1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月二十七日(土曜日)
午後二時四分開議
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議事日程 第十七號
昭和十八年二月二十七日
午後一時開議
第一 自動車交通事業法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 藥事法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 船員保險法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 軍事扶助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 敵國在留同胞に關する決議案(前田米藏君外六十五名提出)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一議員より提出せられたる議案左の如し
敵國在留同胞に關する決議案
提出者
米田米藏君 綾部健太郎君
牛塚虎太郎君 小山倉之助君
大麻唯男君 太田正孝君
加藤鯛一君 加藤鐐五郎君
勝正憲君 金光庸夫君
川崎末五郎君 川島正次郎君
清瀬一郎君 久山知之君
窪井義道君 小柳牧衞君
紅露昭君 白鳥敏夫君
眞藤愼太郎君 田中武雄君
田邊七六君 高橋守平君
武知勇記君 津雲國利君
東條貞君 中瀬拙夫君
永井柳太郎君 西方利馬君
橋本欣五郎君 松田竹千代君
松永東君 松村光三君
松本忠雄君 三好英之君
山崎逹之輔君 山本芳治君
勝田永吉君 小泉又次郎君
青木精一君 中井一夫君
鶴見祐輔君 星一君
川崎巳之太郎君 清水留三郎君
飯塚茂君 今井健彦君
小高長三郎君 四王天延孝君
平川松太郎君 高岡大輔君
加藤知正君 猪野毛利榮君
小山邦太郎君 小山松壽君
芦田均君 濱野徹太郎君
松山常次郎君 小山谷藏君
島田俊雄君 小川郷太郎君
古田喜三太君 藤本捨助君
馬場元治君 深水吉毅君
津崎尚武君 漢那憲和君
(以上二月二十六日提出)
一昨二十六日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第六部選出決算委員 橋本祐幸君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=0
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001・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス、日程第一、自動車交通事業法中改正法
律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
報〓ヲ求メマス-委員長橫川重次君
第自動車交通事業法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一自動車交通事業法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十五日
委員長橫川重次
衆議院議長岡田忠彥殿
〔橫川重次君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=1
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002・横川重次
○橫川重次君 只今議題トナリマシタ自動
車交通事業法中改正法律案ノ委員會ノ審議
ノ經過及ビ結果ニ付キマシテ、簡單ニ御報
告申上ゲマス、本案ノ趣旨ハ、要シマスル
ニ戰時陸運非常體制確立ノ一環ト致シマシ
テ、貨物自動車輸送力ヲ確保シ、以テ戰力
增强ニ資スルコトヲ目的トスルモノデアリ
マス、而シテ其ノ改正ノ眼目ハ大體四點ニ
要約サレルノデアリマスガ、其ノ第一點ハ、
從來地方長官ニ委ネラレテ居リマシタ事業
ノ免許其ノ他ノ重要事項ノ權限ヲ、鐵道大
臣ニ直屬セシメマシテ、綜合統一的運營ヲ
圖リタイト云フ點ガ、第一ノ點デゴザイマ
ス、第二點ハ、主務官廳ガ必要ニ依リ貨物
ノ運送命令ヲナシ得ルト云フコトデアリマ
ス、第三ノ點ハ、業者ニ對スル補助制度ヲ
擴大ヲ致シタト云フコト、第四ノ點ハ、組
合ノ制度ヲ改編致シマシテ、其ノ事業組合
及ビ其ノ聯合會ノ統制力ヲ、强化シタト云
フ四點デゴザイマス
本委員會ハ二月十九日カラ二十五日ニ至
ルマデ、五囘ニ亙リ開催致サレマシテ、其
ノ間祕密會等モ開催ヲ致シ、終始各委員カ
ラ眞摯ナル質問ガ提出致サレマシテ、之二
シ對シテ政府ヨリ亦懇篤ナル答辯ガアツタノ
デゴザイマス、其ノ詳細ハ速記錄ヲ御覽願
ヒタイト思ヒマスガ、玆ニ二一、三ノ事項ニ
關シテ御報告申上ゲタイト存ジマス
第一ニ今囘ノ事業法ノ改正ハ結構デアル
ガ、自動車ノ總力ノ確保ニハ、自動車ニ關
スル根本方針、少クトモ日滿支ヲ通ズル自
動車基本政策ヲ樹立シナケレバナラヌト思
フガ、政府ニ於テ其ノ用意ガアルカドウカ、
右ノ質問ニ對シマシテ政府ハ、大東亞建設
審議會ニ於キマシテ、自動車ニ關スル基本
國策ノ樹立ヲ致シ、銳意ソレガ實施ヲ圖ツ
テ居ル現在デアルガ、特ニ日滿支間ニ於テ
ハ經濟懇話會等ノ機會ニ於テ、自動車部會
ヲ設ケテ相互連絡ヲ圖リ、萬全ヲ期シテ居
ルト云フ答辯ガアツタノデアリマス
次ニ自動車ニ關シマスル要員、資材、燃
料等ノ確保ヲ圖ルコトガ、自動車輸送力ヲ
確保致シマスル上ニ於ケル喫緊ノ要務ト思
フガ、之ニ對スル對策ハ、ドウデアルカト
云フ問ヒニ對シマシテ、現在要員、資材ト
モ各般ノ事情カラ極メテ窮屈デハアルケレ
ドモ、極力是ガ確保ヲ圖ツテ居ル、特ニ是
等ノ充用ニ際シマシテハ、戰時規格ヲ定メ
テ、是ガ經濟的ナ利用ヲ圖ツテ居ル次第デ
アツテ、又要員ノ養成ヤ修理ノ施設ニ關シ
テハ、鐵道省ニ於テモ自ラ色々ノ施策ヲ施
シテ民間輸送力ト相補ヒ、輸送力增强ニ對
シ、最善ノ努力ヲシテ居ルト云フ答辯ガア
ツタノデゴザイマス
次ニ今次事業法改正ノ趣旨ヲ實現スル爲
ニハ、事業ノ一元的統合ヲ實施致シマシテ、
一元的運營ヲ圖ルコトガ必要デアルト思フ
ガ、政府ノ之ニ對スル所見ハドウデアルカ
ト云フ質問ニ對シマシテ、統合ノ方法ニハ
色々アルノデアルガ、自動車事業ガ其ノ發
達ノ歷史ニ於キマシテ、比較的新シイノデ
アル、其ノ爲ニ弱少企業等、企業形態ニ於
テ整備セラレザルモノ多數ヲ含ンデ居ルノ
デアルカラ、現在ノ段階ニ於キマシテハ、目
下實施中ノ統合ノ方針ガ、最モ適切デアル
ト思フトノ答辯ガアツタノデアリマス、而
シテ今後ノ問題トシテハ、ドウデアルカト
云フコトニ關シマシテハ、今後ニ於テモ其
ノ必要ガアリマスル場合ニ於テハ、更ニ高
度ニ給制ヲ强化スル積リデアルガ、併シナ
ガラ大體ニ於テハ、其ノ運營形態ニ於キマ
シ·ハ民營ヲ主トスルコトニ考ヘテ居ル、
民營ヲ原則トシテ運營形態ヲ、今後トモ考へ
テ行クト云フ意味ノ答辯ガアツタノデゴザ
イマス、更ニ之ニ關聯致シマシテ、小運送
ト地場運送トノ調整ノ方針ハ、ドウデアル
カトノ質問ガアリマシタガ、之ニ對スル政
府ノ答辯ハ、小運送ハ鐵道ノ運營ト密接ナ
關聯ヲ有シテ、比較的早クカラ業態モ整頓
ヲシテ參ツタノデアルカラ、其ノ點ニ於キ
マシテ一日ノ長ガアルノデアル、地場ノ貨
物自動車ハ、寧ロ最近ニ至ツテ其ノ統制統
合ノ段階ニ立至ツタモノデアリマシテ、サ
ウ云フ見地カラ見マスルト、今囘ノ貨物自
動車事業ノ統合ニ際シマシテハ、事業ノ性
質ト事業ノ發達ノ段階ニ適應セル統合ノ方
法ヲ執ツタ積リデアルカラシテ、左樣御諒
承ヲ願ヒタイト云フコトデアツタノデアリ
きく、併シナガラ更ニ政府ハ、統合ノ方式
ハ成程二元的ニナツテ居ルノデアリマスガ、
其ノ運營ノ方式ハ、一元的ニ之ヲ行ツテ行
ク方針デアル、小運送業者ト雖モ「トラック」
ヲ使用スル限リニ於キマシテハ、組合ニ入
ル義務ガアルノデアリマシテ、又現ニ入ツ
テ居ルノデアリマスガ、組合員トシテ組合
ノ統制ニ服スルコトニナリマシテ、且ツ小
運送ニ必要ナル車輛モ、組合ノ配車統制ニ
依リマシテ、地場運送側カラ融通スルコト
トシテアルノデゴザイマス、而シテ兩者ヲ
協調セシメマシテ、彼此相通ズル□滑ナル
運營ヲ計畫シテ居ルト云フ答辯デゴザイマ
シタ
次ニ自動車輸送力ノ增强ノ爲ニハ、進
ンデ行政機構ノ改革ヲ行ヒ、現在ノ如キ
複雜多岐ナル機構ヲ一省ノ下ニ統合シテ之
ヲ一元化シナケレバ、萬全ヲ期シ得ナイト
思フガ、ドウデアルカト云フ質問ニ對シ
マシテ、政府ハ行政機權設備一元化モ望マ
シイコトデハアルガ、現在ノ急ニ應ズル爲
三、先ヅ基本國策ノ決定ニ從ツテ、各省
ガソレ〓〓ノ部門ヲ擔當致シ、運用ニ依ツ
テ極力遺憾ナキヲ期シテ居ル次第デアリマ
ス、斯樣ナ答辯デアツタノデゴザイマス、
更ニ戰時下鐵道ノ運營方針ハ、從來ノ如ク
所謂收益主義、或ハ收支ノ均衡ニノミ重點
ヲ置イテヤツテ行クヤリ方ハ、妥當デハ
ナイト思フノデアルガ、政府ノ之ニ對
スル所見ハドウデアルカト云フ質問ガアリマ
シタガ、之ニ對シテ政府カラ、國鐵ハ明治
初年以來、鐵道國有ノ基本大方針ニ則
リ、總テ其ノ時々ノ國策ニ從ツテ計畫
ヲシ、之ヲ實施ニ移シテ參ツタノデアル、現
在ノ戰時下ニ於テモ此ノ方針ニ何等變更
ハナク、國策ニ順應シテ運營シテ居ル次第
デアリマスルカラ、其ノ意味カラ申シマス
ルト、國鐵ニ關シマスル限リニ於テ、何等
收益主義ニ偏スルヤウナコトハ、絕對ニナイ
ノデアリマス、更ニ鐵道收入改善ノ爲ニ、
運賃ノ値上ゲノ意思アリヤ否ヤトノ質問ニ
對シマシテ、我ガ國ノ鐵道ハ他國ト異ナリ
マシテ、從來旅客收入ノ割合ガ、貨物ニ比
較シマシテ著シク多イノデアリマス、現在
ノ狀態デハ貨物收入ハ、輸送ノ實費ヲ遙
ニ割ツテ居ル狀態デアリマシテ、尙ホ目下
石炭、其ノ他重要物資ガ、海運カラ陸運ニ轉
移セラレマシテ、是等ヲ鐵道輸送ニ依ツテ
賄ツテ行クベキ必要ノアリマスル今日、益〓鐵
道ノ會計ノ負擔ハ加重セラレツツアル傾向
デアリマシテ、運賃ノ値上ニ關シマシテハ、
國有鐵道ノ事業經營上ノ見地カラ之ヲ見マ
スルナラバ、業ニ已ニ値上ゲヲ考慮スベキ
段階ニ達シテ居ルノデアリマスルガ、本問
題ハ國右鐵道ノ性質ニ鑑ミマシテ、又低物
價政策、或ハ其ノ他一般經濟情勢トモ睨合
ハセマシテ、愼重ナル考慮ヲ重ネ以テ措置
スベキ問題デアルト考ヘテ居ル、斯樣ナ答辯
ガアツタノデゴザイマス、尙ホ今囘ノ改正
ニ依ル自動車運送事業組合、及ビ聯合會ノ
性格ニ關スル質問、組合ノ役員ノ兼職禁止
ノ趣旨ニ關スル質問、其ノ他組合ノ組織運
營ニ關スル質問等ガアリマシタガ、之ニ對シ
テ政府ヨリ、ソレ〓〓ノ懇切ナル答辯ガア
リ、又以上ノ外ニ亙リマシテモ、自動車ノ
要員ヲ他カラ徵用シタラドウデアルカ、又自
動車用ノ木炭ヤ薪ノ確保ノ對策ハドウデア
ルカ、或ハ時局的ノ道路政策ニ付テ、特別
ナル考ヘヲ以テ進ムベキ必要ガアルガ、之
ニ對シテハドウ云フ用意ガアルカ等々、各
般ノ事項ニ關シマシテ重要ナル質疑應答ガ
重ネラレテ參ツタノデゴザイマスルガ、其
ノ詳細ハ速記錄ニ依リマシテ御承知ヲ願ヒ
タイト存ジマス
斯ク致シマシテ質問ヲ終了致シマシテ、
二十五日午後一時討論ニ入リマシテ、翼贊
政治會ヲ代表致シテ坂東委員カラ、原案贊
成ノ表明ガアリマシテ、併セテ希望意見ノ
開陳ガアツタノデアリマス、希望意見ハ要
約致シマスルト、陸上輸送力ノ增强確保
ハ海運力ト相竝ンデ、戰力ノ增强ニ重大
ナル關係アルニ鑑ミ、物動計畫上其ノ必要
資材ニ付キマシテハ、軍需ニ準ズル取扱ヲ
ナスベキ必要ガアル、政府ニ於テハ此ノ點
ニ關シ、尙一層ノ善處方ヲ望ムト云フ趣旨
デアリマス、斯クシテ討論ヲ終リ、採決ヲ
致シマシテ、全會一致原案通リ可決致スベ
キモノトノ決定ヲ致シタノデゴザイマス、
此ノ段御報〓ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=2
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003・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=3
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004・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=4
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005・森下國雄
○森下國雄君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=5
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006・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=6
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007・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
自動車交通事業法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=7
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008・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ委員長報告通リ
可決確定致シマシタ(拍手)
日程第二乃至第四ハ同一委員ニ付託シタ
ル議案デアリマスカラ、一括議題トナスニ
御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=8
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009・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第二、藥事法案、日程第三、船員
保險法中改正法律案、日程第四、軍事扶助
法中改正法律案、右三案ヲ一括シテ第一讀
會ノ續キヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長〓水留三郞君
第二藥事法案(政府提出、貴族院送
付第一讀會ノ續(委員長報〓)
第三船員保險法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四軍事扶助法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一藥事法案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十六日
委員長〓水留三郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一船員保險法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月二十六日
委員長〓水留三郞
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓。日
一軍事扶助法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月二十六日
委員長〓水留三郞
衆議院議長岡田忠彥殿
〔〓水留三郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=9
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010・清水留三郎
○〓水留三郞君 只今議題トナリマシタ藥
事法案、船員保險法中改正法律案、及ビ軍
事扶助法中改正法律案ノ三件ニ付キマシテ、
委員會ノ審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上
ゲマス、委員會ハ去ル十六日ヨリ昨日マデ、
九日間ニ亙リマシテ愼重審議致シマシテ、
委員各位ヨリ熱烈ナル御質疑ガアリ、厚生
大臣竝ニ政府委員ヨリ誠意アル答辯ガアツ
タノデアリマス、其ノ中論議ノ中心トナリマ
シタノハ、藥事法案デアリマシテ、私ハ玆ニ先ヅ
藥事法案ヨリ御報告申上ゲタイト思ヒマス
藥事法案ハ、國民體力ノ維持增强ヲ期
スル爲ニ、昨年ノ七十九議會ヲ通過致シ
マシタ國民醫療法ノ姉妹篇トモ言フベキ
モノデアリマシテ、卽チ藥事行政ノ適正、
醫藥品ノ配給ニ關スル圓滑等ヲ期スル爲ノ
法案デアリマス、案ノ內容トシテ重要ナル
點ハ三點デアリマシテ、一ハ藥劑師ニ關ス
ル點、一ハ藥劑師會ニ關スル點、一ハ醫藥
品ノ供給ニ關スル點ナノデアリマス、藥劑
師ニ關スル點ニ於キマシテハ、現在ノ藥劑
師法ニ於キマシテ、藥劑師ノ定義ト致シマ
シテハ、藥劑師ハ調劑ヲ主トシ、醫藥品ノ
配給ヲ從トシテ居ルノデアリマス、所ガ是
デハ現下ノ時代ニ適應シナイ、是ニ於テカ
藥劑師ノ定義ト致シマシテ、調劑竝ニ醫藥
品ノ供給ヲナス外ニ街ノ化學者トシテ、保
健衞生ノ爲ニ貢獻セシメルト云フ公共的ノ
性質ヲ帶ビサシタノデアリマス
第二點ハ藥劑師會ノ問題デアリマスルガ、
藥劑師會ノ組織及ビ職能ノ强化刷新ヲ期シ
タノデアリマス、從來動トモスルト藥劑師
會ト云フモノハ、同業組合的ニ化シテ居ツ
タノデアリマス、之ヲ今囘保健國策ニ卽應
スルト云フヤウノ制度ニ改メタノデアリマ
ス
第三點ハ、醫藥品ノ配給其ノ他ニ關スル
問題デアリマスルガ、賣藥ニ於キマシテハ、
今マデ許可主義デアリマシタ、併シ新藥新
製劑ハ屆出ヲスレバ濟ンデ居ツタノデアリ
マス、故ニ賣藥トシテ許可ヲ得ルコト困難
ナルモノガ、或ハ多少ノ體裁ヲ變ヘテ、新
藥トシテ屆出ノミデ世ノ中ニ賣ラレテ居ツ
タ例モ少クナイノデアリマス、又賣藥部外
品ノ中ニハ、醫藥品類似ノモノガ相當ニア
ルノデアリマス、之ヲ今囘統制致シマシテ
醫藥品トシ、悉ク認可ニ依ルト云フ制度ニ確
立セラレタノデアリマス、現在醫藥品ノ材
料ガ段々缺乏シテ居リマス、此ノ場合ニ於
テ從來ノ儘デ居ルナラバ、醫藥品ハ一部ニ
偏在致シマシテ、一般ニ行渡ラザルト云フ
傾向ヲ生ズルノデアリマス、殊ニ大東亞共
榮圈內ニ於キマシテ、日本ト致シマスルト、
軍需資材、其ノ他ノモノヲ、多ク共榮圈內
ヨリ輸入シテ居リマス、輸入スルノミデ、
彼等ノ要求スルモノヲ輸出スルコトガ出來
ナイナラバ、彼等ノ人心ハ日本カラ離ルル
ノデアリマス、是ニ於テカ此ノ整備ヲ斷行
致シマシテ、或ル部分ハ大東亞共榮圈內ニ
輸出シナケレバナラヌノデアリマス、少キ
資材ヲ以テ多クノ用途ニ充テル爲ニハ、茲
ニ大改革ガ必要ニナツテ居ルノデアリマス、
今政府ハ企業整備令ニ於キマシテ、賣藥止
ノ他ノ整備ヲ斷行最中デアリマス、例ヘテ
見レバ賣藥ノ如キニ於キマシテハ、今マデ
四十万ト言ハレテ居リマス、四十万アル賣、
藥ヲ其ノ儘存置スル譯ニハ參リマセヌカ
ラ、之ヲ或ル程度ニ縮小スルト云フノデア
リマス、更ニ製藥ノ中ニ於キマシテモ、餘リ
保健衞生上必要デナイヤウナ賣藥モ其ノ他
ノモノモ相當出テ居リマス、資材缺乏ノ場
合デアリマスルカラ、之ヲ整理スルト云フ
コトハ當然デアリマスルシ、更ニ配給機構
ト云フモノガ、今マデハ非常ニ複雜多岐デ
アリマシタ、之ヲ整理スル爲ニ、今囘ノ此
ノ案ガ生レ出タノデアリマス、サウシテ此
ノ藥事法案ハ、今年ノ秋ヨリ政府ハ實施ス
ルト云フコトデアリマス
今私ハ委員會ニ現ハレマシタル本法案ニ
對スル質疑應答ノ〓要ヲ申上ゲタイノデア
リマス
第一ハ、本法案ノ內容ヲ以テシテ、果シ
テ戰力增强ニ資シ得ラルルカト云フ質問デ
ゴザイマス、之ニ對シマシテ政府ハ、本法
案ハ國民體力ノ向上ヲ期スル爲ニ、藥事衞
生ニ關スル諸般ノ制度ヲ整備セントスルノ
デアツテ、其ノ整備セラレタ制度ノ上ニ立
ツテ、今後藥劑師及ビ藥劑師會ニ對シテ指
導督勵ヲ加ヘ、醫藥品ニ對シテハ、生產配
給等各部門ニ亙ツテ諸般ノ施設ヲ講ジテ戰
力增强ニ資シ得ルコトト確信スルト云フ政
府ノ答辯デアリマシタ
第二ハ、本法案ノ內容トスル所ハ、〓
ネ國家總動員法ニ依ツテ處置シ得ラル
ルト思フガ、特ニ本案ヲ提出シタ理由如
何ト云フ問題デアリマス、之ニ對シマシ
テ政府ハ總動員法ニ依ツテ處置シ得ラ
レザル重要事項ガ多イ、又處置シ得ラレ
ル事項ガアルト致シマシテモ、本法案ガナ
ケレバ、十分ノ成果ヲ期スルコトハ困難ダ、
又手數ヲ省ク爲ニ於キマシテモ、本法案ハ
必要デアルト云フ答辯デゴザイマシタ
第三ニハ、醫藥分業ニ對スル政府ノ所見
ヲ質シマシタノニ對シテ、政府ハ醫藥分業
ハ多年ニ亙ル重要ナル問題デアリマシテ、
本法ニ於テハ從來通リ、卽チ調劑ハ藥劑師
ニ、醫師ニ對シテハ診察シタ患者ニ對シテ
調劑ヲ許シテ居ルコト、從來ト何等ノ變リ
ハナイ、尙ホ此ノ問題ハ重大問題デアルカ
ラ、十分愼重ニ考慮シテ居ルト云フ答辯デ
ゴザイマシタ
第四點ト致シマシテハ、醫療國營竝ニ醫
藥營團ニ關スル質問デアリマシタ、醫療國
營ニ對シマシテ厚生大臣ハ、現在世界ニ於
テ醫療國營ヲ實施シタノハ「ソ」聯邦ダケデア
ル、所ガ「ソ」聯邦ガ醫療國營ヲ行ヒマシタ結
果ト云フモノハ、醫者ハ不親切トナリ、患
者ハ激增シ、死亡率ハ增加シテ居ル、此ノ爲
ニ「ソ」聯邦デスラ今日ハ醫療國營ヲ斷念シ
タ、政府トシテハ今日醫療國營ヲスル考ヘ
ハ毛頭ナイト云フノデアリマス
次ニ營團ノ問題ニ付キマシテ、政府ハ營
團ノ如キ特殊機關ヲ設ケテ、全部面ニ醫藥
品ノ國家管理ヲ徹底スルト云フコトハ只
今ハ考ヘテ居リマセヌ、今後事態ノ推移ニ
卽應シテ、各般ノ施設ヲ强化シ整理シテ、
醫藥品ノ供給ニ遺憾ナキヲ期シタイト云フ
政府ノ答辯デゴザイマシタ
次ハ藥種商ニ關スル問題デゴザイマス、
此ノ法案ハ藥種商ノ範圍ニ付テ、何等カノ
制限ヲ加ヘルノデハナイカ、指定藥品ニ付
テハ、ドウ云フ方針ヲ採ルカト云フ質問ガ
アリマジタ、之ニ對シマシテ政府ハ、指定
藥品ノ制度ハ現在已ムヲ得ナイ、併シ或ル
程度檢討ヲ加ヘル餘地モアルト思フカラ、
今後此ノ實際ノ問題ヲ決メル場合ニ於テ、
十分考慮シテ見タイト云フノデアリマス、
又藥種商ニ對シテハ、現行法ト何等變ツタ
コトガナク、何等制限ハ特ニ加ハツテ居ラ
ヌト云フ答辯デゴザイマシタ
次ニ藥品中ニ於テ醫師向ノ藥品ガアリ、
一般向ノ藥品ガアル、醫師ガ特ニ用ユル醫
師用ノ藥品ノ配給ニ付テハ、日本醫師會ヲ
活用シテ、之ヲ一元化スル必要ハナイカト
云フ質問ガゴザイマシタ、之ニ對シマシテ
政府ハ、醫師向藥品ノ配給ニ付テハ、現在
相當ニ考慮ヲ要スベキト認メラルル點ガア
リマスルカラ、醫師會等トモ十分連絡ノ
上、遺憾ナキヤウニ期シタイト云フ答辯デ
アリマシタ、其ノ他質問ハ非常ニ數多カツ
タノデアリマス、之ヲ一々質疑應答ニ付テ
申上ゲルト云フト、時間ヲ要シマスルカラ、
質疑ノ項目ダケヲ申上ゲテ置キタイト思フ
ノデアリマス、醫藥制度調査會ノ答申ト本
条トノ關係、藥劑師ノ增加、適正配置及ビ
待遇改善、藥學〓育ノ刷新、特ニ公私立醫
學校ノ官立移管、藥劑師會ニ對スル助成、
藥品ノ配給、特ニ產業組合トノ關係、醫藥
品ノ價格、賣藥其ノ他藥業ノ整備、特ニ共
助金ノ問題、家傳藥、配置賣藥及ビ其ノ賣
リ子ノ問題、醫藥用品ノ配給ニ關スル問題
ㄱビー·シー·ジー」接種注射藥ニ關スル問
題其ノ他本案ニ對シテ數多キ質問ガゴザ
イマシタ、又厚生省ノ特別委員會ト云フモ
ノハ、此ノ委員會ノミデゴザイマシタカ
ラ、厚生省ニ關スル所ノ各般ノ事項ニ付キ
マシテ、關聯事項トシテ數多キ質問ガアツ
タノデアリマス、其ノ中ノ項目ダケヲ玆ニ
申上ゲマスルト、結核對策、熱帶病對策、
乳幼兒對策、人口問題、醫療ノ普及及ビ內
容ノ向上、醫師會及ビ齒科醫師會ニ付テ、
鉞灸術制度ノ確立、保健所、健民修鍊施設
及ビ保健婦ノ問題、武道及ビ體育、結婚奬
勵對策、勤勞問題、國民徴用及ビ屋外勞働
者ノ問題、住宅、浴場、食堂及ビ派出婦ノ
問題等數多キ質疑ガアツタノデアリマス、
ソレ等ニ對シ一々政府ハ答辯セラレタノデ
アリマスルガ、此ノ答辯ノ內容等ニ付テハ、
速記錄ニ於テ御覽ヲ願ヒタイノデアリマス
最後ニ昨日討議ニ入リマスル前ニ、委員
長トシテ私ヨリ、今マデ質疑ニ現ハレナカツ
タ點及ビ質疑應答ハ交サレマシタガ、マダ
本當ノ要領ヲ得ナカツタ點ニ付テ、政府ニ
對シテ質問シタノデアリマス、玆ニ六項目
ニ亙ツテ私ヨリ質問致シマシタガ、ソレヲ
御紹介申上ゲマス
第一ハ、國民體力ノ向上、人口ノ增强ヲ
目的トスル本法案提出ノ趣旨ヲ達成スル爲
三、獨リ藥劑師ノミナラズ藥種商、製藥
業者其ノ他藥事關係者ヲ總動員ヲナスヤウ、
本法運用ニ付キ最善ノ努力ヲナスベキ必要
アリト思ハレルガ、政府ノ所見ハドウカ、第二
ハ、大東亞共榮圈內各地ニ活動スル大和民族
ノ保健衞生ニ資スルト共ニ、圈內各民族ヲシ
テ各〓其ノ所ヲ得セシムル爲ニハ、是等諸地域
ニ對シ、醫藥品ノ供給ヲ適正ナラシムル要ア
リト思フガ、政府ノ所見如何、又大東亞共
榮圈內ニハ、天賦ノ醫藥資料極メテ豐富デア
ルコトハ、現在旣ニ明カナノデアルカラ、是
等ヲ開發利用シテ、醫藥品供給ノ素地ヲ作ル
コト刻下ノ急務ナリト考ヘラルルガ、政府
ノソレニ對スル考ヘハドウカ、第三點、藥品
供給ノ現狀ニ鑑ミ、現下戰時體制ニ卽應
シ、醫藥品供給確保ヲ圖ル爲ニハ、現在ノ如
ク錯雜多岐ニ亙ル醫藥品ノ品目ニ付テ、徹
底セル整理ヲ斷行スルト共ニ、醫藥品ノ生
產、配給竝ニ貯藏ノ各方面ニ亙リ、現在ノ
機構ニ付キ相當ノ强化改善ヲ爲スコト緊切
ナリト思フガ、之ニ對スル政府ノ所見ハ如
何第四ハ、患者ノ支拂フ醫療費ノ過重ハ
醫師ノ藥價ニ對スル國家的制限ナキガ爲メ
デアル、仍テ政府ハ此ノ際藥價令ヲ制定シ
テ、醫師ノ調劑藥價ト藥劑師ノ調劑藥價ト
ヲ統一スル考ヘハナイカ、第五ニ、現行藥
品營業竝ニ藥品取扱規定ニ基ク指定藥品ノ
品目中ニハ、現下ノ實情ニ照ラシ削除スル
ヲ適當ト認メラルルモノモ相當ニアル、政
府ハ本法案第二十三條第二項ノ規定ニ基ク
命令ヲ發スル場合ニ於テハ、其ノ品目中再
檢討ヲナスノ要アリト思フガ、之ニ對スル
政府ノ所見ハ如何、第六ハ、農業用藥品中
ニハ毒性、劇性ノ强イモノモ少クナイガ、
所ニ依ルト藥劑師等ノ適當ナル責任者ナク
シテ、大量ノ取引ガ行ハレテ居ルト云フコ
トモ聞イテ居ル、是ハ極メテ危險デハナイ
カ、本法案ニ是等ノ農業藥品ヲ包含シ、取
締ノ徹底ヲ圖ル意思ハナイノデアルカ、政府
ノ考ヘハドウカ、此ノ六項目ニ對スル私ノ
質問ニ對シマシテ、小泉厚生大臣ヨリ次ノ
如キ答辯ガアツタノデアリマス
第一ノ質問ニ對シマシテハ、藥事法所期
ノ目的ヲ達スル爲ニハ、御話ノ如ク之ニ關
係アル總テノ方々ノ格段ノ御努力ヲ願ハナ
ケレバナラナイノデアリマシテ、御話ノ點
ニ付キマシテハ全ク同感デアリマス、御趣
旨ノ點ニ付テハ本法案運用上十分意ヲ用ヒ
テ、所期ノ目的ヲ達スルヨウ萬遺憾ナキヲ
期シタイト存ズルノデアリマス
第二ノ問題ニ對シマシテハ、大東亞共榮
圈ニ對スル醫藥品ノ供給ノ確保ト、其ノ醫
藥資源ノ開發利用ノ緊要ナルコトハ、全ク
御說ノ通リデアリマシテ、現在醫藥品ノ供
給確保ニ關シマシテハ、國內ニ於ケル生產
力ノ擴充等極力供給力ノ增强ニ努ムルト共
ニ、關係方面ト連絡ヲ密ニシ、一定ノ計畫
ニ基イテ、是ガ供給ノ方途ヲ講ジテ居ル次
第デアリマス、又南方共榮圈內ノ問題ニ於
キマシテ、南方醫藥資源ノ開發利用ニ付キ
マシテハ、其ノ狀況ノ調査ヲ行フト共ニ、
是ガ集荷ノ爲メ必要ナル措置ヲ講ズル等遺
憾ナキヲ期シテ居ル次第デアリマス、今後
益〓關係各方面ト一致シテ、各般ノ施設ヲ整
備シ、御趣意ニ副ヒタイト思ヒマス
第三ニ對シマシテハ、醫藥品供給ノ確保
ニ關スル御意見ハ、洵ニ御同感デアリマス、
醫藥品ノ品目ノ整理ニ付キマシテハ、現在
一部進行中デアリマスガ、政府ニ於キマシ
テハ、全般的ニ〓究ヲ加ヘ、速カニ其ノ實
現ヲ期シタイト存ズル次第デアリマス
次ニ生產、配給等ノ機構ノ改善强化ニ關
シマシテモ、具體的方策ニ付キ銳意考究致
シテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、事態ノ
推移ニ卽應シテ、必要ナル機構ノ設備ヲ圖
リ、醫藥品ノ供給ニ萬全ヲ期シタイト存ズ
ル次第デアリマス
第四、醫療費ノ適正ヲ期スルコトハ、國
民保健ノ見地カラ最モ肝要ナルコトデアリ
マス、仍テ醫師ノ受クベキ醫療報酬ニ關シ
マシテハ曩ニ制定セラレマシタ國民醫療
法第二十五條ニ規定ヲ設ケテ居ルノデアリ
マス、醫師ノ藥價ニ付キマシテハ、之ニ依
ツテ規制シ得ルノデアリマシテ、藥劑師ノ
調劑報酬ニ付キマシテハ、本法案第二十條
ニ其ノ規定ヲ設ケテ居ル次第デアリマス、
而シテ今後藥價令ノ如キモノヲ定メテ、兩
方ヲ一〓ニ規定スルカ否カト云フコトニ付
キマシテハ、兩者ハ密接ナル關係ヲ有スル
モノデモアリマスカラ、今後十分考慮シテ
見タイノデアリマス
第五、御話ノ如ク現在ノ指定藥品ノ品目
ハ、前ノ改正以來既ニ相當ノ年月ヲ經過シ
テ居ルノデアリマス、或ル程度檢討ヲ加ヘ
ル餘地ガアルト云フコトハ考ヘラレテ居リ
マスカラ、御趣旨ヲ尊重シ、檢討致シテ見
タイト思フノデアリマス
第六、農業用藥品ハ醫藥品デアリマセヌカ
ラ、其ノ中、毒性、劇性ノ强イモノニ付キ
マシテモ、本法案ノ適用ヲ受クルコトハ致
サナカツタノデアリマス、而シテ是等ニ付
キマシテハ、現在毒物劇物取締規則ニ依リ
マシテ、取締ヲ行ツテ居ル次第デアリマス
ガ、御話ノ如ク、取締上注意ヲ要スベキ點
ガアルト致シマシタナラバ、今後一層留意
致シマシテ、取締上遺憾ナキヲ期スルヤウ
致シタイ次第デアリマス、是ガ厚生大臣ノ
答辯デアリマシタ、是デ藥事法案ニ對スル
所ノ質疑ハ全部終了致シマシタ
次イデ船員保險法中改正法律案ニ移ツタ
ノデアリマス、船員保險法中改正法律案ニ付
テ、簡單ニ御說明申上ゲマス、大東亞戰爭遂行
下ニ於テ、極メテ重要スル海上輸送力確保ノ
爲メ、危險ヲ冒シテ困難缺乏ニ耐ヘ、挺身其ノ
業ニ從事スル海員保護ヲ强化スルト云フノガ、
本改正案ノ目的デアリマス、其ノ內容ト致
シマシテハ、一ハ船員ノ疾病ニ對スル一元
化ノ規定デアリマス、船舶所有者ノ船員扶
助及ビ手當ノ義務ヲ、本法案ニ取入レタノ
デアリマス、第二ハ、戰時危險區域ヲ航海
スル船舶ニ乘込ム船員ニ、被保險者タル期
間ニ付テ、一定割合ノ加算ヲ附シタノデア
リマス、第三ハ、船員ノ結核性疾患ニ對スル
保護ヲ含ンダノデアリマス、第四ハ、福祉
施設ニ對スル規定、保險醫制度其ノ他必要
ナル事項ノ整備デアリマス、船員保險ニ關
スル質疑モ數多アツタノデアルガ、其ノ中
特ニ重要ナル一點ダケヲ、玆ニ御紹介申上
ゲマス、時局下ニ於テ船員保護對策トシテ、
何トナク物足リヌノデハナイカト云フ質問
ニ對シマシテ、政府ハ時局下ノ船員保護ハ、
官民諸施設ト相俟ツテ綜合的ニナスベキモ
ノデアル、本改正案ハ社會保險タルノ立場
ニ於テ、能フ限リノ考慮ヲ拂ツタト云フノ
デアリマス、更ニ質疑ノ主ナルモノノ項目
ダケヲ此處ニ申上ゲマス
保險給付ヲ受クベキ期間ガ、下船後十日
以内デ消滅スルハ短カ過ギハシナイカ、給
付期間ガ九箇月ハ同ジク短カクハナイカ、
延長給付ヲナス疾病ノ結核以外ニ、神經痛
其ノ他疾病ヲモ加フル必要ハナイカ、給付
期間滿了後、尙ホ治癒セザルモノニ對スル
保護方法ハドウカ、福祉施設ノ現狀竝ニ將
來ノ方針如何、船員ノ家族ニ對スル給付ノ
問題、死亡手當ニ關スル問題、其ノ他各般
ニ亙ツテノ質疑ガアリマシタ、之ニ對シテ
一々政府ハ答辯セラレタノデアリマスルガ、
是ハ速記錄ニ讓リマス
又軍事扶助法中改正法律案ニ付キマシテ
ハ、是ハ現下軍人援護ノ徹底ヲ期スル爲デ
アリマシテ、改正ノ內容ハ、一ハ現行法ニ
於ケル傷病兵ノ範圍ヲ擴張シタコト、新タ
ニ現役下士官ノ家族ニ對スル扶助制度ヲ設
ケタコト、下士官兵ノ家族ニ對スル扶助機
關ノ延長ヲシタコトデアリマス
質疑ニ付キマシテハ項目ダケヲ御紹介致
シマスルガ、現下ノ時局ニ鑑ミ更ニ軍事援
護ノ精神ヲ〓揚シ、軍人援護〓育ノ普及ヲ
圖ル必要ハナイカ、軍人援護ノ徹底ヲ期ス
ル爲ニ、市町村銃後奉公會ヲ、更ニ强化擴
充スルト共ニ、方面委員、大日本婦人會等
ヲシテ、積極的ニ參加協力セシムル必要ハ
ナイカ、軍人援護事業ハ生業援護ニ重點ヲ
注グベキデハナイカ、特ニ遺族、家族、傷
痍軍人ノ授產就職方面ニ新工夫ヲナス必要
ハナイカ、遺族、家族竝ニ傷痍軍人ノ子女
ノ育英等ヲ、更ニ强化スル必要ハナイカ、
現在ノ經濟事情ニ照シテ、軍事扶助ノ支出
ノ限度ヲ引上グル意思ハナイカ、傷痍軍人
ノ再〓育竝ニ結婚奬勵ニ付キ、更ニ格段ノ
考慮ヲ拂フノ必要ハナイカ、是等ノ質問ニ
對シテ政府ヨリ一々答辯ガアリマシタ、是
亦速記錄ニ讓リマス
斯クシテ委員會ハ昨日ノ午後開會致シマシ
テ、小泉純也君ガ翼贊政治會ヲ代表シテ、
贊成ノ意見ヲ述ベラレマシタ、起立ニ問ヒ
マシタ所、總員起立デアリマシテ、滿場一
致ヲ以テ、委員會ニ於テハ藥事法案外二件
ヲ可決シタノデアリマス、此ノ段御報〓申
上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=10
-
011・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=11
-
012・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=12
-
013・森下國雄
○森下國雄君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=13
-
014・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=14
-
015・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、乃テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
藥事法案第二讀會(確定議)
船員保險法中改正法律案
第二讀會(確定議)
軍事扶助法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=15
-
016・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=16
-
017・森下國雄
○森下國雄君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出シマス、卽チ此ノ際政府提出、商工經
濟會法案、商工組合法案及ビ商工組合中央
金庫法中改正法律案ノ三案ヲ一括議題トナ
シ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メ
ラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=17
-
018・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=18
-
019・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-商工
經濟會法案、商工組合法案、商工組合中央
金庫法中改正法律案、右三案ヲ一括シテ第
一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報〓ヲ求
メマス-委員長木村正義君
商工經濟會法案(政府提出、貴族院送
付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
商工組合法案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
商工組合中央金庫法中改正法律案政
府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一商工經濟會法案(政府提出、貴族院送
付
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月二十七日
委員長木村正義
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一商工組合法案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十七日
委員長木村正義
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一商工組合中央金庫法中改正法律案政
府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十七日
委員長木村正義
衆議院議長岡田忠彥殿
〔木村正義君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=19
-
020・木村正義
○木村正義君 只今議題ト相成リマシタ商
工經濟會法案外二件ノ委員會ノ經過竝ニ其
ノ結果ニ付テ御報告申上ゲマス、委員會ハ
去ル二月十三日以來今日ニ至ルマデ、開會
スルコト十囘、委員諸君カラ熱心ナル質疑
ガアリマシテ、之ニ對シ政府當局ヨリ又詳
細ナル說明ガアツテ、愼重審議ヲ重ネマシ
ク、此ノ三法案中、商工經濟會法案竝ニ商
工組合法案ハ、是ハ商工關係ノ組織法デア
リマシテ、政府ノ言フ所ニ依レバ、現下決
戰體制確立ノ爲ニ、國民經濟ノ總力ヲ發揮
セシムル爲メ、又統制經濟ノ運營ヲ全カラ
シムル、斯ウ云フ點ニ重點ヲ置キマシテ、
商工經濟會ハ是マデノ商工會議所ヲ廢止シ
テ、地域的、綜合的經濟團體トシテ、又地方
產業行政ノ協力機關トシテ、全國各道府縣
ニ之ヲ設置セントスルモノデアリマス、商
工組合制度ハ是マデノ商業組合、工業組合、
同業組合竝ニ重要產業團體令ニ依ル所ノ統
制組合ハ、是等ノ諸組合制度ヲ統合致シマ
シテ、商業、工業ニ關スル强力ナル統制組
織ヲ、整備確立セントスルモノデアリマス、
又商工組合中央金庫法中改正法律案ハ、金
庫ノ資金ヲ充實シテ、其ノ業務ヲシテ中小
商工業ノ再編成ニ對應セントスルモノデア
リマス、ソレ故ニ本法案ハ、長キ歷史ト傳
統ヲ有スル我ガ國自由經濟組織ノ下ニ發達
シテ、今日ニ至リタル所ノ全國ノ商工會議
所、同業組合、商業組合、工業組合等ノ諸
制度ニ對スル變革デアリマシテ、今ヤ戰時
經濟統制下ノ我ガ國產業經濟ノ統制機構
ハ曩ノ重要產業團體令ニ依ル所ノ統制會
ノ組織ト共ニ、今囘ノ商工經濟會、商工組
合制度ト兩方ガ相俟ツテ眞ニ其ノ運用宜シ
キヲ得マスルナラバ、縱斷的ニ將又橫斷
的ニ、一應ノ整備ヲ見タモノト言ハネバナ
リマセヌ、隨テ本委員會ニ於キマシテハ、
此ノ劃期的立法デアル所ノ產業經濟團體統
制組織ニ付テ、其ノ性格、目的、事業、組
織竝ニ運營等ノ各般ニ亙ツテ、活發ニシテ
且又眞摯ナル質疑ガ行ハレマシタガ、今其
ノ重要ト思ハレマスル所ノ數項目ニ付テ、
御紹介申上ゲタイト存ジマス
第一ハ、商工經濟會ノ性格機能デアリマ
ス、商工經濟會法ノ第一條ヲ見マスト「商工
經濟會ハ國民經濟ノ總力ヲ最モ有效ニ發揮
セシムル爲國策ニ協力シ產業經濟ノ圓滑ナ
ル連絡ヲ圖ルト共ニ其ノ改善向上ニ努ムル
コトヲ目的トス」トアルノデアルガ、體
國策ニ協力スルト云フコトハ、ドンナ形デ
協力スルノデアルカ、ソレニ付テノ何カノ
權限ヲ與ヘテアルノデアルカ、協力方法ニ
付テ、法文ノ上ニ明カニシテナイデハナイ
カ、ソレデハ目的ガ達セラレナイノデハナ
イカ、權限ノ委讓ニ付テハドウ云フ考ヘデ
アルカ、斯ウ云フ質問ガ委員カラ屢〓繰返
サレタノデアリマス、此ノ質問ニ對シテ商
工大臣ハ、今日ノ統制經濟ノ建前ト云フモ
ノハ、大體重要產業部門ニ對シテハ、業種別
ニ統制會ニ依ツテ生產、配給、消費ヲ縱ニ
一貫シタ統制ガ出來上ツテ居ル、併シ實際
ニ此ノ統制計畫ガ實施サレル所ヲ見ルト、
ソレハ末端ニ於テ橫ノ連絡ガナケレバ、此
ノ統制計畫ト云フモノハ實行出來ルモノデ
ハナイ、例ヘバ勞務ノ問題ニシテモ、或ハ
輸送ノ問題ニ致シマシテモ、或ハ勞務者住
宅ノ問題ニシテモ、此ノ統制計畫ガ地元ノ
現場ニ於テ、其ノ地方ノ經濟產業ト密接ナ
ル連絡ヲ執ラナケレバ、實行ノ出來ルモノ
デハナイ、是ガ今日マデ我ガ國ノ統制經濟
ノ實現ノ上ニ、困難ヲ來シタ重要ナ點デア
ル、然ルニ今日ノ實情ヲ見ルト、此ノ末端
ニ於ケル所ノ橫ノ連絡ヲヤツテ居ル行政ト
3-
云フモノハ地方廳デアル、其ノ地方廳
ト一體トナツテ此ノ統制ノ連絡調整ニ當
ル所ノ機構ガ必要デアル、然ルニ今日ハ
其ノ機構ガ缺ケテ居ル、商工會議所ト云
フモノハ、今日マデ此ノ點ニ力ハ入レテ居
ツタケレドモ、商工會議所ノ機構其ノモノ
カラ言ツテ、其ノ目的ヲ達スル上ニ十分
デナイ、ソコデ此ノ度商工經濟會ト云フモ
ノヲ設置シタノデアル、サウシテ地方長官
ガ其ノ統制ノ權力ヲ實行スル場合ニ於テハ、
此ノ商工經濟會ガ必ズ地方長官ノ後ロニク
ツ付イテ居ツテ、表裏一體トナツテ統制計
畫ノ實行ニ當ラセル、斯ウ云フ仕組デアル
ト云フコトヲ、商工大臣ヨリ詳細ナル御說
明ガアリマシタ、要スルニ商工經濟會ノ活
躍ノ重點ト云フモノハ、何處ニアルカト言
ヘバ、統制ノ計畫ト實行トヲ一致セシメル、
サウ云フ點ニ存在スルノデアルト云フノデ
アリマス、ソコデ全面的ニ此ノ統制計畫ノ
實行ニ、商工經濟會ハ參畫スルノデアルカ
ラ、權限ト云フヤウナモノハ今日ハ認メ
テ居ラナイ、權限ト云フヨリモ積極的ニ、
全面的ニ、綜合的ニ地方長官ト一體トナツ
テ參畫スルト云フ意味デアル、斯ウ云フ說
明デアリマス、併シナガラ實際ノ運用ノ上
カラ考ヘテ、權限ガ必要デアルト云フコト
ナラバ、今日權限委讓ノ勅令モ出テ居ルノ
デアルカラ、ソレニ依ツテ與ヘテモ差支ヘ
ナイト云フ答辯デアリマシタ、第二ノ點ハ
產業經濟ノ中央機構等ニ關スル問題デアリ
マス、今囘ノ商工經濟會法案ヲ見テミルト
中央機構ガナイ、是マデハ日本商工會議所
ト云フモノガアツタノデアルガ、今囘ハソ
レ等ノ規定ガナイ、又數府縣ヲ通ズル所ノ商
工經濟會ノ設置ガナイノハ、ドウ云フ譯デ
アルカ、ソレ等ガ必要デハナイカト云フ質
問ニ對シマシテ、商工大臣カラ、商工經濟
會ト云フモノハ道府縣單位デ、道府縣ト表
裏一體ノ關係デ今囘ハ設置セラルルコトニ
ナツタノデアルガ、今日ノ產業經濟ノ實際
ヲ見ルト、府縣ノ行政區畫ト、經濟ノ活動
範圍ト云フモノハ、必ズシモ一體トナルモ
ノデハナイ、隨テ數府縣ニ亙ツテ商工經濟
會ヲ作ルト云フコトモ考ヘテハ見タノデア
ル、併シナガラ今日ノ統制經濟ノ運營ガ實
際行ハルル所ヲ考ヘテ見ルト、行政機構ト
一體トナラナケレバ、其ノ實行ハ不可能デ
アル、ソレ故ニサウ云フ數府縣聯合ノ會ガ
出來上ル、サウシテ實際問題ヲ其ノ地方地
方ノ經濟「ブロック」ニ於テ解決スルト云フ
コトハ、ソレハ實際上起リ得ルコトデアリ、
又希望スル所デアルガ、之ヲ法文ノ上ニ現
ハシ、之ヲ制度化スルコトニ付テハ、國家
行政機構ト睨合ハセタ上デナイト、是ハ實
行出來ナイノデアル、所謂道州制度ト云フ
ヤウナモノガ出來タ時ニハ、此ノ數府縣ニ
通ズル所ノ商工經濟會ヲ設置スル、斯ウ云
フ意味デアリマス
次ニ中央機構ニ付キマシテハ、今日ノ經
濟界ノ活動ニ付テ、旣ニ中央ニハ各種ノ機
關ガアルノデアル、今マデハ日本商工會議
所ガアリ、其ノ外ニ日本經濟聯盟ガアル、
或ハ東亞經濟懇談會ガアル、或ハ物價統制協
議會ガアル、或ハ統制會ノ橫ノ機關トシテ
ハ重要產業協議會ト云フモノガアル、凡
ユル有力ナル機關ガ中央ニ集ツテ居ルノデ
アル、隨テ是等ノ諸團體ヲ見テミルト、同
一ノ人ガ澤山入ツテ居ル、ヤツテ居ルコト
モ必ズシモ明確ナル分界ハナイ、〓究調査
モ同ジヤウナコトヲヤツテ居ル、隨テ政府
カラ說明ニ行ク時ニハ、方々ニ行カナクチ
ヤナラナイ、斯樣ナ狀態ニ產業經濟ノ有力團
體ガ存在シテ居ルコトハ適當デナイ、隨テ是
ハ何トカ致サナクテハナラヌト云フコトガ、
今日ノ問題トナツテ居ル、ソコデ商工經濟會
ノ中央機構ヲ、今日決メテシマツテ固定サセ
ルト云フコトニナルト、是等ノ凡ユル有力ナ
團體ヲ統制スル時分ニ支障ニモナル、政府ニ
於テモソレ等ノ點ニ鑑ミテ十分調査ヲ致シ
テ居ル、今後戰時經濟ヲ强力ニ遂行シテ、更ニ
大東亞共榮圈ノ經濟發展等ヲ考ヘテ、世界政
策ノ一端ヲ日本ノ經濟面ニ於テ受持ツベキ
有力ナ包括的、綜合的團體ガ出來ルト云
フコトヲ實ハ深ク希望シテ居ルノデアル、
之ヲ如何ニシテ實現スルカ、ドンナ形デ成
立結成セシムベキカニ付テハ、今尙ホ〓究
ハ續ケテ居ルガ、是ハ早急ニ考究シテ具體
的方策ヲ立テテ、サウシテ實行ヲ致サナク
テハナラナイ、ソレニハ商工經濟會ノ中央
會ヲ構成シテ固定サセルヤリ方ハ、適當デ
ハナイト考ヘタノデアル、併シナガラ實際
問題トシテハ、中央ニサウ云フ綜合的ナ機
關ガ出來上ルト云フコトモアリ得ルデアラウ、
ソレモ亦必要デアラウ、隨テ今申シタ有力
ナル包括的ナ、綜合的ナ全日本、大東亞ヲ
包擁スル所ノ大經濟團體ガ出來上ルマデ
ハ自然ノ狀態ニ委シテ置ク、斯ウ云フ答
ヘデアリマシタ、ソレニ對シテ、ソレデハ
何時マデニ出來ルノカ、斯ウ云フ念ヲ押シ
マシタ所ガ、何時マデト玆ニ言明ハ出來ナ
イケレドモ、併シ商工經濟會ノ組織等ガ、
圓滑ニ實行サレルト云フコトニナルト、案
外早ク出來ルデアラウ、斯ウ云フヤウナ答
辯デアリマシタ
第三ハ、商工組合制度ニ付テデアリマス
ガ、是ハ時間ノ關係上省略致シタイト思ヒ
どう、卽チ今囘商工組合制度ハ、統制組
合ト施設組合ト、商工組合中央會ト云フ三
ツノ機關ヲ作ルノデアリマスガ、從來ノ工
業組合、商業組合、同業組合、或ハ重要產
業團體令ニ依ル所ノ統制組合、是等ヲ打ツ
テ一丸トシテ統制組合ヲ作ル、施設組合ヲ
作ル、斯ウ云フモノデアリマス、其ノ著シ
イ點ハ、從來ノ組合ト云フモノハ、業界ノ
改善ト云フヤウナ點ニ重點ガアツテ、サウ
シテ最近統制ノ事業ト云フモノガ、ソレニ加
ハツテ居ツタノデアリマスガ、今囘ノ統制
組合ト云フモノハ、統制ノ事業ト云フモノ
ヲ行フコトガ重點デアツテ、此ノ統制ノ確
保上必要ナル或ル限度ノ經濟行爲ヲ行フ共
同施設ヲナスコトガ出來ル、斯ウ云フヤウ
ニ逆ニチツタノデアリマス、是等ノ詳細ニ
付キマシテハ、之ヲ省略致シマスガ、此ノ
商工組合制度ニ關聯致シマシテ問題トナツ
タノハ、統制會社ノ問題デアル、今日統制
會社ハ八百有餘ニ垂ントスルノデアリマス
ガ、此ノ統制會社ヲ今度ハ商工組合制度ノ
統制組合ニ變更スルノデアルカ、整理スル
ノデアルカ、斯ウ云フ質問デアリマス、之
ニ對シテ商工大臣ハ、ソレハ出來ルダケ今
度ハ統制組合デ行キタイ、成ルベクサウナ
リ得ルモノハサウシタイ、併シナガラ現實
ニアルモノニ付テハ、是ハ一々抽象的ニ言
フ譯ニハ行カナイノデ檢討ヲ要スル、殊
委員カラ問題ニナリマシタノハ、纖維ニ關
係スル統制會社ノ問題デアツテ、例ヘバ銘
仙一反ガ生絲百匁七圓五十錢ナノガ、消費
者ノ手ニ入ル時ニハ十七圓九十錢ニナル、
色々ノ統制配給ノ會社ガアツテ、其ノ間ニ
口錢ヤ手數料ヲ取ツテ居ル、是デハ困ル、
單純化シテ統制組合デヤツテ行ク方ガ適當
デハナイカト云フ質問ガアリマシタガ、之
ニ對シテハ商工大臣カラ、此ノ纖維關係ノ
統制會社ト云フモノハ統制ヲヤルト同時ニ、
一方デハ企業再編成ノ問題モ含メテ來テ居
ルノデアル、支那事變以來非常ニ簡單化シ、
單純化シテ來テ居ル、例ヘバ轉廢業ナドニ
對スル資金ナドヲ、更生金庫カラ其ノ會社
ガ借リテ肩替リヲシテヤツテ居ル、斯ウ云
フヤウナ關係モアツテ、サウ云フ色々非難
ガ起ルヤウナコトモ起ツテ居ルカモ知レナ
イガ、是ハ自分ノ考ヘデハ、ヤハリ統制會
社ニシテ置イテ、サウシテソレヲ整備シテ
單純化シテ行ク方ガ適當デアラウ、斯ウ云
フ答辯デアリマシタ
此ノ商工組合制度ニ付テ更ニ問題ニナリ
マシタノハ、產業組合トノ關係デアリマス、
產業組合ノ關係ハ、詰リ商業者ト產業組合
トノ事業分野ノ調整ニ關スル問題デアリマ
ス、是ハ數委員カラ熱心ナル御質疑ガアリ
マシタ、此ノ商工組合制度ガ出來、又一方
農業團體ニ付テハ、新タナル協力團體ガ出
來タノデアルカラ、此ノ機會ニ於テ兩者ノ
關係ヲ明朗ナラシムルヤウニ解決ヲスベキ
デハナイカ、斯ウ云フ質問デアリマス、之
ニ對シテ商工大臣、農林大臣カラ詳細ナル
答辯ガアリ、又一日ハ懇談會ヲ開キマシテ、
農林、商工ノ事務當局ヲ呼ンデ、詳細ナル
實情ヲ聽イタノデアリマス
之ヲ極ク簡單ニ要約シテ申シマスルト、
元々生產ハ農林省、配給ハ商工省ト云フ時
代ニ於テハ、所謂反產運動ト云フヤウナ問
題ガアツタノデアルガ、一昨年以來〓糧其
ノ他農林畜水產物ノ集荷配給ノ權限ガ農林
省ニ移ツテカラ、自分カラ見ルト、商人モ
農業者モ同ジ子供ノヤウデアルカラ、其ノ
後段々サウ云フ方面ハナクナツテ來タノデ
アル、最近中小企業ノ整備ニ伴ウテ、產業
組合ガ其ノ方面ニ進出スルト云フ噂モ聞イ
テ居ル、ソレニ付テハ實情ニ卽シテ、十分
諒解ヲ得テ、圓滿ニ處置スルヨリ外ニナイ、
結局農林畜水產物ノ集荷配給ハ、原則トシ
テ、集荷ハ生產者團體、配給ハ商業者ヲシ
テ、之ニ當ラシムルト云フ建前ニナツテ居
ルノデアツテ、米、麥、木炭、藁工品ニ付
テハ、其ノ措置ヲ執ツテ來テ居ル、又生產
資材ニ付テハ、是ハ單ニ價格數量ノ問題デ
ナクシテ、適期ニ配給スルト云フ必要ガア
ル、隨テ是ハ生產計畫ヲ確保スル上カラ言
フト、今囘新タナル農業團體ガ出來タノデ
アルカラ、此ノ農業團體ヲシテ、一本ニヤ
ラシメル方ガ浦常デアルト思フ、サウ云フ
意圖ヲ自分ハ持ツテ居ル、斯ウ云フ說明デ
アリマシタ、雜貨等ニ付テハ、是ハ從來ノ
商業者ガヤツテ居レバ、ソレデ宜イノデア
ツテ、ソレヲ農林團體ニヤラセル、斯ウ云
フ考ヘハナイ、商工大臣ハ此ノ問題ニ付テ
ハ、企業整備ノ結果、產業組合ガ進出ヲス
ルト云フコトハ、是ハ非常ナル社會問題ヲ
惹起シ、又企業整備ノ上ニモ惡影響ヲ及ボ
スノデアルカラ、是ハ企業許可令ニ依ツテ
產業組合ニ許可シナイ方針ヲ執ツテ居ル、ゝ
一般的ニ言フト、斯ウ云フ事變下ニ於テ、急
激ナル變更ヲ與ヘルト云フコトハ適當デナ
イノデアルカラ、現狀ノ儘ニナスト云フコ
トガ今日ハ必要デアルト思フ、併シナガラ
一々具體的ノ問題ハ商工、農林ガ十分ナル
連絡ヲ執ツテ、實情ニ卽スルヤウニ解決ヲ
スルヨリ外ニナイ、吾々委員ノ方カラ考ヘ
マスルト、懇談會ノ結果等カラ見テモ、未
ダ此ノ問題ニ付テ農林、商工兩省ノ間ニ、
多々協議スベキ問題ガ殘ツテ居ルヤウニ
思ヒマス、商工當局ニ於テハ旣ニ案ヲ持ツ
テ居ラルルヤウニ思フ、隨テ速カニ此ノ際
是等新制度ガ出來上ルニ際シマシテ、適當
ナル解決策ヲ立テラルルコトガ必要デアル
ト云フコトハ、委員一同ノ要望デアリマス
(拍手)此ノコトヲ茲ニ御報告申上ゲルト共
ニ、政府當局ニ對シ此ノ點ニ十分ナル注意
ヲ御喚起致ス次第デアリマス
次ニ第四ニハ、統制組合ノ役員ノ刑罰ニ關
スル問題デアリマス、商工組合法第八十一
條ノ規定ニ依リマスルト、統制組合ノ役員
ガ其ノ業務ノ執行ニ關シテ知リ得タル所ノ
人ノ又ハ法人ノ機密ヲ漏洩シ又ハ之ヲ竊用
シタル者ハ二年以下ノ懲役又ハ二千圓以下
ノ罰金ニ處ストアルノデアリマス、然ルニ
過般本議會ヲ通過致シマシタ日本證劵取引
所法案ノ第八十七條ノ規定ニ依レバ、日本
證劵取引所ノ職員ガ其ノ職務ノ執行ニ關シ
テ同樣ノコトヲヤツタ時ニハ、三千圓以下
ノ罰金ニ處ストアル、社會ニ影響ヲ與ヘル
點カラ考ヘマスルナラバ、此ノ證劵取引所
ノ職員ノ機密漏洩ト云フモノハ甚大デアル、
然ルニ斯クノ如ク刑罰法規ニ差ガアルト云
フコトデハ、不均衡モ甚ダシイノデアル、
此ノ問題ニ對シマシテハ、過日日本證劵取
引所法案ノ審議ニ當ツテ、司法大臣カラ、
斯ウ云フ經濟違反ニ關スル所ノ諸法規ハ、
此ノ議會ガ濟ンデカラ司法省內ニ調査會ヲ
設ケテ、サウシテ均衡ヲ得ルヤウニ〓究ヲ
シテ、來ルベキ議會ニ提出スルト云フヤウ
ナ言明ガアツテ居リマスルガ、ソレハ併シ
一年先ノコトデアル、日本證劵取引所法ニ
シテモ、此ノ商工組合法ニ致シマシテモ、
議會ヲ通過シタナラバ、法律トナツテ實施
セラレル、此ノ一年間ハドウスルノカ、斯
ウ云フノガ問題デアリマス、隨テ此ノ點ニ
關シテ、司法大臣ハ差文ヘガアツテ、司法
次官ガ參ラレテ、答辯ヲ求メマシタ所ガ、
此ノ一年間カ、或ハ其ノ法律ガ出來上ルマ
デハ、是等ノ事犯ニ對シテハ單ニ當該法令
ノミナラズ、是ノ類似ノ凡ユル法令ヲ檢討
致シテ、其ノ間ニ不均衡ノ起ラナイヤウニ
厲行スル、斯ウ云フ御答辯デアリマス又議
會終了後ハ直チニ控訴院長、檢事長、地方
裁判所長、檢事正ヲ招集シテ、サウシテ此
ノ委員會ニ於ケル御審議ノ模樣、御意向ヲ
傳ヘテ、ソレニ副フヤウニ致シタイ、斯ウ
云フ言明デアリマシタ
以上ノ外ニ、此ノ三法案ニ付キマシテ、
產業經濟ノ各方面カラ幾多有益ナル御質疑
ガアリマシタ、又三法案ニ付テ逐條審議ヲ
致シタノデアリマスルガ、是等ハ速記錄ニ
依ツテ御承知願ヒタイト存ジマス
斯樣ニ致シマシテ、本日午後一時最後ノ委
員會ヲ開キ、直チニ討論ニ入リ、翼贊政治
會ヲ代表シテ小高長三郞君ヨリ、原案贊成
ノ旨意見ノ開陳ガアリマシテ、採決ノ結果、
政府原案通リ滿場一致ヲ以テ可決致サレ
マシタ、右御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=20
-
021・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=21
-
022・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=22
-
023・森下國雄
○森下國雄君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=23
-
024・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=24
-
025・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
商工經濟會法案第二讀會(確定議)
商工組合法案第二讀會(確定議)
商工組合中央金庫法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=25
-
026・岡田忠彦
○議長(岡用忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案共委員長
報〓通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=26
-
027・森下國雄
○森下岡雄君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、飼料
配給統制法中改正法律案、昭和四年法律第
九號中改正法律案、硫酸アンモニア增產及
配給統制法中改正法律案、右三案ヲ一括議
題トナシ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其ノ審議
ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=27
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028・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=28
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029・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-飼料
配給締制法中改正法律案、昭和四年法律第
九號中改正法律案、硫酸アンモニア增產及
配給統制法中改正法律案、右三案ヲ一括シ
テ第一讀會ノ續キヲ開キマス、委員長ノ報
告ヲ求メマス-委員長池田秀雄君
飼料配給統制法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
昭和四年法律第九號中改正法律案馬
ノ傳染性貧血ニ罹リタル馬ノ殺處分ニ
關スル件)(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
硫酸アンモニア增產及配給統制法中改
正法律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一飼料配給統制法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十七日
委員長池田秀雄
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一昭和四年法律第九號中改正法律案馬
ノ傳染性貧血ニ罹リタル馬ノ殺處分ニ
關スル件)(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十七日
委員長池田秀雄
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一硫酸アンモニア增產及配給統制法中改
正法律案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十七日
委員長池田秀雄
衆議院議長岡田忠彥殿
〔池田秀雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=29
-
030・池田秀雄
○池田秀雄君 只今議題ト相成リマシタ飼
料配給統制法中改正法律案外二件ノ特別委
員會ノ經過竝ニ結果ヲ、簡單ニ御報告申上
ゲマス、委員會ハ二月二十二日以來五日間
ニ亙リ熱心ナル審議ヲ續ケ、政府ト委員間
ニ眞面目ニシテ建設的ナル質疑應答ガ續行
セラレマシタ
第一、飼料配給統制法中改正法律案ニ付
キテ申上ゲマスレバ、本法ハ昭和十三年制
定セラレマシタガ、五箇年ノ期限附デアリ
マシテ、今年十月ニナリマスレバ、期限ガ
滿了ノ筈デゴザイマス、然ルニ大東亞戰下
ノ今日、飼料ノ確保ニ努メ、是ガ配給ノ適
正ト價格ノ公正トヲ期スル爲メ、其ノ施行
期間ヲ更ニ大東亞戰終了後一年マデ延長セ
ントスルモノデアリマス、各委員カラ種々
質問ガアリマシタガ、詳細ハ速記錄ニ依リ
御承知ヲ願ヒマス
唯其ノ主要ナルモノニ付テ申上ゲマスレ
バ、玄米食實施ニ伴ヒマシテ、米糠減少ニ
對シ、飼料對策ハ如何デアルカト云フ質問
ニ對シマシテ、當局ヨリ、大豆粕、甘藷等ノ
大家畜飼料ノ確保ニ努力シ、甘藷蔓、生草
類等ヲ人工乾燥シ、效率ノ高イ粉末飼料ヲ
造リマシテ、米糠ノ代用ニ資スベク計畫ヲ
進メ、一部既ニ實施中ナル旨ノ答辯ガアリ
マシタ、又飼料ノ逼迫シテ居ル際、自然飼
料ニ依ル方針ヲ樹立シ、適當ナル家禽數ト
品種ヲ飼養セシムル必要ガアルト思フガド
ウカト云フ質問ニ對シ、養雞羽數ノ整理ヲ
斷行シテ、自給飼料ヲ利用致シマシテ、極
力食糧トノ摩擦ヲ避クルヤウ指導シテ居ル
トノ答辯ガアリマシタ
第二、硫酸アンモニア增產及配給統制法
中改正法律案ニ付キマシテ申上ゲマス、現
行法ハ昭和十三年制定セラレ、肥料トシテ
重要ナル硫安ノ供給ヲ確保シ「アンモニア」
工業ノ確立ヲ圖ル爲メ施行後五年以内ハ、
其ノ新設又ハ增設ヲ爲シタル者ニ對シテ、
一定年間法人稅其ノ他ノ諸稅ノ免除ヲ爲シ、
諸般ノ保護、特典ヲ與フル規定ヲ含ンデ居
リマスルガ、現下ノ情勢ハ肥料增產ノ必要
愈〓急ナルニ鑑ミマシテ、從來ノ特典ヲ更
ニ五箇年間延長セントスル法案デゴザイマ
ス
此ノ法案審議ノ際ノ質議應答ノ主ナルモ
ノハ一、現下ノ肥料ノ重要性ニ鑑ミ、是
ガ確保ニ對スル政府ノ力ノ入レ方ガ足ラヌ
デハナイカ、硫安、石灰窒素ニ對スル電力、
石炭、鐵鋼等ノ動力、資材ノ配給ハ、尙ホ
善處ノ途ガアルデハナイカト云フ質問ニ對
シマシテ、政府ハ今日電力ニ對シテハ、大
イニ規正シテ居ルガ、硫安ハ第二種甲ノ
「イ」ニ置イテ一割ノ規正ヲナスニ過ギマセ
又、軍需工業ニ次イデ之ヲ重視シ、石炭、
鐵鋼其ノ他ノ資材ニ對シハ、軍需品ニ次グ
重要性アルモノトシテ、物動計畫上十分考
慮シテ居ル、將來モ考慮スルトノ答辯ガア
リマシタ、次ニ本年春肥ノ配給割當ハ、相
當ノ減額ヲ餘儀ナクサレルモノト心配サレ
テ居ルガ如何ト云フ問ニ對シ、政府ハ石炭、
電力等ノ不足ニ依リ相當ノ減產ハ免レナ
イガ、春肥ノ割當ハ減額シナイ積リデア
ルト云フ答辯デアリマシタ、次ニハ肥料ノ
重要性ニ鑑ミ、肥料工業ヲ戰時行政特例法
案ニ指定シ居ル五種工業ニ追加スル必要ガ
アルト思フガ、ドウカト云フ質問ニ對シマ
シテ、政府ハ追加スル考ヘハナイガ、物動計
畫上十分考慮スルトノ答辯ガアリマシタ、
次ニ現下ノ肥料狀態ニ於テ、自給肥料ノ增
產ガ最モ必要ト思フガ、如何ト云フ問ニ對
シ、政府ハ同感デアルカラ、綠肥及ビ堆肥
ノ增產竝ニ厩肥ノ生產改良ニ關シ助成施設
ヲ講ジ、都市糞尿ノ農村還元ノ施設ヲ講ジ
テ居ルトノ答辯ガアリマシタ、尙ホ綠肥ニ
付キマシテハ、最早調査〓究ノ時デハナ
イ、積極的ニ奬勵スベシトノ要望ガアリ、
又近來小作料ノ物納ニ替フルニ金納ニスル
傾向ガアル、是ハ產米增殖上大問題デアル
カラ、政府ハ確乎タル方針ヲ樹立善處スベ
シトノ要望ガアリマシタ、又農產物增產ノ
計畫ハ、眞ニ實現性アル計畫ヲナスベキデ
ハナイカ、從來ノ通リ今年ハ米七千百万石
デアル、麥ハ二千五百万石ト色々目標ヲ立
テラレマスケレドモ、今マデ實際實現シタ
例シハナイデハナイカ、將來ハ實現性ガア
ル計畫ヲ立テラレタイト云フ熱心ナル要望
ガアリマシタ
第三、昭和四年法律第九號、馬ノ傳染性
貧血ニ罹リタル馬ノ殺處分ニ關スル法律中
改正法律案ニ付キ申上ゲマス、本改正案ハ
馬ヲ殺處分ニ付シタル場合ノ手當ガ、從來
差額ノ三分ノ一デアリマシタモノヲ、二分
ノ一ニ引上ゲントスルモノデゴザイマス、
本改正案ニ關シ、種牡馬ニ付キ質問ガアリ、
政府ノ買上方針ハ、中間種ノ馬ヲ主トスル
點ニ於テハ變リハナイカ、又政府ノ買上價
格ハ、相當引上ヲシテハ如何ト云フ質問ニ
對シマシテ、政府ハ、馬政方針ニ變リハナイ、
又價格等ニ付テモ十分善處スルトノ答辯ガ
ゴザイマシタ、尙ホ野草ヲ十分ニ利用スルヤ
ウ指導シ、輓馬ノ酷使ヲ防止スルヤウ指導
シテハ如何トノ質問ニ對シ、政府ハ馬事團
體ヲ中心ニ指導ノ徹底ヲ期シ居ルト云フ御
答辯ガアリマシタ、尙ホ肥料、飼料、畜產
問題ニ關シ、凡ユル角度カラ熱心ナル檢討
ガナサレマシタガ、ソレハ速記錄ニ依ツテ
御覽ヲ願ヒマス、仍テ本日午後一時委員會
ヲ開キマシテ、泉國三郞君カラ動議ガアリ
マシテ、滿場一致之ヲ通過セシムベキモノ
トシテ討論ヲ終局シテ可決ヲ致シマシタ、
右御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=30
-
031・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=31
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032・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=32
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033・森下國雄
○森下■雄君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=33
-
034・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセスカ
(「異議ナシト」呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=34
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035・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第一一讀會ヲ開キ、議案
全部ヲ議題ト致シマス
飼料配給統制法中改正法律案
第二讀會(確定議)
昭和四年法律第九號中改正法律案爲
ノ傳染性貧血ニ罹リタル馬ノ殺處分ニ
關スル件)第二讀會(確定議)
硫酸アンモニア增產及配給給制法中改
正法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=35
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036・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=36
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037・森下國雄
○森下國雄君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、恩給
法中改正法律案、東北興業株式會社法中
改正法律案及ビ會計檢査院法中改正法律
案ノ三案ヲ一括議題トナシ、委員長ノ報告
ヲ求メ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=37
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038・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=38
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039・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ變更セラレマシタ-恩給
法中改正法律案、東北興業株式會社法中改
正法律案、會計檢査院法中改正法律案、右
三案ヲ一括シテ第一讀會ノ續キヲ開キマス
委員長ノ報告ヲ求メマス-委員長前田房
之助君
恩給法中改正法律案(政府提出、貴族
院送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
東北興業株式會社法中改正法律案政
府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
會計檢査院法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一恩給法中改正法律案(政府提出、貴族院
送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十七日
委員長前田房之助
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一東北興業株式會社法中改正法律案政
府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十八年二月二十七日
委員長前田房之助
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一會計檢査院法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十八年二月二十七日
委員長前田房之助
衆議院議長岡田忠彥殿
〔前田房之助君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=39
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040・前田房之助
○前田房之助君 只今議題トナリマシタル恩
給法中改正法律案外二件委員會ノ審議ノ大
要竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス、此ノ三案
ニ對シマスル提出ノ要旨ハ、過般本會議ニ
於キマシテ、政府ヨリ詳細ノ說明ガアリマ
シタカラ、私ハ此ノ場合之ヲ省略致シマシ
テ、質疑應答ノ大要ダケヲ御報告申上ゲマ
ス、先ヅ恩給法中改正法律案ニ付テ申上ゲ
マス
第一ハ、最近各種ノ統制會ヤ國策會社ニ
官吏デ恩給ヲ取ツテ居ル者ガ多數入ツテ居
ル、而モ此ノ人達ハ多額ノ俸給ヲ貰ツテ居
ルノデアルガ、斯樣ナル高額所得者ニ對シ
テハ、恩給ノ全額ヲ一時停止スルト云フコ
トハ、國民思想ノ上ニ於テモ好キ影響ヲ及
ボスノデハナイカ、之ニ對スル政府ノ所見
如何、斯ウ云フ質疑ニ對シマシテ政府委員
ヨリ、現在高額所得者ニ付テハ最高三割
マデ停止シテ居ルノデアルガ、恩給ノ全額
停止ヲヤルト云フコトニ付テハ、先ヅ考へ
ネバナラヌコトハ恩給ノ本質デアル、之二
付テハ色々ノ議論ノアル所デアリマシテ、
卽チ法律上デハ權利トシテ扱ツテ居ルガ、
實質上ハ有難キ恩典タル性質ヲ持ツテ居
ル、其ノ性質ハ中々複雜デアル、併シ之ヲ
要約スレバ、官吏ハ在職中一意國務ニ勵精
シテ居ルニ拘ラズ、在職中ノ給與ハ比較的
薄イノデ、恩給ヲ以テ老後ノ生活ヲ、或ル
程度保護スルモノト謂フコトガ出來ル、隨
テ恩給以外ニ多額ノ所得アル人ハ、生活上
ノ餘裕アリ、恩給ノミデ生活スルノデナイ
カラ、斯樣ナ場合ニ或ル程度恩給ヲ停止ス
ルコトハ不當デハナイノデアツテ、卽チ現
行法ハ一部ノ停止ヲシテ居ルノデアリマス、
而シテ此ノ停止ノ制度ハ昭和八年ニ創設ヲ
セラレ、次イデ昭和十五年ニ停止率ヲ增加
致シテ、現在ハ最高恩給ノ三割マデ停止ス
ルコトニ改メタバカリデアルノミナラズ、
恩給ノ本質カラ考ヘテモ、此ノ制度ヲ屢〓、
改正スルノハ適當デハナイ、又恩給ガ恩典
タル性質ヲモ持ツテ居ルコトカラ考ヘマス
ト、恩給ヲ全額停止スルコトハ、餘程考慮
スベキ問題ト考ヘマスノデ、今ノ所全額停
止ヲスル意思ハアリマセヌト云フ、政府ノ
答辯デアツタノデアリマス、其ノ他種々適
切ナル質疑應答ガアリマシタガ、他ハ速記
錄ニ於テ御承知ヲ願ヒマス
次ニ東北興業株式會社法中改正法律案ニ
付テ申上ゲマス、第一ハ、東北興業株式會
社ノ性格ニ付テノ質問デアリマス、是ハ委
員各位カラ色々ト各方面ノ例ヲ擧ゲテ質問
ガアツタノデアリマス、卽チ同社ハ昭和九
年ノ冷害ヲ契機トシテ、昭和十一年設立サ
レタモノデアルガ、今日ハ其ノ目的トスル
所ハ、單ニ東北地方ノ救濟振興ニアラズシ
テ、大東亞共榮圈全般ヨリ見タル吏北地方
ノ特質ヲ十分ニ發揮シテ、產業ヲ振興シ、
其ノ經濟力ヲ强化シ、仍テ以テ國防國家建
設ノ一環トシテ、國家ノ最高國策ノ一端ニ
寄與スルニアリト思フガ、政府ノ所見如何、
斯ウ云フ質疑ニ對シマシテ政府委員ヨリ、
御趣旨ハ至極御尤モデアリマス、卽チ東北
地方ノ人的竝ニ物的態勢ヲ總動員ヲシテ、
其ノ總力ヲ發揮シ、戰力ヲ增强シ、大東亞
戰爭完遂ニ資スルニアル旨ノ答辯ガアリマ
シテ、其ノ性格ニ付テ政府ノ所信ヲ明カニ
サレタノデアリマス
第二ハ增資ノ結果、同社ノ鑛工業ノ增產
計畫如何トノ質疑ニ對シマシテ、政府委員
ヨリ、現下ノ時局ニ於テ最モ緊急ヲ要スル
モノヲ增產スル、卽チ昭和十八年度以降五
箇年間ニ化學方面ニ八千万圓ヲ計上シ、肥
*バルプ」、、「アルコール」等ノ增產ヲ、金
屬工業ハ一千万圓ヲ以テ「アルミニウムL
「マグネシウム」等ヲ、機械工業ハ一千七百
万圓ヲ以テ軍需用、造船用ノ機械製作ヲ、
鑛業開發方面ハ三千三百万圓ヲ以テ銅、鉛
亞鉛、石炭等ノ增產ヲ圖ル豫定ナル旨ノ答
辯ガアツタノデアリマス
第三ハ、東北振興ノ隘路ヲ切開スル爲
メ、豫定鐵道線ノ完成、幹線ノ複線化ハ
決戰下我ガ國交通政策上急ヲ要スル重大問
題ト思フガ、之ニ對スル政府ノ方針如何ト
ノ質疑ニ對シマシテ、政府委員ヨリ、御趣
旨ハ是亦至極御尤モデアルガ、資材其ノ他
ノ大ナル制約ヲ受ケテ居ル今日ニ於テハ、
先ヅ輸送上ノ隘路ヲ救濟スルコトヲ目前ノ
方針トシテ、資材其ノ他ト睨合セテ、時機
ガ來レバ着々ト豫定線ヲ完成シ、幹線ノ複
線化ヲ促進スル方針デアル旨ヲ答辯サレタ
ノデアリマス
第四ハ、產業振興上東北地方ノ港灣ノ整
備ハ、刻下ノ急務ト思フガ、之ニ對スル方
針如何トノ質疑ニ對シマシテ、政府委員ヨ
リ、東北地方ハ地勢上港灣少ク、其ノ設備
〓ネ不完全デ、產業、振興上遺憾ガ少クナイ、
仍テ速カニ是ガ修築ヲ圖ルト共ニ、臨海工
業地帶ヲ造成シテ、產業ノ振興ヲ期スルノ
要ガアルカラ、昭和十八年ニ於テハ靑森、
八戶、土崎、小名濱、酒田、船川、石卷、
女川、大船渡、久慈、大間各港ノ修築竝ニ
仙鹽及ビ八戶ノ兩臨海工業地帶ノ造成ヲ圖
ルコトトシタガ、今後ハ一層該地方ノ港灣
ノ整備ニ努ムル方針ナル旨ノ答辯ガアツタ
ノデアリマス
其ノ他人口問題、厚生施設ノ問題、食糧
增產ノ問題、農地開發ノ問題、道路ノ問題、
亞炭活用ノ問題、又〓育、文化施設ノ問題、
木造船造船ノ問題等、凡ユル角度カラ幾多
有益ナル建設的ノ意見ヲ述べラレタノデア
リマスルガ、之ニ對シテ政府委員ヨリ、ソ
レゾレ所見ヲ明カニサレタノデアリマス、
詳細ハ速記錄ニ於テ御承知ヲ願ヒタイト存
ジマス
最後ニ委員長トシテ私ヨリ、東北振興計
書實施ニ關スル今後ノ政府ノ所信ヲ質シ
タニ對シマシテ、安藤國務大臣ヨリ政府
ヲ代表シテ、東北地方ノ人的及ビ物的態勢
ヲ整備强化シ、其ノ總力ヲ發揮セシメ、以
テ大東亞戰爭目的完遂ニ資スルコトハ、國
家ノ爲メ最モ緊要ト考へラレルノデアリマ
ス、隨テ東北地方ノ振興ニ付テハ、政府ト
シテハ出來得ル限リ熱意ト工夫ヲ以テ之ニ
當ル所存デアリマストノ答辯ガアツタノデ
アリマス(拍手)
最後ニ私ハ會計檢査院法中改正法律案ニ
付テ、簡單ニ御報告致シマスルガ、此ノ財
政ガ非常ニ膨脹シテ、豫算ガ巨額ニ達シテ
居ル今日、會計檢査院ノ官吏ヲ減少シテモ、
檢査上支障ハナイノデアルカ、斯ウ云フ質
疑ニ對シマシテ、政府委員ノ答辯トシテ、
官吏ノ頭ヲ戰時的ニ切替ヘル必要ガアル、
官吏ノ頭ヲ戰時的ニ切替ヘ、サウシテ事務
ノ敏活サヘ圖レバ、一割程度ノ減員ヲ致シ
テモ、會計檢査事務ニハ一向支障ガナイト
云フ答辯デアツタノデアリマス、其ノ外法
文ノ解釋ニ付キマシテ、色々適切ナル所ノ
質問ガアリ、ソレニ對シテ政府ノ所信ヲ明
カニサレタノデアリマスルガ、是亦速記錄
ニ於テ御承知ヲ願ヒタイト存ジマス
斯クテ本日午後二時、三法案ニ對スル質
疑ヲ終リマシテ、直チニ討論ヲ行ヒ、米田
吉盛君ハ翼贊政治會ヲ代表致シマシテ、原案
贊成ノ意見ヲ述ベラレ、採決ノ結果三案ト
モ全會一致原案通リ可決致シタノデアリマ
ス、此ノ段御報〓ヲ申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=40
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041・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 三案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=41
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042・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=42
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043・森下國雄
○森下國雄君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=43
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044・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=44
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045・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ三案ノ第一一讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
恩給法中改正法律案第二讀會(確定議)
東北興業株式會社法中改正法律案
第二讀會(確定議)
會計檢査院法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=45
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046・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案トモ委員
長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=46
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047・森下國雄
○森下國雄君 此ノ際暫時休憩セラレンコ
トヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=47
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048・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=48
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049・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、暫時休憩致シマス
午後三時四十六分休憩
午後四時三十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=49
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050・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 休憩前ニ引續キ會議
ヲ開キマス、日程第五、敵國在留同胞ニ關
スル決議案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣
旨辯明ヲ許シマス-提出者松田竹千代君
第五敵國在留同胞ニ關スル決議案
(前田米藏君外六十五名提出)
敵國在留同胞ニ關スル決議案
敵國在留同胞ニ關スル決議
天涯萬里遙ニ祖國ヲ離レテ敵國ノ不法抑
留下ニ覊束セラレ或ハ粒々辛苦ノ資產ヲ
沒收セラレ或ハ不毛荒蕪ノ野ニ逐ハレテ
酷使セラレ甚シキハ監禁ノ汚辱、拷問ノ
苦痛ヲ受ケ悲憤訴フルニ處ナク日夜斷膓
ノ念ニ堪ヘザルモノ是レ寔ニ我ガ敵國殘
留六十萬同胞ノ現狀ナリ
顧フニ是等同胞ハ大和民族海外發展ノ功
勞者ニシテ我ガ國貿易及產業上ニ收メタ
ル事績頗ル顯著ナリ而シテ一旦祖國緩急
ノ事アルヤ進ミテ巨額ノ資ヲ義捐シ祖國
民災殃ニ遭フヤ每ニ多大ノ救恤ヲ行ヒ以
テ多年國家ニ寄與シタル功績ハ我等永ク
之ヲ議ルル能ハザル所ナリ今ヤ是等同胞
ハ罪ナクシテ流謫ノ人トナリ忍ブベカラ
ザル苦境ニ沈淪ス而モ義ヲ重ンジ節ヲ守
リ偏ニ祖國ノ戰勝ヲ祈念シツツアリ全國
民誰カ感歎同情ノ淚ヲ濺ガザラムヤ
衆議院ハ此ノ際國民ノ總意ヲ以テ深甚ナ
ル慰問ノ意ヲ致シ速ニ人類ノ敵米英ヲ擊
滅シ以テ無辜ノ同胞ヲ不測ノ溝壑ヨリ救
援シ世界新秩序ノ建設ヲ完ウセムコトヲ
期ス
右決議ス
〔松田竹千代君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=50
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051・松田竹千代
○松田竹千代君 玆ニ議題トナリマシタル
敵國在留同胞ニ關スル決議案ニ付キマシテ、
聊カ趣旨辯明ヲ致シタイト思フノデゴザイ
マスルガ、此ノ場合私ハ玆ニ謹シンデ敵國
ニ在留スル五十數万ノ同胞ノ身ノ上ニ恙ナ
キコトヲ祈ツテ已マナイノデゴザイマス(拍手)
先ヅ決議案文ヲ朗讀致シタイト思ヒマス
敵國在留同胞ニ關スル決議案
天涯萬里遙ニ祖國ヲ離レテ敵國ノ不法抑
留下ニ覊束セラレ或ハ粒々辛苦ノ資產ヲ
沒收セラレ或ハ不毛荒蕪ノ野ニ逐ハレテ
酷使セラレ甚シキハ監林示汚汚拷問ノ
苦痛ヲ受ケ悲憤訴フルニ處ナク日夜斷腸
ノ念ニ堪ヘザルモノ是レ寔ニ我ガ敵國殘
留六十萬同胞ノ現狀ナリ
顧フニ是等同胞ハ大和民族海外發展ノ功
勞者ニシテ我ガ國貿易及產業上ニ收メタ
ル事績頗ル顯著ナリ而シテ一旦祖國緩急
ノ事アルヤ進ミテ巨額ノ資ヲ義捐シ祖國
民災殃ニ遭フヤ每ニ多大ノ救恤ヲ行ヒ以
テ多年國家ニ寄與シタル功績ハ我等永ク
之ヲ議ルル能ハザル所ナリ今ヤ是等同胞
ハ罪ナクシテ流謫ノ人トナリ忍ブベカラ
ザル苦境ニ沈淪ス而モ義ヲ重ンジ節ヲ守
リ偏ニ祖國ノ戰勝ヲ祈念シツツアリ全國
民誰カ感歎同情ノ淚ヲ濺ガザラムヤ
衆議院ハ此ノ際國民ノ總意ヲ以テ深甚ナ
ル慰問ノ意ヲ致シ速ニ人類ノ敵米英ヲ擊
滅シ以テ無辜ノ同胞ヲ不測ノ溝壑ヨリ救
援シ世界新秩序ノ建設ヲ完ウセムコトヲ
期ス
以上デアリマスルガ、諸君、昨日政府當
局ノ發表セラレマシタル調査ニ依リマスレ
バ、米英ヲ中心トセル敵國內ニ在留スル我
ガ同胞ノ數ハ約五十六万六千餘名ト云フコ
トデアリマス、今吾々ハ是等同胞ノ上ニ靜
カニ思ヒヲ致シマス時、洵ニ感慨無量ノモ
ノガゴザイマス、惟フニ在外同胞コソハ肉
彈ヲ以テ世界各國ニ進出シ、我ガ國海外發
展ノ突擊隊トシテ自ラ任ジテ參ツタ勇士デ
ゴザイマス、然ルニ今ヤ罪ナクシテ實ニ語
ルニ忍ビナイ苦難ニ陷ツテ居ルノデゴザイ
マス、今御許シヲ得マシテ其ノ苦難ノ體驗
者ノ御話ノ一端ヲ御紹介申上ゲタイト思フ
ノデアリマス、永年桑港デ貿易斡旋所ヲ經
營シ、先般交換船デ歸國致シマシタ友人ノ
話ニ依リマスルト、眞珠灣爆擊直後官憲ニ
踏込マレマシテ、イキナリ「ピストル」ヲ突
付ケラレ、手錠ヲ嵌メラレ、素裸デ檢査ヲサ
レ、所持品全部ヲ押收サレテ、着ノミ着ノ儘
デ不潔極マル抑留所ニ投ゼラレタノデアリ
マス、サウシテ數日後、外部ノ見エナイ密
閉セラレタ汽車デ三日三晩坐ツタ儘デ護送
セラレタ先ハ「モンタナ」州「ミゾラ」要塞ト
云フ「ロッキー」山脈山中ノ盆地デアリマス、
其處ハ零下三十度近イ非常ニ寒イ所デアリ
マシテ、三、四箇月ト云フモノハ全ク雪
中ノ生活デアリマス、屋舍ハ極メテオ粗末
ナ「バラック」デ、食堂ハ四、五町モ先ニア
ル、酷寒骨ヲ刺スヤウナ未明ノ頃、雪中ニ傘
モナク、列ヲ作ツテ立並ンデ數十分間モ待タ
サレテ、辛ウジテ粗食ニアリ付クト云フ有樣
デアリマシテ、中ニモ最モ氣ノ毒ニ堪ヘナカ
ツタノハ、多年「ロサンゼルス」ノ日本人會會
長ヲ致シマシテ、令名特ニ高ク、太平洋沿岸
在留民間ニ最モ尊敬セラレテ居タ某氏ノ如
キハ、膽石病ニ罹リ、黃疸ヲ併發シテ食事モ
自由ニ攝レナイ、病床ニ呻吟シテ居ル其ノ儘
抑留所へ連レテ行カレテシマツタノデア
リマス、又紙上ニモ是ハ旣ニ出テ居ツタコト
デアリマスルガ「ロサンゼルス」ノ醫學博士ノ
本田力太氏ノ如キハ、多年日本海軍ノ軍人
ヲ歡迎シタト云フ廉デ直チニ投獄サレ、散
散拷問ヲ受ケテ、悶死スルニ至ツタノデア
リマスガ、翌日ニナツテ全身打撲傷デ、紫
色ニ膨レ上ツタ其ノ慘タラシイ有樣ヲ見テ、
同氏ノ夫人モ遂ニ發狂シテシマツタノデア
リマス、「ミゾラ」ノ要塞ノ抑留所ニ抑留サ
レテ居タ者ハ一千百名デアリマシタガ、其
ノ平均年齡ハ所謂條約商人ノ若イ人達ヲ入
レテモ五十七歲、之ヲ除クト六十二歲ト云フ
コトニナルノデアリマシテ、老人バカリデア
リマス、病氣ニナツテ苦痛ヲ愬ヘルト云フ
ト麻痺劑モ與ヘズニ、直グニ手術ヲスル、
注射スル時ニハ、馬ニ注射スル注射針デ注
射ヲスルト云フヤウナ鹽梅デ、全ク人間扱
ヒハサレナカツタノデアリマス、此ノ外「ハ
ワイ」デモ、濠洲デモ「カナダ」デモ、英本
國デモ、「インド」デモ、大體同ジヤウニ憂
目ヲ見テ居ルノデアリマス、「インド」ノ抑
留所ノ如キハ特ニ低イ「テント」張デアリマ
スル爲ニ、始終腰ヲ屈メテ居ラナケレバナ
ラヌト云フ、アノ暑イ所デ「テント」生活ト
言ヘバ、想像スルダニ暑イ、苦シイコトデ
アラウト思ハレルノデアリマスルガ、其ノ
上ニ食物ハト言ヘバ、水ト「パン」位デアリ
マスルカラ、二千百名ノ抑留者ノ中、大體
一割位ハ既ニ死亡シテ居ルト云フ狀態デア
リマス、抑留所ノ生活ハ、固ヨリ荒涼タル
モノデアリマシテ、何等慰安ノ途ハナイ、
而モ其ノ周圍ニ電流ヲ通ジタ鐵條網ヲ張リ
繞ラシ、機關銃ヲ据エ付ケルト云フ鹽梅デ
アリマシテ、其ノ重壓感等、遠ク祖國ヲ離
レ、或ハ妻子トモ別レ〓〓ニナツタ、外界
トノ交涉ヲ一切絕タレタ囚ハレノ生活ト云
フモノハ、精神的ニハ極メテ重大ナ影響ナ
クシテハ叶ハナイ、而モ戰爭ノ續ク限リハ
何時マデモ何日マデモ日ノ目ヲ見ルコトガ
出來ナイト云フコトニ想到致シマスルナラ
バ、實ニ是ハ地獄ノ生活ト言ハナケレバナ
ラヌ、而モ是等ノ抑留者ハ北米ダケデモ五
千餘名、濠洲、「インド」合ハセマスルト、
一万二千餘名ニ達スルノデアリマス、然ラバ
一方抑留サレテ居ラナイ多數ノ同胞ノ狀態
ハドウデアルカト申シマスルト、是亦到ル
處重大ナ困難ニ直面致シテ居ルノデアリマ
ス、「メキシコ」トカ「ペルー」トカ、「ブラジ
ル」トカ云フ方面ニ於キマシテハ、旣ニ政
府ノ壓迫トカ、其ノ他ノ事柄ニ依リマシテ、
失業者ガ續出致シマシテ、一万以上ニモ達
シ、是等ノ人々ハ實ニ其ノ日〓〓ノ生活ニ
モ途方ニ暮レテ居ルト云フヤウナ狀態デゴ
ザイマス、又北米太平洋沿岸ノ十數万ノ同
胞ニ至リマシテハ、多年住ミ慣レタ、而モ
粒々辛苦築キ上ゲタ所ノ各種ノ事業ノ所在
地カラ、突如トシテ追出シヲ食ヒ、或ハ「ア
リゾナ」ノ沙漠地、或ハ「ロツキー」ノ山
麓ニ强制移住ヲ命ゼラレマシテ、老ノ身ヲ
以テ開拓ノ鍬ヲ振ハナケレバナラナイ狀態
ニナツテ居ルノデアリマス、而シテ又彼等
ノ幾億「ドル」ニ上ル財產ハ、殆ド沒收同樣
ニ處分サレテ居ルノデアリマス、桑港ノア
ノ有名ナ書店ガアリマスガ、時價數十万
「ドル」ト言ハレテ居ルモノガ、僅カ千F
ル」、ㄱロサンゼルス」ノ三層樓ノ大「ホテ
ル」僅カ五百「ドル」デ奪ハレテ居ルノデア
リマス、而モ其ノ方法ハ極メテ陰險デアリ
マシテ、表カラ「ユダヤ」商人ガ買手トナツ
テ、裏ニハ官憲ガ絲ヲ引張ツテ、賣却シナ
ケレバ檢束スルソト脅カシテヤルモノデア
リマスルカラ、泣クニモ泣カレズ、言ハル
ル儘ニ總テヲ投出シテシマツテ居ルト云フ
ヤウナ有樣デアリマス、斯クシテ數十年ノ
努力、其ノ結果得タ裕福ナ地位カラ、朝
ニシテ轉落シ、今住ムニ家モナク、野良犬
ノヤウニ沙漠ヲ追〓ハサレテ、不安ニ戰キ
ガラ、而モイツ何時暴力ノ犧牲トナラナイ
トモ限ラナイ狀態ニ置カレテ居ルノデアリ
マス、顧ミマスレバ是等海外同胞ハ約半世
紀ノ久シキ、否明治元年五月、上野ノ戰爭
未ダ酣ナルノ時、否其ノ當日-明治元年
五月デアリマス、百四十三名ノ最初ノ「ハ
ワイ」移民ガ橫濱ヲ出帆シテ以來、實ニ全
ク徒手空拳、本國カラ何ノ應援ヲ受ケル譯
デハナイ、全ク赤手空拳、今日ノ地盤ヲ築イ
テ來タノデアリマス、而モ是マデニ如何ニ
莫大ナル貢獻ヲ祖國ニ致シテ居ルカト云フ
ト、彼等ノ送金ダケデモ六十億圓ニ達スル
ノデアリマス、滿洲事變、支那事變ノ場合ニ
ハ數百万圓ノ獻金、數百万箇ノ慰問品、又
更ニ關東大震火災、關西風水害等ニ對シマシ
テハ、逸早ク救恤金ヲ送ツテ來ル等、其ノ他
一々算へ上ゲラレナイヤウナ位、祖國ニ對
シテハ盡シテ參ツテ居ルノデアリマス、現
ニ靖國ノ社頭ニ見ルアノ手洗鉢ノ如キモ、
海外同胞ガ赤誠ヲ籠メテ獻納シタ所ノモノ
デアリマス
飜ツテ思フニ、海外同胞ハ其ノ在留國ニ
對シテ寄與セル所ノモノモ極メテ大イナル
モノガゴザイマシテ、敵國人ト雖モ之ヲ否
定スルコトハ出來ナイノデアリマス、今日
百万「トン」ニ達スル砂糖ヲ產出スル「ハワ
イ」ノ甘蔗ノ如キモ、「ダバオ」ノ「マニラ」
麻ノ如キ、「ブラジル」ノ棉花ノ如キ、之ヲ
悉ク海外同胞ノ不撓不屈ノ意志ト忍苦ノ賜
モノニ外ナラナイノデゴザイマス、試ミニ
又アノ全米國人ガ憧憬ノ的トナツテ居リマ
スル加州、アノ加州ノ曾テノ荒野デアリマ
シタアノ平原ヲ、綠滴ル農園ニナシタ所ノ
者ハ、誰デアルカト聽キマスルナラバ、米
國人ト雖モ、ソレハ日本ダト答ヘザルヲ得
ナイノデアリマス、併シ此ノ事實ハ數十年
ノ悲壯ナル敢鬪ノ結果デゴザイマス、日露
戰爭後ト云フモノハ、米人ノ日本ニ對スル嫉
視ガ日ニ〓〓募ルニ連レ、眞先ニ其ノ犠牲
トナツタ者ハ、在米同胞デアツタノデアリ
マス、彼ノ學童問題ノ如キ、寫眞結婚ノ禁
止、土地所有權ノ否認、排日移民法ト、次
次ニ、恰モ昨日ハ片手ヲ、今日ハ片足ヲ務
ギ取ラルルニモ等シイヤウナ法律上ノ迫
害社會的ノ侮辱、政治的壓迫、群衆的ノ
暴力ノ眞只中ニ於テ奮闘ヲ續ケテ贏チ得タ
所ノモノデアリマス、忘レモ致シマセヌ、
排日運動ノ最モ盛ンナリシ頃、日本人ヲ是
ガ非デモ加州カラ追放シヨウトシテ、大
示威運動ヲ起シマシテ、加州ヲシテ永久ニ
白人ノ加州、白色タラシメヨト叫ンデ、實ニ
物凄イ光景ヲ呈シタコトガアルノデゴザイ
マスガ、其ノ時我ガ在留同胞少シモ騷ガズ、
之ニ對抗シテ、加州ヲ永久ニ綠色タラシメ
ヨト「スローガン」ヲ揭ゲテ戰ツテ、大勝利
ヲ博シタ結果ナノデアリマス(拍手)斯クノ
如ク凡ユル侮蔑ト迫害ニ報ユルニ、凡ユル
努力ト貢獻ヲ以テシタ所ノモノハ、我ガ在
留同胞デアリマス、ニモ拘ラズ戰爭勃發ト
同時ニ、前ニモ中シタヤウナ、何トモ悲慘
ナル境遇ニ置カレテ居ルノデアリマス、併
シナガラ玆ニ最モ嬉シイコトハ、彼等同胞
ハ逆境ニアリナガラ、少シモ日本人タルノ
矜持ヲ失ハズ、忠良ナル臣民トシテ
陛下ノ赤子タルコトヲ忘レナイコトデアリマス、
三千年ノ歷史ト傳統ニ培ハレ、其ノ上ニ
殆ド全生涯ヲ通ジテ殘酷極マル迫害ニ耐ヘ
テ鍛練セラレマシタ結果、今日ノ在外同胞
ハ、今敵地ニ於テ壓迫ト虐待ノ最中ニ彼等
ノ日本魂ハ、毅然トシテ光ツテ居ルノデア
リマス(拍手)先般交換船ニ歸朝スルコトノ
出來タ者ハ、數千名中ノ數人ニ過ギマセ
又、後ニ殘シタ多數ノ同胞ニ後髪ヲ引カル
ル思ヒヲシテ別ルル最後ノ言葉ヲ交シタ際
ニ、彼等ハ丁度言合ハシタヤウニ、我等ハ
如何ナル虐待ニモ耐ヘマス、ドンナ辛抱デ
モシマス、ドウカ此ノ戰爭ニハ勝ツテ下サ
イト、彼等ハ叫ンダト云フコトデアリマス
(拍手)諸君、吾々內地ニアル國民ハ、何
トシテ是等海外同胞ヲ慰メテ宜シイカ、
全國民擧ツテ衷心ヨリ深甚ノ同情ヲ捧ゲナ
ケレバナラナイト存ジマス、ト同時ニ政府
ハ宜シク凡ユル手段、凡ユル方法ヲ以テ、
同胞ノ悲慘ナル境遇ヲ改善スルコトニ努メ
ルハ勿論ノコト、尙ホ將來ノコトニ付キマ
シテモ、深ク慮ル所ガアツテ萬全ノ策ヲ立
テ、彼等ノ救濟ヲ圖ルベキデアルト存ジマ
ス、唯遺憾ナルコトハ吾々ハ如何ニ同情
シ、政府ハ如何ニ努力ヲ致シマシテモ、同
胞ハ今現ニ敵國ニアルノデアリマス、而シ
テ戰ハ決戰又決戰デアリマス、此ノ戰ニ勝
拔ク以外ニハ彼等ノ肉體ヲ救フコトガ出來
マシテモ、彼等ノ魂ハ救ハレナイノデアリ
やっ、「ソロモン」ノ彼方一万數千ノ我ガ精
銳ハ、萬斛ノ恨ミヲ呑ンデ護國ノ華ト散ツ
テ行ツタノデアリマス、此ノ恨ミハ吾々ハ何
トシテモ果サナケレバナラナイ、太平洋ノ彼
方ニモ五十數万ノ同胞ハ、帝國ノ崇高ニシ
テ雄渾ナル歷史的大使命ノ爲ニ、今此ノ敵
國內ニ人質トナリ、生贄トナツテ尊イ奉仕
ヲセラレテ居ルノデアリマス、吾々ハ此ノ偉
大ナル犠牲ヲ斷ジテ徒爾ナラシメテハナラ
ナイト存ジマス、而シテ戰ニ勝ツ爲ニハ
本當ニ敵ヲ知ラナケレバナラナイ、吾々ハ
本當ニ吾々ノ敵ヲ知ツテ居ルカドウカ、平
和ヲ愛好スルノ餘リ、努メテ英米ニ接近
シ、其ノ無理難題ヲ餘リニモ長ク聽イテ來
タ吾々デアリマス、「アジア」民族ノ凡ユル不
幸、凡ユル悲慘事ノ根源ダトモ言と得ル米
英近世世界ノ妖魔デアル米英ノ正體ヲ
吾々ハ果シテシツカト握ツテ居ルカドウ
カ、英國ノ老獪ト、殘忍トハ姑ク措キ、
米國ハ如何、一度米國ノ歷史ヲ見、米國ノ社
會ヲ見マスルナラバ、何人ト雖モソコニ二
ツノ大イナル事實ニ逢着スルノデアリマス、
其ノ第一ハ嘗テ「アメリカ」大陸到ル處ニ平
和ノ生活ヲ營ンデ居ツタアノ所謂「アメリ
カインデアン」デアリマス、今日ハ保護地
帶ニ四十万バカリ殘ツテ居ルダケデアリマ
シテ、彼等ノ姿ハ何處ニモ認メ得ナイト云
フコトデアリマス、米大陸發見以來四百五
十年、建國以來僅カニ百六十年、此ノ短期
間ニ幾千万人ト云フ原住民ハ、其ノ土地ヲ
奪ハレタ上ニ、七面鳥ヤ、兎狩リヲスルヤウ
ナ調子ニ狩リ殺サレテシマツタト見ナケレ
バナラヌノデアリマス、是ハ現實ノ歷史ノ
示ス事實デアリマス、今一ツハ三百二十年
前「アフリカ」ノ「ジヤングル」カラ拉シ來ツ
テ奴隷トシタ黑人ハ、今ハ千六、七百万人
ニ達シテ居ルノデゴザイマス、邪魔ニナル
モノハ鏖シニシテシマフ、オトナシク「サー
ビス」ヲスル者ハ之ヲ奴隷トスル、是
ガ〓チ米國ノ正體デアリマス、吾々ハ之ヲ
銘記シナケレバナラヌト思ヒマス、併シ「ア
タリカ」ノ黑人モ何時マデモ奴隷デ甘ンジ
テ居ルモノデハナイノデアリマス、幾万ト
云フアノ「リンチ」サレタ奴隷ノ魂ハ、今日
ハ深ク「ヤンキー」ノ心臟ニ食入ツテ居ルノ
デアリマシテ、黑人ノ靑年指導者デアル「ロ
バート·エル·ヴアン」ガ私ニ語ツタコトガア
リマス、彼ノㄱピッツバーグ」ノ郊外豪壯タ
ル邸宅ニ於キマシテ、私ニ泌々語ツタ、日
本ノ友ヨ、ドウカ忘レズニ記憶シテ置イテ
呉レ給ヘ、「ヤンキー」ト云フ奴ハ、頭ヲ下ゲ
ル者ハ唯二ツヨリナイ、其ノ一ツハ彼等ガ
萬能ノ神ト信ズル黃金デアリ、弗デアル、
今一ツハ何デアルカ、暴力デアル、黃金ノ
前ニハ頭ヲ下ゲル、彼等ノ得意トスル暴力
デ負ケタラバ、初メテ素直ニ頭ヲ下ゲル彼
等デアルゾヨ、ト云フコトヲ彼ハ言ツタノデ
アリマス、卽チ彼等ノ說ク自由モ、平等モ、
正義人道モ、歸スル所ハ此ノ弗ト暴力ノ假
面ニ外ナラナイト思フノデアリマス、眼ニ
ハ眼ヲ報イヨデアリマス、暴ニハ暴ヲ以テ
戰拔ク以外ニハ在外ノ陛下ノ赤子ヲ救フ
ノ途モナイノデアリマス、此ノ意味ヲ以チ
マシテ、ドウカ滿堂諸君ノ御贊成アランコ
トヲ切ニ御願ヒシマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=51
-
052・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 採決致シマス、本案
ニ贊成ノ諸君ノ起立ヲ求メマス
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=52
-
053・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 起立總員、仍テ本案
ハ全會一致可決致シマシタ(拍手)此ノ際外
務大臣ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマス-
谷外務大臣
〔國務大臣谷正之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=53
-
054・谷正之
○國務大臣(谷正之君) 只今滿場一致ヲ以
テ御決議ニ依リ、敵國竝ニ斷交國ニ殘留シ
テ居リマス所ノ同胞ニ對シテ深キ思ヒヤリ
ト、溫カキ同情ヲ御注ギ下サイマシテ、政
府ト致シマシテモ全ク御同感デ感謝ニ堪ヘ
マセヌ、之ヲ傳ヘ聞キマス所ノ我ガ在留同
胞ハ、如何バカリ嬉シク又心强ク感ズルコ
トカト存ジマス、只今御決議ノ次第ハ、早速
適當ノ方法ニ依リマシテ、在留同胞ニ普ク
傳ハル方法ヲ講ジタイト思ツテ居リマス、
是ト同時ニ政府ハ今後トモ愈〓只今御決議
ノ趣旨ニ鑑ミマシテ、在留同胞ノ苦痛ヲ恩
ムル爲ニ凡ユル努力ヲ致シタイト考ヘテ居
ル次第デゴザイマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=54
-
055・森下國雄
○森下國雄君 議事日程追加ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出、東京
都制案ヲ議題トナシ、委員長ノ報〓ヲ求メ、
其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=55
-
056・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=56
-
057・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ハ追加セラレマシタ-東京
都制案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長
ノ報告ヲ求メマス-委員長〓瀨一郞君
東京都制案(政府提出)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一東京都制案(政府提出)
右ハ本院ニ於テ別紙ノ通修正スヘキモノ
ト議決致候此段及報告候也
昭和十八年二月二十七日
委員長〓瀨一
衆議院議長岡田忠彥殿
(別紙)
(小字及-ハ委員會修正)
東京都制案中左ノ通修正ス
區會ハ議員中ヨリ議長及其
第百五十一條區會ハ區長ヲ以テ議長ト
ノ代理者一人ヲ選擧スベシ
ス區長〓章アルトキハ其ノ代理者議長
ノ職務ヲ代理ス
議長及其ノ代理者ノ任期ハ議員ノ任期ニ依
ル
附帶決議
政府ハ帝都ノ重要使命ニ鑑ミ都ノ官
制制定ニ當リ最善ノ方途ヲ講ズルト共
ニ都長官ノ身分及選任ニ就テハ特別ナ
ル考慮ヲ拂フベシ
-政府ハ東京都ニ於ケル一般行政ト警
察行政トノ一元的運營ヲ期スル爲特ニ
配意スベシ
政府ハ帝都防空ノ重要性ニ顧ミ防空
諸施設ノ强化及防空業務ノ一元的運營
ニ就キ特ニ留意スベシ
〔〓瀨一郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=57
-
058・清瀬一郎
○清瀨一郎君 東京都制案ノ委員會ノ經過
竝ニ結果ノ報〓ヲ致シマス、此ノ案ハ現在
ノ東京府ノ區域ヲ以テ、東京都ノ區域ト致
シマシテ、其ノ首長ハ官吏デアリマスル都
長官トシ、補助職員ハ、幹部級ハ官吏、其
ノ他必要ナル範圍ニ吏員ヲ置クノデアリマ
ス、都議會及ビ參事會ノ組織ハ、〓ネ府縣
會及ビ府縣參事會ニ準ジマシテ、ソシテ都
議會ノ議日數ハ、百名、都參事會ノ定員ハ、
十五名デアリマス、都ノ下級行政組織ハ、
現在ノ東京六內デハ、區、其ノ他ハ市町村
デアリマス、是ガ大體ノ案ノ骨子デアリマ
ス
此ノ委員會ハ一月三十日ニ委員長及ビ理
事ノ互選ヲ致シマシテ、本日ニ至ルマデ前
後十二囘ノ委員會ヲ開キ、實ニ愼重審議致
シタノデアリマス、委員會ニ於ケル質問應
答ハ此ノ場合〓ネ速記錄ニ讓リタイト思ヒ
マスルガ、唯一、二點ダケ御紹介ヲ申上ゲ
ル必要ガアルト思ヒマス
其ノ一ツハ、本案ハ戰時下ニ敢テ提案ヲ
必要トスル緊急法案デアルト認メラルルカ
ト云フ間ヒデアリマス、之ニ對シ當局カラ
ハ、帝都タル東京ニ、眞ニ其ノ國家的意義
ト重要性トニ對應スル確乎タル體制ヲ立テ
ルト共ニ、帝都ニ於ケル從來ノ府ト市ノ併
存ノ弊ヲ改メテ、一元的機構ノ下ニ帝都ニ
於ケル各種ノ時局的事務、其ノ他一般行政
事務ノ敏活强力ナル遂行ヲ圖リ、斯ノ如ク
シテ時局ニ對處シ、帝都行政ノ萬全ヲ期ス
ルト云フコトハ、大東亞戰爭ノ完遂上、眞
ニ緊急ナルコトト考へタノデアル、殊ニ本
案實施ニ依ツテ、帝都ノ民防空ニ關スル行
政喜務ハ著シク整備セラレマシテ、一ツニ
ハ、防空上必要ナル都市構成事業ヲ、綜合
的ニ施行シ得ルコトニナル、府ト市トノ分立
ヲ解消シタ結果、綜合的ニ施行セラレル、
二ツニハ防空設備資材ノ整備ヲ促進スル
コトガ出來ル、三ツニハ隣保班防空群ノ育
成ヲ强化スルコトガ容易ニナル、四ツニハ
空襲ノ非常事態ニ際シテ、防空上必要ナル
救護、避難、退去、罹災者救助、應急ノ復
舊及ビ復興等ニ關スル行政ヲ强化シ得ル結
果ニナル、五ツニハ防空施設ニ對シテ、重
點的財政運用ヲナシ得ルノ利益ガアルト云
フ說明デアリマシタ、案全體ノ性質ニ關ス
ルカラ、是ハ御紹介申上ゲテ置キマス
次ニ東京都內ノ區ノ性格ニ關スル重要ナ
ル質問ガアリマシタ、其ノ趣意ハ、本案第
百四十條ニハ、「區ハ其ノ財產及營造物ニ關
スル事務竝ニ都條令ノ定ムル所ニ依リ區ニ
屬スル事務ヲ處理ス」ト云フ文字ガアル、
府縣制トカ、市制、町村制ニアル如クニ、
法令ニ依ツテ自治事務ヲ行フト云フ規定ガ
ナイノデアルガ、是デハ區ノ自治體タル性
格ヲ明カニスル上ニ於テ缺クル所ハナイノ
デアルカト云フ意味ノ質問デアリマス、之
ニ對シテ政府ハ、地區ヲ基礎トスル公共團
體デアル以上ハ、府縣制、市町村制ト同ジ
ヤウナ「法令ニ依ル」云々ノ文字ハナクテモ、
其ノ自治區タルコトヲ表明スルノニ十分デ
アル、卽チ東京都下ノ區ハ、行政區デハナ
クシテ、自治區デアル性格ヲ完全ニ持ツテ
居ルト云フ言明デアリマス
本日午後討論ニ入リマシテ、松永東君カラ
次ノ修正動議ト、附帶決議ノ提案ガアツタ
ノデアリマス、修正案ノ本文ハ次ノ如クデ
アリマス、朗讀致シマス
第百五十一條ヲ左ノ如ク改ム
第百五十一條區會ハ議員中ヨリ議長及
其ノ代理者一人ヲ選擧スベシ議長及其ノ
代理者ノ任期ハ議員ノ任期ニ依ル
此ノ一箇條デアリマス
ソコデ此ノ修正ヲ必要トシタル松永東君
ノ修正動議ノ說明ヲ御紹介スルコトヲ必要
ト考ヘマス、是ガ原案デハ、區會ノ議長ハ
當リ前ノ會議體ノヤウニ選擧ニ依ラナイデ、
官選ノ其ノ區ノ區長ガ議長ニナルト云フノ
ガ原案デアリマス、然ルニ松永君ノ代表サ
レタル御意見ハ、斯ウ云フコトデアリマス、
第一ニハ自治ノ本義ニ鑑ミマシテ、要多)
議長ハ區會議員ニ依ツテ選擧スルノガ、是
ガ先ヅ當然ノコトデアル、第二ニハ實際
問題トシテ、今囘ノ區議員ハ數ガ大變少ク
ナツテ居ル、ソレデアルカラ可否同數ト云
フコトニナル場合ガ相當多カラウ、サウナ
ルト原案デ行ケバ、官吏タル區長ガ可否同
數ノ區會ノ採決ヲスルコトニナツテ、結局
官吏、卽チ役人ノ意思ガ區會ノ意思トナツ
テシマフ、斯ウ云フ「ケース」ガ相當多カラ
ウ、是ハ自治ノ本義ト大分遠ザカルモノデ
アルヤウニ思ハレル、斯ウ云フ心配デアリ
マス、第三ニハ東京ノ各區ノ區長ノ職務ハ
都政ノ實ニ第一線ニ立ツテ、直接區民ニ接
觸スル職務デアツテ、非常ニ複雜、多岐、
多忙デアリマス、若シ原案ノ如クニ區長ガ
同時ニ區會議長デ、區會ノ統率ト云フコト
ニ力ヲ注ガナケレバナラヌト云フコトニナ
ルト、本來ノ區長ノ行政執行事務ガ、動モ
スルト疎カニナル虞ハナイトシナイ、殊ニ
戰時下諸般ノ行事、儀禮、是等デ區民ノ協
力ヲ求ムル等、區代表者、卽チ區會代表者
ノ活動ヲ要請スル場合ハ極メテ多イノデア
ル、仍テ區會任表者ヲ別ニ存置シテ、是ト
區長ト協力シテ以テ翼賛ノ誠ヲ盡ス方ガ、
機構トシテハ良イノデアラウト云フ確信ヲ
持ツト云フコトデアリマス、此ノ三點ノ觀
察カラシテ修正動議ヲ出シタノデアル、松
永君曰ク、人或ハ說ヲナシテ現在ノ定員三
十名以下ノ場合ニハ、市町村長ガ市町村會
ノ議長ニナルデハナイカ、サウスレバ東京
ノ區ノ議長ヲ區長ガ務メルノモ同ジコトデ
ハナイカト言フ者ガアルカモ知レヌガ、ソ
レハ違ツテ居ル、市町村長ト云フモノハ、
元々市町村會ノ總意ニ依ツテ就任シテ居ル
譯デアリマス、然ルニ東京都ノ區長ハ純
然タル官吏デアリマスルカラ、是ト大變趣
キガ違フノデアツテ、彼ト此レトヲ同一ニ
論ズベキモノデナイト云フ御說明デアリマ
ス、此ノ動議ハ法規ニ依リ成立致シマシタ
カラ、松永君ノ動議ガ成立シタ場合ニ、政
府ハ如何ナル見解ヲ持ツテ居ラルルカ、出
席ノ內務大臣ニ質問致シマシタ所、內務大
臣ハ本案ガ、卽チ本修正案ガ兩院ヲ通過シ
タ曉ニ於テハ之ニ同意致シマス、是ガ執行
ノ萬全ヲ期スル考ヘデアリマスト云フ御答
ヘデアリマシタ(拍手)
松永君ノ附帶決議ハ次ノ三項デアリマス、
是モ朗讀致シマス
ー政府ハ帝都ノ重要使命ニ鑑ミ都ノ官
制制定ニ當リ最善ノ方途ヲ講ズルト共
ニ都長官ノ身分及選任ニ就テハ特別ナ
ル考慮ヲ拂フベシ
-政府ハ東京都ニ於ケル一般行政ト警
察行政トノ一元的運營ヲ期スル爲特ニ
配意スベシ
政府ハ帝都防空ノ重要性ニ顧ミ防空
諸施設ノ强化及防空業務ノ一元的運營
ニ就キ特ニ留意スベシ
此ノ三項デアリマス、引續イテ採決ニ入リ
マシタ所、松永君ノ修正案ト、原案中修正
點ヲ除キマシタ部分全部竝ニ附帶決議ト
モ、滿場一致ヲ以テ之ヲ可決スベキモノト致
シタノデアリマス、此ノ段御報〓申上ゲマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=58
-
059・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 本案ノ第二讀會ヲ開
クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=59
-
060・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決シマシ
タ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=60
-
061・森下國雄
○森下國雄君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ議決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=61
-
062・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=62
-
063・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開キ、議
案全部ヲ議題ト致シマス
東京都制案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=63
-
064・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 別ニ御發議モアリマ
セヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告通
リ確定致シマシタ(拍手)
次會ノ議事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、
本日ハ是ニテ散會致シマス
午後五時十五分散會
衆〓院議事速記錄第十六號中正誤
頁段行誤正
三一七-三四-三五秀員會ノ經過委員會報告
報告発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113242X01819430227&spkNum=64
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