1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十八年二月五日（金曜日）午前十時十七分開議
出席委員左の如し
委員長 池田秀雄君
理事 泉國三郎君 理事 岩瀬亮君
理事 角猪之助君 理事 日下田武君
理事 深澤吉平君
安孫子孝次君 石榑敬一君
小野祐之君 岡本馬太郎君
紀藤常亮君 齊藤正身君
田部朋之君 竹内俊吉君
野村嘉久馬君 馬場元治君
樋口善右衞門君 松岡秀夫君
松浦周太郎君 牧原源一郎君
滿井佐吉君 村上國吉君
最上政三君 矢部藤七君
安田桑次君 吉田賢一君
出席政府委員左の如し
農林次官 石黒武重君
農林省農政局長 石井英之助君
━━━━━━━━━━━━━
本日の會議に上りたる議案左の如し
農業保險法中改正法律案（政府提出）
食糧管理特別會計法中改正法律案（政府提出）
農業保險の保險料國庫負擔金等の交付及分擔等に關する法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=0
-
001・池田秀雄
○池田委員長 ソレデハ昨日ニ引續キ開會
致シマス、通〓順ニ依リマシテ安孫子君ニ
御願ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=1
-
002・安孫子孝次
○安孫子委員 私ハ主ト致シマシテ水稻冷
害ノ救濟事業ニ關シマシテ御尋ネヲ申上ゲ
テ見タイト思フノデアリマス
現下ノ重大ナル決戰下ニ於キマシテ、食
糧增產確保ノ重大責務ヲ持ツテ居リマス農
民ヲシテ、安ンジテ其ノ職務ニ專念セシ
ムル態勢ヲ整ヘマスルコトハ、現下ニ於
ケル農林行政ノ最モ重要ナル「ポイント」
トシナケレバナラナイト云フコトハ申上
ゲルマデモナイコトデアリマス、自然ヲ相
手ト致シテ居リマス所ノ農業ハ、時々不
可抗力ノ災害ニ遭遇致シマシテ、其ノ生活
ヲ脅カサレ、經營ノ根柢ヲ覆サレルニ至
ルコトハ、旣ニ過去ノ實績ニ依ツテ明カ
ナルコトデアルノデアリマス、現下ノ情
勢ハ、斯カル事態ガ生ジマシテモ農業者ヲ
シテ再起奮鬪セシムル方法ガ整備サレテ
居ナケレバナラヌト思フノデアリマス、
ソレデナケレバ、一旦斯カル災害ニ遭遇シ
タ曉ニハ爾後〓糧生產ノ上ニ大キナ危險
ガ伴フカラデアリマス、是ガ有力ナル對策
ノ一ツト致シマシテ農業保險制度ガ役立タ
ネバナラヌト私ハ信ズルノデアリマスガ、
農業保險ハ斯カル際ニ十分其ノ效力ヲ發揮ス
ルモノデナケレバナラヌ、斯ウ考ヘルノデ
アリマス、左樣ナ意味合ニ於キマシテ此ノ
度農業保險法中改正法律案ヲ御提出ニナリ
マシテ、其ノ整備ヲ御圖リニナルヤウニナ
リマシタコトニ對シマスル當局ノ御盡力ニ
對シマシテハ、心カラ敬意ヲ表スル次第デ
アリマス、併シ段々ト御說明ヲ拜聽シテ參
リマスト、色々ノ點ニ於テ疑問ガ出テ來ル
ノデアリマス、特ニ水稻冷害共濟事業ハ只
今申上ゲタヤウナ目的ヲ達シ得ルカドウカ
ト云フコト、冷害凶作ニ依ル所ノ農業者ノ
困難ヲ幾許ノ程度ニ救ヘルカドウトカ云フ
コト或ハ極端ニ申上ゲマスレバ、ナイヨ
リモアツタ方ガ宜シイト云フ程度ニ終ルコ
トナキヤヲ心配スルノデアリマス、又同時
ニ組合ノ經營上ニ大キナ困難ガ伴フヤウニ
モ思ハレルノデアリマス、ソレデ特ニ斯ウ
云フ見地ニ立チマシテ、若干ノ事項ヲ御尋
ネ申上ゲル次第デアリマス
第一ニ御尋ネ申上ゲタイコトハ、水稻ノ
冷害ヲ第一類ノ保險事故トシテ御認メニナ
ラナカツタ理由デアリマス、此ノ點ニ關シ
マシテハ旣ニ農林省ノ事務當局ノ方々カラ
モ曾ツテ伺ツタコトガアリマスガ、考ヘテ
見マスト、ドウシテモ之ヲ第一類ノ保險事
故ニ認メナイト云フコトニ對シテ理解シ難
イノデアリマス、第一ノ水稻ノ保險事故ト
致シマシテハ、風水害、早害、霜害、電害
竝ニ旱害ニ伴フ所ノ二、三ノ病害ガ認メラレ
テ居ルノデアリマスガ、是等ト冷害トヲ區
別シナケレバナラヌ所ノ理由ガ判明シナイ
ノデアリマス、殊ニ早害ヲ認メテ居ツテ、
冷害ヲ認メナイト云フ理由ガドウモ能ク分
リマセヌノデ、此ノ點ニ對シテ御當局ノ御
見解ヲ御伺ヒシタイノデアリマス、或ハ伺
ヒマスト、冷害ニ對スル調査ガ不十分デア
ルト云フヤウナコトモ伺ツテ居リマスガ、
ソレナラバ其ノ調査ハドノ邊マデ進ンデ居
ルカ、何時調査ガ完了スルノデアルカト云
フヤウナ點ニ對シテモ御答辯ヲ御願ヒシタ
イノデアリマス、假令調査ガ不十分デアツ
テモ、私ハ現下ノ此ノ食糧增產ノ情勢カラ
見マスレバ、ドウシテモ速カニ第一類ノ保
險事故トシテ之ヲ認メテ差支ヘナイト私ハ
考ヘテ居リマスガ、又斯ウ云フコトモ伺ツ
テ居ルノデアリマス、冷害ヲ第一類ノ保險
事故ト致シマシテ採リ入レマス場合ニ、國
庫ノ負擔ガ非常ニ多額ニナル、俄カニ入レ
難イト云フヤウナ事由デアルト云フコトモ
仄聞シテ居ルノデアリマスガ、果シテサウ
デアルカドウカ、若シ第一類ノ保險事故ト
シテ冷害ヲ入レマシタ場合ニ於テ、一體幾
許ノ國庫ノ負擔ニナルカドウカト云フヤウ
ナコトモ御尋ネ申上ゲタイノデアリマス、
私ハ國庫ガ負擔ニ困ルヤウナ大キナ災害ヲ、
此ノ度改正サレマシタヤウナ共濟ノ方法デ
共濟ガ出來ルカドウカト云フ點ニ於テ疑問
ヲ持ツテ居ルノデアリマス
第二ニハ第一類ノ保險ニ於ケル所ノ保險
金ト、冷害共濟金トノ間ニ差異ヲ付シマシ
タ理由デアリマス、水稻ノ自作ノ場合ニ於
キマシテハ、第一類ノ農業保險ノ方ニ於キ
マシテハ、反四十五圓デアリマスガ、冷害
共濟金ハ二十五圓ニナツテ居リマス、兩者
ノ間ノ區別ヲ付ケラレマシタ所ノ理由ハ何
處ニアルカ、先ヅ此ノ二ツノ點ニ付テ御尋
ネ申上ゲテ見タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=2
-
003・石井英之助
○石井(英)政府委員 冷害ニ付テノ御尋ネ
デアリマスガ、冷害ヲ保險對象タル事故ニ
致サナカツタコトハ是ハ度々機會ノアル
時ニ御話ヲ申上ゲテ居リマスガ、現在ノ保
險ノ料率算定ノ基礎ニ致シテ居ル統計ハ
大正九年カラノモノニ付テ被害率ノ算定ヲ
致シテ居ルノデアリマス、其ノ間ニ於ケル
冷害ノ發生ノ頻度等ヲ考ヘテ見マスト、其
ノ間ノ統計ニ依ツテ保險料率ノ算定ヲスル
ト云フ程度ニ統計ガ纏マツテ居ラナイト云
フコトガ最モ重要ナ原因ナノデアリマス、
是ハ保險技術ノ方カラ申シマシテ、被害統
計中ニ入ツテ居リマス冷害ノ囘數ガ少イ爲
ニ、保險ノ對象トスル爲ニ根本的ニ必要デ
アル料率ノ算定ガ困難デアル、斯ウ云フ所
ニ冷害ヲ保險事故ノ對象ト致サナカツタ理
由ガアルノデアリマス、從來ノ調査カラ申
シマスト、大體冷害ハ相當ノ期間ヲ離レテ
周期的ニ襲來ヲスル、サウシテ周期的ニ其
ノ冷害ガ參リマスト、二、三年續イテ來ル、
斯ウ云フヤウナ傾向ヲ持ツテ居ルモノナノ
デアリマス、隨ヒマシテサウ云フモノ總テヲ通
ジマシテ、保險ノ對象トスル爲ノ料率算定
ヲ致ス爲ニハ、相當長期間ニ亙ル被害統計
ヲ集計致シマシテ、サウシテ其ノ調査ヲ致
シマセヌケレバ、正式ニ保險ノ對象トスル
コトハ技術的ニ困難デアル、斯ウ云フコト
カラ冷害ヲ保險事故ト致サナカツタノデア
リマス、冷害ノ生ズル原因ニ付キマシテハ、
從來カラ色々ノ調査ガゴザイマスケレドモ、
マダ其ノ邊ハハツキリ致シテ居ラヌノデア
リマス、是モ總テノ方面ニ亙ツテノ調査ガ
段々進ンデ參リマスレバ、此ノ冷害ト云フ
モノニ對スル取扱モ將來ハ段々ト考ヘヲ進
メテ行クコトガ出來ルノデハナイカト思
ツテ居リマスケレドモ、現在ハ左樣ナ關
係カラ之ヲ保險事故トハ致シテ居ラナイ
ノデアリマス、尙ホ之ヲ保險ノ事故トスル
コトニ致シマスト、國庫ノ負擔ガ非常ニ增
大スルカラ、ソレヲ恐レテ保險ノ對象ニシ
ナカツタノデハナイカト云フヤウナ御話ガ
ゴザイマシタケレドモ、左樣ナコトハ全然
考ヘテ居ラナイノデアリマス、之ヲ保險ノ事
故ト致シタナラバ、ドノ程度國庫ニ於テ負
擔シナケレバナラナイカト云フヤウナ計算
モ實ハ考ヘルマデニ至ラナイノデアリマス、
其ノ前提タル技術的ノ關係ニ於キマシテ、、
保險ノ事故トスルコトガ出來ナイト云フコ
トデ現在ノヤウナ取扱ヲ致シタノデアリマ
ス、併シナガラ御話ニモゴザイマシタ通リ、
當面ノ食糧增產ノ問題ト致シマシテ、此ノ
冷害ニ對スル共濟制度ノ整備擴充ト云フコ
トハ非常ニ必要ト考ヘマシテ、現在ノヤウ
ナ國庫負擔ノ方法モ考ヘテ、只今ノ事態ニ
卽スル措置ヲ執ルコトニ致シタ譯デアリマ
ス、之ニ依リマシテ保險ノ事故ト致シマシ
タニ近イヤウナ效果ヲ擧ゲルコトニ努力ヲ
致シテ居ル次第デアリマス、尙ホ冷害ノ共
濟金ト水稻ノ保險ノ方ノ保險金トニ差異ヲ
設ケタ理由ニ付テ御尋ネガゴザイシマタガ、
是ハ從來實行シテ居リマス現狀ニ卽シマシ
テ、今般ノ改正ヲ考ヘタノデアリマシテ、
從來水稻ノ保險ノ保險金額ハ二十圓ト云フ
コトデアリ、水稻ノ冷害ノ方ハ、其ノ半額ノ
十圓ト云フコトデ共濟制度ヲ實施シテ來テ
居リマシタ從來ノ沿革ニ鑑ミマシテ、此ノ
際ノ改正ニ當リマシテモ、水稻ノ保險ト冷
害トノ間ニハ今囘改正ヲ致シマシタ程度ノ
差異ヲ設ケテ行キマスコトガ沿革的ニ考ヘ
マシテ、適當ナ所ト考ヘテ斯樣ナ取扱ヒニ
致シタ譯デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=3
-
004・安孫子孝次
○安孫子委員 今ノ御答辯ニ依リマスト、
調査ガ未了ノ爲ニヤリ得ナイト云フヤウナ
御趣旨ノヤウニ拜聽致シマシタノデアリマ
スガ、サウ致シマスト中々確實ナ統計ヲ取
ルト云フコトハ三年ヤ五年ヤ、十年ノ問題
デナイヤウニモ考ヘラレルノデアリマス、サ
ウスルト暫クノ間冷害ヲ第一類ノ保險事故
ニ認メルコトハ困難デアルト云フ見解ニ落
着クヤウニモ見エルノデアリマス、又今ノ
共濟金ノ金額ニ於キマシテモ、二十五圓ニコ
コニ御定メニナツテ居ルノデアリマスガ、
サウ云フヤウナ方法デ今改正サレマスルヤ
ウナ共濟制度ニ於キマシテ冷害ニ遭遇シタ
農家ヲ救ヒ得ルヤウナ御見透シガ確實デゴ
ザイマセウカ、此ノ點ニ付テ當局ノ御見解
ヲ伺ヒタイノデアリマス、隨分冷害地ノ農
家ハ一旦冷害ニ遭フト慘メナ狀態ニナツテ
居リマスノデ、私ハドウモ、御改正ノ趣旨ニ
對シテハ心カラ敬意ヲ表シマスガ、其ノ結
果ニ於キマシテハ、是ハ當局ガ御考ヘニナ
ルヤウナ效果ヲ齎ラスコトガ出來ルカドウ
カト云フコトニ非常ナ心配ヲ持ツテ居ルノ
デアリマス、此ノ點ニ對スル當局ノ御見透
シハドウカト云フコトヲ此ノ際伺ヒタイノ
デゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=4
-
005・石井英之助
○石井(英)政府委員 大體ノ原則ト致シマ
シテハ、水稻冷害ニ對スル共濟金二十五圓
ト云フコトデ、非常ナ冷害ガ起リマシタ場
合ノ救濟ト申シマスカ、其ノ被害ヲ全的ニ
囘復ヲスルト云フヤウナコトニハ、勿論足
リナイ所ガアラウト思ヒマスケレドモ、再
生產確保ト云フ見地カラ申シマシテ、二十
五圓程度ノ共濟金ガ出ルコトニナリマスレ
バ、大體ニ於テ其ノ趣旨ヲ達成シ得ルモノ
ト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=5
-
006・安孫子孝次
○安孫子委員 ソレナラバーモウ少シ御尋
ネ申上ゲタイノデスガ、現行ノ施設ニ於キ
マシテハ、共濟金ヲ支拂フベキ所ノ最低最
高ノ被害率ガ定マツテ居ルノデアリマス、
隨テ冷害ガ起リマシテモ二十五圓ノ共濟金
ヲ農家ガ貰フト云フ場合ハサウナイノデハ
ナイカト云フヤウナ心配ガ出來テ居ルノデ
アリマス、ソレデ今ノヤウナ御趣旨デアリ
マスレバ、先ヅ以テ最低最高ノ被害率ヲ撤
廢セラルル御意圖ガナイカドウカト云フ點
デアリマス、昨年ノ一月十四日農林省告示
第四百八十八號ニ依リマスト、北海道ノ最
低被害率ハ二〇%ニナツテ居リマス、併シ
北海道ハ土地ガ非常ニ廣汎デアリマスノデ、
平均ノ被害率ガ二〇%デアリマシテモ、或
ル地方ニ於キマシテハ收穫皆無ノヤウナ狀
態ガ來ル場合ガアルノデアリマス、ソレデ
北海道ハ平均二〇%以上ニナラナケレバ恐
ラクハ此ノ共濟金ノ交付ガナイコトニナル
ノデナイカト解釋サレルノデアリマス、私
ノ申上ゲルコトガ間違ツテ居ルナラバ、御
訂正ヲ願ヒマスガ、私ハサウ考ヘテ居ルノデ
アリマス、現ニ昨年ノ如キモ、北海道ト致
シマシテハ、作柄ハ先ヅ上乘デアリマシタ、
大體ニ於テ相當ノ收穫ヲ上ゲテ居リマスガ、
或ル地方ニ於キマシテハ可ナリノ冷害ヲ受
ケテ居ルノデアリマス、其ノ地方ハ、冷害ヲ
受ケマシテモ此ノ共濟ノ恩典ニ浴スルコト
ガ出來ヌ結果ニナルノデアリマス、又更ニ
是ハ北海道デモ東北デモ同ジコトデアリマ
スガ、保險組合別ニ其ノ最低最高ノ被害率
ヲ見マスト甚ダ實情ニ副ハナイヤウニ私ハ
考ヘルノデアリマス、例ヘバ北海道ヲ見マ
シテモ、北見ノ保險組合ニ於キマシテハ、
最低被害率ガ四四·九七六%、最高ガ七七·
一九七%ニナツテ居リマス、日高ニナリマ
スト、最低ガ一一·四三%、最高ガ二七·七
三七%ニナツテ居ルト云フヤウナ譯デ、
一申上ゲルト冗漫ニナリマスカラ申上ゲマ
セヌガ、其ノヤウニ非常ニ地方ニ依ツテ實
情ニ副ハナイコトガアルノデアリマスガ、
特ニ最高被害率ヲ見マスト、ソレ〓〓制限
ガアリマスルノデ、二十五圓ノ共濟金ガ揭
ゲテアリマシテモ、其ノ結果ハ其ノ幾割カ
ヲ削減シテ支拂ハナケレバナラヌト云フコ
トニナルト思フノデアリマスガ、又實際ノ
場合ニ於キマシテハ其ノ他ノ理由ニ依ツ
テ-是ハ後デ申上ゲマスガ-削減サレル
場合ガアリマスカラ、一層減額サレルト云
フコトニナリマシテ、之ヲ酷ニ批判致シマ
スレバ羊頭狗肉ノ謗リヲ免カレナイト云フ
ヤウナコトニモナリハシナイカ、ソレデア
リマスルカラ之ヲ撤廢シテハドウカト思フ
ノデアリマスガ、之ニ對スル當局ノ御所見
ハドウカ、又之ヲ撤廢致シマスト保險組合
ノ經營ニ支障ガ起ルトノ意見モ出テ來ルト
モ思フノデアリマス、共濟金ガ第一類ノ保
險金ノ約半分ニ加ヘマシテ、更ニ減額支拂
サレルヤウデハ、假令保險組合ノ經營ニ困
難ガ伴ヒマシテモ、農業者ノ困難ヲ救フト
云フコトニナラヌノデアリマスノデ、斯ク
テハ農業者ヲ加入セシメマスル上ニ於テ甚
ダシク困難ヲ感ズルト思フノデアリマス、
組合ノ運營ニ對シマシテハ別途ニ對策ヲ講
ゼラレマシテ、此ノ最低被害率、最高被害
率ヲ撤廢シテ戴クト云フコトニ對シマスル
當局ノ御所見ハドウデアリマスカ、此ノ點
ニ對シマシテ御答辯ヲ御願ヒシタイノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=6
-
007・石井英之助
○石井(英)政府委員 冷害共濟ニ付テノ最
低被害率、最高被害率ヲ設ケテ居リマスノ
ハ、最低被害率ニ付テハ、部分的ナ冷害的現
象ガ起リマシタヤウナ時ニ、ソレニ對シテ
モボツ〓〓共濟金ノ拂ヒヲスルト云フヤウ
ナコトハ全體ノ冷害共濟ノ趣旨カラ見テ
ハ不適當デアル、御承知ノ通リ、大體所謂冷
害ガ參リマスル場合ニハ其ノ地域ガ廣汎ニ
大規模ニ來ルノガ通態デアリマス、デアリ
マスルガ、偶〓部分的ニ冷害ト云フヤウナコト
デ此ノ共濟金ヲ出シテ行クト云フヤウナコ
トハ、全體ノ冷害ハ對スル共濟制度ノ趣旨ヲ
貫徹スル爲ニハ適當デナイト云フ見地カラ
最低被害率ト云フモノヲ設ケテ居ルノデア
リマス、實際ノ問題ト致シマシテモ、旣
往ノ被害率カラ計算ヲシテ見マスルト、所謂
冷害ガ出來マシタ年ニ於ケル道府縣ノ被害
率ト云フモノハ、總テ最低率以上ニ現實
問題トシテナツテ居ルノデアリマス、殊一
北海道ニ付テ具體的ニ吾々ノ方デ觀察ヲシ
テ居ル所ニ依リスマレバ、冷害ノ參リマシ
タ時ニハ必ズ最低被害率以上ニ郡別ニ考ヘ
マシテモナツテ居ルノデアリマス、ソレカ
ラ尙ホ最高被害率ニ付キマシテハ、旣往ノ
最高被害ノ所ヲ取ツテ居ルノデアリマスカ
ラ、是亦吾々ノ方ノ見込ト致シマシテハ、
現實ノ問題トシテ支障ヲ生ズル虞ハナイ、
斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス、尙ホ此ノ
被害率ノ問題ニ付キマシテハ、實際ノ事實ニ
基キマシテ、出來得ル限リ實情ニ副フヤウ
ナモノニ致サナケレバナラヌコトハ、申ス
マデモナイノデアリマスカラ、今後ニ於キ
マシテモ實際ノ被害現況ニ卽シマシテ、適
當ニ算定ヲ致スコトハ勿論デアリマス、大
體現在トシテハ此ノ最低最高ノ問題ニ付テ
ハ現行制度ヲ維持致シタイ、斯樣ニ考ヘ
テ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=7
-
008・安孫子孝次
○安孫子委員 只今ノ御答辯デ、現行制度ヲ
維持スルト云フ御方針ノヤウデアリマスガ、
併シ又實情ニ卽スルヤウニ改正シタイト云
フ御意見ノヤウニ伺ツタノデアリマスケレ
ドモ、昨年ノ北海道ノ作況ニ付テ御調査下
サイマスレバ、私ハ此ノ最高最低被害率ノ
アルコトニ依ツテ、農家ガ此ノ共濟事業ニ
對スル關心ヲ非常ニ低メルト云フ結果ニナ
リハシナイカト云フ心配ヲ持ツテ居ルノデ
アリマス、只今申上ゲタコトハ繰返シマセ
ヌガ、昨年ハ地方ニ依ツテハ、例ヘバ北見
ノ保險組合ノ如キハ可ナリノ冷害ヲ受ケテ
居ルノデアリマスカラ、私ト致シマシテハ
モツト實情ヲ御調査下サルコトヲ玆ニ希望
スル次第デアリマス
次ニ共濟事業運營ノ問題デアリマスガ私
ハ今話ニ出マシタ所ノ北見ノ保險組合ガ、
過去昭和三年カラ共濟事業ヲ實施シタモ
ノトシテ計算シテ見タノデアリマスガ、其
ノ結果ニ付キマシテ一應申上ゲマシテ、當
局ノ御見解ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス、
話ガ細目ニ入リマスノデ洵ニ恐縮デアリ
マスガ、北海道トシマシテハ此ノ點ハ極メ
テ重要デアリマスノデ、少シ細目ニ入リマ
シテ御尋ネ申上ゲタイト思ヒマス
北見地方ニ於キマシテハ昭和三年以降昭和
六年、昭和七年、昭和九年、昭和十年、昭和十
六年ト、五囘ノ凶作ニ遭ツテ居リマス、之ヲ
斯ウ云フ風ニ計算シタノデアリマスガ、昭
和六年ノ作付段別ハ一万九千二百十一町八
段步デアリマス、サウシテ其ノ年ノ平均被
害率ハ四九·九一六%トナツテ居リマス、今假
ニ共濟掛金ヲ二圓ト致シマシテ、今囘ノ改
正ニ依リマシテ其ノ內國庫ニ於テ約一圓三
十錢ヲ負擔シテ戴クカラ、農業者ハ約七十
錢ノ負擔ヲスルト云フヤウナ計算ヲヤツタ
ノデアリマス、昭和三年カラ五年マデハ災
害ガアリマセヌノテ、此ノ三年間ニ共濟掛
金ハ、耕作段別一万九千二百十一町八段步
トシテズツト計算致シマスレバ、共濟掛金
ノ積立ガ百十五万二千七百八圓ニナルノデ
アリマス、昭和六年ノ被害ハ四九·九一六%デ
アリマスカラ、是ハ補助令ノ適用ヲ受クル
譯デアリマス、サウ云フ基礎カラ計算致シ
マスト、此ノ保險組合ガ共濟金トシテ支拂
ハナケレバナラヌ所ノ金ハ二百三十九万七
千四百四十九圓二十五錢ニナリマス、ソレ
カラ保險掛金ノ積立額ハ百十五万二千七百
八圓デアリマスカラ、北見保險組合ノ不足
分ハ百二十四万四千七百四十一圓二十五錢
ニナルノデアリマス、此ノ半分ハ國庫カラ
利子ノ補給ヲ戴ケルコトニナツテ居リマス
カラ、先ヅ此ノ半分ダケヲ借金致シマシテ、
サウシテ此ノ共濟金ノ支拂ヲスルト云フ計
算ヲヤツテ見タノデアリマス、其ノ半額ハ
六十二万二千三百七十圓六十二錢五厘ニ
ナリマスノデ、之ヲ借金ヲ致シマシテ、サ
ウシテ今ノ支拂ヲ致シマスト、實際支拂フ
金ガ百七十七万五千七十八圓六十二錢五厘
ニナリマス、サウスルト當然支拂フベキ所
ノ共濟金ノ二百三十九万七千四百四十九圓
二十五錢ニ對シマシテ、七四%ニ相當スルノデ
アリマス、二六%ヲ削減シテ支拂ハナケレバナ
ラヌ、サウシテ組合ハ六十二万二千三百七
十圓六十二錢五厘ノ無利子ノ金ヲ借リルコ
トニナリマス、此ノ年ノ段當支拂共濟金ハ
之ヲ平均ニ削減スルモノトシテ、之ヲ支拂
ヒマス場合ニ於キマシテ、一々細カク申上
ゲマスト時間ガ掛カリマスノデ一部分ダケ申
上ゲマスガ、被害程度三割乃至四割ノモノ
ハ規定ニ依リマスト二圓五十錢ノ共濟金ヲ
受取ルベキモノガ、本年ハ一圓八十五錢ヨリ
受取ルコトガ出來ナイノデアリマス、又五割
乃至六割ノ被害程度ノモノハ規定ニ依リマ
スト十圓ノ支拂ヲ受ケマスノガ、本年ハ七
圓四十錢ヨリ受ケルコトガ出來ナイ、九割
以上ノ被害ノモノハ、規定ニ依リマスレバ二
十五圓ノ共濟金ヲ受取ルベキノガ實際ハ十
八圓五十錢シカ受取ルコトガ出來ナイ、昭
和七年モ冷害ガアツタノデアリマスガ、途
中ノ說明ハ省略致シマシテ、昭和七年ノ計
算ハ斯ウナリマス、支拂フベキ所ノ共濟金
ハ三百六十三万九千七百九十八圓八十七
錢五厘ニナリマス、此ノ年ノ保險收入、詰
リ共濟掛金ハ三十九万九千五百八圓シカナ
イノデアリマスカラ、不足額ガ三百二十四万
二百九十圓何ガシニナリマス、サウスルト
本年モ此ノ半分ノ政府ノ利子補給ヲ受ケ得
ルモノダケヲ借入致シマシテ支拂フコトニ
致シマスト、百六十二万百四十五圓四十三
錢ヲ削減シナケレバナラヌノデアリマスカ
ラ、支拂ヒ得ル金額ハ二百一万九千六百五十
三圓四十三錢トナリマシテ、五五·四九%ハ支
拂ヒマスガ四四·五一%ハ削減ノ外ハナイノデ
アリマス、ソレデアリマスカラ、實際ノ段
當支拂保險金ハ三割カラ四割ノ被害程度ノ
モノハ一圓三十八錢七厘、五割カラ六割ハ
五圓五十四錢九厘、ソレカラ九割以上收穫
皆無ト云フベキモノハ、十三圓七十八錢ノ
共濟金ヲ受ケルヨリ仕樣ガナイノデアリマ
ス、斯樣ナ計算ヲズツトシテ參リマスト、
每年々々ノ數字ハ持ツテ居リマスガ、冗漫
ニナリマスカラ之ヲ省略致シマシテ、昭和
十六年ノ計算ヲ申上ゲマス、昭和十六年ハ
昭和十一年カラ十五年マデ五箇年ハ幸ヒニ
災害ガナイノデアリマス、併シ年々災害ノ爲
ニ作付段別ガ減ツテ居リマスノデ、此ノ段
別ハ昭和十四年、十五年ノ平均ノ作付段別
ヲ見マシテ、サウシテ五箇年ノ收入ヲ計算
致シマスト、百二十九万二千八百圓ニナリマ
ス、之ヲ借金ノ辨濟ニ充テマシテモ三百五
十八万二百八十七圓九十八錢ノ借金ヲ持ツ
テ昭和十六年ヲ迎ヘルコトニナルノデアリ
マス、昭和十六年ハ最高被害率ヲ超エテ居
リマスカラ、其ノ基準ノ金額ハ百七十九万
百五十九圓八十三錢ニナリマス、然ルニ收
入ハ十八万五千五百十六圓ヨリ外アリマセ
ヌ、ソレデ今年モ前年同樣利子補給ヲ受ケ
得マスル借入金ダケヲシテ支拂フコトニ致
シマスト、其ノ借入金ハ八十万二千三百二
十一圓八十錢トナリマシテ、サウシテ實際
農家ニ支拂ヒ得ル所ノモノハ三割カラ四割
ノ被害ヲ受ケタモノハ一圓二十八錢五厘、
ソレカラ五割カラ六割ノ被害ヲ受ケタモノ
ハ五圓十四錢一厘、九割以上ノ被害ヲ受ケ
タモノハ十二圓八十五錢三厘ニナリマシテ、
組合ハ四百三十八万二千六百九圓七十八錢
ノ借金ガ殘ル譯デアリマス、斯ウ云フ風ナ
計算ヲシテ見マスト、是ハ連年借錢拂ヲ致
シマシタ上ニ、年々借金ハ增スコトニナル
ノデアリマス、第一斯カル金額デハ私ハ冷
害ノ凶作ニハ非常ニ不十分デアラウト思ヒ
マス、是デハ災害ニ相成リマシタ場合ニ於
キマシテ、農家ノ生活ヲ保證致シマシテ翌
年ノ再生產ノ準備ヲナスト云フ上ニハ、大
キナ困難ガ伴フノデハナイカト思ヒマス
各地ニ離農者ガ增加シテ來テ居リマス、不
作付地モ多クナツテ居ルコトハ洵ニ憂フベ
キコトデアリマスガ、殊ニ北海道ノ如キ生
產條件ノ劣ツテ居ル所ニ於キマシテハ、此
ノ傾向ガ特ニ激シイノデアリマス、昨日御
配付ヲ受ケマシタ所ノ資料ニ依ツテ見マシ
テモ、北海道ハ昭和十二年ニ於テハ十九万
八千八百三十八戶ノ農家ガアリマシタモノ
ガ、昭和十五年ニハ十八万一千四十六戶ト
ナツテ、一万六千七百九十二戶減ジテ居リ
マス、昭和十六年、十七年ト合シマスレバ
恐ラクハ二万戶以上ノ農家ガ減ツテ居ルノ
デアリマス、之ニ伴ツテ不作付地ガ著シク
增加シテ居ルコトハ御承知ノ通リデアリマ
ス、今假ニ例ヲ取ツテ述ベマシタ所ノ北見
保險組合管內ノ作付反別ヲ見マシテモ、昭
和六年ニハ一万九千二百十一町八反デアツ
タモノガ、昭和十六年ニハ九千二百七十五
町八反トナツテ、一万町步ノ減少ヲ來シテ
居リマス、勿論是ハ冷害バカリデハアリマ
セヌケレドモ、斯樣ニ減少致シマシタ所
ノ重要ナル原因ハ、冷害ヲ擧ゲルコトガ出
來ルト思ヒマス、私ハ農業者ノ時局認識ハ
不十分デアルトハ考ヘテ居リマセヌ、職域
御奉公ニ熱心ニ燃エ上ツテ居ルト思フ、北
海道ノ色々ノ實例ニ徵シマシテモ、原始作
物ノ爲ニ、採算ハ取レナクテモ、國家ノ用
ニ立ツト思ヒマスレバ、進ンデ是ガ生產ヲ
スルト云フヤウナ狀態デアリマス、然ル
ニ尙ホ離農シ、不作付地ヲ生ズルト云フコ
トハ眞ニ已ムヲ得ザル事態ガアルカラデア
リマシテ、其ノ心情ハ洵ニ同情スベキコ
トデアリマス、殊ニ水田耕作者ニ於キマシ
テハ經營ガ單純デアリマス、北海道ハ、二
毛作ガ出來マセヌノデ、單純デアリマスカ
ラ、一旦不作ニ遭ヒマスト、其ノ困難ガ極
メテ大キイノデアリマス、祖先墳墓ノ地ヲ
見捨テマシテ、土地ヲ離レルト云フコトハ
ヨク〓〓ノコトデアリマスノデ、北海道ニ
於キマシテハ其ノ原因ノ大キナモノガ冷害
ニアルト云フコトハ是ハ申上ゲルマデモナ
イノデアリマシテ、斯クテハ農業者ノ生活
ノ安定モ、經濟ノ合理化モ、農業者ガ君國
ニ御奉公申上ゲルコトモ出來ナイト思フ
ノデアリマス、私共斯ウ云フ考ヘヲ以テ
農家ニ接シテ居リマスガ、農業者ノ生活
ノ安定ト經濟ノ確立モ、農業者ノ爲メデ
ナク、國家ニ御奉公スル手段デアル、隨
テ現在ニ於テ許サレタル最低ノ生活ガ
保障サレ、翌年ノ再生產ガ出來レバ滿足
シテ宜イ、然ルニ今申上ゲタヤウナ共濟金
デハソレハ不可能デアリマス、隨テ何トカ
別途ニ國家ガ之ニ對スル對策ヲ御講ジニナ
ルト云フ御準備ガアリマスレバ格別、恐ラク
ハ別途ニ何カノ對策ヲ御持チ合セニナツテ居
ラレルト思ヒマスガ、冷害共濟ノ立場カラ
申シマスト、此ノ點ニ對シテ私ハ甚ダ遺憾
ニ思フノデアリマス、而モ以上ノ計算ニ依
リマスト、組合ハ年々借金ヲ增加シテ行ク
ノデアリマスカラ、忽チニシテ組合ノ經營
ガ破綻スルコトニナリハシナイカ、是ガ爲
ニドウシタラ宜イカト云フト、先ヅ組合ト
シテヤルベキ方法ハ、更ニ借錢拂ヒヲスル
ト云フコトデアリマス、結局掛金ノ程度デ
支拂ヒヲスル、此ノ程度ノ共濟ヨリ出來ナ
イト云フ、自分ガ掛ケマシタ掛金ト、政府
カラ戴キマシタ掛金ヲ合セタ程度ノ仕事ヨ
リ以上ハ出來ナイ、其ノ以上ノ借金ハ國ノ
御定メニナツタ共濟金デ支拂フコトハ困
難デアルト云フ結論ニ到達スルノデハナイ
カト思フノデアリマス、其ノ結果ハ冷害共
濟金ハ備荒貯蓄ノ域ヲ出ナイト云フコトニ
ナリハシナイカ、斯ウ考ヘルノデアリマス、
此ノ點ニ對シマシテ私ハ政府ノ御所見ヲ伺
ヒタイ、此ノ二十五圓ト云フ金額ハ不十分
ト私ハ考ヘテ居リマス、ソレデ此ノ二十五
圓ト云フ金額ヲ玆ニ揭ゲマシテモ、ソレハ
高嶺ノ花デアツテ、組合ガ其ノ金ヲ拂ツテ
ヤラウト致シマスレバ、組合自身ガ成立タ
ナイト云フヤウナ結果ニ陷ルコトハ明カデ
アル、以上申上ゲタヤウナ結論ニ到達スル
コトニナリマス、之ニ對スル當局ノ見解ハ
如何デアリマスルカ、承ツテ見タイノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=8
-
009・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今御話ノ點ニ付キ
マシテハ、一ツノ過去ノ實例ニ付テ、ソレヲ
本トシテ色々御計算ニナツタヤウニ承ツタ
ノデアリマスガ、其ノ點ガ先程申上ゲマシ
タヤウニ、冷害ト云フモノハ如何ナル頻度
ニ於テ、如何ナル周期ヲ以テドウ云フ風ニ、
永年ノ傾向トシテ現ハレテ來ルモノデアラ
ウカト云フコトニ付テ、吾々ノ方トシテハ
之ヲ正確ニ取扱フ資料ガナイノデアリマス、
隨ヒマシテ之ヲ保險事故ノ對象トスルコト
ガ出來ナイト云フコトハ先程申上ゲタ通リ
デアリマス、隨テ今後ニ於キマシテ如何
ナル程度ニ此ノ冷害ノ被害ト云フモノガ發
生スルカト云フコトハ、吾々トシテハ正確
ナ資料ニ基ク見透シト云フコトガ不可能ナ
狀態ニアルノデアリマス、隨ヒマシテ冷害
ニ付テハ差當リ第二類ノ共濟事業トシテヤ
ル、是ハ要スルニ共濟金ヲ集メテ、被害率
ガドウ斯ウト云フノデ保險ノ程度ヲ正確ニ
ヤルトハ申シ得ナイ、集マツタ金デ共濟ヲシ
テ行ク、斯ウ云フコトデヤツテ行クヨリ現
狀ハ致シ方ガナイノデアリマス、ソレニ對
シテ國ガ東北北海道ノ米作ノ關係モ十分考
ヘマシテ、其ノ共濟金ノ一部負擔ヲスル、
斯ウ云フ考ヘ方デ行ツテ居ル譯ナノデアリ
マス、隨テ今後如何ナル狀態ニ冷害ガ發生
スルカト云フ豫測ヲ致スコトハ、非常ニ困難
デアリマス、其ノ結果ハドウ云フ結果ニナ
ルカ、又組合トシテ如何ナル經營狀況ニナ
ルカト云フコトハ、確タルコトハ申シ得ナ
イノデアリマス、御說ノヤウナ事態ニ或ハ
ナルカモ知レヌ、又或ハ冷害ノ生ジマス頻
度、囘數ト云フモノガ最近ノ如クデナカツ
タナラバ、更ニ餘裕ガアル經理ガ出來ルノ
デハナイダラウカト考ヘラレルノデアリマ
ス、尙ホ二十五圓トスレバ冷害ノ起リマシ
タ場合ノ共濟金ガ不十分デアルト云フコト
デアリマスガ、吾々モ之ヲ以テ非常ニ十分
ナルモノトハ考ヘテ居ラヌノデアリマスガ、
此ノ共濟金ヲ引上ゲルコトニ致シマスレバ
冷害ニ付テハハツキリシタ基礎ガナイノデ
アリマスカラ、共濟掛金ト云フモノハ相當
ニ高ク致サナケレバ、組合ノ經理ト云フモ
ノガ是亦成立タナイト云フコトニ相成ルノ
デハナイカト思フノデアリマス、其ノ邊ハ
今マデヤツテ見マシタ沿革ト、農民ニ對ス
ル負擔關係ト云フモノモ考ヘテ、反當共濟
金ト云フモノヲ決メデ行クノガ、實情ニ卽
シタヤリ方デアラウト考ヘマスノデ、差當
リノ問題ト致シマシテハ反當二十五圓ト致
スノガ、實際問題トシテ適當ナ所デアラ
ウ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=9
-
010・安孫子孝次
○安孫子委員 私ガ今御質問申上ゲマシタ
所ノ計算方法ハ、正シイト認メテ宜シウゴ
ザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=10
-
011・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今ノ計算ノ點ハ各
郡ノ被害別其ノ他ヲ、私ノ方ノ資料デ十分
調ベテ計算シテ見ナケレバ、計算上問題
デアリマスカラ、今御述べニナリマシタノ
ガ、其ノ通リ正確ナ結果ニナルモノカドウ
カ、只今此處デ御答ヘヲ申上ゲルコトハ困
難ダト思ヒマス、尙ホ十分調査ヲ致シマシ
タ上デ〓究ヲシテ見タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=11
-
012・安孫子孝次
○安孫子委員 私ハ數字ノ適否ヲ御尋ネ申
上ゲタノデハナイノデアリマス、計算ノ筋
道ガサウナリマスカ、左樣ナ計算デ行クコ
トガ、計算ノ筋道トシテ當局トシテ御決メ
ニナツタ方法ニ卽シテ居ルカドウカト云フ
點ヲ私ハ御伺ヒシタノデアリマス、私ノ計
算ガ誤ツテ居リマスレバ、是ハ申上ゲテモ
何ニモナラヌコトニナリマスカラ··発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=12
-
013・石井英之助
○石井(英)政府委員 計算致シマス筋道ハ、
大體御話ニナリマシタヤウナ筋道デ進行致
スト考ヘマス、併シ其ノ被害率ヲドウ取ル
カ、何ヲドウ取ルカト云フコトニ依リマシ
テ今ノ數字ハ基礎ガ違ヘバ相當ニ違ツテ
參ルダラウト思ヒマス、ソレガ如何ナル年
ニドウ起ツテ來ルカト云フ今後ノ見透シニ、
御話ノ事實ガ其ノ儘基礎ニナリ得ルカドウ
カト云フコトニ付テハ、相當〓究ヲ要スル
問題ガアラウト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=13
-
014・安孫子孝次
○安孫子委員 今私ハ色々ト實ハ考ヘテ
見タノデアリマスガ、考ヘル結果ハ結局組
合ノ經營ヲ安全ニ致シマスト、先程申上ゲ
タヤウニハツキリト政府ノ掛金ニ對スル補
助ノ程度以上ニスルコトハ困難デアラウ
ト云フ結論ニ達スルノデアリマス、ソレカ
ラ二十五圓ト云フ金額ヲ拂フヤウニスルト、
組合ノ經營ガ成立タナイト云フ結論ニ、私
ノ計算ニ於テハナルノデアリマス、ソレデ
アリマスカラ斯ウ云フノデハ到底農家ヲ
シテ組合ニ加入サセルコトハ困難デアル、
奬勵サレマシテモ勸誘上非常ニ困難デアル
ト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレニ伴ツテ私
ハ次ノコトヲ御伺ヒシタイ、今統計上色々
過去ノ實績カラ、第一例ニ入レルコトハ困
難デアルト云フコトデアリマスレバ、ソレナ
ラバ斯ウ云フコトハ出來ナイカ、是ハ農林
省御擔當ノ色々ノ仕事ニ於テモ、旣ニオヤ
リニナツテ居ルコトデ、損失補償ノ制度ガ
アルヤウニ承知致シテ居リマス、負債整理
問題トカ、或ハ國策會社等ノ問題ニ於キマ
シテモ、損失補償ノ制度ガアルノデアリマ
スガ、共濟組合ニモ斯クノ如キ制度ヲ採リ
入レテ、經營ヲモウ少シ安全化スルコトニ
依リマシテ、モウ少シ國ガ決メラレタ所ノ
共濟金ニ近イ金ヲ拂ヒ得ルト云フコトモ出
來ルカト思フノデアリマス、此ノ點ニ對シ
マシテ當局ハサウ云フ御考ヘヲ御持チニナ
ツテ居ルカ、或ハ今後サウ云フ點ニ對シテ、
ドウ云フ御見解ヲ御持チニナツテ居ルカ伺
ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=14
-
015・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今御話ノ點ハ、組合
ノ運營ト云フモノヲ確實ニヤツテ行カウト
スレバ、二十五圓ノ支拂ハ難カシイ、二十
五圓ノ支拂ヲ確保スル爲ニハ、組合ノ運營
ガ旨ク成立タヌ、斯ウ云フコトニナルガ、
ソレヲ二十五圓拂ヒ得ルヤウニシテ、且又
組合ノ運營モ十分ニ行クヤウニ、何カ別途
ノ方法ヲ採ル考ヘハナイカ、斯ウ云フ御尋
ネノヤウニ承ツタノデアリマスガ、二十五
圓ノ支拂ヲ致シテ、組合ノ運營ト云フモノ
ヲ十分ニヤツテ行クト云フコトニナレバ
共濟掛金ト云フモノヲ十分ニ致シテ置ケ
バ、是ハ問題ナイコトハ申上ゲルマデモナ
イノデアリマス、其ノ共濟掛金ト云フモノ
ヲドノ程度ニシテ置ケバ、長年ノ共濟制度
トシテ固マツデ行クデアラウカト云フ見透
シガ付カナイガ故ニ、之ヲ保險事故ノ對象
ニ致サナカツタノデアリマス、其ノ根本ノ
所ノ事情ヲ一ツ十分御諒解願ヒタイト思ヒ
マス、差當リノ冷害共濟ノ問題トシテハ
凡ソノ見當ヲ付ケ、共濟ノ掛金ヲ農家ノ負
擔ノ事情モ考ヘテ決メテ參ツテ、サウシテ
或ル程度金ガナイ場合ニハ、打切ルト云フ
制度デヤラザルヲ得ナイト云フ根本ノ事情
ガアル譯デアリマス、之ヲ非常ニ共濟掛金
ヲ高ク致シマスレバ、實行上ニ於テ非常ニ
困難モ生ジテ參リマセウシ、ソコニ水稻冷
害共濟ニ對スル考ヘ方ニ、或ル意味ニ於テ
ノ不徹底ヲ免レナイ根本ノ原因ガアル譯デ
アリマス、デアリマスカラ此ノ冷害ニ對
スル共濟制度ト云フモノハ、合理的ナル基
礎ノ上ニ漸次堅實ナモノニ固メテ行クト云
フ努力ヲ、吾々トシテハ致シタイト思フノ
デアリマス、其ノ邊ガ固マツテ參リマセヌ
ト、今御話ノヤウナ意味ノ補償ト云フヤウ
ナコトニ參リマスルコトハ困難デアラウ、
斯ウ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=15
-
016・安孫子孝次
○安孫子委員 今ノ御答ニ依リマスト、私
ハ此ノ冷害施設ヲ北海道ニ-東北地方モ
同樣ダラウト思ヒマスガ-實行サセルニ
ハ非常ニ困難ヲ伴フデアラウト云フ見透シ
ヲ付ケテ居ルノデアリマスガ、尙ホ斯ウ云
フ點ヲ考ヘナケレバナラヌノデアリマス、
水稻ノ冷害共濟事業ヲヤル爲ニハ、勿論第
一例ノ農業保險モヤラナケレバナラヌト思
フノデアリマスガ、サウシマスト冷害地方
ノ農業者ハ二ツノ組合ニ加入シナケレバナ
ラヌ、二重ノ掛金ヲシナケレバナラヌト云
フコトニナルノデアリマス、殊ニ北海道ノ
事情ハ、風水害ニ於キマシテモ、早害ニ於
キマシテモ、霜害ニ於キマシテモ事故ガ
極メテ少イノデアリマス、特ニ水田面積ノ
三分ノ二ヲ占メマス所ノ石狩地方、卽チ上
川、空知ノ如キ水稻ノ北海道ノ中樞地帶ニ
於テハ、其ノ災害ハ問題ニナラヌノデアリ
マス、斯カル場合ニ於テ兩者ヲヤラセルト
云フヤウナコトハ、私ハ非常ニ困難ナコト
デアラウト思フノデアリマス、一方ノ第一
例ノ保險事故ニ對シマシテハ是ハ當然デア
リマスガ、ソレヲヤリ、更ニ冷害共濟ヲヤ
ルト云フヤウナコトハ、不可能ニ近イコト
デハナイカト考ヘルノデアリマス、私自身
ガ斯ウ云フコトヲ御尋ネ申上ゲルノハ、政
府ノ御趣旨ハ宜シイノデアリマスカラ、出
來ルダケ之ヲヤツテ見ヨウト云フ考ヘヲ持
ツテ居リマスガ、併シ實際ヤル上ニ於キマ
シテ非常ニ困難ヲ伴ヒマスルト、是ハ政府
ノ計畫ナサイマシタ其ノ企圖ニ副ハナイコ
トニナルノミナラズ、却テ農業者ニ色々ナ
非常ナ困難ナ事態ヲ生ズルコトニナルノデ
ハナイカト云フ心配ヲ持ツテ居ルノデアリ
マスカラ、斯ウ云フ風ニ再度ニ亙ツテ御伺
ヒヲスルノデアリマス、殊ニ水害ノ如キモ
過去ノ統計ニ於キマシテハ、北海道ハ相當
ニアツタノデアリマス、併シ最近治水事業
ガ段々完備ヲ致シマシテ、殆ド水害ノ被害
ハ極ク局部ニ限ラレマシテ、大キナ被害ハ
ナイト言ツテモ宜カラウト思フノデアリマ
スノデ、斯樣ナ意味合ニ於キマシテ二ツヲ
ヤルト云フコトハ可ナリ困難デアルト思フ
ノデアリマスルガ、此ノ點ニ對シマシテ伺
ヒタイノデアリマスガ、必ズ兩者ヲヤラナ
ケレバナラヌカドウカ、共濟事業ノミヤツ
テドウカト云フコトデアリマス、共濟事業
ノミヤルコトガイケナイトシマスレバ、第
一例ノ保險事業ヲ極メテ少額ニ止メテヤル
コトハドウカト云フ意見デアリマスルガ、
之ニ對スル當局ノ御見解ヲ伺ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=16
-
017・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今御尋ネノ點ニ付
キマシテハ、昨日モ申上ゲマシタ通リ、保險
ノ今囘ノ擴充ニ付キマシテハ豫テカラノ民
間側ノ御意向モアリマシテ、政府ニ於テ相
當ノ負擔ヲ致シマスルト共ニ、全國ノ農民
ガ全部此ノ共濟制度ニ參加ヲ致シマシテ、
全部ノ農民ノ總力體制ニ依ツテ、國ト一〓
ニ農業ノ共濟保險制度ヲ整備シテ行クノデ
アル、斯ウ云フ建前ノ下ニ、總テ計畫ヲ致
シテ居ルノデアリマス、今囘ノ農業保險ノ
改正モ、サウ云フコトヲ指導上萬全ヲ盡ス
コトハ勿論デアリマスガ、ソレデ尙且ツ十
分ニ行キマセヌ場合ニハ、其ノ事項ヲ命令
シ得ルヤウナ權限ヲ法律ニモ決メタ、斯ウ
云フ關係ニ相成ツテ居ル譯デアリマスカラ、
農業保險ノ方面ハ全國農民ノ協力的ナ總共
濟制度ノ實ヲ擧ゲルヤウニ致シタイト考ヘ
テ居ルノデアリマス、北海道ニ付テ色々御
話ガゴザイマシタガ、內地ニ於キマシテモ
比較的保險事故トナツテ居ルヤウナ災害ノ
少イ地域モ部分的ニハアルノデアリマスケ
レドモ、是等ノ地方ニ於キマシテモ、今ノ
趣旨カラ全部共濟保險制度ニ參加ヲシテ貰
フヤウニ御指導ヲ願ヒ、又吾々トシテモ努
力ハ致シタイト思ツテ居ルノデアリマス、
隨テ今御尋ネノ點ニ付キマシテモ、是ハ水
稻冷害ヲ行ヒマス場合ニ於テモ、保險ノ方
ハ必ズ參加ヲシテ貰フ、斯ウ云ウコトニ進
ンデ參リタイト思フノデアリマス、水稻冷
害ノ共濟ト普通ノ保險ノ兩者ヲ實行致シマ
スル場合ノ調整ニ付キマシテハ、各地方ソ
レゾレノ實情ニ卽シマシテ、適宜ノ處置ヲ
考ヘタイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=17
-
018・安孫子孝次
○安孫子委員 今御答辯ノ中ニモアツタヤ
ウニ、保險事業ヲ全國ノ危險分擔ノ上ニ於
テヤルト云フ御方針ニ對シマシテモ、私共
豫テ御願ヒシタコトデアリマスカラ、其ノ
點ニ關シテハ全然贊成ヲシテ居ルノデアリ
マスガ、運營上非常ナ困難ナ事態ガ茲ニ出
テ居リマスノデ、ソレニ對シテ何カノ御考
慮ヲ拂ツテ戴ケルノデナケレバ、私ハ冷害
地方ニ於キマシテハ政府ガ折角改正ニナリ
マシタ此ノ保險ノ事業ガ圓滑ニ進ミ得ナイノ
デハナイカト云フ心配ヲ、今ノ御答辯ヲ伺
ツテモ、拔ケ切ラナイノデアリマス、此ノ
點ニ對シテ私ハ尙ホ十分ニ御考慮ヲ御願ヒ
シタイノデアリマスガ、非常ナ困難ナ事態
ニ遭遇スルノヂヤナイカ、斯ウ私ハ見透シ
ヲ付ケテ居リマス
次ニ斯ウ云フコトヲ御伺ヒシタイノデア
リマス、冷害ハ不可抗力ノ災害デアリマス
ケレドモ、或ル程度マデハ人力ヲ以テ輕減
ガ出來ルノデアリマス、例ヘバ北海道ノ過
去ノ冷害ヲ見マスト、大正十二年ノ凶作ハ
全道ノ反收ノ平均ハ七升七合デアリマス、
併シ最近ノ冷害ハ、殊ニ昭和十六年ノ如キ
ハ大正十二年ノ氣候ノ狀況ニ比ベマシテサ
ウ好クナカツタノデアリマスガ、ソレデモ
半作程度ノ收穫ヲ擧ゲテ居ルノデアリマシ
テ、是ハ其ノ後ノ品種ノ改良ヤ、耕種ノ改
善等ニ依ツテ段々冷害ガ輕減サレテ來タ結
果デアラウト考ヘマスガ、殊ニ冷害ヲ考ヘマ
スト、冷害ハ大體二ツノ場合ヲ考ヘルコト
ガ出來ルノデアリマス、ソレハ秋早ク冷氣
ガ來マシテ、結霜ガ早カツタ場合ト、夏ノ低
溫ノ場合デアリマス、此〓點カラ見マシテ
北海道ノ品種改良事業ハ可ナリ進步致シマ
シテ、極ク早熟ノ品種ハ播種後百二十日位
デ結實シマスノデ、秋ノ霜ニ對スル被害ノ輕
減ハ相當出來ルト思フノデアリマス、併シ
夏ノ低溫ニ對スル所ノ災害ニ對シマシテハ、
是ハマダ〓〓〓究ガ足リナイノデアリマス、
併シ府縣ノ品種ト北海道ノ品種ト冷氣ニ對
スル所ノ抵抗力ヲ見マスト、府縣ノ品種ハ
〓ネ攝氏二十度、詰リ穗朶期カラ出穗、開花
ノ時期ニ際シマシテ攝氏ノ二十度以下ニ下リ
マスト凶害ノ兆候ガ現ハレマスガ、北海道ノ
品種ハ大體攝氏ノ十七、八度カラサウ云フ兆
候ヲ現ハスノデアリマス、サウシマスト一、三度
ノ差ガ現ハレテ來ルト云フコトハ品種改良
ノ餘地ガ非常ニアルコトヲ示スノデアリマ
ス、又土地改良ニ依リマシテ、或ハ水溫ノ
上昇施設ニ依リマシテ、或ハ溫床ノ施設ニ
依リマシテ此ノ冷害ヲ輕減シ得ル事實ハ澤
山現ハレテ居ルノデアリマス、又經營改良
ニ依リマシテ北海道ニ於キマシテハ北見地
方、上川地方ニ於テ色々〓究ハ進ンデ居リ
マス、水田ヲ有畜化スルコトニ依リマシテ、
水田ヲ極メテ小部分ヲ畑地ニ還元シ、更ニ集
約ナル方法ニ於キマシテ家畜ヲ利用スルコト
ニ依ツテ經營全體ヲ安全化スルト云フヤウ
ナ方法モ進メラレテ居ルノデアリマス、又
農事實行組合ノ活動ニ依リマシテ、互ニ相
助ケ合フト云フ施設ガ十分ニ完成シテ居リ
マス所ハ、同ジ冷害ニ遭ヒマシテモ被害ノ程度
ガ少イト云フヤウナ事實モ澤山アルノデア
リマスガ、之ニ對スル政府ノ施設ヲ見マス
ト洵ニ貧弱デアルト思フノデアリマス、御
配付ノ資料ニ依ツテ見マスト、此ノ方面ニ對
スル國庫ノ支出ハ昭和十六年ニ於テハ約三
十万圓、十七年ニナリマシテソレガ減リマ
シテ二十四万圓、此ノ東北、北海道ニ取リマ
シテ非常ニ廣範圍ニ亙ル所ノ冷害ニ對スル
〓究奬勵施設トシテハ極メテ貧弱デアル、
是デハナラヌト私ハ考ヘルノデアリマス、
保險ニ依リマシテ災害ヲ救フコトモ勿論大
切デアリマスガ、ソレヨリモ先ヅ冷害ノ被
害ヲ輕減スル方法ヲ茲ニ確立スルコトガ先
決問題デナケレバナラヌノデアリマスカラ、
此ノ點ニ對シマシテ、是ハ政府ニ於テモ御
考ヘデアルト思ヒマスガ、更ニ之ニ對シマ
シテハ十分ナル國帑ヲ御出シ下サイマシテ、
〓究奬勵施設ヲ擴充シテ戴キタイト思フノ
デアリマス、殊ニ今米價ノ問題ガ非常ニヤ
カマシクナツテ居リマスルガ、特ニ困難ヲ感
ズルコトハ所謂低生產地帶デアリマス、或
ル地帶ハ現在ノ米價デモ、先程私ガ申シマ
シタ農業者ハ最低生活ヲ茲ニ確立サレ、翌
年ノ再生產ヲ爲シ得ル程度ニ甘ンジナケレ
バナラヌト云フ所ノ其ノ原則カラ言ヒマス
レバ、現在ノ米價デモ間ニ合フ地帶モアル
ト思ヒマス、併シ低生產地帶、特ニ冷害ノ
地帶ハドウシテモ現在ノ事情デハ非常ニ困
難ニ陷ツテ居リマスノデ、重點的ニ其ノ方
面ニ特殊ノ御施設ガナケレバナラヌト思フ
ノデアリマスガ、此ノ點ニ對シマシテ當局
ノ御考ヘヲ伺ヒタイノデアリマス、第一ハ
現在ノ施設ヲ擴充スル御意圖ガアルカドウ
カ、又サウ云フ冷害地帶ニ於キマシテ特殊
ノ重點的ノ御支出ガ今後ニ計畫サレル所ノ
御意圖ガアルカドウカ、其ノ點ニ對シマシ
テ御所見ヲ御伺ヒ申上ゲタイト思フ次第デ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=18
-
019・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今御述べニナリマ
シタ點ニ付テハ、吾々ノ方トシテハ悉ク御
同感デゴザイマシテ、先程來申上ゲマシタ
ヤウニ、冷害防除ノ問題、又冷害ノ性質ニ
關スル科學的ナ〓究ト云フモノハ、今後出
來ル限リ早ク進メテ之ニ對スル共濟施設モ
防除ノ方ト併セテ完璧ヲ期スルヤウニ致シ
タイト考ヘテ居ルノデアリマスルカラ、此
ノ冷害ノ防除ニ關シマスル試驗〓究ノ施設
ヲ擴充スルト云フコトニ付テハ、今後出來ル
ダケノ努力ヲ致シタイト考ヘテ居ルノデア
リマス、其ノ方法ノ中ニ自ラ第二ノ御尋ネ
ノ地方的ニ特殊ノ施設ヲ講ジテ參ルト云フ
ヤウナ問題モ起ツテ參ルノデハナイカ、斯
樣ニ考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=19
-
020・安孫子孝次
○安孫子委員 今ノ御答辯ノ結果ニ依ツテ
考ヘマスト、冷害地帶、特ニ北海道ニ於キ
マシテハ此ノ冷害ノ施設ヲ奬勵致シマス上
ニ非常ニ困難ガアルト云フコトヲ重ネテ申
ゲマシテ、私ハ玆ニ御質問ヲ終リニ致シ
マスルガ、之ニ對シテ多少ノ意見ヲ持ツテ
居リマスルノデ、是ハ次ノ別ノ機會ニ於テ
申上ゲタイト思ヒマス、是デ私ノ御質問ヲ
終ルコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=20
-
021・池田秀雄
○池田委員長 安孫子君ノ御質問ガ終リマ
シタガ、竹內俊吉君如何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=21
-
022・竹内俊吉
○竹內委員 去ル一月十日茨城縣內原ニ於
テ全國農村ノ中堅指導者一万五千餘名ヲ前
ニシテ陸軍省ノ谷萩報道部長ガ農村ニ對ス
ル激勵ノ演說ヲサレタノデアリマス、此ノ
演說ノ要旨ヲ新聞デ讀ミマスルト、現在農
村ガ惱ミトシテ居ル事柄ノ重點ニ殆ド觸レ
ラレ、端的ニ之ヲ衝イテ居ルヤウニ感ジマ
シテ、洵ニ感銘深カツタデノアリマス、此ノ
演說要旨ノ中デ、諸物價ガ非常ニ〓揚シタ
中デ、米、雜穀ハ低物價方針ニ制約サレテ其
ノ割ニ上ラナカツタ爲ニ、農家ノ收支ニ不
均衡ヲ來シ、其ノ爲ニ農村ガ時局下不過ノ
位置ニアルコトハ陸軍ハ之ヲ肯定スルト云
フコトヲ斷言致サレテ居ルノデアリマス、
兵隊ヲ澤山出シテ居ル農村ニ對シ軍ガ格別
ノ關心ノ深イコトハ當然ノコトデアラウト
思フノデアリマシテ、谷萩報道部長ノ此ノ
演說ハ、率直ナル農村ニ對スル軍ノ意見デ
アラウト考ヘマス、又此ノ演說ガ直接ニハ
一万五千ノ中堅指導者ヲ通シテ、或ハ國民
ニハ新聞ヲ通シテ非常ニ日本ノ農村全體ニ
深イ感動ト衝動ヲ與ヘタコトト私ハ思ツテ
居リマス、戰爭ガ一切ヲ指導スル此ノ政治
ノ現段階ニ於テ、軍ノ此ノ意見ハ農政當局
トシテモ重要視シテ置カナケレバナラヌ所
デアルト私ハ考ヘルノデアリマス、農林當局
ハ之ニ對シテドウ云フ御感想ヲ持ツテ居ラ
レマスカ、其ノ點ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=22
-
023・石黒忠篤
○石黑政府委員 只今ノ御尋ネニ御答ヘ致
シマス、本委員會ニ於キマシテモ昨日以來
他ニモ御質問ガゴザイマシタ通リ、又其ノ
場合ニ於テ私共モ御述べ致シマシタ通リ、
農產物價ノ關係ハ、現狀ニ於キマシテ色々
ト問題ヲ孕ンデ居ルコトハ事實デゴザイマ
シテ、吾々モ豫テ此ノ點ニ付キマシテハ色
色ト考究モ致シ、苦慮モ致シテ居ルコトデ
アリマシテ、其ノ關係ニ付キマシテ何モ報
道部長ノ話ニ依ツテ事新シイコトヲ感ジタ
ト云フヤウナコトハゴザイマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=23
-
024・竹内俊吉
○竹內委員 報道部長ノ演說デ事新シイコ
トヲ御感ジニナラナカツタト云フ御答辯デ
アリマシタガ、事新シイトカ、新シクナイ
ト云フ問題デナク、現下ノ農村事情ニ對シ
テ軍ガ特ニ御心配ヲサレテ、アノ一万五千
ノ中堅指導者ノ前ニ於テ之ヲ愬ヘタト云フ
コトハ重大ニ考フベキ事柄デアルト考ヘマ
ス、其ノ理由ノ詳細ニ付キマシテハ、申上
ゲルコトハ適當デハナイト思ヒマスカラ申
上ゲマセヌガ、銃後ノ生活ノ安定ニ於テド
ノ部面ガ安定率ガ良イト云フ、サウ云フ安
定ノ序列ノアルベキ筈ハ勿論ナイ、勿論ナ
イノデアリマスガ、現在ノ日本ノ實態カラ
見テ、農村ノ銃後生活ノ安定ト云フコトハ
最モ是ハ重要視シナケレバナラヌコトデア
ラウト私ハ考ヘマス、其ノ點カラ見テ軍ガ
國民職能層ノ中ニ於テ、農村ト中小商工業ガ
最モ不遇ノ位置ニアルコトハ肯定スルト云
フコトヲ斷言サレタト云フコトハ、之ヲ端的
ニ言ヘバ政治ト政治家ニ對シテ私ハ軍ガ一
大警告ヲシタモノデアルト受取ルノデアリ
マス、私ハ今此處デ米ノ値段其ノモノヲ引
上ゲヨト云フコトヲ中スノデハアリマセ
又、米價ノミガ農村及ビ農家經濟ノ生活安
定ノ全條件デナイコトモ承知シ、テ居リマ
ス、米價ノ操作ガ色々ノ副作用ヲ齎スノデ、
是ハ單ナル比較物價論ヤ原價計算論一本デ
行ケナイ事情モ分ルノデアリマス、併シナ
ガラサウシタ物價論ニコダハツテ居ツテ、
此ノ農村ノ生活安定ヲ失フト云フヤウナコ
トガアツテハナラヌコトガ總テノ前提條件デ
アラウト考ヘマス、農林大臣ハ豫算總會、
其ノ他ノ機會ニ於テ米ノ値段ハ上ゲナイ、
併シナガラ生產費ヲ割ルヤウナコトノナイ
ヤウニ措置ヲシテ行ク考ヘデアルト云フコ
トヲ申シテ居リ、又別ノ方法トシテハ米麥
其ノ他ノ生產費ノ低下及ビ經營ノ合理化ニ
依ツテ之ヲナシテ行クト云フ御答辯ヲサレ
テ居ルノデアリマスルガ、私ハ此ノ生產費
ノ低下及ビ經營ノ合理化ト云フ大臣ノ申サ
レタ言葉ノ中ニ大キイ政治的意味ガアリ、
ソコニ大キイ思索ガ含ンデ居ルデアラウト
考ヘルノデアリマスガ、其ノ農產物ノ生產
費ノ低下及ビ是ガ經營ノ合理化ト云フモノ
ハ、具體的ニハドウ云フ內容ヲ持ツテ居ル
ノデゴザイマスカ、其ノ內容ニ付テ伺ヒタ
イト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=24
-
025・石黒忠篤
○石黑政府委員 經營ノ合理化、生產費ノ
低下、其ノ方途ニ付テハ勿論非常ニ數多ク
アルト存ジマス、例ヘマスレバ耕地ニ付テ
ノ土地ノ改良、或ハ農村ニ於ケル立地狀態
カラ現ニ存スル所ノ非常ニ勞力ヲ要スル事
態ヲ改善スルコト、或ハ多收穫品種ノ發見、
或ハ其ノ普及、又ハ耕作技術ニ付キマシテ
モ、例ヘバ最小ノ肥料ヲ以テ最大ノ收穫ヲ擧
ゲルヤウナ方法ノ普及、其ノ他多々アルヤ
ウニ存ズルノデアリマス、吾々ト致シマシ
テモ現在左樣ナ諸點ニ付キマシテ色々ト施
策ヲ致シテ居ルノデアリマス、所デ現在ノ
實績ガ十分デアルカドウカト云フコトニ付
キマシテハ、率直ニ申シマスト、吾々ト致
シマシテモマダ十分トハ存ジテ居リマセヌ、
殊ニ例ヘバ品種ノ發見改善トカ、或ハ耕
種方法ノ改善トカ、色々良イ方法ガアリマ
シテモ、未ダ十分ニ實際ノ農家ニソレガ滲
透シテ居ラナイト云フヤウナ憂ヒガ多々ア
ルヤウニ存ズルノデアリマス、斯樣ナコト
ニ付キマシテ私共ト致シマシテハ、本年殊
ニ力ヲ加ヘタイ、從來カラソレハ勿論ヤツ
テ居リマスケレドモ、實際ニ滲透スルト云
フコトニ付キマシテ、殊ニ力ヲ致シ實績ヲ
擧ゲルヤウニ運ンデ參ラナケレバナラヌト
云フ風ニ存ジテ居リマス、今後尙ホ益〓努
メナケレバナラヌ餘地ガ非常ニ多イコトヲ
感ジテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=25
-
026・竹内俊吉
○竹內委員 只今ノ農林次官ノ御答辯デハ
土地改良、多收穫ノ品種發見、其ノ他ノコ
トヲ申サレマシタガ、斯ウ云フ事柄ハ何レ
長イ期間ニ於テハ勿論生產費ノ低下ト云フ
コトニ相成ルノデアリマセウガ、吾々ガ今
問題ニシテ居ル生產費ノ低下ト云フコトハ、
サウ云フ五年、十年先ノ生產費ノ低下ノコ
トデハナイノデアリマシテ、端的ニ言ヘバ
明年ノ生產費低下ト云フコトニ關聯シテノ
コトナンデス、折角ノ御親切ナ御答デアリ
マスガ、私ハサウ云フコトデアツテハ、現
下農村ガ求メテ居ル生產費低下ト云フコト
ニハ大シタ效果ハナイ、寧ロ土地改良ノ如
キハ、之ヲ今年行ヘバ明年ノ生產費ノ低下
ニナル、是ガ〓騰スルコトハ土地ニ對ス
ル資本ノ昂騰デアリマスカラ當然デアリマ
ス、サウ云フ意味デナク、現下ノ米價問題
ト睨合セテノ生產費低下ヲ私ハ申上ゲテ居
ルノデアリマシテ、此ノ點ニ付テハモウ一
度御答ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレニ付テ
考ヘマスコトハ、農林大臣ガ米ノ値段ハ上
ゲナイ、併シ生產費ヲ割ルヤウナコトガナ
イヤウニ處置スル、詰リ補助金ガ行ク必要
ガアレバ、補助金デ行カナケレバナラヌト
云フヤウナコトヲ申サレテ居ルト云フコト
ヲ聽キマシテ、農林省トシテハ肚ガモウ決
ツテ居ルノヂヤナイカト私ハ考ヘル、肚ガ
決ツテ居ルモノトスレバ之ヲ成ベク早イ機
會ニ明カニサレタ方ガ今年ノ增產ニ非常ニ
大キイ效果ガアラウト思ヒマス、若シ肚ガ
決マラヌト云フコトデアツテ、唯大體ノコ
トヲ申上ゲテ居ルノダ、肚ガ決ラヌ理由ト
シテハ調査ガ不十分ダトカ、サウ云フコトデ
アラウト思ヒマスガ、或ハ四月三十日マデ
ニ米價ノ〓示ヲスレバ宜イコトニナツテ居
リマスカラ、ソレマデ持越スノダ、今之ヲ
發表スレバ色々ナ弊害ガ起ルト云フ御考ヘ
デアルカモ知レマセヌガ、現在ハ御承知ノ
通リ、農村デハ小作契約ノ更新期デアリマス、
又來年ノ耕作ノ準備ヲ致ス爲ニハ種籾ノコ
トカラ何カラ大體ニ於テ此ノ一月位ノ中ニ
ヤルノデアリマス、斯ウ云フ面ヲ考ヘテモ肚
ガ決ツテ居ルモノトスレバ、成ルベク之ヲ
早ク明カニサレタ方ガ非常ニ效果ガアラウ
ト考ヘマスガ、其ノ點如何デゴザイマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=26
-
027・石黒忠篤
○石黑政府委員 先程私ガ申シマシタコト
ニ付テ當面ノ生產費低下ニナラヌト云フ御
話デゴザイマシタガ、ソレハ今申シマシタ
ノハ極ク大雜把ナ御話デゴザイマスガ、私
ガ假ニ例トシテ擧ゲマシタモノモ相當當面
ノ生產費ノ低下ニナルト思ヒマス、土地ノ
改良ニ致シマシテモ、私モ地方デ經驗ガゴ
ザイマスガ、事實其ノ施設ヲヤツテ其ノ年
カラ收穫ガ非常ニ殖エ、而モソレガ一時ニ金
ガ要ツタラウト云フコトデアリマセウガ、
現金支出ニ付テハ相當ナ補助金モ出テ居リ
マスシ、其ノ他致シマシテ、格別當面エラ
イ負擔ニモナラナイデ、而モ生產費ハ增收
ニ依リマシテ低減シテ居ルト云フ事實ガア
リマス、ソレカラ耕作方法ノ改善ト云フヤ
ウナコトハ、是ハ直チニ生產費ノ低下ト云
フヨリモ、增收ト云フコトガ正シイノデア
リマセウガ、延イテ生產費ノ低下ニモナル
ト云フコトガアル譯デアリマス、併シ勿論
私ノ申シマシタ事柄ガ先ヅ總テデアルトハ
存ジマセヌノデ、廣ク各方面ノ有益ナル御
意見ニ依リマシテ、今御話ノヤウナ目途ニ
向ヒマシテ、最善ノ努力ヲ致シタイト思フ
ノデアリマス、尙ホ今大臣ノ答辯ニ關聯致
シマシテノ御話ガ最後ニゴザイマシタガ、
小作ノ更新期云々ノ御意見モゴザイマシタ
ガ、何レニ致シマシテモ今日ノ場合ニ於キ
マシテ恐ラク大臣ガ述ベマシタ以上ノコト
ヲ申述ベルベキ別ニドノ方面ニ-要スル
ニ大臣ト致シマシテハ此ノ價格關係ノコト
ニ付テ非常ニ苦慮シテ居ル、是ハ事實吾々
モ色々相談ヲ致シテ居リマスカラ、其ノ事
ヲ申シタノダト思ヒマスガ、ソレ以上ニソ
レガドウ云フ方向ニ向ツテ居ルト云フヤウ
ナコトヲ今玆ニ申スヤウナ段階ニハ至ツテ
居ラナイト云フコトハ間違ヒナイコトデア
リマシテ、折角ノ御尋ネデアリマスケレド
モ、其ノ點ニ付テハ申上ゲルモノヲ持ツテ
居リマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=27
-
028・竹内俊吉
○竹內委員 私ハ今ノ點ガ非常ニ重要ナ點
デアルト考ヘマスルガ、是ハソレ以上申上
ゲマスルト、見解ノ相違ニナリマスカラ申
上ゲマセヌガ、今日農村ガ望ンデ居リマス
コトハ、單ニ米價ヲ引上ゲヨト云フ問題デ
ハナクシテ、生產ノ安定ヲ得タイ、生產ヲ
スル爲ニ一層ノ御奉公ガ出來ルヤウナ狀態
ニシテ欲シイト云フ熱望ガ漲ツテ居ルコト
ハ、先程次官ノ御答辯ノ中ニアツタコトデ
モ明瞭デアリマス、ドウカ其ノ點ヲ十分ニ
御考ヘ下サツテ、詰リ政治ヲモウ少シ考へ
テ欲シイ、私ハ農業保險對策ニシテモ、米
價ノ問題ニシテモ、サウ云フ技術的ナルコ
下、或ハ思ヒ過シノヤウナコトデナク、國
民一致結束シテ此ノ大戰爭ヲ勝拔ク決意ヲ
シテ居ルノデアリマスルカラ、國民ヲ信賴
シテ政府ガ肚ヲ割ツテ出レバ、ソレニ依ツ
テサウ憂慮スベキ事態ハ起ルモノデハナイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、是レ以上申上
ゲマスルト意見ノ相違ニナリマスルカラ申
上ゲマセヌ
次ニ農林省ガ皇國農村確立ノ爲ニ應急
施策ヲ御立テニナツテ、之ヲ實施シヨウ
トシテ居ル御意圖ノアリマスコトハ洵ニ
其ノ計畫ニ敬意ヲ表シ、其ノ效果ニ大キ
イ期待ヲ持ツノデアリマス、其ノ施策ノ中
心ヲナスモノハ自作農創設事業ノ擴充强
化ニアルヤウニ見受ケルノデアリマス、今
日農村ノ實體、農業ノ現段階カラ考ヘテ、
農地政策ガ一ツノ大キイ基本ヲ成シテ居ル
ト云フコトハ申スマデモナイノデアリマス、
所謂井野農政ノ農地政策ノ現レガ、此ノ皇
國農村確立ノ施策ノ中ノ大眼目ヲ成シテ居
ル自作農創設事業トシテ現ハレテ來タモノ
デアルト考ヘマス、農地政策ニ關シマシテ
ハ、色々ノコトヲ言フ學者モ居リ、政治家
モ居ルノデアリマシテ、或ハ强權ニ依ツテ
小作地ヲ全部國家管理ニシタ方ガ宜シイト
云フヤウナコトヲ唱ヘテ居ル人モ居リマス
ルガ、私ハサウ云フ土地ニ對スル强權ノ發
動ノ如キハ、日本ノ國政ハ本體カラ申シマ
シテモ、又農村社會ノ傳統的ナ社會性カラ
言ツテモソレハ適當デハナイト考ヘマスル
ノデ、今政府ガ御計畫ニナツテ居ル自作農
創設事業ニ多大ノ期待ヲ持ツ者デアリマス、
サウシテ逞マシイ專業農家ヲ中心トスル皇
國農村確立ノ爲ノ自作農創設事業ハ、名前
ハ自作農創設事業デハアリマスケレドモ、
從來ノソレトハ質的ニモ、量的ニモ全ク飛
躍シタル基盤ノ上ニ立ツモノデナケレバナラ
ヌト考ヘルノデアリマス、申上ゲルマデモ
ナク、從來ノ自作農創設事業ハ大正末期ノ
農村ノ行詰リニ端ヲ發スル農民救濟ノ一ツ
ノ農地ノ合理政策ト云フカ、サウ云フモノ
デアツタノデアリマスガ、今日ノ此ノ自作
農創設ハ皇國農村ノ確立ト云フ確乎不動ノ、
皇國農村ガ本來アルベキ姿ニ打樹テルト云
フ、非常ニ大キナ確乎不動ノ施策デアリマス
ルカラ、其ノ自作農創設ノ內容ハ先程申上ゲ
タヤウニ量的ニモ質的ニモ、全ク躍進サレ
タ姿デ現ハレテ來ナケレバナラヌト私ハ考
ヘルノデアリマス、ソレニ付テ、此ノ自作
農ノ創設ニ附隨シテ自作農ノ維持、保護ト
云フコトガ非常ニ重要ナ一ツノ部面デアラ
ウト考ヘマス、其ノ觀點カラ政府ハ、例
バ農地ノ家產法的ナ措置ヲ何カ考ヘテ居ル
カ、家產法其ノモノヲ設ケルト云フコトハ、
或ル色々ノコトカラ見テ不可能ノコトデア
ルカモ知レマセヌガ、家產法的ナ何等カノ
措置ヲ自作農創設事業ト併セ行フ用意ヲ持
ツテ居ラレルカドウカ、其ノ點ヲ御伺ヒ致
シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=28
-
029・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今御尋ネノ自作農
創設ノ實施ニ關聯ヲ致シマシテ、家產制度等
ノ實施ヲ考慮シテ居ルカドウカト云フ點デ
アリマスルガ、差當リノ皇國農村確立促進ノ
施設ハ、御尋ネノヤウナ趣旨ニ於ケル農村
確立政策ノ一端デアリマシテ、是ト併行致
シ、又ハ相續キマシテ、農村確立ノ爲ノ諸
施策ヲ漸次實施ニ移シテ參リタイト考ヘテ居
ルノデアリマス、農地ノ問題ニ關シマシテ
モ差當リノ對策ト致シマシテハ、自作農創
設ニ對スル資金融通ノ機構ヲ改訂スルト云
フコトニ重點ヲ置イテ制度ヲ立テテ居ルノ
デアリマスガ、之ニ引續キマシテ、現在農
林省ニアリマスル農地審議會ニ皇國農村確
立ノ必要ニ應ジタル農地政策上執ルベキ方
策ト云フコトヲ諮問致シマシテ、其ノ審議
會ニ於テ之ニ相次イデ實施スベキ制度問題
ノ〓究ヲ致シテ居ルノデアリマス、其ノ制度
問題ハ幾多ノ重要ナ事項ヲ包含スルコトニ
ナルト思ヒマスガ、御尋ネノ如キ家產制度
ノ問題ト云フモノモ其ノ中ノ重要ナル一項
目トシテ〓究ヲ致スコトニナラウト考ヘテ
居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=29
-
030・竹内俊吉
○竹内委員 從來我ガ國ノ農政ニハ、小作
制度及ビ小作人ニ對スル指導乃至ハ保護、
或ハ取締ト云フモノガアツタノデアリマス
ルガ、地主ニ對スル指導ノ具體策ト云フモ
ノガ殆ドナカツタト思フノデアリマス、是
ハ言フマデモナク一ツノ大キイ手落チデア
ツタヤウニ思フノデアリマス、尤モ近年各
地方トモ地主會ト云フモノガ出來マシテ、
地主ノ立場カラ其ノ活動ヲシテ居ルモノガ
アルノデアリマスルガ、其ノ活動ノ內容ハ
非常ニ期待スベキモノモアリマスケレドモ、
其ノ活動全體ヲ眺メテ見ルト、是ハ別ニ統
一アル活動デモナク、又現下ノ時局ノ要請
ニ完全ニ一致シテ居ル活動ノミデアルトモ
限ラヌノデアリマス、農業ニ於ケル地主ノ
位置ノ重大ナルコトハ申上ゲルマデモアリ
マセヌ、此ノ地主ノ指導ニ關シマシテ政府
ハ此ノ時局ニ鑑ミテ、地主ニ名譽アル農村
ノ指導者トシテノ何等カノ措置ヲ執ラウト
云フ用意ガアルカ、今日ハ地主ハ明治大正
時代ノ地主ト違ヒマシテ、喜ンデ協力スル
コトト思ヒマス、或ハ場合ニ依ツテハ法令
ヲ以テ地主ニ增產ニ對スル何等カノ責任ヲ
負ハスコトモ考ヘ得ルデアリマセウ、何レ
ニシマシテモ、此ノ地主ノ生產增强ニ結付ケ
タ指導ヲ何カ御考ヘニナツテ居リマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=30
-
031・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今御尋ネノ地主ノ
協力體制ノ問題ハ、差當リ自作農創設ノ問
題其ノ他農村確立ノ促進ノ施設ト云フモ
ノヲ總協力體制ヲ通ジテ實現ヲシテ參リタ
イト云フ方針ヲ執ツテ居リマスノデ、地主
ノ協力ヲ求メ、其ノ協力ヲナシ得ルヤウナ
體制ヲ作ルト云フコトハ非常ニ必要ナ事項
トシテ全ク御同感ニ考へテ居ルノデアリマ
ス、最近ノ情勢ノ變化ニ連レマシテ、各方
面ニ農村確立ヲ目標トシタ地主ノ協力的機
運ト云フモノモ漸次幸ヒニシテ〓マツテ參
ツテ居リマス、之ニ應ジマシテ之ニ卽應シ
タ方法ヲ中央トシテモ執ツテ參リタイト考
ヘテ居ルノデアリマスガ、マダ具體的ニ斯
樣ナ方法ヲ以テ、或ハ法令ヲ以テ云々ト云
フヤウナ所マデ進ンデハ居ラナイノデアリ
マス、併シ具體的ニ適當ナ方法ヲ執リマシ
テ、此ノ地主ノ協力體制ヲ漸次强イモノニ
シテ參リタイト云フコトヲ期シテ居ル次第
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=31
-
032・竹内俊吉
○竹內委員 其ノ點モウ少シ具體的ニ、大
體今考ヘテ居ルコトヲ、例ヘバ土地改良ニ
關シテハ地主ハ斯ウ云フ責任ヲ持ツヤウニ
指導シタイトカ、何カ具體的ナコトヲ御考
ヘニナツテ居ル筈ダト思ヒマスガ、今少シ
具體的ニ御答ヘ出來マセヌデセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=32
-
033・石井英之助
○石井(英)政府委員 只今具體的ニ此處デ
申上ゲル程度ニ實ハ吾々トシテハ熟シテ居
ラナイノデアリマス、地主ノ側ノ協力ヲ必
要トスル事項ハ多々アリマスケレドモ、其
ノ協力ヲ斯ウ云フ方法ニ依ツテ圓滑ニ進行
セシメルヤウニシタイト云フ具體的ノ方法
ヲ、只今色々〓究シテ居ルノデアリマス、
ソレハマダ此處デ具體的ニ御話申上ゲル程
度マデ熟シテ居ラナイノデアリマス、左樣
御諒承願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=33
-
034・竹内俊吉
○竹內委員 最後ニ米ノ買入價格ノ食糧管
理施行令ニ依ル當該年度ノ、例ヘバ四月三
十日マデニ農林大臣ガ之ヲ定メテ告示スル
ト云フコトニナツテ居リマスガ、此ノ事柄
ニ關シテ先程申上ゲタヤウニ、四月三十日
ニ告示ヲスルノデハ增產ヲ刺戟スルト云フ
面ニ於テハ是ハ遲イノデアリマス、私ハ少
クトモ二月末位マデニ告示ヲスルノガ增產
刺戟ノ上ニハ非常ニ效果ガアルト考ヘルノ
デアリマス、四月三十日マデニ告示スルト
云フコトハ、米價ノ上ルコトニ依ツテ起ル、
或ハ下ルコトニ依ツテ起ル色々ノコトヲ考
ヘラレタ政治的措置デモアラウカト考ヘマ
スガ、現在デハ米ハ全部供出割當ニナツテ
居ルノデアリマシテ、二月末ニ發表シテモ、
四月末ニ發表シテモ、ソレ程大キイ影響ノ
アルベキ筈ガナイノデアリマス、サウ云フ
狀態デアルトスレバ何モ四月三十日マデニ
決メルト云フコトヲ、四月三十日一パイ/
ニ之ヲシナクテモ、增產ニ效力ノアル適當
ノ機會ニナスコトガ宜イノヂヤナイカト考
ヘマスガ、如何デゴザイマスカ
關聯シマスカラモウ一、二點申上ゲマス
ガ、米價決定ノ基礎トナル米ノ反當生產量
ノ決定、米價決定ノ基礎資料ニ關スル規定
ハ、食糧管理法施行規則十一條、十二條、十
三條ニ規定シテ居ルノデアリマスガ、此ノ
三箇條ノ規定ハ、現在ノ狀況ニ依ル米價決
定ノ基礎算出ノ方法トシテ完全ナルモノト
農林省ハ御考ヘデアリマスカ、ソレトモ不
備ノ點、或ハ現狀ニ照ラシテ不合理ノ點ガ
アルト御考ヘデアリマスカ、其ノ點ヲ一ツ、
ソレカラ食糧管理法、食糧管理法施行令、
施行規則ヲ通ジテ見スマト、米價ハ生產者
ノ反當生產費及ビ一般物價指數ノ變動ノア
ツタ場合ハ、法ノ命ズル所ニ依ツテ必然的
ニ自働的ニ米價ノ改訂ガ行ハレナケレバナ
ラナイ精神ノヤウニ解釋サレマスガ、其ノ
ヤウニ解釋シテ宜シイカドウカ、其ノ三點
ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=34
-
035・石井英之助
○石井(英)政府委員 其ノ年ノ米價ヲ其ノ
年ノ四月末日マデニ決定スル、斯ウ云フコ
トヲ制度トシテ決メテ居ルノデアリマス、
勿論御說ノ通リ米ノ集荷ノ方ノ進行狀況ヲ
考ヘマシテ、成ベク早イ時期ニ米價ヲ決定
スルト云フコトガ、生產方面ニ良イ刺戟ヲ
與ヘルト云フコトハ吾々モ御同感ニ考ヘル
ノデアリマス、此ノ四月末日マデニト云フ
コトハ、遲クモ四月中ニハ決メナケレバナ
ラヌト云フコトヲ政府ノ方デハ決メテ居ル
ノデアリマス、唯其ノ場合ニドウシテモ考
ヘテ置カナケレバナラヌノハ、現在ノ米價
ノ設定ノ基準ト云フモノガ、御承知ノ通リ
生產費調査ト云フモノニ非常ニ大キナ要素
ヲ置イテ居ルノデアリマス、此ノ生產費ハ
前年ノ米ノ生產費ト云フモノヲ取込マナケレ
バナラヌト云フ事情ハ、是亦申スマデモナ
イノデアリマス、其ノ前年ノ米ノ生產費ヲ
取纒メテ、サウシテソレヲ其ノ年ノ米價ノ
算定ノ基礎ニスル準備トスルニハ相當ノ時
間ト手數ヲ要スルノデアリマス、ソレガ出
來ルダケ早ク完成スルコトニ從來トモ努力
ヲ致シテ居リマスケレドモ、其ノ方面ノ條
件ノ制約ヲ受ケマシテ、二月ナリ、三月ニ
ヤルト云フコトハ非常ニ困難ナ實情ニアル
ノデアリマス、ソレデ四月中マデニ決メマ
スレバ、植付前ニ生產者ニ大體ノ目標ヲ示
スト云フコトハ先ヅ〓〓支障ハナイ、斯樣
ニ考ヘマシテ、四月中マデニ決メルト云フ
コトニナツテ居ルノデアリマス、主トシテ
サウシテ居ルノハ生產費ノ關係カラ來テ居
ルノデアリマス
ソレカラ現在ノ生產費調査ニ關シマス基
準的ノ方法ガ、最善ノモノト考ヘテ居ルカ
ドウカト云フ御尋ネデゴザイマスガ、此ノ
米ノ生產費、其ノ他一般的ニ考ヘマシテ農產
物ノ生產費調査ト云フモノハ、御承知ノ通
リ非常ニ難カシイモノデアリマス、隨テ此
ノ農產物、特ニ米ノ生產費ノ問題ニ付キマ
シテハ其ノ的確ヲ期スル爲ニ、調査方法ニ
付テ〓究致スベキ事項ハマダ〓〓アルト吾
吾ハ考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ意味ニ
於テ調査〓究ノ餘地ガアルコトハ考ヘテ居
リマスケレドモ、差當リノ問題ト致シマシ
テハ、現在ノ制度ヲ以テ先ヅ〓〓適當ナル
モノト考ヘテ居リマス、
ソレカラ米價ノ改訂ハ、經濟事情ノ變動
著シキ場合ニ限ツテ之ヲナスコトニナツテ
居リマスガ、是ハ自働的ニ改訂ガ行ハレ
ルノニアラズシテ、經濟事情ノ變動ガ極メ
テ著シイ場合ニ於テ改訂ヲナシ得ルト云フ
建前ニナツテ居ルノデアリマスカラ左樣ニ
御承知願ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=35
-
036・竹内俊吉
○竹內委員 只今ノ米價決定ノ基礎トナル
米ノ反當生產量ノ決定竝ニ米價決定ノ基礎
資料ニ關スル規定、食糧管理法施行規則十
一、十二、十三條ノ規定ガ適當デアルト云
フ御考ヘノ御答辯デアルガ、併シナガラ尙
ホ〓究ノ餘地ガアルト云フヤウニ「デリケ
ートレナ御答ヘガアツタガ、此ノ問題ニ付
テハ只今要求申上ゲテ居ル資料ヲ戴イテカ
ラ改メテ御尋ネ致シタイト思ヒマス
最後ニ一言申上ゲタイノハ、先程我孫子
委員ヨリ北海道ノ事例ヲ擧ゲテ、冷害救濟
ニ關スルコトヲ縷々申述ベラレマシタガ、
北海道デ擧ゲラレタ事例ト、東北ノ凶作ノ
救濟ニ關スル事柄トハ全ク同樣デアリマス、
最低最高率ノ撤廢ハ農林省デハ非常ニ確信
ガアルヤウデアリマス、併シ實情ニ合ハヌ、
私ハ實際ヲ見テ所謂再生產ノ意味ノ保險ヲ
ナシテ居ナイ、正シク是ハ我孫子委員ガ申サ
レタ通リ、備荒貯蓄デアリマス、斯ウ云フ
コトデナク純保險論ニ囚ハレルヤウナコト
デナク、モツト政治的態度デ、調査ガ出來ナ
ケレバ止メルト云フコトデナク、此ノ食糧
ノ生產增强ト云フ事態ハ國家ノ至上命令デ
アリマスカラ、此ノ事態ニ卽スルガ如キ、モ
ツト腰ダメノ政治的ナ措置デ行クベキデア
ツテ、是ハ算盤ヲ置イテ、算盤ノ數字ニ乘ル
ヤウナ農業災害デナイト私ハ考ヘマス、モ
ツト政治的ナ意味カラ解決ヲ要スル問題デ
アラウト考ヘマス、ドウモ從來ノ農林省ノ
ヤリ方ヲ見テ居ルト、純保險論ノ理論ニ
囚ハレテ居ルヤウナ形ガ見エルノデアリ
マスカラ、サウデナク、ソレヲ離レテ政治
的觀點カラ之ヲ解決スルト云フ方向ニ大體
ノ建前ノ方向ヲ變ヘテ貰ハナケレバナラヌ
ト思フ、詳シイ事例ニ付テハ我孫子委員カ
ラ縷々申サレマシタノデ、其ノ點ダケヲ特ニ
申上ゲマス、以上デ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=36
-
037・池田秀雄
○池田委員長 是デ本日ノ質問ハ終了致シ
マシタ、本日ハ議場ノ關係上午前中ニ致シ
マシテ、明日ハ午前十時ニ開會ヲ致シマシ
テ、午後マデ繼續シテヤル積リデ居リマ
ス、尙ホ段々農業保險改正法外二件ニ
對シテノ御質問モ大分進ミ、昨日ハ七名
ノ諸君、本日ハ二名、明日位デ大體此ノ問
題ニ付テハ一應鳧ヲ付ケテ、又他ノ問題ニ
移ル、質疑ダケハサウ云フ風ニ進メタイト
云フ希望ヲ持ツテ居リマス、ソコデ明日御
質問ノ方ハ一ツ理事ノ諸君ニ御通告ヲ戴キ
タイノデス、明日ハ又大臣モ極メテ御多忙
デスケレドモ、今農林次官ト相談シテ、午
前カ午後ニハ是非御出席ヲ願ヒタイト云フ
コトヲ、大臣ト相談シテ戴クコトニシテ居
リマス、明日ノ質問者ハ通告ト、項目ト、
或ハ大臣、次官ト云フヤウナ御希望ガアレ
バ、サウ云フヤウナコトヲ理事ノ方マデ御
申出ヲ戴キタイト思ヒマス、本日ハ是デ散
會致シマス
午後零時一分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00419430205&spkNum=37
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。