第81回帝国議会　衆議院　農業保険法中改正法律案外三件委員会　第3号　昭和18年2月4日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十八年二月四日（木曜日）午前十時十八分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　池田秀雄君
  　　理事　泉國三郎君　理事　岩瀬亮君
  　　理事　角猪之助君　理事　日下田武君
  　　理事　深澤吉平君
  　　　　安孫子孝次君　　　小野祐之君
  　　　小笠原八十美君　　　大石齊治君
  　　　　岡本馬太郎君　　　加藤七郎君
  　　　北村又左衞門君　　　紀藤常亮君
  　　　　齊藤正身君　　　酒井利雄君
  　　　　田部朋之君　　　竹内俊吉君
  　　　　中村又七郎君　　　野村嘉久馬君
  　　　　馬場元治君　　樋口善右衞門君
  　　　　二田是儀君　　　松岡秀夫君
  　　　　松浦周太郎君　　　牧原源一郎君
  　　　　三善信房君　　　滿井佐吉君
  　　　　村上國吉君　　　最上政三君
  　　　　矢部藤七君　　　安田桑次君
  　　　　吉田賢一君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　農林大臣　井野碩哉君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　　農林次官　石黒武重君
  　　　　　農林省農政局長　石井英之助君
  　　　　　農林省山林局長　井出正孝君
  　　　　　　　大藏書記官　窪谷直光君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　農業保險法中改正法律案（政府提出）
  　食糧管理特別會計法中改正法律案（政府提出）
  　農業保險の保險料國庫負擔金等の交付及分擔等に關する法律案（政府提出）

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• 001・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ開會致シマス、
  寸御諮リヲ致シマスガ、今日カラ暫クノ間ハ農
  業保險法中改正法律案ト、食糧管理特別會
  計法中改正法律案竝ニ農業保險ノ保險料國
  庫負擔金等ノ交付及分擔等ニ關スル法律案、
  此ノ三案ニ付テ御質問ヲ願ヒタイト思ツテ
  居リマス、木炭需給調節特別會計法中改正
  法律案ハ少シ食糧關係トハ緣ガ遠イノデゴ
  ザイマスカラ、是ハ又後デ適當ナ機會ニ御
  願ヒシタ方ガ、議事ガ混雜セヌデ宜クハナ
  イカ、一方ニハ木炭ヤ薪ヲヤリ、一方ニハ
  〓糧ト云フヨリハ此ノ三件ヲ先ヅ本日ハ
  御質問ヲ願フト云フヤウニ致シタ方ガ宜カ
  ラウカト思ツテ居リマスガ、如何ナモノデ
  セウカ-サウ云フヤウニ御願ヒ致シタイ
  ト思ツテ居リマス、ソレカラ又御承知ノ通
  リ戰時議會デモアルノミナラズ、開會モ遲
  レテ居リマス、ソレデ成ベクナラバ御質問
  ハ一人デ二時間モ、三時間モ、四時間モト
  云フヤウナコトハ御遠慮ヲ願ツテ、大體一
  時間見當位デ御質問ヲ願ヒ、成ベクハ多ク
  ノ方ニ御質問ノ機會ガ出來ルヤウニスルノ
  ガ宜カラウト思ツテ居リマス、ソレニ又成
  ベク案ニ卽シタ御質問ヲ願ヒ、豫算委員會、
  或ハ農業團體法ト餘リ重複セヌヤウニヤツ
  タガ宜カラウト思ヒマスカラ、成ベクハ案
  ニ卽シタ御質問ヲ願ヒタイ、尤モ斯ウ申シ
  マシテモ、敢テ皆サンノ言論ヲ封ズル意味
  ハアリマセヌ、併シ成ベク案ニ卽シタル御
  質問ヲ願ツテ、一應ノ結論ニ到達致シマス
  レバ、又時ヲ見計ラツテ一般農業問題、農
  業國策問題等ニ付テハ農林大臣其ノ他ノ
  御出席ヲ願フ、機會ヲ作リタイト思ツテ居
  リマスガ、最初ハ成ベク案ニ卽シタ御質問
  ヲ願ツタ方ガ議事ノ進行上都合ガ好クハナ
  イカト云フヤウニ考ヘテ居リマスガ、此ノ
  點皆サンノ御諒解ヲ得テ置キタイト思ヒマ
  ス

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• 002・樋口善右衞門

  ○樋口委員　委員長ノ御說御尤モト思フノ
  デス、併シナガラ此ノ保險トカ、或ハ今提
  案セラレテ居ル案件ニ付キマシテモ、根本
  ハ大體農村ノ現狀ハ、區々ナル案件ノ審議
  ヲシテ居ルヨリモ、根本的ニ私ハ檢討シ直
  サネバナラヌモノガアリハセヌカ、隨テ此
  ノ法案ヲ審議スルコトハ當然デハアリマス
  ケレドモ、此ノ法案ヲ審議スルニ先ダチマ
  シテ、政府當局ノ食糧及ビ農村ノ問題ニ對
  スル意思ノアル所ヲ確カメテ、然ル後本案
  ヲ審議スルト云フコトニ行カネバ、現下我
  ガ國ノ實情ハ普通ノ場合ト違ツテ居ルト私
  ハ思フノデゴザイマス、又保險法ノ制定ノ
  如キデモ、之ヲ制定スル必要ガ喧シク言ハ
  レタ當時ト現狀トハ違フノデゴザイマス、
  現狀ハソレヨリヽハモツト〓〓根本的ナ問題
  ニ遡ツテ農村ヲ如何ニスルカ、食糧問題ヲ
  如何ニスルカト云フコトガ私ハ一番必要デ
  アルト思フ、ケレドモ玆ニ政府ガ折角斯ウ
  云フ改正案ヲ出サレテ、共濟的ナル效果ヲ
  擧ゲルト言ハレルコトニ付テハ、是ハ私此
  ノ提案ヲ適當ト思フノデアリマスルケレド
  モ、併シ之ヲ運用シテ行ク母體デアル農村
  ノ現狀ハドンナ姿ヲシテ居ルカ、是等ヲ見
  直ス時ニ於キマシテハ、私ハ當局ノ意思ノ
  アル所ヲ各委員カラ尋ネラレテ行クコトハ、
  委員長之ヲ御許シニナツタガ宜シイト思ヒ
  マス、此ノ點ニ付テ委員長ノ御意見ヲ伺ヒ
  タイト思ヒマス

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• 003・池田秀雄

  ○池田委員長　御答ヘ致シマス、只今ノ樋
  口君ノ御意見ハ御尤モト思ヒマス、尢モ農
  業保險ノ改正ニ付キマシテモ、其ノ前提ガ
  ナケレバ十分論旨ヲ盡スコトハ出來マスマ
  イ、ソレマデ御遠慮ヲ願ヒタイト云フ意味デ
  ハアリマセヌ、結論ニ到達スルニハソコカ
  ラ論ジナケレバナラヌコトガ多々ゴザイマセ
  ウ、唯併シ成ベクソレニ付テモ案ニ卽シテ、
  ソコカラ論ジテ行カナケレバ、此ノ案ニ付
  テ結論ガ得ラレヌヤウナ意味合ニ於テ一ツ
  御質問ヲ願ヒタイ、ソレデ敢テ案ト關係ガ
  ナイト言ツテ、私ハ皆サンノ質問ヲ封ジヨ
  ウト云フ考ハ毛頭持ツテ居リマセヌ、成ベ
  ク議會ノ論議ハ之ヲ尊重シテ行ク、サウシ
  テ權威アル委員會ニシテ行キタイト云フヤ
  ウナ積リデ居リマスルカラ、其ノ積リデド
  ウゾ御願ヒ致シマス-ソレデハ質問ノ通
  告ガアリマスカラ、樋口善右衞門君ニ質問
  ヲ願ヒマセウ

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• 004・樋口善右衞門

  ○樋口委員　色々委員長ノ議事進行上御注
  意モアリマスカラ、成タケ簡明率直ニ御尋
  ネヲシタイト思ヒマス、私現下ノ食糧事情ト
  云フモノヲ見マスル時ニ、全ク惡化ノ一路
  ヲ辿ツテ參ツテ居リマス、國民ノ食糧ニ對
  スル所ノ不安感ト云フモノハ一層深刻ニナ
  ツテ參ツタノデアリマスガ、政府ハ色々之
  ニ付テ消費生產方面ニ聲ヲ嗄シテ叫ンデ居
  ラレル、全ク骨身ノ削ル御勞苦ヲ拂ツテ戴
  クコトハ洵ニ私共感謝ニ堪ヘヌノデアリマ
  スガ、併シナガラ事今日マデ御計畫ニナツ
  タコトニ反シタル結果ガ卽チ惡化ノ一路ヲ
  辿リツツアルノダト思フノデアリマス、
  今ニシテ根本的ナル方法ヲ御檢討願ハネバ
  折角御努力ヲ願フコトソレ自身ガ寧ロ惡化
  ノ一路ニ傾イテ行クノデハナイカト云フ心
  配ガアルノデアリマス、之ニ付キマシテ昨
  年ノ議會ニ於キマシテモ、色々政府ハ此ノ
  大戰ノ前途ヲ見透シテ、現在ノ生產消費ヲ睨
  合セテ、ソコニ食糧政策ヲ御立テニナリマ
  シテ、玆ニ一年ヲ經マシタル今日ニナリマ
  スルト、其ノ當時ニ於キマシテ旣ニ私共ハ
  其ノヤリ方デハ到底御計畫ガ實現セマイト
  云フコトヲ申上ゲタ積リデゴザイマス、所
  ガ政府ニハ如何ニモ確信アルカノヤウナコ
  トデアリ、唯天候其ノ他已ムヲ得ザル事情
  ト云フヤウナ場合ハ計畫ニ反スルカモ知レ
  ヌト云フヤウナコトデゴザイマシタ、然ル
  ニ昨年ノ米作ノ如キハ近年ニナイ豐作デア
  ル、朝鮮ノ一部ノ如キハ成程是ハ早害ヲ受
  ケマシタカハ知ラヌガ、元來我ガ國ノ食糧
  ハ決シテ外地及ビ外米ニ依存セヌデモ、內
  地ニ於テ十分ナ自給自足2出來ルノハ、現
  在デモ私ハ米ガアルト信ジテ居ルノデゴザ
  イマス、唯ソレ需給ノ關係ガ圓滑ヲ缺クガ爲
  ニ斯樣ナ結果トナリ、又此ノ生產者ノ心理
  
  ヲ十分摑マズシテ、唯茲ニ法律規則ヲ以テ
  事ヲ計ラツテ行ク所ニ、此ノ需給ノ圓滑ヲ
  缺イテ來タ結果ガ、今日ノ外地米、外米ニ
  賴ラネバナラヌト云フヤウナ、洵ニ情ケナ
  イ現狀ニ至ツテ居ルト思フノデゴザイマ
  ス、ソレデ昨年ノ此ノ議會ニ於テ政府ガ御
  立テニナツタノト、現在ト甚ダシイ違ツタ
  コトハ成程大東亞戰爭ノ推移ノ狀況モア
  リマセウケレドモ、大東亞戰爭タルヤ固ヨ
  リ前途遼遠デアリ、是カラデアルト云フコ
  トハ各大臣カラ各方面デ國民ニ覺悟ヲ促シ
  テ居ラレル、其ノ場合ニ於ケル政府トシテ、
  大東亞戰爭ハ一層甚ダシクナツテ來ルト云
  フコトノ豫想モ付イテ居ラヌ筈ハナイト思
  フ、ソレヤ是ヤヲ考ヘマスル時ニ、食糧問
  題ガ現在ノヤウナ狀態ニナツテ來タ、包米
  ヲ食ツタリ、玄米ヲ食ハネバイカヌ、食ハ
  セネバナラヌ、何ト云フ情ケナイコトダト思
  フノデゴザイマス、產業戰士ニ對シテ、ド
  ウゾ私ハ彼等ノ好ム物ヲ食ハシテヤレルモ
  ノナラバ、此ノ方法ニ依ツテ必ズナシ得ラ
  レルモノヲ、玄米デ我慢シロ薩摩芋ヲ食ツ
  テヤレ、包米ヲ食ツテヤレト云フコトハ、
  聊カ食糧政策ヲ御立テニナルコトニ付テ、
  私ハ非常ナル根本的ノ行違ヒガアリヤセヌ
  カト云フコトヲ思フノデゴザイマスルガ、
  併シナガラ豫算總會ニ於テ承リマシテモ、
  今日デモ政府ノナサレテ居ルコトハ、大體ニ
  於テ是デ宜イ、是デ押通シテ行クト云フ御
  意向ノヤウニ伺ツタノデアリマスルガ、之
  ニ對シマシテ、大臣ハ現在ノ狀態ガ如何ナ
  ル原因ニ依ツテ斯ウナツタカ、其ノ主ナル
  モノ、其ノ主ナル原因ト、サウシテ我ガ國
  ノ食糧政策ノ見透シニ付テ御〓示ヲ願ヒタ
  イト思フノデゴザイマス

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• 005・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今樋口君ハ我ガ國ノ食
  糧事情ガ惡化ノ一途ヲ辿ツテ居ルト云フ御
  言葉デアリマシタガ、私ハサウハ思ツテ居
  リマセヌ、惡化ト云フコトハ非常ニ將來ノ
  悲觀性ヲ意味スルノデアリマスガ、支那事
  變五年目、大東亞戰爭二年目ノ今日、兎モ
  角平年作以上ノ作ヲ得タト云フコトハ、決
  シテ食糧計畫ノ上ニ於テ惡化ノ一途ヲ辿ツ
  テ居ルトハ考ヘテ居ラナイノデアリマス、
  如何ナル國ニ於キマシテモ、戰爭五年目ニ
  ナリマスルト、殆ド生產ハ半減致シマス、
  然ルニ我ガ國ハ御稜威ノ下、農民諸君ノ全
  ク滅死奉公ノ努力カラ、平年作以上ノ作ヲ
  得タノデアリマス、昨年モ政府トシマシテ
  ハ七千百万石ト云フ目標ニ致シマシタ、其
  ノ時樋口君ハソンナ目標ヲ作ツタツテ駄目
  ダト云フコトヲ仰シヤイマシタガ、昨年ノ
  六千七百万石ト云フ二囘收穫豫想ハ、兎モ
  角九州、四國ノアノ災害ヲ考慮ニ入レマシ
  テ尙ホ六千七百万石デアリマス、若シモア
  ノ災害ナカリセバ、七千万石以上ヲ突破シ
  テ居ツタト思フノデアリマス、デアリマス
  カラ生產計畫ノ上ニ於キマシテハ少シモ齟
  齬ハナイノデアリマス、然ラバ何故今日食
  糧ノ狀態ニ於テ外米ニ多少依存スルカ、外
  米依存ナンカシナクテモ立派ニ國內デヤツ
  テ行ケルヂヤナイカト云フ御意見モアリマ
  シタ、是ハ私モ出來ルヤウニ致シテ居リマ
  スルガ、從來カラノ生產計畫ヲサウ急ニ倍
  加スル譯ニハ、內地ノ事情ニ於テモ行カナ
  イノデアリマス、而モ戰爭後消費ノ增加ト
  云フモノガ非常ニ增大致シテ居リマスル
  コトハ御承知ノ通リデアリマス、此ノ急
  激ナル增加ニ對シテ、供給ヲ出來ルダケ多ク
  スルコトニ依ツテ賄ツテ行クト云フコトニ
  ナリマスレバ、勢ヒ多少ノ外米ニ依存シナ
  ケレバナラヌ實情デアリマス、隨テ外米ノ
  輸入モ政府トシテハ出來ルダケノコトヲ致
  シタノデアリマス、然ルニ本年ハ大東亞戰
  爭第二年目ヲ迎ヘマシテ、所謂決戰ノ年デ
  アリマスルカラ、第一線ノ將兵ニ思フ存分
  働イテ貰ヒタイ、サウシテ立派ニ米英ヲ叩
  キ付ケテ貰ヒタイト云フ氣持カラ、船ハ出
  來ルダケ第一線ニ割カウヂヤナイカ、國民
  ハ多少生活ノ上ニ窮屈ガアツテモ我慢シヨ
  ウヂヤナイカト云フ意味ニ於テ、外米ノ輸
  入モ極力抑制ヲ致サウト考ヘマシタガ故
  ニ、消費部面ノ上ニ於キマシテ色々ノ工夫
  ヲ致シテ居ルノデアリマス、併シ此ノ事態
  ヲ以テ將來ノ食糧ガ不安ナリトハ私ハ考ヘ
  テ居リマセヌ、國民ガ戰時生活ニ耐ヘ忍ブ
  決意ヲ持ツテ居リマスル以上、政府ノ施策
  ニ應ジマシテ、適當ニ國民トシテモ食糧問
  題ニ付テハ政府ヲ信ジ、政府モ亦國民ヲ信
  ジテヤツテ行キマスレバ、少シモソコニ不
  安ハナイト私ハ信ジテ居ルノデアリマス

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• 006・樋口善右衞門

  ○樋口委員　成程惡化ト云ツテハ或ハ言ヒ
  方ガ惡イカモ知レマセヌガ、窮屈ニナツタ
  コトハ事實デアリマス、ソレカラ昨年ハ七
  千百万石出來タ、事變以來生產ノ維持ハシ
  テ來タ、斯ウ云フコトニ於テ政府ノ計畫ハ
  違ハナイト云フコトデアリマス、其ノ通リ
  七千百万石ヤソコラハ出來タノデアリマス、
  併シ兎ニ角モ我ガ國ノ米ト云フモノハ、天
  候サヘ好ケレバ七千万石ヤソコラデハナ
  イ、ソレハソレトシテモ、七千万石モ穫レ
  タノニ、ナゼ今日コンナニ慌シイコトヲシ
  ナケレバナラヌノデアルカ、私ハ今日政府
  ノヤラレル所ヲ見ルト、七千万石穫レタモ
  ノデアルナラバ、政府ハ自給關係ニ於テ此
  ノ七千万石ニ付テ其ノ運用宜シキヲ得ルナ
  ラバ、コンナ窮屈ナコトヲセヌデモ、來年
  ノ見透シハ付クト云フヤウナコトヲ仰セニ
  ナリマシタケレドモ、我ガ國ノ米ト云フモ
  ノハ建國以來ノモノデゴザイマシテ、米
  卽チ農ノ本デアリ、全ク我等ノ血ト肉ハ米
  ニ依ツテ出來、米ハ國家ノ生命デアルノデ
  アリマス、此ノ尊イ米ヲ作ル耕地ガ人口ノ
  增加ト共ニソレニ比例シテ殖エテ來テ居リ
  マシテ、統計ヲ見マシテモ六千五百万石ナ
  リ、七千万石ナリト云フモノハ出來テ居ル
  ノデアリマス、而モ此ノ統計ニ現ハレタル
  モノタルヤ、農村ノ特異性ト申シマスカ
  或ハ德川時代ノ藩政ノ苛歛誅求ノ結果、此
  ノ統計ニ現ハレマス申告ト云フモノハ、七
  俵穫レバ六俵ヲ申〓スル、ソレ以上ヲ言フ
  モノハ篤農家以上ニハナイノデアリマス、
  昨年ハ宜カツタガ、今年ハドウモイケナイ
  ト云フコトデ、農家ノ肚デ以テソコニ屆ケ
  テ來タモノガ此ノ數字デアルノデアリマス、
  ソレデ只今ハ世界各國ノ例ヲ御引キニナリ
  マシタガ、我ガ國ハ農ヲ以テ本トシテ居ル
  國デアリマシテ、世界ノ他ノ國ノ農業經營
  トハ全然違フノデアリマス、五百五十万ト
  カ六百万トカ云フ農家ガ、全ク獨立自營ノ
  本質ノ下ニ之ヲ作ツテ居ル、是等ノ點ニ思
  ヒヲ致サズシテ、數字ノ上ダケデ御覽ヲ戴
  キマスト、其ノ政策ニ大ナル間違ヒガ出來
  ルト思フノデアリマス、假ニ御計畫ノ七千
  百万石出來タト見マシタ所ガ、片方ノ農家
  ガ今日米ヲ食ツテ居ル、是ハ全國何レモ先
  ヅ以テ否定スベカラザル事實デアリマス、
  都會ハ芋ヲ食ヒ、麥ヲ食ヒ、外米ヲ食フ、
  私共ハ昨年以來之ヲ心配シタノデゴザイマ
  ス、幾ラ穫レテモ農家ガ〓込ムト云フコト
  ニナレバ是レ位恐シイコトハナイ、世界ノ
  廣イコトハ私共ハ知リマセヌガ、例ヲ擧ゲテ
  行ケバ「ドイツ」ノ如キデモ南「プロシャ」ニ於
  テ最モ集約農業トセラレル所ガ五十町步ヲ
  最小トスルト云フヤウナコトヲ聞イテ居リ
  マス、是等ノ經濟的農業ト違ヒマシテ、我
  ガ國ノ農業ハ企業デハアルケレドモ、精神
  的ノ農業デゴザイマシテ、先ヅ以テ自分ノ
  食フモノヲ自分デ穫ルト云フ程度ノモノデ、
  平均ハ一人ニ六反步內外ニシカ當リマセ
  又、此ノ農家ガ全國的ニ一日五合ヅツ米ヲ
  濫費スルトスレバ、優ニ是ハ九百万石乃至
  一千万石ヲ食ヒ込ムノデゴザイマス、唯收
  穫ガアツタカラト云フノデナク、此ノ米ヲ
  十分供出セシメテ、之ヲ消費地へ持ツテ來
  テ、初メテ私ハ〓糧增產ノ全キヲ得タト云
  フコトガ出來ルト思フノデアリマス、此ノ
  米ヲ農家ガ自ラノ消費ニ多數ヲ使ヒ、又濫
  費ヲスル、聞ク所ニ依レバ濁酒ヲ造リ、又
  米味噌ヲ造ル、或ハ屑米ハ動物ノ飼料ニス
  ル、私バ斯ウ云フコトヲ聞ク度ニ目ノ潰レ
  ルヤウナ勿體ナイ感ジガスルノデゴザイマ
  ス、是ガ私共ノ昨年憂ヘタ點デゴザイマシ
  タ、天候ガ好カラウガ、惡カラウガ、穫レ
  タモノヲ大切ニシテ、米ハ一粒デモ無駄ニ
  スレバ目ガ潰レルト云フ位農家ハ大切ニシ
  テ居ツタノデゴザイマス、ソレヲ今日米ヲ
  食フヤウニナツタト云フコトハ、要スルニ
  米ガ一番安イト云フコトデゴザイマス、此
  ノ値段ヲ此ノ儘デ置イタ時ニハ必ズヤ食
  糧政策上非常ニ困ル、斯ウ云フ風ニ米
  價ト云フモノガ低物價政策ノ犧牲ニナ
  ツテ居ル、犧牲ト云フト語弊ガアルカ
  知ラヌガ、一番之ヲ低物價政策ノ恐ロシ
  キモノノヤウニ政府ハ見テ居ラレル、
  其ノ結果他ノ物ハドンノ〓上ツテモ米ダケ
  ハ安イ、安イニ依ツテ貴サト云フモノガナ
  クナツテシマツテ居ル、又農家ニ於テ之ヲ
  ナゼ食フカト言ヘバ、他ニ食フモノガ何モ
  アリマセヌ、平常持ツテ居ルモノデアリ、
  又安イト云フコトニ依ツテコツチデ使ツテ
  シマフ、早ク米ノ相場ヲ他ノモノト釣合ヲ
  取ルヤウニセニヤイカヌト云フコトカラ、
  私ハ大臣ニ斯ウ云フ間違ヒガ起リハセヌカ
  ト云フ心配カラ尋ネタノデゴザイマス、何
  モ米ガ穫レルトカ穫レヌトカ云フンヂヤナ
  イ穫レタモノヲ需給ノ關係ヲ宜クシテ、
  初メテ食糧政策ト云フモノガ出來ルノデア
  リマスカラ、私ハ此ノ値段デハイカヌト云
  フコトヲ申上ゲタ、五圓ノ補償金デ非常ニ
  喜ンデ出スト云フヤウナ御見解デアリマシ
  タガ、其ノ點ヲ私ハ心配シタ、大臣ナリ政
  府ナリノ方ニ聞エテ來ルノハ、洵ニ結構デ
  ゴザイマスト言ヒマセウケレドモ、生產者
  自體ガ米ヲ食フ所ヲ見マスト是ハ決シテ有
  難ガツテ居ラヌト云フ證據デアル、ソコデ
  私ハ昨年非常ニ之ヲ憂ヘタガ、只今御說ノ
  ヤウニ、何モ今困リハセヌ、斯ウ云フ御話
  デアリマスガ、都會ニ芋ヲ食ハセナケレバ
  イカヌ、代用食ヲ配給シナケレバイカヌト
  云フコトニナツテ來タ原因ハ、價格ノ問題
  カラデアル、芋トカ云フモノハ非常ニ腐敗
  シ易イモノデ、是ハ都會ノ人ノ代用食ニス
  ベキモノヂヤナイ、米ガ貴イモノデアルカ
  ラ米ヲ出ス、サウスレバ結局其ノ代用食ヲ
  麥ニ取ルトカ、芋ニ取ルトカ云フコトニナ
  ツテ來ル、ソレガ斯ウ云フコトニナルト云
  フノハ、米ノ價格ガ一番安イト云フコトニ
  原因シテ居ルコトハ爭ハレナイ事實デアリ、
  是ハ恐ラク全五百五十万戶ノ意思デアルト
  言ツテ憚ラヌノデゴザイマス、ソレヲ此ノ
  儘押通シテ御計畫ヲ御立テニナツテモ、田
  舍デ使フ所ノモノヲドウスルカ、又生產者
  自ラガ耕作ヲ怠ルノヲ、規則ヤ何カデ止メ
  ラレルモノヂヤナイ、最モ貴イ米デアル以
  上私ハ最モ高イノガ當然デアルト思フ、
  假令之ニ二重價格ヲ御用ヒニナリマシテモ、
  現在ノ價格ヲ以テ押通シテ行クト云フコト
  デハ、如何ニ消費ヲ規正セラレテモ、如何ニ
  生產ヲ增加シテモ、其ノ濫費スル所ノモノ、
  之ニ依ツテ食ヒ違ヒガ出來テ來ル、我ガ國
  ノ農業ノ經營狀態ハ、ソンナ「ヨーロッパㄴ諸
  國ナドト大イニ趣キヲ異ニシテ居テ、米ヲ
  最モ高イモノ、貴イモノト云フ、此處ニ重
  點ヲ置イテ、米サヘ確保致シマスレバ、他
  ノモノハソレ程ヤカマシク言ハヌデモ、私ハ
  我ガ國ノ〓糧問題ハ解決スルト思フ、農家
  自ラガ增產シヨウ、自ラ節米シヨウ、自ラ
  進ンデ供出シヨウト云フ風ニ仕向ケテ行キ
  マスナラバ五百五十万戶ノ農家デ僅カ五
  反ヤ六反ノ平均デアレバ、肥料、勞力ノ不
  足、固ヨリ苦痛デアリマスケレドモ、之ヲ
  克服スルコトニ付テハ大農式ト違ツテヤリ
  易イ所ガアル、同時ニ節米サセルニ付テモ非
  常ニ都合ガ好イ、然ルニ現在デハ其ノ反對
  ノ結果ヲ來シテ、五百五十万戶ノ米ヲ作ル
  農業者ト云フモノガ何トナク力ヲ入レマセ
  又、ソコニ持ツテ來テ彼等ガ米ヲ食フ、之
  ヲ供出スルト云フコトニナルト隱スヤウニ
  スル、斯ウ云フ現狀ヲ其ノ儘ニシテ之ヲ押
  通スト云フコトハ、非常ニ間違ヒガ生ジテ
  來ル、原因ニナルト思フ、此ノ間カラノ政
  府ノ御答辯ヲ伺ヒマシテモ、米ノ値段ハ上
  ゲナイ、但シ二重價格制ヲ以テデモ云々ト
  云フヤウニ言ツテ居ラレル、是ハ消費者ニ
  對スル價格ヲ上ゲヌト云フコトニモ聞エル
  ノデアリマスガ、私ガ昨年言ツタノハ、此
  ノ米ノ値段ヲ早ク適正ニシナケレバナラヌ
  ト云フコトデ申シタノデアリマス、値段ヲ
  上ゲヌト言ハレルノハ、消費者ニ對スル低
  物價政策トシテ言ハレルコトダト云フ風ニ
  私ハ思ツテ居ツタノデアリマスガ、私ノ聽
  キ誤リカモ知レナイガ、世間多ク傳ヘル所
  ハ農林省ノ委員會デ政府ハ、米ノ値段ヲ
  上ゲル位ナラ出シテ吳レヌデモ宜イト云フ
  風ニ言ハレタト聞イテ居ル、若シ夫レ斯ウ
  云フ結果デ見ルト、消費者ノ方ノ値段ヲ上
  ゲヌノハ、是レ以上二重價格トシテデモ生
  產者ノ手取ヲ上ゲヌト云フコトニ是ガナル
  コトダト思フガ、是等ニ付キマスル大臣ノ
  御意見ヲハツキリシテ、生產者ニ疑惑ヲ持
  タセヌヤウニシテ、進ムベキ方向ヲ定メラ
  レル必要ガアルト思フ、此ノ點ニ付キマス
  ル御所見ヲ一應承ツテ、吾々モ此ノ生產ノ
  第一線ニ從事スル指揮指導ノ參考ト致シタ
  イト思フノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=6

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• 007・井野碩哉

  ○井野國務大臣　樋口君ノ色々米ノ增產ニ
  對スル御心配ハ私モ感ヲ同ジウスルノデアリ
  マシテ、私トシテモ率直ニ申上ゲレバ、農
  村ニ出來ルダケ有利ニ米ノ値段モ考ヘ、又
  生產ノ增强ノ爲ニ色々ノ施設ヲシテ參リタ
  イト云フコトハ、是ハ私トシテハ當然デアリ
  どく、併シ政府全體トシテ茲ニ色々考ヘナ
  ケレバナラヌ問題ガアルト云フコトヲ各方
  面カラ申上ゲテ居リマスカラ、ソレガ部分
  的ニ或ハ米ノ値ヲ上ゲヌトカ、或ハ二重價
  格制度ヲ絕對ニヤラヌトカ、色々ナ風ニ響
  カレマスガ、結局私ノ氣持ヲ率直ニ申上ゲ
  マスト、今樋口君ハ、今日農村ガ米ノ收穫量
  ニ付テ餘リ實際ノ報〓ヲシテ居ナイト云フ
  御話デアリマシタガ、併シ私ハ農民ガ噓ヲ
  ツクト云フコトハ考ヘタクナイノデアリマ
  ス、ヤハリ色々ノ報告等ニ付テハ正直ニ報
  告シテ居ラレル、併シソコニ統計上色々ノ
  關係モアツテ、全部今日出テ居ル統計ガ農
  村ニアル米ノ全統計トモ考ヘテ居リマセヌ、
  ソレ以外ノモノモアルトハ思ツテ居リマス、
  併シソレハ農民ガ申告ヲ僞ルガ故ニナルノ
  デハナクシテ、ソコニ農民ノ申告デナイ色
  色統計員等ノ米ノ豫想力ラ來ル統計モ集マ
  ツテ居ルノデアリマスカラ、隨ツテヤハリ
  今日ノ數字的ナ實體ヲ以テ〓糧政策ノ基本
  トシテ行カナケレバナラヌト思ヒマス、ソ
  コデ農村ニ於テ米ヲ此ノ儘ニ置イテオクト
  食ヒ過ギテシマフ、ダカラ政府ハモツト米
  ヲ農村カラ供出サシテ、都會ニ於テ芋ナン
  カヲ使ハナイデ處理シテ行ツタラ宜イデハ
  ナイカト云フ御意見デアリマス、今日農村
  ニ對シマシテハ政府トシテモ米ノ國家管理
  ヲ致シマシタ以上、農民ハ是ダケノ米ヲ當
  然食ベテ宜イト云フ數量ヲ示シテ居ルノデ
  アリマス、所謂自家用保有米ト云フモノヲ
  農村ニ示シテ、是ダケハ農村トシテモ自カ
  ラ作ツタモノデアリマスカラ當然〓ベテモ
  宜シイ、サウシテソレ以外ノモノヲ政府ニ
  供出シテ貰ヒタイ、ソレヲ農民以外ノ消費
  者ニ政府ハ自カラノ責任ニ於テ分ケテ行ク
  ト云フ風ナ制度ヲ今日執ツテ居ルノデアリ
  マス、昨年ノ實績ヲ見マシテモ、政府ガ豫
  期シテ居リマシタ供出米以上ニ農村ハ自分
  ノ自家用米ヲ割イテモ供出シテ居リマス、
  數字的ニ見マスト、ソコニ農村トシテハ相
  當ニ政府ノ政策ニ協力シテ、自家用米ヲ他
  ノ物ニ換ヘテ、サウシテ米ノ供出ヲ致シテ
  居リマス、部分的ニ見レバ無論或ハ供出
  米以上ノモノヲ食ベタ所モナイトハ言ヒマ
  セヌケレドモ、全體的ニ見レバサウ云フ態
  勢ニナツテ居ルノデアリマス、デアリマス
  カラ本年度ニ於キマシテモ、大體本年ノ作
  柄ニ應ジマシテ供出米ヲ割當テ、サウシテ
  目下政府ハ是ガ買上ヲ致シテ居リマスガ、
  非常ナ好成績デアリマス、斯ウ云フ狀態デ
  アリマスカラ、農村ニ對シテ決シテ今農村
  ガ割當テラレタ以上ノ米ヲドン〓〓食ベテ、
  其ノ消費ヲ增加シテ居ルトハ私ハ考ヘテ居
  ラナイノデアリマス、併シ農村ニ對シテ然
  ラバ米ノ値ヲモツト上ゲテ或ハ自家用保有
  米ノ半分モ出シテ、アトハ芋ヤ何カデ農村
  ハ賄フヤウニシタラ宜イデハナイカト云フ
  コトモ、是ハ一ツノ案デアリマス、値ヲ上
  ゲテ米ヲ多ク取ルト云フコトモ一ツノ方法
  デ、是等ノコトニ付テハ色々ノ御意見ヲ私ノ
  所ニモ言ツテ參リマス、併シ私ハ今日低物
  價政策ト云フモノヲ政府ガ堅持シテ行クコ
  トガ大東亞戰爭ヲ勝拔ク上ニ極メテ大切ナ
  コトデアル、之ヲ其ノ一端ヲ破レバソコカ
  ラ物價政策ト云フモノハ崩レテ來テ、先般
  「ドイツ」ガ物價政策ノ破綻カラ結局敗戰ニナ
  ツタ事例ヲ見マシテモ、是ハ日本ノ今日ノ
  國內經濟ニ於テ嚴守シナケレバナラヌ事態
  デアルト私ハ思フノデアリマス、隨テ米ノ値
  段ヲ上ゲルト云フコトガ總テノ物價ニ大キ
  ナ響キヲ與ヘルノデアリマス、隨テ政府ト
  シテハ、米トカ、鐵トカ、石炭トカ云フ基
  本的ナ物資ハ値上ゲハシナイ、其ノ代リ主
  產費、或ハ他物價ト比ベテ見テ非常ニ引合
  ハヌト云フ場合ニハ、國家ノ補助金、或ハ補
  償金ヲ以テ所謂二重價格制度ヲ以テ之ヲ賄
  ツテ行クト云フ方針ヲ執ツテ居ル譯デアリ
  マス、然ラバ、今日米價ニ付テモツトドン
  ドン助成金ヲ出シタラ宜イデハナイカト云
  フコトモ、是ハ出來レバ吾々モ成ベク多
  クノ助成金ヲ出シテ行キタイノデアリマス、
  併シ國家ノ財政ニモ限リガアリマス、隨テ
  米ノ値段ニ付テ助成金ヲ多クスルコトニ
  依ツテ米ヲ引出シテ來ルト云フ、サウ云フ
  行キ方ハ、何時カハ行詰ル時代ガ來ルノデ
  アリマス、國家ノ財政ニ限リガアリマスカ
  ラ-幾ラデモ國家ガ金ヲ出セルト云フナ
  ラ是ハドン〓〓ヤルガ宜イト思ヒマスガ、
  限リノアル以上ハ或ル所ニ來ルト行詰リガ
  來ル、行詰リガ來テカラ今度ソレガ出來ナ
  イト云フコトニナレバ、農村ヲ導イテ行ク
  上ニ於テ、唯價格ダケデ農村ヲ導イテ行ク
  ト云フコトハ、却テ寧ロ日本傳統ノ農村ヲ
  墮落セシムルヤウナ嫌ヒガアリハシナイカ
  ト云フ心配ヲ私ハ持ツノデアリマス、デア
  リマスカラ、農村ニ對シテハ、斯ウ云フ事情
  デアル、政府トシモテ出來ルダケノコトハシ
  タイノダ、ケレドモ今日ハ斯ウ云フ譯デ出
  來ナイノデアルカラ、農民諸君モドウカ此ノ
  氣持ヲ能ク買ツテ貰ツテ、サウシテ出來ルダ
  ケ增產ニモ努メ、又供出ニモ努メテ貰ヒタイト
  云フヤウニ、農村ヲ精神的ニ導クコトニ依
  リマシテ、從來ノ農村ノ美シサヲ壞サナイ
  ヤウニ、サウシテ農民ノ傳統的ナ、所謂土
  ニ育ミ滅私奉公ノ觀念デ增產ニ進ンデ居ラ
  レル其ノ氣持ヲ私ハ導イテ行キタイト思フ
  ノデアリマス、單ナル價格政策ダケデ色々
  ノ操作ヲシテ行クコトハ是ハ易シイコトデア
  リマス、行政官トシテモ一番容易イ方向デ
  アリマス、サウ云フ方向モ無論考ヘテハ行
  キマス、政府トシテハ引合ハナイコトヲ無
  理ニ農村ニ要請スル譯ニハ參リマセヌカラ、
  凡ユル方向カラ考ヘ直スベキハ徐々ニ直シ
  テ行キマスケレドモ、思ヒ切ツテソレガ出
  來ナイ、樋口君ノ御意見ハ、ソレヲウント
  一ツ出シテ、サウシテ農村カラ米ヲ出サセ
  テ、農村デハ算盤カラ見テ他ノ物ヲ食ベサ
  セテ、サウシテ消費者ノ米ノ値段ヲ緩クシ
  タ方ガ宜イノデハナイカト云フ御議論、是
  ハ私モ出來レバサウシタイ氣持ハ持ツテ居
  リマス、併シソレガ今日ノ國家ノ財政竝ニ
  低物價政策ノ見地カラ見マシテ中々出來得
  ナイト云フ事情ヲ申上ゲテ御參考ニ供シタ
  イト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=7

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• 008・樋口善右衞門

  ○樋口委員　色々御意見ヲ承リマシタガ、
  一寸實情ダケヲ申上ゲテ置キマス、只今ノ
  御答辯中ニ、米價ノ上ゲラレナイ事情ニ付
  テノ御話ガアリマシタ、又申告ハ正確ナル
  モノデアルト云フ御話、私モサウ信ジタイ
  ノデアリマス、尙又一昨年不作デアツテモ、
  十六年度產ノ米ハ豫期以上ニ供出ヲシタ、
  要スルニ農家ハ保有米ヲ供出シテ其ノ數ニ
  ナツタト云フ風ニ聞エル、尙且ツ農家ノ消
  費ハソレ〓〓規正シテアルカラ、ソレ以上
  食ツテハ居ラヌト思フト云フ風ニ伺ツタノ
  デゴザイマスガ、先ヅ第一ニ昨年豫期以上
  ニ出テ來タト云フコトニ付テ、私ハ昨年モ
  申上ゲタ積リデアルガ、實ニ米ノ檢査員ガ
  戶別ニ廻ツテ、盗人シタモノデモ調べルカ
  ノヤウニ、隨分脅威ヲ感ズル取締ヲシテ、
  爲ニ一人ナラズ二人マデ、私ノ方デハ其ノ
  强壓ノ爲ニ自殺ヲシテ居ルノデゴザイマス、
  斯樣ナルコトハ恐ラクハ全國其ノ例少カラ
  ズト私共ハ思フ、ナゼソコマデ無理シナ
  ケレバナラヌカト言ヒマスレバ、農家ノ規
  正セラレタルアノ量目ト云フモノハ、到底
  ソンナモノハ晝飯一遍ノ辨當デ食ツテシマ
  フヤウナ量デアル、他ニ何物モ食ハヌ所ノ一
  汁一菜ト云フヤウナ者ガ、米ノミニ依ツテ
  是ガ生キテ行ツテアンナ數字デ行ケル筈モ
  ナシ、サウシテ芋ハ芋デ供出ガ來ル、ア
  レハアレデ來ルト云フコトニナツテ居リマ
  スガ、アノ規正ヲ以テ若シ農家ニ臨マレル
  ナラバ、私ハ農村ノ米產地ニ大ナル衡動ヲ
  起スト思フノデアリマス、私本年米產地ヲ
  具サニ視察シテ參リマシタ、見ルトマダ寬
  大ナ御取廻シガアルニ依ツテ濟ンデ居ルガ、
  若シ夫レ之ヲ今言ツタヤウナ死ヌマデ苛酷
  ナ調査ノ結果供出ヲサセマシタナラバ、ア
  ル米ハ出セマセウケレドモ、ソレデハ農村
  ガ生產ニ協力ヲスルト云フコトニハ反對ノ
  結果ヲ來スモノデハアルマイカト思フ、洵
  ニ檢査員ガ心ヲ鬼ニシテ、政府ノ要請ニ我
  レガ役目ヲ持ツテ居ルカラ、戶每ニ廻ツテ
  虱潰シニシマシテ出サレタ米ガ、昨年ノ數
  字デアルト思フノデゴザイマス、中ニハ狡
  イ者ハ餘分ニ持ツタデセウケレドモ、正直
  ナ者ハ死ナンナラヌヤウナコトニナツテ居
  リマス、デアリマスノデ、此ノコトニ付テ
  ハ私ハ別ニ議論ヲスルノデハアリマセヌガ、
  御參考マデニ御承知ヲ願ヒタイ
  ソレカラ私一ツ斯ウ云フ風ニ見ルガ、大
  臣ノ所見ヲ伺ヒタイ、此ノ食糧ノ統制ノ狀
  態ヲ見マスト、消費方面ニ對シマシテハ、
  實際是デ政府ノ計畫通リ旨ク行ツテ居ルト
  思フ、私東京へ參リマシテ各方面ノ飯屋ヲ
  覗イテ見ルト、學生ト雖モ、勞働者ト雖モ、
  アノ玄米ニ不足ヲ言ツテ居ル者ハ一人モナ
  イ、洵ニ私イヂラシク思フ、國家今日ノ場
  合己ムヲ得ヌトシテ皆我慢ヲシテ、勝タネ
  バイケヌト云フ氣持ト、食糧ガ窮迫シテ居
  ル此ノ時デアルカラ、玄米ノ飯デモ、包米
  ノ飯デモ實ニ感謝ノ氣持ヲ持ツテ居ル所ニ、
  配給上ニ於ケル政府ノ計畫ハ私ハ稍〓徹底シ
  テ居ルモノト思フノデゴザイマス、所ガ生
  產方面ニナリマスト、寧ロ其ノ反對ナ結果
  ヲ來シテ居ルノデアリマス、政府ニ於テハ、
  供出米ハ今年ノ結果ヲ御覽ニナツテ分ル筈
  ダト思フ、大體統計ハ生產總額ガ減ツテ來
  テ居ル、初メヨリ順々ニ減ツテ來テ、今ハ
  六十何百万石ト云フヤウナコトヲ言ヒ掛ケ
  テ來タ、ソレハドウダト云フト、申告ノ上
  ニ非常ニ遲疑逡巡シテ居ル虞ガアル、隣ノ
  人ノヤウニ死ンデハ困ル、又後カラ何ヲ言
  ハレルカモ分ラヌト云フヤウナ點モアリマ
  セウシスルカラ、アノ全國ノ生產總額ト云
  フモノガ、最初新聞ニ出タヨリ減リ、又少シ
  殖エタト言ヒマスガ、ソンナモノデハナイ、
  マダウント穫レテ居ルト私ハ見テ居ルノデ
  ゴザイマス、丁度收穫ノ時ニ行キマシタガ、
  西日本ノ一部ノ被害位ハ僅カナモノデアツ
  テ、全ク米作地ハ近年ニナイ豐作デアル、
  是コソ私ハ今年ハ皆ニユツクリ食ベテ貰ヘ
  ルト云フコトヲ喜ンダ、所ガ其ノ生產額ハ
  順次報〓ハ少クナツテ參ツタト云フコトハ、
  所謂農家ノ消費米ヲ政府ガ過少ニ見積ツテ
  ヤツテアリマス、デアリマスカラ、サウ云
  フ結果ニナリマスガ、ソレデ私ハドウ考ヘテ
  見テモ、是ハ政府ガ確實ナル管理米ト云フ
  モノヲ握ルト云フコトヲ考ヘナケレバイカ
  ヌト思フ、ソレニハ生產方面ニ對シマシテ、
  是ハ生產團體ニ生產方面ノ責任ヲ負ハシテ、
  其ノ方法及ビ一切ノコトハ御任セニナツテ、
  サウシテソレニ政府ガ協力スルト云フコト
  ニシテ戴キマシタナラバ、私ハ是デ完全ニ
  確保ガ出來ルモノダト思フ、現在デハ生產
  者ニ協力セヨト云フコトデ、私ハソレハ非
  常ナル主客〓倒シテ居リハセヌカト云フコ
  トヲ思フノデアリマス、吾々皆國民ハ戰ニ
  勝タナケレバイカヌ、各バノ職場ハ知ツテ居
  ル、知ツテ居ルケレドモ、現在デ見ルト政
  府ガ一カラ十マデ其ノ指揮指導ヲシテ居ル、
  ダニ依ツテ生產者ニハ責任ガナイ譯デアリ
  マス、政府ノ言ハレマシタヤウニヤリマシ
  タト言ヘバソレデ濟ンデシマヒマスガ、之
  ヲ生產團體ニ政府ハ命令ヲ御出シニナツテ、
  例ヘバ米ガ三千五百万石要ル、麥ガ一千
  百万石要ル、或ハ又芋ガ十億貫ナリ、十五
  億貫要ルナラバ要ルト云フ數字ヲ計算シテ、
  豚何頭、鷄何羽、兎何頭、之ヲ生產團體ニ
  生產方面ヲ一切御任セニナツテ初メテ私ハ
  責任ヲ負フコトニナルト思フノデアリマス
  ガ、現在ノ狀態デハ政府ガ增產計畫ヲナシ、
  政府自ラ耕作ヲナシ、政府自ラ飼育ヲスル
  ト云フヤウナ責任ヲ負ンデ見エルカラ、是
  ハ生產團體ガ責任感ト云フモノガ非常ニ薄
  イノデアリマス、現在モウ一ツ考ヘナケレ
  バイカヌコトハ、イツモノ時ナラバドレダ
  ケ抑ヘテモ農業ト云フモノハヤルモノデア
  リマス、所ガ今デハ錢儲ケガ幾ラデモ他ニ
  アル、是ハ先ツポノ方ヘドエライ穴ガ開イ
  テ居ル、幾ラコツチノ方デヤツテ居ツテモ、
  錢儲ケノ方ヘ逃ゲテ行ツテシマフコトガアル、
  是ガ農家ノ經濟力ヲ維持シテ來ル、ソレデ
  アリマスカラ、純農村ヘ錢儲ケガ入レバ入
  ル程、此ノ純農村ハ著シイ變化ヲ心理上ニ
  來ス、ダニ依ツテ、現在ノヤウナ狀態デイツ
  モノヤウニ農家ノ狀態ヲ見テ居ルト、農家
  ハ決シテ政府ノ財政上ノ補給ヲ賴マナイト
  思フ、大ナル災害デモアリマレバ別デアリ
  マスケレドモ、今玆ニ保險ノ案モ出テ居リ
  マスケレドモ、現在ノ農家ノ經濟狀態ノ、
  勞賃ヲ入レテ來ル方面、其ノ他ノ方面デハ、
  コンナ一反デ二十圓ヤ三十圓ノ金ハ、全ク
  賴リニスルト云フ時期デハナイ、ソレデア
  ルカラ、最モ恐ロシイモノハ、米モ食フ、
  金ガアルカラ米モ食フ、年貢モ出サズニ、
  ソレモ金デ納メテ行ツテ自分ガ食フ、斯ウ
  云フコトニナルト云フ虞ガ十分アル、ソレ
  ダニ依ツテ、生產團體ニ之ヲ任サレテ、生產
  團體ガ今度ハ系統的ニ各團體ニソレ〓〓責
  任額ヲ割ツテ、サウシテ下個人ニ至ツテノ
  責任ヲ取ツテ、其ノ責任ヲ果スダケノ金ヲ
  三億圓直カニ政府ガ出スナラバ、一億圓
  ナリドレダケヲ責任ヲ果ス所ノ助成ヲシ
  テ協力ヲスル、斯ウ致シマスレバ私ハ必
  ズヤ是ハ出來ルト思フ、如何程アナタノ方
  デ言ハレテモ、深刻ナルコト、闇取引ノ多
  イコト、司法大臣モ此ノ頃御述ベニナツ
  テ居ル、協力會議デモ御述ベニナツテ居リ
  マスルガ、一番殖エタノハ食糧ノ闇取引ダ
  ト云フコトヲ言ツテ居ラレマスガ、其ノ通
  リデゴザイマス、恐ラクハ闇ニアラザルハ
  ナイト云フマデ來タト云フコトハ、如
  何ニ此ノ價格、其ノ他ノ矛盾ガ原因ヲ
  ナシテ居ルガ、之ヲ止メントシテ止メルコ
  トハ出來ヌ、之ヲ法律デ取締リ、檢擧シ
  タナラバドンナコトニナリマスカ、檢擧シ
  タナラバ目的タル所ノ增產ノ反對ノ結果ヲ
  來ス、萎縮セシメル虞ガアルノデ、手加減
  ヲ以テヤル、取締ラズニ置ケバドウナルカ
  ト言ヘバ、是ハ又ドウニモ斯ウニモナラヌ
  ヤウニナルト云フコトヲ考ヘマシテモ、我
  ガ國ノ農村ノ事柄ヲ法律ヲ以テヤルト云フ
  コトガ、抑〓私ハ不適當ナヤリ方ダト思フノデ
  ゴザイマス、ソレヨリ責任觀念ヲ持タセテ、
  自ラ進ンデ增產シ、自ラ進ンデ節米シ、自
  ラ進シデ出スト云フ風ニ仕向ケテ行ク政策
  ガ、今日最モ必要ナルコトダト私ハ思フ、
  ソレニ付テハソレ等ノ一切ノコトハ實際ニ
  卽スルコトデアリマスルカラ、政府ノ方デオ
  ヤリニナラズニ、生產團體ニ委セテ、政府
  ハ之ヲ命令シ、之ヲ監督シ、協力スル、斯
  ウシテ進ンデ農業報國ノ實ガ直チニ擧ルヤ
  ウニシナケレバナラヌ、法律ノ爲ニヤツタ
  ナント云フヤウナコトデハ、國民性ヲ〓揚
  セシメル譯ニハ行カヌ、法ヲ設ケレバ設ケ
  ル程イカヌコトニナツテ來テシマフト思フ、
  デアリマスルカラ、其ノ點ガ根本問題ダト思
  フノデゴザイマス、生產方面ニ對スル政府
  ノ御勞苦ハ私御察シスルケレドモ、何分ニ
  モ千差萬別、我ガ國ノ如キ殊ニ長イ國デア
  リ、細イ國デアル、氣候ト云ヒ、風土ト云
  ヒ違フノミナラズ、農業ノ狀態ハ國ニ依
  ツテ違ヒ、郡ニ依ツテ、村ニ依ツテ違ヒ、
  個々ノ一軒ノ耕作地ダケデモ違ツテ居ル、
  斯樣ナ實情ニ對シテ政府ガ玆ニ一ツノ方針
  ヲ以テ命令ヲ出サレルト云フコトニ付テハ、
  作レト云フコトダケハ宜イケレドモ、アア
  ヤレ、斯ウヤレデハ、私ハ御骨折ヲ願ツテ
  却テ效果ノナイコトデアルト思ヒマスルガ、
  此ノ點ニ付テ御所見ヲ伺ヒタイト思フノデ
  ゴザイマス

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• 009・井野碩哉

  ○井野國務大臣　當初樋口君ガ實例トシテ
  御擧ゲニナリマシタ檢査員ガ非常ニ苛酷ノ
  爲ニ不祥ナコトガアツタト云フコトハ、私
  初メテ伺ヒマシタ、是非一ツ其ノ實例ヲ、
  今デナクテモ結構デスガ、御知ラセ願ツテ、
  サウ云フコトガアツテハ相濟マヌコトデス
  カラ、十分ニ私共トシテハサウ云フコトノ
  ヤイヤウニ指導シテ參リタイト思ツテ居リ
  マス、又今生產方面ノ增產ヲ期スル爲ニ、
  生產者自體ニ責任ヲ持タセルト云フコトガ
  必要デアル、其ノ意味ニ於テ或ハ從來ノ農
  會ナリ、其ノ他ノ團體ヲシテ責任團體タラ
  シメルコトガ寧ロ宜イノヂヤナイカ、政府
  自ラガ責任ヲ持ツテヤルコトガ却テ千差萬
  別ノ生產事情ニソグハナイデハナイカト云
  フ御意見デアリマス、此ノ點モ吾々トシテ
  ハ勿論政府ノ力ダケデ總テノ增產計畫ト云
  フモノハ出來マセヌノデ、今マデデモ農業
  關係ノ諸團體ノ協力ヲ得マシテ、サウシテ
  增產ナリ、供出ニ進ンデ居ルノデアリマシ
  テ、其ノ點ニ付テハ從來ノ農業團體ガ色々
  ニ分レテ居リマスルカラ、ソレ等ノ指導ヲ
  シ、又農民自體モ是ガ統制ヲ受ケテ行ク上
  ニ於テ非常ニ區々ニナツテ居リマスノデ、
  之ヲ今度ハ農業團體ノ統合ニ依リマシテ新
  農業團體トシテ生レテ參リマスルト、從來
  ヨリ一層サウ云フ點ニ付テノ協力態勢ハ整
  フト思フノデアリマス、隨テ今後政府トシ
  マシテモ、新農業團體ヲ十分ニ活用シマシ
  テ、生產ノ昂揚ニ努メル積リデアリマスル
  ガ、唯之ヲ總テ農業團體ノ責任ニシテシマ
  へサウスル方ガ寧ロ增產ガ出來ル、斯ウ
  言ハレマスガ、食糧問題ダケハドウシテモ
  ヤハリ政府ガ責任ヲ持タナイトイカヌト思
  フノデアリマス、團體ノ責任ダカラ俺ハ知
  ラヌ、自分ハ知ラヌト云フヤウナ態勢ヲ執
  ツテ參リマシテハ、食糧ノ安定ノ上ニ於テ
  非常ナ間違ヒガ生ジテ來ルノデアリマシテ、
  食糧問題ニ關スル限リハ政府自體ガ責任ヲ
  取リマシテ、サウシテ團體ヲシテ自ラ之ニ
  協力セシメ、又團體ニモ一部ノ責任ハ勿論
  割カセマスケレドモ、生產ノ全責任ヲ團體
  ニ負ハセテ、政府ハ唯ソレヲ監督シテ居ル
  ト云フダケデハ私ハ相濟マヌト思フノデ
  アリマス、隨テ今後此ノ新農業團體ガ出來
  テ參リマスレバ、從來ヨリハ樋口君ノ御意
  見ニ近イ進ミ方ニナツテ參リマスルケレド
  モ、今申シタ通リ全責任ヲソコニ預ケルト
  云フ譯ニハ參ラナイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=9

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• 010・樋口善右衞門

  ○樋口委員　是ハ此ノ程度ニ止メテ置キマ
  ス、更ニ御伺ヒ致シマスガ、統制會社ノ問
  題デアリマスガ、此ノ統制會社ト云フモノ
  ガ非常ニ問題ニナツテ居リマス、之ニ付テ
  ハ政府デモ能ク御〓究ニナツテ居ルト思ヒ
  マスガ、此ノ頃色々委員會ノ應答ヲ聽キマシテ
  モ、此ノ統制會社ガ出來タガ爲ニ從來ヨリモ生
  產者ノ方ガ利益スルヤウニナツタ、斯ウ云フ
  ヤウナコトダ、併シナガラ從來ドレダケ儲ケ
  ラレテ居ツタト云フコトガ分ラナイニ依ツテ、
  今ソレガハツキリシタカラ彼此レ問題ガア
  ルノダト云フヤウナ御意思ノヤウニ伺ハレ
  ルノデアリマス、所ガ是等ニ付キマシテモ、兎
  ニモ角ニモ統制會社ダケ餘計ニナツタト云
  フコトダケハ事實デゴザイマス、サウスル
  ナラバ問屋ヲ廢メルカ、小賣店ヲ廢メルカ、
  何處カ少シ省略シテ行ケバ宜イガ、此ノ間
  モ豫算總會デ聽イテ居リマスト、松村サン
  ガ食肉統制ノ例ヲ擧ゲテ非常ナ複雜化ヲ言
  ツテ居ラレタガ、現ニアナタ今日アンナコ
  トヲセヌデモ-統制ヲシヨウトスレバ、
  何モ强ヒテ斯樣ナコトヲセヌデモヤツテ行
  ケル、何處カ廢メレバ宜イ、今日マデ中ニ
  入ツテ居ラナカツタ帝畜、縣畜、郡畜、斯
  ウ云フモノニ何ノ關係ガアリマスカ、統制
  會社自體ト云フモノニ付テハ成程ソレモア
  リマセウケレドモ、畜產組合ナドガ何ノ爲
  ニ手數料ヲ取ルコトガアラウカ、ソンナモ
  ノガ中ニ入ツテ何ヲヤツタカ、唯屠殺場デ
  書イテ書類ヲ送ルダケデ手數料ヲ取ルカ
  ラ、皆ガ利益ガアツテモナクテモ、アンナ
  旨イコトハナイト云フヤウナコトニナル、
  木炭ノ如キモ、木材ノ如キモ、或ハ薪木ノ
  如キモ皆サウデアリマス、今マデ隣リヘ最
  終價格デ賣ツテ居ツタモノヲ、統制デナケ
  レバ賣レナイト云フコトニナツタモノダカ
  ラ、隣リヘ薪木ヲ一東賣ルノニモ十錢ノ利
  益ヲ商人ナリ、其ノ統制階級ニ取ラレナケ
  レバナラヌ、藁工品ノ如キデモ其ノ通リデ
  アリマス、最終價格デ賣ツテ居ツタモノガ、
  現地貨車乘價格ト云フコトニナリマスルト、
  三錢ノ値上ヲシタモノハ藁工品會社ノ利得
  トナリ、生產者ノ利得ニハ何モナラナイノ
  デアリマス、ダカラ私共ハ稗筵デモ六百万
  枚織ラシテ居ルノデアリマスガ、統制會社
  ガ斯ウ云フコトヲシテ値ヲ下ゲタ、ダガ奬
  勵前ニハドレダケ値上ヲシテ居ルカ分ラ
  ヌ、政府ハ値ヲ御上ゲニナツタ積リデアル、
  實際ハ現地貨車乘價格ト云フモノヨリ取ラ
  ナイ、吾々デ言ヘバ大阪デモ名古屋邊リデ
  モ、今日織ツタモノハ直チニ使用者ノ方面
  ニ向ケテ居ツタノデアリマスガ、ソレヲ今
  日ハ藁工品會社ガ出來、統制セラレテ、皆
  東京ニ一遍指ツテ來テ、ソコデ整理シタ上
  デナケレバイカヌト云フコトデ、使用者ノ
  方デモ困ツテ居ラレルガ、生產者モ非常ニ
  是デ利益ヲ落シテシマツテ、現在ニ於テハ
  恐ラク二百万枚モ出來ナイト言ツテ居ル、
  是等ノ如キモ餘程注意シナイト、農繁期ニ
  ナレバ絕對ニ出來マセヌ、此ノ二、三、四
  年ノ內ニヤラセレバ宜イガ、コンナ狀態デ
  ハ何處マデモ力瘤ヲ入レテヤラウト云フ人
  ハ誰モ居マセヌ、漸クニシテ慌テテ奬勵金
  ヲ出ストカ、何トカ言ヒマスルケレドモ、
  何モソンナコトヲセヌデモ、幾ラデモ間ニ
  合ツテ居ツタコトハ、軍隊方面ノ、私ノ方
  ニ實情ヲ御尋ネニナツテモ分ル、何處カラ
  モ手ヲ付ケサセヌヤウニ組合ノ方デヤツテ
  居ツタ、之ヲ日藁ガ統制スルト言ヒマシタ
  爲ニ扱ツテ居ラヌ、縣販購聯ナドガソレヲ
  扱ツテ、生產ハ生產團體ガヤツテ居ツタ、
  生產團體ヲソツチ除ケニシテ、扱フ方ノコ
  トダケ統制ガ確立シテ、其ノ結果ガ生產不足
  ニナツタコトハ恐ラクハ私ハ全國皆サウデ
  アラウト思フ、ソレハ現在ニ於テ繩ヲ一束
  買ハウトシテモ買へマセヌ、生產ヲセヌモ
  ノハドウスルコトモ出來ナイ、私ノ方デモ
  此ノ頃ハ總會ヲヤツテ何ト勵マシテモ、藁
  工品會社ニ儲ケラレルト云フヤウナ氣持ガ
  頭ニアル、統制セラレタラ値ガ上ツテ行ケ
  バ宜イガ、値ガ下ツテ、消費ノ方ハ同ジ價
  格デ行ツタトシテ見レバ、是ハ誰ノ利得カ
  ト言ヘバ統制會社ノ利得デアル、大臣ハ統
  制會社ガ出來タニ付テ從來農家ガ商人ニ暴
  利ヲ取ラレテ居ツタモノガ、正シイ計算表
  ガ分ルカラ、ソレデヤカマシイノダト言ハ
  レルガ、サウ云フ者モアツタカモ知レヌケ
  レドモ私共ノ直接扱ツテ居ル範圍デ見ル
  ト、統制會社ガ出來テ不利不便トナリ、何
  等利益ヲ得テ居ラヌコトハ確カデゴザイマ
  ス、食肉ト云ヒ、薪炭ト云ヒ、木材ト云ヒ、
  板一枚モ今買へマセヌ、恐ラクハ重要ナル
  方面スラモ不自由デアリハセヌカ、ダカラ
  私ハ統制會社ト云フモノハ根本的ニ改正ヲ
  シテ貰ハヌト-問屋、小賣商組合、小賣
  人、消費者コンナ段階ヲ設ケテ行カヌデモ、
  時局下或ル程度マデ國家目的ニ副ハセルコ
  トハ出來ルト思フノデアリマス
  尙又之ニ付テモウ一ツ聞キタイコトハ、
  ナゼ統制會社ノ役員ト云フモノニアア云フ
  大枚ノ俸給ヲ拂ハナケレバナラヌカ、是ガ
  最モ疑惑ヲ持ツ第一ダラウト思フノデアリ
  マス、統制ト云フコトハ國家ノ要請スル目
  的デアリ、此ノ目的ニ從事スル者ハ、戰地
  ニ動員セラレタモ同樣デアルト考ヘナケレ
  バナラヌ、隨テサウ云フ心掛ケデナケレバ
  ナラヌ、前ニ自分ガ俸給ヲ取ツテ居ツタト
  スルナラバ、ソレヨリ少ク行クト云フコト
  ガ當然デアルト思フ、凡ソ人ヲ使フ者ハ自
  ラ給料ヲ下ゲテ行クト云フコトガ道デアリ、
  德川時代カラ皆サウデアル、德川モ澤山收
  入ノアル大名ハ何等重要ナ位置ニハ使ツテ
  居リマセヌ、指導、指揮スル所ノ者ハ必ズ
  碌ガ少クシテアル、ソコニ一ツノ權威ガア
  ルノデアリマス、然ルニ現在ノヤウニナゼ
  アンナニ高イ俸給ヲ拂ハナケレバナラヌ
  カ、國家今日ノ場合、一家ヲ顧ミズ、血ト
  肉トヲ捧ゲテ第一線ニ立ツテ居ル將兵モ、
  國家目的ニ對シテノ統制モ同ジク重要事中
  ノ重要事デアル、之ニ從事スル人ガナゼ斯
  ウ云フ莫大ナル給料ヲ取ツテ、又政府之ヲ
  認メナケレバナラヌカ、此ノ點ニ付テ御所
  見ヲ伺ヒタイノデゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=10

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• 011・井野碩哉

  ○井野國務大臣　國策會社竝ニ統制機關ノ
  手數料ノ問題、又役員ノ報酬ノ問題ハ、前
  議會カラ色々御議論モアリ、吾々トシテモ
  極力サウ云ツタ御氣持ノ起ラナイヤウニ努
  メテハ參ツテ來テ居リマス、併シ今日統制
  會社或ハ統制機關ト云フモノハ作ラナイデ
  濟ムナラ本當ハ私モ作リタクナイノデアリ
  マス、唯物ガ足リナクナツテ來テ、而モ需要
  ガウント殖エテ來タ、サウスルト今マデノ
  ヤウニ自由經濟時代ノ儘ニ放ツテ置キマス
  ト、大事ナ所ニ大事ナ物ガ行カナイ、結局
  大事デナイ所ニ闇相場、或ハ其ノ他ノ緣故
  關係デドウシテモ流レテ行ク、ココデ統制
  ト云フコトガ必要ダト云フコトヲ各方面カ
  ラ要請セラレテ、政府トシテモ玆ニ或ル意
  味ニ於テ已ムヲ得ズ統制機關ヲ作ツテ行ク
  譯デアリマス、デアリマスカラ、其ノ統制
  機關ガ出來マシタ結果、生產者カラ見マス
  ト云フト、自由經濟時代ニ、自分ノ思フ所
  ニ賣ツテ、而モ金モ早ク入ルシ、色々物ガ
  少クナツテ來テ需要ガ多クナツテ來レバ、
  買フ方ガドウシテモ苦心シマスカラ、賣ル
  方ハ非常ニ有利ダ、是ハ放ツテ置ケバ必ズ
  サウデアリマス、併シサウ行カナイ事情ガ
  アル、ト云フノハ、今申シタ通リ、重點的
  ナ配給ガ出來マセヌカラ、已ムヲ得ズ茲ニ
  一ツノ統制機關ヲ作ツテ來タノデアリマス
  カラ、作ル方カラ見ルト、固ヨリ自由經濟
  時代ヨリ窮屈デアルコトハ當然デアリマス、
  唯此ノ間豫算總會デ手數料ノ點ニ付テ申上
  ゲタノハ、例ヘバ畜產ノ例ヲ御擧ゲニナリ
  マシタカラソレヲ申上ゲタノデス、(從來ノ
  ヤウニ家畜商ニ或ル意味ニ於テ叩カレテ買
  ハレテ居ツタ農民カラ見レバ、ピツチリシ
  タ手數料ヲ拂フコトニ依ツテ寧ロ公正ナル
  取引ニナツタ方ガ、其ノ點ハ得ナ點モアル
  ト云フコトヲ申上ゲタ、ソレハ全部ノ國策
  會社ガ從來ヨリ生產者ニ取ツテ有利ダト云
  フコトヲ申上ゲタ譯デハナイノデアリマス、
  隨テ今申上ゲタ通リ、生產者カラ見レバ自
  由經濟時代ヨリ今日ハ窮屈デアル、又得デ
  ナイ所モアルト云フコトハ爭ハレナイ事實
  ダラウト思ヒマス、然ラバ生產者ノ爲ニ之
  ヲ止メタラドウカト云フト、ソレハ今申シ
  タ通リノ事情デ止メラレトナイト云フ所カラ、
  已ムヲ得ズ斯ウ云ツタ行キ方ヲ執ツテ居ル
  ノデアリマス、隨テ國策會社ナリ、統制機
  關ノ運用ニ付キマシテハ、國モ出來ルダケ
  監督シテ、嚴正ナル行キ方ヲシナケレバイ
  カヌ、手數料ガ多イ爲ニ農民ニ生產ノ氣魄
  ヲ衰ヘサセルトカ云フヤウナコトガアツテ
  ハナラヌト云フコトデ、手數料ノ問題ニシ
  口、又經營ノ問題ニシロ、國ハ色々苦勞ヲ
  シテ居ルノデアリマス、ケレドモ、何分ニ
  モマダ各機關共ニ生レ出タバカリデアリマ
  スカラ、中々吾々ノ思フヤウニ行カナイ點
  モアルノデアリマス、併シ漸次改善ニ努力
  ハ致シテ來テ居リマス、又重役等ノ報酬ニ
  付キマシテモ、民間ノ人ヲ成ベク之ニ充テ
  タイト云フ方針デ吾々ハ進ンデ來テ居リマ
  スガ、現在民間ノ會社ニ居ツタ人ガサウ云
  フ統制會社ニ來マスト云フト、却テ報酬ハ
  下ツテ居リマス、決シテ上ツテ居リマセヌ、
  唯役人ガ其處ニ行ツタ時ニ從來ノ報酬ヨリ
  多クナツテ居ル事例ガ多イノデアリマスガ、
  是ハ私共モ極力サウナラナイヤウニ抑ヘテ
  行カナケレバナラヌ、唯民間ノ人ト役人ト
  ガ同ジ會社ニ居テ、非常ニソコニ又收入ノ
  差ガ多イト云フコトモ仕事ノ上ニ於テ差障
  リガアルモノデアリマスカラ、ソコニ或ル程
  度ノ均衡ヲ保ツテ行クト云フコトニナリマ
  スカラ、役人ノ方ガ兎角多少高イ報酬ヲ取
  ルト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、
  併シ是ハ役人ヲ無理ニ其處ニ押込ムト云フ
  コトニ於テ大キナ弊害ガアルノデ、役人デ
  モ有能ナ者デ、會社自體ガ欲スル者デアリ
  マスレバ、多少高イ報酬ヲ出シテモ良イ人
  ヲヤツタ方ガ宜イノデアリマスカラ、サウ
  云フ場合ニハ今ノ制度デ決シテ惡クナイノ
  デアリマスガ、唯役人ノ古手ヲ無理ニソコ
  ニ押込ム、サウシテ高給ヲ其ノ統制會社デ
  食マセルト云フコトハ、是ハ極力抑ヘテ行
  カナケレバナラヌト思ヒマス、隨テ最近ニ
  於キマシテ私ハ色々ノ統制會社ガ出來テ參
  リマスケレドモ、役人ノ所謂古手ヲ入レル
  ト云フコトハ、絕對ニ避ケサセテ來テ居リ
  マス、サウ云ツタヤウナ行キ方デ段々改善
  シテ行クヨリ此ノ問題ハ致シ方ガナイト考
  ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=11

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• 012・樋口善右衞門

  ○樋口委員　最モ大切ナコトハ、統制ヲシ
  ナケレバナラヌダケニ私ハ此ノ統制ト云フ
  コトニ付テハ餘程政府ハ適切ナル御考究ヲ
  ナサイマセヌト漸次改善スルト言ツテ居
  ラレルヤウナ現在ノ國情デハナイト思フ、
  私ハ色々民間カラノ注意モアルト思フガ、
  政府ハソレヲ實行スル上ニ於テ非常ニ遲疑
  逡巡スル嫌ヒヲ見ルノデゴザイマス、是ハ
  色々責任ノ上デサモアルベキコトダトハ思
  ヒマスケレドモ、凡ソ統制ナドト云フ國策
  ニ從事スル者ハ、他ノ會社ニ於テ或ハ民間
  デ多大ナル報酬ヲ取ツテ居夕人デモ、私ハ
  其ノ人ノ人材ヨリモ精神ト云フモノヲ國民
  ニ示サナケレバイカヌト思フ、統制ニ服從
  セシメルニハ範ヲ示ス、ソレニハ是マデハ
  十万、百万取ツテ居ツタガ、俺ハ無給デ一
  ツヤルゾト云フ人コソ私ハ統制ニ適當スル
  人物デナイカト思フノデアリマス、假令政
  府ガサウ云フ心配ヲセラレテモ、ソレハ御
  無用デアル、無用デアルノミナラズ、ソレ
  ハ自分ガ統制ノ重任ヲ果ス上ニ非常ナ支障
  ニナルト言ツテ之ヲ斷ハルノガ、私ハ統制
  ヲ强化シ、人ヲ指導スル所以ダト思フノデ
  ゴザイマス、上ノ人ガ何万圓取ツテ居ルト
  云フヤウナコトヲ七五三ト言ツテ新聞ニモ
  書イテ居ル、ソンナコトデハ下ノ國民ハ政
  府ニ統制ト云フコトニ付テ果シテ此ノ實ヲ
  擧ゲヨウト云フ本當ノ誠意ガアルカドウカ
  疑ヒ、皆統制會社ト政府ト混同シナケレバ
  ナラヌト云フ風ニマデ見エル、又昨日マデ
  知事ヲシテ居ツテ、滅私奉公ヲ說イテ居ツ
  タ人ガ、今度統制會社ヘ入ツタガ爲ニ、何
  万圓ト云フ俸給ニ自分ガ甘ンズルト云フヤ
  ウナコトニ付テモ、ソレハ適當ナ器デナイ
  ト人ガ思ヒハセヌカト思フノデアリマス、
  凡ソ國家ノ統制指導ノ大幹部、此ノ人コソ
  其ノ統制ノ精神ヲ呑込ンデ、其ノ統制會社
  ト一ツニナツテ、統制國策ノ實行ノ爲ニ國
  民ヲ納得セシメルヤウナ人デナケレバナラ
  ヌ、サウ云フ人ヲ選ブコトガ主タル點デナ
  ケレバナラヌト思フノデゴザイマス、現在
  デ見マスト、世間ハドウダト云フト、事變
  ガ始マツタ當時商工省ニ參リ、、又農林省ニ
  參リマシテ、卓ヲ叩イテ當業者ハ我等ノ死
  活問題ダト云フコトヲ喧シク言ツタ、近頃ハ
  商工省ヘ參リマシテモ、農林省ヘ參ツテモ、
  此ノ統制會社ノ人達、又其ノ業ニ携ハル有
  力ナル人達ハ、晩ハ料亭デ夕飯ヲ食ハレル、
  斯ウ云フヤウナコトデ話ガ圓滿ニ行ツテ、
  事ガナクナツタコトハ結構デアリマスルガ、
  私共之ヲ見ルト、彼等專業ナル人ノ知識ト
  云フモノハ、此ノ方面ニ掛ケタラ政府ノ一
  般行政ニ携ハル者ノ知識ト別箇ノ問題デア
  ツテ、直グニ政府ノ意向ヲ見テ取ツテ、宜
  シイ、政府ハ事實ニ暗イ、斯ウ持ツテ行ケ
  バ政府モ跟イテ來ルト云フノデ、今日役人
  ト爭ツテ居ルヨリハソレガ宜シイコトデアル、
  サウヤリナサイト言ツテ、寧ロ役人ノ言フ
  ガ儘ニ之ヲ取扱ツテ行ケバ宜イト云フ風ニ
  出テ、結局政府ノ馬ニ乘ツテ舵ヲ取ツテ、
  今日斯ウナツタノハ政府ガヤツダンダ、斯
  ウ云フヤウナ狀態ニ立至ツテ居ルト見ルノ
  デゴザイマス、今日ヤラレルコトハ、此ノ
  頃ノ種苗統制ノコトニ付テモ私ハサウ思ツ
  テ居ル、アンナ一粒萬倍ノ容易ナラヌモノ
  ヲ、統制シテ全國ヲ七ツノ商人ニ渡スナド
  ト云フコトハ、無定見ト言フカ、冒險ト言
  フカ、是レ位危ナイ藝當ハナイト思ヒマス、
  農業ニ關聯スル統制ト云フコトハ商賣ノ統
  制ヨリモモツト注意ヲ拂ハナケレバナラ
  又、ナゼイカヌカト云フト農業ハ本當ニ
  農業ニ從事シテ居ル人間ニ俟タナケレバナ
  ラヌ、之ヲ納得セシメネバイカヌモノデア
  ル、今マデ縣廳マデモ行ツタコトハナイ、
  況ヤ本省近所ニ來タコトハ勿論ナイ、講演
  ナドヲ承ハル位ノコトデアル、此ノ主ダツ
  タ人ガ本省デアラウガ、何處デアラウガ、
  何處ヘデモ行ツテ自分ノ意見ハ何處マデ
  モ徹底的ニ之ヲ主張スル、デアリマスル
  カラ、動モスルト誤ラレル虞ガ彼等ノ口
  ヲ聽イテヤルトアルノデゴザイマス、農
  村ヲ御廻リニナツタ時ニハ成程默々ト
  シテ淚グマシク協力的ニ見エルデセウ
  ガ、實際ノコトハ彼等ノ家庭ヘ入ツテ初メ
  テ分ルコトデアリマス、此ノ言ハザル所ノ
  農、音ノセザル聲ヲ聽ク所ニ政治ノ最モ大
  切味ガアル、殊ニ農村ノコトニ對シテハ
  層是等ニ注意ヲシテ戴カナケレバナラヌ、
  ソレニ付キマシテ統制以前ニ於テ利益ヲ商
  人ガ壟斷シテ居ツタ此ノ一面ダケヲ見レバ、
  成程商人ガ惡イノデアルケレドモ、生產
  ト消費トノ間ニ介在シテ來タ商人、是ノ活
  動ニ依ツテ今日ノ產業ハ私ハ發達シテ來タ
  ノダト思フ、此ノ一點デ見マスト、唯利益
  ヲ壟斷シテ居ツタト云フコトダケヲ見テ、
  商人ヲ何處マデモ排擊スルト云フコトハ、
  牛ノ角ヲ恐レテ之ヲ斬ツテ殺スト同ジヤウ
  ナモノヂヤナイカ、商人ニハ商人ノ特長ガ
  アリマス、之ヲ活カシテ行クト云フ所ニ於
  テソコデ初メテ物ノ運用ガ付イテ行ク、
  ソレヲソツチ除ケニシテ、素人バカリヲ集
  メテ、ヤレ統制トカ何トカ言ハレルカラ、實
  地ニ卽セザルコトガ多々益〓起ツテ來テ、今
  日モ命令、明日モ通牒、明後日モ協議會、
  講演トヤラレルカラ、何モヤルコトガ出來
  ズシテ、幹部ハソレニ忙殺セラレテ指導、
  指示ヲスルト云フ暇ガナイ、又假ニ技術的
  ノ指示ヲナサツタトテ、農民ニ十分協力ス
  ルト云フ心構ヘガナカツタナラバ、向フヲ
  向イテ居ル奴ニドレダケ技術的ノ指導ヲシ
  タ所デ是ハ效キ目ガナイ、ニ依ツテ私ハ統
  制ニ付テハ今少シ-大臣ノ御說ハ尤モト
  聽キマス、アナタノ方カラ見レバ、御尤モ
  デアリマスガ、私ノ方カラ見ルト洵ニ危檢
  至極ニ感ズルノデアリマス、ドウゾ此ノ點
  ハ更ニ御檢討ヲ願ヒタイ
  モウ一ツ肥料ノコトニ付テ伺ヒマス、肥
  料ガ足ラヌコトモ生產ノ上ニ影響スルノデ
  アリマスガ、先ヅ堆肥ヲ以テ主ナルモノト
  シナケレバナラヌ、堆肥增產ト云フコトニ
  付テ今少シ政府ガ本腰ヲ入レテヤツテ戴キ
  マスナラバ、我ガ國ハ僅カ一割八分カソコラ
  ノ耕地デ、八割以上ノ所ハ山林原野デアル
  此ノ山林原野ヲ利用シテ堆肥生產ニモウ少
  シ力ヲ入レテ戴キマスナラバ大變宜イト
  思ヒマス、私ガ汽車ニ乘ツテアノ山野ヲ眺
  メル時ニ此ノ燐酸加里ノ足ラヌ時ニアノ雜
  草ガ刈ラズニ捨テテアルト云フコトハ、色
  色事情ハアリマセウ、之ニハ必ズ經濟問題
  ガ携ハツテ居ルモノト思フガ、尙又精神的
  ニモ一ツ進メテ戴カナケレバナラヌ、之一
  付キマシテ一番問題ハ、草ヲ先ヅウント
  刈ラセルコトデ、草デモ何デモ、百草千柴
  肥料ナラザルハナシト言ツテ、何デモ肥料
  ニナルノデアル、サウシテ今其ノ肥料ニ缺
  乏シテ來テ居ルノデアリマス、先程モ御話
  ガアリ、又貴族院ノ方デ御述ベニナツタ所
  ヲ讀ンデ見テモ、今年ハ昨年ノ豐作ノ後デ
  地力ガ減退シテ居リハシナイカト云フコト
  ハ、其ノ通リデアリマス、併シナガラ之ヲ
  補給スル途ハ幾ラデモアル、尙ホ又玆ニ近
  頃玄米食ガ喧シク言ハレマスガ、是モ極メ
  テ結構デアリマス、ケレドモ有畜者トカ、
  都會ノ人ハ非常ニ困リハセヌカ、是等ニ對
  スル何カ對策モアルデアラウト思ヒマスル
  ガ、モウ少シク堆肥增產ニ力ヲ致シ、畜類
  及ビ山野ヲ十分ニ嘗メ盡スト云フコトニ付
  テノ何等カノ方策ハナイモノデアリマセウ
  カ、之ヲ最後トシテ私ノ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=12

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• 013・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今樋口君ノ御述ベニナ
  リマシタ肥料對策、是ハ私全ク同感デアリ
  マス、今日販賣肥料ノ足リナイ場合ニ於キ
  マシテ、自給肥料ヲ出來ルダケ增產シテ、
  之ヲ補ツテ參ルト云フコトニ付キマシテパ、
  極力政府トシテモ是ガ指導督勵ニ當ツテ居
  ルノデアリマス、隨テ山野ノ草ノ刈入レ、之
  ニ付キマシテハ極力奬勵モ致シテ居リマス
  ガ、何分ニモ勞力ガ非常ニ不足シテ居ル今
  日デアリマスカラ、思フヤウナ增產ハ出來
  ナイノデアリマス、併シ昨年デモ自給肥料
  デ十億万貫ノ增產ガ出來テ居リマス、是等
  ハ今樋口君ノ御述ベニナリマシタ方向ニ向
  ツテ政府トシテモ極力努力致シタ結果デア
  ルノデアリマシテ、今後益〓サウ云ツタ山
  野ノ草木ノ自給肥料化ト云フ問題ニ付テハ
  努力致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=13

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• 014・樋口善右衞門

  ○樋口委員　色々長々シイ質問ヲシテ恐縮
  デアリマシタガ、私ノ質問ハ御尋ネセント
  スル御尋ネデハナイ、實行致シタイト思ツ
  テ御尋ネヲ申上ゲテ居ルノデアリマシテ、
  一番重大ナルコトハ實情ニ卽スルト云フコ
  トガ一番重大ナコトデアリ、生產者ノ心理
  ガソコニ摑メル、消費ノ部面ハ先程私ガ申
  上ゲタヤウニ洵ニ能ク協力ガ出來テ居ル、
  ドウモ生產ノ方面ノミガ旨ク行カヌト云フ
  2
  ノハ、ソコニ實情ニ卽セザルモノガアルト
  云フコトヲ、十分認識ヲ願ハヌト、農村ガ時
  局ニ對シテ非認識ダト云フ罪ヲ被セラレル
  ト是ハ結果ニ於テ一層惡クナツテ來ル虞
  ガアルノデアリマス、先程モ申シマシタ
  ガ、私ハ本年穗ノ出タ時ニ米產地ヲ悉ク〓
  ハツテ參リマシタガ、其ノ當時各地ノ狀況
  ヲ聽キマシテモ皆同ジデアリマス、政府カラ
  來タトカ何トカ言ヘバ實情ハ言ヒマセヌ、
  產業團體ガ統合セラレテ來マスガ、是モ只今
  ドウアラヴトモ私ハ贊成ヲスル者デアリマス、
  一步現狀ヲ打破スルト云フコトニ付テ私ハ
  贊成ヲ致シマスルガ、生產方面ニ政府ガ餘リ
  足ヲ踏ミ入レルト云フコトダケハ、是ハ一ツ
  十分〓究シテ戴キタイト思フノデアリマ
  ス、私ハ農會長ト致シマシテ喧シク言ツテ
  居ルガ、私ガ言ツタノデハ却テヤリマセヌ、
  彼等ノ責任ニナルトヤルノデアリマス、ア
  アヤレ、斯ウヤレト云フノデバナク、是ダ
  ケノモノヲ穫ラナケレバナラヌゾト言ヘバ、
  太郞兵衞ハ太郞兵衞、權助ハ權助デ考ヘル
  ノデゴザイマスガ、斯ウヤレ、アアヤレト云
  フ式ダト、其ノ命令ニ從ツタト云フダケデ、
  生產ノ責任ハ負ハヌノデアリマス、デアリ
  マスカラ、從來ノ方針モ宜イガ、今日ノ場
  合ハ萬民悉ク責任ヲ負ハネバナラヌ時デア
  リマスカラ、ドウゾ一ツ淳朴ナル農村ニ國
  家ノ重要ナル食糧確保ノ使命ヲ負ハシテ
  戴キタイ、ソコデ初メテ農民ハ自ラ增產シ、
  自ラ節米ヲシ、自ラ都市ヘ出シテ、初メテ
  元ノ位置ニ復シテ見テ、田舍デ副食物ヲ食
  ベ、サウシテ都會ニハ腐敗セザル物、運送
  ニ便利ナ物、米麥等ヲ出ス、今ハ全ク主客
  〓倒シテ、指導モ政府デヤルト云フ、ソレ
  カラ出スベキ物ハ食ツテシマフ、出セヌヤ
  ウナ芋ヤナンカヲ持ツテ來ル、ソレガ何處
  ニ一般的ノ間違ヒガアルカ知ラヌガ、兎 L
  角間違ツテ居ル、ソレダカラ之ヲ生產團體
  ニ御任セヲ願ヘレバ、甘藷ナラバ九州ノ者
  ニ食ハセルトカ、馬鈴薯ナラバ關東地方ノ
  者ニ食ハセルトカ、或ハ混合食トシテヤラ
  セルトカ、節米ヲヤラセルトカ、强イテ都
  會ニ持ツテ來ナクテモヤレル、現在野菜ガ
  ナイト云フコトモ、都會デ野菜ヲ米ノ代リニ
  食ツテシマフ、ダカラ野菜ハ一汁一菜デハ
  ナイ、今ハ主食糧ノ補給ニシテシマツテ居
  ル、大根、蕪葱何モアリマセヌ、片ツ
  端カラ食ツテシマフ、斯ウ云フヤウニ都市
  ノ人ガ、米ガ足ラヌ、麥ガナイ、芋ガナイ
  カラト言ツテ野菜マデ食ツテシマフト云フ
  ヤウナ譯デ、是デハ私ハ食糧事情ハ解決シ
  ナイト思フ、ドウゾ此ノ點ニ付テ更ニ御檢
  討ヲ願ヒマス、尙ホ又詳細ノコトハ愚案モ
  アリマスガ、ソレハ又何レ申上ゲルコトニ
  シタイト思ヒマスガ、ドウゾ統制會社デモ
  全力ヲ擧ゲテ、先ヅソレヲ檢討シテ戴クコ
  トガ私ハ根本問題ダト思フノデゴザイマス、
  此ノ點ニ付キマシテ何卒一段ノ御考究ヲ御
  願ヒ致ジタイト存ズルノデゴザイマス

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• 015・矢部藤七

  ○矢部委員　只今ノ樋口サンノ問題ニ關聯
  シタ問題デ極ク簡單ニ···

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• 016・泉國三郎

  ○泉委員　實ハ理事ノ申合セミタイナコト
  デ、成タケ關聯質問ナシニ順次ヤラシテ行
  カウト云フコトデ話合ヒヲシタ譯デゴザイ
  マスカラ、關聯質問デシタラ本當ニ關聯シ
  タコトダケニシテ

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• 017・池田秀雄

  ○池田委員長　只今御聽キノ通リ、理事諸
  君ノ御打合セハ成ベク關聯質問ハ御遠慮願
  ヒタイト云フコトデスガ、極メテ簡單デス
  カ、サウシテ直接關係ガアリマスカ

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• 018・矢部藤七

  ○矢部委員　極ク簡單デス-實ハ先程樋
  口サンカラ色々述ベラレタ米價ノ問題デア
  リマス、是ハ農業保險法ニ直接ノ關聯ハア
  リマセヌガ、間接ニ關聯ガアリマスカラ御
  伺ヒシタイト思ヒマス、只今御質問ガアリ、
  御答辯ガアツタノデ、大體大臣ノ御考ヘモ
  分ツタノデゴザイマスガ、唯私ハ此ノ際現
  在ノ米價ヲ決メタ基準ヲ變更スル必要ニ迫
  ラレテ居ルノデハナイカト云フコトヲ伺ヒ
  タイト思ヒマス、ソレハ實ハ私ノ縣ニ於キ
  マシテ米價ヲ決メマス基準ノ最モ重要ナル
  基礎トナル生產費ヲ調査シテ參リマシテ-
  是ハ自作、小作、自小作ト三段階ニ分ケテ
  調査シマシタガ、大體ニ於テ現在ノ公定價
  格ノ上ニ於テ計算シマシテモ生產費ヲ割ル、
  或ハ極ク好ク行ツタモノデモ生產費カスノ
  ノ狀態ニナツテ居ル、是デ以テ今日ノ米價
  ヲ此ノ儘ニシテ置クト云フコトハ、物價ヲ
  決メマス上カラ妥當デアルカドウカ、之二
  付テ一ツ御意見ヲ承リタイト思ヒマス、尙
  ホ一ツ簡單ニ御參考マデニ申上ゲマスガ、
  今日米價ノ問題ガ相當農村ニモ言ハレテ居
  リマス、又同僚議員ノ間ニモ色々米價ノ問
  題ニ付テハ御議論ガアリマス、ソレデ實際
  ニ於テ今日ノ農家トシテ米作地帶ノ農家、
  畑作地帶ノ農家ガドウ云フ經濟狀態ニアル
  カト云フコトヲ調ベテ見マシタラ、私ノ縣
  ニ關スル限リニ於テハ、米作農家ハ自作農、
  小作農、自小作農、凡ユル段階ヲ通ジマシ
  テ何レモ赤字デアル、一年ノ經濟狀態ハ收
  入支出ヲ計算シマスト赤字デアル、或ハ赤
  字デナイトシテモ、極ク僅カノ收益デアル、
  本當ニ働ク農業者一人ニ付テ百圓位ノ收益
  シカ上ツテ居ナイ、是ハ極ク成績ノ好イ者
  ガサウデアリマス、然ルニ畑作地帶ニ於
  キマシテハソレト大イニ趣キヲ異ニシマシ
  テ、三倍位ノ收益ガ上ツテ居ル、斯ウ云フ
  實際ノ狀態ガ現ハレテ居ルノデアリマス、
  農林省ニ於テモ既ニ統計上ノコトハ實際御
  分リノコトト思ヒマスルガ、斯ウ云フ觀點
  カラ見マシテ、ドウシテモ今日ノ米價ヲ變
  更スルト云フコトハ出來ナイモノデアルカ
  ドウカト云フコトヲ御伺ヒシタイト思フノ
  デアリマス

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• 019・井野碩哉

  ○井野國務大臣　米ノ價格ノ問題ハ度々申
  上ゲテ居リマスルカラ、私ノ氣持ハ能ク御
  分リ願ヘルト思フノデアリマス、唯是ガ生
  產費ノ計算ノ基礎ヲドウ考ヘルカ、例ヘバ
  今日ノ米ノ生產費ハ中庸生產費デ出來テ
  居リマスガ、是ガ所ニ依ツテハ中庸生產費
  デ賄ヘナイ米作地モアルノデアリマス、サ
  ウ云フ所デハ今日ノ生產費ヲ償ハウトシテ
  モ結局償ヘナイト云フコトニナルノデアリ
  マス、サウ云フ基準ヲドウスルカト云フコ
  トニ付テハ、政府デモ色々〓究シテ居リマ
  ス、此ノ生產費ノ基礎ヲ何處ニ持ツテ行ク
  カト云フコトニ付テハ〓究シテ居リマスガ、
  然ラバ中庸生產費ヲドウ變ヘテ行クカト云
  フコトニ付テハマダ結論ヲ得テ居リマセヌ、
  隨テ是カラモ〓究ハシテ行カナケレバナラ
  ヌト思ツテ居リマス

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• 020・矢部藤七

  ○矢部委員　宜シウゴザイマス

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• 021・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ通〓ニ依リマシテ
  今度ハ滿井君ニ御願ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=21

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• 022・滿井佐吉

  ○滿井委員　大臣ハ午後出ラレナイサウデ
  アリマスカラ、私數項目アリマスノデ、
  項每ニ御尋ネヲシ御答ヘヲ得タイト思ヒマ
  シタガ、先ニ總括的ニ大臣ニ御尋ネサシテ戴
  キタイト思ヒマス、サウシテ殘リマシタ分
  ハ項目每ニ午後當局ノ御方ニ御尋ネサシテ
  戴クコトニ御願ヒ致シマス
  先ヅ第一ニ農林大臣ニ現在ノ農林行政ノ
  輔弼ハ是デ宜イト御考へニナツテ居ラレル
  カドウカト云フコトヲ御尋ネ致シマス、其
  ノ御答ヘヲ待チマシテカラ····

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• 023・井野碩哉

  ○井野國務大臣　私モ大命ヲ拜シマシテカ
  ラ一年有餘ニナルノデアリマスガ、極力農
  林行政ノ爲ニハ盡シテ居ル積リデアリマス、
  隨テ是デ宜イカドウカト云フ御尋ネデ、自
  分デ完全ニヤツテ居ルトハ無論申シマセヌ
  ガ、出來ルダケノ「ベスト」ヲ盡シテ居ルト
  云フ信念ハ持ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=23

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• 024・滿井佐吉

  ○滿井委員　憲法政治ノ立場上議會ガ積極
  爲有ニ其ノ機能ヲ發動シナケレバ、眞ノ農林
  行政ノ實行ト云フモノハ完璧ヲ期シ難イト
  思ヒマスガ、大臣ノ今ノ御心構ヘデハ、大
  體ニ於テ非常ニ能クヤラレテ居ルヤウナ御
  自信ノヤウデゴザイマスガ、以下質問等ヲ
  通ジテ一般國民ノ實情ナリ、吾々ノ考ヘナ
  リニ對シテ本當ニ誠意ヲ以テ耳ヲ傾ケテ之
  ヲ採リ入レラレル雅量ト御心構ヘガオアリ
  デゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=24

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• 025・井野碩哉

  ○井野國務大臣　私ハ自分ノ職責ヲ全ウシ
  マス上ニ於キマシテ、極力皆サンノ御意見
  ハ採リ入レル決心ヲ持ツテ居リマス、」隨テ
  議會ヲ通ジマシテハ勿論デアリマスルシ、
  議會ヲ通ジマセヌデモ、個人々々ニ私ノ所
  ニオイデ戴キマシテ、色々御意見ヲ戴ケレ
  バ、出來ルダケ其ノ御意見ニ副フヤウニシ
  テ居リマス、併シ出來ナイ事情モ色々ゴザ
  イマスカラ、總テガ出來ナイカラ、ソレデ
  ハ意見ヲ受入レヌト云フヤウナコトヲ御考
  ヘ願ツテハ困リマスケレドモ、誠意ヲ以テ
  御意見ヲ受入レルニ吝カデナイコトハ申上
  ゲテ置キマス

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• 026・滿井佐吉

  ○滿井委員　實ハ私共ハ議會外ハ固ヨリノ
  コト、議會ニ於キマシテモ申上ゲルコトス
  ラ無駄デハナイカト思ツテ居ツタノデアリ
  マス、ソコデ現在ノ行政輔弼ノ狀態デ、是
  デ耳ヲ傾ケル餘地ガ全クナイト云フ御心持
  デアルナラバ、ソレデハ御辭メニナツテハ
  如何デアリマスカト云フコトヲ一言申上ゲ
  タイト思ヒマスガ、全クサウデハナイ、多
  少餘地ガアルト云フヤウナ御答ヘデゴザイ
  マスカラ、ソコデ御辭メニナツテハト云フ
  氣持ハアリマシテモ、ソレヲ强ヒテ申上ゲ
  ル所マデハマダ行ツテナイヤウニ思ヒマス、
  ソコデ今カラ私ガ申上ゲル質問ヲ通ジテ國
  民ノ實情ヤ、一般國民ノ考ヘ等ヲ御酌ミ取
  リ下サイマシテ、斯ウモシタラ本當ニ一億
  一體デ戰力增强ガ出來ハセヌカト云フ、本
  當ニ國家ヲ救フ中心問題ニ觸レマシテ、大
  臣ハ時間ガオアリデゴザイマセヌカラ、局
  長以下ノ方々デシツカリト誠意誠心御聽キ
  下サルヤウニ、午後ノ質問ニ耳ヲ御傾ケ下
  サルコトヲ御希望致シマシテ、午前ノ質問
  ハ是デ打切ラシテ戴キマス

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• 027・井野碩哉

  ○井野國務大臣　滿井君ノ極メテ御親切
  ナル御忠告ニ對シマシテハ私モ能ク伺ツテ
  居リマス、場合ニ依ツタラ辭職シタラ宜イ
  ヂヤナイカト云フ御氣持モ私ハ伺ツテ居リ
  マス、併シ今ノ時代ハドウモ自分ダケデ勝
  手ニ辭メラレナイ時代デアリマスルシ、斯
  ウ云フ時代ニハ自分トシテモ一身ヲ賭シテ
  モ色々仕事ヲシナケレバナラヌ時代デアリ
  マスカラ、何處ガハツキリ惡イカト云フコ
  トガ分レバ私モ色々責任ヲ持タナケレバナ
  リマセヌケレドモ、サウ云フヤウナ意味デ實
  ハ自分ノ職責ニ盡シテ居ルノデアリマス、滿井
  君ニハ日外木材問題ニ付キマシテオイデヲ
  願ツテ、吾々ノ惡イ所ガアレバ直スト云フ
  コトヲ申上ゲテ御懇談申上ゲタノデアリマ
  ス、ソレデ私ガ色々其ノ時ニ斯ウ云ツタ事
  情デアル、アア云ツタ事情デアルト云フコ
  トヲ申上ゲタラ、ソレデ御分リデアツタト
  實ハ私ハ思ツテ居ツタノデアリマス、其ノ
  後オイデニナリマセヌカラ、ソレデ實ハ滿
  井サンハ私ノ言フコトヲ能ク聽イテ下サツ
  タモノ、斯ウ思ツテ居リマシタカラ、實八
  今マデ辭職勸告ヲ受ケルコトモナイト考ヘ
  テ居ツタノデアリマスガ、尙ホ午後能ク御
  議論ヲ伺ヒマシテ、自分トシテノ考ヘモ述
  ベタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=27

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• 028・滿井佐吉

  ○滿井委員　今大臣カラ、私ガ大臣ヲ訪ネシ
  マシタ時ノコトガ出マシタカラ申上ゲマス
  ガ、實情ト、書類ノ調査ノ上ニ出マシタ統
  計トノ見解ノ相違デアルコトヲ一應其ノ時
  申上ゲテ、大臣ハ机上ノ報告ニ信賴ヲ置カレ
  テ居ルガ、政治ハ現場デヤルベキモノデア
  ツテ、吾々ガ實情ヲ見ルト、今ヤ國家經濟
  ハ崩壞シツツアルト云フコトヲダメヲ押シ
  テ申上ゲテ歸ツタ筈デアリマス、其ノ後手
  紙ヲ通ジテ度々其ノ實情ノ一端ヲ申上ゲタ
  筈デアリマス、併シソレ等ニ付キマシテハ
  打切リマシテ、午後具體的ノ問題ヲ御尋ネ
  致シマス

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• 029・泉國三郎

  ○泉委員　モウ十二時デモゴザイマスカラ、
  暫時休憩セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=29

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• 030・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ暫時休憩ヲ致シマ
  シテ、一時カラ再開ヲスルコトニ致シマス、
  尙ホ午後モ農林大臣ハ出來ルダケ出席スル
  ト言ツテ居ラレマスルカラ、御都合ガ付ク
  限リ出席スルト云フ御話デアリマスカラ、
  其ノオ積リデ······ソレデハ是デ休憩致シマ
  ス
  正午休憩
  午後一時十四分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=30

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• 031・池田秀雄

  ○池田委員長　午前ニ引續キ再開致シマ
  ス-滿井君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=31

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• 032・滿井佐吉

  ○滿井委員　私ノ質問ハ食糧品ト木材ニ關
  シテデアリマスガ、木材ノ方ハ後日ニ讓ラ
  シテ戴キマシテ、食糧品關係ノ方ヲ數項目
  質問サセテ戴キタイト存ジマス、只今農村
  經濟ハ非常ナル行詰リニ直面シテ居ルヤウ
  ニ、吾々ハ觀察致シマスガ、其ノ由ツテ來
  ル要點ハ何處ニアルカト云フト、第一ハ價
  格問題、第二ハ生產、販賣、供出等ノ機構
  ノ問題、第三ニハ計畫統制經濟ノ誘導ノ內
  容ガ本質的ニ適切デアルカドウカト云フ問
  題大體此ノ三ツニ分ケテ考ヘラレルト思
  フノデアリマス
  先ヅ第一項目ノ價格ノ問題カラ伺ヒマス
  ガ、一番大切ナ米ノ價格ニ付テ政府ノ御意
  圖、殊ニ今日大臣ノ言ハレマシタ所ヲ判斷
  致シマスト、今後ニ於テ米價ヲ上ゲル御意
  思ハ全クナイカノヤウニ思ヒマスガ、政府
  ハ左樣ニ御考ヘデゴザイマセウカ、其ノ點
  ヲ先ヅ伺ヒタイト存ジマス

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• 033・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　現在米價ヲ引上ゲル意思
  ハナイカト云フ御質問デゴザイマスガ、引
  上ゲル意思ハ現在ゴザイマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=33

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• 034・滿井佐吉

  ○滿井委員　只今農林次官モサウ仰シヤイ
  マスガ、大臣モ米價ヲ是レ以上上ゲルト低
  物價政策ガ壞ハレ、農村ノ者ガ堕落ヲスル
  ト言ハレマスガ、斯樣ナ政府ノ認識ハ實情
  ニ卽シテ居リマセヌカラ、根本的ニ改メラ
  レル必要ガアルト考へマス、時間ガアリマ
  セヌノデ極ク簡單ニ申シマスガ、其ノ理由
  ハ極メテ明白デアリマシテ、現在ノ米ノ價
  格ヲ以テシテハ農村經濟ハ立チ行キマセヌ、
  例ヘバ一反ニ付テ能ク出來ル所デ七俵トシ
  テ、一俵二十二圓トスレバ一反ガ百五十四
  圓デアリマス、是ハ中部地方ノ統計デアリ
  マスガ、九州方面ノ豐カナ所デハ一反ニ八
  俵トシテ、一俵二十二圓デ百七十六圓、是
  ガ大體最高ノヤウデアリマス、瘦セタ所デハ
  六俵ト見テ、二十二圓デ百三十二圓デアリ
  マス、然ルニ米ノ代リニ白菜ヲ作リマスト、
  一株三十五錢ノ大キイ株ガ、一坪ニ十株出
  來タトシテ、一反歩デハ千五十圓ニナリマ
  ス、是ハ土地ノ比較的肥エテ居ル所デアリ
  マス、モウ少シ痩セテ居ル所ヲ取リマシテ、
  一株二十五錢ノ株ガ一坪ニ十株出來タト致
  シマシテモ、七百五十圓ハ大丈夫上ルノデ
  アリマス、斯樣ナ「バランス」ニ置イテオイ
  テ、野菜ヲ作ルナ、米ヲ作レト言ハレテモ、
  百姓ノ感激ハ湧カヌノデアリマス、然ラバ米
  ヲ止メテ野菜ダケデモフンダンニ出テ來ル
  ヤウニナルカト申シマスト、斯樣ナ有利ナ
  野菜ガ現狀ニ於テハ不自由デアリマス、其
  ノ理由ハ野菜ノ販賣供出ノ機構ガ一元的ニ
  握ラレテ居ルト云フ點ニアルト思ヒマスガ、
  價格ダケカラ申シマスト、米ノ方ガ非常ニ
  拘束ヲ受ケテ居ルコトハ確カデアリマス
  是ト「バランス」ヲ保ツベク農村ニ賣付ケラ
  レル色々ノ肥料、其ノ他ノ品物ニ對スル支
  拂ヒハ現金デ高ク取上ゲラレテ居リマス
  爲ニ、到底農村經濟ハ米ヲ作ツテ居ツタノ
  デハ持テナイノデアリマス、更ニ其ノ上ニ
  考慮シナケレバナラヌコトハ玄米食ノ强要、
  其ノ他ノ理由カラ糖ヲ農村ニ與ヘナイノデ
  アリマス、玄米ノ儘デ出サセマス爲ニ農村
  デハ肥料ガナク、飼料ガナイ、之ヲ正確ニ
  換算シマスト一俵ニ付テ約二圓ノ缺損デ、
  是ハ農村ガ只デ都市カラ取ラレテ居ルヤウナ
  條件ニナリマス、サウシテ糠ノ搾リ粕デア
  ル脂ノ脫ケタ肥料ヲ無理ニ賣付ケラレテ居
  ル、斯ウ云フ始末デアリマス、米ダケヲ繞
  リマシテモ、農村經濟ハ價格引上ゲヲ大幅
  ニヤルニアラズンバ絕對ニ增產ハ不可能デ
  アルト吾々ハ見テ居リマスガ、是デモ農林
  當局ハ米ノ價格ヲ上ゲル云フコトニ付テ根
  本的ナ御反省ハオヤリニナリマセヌデセウ
  カ

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• 035・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今滿井サンノ御述ベニ
  ナリマシタ色々ノ事例ノ具體的ナ事柄ニ付
  キマシテハ姑ク措キマシテ、御說ノ如ク今
  日農村ニ於キマシテ、主要ノ食糧タル米麥
  ノ價格ト、其ノ他ノ農產物或ハ蔬菜デアル
  トカ、或ハ果物類デアルトカ、左樣ナモノ
  ノ價格トノ間ノ不均衡ノ問題、或ハ其ノ他
  各種ノ勤勞ニ服スル場合ノ報酬トノ均衡ノ
  問題、是等ノモノガ今日農村ニ於ケル一ツ
  ノ大キナ惱ミデアルト云フコトニ付キマシ
  テハ、私共モ御說同樣或ハ農村ノ方々ト共
  ニ深ク苦シンデ居ルノデアリマス、是ハ全
  ク事實デゴザイマス、就キマシテハ、此ノ
  價格ノ關係ニ付キマシテモ色々ト苦心ヲ致
  シテ居ルノデゴザイマスガ、先程モ此ノ米
  價格ヲ引上ゲルカドウカト云フコトニ付
  キマシテハ、例ヘバ石十數圓上ゲタ所ノ
  デ、消費者ニ取ツテハ月ニ幾ラ位ノコト
  デハナイカト云フヤウナ色々ノ御說モアル
  ノデゴザイマス、併シナガラ今日政府ガ此
  ノ戰爭遂行ノ爲ニ低物價政策ヲ堅持致シテ
  居リマスガ、是ハマア全般的ナ一ツノ政策
  トシテハドウシテモ左樣デナケレバナラヌ
  カト思フノデゴザイマスガ、而モ狀況ハ、
  此ノ低物價政策ヲ遂行スルニ付テ、色々ト
  逆條件ノアルコトモ亦否ミ得ナイノデアリ
  マス、其ノ間ニアリマシテ、今日戰爭遂行
  上必要ナル低物價政策ヲ遂行スルト云フコ
  トノ具體的ナ手段ト致シマシテハ、- 21.
  ハ茲ニ根幹的ナ重要物資ノ價格ニ付テ、其
  ノ安定ヲ圖ルト云フヤウナコトガ必要ニナ
  ツテ參リマシテ、自然米ノ如キモノガ其ノ
  物資トシテ取上ゲラレテ參ルノデアリマス、
  此ノ場合ニ於キマシテ、具體的ナ數字ノ差
  ガ消費者ニ及ボス具體的ナ影響ト云フヤウ
  ナ事柄ノミヲ見ルコトガ出來ナイノデアリ
  マシテ、ヤハリソコニ物價政策全般ニ及ボ
  ス所ノ心理的影響ト云フヤウナモノヲ根幹
  的ナ物資ニ付テハヤハリ考ヘナケレバナラ
  ナイト云フ風ニ、現在政府ハ見テ居ル譯デ
  アリマス、左樣ナ觀點カラ致シマシテ、米
  ノ價格ノ如キモノハ其ノ點ニ於キマシテ制
  約ヲ受ケルノデアリマス、此ノ間ニ處シマ
  シテ、政府トシテハ如何ナル方策ヲ執ルカ
  ト云フコトニ付キマシテハ、從來カラヤツ
  テ居リマス所ヲ申述ベマスレバ、生產ノ奬
  s
  勵金ヲ交付スルトカ、或ハ細カイ點ニ付キ
  マシテ、食糧特別會計ノ取扱上努メテ生產
  農家ノ爲ヲ圖ツテ參ルトカ、或ハ又廣ク、
  主トシテ米ノ生產ヲ致シマスル所ノ水田耕
  作ニ對シマシテ各般ノ助成ノ措置ヲ講ズル
  トカ、或ハ土地ノ改良ノコトデアルトカ、
  其ノ他各種ノ點ニ付キマシテ、努メテ茲ニ
  助成ノ方途ヲ講ズル、又今囘モ農業保險ノ
  如キ制度ニ付キマシテ、國家ガソコニ助成
  ノ新タナル方策ニ出テ居ルノデアリマス、
  是等各種ノ方法ニ依リマシテ、今後モ米作
  ノ奬勵、增產ノ達成ニ向ツテ進ンデ參ラナ
  ケレバナラナイノデアリマスガ、今後モ農
  村各方面ノ指導者ノ方々ト共ニ吾々ト致シマ
  シテモ色々ト一ツ方法ヲ講ジマシテ、增產
  ニ遺憾ナク、又農村トシテ、農家トシテ立
  派ニ立ツテ行キマスヤウニ今後漸次努メテ
  參リタイト考ヘル次第デアリマス

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• 036・滿井佐吉

  ○滿井委員　低物價政策ト全般ノ財政經濟
  政策ノ根本方針上米ノ値段ガ上ゲラレナイ
  ト云フ御答辯ノヤウニ承リマシタガ、其ノ
  點ヲ根本的ニ解決シマス爲ニハ、米價ノ問題
  カラシテモ現在ノ如キ窮屈ナ低物價政策ヲ
  此ノ儘堅持シテ行カレルコトハ寧ロ國家
  經濟ヲ實質ニ於テ破綻スルモノデアルト私
  ハ思フノデアリマス、當局ノ言ハレル所ハ、
  經濟政策ヤ財政上ノ主トシテ金融經濟的ナ
  面ノ破壞ヲ惧レテ居ラレルヤウデアリマス
  ガ、低物價政策ヲ不必要ナ程度ニ堅持サレ
  マスコトハ、物經濟ノ本質ニ對シテ腰ヲ碎
  ケサセルヤウニナルノデハナイカ、斯ウ私
  共ハ見テ居リマス、ゾコデ本當ノ意味ノ農
  村經濟、國家〓糧品經濟ノ意味カラシマシ
  テ、此ノ際從來ノ動向ヤ從來ノ御立場等ニ
  囚ハレルコトナシニ、政府當局トシテハ虛
  心坦懷ニ過去ノ動向ヲ切替ヘラレテ、私共
  ノ御質問申上ゲルヤウナ點ニ付テ、十分考
  慮ヲ拂ハレルダケノ雅量ト申シマスカ、御
  用意ハアリマセヌデセウカ

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• 037・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　一口ニ申シマスレバ、主
  要食糧ノ增產ノ爲ノ問題ト云フコトニ付キ
  マシテハ、私共モ凡ユル觀點カラ必ズシモ
  形而的ナ一ツノ觀念ニ因ハレルト云フヤウ
  ナコトナク、凡ユル觀點カラ實情ニ卽スル
  ヤウニ進ンデ參リタイト云フコトハ考ヘテ
  居ルノデゴザイマス、併シナガラ價格ノ問
  題ハ全般ニ亙リ非常ナ難カシイ問題デゴザ、
  イマシテ、色々ト考ヘ方ガアル譯デゴザイ
  マスガ、政府ノ斯ノ如キ戰時經濟ノ運營上
  ノ根本的ナ問題ニ付キマシテハ、ソコニヤ
  ハリ政府トシテハ一貫シタ纒ツタ考ヘ方ニ
  出テ行クト云フコトガ必要デアラウト思ヒ
  マス、濫リニ色々ノ考ヘ方カラ彼此レノコ
  トヲ考ヘルト云フコトハ、〓究トシテハ、
  政府部內ニ於ケル吾々トシテハ出來得ルノ
  デアリマスケレドモ、兎ニ角政府ノ方策ト
  シテハソコニ一貫シタモノガナケレバナラ
  ヌト考ヘルノデアリマス

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• 038・滿井佐吉

  ○滿井委員　ドウモ農林次官ノ御答辯ハ私
  滿足致シ兼ネマスノデゴザイマスガ、結局
  スルニ、大臣ハ先程大イニ誠意ヲ以テ聞カ
  レル餘地ガアルヤウニ申サレマシタガ、米
  價問題ヲ繞ツテハ國民ノ實情ヤ國民ノ總意
  ノ存スル所ヲ聽カレル餘地ハ只今ノ御答辯
  ニ於テハナイモノト思ヒマス、此ノ點ニ付
  キマシテハ私ハ少クモ私ノ選擧區及ビ私ノ
  個人的ニ接觸シテ居リマスル幾十万ノ國民
  ヲ代表シテ玆ニ政府ノ米價對策ハ根本的ニ
  落第デアルト云フコトヲ申上ゲマス、其ノ次
  ニ農產物ノ供出販賣等ノ機構ニ付テデゴザ
  イマスガ、是ガ餘リニ一元的ニ統制强化サ
  レテ居リマスコトノ爲ニ、實ニ國民ハ生產
  增强ノ意慾ヲ失ヒツツアルノデアリマス、
  一例ヲ申シマスルト、微細ナ野菜類ニ至ル
  マデ非常ニ嚴格ニ極メ付ケラレマス爲ニ、
  到底增產ノ意慾ガ湧イテ居ラヌノデアリマ
  ス、此ノ販賣供出ノ一元的强化ヲ緩和シテ、
  國民ガ喜ンデ作レルヤウニ、又必要ナモノ
  ラ必要ナ所ニ買出シニ行ケルヤウニ、賣出
  シニ行ケルヤウニ工夫シテ、從來ノ計畫統
  制經濟ノ根本觀念ヲ改メラレル誠意ガ農林
  當局ニオアリデゴザイマセウカ

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• 039・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　主トシテ蔬菜類ノ供出、
  或ハ販賣機構ニ付テノ御話ト承リマシタガ、
  ソレニ付テ申上ゲマス、御承知ノ如ク大體ニ
  於テ蔬菜ハ或ル程度從來ニ比較致シマシテ
  減產ノ傾向ガゴザイマス、又季節的ノ調節
  モ中々ムヅカシイノガ、左樣ナ事態ニ於テ
  ハ起ツテ參ルノデアリマス、殊ニ最近ニ於
  キマシテハ輸送其ノ他ノ關係ガゴザイマ
  シテ、玆ニ限ラレタル生產供出ノ物資ヲ如
  何ニ消費者ニ對シテ最モ適正ニ配給スルカ
  ト云フコトガ大都市等ニ於テハ一ツノ大キ
  ナ問題デアルコトモ御承知ノ通リデゴザイ
  マス、此ノ間ニ處シマシテ、農林省トシテ
  ハ從來消費地ニ於ケル消費者ニ對スル配給
  ノ適正ニ參ルヤウニト云フコトガ主トシテ
  ノ目標トサレマシテ、此ノ蔬菜類ニ付テハ、
  販賣供出ノ機構ニ付テノ統制ヲ致シテ參ツ
  テ居ルノデアリマス、併シ地方ノ極メテ小
  都市等ニ付キマシテハ、必ズシモ左樣ナ同
  ジコトヲヤルト云フ方針デモナク致シテ居
  ルノデアリマスガ、其ノ間大都市ニ對スル
  供出配給ノ機構ニ傚ヒマシテ、往々ニシテ
  地方等ニ於テ如何カト思ハレルヤウナ地區
  ニ於テマデ是ト同ジヤウナ形ヲ執ツテ居
  ル、其ノコトノ爲ニ却テ其ノ間非常ナ支障
  ヲ來シテ居ルト云フヤウナ實例、又ソレヲ
  改善サレタト云フヤウナ實例モアルノデア
  リマス、勿論、玆ニ供出或ハ販賣ニ付テ或
  ル種ノ統制ヲ加ヘマスト、ソレガ一カラ十
  マデ總テ利便バカリヲ與ヘルノデハナイノ
  デアリマシテ、御話ノ通リ、生產者ニシテ
  見レバ、供出ヲスルノニ一々或ル種ノ制限ヲ受
  ケルト云フヤウナコトデアリマシテ、其ノ
  間色々ト不自然ガ起ツテ來ル、吾々ト致シ
  マシテモ好マシクナイヤウナ結果モアルノ
  デアリマス、此ノ間ニ處シマシテ成ベク適
  正ナ結果ヲ得ラレルヤウニト云フノデ、-從
  來カラ大都市ニ於テモ或ル種ノ例外ノ方途
  ヲ認メテ、統制ノ實際的運營ニ遺憾ノナイ
  ヤウニ圖ツテ參ツタノデアリマスガ、併シ
  又皆樣ノ御批判ハ中々區々デアリマシテ、
  最近ニ於テモサウ云フ例外的ナ緩和ノ處置
  ノ如キハモウ止メテ、絕對統制デ行ケト云
  フヤウナ激シイ意見ヲサレル方面モアリマ
  ス、カト思フト、又一面ニ於テ、モツト
  自由ニシタラ自然ニ出テ來ハセヌカト云
  フヤウナ御意見モアリマス、ソレ〓〓〓
  御意見ニ付テハ、吾々トシテハ御話ノアル
  每ニ常ニ十分色々ト考ヘテ居リマスシ、其
  ノ間漸次適正ヲ期シタイト思ツテ居ルノデ
  アリマスガ、先程モ申シマシタヤウニ、全國
  一律一體、何處ニデモ同ジヤウナコトヲヤ
  ラウトハ決シテ考ヘテ居ラナイノデアリマ
  ス、併シ實際ニ於テハ、ソレガ地方ニ依リ
  マシテ、或ハ所ニ依リ、行過ギノヤウナコ
  トガナイトモ限リマセヌノデ、是等ニ付キ
  マシテハ漸次實情ニ副フヤウニ改善ヲ圖ツ
  テ參リタイト考ヘテ居リマス

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• 040・滿井佐吉

  ○滿井委員　各府縣ニ依ツテ多少ノ手加減
  ノ違フ所ガアルカモ知レマセヌガ、大體全
  國的ニ私ノ接觸シテ調査シタ範圍ニ依ル
  ト農林當局ノ御指令ニ基イテ現在實行シ
  ツツアル配給供出ノ非常ナ强行的ナ一元化
  ト云フモノハ、明カニ農民ノ生產意慾、販
  賣意慾ヲ殆ド根柢的ニ破壞シテ居リマス
  日本ハ雨ノ多イ土地ノ肥エタ國デアリマシ
  テ蔬菜類ノ如キハ不自由スルヤウナ國デ
  ハナイノデアリマス、然ルニ現狀ハ此ノ通
  リデアル、是ハ明カニ農林當局ノ思想ノ中
  ニ、一元的ニ計畫統制經濟ヲヤレバ、机上
  ノ計算通リ物ガ出テ來ルヤウナ誤ツタ經濟
  觀念ヲ御持チニナツテ居ラレテ、ソレヲ實
  行ニ移シテ居ル弊害デアルト私共見ルノデ
  アリマス、農林省ハオ上手デゴザイマシテ、
  非常ニ御答辯ガ巧妙デ、此ノ場限リデ消エ
  込ムヤウナ御答辯ヲナサルノデ、私共賴リ
  ナク思ヒマスガ、此ノ點ニ付テ、其ノ主務
  局ノ局長ノ御方ニハ、今日マデヤツテ來タ
  ヤウナ所謂一元的ナ統制計畫經濟デ銃後ノ
  食糧問題ヲ增强シツツ、戰爭ニ勝拔ク信念
  ガオアリデアルカドウカ、ナイトスレバ
  豫ネテ民間ニモ聲ノアルヤウナ精神要素ヲ
  活カス所ノ、生キタ精神的誘導統制ニ方針
  ヲ切リ替ヘル御反省ガアルカナイカ、的確
  ニ伺ヒタイノデアリマス

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• 041・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　主務局長ト云フ御言葉ガ
  アリマシタガ、一應私カラ申上ゲマス、私
  共ノ考ヘト致シマシテハ、觀念的ニ單ニ所
  謂一元統制トカ、統制機構ト云フヤウナモ
  ノデ總テノモノガ片付クトハ考ヘテ居リマセ
  ヌ、御話ノ通リ、人ノ精神的方面ト云フモノ
  ハ勿論考慮致サナケレバナリマセヌ、又殊
  ニ農林關係物資ニ付テハ、御承知ノ通リ生
  產者モ殆ド全國ニ亙ツテ非常ニ廣汎デアリ、
  其ノ消費者ノ範圍モ亦非常ニ廣イト云フヤ
  ウナコトヨリ、是ハソレ〓〓ノ人々ノ生活
  ニ關聯スル所ガ非常ニ多イノデアリマス、
  隨ヒマシテ是ガ重工業上ノ重要物資ノ配給
  統制ト云フヤウナモノトハ、御說ノ通リソ
  コニ非常ニ違ツタモノノアルコトハ私モ感
  ズルノデアリマス、ソコデ例ヘバ今ノ蔬菜
  ノコトニ付キマシテモ、必ズシモ一元的ナ
  强硬ナヤリ方ト云フヤウナコトハ考ヘテ居
  リマセヌ、色々ナ情勢ニ應ジテ、其ノ間ニ
  適正ヲ圖リタイト云フコトヲ考ヘテ居ル次
  第デゴザイマス

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• 042・池田秀雄

  ○池田委員長　農政局長御答辯ガアリマスカ

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• 043・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　今ノ御話ハ、專ラ集荷
  關係ノ御話ト思ヒマスノデ、ソレハ私共ノ
  局ノ主管デハナイモノデアリマスカラ、ド
  ウカト思ヒマスガ···

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• 044・滿井佐吉

  ○滿井委員　ソレデハ次ノ質問ヲサセテ戴
  キマス
  只今ノ農林次官ノ御答辯ニ多少各府縣
  デ取捨選擇シテ適切ニオヤリニナルト云
  フ御答ガゴザイマシタガ、ソレデハ實情ヲ
  申上ゲマセウ、例ヘバ一例ヲ福岡縣ニ取ル
  ト、八幡ノ製鐵所ガアレダケノ鐵產業ヲ以
  テ數十万ノ工員ヲ擁シテ居リマスガ、之二
  必要ナル野菜ヲ思フ所ニ買ヒニ行クコトガ
  出來ヌ、隣リノ宮崎縣ヤ大分縣デハ腐ツテ
  居ルガ、福岡縣ガハ足リナイ、而モ福岡縣
  ノ內部ニ於テスラ南ノ方ノ久留米、南方ニ
  ハ餘ツテ居ルガ、其處ヘ買ヒニ行クコトガ
  出來ナイデ、八幡ノ區域ハ北九州ノ一部、
  小倉ノ區域ハ是ダケト云フ風ニ、縣ガ割附
  ケテシマツテ居ル爲ニ國防產業デアル八幡
  ノ製鐵所ハ、工員ニ野菜ヲ食ハスノニ非常
  ナ不自由ヲ感ジテ居ル、サウ云フ狀態ノ所
  ニ、八幡ニ野菜ガアリマセヌカラ、百姓ガ
  賣リニ出ル、所ガ經濟警察ガ其ノ値段ヲ調
  ベテ、統制値段ヨリ高ク賣ツタト云フノデ
  留置シテシマツタ、理由ヲ聞クト、水ヲ含
  ンデ居ル折ハ重サガアツタケレドモ、斯ウ
  ヤツテ、仕入レテ賣リニ來ル內ニ、段々干涸
  ビテ來テ重サガ減ルカラ、其ノ減ツタ分ダ
  ケハ、利益ハナイケレドモ、最初買ウタ値
  段ニ辻褄ヲ合ハセル爲ニ、重サニ對シテ幾ラ
  カヅツ高クナルヤウニ賣ツタノデ、別ニ違
  反シタノデハナイト言ウタラ、ソンナ馬鹿
  ナコトハナイ、銃後ノ者ハ此ノ際戰列部隊ガ
  死ヲ賭シテ戰ツテ居ル其ノ心デナゼヤラヌ
  カ、此ノ非國民ガ、ト言ハレタモノダカラ、
  ビツクリシテ、正直ナオ爺サンナモノデスカ
  ラ、警察ノ裏ノ山ニ入ツテ首ヲ縊ツテ自殺
  シタト云フ話ガアル、(笑聲)是ハ笑ヒゴトデハ
  ナイ、其ノ次ニハ門司ニ野菜ヲ賣リニ來タ
  所ノ百姓ノ若イ細君ガ、野菜ヲ賣ツテ居ル、
  賣ツテハナラヌノニ何デ賣ツタカト云フノ
  デ、販賣供出ノ徑路ガ違フ上ニ、多少値段モ
  違フト云フノデ、警察ニ留置サレタ、留置サ
  レテ細君ガ言ヒマスノニハ、ドウモ家ニ嬰
  兒ガ居ツテ乳ガ張リマスカラ、私モ長ク留
  メラレルナラバ、子供ヲ呼ンデ乳ヲ呑マサ
  シテ吳レ、斯ウ言ツタサウデアリマス、サウシ
  タラ、貴樣戰列部隊ハ戰死シテヤツテ居ル
  時ニ、銃後デソンナ橫着ナコトヲ言フ、第
  五列ミタイナモノダト云フ譯デ、ウント虐
  メラレテ、左樣ナ贅澤ヲ言フナラオ前ノオ
  ヤヂモ一〓ニ入レテヤルゾト言ツタサウデ
  アリマス、サウシタラ細君ハ、實ハ私ノ主
  人ハ南洋デ今戰爭シテ居マス、御喚ビニナ
  ラレテモ戰列ニ出テ居ツテ、此處ニハ居リ
  マセヌト云フコトヲ申上ゲタ、私ハ留守ノ
  家庭ヲ守ル爲ニ、此ノ野菜ヲ自由ニ賣ラシ
  テ吳レナケレバ、家庭生活ガ持テヌノダト
  云フコトヲ申上ゲタサウデアリマスガ、サ
  ウシタラ初メテ警察ガ、顏ヲ反ケテ歸ラセ
  テ下サツタ、斯ウ云フ事實モアルノデアリ
  マシ、又更ニ一例ヲ擧ゲマスト福岡縣ノ
  企救郡ノ東谷村ト云フ所デ起ツタ事實デア
  リマスガ、馬鈴薯ヲ供出シロト云フノデ供
  出シタ所ガ、假ニ三俵出シタ內二俵ハ腐ラ
  シテ、一俵殘ツタノヲ取リニ來イ、斯ウ云
  フコトニナツタ、ソレハ一軒ダケデナク、
  何軒モサウ云フ光景ニアル、大體三分ノ二
  ハ腐ラシタサウデアリマス、取リニ行ツタ
  所ガ、其ノ値段ヲ吳レズニ、腐レ掛ケタ所
  ノ殘リノモノダケ持ツテ歸ラサレテ、責任
  ハ遂ニ供出販賣ノ組合側ノ方ガ負フコトナ
  シニ、百姓ノ方ガ負フコトニナツタ、サウ
  云フ光景デ百姓ガ政府ヲ怨ンデ居ル所ニ、
  更ニ麥ヲ出セト云フコトニナツテ、縣ノ役
  人ガ取リニ來タ、サウシタラ前囘ノ馬鈴薯
  ノ値段カラ始末ヲ附ケテ吳レ、斯ウ言ヒマ
  スト、私ハ馬鈴薯ニ關係スル者デナイ、上
  司ノ命令デ以テ麥ヲ出サセル爲ニ來タノダ
  カラ出セ、イヤ馬鈴薯ノ値段カラ解決シテ
  吳レナケレバ麥ハ出サナイ、何ヲ言フカ、
  出セト言ツタラ出セ、出サヌト言フナラ警
  察ニ言ツテ出サセル、斯ウ云フヤウニナツ
  テ、强權デ壓迫ニ掛リマシタカラ、其處ニ居
  リマシタ村ノ者ガ、何ヲ計フカト云フノデ
  イキリ立ツテ、縣カラ來タオ役人ヲ袋叩キ
  ニシサウナニツタガ、マア〓〓ト宥メル人ガ
  アツテ、縣ノ役人ハ這々ノ態デ歸ツテ行カ
  レク、斯ウ云フ事實ガアルノデアリマス、
  是ハ一葉落チテ天下ノ秋ヲ知ルベシ、霜ヲ
  履ンデ堅冰至ルヲ知ルベキデ、今ヤ全國的
  ニ斯樣ナ動向ヲ迪リツツ國民ハ農林行政ノ
  一大失策ニ對シテ痛憤措ク能ハザル思ヒヲ
  抱イテ居ルノデアリマス、是ハ何處カラ來
  ルカト言ヒマスト、机上デ計算スルト、數
  字通リニ押附ケテ行ケバ、經濟ハ理想通リ
  增强出來ルカノヤウニ誤解ニナツテ居ラレ
  ル點カラ來ルノデハナイカ、事實ノ經濟ト云
  フモノハ現場ニ於テ見ナケレバナラヌノデ
  アリマス、其ノ現場ガ增强スル前ニ、先ヅ農
  村ノ國民ノ氣持ノ中ニ、次ノ增產ヲ魂ノ世
  界ニ生ミ出サナクテハナラヌノデアリマス、
  現下ノ農林省デオヤリニナル一元的ナ强硬
  ナ統制計畫經濟ハ、出來上ツタ數字ノモノ
  ヲ割振ルコトニ汲々トシテ居ラレマシテ、
  次ノ作附ニ於テ增產ヲ導クヤウニ農村人ノ
  魂ノ中ニ未來ノ增產ヲ誘導スル熱意ガ缺ケ
  テ居ルノデアリマス、此ノ點ヲ根本的ニ御
  反省ニナツテ、大臣、次官、局長、上下ヲ
  通ジテ總理大臣ノ言ハレマスヤウニオヤリニ
  ナル御意思ガアリマスカ、アリマセヌカ

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• 045・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今滿井サンカラ色々ノ
  洵ニ歎カハシイヤウナ事例ノ御話ガゴザイ
  マシタガ、私ハソレハ何カ間違ヒデアツテ、
  左樣ナコトハナイデハナイカト云フ位ニ考
  ヘルノデアリマス、御承知ノヤウニ現在大
  消費地方ニ於ケル蔬菜ニ付キマシテハ已ム
  ナク色々ノ配給上ノ統制ヲ致シテ居リマス
  ケレドモ、其ノ間ニアリマシテ、ヤハリ之ニ
  付テモ色々非難ガアリマス、アリナガラモ
  尙且ツ或ル程度ノ行商ヲ認メタリ、又或ル
  程度買出シニ行クコトヲ認メタリシテ居ル
  ノデアリマス、之ニ付テハ隨分色々ト御批
  判モアリマシテ、或ル時期ニ於キマシテハ
  外部ノ方カラモウスツカリ止メテ貰ヒタイ、
  止メナケレバ是ハドウモ宜シクナイト云フ
  位ナ御意見モアリマシタガ、現在致シテ居
  リマス、何カソコニ實際上ノ話ノ中ニ齟齬
  ガアルノデハナイカト云フ位ニ私ハ思フノ
  デアリマス、馬鈴薯ノ腐ツタ御話ガゴザイ
  マシタガ、是ハ實際問題トシマシテ、例へ
  バ北九州邊リノ馬鈴薯ニ付キマシテハ、丁
  年天候其ノ他ノ關係カラ昨年アタリ色々左
  樣ナ事例モアツタヤウデゴザイマス、或ル
  簡易ナ保藏ノ方法ヲ講ズレバソレモ避ケ得
  ルノニ、其ノ方法ガ講ゼラレナカツタ、ソ
  レニ付テハ勿論指導ノ至ラヌ點モアツタ譯
  デアリマスガ、左樣ナ事例ガアリマシタヤ
  ウナ譯デ、是ハ洵ニ遺憾デアリマシテ、左樣
  ナコトノ繰返サレナイヤウニ、今後殊ニ芋
  類ニ付キマシテハ主要食糧ノ補塡〓糧トシ
  マシテ大イニ增產ヲシナケレバナラヌノデ
  アリマシテ、其ノ間ニ非常ニ腐リ易イモノ
  デスカラ難カシイノデアリマスガ、農家ト
  共々ニ成ベク之ヲ一ツ有效ニ利用スルヤウ
  ニ、又其ノ觀點カラ致シマシテ何カ巧ク考
  ヘ得ル點ガアリマシタナラバ、新タナル考
  慮モ加ヘテ見タイト云フ風ニ思ツテ居ルノ
  デアリマス
  總理ノ御話ノヤウニヤルカト云フヤウナ
  御話ガ最後ニアリマシタガ、勿論總理大臣
  ノ方針ニ依ツテ吾々モヤツテ居ル譯デアリ
  マシテ、總理ノ御考ヘノ通リニヤリタイト
  思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=45

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• 046・滿井佐吉

  ○滿井委員　時間ガアリマセヌノデ、意ヲ
  盡クシ兼ネマスカラ項目ダケデヤラシテ戴
  キマス、總理大臣ハ國民ノ創意工夫ヲ助長
  スルヤウニ大イニ國民ヲ信賴シ、國民ト一
  體デヤル、斯ウ仰セラレテ、洵ニ國民トシ
  テ吾々感激シテ居ルノデアリマス、然ルニ
  現下ノ經濟統制ノ實情ハ全ク總理大臣ノ言
  フ所ト事實ガ反スルノデアリマス、其ノ責
  任ハ擧ゲテ農林大臣以下當局ニ在ルモノト
  吾々ハ考ヘル、總理大臣ニハ責任ガナイト
  思フ、監督指導ノ責任ハアルデアリマセウ
  ガ、主トシテ主務省、主務局ノ官吏ノ御方
  方ガ具體的ノ責任ヲ執ラナケレバナラヌト
  思ツテ居リマス、此ノ點カラ今私共ハ農林
  當局ノ責任ト云フモノヲ非常ニ重大視シテ
  居リマス、今日ハ木材ノ質問ハ致シマセ
  ヌガ、食糧品ダケニ付テ考ヘテ見マシテモ、
  農林行政ハ明カニ大失敗デアリマス、國民
  ヲシテ是程憤懣ヲ懷カセ、場合ニ依ツテハ
  大變ナ事態ニマデ、經濟ノ腰碎ケニナリハ
  シナイカト云フヤウナ風ニ、ソレカラ或ハ
  社會不安的ナト云フヤウナコトモ杞憂セラ
  レルヤウナ狀態ニ持ツテ來タ責任ハ何トシ
  テモ農林當局ガ負ハナケレバナラナイ、然
  ルニ其ノ點ニ付キマシテ大臣ハ、午前ニ虚心
  坦懷誠意ヲ以テ聽クト言ハレマスルガ、私
  申上ゲルコトハ大變不本意デアリマスガ、
  農林次官ハ非常ニ人格圓滿ナ御方デ、御折
  衝ガオ上手デアリマス爲ニ、動モスルト此
  處ダケノ押シ問答デ、モウアレデ言ヒ括メ
  タカラ宜カツタト云フヤウナ結果ニナリハ
  シナイカト云フコトヲ憂慮セラレルノデア
  リマス、モウ少シ一國ノ政治ヲ輔弼スル所
  ノ官僚ノ御方々ハ中心問題ニ觸レテ事實ヲ
  檢討シナケレバナラヌ、何カノ間違ヒト云
  フコトヲ苟クモ代議士ガ此處デ言ヒマセヌ、
  必要ナラバサウ云フ事實ヲ持ツテ來タ本人
  達ヲ連レテ來テモ宜シイノデアリマス、間
  違ヒハナイノデアリマス、的確ナ事實ヲ押
  ヘテ申シテ居ルノデアリマス、左樣ナコト
  ヲ耳ヲ掩ウテ鈴ヲ盜ムヤウナ言〓シ方デ、
  國政ヲ責任免レシテ行カウト云フコトデハ、
  ソレハ一時官僚ハ首ハ繋ガレマセウ、內閣
  モ延命ハ致シマセウ、併シ其ノ後ニ來ルベ
  キ經濟ノ腰碎ケカラ、祖國ガ遂ニ戰爭ヲ勝
  拔ク爲ニ、日本ハ國體ガ良イカラ負ケハシ
  マセヌガ、勝拔ク爲ニ、非常ナ豫期セザル
  所ノ混亂ト難關ヲ切拔ケナケレバナラナイ
  ヤウニナツタ其ノ時ニナツテ、責任ヲ追及
  シテモモウオ終ヒナンデアリマス、事實吾
  吾ハ潮先ヲ見テ居ルノデアリマス、政治ハ
  机ノ上ノ統計デハイケナイ、出來上ツタ統
  計ヨリモ、軈テドウ云フ統計ガ出來上ツテ
  來ルカト云フ潮先ヲ見ナケレバナラヌ、今
  水ガアツテモ退潮ニナルノカ、今水ガ是ダ
  ケシカナイガ、滿潮ニナツテ居ルカ、其ノ
  農民ノ氣持ノ中ニ將來ハ滿潮ニナリツツア
  ルカ、退潮ニナリツツアルカト云フヤウナ
  コトヲ見ルヤウナ、未來ノ農村ヲ今誘導シ
  テ、農村民ヲ其ノヤウナ氣持ニ導クヤウ、
  農林當局ノ御誠意ヲ望ムモノデアリマス、午
  前ニ大臣ハ政府ハ國民ヲ信ジ、國民ガ政府
  ヲ信ジテ行キサヘスレバ〓糧對策ハ大丈夫
  ダト言ハレマシタガ、政府ハ國民ヲ御信ジ
  ニナツテナイト思ヒマス、此ノ度出サレタ
  所ノ諸法案ヲ見マシテモ、恰モ國民ヲ罪人
  扱ヒセラレルヤウニ出來テ居ル、現ニ行ハ
  レツツアリマス統制ヲ見マシテモ、一々經
  濟警察ガ付イテ國民ヲ捕虜扱ヒニシテ居ル、
  又國民ハ左樣ナ實情ニ於キマシテ政府ヲ信
  賴シテナイノデアリマス、信賴シテナイガ、
  ソレヲ口ニ出スト壓迫ガ來マス爲ニ、默々
  トシテ其ノ欝憤ヲ何カノ形デ出シテ居ル、
  ソレガドウ現ハレテ來ルカト云フト、國體
  ガ良イノデスカラ、政府ヤ國體ニ反逆ハ出
  來マセヌ、ソコデ國民ハ無抵抗ノ消極的ナ、
  詰リ自己滿足ト云ヒマスカ、自己更生ノ途
  ニ逃レテ居ルノデアリマス、其ノ結果小作
  人ハ今ヤ米ヲ作ルコトヲ止メテ、段々土地
  ヲ地主ニ返シ、地主ハ田ノ草ガ取レナクナ
  ツテ、植付ガ出來ナクナツテ、大困リデア
  リマス、サウ云フ傾向ガ全國的デアリマス、
  ソレダカラ近所ニ工場ガアリマシタリ、他
  ノ事業ガアリマス所ノ農村人ハ、ドシ〓〓
  ト其ノ方ニ勞力ヲ流シテ居リマス、サウシ
  タ結果鞭ウツヤウニシテ極メ付ケテヤリマ
  シテモ、事實增產ト云フモノハ出來ナイノ
  デハナイカト云フコトヲ私ハ非常ニ憂慮シ
  やく、其ノ結果社會不安ニマデ今ヤ行ク虞
  ガアルノデハナイカト云フコトヲ私窃カニ
  憂慮シテ居ル次第デアリマス、斯ウ云フ點
  カラ此ノ際一々細カイ質問ハ、モウ私ニ與
  ヘラレタ時間ガナクナリマシタカラ止メサ
  シテ戴キマス
  唯一ツ最後ニモウ一應念ノ爲ニ伺ツテ置
  キマスガ、大體農林省デモ、其ノ他商工省
  デモ、現在ノ政府御當局ノ御考ヘヲオヤリ
  ニナル所カラ私ハ推察ヲ致シマスルト、經
  濟ト云フモノハ五ニ五ヲ加ヘルト十ニナル
  ト云ツタヤウナ計算ヅクメデ、非常ニ「ロシ
  ヤ」ノ唯物主義者デモ考ヘルヤウナ御考
  ヘ方ノ經濟通念ヲ御持チヂヤナイカト思フ
  ノデアリマス、事實ノ經濟ハサウデナイノ
  デアリマス、五ニ五ヲ加ヘテ百ガ出來ルノ
  デアリマス、ソレハ精神力カラ出テ來ルノ
  デアリマス、今玆ニ一粒ノ米ガナクツテモ、
  籾ガ一粒サヘアレバ、ソレガ今年ノ秋時ニ
  ハ一粒カラ百粒ニナルト云フコトヲ豫定ガ
  出來ルノデアリマス、今玆ニ百粒アリマシ
  テモ、百姓ガ植付ケヲ怠リ、田草ヲ取ラナ
  カツタラ、今年ノ秋ニハ一粒モナイ結果ニ
  ナル、隨ヒマシテ今アル數字、今出テ來テ
  居ル統計ト云フモノヲ基礎ニシテ割振ルコ
  トヲヤルヤウナ計畫經濟ヲ根本的ニ切替ヘ
  テ、精神要素カラ未來ノモノノ姿ヲ大キク
  建設シテ行ク精神的誘導ノ增產經濟ニ踏込
  マレル爲ニ、御當局ガ本當ニ虚心坦懷ニ國
  政ヲ國民ト共ニ輔弼シテ行ク御考ヘニオナ
  リニナツテ戴クコトハ出來ナイノデアリマ
  スカ、ソレガ出來ナイトナルト吾々ハモウ
  政府ニ對スル期待ト云フモノヲ失ハナケレ
  バナラヌノデアリマスカラ、此ノ點ヲハツ
  キリト御答辯ヲ戴キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=46

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• 047・池田秀雄

  ○池田委員長　此ノ機會ニ次官ニ一寸申上
  ゲマスガ、滿井君ノ質問ニ對シ滿井君ノ例
  ヲ擧ゲラレタコトハソレハ何カノ間違ヒデ
  アラウト云フヤウナコトハ釋明ヲシテ置カ
  レタ方ガ適當ダラウト思ヒマス

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• 048・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ滿井サンノ精神的
  要素、殊ニ將來ノ發展ト云フコトヲ考ヘテ
  共々ニ考ヘル用意ハナイカト云フ御質問ニ
  對シマシテハ、是ハ全ク私共本當ニ左樣ニ
  考ヘテ居リマス、其ノコトヲ申上ゲテ置キ
  タイト思ヒマス
  ソレカラ先程滿井サンノ御話ノコトニ付
  テ私ガ申シマシタ趣旨ハ、今委員長カラノ
  御注意マデモナク、實ハ私ハ言外ノ意味ヲ
  申シタノデアリマス、滿井サンガ如何ニ事
  實ニシタ所デ、マサカソンナコトハアリ得
  マイト云フ、兎ニ角洵ニ聽クニ堪ヘナイコ
  トデアルカラ、私ハサウ申シタノデアリマ
  ス
  ソレカラ先程カラモ申上ゲテ居リマス通
  リニ、農林關係ノコトニ限リマセヌ、總テ
  全國ニ從來カラ見マスト餘程變ツタ今日ノ
  戰時下ニ於ケル各種ノ經濟政策ヲ施行シテ
  行キマス上ニハ、中々實際ノ實情ニ合フヤ
  ウニ色々ノ施策ガ滲透スルノガ困難デアリ
  マシテ、此ノ點ニ付キマシテハ私共モ非常
  ニ苦慮致シテ居リマス、又實際色々ノ御注
  意ヲ聽キマシテモ、マア何ダツテサウ云フ
  コトニナツタンダラウト云フ位ニ、吾々ト
  シテモ御同感ノ感ジヲ持ツヤウナ例モアル
  ノデアリマスガ、是等ニ付キマシテハ官ト
  民トヲ問ハズ、兎ニ角今日ノ如キ事態ニ卽
  シテ此ノ總力戰下ニ於ケル國力結集ノ體制
  ノ下ニ於ケル色々ノ施策ノ圓滑ナ運營ト云
  フコトニドウシテモ是ハ慣熟シテ行カナケ
  レバナラナイト思フノデアリマス、慣熟ス
  ル上ニ於テ常ニ時間的ナ一ツノ經過ガアリ
  マシタリ、或ハ又實際ノヤリ方ニ於テ十分
  ナラザル點ガアリマシタリ致シマスコトニ
  付キマシテハ、吾々ハ色々ト實際ノ例ヲ伺
  フニ伴ヒマシテ、ソコニ適當ナル處置ノ講
  ジ得ルモノニ付テハ處置ヲ講ジテ行キタイ
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、是ハ具體的ニ
  申ス譯ニモ參リマセヌガ、或ル大都市ノ如
  キハ其ノ大都市ノ近郊ニ或ル一ツノ時局關
  係ノ工場ガ出來タ爲ニ、其ノ大都市ノ一箇
  月半分位ノ蔬菜ノ生產ガ止ツタト云フ例モア
  ルノデアリマス、是ハ恐ラクサウ云フコト
  ハ一般市民ハ知ラナイト思フノデアリマス
  ガ、事實サウ云フコトガアリマシテ、例
  バ玆ニ一ツゴソツト一ツノ供給源ガ落チテ
  居ル、斯樣ナ事態ニ對處致シマス場合ニ於
  テ、出來ル限リ輸送其ノ他ノ都合ガ付キマ
  スレバ、廣ク外カラモ蔬菜ノ供給ヲ圖リ、
  或ハ近傍ニ於テ蔬菜ノ增產ヲ圖ル、色々ア
  リマスケレドモ、ソコニヤハリ自ラ供給ノ數
  量ニ或ル限度ガ出來ルト云フヤウナコトモ
  起ルノデアリマス、左樣ナ場合ニ於キマシ
  テハ、是ハ所謂平等主義ト云フヤウナコト
  ハ採ラナイノデアリマス、併シ比較的足ラ
  ナケレバ足ラナイモノヲ皆ガ奪ヒ合ヒヲシ
  タノデハ大變デアル、ソコデ何トカオ互ニ
  持合ツテ、限ラレタル數量ヲ以テ或ル一時
  的ニハ凌イデ行カナケレバナラヌト云フヤ
  ウナコトモ起ルノデアリマシテ、左樣ナ場
  合ニ付キマシテ、實情ニ副フヤウニト云フ
  ノデ、色々ト配給ノ統制等モ行ハレテ居ルノ
  デアリマス、斯ウ云フコトニ付キマシテハソレ
  ゾレ色々ト必ズシモ一般的ニハ知ラレナイ事情
  モアルノデゴザイマス、併シナガラ同時ニ吾々ト
  致シマシテハ、御話ノ通リ、一般ノ人心、
  或ハ精神的要素ト云フヤウナモノハ、殊
  我ガ國ニ於キマシテハ重要ナ要素デアリマ
  シテ、總テノ經濟ト云フモノハ、殊ニ今日
  ノ場合ニ於テサウ云フ要素ガ入ラナイデ巧
  ク進ンデ行クモノハナイ譯デアリマス、是
  等ノコトニ付キマシテハ、最後ニ御質問ノ
  點ニ付テハ全ク御同感デゴザイマス、能ク
  時局ノ實情ヲ認識シテ、國民全般ニ認識シ
  テ貰フコトモ一ツノ必要ナルコトデアリマ
  スガ、又同時ニ中々是デ狀況モ複雜デアリ
  マシテ、之ニ對處スル最善ノ策ト云フモノ
  ヲ執ル積リデモ、ツイソコニ又巧ク參ラナ
  イデ居ルト云フヤウナコトモアリマスノデ、
  サウ云フヤウナコトニ付テハ御話ノヤウナ
  點ニ付テ十分戒心ヲシテ參リタイト思ツテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=48

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• 049・滿井佐吉

  ○滿井委員　時間ガ來マシタカラモウ一ツ
  ダケ伺ヒマス、縣「ブロック」ヲ非常ニ强ク
  締メラレテ居リマス爲ニ、農產諸品ノ配給
  供出ガ圓滑ヲ缺イテ、國家的ニ見マシテモ、
  一方デ腐ツテ、一方デ苦シンデ居リマス、
  又農村人カラ見マシテモ折角作ツタモノガ
  金ニナラズニ、經濟的ニ破綻ヲシテ居リマ
  スカラ、縣「ブロック」ダケハ是非撤廢ヲシ
  テ戴キタイト思ヒマスガ、之ニ對シテ撤廢
  ヲナサル御意思ハアリマセヌデセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=49

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• 050・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　縣「ブロック」ト云フコト
  ハ隨分前カラ言ハレテ居リマスノデ、人一
  依リマシテ其ノ言葉ノ中ニ含マセテ居ラレ
  ル觀念ガ色々違フノデアリマシテ、(株)
  一寸申シ兼ネルノデアリマスガ、先ヅ以テ
  府縣ニ依ル區劃的ナ行政ト云フモノヲ食糧
  關係其ノ他ニ付テ撤廢スルカドウカト云フ
  コトニ付キマシテハ、是ハ全國的ナ一ツノ
  取扱ノ出來ルモノモ物ニ依ツテハゴザイア
  スガ、殊ニ生產者ノ非常ニ多イ、消費者ノ
  非常ニ多イト云フヤウナモノニ付テハドウ
  シテモ或ル部分々々ノ區劃的ナ考ヘ方ト云
  フモノハ已ムヲ得ナイデハナイカ、是ハ平
  常ニ於テ必ズシモ理想的ナ方法デハゴザイ
  マセヌガ、例ヘバ今東京市ニ於キマシテ隣組
  單位ノ蔬菜ノ配給、登錄制ヲヤツテ居ル、ア
  レモ一ツノ區劃々々ヲ作ツテ居ルヤリ方デ
  アリマス、併シナガラ府縣「ブロック」ト云フ
  モノハ、府縣內ダケニ物ヲ溜込ンデ、他ノ
  コトハ構ハナイト云フヤウナ、サウ云フ觀
  念ト致シマスレバ、是ハ勿論打破致サナケ
  レバナリマセヌシ、又私共ト致シマシテハ、
  ヤリ方ノ上手下手ハアリマスケレドモ、過
  去ハイザ知ラズ、今日ニ於キマシテハ殊
  ニ一般必需物資ニ付キマシテ、府縣ニ於テ
  其ノ管內ノ爲ニ故ラ餘所ヘ出サヌト云フヤ
  ウナコトハモウナイノデハナイカト云フ風
  ニ考ヘテ居リマス、併シナガラ若シ左樣ナ
  實情ガアリマスナラバ左樣ナコトノナイ
  ヤウニ、私共ノ方トシマシテハ府縣ニ對シ
  テ十分指導致シタイト思ツテ居リマシテ、
  之ニ付テハ十一月ノ地方長官ノ會議ノ時ニ
  モ、農林大臣カラ、特ニ今日ノ場合ニ於キ
  マシテ、或ル地方ガ管內ニ於テ物ノ充足ラ
  圖ツテ、管內ノ治安成レリトシテ滿足スル
  ヤウナコトデアツタナラバ、是ハ今日ノ時
  局ノ認識ヲ缺クモノダ、サウシテ職責ヲ盡
  シタト思フノハ時局ノ認識ヲ缺クモノダ、
  全國的ナ考ヘ方ヲ、シナケレバナラヌノダ
  ト云フコトヲ特ニ强ク申シマシタヤウナ次
  第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=50

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• 051・滿井佐吉

  ○滿井委員　最後ニ、大臣ガ居ラレマセヌ
  カラ、次官カラ篤ト大臣ニ次ノコトヲ申上
  ゲテ戴キマシテ、午前ノ質問ノ續キトシテ
  ノ私ノ御願ヒヲ打切リト致シマス
  第一ニハ、米價問題ニ付キマシテハ、農林
  當局ノ御說明ヤ御意思ニハ私ハ絕對ニ承服
  シ兼ネマス、一俵ガ二十二圓デゴザイマシ
  テ、假ニ今大臣アタリガ赤坂デ宴會ヲヤラ
  レタトシマシタナラバ、恐ラク一食ニ十五
  圓、二十圓ハ吹ツ飛ンデシマフト思ヒマス、
  米一俵一寸ノ間ニ飮ンデ食ウテシマフコト
  ニナルノデアリマス、狀袋一束買ヒマシテ
  千、少シ質ノ良イモノハ米一升分デアリマ
  ス、斯樣ニシテ農村ヲ破壞ニ追込ム以外ノ
  何モノデモナイ、斯樣ナコトデ增產ヲヤレ
  ト云フコトハ、言フベクシテ行ハレナイコ
  トデアリマスカラ、米其ノ他農產諸品ノ中
  デ必要ナモノノ價格ノ大幅引上ゲト云フモ
  ノヲ斷行サレル必要ノアルコトヲ切ニ申上
  ゲマス
  其ノ次ニハ、只今ノ御說明デ、縣「ブロツ
  クレハ色々解釋ノ仕樣ガアルヤウデアリマ
  スガ、私ノ申シマス縣「ブロック」ハ一々縣當
  局ノ御指圖ヲ受ケ、御許シヲ得ナケレバ、
  馬鈴薯一ツモ、里芋一ツモ縣外ニ持ツテ出ル
  コトガ出來ナイ、左樣ナ狀態ニ於キマシテハ、
  假令其ノ統制指導ガ適切デアル場合ニ於テ
  モ、敏活、圓滑ト云フ上ニ於テ實際ノ經濟
  ニ合ハヌ、况ヤソレガ許可ヲシナイト云フ
  コトニナリマシタカラ、益〓以テイケナイ、
  ダカラ行政單位ノ縣ヲ中心トシテ經濟活動
  ヲ律スル所ノ縣「ブロック」制ノ思想ト動キ
  ヲ根本的ニ切替ヘテ戴キタイノデアリマス
  其ノ次ニハ、米トカ麥トカ云フ重要ナル
  モノハ致シ方ナイト致シマシテ、野菜類、
  其ノ他農產諸品ノ中ノ細カイモノハ、農民
  ノ自由ニ思フ値段デ、欲スル場所ト時期ニ
  於テ賣ツテ宜イヤウニシテ戴キタイノデア
  リマス、又都市生活者モ必要ナ時期ト場所
  ニ於テ買出シニ行ツテ、オ互ニ賣ル方ト買
  フ方トノ間ニ成リ立ツタ協定ノ値段ニ於テ
  買取ツテ來ルヤウニ、是ハ統制ヲウント緩
  和シテ戴キタイノデアリマス、サウスレバ
  キツト澤山出テ來ル、其ノ次ニハ農民全體ニ
  對スル行政ノ行キ方ガ、今囘ノ農業團體法案
  ヲ見マシテモ、其ノ他ノ法案ヲ見マシテモ、
  非常ニ嚴シク極メ付ケテ居ルヤウデアリマ
  スカラ、從來デサヘ苦シカツタノガ益〓苦シ
  クナリマスカラ、斯樣ナ狀態デハ農民段々
  事業ヲ失ヒマシテハ、農村ハ萎縮スル以外ニ、
  增產ノ餘地ハナイト思ヒマス、此ノ點ニ付
  キマシテ根本的ナ御反省ヲ遊バサレマシテ、
  今後ノ行政指導ノ御實行ノ上ニ於キマシテ、
  農村人ヲシテモウ少シ手足ヲ緩メテ働カセ
  ルヤウナ情ケノ政治ノ御工夫ナサルコトニ
  付テ切ニ私ハ大臣ニ申入レタイノデアリマ
  ス
  其ノ次ニ都市カラ農村ニ賣付ケマス品物
  ノ値段ガ高ク、其ノ品物ノ質ガ惡クテ、農
  村ニハ耐ヘ難イ苦シミニナツテ居リマスカ
  ラ、此ノ點ニ付キマシテ適正ナ御修正ガシ
  テ戴キタイノデアリマス、以上ヲ通ジマシ
  テ、今囘出サレマシタ政府法案ダケデハ到
  底此ノ價格問題、其ノ他農村經濟ノ解決
  ガ出來ナイト思ヒマスカラ、實ハ私共ノ方
  デ米價ヲ上ゲル決議デモ出シタラト云フヤ
  ウナ個人的ノ考ヘヲ持ツテ居リマスガ、ソ
  レ等ノ議會活動ハ一國一體ノ現在ノ議會ノ
  事情ニ於キマシテ、吾々個人的ノ意思デハ
  中々盛リ上リハ許サレナイ、梗塞狀態ニア
  リマスル爲ニ、此ノ席上カラ當局ニ御願ヒ
  申シテ置キマス、今後ノ統制指導、行政ノ
  實行上ニ於カレマシテ、願ハクハ此ノ法案
  其ノ他ニ於テ解決シテ居ナイ所ニ寧ロ却テ
  重大ナ「ポイント」ガアリマスルガ故ニ、是等
  指摘シマシタ諸點ヲドシ〓〓ト政府ノ責任
  ノ範圍ニ於テ御實行遊バサレマスヤウニ、
  特ニ大臣ニ御傳ヘヲ願ヒタウゴザイマス、
  是デ私ノ質問ヲ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=51

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• 052・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ滿井君ノ御質問ハ
  濟ミマシタカラ、豫テ御通〓ノ野村君ニ發
  言ヲ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=52

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• 053・野村嘉久馬

  ○野村委員　私ハ〓繭價格ニ付テ御尋ネ致
  シタイト思ヒマス、總テノ物價ガ今騰貴ノ
  趨勢ニアリマシテ、尙ホ農產品ノ價格ガ漸
  次適正ヲ保チツツアリマスガ、唯只今モ御
  話ノ通リ米價ト〓繭價ダケガ据置ニサレテ
  居ル狀況デアリマス、而モ米ノ價格ニ付テ
  ハ、昨年二重價格制ニ依ツテ生產者ニ奬勵
  金ヲ交付スルト云フコトニ依ツテ幾分ヲ緩
  和シタ、又價格ノ適正ヲ圖ツタト政府ハ御
  考ヘニナツテ居リマセウガ、併シナガラ今
  日ニ於テハ不十分デアル、斯樣ニ斷ズル者
  デアリマス、ソレ等ニ付テハ只今滿井サン
  カラ縷々御述ベニナツタ通リデアリマスガ、
  私ハ此ノ米價ニ關シマシテハ豫算總會、或
  ハ吾々ノ同僚ニ依ツテ色々ナ委員會ニ於テ
  御話ニナツテ居リマスカラ省略致シマスガ、
  唯蠶繭價格ガ米價ト同ジヤウニ据置サレテ
  居ルト云フコトハ洵ニ慨歎ニ堪ヘナイノデ
  アリマス、只今繭ノ値段ハ、蠶絲統制株式
  會社ガ買入レル價格ハ六十掛デアリマス、
  之ヲ一貫ノ値段ニ直シテ見マスト、八圓四
  十錢ト云フコトニナルノデアリマス、而シ
  テ之ニ奬勵金ガ二十錢加ハリマスカラ八圓
  六十錢ノ計算ニナルカト存ズルノデアリマ
  ス、爾ガ致シマシテ此ノ養蠶ノ一貫目ニ對
  スル生產費ハドウナツテ居ルカト申シマス
  ト政府或ハ農會等ニ依ツテ調査シタモノ
  ハ昭和十七年度ニ於テ十圓八十一錢トナ
  ツテ居ルヤウデアリマス、爾カ致シマスト
  生產費ヨリ一貫目ノ價格ガ二圓二十一錢低
  クナツテ居ルヤウデアリマス、斯樣ナ狀
  況デアリマスカラ、農民ハ此ノ割ノ惡イ、
  又採算ノ採レナイ養蠶ヲ段々縮少シ、廢止
  シテ行クト云フ狀況デアリマス、之ヲ統計
  ニ依ツテ見マスト、此處ニモ載ツテ居ルヤ
  ウデアリマスガ、大體此ノ五、六年間ノ
  動向ヲ見マスト、養蠶戶數ニ於テモ殆ド數
  十万戶ノ減、反別ニ於テハ十數万町步ノ減、
  隨テ產繭額ニ於テハ數千万貫ノ減少ヲ見テ
  居ル、斯樣ナ狀況デアリマス、而モ政府ガ
  昨年目標ヲ立テテ各府縣ニ此ノ確保ヲ奬勵
  致シタモノデアリマスガ、其ノ目標額ニモ
  足ラザルコトガ尙ホ遠イノデアリマス、サ
  ウシテ本年モ亦澤山ノ目標額ヲ各府縣ニ通
  牒ヲサレテ居ルヤウデアリマス、今ノ
  狀況デアルトスルナラバ、此ノ產繭確保ハ
  絕對ニ出來ナイ、斯樣ニ私ハ信ズル者デア
  リマス、今日此ノ繭ハ纖維資源ノ全ク大ナ
  ルモノデアリ、而モ此ノ東亞共榮圈ニ於ケ
  ル織維資源トシテハ最モ重大ナルモノト思
  フノデアリマス、而モ只今マデノ繭ト云フ
  モノハ、大體高級生絲ヲ製造スル斯ウ云
  フコトニアツタノデアリマスガ、今日ノ所
  ハ短纖維トシテ所謂大衆向ノ纖維資源ト相成
  ツテ居ルヤウナ譯デアリマス、斯樣ナ最モ
  重要ナル所ノ此ノ絲ヲ採ル所謂產繭ヲ確保
  スルト云フコトニ於テハ、ドウシテモ値段ヲ
  今少シ是正スルニアラズンバ、是ハ絕對確
  保ハ出來ナイト云フコトヲ思フモノデアリ
  マス、色々政府ニ於テモ事情ハゴザイマセ
  ウガ、此ノ場合思ヒ切ツテ此ノ値段ノ是正
  ヲ斷行サレンコトヲ希望スルモノデアリマ
  ス、此ノ點ニ付テドウ云フヤウニ御考ヘニ
  ナツテ居リマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=53

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• 054・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　養蠶ノ最近ノ狀況其ノ他
  ニ照シマシテ、色々ト最近問題ガゴザイマ
  ス、今日ノ儘デハ御話ノ如ク或ル定量ノ生
  產ノ確保モ困難デハナイカト云フヤウナコ
  トニ付キマシテハ、業界ノ皆サン方ト共ニ
  私共モ色々ト考慮致シテ居ル點デゴザイマ
  ス、唯價格ノコトハドウスルカト御質問ニ
  ナリマシテモ、十分色々考究致シタイト云
  フコト以上ニハ御答ヘヲ致シ兼ネマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=54

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• 055・野村嘉久馬

  ○野村委員　價格ニ付テハ次官ハドウモ答
  辯シニクイト云フコトデアリマス、成程之
  ニ付テハ農林大臣デナケレバ、責任アル御
  答辯ハ出來ナイト思ヒマス、此ノ問題ハ何
  レ大臣ノ御出席ヲ願ツテ御答辯ヲ伺ヒタイ
  ト思ヒマス
  次ニ飼料對策ニ關スル件ヲ御尋ネ致シマ
  ス、只今米ノ自給自足ト云フヤウナ觀點カ
  ラ、玄米食或ハ二分搗キ、或ハ五分搗キト
  云ツタヤウナコトニ、政府或ハ翼贊會ヲ以
  テ國民ニ呼ビ掛ケテ居ラレマス、洵ニ結構
  ナリト存ズルノデアリマス、之ニ依ツテ得
  ル所ノ節米ハ蓋シ數百万石ニナルト思フノ
  デアリマス、洵ニ是ハ機宜ニ適シタルモノ
  デアラウカト思フノデアリマス、併シナガ
  ラ此ノ問題ガ家畜ノ飼料ニ影響スルコトヲ
  又思ハナケレバナラヌト思フノデアリマス
  又是ガ却テ逆效果ヲ示ス場合ガナイデハナ
  イカト云フコトモ亦心配サレルノデアリマ
  ス、只今家畜ノ飼料ト致シマシテハ、燕麥
  トカ、或ハ麥類、或ハ糠、斯ウ云フモノニ
  賴ツテ居ルノデアリマスケレドモ此ノ糠ガ
  全クナクナル、又減少スルト云フコトニ依
  ツテ、或ハ麥ト云フモノヲ飼料トシテ用ヒ
  ルト云フコトニナルトカ、又ハ其ノ量ガ多
  量ニナリハシナイカ、左樣致シマスナラバ
  折角自給自足ノ建前カラヤリマスコトガ、
  却テ逆效果ヲ示スコトニナルノデハナイカ
  ト云フコトヲ心配スルモノデアリマス、而
  モ次官ハ「ラジオ」ヲ通ジ、或ハ色々ナ方面ニ
  於テ此ノ飼料對策ハ十分〓究シテ居ル、立
  派ニ考ヘガアルト仰セラレテ居ルヤウデア
  リマス、此ノ場合是等ニ付テ具體的ニ御話
  ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 056・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　御說ノ如ク國民食糧ノ確
  保ノ諸施策ノ觀點カラソレガ延イテ飼料ニ
  及ンデ參ルト云フコトハ全ク左樣デゴザイ
  マシテ、其ノ間ノ關係ニ付キマシテハ私ノ
  方ト致シマシテモ色々苦慮致シテ居ル點デ
  ゴザイマス、併シナガラ之ニ對スル對策ト
  致シマシテハ、一面ニ於キマシテ滿洲、其
  ノ他ノ方面カラ努メテ輸送其ノ他ノ許ス限
  リ、又先方ノ供出ガ出來ル限リニ於キマシ
  テ飼料用ノ農產物ノ流入ヲ圖ツテ、努メテ
  其ノ數量ヲ多ク致ス、ソレカラ又國內ニ於
  キマシテモ色々ト飼料ニ使ヒ得ベクシテ、
  從來カラ必ズシモ十分使ハレテ居ラナイト
  云フヤウナモノヲ玆ニ動員致シマシテ、飼
  料ノ補塡ヲ圖ル、又一面ニ於キマシテハ農
  家其ノ他ノ家畜ヲ養ハレル方面ニ於キマシ
  テ、例ヘバ肥料ノ段々ニ窮屆化スルニ從ヒ
  マシテ、自給肥料ノ增產ヲ圖ルト同ジヤウ
  ニ、飼料ノ方面ニ於テモ努メテ增產ヲ圖ツ
  テ戴キ、尙且ツ足ラザル向キニ付キマシテ
  ハ一口ニ家畜ト申シマシテモ大家畜、小
  家畜、又其ノ繁殖ニ付テモ相當ニ暇ノ掛ル
  モノト比較的繁殖ノ容易ナモノガゴザイ
  そう、斯ウ云フ家畜類ニ對シマシテ絕對繁
  殖ヲ必要トスルヤウナモノハ努メテ之ヲ育
  成シマスルト同時ニ、比較的又繁殖ヲ囘復
  シヨウト思ヘバ容易ニ出來ルヤウナモノニ
  對シテハ或ル程度此ノ際多少ノ制約ヲ致シ
  マシテモ已ムヲ得ナイト云フヤウナ風ニ、家
  畜ノ種類ニ依リマシテ是ガ保護育成ニテノ
  方針ヲ區別致シマシテ、最近ノ飼料ノ實情
  ニ卽スルヤウニ措置シテ參リタイト考ヘテ
  居リマス

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• 057・野村嘉久馬

  ○野村委員　成程外地カラ飼料ヲ輸入ス
  ル、又農民ノ自力ニ依ツテ之ヲ補フト云フ
  御話ガアリマスガ、唯私共ノ心配致シマスル
  ノハ麥ノ問題デアリマス、先達テ政府カラ
  麥ノ供出ニ付テ非常ニ盛ンニ縣ニ呼ビ掛ケラ
  レ、縣ハ又縣農會ニ、又農會ハ農民ニ呼ビ掛
  ケテ供出ヲ要請シタノデアリマス、此ノ場合
  麥ガドウシテモ家畜ノ飼料トシテ之ヲ殘シ
  テ置カナケレバナラナイ、斯ウ云フヤウナ譯
  合デ、ドウシテモ十分ナ麥ノ供出ヲ澁ツタ例
  ガアルノデアリマス、而モ其ノ飼料ガ愈〓、窮
  窟ニ相成ルト云フコトニナリマスルト、尙
  ホ一層麥類ヲ飼料ニ消費スル、斯ウ云フ傾
  向ヲ生ンデ來ハシナイカト思フノデアリマス、是
  等ノ事例ニ付テハ十分御當局ハ御承知ノ筈
  デアルト思ヒマスガ、此ノ點ハ十分ニ御
  注意ヲ願ヒタイト思ヒマス-木材ニ付テ
  ハ本日質問出來ナイ譯デスネ

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• 058・池田秀雄

  ○池田委員長　木材ハ食糧ノ關係トコンガ
  ラカリマスノデ、他日ニ御願ヒシマス

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• 059・野村嘉久馬

  ○野村委員　私ノ質問ハ是デ終リマス

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• 060・池田秀雄

  ○池田委員長　野村君ノ質問ハ濟ミマシタ
  カラ豫テノ御通告順ニ依ツテ矢部君ノ發言
  ヲ許シマス

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• 061・矢部藤七

  ○矢部委員　只今マデ米價問題ヲ中心トシ
  タ農業政策ニ付テ色々御話ガアツタノデス
  ガ、私ハ直接ニ此ノ法案ニ關係シタ問題ニ
  付テ御質問申上ゲタイト思ヒマス、今度ノ
  農業保險ノ改正ノ一要點ハ保險金額ノ增
  額是ガ中心ニナツテ色々政策ガ行ハレテ
  居ルノデスガ、此ノ點ニ付キマシテハ、私
  共ハ多年農業團體ト致シマシテ要望シタ問
  題デアリマス、其ノ保險金額ノ値上ゲノ額
  ハ吾々ノ企圖シタ所ニハ達シナイノデアリ
  マスケレドモ、兎ニ角農林當局ガ御骨折リ
  ニナツタコトニ對シテハ感謝ヲ致ス者デア
  リマス、只今マデ各同僚諸君ノ御話ニナツ
  タ米價竝ニ主要食糧ノ價格ノ問題ハ此ノ保
  險ノ事業ニ大キナ關係ヲ持ツテ居ルト私ハ
  痛切ニ感ズルノデアリマス、若シモ政府當
  局ノ言ハルル通リ、米價ヲ中心トシタ農產
  物ノ價格ノ問題ガ、吾々ノ希望スル所ニ解決
  ガ得ラレナイト云フ事情ニアルトシタナラ
  バ、此ノ保險事業ト云フモノハ益〓强化シ
  テ、サウシテ保險施設ニ依ツテ農民ガ受ケ
  タ所ノ不慮ノ災難ニ付テ、其ノ經濟ヲ緩和
  シ、生活ヲ安定セシムルト云フコトニ將來
  重點ヲ置クベキモノト思フノデアリマス、
  隨テ私ノ特ニ農林大臣ニ御尋ネ致シタイト
  思ヒマスコトハ、米價問題ト、米價ヲ中心
  トシタ農產物價問題ニ關聯シテ保險致策ヲ
  更ニ一段ト强化スル御考ヘガアルカドウカ
  ト云フコトニ付テ御所見ヲ伺ヒタイト思フ
  ノデアリマス
  ソレカラ第二ノ問題ハ今度ノ改正ニ依リ
  マシテ保險金ガ增額ヲスル、隨テ保險料ヲ
  增加シナケレバナラヌ、然ルニ其ノ保險料
  ハ之ヲ農民ガ負擔スル-無論一部ハ國庫
  ノ負擔ニナルヤウニナツテ居リマスガ、農
  民ガ之ヲ負擔スルト云フコトニナルノデア
  ルカドウカ、之ヲ一ツハツキリ伺ヒタイト
  思フ、昨年保險料ノ値上ゲニ付テハ全國的
  ニ大キナ問題ヲ起シタコトハ御承知ノ通リ
  デアリマス、若シモ保險金ガ上ツタガ爲ニ
  更ニ今度保險料ガ幾分デモ上ルト云フコト
  デアルナラバ、折角保險金ガ上ツテモ農民
  ニハ何等ノ恩惠ガナイト云フコトニナルノ
  デゴザイマス、政府ハ此ノ保險料ノ增額ニ
  付テハ全部國庫ガ負擔ヲ致シマシテ、農民
  ニ更ニ負擔ヲ掛ケナイト云フ御方針デアル
  カドウカ、其ノ點ヲ一ツハツキリ伺ヒタイ
  ト思フノデアリマス

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• 062・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　農業ノ發展、農家ノ生活
  改善、或ハ健全ナル農村ノ人口ト云フコト
  ニ付キマシテハ、凡ユル方面カラ今後致府
  ト致シマシテ施策ヲ講ジテ參ラナケレバナ
  ラヌト存ジマス、其ノ一ツノ方法トシマシ
  テ農業保險ノ制度ノ運營ノ如キモ、勿論重
  要ナ方策ト考ヘラレマス、其ノ意味ニ於キ
  マシテ將來ニ亙ツテ今度ノ制度ガ絕對ニ一
  番良イ方法デアルト云フヤウナコトハ、必
  ズシモ考ヘナイノデアリマシテ、將來更ニ
  改善スベキモノガアレバ又改善モ加ヘテ行
  ツテ然ルベキモノト考へルノデアリマス、
  價格問題ニ致シマシテモ、是ハ勿論色々ト
  ヤハリ考慮〓究ヲ遂ゲテ參ルベキモノト考
  ヘテ居リマス
  所デ第二點ト致シマシテ、保險金ノ上ツ
  タノニ付テ保險料ガ上ツタカドウカト云フ
  コトデゴザイマスガ、是ハ勿論其ノ保險金
  ノ上リマシタ割合ニ於テ保險料ガ上ツテ居
  ラナイコトハ御承知ノ通リデアリマス、唯
  若シ現在ノ保險料ヨリモ絕對ニ上ラナイカ
  ト云フ御質問デゴザイマスレバ、是ハ何ト
  申シマシテモ保險金ノ割合ガ倍以上ニ上ツ
  テ居リマス、之ニ對シマシテ政府ガ相當ニ助
  成ヲ致シテハ居リマスガ、又一面ニ於テ保險
  組合ノ保險制度ヲ一層其ノ基礎ヲ確實ニ致
  シマス爲ニ、御承知ノヤウニ被害ノ統計關係
  ナドモ相當ニ確カナモノニ致シテ居リマス、
  彼此レ致シマシテ、是ハ其ノ地方ノ狀況ニ
  應ジマシテ色々違フノデアリマスガ、從來カ
  ラ比較的掛金ノ少イト云フ方面ニ付テハ多
  少上ツテ參ル、又地方ニ依リマシテハ從來カ
  ラ非常ニ高イト云フヤウナ所ニ付テハ割合
  ニ上ラナイ、或ハ上ツテ居ラヌ、具體的ニハ
  能ク存ジマセヌガ、場合ニ依ツタラ下ルト云
  フヤウナコトモアルカモ存ジマセヌガ、兎
  ニモ角ニモ全般ニ均シテ申セバ、玆ニ是ダ
  ケ保險金ガ上リマシタシ、又保險制度ヲ一層
  確實ニ致シマスト云フヤウナ關係-御承
  知ノヤウニ從來ノ此ノ保險制度ハ大體皆赤
  字續キニナツテ居リマス、是等ノ點ト關聯致
  シマシテ、多少上ルコトハ已ムヲ得ナイカ
  ト考ヘテ居リマス、尙ホ此ノ點ニ付キマシ
  テハ農政局長カラ申上ゲルコトニ致シマス

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• 063・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　保險金額ノ引上ニ伴
  ヒマシテ、各農會ノ負擔スル保險料ノ部分ガ
  現在ヨリモ增額サレルカドウカ、斯ウ云フ
  御尋ネト考ヘマス、大體ノ結果ニ付キマシ
  テハ、只今次官カラ御答辯ノアツタ通リデ
  アリマスガ、御承知ノ通リ各地域ニ亙リマ
  シテ、ソレ〓〓料率ガ異ナリマスシ、今度
  改正ヲ實行致シマスニ付テハ、更ニ其ノ基
  礎タル被害ノ率ノ算定ノ期間ハ延長致シタ
  イト考ヘテ居リマスノデ、實際ノ結果ニ於
  キマシテ各地方々々如何ナル結果ニナリマ
  スカハ、モウ少シヤツテ見マセヌトハツキ
  リ致サナイノデアリマス、隨テ個々ノ事例
  トシテ必ズドウナルカト云フコトヲ申上ゲ
  ルコトハ困難ナノデアリマス、大觀致シマ
  シテ、多少現在ヨリモ上ルト云フコトニナ
  ルヂヤナイカト考へテ居リマス、唯併シ今
  度ノ國庫負擔金ノ決定方法ハ、御承知ノ通
  リ超過累進的ニナツテ居リマスノデ、比較
  的保險料ノ額ノ高イ所ハ國庫負擔金ノ率ガ
  多クナル、斯ウ云フヤリ方ヲシテ居リマス
  カラ、現在ヨリモ負擔ガ增ニナル部分ト云
  フモノハ合理的ニ均ラサレルノデハナイカ
  ト云フ風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、先
  ヅ大局論トシテハ國庫負擔ト云フモノガゴ
  ザイマスケレドモ、尙且ツ幾分現在ヨリモ
  保險料ガ上ル所ガアル、斯ウ云フ風ニ御承
  知置キヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 064・矢部藤七

  ○矢部委員　大體了解シマシタガ、此ノ保
  險料ノ問題ハ、額ハ今ノ所ノ御分リニナラヌ
  ト申サレルカラ、批判ハ出來マセヌノデス
  ガ、其ノ額ニ依リマシテハ、相當實際問題
  ガアルト思フ、御承知ノ通リ、昨年保險料
  ヲ全國的ニ値上シマシテ、從來ノ保險料ノ
  二倍乃至三倍ニ上ツタ所ガアル、其ノ際ニ
  農林當局ハ必ズ保險金ヲ此ノ次ノ議會ニ上
  ゲルノデアル、隨テ保險料ハ先ヅ以テ今度
  ハ上ゲナイノデアルト云フヤウナ御方針ヲ
  闡明シテ居ルヤウニ私ハ聞イテ居ルノデア
  リマス、今度保險金ヲ上ゲタガ故ニ、又保
  險料ガ上ルト云フコトニナリマスト、農業
  方面ニ色々ナ問題ガ起ルヂヤナイカト心配
  スルノデアリマス、此ノ點ハ實際ニ御決メ
  ニナル場合ニ於テハ、兎ニ角民間カラ徵集
  スル保險料ハ上ゲナイト云フ御方針デ御願ヒ
  シタイト云フコトヲ申上ゲテ置キタイト思
  フノデアリマス、殊ニ御承知ト思ヒマスガ、
  現在ノ農業保險ノ保險料ノ實際ノ拂込ハ、
  多ク農會ノ會費ニ於テ賄ツテ居ル町村ガ多
  イノデアリマス、而モ其ノ農會ノ經理ノ實
  體ヲ見マスト、農會費ノ三割ハ保險料ニナ
  ツテ居ルノデアリマス、是レ以上保險料ヲ
  上ゲルト云フコトニナリマスト、農會ノ經
  理ト云フコトニ非常ナ困難ヲ來スト云フ實
  情ニアルト云フコトモ、一寸御含ミヲ願ツ
  テ置キタイト思フノデアリマス
  ソレカラ尙ホモウ一ツ御伺ヒシタイト思
  ヒマスコトハ、此ノ改正ノ第一條ニ依リマ
  シテ、今度强制加入ノ途ガ開ケル譯デアリ
  マス、是亦農業團體方面ニ於テモ要望シタ
  問題デアリマスノデ、無論是ハ結構ノコト
  デアリマスガ、唯實際問題ト致シマシテ
  今マデ强制加入シナカツタ農會ハ、多クハ
  災害ガ多クテ保險料ガ非常ニ高イ村デアル、
  或ハ殆ド災害ガナクテ農業保險ノ必要ヲ餘
  リ認メナカツタト云フヤウナ村ガ多ク殘ツ
  テ居ルノデアリマス、サウ云フ村ニ對シマ
  シテ今度ハ强制的ニ加入ヲ命ズルト言ヒマ
  シテモ、命令ヲ聽ケバ宜イノデスガ、中々
  命令ヲ聽カナカツタト云フ場合ニハドウ云
  フ風ニ處置スルカ、此ノ法文ヲ見マスルト、
  唯加入ヲ命ズルコトヲ得ト云フノト、ソレ
  ニ必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得ト云フダケ
  デアルノデアリマスガ、此ノ第一條ノ第一
  項竝ニ第二項ノ末文ニ付キマシテ、モウ少
  シハツキリシタ御考ヘヲ此ノ際ニ承ツテ置
  キタイト思フノデアリマス
  ソレカラモウ一ツ農政局長ニ御伺ヒ致シ
  タイト思ヒマスノハ、是ハ法文ニハアリマ
  セヌガ、御承知ノ通リ保險ヲ實際ニ運營ス
  ル場合ニ、異常災害ノ場合ニ、此ノ七割ハ
  所謂保險金トシテ聯合會カラ參リマスケレ
  ドモ、アトノ三割ト云フモノハドウシテモ
  郡ノ保險組合ガ負擔シナケレバナラヌ、其
  ノ三割負擔ノ爲ニ大キナ災害ノ際ニ、何處
  ノ組合モ困ツテ居ルト云フ實情デアルノデ
  アリマス、其ノ際ニ於キマシテハ、昨年、
  一昨年、其ノ前ノ年アタリニ大キナ災害ガ
  アリマシタ場合ハ、各方面デ三割負擔ノ爲
  ニ惱ミマシテ、國庫助成ノ運動ヲシタ實例
  ガアルノデアリマスガ、アア云フコトヲ今
  後大災害ガアツタ場合ニ繰返スト云フコトハ、
  民間トシマシテモ、官トシマシテモ困ル問
  題ダト思ヒマス、之ヲ根本的ニ解決スル方
  法ハナイモノデゴザイマセウカ、異常災害
  ノ場合ハ全額國庫ニ於テ何トカ負擔スルト
  云フヤウナ方法ガナイモノデセウカ、此ノ
  點ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 065・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　御尋ネノ點ニ御答ヘ
  申上ゲマス、前ニ保險料ノ引上ゲノ爲ニ生產
  者ノ負擔增ニナル關係ニ付テノ御希望ガゴ
  ザイマシタガ、ソレニ關聯シテ一言申上ゲ
  テ置キタイト思フノデアリマス、此ノ保險
  料ガ今囘ノ國庫負擔ノ結果ニ依リマシテ尙
  且ツ多少ノ增額ヲスルカト云フコトハ、是
  ハ全般的ニ致シ方ノナイ關係ニナツテ居ル
  ノデアリマス、唯ココデ從來ノ沿革カラ考
  ヘマシテ改メテノ增額ト云フモノガ問題ニ
  ナルト云フ御事情ハ地方々々ニ依ツテ吾々
  モ諒承致スノデアリマスケレドモ、其ノ負
  擔增ノ程度ニ依リマシテ各農會ニ於カレテ
  ハ今度ノ改正ノ趣旨ヲ十分諒得セラレルヤウ
  ナ方法ヲ講ジマシテ、多少ノ增額ニ付テド
  ウ斯ウト云フコトノナイヤウニ、農會方面
  トモ十分連絡ヲ取ツテ此ノ制度ガ圓滑ニ實
  行セラレマスヤウニ吾々トシテハ努力シタ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス、唯實際問題
  ト致シマシテ、其ノ增額ノ程度如何ニ依リ
  マシテハ、ソレ〓〓ノ地方ノ實情ヲ見テ適
  宜ノ措置ヲ講ズルト云フ、其ノ點ノ考慮ダ
  ケハ致スコトニ致シマシテ、大局的ニハ協
  力的ニ此ノ制度ヲ成立タセルコトニ努力ヲ
  致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、ドウ
  ゾ左樣ニ御承知ヲ願ヒタイト思ヒマス
  ソレカラ町村農會ニ對シマスル强制ノ方
  法デアリマスルガ、是ハ「命令ノ定ムル所ニ
  依リ」トゴザイマシテ、何レ之ニ關スル施行
  ノ關係法令ヲ出ス積リデ居ルノデアリマス、
  其ノ中デ明瞭ニ致シタイト考ヘテ居リマス
  ルガ、大體吾々トシテハ其ノ命令ガアリマ
  シタ場合ニ、市町村農會ガ共濟事業ヲ開始
  致シマセヌ場合ニハ、行政官廳ニ於テ共濟
  規定ト云フモノヲ作成致シマシテ、其ノ共
  濟事業開始ノ日ヲ指定シテ、之ヲ一般ニ〓
  示スルコトニ致シマスルト、共濟規定ヲ作
  成致シマスレバ、其ノ規定ノ日カラ當然ニ
  共濟事業開始ト云フコトガ行ハレルヤウニ
  相成ルノデアリマス、法令上左樣ナ措置ヲ
  執リマシテ、最後ノ締括リヲ付ケタイト、
  斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ
  付キマシテモ吾々ノ方ト致シマシテハ、此
  ノ趣旨ノ普及徹底ニ依リマシテ、豫テ農業
  團體側トシテハ全國農民ノ全體的ナル共
  濟施設ヲ確立シヨウト云フ意味ニ於テ、此
  ノ强制規定ノ要望モアツタノデアリマスル
  カラ、其ノ根本ノ趣旨ニ鑑ミマシテ、其ノ
  普及徹底ニ努メ、指導上ノ問題トシテ此ノ
  問題ヲ解決致シタイ、サウシテ此ノ强制命
  令ト云フヤウナコトニ至ルヤウナコトハ、
  極力之ヲ避ケテ參リタイト考ヘテ居ルノデ
  アリマス、ソレカラ保險組合聯合會ナリ、
  農業保險組合ナリノ自己ノ負擔ニ於テ始末
  シナケレバナラヌ部分ニ付テ、何等カ其ノ
  都度問題ノ起ラヌヤウナ方法ヲ講ズル餘地
  ガナイカ、斯ウ云フ御尋ネデアリマスルガ、
  此ノ點ハ今囘ノ保險金額ノ引上ゲニ伴フ保
  險料ノ增加ニ依リマシテ、各組合ナリ聯合
  會ナリノ資金造成ノ幅ト云フモノガ非常ニ
  廣クナツテ參ルト考ヘルノデアリマス、隨
  テ其ノ被害發生ノ時期竝ニ頻度ニ依ツテ自
  ラ異リマスケレドモ、大局的ニ考ヘマスル
  ト保險料ノ增額ガアリ、ソレニ對スル國庫
  ノ一部負擔ト云フモノガアルノデアリマス
  カラ、支拂ニ充ツベキ資金ヲ造成スル力ト
  云フモノハ今後ニ於テハ非常ニ增大スルノ
  デハナカラウカ、又必ズ增大スルト云フ風
  ニ見テ居ルノデアリマス、デアリマスカラ
  過去ニ於ケルガ如ク、災害ガ起リマシタ都
  度非常ニドウ斯ウト云フコトハ、今後ニ
  於テハ從來ヨリモ減少シテ來ルデアラウ
  ト云フ風ニ見テ居ルノデアリマス、御承
  知ノ通リ從來ハ保險法制定直後カラ頻々
  ト非常ナ災害ヲ受ケマシタ爲ニ、アア
  云フ經理上ノ困難ヲ生ジタ譯デアリマス、
  アア云フ不幸ナ場合ニ於キマシテハ何トモ
  已ムヲ得ナイノデアリマスケレドモ、先ヅ
  大體從來ノ被害狀態カラ考ヘマスレバ、今
  囘ノ制度ノ改正ニ依リマシテ相當資金造成
  ノ餘力ガ殖エテ參ル、隨テ從來ノ如キ困難
  ハ避ケルコトガ出來ルト、斯樣ニ考ヘテ居
  ルノデアリマス、先ヅ此ノ制度ニ依リマシ
  テ實行致シ、其ノ經過ヲ見マシテ十分考ヘ
  タイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=65

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• 066・矢部藤七

  ○矢部委員　最後ノ御答ヘニ付テ一寸私マ
  ダ呑込メナイノデスガ、寧ロ保險金額ノ增
  額ニ依リマシテ、非常ナ災害ガアツタ場合
  ニハ所謂不足金額ハ多クナルノデハナイカ
  ト思フ、サウ云フ結果ニナリマセヌデセウ
  カ、今マデ米ニ例ヘテ見レバ二十圓ノ保險
  金デアツタモノガ、今度四十五圓、此ノ三
  割ノ不足額ト云フモノガ寧ロ多クナル、所
  謂赤字ノ支拂ニ一層惱ムノデハナイカ、斯
  ウ考ヘルノデアリマスガ、此ノ點ニ付テ一
  寸農政局長ノ御話ト私ハ逆ナ考ヘ方ヲ持ツ
  テ居リマスノデ、此ノ點心配スルノデアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=66

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• 067・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今ノ御尋ネノ點ハ
  保險金額ガ增額サレテ居リマスルカラ、災害
  ガ起ツタ場合ニ支拂フベキ額ト云フモノハ
  從來ヨリモ殖エルコトハ當然御說ノ通リデ
  アリマス、ソコデ此ノ改正ヲ實施致シマシ
  テ、ドノ程度經ツテカラ左樣ナ災害ガ起ツ
  テ來ルダラウカト云フコトニ依リマシテ、自
  ラ組合ノ經理上困難ガアルカ、困難ガナイ
  カト云フコトガ決マツテ參ル問題ト思フノ
  デアリマス、理想的ナコトヲ申シマスレバ
  玆ニ相當ナ基金ヲ積ンデ此ノ事業ヲ開始ス
  レバ宜シイ譯デアリマスケレドモ、サウ云
  フコトデナクシテ、年々收入致シマスル保
  險料ヲ積立テテ、ソレニ依ツテ長イ間ノ災
  害ヲ均シテ共濟シテ行カウト云フコトデア
  リマスカラ、此ノ制度ヲ改正致シマシテ直
  後ニ相當ノ被害ニ見舞ハレルト云フコトニ
  ナレバ、ソコニ非常ナ困難ガ生ズル、斯ウ
  云フ譯デアリマス、ケレドモ一方ニ於テ保
  險料收入ガ增大シテ參ル譯デアリマスカラ、
  其ノ災害ガ相當期間ヲ置イテ來ルコトニ
  ナリマスレバ、ソコニ從來ヨリモ餘力ガ殖
  エテ來ル、斯ウ云フコトニナラウト思フノ
  デアリマス、尙ホ此ノ三割負擔ト云フ問題
  ニ付キマシテハ是ハ農民ノ自主的ノ共濟
  ト云フコトヲ根本ノ趣旨ニ致シテ居ルノデ
  アリマスカラ、生產者ノ方ノ負擔ト云フモ
  ノハ飽クマデモ存置シテ行クノガ適當デア
  ラウ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 068・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ次ハ岡本馬太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=68

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• 069・岡本馬太郎

  ○岡本(馬)委員　本朝來委員各位カラ農村
  問題ニ付キ、殊ニ食糧問題ニ付キマシテ段々
  有效ナル御質疑ガアリマシタカラ、成ベク
  私ハ重複シナイ程度デ営局ノ御意見ノアル
  所ヲ承ツテ置キタイト思ヒマス、農業保險
  ヲ制定致シマシタノガ昭和十三年デ、丁度
  四箇年ト云フモノヲ實施シタノデアリマス、
  偖テ其ノ實施致シマシタ跡ヲ公平ニ冷靜ニ
  考ヘテ見ル必要ガ先ヅ以テアルト私ハ思フ
  ノデアリマス、固ヨリ斯ウ云フ新規ノ仕事
  ヲ目論ミマシテヤルコトニ付キマシテハ、
  勿論政府ト致シマシテモ、又地方ノ私共ト
  致シマシテモ見透シノ付カナイコトハ是ハ
  當然デアリマス、併シナガラ私共ハ農業指
  導ニ三十有餘年間終始一貫參畫シテ居ル者
  デアリマスガ、農業保險制度ガ出來マシテ、
  其ノ後我ガ縣內ノ農業者ヲ農業保險組合ニ
  加入スルニ非常ナル苦心ヲシタノデアリマ
  ス、私ハ今マデ農業指導ヲ致シマシテ色々
  -ナ問題ヲ擔當シテ指導致シマシタガ、農業
  保險位加入ニ困難ヲシタコトハアリマセヌ
  固ヨリ現行制度ハ吾々ガ農業保險ヲ制定ス
  ル最モ重點ニ遠ザカツタ關係モアリマセウ、
  殊ニ其ノ內容ヲ一々申上ゲマスコトハ避ケ
  マスガ、不備ナ點、或ハ遺憾ナ點ガ澤山ア
  リマス、併シナガラ今囘ノ改正ニ依リマシ
  テソレ等ノ不備ノ點、缺陷ノ點ヲ十分ニ政
  府ノ御當局ハ愼重ニ御〓究下サイマシテ、
  或ル程度ノ調節ヲシ、或ル程度ノ緩和ヲ圖
  ラレマシタカラ、今後ノ農業保險ノ運營ハ
  從來ヨリハ相當農民ハ關心ヲ持ツモノト私
  ハ確信スル一人デアリマス、併シナガラ玆ニ
  特ニ當局ノ御意見ヲ伺ツテ置キタイノハ、
  桑ヲ對象トスル保險ノ問題デアリマス、桑
  ハ御承知ノ通リ桑其ノモノヲ對象トシテ養
  蠶ガ飼育シ經營ヲスルモノデハアリマセヌ
  ノデ、其ノ桑ノ葉ヲ蠶ニ食ハシテ、蠶ガ繭
  ヲ成形シ、其ノ繭ガ初メテ市場價値ガアル
  ノデアリマス、桑其ノモノヲ對象トスル保
  險ハ今日ノ時代トシタラ最早後レテ居ルノ
  デハナイカト私ハ思フ、言ヒ換ヘテ見レバ、
  蠶作ヲ對象トスルモノニ仕向ケナクテハナ
  ラヌヂヤナイカト私ハ痛切ニ考ヘル一人デ
  アリマス、此ノ問題ニ付キマシテハ、過グ
  ル十三年ノ法案ヲ提出サレタ場合ニ於キマ
  シテ、慥カ七十三議會ダト思ヒマスガ、其
  ノ時分ニハ養蠶業ニ相田詣詣ガアリ經驗ノ
  アル議員諸君カラ、桑其ノモノヲ對象トス
  ル保險ヨリハ蠶作ヲ對象トシタ保險ニシ
  テハドウカト云フ强イ要望ガアツタト私ハ
  記憶シテ居ルノデアリマス、所デ今囘ノ提
  案モ私ハ必ズヤ政府御當局ハ桑ヲ對象トス
  ル保險デナクシテ、蠶作ヲ目標トスル保險
  ニ致シテ提案セラレルモノダト云フヤウニ
  心窃カニ期待シテ居ツタノデアリマス、ソ
  レガ反スルヤウナコトニナツテ居リマス、
  勿論今囘ノ改正案ハ、桑ノ損害評價ガ十圓
  ノモノガ二十圓ニ上リマシタカラ、是ハ相
  當養蠶家ノ經營ヲ安定スル譯デアリマスケ
  レドモ、元來之ヲ能ク仔細ニ檢討致シマス
  ト桑其ノモノノ損害評價ハ極メテ困難デ
  アリマス、私ハ實際縣ノ會長トシテ桑ノ凍
  害ノ損害ノ調査ト云フモノハ實ニ困難ナモ
  ノダト思ヒマス、困難ナ點ガアルカラ茲ニ
  色々損害評價ヲシテ政府ニ要望シ、聯合會
  ガ處理スル上ニ於テ非常ナ困難性ガアルノ
  デアリマス、政府ニ於カレマシテモ保險ノ
  赤字ハ必ズヤ桑ノ凍害ニ罹ル損害評價ガ多
  大ナ原因ヲシテ居ルト私ハ信ズル者デアリ
  マス、此ノ點ニ付テ御當局ハドウ考ヘルカ、
  之ヲ先ヅ承ツテ置キタイ、ソレカラ序デ
  ニ申シマスガ、最早蠶作ヲ對象トスル保險
  ニ仕向ケテ行カネバナラヌト云フ實情ニ迫
  ツテ居リマスルコトハ御存ジノ通リデアリ
  マス、蠶絲、養蠶業ノ問題ハ總テ終始一貫
  統制シマシタ、御承知ノ通リ蠶絲ノ統制、
  產繭ノ總テノ計畫指導ニ依リ其ノ產繭ハ處
  理統制シテヤルト云フヤウニ一大革新セラ
  レタ、是ハ勿論御當局ガ熱心二一一、三年間
  努力セラレタ結果デ、洵ニアア云フヤウナ
  機構ニ一貫シタト云フコトヲ私ハ非常ニ喜
  ブ一人デアリマス、此ノ統制機關ガピツタ
  リト出來マシタ以上ハ、蠶作ニ對スル損害
  評價ハ其ノ機關ヲ通ジテヤルノ·ハ容易ニ出
  來ルト思ヒマス、寧ロ私ニ言ハセレバ桑ノ
  凍害ノ損害評價ヨリハ、蠶作ノ損害評價ノ方
  ガ容易ニ出來得ルト私ハ確信シマス、若シ
  御當局ガ蠶作ニ向ツテ農業保險ヲ今後運營
  スルト云フ目標ニ御變へ下サルナラバ保
  險金ノ掛金ニ於キマシテモハ現在改正法案
  ノ內容ニ付キマシテモ、日本蠶糸統制株式
  會社カラ受入レテ保險金ノ一部ヲ負擔サス
  ト云フコトニナツテ居リマス、又日本蠶糸
  統制株式會社ハ違作ニ對スル補償制度ト云
  フヤウナモノヲ拵ヘテ、團體ノ方ヘ流シテ
  ヤルト云フコトモアルノデス、サウ云フヤ
  ウナモノヲ總テ纏メマシテ、違作ニ對スル
  損害ノ補償ト云フヤウナ金モ、桑ニ對スル
  保險ノ收入金モ皆合ハシテ保險組合ニ一貫
  シタモノニシテヤルナラバ、左程保險金ハ
  高ク上ゲズシテ、運營ニ支障ノナイ都合ノ
  宜イモノニナリハセヌカト私ハ確信シテ居
  リマス、若シ幸ニ御當局ガ今後ニ於キマシ
  テ桑ヲ對象トセズシテ、此ノ蠶作ヲ對象ト
  シテ保險運營ヲ仕向ケテ行クト云フヤウナ
  氣持ニナレバ、養蠶家ハ洵ニ喜ンデ滿足ス
  ルモノデハナイカト私ハ思フノデアリマス、
  斯樣ナコトハ甚ダ失禮デスケレドモ、實際
  私共ハ始終縣內ニ居リマシテ、其ノ問題ニ
  當面致シマシテ苦ンデ居ル次第デアリマス
  故ニ、私共ノ意思ノアル所ヲ十分御翫味御
  〓究下サイマシテ、出來得ル限リ蠶作ニ向
  ツテ保險制度ヲ進展セシムルト云フヤウナ
  コトニ仕向ケテ戴キタイノデアリマスガ、
  先ヅ以テ當局者ノ御意見ヲ十分ニ承ツテ置
  キタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=69

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• 070・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今ノ御意見ノ點、
  御趣旨ハ能ク諒承ヲ致シマシタ、柔ダケノ
  保險ト云フコトデハ、養蠶ト云フモノニ對ス
  ル共濟制度トシテ考ヘテ見タナラバ、途中
  デ止マツテ居ル制度デハナイカ、更ニ突進
  ンデ蠶作ト云フモノヲ對象ニシテノ共濟的
  ノ制度ト云フモノヲ考フベキデハナイカ、
  斯ウ云フ御趣旨ニ付キマシテハ吾々モ全ク御
  同感ニ考ヘテ居ルノデアリマス、養蠶ノ立場
  カラ申シマスルナラバ、桑ノ保險ノミナラズ、
  蠶作ト云フモノニ付テ共濟的ノ制度ヲ必要
  トスルコトハ其ノ通リト考ヘルノデアリマス、
  只今御話ノ中ニモアリマシタ通リ、日本蠶絲統
  制株式會社ハ此ノ蠶作補償ト云フヤウナ
  意味ニ於テノ經費ノ一部ヲ出シテ居ル譯デ
  アリマス、アノ制度ヲ、蠶作補償ト云フ意
  味ニ於テ制度的ニモウ少シシツカリシタモ
  ノニスルト云フコトノ必要、ソレト此ノ
  農業保險ト云フモノヲ嚙合セテ適當ナ制度
  ガ出來ルカドウカ、斯ウ云フ點ハ吾々トシ
  テハ今後十分考ヘテ見タイト思ツテ居ル
  ノデアリマス、唯其ノ場合ニ於テ吾々トシ
  テ考ヘナケレバナラヌ點ハ、此ノ農業保險
  ハ御承知ノ通リ自然災害ニ對スル保險ト云
  フコトヲ根本ノ趣旨ニ致シテ居ル譯デアリ
  マスガ、蠶作ニ對スル共濟ナリ、保險ナリ
  ト云フコトニナリマスルト、ソコニ蠶種ニ
  基因シテ不作ガ生ジタルモノナリヤ、或
  飼育上ノ技術ニ關聯ヲシテ左樣ナ違作ヲ生
  ジタルモノナリヤト云フヤウナ點ニ付テ、
  之ヲ制度的ニ固メマス場合ニマダ〓究ノ盡
  シテ居ラヌ部分ガ非常ニ多イノデアリマス、
  デアリマスカラ、蠶作ヲ對象トスル共濟事
  業ヲ實行スル場合ニ於テ、之ヲ農業保險ノ對
  象トシテ取扱フガ宜シイカ、或ハ桑葉ノ保
  險ト云フモノヲモ含メテ蠶作ノ共濟制度ト
  シテ又別途ノ趣旨ニ於テ固メルノガ宜シイ
  カト云フヤウナ點ニ付テモ、今後十分〓究
  ヲ致シテ見ナケレバナラヌ、左樣ニ考ヘテ
  居ルノデアリマス、併シ御趣旨ニ付キマシ
  テハ此ノ蠶作ヲ對象トスル共濟制度ノ確立
  ト云フコトニ付テハ、十分〓究ヲシテ適當
  ナ方法ヲ考ヘテ見タイ、斯樣ニ思ツテ居ル
  次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=70

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• 071・岡本馬太郎

  ○岡本(馬)委員　幸ヒニ蠶作ヲ對象トシテ今
  後ノ養蠶業ノ振興ヲ圖ツテ見タイト云フ當
  局ノ御熱意ノアルコトニ付キマシテハ私ハ
  感謝致シマスガ、要ハ從來ノ養蠶絲、養蠶
  業ノ振興致シテ參リマシタ今日マデノ道程
  ヲ靜カニ考ヘテ見マスレバ、政府ニ於カレ
  マシテモソレ〓〓技術者ナリ、指導者ナリ
  ガ終始一貫專門的ニ〓究シテ居リマスカラ、
  資料ハ相當澤山アラウト私ハ思ヒマス、又
  民間ニ於キマシテモ、ソレ〓〓ノ技術者ナ
  リ、指導者ナリガ專門的ニ〓究シテ居ラレ
  ルノデアリマスカラ、此ノ民ト官ト云ウテ
  ハ語弊ガアルカモ知レマセヌガ、サウ云フ
  ヤウナ識見者ガアツテ、シツクリト御〓究
  下サレバ、私ハ斯ウ云フ問題ハ容易ニ解決
  ノ出來得ルモノダト思ヒマス、サウ云フコ
  トヲ特ニ御聽取ヲ願ヒタイ、質問ハソレデ
  大體打切リタイト思ヒマスガ、此ノ際特ニ食
  糧關係ニ付キマシテ誰モマダ御質問シテ居
  ラヌヤウデアリマスカラ、簡單ニモウ一ツ
  御尋シテ置キタイ、多年問題デアリマシタ、
  農業諸團體モ今囘統合ノ機運ガ釀成致シマ
  シタコトハ、私ハ國家ノ爲ニ頗ル慶賀ニ堪
  ヘヌ次第デアリマス、此ノ農業團體ヲ統合
  致シマシテ、今後ノ實際ノ仕事ヲ運營セシ
  ムルニ於テハ容易ナラザルモノガ多々アル
  ト思ヒマスガ、就中會計經理ノコトニ付キ
  マシテ、一言當局ノ意ノアル所ヲ御聽キシテ
  置キタイト存ジマス、元來農會方面ハ大部
  分ノ金ガ國庫ノ助成、縣費ノ助成ニ依リマ
  シテ指導ヲ擔任シテ居リマス、大部分今日
  ノ各府縣ノ農會ト云フモノハ、斯樣ナ經理
  ニ依ツテ指導ヲシテ居リマス、併シナガラ
  農會ノ指導部面ニ對スル所ノ不足額ヲ全部
  各府縣ノ賃貸價格ニ依ツテ徵收シテ居ルト
  云フコトハ御存ジノ通リデアリマス、所デ
  農業會トナリマシテ、指導部、經濟部ト或
  ル程度ノ部署ヲ分ケマシテ一體化スル指導
  ニハナラウト存ジマスルガ、此ノ經濟、會
  計ト云フ方面ニ付キマシテ考ヘテ見マスル
  ト、今後一層考ヘル必要ガアル、ト申シマス
  ノハ農業保險ノ掛金モ只今局長サンノ御話
  ニ依リマシテ、大體現在確定シテ居ルヨリ
  ハ下ラヌト云フ御見込ラシイ、然ラバ農業
  保險ノ掛金モ田畑ニ依ル賃貸價格ニ依ツテ
  徵收シナケレバナラヌ、農會ノ指導部門ニ要
  スル費用モ賃貸價格デ徵收スル、農家ガ賃貸
  價格ニ依ツテ出シマスル金ハ、主トシテ水稻
  地帶ノモノガ餘計負擔シマス、所デ一面農家
  ノ經濟ト云フコトヲ考ヘテ見マスルト、農家
  ノ農產物價格、全體カラ眺メテ見マスルト、
  米麥ヨリハ蔬菜、園藝方面ニ力ヲ入レ、又サ
  ウ云フ地帶ノモノガ相當收入ガ多イノデア
  リマス、收入ノ多イ農業者ハ現在負擔ガ非
  常ニ輕クナツテ居リマス賃貸價格ノ低イ、詰リ
  畦畔地帶、山間地帶ヲ開墾シタモノニ園藝
  地帶トシテ織込ンデ居ルモノガ多イノデアリ
  やっく。サウ云フ所ハ園藝ニシテモ、蔬菜ニ
  シテモ、農會ト致シマシテハ園藝指導ハド
  ンドンヤツテ居ルガ、費用ハ比較的徵收シ
  テ居ラヌ、斯ウ云フコトカラ眺メテ見マス
  ト、今後ノ農業會ハ賃貸價格ニ依ツテ一部ハ
  負擔サスガ農產物ノ供出ニ依ル販賣斡旋ノ
  價格ノ一部分ヲ指導費ニ織込ンデヤルト云
  フコトガ極メテ必要ダト思フ、サウ云フコ
  トヲ私ハ常々仕事ヲ取扱ツテ居ル所カラ考
  ヘイ、又今日ノ農家經濟全體カラ考ヘテ見
  マシテ特ニ痛切ニ感ジテ居ル者デアリマス、
  定メシ當局ニ於カレマシテモ其ノ點ハ十分
  御考慮下サツテ居ルト存ジマスガ、幸ヒニ
  本日此ノ機會ニ於キマシテ一應御意見ヲ承
  ツテ置キタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=71

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• 072・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ御話洵ニ御尤モデ
  ゴザイマシテ、現在ニ於テ蔬菜或ハ更ニ果
  物ト云フヤウナ方面ガ非常ニ收益關係モ宜
  シイ、サウ云フ關係ノ下ニ於キマシテ團體
  ノ經費等ノ負擔關係ニモ之ヲ織込ンダラド
  ウカト云フ御話-實ハ今ノ御話ト全然同
  樣デハゴザイマセヌケレドモ、大體ノ根本
  的趣旨ニ於テハ同ジヤウナコトモ私共實ハ
  色々考ヘテ居リマスノデ、尙ホ今ノ御話ノ
  點モ十分採リ入レマシテ今後運營ニ付テノ
  處置ヲ執リタイト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=72

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• 073・岡本馬太郎

  ○岡本(馬)委員　私ノ質問ハ是デ終リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=73

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• 074・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ御通告ニ依ツテ松
  岡秀夫君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=74

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• 075・松岡秀夫

  ○松岡(秀)委員　私ノ質問致シタイト云フ
  一點ハ前質問者ニ依ツテ大體質問サレテ居
  リマスカラ、簡明ニ致シマス、只今農林省
  當局ノ御答辯ニ依リマスルト、米價ノ改訂
  ハ絕對罷リナラヌ、繭ノ價格ハ引上ゲナイ
  ト云フコトヲ御答辯ナサツテ居リマスルガ、
  此ノ聲ヲ聞キマスルト、農民ハ非常ニ落膽
  スルノデハナイカト考ヘラレマス、常ニ農
  林御當局ノ米價、繭ニ對スル御意見ヲ承ル
  ト現狀維持ト云フコトニ決マツテ居ルノデ
  アリマス、是デハ米ノ生產增强、繭ノ生產
  增强ト云フコトニハ非常ニ支障ノアルコトト
  存ズルノデアリマス、若シ農民ダケニ精神昂
  揚ヲ以テ增產ニ當レ〓〓ト云フコトデアツ
  タナラバ、是ハ他ノ業者ニ對シテモサウ云
  フヤウナ觀念ヲ以テ臨マナケレバナラヌ
  ト、斯ウ考ヘラレマス、然ルニ吾々ノ作ツ
  テ居リマス繭、米ハ或ル限度ニ止メラレテ
  置キマシテ、吾々ガ使用スル所ノ物資ニ對
  シマシテハ、原價計算ヲ以テ逐年引上ゲラ
  レマシテ、其ノ物價指數ニ於テモ見ラレル
  通リ、米價ナルモノハ一番最低位ニ置カレ
  テ居ルコトハ明カナコトデアリマス、先程
  農林當局ノ御答辯ニ依リマスト、他ノ物價
  ト睨合セト云フコトガアリマシタガ、他ノ
  物價ガ指數ヲ以テ現ハスナラバ、米ノ指數
  ヨリモ上ツテ居ルト云フコトニナレバ、ヤハ
  リソレマデ持ツテ行クコトハ當然ノ理窟デ
  ハナイカト思フノデアリマス、又米ト他ノ農
  產物トノ釣合ニ於キマシテモ非常ニ格差ガ
  アルノデアリマス、此ノ格差ガアルト云フ
  コトハ、卽チ公定價格ヲ御決定ナサル所ノ
  時期ガ異ツテ居ルト云フコトデハナイカト
  思フ、米ハ數年前ニ決定サレタ公定價格ニ
  依リ、又蔬菜ノ如キハ最近ニ於テ決定サレ
  タ公定價格ニ依ルモノデアリマシテ、米作
  ヲ厭ツテ蔬菜ノ方へ行クト云フヤウナ傾キ
  ガアルノデハナイカト思フノデアリマス、
  此ノ點ニ付キマシテヤハリ同ジ農作物關係
  ニ於キマスル價格ニ於キマシテモ、時期ヲ
  一定シテ公定價格ヲ御決定ナサル御意思ア
  リヤナシヤ、是ガ一ツデアリマス、尙ホ此
  ノ價格問題ニ關聯致シマシテ、最近統制會
  社ノ設立ガ相當アルヤウデアリマス、曩ニ
  ハ日本蠶糸統制會社ノ設立ヲ見、只今デハ
  米ニ對シマシテハ〓糧營團ナルモノガ設立
  サレテ居リマス、サウシテ蠶糸統制會社ニ於
  キマスル手數料ヲ見マスルト、十貫ノ生絲
  ニ對シマスル手數料ハ百五十二圓ト聞イテ
  居リマスガ、昭和十七年度ニ於キマスル同
  統制會社ガ儲ケタ金ガ大體資本金ト同額ニ
  ナツテ居ルト云フヤウナ莫大ナル儲ケ方ヲ
  ヤツテ居リマス、斯ウ云フヤウナコトガ農
  民ノ心理狀態ニ及ボス影響ガドレ位强イカ
  ト云フコトヲ御考ヘニナツテ居ルカドウカ
  若シ又御考ヘニナツテ居ルトスレバ、蠶糸
  統制會社ノ手數料百五十二圓ヲ壓縮致シマ
  シテ、之ヲ農民ニ還元スル御意思アリヤ
  ナシヤ、是ハ會社ニ關スルコトデアリマ
  スカラ、會社ガシナイト言ヘバソレマデ
  ダト仰シヤルカモ知レマセヌガ、農林御
  當局ノ御指圖ニ依ツテ是ハドウニカナ
  ルノデハナイカト考ヘラレマス、尙ホ
  私ハ繭ノ値ヲ上ゲテ吳レト云フコトヨリモ、
  サウ云フ農家ニ還元シテヤルト云フコトニ依
  ツテ、繭ノ値ガ引上ゲラレテ行クノデハナ
  イカト考ヘラレマス、尙ホ繭ノ檢定方法ニ
  付キマシテ非常ニ矛盾ガ多イノデアリマシ
  テ、繭ノ檢定方法ニ於キマスル價格決定ハ、
  大體ニ於テ絲量デ行クヤウデアリマス、併
  シ現在ニ於キマシテハ其ノ副產物タル副蠶
  絲及ビ蛹ノ價格ト云フモノガ非常ニ加ヘラ
  レテ來テ居リマス、是ハ誰ガ儲ケルカト言
  ヘハ、是ハ要スルニ製絲家ガ儲ケテ居ル、
  絲量デ取引サレテ、其ノ副產物ニ付テノ割
  戾シガ農民ニナイト云フコトハ、是ハ繭檢
  定方法ノ誤リデハナイカ、此ノ繭檢定方法
  ノ改正ヲ要スルカ、ドウカ、檢定方法ヲ改
  正致シマシテ、繭ノ價格ガ上ゲラレナイ
  トスレバ、其ノ方面デ農民ニ割戾シヲスル
  ト云フヤウナコトハ出來ナイモノデアルカ
  ドウカト云フコトデアリマス
  次ニ御伺ヒ致シタイノハ、農民ガ現在マ
  デ死力ヲ盡シテ戰ヒ、卽チ耕作ニ從事シテ
  居ルト云フコトハ、全ク淚グマシイコトデ
  アリマス、此ノ反面ニ於キマシテ、農民ガ
  使用シテ居ル資材ト致シマスト、所謂日常
  使用スル所ノ勞働服ノ如キハ、洵ニ配給ガ
  貧弱デアリマス、例ヘバ地下足袋ニ致シマ
  シテモ、勞働服ニ致シマシテモ、モウ既ニ
  使用スルコトガ出來ナイマデニ立至ツテ居
  リマス、然ルニ是等ノ配給ヲ昨年度カラ點
  數ヲ以テ制限サレマスル結果、非常ナル苦
  痛ガアルノダラウト思ヒマス、又價格ガ非
  常ニ高イ爲ニ手ニ入ラヌ、今マデノ米、繭
  ヲ賣ツテ居ツタ値段カラ致シマスト)相當
  高イ、是等ヲ入手スル爲ニ非常ニ高イ金ヲ
  出サナケレバナラヌト云フコトデ、農民ノ
  今着テ居リマス作業服ナルモノハ、モウ使
  用ニ堪ヘナイ程度ニ行ツテ居リマスケレド
  モ、ソレデモ我慢シテ居ルノデアリマスカ
  う、出來ルダケ之ヲ早ク補給シテヤツテ
  氣分的ニモ農耕ニ從事サセルヤウニシテ戴
  キタイ、是ハ其ノ次ノ點デアリマス
  尙ホ現在ニ於キマスル玄米食ノ奬勵ノ結
  果、家畜ニ對スル飼料ガ漸減シテ參リマシ
  ク、卽チ軍用保護馬等ニ於キマスル榮養ガ
  段々行屆カナクナツテ參リマシタ、此ノ軍
  用保護馬ノ飼育ト云フコトニ付キマシテハ、
  農民ガ本當ニ注意ヲ怠ラズニヤツテ居ルノ
  デアリマスルガ、其ノ飼料ガナクナツテ行
  ク爲ニ、馬ハ段々瘠セテ參リマス、又此ノ
  乳牛ノ乳ノ出ガ惡クナルト云フ結果モ出テ
  來ハシナイカト憂フル者デアリマス、ソコ
  デ私ハ玄米食ヲ奬勵シテ、玄米ニ依ル蛋白
  ヲ攝ルカ、家畜ヲ通シテ蛋白ヲ攝ルカ、何レ
  ガ效果的ナリヤト云フコトニ付キマシテ御
  伺ヒシタイノデアリマス
  次ニ農業保險ニ付キマシテ、是ハ本問題
  デアリマスカラ特ニ御質問致シタイト思フ
  ノデアリマス、保險ノ契約ニ付キマシテ、
  相當多額ノ契約ヲ致シマスルガ、昨年アタ
  リノ實情ヲ見マスルト、契約金ダケ保險組
  合ガ支拂ツテ居リマセヌ、サウシテ農林省
  カラ補助ヲ貰ツテ、幾分カ保險組合ガ淚金
  ヲ出シタ程度デアリマシテ、契約ノ全額ヲ
  支拂ツテ居ナイ爲ニ、農民ハ農業保險ニ對
  シマシテガツカリシテ居ルヤウナ狀態デア
  リマス、デアリマスカラ農業保險ト云フモ
  ノハ、是ハ單ニ組合デ經營サセズシテ、將
  來ハ國營ニデモシテ、契約金額ダケハ支拂ヒ
  ノ出來ルヤウニナサルカドウカ、此ノ點デ
  アリマス、以上

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=75

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• 076・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　度々申上ゲマスヤウニ、
  農產物價ノ問題ハ現在農政問題ト致シマシ
  テ、最モ吾々トシテ苦慮致シテ居ル所デア
  リマス、農村方面ニ於キマシテモ、隨分喧
  マシイ問題ノヤウデアリマスガ、殊ニ是ガ
  當面ノ公定價格制度ノ下ニ於キマシテハ
  吾々ガ責任ヲ以テ色々ト決メル譯デアリマ
  スノデ、吾々ノ方ガ寧ロ一層苦慮シテ居ル
  カト思フ位ニ苦慮致シテ居ルノデアリマス、
  今後モ色々ナ點カラ善處シテ參リタイト思
  フノデアリマス、全般的ナ關係ニ付テ今申上
  ゲルノハ差控ヘマスガ、唯個々ノ物資ノ値
  段ヲ上ゲルカ下ゲルカト云フ御質問ニ對シ
  マシテハ、甚ダ不本意デハアリマスケレド
  モ、要スルニ上ゲナイト云フコトヲ御答ヘ
  スルノ外ハアリマセヌ、繭ノ價格問題ナド
  ニ付キマシテモ、最近ノ色々ナ生產關係トカ色
  色ナコトニ付テ其ノ問題ノアルコトモ能ク
  承知致シテ居リマスガ、上ゲルカ上ゲナイ
  カト云フ御問ヒデアレバ上ゲル考ヘハナイ
  ト云フコトヲ御答ヘスル外ハアリマセヌ
  統制會社ノ手數料ヲ十貫百五十二圓取ツテ
  居ルト云フ御話デアリマスガ、是ハ統制會
  社ヲ作リマシテ蠶絲關係ノ統制ヲ致シマシ
  タ時ニ、是ハ御承知ノヤウニ日米今日ノ如
  キ關係ニ立到ル虞ヲ考慮致シマシテ、豫メ
  蠶絲全般ニ亙リマシテ統制ヲ執ツタノデア
  リマシテ、當時ノ考ヘ方ト致シマシテハ、
  兎ニ角全般ノ統制ヲ執ツテ、萬一從來日本
  ノ蠶絲業ガ殆ド全面的ニ依存シテ居ツタ所
  ノ對米輸出ガ止ルヤウナコトガアリマシテ
  モ、蠶絲業全般トシテ何等動搖ヲ來サナイト
  云フヤウナコトヲ致シマス爲ニ、アア云フ
  制度ヲ執ツタノデアリマス、サウシテ萬一
  ノ將來ニ備ヘル爲ニ絲價ノ安定ノ資金ヲ生ミ
  出サウト云フノデ、當時養蠶ノ經營ノ狀態、
  或ハ製絲業經營ノ狀態、其ノ他ヲ勘案致シ
  マシテ、茲ニ百五十二圓デアリマシタカ、大體
  サウ云フ程度ノ金ヲ蠶絲業全體ノ謂ハバ共
  同資金トシテ積立テ、サウシテ絲價ノ安定
  ノ資金ニスルト云フコトデ、是ハ蠶絲統制
  會社ガ謂ハバ預ツテ居ル金デアリマス、サ
  ウ云フ關係デアリマスノデ、此ノ資金ハ會
  社ト致シマシテ何等收益トシテ課稅ヲ受ケ
  テ居リマセヌ、稅モ拂ハズニ、業界全般ノ
  爲ニ御預リシタ金トシテ積立テテ居ルヤウ
  ナ譯デアリマシテ、決シテ斯ウ云フ差額ノ
  全部ヲ手數料トシテ收得シテ居ルト云フ關
  係デハナイノデアリマスカラ、其ノ點ハ御
  諒承ヲ願ヒマス、之ヲ還元スルカドウカト
  云フヤウナ御質問ニ對シマシテハ、旣ニ積
  立テタルモノニ付テハ其ノ本來ノ資金ノ用
  途ニ向ツテ將來業界全般ノ爲ニ適當ニ之ヲ
  利用シテ行クベキモノダラウト考ヘマス
  繭ノ檢定方法ヲ例ヘバ蛹ノ關係トカ、色
  色ナコトカラ改正セヌカドウカト云フヤウ
  ナ御話ガアリマシタガ、繭檢定方法ト云フ
  モノハ繭ノ本來ノ用途ニ向ツテ或ル種ノ標
  準ヲ立テテ檢定ヲ致スノガ根本趣旨デアリ
  マス
  〔委員長退席、泉委員長代理着席〕
  左樣ナ觀點カラ、例ヘバ最近用途ノ殖エ
  マシタ短纖維等ニ付テハ切步檢定ヲヤルト
  云フヤウニ致シテ居リマス、現在ノ制度ガ
  必ズ永久ニ一定不變デナケレバナラヌト云
  フヤウナモノデハナイノデアリマシテ、用
  途其ノ他ニ應ジテ適宜改善スベキモノハ改
  善シテ參ルベキダラウト思ヒマス、是ハ蛹
  ノ値段ト云フヤウナ問題ヨリ寧ロ是ハ繭
  全體ノ價格ノ問題カトモ思フノデアリマス、
  今後モ養蠶ノ實情其ノ他ニ應ジテ十分〓究
  致シテ參リタイトハ思ツテ居リマス
  ソレカラ勞働着或ハ地下足袋等ノ配給ヲ
  十分ニシロト云フ御話デアリマシタガ、是
  ハ御承知ノヤウニ現在棉花ノ供給ト云フモ
  ノガ、昔ハ「インド」或ハ「アメリカ」邊リカラ
  低廉ナ物ヲ多量ニ入レテハソレヲ利用シテ
  居ツタ譯デアリマスガ、最近ニ於キマシテ
  ハ勿論サウ云フ所カラノ期待ハ出來ズ、北
  支中支等ニ於テ或ル限ラレタ數量ノ供給
  ヲ受ケテ居ル、而モソレハ主トシテ軍需ニ
  使ハレテ居ルト云フヤウナ關係デ、是ハ生
  產必需ノモノデハアリマスケレドモ、ソコ
  ニ自ラ供給ノ制限ガサレルヤウデアリマス、
  輸出用ノ綿布ハ相當滯貨ガアルノデアリ
  マスケレドモ、ソレ等モ從來カラ作業着等
  ニ使ヒ得ル種類ノモノハ、ヤハリ或ル程度
  國內ニ流シテ貰ツテ居リマスガ、併シ輸出
  物モヤハリ生地ガ丁度合ハナカツタリ致シ
  マシテ、相當大量ニハゴザイマスガ、必ズ
  シモ作業着ニ向カナイト云フ所ガアルノデ
  ゴザイマス、最近農村方面ニ於キマシテ勞
  働着或ハ地下足袋等ノ要望ガ非常ニ多イノ
  デアリマシテ、私共モ極力商工當局、其ノ他
  ノ方面ニ向ツテモ成ベク多量ニ供給シテ貰
  ヒマスヤウニ要望努力致シタイト思ツテ居
  リマスガ、唯ソコニ自ラ或ル程度ノ制限ヲ
  受ケマスコトハ此ノ際巳ムヲ得ナイカト思
  フノデアリマス
  家畜ノ飼料ト玄米食トノ關係ニ關聯致サ
  レマシテ、玄米食ヲ直接ヤルノガ宜イカ、
  或ハ糠ヲ取ツテ、一應家畜ヲ通シテ、然ル
  後ノ生產品ヲ食ベルノガ效果的カ、ドウダ
  ラウカト云フ御話デアリマス、是ハ非常ニ
  難カシイ問題デアリマシテ、詳シク學問的
  ナ〓究ハ致シテ居リマセヌガ、現在玄米食
  ヲ致シマスノモ、要スルニ當面ノ船腹節
  約其ノ他ノ爲ニ緊急已ムヲ得ザル一ツノ
  奬勵方策デアリマス、勿論玄米食ヲ現在
  强制ハ致シテ居リマセヌ、唯普及ビ奬勵ヲ
  致サレテ居ルダケデアリマスガ、緊急已ムヲ
  得ザル所デアリマシテ、長キニ亙ツテ何レ
  ガ效果的デアルカト云フヤウナコトニ付テ
  マダ考慮スル差當ツテノ遑ガナイ譯デゴザ
  イマス、併シ將來ニ亙リマシテハ尙ホ能ク
  吾々ノ立場トシテモ〓究致シテ參リタイト
  思ヒマス
  農業保險ニ付テ組合ナドデ經營サセナイ
  デ、將來國營ニシタラドウカト云フ御話
  デゴザイマスガ、先程御例示ニナリマシ
  タヤウナコトガ或ハアツタカモ知レマセ
  ヌガ、今囘ノ如クニ保險制度全般ニ亙リマ
  シテ、先程說明モアリマシタヤウニ、被害
  ノ危險率等ニ付テモ確カナモノヲ基礎ニ致
  シ、又政府ノ助成モ從來ナカツタヤウナ保
  險料ノ助成ヲ致シマシテ今囘ノヤウナ制度
  ニ致シテ參リマスナラバ、國營ニ移サズ、
  從來通リ組合經營デヤツテ置キマシテモ立
  派ニ成績ヲ擧ゲテ行ケルノデハナイカト思
  ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=76

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• 077・松岡秀夫

  ○松岡(秀)委員　尙ホ生絲ノ問題ニ付キマ
  シテハ只今ノ價格ニ於キマシテハ輸出向ト、
  國內向ト價格ガ二本建ニナツテ居リマス
  ガ、之ヲ一本建ニスル御意向ハゴザイマセ
  ヌカ、一本建ニ致シマシテ、サウシテ絲ノ
  統制ヲ致シマシテ、國內需要ヲ充タセルヤ
  ウナ御考ヘハアリマセヌデスカ、其ノ點ヲ
  御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=77

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• 078・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　生絲ハ御承知ノヤウニ最
  近ニ於キマシテハ軍需其ノ他ノ關係モアリ
  マスシ、サウ云フ用途デアリマセヌデモ、
  我ガ國ノ友邦諸國デモ我ガ國ノ特產品トシテ
  少量ナガラモヤハリ要望ヲ致シテ居リマス、
  是等ニ對シテ生絲ノ供給ヲ致スト云フコト
  ハヤハリ或ル程度致シタ方ガ彼我兩方ノ爲
  ニ有益デアラウト思フノデアリマス、隨ヒ
  マシテヤハリ今後モ出來ル限リニ於テ或ル
  程度ノ輸出ハ、大シタ數量デモアリマセヌ
  ガ、致シテ參ツタ方ガ宜シイト考ヘルノデ
  アリマス、其ノ場合ニ於キマスル價格ト云
  フモノハ、是ハヤハリ品質其ノ他ニ應ジマ
  シテ、適當ナ價格デヤツテ宜シイト思フノ
  デアリマシテ、優良ナルモノニ付テ特ニ安
  クシナケレバナラヌト云フコトモナイカト
  思ヒマズ

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• 079・松岡秀夫

  ○松岡(秀)委員　次ニ蠶種ニ付キマシテ御伺
  ヒ致シタイト思ヒマス、近頃蠶種製造家ガ
  統合サレマシテ、蠶種ニ其ノ責任者ノ記名
  ガサレテ居ナイ關係上、非常ニ粗惡ナル種
  ガ配付サレル向キガアリマスガ、之ニ付テ
  御當局ハドウ云フ取締ヲナサレマスカ、將
  來責任票ヲ付ケルカドウカ、之ヲ御伺ヒシ
  タイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=79

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• 080・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　蠶種ニ付キマシテ御話ノ
  ヤウナ弊ガアルト云フコトハ、私共モ聞キ
  及ンデ居リマス、是ハ何トカ致サナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマスガ
  〔泉委員長代理退席、委員長着席〕
  只今御話ノ票ヲ付ケルカドウカ、サウ云
  フ方法ヲ執ルコトガ適當デアルカドウカ
  ト云フコトハ、實ハ餘リ最近ニ於ケル具體
  的ナコトハ承知致シマセヌノデ申上ゲ兼ネ
  マン、併シ何トカサウ云フコト、或ハソレ
  ニ準ジテ效果ヲ上ゲルヤウナ方法ヲ講ジマ
  シテ、一ツ改善ヲ圖リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=80

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• 081・松岡秀夫

  ○松岡(秀)委員　尙ハ是ハ保險ノ方ニハ餘
  リ關係ハアリマセヌガ、一ツ御伺ヒシタイ
  コトハ、肥料ノ配給ガ非常ニ過去ニ於キマ
  シテハ混亂ヲシテ居リマシタ、例ヘバ私ハ埼玉
  縣デアリマスガ、埼玉縣ニ於キマシテハ米肥聯
  カラ配給サレルノト、縣信聯カラ配給サレ
  ルノト二本建ニナツテ居リマス、其ノ最下部
  デ受ケルノハ町村ノ產業組合デ受ケテ居ル、
  然ルニ縣聯ノ方カラ受ケマス肥料ト、肥料商側
  カラ受ケマス價格トガ非常ニ違ツテ居ツタ、
  斯ウ云フコトハ非常ニ產業組合ガ、商人ノ
  提燈持ヲシテ居ルヤウナ風ニ取レテ洵ニイケ
  ナイト思ヒマス、別ニ產業組合ハ手數料ヲ
  取ラナクテモ宜イデアリマセウガ、肥料小
  賣商カラ最終小賣價格デ以テ產業組合ガ
  受ケテ居ル狀態デ、殆ド肥料商側カラ來ル
  肥料ハ無手數料デ配給シテ居ル狀態デアリ
  マス、唯縣販購聯カラ來マス肥料ハ多少ユ
  トリヲ取リマシテ手數料ニナルヤウナ關係
  上、丁度寄セテニデ割レバソコニ幾ラカ
  ノ餘剩ガアルト云フヤウナ工合デアリマ
  ス、斯ウ云フヤウナ工合デアリマスト、產
  業組合ノ方々ニ言ハセルト、吾々ハ肥料商
  ノ手傳ヲヤツテ居ルノダト云フダケニナツ
  テ洵ニ困ル、デアリマスカラ是ハ將來農業
  團體ガ統合サレテ行キマシテモ、サウ云フ
  ヤウナ結果デアツテハイカヌト思フノデア
  リマス、ドウカ此ノ點ハ一ツ改メテ貰ツ
  テ、縣ノ農業聯合會ヘ肥料ヲ配給願ツテ、
  ソレカラ縣ノ聯合會カラ町村ヘ配給シテ貰
  フト云フ風ニシタ方ガ、一元的配給ニナ
  ツテ非常ニ宜イト思ヒマス、農家ノ使用
  スル肥料ノ如キハ、肥料ノ製造業者カラ
  直接將來ノ縣農業會、今ハ縣信販聯ニ
  ナツテ居リマスガ、縣信販聯ニ流シテ下級
  部ニ流シテ行クノガ、手數ヲ省イテ非常ニ
  宜イト思フノデアリマス、又季節的ニ配給
  サレマシテモ、農家ト致シマシテハ洵ニソ
  レヲ望ンデ居リマスカラ、ドウカ其ノ點ニ
  付キマシテモ將來御留意ヲ願ヒタイト思ヒ
  やっ、尙ホ農器具ノ配給ノ狀態デアリマス
  ガ、是ハ一旦縣信聯ノ方ニ入ツタモノガ更
  ニ商人ノ手ニ渡ツテ、又町村組合ノ方ニ渡
  ルヤウナヤヤコシイ手數ヲ掛ケテ居リマス
  ガ、其ノ制度モヤハリ農業關係ノ資材デア
  リマスカラ、現在ニ於テハ縣信販聯ヲ通ジ
  テ、町村組合ニ流シテ貰フヤウニシテ貰ツタ
  方ガ宜イデハナイカト思ヒマス、將來ハ縣
  ノ農業會ヘ農業資材ハ全部配給サシテ戴キ
  タイ、又穀物ノ集荷ニ付キマシテモ、町村
  農業會カラ縣ノ方へ出シテ行クノデアリマス
  カラ、非常ニ其ノ方ガ都合ガ好イト思フノ
  デアリマス、其ノ點ニ付キマシテノ將來ノ
  御方針ハドウデアルカ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=81

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• 082・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ肥料ノ配給ノコト
  ニ付キマシテハ、是ハ恐ラク肥料商系統、
  或ハ產業組合系統ノ兩配給系統ガアリマシ
  テ、本來ナラバ肥料商ノモノハ肥料商カラ
  直接農家ニ行クベキモノヲ、ソレデハ全體
  ノ配給ノ統制ガ取レヌト云フ所デ、便宜町
  村產業組合ニ於テソレヲ一括シテ配給ヲシ
  テ居ルト云フコトカラ生ジテ居ル事態デア
  ルト思イマス、肥料農器具、其ノ他各種ノ
  物資ニ關シマシテ、農村ニ對スル生產物資ノ配
  給ニ付キマシテハ、從來カラ御話ノ如ク商
  業者系統、或ハ產業組合系統ノ兩方面ノ配
  給ガ、數量ノ高ハ姑ク措キマシテ、多クハ
  アルノデアリマス、實際ノ農家ノ都合カラ
  申セバ、ソレヲソコニ一元化スルコトガ非
  常ニ適當デアルト云フ風ニ考ヘラレルノデ
  アリマス、一面ニ於テ此ノ戰時下ニ於キマ
  スル產業組合ト商業者トノ關係ニ付キマシ
  テハ、中々ヤヤコシイ問題ガアルノデゴザ
  イマス、是ハ御承知ノ通リデアリマシテ、
  之ニ付キマシテハ大體ニ於テ所謂相剋摩擦
  ヲ避ケルト云フヤウナコトカラ、是ガ延イ
  テ或ハ農家ニ不便ヲ來シタリ、或ハ何カ非
  常ナ妙ナコトヲヤツテ居ルト云フヤウナ感
  ヲ抱カセルコトモアラウカト思フノデゴザ
  イマスガ、吾々ト致シマシテハ今後モ此ノ
  間色々ノ狀況ニ照ラシマシテ、十分善處ハ
  致シタイト思ツテ居リマスケレドモ、今申
  シマシタヤウナ事情ガアリマスコトダケハ、
  一ツ能ク御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=82

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• 083・松岡秀夫

  ○松岡(秀)委員　私ノ質問ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=83

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• 084・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ二田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=84

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• 085・二田是儀

  ○二田委員　私ハ此ノ農業保險制度ヲシテ
  將來益〓堅實ナ發達ヲナサシメ、又一方食糧
  ノ增產確保ヲ圖ル爲ニ、一一、三御當局ニ御伺
  ヒシタイト思ヒマス、第一ニ今マデ農產物
  價ノ問題ガ非常ニ皆樣カラ論議サレタノデ
  アリマスガ、私モ一言此ノ點ニ付テ先ヅ御
  伺ヒ致シタイト思ヒマス、唯私ハ農產物ノ
  價格ヲ上ゲルコトガ、直チニ增產ヲ來スカ
  ドウカト云フコトニ付テハ、聊カ意見ヲ持
  ツテ居ルノデアリマスカラ、別ナ觀點カラ
  御尋ネヲ致シタイト思ヒマス、第一ニ農林
  當局ニ於カレマシテハ現在ノ農產物ノ價格、
  特ニ米ノ價格ハ適正ヲ得テ居ルカ、殊ニ他
  ノ農產物ニ比シマシテ適正ヲ得テ居ルカド
  ウカ、此ノ點ヲ御伺ヒ致シマス、適正價格
  トハ中々是ハ經濟學上ヨリ見テモ難カシイ
  ト思フノデアリマスガ、要スルニ生產費ト
  比較シテドウデアルカ、又他ノ物價ト比較
  シテドウデアルカト云フコトガ所謂適正價
  格ヲ決定スル要件デアルト思フノデアリマ
  スガ、此ノ點ニ付テ第一ニ承リタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=85

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• 086・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ御質問ニ對シマシ
  テ率直ニ申上ゲマス、大體ニ於キマシテ生
  產費等ニ對シテ考ヘマシテ、現在ノ米ノ價
  格殊ニ奬勵金ヲ含メテノ米ノ價格ト云フ
  モノハ、詰リ一昨年ノアノ當時五圓ヲ加ヘ
  テ適正ヲ得タモノデアリマス、昨年ノ豐作
  ニ於テ適正ヲ得ラレナイト云フコトハ先
  ヅ一般的ニ考ヘラレナイト云フヤウナ大乘
  的ナ觀察モ出來マスルシ、私最近ニ於テ特
  ニ深ク此ノ生產費ノ關係ニ立入ツテハ見マ
  セヌケレドモ、先ヅ適正ヲ得テ居ルモノダ
  ラウト思フノデアリマス、併シナガラ他ノ
  農產物ノ價格、其ノ他ト比較致シマシテ、
  所謂均衡ノ問題ト云フ點カラ見テ適正ヲ得
  テ居ルカト言ヒマスレバ、生產者ニ取リマ
  シテノ價格トシテハ、私ハ明カニ適正ハ得
  テ居ラナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=86

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• 087・二田是儀

  ○二田委員　農林當局自ラ適正ヲ得テ居ナ
  イト云フコトハ御認メニナツタヤウニ拜承
  致シマス、其ノ適正ヲ得テ居ラナイ程度モ
  僅カデアルナラバ、是ハ農民ハ我慢スルト
  思ヒマスガ、其ノ差ガ非常ニアルナラバ-
  例ヘバ私東北ニ居リマスガ、靑森縣、秋田
  縣邊リノ林檎ニ比較スル時ニハ甚ダシイノ
  デアリマス、林檎ノ反當收量ハドウシテモ
  一反カラ七、八百圓デアリマス、而モ其ノ
  生產費モ掛ルコトハ掛リマスガ、其ノ七、
  八百圓ノ生產費ノ半分ハ掛ラヌ、是ニ於テ
  カ其ノ殘ル利益ガ非常ニ多イ、恐ラクハ五
  百圓位ハ殘ルノデアリマス、米ノ方ハ奬勵
  金ヲ加ヘマシテ一俵十九圓、反當收量ハ百二、
  三十圓デアリマス、之ニ對スル生產費ハ非
  常ニ掛ル、特ニ勞銀ノ問題ニ於テヒドイノ
  デアリマス、勞銀ハ公定價格ガアリマスガ、
  到底公定價格デハ賴メナイ、一方又各方面
  ヲ見マスルニ、非常ニ勞銀ガ高イ、現ニ農
  林省管轄デヤツテ居ル所ノ營林局、アノ邊
  デ使ツテ居ル農民ノ勞銀ハ、農村方面カラ
  見マスト約三倍位高クナツテ居ル、斯ウ云
  フ點ハ農林當局ハドウ云フ風ニ御覽ニナツ
  テ居ルカ、此處ヲ一ツ御伺ヒ致シタイノデ
  アリマス、尙ホ適正ヲ得テナイトスレバ、
  之ヲ如何ニシテ適正化スルカト云フコトノ
  一ツノ御方針ヲ承リタイノデアリマス

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• 088・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　農產物ノ均衡上ノ問題ト
  シテ適正ヲ得テ居ラナイト申上ゲマシタ、
  之ニ付キマシテハ色々ト考ヘテ居リマスケ
  レドモ、マダ此處デ斯ク〓〓ノ方法デ斯樣
  ナコトヲスルト云フコトヲ申上ゲルマデニ
  至ツテ居リマセヌノハ遺憾デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=88

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• 089・二田是儀

  ○二田委員　私ハ農林次官カラ適正ヲ得ル
  方法ヲ持タナイト云フ御話ヲ伺ツテ非常ニ
  遺憾ニ思ヒマス、凡ソ此ノ物價ト云フモノ
  ハ、先程申上ゲマシタガ、生產價格デ間ニ
  合フト云フダケデハ增產ハ中々難カシイ、
  ソレデ適正ヲ得テ居ナイト云フコトハ認メ
  テ居ルガ、政府ニ方針ガナイト云フコトハ政
  治力ヲ旣ニ失ツタ、斯樣ニ言ツテモ差支ヘナイ
  ノデハナイカト思ヒマス、此ノ點ニ付キマシ
  テハ、速カニ適正ヲ圖ルヤウナ方法ヲ見出サ
  レンコトヲ玆ニ切望シテ置ク次第デアリマス
  次ニ農業保險ノ改正ニ於キマシテ、大
  幅ニ引上ゲテ農家ニ經濟上ノ彈力性ヲ持タ
  セルト云フコトハ非常ニ結構ナコトデハア
  リマスガ、要スルニ我ガ國ノ農業ハ天候
  ノ支配ヲ受ケルコトガ非常ニ大キイノデ
  アリマス、天候ハ如何トモスルコトハ出
  來ナイノデアリマスガ、天候ノ被害ヲ出來
  ルダケ人力ヲ以テ少クスルト云フコトヲ最
  モ考ヘナクテハイカヌト思フノデアリマス、
  ドウ云フ風ナ方法ニ依ツテ此ノ天候ノ被害
  ヲヨリ少クスルカト言ヒマスト、ソレハ色々
  ノ土地改良ヲスル外ハナイ、農林當局ニ
  於キマシテモ、色々土地改良ニ重點ヲ注ガ
  レテ居ルヤウデハアリマスガ、尙ホ大規模
  ニ行ハナクテハイカヌノデナイカト私ハ考
  ヘテ居ルノデアリマス、是カラ肥料モ非常
  ニ不足スルノデアリマスガ、殊ニ我ガ國ノ
  水田ト云フモノハ大體ニ於テ非常ニ古イ、
  吾々ノ先祖ハ之ニ堆肥ヲ施シ、又天然ガ之
  ニ色々ノ力ヲ持タセテ居ル、此ノ力ヲドウ
  カシテ使フト云フコトヲ、吾々考ヘナクテ
  ハイカヌノデハナイカト、斯樣ニ考ヘテ居
  ルノデアリマス、ソレニ最モ宜イノハ暗渠
  排水デアル、之ニ依ツテ理化學的ニ土地ノ
  肥料ヲ分解サセル、サウ云フコトガ肥料不
  足ノ今日最モ大切ナコトデハナイカト私ハ
  考ヘテ居ルノデアリマス、先程農林大臣ハ
  堆肥ハ殖エテ居ル、現ニ十億万貫デシタカ
  殖エテ居ルト云フコトヲ言ハレマシタガ、
  今農村ニ於テ勞力不足ノ折柄、統計ニハサ
  ウ云フ數字ガ現ハレタカモ知レマセヌガ、
  併シ本當ノ肥料分ノアル堆肥ガソレダケ殖
  エタカドウカ、私ハ深イ疑問ヲ持ツテ居リ
  マス、尙ホ堆肥ノミヲ以テ果シテ將來增產
  ガ出來ルカ、之ニモ深イ〓〓疑問ヲ持ツテ
  居ルノデアリマス、之ニ對シテドウ云フ土
  地改良ニ農林省ハ重點ヲ注ガレルノカ、ド
  ウ云フ方法デ土地改良ヲ速カニヤラレルカ
  ト云フコトヲ御伺ヒシタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=89

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• 090・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　肥料ノ不足、勞力關
  係ノ窮屈ト云フヤウナ現狀ニ於キマシテ、生產
  增强ノ爲ニ土地改良ニ重點ヲ置クベシト云
  フ御議論ニハ全ク吾々御同感デゴザイマ
  ス、今年度ノ豫算ニ於キマシテモ、土地ノ
  擴張ヨリモ重點ヲ土地改良ノ方ニ向ケタ豫
  算ノ組ミ方ヲ致シテ居ルヤウナ狀態デアリ
  やく、殊ニ御話ノゴザイマシタ暗渠排水ノ
  問題ハ、比較的工事ガ簡易ニシテ其ノ效果
  ノ大ナルモノトシテ、吾々ハ之ニ相當大キナ
  期待ヲ置イテ居ルノデアリマス、唯問題ハ
  御承知ノヤウニ土管等ノ資材ノ關係ニ於テ
  十分配給ガ〓ラヌト云フコトノ爲ニ、ヤ
  リタクテモ工事ガ出來ナイト云フ部分モ、
  遺憾ナガラ起ツテ居ルノデアリマス、是等
  ノ資材ニ對シマシテハ、土地ニ依ツテサウ
  モ參リマセヌケレドモ、粗朶等ノ物資ヲ使
  ビマシテ、年限ハ短クアリマスガ、暗渠排
  水ノ效果ヲ擧ゲルコトガ出來ルノデアリマ
  スカラ、サウ云フ土管等ノ資材ヲ用ヒナイ
  暗渠排水ノ工事モ工夫ヲ凝ラシテヤツテ參
  リタイト思ツテ居リマス、其ノ他農業工事
  トシテ、各地方ノ地元トシテハ、小規模ナ
  水利事業ノ促進ト云フコト用排水ノ比較
  的小規模ノ工事ヲ推進、是等ノコトニ重點
  ヲ置イテ、土地改良ノ問題ヲ進メテ參リタ
  イト思ツテ居リマス

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• 091・二田是儀

  ○二田委員　農村ニ負ハサレタ所ノ使命ノ
  食糧ノ增產ハ最モ重大ナコトデアルノデア
  リマスガ、其ノ外ニモウ一ツ重大ナコトガ
  アル、ソレハ農村ヨリ勞力ヲ他ノ產業ニ供
  出シナケレバナラヌト云フコトデアリマス、
  我ガ國ガ米英ト決戰ヲスル爲ニドウシテモ
  軍需工業ノ必要ナコトハ申スマデモナイノ
  デアリマス、是等ノ工場要員ハ何處カラ最
  モ出スカト言ヒマスト、我ガ國人口ノ四割
  ヲ占メマス所ノ農村ヨリ出ス外ナイノデア
  リマス、唯茲ニ無方針ニドン〓〓農村ヨリ
  人ヲ出シタナラバ勢ヒ農產物ノ增產ニ影響
  スル、之ヲ農產物ノ增產ニ影響セシメナイ
  デ、而モ健全ナル勞力ヲ農村ヨリ軍需工業
  ニ供出スルニハドウ云フ風ナ方法デヤルカ
  ト云フコトヲ吾々ハ考ヘナケレバナラヌ、
  我ガ國ノ農業ハ、特ニ水田ニ付テ申上ゲマ
  スト、非常ニ手間ガ掛カル、一反步ニ付キ
  マシテ二十人乃至二十五人位ハ掛カラウト
  思ヒマス、之ヲドウ云フヤウナ方法デモウ
  少シ手間ノ掛ラナイ水田ヲ作ルカト云フコ
  トガ、食糧增產ニ課セラレマシタ最モ重大
  ナル問題ト私ハ考ヘテ居リマス、私ハ斯樣
  ニ考ヘテ居ルノデアリマスガ、若シ我ガ國
  ノ水田ノ大半ニ耕地整理ヲ施シマシテ、作
  リ易イ田ニスル、田每ノ月ヲ見ルヤウナア
  ア云フヤウナ田デナク、作リ易イ、而モモ
  ウ少シ機械力ヲ入レテ、特ニ畜力ヲ入レル
  コトノ出來ルヤウナ田ヲ作ツテ、大規模ノ
  農業土木事業ニ依ツテ、サウ云フヤウナ恰
  好ノ田ヲ作ツテ勞力ノ節約ヲスル、現ニ耕
  地整理ヲ能クヤツタ田デアレバ、ヤラナイ
  田ヨリモ五人ハ節約出來ルノデアリマス、
  是ハ大體除草ニ於テ非常ニ節約出來ル、或
  ハ田植ニ於テ、稻刈ニ於テ節約出來ル、
  斯樣ナ狀態ニナツテ居リマスカラ、玆ニ農
  林當局ニ於テハ大規模ノ耕地整理ヲ行フ御
  意思ガアルカドウカ御伺ヒ致シマス

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• 092・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　地方々々ノ實情ニモ
  依リマスルガ、耕地整理ヲ必要トスル地區モ
  マダ〓〓非常ニ多イト吾々ハ考ヘテ居ルノ
  デアリマス、是等ノ地區ニ對シテハ、耕地
  整理ノ實行ニ對シテハ從來通リト申シマス
  ルカ、從來ニ加ヘテ助成ヲ增加シテ參リタ
  イト考ヘテ居ルノデアリマス

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• 093・二田是儀

  ○二田委員　是ハ大臣ニ御伺ヒスルコトカ
  モ知レマセヌガ、オイデニナラナイカラ次
  官ニ御願ヒ致シマス、此ノ土地改良ニ付キ
  マシテ實際ニ當ツテ第一ニ難カシイコトハ
  土地改良ノ法律上ノ手續ガ非常ニ難カシ
  イ、土地所有者ノ半分ノ同意或ハ賃貸價格
  ノ面積ノ三分ノ二ノ同意ヲ得ナケレバ出來
  ナイ、之ニ地方ニ於テハ惱ンデ居ル所ガ相
  當ニアリマス、斯樣ナ法令デハ、今早急ニ
  大規模ノ土地改良ハ出來ナイノデアリマス、
  之ヲ出來易イヤウニ法律ヲ改メルヤウナ御
  意思ガアルカドウカ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=93

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• 094・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ問題、左樣ナコト
  モアルコトト存ゼラレルノデアリマスガ、是
  モ亦餘リニ强制的ト申シマスカ、一部ノ土地
  所有者、其ノ他土地ニ付テ權利ヲ持ツテ居
  ル者ノ意思ヲ無視シテモ斷ジテヤルト云フ
  ヤウナコトニ致シマスルト、ソコニ又何カ
  所有權其ノ他ニ對スル非常ナ强制ノ問題ト
  云フヤウナコトモアルカトモ思ハレルノデ
  アリマスガ、尙ホ非常ニ手續ガ込入ツテ中
  中難カシイト云フヤウナコトニ付テハ私共
  モ經驗ガアリマセヌモノデスカラ、是ハ一
  ツ能ク〓究致シマス、土地改良ト云フコト
  ハ確カニ非常ニ有益ナコトデアリマスノデ、
  促進シテ參ラナケレバナリマセヌカラ、十
  分一ツ〓究ヲシテ見タイト存ジマス、ソレ
  カラ尙ホ最後ニ價格ノ問題ニ付テ御話ガア
  リマシタガ、要スルニ私共モ色々考ヘテ居
  リマス、二田サンモ御承知ノコトト思ヒマ
  スガ、今日此ノ場合此ノ席ニ於テ申上ゲル
  域ニ達シテ居ラナイコトヲ申上ゲテ置ク次
  第デゴザイマス

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• 095・二田是儀

  ○二田委員　次ニ別ノ問題ニ付テ御尋ネ申
  上ゲマスガ、農業保險ノ交付金ヲ相當大幅
  ニ値上ヲシタコトハ結構ナコトデアリマス
  ガ、斯ウ云フ物資ノ足ラヌ際ニハヤハリ一
  ツノ裏ト云フコトモ考へテ見ナケレバナラ
  ヌノデアリマス、最近特ニ米作ガ他ノ農產
  物、或ハ他ノ物價ニ比シマシテ割ノ合ハナ
  イ仕事デアルト云フコトハ農民ノ通念ニナ
  ツテ居リマス、又一方ドン〓〓勞銀ガ高
  クナツテ居リマスカラ、此ノ保險金ガアル
  ト云フコトハ場合ニ依ツテハ途中ニ於テ諦メ
  サセル、ドウモ旱魃ノ爲ニ植付ガ餘リ十分
  ニ行カナイカラ、諦メルトカ何トカ彼トカ
  云ツテ、途中ニ於テ諦メサセル感ジヲ出サ
  ナイ譯デモナイ、吾々ハ農村ニ居リマシテ、
  農民ノ心理ト云フモノハ或ル程度分ツテ居
  リマス、斯樣ナコトモ危惧シナケレバ、イ
  カヌヤウナ今ノ農村ノ事情デアルト云ツテ
  モ差支ヘナイト思ヒマス、ソレニ付キマシ
  テハ大臣モ先程カラ言ハレテ居ルノデアリ
  マスガ、農民ノ精神的訓練是ガ重大ダト云
  フコトヲ言ハレテ居ツタノデアリマスガ、
  ソレハ其ノ通リデアリマス、ソレデ唯口先
  バカリデ精神訓練ト云ツテモ、今ハ中々其
  ノ通リニハ實行出來ナイノデアリマス、之
  ニ付キマシテ農林當局ニ於テハ具體的ニド
  ウ云フ御方針ヲ持ツテ居ラレルカ、ドウ云
  フ方策ヲ持ツテ居ラレルカ御伺ヒ致シタイ
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=95

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• 096・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今ノ點ハ農業保險
  ニ伴フ道德的危險ガ保險金額ノ引上ゲニ依
  ツテ增加ヲスル結果ニナルガ、ソレニ對シテ
  其ノ防止ノ爲ニ如何ナル方法ヲ用意シテ居
  ルカト云フ御質問ノヤウニ承ツタノデアリ
  マスガ、今囘ノ保險金額引上ゲニ依リマシ
  テ、道德的危險ノ防止ト云フコトニ付キマ
  シテハ、從來以上ノ考慮ヲ拂フベキハ御承
  知ノ通リデアリマス、吾々ノ方ト致シマシ
  テハ被害程度別ノ保險金額ノ支拂等ニ於テ
  モ其ノ點ノ考慮ヲ致シテ居リマスト共ニ、
  若シ道德的ニ耕作者ガ通常行フベキ肥培管
  理ヲ怠ツタト云フヤウナ場合ニ於キマシテ
  ハ、ソレニ對シテハ保險金ノ支拂ヲ制限ス
  ルト云フコトガ農業保險ノ組織トシテハ基
  本的ニ決ツテ居ルノデアリマス、此ノ制度
  ヲ運用致シマシテ、左樣ナ弊害ノ起ラヌヤ
  ウニ措置ヲ講ジテ行ク、ソレト同時ニ保險
  金ヲ貰フヨリモ實際ノ收穫ヲ得ル方ガ確ニ
  有利ニナルヤウナ計算モ、被害程度別ノ支
  拂割合ニ於テ致シテ居ルノデアリマス、尙
  ホ道德的危險ヲ生ズルソレ等ノ防止策トシ
  テハ、評價ノ嚴正ヲ期スル爲ニ、特ニ地方
  ノ委員會ニ其ノ方面ノ專門家ヲ置キマシテ、
  是ガ損害評價ノ嚴正ヲ期スル爲ニ特別ノ措
  置ヲ新シク講ズルコトニ致シタ次第デアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=96

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• 097・二田是儀

  ○二田委員　一寸私ノ伺ツタノハサウ云フ
  風ニ怠ツタ爲ニ被害ガ大キクナツタト云フ
  ヤウナコトヲ防グト云フ意味合デナク、サ
  ウ云フ氣持ヲ起サナイヤウニ常々農民ヲ如
  何ナル方法ニ依ツテ訓練スルカト云フ、サ
  ウ云フ御方針ガアルト云フコトヲ伺ツタノ
  デアリマス

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• 098・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　農民ニ對スル修練ノ
  問題ニ付キマシテハ、今囘議會ニ出テ居リ
  マスル豫算ニモ修練農場組織ノ整備擴充ト
  云フコトヲ計畫シテ居ルノデアリマス、此
  ノ計畫ハ中央ニ於キマシテハ、農民ノ修練
  ニ當ルベキ指導者ノ養成ヲ中心トスル中央
  ノ修練農場ヲ設ケ、ソレカラ更ニ各地方ニ現
  在アリマスル修練農場ノ組織ヲ整備擴充スル
  ト云フコトニ致シテ居ルノデアリマス、大
  體現在各府縣ニアリマスル修練農場ハ五十
  人程度ヲ收容スルコトニナツテ居ルノデア
  リマスガ、之ヲ第一期ノ計畫トシテ、先ヅ
  全國ニ亙ツテ之ヲ百人程度收容シ得ル修練
  農場ニ擴充ヲシテ參リタイ、ソレカラ更ニソレ
  ニ女子部ヲ併設致シマシテ、農村婦人ノ今後
  ノ重大性ニ鑑ミテ、其ノ修練ニ一段ノ努力
  ヲ拂ハウト云フコトニ致シテ居ルノデアリ
  マス、是等ノ施設ヲ實行致シマス爲ニ、設
  備等ニ對シテハ全額國ガ助成ヲスル、ソレ
  カラ經常費ノ職員ノ設置費ニ對シテモ全額
  ノ助成ヲスル、又農場ノ設備、ソレカラ修
  練生ノ食費等ニ對シテハ二分ノ一ノ助成ヲ
  スルト云フヤウナコトヲ實行致シテ、修練農
  場組織ノ整備擴充ニ努メルコトニ致シテ居
  ルノデアリマス、是等ノ各地方ノ修練農場
  ヲ中心ト致シマシテ、農民ノ修練事業ヲ一
  段ト强化充實致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル
  次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=98

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• 099・二田是儀

  ○二田委員　今マデ修練農場ハ大體ニ於テ
  農林省ノ關係デハ補助ガアツタ、殘リハ自
  給自足デ賄フト云フヤウナ方針デ進ンデ居
  ツタヤウニ見受ケラレルノデアリマス
  一體訓練ト云フモノハサウ云フ經濟的ニ間
  ニ合フトカ間ニ合ハヌトカ云フモノデハナ
  イ、訓練ヲスル以上ハ、ソコニ經費ハ掛ツ
  テモシツカリシタ人間ヲ作ルト云フヤウナ
  方針デ進ムベキデアルト思フノデアリマス、
  唯茲ニ自給自足ノ經濟ヲ立テルト云フヤウ
  ナ意味合デ訓練ヲ致シマスト、唯働カセル
  ト云フヤウナコトニ墮スル嫌ヒガアルノデ
  アリマス、訓練トハ無論働カナクチヤイカ
  ヌガ、ヤハリ茲ニモノモ〓へテ、知識ヲ授
  ケテヤルコトガ本當ノ農村指導者ノ訓練ト
  思ヒマス、今囘助成ヲナシテ修練農場ノ擴
  張ヲヤルト言ハレマスガ、今マデノヤウニ
  唯各府縣ガ之ヲ自給自足的ニ考ヘルト云フ
  ヤウナコトデ御認メニナルカ、或ハ本當ノ
  訓練ノ意味ニ於テ金ガ掛ツテモ立派ナ人間
  ヲ作ルト云フヤウナ御氣持デヤルカ、ソコ
  ヲ一ツ御伺ヒ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=99

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• 100・石井英之助

  ○石井(英)委員　修練農場組織ノ指導方針
  ニ付テハ御說ノ通リニ吾々モ考ヘテ居ルノ
  デアリマス、從來各府縣ノ經費ガ十分デナ
  イ關係上、各修練農場ガ兎角自給自足ノ經
  營デナケレバナラヌト云フ窮屈ナ狀態ニナ
  リマシテ、其ノ爲ニ思フヤウナ修練ガ出來
  ナイト云フ遺憾ナ點ガアツタノデアリマス、
  吾々トシテハ其ノ點ハ是非トモ今囘ノ施設
  ニ依リマシテ改正ヲ致シテ、サウシテ經濟
  的ナ點ニ修練農場ノ首腦者ガ心ヲ勞スルコト
  ナクシテ、本來ノ農民ノ鍊成ト云フコトニ
  力ヲ集中シ得ルヤウニシタイト云フノガ、今
  囘特ニ國ノ助成ヲ厚ク致シマシタ理由ノ
  ツデアリマス、隨ヒマシテ今後ニ於キマシ
  テハ各修練農場ニ於テハソコノ經費ヲドウ
  シテ賄ハウカ、修練生ノ食費ヲドウシテ得
  ルカト云フコトニ、餘リ頭ヲ勞セズシテヤ
  ルヤウニ致シテ參リタイト思ヒマス、今囘
  ノ助成ノ內容ニ付キマシテモ、此ノ程度ノ
  モノデアレバ、從來ノヤウナ遺憾ナ點ハ大
  體除去出來ルモノデアル、斯ウ云フヤウニ
  考ヘテ計畫ヲ致シテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=100

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• 101・樋口善右衞門

  ○樋口委員　少シ關聯シテ······此ノ修練
  道場ノコトデアリマスガ、只今農政局長ノ
  御述ベニナルノハ縣立ダトカサウ云フモノヲ
  指シタモノト思フノデスガ、私共思フニ修
  練道場ト云フモノハ各地方、民間ニ澤山ア
  ル、此ノ時代ニ於テハ農業ト言ハズ、何ト
  言ハズ修練サセル必要ガ大イニアルヤウニ
  思フガ、是等ヲ總テナルタケ多ク動員シテ
  使ツテ行クト云フ風ニシタ方ガ宜イト思フ
  ガ、其ノ點ニ付テドンナ風ニ考ヘテ居ラレ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=101

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• 102・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　只今吾々共トシテ計
  畫シテ居リマスモノノ對象ハ、現在地方農
  事講習所規程ト云フモノガアルノデアリマ
  ス、其ノ規程ニ依ツテ地方修練農場ト云フ
  モノヲ設立シ得ルコトニナツテ居ルノデア
  リマス、大體各府縣デヤツテ居リマスル修
  練農場ハ地方農事講習所規程ニ依ル修練農
  場トシテ出來テ居ルノデアリマス、隨ヒマ
  シテサウ云フモノニ付テハ一定ノ規模ヲ持
  チ、又其ノ設備ノ內容ニ於テモ十分農民ノ
  鍊成機關トシテノ資格ノアルモノダケガ其
  ノ規程ニ依ツテ設立ヲ認メラレテ居ルノデ
  アリマス、先ヅ第一段トシテ是等ノモノガ
  十分ニ活動ガ出來ルヤウニト云フコトヲ目
  標ニ致シテ居ルノデアリマス、此ノ地方農
  事講習所規程ニ依リマスモノデサヘモ、現
  狀ニ於テハ甚ダ遺憾ノ點ガアルノデアリマ
  スガ、ソレヲ十分充實サセテ農民鍊成ノ仕事
  ガ徹底的ニ出來ルヤウニシヨウト云フコト
  ヲ第一段ニ考ヘテ居ルノデアリマス、但シ
  必ズシモ府縣營タルコトヲ吾々ハ要シナイ
  ト思ツテ居ルノデアリマス、併シ何レニシ
  マシテモ相當ノ規模ヲ持チ、又修練生ノ收
  容力ニ於テモ相當ノ規模ヲ持ツモノニ此ノ
  助成ヲ集中シテ、力强イモノニシテ參リタ
  イト云フコトヲ考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=102

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• 103・樋口善右衞門

  ○樋口委員　縣ノ農事試驗場ニアリマスル
  ノハ私共ノ見ル所カラ言フト國デヤル
  トカ縣デヤルトカ云フヤウナコトハ、精神
  的方面ノコトニハドウモ不適當デナイカト
  思フ、强制セラレル傾キガアルノデス、例
  ヘバ縣ニ一箇所アルト言ヒマシテモ、隨分
  地方ニ依ツテハ遠イノデアツテ、中々ソコ
  ニ一週間ナリ二週間ナリヤルト云フコトハ
  事實問題トシテ容易ナラヌコトデハナイカ
  ト思フノデス、現ニ內原ノ如キモ政府トシ
  テハ一人ニ付テ千何百圓掛ルト云フ御話ヲ
  聞イタノデスガ、彼處ニ先ヅ出ス者ヲ縣カ
  ラ郡ニ割ツテ來マスルト、其ノ人ヲ選拔シ
  テ出スノニ非常ニ困ル、サウ云フコトデ國
  デヤルトカ、縣デヤルトカ云フモノハドウ
  モ遠イ所ノ一地方ヘ集メナケレバナラヌ、
  所ニ依ツテ違ヒマセウケレドモ、縣ニ依ツ
  テ相當發達シテ居ル所ヲ見ルト、各方面ノ
  人格者ガ中心トナツテ、サウシテ無理ニ行
  ケト言ハヌデモ、其ノ人ヲ慕ツテ來ルト云
  フモノガ相當アルト思フノデゴザイマス、其
  ノ點ニ付テハ眞ニ自分ガ自覺シテ修養ニ行
  カウ、斯ウ云フ風デナイト、縣トカ國トカ
  云フコトデハ道場方面ニハ聊カ不適當ナ所
  ガ多イト思ハレマスガ、ソレデモ宜イガ、
  私共ノ希望トシテハ、ドウカ精神修養ノコ
  トハ能ク考ヘテヤツテ戴キマセヌト、無理
  ニ送ルトカ、送ル人ヲ探スニ困ルトカ云フ
  ヤウナコトデヤツタノデハ、ヤルコトハド
  レ程ヤツテモ、其ノ者ガ歸ツテ來テ他ニ及
  ボス影響ハ極メテ薄イノデス、ソレデ集メ
  ラレタ數ガ縣內デ僅カナモノデ、ソレヲ歸
  シテカラ一般ノ思想ニ及ボスト云フ爲ニハ
  本當ニ精神的ニ打込ンデ戴カナケレバナラ
  ヌノデアリマス、ドウカ是等ノ選拔ニ付キ
  マシテハ、全國廣ク適當ナル人ヲ選ンデ、成
  ルベク多ク、早ク一般ニ及ボシテ行クコト
  ヲ希望シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=103

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• 104・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　御趣旨ノ程ハ能ク拜
  聽致シマシタ、唯一言申上ゲテ置キタイト思
  ヒマスガ、御說ノ通リ農民修練ノ問題ハ指
  導者ト申シマスカ、中心人物ト言ヒマスカ、
  其ノ人ノ如何ニ依ルノデアリマスカラ、國
  立トカ縣立トカ餘リサウ云フコトニコダハ
  ルベキデナイト云フコトハ、吾々モ重々サ
  ウ考ヘテ居ルノデアリマス、所デ現在各府
  縣ニ在リマスル地方修練農場ノ首腦者ト云
  フモノハ、實ニ眞劍ニ仕事ヲシテ居ル適任
  者ガ非常ニ多イノデアリマス、ソレデ實際
  問題トシテ希望者ガ非常ニ多ク段々ト出テ
  參リマスノデ、現在ノ施設デハ其ノ要望ニ
  應ジ切レナイ實情デアリマスノデ、サウ云
  フコトカラ考ヘマシテ今囘ノヤウナ計畫ヲ
  致シタノデアリマス、其ノ點一ツ御諒承置
  キヲ願ツテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=104

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• 105・泉國三郎

  ○泉委員　殘餘ノ質問ハ延期シテ本日ハ是
  ニテ散會セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=105

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• 106・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ本日ノ豫定ノ質問
  者ダケハ濟ミマシタカラ、本日ハ是デ散會
  致シマス、明日ハ午前十時ヨリ開會致シマ
  スカラ、何卒御出席ヲ願ヒマス、唯部屋ノ
  關係上今ノ所デハ午前中ダケノ積リデアリ
  マス、近頃ハ御承知ノ通リ委員會ガ輻湊シ
  テ居リマスカラ、部屋ヲ取ルコトガ中々難
  カシイ、ソレデハ是デ散會致シマス
  午後四時四分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00319430204&spkNum=106

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