1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十九年二月一日(火曜日)午前十時九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=0
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001・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) ソレデハ開會
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=1
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002・山岡萬之助
○山岡萬之助君 私ハ大臣ニ對シテ一二點
伺ヒマシテ、後ハ政府委員ニ伺ヒタイト思
フノデスガ、岡部文相御就任以來非常ニ文
〓ノ方面ニ面倒ナ問題ガアッテ御心勞ニ相
成ッタ點ニ付テハ、外ノ諸君ト共ニ深ク敬
意ヲ表スル者デアリマス、昨日ノ質問應答
デ本案ニ關スル〓育上ノ大體ノコトハ濟ン
デ居リマスルノデ、私ハ法案自體ニ付テ御
尋ヲスルノデアリマス、今日財團法人デ此
ノ事業ヲ行ッテ居ラレルノデアリマシテ、ソ
レニ對スル資金トカ、之ニ牽聯スル事柄ハ
法律等ヲ以テシマスルト、長イ問題ニナリ
マスルカラ、基礎ハ强固ニナルト思ヒマス
ガ、其ノ財團法人ト云フコトヲ離レテ、斯
ウ云フ別ナ法人ヲ作ル爲ニ、法律ヲ其ノ意
味ニ於テ御出シニナッタト云フ、サウ云フ必
要ハドウ云フ意味カラ御考ヘニナッタノデ
アルカ、言葉ヲ換ヘレバ、財團法人デモ立
派ニヤッテ行ケルノヂヤナイカ、資金ノ問題
位ハ法律ニ依ッテ適當ニヤッテ行ッタ方ガ宜
イ、コンナ風ナコトヲ考ヘラレマスノデ、
私ハ此ノ御提案ニナッテ居リマスノヲ見テ、法
人ヲ作ル爲ニ特ニ出來タヤウナモノデ、資
金ト云フ意味ヨリモソッチニ力ガ入ッテ居ル
ノヂヤナイカ、サウ云フ必要ガアリヤ否ヤ、
少シ疑フノデアリマスガ、ドウ云フ御考デ
御提出ニナリマシタカ、簡單デ宜シウゴザ
イマスカラ、御說明願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=2
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003・永井浩
○政府委員(永井浩君) 本法案制定ノ理由
ニ付テノ御尋デゴザイマス、只今御尋ノ中
ニモアリマシタ如クニ、資金ヲ確保致スト
云フ意味デ法案ガ出來テ居リマスコトハ、
確カニ其ノ一ツデアリマスト同時ニ、先般
大臣ヨリ御說明ガアリマシタ如クニ、本貸
費ハ五年据置、二十五年償還ト云フ長期ニ
亙リマシテノ關係デゴザイマスノデ、之ヲ
安ンジテ貸シ、借レルト云フコトニ於キマ
シテモ、法律ヲ以テ制定致シマスルコトガ
適當デアリマスルト存ゼラレマスルト共ニ、
斯ウシタ國家的ナ規模ニ依リマスルモノデ
アリマスルカラ、一層此ノ法案ヲ以テ、法
律ヲ以テ其ノ基礎付ケヲ確カニシテ行クト
云ッタヤウチ意圖カラ、斯ウシタ特別法ノ制
定ヲ御願ヒ致シテ居ルヤウナ次第デゴザイ
マス、尙是モ亦大臣御說明ノアリマシタコ
トヲ繰返スヤウデアリマスガ、本法案運用
ニ當リマシテノ貸費ニ付キマシテハ、無論
無利子ノ貸費ヲ致スモノデアリマシテ、此
ノ利子ニ付キマシテハ、國庫ヨリ每年之ガ
補助ヲ仰グコトニナリマシテ、初メテ運營
ノ全キヲ期スルコトニ相成ルノデアリマス
ノデ、サウシタ利子國庫補給ノ關係カラモ、
此ノ法律ヲ以テ長期ニ亙ル關係ヲ明定致シ
テ置キタイト云フコトモ法案制定ノ趣旨デ
ゴザイマスノデ、併セテ附加ヘテ置キタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=3
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004・山岡萬之助
○山岡萬之助君 御說明ニ依ッテ此ノ資金
ノ關係、從ッテ利子問題、サウ云フコトニハ
法律ヲ要シ、又左樣ニサレルコトガ適當ダ
ト思ヒマスガ、唯法人問題ニ付テ御尋ネシ
タノデアリマシテ、是カラ法人ノ本質ニ
付テ伺ヒタイ次第デアリマス、ソレハ何ノ
爲ニサウ云フ御尋ヲスル必要ガアルカト申
セバ、本案ノ組立ガ法人ノ本質カラ出テ來
ルノデアリマシテ、其ノ本質ガハッキリス
ルト、此ノ組立テタ各條項ガ適當デアルヤ
ト云フコトガ直チニ判斷出來ルヤウニナ
ルノデアリマス、又將來此ノ法律ヲ運用シ
テ法人ノ事業ヲ運營シテ行ク場面ニ於キマ
シテモ、法人ノ本質ガ明カニナッテ居ルコト
ガ私ハ必要ト考ヘマスノデ、玆ニサウ云フ
御尋ヲ致ス次第デアリマス、近時公私ノ別
ト云フモノガ次第ニ近寄ッテ來タト申シマ
スカ、或ハ其ノ區別ガ撤廢サレタト申シマ
スカ、サウ云フ風ニ進ンデ行ク傾向デアリ
マス、ソコデ特別法ヲ以テ、特別ナ法人ガ
段々ト設ケラレテ居ルコトハ申ス迄モナイ
コトデアリマス、而シテ其ノ行フ事務ガ公
ノ性質ヲ有スル場面ニ於テハ、其ノ事務ヲ
行フモノヲ公務員トスル、是ガ今日立法ノ
一傾向デアルノデアリマス、本法案ニ依ル
法人ガ民法ノ公益法人デナイコトハ、案ノ
第九條ニ於テ、民法ノ規定ヲ準用スルト
特ニ定メテ居ルコトデ明カデアルト思ヒマ
ス、併シ法人ノ役員ニ對シテ民法ノ法人ニ
規定スルガ如クニ、其ノ職務違反ニ對シテ
過料ノ規定ヲ設ケテアルノデアリマス、斯
ウ云フ見方カラ行クト民法ノ公益法人ニ性
格ガ近イ、斯ウ云フ風ニ認メラレルノデア
リマス、併シ私ハ此ノ本案ニ規定致シマス
ル法人ノ事務ヲ檢討シテ見マシテ、其ノ事
務ハ公務デアルト考ヘルノデアリマス、從ツ
テ此ノ法人ハ公法人ニ近イモノデアッテ、外
ノ營團トカ或ハ金庫トカ云フガ如クニ、
私法人ニ近イモノデハナイ、斯樣ニ考ヘル
ノデアリマス、ソレガ卽チ私法人ニ近イカ、
公法人ニ近イカト云フ所ノ本質ガ決リマス
ルト、立法上ノ建前ガ決ッテ來ルト、斯ウ思ヒ
やっ、私ハ法律ノ理論ヲ少シク申上ゲマシ
タガ、サウ云フコトハ唯此ノ材料トシテ一應
申上ゲタダケデアリマシテ、此ノ法人ノ事
務ガ文部省所管ニ於テ極メテ育英ノ爲ニ重
要デアル、卽チ文部省行政事務トサウ離レ
タモノデナイ、斯ウ云フ風ニモ思ハレルノデ
アリマス、理論ハ一々承ル必要ハアリマセ
又、文部大臣ノソレニ對スル何カ御考ヲ率
直ニ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=4
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005・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 此ノ育英會
ニ於キマスル主體ハ法人ト云フコトニ規定
シテアルノデアリマスルガ、他ノ營團ト其
ノ事業、目的ニ於テハ違ヒマスルガ、法人
的ノ實質ニ於キマシテハ稍〓類似ノモノガア
リマスルノデ、從來營團ニ認メラレマシタ
此ノ程度ノ罰則ヲ、此ノ育英會ノ此ノ法律
ニモ設ケテ差支ナイト考ヘテ居ルノデアリ
マス、育英會ハ全面的ニ國家ノ補助ニ依ッテ
事業ヲ營ムモノデアリマスカラ、此ノ點カ
ラ申シマシテモ、監督上其ノ運營ノ適正ヲ
期スル見地カラ申シマシテモ、或程度ノ罰
則ヲ設ケテ置クト云フコトハ必要ナコトト
考ヘタ譯デアリマス、此ノ法人ノ性格ニ付
キマシテハ、無論私法人デハナイ、是ハ申ス
迄モアリマセヌガ、一種ノ特殊法人ト認メ
テ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=5
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006・山岡萬之助
○山岡萬之助君 御說明ニ依リマシテ、大
體私ノ考フル所ト合ヒ、了解致シマシタガ、
唯進ンデ今一ツ御尋ネ致シマスガ、私法
人デナイト云フ御話デアリマスルガ、私法
人デナイコトハ確カデアリマスルガ、ドッチ
カト云フト寧ロ公法人ニ近イモノデアルト
云フコトヲ御認メニナルヤ否ヤ、サウ云フ
風ニナッテ來ルト、私ハ此ノ罰則ヲ設ケルコ
トガ適當デナイト、斯ウ云フ風ナ議論ニナ
ルノデアリマスルガ、併シ此ノ法案自體ニ
對シテ今日彼此レ申ス考ヘハナイノデ、寧
ロ此ノ運營ヲシテ正シイ道へ導キタイ、斯
樣ニ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、其ノ點
ヲ今一度大臣ニ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=6
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007・永井浩
○政府委員(永井浩君) 本育英會ノ法人的
ナ性格ニ付テノ御尋デゴザイマシタガ、只
今大臣ヨリモ御答ガアリマシタケレドモ、
私ヨリモ補足的ニ御答へ申上ゲタイト思ヒ
マス、先ヅ最初ニ本會ガ法人ト申シマスノハ
財團法人的ナモノナリヤ、社團法人的ナモ
ノナリヤト云フ問題ガアルト思ヒマス、固
ヨリ是ハ特別法ニ依ル特殊法人デハアリマ
スガ、其ノ實質ガ財團的ナリヤ社團的ナリ
ヤト云フコトニ付キマシテハ、是亦相當疑
問ガ感ゼラレル所デアラウト思フノデアリ
マリ、ソレデソレニ對シマシテハ財團法人
ニ類スルモノト云フコトニ考ヘテ居ルノデ
アリマス、併シナガラ本法人ハ其ノ事業費
ノ殆ド大部分ヲ大藏省ノ預金部カラ借リル
ト云フコトニナッテ居リマスルノデ、ソレ
ダケデハ財團的ナ性格ガ誠ニ明確デゴザイ
マセヌノデ、ソレデ只今御尋デハゴザイマ
セヌデシタカモ存ジマセヌガ、第三條ニ「大
日本育英會ノ基金ハ百萬圓トス但シ主務大
臣ノ認可ヲ受ケ之ヲ增加スルコトヲ得、政
府ハ大日本育英會ノ基金トシテ百萬圓ヲ支
出スベシ」ト云フ規定ヲ置キマシタ所以ノモ
ノハ、此ノ百萬圓ヲ基金トシテ政府ガ出ス
ト云フコトニ依ッテ、先程申シマシタ財團的
性格ト云フコトガ、多少是ナクシテハ曖昧
デアルカモ分ラナイ所ヲ、之ヲ支出スルコ
トニ依ッテ財團的ナ性格ヲ明確ナラシメタノ
デアリマス、重ネテ申上ゲマスガ、此ノ點
ニ於キマシテハ、本法人ハ財團法人的ナル
特別法人デアルト云フ性格ヲ三條デ明確ニ
致シマシタ次第デアリマス、次ニ本法人ハ
私法人ナリヤ公法人ナリヤト云フコトデゴ
ザイマスガ、是ハ只今御意見ノ通リニ、私
法人的ナモノデハナイコトハ、事業ノ性質
カラ申シマシテ明カナモノダト思ヒマス、
矢張リ是ハ公法人的ナルモノデアルト云フ
コトハ明確ニ申セルコトダト思ヒマス、唯
ソレニ付テハドウシテ、此ノ罰則等ニ付テ
比較的細カニ規定シテアルノデ、是デハ如
何ニモ私法人的ノ色彩ガ强イデハナイカト
云フ御尋ノヤウニ伺フノデアリマスガ、此
處ニ揭ゲマシタル諸條項ト云フモノハ、是
ハ他ノ特別法ニ依ル各種ノ營團、是等モ公
法人的ナル色彩ノ濃厚デアリマスルモノデ
アリマスガ、斯ウシタ各種ノ營團法ニ於キ
マシテ規定致サレテ居リマスル程度ノ罰則
ノ規定ヲ此處ニ大體持ッテ參ッタト云フノニ
過ギナイノデアリマス、尙只今大臣カラモ
御話ガアリマシタ如クニ、是ハ公法人的デ
アルトハ申シナガラ、事業ノ性質ガ只今申
上ゲマシタヤウニ、全面的ニ國家ノ補助ニ
依ッテ經營サレルノデアリ、而モ是ハ相當長
期ニ亙ッテノ金錢ノ貸借等ヲ取扱フモノデア
リマスルノデ、是ハ矢張リ此ノ程度ノ罰則
ヲ置イテ置キマスルト云フコトガ、斯ウシ
タ事業ノ監督上必要ナモノデハナイカト思
ハレルノデゴザイマス、繰返シテ簡單ニ申
上ゲマスレバ、無論公法人的ナル法人デハ
ゴザイマスガ、事柄ノ性質上、他ノ特殊法
ニ依ル營團ト同樣ノ罰則ノ規定ヲ此處ニモ
準用シタト云フニ過ギナイ次第デゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=7
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008・山岡萬之助
○山岡萬之助君 御說明ニ依リマシテ、此
ノ罰則規定ヲ設ケテ役員ニ對スル職務違反
ヲ規律シテ居リマスル必要ハ、營團等ニ傚ッタ
ト云フ御說明デアルノデ、一應ハサウ云フ
風ニ承リマスガ、私ハ、公法人ニ近イモノ
デアル以上ハ斯樣ナ規定ハ要ラヌ、斯ウ考
ヘルノデアリマス、私法人ハ第一其ノ役員
ヲ自分デ自由ニ作リ上ゲルノデアリマス、
ソレデアリマスルカラ制裁ヲ以テ臨ミマセ
ヌ、其ノ行動ニ對シテ公益上必要ナコト
ヲ强制出來ナイ、公法人ニ近イモノデアリ
マスレバ、任命ハ公ニ行クノガ當リ前デア
リマス、ソコデ本案ニ於テハ、主務大臣ニ
於テ會長以下役員ヲ任命スル、斯ウナッテ來
ルノデアリマス、デ私法人ハサウハ出來テ
居ラヌ、私法人自ラノ機關ニ依ッテ役員ヲ作
ルノデアリマス、ダカラシテ其ノ行動ニ對
シテ過料ヲ以テ或重要ナ行爲ハ强制シナケ
レバナラヌ、斯ウ云フコトニナルノデアリ
やっ、ダカラシテ本質ガ公法人ニ近イ近時
ノ營團其ノ他ノモノガ私法人ニ近イモノナ
ラバアレデ宜シイノデアリマス、アレハ
丁度私法人ト公法人ノ間ヘ出來タモノデアリ
マスカラ、ドッチヘ近イカニ依ッテ過料ノ罰
則ヲ以テ臨ムカ臨マヌカノ差ガ出來ナケレ
バナラヌ、ソレガ千遍一律、今日迄ノ立法
ハ變ッテ居ラヌ、私ハ斯クノ如ク育英ト云フ
國家ノ公ナ、何ト申シテ宜イカ、崇高ナ事
業ヲ行フ場合ニ於テハ、唯金錢ヲ貸借スル
ト云フヤウナ法人ト同ジヤウナ形ヲ採ルコ
トヲ誠ニ適當ナラズ、斯ク考ヘルノデアリ
マスカラ、玆ニ之ヲ申スノデアリマス、而
シテ本案ノ法人ハ、官ノ任命デアリ、又其
ノ職務違反ガアッタ時ハ解職ガ出來ルヤウ
ニナッテ居リマス、結局法人ヲ取締ルト云フ
コトハ任命ノ場合、役員任命、役員ノ解
職而シテ過料、斯ウ云フ風ニナッテ、過料
ハ役員ノ任命モ解職モ出來ナイ場合ニ、是
ハ必要ナノデ、役員ノ解職、任命ヲ持ッテ居ッ
テ、尙過料ヲ持ッテ居ルコトハ、實際ニ於
テ本質的デナイノデアリマス、併シソレハ
ソレ迄ニ承ッテ置クノデアリマスガ、唯玆ニ
必要ナリトシテモ、如何ニモ檢討ガ足ラナ
カッタト思ヒマスルノハ、二十九條ノ第一デ、
本法ニ依リ主務大臣ノ認可ヲ受クベキ場
合ニ認可ヲ受ケナカッタ、此ノ條文、ソレ
カラ登記ヲ怠ッタ、或ハ二十條ノ規定ニ依ル
書類ヲ提出シナカッタ、斯ウ云フコト位ハ、
過料デ一條位一番終ヒノ方へ書イテ置クト
云フコトハ、サウ法人ノ本質ヲ惡クスルコ
トハナク、法案ノ體裁カラ言ッテモ、此ノ崇
高ナ事業ヲ害サナイモノト思ヒマスガ、併
シ罰則ト云フモノヲ設ケテ、斯クノ如クス
ルニ至ッテハ、是ハ私ハ檢討ガ足ラヌト思ヒ
マス、卽チ二十九條ノ二以下「本法ニ規定セ
ザル業務ヲ營ミタルトキ」、一體斯ノ如キコ
トガアリ得ルカ、又十九條ノ「規定ニ違反シ
業務上ノ餘裕金ヲ運用シタルトキ」、サウ云
フコトモ恐ラク此ノ會長以下ノ立派ナ、文
部大臣御自身ガ會長ニナッテモ宜イ位ノ會
デアリマスカラ、ソレガ資金ヲ運營スルト、
サウ云フコトハ私ハ絕對ニアリ得ナイト思
フノデス、デ主務大臣ノ監督上ノ命令處分
ニ違反スル、是ハ場合ニ依レバナイト言ヘ
ナイガ、是コソ監督權ニ依ッテ行クベキモノ
デアリマス、サウ云フ次第デアリマスカラ、
要スルニ罰則ヲ置クニ致シマシテモ、モウ
少シ此ノ崇高ナル事業ノ爲ニ御檢討ニナッ
タラ宜カッタラウト思フノデスガ、ソコラ
ノ點ニ付テ立案ノ際ニ何カ御〓究ガアッタ
ラバ、其ノ經過ヲ承ッテ見タイト思フノデア
リマス、ソレカラ尙チヨット失禮デスガ、附
加ヘマスガ、殊ニ是迄申上ゲタヤウニ、〓
育ニ關係ノアリマスル法人デアリマスル以
上、文〓ノ所管ニ於キマスル者ガ、斯ウ云ツ
タ所カラ相當遠ザカルコトガ適當ナリト考
ヘマスルガ、ソレ等ニ關シテ一應御意見ヲ
承ッテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=8
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009・永井浩
○政府委員(永井浩君) 御所見ノ所ハ誠ニ
御尤モダト思フノデアリマスガ、本罰則ノ
規定ヲ置キマシタ所以ニ付キマシテハ、先、
程申上ゲタ通リデゴザイマス、只今此ノ大
日本育英會ガ發足致シマスル際ニ當リマシ
テ、無論御話ノ如クニ、斯ウシタ罰則ノ規
定ハ無用デアルカノ如クニ實ハ感ゼラレル
ノデアリマス、併シ本會ニ於キマシテハ、
實ハ貸費ニ要スル金額ヲ國庫カラ補助ヲ受
ケマシテ事業ヲ開始致スノデゴザイマス
ガ、其ノ他ニ寄附金等ガ相當アルコトヲ豫
想サレモ致スノデアリマス、事實可ナリ方
方カラ寄附金ノ募集ノ申込ナンカガゴザイ
マシテ、今後ニ亙リマシテハ、此ノ寄附金
等モ、豫想デハゴザイマスルケレドモ、或
ハ相當多額ノモノガ入ッテ參ルト云フヤウナ
事態ニナリハシナイカト思ハレルノデアリマ
ス、收入ノ方ニ於キマシテモサウ云フコト
デアリマスルシ、ソレカラ又事業ノ方ニ於
キマシテモ此ノ十六條ニ規定シテアルノデ
アリマスガ、無論此ノ主體ハ學資ノ貸與デ
ゴザイマシテ、之ヲ中心ニ動ク所ニ、其ノ
點ニ付テ國家ガ補助致サムトスルノデアリ
マスルガ、只今申シマシタヤウニ、此ノ寄
附金等ガ集ルト云フヤウナ場合ニ於キシマ
テ、段々奬學生ノ生活狀況等モ色々考ヘテ
見ナケレバナラヌ、例ヘバ學資ハ、大學生
ハ平均年八百圓ト云フコトニ考ヘテ居リマ
スケレドモ、現在ノ東京ナラバ東京ノ生活ニ
於キマシテハ、ナカ〓〓宿舍ガ得ラレナイ、
又食糧モ得ラレナイ、普通ノ下宿屋デ生活
ヲシヨウト思ヒマシテモ、可ナリ金ガ掛ッ
テ、到底此ノ年八百圓デハ賄ヒ切レナイト
云フヤウナ事態ガ出テ來ルト云ッタヤ。ウナ、
場合ニ依リマシテハ、サウ云フヤウナ急場
ノモノヲ救フ爲ニ寄宿舍等ノ設備モ、資金、
寄附金等ガ相當額集レバ考ヘテヤラナケレ
バナラヌ、又サウ云フコトヲ考ヘルコトニ
依ッテ、此ノ本當ノ精神的ナ行動モ亦出來ル
ト云フヤウナ事態ニ到達スルカモ分ラナイ、
サウシテサウ云フヤウナ宿舍ヲヤリマスル
ト云フヤウナコトハ、十六條ノ第一項ノ第
三號ノ「修學上必要ナル施設ノ設置及經營」、
四號ニ「前各號ノ業務ニ附帶スル業務」ト
云フノデ、場合ニ依リマシテハ、サウ云ッタ
種類ノ事業ト云フモノヲソレカラソレヘト
ヤッテ行カナケレバナラヌ事態モ將來ニ亙ツ
テハ想像シ得ルト云フヤウナコトデアリマ
シテ、先程モ申シマシタヤウニ、無論本貸
費ノ運營ハ精神的ナモノデナケレバナラヌ
シ、其ノ所ヲ此ノ生命ニハ致シテ居リマス
ルケレドモ、何シロ扱フモノガ金錢デアリ、
ソレカラ其ノ事業等モ將來ニ亙ッテハ可ナ
リ擴ガリ得ル點モアルカモ分ラナイ、ソレ
等ノ場合ニ是ハ餘程、其ノ事柄ハ私法人的
デハ固ヨリゴザイマセヌガ、サウ云ッタ經營
ヲヤルト云ッタヤウナ部面モ出テ來ルカモ
分ラナイト云ッタヤウナコトヲ用心致シマ
シテ、主トシテハ、他ノ公法人的ナル營團ニ
關スル特殊法モ、之ト同樣ノ罰則ノ規定ヲ
持ッテ居リマスノデ、之ヲ此處ニ準用致シ
夕迄ノコトデゴザイマシテ、此ノ規定ガア
リマスカラト申シマシテ、本育英會ノ性格
ノ眞ニ精神的ナル本質ト云フモノヲ阻碍致
スト云フコトハナイヂヤナイカト云フ風ニ
考ヘテ、之ヲ規定致シタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=9
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010・山岡萬之助
○山岡萬之助君 只今ノ御說明デ能ク趣旨
ハ了解致シマシタ、結局此ノ規定ハサウ必
要デハナイガ、矢張リ將來ヲ考ヘテ置イタ、
卽チ他ノ營團ニ倣ッタモノデアルト云フ御
說明デアリマスガ、ドウカサウ云フ趣旨ニ
於テ、是等ノ運營ニ付テハ、罰則ヲ以テ此
ノ營團ノ役員ニ臨ムヤウナコトノナカラム
コトヲ、監督上御注意ヲ願ヒタイ、實ハ是
ガ衆議院ヲ通過シテ居リマスルノデ、此ノ
法案ニ彼此レ手ヲ入レルト云フヤウナコト
ハ寧ロアッテハナラヌト思ヒマス、私ハ
玆ニ此ノ過料規定ヲ彼此レ一々內容ニ入ッ
テノコトヲ申上ゲルコトハ避ケル次第デ
アリマス、唯運營上ニ於テ其ノ精神ノアル
所ヲ十分御酌ミ取リヲ願ヘバ、ソレデ宜シ
イノデアリマス、ソコデ大體論ハ此ノ程度
デアリマスルガ、私チヨット豫算委員ノ關
係ガアリマシテ、玆ニ細カイコトヲ四五點
デアリマスルガ、總テ竝ベ上ゲマシテ、政
府委員ノ御說明ヲ願ヒタイト思ヒマスカラ、
ドウゾ委員長ヨリ御許ヲ願ヒタイノデアリ
マス、其ノ第一點ハ、此ノ事業計畫調ニア
ル所ニ依リマスレバ、中學校ニ在學以上ノ
學徒ヲ目標ニ置イテ居ルヤウデアリマス、
私ハ之ヲ一ツモウ少シ、餘リ擴大ト云フ意
味ヂヤアリマセヌガ、幾ラカ擴大ニナリマ
スルガ、擴大シテ、有ラユル靑年ニ向ッテノ
機會均等ヲ得ルヤウニシ、サウシテ學術ノ
優秀ナル、例示スレバ、小學校ニ於ケル一
二番ニ居ッタト云フヤウナ者ガ、此ノ規定ニ
依ッテ援護セラレテ行ク、斯ウ云フコトニナ
ラムコトヲ希望スルモノデアリマス、中學
校ニ入ッタ者、ソレハ無論其ノ入學試驗ヲ受
ケテ相當ノ者デアリマスルガ、家庭ノ關係
デ中學ニモ行ケナイ者ガアリマス、ソレハ
無論少數ノモノデアリマセウガ、非常ナ優
秀ナ者ガ世ノ中ニ殘ルノデアリマス、サウ
云フ者ガ殘ルト云フコトハ誠ニ遺憾ナコト
デアリマス、强ク申セバ、天才的ナ者ヲ一
人デモ二人デモ救ヒ上ゲタラ大變國家ノ爲
ニナリマス、此ノ永遠ナ大キナ事業、ソコ
ラノ邊ガナカッタラ、矢張リ非常ニ缺ケテ
來ルト思ヒマス、中學迄行ケル者ト云フノ
ハドッチカト云ヘバ良イ方デアル、行ケ
ナイ者ノ中ニ珠ガアルノデアリマス、ソレヲ
拾ヒタイ、同時ニ靑年學校ト云フモノガ、
段々ト文部省ノ御方針デ充實セラレテ參リ
マシテ、將來ハ相當充實シテ來ルト思フノ
デアリマス、之ニ付テハ學校制度ノ問題ニ
モナリマスルガ、段々ト是等ノ人ニモ相當
ナ途ヲ以テ進路ヲ十分ニ開クヤウニ、サウ
シテマア開キ得ルモノト考ヘテ、是等ノ中
ニ矢張リ今申シタ意味ノ、優秀ナ者ガアル
ト思フノデアリマス、デアルカラサウ云フ
ヤウナ人ヲ之ニ於テ貸費シテ行クト云フコ
トニ付テ、將來御計畫ヲ願ヒタイト云フコ
トガ一ツデアリマス、結局此ノ資格ノ問題
ガ非常ニ大事デアリマシテ、啻ニ學業優秀ダ
ケデナク、此處ニモ書イテアル通リ「志操堅實」
ㄱ品行方正」トアリマシテ、要スルニ人格ガ立
派デナケレバナラヌト思ヒマス、國家ノ是
程ノ恩典ヲ受ケテ、其ノ債務ヲ喜ンデ一日
モ早ク辨償シ、否ヨリ以上ノ寄附ヲスル、
恩惠ヲ感ジテ······サウ云フヤウナ人ダケニ
目標ハナケレバナラヌ、又サウデアラウト
思フノデスガ御制定ノ案ノ趣旨ハ、人格ノ
惡イノガアッテ、イヤ國家カラ出シテ貰ッテ
居ルカラ、自分ノ都合ガ惡インダカラ辨償
シナイデ濟ムノダト云フヤウナコトガアッ
テハ此ノ財團ノ本質ヲ阻碍スルモノデアル、
サウ云フ意味ニ於テハ之ヲ公法人迄ズット
强メテ行ッテ、債務ヲ辨償シナケレバ支拂命
令ト同樣ナ效果ノアルモノヲ、主務大臣ノ
認可ヲ得テ出スト云フ所迄行クト私非常ニ
宜イト思ヒマス、ダカラ何處迄モ是ハ性質
ニ鑑ミテ强イ意味ノアル、而シテ慈悲ノア
ル、二ツノ意味ノアル法人デナケレバナラ
ヌ、サウ云ッタ意味デ此ノ資格ヲソコ迄將來
延長シテ戴キタイト思ヒマスガ、サウ云フ
コトニ關スル御所見ヲ伺ヒタイノガ一ツ、
ソレカラ次ハ此ノ規定自體ノ方面デ一ツ承
リタイ、第十六條ノ三デアリマスガ、「修學
上必要ナル施設ノ設置及經營」、是ハ先刻政
府委員ヨリ少シク觸レテ御答ヘニナッテ居
リマスガ、之ニ對スル資金ノコトハ別ニ外
ニモナイヤウデスガ、先刻ノ御說明デハ寄
附金モアルカラト云フ御話デアリマシタ、
是ト二ニ於ケル業務ノコトハドウ云フコト
ヲ大體ナサル御見込デアルカドウカノ御說
明ヲ願ヒタイ、ソレカラ今一ツハ此ノ三十
一條デアリマス、此ノ規定ハ何ガ故ニ置カ
レタカ、是モ大變私ノ遺憾トスル所デアリ
いや、 、大學令第二十一條ニハ大學ハ他ノモ
ノガ稱シテハナラヌトアリマスガ、別ニ罰
則ハナイ、唯附則ニ於テ過去ニ大學ト稱シ
タモノハ當分稱シテモ宜イトアルダケデ今
日迄別ニ支障ハナイ、斯ウ云フヤウナ規定
ハ決シテ必要ナモノデモナカラウト思フノ
デスガ、先刻ノ御答辯デ大抵盡キテ居リマ
スガ、序ナガラ以上ノ點ニ付テ政府委員ヨ
リ御說明ヲ願ッテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=10
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011・永井浩
○政府委員(永井浩君) 有ラユル靑年ニ向ッ
テ其ノ修學ノ機會均等ヲ與ヘル、殊ニ人格
優秀ナ者ニ對シテ與ヘヨウト云フ御示シデ
ゴザイマシテ、是ハ全ク御同感デゴザイマ
シテ、其ノ通リニ致シタイト思ッテ居リマス、
尙其ノ時ノ御話ニ、私聽キ間違デアッタカト
思ヒマスガ、中學校ノ生徒ニ對シマシテハ
無論貸費ヲ致スノデゴザイマシテ、之ニ付
キマシテハ中學校ニ入リマスル際ニ、從來
ナラバ中學校ニ入リ得ナカッタ者ヲ入レテ
ヤラウト云フコトガ、是ハ非常ニ大キナ眼
目デゴザイマス、マアドノ位ノ程度、入レ
バ入リ得ル所ノ優秀ナ國民學校ノ卒業者ガ、
經濟的理由ニ依ッテドノ程度中學校ニ對ス
ル進學ヲ阻マレタカト云フ見當ハナカ〓〓
附カナイノデアリマス、色々ナ點カラ考察
致シマシテ、是ハ可ナリノ數ガアルト云フ
ヤウナ風ニ思ッテ居リマス、其ノ數ヲ色々ナ
意味カラ一應六千人ト云フ風ニ見當ヲ附ケ
マシテ、每年六千人ヅツ中學校ニ入ル者ニ
對シマシテ貸費スル計算デヤッテ居リマス、
尙靑年學校ニ在學スル生徒ニ付テノ御話デ
ゴザイマシタガ無論靑年學校ヲ出マシタ
者ニ於キマシテモ、他ノ色々ノ規定ノ許ス
所トナリマシテ、上級ノ學校ヘ入ルト云フ
場合ニ於キマシテハ、其ノ靑年學校ニ於キマ
シテ貸費ヲ受ケナイ、マア靑年學校ハ原則
トシテ自分ガ働キツヽ學校ニ通フ譯デアリ
マスカラ、或ハ貸費ヲ受ケナイ者ガ多イノ
デアルト思フノデアリマス、其ノ貸費ヲ受
ケナイ者デアリマシテモ、ソレガ他ノ規定
ノ許ス所トナリマシテ上級ノ學校ニ入リマ
シタナラバ、其ノ上級ノ學校カラ貸費ヲ致
スト云フコトハ是ハ當然デゴザイマス、ソ
レナラバ靑年學校ニ居リマス間ニ、其ノ靑
年學校ノ生徒ニ對シテ優秀ナ者ニ貸費ヲス
ルカドウカト云フ點ニ付テハ、是ハ只今モ
申シマシタヤウニ靑年學校ノ本質上カラ考ヘ
マシテ、是等ノ者ニ貸費ヲスルト云フコト
ニ付テハ、色々ト〓究ノ事柄ガアラウトハ
思ヒマスガ、何レニ致シマシテモ、本法案
ノ第一條ニアリマスル目的ニ副フモノデゴ
ザイマシタナラバ、決シテ窮屈ナ制限ヲ設
ケルト云フコトナシニ、可ナリ廣イ眼デ適
用致シマシテ、眞ニ國家有用ノ人材タル
ベキ素質ヲ有スル者ニ付キマシテハ、出來
ルナラバ漏レナク之ガ育成ニ當リタイト
云フ考デゴザイマス、御趣旨ニ付キマシテ
ハ、是ハ全ク御同感デアリ、其ノ取扱デ
今後參リタイト思ッテ居リマス、次ニ十六
條ニ付テノ御尋デゴザイマシタガ、是ハ先程
モ申シマシタ所デアリマスガ、十六條ノ第
一項第三號ノ「修學上必要ナル施設ノ設置及
經營」ト云ヒマスモノハ、先程モ申上ゲマシ
タヤウニ、寄宿舍ノ經營ト云フヤウナモノ
ガ殆ド主タルモノデアリマス、尙其ノ他之
ニ類似ノ事柄モアラウカト思ヒマスガ、目
下ノ處、先程モ御話申上ゲマシタヤウニ、
之ガ資金ヲ國庫ニ仰グ譯デハゴザイマセヌ
ノデ、寄附金等ガ今後ニ於テ相當出テ參リ
マシタ節ニ、此ノ事業ノ主タル目的デアル
貸費ノ點ニ直接聯關シテ是非共ヤリタイト
云フヤウナ必要ナ施設ガ起ッテ參リマシタ
節ニヤラウト致スモノデゴザイマス、二號
ノ點ニ付テノ意味ハ、ドウ云フコトデアル
カト云フ御話デゴザイマシタガ、是ハ二號
ニ付キマシテハ「學資ノ貸與ヲ受クル學徒ノ
輔導」トアリマスルノデアリマスルガ、是亦
先程御話ガアリ御答ヲ申シマシタ如クニ、
本會ノ奬學制度ノ關係ガ、唯單ニ金錢ノ貸
借ト云フヤウナ物的ナル關係ダケデアリ
マシテハ、折角斯ウシテ國家的規模ニ依リ
マシテ、國家有用ノ人材ヲ育成シヨウト云
フ目的ニ本質的ニ反スルモノデアリマス、
假令其ノ關係ガ金錢上ノ關係ヲ主ト致シマ
セウトモ、之ガ運營上ノ繫ガリト云フモノ
ハ、何トシテモ精神的ナモノデナケレバナ
ラナイ、此ノ點ヲ忘レマスト、此ノ制度自
體ガ丸ッキリ死ンデ參リマスノデアリマス、
サウ云フ意味ニ於キマシテ、此ノ學資ノ貸
與ヲ受クル學徒ト本會トノ關係ガ能ク精神
的ナ繫ガリヲ持チマスルヤウニ、言葉ヲ換
ヘテ言ヒマスレバ、場合ニ依リマシテハ親
代リニ、又ハ親心ヲ持ッテ其ノ貸費學生ニ當
ルト云フコトヲヤラシタイト申シマスコトガ、
此ノ學徒ノ輔導ト云フ字ニ現ハレテ居ルノ
デアリマシテ、固ヨリ徒ニ色々干涉ヲ致ス
ト云フ意味ノ輔導デハナイノデアリマシテ、
全ク親代リ或ハ親心ヲ持ッテ精神的ナ繫ガ
リヲ得テ十分ニ進學上ノ指導ヲヤリマシタ
リ、身ノ上相談ト云フヤウナモノニモ與カツ
テヤッタリスルト云ッタヤウナコトヲヤラセ
タイト云フ趣旨ニ外ナラナイノデアリマス、
三十一條ノ規定ハ、成ル程御話ノ如クニ餘
リ必要デナイダラウト申セバサウ云フ風
ニモ感ゼラルヽノデアリマスガ、是亦先程
二十九條三十條ノ所デ申シマシタ如クニ、
全體ノ扱ハ非常ニ精神的ナモノデ參ッテ行
カナケレバナラナイ、是ガ中心デアリマス
コトハ申上ゲル迄モナイコトデアリマスガ、
ト同時ニ何ト申シマシテモ、又繰返スヤウ
デゴザイマスケレドモ、色々金錢的ナ問題
等モアッタリ致シマス、ソレカラサウ云フヤ
ウナ、是ハ余リ此處デ申上ゲタクハナイ事
例デゴザイマスケレドモ、實ハ從來ノ育英
財團ガ相當ゴザイマス、數カラ申シマスレ
バ數百ニ上リマスシ、法人トナッテ居リマス
ノモ二百六七十ニ上ッテ居ルノデアリマス
ガ、斯ウシタ從來ノ育英財團ガ相當アル
ソレニ對シテ、申上ゲタクナイ事例デハゴ
ザイマスガ、靑年ノ中ニ於キマシテハ、方々
カラ貸費又ハ給費ヲ受ケマシテ、變ニ贅
澤ナ生活ヲシテ居ルト云ッタヤウナ者ガナ
イデモナイノデアリマス、又場合ニ依リマ
シテハ、如何ニモ其ノ貸費ヲ受ケテ居ルト
云ッタヤウナコトガ、非常ナ恥ト云フヤウニ
考ヘマスノカ、社會的地位ハ可ナリ立派ニ
ナッテ居ル人、相當ノ年輩、五十近クノ年輩
ニナリマシテモ色々ナ關係上ヒタ隱シニ隱
シタイト云フヤウナ心情カラカ、一向返サ
ナイ、返スダケノ資力ハ十分有リナガラ返
サナイト云ッタヤウナ事例等モアリマシタ
リ今後ハ斯ウ云フコトハナイトハ思ヒマ
スガ、過去ニ於キマシテハ可ナリ色々、ソ
レニ紛ラハシイ財團ノ間ヲ縫ッテ色々ナ問
題ガ發生シタリスルヤウナコトガアリマシ
タノデ、本會ハ斯ウシタ特別法ニ依ル、全
國的、國家的ナ規模ニ依ルモノデアリマス
ルカラ、之ト外ノモノト紛ラハシイヤウナ
コトニハナラナイカラ、コンナ規定ハアル
必要ハナイノヂヤナイカト云フ思召シモ誠
ニ御尤モト思フノデアリマスケレドモ、同
時ニ又變ナ風ニ混淆サレルノモドウカト
云ッタヤウナコトカラ、斯ウシタ規定ヲ置キ
マシタ次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=11
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012・山岡萬之助
○山岡萬之助君 段々ノ御說明ニ依リマシ
テ、資金ヲ貸與スル物的方面ト、補導ヲ與
ヘテ精神的ニ親心ヲ以テ人格ヲ育成スル、
斯ウ云フ點ヲ御說明ヲ受ケマシテ私ハ頗ル
滿足スルモノデアリマス、全ク物心兩面ニ
亙ッテ行クコトニ於テ始メテ此ノ目的ヲ達成
スルト思フノデスガ、ソコデ今御說明ガア
リマシタノデ、モウ一言伺ッテ置キタイコ
トハ、二百幾ツモ他ニ育英會ガアリ、實際
御話ノヤウニ縣ノ育英會、郡ノ育英會、其
ノ方カラ、ナカ〓〓器用ニ立チ廻ル人ハ貸
費ヲ受ケテ都合好クヤッテ居ル、器用デナイ
者ハ一生懸命ニ勤勞ヲヤッテ、サウシテ學問
ヲヤル、ドウモ世ノ中ハ到底公平ニ行クモ
ノデハナイノデアリマスケレドモ、サウ言ッ
タコトハ丁度今御話ノヤウニ、私モ體驗ガ
アルノデスガ、二百幾ツモアルノニ、此ノ
モノヲ置クト今後愈〓此ノ弊ヲ助長スルト云
フコトニナリマスガ、ソレ等ヲドウ云フ風
ニスルカト云フコトヲ此ノ育英財團ガ出來
マシタ曉ニ於キマシテ、ソレニ付テ將來ド
ウスルカ、統制ヲドウスルカト云フコトニ
付テ、何カ御考ガアリマシタラソレヲ伺ヒ
タイノデアリマス、私ノ質問ハソレノ御答
デ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=12
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013・永井浩
○政府委員(永井浩君) 只今ノ御問ヒニ對
シテ御答ヘ申上ゲタイト思ヒマスガ、御配
リ致シマシタ資料ノ中ニモアリマスル通リ
ニ、此ノ府縣ト云フヤウナ公共團體デ事業
ヲヤッテ居リマスルモノガ九十六、財團、社
團等ノ法人デヤッテ居リマスモノガ二百五
十八、法人デナイ〓體又ハ個人デヤッテ居リ
マスルモノガ五十、ソレカラ學校ガ直營デ
ヤッテ居リマスルモノガ一一百四十一、合セマ
シテ六百四十五ト云フマア調ニナッテ居リ
マス、ソコデ在來ノ斯ウシタ團體ニ對シテ、
本會ガ出來マシタナラバドウ云フヤウナ扱
ニ致スカト云フ御尋デアリマスガ、是等從
來ノ財團ニ於キマシテハ是ハ舊藩侯ノ時
代カラ非常ニ歷史ヲ有ッタ由緒深イ財團デ
アルト云フヤウナ、誠ニ美シイ傳統ヲ有ッタ
モノモ相當ゴザイマス、又地方ノ名望家、
財產家等ノ精神的ナル出費ヲ基ニ致シマシ
テ、之ヲ中心ニ出來上リマシタ財團モアリ
マスルシ、斯ウシタヤウナモノニ付キマシ
テハ、ソレ〓〓歷史、傳統ヲ有ッテ居リマス
ルコトデアリマスルカラ、是等ヲ本會法ガ
出來マシテ本會ガ成立致シマシテモ、之ヲ
吸收統合スルト云フヤウナ考ハ毛頭持ッテ
居ラナイノデアリマシテ、斯ウシタ歷史、
傳統アル財團ハ益〓盛ニソレ等ノ各〓ノ特色ヲ
發揮シツヽ育英ノコトニ當ッテ戴キタイト
考ヘテ居リマス、學校直營ノモノ等ニ於キ
マシテモ、是ハ種類ガ色々アリマスルノデ、
一〓ニハ申セナイト思ヒマスガ、是等ハ段々
種類ニ於キマシテハ、自然マア解消致シ
マスルカ、合流致シマスルカ、サウ云ッタヤ
ウナ方向ニ恐ラク進ンデ行クノダラウト思
ヒマス、ソレカラ又一般ノ團體、個人等デ
ヤッテ居リマスルモノ等モ先程申シマシタヤ
ウナモノハ別ニ致シマシテ、中ニハ斯ウシ
タ國家的規模ニ依ル大キナ育英會ガ出來上
ルノダカラ、自分ノ所ハ資金モ一〓ニ寄附
シタイト云フヤウナ意嚮ヲ以テ本會ニ······
現在ハ財團法人デアリマスガ、財團法人大
日本育英會ニ申出デ居ル向キモアルヤウニ
聞イテ居ルノデアリマシテ、斯ウシタモノ
ニ付キマシテハ、ソレハ寧ロ歡迎ヲ致シテ
居ル次第デアリマス、マア大體以上ノヤウ
ナ心持デ是等ノ諸團體ニ當ッテ居リマスガ、
最初ニ申上ゲマシタヤウニ、由緒アル立派ナ
モノニ付テハソレ〓〓ノ特長ヲ發揮致シテ
戴キタイト云フ氣持ヲ持ッテハ居リマスル
ガ、此ノ全體的ナ運用ニ當ッテハ、先程御答
ヘ致シマシタヤウニ、貸費ノ標準等モ違ッテ
居ッタリ、二重取リ、惡イ言葉デアリマスガ
二重取リノヤウナモノヲ防イダリスルヤウ
ナ關係上、事業ノ連絡ダケハ相當附ケテ置
イタ方ガ宜イノデハナイカト思ヒマシテ、
其ノ氣組ミデ居リマス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=13
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014・田所美治
○田所美治君 隣席ノ松井委員カラ御通〓
ガアルサウデアリマスガ、今朝來山岡君カ
ラ御尋ヲセラレテ居リマス其ノ點ニ關聯致
シマシテ、數分間拜借シテ御尋ヲ致シタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=14
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015・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 御異議ガナケ
レバ······田所君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=15
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016・田所美治
○田所美治君 山岡君カラ法人ノ問題ニ付
テ、本案ニ入ッテ今日始メテ御質問ガアッテ、
色々問答デ了解致シマシタノデアリマスル
ガ、私チヨット文部大臣又ハ政府委員カラデ
モ宜シウゴザイマスガ、今朝來承ッタ處、或
ハ此ノ法案ヲ拜見致シマシタ處、戰時中ニ
モ拘ラズ本事業ヲ御設ケニナリマスコトハ、
私ハ是ハ現文部大臣ノ御殘シニナルベキ誠
ニ良イ事業ノ一ツダラウト思ヒマス、育英
事業ハ我ガ國デ、表モ戴キマシタガ、隨分
發達シテ來テ居リマスシ、外國デモ大〓「ス
カラー·シップ」ノ制度ハ設ケテ居リマスケ
レドモ、二億何千萬圓或ハ三億圓ニモナラ
ウト云フヤウナ將來ヲ有ッテ居ル此ノ大事業
ヲ、國ガ是ダケノ世話ヲシテ、今ノ御話
デ、外ニモアルヤツヲ其ノ儘ニシテ置クト
云フコトデアリマスガ、國家ガ所謂今日ノ
言葉デ言ヘバ統一的ニ、國家ノ恩惠ニ依ッ
テ直接ヤッテヤルト云フ所ハ何所ニモアル
マイト思ヒマス、私未聞デアリマスケレド
モ、誠ニ良イ事業ダト考へテ居ルノデアリマ
スガ、ソコデ御尋ネスルノハ何故ニ之ヲ國
ノ事業トシテ直接オヤリニナラナカッタノ
デアルカ、斯ウ云フ點ヲ一ツ伺ッテ見タイノ
デアリマス、旣ニ山岡委員カラモ私法人デ
アルカ、公法人デアルカ、或ハ特殊法人デ
アルカ、是ハマア、特別ノ法人ハ近來ナカ
ナカ多ク作リマスネ、寺迄ガ特別法人ニナッ
テ、破產ヲシテモ解散セス、法人カ私人カ、
營團ハドウデアルカ、總テノ場合ニ山岡君
ガ尋ネラレタヤウナコトガナカ〓〓澤山出
來テ來テ居リマス、ソレハソレトシマシテ、
或ハ將來統一サレル時モアラウカト思ヒマ
スガ、民法ノ私法人デモナケレバ、我々ノ
〓念ニ基ク公法人デモナイ、ソンナモノノ
眞似ヲシテ、此ノ大キナ事業ヲ法人ノ仕事
ニ爲サッタト云フコトハドウ云フ譯デアルカ、
斯ウ伺ッテ見タイノデアリマス、今政府委員
ノ御說明デモ、色々山岡君ノ御問ニ對シマ
シテ、第十六條第三項ノ修學上必要ナル施
設ト云フノハ何ダ、斯ウ言ッテ見ルト、ソレ
ハ唯金錢ノ貸借ノヤウナ素直ナ事業デハイ
カヌノデ、國家ノ恩惠ヲ施ス場合ニハ、精
神的ノコトヲ考ヘナケレバイカヌ、寄宿舍
ヲ一例ニ御話ニナリマシタガ、寄宿舍ハ是
ハ精神的ト云ヘバ精神的デアリマスケレド
モ、此處ハ何モ〓育機關デハナイノデアリ
マスカラ、如何ニ餘力ガアッテモ此處デ學校
ノヤウナ訓育ヲ施シテ行クト云フコトハ決
シテ出來ナイト思ヒマス、矢張リ經濟上ノ
關係、今日物資ノ缺乏ノ際ニ、下宿ハ困難
デアル、寄宿舍モ少イ、寄邊モナイ斯ウ云
フ場合ニ寄宿舍位ハ考ヘテヤラウカ、斯ウ
云フコトデアリマスケレドモ、寄宿舍ト雖
モ、是アルガ爲ニ精神的ニドウト云フコト
ハナイト斯ウ私ハ思フノデアリマス、其ノ
他ノコトヲ若シオヤリニナルトスレバ、學
校ヲオヤリニナル、一種ノ混合シタヤウナ
訓育學校ヲヤル、サウ多岐ニナカ〓〓國家
ノ行政ト云フモノハ行クモノデハナイト云
フコトハ是ハマア私モ多少ノ經驗デ、〓育
ノ方デハ、ソンナコトハ迚モ出來マセヌ、
ソレハ言フダケノ話デ、寄宿位ノ機關ヲ作ッ
テヤル、ソレモ私ハ及ブマイカト思フノデ
アリマス、七十圓モヤリ、六十圓モヤリ、
五十圓モヤッテ居ル、マア附帶事業ニシテヤ
ルコトニナレバ文部省デ別ニ拵ヘラレタラ
宜イ、其ノ法人ノ事業ニソレヲスルニ及バ
又、此ノ又育英ノ目的ノ機關ニセシメラレ
ルコトハ、是ハ議論ニナリマスカラ意見ニ
ナリマスガ、折角コンナモノヲ置イタカラ
十六條ノ三項ヲ一ツ置イテ置ク、何時カ餘
裕ガアッタラヤッテヤル、モット近接シテ寄
宿舍位ハ一ツ拵ヘテヤルト云フヤウニ輕ク
了承スレバ、十六條ノ第三項ニ依ッテ其ノ位
ノ御說明デ諒シテ置キマセウ、ソレニシテ
モデス、直グニ精神云々ト御話シニナル、
サウダラウト思ヒマス、國カラ莫大ナ金ヲ
受ケマシテ、是ハ數年ニ亙リ、十數年ニモ
亙ルヤツモアルデアリマセウガ、中學校カ
ラ大學迄借リルナラバ十年近クモ借リナケ
レバナラヌ、サウ云フモノデ、今日ノ經濟
カラ言ヘバ十分ニ貸費シマシテ、サウシテ
十分ニ目的ヲ達成スルコトハ、斯ウ云フ場
合ニ於キマシテデスナ、國家カラ恩惠ヲ受
ケテ居ルト云フコトヲ感ズルト感ゼヌトハ
非常ニ違フ、無論感ズルノデアリマスガ、
間接ニシナイデ、文部省自身ガ何故オヤリ
ニナラナカッタカ、ソレコソ近代〓育ヲ國家
的ニ進メル、國體ノ本義ニ基イテヤル、斯
ウ云フモノヲ拵ヘテモ精神方面ヲ考ヘテヤ
ル、斯ウ云フコトニ考へマスト、何ヲ苦ン
デ私法人ニアラズ公法人ニアラズ、特別ノ
法人ヲ作ッテサウシテ近來ヤッテ居ル營團等
ノ眞似ヲシテ、其ノ實內容ハ基金ノ百萬圓
モ政府ガ出シテヤル、將來ハ二億何千萬ノ
保證モシテヤル、ソレカラ每年ノ俸給モ何
分ノ一カヤッテ、斯ウ云フモノデアルトスレ
バデスナ、何モ此ノ法人ノ力ヲ借リル必要
ハナイ、法人ノ役員ニ當ラレル人ガ、卽チ
文部省ガ、國家ノ代表者トナッテ直接奬學事
業ヲオヤリニナッタラドウカ、是コソ單純無
垢デ、立派ニ國家的、精神的ノ御指導ガ出
來ル、何モ法律ニ依ル權限ノ狹イトカ廣イ
トカ、或ハ條文ヲ設ケテ權限ヲ與ヘテ、違
反ガアレバ監督スル、違反ハナイト云フ山
岡君ノ御考ナドモアルヤウデアリマスガ、
ソンナコトモアリマスマイ、文部省ノ經驗
家ガ之ニ當ルノデアリマセウカラ、他ニ奬
學局ヲ御設ケニナッテ、國家ノ直接發動ニス
レバ取調モ便利デアリマセウシ、監督モ便
利デアラウシ、貸費スベキ人間ニ付テ取調、
或ハ指導シテ行クコトモ、學校トノ連絡モ附
クシ、假ニ學校以外デアリマシタラ尙困難デ
ス、コンナ法人ガヤルト云フコトハ出來マセ
ヌ、生活ノ調査ナンカ、迚モ山岡君ノ希望サ
レルヤウナ、民間ノ流浪ノ人ヲ委細ヲ取ラ
ウナント云フコトハ迚モ出來ナイ、色々ナ
コトニ於テ此ノ事業ヲ完成シテ行クニハ、
前途ヲ考ヘマスト、何故ニ政府事業ニサレ
ナカッタカ、何故ニ文部省ニ奬學局ヲ御設
ケニナッテ、サウシテソコデオヤリニナラ
ナカッタカ、資金局へ電話デ御話シニナレバ
豫算ノ調査ハ直グニ大藏省デヤッテ吳レマ
セウシ、コンナモノハ間接ニ文部省ニ出テ
認可ヲ受ケテ、ソレカラヤッテ行ク、本人ハ
文部省カラ、國カラ借リテ居ルモノヲ法
人カラ貰ッテ居ル位ノコトデ、精神的ノ方面
カラ言フト感激ガ薄クナリマス、今日〓育
ノ目的ガ國家的々々々ト斯ウナッテ來テ居
ルヤウナ場合ニハ、何モ政府デオヤリニナ
ルニ支障ハナイ、寧ロ其ノ方ガ宜イ、承ッテ
居ルト一ツノ法人ニシナクチヤナラヌト云
フ點ガ私ハッキリシナイノデアリマスガ、ド
ウシテ是ハ國家事業ニナサラナイカ、其ノ
點一ツ伺ッテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=16
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017・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 只今ノ御質
問非常ニ御尤モナ御質問ト考ヘマスルガ、
此ノ育英事業ト云フモノハ、當初カラ家族
主義トシテ親ガ子ヲ育テルト云フ根本ノ精
神ヲ忘レナイヤウニト云フコトヲ非常ニ注
意ヲ拂ッタ譯デアリマス、今御話ノ通リ國家
ガ總テノ資金ヲ出シ補助モスルト云フコト
デアリマスカラ、國營ニシタナラバ一番簡
單デハナイカト云フコトデアリマスルガ、
サウシマスルト、如何ニモ〓育ト云フ問題
ヲ國營ニスルト云フヤウナ感ジヲ與ヘルト
云フコトニ付テ非常ニ心配ヲ致シマス、從ツ
テ親ノ子女ニ對スル〓育ノ義務ト云フモ
ノハ、其ノ一角カラシテ稀薄ニナッテ來ル
ト云フヤウナ虞ガアルヤウニ考ヘマシテ、
飽ク迄モ是ハ國家ハ無論御助ケハスルノデ
アルケレドモ、親ノ子女ニ對スル義務ハ絕
對ノモノデアル、國家ガ力足ラザル者ニ、
而モ優秀ナル才ヲ有ッテ居ル者ヲ國家ノ用
ニ立テル爲ニ手傳ッテヤルト云フ考ヲ以チ
マシテ、ソレニハ矢張リ國家直營ト云フヨ
リハ斯ウ云フヤウナ育英團體ヲ作リマシテ
ソレニヤラセルト云フコトノ方ガ、其ノ精神
ヲ徹底サセルノニモ都合好カラウト云フヤ
ウナ所カラ、斯ウ云フ風ナ法人、特別機關ニ
依ッテヤラセルト云フコトニナッタ譯デゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=17
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018・永井浩
○政府委員(永井浩君) 全ク只今大臣ヨリ
御話ノアリマシタ通リデゴザイマシテ、之
ニ付キマシテ更ニ事務的ニ申上ゲマスレバ、
斯ウシタ育英事業ノ方法ニ二ツノ種類ガア
リマス、一ツハ給費デアリ、一ツハ貸費デアリ
マス、併シナガラ此ノ給費ト云フコトニナリ
マスルト云フト、是ハ國家ガ直接必要トスル
軍人ヲ養成スルトカ、或ハ〓育者ヲ養成ス
ルトカ云フコトハ別ニ致シマシテ、一般的
ナ〓育ト云フモノヲ給費デ以テヤルト云フ
コトハ、只今大臣ヨリ御述ベニナリマシタ
如クニ、日本ノ家族制度、子女ノ〓育ハ親
ガ預ルノダ、國家ハ此ノ親ノ子女ノ〓育ノ
義務ト云フモノヲ助ケルノダ、ソコニ眞ニ
我ガ國ニ於ケル家族制度ノ氣持ヲ十分伸バ
シテ行クコトガ出來ルト云フ所ニ特徴ガア
ルノデアリマス、ソレデサウ云フ意味カラ
申シマシテ、是ハ給費ニ依ラズシテ、貸費ニ
依ルト云フコトニ相成ッタノデアリマスガ、
ソレハ全ク我ガ國ニ於ケル家族制度、只今
大臣ガ御話シニナリマシタヤウニ、家族制
度ト云フ所ヲ中心ニ致シタコトデアリマス、
ソコデ苟モ貸費ニ依ルト云フコトニナリマ
スト、御話ノ如クニ國家ガ直接ニヤリマス
ト云フコトニナリマスト、是ハ事務的ニ申
シマシテ誠ニ困ルノデアリマス、先程モ申
シマシタヤウニ極ク少額ヲ五年据置、二十
五箇年償還ト云フ長期ニ亙ッテノ無擔保ノ
貸付契約ト云フモノガ、國庫ガ直接ニ其ノ奬
學生ト結ブト云フコトニ相成ルノデアリマ
シテ、又此ノ貸費資金ノ返還ト云フヤウナ
場合ニ於キマシテモ、是ハ國庫ガ直接デア
リマスト云フトナカ〓〓不適當ナ事柄ガ起ッ
テ來ルト思ヒマス、尙償還ヲ致シマスル場
合ニハ相當償還不能ノ者モ出テ參リマシテ、
斯ウシタ償還不能ノ者ニ付キマシテハ、本
法案ノ二十七條ニアリマス如クニ、此ノ元
本ノ償還及利子ノ支拂ヲ政府ガ保證スルト
云フヤウナ制度デ、從ッテ返還不能ノヤウ
ナ場合ガ起キマシタ時ハ、ソレハモウ已ム
ヲ得ナイ、是ハ缺損ニ立テヽ參ルト云フヤ
ウナ扱ヲ、法人ト致シマスレバ是ハ比較的
簡單ニ參ルノデアリマス、ソレカラ死亡者
ノ見込モ、此ノ計算ハ總テ一種ノ保險計算
デヤッテ居リマスノデ、此ノ計算ノ內部ノ中
ニハ從來ノ保險計算ニ依ル詰リ死亡率ト云
フモノモ自ラ見込ンデアリマスノデ、サウ
云フヤウナ點カラ申シマシテモ、斯ウシタ
扱ハ法人デナケレバチヨット困ル點ガアル
ノデアリマス、政府ガ直接ノ事業ト致シマ
シテ、斯ウシタ奬學生ニ對シテ貸費ヲスル
ト云フコトニナリマスト云フトドウニモ
是ハチヨット動キノ取レナイ、又ヤリマシテ
モ非常ニ困難ノ場合ニ相成ル、給費ト云フ
モノデ扱フト云フヤウナコトデアリマシタ
ナラバ、御話ノ如クニ國家ガ直接ニヤッテ
モ宜イ、可能デアリ、又必要デアルト云フ
ヤウナコトニナルカトモ思ヒマスガ、其ノ
給費デヤリマスト云フ點ニ付キマシテハ、
只今大臣ヨリノ御答辯ニアリマシタ如クニ、
我ガ國ニ於ケル家族制度ト云フコトヲ考ヘ
テ、是ハドウモ又親代リト云ッタヤウナコ
トモ考ヘナガラ、國直接ト云フヨリモ、斯ウ
シタ特別法人ト云フモノヲ以テ之ニ主トシ
テ直接ニ當ラセルト云フコトガ穩當デアル
ト云フ所カラ出發シテ居ルヤウナ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=18
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019・田所美治
○田所美治君 其ノ點ハ考ニナリマスカラ、
ソレヲ極論シテ行ケバ、此ノ案ニ對シテ又
一種ノ意見ヲ持タナケレバナリマセヌケレ
ドモ、サウ云フ考デハナイノデス、今ノ御
說明ハ私ニハ分ラナイノデス、家族主義ダ
カラ、親心ダカラ云々ト云フコトデハ說明
ガ附クマイト思フノデアリマス、國ガ親心
ガアルガ爲ニ莫大ノ費用ヲ使ッテ〓育事業
ヲヤッテ居ラレル、澤山ノ大學ガアルニモ拘
ラズ帝國大學ヲドン〓〓拵ヘテ行ク、直轄
學校モドン〓〓拵ヘル、是ハ親心ニ非ズシ
テ何ゾヤ、私共モ矢張リ長年其ノ世話ニナッ
テ居リマスカラ、國家ノ恩義ト云フモノハ
深ク感ジテ居リマス、ソレガ卽チ日本ノ家
族主義ト謂ヘバ家族主義ノ國體ニ基ク國家
ノ恩惠デアル、斯ウ云フコトデ感激今日又
新タナモノガアルト思フノデアリマス、私
共モ育英事業ニ大分關係シテ居リマス、國
ノ斯ウ云フ施設ガナカッタノデアリマスカラ
··皆サンモサウデアリセウガ、〓里ノ育
英事業ニ關係シテ居リマスガ、其ノ沿革ナ
ドヲ見マスト、昔舊藩主ガヤリマシタ基金
ナドヲ殘シマシテ、ソレヲ繼イデヤッテ居ル
私ノ關係ハソレデアリマスケレドモ、舊藩
主ト本人トノ關係ト云フモノハ卽チ親心ナ
ンデス、舊藩主ハ個人デアリマスケレドモ、
國ハ法人デアリマス、法人ドコロヂヤナイ、
日本デハ家族制度ニ基ク君臣一體、君臣父
子ト云フ國體ナンデアリマスカラ、ソレヲ
代表シテ居ル所ノ政府ノヤル仕事ト云フコ
トニナレバ、ドウモ親心ガソレガ爲ニ云々
ト云フコトハ、私ハチヨットドウカト思フノ
デアリマス、御批評ヲ申上ゲテ見ルト云フ
ト其處デ養フノガ又國家思想ノ〓揚デア
ル、是ハ福利ノ增進デアリマスカラ、行政
ノ部分ニハ限リガナイノデアリマスガ、斯
ウ云フ福利ヲ增進スル部分ニ國家ガ事業ヲ
段々擴張サレテ行ク、而シテ家族主義ガ日
本ノ國體デマル、外國ハ國體ヂヤナイ、政
體ナンデスカラ、日本デハ國ノ事業程感激
スルモノハナイト思フ、長イ間、貧乏ノ爲
ニ勉强出來ヌ者ガ入レルト云フコトニナレ
バ、ソレデモウ國家ニ對スル感銘感激ニナ
ル、斯ウ云フコトニナルト私ハ思ヒマス、
國家ノ親心、其ノ親心ガ若シ國家ノ事業デ
ナイト云フコトニナレバ、文部省ノ事業ト
云フモノハ殆ド大半ハナクナッテシマフ、斯
ウナッテ來ル、〓育ノ發達ハ皆親心ナンデス、
義務〓育ト雖モ親ガスベキモノヲ、其ノ抛ッ
テ置イタモノヲ國家ガ段々世話シテヤッテ、
國家ノ御蔭デ今日ノ鍊成ト云フ、斯ウ云フ
コトニナッテ來テ居ル、殊ニ其ノ模範トシテ
ハ日本ヲ擧ゲテ居ル、又擧ゲナケレバナラ
又、斯ウ云フ基礎デ行ッテ居リマスカラ、國
家ガヤルカラ親心云々ト云フコトハナイト
思フ、法人ガヤッテコソ、親心ガ薄クナリヤ
シナイカ、何處カラ其ノ金ガ出テ來ルカト
云フコトハ法律ヲ見ナケレバ分ラヌ、本人
ハ知リマセヌ、又法人ノ主體ト云フモノハ
始終更迭シテ行クト云フコトニナリマセウ
カラ、ドウモ其ノ關係ト云フモノハ却テ反
對ニナリハシナイダラウカト、斯ウ思フノ
デアリマス、ソレカラ事務ノ方ノ關係ハ、
今御話ニナリマシタガ、ソンナコトハドウ
ニデモ出來マセウ、殊ニ又永井政府委員ハ
會計課長ヲ長クヤッテ居ラレマシタノデ、
會計法ニ通ジテ居ラレルガ、貸費ノ關係ハ
無利子ニシテモ宜イシ、擔保ノ關係ハ無擔
保デモ宜イシ、或ハ保證ノ關係ハ何ニモ要
リマセヌ、缺損ヲシタラ、ソレコソ親心ト
シテヤッタラ宜イ、ソレハ外ニ例ガ澤山アル
ノデアリマス、大藏省ノ例ノ震災ノ時ノ貸
金ナンカモ五十年間位貸シテ居リマセウ、
アノ中デ破產シタ者ハ返セナイ、斯ウ云フ
コトニモナッテ居リマス、矢張リ斯ウ云フ
育英ノ關係デ特別ノ何カ會計法デモ出スコ
トニスレバ、私ハ會計法ハ素人デアリマス
ケレドモ、今ノ事務的關係ノ仕事ハソレデ
經理出來ハシナイカト斯ウ思フノデアリマ
ス、其ノ先ヲ段々御話スルト、是ハ國家事
業ノ方ガ宜イト、斯ウ云フ考ニナリマスケ
レドモ、今ノ御說明ダケデハドウモ了解ヲ
シ兼ネルノデアリマス、是ハ意見ニナルト
思ヒマスガ、或ハ是ハ去年出來タ育英團ノ
今アル權利義務ヲ承繼スルト云フコトガア
リマスガ、アレハ私法人デ出來タカラ、法
人ノ考ヨリハ多少ハ進ンダト云フコトデ、
事務的ノ順序ヲ考ヘテ居ルノデアリマス
カ、ソンナコトハ推測デアリマスケレドモ、
本質ヲ言フト、之ヲ拜見シテ見ルト云フ
ト、ソンナヤウナ氣ガスル、殊ニ私ハ國家的
ナ〓育施設ヲ頭ニ置イテ考ヘナケレバナラ
ヌト思フノデアリマスガ、ナゼ竿頭一步ヲ
進メテヤラヌカ、斯ウ思フノデアリマス、
併シ今ノハ御說明ニ付テノ質問デハナク、
私ノ考ヲ申上ゲタ譯デスカラ、別ニ政府委
員ノ方カラノ御答ハ要リマセヌガ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=19
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020・永井浩
○政府委員(永井浩君) 御所見ヲ承ッタノ
デアリマスガ、固ヨリ今ノ御所見ニ對シテ
別ニ反駁ヲ致スト云フヤウナ意味デモ何デ
モナイノデゴザイマスガ、今ノ事務的ナコ
トデゴザイマスケレドモ、實ハ此ノ關係者
ハ平年度、所謂一番「コンスタント」ナ狀態ニ
ナリマシタ時ノコトヲ考ヘテ見マスルト云
フト、之ガ關係者ハ約三十萬人ニ相成ルノ
デアリマス、現ニ貸費ヲ受ケル者、又償還
ヲ爲ス者ト云フモノノ總數ト云フモノハ約
三十萬人ニ相成ッテ居リマスノデ、是ガ三十
萬人ニモ涉リマスルヤウナ關係ガアリ、サ
ウシテ死亡ノ關係ガアリ、ソレカラ償還不
能ノ關係ガアリ、ソレカラ扱ヒマス金額モ
極メテ僅カデアリマスシ、實ハサウ云ッタヤ
ウナコトカラ考ヘマスルト、詰リ貸費シテ
ヤルト云フコトニナリマスル場合ニハ、何
トシテモ法人、特殊法人ト云フモノノ介在
致シマスルコトノ方ガ適當デアラウカト思
フノデゴサイマスルガ、只今申上ゲマシタ
コトハ、先程御答辯申上ゲタコトヨリ外ニ
ハ出ナイカモ分リマセヌケレドモ、念ノ爲
ニ繰返スヤウデ恐レ入リマシタガ、申上ゲ
タ次第デアリマス、ソレカラ尙先程家族制
度云々ニ付テノ御話ハ誠ニ御尤モト思フノ
デアリマスガ、詰リ斯ウ云フ子弟ノ〓育ト
云フコトハ、是ハ親ガ之ニ當リ、國家ガ直
接ニ〓育ヲスル、或ハ國家ガ〓育費ノ全部
ヲ出ス、乃至ハ給費ヲシテヤルト云ッタヤウ
ナ關係ハ、國家ガ直接ニ必要ト致シマスル
軍人又ハ〓育者等ニ付キマシテハ、給費デ
以テヤッテ行クト云フ關係ニ致スノハ是ハ
固ヨリト思フノデアリマスガ、一般ノ子女
ノ〓育ト云フモノハ親ガヤル、國家ハ其ノ
親ノヤル〓育ヲ援助ヲシテヤルト云フヤウ
ナコトニナリマス、サウ云フ意味合ノコト
ガ宜イノデハナイカ、トモスルト國民ノ頭
腦ト云フモノヲ國家ガ管理スルト云ッタヤ
ウナ風ノ物ノ考ヘ方ニナリマスト困ルノヂ
ヤナイカト云フコトヲ避ケタイト云フコト
デ、此ノ制度ヲ貸費ト致シマシタヤウナコ
トデゴザイマシテ、先程申シマシタコトト
容レナイカモ分リマセヌケレドモ、重複シ
テ恐レ入リマスガ一應申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=20
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021・田所美治
○田所美治君 モウ一遍申上ゲテ置キマス
ガ、ソレハ西洋風ノ考ヘ方デス、或ハ私ハ
淺薄ナ考カモ知レヌノデアリマスケレドモ
此ノ義務〓育ノ制度ヲ拵ヘタ時ニ、丁度今
永井君ノ言ハレタヤウナコトヲ私ハ提案致
シマシタ譯デス、一體〓育ト云フモノハ親
ノ事業ダ、是ハ公共團體ガ關係スベキデハ
ナイ、況ヤ國家ト云フモノガ關係スベキモ
ノデハナイ、是ハ二百年前ニ義務〓育ガ出
來タ時分ニ色々ノ論議ガアッタノデス、ソレ
ハ御承知ノ通リ〓育制度ノ初歩デアッタノ
デスガ、〓育ト云フモノハコンナモノカナ
ト私感ジタノデス、ソレハ文部省デヤッテ居
ル事業ト云フモノハ是ハ皆父兄ノ圈內ニ
侵蝕シテ行クト云フコトニナルノデハナイ
カ、コンナモノハアルモノデハナイト思フ、
顧ミテ義務〓育ノ實際ヲ見マスト、二百年
後ノ今日ハ皆國家ガヤッテ居ル、義務〓育ト
云フモノハ授案料ヲ取ッテハナラヌ、全部政
府ガスルノガ義務〓育デス、ソレハ其ノ起
リハ、卽チ今丁度永井政府委員ノ言ハレタ
〓育ハ、個人ノ親ガ子ニ對スル義務デアル、
ソレデヤット公共團體ノ費用ヲ出サセテ、市
町村ノ費用ニシマシテ、ソレガ段々國家ガ
補助シ、今日ハ殆殆全部國家ノ費用ニナッテ
居ル、又ソンナコトヲ經濟上カラ外國アタ
リハ唱ヘマシテ、半額シカ補助セヌトカ、
大半ハ市町村ガ出セトカ、又他ノ理由モア
リマセウケレドモ、サウ云フコトデ段々經
マシテ、今日デハ小學校〓育ト云フモノハ、
全部御承知ノ通リ國家ガヤッテ居ル、斯ウ
ナッテ參ッテ居リマスネ、ソレカラ年々歲々
文部省ノ積極的ニ御進メニナル徑路ヲ見マ
ストデス、モウ親ニヤラシテ置イタラ宜イ
モノヲ皆子弟養成ノ最モ深刻ナモノデアリ
マスカラ、親ニ代ッテヤッテ居ル、斯ウ云フ
コトデアリマス、親心ニ非ザルハナシト斯
ウ私ハ考ヘテ居リマスカラ、何モ斯ウ云フ團
體カラ取次イデ貰フ必要ハナイ、ソレガ爲ニ
却テ遲クナル、何處カラ是ハ金ガ出テ來ル
ノカ、國カラ文部大臣カラ貰ヒサヘスレバ
宜イノニト云フコトニナッテ、極ク通俗ニ御
話スレバ、サウ云フ御話ニナッテ來ル、是ハ
斯ウナッテ居リマスカラ、是ハ私ハ反對スル
意味ヂヤナイ、是ガ極ク平時デヤル問題ト
違フカラ、一歩ヲ進メラレタラ····、殊ニ〓
育審議會アタリデモ、我々モ關係シテ、專
門〓育以上ニ付テモ特ニ奬學ノ施設ヲ整備
シ云々ト云フ條項ヲ揭ゲテ置キマシタ、大
イニヤレト云フコトヲ言ヒ、當時ノ文部大
臣ハ之ヲ贊成サレタ、是ハ御承知ノ通リ、
ソレノ現レトモ思ハレルシ、ソレニモ合致
ヲシテ參リマス、非常ニ私ハ喜バシク、初
メカラ、昨日カラ贊成ヲシテ居ッタノデ、今
日山岡君ノ話ガアッテ、根本的ニ、拔本的ニ
言フト、其ノ考ヲ持ッテ行ッテ居ルコトデア
ラウ、デ來年デモ再來年デモ、好イ時ニ
サウナルコトヲ希望シマス、サウナッテ來レ
バ、國家思想ト云フモノヲ英才ニ、秀才ニ
感激セシメテ、何モ官吏ニナラヌデモ宜イ、
今日ハ、結局所謂忠誠ノ心ト云フモノノ涵
養ニモ資スル、所謂御說明ノ精神ト云フモ
ノガ、其ノ一方ニ於テ其ノ頭ガ出來ハシナ
イカ、コンナ機會ヲ一ツ逸スルト云フコト
ニナリハシナイカ、此ノ法案ニ於テコンナ
ニ感ズルノデス、會計法ノコトハ····、ソ
レカラ貸費給費ノ御話ガアリマスガ、ソレ
ハ既ニ貸費ハヤッテ居ルノデス、丁度震災ノ
時分ニ國ガ五千萬圓カ一億カ出シマシタラ
ウ、殆ドサウシテ五十年賦デ貸シテ、還ッテ
來テ居ルノデアリマス、初メカラ返シテ居
ルノガ大分出來テ居リマスガ、今ニ數十年
ノ義務ヲ背負ッテ居ル、利子モ今日ハ極ク僅
カバカリデスガ附ケテ居ル、ソレハ大キナ
金錢上ノ貸借ニナリマスケレドモ、ソレハ
三十萬人ト云フ御話ガアリ、ソレカラ又大
分事務ノ關係ハ面倒デスガ、ドウデモ出來
ル、ソレコソ朝飯前ノ仕事デ、文部省ノ事
務ハサウ云フコトヲ細大漏ラサズヤッテオイ
デニナルカラ、組織ヲ地方ニ御拵ヘニナッ
テ、ソレカラ取調ヤラ監督指導ニ付テモ、
一命ノ下ニ材料ガ集ルシ、ナダラカニ行キ
ハシナイカト考ヘルノデス、私モ考ヘマス
ケレドモ、尙本案ハ本案トシマシテ、能ク
御考究ヲ願ヒタイト思ヒマス、斯ウ申上ゲ
テ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=21
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022・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 松井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=22
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023・松井茂
○松井茂君 私ハ文部大臣ノ御出ニナル時
ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=23
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024・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) ソレデハ後
デ····入江君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=24
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025・入江貫一
○入江貫一君 私ハ此ノ法案ニ付キマシテ
細カイコトモ伺ヒタイシ、又文部大臣ニ昨
日カラノ質問應答ノ點ニ付キマシテモ伺ヒ
タイト思フノデアリマス、只今文部大臣ガ
居リマセヌカラ、先ヅ此ノ法案ニ付テ細カ
イコトヲ承リタイト思ヒマス、先程カラ御
說明ナドニ依リマシテ、伺ヒタイト思フコ
トモ了解シタ點モゴザイマスガ、ソレ等ヲ
除キマシテ伺ヒタイト思フノデアリマス、
甚ダ迂闊ノコトヲ伺フコトニナルカモ知レ
マセヌガ、私共ガ小サナ法人ノ育英事業ニ
關係致シマシタ經驗カラ考ヘマシテ、此ノ
事業ニ付テ貸費生ノ選擇ト云フコト、及ビ
學費ノ返還ト云フコトガ相當困難ナコトデ
ハナイカト考ヘルノデアリマス、其ノ貸費
生ノ選擇ト云フコトニ付キマシテハ御說明
モアリマシタシ、又說明書ノ書類ニ依ッテ拜
見致シマシテモ、經濟上ノ原因カラ學費ガ
支辨出來ナイト云フ條件ハ、是ハ別ト致シ
マシテ、品行方正、學術優秀、志操堅實、
身體强健ト云フウヤナ條件ガアルヤウデア
リマス、是ハ至極御尤モナコトデアリマス
ガ、全國ニ亙リマシテ數千若シクハ一萬ノ
學徒ヲソレ等ノ標準ニ依ッテ選定致スニハ誠
ニ困難ナコトガアルノデハナイカト思フノ
デアリマス、說明書ニ依リマスト、推薦委
員會、是モ地方及中央ニ於テ委員會ナドヲ
設ケ、或ハ學校カラ直接ニ推薦ヲサセルト
云フヤウナ方法ヲ御採リニナルヤウニ思ハ
レルノデアリマスガ、推薦委員會ト云フモノハ、
直接本人ヲ知ラナイモノガ多カラウト思フノ
デアリマス、サウスレバ學校ノ推薦ニ依ルト云
フコトガ主ナ推薦ノ方法ニ事實上ハナルノデ
ハナイカト思ヒマスガ、是ハ全國ニ亙リ、多
數ニ亙リマシテ、果シテ公平ニ推薦ガ出來
ルモノデアリマセウカ、決定ガ出來ルモノ
デアリマセウカト云フコトヲ懸念ヲ致スノ
デアリマス、私固ヨリ素人デアリマスカラ、
ソレニ對シテドウシタラ宜イカト云フ案ヲ
持ッテ居ル譯デハアリマセヌノデ、文部當局
ガソレハ公平ニ出來ル、十分此ノ目的ニ合
スルヤウニ出來ルノデアル、出來ル確信ヲ
持ッテ居ルト云フコトデアリマスレバ、其
ノ確信ニ對シテ私共ハ全ク信賴シタイト考
ヘルノデアリマス、甚ダ確信ガアルカナイ
カト云フヤウナコトヲ伺フノハ失禮ナコト
ノヤウニ存ジマスガ、念ノ爲ニ、安心スル
爲ニ其ノ點ヲ伺ヒタイノデアリマス、ソレ
カラ貸費ヲ始メマシタ學徒デモ、學業中ニ
死亡若シクハ疾病ノ爲ニ廢學スルト云フコ
トモ有リ得ルコトデアリマスガ、其ノ他ニ
尙品行上ニ、操行上ニ缺點ヲ生ジタトカ、
或ハ學術ノ優秀サガ減退シタ、若シクハ思
想上ニ面白クナイ點ヲ發見シタトカト云フ
ヤウナコトガ有リ得ルコトト存ジマシテ、
ソレ等ニ對シマシテノ監督ハドウナサイマ
スカ、是モ學校當局ニ委任シテ監督セシム
ルト云フ方法ハ想像シ得マスガ、是ガ全國
ニ亙ッテ、全學校ニ亙ッテ公平ニ同ジヤウナ
標準ヲ以テ之ヲ裁定スルコトガ出來マスカ、
ソレ等ノ者ハ恐ラク給費ハ停止サレルコト
デアラウカト存ズルノデアリマスガ、其ノ
停止等ニ付テモ公平ニ出來ルモノデアリマ
スカ、如何デアリマスカ、其ノ點モ併セテ
伺ヒタイト思フノデアリマス、次ニハ償還
ノコトデアリマス、是モ先程チヨット御話モ
出タヤウデアリマスガ、念ノ爲ニ伺ヒタイ
ノハ、是ガ死亡トカ、特殊ノ原因デ貧困ニ
陷ッタトカト云フヤウナ者ニ對シマシテハ
償還ヲ免除サレルト云フコトニナルノデア
ラウト存ジマスガ、學校モ出、社會ニ於テ
モ相當ノ地位ヲ得テ居ル、併シナガラ其ノ
生活ハ、殊ニ主觀的ニハ切詰メタ生活ヲシ
テ居ルガ爲ニ、返還ヲスル餘裕ガナカ〓〓
ナイト云フヤウナコトガアッテ、ソレガ爲ニ
怠慢ニ流レテ居ルト云フヤウナコトガアラ
ウカト思ヒマス、今迄ノ育英會ノ經驗ニ依
リマスト、相當ニ其ノ數ガ多イノデアリマ
ス、ソレ等ニ對シテドウ云フ方針ヲ御採リ
ニナル御心組ミデアリマスカ、死亡等ニ付
テハ御說明モアリマシタシ、又ソレノ償還
不能ニ陷ッタ時ノ處置ニ付テモ伺ッタノデア
リマスガ、サウデナイ、特別ノ事情ガナク
シテ怠ッテ居ルト云フヤウナコトガ想像シ得
ラレルノデアリマス、ソレニ對シテ强制手
段ヲ御用ヒニナルノカ、裁判ニ御掛ケニナ
ルカ、若シサウ云フコトガアレバ面白クナ
イコトニモ考ヘルノデアリマス、ソレ等ニ
付テノ御計畫ヲ伺ヒタイノデアリマス、第
三ニ、此ノ法案ノ第一條及十六條デアリマ
シタカ、先程カラ色々御話ガ出タコトデア
リマス、詰リ貸費ノ外ニ、何カ「育英上必要
ナル業務」ト第一條ニハ書イテアリ、十六條
ニハ、「修學上必要ナル施設ノ設置及經營」ト
書イテアリマスガ、是ハ具體的ニ申シマス
トドウ云フコトヲ考ヘテオイデニナリマス
カ、先程カラ寄宿舍等ノ說明ハアリマシタ
ガ、成程寄宿舍ナドハ尤モナコトデ、餘裕
ガアレバ造ルコトハ宜イト思ヒマスガ、其
ノ他ハドウ云フコトヲ御考ニナッテ居リマス
カ、先程チヨット食糧ト云フヤウナ御說明ガ
アリマシタガ、ソレ等ハドウ云フコトデア
リマスカ、私共ガ玆デチョット考ヘマスト、例
ヘバ此ノ頃ハ辨當ヲ食ベルノニ甚ダ不便デ
アルカラ、ソレ等ノ爲ニ食堂ヲ造ッテ辨當ヲ
食ベサセルト云フヤウナコト、或ハ圖書館
ヲ造ッテ、ソレ等ノ學問ノ〓究ノ參考資料ナ
ドヲ備ヘテ置クトカ、或ハ健康保持ノ爲ノ
運動設備ヲ拵ヘルトカト云フヤウナコトモ
考ヘ得ラレナイデハナイノデアリマス、併
シナガラソレハ貸費生ノ爲ニ特別ニ造ルト
云フコトハ如何カト思フノデアリマス、般
ノ學生ノ爲ニ、食事ガ非常ニ困難デアルカ
ラ、學生ノ爲ニ食堂ヲ造ルトカト云フコト、
若シクハ圖書館ヲ造ルト云フヤウナコトガ
若シアリト致シマスレバ、ソレ等ハ貸費生
モ尙亦利用シ得ルノデアリマス、然ルニ貸
費生ノ爲ニ特」ニサウ云フ設備ヲシタトス
レバ、ソレハ一般ノ學生ハ其ノ便宜ヲ受ケ
ルコトガ出來ナイノデハナイカト思フノ
デ、要スルニ具體的ニハドウ云フコトヲ御
考ヘニナッテ居リマスカト云フコトヲ伺ヒ
タイノデアリマス、取敢ヘズ本案ニ付テハ
ソレダケノコトヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=25
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026・永井浩
○政府委員(永井浩君) 第一ニハ奬學生、
是ハ貸費生デゴザイマスガ、奬學生ト呼ブ
コトニ致シマシタ、此ノ奬學生ノ銓衡ニ付
テドウ云フヤウナ方法ニ依ルカト云フ、全
ク直接御體驗ニ基キマシテノ御親切ナ御心
配デゴザイマシテ、我々モ此ノ事業ノ一番
必要ナ點ハ、眞ニ國家有用ノ人材デアル素
質ヲ、本當ニ公平ニ洩レナク選ビ出セルカ
ドウカト云フコトガ本事業ノ眼目デアル
ト思フノデアリマス、ソコデドウ云フ方法
ニ依ッテヤリマスカト申シマスト、中等學校ニ
入ル者ニ付キマシテハ、是ハ各國民學校ノ
受持〓員乃至ハ國民學校長ト云フモノト
ソレカラ其ノ國民學校ノ卒業者ガ入リマシ
タ中等學校ノ受持〓員乃至學校長ト云フ者
カラ、之ヲ縣ノ支部ノ方ニ申出デシムル、
デ各府縣ニ本育英會ノ支部ヲ置キマシテ、
支部長ハ府縣知事ヲ支部長ニ致シタイト思ツ
テ居リマスガ、此ノ府縣知事ガ支部長デア
リマスル此ノ府縣ノ支部ニ申出デシメル、サ
ウシマスト、各府縣ノ支部ニ於キマシテハ、
其ノ支部ノ銓衡委員會ト云フモノガゴザイ
マシテ、此ノ銓衡委員會ハ、是ハソレ〓
直接關係アル者、或ハ經驗學識アル者ニ依ッ
テ組織サレタ銓衡委員會デ、一定ノ基準ト
考ヘ方トヲ原則的ニ決メマシテ、是デ各府
縣ノ支部ニ於キマシテ、第一次ノ銓衡ヲ終
ル、デ第一次ノ銓衡ヲ終リマシタモノヲ中
央ノ方ヘ持ッテ參リマスト、中央ニモ矢張リ
此ノ銓衡委員會ガゴザイマシテ、此ノ中央
ノ銓衡委員會デ、此ノ各府縣ニアル支部ノ
間等ニ於テ不公平等ガアッテハ困リマスノデ、
サウ云ッタ點、又ハ多少實施ニ當リマシテモ
十分銓衡致シマシテ、此ノ銓衡ヲ經タ者ヲ
本會ノ理事會ニ於テ最後ニ理事長ガ決定ヲ
スルト云フヤウナ段取デ參リタイト思ッテ
居リマス、ソレカラ專門學校以上ノ學校へ
入リマスル者ニ付キマシテハ、是ハ府縣支
部ヲ通サナイ、詰リ府縣知事ヲ支部長ト致
ス府縣支部ヲ通サナイデ、直接各學校ノ受
持〓授乃至ハ學校長ノ所見ヲ附ケマシテ、
學校長ヨリ本部ノ中央ノ銓衡委員會ニ申出
デヲセシメマシテ、此ノ銓衡委員會デハ一
定ノ基準ヲ設ケマシテ銓衡スル、十八年度
ニ於キマシテモ、財團法人等ノ銓衡カラ申
シマシテモ、大體學業ノ成績ニ依ッテ五種
類位ニ分ケ、又人物其ノ他ノ所見ト云フモ
ノモ十分ニ其ノ中ニ受入レマシテ、此ノ五
種類位ニ分ケマシタ中カラ順次選擇ヲ致ス
ト云フ風ニ參ッテ居ルノデアリマスガ、大
體十八年度ニ於キマシテ各學校カラ推薦ニ
ナリマシタ者モ、相當優秀ナ、詰リ全體
ト致シマシテ四分ノ一以上ノ成績ニアリマ
ス者ガ略〓大方デアリマス、殆ド中等學校ナ
ンカカラ推薦ガアリマスル者ニ付キマシテハ、
隨分良イ、一、二番ト云フモノガ可ナリノ數
デ推薦ヲ受ケテ居ルヤウナ實情デゴザイマ
スガ、マアサウ云ッタヤウナ標準ヲ以チマ
シテ、此ノ專門學校以上ノ場合ニ於キマシ
テハ、中央ノ銓衡委員會ノ議ヲ經マシテ、
理事會ニ於テ更ニ審査シ、理事長ニ於テ決
定ヲスルト云フ運ビデ參ル段取リニナッテ
居リマス、ソレカラ次ニ學資ノ貸與ヲ受ケ
テ居ル者ガ死亡致シマシタ場合ニ付キマシ
テハ、先程申シマシタカラ省略致シマシテ、
只今ノ御尋ハ、素行上、思想上、乃至ハ學
術上不良ニ陷ッタ者ニ對スル監督ハドウス
ルカト云フ御話デゴザイマス、無論サウ云ッ
タヤウナ場合ニハ、是ハ是正シ得ラレル
ダケ是正ヲシテヤル、ソレガ輔導デアラウ
ト思ヒマスカラ、輔導ヲ本會トシマシテモ
考へ、又學校當局ニ對シテ之ヲ委託シテ、
十分ニ其ノ輔導ヲ盡サシムルト云フコトガ
第一ニ採ルベキ手段ダト思ヒマスガ、ソレ
デモ到底成業ノ覺束ナイ者ニ付キマシテ
ハ無論貸費ノ停止ヲヤルト云フヤウナ處
置ニ出デザルヲ得ナイコトト思ヒマス、常
常ノ監督ニ付キマシテハ、是ハ先程來色々
ニ御話ガアリマシテ御答ヘ申上ゲマシタ通
リニ、親心ヲ以テ親代リト云ッタヤウナ積
リデ輔導ヲ致シタイト思ッテ居リマスルノ
デ、十分其ノ點ニ付キマシテハ、當該學校
ノ〓授、先生等ニ御願ヲ致シマシテ、是等
ノ奬學生ノ輔導ニ力ヲ致シタイト思ッテ居
リマスガ、マア何分ニモ數ガ多イコトデゴ
ザイマスノデ、御懸念ノ如クニ斯ウシタ輔
導ガ眞ニ能ク行クカドウカト云フ點ニ付キ
マシテハ、專ラ今後ノ運用ト今後ノ工夫ニ
俟タナケレバナラナイコトダト思ヒマス、
結局要ハ先程御話モアリマシタヤウニ、
初メノ銓衡ノ時ニ餘程念ヲ入レテ十分ニ
素質ノ良イ者ヲ選擇スルト云フコトガ中
心デアラウト思ヒマスノデ、ソコニ重點
ヲ置キツヽ更ニ監督輔導上ノ問題ニ付キマ
シテハ、今後ニ於キマシテ工夫ヲ盡シテ參
リタイト思ッテ居ル次第デアリマス、ソレカ
ラ次ニ學資ノ返還ニ付テハ强制手段ヲ用ヒ
ルカドウカト云フコトデゴザイマスガ、大
體先程申シマシダヤウニ、本法自身ト致シ
マシテハ死亡ハ勿論其ノ他貸費不可能ナ
ル場合ニ於テ、又貸費償還不可能ナル場合
ニ於テ、又ハ困難ナル場合ニ於テノ損失ニ
付テノ政府ノ補償ト云フコトモ豫定致シテ
居リマスルガ如クニ、必ズシモ貸シタモノ
ヲ何デモ彼デモ取立テヨウト云フノデハナ
クテ、可ナリ裕リヲ持ッタ考ヲ入レテアルノ
デアリマス、從ッテ之ヲ法律トシテ決定ヲ致
シテ置クト云フ必要モ亦生ジテ參ルノデア
リマスルガ、併シ是ハ政府ガ本會ニ對ツテ
臨ム態度デアリマシテ、貸費ヲ受ケタ者ノ
側デ考ヘルベキコトデハナイコトハ申ス迄
モナイノデアリマス、從ッテ法案ノ趣旨トシ
テハ可ナリ緩ヤカニモ考ヘラレルヤウナ風
ニ思ッテ居リマスルケレドモ、實際ノ奬學生
側ノ問題トシテハ、是ハドウシテモ返スト
云フ態度デナケレバナラヌコトト思ヒマス、
其ノ態度ヲソレデハ促進スル爲ニドウ云フ
手段ヲ採ルカト申シマスト、是ハ結局矢張
リ是等輔導ノ宜シキヲ得ナケレバナラヌ、
或ハ奬學生ノ間ニサウ云フ精神ヲ涵養スル
爲ニ、團體ト云フヤウナ固ッタモノデハナイ
ト致シマシテモ、自主的ニ御互ニ勵マシ合
ヒナガラ返シテ行クト云フヤウナ氣風ト風
習ト云フヤウナモノヲ作リ上ゲルトカ云ッ
タヤウナ手段デ、出來ル限リ自發的ニ一人
モ理由ナキコトニ依ッテ返還ヲ怠ルト云フ
者ノナイヤウナ風ニ、コチラカラ仕向ケテ
行クト云フ方法ヲ採ル積リデアリマス、尤
モ實際施行致シマシテノ上ニ於キマシテハ、
可ナリノ程度ニ於テノ强制手段ト云フモノ
ハ用ヒナケレバ全般ノ示シニナラナイト云
フ場合モ生ジテ來ルダラウトモ思ヒマスケ
レドモ、大體今ノ心持デハサウ云フ風ニ思ッ
テ居リマス、次ニ此ノ必要ナル施設ノコト
ニ付テ重ネテノ御尋デゴザイマシタガ、之
ニ付キマシテハ、先程モ御答ヘ申シマシタ
ヤウニ、實際今日ノヤウナ狀況ニ於キマシ
テハ、東京デ就學スルト致シマシテモ、又
東京以外ノ土地デモサウデアリマスケレド
モ、第一泊ル場所ガナイ、幾ラ金ヲ貸シテ
貰ッテモ、アノ程度ノ金デハ、實際身寄カ、
特ニ知合ノ家デモナケレバ居ル場所ガナイ
ト云ッタヤウナ事例ガ可成リアルヤウニ聞イ
テ居リマス、斯ウシタ場合ニ、是ハ宿舍ヲ
一ツ本會ガ持ッテ、サウシテ是等ノ者ヲ世話
シテヤルト云フヤウナ必要モ將來ニ當ッテ
ハ起ッテ來ルノヂヤナカラウカト云フコト
ガマア主タルコトデアリマスノデ、其ノ一
例ダケヲ申シタノデアリマシタガ、併シ同
時ニ只今モ御話ガアリマシタヤウニ、實際
今ノ學生ノ現狀カラ申シマスト、食事ヲ外
食致スト云フコトニ致シマシテモ、ナカ〓〓
時間ノ如何ニ依リマシテハ、又時間ガ偶都
合ガ附イテモ、可成リ方々食べ步クト云ッタ
ヤウナ事例モナイデモナイト思ハレルノデ
アリマス、何シロ食事ノ問題等ニ付テハ、
可成リ學生等ガ深刻ニ惱ンデ居ル所モアル
ト思ハレルノデアリマシテ、是等ニ對シテ
若シソレダケノ收入アリ經費ガ許シマスナ
ラバ、或程度ノ食事ノ世話、先程モ御話ノ
通リ食堂ト云ッタヤウナモノヲ考ヘレバ考
へ得ラレルヂヤナイカ、其ノ節御心配ノ如
クニソコラハ奬學生ダケニ其ノモノヲヤッ
テ、外ノ者ニナイノハ困ルヂヤナイカト云ッ
タヤウナ御懸念モアルノデアリマスガ、ソ
レハ御尤モデゴザイマシテ、サウ云ッタヤウ
ナ場合ニ、奬學生ダケヲ他ノ學生ヨリモ峻
別シテ、ソレヲ特ニ可愛ガルト云ッタヤウナ
弊ニ陷ルガ如キ施設ヲ特別致スト云フコト
ハ思想上モドウカト思ヒマスノデ、假ニサ
ウ云フヤウナ食堂ノ如キヲ經營スルコトガ
アリマシテモ、是ハ學生誰モガ行ッテ、其處
デ食ヘルト云ッタヤウナ風ニナラナケレバ
ナラナイコトダト思ヒマスガ、併シサウ具
體的ニ申シマスト、如何ニモ本會ガサウ云
フヤウナ食堂ナリ寄宿舎ナリヲ直チニ經營
スルト云フヤウナ風ニ御取リニナル虞ガア
リマスルノデ、特ニ申上ゲナイ方ガ宜イカ
トモ思ッタノデアリマ、スガ、トモアレ、是ハ
先程モ御話ガアリマシタ如クニ、若シ本會
ガ將來斯ウシタヤウナ事業ヲヤラウト云フ
場合ニ、是ハヤレルダケノ法的ナ準備ハ、
用意ハ規定致シテ置イタ方ガ宜イヂヤナ
イカ、端的ニ申シマスレバ、サウ云ッタヤウ
ナ意味合デ玆ニ規定ヲ致シテ居ルノデアリ
マシテ、當面ニ本會ガ直チニ斯ウシタ附帶
事業的ナコトニ迄手ヲ伸バシテ行クト云フ
積リハナイノデアリマシテ、豫算トシマシ
テ國庫カラ支出致シマスルモノモ、全ク此
ノ貸費ニ對スル利子、ソレカラ事務費、ソ
レカラ政府ガ保證〓シマスノハ、預金部ノ
貸付及ビ元本ノ償還保證ト云フコトニ限局
サレテ居ル次第デアリマス、其ノ點ヲ申上
ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=26
-
027・入江貫一
○入江貫一君 今ノ御答ニ付テ多少伺ッテ
見タイコトモアリマスガ、時間ノ關係ハ如
何デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=27
-
028・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) モウ少シナラ
宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=28
-
029・入江貫一
○入江貫一君 ソレデハ、今色々詳シイ御
說明ヲ戴イテ誠ニ有難ウゴザイマス、能ク
分ッタ點モアリマスガ、尙念ノ爲ニ伺ヒタイ
ノハ、第一ノ奬學生ノ選定デアリマスガ、
一定ノ基準ヲ設ケテ推薦若シクハ、何委員
會トカ仰ッシヤイマシタガ、委員會ヲ設ケテ
鄭重ニ扱フト云フコトデアリマス、其ノ
定ノ基準ト申シマスノハ、例ヘバ學業ノ點
數トカ云フヤウナコトハ基準ハ或點迄設ケ
ラレマセウガ、品行ノ基準トカ思想ノ基準
トカ云フヤウナコトニ付テ、ドウ云フ風ニ
一定ノ基準ヲ御設ケニナリマスカ、ソレモ
チヨット了解シ兼ネルノミナラズ、其ノ學校
ノ受持ノ〓員若シタハ校長ナゾガソレ等ノ
コトヲ申出シテ、アト採擇スルモノハ直接
ニ其ノ學生ハ見モシナイシ知リモシナイト
云フ人ニナルデアラウカト思ヒマス、ナカ
ナカ之ヲ決定スルノニハムヅカシイコトデ
ハナイカト存ジマス、且先程モ申シマシタ
通リ、私トシテソンナラバドウ云フ案ガア
ルカト言ハレテモ、私ハ素人デアッテ分リマ
セヌノデ、ソレニ對シテ十分ナ確信ガアル
ト云フ御說明ヲ伺ッテ安心ヲシタイト思ッタ
ノデアリマス、諄クハ申シマセヌ、御確信
ガナイノニ斯ウ云フ案ヲ御作リニナルコト
ハナイト思ヒマス、十分御確信ガアルモノ
ト信賴致シマシテ、ソレニ依ッテ安心ヲシタ
イト存ズルノデアリマス、ドウカ、ヤッテハ
見タガドウモ工合ガ惡イ、弊害ガ起ッタ、ト
云フヤウナコトデ更ニ變ヘルト云フヤウナ
コトガナイヤウニ、是モ蛇足ナコトデアリ
マスガ、御願ヲシタイト考ヘルノデアリマ
ス、監督輔導、詰リ學生ノ監督輔導モ先程
御說明ガアリマシタ、勿論監督輔導ヲナサ
ルコトノ必要ナコトハ明カデアリマスガ、
私ノ伺ヒマシタノハ、ソレガ全國的ニ公平
ニ同ジ標準デ行ハレルカ否カ、斯ウ云フコ
トヲ伺ッタノデアリマス、是モ併シ蛇足ノヤ
ウナ質問デアラウカト存ジマスガ、是モ當
局ノ御確信ニ信賴ヲシタイト考ヘテ居リマ
ス、最後ノ點デアリマス、償還不能ト云フ
モノニ對シテ國家ガ之ヲ補償スルコトハ御
說明ニ依ッテモ明カデアッテ、又サウアラウ
カト考ヘルノデアリマス、償還困難、困難
ト云フ程度ガ甚ダムヅカシイノデアリマス、
極ク僅カナ私ノ經驗ニ依リマシテモ、モウ
少シ生活ノ程度ヲ落シタラ、此ノ位ノ償還
ハ何デモナイダラウト思フ場合モアリマス、
併シ當人ハナカ〓〓切詰メテ生活シテ居ル
カラ、サウ云フ餘裕ガナイト云フノモアリ
マス、又第三者カラ見レバ、其ノ位ノ償還
ハ出來ルダラウト思フニ拘ラズ、當人ノ主觀
カラ申シマスト、切詰メタ生活ヲシテ居ル、
ナカ〓〓サウハ行カヌト云フ場合モアルノ
デアリマス、サウ云フモノハ償還シ得ルモ
ノハ悉ク償還スルヤウナ態度ニ出ルヤウ
ニ、御指導ニナリ御輔導ニナルト云フ御考
ハ誠ニ結構デアリマスガ、其ノ標準ハ、償
還ヲ免除スルカ否カト云フ標準及ビ事實ハ
非常ニ難シイモノト考ヘルノデアリマス、
之ニ付テドウ云フ御考カ、モウ一遍伺ヒタ
イノデアリマス、ソレカラ最後ノ其ノ他ノ
施設デアリマスガ、繰返スヤウデアリマス
ガ、寄宿舍ノ如キハ想像ガ出來ルノデアリ
マス、其ノ外ニ强ヒテ想像スレバ、食堂デ
アルトカ、圖書館デアルトカ云フモノデアラ
ウ、先程モ申シマシタガ、是ハ其ノ奬學生
ノミニ限ルト云フコトハ面白クナイコトデ
アルト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス、
矢張リサウ云フ御考デ、食堂ヲ造ルニシテ
モ其ノ奬學生ノミナラズ、一般ノ學生デモ
何デモ其處デ食事ガ取レルヤウニシナケレ
バナラヌト云フ御說明デアリマシタガ、サ
ウ云フヤウナコトヲ此處デ豫想ヲセラレル
モノデアリマセウカ、先程ノ御話デハ
具體的ノ豫想ハ此處デハシナイ方ガ寧ロ宜
イト云フ御說明デアリマシタガ、ソンナラ
何故ニ外ノ仕事ヲスルノデアルト云フコト
ヲ玆ニ法文ニ御書キニナリマシタカ、髙
何カスル時ノ爲ニ法文ニ書イテ置クノ
デアル、今何モ豫想ハシテ居ラヌノデアル
ト云フコトデハ、ドウモ法文ニ御書キニ
ナッタ趣旨ガ分ラナイヤウニ考ヘルノデア
リマス、其ノ點ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=29
-
030・永井浩
○政府委員(永井浩君) 初メノ二點ニ關シ
マシテ、卽チ銓衡ニ付テ、或ハ監督ノ公平
ヲ期スルニ於テ、果シテ確信アリヤ否ヤト
云フ御問デゴザイマス、私共此處デ其ノ確
信アリト斯ウ見エヲ切ルヤウナ僭越ナ氣持
ハ持ッテ居リマセヌ、之ニ付キマシテハ極力
此ノ萬全ヲ期シタイト思ヒマスルシ、サウ
シテ又萬全ヲ期シ得ルダケノ此ノ育英會ノ
人的組織、內部ノ役員組織、職員組織等モ
進メテ居リマスノデ、是ガ御話ノ如クニ完
全ニ參ルト云フコトハ申シマセヌデモ、マア
先ヅ全ク御安心下サッテ然ルベキヤウナ風ニ
ハ參ラウト云フ風ニ信ジ得ラレマスルノデ、
此ノ點ヲ申上ゲマシテ、御答ト致シテ置キ
マス、ソレカラ償還困難ナ場合ニ付テノ御
問デゴザイマジテ、先程ハ專ラ十分ニサウ
云フヤウナ自發的ナ氣持ヲ起サシメルト云
フ所ニ賴ッテ行キ、又ソコガ國家的ナ規模ニ
依ル本會ノ如キ育英事業ノ精神的ナ據リド
コロデアルカラ、サウ申シタノデアリマス
ガ、更ニサウシタ實際ノ御體驗ニ伴ッテ、ソ
ンナコトデモ隨分色々ナモノガアルカラ、
是ハマア色々ト困ル、又ハ公平ヲ失スルト
云フモノガアルヂヤナイカト云フ御心配デ
ゴザイマス、是ハ誠ニ御尤モデゴザイマス、
無論無擔保デ貸付ニ致ス譯デアリマスガ、
貸付ニ當リマシテハ、是ハ保證人等ニ
何ト謂ヒマスカ、連帶保證ト云フヤウナ、
程ノ强イ法律上ノ效果ヲ直チニ發スルヤウ
ナ、細カナ規定ヲ持ツ所ノ連帶保證デハゴ
ザイマセヌガ、全體的ノ保證、無論其ノ時
ニハ物質上ノ問題モ含メ得ル程度ニ於テノ
保證人ト云フモノノ保證ノ下ニ貸費スルト
云フ建前デ參リタイト思ッテ居リマス、併シ
サウ申シマシテモ先程モ申シマシタヤウニ、
飽ク迄モ其ノ場合ニ保證人ノ方ヲ突イテ、
餘リ努力ヲシナイデ保證人ノ方カラドンド
ン細カク文句ヲ言ッテ取上ゲルト云ッタヤ
ウナ方法ハ致サナイ積リデゴザイマスガ、
併シ貸費スルニ當リマシテハ、サウ云ッタ
保證人ニ保證セシメルト云フコトヲ致シタ
イト思ヒマスノデ、餘リドウモ不都合ナル
理由ニ依ッテ只今御話ノヤウニ切詰メ得ラル
ル生活モ切詰メナイデ、詰リノウ〓〓トシ
テ返還ヲシナイト云フヤウナ不都合ナ例
ガアリマシタラバ、ソレ相當ナ强制的ナル
手段ヲ講ジ得ル用意ハ考ヘテ居ル次第デア
リマスノデ、此ノ事ヲ附加ヘテ置キタイト
思ヒマス、ソレカラ最後ニ必要ナル事業ノ
コトニ付テノ御話デアリマシテ、是ハモウ
再三御述ベニナリマスノデ、御答ヲ致スノ
モ失禮カト思フノデアリマスガ、此處デハ
專ラ寄宿舍ノ如キモノヲ豫想致シテ居ルノ
デアリマシテ、是等ノ事柄ト云フモノハ是
ハ本會ガ成立後ニ於テ、斯ウシタ事業ト云
フモノヲ早晩ヤラナケレバナラナイ時代ニ
到達スル性質ノモノデアラウト思ハレルノ
デアリマシテ、今直チニ其ノ具體的計畫ハ
ゴザイマセヌケレドモ、併シ早晩起リ得ル
コトニ對シテノ、之ヲヤリ得ル法規上ノ根
據ハ明定致シテ置カナケレバナラナイト云
フノデ、玆ニ規定サレマシタ次第デアリマ
ス、御答ヘ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=30
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031・入江貫一
○入江貫一君 本案ノ如キ施設ガ出來マス
コトハ是ハ大變ニ結構ナコトデ聊カノ異
議モ何モナイ、唯願ハクハ是ガ順調ナ發達
ヲシテ效果ヲ十分ニ收メルヤウニト云フ希
望カラ、只今ノヤウナ質問ヲ致シタノデアリ
マス、奬學生ノ選擇監督等ニ付キマシテモ、
委員會ナド十分ニ御銓衡ノ上ニ御作リニナ
ルト云フコトデアリマスカラ、ドウカソレ
等ノ機能ヲ十分ニ發揮シテ、公平ニ、正當
ニ本事業ガ行ハレルコトヲ祈リマス、ソレ
ニ付テハ委員ノ選定ナドモ申ス迄モアリマ
セヌケレドモ、十分ナル御注意ヲ以テ完全
ナルモノヲ御選定ニナルコトヲ切望致シマ
ス、本案ニ付キマシテノ質問ハ先ヅ此ノ位
ノ程度ニ止メテ置キタイト存ジマス、大體
ニ付テノ質問ハ時間モ過ギタコトデアリマ
スカラ、他ノ機會ニ於テ致シタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=31
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032・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 御相談ヲ申上
ゲマスガ、今日ハ此ノ程度ニ致シタイト思
ヒマス、明日午前ハ、大臣ハ樞密院ノ方ニ
御出掛ケニナルノデ御出席ガ叶ハナイサウデ
アリマス、仍テ午後一時半開會致シマシテ
少シク御勉强願ヒタイト思ヒマス、御異議
ガナケレバ左樣ニ致シタイト思ヒマス、今
日ハ是デ散會致シマス
午後零時二十九分散會
出席者左ノ如シ
委員長子爵野村益三君
副委員長男爵淺田良逸君
委員
公爵鷹司信輔君
侯爵筑波藤麿君
伯爵酒井忠正君
關屋貞三郞君
子爵松平康春君
子爵伊集院兼高君
松井茂君
入江貫一君
男爵井田磐楠君
安井英二君
男爵加藤成之君
山岡萬之助君
田所美治君
田澤義鋪君
諸橋久太郞君
野田六左衞門君
岩元達一君
國務大臣
文部大臣子爵岡部長景君
政府委員
文部次官菊池豊三郞君
文部省總務局長藤野惠君
文部省專門〓育局長永井浩君
文部省國民〓育局長阿原謙藏君
文部省體育局長小笠原道生君
文部書記官伊藤日出登君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00219440201&spkNum=32
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