1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月十三日(土曜日)
午後一時七分開議
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議事日程 第十號
昭和十八年二月十三日
午後一時開議
第一 昭和十八年度歳入歳出總豫算案竝昭和十八年度各特別會計歳入歳出豫算案
第二 豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
第三 (第一號)昭和十七年度歳入歳出總豫算追加案
第四 (特第一號)昭和十七年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第五 (第一號)昭和十八年度歳入歳出總豫算追加案
第六 (特第一號)昭和十八年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
第七 (追第一號)豫算外國庫の負擔となるべき契約を爲すを要する件
第八 特殊財産資金豫算案
第九 (第二號)昭和十八年度歳入歳出總豫算追加案
第十 (特第二號)昭和十八年度各特別會計歳入歳出豫算追加案
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
圖書館の戰時體制確立に關する建議案
提出者 金井正夫君
(以上二月十二日提出)
一昨十二日辭任したる常任委員左の如し
第五部選出決算委員 中川重春君
第八部選出建議委員 伊藤東一郎君
一昨十二日議長に於て選定したる委員左の如し
兵役法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)外三件委員
荒川眞郷君 猪野毛利榮君
小山田義孝君 大島高精君
金子定一君 唐橋重政君
黒田巖君 田嶋榮次郎君
高梨乙松君 中井川浩君
長沼權一君 西村茂生君
林正男君 堀内一雄君
松本治一郎君 宮崎一君
山口喜久一郎君 吉田貞次郎君
商工經濟會法案(政府提出、貴族院送付)外二件委員
今井嘉幸君 井阪豐光君
内池久五郎君 宇田耕一君
卯尾田毅太郎君 小高長三郎君
大倉三郎君 岡本傳之助君
加藤鐐五郎君 川上胤三君
川島正次郎君 木村正義君
九鬼紋七君 楠美省吾君
小坂武雄君 河野密君
坂本宗太郎君 田中和一郎君
田中亮一君 高岡大輔君
高野孫左衞門君 高畠龜太郎君
瀧澤七郎君 土屋寛君
鶴惣市君 永田良吉君
船田中君 本多鋼治君
星一君 星島二郎君
松尾三藏君 前田善治君
牧野良三君 三木與吉郎君
南鐵太郎君 安田桑次君
一昨十二日に於ける特別委員の異動左の如し
戰時行政特例法案(政府提出)外二件委員
辭任河上哲太君 補闕白川久雄君
石油專賣法案(政府提出)外二件委員
辭任野田武夫君 補闕松尾三藏君
辭任南雲正朔君 補闕松村光三君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=0
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001・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一乃至第十ハ一括議題トナスニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=1
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002・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第一、昭和十八年度歲入歳出總豫
算案竝昭和十八年度各特別會計歲入歲出豫
算案、日程第二、豫算外國庫ノ負擔トナル
ベキ契約ヲ爲スヲ要スル件、日程第三、第
一號)昭和十七年度歲入歲出總豫算追加案
日程第四、(特第一號)昭和十七年度各特別
會計歲入歲出豫算追加案、日程第五、(金)
號)昭和十八年度歲入歲出總豫算追加案、日
程第六、(特第一號)昭和十八年度各特別會
計歲入歲出豫算追加案、日程第七(追第一
號豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件、日程第八、特殊財產資金豫
算案、日程第九、(第二號)昭和十八年度歲
入歲出總豫算追加案、日程第十(特第二號)
昭和十八年度各特別會計歲入歲出豫算追加
案、右十案ヲ一括シテ議題ト致シマス、豫
算委員長ノ報〓ヲ求メマス-豫算委員長
金光庸夫君
第昭和十八年度歲入歲出總豫算案
竝昭和十八年度各特別會計歲入歲出
豫算案
第二豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契
約ヲ爲スヲ要スル件
第三(第一號)昭和十七年度歲入歲出
總豫算追加案
第四(特第一號)昭和十七年度各特別
會計歲入歲出總豫算追加案
第五(第一號)昭和十八年度歲入歲出
總豫算追加案
第六(特第一號)昭和十八年度各特別
會計歲入歲出豫算追加案
第七(追第一號)豫算外國庫ノ負擔ト
ナルベキ契約ヲ爲スヲ要スル件
第八特殊財產資金豫算案
第九(第二號)昭和十八年度歲入歲出
總豫算追加案
第十(特第二號)昭和十八年度各特別
會計歲入歲出豫算追加案
報〓書
一昭和十八年度歲入歲出總豫算案竝昭和
十八年度各特別會計歲入歲出豫算案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一豫算外國庫ノ負擔トナルベキ契約ヲ爲
スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一(第一號)昭和十七年度歲入歲出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
-(特第一號)昭和十七年度各特別會計歲
入歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一(第一號)昭和十八年度歲入歲出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一(特第一號)昭和十八年度各特別會計歲
入歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一(追第一號)豫算外國庫ノ負擔トナルベ
キ契約ヲ爲スヲ要スル件
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一特殊財產資金豫算案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一(第二號)昭和十八年度歲入歳出總豫算
追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一(特第二號)昭和十八年度各特別會計歲
入歲出豫算追加案
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十二日
豫算委員長金光庸夫
衆議院議長岡田忠彥殿
〔金光庸夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=2
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003・金光庸夫
○金光庸夫君 只今議題トナリマシタ昭和
十八年度歲入歲出總豫算案竝昭和十八年度
各特別會計歲入歲出豫算案外九件ニ付キマ
シテ、豫算委員會ニ於ケル審議ノ經過竝ニ
結果ヲ御報告致シマス
先ヅ昭和十七年度歲入歲出總豫算追加第
一號ニ計上致シテ居リマスル金額ハ歲入一
億餘万圓、歲出四億餘万圓デアリマシテ、
差引三億餘万圓ノ歲出超過トナツテ居リ
マスガ、是ハ昭和十七年度豫算實行上ノ歲
入超過額ノ中ヨリ、充當スル計畫トナツテ
居リマス、而シテ歲出追加額ノ中ニハ、災
害土木費補助ノ增加一千餘万圓、支那棉花
輸入價格調査費補助三千餘万圓、鐵鋼原料
補償金八千餘万圓等ガ含マレテ居リマス
次ニ昭和十八年度歲入歲出總豫算ニ付テ、
其ノ全貌ヲ明カナラシムル爲メ、本豫算竝ニ
追加豫算第一號及ビ第一一號ヲ通計致シマシ
テ、其ノ大要ヲ玆ニ申上ゲルコトト致シマス
昭和十八年度歲入歲出總豫算ノ本豫算額
ニ、昭和十八年度歲入歲出總豫算追加第一
號及ビ第二號ノ金額ヲ加ヘマスルト、般
會計豫算ノ總額ハ、歲入歲出共ニ百三十二
億餘万圓トナリ、之ヲ前年度豫算額ニ比較
致シマスルト、歲入ニ於テ四十二億餘万圓、
歲出ニ於テ三十九億餘万圓ノ增加トナツテ
居リマス、而シテ右ノ豫算額ニ、過日本議
會ノ協賛ヲ經マシタ所ノ臨時軍事費豫算追
加臨第一號ノ金額二百七十億圓ヲ合算致シ
マスレバ、四百二億餘万圓トナリ、是ヨリ一般
會計及ビ臨事軍事費特別會計間ニ於テ重複
スルコトトナツテ居リマスル一般會計ヨリ、
臨事軍事費特別會計ヘノ繰入額四十二億餘
万圓ヲ控除致シマスレバ、三百六十億餘万
圓ト相成ルノデアリマシテ、之ヲ前年度ニ
比較致シマスレバ、百十三億餘万圓ノ增加
ト相成ル譯デアリマス
次ニ昭和十八年度一般會計豫算ノ內容ニ
付キ申上ゲマスレバ、先ヅ歲入豫算ノ內譯
ハ、租稅其ノ他ノ普通歲入ガ九十七億餘万
圓前年度剩餘金繰入ガ三億餘万圓、公債
金ガ三十二億餘万圓デアリマシテ、右ノ普
通歲入ハ、之ヲ前年度ニ比較致シマスレバ、
二十三億餘万圓ノ增加デアリマス、是ハ主
トシテ租稅收入ノ增加ニ基クモノデアリマ
スガ、其ノ中ニハ別途本會議ニ於テ審議中
ノ間接稅ヲ中心トスル新增稅ニ基ク增加
額十億餘万圓ガ見込マレテ居ル次第デアリ
マス、尙ホ其ノ他ノ主要ナル增加ト致シマ
シテハ、本年一月實施サレマシタル煙草値
上ニ依ル專賣局益金ノ增加額四億餘万圓、
今次ニ於ケル「アルコール」賣渡價格引上ゲニ
依ル燃料局益金ノ增加額八千餘万圓等ガ、
計上致サレテ居ル次第デアリマス
次ニ歲出豫算額ヲ前年度豫算額ニ比較致
シマシテ增加シタ金額ハ、只今申上ゲマシ
タ通リ三十九億餘万圓デアリマシテ、相當
顯著ナル增加ト相成ツテ居リマス、其ノ內
譯ヲ見マスレバ、國債費ニ於テ五億餘万
圓、年金及ビ恩給ニ於テ五千餘万圓、臨時
軍事費特別會計ヘノ繰入ニ於テ十六億餘万
圓、爲替交易調整特別會計ヘノ繰入ニ於テ四
億餘万圓、國庫豫備金ニ於テ七億万圓、地方
分與稅分與金特別會計へノ繰入ニ於テ一億
餘万圓、其ノ他ノ經費ニ於テ四億餘万圓トナ
ツテ居リマス、右ノ中其ノ他ノ經費ノ項ハ
生產增强、低物價維持、中小企業整備、食
糧對策、國民保健、國民生活及ビ人口對策、
軍人援護、文〓刷新、科學技術振興、防空
等デアリマシテ、何レモ時局ニ鑑ミ眞ニ緊
要ナル經費ノ增加ニ因ルノデアリマス
次ニ今囘設置致サレルコトト相成リマシ
タ特殊財產資金特別會計ハ、帝國ガ大東亞
戰爭勃發以來、大陸及ビ南方作戦諸地域ニ
於テ沒收シ、又ハ管理下ニ收メマシタ敵產
ノ統一運營ヲ圖リ、以テ我ガ戰力ノ增强等
ニ役立タシムル爲メ、特別ノ資金ヲ置キ、
其ノ歲入歲出ヲ一般會計ト區分經理スル爲
メ設置サレルコトトナツタモノデアリマス、
爾餘ノ昭和十八年度各特別會計歲入歲出豫
算案外五件ニ付キマシテハ、其ノ說明ヲ省
略致シマス、又昭和十八年度ニ於ケル歲出
豫算ノ財源タル公債ノ發行豫定額ヲ見マス
ルニ、一般會計及ビ各特別會計豫算竝ニ過
日本會議ノ協贊ヲ經マシタ臨時軍事費豫算
ニ伴ヒマスル分ヲ通計致シマシテ、其ノ總
額ハ二百十四億餘万圓ト相成ツテ居リマス、
隨テ之ヲ前年度ノ百六十三億餘万圓ニ比較
致シマスレバ、五十億餘万圓ノ增加トナル
次第デアリマス、豫算委員會ハ右豫算各案
審議ノ爲メ、一月二十九日開會政府ノ說明
聽取後、更ニ政府ノ申出ニ依リ、三十一日
マデ三日間ニ亙リ祕密會開會、物動計畫其
ノ他國家ノ重要諸計畫、國際專情、戰況竝
ニ占領地軍政等ニ付テ補充說明ヲ聽取シ、
二月一日ヨリ八日マデ質疑ヲ繼續シ、二月
十日政府ノ申出ニ依リ最近ノ戰況報〓ヲ聽
取シ、分科會ヲ二月九日以降三日間開キマ
シタ、幸ヒニ委員諸君ノ非常ナル御精勵ニ
依リマシテ、短時日ノ間ニ審議ヲ終リ、而
モ委員諸君ノ質疑ハ特ニ今期議會ノ重大使
命ニ鑑ミ、主トシテ戰力增强ノ一點ニ集中
シ、其ノ眞摯熱烈、憂國ノ至情、實ニ傾聽ニ
値スル建設的意見多ク、一億國民ノ總意ヲ
遺憾ナク反映セシメ、政府ノ答辯又熱誠ニ
シテ懇切、未ダ必ズシモ全員ノ滿足ヲ得ル
ニ至ラザリシト雖モ、時局擔當ノ固キ決意
ト、國民ノ信賴ヲ期待セラルル强キ信念
ハ、吾人ノ意ヲ强ウスルニ足ルモノガアリ
マシタ(拍手)斯クテ官民一體米英擊滅ノ聖
戰完遂ニ邁進セントスル固キ決意ガ、本委
員會ノ空氣ニ如實ニ反映サレマシタコト
ハ、私ノ最モ欣快トスル所デアリマス、詳
細ハ速記錄ニ依ツテ御承知ヲ願フコトト致
シマシテ、是ヨリ委員會審議ノ內容ニ付テ、
主ナル問題論點ヲ選ビマシテ、御紹介申上
ゲルコトト致シマス
此ノ項ハ稍〓詳細ヲ極メテ居リマスカラ、
少シ長クナルノデアリマスガ、御諒承願ヒ
マス、戰力增强、生產增加ノ問題ニ付テハ、
凡ユル角度カラ質疑ガ重ネラレマシタガ、
先ヅ原價計算制、勞務制度ニ付テハ、政府
ハ依然原價計算制ヲ執ル旨ノ答辯デアル
ガ、全面的ニ此ノ方針ガ續ケラルル限リ、
遺憾ナガラ生產增强ハ豫期ノ如ク行ハレナ
イデアラウ、所謂東部戰線ニ於テ「ソ」聯ガ
意外ニ兵器ガ多カツタノデ、「ドイツ」側ニ
於テ「ソ」聯ノ生產能率ノ高キ理由ヲ調査
シ、今日「ドイツ」モ亦「ソ」聯ニ傚ツテ、高
能率第一主義ヲ採用スルニ至ツタサウデア
ル、「ソ」聯デハ生產工場每ニ其ノ標準生產量
ヲ査定シ、其ノ査定額以上ノ生產ニ對シテハ、
累進的ニ價格ヲ上昇シ、又勞務者ニ對シテモ、
成績ニ應ジ思切ツテ階級ヲ上セ、賃金ヲ引上
ゲル等、遺憾ナキ奬勵制度ヲ採用シ、一面標準
生產量ニ達セザル經營者ニ對シテハ、嚴
其ノ責任ヲ追求シテ居ル、サレバコソ「ソレ
聯ガアノ廣イ工場地帶ヤ、資源地帶ヲ失
ヒツツモ、驚クベキ生產量ヲ擧ゲツツアル
所以デアル、「ヒトラー」總統ハ直チニ此ノ
制度ヲ採リ入レ、生產增强ニ邁進シテ居ルノ
ハ、洵ニ賢明ナ措置ダト言ハネバナラヌ、
我ガ國ノ現在ノ制度デハ、勉强シテ生產費
ヲ下グレバ、政府ノ買上値段ガ下ガル、是
デハ進步モ、改善モ、增產モ期待スルコト
ハ出來ヌ、賃金統制ノ行ハルル以前ニハ、
八倍ノ能率ヲ擧ゲタ工員モアツタトノコト
デアル、政府ハ此ノ原價計算制ヲ一部廢止
スル考ヘハナイカ、經理統制令ヤ、賃金統
制令等ノ制約ヲ乘リ越エテ、高能率第一主
義ヲ採用スルノ英斷ニ出デラレテハ如何ト
ノ問ニ對シ、鈴木企畫院總裁ハ、原價計算
ヲ全面的ニ持ツテ行クカドウカト云フ問
題最高能率ヲ發揮スルヤウニ、是等ノ各
問題ヲ取扱フ點ニ付テハ篤ト〓究シテ參
リ、御意見ノ如キ方法ニ進マントシテ居ル、
但シ原價計算ヲ悉ク止メテシマフ譯ニハ參
ルマイトノ答辯デアリマシテ、雙方ノ意見
ハ殆ド接近シテ參リマシタ、何レ是ガ是正
ヲ見ルコトト存ジマス、國家ノ爲メ幸慶ノ
至リニ堪ヘマセヌ(拍手)
次ハ全國民ヲシテ欣然生產增强ニ、全力
ヲ凝集セシムベキ政府ノ用意如何ト云フ點
デアリマス、生產增强ノ障碍ハ、資金、資
材、勞務ノ不足、統制機關ノ不整備、統制
運用ノ不慣レ、拙劣、價格ノ不適正、官廳
手續ノ煩瑣、澁滯等カラ來ルモノモ多イ
ガ、其ノ最大ナルモノハ所謂官僚統制ノ弊
デアル、東條首相ハ常ニ人情政治、親心政
治ヲ示サレ、其ノ御心掛ケト、實踐躬行ト
ニハ心カラ敬意ヲ表シテ居ルガ、經濟統制
ノ實際ニ見ルト、遺憾ナガラ總理ノ心事ト
相反スルモノガ多イ、動モスレバ慨念的ナ
理論一點張リトナリ、人間性ヲ輕視シ、物
質扱ヒ、機械扱ヒニシタリ、人間ノ本能ヲ
輕ンジ、慾モ得モナイ神樣扱ヒニスル爲
ニ、經營者、勞務者ヲシテ其ノ全力ヲ發揮
セシムルコトガ出來ナイ憾ミガアル、盟邦
獨伊ノ例ヲ見ルニ「ムソリーニ」首相ハ、
理論的統制ノ行詰リカラ常識統制、人情政
治ニ轉換シタルコトハ有名ナ事實デアリマ
ス、同首相ハドンナ良イ改革デモ、國民ノ理
解ナクシテハ出來ナイ、ソレガ假令一部門
デアツテモ、爲ニ全體ノ破綻ヲ來スコトニ
ナルト言ツテ、先ヅ國民ノ理解ヲ得ルコト
ニ努力シ、以テ今日ノ「イタリア」ヲ築キ上
ゲタトノコトデアリマス、又「ドイツ」ノ
ㄱヒトラー」總統ハ、權力ニ依ル統制ハ强制
ニ等シイ、指導者ハ宜シク人格ノ輝キヲ以
テ指導セヨ、一ツノ命令ヲ出スヨリ、先ヅ
模範ヲ示セ、若シ協力スベキ者ガ其ノ協力
ヲ拒ミタル時ハ、主トシテ其ノ原因ヲ自己
ニ求メヨト言ツテ居ル、其ノ一貫セル精神
ハ實ニ我ガ東條首相ノ率先垂範ノ御精神ト
符節ヲ合スルガ如キモノガアル(拍手)閣僚
諸公ハ是等ノ言葉ヲ深ク玩味セラレ、東條
總理ノ意圖徹底ニ盡瘁サレテ、以テ木人方
ニ唱ヒ、石女起ツテ舞フノ妙境ニ入リ、
億國民ハ促サズシテ輯睦和協、挺身奉公ヲ
勵ミ、飛躍的ニ生產增强ヲ見ルニ至ランコ
トヲ希フ、隨テ政府ハ人ト人トノ結ビ付キ
デ出來テ居ル此ノ社會ラ、冷嚴ナル理論一
點張リデ律セントスル現行各種法令ヤ、細
紬シキ監督、干渉等ヲ緩和シ、今囘提出サ
レタル行政特例法ガ通過ノ曉ニハ、迅速果
敢ニ又能フ限リ廣イ範圍ニ之ヲ實行セラ
L、以テ人間性ニ適應シタル明朗濶達ナル
政治ヲ行ツテ戴キタイトテ、首相ノ所見ヲ
質シタルニ對シ、首相ハ、眞摯ナル御意見
ニ付キマシテハ深ク私ハ傾聽スルモノデア
ル、人ト人トノ吻合、又官ト民トニ於テモ、
此ノ精神ト精神トノ吻合ガナクシテハ、何
事モ出來ナイ、人情味、人間味ヲ無視シテ
ハ、能率ハドン〓〓下ツテ行ク、若イ者ト
シテハ理論的ニ陷ルト云フ點モ無キニシモ
アラズデアルガ、私ハソレモ一カラ十マデ
否定ハ致シマセヌガ、理論的觀念的ニ國政
ヲヤラレタノデハ、堪ツタモノデハナイ(拍
手)精神的問題ニ付テハ、全然同感デアル
旨ヲ强調サレマシタコトハ、國家ノ爲メ洵
ニ慶祝ノ至リデアル(拍手)ドウカ首相ニ於
カレマシテハ、憤リヲ發シ食ヲ忘ルル底ノ
御覺悟ヲ以テ、是ガ徹底ヲ期セラレンコト
ヲ切望ヲスル次第デアリマス(拍手)
次ニ價格增產調整ノ問題デアリマス、現
下ノ價格政策ガ增產第一主義デアル以上、
生產ヲ阻碍セヌヤウナ價格政策ヲ誘導スル
ノ要アリ、殊ニ重要物資ニ對スル補助金政
策ハ、現下ノ實情ニ鑑ミ、之ヲ轉換スルノ
意向ナキヤトノ多數委員ヨリノ質疑ニ對ス
ル關係各大臣ノ答辯ヲ綜合致シマスルト、
戰時物價政策ノ基調ハ、物價ノ安定ニアル
ヲ以テ、其ノ根本ヲ低物價政策ニ置キ、之
ヲ飽クマデ堅持シテ行ク方針デアル、卽チ
各方面ニ重大影響ヲ及ボシ、物價ノ直接惡
循環ノ原因トナル重要基礎物資ニ對シテハ、
從來通リ補助金政策ヲ採リ、之ニ依リ放出
セラレル資金ハ、適當ノ方法ニ依リ極力之
ヲ囘收シ、「インフレーション」ノ誘致ヲ避ケ
ル、又個々ノ其ノ他ノ物資ニ付テ不合理ノ
アル點ハ、嚴正ナル原價計算ヲ行ヒ、適正
價格ニ修正スル旨ノ答辯ガアリマシタ
農村及ビ食糧問題ニ付キマシテハ、日滿
支ヲ通ズル恆久的食糧對策ノ樹立ガ必要デ
アル、政府ハ〓糧ニ不安ナシト言フモ、果
シテ然ルヤ、農村ハ國家ノ根幹デアリ、大
和民族培養ノ源泉デアル、然ルニ戰時下農
村ノ人口ハ、質的ニモ、量的ニモ減退傾向
顯著ナル實情ヲ、政府ハ如何ニ見ルヤ、農
村經濟ノ再建、農村ノ厚生安定ニ遺憾ナキ
ヤトノ質疑ニ對シ、企畫院總裁及ビ農林大
臣ノ答辯ハ、長期建設戰下食糧ノ自給自足
體制ノ確立ニ對シ、政府ハ日滿支ヲ通ズル
食糧自足體制ヲ樹立シ、其ノ實現ニ努力シ
テ居ル、米麥ノミナラズ、甘藷、馬鈴薯及
ビ雜穀等ノ綜合的食糧政策ヲモ勘案シテ居
ル、又農村人口確保ニ付テハ、國民ノ四割
ヲ農村ニ定着セシムルノ方針デアル、政府
ハ此ノ方針ニ則リ、皇國農村確立促進計畫
ノ下ニ、農村ノ安定ト經濟ノ合理化、更生
等ニ各般ノ施設ヲ講ジツツアル旨ノ答辯ガ
アリマシタ、更ニ米價ノ適正標準ニ付テハ、
從來ノ米價ト他物價トノ均衡ガ、兎角破レ
勝チデアル、是ハ米穀增產上、農村經濟安
定上重大問題デアル、政府ハ米價決定ノ基
準ヲ何處ニ置クヤトノ質疑ニ對シマシテハ、
物價政策ノ要諦ハ、物價ニ對スル國民ノ安
定感ニアル、米價ハ總テノ物價ニ重大影響
ヲ與フルモノナルガ故ニ、是ガ引上ハ行ハ
ズ、從來通リ國庫助成金ニ依ル二重價格制度
ヲ堅持スル旨ノ答辯ガアリマシタガ、本答辯
ニ付テハ委員ノ大部分ハ、政府ノ答辯ニ對シ
テハ不滿ヲ有スルモノノヤウデアリマス拍
手)政府ハ速カニ是ガ對策ニ付キ、更ニ萬全
ノ方策ヲ考慮セラレンコトヲ望ム、尙ホ重
要食糧ノ增產對策、農村勞力問題、農水產
統制機構、農畜問題等ノ質疑ガ行ハレマシ
タ
勞務問題ニ付テハ、生產力擴充ノ根幹ヲ
成ス問題デアルダケニ、幾多ノ重要質疑ガ
交換サレタガ、中ニ就テ超重點ノ五大產業
ニ對スル勤勞對策如何、勞務ノ配置轉換ノ
方針如何、國民徵用ノ方針如何、勤勞根本
法制定ノ意思ナキヤ、女子ノ勤勞部門ヘノ
積極的動員ノ意思ナキヤ、應召戰士タル徵用
工務員ノ優遇方法如何、熟練工ノ召集ヲ解
除スルノ意思ナキヤ、其ノ他幾多ノ質疑ガ
重ネラレマシタ、之ニ對スル政府ノ答辯ハ、
女子ノ徴用ハ、日本ノ家族制度ニ於ケル女
子ノ特殊性ニ鑑ミ、未ダ其ノ時期ニアラザ
ルコト、徵用工ニ對スル援護制度ハ、努メ
テ之ヲ實施スル、熟練工ノ應召解除ハ軍ノ
行動ニ差支ヘナキ範圍ニ於テ、之ヲ實行シ
ツツアル旨ノ答辯ガアリマシタ、其ノ他ハ
之ヲ省略致シマヌ
海上輸送力、卽チ船舶問題ニ付テハ、造
船ノ前途ニ不安ナシトノ總理大臣ノ言明、
又最近ノ船舶建造狀況ハ、諸種ノ制約ニ拘
ラズ順調ニ進ミ、船舶現在數ハ開戰前ニ比
シ減少シテ居ナイコト、造船技術ハ絕對ニ
低下スル懸念ノナイコト等ヲ强調サレタノ
デアリマス、其ノ他軍需徵用船以外ノ船舶
ノ運航ニ缺陷ナキヤ、荷役能力ハ戰前ニ比
シ低下シテハ居ナイカ、運航能率ノ急速擴
充ノ爲ニハ、船員ニ對スル生活必需物資ノ
增配、待遇ノ改善ガ必要デハナイカ、本問
題ニ付テハ、多方面ニ亙リ、質疑應答ガ重
ネラレタノデアリマスガ、之ヲ省略致シマ
ス
企業形態ニ關スル質疑ニ付テハ、出來得
ル限リ國營形態ハ之ヲ避ケ、國家資金ハ必
要アル場合、最小限度ニ投下サルベキデア
ル、出來得ルダケ民間ノ創意工夫ヲ活用シ、
民營尊重、生產第一主義ヲ以テ進ム、又普
通銀行ノ合同ハ歡迎ハスルガ、之ヲ强制ス
ル意思ハナイトノ答辯デアリマシタ
外交問題ニ付キマシテハ、幾多有益ナル
質疑應答ガ交換サレマシタ後、「ルーズヴェ
ルト」ハ開戰ノ直前我ガ國ニ對シ、虎ハ幾ラ
撫デテヤツテモ猫ニハナラヌカラ、彈壓
ノ手ヲ緩メテハナラヌナドト暴言ヲ吐イテ
居ツタガ、今度ハ今カラ獅子ノ分ケ前ナド
ヲ論ジ、宣傳戰ニ攻勢ヲ取ツテ居ル其ノ暴
慢不遜、吾人ノ耳目ヲ掩ハシムルモノガア
ル、之ニ對シテ何等カ宣傳對策ハナイカ、
連戰連勝ノ樞軸側ハ、自己ノ天職デアル所
ノ周圍ノ廣域經濟圈ニ付テハ、具體案ヲ發
表シテ居ルケレドモ、ソレ以外ノ地域ニ付
テモ、具體的ノ聲明ヲサレテハドウカトノ
意味ノ質疑ニ對シマシテ、東條總理ハ、米
英ガ頻リニ戰勝後ニ於ケル世界改造ノ具體
的計畫等ヲ發表シテ居ルガ、斯クノ如ニ宣
傳謀略ニ依ツテ戰勝ヲ擬裝シテ、民心ノ收
攬ニ努メツツアルコトハ、洵ニ笑止千萬デ
アル、帝國ノ戰爭目的ハ、畏クモ宣戰ノ大詔
ニ明示サレテ居ル所デアリ、帝國ハ先ヅ以
テ米英ノ魔手ヲ斷乎排撃シテ、自存自衞ヲ
全ウスルト共ニ、大東亞ノ各國家、各民族
ヲ米英ノ桎梏カラ離脫セシメ、以テ彼等ヲ
シテ本來ノ正シク、而モ力强キ生活ニ立還
ラシムルコトニアルノデアル、隨テ戰爭目
的達成ノ爲ニハ如何ナル手段モ躊躇シナイ
ガ、米英流ノ貪慾飽クナキ世界制覇ノ非望
ノ如キハ帝國ノ斷ジテ意圖スル所デハナイ、
併シナガラ何モ米國ノ領土ナドヲ取ツテ見
テモ仕方ガナイ、斯ウ云フ領土的野心ノ上
ニ立ツテ吾々ハ毛頭考ヘテ居ナイ旨ヲ聲
明サレマシタ、又南方占領地經營ニ關シテ
ハ、民心ノ把握、指導者ノ選擇、大和民族
ノ大進出等ニ對スル質疑ニ對シ、東條總理
ハ一度我ガ治下ニ入ツテ來タ者ニ對シテハ、
眞ニ之ヲ親子ノ情ヲ以テ遇スル、進出邦人
ノ指導ニ付テハ、特ニ日本人タルノ矜恃ヲ
保持セシムルコトニ留意ヲスル、又大東亞
圈內ニ於ケル民族政策ニ付テハ、一、皇國
國力ノ根基ニシテ、大東亞共榮圈建設ノ推
進力デアル所ノ大和民族ノ驛進的增强ヲ策
スル、二、適正ナル配置ヲ策シ、諸民族ノ
指導的地位ヲ確保スル、三、諸民族ノ大和民
族ニ對スル信賴ヲ把握シ、以テ大和民族ヲ
中心トスル大東亞諸民族ノ結束ヲ鞏固不動
ニスル、四大和民族ノ統一性ヲ保持スル
ヤウ指導スルトノ答辯デアリマシタ
次ニ官紀振肅、吏道刷新竝ニ選擧取締ニ付
テハ、幾多ノ事例ヲ擧ゲテ、其ノ肅正方策
ニ付キ質疑ガ重ネラレマシタガ、東條首相
ハ官吏ノ非違ニ對シテハ嚴重ノ處斷ヲスル、
禍ヒヲ轉ジテ福トスルヤウ、常ニ訓戒シテ
居ル、吏道刷新ニ付テハ常ニ訓戒ヲ怠ラナイ
ガ、此ノ上是ガ徴底ヲ期スルトノ答辯ガア
リ、司法大臣ヨリモ刑事政策上ノ答辯ガア
リ、內務大臣ヨリ選擧取締ノ件ハ調査考究
スル旨ノ答辯ガアリマシタ
次ニ委員長ヨリ翼贊會問題ニ付テ、盛リ
上ル一億國民ノ忠誠心ヲ結集シ、國民ノ線
力戰爭體制ヲ整備センガ爲メ、曩ニ翼贊政治
會ヲ結成セラレ、大政翼贊會ガ改組セラレ
タノデアル、而シテ此ノ兩者ハ、各〓其ノ職域
分野ヲ明確ニシ、凡ユル部面ヨリ國民ノ忠
誠心ガ一段ト〓揚セラルルノ要今日ヨリ切
實ナルモノハナイト思フ、此ノ兩者ノ活動
部面ニ付キ、總理ノ所見ヲ伺ヒ、議會ヲ通ジ
テ戰爭體制ノ完璧ニ付キ、國民ノ覺悟ヲ促
シタイトノ問ニ對シ、東條總理ハ、大政翼贊
會ハ臣道實踐、萬民翼ハノ國民運動推進ノ
中核タル公事結社デアツテ、其ノ活動ハ嚴ニ
政治運動ノ分野ニ立入ルルヲ許サナイノデ
アル、一方翼贊政治會ハ、擧國政治力ヲ結
集シテ、國政ヲ翼贊スル政事結社デアツテ、
兩者ハ其ノ本質ヲ異ニスルモノデアルガ、
兩者共ニ其ノ理想ヲ一ニシ、一億國民ノ燃
エ上ル奉公心ヲ基礎ト致シマシテ、相互ニ
密接ナル關係ヲ保チ、相協力スベキハ勿論
デアラウト考ヘル、兩者ハ今後トモ各〓其ノ
分ニ恪循シ、愈〓密接ナル連繫ヲ保チツツ、
兩者相俟ツテ國內戰時體制ノ强化ニ向ヒ、
一路邁進センコトヲ深ク期待スル旨ノ答辯
ガアリ、次イデ兩者ハ直チニ其ノ職域ニ於
テ、愈、其ノ機能ヲ整備シ、兩者更ニ緊密ナ
ル連繫ノ下ニ、活潑ナル活動ヲ展開シ、國
民ノ忠誠心昂揚ニ努ムベキデアルト思フガ、
大政翼贊會總裁トシテ、兩者ノ緊密聯關ノ
方途ニ付キ、適當ノ方途ニ出デラレンコトヲ
希望スル、之ニ對スル總理ノ所見如何トノ
問ニ對シ、東條總理ハ、御希望ノ點ハ篤ト
了承シタ旨ノ答辯ガアリマシタ
又委員長ヨリ育英問題ニ對シ、政府ハ速カ
ニ育英金庫制度ヲ創設シ、良能ノ埋沒ヲ防ギ、
聖戰完遂ノ途上、靖國ノ英靈トナラレタル遺
孤竝ニ國策ノ犠牲トナリ、祖先傳來ノ業ヲ轉
換セラレタル方々ノ子弟ノ育英ニ盡サレンコ
トヲ切望スル旨ノ質疑ニ對シ、橋田文相ハ
全ク御同感デアル、十八年度ニ實現ノ出來
ルヤウ、萬全ヲ盡ストノ答辯デアリマシテ、
委員一同ハ滿足致シマシタ(拍手)
次ニ委員ヨリ、政府ハ今囘官立大學ノ大
學院ニ於テ、專門學徒養成ノ企テガアルガ、
官私學ニ差別待遇ヲ行フコトハ無理解ダト
思フ、私學ニテモ適當ナモノニハ之ヲ設
置スベキデハナイカトノ問ニ對シ、東條總
理ハ、出來ルダケ本年度ヨリヤルトノ答辯
ガアリ、一同ノ了承スル所トナリマシタ(拍
手)
以上幾多ノ質疑應答中、隨所ニ現ハレマ
シタル點ハ、政府ノ施政ハ餘リニ理論ノ末
ニ拘泥シ過ギハセヌカ、今少シ人間味ノア
ルヤリ方ガ望マシイ、卽チ情理併セ盡ス政
治ガ望マシイ、總理ノ考ヘ方ハ、吾々ト同
ジヤウニ思ハルルガ、事務官僚諸君ハ其ノ
才能ニ任セテ、一點一畫統制ノ枠ノ中ニ入
レナクテハ氣ガ濟マヌト云フ統制振リヲ發
揮シ、又此ノ時トバカリ、左程急要トモ思
ハレヌ機構改革ヲ行ヒ、官權ノ擴大ヲ試ミ
ントスルヤノ嫌アリトナス意味ノ論難ガ多
カツタヤウデアリマス、唐虞ノ治只情ノ
字、其ノ人存スレバ其ノ政擧ル、要ハ人デ
アル、人ノ心掛デアル、國家幾十年才智ノ
臣無カルベシ、一日モ氣節ノ臣無カルベカ
ラズ、才能ノ士以上ニ至誠至情ノ爲政者ヲ
必要トスル、賢明ナル東條總理ハ部下御統
率ノ上ニ、今一段ノ御工夫ガ望マシイト云
フ意味ノ空氣ガ、濃厚デアツタヤウデアリ
マシタ(拍手)
斯クシテ質疑應答ノ結果、豫算各案ハ原
案通リ可決スベシトノ結論ニ到達シ、各分
科會ニ於テモ界議ナク決定シ、昨十二日豫
算總會ニ於テ討論ニ入リ、田村秀吉君ヨリ、
政府ハ此ノ未曾有ノ厖大豫算ノ實施ニ當
リ、官僚獨善、官廳割據主義ヲ排シ、官民
相互信賴、政戰兩略、一致以テ戰時行政運
營ノ萬全ヲ期セネバナラヌ旨ヲ高調、贊成
意見ヲ表明シ、審議ヲ要セザル皇室費ヲ
除キタル部分ニ付キ採決ノ結果、滿場一致
原案ノ通リ豫算各案全部ヲ可決致シマシタ
語ニ曰ク、一人死ヲ必スレバ十人當ルベ
カラズ、萬夫死ヲ必スレバ天下ヲ濶步スベ
シト、況ヤ一億國民ガ心力齊々、烈火ノ
丸トナツテ國難突破ニ驀進スル時、其處ニ
ハ憂フベキ、恐ルベキ何モノモナイノデア
リマス(拍手)希クハ本豫算案ハ國民ノ總意
トシテ、滿場一致可決アランコトヲ熱望致
シマシテ報告ヲ終リマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=3
-
004・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 是ヨリ討論ニ入リマ
ス-太田正孝君
〔太田正孝君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=4
-
005・太田正孝
○太田正孝君 私ハ玆ニ議題トナツテ居リ
マス豫算案ニ付キ、政府原案ニ贊成セント
スル者デアリマス
一般會計ノ豫算ト四十九ノ多キニ及ブ特
別會計ヲ合セテ、歲出ノ總計ハ四百七十四
億トナルノデアリマスガ、其ノ中核トモ言
フベキ一般會計ト、過日本院ヲ通過致シマ
シタル臨時軍事費ノ追加豫算ヲ加ヘマシテ、
重複計算ヲ整理シタモノハ、大體三百六十
億圓トナルノデアリマス、私ハ之ヲ基準ト
シテ論議ヲ進メタイト思フノデアリマス、
卽チ我等ハ此ノ三百六十億圓ノ豫算ヲ以テ、
畏クモ開院式ニ賜ハリマシタ今ヤ戰局重大
ナリトノ勅語ヲ拜承シ、一大決戰ヲ覺悟ス
ベキ昭和十八年ニ對シ、必勝ヲ期セナケレ
バナラヌノデアリマス、同時ニ此ノ三百六
十億圓ノ歲出ヲ調ヘルニ付テ、國民ノ心カ
ラナル財政負擔ヲ要求シナケレバナラヌノ
デアリマス
此ノ意味ニ於キマシテ歲出ヲ眺メ、此ノ
意味ニ於テ歲入ヲ調ベル、先ヅ歲出トシテ
ノ三百六十億圓ニ付テ考ヘラレマスルコト
ハ、我ガ國ノ財政ガ逞シク伸ビテ來タ足取
リデアリマス、明治、大正、昭和ヲ通ジテ
ノ健ヤカナル發展デアリマス、戰費ノミト致
シマシテモ、支那事變勃發以來、今囘ノ追
加サレタ分ヲ加ヘテ七百四十一億圓トナル
ノデアリマス、併シ物質力ヲ誇リ、物質力
デ敗ケ戰ヲ盛リ返サウト焦ツテ居ル敵ニ對
シテ、我等ハ財政上ノ戰ニ勝タナケレバナ
ラヌノデアリマス、此ノ點ニ付キ敵ノ主力
トモ見ルベキ「アメリカ」ハ、來ルベキ財政年
度ニ於テ、千九十億「ドル」ノ豫算ヲ以テセ
ントシテ居ルノデアル、其ノ內ニハ「ヨー
ロッパ」方面ニ對スル自ラノ作戰ヤ、聯合
國軍ノ援助ニ關スルモノモアリマセウシ、
圓ト「ドル」トノ比較モアリマスガ、兎ニ角
三百六十億圓ヨリ數字的ニ多イト云フコト
ハ事實デアリマス、併シ我等ノ三百六十億
圓ハ、軍官民一體トナツテ戰力增强ニ努ム
ルニ於テハ、此ノ數字以上ノ强イカトナツ
テ現ハレルト信ズルノデアリマス(拍手)
我ガ皇軍ガ前線ニ於テ、寡兵能ク敵ノ大
軍ト戰ツテ勝ツテ居ルガ如ク、我等ハ其ノ
銃後ニ於テモ、之ニ劣ラザル創意ト工夫ト努力
トヲ以テ、最大ノ效果ヲ擧ゲルヤウニシナケ
レバナラヌノデアル、東條內閣總理大臣ガ、
二ト三ヲ加ヘテ五トナルト云フヨリモ、ソ
レガ八トナリ、十ニナルト云フヤウニシナ
ケレバナラヌト申サレマシタコトハ、洵ニ
味ハウベキ言葉デアルト存ジマス、一三、六、
シテ言ヘバ、二ニ三ヲ足シテ五「プラス·ア
ルファー」ニスルト云フノガ、日本的戰時
財政ノ方式デアルト信ズルノデアリマス
(拍手)反對ニ一步ヲ誤マリマスト「マイナス·
アルファー」トナルノデアリマス、ソレハ
「アメリカ」ノ財政デアル、千九十億「ドル」
ノ豫算ヲ裏打スベキ物資ニ付キ、眞ニ必要
ナル軍需ノ基礎資源ニ缺キツツアルコト、
勞働力ノ不足スル現狀ニ於テ、所期ノ如ク
六百万人ヲ得ラレルコトハ難カシイノデハ
ナイカト云フコト、此ノ巨額ノ資金ヲ撒布
スルコトガ、統制力ノ弱イ「アメリカ」財界
ニ、必然的ニ物價騰貴ヲ齎ラスベキコトナ
ド考ヘマスルト、唯單ニ豫算ノ金額ノ大キ
イト云フコトニ付テ、驚ク必要ハナイト信
ズルノデアリマス(拍手)況シテヤ專門家ノ
間ニ「アメリカ」ノ生產力ハ、本年夏ノ頃ヲ
以テ最頂點ニ達スルト見ラレルニ於テヲヤ
デアリマス、勿論斯ク申セバトテ、敵ノ力
ヲ輕ク見テ宜イト云フノデハナイ、此ノ際
安價ナル樂觀ハ禁物デアリマス、現在我ガ
國ハ赫々タル戰果ニ依リ物ヲ持チ得ル國ト
ナリマシタコト、忠誠ニシテ豐富ナル人的
資源ヲ持ツテ居ルコトナドニ鑑ミマシテ、
軍ガ作戰ト產業トノ調整ニ留意サレ、官ガ
只今委員長カラモ報告ノ中ニ述ベラレタル
如ク、統制ノ誤リナキ運用ニ努メラレ、吾
吾國民ガ國家目的ニ精進スルニ於テハ、必
ズヤ財政經濟上ノ勝利ヲ得ルト信ズルノデ
アリマス(拍手)
ソコデ問題トナリマスノハ、戰力增强ト
豫算トノ關係デアリマス申スマデモナク、
今日ノ豫算ハ金額ニ現ハサレタモノダケデ
判斷スベキモノデハナイ、金ヲ裏打スベキ
物トノ關係ガ、强ク結バレテ居ルノデアリ
マス、更ニ廣ク計畫經濟ト云フ觀點カラ致
シマスレバ、豫算ハ唯財政ノ一方面ヲ示シ
テ居ルノニ過ギナイノデアル、而シテ我ガ
國ノ計畫經濟ハ物資ニモ、資金ニモ、勞務
ニモ全面的ニ及ンデ居ルノデアリマス、卽
チ物動計畫ヲ初メ、生產力擴充計畫、生活
必需物資綜合計畫、電力動員計畫、交通動
員計畫、貿易計畫ノ六ツノ計畫ニ依ツテ、
物ヲ中心トシタ計畫ヲ現ハシテ居マス、此
ノ外ニ金ノ方面ニ於テ資金統制計畫ガア
リ、勞務ヲ對象トスル國民動員計畫ガアリ
マシテ、都合八ツノ計畫カラ成ツテ居ルノ
デアリマス、此ノ計畫經濟ハ昭和十七年ニ
初メテ完成サレ、其ノ中ニハ、是マデナカ
ツタ大東亞共榮圈ノ雄大ナル經濟構想モ織
リ込マレテ居ルノデアリマス、併シ作戰途
上ニ於テ、共榮圈內ノ交通關係ナドニ鑑ミ
マシテ、國內ニ現有スル設備ヤ、國內ノ勞
働力ヲ中心トシテ計畫ヲ進メテ行カナケレ
バナラヌノデアリマス、尤モ是等ノ計畫ノ
實體ニ付キマシテノ數字上ノ檢討ハ、軍機
ニ關スルコトガ多ク、隨テ玆ニ批判スベキ
限リデハアリマセヌ
而シテ此ノ計畫經濟ニ對スル豫算トノ關
係ニ付キマシテハ、國家ノ資金計畫中ノ財
政資金ニ關スルコトガ、直接ノ問題トナル
ノデアリマス、其ノ豫算ニ揭ゲラレテ居ル
生產增强ニ關スル經費ハ、一般會計ト特別
會計トヲ通ジマシテ、十億二千餘万圓ニナ
ツテ居ル、今年度ヨリ三億圓見當多クナル
ノデアリマス、其ノ內容ニ付キマシテハ、
只今委員長カラ報〓サレタ通リデアリマシ
テ、鐵ヤ石炭ナドノ重要軍需物資、或ハ〓
糧品、木材ノ增產ナドニ關スルモノデアリ
マス、申スマデモナク戰爭ノ現段階ニ於テ、
戰ニ勝ツ爲ニ國ガ欲シイノハ物資デアリ、
其ノ物資ヲ軍需物資ニ付キマシテハ、最大
限度ヲ得タイノデアリマス、生活必需品、
特ニ食糧品ニ付キマシテハ、如何ニ國民ノ
生活ヲ切詰メマシテモ、最小限度ノモノヲ
確保シテ、更ニ餘裕ヲ見出スヤウニシナケ
レバナラヌノデアリマス、其ノ軍需品ナリ、
其ノ生活必需品ヲ、ドウシタラ得ラレルカ
ト云フコトガ、現下ノ問題デアル、ソレニ
ハ問題ヲ裏カラ見マシテ、如何ニセバ生產
ノ增强ノ妨ゲトナツテ居ルモノヲ取除キ、
狹メラレタ隘路ヲ取擴ゲ得ルカト云フコト
ニナルノデアリマス
此ノ意味ニ於テ政府ハ總理大臣ノ權限强
化ヲ圖リ、新機構ヲ加ヘズ、專ラ現在ノ機
構ヲ動員シテ、人ノ力デヤリ拔カウトシテ
居ルノデゴザイマスガ、機構イヂリト云フ
意味デナク、重要產業ニ關スル生產ヲ推進
シ、早ク事ヲ運バス爲ノ强イ手輕ナ仕組ヲ
以テスベキコトハ、モウ一度御考ヘヲ願ヒ
タイト思フノデアリマス(拍手)民間ノ企業
形式モ、今後統制ハ强マルデゴザイマセウ
ガ、理窟ハ二ノ次ニシテ、最モ早ク最モ多
ク生產スル仕組ヲ以テ、能率ヲ擧ゲルヤウニシ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス(拍手)
輸送ニ付キマシテハ、造船ニ、運航ニ、海
員ノ養成ニ精一パイノ工夫ト努力ヲシテ、
效率ヲ擧ゲルヤウニシナケレバナラヌト信
ジマス、勞務ニ付キマシテモ、豐カナル人
的資源ヲ活用シ、國民皆勞ノ精神ノ下ニ勞
務ノ充足、適正ナル配置、能率ノ向上、徵
用ノ合理化ト援護トニ徹底ヲ期スル上ニ、
働キ易イ、物ノ增產ニ副フ如キ賃金ニ致サ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス(拍手)
更ニ財政上問題トナリマスモノハ、物價
對策デアル、物ガ欲シイノデスカラ、金ニ
絲目ヲ吳レナクテモ宜イトハ申シマセヌガ、
金ニノミ執着シテ居ルモノデハナイト思フ
ノデアル、特ニ十八年ト云フ決戰體制ニ對
處致シマス爲ニハ、金ヨリモ物ト云フコト
ガ、第一義ニ考ヘラルベキモノデアルト思
フノデアリマス(拍手)固ヨリ放漫ニ金ヲ使
ヘバ宜イト云フノデナク、特ニ長期戰ノ構
ヘトシテハ、惡性「インフレ」ノ防止ニ努ムベ
キコトハ、寸時モ忘レテハナラナイノデア
ル、隨テ現下ノ取扱ヒトシテハ「インフレㄴ
防止ニ注意シツツ、出來ルダケ此ノ際物ガ
多ク增スヤウニスルト云フコトニナルノデ
アリマス、此ノ點ニ付テ只今モ委員長ノ報
告ニアリマシタル通リ、政府當局ノ恐レテ
居ルノハ、物價ノ惡循環ト云フコトデアリ
さく、併シナガラ中央地方ヲ通ジテ、數十
万種ニ及ブ商品ノ價格ヲ公定シタト致シマ
シテモ、ソレガ現實ニ取引サレテ居ル價格
ト離レテ居テハ、何ニモナラナイノデアリ
マス(拍手)何人モ言フヤウニ、所謂闇ガ行
い!闇ノ公定價格ナドト云フ言葉ノアル
如ク、價格ノ世ノ中ハ濁ツテ居ルノデアリ
マスコトハ、洵ニ遺憾千萬デアリマス、其
ノ闇ノ中ニ闇ノ惡循環ガ行ハレルヤウニナ
ツタナラバ、天下ノ一大事ト言ハナケレバ
ナラナイ(拍手)ソレガ國民ヲシテ罪ヲ犯サ
シメタリ、或ハ關係官吏ノ忌ハシイ問題サ
ヘ起スヤウニナツタトシマシタナラバ、
洵ニ殘念至極デアリマス、政府ノ恐レル
物價ノ惡循環ニ付テハ、吾々トシテハ素
材料ト製品トノ間ノ關聯ノ如キ、政府當
局ト必ズシモ見ル所ヲ同ジウシテ居ラナ
イノデアリマス、又補助金政策ニ依ル二
重價格制ヲ執ルコトガ、巳ムヲ得ナイト
致シマシテモ、生產費ト適正利潤カラ見
テ、改ムベキモノモアルデハナイカト思
フノデアリマス(拍手)尙ホ委員長ノ報告
ノ最初ニ强調サレタル如ク、生產ノ增加
ノ度合ニ應ジテ、價格ヲ動カシテ行ク累
進價格制ノ如キモ、此ノ際特ニ考慮ニ加
フベキモノデハナイカト思フノデアリマ
ス、要ハ形式的ノ公定價格ヤ、上邊ノ低
物價ヨリモ、實質的ノ增產ニ副フガ如キ
低物價トシテ欲シイト云フノデアリマス
(拍手)而モ問題ノ處理ハ急ヲ要スル、政
府當局モ、委員長ノ報〓ニアリマシタル通
リ、誤レル價格ノ是正ニ努ムルト言ツテ居
ルノデゴザイマスガ、其ノ實行ヲ期待シテ
已ミマセヌ
兎ニ角我等トシテハ、此ノ際生產增强ノ
爲ノ國家財政ノ負擔ハ、思ヒ切ツテ增シテ
モ構ハナイト云フ信念ヲ持ツテ居ルノデア
リマス、物ガ欲シイノデアル、物ガ欲シイ
ノデアル、物ヲ造リタイノデアル、其ノ爲
ノ財政負擔ノ增スコトハ已ムヲ得ヌト云フ
ノデアリマス、軍需物資以外ノ大キイ問題
ハ、主要食糧品ニ關スル價格問題デアリマ
ス、食糧增產ノ重大性ニ顧ミテ、眞劍ニ取
扱ハネバナラヌ問題デアル、一體主要食糧
品價格ノ占ムル地位、我ガ國全體ノ經濟ニ
於キマシテ、過去ト違ツテ來テ居ルト云フ
コトヲ、注意シナケレバナルマイ、明治三
十五年ニ國民所得十五億ト謂ハレタ中ニ、
農業所得十億ヲ占メマシタ時代ト、現在ノ
大藏大臣ニ依ツテ表明サレタル如キ、國民
所得五百億圓ノ中ニ占メル農業所得六十億
圓トハ、大變ナ違ヒガアルノデアリマス(拍
手)要スルニ主要食糧品ノ價格ハ、他ノ
般物價トノ釣合ヒニ付キマシテ、能ク考へ
テ貰ヒタイト思フノデアリマス(拍手)此ノ
點ニ付テ農家ガ借金ヲ返シテ居ルト云フコ
トヲ以テ、大摑ミニ其ノ暮シガ良クナツタ
ナドト斷定スルコトハ、誤リデアリマス(拍
手)ソレハ主要食糧品以外ノ蔬菜ヤ、果實ノ
値段ノ高クナツタコトトカ、別ニ働イテ得
ル賃金ナドノ副收入ニ依ツテ補ハレテ居ル
コトヲ見ナケレバナラヌカラデアリマス、
而モ主要〓糧品ノ價格ガ、餘リ高級ナラザ
ル煙草ノ値段ト較ベラレル如キハ、比較ス
ルモノガ稅ノ性質ヲ持ツタ專賣品トハ言ヒ
ナガラ、考ヘサセラレルノハ農民バカリデ
ハナイト思フノデアリマス(拍手)斯ク申セ
バトテ、農村ヲ樂ニサセタイ爲ニ、食糧品
價格ノ問題ヲ取扱ヘト云フノデハナイ、ソ
レドコロカ現在ノ農村ハ、農民ノ傳統ト名
譽ニ掛ケテ、增產ノ戰ヲ大地ニ向ツテ今默
默トシテ居ルノデアリマス(拍手)本問題ノ重
要性ニ鑑ミマシテ、翼贊政治會モ調査ヲ進
メテ行キマスガ、政府當局モ適切ナル處置
ニ出ラレンコトヲ望ンデ已マナイノデアリ
マス(拍手)要スルニ價格ニ付キマシテハ、
財政上ノ負擔ト云フコトヨリモ、惡循環ノ
ナイヤウニ正シイ價格ニスル、ソレガ特ニ
增產ニ役立ツヤウニスル、ソレヲ急イデ考
ハイ、急イデ實行シテ貰ヒタイト云フノデ
アリマス(拍手)若シ夫レ生產增强ニ關聯シ
テ、緊急ニ財政上ノ必要ヲ要スルモノニ付
キマシテハ、第二豫備金ガ增サレテ十五億
圓ニモナツテ居ルノデアリマス、平時ニ於
ケル一年分以上ノ金ガ、政府ヲ信賴ヲシテ
支出シ得ルヤウニナツテ居ルノデゴザイマ
スルカラ、相當ノ措置ヲ執リ得ル筈デアリマ
ス、而モ此ノ豫備金ヲ以テシテモ、尙ホ不
足スルト云フナラバ、勝ツ爲ニ、生產力ヲ
增强スル爲ニ、議會ニ愬ヘル手段ハ幾ラモ
アルト私ハ思フノデアリマス(拍手)
次ニ歲出ヲ充スベキ歲入ハドウデアルカ、
是ハ「インフレ」防止ト云フ命題ト深キ關
聯ヲ持ツテ居リマス金ト云フイタヅラ者ガ、
非常時局ニ對スル不心得者ノ手ニ入リマシ
テ、自由ニ使ハレテハ敵ヒマセヌ、國家目
的ニ副フヤウニ、謂ハバ出テ行ク金ニ絲ヲ
付ケテ置クヤウニシナケレバナラナイノデ
アル、サウシテ消費ヲ規正スルノデアル、
尤モ國家ガ强制的ニ徵收スル稅ガ、七十五
億九千万圓ノ多キニ達シテ居ルノデアル、
此ノ中ニ間接稅ノ增稅ガ十億圓アルコトハ
貫フマデモアリマセヌ、尙ホ法律ヲ改正セ
ズシテ、豫算ノ上ノ見積リデ增シテ行ク自
然增收モ當然增ト加ヘマシテ、八億二千餘
万圓モアリマス、此ノ自然增收ハ直接稅、
特ニ所得稅ノ增スモノガ、四億五千六百万
圓モアルコトヲ氣付カナケレバナラナイノ
デアリマス、是ハ法律ヲ改正セズシテ、稅
務署ノ査定デ高マツテ行ク稅デアリマス、
大藏大臣ハ稅ニ付テ取ルトカ、取ラレルト
云フ對立シタ考ヘデナク、官民ノ協力スル
コトガ望マシイト言ハレマシタガ、其ノ通
リデス、併シ斯樣ニ增シテ行ク、斯樣ニ高
マツテ行ク稅ニ付テ、大キイモノヲ逃サズ、
小サイモノヲイヂメズ、國民ヲシテ能ク納
得セシメル工夫ト努力ヲシテ貰ヒタイト思
フノデアリマス(拍手)
此ノ稅ハ、長期戰ニ對處スル財政ノ中核タル
ベキモノデアル、今年所得稅ノ改正ニ手ヲ着ケ
ラレナカツタコトハ、一昨年定メタ新シイ稅ノ
落着キヲ見ルト云フ意味ニ於テ、然ルベキコト
デアツタト信ジマス、增稅サレタ稅ノ落着イタ
時ニ考フベキ問題ハ澤山アル、況シテヤ三百
六十億圓ノ中ニ、稅ノ占ムル地位ハ二割六分、
公債ノ占ムル地位ハ、六割六分トナツテ居
ルノデゴザイマシテ、稅ノ占ムル地位ガ低
下シテ居ルト云フコトモ、考ヘナケレバナ
ラナイノデアリマス、此ノ意味ニ於テ、負
擔衡平ノ面カラモ、收入增加ノ面カラモ考
ヘラレタイト思ヒマス、又今度ノ改正ニ依
ツテ、是以上ニ伸バシヤウノナクナツタ物
品稅ナドニ對スル工夫モ、今ヨリシテ準備
サレナケレバナラヌト思フノデアル、若シ
夫レ「インフレ」防止ノ面カラシマスレバ、ア
ノ手、此ノ手ト、凡ユル手段ヲ代替ニ行フ
ベキモノト信ズルノデアリマス
ソレニシテモ戰時財政ヲ遂行スル爲メ、二
百十億圓ノ公債ヲ消化シ、生產擴充資金ニ
六十億圓ヲ調ヘル國民貯蓄ノ意味ハ、益〓重
要トナツテ居ルノデアリマス、隨テ國民所
得五百億圓ノ中、國家ノ爲ニ稅デ百億圓、
公債デ二百十億圓、更ニ生產擴充資金トシ
テ六十億圓、都合三百七十億圓ヲ出シマス
ノデアリマス、サウ致シマスト、我等ノ生
活ハ百三十億圓デ賄ハナケレバナラヌコトニ
ナツテ、今年ヨリ二十億圓少クナルノデア
リマス、苦シカラウガ當然ヤラネバナラナ
イ、紅酒綠燈ノ下、遊興シナクナツタナラ
バ、稅ハ減ツテモ貯蓄ノ方ヘ廻ルナドト云
フ考ヘハ、如何チモノデゴザイマセウカ、
個人ノ懷ロカラ出ス遊興費ハ減リマシテモ、
會社ナドノ勘定カラ、經費トシテ出スモノノ
アルコトナドニ眼ヲ光ラセテ戴キタイト思
フノデアリマス(拍手)
又諸事簡素デナケレバナラナイト云フ中ニ、
少クナツタトハ言ヒナガラ、煙草ノ種類ノ減
リ方ハ、餘リ多クナイノデアリマス、酒ノ種類モ
新タニ四ツニ分ケル如キハ、稅ノ負擔ノ公正ト
云フ立場カラデゴザイマセウガ、同時ニ簡素
主義カラモ亦造ル品物ノ種類ヲ少クスレバ經
費ガ低マル、合理化主義ニ合フト云フ觀點カ
ラモ、考ヘテ戴キタイ問題デアルト存ズルノ
デアリマス、兎ニ角國民ノ生活ハ國家目的
ニ叶フヤウニ縮メテ行キマスガ、ソレニハ
政府側ニ於キマシテモ、物資ノ配給トカ、
物價ノ中正ナルベキコトナドニ付テ、國民
ノ生活ノ爲ニ目ヲ見テ戴カナケレバナラヌ
點ガ、少クナイト信ズルノデアリマス拍
手)況シテヤ、我等ノ生活其ノモノガ、凡
ユル面ニ於テ國家ノ締制下ニアルニ於テオ
ヤデアリマス、又國民ニ生活ノ引下ヲ要求
スル前ニ、役人ノ上ニ立ツ者ナリ、社會一
般ノ指導者ガ、其ノ手本ヲ示スベキコトハ、當
然ノコトデアルト信ズルモノデアリマス(拍手)
私ハ以上歲出ト歲入トニ付キ私見ヲ加
ヘツツ、此ノ豫算デヤツテ行クベキコト
ヲ述ベタノデアリマス、而モ豫算ヲ最大限
ニ效率化シ、「プラス·アルファー」ニ致シマ
ス爲ニハ、官民一體ニナツテヤラナケレバ
ナリマセヌ、國民ノ事業ニ依ル利潤ニ付キ、
適正ナルモノハ認ムベキデゴザイマスガ、
自由主義的營利根性ハ、其ノ根ヲ絕ツコト
ガ事業指導ノ要諦デアル、之ニ關聯シテ統
制會ノ育成ニモ留意サレタイト思ヒマス、
又國民生活ニ付テ、自分ダケ宜ケレバ宜イ
ト云フ考ヘヲ改メシムベキコトモ、國民生
活指導ノ要諦デアル、ソレニシテモ、國民
側ノコトハ我等衆議院ニ席ヲ有スル者ノ、最
モ能ク知ツテ居ル所デアリマス、取締ノ立
場ニアル人達ノ分ラヌ國民ノ心持、特ニ統
制經濟下ニ於ケル不滿不平ヲ、最モ能ク承
知シテ居ルノデアリマス、私ハ政府ノ役人
ノヤリ口ニ付テ、尻ツポヲ取ツテ論ハント
スル者デハナイ、ガ併シ役人ガ無用ナ體面
論ヤ、繩張爭ヒヲシテ居ルコトニ付キマシ
テハ、嚴ニ戒メラレタイト思ヒマス、東
條首相ノ言フ國民ノ力ヲ盛リ上ゲルニ付テ
ハ、國民ノ側ニ十分ノ心構ヘヲ作ルコトニ對
シテハ、我等政治ノ面ヨリシテ、必ズ御引
受ケ申スノデアル、此ノ上盛リ上ル力ヲ抑
ヘヌヤウニ、上ノ役人ノ考ヘガ、能ク下ノ
役人ニ滲ミ込ムヤウニ、馴致シテ行カナケ
レバナラナイノデアリマス(拍手)ソレヲ努
メテ戴キタイ、同時ニ下級役人ノ生活狀態
ニモ思ヒヤリヲシテ戴キタイト思フノデア
リマス
大藏大臣ハ決戰生產、決戰生活、決戰財
政ト申サレマシタ、洵ニ善キ表現デアル、
而モ其ノ生產、其ノ生活、其ノ財政モ役人
ニ依ル國家的指導ノ面ガ多イノデアリマス、
隨テ決戰生產、決戰生活、決戰財政ト共ニ、モ
ウ一ツ決戰行政ト云フコトヲ、役人ノ地位
ニアル人達ガ考ヘテ戴キタイノデアリマス(拍
手)手續ニ無用ナ時間ヤ、費用ガ掛ツタリス
ルコトハ、斷ジテ決戰行政デハナイノデアリマス
(拍手)時ハ金ナリトハ、昔ノ經濟人ノ言葉
デアリマシテ、今日ノ生產增强時代ニ於テ
ハ、時ハ物ナリト言フベキデアリマス、
日モ早ク我等ハ敵ヲ殪ス彈ヲ造リタイ、又
飛行機ヲ造リタイ、食糧ヲ得タイトシテ居
ルノデアリマス、手續ノ爲ニ益ナキ時間ヲ
取ラレルコトガ口惜シクモアリ、不經濟デ
アルト思フノデアリマス(拍手)固ヨリ役人
ノ惡ロヲ申シテ濟ム世ノ中デハナイ、今帝
國議會ハ、政府ト議會人トガ敵前ニ議事ヲ
進メテ居ルノデアル、敵ハ外ニアリマス、
米英デアリマス、國內ニ官民ガ啀ムト云フ
ヤウナコトハ、以テノ外ノコトデアル、卽
チ此ノ敵前議會ヲ通ジテ、官民ノ美ハシイ
體化ヲ、彌ガ上ニ强メネバナラヌト信ズ
ルノデアリマス、私ハ財政上ノ論議ヲ唯單
ニ物質方面カラ致スノデハゴザイマセヌ、
敵愾心ヲ强メツツ思想〓育ノ面ニ、留意シ
テ國民ノ精神力ヲ高ムベキコトハ、戰力增
强ノ要諦デアルト信ズルノデアリマス(拍
手)
諸君戰局ハ重大デアル、戰力ヲ增强シテ
敵國ノ非望ヲ打破ルベク上聖明ニ應ヘ奉
リ、下國民ノ負託ニ副フベク、此ノ三百六
十億圓ノ豫算ヲ承認スベキモノト信ズルノ
デアリマス、吾等ハ計畫經濟ノ基本トナル
物動計畫ナドニ付キ、全面的ニ政府ヲ信ジ
テ、此ノ三百六十億圓ト云フ大キナル小切
手ヲ振出ス權能ヲ、政府ニ與ヘマスト共
ニ、其ノ金ハ國民ガ耳ヲ揃ヘテ作ル、サウ
シテ三百六十億圓ノ豫算ヲ「プラス·アルフ
アー」ノ豫算トシテ現ハサネバナラヌト思
フノデアリマス、ドウカ滿場一致御贊成ア
ランコトヲ希望致シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=5
-
006・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 是ニテ討論ハ終局致
シマシタ、是ヨリ採決ニ入リマス、但シ總
豫算案中皇室費ハ協賛ヲ要セザル費目デア
リマスカラ、之ヲ除キマス、十案ヲ一括
シテ採決致シマス、委員長報告ハ何レモ可
決デアリマス、十案ヲ委員長報告ノ通リ決
スルニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=6
-
007・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 起立總員
〔拍手起ル〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=7
-
008・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 仍テ十案トモ委員長
報〓ノ通リ全會一致可決確定致シマシタ
(拍手)是ニテ昭和十八年度總豫算案外九件
ハ議了致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=8
-
009・森下國雄
○森下國雄君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、昭和
十八年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
債發行ニ關スル法律案、營繕用品資金特別
會計法案、造幣局ノ資金ニ關スル法律案、
昭和十五年法律第六十九號中改正法律案、
樺太內地行政一元化ニ伴フ樺太廳特別會計
ト他ノ會計トノ關涉ニ關スル法律案、昭和
十二年法律第八十號改正法律案、朝鮮事業
公債法中改正法律案、朝鮮簡易生命保險及
郵便年金特別會計法案、臺灣事業公債法中
改正法律案及ビ臺灣官設鐵道用品資金會計
法中改正法律案ノ十案ヲ一括議題トナシ、
委員長ノ報告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレ
ンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=9
-
010・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=10
-
011・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ-昭和
十八年度一般會計歲出ノ財源ニ充ツル爲公
債發行ニ關スル法律案、營繕用品資金特別
會計法案、造幣局ノ資金ニ關スル法律案、
昭和十五年法律第六十九號中改正法律案、
樺太內地行政一元化ニ伴フ樺太廳特別會計
ト他ノ會計トノ關涉ニ關スル法律案、昭
和十二年法律第八十號改正法律案、朝鮮
事業公債法中改正法律案、朝鮮簡易生命保
險及郵便年金特別會計法案、臺灣事業公債
法中改正法律案、臺灣官設鐵道用品資金會
計法中改正法律案、右十案ヲ一括シテ第一
讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長矢野庄太郞君
昭和十八年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案(政府
提出)第一讀會ノ續(委員長報告)
營繕用品資金特別會計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
造幣局ノ資金ニ關スル法律案(政府提
〓第一讀會ノ續(委員長報〓)
昭和十五年法律第六十九號中改正法律
案(大東亞戰爭ニ關スル一時賜金トシ
テ交付スル爲公債發行ニ關スル件)(政
府提出)第一讀會ノ續(委員長報〓)
樺太內地行政一元化ニ伴フ樺太廳特別
會計ト他ノ會計トノ關涉ニ關スル法律
案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
昭和十二年法律第八十號改正法律案
(通信事業特別會計ニ於ケル簡易生命
保險及郵便年金ノ事務ノ取扱ニ要スル
經費ニ關スル件)(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提
〓第一讀會ノ續(委員長報〓)
朝鮮簡易生命保險及郵便年金特別會計
法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
臺灣事業公債法中改正法律案(政府提
四第一讀會ノ續(委員長報告)
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法
律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一昭和十八年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案(政府
提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一營繕用品資金特別會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一造幣局ノ資金ニ關スル法律案(政府提
典
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一昭和十五年法律第六十九號中改正法律
案(大東亞戰爭ニ關スル一時賜金トシ
テ交付スル爲公債發行ニ關スル件)(政
府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一樺太內地行政一元化ニ伴フ樺太廳特別
會計ト他ノ會計トノ關涉ニ關スル法律
案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一昭和十二年法律第八十號改正法律案
(通信事業特別會計ニ於ケル簡易生命保
險及郵便年金ノ事務ノ取扱ニ要スル經
費ニ關スル件)(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一朝鮮事業公債法中改正法律案(政府提
〓
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一朝鮮簡易生命保險及郵便年金特別會計
法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一臺灣事業公債法中改正法律案(政府提
出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法
律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十三日
委員長矢野庄太郞
衆議院議長岡田忠彥殿
〔矢野庄太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=11
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012・矢野庄太郎
○矢野庄太郞君 只今議題トナリマシタ昭
和十八年度一般會計ノ歲出ノ財源ニ充ツル
爲公債發行ニ關スル法律案外九件ニ付テ、
委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓致シマス、
先ヅ議案ノ內容ヲ念ノ爲ニ簡單ニ一言致シ
マスト、第一ハ、普通ニ一般會計ノ赤字公
債ト稱セラレル公債ヲ發行スル法律案デア
リマシテ、御承知ノ通リ、假令豫算ガ通過
致シマシテモ、此ノ法律案ガ議會ニ於テ成
立セナケレバ、政府ハ公債ヲ發行スルコト
ガ出來マセヌ、而シテ此ノ法律案ニ依ツテ、
政府ガ其ノ發行ノ權限ヲ得ヨウト致シテ居
リマスル明十八年度發行ノ一般會計ノ赤字
公債ハ、三十一億八千六百三十万圓トナツ
テ居リマス、是ハ政府ニ於テ增加ノ修正ヲ
サレタ金額デアリマスガ、先刻此ノ席上ニ
於テ豫算委員長カラ御報告ニナリマシタ通
リ、十八年度ニ於テ發行スル公債ノ總額ハ、
二百十四億餘万圓トナツテ居ルノデアリマ
スガ、茲ニ只今議題トナツテ居リマスル公
債發行額ハ、三十一億八千六百三十万圓デ
アリマスガ、ソレデハ其ノ殘リハドウナル
ノカト云フ疑問ガ起ルノデアリマスルガ、所
デ其ノ殘リノ公債ハ、一部分ハ發行ノ權能
ヲ、旣ニ政府ガ持ツテ居ル分モアルノデア
リマス、ソレカラ只今本委員會ニ於テ、其
ノ發行ニ付テ權能ヲ得ントシテ政府ガ法
律案ヲ提出サレテ、今審議中ニ屬スルモノ
ガアルノデアリマス、左樣ナ譯デアリマス
ルノデ、金光委員長ノ御報告ニナツタ通リ
ニ、二百十四億餘万圓ノ公債ヲ發行スルコ
トハ、其ノ通リ事實デアルノデアリマス、
第二ハ、大藏省營繕管財局デ掌ツテ居リマ
スル建築、其ノ他ノ營繕事業ヲ施行致ス上
ニ於テ、物資ヲ得ル爲ニ、五百万圓ノ資金
ヲ設ケテ、新タニ特別會計トシテ經理セン
トスル法律案デアリマス、ソレカラ第三ハ
造幣局ノ資金ニ關スル法律案デアリマシテ、
案ノ內容ハ二ツニ分レテ居リマスガ、其ノ
一ツハ運轉資本金四百万圓ヲ、二千六百万
圓ダケ增加シテ、三千万圓トスルコト、ソ
レカラ其ノ二ツハ工場ノ新設擴張ノ爲ニ繼
續事業トシテ、二千三百五万餘圓ハ、旣ニ先
ノ議會ニ於テ協賛ヲ致シテ居リマスガ、ソ
レヲ六千百七十六万餘圓增加シテ、八千四
百八十一万餘圓トスルコト、此ノ二ツデアリ
マス、第四ハ大東亞戰爭ニ關シ一時賜金トシ
テ交付スル公債發行ニ關スル件デアリマス、
法律案ノ內容ヲ見マスルト、十五年度乃至
十七年度中ニ、一時賜金賜與ノ發令ガアリ
タルモノニ對シ交付スル場合ニ、只今ノ法
律ガ限定セラレテ居リマスルノデ、ソレヲ
十八年度ニ於テ賜與ノ發令ガアリタル部分
三、〇、適用セントスル改正案デアリマス、第
五ハ樺太行政ガ御承知ノ通リ、內地行政ニ
一元化サレル一ツノ現ハレト致シマシテ、
樺太ノ特別會計ノ中ノ色々ナ事業ノ中デ鐵
道通信其ノ他ノ事業ガ內地ノ事業ニ合併
サレマシテ、ソレガ爲ニ色々ナ事業ガ分離
シテ、內地ノ鐵道或ハ通信等特別會計、又
ハ一般會計ニ吸收サレマスガ、ソレニ關ス
ル法律案デアリマス、第六ハ行政簡素化ニ依
ツテ、厚生大臣ノ管理ニ屬シテ居リマシタ
簡易生命保險ト郵便年金ニ關スル事務ガ、
厚生大臣カラ遞信大臣ノ管理ニ移ルコトト
ナリマシテ、其ノ上ニ簡易生命保險、郵便
年金ニ關スル事務取扱ノ機構ガ改革ニナリ
マシタ爲ニ、會計事務取扱ヲ改正スル法律
案デアリマス、第七ハ朝鮮特別會計ニ於テ事
業公債ノ限度ヲ五億五千五百三十万圓ダケ
擴張スル法律案デアリマス、此ノ法律案ト豫
算トノ關係ハ、先ニ第一ノ所デ申上ゲマシタ
通リデアリマシテ、假令豫算ガ通過致シマ
シテモ、此ノ法律案ガ成立シナケレバ、政
府ハ公債發行ノ權能ヲ得ルコトハ出來ナイ
ノデアリマス、第八ハ朝鮮ニ於テ新タニ郵
便年金事業ヲ開始シマスノデ、之ニ關係ス
ル特別會計法案デアリマス、第九ハ、臺灣特
別會計ニ於テ、事業公債發行限度ヲ千五百
十万圓ダケ擴張スル法律案デアリマシテ、
豫算トノ關係ハ先ニ第一及ビ第七ニ於テ述
ベタノト同樣ナ關係ニアルノデアリマス、
第十ハ、臺灣官設鐵道用品資金ノ法定額二
百万圓ヲ、五百万圓ニ增加スル法律案デア
リマス
卽チ以上十件ノ中、所謂赤字公債及ビ事
業分債發行ノ法律案三件ヲ除キマスルト、殘
リノ七件ハ何レモ官廳會計事務處理、又ハ資
金等ノ增加ニ關スルモノデアリマスガ、今委員
會ニ於ケル質疑應答ノ大要ヲ申述ベマスト
第一點ハ、公債ノ消化ニ關シテデアリ
マスガ、森川仙太君カラ南方資源ノ開發會
社ヲ興シテ、公債所有者ニ其ノ株劵ノ優
先引受ヲ認メ、以テ公債ノ消化ヲ容易ニシ
テハドウカトノ質問ガアリマシタ、之ニ對
シテ政府ハ、或ル一部分ノ公債ニ對シテ、
南方企業ヲ以テ裏付ケスルコトハ、將來發
行スル數多ノ公債ニ惡影響ヲ及ボス虞ガア
ルカラ、俄ニ贊成ハ出來ナイ、政府ハ南方
資源ハ無論デアルガ、國家全體ノ信用ヲ以
テ公債ヲ發行シテ行キタイトノ答辯ガアリ
マシタ
第二點ハ、公債ノ發行手續ニ付テデアリ
マスガ、南鐵太郞君カラ、今日ノヤウニ汽
車ニ乘ルニモ指定劵ガ要ル、着物ハ衣料切
符ダ、食糧ハ割當配給ダト云ツタヤウニ、
消費ノ一擧一動ガ切符デ制約セラレル結果、
通貨ハ從來ノ性質ヲ一變シテ、一般的ナ切
符トナツタ、併シ此ノ一般的ノ切符ハ、特
別切符ガナクテハ使ハレナイ、詰リ通貨ハ
行キ所ガナイカラ、自然銀行等ノ金融機關
ニ集マル、故ニ政府ハ公債證劵ヲ發行セズ
トモ、銀行ニ一片ノ證書ヲ渡シテ御用金ヲ申
付ケタラ宜イデハナイカ、サウスレバ公債
證劵ノ發行ニ、多大ノ手數ト費用ヲ掛ケル
必要モナク、無駄ガ省カレルノデハナイカ
トノ意味ノ質問ガアリマシタ、之ニ對シテ
大藏大臣ヨリ、租稅ハ數百年ノ歷史ヲ有ス
ルガ、ソレデモマダ購買力吸收ノ方法トシ
テハ完全デハナイ、況ヤ切符制度ノ如キ最
近ノ發達ニ係ルモノデハ、購買力ヲ規正ス
ルニ甚ダ不十分デアル、故ニ資金調整、貯
蓄奬勵其ノ他色々ノ方法ヲ以テ、資金ノ集
中化ヲ圖リ、同時ニ其ノ離散ヲ防イデ居ル
ガ、併シ證書ヲ銀行ニ渡シ、公債證劵ノ發
行ヲ止メルヤウニハ中々行カナイ、尤モ今
日ト雖モ大口ハ日本銀行ニ於ケル登錄制度
ニ依ツテ、證劵發行ノ手數ハ省ケテ居ルガ、
百圓劵ハオロカ、十圓劵、五圓劵ノ發行マ
デヤツテ行カヌト、計畫通リノ購買力ヲ捕
捉シ、資金ヲ動カスコトハ出來ナイ、大要
此ノヤウナ答辯ガアツタノデアリマス
第三點ハ、文部大臣ハ能ク御聽取リヲ願
ヒマス、ソレハ貯蓄增强ニ付テデアリマス
ガ、國民學校ノ兒童ニ對シテハ、貯蓄增
强ノ趣旨目的ヲ認識セシムル爲ニ、或ル
程度努力ヲ拂ツタ跡ヲ認ムルコトガ出來
ルケレドモ、中等學校ノ生徒、殊ニ專門
學校、大學ノ學生ニ對シテハ、貯蓄增强ノ
必要性ヲ認識セシムルニ付テ、頗ル徹底ヲ
缺イテ居ル、ソレガ爲ニ或ハ多數不良學生
ノ狩出シヲ見タリ、劇場ノ門前ニ學生ノ山
ヲ築イタナドノ不祥事ヲ勃發シタコトハ、
洵ニ遺憾千萬デアル、抑〓國家ハ每年多額ナ
赤字公債ヲ發行シナガラ、是等學生ノ爲ニ
人ニ付一年數百圓、或ハ數千圓、殊ニ臺灣ノ
如キハ一万圓以上ト云フガ如キ、莫大ナ〓
育費ヲ支出シテ居ルノデアルガ、學生ハ斯
樣ナ事實ハ知ラナイ、若シ文部當局ガ學生
ヲ指導監督スルニ付テ、ソコニ意ヲ用ヒ、
國家ガ如何ニ學生ノ爲ニ犠牲ヲ拂ツテ居リ、
恩惠ヲ施シテ居ルカト云フコトヲ、學生ニ
ヨク〓ヘテヤレバ、前段述ブルヤウナ不祥
事ハ勃發シナイノミカ、一屏自肅自戒シテ、
時局ニ對シ認識ヲ新タニスルデアラウ、文
部當局ノ責任重大ナリト考フルガ、政府ノ
所見ハ如何トノ意味ノ質問ガ、松田正一君
カラ發セラレマシタ、ソレニ對シマシテ、
文部次官タル菊池政府委員ヨリ、御質問ハ
憂國ノ至誠溢フルルモノアルニ依ルト存ジ
マシテ、今後ハ學生生徒ノ指導ニ萬全ヲ期
シタイトノ答辯ガアリマシタ(拍手)
以上ノ外ニ各案ニ付テ、色々ノ角度カラ
質疑應答ガ交ハサレマシタガ、總テハ速記
錄ニ讓リマス、斯クシテ今日午前質疑ヲ終
了シ、討論ニ入リマシテ、全員一致政府提
出原案贊成ニ決シマシタ、此ノ段御報告申
上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=12
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013・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 十案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=13
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014・岡田忠彦
○議長(岡円忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ十案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=14
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015・森下國雄
○森下國雄君 直チニ十案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=15
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016・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御里
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=16
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017・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ十案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
昭和十八年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル爲公債發行ニ關スル法律案
第二讀會(確定議)
營繕用品資金特別會計法案
第二讀會(確定議)
造幣局ノ資金ニ關スル法律案
第二讀會(確定議ノ
昭和十五年法律第六十九號中改正法律
案(大東亞戰爭ニ關スル一時賜金トシ
テ交付スル爲公債發行ニ關スル件)
第二讀會(確定議ノ
樺太內地行政一元化ニ伴フ樺太廳特別
會計ト他ノ會計トノ關涉ニ關スル法律
案第二讀會(確定議)
昭和十二年法律第八十號改正法律案
(通信事業特別會計ニ於ケル簡易生命
保險及郵便年金ノ事務取扱ニ要スル經
費ニ關スル件)第二讀會(確定議)
朝鮮事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
朝鮮簡易生命保險及郵便年金特別會計
法案第二讀會(確定議)
臺灣事業公債法中改正法律案
第二讀會(確定議)
臺灣官設鐵道用品資金會計法中改正法
律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=17
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018・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發言モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、十案トモ委員長
報〓通リ可決確定致シマシタ(拍手)次會ノ
議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日
ハ是ニテ散會致シマス
午後二時四十分散會
衆議院議事速記錄第十號中正誤
頁段行誤正
二三七二三基本本法基本法
二四一一五外鐵金屬非鐵金屬発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01119430213&spkNum=18
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