1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十九年二月三日(木曜日)午前十時四十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=0
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001・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 是ヨリ開會致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=1
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002・伊集院兼高
○子爵伊集院兼高君 私ノ先ヅ伺ヒタイコ
トハ大體次ノ四點デゴザイマス、其ノ第
一點ハ、一昨日入江サンノ御質問竝ニ昨日
松井サンノ御質問中ニアリマシタノデ、重
ネテ伺フヤウニナッテ恐縮スルノデアリマス
ガ、優秀ナル者トシテノ標準竝ニ其ノ銓衡
方法ニ付テモウ少シ具體的ノ御說明ヲ承リ
タイト存ジマス、昨日岡部文部大臣ノ御說
明ニ依リマスト、單ニ秀才バカリデナク、
體力、人格等ノ優レタ者ヲ選ブ方針デアル
ト云フ風ニ承リマシタ、是ハ誠ニ御尤モナ
コトデ、特ニ人格ノ點ニ付キマシテハ、愼
重ニ銓衡サレタイト存ジマス、私ハ曾ッテ斯
ウ云フ話ヲ聞イタコトガゴザイマス、或私
立ノ專門學校デ秀才ニ對シテ授業料ヲ免除
スル特待生ト云フ制度ノアリマシタ時、
學生ハ入學以來卒業スル迄、ズット首席デ
通シ、〓員ノ間デモ評判ハ惡クナカッタノデ
アリマスガ、同級生ノ話ニ依リマスト、彼ハ
試驗ニ際シテ常ニ「カンニング」ヲシテ居ッタ
サウデアリマス、學問ガ出來ル上ニ「カン
ニング」ヲヤルノデ、良イ答案ガ書ケルノハ
當然デアリマス、又試驗監督ノ先生モマサ
カ此ノ秀才ガ「カンニング」ナドヲシヨウト
ハ思ハナイノデ、其ノ眼ヲ逃レテ居ッタト云
フ次第デアリマス、併シナガラ心アル學友
ノ間ニハ信望ガナカッタバカリデナク、一部
ノ者ハ大イニ憤慨シテ居ッタサウデアリマス、
彼ノ學校卒業後ノ動靜ハ聞イテ居リマセヌ
ガ、恐ラク立派ナ人物ニハナッテ居ラナイダ
ラウト存ジマス、又學校デハ溫和シクシテ
居テ、先生方ニ信用ヲ持ッテ居ル者ガ、家へ
歸ルト近所ノ子供達ノ餓鬼大將トナッテ惡
イタヅラヲシタリ、他人ノ住ヒノ中ニアル
果物ヲ盜ンダリ、其ノ他色々惡イコトヲス
ルノデ、近所ノ憎マレ者ニナッテ居ル者モ澤
山アラウト思ヒマス、斯樣ナ者モ亦將來有
用ナ人物トハナルマイト思ヒマス、以上ニ
述ベマシタヤウナ點ニ付キマシテハ、操行
點トカ校長ノ推薦書等ニ依ッテ之ヲ窺知スル
コトハ出來ナイト存ジマス、大日本育英會
ノ本部又ハ支部ニ作ラレマシタ銓衡委員會
ハ此ノヤウナ事柄ハドウシテ調査サレル
ノデアリマセウカ、次ニ銓衡方法デアリマ
スガ、今年度ノ國民學校卒業者デ、中等學
校ニ進學スル者ノ中カラ六千名奬學生トス
ルト云フコトデアリマスガ、其ノ銓衡基準
竝ニ女子ニモ及ボサレルサウデアリマスガ、
其ノ男子ニ對スル比率、竝ニ同樣ナ事柄ヲ
專門學校、高等學校、大學ニ付テ御說明ヲ
煩シタイト存ジマス、第二點ハ、「經濟的理由
ニ因リ就學困難ナモノ」トハ、其ノ家ガ貧困
デアルト云フコトデアリマセウガ、然ラバ
其ノ程度ヲ判定スルニハドウ云フ標準ニ依
ラルヽノデアリマスカ、ト云フ點デアリマ
ス、俸給ヤ給料等ノ收入ガ同ジ位ノ幾多ノ
家庭ニ付テ調ベテ見マスト、其ノ家族ノ人
數生活程度或ハ內職等ニ依ル內々ノ收入
等ノ關係デ、經濟狀態ハ決シテ一樣デハナ
イト思ハレマス、直接國稅ヲ納メテ居ル者ハ、
其ノ稅金額ニ依ルト云フコトモ一應考ヘラ
レマスガ、是モ矢張リ前ト同ジヤウナ關係
ニナラウト思ヒマス、ソコデ貧困ノ程度ヲ
判定スルコトガ困難ニナルト存ジマス、其
ノ具體的方法ヲ承リタイノデアリマス、尙
旣ニ中等學校以上ノ學校ニ在學中ノ者デ、
急ニ家庭ノ經濟狀態ガ惡クナッテ學資ガ續
カナクナッタ者ニ對シテハ、ドウ云フ風ニ御
取扱ニナルノデゴザイマセウカ、斯ウ云フ
ヤウナ場合ニモ貸費サレルヤウナ方法ガオ
アリデゴザイマセウカ、其ノ點モ承リタイ
ト存ジマス、第三點ハ、現存シテ居リマス各
種ノ育英會カラ貸費ヲ受ケテ居ル所謂奬學
生ノ總員數竝ニ全學徒ニ對スル比率ニ付テ
デアリマス、戴キマシタ表ニ依リマスト、
昭和十八年度ニ於キマシテハ、學徒ノ總員
數ガ一百八十八萬五千一百四十六名ニ對シ
テ、奬學生ノ數ガ一千三百二十三名、比率ガ
〇·〇七「パーセント」トアリマスガ、是ハ十
八年度ニ於テ銓衡サレタ人數デ、其ノ以前ノ
者ハ含マレテ居ラナイノデハナイカト思ハ
レマス、ソコデ總員數竝ニ其ノ比率ヲ承リ
タイノデゴザイマス、第四點ハ、現存シテ
居リマス各種ノ育英會ノ最近數年間ノ趨勢、
竝ニ是等ト大日本育英會トノ關係ノ點デゴ
ザイマス、仄聞スル所ニ依リマスト、此ノ
間、奬學生ノ數ハ次第ニ減少シテ居ルトノ
コトデゴザイマス、此ノ傾向ハ社會情勢ノ
變化其ノ他色々ノ關係ガアラウト思ハレ
マスガ、主ナル點ハドウ云フ所ニゴザイマ
セウカ、此ノ度本法案ニ依リマシテ國家ガ
保證スル立派ナ大日本育英會ガ出來マスト、
旣存ノ各育英會ノ奬學生ノ數ハ減少ノ一途
ヲ迪リ、遂ニハ其ノ存立ガ困難ナル狀態ニ
立チ到リハシナイカト存ゼラレマス、昨日
ノ大臣ノ御說明ニ依リマスト、旣存ノ育英
會ニ對シテハ大イニ助成スルトノコトデゴ
ザイマシタガ、實際問題ト致シマシテ、此
ノ漸減的傾向ハドウニモナラナイノデハナ
イカト存ゼラレマス、ソコデ之ヲ喰ヒ止メ
ルトカ、又ハ他ノ方策ヲ講ズルカ、ト云フ
ヤウナ點ヲ承リタイノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=2
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003・永井浩
○政府委員(永井浩君) 第一ハ優秀ナル學
徒ヲ擇ブ標準及ビ其ノ銓衡方法等ニ付テ色
色ト例ヲ擧ゲテノ御尋デゴザイマシタ、銓
衡方法ニ付キマシテハ、前囘申上ゲマシタ
所デゴザイマスノデ、御了承ヲ願ヒタイト
思フノデアリマスガ、特ニ例ヲ擧ゲテノ色
色ノ御心配ニ付キマシテ、之ガ主ナル御尋
ト存ジマスノデ、之ニ對シテ御答ヲ申上ゲ
タイト思ヒマス、前會モ申上ゲマシタヤウ
ニ、此ノ銓衡委員會ニ持ッテ參リマスノハ、
是ハ學校長ノ推薦ヲ致シタモノデアリマシ
テ、其ノ學校長ガ推薦ヲ致スニ付キマシテ
ハ、其ノ受持ノ〓員カラ十分ナル報〓ヲ採
リマシテ、然ル後學校長ガ十分其ノ調査ヲ
致シマシテ、銓衡委員會ニ提出スルト云フ
運ビニ致シテ居ルノデアリマス、只今御話
ノ如クニ、是迄優等生、特待生デアッタ者ガ、
調ベテ見マスト實ハ「カンニング」ヲヤッテ居
タ學生デアッタ、知ラナイノハ先生バカリデ
アッテ、友達ナド周圍ノ者ハ知ッテ居タト云
フヤウナ例ガアッテ、斯ウ云フヤウナ羽目
ニ陷ルヤウナコトハ多少ナイダラウカト云
フ御話デゴザイマシタガ、誠ニ御尤モノ御
心配ト思フノデアリマス、サウ云フ學校ノ
受持ノ先生ナリ學校ナリガ、特待生ナリ優
等生ナリト云フノガ、實ハ「カンニング」ヲ
ヤッテ居タリ、人物上面白クナイ、サウ云フ
ノガ分ラナイト云フ事態ハ、是ハ詰リ學校
〓育ノ問題デアッテ、學校〓育ノ缺陷ニ屬シ
テ居ルコトト思ヒマス、從來サウ云フヤウ
ナ御話ノヤウナ例ガ、稀デハアリマセウケ
レドモ、有リ得タコトハ、十分想像サレル
ノデアリマスガ、ソレハ從來ノ學校〓育ト
云フモノガ、單ニ學生生徒ヲ〓壇ノ上カラ
講義ヲ注ギ込ム、所謂〓壇ノ知的〓育ト云
フコトニ墮シテ居夕弊カラ齎ラサレタコト
ダト存ズルノデアリマス、是ハドウシテモ
サウ云フ風ニナッテハナラナイノデ、學校〓
育其ノモノヲ根本的ニ變ヘテ、學校〓育ニ
於キマシテハ知的ノミナラズ、眞ニ國家有
用ノ材ヲ作ルト云フ點ニ重キヲ置イテ行カ
ナケレバナラヌト云フノデ、各學校制度及
〓育內容ニ目下全面的ナ改正ヲ施シマシタ
シ、又今後モ繼續致シタイト思ッテ居ルノデ
ゴザイマス、一例ヲ取ッテ申上ゲマスレバ、
高等學校等ニ於キマシテハ、昨年ノ四月カ
ラ學科課程ノ全面的ナ改正ヲ行ッタノデア
リマス、サウシテ其ノ大體ノ仕組ハ、高等
學校ニ於ケル授業ハ、〓授ト修錬ト云フ二
ツカラ成リ立ッテ居ルモノデアル、デ此ノ修
鍊ニ於テハ生徒ノ人格、健康、此ノ二ツヲ
特ニ見ル、サウシテ此ノ修錬ニ付キマシテ
ハ、要スレバ學校ニ於キマシテ評點ヲ附ケ
マシテ、此ノ修鍊ノ成績ト〓授ノ方ノ成績
ト兩々相俟ッテ、其ノ生徒ノ全體的ナ綜合的
ナル優劣ノ判定ヲ致スト云フ風ニ內容ヲ變
ヘタノデアリマス、デ是ハ長ク申上ゲマス
トモウ少シ御分リ願フコトガ出來ルト思
フノデアリマスガ、餘リ時間ヲ取リマスノ
デ、此ノ程度デ止メマスガ、獨リ是ハ高等
學校バカリデナク、各專門學校等ニ於キマ
シテモ、各々〓授ト修鍊、詰リ知育ト體育、
德育、此ノ三者ヲ綜合的ニ見テ、人格的ナ
ル全人的ナル陶冶ヲ致スト云フコトヲ今ノ
學校ノ根本精神ト致シ、之ニ應ズルガ如ク
ニ學校ノ〓育仕組ト云フモノヲ致シタノデ
アリマス、デ全體ニ對シマシテ、學校報國
團ト云フヤウナモノヲ學校ト不離一體ノ關
係ニ置キマシテ、此ノ又報國團ニ於キマシ
テモ、〓授ガ自ラ其ノ報國團ノ組織ノ中ニ
入ッテ、各生徒々々ノ日常ノ生活迄モ十分ニ
看取ッテ行ク責任者ヲ拵ヘタリ致シテ居ルノ
デアリマス、私立學校等ニ於キマシテノ只
今ノ御心配デアリマス、是ハ誠ニ御尤モト
思フノデアリマスガ、此ノ私立學校等ニ於
テ〓育ガ行屆カナイ、人物ノ點ニ迄考へ得
ラレナイト云フハ、人數ガ多イカラト思ヒ
マス、先生ノ數ニ比シテ收容ノ人數ガ從來
非常ニ多カッタノデアリマス、ソレハ能ク調
ベテ見マスト、詰リ許サレタル定員ヨリモ
遙カニ多イ數ヲ實ハ採ツテ居ッタ、甚ダシイ
ノニナルト、定員ヨリ二倍ノ數ヲ採ッテ居ツ
タト云フヤウナ現象等ガアッタノデアリマス、
斯ウ云フコトデハイケナイト云フノデ、二
三年前カラヤカマシク申シマシテ、定員ハ
今日ニ於テハ全ク嚴守サレテ居リマス
併シマダ文科系統ノ學校ニ於キマシテハ、
兎角先生ノ割合ニ比シテ生徒ガ多過ギル
ノデアリマスガ、之ニ付キマシテハ、
今囘、ソレガ原因デハ固ヨリアリマセヌ
ガ、勞務上ノ要求、國防上ノ要求等カラ申
シマシテ、定員ノ減少ト云フコトヲ致スヤ
ウナ風ニナリマシタノモ、是ハ幸カ不幸
カ、兎ニ角斯ウ云フ〓育ノ面、生徒ノ一人
一人ニ對シテ十分眼ガ屆クト云フ面ニ
付テハ、誠ニ仕合セナ結果ニモ相成ル
カト思フノデアリマス、要スルニ學校當局
ガ自分ノ學校ノ生徒ノ人格ニ迄眼ガ行キ屆
カナイト云フヤウナコトガアッテ、育英會ニ
對スル推薦ト云フヤウナコトニ對スル眼ノ
行キ屆カナイ儘デ推薦サレルト云フヤウナ
事態ト云フモノハ、是ハ率直ニ申シマスレ
バ、育英會自身ノ銓衡ノ如何ト云フヨリモ、
學校〓育ノ行キ屆イテ居ルカドウカト云フ
コトニ歸スルコトデアリマスノデ、是ハ〓
育トシテモ大キナ問題デアリマスノデ、只
今申上ゲマシタヤウニ〓育自體、學校〓育
自體ガ斯クノ如キコト絕無ナラシメテ、苟
モ學校長ガ受持ノ先生ト十分ニ話合ッテ、銓
衡委員會ニ提出致シマシタル奬學生候補者
ニ付キマシテハ、是ハ人物ノ點迄モ十分ニ
調査ノ上デアルト信ゼラレルヤウナコトニ
相成ッテ行カナケレバナラナイコトヂヤナイ
カト云フ風ニ思フノデアリマス、サウ云フ
ヤウナコトデ育英會ノ方ト致シマシテハ、
詰リ學校長ノ推薦ト云フモノヲ十分信賴ヲ
致シ、唯其ノ推薦モ學業ノ成績バカリデナ
ク、其ノ人物ノ識見等ニ至ル迄詳シク書キ
マシタ推薦書ヲ出サセマシテ、出サセマシ
タ以上ハ、之ヲ大體ノ目安ニシ、信用致シ
マシテ、銓衡會デ色々ト判定ヲスルト云フ
行キ方デ行カナケレバナラナイノデハナイ
ダラウカト思フノデアリマス、尙此ノ奬學
生ノ數ガ極メテ少數デアリ、又其ノ奬學生
ニ對シマスル團體ガ區々ニ分レテ居リマス
ルト、トモスルト云フト、人目ヲ潜ッテ詰ラ
ナイ人間、優秀ナラザル人間ガ其ノ貸費ヲ
受ケテ居ルト云フヤウナ事態モ、往々ニシ
テ生ジ易イト思フノデアリマスガ、今囘ノ
如クニ、國家的規模ニ依ル所ノ團體デアッ
テ、ソレデ奬學生ノ數モ可ナリ多イト云フ
コトニナリマスルト、一ツノ學校カラ同ジ
ク育英會ニ依ッテ貸費ヲ受ケテ居リマスル學
生ノ數ガ自然多クナルコトダト思ヒマス、
從ッテ斯ウシタ奬學生同士ノ自ラ自治的ナル
關係モ、自治的ニ自戒自肅スルト云フ狀態
モ起リ得ルコトデアリ、自然ニ又サウ云フ
コトハ當局者ノ耳ニモ入リ易イコトデアリ
マスノデ、サウシタ御互ノ自戒、自肅、自
奮ノ關係ト云フモノモ、獎學生ノ數ガ多ク
ナレバナル程、是ハ能ク參ッテ行クノヂヤナ
イカト云フコトニ望ヲ囑シテ居ル次第デア
リマス、尙銓衡方法ニ付キマシテノ具體的
ナ標準ト云フモノニ付キマシテハ、餘リ斯
ウ一樣ニ形式的ニ行クト云フノハ如何カト
思フノデアリマス、十八年度ニ於キマシテ
財團法人大日本育英會デ貸費致シマシタ實
例カラ申シマシテモ、第一高等學校ノ生徒
デアッタト思ヒマスガ、是ハ學校ノ成績カラ
言フト良クナイ、下ノ方ノヤウデアリマス、
併シ推薦ノ理由、推薦書等カラ考ヘテ見マ
スト、此ノ一高ノ生徒ハ苦學力行ノ者デア
リマシテ、自分デ一生懸命ニ自活シ、稼ギ
ナガラ中等學校ヲ了ヘテ來タ誠ニ感心ナモ
ノナノデアリマス、サウ云ッタヤウナ關係
上、自然學業ノ成績ト云フモノカラダケ申
シマスト、其ノ學業ノ成績ノ順番ハ上ヂヤ
ナイノデス、寧ロ下ノ方デアリマス、併シ
其ノ人柄ト云フモノガ誠ニ立派ナモノデア
ルカラ、斯ウ云フ者ニ貸費シテ貰ッタラト云
フヤウナ學校ノ申出等ガアリマシテ、サウ
云フヤウナ場合ニハ、是ハ現實ニ十八年度
ニ於テモ採用ヲ致シテ居ルノデアリマス、デ
一口ニ或學校ノ十分ノ一以上ノ成績トカ四
分ノ一以上ノ成績トカ云フ風ニ機械的ニ決
メマスト云フト、是ガ今申シマシタヤウナ、
詰リ一高ノ苦學力行シテ行ッタ生徒ト云フヤ
ウナモノヲ逃ガシテシマフノデアリマシテ、
サウ云ッタヤウナ點ニ付テハ唯機械的ナ標
準デナク、十分ニ實情ヲ見テ、眞ニ是コソ
國家有用ノ人材タルベキ素質ヲ持ッテ居ル
ト云フ所デ考ヘテ參リタイト云フ風ニ思ッ
テ居リマス、要スルニ是等ノ銓衡ニ付テハ
不公平ニ渡リ、情實ニ墮シテハイケマセヌ
ケレドモ、サラバト云ッテ、唯形式的ニ流レ
テハイケナイ、能ク實情ヲ見ナガラ、ソレ
ゾレノ學校長モ亦能ク其ノ生徒ノ人物學力
等ヲ見ナガラヤッテ行ク、推薦シテ行クト云
フヤウナ方法ヲ以テ、此ノ大日本育英會ノ、
詰リ銓衡ハ運用ヲ致シテ行キタイト云フ風
ニ考ヘテアリマス、尙銓衡ノ人數ノ決定ハド
ウ云フ所デ決定シタカト云フ意味ノ御質問
デゴザイマシタガ、大體中等學校六千人ト
申シマスノハ、每年國民學校ノ初等科ヲ出
マスノガ、是ハ男子デアリマスガ、八十萬
人餘リデゴザイマス、此ノ八十萬人餘
ノ中、成績ノ大體優良ト認メラレル、詰
リ人物優秀ナリト認メラレル人間ハ、色 B
ノ計算カラ計算致シテ見タノデスガ、大
體十그パーセント」ノ程度ダト思ハレル
ノデアリマス、ソコデ是ハ八萬人餘ニナリ
やっと、此ノ中デ學資ノ支出困難ニ依ル詰リ
不進學者、學資ノ支出ガ困難デアリマスル
カラ、十つパーセント」程度ノ優良ナ國民學
校卒業者デハアルケレドモ、中等學校ヘ行
ケナイト云フ者ガ、ドノ位ノ「パーセン
テージ」デアルカト云フト、色々ナ資料ニ依ッ
テ考ヘテ見マシテ略〓其ノ六「パーセント」ノ
程度ト思ハレルノデアリマス、ソレニ依リマ
スト此ノ數ガ約五千人、ソレカラ學資支出
困難ト云フ以外ノ理由ノ中デ、是ハ後ニ說明
致シマスガ、經濟的事由ニ依ッテ其ノ進學
ガムツカシイト云フ者ガ大體一千人ト云フ
風ニ判定ヲ致シマシテ、ソコデ合計六千人
ト云フ數字ヲ計算致シタノデアリマス、專
門學校等ニ於キマシテ、是ハ平年度ノ計算
デゴザイマスガ、中等學校カラ繼續的ニ貸
費ヲ致シテ行ク者ヲ約一千人ト見、中等學
校ノ時ニハ貸費ヲ受ケテハ居リマセヌガ、
併シナガラ愈〓。専門學校ニ入ルト云フ場合ニ
ナッテハ是ハ貸費ヲ受ケナケレバ進學出來
ナイト云フ種類ノ家庭ノ子弟ヲ約四百人ト
見、合計千四百人、ソレニ多少ノ餘裕ヲ見
テ千五百人ト云フ風ニ抑ヘタノデアリマス、
高等學校ニ於キマシテモ、矢張リ專門學校
ト同樣ノ方法ニ依リマシテ千三百人ト云フ
數字ヲ抑ヘタノデアリマス、ソレカラ尙女
子ニ對シテドウスルカト云フ御話デゴザイ
マスガ、此ノ女子ニ付キマシテハ、貸費ノ
對象ニ致サナイト云フ譯デハナイノデゴザ
イマスガ、併シ今囘此ノ計算ヲ致シマシタ
計算ノ中ニハ、一應女子ノ人數ト云フモノ
ハ除外ヲ致シテ居リマス、併シナガラ只今
モ申上ゲマスヤウニ、是ハ女子ニハ貸費シ
ナイト云フ譯デハアリマセヌノデ、特ニ是
非共一ツ是ハ貸費スル必要ガアルト云フ優
秀ナ者ニ對シマシテハ、昭和十八年度ニ於
キマシテモ現ニ少數ナガラ或程度ノ女子ニ
貸費ヲ開始致シテ居ル實例ガアリマス、
第二ニ經濟的理由ニ因ル者トハ如何ナル
者デアルカ、其ノ貧困ノ度合程度ト云フモ
ノニ付テノ御尋デゴザイマシタガ、是ハ所
謂社會的ニ見テ貧困ノ階級ニ屬スル貧乏人
ノ子弟ト云フ者バカリデナク、相當中流程
度ノ生活ヲ營ンデ居ル家庭ノ子弟デアリマ
シテモ、事實優秀ナル子供ヲ數人持ッテ居リ
マシテ、是ハ何トシテモ相當進學サスコ
トガ國家的ニ見テモ必要デアルト思フヤウ
ナ、素質ノ良イ子供ヲ數人持ツテ居ル場合
ニ於キマシテハ、之ヲ皆大學ニ入レルト申
シマシテモ是ハナカ〓〓經濟上許サナイト
云フヤウナモノガ、家ガ貧困デアルト云フ
以外ノ經濟的理由ニ因ッテ貸費スルト云フ
モノニ當テ嵌ルノデアリマス、先程、後一
申上ゲマスト言ヒマシタノハ、斯ウ云フ家
庭ガ當テ嵌ルノデアリマス、ソレデ其ノ一
一ノ標準ニ付テ、或ハ直接國稅ニ依ルカ、
或ハ內職ノ收入ノ調査ト云フノモ程度ニ入
レルカト云ッタヤウナコトノ御尋デゴザイ
マシタガ、是モ實ハ餘リ形式的ナ標準ヲ示
スト云フコトニナリマスト、却テ制度ガ死
ンデ參リマス、其ノ點ニ付キマシテハ十分
ニ一ツ實情ヲ見マシテ、一應ノ形式標準ハ
立テナケレバナリマセヌケレドモ、併シ其
ノ邊ニ付テハ可ナリ裕リモアリ、實情ニ適
スルト云フヤウナ方法デ判斷ヲ致シテ行キ
タイト思フ次第デアリマス、ソレカラ在學
中ニ、急ニ家庭ノ經濟的狀況ガ惡クナッタ
者ニ對シテ如何ニスルカト云フコトデゴ
ザイマシタガ、是等ノ者ニ對シマシテハ、
矢張リ出來ルダケ育英ノ對象ニ致シテ行キ
タイト云フ風ニ考ヘテ居ル次第デアリマス、
ソレカラ第三點トシテ現在ノ育英團體ニ
依ッテ貸費若シクハ給費ヲサレテ居ル總人
員ハ幾ラデアラウカ、ソレガ現在ノ學徒ニ
對スル比率如何ト云フコトデアリマスガ、
是ハ後程調ベマシテ御屆ケ致シマス、第四
點ノ現存ノ各種育英會ノ最近數年間趨勢
ハドウ云フモノデアルカト云フ御尋デゴザ
イマシタガ、最近色々斯ウシタ育英團體ノ
話ヲ聞イタリ、中ニハ色々ト我々ノ所ヘモ御
相談ニオイデニナル方等ガアルノデゴザイ
マスガ、大體斯ウシタ育英團體ハ、基本財產
ガアリマシテ、其ノ基本財產ノ利子收入デ
以テ其ノ限度ニ於キマシテ育英ヲ致シテ居
ラルヽ向ガアルノデアリマス、處ガ目下公
債其ノ他ノ利子ノ低下ニ伴ヒマシア、可ナ
リ斯ウシタ事業資金ニ困ッテ、減少サレテ
居ラルヽ向モアッタリ致シマス、又一面此
ノ世ノ中ノ景氣モ、或方面デハ非常ニ好イ
爲ニ、育英團體ノ御世話ニナラウトスル人
人ノ人數ガ餘リ多クナラナイト云フヤウナ傾
向モ亦アルカノ如クニ考ヘラレマス、旁〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
以テ是等育英團體ノ事業ガ近年ハ多少縮
小ノ傾向ニアルト云フコトハ御話ノ通リ
デアラウト、私ハ思ツテ居リマス、併シ
斯ウシタ大日本育英會ガ特殊法人トシテ出
來マシタ後ニ於キマシテ、斯ウシタ育英團
體トノ關係ハドウデアラウカ、此ノ大日
本育英會ガ出來マシタ爲ニ、非常ニ斯ウ
シタ育英團體ノ事業ノ繼續ト云フモノニ影
響ヲ來シハシナイダラウカト云フ御心配デ
アリマスガ、是ハ成ル程サウ云フヤウナ御
心配ノ事態モ起リ得ルト思フノデアリマス
ガ、又是ハ色々能ク御話合ヲシテ行ッタリ、
連絡ヲ取ッテ參ッタリ致シマスレバ、兩々相
俟ツテ、却テ又全國的ナ統一モ出來テ、事
業モ好ク參ッテ行クノヂヤナイカト云フヤウ
ナ點モ亦考ヘラレルノデハナイカト云フコ
トハ昨日モ大臣ヨリ御話アリマシタ通リ
デアリマス、先般本委員會ニ於キマシテモ、
貸費、給費等ノ問題ガ出タノデアリマシタ
ガ、此ノ國家的規模ニ依リマスル多勢ニ對
シテ育英ヲ致シマスルヤウナモノニ付キマ
シテハ、我々ハドウシテモ貸費デ行クベキ
ダト思フノデアリマスガ、舊藩黌ヲ中心ニ
シ、或ハ地方ノ有力者ヲ中心ニシテ、小規
模ナガラ傳統ト精神トヲ以テ長年ノ歷史ヲ
以テヤッテ居リマスルヤウナ育英團體等ニ
於キマシテハ、是ハ給費ト云ッタヤウナモ
ノデ行クノモ一ツノ方法デアラウカト思ヒ
マシテ、私共ノ所ニ御相談ニ見エマシタ人
達ニモ、サウ云フコトヲ御話致シテ居ッタノ
デアリマス、ソレカラ又昨日大臣カラモ御
話ガアリマシタヤウニ、此ノ大日本育英會
デハ、ドウモ貸費ノ對象ニナリニクイガ、
何トカシテ是ハ貸費ニシテヤリタイト云フ
種類ノ此ノ學生、生徒モ居ルノデアリマス、
斯ウ云ッタヤウナ方面ニ、詰リ特殊ノ場合。
ニ此ノ貸費ヲスルト云フコトモ一ツノ方法
デアラウカト思ヒマス、兎マレ斯ウシタ在
來ノ長年ノ傳統、歷史ヲ持ッテ居リマス育
英〓體トシテ、十分ニ能ク聯繫ヲ保チマシ
テ、一方ニ於テ斯ウシタ國家的規模ニ依ル
相當大規模ノ育英ヲヤリマスルト共ニ、
方ニ於テ精神ヲ中心ニシ傳統ヲ中心ニシテ
ヤッテ參リマシタ旣設ノ、旣存ノ各種ノ育英
團體ノ其ノ長所ヲ活カシテ參ルト云フコト
三、十分ノ力ヲ致シタイト考ヘテ居ル次
第デアリマス、少シ長クナリマシタガ、右
御答辯申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=3
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004・伊集院兼高
○子爵伊集院兼高君 只今ノ政府委員ノ御
答辯デ大體了承致シマシタガ、第一ノ人格
ノ點ニ付キマシテ、今年高等學校ノ〓授要
綱及修鍊要綱ト云フモノガ作ラレマシテ、
學科バカリデナク修鍊ニモ重キヲ置イテ、
特ニ修鍊ニアリテハ人格ノ陶冶、健康ノ增
進ノ二點ニ重キヲ置イテ居ルト云フ御話デ
ゴザイマシタガ、是ハ誠ニ結構ナコトデゴ
ザイマス、此ノ修鍊要綱ノ解說ニ其ノ目標
カ示シテアルノデゴザイマスガ、是ハ大變
ムヅカシイ言葉ヲ使ッテアッテ、チヨット我
我ニハ分リニクイヤウヲ點ガアルノデゴザ
イマス、今御參考迄ニチヨット讀ンデ見マス
ト、「浮上ッタ理論遊戯カラ端的ナ實踐實行
ヘ、斷片的分裂的生活カラ國家ヲ本位トス
ル統合的相卽的生活ヘ、ト云フノガ修鍊要
綱ノ首尾一貫シタ目標デアル」、斯ウ云フ風
ニ御示ニナッテ居ルノデアリマス、之ヲ讀
ミマシテチヨットドウ云フコトダカ直グ判
斷ガ出來ナイノデアリマスガ、此ノ點ヲモウ
少シ承リタイト存ジマス、ソレカラ銓衡方
法ニ付キマシテハ、裕リノアルヤウナ方法
ヲ講ズルトノ御話デアリマス、是モ大變結
構デアリマスガ、サウ致シマスト、場合ニ
依ルト情實ニ囚ハレルト云フヤウナコトモ
起ッテ來ヤシナイカト思ヒマス、此ノ點特ニ
御注意願ヒタイト思ヒマス、銓衡委員會ニ
於キマシテモ、單ニ色々ノ調書等ノ書類ノ
上ノ銓衡デナク、矢張リ直接ニ本人ニ會ッ
テ「メンタルテスト」ノヤウナモノデモ行フト
云フヤウナ方法ヲ御採リニナルト云フヤウ
ナ御考ハナイデアリマセウカ、此ノ點モ承
リタイト存ジマス、ソレカラ旣存ノ育英會
ニ對スル御取扱ハ、昨日ノ大臣ノ御話、又
只今ノ政府委員ノ御說明デ、大體了承致シマ
シタガ、是モ大日本育英會ノ方ガ非常ニ貸
費額ガ多イト云フ點デ、旣存ノ方カラドン
ドンソチラヘ走ルト云フヤウナ心配ガ非常
ニアラウト思ヒマスガ、此ノ點ニ十分御注
意願ヒタイト思ヒマス、只今申上ゲマシタ
コトニ對シテ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=4
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005・永井浩
○政府委員(永井浩君) 高等學校ノ修鍊要
綱ニ付テ只今御尋ヲ受ケタノデアリマスガ、
高等學校ノ修鍊要綱ニ付キマシテハ、只今
御讀上ゲ下サッタノハ恐ラク是ハ解說書ノ
所ト思ヒマス、此ノ修鍊要綱其ノモノニ付
キマシテハ、今ノ文句ヲ使ッテ居リマセヌ
ガ、是ハ之ヲ取扱フ〓授ニ、能ク頭ニ入レ
ルヤウナ風ニ解說ヲ致スト云フ意味デ解說
書ノ文句ニ使ッタノデアリマス、是ハドウモ
其ノ解說書ヲ書キマシタノハ、高等學校ノ
修鍊要綱ノ作成ニ當リマシタ者ガ書キマシ
タノデアリマシテ、恐ラクサウ云ッタヤウナ
解說上ノ文句ガ、現在ノ高等學校ノ〓授ニ
ハ一番ピッタリシテ、言ハムト欲スル所ガ分
ルト云フノデ書イタノダラウト思ヒマス、
一般ニ出シテ居リマスル修鍊要綱ニ於キマ
シテハ、只今ノ文句ハ使ッテ居ラナイコトヲ
御了承願ヒマス、ソレカラ次ニ色々大日本
育英會ノ銓衡方法其ノ他ニ付キマシテノ御
注意ノ點ハ、謹シンデ拜聽致シマシテ、御
趣旨ニ副フヤウ極力努メタイト思ヒマス、
何シロ是カラ出發ヲ致シテ行クモノデアリ
マスノデ、實際ヤッテ見マスルト色々ナ問題
ガ起ッテ、色々ト方法ヲ考ヘテ行カナケレバ
ナラナイコトガアルト思ヒマス、御注意ノ
點ニ付キマシテハ十分ニ拜承致シマシテ、
御希望ニ副フヤウナ取扱ヲ致シタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=5
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006・伊集院兼高
○子爵伊集院兼高君 只今ノ御答辯デ育英
會ニ對スル方ハ大體了承致シマシタガ、先
程申上ゲマシタ高等學校ノ〓授要綱竝ニ修
鍊要綱ノ解說ニ付テ少シ承リタイ點ガゴザ
イマス、此ノ解說ニ付キマシテハ、只今讀
ミ上ゲマシタ修鍊要綱ノ目標、是バカリガ
ムヅカシイ言葉ガ使ッテアルノヂヤナクテ、
他ニモ色々大變ムヅカシイ言葉ガ使ッテゴ
ザイマシテ、我々ニ分リニクイヤウナ所ガ
アルノデゴザイマス、ソレカラ又博物ノ所
デ、物質交代、是ハ從來ノ物質代謝デアル
ト云フ風ニ御說明ニナッテ居リマス、我々學
生時代ニハ物質代謝ト云フ言葉デ習ッテ居ツ
タノガ、今度ハ又物質交代ト云フ風ニ表現ガ
變ッテ居リマス、ソレカラ又成長ト云フ字
ガ、我々ノ學生時代ニハ「成」ト云フ字ニ「長」ト
云フ字、只今ノト同ジデアリマシタガ、途
中デ「生」ト云フ字ニ「長」ト云フ字ニ變リマシテ、
今度又「成長」ト云フ風ニ昔ニ戾ッタ、サウ云フ
風ニ學術的ナ言葉ガチヨイ〓〓變ルト云フ
ノハ面白クナイコトヂヤナイカト思ヒマス、
斯ウ云フ點ニ付テドウ云フ風ニ御考ニナッテ居
ラレルノデアリマセウカ、ソレカラモウ一
ツ伺ヒタイノハ、高等學校、專門學校以上
ノ學徒ニ對シマシテ、情操的ノ〓育ガ今殆ド
行ハレテ居ラナイト思ハレルノデアリマス
ガ、之ニ關シマシテハドウ云フ御考ヲ持ッテ
オイデニナルノデゴザイマセウカ、現今ノ
ヤウナ苛烈ナ戰時下ニ於キマシテ情操的〓
育ト云フヤウナコトヲ申上ゲマスト、一面
不必要ナヤウニモ御取リニナルカモ分ラナ
イノデゴザイマスガ、昔ノ武人等ニ於キマ
シテハ、陣中ニ於キマシテ或ハ歌ヲ作リ詩
ヲ詠ミ又舞ヲ舞ッタリ笛ヲ吹イタリ、サウ云
フヤウナコトヲ行ッタ事例ガ澤山アルト存ジ
マス、是ハ戰爭中ニ於キマシテ、始終緊
張バカリシテ居ルト云フコトハ出來ナイノ
デ、場合ニ依ルト其ノ緊張ヲ緩メル、詰リ
馬ニ乘ッテ居リマシテモ手綱ヲ緊メッ放シデ
ハ馬ガ言フコトヲキキマセヌノデ、或場合
ハ緩メル、又緊メル、ソレデ非常ニウマク
行クト云フヤウナ譯デアリマスカラ、矢張
リ戰爭中ニアリマシテモ、餘リ緊張バカリ
サシテ心ノ裕リト云フモノガナクナッテシマフ
ト云フコトハ非常ニ面白クナイト思フノデ
アリマス、其ノ點ニ付キマシテ是非情操〓
育ト云フコトヲ私ハヤッテ戴キタイト思フノ
デアリマス、具體的ニドウト云フコトハ申
シマセヌガ、何カ文部當局ニ於カレマシテ
ハ、ソレニ對シテ御考ニナッテ居ラレルデ
ゴザイマセウカ、其ノ點ヲ承リタイト存ジ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=6
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007・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 只今ノ〓育
ノ內容ニ付テノ御造詣ノアル御言葉、傾聽
致シマシタ、解說ノ書キ方等ニ付キマシテ
詳シク御說明申上ゲマスト非常ニ時間ヲ取
リマスカラ、是ハ一ツ別ノ機會ニ讓ッテ戴キ
タイト思ヒマス、又情操ノコトニ付キマシ
テハ、修鍊等ニ於テ相當其ノ點ハ重視シテ
居ルノデアリマシテ、全ク御說ノ通リ唯緊
張シッ放シデハ、決シテ是ハ本當ノ〓育ノ
效果ガ擧ガリ有用ナ人材ヲ作ル所以デハゴ
ザイマセヌカラ、是等ノ點ニ付キマシテ
ハ、十分〓育ノ面ニ於テハ何レノ學校ニ於
キマシテモ相當考慮ヲ拂ッテ居ルノデアリ
マス、色々又具體的〓育ノ御意見ハユック
リ拜聽サシテ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=7
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008・伊集院兼高
○子爵伊集院衆高君 只今ノ御答辯デ了承
致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=8
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009・安井英二
○安井英二君 私ハ數日前ニ本委員會ニ於
キマシテ、文部大臣カラ一般文政ニ付テ御
述ニナリマシタ其ノ事ニ關聯シマシテ、若
千御尋ヲ致シタイト思ヒマス、御尋ネ致シ
タイコトハ、三點デアリマスガ、實ハ私ハ
平素社會ノ各方面ニ於キマシテ、緣ノ下ノ
力持ヲ致シマシテ非常ニ苦勞ヲシテ居ラレ
ル方々ニ努メテオ目ニ掛ッテ御話ヲ伺ッテ居
ルノデアリマスガ、今日御尋ネ致シマスル
コトモ、私ノ申上ゲ方ハ雜駁デアリ、事柄
ニハ大小ガゴザイマセウガ、基ク所ハサウ
云フ點ニアルト云フコトヲ豫メ御了承ヲ願
ヒタイト思ヒマス、時間ノ關係上極メテ切
詰メテ申上ゲマスルシ、御答辯モ結論ダケ
デ結構デゴザイマス、第一ハ靑少年工ノ
〓育ト竝ニ生產ト〓育トノ一體化ト云フコ
トニ付テ御尋ネ申上ゲタイ、今日時局ガ重
大デアレバアル程、戰時ノ急ニ應ジマスル
爲ノ〓育、訓練ガ重大トナッテ來ルコトハ申
ス迄モナイノデゴザイマスガ、殊ニ今日戰
力增强ガ一日モ忽セニスベカラザル急務デ
アレバアル程、其ノ戰力增强ヲ本當ニ實現
スル爲ニハ、人間ガ基礎デアリ根幹デアル
コトニ注目シナケレバナラヌト考ヘルノデ
アリマス、人間ガ良クナイト仕事ノ品質ガ
低下シ、生產ノ成績ハ到底擧ガリ得ナイカ
ラデゴザイマス、而シテ今日工場ニ於キマ
シテ、全勞務者ニ對スル靑少年工ノ割合ハ
益〓大キクナッテ參リマシテ、其ノ〓育問題ハ
極メテ重大ト相成ッテ居リマス、然ルニ動ト
モ致シマスルト、生產ノ增强ト〓育トガ相
反スル如ク考ヘラレ、工場ニ依リマシテハ、
靑年學校ノ存在ハソレダケ生產ノ障碍トナ
ルヤウニ論ズル者ガアルノデゴザイマス、
殊ニ經營者ニ其ノ人ヲ得ナイ、能率ノ擧ラ
ナイ工場ニ於キマシテ、斯樣ナ意見ガアル
ヤウニ聞イテ居ルノデゴザイマス、之ニ反
シテ立派ナ成績ヲ擧ゲテ居リマスル良イ工
場デハ〓育ニ非常ニ力ヲ入レテ居リマス、
良イ工場デハ、何レモドウスレバ良イ人間一
ヲ養成スルコトガ出來ルカト云フコトニ苦
心努力ヲ致シテ居リマス、良イ工場デハ
私ノ工場ハ〓育ノ御蔭デ良イ成績ヲ擧ゲテ
居ル、斯樣ニ申シテ居ルノデアリマス、是
等ノ良イ工場デハ如何ニシテ人材ヲ養成ス
ルカト云フコトニ、〓育者ト同ジ、若シク
ハソレ以上ノ感激ト樂シミヲ持ッテヤッテ居
ルノデアリマス、斯樣ニ良イ人間ヲ作ラウ
ト努力致シテ居ルノデアリマスルカラ、期
セズシテ良イ者ガ出來テ、生產ノ成績モ格
段ニ宜シイノデゴザイマス、固ヨリ形式的
ナ、格好ヲ付ケルニ過ギナイヤウナ〓育デ
アリマスレバ、無論生產ノ邪魔ニナルデ
ゴザイマセウガ、本當ノ〓育デアリマスレ
が、ソレハ生產增强ニ非常ナ貢獻ヲナシ得
ルト云フコトハ現ニ實績ノ示シテ居ル所デ
ゴザイマス、固ヨリ〓育ヲ重ンズルト申シ
マシテモ、ソレハ今日ノ情勢ニ應ズベキコ
トハ當然デアリマスカラ、必ズシモ時間ヲ
長クスルトカ、設備ヲドウスルトカ云フヤ
ウナコトデハナイノデアリマシテ、本當ニ
工員ヲ、勤勞者ヲ育テ上ゲルト云フ誠意ト
熱トヲ持ッテ居ルコトガ根本デアルノデアリ
マス、斯樣ナ者ニ取リマシテハ、到ル處〓
場デアリ、往ク所道場トナルト思フノデア
リマス、斯樣ナ所ニ於キマシテハ、生產ノ
爲ニ〓育ヲ犠牲ニスルトカ、又〓育ノ爲ニ
生產ヲ犠牲ニスルト云フヤウテ問題ハ起リ
得ナイノデアリマス、寧ロ〓育ト生產トガ
有機的ニ融合シテ一體トナリ、兩者共效果
ガ擧ルノデアリマス、尙更ニ進ミマシテ、單
ニ靑少年工ノ〓育ト云フコトダケニ止リマ
セヌデ、工場ノ經營ソレ自體ニ付キマシテ
モ、ソレガ單ナル營利事業デナク、〓育的
ナル經營ガ必要ニナッテ來タヤウニ思フノデ
アリマス、此ノ意味ニ於キマシテ私ハ今日
生產經營ト〓育トガ一體化サレルコトガ急
務デアルト思フノデアリマス、モウ少シハッ
リ申シマスレバ、工場ノ經營ソレ自體ガ〓
育勅語ノ御精神ヲ遵奉シテ、其ノ實行ニ努力
スルノデナケレバ、到底今日ノ國家ノ要請
スル所ニ應ズルコトハ不可能デアルト考ヘ
ルノデアリマス、若シ此ノ點ニ經營者ガ留
意シ努力致シマスルナラバ、生產力ハ劃期
的ニ增大スルト私ハ確信スルノデゴザイマ
ス、此ノ意味ニ於キマシテ企業生產者ノ責
任ハ、其ノ工場ニ於ケル〓育責任者タルノ
自覺ト責任ヲ持タシメルコトガ決戰下ノ今
日急務デアルト思フノデアリマス、此ノ事
ハ單ニ全勞務者ニ對スル靑少年工ノ割合ガ
增大シタトカ、又女子ノ勤勞挺身隊ヤ、又
中學三年以上ノ靑少年學徒ガ、比較的長期
ニ涉ル勤勞動員ニ依ッテ工場デ勞働サレル、
ト云フコトダケノ理由ニ止マラナイノデア
リマシテ、刻下非常時ニ於キマシテ生產ノ
質竝ニ量共ニ之ヲ最高度ニ發揮スル爲ニ、
私ハ必要ダラウト考ヘル者デゴザイマスル
ガ、是等ノ點ニ付キマシテ文部大臣ノ御所
見ヲ伺ヒタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=9
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010・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 今御述ニナ
リマシタ點ニ付テハ全然御同感デゴザイマ
シテ、實ハ衆議院ノ豫算總會ニ於テモ同樣
ノ質問ガアリマシテ、私其ノ時ニ御答ヘシ
タノハ、只今御述ニナッタ通リノコトヲ實ハ
述ベタノデアリマシテ、玆ニ繰返シテ申上
ゲル必要ハナイト考ヘマス、ソレニ付キマ
シテ唯具體的ナ問題トシテ、如何ニ靑年學
校ノ〓育ヲ重視シテ居ルカト云フ點ニ付テ
申上ゲタイト思ヒマスルガ、今回提案致シ
マシタ靑年學校〓育費國庫補助法中改正法
律案、是ガ其ノ一端ヲ現スモノデアリマシテ、
從來靑年學校〓育費ハ、其ノ費用モ十分デア
リマセヌシ、ノミナラズ國庫トシテハ補助
ヲシテ居ラナカッタノデアリマスガ、今囘ノ
改正ニ依リマシテ〓員ノ給與其ノ他ノ費用
ノ半額ヲ國庫ニ於テ補助スルコトニ致シマシ
タ結果、約一千萬圓ノ金額ガ增ス譯デアリ
マス、又是ハ從來市町村立ノ靑年學校ニ限ッ
テ居ッタノデアリマスガ、今囘更ニ之ヲ都道
府縣立ノ靑年學校ニ範圍ヲ擴ゲタ次第デア
リマシテ、靑年學校〓育ノ充實ト云フコト
ハ、確カニ此ノ戰時下、殊ニ增產上必要ナ
ルコトハ我々モ痛感シテ居ルノデアリマス、
尤モ只今御話ノヤウナ無理解ナ者モ確カニ
アルノデアリマスガ、サウ云フ者ニ對シマ
シテハ又思想方面或ハ其ノ他ノ啓發等ニ依
リマシテ、サウ云フ間違ッタ考ヲ一掃スル
ヤウニモシテ行カナケレバナラヌト思ッテ
居ルノデゴザイマシテ、別途ニ要求シテア
リマス思想對策施設ニ要スル經費ノ中ニ於
キマシテモ、企業者ニ對スル啓發宣傳、指
導ト云フコトモ今後ハ致シテ參ル考デゴザ
イマス、ソレカラ尙靑年學校〓員養成所ガ、
從來ハ各府縣ニアリマシタノデアリマスル
ガ、之ヲ今囘ハ官立ノ靑年師範學校ト云フ
モノニ改メルコトニナリマシテ、是ガ來年
度カラ寳施セラレルト云フコトニナッテ居ル
ノデアリマスガ、此ノ經費ニ付テモ相當ノ
費用ヲ要求致シテ居ルノデアリマシテ、是
亦靑年學校ノ〓育ヲ國家トシテハ本格的ニ
採リ上ゲテ、今後ハ益〓其ノ充實ヲ圖ルト云
フ方針デアリマス、ソレカラ又學徒ノ勤勞
ニ付キマシテハ、所謂〓育ト生產トノ一體
化ト云フコトヲ狙ッテ居リマシテ、學校ノ〓
員校長或ハ其ノ他關係ノ視學官ト云フヤ
ウナ者ニ軍需監理官ヲ兼任セシメ、或ハ勞
務監理官ヲ兼任セシメルコトニ致シマシテ、
學徒ノ勤勞、靑少年工ノ生產ヲ、〓育的意
味ヲ以テ徹底シタ指導ヲスルト云フコトニ
閣議決定ヲ致シタヤウナ次第デアリマス、
又會社ノ方ノ色々關係ノ係員ト云フヤウナ
主ナル者ヲ、文部省或ハ地方廳ノ囑託ニ致
シマシテ、是亦學徒靑少年工等ノ勤勞ニ對
シテ、會社經營側ニ於テ十分注意ヲ拂ッテ貰
フヤウニ措置スルコトモ、閣議決定ヲ致シ
タヤウナ譯デアリマス、尙又技能者養成令、
是ハ從來厚生省デヤッテ居リマシタガ、之モ
矢張リ靑年學校ニ一本ニシテヤッテ行クコト
ニ大體今準備ヲシテ居ル譯デアリマス、此
ノ工場ニ於ケル生產ト〓育トノ一體化ト云
フコトニ付テハ、尙モット徹底シタル責任者
ヲハッキリ致シマシテ、其ノ方ノ效果ヲ十分
ニ擧ゲルコトヲ考ヘナケレバナラナイノデ
アリマシテ、御說ノ通リ今日ノ工場ノ職工
勤勞者ト云フモノハ大部分ガ靑年男女エデア
リマシテ、是等ハマダ何ト申シマシテモ發
育盛ノモノデアリマスカラシテ、之ヲ唯放ッ
テ置イテ使フヨリハ、矢張リ〓育ヲシテ其
ノ素質ノ向上ヲ圖リツヽ働カセルト云フコ
トガ、實際生產ノ上ニ於テノ效果ニ著シイ
相違ガ出テ來ルコトハ御話ノ通リデアリマ
ス、ソレニ對シテハ文部省ト致ジマシテモ、
今後ハ〓育ガ實際ノ方ニ非常ニ進出シテ、
實生活或ハ生產面ト〓育ト云フモノヲ常ニ
一ツニシテ考ヘナケレバナラヌト云フ風ニ、今
文部省ニ於テモ〓究シテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=10
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011・安井英二
○安井英二君 文部大臣カラ御同感デアル
ト云フ御話デゴザイマスノデ、餘リ是以上
申上ゲル必要ハナイト思ヒマスガ、只今申
上ゲマシタコトハ、靑少年工ノ〓育ノコト
ト、更ニ進ンデ生產ト〓育トノ一體化ト云
フコトニ付テ申述ベタ質問デアリマス、
應ハ衆議院ナドニ於キマシテノ論議モ拜見
シタ積リデアリマスガ、重複ヲ避ケテ申上
ゲタ積リデアリマス、併シ之ニ付テハ是以
上申上ゲマセヌ、要スルニ、殊ニ後段ニ述
ベマシタ生產ト〓育トノ一體化ト云フコト
ハ、丁度政〓一致ト云フコトガ今日必要デ
アルト言ハレテ居リマス、ソレト同ジヤウ
ナ意味ニ於キマシテ、工場ノ經營ト〓育ト
ハ一體化シナケレバナラヌト云フコトヲ深
ク感ズルカラデアリマス、殊ニ此ノ問題ハ
苛烈ナル決戰段階ノ今日ニ於キマシテ、ド
ウスレバ生產力ノ增强ヲ爲シ得ル力ノ緊急
當面ノ問題トシテ、少シ誇張シテ申シマス
ト、二ツノ相反スル考ガ今日產業界ニ現レ
テ居ルノデアリマス、其ノ一ツハ工場管理、
或ハ勞務管理ヲ、主トシテ權力的手段ニ
依ッテ、或ハ主トシテ金錢物資デ釣ルト云フ
ヤウニ、唯物的考ヘ方ニ重キヲ置クノガ一
ツデアリマス、モウ一ツハ本當ニ勤勞者ヲ
育テ、必ズシモ其ノ權力ヤ物質ヲ排斥スル
ノデハゴザイマセヌケレドモ、主トシテ勤
勞者ヲ育テ上ゲルト云フ、斯ウ云フコトニ
重キヲ置クノデアリマス、謂ハバ正道ト申
シマスカ、或ハ〓育的ト申シマスカ、今日
之ガ本當ニ成績ヲ擧ゲテ居ル工場ハ固ヨリ
其ノ通リデアリマス、當業者モ非常ニ惱ン
デル問題デアリマスト云フ、實際ノ體驗ニ
基ク訴ヘヲ始終聞イテ居ルノデアリマス、
サウ云フ意味デ申上ゲタノデアリマシテ、
是ハ必ズシモ文部省ノ御所管デアルカドウ
カ分リマセヌガ、厚生省ノ御所管カモ知レ
マセヌガ、併シ只今大臣モ御述ニナリマシ
タ通リ、又本委員會ニ於キマシテモ、亦衆
議院ノ委員會ニ於キマシテモ、繰返シテ文
部省ガ思想ノ推進力ニナッテ努力シタイト
仰セニナリ、又皇國生活觀、皇國勤勞觀、
皇國經營觀ナドニ付キマシテモ、何レモ文
部省ガ相談ヲ受ケテ參畫シテ居ルト云フ、
斯ウ云フ誠ニ有難イ御話デゴザイマシタノ
デ、特ニ此ノ問題ヲ申上ゲテ格段ノ御盡瘁
ヲ願ヒタイ、私ハ必ズシモ今迄論ゼラレタ
コトヲ重複シナイ積リデ申上ゲマシタガ、
是レ以上申上ゲマセヌガ、若シ御暇ガゴザ
イマスレバ引續イテ御考ヲ戴キマスレバ結
構ダト存ジマス、後ハ小サイ問題デゴザイ
マスノデ一括シテ申上ゲマス、今日闇取引
ノ橫行ヤ、其ノ輕佻浮薄ナル社會環境ノ中
ニアリマシテ、本當ニ國ヲ憂ヘ、道義確立
ノ爲ニ懸命ノ努力ヲ致シツヽアル國民學校
ノ先生方ニ、私ハ御目ニ掛カリマス每ニ、
何ト感謝シテ宜イカ、其ノ言葉ヲ知ラナイ
ノデゴザイマス、是等ノ先生方ハ日々夜々
反省修養シテ、道義的勇氣ヲ振ヒ起シテ、
一路其ノ職分トスル所ニ邁進シテ居ラレル
ノデアリマス、從ッテ是等ノ先生方ハ、精神
的ニ又ハ物質的ニ待遇ノ好クナイト云フヤ
ウナコトニハ、何等苦情ハ申シテ居リマセ
又、唯ドウスレバ此ノ軍國非常ノ時ニ於キ
マシテ前線ノ將兵ト同樣ノ意氣込ミデ、本
來ノ〓育其ノモノニ沒頭スルコトガ出來ル
カト云フコトダケデゴザイマス、從ッテ今日
國民學校デ中央ヤ地方ノ役所カラ命ゼラレ
マスル煩瑣ナル各種ノ統計トカ調査トカ、
又其ノ地方ニ於キマスル形式的ナ各種ノ會
合ニ出席ヲ餘儀ナクセラレマシテ、非常ナ
ル勞力ト時間トヲ奪ハレルコトハ、誠ニ情
ケナクテ仕樣ガナイト云フノガ、是等ノ方々
ノ今ノ衷心ノ叫ビデゴザイマス、殊ニ今
日國民學校ノ先生ノ多數ハ、或ハ應召シ、
或ハ產業界ニ轉職致シマシテ、其ノ補充ハ
女ノ先生ヲ以テシテ居ル、最近ハ女ノ先生
ガ非常ニ增加シテ、恐ラク全體ノ七割乃至
八割ニ及ンデ居ラウカト存ジマス、而モ是
等ノ女ノ先生方ハ、女子師範ノ卒業生ハ極
テ少イ、多クハ女學校出身ノ臨時〓員デア
ル、從ッテ其ノ校長ヤ男ノ先生方ガ、々
指導シナケレバナラヌト云フヤウナ實情ニ
ナッテ居ルノデアリマス、無論狡イヤリ方ヲ
致シマスレバ、本來ノ〓育ノ方ハ幾ラデモ
手ヲ拔キマシテ、監督官廳ノ調査ヤ統計ニ
專念シ、又各種會合ニモ御附合ヒヲ致シマ
シテ、御覺エヲ目出度クスルト云フコトハ
譯ノナイコトデゴザイマスケレドモ、科、
ソレヲ最モ惧レルノデアリマス、私ハ總テ
ノ調査ヲ廢シテ、又會合ニ絕對ニ出ナイト
云フヤウニセヨト云フ所存デハゴザイマセ
ヌ、今日ノ苛烈ナル戰時下ニ於キマシテ、
絕對已ムヲ得ザルモノダケニ止メテ戴キタ
イノデアリマス、然ラザルモノハ戰時下ナ
ルガ故ニ、之ヲ割愛シテ簡素化ニスルヤウ
ニ御願ヒヲ致シタイノデアリマス、文部省
ノ行政簡素化ハ、是非第一線タル此ノ國民
學校ノ事務ニ及ブヤウニ御盡瘁ヲ願ヒタイ、
斯樣ニ考ヘルノデゴザイマス、ソレカラ第
三ノ問題ハ、今日有ラユル方面ニ亙リマシ
テ、綜合的ニ有機的ニ結ビ付ケテ最高度ニ能
率ヲ發揮シナケレバナラヌコトハ申ス迄モ
ナイノデアリマシテ、是ハ廣イ意味ニ於キ
マスル戰力增强ノ國家的要請デアルト考ヘ
ルノデアリマス、文部大臣ハ豫々廣イ視野
ニ立ツテ、夙ニ此ノ點ニ御著眼ニナッテ居ル
ノデ、誠ニ心强ク感ジテ居ルノデアリマスガ、
私ハ戰時下、今日ノ實情ガ要求致シツヽア
ル一例ヲ申上ゲマシテ御所見ヲ伺ヒタイト
思ヒマス、ソレハ此ノ度醫學部ノ學生竝ニ
醫學專門學校ノ生徒ハ徵兵猶豫ニナッテ居
ルノデアリマスルガ、是等ノ學生生徒ヲ官
公私立ノ病院ニ配屬セシメルコトハ如何デ
アラウカト云フ風ニ考ヘルノデアリマス、
卽チ是等ノ學生生徒ガ下宿屋カラ學校へ通
學致シマス代リニ、病院カラ學校へ通學セ
シムルコトト致シマシテ、學校デ授業ヲ受
ケ、病院ニ歸ッテハ病院ノ御手傳ニ奉仕セシ
メルト云フコトデゴザイマス、是ハ一面ニ
於キマシテハ、醫學〓育其ノモノノ效果ヲ
擧ゲル點カラモ意味ノアリマスコトデア
リマシテ、生活ト學業トヲ一致セシメルコ
トニナラウカト存ジマス、又一面ニ於キマ
シテハ、今日各病院ハ應召ナドノ爲ニ醫者
モ看護人モ非常ニ手不足デゴザイマシテ、
國民醫療ノ上カラ非常ニ寒心ニ堪ヘナイ實
情ニアルノデゴザイマス、戰時下ノ今日、
是位ノコトハ疾クニ行ハレテ居ッテ然ルベキ
デナイカト思フノデアリマス、決戰下ノ今
日、徵兵猶豫ニナッテ居ル學生達ガ下宿屋カ
ラ通フト云フコトハ、凡ソ無意味ノコトヂ
ヤナカラウカ、斯樣ニ存ジマスノデ、是ハ
直グ御考ヘヲ伺フノハ如何カト思ヒマスガ、
少クトモ御〓究ヲ願ヘレバ結構ダト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=11
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012・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 御質問ノ最
初ノ問題、國民學校ノ〓員等ガ、色々ノ會合
或ハ調査等ニ非常ニ時ヲ取ラレテ、〓育上
ニ沒頭スルコトニ種々支障ガアルト云フコ
トハ、非常ニ良キ御注意ヲ戴キマシテ感謝
スルノデアリマスガ、是ハ文部省カラ直接
出シタモノモナイコトハアリマスマイガ、
又地方廳等ニ於テ色々時局下ニ卽シタ問題
ヲ、或ハ通達シ或ハ協議スルト云フヤウ
ナモノモ尠クナイト思フノデアリマス、之
ニ付テハ單ニ〓育面バカリデハナク、各方
面ニ於テサウ云フ苦情モ聞クノデアリマス
ガ、尤モナコトデアリマシテ、徒ニ煩瑣ナ
コトヲ斯ウ云フ際ニヤルト云フコトハ極力
避ケナケレバナラヌコトハ申ス迄モナイノ
デアリマス、之ニ付テハ尙今後十分注意ヲ
シテ參リ、眞ニ〓育ニ出來ルダケノ力ヲ注
ギ得ルヤウニシテ參リタイト考ヘマス、御
注意ノ點ハ尙能ク注意致シタイト思ヒマス、
ソレカラ次ニ醫學生ノ問題デアリマスルガ、
之モ至極御尤モナ良イ御注意ト考ヘマスガ、
色々事情モアリ或ハ宿舍等ノ關係モアルデ
アリマセウシ、先般軍務ニモ相當服シテ大
分手傳ヒモシタヤウニ承知シテ居リマスル
ガ、サウ云フコトハ非常ニ〓育ノ爲ニモ有
益有效ナ仕事デアリマスルシ、又ソレガ
今日ノ醫療問題等ニモ、非常ニ貢獻スル所
モ少クナイト考ヘルノデアリマスルガ、最
近デハ醫學生ノ最高學年ノ者ハ、一年間ハ
殆ド病院ニ勤務スルト云フコトニナッテ居ル
ノデ、大體御趣意ニ副フヤウナコトニ段々
ナリツヽアルノデハナイカト考ヘマス、尙
サウ云フ風ニ醫學生ガ此ノ際少シデモ役ッ
ヤウニシテ行カナケレバナラヌト考ヘテ居
リマス、尙〓究致シマシテヤリタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=12
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013・安井英二
○安井英二君 只今ノ御答辯デ滿足デゴザ
イマス、殊ニ此ノ國民學校ノ先生方ニ對ス
ル色々ノ調査、報〓、會合等ノ問題ハ、實
ハ前カラアルコトデ今更之ヲ反上ゲマシタ
コトハ、實際其ノ必要ガアルコトハ當然デ
ゴザイマスガ、豫々此ノ委員會其ノ他ニ於
キマシテ、文部大臣ハ非常ニ積極的ニ、唯
文部省ノ仕事ダケデナク、地方廳ノコトモ
各省ノコトモ、殊ニ積極的ニ御ヤリニナラ
ウト云フ御意思デアルヤウニ伺ッテ居リマ
スルノデ、特ニ此ノ際取上ゲテ申上ゲマス
譯デアリマス、ドウゾ宜シク御願ヒ致シタ
イト思ヒマス、私ノ質問ハ是デ全部終リマ
シタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=13
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014・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) ソレデハ午後
一時ヨリ開會致シマス、休憩ヲ致シマス
午後零時十六分休憩
午後一時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=14
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015・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 是ヨリ開會致
シマス、先刻ノ御質疑ニ聯關シテ、政府委
員カラ御答辯、御報告ガアルコトニナッテ居
リマス、尙靑年學校ニ關スル大體ノコトニ
付テモ御報告ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=15
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016・永井浩
○政府委員(永井浩君) 午前御答ヘ漏レヲ
致シマシタ點ニ付テ申上ゲマス、現在旣存
ノ育英團體ニ於テ貸與又ハ給與ヲ受ケテ居
ル人數ガドノ位アルカ、ソレガ全體ノ學生
數ニ對シテドノ程度ノ比率デアルカト云
フ御尋デゴザイマシタ、中等學校ニ付テ申
上ゲマスト、二千百十五名ト云フ計算ニナツ
テ居リマス、デ此ノ一千百十五名ノ現在生
徒總數トノ比率ハ、之ヲ中學校ノ在學者總
數ノ比率トシテ考ヘテ見マスト云フト、〇·
四ㄱパーセント」デアリマス、大體中學校ガ
多イト思ヒマスノデ、ソレトノ比率ヲ申上
ゲタノデアリマスガ、併シ男子ノ全中等學
校ノ在學者ニ對スル比率カラ申シマスレバ、
是ハ〇·一「パーセント」ニ當ッテ居リマス、
次ニ大學、高等學校、專門學校ニ於ケル貸
與又ハ給與ヲ受ケテ居リマスル現在數ハ、
五千二百三十六人ト云フ計算ニナッテ居リ
マス、デ此ノ現在生徒ニ對スル比率ガ二·四
「パーセント」ニ當ッテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=16
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017・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) ソレデハ靑年
學校ニ關スル一般ノ御報告ヲ後程ニ願フコ
トニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=17
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018・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 大臣ノ御イデニナリマ
ス前ニ政府委員ニ御尋ヲ申上ゲルコトヲ、
只今カラ質問ヲ致シマス、勤勞奉仕作業ノ
コトデゴザイマス、中等學校以上ノ學生生
徒ガ盛ニ勤勞作業ヲ致シテ居リマス、是ハ
極ク大切ナコトデ效果モ亦多イコトハ勿論
デアリマス、學徒モ亦其ノ趣旨ヲ理解ヲ致
シマシテ熱心ニ從事ヲ致シテ居リマス、相
當ナ成績ヲ擧ゲテ居ルノデアリマス、是一
關聯シタ細カイコトデハゴザイマスルケレ
ドモ、報酬ト云フ譯デモナカラウガ、實費
ト云フ意味デオ金ガ若干支給セラレマシタ
リ、又金ノ支給ガアルナラバ今囘コソアリ
サウナモノダト思フ時ニ無カッテ見タリ、又
金額モ區々マチ〓〓デアッタリスルト云フ點
ガゴザイマス、ソレカラ金ハ、實ハ其ノ局
ニ當ッテ居ルモノハ必ズシモ欲シクナイケレ
ドモ、隨分靴ガ傷ンダリ服ガ傷ンダリスル、
現品デ物ガ欲シイ、材料ガ欲シイト云フノ
デアリマスケレドモ、ソレハ一向出廻リガ
ナイノデアリマス、又行ク所ニ從ヒマシテ
扱ヒ方モ大變相違ガアル、斯樣ナコトカラ、
弊害モ起レバ或ハ不平、不滿ノ聲モ耳ニシ
ナイコトモナイノデアリマス、固ヨリ學徒
タルモノハ崇高ナル奉公心ノ下ニヤッテ居
ルノデ、決シテ待遇如何ト云フコトハ考ヘ
テ居リマセヌ、ケレドモ是ハ道府縣トカ或ハ
ヤッテ貰フ側カラスレバモット是等ノ點ヲ
考慮スルコトガ必要デアラウ、斯ウ云フヤ
ウナコトニ付テハ、ドウモ從來手廻リ兼ネ
ルト見エマシテ、實際私共ガ見マスト、計
畫モ杜撰デアリ、從ッテアヽモシタラ、斯ウ
シロ、ヤレドウシロト云フヤウナ風ニ、萬
難ヲ排シテ之ニ應諾スルノニハ餘リニ迷惑
ヲ感ズルコトガ、相當多イノデアリマス、
ソレニモ拘ラズ振ッテ行ッテ見レバ、今度ハ
何シニ來タ、ト云フ譯デモナイケレドモ連
絡モ十分執レナケレバ準備モ十分執レナイ、
是ハ過渡時代デアルカラ已ムヲ得ナイカ知
レマセヌガ、斯樣ナ無駄ハ、出來ル限リ排
除シテ行カナケレバナラヌノミナラズ、責
任ノ所在ヲ明カニシテ、モット的確ニヤラナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フヤウナコトニ付キ
マシテハ當局ニ於キマシテモ十分御承知ダ
ラウト思フガ、ドウ云フ工合ニ是カラ取計
ラッテ行ク御積リデアルカ、ソレハ大體論ノコ
トハ文部省デモ御承知デアラウケレドモ、
實際文部省ノ方々ガ地方ニ出張ッテ現狀ヲ
見テ、地方ノ聲ヲ聞イテ居ルコトガ果シテ
ドノ位デアルカ、餘リ私共ハサウ云フ機會
ニ出會ハシテ居リマセヌ、從ヒマシテ縣廳
アタリカラノ報〓ト云フモノハ多少潤飾ガ
アルニ相違ナイ、實相ヲ捉ヘルコトガ果シ
テ文部省デ出來ルカドウカ、此ノ點ヲ懸念
ヲ致シテ居ルノデアリマス、其ノ點ヲ同ヒ
タイノデアリマス、モウ一ツハ今度大日本
育英會デ斯樣ナ學生ヲ世話スル、學徒ノ勤
勞奉仕ト云フモノヲ、此ノ世話ニナッテ居ル
所ノ學徒ニ對シテドウ云フ工合ニ適用シテ
行クカ、元來資質モ優秀デアリ、身體モ心
モ出來テ居ル生徒デアルカラ、時間ノ餘裕
モ得ラレルデアラウシ、能率モ擧ゲルニ相
違ナイ、斯ウ云フ學徒ノ輔導ニ於キマシテ、
大イニ義務心ヲ發露シテ、サウシテヤッテ行ク
ト云フコトニナレバ、大變是ハ良イ反響ヲ
及スノデアラウト思ッテ居ルノデアリマス、
然ル時ニ於キマスル所ノ、初メ申上ゲタヤ
ウナ色々チ障碍トナル如キコトヲ考慮シテ、
サウシテ一ツ政府ノ是ハ機關ト云フ譯デハ
ナイケレドモ、能ク監督指導ノ行屆ク所ノ
大日本育英會ノ組織內ニ於テ、勤勞奉仕ト
云フモノヲ完全ニ一ツヤッテ行ク、サウシテ
範ヲ垂レル、サウ云フヤウナコトガアレバ
大變結構ナコトデアラウト思フノデアリマ
スガ、是等ノ點ニ付テ一ツ文部省ノ御考ヲ
チヨット承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=18
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019・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 學徒ノ勤勞奉仕、
特ニ中等學校等ニ於キマスル作業ノ狀況ニ
付テ御尋ヲ蒙リマシテゴザイマシタガ、大
體ニ於キマシテ相當ナ效果ヲ擧ゲテ居ルト
云フ風ニ、役所ニ於テモ考ヘテハ居ルノデ
アリマスルガ、段々御擧ゲニナリマシタ點、
例ヘバ學徒ノ勤勞ニ對スル報償ノ關係、或
ハ物資ノ配給ニ關スル事項、其ノ他待遇ニ
關シマシテ區々ニ分レテ居リマシタト云フ
事實ハ、當局ニ於キマシテモ左樣ニ考ヘテ
居リマス、マダ十分統一サレテ居ッタトハ申
シ難イヤウニ思ハレルノデアリマス、從來
ト雖モ實ハ全然放任シテ居ッタ譯デハゴザイ
マセヌデ、學徒勤勞動員ニ對シマスル需
要者側ノ指導要領ト云フモノヲ決定ヲ致シ
マシテ、方針要領等カラ、別表ニ於テ、學
校報國隊手當又ハ償金竝弔慰金支給標準ト
云フモノモ定メテ居リマシテ、中等學校ニ
付テ申シマズルト、宿泊ノ場合ハ五十錢、
晝〓携行ノ場合ハ八十錢ト云フモノヲ、是
ハ手當ト申シマスカ、賃銀トシテハ取リマ
セヌデ、所謂實費辨償ニ當テルト云フ意味
合デ、是迄取ルヤウナ標準モ定メテ居ッタ
ノデアリマス、災害ノ場合ノ弔慰金等
ニ付キマシテモ、業務外死亡ノ場合三百
圓業務上死亡ノ場合五百圓ト云フヤウ
ナ扱ヒモ實ハ決メテ居リマシタ、然ル處
從來ノ勤勞ハ、未ダ比較的ニ輕易ナル勤
勞奉仕モ含ンデ居リマス、仰セノ通リ明確
ニ國民勤勞報國協力令ニ依リマスル出動命
令ヲ以テ致シマスルモノト、協力令ニ依ラ
ザル任意ノ勤勞奉仕ト云フモノトガ、兩方
竝ビ行ハレタ狀況デアリマス、任意ニ行ヒ
マスル勤勞奉仕ニ付キマシテハ、只今申上
ゲマシタヤウナ標準モ自ラ其ノ儘適用サレ
テハ居ラヌト云フヤウナ狀況ニゴザイマス、
然ル處、今囘午前中本委員會ニ於キマシテ
モ大臣ヨリ御答ガゴザイマシタヤウニ、學
徒ノ勤勞ニ付テハ、生產ト〓育トノ一體的
ナル關係ニ立脚ヲ致シマシテ、學徒勤勞ノ
飛躍的ナル强化ヲ圖ルコトニナリマシテ、
一年ニ付テ大體三分ノ一相當期間ハ工場事
業場等ニ於テ働クト云フヤウナ建前ヲ取ル
コトニ相成リマシタノデ、今後ハ是等ノ指
導要領モ更ニ之ニ策應致シマシテ十分强化
ヲ致シ、只今淺田委員ノ御心配ヲ戴キマシ
タヤウナコトノナイヤウニ致シタイ、斯ウ
考ヘテ居リマス、之ガ爲ニハ一般ノ國民勤
勞報國協力令ニ依リマスルノデハ或ハ不十
分デハナイカト考ヘテ居リマスノデ、學徒
ノ勤勞ニ關シマシテ、別途ノ法規的ナ措置
ヲ講ジテ參ルト云フコトニ致シマシテ、只
今折角ソレ等ノ點ヲ考究ヲ致シテ居リマス、
之ニ付キマシテハ、只今御示ノゴザリマシ
タ實費其ノ他報償的ナモノニ付テノ標準、
或ハ工場事業場ニ於ケル作業衣、其ノ他作
業用具類ノ配給ト云フヤウナ點モ、十分今
後ハ需要者側ノ受入態勢ノ上ニ確定ヲ致ス
ヤウナ方法デ考ヘテ見タイ、斯ウ云フ風ニ
存ジテ居リマス、ソレカラ今後如何ニ取扱ッ
テ行クカ、又地方ノ現狀ニ付テ知ル所ガ稀
薄デハアルマイカトノ御深切ナ御指摘ヲ戴
キマシタガ、今後取扱ヒマスル大體ノ方針
ガ、午前中大臣カラモ申サレマシタ如クニ、
工場事業場モ、卽チ生產ニ從事スルト云フ
コトヲ以テ〓育其ノモノトシテ考ヘテ參リ
タイ、一體的ナ關係ニ於テ考ヘテ參ル建前
デゴザイマスノデ、工場事業場ニ於キマス
ル受入ノ態勢ヲ十分勘考致シマシテ、午前
中御示唆ノアリマシタヤウナ、工場事業場
ニ於ケル〓育責任制ノ確立ト云フヤウナコ
トモ併セテ考ヘ、又工場事業場側ニハ文
部省若シクハ地方廳ノ囑託關係ニ於キマス
ル適當者ヲ選ビマシテ、是ガ學徒勤勞ノ事
業場工場內ニ於ケル運營ノ一切ノ世話ヲシ
テ吳レルト云フヤウナ方法モ採ら、又學校長
其ノ外〓職員或ハ地方視學官等ノ地方〓育
行政關係官等モ、軍需監理官或ハ勞務管理
官等ヲ兼務スルト云フヤウナコトモ考ヘマ
シテ、一方指導側、監督側ト申シマセウカ
ソレト、工場事業場內ニ於キマスル受入側
ノ態勢、此ノ兩方ヲ完備シテ參リタイ、斯
ウ云フ風ニ大體今後ノ取扱ノ方法ヲ狙ッテ
居ル次第デアリマス、地方ノ現狀ニ付キマ
シテハ、實ハ隨時、殊ニ此ノ大規模ナ學徒
勤勞、例ヘバ昨年ノ夏カラ秋ニ掛ケマシテ
北海道ニ、〓糧增產ノ爲ニ約一萬二三千ノ
學徒ヲ全國カラ動員ヲ致シマシテ、相當北
海道ニ於キマスル食糧增產ノ緊急對策上裨
益スル所ガアッタト考ヘマスルガ、チヨット
速記ヲ止メテ戴キタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=19
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020・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=20
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021・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 速記開始発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=21
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022・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 一般ノ學徒勤勞作
業ニ付キマシテハ、隨時學事ノ一部トシテ、
或ハ又勤勞作業トシテ之ヲ視察モ致シ、特ニ文
部省ノ文部委員ノ方々ニハ、全國ヲ四班ニ
分チマシテ具サニ學徒勤勞ノ狀況ノ御視
察ヲ願ヒマシテ、其ノ後、是等ノ文部委員
ノ方々ノ御報告ノ會合等モ開キ、其ノ模樣
等モ詳細ニ承ッタヤウナコトモアッタ次第デ
アリマスルガ、尙今囘學徒勤勞ガ非常ニ强
化サレマスル關係上、御指摘ノアリマシタ
點ハ、今後一層注意ヲ致サナケレバナラヌ
點ト考ヘマスルノデ、今後特ニ地方廳トノ
連絡ヲ密ニ致シマスルハ勿論、適時ニ是等
ノ事情ヲ詳細調査致シタイト考ヘテ居リマ
ス、最近ニモ厚生省方面ト連絡ヲ致シマシ
テ、西部ニ於キマスル最モ勞務ノ需要ノ緊
切ヲ〓ゲテ居リマスル地方ニ、本省カラモ
厚生省ノ方々ト同行致シマシテ、軍需省ノ
方々モ御參加ヲ戴キ、協力ヲ致シテ其ノ學
徒勤勞ノ需要狀況等モ明カニ致シ、之ニ適
應致シマスル計畫ヲ樹テタイト考ヘテ居リ
.マス、要スルニ今後ノ學徒勤勞ノ强化ハ、
舊臘末閣議ニ於テ決定ヲ致シマシタガ、是
等ノ具體的ナ事項ハ只今折角考究ヲ致シテ
居リマシテ、近クソレ〓〓決定ヲ見マシテ、
受入側或ハコチラノ指導關係、兩方ノ要領
ヲ明カニ致シ、必要ニ應ジテハ法的ナル措
置ヲモ併セマシテ完璧ヲ期シタイト考ヘテ
居リマス、次ニ奬學者ニ對シマスル勤勞ヲ
如何ニ適用スルカト云フコトニ付キマシテ
ハ他ノ政府委員カラ御說明申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=22
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023・永井浩
○政府委員(永井浩君) 奬學者ニ對スル勤
勞作業ニ付キマシテハ、一般ノ學生ト同樣
ニ、只今政府委員カラ申述べマシタアノ方
法ニ依リマシテ、同樣ニ之ヲ施スト云フコ
トデ參リタイト思ッテ居リマス、特別ノ待
遇〓、特別ノヤリ方ト云フモノハヤラナイ積
リデ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=23
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024・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 政府委員ノ御懇切ニシ
テ將來ノ改善ノ爲ノ力アル御答辯ヲ得テ、
其ノ點滿足ヲ致シマスガ、最後ノ大日本育
英會ノ生徒ノ此ノ扱ヒ方等ハ如何シタラ宜
イカト云フコトニ付テ、御考究ヲ煩ハシタ
イノデアリマス、私ハ、斯樣ナ選拔セラレ
タル學徒ト云フモノハ、何時如何ナル場合
ニ於テモ、自ラ範ヲ垂レ、サウシテ效果ヲ
擧ゲテ、特ニ國ノ御世話ニナッテ居ルノデ
アルカラシテ、國ノ爲ニ餘計働ク、又働カ
セル、斯ウ云フ氣分デ行クコトガ望マシイ
コトト思ウテ質問ヲ申上ゲマシタガ、將來
ノ爲御〓究ヲ煩ハセバソレデ結構デアリマ
ス、次ハ中等學校〓科書ノ間題デアリマス、
過日衆議院ニ於キマシテ、英語ノ〓科書ヲ
中心ニ深刻ナル質疑應答ガ交サレタヤウデ
ゴザイマス、私ノ見ル所デハ、英語ノ〓科
書トカ云フモノヨリモ、モット大切ナ修身、
是ナドニ於キマシテモ具サニ其ノ內容ヲ檢
討シテ見マスレバ、一々實例ヲ擧ゲマセヌ
ケレドモ、頗ル現在ノ考ヘ方カラ照シテ見
テ不都合デハナイカト云フコトモチラホラ
アルノデアリマス、又勿論現在ノ〓科書デ
ハ間ニ合ハナイ、今使ッテ居ル〓科書デハ足
ラナイ、是カラ先ノ必要ヲ充タスコトガ出
來ナイト云フコトガアリマスノデ、文部省
ハ國定〓科書ヲ御作リニナルト云フコトデ
アリマスカラ、誠ニ結構デアリマスガ、伺
ヒタイノハ、何時完成ヲシテ、サウシテ何
時カラソレヲ使ハセル御見込デヤッテ居ル
カヲ御尋ネ致シタイノデアリマス、又其ノ
次ハ、現用ノ〓科書ノ中ニ部分的ニ不當ト
思ハレルモノガ澤山アルカラ、必ズ臨機ノ
處置ヲ執ラレルニ違ヒナイ、何時其ノ臨機
ノ處置ヲ御執リニナルノデアルカノ豫想ヲ
承リタイ、第三點ハ、國定〓科書ヲ御作リ
ニナリマシテモ、其ノ配布ガウマク行カニ
ヤ困ルノデアリマス、御承知ノ通リ、此ノ
兩三年來中等學校······國民學校デスラモ
デスガ、非常ニ〓科書ノ不渡リニ惱ンデ居
ル、何ボ催促シテモ、田舍ノ學校ナドハ容
易ニ來ナイ、ソレガ爲ニ著シク〓育ニ支障
ヲ來シテ居ルコトハ十分御承知ノ通リデア
リマス、併シ國定〓科書デモ出來レバ、絕
對ニサウ云フコトハアルマイト思フノデア
リマスガ、愈〓紙ガ不足ヲ告ゲルト云フコト
ニナリマセウガ誠ニドウモ緩急本末ヲ考慮
スル時ニハ、今日ノ時勢デモ〓科書ニハ不
足ヲ告ゲヌデモ宜カラウ、紙ノ不足ナラバ、
外ノ方面デ何カ處理ガ出來ルダラウ、斯ウ
思フニ拘ラズ、文部省ノ威力ヲ以テ致シマ
シテモ、ナカ〓〓〓科書ヲ滿足ニ與ヘ切レ
ナイ狀況デアッタラ、將來ドウ云フ工合ニ爲
サル積リデアルカヲ伺ヒタイノデアリマス、
其ノ次ハ新規ニ設ケラレマシタ修鍊ト云フ
モノ是ハ非常ニ重キヲ成ス課目デゴザイマ
セウ、本當ニ修鍊ト云フコトヲ能ク理解シ
タナラバ、只今迄色々論議セラレテ居リマ
スル所ノ、學術。優秀ノ場合ニ於ケル人格云
云ノコトモ、修鍊ト云フモノヲ如何ニ取入
レルカト云フコトヲ〓究スルト、大〓氷解
スルノデナイカト思ハレルノデアリマス、
ソレ程大切ナル此ノ修鍊ニ對スル〓究ト云
フモノハ、是カラノ問題デゴザイマス、ソ
レデ〓師ニ致シマシテモ、ドウ云フ工合ニ
修鍊ト云フモノヲヤッテ行クカ······ヤッテ行
クカデナイ、修鍊其ノモノノ本質ガ一體ド
ウ云フモノデアルカト云フコトスラモ、ナ
カナカ理解サセルコトハムツカシイノデア
リマス、ソレハ既ニ要目ト云フヤウナコト
ハ出テ居リマスケレドモ、新シイ斯ウ云フ
修鍊ト云フ課目ニ付キマシテハ、文部省ハ
成ルベク早ク有效適切ナル參考書ヲ作ッテ
〓師ニ配布スルノデナケレバナラヌト、痛
感ヲ致シテ居ルノデアリマス、是ハドウ云
フ工合ニ爲サル御積リデアリマスカ、其ノ
點ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=24
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025・阿原謙藏
○政府委員(阿原謙藏君) 只今〓科書ノ問
題ニ付キマシテ色々御尋ネガゴザイマシタ
ノデアリマスガ、現在ノ國定〓科書ノ進行
狀況ニ付キマシテ、一應申上ゲヨウト思ッテ
居リマス、國定〓科書ノ中デ、國民學校ノ
初等科ノ〓科書ハ全部完了致シマシテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=25
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026・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 中等學校ノ〓科書ダケ
ニ限ッテ質問ヲ致シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=26
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027・阿原謙藏
○政府委員(阿原謙藏君) ソレデハ改メマ
シテ中等學校ノ現在ノ〓科書ノ編纂狀況ヲ
申上ゲマス、中學校竝女學校ニ於キマスル
國民科、理數科、家政科、此ノ關係ノ〓科
書ニ付キマシテハ、十八度度ニ於キマシテ
第一學年及第二學年ノ編纂ヲヤッテ居リマ
シテ、現在此ノ編纂ノ出來マシタモノハソ
レゾレ印刷所へ〓シマシテ配布ヲ急ガセテ
居ルヤウナ狀態デゴザイマス、更ニ是ハ來
年度第三學年ト云フ風ニ、順次學年ヲ逐ヒ
マシテ、國民科、理數科、家政科ニ付キマ
シテハ、國定ノ〓科書ヲ作ラセタイト云フ
コトデ計畫ヲ進メテ居リマス、ソレ以外ノ
〓科書ニ付キマシテハ、大體國民科、理數
科家政科ノ〓科書ノ編纂ヲ了シマシテカ
ラ計畫ヲ進メタイト考ヘテ居リマスルガ、
ソレ迄中等學校〓科書ニ付キマシテハ、
現在中等學校〓科書株式會社ト云フモノガ
ゴザイマシテ、是ガ文部省ノ外郭團體ト致
シマシテ、文部省ノ監督ノ下ニ此ノ會社ニ
監修編纂致サセマシテ、其ノ致サセマシタ
モノヲ大體使用セシメル、勿論此ノ編纂ニ
當リマシテハ、文部省ノ監修官ガ直接ソレ
ヲ監督致シマシテ、遺憾ナキモノヲ作リタ
イト云フ計畫ノ下ニ編纂ヲ進メテ居リマシ
テ、旣ニ出來上ッテ中等學校方面ニ配布シ
テ居ルモノモゴザイマス、之ニ付キマシテ
ハ私共モ十分注意致シマシテ、國定ニ準ズ
ル位ノモノニ致シタイト云フ考ノ下ニ大體
進メテ居ル次第デゴザイマス、尙〓科書ニ
付キマシテ、衆議院デ色々問題ニナリマシ
タコトハ非常ニ遺憾ニ存ズル次第デゴザイ
マスガ、旣存ノ〓科書ニ對シマスル臨機ノ
處置ニ付キマシテハ、衆議院デモ申上ゲタ
ノデアリマスルガ、昨年ノ五月ノ中旬ニ各
都道府縣ノ〓科書ノ主任ノ參集ヲ求メマシ
テ、ソコデ昭和十八年度ノ使用〓科書竝昭
和十九年度ニ使用致シマス〓科書ノ取扱ニ
付キマシテ懇切ニ指導致シマシテ、十分、
〓ヘル先生ガ、旣存ノ〓科書ノ中ニ出テ來
ル事柄デアリマシテ注意スベキ點ハ十分ニ
注意ヲサセマシテ〓育スルト云フヤウニ、
注意ヲ致シタノデゴザイマス、尙又旣存ノ
〓科書ニ付キマシテハ、本省ニ於キマシテ
モ昨年春ニ、現在已ムヲ得ズ使ハナケレバ
ナラヌ所ノ〓科書ニ對シマスル措置ヲ色々
ト考究致シマシテ、ソレニ付キマシテ必要
ナモノニ付キマシテハソレ〓〓指導書ヲ出
シマシテ、指導書ニ依リマシテ〓科書ノ取
扱上遺憾ナキヲ期スト云フ方針ノ下ニ、指
導書ノ編纂ヲ見マシテ、ソレヲソレ〓〓配
布致シマシテ、指導書ニ依リマシテ〓科書
ノ取扱ノ上ニ於テ遺憾ノナイヤウニ致シタ
次第デゴザイマス、次ニ〓科書ノ配布ノ遲
延ノ問題デゴザイマス、此ノ點ハ私マダ就
任致シマシテ日ガ淺イノデアリマスルガ、
非常ニ遺憾ニ考ヘテ居リマシテ、出來ルダ
ケ此ノ配布ノ遲レナイヤウニ致シタイト、
現在モ非常ニ苦心シ、努力ヲ致シテ居ル次
第デゴザイマスルガ、何ニ致シマシテモ最
近色々勞力ノ不足又用紙等ノ關係、サウ云
フ點カラ、ドウシテモ思フ通リニ參ラナイ實
情ニアリマスルコトハ、非常ニ遺憾ニ存ズ
ルノデアリマス、而モ又急イデ多數ノ〓科
書ヲ編纂配布シナケレバナラヌト云フヤウ
ナ關係ニ於キマシテ、編纂ニ於キマシテモ
多少遲延ヲ見ルト云フヤウナコトデ、從來
配布ガ遲レルト云フヤウナ狀態ニ立チ到ッテ
居ッタノデゴザイマスルガ、國民學校方面ニ
付キマシテハ、大體先程申上ゲマシタヤウ
ニ初等科ノ方ハ大體編纂モ完了致シマシテ、
配布ノ上ニ於キマシテハ遲レナイヤウニ致
シテ居ルノデアリマスルガ、中等〓科書ニ
付キマシテハ、今後出來ルダケ有ラユル努
力ヲ致シマシテ、成ルベク配布ノ遲レナイ
ヤウニ私共心掛ケテ居ル次第デアリマシテ、
此ノ點ニ付キマシテハ、御注意モゴザイマ
シタノデ、更ニ一層各方面ヲ督勵致シマシ
テ十分ニ遺憾ノナイヤウニ努メテ行キタイ、
斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス、修練
ニ付キマシテハ他ノ政府委員ヨリ御答ヘ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=27
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028・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 只今淺田男爵ノ、
修鍊ニ付テハ大變結構デアルガ參考書デモ作ッ
テハドウカト云フ御指摘デアリマシタ、修
鍊ハ、仰セノ通リ曩ニ行ヒマシタ學制改
革ノ〓育內容ニ於ケル刷新ノ大キナ眼目ノ
一ツデゴザイマス、〓科ト相俟ッテ眞ニ皇國
ノ道ニ則ル國民鍊成ト云フ〓育ヲ成就セム
ガ爲ノ狙ヒガ一ツデアリマシテ、此ノ點ハ
中學校規定ニ於キマシテモ其ノ旨ヲ明カニ
致シ、修鍊ハ行的ノ修鍊ヲ中心トシテ、〓
育ヲ實踐的、綜合的ニ發展セシメ、〓科ト
併セ一體トシテ盡忠報國ノ精神ヲ發揚シ、
獻身奉公ノ實踐力ヲ涵養スルヲ以テ要旨ト
ス、ト云フコトヲ明カニ致シテ居リマス
此ノ修鍊ニ付キマシテハ大體三通リニ分ケ
テ居リマシテ、日常行ヒマスル修鍊、通常
之ヲ常時修鍊ト申シテ居リマス、ソレカラ
每週定時ニ行ヒマス修鍊、是ハ定時修鍊ト
申シテ居リマス、尙又學年中隨時ニ行フ修
鍊是ハ隨時修鍊ト申シテ居リマシテ、此
ノ三通リノ修鍊ヲ考ヘマシテ、是等ノ修鍊
ニ付キマシテハ、從來ハアリマセヌデシタ
ガ、今囘〓科内容ノ刷新ト共ニ、中等學校
ノ〓授要目ノ中ニ特ニ修鍊指導要目ト云フ
ノヲ揭ゲテゴザイマシテ、此ノ修錬指導要
目ニ於テ指導ノ要旨、指導ノ方針、ソレカ
ラ指導事項ト云フ風ニ明示ヲ致シテゴザイ
きくら、サウシテ其ノ指導事項ノ中ニ、仰セ
ニナリマシタヤウナ參考トナルベキ事項ヲ
相當ニ揭ゲテ居リマス、例ヘテ申シマスレ
バ〓修ニ關スル事項、鍛鍊ニ關スル事項、
作業ニ關スル事項ト云フ風ニ區分ヲ致シ、
其ノ〓修ニ關スル部分ニ付テハ例ヘバ大東
亞事情、大東亞戰爭等ニ關スル〓修、或ハ
古典、先哲、偉業、偉人等ニ關スル〓修、
或ハ〓土ノ調査乃至ハ國防科學ニ關スル〓
修ト云フヤウニ、ソレ〓〓ノ事項ヲ實ハ相
當綿密ニ揭ゲタノデアリマス、唯此ノ修鍊
ハ其ノ要旨ニ揭ゲマスル通リニ相當是ハ綜
合的ニ且又實踐的ニ行クト云フヤウナ事情
ニアリマスルノデ、其ノ土地ノ情況、ソレ
カラ季節ノ關係、當該學校生徒ノ心身ノ發
達ノ狀況ト云フヤウナ點ニ付テ非常ニ分レ
テ居リマスカラ、畫一的ニハ實ハ出來難イ
關係ガゴザイマス、依ッテ此ノ點ハ本省ト
致シマシテハ、是等ノ指導要目ヲ揭ゲテ一
般ニ示シマスルト同時ニ、學校ノ施設、督
學ノ機會ニ於キマシテ各學校ニ付キマシテ
〓科ニ關スル〓案ト共ニ、修鍊ニ關シマス
ル指導案ヲ各學校ガ持ッテ居リマスノデ、ソ
レニ付テ學校每ニ確カメ、其ノヤリ方ニ付
テノ指導ヲ致スト云フヤウナ方法ヲ只今採ッ
テ居リマスルノト、今一ツハ、〓職員ノ鍊
成講習ノ機會ニ於キマシテハ、必ズ修鍊ニ
關シマスル實踐的ナ面ヲ捉ヘテ、サウシテ
其ノ意義竝ニ之ガ實施上ノ要領等ニ付テ授
ケルト云フヤウナ方法ヲ採ッテ居ル次第デ
アリマス、御指摘ノ參考書ヲ作ルト云フコ
トハ、極メテ適切ナコトトハ存ジマスルガ、
只今ノ所ハ、マダ經驗モ實ハ淺イノデアリ
ひと、今後各學校ニ於キマスル實績等ス十
分ニ見究メマシテ、良キ據リドコロトモナ
ルヤウナコトガ相當集リマシタ上ハ、其ノ
內採ッテ以テ參考スベキコトヲ輯錄ヲ致シテ
參考書トスルト云フヤウナコトハ、考ヘラ
ルベキコトデアリ、又將來考ヘナケレバナ
ラヌカト思ヒマスルガ、只今ハ、今申上ゲマ
スル指導要目ト云フモノト、實際ノ學事指
導ニ依ッテ行ッテ居ルト云フコトニ、御承知
置キヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=28
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029・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 初メニ承リマシタ國定
〓科書ノコトデアリマスガ、是ハ當然文部
省ニ於テ是カラノ整備計畫ト云フモノハ出
來テ居ルニ相違ナイト思ヒマス、何々ノ科
目ハ何時ニナッタナラバソレヲ完成シテ配付
スル、斯ウ云フ年次計畫ハオアリダト思ヒ
マスノデ、ソレヲ御尋ネシタノデアリマス
ガ、具體的ナ問題ニ觸レズニ、唯段々トヤツ
テ行クト云フコトデアリマシタ、若シモ併
シ計畫ガオアリデゴザイマシタナラバ、ド
ウ云フ過程ヲ經テ此ノ國定〓科書ヲ整備シ
テ行クカト云フコトヲ一表ニデモシテ下サ
ルコトヲ御願ヒ申上ゲテ置キマス、ソレカ
ラ最後ノ修鍊ノ問題デゴザイマスガ、只今
御說明ニナリマシタコトハ、本モ讀ンデ
居ルシ、又招集モ受ケテ居リマスカラ、私
自身トシテハ理解ハ致シテ居ルノデアリマ
スルケレドモ、ナカ〓〓實行ノ衝ニ當リマ
ス〓師等ハ、此ノ修鍊ト云フモノニ對シテ
新シイ行キ方デゴザイマスカラ理解シニク
イノデアリマス、デアルカラシテ參考書ト
云フコトヲ申上ゲマシタ、若シモ參考書ト
云フコトニ付テ、是ガサウ容易ニ出來ナイ
モノナラバ、文部省ガ此ノ修鍊ト云フモノ
ヲ御定メニナッタ以上自信ガオアリニ相違
ナイ、其ノ自信ノアル督學官ナドヲ方々ニ
オヤリ下サッテ、〓修ハ斯ウヤルノダ、作業
ハ斯ウヤルノダ、鍛鍊ハ斯ウヤルノダト云
フ範ヲ各府縣每ニ御示シニナッテモ結構ト思
ヒマス、文部省カラ來テ御說明ナサル方ハ、
机ノ上ノ議論ヲサレルダケデアッテ、一つん
實際ノ範ヲ示シテ居ナイ、是ハ誠ニ遺憾ナ
コトデス、無論ソレデハオ前ハドウスルカ、
ヤッテ見ロト言ハレレバ、ソレハ受身ノ方ニ
於テヤリマスカラ、ソレヲ御批判下サッテモ
宜シイ、サウ云フ所迄進マナケレバ新シイ
試ミト云フモノハ容易ニ成立ッテ行クモノデ
ナイト云フコトヲ一ツ御參考ニ申上ゲマシ
テ、大臣モオイデニナリマシタカラ、次ノ
質問ニ移ルコトニ致シマス、武道奬勵ノコ
トデゴザイマス、私ハ嘗テ屢〓文部省ハ國民、
特ニ學徒ノ武道ヲ司ル所デモアルカラシテ、
一層之ヲ奬勵シテ欲シイ、之ガ爲ニ、武道
〓師ノ養成トカ、素質ノ向上、待遇ノ改善、
又武道ハ是非共國民學校ノ正課ニ入レテ戴
カナケレバナラヌ、斯ウ云フ質問ヲ致シテ
參リマシタガ、幸ニシテ時到リ、當路ニ其ノ
人ヲ得マシテ、著々實現ヲ見テ參ッテ居リマ
ス、最近ハ武道章ト云フモノ迄モ作ルト云フ
工合ニ進ンデ參ッタノハ、本當ニ感謝ヲ致シテ
居ルノデゴザイマス、然ルニ我ガ國ハ申ス迄
モナク、今ヤ此ノ聖戰ニ勝チ拔クト云フコト
ハ、最大ノ目標デアリマス、而モ今ヤ決戰ノ最
高潮ニ達シテ居ル此ノ際、靑年男子ハ悉ク
戰場ニ馳セ參ジナケレバナラヌ、斯ウ考へ
テ來タ時ニ、果シテソレニ相應シキ中等學校、
靑年學校、其ノ他ノ若人ニハ、此ノ武道ト
云フモノハヤラレテ居ルカドウカ、固ヨリ
各學校ノ當局モ靑年モ理解ヲシテ居リマ
スカラ、戰場デ斯ウ云フコトガアッタ、斯ウ
云フ武道ヲ斯ウ鍛鍊シテ置ケバ宜イト云フ
コトヲ知ッテ居ルカラヤッテハ居ルノデアリ
マスケレドモ、私ハマダ存ジ上ゲマセヌガ、
文部省デハ此ノ點ニ關シテドウ云フ指令ヲ
御出シニナッテ居ルカ、勿論燃エ上ル自發的
ナ、武道ニ對スル信仰モ必要デアルケレド
モ、文部省トシテノ指令、指導、是ハドウ
云フ工合ニナッテ居リマセウカ、未ダ寡聞ニ
シテ私ハピント來ナイ、又大臣其ノ外文部
省ノ高官ハ陣頭ニ立ッテ視察激勵下サルト
云フガ如キコトガアレバ、誠ニ是ハ結構ナ
コトト思フノデアリマス、ドウカ此ノ點ハ
御願旁々左樣ニシテ實況ヲ御覽下サルト共
ニ、此ノ武道奬勵ニ付キマシテハモツト力
ヲ入レルベキヂヤナイカト思フノデアリマ
ス、文部省ハ戰時ノ臨時措置トシテ專門學
校以上ノ學徒ヲ急遽軍門ニ赴カシメ、又中
等學校ノ上級生徒ノ三分ノ一迄モ勤勞作業
ニ出ロト云ッテ生產增强ニ協力サセル、是ナ
ドハ誠ニ機宜ノ處置デアリマスケレドモ
更ニ步ヲ進メマシテ、中等學校ノ授業時間
內ニ於テ學科ノ一部ヲ割イテモ必要ナ〓鍊、
武道ハモツトヤラナケレバイカヌヂヤナイ
カト云フ氣持ガオアリデアルカドウカ、又
一週三十五六時間、今時ソンナコトデハイ
カヌ、モツト時間ヲ增加シテモ、其ノ增加
シタ時間ヲ武道ノ方ニ引當テテハドウカ、斯
ウ云フコトニ關シテドウ云フ御見解ヲ持ッ
テ居ルノデアリマセウカト云フコトヲ御尋
ネシタイ、又我ガ國ノ古來カラノ獨特ノ此
ノ武道ノ徹底的振興ヲ圖リマシテ、且世ノ
中ガ段々變ッテ行ク、戰ノ道モ進步シテ行ク、
此ノ時勢ニ適應スルガ如ク古來ノ武道ノ改
善進步ヲ圖ルト云フコトモ必要デゴザイマセ
ウ、左樣ナコトヲ篤ト考ヘテ見ルト、ドウ
シテモ官立ノ武道大學トカ專門學校トカ云
フモノガナケレバナラナイノデハナカラウ
カ、一ツモ我ガ國ニ官立ノ武道專門學校以
上ノモノハナイノデアル、又今申上ゲル進
步改善ヲ企圖スル爲ニハ、〓究所ト云フモ
ノガ是非必要デアラウ、然ルニ〓究所モア
リマセヌ、是等ハ誠ニ遺憾ナコトデハナカ
ラウカ、又武道ハ靑年期ニテ最モ著シク
發達ヲ遂ゲルモノデアルカラ各道府縣ニ一
二ノ武道中學校ガアッテモ宜イモノヂヤナ
イカ、ソレハ今農學校モ、ソレカラ工業學
校モアルヤウニ武道中學校ト云フモノガア
レバ、其ノ靑年期ニ於テ武道ニ精進ヲシ、
優秀ナモノヲ造ル、サウシテ之ヲ專門學校、
次ニ大學、斯ウ云フ風ニ及シテ行クト云フ
コトハドンナモノデアルカ、之ニ對スル文
部省ノ今迄ノ御〓究ト、ソレカラ御所見ト
ヲ承リタイノデアリマス、次ニ、昔ハ世界
ノ先達デアリマシタ「アジア」民族ガ其ノ後段
段ト墜落ヲシテ、終ニ見ル影モナク白人ノ
蹂躪スル所トナッテ、其ノ桎梏下ニ呻吟スル
ニ至ッテ居ル原因ノ最大ノモノハ何デアル
カ、是ハ矢張リ何トシテモ剛健ナル精神力
ノ荒廢ニ歸スルノデアル、就中武德ノ崩潰、
武道ノ潰滅、斯ウ云フヤウナコトカラ斯樣
ニナッテ來タト云フ風ニ考ヘラレルノデアル、
果シテサウデアルナラバ大東亞建設ノ爲ノ
永久的方策ト致シマシテ、最モ緊要ナ一面
ハ武道ヲ復興スルコトデアル、之ヲ普及徹
底セシムルト共ニ武德ヲ涵養致シマシテ、
サウシテ其ノ「アジア」民族ノ個人々々ガ腕ニ
覺エガアリ、肚ガ据ハリ、ナアニ白人ニ負ケル
コトハナイ、斯ウ云フコトニナリマシテ、大
東亞全體ノ士氣ガ〓揚セラレ、自賴心モ〓
り、自信力モ大キクナルト云フ風ニ考ヘ
ルノデアリマス、サウシテ何處迄モ日本ハ
所謂神武ヲ以テ此ノ大東亞ヲ指導シテ行カ
ナケレバナラヌ、實ニ神武コソハ大東亞ノ
建設、又五原則顯現ノ根幹トモ考ヘルヤウ
ナ譯デアルカラ、此ノ目的ヲ達スル爲ニハ、
大東亞ノ各地ニ武道指導者ヲ盛ニ送ツテ、
現地靑年ニ向ッテ活動實踐セシメルト共ニ、
我ガ國ニ來ル所ノ留學生ニハ特ニ武道ヲ實
修練達セシメルト云フコトガ宜イヤウニ思
フノデアリマス、先般私ガ伺ハウト思ッテ居
リマシタコトヲ、他ノ委員カラ、大東亞ノ
留學生ニ對スル色々ノ質問ガアリマシタケ
レドモ、此ノ問題ニハ一言モ答辯ニ於テ觸
レテ居ラナイノデアリマス、サウシテ之ヲ
行フニ付キマシテハ、何トシテモ先ニ申上
ゲタ所ノ官立武道大學、專門學校、〓究所
ト云フモノガ中心トナッテ行ッテ、サウシテ
一方現在マダ澤山アル所ノ武道家ヲ總動員
シ、且武ノ淵源デアリ、骨幹デアル所ノ軍
部ノ大ナル支援ヲ仰イデ、成ルベク早ク武
道鍊達ノ士ヲ錬成スルト共ニ、之ニハ相當
ノ施設、資材ト云フモノガ要ルノデアリマ
スカラ、之ガ整備ヲ圖ラナケレバナラヌ、
斯ウ云フ風ニ考ヘルノデゴザイマスガ、之
ニ關スル文相ノ方針ト方策ノ要點トヲ伺ヒ
タイト存ズルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=29
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030・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 御意見拜聽
致シマシタガ、武道ガ非常ニ國民精神ノ昂
揚ノ上ニモ、又大東亞共榮圈諸民族ノ中心
ニナッテ日本ガ之ヲ推進シ、指導シテ行ク上
三·つ、武道ト云フモノヲ留學生〓育ノ上ニ
モ採上ゲテ行ッタラ宜カラウト云フ御意見
ハ頗ル御同感デアリマシテ、御承知ノ通リ
國民學校ニ於キマシテハ、是ハ正科ト致シ
マシテ實施スルコトニナッテ居ルノデアリマ
ス、色々具體的ノ點デ御參考ニ供シタイト
存ジマスカラ、政府委員カラ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=30
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031・小笠原道生
○政府委員(小笠原道生君) 只今大臣カラ
御答ガゴザイマシタガ、細部ノ點ニ付キマ
シテ若干私カラ申述ベサシテ戴キマス、淺
田男爵ノ御說ノ、此ノ際武道ヲ大イニ學校
〓育ノ中ニ於テ振興徹底サセヨウト仰セラ
レマス點ハ、全ク其ノ通リデゴザイマシテ、
現在ニ於キマシテモ文部省ニ於キマシテハ
其ノ方針ヲ以チマシテ色々努力ヲ致シテ居
ル次第デゴザイマス、國民學校ニ於キマシ
テモ之ヲ正科ニ加ヘマシテ、中等學校ニ於
キマシテハ勿論ノコト、以前カラ正科ニナッ
テ居リマス、高等專門學校、大學等ニ於キ
マシテハ是ハ正科ト云フ譯デハゴザイマセ
ヌガ、學校報國團其ノ他ノ施設ヲ利用致シ
マシテ、武道ノ修錬ニハ大イニ努メサセテ
居ル次第デアリマス、今日ノ情勢ニ卽應シ
テドウ云フ指導方針デヤッテ行クカト云フ
御尋デゴザイマシタガ、今日各學校ニ對シ
テ採ッテ居リマス方針ハ、學校ノ程度ニ依リ
マシテモ異ッテ居リマスガ、國民學校ニ於キ
マシテハ何分年齡等ノ少イ學童デゴザイマ
スカラ、其ノ技ヲ究メルト云フヨリモ寧ロ
其ノ精神ヲ鍛ヘル、武道ノ精神ヲ多少ナリ
トモ會得サセテ、其ノ初歩ヲ會得サセルト
云フ點ニ重點ヲ置キマシテ指導致シテ居リ
マス、中等學校以上ノ學校ニ於キマシテハ
是ハ精神ハ固ヨリデゴザイマスガ、其ノ技
ニ付キマシテモ、稍〓進ンダ程度ニ强ク修鍊
サセルヤウニ指導致シテ居リマス、又武道
ト申シマスト、動トモ致シマスト、從來カ
ラ所謂劍道、柔道ト云フヤウナモノダケヲ
考ヘル傾向モゴザイマシタガ、ソレバカリ
デハ足リマセヌ、ト申シテハ語弊ガアルカ
モ存ジマセヌガ、今日ニ於テハモウ少シ廣
ク行ハシメル方ガ宜シイト考ヘマシテ、或
ハ銃劍術、射撃ト云フヤウナモノモ、武道ト
致シマシテ之ヲ行ハシメテ居ルノデゴザイ
マス、或ハモット廣ク申シマスナラバ、有ラ
ユル物ガ根本的精神ニ於テハ、武道トシテ之
ヲ修鍊シテ行クコトガ望マシイト云フ見地
カラ、學校〓育ノ全面ニ亙リマシテ、其ノ
精神的ナ訓練ニ於キマシテハ、武道精神ノ
訓練涵養ト云フコトニ常ニ留意ヲ致シテ居
リマスヤウナ次第デゴザイマシテ、一般ノ
體育訓練、之ニ付キマシテモ、形ハ異ッテ居
リマシテモ其ノ根本ノ精神ト致シマシテハ、
武道ト何等變リナイ精神デ行ハシメルヤウ
ニ、此ノ點ハ强ク指導致シテ居リマシテ、
實ハ學徒ノ體育訓練、武道等ニ付キマシテ、
政府ノ方針ニ卽シテ外郭團體トシテ、之ノ
振興ニ努力致シテ居リマス大日本學徒體育
振興會ト云フモノニ於キマシテハ、他ノ各
種ノ同樣ノ團體ガ、或ハ體育運動ノ團體、
或ハ武道ノ團體ト云フ風ニ劃然ト分レテ居
リマスノヲ、殊更此ノ學徒體育振興會ニ於キ
マシテハ一本ニ致シマシテ之ヲ取扱ハセテ
居リマス、之ニ對シテ一面カラハ武道ト體
育トヲ一〓ニスルノハ、ヲカシイノデハナイ
カト云フヤウナ說モゴザイマスガ、實ハ私
共ノ眞意ト致シマシテハ其ノ逆デアリマシテ、
殊更ソレヲ一緒ニスル所以ハ各種ノ體育訓
練ト呼バレルモノモ、總テ武道ト同ジ精神
デ行カナケレバナラナイ、此ノ點ヲハッキリ
サセ、又此ノ點ニ强ク指導致シタイト云フ
ヤウナ意味デ、斯樣ナ外郭團體ニ付キマシ
テモ、殊更斯樣ナ組織ヲ作ッタト云フヤウナ
次第デゴザイマシテ、是ハ一例デゴザイマ
スガ、全面的ニ廣ク武道精神ヲ徹底サセル
ト云フ方針ヲ堅持シテ進ンデ居リマス、又
柔道ヤ劍道ノ指導ニ致シマシテモ、今日ノ
戰爭ノ實情等ニ鑑ミマシテ、或ハ屋外デ柔
道ノ訓練ヲヤラセルコトヲ試ミマストカ、
或ハ又劍道ニ致シマシテモ、道場內デ行ブ
モノノミデナク、時ニハ野外ニ於テ、或
平坦ニ非ザル不整地ニ於テ之ヲ行ハシメマ
シタリ、或ハ又一人對一人ノ型ニ嵌ッタ試合
バカリデナク、一人對數人、或ハ持チマス
武器モ異ツタ武器ヲ持ツ相手ニ對スル試合、
サウ云フヤウナモノヲモ行ハシメマシテ、
之ヲ實戰的ニ指導致スト云フヤウナ方針ヲ
以テヤッテ居リマス、次ニ授業時間數ニ付キ
マシテ、今日ノ所定ノ時間デハ十分デナイ
デハナイカト云フ御懸念モゴザイマスヤウ
デゴザイマスガ、勿論此ノ點ニ付キマシテ
ハ現在行ッテ居ルダケデ十分デアルトハ、
是ハ到底申上ゲラレナイト存ズルノデゴザ
イマスガ、御承知ノヤウニ色々學校ニ於キ
マシテハ授ケナケレバナラナイ重要ナ課目
等モゴザイマシテ、ソレ等多數ノモノヲ考
ヘ併セマシテ按配ヲ致シマシテ、學校ノ授
業時數ト云フモノヲ定メマスヤウナ關係カ
ラ、今日ノ定ッタ時間ガ定メラレテ居リマ
スヤウナ次第デアリマシテ、勿論モット增
シマスナラバ尙宜シカラウト云フコトハ考
ヘラレマスケレドモ、俄カニ是ノミヲ增ス
ト云フ譯ニハ參ラヌ事情モゴザイマスノ
デ、今後全體ヲ睨ミ合セマシテ、增シ得ル
モノヲ增シテ參ル積リデゴザイマス、又現
在ノ時間數ニ於キマシテモ、先程カラ申シ
マスヤウニ、課外ノ時間等ノ、學校報國團
ノ活動トカ或ハ修錬ト云フ時間等モゴザイ
マスノデ、サウ云フモノヲ極力利用致シマ
ストカ云フヤウナ方法ヲ講ジマシタリ、或
ハ所謂武道ト云フ名前デ、定メラレタ時間
以外ノ訓練ニ於テモ武道ト同ジヤウナ內容
ノモノヲ修鍊サセルト云フコトヲ心懸ケマ
シタリ、左樣ナコトヲ色々致シマシテ、サ
ウシテ武道ノ訓練ニ資シテ居ル次第デゴザ
イマス、實狀ヲ申セバ此ノ數字ニ擧ゲラレ
テ居リマス時間數ハ、時間數其ノモノニ付
テ申シマスナラバ或ハモット多イ方ガ宜イ
ト云フ風ニ勿論考へラレマスガ、實ハ此處
ニ現ハレテ居リマス時間ヨリハ今少シク多
量ノ時間ガ現ニ旣ニ武道ノ修鍊ニ用ヒラレ
テ居ルト云フ實狀ニモゴザイマスコトヲ御
了承願ヒタイト思ヒマス、勿論併シ現狀ヲ
以テシテ十分ナリト申ス譯デハゴザイマセ
又、是等ノ點ニ付テハ今後十分ニ勘案致シ
テ參リタイト存ジテ居リマス、又武道ノ大
學或ハ武道ノ專門學校、或ハ武道〓究所等
ヲ作ルコトニ付テノ御示ガゴザイマシタガ、
勿論斯樣ナモノガ設立致サレマスコトハ極
メテ必要ナコトト存ゼラレマスシ、又斯樣
ナ機關ガ設ケラレマスナラバ、今後武道ノ
振興ノ上ニ非常ナ寄與ヲ致スデアラウト云
フコトモ全ク御同感ニ存ゼラレマスルノデ
ゴザイマスルガ、率直ニ實ハ申上ゲマスガ、
今日ノ處マダ斯樣ナモノヲ設ケヨウト云フ
計畫ヲ致シテ居リマセヌデシタ、是ハ單ニ
經費トカ其ノ他ノ資材トカ云フヤウナ部面
カラ今直グニハ出來ナイト云フダケノコト
デハゴザイマセヌデ、學校ノ今日ノ制度ノ
全般ニ付キマシテ、色々勘案ヲ致シテ居リ
マスノデアリマシテ、或ハ大學或ハ〓究所
ト云フヤウナモノヲ作リマスニ付キマシテ
ハ、モット先ニ作ラナケレバナラナイト云フ
ヤウナモノモゴザイマシタリ、或ハ又大學
ト云フモノノ今日迄ノ建前或ハ制度ト云フ
ヤウナモノカラ考ヘマシテ、武道專門ノ大
學ヲ作ルト云フコトニ致シマスト、其ノ制
度トノ關係或ハ其ノ建前ノ改廢ト云フヤウ
ナコトニ付キマシテ、色々〓究モ致サナケ
レバナラナイ點モゴザイマシタヤウナ意味
カラ、實ハ急ニ斯樣ナモノヲ作ラウト云フ
コトヲ今日實ハ考ヘテ居ラナカッタノデゴザイ
マシテ、是ハ實情ヲ率直ニ申上ゲル次第デ
ゴザイマス、併シナガラ是等ノコトハ固ヨ
リ重要ナコトデゴザイマシテ、先程私ハ他
ニモット急グモノモアルト云フ風ニ申シマシ
タガ、或ハ此ノ言葉ニ對シテハ非常ニ御不
滿ニ御感ジニナルカモ知レマセヌ、他ニ急
グト云フヨリモ、武道ノ大學トカ〓究所ト
云フヤウナ御示ノヤウナモノノ方ガ一層急
ダト云フヤウニ御感ジニナラウコトモ御尤
モト存ジマスノデゴザイマシテ、決シテ此
ノモノガ不必要、或ハ又不急ノモノデアル、
斯樣ナ意味デハ全然ゴザイマセヌ、今日迄
斯ウ云フ實情デアッタ、我々ノ方ノ今日考へ
テ居ッタコトノ實情ハ斯ウデゴザイマシタト
云フコトヲ實ハ率直ニ申上ゲタ次第デゴザ
イマス、今後色々全般的ニ考ヘマシテ、將
來可能ナル限リ斯樣ナモノノ設置ニ付キマ
シテモ考ヘテ參リタイト斯樣ニ存ジテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=31
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032・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 只今ノ私ノ質問ニ對ス
ル大臣ノ同感ノ意ヲ御表シ下サッタコト、竝
ニ附隨シテ政府委員ノ御說明ニ依ッテ詳細了
承致シマシタ、次ハ私立學校ニ關スルコト
デゴザイマス、今盛ニ整理統合ヲ唱ヘラレ
テ居ル大學、專門學校、是ハ私ハ間接ニ承ツ
テ居ルダケデアリ·マスノデ、暫ク省キマシ
テ、專ラ私立中等學校ノコトニ付テ補助育
成ヲ如何ニセラレル積リデアルカヲ御伺ヒ
致シタイノデゴザイマス、隨分澤山私立中
等學校ガ日本ニゴザイマス、是ナクンバ現
在ノ靑年ノ向學心ヲ滿タスコトハ出來ナイ
ノデハナカラウカ、卽チ私立中等學校ハ國
家ノ爲ニ重要ナ〓育機關デアッテ、ナクチヤ
ナラヌモノ、一ツデモ減ラシタクナイモノデ
アラウト私ハサウ考ヘテ居リマスガ、文部省
モサウ云フ風ニ御考ヘニナッテ居リマセウカ、
ソレヲ先ヅ御尋ネ致シマシテカラ、次ニ若
シ私立ノ中等學校カ果シテ必要ナモノトシ
タナラバ、文部省ハ之ガ存續ヲ希望スルケ
レドモ、素々私立ダカラオ前等ハ勝手ニ維
持經營シテ行ケ、ナカ〓〓援助ハ出來難イモ
ノダ、斯ウ云フ御積リデアルカ、ソレトモ出
來ルダケ精神的ニモ、物質的ニモ、經濟的
ニモ最善ヲ盡シテ補助育成シテ行カウ、斯
ウ申サレルカ、乃至ハ爲シ得ル限リハ援助
ハシタイノダケレドモ、國費多端ノ折柄今
ハドウニモ手ガ著ケラレヌ、斯ウ云フノデ
アルカ、其ノ點ヲ承リタイノデゴザイマス、
此ノ見地カラ私ノ文部省豫算ヲ一瞥シタ所
デハ、私立學校刷新改善ニ關スル經費二十
三萬圓ト云ッタ風ニナッテ、何處ニドウ云フ
工合ニ包括サレテ居ルカ分リマセヌケレド
モ、餘リニ私立學校ノ數等ニ比較シテ金額
モ少イシ、從來オヤリ來リノコトモ本當ニ
二階カラ目藥ノヤウナ感ガアルノデハナカ
ラウカ、斯ウ云フ風ニ考ヘテ居ルガ、是ハ
ドウ云フ譯デアリマセウカ、申ス迄モナク
度々此處デ論議セラレタヤウニ、良イ〓育
ヲ施スノニハ良イ先生ヲ取リ揃ヘナケレバ
ナラヌ、良イ先生ヲ養ッテ配付ヲシテ貰ハナ
ケレバナラヌ、是ハ私立デアッテモ公立
デアッテモ變リガナイ、皆國家ノ必要ナ靑年
ヲ〓養スルノデアル、公立ニモ良イ先生ヲ
備ヘナケレバナラヌト共ニ、私立ニモ良イ
先生ヲ廻シテ貰ハナケレバナラヌ、然ルニ
今日ハナカ〓〓公立學校ニ於キマシテモ先
生ヲ揃ヘルト云フコトガムヅカシイ、況ヤ
私立學校ニナリマスルト云フト、ソレ〓〓
ノ首腦者ガ無月給デ働イテ居ッテモ十分ナ
御手當ヲ先生ニ仕向ケルト云フコトガ困難
ナ狀況デ、其ノ實相ハ極メテ深刻デアリマ
ス、ソコデソレハドウ云フ原因デアルカト
見マスト、例ヘバ恩給問題、是ハ政府ノ官
吏ニ準ズル所ノ中等學校ノ〓師ハ或年限ガ
來レバ恩給ガアル、處ガ私立ノ學校デゴザ
イマスルト、恩給財團ト云フヤウナ極メテ
貧弱ナモノハゴザイマスケレドモ、是ハド
ウモ大變ナ相違デアル、恩給ト云フ問題ダ
ケデモセメテ公私立ノ別ナカラシムルナラ
バ、是ハ非常ニ宜イ、別ニ金ヲドウ斯ウ
シテ吳レト云フノデハナイ、金ヲ積立テサ
セルナラバ、ドウ云フヤウナ方法ヲ採ッテモ
宜シイ、何トカシテ此ノ恩給問題ヲ解決シ
テ戴クコトガ出來ナイダラウカト痛感致シ
テ居ルノデゴザイマス、同時ニ又、今此ノ
政府豫算ニ相當程度澤山公立中等學校ノ俸
給賞與、家族手當、戰時勤勉手當、斯ウ
云フ風ニドン〓〓ト國ノ豫算ヲ取ッテ居ルト
云フコトハ非常ニ結構デアル、是デモ足ラ
又、中等學校〓師ニ百十何圓程ノ平均俸給
デハ、今日是ハ自由勞働者ヨリ少イ俸給ダ
カラ、コンナコトデハ到底イカヌト思フ、
先ヅソレニシテモ公立學校ノ爲ニドンノ
國庫カラ、或ハ地方費カラ出シテ參ルノデ
アルケレドモ、私立學校ニ於テハ何等ノ恩
典モナイ、併シ一方キツイ御要求ガアッテ、
當然私立學校トシテハ文部省ノ仰シヤル通
リ先生モ備ヘナケレバナラズ、又〓育上ノ
缺陷モナイヤウニ施設モシテ行カナケレバ
ナラヌト云フコトハ當然デアル、ソコデ起ッ
テ來ルノハ授業料ノ增額ト云フ問題、是モ
ナカ〓〓容易ニ許サレヌ、又無暗ニ增額ス
ベキモノデナイト思フガ、迚モ家族手當ト、
ソレカラ戰時勤勉手當、臨時手當ト云フヤ
ウナモノデモ非常ニ是ハ困難デアル、ソコ
デ困難デアレバ其ノ學校ハ潰レテ宜イノカ、
或ハ新シキ御考ニナッテ、國庫カラ出スモノ
デアルナラバ、何トカシテ私立學校ニモ之
ヲヤリマシテモ宜シカラウ、ソレハ校長ガ
一萬圓モ二萬圓モ取ッテ居ルヤウナ所ナラ
バソレハドウデモ構ハヌノデスケレドモ、
全般ヲ睨ンデ見ルト、是ハドウシテモサウ
云フ譯ニハ行カナイ、是ハ一度內部ニ立入ッ
テ算盤ヲ彈イテ、文部省御自體ガ私立學
校ノ經營ト云フモノヲ御考ニナッタラ能ク御
分リニナルノデ、斯クノ如クスルコトニ依ッ
テ國家モ益スル、地方モ亦益スル、其ノ
學校ノ存在ト云フコトハ非常ニ意味ガア
ル殊ニ官立學校アタリデハ到底豫期スル
コトノ出來ナイ所ノ寶ヲ澤山持ッテ居ル、歷
史、傳統等ニ富ンダ色々ナ良イコトガアル
ノデアルカラ、之ヲ活カシテ行カナケレバ
ナラヌ、活カスト云フコトニ付テハ何トカ
此ノ際方法ヲ講ズルノデナケレバイケナイ
ノデ、尤モ是ハソンナコトハセズニ、自然ニ
潰レテシマヘバ全部官學ニシテシマフト云
フコトナラバ、ソレハソレデモ一ツノ趣旨
デアルカラ、私共ハソレハ別ニ考ヘナケレ
バナラヌ問題ダケレドモ、旣ニ若シ私立中
等學校ト云フモノハ國家ノ主要ナ機械デア
ル、之ヲ活カシテ行キタイト云フナラバ、
少クトモ現在ノヤウニ、足ノ下カラ鳥ガ飛
ビ立ツヤウニ、家族手當モヤラウ、ドウ斯
ウシヨウト云フ時ニ、是ハ矢張リ國家ノ重
要機關デアルナラ同ジヤウニ見テ行カナケ
レバナラヌト思ヒマス、斯ウ云フ點ニ付テ
ドウ云フ風ニ御考ニナッテ居リマスカ、御
尋ヲ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=32
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033・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 私立中等學
校ノコトニ付テノ色々御意見御質問ヲ拜
聽致シマシタガ、是ハ必ズシモマア私立中
等學校ニハ限ラナイノデアッテ、私立學校
ハ大學カラ國民學校、或ハ更ニ言ヘバ幼稚
園ニモ及ブ問題デアルト考ヘルノデアリマ
スガ、ドウモ今迄私立學校ト云フモノハ割
合ニ政府トシテハ放任シテ居ッタト謂ッテ宜
イノデハナカラウカト考ヘルノデアリマス、
私立學校ト云フモノノ考ヘ方ガドウモマダ
ハッキリシテ居ラナイデハナカラウカト思
フノデアリマス、是ハ〓育ハ國家ガ擔當ス
ベキモノデアル、併シ國家ダケノ力デハ到
底十分ニ行カナイカラ、公立ハ半分國家的
ナモノデアリマスルガ、其ノ足ラザル所ヲ
私立ニ依ッテ補ハセルト云フ趣意デ私立學
校ガ認メラレテ居ルモノデアルカ、或ハ國
家ハ國家トシテノ〓育ノ體制ヲ整ヘテヤル
ノデアルガ、併シ又各々〓育ニ特殊ノ主張ヲ
持チ、考ノアル方々ガ國家ノ〓育方針ト多
少違ッタ特色ヲ持ッタ〓育ガシテ見タイト云
フノデ、例外的ニサウ云フモノヲ經營シヨ
ウト云フ意味ニ於テ私立學校ガ認メラレテ
居ルノデアルカ、ドウモ只今迄ハ、少クト
モ私自身トシテハマダハッキリシタ觀念ヲ
持ッテ居ラナイノデアリマス、從ッテ今迄ノ
私立學校ハ、〓育全般カラ見マシテ相當大
キナ貢獻ヲシテ居ルモノハ無論多數デアリ
マスガ、中ニハ又淺田男爵等ノ御目ニ止マ
ラナイヤウナ隨分如何ハシイ私立學校モア
ルノデアリマシテ、今日ハ寧ロ〓育機關ト
シテ極端ニ申セバ存在ヲ許スコトノ出來ナ
イヤウナモノサヘ或ハ絕無トハ言ヘナイト
思フノデアリマス、國家トシテ〓育ノ問題
ニ付テ從來ハ今申シタヤウナ譯デ、大體ニ
於テ官立或ハ公立程度迄ハ相當計晝モ立テ、
面倒モ見テ來タノデアリマスガ、ドウモ
私立學校ト云フモノニ對シテハ、サウ云フ
風ナ徹底シタ〓育系統ノ中ニ之ヲスッカリ
取入レテ考ヘタノデハナカッタヂヤナイカ
ト思フノデアリマス、今後此ノ〓育ノ問題
ハ益〓重要ニナッテ來ルノデアリマシテ、是
ハ官公私ヲ問ハズ、國家ガ文〓ノ問題トシ
テ全般ニ通ジタ一ツノハッキリシタ方針ヲ
立テナケレバナラヌヂヤナカラウカト思ッ
テ居ルノデアリマス、ソレデ私立學校ト云
フモノハ、私ハドチラカト云ヘバ、是ハ特
色ノアルモノデアリ、又特色ノアルコトニ
於テ意義ガアルモノデハナカラウカ、官立
ハ大體ニ於テ型ニ嵌ッタモノガ出來ルノデ
アリマスガ、勿論官立ト雖モ色々考ヘテ行
カナケレバナラヌコトハ當然デアリマスル
ガ、殊ニ私立ニ於キマシテハ一ツノ〓育理
想ヲ持チ、〓育ノ特色ヲ發揮シテ行キタイ
ト云フヤウナ、非常ナ又長所ガソコニ發見
シ得ルノデアリマスカラ、國家全體ノ〓育
問題トシテ、矢張リ私立學校ト云フモノヲ
健全ナル發達ヲサセルコトガ、今後必要ノ
問題デハナカラウカト思フノデアリマス、
サウ云フ意味ニ於キマシテ、然ラバ私立學
校ニ對シテ國家カラ補助シテ其ノ目的ヲ達
スルカ、或ハ私立學校ハ私立學校トシテノ
十分鞏固ナル基礎ヲ持ッタモノニ〓育ヲヤ
ラセルカト云フコトモ、是ハ又第二ノ問題
デアルト思フノデアリマス、總テ國家ノ御
厄介ニナッテ行カナケレバナラナイヤウナ
私立學校ガ存在スルコトガ、果シテ私立學
校ノ存在ヲ認メテ行ク根本方針ニ合致スル
モノデアルカドウカト云フ所ニ、私ハ今疑
問ヲ持ッテ居ルノデアリマス、私立學校ト
シテ特色ノアル〓育ヲスルト云フノハ、國
家ナドノ御厄介ニナラズニ立派ニヤッテ行
ケルト云フモノニ於テ初メテ特色ヲ發揮シ
得ルノデハナカラウカ、一ニモ二ニモ國家
カラシテ補助ヲ受ケテヤッテ行クト云フコ
トナラバ、其ノ位ナライッソ官立デヤッタ方
ガ宜イヂヤナカラウカ、國費ニ依ッテ補助ヲ
シ、アトハ授業料デ以テヤッテ行クト云フ
コトナラバ官立ト全然違ハナイ、ソコラニ
於テ私立學校ニ對シテ今後ドウ云フ方針ヲ
以テ之ヲ存在セシメルカドウカト云フコト
ニ、私ハ實ハマダ根本ニ多少ノ疑問ヲ持チ、
今後ソレニ付テハ一ツ四家全體ノ〓育計畫
ト云フモノヲハッキリ樹立シテ行ク必要ガ
アルヂヤナカラウカ、サウシテ大イニ存在
ノ理由ガアルトハ考へラレマスケレドモ、
私立學校トシテハ堅實ニシテ、而モ充實シ
タ〓育ヲヤレルヤウナ私立學校ガ欲シイ、
其ノ爲ニ又或程度必要ナモノハ國庫カラ補
助スル必要ガアル、國家カラモ補助スル必
要ガアル、國家ダケノ力デハ〓育全體ヲ迚
モヤリ切レナイカラ私立學校ノ協力ニ俟タ
ナケレバナラヌト云フヤウナコトデアリマ
スレバ、又國家カラ相當補助ヲ致サナケレ
バナラヌト云フコトニモナルト思フノデア
リマス、實ハ今御質問ノ點ニ付テ直チニ全
面的ノマダ御賛成ヲ申上ゲ兼ネマスルノハ、
私立學校ト云フモノニ對スル根本ノ觀念ノ
問題ニ付テマダハッキリシタモノヲ持チマ
セヌノデ、今日御卽答致シ兼ネルノデアリ
マスルガ、是ハ私ハモウ現在差迫ツタ問題
デアリ、又〓育全體ニ付テノ徹底シタ方針
ヲ立テテ行カナケレバナラヌノデハナカラ
ウカト云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、
或ハ十分御期待ニ副ハナイ御答辯デアッタ
カモ知レマセヌガ、又御質問ガアレバ重ネ
テ御答ヘ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=33
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034・淺田良逸
○男爵淺田良逸君 只今大臣ノ御所見ハ私
モ全クサウ考ヘテ居ルノデアリマス、授業
料モ取リ國家カラ補助モ受ケテヤルヤウナ
中等學校ナラ、ソレハナクテモ宜シイ、斯
ウ云フ風ニ一應考ヘラレマス、ケレドモ各
學校ハ文部省ノ御趣旨ニ從ヒマシテ、財團
ヲ作リ、財團ニハ相當大キナ財產モ持テバ、
又人モアリ、基礎ガ出來テ居ル、之ヲ活用
スルト云フコトハ政府トシテ非常ニ大切ナ
か、コトデアル、ソコデ是ガナクナッタ爲ニ新シ
ク左樣ナコトヲシロト言ッタラ、是ハ莫大ナ
國費ヲ要スルモノデアル、デアルカラ私ハ、
方針ヲ是カラ立テルト仰シヤルノハ御尤モ
デアリマスケレドモ、何トシテモ現存スル
モノヲ活用シ、發達セシメテ行クト云フコ
トニハ、是ハ少シノ疑モナイコトヂヤナイ
カト思フ、若シ何等ノ補助ガナイカラ潰レ
テシマフ學校ナラバ潰シテモ宜シイト、斯
ウ云フコトニナルト、ソレモ一ツノ御見解
デアリマス、併シソレニ代ルモノヲ作ルト
セバ莫大ナ費用ヲ要スルト云フコトヲ考ヘ
テ來タ時ニ、又思ヒ直サニヤナラヌト云フ
風ニ考ヘマス、サウ云フ風ナ色々ナ大問題
ガゴザイマスノデ、私ハ此處デ御卽答ヲ願
ハヌデモ結構ナノデアルガ、幸ヒ現文部大
臣ガ廣ク色々ナ御考ヲ御持チニナッテ居ル
ノデアリマスカラシテ、ドウゾ此ノ機會ニ
於テ、若シモ從來各文相ガ斯樣ナコト迄モ
徹底的ナ觀察ヲ下シ得ズ、計畫モ確立シテ
居ナイト云フナラバ、是ハ政府トシテ當然
御決メニナラナケレバナラヌ、成ルベク早
ク之ヲ御確定ニナリマシテ、サウシテ方針
ヲ立テテ御示ニナリ、又其ノ御方針ニ依ッテ
處理ヲシテ行カナケレバナラヌモノデアル
ト思ヒマス、而シテ私ノ補助ノコトヲ申上
ゲマシタノハ實ハ速急ノ問題ナノデアリマ
ス、ソレハ何モ今迄家族手當ト云フモノハ
アリマセヌデシタケレドモ、ドウシテモ一
ツノ中等學校デ持チマシテ家族ノ扶助ヲシ
ナケレバナラヌ人ハ百人ハアルト見ニヤナ
ラヌ、サウスルトソレニ對スル所ノ非常ニ
深刻ナ關係ガ大分起ル、官公立ナラバ直チ
ニ政府ガ國庫カラ出スカラ幾ラデモ宜シイ、
ケレドモ私立學校ハサウハ行カナイ、戰時
勤勉手當ナド、斯ウ云フモノハ速急ノ問題
デアリマスカラシテ、ドウカ餘リ氣長ク御
〓究御觀察ニナル問題ト、速急ノ問題トハ
切リ離シテ一ツ御〓究ヲ願ッテ、ソシテ成ル
ベク國家ノ爲ニナルヤウニスルナラバ、國
民ニ於キマシテモ其ノ費用ヲ政府豫算カラ
出スコトヲ拒ムモノデハナイ、吝カナモノ
デハナイ、是ハ私等ノ子供ヲ養ッテ居ルノデ
アル、斯ウ云フノデアリマスカラシテ、ド
ウカ一ツサウ云フ風ニ御取計ヒヲ願ヒタイ、
併シ、若シ夫レ〓〓私共ノ知ラナイヤウナ
不都合ナ學校ガアルナラバ、ドシ〓〓御整
理ニナッテ、左樣ナモノハ閉鎻ヲスルナリ、
今日現實ニヤッテ居ルコトヲオヤリニナレバ
宜シイ、併シ堅實ニシテ相當效果ヲ擧ゲテ
行クモノハ之ヲ助成シテ行クト云フヤウナ
英斷コソ今日必要デアルト思フノデアリマ
スノデ、若シ御答辯ヲ下サルナラバ結構デ
ゴザイマスケレドモ、サウデゴザイマセヌ
ナラバ、十分ナル御勘考ヲ煩ハシテ置キタ
イノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=34
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035・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 重ネテノ御
意見拜承致シマシテ、今御話ノ通リ基礎モ
相當鞏固デアリ、立派ナ成績ヲ擧ゲテ居ル學
校等ニ對シテハ大イニヤラシタ方ガ宜カラ
ウト云フコトハ、是ハ問題ナイト思ヒマス、
サウ云フ立派ナ私立學校ナラバ、ソコニ〓
育ノ特色モ十分發揮シ得ルコトデアリマス
シ、如何ハシイ非難ヲ受ケルヤウナコトハ
決シテナイト思ヒマスガ、動モスルト私立
學校等ニ於キマシテハ非常ニ營利的ナ風ニ
見ラレル學校モナイデハナイノデアリマシ
テ、サウ云フヤウナ學校ニ付キマシテハ、
是ハ餘程矢張リ〓究シナケレバナラヌモノ
デアラウト考ヘマス、今早急ノ問題トシテ色
色ノ點ニ付テ助成モスル必要ハ、是ハ確ニ
アルト考ヘマス、今理想的ナ形ノ事バカリ
ヲ考ヘテ居ラレ、ナイ時代デアリマスカラ、
今日現在ノ學校設備等ヲ十分ニ活用スルト
云フコトハ、是ハ當然考ヘナケレバナラヌ間
題デアリマス、ソレニ付キマシテハ中等學
校等ニ於キマシテ、差當リノ問題ト致シマ
シテハ、商業學校ナゾハ相當多數工業學校
等ニ轉換サセマシテ、此ノ際ノ最モ必要ナ
ル工業從事員ヲ養成スルト云フ方針ヲ採ッ
テ、此ノ四月カラ大分多數ノモノガ工業學
校ニ轉換スルヤウニナリマスルノデ、是等
ニ對シテハ十分ヤッテ參リタイ考デアリマ
ス、〓育ノ問題ハ悠久デアルト同時ニ、又
非常ニ差迫ッタ問題デモアリマスルシ、今御話
ノ御趣意ハ十分了解致シマシタ、御期待ニ
副フヤウニヤッテ行キタイト考ヘテ居リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=35
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036・田所美治
○田所美治君 私ハ皆サンノ御問ノ後デモ
ト思ッテ居リマシタガ、丁度淺田男爵ガ各方
面ニ亙ッテ能ク御調ベニナッタ御意見ヲ拜聽
シマシタ、最後ニ私立學校ニ付テノ御尋ガ
アッタノデアリマスガ、文部大臣ノ御答モ了
承致シマシタガ、文部大臣ハ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=36
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037・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 諸橋君、只今
御聽キノ通リデアリマスガ、宜シウゴザイ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=37
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038・諸橋久太郎
○諸橋久太郞君 ハア発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=38
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039・田所美治
○田所美治君 〓育ノコトハ平常カラ非常
ニマダ文部大臣ニオナリニナラヌ前カラ議
員トシテハ甚ダ〓究ヲ深クセラレテ居リマ
スガ、ドウ云フ譯デカ〓育審議會ニ御關係
ガナカッタカト思ヒマスガ、今御答へニナッ
タ問答ノ點ハ、五箇年間ヤリマシタ〓育審
議會デ可ナリ其ノ場合其ノ場合ニ能ク〓究
ヲ凝ラシマシタ、ソレデ丁度淺田君ノ御尋
ネニナルヤウナ點ガデスナ、〓究ノ上ソレ
ゾレ決議ニナッテ居リマス、ソレハ能ク御調
ベヲ願ヒマシテ御實行ヲ願ヒタイ、斯ウ思ッ
テ居ルノデアリマスガ、大體論トシテハ宜
イノデアリマスガ、私一寸拜聽シテ居ル間
ニ色々見テ見マシタガ、私立學校ノ起リハ
デスナ、丁度維新ノ頃ニマダ學校ノ出來タ
時分ニハ、慶應義塾ガ起リマシタリ、或
昔ナガラノ塾ガアリ、其ノ塾ガ發達シテ、
地方アタリニハボツ〓〓良イノガ出來テ來
マシタ、マダ其ノ外ニモゴザイマセウ、例
ヘバ淺田男爵ノ御〓里ノ東奧義塾デス
カ······アレ等ハ昔出來タノガズット發達シテ
今日デハ中學校ニナッテ居ル、多分淺田男爵
ハ深イ御關係デアラウト思フ、アレダケノ
コトヲ御調ベニナッテ文部大臣ニ要請的ノ御
質問ガアッタヤウニ思フノデアリマスガ、サ
ウ云フモノモ殘ッテ居ル、當初ノ起リハ金ノ
アッタモノ、或ハ歷史ガアルモノ、ソンナモ
ノガズット維新以來官公立ヨリモ先ニ、發
達シマシテ、又官公立ト相俟ッテ發達シタモ
ノモアル、ダカラ政府ノ助成等ハ要ラヌ、
ソレガ特色ヲ發揮シテ居ル、斯ウ云フモノ
ガ所謂私立學校ニ我々モ知ッテ居ルモノガ
殘ッテ居ッタリシテ發達シテ來タ、斯ウ云フ
モノモゴザイマス、處ガ向學心ノ發達ノ爲
ニ、是ハ文部大臣モ御承知ノ通リデ、迚モ
官公立デハ間ニ合ハヌ、斯ウ云フ者ノ爲ニ
民間ノ〓育者、或ハ〓育ニ熱心ノ者ガ金ヲ
出シマシテ、其ノ後ニ發達シタ、卽チ明治
ノ時代カラ今日迄數十年間興ッテ來マシタ、
其ノ〓育機關ノ中ニハ私立學校ハ實ニ多數
興ッテ參リマシテ、私ハ實ハ自分自ラハ私立
學校デ學ンダ體驗ハナイノデアリマスケレ
ドモ、先程モチヨット聽キマシタガ、中等學
校アタリデハ今日デハ七割、百ノ內七十ガ
私立學校ダ、斯ウ云フ情勢デアルノデアリ
マシテ、サウシテ監督ハ文部省ガ矢張リ公
立ト同ジヤウニ監督シマシテ、例ヘバ其ノ
財源ノ金ニ於キマシテモ、文部大臣ノ認可
ヲ受ケナケレバ一文ノ金モ取レヌ、授業料
其ノ他ノ收入モ得ラレヌ、斯ウ云フ監督ヲ
受ケテ居リマス、サウシテ今日七割ヲ占メ
テ、例ヘバ中等學校ハ、一萬人居レバ七千
人ハ私立學校ニ行ッテ居ル、專門學校以上ニ
ナリマシタラ尙多イダラウト思ヒマス、ソレ
ハ文部大臣ガ豫テ御心配ナ金ノ要ラヌ·····
今日ハ丁度山岡君ハ見エマセヌケレドモ、
山岡君ノ大學アタリデハ法文ヲ餘計ニシ
テ、理科、醫科等ノ理科方面ガ少イ、ソン
ナコトハ何處カラ起ッテ居ルカト云フト、詰
リ理科ノ方面ニハ金ガ非常ニ要ル、文科ナ
ラバ、ソンナニ要ラヌデ經營ガ出來ル、私
立學校トシテハ監督ヲ受ケルモノデスカラ、
授業料ハ認可ヲ得ナケレバナラヌ、斯ウ云
フコトデアリマスカラ、官立ノ如クニ自在
ニ租稅デヤッテ行クト云フ譯ニ行キマセヌ
カラ、理科方面ハ其ノ儘ニ居ッテ、法文ノ方
デ財源ヲ得テ居ル、コンナ經營ノ方針ヲ採ッ
テ居ルト思ヒマス、今日デハソレデナリマ
セヌ、監督シテ行ッテ、文部大臣ノ御考ノヤ
ウニモ一ツ國策ニ導イテ行カナケレバナラ
又、是モ良イ御考デアラウト存ジマスガ、
色々俟チマシテ、丁度淺田男爵ガ考ヘテ居
ラレルヤウニ、私立學校ヲ今日廢止スル譯
ニ行キマセス、廢止シタラ大變ナコトニナッ
テ行ク、私立學校デヤット中等〓育等ガ出
來テ居ル、又中等〓育以上ニ付テ考ヘテ見
マシテモ、勉强サセヌト云フ方針ヲ採ラレ
レバ別デスガ、私立學校ト云フモノハ相當
ノ貢献ヲシテ居ル、中ニハ我々ノ知ッテ居ル
東京ニ於テモ數個ノ良イ私立ノ大學モアル、
專門學校モアル、眞面目ニヤッテ居リマシ
テ、サウシテ官立ノ帝大ニ負ケ劣ラヌ、斯
ウ云フモノモアルノデアリマスカラ、今日
デハドンナコトヲシマシテモ私立學校ハ之
ヲ導イテ、サウシテ益〓良イモノニシテ、官
立ト同ジヤウナモノ、或ハソコラニ特色ガ
加ハッテ、モット良イモノニナル、斯ウ云フ
コトニ御考ヘニナルヨリ仕方ガナイダラウ
ト思ヒマスガ、サウ云フ考ニ基キマシテ審
議會デハ各所ニ淺田男爵ガ御問ヒニナル點
ヲ決議致シテ居リマス、例ヘテ言ッテ見レバ、
恩給ノ點デス、一番具體的ニハ恩給ノ點、恩
給ヲ私立學校ノ〓員ニヤルト云フコトハ、
私モ自分デドウ云フモノダラウ、斯ウ考へ
サセラレタコトモアルノデアリマスガ、現
ニヤッテ居ルノデス、實際ノ事情トシテ政府
ハ顧ミラレマセヌカラ財團ヲ作リマシテ、
僅ノモノデスガ、百萬カ二百萬シカ金ヲ集
メテ居リマセヌ、私立學校ノ微々タル薄給
ノ〓員ガ月々俸給ノ金ヲ掛ケマシテ、百分
ノ一トカ二トカ、丁度政府ノ恩給ト同ジヤ
ウナモノヲ掛ケマシテ、百萬カ二百萬カ集ッテ
居ル、ソレダケノ利子デハ行ケマセヌカラ、政
府ガ若干補給シテ居ル、丁度豫算ニ戴ッテ居
リマス、九萬何千圓ト云フモノヲ恩給ニ出シ
テ居ル、ソレガ爲ニ恩給ハヤリマスケレドモ
政府ノ恩給ノ半分ニモ達シテ居ラヌ、斯ウ云フ
憐ナ狀況デアル、サウ云フ點ヲ土臺ニシテ、
段々深イ御關係ノ淺田君ガ御尋ネニナッタノ
ダラウト思ハレマスガ、恩給ニ付テハドウ
ヤッテ居ルカト云フト、「私立學校〓職員ニ對
シ普ク」、丁度大臣ガ御話シニナッタ中等學校
ニ限ラヌ、私ハ中等學校ダラウト思ッテ··
丁度御承知ノ通リ決議ニ加ハッテ居リマスカ
ラ、大學モ專門學校モアルヂヤナイカ、丁
度大臣ノ御答辯ノ全體ヲ包含シマシテ「私立
學校〓職員ニ對シ國ノ恩給制度ニ準ジ恩給
ヲ支給スルノ方途ヲ講ズルコト」、斯ウ立派
ニ確定シテ居リマス、此ノ決議ニ對シマシ
テハモウ是ハ岡部文相御承知ノ通リ、歷代
ノ文部大臣ガ若シ異議ガアラレルナラバ
之ガ實行上或ハ困難デアルナラバ、私モ深
イ關係ヲ持ッテ居リマシタカラ考ヘナクチ
ヤナラヌト思ヒマシタガ、實行ヲ誓ハレテ
居ル、斯ウ云フコトニナッテ居リマス、只今
デハハツキリ決議ヲ致シテ居リマス、或ハ
又小學校ノコトヲ議シマス時分ニ、中等學
校カラ上ノ方ノ學校ニ入ル、或ハ小學校カ
ラ上ノ方ノ學校ニ入ル、各學校ノ連絡關係
等ノ所ニ於キマシテ、中等學校入學者選拔
ニ關聯シテ、「各國民學校間及ビ各中等學校
間ノ差等ヲナカラシムル爲メ」七割モ存在シ
テ居ル以上ハ公立ヘ行カナケレバナラヌ、
私立ハ惡イ學校ダト云フコトヲ看過スル譯
ニ行カヌノデアリマスカラ、ソレヲドウシ
テモ差等ナカラシムルノガ本旨デナケレバ
ナラヌ、ソレハ長イ間ノ文部省ノ法制上ノ
監督ハサウナッテ居リマスカラ、「ナカラシム
ル爲メ適當ナル施設ヲ講ズルコト」、殊ニ「曩
ニ本會ガ決議セル私立中等學校ニ對スル助
成ニ付テハ」、助成ト云フノハ物質的ナ助成
デアリマス、金錢上ノ〓育ノ內容ヲ改良シ
テ行クニ付テノ助成、「助成ニ付テハ速カニ
之ガ實行ヲ圖ルコト」、斯ウ云フコトヲ又別
項ニヤッテ居リマス、マア方々讀ミ上ゲテ見
マスレバ、或ハ大學ノ場合ニナリマシテハ
「私立大學ノ堅實ナル發達ヲ期シ其ノ內容ヲ
充實セシムルコト」、惡イ學校ハ勿論監督シ
テ、或ハ廢止モシナケレバナラナイガ、ソ
レト共ニ「適當ナル助成ノ方途ヲ講ズルコト」
「特ニ自然科學ニ關スル施設ニ關シテハ一
層之ガ助成ニ努ムベキコト」、先程申シマシ
タ理科方面ノ助成、斯ウ云フコトヲドウシ
テモセナケレバ非常ニ莫大ナル金ガ要ルノ
デアリマスカラ、今日私立學校アタリデ授
業料ノ外ニナカナカエライ金ヲ徵收シマシ
テ私立大學等ハ經營シテ居リマシテ、山岡
君ナドハ自分デ經營サレテ居ラレルカラ御
承知デアリマセウガ、サウ云フコトモシテ
デナケレバ此ノ理科ノ經營維持ト云フモ
ノハ出來ナイ、非常ニ金ガ要ルノデアリマ
ス、若シ國家的ニ私立學校ノ今日ノ貢獻ヲ
認メラレルナラバ助成ヲスルハ當然デアル、
助成スレバ卽チ生徒ノ負擔ハ減ッテ來ル、斯
ウ云フ場合ナドモ皆論及シマシテ、大學ニ
付テモソンナ決議ヲシテ居リマス、各所ニ
通ジマシテ、〓育審議會ノ全體ヲ通ジマシ
テ今日デハ、文部大臣ノ御話ノ通リ〓バ
ソナル·インフレンスLカラヤル、自分ノ考
カラヤル、斯ウ云フコトデ起リマシタラウ
ガ、今日デハ堂々タル〓育機關デ、是ハド
ウシテモ助長改善ヲ促シテ行ッテ、官公立ヨ
リモ優ッテモ劣ラヌ、斯ウ云フモノニ御世話
ニナラナケレバナルマイト、斯ウ云フコ
トニ、實ハナッテ居リマス、尙ソレハ能ク御
覽ヲ願ヒマシテ、御〓究ノ資ニ御供シ願ヒ
タイノデアリマス、ソコデ私ハ淺田男爵ノ
御問ガナケレバ、何故恩給法ヲ出サナカッタ
カ、恩給ノ金位ハセメテタッタ九萬圓デ、モ
ウ十年モヤッテ居ラレマセウ、タッタ九萬圓
捨テテ顧ミラレズ、ソレデアリマスカラ私
立ノ中學校、例ヘバ淺田男爵ノ東奧義塾、
假ニ御關係ガアルト假定シマシテ、其ノ東
奧義塾アタリデドウヤッテ居ルカト云フト)
恩給ヲ取ッテ居ル古イ先生ヲ集メナケレバ
ナラヌ、私立學校デサウ莫大ノ金ヲヤレマ
セヌ、僅ノ授業料位デ、其ノ上借金デモ背
負ッテ居ルヤウナモノデアレバ、ソレモ惡イ
借金デハイケマセヌガ、學校ノ建築ノ爲ノ
借金ヲ拂ッテ行カウト云フヤウナモノハ、五
圓十圓ノ授業料デハイカヌノデアリマスカ
ラ、恩給取リノ古イ先生ヲ集メル、サウデ
ナケレバ新シイ先生ヲ招ンデ來ルガ、恩給
ナルモノハヤレナイ、良イ者ガ來ル筈ガナ
イノデアリマス、高等師範卒業生ヲ採ルニ
シテモ、ソレハ官公立ノ方ヘ皆行キマス、
私立學校ヘハ一人モ來ナイ、殊ニ今日理科
トカ或ハ體操ノ〓育ナンカハ不足デアリマ
スガ、恐ラクハ東奧義塾へ行ク人ハ一人モ
アリマスマイ、サウ云フ實際ノ狀態デアリ
マスカラ、セメテ恩給デモ具體的ニ歷然ト、
決議シテ居ルノデアリマスカラ、助成ノ方
法デ宜シウゴザイマセウ、百萬圓ナリ二百
萬圓ノ金ガ集ッテ居レバ財團法人ヲ····多 >
タ九萬圓ノ補助デハ全國ノ私立學校ヘソレ
ハ均霑スル筈ガナイノデアリマスカラ、五
十萬圓トカ百萬圓ノ金ヲ御取リニナリマシ
テ、良イ〓員ヲ靑森ノ東奥義塾、ニ供給シテ
ヤルト云フヤウニ御考へニナッテ、是ハ今度ノ
議會アタリニ、育英會法案ヲ御出シニナル
カラ、私ハセメテソレデモ戴ッテ居ルノカト
思ヒマシタガ、タッタ九萬三千圓ガ何年モ
ズット續イテ居リマス、私立學校ノ者ハ、愬
フルニ途ナシデハアリマセヌガ、誠ニ薄張
デ、文部大臣ニ十分ナ請求モ出來テ居リマ
スマイ、捨テテ顧ラレヌデハ困ルノデアリ
マスカラ、ドウシテモサウヤッテ行クヨリ仕
方ガナイト思フノデアリマス、育英會法案
ノ次ニアリマス二ツノ案モ、矢張リ公立學
校ト官立學校ニ限ッテ居リマス、公立學校職
員ノ待遇ニ關スルコト、是ハ結構ナコトデ
アリマス、今日中等學校アタリデ、此ノ間
表ヲ貰ヒマシタガ、百十圓ソコ〓〓ノ俸給
デハ迚モ行キマセヌカラ、年功加俸ナリ手
當ナリ戰時手當ナドデ百八十圓バカリ御取
リニナッテ居リマス、ソンナコトデハイケマ
セヌケレドモ、併シナガラ之ヲ端緒ニ年々
御殖シニナルコトモ出來マセウ、今度私立
學校ハ官公立トノ差等ノ幅ガ廣クナルト云
フヤウナ形勢ヲ馴致スルト云フコトニナッテ
居リマスカラ、セメテ具體的ニ決議シテ居
ルコトハ、財政ガ許ス限リ御實行ヲ願ヒタ
イ、斯ウ申上ゲテ置キタウゴザイマス、是
ハ三四百項決議シタ譯デアリマスガ、其ノ
要綱ノ一ツデゴザイマス、私立ノ〓育機關
ヲドウ見ルカ、數年前カラ一兩年前ニ完結
スル時迄一貫シテ決議ヲ致シマシタヤウナ
譯デアリマス、私立ノ幼稚園或ハ小學校ノ
御話ガゴザイマシタガ、小學校ハ義務〓育
デ、今度愈〓强クシテ市町村立ノ外ハ許サナ
イ、國民學校ハ公立ニ限ルト云フコトニ致
シマシタ、特殊ノモノハ若干ゴザイマスケ
レドモ······ソレカラ幼稚園ニ至リマシテ
ハ是ハ小サイ子供デ、幼稚園ノ義務〓育制
ナント云フコトヲ頻リニ言フ人モアリマス
ケレドモ、ソンナコトハ申シテ居リマセヌ
ガ、中等〓育以上ノ、卽チ任意施設ニ對シ
マシテハ、數十年來私立ガ發達シテ來マシ
テ、只今ノヤウナ決議ヲ致シテ居リマス、
是ハ文部大臣モ御覽ニナレバ皆直グ御贊成
ノコトダト思ヒマスカラ、能ク〓究ヲ願ヒ
マシテ、私ハ今年ノ豫算ニ御入レニナッタラ
宜カッタト思ヒマス、淺田君ノ御質問ニハ私
ハ全ク御同感デアルト云フ意味デ、其ノ通
リ御實行ヲ願ヒタイト云フコトヲ御願ヲ致
シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=39
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040・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 〓育審議會
ノ答申ニ付キマシテ、私ハ未ダ能ク見テ居
リマセヌノデ、尙能ク當時ノ經過等ヲ調べ
マシテ善處致シタイト思ッテ居リマス、
只今豫算等ニ計上シマシタモノノ中デ、〓育
ニ關スル非常措置ニ伴ヒマシテ、十九年度
ニ於テハ理科系ノ私立大學、專門學校ニ對
シテ助成ヲ行フト云フコトニナッテ居リマ
ス、是ハ相當擴張スル豫定デアリマス、ソ
レカラ私立中等學校ニ付キマシテハ工業學
校ノ學科增設、商業學校ノ轉換等ニ付テハ
是亦助成ヲスルコトニシテ居リマス、ソレ
カラ理科系統ノ設備、家事科ノ設備ニ付テ
モ私立中等學校ニハ相當助成スルコトニシ
テ居ル譯デアリマス、是ハホンノ臨時措置
トシテ取上ゲタコトデゴザイマシテ、今ノ
全般的ノ御期待ノ極メテ一小部分トシカ考
ヘラレマセヌガ、時局下最モ必要ト感ゼラ
レタ點ニ付テ是等ノコトヲ致シタ譯デアリ
マス、ソレカラ私立學校ノ恩給制度ノコト
ニ付キマシテハ、調査費用ヲ十九年度ニ於
テ一萬五千圓ダケ計上致シマシテ最モ〓究
スルコトニナッテ居ル譯デアリマス、私立學
校全般ニ付キマシテ、今ノ御話ハ、御說ノ
通リ七割程度迄ハ私立學校デヤッテ居ルノデ
アリマスカラ、差當リノ問題トシテハ之ヲ
助成シテ行ク外、全般互ッテ〓育ノ向上充
實ヲ圖ルト云フコトガ一應適當カトモ考
ヘラレマスガ、今日ノ色々ノ、軍ノ要請ノ爲
ニ徵兵適齡ハ十九歲ニナリ、又勤勞動員ノ
關係デ數百萬ノ靑年或ハ壯年ガ、徵兵ト重
複シテ要請サレルノデアリマシテ、固ヨリ
靑年學校等ニ入ッテ、未丁年ノ者ハ仕事ニ
服シナガラ學校〓育ヲ受ケルト云フ形ニナ
リマスケレドモ、是ハ本格的ノ〓育トハ申
セマセヌノデ、所謂中等學校、專門學校、
或ハ大學ト云フヤウナ系統ノ〓育ニ付キマ
シテハ、是ハドウシテモ此ノ時局下將來ノ
見透シヲ付ケテ、〓育ノ體系ト云フモノヲ
此處デ一ツハッキリ立テテ行カナケレバナラ
ヌノデハナカラウカ、從來ノ形ノ儘デハ日
本ノ〓育ハ殆ド崩レテシマフノデハナカラ
ウカトサヘ考ヘルノデアリマス、併シサウ
云フコトニナッテハ大變ナンデアリマシテ、
今後ノ〓育ハ益〓充實シタモノニシテ行カナ
ケレバナラヌノデアリマス、私ハ豫テ日本ノ
〓育ハ甚ダ貧弱デアルト考ヘテ居ッタノデア
リマシテ、今迄ノ程度ノ〓育デハ本當ニ充
實シタ張切ッタ學力ガ發揮サレルトハ考ヘ
ラレナイノデアリマス、殊ニ學校ノ設備モ
一通リハドウヤラ出來テ居リマスケレドモ、
學術〓究ノ設備ニ至ッテハ、全ク御話ニナラ
ナイ貧弱ナモノデアリマシテ、コンナコト
デ將來世界ト太刀打ガ出來ルモノデナイト
私ハ痛感シテ居ルノデアリマス、是等ハ一
ツ〓育、學術全面ニ亙ッテ本當ニ世界ノ一
等國タルノ實ヲ備ヘルコトガ望マシイコト
デアリ、サウナケレバナラヌコトト考ヘテ
居ルノデアリマス、サウ云フ風ナ抱負ヲ以テ
一ツ文〓ノ大刷新ヲヤラナケレバナラヌト
云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、少シ言
葉ハ大キ過ギマスケレドモ、實際自分ハサ
ウ考ヘテ居リマスノデ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=40
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041・田所美治
○田所美治君 文部大臣ノ御抱負ヲ承リマ
シテ頗ル意ヲ强ウシテ御期待申上ゲテ居リ
マス、是モ〓育審議會ノ最後ノ建議ニ於テ
御考ヘノヤウナコトヲ會員共カラ望ンデ居
リマス、冀クバ我ガ國ノ允文允武ノ國體ノ
發達ニ基イテ、殊ニ維新以來明治天皇ノ御
奬勵、今日ニ及ンデ居リマシテ、今上陛下
ノ度々ノ戰時ニ際シテノ御詔勅モ拜シマシ
テ、愈~感激ヲ深ウシテ、丁度文部大臣ノ
結論トシテ御話ニナッタ我ガ國ガ〓育國家
トシテ世界ニ垂範シナケレバナラヌ、斯ウ
云フ意味ノ建議ヲ滿場一致致シテ置キマシ
タ、全ク政府モ御同感ト存ジマスカラ、ド
ウド其ノ御抱負ヲ著々御實行願ヒマシテ、
微々タル我々モ御協力申上ゲル、斯ウ云フ
考デアリマス、淺田男爵ヨリ修錬ノコトニ
付テ御尋ガアリマシタ、修鍊ニ付テハ全ク
私御同感ニ存ジマス、是モ今度ノ審議會ノ
內容ノ改善ノ主タル眼目ノ一デゴザイマス、
從來劃一ノ弊ニ流レタ、生活ヲ沒却シタ、
一ツノ學校ニ百人モ五十人モ一緒ニ容レテ
居ッタ、アヽ云フコトデハイカヌ、ソコニ
向ッテ匡正ヲシナケレバナラヌト云フコト
デ、修鍊ヲヤリ始メマシタ、其ノ標準ヲ文
部省デ御作リニナリマシタ、實ハ標準ハ御
示シニナリマシタガ、現在ノ有樣ハドウシ
テ宜イヤラ分ラヌ、斯ウ云フコトガ事實デ
ゴザイマセウ、是ハ其ノ學校ノ校長トカ、
或ハ〓職員ノ働ニ俟ツ點ガ多イノデアリマ
シテ、卽チソコデ有良ナル〓員、優秀ナル
〓員ヲ養成シナケレバナラヌト云フコトニ
ナッテ參ルノデアリマスガ、一朝一夕ニハ參
リマセヌ、併シナガラソレハ修鍊ヲヤラナ
イデモ、修鍊科ト云フ學科ガナクテモ、從
來デモサウナクチヤナラヌモノヲ、一ツ具
體化シテ强メタト云フコトニナッテ居リマ
ス、併シ何ヲシテ宜イカ分ラヌト云フコト
ヲ申シテ居リマス、サウシテ劃一ニ流レテ
居ルコトガ、文部大臣ノ申サレタヤウナ餘
ク良クナイ結果ヲ來シテ居ルト斯ウ思ハレ
マス、之ヲ是認サレテ法令デ規定シタ以上
ハ督學官ヲ派遣サレテ、ドウゾ御善導ヲ願
ヒマス、適當ナ指導ヲスルナリ或ハ批判
ヲスルト云フコトガアリマシタ、淺田男爵
ガヤッテ居ラレル所ヲ批判ヲサレテ、倶ニ共
ニ其ノ成績ヲ良クシテ行クト云フコトニ御
導キヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=41
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042・諸橋久太郎
○諸橋久太郞君 育英會法ニ付キマシテ極
ク簡單ニ御尋ネシタイト思ヒマス、先ヅ第
一ニ本法案ノ內容ヲ檢討シマスニ、本當ニ
完璧ニ近イモノガアリマシテ、而モ提出シ
マス時期ガ最モ適シタ時期デアリ、此ノ大
東亞戰爭ノ最中ニ、而モ共榮圈建設ノコト
モ綱領ニ入リマシタヤウナ內容ヲ持ッテ居
リマスノデ、正ニ我ガ國文〓百年ノ大計ヲ
樹立シタヤウナ感ジガ致シマシテ、衷心ヨ
リ贊意ヲ表スル者デゴザイマス、唯惜ムコ
トハ學徒ノ學資ノ融通ノ方法ニ付キマシテ、
之ガ事業ノ中心ヲナス根本ノ使命ダト承知
致シマスガ、貸與ノ一點ニコダハッテ居ル點
デアリマス、此ノ制度ヲ御決メニナッタコトヲ
私ハ甚ダ遺憾テ思フノデアリマシテ、ドウカ
是ハ再考ヲナサッテ今迄モ衆議院ニ於キ
マシテモ、又本院ニ於キマシテモ、文相ノ
御說明ヲ拜聽致シマシテ、貸與ガ宜イノダ
ト云フ說モアリ、又給與ガ宜イノダト云フ
ヤウナ御說モ拜聽シテ居ルノデアリマス、
私ハ是ハドウシテモ貸與デハイカヌ、全額
支給ガ至當デアルト云フ信念ヲ持ッテ居ルノ
デアリマス、ト申シマスノハ、文相ニ於カ
レテモ此ノ內容ノ說明ニ於テ我ガ國ノ家族
制度ノ美點ト云フコトヲ御說キニナリマシ
ク、國家ガ親代リヲスルノダト云フヤウナ
實ニ御親切ナ思ヒヤリノ御言葉ガアッタノ
デアリマス、併シ考ヘマスノニ、現在我々
ノ家庭ニ於キマシテ、子弟ノ〓育ガ如何ニ
此ノ時局ニ伴ヒマシテ重大デアルカト云フ
コトハ申ス迄モナイノデアリマスガ、戰局
ノ進展ニ伴ヒマシテ、ソレ〓〓此ノ戰費ノ
調達ニモ貯蓄ノ增强ニモ盡力シ、或ハ公債
ノ消化、進ンデハ租稅ノ負擔ニモ堪ヘナケ
レバナラヌノデアリマス、益〓此ノ中產以下
ノ父兄ガ自己ノ子弟ノ育成ト云フ點ニハナ
カナカ及バナイノデアリマシテ、誠ニ本案
ノ立派ニ施行セラレルコトハ誠ニ感謝ニ堪
ヘナイ次第デアリマスルガ、然ラバ此ノ子
弟ノ學資ヲ支給スルニ於キマシテハ、ドウ
シテモ此ノ家族制度ノ美點ガ根本ニナリマ
シテ、立派ナ自己ノ一家族ノ中カラ子孫ノ
中カラ有爲ノ人物ヲ出シ、サウシテ一家
一門ノ繁榮ヲ圖ルト共ニ、又一面ニ於テ
ハ國家有用ノ、有爲ノ人材ヲ出シテ御奉公
シタイト云フノガ唯父兄ノ念願デナケレ
バナラヌノデアリマス、同時ニサウ云フ積
リデ今迄ノ子弟ヲ〓育シタコトト思フ
ノデアリマシテ、此ノ間ニ何等ノ金錢ノ貸
借ト云フヤウナ觀念ハ持タナイノデアリマ
シテ、文相ノ御說ノ如ク國家ガ之ニ親代リ
トシテヤルノデアリマスレバ、何ガ故ニ斯
樣ナ窮屈ナ小乘的ナ御考ヲ持ッテ之ヲ運用
サレルノデアルカ、私ハサウデナクシテ、
是ハ全然全額支給デ宜シイト思フノデアリ
さく、斯樣ニ考ヘマシテ、其ノ外色々ゴザ
イマスガ、時間モゴザイマセヌカラ簡略ニ
致シマスガ、此ノ點ヲモウ一考ナサレテハ
ドウカト云フ點ヲ御尋ネスルノデアリマス、
續イテ此ノ償還年限ガ、給與制デナクシテ
飽ク迄貸與ガ至當トスルナラバ、返濟年限
ガ非常ニ長イノデアリマス、二十五年或ハ据
置三十年ト云フヤウナ長イノデアリマス、人
生ノアレヲ考ヘテ見マスノニ、既ニ二十何
歲ニシテ大學ヲ出マスレバ、人生ノ半バニ
近イノデアリマス、同時ニ返濟ニ三十年ト
云フ長キニ亙ッタナラバ殆ド一生ヲ費スノ
デアリマシテ、マダ次代ノ國民ヲ造ルノニ
遑ガナイ中ニ之ヲ繰返スト云フノハ非常ニ
負擔ニ堪ヘズ、立派ナ成績ガ擧ッテ行カヌ、
何囘モソレヲ繰返サナケレバナラヌト云フ
コトハ、非常ニ過重ナコトト思フノデアリマ
シテ、ドウカ是ハ半分位ニシテ上ゲタイト
云フノガ私ノ考デアリマス、デスカラ此ノ
適格者ト致シマシテ、優秀ナル學徒デアリ
マスレバ、必ズヤ此ノ返濟問題ニ於テモ忠
實ニオヤリニナルコトト思フノデアリマス、
是ガ十年ナリ十五年ノ短期間ニ於テ完納セ
ラレタナラバ、之ニ對スル何ト謂ヒマスカ、
褒賞的ト謂ヒマスカ、或ハ其ノ努力ニ對シ
テ國家ハ又感謝ノ意味ヲ以テ殘餘ノ後半期
ノモノハ全部棒引キニシテヤルト云フヤウ
ナ特免ヲ與ヘテモ宜シイノヂヤナイカ、斯
ウ云フヤウナ考ヲ致スノデアリマス、是等
ニ對シマシテ、文相ノ御所見ヲ承リタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=42
-
043・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 非常ニ同情
ノアル御意見ヲ拜聽致シマシタ、貸與デハ
甚ダ不徹底デナカラウカ、給與ニシタ方ガ
宜イト云フ御說、サウ云フ意見モ多イノデ
アリマシテ、我々モ色々〓究致シマシタガ、
貸與デアレバ、四十年ノ內ニハ、旣ニ是ガ
一定數ニナリマスレバ循環スルト云フコト
ニモナリマス、國家ノ給與デアリマスト、國
家ノ負擔ハ永久ニ增シテ行ク譯デアリマス、
殊ニ此ノ資金ハ御承知ノ通リ豫金部カラ融
通ヲ受ケルコトニナッテ居リマスノデ、國
費ノ負擔ハ割合輕イノデアリマスガ、全部
給與ト云フコトニナリマスト、ドウシテモ
國家ノ國費カラ出サナケレバナラヌコトニ
ナリマスノデ、又問題ノ實現性ニ於テ非常
ニ難易ガアルト考ヘルノデアリマス、今日
ニ於テハサウ云フコトハ考ヘラレマセヌノ
デ、貸費ト云フコトデ決行致シタノデアリ
やっ、又貸費デアリマスカラ、外ニモ色々
貸費ヲヤッテ居ル團體モアリマスノデ、サウ
云フ所ノ實例ヲ聞キマスト、貸シタトカ借
リタト云フ風ナ氣持デナク、還スト云フヨ
リハ、寧ロ自分達ハ同ジ境遇ニアル者ヲ一
人助ケテヤルノダト云フ氣持ヲ以テ此ノ金
ヲ償還サレテ、非常ニ成績ガ良イト云フコ
トヲ聽イテ居リマス、全ク長イ間利子ヲ附
ケズニ還スト云フ譯デアリマスカラ、普通
ノ意味ニ於ケル金錢ノ貸借デハナイノデア
リマシテ、ソレニ依ッテ非常ニ自分ガ仕合セ
ヲシタト考ヘレバ、自分ト同ジ境遇ニアル
者ヲ一人矢張リ自分ガ償還ヲスルコトニ依ッ
テ助ケルコトガ出來ルノダト云フコトヲ徹
底サセマスレバ、其ノ還スト云フコトモ非
常ニソコニ意義ガアルノデハナカラウカト
云フヤウナ考モサレルノデアリマス、尙半
分還シタラアトハ免除シテヤッタラ宜クハ
ナイカト云フコトハ、是ハ御意見トシテ拜
聽シテ參リ、將來ノ實行ノ上デ能ク考慮シ
タイト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=43
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044・諸橋久太郎
○諸橋久太郞君 此ノ上共善處セラレムコ
トヲ希望致シマス、次ニ地方デ能クアル問
題デアリマスガ、偉人烈士ノ顯彰ト云フ點
ハ、此ノ時局下士氣ノ昂揚ニ非常ニ重大ナ
關係ヲ持ツノデアリマス、殊ニ明治維新當
時ノ志士等ガ諸國ヲ遊歷サレ、相當歷史上
生徒達ニ執ッテハ活キタル〓化ヲ遺シテア
ルコトガ尠クナイノデアリマス、是等ヲ文
部省ハ如何ニ取扱ッテ居ラレルカ、ソレカラ
〓土ノ偉人ガ神トシテ祀ラレテ居リマスガ、
是等モ建築ガ腐朽ニ瀕シマシテ、今ヤ改築
ヲシナケレバ御神威ニモ關係スルト云フヤウ
ナ地方崇敬ノ神社ニ對シマシテ、改築トカ
增築ト云フヤウナ時ニハ、文部省ガ如何ニ
之ヲ御補助ナサルヤウナコトニナッテ居リマ
セウカ、今後ナサラウト云フヤウナ御意思
ガアリマセウカ、是ハ大〓〓社デアリマス、
併シ縣社ナドヨリ其ノ地方ニ於キマシテハ
非常ニ盛ナ祭禮ヲ行ッテ居ルト云フ神社ガ
多々アラウト思フノデアリマス、簡單デス
ガ、之ニ對シテドナタデモ宜シウゴザイマス
カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=44
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045・近藤壽治
○政府委員(近藤壽治君) 御答ヘ致シマス、
地方ニ於ケル偉人烈士ノ顯彰ナドヲ行ッテ
〓育上大イニ士氣ノ〓揚ニ資シタラ如何カ
ト云フ御意見ノヤウニ拜聽致シマシタ、是
ハ文部省ニ於キマシテモ、是等ノ問題ニ付
キマシテハ十分注意ヲ致シテ居ルノデアリ
マス、ソレ等ノ中デ、是非國民〓育及中等〓
育其ノ他ニ於テ我々ガ模範トシテ然ルベシ
ト思フヤウナ人ノ傳記其ノ他治績ハ調査致
シマシテ、〓科書等ニモソレ〓〓是ハ國語
バカリデナク、歷史ノ場合、或ハ公民其ノ
他ノ場合ニ於キマシテソレ〓〓適當ト思ハ
レル箇所ヲ選ンデ揭載ヲ致シテ居リマス次
第デアリマスシ、其ノ他尙文部省デ出版ヲ
致シマスヤウナ〓學叢書トカ、日本精神叢
書ト云フヤウナ書物ガ相當出マスカラ、ソ
レ等ニ於キマシテ每度サウ云フ立派ナ人々
又ハ是迄知ラレテ居ラヌヤウナ人々ニ付キ
マシテモ、調査〓究ガ出來次第發表致シ
マシテ、〓育上ノ資料ニ致シテ居ルヤウナ
次第デアリマス、ソレカラ其ノ次ニ神社ノ
問題ニ對シテ御尋ガアリマシタガ、ニテン
神社問題トナリマスト內務省ノ方ノ所管デ
アラウト思ヒマスガ、今ノ御話ノ中ノ、立
派ナ地方ノ〓社デモ或ハ縣社デモ立派ナモ
ノニ對スル建築及改築、其他ニ付テノ場合
ニ、文部省ガドウ云フ風ナ態度ヲ執ルカト
云フヤウナ御話デアリマシタガ、是ハ色々
或ハ國寶的ナモノ、或ハ重要美術トシテ我
ガ國ノ史實若シクハ文化上ニ保存シ、之ヲ
維持シテ行カネバナラヌト云フヤウナモノ
ニ付キマシテハ、出來ルダケ調査ヲ致シ之
ヲ助成シテ參リ、建築、改築其ノ他ノ場合
ニ於キマシテモ、出來ルダケコチラカラモ
援助シ、補助シシテ之ヲ保存シテ行キタイ、
斯ウ云フヤウナ、今態度ヲ執ッテ居ルヤウナ
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=45
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046・諸橋久太郎
○諸橋久太郞君 了承シマシタ、次ニ文部
大臣ガ既ニ十數年以前ニ御發表ナサイマシ
タ「メートル」法專用ニ對シ、國粹的觀念カ
ラ尺貫度量衡ヲ併用スベシト云フ御說ヲ發
表サレタコトガアルノデスガ、ソレヲ現在
文部省ニ於テハ、ドウ云フヤウナ御扱ヲナ
サッテ居リマセウカ、殊ニ今ノ國民學校生徒
ニハズット「メートル」法ヲ專用ヲシテ居ル
ヤウニモ思フノデスガ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=46
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047・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 其ノ事ニ付
キマシテハ豫算總會デモ御質問ガアリマシ
テ、今日ノ度量衡ノ使用ノ現狀ヲ見マスト、
軍事方面及科學技術方面デハ主トシテ「メー
トル」法ガ使用サレテ居リマス、產業方
面デハ「メートル」法、尺貫法、「ヤード」「ポ
ンドㄴ法等種々使用サレテ居リマス、又祭
祀ヲ始メ國體上特殊ナ由〓ノアル各方面竝
ニ國民生活、特ニ家庭生活ノ方デハ主トシ
テ尺貫法ガ用ヒラレテ居ルノデアリマシテ、
從ッテ此ノ由緒アル尺貫法ハ現行法規ノ下
ニ於テモ認メラレ、今日ノ緊迫セル國民生
活ニ普遍的ニ用ヒラレテ居ルノデアリマス
カラ、傳統ヲ尊重スル意味カラモ又國情ニ
添フト云フ點カラモ、之ヲ輕視スベキモノ
デナク、法令ニ示サレル所ニ依ッテ「メート
ル」法ト共ニ、ソレ〓〓ノ分野ニ於テ適當
ニ使用セラレルベキモノト考ヘルノデアリ
マス、〓科書ニ於ケル取扱ハ大正十三年ノ
度量衡法改正當時ニ、小學校ノ〓科書ノ改
訂ガ施サレ、低學年ハ「メートル」法ニ依ツ
テ度量衡ニ關スル智識ヲ授ケ、第六學年ニ
於テ初メテ尺貫法ヲ〓ヘテ、一通リノ智識
ヲ與ヘルニ過ギナカッタノデアリマス、中等
學校以上ハ大體「メートル」法ニ據ッテ來タ
ノデアリマス、處ガ昭和十三年ニ度量衡制
度調査會ノ答申デ、「メートル」法ヲ併用ス
ベキモノデアルト云フ答申ガアリマシタノ
ニ基キマシテ、昭和十四年ニ改正ノ勅令ガ
發布セラレマシタ、其ノ御趣意ニ則リマシ
テ、漸次尺貫法ヲ强化シテ參リマシテ、今
日デハ國民學校ノ初等科第四學年デ其ノ名
目ヲ〓ヘ、第五學年以上ニ於テ算數ニ於テ
ハ正シク尺貫法ヲ授ケ、高等科及中等學校
デハ理科系ノ科目ハ、大體「メートル」法ニ
依ッテ、將來軍隊或ハ工場等ニ入ッタ場合ニ
不便ノナイヤウナ用意ヲシマスル一方、國
體トノ由〓ノ深イ祭祀、歷史、美術等ヲ始
メトシマシテ、土地、建物ヨリ國民生活方
面ニ關係ノ深イ科目ニ付テハ、主トシテ尺
貫法ニ依ッテ〓授ヲシ、或ハ相當多分ニ之ヲ
併用シテ〓授ヲスルコトト致シテ居ル次第
デアリマス、國情ニ親シミヲ深カラシメル
ト同時ニ、直チニ戰時下國民ノ實生活ニ役
立タシメル方針ヲ以チマシテ、〓育ヲシテ
居ルノデアリマシテ、〓育ガ國情民風カラ
遊離スルト云フヤウナコトノナイヤウニ飽
ク迄モ努メテ行カナケレバナラヌト考ヘテ
居ル次第デアリマス、今期議會デハ開會以
來屢〓論議サレマシタ通リ、國民總力ノ發揮
ハ根本ハ精神ニ在ルト云フコトデアリマス
ノデ、又政府ト致シマシテハ、其ノ施策ニ
於テ、國民ノ實情ニ適合シタル親切ナル措
置ガ必要デアルコトガ强調セラレテ居リマ
スノデ、是等ノ點ニ反省ヲシテ〓科書等ノ
扱ヒニ付テモ亦大イニ考慮ヲ要スコトト考ヘ
テ居ルノデアリマスシ、一方又、思想方面
ニ於キマシテモ種々ノ對策ヲ講ズル筈デ、
豫算等ニモ思想對策ノ經費百萬圓餘ヲ御要
求シテ居ルヤウナ譯デアリマシテ、從來動
モスルト世界的日本觀ニ堕シタ嫌ヒガアリ
マスルノデ、是ハドウシテモ今後一掃シテ、
所謂皇國的史觀ニ立脚シタル日本的世界觀
ガ確立サレナケレバナラヌノデアリマス
思想對策ニ於キマシテモ、此ノ點ハ飽ク迄
モ强調シテ行ク考デアリマス、戰意昂揚、
戰力增强等モ斯ウ云フ思想的ノ根柢カラ出
發シナケレバナラヌト考ヘテ居ルノデアリ
てい、度量衡問題ノ如キモ、一千年ノ歷史
ニ發展シテ參ッタ所ノ、國民ノ全生活ト關係
ガアル問題デアリマスシ、又思想的ニモ、
更ニ前ニ申シマシタヤウナ觀念カラ之ヲ再
檢討スル必要ノアルコトヲ痛感シテ居ル次
第デアリマス、〓科書ノ取扱ニ付キマシテ
干、今後更ニ篤ト〓究スル必要ガアルヤウ
ニ感ジテ居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=47
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048・諸橋久太郎
○諸橋久太郞君 只今御說ノ如ク、尺貫度
量法ハ科學ノ基礎ヲ爲スモノデアリマシテ、
總テノ標準ヲ立テル數ノ觀念ヲ養成スルモ
ノデアリマス、ソレガ甚ダ「メートル」法一
方ニ片付ケルト云フコトハ非常ニ遺憾ニ思ツ
タノデアリマスガ、文相ニ於カセラレマシ
テハ、最適ノ理想ヲ行ヒツヽオアリニナル
ヤウニ拜聽致シマシテ、誠ニ御親切ナル答
辯デ有難ウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=48
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049・井田磐楠
○男爵井田磐楠君 簡單ニ御尋ネ申上ゲマ
ス、私ノ御尋ハ、先ヅ政府委員カラ御答ヲ
得マシテ、要スレバ大臣ノ御答ヲ、ソレニ
附加ヘテ何カ仰シヤル必要ガアリマシタラ
バ御返事ヲ戴キタイ、此ノ育英會法ノ中ニ、
寄附行爲ガ出來テ居リマスガ、此ノ寄附行
爲ハドウ云フ理由デ此處ニ御附ケニナッタ
カト云フ其ノ理由、必要ヲ御伺ヲシタイ譯
デアリマス、私ト致シマシテハ、度々政府
委員竝ニ大臣カラ御伺ヒ致シマシテ、此ノ
法案ガ頗ル國家性ヲ持ッテ居ルモノデアリ
マシテ、又其ノヤウニ是ハ御組ミニナッテ居
ルコトハ、法ノ出來上リノ形デ分ルノデア
リマスルガ、ソレガ前提ニナッテ此ノ法律
ガ出來テ居ルノデアリマス、處ガ其處ヘ此
ノ木ニ竹ヲ接イデ居ルヤウナ案トシテ寄附
行爲ガ出來テ居ルノデアリマス、從ッテ先般
政府委員ノ御話ノヤウニ、之ガ爲ニ罰則ト
云フヤウナモノモ自然附隨シテ來タヤウナ
形ニナリマシテ、極メテ簡單ニ出來上ルヤ
ウナ此ノ法律ガ、ソレガ爲ニ何カ木ニ竹ヲ
接イデ置イテ、ソレニ藪枯ラシガ引絡ンデ
來タヤウナ法律案ミタイニ、複雜性ヲ帶ビ
テ居ルヤウニモ見エマス、前提ガサウ云フ
國家性ヲ持ッテ居ル所ニ、中間ニ寄附行爲ガ
附イテ來テ居ル、ソコデ出來上ッタモノガ斯
樣ナ法律案ニ結論トシテ出テ來タモノト思
フノデアリマス、私ハ藪枯ラシトカ或ハ
木ニ竹ヲ接イダト言フノハ、チヨット言ヒ過
ギタコトカモ知レマセヌガ、マア理論上カ
ラハサウ見エル、事實トシテ斯ウ云フコト
ヲ申上ゲテ見タイノデスガ、私ノ知ッテ居リ
マスル極メテ親シイ或苦學ヲシテ居リマス
ル學生ハ、立派ナ學生デスカラ、何トカ之
ヲ物ニシテヤリタイト思ヒマシテ、9學費ヲ
色々心配ヲシテヤルノデアリマスルケレド
モ、勿論其ノ男ハ個人ノ學資ハ受ケナイ、
又或奬學團體ノ金モ受ケナイ、國家性ノモ
ノナラバ受ケルト云ッタヤウナ考ヲ、其ノ學
生ハ早クカラ持ッテ居リマシタ、遂ニサウ云
フモノガナイ爲ニ、苦學ヲシテ出テ來タ者
ガアルノデアリマス、斯ウ云フヤウナ寄附
行爲ガ此ノ中ニ、ドレダケ入ッテ參リマスカ
知リマセヌガ、アルト云フト、折角御考ノ
國家性ヲ持ッタモノガ、所謂木ニ竹ヲ接イダ
ヤウナ、少シ曖昧模糊タルモノニナリマシ
テ、受ケル方ノ、所謂奬學ヲサレル學生ト
シテモ、今申上ゲマシタ一例ノ如キ學生ハ
極メテ純粹ナモノデアリマスルカラ、サウ
云フ學生モナイデハナイノデアリマス、デ
私ハサウ云フ意味ニ於ケル、又法ノ組立ノ
上カラ、此ノ寄附行爲ハ寧ロ無イ方ガ宜イ
ノデナイカ、斯ウ云フ考ヲ持ッテ居ル一人デ
アリマス、併シ此ノ法案ヨリ今之ヲ削除ス
ルト云フコトニナリマスト、削除案ヲ出シ
マスト、相當又此ノ法律案ニ付キマシテ·
私ハ是ハ贊成ナンデアリマス、ソレガ爲ニ
大切ナ法律案ガ出ナクナルト云フヤウナコ
トガアッテハ甚ダイカヌノデアリマスガ、
私ハ此ノ寄附行爲ハ御奬勵ニ····何レハ淨財
ニ違ヒアリマセヌガ、是ハ法案ニ、斯ウ云
フモノガ假ニ通ッタトシテモ、是ハ御奬勵ニ
ナラヌ方ガ宜イノデナイカト思フノデアリ
マス、次ギマシテ此ノ職員ハ、會長以下職
員ガアリマシテ、其ノ會長以下ガ、此ノ法
案ニ依リマスレバ、牴觸ヲスル時ニハ處罰
ヲ受ケルト云フヤウナコトニナリマス關係
上、會長ニ依ッテハ、斯ウ云フ處罰ノアルヤ
ウナ會ハ引受ケヌト云フヤウナ會長ガ出テ
來ルカモ知レマセヌ、尙私ハ會長ハ、斯ウ
云フヤウナ法案ニ依ッテ構成ガ斯ウナッテ居
ルカラデアリマスルガ、定款ガ何レ定ルノ
デアリマスガ、定款ノ上ニ於テ、總裁ト云
フモノヲ會長ノ上ニ置ケルヤウナ定款ガ欲
シイト思フノデアリマスルガ、斯ウ云フコ
トガ一體出來ルカドウカ、是ハ私法律ノ上
ニ於テサウ云フ技術ヲ知ラナイ、畏多イコ
トデアリマスガ、會ノ性質ト致シマシテ、
此ノ總裁ニハ宮樣ヲ戴イテ、サウシテ此ノ
會ヲ最モ崇高ナ····是ハ此ノ前田所サンモ
サウ云ッタヤウナ、田所サンノ御意見ヲズッ
ト敷衍シテ行クト、サウ云フモノガ出テ來
ルノデナイカト思フノデアリマスガ、崇高
ナル此ノ何ニハ、餘リ斯ウ云フモノヲ土臺
ニシテ、政治的ナリ或ハ社會的ノ自分ノ足
場ヲ作ルト云ッタヤウナモノニハ、絕對ニ致
シタクナイ、是ハドナタモサウ云フ風ニ御
考ヘダラウト思フ、其ノ意味ニ於キマシテ非
常ニ國家性ヲ持ッテ居ル有難イ此ノ法案ニハ
宜シク總裁制ノ下ニ宮樣デモ戴キマシテ是ガ
出テ來ルト云フコトニナルト、一層此ノ奬
學ノ下ニ入ル學徒アタリモ非常ナ感激ニ滿
チテ行クモノデハナイカト斯ウ思フモノデ
アリマス、是ハ技術ノ問題ニナリマスルガ、
希ハクハサウ云ッタヤウナコトニ定款ヲ御定
メニナル時ニハ、出來マスルナラバサウ云
フ風ニアリタイ、今私ハ此ノ法律案ヲ改メ
テ總裁ヲ此處ニ入レテ、サウシテ此ノ總裁
ガ處罰ヲ受ケルト云フヤウナコトノナイヤ
ウナ風ニ組立テタイト云フ爲ニ申スノデア
リマス、大體其ノ二點デアリマスルガ、唯
一ツ言ヒ殘シマシタノハ、斯樣ナ會ノ性質
ト致シマシテ、出來ルダケ此ノ國家性ヲ持
ツト云フ上ニ於キマシテ、ソレハ富者ノ萬
燈貧者ノ一燈、皆寄附トシテ惡イコトハ
アリマセヌガ、サウ云フモノヲ托鉢シテ、
會ノ人ガ淨財ダカラト云ッテ托鉢ノ中ニ入
レテ貰フト云フヨリハ、富者ノ萬燈モ此ノ
場合ニハ要ラナイ、寧ロ今日ノ社會事業ハ
政府ガ個人ノ事業ヲ助ケテ政府ノ方カラ補
助シテ行カナケレバナラヌノガ今日ノ社會
事業、政府ガ民間カラ金ヲ貰ッテサウシテ
其ノ事業ヲ助成シテ行クト云フノハ過去ノ
時代ト思フノデアリマス、話ガ橫道ニ入リ
マスガ、今日獻艦運動ナント云フモノガア
リマスルケレドモ、是ハ或意味ニ於テ精神
上善イカモ知レマセヌケレドモ、獻艦運動、
サウ云フ風ニシテ、或ハ飛行機ダトカ色々
ナ注文ヲ附ケタ獻金ヲ軍ガ貰ッテ困ルコトガ
アルヤウデアリマス、精神ノ現レトシテ誠
ニ結構デハアリマスルケレドモ、政府ハ今
日金ノ不自由ハナイ、物資ノ不自由ハアッ
テモ金ノ不自由ハナイ、此ノ事業ノ傾向ハ
益〓國家性ヲ持ツト云フ風ニ進ムベキ法案ナ
ンデアリマス、今モサウ云フヤウナ御氣持
ノ議論ガチヨン〓〓出テ居ルノデアリマス、
スルトドウモ此ノ法案ノ將來性カラ見テモ、
此ノ寄附行爲ト云フモノハ假ニ此ノ儘是ガ
通過ニナリマシテモ、之ヲ運用スル上ニ於
キマシテ寄附行爲ト云フモノハ考ヘナイ方
ガ宜イノデハナイカ、寧ロ十分國家性ヲ持
タシタ意味ニ於キマシテ天恩ヲ拜シテサウ
シテ後輩ガ益〓進ンデ行クト云ッタヤウナ風
ニ私ハ御考ヘ下スッタ方ガ宜カラウ、斯ウ思
フノデアリマス、大體其ノ二點ガ私ノ質問
ノ要旨デアリマシテ、尙一二之ニ伴ヒマシ
テ〓細ナコトヲ御尋ヲ申上ゲタイト思ヒマ
スガ、大體ソレニ付キマシテ大臣、政府委
員ドチラカラデモ宜シウゴザイマス、御
答ヘ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=49
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050・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 寄附行爲ノ
コトニ付キマシテハ井田男爵ノ御考ノヤ
ウナ非常ナ重要ナ考慮ヲ拂ッタ譯デハアリ
マセヌガ、併シ淨財デアリ、斯ウ云フ仕事
ニ、學徒ニ一人デモ餘計ニサウ云フ機會ヲ
與ヘタイト云フ氣持ノ人ガ金ヲ使ッテ貰ヒ
タイト云ッテ出シテ吳レルヤウナ場合ニ、
斷ル必要ハナイト考ヘマシテ、矢張リソレ
ハ受容レル途ハ開イテ置イタノデアリマス、
併シ御話ノ通リ之ヲ托鉢シテ步クト云フヤ
ウナコトハ考ヘテ居リマセヌ、本當ノ淨財
ヲ迎ヘル、淨財ガアッタ場合ニハ喜ンデ之
ヲ迎ヘルト云フ風ニ御了解戴ケバ結構ダト
思ヒマス、サウ御趣意ニ反スルコトモナカ
ラウト考ヘマス、併シ又同時ニ寄附金ガ出
來タカラ政府カラノ金ヲ減ラスト云フヤウ
ナコトハ、是ハナイヤウニシテ行カナケレ
バナラヌト思ッテ居リマス、貸費ニ關スル費
用ハ大體預金部カラ出シテ、寄附金ノ有ル
無イニ拘ラズ出シテ貰ハナケレバナラヌト
考ヘテ居リマス、從ツテ貸費ハ大體ニ於テ
國家ノ援助ニ依ル金デヤル、寄附金ナドハ
又事業ノ二號以下ノ仕事ナドニ充テテ行ッ
タラ宜イノヂヤナイカト考ヘテ居ル譯デア
リマス、ソレカラ今御話ノ總裁ノコトニ付
キマシテハ、此ノ法律案ニハ無論アリマセ
ヌガ、設立委員會ニ於テ、又色々定款ノ審
議ノ際ニハ御趣意ノ點ハ能ク〓究シテ見タ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=50
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051・井田磐楠
○男爵井田磐補君 此ノ寄附行爲ニ基キマ
シテ、寄附ノ多イ人ガ是ガ名譽會員デアル、
色々ノ會員組織ガ此ノ定款ノ上デ出來ルノ
デアリマスカ、ドウデアリマスカ、之ヲ御
伺ヒ申上ゲタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=51
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052・永井浩
○政府委員(永井浩君) 只今大臣カラ御答
辯ノアリマシタヤウニ、只今ハ寄附金ヲ豫
定致スト云フ計畫デゴザイマセヌ、目下寄
附金ガ二百數十件、合計五萬圓程度ガ集ッテ
居リマスガ、何レモ全ク此ノ趣旨ニ感激シ
テ集ッタモノデアリマシテ、是ハ本法案ニ
依ル法人ニ引繼グコトニナルモノデゴザイ
マスケレドモ、サウ云フヤウナ次第デ、今
後サウ云フモノヲ計畫的ニ集メルト云フ豫
定ニナッテ居リマセヌ、從ッテ只今ノ御尋ノ
如クニソレヲ特別ノ會員ニスルトカ何トカ
云フ豫定モ何モ持ッテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=52
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053・井田磐楠
○男爵井田磐楠君 法案ト少シ離シマスル
ガ、最近夜間ノ中等學校等ニ參ッテ居リマス
ル學徒ガ徵用其ノ他ノ關係ニ於キマシテ、
職ヲ離レナケレバナラヌ學徒ガ出テ參ッタ
ノデアリマス、從ッテ此ノ夜間ノ學校モ或ハ
閉鎻シナケレバナラヌ學校モ出マセウシ、
又其ノ學徒ハソレガ爲ニ自分ノ學業ヲ修メ
ルコトガ非常ニ困難ニナッテ來タ學徒モアル
ヤウデアリマス、是ハ必ズシモ優秀ナ學生
トハ申シマセヌ、一般學生、又其ノ中ニハ
優秀ナ者モアルデアリマセウ、此ノ法案ノ
中ニ關係スルヤウナ者モ恐ラクアルダラウ
ト思ヒマス、斯ウ云フ者ニ對シテ文部省ト
サレマシテ何等カ斯ウ云フモノヲ援助スル
トカ云フヤウナ何カ御考ハナイノデゴザイ
マセウカ、之ヲ一ツ御伺ヒ致シタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=53
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054・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 只今徴用制度トノ
關聯ニ於キマシテ、從來夜學ニ通ッテ居リマ
スル者ノ修學ガ非常ニ困難ナ事情ニナッテ來
タト云フ事情ハ確カニサモアラウト考ヘテ
居リマス、徵用ガ昨年ノ秋頃迄ハ左程迄ニ
强化サレテ居リマセヌデシタ、昨年ノ暮カ
ラ段々强化サレテ參リマシテ、只今デハ理
工科系ノ夜學ノ〓育ハ一應免ゼラレマスヤ
ウデアリマスガ、理工科系以外ノ者ハ矢張
リ徵用ヲ受ケル實情ニアルヤウデアリマス、
是等ニ付キマシテハ今我々ノ方デモ〓究致
シテ居リマシテ、現ニ在學スル者ニ付テ何
等カ繰上卒業ト云フヤウナ時期ニモアレバ、
サウ云フヤウナコトヲ一ツ考ヘテ見タラド
ウカト云フノデ、サウ云フ點ハ〓究ハ致シ
テ居リマス、唯今井田男爵ノ御意見ハ、
寧ロサウ云フコトヨリモモウ一步進メテ、
斯ウ云フモノガ依然トシテ修學ガ續ケラレ
ルヤウニ考ヘテヤル方策ハナイカトノ御意
向デアラウカト考ヘマスガ、此ノ點ハ勞務
動員ノ根幹ニ觸レタ問題デアリ、モット細カ
ニ申上ゲマスルト、工場、事業場ニ於キマ
スル交替制ノ關係デゴザイマス、是ガ詰リ
交替ガ六時間トカ八時間ト云フ程度デゴザ
イマスルト、晝間ノ方ニ〓シテ貰ヘバ夜間
修學ガ可能ダト云フコトニモ相成ラウカト
思ヒマス、處ガ實際ハサウ云フ僅少ナル勤
勞時間デハ今日ノ生產增强ハ迚モ確保セラ
レナイト思フノデアリマシテ、實際ハ現場
ニ於キマシテハ、相當强キ勤勞時間ヲ當テ
テ居リマスルカラ、此ノ點ハ只今ノ所ハ相
當困難デハナイカト云フ風ニ考ヘザルヲ得
ナイノデアリマスガ、只今申上ゲマスル通
リ、最近ノ勞務事情ニ鑑ミマシテ、是等ノ
氣ノ毒ナ事情ノ下ニアリマスル者ニ付テハ、
何等カ方法ガアリマスル限度ニ於キマシテ
ハ、十分親心ヲ以テ考ヘテ行キタイト云フ
氣持デ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=54
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055・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 從來ハ國民
學校ヲ卒業シテ、所謂生計上困難ナ者ハ、
中等學校ヘハ入ラナカッタ、サウ云フ者ガ職
場へ行ッテ夜學ヘデモ通フト云フコトデアル
ノデアリマスガ、今度ハ育英會ガ設立サレ
マシテ、之ニ依ッテ補助ヲ受ケルコトニナリ
マスレバ、年々六千人內外ノ者ハ、從來夜
間ニ通ッテ居ッタ者ガ、今度ハ補助ヲ受ケマ
シテ正規ノ中等學校ニ通ヘルヤウナコトニナ
ル譯デアリマス、サウスレバ晝間働カナクテモ晝
ノ學校ヘ行ケル譯デス、サウ云フヤウナ者
ガ六千人バカリハ全國デ拾ヒ上ゲラレル譯
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=55
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056・井田磐楠
○男爵井田磐楠君 先程モ全額支給ノ御意
見ガアッタヤウデアリマスルガ、今中等學校
ノ問題ガ出マシタカラ、之ヲ例ヲ引イテ申シ
マスレバ、中等學校デハ奬學費ガ月二十圓、
年額二百四十圓、是デハナカ〓〓ヤッテ行ケ
ナイ、苦學生ハソレ以上ノ報酬ヲ得テ苦學
ヲシテ居ル譯デアリマス、ソコデ官公ノ
中等學校等ニ於キマシテ、其ノ學校長ガ、
是ハ勿論學校ノ收入ニモ影響スル譯デアリ
マセウガ、優秀ナ者ニ對シテハ更ニ月謝ヲ
免除スルト云ッタヤウナコトハ考ヘラレナイ
モノデアリマセウカ、斯ウ云フヤウナ奬學
費ヲ受ケツヽ、更ニソレヲモウ少シヨリ良ク
スル爲ニ、月謝免除ト云ッタヤウナコトヲ、
是ハ私立ノ學校ニ於テハ、先程御話ノアッタ
通リ困難ナ問題デアリマセウガ、サウ云フ
コトハ出來ナイモノカ、一ツ御伺ヒシテ置
キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=56
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057・永井浩
○政府委員(永井浩君) 獎學生デ貸費ヲ受
ケテ居リマス者ヲ、ソレヲ條件ニシマシテ
月謝ノ免除ト云フヤウナコトハ、只今計畫
ハ致シテ居リマセヌガ、其ノ點ニ付キマシ
テハ十分將來ニ於テ考究スベキ問題カト
存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=57
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058・井田磐楠
○男爵井田磐楠君 私ノ質問ハ是デ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=58
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059・關屋貞三郎
○關屋貞三郞君 條文ニ付キマシテチヨット
御伺ヒシタイノデスガ、第八條ニ「大日本
育英會ニ非ザル者ハ大日本育英會又ハ之ニ
類似スル名稱ヲ用フルコトヲ得ズ」トアリ
マスガ、類似スル名稱ト云フノハドウ云フ
モノデアリマセウカ、是ハ大臣ガオイデデ
アリマスカラ、御訊キ下サッテデモ、又政府
委員カラデモ宜シウゴザイマスガ、類似ス
ルト云フノハドウ云フコトヲ謂フノデアリ
マスカ、ト云フノハ、モウ少シ說明シタ方ガ分
リ宜イト思ヒマスガ、現ニ私共直接間接ニ
關係致シテ居リマス斯ウ云フ育英財團ガア
リマスガ、例ヘバ靜岡縣ニハ靜岡縣育英會
ト云フノガアリマス、ソレカラ井上侯爵ガ
ヤッテ居ラレルノニ井上育英會ト云フノガアリ
マスガ、是ハ類似スル名稱ノ中ニハ入ラヌフ
ダラウト思ヒマス、ト云フノハ、第八條ノ
規定ニ違反シタ場合ニハ、此ノ間モ他ノ委員
カラモ御話ガアリマシタガ、罰則ノ規定ガ
アリマシテ、第八條ノ規定ニ違反シタ者ハ
五百圓以下ノ過料ニ處スト斯ウ云フコトガ
アルノデス、私共ハ實ハ此ノ過料ノ問題ハ、
一體規則ニ無暗ニ過料ノ規定ヲ設ケラレル
ト云フコトハ、非常ニ遺憾ニ思フノデス、
其ノ根本問題ハ姑ク別問題ト致シマシテ、直
接ニ影響ノアル第八條ト罰則ノ關係デ、類
似スル名稱ト云フ問題ガ非常ニ重大ニナッテ
參ルノデゴザイマスガ、是ハ例ヘバドウ云
フコトヲ類似スル名稱ト云フノデアリマス
カ、伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=59
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060・永井浩
○政府委員(永井浩君) 例ヘテ申シマスレ
バ、大日本育英團、又ハ日本育英會ト云フ
ヤウナ、極メテ紛ハシキ名稱ヲ之ニ該當ス
ルモノト考ヘマスノデ、只今御話ノ如キモノ
ハ無論一切此ノ規定ニ牴觸セザルモノデア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=60
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061・關屋貞三郎
○關屋貞三郞君 只今政府委員ノ御說明ヲ
聽キマシテ非常ニ安心致シマシタガ、私ノ
申上ゲマシタノハ單ニ二ツノ會ノ例デアリ
マスガ、各藩ナリ或ハ各縣ニモ育英會ト云フ
モノガ段々出來テ居リマスノデ、恐ラク育
英會ト云フ文字ヲ使フノハ過去ニ於テモア
リ、又將來ニ於テモアリ得ルト思フノデア
リマシテ、育英會ト云フ言葉ヲ使ッタライカ
ヌト云フヤウナ考ハ御持チニナラヌヤウニ
願ヒタイト思ヒマス、ソレカラ御承知ノヤ
ウニ、統計ニモアリマス通リ、從來モ育英
團體ガアリマス、財團ノモノモアリ、財團
デナイモノモアリマセウガ、從來ノ育英會、
ソレカラ又將來モ斯ウ云フモノガ起リ得ル
ト思フノデアリマスガ、是ハ起リマシテモ
差支ナイモノダト思フノデスガ、如何デゴ
ザイマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=61
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062・永井浩
○政府委員(永井浩君) 無論左樣デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=62
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063・關屋貞三郎
○關屋貞三郞君 ソレカラモウ一ツ伺ヒタ
イノデスガ、此ノ計畫デ中等學校以上ニ貸
費ヲナサル、此ノ貸費ヲ受ケル中ニハ朝
鮮人卽チ半島人、ソレカラ臺灣人、是ハ本
島人ト法律語デハ言ウテ居リマスガ、朝鮮
人モ臺灣人モ無論入ルト云フ風ニ解釋シテ
宜シイト思フノデスガ、ソレデ宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=63
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064・永井浩
○政府委員(永井浩君) 朝鮮人、臺灣人モ
無論此ノ育英會貸費ノ對象ニナルモノデゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=64
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065・關屋貞三郎
○關屋貞三郞君 ソレデ分リマシタ、其ノ
點ハッキリシテ置キタイト思フノデス、先刻
疑ヲ起シタノハ、女子ハ餘リ考ヘテ居ラナ
カッタト云フヤウナ御話モアリマシタガ、實
際ニ於テハ女子モ御入レニナルト云フコト
デアルヤウデアリマス、私ハ初メカラ女子
モ無論此ノ對象ニ入レテ御計算ニナッテ然ル
ベキモノデアッタラウカト思フノデアリマ
ス、ソレカラ此ノ間材料ヲ戴キマシタガ、
私ノ御顧ヒシタ材料ハ、大學、高等專門學
校〓授俸給待遇ノ問題デス、是ハ精神的
ノ方面ノ待遇ノコトデハナイノデ、唯俸給
ガドウデアルカト云フコトノ調ヲ御願シタノ
デス、此ノ中ニハ大學總長トカ或ハ專門學
校長ノ俸給ノ調ガナイヤウデアリマスルガ、
之ヲ見マシテモ、平均給ト云フモノガ、
般官吏ノ俸給、勅任モ奏任モアリマスルガ、
ソレニ劣ルコトガ非常ナモノデアリマス、
況ヤ例ヘバ年末ノ手當デアルトカ、或ハ半
期ノ手當デアルトカト云フヤウナモノヲ通
算致シマスレバ、私ハ行政官ヨリモ非常ニ
大學〓授等、專門學校以上ノ人達ノ待遇ガ
菲薄デアルト思フノデアリマシテ、此ノ事
ハ〓育者優遇ト云フ點ニ於テ非常ニ遺憾
デアルト云フコトヲ申上ゲタノデアリマス
ルセ、此ノ表ヲ見ルニ及ビマシテ、益〓其ノ感
ヲ深クスルノデアリマス、是ハドウシテモ、
此ノ間モ大臣ニモ特ニ御願ヒ致シマシタガ、
是非英斷ヲ以チマシテ相當ヲ待遇ニシテ戴
ク必要ガアルト云フコトヲ信ズルノデアリ
マス、何ダカ本案ト直接ニ關係ノナイヤウ
ナ風ニモ見エマスルガ、私ノハサウデナク
シテ、有用ナ人材ヲ作ルト云フコトハ、〓
育者ノ力ニ依ッテ出來ルノデアルカラシテ、
此ノ〓育者ニ優秀ナ人ヲ迎ヘタイ、サウ云
フ點ニ於テ、精神的ニ、又物質的ニ相當ニ優
遇スベキモノデアル、是ハ大キク言ヘバ、〓
育尊重デアッテ、是ガ文部省ノ方針デナケレ
バナラヌシ、又實際問題トシテ、〓育者其
ノモノヲ精神的ニモ物質的ニモ優遇シナ
ケレバナラヌト云フコトヲ申上ゲタノデア
リマス、大臣ニ於カレマシテモ、大體御同
感ノヤウニ承リマシタノデアリマスルガ、
ドウカ是ハ大臣ハ先刻モ、現在ノ此ノ文
〓ノ行政ニ付テハ、マダ〓〓非常ニ足ラヌ
所ガアルト云フヤウナコトヲ御考ニナッテオ
イデデアルヤウデアリマシテ、ソレダケノ
御注意ガアリマスレバ、各般ノ方面ニ於テ、
必ズヤ改善ガ行ハレルト思ヒマスルガ、此
ノ事モ其ノ中ノ一ツデアラウト思フノデア
リマス、ドウカ一ツ十分ニ御考慮ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、ソレカラ尙此ノ間モ私ハ司
法官ノ例ヲ擧ゲテ置キマシタガ、司法官モ
數年ニ亙リマシテ段々ニ增俸ナドガ出來マ
シテ、今デハ行政官トノ開キガ少クナッタサ
ウデアリマス、ソレハ極ク最近ニ私ハ司法
省カラ承リマシタガ、非常ニ司法官ノ方々
モ喜ンデ居ル、從ッテ優秀ナ人ガ段々入ルヤ
ウニナリツヽアルト云フコトヲ言ハレマシ
タガ、ドウゾ文部省ニ於カレマシテモ上ハ
大學、下ハ國民學校迄總テ優秀ナ〓育者ヲ
網羅スルヤウニシタイト云フコトヲ切望ス
ルノデアリマシテ、之ニ依ッテ初メテ大日本
育英會ト云フモノノ效果ヲ全クスルコトガ
出來ル、斯ウ云フ風ニ考ヘルノデアリマス、
ソレカラ尙是ハ稍〓蛇足ニナリマスルガ、法
文系ノ學生生徒ガ非常ニ減ル、是ハ今日已
ムヲ得ヌ次第デアリマスガ、併シ之ニ付テ
ハ大臣ハ特ニ御注意ガアリマシテ、人文科
學モ今日ノ場合ニ輕視スルコトハ宜クナイ
ト云フコトヲ特ニ外ノ機會ニ於テ述ベラレ
テ居ッタヤウデアリマスガ、私モサウデナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、唯何サマ
生徒ガ少クナリマスカラサウ云フ人達ノ手
ガ空クノデアリマシテ、ソレニ付テハ田所
委員ノ御話モアリ、又衆議院ノ速記錄等ヲ
拜見致シマシテモ、之ヲ適當ニ利用スルト
云フコト、活用スルト謂ヒマスカ、サウ致
シマシテ既ニ文部省デ御考ニナッテ居ル〓
究ト云フコトヲ致シ、外ニモ色々社會的ニ
非常ニ役ニ立ツヤウニスルコトガ出來ルト
云フコトヲ仰セラレテ居リマスガ、秋、
大變結構ナコトデアラウト思ヒマス、ソコ
デ是等モ旣ニ文部當局ノ方デハ御考ヘニナッ
テ居ルコトデアリマシテ、餘計ナ事カモ知
レマセヌガ、私ハ此ノ機會ニ於キマシテ矢
張リ中等〓員、ソレカラ國民學校靑年學
校〓員ノ再〓育ト云フヤウナ意味ニ斯ウ云
フ人ヲ御活用ニナッタラドウダラウカト思
ヒマス、是ハ社會〓育ト謂ヘバ社會〓育デ
アリマスガ、社會〓育トモ多少違フカモ知
レマセヌガ、サウ云フ方面ニ御使ヒニナル
ト云フコトガ必要デアル、尤モ時局柄斯ウ
云フ〓員ノ諸君モ非常ニ多忙デアリマスカ
ラ、始終講習ヲ受ケルト云フヤウナコトモ
出來ナイノデアリマスケレドモ、適當ナ時
間デアリマスレバ、講習ヲ受ケルコトガ出
來ル、現ニ文部省ニ於テハ國民學校ノ〓育
者トナル所謂師範學校ヲ昇格ナスッタ位デア
リマシテ、矢張リ國民學校靑年學校ノ〓員
ノ學力ノ低下ヲ非常ニ惧レテオイデニナル
ノデアリマスカラ、サウ云フ場合ニ、其ノ
法文科系ノ少シ暇ノアル〓授助〓授ノ諸
君ナドヲ、大學ナリ高等專門學校ノ人達ガ
サウ云フ方面ニ迄御働キニナッタナラバ、是
ハ矢張リ再〓育ガ出來テ、文部省ノ御方針
ニモ適フモノデアラウカト思ヒマス、又法
科經濟ト云フヤウナ方面ノ方々ハ銀行會社
ノ社員、是ハモウ忙シイ人ニバ違ヒアリマ
セヌケレドモ、サウ云フ方面、是ハ商業
學校ナドモ段々ナクナリマシテ、女子ガ其
ノ方ニ餘計ニ勤務シナケレバナラヌヤウナ
コトニナリマシテ、動モスルトサウ云フ方
面ニ從事シテ居ル人ノ學力ガ低下スル虞ガ
アルノデアリマスカラ、此ノ機會ニ於テサ
ウ云フ法文科系ノ〓育家ガ銀行會社其ノ他
實業方面ニ從事シテ居ル人ノ學力ヲ附ケテ
ヤル、殊ニ今日ノ非常時局ニ沿ウテ必要ナ
モノ、產業經營或ハ生產增强ト云フヤウナ
方面モアリマセウガ、其ノ外ニモ人文科學
ノ方面ニ於テ色々學力ヲ附ケテ戴クコトニ
ナリマスレバ大變結構デアリマス、又外國
語ノ專門家モ澤山居リマセウガ、斯ウ云フ
人達ハ〓究ノ外ニ飜譯トカ何トカ云フコト
デモ政府ガオヤラセニナレバ幾ラデモ仕事
ガアルデアラウト思ヒマス、要スルニ斯ウ
云フ變態ノ時期ニ於キマシテハ忙シイ人ト
比較的暇ナ人ガ出來ルノハ已ムヲ得マセヌ
ケレドモ、其ノ人ノ暇ガアルガ爲ニ將來ノ
人文科學ガ非常ニ衰へルト云フヤウナコト
ガアッテハ相成ラヌノデアリマスカラ、此處
ハ一ツ文部省ニ於キマシテ十分ニ御注意ヲ
下サイマシテ、斯ウ云フ人達ノ力ヲ滿度ニ
利用スルヤウニ御願ヒシタイト云フコトヲ
蛇足ナガラ附加ヘテ置キマシテ、私ノ質問
ハ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=65
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066・永井浩
○政府委員(永井浩君) 先程朝鮮人、臺灣
人ノ學生ハ內地人ト無論同樣ニ貸費ノ目標
ニ致シテ居ルト云フコトヲ申上ゲマシタノ
デアリマスガ、ソレハ無論其ノ通リデゴザ
イマスガ、是ハ內地ノ學校ニ入リマスル朝
鮮人臺灣人ノコトヲ申上ゲタノデ、臺灣及
朝鮮ニアリマスル學校ニ入リマスルモノニ
付テノ育英ニ付キマシテハ只今ノ所ハ今
囘ノ貸費ノ計算ノ中ニハ入レテ居リマセヌ
ケレドモ、本會ノ目標ト致シマス所ハ必ズ
シモソレヲ除外致シテ居ル譯デハゴザイマ
セヌケレドモ、只今ノ所ハ其ノ計畫デゴザ
イマセヌ旨ヲ、先程少シク言ヒ落シタカト
思ヒマスノデ、蛇足デハゴザイマスガ、申
添ヘテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=66
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067・關屋貞三郎
○關屋貞三郞君 是ハ外地ノ當局、殊ニ外
地ヲ管轄シテ居ル今デハ內務省デスカ、內
務省トモ御相談下スッテ、適當ニ措置サレム
コトヲ希望致シテ止マナイノデアリマス、
チヨツト速記ヲ止メテ下サイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=67
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068・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=68
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069・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 速記ヲ始メテ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=69
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070・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 待遇改善ノ
コトニ付テノ御質問デアリマシタガ、是
ハモウ我々トシテハ大イニヤラナケレバナ
ラヌコトト痛感シテ居ルノデアリマス、併
シ先程申シマシタヤウナ譯デ、〓育ト云フ
コトニ付テ、或ハ學術學問ト云フコトニ付
テ、深イ認識ヲ矢張リ持ッテ貰ヒマセヌト、
唯現在ノ一割上ゲルトカ、二割上ゲルトカ
云フ程度デヤルノデハ、ナカ〓〓是ハ解決
ガ附カナイヤウニ思ヒマス、ソレモ無論必
要デアリマスルガ、マア一方ハ〓育ト云フ
コトニ付テノ更ニ深イ認識ヲ持タセルコト
ニ努力シテ行カナケレバナラヌト考ヘテ居
リマス、再〓育ノコトニ付テハ實況ヲ政府
委員カラ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=70
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071・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 只今法文系ノ〓職
員ノ中ニハ或ハ國民學校ノ〓員ノ再〓育ニ
使ヘル者ガアルダラウ、此ノ再〓育ヲヤッタ
ラドウカト云フ誠ニ御尤モナ御意見ト存ジ
マスガ、實ハ此ノ委員會デモ御話ガ出マシ
タヤウニ、法文系ノ〓授、助〓授等ニ付キ
マシテハ、今後精神文化方面ノ振作ノ爲ニ、
或ハ大學ノ精神文化〓究所等ノ〓究施設等
ニ於テ、〓究ヲ繼續シテ戴ク方モゴザイマ
セウシ、其ノ外或ハ專門高等ノ〓育ニ當ッテ
戴クト云フ部面モアラウト思ヒマス、直接
國民學校ノ〓員等ニハ、實ハ〓ッテ戴ケル餘
裕ガアルカドウカト云フコトヲ、少シク考
ヘテ見ナケレバナラヌト思ッテ居リマス、是
等ノ方々ハ極メテ高キ程度ノ學問〓究ニ從
事セラレタ方々デアリマスカラ、其ノ御力
ヲ出來得ル限リ高度ニ活用シテ戴ク意味ニ
於テ、實ハ政府ハ十分考ヘテ居ル積リデア
リマス、併シナガラ關屋サンノ御指摘ノヤ
ウニ、今日ハ國民學校〓職員モ相當ニ不足
ヲ〓ゲテ居リマスル時デアリマスルカラ、
サウ云フ方面ニ働イテ戴キマスルコトヲ必
要トスル場合ニ於キマシテハ、國民學校〓
育ノ本旨ニ鑑ミマシテ、相當再〓育等ノ
處置ヲ講ジナケレバナラヌト思ッテ居リマス
ガ、之ニハ文部省ニ於テ〓員ノ再〓育等ニ關
シマスル〓括的ナ豫算ガ取ッテゴザイマスノ
デ、是ハ實施上其ノ必要ニ應ジテ考ヘテ參
ルト云フコトニ御了承願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=71
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072・關屋貞三郎
○關屋貞三郞君 只今ノ政府委員ノ御話、
極メテ滿足致シマシタ、私ハ唯實情ヲ餘リ
知ラヌ人間トシテ、御參考迄ニ申上ゲタダ
ケデアリマスカラ、ドウゾ御含ミノ上デ適
當ニ御實行願ヘバ結構デアリマス、ソレカ
ラ尙文部大臣ハ〓育尊重ト云フコトガモウ
根本問題デアルト云フコトノ御話ガアリマ
シタガ、私ノ先日來申上ゲタノモ、〓育尊
重ト云フコトヲモットシッカリヤッテ戴キタ
イト云フコトヲ申上ゲテ居ルノデアリマシ
テ、此ノ〓育者優遇ト云フヤウナ問題ハ、
寧ロ其ノ一ツノ適用デアルト云フ位ニ考ヘ
テ居ル譯デゴザイマスカラ、ドウゾ其ノ御
積リデ〓育尊重ト云フ、是ハ當然ノコトデ
アリマスケレドモ、大方針ノ下ニ此ノ問題
ヲ解決シテ戴ケバ宜イノデゴザイマス、唯
實際問題ト致シマシテハ矢張リ豫算ヲ伴フ
コトデアリ、又經費ヲ伴フコトデアリマシ
テ、例ヘバ財政當局ノ如キハ相當ニ難色ガ
アルト思フノデアリマス、殊ニ人數ガ非常
ニ多イコトデアリマスカラ、文部省トシテ
ハ非常ニ御骨ガ折レルコトト思フノデアリ
マスルガ、是ハドウシテモ文部大臣ノ御力
ニ依ルノ外ナイノデアリマス、我々ガ平素
尊敬シテ居ル岡部文相ハ、一旦決定シタコ
トハナカ〓〓後ヘ下ラヌヤウナ風ニ私共ハ
平素カラ考ヘテ居リマスカラ、御決心ニナ
リサヘスレバ必ズ私ハ出來ルコトダト思フ
ノデアリマス、來年度ニ於テ、今年度ハマ
アムヅカシイカモ知レマセヌ、追加豫算ト
云フヤウナ譯ニ行クマイト思フノデアリマ
スガ、私ハ來年度ニ於テ岡部文相ノ英斷ヲ
深ク期待致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=72
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073・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 御異議ガナケ
レバ會議ノ時間ヲ延長致シマス、岩元君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=73
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074・岩元達一
○岩元達一君 私ハ中等學校ノ入學試驗ノ
方法ノ問題ニ付テ御尋ネシタイト思フノデ
ゴザイマスガ、中等學校へ進學期ノ子供ヲ
持ッテ居ル親ノ最モ頭ヲ惱マシテ居ルコト
ハ、私ハ此ノ入學試驗ノ問題デアラウト思
フノデゴザイマス、處ガ大體先日ノ新聞デ
御伺ヒ致シマスト、本年度モ大體前年ノ方
法ト同樣ナ方法ノ銓衡試驗ヲオヤリニナル
ヤウニ承ッテ居ルノデゴザイマスルガ、此ノ
現在ノ方法ニ改マリマシテカラ、モウ既ニ
數年ニナッテ居ルノデゴザイマスガ、此ノ可
否ニ付キマシテハ、未ダニ世間デ相當喧シ
ウ論議ガアルト思フノデゴザイマス、秋
此ノ問題ニ付キマシテ御當局ノ御所信ヲバ
明カニシテ戴クコトガ出來タナラバ幸ト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=74
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075・阿原謙藏
○政府委員(阿原謙藏君) 只今中等學校ノ
入學考査制度ニ付キマシテノ御尋デゴザイ
マス、仰セノヤウニ中等學校ノ入學考査制
度ノ問題ハ、中等學校ニ入學シマスル兒童
ニ取リマシテ、又其ノ父兄ニ取リマシテハ
非常ニ關心ノ深イコトデアリ、從ヒマシテ
兒童ニ與ヘマス所ノ影響モ極メテ甚大ナル
モノガアルト云フコトヲ考ヘテ居リマシテ、
從來ニ於キマシテモ文部省ニ於キマシテハ
非常ニ此ノ制度ノ取扱ニ付キマシテハ愼重
ニ〓究ヲ重ネテ來タ次第デアリマス、本年
迄執リマシタ大體ノ入學考査ノ方法ニ付キ
マシテハ、御承知ノヤウニ人物考査、身體
檢査、內申書、此ノ三ツノモノヲ綜合判定
致シマシテ、其ノ結果ニ依リマシテ入學ヲ
決定スルト云フ方針ヲ執ッテ居ル次第デゴ
ザイマス、我々ト致シマシテハ現在ノ此ノ
制度ニ付キマシテ、制度ト致シマシテハ現
在ノ制度ガ最モ善イモノデアル、斯樣ニマ
ア色々〓究致シマシタ結果ナッテ居リマス
ガ、實際之ヲ運用致シマス上ニ於キマシテ、
色々又缺陷ガ出テ參リマシタシ、又非常ニ
嫌ナ事件モ御承知ノヤウニ世上ニ發表サレ
ルト云フヤウナコトガアリマシテ、更ニ現
在ノ制度ヲモット完璧ナモノニ致シタイ、サ
ウシテ出來ルダケ缺陷ヲ是正致シタイト云
フ考ノ下ニ、先般御承知ノヤウニ新聞ニ發
表致シマシタヤウニ、從來ノ方針ノ足ラナ
イ所ヲ補フ、斯ウ云フ意味ニ於キマシテ來
年度實施致シマスル制度、詰リ此ノ春實施
致シマスル所ノ制度ノ內容ニ付キマシテ發
表致シタノデアリマス、其ノ內容ハ御承知
ノヤウニ從來ノ方針ヲ根本的ニハ變ヘルモノ
デハゴザイマセヌ、唯一部從來ノ缺陷ヲ是
正スル、更ニヨリ良クスル、斯ウ云フ意味
ニ於キマシテ多少ノ修正ヲ加ヘタ程度デア
リマシテ、根本精神ニ於テハ何等變ッテ居
ラナイノデアリマス、之ガ實施ニ當リマシ
テモ私共ハ十分ニ注意致シマシテ、成ルベ
ク父兄ノ心配ヲ少クスル、又父兄ガ安心シ
テ此ノ制度ニ賴リ得ルト云フ方向ニ持ッテ
行ク爲ニ、今後共努力致シタイト思ッテ居
ルノデアリマスルガ、今囘變ヘマシタ點ハ
根本ニ於テハ變ッテ居リマセヌガ、唯人物考
査ニ於キマシテ、從來口頭試問ノミニ依ル
コトニ依リマシテ、十分ニ人物考査ノ適否
ガ確メラレナイト云ッタヤウナ特殊ノ場合ノ
時ニ限リマシテ、口頭口問ト同ジ趣旨ニ依リ
マスル筆問筆答ヲ加へ得ルト云フ餘地ヲ與
ヘタノデゴザイマス、是ハ極ク特殊ナ場合
ヲ豫想致シマシテ、サウ云フ餘地ヲ與ヘタ
ノデアリマシテ、此ノ點ハ從來ノ根本趣旨
トハ何等變ッテ居ラナイノデアリマス、例へ
バ大都會デゴザイマシテ、非常ニ入學者
ガ多クテ、其ノ入否ノ判定ニ非常ニ困難致
スト云フヤウナ特殊ノ事情ガアル場合ニ限
リマシテ、サウ云ッタヤウナ事例ヲ認メル
ト云フコトニ致シタノデアリマス、併シナ
ガラ之ニ付キマシテモ其ノ地方デ勝手ニ判
定シテ、自分ノ方ハサウ云フ場合ニ該當スル府
縣デアルトカ云フコトデ、勝手ニヤラレル
コトハ矢張リ我々ト致シマシテモ非常ニ遺
憾デアルト云フ風ニ考ヘマシテ、之ヲ實施
スル場合ニ於キマシテハ、本省ト十分協議
致シマシテ、斯ウ云フ內容デアル、斯ウ云
フ方法デアルト云フコトヲ具體的ニ御相談
願ヒマシテ、御相談ノ結果我々ガ認メマシ
テ差支ナイト云フ特殊ノ府縣ダケニ、サウ
云フヤウナ事例ヲ認メルト云フコトニ致シ
タイ、斯ウ云フ考ノ下ニ現在進メテ居リマ
ス、其ノ他或ハ國民學校長ノ內申書ト云フ
モノハ、是ハ勿論學校ノ先生ガヤラレルノ
デアリマスカラ、我々ト致シマシテハ全幅
ノ信賴ヲ持ツベキデアリ、又持タナケレバ
ナラヌト考ヘテ居ルノデアリマスルガ、併
シナガラ世上ニ現ハレマシタ事例ニ依リマ
スルト、動モスレバソレハ擔任ノ先生ガ主
ニナッテヤルト云フ所カラ、ソコニ極ク少
數ナ場合デアリマスルケレドモ、手加減ヲ
スルト云ッタヤウナコトモゴザイマシテ、問
題ガ起ッテ來タト云フヤウナ點ニ鑑ミマシ
テ、サウ云フ點ヲ是正スル意味ニ於キマシ
テ學籍簿委員會ト云フヤウナモノヲ別個ニ
組織致シマシテ、是ハ各學年別ニ一學年カ
ラ六學年ニ至ル迄各學年每ニサウ云ッタヤ
ウナ委員會ヲ作ラセマシテ、學籍簿ノ記入
ヲ平時カラ常時之ヲ續ケテ行ク、而モ之ニ
對シマシテハ他ノ先生方モ始終其ノ兒童ノ
成績ヲ普段カラ注意致シマシテ、其ノ結果
ガ率直ニ學籍簿ニ現レル、而モソレヲ本ニ
致シマシテ内申書ヲ作成致サセマシテ、此
ノ內申書ニ基ク從來ノ非難ヲ少クシヨウト
云フヤウナ考ノ下ニ、サウ云ッタヤウナ制
度ヲ更ニ完備スルト云フ意味ニ於キマシテ設
ケタト云フコトモゴザイマス、又身體檢査
ニ付キマシテモ餘リ標準ガ細カク分レ過ギ
テ居ッタト云フコトカラ、サウ無理ニ出來ナ
イコトヲ子供ニ强ヒテ、或ハ懸垂サセルト
云フモノニ付キマシテモ囘數ガ多イト云フ
トカ、點數ガ一點多イトカ、二點多イト云
フコトニナリマシテモ、ソコニ又非常ニ弊
害ガアルト云フヤウナコトモ認メラレマシ
タ、サウ云フ點ヲ是正シテ行キタイト云フ
コトデ、サウ云フ點ニ付キマシテモ若干修
正ヲ加ヘルコトニ致シタノデアリマス、唯
此ノ問題ニ付キマシテハ勿論〓育者全體ガ
非常ナ關心ヲ持チマシテ、此ノ制度ニ付キ
マシテ萬全ヲ期サネバナラヌ、又我々モ其
ノ意味ニ於キマシテ十分ノ指導監督ヲシナケ
レバナラヌト云フ責任ヲ感ズルノデアリマ
スガ、同時ニ又一般ノ父兄ガ現在ノ制度ニ
對シマシテ十分心カラノ御理解ヲ御持チ願
ヒマシテ、其ノ理解ノ下ニ子供ノ進學ヲシ
テ戴ク、サウ云フ意味ニ於キマシテ或ハ受
持ノ先生、其ノ他ノ方々ト十分ニ其ノ方面
ニ付テ懇談ヲ致サレマシテ、本當ニ自分ノ
子供ノ能力ニ應ジマシテ學校ニヤル、自分
ノ子供ノ働キニ依ッテ學校ヲ選ブト云フ風
ニ父兄ノ方ノ心カラナル御理解ヲ俟タネバ
ナラヌト私ハ考ヘルノデアリマシテ、サウ云
フ點ニ對シマシテ私共機會アル每ニ父兄ノ
方々ニ、今囘ノ制度ニ付キマシテ十分ナル
御理解ヲ得ルヤウニ御願ヲ致シテ居ルヤウ
ナ次第デゴザイマスガ、ドウゾサウ云フ點
ニ付キマシテ十分ノ御理解ヲシテ戴クナラ
バ仕合セニ存ズル次第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=75
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076・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 御諮リヲ致シ
マス、御異議ガナケレバ併託ノ二案ニ付テ
ノ御質疑ヲモ加ヘタイト思ヒマスガ、御質
疑ヲ願ヒマス前ニ、先刻チヨット御照會申上
ゲマシタ靑年學校ノ大勢ニ付テ政府委員カ
ラ御報告ヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=76
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077・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 先程委員長ヨリ御
示ノアリマシタ靑年學校ニ關シマスル現勢ニ
關シマシテノ箇條デゴザイマシタガ、ソレ
ニ對シテ大體數字ノ結果ヲ申上ゲマス、靑
年學校ノ數デゴザイマスガ、公立ガ一萬六
千十一校、私立ノ方ガ二千九百二十五校、
合計一萬八千九百三十六校デゴザイマス、
次ニ靑年學校ノ生徒數デゴザイマス、是モ
公立私立ニ分ケテ申上ゲマスト、先ヅ公立
ノ方ノ男子ガ〇〇人、女子ノ方ガ〇〇人、
合計〇〇人トナリマス、ソレカラ私立ノ方
ハ男子ガ〇〇人、女子ノ方カ〇〇人、通ジ
マシテ〇〇名トナリマス、委員長、只今ノ
靑年學校ノ生徒ノ〓ハ速記カラ省イテ戴キ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=77
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078・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 只今ノ政府委
員ノ御話ノ通リデ御異議ガゴザイマセヌケレ
バ、サウ致シマス
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=78
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079・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) デハ左樣ニ取
計ラヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=79
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080・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 次ニ靑年學校〓員
數デゴザイマス、〓員ノ數ハ專任ノ〓員ガ
四萬三千四百六十九人、其ノ他ノ〓員ト申
シマスノハ〓ネ囑託關係ノ者デゴザイマス
ガ、ソレガ十八萬一千九十八人デゴザイマ
ス、次ニ靑年學校經費ノ總額デゴザイマス
ガ、公私立ヲ合計致シマシテ一億一千一百
二十一萬八千八百四十九圓デアリマス、次
ニ靑年學校ニ對スル國庫ノ補助額デアリマ
スガ、昭和十九年度、只今提案ヲ致シテ居
リマス補助額ハ三千二十三萬二千九百十三
圓ト云フコトニ相成ッテ居リマス、御參考ノ
爲ニ、十八年ノ補助額ハ一千八百五十七萬
五千五百二十七圓ト云フコトデゴザイマス、
次ニ靑年學校〓員ノ養成所トシテ從來アリ
マシタモノデアリマスガ、其ノ靑年學校〓
員養成所ノ數ガ五十三校ゴザイマス、ソレ
カラ靑年學校〓員養成所ノ生徒ノ數ハ五千
八百七十八名、其ノ內男子ガ四千四百九十
八人、女子ガ一千三百八十人ト云フコトニ相
成ッテ居リマス、之ニ對シマシテ今囘ノ靑年
師範學校制度、新設サルベキ靑年師範學校
ニ於キマシテハ、學校ノ數ガ四十七校ニ相
成リマス、ソレカラ生徒數ガ一萬一千八十
名、其ノ內男子ガ八千七百六十名、女子ガ
二千三百二十名ト云フコトデゴザイマス、
ソレカラ〓員ノ數ハ六百五十六人デゴザイ
マス、ソレカラ經費ガ七百一萬七千圓バカ
リデゴザイマス、以上申上ゲマシタ靑年師
範學校ノ學校數ヲ除キマシタ部分、卽チ生
徒數〓員數、經費等ハ、是ハ完成ヲ致シ
マシタ時ノ數字デゴザイマス、サウ云フヤ
ウニ御承知ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=80
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081・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) ソレデハ田澤
君、御質疑願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=81
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082・田澤義鋪
○田澤義鋪君 大分遲クナッテ御疲レノ處、
失禮デスガ、成ルベク簡單ニ御尋ネ致シ
タイト思ヒマス、靑年學校ニ付テ質問ヲ
申上ゲタイト思フノデアリマスガ、只今
靑年學校ニ關スル數字ヲ拜聽致シテ見マス
ルト、我々素人ニハ、マダ大體サウ云フコ
トニナッテ居ルノカナト云フ漠然タル感ジ
シカ受ケ得ナイヤウデアルノデアリマス、
處デ、今日ノ靑年學校ノ實質ヲ眺メテ見マ
スルト、非常ナ勢ヒデ、何ト謂ヒマスカ、
形ガ變リツヽアル、性質ガ變ジツヽアル、是
ハ驚クベキ、靑年學校〓育ト云フ立場カラ
見レバ重大ナ時期ニ遭遇シテ居ルト思フノ
デアリマス、何トナレバ、私ノ數字ハ、是
ハチヨット間違ッテ居ルカモ知レマセヌガ、
一昨年一箇年ニ東京都ノ區域デ靑年學校ガ
閉鎖サレテ居ルノガ六百幾十、是ハ商業關
係ノ靑年學校ノ閉鎖デアリマス、小サナ店
迄商業關係ノ靑年學校ヲヤッテ居ッタノガ
徵用其ノ他ノ企業整備、色々ナ意味デヤレ
ナクナッタ、六百幾ツノ閉鎖、同時ニソレニ
伴ウテ工業方面ノ靑年學校ノ增設、是亦非
常ナモノデアラウト思ヒマス、學校ノ數ト言
ハヌデ、更ニ生徒數ヲ比較シテ見マスレバ、
只今伺ヒマシタノハ公立私立ノ對照デアリ
マスガ、工場關係ト商業關係ト、サウデナ
イ都市ノ靑年學校ト云フヤウナモノヲ較ベ
レバ、是亦非常ナ變化ヲ來シテ居ルト思フ
ノデアリマス、ソレカラ又農村ノ靑年學校
デアリマスガ、農村ノ靑年達ガ大分都會ノ
工業部門ニ吸收サレテ居ル、勿論一部ハ〓
糧增產ニ眞劍ニ働ク爲ニ殘サレテ居ルニハ
相違アリマセヌケレドモ、從前ニ較ベルト、
靑年學校ノ農村地帶ニ於ケル生徒數ハ激減
シテ居ルト謂ハナケレバナラヌノデアリマ
ス、形ノ上カラ見マシテモ斯クノ如ク商業
靑年學校ノ大量減縮、工業靑年學校ノ大量
激增、而シテ農村ハ、學校ハ違ヒアリマス
マイガ、變化アリマスマイケレドモ、生徒
數ニ於テ是亦非常ナ變化ヲ來シテ居ル、斯
ウ云フ時期ニ此ノ靑年學校ノ〓育ガ如何ナ
ル方針デ其ノ豫定メ目標ヲ達成スルカ、是
ハ實ニ重大ナル問題デアルト存ズルノデア
リマス、サウシテ尙其ノ內容ニ付テ申シマ
スレバ、今日安井委員カラ御話ガアリマシ
タヤウニ工業工場部門ニ於キマシテハ、靑
少年工ノ「パーセンテージ」ガ非常ナ勢ヒデ
增加シテ居ル、此ノ〓育ニ當ッテ居ル靑年學
校ノ責任、ヤリ方ハ、非常ナ重大ナ問題ニ
ナッテ居ルト思フノデアリマス、斯ウ云フ此
ノ外形ノ變化、外形ト言フヨリハ或ハ實質
ノ變化ト言ッテ宜イカト思フノデアリマス
ガ、サウ云フコトニ對シテ文部省ハ此ノ靑
年學校ノ〓育ノ根本方針ニ於テ如何ナル態
度ヲ御執リニナッテ居ルカ、ドウ云フヤリ方
デ之ニ對處サレツヽアルカ、段々伺ヒタイ
ノデアリマスガ、先ヅ此ノ第一點ヲ總論的
ニ伺ッテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=82
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083・岡部長景
○國務大臣(子爵岡部長景君) 御尋ノ通リ
靑年學校ノ實情ト云フモノガ此ノ兩三年ノ
間ニ非常ナ變化ヲ來タシ、又來タシツヽア
ル變革シツヽアルト云フコトハ其ノ通リ
デアリマス、併シ是ハ今日ノ時局ノ非常ナ
大急變轉ノ實情ニ卽シテ、矢張リ斯ウ云フ
變轉ハ靑年學校トシテ已ムヲ得ナイ變化デ
アリマス、殊ニ此ノ際勤勞方面ニ非常ナ靑
少年ガ要請サレマスノデ、靑年學校ト申シ
マシテモ、內容的ニ見マスレバ、從來ノ座
學ヲ極度ニ縮減シテ職場卽〓育場、〓室ト
云フヤウナ、所謂行學一體ノ方針デ此ノ時
局ノ要請ト併行シテ、之ニ卽シタル〓育方
針ヲ執ッテ參ラナケレバナラナイノデアリ
やっく、實際御話ノ通リ非常ニ〓育ノ效果ヲ
擧ゲルト云フコトニ付キマシテハ、非常ナ
苦心ヲ要スルノデアリマスガ、併シ先程安
井委員カラノ御尋モアリマシタヤウニ、此
ノ靑年學校〓育ヲヤッテ居ル所トヤラナイ
所トハ、其ノ能率ノ上ニ於テ非常ニ違ヒガ
アルト云フコトハ、是ハ我々一般的ニ認メ
テ居ル所デアリマス、飽ク迄此ノ時代ニ卽
應シマシテ、又時代ノ要請ヲ十分考慮ニ入
レテ、此ノ靑年學校〓育ノ充實ヲ圖ッテ行
カナケレバナラヌト考ヘテ居ルヤウナ譯デ
アリマシテ、今日具體的ニハ色々指導方針
ヲ授ケテ居ル譯デアリマス、又都合ニ依リ
マシテ政府委員カラ御說明申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=83
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084・田澤義鋪
○田澤義鋪君 尙政府委員カラ御答ヘゴザ
イマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=84
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085・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 只今大臣ノ御答辯
ニナリマシタ大方針ニ基キマシテ、曩ニ田
澤サンノ御指摘ノゴザイマシタ工場事業場
等ニ於ケル靑年學校ノ當面ノ措置ト致シマ
シテ、座學ノ時間ハ成ルベク之ヲ削除致シ、
サウシテ職業科ノ時間ヲ殖シテ、職業科ノ
時間ハ職場〓育ヲ以テ充テルト云フ臨機ノ
處置ヲ講ジマシテ、併シナガラ大臣ノ御述
ニゴザイマシタ通リ、現時局下ニ於キマシ
テ靑少年ガ、殊ニ靑少年勤勞者ガ中ニアッテ
生產ノ第一線ニ於テ働イテ居リマスト同時
二、直チニ適齡ニ達シマスレバ、戰線ノ第
一線ニ立ツモノデアリマス、國防ノ上カラ
モ生產ノ上カラモ、兩面カラ以テシテ、最
モ重大ナ國家的任務ヲ荷擔シテ居ルモノデ
アリマスガ故ニ、靑年學校〓育ノ重大ナル
意義ヲ考ヘマシテ、今囘ノ豫算ニ於キマシ
テモ、之ガ一端トシテ先ヅ其ノ最モ緊要ナ
ル靑年學校ノ〓育ニ當リマス〓育者、其ノ
〓育者養成ノ機關デアリマスル從來ノ靑年
學校〓員養成所ヲ改メテ、官立ノ靑年師範
學校ノ制度ヲ設ケマスト共ニ、一面從來是
等ノ靑年學校ニ關シマスル經費ガ、靑年學
校〓員俸給其ノ他大體ニ於テ市町村費負擔
ト相成ッテ居リマシタノヲ、今囘特ニ道府縣
費ニ之ヲ移管ヲ致シマシテ、其ノ財政的ナ
ル面ノ色々ノ缺陷ヲ補正ヲ致シ、又同時ニ
〓員ノ配置ニ付キマシテモ、適材ヲ適所ニ
配置シ得ルヤウナ仕組ヲ講ジ得ルヤウニナ
ルコトヲ期待致シテ居ルノデアリマス、其
ノ他諸般ノコトモゴザイマスルガ、大體ソ
レダケヲ申上ゲテ置キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=85
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086・田澤義鋪
○田澤義鋪君 モウ少シサウ云フ問題ニ關
聯シテ御尋ネ申上ゲタイト思ヒマスガ、此
ノ靑年學校ノ一般ノ中カラ出テ來ル色々ノ
問題ガアルト思ヒマスケレドモ、時間モ時
間デアリマスルシ成ルベク簡單ニ致シタイト
思フノデアリマス、一番重大ナ問題ノ一ツハ
〓員對策、如何ニシテ適當ナル〓員ヲ得ル
カト云フ問題デアルノデアリマスガ、自分
ノ事ヲ申シテ相濟ミマセヌガ、私モ五六年
靑年學校長ノ仕事ヲシテ居ッタノデアリマス
ケレドモ、一番困リマシタノハ一人ノ〓員
ガ缺員ガアッタ場合ニ如何ニシテ其ノ後任
ヲ得ルカ、適當ナル後任ヲ得ルカト云フコ
トニ本當ニ困リ拔クノデアリマス、ソレハ
マア時局ガ斯クノ如ク苛烈ニナラナイ時分
ノ話デアリマス、今日ノヤウニナリマシテ、
頂戴シタ印刷物カラ見マスト、國民學校ニ
於ケル先生ノ不足ガ約二萬圓、サウ云フコ
トニナッテ居ルノデアリマシテ、此ノ國民學校
ノ二萬人ノ不足ニ對シテハ、マア不十分ナ
資格ヲ有ッタ人デアルカモ知レマセヌガ、兎
ニ角女子ヲ用フルト云フヤウナコトニ依ッ
テ、或程度是ハ補フコトモ出來ルノデアリ
マスガ、靑年學校ノ方ハ、普通科ノ先生等
ハ女子ヲ以テ當嵌メルコトモ出來マスケレ
ドモ、本科ニ於テハ絕對ニ不可能トハ申シ
マセヌガ、ナカ〓〓困難デアリマス、マア
相當アリマセウガ多クヲ求ムルコトガ出來
ナイ、而シテ既ニ國民學校ニ於テ色々ト政
府カラ對策ヲ講ゼラレ、社會カラモマア靑
年學校ニ比シテハ尊重サレテ居ル、而モソ
レガ二萬人ノ不足ト云フコトデアリマスカ
ラ、從來ハ靑年學校ノ〓員ノ不足ハ、別
數字ハ頂戴シタ譯デハゴザイマセヌガ、餘
程ノ數ニ達スルノデハナイカト考ヘルノデ
アリマス、此ノヤウニ得ルコトノ出來ナイ
靑年學校ノ先生、而モ先程申シマスヤウニ、
工場地帶ノ學校ニ於キマシテハ非常ナ學級
增加、非常ナ生徒ノ增加、先生達ヲ要スル
コト實ニ夥シイモノガアルノデ、勿論職域
ニ關シテハ是ハ工場ノ人ニ手傳ッテ貰フト
云フヤウナコトモ無論出來マスケレドモ、
ソレダケデ濟ムト云フ譯ニハ參リマスマイ、
サウ云フヤウナ情勢デアルノデアリマス、
又農業科ノ先生等モ從來此ノ靑年學校〓員
養成所ニ居ラレタヤウナ行キ方デ今日ノ農
村靑年ノ食糧增產一點張リノ生キタ戰ヲ現
實ニ鬪ッテ居ル其ノ靑年ヲ指導スルノニ、從
來ノヤウナ〓育デ適スルカドウカ、是モ一
ツノ大キナ疑問デアルト思フノデアリマス、
ソコデ此ノ〓員對策ヲドウナサラウト云フ
ノカ、例ヘバ靑年師範學校ニ御集メニナル
八代、其ノ生徒數ヲ先程御示シニナッタノデ
アリマスガ、ソレダケノ生徒數ガ必ズ集メ
得ルモノト御確信ガアルデアラウカドウ
カ、私共カラ見レバ容易デハナイ、ナカ
ナカ集ラナイノヂヤナイカト云フヤウナ氣
ガ致シマスガ、サウ云フ單リ靑年師範學校
バカリデナイ、靑年學校自體ノ〓員對策、
職業ノ方面デ工場ノ技師ナドヲ併用スルト
云フコトハ是ハモウ能ク分ッテ居リマスケレ
ドモ、其ノ以外ニ於テドウ云フ對策ヲ以テ
此ノ難局ニ處シテオイデニナル積リデアラ
ウカ、此ノ方面ニ關スル御答ヲ政府委員ノ
方デ結構デゴザイマス、ドウゾ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=86
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087・阿原謙藏
○政府委員(阿原謙藏君) 只今御尋ノ靑
年學校ノ〓員對策ノ問題デアリマス、只今
御話ノゴザイマシタヤウニ、確カニ〓員ノ
不足ハ相當告ゲラレテ居ル現狀デゴザイマ
シテ、今日靑年學校ノ使命ガ非常ニ重大ナ
ル折柄、之ガ〓員對策ヲ十分ナラシムルコ
トハ刻下極メテ必要デアラウト存ズルノデ
ゴザイマス、ソレニ付キマシテハ只今モ御
話モゴザイマシタヤウニ、靑年學校〓員養
成所ヲ來年度カラ昇格致シマシテ、官立ト
致シマシテ靑年師範學校ニ致シタイ、斯樣
ニ考ヘ居ル次第デゴザイマス、又先程モ御
話ノゴザイマシタヤウニ靑年學校ノ職員ノ
待遇改善ト云フコトモ、現在豫算ニモ計上
サレテアリマシテ、是ガ實施ニ付キマシテ
現在ソレ〓〓關係方面ト折衝致シマシテ、
出來ルダケ靑年學校職員ノ待遇改善ヲ圖リ
タイ、斯樣ニ考ヘテ居ル次第デゴザイマス、
尙又國民學校〓員ト同樣ニ國民學校〓員ノ
採用範圍ノ擴張ト云フコトヲ考ヘテ居リマ
シテ、現在之ガ制度化ニ付キマシテ色々〓
究ヲ進メテ居ルノデアリマス、同ジヤウナ
意味ニ於キマシテ靑年學校職員ニ對シマシ
テモ〓員ノ從來ノ採用範圍ヲ擴張致シマシ
テ、廣イ範圍カラ、〓員ヲ求メタイト云フ
計畫ヲ進メテ居ルノデアリマス、例ヘテ申
シマスルト現役デナイ軍人ノ方々、或ハ又
判任官又ハ其ノ待遇デ曾テアッタ方々、其ノ
他學識或ハ德望ノアル方ヲ地方長官ガ推薦
出來ルナヤウ方途ヲモ現在考究致シマシテ、
斯ウ云フ方面ト相俟チマシテ、出來ルダケ
〓員對策ニ付キマシテ努力致シタイ、斯樣
ニ考ヘテ居ルノデアリマス、尙又靑年師範
學校ニ對スル志望者ト云フモノガ十分ニ入
學者ガ採リ得ルカト云フナヤウ御尋デゴザ
イマスガ、昨年ノ事例ヲ考ヘマシテモ、靑
年學校〓員養成所デゴザイマスガ、大體募
集人員ノ倍數位ノ志願者ガ實ハアッタヤウ
ナ狀態デゴザイマス、今年ハ色々ナ事情ヲ
考ヘマシテ、私共ハ寧ロ昨年ヨリモモット志
願者ガ多イノヂヤナイカ、斯樣ニ考ヘテ居
ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=87
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088・田澤義鋪
○田澤義鋪君 靑年師範學校ノ生徒ノ入學
ト云フコトニ對シテハ非常ナ樂觀的ナ希望
ヲ御持チニナッテ居ル、誠ニ國家ノ爲ニ欣ブ
ベキコトデアリマシテ、我々門外漢ノ𣏌憂
ガ一掃サレルト云フコトニナルナラバ、ソ
レニ越シタコトハゴザイマセヌ、又此處デ
之ニ關聯致シタコトデ伺ッテ見タイノハ、靑
年師範學校ノ兎ニ角、科トデモ謂ヒマスカ、
文科トカ、何々科、何々科ガアル、從來ノ
靑年學校〓員養成所ニハ農業ノ先生ト、ソ
レカラ普通學科ノ先生ガ工業科ノ先生ヨ
リハ少イ、工業方面ノ職業科ノ先生ハ
地方ニ依ッテハヤッテ居ッタカモ知レマセヌ
ガ、多クノ養成所デハ誠ニ微々タルモノヂ
ヤナイカト思フノデアリマスガ、尤モソレ
ハ今度ハ工場カラヤッテ貰フ積リダト、斯ウ
云フ餘裕ガアルト思ヒマスカラ、其ノ點ヲ
强ク別ニ彼此レ申ス譯デハアリマセヌガ、
何カ靑年師範學校ノ中ノ此ノ科目ト謂ヒマ
スカ、分科ト謂ヒマスカ、其ノヤリ方ヲ
ツ我々ノ心配ヲ拂拭スルニ足ルヤウナモノ
ヲ見出シタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=88
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089・阿原謙藏
○政府委員(阿原謙藏君) 新シク豫定サレ
テ居リマス靑年師範學校ノ學科デゴザイマ
スルガ、大體男子ノ職業科ハ工業、農業、水
產ト云フ風ニ分ケテ取扱フ積リデゴザイ
マス、女子ハ主トシテ家政科ヲ中心ニシテ
ヤル考デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=89
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090・田澤義鋪
○田澤義鋪君 普通學科ノ方ハナイノデゴ
ザイマスネ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=90
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091・阿原謙藏
○政府委員(阿原謙藏君) 普通學科ノ方ハ
今ノ所ハ考ヘテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=91
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092・田澤義鋪
○田澤義鋪君 段々疑ヒガ解ケテ參ルノデ
アリマスガ、農業科ノ先生等ハ、新タナ見
地デ〓育ナサレバ無論立派ナ先生ガ得ラレ
ルト思ヒマスケレドモ、何カ昔風ノ傳統ガ
幾ラカ邪魔ヲシテ、今日ノ本當ニ戰ヒ拔ク
農村靑年ノ指導ト云フコトニ適當シテ居ラ
ナイ、一種ノ或昔風ノ農業技術者ト云フヤ
ウナ立場ノ人ヲ以前ハ養成シテ居ラレタヤ
ウデアリマスガ、近頃ハサウ云フ心配ハナ
イコトニナッテ居リマセウカ、或ハサウ云フ
點カラ却テ町村ニ於ケル何カ篤農家ト云フ
ヤウナ人達ニ短期ノ指導デモ〓育デモシテ、
サウシテ現實ノ今日ノ農村生活ニ卽シタ〓
育ヲ靑年學校デヤッテ戴クコトガ寧ロ適當シ
テ居ルノヂヤナイカト云フヤウナ氣モ致シ
マスガ、サウ云フ點ハドウナッテ居リマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=92
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093・阿原謙藏
○政府委員(阿原謙藏君) 只今御尋ノ農業
科ノ先生デゴザイマスガ、從來私共極メテ
經驗ガ淺イノデゴザイマスガ、或ハ技術者
風ノ氣風ガアッタノデハナイカト云フ御尋
デゴザイマシテ、サウ云フ點モ私ハアッタラ
ウト存ズルノデアリマス、唯今囘制定サレ
マスル師範學校ニ於キマシテハ、矢張リ現
下ノ時局ニ卽應致シマシテ、且又地方ノ實
際、又職業ノ實際ニ卽應スルヤウナ指導ヲ
致シマシテ、サウシテ本當ニ現下ノ要求致
シテ居リマスル師範學校ノ先生ニ相應ハシ
イ人々ヲ作リタイト云フ考ノ下ニ進メタイ
ト思ッテ居リマシテ、從來ハ別ニ師範學校〓
員養成所ニ於キマシテハ、例ヘバ〓授要綱
ト云フヤウナ別ニ定メハナカッタノデゴザ
イマスガ、サウ云フモノヲ新シク今度ハ制
定致シマシテ、現在近ク先生方ノ講習モヤ
ラウト考ヘテ居リマス、又〓科書ニ付キマ
シテモ、原則ト致シマシテ國定デ編纂シテ
行キタイト云フヤウナ方針ヲ取リマシテ、
斯ウ云フコトニ依リマシテ從來ノ足リナイ
所ヲ補ッテ行キタイト思ッテ居リマス、尙其
ノ篤農家ニ付キマシテハ色々現在〓究致シ
テ居リマスルガ、マダ具體的ニ玆ニ申上ゲ
ルダケノ段取リニナッテ居リマセヌコトヲ御
了承願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=93
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094・田澤義鋪
○田澤義鋪君 其ノ〓授法ヲ制定シテ戴ク
トカ、何カ講習ヲヤルトカ仰シヤルコトガ、
文部省ノ御當局トシテハ確カニ立派ナ目標
ヲ以テオヤリ下サルノデアラウト思ヒマス
ガ、地方ノ實際カラ言フト、サウ云フコトデ
先生ガ靑年ト離レテシマフ、本當ノ村ノ實
際カラ遊離シテシマフ、サウシテ〓授法ガ
ドウダ、技術ガドウダ、定義ハ、應用ハ
ト云フ風ニナッテ來ルノデアリマシテ、我々
ガ今日ノ此ノ實戰下ニ何トシテモ食糧增產
ト云フヤウナ場合ノ靑年學校ノ先生トシテ
ハ、違ッタ方向ニ行ッテシマハレルノヂヤナ
イカト云フヤウナ心配ヲ致スノデアリマス
ガ、是ハモウ是レ以上申上ゲテモ或ハ見解
ノ相違ニナルコトカモ知レマセヌガ、ドウ
ゾ更ニ一ツ御考究ヲ願ヒタイノデゴザイマ
ス、其ノ次ニ伺ッテ見タイコトハ、工場ヲ中心
トスル靑年學校デアリマス、是ハ安井委員
カラ最モ重要ナ點ニ付テ御質問ガアリマシ
タカラ、モウ繰返サナイコトニ致シタイト
思ヒマス、唯此處デ一ツ申上ゲテ置キタイ
コトハ、座學ノ廢止ト云フカ、廢止デモア
リマスマイガ、程度ヲ少クスル、サウシテ
行學一如、實際ノ仕事ノ上ニ學問スル、是
ハモウ文部省ノ御方針トシテ最モ有難イコ
トデ、一體靑年學校ト云フモノハ初メカラ
サウアルベキデ、私共學ビツヽ働ク、仕事
スルコトガ學問デアリ、學問ハ實際ノ生活
ト離レチヤイカヌ、是ガモウ當初カラノ精
神デアリマス、其ノ點カラ言ヘバ、斯ウ云
フ時局ニナッテ愈〓ソレガヤレルヤウニナッ
ク、斯ウ云フ氣持デアラウカトモ思ヒマス、
併シ此ノ點ハモウ一段突込ンデ考ヘテ見マ
スト、一面ハ非常ニ喜ブベキ現象デ、兎の
角行學一如ノヤリ方ガヤレル、講義スルダ
ケデハナイ、實際仕事ヲスル、其ノ仕事ノ
中ニ〓究ナリ工夫ナリ創意ナリ學問ガアル
ノダ、是デ以テ靑年學校ノ初メカラノ理想
ヲ實現シナケレバナラヌノダ、斯ウ云フ氣
持デ御當リ下サルコトハ非常ニ結構ダト思
ヒマスガ、同時ニ一面憂フベキ點モナイデ
モナイノヂヤナイカト思フノデアリマス、
ソレハドウ云フコトヲ申シマスカト云フト、
行學一如ニナレバ實ニ結構デスケレドモ、
行學分離ト云ッタヤウナ實際ヲ現シテ居ル
所モナイデハナイノデアリマス、工場ノ仕
事ノ方ハ工場ノ技師ガ擔任スル、靑年學校
ノ〓育ト云フコトハ今迄餘リ頭ヲ使ッタコ
トモナイ、老ヘタコトモナイ、純然タル工
場ノ技術家ト云フ人達ガ擔任スル、サウシ
テ修身國民科トカ、或ハ其ノ他ノ、是ハ極
ク簡素化サレテ居ルデアリマセウガ、時間
ガ非常ニ少クナッテ居リマセウガ、普通學科
ナドハ從來ノ靑年學校ナリ、國民學校ナリノ
先生ノ經驗ヲ持ッタヤウナ人達ガ之ニ當ル、
此ノ修身學科ナリ普通學科ナリヲ〓ヘル人、
或ハ靑年學校ノ生徒ノ指導ヲ自己ノ〓育的
ノ責任ト考ヘテヤラナケレバナラヌ人ガ、技
師ノ職員ガ當ッテ居ル實際ノ仕事ノ〓育ト云
フコトヲ、アレハ俺達ノ仕事ヂヤナイノダ、
何カヤッテ居ルラシイト云フコトデ關心ガ薄
クナル、ソレカラ又技師ノ諸君ハ、ナニ、
斯ウ云フ時ニ靑年學校デ何カヤッタッテ仕樣
ガナイノダ、俺達ハ自分デ仕事ノ方ヲ一生
懸命ニヤッテ見セルノダト云フヤウナ氣持
デ考ヘテ、本來ノ〓育指導ト云フモノヲ稍〓
輕ンズルト云フヤウナ傾モナイコトハナイ、
良ク行ケバ行學一如デアリマスケレドモ、
惡ク行ケバ行學分離ニナル虞ガ多分ニアル、
是ハ安井委員カラ御話ノ、工場經營者自體
ガ、今日ノ工場ト云フモノハ〓育ヲ中心ト
シテヤルヨリ外ナイノダト云フコトガ本當
ニ理解サレテ、心血ヲ注イデヤッテ居ル所ダ
ケウマク解決サレルノデアッテ、一般ノ所デ
ハナカ〓〓十分ニ解決ガ出來ナイノヂヤナ
イカ、是迄モ工場ノ靑年學校ハ多ク私立デ
アリマスカラ、サウ言ッテハ失禮ニ當ルカモ
知レマセヌガ、私立ノ學校ニハ文部省ノ方
針ト云フモノガ何ダカ本當ニ滲透シテ居ナ
イノヂヤナイカト云フヤウナ氣ガ致スノデ
アリマス、我々〓テ見マシルモサウ感ゼラ
レルノデアリマス、例ヘバ二三年前デアリ
マシタカ、アノ要目ノ改正ニハ劃期的ナ色
色ナ重大ナ意味ヲ含メテアッタノデアリマス
ルガ、兎ニ角困難デモアッタラウ、而モ公立
デハ其ノ新要目ニ基イテヤラウトスル所ガ
相當アッタノデアリマスガ、私立工業學校ナ
ドデハ校長ノ頭モ先生ノ頭モ、文部省ノ訓
令ナドハ大シテ問題ニシナイト云フヤウナ
風ガ相當アッタノデハナイカト思フ、我々實
際ヲ見テサウ云フ感ジガシタノデアリマス、ア
ノ要目ハ此處デハドウシテヤッテ居ルカト
聽イテモ、ソンナノガアリマスカト言ッタ受
ケ答ヘガ大部分デアッタノデアリマス、斯ウ
云フコトカラ考ヘルト行學一如ヲ狙ッタコト
ガ行學分離ニナリハセヌカト云フヤウナ心
配ガ多分ニアルノデアリマス、要スルニモ
ウ餘計ナコトハ申シマセヌガ、今日ノ國情
ニ於テ靑少年ト云フモノガ工場ニ於テ如何
ニ重大ナ立場ニ居ルカト云フコトハ、是ハ
モウ申上ゲル迄モナク安井委員ノ御話ニモ
十分出テ居リマス、獨リ工場バカリデナク、
學生ニ於テモ、農村ニ於テモ若イ者ガ正面
ニ國家ノ要請ヲ受ケテ奮起シテ居ルト云フ
狀況ヲ見マス時ニ、〓育ヲスルナラ今ダ、
今〓育ヲスルナラバ普段ハ到底擧グルコト
ノ出來ナイ大效果ヲ擧グルコトガ出來ルノ
ダ、〓育ト云フモノハ環境、時世ニ非常ニ
影響サレル、靑少年ノ〓育ハ今ダ、今此處デ
奮起シテヤラナケレバナラヌ、サウ云フ氣
持デ徹底的ニ工場ト言ハ、ズ、或ハ農村ト言
ハズ、此ノ靑年學校ノ〓育ニ當ッテ戴キタイ
ト思フノデアリマスガ、是程ノ內容ノ變化、
變質ニ對應スル〓育方針ト云フヤウナモノ
ヲ、此處デハッキリト御拵ヘニナッテ、靑年
學校ノ〓育ハ是デ行クノダト、寧ロ大聲叱呼
シテ靑年ノ士氣ヲ鼓舞シテ戴キタイヤウニ
思フノデアリマス、是ハ此處デ御意見ヲ伺ッ
テ御議論ヲ申上ゲルヤウナ氣持デハアリマ
セヌ、ドウカサウ云フコトデモシテ戴ケバ
有難イコトダト思フノデアリマス、私ノ質
問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=94
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095・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 御質疑ヲ願ヒ
タイノデアリマスガ、如何デアリマスカ、御
質疑モナイヤウデアリマスカラ討論ニ移リ
マス、三案束ネテ議題ト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=95
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096・田所美治
○田所美治君 意見ヲ申上ゲテ宜シウゴザ
イマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=96
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097・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) ドウゾ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=97
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098・田所美治
○田所美治君 先輩諸君ノ御發言モゴザイ
マセウガ、私ハ三案共異議ナシ、御趣意頗
ル贊成デアリマスカラ、ドウゾ此ノ效果ヲ
適切ニ御擧ゲニナルヤウニ御願ヒスル、斯
ウ云フ意味ニ於テ三案共贊成ヲ致シマス、
此ノ十九名ノ委員ハ實ニ皆熱心ナ同僚諸君
デアリマシテ、私ガ多少〓育ニ關係シテ居
ルコトカラ考ヘルト、短期ノ僅カ三囘カノ
委員會デアリマシタガ、殆ド皆樣平素御體
驗ノコト、或ハ御懷抱ノ意見ヲ忌憚ナク各
方面ニ御述ベニナリマシテ、當局ノ參考ニ
供セラレタ點モ澤山アリマス、又之ニ對シ
テ文部大臣ハ御就任日尙淺キニ拘ラズ、此
ノ時局ノ困難ナ際ニ一大抱負ヲ以テ〓育ノ
革新ヲ圖ル、刷新ヲ圖ル、斯ウ云フ御意見
モ承リマシテ、私ハ有益ナル審議ノ經過ダッ
タラウト思ヒマス、是等ノ意見ハドウゾ政
府委員諸君モ皆熱心ニ御聽キニナッテ居ッタ
事柄デアリマスカラ、外ノ場合モ同樣デア
リマスケレドモ、唯質問シタカラソレニ答
辯シタト云フコトニ終ラズ、皆樣ノ意見ヲ
十分ニ尊重サレマシテ、決議ノヤウナ形ニ
ハナッテ居リマセヌケレドモ、大體ニ於テ皆
樣ノ御意見ハ皆樣共ニ御同意ノヤウニ拜承
シマシタ、其ノ證據ニハ文部大臣ハ多クノ
場合ニ贊意ヲ表セラレテ居リマス、斯ウ云
フ譯デアリマスカラ、採ッテ以テ施政ノ參考
ニセラレマシテ、此ノ議會中若シクハ議會
ガ濟ミマシテ後、本年度御實施ニ當リ、又
來年度ノ御計畫ニナル場合ニモ十分ニ御參
考ニナリマシテ、著々私ハ御實施ヲ御願ヒ
シタイト存ジマス、文部大臣又大抱負ヲ御
實行ニナリマスニ付テ、各方面ノ意見モ御
聽取ニナリマセウガ、其ノ發端ニハ只今同
僚諸君ノ意見ハ第一ニ御考慮願フコトガ多
カラウト存ズルノデアリマス、ドウゾ斯ウ
云フ風ニ御願ヲシタイト存ジマス、〓育者
ヲシテ此ノ時局ノ間ニ、今モ田澤君カラ御
述ニナリマシタヤウニ熱心ニ其ノ魂ヲ起サ
ナケレバナラヌ、斯ウ云フコトガドウモ一
番ノ第一義ダラウト思フノデアリマス、ソ
レニハ優良〓員モ入レナクチヤナラヌシ、
文部省ハ無論ノコト、各學校當局ハ此ノ機
逸スベカラズト云フ御話ガアリマシタガ、
此ノ時局ニ依ッテ〓育ラ學行一致ト謂フカ、
國ト〓育ノ一致ト申シマスカ、サウ云フ意
味ニ於テ一層ノ效果ヲ擧ゲルニ絕好ノ時機
デアリマス、ソレニハ魂、精神ガ凝ラナク
チヤイカヌ、其ノ方法ハ文部大臣トシテハ
豫算ヲ御取リニナリ、御考究ヲ願フト云フ
譯デアラウト思ヒマス、民間ニ居リマシテ
此ノ複雜ナル時局ヲ見マシテモ、又〓育モ
益〓複雜ニナッテ行ク、或ハ又時局ノ變遷ニ
依ッテ思ヒ掛ケモナイ事柄ヲ御施設ニナラ
ナクチヤナラヌ、昨日迄五年デアッタモノヲ
四年デヤリ上ゲルト云フヤウナコトナドモ
ヤラナクチヤナラヌ、三年ノモノヲ二年デ
ヤリ上ゲナクチヤナラヌト云フヤウナコト
ガ急激ニ來マシテ、餘程其ノ間ニ其ノ效果
ヲ減退シナイヤウニシナクチヤナラヌ、斯
ウ云フヤウナコトガマダ〓〓續イテ起ツテ
來ヨウカト思フノデアリマスガ、ソレ等ニ
對シマシテハ御〓究ハ無論ノコトデアリマ
スルガ、單ニ机上ノ御〓究ダケデハナシニ、
主トシテ實地ヲ御覽ニナリマシテ、今ノ靑
年〓育ニ付テノ實地ニ付テ田澤君ガ平素カ
ラ、是コソ第一人ノ者トシテ御〓究ニナッテ
居ル問題デアリマスガ、當局ガ之ニ負ケズ
シテ、實地ノ御〓究ニナリ、單ニ靑年學校
ダケデアリマセヌ、大イニ先ヅ第一線ニ
立ッテ激勵ヲシテ行ク、指導ヲシテ行ク、〓
ヘテ行ク、或ハ意見ヲ聽イテ行ク、時局ノ
認識、精魂ノ徹底、或ハ大國民ノ思想ノ養
成大局ニ於テ誤リナイ指導ノミナラズ、
積極的ニ指導シテ行ク、サウシテ此ノ戰ヒ
ヲ一ツ勝チ拔カナクチヤナラヌ、斯ウ云フ
ヤウナ意味ニ於キマシテ民間ヲ御鞭撻ニナ
リマスト同時ニ、文部省ニ於キマシテモ實
地ノ御施設、其ノ他〓究上御遺漏ナキヲ望
ム、斯ウ申上ゲテ置カウト思フノデアリマ
ス、唯老婆心カヲ申上ゲマス、此ノ育英會
ニ付テハ誠ニ結構ナコトヲオヤリニナリマ
シタ、モウ皆サンモ、承ッテ居リマスニ大贊
成デオイデニナリマスガ、將來三十萬人程
ニモナラウト申シマスガ、續々出來テ參ラ
ウト思ヒマスガ、此ノ施設ニ付テハ色々ノ
點デ御銓衡上ニ御注意ヲ願ハナクチヤナリ
マスマイガ、私ハ品行方正、學術優秀、志
操堅實トアリマス、志操ノ堅實、所謂志操
ノ堅實ナ者デナイト云フト大事ニナルダラ,
ウト思ヒマス、三十萬人モ國家ガ三億ノ金
ヲ出シマシテヤッテ行クト云フ場合ニ於テ假
ニ志操ノ不健全ナ者ガアリマシタナラバ、
ソレコソ其ノ自家撞著ノミナラズ、根本ノ
方針ニ背ク譯デアリマスカラ、私ソレ故ニ
國家ガ御自身オヤリニナルノガ一番誤リガ
少イモノデアル、ソレデモナカ〓〓心配デ
アリマス、學術ノ優秀ナル者ガ〓究ガ深イ、
〓究ガ深イト云フト、トンデモナイ所ニ行
クト云フノガ過去ノ例デアリマシタ、將來
モ亦サウデアラウト存ジマスカラ、此ノ育
英ノ資格ノ學術優秀ナ者ハ、殊更ニ此ノ志操
ノ堅實ナリト云フ者ヲ御選ビニナラヌトイ
ケナイコト、是ガ若シサウデナカックナラ
バ、ソレコソ模範ノ國民ガサウデナイト云
フコトニナリマスカラ、共ノ邊ノ所ハ、私
ハ本案ヲ實施スルニ付テ、一番ノ一ツノ御
注意ヲ願ハナケレバナラヌ、ソレニハ餘程
面倒デゴザイマセウケレドモ、文部大臣ノ
監督ヲ以チ、極メテ周到ナ御注意ヲ願ッテ置
キタイト思フ、尙將來ニ於キマシテ、色々
ノ事務ノ執リ方ニ於テ御觀察ニナリマシテ、
若シ國家ガヤル方ガ適當ナリト云フヤウ
ナ、私ノ考ヘマスヤウナ考ニ近付イタ場
合ニ於キマシテハ、何モ御遠慮モ要リマセ
スカラ、趣意ハ擴充スルコトニナルダラウ、
改善スルコトニナルダラウト存ジマスカラ、
此ノ法人施設ヲ國家ノ直接經營ニ御移シニ
ナルト云フコトモ何時デモ出來ル話ト存ジ
マスカラ、法ヲ以チマシテ、要ハ卽チ此ノ
折角良イ案ガ出來マシタカラ、之ヲドウゾ
目的ヲ有效適切ニ御完遂ニナルヤウニ御願
ヒシテ置キマス、希望ヲ述ベマシテ私ハ大
贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=98
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099・山岡萬之助
○山岡萬之助君 只今田所委員ヨリ廣イ意
味ニ於テ、詳細ニ贊成ノ意ヲ御述べニナリマ
シテ、別ニ私附加ヘルコトモナイヤウデア
リマスガ、極メテ重大ナル案件デアリマス
カラ、一言玆ニ申述ベテ贊成ノ理由ヲ明カ
ニシタイト思フノデアリマス、育英ノ事ハ
モウ旣ニ長イコト各方面ニ於テ貸費給費等
ヲ以テ行ハレテ來タノデアリマスガ、是
大體此ノ慈善的ナ社會事業ノ氣分デ進ンデ
來タノデアリマスガ、今日國家ガ總力ノ動
キヲスルヤウニナリマシテ、〓育モ官公私
別ナク、一切ノ國家最高目的ニ合致シナケ
レバナラヌ、而シテ今日申ス迄モナク科學
戰トナリマシテ、學問ト云フコトガ國家ノ
非常ナ重大ナ仕事ニナッテ來タ所カラ、所
謂人材ヲ剩スコトナク、廣ク全體カラ見出
シテ〓育スルト云フ必要カラ此ノ案ガ自然
ニ出來テ來タコトト私ハ信ズルノデアリマス、
卽チ本案ハ今日ノ世ノ中ノ要求セラレルコ
トニ合致スルノデアリマシテ、此ノ際此ノ
案ヲ御提出ニナッタト云フコトハ誠ニ時機ノ
宜シキヲ得タモノト思フノデアリマス、唯
法案ノ組織共ノ他ニ付テハ多少ノ論議スベ
キモノナキニアラズト致シマシテモ、政府
ノ段々ノ御說明ニ依リマシテ貸費ト云フモ
ノ、物的面ト云フモノハ、ソレハ無論此ノ
案ノ重要ナ點デアリマスガ、所謂精神的ノ
輔導、之ニ十分ナ力ヲ致スト云フ御說明ガ
ゴザイマシテ、私ハ過去ノ育英ノヤリ方ハ
金ヲ貸シテヤルノダ、金ノアル人ガ慈善的
ニヤルノダト云フコトガ相當アッタト思フ
ガ、是ハサウデナイ、何處迄モ立派ナ人間
ヲ造リ上ゲル、物心一如ノ人間ヲ造ルヤウニ
指導誘披シテ國家ノ目的ニ適フヤウニスル、
御說明ノ中デモ伺ッタノデアリマスガ、兎
モ角是等ノ人ガ國家ノ目的ニ、自分ハ御世
話ニナッタカラ本當ニ努力スルト云フコト
ニナッタラ、非常ニ國家ニ貢獻スルコトガ、
御說明ノ中デモ伺ッタガ、廣イ意味デハ大
キイト思ヒマス、其ノ意味ニ於テ此ノ案ガ
從前ヨリ特色ノアル所デアリマス、唯之ガ
支拂ヲ爲サナカッタ時ニ對スル行キ方ニ、
何カ足ラナイ所ガナイデモナイヤウデアリ
マスガ、政府ノ御說明ニアリマシタヤウニ、
人格ノ點ニ、精神的ニ御指導ニナッタナラ
バ、ソレガ强制力デモ用ヒナケレバ拂ハナイ
ト云フヤウナコトハ萬ナカラウト思フ、又
サウ云フ者ガアルヤウデハ此ノ所謂輔導ノ
目的ヲ達シナイコトニナルト思ヒマスノデ、
是等ノ點ニ付テハ相當ノ方法ヲ講ゼラレム
コトヲ望ム次第デアリマス、私ハ文〓當局
ヲ深ク信賴スルモノデアリマシテ、其ノ運
營ニ付テハ違算ナカラムコトヲ信ジマシテ、
本案ニ總テ贊成致スモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=99
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100・井田磐楠
○男爵井田磐楠君 私ハ此ノ三案一括シテ
贊成ヲ致スモノデアリマス、委員會中專ラ
問題ニナリマシタ、質疑應答ノ一番多クア
リマシタ育英會ノ件ニ付キマシテ、一言愚
見ヲ述ベテ御贊成申上ゲタイト思ヒマス、
此ノ法案ヲ施行サレマス時ニハ定款ガ出來
テ來ルコトニナル譯デアリマスカラ、此ノ
定款ヲ御作リニナリマス時ニ、能ク〓〓此
ノ委員會ノ空氣等ヲ御參酌願ヒマシテ、法
案ヲ御作リニナリマシタ觀念ニ卽シテ、更
ニ又非常ナ勢ヲ以テ流レテ居リマス時局、
何處迄轉ガッテ行クカ分ラヌヤウナ、此ノ時
局ノ見透シモ隨分困難ナ問題デアリマスガ、
此ノ點ヲ能ク〓〓御吟味下サイマシテ、此
ノ法ヲ運營ナサル上ニ付テノ定款ヲ、尙能
ク御吟味シテ作ッテ戴キタイト云フ希望ヲ
申上ゲテ置キタイノデアリマス、尙定款ガ
出來、又玆ニ法律ガ生レテ參リマスガ、畢
竟是ハ一ツノ空文ニ過ギナイ、法ハ運營ノ
如何ニ依ッテ、先程田所委員ノ討論ノ御意見
ノ如クニ、却テ是ガ國家ニ對シテハ有害ナ
ルモノニナルト云フヤウナ御心配ノ御意見
モアルノデアリマシテ、從來斯樣ヲ立派ナ
組織ガ出來マスルト云フト、其ノ組織ノ中
ニ兎角色々ノ思想ノモノガ一ツノ橋頭堡ヲ
自分ノ立場トシテ取ル傾向ガアル、一歩一
步飛石ヲ傳フ、大キナ飛石ガ出來ルト、リ
レヲ橋頭堡トシテ更ニ其處カラ色々ノ場面
ヲ展開シヨウト云フヤウナ考ヘ方ガ反國體
的ノ人達ノ中ニハアル、畢竟斯樣ナル法案ガヽ
立派ナ法案ガ出來レバ出來ル程、此ノ法ヲ
運營スル人デアリマス、銓衡サレテ行ク人
ハ銓衡スル人ニ依ッテ出ルノデアリマス、此
ノ理事者ト申シマスカ、職員ト申シマスカ、
此ノ最初ガ大切デアリマス、最初ノ出發ニ
於キマシテ十分此ノ人事ノ銓衡、育英會ニ
於ケル職員人事ノ銓衡ト云フコトニ付キマ
シテハ、或ハ最早御成案ガアルカモ知レマ
セヌケレドモ、十分々々吟味ニ吟味ヲ重ネ
テ戴キマシテ、サウシテ此ノ法ノ運營ガ本
當ニ國家ノ御役ニ立ツモノデアルト云フ風
ニシテ戴キタイノデアリマス、斯樣ナ深イ
希望ヲ申シマシテ、全面的ニ此ノ三案ニハ
御贊成、分ケテモ育英會ノ問題ニハ大贊成
ヲ致スモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=100
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101・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 御發言モナイ
ヤウデアリマスカラ採決ニ移リマス、本三
案ヲ可決スベキモノナリト御考ヘニナル方
ノ擧手ヲ願ヒマス
〔總員擧手〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=101
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102・野村益三
○委員長(子爵野村益三君) 全會一致ト認
メマス、仍テ本三案ハ可決確定致シマシタ、
連日ニ亙リマシテ非常ニ御熱心ナル御審議
ヲ戴キマシテ、誠ニ御同慶ノ至リデアリマ
ス、尙本案採決ニ際シテ熱烈ナル御希望ノ
御陳述ガアリマシタ、政府ニ於カレテモ十
分ニ傾聽サレテ、各諸君ノ御意圖ニ副フベ
ク善處サレルコトト存ジマス、玆ニ連日ノ
御審議ニ對シマシテ謝意ヲ表シ、玆ニ本案
ノ成立ニ御同慶ノ意ヲ表シマス、デハ是デ
散會致シマス
午後五時二十二分散會
出席者左ノ如シ
委員長子爵野村益三君
副委員長男爵淺田良逸君
委員
公爵鷹司信輔君
侯爵筑波藤麿君
伯爵酒井忠正君
關屋貞三郞君
子爵松平康春君
子爵伊集院兼高君
松井茂君
入江貫一君
男爵井田磐楠君
安井英二君
男爵加藤成之君
山岡萬之助君
田所美治君
田澤義鋪君
諸橋久太郞君
野田六左衞門君
岩元達一君
國務大臣
文部大臣子爵岡部長景君
政府委員
文部省總務局長藤野惠君
文部省專門〓育局長永井浩君
文部省國民〓育局長阿原謙藏君
文部省〓學局長近藤壽治君
文部書記官伊藤日出登君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008402329X00419440203&spkNum=102
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