1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月十八日(木曜日)
午後一時十分開議
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議事日程 第十二號
昭和十八年二月十八日
午後一時開議
第一 在滿日本人の身分に關する滿洲國裁判の效力に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第二 裁判所構成法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 陪審法の停止に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
帝國在郷軍人會に對する國庫補助増額に關する建議案
提出者
赤松寅七君 伊吹元五郎君
吉田貞次郎君 松浦周太郎君
(以上二月十六日提出)
押玄米奬勵に關する建議案
提出者 伊禮肇君
(以上二月十七日提出)
一昨十七日貴族院に於て本院の送付に係る
左の政府提出案を可決したる旨同院より通牒を受領せり
北海道鐵道株式會社所屬鐵道外十一鐵道買收の爲公債發行に關する法律案
多獅島鐵道株式會社所屬新義州南市間鐵道買收の爲公債發行に關する法律案
一議員より提出せられたる質問主意書左の如し
外交に關する質問主意書
提出者 角猪之助君
(以上二月十七日提出)
一去十六日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第六部選出請願委員 永田良吉君
一去十六日議長に於て選定したる委員左の如し
戰時刑事特別法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)委員
赤尾敏君 伊藤清君
今井新造君 今成留之助君
江口繁君 沖藏君
金井正夫君 木下郁君
木村武雄君 久山知之君
篠原陸朗君 庄司一郎君
宗前清君 田中伊三次君
田中勝之助君 田村みのる君
仲井間宗一君 信正義雄君
濱野徹太郎君 一松定吉君
松岡俊三君 牧野賤男君
眞崎勝次君 宮崎一君
滿井佐吉君 水谷長三郎君
山本粂吉君
一去十六日に於ける特別委員の異動左の如し
昭和十八年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)外九件委員
辭任大橋清太郎君 補闕清寛君
辭任南雲正朔君 補闕松浦伊平君
農業保險法中改正法律案(政府提出)外三件委員
辭任馬場元治君 補闕川崎巳之太郎君
石油專賣法案(政府提出)外二件委員
辭任山本粂吉君 補闕川崎巳之太郎君
辭任金光邦三君 補闕今井嘉幸君
辭任今井健彦君 補闕高橋熊次郎君
北支那開發株式會社法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)外二件委員
辭任河上丈太郎君 補闕前川正一君
一去十六日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
昭和十八年度一般會計歳出の財源に充つる爲公債發行に關する法律案(政府提出)外九件委員
理事 森川仙太君(理事南雲正朔君去十六日委員辭任に付其の補闕)
理事 清寛君(理事大橋清太郎君去十六日委員辭任に付其の補闕)
一昨十七日委員長及理事互選の結果左の如し
戰時刑事特別法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)委員
委員長 濱野徹太郎君
理事
金井正夫君 木村武雄君
田中伊三次君 山本粂吉君
一昨十七日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第六部選出
請願委員 川崎巳之太郎君(永田良吉君補闕)
一昨十七日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
請願委員
理事 川崎巳之太郎君(理事永田良吉君去十六日委員辭任に付其の補闕)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=0
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001・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス日理第一乃至第三ハ便宜上一括議題ト
ナスニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=1
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002・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程第一、在滿日本人ノ身分ニ關
スル滿洲國裁判ノ效力ニ關スル法律案、日
程第二、裁判所構成法中改正法律案、日程
第三、陪審法ノ停止ニ關スル法律案、右三
案ヲ一括シテ第一讀會ヲ開キマス-岩村
司法大臣
第在滿日本人ノ身分ニ關スル滿洲
國裁判ノ效力ニ關スル法律案(政府
提出、貴族院送付)第一讀會
第二裁判所構成法中改正法聿案(政
府提出、貴族院送付)第一續
第三陪審法ノ停止ニ關スル法律案/政
府提出、貴族院送付)第一讀會
在滿日本人ノ身分ニ關スル滿洲國裁判
ノ效力ニ關スル法律案
滿洲國ノ法院ガ同國ニ住所ヲ有スル日本
人ノ身分ニ關スル事件ノ爲ノ特別手續ニ
依リ隱居、廢家、親族會、相續又ハ遺言
ニ付爲シタル裁判又ハ處分ハ非訟事件手
續法ニ之ニ相當スル規定アル場合ニ限リ
裁判所ガ同法ニ依リテ爲シタルモノト同
一ノ效力ヲ有ス
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
裁判所構成法中改正法律案
裁判所構成法中左ノ通改正ス
第八十八條第一項ヲ左ノ如ク改ム
書記ハ判任トス但シ勅令ノ定ムル所ニ
依リ之ヲ奏任ト爲スコトヲ得
書記ノ職ハ司法大臣之ヲ補ス
司法大臣ハ大審院長控訴院長檢事總長
檢察長ニ各〓其ノ裁判所又ハ檢事局ノ
判任書記ヲ地方裁判所長檢事正ニ各〓
其ノ裁判所及其ノ管轄區域內ノ區裁判
所又ハ檢專局及其ノ局ノ附置セラレタ
ル地方裁判所管轄區域內ノ檢事局ノ判
任書記ヲ任シ及補スルノ權ヲ委任スル
コトヲ得
附則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
陪審法ノ停止ニ關スル法律案
陪審法ハ其ノ施行ヲ停止ス
附則
本法ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
本法ハ本法施行前陪審手續ニ依ル公判期
日ノ定リタル事件ニ關シテハ之ヲ適用セ
ズ本法施行前其ノ裁判ノ確定シタル事件
ニ關スル陪審法第四章又ハ第五章ノ規定
ノ適用ニ付亦同ジ
陪審法ハ大東亞戰爭終了後再施行スルモ
ノトシ其ノ期日ハ各條ニ付勅令ヲ以テ之
ヲ定ム
前項ニ規定スルモノノ外陪審法ノ再施行
ニ付必要ナル事項ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
〔國務大臣岩村通世君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=2
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003・岩村通世
○國務大臣(岩村通世君) 只今土程ニ相成
リマシタ在滿日本人ノ身分ニ關スル滿洲國
裁判ノ效力ニ關スル法律案外二件ニ付キマ
シテ、提案ノ理由ヲ順次御說明ヲ申上ゲマ
ス
御承知ノ通リ滿洲國ニ居住致シマスル日
本內地人ノ數ハ、逐年增加ノ一途ヲ辿リマ
シテ、殊ニ最近ニ於キマシテハ、開拓民其
ノ他一家一族ヲ擧ゲテ渡滿永住スル者ガ多
キヲ加ヘツツアルノデゴザイマス、是等ノ
在滿內地人ガ隱居、廢家其ノ他ノ身分上ノ
行爲ニ付キマシテ、裁判又ハ裁判所ノ處分
ヲ必要ト致シマスル場合ニ、現在滿洲國法
院ハ、斯カル裁判ヲナシ得ル權限ヲ有シテ
居リマセヌノデ、ドウシテモ內地ノ裁判所
ノ裁判ヲ仰グ外ハナク、其ノ都度多額ノ費
用ト、多數ノ日時ヲ費シ、且ツ現ニ從事致シマ
スル重要ナ仕事ヲ休ンデ、內地ニ戾ラナケ
レバナラヌ狀態デアリマシテ、其ノ不便洵
ニ大ナルモノガアルノデゴザイマス、仍テ
日滿兩國ノ特殊ナ關係ヲ考慮致シマシテ、
實際上ノ必要ニ應ズル爲ニ、今般滿洲國ニ
於テ在滿日本人ノ身分ニ關スル特別ノ手續
法ヲ制定致シマシテ、同國ノ法院ガ在滿日
本人ノ身分ニ關スル事項ニ付テ裁判ヲナシ
得ル途ヲ開クノニ相照應致シマシテ、我ガ
國ニ於テモ滿洲國法院ノ致シマシタ裁判ノ
效力ヲ承認致シマシテ、之ニ依ツテ前ニ述
ベマシタヤウナ不便ヲ除クコトニ致シタイ
ト存ズル次第デアリマス
次ニ裁判所構成法中改正法律案ニ付テ、
提案ノ理由ヲ御說明申上ゲマスゝ政府ニ於
キマシテハ、昨年實施致シマシタ行政簡素
化ニ伴ヒマシテ、一般官吏ノ優遇方ヲ考慮
致シ、多年重要ノ職ニ當リ事務練達優等
ナル者ハ、定員ニ拘ラズ、判任ヲ奏任トナ
スコトヲ得ル途ヲ開クコトト致シマシタ
然ルニ書記長ヲ除ク裁判所書記ハ、裁判所
構成法第八十八條第一項ノ規定ニ依リ、司
法大臣ガ之ヲ任ズルコトトナツテ居リマス、
卽チ判任官ニ限ラレテ居ルノデゴザイマス、
之ヲ奏任官トナスガ爲ニハ、裁判所構成法
ヲ改正スル必要ガアルノデゴザイマス、仍
テ今般裁判所構成法第八十八條第一項ヲ改
正シ、裁判所書記ハ判任ヲ原則トシ、例外
トシテ勅令ノ定ムル所ニ依リ、奏任トスル
途ヲ開カントスル次第デゴザイマス
次ニ陪審法ノ停止ニ關スル法律案ニ付テ
提案ノ理山ヲ御說明申上ゲマス、昭和三年
十月一日陪審法ガ施行セラレマシテカラ後、
陪審ノ評議ニ付セラレル事件ハ逐年遞減
シ、全國ニ於テ最近數年ハ、僅カニ或ハ一
件、或ハ三、四件ニ過ギヌト云フ狀態ニア
ルノデアリマス、然ルニ一方市町村ノ一般
事務ハ、年ト共ニ激增ノ傾向ニアリマスノ
デ、曩ニ昭和十六年法律第六十二號陪審法
中改正法律ニ依リマシテ、陪審員資格者名
簿及ビ陪審員候補者名簿ハ、之ヲ四年每ニ
調製スベキコトトシ、市町村ノ事務ノ負擔
ノ輕減ヲ圖ツタノデアリマスルガ、其ノ後
モ右兩名簿ニ異動ヲ生ジタル場合等ニ於
テ、市町村長ノナスベキ常務ハ、相當ニ殘
ツテ居ルノデアリマス、尙ホ陪審ノ公判ガ
開カレマシタ場合、陪審員ノ出頭ヲ必要ト
スルノハ勿論、陪審手續ノ性質上、勢ヒ相
當多數ノ證人ヲ喚問スルコトニモナリマス
カラ、是等ノ人々ガ戰時下種々多忙デアル
コトヲモ考慮シ、此ノ際陪審法ノ施行ヲ停
止スルコトハ、洵ニ已ムヲ得ザルモノト信
ズルノデアリマス、尤モ廢止スルノデハア
リマセヌカラ、大東亞戰爭終了後再施行ス
ル考ヘデゴザイマス、何卒愼重御審議ノ上、
何レモ御協賛ヲ與ヘラレンコトヲ御願ヒ致
シマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=3
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004・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 各案ノ審査ヲ付託ス
ベキ委員ノ選擧ニ付テ御諮リ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=4
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005・森下國雄
○森下國雄君 日程第一乃至第三ノ一一案ヲ
一括シテ、政府提出戰時刑事特別法中改正
法律案委員會ニ併セ付託セラレンコトヲ望
ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=5
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006・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=6
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007・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ動議ノ如ク決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=7
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008・森下國雄
○森下國雄君 委員會ニ付託シタル議案ノ
審査終了ヲ待ツ爲メ、此ノ際暫時休憩セラ
レンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=8
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009・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセスカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=9
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010・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、暫時休憩致シマス
午後一時十八分休憩
午後二時八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=10
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011・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 休憩前ニ引續キ會議
ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=11
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012・森下國雄
○森下國雄君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出戰時行
政特例法案、許可認可等臨時措置法案及ビ
〓育基金特別會計法外二十三法律ノ廢止ニ
關スル法律案ノ三案ヲ一括議題トナシ、委
員長ノ報〓ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレン
コトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=12
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013・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=13
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014・岡田忠彦
○議長(岡円忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ-戰時
行政特例法案、許可認可等臨時措置法案、
〓育基金特別會計法案外二十三法律ノ廢止
ニ關スル法律案、右三案ヲ一括シテ第一讀
會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス委員長前田房之助君
戰時行政特例法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
許可認可等臨時措置法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
〓育基金特別會計法外二十三法律ノ廢止
ニ關スル法律案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一戰時行政特例法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十八日
委員長前田房之助
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一許可認可等臨時措置法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十八日
委員長前田房之助
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一〓育基金特別會計法外二十三法律ノ廢
止ニ關スル法律案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十八日
委員長前田房之助
衆議院議長岡田忠彥殿
〔前田房之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=14
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015・前田房之助
○前田房之助君 諸君、私ハ只今議題トナ
リマシタ戰時行政特例法案外二件委員會ノ
審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
大東亞戰爭ガ眞ニ皇國ノ興廢ヲ賭シタル
決戰非常ノ時ニ直面致シテ居リマスル現段
階ニ對處スル爲メ、政府ハ凡ユル施策ヲ重
點的ニ戰力增强ニ集中シテ參ツタノデアリ
マスルガ、今囘更ニ生產行政ヲ、最モ效率
的且ツ重點的ニ敏活簡素ニ運營シテ、戰力
增强、就中重要軍需物資ノ飛躍的生產擴充
ヲ期センガ爲ニ、戰時行政特例法案竝ニ許
可認可等臨時措置法案ヲ議會ニ提出致シ、
是ト並行シテ雕時行政職權特例ヲ制定セン
トスルモノデアリマス、卽チ戰時行政特例
法案ハ、戰力增强ノ障碍トナルベキ一切ノ
法的制約ヲ排除シテ、生產力ノ飛躍的擴充、
其ノ他各般ニ亙ル綜合國力ノ擴充運用上ノ
具體的要請ニ應ズルガ爲メ、法律ノ一般的
ナル規律ニ對シ、勅令ノ定ムル所ニ依ツテ
戰時中特例措置ヲ講ゼントスルモノデアリ
やく、許可認可等臨時措置法案ハ、徹底的
ニ行政事務ヲ刷新强化シ、國民活動ヲ積極
濶達ナラシムル爲メ、法律ヲ必要トスル事
項ニ付キ、特別ナル措置ヲ講ゼントスルモ
ノデアツテ、戰時行政特例法案ト相俟チテ、
生產增强ノ效率化ヲ圖ラントスルモノデア
リマス、戰時行政職權特例案ハ、鐵鋼、石
炭輕金屬、船舶、航空機等ノ重要軍需物
資ニ關シテ、是ガ生產ノ飛躍的擴充ヲ達成
センガ爲ニ、必要ナル行政職權ニ關スル特
例ヲ定メントスルモノデアツテ、是等物資
ノ生產擴充ニ關シ、內閣總理大臣ニ於テ、
各省大臣ニ對シテ必要ナル指示ヲナシ得ル
ノ途ヲ開キ、又是等重要物資ノ生產要件タ
ル勞務、資材、動力、資金ニ關スル各省大
臣ノ職權ノ一部ヲ、命ヲ承ケテ内閣總理大
臣自ラ行ヒ、又他ノ各省大臣ヲシテ行ハシ
メ、以テ生產部面ニ於ケル戰時行政ノ强力ナ
ル推進統一ヲ圖ルト共ニ、時宜ニ應ジテ右
生產ニ關係アル行政官廳、或ハ官吏ノ職權
ヲ調整シ、以テ指導監督ノ單純一元化ヲ圖
ラントスルモノデアリマス
斯クノ如ク內閣總理大臣ノ權限ヲ强化
シ生產行政ヲ一元化スルコトハ畫期的
措置デアツテ、大體ニ於テ我ガ翼贊政治會
ノ主張ト民間ノ要請ニ應ヘントスル政府ノ
英斷ト見ルベキモノデアリマス、併シナガ
ラ其ノ效果ハ懸ツテ今後ノ運營ニ存スルノ
デアリマス、隨テ今後運營ノ適否コソハ、
戰ヒノ勝敗ヲ決スル鍵ナリト申上ゲテモ、
故テ過言デハナカラウト存ズルノデアリマ
ス
是ニ於キマシテカ本委員會ハ、其ノ使命
ノ重大ナルニ鑑ミマシテ、、本月三日ヨリ今
日ニ至ルマデ、愼重審議ヲ盡シタノデアリ
さく、委員各位ハ何レモ極メテ熱心且ツ眞
摯ナル態度ヲ以テ、實地ノ調査ト周到ナル
〓鑚トヲ基礎トシテ、凡ユル角度ヨリ戰力
增强ニ關スル積極的且ツ建設的意見ヲ述べ
テ、政府ノ所信ヲ質シナガラ、政府ノ重要
施策ニ供セラレ、其ノ烈々タル翼贊ノ熱意
ハ一億同胞ノ總意ヲ反映セシムルニ十分
デアツタノデアリマス(拍手)東條內閣總理
大臣亦磐石ノ信念ノ下ニ、不退轉ノ勇氣ヲ
以テ時局擔當ノ決意ヲ示サレ、大膽率直ニ
國政運用ノ根本方針ヲ表明シテ、決戰下盛
リ上ル國民ノ協力ヲ求メラレ、其ノ他ノ國
務大臣、政府委員亦何レモ虛心坦懷、其ノ
所信ヲ闡明セラレマシタルコトハ、洵ニ吾
吾ノ多トスル所デアツタノデアリマス拍
手)
質疑ニ入ルニ先ダチマシテ、政府ノ要求
ニ依リ祕密會ヲ開キマシテ、鈴木企畫院總
裁ヨリ鐵鋼、石炭、「アルミニウム」ノ生產事
情ニ付テ、佐藤陸軍省政府委員ヨリ航空機
等ニ付テ、岡海軍省政府委員ヨリ造船等ニ
付キ、ソレ〓〓詳細ナ說明ガアツタノデア
リマス、是ヨリ質疑應答ノ主ナルモノヲ申
上ゲマス、詳細ハ何卒速記錄ニ於テ御承知
ヲ願ヒタイノデアリマス
先ヅ第一ハ、大東亞戰爭開始以來民間ノ
產業界ハ、總理大臣ノ權限强化、生產行政
ノ一元化ニ依ル生產增强ノ效率化ヲ熱望シ
テ居ツタノデアリマス、而シテ法案及
ビ勅令案ニ示サレタル首相ノ指示權、
命令權ハ、極メテ廣範圍ニ及ビ、首相ノ政
治力ハ非常ニ强化サレルノデアルガ、世間
デハ之ヲ目シテ首相ノ「ワン·マン·コント
ロール」ダトモ解釋シ、又ハ總理統裁主義
ナドト言ツテ居ルノデアル、又生產行政ノ
一元化ニ伴ヒ、金業經營形態ガ漸次〓〓家管
理ニ移行スルノデハナイカト案ジテ居ルト
テ、政府ノ所信ヲ質シタノデアリマス、東
條首相ハ、歐米ノ獨裁主義ハ、我ガ國體ト
根本ニ相容レザルモノアルコトヲ明カニ
セラレ、日本ノハ陛下ノ御命令デ、內閣
總理大臣ト云フ重職ニ御任命ニナツテ居ル、
而シテ現在ハ私ガ全國ノ指導者デアル一個
ノ東條ト云フ者ハ草莽ノ臣ニ過ギナイ、唯
私ハ玆ニ總理大臣ト云フ職責ヲ與ヘラレテ
居ル、是ハ陛下ノ御光ヲ受ケテ初メテ光
ルノデアル陛下ノ御光ガナクナツタナラ
バ、私ナンカハ石コロニ等シイ陛下ノ御信
任ガアリ、此ノ地位ニ就イテ居ルガ故ニ光
ツテ居ル、ソコデ所謂獨裁者ト稱スル歐米
ノ諸公トハ、全然趣キヲ異ニ致シテ居ルノ
デアル(拍手)又戰力增强ノ實施ニ當ツテハ、
飽クマデモ國民ノ盛リ上ル力ヲ結集シ、國
民ノ創意、國民ノ工夫等ヲ自由濶達ニ動カ
シ、之ヲ綜合シテ其ノ目的ヲ達シタイ、隨
テ强權ニ依リ全面的ニ國家管理ヲナスガ如
キコトハ、餘リ我ガ國體ニモ副ハナイノデ
アルカラ、自分ハ斯樣ナ意圖ヲ持ツテ居ラ
ナイ、企業經營ノ形態ハ成ルベク現在ノ儘
進ミタイ、機構イヂリハヤラヌ、仕事ハ人ニ
依ルノデアルカラ、軍、官民一致協力シ
テ進ムナラバ、必ズ英米ヲ擊滅シ得ルトテ、
固キ信念ノ下ニ決戰下國政運用ノ根本方針
ヲ明カニシテ、一億國民ノ協力ヲ求メラレ
タノデアリマス
第二、指示權竝ニ法令ノ運用ニ關シ、各
省大臣ニ對スル內閣總理大臣ノ指示ハ、指
揮命令ト同一ノモノナリヤ、內閣總理大臣ノ
權限强化ノ結果、國務大臣輔弼ノ性格ニ重
大影響ヲ及ボサザルヤ、內閣總理大臣ガ新
タニ付與サレシ權限ノ發動ノ範圍如何トノ
質疑ニ對シ、森山政府委員ヨリ、首相ノ各省
大臣ニ對スル指示權ハ、指揮命令ト實質的
ニハ何等ノ變リハナイ、併シ指揮命令ハ上
紋官廳ガ下級官廳ニ對シテノミ使用サル
ベキモノデアツテ、內閣官制デハ首相ト
各省大臣ノ閣內ニ於ケル地位ハ同等デアル
カラ、此ノ點ヲ考慮シテ、特ニ指揮命令ノ
言葉ヲ避ケ、指示ナル言葉ヲ使ツタノデア
ル、隨テ首相ノ關係各省大臣ニ對スル指示
權ハ、關係各省大臣ノ行政職權ニ對スルモノ
デアリ、其ノ指示ラ受ケタル各省大臣ハ
之ニ從フ義務ガアルノデアル、斯ノ如ク首
相ガ關係各省大臣ニ指示スル時ハ首相ハ
行政長官トシテ有スル各省大臣ノ職權ニ對
シテノミ指示スルモノデアツテ、國務大臣
ノ輔弼ノ職務ニ對スルモノデハナイ隨ツ
テ各省大臣輔弼ノ性格ニハ、何等ノ影響ヲ
及ボサナイ、首相指示權ノ範圍ハ廣範圍デ
アル、鐵鋼等五重要軍需物資ノ生產擴充上
必要アル限リニ於テハ其ノ重要品目其ノ
モノヲ對象トセズトモ、ソレニ關聯スル各
種物資ノ關係ニモ及ビ、更ニ進ンデソレニ
關聯シナイ物資、或ハ國民生活ノ消費部面
ニ關シテモ、各省大臣ヲ指示シ得ル彈力性
ヲ有シテ居ルコトヲ、明カニサレタノデア
リマス
第三ハ我ガ國ノ國是トモ見ルベキ農村ニ
四割ノ人口ヲ保有シナガラ、近代的ヲ顧防
國家ヲ建設スルニハ、大ナル苦心ヲ要スル
ト思フ歐洲ノ今囘ノ戰爭ヲ見テモ、少ク
トモ人口七、八千万人ヲ持タナイ國家ハ
國家トシテ成リ立チ得ナイ狀態デアル、換
言スレバ現在ノ戰爭ハ七、八千万以上ノ人
口ト、一億以上ノ人ロトヲ持ツ國ノ戰爭デ
アル、隨テ英國ノ如キハ、ドンナニ頑張ツ
テモ、人ロガ少イノデアルカラ、日本ニ依
リ海軍ヲ擊破サレタラ、直チニ劣等國ニ沒
落スルハ當然デアル、獨「ソ」戰ノ如キモ、兩
民族ノ人口總數ガ、戰ヲ決スル上ニ於テ相當
重要デハナイカト思フ、殊ニ今囘ノ如ク長
期運續ノ決戰デ、且ツ曾ツテナキ熾烈ナル
戰爭ニ於テハ、人口總數ガ重要ナ要素トナ
ル、戰爭ノ現段階ニ於テ、生產增强ガ絕對ノ
要請デアル今日、農村ニ四割ノ人口ヲ保持ス
ルト同時ニ、生產擴充ノ人口トヲ如何ニシテ
調和スルカハ、蓋シ重大問題デアル、殊ニ將
來農村ガ强兵ノ根源デアルト共ニ、工場亦
强兵ノ源泉ニセナケレバナラヌト思フ、又日
本ノ丁場ハ歐米ニ比シテ能率ガ惡イ、如何
ナル理用的ノ工場ト雖モ、勞働者ノ數ニハ、
アル程度ノ限度ヲ必要トスル、千人乃至二
千人程度ノ工場ガ、理想的デ能率モ上ル傾向
ガアル、斯ノ如キ工場ニハ指導能力ニ限度ガア
ルカラ、最高能率ヲ上グル爲メ、工場單位制ヲ
考慮スベキデハナイカトノ意見ニ對シマシテ、
吏條首相ハ、大體人口一億以下ノ國家ハ、
將來世界ニ雄飛シ得ナイ、隨テ人口ノ增加
ハ極力國家的ニ考フベキデアル、何レノ國
デモ戰爭ノ間ハ人口ガ減ル、死亡ガ殖エテ
出產ガ少クナルノガ常態デアル、幸ニ日本
ダケハ是ト違ツテ殖エテ居ル、又今年モ殖
エテ居ル是ハ實ニ貴重ナ現象ダト思フ、
是ハ日本獨特ノ家族制度ガ、重要ナ原因ヲ
ナシテ居ルノデハナイカト考ヘラレル、隨
テ家族制度ヲ破壞スルヤウナ行爲ハ、努メ
テ避ケルヤウ指導シテ居ル、而シテ「イギリ
ス」ノ如ク殆ド農村ハ疲弊シ、工場ガ主體
デ、工場本位ノ形ニ進ムヤウナ事態ハ國防
上ノ見地カラ、將又一ノリリチリラ言ツ
テ、健全ナ形デハナイカラ四割ノ人口ハ
是非共農村ニ保持スベキデアル、工場單位
制ハ能率ヲ上グル上ニ於テ、一ツノ着想ト
思フカラ〓究スルトノ率直ナル答辯ガアツ
タノデアリマス
第四、統制會ハ何レモ設立後日尙淺ク、
其ノ內容未ダ充實セザルモノモ少クナイ、
今ヤ生產行政ヲ一元化シテ、基本軍需物資
ノ飛躍的生產增强ヲ急務トスル今日、急速
ニ統制會ヲ充實强化スルノ要アリト思フ、
隨テ速カニ權限ヲ移讓シ、且ツ統制會ト官
廳トノ間ニ、眞ニ有爲ノ人材ヲ交流セシメ
テハ如何、又統制會ニ經濟行爲ヲ許スベキ
中、統制會ノ橫ノ連絡ヲ作ル爲メ、上部機
構ヲ設クルノ意思ナキヤ等ノ皆疑ニ對シ、
商工大臣ハ、統制會强化ノ爲ニハ、其ノ組
織內容ヲ充實刷新シ、業界全體ガ統制會
ニ協力シ、政府亦統制會ノ强化ニ對シ、出
來ル限リ速カニ權限ヲ移讓スル等育成强化
ニ協力スル、官廳ト統制會トノ人事交流ヲ
可及的ニ實行シ、最高能率ヲ上グルコトニ
努力スル統制會ノ經濟行爲ハ、理論的ニハナ
シ得ル建前ナルモ、今日之ヲ行フハ適當デ
ハナイ、若シ必要アル場合ニハ、統制會ノ下
部組織タル統制會社ヲシテ行ハシムルコト
ガ滴當デアル、統制會ノ橫ノ連絡ハ、今ノ
所重要產業協議會ヲシテ行ハシムル、統制
會ノ上部ニ法的統制機關ヲ設クルコトハ
其ノ指導性ヲ稀薄ナラシムルカラ、設置ス
ル意思ハナイ旨御答辯ガアリ、其ノ所信ヲ
明カニサレタノデアリマス
第五、從來賃金締制令ハ、低物價政策ニ
相呼應シテ來タガ、決戰下ニ於ケル生產增
强ノ爲メ賃金、物價等ニ付テモ、全面的ニ
新シキ構想工夫ヲ必要ト思フガ、政府ノ所
見如何トノ質疑ニ對シ、厚生大臣ハ、低物
價政策ヲ堅持スルコトハ原則ナルモ、物價
ニ付テハ生產ノ增强ト、國民ノ生活トヲ睨
ミ合セテ、各〓ノ物資ニ付キ現下ノ實情ニ
卽應シテ、新シキ對策ヲ必要トスル段階ニ
達シテ居ル、此ノ對策ナクテハ、生產增强
上ノ隘路ハ、完全ニ開カルルモノデハナイカ
ラ、速カニ檢討シテ見ヨウト思フ、又生產
增强ガ國家ノ絕對要請デアル以上、賃金ト
收入トヲ別個ニ考ヘテ、勤勞ノ管理ハ作業
場ノミノ管理ニ止マラズ、進ンデ生活管理ニ
マデ及ブベキデアツテ、是ガ爲メ、生活賃
金制ヲ考慮スル必要ガアル、此ノ新シキ賃
金制ガ生レナケレバ、生產力ノ擴充ノ眞ノ
目的ハ達シ得ザル旨、極メテ熱心ニ、且ツ率
直ニ其ノ所信ヲ示サレタノデアリマス
第六ハ、現在勤勞ニ關スル法令ハ複雜多
岐ニ亙リ、其ノ門統一ヲ缺ケルノミナラズ、
今日ノ實情ニ副ハザルモノモ少ナクナイト
思フ、政府ハ勤勞ニ關スル根本法ヲ制定ス
ル意思ナキヤ、又產業及ビ企業ノ重點移動
ニ伴フ企業整備ノ進捗ニ依リ、工場事業間
ニ於ケル勞務者ノ配置轉換ハ、重點ナ問題
ト思フガ、勞務者ノ配置ニ付キ、法制的措
置ヲ講ズル要ナキヤトノ質疑ニ對シマシテ、
厚生省政府委員ヨリ、厚生省トシテハ、勤勞
ニ關スル根本法ハ一應案ハ出來テ居ツタ
ノデアルガ、戰時行政特例等ノ爲メ、提案
ヲ見合ハシタノデアル、昨年二月總動員法ニ
基キ、重要車業場勞務管理令ガ、勅令ヲ以
テ公布サレタガ、此ノ勅令ハ一種ノ勤勞根
本法ノ趣旨ヲ、相當含ンデ居ルモノト思フ、
戰時行政特例ガ公布サレ、勤勞根本法ガ制
定サレルマデノ暫定的措置トシテハ此ノ
管理令ニ依リ、勤勞精神、勞務管理等各工
場ニ適シタル施設ヲ講ゼシムルコトトシ、
生產增强ト勤勞者ノ厚生トヲ圖リタイト考
ヘテ居ル、又勞務者配置ニ付テハ、出來得ル
限リ自發的意思ニ俟チ、更ニ國民徴用合ニ
依ル徴用モ考慮シ、ソレト別途ニ總動員法
第六條ヲ適用シ得ルヤ否ヤ〓究中デアル、若
シ適用シ得ザル場合ハ、國民職業指導所長
1.半バ强制的ナル指導幹旋ニ依ツテ行フ
コトトスル、併シナガラ厚生省トシテハ
現行法令以外ニ新シキ法制的措置ヲ講ズル
コトニ付テモ、目下〓究中ナル旨ノ懇切ナ
ル答辯ガアリ、勞務再編成ノ必要性ヲ認メ
ラレタノデアリマス
第七ハ、超重點產業ノ生產增强ノ爲ニ、
又支那ニ居ル現地軍ノ必要上カラ、我ガ國
ハ支那ヨリ相當巨額ノ物資ヲ買付クル要ア
リト思フ、是ガ收買ニ當ツテハ、如何ナル
通貨ヲ使用スルヤ、軍票ト儲備劵ノ現在ノ
交換此率ハ、今後ト雖モ堅持スル方針ナリ
ヤトノ質疑ニ對シ、大東亞大臣ハ、昨年三
月儲備銀行劵ト舊法幣トノ等價離脫後ニ於
テ、儲備劵ノ流通面ヲ擴充シ、其ノ基礎ヲ
强化スル工作ニ對シ、我ガ方モ全面的ニ支
舟ヲ與ヘ、旣ニ大體中南支主要地區ニ於
テ、諸備劵ノ統一工作ガ出來上ツテ居ル、
隨テ物資ノ買付ニ付テモ、出來得ル限リ儲
備銀行劵ヲ使フ方針デアル、又昨年三月軍
票ト儲備劵ノ相場ヲ百對十八圓ニ決メテ、
此ノ相場ヲ維持スルコトヲ日支兩當局ヨリ
發表シ、今日マデ實行シテ居ル、此ノ儲備
劵ト日本ノ圓ノ交換比率十八圓ハ、今後ト
雖モ堅持スル方針ナル旨明言サレマシタ
ガ、此ノ大東亞大臣ノ聲明ハ、支那ノ參戰
後多少ノ𣏌憂ヲ抱キツツアリシ通貨ニ對ス
ル不安ヲ一掃シ、支那民心ノ安定ニ裨益ス
ルコト、大ナルモノガアツタト思フノデア
リマス、其他企業整備ノ問題、物價問題、
勞務ニ關スル問題、賃金ニ關スル問題、資
材資金、糧食、運輸、石炭增產竝ニ資材囘
收等國政百般ニ亙ツテ、極メテ適切ナル建
設的意見ヲ述ベテ、戰力增强ニ論議ヲ集中
セラレ、政府亦懇切丁寧ニ答辯ガアツテ、
ソレ〓〓其ノ所信ヲ明カニサレタノデアリ
マス
唯本委員會ヲ通ジテ遺憾ニ考ヘマシタコ
トハ法令審議ノ爲メ、是等法令運用ノ具
體的細目ヲ知ルコトノ必要ヲ認メ、政府ニ
再三交涉致シタノデアリマスルガ、是等法
令ハ、各種ノ事態ニ應ジ、隨時適切ナル措置
ヲ講ジ得ル所ニ、是等法令ノ眞面目ト特色
ガアルノデアルカラ、假ニ差當リノ措置ト
シテ、〓究中ノモノヲ說明シテモ、之ヲ以
テ是等法令ノ將來ノ運用ノ全貌ヲ明カニス
ルモノデハナク、却テ關係者ニ政府ノ措置
ガ是等ニ限定セラルルモノナルカノ誤解ヲ
生ゼシムル虞アリトノ理由ノ下ニ、遂ニ知
ルコトヲ得ナカツタノデアリマス、就キマ
シテハ政府ハ速カニ民間ノ經驗知能ヲモ十
分攝取シテ、實際ニ卽スル有效適切ナル運
用ノ具體的細目ヲ決定セラレンコトヲバ、
此ノ機會ニ於テ希望致シテ置キマス
質疑終了ニ際シ、昨日私ハ委員會ノ總意
ヲ體シ、首相ノ指示權ト輔弼ノ職務、職樺
ノ移管ト責任ノ分擔又ハ歸屬、國家諸計書
ト生產增强ノ完遂、企業整備等ト國家ノ角
擔、行政ノ障碍除去、憲法ノ餘重ト强力ナ
ル政治力ノ發揮等ニ付キ、東條首相ノ信念ト
所信トヲ質シタノデアリマス、詳細ハ速記
錄ニ就テ御承知ヲ願ヒタイト存ジマスル
ガ、首相ノ御答辯ニ依リ明カトナリマシタ
ル極メテ要對ダケヲ御報〓申上ゲマス、卽
チ內閣總理大臣ノ指示ハ各省大臣ノ行政
各部長官トシテノ職權ニ對スルモノデアリ、
國務大臣トシテノ輔弼ノ職務ニ對スルモノ
デナイコト、各省大臣ハ之ニ從フ義務ノア
ルコトヲ再確認セラレ、階權ヲ整ハ明確ニ
之ヲ行ヒ、苟クモ職務ノ混淆ヲ來スコトナ
キコトヲ期スルコト、生產力增强ニ支障ノ
アル行政部門ノ障碍除去ニ付テハ曩ニ翼
贊政治會ノ調査セラレタ點ハ、洵ニ適切デ
アツタト思フ、斯カル障碍ヲ敏速ニ、而モ
徹底的ニ排除シテ生產ノ發揮ニ努メルコ
ト、基本軍需物資ノ飛躍的增產ノ爲メ、平
和產業ハ固ヨリ重工業方面ニ於テモ、大規
模ノ企業整備ヲ斷行スルノ要アリト思フ、
固ヨリ政府ハ基本軍需物資ノ增產ノ爲ニ
ハ、必ズシモ既定方針等ニ拘泥セズ、思ヒ
切ツタ措置ニ出デ、之ニ要スル金額モ必ズ
シモ豫算ニ計上シタ金額ヲ以テシテハ賄
ヒ切レナイ場合モ考ヘラレル、其ノ際ノ措
置トシテ、相當多額ノ豫備金ヲ準備シテ居
ルガ、而モ尙ホ不足スル場合ニハソレ
ゾレ必要ナル措置ヲ講ジテ萬遺憾ナキヲ
期スル旨ノ言明ガアツタノデアリマス、最
後ニ是等法令ノ運用ニ當ツテハ憲法ヲ尊
重スルコトハ勿論、且ツ强力ナル政治力ヲ
發揮シテ行政ノ滲透ヲ期シ、閣僚ト共ニ挺身
生產增强ニ當ルノ決意ヲ表明セラレタノデ
アリマス、是ニテ質疑ハ終了致シタノデア
リマスルガ、私ハ戰力增强ノ超重要性ニ
鑑ミ、本委員會ヲ通ジテ、眞摯ニシテ而
モ活潑ニ行ハレマシタル建設的意圖ヲ一括
綜合シテ、簡單ニ御報告申上ゲ、一段ト政
府ノ勇斷ヲ要望スルト共ニ、一億國民ノ一
層ノ協力ヲ促シタイト存ズルノデアリマス
諸君、戰局ハ正ニ重大デアリマス、今コ
ソ戰ヲ決スベキ秋デアリマス、明日ノ千「ト
ン」ヨリモ、今日ノ百「トン」ヲ重シトスル時
デアリマス、而モ決戰ニ對應シ得ル如ク、
生產ノ割期的增强ノ目的ヲ達成スルコトハ、
一ニ懸カツテ是等法令ノ今後ノ運用如何ニ
存スルノデアリマス、是ガ運用ノ局ニ當ル
者ノ責務ガ、如何ニ重大ナルカヲ白覺セネ
バナラヌノデアリマス、內閣總理大臣ノ指
示ハ、民間ノ經驗知能ヲ十分攝取シ、實際
ニ卽應シテ發セラルベキデハアルガ、其ノ
發セラレタル指示ハ、關係各省大臣ヲ通ジ
テ、官吏機構ノ末端ニ至ルマデ敏速ニ透徹シ、
行政事務ガ敏活ニ處理セラルルコトガ、何
ヨリモ肝要デアルノデアリマス、ソレガ爲
ニハ支那事變以來國政百般ノ土ニ幾多ノ
情弊ヲ釀成シ、忠誠ナル國民ヲシテ、其ノ依
據スル所ヲ惑ハシメ、生產增强ノ深刻ナル
隘路ヲナシツツアリシ行政事務ノ屬僚化ヲ
改メテ、上級責仟行政官ノ青任制ヲ、專實ノ
上ニ確立スルコトガ、喫緊ノ要務デアラウ
ト考ヘルノデアリマス(拍手)千百ノ訓示
ヨリモ、一ツノ實踐ヲ以テ尊シトスルモノ
デアリマス(拍手)
今ヤ一億同胞ハ、其ノ總力ヲ凝集シテ、
戰ヒニ打勝タンガ爲メ、前線將兵ノ勞苦ヲ
偲ビナガラ臥薪嘗膽ヲモ敢テ辭セザルノ熱
意ヲ以テ、決戰生活ノ下ニ政府ニ協力セン
ト誓ヒツツアルノデアリマス(拍手)然ルニ
若シソレ吏道亂レテ、苟且ニモ車務アツテ
政治ナキ傾向アリトセバ、是レ國民ノ忠誠
心ヲ裏切ルモノデアリマス、政府ハ須ラク
時弊ヲ達觀シテ、英斷以テ吏道ヲ振肅シ、
信賞必罰ヲ明カニシ、適材ヲ適所ニ配置シ
テ、行政ノ根本的刷新ヲ期スベキデアリマス、
併シナガラ行政ノ機構ヲ潑刺タラシムルニ
ハ、行政ノ背後ニ强力ナル政治力ヲ必要ト
スルモノデアリマス、卽チ決戰行政ノ爲ニ
ハ、決戰政治ヲ前提要件トシナケレバ相成
ラヌノデアリマス(拍手)決戰政治ナクシテ、
決戰行政ハ斷ジテ生レルモノデハナイノデ
アリマス、政府ハ生產增强ノ至上命令ニ應
ズル爲メ、內閣總理大臣ノ權限强化ニ伴ヒ
テ、强力ナル政治力ヲ發輝スベク、更ニ新
シキ樺想ト努力トヲ致サレンコトヲ、此ノ
際特ニ政府ニ要望スル次第デアリマス、生
產行政ノ一元化ニ依ツテ、生產增强隘路ノ
源泉タリシ官廳ノ割據主義ハ是正サルベキ
デハアルガ、强力ナル政治力ガ、上ハ關係
各省大臣ヨリ下ハ末端屬僚ニ至ルマデ滲
透スルニアラザレバ、割據主義ハ依然トシ
テ其ノ影ヲ潜メズ法令ノ運用上多大ノ支
障ヲ來スノミナラズ、法令ノ具體案其ノモ
ノガ、鶴的ニ墮スル虞スラアルノデアリマ
スカラ、此ノ點特ニ東條首相ノ大勇斷ヲ望
ムモノデアリマス
更ニ法規ノ末節ニ制約サレテ、一律化、
平板化セル官僚統制ヲ打破シテ、統制方式
ヲ改正シ、基本軍需物資ノ飛躍的增强ノ目
標線ニ沿ヒテ、彈力性アル決戰締制ノ方式
ニ進ムコトガ、各務中ノ各務デアリマス、併
シナガラ是ガ爲ニ、今後締制ガ緩和サルル
ノデハナイカトノ印象ヲ、國民ニ與ヘテハ
相成リマセヌ、申スマデモナク締制ハ手段
デアツテ、目的デハナイノデアリマスルカラ、
屬僚慾ヨリ生レタル不必要ナル締制、或ハ決
戰經濟ノ現段階ニ於テ、旣ニ不必要化セル統
制、重複セル絲制ハ、斷乎排除スベキデハア
ルガ、戰力增强ニ國家ノ總力ヲ集中〓揚ノ必
要アル今日、統制經濟、計畫經濟ハ決シテ退
步スルモノデハナク、更ニ積極的ニ强化シテ、
ミ國家ノ總力ヲ愈〓戰力增强ニト集中スベキハ
當然デアリマス、物價ト勞務ハ決戰經濟ノ根
底ヲ成スモノデアリマス、殊ニ限リアル資材
ヲ最高度ニ活用スル爲ニハ、生產增强ノ
線ニ沿ツテ物價政策ヲ改訂シ、勞務政策ヲ
再編成スルコトハ、喫緊ノ急務デアリマス、物價
政策ニ付テハ現行補助金政策ノ補强ト相俟
チテ、單一原價計算制ニ依ル適正價格ノ擴
充、竝ニ或ル程度ノ協定價格ノ活用等考慮
スベキデハナイカト思フノデアリマス、(「簡
單」「簡單」)其ノ他利慾追求ノ念ハ斷乎排擊
シテ、國民ノ決戰意識ヲ〓揚スベキデハア
ルガ、適正ナル生產利潤ハ、生產ノ原動力
トシテ當然之ヲ保證シ、高能率企業ニ對シテ
ハ、一段ノ向上心ヲ誘發スルガ如キ特別ノ
措置ヲ講ジテ、人間ノ性能心理ノ機微ニ觸
レタル戰時施策ノ妙ヲ發揮シ、更ニ直接增
產ヲ推進スル措置トシテ、國家補償ノ建前
ノ下ニ、增產ニ必要ナル新設備ノ指揮命令
ヲナシ得ル等、新シキ構想ノ下ニ、適切ナ
ル決戰經濟施策ヲ斷行スベキデアルト思フ
ノデアリマス、而シテ昨日モ申上ゲマシタ
ガ如ク、基本軍需物資ノ生產增强ノ爲ニ
ハ、苟クモ經濟秩序ノ破壞サレザル限リ、
巨額ノ國家負擔ヲ覺悟スベキデアリマス、
明日ノ財政ヲ顧念スルコトナク、今日ノ生
產ニ國力ヲ集中スベキデアリマス、我ガ國
力ハ十分之ニ堪へ得ル實力ヲ有シテ居ルノ
デアリマス、斯ノ如クニシテ國民ノ戰時意
識ハ愈〓〓揚シ生產ハ增强シテ、不倶戴天ノ
敵英米ヲ擊滅シ得ルノデアリマス、由來政
治ハ言フハ易ク行フハ難イノデアリマス、
我等ハ國民ト共ニ、東條首相ニ對シ深キ信
賴ヲ持チ、全幅ノ協力ヲ與ヘントスルモノ
デアリマス、首相ハ大勇斷ヲ以テ、其ノ言
責ヲ異サレンコトヲ要望スル次第デアリマ
ス
斯クテ質疑ヲ終了シ、本日午後一時ヨリ
委員會ヲ開キ、戰時行政特例法案、許可認
可等臨時措置法案ヲ一括シテ討論ニ入リ、
翼贊政治會ヲ代表シテ、中助松君ヨリ原案
贊成ノ意見ヲ述ベラレ、採決ニ入リ、全員
一致原案通リ可決致シマシタ、更ニ〓育基
金特別會計法外二十三法律ノ廢止ニ關スル
法律案ノ討論ニ入リ、是亦中助松君ヨリ贊
成意見アリ、採決ノ結果是亦全會一致ヲ以
テ、原案通リ可決致シタノデアリマス、此
ノ段御報〓ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=15
-
016・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=16
-
017・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=17
-
018・森下國雄
○森下國雄君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=18
-
019・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=19
-
020・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
戰時行政特例法案第二讀會(確定議)
許可認可等臨時措置法案
第二讀會(確定議)
〓育基金特別會計法外二十三法律ノ廢
止ニ關スル法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=20
-
021・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=21
-
022・森下國雄
○森下國雄君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、日本
證劵取引所法案、市街地信用組合法案、外
貨債處理法案、爲替交易調整特別會計設置
等爲替交易調整法案及ビ特殊財產資金特別
會計法案ノ五案ヲ一括議題トナシ、委員長
ノ報告ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコト
ヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=22
-
023・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=23
-
024・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ追加セラレマシタヽ日本證
劵取引所法案、市街地信用組合法案、外貨
債處理法案、爲替交易調整特別會計設置等
爲替交易調整法案、特殊財產資金特別會計
法案、右五案ヲ一括シテ第一讀會ノ續ヲ開
キマス、委員長ノ報〓ヲ求メマス-委員
長山本厚三君
日本證劵取引所法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
市街地信用組合法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
外貨債處理法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委目長報〓)
爲替交易調整特別會計設置等爲替交易
調整法案(政府提出)
第一讀會ノ績(委員長報〓)
特殊財產資金特別會計法案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報告書
一日本證劵取引所法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十八日
委員長山本厚三
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一市街地信用組合法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十八日
委員長山本厚三
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一外貨債處理法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十八日
委員長山本厚三
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一爲替交易調整特別會計設置等爲替交易
調整法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月十八日
委員長山本厚三
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一特殊財產資特特會計法案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月十八日
委員長山本厚三
衆議院議長岡田忠彥殿
〔山本厚三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=24
-
025・山本厚三
○山本厚三君 日本證劵取引所法案外四件
ノ委員會ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマ
ス、此ノ各案ノ提案ノ趣旨ニ付キマシテハ
過日本議場ニ於キマシテ、大藏大臣ヨリ詳
細ニ御說明ガアリマシタカラ、玆ニ之ヲ細
說ヲ致シマセヌ、本委員會ハ八回ニ亙リ會
議ヲ開キマシテ、委員諸君カラ熱心ナ御質
間ガアリ、政府ヨリ懇切ナル御答辯ガアリ
マシタ、只今其ノ質疑ノ中、重要ト認メラ
ルル數點ニ付テ御紹介ヲ申上ゲタイト存ジ
マス
先ヅ日本證劵取引所法案カラ申上ゲマス
ルガ、本案ニ付キマシテハ、大體ニ於テ〓
算取引ト其ノ罰則ノ點ニ付テ、意見ガ交換
セラレタノデアリマス、第一ニ有價證劵ノ
市價ノ暴騰暴落ヲ防グ操作ハ、戰時金融金
庫ヲシテ當ラシムレバ、十分デハナイカト
云フ意味ノ質問ニ對シマシテ、政府ハ主ト
シテ此ノ事務ハ戰時金融金庫ニ當ラシメル
ガ、必要ニ應ジテハ新取引所ヲモ、活用ス
ルノ要ヲ認メルノデアルト云フ答辯デアリ
マス、次ニ市場開設地ハ何處々々デアルカ
ト云フ質問ニ對シマシテ、政府ハ實物取引
ヲ行フ市場ハ現在ノ全國十一箇所ニ一應
設置スル更ニ將來專情ニ依リテハ、他ノ
地ニモ設置スルト云フ旨ヲ明カニシマシタ、
〓算市場ハ極メテ少數ノ地ニ設置スル考ヘ
デアルト云フ答辯デアリマス、次ニ取引ノ
方法ニ關シテ最モ多ク論議セラレタノデ
アリマスガ、第一ニ〓算取引ハ過當投機ノ
根源デアルト云フコトヲ、政府ハ頻リニ言
ハレルガ、ソレナラバ是ハ廢止サレテハド
ウデアルカト云フ質問ニ對シマシテ、〓算
取引ハ幾多ノ弊害ハ認メル併シ一面公正
ナル價格ヲ形成シ、又價格ヲ平準ナラシメ
ル長所モアル、仝廢スルノハ妥當デナイト
認ムル出來ルダケ其ノ短所ヲ抑制シテ、
之ヲ存續シテ行キタイト考ヘルト云フ答辯デ
アリマシタ、之ニ對シテ果シテ然ラバ東
京一箇所デモ宜シクハナイカ、價格ノ公正
ナル形成ト云フダケナラバ、而シテ非常ナ
敝가害ガ多イト云フノナラバ東京一箇所デ
十分デハナイカ、之ニ對シテ政府ハ〓算
取引設置ノ目的達成ノ爲ニハ實績ニ徵シ
テ單ニ一箇所デハ不十分デアル斯ウ云フ
答辯デアリマシタ、次ニ之ニ對シマシテ、
清算取引ハ共ノ短所ヲ矯メルノナラバ、市
價平準ニ役立ツト云フノデアルカラ、少數ニ
限ルノ必要ハナイデハナイカ、此ノ質問
ニ對シマシテハ政府ハ、多數設置ノ要ハ認
メヌ、又監督上モ多數ニナルト行屆カヌ、
斷樣ナ答辯デアリマシタ
次ニ〓算取引ヲ許サザル市場ノ取引員ト
云フモノハ、殆ド實物取引バカリデハ商賣
ニナラス、殆ド自滅スルヤウナモノデアル
ガ、政府ハ之ヲ放任スルノカ、斯ウ云フ意
味ノ御質問ニ對シマシテ、政府ハ中央市場
ノ取引員ガ支店、出張所、代理店等ヲ設置
スルコトヲ今囘ハ許スカラ、之ニ依ツテ地
方ノ實物取引ノミノ取引員モ、連絡取引ヲ
スルコトガ出來ル、又有價證劵ト云フモノ
ハ、將來非常ナ勢ヒデ增加ヲスル見込デア
ルカラ、左樣ナコトハアルマイト思フト云
フ御答辯デアリマシタ、結局此ノ問題ニ付
キマシテハ、委員多數ノ章見ハ、〓算取引
ヲ全國樞要ノ地點ニ設置スベシト云フ考へ
方ガ多カツタノデアリマスルガ、最後ニ〓
算市場ノ設置ハ少數デアルト云フガ、何處
何處ニ置クノデアルカト云フ質問ニ對シマ
シテ、政府ハ、今ノ所東京及ビ大阪ヲ適當
トスル考ヘデ居ル旨答辯ガアリマシタ、更
ニ將來情勢ノ變化ニ應ジマシテ、他ノ場所
ニモ設置スルコトヲ考慮スルカトノ質問ニ
對シマシテ政府ハ、將來情勢ノ變化ヲ生ジ、
他ニ〓算市場ヲ設置スルヲ滴當ト認メタル
場合ハ、考慮スルト云フ旨ノ答辯ガアツタ
ノデアリマス
次ニ罰則ノ輕重ニ關シテノ質問デアリマ
スルガ、其ノ一ツハ本法案第十九條取引所
ノ役職員等ノ市場ニ於ケル賣買取引、及ビ
取引員トノ利害關係ヲ禁止スル規定中ニ、
當該官吏ヲモ加フベキモノデハナイカ、是
ガ加ツテ居ナイガ、ドウデアルカト云フ質
問ニ對シマシテ、政府ハ同條ニ關聯スル命
令ニ於テ之ヲ規定スル旨答辯ガアリマシタ
次ノ點ハ第十九條ノ違反行爲ニ對スル第
八十五條ノ罰則ガ五千圓以下ノ罰金デア
ル、及ビ當該官吏、委員、職員等ノ祕密漏
洩ニ對シテハ、三千圓以下ノ罰金デアルガ、
是ハ五十年以前ノ規定ヲ、其ノ儘踏襲シテ
居ルト云フ點モアルシ、又其ノ罪質ニ鑑ミ
テ非常ニ是ハ輕キニ失スル、宜シク體刑ヲ
科スベキモノデハナイカト云フコトニ、委
員ノ意見ガ大體一致ヲシテ居ルヤウナ形勢
ニナツタノデアリマスルガ、此ノ質問ニ對
シマシテ政府ハ、罪質ニ顧ミ輕キノ感ナキ
ニアラザルモ、經濟統制違反ニ對スル各種
法令ノ刑罰中、權衡ヲ得ザルモノアルノ實
情ニ顧ミ、政府ハ此ノ際是等ノ調整ヲ圖ル
爲ニ、特ニ司法省ニ於テ貴衆兩院議員ヲモ
含ム民間ノ構威者ヲモ加ヘテ、速カニ其ノ
調査〓究ニ着手シ、次期議會ニ改正法律案
ヲ提出スル運ビト致スベキ旨ノ答辯ガアリ
マシタ
以上ノ外政府ノ答辯ニ依リ明カトナリマ
シタル二、三ノ點ヲ擧ゲマスレバ、新取引
所ノ成立時期ハ、大體七月頃ノ豫定デアル
ト云フコトデアリマシタ、次ニ取引ノ限月
ハ之ヲ短縮スベキモノト考ヘテ居ルガ、有
價證劵取引委員會ニ、取引方法ノ改善問題
ト共ニ是ハ諮問スルコトニナツテ居ルカラ、
其ノ上デ決メルト云フコトデアリマス、第
三ノ點ハ、取引員タル者ノ資格デアリマス
ガ、拂込資本金百万圓以上ノ株式會社トス
ル方針デアル尤モ地方ト取引ノ種類ニ依
ツテ差等ガアル樣子デアリマス、取引所法
案ニ付キマシテノ質疑應答ハ、大體右ノ通
リデアリマス
次ニ市街地信用組合法ニ付テ一點申上ゲ
マスガ、本組合ノ中央金融機關ハ本法案
ニ依レバ、從來通リニ產業組合中央金庫ニ
ナツテ居ルガ、本組合ガ獨立スル以上ハ、
特殊ノ關係ヲ有スル金融機關ヲ、政府ハ創
設スル意思ハナイカ、斯樣ナ質間ニ對シマ
シテ、政府ハ差當リ此ノ儘デ行ツタ方ガ雙
方圓滑ニ行クカラ、一時斯樣ニシテ置イタ
ガ、將來トシテハ產業組合中央金庫ノ外ニ
商工組合中央金庫、庶民金庫等ノ機能分野
ト市街地信用組合ノ車業トノ關係ヲ綜合
的ニ勘案ヲシテ、愼重ニ〓究シタイ考ヘデ
アルトノ答辯デアリマシタ其ノ他本組合ノ
車業全部ヲ、他ノ金融機關へ讓渡ノ作、及
ビ本組合ノ組合員トシテ、如何ナル範圍マ
デ法人ノ加入ヲ認メルカ等ノ質疑ガ行ハレ
タノデアリマス
次ニ外貨債處理法案ニ付テ申上ゲマスガ
第一ニ本法案ニ依ル外貨債ノ借換條件ハ、
如何ニシテ決スルカト云フ質問ニ對シマシ
テ、政府ハ借換ノ條件ハ發行者、所有者及
ビ國庫ノ三者間ニテ、複雜ナル利害關係ヲ
持ツモノデアルカラ、外貨債處理委員會ノ
議ヲ經テ、愼重ニ之ヲ決定スル考ヘデアル
ト云フ御答辯デアリマシタ、之ニ關聯シテ
處理委員會ニハ、貴衆兩院議員ヲ入レル積
リカト云フ質問ガアリマシタガ、政府ハ御
意見ノ點ハ十分ニ考慮ヲシテ決メルト云フ
答辯デアリマシタ
次ニ敵國人ノ所有スル債權ハ如何ニスル
カト云フ質問、又本法案ノ效果ハ在外ノ
債權ニモ及ブカ等ノ質疑ガアリマシタ
次ニ爲替交易調整法案ニ付テ申上ゲマス
第一ニ本特別會計ノ設置ニ依リテ今後ノ調
整料、留保金ノ類ハ全部本特別會計ニ統合
セラルルヤ否ヤト云フ質問ニ對シテ、然リ
トノ答辯ガアリマシタ、第二ニ交易營團ト
所管ヲ異ニシ、二重監督ノ弊ヲ生ズルガ如
キコトハナイカト云フ質問ニ對シマシテハ、
交易營團ノ取扱物資ハ、全部ノ物資ニ亙ル
モノデハナク、他ノ官省ノ監督スル交易機
關モ引續キ業務ヲ行ヒ、又價格差調整トシ
テハ、爲替操作ハ極メテ重要デアツテ、交
易營團ノミニ依ツテナシ難イ、又本特別會
計ト營團トハ、相俟ツテ計畫交易ノ完璧ヲ
期スルモノデアルト云フ意味ノ答辯ガアリ
マシタ
最後ニ特種財產資金特別會計法案ニ付テ
申上ゲマス、本資金ハ如何ナル使途ニ用ヒ
ルカ、例ヘバ敵國抑留同胞救濟等ニ使用ス
ル考ヘハナイカ、之ニ對シテ戰力增强ノ爲
ニ使用スル考ヘデアルトノ答辯デアリマシ
ク、次ニ敵產ノ處理ニ付テハ急速處理ス
ルノ必要ガアルト思フガ如何トノ質問ニ對
シテハ、政府ハ、至極同感デアル管理人
ヲ指導督勵シテ居ルト答ヘマシタ、大體質
疑應答ノ主ナルモノハ以上ノ通リデアリマ
スルガ、尙ホ詳細ニ付テハ速記錄ニ依ツテ
御承知アランコトヲ希望致シマス
以上ノ質疑ヲ終リマシテ、本日午後一時
半討論ニ入リマシタガ、日本證劵取引所法
案ニ對シマシテハ吉田敬太郞君ヨリ御意
見ノ陳述ガアリマシタ、其ノ大體ノ要旨ハ、
〓算取引ノ扱ヒ方ハ東京、大阪ノ二箇所ニ
限ルト云フ政府ノ御方針ハ承服出來ナイ、
長所モアレバ、短所モアルト言フガ、其ノ短
所デアリ過當投機ノ弊害ヲ釀成スル最モ大キ
ナ所ハ東京、大阪デアツテ、其ノ取扱高ガ
七割ニ及ンデ居ル、其ノ最モ弊害ノ多イ東
京大阪ヲ殘シテ、他ノ大部分ノ扱ヒ高ハ
三割デアルケレドモ、大部分ノ九箇所ヲ除
クト云フコトハドウモ承服出來ナイ、又
地方ノ經濟的ニ見テモ、或ハ將來空襲等ノ
關係カラ見テモ、地理的カラ見テモ、重要ナ
地區ニ分布スベキモノデアル、併シ政府ハ
先程申シマシタヤウナ、將來情勢ノ變化ニ
應ジテ考慮スルト云フコトデアルカラノ此
ノ點ヲ十分注意シテ、政府ハ善處シテ貰ヒタ
イト云フ意味ヲ附加へラレマシタ、又罰則
ニ付キマシテハ、吾々委員ノ多數ハ、餘リ輕
キニ失スルカラ適當ノ體刑ヲ科スベキモ
ノデアルト云フ意見デアツタガ、政府ノ所
信トシテハ、全面的ニ經濟統制違反ノ罰則
ヲ是正スルト云フ考ヘデアル而モソレハ
速カニ調査委員會等ヲ設ケテ是正スルト云
フノデアルカラ、姑ク政府ノ言明ニ信賴ヲ
シテ贊成スルガ、政府ハ速カニ此ノ言明ヲ
實現セラレンコトヲ望ムト云フ意味ノ御意
見ガアリマシテ、本法案ニ對シテハ、原案贊
成ヲ述ベラレタノデアリマス、之ニ對シマ
シテ採決ノ結果、滿場一致委員會ハ原案ヲ
可決確定致シタ次第デアリマス
次ニ市街地信用組合法案外三件ヲ議題ニ
供シマシテ、古田喜三太君ヨリ、信用組合
ニ對スル金融機關ノ設備等ニ對シテ御希望
ガアリマシテ、是亦四案トモ原案ニ贊成ス
ル旨陳述セラレタノデアリマス之ニ對シ
テ採決ノ結果、滿場一致原案ヲ可決確定致
シタ次第デアリマス、此ノ段御報〓申上ゲ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=25
-
026・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 五案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=26
-
027・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ五案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=27
-
028・森下國雄
○森下國雄君 直チニ五案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=28
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029・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=29
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030・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ五案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
日本證劵取引所法案第二讀會(確定議)
市街地信用組合法案第二讀會(確定議)
外貨債處理法案第二讀會(確定議)
爲替交易調整特別會計設置等爲替交易
調整法案第二讀會(確定議)
特殊財產資金特別會計法案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=30
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031・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、五案トモ委員
長報告ノ通リ可決確定致シマシタ(拍手)次
會ノ議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス
午後三時七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01319430218&spkNum=31
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