第81回帝国議会　衆議院　農業保険法中改正法律案外三件委員会　第5号　昭和18年2月6日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十八年二月六日（土曜日）午前十時二十九分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　池田秀雄君
  　　理事　泉國三郎君　理事　岩瀬亮君
  　　理事　角猪之助君　理事　日下田武君
  　　理事　深澤吉平君
  　　　　安孫子孝次君　　　小野祐之君
  　　　小笠原八十美君　　　大石齊治君
  　　　　岡本馬太郎君　　　紀藤常亮君
  　　　　齊藤正身君　　　酒井利雄君
  　　　　田部朋之君　　　竹内俊吉君
  　　　　野村嘉久馬君　　　馬場元治君
  　　　樋口善右衞門君　　　松浦周太郎君
  　　　　牧原源一郎君　　　三善信房君
  　　　　滿井佐吉君　　　最上政三君
  　　　　矢部藤七君　　　安田桑次君
  　　　　吉田賢一君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　農林大臣　井野碩哉君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　　農林次官　石黒武重君
  　　　　　農林省農政局長　石井英之助君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　農業保險法中改正法律案（政府提出）
  　食糧管理特別會計法中改正法律案（政府提出）
  　農業保險の保險料國庫負擔金等の交付及分擔等に關する法律案（政府提出）

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• 001・池田秀雄

  ○池田委員長　是ヨリ開會致シマス、昨日
  ニ引續キ大石君ノ御質問ヲ願ヒマス

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• 002・大石齊治

  ○大石(齊)委員　私ノ御尋ネ致シタイト思
  ヒマス一部ハ大臣ノ出席ヲ待ツテ致シタイ
  ト思ヒマスカラ、一部ハ午後ニ留保スルコ
  トヲ御許シ願ヒマス、サウ願ヒマシテ二、
  三ノ問題ニ付テ御尋ネヲ申上ゲマス
  第一ニ農業保險ノ對象デアリマス現行保
  險法ニ依リマスレバ、水稻、麥、桑ト云フ
  三作物ニ限定セラレテ居リマス、ソレカラ
  對象トスル災害モ亦風水害、旱害、桑ノ凍
  害水稻ニ對スル共濟事項ト致シマシテ冷
  害麥ノ風害、濕潤害、斯ウ云フ程度ニ災
  害ヲ認メラレテ居ルノデアリマスガ、此ノ
  範圍ヲ擴大セラルル御意思ガアリマスカ、
  ドウデアリマスカ、ト云ヒマスノハ農業保
  險ヲ全國的ニ强制セラルルヤウナコトニ相
  成リマスル場合、災害ノ種類ナリ範圍ナ
  リ、程度ナリト云フモノハ、地方的ナ事情
  ニ依リマシテ區々ナノデアリマス、出來得
  ルダケ全國各市町村内ノ實情ニ副フヤウニ
  此ノ保險ノ範圍ナリ對象ナリヲ擴大シナケ
  レバ、農民大衆ノ希望ニ副ハナイヤウニナ
  リハシナイカト云フコトヲ考ヘマスノデ、
  先ヅ以テ此ノ對象ヲ擴大スル意思ガアルカ
  ドウカト云フコトヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 003・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　農業保險ノ對象ヲ擴
  大スルコトニ付テノ御尋ネデアリマスガ、
  目下ノ所ニ於キマシテハ、御承知ノ通リ農
  業保險ノ對象ニ致シマス爲ニハ、ソレ等ノ
  作物ニ付テノ被害統計ガ整備致シテ居リマ
  セヌケレバ、之ヲ對象トスル譯ニハ參ラナ
  イ狀態ニゴザイマスルノデ、目下ノ所ト致
  シマシテハ現狀以上ニ之ヲ擴張致スコトハ
  考ヘテ居ラナイノデアリマス、尙ホ此ノ保
  險ノ實行ニ當リマシテハ、申スマデモナク
  損害ノ判定ト云フモノニ付テ、實行上可能
  ナル程度ニ判定ガ出來得ルモノデナケレバ
  相成ラヌ關係モゴザイマスルノデ、ソレ等
  ノ關係ヲモ考ヘマシテ、目下ノ所デハ現狀
  程度以上ニ致ス考ヘハ持ツテ居リマセヌ

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• 004・大石齊治

  ○大石(齊)委員　實施ニ當リマシテハ相當
  ノ資料モナケレバナラナイシ、準備モナケ
  レバナラナイ譯デアリマセウカラ、御無理
  ヲ申上ゲル譯ニハ勿論イカナイノデアリマ
  スケレドモ、少クモ地方農民ノ希望シテ居
  ル點ニ付テ此ノ場合申上ゲマシテ御考慮ヲ
  願ツテ置キタイト思ヒマス、私ハ富山縣デ
  ゴザイマスガ-富山縣ニ限ツタ譯デハア
  リマセヌケレドモ、少クトモ北陸一體ト申
  シテ宜カラウト思ヒマスガ、例ヘバ麥ノ
  雪害デアリマス、一體北陸方面ハ水稻ノ裏
  作トシテノ麥作ハ從來殆ド見ラレナカツタ
  ノデアリマスガ、最近政府ノ御奬勵ニ依リ
  マシテ、所謂食糧增產ノ目的ヲ以テ麥作ニ
  農民ハ精魂ヲ盡シテ精進致シテ居リマス、
  ケレドモ由來北陸方面ニ水稻ノ裏作トシ
  テノ麥裏作ノ成功シナカツタ理由ハ一ニ雪
  害ヲ恐レタノデアリマス、北陸ノ雪ハ質ガ
  違ヒマシテ、ベタ〓〓シテ水分ノ非常ニ飽
  和セラレタ雪ナノデアリマス、ソレガ二月
  三月マデ續キマシタ時ハ、殆ド麥ハ全滅ス
  ルヤウナ場合ガ多イ、肥培管理、其ノ他ニ
  注意ヲ致シマシテモ、天候カラ來ル雪害ハ
  中々防止シ兼ネルノデアリマス、是ガ農家
  ニ對スル大キナ脅威トナツテ麥作ガ成功シ
  ナカツタノデアリマス、其ノ困難ヲ克服シ
  テ今日農家ハ麥作ニ精進シテ居リマスガ、
  今ノ所農民ノ熱望ト致シマシテハ、是非麥
  作ニ對スル雪害ヲ保險ノ對象トシテ貰ヒタ
  イト云フ希望ガ多イノデアリマス、此ノ點
  ヲ一ツ御含ミ置キヲ願ヒタイト思ヒマス、
  私共保險ニ關スル色々ノ當局ノ御準備ナリ
  何ナリニ付テ內容ハ能ク承知致シテ居リマ
  セヌノデ、御無理ヲ申上ゲテ相濟マナイコ
  トニナルカモ知レマセヌガ、農民ノ熱望ト
  シテ御聽取リヲ願ヒタイ
  モウ一ツ之ニ類スルモノデアリマスガ、
  無理ノヤウニ存ジマスケレドモ、例ノ紫雲
  英ノ雪害デゴザイマス、是ハ最近肥料ノ缺
  乏ニ伴ヒマシテ、自給肥料ノ增產奬勵ヲ願
  ツテ居ル關係モ考ヘマシタ場合ニ、稻作ノ
  豐凶ニ直接ノ關係ヲ持ツテ居リマス紫雲英
  ノ作柄ノ如何、是ハ直接米ノ增產ニ關係ア
  ルノミナラズ、農家ノ經濟ニ至大ナ關係ヲ
  持ツテ居リマス、隨ヒマシテ紫雲英ノ雪害
  ニ對スル農家ノ關心ハ非常ニ深イ、是モ大
  體農民ノ熱望ト致シマシテハ是非保險ノ對
  象ニシテ貰ヒタイト云フ考ヘヲ持ツテ居ル
  コトモ御聽取リヲ願ツテ置キタイノデアリマス
  ソレカラモウ一ツ伺ツテ見タイト思ヒ
  マスノハ、水稻ニ對スル冷害ヲ認メラレテ
  居ルノデアリマスガ、一體冷害ノ範圍ハド
  ウ云フ程度ニ御考ヘニナツテ居ルノデアリ
  マスカ、私共ノ考ヘデハ多分東北ヲ度々襲
  フ例ノ早冷ノ害位ヲ御考ヘニナツテ居ルノ
  デハナイカ、ソレトモ其ノ他ノ場合ニ於ケ
  ル冷害トモ言フベキモノヲモ御認メニナツ
  テ居ル譯デアリマスカ、此ノ點ヲ一ツ伺ツ
  テ置キタイト思ヒマス

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• 005・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　共濟事項ヲ實行致シ、
  ソレニ對シテ政府ガ助成ヲ致スト云フ意味
  ノ水稻ノ冷害ハ今御話モゴザイマシタヤ
  ウニ夏季ニ於ケル低溫寡照等ノ寒冷ナル氣
  象ニ依シテ水稻ノ成育ガ十分ニ參ラナイデ、
  其ノ結果靑立ニナリ、不稔實ノ狀態ニナル
  ト云フノモ冷害ト考ヘテ居ルノデアリマス、
  部分的ニ他ノ原因ニ依ツテ生ジマスルモノ
  ハ之ヲ冷害トハ考ヘテ居ラナイノデアリマ
  ス

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• 006・大石齊治

  ○大石(齊)委員　一定ノ植物病ト云フモノ
  ヲ御認メニナツテ居リマスガ、稻熱病ト云
  フモノニ對シテドウ云フ御考ヘヲ持ツテ居
  リマスカ、伺ヒタイ

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• 007・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　稻熱病ハ之ヲ保險事
  項ニ加ヘテ居リマセヌ、是ハ一般的ニ考ヘ
  マスレバ、病害ノ一種デゴザイマシテ、人
  爲ヲ以テ防除シ得ルモノデアリ、最近ニ於
  テハ漸次稻熱病防除ノ技術モ進步シテ來テ
  居リマス、是ハ技術的ニ防除ノ方法ヲ發達
  改善致シマシテ、其ノ方法ヲ普及セシムル
  コトニ依ツテ防除致スベキ筋合ノモノデア
  ル、之ヲ保險ノ對象ニスルト云フコトニ致
  シマシテハ、所謂道德的危險ヲ增大セシムル
  虞ガ非常ニ顯著ナモノガアリマスノデ、是
  ハ保險ノ對象ニスベキモノデナイ、斯樣ニ
  考ヘル譯デアリマス

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• 008・大石齊治

  ○大石(齊)委員　御趣旨ハ能ク分リマシタ、
  人口的ニ防止、豫防シ得ルモノヲ保險ノ對
  象ニスルコトノイケナイコトハ、私共十分
  承知ヲ致シテ居リマスガ、稻熱病ノ少クモ
  誘因トシテ、夏ノ稻ノ分蘖期デアリマス七ノ
  八月頃ノ稻ノ最モ旺盛ナ成熟ヲ遂ゲル時期
  ニ、陰濕多雨ノ現象、或ハ日照時間ガ少イ
  トカ、或ハ低溫デアルトカ云フコトノ爲ニ
  軟弱ノ成育ヲ遂ゲマシタ結果、稻熱病ノ誘
  因ヲナス場合ガ非常ニ多イノデアリマス、
  單ナル稻熱病菌ノ侵蝕ニ依ツテ起ル病氣ニ
  ハ相違アリマセヌケレドモ、併シ夏季ニ於
  ケル陰濕ノ爲ニ徒長シ、或ハ軟弱ニナツタ
  コトガ誘因トナツテ稻熱病ヲ發生スル場合
  ガ非常ニ多イノデアリマス、斯ウ云フ點カ
  ラ考ヘマシテ、肥培管理ノ誤リヨリ起ル稻
  熱病ハ勿論保險ノ對象トスベキ限リデハア
  リマセヌケレドモ、サウ云ツタヤウナ氣候
  ノ變動ガ少クモ完全ニ誘因ヲナシテ居ルト
  云フコトヲ、ハツキリ見テ取ルコトノ出來
  ル場合ニ於ケル稻熱病ニ對シテノ保險ガ、
  何等カ考慮セラルベキデハナイカト考ヘマ
  スガ、其ノ點ニ付キマシテ更ニ御意見ヲ伺
  ヒタイト思ヒマス

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• 009・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　稻熱病ノ生ジマスル
  誘因ニ付キマシテハ、技術的ニ色々問題ガ
  アルヤウニ吾々モ承知ヲ致シテ居ルノデア
  リマスガ、稻熱病其ノモノニ付キマシテハ、
  先刻申上ゲマシタヤウナ性質ノモノト考ヘ
  テ居リマスノデ、是ハ飽クマデモ稻熱病ノ
  防除ノ手段ヲ進メルコトニ依ツテ解決ヲ致
  シテ參リタイト思フノデアリマス、之ヲ保
  險ノ對象ニ致スコトハ性質上適當デナイノ
  ミナラズ、一方左樣ナコトヲ致シマスレバ、
  此ノ防除ニ對スル施設ノ進行、努力ヲ進メ
  マスコトニ於テ遺憾ヲ生ズルヤウナコトガ
  アリハシナイカトモ考ヘラレルノデアリマ
  ス、飽クマデモ防除方法ノ徹底ニ依ツテ解
  決ヲシテ參リタイト考へテ居ルノデアリマ
  ス

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• 010・大石齊治

  ○大石(齊)委員　誘因トシテ可ナリ稻熱病
  ニ氣候ノ變動ガ働キ掛ケテ居ル場合ガ多イ
  ト致シマシテモ、之ヲ事務的ニドノ程度マ
  デガ天候異變ニ基クモノデアリ、ドノ程度
  マデガ農家ノ肥培管理ノ周到ヲ缺イタガ故
  デアルト云フ其ノ判定モ中々容易デハナイ
  ト思ヒマス、ノミナラズ今御說ノ通リニ農
  民ノ稻熱病防止ニ關スル熱意ヲ冷却サセル
  ヤウナコトニナリマシテハ相濟ミマセヌト
  思ヒマスガ、併シ事實ニ於キマシテハ隨分
  人爲ヲ盡シテ防止ハシテ居ルガ、七、八月
  頃ニ於ケル日照時間ノ足リナイ爲ニ、或
  陰濕ナル氣候ノ連續セル爲ニ、稻熱病ヲ發
  生スル場合ガ非常ニ多イノデアリマス、是
  ハ所ニモ依リマセウガ、少クトモ北陸ノヤウ
  ナ雨量ノ多イ所ニ於キマシテハ、私共ノ從
  來ノ經驗ヲ以テ致シマスルト、十中ノ八、
  九マデガ氣候ノ異變ニ基イテ稻熱病ガ發生
  スルモノノ如ク見テ居ルノデアリマス、併
  シナガラ一地方ノ事實ヲ以テ全國的ニ律ス
  ル譯ニハ參リマセヌノデ、是レ以上御無理
  ハ申上ゲマセヌ、併シ少クモ北陸ニ於ケル
  氣候ノ特異性ニ付キマシテハ、或ル程度是
  カラ御〓究ヲ進メテ戴キマシテ、斯ウ云ツ
  タヤウナ農家ノ希望ニ對シテハ、何等カソ
  レニ副フヤウニ御考ヘヲ願ヒタイト思ヒマ
  ス
  農業保險ノ對象ニ關スル御質問ハ此ノ程
  度ニシテ置キマシテ、保險トハ少シ話ガ變
  リマスガ、十八年度ノ豫算ト致シマシテ、農
  林省デハ土地改良施設ニ千四百万圓デアツ
  タカト思ヒマスガ、御計上ニナツテ居ルヤ
  ウデアリマス、是ハ非常ニ私共有難イコト
  ダト心密カニ感謝ヲシテ居リマス、就キマ
  シテハ其ノ內容ヲ少シ此ノ機會ニ伺ヒタイ
  ト思フノデアリマス、漏レ聞ク所ニ依リマ
  スレバ、大部分ハ暗渠排水ノ方ヘ仕向ケラ
  レルヤニ伺ツテ居リマス、暗渠排水ハ是ハ
  非常ニ結構ダト思ヒマス、手取早ク安價ニ
  食糧增產ヲ圖ル上ニ於テ、是程有效ナモノ
  ハナイト私ハ考ヘテ居リマスノデ、ソレハ
  洵ニ良イ事ナリト致シマシテ、贊意ヲ表ス
  ル者デアリマスガ、尙ホ一ツ是ハ御考ヘニナ
  ツテ居ルコトニ相違ナイコトトハ思ヒマス
  ガ、一言伺ツテ見タイト思ヒマスノハ、今
  日ノ農村ニ於ケル勞力ノ缺乏デアリマス、
  食糧增產ヲ阻ム最大ノ原因ハ、私共玆ニア
  ルト思ヒマス、況ヤ農村ノ將來ヲ考へマス
  ルト、多々益〓此ノ勞力ノ缺乏ヲ深刻化スベ
  キ可能性ヲ考ヘナケレバナラナイノデアリ
  マス、兵隊ニハ澤山取ラレル、在〓軍人ハ次
  カラ次ヘ應召シナケレバナラナイ、勞務動
  員ガ農村ニマデモ波及スル、滿洲移民ヲ送
  リ出サナケレバナラナイ、斯ウ云ツタヤウ
  ニ次カラ次ヘ幾多ノ條件ガ殺到シテ參リマ
  スル以外ニ、尙ホ最モ恐ルベキコトハ、農村
  ニ於ケル靑壯年層ノ離村離農ノ趨勢ノ恐ロ
  シク「スピード」化シテ居ルコトデアリマス、
  ソンナヤウナコトヲ考ヘマスルト、今後ニ
  於ケル農村ノ勞力ト云フモノハ、ドウ云フ
  程度ニマデ逼迫シテ來ルカト云フコトヲ、
  私共非常ニ惧レテ居リマス、是モ致シ方ガ
  ナイコトト致シマシテ、殊ニ時局ノ要求ト
  致シマシテ、他へ勞務者ヲ送ラナケレバナ
  ラナイ、兵役義務者ヲ送リ出サナケレバナ
  ラヌト云フコトニ對シテハ、是ハ勿論ノコ
  トデアリマスカラ、ソレハソレトシテ置イ
  テ、此ノ勞力不足ニ對應スル施策ヲ考ヘナ
  ケレバナラナイノデアリマスガ、其ノ方途
  ト致シマシテハ何ト言ヒマシテモ、耕地整
  理特ニ農道ノ改修デアリマス、今日農村
  ノ耕作道路ノ改修ト云フコトガ絕對ノ必
  要ナ要求ダラウト考ヘルノデアリマス、農
  道ガ完成致シマスレバ、ソレ自體勞力ノ節
  約ニ役立ツコトハ當然デアリマスシ、殊
  當局ニ於キマシテ頻リニ昨今奬勵セラレテ
  居リマスル耕地ノ分合整理、農地ノ集團化
  デアリマス、是ナドモ私ナドハ頻リニ奬メ
  テモ居リ、頻リニ手ヲ盡シテ居リマスケレ
  ドモ、ヤハリ農道ガ完成セザル限リ分合整
  理ナドト云フモノハ出來ルモノデハナイ、
  如何ニ良イコトダト考ヘテ居リマシテモ、是
  ハ出來ナイ、ダカラ農道ノ改修ヲ以チマシ
  テ、先ヅ之ヲ前提トシテ然ル後ニ耕地ノ分
  合整理ヲヤラナケレバナラナイト考ヘル、
  又一方當局ノ熱心ニ御奬勵ニナツテ居リマ
  スル農業經營ノ有畜化、機械化、是ナドモ
  農道ガ完成セザル限リハ思ヒ通リニ行カナ
  イコトモ言フマデモナイコトデアリマス、
  色々ナ意味ニ於キマシテ、私共農村ノ今日
  ノ施設ト致シマシテハ、ドウシテモ農道ノ
  改修ヲ目標トスル耕地整理ト云フモノニ重
  キヲ置カナケレバナラヌト考ヘテ居リマス
  ルガ、今度御計上ニナリマシタ土地改良施
  設ノ中ニ、ドウ云フ程度ニ此ノ農道ノ改修
  ト云フモノヲ御見込ニナツテ居リマスカヲ
  伺ヒタイト思ヒマス

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• 011・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　御說ノ通リ農道ノ改
  修設置ト云フコトノ重要ナルコトハ、吾々モ
  全ク御同樣ニ考ヘテ居ルノデアリマシテ、區
  劃ノ整理ト云フコトヲ目標トスル耕地整理
  ノ仕事ニ對シテモ、國デハ助成致スコトニ
  致シテ居ルノデアリマス、此ノ運用ニ依リ
  マシテ農道ノ改修ノ問題ニ付テモ政府ハ助
  成ヲ致シテ其ノ實現ヲ圖リタイト考ヘテ居
  ルノデアリマス、運用ニ依リマシテ、御說
  ノ如キ趣旨ヲ達成スルト云フコトニ努力致
  シタイト考ヘテ居リマス

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• 012・大石齊治

  ○大石(齊)委員　本年ノ此ノ土地改良施設
  ノ內容トシテ農道ノ改修ナリ、或ハ耕地整理
  ナリト云フモノハ特ニ重キヲ置イテ豫算ヲ
  計上セラレタモノヂヤナイノヂヤゴザイマ
  スマイカ、要スルニ從來ノ方針ヲ踏襲シテ
  居ル位ノモノデアルノデアリマスカ、ソレ
  トモ今度ノ土地改良施設ノ中ニ、今御話ノ
  ヤウナ耕地整理若クハ農道ノ改修ト云フコ
  トニ相當重キヲ置クノ考ヘヲ持ツテ居ラレ
  ルノデアリマスカ、ソレヲモウ少シ的確ニ
  御示シヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 013・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　特ニ農道ノ設置改修、
  耕地整理ノ問題ニ重點ヲ置イテ、土地改良
  ノ經費ヲ計上致シタト云フコトニハ相成ツ
  テ居ラナイノデアリマス、耕地整理事業助
  成ニ依ツテ、御話ノ如キ目的ヲ達スルヤウ
  ニ致シタイト考ヘテ居ルノデアリマス、吾
  吾ノ方トシテ土地改良ニ關スル考ヘ方、方
  針ト云フモノハ農業溝渠ナリ、用排水ノ改
  良ナリ、耕地整理ノ事業ナリ、各地方々々
  ノ比較的小規模ナ地元々々ニ於テ實行致シ
  マスル土地改良ノ事業ト云フモノガ、今日
  ノ時局ニ於テハ差當リ食糧增產ニ非常ニ效
  果ガ大キイ、勞力ノ關係ニ於テモ、資材ノ
  關係ニ於テモ今申上ゲタヤウナ比較的地元
  地元デ實行シ得ルヤウナ土地改良ノ仕事ト
  云フモノガ、非常ニ實行可能デアル、其ノ
  效果モ顯著ニ上ルト考ヘマシテ、土地改良
  ノ仕事ト云フモノニ全般的ニ重點ヲ置イテ
  考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ意味ニ於キ
  マシテハ、其ノ改良事業ニ重點ヲ置イテ居ル
  考ヘ方デアリマスケレドモ、其ノ中ニ於テ
  特ニ農道ノ設置ト云フコトヲ主眼ト致シテ
  居ルト云フ考ヘ方デハナイノデアリマス、
  全體的ニ重點ヲ置イテ考ヘテ居ル、斯樣ナ
  譯デアリマス

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• 014・大石齊治

  ○大石(齊)委員　實ハ私共ハ農道ノ改修ト云
  フコトニドウシテモ力ヲ入レナケレバナラ
  ヌト考ヘテ居リマスト同時ニ、耕地整理ト
  云フモノヲ是非徹底的ニ進メナケレバナラ
  ナイト云フコトヲ考ヘツツアルノデアリマ
  スガ、實ハ中々難カシイノデアリマス、
  難カシイト云フコトノ新シイ事實ハ、耕
  地整理ト云フ場合ニ、ドウシテモ地主ノ
  負擔ニ於テ事業ヲ進メテ行カナケレバナラ
  ナイヤウナコトニナツテ居ルノデアリマス
  ガ、最近地主ハ米ノ値段ガ思フ通リノ値段
  ニナツテ居ラナイ、他ノ物價トノ均衡ヲ恐
  ロシク缺イテ居ルト云フコトノ爲ニ、又、
  面大キナ負擔ヲ背負ハナケレバナラナイ
  ト云フ事實モアリ、要スルニ耕地整理ニ奉
  仕スル餘力ガナイ、餘力ガナイノミナラズ、
  又熱意モ持チマセヌ、是ガ爲ニ地方ニ於キ
  マシテ何トカシテ此ノ勞力節約ノ目的ヲ以
  テ、農道ノ改修位ニハ乘出シタイト思ヒマ
  シテ、色々ノ計畫モ致シテ見マスケレドモ、ドウ
  モ土地所有者ノ熱意ガ湧イテ來ナイノト、又
  事實仔細ニ調ベテ見マスト、土地所有者ノ資
  力モ殆ドサウ云ツタ方ニ資金ヲ投ズル餘裕
  ガナイノデアリマス、此ノ點私共頻リニ苦慮シ
  テ居ルノデアリマスガ、斯ウ云フコトヲ本省
  ノ方デハドウ御考ヘニナツテ居リマスカ
  ソレカラモウ一ツ、是ト相關聯シタコ
  トデアリマスガ、土地ノ賃貸價格ガ時々
  修正サレルコトニナツテ居リマスガ、事實
  ハ修正サレナイデ殆ド釘付ノ狀態デア
  ル、サウシテ一面ニハ其ノ土地ノ賃貸價格
  ヲ基礎ト致シマシテ農村ハ其ノ三十倍、市
  ヤ町ハ其ノ五十倍以上ヲ以テ賣買スルコト
  ハイケナイト云ツテ、賣買ノ拘束モ受ケナ
  ケレバナラナイノデ、結局地主階級ガ土地
  ノ改良ト云フモノニ對スル熱意ヲ最近ハ恐
  ロシク殺ガレテ居ルノデアリマス、此ノ熱
  意ノ湧クマデ待テバト言ヘバ、言ヘナイデ
  モナイノデアリマスケレドモ、併シ一方私
  共ハ眞ニ農村ノ現狀カラ考ヘマシテ、勞力
  ノ不足セル事實カラ考ヘマシテ、何トカシ
  タイト思ヒマシテヤキモキシテ居リマスガ、
  今申シマシタヤウニ米ノ値段ノ問題ガ禍ヒ
  シ、一面又賃貸價格ノ釘付問題ガ、地主ノ
  熱意ヲ湧力セナイ原因ニナツテ居ル、斯ウ
  云ツタヤウナコトカラ、實ニ困ツテ居リマ
  スガ、勿論賃貸價格ノ問題ノ如キハ、農林
  省ノ主管デハゴザイマスマイケレドモ、斯
  ウ云ツタコトニ付テモ、何等カノ御考ヘヲ
  願ヒマシテ、相當ニ善處シテ貰ハナケレバ
  ナラナイト思ヒマスガ、此ノ點ニ付テハ當
  局ノ方デハドウ云フヤウニ御考ヘニナツテ
  居リマスカ、御意見ヲ一ツ伺ツテ見タイト
  思ヒマス

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• 015・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　地方ニ依リマシテハ
  御話ノヤウナ現象モ起ツテ居ルト考ヘマス
  ガ、一方ニ於キマシテ土地改良ノ熱意、殊
  ニ小規模ナ土地改良ニ關スル熱意、希望ト云
  フモノハ寧ロ非常ニ强クナツテ居ルヤウニ
  吾々ハ見テ居ルノデアリマス、暗渠排水ノ
  仕事デアルトカ、溜池ノ設置トカ云フヤウ
  ナコトニ對スル希望ハ相當ニ强イノデアリ
  マス、豫算ノ助成金ノ消化ノ狀況カラ考ヘ
  テ見マシテモ、此ノ方面ニ對スル消化率ト
  云フモノハ相當ニ宜シイノデアリマス、デ
  アリマスルカラ部分的ニハ御話ノヤウナ事
  情ノ所モ或ハアルカト考ヘマスガ、全般的
  ニ考ヘテ見マスルト、吾々トシテハ現狀ノ
  制度ヲ以テ推シテ參リマシテ、相當ノ成績
  ヲ擧ゲ得ルト云フ風ニ見テ居ルノデアリマ
  ス、米價ノ問題、賃貸價格ノ問題等ニ付キ
  マシテハ、一般的ノ問題トシテ考慮セラル
  ベキ問題デゴザイマスルガ、土地改良ノ間
  題ト致シマシテハ大體左樣ニ考ヘテ居ルノ
  デアリマス

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• 016・大石齊治

  ○大石(齊)委員　尙ホ二、三御尋ネ致シタイ
  ト思ヒマスケレドモ、是レ以上ノコトハ午
  後マデ保留サセテ戴キタイト思ヒマス

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• 017・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ今度ハ安田桑次君
  カラ御申込ニナツテ居リマスノデ、安田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=17

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• 018・安田桑次

  ○安田委員　私ハ二點ニ付テ御伺ヒヲ致シ
  タイ、其ノ一ツハ此ノ農業保險法ハ內地ノ
  農業者ダケニ付テ適用サレルノカ、或ハ朝
  鮮ナドモ之ニ入ツテ居ルノカト云フコト、
  モウ一ツハココ數日各委員會ヲ覗イテ見マ
  シテモ、米價ノ問題ガ非常ニ喧マシク論議
  サレテ居ルノデアリマシテ、殊ニ本委員會
  ニ於テモ熱烈ナル議論ガ出、之ニ對シテ大
  臣及ビ次官ニ於カレマシテハ、本年ハ米價
  ヲ引上ゲルノ意思ナシトハツキリ御答辯ニ
  ナツテ居ルノデアリマスガ、一體米價ノ安
  イトカ高イトカ云フコトハ、比較ノ問題デ
  アリマシテ、總テ物ヲ單獨ニ切離シタ時ハ
  高イモ安イモナイノデアリマス、私ハ政府
  ノ言明セラレル點ニモ一ツノ理窟ガアルト
  思フノハ、一體今ノ基礎物價ト米價ヲ比較
  シテ考ヘマスルナラバ、少クトモ一石一百
  圓見當マデ之ヲ引上ゲナケレバ其ノ均衡ガ
  取レナイト思フノデアリマス、ソレデアリ
  マスカラ斯ウ云フヤウナ時局ニ臨ンデ、
  方商工業者ノ連中ガ曾テ自由經濟ノ時代カ
  ラ統制經濟ニ移行スル場合ノ混亂ニ乘ジ、
  ソコニ持ツテ來テ役人ガ素人デ不得手デア
  ツタ、サウ云フヤウナ時ニ色々ナル計算ヲ
  持込ンデ見テ、到頭今日ノ公定物價ヲ制定
  セシメタ、所謂官吏ガ胡麻化サレテ、專門
  家ガ胡麻化シタト云フ結果ニナツテ居ルノ
  デアリマスガ、今ヤ聖戰數年ニシテ、農林
  當局ニ於カレマシテモ、商工省方面ニ於カ
  レマシテモ、官吏モ稍〓慣レテ居ラレルト思
  ヒマスノデ、此ノ場合他ノ適正物價ヲ拵ヘ、
  漸次引下ゲテ行クト云フコトガ、低物價政
  策ト云フ基本國策ニ私ハ一番合致スルト思
  ヒマス、所ガ昨年初メテ二重ノ價格ヲ設定
  サレタ時ニ、農民ハ非常ニ喜ンダノデアリ
  マス、生產者ガ五圓高クナツテ、納米ヲ受
  ケル地主ガ僅カニ一圓ノ利益デアル、初メ
  テ生產其ノモノノ價値ヲ國家ガ認メタト
  云フ考ヘ方カラ、心理的ナ影響ハ相當ニ良
  カツタノデアリマスガ、一年ヲ經夕今日再
  ビ米價ノ問題ガ喧シク論議サレルト云フコ
  トハ、人間ノ欲望ニハ切リガナイノト、モ
  ウ一ツハ、私ハ農村ニ生レテ久シク農村ニ
  住ンデ、今尙ホ百姓ヲヤツテ居ルノデアリ
  マスガ、此ノ生產者ノ實體ヲ見マスト、收
  穫ノ五、六割ト云フモノハ-大體生產者ト
  稱シマスルモノハ小作農又ハ自作兼小作、
  或ハ自作農、此ノ三段階ニ分レルノデアリ
  マスガ、其ノ大部分ノモノガ納米トシテ政
  府ノ管理米ニナリ、地主ニ納メラレル、サ
  ウスレバ殘ツタ中カラ自分ノ〓糧ノ保有米
  ヲ引イテ參リマスト、政府ニ供出スルトカ
  何トカ云フモノハ極メテ少量ニナツテ來
  ル、收穫ノ大部分ヲ食糧ニ供スルノガ農民
  ノ實體ナノデアリマス、ソコデ以テ之ニ相
  當額ノ引上ヲ行ツテ貰ツテモ、生產者ノ農
  家經濟上大キナ影響ハ來サナイト私ハ確信
  スル者デアリマス、若シ此ノ場合農民ノ心
  理的ノ影響ヲ狙ツテ、少シデモ其ノ不平ト
  云フヤウナ感ジヲ抑ヘントスルナラバ、宜
  シク昨年ノ如ク二重價格制ノ强行ヲ願ヒタ
  イ、斯ウ思ツテ居ルノデスガ、之ニ對シテ
  ドンナ御考ヘヲ持ツテ居ラレルカト云フコ
  トデアリマス
  モウ一ツハ農業保險法モ、サツキ申上ゲ
  マシタ通リニ、私ハ朝鮮ノ事情ヲ考ヘテ見
  ル場合ニ、內地ト朝鮮ノ間ニ於テハ不可分
  ノ關係ガアリマシテ、切離シテ物ヲ考ヘル
  コトガ出來ナイノガ食糧對策デアルト信ジ
  テ居リマス、隨テ朝鮮ニ適用サレナイトス
  レバ、他ニドンナ手ガ打ツテアルカト云フコ
  トモ併セテ御伺ヒ致シタイノデアリマス、
  以上二點ニ付テ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=18

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• 019・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　此ノ農業保險法ノ關
  係ハ外地ニハ適用ニナツテ居リマセヌノデ、
  朝鮮ニハ施行セラレナイノデアリマス、
  是ハ朝鮮ノ方ノ事情ハ、農林關係、其ノ他
  諸般ノ事情ガ內地トハ非常ニ趣キヲ異ニ致
  シテ居リマスノデ、只今直グ農業保險制度
  ガ朝鮮ニ施行シ得ルヤ否ヤニ付テハ、餘程
  考究スベキ問題ガ多イデアラウト云フ風ニ
  考ヘルノデアリマス、農林省ト致シマシテ
  ハ內地ダケノ問題トシテ之ヲ取扱ツテ居ル
  譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=19

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• 020・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　只今ノ米價ニ關スル安田
  サンノ御質問ニ御答ヘ致シマス、最近米價
  ノ問題ガ一般ニ色々喧シイ問題ニナツテ居
  リマス、又此ノ議會ニ於キマシテモ色々ノ
  機會ニ於テ熱烈ナ御意見ガアリマスノデ、
  吾々ト致シマシテハ御質問ノ中ニ現ハレマ
  シタ色々ノ御意見ニ對シテハ能ク拜聽致
  シテ居ルノデアリマス、併シナガラ之ニ對ス
  ル政府ノ現在ニ於ケル意見ハドウカト云フ
  御質問ニ對シマシテハ、豫テ申上ゲテ居ル
  通リデアリマス、一體米價ノ決定ニ付キマ
  シテハ-是ハ他ノ各種ノ物資ニ付テモオ
  互ヒ相關聯スル所ガナイモノハナイノデア
  リマスケレドモ、殊ニ米價ノ問題ト云フモ
  ノハ、所謂基本物資ノ一ツデアリマス爲ニ、
  非常ニ全經濟產業ニ關聯スル所ガ大キイノ
  デアリマス、農林省ト致シマシテハ豫テ米
  穀統制法ノ時代カラ、此ノ最高最低價格ノ
  決定ノ場合ニ於キマシテモ、政府部內ノ手
  續ト致シマシテモ、非常ニ愼重ナ手續ヲ執
  リマシテ之ヲ決スルト云フコトニ致シテ居
  ルノデアリマス、現在ノ管理法ノ下ニ於キ
  マシテモヤハリ同樣デアリマシテ、是ガ決
  定ニハ非常ナ愼重ナル手順ヲ經ルコトニ致
  シテ居リマス、隨ヒマシテ今日ノ時期ニ於
  キマシテハ、要スルニ豫テ申上ゲテ居ル意
  見ノ通リニヤツテ居ルノデアリマス、將來ノ
  問題トシテハソレ〓〓ノ手順ヲ經テ決マル譯
  デアリマシテ、其ノ內容ガドウナルカト云
  フコトニ付テハ、私共モ現在ノ所豫言ガ出
  來ナイ位ノモノデアリマス、唯色々ノ御意
  見ニ付テハ能ク拜聽ヲ致シテ居ル次第デア
  リマス、所デ今安田サンノ價格ノ引上ト云
  フコトハ出來ナイダラウカ、奬勵金ノ引上
  ト云フヤウナコトハドウ考ヘルカト云フ御
  話デアリマス、若シ茲ニ生產者ノ販賣價格
  ガ現狀ヨリモ上ラザルヲ得ナイト云フ場合
  ヲ假ニ豫想シマスナラバ、米ノ如キ物資ニ
  付キマシテハ、是ハ他ニ色々御意見モアリ
  マスケレドモ、何レカト言ヘバ價格其ノモ
  ノノ引上ヨリハ、奬勵金ノ引上ト云フヤウ
  ナ方法ガ比較的執ラルベキ手段デハナイカ、
  斯ウ私共モ考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=20

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• 021・安田桑次

  ○安田委員　農政局長ノ御意見デ能ク分リ
  マシタガ、私ハ朝鮮ノヤウナ所ニコソ本當
  ニ政府ガ親心デ心配ヲシテヤツテ貰フ必要
  ガアルト思フノデアリマス、一旦其處ニ早
  魃ガ起ツテモ相當ノ害ガアリマスシ、又雨
  ガ降ツテモ非常ニ害ガアル、兩方ニ引掛ル
  災害地ナノデアリマス、殊ニ農業技術ハ一
  步モ進步ヲシテ居リマセヌ、溜池一ツ造ル
  譯デハナイ、又吾々朝鮮ノ農業ヲ拜見致シ
  マスト非常ナ原始農業デアル、土地所有者
  ハ悉ク京城附近ノ都會ニ集マツテ豪華ナ生
  活ヲシテ、穫リ上ツタ收穫ノ九割以上モ搾
  取シテ居ル現狀デアル、又內地ガ日照時間
  ガ多クテ、米ガ豐作ノ時ニハ朝鮮ハ不作デ
  アリ、內地ガ不作ノ場合ニハ朝鮮ガ豐作デ
  アル、不作、豐作ヲ交互ニ繰返シテ居ル狀
  態デアリマス、玆ニ將來ノ食糧問題ノ點カ
  ラ餘程感心シナイ問題ガアルト思フノデア
  リマスガ、朝鮮總督府ニ於テ何カ適當ナ施
  設ガアリマスナラバ承リタイト思フノデア
  リマス、實際朝鮮ノ農業ト內地ノ農業トヲ
  比較シタ時ニ、今年アタリノ農民ノ狀態ハ
  實ニ雲泥ノ差デアリマス、內地ノ農村ハ全
  ク樂デアル、朝鮮ノ農村ノ連中ハ本當ニ地
  獄ニ突キ落サレテ居ルヤウナ感ジガスル程、
  內地トハ大變ナ隔リガアルノデアリマス
  ガ、玆ニモ政府ノ親心ガナケレバナラヌ
  ト思フノデアリマス、唯此ノ保險法ガ如
  何ナル形ニ於キマシテモ內鮮ヲ通ジテ施
  行セラレナイコトヲ、殘念ニ思ヒ遺憾
  ノ意ヲ表スル次第デアリマス、次官ノ御
  答辯モ大體私諒承致シマシタ、實際今日程
  是等ノ勞働力ガ國家ヲ初メ各層ニ於テ大變
  尊重サレテ居ルコトハ未ダ曾テ開闢以來
  ナカツタト思ヒマスガ、今カラ十年モ前ニ此
  ノ議事堂邊リヘヤツテ來テ、農村ノ勞力問
  題ナド言ツタラ張リ倒サレテシマツタト云
  フ位ノ時代モアツタノデアリマスガ、今ヤ
  非常ニ勞働力ガ尊重サレルト同時ニ、食糧
  部門ニ携ハル人々ノ勞働價値ト云フモノガ
  國家的ニ認メラレテ來タ、今日ハ色々農家
  ト致シマシテモ不平ハアリマセウガ、國家
  ノ危急存亡ノ場合、勿論辛抱スルコトハ當
  然デアリマスケレドモ、一寸計算ヲシテ見
  テモ餘リニ釣合ガ取レナイノデアリマス、
  例ヘバ東京へ來テ一泊シマシテモ米ヲ三斗
  位持ツテ來ナケレバ一晩泊メテ吳レナイ、夕
  食ヲ一遍食ベニ參リマシテモ、一斗五升位
  ノ米ヲ持ツテ來ナケレバドウシテモ夕食一
  遍ガ食ベラレナイ、一反步ノ收穫ヲ以テシ
  マシテモ、一寸良イ反物ハ二反位シカ買ヘ
  ナイ、餘程安イ實用銘仙ト稱スルヤウナ被
  服デモ米ヲ二俵持ツテ來ナケレバ買ヘナイ
  ト云フヤウナコトハ、何ト言ツテモ理窟ニ
  合ハナイノデアリマス、然ラバ買入レルモノハ
  ドウカ、煙草一箇、朝日一箇買フニ致シマ
  シテモ、米ヲ一升持ツテ行カナケレバナラ
  又、一升ノ米ハ一坪餘リノ田デ八箇月ヲ要
  スルノデアリマス、細カイ計算ヲ致セバ相
  當百姓ニモ不平ハアリマスケレドモ、併シ
  ナガラ昔カラ數ノ多イ者ガ大切ニサレナイ
  ノハ當然デ、數ノ少イモハ世ノ中ニ大切ニ
  サレテ行クト云フ結果ガ玆ニモ隨分現ハレ
  テ居リマス、昔カラ農業ハヤハリ百業ノ下
  積ミデアルト言ハレテ居ルガ、今日ニナリ
  マシテモ尙ホ百業ノ下積ミトシテ甘ンジナ
  ケレバナラヌ、私ハサウ云フ認識ノ下ニ斯
  ウ云フ事變ニナツテカラ、國家カラ甲ハ百姓
  ヲヤレ、乙ハ軍需工業ニ働ケト云フヤウニ
  割付ケラレタモデナクシテ、祖先カラ承繼
  イデ來タモノデアルカラ、多少ハ不平ガア
  ツテモ少々ハ辛抱シナケレバナラヌコトハ
  勿論デアリマス、サウ云フコトモ私ハ近親
  ノ者ニ言ウテハ居リマス、唯米價ガ上ラナ
  クテモ宜イ、上ラナケレバ上ラナイデ宜イ
  ト云フコトハ、其ノ反面ニ於テ無茶苦茶ニ
  鰻上リニ上ツテ行ク相場ノ引下ゲヲ一ツ是
  非ヤツテ貰ハナケレバナラナイコトダト思ツ
  テ居リマス、是ハ實ハ次官ニ御尋ネスルコ
  トデハアリマセヌガ、國務大臣ニナツタ氣
  持デ一ツ聽イテ戴キタイト思ヒマス、私ハ
  實際今マデノ日本ノヤリ方ト云フモノハ恰
  モ庭師ガ枝葉末節ヲ摘ムヤウナ仕事バカリ
  デアツテ、根本的ナ拔本塞源ト云フヤウナ
  徹底シタ政策ニ缺ケテ居ルト思ヒマス、例
  ヘバ纖維ノ問題ニ致シマシテモ、衆智ヲ集
  メテ國民服ヲ作ル、サウ致シマスルト、其
  ノ國民服ヲ制定シタニモ拘ラズ、尙且ツ縞
  ノモノ、或ハ其ノ他ノ羅紗ノ系統ノモノヲ
  ドシ〓〓織ラセテ見タリ、或ハ一ツノ團體
  ガ出來ルト、例ヘバ警防團ニハ特別ニ又服
  ヲ作ラセル、軍人、靑年團、凡ユルモノガ
  各種各樣ノ服裝ヲスルト云フコトハ、國家
  ノ纖維ノ使用ノ上カラ言ヘバ私ハ大キイ損
  害デアルト思ヒマス、ソンナコトハ商工大
  臣ニ言フコトデアリマスケレドモ、何カニ
  付ケテ無駄ガ多イノデアリマス、偶〓本案ノ
  農業保險法ノ如キモ、決シテ農民ガ之ニ依
  ツテ本當ニ喜ンダ氣持デ、安心シテ農業ニ
  從事スルコトガ出來ルト云フ拔本的ナ案デ
  ナイコトハ私ガ申上ゲルマデモナイノデアリ
  マス、ヤラヌガ宜イカ、ヤツタ方ガ宜イカ
  ト言ヘバ、是ハヤツタ方ガ心理的ニ宜イト
  云フ程度ノモノデアルト私ハ確信致シマス
  ガ、一體コンナ工合デ世相ノ赴ク所ヲ見マ
  スト、配給ノ不圓滑カラ色々ナ形ニ於テ闇
  取引ガ橫行致シマスシ、而モ其ノ闇取引ノ
  最初ハ商工業者ノ大手筋デアツタノデアリマ
  スガ、是ガ一應檢擧ヲ致サレマシテ今日ニ
  ナリマスト、最早全ク拾收ノ出來ナイヤウ
  ナ小サナ闇取引ガ到ル所ニ起キテ參ツタノ
  デアリマス、而モソレガ都會カラ差伸ベラレ
  ル手ガ農村ニ及ンデ、サウ云フ經濟的ノ深
  イ考ヘ方ヲ持ツテ居ラナカツタ農民ノ頭ニ
  浸潤致シマシテ、今ヤ大根一本、牛蒡一本
  ニ致シマシテモ、殆ド闇ナラザルハナシノ
  今日、是デ一體宜イノデアルカドウカト云
  フコトヲ、私ハ常ニ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス、コンナコトハ本當ハ總理大臣ニ御尋ネ
  スルコトデアリマスケソドモ、吾々ノヤウ
  ナ新米ハ上ノ人ガ皆口ヲ封ジテシマツテ、此
  ノ邊ノ所ニ押込ンデシマツタ(笑聲)已ムヲ得
  ズ斯ウ云フ小サナ委員會デコンナ不平ヲ爆
  發スルヤウデアリマスケレドモ、ロデコソ
  官廳其ノ他大政翼贊會ニ於キマシテモ、色々危
  急存亡ダト言ツテ居リマスケレドモ、將來
  存立スルカ亡ビルカト云フヤウナ、本當ニ
  ソンナ空氣ガ一體何處ニ漲ツテ居ルカト云
  フコトヲ考ヘマスル時ニ、洵ニ遺憾至極デ
  アリマス、ドウカ一ツ御迷惑デアリマスル
  ケレドモ、次官ニ總理大臣ニナツタ積リデ
  御答辯ヲ戴キタイト思ヒマス(笑聲)

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=21

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• 022・石黒忠篤

  ○石黑政府委員　各種ノ統制、殊ニ價格統
  制ニ付キマシテ、段々今日ニ至ルマデノ沿
  革的ナ觀察モ御加ヘニナツテ、安田サンノ
  種々實情ニ應ジテノ御意見ハ大體ニ於キマ
  シテ御同感デアリマスガ、唯御話ノ中ノ意
  見ノ違フ點ヲ先ニ申上ゲマス、例ヘバ最近
  ニ於キマシテモ、煙草ノ値上ニ伴ツテ、ヨ
  ク世間デ、例ヘバ「櫻」ト米ノ値段ト云フモ
  ノヲ比較シテノ議論ガアルノデアリマシテ
  是ハ一寸考ヘルト如何ニモ尤モデアリマス
  ガ、其ノ點ニ付テハ農家邊リニ十分理解シ
  テ貰フコトハ難カシイト思ヒマスケレドモ、
  此ノ機會ニ於テ私共ノ所見ヲ申上ゲテ置キ
  タイト思ヒマス、今日ノヤウナ時期ニ於キ
  マス各種ノ物ノ値段ニ付キマシテハ、物ノ
  値段ト其ノ中ニ含マレテ居ル所ノ利潤、或
  ハ其ノ物ノ値段ノ中ニ加ヘラレテ居ル所ノ
  國家ノ徵稅スル課稅ト云フモノヲ分ケテ考
  ヘナケレバナラナイノデアリマス、煙草ノ
  場合ニ於キマシテハ、御承知ノヤウニ國ノ
  專賣ニ依リマシテ國家ガ其ノ利潤ヲ取得致
  シマシテ、之ヲ軍費其ノ他ニ使フノデア
  リマス、サウ云フ方法ニ依リマシテ物ノ値
  段ヲ上ゲル場合ニ於テハ、其ノ物ガ國民ノ
  眞ノ必需品デアル場合ニハ、是ハ努メテサ
  ウ云フコトヲ避ケナケレバナラナイノデア
  リマス、愈〓ドウシテモ國家財政ノ上ニ必要
  ガアツテ已ムヲ得ナイト云フコトニナレバ、
  或ル程度必需品マデ及ブカモ知レマセヌケ
  レドモ、是ハ成ベク避ケナケレバナリマセ
  又、今囘ノ間接稅ノ增稅ニ付キマシテモ、
  相當サウ云フコトハ考慮セラレテ居リマス
  ガ、一昨年アタリノ場合ニ於キマシテモ、
  同ジ種類ノモノニ對シテ間接稅ノ課稅ヲ致
  ス場合ニモ、國民大衆ノドウシテモ使ハナ
  ケレバナラヌヤウナモノニ付テハ、課稅ヲ
  止メルトカ云フコトニ致シマシテ、アノ課
  稅ガ行ハレテ居ルノデアリマス、物ノ價格
  ハ、必需品ハ努メテ抑ヘナケレバナラナイ、
  同時ニ不急不要ノ品物ハ、極端ニ行ケバ製
  造ヲ禁止スルシ又場合ニ依リマスト、或ル
  程度ノモノハ一般ニ流通サセテモ宜シイガ、
  ソレニハ課稅ヲ致シマシテ、其ノ流通ノ場
  合ニ於テハ必ズ國家ガ徵稅ヲスルト云フヤ
  ウナコトニ致シマシテ、結局、其ノ物ノ値
  段ヲ高クスル、高クスルコトニ依ツテ、-
  面ニ於テ國家ノ收入ヲ課稅ニ依ツテ得マス
  ルト同時ニ、一般ノ人ノサウ云フ方面ニ對ス
  ル消費ヲ抑制スル斯ウ云フ手段ヲ執ルノデ
  アリマスガ、是ハ當然然ルベキ巧妙ナル國
  家トシテノ方法ダラウト思ツテ居リマス、
  所ガ世間往々ニシテ結果ダケヲ見マシテ、
  不急不要ナモノニ課稅ナンゾヲシテソレニ
  依ツテ又改メテ數量的ニ消費ヲ抑制シヨウ、
  國民ニ對シテ抑制サセヨウト云フヤウナ手
  段ニ出テ居ルノニ、不急品ト不要品トヲ比
  較シマシテアア云フ物ガ高クナツタラ、斯
  ウ云フ物モ高クナツテモ然ルベキヂヤナイ
  カト云フ感ジヲ抱クノデアリマスガ、是八
  先程申シマシタヤウニ、一應サウ云フ風ニ
  感ズルノモ無理カラヌ點モアリマスケレド
  モ、ソコハ餘程嚙ミ分ケテ國民全體トシテ
  ハ今日ノ國家ノ施策ヲ理解シテ戴ク必要ガ
  アラウト思フノデアリマス、唯必需品ト不
  急不要品トノ兩者ノ中ニ含マレテ居ル、
  ソレガ生產ナリ何ナリノ爲ノ勤勞ニ對スル
  報酬、或ハサウ云フ物ノ生產ナリ何ナリニ
  伴フ所ノ利潤ト云フヤウナモノヲ比較シ
  マスル場合ニ、不急不要ノ方面ニ利潤ガ多ク
  シテ、必需品ノ方ニ利潤ガ少ナイト云フヤウ
  ナコトハ、是ハヤハリ物價政策ノ觀點カラ
  申セバ、少クトモ好マシクナイノデアリマ
  ス、私共農產物ノ價格ノ均衡問題ニ付キマ
  シテモ、其ノ點ヲ感ジマスノデ、現在ノ狀
  況ニ對シテ深ク苦慮シテ居ルヤウナ次第デゴ
  ザイマス、勿論苦慮バカリシテ居テモ仕方
  ガナイヂヤナイカト云フコトニモナリマス
  ガ、何等カ一ツ方法ヲ講ジテ參リタイト考ヘ
  テ居ルヤウナ譯デアリマス、各種ノ纖維製品
  ナドモ農家ノ消費ノ上ニ大キナ關聯ノアル
  品物デアリマスノデ、農家トシテ非常ニ關心
  ヲ持ツノデアリマス、從來ノ狀況必ズシモ適
  當デアツタトモ考ヘラレマセヌガ、最近ニ
  於キマシテハ事態ノ緊迫化ニ伴ヒ、其ノ
  方面ノ當局ニ於キマシテモ愈〓必需品ノ
  生產ニ集中致シマシテ、不急不要或ハ贅澤
  ナ方面ニ對スル生產ヲ極度ニ抑制シテ參ル
  ト云フヤウナ方針ヲ執ツテ居リマシテ、其
  ノコトガ現ニ例ヘバ蠶絲業方面ニ於キマシ
  テハ繭ノ處理方法ノ一大轉換ヲ要スルヤウ
  ナコトニモ立至ツテ居ルヤウナ次第デアリ
  マス、或ハ國民服ノ御話モアリマシタガ、
  國民服制定當時ニ於テハ、私ハ偶〓其ノ方面
  ノ纖維ノ方モヤツテ居リマシタガ、當時ヤ
  ハリ纖維當局トシテハ、男子ノ服ハ全部國
  民服地ヲ作ルト云フ位ナ方針ヲ以テ實ハ進
  ンダノデアリマスガ、アレモ主ニ「カーキL
  色ニ付テハヤハリ特定ノ染色ヲ要スルト云
  フヤウナ譯デ、ヤハリ是ガ生產ニ付テハ或
  ル程度ノ限界ガ染色其ノ他ノ關係カラ參ツ
  タヤウナコトモアルノデアリマス、詰リ業
  者ノ持合セ、其ノ他各種ノ染色材料、染料
  ガマダ使ハレズニアル、ソレヲ一面ニハ使
  ツテ行カナケレバナラヌト云フコトト、今
  一ツニハ「カーキ」色地ヲ作ルニ要スル染料
  ハ軍需關係ニ非常ニ使ハレル、軍需關係以
  外ノモノニ對スル供給量ト云フモノハ、ソ
  コニヤハリ限定サレルト云フヤウナコトデ、
  結局私モ記憶致シテ居リマスガ、當時計算シ
  テドノ位作ラウカト云フ時ニ、百何十何万
  着ト云フ程度ニ一應止メザルヲ得ナカツタ
  ヤウナコトモ、或ハ記憶ノ間違ヒガアルカ
  モ知レマセヌガ、アツタヤウニ思フノデア
  リマス、ヤハリ現在ハ色々資材關係ガ中々
  ムヅカシイノデアリマシテ、其ノコトノ爲
  ニ段々立入ツテ見マスト、若シ其ノ方面ノ
  事情サヘ打開サレレバ、洵ニヤツテ然ルベ
  キト思フヤウナコトデモ、或ル限界ニ限ラ
  レルト云フヤウナコトモアルノデアリマス、
  政府ト致シマシテハ出來ルダケ實情ヲ國民
  全般ニ知ラシテ理解ヲ得ル必要ガアリマス
  ケレドモ、是亦自ラ限度ガアリマシテ、中
  中ソレガ出來ナイノデアリマス、併シ又
  今日ノヤウナ事態ニ於キマシテ、國家全體
  ノ運營ヲ少シデモ良クシタイト云フ考ヘヲ
  吾々日本國民全體ガ、ソレ〓〓直接ノ職能
  ニアルト否トヲ問ハズ、熱烈ニ持ツテ居リ
  マス爲ニ、各方面ノコトニ付テ非常ニ論議
  ガ多イヤウデアリマス、是ハ當然ノコトデ
  アリマシテ、此ノ間ニ處シテ大局的ニハ能
  ク各方面ノ皆樣方ノ御意見モ聽キ、又政府
  ノ色々ナ事情ニ付テモ或ル程度已ムヲ得ナ
  イ點ニ付キマシテハ御信用ヲ戴クト云フヤ
  ウニ行カナケレバナラナイノデスガ、ソレニ
  付テハ御信用ヲ戴クヤウニ吾々モ平素カラ
  努メナケレバナラヌノデ、今農家或ハ農家
  ノ經濟、其ノ他ノコトニ關聯シテノ大局的
  ナ御話ノ點ハ洵ニ御同感デアリマシテ、私
  共ト致シマシテモサウ云フヤウナ事情ヲ能
  ク考慮ニ入レマシテ、色々ナコトヲ進メテ
  參リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=22

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• 023・安田桑次

  ○安田委員　次官ノ懇切ナ御說明ニ依ツテ
  將來ノ行キ方ニ付テ私ハ諒承致シマシタ
  ガ、戰時生活ニ付テハ色々美名ハ稱ヘラレ
  テ居ルケレドモ、本當ニ是ガ行ハレテ居ナ
  イノガ實際デアリマシテ、戰時生活トハ困
  苦缺乏ニ堪ヘルコトデアツテ、アレガ足ラ
  ヌトカ、是ガ足ラヌトカ云フコトヲ口ニ言
  フベキ時代デハナイ、然ルニドウモ政府ノ
  役人ノ言ハレルコトト實際トガ〓違ツテ來
  ル、例ヘバ農村デアリマスナラバ付合フ者、
  接スル者ガ大體隣近所ヲ中心ニシテ、隣ガ
  米ヲ何俵穫ツタカラ、自分ノ家ハドレダケ
  穫ラナケレバナラナイ、隣ガドレダケ金ヲ
  貯メタカラ、自分ノ方ハ是ダケ貯メナケレ
  バナラナイト云フ譯デ、極メテ視野ガ狹ク、
  近隣ヲ出デナイノデアリマス、隨テ國家ガ
  潰レテモ宜イト考ヘテ居ル者ハ一人モ居リ
  マセヌガ、ドウカスルト自分ノ私慾ノ方ニ
  趨ツテ、ドンナニ立派ナ指導者ガヤツテ來
  テ色々ナコトヲ話シテ見テモ、ソレハ丁度
  御說〓ヲ聽イテ居ルヤウナ氣持デ、高座ノ
  前デハ隨喜感激ノ淚ヲ出シマスガ、一步外
  へ出ルトモウソンナコトハ忘レテシマツテ、
  私益追求ニ戾ル、隨テ政府ハ一兩年來盛ン
  ニ共同作業ヲ勸メラレテ居ラレマスガ、中
  中ソレガ旨ク行カナイ、而モ命令ニ服セザ
  ル者ハ農會法ノ命ズル所ニ依ツテ相當ノ過
  怠金ヲ取ルト云フ法文ガアルニ拘ラズ、兎
  ニ角之ヲ厭ガル、其ノ厭ガル根本ノ理由ト
  スル所ハ能率ガ上ラナイト云フノデス、何
  故カト申シマスト、甲ナリ、乙ナリ、丙ナ
  リハ各〓自分ノ體力ニ依ツテ仕事ノ能率ガ違
  フ、ソレヲゴツチヤ混ゼニシテ仕事ヲスルト、
  體ノ强イ者ガ損ダト云フ、極メテ細カイ所ニ
  拘泥ヲシテ居ルノデス、私ハ是ハ國家ノ大キナ
  目的ノ爲ニ、勞力不足ノ爲ニ今日之ヲ總括的
  ニ補ツテ行ク最良ノ方法デアルト思ツテ居ルノ
  デスガ、容易ニ是ガ行ハレナイノデアリマ
  ス、ドウカ斯ウ云フコトニ付テモ將來宜シ
  ク御指導下サツテ、萬全ヲ期シテ戴キタイ
  ト思ヒマス、更ニ賃金ノ如キモ公定賃金ガ
  アルニ拘ラズ、闇デ勞力ガ取引サレルト云
  フコトモアルノデアリマシテ、是ハ一面已
  ムヲ得ナイコトカトモ思ヒマスガ、兎ニ角
  國家ノ政治ノヤリ方ガ餘リニ生半可デ徹底
  ヲ缺イテ居ル、恰モ薄氷ヲ履ムヤウナ心持
  デ國民ニ對シテ政策ヲ行ツテ居ル、現在ハ
  喰フカ喰ハレルカノ大戰爭ヲヤツテ居ルノ
  デアリマシテ、負ケテシマヘバモウ何モ間
  題ハナクナツテシマフ、デアルカラ如何ナ
  ル困苦缺乏ニモ堪ヘテ、勝ツト云フ決意ノ
  下ニ本當ニ死力ヲ盡シテヤルト云フ熱意ガ
  政府ニアツテ欲シイト思フ者デアリマス、
  私ハ十數年ノ村治ノ經驗ヲ持ツテ居リマス
  ガ、其ノ自分ノ經驗カラ考ヘマスト、長イ
  間農家ニ生レテ農家ニ育チ、農業バカリヤ
  ツテ居ル人ハ視野ガ狹ク、高遠ナ理想、精
  神的ノ文化ヲ植付ケヨウトシテモ中々困難
  ナノデアリマス、隨ツテ是ハ政策ノ强行ニ
  依ツテヤルヨリ外方法ハナイト思フノデス、
  ドウカサウ云フ意味合ニ於キマシテ、軈テ
  次官モ大臣ニナラレル時代モアルト思ヒマ
  スシ、大臣ノ仕事ハ大體次官ガセラレルノ
  デアリマスカラ、是非色々ノ立案ノ場合ニ
  ハ御考へ願ヒタイト思ヒマス、モウ一ツ申上
  ゲタイ點ハ、別ニ御注意ヲ申上ゲルト云フ譯
  デハナイケレドモ、政府ノ大官ガ各方面ヲ視
  察サレル場合ニハ、餘リ新聞ナドニ發表
  シテ戴カナイ方ガ宜イト思ヒマス、新聞
  ニ出マスト、地方長官ナドハ非常ニ心配
  シテ色々準備ヲシ、又視察ノ行程ナドヲ作
  ル、サウ云フコトニナルト本當ノ姿ガ見テ
  戴ケナイ、皆化粧ヲシ、白粉ヲ着ケテ、サ
  ウシテ出來ルダケ立派ナモノヲ大臣諸公ニ
  御目ニ掛ケタイト云フノガ地方長官トシテ
  ノ、寧ロ人間トシテ無理カラヌ氣持デアラ
  ウト思ヒマスガ、ソレデハ折角中央カラ御
  出張戴イテモ、眞ノ姿ヲ視テ戴クコトガ困
  難カトモ存ジマス、生地ノ儘ヲ視テ戴クニ
  ハ、豫メ新聞ニ發表ニナラズニ、後ニナツ
  テ發表シテ戴ク、ソレコソ昭和ノ水戶黃門
  樣ノヤウナモノデ、農民ニ與ヘル影響モ大
  キイト思ヒマス、前ニ發表シタノデハ、本
  當ニ農民ニ接シテ實情ヲ見聞シテ戴クコト
  ガ出來ナイ、村長トカ、農會長トカ云フモ
  ノモ色々絹ヲ着セテ話シ、又色々ナモノヲ
  拵ヘテ來テ朗讀的ニ報告スルト云フヤウナ
  コトデ、御視察ノ不徹底ヲ來スコトニナリ
  マスカラ、之ニ付テハ將來ニ向ツテ御注意
  ヲ願ヒタイト思ヒマス、私ノ質問ハ是デ終
  リマス

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• 024・池田秀雄

  ○池田委員長　質問ノ通〓ハ是デ濟ンデ居
  リマスガ、短時間ドナタカ質問ヲオヤリニ
  ナルナラ此ノ際宜シウゴザイマス-午後
  ハ大臣ニ御出席ヲ願フコトニナツテ居リマ
  ス、大臣ニ御質問ノ方モ大體承ツテ居リマ
  スケレドモ、理事ノ方ニ御申込ヲ願ヒマス、
  ソレデハ午前ハ是デ休憩致シマシテ、午後
  一時ニ再開致シマス
  午前十一時四十一分休憩
  午後一時十七分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=24

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• 025・池田秀雄

  ○池田委員長　是ヨリ午前ニ引續キ會議ヲ
  開キマス-松浦周太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=25

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• 026・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　過日農業保險改正法案本
  會議提案ノ際ニ於ケル大臣ノ御說明ヲ讀シ
  デ見マスト「大東亞戰爭ノ進展ニ伴ヒマシ
  テ、日本民族ノ源泉タル農村ノ維持育成及
  ビ日滿ヲ通ズル食糧自給力强化ノ根本國策
  ヲ實現致シマスル爲ニ、農業經營ノ安定ヲ
  圖リ、農業經濟ノ確立ヲ期スルノ必要ハ益〓
  緊切ナルモノガアルノデアリマス」ト云フ
  御說明デアリマシテ、御說ノ通リデアリマ
  ス、農業經營ノ安定ヲ圖リ、農家經濟ノ確
  立ヲ期スルコトハ戰時下食糧增產計畫ノ上
  ニ最モ緊切ナルコトハ私ハ同感デアリマス、
  然ルニ本案ノ提案サレマシタ改正要點ハ保
  險事故中第一類ノ水稻ニ對シマシテ四十五
  圓第二類ノ共濟事業ニ對シテハ二十五圓
  トナツテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ對シ
  マシテ當局ガ努力サレテ參リマシタコトニ
  付キマシテハ見ルベキモノガアルト思ヒマ
  ス、特ニ保險ノ考ヘ方ガ從來ト變リマシテ、
  國ト食糧特別會計方面ニ於テ半分以上ヲ持
  ツト云フ新シイ考ヘ方ニ對シマシテハ共鳴
  スルモノデアリマス、然ルニ一方冷害地ニ
  アラザル方面ノモノガ四十五圓デアツテ、
  水稻冷害地ノ共濟制度ト云フモノハ二十五
  圓デアル、此ノ點私ハ常ニ申シテ居ル所デ
  アリマシテ、本案ガ有馬農相時代ニ提案サ
  レタ當時カラ議會ノ問題トナツテ居ルノデ
  アリマス、當時政府當局ニ於キマシテハ農
  業保險法ノ決議ニ際シマシテ冷害ヲ保險事
  故ニスルト云フコトニ付テハ、近イ將來ニ
  必ズスルト云フコトヲ度々議會デ聲明セラ
  レテ居リマス、又其ノ後議會ガ數囘開カレ
  マシタガ、其ノ開カレマス度ニ此ノ問題
  ヲ解決スルト云フコトヲ常々申シテ居ラレ
  マスガ、今度提案サレタモノニ對シテ多少
  ハ直ツテ居リマスケレドモ、四十五圓ニ對
  スル二十五圓ト云フ此ノ開キガ何處ニ私ハ
  論點ガアルカ、之ヲ見出スニ苦シムノデア
  リマス、假ニ四十五圓ノ方ノコトヲ考ヘテ
  見マスト、四十五圓ノ方ハ大體二毛作ガ出
  來マス、水田ノ表作ガ不作デアリマシテ
  干、裏作ニ於テソレヲ取返ヘスコトガ出來
  ルデアリマセウ、玆ニ農家經濟ハ安定セラ
  レルモノデアリマス、又保險ノ掛金ノ步合ヲ
  見マシテモ、四十五圓ノ方ハ一圓二十三錢、
  ソレヲ國ト食糧特別會計ノ方トデ六十三錢
  持タレルカラ、結局六十錢ノ一本掛デ宜シ
  イ、然ルニ冷害地ノ方面ハ八十九錢ノ共濟
  ノモノニ對シテ四十九錢國及ビ食糧特別會
  計ノ方デ持タレルカラ、此ノ方ガ四十錢ノ
  掛金ヲ拂フノデアリマス、同時ニ第一類ノ
  保險ノ方ヲ六十錢掛ケルト一圓ノ掛金ヲシ
  ナケレバナラヌ、一圓ノ掛金ヲシタ方ガ災
  害ノ起ツタ時分ニハ二十五圓シカ貰ヘナイ、
  片方ノ六十錢ノ方ハ四十五圓貰フコトガ出
  來ル、斯ウ云フ不均衡ナコトデ、ドウシテ
  農村ノ再生產ガ行ハレルカト云フ點デアリ
  マス、更ニ此ノコトニ對シマシテ、冷害地
  ノ方面ノ生產「コスト」ガ安ク上ツテ、サウシ
  テ冷害ニアラザル普通保險事故ノ方ノ四十
  五圓ノ方ガ生產「コスト」ガ高ク上ルカト云フ
  コトヲ檢討致シテ見マスナラバ、是亦逆ナ
  方向ニ向ツテ居リマス、之ニ對シマシテハ
  安孫子委員カラモ技術的ニ色々ト御質問セ
  ラレマシテ、判然致シテ居ルノデゴザイマ
  スガ、一例ヲ申シマスト、是ハ北海道農會
  ノ調査デゴザイマスガ、北海道ノ冷害ヲ受
  ケル方面ノ生產費ヲ見マスト、自作ハ直接
  費ガ一反步當リ八十五圓掛ツテ居リマス、
  間接費ガ十五圓、計百圓掛ツテ居ル、百圓
  掛ツテ居ルモノニ對シマシテ、小作ノ方ハ
  百九圓八十六錢ニナツテ居リマス、是ダケ
  ノ經費ヲ掛ケタモノニ二十五圓ノ保險金ヲ
  貰ツテドウシテ農業再生產ガ出來ルカ、農
  家經濟ノ安定ヲ期シ、農業經營ノ確保ヲス
  ルニアルト云フ大臣ノ御聲明トハ、大分隔
  リガアル、斯ウ云フ風ニ考ヘマスガ、之二
  對シマシテドウシテ此ノ二十五圓ノ保險金
  ニ依ツテ再生產ガ行ハレルカト云フ大臣ノ
  御所見ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=26

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• 027・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農業保險ノ問題ニ關聯致
  シマシテ、水稻ノ冷害ヲ保險事故ニ加ヘテ
  貰ヒタイト云フ御希望ハ、從前カラ吾々ハ
  伺ツテ居ルノデアリマス、併シ今御話ノヤ
  ウニ政府ガ議會デ必ズ保險事故ニスルト云
  フコトヲ申上ゲタコトハ私ハ記憶シテ居リ
  マセヌ、詰リ保險事故ニハ中々困難デアル
  ケレドモ、兎モ角冷害ニ付テモ出來ルダケ
  調査會、其ノ他ノ色々ノ機關デ〓究ヲシテ、
  サウシテ御希望ニ副フヤウナ何等カノ施設
  ヲ講ジタイト考ヘテ居ルト云フコトヲ申上
  ゲテ居ルノデアリマス、ソレガ先般共濟施
  設トシテ現ハレテ參ツタノデアリマシテ、
  今日ニ於キマシテモ冷害ノ危險率カラ考ヘ
  テ見マシテモ、直チニ之ヲ保險事故ニ致シ
  マスト、非常ナ高イ保險料ニ致サナケレバ、
  其ノ經營ガ出來得ザル實情ニアルト思フノ
  デアリマス、隨テ保險事故ニハ致シマセヌ
  ガ、共濟施設トシテ保險事故ニ類似ノ施設
  ヲ以テ是ガ對策ト致シタイト考ヘマシテ、
  先般十圓ノ共濟金ヲ以テ國庫ガ多少ノ補助
  ヲ致スコトニ依ツテ、其ノ施設ヲ致シタノ
  デアリマスケレドモ、今囘一般ノ農業保險ヲ
  水稻ニ付テハ從來二十圓デアリマシタノヲ
  四十五圓ニ致シマシタノデ、其ノ關係デ冷
  害ニ關スル共濟施設モ十圓ヲ二十五圓ニ上
  ゲタノデアリマス、其ノ割合ハ寧ロ水稻ノ
  他ノ保險事故ヨリハ上ゲタ位ニ私共ハ考ヘ
  テ居ルノデアリマス、然ラバナゼ一擧ニ四
  十五圓マデニセヌカ、斯ウ云フ御話デアリ
  マスガ、マア總テ斯ウ云ツタ施設ニ付キマ
  シテハ、國家ノ財政ノコトモ考ヘナケレバ
  ナリマセヌシ、急激ニ其ノ施設ヲ擴充致シ
  マシテモ又ソレガ十分ニ行カナイト云フ場
  合モアリマスルカラ、取敢ヘズ此ノ程度ヲ
  以テ御要望ニ對シテハ相當ニ御答ヘシタ積
  リデアルノデアリマス、此處マデ持ツテ來
  マスノニモ隨分私トシテモ苦勞ヲ致シマシ
  タ、中々財務當局ノ方デハ此ノ問題ニ付テ
  モ難色ガアツタノデアリマスガ、兎モ角是
  ハ議會デモヤカマシイ問題デアリ、議員諸
  君モ非常ニ要望シテ居ラレル問題デアルカ
  ラ、是非此ノ程度ダカラシテ吳レト云ツテ、
  大體話ヲ決メタノガ此ノ程度デアリマス、
  又何カ之ヲ實行致シマシテ不十分ナ點ガア
  レバ是ハ又改善致シテ參リタイト思ヒマス
  ケレドモ、今日ノ施設トシテハ此ノ程度ヲ
  以テ滿足シテ戴クト云フヨリ外致シ方ガナ
  イノデハナイカト考へテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=27

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• 028・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　保險事故ニヤルトハハツ
  キリ申サレマセヌガ、冷害ヲ保險事故ニ入レ
  ラレルヤウニ近イ將來ニスルトハ仰セラレテ
  居ルト思フノデアリマス、更ニ今度保險ノ
  改正ノ目標ハ、農家ノ增產ニ對スル一ツノ刺
  戟ニナラナケレバナラヌ、斯ウ云フコトガ
  一ツノ目標ダト思フノデス、此ノ保險ヲサ
  レルコトニ依ツテ不安定デアツタモノヲ續
  ケテ米ヲ作ツテ行ク、斯ウ云フ自發的ナ氣
  持ヲ起ス、詰リ農家ノ作物ニ對スル安全感
  ヲ持ツテ增產ニ益〓拍車ヲ掛ケテ行クト云フ
  コトガ狙ヒデナケレバナヌト思フ、今日國
  內ノ〓糧ノ自給策ヲ講ズルト云フヤウナ場
  合ニ、何處ニ其ノ穀倉ヲ求ムルカト云フコ
  トヲ考ヘテ見マスルナラバ、土地開發營團
  ノ方ノコトモ考ヘナケレバナリマセヌガ、
  今日ノ土地開發營團ノ內容ニ付キマシテハ、
  豫算委員會等ニ於キマシテモ色々質疑應答
  ガ重ネラレマシテ、成績ノ上ラヌコトハ明
  カデアル、同時ニ從來米ノ增產ガドン〓〓
  行ハレテ居リマシタ所ノ內地一般ノ美田良
  圃ハ工場、鑛山、都市ノ擴張、飛行場、交
  通路、其ノ他ニ依リテドン/〓潰地ガ出來
  テ居ル、然ラバ國內ノ自給策ヲ講ズル所ノ
  穀倉ハ何處ニ求メルカト云フト比較的文
  化ノ劣ツテ居ル東北、北海道ノ冷害地、其
  ノモノガ日本ノ將來ノ穀倉ニナツテ行カナ
  ケレバイカヌ、玆ニ農業生產ニ對スル大キ
  ナ政治的ナ意味ガ含マレテ行カナケレバナ
  ラヌト云フ時ニ、是等ノ地方ガ何ニ依ツテ
  離農者ガ一番多イカト云フト、災害デアリ
  マン、此ノ災害ガ年々出テ來ル爲ニ農家ノ
  生活ニ脅威ヲ與ヘル、農家ノ生活ガ脅威ヲ
  與ヘラレル反面ニ、殷賑產業方面カラドンド
  ント誘惑ノ手ガ伸ビテ來ルト云フコトガ東
  北北海道ノ穀倉地ニ於ケル離農者ノ數、
  荒廢田畑ノ數ガ年々累進的ニ現ハレテ來ル
  事實ガ物語ツテ居ルノデアリマスマイカ、
  現ニ我ガ北海道ノコトヲ考ヘテ見マスナラ
  バ、土功組合ガ起リマシテ、サウシテ水田
  ガ完成セラレタト云フ時ニハ約二十二万町
  步ノ水田ガアツタモノナノデアリマス、所
  ガ今日作付ケラレテ居ルモノハ十六万町步
  ヲ下ルト云フ現狀デアリマス、現ニ私ノ住
  ム村ニ於キマシテモ、去年ノヤウナ豐作ノ
  ヤウナ年デスラ三分作ニ至ラナイ、保險ノ
  掛金ハシタケレドモ、殆ド僅カノ保險金シ
  カ取ルコトガ出來ナイト云フコトデ、モウ
  是ハドウシテモ水田ヲ耕作シテ居ツタノ
  デハ農家ハ安定スルコトガ出來ナイト云フ
  所ニ立至ツテ居リマス、ソコデ今日理事者
  ガ何カノ方法ヲ講ジナケレバ殆ド離農シテ
  シマフト云フヤウナ傾向ガ現ハレテ居ル、
  デゴザイマスカラ、適地適作主義ニ變ヘテ
  行カナケレバナラヌト云フヤウナ案モ立テ
  テ進ンデ居ルヤウナ工合デゴザイマス、斯
  ウ云ツタ現狀デゴザイマスカラ今度ノ改訂
  ガ是等ノ人々ニ刺戟ヲ與ヘテ、サウシテ離
  農シナイデ、續イテ農業ノ生產ノ上ニ於テ、
  國家ニ寄與シテ行クト云フヤウナ氣持ヲ起
  サセルコトガ、今度ノ改正ノ重點デナケレバ
  ナラヌト思フ、然ルニ只今御說明ニナリ
  マシタヤウニ、十圓ノモノヲ十五圓ニ上
  ゲタカラ、事務的ニ、技術的ニ相當大幅
  ナ考ヘ方デアルト仰セラレルカモ知レマ
  セヌガ、先程申シマシタヤウナ百圓ヲ下
  ラナイト云フヤウナ生產「コスト」ノ掛ル時ニ、
  ソレガ十圓ヤ十五圓ノ增金ヲシテ貰ツタ所
  ガ是デハ迚モ續ケテ行クコトハ出來マセヌ、ソ
  レハ色々御當局ハ指導シテ居ラレマスケレ
  ドモ、食ハズニハ戰線ニ立テナイ、是ガ現
  實ノ叫ビデアリマス、此處ヲ十分ニ御考ヘ
  ニナルナラバ、大藏省御當局トノ折衝ニ於
  キマシテモ、大イニ大臣ノ政治力ヲ發揮セ
  ラレマシテ、特ニ農村ニ付テ理解アリ、又
  特ニ代議士デアラレル大臣ハ、民情ニモ十
  分通ジテ居ラレル筈デアリマス、色々事務
  當局ヤ技術的方面ノコトヲ伺ツテ見マスナ
  ラバ、統計ガ足リナイ、今日技術的ニハ說
  明ガ十分ニ出來ナイト云フヤウナコトデ、
  是ガ實行セラレナイヤウナ御說モ伺ヒマス
  ケレドモ、是等ノコトハ事務的、技術的ナ
  コトガ十分デナイカラ出來ナイト云フコト
  ニナレバ、是ハ當局ノ私ハ一ツノ事務或ハ
  技術ノ足リナイ點デアルト思フ、モウ少シ
  農業ノ災害防止ニ對シマシテ、從前カラ色
  色計畫サレテ、材料ノ蒐集ヲシテ居ラレネ
  バナラヌ、斯ウ云フ場合ニ向ツテ何時デモ
  材料ガ出來ルヤウニ、農林當局ノ技術的事
  務的方面ガ進ンデ居ナケレバナラヌト思フ、
  若シサウデアルトスルナラバ、自ラ自己ノ
  行政事務ノ至ラザルヲ叫ブコトデアルト私
  ハ思ヒマスガ、斯ウ云フ場合ニ於テ、此ノ
  冷害ノ保險ヲ第一類ニ擧ゲルカ、若シクハ
  二十五圓ヲ四十五圓ニ引直スコトニ對シマ
  シテノ大臣ノ御所信ヲ伺ツテ置キタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=28

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• 029・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日皇國農村確立ノ見地
  カラ見マシテ、水田ヲ中心ニシテ行ク農業
  經營ト云フモノニ付テ、農林省トシテモ相
  當ノ重點ヲ置イテ居ル次第デアリマス、併
  シ土地ノ立地條件ニ依リマシテ、水田自體
  デハ不適當ナ所モアリマス、北海道ノ如キ
  固ヨリ稻作ガ中心デ、色々指導モサレテ居
  リマスケレドモ、土地ノ條件ニ依ツテハ
  ソレ自體ガ無理デアルト云フ所モアリマス、
  非常ニ無理ナ所ニハ、國家トシテモ要請シ
  テ行クコトハ不適當デアリマス、デアリマ
  スカラソレ等ノ點ニ付テハ十分再檢討致シ
  マシテ、又指導方針ニ付テモ今後モ考ヘテ
  行カナケレバナラヌト思ヒマス、隨テ災害、
  冷害ト云フ問題ガサウ每年起ル爲ニ、其處
  デ農業ガ出來ナイト云フノデアレバ、サウ云フ
  所ハ品種改良、或ハ其ノ他耕地ノ改善等ニ
  依ツテ解決出來レバ別デアリマスケレドモ、
  出來ナイ限リハ寧ロ稻作ヲ止メテ、他ノ作物
  ニ轉換スベキデアルト思フノデアリマス、
  隨テ今日稻作トシテ出來得ル所ハ、サウ每
  年冷害ニ罹ルト云フノデハナクテ、或ハ
  三年每、四年每ニ罹ルト云フ場合ニ、初メ
  テ農業經營トシテモ成立ツテ行ク譯デアリ
  マス、サウ云フ場合ニ於ケル施設ガ一ツノ
  共濟施設デアリマス、隨テ今ノ御話ノヤウ
  ニ百圓掛ルモノヲ二十五圓貰ツタノデハ引
  合ハヌト云フヤウナコトハ-每年サウ云
  フ冷害ガ起ルコトニモナルノデアリマスカ
  ラ、サウ云フヤウナ氣持デナシニ、ヤハリ
  農業經營トシテ相當ニ成立ツテ行ク場所ニ
  於テ其ノ經營ヲシテ、而モ時々起ル災害ニ
  對シテ之ヲ自ラノ保險料ナリ、或ハ國庫ノ
  補助ナリニ依ツテ補ツテ行ク、是ガ一ツノ
  保險制度デアリ、共濟制度デアルノデアリ
  マス、隨テ今日デモ非常ニ大キナ災害ガ其
  ノ一ツノ地方ニ來タ時ニハ是ハ保險ナリ、
  共濟デハイケナイ、國家ガ別ノ見地カラ補
  助スルヨリ外ハナイ、中國ノ早害デアルト
  カ、或ハ又高潮ト云フコトノ爲ニ起ツタ災
  害等ニ付テハ保險デハイカヌノデアリマス
  カラ、別ノ見地デ國家モ補助シテ居ルノデ
  アリマス、サウ云フヤウナ譯デ常時的ナ經
  營ヲヤツテ行ク上ニ色々起ル災害ニ對シテ
  ノ自治的救濟ト云フコトガ保險ナリ或ハ救
  濟制度デアリマスカラ、其ノ程度ニ於テ此
  ノ制度ヲ持ツテ參リマスレバ、先ヅ以テ現
  在ニ於テハ此ノ爲ニ農業經營ヲ棄テルトカ、
  棄テヌトカ云フ問題ニハナラナイノデハナ
  イカ、寧ロ斯ウ云フ制度ガ是ダケ擴充サレ
  マスレバ、農村トシテモ相當ニヤハリ農業
  經營ニ對スル期待ヲ大キク持ツツ來ルコト
  ハ疑ヒナイト思フノデアリマス、唯增產ナ
  リ或ハ農業經營ノ維持發展ト云フコトハ、
  是ハ又保險ナリ共濟制度ダケデハ解決出
  來ナイノデ、色々他ノ方法モ併セ考ヘテ、
  サウ云ツタ助長ハ致シテ參リタイト考ヘテ
  居ルノデアリマス、デアリマスカラ今直グ
  之ニ對シ二十五圓ヲ四十五圓ニ直ス意思ア
  リヤ否ヤト云フ御質問ヲ受ケマシテモ、之
  ヲ以テ本年ハ御協賛ヲ受クベク、又法律案
  ノ協賛ヲ受クベク提出シテ居ルノデアリマ
  スカラ、今直チニ之ヲ動カス意思アリヤ否
  ヤノ御質問ニ對シテハナイト申スヨリ外
  致シ方ナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=29

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• 030・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　大體御意思ノアル所ハ分
  リマシタガ、然ラバ只今仰セニナリマシタ
  ヤウニ、適地適作主義デヤツテ行クト云フ
  コトニナレバ、所謂北ノ方ノ冷害ノコトヲ
  指シテ居ルノデアリマスガ、只今仰シヤツ
  タヤウニ周期的ニ四年目ニ一遍トカ、三年
  目ニ一遍トカ仰セラレマシタノハ、大體東
  北ヲ指シテノ御話デアルト思ヒマス、私ノ
  指摘シテ居リマスノハ北海道ノ北ノ方ノ方
  面ニアル所謂水田耕作限界線外ニアルモノ
  ガ相當アルト私ハ思フ、是ハ農林省ハ其ノ
  限界線ヲ何處ニ持ツテ居ラレルカ分リマセ
  ヌガ、實際ノ今日マデノ實績カラ見レバ、
  相當廣範圍ニ限界線外ニ耕作サレテ居ルモ
  ノト私ハ思ヒマス、現ニ其ノ面積ヲ言フナ
  ラバ約四万町步位マデハ限界線外ニアル、
  之ヲ保險制度ニ於テ補ツテ農家ノ安定ヲ圖
  ルト云フコトガ出來ナイトスルナラバ、只
  今仰セニナリマシタヤウニ生產統制令、農
  地等管理令ヲ緩和セラレテ、サウ云フ所ハ
  水田ヲ變ヘテ畑地ニスル外、酪農ニスル、
  或ハ主畜農業ニシテ、適地適作主義ニ進
  マシテ行クト云フコトナラバ、是ハ私ハ敢
  テ多クノ議論ヲ申上ゲヌマセ、サウ云フ風
  ニスルカ、サモナケレバ保險金額ヲ引上ゲ
  テ安定シテヤルカシナケレバ、此ノ農家ヲ
  不安定ノ中ニ縛リ付ケテ置イテ、ドツチニ
  モ手ガ伸ビナイ、所謂一方ノ方ニハ四十五
  圓ノ保險金ヲ取レルヤウニスルガ、一久,
  二十五圓ニスルト云フコトハ繼子扱ヒデア
  ル、災害ノドン底ニ叩キ落シテ救ヒノ手ヲ
  伸サヌトスレバ、離農者ノ出來ルコトニ拍
  車ヲ掛ケルヤウニナリマス、デアリマスカ
  ラサウ云フ方向ニ進ンデ行カレル御意圖ガ
  アルカ、言換ヘレバ生產統制令、農地等管
  理令ニ對シテ之ヲ緩和シテヤツテ行カレル
  御考ヘガアルカドウカ、モウ一ツハ只今仰
  セニナリマシタヤウニ例外的ナ異常災害ノ
  起ツタ時ニ、是ハ迚モ二十五圓ノ保險金デ
  ハ農家ノ生活ハサセルコトハ出來マセヌ、
  二十五圓デハ每年ノ再生產ニ對スル所ノ準
  備モ出來マセヌ、隨テ政府ハ大幅ナ救濟ノ
  手ヲ伸バサナケレバナラヌ、斯ウ仰セニナ
  リマシタコトハ非常ニ同感デアリマスガ、
  サウ云フヤウナ場合ガアツタナラバ、第二
  豫備金ナリノ支出ニ依リマシテ、二十五圓
  ノ共濟金デハアルガ、四十五圓マデ支拂フ
  ト云フヤウナコトハ出來マスマイカ、此ノ
  點ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=30

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• 031・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今御述ベニナリマシタ
  通リ、北海道ノ極メテ北ノ方ノ米作ニ適サ
  ナイ所ニ、無理ニ米作ヲ國家トシテ要請ス
  ルト云フコトハ、是ハ私トシテハ致シタク
  ナイト思ツテ居リマス、作付統制令ニ於テ
  許可ヲ得マスレバ轉作出來ルノデアリマ
  スカラ、サウ云フ所ハ許可ヲ得テ轉作サレ
  タラ宜イカト思ヒマス、農林省トシマシテ
  モ、技術上ノ改善ノ餘地ガナク、品種的ノ
  改良ノ見込ノナイ所デアリマスレバ、無論
  許可ヲ致シタイト考へテ居リマス、又異常
  災害ニ對スル共濟金ヲ、異常災害ノ場合ニ
  ハ四十五圓マデ出スカドウカト云フコトデ
  アリマスガ、是ハ共濟制度トシテハサウ云
  フコトハ出來ナイコトニナツテ居リマス、
  共濟制度トシテハ二十五圓ヨリホカ出セナ
  イノデアリマス、唯其ノ災害ノ色々ノ事態
  ニ卽應致シマシテ、是ハ別ノ觀點カラ又考
  ヘル必要ガアレバ、又考ヘルト云フコトヲ
  申上ゲタノデアリマス、制度事態ニ於テハ
  ソレハ可能性ハナイト云フコトヲ申上ゲテ
  宜イト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=31

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• 032・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　別ナ觀點デ御考ヘニナル
  ト云フコトニナリマスト、從來ヤツテ來マ
  シタ災害救濟施設等ニ依ツテオヤリニナル
  ト云フ御考ヘデゴザイマスカ、東北、北海
  道ガ過去昭和六、七年ノ頃ニ起キマシタ全
  般的ナ冷害ニ罹カリマス場合、少クトモ五
  十万町步、六十万町歩ト云フモノガ冷害ニ
  罹カルノデアリマス、サウ云フ場合ニ從來
  ノヤウナ道路ノ改修デアルトカ、河川ノ改
  修デアルトカ、其ノ他ノ勞力ニ依ツテ之ヲ
  救濟スルト云フヤウナコトヲヤリマシテモ、
  一部ノ人ハソレニ行クカモ知リマセヌガ、
  大部分ハ附近ノ殷賑產業ニ走ツテ行クト云
  フ事實ガアリマス、現ニ一昨年北海道ニ稻
  熱病ガ起リマシテ、其ノ稻熱病地帶ニハ丁
  度國策「ㄱパルプ」會社ガ創業當時デゴザイマ
  シタ、稻熱病ニ罹ツタモノハ、言フマデモ
  ナク、直チニ苅取ツテソレヲ處理シナケレ
  バ、翌年度ノ防除ニハナリマセヌ、ソレ等
  ノ施設ヲシナケレバナラヌノデゴザイマス
  ガ、農家ハ其ノ日ノ生活ニ追ハレテ居リマ
  スカラ、此ノ農家ノ災害ヲ狙ツテ、國策會
  社ハソコニ從業員ノ大募集ヲ行ヒ、ホ〓ヒン
  テ多額ノ賃金ヲ出シテ連レテ行クト云フコ
  トデ、其ノ日ノ生活ニ困ルモノデアリマス
  カラ、來年度ノ耕作ノ爲ノ防除施設、其ノ
  他ノ來年度ノ準備ニ付テ手ヲ下サズニ、災
  害ノモノヲ捨テテ置イテ、ドン〓〓トサウ
  云フ方面ニ行キマシテ、道ノ當局デモ是ハ
  非常ニ困ツタ事實ガアリマス、斯ウ云フヤ
  ウナ場合ニ災害救濟ト云フ名前ダケノコト
  デハ、私ハ本當ニ救ハレナイト思フ、農家
  ノ人々ハ災害ノ救助金ヲ貰フナント云フコ
  トニ付テハ非常ニ快イ氣持ニナツテ居ナ
  イ、寧ロ自分デヤツテ行キタイ、斯ウ云フ
  氣持ヲ持ツテ居ルノデアリマシテ、サウ云
  フ災害金ト云フモノヲ御出シニナル場合ニ、
  保險組合ヲ通ジテ保險金ノ一部トシテ救助
  スルト云フヤウナコトニセラレル方ガ、農
  家ノ自尊心ヲ傷ツケルコトモナシ、又全般
  的ニ作付反別ニ平均シタ災害補助金ヲヤル
  コトガ出來ルノデアリマシテ、此ノ二十五
  圓デ足ラヌモノニ對シ、斯樣ナ災害的ナ救
  助ヲサレル金額ヲ、此ノ保險組合ヲ通ジテ
  保險金ノ一部トシテ御拂ヒニナルヤウナ便
  法ハナイモノデアリマセウカ、此ノ點ヲ一
  ツ伺ツテ置キタイト思ヒマス、ソレカラ最
  初ノ冷害ヲ保險ニスルカドウカト云フ問題
  デアリマス、大體此ノ準備ガ十分ニ出來ナ
  イカラ、今年間ニ合ハナカツタト云フノカ、
  或ハ冷害地ハ二十五圓デモウ宜シイト云フ
  ノカト云フ點デアリマスガ、先程今年ヤツ
  テ見テ工合ガ惡ケレバ又考ヘル、斯ウ仰セ
  ニナリマス考ヘ方ト云フモノハ、ヤハリ共
  濟金額ヲ增スト云フコトダケデ終ルノカ、
  或ハ根本的ニ保險事故ノ中ニ入レテ、サウ
  シテ日本全體一視同仁ニ農村ヲ眺メテ行ク
  ト云フ御考ヘデアルノカ、此ノ點ヲハツキ
  リサシテ戴キタイト思ヒマス、農家ノ東北、
  北海道ノ冷害地ニ住ム人ノ氣持ヲ言フナラ
  バ、吾々ノ所ハ掛金ヲ多ク掛ケテ保險金ハ
  少ナイ、斯ウ云フ結果ニナル、此ノ北地ニ2串
  働ク人ダケガ多クノ自然ノ不利ナ狀況ト鬪
  ツテ居ルノニモ拘ラズ、政府ノ恩典ガナゼ
  吾々ダケニハ薄イノカト云フヤウナ考ヘモ
  起スノデアリマス、農家ノ思想ノ上ニ於キ
  マシテモ、生產擴充ノ刺戟カラ見マシテ
  モ、是ハ何レニシテモ一視同仁ノ氣持デヤ
  ツテ貰ハナケレバナラヌ、私ハドウシテ斯
  ウ云フ等差ガ付クノカト云フコトヲ政治ノ
  部面ニ働ク者トシテ、農村ノ人々ノ顏ヲ見
  ル度ニ申譯ナク思ツテ居ルノデアリマス、
  私共ハ此ノ議會ニ出テ參リマス前ニ、御存
  ジノヤウナ五箇年續イタアノ冷害凶作デ、
  農村ノ生活ヲ見テ、何トカシテ此ノ農村ノ
  生活ヲ安定セシメタイト云フコトガ、私ガ
  政治ニ足ヲ入レタ第一步ノ考ヘデアリマシ
  タ、然ルニ五箇年掛ツテモ、六箇年經ツテ
  モ是ガ內地ト常ニ隔ツタ保險ノ行キ方デア
  ルト云フコトニ對シテ、私ハ自分ノ微力ナ
  ルコトニ對シテ非常ニ申譯ナク思ツテ居リ
  マス、今日此ノ冷害地ニ働イテ居ル所ノ農
  村ノ人々ノ狀況ヲ見マスト、淚ナクシテ見
  ルコトノ出來ナイ狀況デアリマス、併シナ
  ガラ色々指導奬勵ニ依リマシテ、其ノ取レ
  ザル所デ相變ラズ努力ヲ續ケテ居ル樣ハ、
  國トシテ默ツテ置ク譯ニハ私ハイケナイト
  思フ、此ノ點ニ對シテ此ノ冷害保險ト云フ
  モノヲ將來ドウ云フ風ニ御取扱ニナルノ
  カ、〓究スル、調査スルト云フコトデ每年
  議會ガ過ギテ居ル、今年二十五圓ニナリマ
  シタケレドモ、是デモ內地トハ等差ガア
  ル、冷害ニアラザル地方トハ等差ガアル、
  此ノ點一ツ同ジ日本國民デアリマスカラ、
  一視同仁ノ見地ニ於テ、全農民ニ平均ナ農
  林行政ヲ行ハレルコトヲ私ハ切望致シテ居
  リマスガ、此ノ點ニ對スル大臣ノ御所信ヲ
  伺ツテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=32

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• 033・井野碩哉

  ○井野國務大臣　先ヅ第一點ノ異常冷害ノ
  起ツタ時ニ、其ノ政府ノ救濟施設ヲ保險ナ
  リ、或ハ共濟制度ヲ通ジテ出シタラドウカ
  ト云フ、是ハ一ツノ御意見デアリマスケレ
  ドモ、今政府トシテハサウ云フ方向デ行ク
  ナラバ、寧ロ此ノ保險金額ヲ引上ゲルトカ
  云フ風ニシテ國庫助成ノコトヲ今現在考ヘ
  ルベキガ當然デアツテ、サウ云フ場合ニハ
  別ノ手段ヲ講ズルト云フコトニ於テ此ノ制
  度ガ出來上ツテ居リマスカラ、今日ニ於テ
  ハサウ云フ氣持ヲ持ツテ居リマセヌ、併シ
  御意見ノ點ハ又十分考ヘテ參リマス
  又共濟施設ヲ十分ニシナケレバ東北竝ニ
  北海道方面デ働ク農民トシテハ全國的ニ非
  常ナ不利ナ條件デ働クコトニナリハシナイ
  カト云フ御說デアリマス、勿論農林省トシ
  テモ全國ノ農民ニ向ツテ決シテ一方ヲ重
  ク、一方ヲ輕クハ考ヘテ居リマセヌ、併シ
  各〓農業ニハ立地條件ガアルノデアリマス
  カラ、其ノ立地條件ヲ覺悟ノ上デ色々ノ農
  業耕作ヲシテ居ラレル人々ニ對スル施設
  ト云フモノモ、自ラヤハリ土地ニ依ツテ
  違ツテ來マスコトハドウモ致シ方ナイノ
  デアリマス、一方ニ於テ非常ナ山ノ中デ開
  墾ヲヤルノハ、平地ノ農業ト比ベテ見ルト
  不利ダカラ、ソレヲ平地ノ農業並ミノ國庫
  ノ助成ヲシテ吳レト云ツテモ、中々サウハ
  行カナイ場合ガアルノデアリマス、是等ノ
  點ハ一視同仁ト申シマシテモ自ラ其處ニ差
  ハアリマスガ、政府トシテノ氣持ハ、固ヨ
  リ總テノ農民ニ對シテ國家ガ增產ヲ要請シ
  テ居ルノデアリマスカラ、出來ルダケノコ
  トハ考ヘテ參リタイト思ツテ居リマス、又
  今ノ御話ノ保險ニ關スル色々ノ統計ナリ
  資料ガナイ爲ニ、今日保險事故トシテ取扱
  ハナイデ、共濟施設デ行ツテ居ルガ、サウ云
  フモノガ出來テ來タラドウスルカト云フ御
  話デアリマスガ、サウ云フ立派ナ資料ナリ
  調査ガ出來テ參リマスレバソレニ應ジテノ
  考慮ヲ加ヘテ參リマスガ、先程御話ノ通リ
  私トシマシテモ事務的ニ色々ナ資料ナリ、
  技術ノ點ニ於テ困難ダト云ツテ抛ツテ置ク
  コトハ宜クナイノデ、此ノ共濟制度ヲ立テ
  タノデアリマス、本來理窟カラ言ヘバ、サ
  ウ云フモノガ出來テ來ルマデハ冷害ニ付テ
  ハ手ヲ付ケナイト云フコトモ政府ノ態度ト
  シテ執リ得ルノデアリマスガ、ソレハヤハ
  リ不親切デアル、サウ云フ調査資料ナリ、
  技術ガナクテ困難デアツテモ、冷害ニハ冷
  害トシテノ考慮ヲ加ヘテ行クコトガ適當デ
  アルト考ヘテ、此ノ共濟施設ヲ一ツノ制度
  トシテ設ケタノデアリマス、ソレモ昨年設
  ケタヨリ本年ハ倍ニシテ之ヲ考ヘテ行クト
  云フノデアリマスカラ、此ノ氣持ダケハ東
  北竝ニ北海道ノ農民諸君ハ能ク理解シテ戴
  ケルト思フノデアリマス、兎モ角政府トシ
  テモ決シテサウ云ツタ意味デ事務的ニ困難
  ナコトモ、或ル程度ハ政治的ニ之ヲ解決シ
  テ居ルノダト云フ氣持ヲ一ツ御理解戴キタ
  イト思フノデアリマス、サウシテ又將來是
  ガ運用ニ依リマシテ一層適切ナル資料ヲ得
  テ參リマスレバ、ソレニ卽應シテ改正ヲ致
  スコトニハ吝カデナイ積リデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=33

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• 034・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　改正ヲスルノニ吝カデナ
  イト仰シヤイマシタコトハ、私共ノ希望ニ
  非常ニ近イノデアリマスガ、其ノ時期デア
  リマス、時ガ二十年モ、三十年モ經ツテカ
  ラデナケレバ統計ガ集ラナイト云フコトデ
  ハ何ニモナリマセヌ、ソレデ第一類ニ入レ
  ル時期ハ何時御入レニナル御考ヘデアル
  カ、唯ヤツテ見テカラト仰シヤルノデハ
  是ハハツキリシタ御約束ニナリマセヌガ、
  時期ハ何時ニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=34

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• 035・井野碩哉

  ○井野國務大臣　目下ノ事情ニ於テハ第一
  類ニ入レル意思ヲ持ツテ居リマセヌ、現在
  私モ色々〓究シテ見タノデスガ、第一類ニ
  入レルノハ非常ニ難カシイト考ヘマシタガ
  故ニ、第二類ニ於テ殆ド第一類ト同ジヤウ
  ナ之ニ準ズル制度デ之ヲ行ツテ行カウト致
  シテ居ルノデアリマス、デアリマスカラ其
  ノ時期ヲ明示シロト仰シヤイマシテモ、次
  ノ議會ニ必ズソレヲ出ストカ、其ノ次ノ議
  會ニ出スト云フコトヲ今申上ゲマシテモ、
  實際出來ナイコトヲ申上ゲテ見テモ仕方ガ
  アリマセヌ、自下ノ狀態ニ於テハ此ノ制度
  ヲ以テ進ンデ參ルト云フ風ニ御答申上ゲタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=35

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• 036・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　少シ諄イヤウデアリマス
  ガ、サウスルト結局冷害地ノ水稻ハ第一類
  ニハ永久ニ入ラヌト大臣ハ仰セラレルノデ
  アリマスガ、然ラバ共濟制度ノ二十五圓デ
  足ラナケレバ四十五圓ニスルト云フコトハ
  可能デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=36

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• 037・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今此處デ直グ其ノ時期ヲ
  申上ゲラレナイト云フコトハ、直チニ永久
  入ラナイト云フ答辯ニハナラヌト思ヒマス
  色々〓究ヲシテ居リマスカラ、適切ナ資料
  ヲ得マスレバ、或ハ第一類ニ入レ得ル時期
  モアルカモ知レマセヌ、併シ今日直チニ其
  ノ時期ハ申上ゲ兼ネルト云フダケデアリマ
  ス、永久トハ決シテ申上ゲナイノデアリマ
  ス、又第二類ノ金額等ニ付キマシテモ、本
  年ハ此ノ程度デ實行シテ參リマシテ、相當
  農村ニモ好イ效果ヲ齎スト信ジテ居リマス
  カラ、之ヲ以テ進ンデ參リタイト思ヒマス、
  併シ財政ノ關係、又農業事情等ニ依リマシ
  テ、將來之ヲ改正スルカドウカト云フコト
  ハ、是ハ必要ニ應ジテヤツテ行クコトハ當
  然デアリマス、其ノ點ダケハ尙ホ第一類ニ
  入レルヨリハ餘程可能性ガ强イト云フ風ニ
  御考ヘ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=37

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• 038・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　本會議ニ於テモ一寸述ベ
  テ居ラレマスガ、五分作反當リ二圓ヲ超エ
  ザル場合デアルカラ直シタト仰シヤルノデ
  アリマスガ、冷害凶作ノ場合ニモ冷害ノ共
  濟制度ノ場合ニ於ケル五分作ハ幾ラニナル
  カト云フト、六圓二十五錢デアリマス、二
  圓ヲ超エザル狀態ダカラ直スト云フ金額ガ
  六圓二十五錢デアリマス、此ノ四圓二十五
  錢增シタコトニ依ツテ仰シヤルヤウナ生產
  確保ガ行ヘルカドウカト云フ點デアリマス
  デアリマスカラ只今四十五圓ニスルコトガ
  可能デアルトスレバ、大臣ノ保險制度ヲ直
  スト云フ御意圖ハ、農業經營ノ安定ヲ圖リ
  農家ノ經濟ヲ確立スルコトニアル、斯ウ云
  フコトデアツテ、同時ニ食糧自給ノ確保ニ
  アル譯デアリマス、四圓二十五錢ヲ增シタ
  コトニ依ツテ是ガ本當ニ確保サレルモノデ
  アルカドウカ、斯ウ云フ點ハ大臣ガ能ク御
  存ジノ上デヤツテ居ラレルト思ヒマスガ、
  此ノ見解ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス、二圓
  デ安イモノヲ四圓二十五錢增シタコトニ依
  ツテ生產確保ガ行ハレルカドウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=38

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• 039・井野碩哉

  ○井野國務大臣　保險金額ナリ、或ハ共濟
  金ニ依ツテノミ增產ハ確保シ得ルトハ思ツ
  テ居リマセヌ、併シ是モ今度ノ改正ニ依リ
  マシテ增產確保ニハ一進步ヲ來スモノデア
  ルト云フ確信ヲ持ツテ居リマス、今御話ノ
  四割乃至五割ニハ六圓一一十五錢デアリマス
  ガ、五割以上六割未滿ハ十圓デアリマス、
  五割一寸增セバ十圓デアリマスカラ、八圓
  增ス、ソレダケ增セバ相當增シタモノト御
  考ヘニナツテ宜イノヂヤナイカト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=39

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• 040・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　私共ノ希望ハ第一類ノ保
  險事故ニ入レテ貰ヒタイト云フコトガ前カ
  ラノ希望デアリマス、併シ統計ガ出來ヌカ
  ラ、調査ガ出來ヌカラト仰シヤイマスガ、
  其ノ調査ガ過日御說明ヲ伺ヒマシタヤウナ
  調査ヲ今後スルトスルナラバ、二十三年間
  ノ統計ガナケレバ出來ナイ、サウスルト二
  十三年ノ年月ヲ經ナケレバ保險ニ直ラヌ
  ソレガ十箇年アルトスルト、アト十三年ヲ
  經ナケレバ出來ヌコトニナリマス、サウ云
  フ事務的ノ調査ダケニ依ツテ農林行政ハ行
  ハレテ居ナイト思ヒマス、又サウデアツテ
  ハナラナイト思ヒマス、今日ノ食糧自給ノ
  重大サハ今玆ニ喋々申上ゲルノ必要ハアリ
  マセヌ、斯ウ云フヤウナ食糧ノ國內自給ト
  云フ重大ナ問題ヲ投ゲ掛ケラレテ居ル政治
  ハ、多少サウ云フ調査ガ十分デナクテモ、
  國內ノ實情ヲ見、農村ノ實情ヲ見合ツテ、
  ソコニ本當ノ農林行政ガ活キテ働カナケレ
  バナラヌ、ソコニモ農業ノ政治力ガ働カナ
  ケレバナラヌト思フ、サウ云フ方面ニ付テハ
  非常ニ堪能デアラレル大臣ニ於テハ分ラヌ筈
  ガナイト思フ、ソレヲ今日ノ儘デ調査ガ十
  分デナケレバ出來ナイト仰セラレマスコト
  ハソレハ事務的ニ逃ゲテ居ラレルノダト
  思フ、今日ノ本當ノ事態ヲ把握シテ居ラレ
  マスナラバ、是ハ政治的ニ大藏省ト折衝シ
  テ、農村ノ安定スルヤウナ方向ニ向ケテ行
  ク、勿論保險ダケニ依ツテ農村ノ生產確保
  ガ行ハレルモノデナイコトハ言フマデモナ
  イ、併シ農村ノ災害防除、農村ノ災害ヲ輕
  減セシムルト云フコトハ是ハ農業經營ノ一
  大問題デアリマス、一大生產擴充ノ要素デ
  アリマス、此ノ食糧自給ノ重要サノ叫バレ
  テ居ル時ニ改訂セラレル場合ハ、ソコニ見
  透シヲ付ケテ行カナケレバナラヌト思フ、
  デアリマスカラ、私ハ近イ將來ニ於テ第一
  類ノ保險事故ニ入レルト云フコトノ希望ヲ
  申上ゲマシテ質問ヲ終リマス

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• 041・井野碩哉

  ○井野國務大臣　一言申上ゲテ置キマスガ、
  農業保險ト云フモノハ元々統計ナリ、或ヘ
  技術ト云フモノヲ要素トシテノ保險デアリ
  マス、デアリマスカラ、冷害ト云フコトニ
  對シテ如何ナル施設ヲスルカト云フコトハ、
  必シモ保險ト云フ制度ヲ行ハナクトモ色々
  ノ施設ガアリマスカラ、先程申シタ通リ、
  資料ナリ技術ノ困難ナ時代ニ於テハ共濟制
  度ヲ以テ充テテ行クト云フノデアリマス、
  デアリマスカラ、政治トシテ餘リニ保險事
  故トシテ第一類ニダケ是非入レナケレバナ
  ラヌト、聰明ナ松浦君ガ主張サレルコトガ
  私ハヲカシイト思フノデス、元々保險ト云
  ツタモノハサウ云ツタ制度ノ下ニ出來テ居
  ルノニ、ソレガナイノニソレヲ解決シロト
  云フコトハ、是ハ丁度技術ヲ知ラナイデ船ヲ
  造レト云フノト同ジデアリマスカラ、サウ
  云ツタコトヨリハ、寧ロ共濟制度ヲ今後益〓
  擴充シテ、サウシテ冷害ニ對スル施設ヲ立
  派ニヤラセテ行クト云フ御主張ヲナサツタ
  方ガ松浦君トシテモ立派ナ主張ニナリハシ
  ナイカト思ヒマス

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• 042・松浦周太郎

  ○松浦(周)委員　大臣ガサウ云フ風ニ仰ツ
  シヤルナラバ、私ハ最初カラ申上ゲテ居ル
  ノデスガ、大體保險技術的ニ出來ナイヤウ
  ナ所ニ水田ヲ作ラセテ居ル、ソレ自體ガイケ
  ナイ、ソレヲ直サナケレバイケナイ、ソレ
  ヲ直スカ、保險ノ方ヲ付ケルカト云フコト
  ヲ言ツテ居ル、ソレヲ最初カラアナタハヤ
  ルト仰シヤツタカラ、私ハ言ハナカツタノ
  デス、今日北地方面ニ於ケル所ノ水田ト云
  フモノハ、是ハオ天道樣ニ弓ヲ引イテ居ル、
  其處ニ作ラセテ居ルコトヲ認可シタ農林省
  ガドウカシテ居ル、サウ云フ所ニ澤山許シ
  テヤラセルモノダカラ、斯ウ云フコトニナ
  ル、ソレヲ適地適作主義ノ、大自然ト融合
  シタ行キ方ニヤツテ行クナラバ、保險事故
  ナンカ要ラナイ、保險事故ナンカ要ラナイ
  ヤウナ作付ヲサセレバ宜イ、ソレヲ今日ア
  ア云フ所ニ水田ヲ作ラセテ、農民ニ多クノ
  犧牲ヲ拂ハセテ置イテ、農林省ガソレヲ見
  ヌ振リヲスルカラ言ツテ居ル、ソレハ大臣
  ノ方ガ惡イ

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• 043・井野碩哉

  ○井野國務大臣　デスカラ、第一ノ點ハア
  ナタノ仰シヤルヤウニ今後直シテ行クト云
  フノデアリマス、決シテ私ハ無理ナコトヲ
  言ツテハ居ラナイト思ヒマス

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• 044・深澤吉平

  ○深澤(吉)委員　大變御高說ヲ拜聽致シマ
  シテ、大變參考ニナリマス、本員ノ質問致
  ス點ハ、既ニ各委員ノ質問ニ於テ盡シテ居
  ルト思ヒマス、大臣ガ吾々同僚トシテ、又
  國務大臣トシテムヅカシイ保險事業ニ指ヲ
  染メテ、改正サレタ農業保險改正法律案及
  ビ之ニ關聯セル法律改正案ヲ見ルト非常ニ
  御苦心ノ跡ガ見エル、ソレハ率直ニ申シマ
  スト事實ニ眼ヲ掩ウテ、ソコニ形式ヲ備
  ヘネバナラヌト云フヤウナ御苦心ノ跡ガ見
  エルノデアリマス、デアリマスカラ、改正
  案ハ前ノ保險法案ニ較ベマシテ一進步ト申
  シマセウカ、所謂數字的ニ又量的ニハ之ヲ
  認メ得マスケレドモ、保險法ソレ自體ノ本
  質及ビ性格カラ見マスト云フト、遺憾ノ點ヲ
  見出ス、是ハ根柢ニ無理ガアルト云フコトヲ
  私ハ意見ヲ述ベマス、例へバ寒冷地帶ノ水稻
  ト溫帶地帶ノ水稻ヲ同一法律內ニ嵌メルト
  云フ所ニ既ニ無理ガアルト思フノデアリマ
  ス、事實ヲ申シマスト云フト、早害ニハ保險
  ノ四十五圓ガ付イタ、旱害ノ反對ハ冷害ナ
  ンデアリマスガ、此ノ方面ニハ二十五圓ダ
  ト云フノデ、ソコニ比較差ト申シマセウカ、
  比較差ニ對スル松浦君ノ議論ハ之ヲ差別待
  遇ナリトスル一ツノ視野カラモ見得ルト思
  ヒマスガ、サスレバ是ハ如何ニスベキカト
  云フ問題ヲ-御苦心ト云フノハ-之ヲ
  兎ニ角取上ゲテ、第二類ト云フ共濟制度ヲ
  立テタ、之ヲ一方カラ批判シマスト云フト、
  災害同士ノ寄合ヒダ、負フコトガ出來ナイ
  ノニ負ウテヤルト云フノデアリマスカラ、
  如何ニ之ヲ政府ガ良クシテヤラウトシテ
  モ、結局泣ク人同士ノ寄合ヒデアリマス、サ
  ウ云フ結果ヲ見テ居ルモノト思ヒマスガ、
  サスレバ第一類ニ嵌メ込ンダラドウカ、之
  ヲ理論カラ申シマスト云フト、政治論トシ
  テハ是ハ當然ノ理論ト思ヒマス、此ノ理論
  ハ間違ツテ居ラヌト思ヒマスケレドモ、事
  實ト又財政面カラ言ヒマスト云フト、是ハ
  許サレナイ事實ニ到着スルト思フノデアリ
  マス、サスレバ農林行政ヲ行フ點ニ於テ此
  ノ寒イ冷害ガ來ル地帶ノ水稻ト、又早害ト
  ヲ如何ニ處理スルカ、我ガ國ノ農林行政ハ
  之ニ對シテドウ云フ風ニ動イテ來タカト云
  フ跡ヲ見マスルト、是ハ自由企業時代ニ於ケ
  ル所ノ流レヲ汲ミマシテ、水稻ニハ嚴格ナ
  ル所ノ、所謂植物栽培ニ於ケル限界線ト云
  フモノニ眼ヲ掩ウタ旣往ノ農林行政ニ於テ
  ハ、出任セヲ許シタ、其ノ結果ハ、所謂前
  質問者松浦委員ガ、北ニ行クニ從ツテ一番ヤ
  カマシイ農業上ニ於ケル所ノ限界線ニ觸レ
  ラレマシタガ、此ノ限界線ヲ飛ビ越シタ場
  合ニハ國家ハ非常ナ迷惑ヲ受ケルノデアリ
  マス、其ノ場合ニ之ヲ如何ニスルカト云フ
  問題ガ起キテ來ルノデアリマス、此ノ點ハ
  企業者ニ於テモ其ノ點ニ於ケル知識上ノ缺
  陷ヲ見出シ得ルト思ヒマス、企業者ソレ自
  體ヨリモ、國土經營ノ上カラ主務大臣ハ之
  ニ向ツテ大イナル制肘干渉ヲ加ヘネバナラ
  ヌノニ、ソレニ眼ヲ掩ウタト云フコトノ非
  難ハ免レ得ナイト思ヒマス、時ハ斯樣ナ論議
  ガ許サヌ時ニ來タ、如何ニ多クノ食糧ヲ穫ル
  カ、又農業者ハ時局ノ要請ト申スヨリカ、自
  ラ進ンデ增產ニ向ツテ全農業者ハ死力ヲ盡
  シテ居ルト思ヒマスケレドモ、災害ニ遭ヒ
  マスト云フト、如何ニ精神的ニ之ヲ盡サウ
  ト致シマシテモ、物ニ於テ缺ケル所ガアリ
  マスト、精神力ヲ十二分ニ發揮シ得ナイノ
  デアリマス、ソコデ其ノ資金ニ於テ、或ハ
  又其ノ他ノ資材ニ於テ、如何ニ良イ精神ヲ
  發揮シヨウトシテモ持タザルコトヲ如何ト
  モ爲シ得ナイカラ、國家ハソコニ一ツノ手
  ヲ伸バシマシテ、所謂東北及ビ北海道ニ對
  スル手ノ伸バシ方ガ共濟制度ト思フノデア
  リマスガ、ソレナラバ旱害、所謂乾燥スル
  地方ニ於ケル所ノ量ト云フモノハ、アレニ
  依ツテ農業ノ再生產ヲ爲シ得ルト云フ見解
  ガ農林當局ノ御見解ト思ヒマス、ソレナラ
  バ冷地害方ニ於ケル二十五圓ノ最高ノ額ヲ
  以テ再生產ヲ爲シ得ルト云フ、此ノ數字ヲ
  一ツ御聞カセ願ヒマシテ、先ノ質問ト重複
  シナイ點ニ於テ私ハ續行致シタイト思ヒマ
  スガ、再生產ニ對スル數字ヲ一寸御說明願
  ヒタイト思ヒマス

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• 045・井野碩哉

  ○井野國務大臣　只今深澤君ノ北ト南ニ分
  ケテノ御議論、無論御說御尤モノ點モアル
  ノデアリマス、併シ今囘冷害ニ對シテ共濟
  制度ヲ設ケテ參ル、其ノ他ノ保險事故ニ付
  テハ保險トシテヤルト云フコトハ、此ノ制
  度自體ヲ立テマス上ニ於テ、無論農業ノ再
  生產モ考慮ニ入レテ居リマスケレドモ、完
  全ナル再生產ノ保險ニ依ツテ出來ル場合ト、
  共濟ニ依ツテハ出來ザル場合トアルコトハ
  致シ方ナイト思フノデアリマス、詰リ共濟
  制度ト云フモノガ冷害ト云フ大キナ危險率
  ニ對シテ一ツノ施設デアリマスカラ、保險
  ニ較ベテ其ノ效用ノ低イコトハ私モ認メテ
  居ルノデアリマス、同ジ效用ガアルトハ申
  シテ居ラヌ、是ハ松浦君ニ對シテモ、冷害
  地帶ニ付テハ此ノ限度デ今日ハ滿足シテ貰
  フヨリ仕方ガナイト云フコトヲ申シテ居ル
  ノデアリマシテ、之ヲ以テ萬全ナリトハ考
  ヘテ居リマセヌ、北ト南ヲ御比べニナツテ、
  片方ハ立派ニ再生產ノ基礎ニナルガ、片
  方ハ十分ニ行カナイデハナイカト云フコト
  ヲ仰セニナリマシテモ、サウダト申上ゲル
  ヨリ外仕方ガナイノデアリマス

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• 046・深澤吉平

  ○深澤(吉)委員　御說ハ能ク分ツテ居リマ
  ス、但シ東北北海道ニ於キマシテ國家ノ
  要請ニ應ヘル點ニ於テ苦シンデ居リマ
  スノハ、土地改良ノ爲ニ資財ヲ多ク投ジマ
  シテ、ソレガ工功組合ノ形ニ於キマシテ約
  二千八百万圓ノ負債ヲ負ウテ居ルノデアリ
  そく、此ノ金利ガ高イシ、又銷却資金ト申
  シマセウカ、斯樣ナモノヲ反當リニ計算シ
  マスト、五圓强ニナルノデアリマス、ソ
  レヲ加へ、又普通經營費ヲ加ヘマスト、北
  海道農會ノ調査ニ依リマスト、一反步ノ生
  產費ガ八十一圓ニナルノデアリマス、又自然
  條件ニ依リマシテ、早害ヲ受ケル地方ヨリ
  モ、冷害ヲ受ケル地方ノ生產量ハ少イノデ
  アリマス、生產費ハ掛ツテ收穫ノ量ガ少イ
  ノデアリマスカラ、其ノ點ニ於テモ經營ハ
  骨ガ折レルノデアリマス、更ニ又二毛作地
  トカ、或ハ立體作物ヲナシ得ル暖イ地方ト
  比ベテ、一毛作ト云フヤウナ營農問題カラ見
  マシテモ骨ノ折レル點ガアル、斯樣ナ點カ
  ラシテ、共濟制度ガナクモ、又保險制度ガ
  ナクモ、立派ニ經營シテ行ケル營農法ガ他
  ノ面カラ考ヘラレルノデアリマスガ、之二
  對シマスル農林當局ノ御意見ヲ御伺ヒシタ
  イ點ガ一ツ
  ソレカラ又立地經營ノ上カラ、水田ガ宜
  イト云フコトヲ政府モ認メ、又農業者モ認
  メタ結果、ドウモ困難ニ陷ツタ斯樣ナ點
  ニ對スル生產增强ノ障碍ニナル點ガ多々ア
  ルノデアリマスガ、之ニ對スル障碍ヲ除ク
  ト云フ點ヲ、生產ノ面カラ農林大臣ノ御考
  ヘヲ此ノ場合御伺ヒシテ見タイノデアリマ
  ス

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• 047・井野碩哉

  ○井野國務大臣　北海道ニ於キマスル農業
  經營トシマシテハ從來自由經濟時代ニ農
  民ガ北海道へ移植シマシテ、水田ヲ開發シ
  米作ヲ致シマシタ、酪農ヲヤツテ居ル地方
  モアリマス、サウシテ自由經濟時代ニハ北
  海道米ガ道內デ消費サレル場合ハ勿論デア
  リマスガ、道外ニ出マス場合ニハ東京ノ市
  場ニ宛テテ出テ來タト云フコトカラ、米價
  モ他ノ府縣ヨリ寧ロ低クナツテ居ツタ、其
  ノ爲ニ非常ナ農業水利改良ヲシツツ經營シ
  テ參リマシタ農家トシテハ、相當ニ金利其
  ノ他ノ負債等ヲ持ツテ苦シンデ居リマスコ
  トモ、私ハ能ク知ツテ居リマス、隨テ統制
  經濟ニナリマシテカラモ、其ノ點ヲ直シタ
  イト考ヘマシテ、先般米價ノ二重制度ヲ採
  リマシタ時ニ、北海道ニ付テハ內地ト違ツ
  タ觀點デ米價ノ問題モ考慮ヲ加ヘタヤウナ
  譯デアリマス、勿論之ヲ以テ北海道ノ農業
  ガ從來ヨリハ非常ニ樂ニナルト云フコトハナ
  イト思イマス、隨テ農業經營ノ上ニ於テ單
  ニ水田耕作ノミニ賴ラズシテ、或ハ酪農々
  業ト申シマスカ、有畜ヲ配シタル農業ニ持
  ツテ行クト云フ行キ方ニ付テハ、私共モ其
  ノ方針デ指導ヲシテ參リタイト考ヘテ居リ
  マスノデ、要スルニ北海道ノ農業經營ニ付
  テハ內地ト違ツタ觀點デ色々指導モシ、又
  〓究モシ、サウシテ適切ナル經營ニ移シテ
  參ルコトガ妥當デアルト考ヘテ居ル譯デア
  リマス

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• 048・深澤吉平

  ○深澤(吉)委員　ソレニ關聯致シマシテ、
  私ハ決シテ農業ソレ自體ニ偏シタヤウナ考
  ヘトカ云フノデナクテ、我ガ國ノ食糧ヲ時
  局下ニ卽應シテ行ク方途トシテハ如何ニス
  ベキカト云フ點ニ付キマシテハ皆委員ノ意
  見ハ一致シテ居リマス、ソレナラバ此ノ農
  業保險法改正ニ對シテノ意見ハト言ヘバ、
  之ニ對シテ反對デアルト云フヤウナ意見ハ
  持ツテ居リマセヌ、唯修正ヲ加ヘテ見タイ
  ト云フ意見ハアリマスケレドモ、サウナリ
  マスト中々ゴタ〓〓シテカラニ機ヲ逸シテ
  シマフ、サスレバ如何ニスルカト云フコト
  ハ大臣ノ意見ハモウ今マデノ應答デ能ク分
  ツテ居リマスガ、唯此ノ點ニ對シテ非常ニ
  御考慮ヲ願ハナケレバナラヌ點ハ、內閣内
  ニ於ケル所ノ事務折衝トカ、或ハ又事務ノ
  調査未了ト云フモノニ重キヲ置ク結果トシ
  テ、本質的ノ實體ヲ逸シテシマフト云フヤ
  ウナ傾向ガ顯著デアルヤウニ私ニハ感ゼラ
  レルノデアリマス、故ニ此ノ調査ハ資料ヲ
  御願ヒ致シマシテモ、中々吾々ガ批判ニ使
  フ爲ニ資料ヲ戴クコトハ困難ニ思ヒマス
  ガ、此ノ調査ヲ急ギマシテ、同時ニ此ノ保
  險ニ對スル國民一般カラ見テ差別待遇ノ
  如キ、又甲地ニ厚ク、乙地ニ薄イト云フヤ
  ウナモノデナクテ、何レノ面カラ見テモ是
  ハ妥當デアリ、日本ノ農林行政ハ斯クアル
  ベシト云フ案ニ達スルニハ距離ハサウナイ
  ト思ヒマス、故ニ此ノ水田不適地ニ對シテ
  水田ヲ作ツテ居ツテ、保險事故問題ヲ起ス
  ト云フコトハ國策カラ見マシテモ、又農業
  者ソレ自體カラ見マシテモ能率的ノ話デナ
  ク、又御國ノ爲ニナルコトデハアリマセヌ、
  故ニ之ニ對シマシテハ嚴格ナル事實ノ批判
  ヲ以チマシテ還元スベキモノハ還元シ、サウ
  シテ有效適切ニ立體耕作條件ヲ立テナケレ
  バ、今ノ時局下ニ於テ斯樣ナコトヲ論議ス
  ルコトガ旣ニ無駄ノ如ク思ハレルノデス、
  故ニ政府ハ此ノ點ニ對シマシテ速カニ調査
  ヲ遂ゲマシテ、保險法ト云フモノハ北ニ對シ
  テハ斯ウ、南ニ對シテハ斯ウト云フコトヲハ
  ツキリ致シマシテ、何レモ民ヲシテ勞逸アラ
  シムル勿レト云フ點ニ於テ遺憾ナキヲ期シ
  テ貰ヒタイノデアリマス、此ノ點ニ對シマシ
  テ大臣ノ御所感ハモウ承知致シテ居リマス
  ノデ御答辯ヲ要シマセヌ、唯適地適作ニ付
  テノヤリ方ニ付テ深キ御注意ヲ願ヒタイコ
  トハ、日本ノ農業從業者ノ人口ト云フモノ
  ハ進ンダ農林行政ヲ執ル國ニ於テハ第一等
  ダト思ヒマス、サウシテ此ノ糧食問題ニ對ス
  ル現狀ヲ見マスルト、一農業者ガ一國民ヲ養
  フノニ免角ノ議論ガ出ルト云フヤウナ現狀
  デアリマスガ、之ヲ少シ目ヲ廣クシテ見マス
  下、一人ノ農業者ガ或ハ數名ヲ養フ、或
  十數名ヲ養フト云フヤウナ農業能率ヲ上ゲ
  タ實例ガ各國ニハアルノデアリマスガ、此
  ノ各國ノ例ト、我ガ國ノ現狀ヲ見マス時ニ
  私ハ非常ニ遺憾ニ思フノデアリマス、戰線
  ニ於テハ世界一デアルガ、農業部面ニ於テ
  脆弱性ト云フモノヲ見出シ得ルノデス、是
  ハドウ云フ譯カト云フコトハ、先年來私ハ石
  黑農林大臣ノ時ニモ所見ヲ叩イタノデアリ
  マスガ、ソレハ現在ニ於テ農業人口ノ保有
  量ト云フモノハ多イノデアル、多イト云フコ
  トハ能率的ニ營農ト云フモノガ進ンデ居ラ
  ナイ、之ヲ能率的ニスルニハ更ニ畜力ノ利
  用ト云フモノガ完成ノ域ニ行ツテ居ラヌ、
  餘リニ僅少デアル、玆ニ目ヲ付ケナケレバ
  此ノ人的勞力ノ動員ヲ如何ニ行ヒマシテモ
  營農問題ハ完成シ得ナイト思フノデス、故
  ニ此ノ畜力ヲ今少シ有效能率的ニ使フト云
  フ畜力動員計畫ト申シマセウカ、此ノ點ニ
  對シマシテ農林大臣ノ御所見ヲ此ノ機會ニ
  御伺ヒシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=48

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• 049・池田秀雄

  ○池田委員長　深澤君、一寸御相談ガアリ
  マス、今豫算委員室カラ是非農林大臣ノ出
  席ヲト言ツテ來テ居リマスガ、農林大臣デ
  ナケレバイケマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=49

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• 050・深澤吉平

  ○深澤(吉)委員　是ダケ聞ケバ私ハ終リマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=50

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• 051・井野碩哉

  ○井野國務大臣　日本ノ農業ヲドウ導イテ
  行クカト云フ問題ニ付キマシテハ、營農主
  義カラノミ是ハ考ヘテハイカヌト思フノデ
  アリマス、結局今日日本ガ農村ニ於テ大和
  民族涵養ノ主トシテ大切ナ點ハ過小農デ
  人口ガ多過ギル、サウシテ農民ガ農業經濟
  ノ上ニ於テ多少不利デアツテモ、相當ノ努
  力ヲシテ增產ナリ何ナリニ進ンデ居ル點モ、
  或ル程度ハ今日日本農村ガ特異性ヲ持ツテ
  居ツタ點デアツタノデアリマス、隨テ所謂
  米國式ノ農業ニ、或ハ「オランダ」式ノ農業ニ
  之ヲドウ改善スルカト云フヤウナ問題ニナ
  リマスト、營農ダケデ考ヘテ行ケバ、農村
  人口ノ問題ヲ離レテ色々ノ施設モ考ヘラレ
  マスケレドモ、私ハ今深澤君ノ御說ニハ別
  ニ反對デモナイノデアリマスケレドモ、唯
  其ノ程度ガアルノデハナイカ、如何ニ有畜
  農業化スルト申シマシテモ、餘リ大規模ナ
  機械化農業化スルト云フコトハ考ヘモノデ
  アル、結局內地ノ農村ニ卽應シタ有畜農業
  且ツ機械化ヲ圖ツテ行クコトガ至當デアル、
  是ハ深澤君モ恐ラクサウ云フ御趣旨デ御述
  ベニナツタノダラウト思フノデアリマス
  ガ、其ノ趣旨ナラバ私モ全ク御同感デアリ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=51

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• 052・池田秀雄

  ○池田委員長　大臣ニ於カレテハ御濟ミニ
  ナツタナラバ、マダ大臣ニ質問致シタイト
  言ツテ居ル方ガ二、三人居ラレマスカラ、
  ドウゾ又······ソレデハ深澤君、他ノ政府委
  員デ宜ケレバ質問ヲ續行シテ下サイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=52

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• 053・深澤吉平

  ○深澤(吉)委員　大臣ノ只今ノ御答ヘニ對シ
  テモウ一ツ質問ガアルノデスガ-是ハ農
  政局長ニ御伺ヒ致シマスガ、實ハ北海道ノ
  水稻栽培ニ非常ニ重大ナ關係ガアル地方的
  ナ問題デアリマスガ、之ニ對シテ御意見ヲ
  御伺ヒシテ置キタイト思ヒマス、東旭川、神
  樂ノ一万町步ノ水田營農ニ對スル問題デア
  リマスガ、日本發送電株式會社ニ於テ約三
  里ノ「トンネル」ヲ水ヲ引イテ來マスト、水溫
  ガ三、四度低下スルノデアリマスガ、御承
  知ノ通リ水稻栽培ニ付テノ積算溫度ト云フ
  モノハ北海道ハスレ〓〓ニナツテ居リマス、
  ソコヘ三、四度水溫ガ低下致シマスト、冷
  害ト云フモノハ必然的ニ豫想シ得ルノデア
  リマスガ、之ニ對スル農林當局ノ關係主務
  省トノ御交涉ト申シマセウカ、御協議ハド
  ンナ風ニナツテ居ルカ、御伺ヒシタイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=53

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• 054・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　御話ノ發送電ノ隧道
  ノ問題ハ、吾々共モ非常ニ重大ナ關心ヲ持ツ
  テ交涉ヲ致シテ居ルノデアリマス、當初日
  本發送電ノ方デアノ計畫ヲ致シマスニ付テ
  ハ、電氣廳長官カラ農林省ノ方ニ意見ノ協
  議ガアツタノデアリマス、其ノ協議ガアリ
  マシタ際ニ、御話ノ通リノ事情デアリマス
  ルカラ、水溫ガ低下シタ場合ニ於テソ、レヲ
  上昇セシムベキ適當ナル措置ヲ考ヘテ貰ハ
  ナケレバナラヌト云フコトノ申入ヲ致シテ
  アルノデアリマス、其ノ申入ニ基キマシテ
  電氣廳ノ方デハ發送電ノ方ニ對シテ其ノ工
  事ノ進行ニ伴ツテ左樣ナ現象ガ起ツテ參ル
  場合ニ於テハ、又ハ其ノ虞ガ非常ニ顯著ニ
  ナツタ場合ニ於テハ、地元ト能ク協議ヲ致
  シタ上デ水溫上昇ノ爲ニ必要ナル措置ヲ講
  ズルヤウニト云フ條件ヲ附シテ許可ヲ致シ
  タヤウニ吾々ハ承知ヲ致シテ居ルノデアリ
  マン、ソレデ最近地元ニ於テ色々折衝御交
  涉ナスツテ居ル趣キハ吾々モ承知シテ居ル
  ノデアリマス、其ノ交涉ノ經過ニ鑑ミマシ
  テ、是ハ勿論道廳方面モ努力ヲシテ居ラレ
  ルト思ヒマスガ、其ノ經過ニ應ジマシテ農
  林省トシテハ適當ナル具體的措置ニ出タイ、
  斯ウ云フ考ヘデ今見テ居ルノデアリマス、
  本件ニ對スル經過ハ大體サウ云フコトデ進
  行シテ居リマス、今後モ十分注意シテ參リ
  タイト思ツテ居リマス

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• 055・深澤吉平

  ○深澤(吉)委員　今一點御伺ヒシタイノデ
  スガ、ソレハ旭川ノ國策「パルプ」會社ニ於キ
  マシテ癈液ヲ流スノデアリマスガ、其ノ結果
  神龍、深川、空知、土功組合約二万町步ニ
  其ノ滓ト言ヒマスカ、浮游物ガ流レ出ルノ
  デ、ソレガ藻ヲ發生致シマシテ、水溫ヲ低
  下セシメテ、米作收穫上支障アリト見ラレ
  テ居ルノデアリマスガ、之ニ對スル政府ノ
  御所見ヲ御伺ヒシテ置キタイト思ヒマス

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• 056・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　國策「パルプ」ノ癈液
  ノ件ニ付キマシテモ一應私ノ方デモ承知ハ致
  シテ居リマスガ、此ノ點ハ技術的ニ相當因果
  關係ニ付テ〓究ヲ要スル餘地ガアルヤウデ
  アリマス、アノ問題ハ水溫ノ低下問題ヨリ
  モ、寧ロ其ノ浮游物ヲ中心トシテ有機物ガ
  之ニ附着ヲシテ、其ノ有機物ガ水田ニ流入
  致シマスル結果、水稻ノ健全ナル成育ヲ阻碍
  スルト云フコトガ論點ニナツテ居ツタヤウ
  ニ承知ヲシテ居ルノデアリマス、其ノ點ハ
  道廳ノ試驗場ノ方デモ調査ヲ致シテ居リマ
  スガ、其ノ間ノ實體ハ未ダ明確ニナツテ居
  ラナイノデアリマス、國策「パルプ」會社ノ
  當局者モ十分其ノ間ノ因果關係ニ於テハ科
  學的ノ探究ヲ遂ゲテ之ヲ防除スル措置ヲ會
  社トシテ執ルベキデアレバ、十分ノ措置ヲ
  講ズル、斯ウ云フコトヲ申シテ居リマスル
  シ、道廳ノ方モ全ク同樣ノ趣旨デ〓究ヲ致
  シテ居ルノデアリマス、左樣ナ經過ニ承知
  ヲシテ居ルノデアリマス、是ハ御話ノ水溫
  低下ノ問題デハナイヤウニ私共承知ヲシテ
  居ルノデアリマス、大體左樣ナ經過デアリ
  マス

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• 057・深澤吉平

  ○深澤(吉)委員　大臣ノ今ノ「オランダ」式
  トカ、「アメリカ」式トカ言ハレマスガ、私ノ所
  見ハサウ云フ風ノモノデハナイノデス、農
  業部面カラ見レバ「アジア」ニ於ケル農業中
  心指導ト申シマスカ、我ガ國ハ世界ニ優レ
  テ居ルゾト、斯樣ナ見地カラ日本ノ農業者
  ハ何處ノ國ニ比ベテモ優ルトモ劣ル所ハ
  ナイ、殊ニ又現下ノ情勢カラ見テ、食糧問
  題等ニ付テ、此ノ日本ノ自然條件下ニ於
  テ不足スルガ如キコトハ有リ得ベカラザル
  コトデアル、若シアリトスレバ更ニ能率
  的ニナシ得ベキ餘地ガ洋々トシテ控ヘテ
  居ル、唯吾々ノ工夫ト技術ト云フモノガ、
  モツト發揚サレナケレバナラヌ、ソレニ
  シテモ勞力問題ノ如キハ寧ロ農村ハ供給ス
  ベキ地位ニアツテ、吸收スベキ地位ニアラ
  ズ、又之ヲ國內的ニ見タ場合ニ職能的ニ分
  類スレバ、農村ガ人口ヲ非常ニ保有シテ居
  ル、勞力ノ源泉地デアル、之ニ加フルニ畜
  力ト又適切ナル營農法、又能率的ナ器具ヲ
  持ツタナラバ農村人口ノ如キ、又勞力問題
  ノ如キハ憂フベキニアラズト云フ見解デア
  リマシテ、決シテ「アメリカ」ノヤウニ何千
  「エーカー」ヤレトカ云フヤウナコトデハナ
  イノデアリマス、唯皇國農村ト云フ-水
  稻栽培ニハ關係アリマセヌガ、大臣ノ所見
  ニ付テハ別ノ機會ニ於キマシテ農村問題ニ
  付テ御伺ヒ致シマスガ、保險問題ニ付テノ
  私ノ質問ハ之ヲ以テ終了致シマス

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• 058・池田秀雄

  ○池田委員長　農林省ハ別ニ御答辯アリマ
  セヌカ-ソレデハ農林大臣ニ對スル質問
  ヲ留保シテ居ラレタ大石齊治君-大石君

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• 059・大石齊治

  ○大石(齊)委員　午前ニ質問ヲ留保致シテ置
  キマシタ二、三ニ付キマシテ、農林大臣ノ
  御意見ヲ拜聽シタイト思ヒマス、先ヅ第一
  ニ人口問題デアリマス、人口問題ハ國家ノ
  將來ニ對スル重大ナ問題デアルコトハ申ス
  マデモアリマセヌ、曩ニ政府ハ人口國策確
  立要綱ヲ決定セラレマシテ、內地人口一億
  ヲ向フ十五箇年ノ間ニ確保スル、更ニ其ノ
  四割ヲ農村ニ確保シナケレバナラナイト云
  フ大方針ヲ決定セラレマシタガ、是ハ實ニ
  國家ノ將來ニ取リマシテ力强イ御決定デア
  リマシテ、本當ニ國民トシテハ喜ビニ堪ヘ
  ナイノデアリマス、ダガ顧ミテ果シテ農村
  ニ全人口ノ四割、今ノ目標カラ申シマスル
  ト、昭和三十五年マデニ一億ニ達成サセナ
  ケレバナラナイ、其ノ四割ヲ農村ニ果シテ
  確保シ得ル御確信ガ大臣ニアルカドウカヲ
  拜聽致シタイト思ヒマス、又ソレヲ確保ス
  ル爲ニハ、私共ノ狹イ見解カラ申シマスル
  ト容易デハナイト思ヒマスガ、相當シツカ
  リシタ對策ガナクチヤナラナイト思ヒマス
  ルノデ、其ノ對策ヲ御漏ラシ願ヒタイト思
  ヒマス、實ハ此ノ問題ニ私非常ニ憂慮ヲ覺
  エマスル理由ハ、私ズツト前カラ農村人口
  問題ニ付テ、興味ト申上ゲテハ相濟ミマセ
  ヌガ、非常ニ心配ヲ覺エマシテ、最近人口
  問題ヲ國策トシテ取上ゲラレルズツト前カ
  ラノコトデアリマスガ、色々ナ〓究ヲ不敏
  ナガラ進メテ參ツテ居ツタノデアリマス、
  特ニ私ノ調ベテ居リマシタノハ、舊藩時代、
  幕府時代ニ於ケル人口對策デアリマス、其
  ノ當時ノ幕府ニ於ケル人口對策ト云フモノ
  ハ、今日ノヤウニ全國ノ人口ヲドノ程度ニ
  增殖シナケレバナラナイ、全國ノ人口ヲド
  ノ程度ニ確保シナケレバナラナイト云フ問
  題ハ、一ツモ取上ゲラレテ居リマセヌ、寧
  ロ其ノ當時ノ人口問題ハ、各藩ノ勿論財源
  涵養ノ爲デアルノニ相違ナイノデスガ、農
  村ニ如何ニシテ人口ヲ確保スレバ宜イカ、
  農村人口ヲ如何ニ增殖スレバ宜イカト云フ
  問題ニ終始一貫シテ居リマス、是ハドノ藩
  ノ人口對策ヲ〓究致シマシテモ、農村ヨリ
  一步モ出テ居ル人口對策ト云フモノハナイ
  ノデアリマス、隨ヒマシテ今日全國ノ人口
  ノ問題ハ別ト致シマシテモ、農村ニ四割ノ
  人口ヲ確保シナケレバナラナイト云フ問題
  ヲ吾々ガ緊急問題トシテ取上ゲル場合ニ、
  幕府時代ニ於ケル人口對策ハ非常ニ參考ニ
  ナルト思フ、所デ其ノ藩政時代ニ於ケル各
  藩ノ人口政策ト云フモノヲ調ベテ見マスル
  下、非常ニ徹底シテ居リマス、私ノ見ル所
  ヲ以テ致シマスルト、今日人口問題ヲ國家
  百年ノ大計ト致シマシテ、政府モ識者モ熱
  心ニ〓究スルヤウニナリマシテ、偖テ其ノ
  問題解決ノ爲ニ考ヘラレテ居リマスル對策
  ト云フモノハ、舊藩時代ニ試驗濟ミニナツ
  タ問題ヨリモ一步モ出テ居ラナイ、寧ロ私
  ハ今日重大ナ時局ニ際シテ、人口對策ニ對
  スル貧困性ニ驚クト云フ位ニシカ考ヘラレ
  ナイノデアリマス、サウ云フヤウニ舊藩時
  代ニ於ケル各藩ノ人口政策ト云フモノハ非
  常ニ徹底シテ居リマシタガ、偖テ舊藩時代
  ニ於ケル農村ノ人ロハドウ云フ步ミヲ進メ
  テ居ツタカト申シマスト、全ク悲觀的デア
  リマシテ、總テ各藩ノ人口對策ガ悉ク失敗
  ニ終ツテ居ルト云ツテ宜イヤウナ進ミ方ヲ
  シテ居ルノデアリマス、サウ云フ事實ヲ
  考ヘルト同時ニ、又今日ノ色々ノ客觀的
  情勢竝ニ農村ノ內在的ノ事情カラ考ヘマ
  シテ、果シテ全人口ノ四割ヲ農村ニ確保シ
  得ルカドウカ、是ハ非常ニ重大ナ問題デア
  ルト考ヘテ居リマス、餘計ナコトヲ申上ゲ
  テ相濟ミマセヌガ、假ニ今私ノ記憶ニ殘ツ
  テ居ル所ヲ申上ゲマシテモ、舊藩政時代ニ
  各藩ノ執リマシタ人口對策ノ二、三ヲ拾ヒ
  上ゲテ見マシテモ、例ヘバ例ノ間引、墮胎
  ノ禁壓ノ如キ、之ニハ恐シイ强壓力ヲ以テ
  禁壓ヲ加ヘテ居ツタノデアリマス、更ニ今
  日喧シク取上ゲラレテ居リマス例ノ姙婦ノ
  强制登錄、姙產婦ノ擁護ト云フヤウナ問題
  ノ如キハ、今識者ニ於テ考ヘラレテ居ルヨ
  リモ、モツト徹底シタコトヲ各藩デハヤツ
  テ居ツタノデアリマスガ、ソレガ巧ク行ツ
  テ居ラナイ、ソレカラ多子家庭ノ擁護ニシ
  テモ、多ク米デスガ、子供一人ノ場合ハ幾
  ラノ補助米ヲ給付スル、或ハ二人、三人、
  五人ノ場合ハドウスルト云フヤウナコトニ
  付テモ、藩ニ依ツテハ實ニ周密、精緻ヲ極メ
  タ所謂產子米制度ト云フモノモ出來テ居リ
  マシタガ、ソレモヤハリ成功シテ居ラナイ、
  產メヨ殖ヤセト云フ聲ハ今日起ツタ聲デア
  リマスケレドモ、舊藩政時代ニ於キマシテ
  ハ、各藩ニ於テモヤハリ此ノ運動ハ盛ンニ
  行ハレテ居リマシテ、法令ヲ以テ女子ハ十
  四歲乃至十七歲、男子ハ十七歲以上二十歲
  マデニハ結婚シナケレバナラナイト云フ强
  制命令ヲ出シテ居ツタ藩モアリマス、オ上
  ニ媒官ト稱スル媒酌役人ヲ設ケマシテ、婚
  姻ノ取持チヲヤラセテ居ル藩モアリマス、
  サウ云フヤウニシテ早婚ヲ奬勵シ、時期ニ
  依リマシテハ、婚取拜借金制度ヲ定メマシ
  テ、結婚資金ノ給與マデモヤツテ居ツタ所
  モアツタノデアリマス、斯樣ニ一面人口增
  殖ノ爲ニハ精根ヲ盡シテ之ヲ奬勵シ、督勵
  シ、一面又農村人口擁護ノ爲ノ直接ノ法令ト
  シテハ、有名ナ寛政年間ニ於ケル老中松平
  樂翁公ニ依ツテノ歸農政策ノ如キ、或ハ又
  天保年間ニ於ケル水野越前守ノ農村人歸シ
  令ト云フ、人ヲ都會カラ農村ヘ歸スト云
  ス、アノ恐ロシク强イ政令ノ如キ、農村人
  口擁護ノ爲ニハ農村カラ離レテ出ル者ヲ
  禁壓スル、若シ五人、十人ト云フ群ヲナシ
  テ出ル場合ニハ、一揆徒黨トシテ嚴罰ヲ加
  ヘルト云フ嚴重ナ制度ヲ設ケ、ソレカラ江
  戶へ農村カラ出タ者ハ悉ク農村ヘ歸サナケ
  レバナラヌ、歸ス方法ハ是レ〓〓ノ方法ヲ
  以テ歸スト云フ、實ニ細カイ政令マデモ行
  ハレマシタケレドモ、ヤハリ不成功ニ終ツ
  テ居ルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ事例
  ヲ考ヘマシタ時ニ、農村人口四割ヲ確保セ
  ラレルト云フコトニ對シマシテ、農林大臣
  ハ確信アリヤ否ヤ、竝ニ其ノ對策ヲ拜聽シ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=59

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• 060・井野碩哉

  ○井野國務大臣　昭和三十五年ヲ目シマシ
  テ、一億ノ人口ニシテ參ルト云フ、所謂人
  口方策ニ付キマシテハ、是ハ主トシテ厚生
  省ガヤツタノデアリマス、而シテ此ノ一億
  ニスル人口對策トシテハ、色々御述べノ通リ
  ノ早期結婚デアルトカ、或ハ醫療施設ノ擴
  充デアルトカ、色々ノ方法カラ人口ヲ殖ヤ
  スト云フ對策ハ講ゼラレテ參ルト思ヒマ
  ス、然ラバ其ノ四割ヲ農村ニ保有スルコト
  ニ付テノ對策如何ト云フ問題デアリマス
  ガ、其ノ問題ニナリマスト、農林省所管ノ
  問題ニナツテ參ルノデアリマス、ソコデ今
  幕府時代ノ色々ノ施策ヲ御述ベニナリマシ
  タガ、其ノ施策ハ大體農村自體ニ於テ人口
  ヲ殖ヤス色々ノ對策、或ハ農村カラ離村ス
  ル者ヲ防止スルト云フ對策ノヤウニ伺ツテ
  居リマスガ、サウ云ツタ農村自體ニ於テ人
  ヲ殖ヤストカ、或ハ離村スルコトヲ防グ、
  斯ウ云フ消極的ナ對策ヲ以テ致シマスレバ、
  今日ノ農村人口四割保有ト云フ問題ハ中々
  私ハ困難ヂヤナイカト思ヒマス、隨テ今日
  農村ニ全人口ノ四割ヲ保有セシメルト云フ
  爲ニハ、農民自體ガ農村ニ安ンジテ、其ノ
  經營ヲ續ケテ行キ得ル體制ヲ整ヘナイトイ
  カヌト思ヒマス、其處ガ政府トシマシテモ、
  皇國農村確立促進ト云フ施策ヲ重要國策ト
  シテ決定致シマシタ所以デアリマシテ、結
  局農村カラ出テ行ク者ヲ縛ル色々ノ規定ヲ
  設ケマスコトハ是ハ米デアリマス、出ナ
  イヤウナ氣持ニ持ツテ行クコトガ、一番大
  切デアリマスカラ、其ノ爲ニ農村ニ於テ農
  民ガ農民トシテノ矜持ト責任トヲ以テ、今
  日農村自體ガ國家ノ要請ノ上ニ、主要食糧
  竝ニ農產物ノ生產場トシテ大切ナ場所デア
  ルバカリデナク、大和民族涵養ノ基地デア
  ル、ソレダケノ大キチ二大責務ヲ農村ガ負
  ハサレテ居ルノデアル、隨テ大東亞戰爭完
  遂ノ爲ニ、農民トシテハ之ヲ果シテ行クコト
  ガ農民ノ矜持デアルト云フ觀念ヲシツカリ
  植付ケテ、經營ノ上ニモ、現在ノヤウナ過
  小農經營、又低位農家ノ經營方式ヲ變ヘマ
  シテ、合理的ナ經營ノ上ニ、農村自體ニ於
  テモ農村全體トシテ、經營上安ンジテ其ノ
  方向ニ進ミ得ルト云フ施設ヲ色々一面ニ於
  テ加ヘテ參リマスト共ニ、又鍊成施設ヲ擴
  充致シマシテ、農民自體ニ其ノ魂ヲ打込ン
  デ行クト云フコトト、竝ニ農村自體ノ經營
  方式ヲ其ノ線ニ沿ヒマシテ計畫的ニ樹立
  サセテ行クト云フ點ニ付テノ色々ノ施策ヲ
  講ジマシテ、農民ガ安ンジテ其ノ居村ニ於
  テ農業ニ從事シ得ルト云フ體制ヲ取ツテ參
  ルコトガ、今日農村人口定有ノ一ツノ根本
  的施策ニ相成ルコトト考ヘテ居リマス、其
  ノ具體的內容ニ付キマシテハ豫算上色々ノ
  施設モ講ジテ居リマス、ソレヲ以テ施設ノ
  上ニ於テハ之ヲ實行シテ參ル、鍊成ノ上ニ
  ニ於テハ色々ノ方式、方法ヲ講ジテ、其ノ
  方向ニ導イテ參リタイト考ヘテ居ル譯デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=60

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• 061・池田秀雄

  ○池田委員長　大石君、他ニモ三、四人マ
  ダ大臣ニ對スル質問ガアリマスカラ、成ベ
  ク簡單ニ御願ヒ致シタウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=61

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• 062・大石齊治

  ○大石(齊)委員　大變該博適切ナ御答ヘヲ
  戴キマシテ、本當ニ安心致シマシタ、實ハ
  私幕末時代ニ於ケル人口對策ヲ〓究致シマ
  シテ、總テガ駄目ダツタ、唯僅カニ成功シ
  テ居ルノハ二宮先生ノ村建直シ法、所謂報
  德仕法ニ依ルモノガアルダケデ、若干ノ成
  功ヲ見テ居ルト云フ位シカ考ヘラレナイ、
  二宮先生ノヤリ方ハヤハリ報德仕法ニ依リ、
  報德社員ノ自肅自戒ト云フコトニ出發シテ
  居ルコトニ付キマシテ、今ノ農林大臣ノ現下ノ
  農村事情ニ適應スル對策ヲ御話戴キマシテ、
  ソレナラバ行ケサウダト云フノデ安心ヲ致
  シマシタコトヲ深ク御禮申上ゲマス、唯併
  シ二宮尊德先生ガ報德仕法ニ依ツテ農村建
  直シヲヤラレタニハ相違アリマセヌガ、今
  日マデ傳ヘラレテ居リマスモノハ、其ノ中
  ノ報德社員ノ自肅自戒方面ノミガ傳ヘラレ
  テ居ルノデアリマス、アノ當時二宮尊德先
  生ガ農村ノ病弊ノ根源ハ、所謂各藩ノ苛斂
  誅求ニアツタノデアル、サウシテ農村人ノ
  生活ノ根柢ニ大キナ脅威ヲ與ヘテ居ル、之
  ヲ除去シナケレバイケナイト云フアノ活眼
  ガ成功シテ居ルノデアリマス、其ノ點カラ
  考ヘマシテ、私先程來ノ農林大臣ノ御意見
  ハ、全幅的ニ敬意ヲ表スルモノデアリマス
  ガ、實ハ自ラ農村ニ於ケル今日ノ主要食糧
  タル米ナリ麥ノ價格問題ニナツテ來ルノデア
  リマス、一般農家ノ收入ト、他ノ業者トノ
  收入ノ不權衡、是ハ各先輩同僚ノ方カラ度
  度ノ質問デアリマスノデ、私質問ヲ繰返ス
  譯デアリマセヌケレドモ、寧口農村ニ於ケ
  ル人口四割確保ト云フコトノ最大ノ缺陷ハ、
  此ノ點ニアルノヂヤアルマイカ、要スルニ
  米價問題ニ對スル再檢討ヲ或ル時期ニヤラ
  ナケレバナラナイノデアルマイカ、或ハ今日
  ノ事情トシテハ之ヲ許サナイカモ知レマセヌ
  ケレドモ、此ノ問題ヲ解決セズシテハ、百
  ノ方法ヲ以テシテモ私農村人口問題ノ解決
  ハ出來ナイト思ヒマス、ソレハ二宮先生自ラ
  ガ農村建直シニ打突ツテ、各藩主ニ手痛イ
  忠言ヲシテ居ラレルノモ此ノ點ニアツタコ
  トヲ想起致シマシテ、此ノ點ニ對シテモ恐
  ラク明敏ナル大臣ニハ相當ノ御考ヘガアル
  モノト信ジマシテ、人口問題ノ質問ヲ打切
  リタイト思ヒマス
  次ニ御伺ヒ致シタイト思ヒマスコトハ、
  所謂適正規模農家、是ハ相當ノ熱意ヲ以テ
  農林當局ノ方デモ御心配ニナツテ居ルヤウ
  ニ伺ツテ居リマス、又皇國農村ノ建設ノ爲
  ニハ恐ラクサウ云フ農家ヲ配列スル、サウ
  云フ農家ノ育成ニ努メルト云フ御方針デア
  ルコトハ勿論ダト思ヒマスガ、此ノ適正規
  模農家ト云フモノニ對シテ農林省ハドウ云
  フ條件、ドウ云フ資格、ドウ云フ要素ヲ持
  ツタモノヲ適正規模農家ト御考ヘニナツテ
  居ルカ、是ハ局長ニ御伺ヒシタイト思ヒマ
  スガ、御示シヲ願ヒマス

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• 063・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　適正規模農家ノ態樣
  ニ付テノ御尋ネデゴザイマシタガ、吾々考
  ヘテ居リマスル農業適正經營ノ問題ハ、勿
  論規模ノ問題ト云フモノガ大キナ問題デア
  リマスガ、單ニ規模ダケノ問題デナシニ、
  其ノ經營全體ヲ通ジマシテ、之ヲ適正ナラ
  シメルト云フ意味ニ於テ、適正經營ト云フ
  コトヲ目標トシテ考ヘテ參リタイ思ツテ居
  ルノデアリマス、此ノ適正經營ノ內容ニ付
  キマシテハ、御承知ノ通リノ農業事情デア
  リマスカラ、各地方々々村々ニ依リマシテ、
  自ラ其ノ態樣ニ差異ノアルコトハ申スマデ
  モナイノデアリマス、隨テ實際ノ實情ニ當
  リマシテハ、ソレ〓〓ノ村ノ實情ニ卽シテ
  考ヘテ參ラナケレバナラヌ
  〔委員長退席、深澤委員長代理着席〕
  具體的ニハ左樣ニシテ決定ヲ致スベキモノ
  ト考ヘテ居リマスガ、是等ヲ通ジマシテ大
  體適正經營ノ內容ガ、ドウ云フモノデアル
  カト云フ一般的ノ點ニ付キマシテ申上ゲテ
  見タイト思ヒマス、第一ノ點ト致シマシテ
  ハ、大體其ノ經營ハ家族勞作ヲ以テ經營ノ
  基本トスル、雇傭勞働ニ依存スルト云フコ
  トヲ建前ト致シマセヌデ、專ラ家族ノ勞働
  ヲ以テ經營ノ基本ト致スコトヲ一ツノ條件
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレカラ又專業
  的ニ農業ニ專念スル農業經營デアリ、此ノ
  農業經營ニ依ル收入ヲ以チマシテ大體自家
  ノ農業經營ナリ、自家ノ生活ナリノ維持發
  展ヲ圖リ得ルヤウナ經營形態、ソレカラ經
  營ノ重要ナ要素デアリマスル農地ハ、自己
  ヲ
  ノ所有ト致シマシテ、自作經營ニ依ル、ソ
  レカラ農地ノ規模ニ付キマシテハ、今申上
  ゲマシタヤウナ條件、地方々々ノ實情ニ卽
  シタ一定ノ面積ヲ持ツト云フコトガ勿論一
  ツノ條件ト考ヘテ居ルノデアリマス、大體
  左樣ナ經營ノ形態ヲ以チマシテ、サウシテ
  其ノ生活內容ニ於キマシテモ、健全且ツ安
  定セル生活ヲナシ得ルヤウナ經營ト云フコ
  トヲ、大體ノ目標トシテ考ヘテ居ルノデア
  リマス、精神的ノ要素ニ付キマシテハ、只
  今大臣カラ御話ノアリマシタヤウナ衿持ヲ
  持ツテ農業ニ專念スルト云フ、國家意識ニ
  徹シタル精神ヲ必要トスルコトハ、申スマ
  デモナイノデアリマス、大體ノ趣意トシテ
  ハ以上ノヤウナ點ヲ、適正經營ト云フモノ
  ノ凡ソノ輪郭トシテ考ヘテ居ルノデアリマ
  ス

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• 064・大石齊治

  ○大石(齊)委員　大體了承致シマシタ、適
  正規模農家ト申シマス以上ハ、ヤハリ耕作
  面積ニモ或ル程度現在ヨリハ擴大ヲサセナ
  ケレバ、將來ノ生活ヲ保障スル譯ニハ參リ
  マセヌ、ソコデ三町步ト稱ヘル人ガアリ、
  二町步ト稱ヘル人ガアリ、色々異ツテ居リ
  マスガ、何レニシテモ耕作面積ヲ殖ヤサナ
  ケレバナラナイコトガ事實デアルトスルナ
  ラバ、現在ノ日本內地ニ於ケル總耕作面積
  ト對比致シマシテ-又元ニ戾ルノデアリ
  マスガ、一億ノ全人口ノ四割ヲ農村ニ確保
  スルト云フ點ニ難點ガアルヤウニ考ヘラレ
  ルノデアリマス、一面ニ於テハ相當日々ニ
  進ンデ參リマス將來ノ農家ノ生活ヲ保證ス
  ルダケノ面積ヲ保有サセナケレバナラナイ、
  サウシテ內地ノ耕作面積ニハ限度ガアル、
  一面ニハ人口國策カラ言ヒマシテ、農村ニ
  人口ヲ四割保有シナケレバナラナイト云フ
  コトニナリマスト、玆ニ枘鑿相容レナイ大
  ナル難點ガアルヤニ考ヘラレマスガ、此ノ
  點ニ付テドウ云フ御考ヘヲ大臣ハ御持チデ
  アリマスカヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=64

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• 065・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農村人口ヲ全人口ノ四割
  ニ定有シテ參リタイト云フ目標ヲ立テマシ
  タ以上、大體ノ見透シハ政府トシテモ立ツ
  テ居ルノデアリマス、併シ元々一億ト云フ
  人口ハ、昭和三十五年ヲ期シテ其ノ目標ト
  シテ居ルノデアリマシテ、ヤハリ其ノ線ニ
  沿ウテ、色々ノ計畫ヲ立テテ參ラナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマス、一億ノ四割トス
  レバ四千万人ニナルノデアリマスガ、假
  一戶當リノ人口ヲ五·七ト云フ現在ノ儘デ
  考ヘテ行ケバ、約七百万戶ニナル譯デアリ
  マス、厚生省其ノ他デモ出來ルダケ各戶ノ
  人口ヲ殖ヤシテ、一戶當リ七人位ニシテ行
  キタイト云フ考ヘヲ持ツテ居リマスカラ、
  若シサウナリマシテ假ニ七人ニナレバ、五
  百七十万戶ト云フ譯ニナルノデアリマス、
  サウ云フヤウナ譯デ其ノ一戶當リノ人口ノ
  數ニ依ツテモ違ヒマスガ、假ニ現狀ノ人口
  ノ儘デ行ツテ、現在ノ耕地面積デ保有出來
  ルカドウカト云フコトヲ考ヘテ見マスト
  七百万戶ノ人口ノ中ノ百万戶ハ、滿洲ニ移
  住致スト云フ計畫ニナツテ居ル、ソレハ昭
  和三十一年ヲ目標ニシテ居リマス、隨テ三
  十一年カラ三十四年マデノ間ニ於テ、又コ
  コデ數十万戶ノ移住ガ出來ル譯デアリマス、
  其ノ外ニ是ハ皇國農村確立ノ爲ニ、支那ナ
  リ或ハ南洋方面ノ移住ト云フ問題ハ、大キ
  クハ取扱ツテ居リマセヌガ、自然ソツチノ
  方面ノ移住モ考ヘテ行カナケレバナラヌノ
  デハナイカト云フコトヲ考ヘテ見マス
  ト、百五十万戶ト云フモノハ內地以外デ保
  有スルコトニナルノデハナカラウカ、サウ
  スレバ五百五十万戶ト云フコトニナル譯デ
  アリマス、現在デモ農村ノ戶數ハ五百五十
  万戶デアリマシテ、其ノ中デ專業農家ガ三
  百八十万戶、兼業農家ガ百七十万戶デアリ
  マスガ、兼業農家ト云フモノハ今後モヤハ
  リ殘ツテ行クノデハナイカ、鑛山或ハ工場
  等ノ勞務トヲ兼ネマシテ、傍ラ農業ヲヤリ、
  傍ラ他ノ事業ヲヤルト云フ者モ考ヘラレマ
  スガ、此ノ兼業農家ニ付テ其ノ經營上ノ農
  地ヲ今以上ニ殖ヤスト云フコトハ、適正經
  營ノ上カラモ考ヘナクテ宜イ譯デアリマス、
  專ラ專業農家三百八十万戶ニ付テ考ヘテ見
  ルベキデハナカラウカ、是ハ現在ノヤウニ
  一戶當リ一町三段九畝ニナツテ居リマスガ、
  ザツト一町四段步程度デハ適切經營ニハ中
  中困難デハナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
  ルノデアリマス、隨テ今後開發見込面積ガ
  約百三十万町步アリマス、現在農地開發營
  團デ實行シヨウト思ツテ居リマスノハ五十
  万町步デアリマス、ソレ以外ニ八十万町歩
  ハ、開墾見込トシテモ相當ニ計畫ノ立チ得
  ル農地デアリマス、隨テ此ノ開發ニ依リマ
  スル百三十万町步ノ耕地ヲ、只今申上ゲマ
  シタ專業農家一戶當リニ割ツテ見マスル
  ト約二反乃至三反ノ增加トナル譯デアリ
  マス、サウシマスト、今後ノ人口增加ニ伴
  ヒマシテ、四千万人ノ人口ヲ農家ニ保有ス
  ルト致シマシテモ、詰リ專業農家トシテハ
  一戶當リ一町七、八反ノ經營ニナリ得ル譯
  デアリマス、平均一町七、八反デアリマス
  レバ-相當ニ是ハ地方々々ニ依ツテ、只
  今局長カラ申上ゲマシタ通リ、經營モ違ヒ
  マスケレドモ-適正ナ經營ガ行ハレテ行
  クノデハナカラウカ、斯ウ云フ風ニ大體見
  透シテ居リマスルカラ、今申上ゲタ通リ、今
  日ノ內地ノ耕地事情竝ニ滿洲ノ開拓事業ト
  併セテ考ヘテ見マスレバ、一億万人ノ人口
  ニ對シテ四割ノ農村人口定有ト云フコトモ
  困難デナイ、而モ適正經營ニ移シテ行ケル、
  斯ウ云フ大體ノ見透シヲ持ツテ居ルノデア
  リマス、併シ是ハ單ナル見透シデアリマス
  ルカラ、之ニ基イテ色々ノ施策ヲ別個ニ考
  ヘテ行カナケレバナラヌコトハ勿論デアリ
  マスケレドモ、一應ノ見透シダケヲ申上ゲ
  テ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=65

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• 066・大石齊治

  ○大石(齊)委員　大體諒承致シマシタ、所デ
  私最近妙ナ事例ニ打突カツテ非常ナ虞ヲ抱イ
  テ居ルノデアリマスガ、最近、今マデ相當
  ノ面積ヲ耕ヤシテ、マア一人前ノ農村ニ於
  ケル中堅農家ト見テ、前途ニ希望ヲ持ツテ
  居ツタヤウナ百姓ガ、是ハ全國的デモアリ
  マスマイ、又サウ多クデモナイノデアリマ
  スルカラ、取立テテ申上ゲルマデモナイコト
  ノヤウデアリマスケレドモ、併シ將來ヲ慮リ
  マスト云フト、非常ニ惧レヲ抱カサセラルル
  ノデアリマスガ、要スルニ三反百姓ニ轉落シ
  ツツアル、今マデ一町幾反作ツテ堂々タル中
  堅農家デアツタ者ガサウ云フヤウニ減反ヲ
  ヤル、、是ハ主トシテ市街地ニ近イ方面デア
  リマス、ドウシテサウ云フ風ニスルカト申シ
  マスルト、兎モ角一家眷族五人ナリ七人ナリ
  ノ家族ノ食糧ダケハ確保シタイ、ソレニハ
  三反ノ田畑ヲ作ル、ソレダケヲ克明ニ作レバ
  一家眷族ノ〓糧ヲ支ヘラルル、其ノ程度マデ
  ハ減反ヲ致シマシテ、ソレニ依ツテ生ズル所
  ノ餘剩勞力デ以テ工場ニ通フ、會社ニ通フ、
  サウシテ高賃銀ヲ取ル、或ハ自由勞働者ノ立
  場ニ立ツテ、近頃農村ニ恐ロシイ勢ヒデ擴
  ガリ掛ツテ居リマス所謂賃銀ノ闇取引、
  ソレヲ敢テシテ、要スルニ一方ニ食糧ヲ確
  保シテ、一方ニ思フ存分ノ高賃銀ヲ取ルト
  云フヤウナ考ヘカラ、サウナリツツアルノデ
  アリマス、私ハサウ云ツタヤウナ考ヘヲ立テ
  テ、サウヤリ掛ツタ人間ヲ摑ヘテ懇々ト其
  ノ不心得ヲ說イテ見マシタ、農業ノ永久性、
  農業ノ安定性、オ金ノ問題ト關係ナシニ農
  村ノ立場ハ斯ウデアル、農民ト云フモノノ
  特異性ハ玆ニアルト云フヤウナコトヲ、懇
  懇トロヲ酸クシテ說イテ見マシタガ、彼等
  ノ考ヘテ居ル所ハ私共ノ考ト非常ニ遠ザカ
  ツテ居ル寧ロ其ノ連中カラ言ハセルト云
  フト、是ガ適正規模農家デアル、現在ノ狀
  態ニ於テ是ガ一番自己ノ生活ヲ進メ得ル途
  デアリ、自己ノ財產ヲ殖ヤシ得ル途デアリ、
  サウシテ安全ナ行キ方デアル、斯ウ言ツテ
  中々意志ヲ飜シマセヌ、其ノ人一人ダケノ
  意志ヲ飜サヌナラ宜イケレドモ、其ノ眞似
  ヲスル者ガ比々農村ニ殖エテ來ル現狀ニア
  ルノデアリマス、コンナコトデ日本ノ農村
  ハ崩レハシナイダラウトハ思ヒマスルケレ
  ドモ、併シ一葉落チテ天下ノ秋ヲ知ルヤウ
  ナ風ナ、何ダカ一種ノ虞レヲ抱カザルヲ得
  ナイノデアリマス、是ト云フノモ屢〓申上ゲ
  マスヤウニ、農村人ノ收入ト、他ノ業者ノ
  收入トノ間ニ餘リニ大キナ隔タリガアルト
  云フコトガ原因ヲ成シテ居ルノデアリマシ
  テ、此ノ根柢ニ何等カノ大斧銭ヲ加ヘナイ
  限リハ、農村ニ忌ハシイ現象ガ日ヲ逐ウテ
  殖エテ來ルノヂヤナイカト云フコトヲ頻リ
  ニ憂ヘラレテ居ルノデアリマスガ、斯ウ云
  ツタヤウナ妙ナ狀況ガ農林省ニハ傳ハツテ
  居リマスカドウデスカ、又斯ウ云フ問題ニ
  對スル大臣ノ御所見ヲ一ツ拜聽シテ置キタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=66

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• 067・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日都會附近ノ農村ニ於
  キマシテ、軍需工場其ノ他生產力擴充方面
  ノ工場ニ勤務スル爲ニ、農業經營ヲ縮小シ
  テ居ル實情ハ私共モ、澤山デハゴザイマセ
  ヌガ承知致シテ居リマス、或ル意味ニ於キ
  マシテ洵ニ憂フベキ現象デアリマスガ、斯
  ウ云ツタ傾向ヲ今大石サンノ御話ノヤウニ、
  個人々々ニ說イテ能ク考ヘ方ノ違ツテ居ル
  點ヲ諭スコトモ一ツノ行キ方デアリマスケ
  レドモ、中々御話ノ通リ收入關係カラ見テ
  電
  聽カナイト云フ人モアリマセウ、併シ今日
  ノ農村ト云フモノノ重要性ヲ眞ニ農民ニ自
  覺セシメマシテ、サウシテ其ノヤツテ居ル
  仕事ガ如何ニ立派ナ仕事デアルカト云フコ
  トヲハツキリ自覺シマシタ農民ハ、決シテ
  サウ云ツタヤウナ考ヘ方デ進ンデハ居ラナ
  イノデアリマス、併シ一面ニ於テ價格問題
  カラ來ルサウ云ツタ傾向ニ付キマシテモ、
  固ヨリ政府ハ種々ノ考慮ヲ拂ツテ居ルノデ
  アリマスガ、然ラバ價格ダケノ問題デ是ガ解
  決出來ルカト申シマスト、必シモサウハ行カ
  ナイノデアリマス、假ニ米ノ相場ニ取ツテ見
  マシテモ、一昨年兎モ角米價ヲ五十圓ニシナ
  ケレバ離村問題ガ非常ニ大キクナツテ來タ、
  〔深澤委員長代理退席、委員長着席〕
  五十圓ニスレバサウ云ツタ問題ハ自然ニ解
  決サレテ來ルト云フ御說モアリ、又其ノ當
  時ノ生產費事情カラモ色々考ヘテ見マス
  下全ク赤字ニナル狀態デアリマシタカラ、
  政府トシテモ臨時價格制度ヲ以テ約五十圓
  ニ匹敵スル米價ニ直シタノデアリマス、
  昨年直スト、直グ又今日ニ於テハ、ソレデ
  ハ駄目ダ、モツト上ゲナケレバ離村スルト
  云フヤウナ狀態ガ續イテ參ルトシマスト、
  是ハ私ハ洵ニ憂慮スベキ事態デハナイカト、
  斯ウ思フノデス、價格問題ダケデ、農村ノ
  人々ガ他ノ仕事ト比ベテソツチニ移ルト云
  フ氣持ハ、或ル程度ヤハリ精神的ニ、農村
  ノ人々ニ對シテサウ云ツタ氣持デナシニ、
  農村自體ヲ守ツテ行クコトガ大切デアルト
  云フ、所謂精神訓練竝ニ農村ニ對シマスル
  各般ノ施設ヲ擴充シテ參リマシテ、是ハ經濟
  施設ハ勿論、厚生施設、娛樂施設、其ノ他
  ノ施設ヲ擴大シマシテ農村自體ニ生活ヲス
  ル方ガ安定性ヲ持ツモノデアルト云フコト
  ヲハツキリ農民ニ自覺セシメテ行クコトガ
  大切デアルト思フノデアリマス、單ナル價格
  ニ依ツテ、然ラバ收入ノ關係ハドウナルカ
  ト言ヘバ、收入ハ假ニ多クナリマシテモ支
  出ガ多イコトニナリマスレバ、結局後ヘ殘
  ツテ行ク金ト云フモノハ少クナルノデアリ
  マン、今日農村ハ勿論米麥作ニ於テハ十分
  ノ剩餘ヲ殘シテハ參リマセヌガ、色々ノ多
  角經營ニ依リマシテ相當ニ農村自體ニモ貯
  金モ殖エ、又負債モ減ラシテ參ツテ居ル、
  此ノ實情、斯ウ云ツタ行キ方、所謂經營ノ
  堅實化ニ依リマシテ指導シテ參ル、サウシ
  テ今申シマシタヤウナ厚生施設、娛樂施設
  等ノ擴充ニ依ツテ、農村自體ヲ安定セシメ
  テ行ク、斯ウ云フ施設ガヤハリ大切デハナ
  イカ、價格問題ダケデ解決スルト云フ行キ方
  デハ、一年ヤツテ見テモ又其ノ次ノ年ニヤ
  ラナケレバナラヌ、ソンナ方法ヲ段々ヤツ
  テ行キマスト、米價ガ自由ニ上ゲラレル時
  ナラ問題アリマセヌガ、今日低物價政策ヲ堅
  持シナケレバナラヌト云フコトガ、此ノ大東
  亞戰爭遂行ノ爲ノ大方策デアリマス以上ハ、
  米價ヲ上ゲルコトハ出來ヌ、結局二重價格
  制度ニ依ツテ奬勵金ヲ殖ヤシテ行カナケレ
  バナラヌノデアリマス、併シ國庫ノ財政ニ
  ハ限度ガアリマスカラ、其ノ限度マデ來テ
  シマツテ、モウ價格問題デハドウニモナラ
  ナイ、斯ウナツテハ農村ハドウナツテモ仕
  樣ガナイト云フ態勢ヲ執ルヨリハ、今カラ
  十分ニサウ云フ點ニ注意ヲ加ヘテ行ク、凡
  ユル方面カラ農村自體ヲ指導シテ、立派ナ
  皇國農村ヲ確立シテ行クト云フコトガ私ハ
  適切デアルト思ツテ居ルノデアリマス、併
  シ價格問題等モ生產費ト勘案致シマシテ、到
  底償ヘナイ事業ニ對シテ、無理ニヤルト云フ
  コトハ無論イケマセヌケレドモ、他ノ事業
  ト比較シテ向フノ方ガ有利ダカラ向フヘ移
  ツテ行クノダト云フ氣持カラ、向フノ價格
  ト合セテコツチモ上ゲテ行ク、サウシテ農
  村ノ人々ヲ引留メテ行クト云フコトハ、寧
  ロ農村ヲ墮落サセルモノダト思フノデアリ
  やっと、デアリマスカラ、サウ云フ問題ニ付
  キマシテ色々御論議モアリ、私モ能ク事情ガ
  分ツテ居リマスカラ、十分ニサウ云フ點ヲ
  兩方面カラ注意シテ、政府トシテモ直スベ
  キモノハ直シテ行ク、麥モ最近價格ヲ上ゲ
  タノデアリマスカラ、直スベキモノハ直
  シテ行キタイ、サウ云フ點ヲ餘程注意シテ
  行カナイト、茲ニ大キナ缺陷ヲ生ズルコト
  ニナルト考ヘテ居リマス、兎モ角此ノ問題
  ニ付キマシテハ善處シテ參リタイト考へ
  テ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=67

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• 068・大石齊治

  ○大石(齊)委員　非常ニ懇切ナ御示シヲ戴キ
  マシテ有難ウゴザイマシタ、次ニ私ガ心配
  シテ居リマス問題ハ農村ノ、專ラ靑壯年ノ
  方面デアリマスガ、農民精神ノ弛緩荒廢、
  餘リ悲觀的ニ申上ゲテハ相濟ミマセヌケレ
  ドモ、最近非常ニ惡クナツテ居ルト云フ點
  デアリマス、實ハ先達テ農業報國推進隊員
  ヲ內原へ送リマシタ時ニ、私壯行會ニ出マ
  シテ、農村ノ危機今日ヨリ甚ダシイコトハ、
  日本開闢以來ナイダラウト云フ、可ナリ奇
  激ナ、激越ナ言葉ヲ以テ、諸君ヲ送リマシタ
  ガ、實際考ヘテ見ルト、實ニ危殆ノ巖頭ニ
  農村ガ立ツテ居ルヤウナ感ガスルノデアリ
  やくっ私共以前ニモ農村ノ危機到レリト云
  フコトヲ言ツタコトガアリマシタ、ソレハ
  米ガ安クテ收入ガ少クテ、農村ノ生活ガド
  ウシテモ維持出來ナイ、之ヲ何トカ救ツテ
  貰ハナケレバナラヌト云フノデ、專ラ物質
  的方面ノ心配デアリマシタガ、其ノ當時ハ
  政治的ニ是ハ解決シ得ル問題ダト思ヒマシ
  テ、深イ憂慮ヲ感ジナイデ居リマシタケレ
  ドモ、今日ノ農村ノ危殆ハ、寧ロ精神的方面
  ニ根據ヲ持ツテ居ルカノ虞ヲ持ツノデアリ
  マス、先程來他ノ各位カラモ御話ガアリマ
  シタ通リニ離村者ガ段々殖エル、殊ニ靑
  壯年ト云フ大事ナ階級ガ農村ニ全ク興味
  ヲ持タナイ、厭氣ガ差シテドン〓〓飛ビ出
  ス、ソレカラ闇取引ト申シマスレバ市街地
  ニノミアルモノト私ハ考ヘテ居リマシタガ、
  今日闇取引ハ、大掛リノモノデハアリマセ
  ヌケレドモ、小サイ闇取引ハ寧ロ農村ニ變
  ツテシマヒマシテ、農村民ト言ヘバ悉ク闇
  取引ヲヤラナケレバナラナイモノノヤウニ
  蔓延橫行シテ居ル實情デアリマス、一體農
  村ノ人ハ純情デアリ、單調デアリマスカラ
  直グ誘惑ニ乘ルト云フヤウナ所カラデモア
  リマセウ、又幾ラカ知識ノ程度ガ低イセイ
  カ、時局ニ對スル認識ニ於テモ不徹底ノ點
  ガアルヤニモ思ハレマスガ、何レニ致シマ
  シテモ此ノ時局ニ相應シカラヌ言行ガ非常
  ニ多クナツテ參ツテ居リマス、勿論是ハサ
  ウ惡意ノアルモノデモナケレバ、又思想的
  背景ノアルモノデモナイノデアリマスガ、
  併シ一ツ二ツ三ツト例ガアルヤウニコンナ
  コトガ頻々ト若イ靑年ノ中ニ言ハレ行ハレ
  ルコトニナリマスルト、全農村民ヲ蠧毒ス
  ルコトガ非常ニ多イコトヲ惧レテ居ルノデ
  アリマス、此ノ點ニ付キマシテハ私ハ質問
  ヲ申上ゲル必要ハアリマセヌ、大臣カラ非
  常ニ該博ナ御示シヲ戴キマシテ、斯ウ云フ
  精神方面ノ救濟ニ付キマシテモ周到ナ御用
  意ノアルコトヲ伺ツテ安心致シマシタガ、
  一面又今ノ米價問題ノミニ依ツテ農村ハ救
  ハレルモノデモナシ、農村ノ精神的弛緩ヲ
  囘復スルコトハ出來ルモノデナイニ相違ア
  リマセヌケレドモ、確カニ一面ハ其處ニア
  ルト云フコトヲ御考慮ノ中ニ置カレマシテ、
  將來トモ農村ノ爲ニ御骨折ヲ願ヒタイト思
  ヒマス、之ヲ以チマシテ質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=68

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• 069・池田秀雄

  ○池田委員長　滿井君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=69

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• 070・滿井佐吉

  ○滿井委員　前囘次官ニ御尋ネ致シマシタ
  ガ、米ノ價格ノ問題ニ付キマシテハツキリ
  シナイ點ガアリマスカラ、簡單ニ大臣ニ御
  尋ネヲ致シテ置キマス、當局ノ各委員會、
  其ノ他デ色々御答ヘナサレタ所デ大體判斷
  致シスマト、農林行政ノ見地ト云フヨリモ、
  寧ロ低物價政策ノ根本ノ爲ニ抑ヘラレテ居
  ルト云フ理由ガ多イヤウデゴザイマスガ、
  米價ヲ是レ以上上ゲルコトノ出來ナイ現在
  ノ程度デ御滿足ニナリマス理由ガ、ギリギ
  リ結着ノ所ハ農林行政上是デ適切デアルト
  御考ヘニナルノデゴザイマセウカ、ソレト
  モ農林行政ノ方カラハモツト上ゲルヲ至當
  ト認メルガ、低物價政策ノ根本基盤ノ上ニ
  立ツテ居ルカラドウニモナラナイ、、斯ウ仰
  シヤルノデゴザイマスカ、其ノ點ヲハツキ
  リ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=70

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• 071・井野碩哉

  ○井野國務大臣　米ノ價格ノ問題ニ付キマ
  シテハ屢〓申上ゲテ居リマス通リニ、米ノ値
  ヲ引上ゲルト云フ問題ト、値ハ引上ゲナイ
  デ-値ト申スノハ賣値デアリマス、一般
  消費者ニ對スル賣値ヲ引上ゲナイデ、生產
  者カラノ買入レ價格ヲ多クスルト云フ二ツ
  ノ行キ方ガアル譯デアリマス、今一般消費
  者ニ對スル米ノ値段ヲ引上ゲルト云フコト
  ハ、低物價政策ヲ堅持シマス政府ノ大方針
  ト致シマシテ、引上ゲヲ現在ニ於テハ行ハ
  ナイト云フ風ニナツテ居ルノデアリマス、
  然ラバ農業經營ノ見地カラ米價ノ引上ゲヲ
  致サントスレバ、農村ノ經營ヲ維持シテ參
  リマス爲ニ所謂二重價格制度ヲ採ルコトガ
  適切デアルト考ヘマシテ、先般五圓ノ奬勵
  金ト一圓ノ買入レ價格ノ引上ゲト、更ニ一
  圓ノ銘柄格差ノ整備ニ依リマシテ、七圓程
  度ノ米價ヲ引上ゲタト同ジ效果ノ施設ヲ致
  シタノデアリマス、然ラバ此ノ二重價格制
  度デ今日適當デアルカドウカト云フ問題ニ
  ナリマスルト、今日米ノ價格ハ大體食糧管
  理法ニ依ツテ決メルコトニナツテ居リマス、
  其ノ法律ノ基礎ハ農家ノ生產費竝ニ諸物價
  ノ指數等ヲ勘案致シテ決メルコトニナツテ
  居リマス、隨テ米ノ生產費ト云フモノガ
  ドウナツテ來ルカト云フコトガ一番大キナ
  問題ニナツテ來ルノデアリマスガ、マダ本
  年ノ米ニ付テハ的確ノ數ガ出テ參リマセヌ
  ケレドモ、一昨年ノ五千五百万石穫レマシ
  タ年ニ於テノ生產費ヲ大體補フベク五十圓
  ニ致シタノデアリマス、本年ハ六千七百万
  石デアリマスカラ、常識的ニ見テ生產費ガ
  ソレヨリ下ツテ居ル實情ニアルモノト考ヘ
  ラレルノデアリマス、隨テ現在ニ於テハ
  昨年二重米價制度ヲ採リマシタバカリデア
  リマスカラ、之ヲイヂルト云フコトハ致サ
  ナイト云フコトヲ申上ゲテ居ルノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=71

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• 072・滿井佐吉

  ○滿井委員　只今御答ヘノ第一點、一般小
  賣値ノ關係ノ方ノ低物價政策ノコトニ付キ
  マシテハ私ハ低物價政策ヲ破ラナイ範圍
  ニ於テ、モツト米ノ小賣値ヲ上ゲテモ宜イ
  可能性ガアルト見テ居リマスカラ、此ノ點
  ニ付テ篤ト商工大臣ニ質問致シタウゴザイ
  マスカラ、商工大臣モ此ノ席ニオイデニナ
  ルヤウニ御取計ヒヲ願ヒイタウゴザイマ
  ス
  ソレカラ次ニ農林大臣ノ御答へ下サイマ
  シタ國家補償ノ二重價格ニ依リマシテ、農
  村人ノ懷ロニ入ル金額ノ方ヲ適正ニシヨウ
  ト御考慮ニナツテ居ラレマスル御事情ハ能ク
  分リマシタガ、此ノ點ニ付キマシテモモウ
  少シ國家補償ノ範圍ヲ擴大シ、金額ヲ增加
  シマシテモ國家財政上心配ハナイノデハナ
  イカト云フヤウニ、吾々ハ素人考ヘガ致シ
  マス、又サウ云フ風ニ增加スルニアラズン
  バ農村經濟ノ均衡ガ取レナイノデハナイカ
  ト考ヘマスガ、此ノ點ニ付キマシテハ大藏
  大臣ヘハツキリト國家財政ノ方ヲ御尋ネ致
  シタウゴザイマスカラ、大藏大臣モ御呼ビ
  ヲ願ヒマス
  更ニ農林大臣ニ今ノ點ヲモウ少シ詳細ニ
  御尋ネ致シタイ、一昨年上ゲテ又上ゲルト
  云フコトハ鰻上リニナツテ農村ヲ墮落サセ
  ルト云フ非常ナ御心配デ、御尤モト思ヒマ
  スケレドモ、何シロ今大東亞戰爭ノ渦中デ
  アリマとテ、モウ決戰期ニ入ツテ居リマシテ、
  食糧問題ガ今年モ亦思フヤウニ行カナイ
  ト、ソコカラ吾々ハ非常ナ社會不安ノ𣏌憂
  ヲ抱イテ居ルノデアリマス、是ハ重大ナル
  問題デアリマシテ、一年、二年鰻上リニ上ツテ
  モ宜シイ、ソレニ農村ガ煽ラレテ思切ツテ增
  產シテ來テ戰爭ニ勝テレバ宜シイノデアリ
  マスカラ、其ノ邊ノコトヲ考ヘ合セマスト
  平時農村對策ノ考慮ト云ツヤウナ方針ハ全
  然拔キニ致シマシテモ、此ノ戰爭ヲ勝拔ク
  食糧問題ニ大切デアル米ト云フ問題カラ致
  シマシテ、大幅ニ國家補償ヲ引上ゲルコト
  ガ適切ナリト思ヒマスガ、更ニ再考慮シテ
  戴ク餘地ハアリマセヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=72

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• 073・井野碩哉

  ○井野國務大臣　食糧增產ノ問題ハ單ニ之
  ヲ價格政策デ私ハ解決サレナイト云フコト
  ヲ度々申上ゲテ居ルノデアリマス、唯價格
  ノ問題モ御話ノ如ク、極メテ大切デアリマ
  スルカラ、政府トシテモ十分考慮ヲ加ヘテ
  今日マデ參ツテ居ルノデアリマス、麥ノ價
  格ノ如キモ其ノ意味ニ於テ引上ヲ致シテ居
  ルノデアリマス、米價ニ付キマシテモ今日
  ノ狀態ガ、今申上ゲタ通リ、農家ノ生產費
  カラ見テソレガ赤字ニドウシテモナルノダ、
  引合ハナイノダ、其ノ爲ニ減產ノ傾向ヲ生
  ズルノダト云フヤウナ事態デアリマスレバ、
  是ハ無論考慮ヲ加ヘテ參ラナケレバナリマ
  セヌガ、兎モ角昨年ハ此ノ米價デ六千七百万
  石ト云フ作ヲ農民ハ一生懸命ニナツテ上ゲ
  テ來テ吳レテ居ルノデアリマス、農民自體
  モ今日ハ米價ニ付テ米價ヲ上ゲナケレバ增
  產ハシナイト云フ氣持デナシニ、ドウシテモ
  國家ノ要請ニ應ズル爲ニ、一生懸命增產シ
  ヨウト云フ氣持ニナツテ居ル譯デアリマス
  デアリマスカラ政府トシテモ凡ユル施策ヲ
  以テ農村自體ヲ維持發展セシメテ行クコト
  ガ適切デアリマスカラ、此ノ際唯徒ラニ奬
  勵金ヲ殖ヤスコトニ依ツテ增產ヲ助長サシ
  テ行クト云フ方策ヲ執ラナイ所以デアルノ
  デアリマス

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• 074・滿井佐吉

  ○滿井委員　御考慮、御苦心ノ點ハ非常ニ
  能ク分ルノデアリマスガ、併シ經濟ノコト
  ハ又精神問題ダケデハイケナイ、國民的ノ
  氣分モゴイマシテ、如何ニ滅私奉公的ノ慫
  慂ヲ國家ガサレマシテモ、事實國民ハ自分
  デ生活ヲ負擔シ、自分ノ責任ニ於テ一切ノ
  經濟生活ヲ解決シテ行キ、納稅モヤラナケ
  レバナリマセヌシ、子弟ノ〓育モヤラナケ
  レバナリマセヌシ、銃後ノ家庭モ守ラナケ
  レバナラヌノデアリマス、サウ云フ意味カ
  ラ見マスト、農村ガモウ現實ニ經濟生活ノ
  均衡ガ破レテ居ルト云フコトハ是ハ蔽フベ
  カラザル事實デアリマス、一兩年前ニ比べ
  テ良クナツタト云フコトハ確カニアリマス
  ケレドモ、此ノ點ニ付テ農林大臣ノ御苦心
  ヤ御功績ニ對シテハ感謝致シマスガ、國民
  全般ノ經濟生活ト云フコトカラ見マスト、
  農村ガヤハリ一番憂慮スベキ樣相ヲ持ツテ
  居ルノデアリマス、徴用工其ノ他勞働者ニ
  付テモ、隨分問題ハアリマス、アリマスケ
  レドモ、玆ニ國民經濟生活ノ破綻ト食糧問
  題ト云フモノヲ關聯シテ考ヘマス場合、食
  糧政策カラ見マシテ、ドウシテモ農村ノ經
  濟的ノ不均衡ト云フモノニ、モツト眞劍ニ
  重點ヲ置カレル必要ガアルノヂヤナイカ、
  此ノ點ガ巧ク是正サレマスト、案外農村貯
  蓄ガ增强サレマシテ、徵用工其ノ他重工業
  方面ニ從事シテ居リマス一般勞働者等ニ對
  スル方面ニ、金ノ經濟ノ手當ヲ增サナク
  テモ、又食糧政策ノ方カラ大イニ是等ノ人
  人ヲ滿足セシメテ働カセル餘地ガ出ルト思
  フノデアリマス、現在八幡ノ製鐵所ノ樣子
  ヲ見マシテモ、其ノ他北九州、關門地帶ノ
  各工場等ヲ見マシテモ、東京大阪ハ直接私
  ハ承知シマセヌガ、多數ノ會員ヲ通ジテ事
  情ハ大體分ツテ居リマシテ、手當ノ足ラナ
  イト云フ不足モアリマスガ、食糧政策上何
  トカシテヤリタイガドウニモナラナイト云
  フ點ガ、寧ロ大キナ癌ニナツテ居ルト思ヒ
  やく、此ノ點カラ一例ヲ申上ゲマスト、日
  立製作所ニ居リマス私共ノ會員モ會社當局
  ニ對シテスラ非常ナ惡感ヲ持ツテ居ルト云
  フヤウナ憂フベキ事實ガアルノデアリマス、
  日本ハ國體ガ宜シイノデアリマスカラ、社
  會問題ハ勃發スルトハ思ヒマセヌガ、非常
  ニ行詰ツタ所ニアリマスカラ、其ノ點ノ解
  決ガ米ノ價格問題デ、或ハ安全瓣ガ拔ケル
  ノヂヤナイカ、又拔ケナケレバナラヌノヂ
  ヤナイカト思フノデアリマスガ、是等ニ付
  キマシテモウ少シ眞劍ニ御考慮ヲ御願ヒス
  ル餘地ハゴザイマセヌデセウカ

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• 075・井野碩哉

  ○井野國務大臣　滿井君ノ御意見、私共決
  シテソレガ間違ツテ居ルトカ、又其ノ御意
  見ニ對シテ私ガ冷淡ナル氣持デ處置シテ參
  ルト云フノデハナイノデアリマス、私モ色
  色此ノ問題ニ付テハ苦心ヲシテ居リマス、
  サウシテ如何ニシタナラバ增產ノ實ガ擧ツ
  テ行クカ、殊ニ食糧ノ自給自足ト云フコト
  ニ付テノ重大責任ヲ持ツテ居リマスカラ、
  色々ノ觀點カラ出來ルダケノコトハシテ居
  リマス、併シ今日私ガ執ツテ居リマス此ノ
  方策ヲ以テ行クコトガ最モ善イト、斯ウ考
  ヘテ居リマスガ故ニ、私自身ハ此ノ施策ヲ
  執ツテ居ルノデアリマス、今御話ノ鑛山ヤ
  工場ニ對スル食糧ノ問題ニ付キマシテモ、現
  在ノ窮屈ナル食糧事情ノ中カラ、サウ云フ勞
  務者ニ對シマシテハ、增配マデ致シテ居ル
  ノデアリマス、最近二、三ノサウ云フ工場
  ナリ、鑛山ニ商工大臣ガ行キマシタ時ニ、國
  ガ窮屈ナ食糧ノ中カラ、是ダケノ增配ヲシ
  テ呉レルコトハ洵ニ有難イト言ツテ、非常
  ニ氣持ノ上ニ於テ感謝モ致シ、又石炭其ノ
  他ノ增產ニ役立ツテ居ルト云フ話モ聞イテ
  居ルノデアリマス、兎モ角國民モ政府モ一
  生懸命ニナツテ、此ノ難局ヲ切拔ケテ行カ
  ナケレバナラヌノデアリマスカラ、其ノ施
  策ノ上ニ、御覽ニナルト色々不十分ナ所モ
  アリマセウガ、色々總テノ觀點カラ見テ戴
  キマセヌト、其ノ施策自體ニモ寧ロ破綻ヲ
  生ズルコトニナルノデアリマス、其ノ點ハ
  十分一ツ御諒承ヲ願ヒタイト思フノデアリ
  マス

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• 076・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ野村君

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• 077・野村嘉久馬

  ○野村委員　簡單ニ質疑ヲ致シマス、昨日
  次官ニ對シテ御伺ヒシタノデアリマスガ、
  一寸次官ノ方カラ言明ガナカツタモノデア
  リマスカラ、此ノ場合大臣ノ御意見ヲ拜聽
  致シタイト思ヒマス、蠶繭價格ノ問題デア
  リマスガ、此ノ蠶繭價格ニ於テハ今日非常
  ニ安ク思ハレルノデアリマス、而モ今ノ値
  段ハ色々ナ調査ニ依ツテ見マスルト、生產
  費ヲ割ツテ居ルト云フヤウナ狀態デ、而モ
  一貫目ニ二圓幾ラト云フヤウニ安イ、斯ウ
  云フヤウナ狀況デアリマス、爲ニ農家トシ
  テハ割ノ惡イ養蠶ヲ棄テテ或ハ百姓ヲスル
  ト云フ狀況デアリマスルガ、統計ニ於テ見
  マシテモ旣ニ分ツテ居ル通リデアリマシテ、
  養蠶戶數ガ少クナリ、又反別モ段々ト少ク
  ナツテ居ル、隨テ產繭額モ非常ナ減少ヲ見
  テ居ル、斯ウ云フ狀況デアリマシテ、是ハ
  色々ナ事情モアリマセウガ、先ヅ此ノ蠶繭
  價格ガ安イト云フコトガ立證サレルノデハ
  ナイカ、斯樣ニ思ハルルノデアリマス、今
  日纖維資源ノ大切ナルコトハ申スマデモアリ
  マセヌ、而モ此ノ大東亞共榮圈ニ於テハ生
  絲ガ最モ大ヲ占メテ居ル資源デアラウト存
  ズルノデアリマス、之ヲ確保スルコトハ此
  ノ戰爭ヲ勝拔ク上ニ最モ重大ナル使命ガ
  アルト私ハ思フノデアリマス、而モ政府ニ
  於テハ非常ナ多量ノ繭ノ確保ニ對シテ各府
  縣ニ命令シテ居ラレルヤウデアリマスガ、
  今ノ狀況デハ迚モ其ノ確保ハ難カシイノデ
  ハナイカト思ハレルノデアリマス、此ノ場
  合如何ナル事情ガアラウトモ、行掛リモア
  リマセウガ、是非此ノ價格ノ引上ヲシテ戴
  キタイ、斯樣ニ希望スルノデアリマス、所
  ガ昨日ノ農業團體法案ノ委員會ニ於テ、大臣
  ハ此ノ引上ニハ考慮スルト言ハレタト云フ
  ノデアリマスルガ、果シテ左樣ナ言明ヲサレ
  タノデアリマセウカ、此ノ場合是等ニ對ス
  ル大臣ノ御所信ヲ承リタイト存ジマス

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• 078・井野碩哉

  ○井野國務大臣　今日產繭額ガ減少シテ參
  リマシタ原因ニ付キマシテハ、繭價ノ問題
  モ其ノ一端デハアリマセウガ、主タル原因
  ハヤハリ生絲ガ一俵モ「アメリカ」ニ賣レナク
  ナツタ、一體蠶絲業ト云フモノハ、今日ド
  ウ云フ國家ノ御役ニ立ツ仕事ニナツテ來タ
  ノカト云フコトノ上ニ於テ、今日ハ重點的
  ナ產業ニ付テ、國家ガ總力ヲ結集致シテ居
  リマスカラ、之ニ從事スル者モ其ノ將來ヲ
  悲觀シテ、減少シツツアル事態ニアルノデア
  リマス、隨テ「アメリカ」ヘ輸出スルト云フ大
  キナ看板ガ下リ、又金獲得ト云フ看板ガナ
  クナツタ今日、ハツキリ茲ニ看板ヲ揭ゲテ
  蠶絲業ノ將來ヲ明朗化シテ行クコトガ私ハ
  一番大切デアラウト思フノデアリマス、ソ
  コデ先般來群馬或ハ東北六縣ノ會合ノ爲ニ
  福島ニ參リ、養蠶家ニモ蠶絲業ノ將來ハ決
  シテ悲觀スベキモノデハナイノダ、軍需竝
  ニ大衆向ノ纖維資源トシテモ、亦南方向ノ
  輸出ノ纖維資源トシテモ非常ナ重要性ヲ持
  ツテ居ルモノデアル、又之ニ副產的ナモノ
  トシテモ蛹デアルトカ、桑樹皮ト云フヤウ
  ナモノガ立派ニ國家ノ色々ノ重要產業ノ御
  役ニ立ツテ居ルノデアリマス、サウ云ツタ
  モノヲ綜合シテ、其ノ經營ヲ合理化シテ行
  クト云フコトニ依ツテ蠶絲業ノ將來ハ明朗
  デアルト云フコトヲ說イテ居ルノデアリマ
  ス、隨テ最近ニ於キマシテハ、養蠶家モ非
  常ニサウ云ツタ蠶絲業ノ將來ニ付テ段々ト
  認識ヲ深メテ來テ居リマスカラ、今政府ガ
  目標トシテ居リマス六千三百万貫ノ確保ニ
  付テハサウ困難デナイ見透シヲ持ツテ居ル
  ノデアリマス、併シ繭價ノ問題ハ今御話ノ
  通リ今其ノ生產費等ヲ色々調ベテ居リマス
  カラ、ソレニ依ツテ非常ニ生產費ヲ割ルモ
  ノデアルト云フコトデアレバ、考慮モ致サ
  ウト云フコトヲ昨日申シタノデアリマス、
  併シ今此處デ然ラバ本年ノ繭價ヲ引上ゲル
  ヤ否ヤト云フコトヲ言明セヨト云フコトデ
  アリマスレバ、其ノ言明ハ無論出來マセヌ、
  是カラ色々ノ調査ヲシマシタ結果、ソレニ
  基イテノ本年ノ繭價ハ蠶絲委員會デ以テ諮
  問致シマシテ決メルコトニナツテ居リマス
  ガ、其ノ議ヲ經マセヌケレバ、是ハ申上ゲ
  ル譯ニハ行カナイノデアリマス、併シサウ
  云フ氣持ダケハ持ツテ居ルト云フコトヲ昨
  日申上ゲタノデアリマス、又一面ニ於テ繭
  價ヲ餘リドン〓〓上ゲテ參リマスト今後
  ノ需要ト云フモノガ軍需竝ニ一般大衆向ノ
  民需ニアルノデアリマスカラ、餘リ高イモ
  ノニシテ行クコトハ寧ロ蠶絲業自體ヲ其
  ノ方向ニ導イテ行ク所以デハナイノデアリ
  マスカラ、此ノ點ニ付テモ或ル限度ガアリ
  マスコトハ、養蠶家諸君モ考慮シテ戴カナ
  ケレバナラヌ、是ハ經營ノ合理化ニ依ツテ
  生產費ヲ低下シテ行カナケレバナラヌト云
  フコトニヤハリ向ツテ行カナケレバナラヌ
  ト云フヤウニ考ヘテ居ル譯デアリマス

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• 079・野村嘉久馬

  ○野村委員　只今御話ノ通リ一應農民ハ非
  常ニ悲觀シテ居ル尙ホ又政府ガ食糧增產ノ
  建前カラ桑園ヲ減反スルト、是ガ又他ニ影響
  シテ居ルコトモ勿論事實デアリマス、併シ
  ナガラ今日ノ所ハドウシテモ値段ノ問題デ
  アルト私ハ確信シテ居ルノデアリマス、吾
  吾ハ地方ヘ參リマシテ是等ノ製品向上ニ付
  テハ非常ニ努メテ居リマス、供シ農家ノ聲
  ハヤハリ此ノ値段ノコトヲ言ツテ居ルノデ
  アリマス、是ハ僞ハラザル所ノ〓白デアラ
  ウト存ズルノデアリマス、此ノ點ハ大臣ニ
  於テモ左樣ニハツキリ御了承ニナツテ居ル
  ト思フノデアリマス、尙ホ只今御話ノ通リ
  蛹ノ問題デアリマス、只今モ蛹ノ問題ニ
  付テ言及サレ、又先日大臣ハ全養聯ノ席上ニ
  於テ訓示ヲサレマシテ、此ノ蛹ガ非常ニ榮
  養素ガ多イ、而モ此ノ利用ハ今日工業化サ
  レツツアル、斯樣ニ御話ニナツテ居ラレマス、
  其ノ通リト存ジマス、所ガ此ノ蛹ノ値段ト
  云フモノハ今日マデ出テ居ナイ、斯ウ云フ
  コトハ事實デアラウト存ズルノデアリマス、
  左樣ニ榮養素ヲ多數含ミ、又今日工業化サ
  レタナラバ、此ノ蛹ノ値段モ、ヤハリ繭價ニ
  見積ルベキモノデハナイカ、又此ノ蠶蛹ノ
  價値ヲ繭ノ値段ニ反映セシムベキガ道理デ
  ハナイカ、斯樣ニ存ズルノデアリマス、左
  樣ナ觀點カラ申シマスレバ、敢テ私ハ物價
  政策ニ牴觸スルモノデハナイ、今マデ値段
  ヲ付ケテ居ナカツタ蠶蛹ニ値段ヲ付ケテ、
  サウシテ繭ノ値段ヲ一〓ニ決メテモ敢テ是
  ガ價格政策、物價政策ニ對シテ何等牴觸シ
  テ居ナイ、反シテ居ナイ、斯樣ニ思フノデ
  アリマスガ、左樣ナ點ニ付テハ大臣ハ如何
  ニ思ツテ居ラレルノデアリマセウカ、尙ホ
  又先程米價ノ問題ニ付テ、價格ヲ二重制ニ
  シテヤルモノト、或ハ消費者ノ直接負擔ス
  ベキモノト二通リアルト云フヤウニ仰セラ
  レテ居ラレル、是ハ其ノ通リデアリマス、
  所ガ私ハ〓繭ノ今後ノ決メ方ハ二重價格制
  ニ依ラズトモ、唯繭ノ値段ニ依ツテノ値上リ
  ヲ見ルベキモノデハナイカ、ト申シマスル
  ノハ米ト繭ノ値段ニ付キマシテハ、勿論生
  活必需品デアリマスルガ、此ノ二ツニ付テ考
  ヘテ見マスルノニ、ヤハリソコニハ厚薄ガア
  ル、ヤハリ消費者ニ影響スル所モ厚薄ガア
  ルカト存ズルノデアリマス、而モ物價ノ指
  數ノ關係カラ申シマシテモ、私ハ是ハ消費者
  ガ負擔スベキモノデハナイカ、斯樣ニ思フ
  ノデアリマス、今後此ノ値立テヲサレル場
  合ニ於テハ、二重價格制ハ執ラズニ繭ニ依
  ツテノミノ値段ヲ附ケルベキモノデハナイ
  カ、斯樣ニ存ズルノデアリマスガ、ソレ等
  ニ對スル御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 080・井野碩哉

  ○井野國務大臣　蛹ノ價格ガ效用ノ增大ニ
  從ツテ高マツテ來ルニ連レテ之ヲ繭價ニ加
  算スベキデハナイカト云フ御意見デアリマ
  スガ、今日繭ヲ賣ル時ニハ蛹ヲ含メテ賣ツ
  テ居リマス、ダカラ今日ノ繭價ニハ蛹ガ入
  ツテ居ルノデアリマス、其ノ蛹ノ價値ガ上
  ツタ所ハ何處デ取ツテ居ルカト云フト、玆
  ニ製絲ノ經營ガ非常ニ窮窟ニナツテ來テ、
  其ノ利潤モ相當少クナツテ來テ居ル、隨テ
  其ノ第窟ニナツタ經營ヲ蛹ノ價格ガ多少デ
  モ上ツタコトニ依ツテ補ツテ居ルノデアリ
  マス、是ハヤハリ一貫シテ養蠶、製絲、ソ
  レカラ先ノ織物業ト云フヤウナ總テノ經過
  ヲ綜合シテ此ノ價格ヲ決メテ行カナケシバ
  ナラヌト思フノデアリマス、隨テ米ノ如ク
  二重價格制ヲ以テスルカドウカト云フ問題
  ニ付キマシテモ、繭ニ付テハ私ハ二重價格
  制ハ今執ル意思ハ持ツテ居リマセヌ

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• 081・野村嘉久馬

  ○野村委員　只今蠶蛹ノ價格ハ既ニ繭ノ値
  段ニ含マレテ居ル、斯樣ニ申サレルノデア
  リマスガ、私ハ左樣ニ思ツテ居ナイノデア
  リマス、詰リ檢定所ニ於テ檢査致シマスル
  ノハ、何掛ト云フコトニ依ツテ、絲ノ步合
  ニ依ツテ此ノ値段ガ決メラレルト思フノデ
  アリマス、デアリマスカラ、蛹ニ對シテハ
  私ハ値段ヲ附シテ居ナイモノデハナイカト
  斯樣ニ存ズルノデアリマス、尙ホ將來ノ値
  段ノコトニ付テハ只今御話ニ依ツテ、ドウナ
  ルカハツキリハ分ラナイト仰セニナツテ居
  リマスルガ、私ハ生產費ヲ割ルヤウナモノ
  デハイケナイ、斯樣ニ思ツテ居ルノデアリ
  マス、ト申シマスノハ先達テ麥ノ値段ノ
  引上ガゴザイマシタ、ソレヲ見マスト非常
  ニ大幅ノ値上デアリマスケレドモ、ヤハリ
  生產費ヲ割ツテ居ル、帝國農會或ハ政府ニ
  於テ調査サレタ生產費ヲ、大麥モ、小麥モ、
  裸麥モ全部割ツテ居ルヤウデアリマス、斯
  ウ云フヤウナ値段デハ合法的ノモノデハナ
  イノデハナイカ、ソレデ今後產繭ニ對シテ
  モ須ク此ノ生產費ヲ割ラナイヤウニ御考慮
  アルベキモノデアラウト思フノデアリマス、
  此ノ點ニ付テ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=81

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• 082・井野碩哉

  ○井野國務大臣　先程申シマシタ通リ、繭
  價ニ付テ考慮ヲ加ヘルト言ツタ點ハ、生產
  費ヲ十分ニ勘案シテ定メルト云フコトヲ申
  シテ居ルノデアリマス、本年ノ春繭ノ價格
  ヲ決定シマス際ニハ、サウ云フ點ヲ一ツ考
  慮スル積リデアリマス

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• 083・野村嘉久馬

  ○野村委員　私ノ質問ハ濟ミマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=83

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• 084・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ御通〓ニナツテ居
  リマス牧原源一郞君ノ發言ヲ許シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=84

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• 085・牧原源一郎

  ○牧原委員　私ハ今囘ノ改正ニ於キマシ
  テ、依然トシテ水稻ノ冷害、麥ノ雪害等ガ
  保險ノ對象事故ニ擧ゲラレテ居ラナカツタ
  コトニ對シテ不滿ヲ禁ジ得マセヌデ、將來
  之ヲ保險事故ニ取上ゲテ戴クコトノ見透シ
  ニ付テノ大臣ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ツタ
  ノデアリマスガ、此ノ問題ニ付キマシテハ
  先刻松浦委員カラ質疑ガアリマシタノデ、
  大體諒承致シマシタ、唯東北ノ冷害ニ對シ
  テ之ヲ取上ゲルカ否カト云フコトニ付キマ
  シテハ、將來冷害地ニ對シテ保險事業ヲヤ
  ツテ參リマス爲ニ色々ト微妙ナル關係ヲ生
  ジマスノデ、大臣カラ此ノ取扱ニ付テ絕望
  的デナク、可ナリ將來ニ於テ明朗性ヲ持ツタ
  御答辯ヲ得タコトニ對シテ之ヲ諒承致シマ
  シテ、今囘ノ法律改正ニ依ツテ增產目的達
  成ニ拍車ヲ掛ケルコトニ及バズナガラ協力
  致ス次第デアリマス
  次ニ冷害ニ對スル共濟資金ノ支拂ニ對シ
  マシテ、不足ヲ生ジタ時ニ借入金ヲ以テス
  ル場合ニ、借入金ノ二分ノ一ニ對スル利子
  補給ヲシテ戴クコトニナツテ居リマスガ、
  是ハ實際ニ於キマシテハ此ノ補給金ノアリ
  マス部分ガ共濟金ヲ貰フコトニナリマシテ、
  其ノ以外ハ貰ヘナイト云フ結果ニナルノデ
  アリマス、隨テ共濟金ニ關スル此ノ限度ハ
  事實ニ於テハ減殺サレル、斯ウ云フコトニ
  ナルト思フノデアリマス、之ニ對シマシテ
  元々支拂金額ノ全額ヲ補助シテ戴クノデハナ
  クシテ、其ノ利子ノ補給デアリマスカラ、
  之ヲナゼ二分ノ一ト云フヤウナ吝ナコトニ
  限定サレマシタカ、ナゼ全額利子補給ヲ御
  願ヒ出來ナカツタカ、又再保險ノ限度ハ七
  割トナツテ居リマスガ、ナゼサウ云フ數字
  ニ囚ハレタカ、ドウ云フ基礎カラ二分ノ一
  ニナツタノデアリマスカ、果シテ二分ノ一
  ノ補給ニ依ツテ此ノ共濟組合ノ目的ヲ達成
  シテ增產ニ熱ヲ上ゲルコトガ出來ルカト云
  フコトニ付テ御尋ネ致シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=85

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• 086・井野碩哉

  ○井野國務大臣　共濟制度ノ中デ共濟金以
  外ノ點ニ付テ資金ノ融通ヲシマス時ニ國庫
  ガ其ノ利子ノ二分ノ一ノ補助ヲスル、ソレ
  デハ足ラヌカラ全額補助ヲシタラドウカト
  云フ御話デアリマスガ、是モ色々制度ヲ立
  テマス上ニ於テハ財政的ノ問題ガアルノデ
  アリマス、財務當局ト色々交涉致シマス時
  ニ、斯ウ云ツタ點ニ付キマシテモ、十分色
  色ナ事情ヲ話合ヒ、サウシテ此ノ程度ナラ
  バ此ノ仕事ガヤツテ行ケルト云フ見透シヲ
  持チマシタカラ、是デ適切ナリト考ヘテ居
  ルノデアリマス、總テ國庫ノ補助ニ付キマ
  シテ、皆全額補助ヲスレバ一番宜イノデア
  リマスガ、ソコハヤハリ色々ナ經營事情ヲ
  見マシテ、二分ノ一ガ宜イカ、三分ノ一ガ
  宜イカ、各〓其ノ施行ヲ致シマス行政官廳ノ
  責任ニ於テ是ハヤツテ居ルノデアリマス、
  此ノ程度ヲ以テ適當デアルト考ヘテ居ルノ
  デアリマス、又七割ノ限度ニナゼ止メタカ
  ト云フ御話デアリマスガ、是ハ保險ハ總テ
  全額デ保險金額ヲ決メルト云フ場合ハ少イ
  ノデアリマス、色々ノ、保險詐欺トマデハ
  行キマセヌガ-其ノ點ハ一ツ農政局長カ
  ラ話サセマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=86

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• 087・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　七割ヲ再保險ニ致シ
  テ居リマスノハ、御承知ノ通リ從來カラノ制
  度ガ左樣ニナツテ居ルノデアリマス、今囘
  ハ其ノ點ニ特ニ改正ヲ加ヘル必要ヲ考ヘマ
  セヌ結果、從來通リ再保險ハ七割ト云フコ
  トニシテ進行致シテ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=87

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• 088・牧原源一郎

  ○牧原委員　今囘ノ改正ニ當リマシテ、町
  村ニアツテハ實際上此ノ農業保險ヲ普及シ、
  此ノ煩雜ナル改正事務ニ當リマスルモノハ、
  大體農業技術員デアラウト思ヒマスガ、刻
  下緊急ノ食糧增產ノ第一線ニ立ツテ指導ヲ
  シナケレバナラヌ場合ニ於キマシテ、保險
  ノ消極的ナル事務ニ忙殺サレテ、食糧增產
  ノ指導ニ掣肘ヲ受ケ、遺憾ナ場合ヲ生ズルコ
  トハナイカ、之ニ對シマシテハ外ニ此ノ技
  術員ヲ束縛シナイヤウニスル對策、〓究等
  ガ何カゴザイマスカドウカ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=88

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• 089・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農業保險ノ仕事ヲヤツテ
  行キマス上ニ於テ、增產ニ影響ヲ及ボシテ
  ハ是ハ無論イケナイノデアリマスガ、技術
  員ハサウ云フ方面ニ使ハナイデ、特ニ保險
  事務ニ書記ヲ置カセルコトニシテ、ソレニ
  對スル國庫助成ヲ致シマス

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• 090・牧原源一郎

  ○牧原委員　其ノ額ハ豫算ニ於テハ、相當ノ
  額ヲ計上サレテ居ルヤウニ存ズルノデアリ
  マスガ、技術員ヲ煩ハサナクテモ、書記ヲ
  以テ十分ニ此ノ保險業務ニ遺憾ナキヲ期シ
  得ルダケノ十分ナル交付金ガ戴ケルカドウ
  カ、其ノ額等ハ如何ナモノデアリマセウカ

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• 091・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　所謂農會ノ共濟事業
  費ニ付キマシテハ、職員設置ニ付テ大臣カ
  ラ御話ガアツタヤウニ助成ヲ致スノデアリマ
  スガ、今囘ハ總額ニ於キマシテ約七十四万
  圓バカリ增加ヲ計上致シテ居ルノデアリマ
  ス、其ノ內容ト致シマシテハ大體一農會
  當リ書記一人ニ付キマシテ二百圓ノ補助ト
  云フコトデ計畫ヲ致シテ居ルノデアリマス

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• 092・牧原源一郎

  ○牧原委員　農業保險ノ組織ハ、從來郡區
  域ヲ單位トシテ居ツタノデアリマスガ、將
  來農業團體ガ統合サレマシテ、郡區域ノ農
  業團體ガナクナルコトニナリマスガ、將來
  農業團體統合法ガ通過致シマシタ後ニ於キ
  マシテハ、組織單位ハドノ區域ヲ以テ充テ
  ラレル積リデアリマスカ、御伺ヒ致シマス

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• 093・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　團體統合ノ成立致シ
  マシタ後ノ機構ニ付キマシテハ、農業保險ノ
  實際ノ事務ノ運用ハ御承知ノ通リ相當複雜
  デモアリマスノデ、暫クハ現行制度ヲ繼續
  致シマシテ、其ノ團體統合ノ成立後ニ於ケ
  ル情勢ニ應ジテ適當ニ措置ヲ致シタイト考
  ヘテ居ルノデアリマス、マダ如何ナル機構
  ニ依ルヲ適當トスルカ結論ヲ付ケテ居ラナ
  イノデアリマス、兩者ノ睨合ヒニ依リマシ
  テ、適當ナル方法ニ依リタイ、斯樣ニ考ヘ
  テ居ル次第デアリマス

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• 094・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ吉田君

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• 095・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　保險ニ付キマシテハ多ク
  ノ委員カラ色々御尋ネニナツテ居リマシタ
  ノデ、私ハ農業一般ニ付キ、マシテ少シク政
  府ノ御所見ヲ伺ツテ見タイノデアリマス
  農村ヨリノ人口供出ハ最近隨分著シイモ
  ノガアリマス、是ハ現下ノ戰時國策上、軍
  需品生產工場等ヘノ要請ニ依ルモノガ多イ
  ト思ハレマス、洵ニ一面巳ムヲ得ザル結果
  トモ考ヘラレマス、併シナガラ日本ノ人口
  國策カラ考ヘ、又日本ノ皇國農村ノ確立ト
  云フ大キナ國策カラ考へレバ、ヤハリ非常ニ
  重大ナ根本的ナ現象デゴザイマス、多クノ
  靑年壯ヲ失ツテ居ル結果、出生ノ減退ヲ生ジ
  ツツアルト云フノガ實情デナイカト思ヒマ
  ス、是ハ詳シイ數字ハ只今私ハ持ツテ居リ
  マセヌケレドモ、或ル地方ヲ步イテ見マス
  ト、國民學校ノ高等科ノ卒業生四十名ノ內、
  三十八名ハ何レモ都會工場ニ出ルコトニ豫
  定サレテ居ル、殘ル者ハ二人デアルト云ツ
  テ、校長サンガ浩歎シテ居ツタヤウナ實例モ
  アル位デアリマシテ、斯樣ニ靑少年ガ段々出
  テ行ツテシマフト云フコトハ、是ハ放任ス
  ルコトハ出來ナイト思ヒマス、最モ優レタ
  ル人ガ農村カラ失ハレテ行クト云フ此ノ現
  象ニ對シマシテ、併シ又一方靑少年-靑
  少年ト云フヨリモ優レタル體軀、精神ヲ持
  ツテ居リマス農村ノサウ云フ靑少年ヲ要求
  シテ居ル他ノ國家ノ要請トノ調和ノ問題ガ
  非常ニ重大デアリマスガ、農村ノ立場カラ
  シテ是ハドウ解決スベキカ、農林大臣ノ御
  所見ヲ拜聽シタイノデアリマス

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• 096・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農村ニ於ケル出生率ハ、厚
  生省デ此ノ間調ベタモノデハ、サウ減ツ
  テ居ナイヤウニ私共聞イテ居リマス、併シ
  農村カラ靑少年ガ離村シテ行クコトノ問題
  ニ付キマシテモ、是ハ先程大石サンカラ御
  質問ガアリマシテ御答ヘ致シマシタガ、併
  シ此ノ問題ハ極メテ重大デアリマスカラ、
  更ニ申上ゲテモ宜シイノデアリマスガ、結
  局農村ヲシテ靑少年ニ安ンジテ其ノ農業ヲ
  經營セシメテ行クヤウナ、色々ノ體制ヲ各
  方面カラ講ズルコトガ必要デアル、隨テ經
  濟的方面カラモ或ハ精神的方面カラモ、又
  更ニ厚生、文化ノ方面カラモ各般ノ施策ヲ
  講ジマシテ)農村自體ヲ皇國農村トシテ立
  派ナ農村ニ仕上ゲテ行クコトニ依リマシ
  テ、自ラ農村ニ安住スルコトガ最モ適當デ
  アルト云フ氣持ヲ持タセルコトニ依ツテ、
  離村防止ヲ圖ツテ行クコトガ一番根本的ナ
  行キ方デハナイカト云フコトヲ、先程モ申
  上ゲタヤウナ譯デアリマス

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• 097・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　一般的ナ原則的ナ左樣ナ
  御方針ハ洵ニ結構ノコトデアリマスガ、同
  時ニ具體的ニ此ノ農村カラ都市乃至ハ工場
  ヘノ人口供出ノ數量的ナ限界ヲ豫定シテ置
  クト云フコトガ、實際政策ヲ行ヒナサル上
  ニ於テ最モ必要ナコトデアラウト思ヒマス
  ガ、又是ハ既ニ豫定サレテ居ルカノヤウニ
  モ承ツテ居ルノデスガ、若シ其ノ邊ヲ聞ク
  コトガ出來レバ結構ダト思ヒマス

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• 098・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農村人口ノ都市ニ勞務者
  トシテ動イテ參リマス點ニ付キマシテハ
  今日企畫院ヲ中心ニ勞務動員計畫ト云フモ
  ノヲ立テテ居リマシテ、是ダケノ數量ハ農
  村カラ軍需竝ニ生產力擴充方面ニ出スト云
  フ數字的ナ計畫モ出來テ居リマス、又一面
  農村自體ニモ農業生產ヲ確保シマス爲ニ
  一定ノ人口ト云フモノハ必ズ保有シナケレ、
  バナラヌト云フ意味ニ於キマシテ、今日デ
  ハ三反步以上ノ耕作ヲ致シテ居ル者ハ、徵
  用等ノ場合ニ於テモ、農會長ノ許可ガナケ
  レバ出サヌト云フ方針ヲ執ツテ居リマス、
  ソレ等ノ點ハ、所謂數字的ノコトハ物動計
  畫ニ關係致シマスカラ申上ゲラレマセヌ
  ガ、サウ云ツタ方法デ色々ノ統制ヲ致シテ
  居リマス

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• 099・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　只今ノハ生產統制令ノ施
  行規則第三條デアリマシタガ、アレノ實施
  適用ニ依リマシテ、三反歩以上トカ、或八
  一箇年ノ稼働日數何日トカ云フ條件ガ決メ
  ラレテ居ルヤウデアリマスガ、ドウモ實情
  ハ是ガ無視セラレマシテ、徵用ガ實施セラ
  レタ後ニ屢〓問題ヲ起シマシテ、徵用サレ
  タ工場乃至縣廳、乃至ハ其ノ前ノ段階ノ國
  民職業指導所等ニ於キマシテ、是ハ徵用サ
  ルベカラザルモノデハナイカト云フヤウナ
  コトヲ問題ニサレテ居ル、斯ウ云フ事件ガ
  頻々ト起ツテ居ルト云フコトノ御注意ヲ喚
  起シテ置キタイノデアリマス、是ハヤハリ
  何ト申シマシテモ、工場乃至ハ軍需生產施
  設ノ方面ノ牽引力ガ、國家機關乃至ハサウ
  云ツタ色々ノ方面ヲ通ジマシテ强イト思ヒ
  マスノデ、農村ノ村長ナリ、農會長ナリト
  云ツタ方面、ソレノ方ガ弱イト思フ、餘程
  是ハ農村行政ノ本來ノ立場ニ立ツテ强ク御
  指導下サイマセヌト、如何カト思ハレマス
  ノトモウ一ツ私今後懸念シテ居リマスコ
  トハ、別ノ委員會デ今審議中ノ戰時行政特
  例法案、戰時行政職權特例案ガ實施セラレ
  ル曉ニハ、サウ云ツタコトガ事實上排除セ
  ラレテ、軍需重點物資ノ生產ニ向ケテ農村
  カラ無理ヤリニ勞務者ガ動員サレテ行クト
  云フ結果ニナリハシナイカト思フノデアリ
  マスガ、閣僚トシテ、省ノ大臣トシテノ農
  林大臣ハサウ云フ場合ニ於キマシテモ、ヤ
  ハリ皇國ノ基本、大國策デアル農村ノ食糧
  增產竝ニ人口國策ノ重大デアル使命ニ顧ミ
  ラレマシテ、大體從來通リノ御方針ヲ堅持
  シテ行ツテ下サルト考ヘマスガ、如何デゴ
  ザイマセウカ

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• 100・井野碩哉

  ○井野國務大臣　大體ニ於キマシテ御說ノ
  通リノ氣持デ進ンデ參リタイト思ツテ居リ
  マス、唯今日ノ戰爭ニ勝チマス爲ニハ、是
  ハ農村ダケノコトヲ考ヘテ居ラレナイ次第
  デゴザイマス、隨テ一方ニ勞働人員等ニ付
  キマシテモ、非常ニ已ムヲ得ナイ場合ニハ
  一時的ニ農村カラ或ル數ヲ貸スト云フコト
  モアリ得ルト思ヒマス、其ノ時ハ其ノ時ニ
  應ジマシテ、無論今御話ノヤウナ氣持ヲ十
  分持チツツ、私トシテハ善處シテ參リタイ
  ト思ヒマス

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• 101・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　ソレカラ既ニ是ハ御答ヘ
  下サツタ內容ニナルカモ知レマセヌガ、サウ
  デナケレバ御答ヘヲ賜ハリタイ、農村人口
  國策ノ一ツノ施策トシマシテ、今後軍需物
  資ノ生產ニ付キマシテ幾多ノ工場ガ新設サ
  レルト思ヒマスルガ、其ノ工場ハ一都市乃
  至ハ一地方ニ集結サレルト云フヨリモ、農村
  ヘ引ツ張ツテ行ク、分散サスト云フヤウニ
  出來ルダケ致サレマシタナラバ、農村ハ農
  業ヲヤツテ且ツサウ云フ工場ニ働ケルト云
  フコトニナリマシテ、農業ヲヤリツツ工場
  ニ通フト云フ風ニナツテ、是ハ都市ヘ農家
  ヲ取ラレルト云フコトガ餘程助カルコトニ
  ナリハシナイカト思ヒマスルノデ、一面產業
  國土計畫ニモ入ルカト思ヒマスケレドモ、
  此ノ點モヤハリ重大ナ問題ト思ヒマスルノ
  デ、閣議乃至ハ色々ナ機會ニサウ云ツタコ
  トニ付テノ御協議モアルベキト思ハレマス
  ノデ、相成ルベクハ可能ナ範圍デ出來ルダ
  ケサウ云ツタ方向ヘ工場ナンカモ誘引スベ
  キデハナイカト思フノデアリマス、是ハ他
  ニ色々產業條件ナド伴ヒマスルカラ、一〓ニ
  言フ譯ニ參リマスマイケレドモ、是ハ確カ
  ニ空襲等ヲ避ケル關係カラ見マシテモ、日
  本ニ於テ缺陷ノ一ツトシテ指摘サレツツア
  ル問題デモアリマスガ、人口國策ノ一對策
  トシテ考ヘマシテモ打ツベキ一ツノ手デハ
  ナイカト思ヒマスルノデ、御所見ヲ承ツテ
  置ケレバ大變結構ダト思ヒマス

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• 102・井野碩哉

  ○井野國務大臣　工場ノ都市集中ヲ避ケマ
  シテ、成ベク地方ニ分散スルト云フ方針
  ハ今日政府デモ採ツテ居リマス、大體サ
  ウ云フ方針デ今進ンデ居リマスガ、唯之ヲ
  農村ニ如何ニ分散セシムルカト云フ問題ニ
  ナリマスト、又徒ラニ分散シテ美田ヲ潰ス
  ト云フコトニナリマシテモ困ル譯デアリマ
  スカラ、ソレ等ノ點ニ付キマシテハ、實際
  ノ場合ニ卽應シマシテ適切ナル指導ヲ致シ
  テ參リタイト思ヒマス

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• 103・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　一寸美田ヲ潰スト云フ問
  題ニ關聯致シマスノデ、此ノ際御尋ネシテ
  置キタイノデアリマスガ、最近例ヘバ住宅營
  團テドガ、昨年モ二、三件サウ云フ問題ガアリ
  マシテ、住宅營團ニ私自身ガ交涉シタ例ガアル
  ノデアリマスルガ、左程美田熟田ヲ潰サナク
  テモ宜カリサウダト思フニ拘ハラズ、ソレガ
  幾ラカ工場ニ近イト云フノデ、ドン〓〓潰
  シテ行ツタ例ガアリ、而モ潰シテ居リナガ
  ラ、一年モ遊バシテ尙ホ住宅ノ建築ヲシナ
  イト云フ例ガ兵庫縣ニ相當アルノデアリマ
  ス、斯ウ云ツタコトハ非常ニ農家ニ對シテサ
  ウ云フ住宅營團ノ國家性トカ、公共性トカ云
  フコトヲ疑ハシメツツアルノデゴザイマシ
  テ、是ハヤハリ何カノ機會ニサウ云ツタコ
  トニ付テモ一ツ御注意ヲ喚起スルト言ヒマ
  スカ、田ヲ保護スルト云フコトニ付テ何等
  カノ方法ヲ執ツテ置イテ下サルコトガ出來
  タラ大變結構ダト思ヒマス、一寸是ハ希望ダ
  ケ申上ゲテ置キマス
  ソレカラ此ノ點ハ、團體法ノ委員會或ハ
  豫算委員會ナドデ御答へ下スツタカト思フ
  ノデアリマスガ、ドウモ私ノ解決出來ナイ
  問題ガ頭ニアリマスノデ、御〓ヘヲ願ヘマシ
  タラト思ヒマスノデ、出來マシタラ一ツ御
  答辯ヲ賜ハリタイノデアリマス
  自作農創定ノ問題デアリマスガ、ドウモ
  統計ニ依リマスト-統計ノ內容ハ能ク分
  リマセヌデスガ、自作農ハ漸減致シテ居リ
  マス、昭和十年ノ自作農ガ百七十三万二
  千餘戶、十四年ガ百六十九万九千餘戶、
  サウスルト三万二千五百餘戶ガ玆ニ
  減少シテ居ルコトニナツテ居リマス、ソ
  コデ小作モ減少シテ居リマスシ、自小作
  モ減少シテ居リマス、マア一般農民ガ減
  wa少シテ居ルト云フコトニナリマス、此ノ
  點ハ農民ガ滿洲へ行ツタコトニ原因シテ居
  ルカ、都會ヘ行ツタコトニ原因シテ居ルカ、
  何ニ原因シテ居ルカ、私ハ只今詳シイ資料
  ヲ持チ合シテ居リマセヌガ、何レニ致シマ
  シテモ、私ノ解ケナイ點ハ自作農創定ニ對
  スル國家ノ根本御方針ト、其ノ實現ニ對ス
  ル可能性ト言ヒマスルカ、政治的、經濟的
  可能性ニ對スル政府ノ御所見、斯ウ云フ點
  ナノデアリマス、此ノ數字モ政府ニ資料ヲ
  要求シタノデアリマスガ、マダ私ハ戴イテ
  居リマセヌ、ケレドモ來年ノ豫算ニハ自作
  農創定ノ經費トシテ二百四十四万圓カ要求
  セラレテ居ルヤウニゴザイマス、是ハ間違
  ツテ居リマシタラ御訂正ヲ賜ハリタイノデ
  アリマス、ソコデ問題ニナリマスノハ、
  體皇國ノ基本タルベキ農家ノ建設ハ自作的
  農家、適正ノ大キサノ農家デアツテ、安心
  シテ自活シ得ル農家デアルト云フコトハ
  是ハ今日ハ定論デアルト思ヒマス、ソコデ
  之ヲ創設スルニ付キマシテ、年來政府ニ於
  カレテモ努力ナサツテ居リ、又各方面ノ自
  作農創設ニ付テノ熱意モ段々高マツテ來テ
  居ルノデアリマスガ、偖テ實現ノ方策如何、
  斯ウ云フコトニナリマスルト中々至難ナモ
  ノデアルラシイ、何ガ原因デアラウカト見
  マスルト、ヤハリ是ハ土地買收ノ一點ニ引
  掛カルノデハナイダラウカ、今日都會地附
  近ニ於ケル實際ノ價格ハ、統制令ニ依ル價
  格ヨリ遙カニ高イ、隨テ此ノ統制令ニ依ル
  價格デ賣ル地主ハ容易ニアリマセヌ、ソコ
  デ事實上賣買ニ同意スルト云フコトハ容易
  ニナサウデゴザイマス、山間僻地ノ非常
  ニ惡イ農地ハ別ト致シマシテ、主ナ原因ハ
  其ノ點ニアルノデハナイダラウカ、併シナ
  ガラ本會議ニ於キマシテモ農相ガ御答辯ニ
  ナツテ居リマシタヤウニ、今日ノ時局下ニ
  於キマシテ、强制買上ゲノヤウナ荒手段ヲ
  執ツテ、國內相剋ト申シマスルカ、ニッフ
  秩序ノ混亂ヲ來スヤウナコトハ決シテ望マ
  シイコトデバナイト云フ御趣旨、是モ洵ニ
  御尤モナ次第デアリマス、サウシテ地主ガ
  容易ニ同意シナイト云フノモ實情デアル、
  而モ自作農ノ創設ト云フコトハ農村ニ於ケ
  ル基本的ナ重大國策トシテ茲ニ段々ト熱望
  サレテ居ル、此ノ三ツノ事實ヲ前提ニシマ
  シテ、一體ドウスレバ宜イノカト云フコト
  デアルノデゴザイマスガ、洵ニ解ケナイ問
  題トシテ私自身モ解決案ヲ頭ヘ描クノニ苦
  慮シテ居ル一人デアルノデアリマス、他ノ
  方ノ御質問ニ依ツテ御答辯ヲ戴イタカモ知
  レマセヌガ、尙ホ重ネテ此處デ御答辯願ヘ
  レバ結構ニ存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=103

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• 104・井野碩哉

  ○井野國務大臣　自作農創設ニ付キマシテ
  只今御述ベニナリマシタ三點ハ、洵ニ是ガ
  實行ノ上ニヤハリ大キナ問題デアリマス、
  一切ヲ國家ガ買上ゲテサウシテ直グ自作農
  創定ヲスルト云フコトニナリマスト、是ハ
  非常ニ早ク出來マスガ、ソレニハ只今申シ
  タ通リノ色々ノ難點ガアルノデアリマス、
  又任意ノ方法ニ依ツテ創定シヨウトシマス
  ト、地主ガ中々農地ノ價格ノ點カラ手放サ
  ナイト云フ點ニモ大キナ難點ガアリマス、
  今マデ政府トシマシテモ自作農創設ハ多年
  奬勵モ致シ、努力モ致シテ參ツタノデアリ
  マスケレドモ、中々思フヤウナ成績ガ擧ラ
  ナイ、其ノ擧ラナイ原因ヲ色々調ベテ見マ
  スト、一番大キナ點ハヤハリ資金ヲ流ス上
  ニ於キマシテ、預金部或ハ簡易保險積立金
  カラ府縣ヲ通シ、市町村ヲ通シテ、個々ノ
  自作農創定者ニ融資スルト云フ行キ方ガ、
  其ノ手續ニ於キマシテ、或ハ町村債ヲ起サ
  ナケレバナラヌ、或ハ縣債ヲ起サナケレバ
  ナラヌト云フ爲ニ非常ニ妨ゲラレテ居ルノ
  デアリマス、一面自作農創定ヲシタイト云
  フ希望ハ、農林省ニ集マツテ參リマスル數
  字ニ於キマシテモ年々相當ニ多イノデアリマス
  ケレドモ、其ノ希望ニ應ジ得ナイ大キナ支
  障ガソコニ存スルノガ分リマシタノデ、政府
  トシマシテモ今囘其ノ點ヲ一ツ直サウト云フノ
  デ、今囘ハ預金部資金ヲ一本建トシマシテ、
  サウシテ產業組合中央金庫ナリ、或ハ勸業
  銀行ト云フ金融機關ヲ通ジテ、自作農創定
  者ニ資金ノ融通ヲ致ス、サウシテ利子補給
  ヲシテ、創定ニ導イテ行クト云フコトニ致
  シタノデアリマス、併シ此ノ手續ノ改善ダ
  ケデナシニ、地主ノ農地價格ノ問題ニ付キ
  マシテモ色々御意見モアリ、又私共モ其ノ點
  ニ付テ相當ノ問題ガアルト考ヘテ居リマス
  ガ、此ノ點ハ今農地價格等統制令ニ依リマ
  シテ一應ノ基準ガ出來テ居リマス、其ノ基
  準モ亦現在ノ法制ニ於キマシテモ農地改良、
  其ノ他ノ色々ノ工作ヲ施シタ場合ノ各個々
  ノ地主ニ對スル價格ヲ改訂スル途モ開イテ
  居リマス、又地方的ニ其ノ價格ガ色々ノ事
  情デ不適當ナ場合ニソレヲ直シ得ル途モア
  リマシテ、是等ハ地方長官、或ハ農林大臣
  ノ許可ニ依リマシテ出來ル途ガ開ケテ居リ
  マス、ソレ等ノ運用ヲ一面ニ於テ致シ、
  面ニハ又地主ニ向ヒマシテ今日ノ國家事情
  ヲ能ク說キマシテ、サウシテ農地ノ解放ト
  申シマスカ、所謂自作農創定者ニ農地ヲ賣
  却スルト云フ氣分ヲ釀成シテ參リタイ、又
  一面今日色々各方面ノ事情ヲ聽イテ見マシ
  テモ相當ニ地主階級ノ方々モ政府ガシツカ
  リ肚サヘ決メテ吳レレバ自分等ハソレニ應
  ズル用意ガアルト云フ態勢モ見エテ居リマ
  スノデ、サウ云ツタ方向ニ依リマシテ自作
  農創定ヲ實行シテ參リタイ、斯ウ云フ風ニ
  考ヘテ居ル譯デアリマス

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• 105・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　今年ノ豫算二百四十万圓
  トカ云フモノハ何ニ御使ヒニナリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=105

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• 106・石井英之助

  ○石井(英)政府委員　十八年度ノ豫算ニ計
  上致シテ居リマスル自作農創設ノ資金ニ付
  テ申上ゲマスガ、總額ニ於テ約二百二十万
  圓ト云フモノヲ計上致シテ居ルノデアリマ
  ス、是ハ第一ノ項目ガ自作農創設資金ヲ只
  今大臣カラ御話ガアリマシタヤウニ、政府
  資金一本デ流スト云フ場合ニ、末端ニ於ケ
  ル融通金利ハ三分二厘デ出シタイト云フコ
  トニ考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ場合政
  府資金ハ大體三分五厘デ出ルコトニナツテ
  居リマスノデ、其ノ間ニ三厘ノ利子補給ヲ
  要スルコトニナリマス、ソレカラ此ノ資金
  融通ノ機構ハ政府資金ヲ本ニ致シマシテ、
  之ヲ現存ノ勸銀ナリ、產業組合中央金庫ナ
  リノ機關ヲ通ジテ創設資金ヲ出スコトニ今
  般機構ヲ改正致シマスノデ、是等金融機關
  ノ取扱手數料ヲ補給致サナケレバナラヌト
  云フコトニナリマスト、之ニ對シテ大體三
  厘、斯ウ押ヘマシテ、此ノ利子補給ノ金額ガ
  出テ居ルノデアリマス、ソレ以外ノモノハ
  此ノ自作農創設事業ノ進展ニ必要ナル農地
  委員會ノ活動促進ノ費用、或ハ新規開發地ニ
  對シテ自作農創設ヲ實行致シタイト考ヘテ居
  リマスガ、是ハ既墾地ニ於ケル自作農創設
  トハ非常ニ趣キヲ異ニ致シテ居リマスノデ、
  之ニ對シテハ殊ニ手厚イ助成ヲシナケレ
  バナラヌ、新規開發地ニ對シテハ、特別ノ
  助成ヲ講ズル、斯ウ云フコトガ其ノ內容ニ
  ナツテ居ルノデアリマス

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• 107・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　大臣ニ尙ホ一ツ御尋ネシ
  テ置キタイノデスガ、今ノ自作農創定ニ付
  キマシテ、是ハ私ノ私見ナノデスガ、斯ウ
  云フモノハ不可能ナモノデアリマセウカ、
  自作農促進ノ一策ト致シマシテ、若シ地主
  ガ官若クハ公共或ハ軍需工場等ヘ已ムヲ得
  ズ賣ルヤウナ場合以外ニ何處カニ賣買スル
  ヤウナ時、小作人ニ先買ノ權利デモ與ヘル、
  是ハ今日法律上何モナイヤウニ思フノデス
  ガ、何カサウ云フヤウナコトヲ制定スル、
  先買ノ權利ト云フヤウナコトニデモシテ置
  ケバ是ハ別ニ强制的デハアリマセヌカラ如
  何カト思フノデスガ、是ハ一應申上ゲルダ
  ケニ止メテ置イテ結構デアリマス
  ソレカラ耕地ノ交換分合ノ問題デゴザイ
  マスガ、是ハ全國的ニ何カ實施スルヤウナ
  方法ハナイモノデゴザイマセウカ、補助ヲ
  スルトカ、何トカシテ全國的ニ非常ニ促進
  スルト云フヤウナ方法ハナイモノデゴザイ
  マセウカ、是ハ非常ニ困難ナ問題デアルト
  ハ存ジテ居リマスノデスガ、私極ク最近岩
  手縣ニ參リマシテ或ル村ヲ見テ參リマシテ
  特ニ感ジテ歸ツテ來マシタノデスガ、特上
  政府ガ大イニ援助ヲナサツテ全國的ニ實施
  スルヤウナ方途ハナイモノデセウカ、其ノ
  點ヲ一ツ伺ヒマス

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• 108・井野碩哉

  ○井野國務大臣　地主ガ土地ヲ離ス時ニ小
  作人ニ先賣セシムルヤウナ何カ法制上ノ考
  慮ハナイカト云フコトデアリマスガ、此ノ
  點ハ農地管理法ヲ作リマス時ニ色々問題ニ
  ナツタ點デアリマス、併シ權利トシテ之ヲ
  認メルヨリハ寧ロ農會ノ方ニ通知スル通
  知義務ヲ置キマシテ、サウシテ農會等ノ斡旋
  ニ依リマシテ成ルベク小作人ニ持タセルト
  云フヤウナ手段ヲ執リツツアルノデアリマ
  ス、ヤハリ現在デモ此ノ程度ノ方法ニ於テ
  其ノ宜シキヲ得レバ自作農創定ニハ役立ツ
  ノデハナイカト思ツテ居リマス、ソレカラ
  農地ノ交換ノ分合ノ問題ハ、是ハ所謂皇國
  農村確立ノ上ニ非常ニ大キナ問題デアリマ
  スノデ、先ヅ取敢ヘズ明年度ニ於テハ三百
  町村ニ付テ色々農村自體ノ事情ニ卽シテ經
  營ノ合理化ヲ圖ラス爲ノ手段ニヤハリ耕地
  ノ交換分合モ入ツテ居リマス、之ヲ全國一
  齊ニヤツタラドウカト云フコトデアリマス
  ガ、一齊ニヤツタラ恐ラク農林省モ手ニ負
  ヘナクナツテシマフノヂヤナイカト云フム
  ヅカシイ問題ニナリマスカラ、三百町村位
  ヲ試シトシテ始メテ見ルコトガ一番適當デ
  ハナイカト思ツテ居リマス

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• 109・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　私ガ思ヒマスノニ、多ク
  識者ノ言フ所デアリマスルガ、日本ノ農業
  乃至ハ日本ノ各產業ガ、其ノ能率ノ割合ニ
  實ニ人ノ手ガ込ンデ居ル、殊ニ農業ハ其ノ
  代表的ナモノデアルト言ハレマスガ、是ハ色
  色ト歷史モアリ、又單位面積ノ生產量ガ大
  キイト云フヤウナ特殊ナ事情モアリハ致シ
  マスケレドモ、併シ何ト考ヘマシテモ、今
  後一億ノ國民カラ、「ドイツ」ガ八千万ノ國民
  カラ一千万ノ國民ヲ動員シテ居ルト假ニ致
  シマスレバ、千數百万人ヲ動員シテ世界ノ
  强國トシテ立ツテ行カナケレバナラヌコト
  ニナリマセウガ、然ル時ニ一人デ二人分シ
  カ農業生產ガ出來ナイヤウナ農業ヲ何時マ
  デモ續ケテ行クト云フコトガ、ハ今後可能デ
  アラウカドウカト云フヤウナコトモ、實ハ
  考ヘテ見ナケレバナラナイデアラウト思フ
  ノデアリマス、サウ云フコトヲズツト續ケ
  テ行ク時ニハ非常ニソレハ立派ナ體格ヲ
  持ツタ、精神ヲ持ツタ、思想ヲ持ツタ國民
  ヲ養ツテ行クコトハ出來マスケレドモ、動
  員ノ率ガ非常ニ世界的ノ水準カラ低下シテ
  居ルト云フコトハ、否メナイ事實デゴザイ
  マス、色々ナコトヲ考ヘマスト、何モ戰爭
  ダケガ目的デハアリマセヌケレドモ、何レニ
  シテモ農村ノ生產ニハモツト人手ヲ要シナ
  イト云フ工夫ヲシテ、言ヒ換ヘマスト、世
  界ノ最高ノ記錄ヲ持ツタ科學ヲ利用致シマ
  シテ日本ノ農業ヲ營ム、然ル所ニ立派ナ日
  本精神ガ養ハレテ行ク、皇國ノ姿ガ實現サ
  レテ行クト云フノガ、是ガ發展性ノアル皇
  國ノ農業デナケレバナラヌト、斯ウ抽象的
  ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、サウ云フ觀點
  ニ於キマシテ何トカ日本ノ農業ヲモツト技
  術的ニ向上セシムルコトニ付テ、政府ハ此
  ノ機會ニ劃期的ナ國策ヲ樹立ナサルト云フ
  コトニ一段ト力ヲ御入ナサル必要ガアルノ
  デハナイダラウカ、所謂農業機械化ト云フ
  言葉モ使ハレテ居リマスルガ、色々ノ人ノ
  機械化ノ議論ヲ拜聽致シマシテモ、從來ノ
  議論デハドウモピント來ナイノデアリマス、
  サウ云フコトモ彼レモ此モ引括メテ全體ト
  シテ技術ヲ向上シテ、何モ「アメリカ」ノ眞似
  ヲスルト云フ意味デハゴザイマセヌ、日本
  ノ土地ニ、日本ノ氣候ニ、日本ノ農業ト致
  シマシテ、モツト手ヲ少ク致シマシテ、農
  業ノ生產ヲ高メテ行クト云フコトニ特段ノ
  工夫ヲスル途ガアルノデハナイノデアラウ
  カ、斯ウ云フコトヲ考ヘマシテ、技術トカ
  機械トカ云フコトニ付テ、農事試驗場モア
  リ、色々致シハ致シマスケレドモ、特ニ國策
  トシテ採リ上ゲテ行クベキデナイカト思ヒ
  マスノデ、サウ云フ點ニ付テ農林大臣ノ御
  所見ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス

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• 110・井野碩哉

  ○井野國務大臣　農業技術ノ向上ヲ圖ツテ
  參リマスコトハ勿論必要デアリマスケレド
  モ、今御話ノヤウナ觀點デ進ンデ參リマス
  ト、却テ御說ト違ツタ方向ニ進ミハシナイ
  カ、ト申シマスノハ今日農業ノ機械化ト云フ
  問題ト、農村ノ一定人口ノ保有ト云フ問題
  トハ、若シモ其ノ方向ヲ誤ルト矛盾ヲ來シ
  テシマフノデアリマス、卽チ農村ガ立派ニ
  技術的ニ機械化サレテ來テ、農村ノ勞力
  ト云フモノハ殆ド要ラナイト云フコトニ
  ナツテ參リマスルト、農村ノ人口ヲ一定
  量保有スルト云フコトガナクナツテ來マ
  シテ、農業ノ機械化ガ行ハレ營農主義ニ
  走ツタ農村經營ニナツテシマフノデアリ
  マス、ヤハリ今日イザト云フ時ニ、オ國
  ノ爲ニオ役ニ立ツ人々竝ニ今後ノ大東亞
  共榮圈建設ノ爲ニ、指導者トシテ大和民
  族ノ數ナリ、質ノ向上ト云フコトヲ考ヘテ
  行キマス上ニ於テ、農村ガ大事ダト申シマ
  スノモ、平素カラサウ云フ人々ヲ農村ニ養
  ツテ置ケル農業經營ト云フモノヲ考ヘテ行
  カナケレバナラヌト云フコトニナリマス、
  隨テ其ノ兩者ヲ睨合ハセテ、適切ナル農業
  經營ヲ考ヘテ行クコトガ所謂合理的經營デ
  アリマシテ、其ノ點ガ一番指導ノ上ニ於テ
  モ餘程考慮シテ行カナケレバナラヌ點デ、
  行キ過ギマスルト所謂「アメリカ」式ノ大陸
  農業ニ墮シテシマヒマシテ、農村勞力ノ保
  有ト大キナ矛盾ヲ生ジテ參リマス、サウ云
  フ點ヲ十分勘案シテ指導シテ參リタイト思
  ツテ居リマス

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• 111・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　只今ノ點ハ私ノ言葉ガ足
  リナカツタノデアリマシテ、私自身モ機械
  化ニ依ツテ起ル弊害、經營第一ト云フコト
  ニ依ツテ起ル、例ヘバ近來ノ產業工場ナド
  ノ持ツテ居ル精神的ナ缺陷、サウ云フ弊害
  ガ農村ニ來ルコトヲ惧レハ致シマスガ、併
  シ同時ニ科學ノ進步等モゴザイマスルノデ
  サウ云ツタコトガ適當ニ農村ニ採リ入レラ
  レルコトニ付テ日夜工夫スルコトガ、同時
  ニ日本ノ農村ニモナケレバナラヌト云フ一
  面モヤハリ考ヘテ行カナケレバナラヌ、此
  ノ點ヲ特ニ申上ゲタヤウナ次第デアツタノ
  デゴザイマス、ソレカラ大體本省ノ御方針
  ダケヲ伺ツテ置ケバ宜シイノデアリマスガ、
  今年ノ外米ノ入ツテ來ナイコト等々カラ考
  ヘマシテ、政府ニハ米ノ買上價格ヲ幾ラカ
  引上ゲルト云フヤウナ御意思ハ今ノ所ハナ
  イノデアリマスカ、其ノ點ハ他ノ會ニ於テ
  御答辯ガアリマシタナラバ、モウ此ノ席デ
  ハ結構デス

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• 112・井野碩哉

  ○井野國務大臣　其ノ點ハ屢〓、申上ゲテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=112

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• 113・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　今ノ所ハサウ云フ御意思
  ハナイノデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=113

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• 114・井野碩哉

  ○井野國務大臣　其ノ點ハ簡單ニ申上ゲル
  ト却テ誤解ガアリマスカラ、速記錄ヲ御覽
  ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 115・吉田賢一

  ○吉田(賢)委員　私ノ質問ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=115

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• 116・池田秀雄

  ○池田委員長　是デ御通〓ノ質問者ハ全部
  發言ヲサレマシタガ、此ノ際御諮リヲ致シ
  テ置キマス、明日曜ハ休ミニ致シマシテ、月
  曜ハ午後一時カラ會議ヲ開キ、サウシテ逐
  條ノ審議ヲ致シタラ如何カト思ヒマスガ、
  如何デゴザイマセウ、其ノ後又農業保險法
  中改正法律案外二件ニ付テ取扱等ヲ御協議
  致スコトニ致シマシテ、月曜ノ午後一時カ
  ラ逐條審議ヲスルト云フコトニ致シテ如何
  デゴザイマセウカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

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• 117・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレカラ政府委員ノ方ハ、
  主管局長ト課長サン位オイデ下スツタラ宜
  クハナイカ、必要ナ場合ハ又大臣ヤ次官ニ
  モオイデヲ願フカモ知レヌガ、主管局長ト
  主管課長位デ如何カト思ヒマスガ、是ハ如
  何デセウカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=117

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• 118・池田秀雄

  ○池田委員長　ソレデハ本日ハ是デ散會致
  シマス
  午後四時四十二分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008112912X00519430206&spkNum=118

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