1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十八年二月五日(金曜日)午前十時二十分開議
出席委員左の如し
委員長 松村光三君
理事 川崎巳之太郎君 理事 小泉純也君
理事 河野密君 理事 永野護君
理事 藤本捨助君 理事 三木武夫君
有馬英治君 小野義一君
小野秀一君 木村正義君
九鬼紋七君 坂本宗太郎君
田中勝之助君 田下政治君
中村三之丞君 原口純允君
橋本祐幸君 一松定吉君
松永壽雄君 前田善治君
山中義貞君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
大藏省主税局長 松隈秀雄君
大藏書記官 池田勇人君
大藏書記官 平田敬一郎君
專賣局長官 木内四郎君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
臨時利得税法中改正法律案(政府提出)
臨時租税措置法中改正法律案(政府提出)
酒税法中改正法律案(政府提出)
酒造組合法中改正法律案(政府提出)
清涼飮料税法中改正法律案(政府提出)
取引所税法中改正法律案(政府提出)
砂糖消費税法中改正法律案(政府提出)
物品税法中改正法律案(政府提出)
遊興飮食税法中改正法律案(政府提出)
入場税法中改正法律案(政府提出)
特別行爲税法案(政府提出)
輸出する物品に對する内國税免除又は交付金交付の停止等に關する法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=0
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001・松村光三
○松村委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、大
藏大臣ハ豫算總會デ要求ガアリ、都合ガア
2
リマスルノデ、大臣ニ關スル質疑ヲ成ベク
集中願ヒタイト云フ申出デアリマスルガ、
取敢ヘズ藤本君カラ御質疑ヲ願ヒマス-
藤本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=1
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002・藤本捨助
○藤本委員 私ハ戰爭財政ノ根本問題ニ付
キマシテ、大藏大臣ニ二、三御尋ネ致シタ
イト思ヒマスガ、豫算總會ニ御出マシノ趣
キ只今拜承致シマシタ、御急ギノヤウニモ存ジ
マスルカラ極メテ簡單ニ、又簡單ナ御答辯ガ
承レレバ結構デゴザイマス、其ノ第一ハ昭和
十八年度ニ於ケル國民所得ニ付テデアリマス
ガ、此ノ件ニ付キマシテハ旣ニ豫算總會
ニ於テ、大體昭和十八年度ノ國民所得ハ五
百億ダト御推定ニ相成ツテ居ラレルノデア
リマス、昭和十七年度ノ國民所得ニ比シマ
スレバ約五十億ノ增加デアリマスガ、是ハ戰
時下戰力增强ノ急務ノ今日、稅ノ負擔モ公
債ノ消化モ一ニ懸ツテ國民所得ニアリマス
ル關係上、洵ニ國家ノ爲ニ慶賀ニ堪ヘナイ
ノデアリマス、併シナガラ內ヲ顧ミマスル
ト、支那事變以來六年ニ亙リマシテ非常ナ
大消耗戰ヲ繼續致シマシタ關係上國內物資
ノ「ストック」モ相當ニ費消シテ居リマス、或
ハ逞マシキ產業戰士モ大命ヲ奉ジテ勇躍戰
地ニ參ツテ居リマスシ、又外ニ眼ヲ向ケマ
シテモ、所謂第三國貿易ト云フモノハ殆ド
斷絕或ハ非常ニ窮屈ニナツテ居ルノミナラ
ズ、更ニ大東亞共榮圈內ニ於ケル物資ヲ輸
入致スニ付キマシテモ、輸送其ノ他ノ關係
カラ致シマシテ思フニ任セヌ事態ニ在ルノ
デアリマス、斯ウ云フ風ニ考ヘマスト、國民
所得ノ增加ヲ阻ム所ノ逆條件ガ非常ニ最近
多ク、又是ハ戰時下ニ於キマシテハ不可避
ノ現象ト思フノデアリマスガ、斯樣ナ逆條
件ヲ考ヘテ行キマスト、果シテ此ノ五百億
國民所得、昨年度ニ比シマシテ五十億ノ增
加ト云フコトハ實質的ニサウナノカ、或ハ
又所謂貨幣價格景氣ノ變動ニ過ギナイノデ
ナイカト云フヤウナコトニ付キマシテ一抹
ノ不安ナキヲ得ナイノデアリマス、一應此
ノ點ニ付テ御所見ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=2
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003・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 日本ノ經濟力ニ付キマシ
テ色々ノ考ヘ方モ出來ルト思ヒマス、只今
ハ藤本君モ國ヲ憂ヘラレルノ餘リ、所謂悲
觀的ノ方面ヲ數ヘテ御示シニナツタ、其ノ
點ハ洵ニ其ノ通リデアリマス、一方カラ申
シマスト、非常ニ希望ノアル--希望デハ
ナク現實ニ良イ面ガ澤山アリマス、戰爭デ
アリマスカラ無論消耗ハアリマスガ、現在
マデノ大局ハ支那事變以來、日本ノ國力ハ
非常ナル增加ヲ致シテ居ルト思ヒマス、生
產擴充資金モ、設備ノ擴充ニ支那事變以來
三百億圓以上ヲ投ジテ居リマス、是ハ支那
事變以前ニハ年ニ十億トカ十五億ト云フ程
度ノモノデアリマシタモノガ、一躍今申上
ゲタヤウナ風ニ進ンデ居リマス、而モ支那
事變以前ニ於キマシテハ、多クハ平和產業ニ
投下サレタモノガ相當大キナモノヲ占メテ
居リマスガ、只今ハ生產力ノ增强ガ戰時產
業ニ向ケラレテ居リマスルシ、又支那事變
以來ノ資本ノ投下ハ皆其ノ面ニ向ツテ居リ
マス、是ハ非常ナル力ノ增强デゴザイマス、
細カク申上ゲレバ其ノ中ニモ完全ニ動イテ
居ナイ設備モアリマスガ、全部ガ戰力增强
ノ目的ニ向ツテ計畫サレツツアルノデアリ
そう、平時ノ同ジ金額ヨリハ戰力增强ニハ
餘程役立ツテ居リマス、設備ノ面ガサウデ
アリマス、人口ノ面ニナリマスルト、是ハ
色々悲觀的ノコトモ考ヘラレマスル
ガ、支那事變以來、日本ノ戰爭ニ依ル人
口消耗ト云フモノハ世界ノ何レノ大戰ノ場
合ニ比ベマシテモ極メテ小ナルモノデア
ル、其ノ上ニ海外各地、共榮圈內各地ノ人口
能率ハ日本內地ノ人間程上ラヌニシマ
シテモ、相當ナ協力體制デ、日本デ使ヒマ
ス製鐵原料ノ石炭ハ北支ノ人ガ現ニ掘ツテ
居ルノデアリマス、海南島ノ鐵礦石モサウ
デアリマス、南方ノ石油ニ付テモ南方ノ住
民ガ働イテ居ル譯デアリマス、人口資源ト
云フ點ニ付キマシテ戰時ニ最モ消耗ノ少イ
國デアツテ、而モ新タニ人口給源ヲ全體ノ
戰力カラ見テ獲得シテ居ル狀態デアリマ
ス、天然資源ハドウカト云フト、日本ハ支
那事變前ニ於キマシテハ、純經濟的及ビ戰
爭ニ依ル交通ノ障碍、軍事的ノ關係ナドモ
入レマスト、確實ニ日本ガ掌握シテ居ツタ
モノハ日本ト滿洲ダケデアツタ、ソレガ支
那ノ大キナ部分、殊ニ東洋一ノ炭田、質を
於テモ量ニ於テモ又品種ノ重要ナモノガ多
數アリマス點ニ於テモ、東洋一デアリマス
ル北支ノ炭田モ完全ナル自給圈內ニ入リ、
海南島ノ鐵鑛石モ入リ、南方ノ石油、錫、「ゴ
山其ノ他モ入ル、天然資源ニ於テハ非常
ナル增加デ、寧ロ之ヲ完全ニ利用スル設備
ノ方ガ足リナイト云フ程大キナ力デアリマ
ス、資源、勞力、設備ト云フモノガ飛躍的
ノ大發展ヲ遂ゲテ居ル、戰爭ニ於テ消耗ス
ルト云フノハ是ハ敵ノ武力ニ依リマシテ
生產設備ヲ破壞サレル、生產設備ノアル土
地ヲ奪取サレタリ、又天然資源ノアル所ヲ
奪取サレタリ、多數ノ、何十万、何百万ノ
捕虜ヲ出ス、或ハ戰死者ヲ出スコトデスガ、
サウ云フ現象ガ日本ニハ一ツモナイ、ノミ
ナラズ皆積極的ニ進ンデ居ルノデアリマス、
私ハ非常ナ飛躍的ノ增加デアルト思フ、他
ノ問題ハ、世界一ノサウ云フ力ヲ誇ル「アメ
リカ」ヲ相手ニシテ居ル又「イギリス」老
イタリト雖モ相當經濟力ヲ持ツテ居リマス、
日本トシテハ支那事變前ニ比ベルト比べ
モノニナラヌ程大キナ生長ヲナシ、又生長
ヲナシ得ル基盤ヲガツチリト握ツテ居ルノ
デアリマスガ、敵ハ大キイカラ是カラマダ
マダヤラネバナラヌト云フ所ニモアル、私
ハ國民所得ノ殖エルコトハ當然ト思ヒマス、
ソレハ假ニ一ツノ芝ヲ竝ベマシテモ、部分
的ニハ揃ハナイ所モ枯レテ居ル所モアリマ
スガ、全體トシテハ立派ナ芝生デアル、私
ハモウ日本ノ經濟ハサウ見テモ宜シイト思
フ、唯敵ガ大キイカラ之ニ對抗シテ行ク爲
ニグン〓〓伸バシテ行カネバナラヌ、斯ウ
云フ觀點デアリマス、ソレデモウ少シ消費
經濟ノ方面ガ伸バシ得ル力ガアレバ所謂國
民所得ノ總額ト云フモノハ非常ニ伸ビルト
思ヒマスルガ、中々サウ云フ呑氣ナコトヲ
言ツテ居レマセヌ、資源ガ澤山アルニシテ
〓、マダ全幅的ニソレヲ掘出シ精製シ得ル
ト云フマデニ力ガ行ツテ居ナイコトハ只今
御述ベニナリマシタ通リデアリマスカラ、
消費方面ハ極力切詰メナケバナリマセヌ
隨テ所謂國民所得ガ增額ヲシマシテモ寧ロ
私ハ伸ビ方ガ少イ位ニ思ツテ居リマス、斯
ウ云フヤウナ考ヘヲ持ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=3
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004・藤本捨助
○藤本委員 國民所得ノ增加ハ私夙夜念願
シテ已マナイノデアリマスガ、只今藏相ノ
御說明ヲ承リマシテ洵ニ國家ノ爲ニ欣快ニ
堪ヘマセヌ、次ニ第二ニ十八年度ニ於ケル
國家資金動員計畫ニ付テ承リタイノデアリ
マス、昨年ノ資金計畫ハ國民所得四百五十
億ト押ヘマシテ、國家財政資金ガ二百四十
億生產擴充資金ガ六十億、アトニ殘存致
シマシタ國民所得ガ國民消費ノ資金ニナツ
タノデアリマスガ、十八年度ニ於キマシテ
ハ今尙ホ臨時軍事費ノ御發表ガアリマセヌ
カラ、隨ヒマシテ資金計畫ヲ承ルコトハ困
難カト存ジマスケレドモ、國民所得ガ其ノ
基盤ニナツテ居ルト云フコトカラモ大體推
定ガ付クノデアリマスシ、且又此ノ資金計
畫ヲ承リマシテ、國家財政資金ガ幾ラ、或
ハ生產擴充資金ガ幾ラト云フコトガ判明致
サヌ限リ、只今問題ノ增稅ノ可否或ハ公債
發行、或ハ國民貯蓄ト云フコトニ付キマシ
テモ檢討シ兼ネルノデアリマスノデ、応
只今御答ヘニクイカモ知レマセヌガ、御差
支ヘノナイ程度デ御示シ願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=4
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005・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ昨日モ木村委員ノ御
尋ネガアリマシテ申上ゲマシタガ、近日中
ニ臨時軍事費追加ノ豫算案ガ出マス、之二
伴ヒマシテ又一般會計ノ追加豫算案モ出ル
ノデアリマス、サウ致シマスルト國債發行
額モ判明ヲ致シマス、其ノ折マデ少シ御待
チヲ願ヒタイト思ヒマス、尙ホ增稅ノ御審
議ニ付テノ御說モ御尤モデゴザイマスガ、
併シ是ハ昨年度ノ狀態ニ於キマシテモ、增
稅ガ可能ナラバ私ハソコマデ行ツテモ宜シ
イ、五百億ノ所デゴザイマシテ、假ニ臨時
軍事費ガ昨年通リト致シマシテモ、本年度
ノ豫算ト云フモノハ、總計ハ一般會計ヲ合
セマスト、三百十億モツト以上ニモ上ル位
デアリマスカラ、寧ロ全體ノ割合カラ申シマ
スト、實ハ度々御說ガアリマスヤウニ、增
稅シ足リナイ位ナ程度ノモノデアリマス、
何レ臨時軍事費等ガ出マシテ申上ゲレバ寧
ロ純財政ノモノハ增稅シ足リナイト云フ御
議論ニナル位ノモノト思ヒマスノデ、少シ
ノ間御留保願ヒマシテ、其ノ節又稅ノ內容
ニ付テハ十分御檢討ヲ願ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=5
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006・藤本捨助
○藤本委員 ソレデハソレマデ御待チ致ス
コトニ致シマス、第三ニ御存ジノ通リ從來
ノ戰爭財政ニ於テハ、一ニモ貨幣二ニモ貨
幣三ニモ貨幣、而シテ貨幣ハ戰爭ノ神經
デアルト言ハレテ居リマシタノデ、旣往ニ
於キマスル戰爭財政ノ任務ハ戰費ヲ支辨ス
ル貨幣ノ調達ニ終始致シテ居ツタノデアリ
マスガ、近代戰爭ハ國家總力戰トナリ、國家
ノ總力ヲ擧ゲテ輸贏ヲ決スルト云フコトニ
ナリマシタノデ、非常ナ大消耗戰ニナリ、隨
ヒマシテ從來ノ如キ戰爭財政ノ本質ガ貨幣
ノ調達ニ終始スルト云フノミデハ足ラヌヤ
ウニナリマシテ、玆ニ新シキ理念ガ生起シ、
戰費ノ負擔ヲ稅ト公債ヲ以テスルコトニハ
變リアリマセヌケレドモ、戰爭財政ノ任務
ハ戰費負擔ノ貨幣ヲ調達ヲ致ス外ニ國家ノ
經濟力ヲ指導致ス、換言致シマスルナラバ、
戰爭財政ヲ以テ國家經濟ノ生產的任務ヲ遂
行致スト云フコトニナツタノデアリマス、
隨ヒマシテ私ノ御尋ネ致シタイト思ヒマス
ルコトハ、日夜藏相ノ御配慮下サツテ居ル
此ノ戰爭財政ガ、大消耗戰ノ要請致シマス
ル所ノ高度ノ技術、或ハ勞力、或ハ現在ニ
於ケル可能量ノ物資ヲ獲得スルニ適切ニ「マツ
チ」シテ居ルカドウカ、更ニ端的ニ申シマ
スレバ、是ダケノ增稅ヲ以テシテ、或ハ臨
時租稅措置法ニ於キマスル、アノ措置ヲ以
テシテ、此ノ戰時下ノ要請スル經濟力ノ指
導、或ハ財政ノ生產的使命ニ對シマシテ、
卽應シテ居ルノカドウカト云フコトデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=6
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007・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 昔ノ比較的發達シナイ時
代ニ於キマシテハ、大體金サヘアレバ物ハ
買ヘルト云フヤウナ觀念カラ、御話ノヤウニ
戰爭財政ト云フモノハ常ニソコニ基點ヲ置
イタノデアリマス、併シ現在ノ如ク相成リ
マシテハ國際的ニモ、國內的ニモ唯金サヘ
アレバドウニデモナルト云フヤウナ-到底
サウ云フ狀態デナク、他ノ物ヲ離レマシテ金
バカリヲ考ヘテ居ルヤウナ政策ガ破綻ヲ示
シマスコト、又他ノ物ヲ考ヘナガラモ金ニ
ノミ賴ラナケレバナラヌト云フ政策ガ破綻
ヲ來シマスコトハ、過グル歐洲戰爭ニ於ケ
ル各國ノ例ヲ見テモ當然ナノデアリマス、
現在ノ戰爭ニ於キマシテハ物的方面ハ所要
ノ場所デ所要ノ時ニ所要ノ物資ガアルト云
フコトデアル、細カク申上ゲマシテ「アメ
リカ」ノハ「アリューシヤン」ニハ使ヘルガ「ソ
ロモン」ニハ使ヘナイト云フ物的戰力ハ
是ハ非常ナ條件付デ考へナケレバナラヌ、
所要ノ場所ニ所要ノ時ニハ所要ノ物ガ要ル、
ソコデ戰爭スル、ソコデ軍艦ガ要ル、爆彈ガ
要ル、大砲ガ要ル、彈ガ要ル、其ノ時ニ其
處デ間ニ合ハナケレバ、間ニ合ツテモ何ニモ
ナラヌ譯デアル、其ノ位ニ總テ精密デアリ
マスカラ、又ソレガ戰爭ノ狀況ニ依ツテ非
常ニ變化ガアルカラ、其ノ變化ニ應ズルヤウ
ナ狀態ノ下ニ考ヘナケレバナラヌ、總量ノ
ミナラズ物ノ質、種類、ソレニ機動力、運
輸斯ウ云フヤウナモノモ皆綜合的ナモノ
ニナツテ來ル、金ノ方面カラ參リマスト、何
トシテモソレヲ-人ノ物ヲ只取ツテ來ル
ト云フ體制ハナイ、必ズ金デ買ツテ來ルト
云フ體制デアリマス、斯カル戰時ニ必要ナ
物資、是ハ武器彈藥其ノ外ノ軍需品、輸送設
備國民ノ最少限度ノ生活、斯ウ云フヤウ
ナモノガ所要ノ目的ヲ達スルヤウニ金ノ面
カラ出來ナケレバナラヌ、金デ-結局別ノ
言葉デ言ヘバ勞力ガ、物資ガ所要ノ所ニ集
マル譯デアリマス、常ニ背面ニソレヲ考へ
テ行カナケレバナラヌ、斯ウ云フ觀點カラ
ドウシテモ先ヅ政府ガ使フ積リデ軍備其ノ
他ノ整備ノ金ガ出來ナケレバナラヌト云フ
コトハ、是ハ昔カラモ共通デ同樣デアリマス
ガ、其ノ出來ル限度ト云フモノハ物資ノ獲
得力ヲ全然除外シマシテ、唯金ダケアレバ
物ガ集マルト云フヤウナ觀點カラハ豫算ノ
編成ハ到底出來マセヌ、ソコデ物資、勞力
其ノ他ト調和ヲ得タ綜合計畫ノ下ニ財政ガ
組マレナケレバナラヌト云フ點ガ此處ニ出
テ居ルノデス、又サウ致シマセヌト單純ニ
金ガ物ヲ購買シ得ルト云フ形ニノミ囚ハレ
テ豫算ヲ增シマシテモ、現實ノ購買物ガナ
イ、購買サレル相手ガアリマセヌデハ何ニ
モナリマセヌ、ソレデハ是ハマルデ紙ミタ
イナモノデアル、ソレガ其ノ他ヲ最モ考へ
テ行カナケレバナラヌ一ツデアリマス、第
二ハ斯カル資金ガ健全ナ方法デ調達セラレ
ナケレバナラヌ、假リニ前世界大戰ノヤ
ウニ中央銀行ノ貸上金デアリマストカ、
短期ノ大藏證劵ノ發行デアルトカ、マルデ
通貨ノ性能ノ形態ヲ以ツテ出來マシタ場合
二ハ一應形ダケハ財政當識デハ出來マス
ルガ、反面ニ國民ノ間ニ國民生活ノ消費ニ
充テル以上ノ購買力ヲ非常ニ多額ニ見越シ
テ居リマス、ドウシテモ今ノ多額ノ購買力
ヲ吸收シテ、ソレヲ政府資金ニ充テルト云
フ方策デナケレバイカヌ、ソレデ此ノ方策
ヲ執ル爲ニハ、國家ノ直接ニ需要致シマスル
政府資金ト云フモノガ大體租稅及ビ國民貯
蓄ノ蓄積ニ依ツテ出來ナケレバナラヌ、斯
ウ云フコトニナリマスレバ、是ハ大體ニ背
後ニ物資ノ裏付ケガナイトイケナイ、サウ
シテ其ノ方策ヲ執ツテ居リマスカラ、ソレ
デ是ガ國民生活、戰時生活ノ大體ノ大キナ
指導ニナツテ居ル、詰リ貯蓄完遂計畫ト云
フモノガ、稅ト云フモノノ反面ニ於テ國民
生活其ノモノヲ一番大キナ見地カラ是ガ規
正指導シテ居ル、ソレガ今戰力調達ニ必要
ナル財政資金デアル、別ノ言葉デ申セバ、
只今ノ生產ト云フモノハ政府需要、特ニ軍
需需要ノ生產ガ多イノデアリマス、而モ其
ノ生產ニ依ツテ拂ハレル對價ト云フモノハ
國民ノ懷ロニ入リマス、入ツタ中デ昭和十
七年度デ申上ゲレバ、三分ノ一シカ國民ガ
使ツテハナラヌ、ソレ以上使ヘバ使ヒ過ギ
ニナル、其ノ三分ノ二ヲ所謂政府需要ニ還
元シナケレバナラヌ、是ガ一番財政ノ大キ
ナ經濟指導デアリマス、其ノ方針ニ卽應シ
テヤツテ居リマス、今年モ無論ソレデ行ク
譯デアリマス、尙ホ追々申上ゲマスルガ、
段々日本ガ外地ト言ヒマスカ、共榮圈內ノ
日本國內以外ニ力ヲ使ツテ行ク、使ツテ行
クト云フト語弊ガアリマスガ、彼等ガ共
同ノ戰爭ノ目的ノ爲ニ、共同ニ力ヲ合ハセ
テ行カウト云フ段階ニ配置サレル、是ハ共
榮圈ノ眞ノ協力觀念デアリマスガ、財政ノ
上ニモ段々ニサウ云フ相貌ガ又一方ニ現ハ
レテ居ル、是ガ共榮圈經濟ト共榮圈財政ト
云フモノノ一ツノ指導理念ニナツテ來ルト
思ヒマス、ソレガ大局デアリマス、其ノ內
容ニ至ツテハ色々今御話ガアリマシタヤウ
ニ、同ジ稅ヲ取リマスノデモ、ソレガ生產
力ノ障碍ニナラナイヤウニ、出來レバ助長
スルヤウニ、又物價政策、生產增强ノ調和
點トシマシテ基本的物資ニハ低物價ト申シ
マスガ、實ハ是ハ正確ニ言ヘバ一定水準ノ
維持ト云フコトデアリマスルガ、其ノ爲ニ
ハ相當ノ努力ヲ要ス、サウ云フコトハ財政
全體カラ見マスルト部分的施策デアリマスル
ガ、ソレヲ各種ノ補助費デアリマストカ、
助長費デアリマストカ、ソレカラ補償費デ
アリマストカ、是ハ造船ニモヤツテ居リマ
ス、鐵ノ囘收ニモヤツテ居リマス、石炭、
ソレカラ製鐵、ソレカラ米、肥料、斯ウ云
フ面ニソレガ出テ居リマス、ソレカラ又是
ハ今相當ニ金額ガ多ク出マスガ、實ハ「バ
センテージ」ハサウ多クナイノデアリマシ
テ、所謂餘リニ採算ニ拘泥シナイデ進マナ
ケレバナラヌ、國策會社的ナルモノノ趣旨
ガ斯ウ云フ面ニ出テ居リマスガ、サウ云フ
面ハ其ノ時其ノ時ノ必要ニ應ジテヤル面デ
アリマス、前段ニ申上ゲマシタコトガ一番
大キナ戰爭財政ガ戰爭經濟ニ對スル施策ト
相成ル譯デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=7
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008・藤本捨助
○藤本委員 御答辯洵ニ有難イト思ヒマス
ガ、私ノ只今御尋ネシタ理由ハ、現下各方
面ニ於テ惡性「インフレーション」ガ憂慮サ
レテ居ルカラデアリマス、是ハ申スマデモ
ナク物ト金トノ「アンバランス」ヨリ生ジマ
スノデ、折角戰時財政ヤ或ハ國民所得ニ此
ノ上御配意戴キマシテモ、之ニ必要ナル勞
力、資材ト云フモノガ「マッチ」シナケレバ
玆ニ惡性「インフレーション」ガ不可避ノ現
象ニナリマスノデ、御尋ネ致シタノデアリ
マス、更ニ此ノ觀點カラ致シマシテ御尋ネ
致シタイノデアリマスガ、今次ノ增稅ノ特
異性ト申シマスカ、是ハ臨時利得稅法ニ一
部改正ヲ加ヘマシテ、法人ノ基準利益率ヲ
廢止シタ以外ニ、直接稅ニハ觸レズ、主ト
シテ間接稅ノ增徵ニ終始シテ居ルノデアリ
ママ、隨ヒマシテ何故ニ直接稅ノ方ヲヤラ
ナカツタカト云フコトニ付キマシテ、旣
同僚議員ヨリモ御質疑ガアリ、又直接稅ヲ
見送ツタト云フコトニ付テノ理由ニ付キマ
シテモ旣ニ御示シガアリマシタ、ソレハ能
ク諒承致シマスガ、尙ホ只今申述ベマシタ
ヤウナ觀點カラ致シマシテ、二、三ノ理論ニ基
キ今後ノ爲ニ大藏大臣ノ御所見ヲ承ツテ置
キタイノデアリマス
其ノ一ツハ所謂貨幣ノ流通速度ニ關シテ
デアリマス、戰爭財政ヲ負擔致シマスノハ
稅ト公債デアリマスガ、赤字公債ノ發行ハ
現實的ニハ貨幣ノ造出ニナリマス、其ノ撒
布ハ國民ノ貨幣所得トナリ、ソレハ又國民
ノ購買力トナルノデアリマス、固ヨリ貯蓄
其ノ他ニ依リマシテ之ヲ多ク吸收サレマス
ケレドモ、一應貨幣ノ形體ニナリマスナラ
バ、其ノ幾度カノ廻轉ニ於キマシテ、其ノ
都度購買力ヲ造出致シマス、隨テ購買力
吸收、而シテ「インフレーション」ノ防止ヲヤ
ルト云フヤウナ見地カラ申シマスレバ、
應購買力ニナツタノヲ抑ヘルヨリモ、其ノ
源泉ニ於テ抑ヘルベキダト云フコトハ、申
スマデモナイノデアリマス、玆ニ貨幣流通
ノ速度ガ問題ニナツテ來ルノデアリマスガ、
我ガ國ノ流通速度ハハツキリ致シマセヌケ
レドモ、米國ノ最近ノ平均流通速度ハ一·七五
デアリマス、假ニ我ガ國ノ流通速度ヲ二ト
抑ヘマスナラバ、假ニ二百億ノ赤字公債ヲ
發行スルトスレバ、其ノ國民購買力ハ四百
億ニナリマス、之ヲ貯蓄其ノ他消費規正等
ニ依リマシテ抑ヘルトシテモ、尙且ツソコ
ニ莫大ナ購買力ガ生起セザルヲ得ナイノデ
アリマス、隨テソレヲ抑ヘル爲ニハ購買力
ニナル前ニ、卽チ其ノ源泉ニ於テ抑ヘルベ
キデアルノデアリマス、シテ見レバ直接稅
ニ於テモ此ノ決戰態勢ノ要請上特ニ配意ス
ル必要ガアツタノデハナイカト云フコトガ
第一點デアリマス、ソレカラ所謂應能原則
ニモ色々新シキ意味ハ加ハツタデアリマセ
ウケレドモ、尙且ツ現在ニ於テモ財政政策
上重要ナ原則デアルコトハ御說ノ通リデア
リマス、ソコデ御尋ネ致スノデアリマスガ、
此ノ戰時下、殊ニ大東亞戰爭ノ勃發以來ト
云フモノハ戰力增强ノ劃期的要請ニ策應シ
テ高能率企業ニ對シテハ凡ユル生產ガ集中
シテ居リマス、隨ヒマシテ玆ニ利潤ガ非常
ニ增嵩シテ居ル、更ニ財產ノ戰時下ニ於ケ
ル自然增價ト云フコトヲ考ヘラレマシテモ、
殘存企業體、或ハ有產階級層ニ相當ノ租稅ノ
負擔力ガアルト思フノデアリマス、然ルニ
他ノ一面ニ於キマシテハ計畫經濟或ハ重點
產業ノ結果トシテ、或ハ祖先傳來ノ職ヲ失
ヒ、又產ヲ傾ケ、サウシテ負擔力ガ非常ニ
減ツタモノガアリマシテ、玆ニ戰時下ニ於
ケル貧富ノ懸隔ト云フヤウナ社會政策的考
慮ハ別ト致シマシテモ、應能原則ガ戰爭財
政ニ於テ特ニ必要デアルナラバ、或ハ新シ
イ意味ニ於キマシテモ、此ノ戰時下ニ於テ
負擔能力ノ增强サレタル者ニ租稅ヲ負擔サ
セルト云フコトハ非常ニ必要ナコトデハナ
イカ、其ノ意味ニ於テ今度ノ增稅ニ於キ
マシテモ一息入レルデナクシテ、直接稅ニ
付テモ亦特ニ配意スベキモノデアツタト考
ヘラレルノデアリマス、更ニ租稅負擔ノ公
平ノ原則カラ申シマシテモ、又新シイ理念ガ
加ハツタノデアリマスガ、ソレハ私ノ考ヘ
ニシテ間違ヒナイトスルナラバ、戰時下ニ
於キマシテ何人モ戰爭ニ依ツテ利得スベカ
ラズ、或ハ戰時下ニ於ケル戰爭利得ニハ自
ラ限度ガアルノデハナイカト云フコトデア
リマス、卽チ私ノ考ヘヲ率直ニ申シマスト、
戰時下ニ於テ一方ニ於テハ非常ナ犠牲ヲ受
ケル階層モアリ、又他方ニ於テハ非常ニ戰
爭ニ惠マレテ利得ヲシ、之ヲ奢侈的生活ニ
費消スル階層ガアルトスルナラバ、是ハ社
會正義上カラ申シテモ、戰時下ニ於ケル擧
國態勢ノ精神的抵抗力ヲ增强致ス上カラ申
シマシテモ、甚ダ問題ト思フノデアリマス、
現實ニ今日ノ經濟社會ヲ見マスルト貧富ノ
懸隔ハ次第ニ甚シクナリ、更ニ一面ニ於キ
マシテハ非常ニ利得シ、然モ戰時下ニ於テ
好マシカラヌ消費ヲヤツテ居ル者ナキニシ
モアラズ、或ハ他ノ一面ニ於キマシテハ非
常ニ日常ノ生活ニ困窮シテ居ル者サヘモア
ルノデアリマスカラ、社會正義、或ハ戰時
國家財政ノ要請カラ考ヘマシテモ、直接稅
ノ方ニ於テモ亦考ヘルベキデナカツタデナ
イカト云フコトガ考へラレルノデアリマス、
更ニ間接稅ハ、直接國民一般ニ對スル大衆
的ナ課稅デアリマス、併シ國民ノ購買力ト
云フノハ決シテ一般的デナイノデアリマシ
テ、購買力ハ或ル階層ニハアルガ、或ル階
層ニハナイ、或ハ國民大衆ノ家庭ノ生活ニ
於キマシテ餘裕ガアルヤウニ見ヘマシテモ、
所謂過剩ノ購買力デナイ場合モアリ得ルノ
デアリマス、卽チ高イカラ買ヘナイノダ、
或ハ戰時下ニ於ケル時局認識上買ハナイノ
ダト云フヤウナ場合ガアリマシテ、兎モ角モ
國民購買力ト、其ノ購買力ノ均霑ト云ヒマス
カ、ソレハ別ナノダト云フコトガ考ヘラレマ
ス、更ニ又長期大消耗戰下ニ於キマシテハ、
國民大衆ニ對シマシテハ、間接稅ハ特ニ考
慮スベキモノガアルノデハナイカ、卽チ消
費規正ノ責任ハ寧ロ低所得ノ者ニ對スルヨ
リモ、高所得ノ者ニ負ハスベキデハナイカ、
ト言ヒマスコトハ勞働ノ生產性ヲ增强スル爲
ニ、或ハ人口ノ增加、或ハ幼兒、小兒ノ精神
的肉體的健康ヲ保持スル爲メ、或ハ技術確
保ト云フヤウナ意味カラ致シマシテ、間接
稅ヲ更ニ國民大衆ニ負擔セシムル爲メ其ノ
消費規正ノ責任ヲ背負ハスト云フコトハ、固
ヨリ最近ニ於キマスル貯蓄ノ增加、昨年ニ
於キマシテ二百十三億ノ貯蓄ノ增加ヲ致シ
テ居ル、或ハ又物品稅、遊興飮食稅等ノ非
常ナ增收ヲ致シテ居ル現狀カラ考ヘマスレ
バ、其ノ必要ナルコトハ能ク分リマスケレ
ドモ、尙且ツ高所得者ニ對シマシテ消費規正
ヲ要求致シ、稅ノ負擔ヲ更ニ增加スルト云
フコトハ必要デハナイカ、斯樣ナ意味カラ
致シマシテ、直接稅ヲ御配意スベキデナカ
ツタカト云フコトガ私ニハ考ヘラレルノデ
アリマス、更ニ思想戰ト云フコトハ目ニモ
見エズ、或ハ耳ニモ聞エマセヌケレドモ、
總力戰ノ一翼トシテ洵ニ重要ナ要素デア
リマス、思想戰ニ破レマシテ或ハ國家ガ滅
ビ或ハ弱マツタノハ、古今東西其ノ例ニ乏
シクナイノデアリマス、思想戰ハ現下我ガ
國ニ於キマシテモ極メテ重要デアリマスガ、
併シ私ハ外カラ所請五列的ニ入ル我ガ國民ノ
思想攪亂ト云フコトハ、日本人ガ眞ニ日本
精神ヲハツキリ把握致シ、日本人的自覺ヲ
持ツテ居ルナラバ、ソレハ大シテ問題デナ
イト思ヒマスノデ、此ノ思想戰ノ問題ニ付
テハ、寧ロ內カラ日本精神、日本人的自覺
ヲ動搖サスト云フヤウナモノヲナクスルコ
トガ必要デアラウト思フノデアリマス、卽
チ思想惡化ノ原因ヲ國內ニ於テ作ラヌト云
フコトガ必要デアラウト思ヒマスガ、ソレ
ニハ大イニ國民精神ノ强化、日本人的自覺
ヲ把握サスト云フコトガ必要デアリ、或ハ
失業者、或ハ又最低國民生活ノ保障性ノ如
何、或ハ收入ノ如何、或ハ年齡ト云フコト
ヲ能ク勘案致シマシテ、宜シク措置スルト
云フコトモアリマスケレドモ、此ノ戰時下
ニ於テ社會的不正義ヲ現出セシメヌト云フ
コトニ重大ナル問題ガアルト思ヒマス、卽
チ一方ニ於キマシテハ、國民中生活上困難
シテ居ル者ガアルニモ拘ラズ、戰爭ニ依ツ
テ少數ノ者ハ利得シテ居ル、而モ其ノ利得
者ガ國家ノ恩惠ニ浴シ、或ハ其ノ利得ガ戰
爭ノ結果デアルニモ拘ラズ、其ノ點ヲ把握
シテ居ラナイ、又刻下喫緊ノ要務ナル生產
力ノ增强ニ對シマシテモ、其ノ使命ガ十分
ニ果サレテ居ラナイト云フコトヲ見ルナラ
バ玆ニ社會正義上戰爭ニ依ツテ惠マレナ
イ者、或ハ犧牲ノ、或ハ負擔ノ大キナ者ハ
ナント考ヘルカト云フコトヲ考ヘマスルナ
ラバ、私ハ今度ノ增稅ニ於キマシテモ、ヤ
ハリ間接稅ヲ增徵スルト云フコトモ意味ガ
十分ニアリマスケレドモ、直接稅ニ於キマ
シテモ尙且ツ增徵ノ手ヲ打ツベキデアツタ
デハナイカ、斯ウ思フノデアリマス、斯樣
ナ觀點カラ致シマシテ、本年度ノ增稅計畫ニ
直接稅ニ觸レテ居ラレヌト云フコトニ對シ
マシテハ、御說明ヲ承リマシテ之ヲ諒ト致
シテ居リマスケレドモ、尙ホ私ハ今後此ノ
問題ニ付テ特ニ御配意ヲ煩ハシタイト思ヒ
マスノデ、今是等ノ問題ニ付キマシテ御所
見ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=8
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009・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 此ノ貯蓄ハ源泉デト云フ
コトデアリマスガ、實ハ二百億以上ニ上ル
貯蓄ハ源泉デナケレバ出來ナイノデアリマ
ス、所得ガアツタモノヲ消費ニグル〓〓廻
ハシテ置イタナラバ結局貯蓄ハ出來マセヌ、
出來テモソレハ何十億ト云フ僅カノモノデ
アリマス、現在源泉ニ移リツツアリマス、
併シ全部源泉ト云フ譯ニハ參リマセヌ、先
ヅ源泉ナラバ軍需工業ヲ主トシタ會社デゴ
ザイマスガ、是ハドウシテモ會社ニハ經理
統制令其ノ他デ、一方カラ言ヘバ緩イ、
方カラ言ヘバヤカマシイト言ツテ居ル內部
資金ノ蓄積ニ努メテ居ル、配當ト勞務員等
ニ對スル支拂ハドウシテモ已ムヲ得マセヌ、
ソコデ又源泉ニ貯蓄ヲサシテ居ル、ソレガ
又全部源泉デ取ラレテ、生活トカ-ソレ
ガ食料品ノ供給業者其ノ他日常品ノ供給業
者ニ對シテ拂フ、是ハ或ル程度ノ循環ハ已
ムヲ得ナイ、其ノ循環ノ過程ヲ急速度ニ細
クシテ行クノガ戰時經濟テアル、ソレガ細
クナラナケレバ斯ウ云フ大キナ貯蓄ハ出來
マセヌ、ソレハ御說ノ如ク源泉ニ努メテ居
リマスルシ、又現在非常ニ急速ニ其ノ方向
ニ參ツテ居リマス、是ハ事變前ノ年ニ二十億、
十億時代ノ貯蓄ト全然其ノ樣相ヲ異ニ致シ
テ居リマス、尙ホ今年ノ間接稅デアリマス
ルガ、先般ノ御質問ニナリマシタ時ニ御答
ヘ申上ゲマシタガ、或ル意味デ直接的間接稅
ト申シテモ宜シイト思フ、普通ノ昔ノ〓念
的ナ生活必需品ヲ主トシテ、而モソレニ均
一稅率ヲ課ケル、此ノ間接稅トハマルデ內
容ガ違ヒマス、節約不可能ナモノハ殆ド
一ツモ課カリマセヌ、サウシテ大體節約可
能ナモノニ課カルヤウニナツテ居ル、私ハ
人ガ所得ニ應ジテ假ニ消費生活ニ向ヒマス
ナラバ、殆ド是ハ擔稅力ニ應ズルニ近イ
間接稅ダト思ヒマス、偶〓ソレニ向ヒマセヌ
人ハ、所得ガアツテモ大體貯蓄ノ方向ニ向
ヒマスノデ、相當好イ作用ガ其ノ方面ニナ
ス譯デアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ從
來ノ生活必需品ヲ主トシテ課ケル所ノ、而
モ一律稅トハ全然私ハ性質ヲ異ニシテ居ル、
斯ウ云フ觀點ガ實ハ稅務技術的ニ見マシタ
良心カラ致シマシテモ、直接稅ト相竝ンデ
進マナイデ、其ノ障碍ヲ一ツ私ノ信條デハ
除去シテ居ルノデアリマス、尙ホ戰時利益
ノ大ナルモノニ付キマシテハ、現在マデノ
稅法ニ於キマシテモ、所得稅ノ累進率ガ相
當大キイモノガアリマス、又臨時利得稅モ
相當大キイモノガ課カツテ居リマス、其ノ
他船舶、鑛業權等ノ賣買ニ依ツテ得マシタ
利益ニモ課カツテ居リ、是ハ相當ナ程度ニ
現在行ツテ居ル譯デアリマス、然ラバソレ
デ宜シイカ、必ズシモ私ハソレデ滿足ハシ
テ居リマセヌガ、一面相當ナ程度ニ參ツテ
居リマスシ、又時局ノ影響ニ依ツテ所得上
氣ノ毒ナ立場ニアリマスル年齡關係ナドニ
致シマシテモ、是ハ戰時下デ世ノ中ガ進ン
ダコトデアリマスカラ、昔ノ稅法ニ見ラレ
ナイ相當ナ多種類ノ臨時施設モ成立ツテ居
ルヤウデアリマス、ソレデ大體昨年ノ增稅
ハ一昨年ノ秋ノ間接稅ト大體步ヲ合ハセル
モノデアリマスガ、聊カ兩方ノ權衡デ見ル
ト直接稅ニ賴リ過ギル、昨年ノ增稅マデノ
直接稅、間接稅ノ比率カラ行キマスト、日
本ガ一番直接稅ノ割合ガ多イ、而モ其ノ間
接稅タルヤ往々ニシテ酒稅ナド-酒稅ハ
昨年無等差デ、砂糖ナドヲ主ニシタ以外ノ
入場稅、物品稅、遊興飮食稅ト云フ非常ナ
擔稅力ニ應ズル面、直接稅的ノ意味ガ入ツ
テノ割合デアリマス、舊來ノ間接稅、直接
稅ノ割合カラ言ヘバ直接稅ガ多イ割合デア
ルト思フ、其ノ意味ニ於キマシテ本年考ヘ
マシタコトハ、本年ノ增稅ガ直接稅的間接
稅デアル、例ヘバ煙草ノ葉卷ハ五十圓ガ百
二十五圓、金鵄ノ如キ場合モ多イノデアリ
マスガ、是ハ相當ナ開キデアリマス、サウ
云フ點ト私共ハ昨年ノ直接稅增稅ガ新タナ
ル所得層ニ隨分廣ク向ヒマシテ、一方ハ家
族控除等相當大キナ特典モアリマス、五人
家族ガアレバ月十五圓モ免稅ニナルヤウナ
コトデアリマスルノデ、相當增稅ガアツテ
モ所得稅ヲ納メヌヤウナ方法ヲ講ジテ居リ
マスガ、多數ノ所得階層ニ、而モ少額ノ層
ニ隨分向ツテ居ル狀況デアリマス、是等ハ
一度モ稅ヲ納メタコトモナイト云フ人ガ初
メテ稅ヲ納メル、增稅ノ仕方モ大幅デアリ
マス、大體釣合カラ申シマシテモ永久ニ其
ノ儘デ參ルト云フコトナラバ問題ガアルカ
モ知レマセヌガ、是ハ又色々施策ノ機會ハ
年々アルコトデアリマスカラ、只今是ガ國
民ノ負擔ヲ不公平ニシテ我慢出來ナイト云
フ程度ノモノデハナイト私ハ思フ、今後モ
增稅ハドウシテモアルコトデアリマス、サ
ウ考ヘマスト、サウ云フ所得層ニ又增稅ヲ
スル、又日本ハ直接稅ヲ增收シマスル時ニ
少額所得ニ增稅シマセヌケレバ殆ド增稅ノ
效果ガナイ、葉卷五十圓ガ七十五圓モ上ツ
タノハ販賣數量ガ少イノデ、依然ト煙草ノ
値上モ金鵄ノ値上ノ增收ノ部分ニ依ツテ居
ル、多額所得者ニウント課ケテモ、是ハ租
稅額デハ幾ラモナイ、ドウシテモ直接稅ノ
增稅ト言ヘバ所得ノ比較的少イ階層ニ向ヒ
マス、是等ノ人々ノ感ジハドウデアリマス
カ、率直ニ申シマシテ非常ニ複雜ナ國家組
織的生活ト云フコトニハ慣レナイ人ガ、
商賣スレバヤレ原料ノ統制、販賣價格ノ
統制、ソレカラ帳面ヲ付ケナケレバナラヌ、
組合ガ出來タ、モウ何ト言ヒマスカ袢天一枚
着テ呑氣ニヤレタモノガ急ニ「カラー」ヲ付ケ
「ネクタイ」ヲ付ケテ、帽子ヲ冠ツテ靴ヲ穿
クト云フヤウナ、總テノ營業方面ガサウナ
ツテ行ク、是ハ巳ムヲ得ヌコトデアリマス
ガ、ヤレ防空ガアル、何ガアルト云フヤウニ
非常ニ生活ニ對シテ複雜性ヲ加ヘテ、ソレ
ガ皆新ラシイコトナノデス、從來ナイ觀念ノモ
ノヲ皆植付ケラレテ實行シテ行カナケレバナ
ラヌ、サウ云フ問題ニ付テハ國家的ニ新シイ
コトヲヤルノデアリマスカラ、指導ニ立ツ役人
ヤ其ノ他ノ人モ慣レナイ、サウ云フ風ニ行違ヒ
ガアル、何カト非常ニ今日國民生活ノ上ニ
負擔ガアルト思フ、是ハ我慢シテ戴カナケ
レバナラヌ、サウシテ大藏省ノ仕事トシマ
シテモ稅金ヲ出シテ貰ハナケレバナラヌ
貯蓄モヤツテ貰ハナケレバナラヌ、貯蓄モ
是ガ非常ナ意識ノ發達シタ所ニハ一元的デ
宜イノデアリマスガ、中々物ハサウ行キマ
セヌカラ、簡易保險、郵便年金、國債、債
劵ト云フヤウニ是ハ中々多元的ニナリマシ
タ、之ヲ從來ノ庶民階級カラ見マシタナラ
バ實ニ複雜デアル、是ハ戰爭ニ必要デアル
ト言ハレルカラ默ツテ居ルガ、サウデナケ
レバウルサイト云フ狀態デアル、ソコデ去
年稅金ガ課ツテ來タ、是ハ高イ稅金ダト思
フ、本年ハ又貯蓄ハ餘計ヤレ、稅金ハ餘計
上ゲタ、サウ云フ場合ニ私ハ一ツデモ整理
シタイト思フ、サウスレバ直接稅、間接稅ノ
問題ハ率直ニ申上ゲマシテ、一年拔キマシ
テモ大シテ差支ナイト思フ、全ク前ニ申シ
マシタヤウナサウ云フ觀點デ本年ハオ休ミ
ニ致シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=9
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010・藤本捨助
○藤本委員 稅ノ負擔モ公債ノ消化モ國民
勤勞、而シテ國民ノ貯蓄ニ之ヲ俟タナケレ
バナラヌノデアリマス、國民大衆ノ稅負擔
或ハ公債ヲ買フト云フコトニ付テハ、時局
認識ノ結果ト致シマシテ自ラ消費規正ヲ致
シテヤツテ居リマスガ、高所得者ノ場合ヲ
考ヘマスナラバ、固ヨリサウ云フ場合モア
リマセウケレドモ、中ニハ貯蓄形態ノ變化
ニ過ギナイノガ多イノデアリマス、卽チ預
金ヲ出シテ稅ヲ拂フ、或ハ預金ヲ出シテ公
債ヲ買フト云フコトガアリマシテ、是ハ貯
蓄形態ノ變化ニ過ギナイ、決シテ消費規正
ノ結果デハアリマセヌ、是ガ時局上考ヘナ
ケレバナラヌ點デアリマス、私ハ玆ニ高所
得者而モ高所得ノ中デ消費的ニ支出サレル
部分ノ小サイ方程其ノ傾向ガ多イト思フノ
デアリマス、隨ヒマシテドウシテモ斯ウ云
フ階層ノ人ニモ大イニ消費規正ヲヤツテ貰
ハナケレバナラヌト云フ觀點カラ致シマシ
テ、自發的ニ出來ヌモノナラバ、强制貯蓄
デヤル、或ハ巷間ニモ强制貯蓄ノ必要ヲ說
ク者ガアリマス、既ニ英國ニ於テ强制貯蓄
ヲ採用致シ、米國ニ於テモ最近大統領ノ〓
書ニ於テ强制貯蓄ヲ言ツテ居ルノデアリマ
スガ、併シ强制貯蓄ニ付テハ可否色々論ガ
アリマシテ、直チニ贊成シ兼ネルコトモア
リマスケレドモ、旣ニ俸給、賃金等ノ支拂
ニ於キマシテ一部公債デ渡ストカ、或ハ法
人ノ利益ヲ社内留保スルト云フコトハ强制
貯蓄デアリマス、其ノ他色々考ヘサセラレ
ルコトガアリマスガ、此ノ强制貯蓄ト云フ
コトニ付キマシテ此ノ際大藏大臣ハ如何ニ
御考ヘニナツテ居ラレルカ、巷間ニ於テハ
ヤル必要ガアルト云フ說モ相當識者ノ間ニ
モアリマス、或ハヤツテハイカヌト云フ說
モアリマスノデ、此ノ際私ハ大藏大臣ニ御
所見ヲ承ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=10
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011・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 一口ニ强制貯蓄ト申シマ
スノハ、今ノヤウナ御考ヘノ觀點トハ違ツ
テ、稍〓其ノ意味ヲ明カニシナケレバナラヌ
コトガアルト思ヒマス、私ハ强制貯蓄ハヤ
ラナイト云フコトヲ前カラ申シテ居リマス、
其ノ意味ハ法律ニ依ル强制貯蓄ヲヤラナイ、
法律ニ依ツテ强制スルコトヲヤリタクナ
イ、之ヲモウ少シ細カク申シマスト、般
ノ所得層ニ入リマス金ニ付テソレヲヤラナ
ア、其ノヤラナイ理由ヲ申シマスト、私ハ
相當實際ニ付テモ考ヘテ居ル、昨年度約六
十億ノ租稅ヲ取リマス時ニ、日本ニ於テモ
何十年間ノ經驗ヲ經タル徵稅機關ヲ備ヘ、
相當ナ經費ヲ以テヤツタ、ソレデモ不完全
ダト云フ話モアリマスガ、兎ニ角何十年ノ
經驗ヲ經タ徴稅機關ヲ持ツテ居ル、其ノ機
關ノ構成タルヤ何百年若シクハソレ以上フ
泰西ノ歷史經驗ヲ移シテ居ルモノデアル、
而シテ租稅理論ハ數百年間ノ發達ヲ見テ居
リ、一ツノ學問ヲ成シテ居ル、サウ云フ下
ニ於テ法律デ是ダケハ必ズ取ルノダ、之ヲ
納メナケレバ滯納處分ガ出來ルノダト云フ
ヤウナ體制ニ於テ、六十億七十億取ルノニ
中々苦情ガ多クテ無理ガアル、然ルニ此ノ
貯蓄ノ問題デ、六十億ノ三倍モ四倍モノ貯
蓄ヲヤル、而モサウ云フ貯蓄ハ日本デ初メ
テノ經驗デアル、世界的ニモ初メテノモノ
デアル、何等機構ノ構成モ其ノ目的ノ爲ニ
出來テ居ラナイ、偶〓、前カラアル機關ヲ利用
シテ其ノ目的ヲ達スル爲ニ法律デ强制シタ
ラドウ云フコトニナルカ、是ハ出來ナイコ
トデアル、假ニ想像致シマシテモ東京ノ町
內會ノ事情カラ考ヘテモ、何デ割當テルカ、
是ガ巧ク行カヌト云フ方面カラ見レバ、市
民稅デモ實情ニ副ハナイ、所得稅ニ於テモ
實情ニ副ハヌノデハナイカ、其ノ通リデア
リマス、同ジ收入ガアリマシテモ、其ノ家
ノ家族ノ數、家族ノ中ニ病人ガアルカナイ
カ、又其ノ病氣ノ程度デモ違ヒマス、〓育ヲ
受ケサセナケレバナラヌ學資ノ要ル大キ
ナ、大學ヤ專門學校ニ行ク子供ガアルカナ
イカ、中等學校ニ行ク子供ガ何人居ルカ居
ナイカ、是デモ違ヒマセウ、又家ニ空地ガ
アツテ野菜ヲ作ルダケノ餘地ガアルカナイ
カ、是デモ違ヒマセウ、所得ガ同ジダカラ
ト云ツテ、同ジモノヲ負擔スルナドト云フ
譯ニハ到底行キマセヌ、ソレヲ無理ガナイ
ヤウニヤルニハ淺ク取ルヨリ外ナイ、ダカ
ラ稅ハ六十億デモ苦情ガアルノデス、ソコ
デ淺ク取ルヨリ外ニナイ、貯蓄ノ强制ヲソ
レヨリ强クヤツタナラバ大變ナコトニナル、
其ノ稅ヲ取ツタ上ニ二百三十億ヤラウ、之
ヲ法律デ以テオ前幾ラ納メナケレバナラヌ
ト云フコトニヤツタナラバ大變ナコトダト
思フ、ソンナ認定ヲスル力ノアル者ハ、私
ハ日本國中ニ殆ドナイト思フ、ソレデハド
ウシテ行クカ、ソレダケノ購買力ヲ吸收シ
ナケレバナラヌ、ソレデ私ハ愛國心ニ愬ヘ
テ居ルノデアリマス、部分的ニハ色々ナコ
トガアリマスガ、昭和十五年以來ソレデヤ
ツテ、日本國民ハ皆實行サレテ居ルノデア
リマス、ソレヲ强制ナドシタラ破壞デアリ
マス、所ガ農村デハ割合隣保消化ノ步合ニ
付テ苦情ガ少イト云フノハ、長ク一〓ニ
居ツテ近隣付合ヒヲシテ居ルカラ、オ互ヒ
ノ事情ガ分リマスガ、東京ナドハ、私等ノ
經驗デモ何十年居リマシテモ、隣ノ主人ト
話ヲシタコトモナイト云フヤウナ生活ヲシ
テ居ル、ソレガ今日戰時下ノ要請デ急ニ色々
ナ隣保組織ガ出來マシテモ、ウマク行カナ
イノハ初メカラ當リ前デアル、併シ其ノ內
ニ御互ヒニ氣心モ知リ、家庭ノ事情モ分リ、
又隣組、町內會ニ於テ世話ヲスル人ガ熱心
デアリ、且ツ行屆イタ人デアルナラバ、段
段其ノ事情ガ分ツテ來テ、市民稅ト云フヤ
ウナモノニ比較シテモ、アスコノ家庭狀態
デハ是ハ無理ダ、ココハ市民稅トシテハ此
ノ位ダガ、息子サンガ重工業ニ雇ハレテ行
ツテ收入モ增シテ來タ、此ノ狀態ナラモツ
トヤツテ貰ツテモ宜イ、軍需工場へ行ツテ
此ノ位ヤツテ居ルガ、親掛リデ遊ンデ居ル
時ヨリモ經費ガ大シテ掛ラヌカラト云フナ
ラモツトヤツテ貰フ、ソンナコトガ段々分
リ東京ナドハ僅カ數年デアルガ、町內會
長サン隣組長サンノ行屆イタ所デハ現實ニ
ソレガ出來テ行クカラ、每月々々ノ貯蓄ノ
成績ヤ、隣保消化ノ成績ヲ見テモ拔群ニ良
イ、少クトモ苦情ガアルト云フコトガ少イ、
之ヲ法律デ强制スルト、何ト考ヘマスカ、
官僚統制ガ惡イト言フガ、其ノ通リデアル、
法律ニ書ク時ニハドウシテモ一律ニナル、「エ
ー」ノ人、「ビー」ノ人ノ事情ヲ一々調ベテ行
クト云フ譯ニモ行カヌ、ソレガ今ノ法律規
則デアリマシテ、ソレガ色々ノ苦情ノ種ニ
ナルノデアリマス、併シ私ハ方法ニ依ツテ
ハソレモ要ルト思フ、私ハ鹽ノ配給ニ付テ
モ色々苦情ノ多イコトヲ聞イテ居ル、專賣
局デ色々ナ計畫ヲ立テ、其ノ立テタモノヲ
紙ノ上デ見レバ一通リ成ツタヤウデアル
ガ、是ハ今マデ各人ガ鹽ヲドレダケ消費スル
カ、鹽ナドハ、他ノ酒ヤ砂糖ト違ツテ、無駄
ニ消費スル人ハアリマセヌガ、ソレデモ使
ヒ方ハ皆違フ、從來ノ實績ガ個別的ニハツ
キリ分ラヌ上ニ、其ノ實績ナルモノガ果シ
テ正當ナリヤ否ヤモ分ラヌ、ソレヲ此ノ專
賣局出張所ノ管內ハ、是ダケダカラ斯ウスル、
紙ニ書イタモノガ何枚モ何枚モアツテ、ソレ
ハ一應立派ナモノガ出來ルガ、之ヲ一ツノ
村ナリ町ナリニ當嵌メル時ニハ中々巧ク行
カヌモノガ多イ、ソレガ時間的ニ人別的ニ
巧ク行カヌ、ソレデ今本院ニ議席ヲ持ツテ居
ラレル或ル方ニ御願ヒシテ、サウ云フ行キ方
ヲ離レテ一々ノ町ナリ村ナリ部落ナリ、下カ
ラ配給計畫ヲ考ヘテ、其ノヤリ方デドウナ
ルカ、是ハ私見デスガ、サウシテヤツテ貰
フヤウニ考ヘテ居リマス、私ハ貯蓄ナドハ
ドウシテモ其ノ行キ方デ行クヨリ仕方ガナ
イ、ソレデモウ略^2五年ノ歷史モアルノデ、
其ノ間熱心ニ而モ上手ニヤラレタ爲ニ非常
ニ苦勞少クシテ、巧イ成績ヲ擧ゲテ居ル人
ガ多イカラ、サウ云フ方々ニ一面全面的ニ
色々御話スルコトモシ、又サウ云フ方々ノ
實驗ヲ他ノ人ニ移シテ、少シデモ空イテ居
ル時間ヲ以テ他ノ組合ヤ何カヲ指導シテ貰
フト云フヤウナ意味デ、サウ云フ指導員ノ
養成ト云フコトニ旣ニ手ヲ着ケテ居ルノデ
アリマス、サウシテ極メテ個別的ニ剴切的
ニ行ク方法ニシタイ、サウナリマス時ニ、
ヨク權力問題ガ起リマス、熱心ナ町會長ナ
ドハ何カ權力ガ欲シイ、ドウシテモ譯ノ分
ラヌ人ガアルノデ、何カナイトイカヌト云
フコトデアルガ、ソコハ政府ノ考ヘデハ
サウ云フ個人的裁量、個別的ニ決定スルマ
デノ執行權ノヤウナモノヲ付ケルト、又弊
害モ非常ニ恐ルベキモノダ、ソレデ其ノ町
會長ナドニハ非常ニ御氣ノ毒ダガ、ヤハリ
前線デ突貫スルノト同ジコトデ、一囘ヤツテ
駄目ナラ二囘デモ三囘デモヤツテ貰フヨリ
外ナイ、サウスレバ相手モ日本人デアルカラ
何囘デモヤレバ其ノ內ニ分ルデアリマセウ、
又ソレデ分ツテ行ツテ居ル實績モアリマス、
是ハ結局サウ云フ精神的基礎ニ基イテ個別
的ノ考ヘヲ入レテ行クヨリ外ナイ問題デア
ルト私ハ考ヘテ居リマス、是ハ此ノ大キナ貯
蓄ガ出來ナケレバ直グ戰時經濟ガ保テナイ
ト云フ大問題デアルガ、五箇年間ノ實驗ニ於
テハ先ヅ每年略、所要ノ目的ヲ達シマシテ、今
マデ戰費ニ一厘ノ不自由モ掛ケズ、國家ノ
眞ニ必要トスル生產力擴充資金ニ困ルコト
モナク、通貨其ノ他ノ狀態モ此ノ大東亞戰
下ニ極メテ平靜ニ進ンデ居リマス、或ル意味
ニ於テ今日マデハ此ノ狀況ハソレデ差支ヘ
ナク行ツタ、而モ躍進段階ヲ見マシテ、昭
和十一年ガ、事變前ノ最高ノ國民貯蓄ノ成績
デアリマシタガ、二十七億デアリマス、其ノ
前ハ二十億足ルカ足ラヌカデアリマス、ソレ
ガ昭和十三年ニハ七十三一億幾ラニ躍進致シ、
サウシテ漸次增加致シマシタ、ソコデ今度
ノ大東亞戰爭下ノ需要ニ應ジ得ルカ得ナ
イカト云フコトニ付キマシテ、今マデハ行
ツタケレドモ、大東亞戰爭ニナツタラモウ
行カナイカト云ヘバ、一年數箇月ノ經驗デ、
是モ大體行クト云フ非常ナ躍進デアリマス
ガ、從來ノ方法ノ延長デ之ヲヤリ得テ居ル
ノデアリマス、私ノ唯獨斷デ是デ宜イト申
上ゲル譯デモナイト思フガ、「ドイツ」ナド
デモ非常ニ强制ト云フコトヲ避ケテ居リマ
ス、「アメリカ」ハ今度强制ヲ、ドウ云フ方
なぁ
法デヤルカ分リマセヌガヤルト言ヒマス、
ㄱイギリス」ナドノ租稅納付式ノヤリ方モア
リマスガ、是ハヤハリ違フヤウデ、昨日モ
一寸申上ゲマシタガ、ドウシテモ日本ハ最
終ノ所マデ十分ニ資金ノ吸收、貯蓄ヲ上ゲ
ナケレバナリマセヌカラ、法律的ニ云ヘバ
非常ナ無理ハ出來マセヌノデドウシテモ淺
クナリマスカラ、假ニ明年二百五十億ナラ
二百五十億、三百億ナラ三百億ヤリマス時
ニ、百五十億位ハ强制デ之ヲヤリ得ルト致
シマシテモ、一番大事ナ其ノ先ノ百億ナリ
百五十億ハ强制デハイカヌト思フ、ソレデ
行ツタラ大變ダト思ヒマス、而モソレダケ
デ濟マヌノデアリマシテ、一タビ金ニ不自
由シタ時ニハ出シ得ナケレバナリマセヌ、
不幸ガアツタラ、又病氣ガアツタラ其ノ時
ノ金ガ要ルカラ、ソレハ預ケナイデ置ク、
預ケタラ出セヌカラト云フノデハ伸ビナイ、
ドウシテモ其處マデ行カナケレバナラヌ
ガ、强制シテ置ケバ、サウ云フ場合ノ引出
シト云フコトニ法的統制ヲ加ヘナケレバナ
ラヌ、サウナレバ誰ガ病氣ニナツタカラ幾
ラ出シテ吳レト云フ願書ヲ拵ヘテ、何處カ
ノ役所ニ持ツテ行ツテ認可ヲ受ケナケレバ
ナラヌシ、其ノ病氣ガ長引ケバ又認可ヲ受
ケナケレバナラヌ、ソレガ葬式デモ出スコ
トニナレバ又認可ヲ受ケナケレバナラヌ、
コンナコトヲシテ强制シテ貯蓄ヲヤルベキ
デハナイ、是ガ私ノ大體ニ於テ法的ノ强制
ニ依ラナイト云フ理由デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=11
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012・藤本捨助
○藤本委員 昨年十二月三十日ノ日銀ノ發
行高ハ七十四億數千万圓、前年度ニ比ベテ
十二億餘万圓ノ增加デアリマス、公債消化
ハ九割六分二厘デアリマス、隨ヒマシテ三
分八厘程度ノ不消化デアルトスルナラバ
年末ニ於キマシテモ金融ハ五、六億圓程度
ノ增加デ宜カツタノデハナイカト思フノデ
アリマスガ、ソレニモ拘ラズ十二億增加シ
タ、玆ニ私ハ先程申上ゲマシタヤウニ、高
所得者ノ中ニハ貯蓄形態ノ變化ニ依ツテ公
債ヲ買ヒ、或ハ銀行關係ニ於キマシテモサ
ウ云フコトガアツタノデハナイカト考ヘル、
サウ云フ意味デ御尋ネシタノデアリマス、
且又巷間ニ於キマシテハドウシテモ是ハ强
制貯蓄ヲヤルヨリ外ナイノデハナイカト云
フ考ヘガアリマス、又今御述ベニナリマシ
タヤウニ、强制貯蓄ハ資金ノ退藏ニナルノ
デアリマスカラ、一〓ニ贊成致シ兼ネルノ
デアリマスガ、幸ヒニ詳細ナ御說明ヲ戴イ一
テ洵ニ結構デアリマス、最後ニ物價問題ハ
ドウナサルカト云フ問題デアリマス、是ハ
固ヨリ商工大臣ノ御主管デアリマスケレド
モ、物價ノ騰貴ハ財政計畫、國民生活ニ重
大ナル關係ヲ持ツト思ヒマス、所定ノ計畫
資金ガ費消サレタト致シマシテモ、物價騰
貴ヲスレバ其ノ費消サレタ額ト云フモノハ、
本當ノ生產力增强デナクシテ、勞力、資材
價格ノ値上リヲ含ムニ過ギナイ、眞ノ生產
力擴充デハゴザイマセヌ、デアリマスカラ
大藏當局ニ於カレマシテモ物價問題ト云フ
モノハ極メテ重要デアルト申サネバナリ
マセヌ、而シテ商工當局ニ於キマシテモ價
格停止令或ハ公定價格、或ハ昨年末デアリ
マスカ、統一原價計算制度ノ採用等、兎ノー
角モウ物價政策ニ於キマシテハ相當ノ手ヲ
打タレタガ今後更ニドウスルカ、低物價政
策ヲ堅持スルト云フ御聲明ハ結構デアリマ
スガ、一體ソレハドウシテヤルカ、所管ハ
商工省ノ問題デアリマシテモ、其ノ指導的
ノ立場ニ立タレルノハ、ヤハリ大藏大臣デ
ナクテハナラヌ、此ノヤウニ思ヒマスノデ、
私ハ此ノ際、今後モ低物價政策ヲ如何ナル
方法ヲ以テ堅持サレルカト云フコトニ付キ
マシテノ御所見竝ニ物價政策ニ對スル御協
力、或ハ御指導ノ問題ニ付キマシテ、御所
見ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=12
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013・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 御話ノ如ク私ハ主管大臣
デハアリマセヌガ、極メテ緊密ナ關係ヲ持
ツテ居リマス、主管大臣デナイ私ヘノ御尋
ネデアリマスカラ、寧ロ私ハ個人的ノ考ヘ
ヲ率直ニ申上ゲタラ宜イト思ヒマス、大シ
夕支障ハナイト思ヒマスケレドモ、其ノ意
味デ申上ゲマスガ、或ハ商工大臣ニ御迷惑
ニナルトイケマセヌカラ、速記ヲ御止メヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=13
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014・松村光三
○松村委員長 速記ヲ止メテ·····
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=14
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015・藤本捨助
○藤本委員 補助金ハ十七年度ハ十七億ト
記憶致シテ居リマスガ、十八年度ハ二十億
ヲ突破致スノデハナイカト思ヒマスルガ二
重價格政策、補助金政策、是ハ確カニ惡循
環ノ懸念ナシトシナイノデアリマシテ、只
今御懇篤ナル御說明モアリマシタガ、尙ホ
物價ノ水準ヲ維持スル、併シ之ニ付キマシ
テモ生產力增强ノ見地カラ再檢討ノ要ガア
ルヤニモ考ヘラレルノデアリマスカラ、何
卒今後御檢討、御善處ヲ煩ハシタイノデア
リマス、御尋ネノ點ハ以上ニ盡キルノデア
リマシテ、語ヲ盡サズ極メテ恐縮デアリマ
シタガ、御懇篤ナル御說明ヲ戴キマシテ感
謝ニ堪ヘマセヌ、尙ホ一言附加ヘタイノハ、
國民ガ此ノ時局ヲ非常ニ認識致シマシテ、
極力消費規正、消費節約ヲ致シテ或ハ租稅
ノ負擔、或ハ公債ノ消化ニ御奉公致シテ居
リマスガ、此ノコトハ固ヨリ政府ニ於カレ
マシテモ其ノ率先垂範ノ必要ガアルノデハ
ナイカト斯ウ私ハ考ヘマス、惟フニ國家ノ
中ニ於キマシテ、政府コソ最モ大ナル所ノ
消費者デアリマスカラ、假ニ十八年度ニ
於テ九十九億九千五百万圓ノ一割消費ガ出
來ルト致シマスナラバ、其ノ消費額ハ九億
九千餘万圓ニナリマス、假ニ一分出來タト
致シマシテモ、九千九百餘万圓ニナルノデ
アリマシテ、實ニ偉大ナル消費節約デアリ
マス、デアリマスルカラ、大藏大臣ニ於カレ
マシテハ、今マデモ率先垂範、政府消費ノ
節約ヲナサツテ下サツタコトハ實ニ感佩ニ
堪ヘナイノデアリマスガ、今後トモ國民ノ
消費規正ニ對シマシテ、政府自ラ率先シテ
消費規正ヲ致サレ、以テ國民ニ御垂範ヲ賜
リタイト存ジマス、私ノ質問ハ是デ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=15
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016・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ御話洵ニ御尤モデ
アリマシテ、國民ニハ增稅ニ次グ增稅ヲ以
テシテ、高率ノ課稅ヲ致シ、又貯蓄增加ノ
爲ニ國民ニ非常ナ御努力ト御苦心ヲ願ツテ
居リマシテ、其ノ金ガ國家收入トナリマシ
テ、十七年度ニ於キマシテハ、國民所得ノ
半額以上、二百四十億ノ金ヲ國家ハ使フ譯
デアリマス、尙ホ生產擴充、是ハ民間資本
ノ系統デアリマスガ、六十億モ使ヒ、三分
ノ二ハサウ云フ方面ニ國民カラ絞リ出シタ
金ヲ使フ譯デアリマスカラ、生產擴充ニ當
リマス人々モ、政府モ共々本當ニ國民ノ汗
ト膏デ出來夕金デアルト云フコトヲ眞ニ考
ヘナケレバナラヌコトヲ痛感致シテ居リマ
シテ、機會アル每ニ其ノ趣旨ニ於キマシテ
浪費ニナラナイヤウニ努メテ居リマスルガ、
尙ホ今後モ御言葉ニ從ヒマシテ十分ニ努メ
テ參リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=16
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017・九鬼紋七
○九鬼委員 大體今一般方針ニ付テノ詳細
ナ御答辯デ了解致シマシタガ、話題ニ上ラ
ナカツタ方面ニ付テ一言御伺ヒヲ致シタイ
ト思ヒマス、簡單ニ結論ダケ申上ゲマス、
年々ノ增稅ニ依ツテ所謂社會ノ中堅層トデ
モ申シマセウカ、其ノ層ノ生產力擴充ニ對
シテ投資スル投資力ガ年々微弱ニナツテ行
クノデハナイカト云フコトヲ心配スルノデ
アリマス、一方ニ於テハ勿論全力ヲ擧ゲテ
納稅ニ御奉公申ス念ニハ變リナイノデアリ
マスガ、一方ニ於テドウモサウ云フ心配ヲ
感ズルノデアリマス、此ノ傾向ヲ辿ツテ行
クト、所謂社會構成上ノ形ニ於テ何カ危險
ノ形ノヤウナモノガ出來ルノデハナイカト
云フ感ジモ持ツノデアリマス、或ハ杞憂ニ
過ギナイカモ知レマセヌガ、此ノ傾向ヲ見
ルト、ドウモサウ云フヤウナ感ジモナキニ
シモアラズデアリマス、其ノ點ニ付テ私ハ
大臣ノ御心持、又何カ對策デモオアリニナ
レバ、御所見ヲ拜聽シタイト思ヒマス、申
上ゲタイコトハマダアリマスガ、時間ノ關
係デ結論ダケ申上ゲマシテ、大臣ノ御所見
ヲ御伺ヒ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=17
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018・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 所得稅其ノ他直接稅ノ課
稅ニ付キマシテハ、ソレ〓〓所得ノ程度ニ
應ジマシテ、綜合課稅等ニ於キマシテハ累
進率モ決メテ居ル譯デアリマスカラ、課稅
ノ上カラシテ御話ノヤウナ所謂中產階級ト
申シマスカ、是ノ蓄積力ガ少クナルト云フ
點ハ、課稅ヲ原因トシテハ私ハナイヤウニ
存ジマス、唯是ハ御質問ノ御答ヘトシテハ
當ラヌカモ知レマセヌガ、私ハ課稅問題以外
ニ考ヘタイノハ、所謂中產階級ノ中ニハ
俗ニ云ヘバ洋服ヲ着テ文化的ニ生活ヲスル、
消費生活形態ガ稍〓文化型ニナリ過ギテ、收
入ノ割合ニ支出ガ多イ、斯ウ云フヤウナ觀
點カラ、資力ガ薄イト云フ弊ト申シマスカ、
ソレハ日本ノ中產階級、殊ニ俸給生活者階
級ナドニ共通的ニ見ラレル現象デハナイカ
ト思ヒマスガ、是等ハ戰時的ニ斯ウ云フ際
ニオ互ヒニ自肅シマシテ一ツ生活其ノモノ
ヲ改善シテ行ク、斯ウ云フ風ナ考ヘ方ニ寧
ロ進ムベキデハナイカト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=18
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019・九鬼紋七
○九鬼委員 以上デ質問ヲ打切ルコトニ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=19
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020・松村光三
○松村委員長 他ニ此ノ際大臣ニ特ニ御質
疑ノ方ガゴザイマスレバ御發言願ヒマ
ス-川崎巳之太郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=20
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021・川崎巳之太郎
○川崎(巳)委員 一昨日貴族院ニ於キマシ
テ、丸山鶴吉君ガ敵國在留日本人ノ保護ニ
付テ質問ヲ致シマシテ、外務大臣カラ明快
ナル答辯ガアリマシタ、其ノコトハ一昨日
ノタ刊ニ出、又「ラジオ」デ放送シ、現在戰
爭中、米英兩國ニ留マツテ居ル幾十万ノ同胞
ガ直接間接ニソレヲ聽イテ嘸カシ心强ク思
ツテ居ルコトト存ジマス、殊ニ大臣御出身
地デアル所ノ廣島縣ヲ初メトシ、山口、福
岡、靜岡、愛知、岡山、新潟、鹿兒島、沖繩
等ノ縣ニ響ク喜ビハ大シタコトデアルト思
ヒマス、之ニ付キマシテハ又來ル九日共立
講堂デ大演說會ガゴザイマシテ、野村前駐
米大使、有田元外務大臣、其ノ他ニ名士ガ
出テ、在外同胞激勵ノ話ガアリマス、ソレ
ハ相俟ツテ敵地ニ居リマス同胞ノ喜ビニナ
リ、同時ニソレ等ヲ出シテ居ル內地ノ人ノ
喜ビモ大變ナコトト思ヒマス、併シナガラ
敵國在留日本ノ救護ニ關スル救護事業ヲ行
フ上ニ兎モ角費用ヲ要スルノデゴザイマシ
テ、外務大臣モ其ノ費用ノ一端ノコトハ
アノ壇上カラ述ベラレテ居リマスケレドモ、
此ノ際內外ニ於ケル敵國在留人及ビ其ノ關
係者ノ安心、慰安ヲ確實ニスル爲ニ、財政
元デアル大藏大臣ノ心組ミ、熱意等ヲ伺ツ
テ置クコトガ出來レバ大變幸福ニ存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=21
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022・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 敵國在留中突然戰爭ガ起
リマシテ、敵國カラ歸ルニ歸レズ、敵國ニ
抑留サレテ居リマス人ノコトハ、私ハ想像
スルダニモ御氣ノ毒ダト存ジテ居リマス、
是ハ前ノ外務大臣ノ時デアリマスルガ、議
會ノ初メノ外交演說ノ中ニモ、ソレニ觸レ
タ言葉ガ出マシテ、其ノ原稿ヲ見マシタ時ニ、
私ハ非常ニ喜ンダノデアリマス、今囘谷外
務大臣ノ外交演說ニモ言及ヲシ、尙ホ只今
御述ベニナリマシタヤウニ、貴族院ニ於ケ
ル質問ニモ御答辯ガアリマシタ、其ノ答辯
ハ獨リ外務大臣ノ答辯デナク、政府ノ答辯
デアル、是ハ申上ゲルノモ何デアリマスガ、
アノ答辯ノ前ニ打合セガアリマシタ、全ク
私ハ同ジ意見デアルト申シテ居ツタノデア
リマス、打合セガナクテモ、無論政府ノ意
見デアリマス、現在ハ事務的ニ申セバ、敵
國抑留中デアリマシテ、何トモ仕樣ガナイ、
唯第三國ヲ通ジテ交涉ヲスル途ガアル、ソ
レニ對シテノ必要ナ費用ハ豫算ニ計上致シ
テアリマスガ、尙ホ其ノ爲ニ財產上ノ損失、
其ノ他ノ問題ニ關シマシテハ、今後敵國カ
ラモ無論要請ガアルノデアリマシテ、同時
ニ國家ト致シマシテ、之ニ最善ノ努力ヲ盡
シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=22
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023・川崎巳之太郎
○川崎(巳)委員 洵ニ有難イ思召シダト存
ジマス、然ルニ谷外務大臣ガ御述べニナツ
タ其ノ費用ハ割合ニ少イヤウニ私共感ズル
ノデス、是ハ外務省カラ要求シテ大藏大臣
ノ御承諾ヲ得タモノト思ヒマス、十七年度
ノ追加豫算ニ二百五十三万圓、十八年度百
万圓、後ハ追ツテト云フヤウニ簡單ニ御述
ベニナツテ居リマス、詳シイコトハマダ外務省
ノ豫算ヲ拜見シマセヌカラ分リマセヌガ、若シ
サウダトスルト如何ニモ金額ガ少イノヂヤナ
イカト云フ感ジヲ催シマス、英米人デ日本ニ
在留ナリ抑留サレテ居ル者ノ數ハ極メテ少ク、
東京近所ニ男子ノ部分ガ三十人、女子ノ部
分ガ三十人、合セテ百名ニ足ラナイト云フ
僅カナ有樣デアリマス、之ニ反シテ敵國ニ
居ル日本人ハ實ニ多イ、「ハワイ」ニ十四万、
米國ニ十二万、「カナダ」ニ二、三万人、「メキ
シコ」ニ何千人「ブラジル」ニ二十三万人「チ
リー」ヤ其ノ途中ノ方々ニ居リマス、又濠洲ニ
ハ何千人、「インド」ニハ三千人、東印度ニ居
ツタノガ送ラレテ方々ニ監禁サレタリ何カ
シテ、此ノホンノ一部分ダケガ交換サレテ
還ツテ來タ譯デアリマス、左樣ニ見マスル
ト少クトモ大雜把ニ數ヘテ約六十万位アル、
ソレニ對シテ三百万圓トスルト一人ノ割合
ガ少イ、特ニ米國ノ方へ赤十字、若シクハ
「ローマ」法王廳ヲ經テ見舞金カ、小遣錢カ、
醫療費カ通信費ト云フヤウニ分ケテヤリマ
シテ、換算シテ向フノ金デ遣ツテシマヘバ三
百万圓ト云ツタ所ガ百万「ドル」ニナラナイ、
是デハ如何ニモ少イ、聞ク所ニ依リマスル
ト「ドイツ」國ノ如キハアレ程ノ大キナ戰爭ヲ
シテ居リナガラ、蘭領印度カラ引揚ゲテ來
テ、東京等ニ臨時在留サセテ置ク者ニー
是ハ色々變ツテ居ルカモ知レマセヌガ、初
メノ內ハマアヨク來タト云フコトモアリマ
シタデセウ、一人五十圓カラ百圓ヤリ、家
族ノ多イ者ニハ一月千圓位ヅツノ手當ヲヤ
ツテ居ツタ者モアツタト云フコトデアリマ
ス、之ニ比ベルト餘リニ少イヤウニ思フノ
デアリマス、差當リノ應急費デゴザイマス
ガ、其ノ點私ノ解釋ガ間違ツテ居ルカドウ
カ御說明願ヒタイト思ヒマス、米國、「ブラ
ジル」等ニ居ル多クノ日本人ハ、身體ハ抑留
サレテ居ル、或ハ收容所ニ溜メラレテ居ル
バカリデナク、生業ヲ營ンデ居タ場所カラ
身體ヲ移サレテ、太平洋沿岸ニ居ツタ人間
ハ或ハ「ロッキー」山ノ中カ、其ノ先ノ方ヘ
監禁サレテ居ル、全ク着ノ身着ノ儘デ連レ
ラレテ行ツテ、其ノ留守ニナツタ家、農園、
其ノ他器物、財產ト云フモノハ公賣ニ付
シテ叩賣リニシテ居ル、例ヘバ一千「ドル」ノ
モノヲ狎レ合デ以テ安ク處分シテ居ル··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=23
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024・松村光三
○松村委員長 川崎君ニ御願ヒシマスガ、
成ベク簡潔ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=24
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025・川崎巳之太郎
○川崎(巳)委員 是等ニ對シテハ、敵國人
ノ財產管理法デ大分敵國人ノ財產ヲ抑ヘテ
居ラレルヤウデアリマスガ、サウ云フモノ
ヲ利用シテ何カ根本的ニ先々ノ活用ヲナサ
ル御考ヘガアルカドウカ、此ノ邊モ伺ヒタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=25
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026・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 〓ロレンソ·マルケス」ニ於
テ日本カラハ二艘、「アメリカ」カラハ一艘シカ
來テ居ナイ、米英カラ歸ツテ來夕日本人ハ、
コツチノ船ニ乘込ンデ、向フノ船トハ比較
ニナラヌ程立派ナ船ヲ二艘モ寄越シテ吳レ
テ實ニ有難カツタト云フ話デアリマスガ、コ
ツチカラ二艘ノ船ニ乘ツテ行ツタ米英人ナ
ドハ部屋割ガ出來ナイデ苦情ヲ言ツテ爭
ヒヲ起シタト云フコトデアリマス、サウシ
テ日本ガ如何ニ彼等ヲ手厚クシテ吳レタカ
ト云フコトニ感謝シタト云フコトデアリマ
ス、是ハ獨リアノ時交換船デ歸ツタ人達ノ
ミニ對スル話デハアリマセヌデ、寧ロアノ
時ノ交換船デ歸ラナカツタ人達ガドレダケ
氣ノ毒デアルカト思フ位デ、之ニ對シテ私
共ノ氣持ニ於テモ手厚クシテヤラナケレバ
ナラヌ、今ノ御話ニ對シマシテハ、日本カ
ラオ金ヲ送ツテヤレバ向フガ待遇ヲ好クシ
テ吳レルト云フナラバ、オ金ヲ送ツテモ宜
イケレドモ、向フハ向フノ都合デヒドイ目
ニ遭ハセテ居ルノデ、オ金ヲ送ツテモソレデ
待遇ヲ好クシテヤツテ吳レナケレバ仕樣ガ
ナイ、ダカラ唯送金ヲスレバ宜イト云フモ
ノデハナイ、又現狀デハ實ハ送金モ中々困
難デアリマス、敵國ノ方デスカラ、之ニド
ウシテ金ヲ送ルカ、「ドイツ」ト日本トハ協
定ガ出來マシタガ、「ドイツ」モ中々大變デア
リマスカラ、「スイス」トカ、中南米ニ送ル
金ヲ「ドイツ」カラ日本ニ立替モ出來ナイノ
デアリマス、ソレモ出來ルダケヤリマスガ、
今申上ゲタヤウニ金ヲ送ツテヤツタラ待遇
ヲ好クシテ吳レルカト云フト、今サウ云フ
關係ニナイ〓思フ、必要ナ金デ役ニ立ツ金
ナラ、假令日本ノ經費ハ少ウゴザイマシテ
モ豫備金デモ出シマスガ、コツチカラ金ヲ
送ツテ日本人ノ待遇ヲ好クシテ吳レト言ツ
テヤツテモ、決シテサウ云フコトハシナイ、
申シテ見レバ金ハ取放シデ、却テ向フノ戰
力增强ノ方ニデモ使ツテ、待遇ハ好クシナ
イト云フコトニナレバ、ドウモ困ル、向フ
ハ同情ガ少イ爲ニ待遇ヲ好クシナイノデア
ツテ、經費ガ少イト云フ關係デハナイト思
ヒマス、尙ホ財產等ノ損害ニ對シマシテハ、
實ハ先刻申上ゲマシタガ、此ノ損害ニ對シ
テハ今金錢ヲ交付シマシテモ何トモナリマ
セヌシ、是ハ戰後能ク調査致シマシテ遺憾
ノナイヤウニ致シタイ、ソレハ結局敵國カ
ラ賠償ヲ取ルト云フコトニナリマスガ、ソ
レニハ今敵產トシテ管理シテ居ルモノガ其
ノ賠償ノ土臺ニナル、是ハ戰後ノ外交交渉
ノ結果決マルコトデアリマシテ、今申上ゲ
ルノハ早過ギマスシ、ドウナルカ分リマセ
ヌガ、一應ハサウ云フ筋合ニナルト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=26
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027・松村光三
○松村委員長 大臣ニ對スル質疑ガ他ニゴ
ザイマセヌナラバ、此ノ程度ニ致シテ置キ
マシテ、川崎君カラ主稅局長ニ對スル質疑
ヲ繼續願ヒマス-川崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=27
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028・川崎巳之太郎
○川崎(巳)委員 今度ノ新ラシイ物品稅ニ
於テ羽根蒲團ヲ加ヘタノハ、ドウ云フ趣旨
デサウ云フ風ニナツタノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=28
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029・松隈秀雄
○松隈政府委員 物品稅ニ於キマシテ羽根
蒲團ハ羽毛製品ニナツテ居ル譯デアリマス、
第一種甲類ニ屬シマシテ、從來モ五割ノ課
稅ニナツテ居ルノデアリマスガ、今囘ハ第
一種ノ中ノ稅率ガ八割ニ上リマシタ、隨テ
羽根蒲團ニ對スル課稅モ五割ガ八割ニナツ
タト云フ譯デアリマス、尙ホ今囘ノ改正案
ニ於キマシテ、「羽毛製品」ノ上ニ「羽毛」ト云フ
ノヲ加ヘテ居リマスガ是ハ羽根蒲團ノ形ニ
マデハシマセヌケレドモ、羽毛ヲ紙ノ袋等
ニ包ンデ居リマシテ、ソレニ蔽ヒヲ掛ケル
ト大體羽根蒲團ニナルヤウナ恰好デ賣ツテ
居リマス、今マデ取扱上サウ云フ羽毛製品
ニ非常ニ近イモノハ羽毛製品ト見做シテ課稅
シテ居リマシタガ、多少疑問モゴザイマスノデ、
ソレヲ加ヘル意味ニ於テ今囘羽毛ト云フモ
ノヲ追加シテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=29
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030・川崎巳之太郎
○川崎(巳)委員 唯ノ羽毛ノ方ハ從來無稅
デアツタガ、今度ハソレニ對シテ八割掛ケ
ルト云フコトニナツタノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=30
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031・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今モ申上ゲマシタヤウ
ニ、從來單純ナ羽毛デアリマシタナラバ課
稅外デアリマス、併シ羽毛デモ袋等ニ入リ
マシテ僅カノ加工デ羽根蒲團ニナルヤウナ
モノハ取扱トシテ羽毛製品ト見做シテ課
稅シテ居ツタノデゴザイマスカラ、其ノ間
ノ差ハ大シテアリマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=31
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032・川崎巳之太郎
○川崎(巳)委員 當業者ガ非常ニ心配シテ
居ル所ニ依リマスト、今綿モ「スフ」モ殆ド得
難イ時ニ、是ハ綿ノ代用トシテ必要ナ品
ダ、サウシテ是ハ雞ナドノ羽毛デナクシテ、
市場ニ出シテ居ルノハ水禽ノ羽毛ダサウデ
ゴザイマス、デアルカラ今マデソレヲ取ツ
タ爲ニ何處ガ困ルト云フノデハナイノダカ
ラ、ソレニ高イ稅金ヲ課ケテ代用品ノ途ヲ塞
グノハ、賢明ナル策デハナカラウト思フガ、
斯ウ云フコトヲ申シテ居ルノデゴザイマス
ガ、之ニ對シテハドンナ風ニ御考ヘニナリ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=32
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033・松隈秀雄
○松隈政府委員 物品稅ノ課稅對象トシテ居
リマスモノハ、大體ニ於テ奢侈的性質ガ相當
强ク、ソレヲ消費シマス場合ニ於テ相當擔
稅力アリト認メラレル方面デ消費スルモノ
ヲ狙ツテ居ルノデアリマシテ、羽毛ガ綿不
足ノ場合ニ於テ或ル程度綿ノ代用品ニナル
コトハ認メルノデアリマスガ、其ノ場合ニ
於キマシテモ、水禽ノ羽毛ト云フモノハ相
當値段ノ高イモノデゴザイマスノデ、サウ
云フモノヲ消費致スヤウナ場合ニ於キマシ
テハ、或ル程度擔稅力ガアルノデアリマス
カラ、之ニ對シテ課稅ヲスルコトガ、外ノモ
ノニ對シテ課稅致ス釣合上適當カト思フノ
デゴザイマス、其ノ場合ニ於キマシテモ、
同ジ羽毛ト申シマシテモ、雞ノ羽毛ニナリ
マスト非常ニ値段モ安イモノデアリマス、
ソコデマダ勅令案ヲ配付致シテゴザイマセ
ヌガ、勅令案ガ出マスレバ、羽毛ノ課稅ハ
最低限百刄當リ一圓ニ致シタイト今ノ所考ヘ
テ居ルノデゴザイマス、サウ致シマスト雞
ノ羽毛ハ全部課稅外、水禽ノ羽毛ハ大體ニ
於テ課稅ノ方ニ入ツテ參ルト思フノデアリ
マスガ、是ハ只今申上ゲマシタヤウナ相當
高價ナモノデアルカラ、ソレヲ消費致シマ
スル場合ニ於ケル擔稅力ガ推測サレマスノ
デ課稅致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=33
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034・川崎巳之太郎
○川崎(巳)委員 羽毛ノ課稅ニ依ツテドノ
位稅收入ガアル見込デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=34
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035・松隈秀雄
○松隈政府委員 羽毛製品又ハ羽毛ヲ用ヒ
タ製品ト致シマシテ、十七年ノ三月カラ八
月マデノ六箇月分ノ課稅價額ハ二十二万圓
ゴザイマスガ、是ハ製品ト、只今申上ゲマ
シタ羽毛ヲ袋ニ入レタト云フ程度ノモノト
一緒ニ入ツテ居リマスノデ、羽毛ダケノ數
字ハ一寸分リ兼ネマス、見込額ハ後程調ベ
テ御答ヘ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=35
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036・松村光三
○松村委員長 本日ハ是ニテ散會致シマス、
明日ハ御承知ノ通リニ午前中ダケデアリマ
スルノデ、尙ホ大臣ニ對スル質疑ノ通告者
ガ一松君、坂本君カラ出テ居リマス、午前
中デアリマスカラ質疑ノ通〓ノ委員ハ遲滯
ナク御出席下サランコトヲ特ニ御願ヒ致シ
テ置キマス、本日ハ是ヲ以テ散會致シマス
午後零時三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008113750X00519430205&spkNum=36
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