第81回帝国議会　衆議院　薬事法案外二件委員会　第8号　昭和18年2月24日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十八年二月二十四日（水曜日）午前十時十分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　清水留三郎君
  　　理事　大石齊治君　理事　勝又春一君
  　　理事　小泉純也君　理事　田中藤作君
  　　理事　竹内俊吉君　理事　渡邊健君
  　　　　赤間徳壽君　　　逢澤寛君
  　　　　伊藤東一郎君　　　池本甚四郎君
  　　　　今牧嘉雄君　　　上田孝吉君
  　　　　大島寅吉君　　　木崎爲之君
  　　　　齋藤憲三君　　　佐藤芳男君
  　　　　菅又薫君　　　杉山元治郎君
  　　　　中井一夫君　　　西尾末廣君
  　　　　坂東幸太郎君　　　深澤豐太郎君
  　　　　深澤吉平君　　　藤生安太郎君
  　　　　藤本捨助君　　　星一君
  　　　　松本治一郎君　　　正木清君
  　　　　三宅正一君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　厚生大臣　小泉親彦君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　大藏省主税局長　松隈秀雄君
  　　　　　　　　厚生次官　武井群嗣君
  　　　　　厚生省人口局長　中村敬之進君
  　　　　　厚生省衞生局長　灘尾弘吉君
  　　　　　厚生省保險局長　平井章君
  　　　　軍事保護院副總裁　藤原孝夫君
  　　　軍事保護院援護局長　高辻武邦君
  　　　軍事保護院業務局長　大坪保雄君
  　　　　　　　厚生書記官　木村忠二郎君
  　　　　　　　厚生書記官　菊池武夫君
  　　　　軍事保護院書記官　杉山俊郎君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　藥事法案（政府提出、貴族院送付）
  　船員保險法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
  　軍事扶助法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）

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• 001・清水留三郎

  ○〓水委員長　是ヨリ船員保險法中改正法
  律案ノ審議ニ入リマス、通〓順ニ依リ質疑
  ヲ許シマス-田中藤作君

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• 002・田中藤作

  ○田中(藤)委員　御提案ノ改正案ノ要綱ヲ
  大體通覽致シマシテ、結論トシテハ消極的
  デハアリマスルケレドモ、妥當ダト考ヘル
  ノデアリマス、併シナガラ決戰下所謂船員
  ノ重責カラ考ヘマスルト、更ニ一步進ムベ
  キデハナイカト云フ感ジガスルノデアリマス、
  私ガ申上ゲルマデモナク、民間ニ於テハ現
  ニ海員ノ爲ニ感謝ノ色々ノ催シヲヤツテ居
  リマス、或ハ又後援會的ナモノモ出來上ツ
  テ居リマス、又サウシタ機運ガ澎湃トシテ
  起ツテ居ルノデアリマス、而モ斯ウシタ民
  間ノ空氣ニ對應スル政府ノ施策トシテノ此
  ノ海員保險ノ改正ヲ見ル時ニハ、ドウモ民
  間ノ熱情ニ對應スル建前カラ言フト物足リ
  ナイノデハナイカト思フノデアリマス、例
  ヘテ申シマスルト、改正案ノ第二十八條ノ
  二ノ如キ、給付期間ト申シマスルカ、保險
  給付ヲ受ケル期間ガ僅カ十日デアル、是ハ
  在來ノ規定ガ十日デアツタノデ、恐ラクソ
  レヲ踏襲サレタト思ヒマスルケレドモ、斯
  クノ如キ給付ヲ受ケ得ベキ權利ガ喪失スル
  ト云フ規定ヲ置クト云フコトガ、民間ノ營
  利保險ト同樣ナ思想デハナイカト云フ感ジ
  ガスルノデアリマス、何ダカ冷タイ、薄情
  ナ感ジガスルノデアリマス、先程言ツタヤ
  ウニ今日船員ニ對スル重大ナル使命ヲ考ヘ
  テ、民間ニ非常ナ後援的ナ熱情ガアル時ニ、
  僅カ十日ノ間ニ給付ノ權利ヲ失フト云フコ
  トハドウカト思フノデアリマス、斯ウ云フ
  點ニ付テノ政府ノ所信ヲ先ヅ伺ヒタイト思
  ヒマス

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• 003・平井章

  ○平井政府委員　只今、今囘ノ船員保險法
  ノ改正ハ船員ノ現在ノ勞務ニ對應シテハ餘
  リニ不十分デハナイカト云フ御話ガアリマ
  シタガ、社會保險トシテノ船員保險ノ分擔
  シマス範圍ハ自ラ限度ガアルノデアリマシ
  テ、船員ニ對スル優遇、待遇改善、總テヲ
  社會保險デ行ヒマスコトハ不可能デアリマ
  スノデ、吾々トシテハ船員保護ノ一翼ヲ成
  シテ居ル社會保險トシテノ立場ニ於テ最善
  ノ案ヲ考ヘタ積リデアリマス、更ニソレニ
  關聯致シマシテ二十八條ノ二ノ點ニ付テ御
  質問ガゴザイマシタガ、是ハ純然タル事務
  的ノ規定デアリマシテ、御承知ノ通リ船員
  保險ニ於テ被保險者ト申シマスノハ、船員
  法上乘船ノ手續ヲ執リ、下船ノ手續ヲ執リ、
  其ノ船ニ乘込ンデ居ル間ノ期間ヲ被保險者
  ト致シテ居ルノデアリマシテ、下船ノ手續
  ヲ執ツテ陸上ヘ上リマスレバ被保險者デハ
  ナクナリマスノデ、果シテ疾病、負傷ガ被
  保險者ノ期間中ニ發生シタカドウカト云フ
  點ヲ事務的ニハツキリ致シマス爲ニハ二
  十八條ノ二ノ如キ規定ガナケレバ運用ガ付
  カナイ問題デアリマスノデ、巳ムヲ得ズ事
  務的ノ必要カラ二十八條ノ二ヲ說ケタノデ
  アリマス、是ハ現在ニ於キマシテモアルノ
  デアリマスルガ、法令ノ整備ノ關係上法律
  ニ上ゲラレタノデアリマシテ、御話ノ通リ
  喪失後十日以内ニ給付ヲ受ケナケレバナラ
  ヌコトニハ一應致シテ居リマスケレドモ、
  餘リニ畫一的ニナリマシテハ如何カト思ヒ
  マスノデ、但書ガ附ケテアリマシテ、已ム
  ヲ得ザル事由ガアリマス時ニハ十日ヲ過ギ
  マシテモ支障ガナイト致シテアリマスノデ、
  其ノ但書ノ運用ニ依ツテ、決シテ船員保險
  ガ船員ニ對シテ冷タイト云フヤウナ結果ハ
  起キナイヤウニ十分考慮スル積リデアリマス

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• 004・田中藤作

  ○田中(藤)委員　船員保險ガ社會保險ノ一
  翼デアルト云フ點ニ於テハ私ハ固ヨリ左樣
  了承致シテ居リマス、併シナガラ船員保險
  ハ船員保險トシテノ使命ヲ遂行スル上ニ於
  テ物足リナサヲ感ズル、斯ウ云フ風ニ私ハ
  申上ゲタ譯デアリマスガ、其ノ點ハ後程質
  問ヲ申上ゲマス
  福利施設ノ點デ更ニ當局ノ所信ヲ伺フコ
  トニ致シマス、今ノ期間ノ十日ノ點デアリ
  マス、但書ガアルコトニ依ツテ相當報イル
  ノデハナイカト云フコトデアリマスガ、在
  來ノ實情カラ申シマスルト、船員ガ手續ニ
  不慣レノ爲ニ往々サウシタ期間ヲ失フコト
  ガアツタ譯ナノデアリマス、又下船後ニ於
  ケル所ノ病名ノ變更或ハ再發ナドニ關シマ
  シテハ、中々容易ニ給付ガ受ケ難イノデア
  リマス、斯ウ云フ點ニ付テノ在來ノ實績、
  或ハ其ノ在來ノ實績ニ基ク當局ノ將來ニ對
  スル對策ニ付テ伺ヒタイト思イマス

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• 005・平井章

  ○平井政府委員　御話ノヤウナ事情ガ、全
  國ニ於キマシテ船員保險ノ施行ヲ致シテ居
  ル關係上或ハアリ得ルカトモ思フノデアリ
  マス、吾々ト致シテモ絕無デアルトハ申上
  ゲ難イノデアリマスルガ、最近モ地方ニ通
  牒ヲ發シマシタシ、更ニ又日本醫師會ヲ通
  ジマシテ保險醫ノ方面ニ注意ヲ促シマシテ、
  苟クモ被保險者デアル期間ニ起キマシタ傷
  病ニ付キマシテハ、給付ガ受ケラレナイト
  云フヤウナ結果ガ出來ナイヤウニ最善ノ努
  力ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、今後ト雖
  モサウ云フ事例ガ相當アリマスヤウナ場合
  ニ於キマシテハ、更ニ一層地方ノ事務當局ニ通
  牒ヲ發シ、或ハ診療ヲ致シマス保險醫ニ注
  意ヲ促シマシテ、先程申シマシタヤウニ被
  保險者タル期間ニ發生シマシタ傷病ニ付キ
  マシテハ、必ズ法ノ命ズル保護ヲ與ヘルヤ
  ウニ致シテ行キタイト考ヘテ居リマス
  〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕

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• 006・田中藤作

  ○田中(藤)委員　大體當局ノ所信ハ了承致
  シマシタガ、結局此ノ二十八條ノ二ノ但書
  ノ「已ムコトヲ得ザル事由アルトキハ此ノ
  限ニ在ラズ」ト云フ條項ヲ寧ロ寬容ニ-
  原則的ニ期間ハ一應斯ウ決メテアルノダガ、
  申出ガアレバ出來ルダケ是ハ但書ニ依ツテ
  律シテヤラウト云フ親心ガ必要ダト吾々考
  ヘテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ付テ將來
  ノ取扱上是非サウシタ親心ニ依ツテ處置セ
  ラレンコトヲ要望致シマス
  ソコデ私ハ更ニ問題ヲ轉ジマシテ、第二
  十八條ノ四ノ所謂保險醫、藥劑師ノ指定方
  針デアリマス、之ヲ伺ヒタイ、在來ノ事情
  カラ致シマスト、或ハ相當其ノ地方ニ於ケ
  ル權威アル醫師ナドガ指定サレテ居ルヤウ
  デアリマスルケレドモ、被保險者カラ見ル
  トドウモ物足リナイ、所謂一流ノ專門醫
  ハ指定漏レダト云フノガ非常ニ多ノデハナ
  イカ、サウ云フ關係デ折角ノ保險給付ヲ受
  ケ得ル狀態ニアリナガラ、自費ヲ以テ自分
  ノ信賴スル醫師或ハ病院ニ入院シナケレバ
  ナラヌト云フコトモ往々アツタノデアリマ
  ス、隨テ此ノ保險醫、藥劑師ノ指定ト云フコ
  トハ極メテ重大デアリマス、此ノ點ニ付テ
  ノ方針ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 007・平井章

  ○平井政府委員　保險醫ノ指定ニ付キマシ
  テハ、來年度カラ此ノ保險醫ノ制度ガ實質
  的ニ、根本的ニ改正ニナルコトハ御承知ノ
  通リデアリマス、從來ハ醫師會ニ引受ケ
  シメマシテ、開業醫ノ中デ希望スル者ガ保險
  醫ニナツテ、各種ノ社會保險ノ診療ニ從事
  致シテ居リマシタガ、來年四月カラハ法律
  ノ改正ノ結果、保險醫ハ地方長官ガ一方的
  ニ指定スルト云フコトニ相成リマシテ、建前
  ノ上カラ申シマスナラバ、必要ナ開業醫ニ
  付キマシテハ、地方長官ガ本人ノ同意ノ有
  無ニ拘ラズ、一方的ニ保險醫タルコトヲ指
  定スル、然ル時ニ開業醫師ハ正當ノ理由ノ
  ナイ限リハ之ヲ拒ムコトガ出來ナイト云フ
  義務的ニ相成ツテ參ツタノデアリマス、是
  ガ運用ニ付キマシテハ色々考究シマシタ結
  果本人ニ全然其ノ意思ガナイ場合ニ、一
  方的ニ保險醫ヲ指定致シマシテモ、保險醫
  タル職責ヲ十分果シテ貰ヒ得ナイ疑ヒモア
  ルノデアリマスノデ、先ヅ原則ト致シマシテ
  ハ、本人ノ意思ヲ尊重シテ保險醫ヲ指定シテ
  行キタイト考ヘテ居リマス、但シ從來ノヤウ
  ナ純然タル本人ノ自由意思ニ任サレテ居ル
  モノデモアリマセヌシ、法律ノ改正ニモナ
  リマシタシ、更ニ又日本醫師會、齒科醫師
  會ガ政府ト表裏一體ニナツテ、國策ニ順應
  シテ醫療報國ヲナスヤウニ醫師會、齒科醫師
  會ノ改組モ行ハレマシタ機會デアリマスノ
  デ、恐ラク開業醫師ハ進ンデ保險醫ニナル
  コトヲ同意セラレルモノト思フノデアリマ
  シテ、先ヅ一段トシマシテハ、左樣ニ保險
  醫ノ意思ヲ尊重シテ指定シテ參リタイト思
  フノデアリマス、但シ本人ガサシテ希望シ
  ナイ場合ニ於キマシテモ、社會保險ノ診療
  上ドウシテモ此ノ開業醫師ヲ保險醫ニシタ
  イト云フ、已ムヲ得ナイ必要ガアリマス場
  合ニ於キマシテハ地方長官ガ一方的ニ本
  人ノ同意ノ有無ニ拘ラズ指定スルコトモア
  リ得ルノデアリマスケレドモ、先ヅ原則ト
  シマシテハ保險醫ノ意思ヲ尊重シテ指定シ
  テ行キタイト考ヘテ居リマス、是モ先程申
  シマシタヤウニ從來ノ情勢トハ違ヒマシテ、
  醫師會ノ改組モアリ、法律改正ノ結果モア
  リ、順調ニ保險醫ノ指定ガ行ハレルモノト
  確信致シテ居リマス、現在ニ於キマシテモ、
  保險醫ハ船員ノ保險醫モ、健康保險ノ保險
  醫モ、國民健康保險ノ保險醫モ總テ社會保
  險ノ醫療ヲ擔當スル醫師ハ共通ニ致シテ居
  リマシテ、全國デハ恐ラク八割餘モ開業醫
  師ガ關與シテ居リマスノデ、サウシテ支障
  ハナイト思ヒマスルシ、將來ニ於キマシテ
  ハ其ノ心配ハ恐ラクナイモノト考ヘテ居リ
  マス

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• 008・田中藤作

  ○田中(藤)委員　大體諒承致シマシタガ、
  結局是ハ本人ノ意思ヲ尊重スルト云フコト
  ニナリマスルト、所謂流行ツ兒ト言ヒマス
  カ、權威アル醫師ハ成ルベク面倒ナコトハ
  避ケタイト云フノガ多イノデハナイカ、從
  來ニ於テ或ハ權威アル醫師ガ指定カラ逸脫
  サレテ居ルト云フコトハサウ云フ點ニア
  ルノデハナイカト思フノデアリマス、サウ
  云フ譯デアリマスノデ、是ハ寧ロ開業醫全
  體ヲ指定スルト云フヤウナ積極的ナ方策ヲ
  執ツテ、サウシテ眞ニ保險醫タル使命ヲ果
  シ難イヤウナ場合ニ於テ、之ヲ寧ロ除クト
  云フ積極的態度ノ方ガ、指定ヲ受ケルコト
  ガ光榮ダト云フコトニナルノデハナイカト
  思フノデアリマス、サウ云フ譯デアリスマ
  ノデ、本人ノ意思ヲ尊重スルト云フヨリモ、
  全醫ヲ指定醫トシテ指定スル、サウシテイ
  カヌノハドシ〓〓拔イテシマフ、斯ウ云フ
  態度ヲ執ラルベキデハナイカト思フノデア
  リマス、斯ウ云フ點ニ付テノ所信ヲ先ヅ伺
  ヒタイノデアリマス

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• 009・平井章

  ○平井政府委員　開業醫師ヲ全部保險醫ニ
  一應指定スルト云フヤウナ御意見デアリマ
  シテ、吾々ト可ナリ其ノ點ニ御共鳴申上ゲ
  ルノデアリマスルケレドモ、實ハ非常ニ難カ
  シイ問題ガアリマス、ソレハ左樣ニ地方長
  官ガ一方的ニ開業醫師ヲ保險醫トシテ指定
  致シマス場合、其ノ診療ニ要スル經費ヲ如
  何ヤウニシテ拂フカ、診療費ノ支拂ノ基準
  デアリマスガ、其ノ基準ヲ法令ノ規定スル
  所ニ依リマスト、厚生大臣ガ決定スルト云
  フコトニ相成ツテ居リマス、勿論醫師會、
  齒科醫師會ノ意見ヲ聽イテ、厚生大臣ガ決
  定スルト云フコトニナツテ居リマスガ、其
  ノ診療費ノ決定ガ事務的、技術的ニ非常ニ
  難カシイ問題モアリマスルシ、更ニ又本人
  ニ全然保險醫タルノ意思ガナイモノヲ强制
  的ニ保險醫ニ致シマシテモ、其ノ結果ハ如
  何デアラウカト云フコトノ懸念モアリマス
  ノデ、吾々ト致シマシテハ、醫師會ノ改組
  ヲサレテ、各醫師ハ總テ國策ニ順應シテ醫
  療奉公ヲシテ戴クヤウナ情勢ニナツテ居リ
  マスノデ、更ニ一段ト開業醫師ノ御諒解ヲ
  得ルヤウニ努力致シマシテ、出來ルダケ圓
  滿ニ保險醫ヲ指定シテ行キタイト考ヘテ居
  リマス、本年マデト來年度以降トノ制度
  ニ於テ非常ニ變ツテ居リマスルシ、醫師會
  改組、其ノ他ノ事情カラモ空氣ガ非常ニ變
  ツテ居リマスノデ、御話ヲスレバ開業醫ノ
  方ガ保險醫ニナツテ戴ケナイト云フヤウナ
  コトハ恐ラクナイト思ヒマスノデ、吾々ハ
  最善ノ努力ヲ拂ヒマシテ、開業醫師ノ全部
  ガ御話ノヤウニ圓滿ニ保險醫ニナツテ貰ヘ
  ルヤウニ、出來ルダケノ努力ヲ拂ツテ行キ
  タイ、左樣ニ考ヘテ居リマス

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• 010・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ問題デアリマスル
  ガ、結局此ノ診療費問題ガ癌ダト云フ風ナ
  御考ヘノヤウデアリマス、是ハ成程サウダ
  ト思ヒマス、從來ノ健康保險醫ガ僅カナ治
  療費ニ依ツテ、忙ガシイ所ヲ更ニ忙ガシク
  サレテハ是ハ大變ダ、斯ウ云フコトデ所謂被
  保險者カラモ可ナリ非難ガアツタコトハ是
  ハ事實デス、併シナガラ此ノ問題ハ醫師ガ醫
  師タルノ本然ノ任務ヲ悟ルナラ、是ハ問題ナ
  イ譯デアル、サウシタ醫師ハ現ニ居ラナイ
  ト思フ、治療費、經費ノ爲ニ診療ヲ拒ムト
  云フコトハ是ハアリ得ナイト思フ、醫ハ仁
  術ナノデアル、サウ云フコトハ今更申上ゲ
  ルマデモアリマセヌガ、苟クモ患者ガアル、
  サウシテ診療ヲ求メル、是ハ經費ニ拘ラズ
  治療スベキデアリマス、往診スベキデアリ
  マイク診察スベキデアル、投藥スベキデア
  ル是ハ醫師ノ任務デアル、ダカラ指定ヲ
  受ケテモ受ケナクテモ、治療ヲ要求セ
  ラレレバ當然サウセナケレバナラヌノガ
  醫師ノ任務デアル、ダカラサウシタ問題ハ
  私ハ寧ロ心配ハナイノデハナイカト思ヒマ
  ス、併シナガラ醫者モサウシタ治療費、經
  費ニ依ツテ、所謂生活ヲ自己責任ノ原則ニ
  依ツテヤツテ居ルノデスカラ、只働キハ氣
  ノ毒ダカラ、國家ハ或ル程度ノ待遇ヲスル
  コトハ、是ハ必要ダト思ヒマス、隨テ例へ
  バ民間ニ於ケル顧問ト云フヤウナ形ニ於テ、
  指定醫ニ對シテハ月額相當ナモノヲ與ヘテ、
  サウシテ治療費、診療費等ハ極ク低イ額ニ
  於テ交付スルト云フヤウナコトニスベキデ
  ハナイカト思ヒマス、卽チ顧問醫ト稱スル
  ガ如ク、一定ノ月額ヲ與ヘテ指定スルト云
  フコトガ、眞ニ醫師ヲ遇スル法デハナイカ
  ト私ハ思フノデアリマス、斯ウ云フ點ニ付
  テノ御方針ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 011・武井群嗣

  ○武井(群)政府委員　保險醫ノ問題ハ今保
  險局長ノ二囘ニ亙ツテ御答ヘシタ通リデア
  リマス、是ハ船員保險バカリデナシニ、各
  種ノ社會保險ニ共通ナモノデアリマス、御
  趣旨ハ能ク了解致シマシタ、昨年議會ノ協
  贊ヲ經テ健康保險、職員健康保險等ニ付キ
  マシテ、此ノ指定制度ヲ執ツタバカリデア
  リマス、御承知ノ通リ此ノ兩三年後ニ全國
  民ガ漏レナク社會保險ニ加入スルト云フ時
  代ガ參リマスト、御趣旨ノヤウナコトガ自
  ラ實現スルコトニナルダラウ、斯樣ニ考ヘ
  テ居リマスガ、政府ノ制度ト致シマシテハ
  是デ結構ダト思ツテ居リマス

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• 012・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今次官ハ各社會保險ノ
  共通ノ制度トシテノ指定醫ノ問題ヲ御答辯
  ニ相成ツタ譯デアリマスガ、此ノ點私〓究不
  足デ能ク分リマセヌガ、全國民大衆ガ所謂
  社會保險ニ依ツテ一切ノ給付ヲ受ケルト云
  フヤウナ狀態ニ達スルト云フコトハ是ハ
  極メテ結構ナコトダト思ヒマスルガ、併シ
  ナガラソレハ現在ノ例へバ健康保險制度デ
  アリ、或ハ國民健康保險制度、或ハ勞働者
  災害保險、或ハ勞働保險等ノ綜合的ナ共通
  制度トシテノ問題デハナイカト思フノデア
  リマス、併シナガラ現在ノ健康保險ト云フ
  モノガ全國民大衆ニ行渡ツテ居ルカト言へ
  バ、必ズシモサウデハアリマセヌ、恐ラク
  其ノ實績カラ見マスルナラバ、國民ノ一小
  部分デハナイカト思フノデアリマス、結局
  是ハ國民ソレ〓〓ノ負擔ノ問題モアリマシ
  テ、サウ簡單ニ私ハ參ラナイデハナイカト
  思ヒマス、若シ一步ヲ進メテサウシタ保險
  料ノ負擔ガ非常ニ輕減サレルト云フヤウナ
  場合ニ於テハ、或ハ國民大衆ニサウシタ社
  會保險制度ガ行渡ルカモ知レマセヌケレド
  モ、現在ノ保險制度ノ下ニ於テハサウシタ
  全國民ニ普及スルト云フヤウナコトハアリ
  得ナイデハナイカト思フノデアリマスガ、
  此ノ點ニ付テノ政府ノ御意見ヲ伺ヒタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=12

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• 013・武井群嗣

  ○武井(群)政府委員　政府ト致シマシテハ
  結核對策ニ關スル大キナ國家意思ヲ決定シ
  テ居リマシテ、御承知ノ通リココ兩三年ノ
  中ニ全國民漏レナク國民健康保險組合ニ加
  入スルヤウニ措置ヲ致シテ居ル譯デアリマ
  ス、現ニ明年度ニ於キマシテハ農山漁村
  ニ於テ千六百万人ト云フモノヲ目當ニ、國
  民健康保險組合ヲ作ラウトシテ居リマス、大
  體明年度中ニ農山漁村民ハ漏レナク國民健
  康保險ニ入ルダラウト思ヒマス、斯樣ニ致
  シマストアト一二年デ全國民ガ入ルコト
  ニナル、只今ノ國策ガ實行サレル限リニ於
  キマシテ、速カニ全國民ノ社會保險ガ實現
  出來ルノデアリマス、斯樣ニ致シマスト、
  最初ニ田中委員ガ御述べニナリマシタヤウ
  ニ、全國ノ醫師ガ此ノ國民保險ニ協力セザ
  ルコトハアリ得ナイト思ヒマス、私ハ御懸
  念ノコトハナクナルダラウト思ヒマス

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• 014・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今全國民ニ對スル健康
  保險ノ普及ト云フ問題ニ關聯致シマシテ、
  醫師ノ指定制度ノ關係デアリマス、只今醫
  師ノ指定制度ノ關係カラサウシタ問題ニ及
  ンダノデアリマスガ、サウシタ醫師ノ指定
  ノ場合ニ、醫師ニ對スル待遇ナドハドウ云
  フ御考ヘデセウカ、之ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

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• 015・平井章

  ○平井政府委員　保險醫ノ醫療制度ハ非常
  ニ大キナ問題デアリマシテ、十八年前ニ社
  會保險ノ濫觴ト致シマシテ、健康保險ガ初
  メテ生レテ實施セラレマシタ當時ニ、關係
  者ノ間ニ大キナ問題ヲ提供致シタノデアリ
  マス、之ヲ他ノ外國ニアル例ニ依リマスヤ
  ウニ、囑託醫制度ニスルカ、或ハ自由選擇
  主義ヲ採用スルカト云フ非常ニ大キナ問題
  ガアツタノデアリマス、其ノ議論ノ結果現
  在ハソレ以來ズツト踏襲シテ居リマス自
  由選擇主義ヲ採用シテ居ル譯デアリマシ
  テ、開業醫五万アレバ五万、六万アレバ六
  万、總テノ人ガ、本人ガ希望サヘスレバ保
  險醫ニナレル、隨テ被保險者ハ制度ニ於テ掛
  ル醫師ヲ制限セラレルコトナクシテ、開業
  醫師ノ中デ自分ノ希望スル人ニ診療ヲ受ケ
  ルコトガ出來ルト云フ、自由選擇主義ヲ採
  用シマシテ、或ル制度、卽チ船員保險ニ於
  テハ此ノ人ト此ノ人ガ保險醫デアル、或ヘ
  健康保險ニ於テハ是ダケノ人ガ保險醫デア
  ルト云フヤウニ、開業醫師ノ中ノ或ル特定ノ
  人ヲ專門的ニ保險醫ニスルト云フ制度ハ避
  ケマシテ、開業醫制度ト云フモノノ美點ヲ
  尊重シナガラ、社會保險制度ノ運營ヲ圖ル
  ト云フ建前カラ、サウ云フ自由選擇主義ガ
  採用ニナツテ來テ居ルノデアリマス、只今
  ニ於キマシテモ其ノ方針ヲ變ヘヨウト云フ
  意思ハ吾々持ツテ居リマセヌガ、恐ラク只
  今次官カラ御說明申上ゲマシタヤウニ、今
  年度ニ於キマシテハ農山漁村二千万人ガ被
  保險者ニナル、國民健康組合ガ約六千出來
  上リマス、是ハ必ズ此ノ三月マデニハ完成
  スルト思ヒマス、又來年度モ千六百万人-
  國民健康保險組合ヲ町村ニ作リマシテ、來
  年度ヲ以テ略〓町村ニハ漏レナク國民健康保
  險組合ヲ設立セシメテ、組合ニ依ツテ此ノ
  診療費ノ重壓ヲ除去シタイ、診療費ノ重壓
  ニ依ル各種ノ社會的悲劇、其ノ他ノ弊害ノ
  起キマスモノヲ分散ノ方式ニ依ツテ、診療
  上ノ重壓ヲ除去シタイト考ヘテ居ルノデア
  リマシテ、來年度ヲ經過致シマスト、恐ラ
  ク全國ノ町村ニハ漏レナク國民健康保險組
  合ガ設立サレル譯デアリマス、然ル時ニハ
  都市ガ殘ルノデアリマシテ、都市ニ付キマ
  シテハ現在ニ於キマシテハ健康保險アリ、
  國民保險ガアリ、其ノ家族ノ給付モ致シテ
  居リマスシ、又船員保險ガアリマシテ、其
  ノ他政府職員ノ共濟組合、或ハ官業ノ共濟
  組合、或ハ〓職員ノ共濟組合ト云フヤウ
  ニ、社會保險デハアリマセヌケレドモ、社
  會保險ト同趣旨ノ制度モ發達致シテ參ツテ
  居リマスノデ、都市ニ住ンデ居リマス人ハ、
  ソレ等ノ制度ニ依ツテ一定ノ保護ヲサレ
  テ居ル譯デアリマスガ、ソレカラ除カレマ
  シタ人々ニ對シマシテハ、明後年カラ手ヲ
  着ケマシテ、都市ニモ普及セシメタイ、然
  ル上ハ恐ラク全國民ト言ヘナクテモ、國民
  ノ大多數ガ何等カノ保險制度ニ依ツテ救濟
  サル、救ハレル譯デアリマスノデ、斯樣ニ
  ナリマシタ場合ニ於キマシテハ、開業醫師
  ハ恐ラク總テガ保險醫ニナツテ戴ケルモノ
  ト思フシ、吾々モ左樣ニ努力シテ行キタイ
  ト考ヘテ居リマス、ソコデ診療費ノ問題デ
  アリマスガ、サウ云ツタ健康保險デ申シマ
  スレバ三百万人、國民健康保險組合デモ數
  千人カラ數万人ニ達シマスガ、其ノ多數ノ
  醫療ニ對スル診療費ヲ政府或ハ組合ガ一手
  デ支拂ヒマス、其ノ基準ヲ決定致シマスコ
  トハ非常ニムヅカシイノデアリマシテ、現
  在ト致シマシテハ最近厚生大臣ノ決定ヲ經
  テ告示サレマシタガ、其ノ保險醫ガ診療ヲ
  致シマシタ場合ニ於ケル診療報酬支拂ノ基
  準ヲ決定致シタノデアリマス、御承知ノ通
  リ其ノ藥劑若クハ手術、處置其ノ他一切
  ヲ點數ニ現ハシマシテ、其ノ一點ヲ現在ニ
  於キマシテハ先ヅ二十錢ト云フコトニ決メ
  マシテ、ソレ〓〓ノ點數ニ二十錢ヲ掛ケタ
  モノガ政府若シクハ組合カラ支拂ハレルコ
  トニ相成ツテ居ルノデアリマス、此ノ多數
  人ノ團體的醫療ノ診療費ノ算出基準ト云フ
  モノハ事務的ニ見マシテ、ドウシテモ或ル
  程度畫一性ニナラザルヲ得ナイノデアリマ
  ス、併シ決定的ニ畫一ニナリマシテハ甚ダ
  シク實情ニ副ハナイ場合ガアリマスノデ、
  其ノ間ニソレ〓〓或ル程度ノユトリヲ付ケ
  テ居リマスケレドモ、原則トシマシテハ或
  ル程度ノ確定的、畫一的ナモノニシマシテ、
  サウシテ事情已ムヲ得ナイ場合ニハ、ユト
  リヲ付ケテソレ〓〓ノ點數ヲ增スト云フヤ
  ウニ決メマシテ、其ノ厚生大臣ノ決メタ基
  準ニ依ツテ各保險醫ガ診療ヲ致シマシタモ
  ノヲ政府若シクハ組合ガ支拂フ、斯ウ云フ
  ヤウニ致シテ居ルノデアリマス

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• 016・田中藤作

  ○田中(藤)委員　健康保險網ノ擴大ト共ニ、
  保險醫ノ指定ノ問題ハ、自ラ解消スルト云
  フ譯デアリマスルガ、是ハ結局二年、或
  三年先ノコトナンデス、現ニ私ガ問題ト致
  シテ居ルノハ此ノ改正ニ依ツテ醫療給付ヲ
  受ケ得ベキ被保險者ノ問題ガ今日ノ問題デ
  アル、二年、三年先ニハ只今次官、政府委
  員カラ御話ノ通リ保險醫ノ指定問題ハ是ハ
  解決スルト思ヒマス、併シ現在ニ於テ適
  當ナ方策ヲ講ゼラレナイ限リハ、權威アル
  醫師ノ療養ヲ受ケ難イト云フ缺陷ガアルノ
  ヂヤナイカ、此ノ點ヲ私御伺ヒシテ居ル譯
  ナンデス、此ノ點ハ結局議論ニナルト思ヒ
  マスルガ、只今ノ說明ニモアツタ如ク、所
  謂均一的ナ療養費用ヲ支給サレル關係上、
  ドウシテモ何ト言ヒマスカ、ソレ等ノ療養
  ニ適切ナ方法ガ講ジ難イト云フノガ實情デ
  ハナイカト云フ氣ガスルノデアリマス、ソ
  コデ此ノ點ニ付テハ十分考慮ヲ願ツテ、今
  明年ノ問題トシテノ保險醫指定問題ニ付テ
  適當ナ考慮ヲ私ハ政府ニ要望致シマス
  是ハ此ノ程度ニ致シマシテ、私ハ更ニ問題
  ヲ轉ジマシテ、三十二條ノ所謂療養給付ノ
  期間、通ジテ九箇月ト云フコトニ改正セラ
  レマシタ、政府ハ所謂延長シタノダト云フ
  風ナ說明デアツタヤウデアリマスケレドモ、
  是ハ在來ノ船主ノ二箇月負擔ガ結局此ノ保
  險ニ統一サレタ關係デ延長サレタ譯デアリ
  マシテ、實質上ノ延長デハナイト私共ハ考
  ヘテ居リマス、此ノ九箇月ノ期間ハ期間ト
  シテハ必ズシモ私短カイトハ申上ゲマセヌ、
  併シナガラ船員病ノ特質カラ申シマスルト、
  短キ傾キガナイデモナイト云フ感ジガスル
  ノデアリマス、例ヘバ船員病ノ特質トシテ
  ハ、結核、神經痛、或ハ外傷、花柳病、胃
  腸病等ノ病症ガ可ナリ統計ノ示ス所ニ依リ
  マスト多イノデアリマス、而モ斯ウシタ症
  狀ト云フモノハ可ナリ長期ニ亙ルノガ實際
  デアリマス、而モ囘復期ニ於テ療養給付ヲ
  打切ラレルト云フコトハ被保險者ニ取ツテ
  ハ大變迷惑デアリマシテ、是ガ爲ニモウ一
  步デ眞ニ治療ノ目的ヲ達シ得ルト云フ時
  ニ、經費ノ關係デ、將來療養スルコトノ出
  來ナイモノモ相當アツタノデハナイカト思
  ハレルノデアリマス、斯ウ云フ點ニ付テノ
  所信ヲ御伺ヒ致シタイト思ヒマス

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• 017・平井章

  ○平井政府委員　御答へ申上ゲマス、社會
  保險ハ御承知ノ通リ短期保險ト長期保險ト
  ガアリマスガ、所謂疾病ノ保險ノ如キ短期
  保險ニ於キマシテハ、大體六箇月ヲ給付期
  間トスルノガ吾々トシマシテモ適當デアル
  ト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ以上ノ期
  間ヲ要スル場合ニ於キマシテハ寧ロ癈疾
  保險ト云フ制度ニ移ルベキデハナイカト考
  ヘテ居リマスルガ、ソコデ今囘船員ヲ義務
  保險ニ入レマシタ關係上ガアリマシテ、船
  員保險ニ於キマシテハ給付期間ヲ九箇月ニ
  致シタノデアリマスルガ、是モ實ハ內部ニ
  於キマシテ、他ノ短期保險ガ健康保險ニシ
  マシテモ、職員健康保險ニシマシテモ總テ
  六箇月デアリマスノデ、船員保險ダケ九箇月
  ニスルト云フコトハ、相當議論ガアツタノ
  デアリマスケレドモ、從來ヨリモ保護ガ薄
  クナツテハ相成ラヌノデアリマスカラ、九
  箇月ニ致シタノデアリマシテ、非常ニオ氣
  ノ毒ナ場合ガアリ得ルノハ結核ノ場合デア
  リマシテ、結核性疾患ニ付キマシテハ法令
  ノ示シテアリマス通リニ、更ニ六箇月間延
  長致シマスノデ、通算致シマスト一年三箇
  月間結核ニ付キマシテハ船員保險デハ療養
  ノ給付ヲ致シマス、一箇年ニ致シマスト結
  核ノ九〇%ハ統計的ニ救ハレテ來ルノデアリ
  マシテ、船員保險ニ於テ一年三箇月ニ相成
  リマス場合ニ於キマシテハ、結核性疾患ノ
  大部分ハ之ニ依ツテ保護サレルコトニナル
  ノデハナイカト考ヘテ居リマシテ、要スル
  ニ短期保險ニ於キマシテハ六箇月、或ハ例
  外的ニ九箇月、若シクハ結核性疾患ニ付テ
  ハ一年ト云フコトガ、大體適當デアルヤウ
  ニ吾々考ヘテ居ルノデアリマス

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• 018・田中藤作

  ○田中(藤)委員　大體分リマシタ、併シナ
  ガラ結核ノ例カラ申シマスルト、僅カデモ
  尙ホ救ハレナイモノガアルト云フコトハ事
  實ナンデス、斯ウ云フ場合ニ於ケル救濟方
  法ガアツテモ宜イノヂヤナイカ思フノデ
  アリマス、是ハ本人ノ爲ト云フヨリハ國家
  ノ爲デス、隨テ此ノ點ニ付テハ何カ但書ト
  カ例外的ナ措置ヲ講ズル方法ハアリマスマ
  イカ、此ノ點ニ付テ御所信ヲ御伺ヒ致シマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=18

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• 019・平井章

  ○平井政府委員　御答へ致シマス、一年三
  箇月ニ致シマシテモ尙ホ治癒シナイデ療養
  ガ打切ラレルト云フ場合ハ少イト思ヒマス
  ケレドモ、絕無デハナイト思フノデアリマ
  ス、併シ現在ノ法令ノ建前カラ申シマシテ、
  法制的ノ給付ハ考ヘル餘地ガアリマセヌ、
  但シ船員保險法ノ改正ヲ今囘致シマシテ、
  福社ニ關スル施設ヲスルコトガ出來ルヤ
  ウニ致シタイト考へテ居リマスノデ、ソ
  レ等ノ事業ニ依リマシテ、法定給付デハア
  リマセヌケレドモ、一年三箇月給付シテ、尙
  ホ治癒シナイデ非常ニ御困リナ場合ガアリ
  マスナラバ、福社施設トシテソレ/〓考究
  シテ見テモ宜イト考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=19

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• 020・田中藤作

  ○田中(藤)委員　法定給付ニアラザル福社
  事業トシテ給付セラレルト云フコトデアレ
  バ、ソレハ結構ダト思ヒマス、是非サウ云
  フ制度ノ實現ヲ望ミマス、尙ホ此ノ三十二
  條ノ所謂主務大臣ノ指定疾病、是ハ多分結
  核ダケダト思ヒマスガ、更ニ例ヘバ神經痛
  ノ如キモノヲ指定スル御意思ガアリマセヌ
  デセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=20

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• 021・平井章

  ○平井政府委員　只今ノ所各種ノ社會保險
  ニ於キマシテ、延長給付ヲ認メテ居リマス
  ノハ結核性疾患ノミデアリマシテ、結核撲
  滅ノ國策ノ決定ニモアリマシタヤウナ事情
  モアリマスノデ、社會保險モ社會保險ノ立
  場ニ於キマシテ、結核撲滅ニ協力スルト云
  フ意味合カラ、各社會保險ガソレ〓〓結核
  性疾患ニ付キマシテ延長給付ヲ致シテ居リ
  マスシ、又致サントシテ居ルモノモアルノ
  デアリマシテ、現在ノ所結核性疾患ノミヲ
  指定致シタイト考ヘテ居リマスガ、尙ホ船
  員ニ特別ノ疾病ガアリマシテ、其ノ疾病ガ
  著シク長期ノ治療ヲ要スルト云フモノガア
  リマスナラバ、吾々トシテハ將來ノ問題ト
  シテ、ソレ〓〓調査〓究シタ上ニ於テ考究
  ヲシテ見タイト考ヘテ居リマス

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• 022・田中藤作

  ○田中(藤)委員　大體了承致シマシタガ、
  此ノ指定疾病ニ付テハ寧ロ醫師ノ認定ニ
  依ツテ主務大臣ガ之ヲ認可スルト云フヤウ
  ナ建前ニ於テ、相當長期ニ亙ル疾病ニ對シ
  テハ療養ノ完璧ヲ期スルト云フヤウニ將來
  御考究ヲ願ヒタイト思ヒマス、此ノ點ハ是
  非政府ニ望ンデ置キマス
  ソコデ其ノ次ニ御伺ヒ致シタイコトハ、
  今度ノ改正ニ出テ居リマセヌガ、第一條ノ
  所謂療養給付ヲ家族ニ及ボス意思ガナイカ
  ドウカト云フコトデアリマス、是ハ健康保
  險法ノ第一條ニ於テモ、被保險者ノ同一世
  帶ニ屬スル家族ニ付テハ療養給付ヲナスト
  云フコトニ相成ツテ居ルノデアリマスガ、
  此ノ船員保險ニ於テ特ニ斯ウ云フ點ガ除カ
  レテ居ル理由ハドウ云フ點ニアルノデセウ
  カ、此ノ點ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス

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• 023・平井章

  ○平井政府委員　船員保險法ヲ制定致シマ
  ス當時カラ非常ニ議論ノアリマシタ一ツハ
  船員ノ家族ニ對シテ給付ヲ致シタラドウカ、
  特殊ノ意味合カラ左樣ナ意見ガ非常ニ鬭ハ
  サレタノデアリマス、ソコデ政府ト致シマ
  シテハ以來家族ニ對スル給付ヲ開始シタ
  イト云フ氣持ヲ以チマシテ調査〓究ヲ進
  メテ參ツテ居リ、現ニ致シテ居ルノデアリ
  マスガ、船員ノ家族ニ對スル給付ヲ始メマ
  スニ付キマシテハ、工場鑛山ノ勞働者ノ狀
  態ト違ヒマシテ、事務的ニ、技術的ニ非常
  ニ困難デアリマシテ、是ハ詳シク申上ゲマ
  スト御諒解ガ行クカトモ思ヒマスガ、御承
  知ノ通リノ船員ノ特殊性ニ鑑ミマシテ、其
  ノ家族ニ給付ヲ致スト云フコトハ技術的
  ニ事務的ニ非常ニ問題ガアリ、困難ナ事情
  ガアリマスノデ、一定ノ成案ガ今尙ホ得ラ
  レナイト云フ狀態ニアルノデアリマス

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• 024・田中藤作

  ○田中(藤)委員　御〓究中ト云フコトデア
  リマスガ、併シナガラ是ハ迅速ニ片付ケテ
  戴キタイ問題ダト思ヒマス、私ガ申上ゲル
  マデモナク、船員ハ今ヤ生命ヲ賭シテ海上
  作戰ニ、或ハ海上輸送ニ健鬪シツツアルノ
  デアリマス、是ガ後顧ノ憂ヘガアツタノデ
  ハ、眞ニ其ノ船員トシテノ使命ヲ果スコトハ
  私ハ出來ナイト思ヒマス、詰リ船員ヲシテ
  後顧ノ憂ヘナカラシムル爲ニハドウシテ
  モ此ノ家族ニ關スル療養給付ト云フコトガ
  緊要デアリ、絕對必要ダト思ヒマス、ソコ
  デ斯クノ如キハ事務的ノ困難モアリマセウ、
  經費ノ問題モ伴ヒマセウ、併シ是ハ勇氣ヲ
  以テヤレバヤレヌコトハアリマセヌ、ソコ
  デ速カニ是ハ成案ヲ得テ、少クトモ此ノ次
  ノ議會、或ハソレマデニ御提案戴クヤウナ
  方法ヲ講ジテ戴キタイト思ヒマス、此ノ點
  ニ付テノ次官ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

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• 025・武井群嗣

  ○武井(群)政府委員　船員保護ノ重要性ニ
  付キマシテハ御說ノ送リデアリマス、而シ
  テ家族給付ノ點ニ付キマシテハ、先程來局
  長ノ述ベタ通リデアリマス、重要性ニ付キ
  マシテハ一層加重セラレタコトデアリマス
  ノデ、更ニ銳意〓究ヲ急グコトニ致シマス

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• 026・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ問題ハ是非急イデ
  解決ヲ願ヒタイト云フコトヲ申上ゲテ置キ
  マス
  其ノ次ニ御伺ヒ致シタイコトハ、是ハ此
  ノ改正案ニ出テ居リマセヌガ、第五十條ノ
  死亡手當ノ問題デアリマス、死亡手當ノ給
  付ニ付キマシテハ三年以上ノ被保險者タ
  ルコトガ必要デゴザイマス、併シナガラ斯
  ウシタ期間ノ限定ト云フコトハ、被保險者
  ニ取ツテハドウモ淋シイ感ジガスルノデハ
  ナイカト思ヒマス、苟クモ被保險者デアル
  以上ハ、死ンダナラバ其ノ遺族ニ對シテ多
  少ノモノガ與ヘラレテ宜イノデハナイカ、
  健康保險其ノ他ニ於テハ、埋葬料其ノ他ノ
  名義デ人情ニ依ツテ適當ニ支給セラレル途
  ガ講ゼラレテ居ルト思ヒマスガ、船員保險
  ニ於テハ、私調ベテ見マシタガ、此ノ點ガ
  ドウモ見當リマセヌ、ドウ云フモノデセウ
  カ、此ノ點ヲ伺ヒタイ

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• 027・平井章

  ○平井政府委員　現在ノ制度ニ於キマシテ
  ハ死亡手當金ハ三箇年被保險者デナケレ
  バ支給シナイト云フコトニ相成ツテ居ルノ
  デ、之ヲサウ云ツタ資格條件ヲ附サナイデ、
  死亡シタ場合ニ於テハソレ〓〓給付ヲ致シ
  タラ如何デアラウカ、斯ウ云フ御質問デア
  ラウト思フノデアリマスガ、實ハ最近ノ死
  亡者ノ狀態ハ極メテ祕密ニセラレテ居リマ
  シテ、吾々ト雖モ十分知リ得ナイノデアリ
  Way隨ヒマシテ先般或ル委員カラ資料ノ
  御要求モアリマシタガ、船員ノ死亡者ノ數
  ハ申上ゲテ居ナイ譯デアリマス、ソコデ船
  員ノ三箇年未滿ノ死亡ニ對シ保險給付ヲ致
  シマス場合ニ於テハ、當然ソレダケ保險金
  ノ方ニ響イテ來ル譯デアリマス、保險料ヲ
  彈キ出ス爲ニハ、大體實情ガドウ云フ狀況
  ニアルカト云フコトガ分リマセヌト、保險
  料ヲ算出スル譯ニモ參ラナイノデアリマス、
  サウ云ツタ事務的ナ困難ガアリマス外ニ、
  現在ニ於テ戰爭ニ伴フ船員ノ死亡ニ付キマ
  シテハ單ニ徵用セラレマシタ船員デアリ
  マス場合ニ於キマシテハ特別ノ賜金ノ制度
  ガアリマスシ、又戰時海運管理令ニ依リマ
  シテ徵用セラレマシタ船員ニ付キマシテハ、
  其ノ管理令ニ基イテ死亡ニ對スル相當額ノ
  一時金モアリマスシ、其ノ爲ニ家族ガ生活
  ニ困ルト云フ場合ニ於キマシテハ、戰時海
  運管理令ニ依リマシテ家族ノ扶助マデモ見
  テ居ルノデアリマシテ、戰時ニ於キマシテ
  船員ガ亡クナリマシタ場合ニ於キマシテハ、
  ソレ〓〓ノ制度ニ於キマシテ或ル程度ノ保
  護ガ加ヘラレテ居リマス關係モアリマスノ
  デ、先程申シマシタヤウナ事務上ノ困難サ
  モアリマスルカラ、今囘ハ改正致サナイデ、
  從來通リ三年間ノ資格ヲ要スルコトニ相成
  ツテ居ルノデアリマス

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• 028・田中藤作

  ○田中(藤)委員　戰時ノ特例トシテソレ〓〓
  國家トシテ遇スル方法ガアルト云フコトデ
  アリマス、ソレハ勿論左樣デゴザイマセウ、
  又斯ウシタ死亡手當ヲ算出スル基礎ニ付テ
  モ祕密ニサレテ居ル關係デ困難ダト云フ
  コトモ尤モダト思ヒマス、併シナガラ制度
  トシテ、期間ニ拘ラズ死亡手當ヲヤルノダ
  ト云フコトヲ示スコトガ、遺族ニ對スル一
  ツノ慰藉ト申シマスカ、喜ンデ海員トシテ
  働イテ戴クト云フ感ジヲ起サス方途デハ
  ナイカト思フノデアリマス、斯ウ云フ譯デ
  アリマスノデ、他ノ色々ノコトデ償ハレル
  ト致シマシテモ、船員保險ハ船員保險トシ
  テ斯樣ナ死亡手當ノ制度ガアル以上ハ、普
  ク及ボスベキデハナイカト思フノデアリマ
  ス、此ノ點ニ對スル所信ヲ更ニ承ツテ置キ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=28

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• 029・平井章

  ○平井政府委員　最初ニ船員保險ヲ目論見
  ミマス場合ハ別ト致シマシテ、色々制度ヲ
  起シマス場合ニ於キマシ、テハ、特別ナ會計
  ニモ相成リマシテ、收支ヲ彈キ出シテ制度
  ヲ行フノデアリマスノデ、現在デハ先程申
  シマシタヤウニ三年間被保險者デアツタ場
  合ニ死亡手當金ヲ支給スル、斯ウ云フコト
  ニ相成ツテ居ルノデアリマシテ、只今ノ所
  ハ吾々トシテ此ノ三年間ノ資格期間ヲ撤廢
  致シマシテ、船員トナツタ翌日死亡シテモ
  死亡手當金ヲ支給スルト云フコトニ致スト
  云フ御約束ハ致シ難イノデアリマスルガ、
  尙ホ色々情勢ヲ見、且又ソレ〓〓ノ資料ヲ
  〓究致シマシテ、著シク負擔ノ增加ヲ來サ
  ナイト云フヤウナ見透シノ付キマシタ場合
  ニ於キマシテハ、十分考慮シタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=29

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• 030・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ問題ハ議論ニナリ
  マスカラ、是以上追究ハ致シマセヌ、是非
  サウシタ條件ノ撤廢ニ進マレンコトヲ望ン
  デ置キマス、只今保險料算出ノ基礎ノ問題
  デ御話ガアツタノデアリマスガ、ドウ云フ
  基準ニ依ツテ保險料ヲ算定サレテ居ルカ、
  斯ウ云フ點ヲ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=30

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• 031・平井章

  ○平井政府委員　現在ニ於キマシテハ保
  險料率ハ標準報酬一圓ニ付テ八錢二厘、百
  圓ニ付テ八圓二十錢、斯ウ云フコトニナツ
  テ居リマシテ、此ノ保險料ヲ事業主ト船員
  トデ折半負擔ニ相成ル譯デアリマス、但シ
  今度ノ改正法ガ實施ニ相成リマス場合ニ於
  キマシテハ、船員法上ノ扶助ヲ保險ニ取入
  レマシタノデアリマスカラ、大體ノ見當ハ
  一圓ニ付テ十錢ニシテ、ソレヲ四錢ト六錢
  ニ負擔ヲ致シマシテ、船主ヲ六錢、船員ヲ
  四錢、斯樣ニ致シタイト考へテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=31

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• 032・田中藤作

  ○田中(藤)委員　私ノ御伺ヒシタノハ、其
  ノ保險料ノコトデハナクシテ、サウシタ一
  圓ニ付テ四錢或ハ六錢ト云フ保險料ヲ算出
  サレタ基礎、ソレヲ御伺ヒシタイノデス

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• 033・菊池武夫

  ○菊池(武)政府委員　死亡手當金ノ保險料
  ノ算出方法ハ、千人ニ付キマシテ死亡率八
  人ト云フ計算ヲ以テヤツテ居リマス

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• 034・田中藤作

  ○田中(藤)委員　今ノハ死亡手當ノ問題デ
  ナクシテ、一般的ノ保險料算出ノ基礎ヲ伺
  ツタ譯ナンデスガ、是ハ御答辯ヲ戴ケマス
  カ

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• 035・平井章

  ○平井政府委員　各種社會保險ニ於キマシ
  テ保險料ヲ如何程ニスルカト云フ問題ハ、
  非常ニ技術的ナ問題デアリマシテ、私今船
  員保險ノ現在ノ八錢二厘ヲドウ云フ基礎ニ
  基イテ算出シタカト云フコトヲ詳細ニ承知
  致シテ居リマセヌガ、ソレハ結局船員ノ疾
  病或ハ勤續年數、或ハ癈疾ノ率、或ハ死亡
  ノ率ト云フヤウニ、各種ノ法定義務ノ事故
  ヲ過去數年間ニ亙リマシテ統計ヲ取リマシ
  テ、何年間普通船員トシテ居ルカドウカト
  云フ其ノ調査モシ、ドノ位ノ死亡率ガアル
  カ、ドノ位ノ癈疾ノ率ガアルカト云フヤウ
  ナ、各種保險事故ノ實績ヲ彈キマシテ、ソ
  レニ依ツテ給付ヲドレダケ出スカト云フコ
  トカラ、財源ガ幾ラ要ルカ、隨テ標準報酬
  ニ對シテハ八錢ナラ八錢デ宜イ、斯ウ云フ
  ヤウニ決マル譯デアリマシテ、各種ノ保險
  事故ノ統計的基礎ト賃金ノ實情カラ、數學
  的ニソレコソ非常ニ細カイ計算ヲシテ彈キ
  出シテ居ルノデアリマス

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• 036・田中藤作

  ○田中(藤)委員　此ノ保險料算出ノ問題ハ
  議論ハ致シマセヌガ、只今ノ死亡手當ノ算
  出ノ基礎トシテノ千人ニ對スル八人ノ死亡
  率ト假ニ致シマスト、假ニ百圓ヅツノ死亡
  手當ヲ出シテモ十六万圓ナンデアル、
  〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕
  現在ノ保險料ノ積立金ノ狀態ハ大體十
  七年度ヲ合セマスト、恐ラク二千五、六百
  万圓ノ金ガアルヂヤナイカト思ヒマス、殊
  ニ所謂運用ノ收入ト云フモノガ今年度ニ
  於テハ八十七万二千圓ヲ計上サレテ居ル譯
  ナンデアリマス、サウ云フ點カラ見ルト、
  僅カ十六万圓位ノ死亡手當ニ依ツテ保險ノ
  經理、保險ノ財源ニ付テ困難ヲ感ズルト云
  フコトハアリ得ナイト思フノデス、サウ云
  フ譯デアリマスカラ此ノ問題ハ更ニ御〓究
  ヲ煩ハシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=36

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• 037・平井章

  ○平井政府委員　實ハ御言葉ヲ返スヤウデ
  恐縮デゴザイマスガ、船員保險ノ積立金ト
  申シマスノハ純然タル剩餘金デハゴザイマ
  セヌ、健康保險ノ如キ短期保險ニ於キマシ
  テハ、積立金ガ純然タル剩餘金デゴザイマ
  スケレドモ、船員保險ハ御承知ノヤウニ短
  期保險ト長期保險トヲ併セタ制度デゴザイ
  マスノデ、長期保險、卽チ年金ニ關スル一
  定ノ積立金ハドウシテモシナケレバナラヌ
  モノデアリマシテ、年金ノ開始ニナリマシ
  タ時ニ手ヲ着ケマスカラ、一定ノ積立金ハ
  ドウシテモシナケレバナラヌ、其ノ責任積
  立金ト云フモノガ御承知ノヤウニ相當ノ額
  ニ達シテ居リマスガ、其ノ責任積立金ガア
  ルカラト云ツテ之ヲ使フ譯ニハ參リマセヌ
  デ、之ヲ使ヒマスト年金ガ始マリマシタ時
  ニ金ガナクテ支給ガ出來ヌ、斯ウ云フ責任
  ノドウシテモ積立テナケレバナラヌ金デア
  リマスノデ、是ハ使ヒ得ナイ金デアリマス、
  更ニ又今死亡者ノ數ハ千人ニ八人ト申シマ
  シタガ、是ハ平時ニ於ケル統計デアリマシ
  テ、最近ノ如キ狀態ニ於キマシテハ八人デ
  ハ到底納マツテ居リマセヌ、數字ハ極祕ニ
  ナツテ居ツテ申上ゲ兼ネマスケレドモ、中
  中ソンナ程度デハ納マツテ居リマセヌ、相
  當死亡者ハ多イノデアリマス

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• 038・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノコトハ議論ハ致シ
  マセヌガ、積立金ガ必ズシモ剩餘金ヂヤナ
  イト云フコトハ、ソレハ御尤モ、私モ左樣
  考ヘテ居リマス、ソレガアルカラト云ツテ
  ドウシロト云フ譯デハアリマセヌガ、例、
  バ十六年ノ決算ヲ見テミマスト、豫定給付
  ニ對スル支出ハ三分ノ一以下ナンデス、何
  デモ百六十七万圓ノ中デ五、六十万圓ノ豫
  定給付シカナイ、百數万圓ガ殘ツテ居ル譯
  デアリマス、斯ウ云フノハ恐ラク剩餘金ト
  見テ宜イノヂヤナイカト思フノデアリマス、
  隨テ財源ニ困ルト云フ意見ガ出タコトハド
  ウカト思フノデアリマス、ソコデ私ハ議論
  シテ居ル譯デアリマスガ、是ハ是以上議論
  ハ致シマセヌ、ソコデ私ハ進ンデ伺ヒタイ
  コトハ、今度ノ新シイ規定ノ福社施設ニ關
  スル問題デアリマス、福社施設ニ付テハ十
  八年度ノ豫算ノ示ス所ニ依リマスト、所謂
  保養費、保健奬勵費、健康診斷費等合セテ
  八万三千圓ヲ計上サレテ居ルノデアリマス、
  金額ニ於テハ極メテ少イ譯デアリマス、斯
  ウ云フコトデ眞ニ福社施設ノ完璧ヲ期シ得
  ルカドウカト云フコトハ私ハ疑問ダト思フ
  ガ、先ヅドウ云フ福社施設ヲナサツテ居ル
  カト云フコト及ビ將來ノ御方針ヲ伺ヒタイ
  ト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=38

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• 039・平井章

  ○平井政府委員　福社施設ノ御質問ニ付テ
  御答ヘ申上ゲマス、吾々ト致シマシテ、
  原則トシテ社會保險ハ單ニ病氣怪我ヲシマ
  シタ場合ニ醫療ヲ加へ、休ンダ場合ニ手當
  金ヲ支給スル、斯樣ニ致シマシテ速カニ病
  氣ヲ治癒セシメテ、一日モ早ク產業ニ從事
  シテ貰フ、又生活ノ安定ヲ期スルト云フコ
  トハ是モ勿論大切ナ目的デアリマスケレ
  ドモ、ソレヲ以テ社會保險ノ目的ガ終始ス
  ルモノデハナイト思ヒマス、吾々ノ考ヘル
  所ニ依レバ、更ニ進ンデ病氣怪我ヲ少クス
  ル、卽チ健康ヲ保持增進スル、社會保險ノ
  條文ハ保健施設ト云フ事業ヲ大イニヤリマ
  シテ、現有勞務ノ增强確保ヲ圖リ、戰時下
  最モ必要ナ戰力增强ニ社會保險モ寄與スル
  ト云フコトガ一ツノ大キナ社會保險ノ使命
  ダト考ヘマシテ、來年度ノ各種社會保險制度
  ノ豫算ニ於キマシテハ健康保持增進ノ保
  健施設ノ經費ヲソレ〓〓增額致シテ居ルノ
  デアリマス、船員保險ニ於キマシテハ御承
  知ノ通リ十三万人足ラズノ被保險者ノ保險
  デアリマシテ、特別會計ガ小サイノデアリ
  マスカラ、自然福社施設ノ金モ御話ノヤウ
  ニ少額デアリマス、現在行ツテ居リマスル
  モノハ全國ノ船ノ出入ノ多イ都市、三十九
  箇所ニ六十名餘リノ健康診斷醫ト云フモノ
  ヲ囑託致シマシテ、船員ガ長ノ航海カラ上
  陸致シマシタ場合ニ健康診斷ヲソコデシテ
  貰フ、疲勞ガ甚ダシクテ、保養ヲ要スルト
  云フ人ニ對シマシテハ十三縣ニ十四箇所ノ
  保養所ヲ設ケマシテ、其處ニ入ツテ戴キマ
  シテ、心身ノ休養ヲ圖ツテ戴ク、最近モ吾
  吾ノ方カラ職員ヲ派シマシテ寢食ヲ共ニシ
  テ船員ト語ラシタノデアリマシテ、船員ガ
  數箇月ニ亙ル危險區域ヲ航海シテ歸リマシ
  テ、心身共ニ疲勞シテ居ル人ガ斯ウ云ツタ
  保養所ニ入リマシテ囘復ヲ圖ルト云フコト
  ニ付テハ、船員ハ非常ニ喜ンデ居ラレルヤ
  ウデアリマス、更ニ吾々ト致シマシテモソ
  レゾレノ希望ヲ聽キマシテ、此ノ保養所ノ
  擴充强化ヲ圖リタイト思ヒマスガ、現在ト
  シテハ十三縣ニ亙リマシテ十四箇所ノ保養
  所ヲ設ケマシテ、每月千人餘リモ此處ニ收
  容致シマシテ、心身ノ囘復ヲ御願ヒシテ居
  ル譯デアリマス、又健康診斷ノ結果、榮養
  劑ノ必要ナ方ニ對シマシテハ榮養劑ヲ支給
  致シテ居リマス、更ニ又船員ニ特別必要ナ
  豫防器具ノ配給ナドモ致シテ居リマス、吾
  吾ト致シマシテハ此ノ保健施設モ一層財政
  ノ餘裕ノ付ク限リ擴充致シマシテ、病氣ニ
  ナツテカラノ療養ヨリモ、病氣ニナラナイ
  ヤウニ、怪我ニ陷ツテ戴カナイヤウニ、健
  康ヲ保持增進スルト云フコトニ努メタイト
  考ヘテ居リマス
  更ニ今度ノ改正法ニ依リマシテ福社施設
  ヲナシ得ル規定ヲ設ケタイト考ヘマスノハ、
  先程來御話ガアリマス長期保險ノ準備ノ積
  立金モ御話ノヤウニ段々增加致シテ參リマ
  スノデ、此ノ積立金ヲ運用致シマシテ、積
  立金ノ保險經濟上ノ利率ハ比較的低イノデ
  アリマスカラ、是ガ運用ヲ圖リマスト、ソ
  コニ利鞘ガ出來マスノデ、更ニ其ノ金ノ運
  用ト云フ問題モアリマシテ、此ノ積立金
  ノ運用ニ依リマシテ、此ノ保健施設ヨリモ
  更ニ一歩進ンダ船員ノ福社施設ノ擴充强化
  ヲ圖リタイ、其ノ爲ニコソ此ノ法律改正ヲ
  實ハ御願ヒシテ居ル譯デアリマス、大體吾
  吾ノ考ヘテ居リマス福社施設トシテハ船
  員ノ老齡者ノ生活保護ニ關スル施設、或ハ癈
  疾船員ノ職業再〓育ニ關スル施設、或ハ癈
  疾囘復ニ關スル施設、癈疾ニナラレタ方ノ
  少シデモ機能ヲ囘復シテ貰フヤウナ施設、
  或ハ生活相談、若シクハ授產、職業指導ニ
  關スル施設ト云フヤウナコトヲ吾々ハ考ヘ
  テ居ルノデアリマシテ、船員保險ガ施行サ
  レマシテカラ未ダ日ガ尙ホ淺イノデアリマ
  シテ、積立金モ澤山アリマセヌガ、漸次增
  加シテ來テ居ルノデアリマシテ、船員保險
  ニ於テハ之ヲ船員ノ福利施設ニ使ヒタイ、
  斯樣ニ考ヘマシテ、今囘ノ法律改正ヲ企畫
  シタ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=39

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• 040・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ全國三十九箇所ニ
  六十人ノ健康診斷醫ガ囑託サレテ居ルト云
  フコトデアリマスガ、六十人デ果シテ全部
  ノ船員ノ健康診斷ガ完璧ニ行ハレルデセウ
  カ、之ヲ先ヅ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=40

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• 041・平井章

  ○平井政府委員　十三万ニ近イ船員ノ人ガ
  同時ニ上陸シテ全部健康診斷ヲ受ケルトス
  ルナラバ、恐ラク六十人デハ足リナイト思
  ヒマスガ、最近ノ船ノ實情ハ御承知ノヤウ
  ニ、昔ニ比ベテ船員ノ乘船下船ノ囘數ガ非
  常ニ少イノデアリマシテ、隨テ其ノ乘船期
  間ガ平時ノ場合ヨリモ著シク長クナツテ居
  リマス、サウ云フ關係デ內地へ歸ラレテ船
  カラ上ガラレタト云フ場合ニ、强制的デハ
  アルマセヌデ、本人ノ希望ニ依ツテ診斷ヲ
  受ケテ貰ヒマスガ、現在ノ所ハ六十人デ
  サシテ支障ハナイト見テ居リマスガ、勿論
  其ノ人數ガ不足デアレバ、吾々トシテハ一
  層其ノ數ヲ增スコトニ吝カデハナイノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=41

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• 042・田中藤作

  ○田中(藤)委員　此ノ健康診斷醫ハ更ニ數
  ヲ相當ニ殖ヤシニナツテ、上陸ノ短イ間ニ
  速カニ全船員ニ健康診斷ガ及ブヤウニ御計
  ヒヲ願ヒタイト思ヒマス
  尙ホ只今御話ノアツタ所謂榮養給付デア
  リマスガ、是ハ豫算ノ上デハ分ツテ居リマ
  セヌガ、ドウ云フ榮養劑、或ハ榮養物ヲ給
  付サレルノデアリマスカ、ソレト之ニ關ス
  ル經費ヲ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=42

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• 043・菊池武夫

  ○菊池(武)政府委員　只今ノ藥ハ大體「ヴイ
  タミン」劑ヲ配給致シテ居リマスガ、其ノ
  費用ハ豫算ニ於テハ八万三千圓ノ費用ノ中
  カラ、特ニ必要アリト認メテ支出致シテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=43

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• 044・田中藤作

  ○田中(藤)委員　今ノ八万三千圓ノ中、ドノ
  位之ニ使ハレマスカ、ソレヲ伺ツテ居ル譯
  デス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=44

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• 045・菊池武夫

  ○菊池(武)政府委員　八万三千圓ノ中約一
  万三千圓バカリデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=45

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• 046・田中藤作

  ○田中(藤)委員　更ニ御伺ヒ致シタイコト
  ハ、全國十四箇所ノ所謂保養所ト申シマス
  ルカ、此ノ保養所ノ狀態ハ、私ノ聞ク所ニ
  依リマスルト、ドウモ滿足ノ狀態デハナイ
  ト聞イテ居ルノデアリマス、例ヘテ申シマ
  スルト、富山縣ノ宇奈月厚生療ヘ被保險者
  ガ參リマシテモ、ソンナコトハ知ラナイノ
  ダト云フコトデ拒マレタ例ガアルヤウデア
  リマス、或ハ又大阪府ノ生駒ニ於ケル療養
  所デアリマスガ、是ナドハダダッ廣クテ硝
  子ガ壞レテ居ツテ、冬ナドハ迚モ行ケナイ
  所ダサウデアリマス、而モソコヘ持ツテ行
  ツテ二階デハドンチヤン騷ギヲヤツテ居ル
  ト云フ譯デ眞ニ保養ノ目的ヲ達シ難イト云
  フノガ現實デアリマス、斯樣ナ點ニ付テハ
  經費ヲ惜シムコトナク、徹底シタ制度デナ
  クテハナラヌノデハナイカト思ヒマス、此
  ノ點ニ付テ將來ドウ云フ方針ヲ御執リニナ
  ツテ居ルカト云フコトヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス、斯ウ云フ營業者ニ任シテ居ルヤウナ所
  謂厚生療、保養所制度デアツテハ、是ハ幾
  ラアツテモ眞ニ保養ノ目的ハ達シ難イノデ
  ハナイカト思ヒマス、此ノ點ニ對スル御所
  信ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=46

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• 047・平井章

  ○平井政府委員　現在アリマス十四箇所ノ
  保養所ハ、御話ノヤウニ宿屋、其ノ他ノ施
  設ヲ利用致シテ居リマス、甚ダ不十分デア
  ルトハ思ヒマスルガ、現在ノ船員保險特別
  會計ノ許シマス最大限ヲ實ハヤツテ居ル譯
  デアリマシテ、左樣ニ不十分ナ施設デアリ
  ナガラ、入ツデ居ラレル船員各位ノ意向ヲ
  聞イテ見マスト、非常ニ滿足ヲシテ居ラレ
  マス、最近モ二箇所バカリ職員ヲ派シテ、
  先程申シマシタヤウニ寢食ヲ共ニシテ色々
  苦心ノ御話ヲ聽キマシタリ、或ハ保養所ニ
  關スル希望ナドモ聽イテ參リマシタガ、船
  員ガ數箇月ニ亙ル危險ナ航海ヲ終リマシテ、
  陸上ニ上ツテ誰一人歡迎スル者モナイノニ、
  心身ノ過勞ヲ保養所ニ依ツテ癒ヤサレテ居
  リマシテ、サウ云フ非常ニ不完備ナ保養所
  デアリマシテモ、感謝ヲシテ入ツテ居ラレ
  ルノデアリマス、併シソレカト言ツテ吾々
  トシテハ現在ノ不十分ナモノヲ以テ滿足シ
  テ居ル譯デハアリマセヌノデ、將來積立金
  ノ運用ニ依リマシテ、又積立金ノ運用ヲシ
  タ利銷ニ依リマシテ、財源ノ餘裕ノ付キ次
  第保養所ノ完璧ヲ期シタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=47

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• 048・田中藤作

  ○田中(藤)委員　成程此ノ中ニハ相當良イ
  所モアリマス、全部ガ惡イト云フ譯デハナ
  イ、併シナガラ結局ハ斯ウ云フ所ヲ管理スル
  人ノ問題ダト思フ、私ハ今ノヤウナ狀態デ
  營業者ニヤラシテ置ケバ、恐ラク其ノ成果
  ハ擧ルマイト思フ、例ヘバ海員報國團ト申
  シマスカ、アアシタ團體ニ管理セシメルト
  云フヤウナコトモ一ツノ方法デハナイカト
  思ヒマス、政府自身ガ管理ニ相成レバ勿論
  結構デスガ、今ノ形デハ是ハ財團法人ノ船
  員保險協會ノ管理ニ屬スルヤウデアリマス
  ガ、ドウモ行キ屆カナイ點ガ多イノデハナ
  イカト思ヒマス、是非是ハ管理ノ上ニ於テ
  相當將來注意セラレタイト思ヒマス、尙ホ
  經費ノ問題デアリマスルガ、現在ノ經費ノ
  最大限ヲ用ヒテ居ルト云フ御話デアリマス
  ガ、併シナガラ私ハサウ思ヒマセヌ、ソコ
  デ私ハ財源ノ問題ニ入ル譯デアリマスガ、
  一定ノ長期準備ノ爲ノ積立金ガ必要ダト
  云フコトデゴザイマスガ、是ハ一體ドノ位
  ナ長期準備ノ積立金ガ必要デアルカ、其ノ
  基準ヲ先ヅ一ツ御示シ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=48

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• 049・菊池武夫

  ○菊池(武)政府委員　船員保險ニ於キマシ
  テハ御承知ノ通リ長期給付ト短期給付ト合
  セテ一本ノ保險デアリマス、隨ヒマシテ積
  立金ハ長期給付ノ責任準備積立金ト短期給
  付ノ剩餘金ガ合ハサツテ居ル譯デアリマス
  ガ、現在マダ船員保險法ガ布カレマシテカ
  ラ約三年近クシカ經タナイノデアリマシテ、
  隨テ積立金總額ガ千二百十六万圓バカリ現
  在ゴザイマス、其ノ內長期給付ノ責任積立
  金ト致シマシテハ千四十八万五千圓程度ガ
  現在積立テラレテ居リマス、殘餘ハ約百六
  十七万圓デアリマスガ、短期給付ノ安全率
  デアリマストカ、其ノ他ノ費用ガ之ニ關聯
  シテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=49

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• 050・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ御答辯ノ長期準備
  積立金ハ千四十八万圓ト云フノデアリマス
  ガ、是ハ保險料收入ノ比率カラ言ツテドウ
  云フ割合デ長期準備金トセラレルノデアル
  カ、其ノ點ヲ伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=50

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• 051・平井章

  ○平井政府委員　御答ヘ申上ゲマス、此ノ
  責任積立金ト云フノハ、實ハ最初ノ保險經
  濟ヲ立テマス時、ソレ〓〓ノ事故ノ率、危
  險率ヲ取リマシテ、ソレニ基イテ保險料ヲ
  算定シタノデアリマス、ソコデ例ヘバ十六
  年度ヲ終リマスト、十六年度ニ於ケル標準
  報酬カラ彈キ出シテ先程申上ゲマシタ最初
  ニ立テタ所ノ保險經濟ノ率カラ算出シテ、
  每年幾ラ責任積立金ヲシテ殘サナケレバイ
  カヌカト云フコトヲ計算シテ、每年積立テ
  テ居ルノデアリマシテ、長期給付ノ開始ニ
  ナリマシタ場合ニ於テ金ガナイ、年金ガ始
  マツタガ金ガナイト云フコトデハ困リマス
  カラ、一定ノ危險率カラ彈キ出シテ、每年
  幾ラ〓〓責任積立金ヲスルカト云フコトカ
  ヲ出シテ居ルノデアリマシテ、現在ノ積立
  金ノ殆ド大部分ハ責任積立金デアリマシテ、
  短期給付ノ爲ノ積立金ト云フモノハ極ク僅
  カデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=51

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• 052・田中藤作

  ○田中(藤)委員　私ノ伺ヒタイノハ其ノ基
  準タル危險率如何ト云フコトナンデス、例
  ヘバ被保險者ガ十三万人アツテ、其ノ中ノ
  何人ガサウシタ長期或ハ短期ノ危險ヲ生ズ
  ルカ、事故ヲ生ズルカト云フ問題、或ハ現
  在ノ保險料ノ收入カラ見テドノ程度ヲ長期
  準備金ニ充テルベキカト云フ一定ノ標準率、
  基準率ヲ伺ヒタイト云フノガ私ノ質問ノ要
  旨デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=52

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• 053・平井章

  ○平井政府委員　此ノ各保險事故ノ危險率
  ヲ具體的ニ說明ヲセヨト云フ御話デアリマ
  シタガ、實ハ今資料ヲ持合セテ居リマセヌ
  ノデ申上ゲ兼ネマスガ、保險事業ノ危險率
  カラ、現在保險料率ト云フモノノ八錢二厘ト
  云フモノヲ出シテ居リマシテ、其ノ八錢二
  厘ノ中六錢四厘ガ現在ニ於キマシテハ一定
  ノ計算ニ基ク責任積立金トナルベキ保險料
  デアリマス、其ノ殘リガ短期給付ニ要スル
  財源デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=53

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• 054・田中藤作

  ○田中(藤)委員　サウスルト約三割ガ短期
  給付ニ當ルト云フ譯デスネ、サウ伺ツテ宜
  シウゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=54

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• 055・平井章

  ○平井政府委員　八錢二厘ノ保險料ノ中デ
  六錢四厘ガ責任積立金ノ方ニナリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=55

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• 056・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ六錢四厘ト云フノ
  ハ長期積立金デスネ、其ノ餘ノ部分ガ短期
  經費ニ充テルト云フ譯デスネ、サウスルト
  凡ソマア三割ニナル譯デスナ、ソコデ此ノ
  豫算ヲ見マスルト、保險料收入ガ、例ヘバ
  十八年度ニスレバ九百五十二万八千圓アル
  ノデゴザイマス、サウスルト其ノ三割二百
  八九十万圓ト云フモノガ短期ノ經費ニ出
  シテ宜イト云フコトニ相成ル譯ナンデス、
  サウ致シマスルト十八年度ノ豫算カラ見マ
  スルト、保險給付ニ關スル費用ハ二百万圓、
  福祉施說ニ關スル費用ガ八万三千圓ニナル、
  サウ致シマスルト尙ホ相當ノ餘裕ガアル譯
  ダト思ヒマス、斯ウ考ヘテ見マスルト、先
  程費用ノ關係デ最大限ニヤツテ居ルノダ
  ガ、ドウモ困ルノダト云フコトハ當ラナイ
  ノヂヤナイカト思フノデス、此ノ點ニ對ス
  ル御所信ヲ伺ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=56

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• 057・菊池武夫

  ○菊池(武)政府委員　只今三割相當額ヲ御
  擧ゲニナリマシタガ、是ハ保險料收入ノ三
  割ハ保險給付ノ費用モ含ンデ居ル譯デアリ
  マスカラ、其ノ中カラ保險給付ニ要スル費
  用ヲ差引キマシタ殘額ガ結局剩餘額トシテ
  出テ來ル譯デアリマス、併シナガラ其ノ殘
  額ノ中ニモ、如何ナル事態ガ生ズルカモ分
  リマセヌカラ、保險料ヲ算定スルニ際シマ
  シテハ、各社會保險共ニ安全率ト云フモノ
  ヲ見込ンデ居ル譯デアリマシテ、隨テ其ノ
  安全率ヲ喰込ムト云フコトハ、非常ニ危險
  性ガアリマスノデ、ソレハ成タケシナイヤ
  ウニ致シテ現在ヤツテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=57

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• 058・田中藤作

  ○田中(藤)委員　安全率ノ大デアルト云フ
  コトハ勿論結構デス、併シ是ハ營利保險デ
  ハナイ譯デアル、其ノ點ヲ特ニ御考慮願ヒ
  タイト思ヒマス、今ノ約三割ヲ長期費用ニ
  充テルト致シマシテモ、十八年度ノ豫算ヲ
  見マスルト、二百三十万圓デ、尙ホ五、六
  十万圓餘裕ガアル譯ナンデス、豫算ノ上ニ
  於テ餘裕ガアル、實績ヲ見マスルト、先程
  私ガ申上ゲマシタ如クニ、十六年度ノ事情
  カラ申シマスルト、豫定給付金ノ三分ノ一
  シカ出テ居ナイ譯ナンデス、百五十八万圓
  ニ對シマシテ、五十一万餘圓シカ給付サレ
  テ居ナイノデス、サウスルトソコニ百万以
  上ノ餘裕ガ十六年度ニ於テ既ニアル譯ナン
  デス、ダカラ旣ニ初メカラ一定ノ基準ニ依
  ル長期積立金ガアリ、而モ短期積立金ノ餘
  裕ガアリ而モソコニ尙ホ五十數万圓ノ餘
  裕ガアルト云フコトニ相成ツテ居リマス、
  而モ是デ財源ガナイノダ、所謂安全率ヲ昂
  メルノダト云フコトデハ、是ハ全ク營利保
  險ト變ラナイノヂヤナイカ、卽チ私共ハ更
  ニ斯ウシタ財產ガアル以上ハ、積極的ニ海
  員ノ重責ニ鑑ミテ、相當ナ計畫ガアツテ然
  ルベキヂヤナイカト思フノデアリマス、其
  ノ點ニ對スル御意見ヲ伺ヒタイノデアリマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=58

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• 059・武井群嗣

  ○武井(群)政府委員　先程來段々ト質問應
  答ノアツタノヲ承ツテ居リマスト、結局船
  員ノ福社增進ニ要スル費用ガ少イヂヤナイ
  カト云フ御尋ネノヤウデアリマス、御趣旨
  ハ篤ト了承致シマシタ、先程來他ノ政府委
  員カラ申上ゲマシタヤウニ何分ニモ船員
  保險ハ始メテカラ僅カニ三年デアリマス、
  而シテ漸ク今度ノ改正法案ニ於テ船員ノ福
  社施設ヲナサウト云フ法律ノ規定ヲ立案致
  シマシテ御審議ヲ得テ居ルト云フヤウナ實
  情ナノデアリマシテ、政府ト致シマシテハ
  此ノ法律ノ規定ニ依ツテ更ニ船員ノ福社增
  進ニ乘出サウ、斯樣ニ致シテ居ル次第デア
  リマス、先程來色々ト各地ノ福利增進施設
  等ニ付キマシテノ御話モアツタノデアリマ
  スガ、政府ト致シマシテハ此ノ法ノ協賛ヲ
  得、制定ノ曉ニ於キマシテハ、更ニ一層此
  ノ方面ニハ力ヲ注グ積リデ居リマス、別途
  加算等ノ爲ニ要スル費用ハ、假ニ戰爭五年
  ト致シマシテモ、千何百万圓ト云フ國家負
  擔ヲ新タニ負擔スルト云フコトニ政府トシ
  テハ相當ノ決意ヲ致シテ居ル次第デアリマ
  スカラ、若シモ今御意見ノヤウニ民間ノ營
  利ノ保險ト同樣ナコトガアリトスルナラ
  バ、是ハ速カニ改ムベキコトダト思ツテ居
  リマス、何分ニモ玆ニ初メテ法ノ規定ヲ拵
  ヘテ福利施設ヲヤラウト云フ譯デアリマス
  ノデ、其ノ當初ノ豫算トシテ八万何千圓カ
  ヲ計上シタ次第デアリマス、此ノ實績ニ鑑
  ミマシテ、更ニ必要ガアリマスナラバ豫算
  ヲ取ルコトハ敢テ厭フモノデハアリマセ
  ヌ、御趣旨ノ點ハ篤ト了承致シマシタノデ、
  セイ〓〓政府ト致シマシテハ誠意ヲ以テ船
  員ノ福社增進ニ當ル積デアリマス、此ノ點
  御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=59

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• 060・平井章

  ○平井政府委員　只今ノ點ハ吾々トシテハ
  財源ヲ隱スト云フコトハ全然アリマセヌ、
  民間保險ノヤウナ嫌ヒガアルト仰セニナリ
  マシタノデ、私ハドウシテモ御答辯申上ゲ
  タイト思フノデアリマスガ、社會保險ハ何
  處マデモ國家ノ保險デアリマシテ、民間保
  險ノヤウナ氣持ヲ以テ吾々ハ全然運營致シ
  テ居リマセヌ、只今ノ短期保險ニ要スル財
  源ヲ三割ト仰セニナツテ御彈キニナリマシ
  タガ、三割マデハアリマセヌノデ、二割二、
  三分デアリマスノデ、ソレカラ計算シテ戴
  キマスト、ソコニ五十万圓隱シテ居ルト云
  フヤウナコトハ全然ゴザイマセヌ、誠心誠
  意國家ノ施設トシテ船員保險ノ運營ヲ致シ
  テ居リマスカラ、其ノ點十分御諒承願ヒタ
  イト思ヒマス
  ソレカラ短期給付ノ方デ金ガ殘ルト云フ
  御話デアリマス、是ハ施行後マダ二、三年
  デアリマシテ、趣旨ガ普及シナイ點モアリ
  マシテ短期給付ノ方ハ多少殘ツテ居リマス、
  併シ殘ツテ居ルノハ過渡的ノ現象デアリマ
  スカラ、ソレヲ財源ニシテ恒久的ノ施設ヲ
  スルト云フコトハ考ヘナケレバナラナイト
  考ヘテ居リマス、財源ガ確實ニ殘ルト云フ
  コトニナレバ、福利施設ヲ致シマスコトニ
  聊カモ吝カデハアリマセヌ、更ニ積立金ガ、
  多額ニナツテ參リマスレバ、是ガ運用ヲ致
  シマシテ十分ニヤツテ行キタイト考ヘマス

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• 061・田中藤作

  ○田中(藤)委員　次官カラノ御話モアリマ
  シタカラ、財源論ニ付テハ兎ヤ角ハ申上マ
  ゲセヌ、唯相當ノ餘裕ガアルト云フコトハ豫
  算ヲ一寸見テモ分ル譯デアリマスカラ、思切ツ
  テ船員ノ福利ノ爲ニ相當ノ計畫ヲ立テテ實行
  シテ貰ヒタイ、之ヲ政府ニ要望致シマス
  尙ホ御伺ヒシタイコトハ、積立金ノ運
  用ニ付テノ問題デアリマスルガ、此ノ運
  用ノ面ニ於テ相當ナ收入ヲ得テ福利施設、
  其ノ他ヲ擴充シタイト云フ御意見モアツタ
  ヤウデアリマス、私共ノ考ヘデハ只今十八
  年度ニ於テハ八十七万圓ノ運用收入ガアル
  譯デス、十七年度ニ於テハ五十三万圓モア
  ル譯デスガ、少クトモ斯ウ云フ積立金ノ運
  用收入全部ヲ擧ゲテ福利施設ニ充テルヤウ
  ナ計畫ガアツテモ宜イノデナイカト思フノ
  デアリマス、此ノ點ニ付テノ所信ヲ伺ヒマス
  ト同時ニ、積立金ノ運用ニ關シマシテハ、會
  計法規デハ何デモ政府預金、或ハ有價證劵
  ニ限定サレテ居ルヤウニ思ヒマスルガ、此
  ノ點ニ對スル改正ハ出テ居ナイガ、是ハ勅
  令カ何カ出來ルノデセウカ、此ノ點併セテ
  御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=61

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• 062・平井章

  ○平井政府委員　運用收入ノ全部ヲ福利施
  設ニ充テタラドウカト云フ御話ガアリマシ
  ク、本年度カラ運用ニ當リマシテ三分七厘
  五毛バカリノ利子ガ僅カ出マスガ、其ノ中
  ノ三分五厘ト云フモノハ保險經濟ノ場合ニ
  於テノ當然ノ收入トシテ計畫ノ中ニ入ツテ
  居リマスカラ、三分五厘ノ積立金ノ運用利
  子ト云フモノハ、保險經濟ノ中ニ割込マシ
  テ居リマスノデ、其ノ三分五厘ノ利子ヲ食
  フト云フ譯ニハ參リマセヌ、唯出來マス所
  ノ二厘五毛ダケハ豫定以上ノ收入デアリマ
  スノデ、之ヲ保健施設ナリ、或ハ福利施設ニ充
  テルト云フコトハ吾々トシテモ考ヘテ居ル
  譯デアリマス、更ニ大藏省トノ關係ハ現在
  大藏省ト交涉中デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=62

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• 063・田中藤作

  ○田中(藤)委員　其ノ點ハ是非福利施設ニ
  付テ保險經濟ノ許ス限リ最大限ノ努力ヲ拂
  ツテ戴キタイト云フコトヲ望ンデ置キマス
  ソコデ更ニ御伺ヒ致シタイコトハ養老
  年金制度ト云ヒマスカ、癈疾手當金制度、
  斯ウ云フモノガ海員保險ニ執ラレテ居ルコ
  トハ海員ニ對シテ大變結構ナコトト思ヒマ
  スケレドモ、斯ウ云フ制度ヲ更ニ國民大衆
  ニ及ボス意思ガアルカドウカ、健康保險組
  合ニ於キマシテ所謂療養網ハ完璧ヲ期セラ
  レテ居リマス、併シナガラ老後ニ於ケル、
  或ハ癈疾後ニ於ケル不安ニ付テハ國民大衆
  ハ尙ホ免レ難イト思ヒマス、勞働者年金制
  度ニ依リマシテ勞働者大衆ハ或ハ救ハレル
  カモ知レマセヌガ、併シナガラ農民大衆、
  或ハ中小商工業者、或ハ自由職業者ナドノ
  如キハ斯ウシタ養老年金制度ノ上カラハ除
  外サレテ居ル譯ナノデアル、勿論郵便年金
  制度ニ依リマシテ救ハレマセウ、併シナガ
  ラ郵便年金制度ニ於ケル負擔ト云フモノハ
  極メテ重イ譯デアル、現在郵便年金制度ニ
  加入シテ居ル方々ノ實情ハサウシタ年金制
  度ニ入ラナクテモ老後ノ心配ノナイ人ガ多
  イノデハナイカト實際ニ於テ私共考ヘテ居
  ル譯デアリマス、ソコデ私ハ斯ウシタ商工
  業者、自由職業者、其ノ他ノ國民大衆ニ對
  シテ斯ウ云フ癈疾年金制度ヲ擴大シテ、少
  クトモ此ノ船員保險ト同樣ナ率ニ於テ老後
  ニ於ケル不安ナカラシムルト云フ方法ヲ御
  執リニナル意思ハナイカドウカト云フコト
  ヲ伺ヒタイノデアリマス

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• 064・平井章

  ○平井政府委員　長期保險、社會保險ニ付
  テノ御意見デアリマスガ、現在短期保險ト
  致シマシテハ略〓完備致シテ居リマス、長期
  保險ト致シマシテハ工場、鑛山ニ勤メテ居
  ル勤勞者ニ對スル年金制度ガ昨年六月カラ
  實施ニ相成ツテ居リマス、吾々ト致シマシ
  テハ更ニ現在アリマス工場、鑛山ニ於ケル
  勞務者ニ對スル年金制度ノ擴充ヲ圖リマシ
  テ、年金制度ノ整備ヲ致シタイト考ヘテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=64

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• 065・田中藤作

  ○田中(藤)委員　年金制度ノ整備ヲ圖ツテ
  戴クコトハ結構デアリマスガ、私ノ聽キ違
  ヒカモ知レマセヌガ、自由職業者、商工業
  煮農民大衆、廣ク國民大衆、斯ウ云フモ
  ノニ及ブ長期年金制度ヲ御考へ願ヒタイ、
  而モ其ノ負擔ハ郵便年金制度ニ比シテ遙カ
  ニ輕イモノデナクテハナラヌガ、
  〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕
  例ヘバ現在郵便年金制度ニ於テハ年額三
  百圓ノ給付ヲ五十歲以上ニ於テ受ケルノニ、
  二十九歲カラ三十歲程度デ每月十二圓四、
  五十錢ノ負擔ニナツテ居ルト思ヒマス、私
  詳シク調ベテナイノデ分リマセヌガ、船員
  保險ニ於テハ船員ノ負擔ガ其ノ三分ノ一デ、
  四圓十錢位ニナツテ居ル、斯ウ云フコトカ
  ラスレバ三倍デアル、船員保險ニ於テハ三分ノ
  一デ同樣ノ給付ヲ受ケ得ル、然ルニ郵便年
  金ニ於テハ眞ニ老後ノ年金ニ止ツテ料金ガ三
  倍デアルト云フノガ實際デアル、「ドイ
  ツ」ナドニ於テハ六%八或ハ七%强ニ依ツ
  テサウシタ年金制度ガ行ハレテ居ルト云フ
  コトヲ聞キマスガ、斯ウシタ制度ヲ國民大衆ニ
  及ボシテ貰ヒタイ、又是ガアツテ然ルベキデ
  ハナイカ、今ヤ自由職業者、或ハ商工業者ト
  云フモノハ其ノ職業ヲ失ヒツツアル、轉落
  シツツアル、而モ斯ウ云フ階級ハ現在ドチ
  ラカト云ヘバ、從來ノ資產ヲ賣拂ツタ所ノ
  僅カナ蓄財ニ依ツテ其ノ日〓〓ヲ過シテ居
  ツテ、老後ニ於ケル生活ト云フモノハ全ク
  不安デアル、凡ユル經濟ガ統制サレテ居リ
  マスケレドモ、サウシタ中小商工業者、自
  由職業者ト云フモノハ自己責任ノ原則ニ依
  ツテ生活ヲ守ツテ居ル、戰ヒ拔イテ居ル、
  斯ウ云フ者ノ老後ニ對シテ更ニ國家ガ親心
  ヲ加ヘナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  斯ウ云フ建前カラ是非此ノ問題ハ緊急ニ調
  査ヲ遂ゲテ、凡ユル部面ニ此ノ制度ヲ及ボ
  スト云フコトニ付テノ方針計畫ナドガアレ
  バ具體的ニ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=65

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• 066・武井群嗣

  ○武井(群)政府委員　此ノ問題ハ重大ナ問
  題デアリマス、率直ニ申上ゲマスガ、御趣旨
  ハ能ク分リマシタ、篤ト拜承致シマシテ、
  實ハ有體ニ申シマスト勞働年金保險法ノ如
  キモノデモ昨年ノ六月一日カラ初メテ施行
  ニナツタヤウナ狀態デアリマス、而モ此ノ
  年金保險法ノ施行ニ付キマシテモ昨年春以
  來此ノ戰時中ニ於テハ施行ヲ延バスベキデハ
  ナイカト云フ意見スラモ相當各方面ニアリ
  マシタ、政府當局ニ於テハ種々考究ノ結果、
  斯クノ如キモノハ決戰體制下ニ於テモ實施
  スベキモノナリト云フ最後ノ結論ニ達シマ
  シテ、六月一日ヨリ施行シ始メタト云フ實
  情デアリマス、斯クノ如ク勞働年金方面ガ
  漸ク實施ニ入ツタト云フ譯デアリマスノデ、
  御話ニモアリマシタ如ク、各方面ノ年金制
  度ト云フモノハ無論必要デアリマスケレド
  モ、自ラソコニハ〓究ノ順序ガアリ、緩急モ
  アルノデアリマス、是等ノ年金保險ノ施行
  ト相竝ビマシテ、更ニ急速度ニ〓究ヲ進メ
  テ行キタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=66

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• 067・田中藤作

  ○田中(藤)委員　大體政府ノ御意見ハ諒承
  致シマシタガ、先程來申シマスヤウニ、所
  謂中小商工業者、自由職業者ト云フモノハ
  統制ニ依ツテ凡ユル面ニ生活規制ヲ受ケテ、
  將來ノ不安ニ惱ンデ居ル、而モソレハ自分
  ノ働キデ生活ヲ守ラナケレバナラヌト云フ
  建前ニアル譯デアリマス、ドウシテモ其ノ老
  後ニ於ケル不安ト云フモノハ解消シ難イ譯デ
  アリマス、是非共斯ウシタ國民大衆ノ惱ミヲ
  解消スル爲ニ、速カニ此ノ制度ヲ實現サレル
  ヤウニ要望致シテ私ノ質問ヲ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=67

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• 068・小泉純也

  ○小泉委員長代理　次ハ渡邉君ニナツテ居
  リマスケレドモ、時間ノ關係デ是ニテ休憩
  ニ入リマス、午後ハ一時カラ再開致シタイ
  ト思ヒマス
  午前十一時五十分休憩
  午後一時九分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=68

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• 069・清水留三郎

  ○〓水委員長　休憩前ニ引續キ船員保險法
  中改正法律案ニ對スル質疑ヲ繼續致シマ
  ス-渡邉君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=69

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• 070・渡邊健

  ○渡邉(健)委員　現在政府ノヤツテ居ル保
  險制度ハ非常ニ澤山アルノデアリマス、健
  康保險、國民保險ハ勿論、職員保險、船員
  保險、共濟組合、詰リ遞信省ノ共濟組合、
  勞働者災害保險、〓員共濟組合ト云フ風ニ、
  此ノ外ニモアルカト思ヒマスガ、一寸數ヘ
  タダケデモコンナ風ニ色々ナ組合ガ澤山ア
  ルノデアリマス、是ハ政府ノ方デモ、種々
  雜多ニ分レテ御困リト思フノデアリマスガ、
  之ヲ取扱ツテ居ル開業醫ノ方デハ可ナリ混
  亂シテ居リマス、詰リ請求書モ多種多樣ニ
  ナリマシテ、赤イ紙、靑イ紙、黃色イ紙ト
  云フ風デ困ルノデアリマス、是ハ每年議會
  ノ問題ニナツテ居ルヤウデアリマスガ、之
  ヲ統合シテ一ツノ組織ニスルヤウナ御考へ
  ガアルカドウカ、又是ガドウシテ統合出來
  ナイノカ、其ノ理由ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=70

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• 071・平井章

  ○平井政府委員　現在社會保險、又ハソレ
  ト類似ノ制度ハ只今御述ベニナリマシタヤ
  ウニ非常ニ多イノデアリマス、之ヲ統合シ
  テ事務ノ簡捷ヲ圖リ、保險醫ノ便宜ヲ圖ツ
  タラドウカト云フ御話、洵ニ御同感デアリ
  マシテ、現在ニ於キマシテ、色々制度ガア
  ツテ、保險醫ノ方ニ非常ニ御迷惑ヲ掛ケテ
  居ルコトモ吾々承知致シテ居ルノデアリマ
  ス、社會保險トシテハ單一保險ガ現在四ツ
  制度ガアリマスガ、サウ云フ事情モアリマ
  スルシ、可能ナ方面カラ統合スルト云フノ
  デ、昨年ノ通常議會ニハ職員保險ト健康保
  險トノ統合ノ改正案ガ出マシテ御協贊ヲ經
  テアリマスノデ、此ノ四月カラハ社會保險
  トシテハ一ツ減ル譯デアリマシテ、職員保
  險ト健康保險トガ統合ヲ見ルノデアリマ
  ス、更ニ進ンデ其ノ他ノ船員保險、或ハ勞
  働者災害扶助責任保險ノ統合ノ問題モ當然
  ニ考ヘラレル譯デアリマスケレドモ、是等
  ノ統合ハ非常ニ事務的ニモ性質上異ナル對
  象ニ對スル制度デアリマスノデ、一〓ニ統
  合モ致シ兼ネルノデアリマス、ソレ〓〓特
  殊ノ事情ヲ帶ビタ共通的ナ方面ヲ一固リニ
  シテ保險制度ヲ布カナケレバ相成リマセス
  ノデ、船員共濟ト健康保險トヲ統合スル、
  形式的ノ統合デアレバ比較的樂デアリマス
  ケレドモ、完全ニ統合スルト云フコトハ、
  ソレ〓〓ノ對象ノ勞働狀況、其ノ他ノ事情
  ガ非常ニ違ヒマスノデ困難デアリマスケレ
  ドモ、吾々トシテハ常ニ〓究ヲ進メテ居ル
  ノデアリマス、更ニ又政府職員ノ共濟
  組合、或ハ官業勞働ノ共濟組合、若シクハ
  〓職員ノ共濟組合、是等ノ共濟組合ハ何レ
  モ社會保險的性質ヲ帶ビタ共濟組合デア
  リマスガ、ソレ〓〓特殊ナ實情ニ應ジテ
  出來テ居リマスノデ、統合ハ可ナリ困難ダ
  トハ思ツテ居リマスノデ、吾々トシテハ
  セメテモ保險醫ノ方々ノ事務ノ簡捷ヲ圖ル
  ト云フ意味デ、何等カノ手續上デモ共通的
  ナモノニシタイト云フノデ、努力ハ致シテ
  居ルノデアリマスルケレドモ、吾々トシマ
  シテハ社會保險ヲ主管スルノミデアリマシ
  テ、共濟組合ノ所管ガ違フ關係モアリ、思
  フヤウニハ今マデ進ンデ居リマセヌガ、サ
  ウ云ツタ聲ヲ吾々モ隨分聞キ、吾々モ承知
  致シテ居リマスカラ、將來出來ルダケ統合
  出來ルモノハ統合スル、統合出來ナイモノ
  デモ事務ノ簡捷ヲ圖ル意味ニ於キマシテ、
  何等カ事務方面ノ統制ヲ圖ルヤウニ努力シ
  テ行キタイト考ヘマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=71

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• 072・渡邊健

  ○渡邉(健)委員　段々統制シテ行クト云フ
  御心掛ノヤウデ、大變結構デアリマスガ、
  今ノ御話ダト、色々業態ガ違フ、其ノ他ノ
  事情ガ違フカラ中々困難ダト云フ御話デア
  リマシタガ、ソンナ方面ヲ考ヘルト、やハ
  リ國民保險ノ實施モ、ソレハ農村ハ農家バ
  カリダカラヤリ宜イノデアリマスガ、ソン
  ナ條件カラ考ヘタラ都會地ノ國民保險ト云
  フモノモ可ナリ不公平デ、各被保險者ノ負
  擔ト云フヤウナ點カラ言ツテモ、可ナリ不
  公平ナ點ガアルト思ヒマス、唯住民稅ヲ標
  準ニシテ負擔サセルト云フダケデハイカヌ
  ノヂヤナイカト思フノデアリマス、ダカラ
  サウ一々細カイコトヲ考ヘナクテモ、或ル程
  度顧慮シテヤツタラ出來ルノヂヤナイカト
  思フノデアリマス、例ヘバ同ジク負擔ヲシ
  テモ〓員ノ共濟組合ノ方デハ一割シカ負擔
  シナイ、他デハ二割負擔スル、自分ガ實費
  ヲ負擔スルノハ一割トカ二割トカ、保險醫
  ニ言ハセルト一々帳面ヲ擴ゲテ見ナケレバ
  分ラヌト云フ狀態デ、此ノ人カラ一割貰ツ
  タラ宜イカ、二割貰ツタラ宜イカ、普通ノ
  開業醫ハ非常ナ混亂ヲ來シテ居ルヤウナ狀
  態デアリマスカラ、是ハ是非早ク畫一的ニ
  統合シテ戴キ、ソレカラ又請求ノ書類ノ形
  式モ一々違ツテ居ルノデアリマス、是モ成
  ベク直スト云フ御話デアリマスカラ、出來
  ルダケ、統合ハ出來ナカツタラ一時其ノ請
  求ノ形式等トカ、或ハ負擔ノ率トカ云フコ
  トハ全部一律ニスルヤウニ御願ヒシタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=72

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• 073・清水留三郎

  ○〓水委員長　渡邉君、アナタノ質問ハ長
  引クヤウデゴザイマシタラ、丁度大臣ガ出
  席サレマシタノデ、大臣ニ對シ保留サレテ
  居ル質問ニ移リタイト思ヒマスガ、簡單ナ
  ラバ繼續ヲ願ヒタイト思ヒマスガ····

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• 074・渡邊健

  ○渡邉(健)委員　ソレデハ後ニ致シマス

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• 075・清水留三郎

  ○〓水委員長　藥事法案ニ對シテ大臣ニ對
  シ保留サレテ居リマスル質疑ヲ此ノ場合許
  シタイト思ヒマス-藤生安太郞君

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• 076・藤生安太郎

  ○藤生委員　私ハ昨日大臣ガ御出席ニナラ
  ナカツタノデ他ノ政府委員ノ方々ニ種々御
  尋ネ致シマシタ、ソレニ對シテ懇切ナル御
  答辯ヲ戴イタノデアリマスガ、其ノ中デ大
  日本武德會ハ大キナ陣容、大キナ機構ノ下
  ニ新タニ結成セラレテ旣ニ一年ニモナルガ、
  其ノ一年間ニドウ云フ活動ヲサレタノデア
  ルカ、申スマデモナク今日戰力增强ノ爲ニ
  ハ精神力ヲ大イニ〓揚シナケレバナラナ
  イ、其ノ精神力昂揚ノ大本山、總本山トモ
  言フベキ此ノ大日本武德會ガ、而モ大キナ陣
  容ニ於テ誕生シタノデアリマスカラ、吾々
  ハ非常ニ此ノ大日本武德會ノ活動、活躍ト
  云フモノニ對シテ期待シテ居ツタノデアリ
  マス、ソコデ其ノ活動ノ內容ニ付テ御尋ネ
  致シタノデアリマシタガ、私共ノ期待ガ全
  ク外レテシマツタノデアリマシテ、御說明
  ニナツタ活動ノ內容ト云フモノハ、從來ノ
  舊武德會ガヤツタ所ノモノヲ唯繰返シテヤ
  ツテ居ルニ過ギナイヤウニ承ツタノデアリ
  マス、ノミナラズ寧ロ却テ京都ノ武道導門
  學校長ノ如キハ一年前ニ辭メタノニ、其ノ
  後任ノ校長ハマダ決定サレテ居ナイヤウナ
  狀態デアツテ、精神ノ增產ヨリハ寧ロ精
  神ノ減產ニナツテ居ルヤウナ風ニ考ヘラレ
  テ、洵ニ期待外レノ感ヲ禁ジ得ナカツタノ
  デアリマス、斯ウ云フ風ニ武道ト云フモノ
  ハモツト高ク評價サレテ、モツト振興サレ
  ナケレバナラナイ、然ルニモ拘ラズ高ク評
  價モサレナケレバ、振興モサレナイト云フ
  ヤウナ根本ノ原因ハ何處ニアルカト云フト、
  武道行政ノ指導的立場ニアラレル所ノ政府
  役人諸公ニ於テ、或ハ武道ニ對スル誤解デ
  モアルデハナカラウカ、隨テ武道振興ト云
  フコトニ對シテ熱意ヲ缺イテ居ルノデハナカ
  ラウカト云フヤウナコトヲ疑ハザルヲ得ナ
  イソコデ私ハ武道振興ノ根本問題ト致シ
  マシテハ、武道行政ニ携ハル所ノ役人諸公
  ハ勿論ノコト一般國民ニ對シテ武道ニ對
  スル所ノ理解、武道觀ト云フモノヲ此ノ際
  確立スルト云フコトガ極メテ必要デアルカ
  ラシテ、ドウカ其ノ點ニ付テ大臣カラ御答
  辯ヲ御願ヒシタイト云フコトヲ、次官ヲ通ジ
  テ御願ヒシテアツタノデアリマス、デアリ
  マスカラ先ヅ第一ニ只今申上ゲマシタヤウ
  ナ意味ニ於キマシテ、大臣ノ日本武道ニ對
  スル指導的ノ信念、卽チ武道觀竝ニ此ノ武
  道ヲドウ云フ風ニシテ指導シテ行クカ、其
  ノ指導ノ根本方針ニ付テ大臣カラ御所見ヲ
  聽カシテ戴キタイノデゴザイマス
  尙ホ其ノ際次官カラ、其ノコトニ付テハ
  此ノ前ノ議會ノ體力法委員會ニ於テ既ニ君
  ト大臣トノ間ニ於テ論議ガ交ハサレテ居ツ
  テ、大臣ガ武道ニ對スル信念ヲ御披瀝ニナ
  ツテ居ラレルノデアル、ソレハ承知ノ筈デ
  アルト云ツテ、モウ此ノ問題ニ關スル論議
  ハ必要デナイカノヤウナ御答ヘガアツタノ
  デアリマス、ソコデ私モソレハ記憶致シテ
  居リマス、記憶致シテ居リマスケレドモ、
  アノ時ノ委員會ニ於ケル此ノ問題ニ關スル
  論議ト云フモノハ極メテ斷片的ナ、極メテ
  小部分ナ問題デアリマシテ、私ガ今聽カウ
  トスルヤウナ內容ノモノデハナカツタト思
  ヒマス、ニモ拘ラズ次官ガアノヤウナ斷片
  的一小部分ノ武道論議ニ對シテサヘ、ソレ
  ハモウ濟ンデ居ルデハナイカト云フ風ナ考
  ヘヲ持ツテ居ラレルト云フコトソレ自體ガ
  私ハ武道ニ對スル熱意ト云ヒマスカ、考、
  方ガ吾々トドウモ同ジデハナイヤウニ考へ
  ラレルノデアリマス、私ハ此ノ際ドウシテ
  モ武道觀ト云フモノヲ確立シテ置ク必要ガ
  アルト思フ、從來ノ議會ニ於テ武道問題ガ
  取扱ハレテ居ナイ、日本ノ帝國議會ニ於テ
  此ノ武道問題ガ餘リニ論ゼラレナサ過ギル、
  斯ウ私ハ考ヘテ居リマス、デアリマスカラ
  其ノ武道行政ノ指導的立場ニ居ラレル內閣
  役人ノ諸公ノ爲ニモ、又一般國民ノ爲ニモ、
  議會人ノ爲ニモ、此ノ際私ハ此フ武道觀ヲ
  確立致シテ置キタイト思ヒマスカラ、之上
  對スル大臣ノ御所見ヲ御聽カセ願ヒタイノ
  デゴザイマス

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• 077・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　日本武道ハ申上ゲルマデ
  モナク我ガ國體ニ其ノ源ヲ發シタモノデ
  アリマシテ、直接武道ノ向上ノ爲ニ力ノア
  リマシタ色々ノ面ニ於キマシテハ肇國以
  來ノ色々ノ時勢ノ變遷ニ伴ヒマシテ、武道
  ノ技術的面ニハ、色々ノ形ノ違ヒハアリマ
  スルガ、根本ノ日本武道ト云フモノノ眞髓、
  精神ニ於キマシテハ國肇マツテ以來徵動
  モシナイ、確乎不拔ナルモノダト考ヘテ居
  リマス、殊ニ中世ニ於キマシテハ武家政治
  ノ盛ントナリマシタ時ニ、又支那等ノ大陸
  ノ文化ノ交流ニ伴ヒマシテ、其ノ技術面、
  或ハ形ノ上ニ於テハ色々ノ變遷モゴザイマ
  シタガ、兎ニ角明治御一新後、殊ニ十五年
  明治大帝ヨリ陸海軍人ニ賜リマシタ御勅諭
  ノ中ニハ、此ノ點ニ付テ洵ニ明カニ御示シ、
  御諭シガアル次第デゴザイマス、而シテ此
  ノ御勅諭ノ中ニモ仰セラレテアリマスヤウ
  ニ、此ノ武道ト云フ御言葉ハゴザイマセヌ
  ガ、此ノ道ハ上下一致、國民ノ總テガ之ニ
  進ムモノデアリ、汝軍人ハ之ニ率先、先ニ
  ヤツテ行ケト云フヤウナ意味ノ御言葉ガ多
  多拜セラルル次第デアリマシテ、決戰體制
  下ニ於ケル今日ノ日本武道ハ正ニ此ノ國體
  ニ發シ、建國以來徵動モセズ參リマシタル
  此ノ精神ニ基キマシテ、億兆一心、此ノ武
  道精神ノ昂揚、武道ノ益〓國民全部ニ遍ク普
  及致スヤウニ致シテ行カナケレバナラナイ
  モノト信ズル次第デアリマス、併シナガラ
  只今申上ゲマシタヤウニ、情神ニ於テハ全
  ク一ツデアリマスルガ、形或ハ技術ノ上
  ニ於キマシテモ歷史ノ進展ニ伴ヒマシテ、
  武道ニモ色々ノ形アリ、或ハ流派アリ、流
  祖アリ、色々ゴザイマシテ、殊ニ幕府政治
  ノ下ニ於キマシテハ、各〓藩藩於テ又藩自己
  ノ形ヲ整ヘルト云フコトカラ、之ニ色々ノ
  流儀、流派ガ生ジマシテ、大日本武德會ガ
  過去ニ於テ是等ノ善イモノヲ取上ゲテ進マ
  レタ其ノ功績ハ大ナルモノガアリマスルガ、
  更ニ只今申上ゲマシタヤウナ意味ニ於テ、
  國家トシテ大日本武道ノ昂揚ヲ圖リ、之二
  依ツテ國民ノ全部ガ武道精神ヲ解シテ御仕
  ヘヲスルト云フ所ニ參リマス爲ニ、法律的
  ニハ是ハ同一人格ガ繼續サレタト云フコト
  ニハナツテ居リマスガ、根本ニ於キマシテ
  ハ全ク今日ノ時局ニ卽應スルヤウナ武道ノ
  昂揚ト云フコトガ願ハシイコトデアルト云
  フコトニ依リマシテ、新シク構成致シマシ
  タル大日本武德會トシテハ、取敢ヘズ日本
  武道トシテ取上ゲマシタモノハ、御承知ノ
  通リ先ヅ手近ク取上ゲラレルモノヲ取上ゲ
  タ次第デアリマス、隨テ銃劍道ト云フヤウ
  ナ新シイモノスラ此ノ中ニ取上ゲラレテ居
  ル次第デアリマス、又一面ニハ當然此ノ武
  德會ノ中ノ科目ニ取上グベキ色々ノモノモ
  マダ多々殘サレテ居ルト存ズルノデアリマ
  スルガ、今一應此ノ方面ノ體制ヲ整ヘテ、
  之ニ依ツテ現時局下ニ最モ相應シイ日本武
  道ノ精神ノ昂揚ヲ期ス、斯ウ考ヘテ居ル次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=77

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• 078・藤生安太郎

  ○藤生委員　只今大臣カラ縷〓武道ニ對ス
  ル御信念ノ程ヲ承リマシタガ、ドウモ私ガ
  御尋ネ致シマシタ質問ノ「ピント」ニ合ツテ
  居ナイノデ、一寸私モ判斷ニ苦シム點モア
  リマスガ、併シナガラ厚生大臣ハ武人デア
  ラセラレルカラシテ、日本武道ニ對スル信
  念トカ、理解トカ、熱意トカ云フヤウナコ
  トハ、十分御持チニナツテ居ルモノデアル
  ト云フコトハ、私ガ固ク信ジテ居ルノデア
  リマス、併シナガラ只今ノ御答辯ハ私ノ質
  問ニ對スル「ピント」ガ、合ツテ居ナイ、モツ
  ト手取早ク、武道ト云フモノハ斯ウ云フモ
  ノダト云フ風ナ內容ニ於テ御說明ガ願ヒタ
  カツタノデアリマス、例ヘバ何遍モ言葉ヲ
  重ネテ御話ニナリマシタガ、武道ハ肇國以
  來我ガ國ニ非常ニ貢獻シテ居ルノダ、サウ
  シテ武道ハ國體ニ淵源ヲ發シテ居ルノデア
  ルト云フヤウナコトヲ御述ベニナリマシタ
  ガ、ソレハ其ノ通リデアリマス、武德會ノ
  結成式場ニ於テ賜ハリマシタ令旨ノ中ニモ、
  其ノ事ハ書イテアルノデアリマス、併シナ
  ガラ只今ノヤウナ御說明デハ何ダカ隔靴搔
  痒ノ感ガアツテ、餘リニ觀念的ナ抽象論ノヤ
  ウナ氣持ガスルノデアリマス、私ハ此ノ際
  武道ヲ理解スル上ニ於テ最モ必要ナモノハ
  只今大臣ガ御述べニナリマシタヤウニ、武道
  ハ正シク日本ノ國體ニ淵源ヲ發シテ居ルト
  云フコトヲハツキリシナケレバナラヌノヂ
  ヤナイカト思ヒマス、ソコデ私ハ此ノ問題
  ニ付テ、是ハ私ガ是カラ色々御尋ネヲシテ
  行ク根本ノ問題ナリ、中心ノ問題デモアリ
  マスカラ、煩ヲ厭ハナイデ、武道ガドウ云
  フ風ニ我ガ國體ニ淵源ヲ發シテ居ルカト云
  フコトヲ明カニシタイト思フノデアリマス、
  是ハ非常ニ必要ナコトデアリマスカラ、私
  ハ武道ガ如何ニ國體ニ淵源ヲ發シテ居ルカ
  ト云フコトノ大臣ノ御說明ヲ承リマス前ニ、
  先ヅ私ノ意見ヲ申述べサセテ戴キタイト思
  ヒマス、是ハ此ノ前ノ委員會ニ於テモ、武
  道觀ニ對スル論議デハナカツタノデアリマ
  スガ、一寸私ガ觸レタコトガアリマス、其ノ
  時ニ私ガ述ベマシタコトハ、卽チ北畠親房
  卿ノ神皇正統記ノ劈頭ニ於テ喝破セラレタ
  ヤウニ、大日本ハ神國デアル、神國デアル
  ト云フコトハ日本人ハ誰モ知ラナイ者ハナ
  イ、皆知ツテ居ル、ケレドモ我ガ國ハ神國
  デアルト言ツタダケデハ、我ガ國體性ハ明
  徵ニハナラナイ、ソコデ私ハ玆ニ山鹿素行
  先生ノ中朝事實ニ於テ述ベラレタコトヲ引
  用シナケレバナラヌノデアリマス、山鹿素
  行先生ハ中朝事實ニ於テ「大八洲ノナルコ
  ト天ノ瓊矛ニ出ズ、其形乃チ瓊矛ニ似タリ、
  故ニ細戈千足國ト號ク、宜ナル哉、中國ノ
  雄武ナルオヤ、凡ソ開闢ヨリ神器靈物甚ダ
  多シ、而シテ天ノ瓊矛ヲ以テ初トナス、是
  乃チ武德ヲ尊ビ以テ雄義ヲ顯ス也」ト斯ウ
  言ツテ、日本ノ國ガ正シク武ノ國デアルト
  云フコトヲ立派ニ闡明シテ居ラレルノデア
  リマス、只今大臣ガ仰セラレマシタヤウニ、
  肇國以來武ト云フモノハ非常ニ國家ノ隆昌
  發展ノ爲ニ貢獻ヲシテ來テ居ルノダ、其ノ
  通リダガ、日本ノ國ヲ肇メラレタ所ノ神々
  ハ、只管武ニ依ツテ國ヲ建テラレタノデア
  リマス、儒〓トカ、佛〓ガ渡來スル前ハ、
  治亂共ニ神々ガ武ニ依ツテ治メラレテ居ツ
  タト云フコトハ申スマデモナイノデアリマ
  シテ、此ノヤウニ神ト武ト云フモノハ、肇
  國以來切離スコトノ出來ナイ密切不可分ノ、
  一元一如ノ關係ニアルノデアリマス、卽チ
  之ニ依ツテ見マシテモ日本ノ國ハ神ノ國デ
  アルト同時ニ武ノ國デアル、卽チ神武ノ國
  デアルト說クコトニ依ツテ、我ガ國體ハ明
  徵ニナルモノト私ハ固ク信ジテ居ルノデア
  リマス、又斯ウ云フ風ニ言フコトニ依ツテ、
  武道ガ國體ニ淵源ヲ發シテ居ルト云フコト
  ガ明徵ニナツテ來ルト私ハ思ヒマス、而
  シテ此ノ神武ノ關係、神武ノ一元一如ノ密
  接不可分ナ關係ヲ最モ明カニ御顯揚遊バサ
  レテ居ラレルノガ、此ノ前申シマシタヤウ
  ニ天照大神樣ノ御尊像デアリマス、天照大
  神ハ女性ノ御神デオ在シマスニモ拘ラズ、
  弓ヲ御手ニ劍ヲ佩カセ給ヒ、背ニ千箙ノ矢
  ヲ負ハレテ、凛々シキ御武裝ヲ遊バサレテ居
  ルト云フコトハ、神ニシテ武、武ニシテ神
  デアル、神武一元一如ノ關係ヲ立派ニ御顯
  揚遊バサレテ居ルト拜察シ奉ルノデアリマ
  ス、又畏多クモ天皇陛下ニ於カセラレマ
  シテモ現人神トシテ神ニオ在マスト同時
  ニ大元帥陛下トシテ武ノ最高ノ地位ニオ
  在マスト云フコトハ、神ニシテ武、武ニシ
  テ神デアル、我ガ神武ノ國體ヲ御一身ニ御
  顯揚遊バサレ給フモノト拜察シ奉ルノデア
  リマス
  又吾々下々國民ト致シマシテモ、一旦御
  召ニ應ジテ戰場ヘ勇躍スル、サウシテ戰場
  ニ於テ武ヲ働キ、武ヲ發揮シ、武ニ死スル
  場合ハ護國ノ神トシテ靖國神社ニ永久ニ生
  キル光榮ニ浴シ得ルノデアリマス、此ノヤ
  ウニ神ト武ト云フモノハ密接不可分ナル關
  係ガアルノデアリマス、隨テ武道ト云フモ
  ノハ昔カラ神ナガラノ道トセラレテ居ルノ
  デアリマス、卽チ武ノ精神ハ其ノ儘是ガ神
  ノ御心デアル、神意デアルノデアリマス、
  換言スレバ神ノ慈悲、天皇ノ御仁慈ノ御
  精神、之ヲ修行シ、實踐スル所ノ道、此ノ
  神ノ慈悲心、天皇ノ御仁慈ノ御精神ヲ積極
  的ニ發動スル道ガ武道デアル、斯樣ニ武道
  ト云フモノハ實ニ嚴肅崇高ナルモノデアリ
  マス、一般ニ文武兩道ト云フコトガ言ハレ
  テ居リマスガ、文武兩道ト云ツテ、之ヲ二
  元的ニ解釋スルガ如キハ眞ニ武道ヲ解釋シ
  タ言葉トハ私ハ思ヒ得ナイノデアリマス、
  文武ハ一元デアリ、一途デアル、不岐デア
  ル、私ハ斯樣ニ考ヘマス、此ノ間ノ委員會
  ノ雜談ノ場合デモ、色々委員諸君カラモ武道
  ニ對スル御尋ネガアリマシタガ、私ハサウ
  云フ御尋ネニ照ラシテ考ヘテモ、ドウモ議
  會ニ於テ斯ウ云フ武道觀ヲ確立シテ置クコ
  トハ極メテ必要ナコトデアル、例ヘバ議會
  ニ於テ一向武ガ論ゼラレヌト云フコトハ、
  果シテ議會ニ武道ガ理解サレテ居ルカドウ
  カヲ疑ハザルヲ得ヌノデアリマス、恐ラク
  議會人ノ多數ノ方々ハ、武道ト政治ト云フ
  モノヲ全然別個ノモノデ、關係ノナイモノ
  ノヤウニ考ヘラレテ居ル人ガ多イヤウニ思
  フ、サウデハナイ、武道ハ政治デアル、政治
  ハ武道デアル、密接不可分ノ關係ガアル、昔
  カラ先程モ申シマシタヤウニ、武道ハ神ナ
  ガラノ道デアル、其ノ神ヲ祭ルコトガ祭事
  卽チ政治デアル、祭政一致ト云フ言葉ハ斯
  ウ云フ所カラ出テ居ルノデアリマシテ、隨
  テ祭政一致ノ精神ヲ積極的ニ發動スルモノ
  ガ武道デアル譯デアリマス、隨テ武道ハ政
  治ト密接ナ關係ガアルノデアリマシテ、昔
  カラ幾多ノ賢人、聖人カラ武道ハ小ニシテ
  ハ修身齊家、大ニシテハ治國平天下ノ要道
  デアルト言ハレテ居ルノデアリマス、要ス
  ルニ神ト云ヒ、武ト云ヒ、政治ト云ヒ、是
  ハ同一內容ノ異レル表現デアルノデアリマ
  ス、然ルニ政府ノ方々モサウデアラウト思
  ヒマスガ、一般ニ武道ト云ヘバ、吉田松陰
  先生ガ戒メラレタヤウニ、劍戟矛槍ノ技藝
  ノミヲ考ヘ兵法ト言ヘバ權謀術數ヲ專ラニ
  スルモノノヤウニ考ヘテ居ル、唯板張リデ
  叩合ヒヲスル、疊ノ上デ投合ヒヲスル、締
  合ヒヲスル、アレガ武道デアル、アレガ眞
  ノ道場デアルト云フヤウニ考ヘラレテ居ル
  ノガ非常ニ多イノデハナイカ、固ヨリアノ
  道場ハ武道ノ道場デアリ、アスコデヤル技
  術モ武道ノ一部分デアルノミナラズ、武道
  修行ノ必須根本ノ條件デアルコトハ申上ゲ
  ルマデモアリマセヌ、併シナガラ其ノ技術
  ナリ精神ナリガ、アノ道場ダケニ跼蹐シテ、
  道場カラ一步モ出ナイ、卽チ實生活ニ實踐
  サレヌト云フヤウナモノデアツタナラバ、
  ソレハ決シテ眞ノ武道ト云フコトハ出來ナ
  イ、板張ヤ、疊敷ノアノ道場ト云フモノハ
  謂ハバ樂屋デアル、舞臺デハナイ、其ノ樂
  屋ダケノ武道ヲ一般ニ武道ダト言フモノデ
  スカラ、武道ノ品位ガ高ク考へラレナイノ
  デアル、然ラバ樂屋デナイ舞臺トハ何デア
  ルカト云フト、政治生活、或ハ經濟生活、文
  化生活、此ノ生活舞臺其ノモノガ舞臺デア
  ルノデアリマシテ、此ノ舞臺ニ於テ演ゼラレ
  ル武道ガ私ハ眞ノ武道デアルト考ヘテ居ル
  ノデアリマス、此ノ前大臣ハ「ソコガ武道ダ」ト
  云フ御話ガアリマシタ、私モ是ハ興味深ク拜
  聽致シタノデアリマスガ、ソレト同ジヤウナ
  コトガ武道ノ聖書ト言ハレテ居ル宮本武藏
  ノ五倫書ニ書イテアル、卽チ「兵法ノ身ヲ常ノ
  身トナシ常ノ身ヲ兵法ノ身トナスコト肝要
  也」是ガ大臣ガ「ソコガ武道ダ」ト言ハレタアノ
  言葉ノ内容ト全ク同ジモノダラウト思フ、
  此ノ宮本武藏ノ五倫書ニ書イテアル言葉ヲ
  大臣ハ「ソコガ武道ダ」ト云フ言葉ニ依ツテ御
  說明ニナツタノダト思ヒマスガ、更ニ此ノ
  五倫書ニ於キマシテハ「兵法ノ利ニマカセテ
  諸藝諸能ノ道トナセバ吾ニ匠師ナシ」ト云フ
  コトヲ言ツテ居リマスガ、是ハ武道ヲ解釋ス
  ル上ニ於テ洵ニ味ハフベキ言葉ダト考ヘル
  ノデアリマス、然ルニ從來ノ武道ハ唯技
  術的ニ又精神的ニ道場ニノミ跼蹐シテ、隨
  テ仕合第一義ニ解サレ、勝チサヘスレバ
  宜イ、勝テバ段ガ上リ、段ガ上レバ自分ノ
  生活ガ保障サレル、ダカラ勝星ヲ稼ギサヘ
  スレバ宜イト云フ試合第一主義ニ堕シテシ
  マツテ、精神ノ修練トカ、人格ノ陶冶ト云
  フコトハ第二義的、第三義的ニシカ取扱ハ
  レテ居ナカツタノデアリマス、ソレデアル
  カラ從來ノ武道ガ「スポーツ」武道トカ、體
  育武道トカ云フヤウナ非難マデ受ケルヤウ
  ニ相成リ、或ハ一般ノ體育運動ト對等視サ
  レ或ハソレ以下ニ取扱ハレルヤウニナツ
  タノデアリマス、武道家モ、武道團體モ亦
  政府ノ指導的立場ニ居ラレル人々モ擧ゲテ
  此ノ流弊ニ陷ツテ居ル、ソレガ爲ニ武道界
  ニ種々ノ惡弊ガ生ズル原因ヲ作ツタト云フ
  コトハ否ムコトノ出來ナイ從來ノ武道界ノ
  實情デアツタノデアリマス、今大臣ノ御言
  葉ノ通リ、武道ハ肇國以來非常ニ貢獻シタ
  ノダ、而モ是ハ國體ニ淵源ヲ發シテ居ルノ
  ダ、洵ニ其ノ通リ、ソコデ私ハ只今申上ゲ
  マシタヤウニ、嚴肅崇高ナ武道デアリマシ
  テ、其ノ武道ハ道場ダケニ跼蹐セヌデ、之
  ヲ生活舞臺ニ於テ活用シテ行クヤウニセナ
  ケレバナラナイ、斯ウ云フ風ニ武道ニ對ス
  ル信念ヲ持ツテ居ルノデアリマス、私ハ昨
  日文部省當局ニ武道ニ對スル信念、武道觀
  ヲ質シタノデアリマス、ソレニ對シテ文部
  省ハ技術ヤ身體ノ强健ト云フコトモ其ノ目
  的ノ一ツデハアリマスガ、最モ大キナ目的
  ハ旺盛ナル精神力、剛健不屈ノ氣魄、進取
  ノ氣象、必勝ノ信念、正義、廉恥、仁義等ノ
  精神ヲ養フニアル、卽チ精神訓育ガ其ノ第
  一義デアルトノ明快ナル御答辯ヲ承ツタノ
  デアリマス、此ノ際私ハ一寸御斷リシテ、
  此處デ速記ニ止メテ置イテ戴キタイノデア
  リマス、私ハ實ハ文部當局ノ御答辯ヲ感違
  ヒヲ致シマシテ、ドウモ只今ノ文部當局ノ
  御答辯ニ對シテハ少シ私ハ異見ガアルカノ
  ヤウニ私ノ意見ヲ言ツタノデアリマスガ、
  ソレハ私ノ間違デアリマスカラ、此ノ機會
  ニ私ハ取消シテ置キマス、全ク文部當局ノ
  御答辯ニ對シテハ全幅ノ同意ヲ表スル次第
  デアリマス、今マデ私ノ武道ニ對スル愚見
  ヲ〓略デアリマシタガ一應申述ベタノデ
  アリマス、之ニ對シテ大臣ハ固ヨリ私ノ意
  見、文部省ノ意見ニ對シテモ御同感ノ意ヲ
  表シテ戴ケルト思ヒマスガ、之ニ對シテ大
  臣ノ御所見ヲ伺ヒマス

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• 079・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今藤生君カラ武道ノ本
  旨ニ付テ信念ヲ御吐露ニナリマシタ點ハ傾
  聽致シマシタ、洵ニ御同感ノ至リデアリマ
  ス、又文部當局ノ申上ゲマシタコトモ當然
  然ルベキモノト存ジテ居リマス、要スルニ
  此ノ時局ニ於キマシテハ、先程モ申上ゲマ
  シタヤウニ此ノ日本武道ノ精神ニ徹底ヲ
  シ、卽チ國民生活ガ、悉ク實生活ニマデ武
  道ノ精神ガ徹底シナケレバナラヌ、是ハ私
  ガ十數年前ヨリ靑少年ニ「ラジオ」ナリ、其ノ
  他デ呼掛ケマシタ所ノ、藁工品ヲヤツテ藁
  ヲ切ツテ居ル其ノ時ニ、蜘蛛ノ巢ノ張ツテ
  居ルノヲ見テ詩ヲ作ルコトモ、悉クソレガ
  武ノ精神ヲ練リ、武道ヲ磨ク所以デアルト
  云フコトヲ申シテ居ルノハ、卽チ生活自體ヲ
  通シテ武道ト云フモノガ磨カレルモノデア
  ル、唯道場ニ跼蹐スルノデハナイ、ソレハ
  一ツノ順序デアルト云フコトヲ申シテ居ル
  ノデアリマシテ、只今藤生君ノ御話ノ通リ
  全ク同感デアリマス

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• 080・藤生安太郎

  ○藤生委員　大臣ノ御同意ヲ得マシタヤウ
  ナ、サウ云フ武道觀ニ立脚致シマシテ、私
  ハ武道ト體育運動ト云フモノガ混同サレル
  ヤウナコトガアツテハナラヌト云フコトヲ
  昨日ノ委員會ニ於テモ强調シタノデアリマス、
  此ノ點ヲ一ツ大臣モ能ク呑込ンデ戴イテ、大
  臣ノ英斷ヲ切望シテ已マナイノデアリマ
  ス、體育運動トハ日本ノ權威者、或ハ西洋ノ
  其ノ方面ノ權威者モ齊シク同ジ見解ヲ下シ
  テ居ラレルヤウニ「フイジカル·エジケーシヨ
  ン」卽チ身體ノ强健ヲ第一ノ目的トスル、
  是ガ體育運動ナノデアリマス、然ルニ武
  道ハ生カ死カ、生死ヲ一瞬ノ間ニ決シヨ
  ウト云フ技術、卽チ武術デアル、此ノ武
  術ノ千鍊萬鍛ニ依ツテ先程モ大臣カラ御話
  ガアリマシタヤウニ、大義武士道ノ精神、
  卽チ軍人勅諭ノ御精神ヲ修行シ、實踐シ
  顯揚スル所ノ道ガ卽チ武道デアルノデア
  リマス、昔ノ各藩ニ於テ武道ニ對シテハ罰
  則ヲ設ケテ强制的ニ之ヲ修行サシタ、ソレ
  デ體育運動ナドト違ツテ武道ヲ修行道、苦
  行道トサヘ言ツテ居ルノデアリマス、ソ
  コデ吾々ガ體育運動ト武道トヲハツキリ
  區別ヲシナケレバナラヌト云フコトニ付テ、
  卽チ體育運動ハ身體ノ强健ヲ第一ノ目的ト
  スル、武道ハ精神訓育ガ第一義デアル、
  此ノ點ニ付テ「講孟剳記」ニ斯ウ云フコト
  ヲ書イテアル、「武士ノ武士タル所ハ國ノ
  タメニ命ヲ惜マヌコトナリ、弓馬刀槍ノ技
  藝ニ非ズ、國ノタメニ命ヲ惜マネバ技藝ナ
  シト雖モ武士ナリ、技藝アリト雖モ國ノタメ
  命ヲ惜ムハ武士ニ非ズ、然レドモ武士ノ武
  士タル所ヲ知ル上ハ技藝固ヨリ捨ツベキニ
  非ズ」ト精神第一主義ノコトヲ明瞭ニ致シ
  テ居ルノデアリマス、故ニ武道ニ於ケル體
  育的ノ價値ト云フモノハ此ノ生カ死カ、生
  死ヲ一瞬ノ間ニ決スルノダ、其ノ武術ノ千鍊
  萬鍛ノ過程ニ於テ體育的價値ハ副產物的ニ、
  必然的ニソレニ伴ツテ來ルノデアリマス、
  デアリマスカラ武道ヲウント奬勵スレバ
  奬勵スル程體育的價値ハ之ニ伴ツテ高クナ
  ルノデアリマス、所ガ從來ノ政府ノヤリ方
  ヲ見マスト、昨日私ハ色々例ヲ擧ゲテ御說
  明申上ゲタノデアリマスガ、色々ナ制度、
  組織ノ上ニ於テ、從來ノ政府ハ武道ヲ體育
  以下ニ取扱ツテ來テ居ル、體育ト同等若シ
  クハ同等以下ニ取扱ツテ來テ居ル、時間ガ
  掛リマスカラ詳シクハ申述ベマセヌガ、タ
  ツタ二ツシカナイ政府ノ武道〓師養成機關
  デサヘモ、高等師範學校ノ體育部ノ中ノ一
  部トシテアル、今度出來タ東京高等體育專
  門學校ノ中ニ武道養成機關モアリマスガ、
  同ジク東京高等體育專門學校ノ如ク體育ノ
  名ニ包容サレテ居ル、此ノ間武道ノ先生、
  高野劍道範士、磯貝柔道範士、是ガ武道ニ
  多年ノ功勞ガアツタト云フノデ表彰サレタ
  ガ、武道功勞者トシテデハナク、體育功勞
  者トシテノ體育功勞章デアル、旣ニ斯ウ云
  フヤウニ體育ト云フ名ニ於テ武道ガ取扱ハ
  レテ居ルト云フコトハ、武道ガ體育以下ニ
  取扱ハレテ居ルヤウニ私ハ考ヘザルヲ得ナ
  イノデアリマス、私ハ斯クノ如ク我ガ國體
  ニ淵源ヲ發スル嚴肅、崇高ナル、神ト一元一
  如ノ關係ニアル所ノ、精神訓育ヲ第一義トス
  ル所ノ武道ト、自由主義、個人主義、或
  共產主義トカ云フヤウナ、我ガ國體ト相容
  レザル所ノ精神、思想ノ祖國、其ノ外國ニ
  最モ流行シ、發達シタ所ノ體育運動、興味
  ヲ追求スル「スポーツ」性ヲサヘ内容トス
  ル所ノ體育運動、身體强健ヲ第一ノ目的ト
  スル其ノ體育運動ト同一ノ水準ニ於テ論ジ、
  或ハ水準以下ニ之ヲ論ズルト云フコトハ斷
  ジテ日本主義的デハナイ、皇道ヲ振起スル
  所以デハナイト考へマス、此ノ點ニ於テ私
  ハ重大ナル質疑ヲ大臣ニ致シタイト思ヒマ
  ス、此ノ間ドナタカニ配付ニナリマシタ
  厚生省ノ官制ヲ拜見致シマシタガ、厚生省
  ノ官制ノ示スヤウニ、厚生省ト云フモノハ
  國民ノ衞生、保健ヲ專ラ主管スル所ノ役所
  デアルヤウニ私ハ了解致シテ居リマス、其
  ノ厚生省ニ於テ精神訓育ヲ第一義トスル武
  道行政ヲ御取扱ヒニナルト云フコトハ、-
  是ハ私ガ只今ズツト述ベテ來タ、其ノ述
  ベタ所ニ對シテ大臣モ御同感ノ意ヲ表シ
  テ下サツテ居リマスガ、其ノ武道ノ本質ニ
  照ラシテ甚ダ不合理デナイカト思フ、私
  多年之ヲ念願致シテ居ルノデアリマスル
  ガ、宜シク厚生省ノ武道行政ニ關スル所ノ
  事務ト云フモノハ、內閣若シクハ文部省ニ
  返上或ハ移管スベキコトガ當然デアル、又
  武道ニ忠實ナル所以デアルト、私ハ斯樣ニ
  考ヘマス、是ハ中々重大ナ問題ト思ヒマ
  ス、之ニ對スル大臣ノ御考へハ如何デゴザ
  イマスカ、承リタイト思ヒマス

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• 081・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　武道ト體育運動トニ付テ
  ノ御話デゴザイマシタガ、體育運動ハ只
  今モ御話ノ中ニアリマシタヤウニ、其ノ發
  達ガ外國等カラ其ノ結果ヲ採ツタト云フヤ
  ウナ點ガアリマシテ、體育運動ノ實際面ニ
  於キマシテハ、國體或ハ日本ノ姿ニ相應シ
  クナイモノガ過去ニ於テ多々アツタト云フ
  コトハ事實デアルト存ジマス、又サウ云フ
  モノガ一ツノ興味本位ニ、卽チ自由主義的
  ナ興味追求ノ觀念カラ斯ウ云フモノノ流行
  ヲ來シタト云フコトモ是亦事實デアリマシ
  テ、其ノ結果恰モソレガ主デアツテ、武道
  ガ其ノ下ノモノデアルト云フヤウナ風ニ考
  ヘラレルヤウナ節ガ多々アツタコトモ甚ダ
  遺憾ニ存ジテ居リマス、今日武道ハ先程來
  御話ノ通リ、又體育運動ニ於キマシテモ、「ア
  メリカ」或ハ其ノ他ノ外國ガ考ヘテ居リマ
  スルヤウニ、唯單ニ身體ノ〓育、肉體的〓
  育ト云フヤウナ意味ノモノカラ蟬脫致シマ
  シテ、玆ニ日本精神ニ立脚シ、基調ヲ求
  メタル、而モ刻下ノ要請ニ卽應スルヤウ
  ナ一ツノ體育運動ト云フモノガ玆ニ生レテ
  來ナケレバナラナイ、卽チ今日ハ從來ノ體
  育運動ハ體道ト云フ一ツノ道ニマデ及ンデ
  來ナケレバナラナイト存ジテ居ル次第デア
  リマス、此ノ意味ニ於キマシテ、厚生行政
  ノ機構ノ上ニ於キマシテ武ト體道-從來
  ノ體育運動ヲ更ニ日本的ニシ、日本化スル
  ト云フ御國振リノ明カナル體育運動トスル
  ト云フコトノ爲ニハ、强ク此ノ行政ノ指導
  力ヲ及ボシタイ、斯ウ考ヘテ機構ノ上ニ勘
  案ヲ致シテ居ル次第デアリマス、而シテ健
  民、健兵、此ノ本ハ精神ト肉體、全ク一如ノ
  發達育成ニ依ツテ初メテ全ウスルコトガ出
  來ル次第デアリマシテ、此ノ意味ニ於キマ
  シテ、今日行政上ニ於キマシテ、厚生省ニ
  於テ武道ノ一課アリ、又將來ノ體道ヘノ
  一課アリト云フ風ニシテ、政府部內ニ於
  テ、〓育トシテノ文部當局トノ間ニ茲ニ緊
  密ナル一體的ノ行政ノ運營ヲ全ウシテ行キ
  タイ、斯ウ考ヘテ、先般ノ行政機構ノ改革
  ニ於テモ處置致シタヤウナ次第デアリマス、
  其ノ實體ハ只今申上ゲマシタヤウナ次第デ
  アリマスノデ、其ノ間文部ニアリ、厚生ニ
  アリ、體鍊課ニアリ、武道課ニアリ、練武
  課ニアリト云フコトニ依ツテ、其ノモノガ
  違ツテ居ルト云フヤウナコトデナク、全ク
  一ツノ道トシテ進メテ行キタイ、唯其ノ運
  營ノ爲ニ行政機構上最モ都合ノ好イヤウニ
  處置シテ居ル次第デアリマス

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• 082・藤生安太郎

  ○藤生委員　只今大臣ノ御答辯デ、從來ノ
  體育ハ成程君ノ言フ通リノ弊害ガアツタノ
  ダ、併シナガラ最近ノ體育ハモウ必ズシモ
  サウデハナイ、殊ニ日本ノ體育ト云フモノ
  ハ體道ト云フ風ナ名前ニ依ツテ取扱ツ
  テ、所謂御國振リニ之ヲ指導シテ行カナク
  チヤナラヌト云フヤウナ理想ヲ御述ベニナ
  リマシタガ、併シナガラ體道トシテ、如何
  ニ御國振リニ直シテモ、本當ノ武道ノ水準ニ
  マデ引上ゲルコトハ出來ナイ、ヤハリ武道
  ノ方ハ山鹿素行先生ガ「本朝武ヲ以テ先ト爲
  ス」ト言ハレテ居ルガ、飽クマデモ本朝武ヲ
  以テ先トナサナケレバナラヌ、體育ト武道
  ト何レヲ先ニスルカ、其ノ先後緩急ノ度ト
  云フモノハ自ラ明瞭デアル、曖昧ナル言葉
  ヲ以テ、體育運動ト武道、其ノ奬勵ノ先後
  緩急ノ度ヲドウスルカト云フコトニ對シテ、
  私ハ不明確ニシテハイケナイト思フ、其ノ
  コトニ對シテハ昨日モ次官ニ追究致シマシ
  タ、次官モ明確ニ第一ニ武道ヲ奬勵スルコ
  トハ當リ前ノコトデアルト言ツテ、力强イ
  言明ヲ得タノデアリマス、ソコデ第一ニ武
  道ヲ奬勵スルト云フコトデアレバ、ソレダ
  ケノ熱意ガアレバ當然厚生省デ扱フ所ノ武
  道行政ト云フモノハ武道ノ本質ニ照ラシテ、
  內閣ナリ、文部省ナリニ移管シ、返上スル
  コトガ本當ノ處置デハナイカト、斯ウ考へ
  テ實ハ御尋ネ致シタノデアリマス、之ニ對シ
  テハツキリシタ御答辯ヲ戴クコトノ出來ナ
  カツタノハ洵ニ殘念デゴザイマスガ、私ハ
  ソレハ只今厚生大臣トシテノ御立場ニ居ラ
  レルカラ無理モナイコトダト思ヒマスケレ
  ドモ、併シナガラ行政長官ト云ツタツテ、
  サウ何時マデモオヤリニナル譯ヂヤアルマ
  イシ、サウ行政長官トシテノ小サイ情實、
  感情ニ囚ハレナイデ、本當ノ武人トシテノ
  面目ヲ沈思默考シテ、此ノ際勇斷シテ武道
  行政ヲ文部省ナリ、內閣ナリニ返上サレタ
  ナラバ、厚生省ノ今ノ役人諸君ハ怪シカラ
  ヌ大臣ダト言ツテ或ハ不平ヲ言フカモ分リ
  マセヌガ、ソンナコトハ言フニ足ラヌト思
  フ、是ハ大キナ國家的意義ガアルト思フ、
  私ハモウ一度御再考願ヒタイ、元來厚生省
  デ武道ヲ取扱フヤウニナツタノハ、吾々ガ
  第七十三議會デ各派共同提案トシテ武道振
  興ニ關スル決議案、此ノ決議案ノ結果、厚生
  省ガ武道ヲ取扱フヤウニナツタケレドモ、
  決議案ヲ出シタ吾々ノ精神ハ斷ジテ武道ヲ
  厚生省デ取扱ツテ貰ヒタイト云フ意思ハ少
  シモナカツタ、ソレデ私ハ時ノ文部大臣ニ
  向ツテ精神訓育ヲ第一義トシ、第一ノ目的
  トスル武道ヲ國民保健衞生ヲ主管トスル厚
  生省ニ取扱ハセルト云フコトハ吾々ハ大反
  對デアル、ナゼ文部省ニ之ヲ取ラヌカト言
  ツテ、時ノ文部大臣ニ喰ツテ掛ツタ、所ガ
  君ノ言フ氣持ハ分ル、併シナガラ君ノ言フ
  本當ノ武道ハ、僕ハ學校武道トヲ持ツテ居
  ルカラ、學校武道デ奬勵シ、振興スルカラ
  宜イヂヤナイカ、併シ厚生省ガ頻リニヤカ
  マシク言フカラ、アノ位ハ向フニヤツテモ
  宜イヂヤナイカト言ハレタ、非常ニ私ハ其
  ノ時ニ不滿足デアツタノデス、聞ク所ニ依
  ルト、是ハ厚生省ニ所管スベキカ、或ハ文
  部省ニ所管スベキカト云フコトハ、內閣ノ
  法制審議會デモ非常ニ問題ニナツタ、法制
  審議會デモ反對デアツタ、所ガ厚生省ハ豫
  算ヲ取ツテ居ツタノデ仕方ガナイト云フノ
  デ、豫算ヲ取ツタ方ガ强イト云フノデ、是
  ガ厚生省ノ所管ニナツタ、厚生省ノ所管ニ
  ナツタ經緯ヲ考ヘテ見ルト無理ガアツタ、
  不自然ガアツタ、ダカラ此ノ無理ヲ無理デ
  ナイ昔ニ還ス意味ニ於キマシテモ、又國家
  的意義カラ言ツテモ、私ハ此ノ際大イニ厚
  生大臣ニ頑張ツテ決心シテ戴キタイト思ヒ
  マスガ、ドウデスカ、御決心ニハナリマセ
  ヌカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=82

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• 083・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　御答ヘ致シマス、只今ノ
  政府ニ於キマシテハ、各行政大臣其ノ各〓ノ
  行政長官トシテノ責任ノ重大ナルヲ感ズル
  ト共ニ、國務大臣トシテ國家ノ重要國策ニ
  對シマシテハ、全部私心ヲ微塵モ持ツテ居
  リマセヌ、而シテ心身一如、國民ノ眞ノ鍊
  成眞ノ保健ト云フコトハ、唯外國式ノ形
  ヲ逐ウテ居ルモノデハゴザイマセヌ、肉體
  ト心ト何處ニモ岐レルコトノ出來ナイ立派
  ナ日本本來ノ國民ノ體力ヲ鍊成シヨウト云
  フコトガ厚生省ノ大キナ目的デアリマス、
  此ノ意味ニ於テ國民全般ニ對スル武道ノ精
  神ヲ體得セシメテ、之ニ依ツテ日本式ノ本
  當ノ精神ヲ體得シタ身體ノ持主タラシムル
  爲ニ、厚生省ト致シマシテ此ノ武道ト云フ
  コトノ面ニ大キナ行政力ヲ拂ツテ居ル次第
  デアリマシテ、決シテ文部省、或ハ厚生省ト
  云フヤウナ、ソンナケチナ考ヘヲ以テ今日
  ノ時局ヲ乘切ツテ行カウトハ思ヒマセヌ、
  隨ヒマシテ〓育ノ方面カラ智育、德育、體
  育ト云フモノヲ三位一體トシテ〓育ハ進メ
  テ行ク、卽チ國民鍊成ノ意味カラ心身一如
  ノ鍊成ヲヤツテ行ク、其ノ行政ノオ互ヒノ
  分擔ニ於キマシテ共ニ相提携シテ國家目的
  ニ副ヒタイト云フノニハ、斯ウ云フ風ナ行
  政機構ガ最モ宜イト信ジテヤツテ居ル次第
  デアリマシテ、其ノ他ハ御意見トシテハ拜
  承ヲ致シテ置キマスガ、只今吾々ハサウ考
  ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=83

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• 084・藤生安太郎

  ○藤生委員　御斷リシテ置カナケレバナラ
  ヌコトハ私ハ行政長官トシテアナタガ私心
  ガアルト云フ風ナコトハ少シモ微塵モ考へ
  テ居リマセヌ、唯人情トシテ斯ウ云フ風ナ
  コトハアリ得ルコトデアリマスカラ、ソレ
  デ私ハサウ云フ人情ガアルトスルナラバ
  サウ云ラモノハ棄テテ、大所高所カラ國家
  的ニ勇斷サレテハ如何デスカト云フ意味デ
  アツテ、決シテ私心トカ何トカ云フ氣持ハ
  更々ナイ譯デアリマスカラ、誤解ノナイヤ
  ウニ願ヒマス
  ソコデ今ノ御答辯ニ對シテモ意見ヲ申上
  ゲタイト思ヒマスガ、尙ホ更ニ進マナケレ
  バナリマセヌカラ、其ノ問題ニ對シテハ其
  ノ位ニ致シテ置キマスガ、此ノ武德會大會
  ノ結成式ニ於テ賜ハリマシタ令旨ノ中ニ、
  武道ハ節義廉恥ノ志操ヲ涵養スルモノデア
  ルト述ベテアリマス、固ヨリ其ノ通リデア
  リマス、然ラバ節義廉耻ノ志操ト云フモノ
  ハ、是ハ何デアルカト云フコトヲ申上ゲマス、
  ト、是ハモウ諄々シク申上ゲルコトハナイ、
  簡單ニ申上ゲマスガ、一言ニシテ言ヘバ皆
  サンモ御承知ノ通リ正シキコトヲ行ツテ耻
  ヲ知ル、武士道ノ言葉デ言ヘバ「進退一ニ義
  ニ就ク」ト云フ言葉ノ意味ニ外ナラナイト思
  ヒマス、サウシテ見ルト、節義廉恥ノ志操
  ヲ涵養セシムベキ厚生省ノ責任ハ極メテ重
  且ツ大ト言ハナケレバナラヌノデアリマス、
  「人能ク道ヲ弘メ道人ヲ弘ムルニアラズ」ト云
  フ言葉ガアリマスガ、其ノ局ニ人ヲ得ルト
  云フコトハ中々大切ナコトデアリマス、武
  〓本論ニ「政治ノ要諦ハ其ノ局ニ立派ナ人物
  ヲ得ルコトニ在ル、ソレ故ニ人物ノ如何、
  ソノ正僞ヲ明ニスル事ハ主タルモノノ勤メ
  デアル、文武百官ハ必ズ人物ヲ選ンデ任用
  スベク、選任正シカラザル時ハ國家亂ルルニ
  至ル」斯ウ述ベテアルノデアリマスガ、是ハ
  多クノ部下ヲ持ツテ居ラレル厚生大臣トシ
  テ、是非味ハツテ戴キタイト思フノデアリマ
  ス、ト申シマスノハ、是ハ此ノ前ノ綜合武道
  團體組織ニ關スル審議委員會ニ付テ、其ノ
  委員會ハ先程申上ゲマシタヤウニ、吾々ガ
  出シタ決議案ノ精神ニ依ツテ出來テ居ル、
  謂ハバ其ノ委員會ノ生ミノ親ハ衆議院ナン
  デス、其ノ衆議院カラ一名ノ委員モ其ノ委
  員會ニ加ヘテナイト云フコトハ是ハ怪シカ
  ラヌヂヤナイカト云フヤウナコトデ、吾々ノ
  議員武道聯盟ノ實行委員ノ委員會ニ於テ問
  題ニナツタ、ソコデ怪シカラヌカラ藤生君
  一ツ糾明シテ吳レト云フ實行委員會ノ決議
  ニ從ツテ、體力法委員會ニ於テ質問スルコ
  トニシテ居ツタ、所ガ豫メ私ハ厚生省ノ方
  方ニ御用意ヲ願フト云フ意味ニ於テ、拔討
  ハ武士道ニアラズト思ツテ、御用意願ハウ
  ト思ツテ、斯ウ云フ質問ヲスルカラト云フ
  コトヲ申上ゲタ所ガ、厚生省ノ役人ノ方々
  ハ-人口局長ガイヤソレハモウ軈テ衆議
  院カラモ委員ニナツテ戴クコトニシテ居リマ
  スカラト言ツテ、私ガ其ノ問題ニ付テ質問
  スルコトヲ好マザル風デアリマシタカラ、私ハ止
  メタ、所ガ一向今日マデ實現シナイ、實現シ
  ナイノミナラズ、其ノ後鍊武課長ノ如キハ、會
  フ度ニモウ直グ發令ニナリマスカラト言ツテ
  居ツタニモ拘ラズ、實現シナイ、實現シナカ
  ツタコトニハ何等一言ノ釋明モナケレバ、辯明
  モナイ、私ハ是ガ實現シナカツタコトヲ咎
  メテ居ルノヂヤナイ、人ヲ僞ハル、人ヲ瞞
  シタ、ソレヲ私ハ言フノデス、卽チ節義廉
  恥ノ志操、恥ヲ知ル精神ガ健在デアルカト
  云フコトヲ私ハ問ヒダイ、サウ云フ者ガ鍊
  武課長ト云フヤウナ地位ニ居ルト云フコト
  ハ、甚ダ吾々多少武道界ニ微力ヲ致シテ居
  ル者ト致シマシテハ迷惑千萬デアル、ソレ
  バカリデハアリマセヌ、今厚生次官ガ立ツ
  テ行カレタガ、私ハ厚生次官ノ居ラレル所
  デ申上ゲタイト思ツテ居ツタガ、ヤハリ其
  ノ委員會ニ於テ相撲ハ武道デアル、アナタ
  ノ仰シヤルヤウナ內容ヲ持ツ相撲、卽チ武
  道トシテノ相撲ヲ今後育成シテ行ク方針デ
  アルト云フコトヲ言明サレタ、サレタニモ
  拘ラズ、其ノ後ハヤハリ東條總理大臣モ言
  ハレルヤウニ娯樂ノ相撲、興行、職業相撲ト
  シテノ相撲ヲ明治神宮外苑邊リデ學生ニヤ
  ラセテ居ル、依然トシテ之ヲ奬勵シテ居ル
  ト云フコトハ心外千萬デアル、然ルニ文部
  省ハドウカト云フト、文部省ハ此ノ前ノ議
  會ニ於ケル吾々ノ論議ニ耳ヲ傾ケラレテ、
  又吾々ノ要求ヲ容レラレテ、去年ノ夏橿原
  神宮ニ於テ大日本學徒體育振興會ノ相撲部ノ
  大會ニ職業相撲ノ弊風ヲ一掃シテ、吾々ノ
  主張スル武道トシテノ相撲ヲ實行セラレタ、
  洵ニ吾々ハ感謝ニ堪ヘナイ、其ノ文部省ガ
  敢然トシテ實行サレタコトニ對シテ世間ノ
  評判ハドウデアツタカ、之ニ對シテハ絕讚
  ノ聲ガ浴セ掛ケラレ、非常ニ文部省ノ態度
  ヲ世間ハ禮讚シタ、所ガ文部省ガ之ヲヤツ
  テ非常ニ人氣ヲ博シタノデ、本當ニ武道ト
  シテノ相撲ヲ主張シテ居ル一部ノ人々ハ非
  常ニ心配シテ來タ、文部省ガ餘リ世間カラ
  好評ヲ得タモノダカラ、厚生省ハ或ハ此ノ
  文部省ノ好評ニ燒餅ヲ燒イテ、來ルベキ明
  治神宮ノ國民鍊成大會ニ於テ行ハレル所ノ
  相撲ノヤリ方ヲ又從來ノヤウナ職業相撲式
  ナヤリ方ヲヤラセルノデハナカラウカト云
  フヤウナコトヲ言ヒ出シタ、ソレデ私ハソ
  ンナ馬鹿ナコトハナイ、ソレハ議會ニ於テ
  約束モアリ、言明モアルコトダカラ、ソン
  ナ馬鹿ナコトハアルモノヂヤナイ、心配要
  ラヌト言ウタ、併シ氣ニ掛ルモノデスカラ、
  私ハ役所ニ行ツテ體鍊課長ヤ、事務官ニ會
  ツテ、世間ニハ斯ウ云フ噂ガアルガト言ウ
  タ所ガ、冗談言ツテハイケマセヌヨ、吾々
  ハ文部省ヨリモツト進ンダ相撲ヲ今計畫實
  施シヨウトシテ居ル、ソンナ心配ハ要リマ
  セヌヨト言フ、私ハ大イニ安心シテ、ソレ
  等ノ人ニ大丈夫ダ、心配ハ要ラヌト言ウタ、
  所ガ案ノ定明治神宮國民鍊成大會ニ於キマ
  シテハ從來ト少シモ變ラヌ職業相撲、娛樂
  相撲ノ樣式ニ依ツテ學生相撲ガ行ハレタ、
  ソコデソレ等ノ人々ハ私ニ向ツテソレ御覽
  ナサイ、此ノ頃ノ代議士ハ役人カラ馬鹿ニ
  サレテ居リマスネト言ツテ冷ヤカサレタ、厚
  生省ノ爲ニ辯護シタ私ハ斯樣ニ冷ヤカサレ
  ルヤウナ醜態ヲ演ジタノデアリマス、斯ウ
  云フ風ナ實例ヲ擧ゲルナラバマダ他ニモア
  リマスケレドモ、此ノ問題ニ直接關係ガア
  リマセヌカラ私ハ述ベマセヌガ、斯ウ云フ
  風ニ帝國議會ニ於ケル言明ヲ無視シ、人ヲ
  僞ツタリ、約束ヲ破ツタリシテ、恥ヲ知ラ
  ヌヤウナ行動ヲナス者ガ武道行政ノ衝ニ立
  ツテ、節義、廉恥ノ志操ヲ涵養スル武道ヲ
  指導シ之ヲ〓育スル所ノ資格ハ斷ジテ私ハ
  ナイト思フ、昨今政府ノ役人ノ中ニハ東條
  總理大臣ヲシテ議會ニ於テ頭ヲ下ゲサセル
  ヤウナ非行ヲナス者ガアルト聞イテ居リマ
  スガ、苟クモ武道ヲ論ズル者ハ瀆職收賄ト
  云フヤウナモノノミヲ非行トスルノデハナ
  イ、斯ノ如キ人ヲ騙シ、約束ヲ破リ、恥ヲ
  知ラヌヤウナ行ヲナス者ハ、瀆職收賄等ノ
  一步手前ノ非行トシテ之ヲ糺彈致スノデア
  リマス、東條總理大臣ハ結成式席上ニ於テ
  武道ノ振興ハ官民一致協力シテ行カナクチ
  ヤイカヌ、昨日モ厚生次官ハ大同團結シテ
  行カネバイカヌト)大同團結官民一致デナ
  クテハ出來ナイト言ハレタ、ソレハ其ノ通
  リデスガ、サウ云フコトヲ言フ人ソレ自體
  ガ大同團結ヲ破ツテ居ル、私ハ甚ダ遺憾ニ思
  フ、議會人モ一般人モ時局ガ時局デアリマ
  スカラ、戰爭ニ勝タナクチヤナラヌト云フ
  譯デ、不平ガアツテモ、不滿ガアツテモ
  ジツト我慢シテ居ル、其ノ我慢シテ居ルコ
  トヲ宜イコト、幸ヒニシテ獨善不遜ノ態度
  ヲ今後繼續スルヤウナコトガアツタラ、其
  ノ結果ハ恐ルベキデアリマス、私ハ今日ノ
  如ク國民ガ、殊ニ議會人デモ物ノ言ヘナイ
  ヤウナ時代ニ於キマシテハ不平ガアリマシ
  テモ、不滿ガアリマシテモ、ソレガ表ニ現
  ハレナイ、其ノ現ハレナイ不平不滿ガドウ
  云フ所ニドウ云フ形デ現ハレテ行クカト云
  フコトニ對シテハ、愼重ナル態度ヲ取ツテ行
  カナクチヤナラヌト思フ、聲ナキニ聲ヲ聞
  キ色ナキニ色ヲ見ルト云フ心構ヘト、反省
  ト云フモノハ今日ノ政府ノ役人諸公ニハ特
  ニ私ハ痛切デアルヤウニ考ヘルノデアリマ
  ス、以上私ノ意見ヲ述ベタノデアリマスガ、
  部下監督ノ責任ヲ持ツテ居ラレル大臣ノ之
  ニ對スル御所見ヲ承リタイノデゴザイマス

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• 085・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今節義廉恥ノ思想ノ根
  本ニ付テ御話ガゴザイマシタ、私ハ先程申
  上ゲマシタ陸海軍人ニ賜ハリマシタ御勅諭
  ノ御言葉ニ對シマシテ節義、廉恥ノ元ハ
  要ズルニ、誠ノ一字ニアルト考ヘマシテ、
  全ク御話ノヤウナ氣持デ居リマズ、而シテ
  此ノ武道精神ニ徹スルト云フ上ニ於テハ、
  要スルニ唯誠ノ一字、之ニ徹スルト云フコ
  トガ根本デアルト思ヒマス、而シテ只今御
  指摘ニナリマシタ綜合團體ヘノ委員ト云フ
  ヤウナコト、是ハ私ノ承知致シテ居リマス
  ル所デハ其ノ衝ニ當リマシタ所カラ議院ノ
  方へ委員ノ推薦方ヲ、御相談致シタノデア
  リマスガ、御推薦ガナカツタ爲ニ議院ノ方
  ノ委員ガナカツタト云フ風ニ承知致シテ居
  リマス、併シ是等ノ點ハ尙ホ篤ト調ベマス、
  私ハ今日部下ノ者ニ此ノ誠ノ一字ニ缺ケル
  ヤウナ行爲ハ絕對ニナイコトヲ確信致シテ
  居リマスルガ、萬一ニモ其ノ間ニ何カアツ
  タト云フヤウナコトデモゴザイマシタナラ
  バ、十分ニ將來ハ注意ヲシテ戒飭シタイト
  考ヘマス、今日ニ於テ敢テ鍊武課ノ者ト限
  ラズ、厚生行政全般、其ノ點ニ於テ誠ノ一
  字ニ缺ケルヤウナコトハナイト確信致シテ
  居リマス

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• 086・藤生安太郎

  ○藤生委員　私ハ先程モ申上ゲマシタヤウ
  ニ其ノ實現シナカツタコトヲ言フノデハナ
  イ、實現シナカツタニ付テハ實現シナカツ
  タ事情モアツタラウト云フコトハ承知致シ
  テ居リマス、併シナガラ、サウナラサウノ
  ヤウニ一應ノ御言葉ハアツテ然ルベキダ、
  ソレヲ放ツタラカシテ置クト云フコトガイ
  ケナイノダ、斯ウ云フコトヲ申上ゲタ譯デ
  アリマス、尙ホ只今申上ゲマシタヤウニ、
  厚生省ハ議會ニ於テ武道ダトハツキリ確認
  サレテ、其ノ武道デアル相撲ヲ維持育成ス
  ルト言ハレテ居ツタニモ拘ラズ、今度大日
  本武德會ガ結成セラレテ、其ノ大日本武德
  會ガ取扱ツタ武道ノ種目ノ中カラ相撲ガ除
  外サレテ居ルノデアリマス、ナゼ相撲ガ除
  外サレタカ、ソレニ付テハ此ノ雜誌ニ書イ
  テアル所ヲ見ルト、委員會ニ於テ二三反對
  ガアツタ、斯ウ書イテアリマスガ、ドウ云
  フ意見ノ反對ガアツタノデアルカ、御聽カ
  セヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=86

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• 087・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　サウ云フ細カイ所ヲ私能
  ク承知シテ居リマセヌガ、私ノ知ツテ居ル
  所デ申上ゲマス、相撲ハ私實ハ個人トシテ
  モ非常ニ力ヲ入レテ居リマスコトハ御承知
  ノ通リデアリマス、唯先程モ御話ノアリマ
  シタヤウニ、今ノ興行ノ相撲ヲヤリ出サレ
  テハ困ル、本當ノ相撲ヲ-私言葉ハ分リ
  マセヌガ、本當ノ相撲ト自分デ言ツテ居リマ
  ス、本當ノ相撲ヲヤリタイト云フ氣持デ私
  ハ委員會ニ於テ種目ノ決定ノ時ニハ自分ノ
  意見ヲ申シテ置キマシタ、必ズシモ此ノ武
  道ノ種目ノ中ニ相撲ヲ入レナイト云フ氣持
  ハ持ツテ居リマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=87

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• 088・藤生安太郎

  ○藤生委員　今大臣ガ仰シヤツタヤウニ、
  本當ノ相撲、私ガ聞イタ所ニ依リマスト、
  恐ラク、其ノ委員會ニ於テハ私ハ反對意見
  ハタツタ一ツデアルト云フコトガ能ク分ツ
  テ居ル、ト云フノハ、私ガ武道振興委員會
  ノ特別委員ヲヤツテ居リマシタ時ニ、其ノ
  特別委員會ノ席上ニ於テ或ル人ガ反對シタ、
  其ノ反對ノ理由ハ斯ウデアル、今日ノ相撲
  ハ兩國ノ相撲ガ代表シテ居ルノデハナイカ、
  アノ相撲ヲ日本ノ正シイ相撲デアルカノヤウ
  ニ一般ハ考ヘテ居ルガ、アノ相撲ハ興行ノ
  相撲デアルサウ云フヤウナ相撲ヲ柔道、劍
  道ト同列ニ取扱フコトハ出來ヌデハナイカ
  ト云フ意見アガツタ、ソレニ對シテ、其ノ
  委員會ハ武道種目ヲ決定スル委員會デナカ
  ツタカラ、私ハ之ヲ聞キ流シテ居ツタノデ
  アリマスガ、私ガ居ラヌ場合ニ是ガ正式ニ
  決定サレルト云フヤウナコトハ、夢ニモ考
  ヘテ居ナカツタノデアリマス、動モスルト
  サウ云フ偉イ人デサヘモ、アノ兩國ノ相撲
  ガ本當ノ日本ノ相撲デアルカノ如ク誤解ヲ
  シテ居ル、ソレダカラ厚生省モ、文部省モア
  ノ相撲ハ日本ノ正シキ相撲デハナイ、アレ
  ハ動進相撲ノ末流ヲ汲ム娛樂相撲、興行相
  撲デアル、正シキ相撲ハ斯クナクテハナラ
  又、今言ツタ本當ノ相撲ハ斯ウ云フモノデ
  アルト云フコトヲ、ナゼ〓究シテ、其ノ規
  範ヲ御示シニナラヌカ、御作リニナラヌカ
  ト云フコトヲ、私ハ建議委員會ニ於テモ、
  他ノ委員會デモ、要求シテ居ルガ、ソレガ何
  時マデ經ツタツテ一向實現サレナイ、今日
  ノヤウナ時局ニ於テハ物資ハ極度ニ制限サ
  レテ居ル、其ノ今日ニ於テモ相撲ハ道場ヲ
  作ル必要モナケレバ、防具ヲ用意スル必要
  モナイ、砂ト藁ト褌一本アレバ、是デ直グ
  ヤレル、厚生省ハ體力々々ト言ツテ居ルガ、
  時間的ニ言ツテモ、效果的ニ言ツテモ、量
  的ニ言ツテモ、是レ位效果ノアルモノハナ
  イ、他ノ武道ヨリモ遙カニ優レテ居ル、精
  神的ニ於テモ、兎ニ角引カバ押セ突カバ押
  セ、押サバ押セ、押シノ一手デ、土俵ヲ二
  分シテ相手ノ陣地、吾レノ陣地ト決メテ、立
  上ルヤ否ヤ直チニ敵陣地ニ逸早ク突入シテ
  飛ビ入ツテ勝敗ハ敵ノ陣地デ決メル、ソレ
  ハ丁度今支那ニ於テ南方ニ於テ我ガ皇軍ガ
  ヤツテ居ルアノ精神、卽チ突擊挺身ノ肉彈
  精神、是ガ相撲ノ精神デアル、攻撃的、精
  神的價値カラ言ツテモ、他ノ武道ニ勝ルト
  モ劣ラヌ、又其ノ普及性ニ至ツテハ「スポー
  ツ」以上ノ普及力ヲ持ツテ居ルト私ハ思フ、
  ダカラ斯ウ云フ相撲ハ大イニ奬厲シテ戴カ
  ナケレバナラヌ、厚生省ハ私ガ居ナクナツ
  タ委員會ニ於テ一委員ノ反對意見ニ從ツテ、
  折角議會デ言明シテ約束シテ居ルニ拘ラズ、
  武道種目ノ中カラ削除シテシマツタト云フ
  コトハ、私ハ洵ニ遺憾ニ存ジマス
  ソレカラ今度厚生省ハ武道章ト云フモノ
  ヲ御作リニナルヤウニ聞イテ居リマスガ、
  武道章ニ付テ一應大臣ノ御說明ヲ承リマス

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• 089・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　今囘武道章ヲ制定致シマ
  シタノハ、ヤハリ武道ノ振興ヲ期スル爲ニ
  致シタ次第デアリマシテ、體力章ト云フモ
  ノガゴザイマシテ、體力檢定ヲシ、體育運
  動等ヲ奬厲致シマシタノデ、ソレト此ノ武
  道章ト一〓ニスルノモ、先程カラ御話ノヤ
  ウナ工合デ出來マセヌノデ、武道章ト云フ
  モノヲ新タニ制定致シタ次第デアリマス

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• 090・藤生安太郎

  ○藤生委員　其ノ武道章ヲ制定サレルニ付
  テ、聞ク所ニ依ルト軍部ノ方デハ柔道ト劍
  道ノ武道章ヲ戴ク試驗ニ合格シテモ、基本
  的ニ銃劍道ト射撃道ニ合格シテ居ナケレバ
  武道章ハ得ラレナイト云フ風ニ軍部ノ方ノ
  意向ガ決メラレテアルヤウニ聞キマスガ、
  ソレハ本當デセウカ

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• 091・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今御尋ネノ點ハ、マダ
  私ハ承知致シテ居リマセヌ、恐ラクサウ云
  フ細カイ小サナ考ヘカラ出發シタモノハナ
  イト思ツテ居リマス

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• 092・藤生安太郎

  ○藤生委員　私モサウデアツテ欲シイト思
  ヒマス、若シソレガサウダトスルト、又
  ツ議論シナケレバナラヌノデアリマスガ、
  サウデナイヤウニシテ戴キタイ、此ノ際若
  シサウ云フヤウナコトガ今後問題ニナルヤ
  ウナコトガアリマシタナラバ、一ツ此ノ機
  會ニ大臣ニ御願ヒ致シテ置キマスガ、基礎
  的ナモノハ、銃劍道、射撃道、卽チ武器ヲ
  持ツ所ノ武術ヨリモ、武器ヲ持タザル相撲ト
  カ柔道、特ニ體捌キヲ修練スル爲ニハ最モ理想
  的ノ柔道ノ如キモノガ、寧ロ基礎的ナ條件ノ武
  道トシテ適當デアル、斯樣ニ考ヘテ居リマス、
  私ハ私ノ體驗ニ照ラシテ、基礎目的ノ體捌キ
  ガ出來テ居レバ、是ハ基礎工事ガ出來タヤ
  ウナモノデ、其ノ上ニハ如何ナル建築ヲヤ
  ツテモ立派ニ建築出來ル、ソレハ事實デス、
  斯ウ云フコトヲ言ツテハ變デスケレドモ、
  私ニハ基礎工事ガ相當出來テ居ルカラ何デ
  モ出來ル、何デモヤツタノデス、砲丸投ゲ
  デモ、槍投ゲデモ、或ハ自轉車デモ「ボート」
  デモ、野球デモ庭球デモ「オフィシヤル」ニ
  ハ出ナカツタガ、一流選手程度ノ「レコー
  ド」ヲ持ツテ居タノデアリマス、ト云フノハ、
  私ハ體捌キ、基礎工事ガ柔道ニ依ツテ出
  來テ居ル、柔道ニ依ツテ體ノ捌キヲ心得テ
  居ルカラト私ハ確信スル、其ノ體捌キヲ〓
  ヘルニハ柔道ガ最モ適當ダト思ヒマス、ダ
  カラシテ、サウ云フ話ガアル場合ニハ
  ツ大臣カラ特ニ柔道ヲ御主張下サルヤウニ、
  特ニ此ノ機會ニ御願ヒシテ置キマス
  更ニ御尋ネ致シタイコトハ、武德殿ノ僭
  稱問題デアリマス、之ニ付テハ前ノ議會ニ
  於テ其ノ僭稱ノ不可ナル理由ヲ私ハ十分述
  ベテ置イタノデアリマス、ソレデ其ノ理由
  ハモウ述べマセヌガ、其ノ際厚生大臣ハ、
  其ノ問題ハ武德殿ノ僭稱問題ハ新武德會結
  成ノ時マデニハ是等ガ解決サレルヤウニ期
  待致シテ居ルト御答辯ニ相成ツタノデアリ
  マス、是ガドウ云フ風ニ解決サレマシタカ

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• 093・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　武德殿ト云フ名ガ從來ノ
  武德會、又其ノ支部等ニ於キマシテ武德殿
  ト稱セラレテ居ルト云フコトハ〓究ヲ要
  スル問題ト致シマシテ、新タニ出來マシタ
  ル大日本武德會ノ今後ノ道場ニ對シマシテ
  ハ、此ノ點ハ十分ニ〓究ヲシテ、唯從來武
  德殿ト言ツテ居ツタカラ其ノ儘武德殿ト云
  フヤウナコトノナイヤウニシヨウト考ヘテ
  居リマス

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• 094・藤生安太郎

  ○藤生委員　サウスルト、マダ解決サレテ
  居ナイノデスカ、今後解決ナサルノデゴザ
  イマスカ

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• 095・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　從來アリマシタ例ヘバ京
  都ノ武德殿ヲ、今日武德殿ト云フ名稱ヲ廢
  止サセルト云フコトハ致シテ居リマセヌ、
  是ハ過去ニ於ケル發達モゴザイマスルシ、
  色々ノ信仰的ナモノモアリマスルノデ、今
  後ニ於ケル新道場ニ付テハ考ヘルト云フコ
  トニ致シテ居リマス

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• 096・藤生安太郎

  ○藤生委員　私ハ甚ダ不滿ナノデスガ、過
  去ノ因緣ガアルトカ、信仰ガアルトカ、ド
  ンナ因緣、ドンナ信仰ガアツタツテ、武德
  殿ト云フヤウナ名ヲ言フト云フコトハ、是
  ハモウ斷ジテ許サレナイ、其ノコトハ私ガ
  前議會ニ於テ詳シク申述ベテ置イタノデア
  リマス、私ハ之ヲ再ビ繰返シマセヌガ、ソ
  レハイケナイノデス、過去ニ於テドウ云フ
  因緣ガアラウトモ、ドウ云フ信仰ガアラウ
  トモ、斷ジテ武德殿ト云フヤウナコトハ稱
  シテハ相成ラヌト思ヒマス、是ハモウ既ニ
  識者ノ間ニ於テモ問題ニナツテ居ル、折角
  今後解決スルト云フ御言葉デアリマスカラ、
  私ハソレヲ信賴致シマシテ、是非是カラ出
  來ル道場デナシニ、今武德殿ト稱シテ居ル
  古イ道場ニ對シテモ、直チニ武德殿ト云フ
  稱號ヲ撤廢サレルヤウニ御願ヒ致シマス、
  特ニ地方ニ於ケル武德會ノ支部ノ道場ノ中
  ニハ甚ダシキニ至ルト公會堂的ニ使用サレ
  テ居ルモノモアル、尙ホ甚ダシキニ至ルト
  宴會場ニ使ハレテ居リ、其ノ會場ニ藝者、
  酌婦ト云フヤウナ類ノ人間ガ出入シテ居ル、
  武道ノ神聖ヲ冒瀆スルモ甚ダシイ、サウ云
  フコトハ絕對ニナイヤウニ、大日本武德會
  ニシカト御願ヒシテ置ク次第デアリマス、
  ソレカラ此ノ武德殿ノ僭稱問題ニ關聯致シ
  マシテ、私ハ前議會ニ於テ國技館ノ攝政盃
  ノ問題ニ付テ意見ヲ述ベタノデアリマス、
  ソレハ其ノ後、此ノコトニ關聯シテ最モ其
  ノ當時ノ事情ヲ熟知シテ居ラレル所ノ權威
  者モハツキリ私ノ意見ヲ裏書キシテ、サウ
  シテ攝政盃ト申上グベキ何等ノ根據モナイ
  ト云フコトヲ明カニサレタノデアリマス、
  是ハ相撲協會ノ潜亂增長ノ結果デアルト私
  ハ斷ゼザルヲ得ナイノデアリマス、前議會
  ニ於テハ私ハ此ノ問題ノ性質上敢ヘテ大臣
  ニ御答辯ヲ要求シナカツタノデアリマスガ、
  併シナガラ善處方ヲ要望シテ居ツタノデア
  リマス、之ニ對シテドウ云フ風ニ善處ニ相
  成ツタノデアルカ、御答辯ヲ煩ハシタイノ
  デアリマス

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• 097・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　攝政盃ニ付テハ、私共其
  ノ後聞イテ見タノデアリマスガ、相撲道御
  奬勵ノ思召シカラ賜リマシタモノト云フコ
  トデ、之ヲ特ニ賜ハリマスルヤウニ申上ゲ
  マシタト云フヤウナ者ノナイコトヲ承知致
  シマシテ、有難キ御奬勵ノ思召シト拜シマ
  シテ、是ノ取扱ヒ方等ニ對シマシテハ特ニ
  注意ヲスルヤウニ考ヘマシテ、攝政盃ヲナ
  クシテシマフト云フヤウナ處置ニハ出デナ
  カツタ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=97

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• 098・藤生安太郎

  ○藤生委員　只今ノ大臣ノ御言葉デハ相撲
  道ノ思召シデ攝政盃ヲ御下賜ニナツタ、斯
  ウ云フ意味ニ於テ諒承シテ宜シウゴザイマ
  スカ

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• 099・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　是ハ盃ヲ賜ツタノデハナ
  イト私共ハ承知致シテ居リマス、オ上ヨリ
  金一封ヲ賜ツタト思ヒマス、之ヲ以テ當局
  ニ伺ヒマシテ盃ヲ製作致シテ、之ヲ攝政盃
  ト謹稱スルコトニナツタト存ジマスガ、ソ
  コニ〓究スル問題ガアリマスノデ、只今申
  上ゲマシタヤウニ、取扱ヒ等ニ注意ヲ致シ
  テ居ルノデアリマス

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• 100・藤生安太郎

  ○藤生委員　ソコデ次ニ御伺ヒ致シタイコ
  トハ段位稱號ノ問題デアリマス、此ノ段位
  稱號ノ問題ハ、武道奬勵、振興上極メテ重
  要ナモノデアリマス、隨テ其ノ取扱ヒハ愼
  重ヲ期サナケレバナラヌコトハ申スマデモ
  アリマセヌ、新武德會ガ結成サレタ理由ノ
  中ニ、從來ノ武德會ハ明朗ナラザル點ガア
  ツタ、一抹ノ不明朗サガアツタ、其ノコ
  トニ付テハ昨日モ政府委員ノ方モ、此ノ段
  位稱號ヲ繞ツテ芳バシカラザル事情ガアツ
  タト云フコトヲ是認セラレテ居ルノデアリ
  マスガ、今度ノ新武德會ハ從來ノ段位ト變
  リマシテ、等制ヲ採用セラレタノデアリマ
  ス、卽チ五段以下、五段ヲ一等トシテ初段
  ヲ五等ニスルト云フヤウニ御決定ニナツタ
  ノデアリマスガ、私ハ特ニ段ヲ避ケテ、サ
  ウシテ等制ヲ御採用ニナツタト云フコトハ、
  從來段制度ヲ採ツテ居ル民間ノ武道團體
  ガ、多年孜々營々、苦心經營シテ來タ此ノ
  武道界ノ武道振興ニ對スル功績ヲ御認メニ
  ナツテ、更ニ是等ノ團體ノ將來ノ發展ヲ促
  ス意味ニ於テ、摩擦相剋ヲ避ケタイト云フ
  心持カラ、段ヲ民間ノ團體ノ方ニ委ネテ、
  サウシテ等制ヲ御採リニナツタ、斯ウ云フ
  ヤウニ解釋スルノデアツテ、是ハ洵ニ結構
  デアリマス、サウナケレバナラナイ、本當
  ニ今日マデ武道ガ盛ンニナツテ來タト云フ
  コトハ、官ノ力ハ少シモナイ、民間團體ノ
  御蔭ナノデアリマス、民間團體ノ苦心經營
  ニ依ルモノデアル、其ノ民間團體ノ功績ヲ
  御認メニナツテ、ソシテ摩擦ヲ避ケル意味
  ニ於テ、段ニ代ツテ等制ヲ御採用ニナツタ
  ト云フコトハ洵ニ結構ダト考ヘマス、所ガ
  實ハ玆ニ非常ナ意外ナ問題ガ惹起シテ居ル
  ノデアリマス、或ハ大臣ハ御存ジデアル
  カモ分リマセヌ、併シ御存ジデナイトス
  ルナラバ怪シカラヌコトデアリマスシ、
  御存ジトスルト尙更怪シカラヌト思フ、ソ
  レハ只今申上ゲタヤウニ民間團體トノ摩擦
  相剋ヲ避ケル意味ニ於テ等制ヲ御採リニナ
  ツタ、サウシテ其ノコトハ其ノ當時各新聞
  ニ賑々シク發表セラレタノデアリマスガ、
  其ノ等制ニ對シテハ實ハ大臣ノオ耳ニハ入
  ツテ居ルコトト思ヒマスガ、武道界ノ中デ
  ハ非常ニ評判ガ惡イ、人間ヲ恰モ鷄ノ品評
  會ノヤウニ心得テ、斯ウ云フ扱ヒヲスルト
  ハ怪シカラヌト云ツタヤウナ批評マデシテヽ
  非常ニ等制ニ對シテ攻擊シテ居ル向キガ相
  當アルノデアリマス、サウ云フ不人氣ノ爲
  ニ、或ハ斯ウ云フヤウナコトヲヤラレタカ
  ドウカハ知リマセヌガ、是ハ東京府廳內ニ
  アル大日本武德會東京府支部ナンデスガ、
  審査要綱ニ五等ノ所ニ初段、一等ノ所ニ五
  段、斯ウ云フヤウニ等ヲ段ニ代ヘテアル、
  一體ドウ云フ譯デ等ヲ段ニ御代ヘニナツタ
  ノカ、何故代ヘタノナラ代ヘタト云フヤウ
  ニ御發表ニナラナイノカ、非常ニ皆不思議
  ニ思ツテ居ル、此ノ點ヲ一ツ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=100

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• 101・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　段位稱號ニ對スル御話
  ハ御話ノ通リノ次第デ今囘等制ト致シタ
  ノデアリマス、只今御指摘ニナリマシタヤ
  ウナ、支部ニ於テ等ヲ段位ニ代ヘタト云フ
  ヤウナコトハ、是ハ甚ダ變ナコトダト私ハ
  思ヒマス、抑〓此ノ機會ニ申上ゲテ置キマ
  スガ、武ト云フコトヲ道トシテ實生活ニ修
  メマスノニハ、サウ云フ不純ナコトデアツ
  テハイケナイ、モツト眞直グニ、純ニ行カ
  ナケレバナラヌ、先程モ柔道ノ御話ガ出マ
  シタガ、私ハ高等專門學校ノ柔道ノ試合ヲ
  見マシテ、實ハ御願ヒシテ居ルノデアリマ
  ス、柔道ハ寢技デ勝ツノガ柔道デハナイノ
  ダ、高等專門學校ノ學生ノ柔道ハ何タル姿
  ダ、劍道ニ於テモ、恰モ「ボクシング」ヲヤル
  ヤウナ姿ヲ以テ、短劍ヲ持ツテ相手ニ向フ
  ト云フコトハ劍道ノ精神ニ反シテ居ル、斯
  クノ如キモノハ全部止メテ貰ヒタイ、サウ
  シテモツトハツキリト、本當ノ武道ヲヤツ
  テ貰ヒタイ、斯ウ云フ積リデ指導ハシテ居
  リマスガ、或ハ何カサウ云フヤウナコトガ
  アツタカハ知リマセヌガ、是ハ決メマシタ
  コトニ從ツテ、ハツキリサウ云フ風ニヤル、
  若シ誤リガアリマスレバ適當ニ是正シテ行
  キタイト考ヘテ居リマス

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• 102・藤生安太郎

  ○藤生委員　ドウカ左樣ニ御願ヒ致シテ置
  キマス、ソレカラ段ニセヨ、等ニセヨ、苟
  モ皇族殿下ヲ總裁ニ奉戴シテ居ル團體ガ
  民間團體ト對立シ相剋シ、競爭スルヤウナ立
  場ニ立ツテ段トカ、等トカ出スト云フコト
  卽チ一流一派的ニ偏シテサウ云フモノヲ取
  扱フト云フコトハ是ハ宜クナイノヂヤナイ
  カ、斯ウ云フ風ニ考ヘル、唯之ニ對シテ大
  臣ノ御答辯ヲ求メマシテモ一寸御困リデア
  ラウト思ヒマスガ、段ト云フノハ御承知ノ
  ヤウニ講道館ガ之ヲ始メタ、嘉納先生ガ御
  始メニナツタ、所ガ講道館ノ嘉納先生ノ弟
  子デアル磯貝範士ガ京都ノ武德會ノ柔道部
  ノ方ノ大將、主任デアル、初メノ間ハ京都側
  モ講道館ニ段ヲ貰ヒニ來テ居ツタ、所ガ段
  段武德會ガ勢力ヲ得ルニ從ツテ講道館ト對
  等的ナ態度ヲ執ツテ、段ヲ出スヤウニナツ
  タ、以前ハ京都ノ武德會ハ總裁ヲ奉戴シテ
  居ルノデアルカラ稱號ダケニシテ居ツタ、範
  士、〓士、練士ト云フ稱號ダケデ、段ハ出シテ
  居ナカツタヤウニ記憶シテ居リマス、ソレガ本
  當デアル、ソレガ段々勢ヒヲ得テ來テ、講道館
  ト對抗的ニナツテ、講道館ト始終問題ガ起
  キタ、問題ヲ起スバカリデナク、競爭スル
  モノデアルカラ、段ノ値打ガ段々下ツテ來
  ク、ダカラ段ト云フモノハ講道館ニ取ツテ
  ハ旣得權デアル、講道館ハ功勞者デアル、
  ダカラソレヲ御認メニナツテ、只今大臣カ
  ラ仰シヤツタヤウニ段ヲ民間團體ニ御任セ
  ニナツテ居ルコトハ結構ナコトデアリマス
  ガ、私ハ只今申上ゲマシタヤウニ、總裁宮
  殿下ヲ奉戴シテ居ル團體ガ一流一派ノ如キ
  態度ヲ執ツテ、民間團體ト對立的ノ行動ヲ
  執ルト云フコト宜シクナイ、其ノ意味ニ於
  テ大日本武德會ハ等トカ段ト云フモノハ取
  扱ハヌ方ガ宜イデハナイカト考ヘマス、又
  是ト關聯致シマシテ鍊士以上ノ稱號ハ
  總裁宮殿下ノ御名ニ於テ授與サレルノデアリ
  マス、今囘モサウ云フ風ニ決定サレタヤウ
  デアリマスガ、畏クモ總裁宮殿下ノ御名ニ
  於テ授與サレル稱號デアルカラ、之ヲ拜受
  スル者ニ取ツテハ感佩之ニ過グルモノハナ
  イノデアリマス、併シ此ノ稱號ガ從來ノヤ
  ウニ舊武德會ノ幹部ニ依ツテ行ハレテ居ツ
  タ「ブローカー」的情實ヤ、請託ニ依ツテ
  取扱ハレルコトガアリマシタナラバ、其ノ累
  ヲ畏レ多クモ總裁宮殿下ニ及ボシ奉ルヤ
  ウナコトニ相成ルノデアリマス、ソコデ私
  ハ先程申シマシタヤウニ一流一派的ノ態度
  ヲ執ラナイデ、段トカ、等トカ一切ヲ取扱
  ハナイデ、稱號ダケヲ大日本武德會ニ於テ
  其ノ大キナ機構、大キナ陣容ニ相應シイ大ナ
  ル見地カラ大ナル稱號ヲ範士、〓士、鍊士ト云
  フヤウナモノダケヲ取扱ツテ、而モ其ノ取
  扱、其ノ授與ノ名義ハ總裁宮殿下ノ御名ニ
  於テデハナクシテ、會長ノ名ニ於テヤツタ
  ラドウカト云フコトヲ考ヘルノデアリマス
  ガ、此ノ點ニ對シテ大臣ノ御所見ヲ伺ヒタイ

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• 103・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今ノ御意見ハ洵ニ御尤
  モニ感ズル點ガ多々ゴザイマス、今後十分
  〓究シテヤリタイト思ツテ居リマス

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• 104・藤生安太郎

  ○藤生委員　是非サウ云フ風ニシテヤツテ
  戴カヌト大變ナ問題ガ起ル、實ハ吾々武道
  ニ關係シテ居ル者ト致シマシテハ、敢テ恥
  ヲ忍ンデ申上ゲルノデスガ、中々「ブロー
  カー」的ノ情實ヤ、請託ニ依ツテ武道界ヲ
  汚ナクスルト云フコトハ明治、大正、昭和
  ノ時代ニ限ツタコトデハナイ、是ハ昔ナガ
  ラノ惡習デアリマシテ、昔ハ御金目錄或ハ
  義理目錄、永年目錄、不憫目錄ト云フヤウ
  ニ情實ニ依ツテ只扱ハレタ目錄ガアツタ位
  デアリマスカラ、一朝一夕ニ武道界ノ不明
  朗ヲ明朗ニスルト云フコトハ出來ナイ、ソ
  レデ私ハ將來此ノ大日本武德會ノ稱號問題
  ニ付テ若シ怪我人デモ起ルヤウナコトガア
  ツテハイカヌト云フノデ、切ニ大臣ニ御考
  ヘヲ願フノデアリマス、是ハ御聽キ置キヲ
  願ヒタイノデスガ、私ハ薙刀問題ガ起キタ
  時ニ、當時ノ武德會ノ會長デアツタ林銑十
  郞閣下ノ御宅ヲ議員武道聯盟ノ實行委員數
  名デ訪問シタ、ソシテ大體薙刀問題ガ起ル
  ト云フコトハ舊武德會ノ幹部ガ腐ツテ居ル
  カラダ、之ヲ改革シナケレバイカヌ、閣下、
  ソレヲ改革シナサイ、若シアナタガ愚圖愚
  圖シテ居ラレルヤウナコトナラバ吾々ハ勢
  ヒ之ヲ議會ノ問題トシテ議會デ取扱ヒマ
  ス、サウ云フコトニナルト勢ヒノ赴ク所總
  裁ノ御名ニ於テ授與サレル所ノ段位ノ稱號
  ト云フモノニ關聯シテ、若シ具體的ノ事實
  デモ出テ來タト云フコトニ相成ツタナラ
  バ、是ハ容易ナラヌコトニナリマスカラ、
  サウ云フコトニナラヌ內ニ一ツ改革ヲ斷行
  シタラ如何デスカト言ツタ、其ノ時林閣下
  モ僕モソレニハ困ツテ居ルト云フヤウナ御
  話モアツタ、山本副會長モ同一ノコトヲ言
  ハレタ、或ル程度サウ云フコトガアルト御
  認メニナツテ居ル、是ハ人口局長ガ來テ居
  ラレマスカラ申上ゲテ置キマスガ、此ノ前
  ノ武德會大會ニ於テ審査ガ行ハレタガ、其
  ノ審査員三名ノ中ノ二人ハ利害ト情實ノ密
  接ナ關係ガアル、ダカラ審査ノ決ハ初メカ
  ラ二對一デ明白デアルカラ、演武者ノ方ハ
  一生懸命ヤツテ居ルガ、其ノ方ハ見向キモ
  シナイデ、私語ニ耽ツテ居ルト云フ狀況ヲ
  眞面目ナ人ガ見テ、折角立派ナ武德會ガ出
  來タノニ舊態依然タル審査ノ方法ハドウダ
  ト、言ツテ憤慨シタ人ガアル位デ、私ノ心配
  シテ居ルコトハ旣ニ萌シテ居ル、ダカラシ
  テ私ハサウ云フヤウナコトガナイヤウニト
  云フ譯デ御願ヒシテ居ルノデアリマスカ
  ラ、私ノ希望申上ゲマシタヤウナ形ニ於テ
  ナサレルヤウニ極力御盡力ヲ願ヒタイト云
  フノデアリマス、餘リ長クテ恐縮デアリマ
  スガ、最後ニ御伺ヒ致シマスノハ私ハ國
  家ノ官吏タル者ハ、卽チ陛下ノ官吏トシテ
  ノ責任ノ重大ナルコトヲ深ク顧ミル所ガナ
  ケレバナラヌト云フコトハ、是ハ申上ゲル
  マデモアリマセヌ、吉田松陰先生ガ「君ハ國
  ノ幹、民ハ國ノ本ナリ、臣ハ君臣ノ間ニ
  立チテ、君ヲシテ仁ニ民ヲシテ業ニ勤メシ
  ム、而シテ美ナルトキハ之ヲ君ト民トニ歸
  シテ刺ヲ己レニ收ム、朝典此ニ因リテ亂レ
  ズ、治〓之ニ因リテ日ニ明ラカナリ、是人
  臣ノ上ニ奉ズル所以ナリ」斯ウ云フ風ニ言
  ツテ居ラレル、又「士タル者ハ三民ノ業ナ
  クシテ三民ノ上ニ立チ人君ノ下ニ居リ、君
  意ヲ奉ジテ民ノ爲ニ災害禍亂ヲ防ギ財政輔
  相ヲナスヲ以テ職トセリ、而ルニ今ノ士タル
  者民ノ膏血ヲ絞リ、君ノ俸祿ヲ攘ミ、此ノ
  理ヲ思ハザルハ、實ニ天ノ賊民ト云フベシ、
  此ノ處人々自ラ考ヘ、三民ノ長タルニ背カヌ
  如ク覺悟スベシ」斯ウ云フヤウニ言ツテ居ラ
  レルノデアリマス、洵ニ味ハウベキコトデ
  アリマス、陛下ノ官吏タル者ハ此ノ業ナ
  クシテ、三民ノ長トシテ、三民ノ上ニ立ツ士
  タルノ覺悟ト〓養ト云フコトガ絕對必要デ
  アルト思フノデアリマス、此ノ意味ニ於キ
  マシテ、私ハ將來官吏タラントスル者ニシ
  テ國家試驗ヲ受ケル者ニ對シテハ、愈〓益〓武
  道ニ對スル所ノ理解ヲ持ツテ戴キタイト云
  フコトヲ念願スル意味ニ於キマシテ、國家
  試驗ニ武道科目ヲ採用スルト云フコトノ必
  要ヲ痛感致シテ居ルノデアリマス、是ハ或
  ハ厚生大臣ノ御答ヘニナル範圍デハナイ、
  内閣ニ關係スルコトカモ知レマセヌガ、併
  シ大臣ノ御考ヘヲ承ハルコトガ出來レバ幸
  ヒデアリマス

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• 105・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　今日高等試驗ノ科目ニ武
  道ヲ採リ入レテ居リマセヌノデ、今後然ラ
  バ採リ入レルカト云フコトデアリマスルガ、
  武道ノ本質ニ鑑ミマシテ篤ト御意見ノ點ヲ
  尊重シ能ク〓究ヲシテ見マシテ、各方面ト
  モ相談致シテ見タイト思ヒマス

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• 106・藤生安太郎

  ○藤生委員　私ノ質問ハ遺憾ナガラ是デ終
  リマス

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• 107・清水留三郎

  ○〓水委員長　中井一夫君

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• 108・中井一夫

  ○中井(一)委員　製藥業者ノ整理統合ニ付
  キマシテ、特ニ大阪府ニ於キマシテハ大阪
  府ノ係官ガ親シク指導セラレマシテ、轉廢
  業者ニ對シテハ更生金庫ヨリ特ニ共助金ヲ
  出サセルト云フコトヲ條件トシテ、昨年來
  熱心ニ整理ヲ促進セラレテ參ツテ居リマシ
  テ、是ガ爲ニ業者一同モ政府ノ趣旨ヲ體シ、
  係官ノ御指導ニ從ツテ着々整備ニ努メテ參
  ツタノデアリマス、然ルニ最近ニナリマシ
  テ特別ニ出サレルト言ハレテ居リマシタ、
  共助金ノ支出ノ問題ニ何等カノ行惱ミデモ
  生ジタノデハナイカト云フヤウナ風說ガ行
  ハレテ參リマシタガ爲ニ、業者一同ハ非常
  ナ心配ヲ致シ、或ハ是ガ爲ニ企業整備ノ進
  行ガ難カシクナルノデハナイカト云フヤウ
  ナコトマデ考ヘラレルニ至ツテ參ツタノデ
  アリマス、洵ニ私ハ殘念ナコトニ存ズルノ
  デアリマス、若シサウ云フコトニナリマス
  ナラバ、此ノ整備ヲ指導セラレタ政府當局
  ノ責任問題モ起ラネバナラヌ筈ダト思ヒマ
  ス、先祖傳來ノ家業ヲ轉廢業致シマスル者
  ノ心持、如何ニシテモ忍ビ難イモノガアル
  デアラウト思フノデアリマス、就キマシテ
  ハドウシテモ厚生省トシテ此ノ問題ニ付
  テハ格別ノ御配慮アツテ然ルベキモノダト
  存ジマス、數日前ノ委員會ニ於キマシテ此
  ノ問題ヲ具體的ニ指摘致シテ政府ノ御取調
  ト御所信トヲ伺ツテ置イタノデゴザイマス
  ガ、其ノ後ノ經過ニ付キマシテ此ノ機會ニ
  承リタイト思ヒマス、唯經過ト云フコトニ
  付キマシテハ私密カニ知ツテ居リマスル所
  デハ、厚生省ニ於カレマシテモ段々ト此ノ
  問題解決ノ爲ニ御盡力中ト存ジテ居リマス、
  隨ヒマシテ其ノ途中ニ於ケル經緯等ノコト
  ヲ承ルノモ却テ如何カト存ジマスノデ、經
  過ト言ハンヨリハ寧ロ此ノ問題ノ善後策、
  如何ニ之ヲヤルカト云フ御所信ヲ承ルコト
  ガ出來テモ結構ダト思ヒマス

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• 109・灘尾弘吉

  ○灘尾政府委員　御答へ申上ゲマス、先達
  テノ本委員ニ於キマシテ中井委員カラ御指
  摘ニナリマシタ事實ニ付キマシテハ、政府
  ノ方ニ於キマシテモ實情ヲ取調ベマシタ、
  就キマシテハ政府ト致シマシテ、今囘ノ賣
  藥業ノ整備ニ伴フ共助金ノ問題ニ付キマシ
  テハ業界ノ實情ニ卽シマシテ、十分親切ニ
  盡力致シタイト考ヘテ居リマス、尙ホ其ノ
  問題ニ關聯致シマシテ更生金庫トノ間ニ於
  キマスル事柄ニ付キマシテハ目下色々折
  衝中デゴザイマスガ、只今申上ゲマシタヤ
  ウナ氣持ニ於キマシテ極力共助金支出ニ付
  キマシテハ實情ニ卽スルヤウニ善處致シタ
  イト考ヘテ居リマス

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• 110・中井一夫

  ○中井(一)委員　局長カラ明確ナ御答辯ヲ
  承ツテ結構ニ存ジマシタガ、幸ヒ大臣モ御
  出席デゴザイマスルカラ、此ノ點ニ付キマ
  シテ更ニ大臣ノ御所見モ承ツテ置キタイト
  思ヒマス

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• 111・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今御話ノゴザイマシタ
  大阪ノ賣藥業者ノ企業整備ニ付キマシテ、
  實ハ具體的ノコトハ私只今初メテ伺ヒマシ
  タヤウナ次第デゴザイマスガ、企業整備致
  シマシタ轉廢業者ニ對シマシテハ、政府トシ
  テ共助金或ハ更生金庫ノ國家的恩典ニ何處
  マデモ浴シ得ルヤウニシナケレバナラナイ、
  又責任ヲ以テサウシテ行カナケレバナラナ
  イト云フ決意ヲ持ツテ居リマスノデ、只今
  御話ノコトニ付キマシテハ私ト致シマシテ
  モ、此ノ線ニ沿ヒマシテ今マデニ何カソコ
  ニ工合ノ惡イコトガゴザイマシタナラバ、
  其ノ惡カツタコトヲ排除スルト云フコトニ
  全力ヲ盡シタイト考ヘマス

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• 112・中井一夫

  ○中井(一)委員　大臣ノ御懇篤ナ御答辯ヲ
  賜ハリマシテ洵ニ有難ウゴザイマシタ、何
  卒一層ノ御盡力ヲ下サレマスルヤウニ此ノ
  機會ニ御願ヒ致シテ置キマス、私ノ質問ハ
  更ニ大藏省ノ方ニ引續イテ致シタイト思ヒ
  マス、中小商工業者ノ企業整備ノ問題ニ付キ
  マシテハ、政府ガ積極的ニ指導者トナリ、
  促進者トナリ、自ラ要請シテ一日モ其ノ結
  果ノ速カニ現ハレンコトヲ希望シテ居ラレ
  ルノデアリマス、戰時下我ガ國ノ國策ノ一
  ツデアリマシテ、國民一同其ノ御趣旨ニ協
  力致スコトヲ否ムモノデハゴザイマセヌ、
  唯併シナガラ何分ニモ先祖傳來ノ家業、或ハ
  自ラ營々辛苦シテ作リ上ゲマシタ老舗、之
  ヲ一朝ニシテ轉廢業致スト云フコトハ凡ユ
  ル意味ニ於キマシテ非常ナ苦痛デアリマス、
  物心兩方面カラ見テ洵ニ是レ一ツノ戰時下
  我ガ國ノ犧牲デアルト申シテ宜イ譯デアリ
  マス、隨ヒマシテ、ソレ等轉廢業ヲ致シテ
  參ル者ノ將來ニ付キマシテハ、政府トシテ格
  別ノ親心ヲ以テ御臨ミニナルベキ筈デアリ
  マシテ、其ノ點ニ付キマシテハ只今大臣カ
  ラモ御懇篤ナ御言葉ガゴザイマシタ通リデア
  リマス、唯併シ廢メマシタ者ガ廢メルコト
  ニ依リマシテ、或ハ更生金庫カラ金ヲ得ル、
  或ハ其ノ營業ヲ他人ニ賣リマシタ其ノ金ヲ
  他人カラ得ル、斯ウ云フヤウナ場合ニ於キ
  マシテ、地方ノ稅務署ノ人達ガ中央ノ政府
  當局ノ如キ御考ヘヲ以テ接シラレマスルナ
  ラバ、事ガ洵ニ穩ヤカニ參ルダラウト思ヒ
  マスルガ、動モ致シマスルト、中央ノ親心
  ハ地方末梢ノ官吏ノ方々ニ及ビマセヌ、整
  理ハ整理、統合ハ統合、稅金ノ取上ゲトハ
  別ダト云フヤウナ態度ガ間々現ハレルノデ
  アリマシテ、是ハ洵ニ殘念ナコトダト考ペ
  テ居ルノデアリマス、此ノ機會ニ主稅局長
  ニ御伺ヒ致シタイコトハ、賣藥業者ノ整理
  統合ニ付キマシテ稅金ノ減免、又稅額ノ認
  定ト云フヤウナモノニ對スル手心、ドレダ
  ケノ親心ヲ示サレルカト云フコトニ付テ承
  ツテ置キタイト思フノデアリマス

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• 113・松隈秀雄

  ○松隈政府委員　只今ノ御尋ネハ、賣藥業
  者ノ轉廢業ノ場合ニ於キマスル課稅上ノ取
  扱ノ問題デアリマスルガ、時局ノ要請ニ依
  リマシテ企業ノ整理統合ガ行ハレマシテ、
  依ツテ生ジマスル轉廢業者ニ對シマシテハ
  課稅上特ニ寛大ナル取扱ヲ致スコトニ致シ
  テ居ルノデアリマシテ、臨時租稅措置法ニ於
  キマシテ各種ノ規定ガ設ゲラレテ居ルノデ
  アリマス、尙ホ此ノ規定ヲ實際ニ運用シテ
  參リマスルニ當リマシテ、ソレガ苛酷ニ亙
  ラナイヤウニ行政上注意ヲ致スベキデアリ
  マスルコトハ御說ノ通リデアリマシテ、之
  ニ付キマシテモ十分戒心致シテ參リタイト
  思フノデアリマス、賣藥業者ノ具體的ナ整
  理方法ニ付テハ詳細承知致シテ居リマセヌ
  ノデ、具體的ニ御答ヘヲ申上ゲル譯ニハ行
  カナイノデアリマスルガ、大體轉廢業ノ場
  合ニ於キマスル課稅上ノ處置ト致シマシテ
  ハ、轉廢業ヲ致シマシタ者ガ政府ノ指導幹
  旋等ニ依リマシタ場合、卽チ國策ニ從ツテ
  轉廢業ヲ致シタト云フヤウナ場合ニ於キマ
  シテハ臨時租稅措置法ニ依リマシテ、轉
  廢業ヲ致シマシタ場合ニ、普通デアレバ前
  年ノ實績ニ付テ課稅サレルノデアリマスル
  ガ、特ニ實績課稅ニ對シマシテ租稅ヲ輕減
  又ハ免除スルト云フヤウナ方法ヲ執ツテ居
  リマス、尙ホ轉廢業ヲ致シマシタ者ニ對シ
  マシテ、統合體又ハ殘存業者ノ組合カラ支
  出セラレマスル各種ノ金ガアルト思フノデ
  アリマス、其ノ金ニ對シマスル課稅上ノ取扱ニ
  付キマシテハ、モノニ依ツテ多少扱ヒ方ガ違
  ツテ居ルヤウデアリマス、普通ニ營業ヲ廢止
  致シマシタ場合ニ、營業補償金ト呼バレテ
  居ルモノガアルノデアリマスガ、之ニ對シマ
  スル扱ヒハ個人ノ場合ト法人ノ場合トデ違
  ツテ居リマス、先ヅ個人ノ場合ニ付テ申上
  ゲマスルト、轉廢業ヲシタ者ニ對シテ統合體
  トカ、或ハ殘存業者ノ組合ガ補償金ヲ拂ヒマ
  スノハ其ノ轉廢業シタ者ノ所得ノ減ツタ
  コトニ對シテ補償スル意味ガアルノデアリ
  やく、此ノ場合ニ於キマシテ、其ノ金ガ一
  時ニ支拂ハレテ居リマスル場合ニ於キマシ
  テハ、現在ノ稅法ニ於テハ一時所得トシテ課
  稅外ニ置イテ居リマス、唯同ジヤウナ金デ
  アリマシテモ、之ヲ年賦金デ支拂フト云フ
  ヤウナコトニナリマスト云フト、現在ノ稅
  法ニ於キマシテハ資產ノ賣却益ノヤウナ
  モノハ別デアリマスケレドモ、サウデナイ場
  合ノ所得ニ於キマシテハ、年々反復シテ收
  入ノアリマスモノハ、乙種ノ事業所得トシテ
  課稅シ得ル建前ニナツテ居ルノデアリマス、
  ソコデ普通ニ放ツテ置キマスト云フト、乙
  種ノ事業所得トシテノ課稅ガ行ハレマスノ
  デ、ソレデハ一時ニ貰ツタ者トノ釣合モ
  或ル程度惡イト云フコトニナリマスノデ、
  今囘特ニ臨時租稅措置法ヲ改正致シマシテ、
  第一條ノ二十三ト云フ規定ヲ追加致シマシ
  テ、補償金ノ總額ガ一万圓以下デアリマス
  ヤウナ場合ニハ所得稅ヲ全免シテシマフ、
  三万圓以下デアリマス場合ニハ五割引イテ
  課稅スル、三万圓ヲ超エルヤウナ多額ノ金
  額ヲ貰フ場合ニ於テハ、相當擔稅力モアル
  ノデアリマスカラ、二割ヲ引イテ課稅スル
  ト云フヤウナ、緩和規定ヲ設ケテ居ルノデ
  アリマス、尙ホ共助金ト申シマス中ニハ、轉
  廢業者ガ直グニ轉職モ出來ズ、生活上困難
  ヲ感ジテ居ルト云フヤウナ所カラ、生活補
  助ノ意味ニ於テ共助金ガ出サレル、其ノ金
  額ノ半分ヲ政府デ補助シテ居ルト云フヤウ
  ナ性質ノ金モアルヤウデアリマス、是等ハ
  何レモ轉廢業シテ、他ニ就職ヲ幹旋シテ、
  收入ヲ擧ゲ得ルマデノ極ク短期間ノ問題デ
  アルヤウデアリマス、豫算ニ於キマシテモ、
  サウ云フ場合ハ極メテ短期間業者ガ半分出
  シ、政府ガ半分出シテ生活保障ヲスルト云
  フヤウナ建前ニナツテ居ルヤウデアリマス、
  サウ云フ種類ノ金デアリマスレバ支給ノ期
  間モ短ク、且ツ金額モ少イノデアリマスカ
  ラ、是ハ課稅外ト致シテ居リマス、ソレカ
  ラ轉廢業者ニ付テ起リマスル問題ハ、營業
  者ノ持ツテ居リマス設備等ノ賣却代金、ソ
  レカラ營業用ノ殘品ノ處分ノ問題デアルト
  思フノデアリマス、營業用ノ設備ヲ賣却致
  シマシタオ金ハ、是ハ個人ニ取リマシテハ
  營業ノ所得デハアリマセヌカラ、課稅外ト
  致シマス、假令其ノ場合年賦ニナツタトシ
  テモ、是ハ課稅外ニ扱ヒタイト思ヒマス、
  殘品處分ノ代金ニ付キマシテハ、是ハ殘品
  處理ノ態樣ト申シマスカ、ヤリ方ニ依ツテ
  多少相違ガ出テ參リマスケレドモ、大體轉
  廢業致シマスルマデニ大部分ノ商品ヲ整理
  シ、殘ツテ居ル品物モ少イト云フヤウナ場
  合ニ於キマシテハ、轉廢業ガ確定致シマシ
  タ時ニ後ニ殘ツタ殘品ハ、是ハ設備ノ處分
  ニ準ジマシテ、殘品處分ノ代金ハ普通ノ營
  業ノ利益ト同樣ニハ見ナイ、卽チ一時的ナ
  所得ト見テ課稅外ニ置クヤウニ致シテ居ル
  次第デアリマス
  法人デアリマスト云フト、以上申上ゲマ
  シタ點ト多少違ツテ參ルノデアリマスガ、
  法人ガ轉廢業致シマシテ、ソレニ依ツ
  テ解散ヲシテシマフト云フ場合ニ於キ
  マシテハ、臨時租稅措置法ニ於キマシ
  テ、其ノ場合法人ニ對シマスル〓算所得
  ニ對シテ、資本ノ大小ニ依リマシテ或ハ百
  分ノ五、或ハ百分ノ十ト、〓算所得ニ對シ
  テ特ニ輕減スルコトニ致シテ居リマス、又
  解散シナイヤウナ場合デアリマスルト、例
  ヘバ事業ノ設備ヲ統合體ニ讓渡シタ、或
  營業權ヲ讓渡シタト云フヤウナ場合ニ於キ
  マシテハ其ノ代金トシテ、時ニ更生金庫
  ノ債劵デアルトカ、或ハ國債ノヤウナモノ
  ヲ受取ルヤウナ場合ガアリマス、又現金ヲ
  貰ツタト致シマシテモ、其ノ現金デ國債等
  ヲ買ツタト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、
  元ノ資產ノ價格ニ其ノ新タニ得マシタ國債
  等ノ有價證劵ヲ同ジ價格デ記帳ヲシテ置キ
  マシテ、卽チ特ニ評價益ヲ出サナケレバ課
  稅ニナラヌ、斯ウ云フヤウナ扱ヒニナルノ
  デアリマス、此ノ點少シク具體的ニ申上ゲ
  マスナラバ、營業ノ設備ガ一万圓アル、而
  モ相當償却ヲシタ後ニ、今一万圓ト云フ記
  帳價格ニナツテ居ル、ソレヲ更生金庫ニ買
  ツテ貰フ爲ニ差出シタ所ガ、ソレニ對シテ
  五万圓ノ代金ガ貰ヘタト云フヤウナ場合ニ
  於キマシテ、其ノ五万圓デ國債等ヲ買ヒマ
  シテ、其ノ五万圓ノ國債ヲ一万圓ト云フ元
  ノ價格デ記帳シテ置ケバ、卽チ强ヒテ評價
  益ヲ出サナケレバ、評價益ガ出タモノトシ
  テノ課稅ヲ受ケナイ、斯ウ云フ譯デアリマ
  ス、尙ホ法人ニ付キマシテハ、營業權ト云
  フヤウナ資產ノ計上シテアル場合ガアルノ
  デアリマス、其ノ營業權ヲ讓渡シタ場合ニ
  デモ、設備ヲ讓渡シタ場合ト同ジヤウナ扱
  ヒガナサレルノデアリマシテ、例ヘバ或ル
  法人ノ營業權ガ元ハ十万圓デアツタケレド
  モ、段々ニ營業權ヲ償却シテ、今ハ三万圓
  ト云フ記帳價格ニナツテ居ル、其ノ營業權
  ヲ營業ノ整理統合ニ依ツテ新シク生レタ統
  合體ニ出資ヲシタト云フヤウナ場合ニ於テ、
  元々十万圓ノ價値ノアル營業權デアルカラ、
  十万圓ニ相當スル出資證劵ヲ貰フ、或ハ現
  金ヲ貰ツタト云フ場合ニ於テ、ソレデ國債
  等ヲ買ツタト云フ場合ニ於キマシテハ、七
  万圓ノ利益ガ出テ、課稅ニナルト云フ心配
  ガアルノデアリマスガ、其ノ場合尙ホ十万
  圓ノ出資證劵又ハ國債等ヲ三万圓ト云フ元
  ノ記帳價格ニ記帳シテ置ケバ課稅ニハナラ
  又、斯ウ云フコトニナルノデアリマス、時
  ニ法人ニ依リマスルト、營業權ガ償却濟デ
  アツタリ、或ハ計上シテナイヤウナ場合モ
  稀ニハアルカト思フノデアリマスガ、サウ
  云フ場合ニ於テモ尙ホ營業權ノ對價トシテ
  金ヲ貰ツタト云フ場合ニハ、零デアルカラ、
  マル〓〓利益ガ出ルノカ、斯ウ云フ場合ガ
  起リマスルガ、サウ云フヤウナ場合、卽チ營
  業權ガ償却濟デ零ニナツテ居ツタ、或ハ元
  元記帳價格ガナカツタト云フ場合ニ於キマ
  シテモ、現在ノ扱ヒト致シマシテハ、受ケマ
  シタル所ノ出資證劵トカ、或ハ買ツタ國債
  等ヲ二割位ノ程度ニ記帳スルト云フコトヲ
  認メルコトニシテ居リマスルカラ、隨テ課
  稅ヲ受ケル割合ハ極メテ僅カニ過ギナイト
  思フノデアリマス、以上大體御答ヘ申上ゲ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=113

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• 114・中井一夫

  ○中井(一)委員　御說明ニ依リマシテ大體
  了承致シマシタガ、共助金ノ問題ニ付キマ
  シテハ、只今ノ御說明ノ中ニ指摘サレマシ
  タモノハ、政府ガ半分補助金トシテ出スト
  云フモノニ付テノ御話デゴザイマシタ、是
  ハ殘存業者、若シクハ組合カラ出スヤウナ
  場合ニ於キマシテハ、ヤハリ同樣ノ取扱ヲ
  受ケルモノトシテ宜シイノデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=114

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• 115・松隈秀雄

  ○松隈政府委員　重ネテノ御尋ネデアリマ
  スルガ、賣藥業者ノ方々ノ轉廢業ノ場合ニ
  於キマスル共助金ノ出シ方ヲ私ハ承知致シ
  テ居リマセヌガ、私ノ所管シテ居リマスル
  酒類小賣業者ノ轉廢業ノ例ヲ申上ゲテ見マ
  シテ、或ハサウ云フ場合ニ該當スレバ丁度
  同ジ扱ヒニナルカト思フノデアリマス、酒
  類小賣業者ノ整理統合ニ當リマシテハ轉
  廢業者ノ中ニハ轉廢業ガ決マツタケレド
  モ、他へ就職スルマデノ間ニ暫ク間ガアル、
  或ハ就職シテモ思フ程ノ收入ガ得ラレナイ
  デ、生活困難ニ陷ルト云フ場合ヲ豫想致シ
  マシテ、殘存業者ヲシテ生活困難ナ者ニ對
  スル生活共助金ヲ出サシメルコトニナツテ
  居リマス、其ノ場合ニ於テ政府ハ業者ノ出
  シマスル金額ノ半額ヲ補助スルト云フノデ
  豫算ヲ組ンデアルノデアリマス、大體一月
  五十圓業者ヲシテ出サシメル、隨テ其ノ場
  合ニ於テ政府ハ一月二十五圓ノ割合デ補助
  スルコトニナツテ居リマス、其ノ期間ハ最
  初四箇月先ヅ支給スル、其ノ間ニハ多分新
  シイ就職、新シイ生活方法等ガ考ヘラレル
  デアラウケレドモ、若シ其ノ期間ニ尙ホ職業
  ノ轉換ガ行ハレナイコトニ依ツテ依然生活
  ノ補助ヲ續ケル必要ガアルナラバ、更ニモ
  ウ四箇月出シテモ宜シイト云フ風ニ致シマ
  シテ、政府ト致シマシテハ一應八箇月分位
  マデノ豫算ヲ見積ツテ居ルヤウナ次第デア
  リマス、斯ウ云フ種類ノ生活困難ナ者ニ對
  スル共助金ニ付テハ、先程申上ゲマシタヤ
  ウニ課稅外ニシテ居ルノデアリマス、其ノ
  他ニ殘存業者ガ轉廢業者カラ營業ヲ引繼イ
  ダト云フコトニ對シマシテ金ヲ與ヘルコト
  ニナツテ居リマス、是ハ補償金トモ申スベ
  キモノデアリマスガ、其ノ場合ニ於キマシ
  テ標準ト云ノモノガゴザイマセヌカラ、
  應ノ標準ト致シマシテハ、從來取扱ツテ居リ
  マシタ實績石數一石當リ三十圓ト云ツタヤ
  ウナ標準ヲ假ニ設ケテ居リマスルガ、ソレ
  ニシマシテモ別ニ之ヲ營業權ノ處分、卽チ
  資產ノ賣却ト見ルノハ當ラナイノデアリマ
  シテ、營業者ガ轉廢業ヲスルト云フ爲ニ所
  得ガ減ツタ、其ノ所得ノ減ツタモノヲ殘存
  業者ガ補償シテヤラウト云フ其ノ一應ノ標
  準ニ使ツタノニ過ギナイ、斯樣ニ見テ居リ
  マスノデ、サウ云フ種類ノ補償金ハ假令一
  石三十圓ト云ツタヤウナ計算デ出シテ、
  寸營業權ノ賣却見タイナ性質ヲ帶ビテ居ル
  カモ知レマセヌケレドモ、是ハ課稅ヲスル
  方ノ性質ノ金デアル、但シ其ノ場合ニ於テ
  モ一時ニ之ヲ支拂ツタノデアルナラバ、現
  行法上課稅ハ出來ナイコトニナツテ居ルカ
  ラ課稅シナイ、ソレガ年賦金ニナルト、是
  ハ現行法上ハ課稅スル建前デアル、其ノ場
  合ニ於テモ一時拂ヒトノ釣合モ多少アルシ、
  又氣ノ毒ナ點モアルト云フノデ先程申上ゲ
  マシタヤウニ今囘特ニ法律ヲ改正致シマシ
  テ、一定金額以下ナラバ全然課稅シナイ、
  相當金額ヲ貰フノデ、而モ年賦デ續クト云
  フヤウナ場合ニハ、或ル程度ノ課稅ニ甘ン
  ジテ戴キタイ、斯ウ云フ趣旨デゴザイマス、
  冒頭ニモ申上ゲマシタヤウニ、賣藥業者ノ
  方々ノ場合ニ果シテドウ云フヤウニ御出シ
  ニナルカ、ソレハ分ラナイカラ、他ノ例ヲ
  以テ一應課稅上ノ扱ヒヲ說明シタヤウナ次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=115

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• 116・中井一夫

  ○中井(一)委員　共助金ニ關スル御說明ハ
  能ク了承致シマシタ、サウスルト先程營業
  權ノ賣却ト云フ問題ニ付テ御話ガアツタノ
  デアリマスガ、ソレハ法人ニ付テノ御說明
  デアリマシタノデ、個人ニ付テノ場合ノ御說明
  ヲ承リタイト思ヒマス、卽チ個人ガ轉廢業
  ヲ致シマスト、賣藥ノ製造販賣ヲスル爲ニ
  ハ免許ガ要ルノデアリマシテ、所謂免許權
  ヲ持ツテ居ルノデアリマスカラ、轉廢業ヲ
  致ス者ハ殘存業者ニ對シテ此ノ免許權ヲ賣
  却シテ、商賣ヲ止メテシマフト云フコトガ
  今日行ハレテ居ル普通ノ場合デアリマスヽ
  是ハ俗ニ言フヤハリ營業權ノ賣却ト云フモ
  ノノ中ニ含マレテ居ルト思フノデアリマス
  ガ、先程局長ノ御話ノ中ニハ營業補償金
  ト云フ言葉ヲ使ハレテ居リマスガ、只今私
  ガ申上ゲマシタヤウナ場合ガ、卽チ營業補
  償金ヲ與ヘルト云フ場合ニ該當スルノデゴ
  ザイマセウカ、假ニ該當セズト致シマシテ
  モ、只今私ガ申上ゲマシタヤウナ場合ニ
  ハ、自己ノ營業權ヲ賣ツテ、一時ニ金ヲ得タ
  ル轉廢業者ニ對シテハ、所謂一時ノ所得ト
  シテ課稅ヲ免レル、斯ウ云フコトニナルノ
  デアリマセウカ、念ノ爲ニ承ツテ置キタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=116

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• 117・松隈秀雄

  ○松隈政府委員　曩ニ營業ノ補償ト云フヤ
  ウナ言葉ヲ使ヒマシタノハ、今囘臨時租稅
  措置法ノ改正法律ノ中ニ於キマシテ斯ウ云
  フ風ニ言ツテ居ルノデアリマス、「法令、法令
  ニ基ク命令又ハ行政官廳ノ指導若ハ斡旋ニ
  依リ昭和十六年一月一日以後昭和十八年十
  二月三十一日迄ニ事業ノ統制ノ必要上營業
  ノ全部又ハ一部ヲ廢止シタル個人ノ當該營
  業ノ廢止ニ因リ受クル補償金其ノ他之ニ準
  ズベキモノニ付テハ命令ノ定ムル所ニ依
  リ」租稅ヲ輕減又ハ免除スル、ト書イテア
  ルノデアリマシテ、此ノ意味ニ於キマシテ
  營業ノ廢止ニ依ツテ受ケル補償金ニ付テハ、
  年賦的ニ支拂ハレルナラバ、現在ノ稅法デ
  ハ課稅ニナルノデアルケレドモ、特ニ一時
  拂ヒノモノトノ釣合ヲ取ル關係モアツテ、
  小額ノモノハ所得稅ヲ全部免除スルシ、金
  額ガ大キクナレバ或ル程度之ニ對シテ課稅
  スル、斯ウ云フコトヲ明カニシテ居ルノデ
  アリマス、其ノ場合ニ於キシマテ是ニ言フ
  營業ノ廢止ニ依ツテ受ケル補償金ト云フノ
  ハ、營業ノ廢止ニ依ツテ其ノ直接ノ所得ハ
  ナクナリ或ハ減ツテシマツタ、ソレデハ氣
  ノ毒デアルト云フノデ殘存業者ガ出スオ
  金斯ウ云フ意味デアリマス、殘存業者ニ
  資產ヲ賣ツタオ金ト云フモノハ、是ハ資產
  ノ處分益ト云フモノデ、個人ニアツテハ全
  ク課稅外デアル、ソレデ資產デアルト云フ
  コトノ極メテ明瞭ナモノハ何カト言ヘバ、
  個人ノ營業設備ト云フヤウナモノハ、是ハ
  誰ガ何ト言ツテモ資產デアル、所ガ個人ニ
  營業權アリヤ否ヤト云フコトハ、法人程明
  瞭デナイ、法人ノ場合ニ於テハ特ニ營業權
  ヲ出資スルト云フヤウナコトニ依ツテ、營
  業權ガ法人ノ財產目錄ニ上ツテ居ルト云フ
  ヤウナ場合ガ比較的多イ、而モソレニ付テ
  ハ償却ヲスルト云ツタヤウナコトデ、帳面
  上モ營業權ノ評價ガ順次明カニナツテ、個
  人ニ付テハ先ヅ普通ノ場合ニ於テハソレ程
  明瞭デナイ、殊ニ其ノ價格ガ幾ラデアルカ
  ト云フヤウナコトハ、法人ノヤウニ財產目
  錄ヲ作ツテ整理シテ居ルト云フ場合ガ殆ド
  ナイノデアリマスカラ、資產的ニ見ルコト
  ハ困難デアル、假ニ例外的ニアルトスレバ、
  ソレハ他人カラ金ヲ出シテ營業權ヲハツキ
  リ買ツテ來タ、斯ウ云フヤウナ場合ニ於テ
  ハソレハ資產ト言ヘルカト思フノデアリマ
  スガ、サウ云フ場合以外デアレバ、個人ニ於
  テハ先ヅ資產ト見ルノハ無理デアラウ、斯
  ウ云フコトヲ申上ゲタ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=117

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• 118・中井一夫

  ○中井(一)委員　隨テ其ノ場合ニハ課稅ニ
  ハナラヌト云フ譯デスネ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=118

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• 119・松隈秀雄

  ○松隈政府委員　先程モ申上ゲマシタヤウ
  ニ、御述ベニナリマシタヤウナ方法ヲ以テ
  賣藥業者ガ一時的ニ轉廢業者ノ所得ノ減リ
  マスコトニ對シテ共助金ヲ出シマスレバ
  是ハ課稅外デアリマス、其ノ場合ニ於テ標
  準トシテ偶〓一年間ノ賣上ノ一割ノ三倍ヲ
  使ヒ、四倍ヲ使ツテモ、ソレハ標準ニ使ツ
  タダケデアル、斯樣ニ御諒承ヲ願ヒタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=119

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• 120・中井一夫

  ○中井(一)委員　私ノ質問ハ是デ終了致シ
  ヘンジ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=120

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• 121・清水留三郎

  ○〓水委員長　上田孝吉君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=121

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• 122・上田孝吉

  ○上田委員　私ハ前囘一應質疑ヲシタノデ
  スガ、補充質疑ガ殘ツテ居リマスノデ、極
  ク簡單ニ申上ゲマス、前囘此ノ藥事法ニ付
  テ、提案ノ理由ト內容トガ十分副ツテ居ル
  ヤウニモ思ハレヌ點ガアルガドウカト云フ
  御質問ヲ申上ゲタノデアリマスガ、ソレハ
  一應御答辯ヲ得タカラ重ネテハ申上ゲマセ
  又、ソコデ實際問題トシテ此ノ法案ノ內容
  ヲ點檢シテ見マスト、藥劑師ト云フモノニ
  付テハ相當ニ色々ノ規定ガアリ、特ニ第二
  章ノ第二條ニハ其ノ本分ト云フモノヲ規定
  シテアルガ、藥種商ニ付テハ現行ノ藥品營
  業竝藥品取扱規則ニハ第二十條ニ、「藥種商
  トハ藥品ノ販賣ヲ爲ス者ヲ云フ」ト云フ本
  分ガアルニ拘ラズ、今囘ノ此ノ改正セント
  スル藥事法ニハ所謂醫藥品販賣業者トナツ
  テ居リマス、其ノ本分ト云フモノノ規定ガ
  トナイ云フコトハ、藥種商ト云フモノヲ輕
  ク見ルコトニナリハセヌカト云フ意味ノコ
  トヲ御尋ネシテ、ソレニ對シテ、大臣カラ
  デハアリマセヌガ、政府委員カラ答辯ガア
  リマシタカラ、之ヲ又繰返シテ申上ゲヨウト
  ハ思ハナイノデアリマスガ、サウ云フ點ガ
  アリマス上ニ、更ニ藥種商ニ付テハ藥種商
  ト云フ古來カラノ名前ガアルノデス、ソレ
  ヲ殊更ニ本法ニ於テ醫藥品販賣業者ト云フ
  コトニナサルノハドウ云フ御考ヘデアルカ、
  是モ藥種商ノ本分ト云フモノヲ今囘ノ藥事
  法ニ御規定ニナラナカツタコトト彼此レ推
  察致シマシテ、藥種商ト云フモノヲヤハリ
  輕ク見ル傾向ニナル虞ガアルノデハナイカ
  ト云フコト、更ニ是モ前ニ指摘シタコト
  デスガ、實ニ怪シカラヌ問題ガアルノデ
  ス、ソレハ私ガ參考資料トシテ要求ヲシテ、
  今囘此ノ委員會ニ政府カラ御提出ニナツテ
  居ル最近三箇年間ニ於ケル開局藥劑師及ビ
  藥種商ニ對スル藥品巡視成績ト云フモノガ
  アリマス、是ハ昭和十二年、十三年、十四
  年ノ開局藥劑師ト藥種商ト云フモノノ巡視
  スベキ箇所數及ビ巡視シタル箇所數、更に
  不良藥品ノ發見、更ニ規則違反處罰數、斯
  樣ナ項目ニ分レテ表ガ出テ居ルノデアリマ
  ス、所ガ之ニ依ルト、何レモ開局藥劑師ノ
  方ガ不良藥品ノ發見ガ多クテ、藥種商ノ方
  ガ少イノデス、然ルニ處罰サレタ者ハドウ
  カト云フト、之ニ反シテ藥種商ノ方ガ開局
  藥劑師ヨリ多イ、
  〔委員長退席、勝又委員長代理着席〕
  是ハ私ハ此ノ前淚ヲ流シテ言ツタノデス、
  斯ウ云フコトガ今日皇國民ニ對シテ許セル
  カドウカト云フコトヲ申上ゲタノデス、私
  ハ諄クハ申シマセヌガ、斯ウ云フコトヲ彼
  此レ考ヘテ見ルト、洵ニ遺憾ナ點ガアルト
  思フ、要スルニ今日ノ此ノ重大ナ時局ニ於
  テ藥事ノ法律ヲ改正ショウト云フ際、特に
  小泉國務大臣ハ斯界ノ權威者トシテ、本當ニ
  天地宇宙、森羅萬象ヲ取ツテ以テ國民體位
  ノ向上、保健衞生、所謂健民强兵ト云フコ
  トニシナケレバナラナイ、藥事ニ關係スル
  者ヲ總動員スベキ御考へガナクテハナラナ
  イノデハナイカ、此ノ問題ハ先日申上ゲタ、
  ソレ程ナ總動員ヲシテヤラウト云フ御考へ
  ガアル以上ハ、今マデ關係ヲシテ居ル者
  ハ-藥劑師ハ勿論之ヲ輕ク見ル必要ハア
  リマセヌ、藥劑師ト云フモノハ尊重シテ宜シ
  イ、又其ノ本分ヲ御決メニナツテ宜シイ、
  藥劑師ヲ大イニ尊重サレルコトハ結構デア
  ルガ、之ヲ尊重スルト共ニ、排他的デアツ
  テハナラナイ、他ノ藥事關係ノ者モ共ニ協
  力スルヤウニスルノガ適當デハナイカ、而
  シテ藥種商ト云フモノハ歷史的ニ考ヘテ見
  ルナラバ、是ハ寧ロ藥劑師ノ親デアル、ソ
  レ程古イ歴史ヲ持ツテ居ル藥種商デアルニ
  拘ラズ、先程來引例シテ申シタヤウニ、彼
  此レ考ヘテ見マスト、ソコニ輕重ノ差ガア
  ルヤウニ、或ハ藥事上協力ヲ求メル上ニ於
  テ、幾分ノ差等ガアルカノヤウニ思ハシム
  ルコトハ洵ニ遺憾デアルガ、此ノ點ニ付テ
  ノ大臣ノ御所感ハ如何、此ノ一點ヲ御聽キ
  シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=122

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• 123・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　先般來申上ゲマシタヤウ
  ニ、今囘提出ノ法案ノ趣旨ヲ達成致シマス
  爲ニハ只今御話ノアリマシタヤウニ藥劑
  師藥劑師會ト云フモノノミナラズ、藥事
  衞生ニ關係ノアル凡ユル方面ノ協力ト云フ
  コトニ俟タナケレバナラナイコトハ、全ク
  私共モサウ考ヘテ居ル次第デアリマス、殊
  ニ醫藥品製造販賣、此ノ過程ヲ通ジマシテ、
  是等ニ從事セラレル方々ノ積極的ナ熱意ハ、
  私共ノ强ク御期待ヲ致シテ居ル次第デアリ
  そく、唯此ノ時ニ只今御話ニアリマシタヤ
  ウニ、藥種商ノ本分ノ規定ガナイ、又特ニ
  歷史ノアル、此ノ功績ノアル藥種商ト云フ
  名前ヲ取ツテシマツテ、販賣業者ノ中ニ入
  レテシマツタト云フヤウナコトニ付キマシ
  テハ、先般來此ノ法案ノ技術的ノ面ニ於テ
  モ色々申上ゲマシタヤウナ次第デ、藥種商
  ト云フコトヲ認メナイノデハナイノデアリ
  マシテ、技術的ニ製造販賣業ト云フモノヲ
  之ニ一括致シタヤウナ次第ナノデアリマス、
  而シテ政府ト致シマシテ先程申上ゲマシタ
  ヤウニ、藥種商ト云フモノヲ一段低ク見ル
  トカ、或ハ之ニ對シテ何カ差等的ナ考ヘヲ
  持ツト云フヤウナコトハ全然考ヘテ居リマ
  セヌ、隨ヒマシテ只今御話ノアリマシタヤ
  ウナ御趣旨ニ依リマシテ、藥劑師ト云フモノ
  ノ本分ガ定メラレ、藥劑師會ガアルト同ジ
  ヤウニ、ヤハリ藥種商ニ對シテモ當然今後
  ノ本法ノ運營上ニ於テ私ハ遺憾ナイヤウニ
  シテ行カナケレバナラナイト存ズル次第デ
  アリマス、尙ホ只今御話ノゴザイマシタ不
  良藥品ノ發見ト云フモノガ藥種商ニ少クテ、
  而モソレニ對スル取締ガソチラノ方ニ却テ
  其ノ結果ガ多ク出テ居ルト云フコトハ實
  ハ初メテ承知致シマシタノデ、斯ウ云フコ
  トハ運營上今後絕無ヲ期シナケレバナラナ
  イ、大イニ藥種商ノ活動力ヲ私ハ期待シテ
  居リ、其ノコトハ再々凡ユル機會ニ於テ申
  シテ居リマスル通リ、日本本來ニ傳ハリ、其
  ノ習慣ニ卽シタ所ノ醫藥ヲ、此ノ廣イ大東
  亞ノ凡ユル方面カラ集メテ、サウシテ適正
  ノ配給ヲシタイト云フノガ本法案ノ狙ヒ所
  ノ一ツニナツテ居リマスノデ、今後ハ其ノ
  點ニ於テ運營上十分ニ御趣意ノアル所ヲ體
  シマシテ、措置致シタイ、斯ウ考ヘテ居リ.
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=123

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• 124・上田孝吉

  ○上田委員　只今ノ大臣ノ御答辯デ洵ニ私
  ハ滿足スルノデアリマス、ドウカ一ツサウ
  云フヤウニ願ヒマシテ、今出テ居ル參考書
  ノ數字ノヤウナコトハ-是レ以上申上ゲ
  マセヌガ、斯ウ云フ遺憾ナコトノナイヤウ
  ニ是非御願ヒシタイト思ヒマス
  〔勝又委員長代理退席、委員長着席〕
  是ハ尙ホ大臣デナクテ結構デアリマス、藥
  事法ノ質疑ガ今日デ打切ラレルト云フコト
  デアリマス、大體此ノ前ノ質問デ分ツテ居
  ルノデアリマスガ、ソレダケデハ明確ニナ
  ラヌ點ガアリマスノデ、一寸伺ヒタイト思
  ヒマス、今日デナクトモ宜イノデアリマス、
  ソレハ指定藥品ノ問題デアリマスガ、現行
  ノ藥品營業竝藥品取扱規則三十七條ノ二ニ
  「藥劑師ニ非サレハ指定藥品ヲ販賣又ハ授
  與スルコトヲ得ス但藥劑師藥種商製藥者間
  ニ在リテハ此限ニ在ラス」斯ウ云フ規定ガ
  アリマス、ソレカラ次ニ三十七條ノ三項ニ「命
  令ノ定ムル所ニ從ヒ藥劑師ヲ使用スル藥種
  商ハ指定藥品ヲ販賣又ハ授與スルコトヲ得
  但」云々、斯ウ云フ規定ガアリマス、ソレカ
  ラモウ一ツ第三十七條ノ四ニ「土地ノ狀況
  ニ依リ地方長官ハ期間及營業所所在地ヲ定
  メ藥種商ニ指定藥品ノ販賣授與ヲ許可スル
  コトヲ得但」云々ト、斯ウ云フ規定ガアリマ
  ス、此ノ第三十七條ノ二、三、四、是ガ今
  囘ノ藥事法ニ於テハド云フ御取扱ニナルカ
  ト云フノデス、今囘ノ案ハ藥品營業及ビ藥
  品取扱規則ト云フモノヲ廢止シテ、サウシ
  テ此ノ藥事法ニ統合シテシマウコトニナル
  ノデアリマスガ、此ノ現行法ノ藥品營業竝
  藥品取扱規則ガ廢止ニナルトスレバ、今申
  上ゲタ三十七條ノ二、三、四ト云フモノハ、
  是ハ俗ニ云フ旣得權デアルカラシテ、ドウシ
  テモ何カデ殘ラナケレバナラヌ譯デアル、
  而シテ更ニ言換レバ此ノ今囘改正サレヨ
  ウトスル藥事法ノ二十三條ノ第二項ノ「必要
  ナル命令ヲ發スルコトヲ得」ト此處ヘ今申シ
  タ三十七條ノ二、三、四ト云フモノガ入ル
  カドウカ、今申上ゲタ三十七條ノ二、三、
  四ト云フモノハヤハリ旣得權トシテ生キテ、
  サウシテ此ノ二十三條ノ二項ノ命令ノ中ニ
  規定サレルノカドウカト云フコトヲ御聽キ
  シタイノデアリマス

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• 125・灘尾弘吉

  ○灘尾政府委員　御答へ申上ゲマス、只今
  指定藥品ニ付テ、現在ノ藥品營業竝藥品取
  扱規則ノ第三十七條ノ一一乃至四ニ關シマシ
  テ御尋ネガゴザイマシタ、是ハ御話ガゴザ
  イマシタ通リ新法ニ於ケル第二十三條ノ第
  二項ノ規定ノ「命令ヲ發スルコトヲ得」ト云
  フコトノ中ニ之ヲ入レル積リデ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=125

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• 126・上田孝吉

  ○上田委員　私ノ質疑ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=126

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• 127・清水留三郎

  ○〓水委員長　昨日星一君ヨリ大臣ニ對ス
  ル質疑ガアリマシタ、若シ御間ニ合ヒニナ
  ルナラバ、大臣ヨリ星君ノ質問ニ對スル答
  辯ヲ此ノ場合願ヒマス

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• 128・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　昨日他ノ委員會ニ出テ居
  リマスル間ニ星委員ヨリ御質問ノゴザイマ
  シタ點ヲ、政府委員カラ承リマシタカラ御
  答ヘヲ申上ゲマス、第一點ハ衣〓住ニ關ス
  ル施策ニ付テ豫防醫學的ナ見地ニ於テ大イ
  ニ之ヲ進展セシメナケレバナラナイ、之二
  對スルル所見如何ト云フ御尋ネデアツタト
  承知致シテ居リマス、厚生省ハ御承知ノ通
  リニ全ク人ニ關スル行政ヲ掌ツテ居ルト申
  シテ宜シイノデアリマス、隨ヒマシテ衣食
  住ト云フヤウナ事項ニ關シマシテハ、是ハ
  最モ大キナ重要ナル部門ヲ占メテ居ル次第
  デアリマス、隨テ從來ハ是等ノ生活全面ニ
  亙リマシテ消極的ナ面、弱キ者ヲ保護スル
  ト云フヤウナ施策ニ進ンデ參リマシタガ、
  今日ニ於キマシテハ御說ノ通リ豫防醫學ト
  申シマスカ、積極的ニ衣食住ヲ、健全ナ國
  民トシテ働キ、其ノ生活ヲ通ジテ十分ニ御
  奉公ノ出來ルヤウニ、斯ウ云フ風ニ積極性
  ヲ持ツタル風ニ指導ヲ加ヘテ行キタイ、斯
  ウ考ヘテ居ル次第デアリマシテ、御意見ノ
  點ニハ全然御同感デアリマスルノデ、今後
  トモ尙ホ一層十分ノ努力ヲ傾注致シタイト
  考ヘテ居リマス
  第二ノ點ハ、醫藥品ニハ調劑用卽チ醫師
  向ノモノト、一般向、例ヘバ賣藥等ノ二ツ
  ノ區別ガアルガ、藥種商、賣藥業者等ノ協
  力ヲ十分ニ得ル爲ニハ、法ノ運營ノ點ニ特ニ
  留意ヲシナケレバナルマイ、之ニ對スル所
  見如何、斯ウ云フ御尋ネデアツタト承知致
  シマス、本法案ニ於テハ法制上ニ於ケル賣
  藥ト藥品トノ區別ハ之ヲ撤廢致シテ居リマ
  スルガ、御話ノ通リ、自ラソコニ主トシテ
  醫師ノ方ニ向ケラレルモノ、又一般ニ向ケ
  ラレルモノガ存在シテ來ルト云フコトハ
  御說ノ通リデゴザイマスノデ、本法ノ運營
  ニ當リマシテモ、其ノ實情ニ卽スルコトガ
  第一ニ必要デアルト考ヘマスルノデ、法ノ
  運用上ニ付テハ十分留意ヲ致シテ、遺憾ナ
  キヲ期スル考ヘデ居リマス
  第三ノ御尋ネデアリマスガ、從來ノ藥學
  專門學校等ノ儘デハ本法ノ精神ヲ徹底スル
  ニハ十分デナイ、藥事〓育ニ對シテハ大イ
  ニ改革ヲシナケレバナラナイ、政府ノ所見
  如何ト云フ御尋ネデアツタト承知致シテ居
  リマス、藥劑師ノ〓育問題ハ極メテ重要ナ
  ル問題デゴザイマス、特ニ時局ノ要請ニ依
  リ藥劑師ニ負荷セラルル責任、使命ノ愈〓重
  大デアルニ鑑ミマシテ今後藥學〓育、更ニ一
  般ニ藥事ノ知識ヲ向上致シマスルト云フ兩
  面カラ致シマシテ、此ノ方面ノ〓育刷新ト
  云フコトニハ、大イニ努力ヲ致サナケレバ
  ナラナイト存ジテ居ル次第デアリマシテ、
  此ノ使命遂行ノ爲ニハ關係當局ト協力致シ
  マシテ、今後萬遺憾ナキヲ期シタイト存ジ
  テ居ル次第デアリマス
  次ニ前世界大戰當時設立セラレマシタル
  內國製藥株式會社ナル國策會社ノ失敗ノ跡
  ニ鑑ミマシテ、經驗者ヲ活用スルト云フコ
  トニハ此ノ際大イニ留意シナケレバナラヌ、
  卽チ原則トシテ製造販賣ノ經驗者ニ仕事ヲ
  行ハシメテ、政府ハ唯之ニ對スル必要ナル
  援助ヲスルト云フ風ニ進ンデ行クノガ當然
  デアルト思フガ、如何ト云フ御尋ネデアツ
  タト承知致シマス、仰セノ通リ、現在總テ
  ノ國民ガ此ノ保健ニ一〓ニナツテヤツテ戴
  クト云フ此ノ秋ニ於キマシテ、特ニ國民ノ
  保健、更ニ其ノ一半ヲ背負ヒマスル藥事衞
  生ノ進步發展ヲ圖ル上ニ於キマシテハ、此
  ノ方面ニ於ケル多年ノ經驗ヲ持ツテ居ラレ
  ル方々ノ知識、衆智ヲ集メル、國家ノ總力
  ヲ十分ニ發揮出來ルヤウニ運營シテ行クト
  云フコトノ必要ナコトハ、御說ノ通リデア
  リマス、殊ニ此ノ製藥販賣ト云フ方面ニハ
  特殊ノ深キ知識經驗ガ必要デアリマスルコ
  トモ、御意見ノ通リデアリマスルノデ、今
  囘本法案ノ成立ノ後ニハ、是等ノ方々ノ全面
  的ナ御活動ヲ期待致シテ居リマスルノデ、
  各般ノ施策ヲ今後致シマスル上ニ付キマシ
  テモ、例ヘバ特殊ノ製造ヲ行フ、或ハ販賣
  機關ヲ考ヘルト云フヤウナ場合ニ於キマシ
  テモ、其ノ機構等ニ於テ十分是等ノ方々ノ
  知識經驗ヲ積極的ニ御活動ガ出來ル上ニ遺
  憾ナイヤウニシテ行キ、斯ウ考ヘル次第デ
  アリマス
  最後ノ御尋ネハ、厚生省ノ行政ノ進展ノ
  爲ニハ人口局ト生活局トヲ統合スルコトガ
  適當ナリト思フガ、所見如何ト云フ御尋ネ
  デゴザイマス、是ハ先般行政簡素化ノ問題
  ガ起リマシタ時ニ、厚生省トシテ此ノ點ハ
  特ニ行政ノ經驗ニ徵シマシテ取上ゲタ問題
  デアリマス、理論的ニハ一應人口局ト生活
  局ト云フモノハ不可分ノヤウニ考ヘラレル
  ト見マスルガ、仕事ノ性質上、例ヘバ人口
  涵養ノ問題、或ハ此ノ人口增强ニ關聯スル
  東亞民族ノ問題、或ハ國民生活ノ確保ノ指
  導ト云フヤウナモノガ、大キナ重要性ヲ增シ
  テ來ルニ鑑ミマシテ、今日ハ之ヲ併置シテ、
  唯兩局ノ仕事ハ全ク密接ナル關係ニ於テ
  連絡ヲ緊密ニシテ、一體的ノ仕事ヲシテ行
  クト云フコトガ、最モ今日ノ時局要請ニ卽
  應スル所以ナリト考ヘマシテ、別個ノ局ト
  シテ置イタヤウナ次第デハゴザイマスガ、
  今日厚生省ト致シマシテハ啻ニ人口局、
  生活局ノ兩局ガ一體緊密ナル連絡ト云フコ
  トニ止マラズ、總テノ局課ガ全ク厚生行政
  ノ一點、ソレモ今日此ノ生產增强ノ第一義
  的國家的要請デアルノニ鑑ミマシテ、厚生
  省ノ全力ヲ擧ゲテ生產增强ト云フ一點ニ集
  中ヲ致シ、ソレノ爲メノ人口ノ增强デアリ、
  人口政策デアリ、又社會保健政策デアリ、
  勤勞政策デアルト云フヤウナ風ニ、極メテ
  互ヒニ密接ナ不可分ノ關係ニ立ツテ居リマ
  シテ、一體的ナ仕事トナツテ運營ガセラル
  ルヤウニ、行政ノ運營ヲスルコトガ出來ル
  ヤウニ今日致シテ居ル次第デゴザイマス、
  其ノ意味カラモ、仕事ノ上カラ、只今申上
  ゲタヤウニ理論的ニハ一應人口局及ビ生活
  局ハ一體化シ得ルモノデアリマスガ、別ニ
  之ヲ二局ト致シテ居ルモノデアリマス

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• 129・星一

  ○星委員　私五分間デ濟ミマス、二ツカ三
  ツデスガ、御許シヲ願ヒマス

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• 130・清水留三郎

  ○〓水委員長　簡單ニ願ヒマス

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• 131・星一

  ○星委員　私ハ厚生文化ト云フ言葉ヲ流行
  サスト云フト語弊ガアリマスガ、我ガ厚生
  文化ヲ南洋ノ方ニモ、世界ニモ弘メテ欲シ
  イ、斯ウ云フコトヲモウ旣ニ御願ヒシテア
  リマス、ソレデ差當リ南洋ノ方ニ厚生文化
  ヲドウシテ進メテ行クカ、ソレハ醫者ヤ、
  藥屋ヲ送ルコトニナリマセウガ、ドチラヲ
  先ニ送ルガ宜イノカト云フ厚生文化ノ東亞
  共榮圈進出ニ對スル御伺ヒト、ソレカラ厚
  生省ハ戰爭ニ對シテ大キナ任務ガアルト云
  フコトヲ知ツテ頂戴シタイト云フコト、ソ
  レハ大東亞戰爭ノ目的完遂マデハ國民ハ死
  ヌコトヲ延期シロ、死ヌナ、病氣ヲスル
  ナ、ナンボ働イテモ草臥レルナト云フコト
  ヲ呼掛ケル任務ガアルト思フ、同時ニ厚生
  省ハ此ノ戰費ノ償還ニ付テ大キナ任務ガア
  ルト考ヘテ頂キタイノデアリマス、戰費ノ
  償還ニ付テ厚生省ガ責任ヲ執ルト云フコト
  マデ言ウテ宜イト思フノデアリマス、人間
  ガ出シタ費用デアリマスカラ、人間ガソレ
  ヲ支拂フコトガ出來ルト云フコトハ、是
  結局國民ノ平均生存年齡ノ延長ト云フコト
  デアリマス、吾々ハ生存年齢ノ點ニ於テモ
  彼等ニ打勝タナケレバナラヌ、今日吾々ノ
  平均生存年齡ハ彼等ヨリ低イノデアリマス
  カラ、吾々ハ此ノ點ニ於テモ彼等ニ打勝タ
  ナケレバナリマセヌ、平均生存年齡ガ五年
  延長シタナラバ、十年延長シタナラバ、ソレ
  ハドレダケノ金額ニナルカト云フコトノ御
  計算ヲ厚生省ハシテ戴キタイト思フノデ
  アリマス、假リニ今七千五百萬ノ人間ノ生
  存年齡ガ延長シ、其ノ中ノ三千万人ガ生命
  延長ニ依ツテ働クトシマス、三千万人ガ
  三百日働キマスト一年ニ延人員ガ九十億人
  ニナリマス、之ヲ一日一圓五十錢ノ働キト
  シマスト、百三十五億圓デアリマス、若シ二
  圓トスルナラバ百八十億圓デアリマス、
  年ダケノ生命延長ニ依ル働キデ是ダケノ富
  ヲ作リ得ルノデアリマスカラ、玆ニ生命延
  長ニ依ツテ戰費ガ優ニ償還出來ルノダト云
  フコトヲ能ク厚生省モ考へ、國民ニモ能ク
  滲ミ込マシテ戴キタイト御願ヒスルノデア
  リマス、ソレカラモウ一ツハ、寺院デアリ
  さく、全國ノ寺院ハ幾ツアルカ知リマセヌ
  ガ、少クトモ八万ハ下ラヌト思ヒマス、八
  万カラアル此ノ寺院ヲ此ノ際利用ノ途ヲ厚
  生省ニ於テ考ヘラレテ宜イデハナイカ、斯
  ウ思フノデアリマス、是ダケ申上ゲマシテ、
  大臣ノ之ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイト思ヒ
  マス

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• 132・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今ノ御言葉ヲ拜借致シ
  マスレバ、厚生文化ヲ南方ハ勿論、世界ニ
  進メル、此ノ御稜威ノ光リヲ世界ニ輝カス
  ト云フコトト存ジマスガ、洵ニ有難イ
  陛下ノ御光リヲ光被セシムルト云フコトニ
  吾々ハドウシテモ全力ヲ盡シテ行カナケレ
  バナラナイト考ヘテ居リマス、而シテ今日
  其ノ一ツノ例トシテ御擧ゲニナリマシタ南
  方ニ對シテ醫師ヲ先ヤルカ、藥ヲ先ニヤルカ
  ト云フ御尋ネデゴザイマシタガ、今日ノ所
  ハ、御承知ノ通リ、醫師ト致シマシテハ、
  軍政下ニアリマスル關係上、所謂陸海軍ノ
  其ノ人的構成ノ働キガ進ンデ居ル次第デア
  リマスガ、之ニ伴ツテ藥ガ出テ居ル次第デ
  アリマス、併シ其ノコトカラ、此ノ戰爭ヲ
  シテ居ルト云フ其ノ面カラ、一面ニハソレ
  ニ竝行シテ建設ガ行ハレツツアル譯デアリ
  マス、此ノ建設面ニ於キマシテハ、今日ハ
  藥ノ方ガ非常ニ强ク出テ居ル次第デアリマ
  シテ、是ハモウ御承知ノ通リデアラウト思
  ヒマス、南方ノ建設ニ於テハ、又藥ノ製造、
  其ノ資源ノ收得ト云フヤウナ所ガ凡ユル從
  來ノ經驗者ノ力ニ依ツテ力强ク進展シツツ
  アルヤウナ次第デアリマス、ドウシテモ今
  日ハ先ヅ以テソチラガ先ニナリツツアルト
  云フ現狀ヲ申上ゲテ置キマス
  次ニ此ノ大戰爭ニ勝拔キ、大東亞ヲ建設
  スル爲ニハ、死ヌナ、病氣ラスルナ、平均生
  存年齡ノ延長ガ絕對必要デアルト云フ御趣
  旨ノ御意見ハ全ク御同感デゴザイマス、是レ
  アルガ爲ニ政府ト致シマシテハ、健兵健民運
  動ト云フモノヲ强ク此ノ時局ニ進展ヲシテ居ル
  ノデアリマシテ、其ノ目指ス所ハ、根本的ニハ
  人口ノ增殖ニアリ、又只今御話ノヤウナ、
  平均生存年齡、殊ニ活動シ得ル年齡級ノ增
  加ト云フコトニ進メテ居ルヤウナ次第デア
  リマス、是ガ完成致シマスレバ、卽チ健民
  健兵、健民强兵、總テ國民ガサウ云フ形ニ
  ナリマシタ時ニハ、此ノ大東亞戰爭ニ於テ
  支出サレタ所ノ經費ト云フヤウナモノハ、
  極メテ易々トシテ是ガ人的國力ニ依ツテ完
  全ニ償ハレ、更ニ世界ノ大發展ニ力强ク進
  ムモノト確信ヲ致シテ居リマス
  更ニ、寺院ノ利用ニ付キマシテハ、是一
  色々ノ方面カラ考ヘラレテ居ル次第デアリ
  マシテ、健民政策ノ上カラモ、寺院ニ色々
  其ノ方面ノコトデ御一〓ニヤツテ戴クト云
  フコトモアリ、又思想上ノ問題モアリ、色々
  ゴザイマスガ、政府ト致シマシテハ、此ノ寺
  院ト云フモノノ國民的信仰ノ中心デアリ、
  又本當ノ皇國民鍊成ノ中心機關トシテ、此
  ノ寺院ト云フモノガ一緒ニナツテ行ク、言
  葉ハ穩當デアリマセヌガ、利用活用シテ行
  クト云フ風ニ色々施策ヲ進メツツゴザイマ
  スガ、今後尙ホ此ノ點ハ一層强ク、而モ速
  カニサウ云フ體制ノ整フヤウニ措置シテ行
  キタイサウ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=132

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• 133・清水留三郎

  ○〓水委員長　藥事法案ニ對スル質疑ノ通
  告者ハマダ二、三アリマスルガ、本日御出
  席ガアリマセヌノデ、藥事法案ニ對スル質
  疑ハ大體ニ於テ終了シタモノト認メマス、
  但シ若シ本案直接ノ關係デ重要ナル質疑ガ
  アルト致シマシタナラバ、藥事法案ノ討論
  ノ前ニ特ニ御許シスルヤウナ場合ガアルカ
  モ知レマセヌ-是ヨリ午前中ノ船員保險
  法中改正法律案ニ對スル質疑ノ繼續ヲ致シ
  マス-逢澤君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=133

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• 134・逢澤寛

  ○逢澤委員　船員保險法案ニ付キマシテハ、
  私ハ唯福利施設ノ充實ニ付キマシテ今一段
  ノ增强ヲ御願ヒ致シタイト考ヘマス、サウ
  シテ私ハソレニ關聯致シマシテ勞働者災害
  保險ノコトニ付キマシテ御尋ネ致シタイト
  思ヒマス、共濟ノ中デ、罹災者ノ給付、或
  ハ其ノ施療費、斯ウ云フモノガ大分前ニ行
  ハレテ、其ノ規定ガ制定致サレタノデアリ
  マスガ、現在ノ如ク物價ガ高クナリマシタ
  ニ際シマシテハ、ソレガ適當デナイ、斯ウ
  云フ風ニ思ハレル節ガ段々アルノデアリマ
  ス、當局ニ於カセラレマシテハ、之ニ對ス
  ル改正ノ意思ガアルカナイカ、若シ改正ガ
  出來ルトスレバドウ云フ程度ノ御改正ガ出
  來マスカト云フコトニ付テ御伺ヒ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=134

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• 135・平井章

  ○平井政府委員　御答へ申上ゲマス、勞働
  者災害扶助、船員保險法ニ出テ居リマス災
  害扶助法ニ規定ノアル各種ノ扶助料ノ引上
  ノ意思アリヤ如何ト云フ御質問デアリマシ
  タガ、數年前ニ其ノ支給日數ノ引上ヲヤツ
  テ居リマスルシ、又此ノ二月初メニモ改正
  致シマシテ、支給日數ハ變更アリマセヌガ、
  其ノ基準トナリマス所ノ標準賃金ヲ可ナリ
  引上ゲテ居ルノデアリマス、昭和七年ニ標
  準賃銀一圓トシテ或ハ五百四十日分ト云フ
  ヤウナ計算ヲ致シテ居リマシタガ、ソレヲ
  昭和十五年ニハ一圓三十錢ニ引上ゲタノデ
  アリマス、而シテ今月之ヲ一躍二圓ニ引上
  ゲタノデアリマシテ、昭和七年ト比較致シ
  マスト標準賃銀ガ約倍ニナツテ居リマス、
  ソレハ卽チ扶助料ガソレダケニ於テ倍額ニ
  相成ルト云フ結論デアリマシテ、其ノ他支給
  日數モ每年殖ヤシテ居リマス、扶助料ハ最
  近增額致シテ居リマスノデ、當分ノ間此ノ
  內容ニ依ツテ實行シテ行キマシテ、更ニ必
  要ナ點ハ考慮シテ行キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=135

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• 136・逢澤寛

  ○逢澤委員　只今標準賃金ヲ一圓三十錢ニ
  マデニ增額シ、更ニ本年度ハ二圓ニ增額ガ
  出來ルト云フ御話デアリマスガ、現在ノ勞
  銀ノソレト比ベテ見マスルト、此ノ二圓ハ
  餘リニ低ク過ギルト云フ感ジガ致スノデア
  リマス、併シ是ハ結局保險料ノソレトモ關
  聯致シマスノデ、保險經濟ガ成立ツカ成立タ
  ナイカ、所謂勞働者災害扶助保險ノ經濟ガ
  成立ツカ成立タナイカト云フ所ニ問題ガ岐
  シテ來ルト思ヒマス、ソコデ若シ此ノ保險
  經濟ガ成立ツモノトスレバ、今少シ增額ヲ
  御考ヘニナル御意思ガアルカナイカト云フ
  コトヲ更ニ御尋ネ致シタイノデアリマス、
  ソレカラソレト關聯致シマシテ休業扶助ニ
  付キマシテ、現行ノ扶助ノ方法ガ適切デア
  ルカナイカ、又休業扶助ニ對シテ何カ適當
  ナ時期ニ改正スル御意思ガアルカナイカト
  云フコトニ付テ御答ヘヲ願ヒタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=136

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• 137・平井章

  ○平井政府委員　御答へ申上ゲマス、扶助
  料引上ノ點ニ付キマシテハ、保險經濟ニ餘
  裕ガアレバ引上ゲルカドウカト云フ御質問
  デアリマシタガ、船員保險ニ於ケル、保險
  金額ノ扶助料バカリデアリマセヌデ、其ノ
  他ノ方面ノ給付ノ擴充ナドモ同樣ニ必要デ
  アルモノモアリマスノデ、隨テ餘裕ガアレ
  バ必ズ扶助料ヲ引上ゲルト云フ譯ニハ參ラ
  ヌト思ヒマス、現ニ他ノ方面ニ於ケル給付
  ノ擴充、强化ヲ現在計畫致シテ居リマシテ、
  此ノ四月頃カラ給付ノ擴充强化ヲ實現致シ
  タイト考ヘテ居リマスカラ、財源ガアレバ
  必ズ扶助料ノミ引上ゲルト云フ譯ニハ相成
  ラヌト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=137

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• 138・逢澤寛

  ○逢澤委員　只今御尋ネ致シマシタ休業扶
  助ニ付キマシテ、今マデニ何カ缺陷ガアル
  ト云フヤウナコトヲ御承知ハナイデセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=138

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• 139・菊池武夫

  ○菊池(武)政府委員　御答ヘ致シマス、休
  業扶助料ニ付キマシテ缺陷ガアルト云フ點
  ニ付テハ、別ニ考ヘテ居リマセヌ、健康保
  險其ノ他ノ社會保險ト同ジヤウニ百分ノ六
  十ノ扶助料ヲ出シテ居ルノデアリマシテ、
  別ニドウ云フ弊害ガアルト云フコトニ付テ
  ハ、私共ハナイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=139

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• 140・逢澤寛

  ○逢澤委員　實ハサウ御覽ニナルノガ正當
  ト思ヒマス、實ハコンナコトヲ此ノ席デ申
  上ゲルノハ實ハ遠慮シタイト思フノノデ
  スガ、內地ノ勞務者ニハ、私ノ體驗上カラ
  言ツテサウ云フコトハアリマセヌガ、併シ
  遺憾ナコトニハ半島勞務者ニ非常ニソレガ
  多イノヲ殘念ニ思フガ、負傷致シマシテ休
  養ヲスル、其ノ休養ノ場合ニソレニ扶助ヲ
  與ヘル、內地人ハ少々傷ガ痛ンデモ仕事ニ
  勵シム、是ガ內地人ノ性格ナンデス、所ガ
  半島勞務者ハ扶助ニ依ツテ生活ガ出來ル
  ト休業日數ヲ多クシテ來ルト云フコトガ
  アルノデアリマス、ソコデ扶助ノ適正ヲ期
  スルト云フ事柄ハ、仕事ノ能率ヲ上ゲル上
  ニ非常ニ密接ナ關係ガアル、一旦傷ヲスル
  ト、ソレガ痛イカラ仕事ガ出來ナイト言ヘ
  バソレダケデアリマス、ダカラ其ノ邊ヲ保
  險制度ニ於テ適正ヲ期セラレ、或ハ其ノ傷
  害ノ程度、或ハ其ノ程度ノ認識ガ、保險醫
  ノ方々ニノミ信賴セズ、或ハ將來出來マス
  所ノ勞報ナドノ機關モ通ジテ、是ハ勞務ニ
  差支ヘガアルモノデアル、或ハ此ノ程度ノ
  モノハ勞働ニ勵シムベキモノデアルト云フ
  範圍ヲハツキリシテ戴ク必要ガアルト思フ
  ノデスガ、之ニ對シテ若シ御考ヘガアレバ
  伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=140

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• 141・平井章

  ○平井政府委員　御答へ申上ゲマス、勞働
  者扶助、災害扶助、船員保險ト言ハズ其ノ
  他ノ社會保險ニ於キマシテハ、傷病ノ爲ニ
  休ミマシタ場合ニハ手當金ヲ出シテ居ルノ
  デアリマス、賃金ノ六割ヲ出シテ居リマス、
  ソレアルガ爲ニ勤勞能率ガ低下スルノデハ
  ナイカト云フヤウナ聲ハ、多少私共モ耳ニ
  致シタコトガアリマス、甚ダ以テ吾々トシ
  テモ遺憾千萬ダト存ジマシテ、爾來聲ヲ大
  ニシマシテ府縣ノ當局者ニ是ガ取締ヲ命
  ジテ居リマス、更ニ又配置サレマシタ日本
  醫師會ニ能ク話シマシテ、醫師ガ證明ヲ出
  シマス場合ニ嚴然タル態度ヲ以テ證明ス
  ルヤウニ慫慂致シテ居リマス、更ニ又產業
  報國會ニ對シマシテモ勤勞精神ノ昂揚ト云
  フ方面ニ向ツテ一段ト御努力ヲ願ヒタイト
  云フコトヲ御願ヒ申上ゲテ居リマシテ、政
  府ト產業報國會及ビ醫師會ノ三者一體ニナ
  リマシテ、苟且ニモ左樣ナ弊害ノ起キナイ
  ヤウニ實ハ懸命ノ努力ヲ拂ツテ居ル譯デア
  リマス、災害保險ニ於キマシテモ左樣ナコ
  トガアリト致シマスナラバ、新シク出來マ
  ス所ノ報國會トモ能ク連絡ヲ執リマシテ、
  苟クモ左樣チコトガナイヤウニ、社會保險
  制度ハ要スルニ健康ノ保持增進ヲ圖リ、現
  有勞務ノ增强確保ヲ圖リマシテ戰力增强ニ
  資スルコト、其ノコトニ目的ガアルノデア
  リマスカラ、ソレニ反スル行爲ガ行ハレナ
  イヤウニ嚴重取締ツテ行キタイト考ヘテ居
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=141

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• 142・逢澤寛

  ○逢澤委員　勞災ノ保險料金ト言ヒマスカ、
  保險率ト言ヒマスカ、ソレニ付テ最近改
  正ヲナサル御意見ガアルカナイカト云フコ
  ト、ソレカラ又現行ノ勞働者災害保險法ノ
  基準料金トモ言フベキ根本ヲ御變へニナル
  ベキデハナイカト云フ意見、現在ノ勞働者
  災害保險ノ保險金額ハ請負金額何ガシニ依
  ツテ課セラレテ居ルノデアリマスガ、過渡
  的ノ方法トシテハ是モ已ムヲ得ナカツタモ
  ノト思ヒマスルガ、現在ノ如ク既ニ勞働者
  災害保險法ガ始マリマシテ數年ヲ經マシテ、
  相當ニ今後ノ見透シモ付イテ居ルコトト考
  ヘマス、ソレデ此ノ請負金額ニ依ツテ課セ
  ラレル保險料ガ適切デナイト云フコトハ
  當局ノ方々モ能ク御承知ダト思ヒマス、災
  害其ノモノガ請負金額ニ依ツテ生ズルモノ
  デモナイ、災害其ノモノハ人ニ依ツテ出來
  テ來ル、其ノ使用人ノ數ノ大小、或ハ其ノ
  工事ノ種別ノ危險性ノ多小トカ云フヤウナ
  コトニ依ツテ生ジテ來ルモノデ、請負金額
  ニ依ツテ災害ガ生ジテ來ルモノデハナイコ
  トハ御承知ノ通リダト思ヒマス、ソコデ之
  ヲ其ノ使用ノ人數或ハ危險箇所、災害ノ起
  ル種類ニ依ツテ課スル、斯ウ云フヤウナ御
  考ヘガアリマスカ、アリマセヌカ、一寸御
  尋ネ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=142

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• 143・平井章

  ○平井政府委員　御答へ申上ゲマス、御
  承知ノ通リ最近保險經濟ノ方面ニ餘裕ガ
  出來タコトハ事實デゴザイマス、隨テ其ノ
  保險經濟ノ餘裕ヲ如何ニシテ處理スルカト
  云フ點ニ付キマシテハ、一〓ニ保險料ヲ引
  下ゲルト云フコトハ相當考究シナケレバナ
  ラヌト思フノデアリマス、購買力吸收ノ現
  下ノ際デアリマスノデ、保險料ヲ引下ゲル
  ト云フコトハ尙ホ考究ヲシナケレバナラヌ
  ト思ヒマス、但シ唯今御話ノアリマシタヤ
  ウニ請負金額ニ依ツテ傷病ト云フモノハ出
  テ來ルモノデハナイノデアリマシテ、其ノ
  間ニ何等ノ牽連性ガナイコトハ吾々モ承知
  致シテ居リマス、但シ他ニ方法ガ考ヘラレ
  ナカツタ爲ニ、當初請負金額ニ依ツテ保險
  料ハ算出スルコトニ便宜的ニ致シテ參ツタ
  ノデアリマス、ソコデ吾々トシテハ旣ニ數
  箇年間ノ實績ガアリマスノデ、如何ナル事
  業ニ於テハ如何ナル程度ノ延勞働者ヲ使ハ
  レルモノカト云フコトガ大體實績ニ基ク基
  準ガ出テ參リマシタノデ、其ノ基準ニ基イ
  テ延人員ニ依ル保險料ヲ算出シテ、現行ノ
  保險料率ヲ多少整理シタイト云フコトハ考
  ヘテ居リマス、其ノ結果保險料ノ引下ト云
  フヤウナ結果ヲ來スコトモアラウト思ヒマ
  スケレドモ、引下ト云フ意味合デハナクシ
  テ、保險料率ノ整備合理化ヲ圖リタイト考
  ヘル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=143

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• 144・逢澤寛

  ○逢澤委員　私ハ保險料金ノ適正ナ合理化
  ト云フコトノ御願ヒヲ致シテ居リマスルノ
  デ、決シテソレノ低下ノミヲ主張スル者デハア
  リマセヌガ、若シ相當ノ餘裕ガアルト致シ
  マスルナラバ、今後其ノ能率向上、或ハ保
  健施設ノ增强、所謂福利施設ノ增强ニ十分
  ニ御留意下サルコトヲ御願ヒ致シマシテ、
  私ノ御尋ネヲ終リマス

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• 145・清水留三郎

  ○〓水委員長　船員保險法中改正法律案ニ
  對スル質疑者中、渡邉君ガ午前中半バ質疑
  サレマシテ、藥事法案ニ移リマシタガ、渡
  邊君ノ質疑ノ一部分ヲ保留シテ置キマシタ、
  大體ニ於テ船員保險法中改正法律案ノ質疑
  ハ終了ト認メラレマスノデ、是ヨリ軍事扶
  助法中改正法律案ノ質疑ニ入リタイト思ヒ
  マス-藤本君

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• 146・藤本捨助

  ○藤本委員　支那事變及ビ大東亞戰爭勃發
  以來皇軍ノ振古未曾有ノ戰果ニ付キマシテ
  ハ、固ヨリ御稜威ノ致スコトデアリマスガ、
  又第一線將兵ノ勇戰奮鬪、鬼神モ泣ク御
  勞苦ノ賜モノデアリマシテ、一億國民ノ感
  謝感激措ク能ハザル所デアリマス、併シ榮
  冠淚アリデゴザイマシテ、第一線ニ働キマ
  シタ將兵ノ中ニハ旣ニ大東亞共榮圈ノ建
  設ノ崇高ナル礎石トナツテ、今ハ護國ノ神
  ト化シテ居ル勇士モアリマス、又傷痍疾病
  ニ惱ム將兵モアルノデアリマシテ、衷心敬
  弔ニ堪ヘズ、又衷心御同情致シテ居ル次第
  デアリマス、今囘御提案ニナリマシタル軍
  事扶助法ノ改正モ亦、此ノ國家的、國民的
  感謝ノ微意ノ表現デモアル、斯樣ニモ拜察
  致スノデアリマス、其ノ改正ノ內容ハ三點
  ニ盡キテ居ルヤウデアリマス、卽チ第一
  ハ軍事扶助法ノ扶助ヲ受ケル條件ノ一ツト
  致シマシテ、一種以上ノ兵役ヲ免ゼラレタ
  ル行政處分ヲ要セザルコト、第二ハ下
  士官ノ現役中タルト、應召中タルトヲ問ハ
  ズ、其ノ家族ヲ本法ノ適用ノ範圍ニ入レル
  ト云フコトデアリ、第三ハ下士官兵ノ退營
  又ハ召集解除後扶助ノ繼續期間二十日以內
  ヲ三箇月以內ニスルト云フコトデアリマシ
  テ、悉ク適正デアリマス、何等異議ハゴザ
  イマセヌ、寧ロ双手ヲ擧ゲテモツト〓〓御
  願ヒ致シタイヤウナ感ジガ致スノデアリマ
  ス、併シ尙ホ條文ノ個々ニ付キマシテ具體
  的ニ一、二簡單ニ御伺ヒ致シマス、此ノ
  軍事扶助法ノ狙フ所ハ第一條ニ其ノ對象ヲ
  規定シテアリマスガ、卽チ傷痍軍人、或ハ
  其ノ遺家族、或ハ下士官兵ノ遺家族デアリ
  マスルガ、斯樣ナ方々ニ對シマシテ、此ノ
  法制ニ依リマシテ國家ガ出來ルダケノ所謂
  扶助ヲ致スト云フコトハ結構デアリマスガ、
  併シ私ノ考ヘヲ以テ致シマスルナラバ、是
  ガ總テデナイ、之ヲヤルコトニ依リマシテ
  第一線ニ於ケル將兵ニ後顧ノ憂ナカラシム
  ル、又今後勇躍征途ニ就ク所ノ將兵ニ後顧
  ノ憂ナカラシムル、更ニ又斯クノ如ク傷病
  兵及ビ其ノ遺家族ヲ手厚ク國家ガ扱フコト
  ニ依リマシテ、國民ノ思想ヲ强化スル、サ
  ウシテ奉公心ヲ彌ヤガ上ニモ燃エ立タスト
  云フコトガ、此ノ軍事扶助法ノ重大ナ狙ヒ
  デナケレバナラヌ、私ハ斯ウ思ヒマス、隨
  ヒマシテ先ヅ軍事扶助ノ根本方針ヲ承リタ
  イト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=146

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• 147・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今軍事扶助法、又軍人
  援護ノ根本精神ニ觸レテノ御所感、洵ニ御
  同感ニ堪ヘマセヌ、今日ノ時局ニ鑑ミマシ
  テ、軍人援護精神ト云フモノヲ益〓〓揚シテ、
  全國民ニ徹底セシムル、之ニ依ツテ啻ニ扶
  助法ノミナラズ、其ノ援護精神ノ昂揚ヲ期
  シタイト云フ考ヘカラ、國民ノ全部ニ對シ
  テ、援護精神ノ徹底ニ對シテハ、從來學校
  〓育ニ於テ、私ハ援護運動ニ於テ色々行ツ
  テ居リマスルガ、今後尙ホ一層之ニ對シテ
  徹底的方策ヲ講ジタイ、斯ウ存ズルノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=147

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• 148・藤本捨助

  ○藤本委員　軍人援護ノ方途トシテハ精
  神的方面ト、物的方面トノ兩面ガアルノデ
  アリマス、物的方面ハ此ノ扶助法デ規定シ
  テ居リマスガ、精神的方面ハ一體ドウ致シ
  マスルカ、一面名譽アル皇軍將兵トシテノ
  衿恃ヲ保持セシメ、或ハ國民モ此ノ名譽ア
  ル皇軍將兵ニ對シマシテ一時ノ泡沫的ナ感
  奮ヤ感激デナシニ、常ニ其ノ名譽ニ對シ、
  御勞苦ニ對シ精神的ニ報ユルコトガナケレ
  バナラヌガ、是ハ一體ドウスルカガ問題デ
  アラウト思ヒマス、憲法第二十條ヲ此處へ
  持出スマデモナク、サウシタ方ガ名譽アル
  軍人トシテモ非常ニ宜イヂヤナイカ、固ヨ
  リ物的方面ニモ大イニ御考慮ヲ願ハナケレ
  バナリマセヌガ、精神的方面ニ於キマシテ
  少シ缺ケル所ガアルノデハナイカト云フコ
  トガ、最近ノ事例ニ徵シテ考ヘラレマス、
  此ノ點ニ付テノ御考へヲ承リタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=148

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• 149・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　軍人援護ノ精神的方面ト、
  國民ノ援護精神ノ昂揚徹底ト云フコトニ關
  シテノ今後ノ措置トデモ申シマスカ、御尋
  ネデゴザイマスルガ、今日マデハ御承知ノ
  通リニ軍人援護會、又傷痍軍人會ト云フ精
  神方面ノ援護團體ニ依リマシテ、軍事保護
  院ノ指導ノ下ニ其ノ援護運動ヲ致シテ參リ
  マシタガ、マダ〓〓徹底モセズ、不十分ナ
  點ガ多々ゴザイマス、吾々傷痍軍人會或ハ
  援護會ノ仕事ハ、淚ヲ以テ聞キ、見ルト云
  フ例ハ澤山ゴザイマス、斯ウ云フ事象モゴ
  ザイマスノデ、今囘政府ト致シマシテハ、
  軍人援護團體ノ强化-財政方面ノ點ニ於
  キマシテモ、人的方面ニ於キマシテモ、之
  ヲ强化スルコトト併セマシテ、今囘傷痍軍
  人會ニハ、援護會ノ總裁宮ヲ同ジク傷痍軍
  人會ノ總裁ニ仰ギ奉リマシテ、之ニ依リマ
  シテ傷痍軍人ノ精神〓導ト云フコトニ强ク
  力ヲ入レテ行キタイ、又ソレニ對スル色々
  ノ措置上ノ施設ノ上ニ於キマシテモ、政府
  ハ全ク是ト協力一致致シマシテ、此ノ精神
  方面ノ運動、其ノ精神ノ昂揚徹底ト云フコ
  トニ萬遺憾ナイヤウニ致シタイ、斯ウ考ヘ
  テ居ル次第デアリマス、只今ノ御趣旨ノ點
  ハ全ク御同感デゴザイマス、今後益〓サウ云
  フ御趣旨ノヤウニ進ンデ行キタイト存ジテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=149

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• 150・藤本捨助

  ○藤本委員　次ニ物的方面ニ付キマシテ御
  尋ネ致シマスガ、豫算ニ依リマスレバ十八
  年度ガ九千餘万圓デアリ、十七年度ハ七千
  四百餘万圓デアリマシテ、僅ニ千六百餘万
  圓ノ增加デアリマスルガ、先刻申述ベマシ
  タヤウニ、此ノ軍事扶助法ヲ通シマシテ、
  傷痍軍人其ノ他ニ對シマシテ援護ヲスル、更
  ニソレヲ通シテ第一線將兵ノ後顧ノ憂ナカ
  ラシムル、或ハ今後勇躍征途ニ就ク者ノ後
  顧ノ憂ヲナカラシメルコトニ對スル豫算ト
  致シマシテハ、洵ニ少イヤノ感ナキヲ得ナ
  イノデアリマス、此ノ點ニ付キマシテドノ
  ヤウニ御考ヘデアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=150

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• 151・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　軍人援護ノ施設ト致シマ
  シテ、從來最モ不備デゴザイマシタ神經ノ
  障碍、例ヘバ脊髓ノ障碍、頭ノ障碍、目ノ
  ナクナツタ方ト云フヤウナ方ニ對スル施設
  ヲ今囘更ニ擴充ヲ致シタイ、更ニ今日此ノ
  施設ノ最モ大キナ部分ヲ占メテ居リマス結
  核療養所等ノ內容ニ於キマシテハ、洵ニ遺
  憾ナ點ガ多々ゴザイマス、眞ニ傷痍軍人ノ
  療養ヲスル、而シテ再起奉公ト云フコトヲ
  可能ナラシメルヤウニスルニハ、施設內容
  等ニ於テ改善スベキ點ガ多々ゴザイマスノ
  デ、此ノ點ニ重點ヲ置キマシテ、今日ノ措
  置ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、今後
  益〓斯斯云フ傷痍軍人ノ增加スル趨勢ニ鑑
  ミマシテ、事態ノ推移ニ鑑ミマシテ、適切
  ニ處置ヲシテ行キタイ、斯ウ政府ハ考ヘテ
  居リマシテ、此ノ點ニ於テハ全ク軍事費ト
  同ジデアリマス、遺憾ナキ措置ヲ識ジタイ、
  斯ウ云フ所存デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=151

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• 152・藤本捨助

  ○藤本委員　今モ申述ベマシタヤウニ、此
  ノ改正ニ要スル經費ハ千六百餘万圓デアリ
  マスガ、私ノ憂慮致シマスノハ是デ宜シイ
  ノカ、是デ御考ヘノヤウナ御施設ガ出來ルノ
  デアルカドウカ、更ニ今モ御仰セニナリマ
  シタヤウニ、此ノ軍人援護費ト云フモノハ
  戰費デアルト云フ觀點カラ御尋ネ致シタ次
  第デアリマス、是デ十分ナラバ結構デアリ
  マスガ、不十分ナラバ大イニ御考ヘ戴キタ
  イト思ヒマス
  次ニ具體的ナコトニ入リマスガ、現行法
  ノ第五條ノ第一項ニ生活スルコトノ困難ナ
  ル者トアリマス、此ノ生活スルコトノ困難
  ナルト云フコトハ、一體誰ガ認定スルカ、
  日本人ト云フモノハ人ノ援助、或ハ國ノ援
  助ナドヲ受ケタガラヌノデアリマシテ、私
  ハ之ニ付テ淚グマシイ例ヲ持ツテ居ルノデ
  アリマシテ、若シ警察署長ガ一刻遲レテ行
  ツタラ、自殺スルマデニ行ツテ居ツタ例ガ
  アリマス、サウ云フ譯デアリマスカラ、生
  活スルコトノ困難ナ者ト云フ其ノ認定ヲド
  ウスルカト云フコトニ付テ御配慮ヲ戴キタ
  イノデアリマス、更ニ第二項ニ生活ヲ維持
  スルトアリマスガ、此ノ中ニハ〓育費ガ入
  ツテ居ル譯デアリマスガ、其ノ〓育ハドノ
  程度マデ引受ケルカ、承ル所ニ依ルト國民
  〓育ノ程度デアルト云フコトデアルガ、私
  ハ是デハイケナイト思フ、過去ノ文化ノ低イ
  時代ナラバ是デモ宜イカモ知レマセヌガ、
  今ヤ普通〓育ハ中等〓育デアリマス、若シ或
  ハ護國ノ神トナラズ、或ハ傷痍軍人トナラ
  ナカツタナラバ、立派ニ其ノ子女ニ中等〓育
  ヲ受ケサセ得ルト云フヤウナ者モ隨分アリ
  マセウ、申スマデモナク日本ノ道德ハ忠孝
  一本ニアリマス、而シテ孝ノ本質ハ子ガ親
  ヲ物質的ニ、勞ハルト云フコトモアリマセウ
  ガ、祖先ノ遺風ヲ體シマシテ、大イニ家名
  ヲ揚ゲルト云フコトニアルノデアリマス、
  又親カラ申シマシテモ、何モ肉體的ニ飽食
  暖衣ト云フノデナシニ、大イニ子孫ノ生成
  發展ヲ願フト云フノガ子ヲ思フ親心デア
  リ、是ガ日本ノ道德ノ本質デアリマス、隨
  テ後繼者ガ如何ニナルカト云フコトハ最モ
  重大ナ關心事デアリマス、ソレガ小學校デ
  止マルト云フヤウナコトハ、日本ノ道德ノ
  根本義カラ申シマシテモ遺憾ナコトデアル
  ノミナラズ、親ガアルナラバ大イニ英才ヲ
  發揮シ得ルト云フヤウナ機會ガ其ノ爲ニ失
  ハレル、斯ウ云フコトカラ致シマシテ、ド
  ウシテモ軍人援護ノ所謂生活扶助ト云フモ
  ノノ中ニ〓育ガ入ツテ居ルナラバ、今ノ國
  民〓育デハ足リナイ、モウ一段高メテ、少
  クトモ中等〓育マデハ引受ケルト云フ所ノ
  國家的ナ措置ガ私ハ必要デアルト思フノデ
  アリマス、其ノ點ニ付キマシテドウ云フ風
  ニ御考ヘデセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=152

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• 153・高辻武邦

  ○高辻政府委員　御答へ申上ゲマス、生活
  困難ナル者ノ認定ノ問題デアリマスガ、是
  ハ扶助ノ申請ガアリマシタ際ニ扶助ノ執行
  機關タル地方事務所長、支廳長若クハ市長
  ガ認定ヲ致シマシテ決定スル譯デアリマス、
  其ノ認定ノ標準ト致シマシテハ、一應ハ勅
  令ヲ以テ定メテ居リマスル扶助ノ限度ニ相
  當スル程度ノ收入ガ本人ニナカツタ場合ニ
  於キマシテハ、卽チ生活ノ困難ナルモノト
  シテ認定致スヤウナ大體方針ヲ執ツテ居リ
  マス、尙ホ次ニ御尋ネノ此ノ扶助ノ限度ノ
  中ニハ修學費ガ入ツテ居ルカドウカト云フ
  點デアリマス、是ハ義務〓育費ハ此ノ扶助
  額ノ限度ノ中ニ算定サレテ居ルモノトシテ
  取扱ヒヲ致シテ居リマス、併シナガラ御尋
  ネノ中等〓育以上ノコトニ付キマシテ相當
  ノ施設ガ必要デアルコトハ全ク御同感デア
  リマスルノデ、此ノ法律ノ規定ヲ離レマシ
  テ、別ニ豫算ヲ計上致シマシテ、戰歿軍人
  ノ遺兒、ソレカラ傷痍軍人ノ子弟ニ對シマ
  スル、育英ノ施設ヲ致シテ居リマス、此ノ
  方面ニ於キマシテハ、中等〓育以上ニ對シ
  マシテモ之ニ給費ヲ致シマシテ、〓育ヲ致
  スヤウニ致シテ居リマス、尙ホ專門學校程
  度以上ノモノニ付キマシテハ軍人援護會ニ
  於テ相當ニ施設ヲ致シテ居ルヤウナ次第デ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=153

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• 154・藤本捨助

  ○藤本委員　今承リマシテ非常ニ安堵致ス
  ノデアリマスガ、併シ申告ハ先程申述べマ
  シタヤウニ恐ラクハ隣組長トカ、或ハ警察
  トカ云フヤウナモノヲ通シテ町村長方面ガ
  ヤルノデアリマセウガ、此ノ點ニ一段ノ御
  留意ヲ願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ遺兒
  ノ〓育デアリマスガ、中等學校以上ニ付キ
  マシテハ、今御話ガゴザイマシタノデ、甚
  ダ結構デアリマスガ、其ノ手續等ガ煩瑣デ
  アリマシタナラバ、折角ノ結構ナ制度ノ活
  用ト云フモノガ非常ニ阻マレルト云フコト
  モアリマスノデ、其ノ點ニ付キマシテモ御
  留意ヲ戴キ、又現在ドレ位ノ豫算デドレ位
  收容シ得ルカト云フヤウナコトヲ一ツ承リ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113458X00819430224&spkNum=154

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• 155・高辻武邦

  ○高辻政府委員　扶助ノ申請ガアリマシタ
  場合ニ只今申上ゲマシタヤウナ標準ニ基イ
  テ判斷ヲ致シテ出スノデアリマスガ、一回.
  執行機關ニ於キマシテ、必要アリト認メ
  マシタ場合ニハ、申請ガナイ場合ニ於キマ
  シテモ扶助ヲ致スコトノ規定ガ設ケラレテ
  居ルノデアリマス、此ノ兩面ノ規定ト相俟
  チマシテ漏レル者ノナイヤウニ常ニ督勵致
  シテ居ル次第デアリマス、今後一層御趣旨
  ニ基キマシテ努力致シテ參リタイト存ズル
  ノデアリマス、尙ホ遺兒若クハ傷痍軍人ノ
  子弟ノ〓育ノ豫算ノ問題デアリマスガ、國
  費ト致シマシテハ八十二万圓程要求致シテ
  居ルノデアリマス、之ニ依リマシテ國費ニ
  依ツテハ中等學校ノ子弟ニ對シマシテハ年
  額二百圓ノ給費ヲ致スコトニ致シテ居リマ
  ス、ソレカラ先刻一寸申シ落シマシタガ、
  高等小學校ノ方ニ對シマシテモ、此ノ豫算
  ノ範圍ニ於キマシテ、一年當リ一年間ニ三
  十八圓程度ノ給費ヲ致スコトニナリマス

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• 156・藤本捨助

  ○藤本委員　今ノ豫算ヲ承リマシタガ、總
  額デ八十二万圓ト云フコトデアリマスガ、
  斯ウ云フコトデハ、私ハ折角ノ制度デハ
  アリマスケレドモ、洵ニ九牛ノ一毛ニ過ギ
  ナイノデハナイカト思ヒマス、今國家ハ專門
  〓育程度以上ニナリマスト、一人ノ〓育ニ數千
  圓使ツテ居リマス、或ハ万ヲ以テ〓育シタ所
  ガ過去ニ於テナキニシモアラズデアリマス
  ガ、ソレニモ拘ラズ此ノ遺兒及ビ傷痍軍人子
  弟ノ〓育費ガタツタ年額八十二万圓デハ到
  底所期ノ目的ヲ達成シ得ナイ、唯制度ガア
  ルニ過ギナイト云フ感ジヲ痛切ニ抱クノデ
  アリマス、此ノ點ニ付キマシテハ大臣ニ承
  リマスガ、斯ウ云フヤウナ御方針ヲ今後モ
  御繼續デアリマスカ、私ハ〓育ニ付キマシ
  テハ非常ニ愼重ヲ期シテ戴キタイト思ヒマ
  ス、此ノ〓育ヲ受ケルコトガ若シ何カノ事
  情デ出來マセヌデシタナラバ、永久受ケ得
  ラレヌノデアリマス、延バスコトガ出來ナ
  イノデアリマス、デアリマスカラ、速力ニ
  モツト〓〓豫算ヲ御取リニナツテ、遺兒及
  ビ傷痍軍人ノ子弟ノ〓育ニ對シマシテハ萬
  全ヲ期シテ欲シイノデアリマス、大臣カラ
  御答辯ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 157・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　只今ノ御話ノ點ハ洵ニ御
  尤モニ存ジ上ゲマス、能ク私ハ細カイ事情
  ハ知リマセヌガ、遺兒等ノ〓育ノ爲ニ折角
  國家ガ企圖致シテ居リマスコトガ徹底シナ
  イト云フコトデアリマスナラバ、徹底致ス
  ヤウニ十分善處致シタイト云フ決意ヲ持ツ
  テ居リマス

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• 158・藤本捨助

  ○藤本委員　今ノ御決意ニ對シマシテハ敬
  意ヲ表シマス、速カニ御實現ヲ念願致シテ
  已ミマセヌ
  次ニ第六條ノ規定デアリマスガ、扶助ノ
  方法ト致シマシテ、生活扶助醫療、助產生
  業扶助トアリマスガ、併シ傷痍軍人ノ治療
  ノ段階ニ於キマシテハ種々ノ方法ガアル、
  又助產-其ノ他ノ方法モ必要デアリマセ
  ウ、ケレドモ、玆ニ私ハ援護ノ重要ナ問題
  ト致シマシテ、生業扶助ニ重點ヲ置クト云
  フコトガ極メテ必要デナイカト思ヒマス、
  ト言ヒマスコトハ此ノ名譽アル軍人ニ獨立
  ノ生計ヲ與ヘルト云フコトハ帝國軍人ニ
  取リマシテハ極メテ必要デアラウト思フノ
  デアリマス、之ニ對シマシテハ職業補導、
  或ハ再〓育等色々ナ方法ヲ以チマシテ、獨
  立ノ生計ヲ與ヘル爲ニ職業ヲ與ヘルト云フ
  コトニ付テ御配慮戴キタイノデアリマス、
  先般戴キマシタ資料ニ依リマスト、洵ニ至
  レリ盡セリデアリマスガ、併シソレガ爲ニ
  總額九十万圓ノ豫算デアリマシテハ、是亦
  今申上ゲマシタヤウニ制度ハ甚ダ立派デア
  ルガ、其ノ實質ニ於テハ洵ニ寥々タルモノ
  デナイカト云フ感ガ致サヌデモナイ、此ノ
  點ニ付キマシテモ今後當局ニ御留意ヲ仰ギ
  タイノデアリマス、ト言ヒマスコトハ此ノ
  傷痍軍人ガ再起シ第一線ニ復歸シテ戴クコ
  トモ結構デアリマスガ、此ノ名譽アル傷痍
  軍人ガ或ハ軍需產業、其ノ他ノ產業ニ參畫
  サレマスルナラバ、傷痍軍人ト致シマシテ
  モ御奉公ノ繼續ニナリマシテ、非常ニ矜持
  ヲ覺エ、又精神的ニ滿足サレル所モアルデ
  アリマセウガ、更ニ大ナルコトハ、或ハ利
  潤追求トカ、或ハ賃金云々ト云フヤウナ聲
  ノアル際ニ於キマシテ、此ノ傷痍軍人ガ產
  業戰士トシテ働イテ居ルト云フコトニ依ツ
  テ、無形ナ感激、感化ト云フモノヲ與ヘル
  ト思ヒマス、ソシテソレガ能率ノ〓揚トモ
  ナルト云フコトヲ考ヘマスナラバ、此ノ
  助ノ方法ト致シマシテハ生業扶助ニ重點ヲ
  置クト云フコトハ非常ニ急務ノヤウニ思フ
  ノデアリマス、又當局ニ於カレマシテモ左
  樣ナ御努力ヲ致シテ居ラレマスコトハ萬々
  承知致シテ居リマス、ソレカラ又ソレト
  同時ニ私ハ銃後ノ思想問題、精神昂揚ト
  云フコトニ付キマシテモ、重要ナル關係ガ
  アルト思ヒマシテ、此ノ第六條デ規定シマ
  ス扶助ノ方法ト致シマシテハ、色々ノ段階
  ニ卽應シナケレバナリマセヌガ、治リマシタ
  傷兵ニ對シマシテハ、物質的ノ扶助モ結構
  デアリマスケレドモ、生業ノ扶助ト云フコ
  トニ對シマシテ、御配慮ヲ一段ト仰ギタイ
  ト思フノデアリマス、其ノ點ニ付キマシテ
  御方針ナリ、今後ノ御處置ニ付キマシテ承
  レレバ幸ヒデアリマス

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• 159・藤原銀太郎

  ○藤原政府委員　只今傷痍軍人竝ニ遺家族
  ノ生業扶助ト云フコトニ付テノ御熱心ナ御
  話ヲ承リマシテ、洵ニ吾々感ヲ同ジウスル
  ノデアリマス、實ハ軍事扶助法ニアリマス
  ル各種ノ扶助ノ中ニ於テモ、御話ノヤウニ
  單ニ生活ノ扶助ヲスルト云フコトノミヲ以
  テ軍人援護ノ理想トスベキモノデハナイノ
  デ、必ズ職業ニ依ツテ身ヲ立テ、今日ノ戰
  時下ニ於テ御奉公ヲスルト云フコトガ出來
  マスルヤウニ指導ヲスル、同時ニ援護ヲス
  ルト云フコトガ建前デアリマス、軍事扶助
  法ニ於キマシテモ其ノ實施ニ當リマシテハ、御
  話ノ通リ生業ノ扶助ト云フコトニ極力指導ヲシ、
  奬勵ヲシテ參ツテ居ルノデアリマス、併シナ
  ガラ此ノ職業ノ援護、保護ト云フコトニ付
  キマシテハ、軍事扶助法ノ施行ト云フコト
  ノミヲ以テ萬全デハナイノデアリマス、ソ
  レ以外ノ方面ニ於キマシテ、軍人援護ノ立
  場カラ致シマシテ、政府ト致シマシテハ各
  方面ノ職業補導對策ヲ今日計畫實施ヲ致シ
  テ居ルヤウナ譯デアリマス、或ハ傷痍軍人
  ノ職業上ノコトニ付テノ指導モシ、或ハ就
  職ノ幹旋ヲシ、或ハ又就職致シマシテカラ
  後ノ職業補導ヲナス、其ノ他從來就イテ居
  リマシタ職業ニ傷痍ニ依ツテ就クコトガ出
  來ナイト云フヤウナ者ニ對シマシテハ、新
  タナル方面ノ職業ノ爲ノ再〓育ヲスル、所
  謂職業再〓育ヲ致シマスル必要モアリマス、
  其ノ爲ニ軍事保護院ノ直接ノ施設ト致シマ
  シテモ、國立ノ職業補導所モ持ツテ居リマ
  ス、其ノ外府縣トシテモ各方面ノ職業ノ再
  〓育ノ施設ヲ行ハシメテ居ルヤウナ次第デ
  アリマス、其ノ外遺族ニ對シマスル問題ニ
  付キマシテモ、大體同樣デアリマシテ、遺
  族ニ付キマシテモ、軍事保護院ノ直接ノ施
  設トシマシテ職業ノ補導所ヲモ設ケテ居ル
  ヤウナ次第デアリマス、是等ノ職業補導ノ
  施設ハ今後更ニ〓〓充實ヲ致シマシテ、必
  要ニ應ジマシテ擴大モ致シテ行ク必要ガア
  ルト思フノデアリマス、要スルニ現在ノ軍
  人援護ヲ行ヒマスル根本ノ方針ノ一ツト致
  シマシテ、此ノ援護ヲ受ケル人ノ職業ノ保護
  ト云フコトニ付テ重點ヲ置ク、サウシテ先
  刻大臣カラ御答ヘモアリマシタヤウニ、現
  在國家ノ最大ノ要請トナツテ居リマスル所
  ノ生產增强ト云フコトニ關シテ、傷痍軍人ナ
  リ、遺族ナリ、家族モ亦銃後ノ國民トシテ
  此ノ方面ニ大イニ御奉公ヲスル、又セシム
  ルヤウニ政府ガ之ヲ指導シ、援助スル、斯
  樣ニ考ヘテ居ル次第デアリマス

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• 160・藤本捨助

  ○藤本委員　軍人援護ニ關シマシテハ精神、
  物質色々ノ方面ガアリマスルガ、ドウゾ此ノ
  兩面ニ亙リマシテ萬全ナル措置ヲ御執リニ
  ナリ、サウシテ所期ノ目的ノ達成ニ對シマ
  シテ、今後益〓御精進、御努力ヲ仰ギタイト
  思ヒマス、私ノ御尋ネハ是デ終リマス

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• 161・清水留三郎

  ○〓水委員長　田中君ヨリ大臣ニ對スル關
  聯質問ノ御要求ガアリマシタ、簡單ナラ只
  今許シマス

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• 162・田中藤作

  ○田中(藤)委員　簡單デス-藤本君ノ質
  問ニ關聯致シマシテ、軍事扶助ノ基礎觀念
  ニ付テ厚生大臣ニ御伺ヒシタイノデアリマ
  ス、ソレハ官吏、會社員ナドハ現職ノ儘應
  召致シテ居ル譯デ、軍事扶助ノ必要ハナイ
  譯デアリマス、所ガ農民、商工業者、自由
  職業者ト云フモノハ、生活上ノ問題デ扶助
  ヲ受ケタイト云フ氣持ハ一般ニアル、併シ
  ナガラ自分ノ立場或ハ社會的ナ地位ヲ考ヘ
  テ軍事扶助ヲ受クルコトニ依ツテ、何ダカ
  誇リヲ失フノデハナイカト云フ感ジガアル
  譯デアリマス、併シ一面ニ於テ會社員、或
  ハ官吏ガ現職ノ儘應召スルト云フ物質上ノ
  豐カサヲ考ヘテ、心ニ何カ滿タサレナイモ
  ノガアルト云フノハ事實ナノデアリマス、
  卽チ此ノ間〓ヲ如何ニシテ埋メルカト云フ
  コトガ大事ナ問題ダト思フノデアリマス、
  ト云ツテ生活扶助ヲ一般的ニ普及シテハド
  ウカト云フ問題モゴザイマスガ、私ハ是ハ
  採リマセヌ、併シナガラ若シ此ノ軍事扶助
  ト云フコトガ生活困難ト云フコトノ條件デ
  ナクシテ、所謂家族手當ト云フヤウナ精神
  デ、有難イ御下賜金ト云フ風ナ考ヘガ一般
  的ニ普及致シマスルナラバ、斯ウシタ問題
  ハ解消スルノデハナイカト云フ感ジガスル
  ノデアリマス、而シテサウシタ家族扶助ト
  云フモノガ現在ノ實際ニ於テハドチラカト
  云フト、此ノ生活困難ト云フ條件ニ拘ラズ、
  相當寛容ニ施行サレテ居ルト云フ點ニ私敬
  意ヲ表シテ居ルノデアリマス、之ヲ更ニ一
  步進メテ、サウシタ間〓ヲ埋メ、而モ名譽
  心ヲ傷ツケルコトナク、生活上ニ不安ナカ
  ラシムルト云フ所ニ留意ガナクテハナラナ
  イノデハナイカ、ソコデ所謂家族手當ト云
  フヤウナ考ヘ方デ、有難イ御下賜金ダト云
  フヤウナ名稱、或ハ制度ト云フヤウナコト
  ニスベキ必要ガアルノデハナイカト思フノ
  デアリマスルガ、此ノ點ニ付テ大臣ノ所見
  ヲ御伺ヒ致シマス

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• 163・小泉親彦

  ○小泉國務大臣　今日人口政策的ノ觀點、
  又其ノ他凡ユル面カラ考ヘマシテ、家族手
  當ト云フヤウナコトガ一般ノ俸給生活者ニ
  對シテ考ヘラレテ居リマス、之ニ對シマシ
  テ農村或ハ自由ナ個人デ經營ヲシテ居ラレ
  ル色々ノ商業ノ方々等ニ對シテハ、其ノコ
  トガ全然及ンデ居ナイ、又軍事扶助ノ方カ
  ラ申シマシテモ、官公吏ガ應召致シマスレ
  バ、其ノ現職ノ儘デアル、是ガ農村ノ靑年
  デアル時ニハ及バナイト云フ、ソコニ非常
  ナ矛盾ガゴザイマス、政府ト致シマシテモ
  何カ是ハ良イ方法ガナイカ、卽チ家族手當
  ヲ先般審議致シマス場合ニ、此ノ問題ハ相
  當深刻ニ〓究ヲ致シマシタ次第デアリマシ
  テ、速カニ何カ名案ヲ一ツ得テ、之ニ依ツ
  テ只今御話ノヤウナ矛盾ナリ、又本當ニ國
  民全部ニ行ツテ居ナイト云フ所ヲハツキリ
  サセタイ、斯ウ云フ考ヘデ是ハ各省皆關係
  致シテ居リマスノデ、政府ト致シマシテ、
  眞劍ニ此ノ問題ヲ如何ニカシテ何カ名案ヲ
  一ツ探シ出サウト云フノデ、今〓究ヲ致シ
  テ居リマス

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• 164・田中藤作

  ○田中(藤)委員　大臣ノ說明ニ依ツテ滿足
  致シマス、是非速カニサウシタ制度ノ實施
  ヲ要望シ、御願ヒ致シマス

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• 165・清水留三郎

  ○〓水委員長　本日ハ此ノ程度デ散會致シ
  マシテ、明日ハ午前十時ヨリ第九委員室ニ
  於テ質疑ヲ繼續致シマス、明日三案ニ對ス
  ル質疑ヲ終リマシテ、出來得ルナラバ明日
  ノ內ニ討論ニ入リタイト思ヒマス、委員各
  位是非御出席願ヒマス、本日ハ是ニテ散會
  致シマス
  午後五時一分散會

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