第83回帝国議会　衆議院　工業所有権法戦時特例案委員会　第2号　昭和18年10月28日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十八年十月二十八日（木曜日）午前九時十分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　作田高太郎君
  　　理事　泉國三郎君　理事　仲井間宗一君
  　　理事　林信雄君　理事　山本粂吉君
  　　　　小野秀一君　　　木下郁君
  　　　　清瀬一郎君　　　庄司一郎君
  　　　　田中藤作君　　　田村みのる君
  　　　　土屋源市君　　　中井一夫君
  　　　　仲西三良君　　　南雲正朔君
  　　　　信正義雄君　　　濱野清吾君
  　　　　松岡俊三君　　　宮崎一君
  　　　　南鐵太郎君　　　村澤義二郎君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　　　司法大臣　岩村通世君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　　　　司法次官　大森洪太君
  　　　　　司法省民事局長　齋藤直一君
  　　　　　司法省刑事局長　池田克君
  　　　　　　陸軍法務中將　大山文雄君
  　　　　　　海軍法務中將　尾畑義純君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　工業所有權法戰時特例案（政府提出、貴族院送付）
  　裁判所構成法戰時特例中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
  　戰時民事特別法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）
  　戰時刑事特別法中改正法律案（政府提出、貴族院送付）

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=0

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• 001・作田高太郎

  ○作田委員長　是ヨリ會議ヲ開キマス、本
  日ハ工業所有權法戰時特例案、裁判所構成
  法戰時特例中改正法律案、戰時民事特別法
  中改正法律案、戰時刑事特別法中改正法律
  案〓、以上ヲ議題ト致シマス、先ヅ裁判所構
  成法戰時特例中改正法律案外二件ノ政府ノ
  說明ヲ求メマス

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• 002・岩村通世

  ○岩村國務大臣　裁判所構成法戰時特例中
  改正法律案、戰時民事特別法中改正法律案
  及ビ戰時刑事特別法中改正法律案ノ提案ノ
  理由ハ、本會議ニ於キマシテ御說明申シマ
  シタ通リデゴザイマスガ、更ニ敷衍致シマ
  シテ其ノ改正理由ヲ御說明致シタイト存ジ
  マス
  司法部ニ於キマシテハ、曩ニ實施セラレ
  マシタ裁判所構成法戰時特例竝ニ之ト密接
  ノ關係アル戰時民事特別法及ビ戰時刑事特
  別法ノ運用ニ依リマシテ、戰時下ニ於ケル
  裁判檢察ノ運行ヲ的確迅速ニシ、以テ其ノ
  本來ノ機能ノ發揚ニ努力シテ參ツタノデア
  リマスガ、大東亞戰爭ハ、今ヤ苛烈ナル決
  戰連續ノ段階ニ入リマシテ、政府ハ斷乎國
  内態勢ノ强化方策ヲ樹立致シマシテ、國家
  ア總力ヲ擧ゲ益〓聖聖ノ目的ニ集中致シマス
  コトトナツタノデ、司法ノ部門ニ於キマシ
  テモ之ニ卽應シ、銃後治安ノ確保ヲ圖ルト
  共ニ、司法ノ一層敏活ナル處理ヲナシ、愈〓
  其ノ效果ヲ發揮スル爲メ是等三法律ニ必要
  ナル改正ヲナサムトスル次第デゴザイマス
  先ヅ裁判所構成法戰時特例ノ改正理由ニ付
  キ申述ベマスガ、今囘ノ改正ノ要點ハ次ノ
  三點デゴザイマス
  第一ハ、民事及ビ刑事ノ訴訟ニ付キ區裁
  判所ノ事物管轄ヲ擴張スル點デアリマス、
  民事訴訟ニ於キマシテハ、從來區裁判所ハ
  裁判所構成法第十四條ノ規定ニ依リマシテ、
  千圓ヲ超過セザル金額又ハ價額千圓ヲ超
  過セザル物ニ關スル請求ニ付キ裁判權ヲ有
  シテ居ツタノデアリマスガ、今回之ヲ擴張
  シ、二千圓ヲ超過セザル金額又ハ價額二千
  圓ヲ超過セザル物ニ關スル請求ハ、總テ區
  裁判所ノ管轄ニ屬セシメルノデアリマス、
  第二條ノ改正規定ガ之ニ當リマス、次ニ刑
  事訴訟ニ於キマシテハ從前ハ裁判所構成
  法第十六條ノ規定ニ依リマシテ、短期一年
  以上ノ懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ハ地方裁判所
  ノ管轄ニナツテ居リマシタ所、裁判所構成
  法戰時特例第二條ノ規定ニ依リマシテ、戰
  時竊盜、常習竊盜等ニ付テハ、之ヲ區裁判
  所ノ管轄トナシタノデアリマスルガ、今回
  更ニ其ノ範圍ヲ擴張シ、短期一年以上ノ有
  期ノ懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ヲモ區裁判
  所ノ管轄トナスコトニ致シマシタ、換言
  スレバ死刑又ハ無期ノ懲役若シクハ
  禁鋼ニ該ル罪ヲ除キ、、總テ區裁判所ノ管轄ト
  致スノデアリマス、但シ豫審ヲ經タルモノ
  ハ此ノ限リデハアリマセヌ、第三條ノ改正
  規定ガ之ニ當リマス、尤モ、後ニ述ベマス戰
  時刑事特別法中改正法律案ニ於キマシテ、
  區裁判所ノ管轄ニ屬スル事件ニ付キマシテ
  モ、檢事ハ事案ノ內容ニ照シ相當ト認メマ
  シタ事件ハ、之ヲ地方裁判所ニ起訴シ、地方
  裁判所ハ此ノ場合ニ於テハ必ズ自ラ裁判ヲ
  ナスベキ旨ノ規定ヲ新設セントスルノデア
  リマス
  第二ハ、民事及ビ刑事ノ訴訟ニ付キ全
  般的ニ控訴審ヲ省略シ、所謂二審制ヲ採
  用スル點デアリマス、民事訴訟ニ於キマ
  シテハ、裁判所構成法戰時特例第三條ノ規
  定ニ依リマシテ、賃貸借ニ基ク家屋ノ明
  渡强制執行ニ關スル訴訟等ニ付キ、刑事
  訴訟ニ於キマシテハ、同法第四條ノ規定ニ
  依リマシテ、戰時刑事特別法ノ罪、經濟事
  件ノ大部分、思想事件ノ一部等ニ付キ、何
  レモ第一審ノ判決ニ對シ控訴ヲナスコトヲ
  得ズ、直接上〓ヲナスコトヲ得ルモノトシ
  テ一部ノ訴訟ニ付キ二審制ヲ採用シテ居ツ
  タノデアリマスガ、今囘其ノ範圍ヲ擴張
  シ、民事及ビ刑事ノ訴訟ニ付キ全面的ニ二
  審制ヲ採用シ、第一審判決ニ對シテハ控訴ヲ
  ナスコトヲ得ズ、直接上告ヲナスコトヲ得
  ルモノト改メ、區裁判所ノナシタル判決ニ
  對スル上告ハ、總テ控訴院ノ管轄ニ屬セシ
  メルノデゴザイマス、第四條及ビ第五條ノ
  改正規定ガ之ニ當リマス、而シチ刑事訴訟
  ニ於テハ、旣ニ重大ナル事實ノ誤認ヲ以テ
  上告ノ理由ト致シテ居リマスガ、民事訴訟
  ニ於キマシテモ二審制トナリマスガ爲ニ、
  新ニ重大ナル事實ノ誤認ヲ以テ上告ノ理由
  トシヨウトスルノデアリマシテ、之ヲ戰時
  民事特別法中ノ改正規定トシテ提案スル次
  第デゴザイマス
  第三ハ、刑事ニ付キマシテモ抗〓裁判所
  ノ爲シタル決定ニ對シテハ更ニ抗〓ヲナス
  コトヲ得ザルモノトナス點デアリマス、裁
  判所構成法戰時特例第七條ノ規定ニ依リマ
  シテ、民事ニ付キマシテハ抗〓裁判所ノナ
  シタル決定ニ對シテハ更ニ抗〓ヲナスコト
  ヲ得ザルコトト相成ツテ居リマスガ、刑事
  ニ付キマシテモ民事ト同樣所謂再抗〓ハ之
  ヲ許サザルモノト改メルノデアリマシテ、
  第七條ノ改正規定ガ之ニ當リマス
  尙ホ以上ノ改正ニ伴ヒ必要ナル經過規定
  ヲ設ケ、改正法律案ハ、其ノ施行前裁判
  所ノ受理シタル訴訟ニ付テハ原則トシテ
  之ヲ適用致シマセヌガ、第四條及ビ第五條
  ノ改正規定ニ限リ、改正法律施行後ニ第一
  審ノ辯論ノ終結シタル訴訟ニ付テモ之ヲ適
  用スル旨ノ附則ヲ置イテ居リマス
  次ニ戰時民事特別法ノ改正理由ヲ御說明
  申上ゲマス、今囘ノ改正ハ先程申述ベマシ
  タ裁判所構成法戰時特例ノ改正ニ伴フ最小
  限度ノ手當ヲ致スモノデアリマシテ、其ノ
  主ナ點ハ二ツアリマスガ、其ノ第一ハ事實
  ノ誤認ニ關シテモ上告ヲ爲スコトヲ得ルモ
  ノト致シマシテ、且ツ上告審ニ於ケル事實
  審理ヲ認メントスル點デアリマス、裁判所
  構成法戰時特例中改正法律案第四條ニ依リ
  マシテ、民事訴訟ハ總テ二審制ト相成リ、
  控訴審ヲ省略致シマス關係上、所罰事實審
  ハ第一審限リトナル譯デアリマス、從來民
  事訴訟ニ於キマシテハ、刑事訴訟ト異リ、
  上〓ノ場合ニハ法令違背ノミヲ上告理由ト
  シテ認メテアツタノデアリマス、併シナガ
  ラ今囘ノ裁判所構成法戰時特例ノ改正ニ依
  リマシテ一般的ニ控訴審ヲ省略致シマスノ
  デ、判決ニ影響ヲ及ボスベキ重大ナル事實
  ノ誤認ノアルコトヲ疑フニ足ル顯著ナル事
  由ノ存スル場合ニハ、之ヲ上〓ノ理由トス
  ルコトガ出來ルモノト致シタノデゴザイマ
  ス、斯カル事由ガアル場合ニハ、勿論上告
  審デハ原判決ヲ破毀シ、事件ヲ原審ニ差戾
  シ、又ハ同等ノ他ノ裁判所ニ移送スルコト
  トナルノデアリマスガ、若シ上告審ニ於テ
  直チニ辯論ヲ開キ事實ノ審理判決ヲナスヲ
  適當ト認ムル時ハ、其ノ方法ヲモ執ルコト
  ヲ得ルモノト致シタ次第デゴザイマス、第
  十條ノ二及ビ第十條ノ三ノ改正規定ガ之ニ
  當リマス
  第二點ハ、裁判所構成法戰時特例ノ改正
  ニ依リ金額又ハ價額二千圓以下ノ訴訟ガ區
  裁判所ノ管轄ニ屬シマスノデ、訴訟物ノ價
  額ヲ算定スルコト能ハザル場合ニ、該訴訟ヲ
  地方裁判所ノ管轄トスル爲ニ、其ノ價額ヲ
  二千圓ヲ超過スルモノト看做シ、以テ民事
  訴訟法第二十二條ノ特則ヲ設ケタ點デアリ
  マス、第五條ノ改正規定ガ之ニ當リマス
  次ニ戰時刑事特別法ノ改正理由ヲ御說明
  申上ゲマス、戰時刑事特別法ハ、大東亞戰
  爭開始直後ノ情勢ニ對處スル爲メ、刑事ニ
  關スル實體及ビ手續ニ關スル規定ヲ整備
  シ、裁判所構成法戰時特例ト相俟チ、犯罪
  ノ豫防鎭壓及ビ刑事事件ノ敏速ナル處理ニ
  相當ノ效果ヲ擧ゲ來ツタノデアリマス、然
  ルニ戰局ノ苛烈化スルニ伴ヒマシテ、銃後
  治安ノ確保ハ益〓喫緊ノ要務トナリ、司法
  ノ職責モ亦愈〓重キヲ加へテ參ツタノデアリ
  マス、此ノ秋ニ當リ率先垂範スベキ官公吏
  等ニシテ、其ノ職ヲ瀆ス者尙ホ其ノ跡ヲ絕
  タナイノハ遺憾至極ノコトデアリマシテ、
  延イテハ國政ノ圓滑且ツ公正ナル運用ヲ妨
  グルノ虞ガアリマスルノデ、此ノ際綱紀ノ
  振肅ヲ圖ル爲メ、漬職罪ニ關スル刑罰ヲ加
  重整備スルノ必要ヲ痛感スル次第デアリマ
  ス、他方刑事手續ニ於キマシテモ、決戰段
  階ニ相應シク一層簡素强力ナルモノト致
  シ、的確敏速ナル裁判檢察ノ運用ニ依リマ
  シテ、銃後ノ治安維持ニ萬全ヲ期スルノ必
  要アリト存ズルノデアリマス
  改正ノ要點ハ四點デアリマス、其ノ一ハ、
  瀆職罪ニ關スル刑罰ヲ加重シ規定ヲ整備セ
  ントスルモノデアリマス、卽チ公務員ノ瀆
  職罪ニ對シテハ全般的ニ重刑ヲ以テ之ニ臨
  ムコトトシ、尙ホ官公署ノ職員ガ其ノ地位
  ヲ利用シ他ノ官公署ノ職員ノ職務ニ屬スル
  事項ニ關シ幹旋ヲナスコト、又ハナシタル
  コトニ付キ不當ノ利益ヲ收受シ、要求シ、
  又ハ約束シタル場合ニ於キマシテモ、之ヲ
  收賄罪トシテ處罰スルコトトシ、又公務ニ
  從事スル職員ハ法令ニ依ラザル場合ト雖モ
  之ヲ公務員ト看做シ、瀆職罪ノ規定ノ適用ア
  ルモノト致シマシタ、他方贈賄罪ニ付キマ
  シテモ、其ノ刑ヲ加重スルト共ニ、贈賄ヲ
  ナサシムル目的ヲ以テ金品ノ交付ヲナシ、
  又ハ情ヲ知リテ其ノ交付ヲ受ケタル者ヲモ
  處罰シ得ルコトト致シタ次第デアリマス、
  第十八條ノ二乃至第十八條ノ七ノ改正規定
  ガ之ニ當ルノデアリマス
  其ノ二ハ、略式手續ノ範圍ヲ擴張セント
  スルモノデアリマス、卽チ略式命令ハ罰金
  又ハ科料ノ刑ヲ科スル場合ニノミ認メラレ
  テ居ルノデアリマスガ、事案ノ內容單純ニ
  シテ犯罪ノ成立明白ナル場合ニ於キマシテ
  ハ、略式命令ヲ以テ一年以下ノ懲役若シク
  ハ禁錮又ハ拘留ノ刑ヲ科シ、更ニ竊盜、戰
  時住居侵入、常習賭博等特殊ノ罪ニ付キ右
  ト同樣ノ條件アル時ハ三年以下ノ懲役ヲ科
  シ得ルコトト致シ、以テ事件ノ一層敏活ナ
  ル處理ヲ圖ラントスルモノデアリマス、第
  二十九條ノ二乃至第二十九條ノ五ノ改正規
  定ガ卽チ之ニ當ルノデアリマス
  其ノ三ハ、刑事手續ニ於ケル簡易化ヲ圖
  ラントスルモノデアリマス、卽チ公判調書
  ニハ被〓人、證人、其ノ他ノ者ノ訊問及ビ
  供述ヲ記載シナケレバナラヌコトトナツテ
  居ルノデアリマスルガ、是ガ記載ヲ簡易ニ
  シ、其ノ供述ノ要領ノミヲ明確ニスルヲ以
  テ足ルモノトシ、尙ホ裁判所又ハ豫審判事
  相當ト認メタル場合ハ證人又ハ鑑定人ノ訊
  問ニ代ヘ書面ノ提出ヲナサシムルコトヲ得
  ルモノトナサントスルモノデアリマス、第
  二十二條ノ二及ビ第二十二條ノ三ノ改正規
  定ガ卽チ之ニ當ルノデアリマス
  其ノ四ハ、裁判所構成法戰時特例ノ改正
  ニ伴ヒ、必要ナル調整ヲナサントスルモノ
  デアリマス、卽チ裁判所構成法戰時特例中
  改正法律第三條ノ規定ニ依リマシテ短期一
  年以上ノ有期ノ懲役又ハ禁錮ニ該ル罪ニシ
  テ豫審ヲ經ザルモノハ、區裁判所其ノ裁判
  權ヲ有スルコトト相成リマスルノデ、是ガ
  運用ノ適正妥當ナルヲ期シマスルガ爲ニ、
  檢事事案ノ内容ニ照ラシ相當ト認ムル場合
  ニ於テハ、區裁判所ノ管轄ニ屬スル事件デ
  アリマシテモ、地方裁判所ニ公判ヲ請求シ
  得ルコトトシ、此ノ場合ニ於テハ地方裁判
  所ハ必ズ之ヲ審判スベキコトト致シマシタ
  尙ホ同改正法律第四條ニ依リ全般的ニ二
  審制ガ採用セラレマスノデ、辯護人ノ數
  及ビ選任時期ニ關スル戰時刑事特別法第二
  十條ノ規定ヲ全般的ニ適用スルコトト致サ
  ントスルモノデアリマス、第十九條及ビ第
  二十五條ノ二ノ改正規定ガ之ニ該ルモノデ
  アリマス
  以上ガ本法案ノ內容デアリマスルガ、尙
  ホ附則ニ於テ略式手續及ビ辯護人ノ選任ニ
  關スル改正規定ハ、本法施行前公訴ノ提起
  アリタル事件ニ付テハ、之ヲ適用セザルコ
  トト致サントスルモノデアリマス
  以上三法律案ノ大體ノ御說明ヲ申上ゲタ
  ノデゴザイマス、何卒愼重御審議ノ上、速カ
  ニ御可決アランコトヲ希フ次第デゴザイマ
  ス、尙ホ色々細カイ點ニ付テハ御質問ニ應
  ジマシテ御答ヘヲ申上ゲマス

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• 003・作田高太郎

  ○作田委員長　是ヨリ工業所有權法戰時特
  例案ノ審議ニ入リマス--別ニ討論ノ通〓
  モアリマセヌカラ、討論ヲ省略致シテ採決
  致シマス、原案ニ贊成ノ諸君ノ御起立ヲ願
  ヒマス
  〔總員起立〕

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• 004・作田高太郎

  ○作田委員長　起立總員、仍テ本案ハ原案
  ノ通リ可決致シマシタ、暫時休憩致シマス
  午前九時三十二分休憩
  午前十時三分開議

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• 005・作田高太郎

  ○作田委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マス、御諮リスルコトガアリマス、本案ニ
  對シマシテハ、質疑ノ通告ガ非常ニ多數デ
  アリマスルノデ、質疑ハ時間ヲ三十分トシ、
  其ノ順序ハ委員長ニ御一任ヲ願ヒマス、尙
  ホ委員諸君ニ於カレマシテハ質疑ノ重複ヲ
  極力オ避ケ下サルヤウ御願ヒ致シマス、又
  政府委員ニ於カレテモ直截簡明ノ御答辯ヲ
  煩ハシタイト思フノデアリマス、更ニ關
  聯質疑ハ原則トシテ之ヲナサナイコトニ御
  注意ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、以上
  御異議ハナイデセウカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

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• 006・作田高太郎

  ○作田委員長　ソレデハ左樣ニ決定致シマ
  ス是ヨリ質疑ヲ許シマス-中井一夫君

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• 007・中井一夫

  ○中井(一)委員　議事進行ニ付テ申上ゲマ
  ス、此ノ問題ニ付テハ質疑ニ入ル前ニ懇談
  會ヲ開クトカ、又質問ノ色々ナ方法等ニ付
  テモ御相談ガアルヤウニ承ツテ居ツタノデ
  アリマスガ、此ノ程度デ此ノ儘、御進ミニ
  ナリマスカ、出來得ベクンバサウスルコト
  ガ議事ガ順調ニ且ツ圓滿ニ行ク所以ダラウ
  ト思ヒマスガ、其ノ點ハドウ云フコトニナ
  ツタノデアリマセウカ

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• 008・作田高太郎

  ○作田委員長　御答ヘ致シマス、中井君ノ
  御注意ハ御尤モデアリマスガ、一應是デ進
  行致シマシテ、狀況ニ依リマシテ又御趣旨
  ノヤウナ方法モ執リタイト思ヒマス、中井
  君、質疑ヲ始メテ下サイ

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• 009・中井一夫

  ○中井(一)委員　私ハ順序ヲ他ノ方ニ御讓
  リ致シマシテ、後カラサセテ戴クコトニ致
  シマス

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• 010・作田高太郎

  ○作田委員長　デハ宮崎一君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=10

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• 011・宮崎一

  ○宮崎委員　現在重大ナル時局ニ際シマシ
  テ裁判手續ヲ簡素ニスルト云フコトノ必要
  ニ付テハ私共モ十分了解致シテ居ルノデア
  リマスガ、或ハ又色々ノ國內思想ノ問題等
  ニ付テモ此ノ度ノ改正ノ趣旨ハ十分了解致
  シテ居ルノデハアリマスケレドモ、最モ各
  方面ノ危惧ノ的ニナツテ居リマスノハ、何
  ト申シマシテモ略式手續ニ依ツテ自由刑ヲ
  科スル、是ハ當局ノ御說明ニ從へバ能ク分
  ルヤウデアリマスシ、又ソレニ對シテ異議
  ノ申立ハ出來ルノデハアリマスガ、實際ハ
  第一審ノ區裁判所ナラ區裁判所ニ於テ-現
  實ノ事實ハ、或ル事件ガアリマスト、是
  ハ已ムヲ得ナイ現狀デハアリマスケレドモ、
  警察ニ於テ被〓ヲ長イ間拘禁シテ置イテ、
  御拘禁ニナツタ儘デ檢事ガ大體ノ警察ノ調
  ベヲ基礎トシテ略式命令ヲ裁判所ニ對シテ
  要求スル、斯ウ云フコトデ、本人ハ多クノ
  場合ニ於テ辯明ノ時期ガナイノデアリマス、
  取調ベル方カラ云ヘバ、連絡ヲ取ラセナイ
  方ガ便利デゴザイマセウケレドモ、被疑者
  ノ方トシテハ可ナリ言ヒタイコトモアラウ、
  自分ハサウデハナイノダト申シタイコトモ
  アラウケレドモ、現在ノ事情ニ於キマシテ
  ハ殆ド辯明ノ機會ガ與ヘラレズシテ、其ノ
  儘略式命令ガ發セラレル、而モ略式命令ニ
  對シテ正式裁判ヲ抛棄シテシマフト云フコ
  トガ現在デモ可ナリ多イノヂヤナイカト思
  フノデアリマスガ、ソレガ自由刑ニ及ブノ
  ダト云フコトニ對シテ、非常ナ危惧ヲ一般
  大衆ガ持ツテ居ルノデアリマス、此ノ點ニ
  關シテモウ少シ-ソレデモ斯ウセネバナ
  ラヌノダ、斯ウ云フ譯ダカラ安心ダト云フ
  コトニ付テ一般大衆ガ諒解スル程度ノ御說
  明ヲ伺ヒタイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=11

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• 012・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今宮崎サンヨリ色々御
  質問ガゴザイマシテ、自由刑ニ付テ書面審
  理ノ上略式命令ヲ以テ裁判ヲスルコトハ、
  國民ガ危惧ノ念ヲ懷クノヂヤナイカト云フ
  御說明ガアリマシタガ、實ハ此ノ立案ニ付
  テモ其ノ點ハ色々考ヘテ見タノデアリマス、
  此ノ第二十九條ノ二ニ示シテアル通リ「事案
  ノ內容單純ニシテ犯罪ノ成立明白ナリト認
  ムル事件」ト云フ譯デゴザイマスカラ、苟
  クモ疑問ノアルヤウナ事件ニ付テハ、無
  論略式命令ノ請求ハ致サナイコトニスル積
  リデアリマス、尙ホ略式命令ノ請求ハ一應
  本人ニ說明シナケレバナリマセヌガ、本人
  ガ公判ヲ執リタイト云フモノニ付テハ、自
  由ニ公判ヲ執ル、斯樣ニ私共其ノ點ハ十分
  注意致ス積リデゴザイマス、非常ノ時期デ
  アリマシテ、イツ空襲等ガアルカモ知レヌ
  ト云フ場合ヲ豫想致シマスト、此ノ程度ノ
  コトハ書面審理ニシテ、成ベク裁判ノ迅速
  ヲ圖ルコトガ必要ダト云フコトデ、斯樣ナ
  規定ヲ設ケタ次第デアリマスカラ、何卒左
  樣御諒承ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=12

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• 013・宮崎一

  ○宮崎委員　只今ノ司法大臣ノ御話ノ趣旨
  ハ分ルノデゴザイマスケレドモ、斯ウ云フ
  ノデス、事件ガ簡單デ明瞭デアルカ否カト
  云フコトヲ誰ガ判斷スルカト云フト、今ノ
  勾留ノ更新ノ場合ノ如キ二箇月-是ハ理
  由ガアルト言ハレレバソレマデダガ、サウ
  云フ制限ハ實際ニ於テ最高ノ司法官或ハ司
  法當局ノ御考ヘノヤウニ參ツテ居ラヌノヂ
  ヤナイカト云フヤウナ心配ニ堪ヘナイノデ
  アリマス、此ノ點ハ十分ニ、今ノ立法ノ建
  前カラ實際ニ能ク御〓究願ヒマセヌト
  立法ノ趣旨ハ此ノ重大時局デ手續ヲ早クシ
  テ國民ノ新體制ヲ强化スルト云フコトデア
  ルガ、實際ノ場合ニハ其ノ趣旨ガ段々下ノ
  方ニ參リマスト非常ニ誤ラレルト云フコト
  ニナリ、或ハ最高ノ方ノ考ヘテ居ルコトガ
  現實ニハ出來ナクナツテ來テ、ソレニ對シ
  テ可ナリ力ガ加ヘラレルコトガアリマシテ、
  大〓ノ者ハアソコニ行ツタラ仕樣ガナイノ
  ダト云フコトデ泣イテ刑ニ服スルコトガア
  リ得ルノデアリマス、是ノ御說明ハソコニ
  盡キルノカモ知レヌ、又實際ノ取扱ニ付テ
  ハ幾ラデモ公判請求ノ機會ガアルト思ヒマ
  スケレドモ、今マデデモドウモサウ云フコ
  トガ可ナリアル、法規ノ上デハサウデアル
  ケレドモ、サウ云フコトヲシヨウモノナラ、
  アトデドンナ目ニ遭フカモ知レナイト云フ
  危惧ノ念ヲ持タセラレテ歸ツテ來ル人ガ可
  ナリ多イト云フコトガ事實ノ眞相デアリマ
  ス、是ハ私ノ考ヘデアリマスガ、本當ハ斯
  ウ云フヤウナ場合デアルカラ或ル程度マデ
  國家ノ權力ガ强クアルコトガ必要デアルガ、
  唯ソレガ度ガ過ギルト、其ノ法規ヲ解釋シ、
  本當ニ刑事關係ノ法規ヲ實際ニ執行シテ居
  ル者ハ巡査部長デアリ、又警察ノ一室デソ
  レガ行ハレル、サウシテソレガ本當ニハ國
  家ノ資格アル裁判官ノ名前ニ於テ其ノ略式
  命令ガ出ルノデアルガ、其ノ土臺全部ハ本
  當ハ若イ感情ノ强イ警察官ニ依ツテ行ハレ
  ル、日本ノ警察官ハ世界的ニ勝レテ居ルガ、
  現實ニ於テハ隨分烈シイコトガ行ハレルト
  云フコトノ爲ニ、事件ハ濟ンダガソレガ爲
  ニ裁判上ニハ現ハレナイガ、本人自身ノ一
  生ニ影響スルヤウナ飛ンデモナイコトガ起
  ル例ハ司法當局御承知ノ通リデアリマスノ
  デ、此ノ點ニ關スル實際ノヤリ方ニ付テハ
  十分ナル御用意ヲ〓ヒマセヌト、今マデノ
  略式裁判デサヘサウデアルカラ、之ヲ自由
  刑ニスルト云フコトニナルト可ナリ重大デ
  アルト思フノデアリマス、唯常習竊盗ナド
  ノヤウナ場合ニハ、斯ウ云フコトモ大シタ
  コトハナイト思フ、常習竊盜或ハ喰逃ゲヲ
  終始ヤツテ居ルヤウナ人間ハ殆ド牢ニ入ル
  コトヲ希望シテ居ルノデハナイカトモ思ハ
  レルノデ「ヘイ」ト言ツテ直グ行ツテシマフ
  カラ、アア云フ者ニハ宜イカモ知レマセヌガ、
  ソレト同ジヤウナ工合ニ無辜ノ良民ニ非常
  ナ强壓ガ加ヘラレル、左樣ナコトハ國家〓
  法規上ナイ筈デアルガ、現實ニ於テハ私共
  ガ言フニ忍ビザルコトガ隨分行ハレツツア
  ルト斷言シテハイケナイガ、ナイトハ言ヘ
  ナイト云フ現狀デアリマスノデ、此ノ點ニ
  付テハ只今ノ御說明デ趣旨ハ分ツテ居ルガ、
  十分ナル御注意ヲ願ハヌト非常ナ危險ガア
  ルト云フコトヲ一應申上ゲテ置キタイ、ソ
  レデ私ハ斯ウ思フ、實際判事サンノ方デ滿足
  ナサルカドウカ、是デハ刑事裁判ノ實際ニ
  起リ得ル事件ガ簡單ナラトカ明瞭ナラト云
  フコトハ、殆ド簡單ニシテ明瞭ニナツテシ
  マフ、本人ガ自白ヲ强要サレルノデスカラ、
  自白シテ居ルコトニナルト簡單ニシテ明瞭
  ダト云フコトデ濟ムガ、實際ノ事實ニ於テ
  サウデナイト云フコトガ儼トシテアルノデ、
  國民ガ之ニ對シテ非常ナ危惧ノ念ヲ持ツテ居
  ルノデス、ソレデ正式裁判ノ申立ヲ抛棄シ
  得ルト云フ規定ガ非常ニ危險ダト云フノデ
  ス、ソレハ現在ノ所、勝手ニ引ツ張ツテ行
  カナイ、本人ノ任意デ出頭シタノダト云フ
  ガ、誰モ任意ニ出頭ハ致シマセヌ、任意ニ
  出頭シテ警察ニ百日モ居ルト云フヤウナ物
  好キガ日本ニハ多イノデアリマセウカ、斯
  ウ云フ任意出頭ノ例モアルカラ、是ハ進ン
  デ抛棄シタノダト云フコトニナルノデハナ
  イカ、其ノ抛棄セシメルト云フ所ニ非常ナ
  危險ガアリマス、抛棄シ得ルト云フコトハ、
  抛棄シナクテモ宜イノダト言フガ、實際ハ
  サウセザルヲ得ナイコトニナル、例ヘバ被
  告ガ保釋ニナツテ歸ツテ來テ、君ハ今マデ
  ノ商賣ヲヤツタラ宜イデハナイカト言ハレ
  テモ、中ニ居ツテ當分商賣ヲシテハイカヌ
  ト言ハレタカラ困ツテモヤリマセヌト云フ
  場合ガ可ナリアルカラ、是ハ可ナリ强キ影
  響ガアリマス、故ニ抛棄シナクテモ宜イト
  言フガ、ソレハ斯ウ云フ大キナ高樓或ハ大
  キナオ屋敷ノ中デノ議論デ、一線ニ參ルト、
  抛棄スル、シナイハ自由ダト言ウテモ、實
  際ハ其ノ自由ト云フ餘地ハ少イノダト云フ
  コトヲ十分ニ御認識ヲ戴キタイ、尤モ抛棄
  スルコトヲ得ナイトスルノモ困難デアリマ
  セウガ、十分ナ御考慮ヲ拂ヒマセヌト、勝
  手ニ正式裁判ノ申立ヲシナイト云フコトニ
  サレテシマフ危險ガ非常ニアルト思フノデ
  アリマス、形式ノ議論デハナイ、實際ノ問
  題デ、今マデノ經驗カラ言ツテ非常ニ多イ
  ノデアリマスカラ、之ヲ心配シテ申上ゲテ
  居ルノデアリマス、何トカシテ之ヲ實際ニ
  弊害ヲ生ジナイヤウナコトニスル御考ヘガ
  アレバ結構デアリマス、理論トシテハ洵ニ
  其ノ通リダト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=13

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• 014・大森洪太

  ○大森政府委員　御答ヘヲ致シマス、先ヅ
  第一ニ略式命令ヲナシマスルヤ否ヤ、是ハ
  御承知ノ通リ區裁判所單獨ノ判事ガ之ヲス
  ルノデアリマス、デアリマスカラ區裁判所
  ノ判事ガ略式命令ニ附スベカラザル者ヲ附
  シタト云フコトニナルト、是ハ由々シキ大
  事デアリマス、隨テ私共此ノ點ニ最モ懸念
  ヲ致シマシテ、練達堪能ノシツカリシタ判
  事ヲ以テ此ノ略式係ニ當テヨウト思フノデ
  アリマス、卽チ極ク小サイ裁判所デ判事ガ
  一人シカナイト云フヤウナ所ハ別デアリマ
  スケレドモ、然ラザル限リ略式專門ノ判事、
  之ニ立派ナ人士ヲ以テ當テタイト思フノデ
  アリマス、此ノ前ニ御協賛ヲ願ヒマシタ、
  旣ニ昨年ノ三月下旬カラ實施ニナツテ居リ
  マス戰時三法律、其ノ實施ニ伴ヒマシテ、私
  共苦心ヲ致シマシテ、相當經驗ノアル士ヲ
  區裁判所判事ニ移シタノデアリマス、併シ
  勿論是デ私共ハ決シテ滿足ヲ感ジテ居ルノ
  デハナイノデアリマシテ、殊ニ斯カル案ヲ
  以テ臨ミマス以上、區裁所判事ノ充實、特ニ
  略式係ノ充實ト云フコトニ付キマシテハ
  懸命ノ努力ヲ拂フ積リデアリマスカラ、左
  樣御諒承願ヒタイノデアリマス
  第二ノ點デアリマスガ、此ノ略式命令ノ
  擴充ニ付キマシテハ、實ハ裁判所側ノ强キ
  希望ガアツタノデアリマス、檢事局ヨリモ
  寧ロ裁判所側カラ全國一齊ニ吾々ニ要求ガ
  アツタノデアリマス、裁判所側ノ强キ要求
  ガアツタト云フコトヲ御承知置キヲ願ヒタ
  イノデアリマス
  第三ノ正式裁判ノ抛棄ノ問題デアリマス
  ガ、全ク御示シノ通リデアリマシテ、若シ
  萬ガ一ニモ直接間接ニ、或ハ判事カラデモ
  檢事カラデモ、抛棄ヲ强要スルト云フヤウ
  ナコトガアリマスナラバ、是ハ最モ忌ムベ
  キコト戒シムベキコト、憎ムベキコトデア
  リマス、此ノ點ニ付キマシテ私共十分ノ努
  力ヲ以テ、左樣ナコトノ毛頭ナイヤウニ之
  ヲ取扱ツテ行キタイト思フノデアリマシテ、
  若シ萬ガ一ニモ左樣ナコトガアリマスナラ
  バ、人事ノ監督上强キ決意ヲ以テ之ニ臨ミ
  タイ、斯樣ニ存ジテ居ル次第デアリマス

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• 015・宮崎一

  ○宮崎委員　此ノ民事特別法ノ第五條ニ價
  格ヲ二千圓トサレタノデスガ、是ハドウ云
  フノデスカ、モウ少シ多クテモ宜クハナカ
  ツタカ、今區裁判所ノ管轄ガ千圓デハ少イト
  思ヒマスガ、區裁判所ノ管轄ハ今ノ物價カ
  ラ言フト、モウ少シ上ゲテ置イタ方ガ宜ク
  ハナイカ、直グ又上ゲナケレバナラヌヤウ
  ナコトガ起リハシナイカ

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• 016・大森洪太

  ○大森政府委員　御尤モニ存ズルノデアリ
  マス、御承知ノ通リニ今日ハ千圓ガ限度ニ
  ナツテ居リマスケレドモ、是ハ大正十四年
  ノ頃ニ左樣ニナツタノデアリマスルカラ、
  當時ノ經濟事情カラ考ヘマシテ、今日ニ換
  算致シマスト、モツト上ゲテモ宜イト云フ
  ノハ確カニ御同感デアリマス、併シ此ノ案
  ニ於キマシテハ民事ニ付キマシテモ控訴審
  ヲ省略シヨウト云フノデアリマス、一二、
  於テ控訴審ヲ省略シ、反面ニ於テ區裁判所ノ
  事物ノ管轄ガ民事ニ於テ甚シク增大致シマ
  スルヤウナ是亦懸念ガアルヤニ存ジタノデ
  アリマシテ、控訴審省略ト云フコトト睨ミ
  合ハセマシテ先ヅ二千圓ノ限度ガ適當デア
  ラウ、而モ控訴審ヲ省略シテ居リマスル
  間ハ、此ノ二千圓ヲ容易ク增額スルノ必要
  モナカラウ、斯樣ニ考ヘタ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=16

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• 017・宮崎一

  ○宮崎委員　只今ノ民事特別法中改正法律
  案ノ二千圓ノ限度ハ御說明デ諒承致シマシ
  タ、併シ實際ハ、サウ云フコトヲ申上ゲテハ
  イケナイノデアリマスケレドモ、ツイ四、
  五年前ト、政府ガ非常ニ御心配遊バシテ低
  物價政策ヲ維持シテ居ラレマスケレドモ、
  現在デハ物ノ價値ト云フモノハ非常ニ違ツ
  テ參リマシタ、是ハ控訴審ヲ省略シタト云
  フ意味モゴザイマセウケレドモ、今ノ三千
  圓四千圓、五千圓ハ數年前ノ千圓位ト同
  ジコトニナツテ居ルノヂヤナイカト思フノ
  デゴザイマス、併シ其ノ御用意ノ點ハ是
  ハ民衆ノ利益ニナルコトデアリマスカラ、
  强クハ主張致シマセヌケレドモ、實際ハ直
  グ又上ゲナケレバナラヌコトニナルデアラ
  ウト私共ハ考ヘテ居リマス
  ソレカラ瀆職ノコトデアリマス、戰時刑
  事特別法ノ改正デ今度ハ瀆職ヲ非常ニ重ク
  サレタノデアリマスガ、私共ノ知ツテ居ル
  範圍デモ可ナリ數ガ多イヤウデゴザイマシ
  テ、殊ニ取締ニ當ツテ居ラレル-私共ガ
  現實ニ事實ヲ知ツテ居ルダケデモ、オ膝元
  ノ警視廳アタリデモ、認可許可ニ當ツテ居
  ラレル警察官ノ中ニ、私自身ガ辯護ヲシタ
  ノデアリマスカラ、具體的ノ事實ヲ申上ゲ
  ルコトハ出來マセヌケレドモ、可ナリ多イ
  ヤウデゴザイマス、私共ノ關係シタノハ
  二十八、九ノ若イ獨身ノ方デスガ、ソレガ
  建築ノ方ニ付テエライ力ヲ持ツテ居ルラシ
  イ、月給ハ八十圓位デスガ、其ノ人ノ所ニ
  行カナケレバ急ガレル軍需的ノ仕事ヲヤツ
  テ居ル人ハ工事ガトテモ出來マセヌ、其ノ
  人ニドウカシテ賴ムト、何ダカ書類ノ順序
  ガ速クナルサウデ、サウスルト幾ラデモ仕
  事ガ出來テ大變仕事ノ上ニ能率ガ上ル、監
  督官其ノ他ノ方カラ叱ラレマスカラ、何ト
  デモシテ早クシタイト云フ爲ニ、其ノ中間
  ニ代願人ノヤウナ人ガ入ツテハ色々チ犯罪
  ガ行ハレテ居タヤウデアリマス、ソレハ本
  人ノ月給ヨリモ隨分ト澤山デ、初メハ御馳
  走デス、府下ノ或ル所デスガ、夕方遲クナ
  リマシタカラドウデスカ一杯ト云フコトデ
  附合ハサレテ、飮ミ食ヒ位ハ宜イト思ツテ
  行クト、次ニハ待合、若イカラ女ヲ抱カサ
  レル、其ノ中ニチヨツトシタ祝ヒ事ガアル
  トカ不幸ガアルト或ハ何カ遠イ親戚ガ死ン
  ダト云フコトデモ、オ宅ハ御不幸ダサウデ
  ト云ツテ二百圓三百圓ノ香奠ヲ持ツテ來ラ
  レル、或ハ年ノ暮ノモノナドハツイ有難ク
  頂戴スル、ソレカラ拔キ差シガ出來ナクナ
  ツテ終ヒニハ問題ニナツテ來ルノデスガ、
  今非常ナ大キナ權限ニ付テ、官廳ノ局長サ
  ントカ課長サント云フモノハ、成ベクサウ
  云フ危險ナ所ニ觸レナイデ、其ノ人ハ非常
  ニ〓廉ダト云フコトデ通ツテシマフ、又〓
  廉デ居ラレルノデセウ、實際ノ認可許可
  ノ第一線ノ仕事ハ本當ニ責任ノナイ、輕イ
  ヤウナ人ニ判ラ捺サセテ、其ノ判ガ積ツテ
  課長ナリ局長ガ捺スノデアリマスカラ、上
  ノ方ハ判斷ガ樂デスガ、第一線ノ人ハ各官
  廳トモ一番下ノ人デス、商工省デ私ノ知ツ
  テ居ル人ハ、氣ノ毒ニ法學士デ斯ウ云フ事件
  ニ掛ツタノデアリマスガ、各方面デサウ云
  フ一番危險ニ觸レル人ハ俸給ノ低イ人デ、
  サウ云フ人ガ實際ノ判斷ニ當ル、最後ニハ
  課長ノ判ガ据ハラナケレバイケナイノデス
  ガ、其ノ判斷ヲスル人ハ下ノ方ノ人デ、其ノ
  人ノ判ガ据ハツテ居レバ、ソレデ大體責任ガ
  逃レルコトニナツテ居ル、低イ地位ノ人ニ重
  大ナ實權ヲ移シテ居ツテ、上ノ方ノ人ガ責
  任逃ガレノヤウナコトヲヤツテ居ツテハイ
  ケナイヂヤナイカ、何カ世間ニ流布サレテ居
  ル所ニ依レバ、一番上ノ方ノ國家ニ關係アルヤ
  ウナ大キナ瀆職ト云フモノハ、ドウモ中途デ
  揉消サレテシマフト云フコトヲ言フノデ
  アリマス、私ハ左樣ナコトハ信ジマセヌガ、
  私共ノ所へ來ルト、何カ一番上ノ方ノ人ガ瀆
  職ニナラナイ、斯ウ云フコトヲ時ニ言フノ
  デアリマス、學校ノコトハ問題ニナラヌカ
  モ知レマセヌガ、何處カノ入學試驗ヲ受ケル
  トエライ金ガ動ク、サウシテ中途ノ人ガヤ
  ラレテ偉イ人ガ揉消シニナルト云フコトハ、
  口サガナキ大衆ノ聲デゴザイマス、ケレド
  モ是ガ可ナリ人心ニ惡イ影響ヲ與ヘル、偉イ
  人ガ惡イコトヲシテモ濟ンデシマウ、中途
  ノ人、下ツ端ノ人ガヤルトエライ目ニ遭フ
  ト云フコトヲ申シマス、ソレガ一般ノ無責
  任ナ大衆ガ言フコトナラ宜シイガ、下ノ方ノ
  官吏ノ中ニハサウ云フコトヲ起シタ場合ニ、
  私共バカリ斯ウ云フ酷イ目ニ遭ツタト云フ
  氣持ヲ、被〓人ハ辯護人ニ洩ラス人モアルノ
  デアリマシテ、此ノ點ガ是ダケノ大キナ刑
  ヲ加重サレタト云フコトニ相成リマシタナ
  ラバ、ドウゾ司法省ニ於キマシテハ-司
  法省ガヤルノデアリマセヌガ、裁判關係ニ
  於キマシテ、ドウゾ上ノ方ノ人ハ何ヲヤツテ
  モ宜シイ、下ノ官吏ダケガヤラレルヤウナ
  コトノナイヤウニ願ヒタイ、斯樣ニ重クナ
  ツタ現在ニ於テ、一番大キイ方ガ逃レテ居
  ルト云フコトハナイト思フノデアリマス、現在
  最近ノ情勢ニ於ケル身分關係ニ於テ、相當上
  ノ人モ擧ゲラレテ居ルト思ヒマスガ、具體的
  ノ事實ハ仰シヤラナクテモ宜シウゴザイマ
  スガ、下ツ端バカリガヤラレテ上ノ人ハ逃
  レルト云フコトヲ非常ニ言ツテ居リマスノ
  デ、刑ガ重クナルニ付キマシテモ、其ノ點
  ニ關シテ分リマシタナラバ、課長サントカ
  何トカト云フモノガ全國ニドノ位居ツタ
  カ、大數ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=17

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• 018・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今官廳ノ下ノ者ノ瀆職
  ハ相當ニ擧ゲラレテ居ルガ、上ノ所謂大官
  ト稱シマスカ、上ノ官吏ニ付テノ檢擧ガ如
  何ニナツテ居ルカト云フヤウナ點ニ付テノ御
  尋ネデアリマスガ、實ハ私ガ職ヲ奉ジテ居リ
  マスル以上ハ、左樣ナ地位ノ上下ニ依ツテ法
  ノ適用ヲ二、三ニスルト云フヤウナコトハ
  絕對ニ致シマセヌ、唯證據ノ問題デゴザイ
  マシテ、私ノ方ニ色々ノコトヲ聞イテハ居
  リマスケレドモ、單純ナ風說等ニ基イテ搜
  査ヲ開始シテハナラヌト云フコトハ、刑事
  訴訟法ニ御承知ノ通リ記載ガアル、併シ色
  色事件ヲ檢擧致シマシタ際ニハ、其ノ檢擧
  カラ段々進ンデ徹底的ニ掘下ゲテ、サウシ
  テ罪質ノ認メラレル限リハ地位ガ如何ナル
  地位ニアラウトモ、左樣ナコトハ決シテ顧
  慮シナイ考ヘデ、現ニ其ノ職務ヲ執ラシテ
  居ル譯デゴザイマス、其ノ點ハ一ツ御安心
  ヲ願ヒタイ、唯全國的ニハヤハリ相當勅任
  ノ地位ニアリマス者ノ犯罪モゴザイマス、
  瀆職ノコトハ資料ガアラウト思ヒマスカ
  ラ、是ハ刑事局長ノ方カラ〓要ヲ申上ゲマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=18

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• 019・池田克

  ○池田政府委員　一寸速記ヲ止メテ··
  〔速記中止〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=19

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• 020・宮崎一

  ○宮崎委員　宜シウゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=20

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• 021・作田高太郎

  ○作田委員長　田中藤作君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=21

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• 022・田中藤作

  ○田中(藤)委員　先ヅ裁判所構成法戰時特
  例中改正法律案ニ付テ御伺ヒ致シマス、全
  面的ニ二審制度ヲ御執リニ相成ルニ付テ
  ハ、第一審タル事實審裁判所ガ可ナリ重要
  ニナルト思ヒマス、現在ノ判事ノ陣容ニ於
  テ必ズシモ不當ダトハ申上ゲマセヌガ、併
  シナガラ現在ノ裁判所ノ實情カラスレバ、
  區裁判所ノ判事ノ陣容ニ於テハ、或ハ若キ
  ニ失スルノデハナイカト云フ世論ガアル譯
  デアリマシテ、此ノ點ニ付テ全面的ノ二審
  制度ノ採用ト云フコトニ相成リマスレバ
  勢ヒ判事ノ非常ナ配置替ヲサレナクテハ眞
  ノ裁判ノ目的ヲ達シ難イト思フノデアリマ
  ス、此ノ點ニ付テノ御所信ヲ先ヅ御伺ヒ致
  シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=22

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• 023・大森洪太

  ○大森政府委員　全ク御示シノ通リデアリ
  マシテ、此ノ案ノヤウニ全面的ニ控訴審ヲ
  廢止シマスル以上、第一審ニ重キヲ置クコ
  トハ是ハ固ヨリ當然デアリマシテ、私共大
  イニ此ノ點ニ意ヲ用ヒマシテ、全國的ニ判
  事ノ配置ヲ異動致シタイト存ジテ居リマス、
  御承知ノヤウニ判事ノ異動ニ付キマシテハ、
  地位ノ保障ノ關係上、行政官ニ比シマシテ
  困難デハアリマスルケレドモ、併シ大東亞戰
  爭開始以後判事ノ氣組ガ大變ニ變ツテ來タ
  ヤウニ存ズルノデアリマス、デアリマスル
  カラ戰爭前ノヤウナ困難ハナイノデアリマ
  ス、私共相當ナ確信ヲ以テ斷行出來ル積リ
  デ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=23

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• 024・田中藤作

  ○田中(藤)委員　次ハ區裁判所ノ事物管轄
  ニ關スル問題デゴザイマスガ、是ハ先程御
  質問ガアリマシタカラ私致シマセヌガ、
  步進ンデ地方裁判所ノ權限ヲ寧ロ區裁判所
  ニ移スベキデハナイカト云フヤウナ意見モ
  アリマス、此ノ點ニ付テノ當局ノ御意見ハ
  ドウデセウカ、或ハ斯ウ云フ點ニ付テ御考
  慮ガアツタカドウカ、「ドイツ」ナドニ於テ
  ハサウ云フ建前ニナツテ來テ居ルノデハナ
  イカト云フ氣ガ致シマスガドウデスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=24

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• 025・大森洪太

  ○大森政府委員　地方裁判所廢止ト云フコ
  トモ確カニ一部ニハ議論ガアリマシタ、併
  シ私共ト致シマシテハ、地方裁判所ハ廢止
  スベカラズト斯樣ニ確信ヲシテ居ルノデア
  リマシテ、御承知ノヤウニ單獨制、合議
  制是ガ裁判所構成法ノ重要ナル一ツノ制
  度ニ相成ツテ居リマスカラ、重要ナ事件ハ
  合議制ノ地方裁判所ヲ第一審トシ、然ラザ
  ルモノハ單獨制ノ區裁判所ヲ第一審トス、
  此ノ建前ハ今日堅持シテ參リタイト思ツテ
  居リマス、「ドイツ」ノ例モ吾々多少聞イテ
  居リマスガ、例ヘテ申シマスルト、民事ニ
  付テ地方裁判所ニ單獨制ト合議制トノ二ツ
  ヲ認メテ居ルト云フコトデアリマス、併シ
  其ノ實際ノ運用ハ旨ク行ツテ居ナイト云フ
  コトヲ「ドイツ」ノ法曹自身ガヤハリ書イテ
  居リマスルガ、是ハ遽カニ學ブベカラザル
  モノト考ヘテ居リマス、要スルニ地方裁判
  所此ノ制度ハ存置シテ參リタイト考ヘテ
  居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=25

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• 026・田中藤作

  ○田中(藤)委員　ソコデ限度ヲ二千圓ニ擴
  大サレタノデアリマスルガ、此ノ二千圓ノ
  擴大ヲ以テ致シマスルト、大體判事一人當
  リ一年ニ七件バカリノ事件ノ增加ニシカ相
  成ラヌ譯デアリマス、地方裁判所ノ關係カ
  ラ見ルト、或ハ二割位ノ數ニナルノデハナ
  イカト思ヒマスルガ、此ノ程度デハ所謂簡
  素ノ眞ノ目的ガ達シ得ナイノデハナイカト
  云フ氣ガ致シマス、此ノ點ハドウデセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=26

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• 027・大森洪太

  ○大森政府委員　區裁判所ト地方裁判所ノ
  事物ノ管轄ノ移動ニ付キマシテハ、全ク御
  示シノ通リ人員ノ移動數ニ於テハ大シタ違
  ヒハ出テ來ナイヤウデアリマス、大體全國
  的ニ見マシテ、地方裁判所ノ五分ノ一ノ事
  件ガ減リマシテ是ガ區裁判所ニ移ル、此ノ
  程度ニ過ギナイト存ジマス、併シ他方御承
  知ノ控訴審ノ省略ガアリマスルノデ、是デ
  若干ノ餘裕ヲ生ズルヤウニ私共計算上心得
  テ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=27

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• 028・田中藤作

  ○田中(藤)委員　次ニ戰時刑事特別法中改
  正法律案ニ付テ御伺ヒ致シマス、司法裁判
  所ハ一般ノ行政ト同樣ノ建前デ簡素化スベ
  カラザルモノダト私共ハ考ヘテ居ル譯デア
  リマス、裁判ハ所謂政ダト私共ハ信ジテ居
  リマス、而モ一般ノ行政ノ簡素化ト同樣ナ
  建前ニ於テ、漸次簡素化サレツツアルノハ
  ドウカト思ヒマス、旣ニ第一次ノ整理ニ於
  キマシテ尙ホ判事ノ中ニハ未整理ノ者ガ相
  當アルノデハナイカ、或ハ百數十人アルノ
  デハナイカト思ヒマス、而モ第二次ノ今囘
  ノ整理ニ依ツテ、尙ホ相當司法官ガ退職ヲ
  餘儀ナクサレルノデハナイカト私ハ考ヘル
  譯デアリマスガ、サウシタ判事ノ第一次第
  二次ノ整理ニ依ツテ、何ト言ヒマスカ、現
  在ノ判事ニ何トナク陰鬱ナ空氣ガアリ、司
  法ノ運用ノ上ニ非常ニ遺憾ノ空氣ガアルノ
  デハナイカト云フ私ハ感ジガ致シマス、
  斯ウ云フ點ニ付テドウ云フ御考ヘデアル
  カ、御伺ヒ致シタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=28

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• 029・大森洪太

  ○大森政府委員　御指摘ノヤウニ過般ノ行
  政簡素化ニ依リマシテ餘剩員ガ出來マシ
  ク、卽チ是ハ今日百二、三十名デアラウト
  思ヒマス、併シ自發的ナ整理ニ依リマシテ
  先ヅ大體ニ於テ現在七十名殘ル、斯ウ云フ
  現狀ダト私共考ヘテ居リマス、ソレニ今囘
  ノ此ノ案ニ依リマシテ些少デモ餘剩ガ出來
  マスレバ、之ヲ合算シマスト幾ラカ殖エル
  コト是ハ勿論デアリマス、併シ此ノ餘剩員
  ノ始末ニ付キマシテハ、是モ最モ簡明ニヤ
  ラウト致シマスト、御承知ノヤウニ大正二
  年當時ノ强制休職ノ方法ヲ執ル、是ハ一策
  デアリマセウケレドモ、斯樣ナ方法ヲ執リ
  マスコトハ全國ノ判檢事ニ及ボシマスル影
  響是ハ餘程考ヘナケレバナラナイノデア
  リマシテ、私共ハ斯樣ナ行政整理ノ方法ハ
  絕對ニ執ラザルコトニ確定ヲ致シマシタ、
  隨ヒマシテ此ノ整理ハ自然減ニ俟ツノ外ハ
  ナイ、又之ニ俟ツコトガ適當デアラウト存
  ズルノデアリマシテ、判檢事ノ意思ニ反シ
  テ退職セシメルト云フ方法ハ絕對ニ執リマ
  セヌ、此ノ事ハ全國ノ判檢事ニモ通達ヲ致
  シマシタ、隨テ判檢事ガ自己ノ地位ニ付テ
  不安ヲ感ズルト云フコトハ毛頭モナイト存
  ジテ居リマス、又現ニ左樣ナ不安ノ狀態ハ
  起ツテ居ナイヤウデアリマスカラ、此ノ點
  ハ御安心ヲ願ヒタイト存ジマス

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• 030・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ點デアリマスガ、
  勿論强制退職ト云フコトハ司法官ノ性質上
  アリ得ナイト思ヒマス、併シナガラ例ヘバ
  任地ノ變更或ハ進級ナドニ付テ、退職ヲシ
  ナケレバナラヌヤウナ餘儀ナキ狀態ニ置イ
  テ退職ヲスルト云フコトモアリ得ルト思ヒ
  マス、勿論現在ノ司法當局ニ於テサウシタ
  コトヲナサルトハ私ハ思ツテ居リマセヌ
  ガ、併シナガラ政府ノ一般ノ方針トシテ第
  一次整理、第二次整理ヲナスベシト云フ國
  家ノ要請ガアル以上、何トカシナケレバナ
  ラナイト云フ司法首腦部ニ空氣ガアルノデ
  ハナイカト思ヒマス、其ノ空氣ガ軈テ司法
  官ニ與ヘル影響ガ陰慘ナモノニナリハセヌ
  カト云フコトヲ私共ハ惧レル譯デアリマス、
  隨テ斯ウシタ整理ノアル場合ニ、司法ハ司
  法トシテ裁判ノ本質ニ鑑ミテ、一般行政ト
  步調ヲ合ハスベキモノデハナイノデハナイ
  カ、ソレヲ何故斷乎トシテ主張サレナイノ
  デアルカ、此ノ點ニ付テハ特ニ御考慮ヲ願
  ヒタイト思ヒマスガ、其ノ御所信ヲ御伺ヒ
  致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=30

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• 031・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今行政部ト司法部ノ違
  ツテ居ル所ニ付テ、縷、、話ガアリマシテ私
  モ同感デアリマス、例ヘバ行政官廳デ言ヘ
  バ、奏任ノ課長ガ居ツテ其ノ下ニ屬官ガ配
  置セラレル、屬官ガ色々起案ヲシテ課長ガ
  決裁ヲシテ行クト云フヤウナ形デ事務ヲ執
  ツテ行クコトガ出來ル、併シ裁判所ハ是ト
  違ヒマシテ、地方裁判所ノ如キハドウシテ
  モ三人要ル譯デアリマス、假令事件ガ一件
  アツテモ三人要ル譯デアリマス、ソレデア
  リマスルカラ其ノ點ニ於テ裁判制度カラ申
  シマシテ、一般ノ行政廳ト裁判所ト云フモ
  ノハ執務ノ仕方ガ全然違ツテ居ル、左樣ナ
  譯デ今囘色々行政機構ノ整備ヲ致シマシタ
  ガ、左樣ナ際ニモ司法部ノ特質ト云フモノ
  ハ能ク說明ヲシテアル譯デアリマス、尤モ
  斯ウ云フ點ハ十分考ヘテ置カナケレバナラ
  ヌト思ヒマスルノハ、司法部ノ職員ト雖モ
  相當應召者ガアル譯デアツテ、最近ノ傾向
  ニ依レバ來年一杯ニハ相當數ノ應召ガアル
  ンヂヤナイカ、是ハ衆議院議員ノ方々デモ
  名譽ノ應召ヲセラレタト同ジ譯デアリマス、
  先程司法次官ヨリ前囘ノ行政簡素化ニ依ツ
  テ司法部ニハ過剩員ガ相當アルト云フ御話
  ガアリマシタガ、整理サレル數モ相當多ウ
  ゴザイマシテ、四百九十九人ゴザイマス、
  南方ヘモ司政長官、司政官等ニ非常ニ多數
  參リマシタ、只今ノ所デハ、年度末ニハ七
  十人位過剩員ガ殘ルノヂヤナイカ、過剩員ガ
  殘ツテモ司法部ノ書記ト判檢事ダケハ、定
  員外トシテ之ヲ司法部ニ置クコトガ出來ル
  ト云フ特別ノ勅令ガ出テ居ル、是ハ行政府
  ト司法部ノ性質ガ違ヒマスカラ、司法部ニ
  於テハ過剩員ヲ持ツコトガ出來ルコトニナ
  ツテ居ル、其ノ過剩員ガ南方ニ行クトカ、滿
  洲ニ行クトカ、或ハ中華民國ノ大使館等ニ
  出ルトカ、色々ナコトヲ致シマシテ、結局
  今ノ所デハ此ノ年度內ニ七十人位殘ルノヂ
  ヤナイカ、斯ウ思ツテ居リマスガ、昨今ノ
  應召ノ狀況デハ左樣ニ殘ルコトハナイト思
  ヒマス、ソレデ一面ニ於テハ、停年制ヲ撤
  廢シテ、停年ニ掛ツタ者デモ在職セシムル
  ノ途ヲ開カナケレバイケナイノヂヤナイカ
  ト云フ說ガアリマス、併シ私共ノ考ヘデハ
  色々ノ事情ヲ勘案致シマシテ、來年一杯ハ、
  今囘ノ法案ガ通過致シマシタナラバ、マア
  一人デ二人前モ働クト云フ時デアリマスカ
  ラ、停年制ハ其ノ儘ニシテ、サウシテ出來
  ルダケ勉强ヲ致シマシテ、應召ノ數ガ多ク
  テモ大體ハヤツテ行ケル積リデアリマス、
  斯樣ナ譯デ行政廳ト司法部ノ仕事ノ相違ト
  云フコトハ十分政府ニ於テモ了解致シテ居
  ル譯デゴザイマス、左樣ニ御諒承ヲ願ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=31

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• 032・田中藤作

  ○田中(藤)委員　司法人事ノ問題ハ特ニ御
  留意ヲ望ンデ置キマス
  次ニ略式命令ノ範圍ノ擴大ニ依ツテ體刑
  ヲ課サレルト云フコトニ相成リマスト、結
  果ニ於テ事務ノ簡素化ヲ望ミナガラ、複雜ニ
  ナリハセヌカト云フコトヲ私ハ惧レテ居ル
  ノデアリマスガ、只今昨日戴イタ資料ヲ一
  寸見マシタ所ニ依ルト、實ハコンナ厚イモ
  ノデスカラ、俄カニ讀ムコトハ出來マセヌ、
  此ノ短期間ニ之ヲ讀ンデ檢討シヨウト云フ
  コトハ恐ラク無理ヂチナイカト思ヒマス
  ガ、當局ノ豫想デハ、恐ラク略式命令ノ中
  ノ三分ノ一位ガ正式裁判ノ申立ヲスルンヂ
  ヤナイカト云フ見當ヲ付ケラレテ居ルト思
  ヒマス、若シサウダトスレバ、三分ノ一ノ
  正式裁判ノ申立ガアレバ、事務ハ簡素化致
  シマセヌ、在來ト同ジコトデアル、或ハ私
  ノ資料ノ見方ガ誤ツテ居ルカモ分リマセヌ
  ガ、此ノ點ニ付テ眞ニ簡素化ナリト云フコ
  トヲ數字ニ付テ先ヅ御說明ヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=32

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• 033・池田克

  ○池田政府委員　御手許マデ御配付申上ゲ
  マシタ資料ハ、非常ニ倉卒ノ間ニ調整致シ
  マシタ爲ニ、丁數モ打チマセズ、甚ダ整備
  サレテ居リマセヌ、此ノ點洵ニ恐縮デゴザ
  イマス、此ノ資料ニ於キマシテ、今囘新タ
  ニ略式手續ノ範圍ニ入ルコトニナルデアラ
  ウト考ヘラレマスルモノヲ一應統計的ニ豫
  想致シマシテ、兎ニ角自由刑デゴゴイマス
  モノデ、後來ノヤウニ罰金、科料刑ニ對シ
  マスルモノヨリモ、或ル程度正式裁判ノ申立
  モ率ガ多イノヂヤナカラウカト云フヤウナ
  一應ノ推定ノ下ニ、實ハ三〇%、斯樣ナ見込
  ヲ立テタノデゴザイマス、併シナガラ今日
  罰金、科料刑ヲ科セラレテ居ル略式命令ニ對
  シテ正式裁判ノ申立ヲ爲ス割合ガ六分デゴ
  ザイマス、百人ノ被〓人ガ略式命令ヲ受ケ
  テ、ソレニ對シテ正式裁判ノ申立ヲスル者
  ガ六、七人、斯樣ナ大體ノ割合ヲ示シテ居
  リマス、ソコデ今度新タニ自由刑ノ或ル程
  度ノモノニ付キマシテ略式命令ヲ許スコト
  ニナルノデアリマスガ、此ノ點ニ付キマシ
  テハ案ノ二十九條ノ二ニモゴザイマス通リニ、
  事案ノ內容ガ單純デアリ、而モ證據上犯罪
  ノ性質ガ明確ダト裁判所ニ於テ認メマシタ
  モノニ付テ、略式命令ガゴザイマス譯デア
  リマス、隨ヒマシテ檢事ニ於キマシテモ左
  樣ナ立場カラ、自由刑ヲ科シマヌルモノニ付
  テ略式命令ノ請求ヲスルト云フコトモ、例へ
  バドノ點カラ見マシテモ被〓人ニ於テ異議
  ガナイ、サウ云ツタヤウナ者ニ付キマシテ、
  略式命令ヲ求メルコトニナルデアリマセウ
  カラ、之ヲ規定ノ上カラ見マスルト、全國ヲ
  通ジマシテ二万人位ノ者ガ新タニ略式手續
  ノ範圍ニ入ルト云フコトニナリマスケレド
  モ、實際ノ運用ニ於キマシテハ、恐ラクハ
  其ノ半數程度ノモノニナルノデハナイカト
  思ヒマス、大體サウ云ツタヤウナ見當デア
  リマス、此ノ調査ニ於キマシテ三割ト云フ
  コトニ致シマシタノハ一應ノ見當デゴザイ
  マス、尙ホ御參考マデニ申上ゲマスガ、是
  ハ東京ノ區裁判所ノ公判ニ於キマシテ自由
  刑ノ言渡ヲ受ケマシタ者ノ裁判ノ確定ノ狀
  況デゴザイマス、是ハ急ギマシタノデ、本
  年ノ九月中ノ一箇月間ニ於キマスル自由刑
  ノ言渡、判決ノ確定竝ニ上訴ヲ調ベタノデ
  ゴザイマスガ、區裁判所ニ於キマシテ判決
  ノ言渡ガアリマシタ卽日被告人ノ上訴權ノ抛
  棄ニ依リマシテ確定致シマスモノガ四六%
  デゴザイマス、上訴期間ノ經過ニ依リマシ
  テ裁判ガ確定致シマシタモノガ二三%デゴ
  ザイマス、ソシテ上訴致シマシタモノガ二
  六%、斯樣ナ實績ヲ示シテ居ルヤウナ次第デ
  アリマス、勿論是ガ確乎タル參考ノ基準ニ
  ナルト云フ譯デハゴザイマセヌケレドモ、恐
  ラク實際ノ運用ニ於キマシテモ、略式手續
  ニ依リマシテモ何等異存ハナイ、詰リ裁判
  ヲ致シマシテモ卽日確定スル、斯ウ云フヤウ
  ナ事件ニ付キマシテ略式命令ガ請求サレル
  コトニナルノデハナイカト考ヘマス、是ハ
  東京ノ例デゴザイマスケレドモ、更ニ又地
  方ニ參リマスレバ、或ハ言渡ノ當日卽日裁
  判ガ確定スルト云フ割合ガ相當ニ多イノデ
  ハナカラウカ、斯ウ云フ風ニモ考ヘマス、
  一應大體ノ狀況ニ付キマシテ御說明申上ゲ
  マシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=33

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• 034・田中藤作

  ○田中(藤)委員　只今ノ御說明ノ數字ニ依
  と た、恐ラク三分ノ一程度マデ不服ノ申出
  ガアルノダト云フノガ妥當ナ見解ヂヤナカ
  ラウカト思ヒマス、今ノ東京ノ二六%トカ
  云フコトモ一ツノ動向ヲ示スモノダト思ヒ
  マス、殊ニ略式ニ於テ體刑ヲ科セラレタ場
  合ニ於テハ、恐ラク被〓人ノ言分、被告人
  ノ有利ナ供述ナクシテ命令ガ發セラレル譯
  デアリマスカラ、被告人トシテハ不滿ノ度
  ノ多イコトハ明白デアリマス、サウ云フ譯
  デアリマスカラ、公判ノ結果ハ只今示サレ
  タ東京ノ二六%ノ例ヨリカ遙カニ多クナル
  ノデハナイカト私共考ヘル譯デアリマス、
  サウ致シマスト、大體三割程度ガ正式裁判
  ノ申立ガ假ニアルトスレバ、略式命令ト、
  正式裁判ノ請求ト、判決ト、三ツニナル譯
  デアリマス、隨テ事務ノ簡素化ヲ御望ミニ
  ナリマシテモ、結論ニ於テハ三重ノ手續ヲ
  要スルコトニナル譯デアリマスカラ、大體
  トン〓〓デアル、之ニ依ツテ事務ノ簡素化
  ヲ望ムコトハ出來ナイノデハナイカト思フ
  ノデアリマス、斯ウ云フ譯デアリマスガ、
  此ノ點ヲ更ニ私ハ御伺ヒシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=34

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• 035・大森洪太

  ○大森政府委員　是ハ全ク見込ノ問題デ
  アリマシテ、確定的ニハ申上ゲラレマセヌ
  ケレドモ、假令三〇%トシテモ二〇%トシ
  テモ、ソレダケノ事件ハ審理ガ省カレルノ
  デアリマス、其ノ審理期間ガ省カレルコト
  ニ依ツテ相當手ガ拔ケルダラウト思フノデ
  アリマシテ、私共ト致シマシテハヤハリ簡
  素化ノ實現ガ期シ得ラレルモノダト考ヘテ
  居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=35

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• 036・田中藤作

  ○田中(藤)委員　審理期間ガ省カレルト云
  フコトハ成程御說ノ通リデゴザイマス、併
  シナガラ是ハ、書面ヲ十分ニ審査檢討セラ
  レルト云フコトト、公判ヲ僅カ一囘位御開
  キニナルコトトハ、實ハ其ノ時間ニ於テハ大
  差ガナイノヂヤナイカト思ヒマス、寧ロ問
  題ハ、被〓人ヲ拘束シツツ公判ノ長キニ亙
  リ、審理ノ長キニ亙ルト云フ點ニ、人ノ動
  員ノ上カラ見テ遺憾ナ點ガアルノデハナイ
  カト思ヒマス、裁判所自身ノ手數カラ見レ
  バ、是ハ五十步百步ヂヤナイカト思フノデ
  アリマス、隨テ私ハ此ノ點ニ付テノ御說明
  ニハ滿足致シマセヌガ、併シ是ハ議論ニナ
  リマスカラ是以上ハ致シマセヌ、ソコデ私
  進ンデ御伺ヒシタイノデアリマスルガ、略
  式命令ノ請求ハ檢事ガ致シマス、而モ檢事
  ノ出來上ツタ聽書ハ、恐ラク明白ナ一點疑
  ヒノ容レナイ犯罪事實ノミヲ起訴スルノデ
  アリマス、疑ヒノアル事件ハ恐ラク起訴ハ
  致シマセヌ、斯樣ナ現狀デアリマスカラ、
  檢事ノ認定ニ依レバ、恐ラク總テガ犯罪ノ
  成立ガ明白ダト云フ事件シカ裁判所ニ移送
  致シマセヌ、檢事ハ申上ゲルマデモナク檢
  事局一體デアリマス、練達堪能ノ檢事モア
  リ、若イ檢事モアリ、各角度カラ檢討シテ
  初メテ起訴致スノデアリマスカラ、單獨判
  事ヨリモ檢事局ニ於テハ整ツテ居ルト言ツ
  テ宜イ譯ナノデアリマス、而モ檢事局ガサ
  ウシタ檢事局一體ノ建前デ十分檢討シテ、
  犯罪事實ガ明白ダト云フコトデ起訴シタモ
  ノヲ、若イ裁判官ガ、ドウモソレハ誤リダ
  ト云フ風ニ一蹴シテ眞ノ裁判ヲスルト云フ
  コトハ中々シナイノデハナイカト、私ハ事
  實問題トシテ考ヘル譯ナノデアリマス、斯
  ウ云フ點ニ付テ、裁判所ハドウ云フ工夫、
  ドウ云フ御考ヘヲ持ツテ居ラレルカト云フ
  コトヲ御伺ヒ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=36

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• 037・大森洪太

  ○大森政府委員　御示シノ通リニ、若シ萬
  ガ一ニモ區裁判所ノ此ノ略式事件ノ專任ノ
  係ガ、此ノ條件ニ合致スルヤ否ヤト云フコ
  トニ付テ見誤リガアリマスルナラバ、是八
  全ク由々シキ大事デアリマス、デアリマス
  カラ先程モ申上ゲマシタ通リ、私共斯樣ナ
  案ヲ以テ望ミマスル以上、區裁判所ノ人員
  ノ配置、特ニ略式係ニハ十分ニ意ヲ用ヒマ
  シテ、シツカリシタ人士ヲ以テ之ニ充テル
  積リデアリマス、今區裁判所ノ判事ノ現狀
  ヲ簡單ニ申述ベテ見マスト、現在全國ニ區
  裁判所判事ハ五百十六名アルノデアリマス、
  此ノ五百十六名ニ付テ觀察致シマスルト、
  六級ト申シマスルト昇進ノ比較的遲イ司法
  部デハ在職十年以上デアリマス、此ノ六級
  俸デ在職十年以上ノ者ガ八六%ヲ占メテ居
  リマス、又四級ニナリマスト是ハ在職十五
  年以上ニナリマス、此ノ四級ニシテ在職十
  五年以上ノ者ガ五〇%以上ヲ占メテ居リマ
  ス、デアリマスカラ年齡カラ申シマスルト、
  今日ノ全國ノ區裁判所判事ハ相當ノ域ニ達
  シテ居ルノデアリマス、此ノ前御審議ヲ願
  ヒマシタ戰時特別ノ法律ニ於キマシテ、卽
  チ昨年ノ三月下旬カラ實施シテ居リマスル
  アノ法律ノ施行ニ伴ヒマシテ、區裁判所ノ
  判事ノ異動ヲ行ヒマシテ、ソレニ依リマシ
  テ平均年齢ガ滿一年カラ滿一年半バカリ殖
  エマシタ、併シ先程モ申シマスル通リ私共
  ハ決シテ是ガ現狀ヲ以テ滿足シテ居ルノデ
  ハアリマセヌ、決シテ完璧トハ申サナイノ
  デアリマシテ、此ノ傾向ヲ益〓濃厚ニシテ行
  キタイト存ジテ居リマス、卽チ區裁判所ノ
  判事ヲシツカリシタ人士ヲ以テ充實スル、
  特ニ略式手續ノ係ニ於テ然リ、斯ウ云フ工
  合ニ進メタイ積リデ居リマスカラ、左樣御
  諒承ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=37

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• 038・田中藤作

  ○田中(藤)委員　專任判事ヲ以テ此ノ略式
  ヲ處理サスト云フコトデ、是ハ成程結構ダ
  ト思ヒマス、所ガ田舍ノ裁判所ニナリマス
  下、恐ラク專任判事ガ出來ナイ場所ガアル
  ト思ヒマス、斯ウ云フ場合ニ、其ノ略式裁
  判ヲヤツタ當該判事ガヤハリ公判ノ裁判長
  トナルコトニナルノデハナカラウカト思ヒ
  マス、サウスルト結局同ジ判事ガ同ジ判斷
  ヲスルト云フコトデ、何ト言ヒマスカ、豫
  斷ヲ持ツテ居リマスルノデ、折角ノ申立モ
  本當ニ申立ノ目的ヲ達シ難イト云フコトニ
  ナリハセヌカト思ヒマスガ、此ノ點ニ付テ
  ノ方法ハ如何デスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=38

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• 039・大森洪太

  ○大森政府委員　御懸念御尤モニ存ズルノ
  デアリマス、區裁判所ニ依リマシテハ判事
  一人ト云フ所モアリマスルカラ、略式命令
  ヲ出シマシタ判事ガ正式裁判ノ申立ヲ受ケ
  マシテ、正式ニ審理判斷ヲスルト云フコト
  モ已ムヲ得ナイノデアリマス、併シ之ニ付
  キマシテハ御承知ノヤウニ刑事訴訟法ノ第
  五百三十一條ニ、正式裁判ノ請求ヲ適法ト
  致シマシタ時ニ、通常ノ規定ニ從ヒマシテ
  審判ヲスルコト、是ハ御承知ノ通リデアリ
  マス、此ノ場合ニ於テハ略式命令ニ拘束セ
  ラレルコトガナイト云フ規定ガアルコト、
  是亦御承知ノ通リデアリマス、此ノ規定ノ
  厲行ハ今日確カニ違算ガナイヤウニ存ジテ
  居リマス、併シ今後斯樣ナ案ノヤウニナリ
  マシタナラバ、一層此ノ規定ノ厲行ト云フ
  コトニ邁進ヲシタイト存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=39

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• 040・田中藤作

  ○田中(藤)委員　結局運用ノ問題ニ歸着ス
  ルコトニナリマスルガ、司法ノ運用ハ恐ラク
  過チガアツタ場合ニハ是正ノ途ガナイノガ
  本當ヂヤナイカト思ヒマス、ソレガ司法ノ
  本質ダト思ヒマス、斯ウ云フ點ニ於テ例へ
  バ保釋ノ問題ニ致シマシテモ、保釋ヲナゼ
  許サナイカト云フコトヲ監督判事ニ申シマ
  シテモ、ソレニ付テハ一々指示ハ出來ナイ
  ト仰シヤルフハ是ハ當然デアル、斯ウ云フ
  譯デアリマスルカラ、判事ガ一旦決定シタ
  以上ハ、ソレハ抗〓或ハ上〓ナドデ是正ス
  ル外方法ハナイ譯デアル隨テ行政ノ如ク
  ニ監督ハ巧ク行キマセヌ、ソコデ斯ウ云フ
  コトニ付テハ何カ特別ナ對案ドハアリマセ
  ヌデセウカ、之ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=40

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• 041・大森洪太

  ○大森政府委員　御承知ノ通リニ、司法ノ制
  度ニ付キマシテ、殊ニ裁判ニ於キマシテ、其
  ノ是正ノ利カナイコト、是レ全ク御說ノ通
  リデアリマス、デアリマスルカラ、是ハドウ
  シテモ判事其ノ人ノ自戒ニ俟ツノ外ナイノ
  デアリマスルケレドモ、幸ヒニ今日決戰態勢
  下ニ於キマシテ、總テノ態度ガシツカリシツ
  ツアリマスル其ノ矢先ニ於テ、私共努力ヲ傾
  注シテ此ノ案ノ運用ニ遺漏ナキコトヲ期シテ
  參リタイ、斯樣ニ存ジテ居ル次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=41

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• 042・田中藤作

  ○田中(藤)委員　モウ一點、正引裁判申立
  權ノ抛棄ノ問題デアリマス、是ハ先程御質
  問ガアリマシタカラ多クハ申上ゲマセヌ
  ガ、斯ウ云フコトハ在來ノ實際ニ鑑ミテ簡
  素化ヲ望ム餘リ相當アルノデハナイカト思
  ヒマス、隨テ此ノ正式裁判申立權抛棄ニ關
  スル規定ヲ削除スル御意思ガナイカドウ
  カ、サウ云フ修正案ヲ出サレタ場合ニ御贊
  成ガ願ヘルカドウカト云フコトヲ伺ヒタイ
  ト思ヒマス、同時ニ先程申上ゲマシタ保釋
  ニ關スル問題デアリマスルガ、相當ノ保證
  人ヲ立テタ場合ニ於テハ、證據湮滅ノ虞ナ
  キ限リハ保釋ヲ許スベシト云フヤウニ改正
  サレル意思ハナイカ、是ハ人モ此ノ戰時下
  ニ於テ各〓ノ職域ニ於テ十分働カシテヤル
  爲ニ、所謂總動員ノ形ニ於テ、保釋ノ制度
  ヲ完全ニ運用シタラドウカト云フ見地カラ
  御伺ヒスル譯デアリマス、此ノ二點ニ付テ
  ノ御所信ヲ承リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=42

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• 043・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今御尋ネノ第一點ニ付
  キマシテハ、原案ヲ修正スルト云フ考ヘハ
  持ツテ居リマセヌ、是カラマダ色々御質問
  モアラウカト思ヒマスガ、抛棄ノ問題ハ全
  ク裁判所ニ對スル問題デ、檢事ガ之ニ關與
  スルト云フコトハ、一切サウ云フ疑ヒノナ
  イヤウニ十分ニ戒メル考ヘデ居リマス、左
  樣ナ考ヘヲ持ツテ居リマスノデ、遺憾ナガ
  ラ其ノ修正ニハ御贊成ガ出來ナイノデアリ
  マス
  第二ノ問題ハ、是ハ運用ノ問題モアリマ
  スガ、或ハ、法律的ニ何カ特殊ノ色々ナ條
  件ヲ付ケテ保釋ト云フモノヲ成ベク許スコ
  トガ出來ルヤウニシタラドウカト云フヤウ
  ナコトニ付テハ、是ハ刑事訴訟法ノ問題デ
  アリマス、只今司法省内ニ刑事法典ノ改正
  準備委員會ト云フモノガゴザイマシテ、特
  ニ此ノ刑事手續ニ付テ第一ニ〓究シヨウト
  云フコトニナツテ居リマス、無論、サウ云
  フ所ノ問題ニモナルト思ヒマスカラ、是ハ
  〓究シテ見タイト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=43

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• 044・田中藤作

  ○田中(藤)委員　尙ホ納得出來ナイ所モア
  リマスガ、一應是デ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=44

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• 045・作田高太郎

  ○作田委員長　庄司一郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=45

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• 046・庄司一郎

  ○庄司委員　簡單ニ一二點御伺ヒシタイ
  ト思ヒマス、戰時刑事特別法中改正法律案
  ニ付キマシテ、第二十九條ノ略式關係ノコ
  トデアリマスガ、終リノ方ニ「前二項ノ場
  合ニ於テ刑ノ執行猶豫ハ刑ノ言渡ト同時ニ
  略式命令ヲ以テ其ノ言渡ヲ爲スベシ」斯ウ
  云フコトニ相成ツテ居リマスルガ、若シ夫
  レ本條ニ依ツテ略式命令ノ言渡ノ場合、從
  來ノ區裁判所ニ於テ公判デ以テ處理シタ場
  合ニ於ケル刑ノ執行猶餘ノ恩典ヲ與ヘマシ
  タ其ノ度數ヨリモ、此ノ略式デ將來審理致
  シマシタ場合ニ於テハ刑ノ執行猶豫ノ恩典
  ト云フモノガ著シク激減スルノデハアルマ
  イカト云フコトヲ、私ハ素人デゴザイマス
  ガ憂慮シテ居ル者デゴザイマス、ソレ〓〓〓
  被〓人ガ身柄ノ拘束ヲ解放サレテ、自由ニ
  公判廷ニ於テ判事ノ審問ニ對シテ答辯ヲシ
  テ居ル、又辯護士諸公ガ參與サレマシテ、
  ソレ〓〓熱誠ニ條理兼ネ備ハツタ所ノ辯護
  ヲシテ下サルト云フヤウナ結果、相當此ノ
  刑ノ執行猶豫ノ恩典ト云フモノガ其ノ數ニ
  於テ多カツタノデハナカラウカ、斯ウ考へ
  テ居リマス、然ルニ略式ト云フコトニナリ
  マスト、書面審理ト云フノデアリマスカラ、
  書面ノ上ニ於テノミ審理サルル所ノ、極端
  ニ云ヘバ「ペーパープラン」デアル、判事ガ
  直接被〓人ヲ親シク訊問スル、或ハ被〓人
  ノ利益ノ供述ヲ親シク聽クト云フヤウナ機
  會ガ殆ンド少イノデハナイカ、或ハ辯護人
  ガ被〓人ノ言ヒ能ハナイ所ヲ言ツテ吳レル
  ト云フヤウナ機會ガ失ハレテ居ルノデア
  リマスルガ、是ハヤツテ見ナケレバ分ラ
  ヌコトデアリマスガ、從來ノ執行猶豫ノ恩
  典ト云フヤウナ有難イ恩典ヲ賜ハル所ノ度
  合ガ、此ノ後ハ相當激減スルンヂヤナイカ
  ト云フコトヲ憂慮シテ居ルノデアリマス、
  是ハ私ダケノ一片ノ不安デアルナラベ結構
  デゴザイマスケレドモ、實際サウ云フ點ニ
  付テハドウ云フヤウナ御考ヘデゴザイマセ
  ウカ、實ハ私モ長イ間司法記者トシテ裁判
  所ニ出入シテ居リマシタ者デアリマシテ、
  公判ノ光景ハ長イ間見テ居リマシタ、檢事
  ハ被告人ノ罪ヲ論〓スル場合等ニ於テ、百
  件ノ內一件位ハ執行猶豫ヲ與フルコトノ妥
  當論ヲ唱ヘラレルコトヲ拜聽シテ居リマス
  ルガ、多クノ場合ニ於テ執行猶豫ヲ與ヘテ
  宜シイト云フヤウナ論告ハ餘リ聞イタコト
  ガゴザイマセヌ、左樣ナ私ノ見學上ノ體驗
  カラ、是ハ無論闇裁判デハナイデアリマセ
  ウケレドモ、ドウモ蔭ノ方デヤル裁判デア
  リマシテ、公正妥當ナル御裁判ハ當然デハ
  アリマスルケレドモ、從來ノヤウナ折角恩
  典トシテ被告人ガ更生ノ道ニ勵ンデ行ク、
  前途ノ希望ト光明ヲ與へル所ノ刑ノ執行猶
  豫ノ恩典ト云フ其ノ度數ガ激減スル虞ガア
  ルノデハナカラウカト云フコトヲ憂慮シテ
  居ル一人デゴザイマスガ、其ノ點ハ如何デ
  ゴザイマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=46

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• 047・大森洪太

  ○大森政府委員　御答ヘハ二ツノ點ニ分ケ
  テ申述ベルコトガ便宜カト思ヒマス、先ヅ
  第一ニ此ノ御指摘ノ案ニ依リマシテ、略式
  命令ニ於テ刑ノ執行猶豫ヲスル途ヲ開イタ
  ノデアリマスガ、是ハ私ハ相當ノ數ニ上リ
  ハシナイカト思ツテ居リマス、卽チ事案ノ
  內容甚ダ輕微デアリ、犯罪ノ成立明白デア
  ル、而モ憫情スベキ餘地ガ書類上多分ニ現
  ハレテ居ル、卽チ區裁判所ニ於テ直チニ執
  行猶豫ヲ言渡シテモ宜イト云フヤウナ事件
  ハ是コソ體刑ヲ略式デ科スル最モ典型的
  ナ事件デハナイカト思フノデアリマス、デ
  アリマスカラ、此ノ規定ヲ以テ今後大イニ
  活用シテ參リタイ積リデアリマス
  第二ノ點ト致シマシテ、此ノ途ヲ開キマ
  シタガ爲ニ、公判ニ於ケル執行猶豫ガ減ル
  ト云フコトハ、決シテナイト思ツテ居リマ
  ス、兩々相俟ツテ執行猶豫ノ妙用ヲ發揚シ
  タイ、斯樣ニ存ジテ居リマスルカラ、其ノ
  御懸念ハ全ク御無用ノヤウニ私共ハ考ヘテ
  居リマス

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• 048・庄司一郎

  ○庄司委員　御懸念御無用ト云フヤウナ御
  言葉デ、洵ニ結構デゴザイマスガ、願ハク
  ハ御言明ノヤウナ御趣旨ニ依ツテ將來運營
  サレンコトヲ强ク望ムノデゴザイマス
  次ニハ極ク簡單ニ關聯事項トシテ御伺ヒ
  申上ゲルコトノ御許シヲ、特ニ委員長ヨリ
  戴キタイノデアリマス、ソレハ刑務所ヨリ
  釋放セラレル所ノ今マデノ受刑者、是ガ明
  日カラ產業戰士トシテ各方面ニ働ク、サウ
  云フヤウナ決心ヲ以テ釋放サレテ參リマス、
  保護會其ノ他色々ノ制度ハ出來テ居リマス
  ガ、娑婆ニ出テ參リマシテモ働クニ勞働着
  ガナイ、地下足袋ガナイ、サウ云フ關係上、
  働カウトシテ働キ得ナイ釋放者ガ可ナリ多
  イノデゴザイマス、衣料切符等ハ町村長ガ
  發行シテ居リマスルガ、物ノ少イ此ノ頃デ
  ゴザイマスカラ、直グ勞働着ヤ地下足袋ヲ
  購買スルト云フヤウナコトハ出來得ナイ實
  情ニアルノデアリマス、ソコデ各刑務所內
  等ニゴザイマス一時保護ノ爲ノ保護會或ハ
  政府部內ニ於テソレ/〓御相談ノ上明日ヨ
  リ直グ鑛山或ハ造船其ノ他ニ働ク所ノ釋放
  者ノ爲ニ、サウ云フ衣料關係ノ御心配ヲ御
  願ヒ申上ゲルコトハ出來ナイモノデアラウ
  カト云フヤウナコトヲ、田舍ニ居ツテ司法
  保護會ノ仕事ヲヤツテ居ル自分ノ體驗ノ上
  ヨリ、斯ウ云フコトヲ强ク御要望申上ゲタ
  イト思フノデゴザイマス
  ソレカラ今一點デゴザイマスガ、昭和十
  四年ノ司法保護事業法ノ御制定以來、全國
  數万ノ司法保護委員或ハ區裁判所單位ノ司
  法保護會等其ノ他司法保護事業ニ働イテ居
  ル職員ト云フノハ、御承知ノ通リ全部無報
  酬デ働イテ居ルノデアリマス、而シテ釋放
  者ノ改過遷善ノ方面ニ指導誘掖シテ居ルト
  云フ其ノ仕事ハ、洵ニ尊イモノデアルト思
  フノデゴザイマス、然ルニ其ノ司法保護委
  員其ノ他ニ對スル國家ノ精神的ナ優遇ノ途
  ト云フモノハ何等開ケテ居ラナイノデアリ
  マス、是等ニ對シテ司法御當局ハ如何ナル
  御對策ヲ御持チニナツテ居リマスカ、願
  クハ相當ノ精神的ノ待遇改善法ヲ講ジテ戴
  キタイト思フノデアリマス、私ノ申上ゲル
  ノハ物質的、經濟的ノ報酬デアルトカ、或
  ハ年末ノ「ボーナス」デアルトカ、サウ云フ
  モノヲ考ヘテ居ルノデハゴザイマセヌ、何
  等カ國家ノ精神的ナ優遇ヲ、刑餘者ノ改過
  遷善ノ爲ニ働イテ居ル諸君ニ左樣ナ途ヲ開
  イテ戴クコトヲ、御當局ニ御要望申上ゲル
  所以デゴザイマスガ、御對策ノ御意見等ガ
  ゴザイマシタナラバ、此ノ席ニ於テ御伺ヒ
  申上ゲタイト思フノデゴザイマス、私ノ質
  問ハ是デ終リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=48

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• 049・岩村通世

  ○岩村國務大臣　今御尋ネノ點ハ二點デ
  アリマスガ、第一點ノ司法保護委員等ノ方
  方ガ司法保護事業ノ爲ニ非常ニ御盡力ヲ願
  ツテ居ル、、斯樣ナ方々ニ對シテ何カ國家的
  ニ待遇ノ途ヲ考ヘテ居ルカト云フコトデゴ
  ザイマス、此ノコトニ付テハ相當ニ〓究ヲ
  致シ、又考ヘテ居ル積リデアリマス、要ス
  ルニ精神的ナ優遇ノ方面、此ノコトニ付テ
  ハツイ最近ニナリマシテモ、色々政府部內
  デ考究ヲ致シテ居リマス、獨リ社會事業的
  ノ仕事ヲシテ居ルノハ司法部內ダケデハナ
  イノデアリマシテ、他ノ各省ニモ色々之ニ
  類似ノ事業ガ澤山ゴザイマスノデ、全般的
  ニソレヲ〓究スルコトニ相成ツテ居リマス、
  御滿足トハ行カナイカモ知レマセヌガ、近
  ク相當ノ優遇ノ途ヲ講ジ得ルコトト考ヘテ
  居リマス
  尙ホ序デニ申上ゲマスノハ、囑託ノ保護
  司ノ方々、之ニハ御承知ノ通リ奏任待遇ノ
  途ガ開カレテ居リマシテ、特殊ノ方々ニ付
  テハ法制上恩惠ニ浴スル途ガアルノデアリ
  マス、マダ其ノ點ガ十分ニ行渡ツテ居ナイ
  ト云フコトハ私共承知シテ居リマスガ、將
  來尙ホ一層サウ云フ方面ノ〓究ヲシテ見タ
  イト思ツテ居リマス
  ソレカラ次ニ釋放者ガ生產部面ノ戰士ト
  シテ、釋放後大イニ活動スル際ニ、地下足袋
  等ガナクテ困ルト云フ御話ガゴザイマシタ、
  サウ云フコトモ私聞イテ居リマス、此ノコ
  トハ產業戰士等ニハ十分ナ配給ヲシタラド
  ウカト云フヤウナ一般的ノ問題モ無論アル、
  殊ニ受刑者ガ釋放セラレマシテ、直チニ產
  業ニ從事スルト云フヤウナ場合ニハ特別
  ニ地下足袋デアルトカ其ノ他ノ作業服デア
  ルトカ、色々必要ナモノガアラウト思ヒマ
  ス、此ノコトニ付テハ如何ニシタラ宜イカ
  ト私共モ非常ニ考ヘテ居ルノデアリマス、
  最近ニ於キマシテ非常ニサウ云フ方面ニ都
  合ガ好クナリマシタノハ、今日受刑者ノ大
  部分ハ刑務所內ニ於テモ殆ド軍需產業ニ從
  事シテ居リマス、又刑務所外ニ於キマシテ
  モ軍需ノ作業ニ從事シテ居リマス、中ニハ相
  當大キナ會社デ、四、五百人カラ二千人ニ亙
  ル多數ノ受刑者ガ軍需ノ仕事ニ從事シテ居
  ル譯デアリマス、全部トハ行カナイト思ヒ
  マスガ、大部分所謂戰時意識ニ燃エテ居
  リマシテ、非常ニ勉强ヲシテ居ルト云フ實
  情デアリマス、ソレデアリマスカラ、軍需
  會社等ニ於キマシテモ、釋放シタ後ニ於テ
  モ熟練シタ者ナドハ是非使ヒタイト云フ希
  望ガ隨分アリマシテ、最近ニ至リマシテハ
  釋放者保讓團體的ノ、卽チ寄宿舍制度的ノ
  モノヲ工場ニ設ケタイト云フコトデ數箇所
  ニ設ケラレマシタ、サウ云フ所ハ軍需會社
  デアリマスカラ、一般ノ職工ニ對シテ地下
  足袋デアルトカ作業服デアルトカト云フモ
  ノヲ供給シ得ル如ク、サウ云フ附設ノ保護
  團體ノ釋放者ニ對シテモ、相當ニサウ云フ
  モノノ配給ガ出來ルヤウニナツテ參リマシ
  ク、是ハ私ハ非常ニ宜イコトダト思ヒマシ
  テ、出來ルダケ軍需會社等ニ於テ働イテ居
  ル受刑者ガ、釋放後ソコノ會社ニ留マツテ
  仕事ヲシタイト云フコトデアリ、會社ニ於
  テモ十分働カシテ宜イト云フモノニ付テハ、
  出來ルダケサウ云フヤウナ寄宿舍制度デモ
  作ツテ、尙ホ刑務所ニ於テ鍛ヘ上ゲタル精
  神ヲ持續スルヤウニ、行刑ノ效果ヲ存續ス
  ルヤウニ、是非助力ヲシテ貰ヒタイト云フコ
  トヲ相談致シマシタ所ガ、非常ニ多數ノ軍需
  會社ノ贊成ヲ得マシテ、續々サウ云フ寄宿舍
  ノ如キモノヲ設ケテ、サウシテ兼ネテ保護
  事業ヲ營ミタイト云フコトニナツテ參リマ
  シタカラ、恐ラクサウ云フ作業上ノ衣服デ
  アルトカ地下足袋ト云フヤウナモノヲ手ニ
  入レルコトハ非常ニ容易デアラウト思ヒマ
  ス、之ヲドノ程度マデ組織化スルカ、是ハ
  少シ時期ヲ要スルト思ヒマス、左樣ナ次第
  デサウ云フ方面ニモ行刑當局、保護當局ニ
  於テ十分注意致シテ居リマスカラ、左樣御
  承知ヲ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=49

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• 050・信正義雄

  ○信正委員　司法關係ニ付テ簡單ニ御尋ネ
  致シマス、本法案ヲ御提出ニナリマシタ理
  念ト申シマスカ、根本思想ニ付テ御伺ヒ致
  シタイト思ヒマス、此ノ時局下ニ於テ司法
  手續ノ簡素化ト云フヤウナコトハ、是ハ何
  人モ異論ノナイ所デアリマス、所ガ此ノ改
  正法律案ガ出マシタコトニ對シテ色々ト憂
  慮スル向キガアルノデアリマス、其ノ第一
  ハ、近頃法制ノ上ニ於キマシテモ國家理念
  ト云フモノガ全面的ニ高調セラレテ參リマ
  シタ、從來ノ個人ノ利益ト云フヤウナコト
  ヨリモ國家ノ利益、或ハ國家ノ防衞ト云フ
  コトガ最大ノ目的ヲナス、斯ウ云フ意味ニ於
  テ總テノモノガ整備セラレテ行ク、是ハ洵ニ
  當然ナコトダト思フノデアリマス、ソコデ
  從來ハ個人ニ依ル國家ノ擅恣的行爲ヲ抑止
  セシメルト云フヤウナ建前ノ法治主義カラ轉
  ジテ、今度ハ國家ニ依ル個人ノ擅恣的行爲
  ヲ抑止スルト云フ法治主義ニ變化ヲ來シツ
  ツアル、斯ウ云フ譯デス、ソコマデハ宜シイ
  ノデアリマスガ、此ノ考へ方ガ更ニ嵩ジテ、
  國民ニハ何モ言ハセナイヤウナ姿ニ置カレ
  ルノデハナイカ、手ツ取リ早ク言ヒマスレ
  バ有無ヲ言ハセナイ、斯ウ云フヤウナコ
  トニナルノデハナイカ、左樣ナ一部ノ正解
  カ、誤解カ知リマセヌガ、サウ云フ考ヘヲ
  持ツ者ガアリマス、ソコデ今此ノ改正法律
  案ヲ見テミマスト、或ハ二審制ト致シマシテ
  控訴審ニ於ケル個人ノ主張ヲ爲ス機會ト云
  フモノヲ奪ツテシマツタ、或ハ略式命令ト
  云フモノノ範圍ヲ擴大致シマシテ、被〓人ヲ
  シテ十分ニ主張ヲナス機會ヲ制限スルト云フ
  ヤウナ結果ヲ見ルニ至ツテ居リマス、或ハ又
  辯護人ノ數ヲ制限シテ辯護權或ハ個人ノ擁護
  ト云フヤウナ途ヲ制限スルト云フヤウニナツ
  テ居ル、斯ウ云フヤウニ見レバ見ラレル譯デ
  アリマス、ソコデ是等ノ事柄ヲ見テ-或ハ是
  ハ誤解デアルカモ知レマセヌ、誤解デアレバ大
  變宜イト思ヒマスガ、斯樣ナ從來カラ行ハ
  レテ居ル事柄ガ皆個人ノ勝手氣儘デアルト
  云フヤウナ考ヘ方デ之ヲ制限シ、或ハ制限
  スルノデナクトモ、少クトモ重視スル必要
  ガナイト云フヤウナ考ヘカラ出タモノデハ
  ナカラウカ、斯ウ云フ憂ヲ抱ク者ガアリマ
  スノデ、是等ノコトニ對スル御所見ヲ承リ
  タイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=50

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• 051・岩村通世

  ○岩村國務大臣　今囘ノ改正案ヲ提案スル
  ニ至ツタ根本的ノ考ヘ方ニ付テ、色々御尋
  ネガゴザイマシタガ、私共今囘此ノ案ヲ提
  出致シマシタ考ヘ方ヲ率直ニ申シマスト、
  戰爭ガ所謂決戰段階ニ入リ非常ニ重大ナル
  時局ニ進ム、色々ナ方面ヲ考ヘレバ、或ヘ
  空襲ト云フヤウナコトモ考ヘテ置カナケレ
  バナラヌ、サウスレバ全國ノ通信機關トカ
  交通機關ト云フヤウナモノハ非常ニ變化ヲ生
  ズル場合モアルノデハナイカ、斯ウ云フコ
  トヲ前カラ考ヘテ居ルノデアリマス、左樣
  ナ場合ニ立至ツテモ司法裁判ト云フモノハ
  如何ナル形カニ於テ完全ニ行ハレルヤウニ
  シテ置キタイ、是ガ私共ノ考ヘデアリマス、
  一面ニ於テドウシテモ戰爭ニ勝タナケレバ
  ナラヌ、其ノ爲ニ戰時ニ關スル特別ノ立法
  ガ、獨リ司法關係バカリデナク、全般的ニ色
  色ナ法律ガ出來テ居ル譯デアリマス、其ノ
  法律ハ、如何ニ戰局ガ進ンデ參リマシテモ、
  如何ナル事態ガアツテモ、私共司法ニ職ヲ
  奉ジテ居ル者ハ何時デモ裁判ハ此ノ程度デ
  出來ルノダト云フコトニシテ置キタイト思
  ヒマス、之ヲ實際ノ例デ申シマスト、御指
  摘ノ三審制度ヲ二審制度ニシタト云フ點デ
  アリマス、サウシテ上〓審ハ控訴院ニト云
  フ原則ニ致シマシタ、是ハ國防保安法モ治
  安維持法モ、今囘ハ區裁判所カラ始ツタ事
  件ハ上〓ハ控訴院デ取扱フコトニシタ譯デ
  アリマス、デアリマスカラ、今日、例ヘバ樺
  太ノ區裁判所ノ事件デモ上告スレバ事京マ
  デ少クトモ上告ノ手續ヲシナケレバナラヌ、
  是ガ色々ナ場合ヲ想像致シマシテ、一朝ニシ
  テ通信等ガ止ルト云フコトガゴザイマスト、
  第一上〓ノ書類ト云フモノガ東京ニ來ルノ
  ガ非常ニ遲延スルト云フコトガ起ツテ來ル、
  又北海道ダケデ申シマシテモ、二審制ニシテ、
  民事刑事トモ區裁判所ノ事物管轄ヲ擴大ス
  ル、例ヘバ從來ハ札幌地方裁判所ハ一審デ
  アリマシタガ、サウ云フ場合ニハ一審事件
  ハ札幌マデ地方ノ者ガ出テ來ナケレバ
  ナラヌ、札幌地方裁判所ノ管內ノ區裁判所
  ノ所在地ノ者デモ地方裁判所マデ出テ裁判
  ヲ受ケナケレバナラヌト云フ關係ニナツテ
  居ル、併シ是ガ區裁判所ノ權限ガ擴張サレマ
  スト、數箇所ノ區裁判所デ事件ガ處理サレ
  ル、サウ云フコトニナルト、一朝色々ナ事
  變ノ場合ヲ考ヘマシテモ、大體裁判所ニ民
  事、刑事ヲ通ジテ相當ノ事物管轄ヲ今日ヨ
  リ廣クシテ置ケバ、一ツノ控訴院管內ニ於テ
  モ、萬ノ場合ハ裁判ガソレデ出來ルヂヤナイ
  カ、交通機關ガ不便デアツテモ、裁判其ノ
  モノハ出來ル形ガ整フデハナイカ、要スル
  ニ戰爭ニ勝ツ爲ニハ、獨リ行政部面ノミナ
  ラズ、司法ノ方面ニ於テモ色々考ヘナケレ
  バナラヌ、然ラバドウ考ヘルカト云ヘバ、
  如何ナル事態ニ遭遇シテモ裁判ガ出來ルヤ
  ウニシテ置カナケレバナラヌ、斯ウ云フコ
  トガ私共ノ考ヘ方デアリマス、是ハ貴族院
  ノ委員會デモ質問ガアリマシタガ、戰爭ガ
  濟ンダラドウナルノダ、戰爭ガ濟ンダラソ
  レハ元ヘ戾ル、是ハ法律ニ明カニ規定ガア
  ル、原則ノ三審制度ニ戾ル譯デアリマス、
  出來ルダケ民事、刑事ニ亙ツテ總テ保護ヲ
  厚クシテ置クコトハ非常ニ大切ナコトト思
  ヒマスガ、保護ヲ厚クセントスレバ戰時狀
  態ニ於テハ裁判ガ出來ヌト云フコトニナル
  ノデハ尙ホイケナイ、玆ニ戰時中ダケ特別
  ナ手續ヲ規定致シマシテ、如何ナル事態ガ
  起ツテモ裁判其ノモノハ出來ル、斯ウ云フ
  コトガ私共ノ考ヘ方デゴザイマス、例ヘバ
  先程御話ノヤウナ裁判所ノ色々ナ手續、略
  式ノ手續ノ如キモ、サウ云ツタ考ヘ方カラ、
  色々細カク言ヘバ御議論ハアラウト思ヒマ
  スケレドモ、戰時中ハ最小限度デモ裁判ガ
  出來ルノダ、斯ウ云フコトニシテ置キタイ
  ノデアリマス
  尙ホ序デニ申上ゲタイト思フノデスガ、
  大體是ダケアレバ相當ノ事態ニ立至ツテモ
  司法權ハ行ヘルト私ハ思ヒマス、ケレドモ
  是ダケデマダ足ラヌ場合ガ少シアル、ソレ
  ハ極ク單簡ナ場合デアリマスガ、土地ノ管
  轄ヲ如何ニスベキカト云フコトダケハ實ハ
  今度法律改正ニハ入レテナイ、例ヘバ或ル
  一ツノ地方裁判所ノ職務ガ止ツタト云フヤ
  ウナ場合、地域ヲ異ニシタ地方裁判所ニ刑
  事事件デアレバ起訴ガ出來ルヤウニシタ
  イ、サウ云フヤウナ特殊ノ場合ガ二三アリ
  マスガ、是ハ非常緊急ノ場合ニ處置シタラ
  宜イト考ヘテ居リマス、今囘提案致シテ居
  リマスル改正法律ヲ御認メ下サイマシタナ
  ラバ大體ノコトハ出來ル、斯ウ云フ考ヘデ
  提案ヲシタ譯デアリマスカラ、御諒承ヲ願
  ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=51

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• 052・信正義雄

  ○信正委員　二審制ノ問題ニ付テデゴザイ
  マスガ、是ハ何ト申シテモ、今日マデ控訴
  審ハ無駄ナコト、蛇足ヲヤツテ居ツタノデ
  ハナク、ヤハリ必要ナ制度ダト思フ、又國
  民ノ方カラ見マシテモ、裁判ガ假ニ第一審
  デ間違フヤウナコトガアツテ見タ所デ、控
  訴審或ハ上〓審、サウ云フヤウナ所ニ於テ
  「セーヴ」スルコトガ出來ルノダ、此ノ心持
  デ司法ノ人ニ對シテ滿腔ノ信賴ヲシテ居リ
  マス、又現實ヲ見テモ、事實上控訴審ニ於
  テ相當救ハレテ居ル、尤モ控訴審ノ考ヘ方
  ガ必ズシモ良イノデアツテ、區裁判所ガ總
  テ惡イト云フノデハアリマセヌガ、大體ノ
  數字カラ見レバ相當控訴審ノ方ガ良イコト
  ハ無論デアリマス、所ガ今是ガ廢止ニナツ
  タニ付テノ國民ノ不安ハ、結論スル所、第
  一審ノ裁判所ハ、大臣、次官ノ御言葉ノ通
  リ各裁判所トモ達識有能ノ經驗者ガ居ルト
  云フコトニ依ツテ、其ノ區裁判所或ハ地
  方裁判所、第一審其ノモノニ對シテ本當ニ
  信賴ヲ置キ得ル狀態ニナツテ居ナイ限リニ
  於テハ何トシテモ國民ノ不安ハ除カレナ
  イ、中々難カシイ問題ダト思フノミナラズ、
  一方カラ考ヘルト、民事事件ハ財產關係ガ
  多イカラ是ハ宜イガ、刑事問題ニナツテ來
  テ、苟クモ無辜ノ民ガ罰セラレル、苟クモ
  寃罪ニ泣カネバナラヌ、或ハ過當ナ刑ニ、
  我慢シテ服サナケレバナラヌノダト云フコ
  トニナルト、國家トシテ是程ノ不祥事ハ
  ナイ、又此ノ事ニ思ヒヲ致シマスレバ、國民
  ノ不安ヲ懷クノモ無理ハナイ、一方ニ於テハ
  裁判ノ簡素化ヲ圖ラナケレバナラヌ、是一
  私ニモ能ク分ルシ、何トカシナケレバナラ
  ヌト思フ、同時ニ一方ニ於テ控訴審ヲ廢止
  スルコトニ依ツテ非常ナ國內不安ヲ惹起
  スル、此ノ不安ヲドウ云フヤウニシテナクシ
  タモノデアラウカ、此ノ點ニ付テ惱マサレル
  ノデアリマス、適材ヲ適所ニ配置スルコト
  モ結構デアル、ソレダケデ果シテ十分國民
  ガ納得シテ吳レルカドウカ、假ニ客觀的ニ
  不安ガナイモノトシテモ、國民ガ不安ヲ感ズ
  ルコトニナルト、ソレ自體ガ非常ニ不利ヲ
  致スノデアリマス、是等ノ點ニ付テ、適材
  ヲ適所ニ配シテ下サルノモ結構デアルガ、
  何トカモウ少シ外ニ考へガナイモノデアラ
  ウカト實ハ伺ヒタイノデアリマス、尙ホ御
  參考マデニ序ニ申上ゲタイガ、今改正案ヲ
  見ルト、裁判所ノ事物管轄ヲ非常ニ增大シ
  テ居ル、殊ニ刑事事件ノ如キニ至ツテハ、
  殆ド區裁判所ガ管轄權ヲ持ツテ居ルコトニ
  ナツテ居ル、所デ今日區裁判所ノ實情ヲ見
  マスト、御承知ノ通リ決シテ閑デハゴザイ
  マセヌ、實ニ忙シイ、場合ニ依ルトタツ
  タ一人ノ判事デ調停カラ民事、刑事ノ公判
  カラ、其ノ他凡ソ總テノコトヲ每日ヤツテ
  居ラレ、實際氣ノ毒デアリマス、或ハ閑ナ
  裁判所モアルカモ知レマセヌガ、私ノ知ツ
  テ居ル範圍ニ於テハ、實際區裁判所ノ狀態
  ハ今日仕事ガ多過ギルヤウニナツテ居ル、
  其ノ上ニ更ニ事物管轄ガ殖エテ居ル、是一
  大變ナモノデス、其ノ結果ハ裁判事務ガ疎
  カニナルヨリ外ニ行キドコロハナイ、勿論
  豫備人員ガアルトモ承リマスシ、又地方裁
  判所ノ判事ノ方デ減員サレテ區裁判所ノ方
  へ御廻リニナル人ガアルカモ知レマセヌガ、
  此ノ事物管轄ノ增大ノ比ト人員增加ノソレ
  トヲ比ベマシテ、果シテ償ヒガ付クカドウ
  カ、是ハ事實問題トシテ案ズル一ツデアリ
  マス、斯ウ云フ風ナコトニナツテ、一番搾り
  裁判所ヲ大事ニシナケレバナラヌ、控訴審
  ガナクナレバ重要視シナケレバナラナイ一
  審ノ裁判所ガ仕事ガ盛リ澤山デハ中々愼重
  審査ト云フヤウナコトハシニクイヤウナコ
  トガ非常ニ起キテ來ル、或ハ斯ウ云フコト
  デアルナラバ、一寸難カシイ話デアリマセ
  ウケレドモ、裁判所ト云フモノハ今マデ單
  獨判事デ仕事ヲシテ居ラレルガ、之ヲ何ト
  カシテ此ノ際二人以上ノ判事ニシテ貰フ、
  サウ云フ風ナコトニデモスレバ、結果ニ於
  テ同ジ所ニ到達スルトシテモ、見ル人トシ
  テハ一人二眼ヲ以テスルヨリハヤハリ二人
  四眼ヲ以テシテ吳レタ方ガ得心ガ出來ル、
  サウ云フ風ナコトモ考ヘラレル、重複ヲ避
  ケル意味ニ於キマシテバラ〓〓ナコトヲ申
  上ゲテ連絡ガ取レマセヌケレドモ、以上申
  上ゲマシタコトニ付キマシテ御意見ヲ拜聽
  致シタイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=52

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• 053・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今區裁判所ノ事務ノ繁
  劇デアルト云フコトニ付テ色々御同情ノア
  ル御言葉ヲ賜ハリマシテ感謝致シマス、大
  體御尋ネノ點ハ二點ニナルト思ヒマス、二
  審制度ト云フコトニナルト國民ガ非常ニ不
  安ヲ抱クノデハナイカ、是ハ三度調ベルノ
  ガ二度ニナル、簡單ニナルノダカラ不安ダ、
  一應ハサウ云フ御懸念ノアルノモ無理ハナ
  イ、ケレドモ今日ノ裁判ニ關スル制度ヲ見
  マスルト、現在ノ我ガ國ノ裁判制度ハ一審
  事件ト云フモノガアル譯デアル、例ヘバ內
  亂罪ノ如キハ大審院デ一審終審、一審事件
  デアル、ソレカラ治安維持法、國防保安法
  ハ二審事件デアリ、其ノ他ニモ若干二審制
  度ガ出來タガ、一般的ノ原則トシテハ三一審
  制度ニナツテ居ル、現在ニ於テ一審制度、
  二審制度、三審制度ト云フ三ツノ制度ガア
  ル、一審制度ノ例モ大審院デ一審終審ノ事
  件モ今マデアツタ譯デアル、結論ハ裁判ニ
  當ル者ガ責任ヲ以テ親切ニ悅服サセルヤウ
  ニ裁判ヲスルト云フコトガ私ハ必要ヂヤナ
  イカト思フ、三審ニシテモ-サウ云フコ
  トハ全然ナイノデアリマスルケレドモ、假
  ニ一審デ取調ヲ粗漏ニスル、卽チモウ一遍
  調ベテ貰ヘルカラト云フ考ヘガアツテ一審
  ノ取扱ヲシタラ、是ハ三審ニシテモ四審ニ
  シテモ五審ニシテモイケナイト思フ、例
  バ行政裁判所ノ如キモ一審デアリマス、要
  ハ三審制度、二審制度ト云フ點、所謂制度
  トシテノ擔保ハ無論アリマスルケレドモ、
  事實ヲ調ベル者、裁判ヲスル人ガ本當ニ熱
  心ニ全力ヲ擧ゲテ責任ヲ持チ、親切ニ扱フ
  ト云フコトガ一番大切ナコトデハナイカト
  私ハ思ヒマス、無論二度ヨリハ三度ト云フ
  現在ノ制度、是ハ平時ノ制度トシテハ各國
  多ク其ノ揆ヲ一ニシテ居ルノデアリマスル
  カラ、其處ニ裁判ノ妙味ト云フモノハ無論
  アルコトハ私モ考へマス、併シ戰時ニ於キ
  マシテハ非常ニ緊迫ヲ致シテ居リマス、所
  謂人的資源ノ確保カラ申シマシテモ、刑事
  事件ノ如キハ速カニ適正ニシテ而モ出來ル
  ダケ敏速ニ確定スルト云フコトガ必要デア
  ル、民事事件ニシテモ、會社等ノ事件ニナ
  リマスルト、生產ノ關係等ニ於テ裁判ヲ繼
  續シテ長引クト云フコトハ是ハ宜シクナイ
  ト私ハ思ヒマス、出來レバ敏速ニ裁判ガ處
  理ノ出來ルト云フコトハ特ニ望マシイコト
  ト思ヒマス、左樣ナ譯デ二審制度ニナリマ
  シタナラバ、二審制度ニナリマシタ爲ニ一
  般ガ不安ヲ抱クト云フヤウナコトノナイヤ
  ウニ、裁判ヲスル者ガ全力ヲ擧ゲテ裁判
  ニ力ヲ致スト云フコトガ必要デアラウカト
  思ヒマス、若シ二審制ニナリマシテ親切ニ
  シテ適正ナ裁判ガ行ハルルト云フコトデ、
  裁判ヲ受ケル者ハ洵ニ有難イ裁判デアルト
  云フコトニ悅服スルナラバ、是ハ不安ガナ
  クナル、二審制度ニナリマスルト其ノ點ガ
  特ニ裁判官ノ注意ヲシナケレバナラヌ點デ
  アリマス、又私共斯ウ云フ點ニ付テ出來ル
  ダケサウ云ツタ方向ニ、裁判ノ出來ルヤウ
  ニ色々ノ方面ノ考ヘヲ致サナケレバナラヌ
  ト云フヤウニ考ヘテ居リマス
  ソレカラ區裁判所ガ事物ノ管轄ガ非常ニ
  廣クナリ、判事モ非常ニ忙シイノデ困リハセ
  ヌカト云フ御同情ノ御言葉モアリマシタ、
  實ハ刑事事件ニ付テハ、檢事ガ區裁判所ノ
  管轄ニ屬スル事件デアリマシテモ、地方裁
  判所ノ直接ノ公判ヲ請求スルコトガ相當ダ
  ト云フヤウニ考ヘマシタ時ニハ、區裁判所
  ノ管轄ニ屬スル事件ト雖モ地方裁判所ニ起
  訴スルコトガ出來ル、斯樣ナ規定ヲ設ケマ
  シテ、成ベク單獨判事デ裁判ヲスルヨリハ
  合議制ガ宜イト考ヘマシタ時分ニハサウ
  云フ便宜ナ取扱モ出來ルヤウニ規定ヲ設ケ
  タ譯デゴザイマス、只今御心配ノ點ノ若干
  ハ左樣ヲ規定ニ依ツテ補フコトガ出來得ル
  カト思ヒマス
  ソレカラ是ハドウ云フ計算ニナルカ分リ
  マセヌガ、區裁判所ノ事物ノ管轄ガ殖エマ
  ス一面ニ於テハ、略式手續ト云フヤウナモ
  ノモ、此ノ案ガ通過致シマシタラ相當廣
  イ範圍ニ行ハレルノデ、如何ニシテ人員ノ
  組替ヲスルカト云フヤウナ事柄ハ、私共更
  ニ十分〓究ヲシヨウト思ヒマスガ、殖エマシ
  タ事件ヲ處理スルニハ人ヲ要スルノハ當然
  デアリマス、ソコデ或ハ斯ウ云フ御疑問モ
  アラウカト思ヒマス、判事ハ地位ノ保障ヲ
  持ツテ居ルモノデ、サウ云フ方面ノ手當ヲ
  シナイデ區裁判所ノ人員ヲ殖ヤスト云フコ
  トハ出來ルカ、斯ウ云フヤウナ御疑念モア
  ラウカト思ヒマスガ、實ハ戰時ニ關スル立
  法ヲ致シマシテ、以後區裁判所ノ權限ト云
  フモノハ相當ニ重クナルト考ヘマシテ、現
  在東京、大阪トカ、相當ノ判事ヲ有シテ居
  ル地方裁判所デハ、部長ヲ除キマシテ、其
  ノ他ノ判事ハ殆ド全部區裁判所ノ判事ト地
  方裁判所ノ判事ト兼務サシテ居リマス、デ
  アリマスカラ、地方裁判所ノ判事ガ區裁判所
  ニ行クノヲ厭ヤガルヤウナ氣持ハナイカト
  云フヤウナ、民間ノ方々ノ御心配ヲヨク聞
  クノデアリマスガ、制度上、手續上ハ地方裁
  判所カラ部長以外ノ判事ガ區裁判所デ仕事
  ヲ執ツテ貰フト云フコトハ、適材適所ノ配
  置ニハ別ニ支障ハナイ譯デアリマス、殊ニ
  先程司法次官カラモ說明ガアリマシタ通
  リ、大東亞戰爭後ハ判事諸君モ適材適所デ
  難カシイ仕事ニ當ラウト云フ氣慨、氣魄ハ
  燃エテ居リマス、左樣ナ點ハ御心配ヲ戴イ
  テ居ルノデアリマスガ、大〓適材適所ノ配
  置ガ出來ル、斯ウ云フ考ヘデゴザイマス、
  甚ダ簡單デゴザイマスガ、一應御說明申上
  ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=53

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• 054・信正義雄

  ○信正委員　今日此ノ戰時ニ於キマシテ一
  審ノ判事サンガ甚ダ不足スルト云フヤウナ
  コトモ考ヘラレマス、ソコデソレ等ノ人ヲ
  補充スル意味ト、更ニモウ一ツハ、最近勾
  留期間ガ長引キマスノハ豫審中ガ多イノダ
  ト云フ實際問題カラ割出シマシテ、此ノ際
  ハ是モヤハリ戰時立法ト致シマシテ、豫審
  ヲ廢止ナサルト云フ風ナコトニシマスノハ
  如何デゴザイマセウカ、サウシマスルト、
  人員モ剩ツテ參リマス、勾留期間ガ長引ケ
  バ不安ヲ感ズル、是ガ長引ク最大ノ原因ハ
  豫審期間デアル、私ハサウ云フ風ニ思ヒマ
  スカラ、寧ロ此ノ豫審ヲ一時廢止サレテ、
  剩ツタ人員ヲ他ノ仕事ニ廻ハスコトニシテ
  ハドウカト思ヒマスガ、如何デアリマセ
  ウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=54

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• 055・岩村通世

  ○岩村國務大臣　豫審ヲ廢止シテ裁判手續
  ノ迅速ヲ圖ツテハドウカト云フ御趣旨ノ御
  尋ネト存ジマス、實ハ豫審ヲ如何ニスベキ
  カト云フコトハ非常ナ問題デアリマシテ、
  數年前司法省內ニ於ケル委員會デ是ガ非常
  ニ問題ニナツタ譯デス、豫審ハ現在起訴前
  ノ豫審、起訴後ノ豫審ト二ツノ制度ガアル
  譯デス、軍法會議ハ起訴前ノ豫審デアツタ
  カト思ヒマス、起訴前ノ豫審ト云フ制度ニ
  スルカ、現在ノ如ク起訴後ノ豫審ニスルカ
  ト云フコトニ付テモ問題ガアル、尙ホ是ハ
  御承知ノ通リ平時立法ニナリマスト、檢事
  ノ聽取書ノ效力ト云フモノガ地方裁判所
  ニハナカツタモノデス、然ラバ豫審制度
  ヲ廢止シテ檢事ノ聽取ト云フモノニ證據力
  ガナイト云フコトニナツテ來マスト、豫
  審ヲ廢止スルト、地方裁判所ニ於テハ何
  モ證據力ノアルモノハナクナル譯デス、
  現在ハ、平時立法デ言ヘバ、檢事ノ聽取リ
  ハ地方裁判所ニ於テハ證據力ガナイ、其ノ
  聽取リニ基イテ檢事ガ起訴シテ豫審ヲ請求
  スル、豫審ニ於テハ其ノ記錄ニ依ツテ訊問
  スル、ソレガ初メテ原則トシテ證據ニナツ
  テ行ク譯デアリマス、ソレデアリマスカラ、
  豫審ヲ廢止スルト云フ問題ハ結局檢事ノ搜
  査權、檢事ノ作成スル書面ニ證據力ヲ持タ
  スカドウカト云フ問題ニ關聯スルト思ヒマ
  ス、是ハ司法制度トシテハ非常ニ大キナ問
  題デアリマシテ、是ハ先程モ申上ゲマシタ
  通リ、刑事法典ノ改正準備委員會ト云フモ
  ノガ、此ノ前ノ議會デ豫算ヲ御協賛下サイ
  マシテ、只今開カレテ居リマス、ソレデ手
  續一切ノモノヲ其ノ委員會ニ掛ケテ、〓究
  シヨウト云フノデアリマス、此ノ際私カラ
  申スノハ如何カト思ヒマスガ、現在ノ刑事
  訴訟法ト云フモノノ建前ハ、其ノ全體ニ付
  テ〓究シナケレバナラヌ點ガアルノヂヤナ
  イカ、ドウモ法廷デ檢事ト被告人ガ對立シ
  テ、原〓ト被〓トナツテ爭フト云フヤウナ
  姿ガ、日本ノ裁判制度トシテ宜イカドウカ
  ト云フコトニ付テハ私ハ非常ニ疑問ヲ持ツ
  テ居ル、而モ訴訟法ノ中デハ、檢事ノ搜査
  ガアリ、終ヒノ方ニ行クト、搜査デモ何デ
  モナイ、刑ノ執行ガ書イテアル、斯ウ云フ
  コトハ外國ノ飜譯デセウガ、今日モウ一遍
  振返ツテ檢討シナケレバナラヌモノガアル
  ノデハナイカト私ハ考ヘテ居リマス、豫審
  制度ノ如キモ其ノ一ツダト思ヒマス、左樣
  ナ譯デ是ハ重大ナ訴訟法ノ問題デゴザイマ
  ス、私共十分御說ヲ伺ツテ〓究ハ致シテ居
  リマスガ、只今ノ所、如何ニスベキカト云
  フコトヲ明言スルダケノ〓究ハ積ンデ居リ
  マセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=55

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• 056・信正義雄

  ○信正委員　是ハ國內治安ノ方ノ問題ニナ
  ルノデスガ、勿論御承知ノコトト存ジマス
  ケレドモ、今日他人ノ非ヲ發クト云フ無責
  任ナ投書ガ實ニ橫行ノ傾向ニアルト思フノ
  デス、是ハ今マデモアツタコトデスガ、近
  頃ハドウモソレガ多イ、是ハドウモ日本人
  ラシクモナイヤリ方デアリマスシ、(塩)
  心ヲ阻碍シ、徒ラニ檢察官ヲ忙殺セシムル
  ト云フコトニナリ、又實際無辜ノ民ガ色々
  ト迷惑ヲ感ズルト云フコトニナルドウモ
  斯ウ云フヤウナ點ガ非常ニ多イ、寧ロソレ
  ヲ歡迎スルヤウナ氣持ガアルト云フヤウナ
  コトデ非常ニ氣持ガ惡イ、モウ一ツハ、今
  度新タニ瀆職罪ノ刑ノ加重ノ規定ガ出來マ
  シタケレドモ、此ノ加重規定ハ主トシテ收
  賄ト云フコトニ關係シタモノノヤウニ拜見
  スル、併シ收賄以外ニ、權力者ガ其ノ無言
  ノ威力ヲ發揮シテ、サウシテ一般ノモノヨ
  リ以上ニ總テヲ自分ノ有利ナヤウニ動カシ
  テ行ク、手取リ早ク言ヒマスレバ、經濟關
  係ナドニ付テ、例ヘバ配給ナドニ致シマシ
  タ所デ、權力者ガサウ云フコトヲ露骨ニ言
  フノデハナイケレドモ、自由專恣ノ行ヒガ
  アルト云フヤウナコトデ一般ニ顰蹙シテ居
  ルノガ事實ダト思フ、此ノ頃ズツト世間ヲ
  見テミマスト、此ノ二ツノ問題ガ非常ニ氣
  持惡ク思ハレル、瀆職ノ刑ノ加重ハ宜シイ
  ガ、此ノ方面ノモノニ付テハ今度ノ改正案
  デハ餘リ觸レテオイデニナラナイヤウニ思
  フ、ルウ云フヤウナ點ニ付テハドウ云フ御
  所見デアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=56

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• 057・大森洪太

  ○大森政府委員　第一ノ投書ノ問題デアリ
  マスガ、檢察當局ニ於キマシテ濫リニ投書
  ヲ信賴シテ、サウシテ事件ヲ拵ヘルト云フ
  コトノ惡イコトハ、御示シノ通リデアリマ
  ス、今日左樣ナコトハ毛頭ナイトハ心得テ
  居リマスケレドモ、併シ今後モ十分ニ注意
  ヲ致シタイト存ジテ居リマス、但シ現在ニ
  於テサウ云ツタ投書ノ種類ガ、特ニ殖エタ
  ト云フ現象ハナイヤウデアリマス、併シナ
  ガラ投書ノ絕滅ト云フコトハ中々出來ナ
  イ、アルコトハアルノデアリマス
  第二ノ點デアリマスガ、御示シノ問題ニ
  付テノ刑罰、確カニ考慮ノ餘地ハアルト思
  フノデアリマス、又大イニ考ヘテ、此ノ時
  局ニ相應シキモノヲ作ラナケレバナラヌト
  云フコトハ、御說ノ通リデアリマスケレド
  モ、今囘ハ斯カル短期間デアリマスシ、決
  戰態勢ニ最モ必要ナモノヲ以テ臨ミタイ、
  斯樣ニ存ジタ次第デ、此ノ程度ニ止メテ置
  イタノデアリマス、右御諒承願ヒタイノデ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=57

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• 058・作田高太郎

  ○作田委員長　十二時過ギマシタカラ、午
  後一時マデ休憩致シマス
  午後零時九分休憩
  午後一時十一分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=58

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• 059・作田高太郎

  ○作田委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マス-木下君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=59

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• 060・木下郁

  ○木下(郁)委員　私ハ戰時刑事特別法ノ改
  正案ニ付キマシテ二、三點御尋ネ申上ゲタイ
  ト思ヒマス、此ノ改正案ノ第二十九條ノ二、
  「區裁判所ハ事案ノ内容」云々トアリマス、
  是ハ此ノ刑事訴訟法ノ從來ノ略式命令ノ手
  續ニ於キマシテ、檢事ノ請求ニ依ルト云フ
  コトニナツテ居ルノデアリマスガ、此ノ分
  ハ檢事ノ請求ガナクテモ構ハヌト云フ意味
  デアリマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=60

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• 061・池田克

  ○池田政府委員　檢事ノ請求ニ依リマシテ、
  公判前ニ區裁判所ガ略式命令ヲ出スノデア
  リマス、其ノ點ニ付キマシテハ、案ノ第二
  十九條ノ四ト致シマシテ、刑事訴訟法第五
  百二十三條乃至第五百二十八條ノ規定ハ第
  二十九條ノ二ノ場合ニ付テ之ヲ準用スルト
  云フ規定ヲ設ケテ居リマス、御諒承ヲ願ヒ
  マス

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• 062・木下郁

  ○木下(都)委員　ソレカラ第二十九條ノ五
  ニ付キマシテ略式命令ノ請求權ノ抛棄デア
  リマスガ、此ノ度ノ改正案ノ根本趣旨ハ、
  大臣カラ戰時下ノ裁判ノ手續ヲ簡素强力ニ
  スル、的確敏速ニスルト云フ目的ダト云フ
  御說明ガアリマシタ、此ノ正式裁判ノ請求
  權ヲ抛棄スル、ソレヲ認メルコトニ依ツテ
  ドノ點ガ此ノ目的ニ副フ譯デアリマスカ、
  狙ヒハ何處ニアリマセウカ、御伺ヒ致シタ
  イト思ヒマス

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• 063・池田克

  ○池田政府委員　現在正式裁判ノ請求ノ抛
  棄ヲ認メテ居リマセヌ爲ニ、被告人ノ方デ
  ハ何等ノ異議ガナイ、卽時罰金ノ支拂ヲ希
  望スルト云フ風ナ場合ガアツテモドウスル
  コトモ出來ナイノデゴザイマス、ソレカラ
  又例ヘバ今囘ノ案ニ依リマシテ、一定範圍
  ノ自由刑ノ言渡ヲモ略式手續ヲ以テ認メル
  コトニナツタノデアリマスルガ、ソレ等ノ
  場合ニ於キマシテモ全ク自己ノ眞意カラ異
  議ガナイ、早ク裁判ヲ執行シテ貰ヒタイ、
  斯ウ云フ風ナ卽時裁判ノ確定ヲ希望スル者
  ガアルノデゴザイマス、左樣ナ被告人ニ對
  シマシテハ今日ノ制度ノ下ニ於キマシテハ、
  正式裁判ノ請求ノ期間ヲ經過致シマシテ、
  要スルニ最小限度七日經チマセヌト裁判ガ
  確定シナイ、斯樣ナ實情デゴザイマス、左
  樣ナ關係ガゴザイマシテ、左樣ナ迂遠ナ途
  ヲ取ルヨリモ此ノ際裁判ヲ確定セシムルコ
  トニ付テ何等ノ障碍ガナイ、斯ウ云フモノ
  ニ付キマシテハ速カニ裁判ヲ確定セシムル、
  斯樣ナ趣旨デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=63

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• 064・木下郁

  ○木下(郁)委員　只今承ル所ニ依リマスト、
  結局七日ノ節約ト云フコトニ相成ルト思ヒ
  マい、從來ノ規定ニ致シマシテモ、刑事訴
  訟法五百二十八條ニ依ルト、七日以內ニ正
  式裁判ヲ申立テナケレバナラヌ、サウスル
  ト現行ノ法規ノ上デモ、七日待テバ抛棄ガ
  出來ルト同ジ結果ニナル譯デアル、ダカラ七
  日ノ節約ダケノ爲ダト云フコトガ反面デ言
  ヒ得ルト思ヒマス、サウシマスト、七日ノ
  節約ダケト云フコトトナレバ、民事ノ上〓
  等ニ於テハ期間ガ三十日、斯ウ云フノヲ半
  分ニシテモ二週間ノ不確定狀態ガ省カレル
  ト云フコトモ考ヘラレル、唯略式ニシテ僅
  カニ七日間ノ手續ノ未確定狀態ヲ節約スル
  ト云フダケデ之ヲヤル、害ガ少シモナケレ
  バ其ノ七日デモ尙ホ節約シタ方ガ、シナイ
  ヨリモ宜シイト云フコトガ考ヘラレマスル、
  所ガ實際ノ略式命令ノ出サレル實情ニ於キ
  マシテハ、被〓ハ身柄ヲ拘禁サレテ居ル場
  合ガ多イノデアリマシテ、今度ノ範圍ガ又
  廣クナレバ隨分體刑ノ部分マデ及ビマスノ
  デ、サウ云フ場合ガ多カラウカト思ヒマス、
  サウ云フ被〓ガ其ノ略式命令ヲ科セラレル
  內輪ノ事情ニ於キマシテ、早イ話ガ此ノ通
  リノ刑罰規定ニナツテ居ルノダ、併シナガ
  ラ此ノ程度デ略式デ行クノダ、貴樣ハソレ
  デモ異議ガアルカドウカト云フコトガヤハ
  リ行ハレナイトハ保シ得ナイノデアリマス、
  サウ云フコトガ此ノ身柄ノ拘禁ノ間ニ於テ、
  又拘禁サレナイ場合ニ於キマシテモ行ハレ
  得ル少クトモ危險ノ機會ハアルト思フ、サ
  ウ云フ危險ノ機會ヲ作ルコトト、僅カニ七
  日間ノ未確定狀態ヲ節約スルコトト比ベマ
  スルト、相當此ノ改正案ノ骨子デアリマス
  ル裁判手續ノ簡素强化ト云フ趣旨ト違ヒハ
  シナイカ、殊ニサウ云フ點ニ於テ危惧ヲ致
  シテ居ル向キガ、今マデノ實績カラ行キマ
  シテモ相當濃厚デアツタト考ヘテ居ルノデ
  アリマス、此ノ意味ニ於キマシテ、私ハ寧
  ロ斯ウ云フ危險ノアルコトヲ、タツタ七日
  ノ節約ノ爲ニスルコトハ止メタ方ガ宜イデ
  ハナイカト云フ風ニ考ヘテ居リマスルガ、
  此處デ議論ヲ申上ゲテモ始マリマセヌカラ、
  其ノ點ハ諄々シク申上ゲマセヌ
  〔委員長退席、山本委員長代理着席〕
  唯眼目ガ裁判手續ヲ簡素化スル、的確敏速
  ナラシメルト云フ點ニアリマスルカラ、其
  ノ意味デ尙ホ別段ノ考慮ガ拂ハルベキモノ
  デアルト考ヘルノデアリマス、ソレハ私先
  般受刑者ノ勤勞シテ居ル造船部隊其ノ他ノ
  モノヲ見マシテ、洵ニ感激深カツタノデアリ
  マス、司法當局ニ於テハ吾々以上ニ十分御承
  知ノコトト思ヒマスルケレドモ、アノ受刑者
  ノ有樣ハ、日本ノ行刑ノ革命的ナ事柄ト私ハ、
  感ジタノデアリマスルガ、日本ナレバコソ
  斯ウ云フコトガアルノダト考ヘタノデアリ
  マス、ト同時ニ此ノ改正案ノ趣旨カラ言ヒ
  マシテ、起訴猶豫ト執行猶豫トノ中間ニ當
  ルヤウナモノヲヤラレテハドウカ、早ク申
  シマスルト、戰時下ニ此ノ改正案ニ依ツテ
  略式命令ヲ出スヤウナ被〓人ニ對シテ、戰
  時下ナルガ故ニ戰時瀆罪手續トデモ申シマ
  スカ、或ハ名前ガ瀆罪デ惡ケレバ挺身手續
  トデモ申シマスカ、戰爭ノ濟ムマデ挺身シ
  テ、貴樣ヤツテミロ、無事ニ日本國民トシ
  テ過チガアツタノダケレドモ、此ノ際咎メ
  ナイ、戰爭ノ濟ムマデ待ツテヤルカラ挺身シ
  テヤツテミロ、無事ニ濟ンダラ戰爭後ニ帳
  消シニスル、或ハ戰爭後ニ其ノ無事ニ濟ン
  ダコトヲ考慮ノ中ニ入レテ略式命令ヲ出ス
  ナラ出ス、ト云フヤウナ工夫ガアツテ然ルベ
  キデハナイカ、其ノ方ガ寧ロ略式命令ノ範圍
  ヲ擴ゲ、且ツ殊ニ正式裁判請求權ヲ抛棄スル、
  七日ノ節約ノ爲ニワザ〓〓サウ云フ條項ヲ
  設ケルト云フヤウナコトヲスルヨリモ宜イ
  ノデハナイカト思フノデアリマスガ、左樣
  ナ起訴猶豫ト執行猶豫トノ中間ニ當ルヤウ
  ナ、何カ戰時下ニ相應シイ制度ノ工夫ガサ
  レテ居ルカドウカ、御伺ヒ致シタイノデア
  リマス

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• 065・大森洪太

  ○大森政府委員　御答ヘヲ致シマス、第
  點ノ問題デアリマスルガ、是ハ見込ノ相違ニ
  ナリマスルカラ、固ヨリ私共ノ方デ强ヒテ
  申シマセヌガ、現在略式命令デ片付ケテ居
  リマスノガ一年ニ約十三万八千デアリマ
  ス、デアリマスルカラ是等ノ多數ノ事件ニ
  付テヤハリ七日ヅツ節約ガ出來マスナラバ
  大變ナ事務ノ簡捷化ニナリマス、又之ニ關
  係スル人々ノ不安ガ餘程解消スルデアラウ
  ト思フノデアリマス、隨テ相當ノ效果ハア
  ラウト考ヘタ次第デアリマス
  第二點デアリマスルガ、今日ノ行刑ノ實
  際ニ付キマシテ大變御同情ノアル御言葉ヲ
  賜ハリマシテ、事務當局トシテ眞ニ感謝ヲ
  スル次第デアリマス、御言葉ノ通リ日本ナ
  レバコソ出來ルノデアリマス、吾々日本人
  ノ眞價ハココニモ存スルト云フコトヲ大變
  誇ラシゲニ考ヘテ居ル次第デアリマス、尙
  ホ此ノ點ニ付テハ更ニ一層ノ效果ヲ上ゲル
  ヤウニ一同邁進ヲシタイト存ジテ居ルノデ
  アリマス
  第三點デアリマスルガ、御指摘ノヤウニ宣
  告猶豫ト中シマスルカ、更ニ進ンデ、今日
  挺身隊ニデモ入ツテサウシテ功績ヲ擧ゲル
  ナラバ、其ノ儘罪ハ默過シテヤラウ、斯ウ
  云フ制度、是ハ戰時下大變ニ結構ナ制度ダ
  ト思ヒマス、實ハ私共サウ云フヤウナコト
  ニ付テ考ヘ及ボシタコトモアルノデアリマ
  ス、唯甚ダ慚愧ニ堪ヘナイノデアリマスガ、
  準備ガ足リナイノデアリマシテ、隨テ今後
  是ガ出來ルカ出來ナイカト云フ確約ハ固ヨ
  リ出來マセヌガ、其ノ方面ニ於テモ〓究ヲ
  續ケタイト存ジテ居リマス、左樣御諒承ヲ
  願ヒマス

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• 066・木下郁

  ○木下(都)委員　略式命令ニ付キマシテハ
  尙ホ申上ゲタイト思ヒマスガ、議論ニ亙リ
  マスノデ省略致シマス、田中君カラノ質問
  デ大體御意向ハ分ツテ居リマスガ、モウ少
  シ具體的ニ申上ゲマスト、判事ノ配置ノ問
  題デアリマス、現ニ區裁判所ニ繫屬シテ居
  リマス刑事事件ノ中ニハ、非常ニ多數ノ戰
  時下ノ經濟統制法規違反ノ事件ガアルノデ
  アリマス、ソレニ付テ、反面民事事件ハ、
  私ノ大雜把ナ見當デアリマスガ、約二割ソ
  コソコニマデ減少シテ居ルノデハナイカト思
  ヒマス、三分ノ一以下デアルト思ツテ居リ
  マス、所ガ此ノ經濟法規違反ハ盗ツタトカ、
  斬ツタトカ、殺シタトカ云フノト違ヒマシ
  テ、民事的ナ色彩ガ非常ニ强イ、其ノ意味
  ニ於テモ民事部ノ判事ヲ刑事部ノ方ニドシ
  ドシ廻ツテ戴クコトガ能率的デモアリ又手
  不足ノ點ヲ補フノニ非常ニ役立ツノデハナ
  イカト思フノデアリマス、現在マデハマダ其ノ
  點ニ於テ、ヤハリ刑事專門ノ判事ハ刑事專
  門ノ方ニ居ラレ、民事ノ方カラ自由ニ刑事
  ノ方ニ代ハラレルト云フコトガ絕無デハ
  ナイヤウデアリマスガ、非常ニ少イヤウニ
  思フノデアリマス、其ノ點ニ付テドウ云フ
  風ナ御方針デオイデニナルカ、伺ヒタイノ
  デアリマス

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• 067・大森洪太

  ○大森政府委員　御說ハ全ク御同感デアリ
  マス、釋迦ニ說法デ甚ダ恐縮デアリマスルガ、
  元來判事ノ職務ハ民事專門、刑事專門ト云
  フヤウナコトハアルベキモノデハナイト思
  フノデアリマス、凡ソ判事デアレバ、民事刑
  事共ニ堪能デナケレバナラナイト存ジテ居
  リマス、所ガ今日ノ實際ニ於キマシテハ
  配置上各專門ニ流レ易イト云フ傾向ガアル
  ノデアリマス、此ノ點ハ全ク改メナケレバ
  ナラナイト存ジテ居リマス、サウシテ御指
  摘ノヤウニ民事ガ多少手ガ空イテ居リマス
  カラ、今後ドシ〓〓刑事ノ方ニ〓シタイ、
  斯樣ナ積リデ居ルノデアリマス

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• 068・木下郁

  ○木下(郁)委員　尙ホ細カイコトデアリマ
  スルガ、私ノ直接經驗シタコトデアリマセ
  ヌケレドモ、信ズベキ所カラ聞イタコトデ
  アリマス、ソレハ現行戰時刑事特別法ノ事
  項ニ付テ辯護人ノ制限ガアツテ、二人ト云
  フコトニナツテ居リマス、ソレハ選任サレ
  タ辯護人ガ二人、ソレガ缺ケタ場合ニハ二
  人マデハ補充ガ出來ルト云フコトニ了解シ
  テ居ツタノデアリマスガ、區裁判所ニ於テ
  十中六、七マデハ其ノ通リノ解釋デ、途中
  デ二人ノ辯護人ガ死ンダトカ、或ハ辭任ヲ
  シタトカ云ツテ變ヘタ場合ニ、後ノ適任ヲ
  認メラレル、所ガ十中二カ三ノ判事ハ之ヲ
  許サレナイ、正ニ裁判ノ上デ籤引ノヤウナ
  恰好ガアツテ、裁判ノ威信ヲ傷クルコト少
  カラヌモノガアルト思フノデアリマス、サ
  ウ云フ點ニ付テハ、司法ノ大キナ建前カラ言
  ツテ、直接命令スルト云フヤウナコトハ出
  來ナイカトモ思ヒマスルガ、何トカソコニ
  サウ云フ萬人誰デモガ納得シナイヤウナ事
  柄ノ起ラナイヤウニ、御工夫シテ戴キタイ
  ト思フノデアリマス、サウ云フコトガ現ニ
  アリマシタカドウカ、又アリマシタナラバ
  サウ云フ事柄ニ付テハドウ云フ風ニ處理セ
  ラレル御方針デアルカ、承リタイノデアリ
  マス

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• 069・池田克

  ○池田政府委員　御尋ネノ問題ガ具體的ナ
  事件ヲ土臺トシテノ御質問デゴザイマスノ
  デ、便宜私カラ御答ヘ申上ゲマス、木下サ
  ンノ御尋ネノ如キ問題ハ、恐ラク某區裁判所
  ニ於テ現ニアリマシタ事件ダト思ヒマスケ
  レドモ、私其ノ點ニ付キマシテ調査ヲ致シ
  マシタ所ガ、價格等統制令ノ第四條ノ二ノ
  違反ノ事件デアリマシテ、是ハ御承知デモ
  ゴザイマス通リニ、手數料ナドニ關シマス
  ル統制違反デ、內容ノ相當ニ重大ナ事件デ
  アルト思ヒマシテ、檢事カラ區裁判所ノ方
  ニ公判ヲ請求シテ來タノデゴザイマス、是
  ハ固ヨリ公判ヲ請求スル事件デゴザイマス
  カラ、裁判所ニ於キマシテモ身柄ハ勾留シ
  タ譯デアリマス、ソレデ公判期日ノ指定ヲ
  致シマシテ、被〓人ニ對シテハ通知シタノ
  デアリマスガ、其ノ結果ト致シマシテ被〓
  人ノ方カラハ、其ノ呼出ノ送達ガアリマシ
  夕日カラ十日內ニ、辯護人二人ノ選任ヲシ
  テ屆出ガアツタ、所ガ其ノ十日ノ選任期間
  ヲ經過致シマシテカラ後ニナリマシテ、他
  ノ辯護人ノ方ガ裁判所ノ方ニ出頭サレマシ
  テ、實ハ既ニ選任サレテ居ル辯護人ノ一名
  方ノ方ガ辭意ヲ洩ラシテ居ル、又被告人ノ
  デモ實ハ其ノ方ハ他ノ方ノ御紹介デ選任シ
  タノデ、餘リ其ノ方ニ對シテ希望シテ居ラ
  ナイ、ソコデドウシテモ其ノ方ニ辭任シテ
  貰ヒタイト云フコトヲ希望シテ居ル、若シ
  其ノ辯護人ノ方ガ辭任スレバ、辯護人トシ
  テ自分ヲ許可シテ貰ヒタイ、斯樣ナ御交涉
  ガアツタノデアリマス、裁判所ニ於キマシテ
  ハ實ハ先般戰時刑事特別法ノ御審議ヲ煩ハ
  シマシタ際ニ、此ノ第二十條第二項ノ後段ノ
  規定、卽チ「巳ムコトヲ得ザル事由アル場合ニ
  於テ裁判所ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ
  在ラズ」ト云フ此ノ規定ノ解釋運用ハ、訴訟ニ
  遲延ヲ來サナイ限リ、出來ルダケ緩ヤカニ
  之ヲ解釋運用シテ行ク、其ノ點ニ付テハ全
  國ノ裁判所ニ凡ユル適當ナル方法ヲ以テ、
  其ノ趣旨ノコトハ徹底スルヤウニ努メルト
  云フコトヲ、司法大臣カラ言明シテアリマス、
  此ノ言明ノ趣旨ニ基キマシテ司法當局ト致
  シマシテハ實務家會同デアリマストカ、
  或ハ長官會同デアリマストカ、其ノ他控訴院
  ノ管轄別ノ實務家會同、凡ユル會同ヲ通ジマ
  シテ、其ノ趣旨ノ徹底ニ付テ努メテ參リマ
  シタ、私ハ是ハ廣言スル譯デハゴザイマセ
  ヌガ、全國ノ裁判所ノ隅々マデ大臣言明ノ
  趣旨ガ徹底シテ居ルト思ヒマス、隨テ裁判
  所ニ於キマシテモ、抽象的ニハ、此ノ「已ム
  コトヲ得ザル事由アル場合ニ於テ」云々ト
  云フノハ、相當ニ彈力ヲ持ツテ解釋運用ヲ
  シテ居ルト私ハ確信致シマス、又問題ノ起
  リマシタ某區裁判所ニ於キマシテモ、個々
  ノ判事何レモ左樣ト思ヒマス、唯具體的ナ
  事件ニナリマスト、是ハ又當該ノ具體的ナ
  事件ニ卽シマシテノ事情ガゴザイマスノデ、
  ソコニ又自ラ色々ナ綾ガ出來テ來ル譯デゴ
  ザイマス、左樣ナ次第モゴザイマシテ、此
  ノ第二十條ノ第二項ノ但書ノ點ニ付キマシ
  テハ、先般ノ議會ニ於キマシテ言明申上ゲ
  マシタ趣旨ノ徹底ハ十分ニナサレテ居ル、斯
  樣ニ考ヘマス、甚ダ抽象的デゴザイマスガ、
  一應其ノ點ダケ御答へ致シテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=69

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• 070・木下郁

  ○木下(郁)委員　今度ノ改正デ辯護人ヲ二
  人ニ制限サレルコトガ、全面的ニ行ハレルコ
  トニナルノデアリマスガ、其ノ點ニ付テハ、
  是ハ辯護士ノ方ナラバ心得テ居リマスケレ
  ドモ、被〓人ノ方ハソンナコトハ知ラナ
  イ、長イ間辯護士ハ二人以上數人選任シテ
  モ宜シイト一般ハ心得テ居リマス、辯護
  人ニハ個々ニ賴ンデ來マス、他ニ二人モヤ
  ツテハ居ナイカト云フ所マデ注意スレバ宜
  イケレドモ、ソコマデハ行キマセヌ、ヤハ
  リ自分ダケニ賴ンデ來タト思ツテヤルコト
  モアルダラウト思フ、サウ云フ點ハ過渡期ニ
  於テハ、特ニ注意シテ戴ク必要ガアルト思
  フノデ、ドウカ今ノ御話ノ趣旨ヲ裁判所ダ
  ケデナクテ、二人ニナツタンダ、辯護士ハ
  二人以上ハ選任ガ出來ナイノダト云フコト
  ヲ、被〓人ニモ注意シテヤル位ノコトヲヤ
  ツテ戴キタイト思フノデアリマス
  ソレカラ是ハ今伺フコトガ出來ナイカト
  思ヒマスガ、過去五年位ノ間ノ略式命令ノ檢
  事ノ請求ノアツタ場合ニ、ソレヲ受ケナイト
  言ツタト云フ數字ガ、昨日頂戴シマシタ調査
  書ノ資料ノ中ニ大體窺ハレマス、其ノ率ガ
  極ク少クテ〇·一%、略式不相當ノ分ト出テ
  居リマス、是ハ私ハ今マデノ略式命令ノ取
  扱ノ實際ニ付キマシテ直接自分デ體驗シタ
  ノデハアリマセヌガ、中ラズト雖モ遠カラ
  ズト思ツテ居ルノハ、今マデハ罰金科料ダ
  ケデアリマスカラ、一應檢事カラ略式命令
  ノ請求ガアレバ、内容ニ付テソレ程詳シク
  調ベナイデドン〓〓出サレタモノダト云フ
  傾向ハ必ズアツタデアラウト云フコトヲ信
  ジテ居リマスガ、其ノ略式ガ許サレナカツ
  タ率モ非常ニ少イ、其ノ少イノモ、內容ヲ
  見マスト、其ノ許サレナカツタ理由ハ形式
  的ナ理由ガ大部分ヲ占メルノデハナイカ、
  事案ノ實質的ナ理由デナクシテ、無罪ダカ
  ラトカ云フヤウナ意味デ略式命令ガ出サレ
  ナイノデナクテ、其ノ形式的ナ要件ヲ缺ク
  ト云フヤウナコトデ出サレナカツタノガ多
  イノデハナイカ、ソレデ大體ノ內譯デモ伺
  ヘレバ伺ヒタイト思フノデアリマス

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• 071・池田克

  ○池田政府委員　先程ノ戰時刑事特別法第
  二十條ノ第二項ノ趣旨ニ付キマシテ、裁判
  所方面ノミナラズ被〓人ノ方面ニ對シテ
  モ、其ノ趣旨ノ徹底ニ努メルコトガ必要デ
  ハナイカト云フ仰セデアリマスガ、是ハ洵
  ニ御尤モデアリマシテ、實ハ裁判所ニ於キ
  マシテモ、召喚狀ニ十日ノ期間內ニ辯護人
  ヲ請求シナサイト云フヤウナコトヲ附記シ
  テアルヤウナ譯デゴザイマシテ、左樣ナ點
  モ一ツノ方法デゴザイマスガ、全國ノ裁判
  所ニ於キマシテ相當ニ第二十條ノ趣旨ノ徹
  底ニ付テハ努メテ居ルト考ヘテ居リマス、
  尙ホ今後ニ於キマシテモ御趣旨ヲ體シマシ
  テ十分ニ努力スル積リデ居リマス
  次ニ略式命令ノ請求ガ檢事カラアリマシ
  タニ對シマシテ、裁判所ニ於テドウモ略式
  命令相當ナラズトシテ通常ノ手續ニ直シマ
  シタモノノ其ノ理由デゴザイマス、是ハ御
  承知ノ通リ裁判所ノ方ノ判斷デゴザイマス
  ノデ、統計的ナ資料モ勿論ゴザイマセヌ、
  又如何ナル理由デ略式命令ヲ不相當ニシタ
  カ、知ルニ由ナイノデアリマス、併シナガ
  ラ推察致シマスルノニ、例ヘバ書面審理デゴ
  ザイマスカラ、記錄ヲ見マシテドウモ事案
  ノ內容ガ複雜タ、略式手續ニ依ルコトガ相
  當デナイトマア考へラレマス、ソレカラ又
  檢事カラノ求刑ヲ見ルト、ドウモ書面審理ノ
  結果ハ裁判所ノ刑ノ量定ニ關スル判斷ト著
  シク違フ、ドウモ略式命令ニ相當デナイ、
  サウ云フ風ニモ考ヘラレマス、更ニ又形式
  的ナ方面ト致シマシテハドウモ公訴事項ガ
  完成シテ居ナイ、或ハ檢事ノ請求自體ニモ
  犯罪ノ成立ニ疑ヒガアル、斯樣ナ事由ガ
  色々アリ得ルト思ヒマス、併シナガラ是ハ
  何レモ單純ナル忖度デゴザイマシテ、正確
  ナコトハ申上ゲルコトガ出來ナイ、左樣ニ
  御諒承願ヒタイト思ヒマス
  〔山本委員長代理退席、委員長着席〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=71

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• 072・木下郁

  ○木下(部)委員　時間ガ來タヤウデアリマ
  スカラ、此ノ程度デ止メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=72

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• 073・作田高太郎

  ○作田委員長　南鐵太郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=73

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• 074・南鐵太郎

  ○南委員　內務大臣ノ御出席ヲ要求シテア
  ルノデアリマスガ、御都合ハ如何デゴザイ
  マスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=74

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• 075・作田高太郎

  ○作田委員長　今防空委員會ノ方ニ行ツテ
  居ラレルサウデ、直キ見エルサウデアリマ
  スカラ、司法省ノ方ヲ先ニ····

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=75

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• 076・南鐵太郎

  ○南委員　ソレデハサウ致シマシテ、五、
  六點御尋ネ致シタイノデアリマス、第一ニ
  略式命令ヲスル場合ニ、愼重ヲ期スル爲ニ專
  任ノ判事ヲ置カルルト云フ御答辯ガゴザイ
  マシタ、御心持ハ能ク分ルノテゴザイマス、
  併シ如何ニ堪能ナル判事ト雖モ單ニ記錄ダ
  ケヲ見テ、殊ニ警察ノ記錄ダケヲ見テ判斷
  ヲスルコトニナリマスト、果シテ是ハ略式
  命令ニ止マルカ、或ハ正式ノ裁判ヲスルニ
  適スルカト云フコトヲ判斷スルコトハ中々
  困難デアラウト思ヒマス、殊ニ警察記錄ト
  云フモノガ洵ニ信用ノ出來ナイ實例ガ澤山
  アルノデゴザイマス、サウ云フ場合ニ判事
  ハ何等直接被〓ヲ調ベズ、單ニ他ノ檢察、
  警察ノ機關ノ調ベ-ソレハ檢察、警察機
  關トシテモ本來公ノ機關デアリマスカラ、
  何モ人ヲ罪ニシヨウトシテ調ベルノデハナ
  イデアリマセウケレドモ、兎角岡ツ引根性
  ミタヤウナモノガ多イノデアリマス、自分
  ノ手掛ケタモノハ罪ニシナケレバ承知セヌ
  ト云フヤウナ氣持ノ人ガ相當アルノデアリ
  マス、殊ニ警察官ニハソレガアル、斯ウ云
  フ場合ニ、サウ云フ人々ガ勝手ニ作ツタ、
  殊ニ拘束シテ置イテ自由ニ發言ノ出來ナイ
  者ニ對シテ拵ヘタ記錄ト云フモノヲ基礎ニ
  シテ、殊ニ略式命令ニハ、事案ノ內容ガ單
  純ダ、犯罪ノ成立ガ明白ダト云フヤウナコ
  トガ要件デアリトスレバ、其ノ通リノ記錄
  ヲ作ルコトモ出來ルノデアリマス、サウ云
  フヤウナコトデ事實ノ調ベヲ判事ガセズシ
  テ、簡單ニ書面審理ヲスルト云フヤウナコ
  トデハ、何ダカ國民トシテハ不安ヲ覺ヱル
  ノデアリマス、殊ニ體刑ニ處スルト云フヤ
  ウナ場合ニ於テ特ニ甚ダシイノデアリマ
  ス、特殊ノ犯罪ニ付テヤルト云フナラバ、
  是ハ又其ノ理由ガアルト思ヒマスケレド
  モ、一般ノ相當ノ犯罪ニ付テ之ヲヤラレル
  ト云フコトニナリマスト、是ハ餘程注意セヌ
  ト危ナイト思ヒマス、況ンヤ之ニ正式裁判
  ノ抛棄マデ伴フ譯デアリマスカラ、非常ニ
  危險デアルト思ヒマス、其ノ場合ニ御尋ネ
  致シタイノハ、判事ハ其ノ際勾留訊問ヲシ
  テ、ソレデ事情ヲ明カニスルト云フ機會ガ
  アルナラバ或ハ宜シイカモ知レナイガ、併
  シ勾留訊問ノ機會ノナイ場合、單ニ警察ニ
  留メ、警察ノ庭ニ括ツテ置イテ、否應ナシ
  ニ略式命令ヲヤツテドウダト云フヤウナコ
  トニナルト、人權ヲ擁護スルト云フ途ガナ
  ツテシマフ虞ガアル、ソレヲ一番惧レルノデ
  アリマスガ、何カ判事直接ニ勾留訊問ニ相當
  スルヤウナ、何カ取調ベヲスルト云フ機會
  ガアルト云フ建前デアリマスカ、勾留訊問
  ノヤウナ法律規定ガナイト云フコトデアレ
  バ、サウ云フコトハ出來ナイノデアリマス
  カ、ソレヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=76

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• 077・池田克

  ○池田政府委員　御尋ネノ如キ御懸念ガ絕
  無デナイコトハ、私共ト致シマシテモ十分戒
  心シナケレバナラヌト思ツテ居リマス、殊
  ニ今囘新タニ一定範圍デハゴザイマスケレ
  ドモ、自由刑ヲ科シ得ルコトニナリマシ
  テ、此ノ自由刑ヲ略式手續ニ依ツテ科スル
  ト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、裁判所
  ニ對シマシテ檢事カラ令狀請求ヲ致シマ
  ス、サウシテ裁判所ニ於キマシテハ被〓人
  ヲ訊問致シマシテ、刑務所ノ方ニ拘禁スル
  ト云フ手續ニスルト云フコトヲ考ヘテ居リ
  マス、勿論ソレハドウシテモ其ノ事案カラ
  見マシテ拘束ヲ必要トスルト云フ風ナ場合
  デゴザイマシテ、自由刑ニ當ル場合デアリ
  マシテモ勿論不拘束ノ儘デ請求スルト云フ
  コトハアリ得ル、併シナガラ今申シマシタ
  ヤウニ拘束ヲドウシテモ必要トスルト云フ
  ヤウナ事件ニ付キマシテハ、檢事カラ令狀
  請求ヲ致シマシテ、裁判所ニ於テハ勾留訊
  問ヲスルト云フ運用ニナツテ居ルト考ヘテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=77

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• 078・南鐵太郎

  ○南委員　其ノ點ニ付キマシテ心配スルノ
  ハ、勾留訊問デアツタ場合ハ幾ラカ事情ヲ
  知ル機會ガアルト云フダケデハナシニ、實
  際勾留訊問ヲヤラレル場合、身柄ガ自由デ
  アル場合ハ心配ハナイ、是ハ自由ニ正式裁
  判ヲ仰グト云フ判斷ガ出來マス、併シ警察デ
  身柄ヲ引張ツテ居ラレル場合ガ非常ニ多イ
  ノデスカラ、サウ云フ場合ニ其ノ儘デ檢事
  ノ手ニ渡ル時ニ、モウ既ニサウ云フ處置デ
  ナクナツテ居ルト云フナラ結構デス、ケレ
  ドモ往々ニシテ正式ノ勾留デハナシニ、自由
  ノ身デアルベキ筈ガ警察ノ中ニ置クト云フ
  場合ガアリマスカラ、サウ云フ風ニ場合ヲ
  特ニ心配スル譯デアリマス、ソレハ只今ノ
  御說明ニ基イテ其ノ點ヲ勵行シテ戴クト云
  フナラ其ノ點ハ宜イノデアリマス、其ノ點
  ハソレトシテ次ニ御尋ネ致シマス、ソレハ
  正式裁判ノ請求權ヲ抛棄スルト云フコト
  ハ、警察ノ場合ニ於テ最モ危險ナノデアリ
  マスガ、必ズシモ警察ニ居ルバカリデハナ
  イ、身柄ガ拘束セラレテ居ツテ正式裁判ヲ
  仰ガウト云フコトハ、中々困難ナ場合ガア
  ル、控訴ノ場合ニデモ、或ハ保釋ヲ請求ス
  ルト云フヤウナ場合デモ、オ前ハ正式裁判
  ヲ仰ガナケレバ保釋ヲ許シテヤルトカ、控
  訴ヲシナケレバ保釋ヲ許シテヤルトカ云フ
  ヤウナコトノ事例ガ相當出テ來ルコトヲ惧レ
  ルノデアリマス、現在デモ控訴ノ場合ニヨ
  クアル、是ハサウデアルベカラザルコトデ
  アリマスケレドモ、實際ハ非常ニアル、保
  釋ト云フコトヲ刑事訴訟法ノ百十四條ニ依
  ツテ、事由ガ止ンダナラバ當然保釋スベキ
  モノデアル、斯ウ云フ考ヘデナシニ、保釋ス
  ルカセスカト云フコトヲ、拷問ヲスル、自白
  ヲスル一ツノ手段ニ供スルト云フ例ガ非常
  ニ多イノデス、是ハ警察ナンカデアツタナ
  ラバ、是ハ保釋ノ問題デハアリマセヌケレド
  モ、例ヘバ身柄ヲ拘束シテ置イテ取調ベヲ
  シテ居ル、何カ食物ナンカヲ差入レタイト
  言フト、今ハマダ一寸出來ナイ、何故カト言
  フト、是ハ本當ノコトヲ言ハナイカラ、言
  ハナイ時ニ家カラ物ガ入ツタリスルト心理
  狀態ガ變ツテ、ドウモ餘計强クナツテ自白
  セヌカラ困ルト云フヤウナコトヲ言ツテ、
  當然ナスベキ或ル行爲ヲモ禁ジテ、食物デ
  釣ツテ、自白スルマデハ差入レヲ許サヌト
  云フヤウナ實例ハ、普通ノ警察ノ扱ヒデハ
  常識デアルト思フ、サウ云フヤウナコトガ
  アルノデスカラ、況ンヤ保釋ノ場合ニ於テ
  モソレハ取調ノ或ル一定ノ豫想ニ基イテ、
  其ノ鑄型ニ嵌メルト云フ爲ニハ便利デアル
  カモ知レマセヌガ、眞實ヲ發見スルト云フ
  時ハ却ツテ害ガアルコンナニ置カレタノ
  デハ身體ガ續カヌカラ何デモ宜イカラ保釋
  ニナリタイ、何デモ言ツテシマハウト言ツ
  テ噓ノコトヲ言フ場合ガ非常ニアル、是ハ
  司法權ノ信用ノ爲ニ恐ルベキデアルト思ヒ
  マス、デスカラ私ハ現在ノ制度ニ於テスラ
  モ行ハレテ居ル弊害ヲ、略式命令デ正式裁
  判ヲ請求スルト云フコトヲ抛棄スルト云フ
  コトニナリマスレバ-是ハ檢事局ニ於テ
  スルトハ考ヘマセヌガ、主トシテ警察ノ手
  ヲ以テ、サウ云フヤウナ正式裁判ヲ仰グナ
  ラバ酷イ目ニ遭フゾ、略式命令ガ出タナラ
  バ正式裁判ノ權利ヲ抛棄スルコトニセヨ
  サウシタナラバ斯ウシテヤラウト云フ少シ
  旨イコトヲ言ツテ、事實上正式裁判ヲ、自
  由ノ判斷ヲ以テ請求スルカ否カト云フコト
  ヲ決メルコトガ出來ナイ場合ガ非常ニ多ク
  ナラウト思ヒマス、現在實例ノ御報告ヲ承
  ツテ見レバ、九十何「パーセント」ト云フモ
  ノガ正式裁判ヲ仰イデ居ラヌト云フコトデ
  アリマスガ、ソレハ正シク悅服ヲシテ十分
  ニ裁判ニ服シテ居ルト云フノナラバソレデ
  結構ナノデアリマスガ、ヤハリ見方ニ依レ
  バソレ等ノ者ハ怨ミヲ呑ンデ、オ上ノ無理
  ニ屈服スルノダト云フヤウナ不安ノ氣持
  デ以テ、仕方ナシ泣ク子ト地頭ニ勝タレヌ
  ト云フ氣持ガ裁判所ニ對シテモ若シ殘ツテ
  居ルトスルナラバ、是ハ現在信用ノアル司
  法權ニ對シテ恐ルベキ禍根デアルト思フ、
  ソレハサウ云フコトニナラヌコトヲ望ム、
  實際ハソレハ稀有ノ場合デアリマセウケレ
  ドモ、稀有ノ場合デモ決シテ油斷ガ出來ナ
  イノデアリマス、何トカシテ悅服ヲシテ裁
  判ニ服スルト云フコトコソ、裁判ノ簡素化
  ノ本ヂヤナイカト思フ、徒ラニ裁判ヲ受ケ
  テモ、尤モダト思ハナイ、無理ナコトヲ言
  ハレテ、仕方ナイ、災難デアルトカ云フコト
  デ以テ、唯事件ダケ片付イタト云フコトデ
  ハ司法ノ事務ノ簡素化ト云フコトニナラ
  ヌト思ヒマス、却テ國民ヲ不安ニ陷レテ、
  司法ノ目的ニ副ハナイヂヤナイカ、斯ウ云
  フコトヲ惧レルノデアリマス、ソレニ付キ
  マシテ御尋ネ致シタイノハ、此ノ正式裁判
  ヲ抛棄スルト云フ場合ニハ、一應身柄ヲ釋
  放シテ、身柄ガ自由ノ場合デナケレバ正式
  裁判ノ抛棄ハ出來ナイ、斯ウ云フヤウナ扱
  ヒニ出來ナイモノデアルカ、自由ナル場合
  ニ於テ抛棄スルナラバ是ハ御尤モナ話ダト
  思ヒマスガ、自由意思デ抛棄スルカ否カヲ
  決メルノデナシニ、單ナル壓迫ノ下ニ、コツ
  チノ言フコトヲ聽ケバ保釋ヲ許シテヤラウ
  ト云フ餌ニ使ツテ、結局出テ來テ自由ノ意
  思デ以テ判斷シヨウト云フ時ハ取返ヘシガ
  ツカヌ、裁判ガ確定シテシマフ、サウ云フ
  コトニナリマスト、洵ニ人權ノ保護ノ上ニ
  於テ由々シキ大事デアルト思ヒマス、是等
  ノ點ニ付テ身柄ノ自由ト云フコトト、此ノ
  正式裁判ノ請求權ノ抛棄ト云フコトトヲ交
  換的ニセラレルト云フ御意向ガゴザイマセ
  ヌカドウカ、其ノ點ヲ一寸御伺ヒ申シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=78

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• 079・池田克

  ○池田政府委員　略式命令ニ依リマシテ重
  刑ヲ科シマス場合デアリマスガ、先程モ御
  答ヘ申上ゲマシタ通リ、其ノ場合ニハ被〓
  人ノ身柄ハ警察ニ居ルコトハ絕對ニナイノ
  デアリマシテ、其ノ點ハ勿論御心配ハナイ
  ト思フノデアリマス、唯此ノ略式命令ニ對
  シマシテ、正式裁判ノ請求ヲ抛棄スル場合
  ニ、先ヅ被告人ノ身柄ヲ自由ニシテ置イテ、
  サウシテ抛棄スルヤ否ヤヲ被告人ノ自由意
  思ニ任スト云フ御意見デゴザイマスガ、是
  ハ實ハ抛棄ノ制度ヲ新タニ政治的ナ手當ト
  シテ認メテアリマスル理由ハ、午前中ニモ
  御答ヘ申上ゲタノデゴザイマスケレドモ、
  殊ニ重刑ニ處スルモノニ付キマシテハ、御
  承知デモゴザイマスヤウニ、實ハ身柄ノ釋
  放ト云フ問題ハサウ簡單ニ行カナイ譯デア
  リマス、何モ之ヲ抛棄セシムル爲ニ身柄ヲ
  自由ニスルトカ云フヤウナコトハ全クアリ
  得ナイコトデアリマス、抛棄スルカドウカ
  ト云フコトハ被〓人ノ意思ニ基クコトナノ
  デアリマス、裁判所ガ抛棄ノ意思ヲ決定セ
  シムル爲ニ先ヅ釋放スルナント云フコトハ
  是ハ私ハドウモ此ノ法規ノ趣旨カラ見マシテ
  贊意ヲ表スルコトハ出來ナイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=79

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• 080・南鐵太郎

  ○南委員　然ラバ自由ナ判斷デ以テ抛棄ス
  ルト云フ機會ヲ與ヘル爲ニ、一定ノ外界ノ
  適當ナ人ト相談ヲスル機會ガアツタ後デナ
  ケレバ抛棄ヲ許サヌト云フヤウナ御取扱ヒ
  ハ出來マスマイカ、詰リ拘束セラレ、强壓
  ノ爲ニ、唯强迫觀念ニ基イテ、抛棄シタモ
  ノト扱ハレルト云フヤウナ錯覺ヲ生ズルカ
  モ知レヌ、サウ云フ場合ガヨクアルカラ、
  ソレヲ外部ニ於ケル信賴スベキ人ト相談ヲ
  シテ、抛棄スベキヤ否ヤヲ決定スル、サウ
  云フ機會ヲ與ヘルヤウナ御考ヘハナイデセ
  ウカ

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• 081・池田克

  ○池田政府委員　正式裁判ノ請求ヲ抛棄ス
  ルヤ否ヤハ、全ク被〓人本人ノ自由ナル意
  思決定ニ依ルベキデアリマシテ、其ノ抛棄
  ノ意思アリヤ否ヤ、サウ云フ點ニ付テ、先
  ヅ外界ニ於キマスル色々信賴スベキ人トノ
  相談ノ機會ヲ與ヘルト云フヤウナコトハ、
  是ハマダ被〓人ガ抛棄ノ意思ヲ表示シナイ
  前ニ、サウ云フヤウナコトハ執ルベキ措置
  デハナイト思フ、例ヘバ被〓人ノ方デ抛棄
  シタイト云フヤウナ意思ヲ申出夕場合ニ於
  キマシテ、或ハソレガ果シテ眞ノ被〓人ノ
  意思ニ基クモノデアルカドウカト云フコト
  ニ付テ、裁判所ノ方ニ於テ確認ヲスルト
  云フカ、裁判所ノ方デ以テ考ヘラレルナラ
  バ、或ハ御說ノヤウナ點ニ付テハ可能デハ
  ナイカト思ヒマスガ、先ヅ被〓人ノ抛棄ノ
  意思ヲ決定セズニ御尋ネノ如キ措置ヲ講ズ
  ルト云フヤウナコトハ、是ハアリ得ナイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=81

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• 082・南鐵太郎

  ○南委員　其ノ抛棄ヲ認メルト云フコトハ、
  事務簡捷ト申シマスカ、一週間待ツテ抛棄
  スルカセヌカガ決マルノデス、正式裁判ヲ
  仰グカ仰ガナイカガ決マルノデスカラ、
  週間モ待テナイト云フ其ノ特殊ノ理由ハ何
  デゴザイマスカ、其ノ略式命令ナラ略式命
  令ヲ出サナケレバナラス、裁判ヲスルニ至
  ルマデ或ハ警察ニ數十日、數箇月ト云フモ
  ノヲ勾留セラレル場合ガヨクアル、サウ云
  フヤウナ場合ニ、最後ニ僅カ一週間位待テ
  ルカ待テナイカト云フ特殊ノ理由ガアリマ
  セウカ、本人ハ望ムト言ツテモ、ソレハ一
  日モ早ク釋放セラレタイコトヲ望ムノハ當
  然デアリマスガ、警察ノ方デ拘束スルト云
  フヤウナコトガ、是ハ非常ナ問題ナノデア
  リマス、サウ云フヤウナコトガ其ノ儘行ハ
  レテ居ツタ儘デ、單ニ裁判所ノ手ニ於テ正
  式裁判ヲ仰グカ仰ガナイカト云フ判斷ヲス
  ル期間一週間ヲ短縮スルト云フコトガ意味
  ヲナサヌヤウナ氣モスルノデス、ソコハ如
  何デアリマスカ、何カ特殊ノ理由デモオア
  リデゴザイマセウカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=82

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• 083・池田克

  ○池田政府委員　正式裁判ノ請求ノ抛棄ノ
  途ヲ開カウト致シマスル趣旨ハ、廣ク申シ
  マスレバ實ハ被告人ノ利益ノ爲メナノデア
  リマス、何モ司法當局ニ於テ抛棄ヲ奬勵シ
  タリ、又抛棄ヲ決シテ望ンデ居ル譯デハナ
  イノデアリマス、ソンナコトマデシテ裁判
  ノ確立ヲ早カラシメルト云フヤウナコトハ
  毛頭考ヘテ居ナイノデアリマス、唯從來ニ
  於キマスル罰金科料デゴザイマスケレド
  モ、略式裁判ノ裁判所ニ於キマスル經驗カ
  ラ見マシテ、被〓人ノ方デ、折角遠方カラ
  罰金覺悟デ以テ持ツテ來タ、ダカラ歸ルニ
  付テハ納メテ歸リタイ、斯ウ云フヤウナ者
  ガアルノデアリマス、ソレヲ抛棄ノ途ヲ開
  イテ置キマセヌト云フト、今日ニ於テハ七
  日ノ期間ヲ待タナケレバナラヌト云ツタヤ
  ウナ不都合ガゴザイマスモノデスカラ、ソ
  コデ抛棄ノ途ヲ開クノデゴザイマシテ、實
  ハ裁判所、檢事局、又司法當局ニ於テモ勿
  論抛棄ヲ全然望ンデモ居リマセヌ、又ソン
  ナモノヲ奬勵シヨウト云フヤウナ考ヘハ毛
  頭ナイノデアリマス、本當ニ是ハ特殊ナ被
  告人ノ利益ノ爲ニ此ノ途ヲ開カウ、斯樣ナ
  趣旨デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=83

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• 084・南鐵太郎

  ○南委員　ソレデハ其ノ點ハ暫ク了承致シ
  マジテ、次ニ審級ヲ減ズルコトニ付テ一寸
  御尋ネ致シマス、先程モ信正君カラモ御尋
  ネガアツタヤウデアリマスガ、非常ニ區裁
  判所デモ忙シイト云フコトハ事實デアリマ
  ス、現在此ノ近クデモ八王子ノ如キハ一人
  ノ判事デ、書記モ一人位ノ人デ、而モ事件
  ハ經濟事件ガウント多クテ、サウシテ民事
  ノ事件モ相當アル、ソレヲ全部一人デヤツ
  テ居ル、辯護人モ迚モ忙シクテ、刑事ノ
  事件ヲ全體デ三十分位デヤツテシマフ、
  一ツノ事件ニハ三十分位シカ時間ガナイ
  ト云フコトデ、辯護ドコロノ騷ギデハナ
  イ、總テ悲鳴ヲ上ゲテ居ルト云フ事實ガ
  アル、ソレカラ又辯護人バカリデハナイ、
  裁判所モ非常ニ御困リノヤウデアリマス、サ
  ウ云フコトヲ度々聞クノデアリマス、サウ
  云フヤウナコトハ唯一ツデハナイト思フ、
  全國ニ相當アラウト思ヒマス、サウ云フヤ
  ウニ區裁判所ノ事件ト云フモノハ非常ニ繁
  忙デアツテ、之ニ對シテ正確ナ判斷ヲ求メ
  ルト云フコトハ無理ヂヤナイカ、ソレガ最
  早一審、事實審ハソレデオ終ヒデアル、上
  告ノ途ハナイト云フコトニナルト、是ハ餘
  程人民ノ權利、人權ヲ擁護スル上ニ於テ非
  常ニ恐ルベキデハナイカト云フコトヲ心配
  スルノデアリマス、殊ニ警察ノ聽取書ト云
  フモノガ證據ニナツテヤルト云フノデアリ
  マスカラシテ、サウナツテ來ルト云フト間
  違ヒハ非常ニ多イダラウト思フ、現ニ是ハ
  最近三重縣ニアツタ例デアリマスガ、三十
  何人カノ被告ガ區裁判所デ皆重イ二年三年
  ノ體刑ニ處セラレタ、所ガ控訴シテ、地方
  裁判所ノ判決デハ皆執行猶豫ニナツタ、事
  實ヲ調ベテ見ルト全然眞相ト違フ、或ル行
  爲ヲヤツタ、ソレハ卽チ非常ニ情ノ惡イコ
  トヲヤツタト云フヤウナ一審デハ認定サレ
  タ、所ガ調ベテ見ルトサウデナイ、オ上ノ
  諒解ノ下ニヤツテ居ルト云フコトガ分ツ
  テ-、皆執行猶豫ニシテシマツタ、一一三前
  科ノアル者ハ仕方ナイ、輕イ刑ニ處セラレ
  タト云フヤウナ事例ガアル、若シ是ガ單ニ
  一審デ終ツテシマツテ上告ダケノ途シカナイ
  ト云フコトニナレバ、是ハ救ハレマセヌ、
  成程上告審ニ於テ事實ノ重大ナル誤認ト云
  フコトニ付テノ途ハアリマスガ、併シ何ニ
  依ツテ其ノ誤認ヲ判斷シテ貰ヘマスカ、記
  錄ニ依ルヨリ外ナイ、記錄カラ見レバ明々
  白々タル有罪ナンデス、所ガ控訴ニ於テ再
  調ヲシタ結果其ノ事實ガハツキリシテ來タ、
  斯ウ云フコトガアルノデアリマスカラシテ、
  輕々ニ事實審ヲ廢棄スルト云フコトハ由々
  シキ大事デハナイカト思ハレル、サウ云フ
  心配ガアルノデス、殊ニ之ニ關聯シテ辯護
  人ヲ二名ニ制限スルト云フ規定ガ一般的ニ
  擴張セラレルコトニナリマスト、益〓其ノ救
  濟セラレル機會ガ薄クナル、戰時特殊ノ犯
  罪ニ付テ特殊ノ扱ヒヲスルト云フナラ、是
  ハ刑ノ重クナルノハ一向差支ヘナイト思フ
  ケレドモ、一般ノ犯罪ニ付テ略式命令ヲ認
  メルト共ニ控訴ガ出來ナイト云フコトニナ
  リマスト、根本的ニ於テ無辜ノ民ヲ作リハ
  セヌカ、上告スルニハ自ラ上告ノ制限ガア
  リマス、本當ノ事實ヲ探究スルト云フコト
  ガ困難デハナイカト思フ、區裁判所ニ於テ
  手ガ十分餘ツテ居ツテ、而モ警察ノ聽取リ
  ト云フヤウナモノノミデナシニ、本當ニ十
  分公判ヲヤツテ御取調ノ結果判斷セラレル
  ナラバ、是ハ或ハ上〓ダケデ結構カモ知レマ
  セヌガ、ドウモ今日ノヤウナ現狀ニ於テ、
  審ダケニ留メルト云フコトニ付テハ、少ク
  トモ區裁判所事件ニ付テハ危險デアリマス、
  殊ニ本法ノ改正案ニ依レバ、地方裁判所ノ
  事件ト雖モ本法ノ適用ニ於テ、警察ノ聽取
  書ト云フモノヲヤハリ用ニ供スルコトガ出
  來ルヤウニナル、是ガ餘程危險性ヲ增スノ
  デ、地方裁判所事件ニ付キマシテモ、判斷
  ノ上ニ餘程錯覺ヲ生ズル場合ガ起ツテ來ハ
  シナイカ、之ヲ非常ニ惧レルノデアリマス、
  是等ノ點ニ付キマシテノ御囘答ヲ得タイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=84

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• 085・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今南サンヨリ縷々御意
  見ガゴザイマシタガ、其ノ中デ重要ト考ヘ
  マシタノハ區裁判所ガ非常ニ忙シイ、此ノ忙シ
  イ上ニ尙ホ忙シクナルノデアルカラ、區裁判所
  ノ事件ノ審理等ニ付テ不十分ナ點ガ起リハシ
  ナイカト云フ御心配デゴザイマシタ、區裁判
  所ノ事務ハ相當ニ忙シイコトハ御說ノ通リデア
  リマス、又場所ニ依リマシテハ、色々事件ノ性質
  等デ特ニ忙シイ所モアラウカト思ヒマス、
  左樣ナ次第デ、此ノ法案ガ通過致シマシテ實
  施ト云フコトニナリマシタナラバ、區裁判所ノ
  權限ガ殖エタ爲ニ、是等ノ人員ノ配置ト云フ
  コトハ餘程考ヘナケレバナラヌト思ツテ居
  リマス、判事ニ付テハ現在、勅令定員内ノ
  判事ヲ具體的ニドノ裁判所ニドレダケ配置
  スルカト云フコトハ、是ハ司法大臣ガ決メ
  得ルコトニナツテ居リマス、各地方ヨリ斯
  ウ云フ事柄ノ事件ガ近頃殖エタカラ增シテ
  貰ヒタイト云フヤウナコトノ要求ガ相當ニ
  ゴザイマス、全體ヲ勘案致シマシテ定員內ノ
  判事ヲ適當ニ配置致シテ居リマス、今囘ノ法
  案ガ實施セラレマスト中々區裁判所ガ忙シク
  ナリマス、サウ云フ際ニハ定員內ニ於テ區
  裁判所ニ十分ノ人員ヲ增シテ配置シタイト
  云フ考ヘデゴザイマス、尙ホ裁判所構成法
  ガ先年改正セラレマシテ、裁判所構成法第
  二十五條ノ二及ビ三ノ活用デ、現在控訴院
  長ハ其ノ控訴院管內ニ於テ甲ノ地方ノ裁判
  所乙ノ地方ノ裁判所ニ於テ一時ニ勤務セ
  シムルト云フヤウナコトモ出來ルコトニナ
  ツテ居リマス、左樣ナコトデ只今ノヤウナ
  御心配ノナイヤウニ十分注意致シタイト考
  ヘテ居リマス、此ノ點私カラ御答ヘ致シ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=85

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• 086・作田高太郎

  ○作田委員長　南君ニ申上ゲマス、大方ア
  ナタノ時間ハ切レテ居ルノデスガ、大臣ガ
  見エタ上デ又御願ヒスルコトニ致シタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=86

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• 087・南鐵太郎

  ○南委員　マダ根本問題ニ付テ伺ヒタイコ
  トガゴザイマスガ、一應內務大臣ト同時ニ
  聽イテ戴キタイト云フ趣旨ノ下ニ質問ヲ留
  保致シマシテ、次ノ人ニ讓リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=87

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• 088・作田高太郎

  ○作田委員長　濱野〓吾君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=88

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• 089・濱野清吾

  ○濱野(〓)委員　先日事前審査ノ時ニ、裁
  判所構成法ノ改正法律案ヲ提出シタル狙ヒ
  所ニ關シテ、次官ヨリ御伺ヒ致シタノデア
  リマスガ、當時承ツテ居ルト實ニ音樂的ナ
  「リズミカル」ナ御答辯デアリマシテ、實
  分ツタ積リデ居ツテマダ分リ切ラナイ所ガ
  アリマスノデ、本日重ネテ質疑ヲ致シタイ
  ト思ヒマス
  先程來先輩ノ殊ニ法律專門家ト稱スル
  方々ノ質疑應答ヲ私ハ拜聽シテ居ツタノデア
  リマスガ、或ハ私ノ質疑ハ其ノ點ニ於テ不
  足デアルカモ知レマセヌ、併シ只今マデ御
  質疑ナサツタ方々ハ、皆法律ニ明ルイ方々
  デアツテ、而モ裁判所等ニ於テ、法律ノ生
  活ヲシテ居ラレル方々ノ立派ナ御質問デア
  リマスガ、私ハ全然法律ニハ關係ナイ男デ
  アリマスカラ、本當ノ國民的ナ質問ヲ致シ
  マス、俗ニ謂ヘバ普通ノ人間ガ斯ウ云フ風
  ニ裁判所構成法ヲ變ヘラレテ安心出來ルデ
  アラウカ、此ノ問題ニ付テ一點、モウ一ツ
  ハ裁判所構成法ト云フ此ノ大事ナ法律ヲ此
  ノ場合二審制度ニ直シテ行ツテ、殊ニ略式
  命令ト云フヤウナ權限モ非常ニ大キクシ
  テ、サウシテ陛下ノ赤子ヲシテ無辜ノ罪ニ
  苦シメルト云フヤウナコトガ全然ナイト保
  證ガ出來ルカドウカ、此ノ二點ニ付テ御伺
  ヒ致シタイノデアリマス
  第一點ハ貴族院ニ於ケル大臣ノ提案理由
  ヲ伺ヒマスト、歸スル所速記ヲ見マシテモ、
  此ノ時局下ニ於テ事務ヲ簡捷ニシテ戰力增
  强ヲスルノダト云フ御說明デアリマシタ、
  更ニ事前審査ニ於キマシテモ、次官ノ御答
  辯ハ出來ルダケ早ク裁判ヲ行ツテ、其ノ裁
  判ヲシタ人々ニ對シテハ不安ヲ殘サナイヤ
  ウナ心境ニ置キ、以テ間接ニ其ノ人々ノ力
  ヲ總力戰ニ動員スルノダ、ソレガ卽チ戰力
  增强デアル、斯ウ云フヤウニ拜承致シタノ
  デアリマス、其ノ他判事、檢事、書記等ノ
  數ガ少イカラ三審制ヲ二審制ニスルト云フ
  譯デモナイ、且又將來判事、檢事、書記等
  ノ是等ノ有用ナ人材ヲ他ノ戰力增强ノ部面
  ニ振向ケテ、サウシテ新タナル戰力增强ヲ
  スルノダト云フヤウナ答辯デモナカツタノ
  デアリマス、色々考ヘテ見マスト、斯ウ云
  フ短期間ノ僅カ三日ノ帝國議會會期中ニ此
  ノ大キナ裁判所構成法、卽チ三審ヲ二審ニ
  切詰メテ行クト云フヤウナ行キ方ガ、ドウ
  モ私共ニ取リマシテハ無理ナ審議デハナイ
  カトサヘ考ヘラレテ居ルノデアリマスガ、
  實ハ審議ニ關スル參考資料等ヲ昨日配付ニ
  ナツタ次第デアリマシテ、凡ソ同僚先輩ノ
  諸君ニ於カレマシテモ此ノ資料ヲ以テ二審
  制度、三審制度ノ結論ヲ檢討シ、而シテ把
  握スルデアラウト思フノデアリマスガ、
  中々調査シ〓究スル時間モ御同樣ナイコト
  ダト存ジマス、擧ゲテ政府ノ主張ヲ信賴シ、
  サウシテ吾々ハ贊成スルト云フコトニ相成
  ルト思フノデアリマスガ、私ノ考ヘヲ以テ
  スレバ、斯ウ云フ大キナ大切ナ法案ハ寧ロ
  此ノ暮ノ議會ニ御提案ナスツテ、吾々ニ十
  分資料ニ依ツテ〓究スル餘地ヲ與ヘテ吳レ
  タ方ガ宜イノデハナイカ、何カ特殊ナ事情
  ガアルノカ、先程ドナタカニ對スル大臣ノ
  御答辯中ニハ、或ハ空襲ト云フヤウナ事實
  ガアツテ、通信機關ナドガ杜絕スル場合モ
  想定シナケレバナラヌ、其ノ場合ニ於テハ
  裁判所ハ之ヲ中止スルト云フコトハ出來マ
  セヌカラ、ト云フヤウナ御話デアリマシ
  タ、御尤モナ御話デアリマス、私共ソレヲ
  中止スルコトハイケナイトハ感ジテ居リマ
  スガ、ソレダケデ而モ三審制度ヲ二審制度
  ニスルト云フコトハ、私ハ餘リ理由ガ小サ
  イノデハナイカ、ト云フヨリハ寧ロ足ラナ
  イノデハナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ル
  次第デアリマス
  裁判ニ附サレテ若シモ間違ツタ判決ヲ戴
  キマスレバ、結局上級裁判ニ行ツテ其ノ裁
  キヲ御願ヒスルヨリ外ナイノデアリマス
  ガ、其ノ上級裁判ノ一ツガ無クナツタト云
  フコトニナリマスレバ、實ニ心淋シイコト
  デアルト云フコトハ、是ハ全國民ガサウ考
  ヘラレルダラウト思フノデアリマス、併シ
  ナガラ上級裁判一ツガ無クナツタコトニ依
  ツテ國民ハ悲觀シナクテモ宜シイ、二審制
  度デアツテモ三審制度ニ依ツテ判決サレタ
  モノト同樣、當然正シイモノトシテヤルコ
  トガ出來ル、斯ウ云フ御考ヘノヤウニ私共
  拜承シテ居ルノデアリマス、卽チ部下ヲ督
  勵シ、或ハ識見ノ堪能ナル士ヲ以テ之ニ振向
  ケルト云フ御話デアリマスカラ、左樣ナコ
  トダラウト思フノデアリマス、併シ戴キマ
  シタ統計ニ依リマスト、吾〓ニ併託サレテ
  居リマス工業所有權法戰時特例案、此ノ改
  正法律案モ三審制ヲ二審制ニスルト云フ案
  デアリマス、此ノ案ノ說明ヲ私昨日聽イタ
  ノデアリマスガ、是ハ少クトモ經濟關係ニ
  對スル審判ノ問題デアリマシテ、人ニ對ス
  ル審判ノ問題デハナイノデアリマス、ドウ
  モ此ノ點ガ本質的ニ私異ツテ居ル點デアル
  ト思ヒマス、特許ノ問題ニ付キマシテハ、
  獨占權ヲ與ヘルコトニ依ツテ發明ヲ續行セ
  シメル、獨占ニ依ツテ彼等ニ經濟的ニ利益
  ヲ與ヘテ、サウシテ公益ヲ圖ツテ行クト云
  フ所ニ此ノ特許法ノ狙ヒ所ガアツタノデア
  リマス、而シテ之ヲ今囘是ト同樣ニ二審制
  ニスルト云フノデアリマスガ、此ノ統計ヲ
  見マスト、十六年度ニ於テ一万九千九百九
  十七件ト云フ出願ガアル、所ガ此ノ拒絕査
  定ヲシタモノハ一万八千件、殘ツタモノノ
  中八百八十件ガ抗告審査請求ガアツタノデ
  アリマスガ、此ノ中百十七件ダケ特許ガ取
  レテ居ル、併シソレデモ滿足セズニ、更ノ
  其ノ特許ノ取レナイ殘ツタ五百三十ノ中、上
  告シタ件數ガ二十八件アツタト云フコトデ
  アリマス、サウシテ大審院ノ審理ノ結果、
  此ノ二十八件ノ中二件ダケガ特許サレルコ
  トニナツテ是ハ成功シタ、斯ウ云フ統計ガ
  出テ居リマス、二十八件ニ對スル二件デア
  リマスカラ、〇·七%デアリマス、斯ウ云フ
  發明者ニ對シテ個人的ナ利益衝動ノ中ニ立
  タセ、飽クマデモソレニ衝撃ヲ與ヘテ公益
  ヲ增進シヨウ、斯ウ云フコトデアツテ、今日
  ノ時局ノ考ヘ方カラ申セバ、特許ガ許サレ
  ヨウガ許サレマイガ、國家ノ爲ニ、或ハ戰力
  增强ノ爲ニ立派ナ發明ヲスベキデハナイカ、
  シナケレバイカヌヂヤナイカ、不可能ヲ可
  能ニシヨウト云フ東條サンノ氣持ガ全國民
  ニ瀰漫シテ居ル此ノ段階ニ於テハ、サウシ
  テ斯ウ云フ改正法律案デアリマスレバ、是
  ハ三審制ヲ二審制ニシテモ、何人ト雖モ反對
  シタリ、別ノ意見ヲ申上ゲタリスルコトハ
  ナイト私ハ承知シテ居ルノデアリマス、併
  シナガラ裁判ノ對象、殊ニ刑事裁判ノ對象
  ハ人デアリマス、是ハ算盤勘定デ事務的ニ何
  〓パーセント」デアルカラ、〇·七%デアルカ
  ラ、是等ノモノガ權利ヲ失フコトアリト雖
  モ、此ノ場合事務簡捷ア見地カラ二審制度ニ
  シヨウト云フ譯ニハ行カナイト思フ、相手
  方ガ人デアリマスカラ、人ノ名譽、信用ノ
  問題デ一ツ間違ヘバ一生其ノ人ヲ臺ナシニ
  スルノデアリマスカラ、假令戰時下デアツ
  テモ私ハ極メテ愼重ナ法ノ運營ト、裁判所
  ノ構成ニシナケレバ相成ラヌト云フ風ニ、
  實ハ私考ヘテ居ル次第デアリマス、而シテ
  サウ云フ風ニ考ヘテ居ル所ニ、實ハ先程此
  ノ統計表ヲ戴イタノデアリマス、是ハ昭和
  十八年十月ニ出マシタ裁判所構成法戰時特
  例中改正法律案、戰時刑事特別法中改正法
  律案ノ刑事關係ノ參考資料デアリマスガ、
  此ノ中ニ控訴審實績調ト云フノガゴザイマ
  ス、其ノ中ノ控訴事件受理、終局及ビ未終
  局件數調ト云フノヲ見マスト、私ハ總論的
  ニ質問シテ居ルノデアリマスカラ控訴審カ
  ラ一寸申シマスガ、昭和十三年カラ昭和十
  七年マデノ控訴審ノ受理件數ガ合計三万四
  千五百八十三件アリマシテ、其ノ中終局ヲ
  シテ判決ヲ言渡サレテ居リマスノガ合計二
  万四千百アリマス、サウシテ昭和十三年カ
  ラ十七年マデノ五箇年平均デハ、刑ノ言渡
  シガ四千八百二十、其ノ中デ控訴サレテ無
  罪ニナツテ居ルノガ百十一アリマス、卽チ
  此ノ五箇年間ノ實績ニ依リマスト、四千八
  百二十ノ中デ百十一ガ無罪ニナツテ居ルト
  云フ統計ヲ拜見スルノデアリマス、而シテ
  之ヲ百分比ニシマスト、一、九ガ無罪ニナツ
  テ居リマスガソレハ違ヒマスカ

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• 090・池田克

  ○池田政府委員　違ヒマス、四千八百二十
  ノ中ノ百十一デハアリマセヌ、一番最後ノ
  計ノ五千八百六十一ノ中デ百十一デス、刑
  ノ言渡ハ百人ノ中デ八二·二、無罪ガ百人
  ノ中デ一、九デアリマス

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• 091・濱野清吾

  ○濱野(〓)委員　分リマシタ、百人ノ中デ
  一、九ダカラ、約二人ノ人々ガ無罪ニナツテ
  居ル、斯ウ云フヤウニ控訴審ニ於テモ、百
  人ノ中二人ガ無罪ニナルト云フ事實、之ヲ
  丁度特許法ノ今度ノ改正法律案ノヤウニ見
  テ宜シイカドウカト云フ問題デアリマス、
  更ニ大審院ノ方ノ上〓ノ記錄ヲ見マスト、
  輕キ刑ニナツタ者ガ四一一、九%、無罪、免訴
  刑ノ免除ガ三〇、六%斯ウ云フ數字ガ出テ
  來テ居ル、是等ノ數字ヲ見マスト、當局ノ
  辯明サレテ居リマスル練達堪能ノ職員ヲ以
  テシテ、三審制度ニ於テサヘモ此ノ無罪ノ
  人々、刑ノ減免ヲ受ケタ人々ガ、兎ニ角此
  ノヤウナ數字ニナツテ出テ居ルノデアリマ
  ス、斯ウ云フノハモウ一切間違ツテ拂拭サ
  レテモ、斯ウ云フ者ガ救ハレナクテモ、此
  ノ時局下ニ於テハドウモ已ムヲ得ナイノデ
  ハナイカト云フヤウナ御考ヘガ若シアリト
  スレバ、是ハ大變ナ間違ヒダト思フノデゴ
  ザイマス、ソレデ大臣モ或ハ次官モ先程來
  言ハレタ練達堪能ノ士ヲ以テ-斯ウ云フ
  統計ニ殘ル三審制度ニ於テサヘ救ハレテ居
  ル者ガ出テ居ル、斯ウ云フ者ハ二審制度ニ
  シテモアリ得ベキコトヲ期待シテ居ラレル
  ヤウデアリマス、ソコデ私ハ一ツ意見ヲ申
  上ゲタイノデアリマス、人ノ能力ニハ限リ
  ガアルノデアリマス、練達堪能ノ士、神中
  近イ者、假令サウ云フヤウナ方々ガアツタ
  トシテモ、結局ハ人デゴザイマスカラ、是
  ハ色々ナ方面ニ於テ限度ガアルト思フノデ
  アリマス、其ノ限度ヲ補フモノハ私ハ組織
  ダト思ツテ居ルノデス、組織ガ其ノ仕事ヲ
  正確ニシ、組織ガ寧ロ其ノ責任ヲ持ツテ來
  ル、斯ウ云フ風ニ考ヘラレテ御作リニナツ
  タノガ、此ノ裁判所構成法ダト私ハ考ヘテ
  居リマス、併シソレモ程度ヲ越エルト今日
  ノ統制會社ノ組織ノヤウニ、ドウモ如何ハ
  シイ議論ガ澤山出テ來ルコトハ當然デアリ
  マスガ、私ハサウ云フ人ノ力ノ及バザル力、
  人ノ能力以外ノ更ニ高度ノ力、更ニヨリ眞
  實ヲ發見シ、或ハ裁判ノ公正ナル力ヲ發揮
  スルコトガ、卽チ今日行ハレテ居ル一審、二
  審、三審ノ制度デアルト思フノデアリマス、
  其ノ組織ノ力、統制ノ力ト云フモノヲ此ノ
  場合三分ノ一ブツタ切ツテシマツテ、サウ
  シテ有能達識ノ士ヲ以ツテ埋合ハセルコト
  ガ果シテ出來ルカ、若シ天皇ノ赤子ヲ、其ノ
  組織其ノ構成ノ事務的ナ處理ニ依ツテ、二
  審制度ニシタ爲ニ、終生拭フコトノ出來ナイ
  立場ニ置イタトシタナラバ、是ハ寧ロ今ノ
  大臣ハ天皇ニ對シテ、私ハ責任ヲ負ハナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、私ガ斯ク
  申シマスノハ、特許法トカ或ハ普通ノ行政
  法ナドトハ違ヒマシテ、人ヲ裁判スルモノ
  デアル、對象ハ人デアリマシテ、サウ云フ
  間違ヘバ拭フコトノ出來ナイ大切ナ裁判ニ
  對シマシテハ、戰時下ニ於キマシテモ、之
  ヲ改正スル必要ハナイノデハナイカ、寧ロ改
  正シナイ方ガ宜イノデハナイカト、根本的
  ニ相容レナイ考ヘ方デアリマスガ、ソレハ
  違フト云フコトナラ、モウ一度一ツ納得ノ
  行クヤウナ御答ヘヲ願ヒタイト思フノデア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=91

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• 092・岩村通世

  ○岩村國務大臣　三審制度ヲ二審制度ニ改
  メル必要ノコトニ付テハ、先程來色々御
  質問ガアリマシテ御答ヘ致シマシタ、多分サ
  ウ云フ考ヘ方デアラウカト云フコトヲ交ヘ
  テ、色々御意見ヲ伺ツタノデアリマスガ、
  無論平時的ノ考ヘトシテハ、今日ノ裁判制
  度トシテ一ツノ組織ヲ持ツテ、或ハ三審ト云
  フ形ガ穩當デアラウト云フ御說ニハ、私モ
  同ジ意見ナノデアリマスケレドモ、今日ノ戰
  時ノ狀態ニ於テ、平時ノ如ク三審ノ制度ヲ
  採ツテ居ルベキカ否カニ付テハ、私ハ反對ノ意
  見ヲ持ツテ居ル譯デアリマス、先程來裁判ハ
  人ニ對スルモノデアルト云フ御話、是モ御
  尢モデアリマスガ、其ノ點ハ御意見ノ通リデ
  アリマスケレドモ、殊ニ刑事裁判ハ何ヲ一體
  法益トシテ居ルカ、何ヲ一體刑罰ニ依ツテ保
  護シテ居ルカト云ヘバ、是ハ色々犯罪ニ依
  ツテ違ヒマスケレドモ、ヤハリ公ノ秩序、
  斯ウ云フコトガ保護ノ對象ニナツテ居ルダラ
  ウト思フ、ソレデアリマスカラ、例ヘバ放火罪
  ヲ犯シタト云フヤウナ場合ニ、其ノ放火ヲシ
  タ人間ヲ調ベルガ、刑罰ニ依ツテ何ガ保護セ
  ラレルカト云ヘバヤハリ公ノ秩序、公安ト云
  フヤウナモノガ保護ヲセラレルコトニツテ
  居ルト思フ、ソレデアリマスカラ裁判制度ハ
  其ノ時ノ時勢ニ依ツテ、殊ニ刑法的ノ問題
  ハ此ノ時勢ニ於テ、ドウシテ其ノ法益ガ保護
  セラレルカト云フコトヲ考ヘナケレバナラ
  ヌ、無論保護スル前提トシテ其ノ人ノ行爲ヲ
  判斷シテ、事實ノ眞相ヲ穿ツテ行クコトハ
  必要デアリマスケレドモ、ソコハ戰時ニ於
  ケル刑事裁判ト云フモノニ對スル考ヘ方ガ、
  私ト遺憾ナガラ意見ガ違フコトニナルダラ
  ウト思フ、ソレデアリマスカラ先程モ申
  シマシタ通リ、司法權ト云フモノハドコ
  マデモ、ドンナ事態ガ起ツテモ裁判カ出
  來ル、最小限ハ司法權ガ行ヘルヤウニシテ
  置カナケレバナラヌ、ソレガ爲ニ二審制ヲ
  採リ、區裁判所カラ出發シタ事件ハ控訴院
  デ終ルト云フコトニ依ツテ、其ノ一ツノ地
  域ニ於テ司法權ガ完全ニ行ハレル形ヲ採ラ
  ナイト、司法權ガ結局行ヘナイト云フコト
  ニナツテハ相濟マヌ、斯ウ云フノガ先程モ
  申シマシタケレドモ、私共ノ考へ方デアリ
  マス、ソレカラ法益ノ考ヘ方ガ、別ニ私ハ
  御考ヘハ違ツテハ居ラヌト思ヒマスケレド
  モ、ドチラニ重キヲ置クカト云ヘバ、被告
  人犯人其ノモノヲ大切ニシテヤラナケレ
  バナラヌト云フ御考ヘト、無論其ノ點モ人
  權ノ擁護カラ必要デアルケレドモ、其ノ犯
  人ヲ罰シテ、其ノ刑罰ニ依ツテ國家ノ法益
  ト云フモノヲ護ツテ居ルノデアル、斯ウ云
  フ考ヘ方ヲ私共ハ採ツテ居ルノデアリマス、
  ソレデ斯ウ云フ非常ナ戰時狀態ノ場合ニ
  ハ總テノ犯罪ハ無論愼重ニ的確ナ裁判ヲ
  シナケレバナリマセヌケレドモ、速カニ裁
  判ガ確定シテ公安ヲ維持スルト云フコト
  ガ、平時ヨリハ必要デハナカラウカ、平常
  ナラ相當ナコトデアリマシテモ、社會的國
  家的ニ非常ナ影響ハナクテモ、戰時ノ場合
  ニハ非常ナ影響ヲ持ツコトガアル、ソレデ
  色々刑事罰則ガ戰時ニハ相當ニ增加シテ居
  ル譯デス、ソレデアリマスカラ戰時的ト云
  フ所ヲ一ツ十分ニ御諒解ヲ願ツテ、御贊成
  ヲ願ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=92

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• 093・濱野清吾

  ○濱野(〓)委員　イヤ大臣ノ仰シヤルコト
  ハ能ク分リマシタ、時代々々ノ法益ハ、其
  ノ時代々々ノ方法ニ依ツテ擁護シナケレバ
  ナラヌ、私ハ其ノ裁判ニ係ル最モ惡辣ナ奴
  ガ可哀相ダカラ、三審制度デ延バシテ行ケ
  ト云フ意味デハナイノデアリマス、ソレハ
  能ク分ツテ居ルノデアリマスガ、併シ時代
  時代ノ法益ヲ如何ニ保護スルカト云フ問題
  ニ對シテ、裁判所構成法ト云フヤウナ其ノ
  構成ヲ動カサナイデモ、是ハ出來ルヂヤナ
  イカ、例ヘバ專門家ニソンナコトヲ言フコ
  トハ甚ダ失禮デアリマスガ、マア總動員法
  ノ如キ然リ、其ノ他八十一議會、八十二議會
  等ニ於テ出タ法案ノ內容ヲ見マスト、事裁
  判所構成法ト云フ大本ニ斧鉞ヲ加ヘナクテ
  モ、是ハ立法ノ技術デ時代々々ノ法益ハ擁
  護出來ルヂヤナイカ、ソレニ「メス」ヲ入レ
  ルト云フコトハ寧ロ其ノ時機デナク、且又
  入レベキヂヤナイノデハナイカ、三審制度
  ト云フモノガアツテ、初メテ日本ノ裁判所
  ノ權威ト云フモノガ寧ロ餘計ニ信賴サレテ
  居ルノデハナイカ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居
  ルノデス、ソレカラ先程一審制度、二審制
  度ト云フモノガ旣ニアリマスカラ、是モヤ
  ツテモ宜イヂヤナイカト云フヤウナ大臣ノ
  御答ガアツタヤウニ拜聽シテ居リマスガ、
  アア云フ一審制度、二審制度デ完結スルモ
  ノハ、是ハ事案ノ本質ニ依ルモノデアルト
  私共ハ考ヘテ居リマス、隨テ前ニ一審制度、
  二審制度デ審判ノ結論ヲ得ルモノガアルカ
  ラト云フ理由デ、三審制度ヲ二審制度ニス
  ルト云フ此ノ法律案ニ付テハ、是モ理由ノ
  全部ヲナシテ居ナイト思フノデアリマス、
  ドツチニシテモ私ハ率直ニ考ヘテ居ルノデ
  アリマスガ、法律家デナイカラ能ク分リマ
  セヌガ、是ハ暮ノ議會ニデモ出シテ吳レタ
  方ガ宜イト思ツテ居リマス、時代々々ノ法
  益ヲ護ルノハ、ソレハ八十一、八十二議
  會或ハ今囘モ出テ居リマスガ、サウ云フ
  手續デヤレバ出來ルノデハナイカ
  モウ一ツハ此ノ裁判所構成法ヲ變ヘテ見
  タカラト云ツテ、直接戰力ノ增强ニドレダ
  ケナルト云フ判定ハ出來マイ、寧ロ三審制
  度ヲ二審制度ニ變ヘテ本當ニ無辜ナ人間ガ救
  ハレナイ者ガアツタトスレバ、是ハ大變ナコ
  トデハナイカ、私ハ斯ウ思フノデアリマス、
  犯罪ヲ犯シタ奴ニ成ベク救ハレル機會ヲ與ヘ
  ルト云フヤウニ取ラレテハ困ルノデアリマ
  ス、ドウセ今晩マデ時間ガアリマスカラ、
  ユツクリ私個人トシテハ考ヘマスケレド
  モ、ドウモ戰力ノ直接ノ增强ニナラヌシ、
  大臣ノ考ヘテ居ルヤウナ間接ノ戰力增强ニ
  モ、或ハ期待スルヤウニナラナイノデハナ
  イカ、三審制度ヲ二審制度ニ急速ニ變ヘ
  テ、寧ロ國民ノ不安ガ起キルノデハナイカ、
  信賴感ガ薄クナルノデハナイカ、サウシテ
  卽决例ト云フヤウナモノト睨合ハセレバ-
  尙ホ大臣ノ折角部下ヲ督勵スルト云フ御言
  葉ハゴザイマスケレドモ、間違ヒガ起ルコ
  トガ多クナリハセヌカ、斯ウ云フ不安モ實
  ハ持ツテ居ルノデアリマス、是レ以上申シ
  マシテモ意見ノ相違ニナリマセウカラ、私
  ハ是デ質問ヲ打止メマス

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• 094・岩村通世

  ○岩村國務大臣　簡單ニ一寸一言加ヘマス、
  現在一審、二審、三審ト三ツノ制度ガア
  ル譯デアリマス、一番、二審ハ御說ノ通リ
  其ノ罪質、サウ云フモノガ或ハ國家ノ機密
  ニ屬スルモノデアルトカ、其ノ犯罪ヲ早ク
  處理シナイト、社會ノ公安ヲ紊ルトカ、非
  常ナ重大ナ影響ヲ與ヘルモノガ一審、二審
  ニナツテ居ル、私ハ此ノ戰時、此ノ決戰狀
  態ニ於テハ、一般ノ犯罪ガサウ云ツタ傾向
  ヲ持ツテ來テ居ルト思フ、ソレデ私ハ一般
  ノ三審制度ノ事件モ二審制度ニシナケレバ
  ナラヌ狀態ニナツテ居ルト思フ、ソレダケ
  ヲ私ハ附加ヘテ申上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=94

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• 095・作田高太郎

  ○作田委員長　松岡君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=95

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• 096・松岡俊三

  ○松岡(俊)委員　私ハ少シ根本的ナ問題ニ
  ナリマスガ、前議會ニ於テ戰時刑事特別法
  ガ成立シマシテ、私有財產其ノ他ニ付テ極
  メテ戰時ニ必要ナル問題ニ對スル手當ガ出
  來タ、今囘ノ戰時刑事特別法ノ改正案ニ依
  ツテ官吏ニ對スル收賄其ノ他ニ付テノ手當
  モ出來タ、サウシテ立派ニ國民ノ納得スル
  ヤウナ所ニ行ツテ居リマスルガ、唯モウ一
  點殘ツテ居ル所ガアリハシナイカト思ハレ
  ル點ニ付テ御尋ネシテ見タイト思フノデア
  リマス、ソレハ刑罰ニ觸レルカ觸レナイカ
  ト云フコトノ問題ハ別ト致シマシテ、行政
  官ガ法律ヲ無視スルト云フカ、或ハソレヲ
  眼中ニ置カナイヤウナ結果ニナルコトヲシ
  タガ爲ニ、國民ガ此ノ影響ヲ頗ル受ケル所
  ガアルト云フヤウナコトガアリ得ルト思
  フ、卽チ行政官ガ若シ此ノ處置ニ付テ不都
  合ガアルト思フナラバ、ソレハ行政裁判所
  ニ行クガ宜シイト云フヤウナ工合ニアツサ
  リト片付ケル問題ガアルト思フ、當然法律
  及ビ法律ニ等シイヤウナモノニ規定セラレ
  テ居ルコトヲ度外視シテ、越權ナ處置ヲ行
  政的ニナシタルガ爲ニ、國民ガ非常ニ影響
  スル所ガ大キイ問題ガ必ズ出テ居ル、其ノ
  行政官ヲ如何ニスベキカト云フ問題ガ戰時
  中ニ於テ戰力增强ノ上カラ考ヘテモ、國民
  ニ眞ニ安心セシムル上カラ言ツテモ、手當
  ガ何等カ考ヘラルベキモノデハナイカト思
  フ、前議會ニ於テアレダケノ問題ガ解決サ
  V、今囘ニ於テ此ノ官吏ノ收賄ニ對スル十
  分ナ手當ガ加重サレテ居ル、斯ウ云フ工合
  ニナツテ居ル時ニ、官吏ガ其ノ處置スルコ
  トガ法ヲ外レタ、又法律ニ等シイコトヲ眼
  中ニ置カズシテヤツタガ爲ニ國民ガ非常ニ迷
  感ヲ起シタ時ニ、官吏ハ動トモスルトソレ
  ハ行政裁判所ヘ行ケ、サウ云フコトニナレ
  バ行政裁判所ニ行ツテ是ガ審理セラレテ行
  キマスル時ニハ、モウ其ノ官吏ハ何處へ行ツ
  テ居ルカ分ラナイト云フヤウナ結果ニナツ
  テ當テガ分ラナイ、有耶無耶ノ裡ニ終ルヤウ
  ナコトガ多々アルト思フノデアリマス、之
  ニ對スル手當ハ國民ノ戰力增强ノ上ニ少ク
  トモ前議會ノ法案、今囘ノ改正案相伴ツテ
  行フベキモノデハナイカ、此ノ一ツダケガ
  殘ツテ居ルカノヤウニ私ハ思フノデアリマ
  ス、之ニ對スル御答辯ヲ願ヒタイト思フノ
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=96

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• 097・大森洪太

  ○大森政府委員　只今ノ御言葉ノ御趣旨ハ
  官吏ガ其ノ職務ノ執行ニ當リマシテ著シキ
  不當ノ行爲ヲナシマシタ場合ニ、今日御承
  知ノヤウニ懲戒ノ處置ノアルコトハ當然デ
  アリマスケレドモ、其ノ外ニ進ンデ之ヲ刑
  罰トシテ取上ゲテハドウカ、左樣ナ意思ナ
  キヤ、斯ウ云フヤウナ御趣旨ノヤウニ拜聽
  致シマシタ、是ハ御尤モノコトデアリマス、
  懲戒制度ノ外ニ、之ヲ以テ足リルモノトハ
  シナイデ、更ニ進ンデ刑罰トシテ考ヘナケ
  レバナラヌト云フコトモ、少クトモ戰時ニ
  於テハ大イニ〓究スベキ一事項ダラウト思
  フノデアリマス、
  大ナル影響ヲ及ボス、生產ノ增强ニ多大ノ支
  障ヲ及ボスト云フヤウナ重大ナ場合、單ニ
  之ヲ懲戒ノミニ止メテ置クト云フコトハ固
  ヨリ妥當デハナイヤウニ存ジマス、唯併シ
  此ノ官吏ノ懲戒ト離レテ之ヲ刑罰ニスルト
  云フコトニ付キマシテハ、相當愼重ニ〓究
  調査ヲ重ネナケレバナラナイノデアリマス、
  私共遽ニ今日其ノ可否ヲ明言スル用意ハナ
  イノデアリマス、併シ十分ニ考慮ヲシタイ
  ト思フノデアリマシテ、今日司法省內ニア
  リマスル民刑兩法典ノ徹底的根本的ノ再檢
  討ニ付キマシテハ、是等ヲ十分ニ論議ヲシ
  タイト思ツテ居リマス、斯樣ナ問題ハ中
  中一朝一夕ニハ決シ兼ネル問題デアリマシ
  テ、殊ニ短期間ニ之ヲ提出スルト云フコト
  ハ不可能カト存ズルノデアリマス

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• 098・松岡俊三

  ○松岡(俊)委員　只今ノ御答辯ニ依ツテ私
  非常ニ喜バシク思フノデアリマス、御答辯
  ノ中ニ刑罰ヲ以テ臨ムト云フコトガ良イカ
  惡イカト云フコトハ、是ハ專門家デアリマ
  セヌカラ分リマセヌガ、少クトモ行政裁判
  所ニ持ツテ行ケ、又持ツテ行カレルベキモ
  ノデアリマス、斯ウ云フ按配ニ總テノ問題
  ガ簡素化サレナケレバナラヌト凡ユル方面
  カラ考慮サレテ居ル時、サウ云フ分リ切ツ
  タ法ヲ逸脫シタヤウナコトニ因ツテ國民ニ
  影響ヲ及ボスヤウナコトハ、サウ譯山ナカ
  ラウト思ヒマスケレドモ、アレバソレハ非
  常ニ弊害ガ大キイモノダト思フ、ソレハ行
  政裁判所ニ行ケト云フヤウナコトハ甚ダ當
  ヲ得ナイ、國民ガ戰時デアルガ故ニ已ムヲ
  得ズシテ我慢スルト云フヤウナコトニサセ
  ルコトハ宜シクナイヂヤナイカ、斯ウ思ヒマス
  ガ、只今ノヤウニ此ノ問題ガ問題トナツテ目
  而モ是ガ國民ノ士氣ニ重一下司法省内ノ審議會ニ議題トナツテ居ラレ
  ルヤウニ拜承致シマシタノデ、洵ニ私ハ喜
  バシイコトト思ヒマス、是ハ當然是ダケハ
  一ツ殘サレタル問題ダト思ヒマス、私ハ此ノ
  點ニ付テ只今ノ御答辯ヲ了承致シマシテ終
  リマス

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• 099・大森洪太

  ○大森政府委員　御許シヲ得テ一寸一言申
  添ヘタイノデアリマス、只今ノ問題ニ付テ
  現ニ司法省ニ於テ委員會ノ議題トシテ〓究
  ヲシテ居ルト云フコトハ、是ハ間違ヒデア
  リマス、私ノ申上ゲ方ガ惡カツタノカモ知
  レマセヌ、〓究ノ價値アル問題トシテ今後
  〓究ハシナケレバナリマスマイケレドモ、
  現ニ議題トシテ〓究中ト云フコトハナイ、
  斯樣ニ御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス

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• 100・松岡俊三

  ○松岡(俊)委員　極メテ重大ナル問題デア
  ツテ、戰力增强ノ上ニハ缺クベカラザル取
  殘サレタル問題ダト云フ點ニ付テ重點ヲ置
  イテ私ハ御尋ネ致シタノデアリマス、ソレ
  デスカラ當然是ハ考ヘラレテ居ル、モウ第
  一段ニ前議會ニ於テアレダケノ加重ノ手當
  ガ出來タ、今度ハ官吏ニ此ノ加重ノ手當ガ
  出來タ、サウシタナラバ此ノ點ニ付テ取殘
  サレテ居ルヂヤナイカト云フコトハ、モウ
  結論的ニハ當然ダト思フ、國民ヲシテソコ
  マデ納得セシメナケレバナラヌ、一方的バ
  カリデ國民ニバカリ求メテハイケナイト思
  ヒマス、官吏ニ既ニ是ダケノ手當ヲ致シタ
  ノデアリマスカラ、今度ハ國民ヲ納得セシ
  メル上ニ、又同時ニ凡ユル方面カラ簡素化
  ヲ期スル上ニ於テ、一刻モ早ク結着セシメ
  ヨウト云フ先程ノ大臣ノ御說明モアツタ通
  リ、ソレヲ行政裁判所ニ直グ持ツテ行ケ、
  分リ切ツタコトデアルカラ、是ハオ前不服
  デアツタナラバ行政裁判所へ持ツテ行ケト
  云フヤウナコトヲ言ハシムルヤウナコトハ
  宜シクナイ、ソコニ遵法精神ト云フ-總
  理及ビ司法大臣ガ前議會ニ於テモ明白ニ御
  聲明ニナツテ居ル所ノ遵法精神ノ上カラ言
  ウテモ考慮セラルベキモノダト思フ、ドウ
  ゾ此ノ點ニ付テ特ニ御留意ヲ願ツテ御處置
  ヲ願ヒタイト思フ次第デアリマス

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• 101・作田高太郎

  ○作田委員長　一寸一言申上ゲタイノデア
  リマスガ、マダ通告ハ四名バカリアルノデ
  アリマスガ、此ノ際短時間ノ補充質問ヲ許
  シマシテ、サウシテ一應休憩シテ懇談ニ移
  リタイト思ヒマス、御諒承ヲ願ヒマス

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• 102・田中藤作

  ○田中(藤)委員　先刻色々ノ角度カラ御伺
  ヒ致シタ譯デアリマスガ、私ハ司法ノ權威、
  裁判ノ威信ノ見地カラ色々御伺ヒシタ譯デ
  アリマス、二審制度ノ全面的ナ採用、略式
  裁判ノ自由刑へノ擴大ト云フコトハ、結局
  裁判ノ威信ヲ失墜スル虞ナキヤヲ憂ヘテ居
  ルノデアリマス、略式裁判ハ或ハ警察裁判
  デハナイカト云フ印象ヲ與ヘマス、又同時
  ニ印象ヲ與ヘルノミナラズ、警察裁判ニ堕
  スル虞モアル譯デアリマス、憲法上ノ所謂
  裁判官ニ依ルニアラザル裁判ニナル虞ガア
  ルト云フ點ニ於テ、私ハソコニ多少ノ疑問
  モアリマス、併シ是ハ法律上ノ問題トシテ
  私ハ提案スル譯デハアリマセヌ、同時ニ又
  略式裁判ニ依ツテ檢事ガ犯罪ガ明白ダトサ
  レツツ、而モ自由ヲ拘束サレルコトニ依リマ
  シテ、結局抛棄ノ强要ト云フ結果ガ招來ス
  ルノデハナイカト思ヒマス、是ハ丁度現在行
  ハレテ居リマスル第一審判決ニ對シマシ
  テ、第一審判決ノ言渡ガアツテ、而モ尙且
  ツ自由ヲ拘束サレテ居ル結果、已ムヲ得ズ
  控訴權ノ抛棄ト云フコトニ相成ツテ居ル實
  情デゴザイマス、斯樣ナ譯合デ所謂寃罪ニ泣
  ク者ガ出來ル、苛酷、苛察ノ裁判ニ泣ク者
  ガ相當出來テ來ルト云フコトニナル、私ハ
  ソレガ軈テ裁判ノ威信ヲ落ス結果ニナ
  リハセヌカト云フコトヲ非常ニ惧レル譯
  ナンデス、又二審制度ノ實情、卽チ御示
  シニナツタ資料ニ依ツテ考ヘテ見マシテ
  モ、控訴事件ノ四八%ハ輕キ刑ノ言渡ガ
  アリマス、言換ヘルト、一審ニ於テハ
  重キ刑ノ言渡ガアツタ譯ナンデス、又其ノ
  中ノ一·八%ハ無罪ノ判決ガアツタ譯ナンデ
  ス、斯樣ナ結果カラ見マスト、略式ハ更ニ
  苛酷、苛察ノ判決ニナラヌト云フコトハ、
  自然ノ歸趨デハナイカト思ハレル譯ナノデ
  アリマス、畏多クモ御一新ノ勅語ニハ「天
  下億兆一人モ其處ヲ得サル時ハ皆朕カ罪ナ
  レハ」ト仰セ給ツテ居ルノデアリマス、此
  ノ有難イ大御心ヲ考ヘ、裁判ノ正道ダト云
  フコトニ思ヒヲ致シマスナラバ、今次ノ此
  ノ改正ト云フモノハ極メテ重大ナモノダト
  思ヒマス、殊ニ此ノ短期ノ議會ニ斯樣ナ重
  大ナ法案ヲ提案セラレ、而モ之ヲ速カニ審
  議セラレンコトヲ要望セラレルト云フコト
  ハ、當局ノ責任極メテ重大ダト思ヒマス、
  隨テ裁判ノ威信ノ見地カラ、更ニ當局ノ之
  ニ對スル確乎タル信念ヲ御伺ヒ致シタイト
  思フノデアリマス

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• 103・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今田中サンヨリ司法ノ
  威信ト云フコトニ付テ、非常ニ御心配ニナ
  ツテ種々御意見ガアリマシタ、之ヲ要スル
  ニ運用ニ注意ヲシナケレバナラヌト云フコ
  トニ歸スルト思ヒマス、只今種々ノ點ヨリ
  御意見ノアリマシタ所ハ十分ニ私共翫味ヲ
  致シマシテ、運用ニ付テハ十分注意ヲ致ス
  積リデゴザイマス、此ノ短期ノ議會ニ斯樣
  ナ重要ナ法案ヲ提出シタコトニ付キマシテ
  ノ責任ニ付テハ、是ハ私提案ヲ致シテ居リ
  マスノデ、十分ニ其ノ責任ヲ感ジ、此ノ法
  律ノ運用ニ付テハ十分ノ效果ヲ收メ得ル確
  信ヲ致シテ居リマス、ドウカ其ノ點ハ御信
  用ヲ願ヒタイト思ヒマス

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• 104・信正義雄

  ○信正委員　手續上ノ問題デ重要ナコトヲ
  御尋ネ漏ラシタノデ伺ヒマス、ソレハ正式
  裁判ノ請求ニ關シテ、拘留中或ハ檢束中ニ
  被〓人ガナス正式裁判申立手續ニ付テノ規
  定ガナイ、此ノ點ニ付テ御伺ヒヲ致シテ置
  キマス、此ノ案文ヲ拜見シマスト、正式裁
  判ノ請求手續ニ付キマシテハ、刑事訴訟法
  ノ五百二十八條、五百三十一條、五百三十
  三條等ヲ準用セラレルコトニナツテ居リマ
  ス、五百二十八條ヲ見マスト、正式裁判ノ
  請求ハ書面ヲ以テ之ヲナスコトトナツテ居
  ルガ、五百三十一條ヲ見マスト、正式裁判
  ノ請求ハ法律上ノ方式ニ違反シタルトキハ
  決定ヲ以テ之ヲ棄却スベシ、斯ウ云フ趣旨
  ニナツテ居リマス、五百三十三條ニ依リマ
  スト、請求期間ノ經過ニ因リテ確定判決ト
  同一ノ效力ヲ生ズルト云フ旨ノ規定ガアリ
  マス、ソコデ正式裁判ノ請求ラ致シマスノ
  ニ付テハ、請求期間內ニ請求ヲシナケレバ
  ナラナイシ、相當ノ書式モ知ラナケレバナ
  ラナイノデ非常ニ難カシイコトニナツテ居
  ルノデアリマス、拘留中ノ被〓人ガ此ノ手
  續ヲスルノニハ一體ドウ云フ風ニシテスル
  ノデアルカ、況シテ警察ニ檢束サレテ居リ
  マス檢束中ノ被〓人ガ正式裁判ノ請求ヲス
  ルノニハドンナ風ニシテスルノカ、是ハ、私
  ハ外ニ何カ適當ナコトガアツテ、ソレヲ知
  ラナイノカモ分リマセヌガ、此ノ改正案ダ
  ケヲ見タノデハドウモ分リマセヌ、元來刑
  事訴訟法ニ於キマシテハ、斯ウ云フ場合ノ
  コトニモ慮リヲセラレマシテ、是ハ控訴上
  告ノ申立ノ場合デアリマスケレドモ、三百
  九十一條ニ定メテ置イテ、勾留中ノ被告人
  ガ控訴上〓ノ申立ヲスルトキニハ監獄ノ長
  ヲ經由シテ申立書ヲ差出シ、被告人自ラ申
  立書ヲ作ルコトガ出來ナイヤウナ時ニハ、
  監獄ノ長或ハ其ノ代理者ヲシテ代書セシメ
  ル、斯ウ云フコトヲ規定セラレテ居リマス、
  是ハ成程無筆ノ被告人モ居ル譯デアリマス、
  又紙モ筆モ持ツテ居ナイト云フ被告人モ居
  ル譯デアリマス、ドウシテモ紙ト筆トガナ
  ケレバ正式裁判ノ申立ヲ書クコトガ出來ナ
  イ、書式ヲ知ラナケレバ正式裁判ノ申立ヲ
  書クコトガ出來ナイ間ニ、一週間ノ日ニチ
  ヲ經過スレバ確定判決ノ效果ヲ生ズルト云
  フコトニナツテシマフノデハ大變ナ問題デ
  アル、曩ノ違警罪卽決處分ニ付キマシテ斯ウ
  云フ風ナコトヲ慮ツタコトデゴザイマセウ
  ガ、卽決處分ノアツタ場合ニハ、家族ノ者カ
  ラデモ正式裁判ノ申立ヲスルコトガ出來ル、
  斯ウ云フヤウナコトヲ規定シテ居ル、是等
  ハ非常ニ親切ナ規定デアル、斯樣ナ規定ノ
  ナイ限リニ於キマシテハ、勾留者ハ本人カラ
  ドウスルコトモ出來ナイ、是ハ餘程御考慮ヲ
  願ハナケレバナラヌノデハナイカト思フ、
  殊ニ檢束處分中ノ場合ナドハ、周圍ノ者ガ
  ドチラカト言ヘバ、正式裁判ノ申立ニ餘リ
  好感ヲ持タナイ人ガ周圍ニ居ル、ソンナ中
  ニ於テ墨モ筆モ紙モナイノニ何トカシナケ
  レバナラナイ、デスカラ玆ニ何等カノ明文
  規定ガナイ場合ニ於キマシテハ、拘束セラ
  レテ居ル場合ニ於テ周圍ノ誰カ親切ニ賴ツ
  テ初メテ紙ヲ貸シテ貰ヒ、筆ヲ貸シテ貰ヒ、
  書式ヲ〓ヘテ貰ツテ漸ク辛ウジテ申立ヲナ
  スコトガ出來得ルト云フ譯デス、他人ノ親
  切ニ俟ツヨリ外ニ途ガナイ、是デハ私ハ此
  ノ重大ナ正式裁判ノ請求手續ニ於テ果シテ
  ドウカト思フノデス、若シ外ニ明文ガアツ
  テ私ガ知ラナイノデアリマスルナラバ、是
  ハ洵ニ幸セデアリマス、若シ其ノ點ニ付キ
  マシテノ明文ガナイノダト致シマスルナラバ、
  何等カ規定ヲ置イテ戴キタイ、御質問デア
  ルト同時ニ是ハ御相談デモアリマスガ、何
  トカシテヤツテ戴カヌト云フト、一週間ト
  云フ短カイ期間ニハドウスルコトモ出來ナ
  イ、此ノ點ニ付キマシテ御伺ヒ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=104

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• 105・池田克

  ○池田政府委員　略式手續ニ依リマシテ出
  サレマシタ略式命令ニ對シマスル正式裁判
  ノ申立ノ運デゴザイマスガ、被〓人ガ勾留
  サレテ居リマスル場合ニ於キマシテハ、刑
  務所ノ長ヲ通ジマシテ勿論略式命令ノ謄本
  ヲ本人ニ交付スルコトガ可能デアリマス、
  隨ヒマシテ本人ニ於テハヤハリ刑務所ノ長
  ヲ通ジマシテ正式裁判ノ申立ヲナスコトガ
  優ニ出來ルト考ヘテ居ル譯デス、左樣ナ次
  第モゴザイマシテ、特ニ其ノ勾留中ノ被告
  人ニ對シマスル正式裁判ノ申立ノ方法手續
  ニ付テノ規定ノ必要ナキモノト考ヘマシテ、
  此ノ案ニ於キマシテハ別段ノ明文ヲ設ケナ
  カツタ次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=105

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• 106・信正義雄

  ○信正委員　サウシマスト、刑事訴訟法ニ
  ハ三百九十一條ニ上訴ノ規定ガアルノデゴ
  ザイマス、明白ニ本人ガ字ヲ書クコトガ出
  來ナケレバ代書シテヤルト云フヤウナコト
  ガ書イテアル、明文ガアル、ソレガ三百九
  十條マデハ準用セラレルコトニナツテ居ツ
  テ、三百九十一條ハ今度ノ改正案デハ準用
  セラレナイ、此ノ三百九十一條モ準用スル
  ト云フ風ナコトニ御書キニナツテ置カレマ
  スト、字ノ書ケナイ者モ看守ノ人ニデモ字
  ヲ書イテ貰ヘマス、筆モ紙モ宛テガツテ貰
  ヘマスケレドモ、斯ウ云フヤウナ條文ガア
  ルニ拘ラズ、サウ云フヤウナモノハ準用シ
  ナイ、斯ウ云フヤウニナツテ參リマスルト
  ドウカト思フ、ソレカラ只今ノヤウナ御言
  葉モアリマスルケレドモ、警察ニ檢束處分
  中ノ者ハドウナルカ、是モ手モ足モ出ナイ
  コトニナル、是ハ何トカ一ツ明文ヲ以テ、
  ソンナ薄情ナ人ハ居ラナイコトヲ期待致シ
  マスルガ、折角法律ヲ斯ウ云フ風ニ御作リ
  ニナルノデスカラ、サウ云フ風ナ手續ノ隅
  々ニ至ルマデ、何ノ憂ヒモナイヤウニシテ
  ヤル必要ガアルノデハナイカ、外ノ法律デ
  モ完全ニサウ云フ風ニヤツテ居ル例カラ見
  マシテモ、此ノ法律デモヤハリ同ジクサウ
  云フヤウナ所ヲ親切ニ規定シテヤツテハド
  ウカ、斯ウ思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=106

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• 107・池田克

  ○池田政府委員　勾留中ノ被告人ノ正式裁
  判ノ途デゴザイマスケレドモ、運用ニ依リ
  マシテ先程御指摘ニ相成リマシタ刑事訴訟
  法三百九十一條ト同樣ノコトニナルカト思
  ヒマス、尙ホ例ヘバ刑事訴訟法ノ五百二十
  三條ノ末項デゴザイマスケレドモ、本人ニ
  略式命令ノ謄本ヲ交付スルト云フコトモ可
  能デゴザイマスノデ、刑務所ニ勾留シテア
  リマス被告ニ付キマシテハ、便宜裁判所ニ
  於テ呼出シマシテ、サウシテ裁判書記カラ
  略式命令ヲ正式ニ正確ニ交付スルト云フコ
  トガ可能デゴザイマス、旁、只今御觸レニナ
  リマシタ如キコトハナイ、斯樣ニ信ジテ別
  段ノ規定ヲシナカツタ次第デゴザイマス
  尙ホ檢束ノ問題デゴザイマスケレドモ、
  略式命令ヲ請求シマス場合ニ檢束ト云フ
  コトハアリ得ナイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデア
  リマス、略式命令ヲ請求致シマス場合ニハ、
  檢事ガ必ズ被〓ノ身柄ヲ受取ル譯デアリマス、
  檢束ト云フコトハアリ得ナイ、假ニ檢束中
  デゴザイマシテモ、檢事ガ身柄ヲ引取ルノ
  デゴザイマスカラ、略式命令ノ請求後ニ於
  テハ檢束ト云フコトハアリ得ナイ、斯樣ニ
  考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=107

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• 108・仲井間宗一

  ○中井間委員　簡單デアリマスガ、私ハ條
  文ニ付テ、此ノ身分ヲ表示スル新シイ條文
  ガ出テ居リマスカラ、其ノ點ヲ伺ヒタイト
  思ヒマス、卽チ第十八條ノ六デゴザイマ
  ス、其ノ後段ニ「公務ニ從事スル職員ハ法令
  ニ依ラザル者ト雖モ之ヲ公務員ト看做ス」
  公務員ノ擬制ガ出テ居リマス、ソレト其ノ
  次ノ條文ノ第十八條ノ七ニ「第十八條ノ二
  ノ規定ハ他ノ法令ニ於テ官吏ト看做サルル
  者ヲ除クノ外」其ノ下デアリマス、「他ノ法
  令ニ於テ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト
  看做サルル者ニ付テハ之ヲ適用セズ」、第
  -ニ公務ニ從事スル職員ハ法令ニ依ラザル
  者ト雖モ之ヲ公務員ト看做スト云フノハ何
  ヲ對象トシテ居ラレルカ、例ヘバドウ云フ
  者ガ主デアルカト云フ點ト、ソレカラ十八
  條ノ七ノ後段ノ法令ニ依リ公務ニ從事スル
  職員ト看做サルル者ニ付テハ之ヲ適用セ
  ズ-

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=108

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• 109・池田克

  ○池田政府委員　御尋ネノ第一點デゴザイ
  マスガ、公務ニ從事スル職員、詰リ法令ニ
  依ラズシテ公務ニ從事スル職員ト申シマス
  ノハ、具體的ニ例示致シマスレバ、各省ニ
  於テ公務ニ從事シテ居リマス囑託員ノ如キ
  者デアリマス、御承知デモゴザイマス通リ
  ニ、從來大審院ノ判例ニ於キマシテ、公務
  ニ從事スル職員デアツテモ、其ノ任用資格
  ニ付テ法令ノ根據ノナイ場合ニ於テハ、ソ
  レハ公務員ト看ルコトハ出來ヌ、斯ウ云フ
  ヤウナ判例ガゴザイマス、現在例ヘバ各省
  ニ於キマシテ、定員ノ關係ナドモゴザイマ
  セウ、法令ニ根據ナクシテ公務ニ從事スル
  囑託員ナドガゴザイマス、而モ其ノ實質ハ
  立派ニ高等官ナリ、或ハ判任官ナリノ不定
  數量ノ仕事ニ從事シテ居ル、斯樣ナ者ニ付
  キマシテ法規ノ伸縮ヲ更ニ刑事的ナ立場カ
  ラモ伸縮スルト云フ意味ニ於キマシテ、公
  務ニ從事スル職員ハ法令ニ依リマセヌデモ
  尙ホ公務員ト看做ス、斯樣ナ趣旨デゴザイ
  マス
  ソレカラ第十八條ノ七ノ「他ノ法令ニ於
  テ法令ニ依ル公務ニ從事スル職員ト看做サ
  ルル者」ト云フノハ、之ヲ例示シマスト、臨
  時資金調整法ノ第五條、外國爲替管理法ノ
  第六條、日本銀行法ノ第十九條、產業設備
  營團法ノ第十六條、交易營團法ノ第二十
  條、日本證劵取引所法ノ第一一十條、戰時金
  融金庫法ノ第十八條、或ハ木船保險法ノ第
  十條等ニ於キマシテ、ソレ等ノ統制團體ノ
  役職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ法令ニ依ツテ
  公務ニ從事スル職員ト看做スト云フ規定ガ
  設ケラレテ居ルノデアリマス、此ノ第十八
  條ノ七ハ、卽チソレ等ノ看做サルル者ニ對
  シマシテハ此ノ戰時刑事特別法ニ規定致サ
  ントスル瀆職ノ刑ヲ以テセズニ、暫ク現行
  刑法ノ百九十七條以下ノ瀆職罪ニ對スル刑
  罰ヲ以テ一應臨ム、斯樣ナ趣旨デゴザイ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=109

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• 110・仲井間宗一

  ○仲井間委員　尙ホ十八條ノ六ノ詰リ法令
  ニ依ラザル者ノ公務ニ從事スル者ト、法令
  ニ依ツテ公務ニ從事スル職員ト、ソコニ法
  ノ適用ヲ區別シテ居ルヤウデスガ、モウ少
  シソレヲハツキリ伺ツテ置キタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=110

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• 111・池田克

  ○池田政府委員　第十八條ノ六ニ規定致シ
  テアリマスルモノハ、是ハ本來ノ公務ニ從
  事シテ居ル職員デゴザイマス、所ガ第十八
  條ノ七ノ方ハ法律ニ依ツテ、罰則ノ適用ニ
  付テダケ公務ニ從事スル職員ト看做サレル
  譯デゴザイマス、詰リ其ノ組織ナリ、或
  訓練ナリ、或ハ其ノ監督、色々ナ點カラ見
  マシテ、他ノ法令ニ依ツテ公務ニ從事スル
  職員ト看做サレル者ニ付キマシテハ、本來
  ノ公務員ト異ナリ、此ノ戰時刑事特別法ノ
  重罰ヲ以テ臨ム程ノ必要ガナイト考ヘル次
  第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=111

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• 112・仲井間宗一

  ○仲井間委員　サウスルト此ノ二ツハ、十
  八條ノ七ハ既ニ從來公務ニ從事スル職員ト
  看做サレタモノデアツテ、十八條ノ六ハ此
  ノ法律デ初メテ公務員ト看做サレル、斯ウ
  云フ譯デアリマスカ、其ノ區別ガハツキリ
  シナイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=112

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• 113・池田克

  ○池田政府委員　十八條ノ六ノ方ハ形式的
  ニ見マスレバ本改正案ニ依ツテ公務員トナ
  ツタノデゴザイマスケレドモ、是ハモウ實
  質的ニ見マシテ純粹ノ公務員ト全然變リハ
  ナイノデゴザイマス

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• 114・仲井間宗一

  ○仲井間委員　御說明デ能ク分リマシタガ、
  條文デ見ルト十八條ノ七ニ「法令ニ依リ公
  務ニ從事スル職員」トアリマスカラ全然區
  別ガナイヤウニ思フノデアリマス、ソコデ
  斯ウ云フ場合ハドウデアリマスカ、衆議院
  議員ハ公務員ニ間違ヒハアリマセヌガ、各
  省委員トシテ任命サレタ者ハ、其ノ各省ト
  ノ關係ニ付テハドウ云フ身分關係ニナル譯
  デアリマセウカ

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• 115・池田克

  ○池田政府委員　各省ノ委員ハ御承知デモ
  ゴザイマス通リニ、官制ニ依ツテ設置サレ
  テ居ルノデアリマス、詰リ法令ニ依ツテ公
  務ニ從事スル職員ニナリマス、是ハ從來十
  八條ノ六トハ無關係デアリマシテ、現行刑
  法ニ依ツテ旣ニサウデアリマス、但シ第十
  八條ノ三ノ新シイ斡旋行爲ニ關シマスル規
  定、此ノ官公署ノ職員ニハ各省ノ委員ハ包
  含サレナイノデゴザイマス

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• 116・作田高太郎

  ○作田委員長　懇談ノ爲ニ暫時休憩致シマス
  午後三時二十五分休憩
  午後五時十八分開議

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• 117・作田高太郎

  ○作田委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マス-中井一夫君

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• 118・中井一夫

  ○中井(一)委員　今朝來、本案ニ付キマシテ
  ハ、同僚議員諸君カラ多種多面ノ問題ニ付
  テ殘リナク質問ガアリ、政府亦之ニ對シテ
  御答辯ガアツタノデゴザイマス、私個人ト致
  シマシテハ此ノ法案ニ付テ尙ホ御尋ネヲシ
  テ、其ノ疑ヒヲ質シタイコトモアルノデア
  リマスケレドモ、委員會ノ空氣ヲ察シマシ
  テ之ヲ取止メルコトニ致シ、此ノ際委員會
  ノ各位ノ總意ヲ代表致シマシテ、數點ノ問
  題ニ付テ御尋ネヲ致シ、政府ノ御明答ヲ得
  タイト思フノデゴザイマス
  第一ノ問題ハ、御提案ニナリマシタ特別
  法ニ關シテ委員會ノ各位ノ懸念セラレル所
  ハ、三審制度ヲ廢シテ二審制度ニシ、又略
  式命令手續ヲ擴張シテ體刑ニマデ之ヲ延バ
  サレル、其ノ結果裁判所ニ於ケル事務ハ極
  メテ簡單ニナリ簡素化サレルコトニハナリ
  マセウケレドモ、大キナ問題ガ殘リハセヌ
  カ、卽チ裁判ガ拙速ニナツテ國民ハ裁判ヲ
  信賴シナクナリ、怨嗟ノ聲到ル處ニ滿ツル
  ノデハナイカ、斯クナリマシタ場合、玆
  國家ノ爲ニ由々シキ問題ガ起リハセヌカ、
  吾々ハ君國ノ時局重大デアルコトヲ深ク思
  ヒマスルガ故ニコソ、今日國民ノ最モ信賴
  ノ厚イ此ノ裁判事務、裁判所、延イテハ司
  法省ノ諸關係、是等ダケハ此ノ際飽クマデ
  モ之ヲ堅持シテ、如何ナル問題ガアツテモ、
  裁判所儼トシテ居ル限リ君國ハ安泰ナノダ
  ト云フ氣持ニ致シタイ、本案ノ目的ハソレ
  ニ適合スルデアラウカト云フ一點ニ歸スル
  ノデアリマス、政府ノ御答辯ニ依リマスレ
  バ、運營ノ上ニ付テ右樣ノ心配ナキヲ期ス
  ルトノ御說明デゴザイマシタ、旣ニ此ノ劃
  期的ナル大改正ヲナサツタ以上、司法當局
  ノ責任タルヤ極メテ重大デアリマス、本案
  提案サレマシテ以來、重大ナル部分ニ於テ修
  正意見ハ議會內ニ充チ滿チマシタコトモ、
  私ハ決シテ無理カラヌコトデアリ、此ノ議
  論出デテ初メテ議會ノ、議員ノ職責モ全ウ
  シ得ラレルモノデハナイカトサヘ考ヘタ程
  デアリマス、重ネテ申上ゲマス、此ノ法案
  ヲ假ニ此ノ議會ニ於テ無事無修正ニテ通過
  シタリトテ、ソレハ司法當局ガ責任ヲ以テ
  其ノ過チナキコトヲ期スルトノ御言明ヲ信
  ジタカラデアリマス、隨テ當局ノ此ノ運營
  ニ於ケル責任タルヤ極メテ重大デアルト云
  フコトヲ重ネテ申上ゲテ置キタイノデアリ
  やっ、就キマシテハ具體的ナ問題ニ入ツテ
  四、五點御尋ネヲ致シマスガ、其ノ第一ハ
  誤リナキヲ期スル運營上ノ問題デアリマス、
  大臣初メ司法當局ノ方々ハ、責任ヲ以テ御
  言明ニナリマシタガ、此ノ御言明ヲ如何ニ
  シテ實現スルコトガ出來ルカト云フコトニ
  付テノ御尋ネナノデアリマス、ソコデ其ノ
  前提トシテ御尋ネ致シタイノハ、曩ノ第七
  十九帝國議會ニ於テ戰時特別法、裁判所構
  成法ノ戰時特例、戰時民刑事特別法、裁判
  所構成法ノ戰時特例等ノ御提案ガアリマシ
  タ時ニ、同僚原惣兵衞君カラ數箇ノ事項ヲ
  擧ゲテ御質問ヲ致シテ居リマシテ、之ニ對
  シテ大臣竝ニ當路ノ方々カラ御答辯ノアツ
  タコトガ速記錄ニ於テ明カニナツテ居リマ
  ス、大臣ノ御答ヘト致シマシテ斯ウ申シテ
  居ラレマス「第七ノ御尋ネハ略式命令ニ對
  スル正式裁判ノ申立ヲ妨ゲ又ハ申立アリタ
  ル場合之ガ取下ヲ勸告シ若ハ辯護權ノ制限
  ヲ爲スガ如キ事例アリ、斯ノ如キコトヲ絕
  滅スル樣之ガ運用ニ付具體策ヲ示サレ度シ
  ト云フ御尋ネデアツタト存ジマス、之ニ對
  シテ御答ヘ申上ゲマス、是亦御趣旨ハ全ク御
  同感デアリマシテ、訓令モ致シマセウシ、
  又司法官、會同其ノ他凡ユル機會ヲ利用致シ
  マシテ、其ノ徹底ヲ圖ル覺悟デアリマス」
  斯樣ニ申シテ居ラレルノデアリマスガ、之
  ニ基ク司法省ノ御處置ハ其ノ後如何ニナリ
  マシタカ、之ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス

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• 119・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今中井サンヨリ本法案
  ガ通過シタ後ニ於テハ、此ノ運營ニ付テ非
  常ニ司法部ノ責任ノ重キコトヲ仰セニナリ
  マシタガ、私モ其ノ點ハ痛感ヲ致シテ居リ
  マス、非常ニ重イ責任ヲ負擔スルコトヲ覺
  悟致シテ居リマス、又最後ニ七十九議會ニ
  於テ原代議士ヨリ色々御質問ガアリマシテ、
  御答へ致シマシタコトハ、其ノ後機會アル
  每ニ部内職員ニ通達致シマシテ、出來ルダ
  ケ努力ヲ致シテ居リマス

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• 120・中井一夫

  ○中井(一)委員　速記錄ニ依リマスト、只
  今ノ大臣ノ御答辯ノ次ニ斯樣ナ御答辯ガア
  リマス「第八ノ御質問ハ戰時刑事特別法第
  二十條但書ノ運用ニ付已ムコトヲ得ザル事
  由ト許可トノ點ニ付裁判ノ審理遲延ノ爲ナ
  ラズ又其ノ恐レナキ場合ニハ原則トシテ巳
  ムコトヲ得ザル事由アリトシテ許可セラル
  ル樣訓令又ハ司法官會同等ニテ明白ニスル
  意思ナキヤト云フ御質問デアツタト思ヒマ
  ス、之ニ對シテ御答ヘ申上ゲマス、全然御
  趣旨ノ通リデアリマシテ、此ノ巳ムコトヲ
  得ザルノ字句ハ決シテ狹義ニ解スベキモノ
  デハナイノデアリマス、右立案ノ趣旨ハ是
  亦凡ユル機會ニ部內ニ十分ノ徹底ヲ圖ツテ
  參リタイト存ジマス」斯樣ニゴザイマシテ、
  此ノ御答辯ニ付キマシテハ是ト同趣旨ノ
  御答辯ガ池田政府委員ヨリ、內藤正剛委員
  ノ質問ニ對シテモアルコトガ速記錄ノ上デ
  明カトナツテ居リマス、就キマシテハ御伺
  ヒ致シタイコトハ、先程御尋ネ致シマシタ
  問題、竝ニ只今御尋ネ致シマシタ問題ニ付
  テ、其ノ御訓令等ガ部下判檢事諸君ニ對シテ
  徹底ヲ致シテ居ルノデアリマセウカドウカ、
  此ノコトヲ承ツテ置キタイト存ジマス

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• 121・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今御尋ネノアリマシタ
  戰時刑事特別法第二十條但書ノ規定ニ關シ
  テ、實際ノ運營ガ如何ニナツテ居ルカ、又
  ドウ云フヤウニ部內ニ徹底セシメテ居ルカ
  ト云フコトニ付テデアリマス、戰時刑事特
  別法第二十條但書ノ規定ノ解釋、運用ニ付
  キマシテハ、曩ニ御審議ヲ煩ハシマシタ際言
  明申上ゲタ趣旨ノ、一層ノ徹底ニハ努メテ
  居ル積リデアリマス、今日ニ於キマシテモ、
  機會アル每ニ此ノ趣旨ノコトハ部內ノ關係
  諸君ニハ能ク通達ハ致シテ居リマス、澤山
  ノコトデアリマスカラ、或ハ中ニ一、二ノ
  御滿足ノ行カナイヤウナ事實ガアルカモ知
  レマセヌガ、將來ニ於テモ出來ルダケ努力
  ヲ致シ、左樣ナコトノナイヤウニ努メル積
  リデゴザイマス、御諒承ヲ願ヒマス

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• 122・中井一夫

  ○中井(一)委員　先程略式命令ニ關シマシ
  テ、其ノ正式裁判ノ手續ヲナスコトノ抛棄
  ヲ關係官等ガ强要致シタ場合ニ於テハドウ
  スルカト云フ同僚諸君カラノ御尋ネニ對シ
  テ、政府委員ヨリハ、其ノ場合ニ於テハ、
  監督ノ責任者トシテノ立場ヨリシテ斷乎タ
  ル處置ニ及ブ、ト云フヤウナ趣旨ノ御言明
  ガゴザイマシタ、只今御尋ネ致シタ略式命
  令ノ問題竝ニ辯護人選任ニ關スル問題等ニ
  於テ、其ノ後上司ノ訓諭、訓令ニ聽カズ、
  其ノ趣旨ニ反スルガ如キ態度ヲ執ルヤウナ
  者ガ出テ參リハシナカツタデアリマセウ
  カ、私ハ責任ヲ以テ申上ゲルノデアリマス
  ガ、此ノ後ノ辯護人選定ノコトノ如キニ付
  キマシテハ、某區裁判所ニハ判事ガ十二人
  居ラレルサウデアリマス、其ノ中ノ八人ハ
  大臣御訓諭ノ通リ解釋シ實行ヲシテ居ラレ
  ルト云フコトデアリマスガ、殘リ四人ハ之
  ニ聽カレナイ、ソレガ爲ニ辯護人ノ諸君カ
  ラ其ノ態度ハ怪シカラヌデハナイカ、現
  大臣ハ議會ニ於テ是ダケノ言明ヲセラレタ
  ノミナラズ、其ノ後刑事局長ノ訓諭ニモ、
  殊ニ本月五、六日頃ノ東京控訴院管內判事
  ノ會議ニ於キマシテモ、大臣御訓諭通リノ
  決議ガアル、之ヲ突付ケテ、是デモ尙ホア
  ナタハ大臣ノ言ハレル所ニ聽カレナイノカ
  ト云フコトマデ申シタノデアリマスガ、ソ
  レニ對シテモ大臣ハ大臣、私ハ私、斷ジテ
  其ノ趣旨ニハ副ハレナイト云フコトデ、如
  何ニシテモ理不盡ニ、選任ヲ辭任致シマシ
  タ辯護人ノ再選任ニ付テ之ヲ許可セラレナ
  イト云フコトデアリマス、私斯ク申ス以上
  責任ヲ以テ申上ゲルノデアリマスガ、其ノ
  一人ノ判事ハ某判事デアリマシテ、外三人
  ガ今日尙ホ其ノ態度ヲ堅持シテ動カレヌト云
  フコトデアリマス、某區裁判所ハ帝都ノ眞
  中デ、大臣ノ膝下ニアル裁判所デアリマス、
  而モ此ノ帝都ノ區裁判所ニ於テ職務ヲ執
  ラレル判事ハ、司法部內ニ於ケル優秀ナル
  判事ナリト言ハナケレバナラナイノデハナ
  イカト思ヒマス、所謂練達堪能ノ士デナケ
  レバナラヌ、其ノ人ガ十二人ノ內四人マデモ
  此ノ決議ヲ突付ケラレテモ尙ホ之ニ從ハヌ
  ト云フコトヲ明言シテ憚ラヌト云フニ至リマ
  シテハ、大臣ノ御威信何處ニアルカ、私、
  此ノ問題コソハ、卽チ此ノ一例ヲ以テシテ
  モ、司法當局ガ本案ニ付テ將來過チナキヲ
  期スル、斷ジテ部下ヲシテ誤ラシメナイ、
  運營其ノ宜シキヲ期シマスト云フコトヲ御
  言明ニナリマシテモ、尙ホ議會ハ其ノ實現
  ヲ疑ハザルヲ得ナイ次第デアリマスヽ先ヅ
  以テ膝下ニ居ル此ノ四人ノ判事等ニ對シテ
  如何ナル處置ヲ以テ對セラレルノデゴザイ
  マスカ、御所見ヲ承ツテ置キタイト存ジマ
  ス

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• 123・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今十二人ノ判事ノ內八
  人ハ、私ガ曩ニ言明シタ通リニ解釋ヲ致シ
  テ裁判事務ヲ取扱ツテ居ル、內四人ハ其ノ
  解釋ニ從ツテ居ラヌト云フコトデ、サウ云フ
  詳シイ事實ハ今此處デ初メテ伺フノデアリ
  マス、能ク取調ベハ致シマス、併シ此ノ際申
  上ゲテ置キタイコトハ、判事ハ法律ニ依ツ
  テ裁判ヲスルノデアリマス、無論法律問題
  ニハ解釋ノ相違ト云フコトハ避ケラレヌコ
  トデアリマス、問題ノアルモノハ大審院ノ
  判例デ決マル、學說デ色々論議ヲセラレル
  ト云フヤウナコトハ隨分アル、私ハ私ノ解
  釋ヲ持ツテ居リマスルガ、私ノ解釋ヲ以テ
  判事ニ之ヲ强制スルト云フヤウナコトハ絕
  對ニ出來マセヌ、又ナスベキコトデナイト
  思ヒマス、唯私ハ私ノ解釋トシテ、其ノ解
  釋ガ正シイト云フコトヲ以テ、私ノ考ヘハ
  部下ニモ通達スルコトハ出來ル、併シ裁判
  ヲスル際ニ、斯樣ニ解釋ヲシテ裁判ヲシナ
  ケレバナラヌト云フヤウナ趣旨ニナリマス
  ルト、是ハ私ノ權限外ノコトト考ヘマス、是
  ハ普通ノ行政事務ト違フコトハ申上ゲルマ
  デモナイ、私ハ私ノ信ズル所ヲ十分徹底サ
  スコトニハ努メマスルガ、裁判官ノ職責ニ
  關シテ私ガ容喙スルガ如キコトハ、斷ジテ
  スベキコトデナイ、斯ウ云フヤウニ私ハ考
  ヘテ居リマス、併シ只今初メテサウ云フ詳シ
  イ事實ヲ伺ヒマシタ、ソレガ職務上ドウ云
  フヤウニ解釋スベキモノデアルカト云フコ
  トハ、調ベテ見タイト思ツテ居リマス、ソ
  レダケ御答ヘ申上ゲテ置キマス

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• 124・中井一夫

  ○中井(一)委員　固ヨリ私共ハ判事ノ職務
  ノ貴イコト、其ノ獨立ヲ尊バネバナラヌコ
  トハ能ク承知ヲ致シテ居ル、併シナガラ此
  ノ問題ノ如キハ、所謂裁判ニアラズシテ、
  其ノ手續ニ過ギヌノデアリマス、隨ヒマシ
  テ之ヲ大臣仰セノ如ク訓辭ノ通リニ解釋ス
  ルカセヌカハ、其ノ判事ノ國民ニ對スル親
  切ガアルカナイカト云フ問題ニ寧ロ歸スル
  ノデアリマス、サウ云フ問題マデモ判事獨
  立ダト云フノデ以テ、司法大臣ガ假ニモ此
  ノ帝國議會ニ於テ御言明ニナツタコトヲ裏
  切ツテ平氣デ居ルト云フノデハ、實ハ國民
  ハ心配ヲ致スノデアリマス、玆ニ御提案ニ
  ナリマシタ問題ニ付テモ强硬ナル反對議論
  アリ、强硬ナル修正意見ノ出マスルノモ實
  ハソレカラナノデアリマス、多ク論議ハ重
  ネマセヌ、直チニ御取調ベニナツテ、所謂
  運營ノ上デ然ルベキ御處斷ヲ賜ハラバ幸ヒ
  ト存ジマス
  ソコデ御尋ネヲ致シタイト思ヒマスルコ
  トハ、現ニ只今御耳ニ入レタヤナウ事實モ
  ゴザイマス、隨テ司法大臣ガ議會ニ於テ御
  言明ニナリ、嚴重ニ訓諭シテ本法案ノ運用
  上誤リナキヲ期スルト仰セラレテモ、ドコ
  マデソレガ實現シ得ルカ、私共本法案ニ付
  テ可否ヲ決心致シマスマデニハ、是非之ニ
  對シテ安心ノ行キ得ルヤウナ大臣ノ御用意
  ヲ承ラナケレバナラヌト信ズルノデアリマ
  ス、ソレニ付キマシテハ唯單ニ訓諭ヲスル
  トカ、一片ノ通牒デアルトカ云フヤウナモ
  ノデハ、俺ハソレハ知ラヌト云フヤウナ人
  ノ出テ參ルコトヲ心配致シマス、就キマシ
  テハ其ノ運營ヲ誤ナカラシムルヤウニ致ス、
  其ノ訓令ト申シマスカ、例ヘテ申シマスル
  ナラバ、司法警察官職務規範ト云フヤウナ
  モノガアリ、是ハ法律デモナケレバ命令デ
  モナイヤウデアリマスケレドモ、昭和十二
  年司法省刑事局訓令トシテ出サレタモノノ
  ヤウデアリマスルガ、ソレハチヤント六法
  全書等ニハ明カニ載セラレテ居ルノデアリ
  マス、誰モガ之ヲ讀ミ、之ヲ知ルコトガ出
  來マスルカラ、知ラヌト申ス譯ニハ參リマ
  セヌ、自然ニ所謂運用宜シキヲ得テ此ノ規
  範ニ從ウテ事務ガ執ラレルコトニ相成ルト
  思フノデアリマス、隨ヒマシテ此ノ度ノ問
  題殊ニ略式命令ノ正式裁判ヲ仰グト云フ
  コトニ付テ、其ノ抛棄ヲ强要シタリスルヤ
  ウナコトハ斷ジテ許サヌゾ、之ヲヤツタモ
  ノニ付テハ其ノ儘ニハ置カヌゾト云フ嚴重
  ナル御訓令ヲ是ト同ジヤウナ方法デ御出シ
  下サルコトガ一ツノ方法デハナイカト思フ
  ノデアリマス、更ニ具體的ニ申シマスルナ
  ラバ、當議院ノ本會議ニ於テ改メテ其ノ趣
  旨ヲ闡明セラレ、廣ク官報ヲ通ジテ國民ニ知
  ラシメル、官僚ニモ知ラセル、又週報等ニモ
  載セラレテ一般ニ周知セシメル、又只今申
  上ゲタ司法警察官職務規範ノ如キ、斯ウ云
  フモノト同樣ナ扱ヒヲセラレテ、六法全書
  等ニモ載セラレルヤウニ御盡力ヲ願フ、斯
  ウ云フヤウニ之ヲ上下各方面ニ知ラシメラ
  レルト云フコト位ダケハオヤリ下サラネバ、
  如何ニシテモ私ハ此ノ法案ニ付テハ多クノ
  疑ヒヲ殘サザルヲ得ヌノデアリマス、委員
  會ノ同僚各位モ同樣ノ御心持デアリマスル
  カラ、此ノ際如何ニシテ之ヲ具體的ニ現ハ
  スカト云フコトノ御明答ヲ得タイト存ジマ
  ス

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• 125・岩村通世

  ○岩村國務大臣　只今色々御意見ノゴザイ
  マシタ點ハ、略式命令ヲ交付スル場合ニ關
  シテデアラウト思ヒマス、其ノ場合ニハ刑
  事訴訟法第三百六十九條ノ規定ニ準ジマシ
  テ、正式裁判ノ申立期間及ビ申立書ヲ其ノ
  裁判所ニ差出ス旨ヲ被〓人ニ告知スルヤウ
  ニ致シタイト思ヒマス、尙ホ略式命令ニ關
  係致シマシテ、監獄ニ在ル被〓人ガ略式命
  令ニ對スル正式裁判ヲスル場合ニ如何ニス
  ルカト云フヤウナ御議論モゴザイマシタ、
  其ノ際正式裁判ノ申立ヲナスニハ、刑事訴
  訟法第三百九十一條、第三百九十二條ノ規
  定ニ準ジマシテ同日中ニ裁判所ニ申立書ヲ
  送付スルコトト致シタイト存ジマス、又正
  式裁判請求ノ抛棄ニ關シテモ色々御意見ガ
  ゴザイマシタ、正式裁判請求ノ抛棄書ヲ受
  理致シマス時ハ、其ノ本人ノ眞意ニ出タル
  ヤ否ヤヲ確カムルコトニ致シタイト存ジマ
  ス、右ハ全ク大部分檢事局或ハ刑務課ノ取
  扱デアリマス、是ハ私ノ方デ訓令ガ出來得
  ルノデアリマス、是ハ先程ノ裁判ニ關スル
  事務トハ大分違ヒマス、是ハ訓令致シマシ
  テ、一般ニ周知ヲスルヤウニ努メタイト思
  ヒマス、是ハ私御引受ヲ致シマス

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• 126・中井一夫

  ○中井(一)委員　御明答デ能ク了解致シマ
  シタ
  次ニ御伺ヒ致シタイコトハ、先程來委員
  諸君ノ心配セラレル所ヲ間違ヒナクヤルト
  云フコトノ爲ニハ、結局ハ裁判事務ニ携ハ
  ル所ノ其ノ人、特ニ判事ノ良イカ惡イカト
  云フコトニ依ツテ決マルノデアルカラ、裁
  判所ニハ練達堪能ノ判事ヲ配屬致シタイ、
  之ニ依ツテ三審制度ヲ二審制度ニ改メタ一
  ツノ缺陷ト申シマスカ、缺點ト申シマス
  カ、弱點ト申シマスカ、其ノ點ノ補强ト致
  シタイ、斯ウ云フ御話デゴザイマシテ、洵
  ニ然ルベキ御意見ト承ツタノデアリマスガ、
  ソレニ付キマシテハ、從來區裁判所ノ判事
  ト申シマスト、何分最下級ノ審級ノ判事ト
  云フコトニナリマスノデ、年ノ寄ツタ人ガ
  來ラレレバ、老朽ダ、若イ人ガ來ラレレバ
  若朽ダト云フヤウナ風ニ思ハレルコトガ慣
  例ノヤウデアリマス、若シサウ云フ感ジヲ
  與ヘマシテハ、折角ノ政府ノ意圖セラレル
  所モ其ノ目的ヲ達スルコトガ出來ヌヤウニ
  ナルト思ヒマスカラ、是ハ一ツ論ヨリ證據
  ト云フ所デ、區裁判所ノ判事ニモ立派ナ人
  ガ來タゾ、ダカラ其ノ昇進等ニ付テモ大審
  院ノ判事同樣ニ扱フゾト云フヤウナ所ヲ證
  據ヲ擧ゲテ御見セ願ヒタイト思フノデアリ
  マス、モツト具體的ニ申シマシタラ、裁判所
  ノ判事カラ一躍所長、檢事正デ出ラレルト
  云フヤウナ劃期的ナ、此ノ法案ニ相應シイ
  特段ナ人事行政ニ付テノ御處斷ヲ賜ハリタイ
  ノデアリマス、サウ致シマスナラバ立派ナ
  判事モ喜ンデ裁判所ノ判事ニモナツテ吳レ
  ラレマセウシ、又サウ云フ待遇ニナリマス
  下、其事務ヲ執ラレル上ニ付テモ必ズソレ
  ダケノ效果ガ現ハレルモノト確信ヲ致シマ
  ス、此ノ點ニ付テ大臣ノ御所見ヲ承リタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008310871X00219431028&spkNum=126

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• 127・岩村通世

  ○岩村國務大臣　御答ヲ致シマス、本案ガ
  幸ニ御協賛ヲ得テ法律トシテ實施セラレル
  場合ニ於キマシテハ、司法ノ適正、人權ノ
  尊重等ニ些ノ遺憾ナカラシメル爲メ判檢事
  ノ配置ニ付キマシテハ十分ノ努力ヲ傾注致
  シタイト思ヒマス
  尙ホ附加ヘテ申上ゲテ置キマスルガ、先
  程來色々御意見ノゴザイマシタ通リ、此ノ
  法案ガ實施ニナリマスルト、區裁判所ノ判
  事ノ職責ハ非常ニ多クナルト考ヘマス、其
  ノ點特ニ適材ノ配置ト云フコトニ付テハ十
  分ニ意ヲ用ヒル積リデアリマス、尙ホ現在
  地位カラ申シマスルト、區裁判所ノ判事ニ
  ハ勅任官ヲ置クコトハ出來ナイノデアリマ
  スガ、御承知ノ通リ官吏優遇ノ途ガ開カレ
  マシテ、本來ナラバ其ノ地位ニ於テハ區裁
  判所ノ判事ハ奏任デアリマスケレドモ、特
  ニ優遇ノ意味ヲ以チマシテ東京ノ區裁判所
  ノ監督判事ハ勅任ヲ以テ優遇スルコトニナ
  ツテ居リマス、外ニモ區裁判所ノ監督判事
  デ勅任ニナリマシタ者モゴザイマス、是ハ
  其ノ人ヲ優遇スル譯デアリマス、サウ云フ
  點ニモ一層注意ヲ致シマシテ、出來ルダケ
  立派ナ人物、人材ヲ區裁判所ニ配置スルト
  云フコトニ致マシテ、法案ノ實施ニ違算ナ
  キヲ期シタイト存ジマス

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• 128・中井一夫

  ○中井(一)委員　最後ニ御尋ネ致シタイト
  思ヒマスコトハ、戰時刑事特別法中改正法
  律案ノ中第十八條ノ三ナルベキ法文ノ解釋
  ニ付テデアリマス、同法文ニ依リマスト「戰時
  ニ際シ官公署ノ職員其ノ地位ヲ利用シ他ノ
  官公署ノ職員ノ職務ニ屬スル事項ニ關シ斡
  旋ヲ爲スコト又ハ幹旋ヲ爲シタルコトニ付不
  當ノ利益ヲ收受シ、要求シ又ハ約束シタルトキ
  ハ收賄ノ罪ト爲シ七年以下ノ懲役ニ處ス」トゴ
  ザイマス、此ノ法文中「官公署ノ職員」ト云フ
  コトハ從來未ダ見ナカツタ言葉デアルノ
  デアリマシテ、之ニ付テハ先程仲井間代議
  士ヨリ御質問ニナリマシテ、一應ノ御答辯
  モ承ツタノデアリマス、併シナガラ何分ニ
  モ初メテ出テ參リマシタ言葉デアリ、將來
  此ノ言葉ノ意義竝ニ其ノ範圍、ソレ等ニ付
  テ若シ立法ノ本旨ニ違フヤウナコトガアリ
  マシテハ相濟マヌ次第デアリマスノデ、此
  ノ機會ニ於キマシテ明確ニ且ツ詳細ニ、殊
  ニ具體的ナ事實ヲ御〓示下サレマシテ、將
  來ノ爲ニ備ヘルヤウニ致シテ置キタイト存
  ジマス、御明答ヲ願ヘレバ幸ヒデアリマス

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• 129・池田克

  ○池田政府委員　法文ノ解釋ノ問題ニ關聯
  ヲスルノデ、便宜私カラ御答ヘ申上ゲマ
  ス、案ノ第十八條ノ三ニアリマス「官公署
  ノ職員」ト申シマスノハ常時專ラ官署又
  ハ公署ニ於キマシテ公務ニ從事スル職員ヲ
  指稱スルノデゴザイマス、之ヲ具體的ニ擧
  指致シマスレバ、官吏、待遇官吏、公吏、
  官公署ノ囑託員、其ノ他俸給又ハ給料ヲ得
  テ公務ヲ奉ズル官公署ノ職員ヲ、右ノ職員
  ノ範圍ニ屬セシメマシテ處罰ノ對象ト致サ
  ントスル趣旨デゴザイマス、隨ヒマシテ官
  公署ニアラザル各種議會ノ議員ハ、何レモ
  官公署ノ職員デハゴザイマセヌ、又內閣委
  員及ビ各省委員職制ニ基キマシテ任命セ
  ラレマスル所ノ內閣委員及ビ各省委員モ亦、
  官公署ノ職員ノ範圍ニハ入ラナイノデゴザ
  イマス、更ニ又內閣總理大臣又ハ各省大臣
  ノ監督ノ下ニアリマスル各種委員會ノ委員
  モ、固ヨリ官公署ノ職員ノ範圍ニ入ラヌ趣
  旨デゴザイマス、右御答へ申上ゲマス

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• 130・中井一夫

  ○中井(一)委員　御說明ノ御趣旨ハ能ク了
  解ヲ致シマシタ、併シナガラ何分是ハ法律デ
  アリマスカラ、之ヲ解釋サレル判事等ニ若
  シ意義ガ他ノ意味ニ解釋サレルヤウナコト
  ガアリマシタラ一大事デアリマス、只今御
  說明ニナリマシタ趣旨ガ徹底致サヌト云フ
  コトニナリマシテハ大變ナコトデアリマス
  カラ、此ノ際只今ノ御說明ノ御趣旨ヲ徹底ス
  ル方策ニ付テ明カニシテ置イテ戴キタイト
  存ジマス、固ヨリ只今御尋ネヲ致シテ居ル
  コトハ、判事ノ解釋ヲ制限シロトカ、判事
  ノ解釋ニ指圖ヲセヨトカ云フヤウナ趣旨デ
  ハゴザイマセヌ、司法大臣トシテ職務上許
  サレ得ル、而モ有效適切ナル方策ガアレバ
  承リタイ、斯ウ云フ趣旨デアリマス

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• 131・岩村通世

  ○岩村國務大臣　此ノ用語ハ法文トシテハ
  餘リ見受ケナイノデゴザイマシテ、色々疑
  問ガアツテハイカヌト私モ考ヘテ居リマ
  ス、殊ニ檢事ガ起訴致サナケレバ裁判ト云
  フモノハ起ラヌ譯デアリマス、起訴ノ點ニ
  付テ十分愼重ノ態度ヲ持シタイト思ヒマ
  ス、尙ホ法律ノ解釋ハ是ハ一般ニ通達致シ
  マシテ、本日御答ヘヲ申上ゲマシタヤウナ
  趣旨デ此ノ法案ヲ起案シタモノデアルト云
  フコトモハツキリ傳ヘル積リデアリマス、
  何レ會同等モ暮ニハ院長、檢事長ノ會同ガ
  アリ、又一般會同デアルトカ、サウ云フ色々
  ノ機會ニ十分部內ニハ徹底サセル積リデア
  リマス、其ノ點ハドウカ御諒承ヲ願ヒマス

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• 132・中井一夫

  ○中井(一)委員　私ノ質問ハ終了致シマ
  シタ

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• 133・作田高太郎

  ○作田委員長　南君ノ警察官拘留ニ關スル
  內務大臣ニ對スル御質疑ガ殘ツテ居ルノデ
  アリマスガ、內務大臣ハ御出席ニナリマセ
  又、御諒承ヲ願ヒマス-是ニテ質疑ハ終
  了致シマシタ

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• 134・南鐵太郎

  ○南委員　私ハ內務大臣ダケニ對スル質問
  デハゴザイマセヌノデ、司法大臣ト共ニト
  云フコトデ留保シテ置イタノデアリマスカ
  ラ、ドウカ司法大臣ダケデモ結構デアリマ
  スカラ······後ハ記錄ヲ見テ貰フコトニ致シ
  マスカラ、其ノ意味デ質問ヲシタイト思マ
  ス、先程留保シテ置イタ質問デアリマス

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• 135・泉國三郎

  ○泉委員　委員長ハ只今質問終了シタト宣
  告サレタヤウデアリマスガ、其ノ宣〓ガ效
  力ガナイモノト致シマスレバ、此ノ程度ニ
  於テ質問終結ノ動議ヲ提出致シマス

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• 136・作田高太郎

  ○作田委員長　委員長ノ宣言ハ維持致シマ
  ス、暫時休憩致シマス
  午後五時五十八分休憩
  午後六時四十一分開議

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• 137・作田高太郎

  ○作田委員長　休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
  マン、南君カラ發言ヲ求メラレテ居リマ
  ス、此ノ際之ヲ許可シマス-南君

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• 138・南鐵太郎

  ○南委員　私ハ今囘ノ改正案ニ伴ヒマシテ
  區裁判所ノ權限ノ擴張ト、地方裁判所ニ於
  テモ警察ノ記錄ト云フモノガ證據ニナツテ
  來ルト云フコトガ非常ニ擴張セラレルモノ
  デゴザイマスカラ、ソレニ付キマシテハド
  ウシテモ警察ノ記錄ト云フモノヲ十分ニ信
  憑ノアルモノニシテ貰ヒタイ、ソレニ付テ
  ハ徒ラニ警察ニ於テ、法律ノ規定ニ據ラズ
  シテ無暗ニ人ヲ拘束シテ居ル、逮捕監禁ヲ
  法律ノ根據ニ據ラズシテヤツテ居ルト云フ
  コトニ付キマシテ、此ノ國家ノ重大時局ニ
  於テ斯ウ云フ違法ナコトガ續クト云フコト
  ハ困ルヂヤナイカ、ソレニ對シテ政府ノ御
  考ヘ方ガナイカト云フコトニ付テ、詳細ナ
  ル理由ヲ具シテ意見ヲ述ベテ御考ヘヲ御尋
  ネスル積リデ居リマシタ、ソレニ付キマシ
  テハ內務大臣ガ御列席下サルコトヲ適當デ
  アル、單ニ司法當局ダケニ御尋ネスルノハ
  足ラヌト思ヒマシテ、御遠慮シテ居ツタヤ
  ウナ譯デアリマシタガ、旣ニ時間モ經チマ
  シタ關係上、又折角御發言ヲ許サレマシタ
  ケレドモ、今日十分ナル發言ヲ續ケルト云
  フコトハ、結果ハモウ分ツテ居ルノデスカ
  ラ、別ノ機會ニ於テ所見ヲ述ベテ政府ノ御
  考ヘヲ尋ネルコトニ致シマシテ、今日ハ全
  然發言ヲ續ケナイコトニ致シマス、ドウカ
  一ツ御諒承願ヒマス

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• 139・作田高太郎

  ○作田委員長　是ヨリ裁判所構成法戰時特
  例中改正法律案、戰時民事特別法中改正法
  律案、戰時刑事特別法中改正法律案ノ三案
  ヲ一括シテ討論ニ付シマス-山本粂吉
  君

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• 140・山本粂吉

  ○山本(粂)委員　私ハ當委員會ニ付託セラ
  レタル以上ノ三案ニ對シマシテハ、時局柄
  最モ重大ナル法案ト思料致シマスケレド
  モ、司法當局ノ言明ヲ信賴シ、其ノ言明ガ
  實效ヲ發スルヤウ全キ御努力ヲ御願ヒ致シ
  マシテ、原案ニ贊成スル者デアリマス

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• 141・作田高太郎

  ○作田委員長　討論ハ是ニテ終局致シマシ
  ク、是ヨリ採決ヲ致シマス、三案トモ原案
  贊成ニ御異議ハアリマセヌカ
  〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

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• 142・作田高太郎

  ○作田委員長　御異議ナイモノト認メマ
  ス、仍テ三案ハ原案ノ通リ可決致シマシタ
  (拍手)
  一言御挨拶ヲ申上ゲマス、會期切迫ノ折
  柄ニ拘ラズ委員各位ニハ非常ナル御努力デ
  本案ノ檢討ニ從事致サレマシタ、委員長ト
  シテ洵ニ感謝ニ堪ヘナイ次第デアリマス、
  オ蔭デ圓滿ニ終局致シマシタ、玆ニ謹ンデ
  御禮ヲ申上ゲマス(拍手)是ニテ散會致シマ
  ス
  午後六時四十五分散會

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