1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十九年一月二十四日(月曜日)午前十時七分開議
出席委員左の如し
委員長 中島彌團次君
理事 阿子島俊治君 理事 石坂繁君
理事 宇田耕一君 理事 駒井重次君
理事 田村秀吉君 理事 中村庸一郎君
内池久五郎君 小野義一君
小野寺有一君 岡本傳之助君
加藤七郎君 勝正憲君
河盛安之介君 唐橋重政君
清寛君 小林絹治君
小浦總平君 齊藤正身君
坂本宗太郎君 田中貢君
田中和一郎君 田中亮一君
田邊徳五郎君 瀧澤七郎君
手代木隆吉君 奧野小四郎君
豐田收君 中川寛治君
中西敏憲君 西村茂生君
原惣兵衞君 廣野規矩太郎君
船田中君 本多市郎君
松田正一君 松尾三藏君
増田義一君 村瀬武男君
吉田正君
同日委員東條貞君辭任に付其の補闕として奧野小四郎君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
内務省地方局長 新居善太郎君
大藏次官 谷口恒二君
大藏省總務局長 松田令輔君
大藏省主税局長 松隈秀雄君
大藏省理財局長 田中豐君
大藏書記官 池田勇人君
大藏書記官 平田敬一郎君
大藏書記官 渡邊喜久造君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法外二十九法律中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=0
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001・中島彌團次
○中島委員長 ソレデハ是ヨリ會議ヲ開キ
W.S.所得稅法外二十九法律中改正法律
案ニ付キマシテ審議ヲ始メマス、先ヅ大藏
大臣ノ提案理由ノ御說明ヲ求メマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=1
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002・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 本委員會ニ付託トナリマ
シタ所得稅法外二十九法律法中改正法律案
ニ付キマシテ、提案ノ理由ヲ說明致シタイ
ト存ジマス
本會議ニ於テモ申上ゲマシタ如ク、戰局
ノ苛烈化ニ伴フ臨時軍事費其ノ他、決戰下
避クベカラザル諸經費ノ增加ニ因ル財政需
要ノ膨脹ニ對處致シマシテ、政府ハ極力租
稅收入ノ增加ヲ圖リマシテ、以テ戰時財政
ノ基礎ヲ鞏固ナラシムルコトニ努メ、是ト
共ニ他面戰時經濟ノ圓滑ナル運營ヲ期スル
爲メ、購買力ノ吸收、消費ノ抑制ヲ圖リ、
以テ國民生活ヲ確保シナガラ、物資、勞力
資金等、凡ソ國家經濟ノ總力ヲ出來ルダケ
戰勝獲得ノ目的ノ爲ニ、戰爭生產力ニ集中
スルノ必要ガ愈〓緊切デアルノデアリマス、
仍テ臨時軍事費ノ財源ノ一部ニ充テマスル
爲メ、此ノ際增稅ヲ行フコトトシテ、本
法律案ヲ提案致シタ次第デアリマス、而シ
テ昨年ニ於キマシテハ、酒稅等ノ間接稅ヲ
中心ト致シマシテ、相當多額ノ增稅ヲ行ヒ
マシタ關係モアリマシテ、今囘ノ增稅ハ所
得稅等ノ直接稅ヲ中心ト致スコトハ勿論デ
アリマスルガ、今次增稅ノ趣旨ニモ顧ミマ
シテ、間接稅其ノ他ニ付キマシテモ相當ノ
增徵ヲ行フコトト致シタノデアリマス、是
ト同時ニ生產力ノ擴充、貯蓄ノ增强、其ノ
他戰時下緊要ナル經濟諸政策ト租稅政策ト
ノ調和ニ付キマシテハ、特ニ愼重ニ考究致
シ適當ト認ムル措置ヲ講ズルコトトモ致シ
テ居リマス、又稅務行政ノ全般ニ亙リマシ
テ極力是ガ簡素化ヲ圖リマスト共ニ、課稅
ノ適正、又課稅ガ遺漏ナク充實ヲ致シマス
ルヤウニ、必要ナル改正ヲ行フコトト致シ
テ居ルノデアリマス、而シテ其ノ要點ヲ申上
ゲマスレバ、第一ニ所得稅ニ於キマシテ新タ
ニ丙種ノ事業所得ヲ設ケマシテ、源泉徵收
制度ヲ擴充强化致シタコトデアリマス、第
二ハ適正ナル納稅ノ確保ニ付キマシテ、特
ニ留意ヲ致シタ點デアリマス、第三ハ決戰
下ノ現狀ニ顧ミマシテ、官民相互共出來ルダ
ケ手數ヲ少カラシメルト云フ意味ニ於テ、
稅制、賦課徴收制度ノ簡素化ヲ圖リマシタ
コトデアリマス、以下案ノ內容ニ付キマシ
テ御說明申上ゲタイト存ジマス
先ヅ所得稅デアリマスルガ、今囘ノ增稅
ハ所得稅ニ主眼ヲ置キマシテ、取別ケ分類
所得稅ニ付キマシテハ、各種ノ所得相互間
ノ負擔ノ權衡ニ留意致シマシテ、稅率ノ引
上ヲ圖ツタノデアリマス、又課稅範圍ノ擴
張ヲ行ツテ居リマシテ、總稅額ハ大體五割
程度ノ增徵ト相成ツテ居リマス、改正ノ
要點ハ、第一ガ稅率ノ引上デアリマスルガ、
是ハ原則ト致シマシテ百分ノ五ダケヲ引上
ゲマシタ、例ヘバ不動產所得ハ現在百分ノ
十六デアリマス、之ヲ百分ノ二十一ニ致シ
マシタ、甲種ノ事業所得ハ現在百分ノ十三
ヲ百分ノ十八ニ致シマシタ、勤勞所得ハ百
分ノ十ヲ百分ノ十五ニ致シタ譯デアリマス、
國債ノ利子ハ其ノ性質等ニ鑑ミマシテ百分
ノ九ヲ百分ノ十三ニ、百分ノ四ダケ上ゲマ
シタ、又乙種事業所得ニ付キマシテハ甲種
ト區分ヲ致ス必要モナイト認メマシテ、百
分ノ六ヲ上ゲマシテ同ジニ致シマシタ、山
林ノ所得、退職所得、〓算取引所得ニ付キ
マシテモ、ソレ〓〓適當ト認メマスル增徵
ヲ行フコトト致シタ次第デアリマス、尙
元本五千圓以下ノ銀行貯蓄預金、產業組合
貯金等ニ付キマシテハ、從來所得稅ガ賦課
サレテ居リマセヌデシタガ、今囘ノ增稅ニ
付キマシテハ其ノ基礎額ノ差ハ無論存置致
シマスルガ、今囘增稅サルヽ分ダケ、卽チ
百分ノ五デアリマスルガ、是ダケノ課稅ヲ
行フコトト致シマシタ、尙普通銀行預金
ニ對シマシテハ、現在ノ預金ノ實情ニ顧ミ
マシテ、之ヲ貯蓄銀行等ノ預金ト同樣ノ課
稅率ヲ適用スルコトニ改メタノデゴザイマ
ス、配當所得ニ付キマシテハ、從來其ノ所
得カラ一割ヲ控除シテ、課稅額ノ課稅ノ客
體ヲ決メテ居リマシタガ、今囘ハ一割控除
ト云フコトヲ止メマシテ、其ノ代リ稅率ヲ
ソレダケ低クシマシタ、、詰リ百分ノ十五ヨ
リ、普通ナラ百分ノ二十ニナル所ヲ十九ニ
止メテ、調整ヲ致シタ次第デアリマス、尙
ホ產業組合、統制組合等ノ特別ノ法人カラ受
ケマスル剩餘金ノ分配ニ付キマシテハ、從
來配當所得ニ比シ、稅率ヲ百分ノ五輕減ヲ
致シテ居ツタノデアリマスガ、今囘ハ通常
ノ稅率ニ依ルコトニ改メタノデアリマス、
以上稅率ノ引上デアリマス
第二ハ課稅範圍ノ擴張デアリマス、今囘
ノ增徵ニ當リマシテハ免稅點、基礎控除等
ハ原則トシテ引下ゲルコトヲ見合セタノデ
アリマスガ、退職所得ニ關シマシテハ其ノ
控除ヲ五千圓カラ三千圓ニ下ゲマシタ、又
產業組合、統制組合等ノ特別ノ法人ノ〓算
分配金等ニ付キマシテモ、各方面共租稅負
擔ノ增大スル際デアリマスカラ、課稅スル
ヲ適當ト認メ之ニ所得稅ヲ課スルコトト致
シタノデアリマス
第三ハ源泉徵收制度ノ擴充、强化デアリ
てい、日傭勞務者等ノ報酬、料金ニ付キマ
シテハ、從來課稅ヲナシ得ル場合ニハ賦課
課稅ノ方法ニ依ツテ居ツタノデアリマス、
是ハ實情ハ課稅ヲスル點ニマデ達シナイ狀
況ガ平時的ニハ多カツタノデアリマス、謂
ハヾ租稅制度上其ノ點ニ付キマシテハ、餘
リ重要ナ考慮ガ拂ハレテ居ナカツタ、又拂
フ必要モナカツタトモ申シテ宜シカツタノ
デアリマスルガ、現在ノ經濟事情ニ於キマ
シテハ、此ノ方面ノ所得ハ相當增加ヲ致シ
テ居ル實情デアリマス、而モ賦課課稅デハ
中々正確ナル捕捉ハ困難デアリマスノデ、
玆デ新タニ丙種ノ事業所得ト云フモノヲ設
ケマシテ、源泉課稅ヲ致ス、是ガ納稅ヲ確
實ニシ、又其ノ手續ヲ比較的簡便ナラシム
ル方法デアルノデ、此ノ方法ヲ執ツタ次第
デアリマス、分類所得稅ヲ報酬料金等ノ支
拂者ヲシテ支拂ヒノ際徵收セシムルコトト
致シテ居ルノデアリマス
第四ハ年度ノ途中ニ於キマシテ稅法施行
地ニ住居所ヲ有スルニ至リマシタ者ニ對
シ、所得稅ノ課稅ノ適正ヲ期スル爲ニ、適
當ナル規定ヲ設クルコトト致シタ點デアリマ
ス、以上デ分類所得稅ノ說明ヲ終リマス
次ニ綜合所得稅デゴザイマス、稅率ノ引
上デアリマスガ、是ハ分類所得稅トノ關係
モ考ヘマシタ、又現在ニ於ケル負擔ノ狀況
ヲモ考慮致シマシテ、最低三千圓ヲ超エル
部分ニ對スル稅率ハ、今百分ノ六デアリマ
スガ、之ヲ八ニ改メマシタ、最高五十萬圓
ヲ越ユル部分ニ付キマシテハ、現在百分ノ
七十二デアリマス、之ヲ百分ノ七十四ニ改
メマシタ、總稅額ニ於テ一一割弱、一割八分程度
ノ增稅ヲ行フコトト致シタノデアリマス、
右ノ引上ニ對應致シマシテ、公社債、銀行
預金等ノ利子ニ付キマシテハ、源泉課稅ヲ
選擇シタ場合ニ於キマスル綜合所得稅ノ稅
率ヲ、百分ノ二十五カラ百分ノ三十ニ引上
ゲタノデアリマス、第二ニ公社債、預金ノ
利子ハ、從來總所得ノ計算ニ當リ四割ヲ控
除シテ課稅ヲ致シテ居リマシタガ、右ノ源
泉課稅ノ場合ニ於ケル稅率ノ引上ニ伴ヒマ
シテ、之ノ控除ヲ三割ニ引下ゲタノデアリ
マス、第三ニ從來總所得一萬圓以下ノモノ
ノ勤勞所得ニ付キマシテハ其ノ所得ノ性
質ニ顧ミマシテ一割ヲ控除シテ課稅ヲ致シ
テ居ツタノデアリマスガ、今囘之ヲ六千圓
以下ノ所得ニ限ルコトニ改正ヲ致シマシタ
法人稅ニ付キマシテハ所得稅ノ增徵トノ
權衡、增稅ガ產業及ビ經濟界ニ與ヘマスル
影響等ニ付テ考ヘヘマシタ結果、所得ニ對スル
稅率ヲ百分ノ二十五ヲ百分ノ三十、個人等
カラ見マシテ大分輕イ程度ニ引上ゲルコト
ニ致シタノデアリマス、尙ホ同族會社ノ加
算稅率ニ付キマシテモ、所得稅ノ增徵ニ伴
ヒマシテ現行稅率百分ノ一一十四乃至百分ノ
七十二ヲ、百分ノ三十乃至百分ノ七十四ニ
引上グルコトト致シタノデアリマス、又資
本ニ對スル稅率ハ、昭和十五年以來增徵ヲ
行ハザリシ點等ヲモ考慮シ、之ヲ千分ノ一·
五ノ現在カラ千分ノ三ニ引上ゲルコトニ致
シタノデアリマス
特別法人稅ニ付キマシテハ、三點ニ付テ
改正ヲ行フコトト致シタノデアリマス、第
一ニ、特別法人稅ノ稅率ハ現在百分ノ十二·
五トナツテ居ルノデアリマスガ、一般ノ法
人ニ對シ法人稅、臨時利得稅、營業稅等各
種ノ租稅ガ增徵セラルヽ此ノ際デモアリマ
スノデ、之ヲ百分ノ二十ニ引上グルコトヲ
適當ト考ヘルノデアリマス、第二ニ、特別
ノ法人ガ解散又ハ合併ヲ爲シタル場合ノ〓
算剩餘金ニ付テハ、從來非課稅デアツタノ
デアリマスガ、各事業年度ノ剩餘金ニ對スル
稅率ヲ引上ゲタル點等ニ顧ミマシテ、之ヲ
課稅外ニ置キマスコトハ不適當ト考ヘラレ
マスノデ、今囘〓算剩餘金ニ對シテモ、新
ニ課稅スルコトト致シタノデアリマス、唯
農業團體法、商工組合法等ノ施行ニ依リ、
舊來ノ國體ガ改組、統合セラレマシタ場合
ニ付テハ、本改正法施行後一年ヲ限リ課稅
セザルコトト致シテ居ルノデアリマス、ノ第
三ニ、特別ノ法人ガ所有スル國債ノ利子ニ
付テハ、剩餘金ノ計算ニ當リ、其ノ七割ニ
相當スル金額ヲ控除スルコトトナツテ居ル
ノデアリマスガ、元來是等ノ法人ニ對シテ
ハ分類所得稅ヲ課稅シテ居リマセヌ點、及
ビ是等ノ法人ノ租稅負擔ノ實情等ニ顧ミマシ
テ、之ヲ廢止スルコトヲ適當ト考ヘタノデ
アリマス、併シナガラ、負擔ノ急激ナル變
化ヲ避クル爲メ、本改正法施行後一年間ハ
尙ホ三割ヲ控除スルコトト致シテ居ルノデ
アリマス
臨時利得稅ニ付キマシテハ、最近屢次ノ
增稅等ニ依リ、其ノ負擔ハ相當重クナツテ
居ルノデアリマスガ、決戰下ノ現在トシテ
ハ或ル程度增徵スルコトヲ適當ト認メラレ
マスノデ、法人臨時利得稅ニ付テハ、現行稅
率百分ノ五十五乃至百分ノ七十五ヲ、各階
級共ニ百分ノ五ヅツ引上ゲ、百分ノ六十乃
至百分ノ八十トシ、小法人ニ對シテモソレ
ゾレ百分ノ五ヲ引上ゲマシタ、又個人ノ讓
渡利得ニ對スル稅率百分ノ二十五乃至百分
ノ五十五ヲ百分ノ三十乃至百分ノ六十ト致
シタノデアリマス、又配當利子特別稅ニ付
テモ、最近增徵ヲ行ハザリシ點ヲモ者慮致
シマシテ、現行稅率百分ノ十五ヲ百分ノ二
十五ニ引上ゲタノデアリマス
其ノ他地方團體ノ財源タル營業稅、地租
及ビ家屋稅ニ付テモ、地方財政ノ現狀及ビ
他ノ各稅トノ權衡等ノ見地ヨリ、現行稅率
百分ノ一·五、百分ノ二、百分ノ一·七五ヲ、
ソレ〓〓百分ノ二、百分ノ三、百分ノ二·五
ニ引上グルコトト致シタノデアリマス
次ニ相續稅デアリマスガ、右ニ申述ベマ
シタ如ク、所得ニ對シ相當增稅ヲ致シマシ
タ關係上、財產ニ對シテモ或ル程度ノ負擔
ヲ增加スルヲ適當ト認メ、總稅額ニ於テ二
割程度ノ增徵ヲ行フコトト致シマシタ、例
ヘバ現行家督相續第一種一萬圓以下ノ金額
千分ノ十二、百萬圓ヲ超ユル金額千分ノ三
百、五百萬圓ヲ超ユル金額千分ノ四百ヲ、
ソレ〓〓千分ノ十三、千分ノ三百六十五、
千分ノ四百四十ニ引上グルコトト致シタノ
デアリマス、卽チ、少額ノ相續財產ニ對シ
テハ其ノ急激ナル負擔ノ增加ヲ避クル爲メ、
又多額ノ相續財產ニ付テハ現在旣ニ相當高
率トナツテ居リマスル點ヲ考慮シテ、增徵
割合ヲ比較的輕度ニ止ムルコトト致シテ居
ルノデアリマス、尙是ト同時ニ從來稅額
百圓以上ナルトキハ、年賦延納ヲ認メテ居
ツタノデアリマスガ、最近ニ於ケル經濟事
情ノ變化、事務手續ノ簡素化等ノ點ニ顧ミ
マシテ、之ヲ三百圓以上ノ場合ニ限ルコト
ト致シタイノデアリマス
通行稅ニ付キマシテハ、從來粁程ニ依ル
階級定額稅率ニ依リ課稅シテ居ルノデアリ
マスガ、之ヲ原則トシテ一粁當リ一等二錢
五厘、二等一錢二厘五毛、三等二厘五毛ノ
比例稅率ニ改メ、以テ負擔ノ公正ト事務ノ
簡捷化ヲ圖リナガラ總稅額ニ於テ七割程度
ノ增徵ヲ行フコトト致シタノデアリマス、
唯其ノ例外トシテ郊外電車等ノ如ク、區
間制ニ依リ運賃ヲ定メテ居ル線路等ニ付テ
ハ、粁程ニ依ル稅率ヲ採用スルコトハ、其
ノ實情ニ適セザルモノガアリマスノデ、例
ヘバ乘車船區間三十粁以下ノトキ一等五十
錢二等二十五錢、三等五錢等ノ如ク、從
來ノ階級定額稅ヲ存置スルコトト致シタノ
デアリマス、尙ホ是ト共ニ三等乘客ニ付テ
ハ現在四十粁以下ノ乘車船ハ非課稅トナ
ツテ居ルノデアリマスガ、各方面共增稅ノ
行ハルヽ此ノ際トシテハ、之ヲ二十粁ニ引
下ゲ、是等ノ乘車船ニ付テモ或ル程度負擔
ガ課セラレタノデアリマス、尙ホ勞務者等
ノ定期劵等ニ付テハ非課稅デアリマスコト
ハ從來ノ通リデアリマス
登錄稅ニ付キマシテハ、定率稅ニ付テハ、
不動產ノ賣買等ニ因ル所有權ノ取得ニ對ス
ル稅率ヲ、現行千分ノ三十ヨリ千分ノ四十
ニ、會社設立ノ場合等ノ登記ニ對スル稅率
現行千分ノ五ヲ千分ノ六ニ引上グル等稅率
ヲ引上ゲ、又定額稅ニ付キマシテハ、最近
久シク增徵セザリシ點ニ顧ミマシテ、十割
程度ノ引上ヲ行ヒ、納稅額ニ於テ二割程度
ノ增徵ヲ行フコトト致シタノデアリマス、
尤モ船舶、海員、特許權、鑛業權、社債等
ニ關スル登記又ハ登錄、臨時租稅措置法其
ノ他ノ特別法ノ規定ニ依ル特別稅率ニ付テ
ハ、其ノ性質ニ顧ミ增徵ヲ見合ハスコトト
致シテ居ルノデアリマス、直接稅ニ付キマ
シテハ以上デ一應說明ヲ終リマス
次ハ消費稅デアリマスガ、今囘ノ增稅ノ
趣旨ハ、決戰下ノ現狀ニ顧ミマシテ、前囘
モ同樣デアリマシタガ、奢侈的性質ヲ有ス
ル消費ニ對シマシテハ特ニ重課スルト云フ
方針デ、然ラザル方面ノ消費ニ對シマシテ
ハ出來得ル限リ增徵割合ヲ少ナクスル、モ
ノニ依リマシテハ增徵ヲ致サナイモノモ若
干アルト云フ次第デアリマス
先ヅ洒稅ノ改正ニ付テ說明致シマス、從
來酒稅ハ原則トシテ酒類造石稅ト酒類庫出
稅トノ兩建トナツテ居ルノデアリマスガ、
課稅方法ノ簡素化ヲ圖ル爲メ、造石稅ヲ廢
止シテ庫出稅一本ニスルト共ニ、稅率ヲ引
上ゲ、總稅額ニ於テ七割程度ノ增徵ヲ行フ
コトト致シタノデアリマス、卽チ〓酒ニ付
テ申シマスレバ、品皆特ニ優良ナル第一級
酒ニ付テハ一石ニ付キ四百八十圓引上ゲ、
現在造石稅ト庫出稅ヲ合シ、一石ニ付キ五
百十五圓デアリマスノヲ九百九十五圓トシ、
第二級酒及ビ第三級酒ニ付テハ同ジク三百
四十圓、二百十圓デアリマスノヲ、ソレ〓〓
六百二十圓、三百四十圓ニ引上グルコトト
致シタノデアリマス、其ノ結果〓酒ノ小賣
價格ハ第一級酒ハ一升ニ付キ十二圓程度、
第二級酒ハ八圓程度、第三級酒ハ五圓程度
ト相成ル見込デアリマス、尙ホ第四級酒ハ
配給事務ノ簡素化其ノ他ノ見地ヨリ之ヲ廢
止スルコトト致シマシタ、又合成〓酒ニ付
テモ右ニ準ジ相當程度ノ增徵ヲ行フコト
ト致シマシタ、麥酒ニ付キマシテハ、石
ニ付キ百七十七圓八十錢ノ現行稅率ヲ二百
八十圓ニ引上ゲマス結果、普通壜一本ノ小
賣價格九十錢ノモノガ、大體一圓三十錢程
度トナル見込デアリマス、其ノ他味淋、燒
酎雜酒等ニ付キマシテモ、品質等ニ應ジ
稅負擔ニ差等ヲ設ケツヽ適當ト認ムル稅率
ノ引上ヲ行フコトト致シテ居リマス、尙ホ、
生產力擴充關係產業其ノ他ノ重要產業ニ
從事スル勞務者等ニ對シ配給致シテ居リマ
ス價格特配酒ニ付テハ、現在程度ノ課稅ノ
輕減ヲ存置スルコトト致シタノデアリマ
ス
〓涼飮料稅ニ付キマシテハ、其ノ消費ノ
性質及ビ酒類等トノ權衡ヲモ考慮シ、相當
大幅ノ增徵ヲ行フコトト致シマシタ、卽チ
第一種玉「ラムネ」ニ付テハ一石ニ付キ二十
圓ヲ七十圓ニ、第二種「サイダー」等ニ付テ
ハ一石ニ付キ六十五圓ヲ百六十圓ニ、第
三種「ソーダ」水ニ付テハ炭酸瓦斯一「キロㄴ
ニ付キ二十五圓ヲ五十圓ニ引上ゲタノデア
リマス、其ノ結果今囘ノ增稅ニ依リ玉「ラ
ムネ」及ビ「サイダー」普通壜一本ノ小賣價
格十錢又ハ三十錢ハ、砂糖消費稅ノ增徵ト
合セテ、「ラムネ」ガ十五錢「サイダー」ガ五
十錢程度トナル見込デアリマス
砂糖消費稅ニ付キマシテハ一般的ノ增
徵トシテハ、他ノ消費稅ニ比較シテ輕クシ、
二割程度ノ引上ニ止メタノデアリマシテ、第
二種乙、卽チ普通ノ白砂糖ニ付テハ、現行
百斤ニ付キ十四圓五十錢ヲ三圓引上ゲ、百
斤ニ付キ十七圓五十錢トシ、其ノ他ノ砂糖、
糖蜜等ニ付テモ、之ニ準ジテ適當ニ增徵ヲ
行フコトト致シテ居リマス、今囘ノ引上ニ
依リ家庭用ノ白砂糖一斤三十五錢五厘ノモ
ノハ三十八錢五厘程度トナル見込デアリマ
ス、又料理店、旅館等ノ業務用菓子其ノ他
ノ製造加工用ノ砂糖等ニ對スル特別消費稅
ニ付テハ其ノ消費ノ性質ニ鑑ミ、家庭用等
ニ比シ增稅割合ヲ多クシ更ニ十割程度ノ引
上ヲ行フコトトシ、現行稅率百斤ニ付キ五
圓又ハ十圓ヲソレ〓〓百斤ニ付キ十圓又ハ
二十圓ト致シタノデアリマス
次ニ織物消費稅ニ付キマシテハ、現在ハ
綿、「ステープル·ファイバー」等ヲ以テ組成ス
ル織物ニ付テハ課稅シナイコトトナツテ居
ルノデアリマスガ、今次增稅等ノ趣旨ニ鑑
ミマシテ、原則トシテ之ヲ廢止スルコトト
致シタノデアリマス、唯綿織物ニ付テハ其
ノ用途ノ實情ニ鑑ミマシテ、從來通リ非課
稅ヲ存置スルヲ適當ナリト認メタ次第デア
リマス
物品稅ニ付テ申シマスレバ、第一ハ稅率
ノ引上デアリマス、卽チ物品稅中第一種及
ビ第二種ノ物品ハ、御承知ノ如ク、奢侈的
性質ヲ有スル物品竝ニ國民生活上比較的不
急ト認メラレ、又ハ其ノ消費ガ擔稅力ヲ示
スト認メラルヽ物品ニ付テ廣ク課稅スルモ
ノデアリマス、今囘ノ增稅ニ於キマシテハ、
物品ノ性質等ニ應ジ種別及ビ類別ニ付キ適
當ト認ムル組替ヲ行フト共ニ、第一種ノ物
品ニ付テハ現在甲類百分ノ八十、乙類百分
ノ三十、丙類百分ノ十デアリマスルノヲ、
甲類百分ノ百二十、乙類百分ノ六十、丙類
百分ノ四十、丁類百分ノ二十ニ改メマシテ、
又第二種ノ物品ニ付キマシテハ現在甲類百
分ノ八十、乙類百分ノ三十、丙類百分ノ二
+、丁類百分ノ十デアリマスノヲ、甲類百
分ノ百二十、乙類百分ノ六十、丙類百分ノ
四十、丁類百分ノ二十ニ改メ、尙ホ第一種
乙類及ビ丙類竝ニ第二種乙類ノ物品中奢侈
的性質强キモノニ付テハ、稅率ヲ特ニ百分ノ
八十トスルト共ニ、第一種丙種ノ物品中比
較的擔稅力少キモノト認メラルヽモノニ付
キマシテハ、特ニ稅率ヲ百分ノ二十ニ輕減
スル措置ヲ講ジテ居ルノデアリマス、第三
種ノ物品ニ付キマシテハ、「マッチ」ノ現行稅
率千本ニ付キ十五錢ヲ二十五錢ニ引上ゲマ
スル外、飴「サッカリン」、蜂蜜等ニ付テ
モ適當ト認ムル引上ヲ行フコトト致シタノ
デアリマス
第二ニ國民生活上比較的不急ト認メラル
ル物品ニ付テハ、課稅最低限ノ引下又ハ撤
廢ヲ行フコトト致シマシタ外、此ノ際トシ
テ課稅スルヲ適當ナリト認メラレマスル若
干ノ物品、卽チ「カレンダー」、繪葉書、敷物
類電話機等ニ對シ、新タニ課稅スルコト
ト致シタノデアリマス
第三ニ第一種ノ物品中、生產者ガ製造場
ヨリ移出スル際課稅スルコトガ適當ト認メ
ラレマスル物品、例ヘバ時計、文房具、運
動具、陶磁器等ニ付キマシテハ徵稅事務
ノ簡素化、課稅ノ適正化ヲ圖リマスル爲メ
之ヲ第二種ノ物品トシテ課稅スルコトト致
シタノデアリマス
次ニ遊興飮食稅デアリマスガ、藝妓ノ花
代ニ付テハ、現在百分ノ二百ノ率デアリマ
スルガ、之ヲ百分ノ三百ニ引上ゲ、其ノ他
ノ花代竝ニ花代以外ノ料金ニ付キマシテ
モ、ソレ〓〓適當ナル增徵ヲ行フコトト致
シテ居リマス、普通ノ飮食ノ料金、及ビ宿
泊ノ料金ニ對スル課稅最低限ハ、之ヲ据置
クコトト致シマシタガ、其ノ稅率ハ現行稅
率百分ノ二十乃至百分ノ百デアリマスルノ
ヲ、百分ノ二十乃至百分ノ百二十ニ引上ゲ
ルノデアリマス、尙ホ大衆的料理店等一定
ノ料理店ニ於ケル飮食料金ニシテ五圓未滿
ノモノニ付テハ、課稅ノ脫漏防止及ビ手續
ノ簡素化ノ見地ヨリ、特ニ最低一人一囘二
圓未滿ナルトキ四十五錢、最高五圓未滿ナ
ルトキ二圓ノ定額稅ヲ以テ課稅スルコトト
シ、此ノ場合ニ於テハ、料金領收書ニ代ヘ、
政府ガ作成シ交付スル納稅切符ヲ使用セシ
ムルコトト致シタノデアリマス
入場稅ニ付キマシテハ、第一種、卽チ映
畫館、劇場等ニ付テハ、現行稅率百分ノ二
十乃至百分ノ百二十ヲ、百分ノ三十乃至百
分ノ二百ニ引上ゲ、第二種、卽チ撞球場、
「ゴルフ」場等ニ付テモ、現行稅率百分ノ三十
乃至百分ノ九十ヲ、百分ノ四十乃至百分ノ
百五十ニ引上グルコトト致シマシタ外、第
二種ノ課稅範圍ニ付キ若干ノ擴張ヲ行フコ
トト致シタノデアリマス
特別行爲稅ニ付キマシテハ、寫眞ノ撮
影調髮整容、染色等ニ對スル現行稅率百
分ノ三十ヲ、百分ノ四十又ハ百分ノ五十ニ、
印刷及ビ製本ニ對スル稅率百分ノ二十ヲ百分
ノ三十ニ引上グルト共ニ、現在ノ課稅最低
限ヲ實情ニ適スルヤウ適當ニ引上ゲ、又ハ
引下グルコトト致シマシタ、又蓄音器、樂
器等ノ修繕、金融機關ノ保護預リ等ニ付テ
ハ、現行課稅行爲トノ權衡上新タニ課稅ス
ルヲ適當ト認メ、之ニ課稅スルコトト致シ
タノデアリマス
其ノ他ノ租稅ニ付キマシテハ、廣告稅ニ
付キ、第一種ノ廣告ニ對スル現行稅率百分
ノ十ヲ百分ノ三十トシ、第二種ノ廣〓中「ポ
スター」ニ付テハ現行稅率一枚十錢ヲ十五
錢トシ、其ノ他ノ廣〓ニ付テモ、ソレ〓
適當ト認ムル增徵ヲ行ヒ、又骨牌稅ニ付テ
モ麻雀ニ對スル現行稅率一組ニ付キ十圓ヲ
二十圓ニ、其ノ他ノ骨牌ニ付テハ、〓
圓五十錢ヲ三圓ニ引上グル等、十割程度ノ
增徵ヲ行フコトト致シマシタ外、印紙稅ニ
付テモ若干免稅ヲ整理シ、產業組合、商工
組合等ガ其ノ出資者以外ノ者ニ對シ發スル
受取書等ニ課稅スルコトト致シタノデアリ
マス
今囘ノ增稅ニ際シマシテハ、適正ナル納
稅ノ確保ト云フコトニ特ニ留意致シタ次第
デアリマス、就中遊興飮食稅、物品稅其ノ
他ノ間接稅ニ付キマシテハ、最近ニ於ケル
屢次ノ增稅ニ依リ、其ノ稅率ハ相當高率ト
ナリ、又納稅義務者ノ數モ極メテ多數ニ上ツ
テ居ルノデアリマスガ、其ノ實情ニ於テ
種々遺憾ノ點ガアリマスノデ、課稅ノ適正、
充實ト云フコトガ肝要デアルト存ジマス、
同時ニ官民相互ノ手續ヲ簡素ナラシムル爲
メ必要ナル改正ヲ行フコトト致シテ居ルノ
デアリマス、卽チ第一ハ遊興飮食稅、物品
稅特別行爲稅等ノ納稅義務者ニ對シ、受取
書又ハ料金領收書ノ發行、政府ガ作成シ交
付スル納稅證紙ノ貼用、其ノ他取締上必要
ナル事項ヲ命ジ得ルコトト致シタノデアリマ
ス、第二ハ現在遊興飮食稅、物品稅、特別
行爲等ノ徵收ニ付テハ、納稅者ノ組織スル團
體ニ對シテ、徴收事務ノ補助ヲ命ジ得ルコ
トトナツテ居ルノデアリマスガ、今囘是等
ノ團體ニ對スル監督規定ヲ整備スルト共ニ
團體員ノ納稅ニ關スル告知ヲ、其ノ代表者
ニ對シ一括シテナシ得ルコトト致シタノデ
アリマス、第三ニ遊興飮食稅、物品稅其ノ
他ノ間接稅ニ付キ惡質ナル犯則者ニ對シテ
ハ、體刑ヲモ科シ得ルコトトスル等、罰則
ヲ强化シ、其ノ取締ニ遺憾ナキヲ期スルコ
トト致シタノデアリマス、而シテ是等ニ關
シ必要ナル改正ハ各稅法中ニソレ〓〓規定
スル外、間接國稅犯則者處分法ニ付テモ必
要ナル改正ヲ行フコトト致シテ居ルノデア
リマス
次ニ臨時租稅措置法ノ改正ニ付テ說明致
シタイト存ジマス、今囘ノ增稅案ノ作成ニ當リ
增稅スベキ租稅ノ種類∴
マシテハ前述ノ如ク、
及ビ增稅額ノ決定ニ當リマシテ、決戰下ニ於
ケル經濟諸政策トノ調和ニ付テハ、特ニ愼重
ナル考慮ヲ拂ツタ次第デアリマスガ、尙ホ
生產ノ增强、產業ノ再編成、貯蓄ノ增强等、
各種ノ重要ナル政策ノ圓滑ナル遂行ニ資ス
ル等ノ爲メ、臨時租稅措置法ヲ改正シテ、
租稅上必要ナル各種ノ措置ヲ講ズルコトト
致シタノデアリマス
第一ハ時局下極メテ緊要ナリト認メラル
ル生產ノ增强ニ關スルモノデアリマス、卽
チ法人ガ其ノ所得ノ一割以上ヲ留保シマシ
テ、設備ノ擴張、又ハ國債等ノ買入ニ充テ
タル場合ニ於テハ、其ノ運用金額ノ百分ノ
七·五ニ相當スル法人稅ヲ輕減スルコトト致
シテ居ルノデアリマスガ、今囘各事業年度
ノ所得中運用シタル金額ノ三割ヲ法人稅ノ
所得ヨリ控除スルコトニ改メタノデアリマ
ス、次ニ法人等ガ特別價格報奬金ヲ取得シ、
之ヲ內部ニ留保シタル場合ニ於テハ、課稅
上ノ特例ヲ設ケ、其ノ五割程度ニ付テハ法
人稅、所得稅等ヲ課稅セザルコトト致ス見
込デアリマス、又時局產業會社等ノ新規拂
込ノ株式ノ配當金ニシテ、配當率一定以下
ノモノニ對スル分類所得稅ノ輕減程度ヲ擴
張致シタノデアリマス
第二ハ產業ノ再編成等ニ關スルモフデア
リマス、時局ノ要請ニ依ル企業整備等ノ場
合ニ付キマシテハ、現在所得稅、法人稅、
臨時利得稅等ノ輕減、免除又ハ課稅標準ノ
計算ニ關スル特例ヲ認メテ居ルノデアリマ
スガ、最近ニ於ケル企業整備ノ狀況等ニ顧
ミマシテ、右ノ期間ヲ更ニ一年延長スルコ
トト致シマシタ外、其ノ適用範圍ヲ若干擴
張致シタノデアリマス
第三ハ貯蓄ノ增强ニ關スルモノデアリマ
シテ、之ニ關シマシテハ、所得稅法ノ改正
ニ付テモ考慮シタノデアリマスガ、現在長
期預金等ニ付テハ、其ノ奬勵ノ爲メ、据置
期間ニ應ジ百分ノ一乃至百分ノ五ダケ分類
所得稅ヲ輕減致シテ居ルノデアリマス、然
ル所今囘契約期間三年以上ノモノニ付テハ、
預入ノ初メヨリ一律ニ百分ノ五ノ輕減ヲナ
スコトニ改メタノデアリマス、又國民貯蓄
組合法ヲ改正シマシテ、國民貯蓄組合ノ幹
旋シタル貯蓄ニ對スル非課稅ノ限度ヲ、現
行ノ七千圓ヨリ一萬圓ニ引上グル等、是等
ノ改正ヲ致サントスルモノデアリマス、尙
ホ元本五千圓以下ノ銀行貯蓄預金、產業組
合貯金ノ利子等ニ付キマシテハ、前述ノ如
ク分類所得稅ノ稅率ヲ特ニ百分ノ五ト致シ
タノデアリマスガ、之ヲ取扱フ金融機關ノ
手續ヲ簡便ナラシムル爲ニ、必要ニ應ジテ
稅引利子ノ計算上簡易ナル方法ヲ採用シ得
ルコトト致シマシテ、此ノ爲ニハ百分ノ一
ノ範圍內ニ於テ、稅率ヲ輕減シ得ルコトト
致シタノデアリマス
第四ハ金融機關ニ對スル課稅制度ノ改正
デゴザイマス、從來銀行等ニ對シマシテハ、
其ノ所有スル供託又ハ登錄公社債ノ利子ニ
付テハ、分類所得稅ヲ百分ノ二乃至百分ノ
六輕減シマシタ、一方所有國債等ニ付テハ
利子ノ七割ヲ控除シテ、法人稅ヲ賦課致シ
テ居ルノデアリマスガ、今囘ノ增稅ニ當リ
マシテハ、供託又ハ登錄公社債ノ利子ニ付テ
ハ、分類所得稅ハ課稅シナイコトト致シマ
スルト共ニ、國債利子等ノ七割控除制度ヲ
廢止スルコトト致シタノデアリマス
第五ハ立木ヲ以テ相續稅ノ物納ニ充ツル
場合ニ於キマシテハ、從來ノ行キ方デハ一
時ニ山林ノ所得ガ澤山出マス爲ニ、多額ノ
所得稅ヲ課セラルヽノデアリマス、又不動
產ヲ以テ物稅ニ充ツル場合ニ於キマシテモ、
一時ニ讓渡利得ヲ生ズル爲ニ、多額ノ臨時
利得稅ヲ課セラルヽコトトナルノデアリマ
スガ、是ハ年賦延納ノ場合ニ比シマシテ、
權衡ヲ得ザル點ガアリマスノデ、是等ノ場
合ニ於ケル所得稅又ハ臨時利得稅ヲ輕減シ
マスル爲ニ、其ノ所得金額又ハ利得金額ノ
三割ヲ控除シテ、課稅スルヤウニ致シタノ
デアリマス、其ノ他木材又ハ薪炭ノ增產ノ
必要上山林ノ增伐ヲ爲シタル者ニ對スル所
得稅輕減ノ程度ヲ擴張シ、法人ノ合併ノ場
合ニ於ケル清算所得等ノ計算ニ關スル規定
ヲ整備スル等、必要ナル改正ヲ行フコトト
致シタノデアリマス
次ニ國內決戰態勢ノ强化ニ伴ヒマシテ、
各般ノ行政ニ亙ツテ其ノ簡捷化ヲ圖ルコト
ハ、極メテ重要デアリマシテ、稅務行政ニ
付キマシテモ出來得ル限リ簡素化致シテ、
人的及ビ物的資源ノ節減ヲ圖ルコトガ肝要
デアリマスノデ、著々實行致シツヽアルノ
デアリマスガ、今囘ノ增稅等ニ伴ヒマシテ、
更ニ納稅者側ニ於テモ又徵稅スル側ニ於テ
モ、官民倶ニ相互ノ手數ヲ省略シマシテ、聊
カデモ是ガ戰力增强ニ寄與スルコトガ出來
ルヤウニト思ヒマシテ、稅制及ビ賦課徵收
制度ノ全航ニ亙リマシテ、簡素化及ビ合理
化ヲ圖ルコトト致シタノデアリマス、是等ニ
付キマシテハ各稅法ヲ御說明申上ゲル際、
旣ニ織込ンデ申上ゲマシタモノモア
リマスガ、ソレ以外ノ點ニ付テ其ノ主
ナルモノヲ申上ゲマスト、分類所得稅
ノ扶養家族ノ控除及ビ基礎控除ノ計算方法
等ヲ簡易化スルト云フコトガ一ツデアリマ
ス、山林ノ所得ニ對スル綜合所得稅ノ課稅ヲ
廢止シマシテ、之ヲ分類所得稅ニ統合スルコト
モ一ツデアリマス、法人稅及ビ臨時利得稅
ノ課稅ニ當リマシテ、資本金ノ計算方法ヲ
簡易化シタコトモ一ツデアリマス、砂糖消
費稅及ビ印紙稅ノ課稅方法モ簡易化致サン
トスルノデアリマス、內外地間ニ於ケル所
得稅等ノ課稅方法等モ簡單化致シマス、田
租以外ノ地租及ビ家屋稅ノ納期ヲ年一回ト
シ、其ノ外各種租稅ノ納期ヲ適當ニ實情ニ
應ズルヤウニ變ヘタイト思ヒマス、又國庫
出納金端數計算法ヲ改正シマシテ、納稅金額
ノ錢位ノ細カイモノガ出マシタ時ニ相互ノ
計算手數ヲ省キマス爲ニ、適宜ニ是ノ措置ヲ
考ヘルコトニ致シタ點モ一ツデアリマス
右申上ゲマシタ外樺太ニ於テモ適當ナル增
稅ヲ行フコトト致シマス關係上、之ニ必要
ナル明治四十年法律第二十一號ニ付テ改正ヲ
行フコトト致シ、又納稅施設法ニ付キマシテモ、
必要ナル改正ヲ行フコトト致シテ居リマス
以上今次增稅等ニ關スル法律案ノ〓要ヲ
說明致シタノデアリマスカ、今囘ノ增稅等
ニ依リマシテ、增收額ハ平年度ニ於テ分類
所得稅九億五千百餘萬圓、綜合所得稅一億
五千三百餘萬圓、合計十一億四百餘萬圓デ
アリマス、法人稅ハ二億四百餘萬圓、特別
法人稅千三百餘萬圓、營業稅四千六百餘萬
圓臨時利得稅一億八千二百餘萬圓、配當
利子特別稅三百餘萬圓、地租千二百餘萬圓、
家屋稅千四百餘萬圓、相續稅二千五百餘萬
圓通行稅五千九百餘萬圓、登錄稅二千四
百餘萬圓、酒稅四億六千四百餘萬圓、〓涼
飮料稅千五百餘萬圓、砂糖消費稅三千四百
餘萬圓、鐵物消費稅五百餘萬圓、物品稅一
億九千五百餘萬圓、遊興飮食稅一億千六百
餘萬圓、入場稅二千三百餘萬圓、特別行爲
稅千四百餘萬圓、廣〓稅八百餘萬圓、骨牌
稅二百餘萬圓、印紙稅百餘萬圓ノ增收ト相
成リマスノデ、地方團體ノ財源タル還付稅
收入ノ增收ヲ含メマシテ、結局平年度約二
十五億七千六百萬圓、初年度タル昭和十九
年度ニ於テ、約二十二億七千二百萬圓ノ增
收トナル見込デアリマス、而シテ此ノ昭和
十九年度ノ增收額中、還付稅收入トナリ地
方財源トナリマス增收額ヲ除キマシタル金
額ニ相當スルモノハ、之ヲ全部臨時軍事費
追加豫算ノ財源ノ一部トシテ、一般會計ヨ
リ臨時軍事費特別會計ニ繰入ルヽコトト致
シテ居ルノデアリマス
最後ニ、地方分與稅法ノ改正ニ付テ御說
明致シマス、御承知ノ如ク、所得稅、法人
稅入場稅及ビ遊興飮食稅ノ一部ハ、地方
分與稅中ノ配付稅ト相成ツテ居リ、其ノ割
合ヲ法定シテアリマス關係上、今囘ノ增稅
等ニ伴ヒマシテ、配付稅ノ割合ヲ改正スル
ノ要ガアリマスノデ、地方分與稅法ニ於キ
マシテ必要ナル改正ヲ行フコトト致シタノ
デアリマス
以上本法律案ニ付キマシテ御說明申上ゲ
マシタ次第デアリマス、何卒十分御審議ヲ
賜ハリマシテ、速カニ御贊成アランコトヲ
御願ヒスル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=2
-
003・中島彌團次
○中島委員長 只今大藏大臣ノ御都合ヲ伺
ヒマスト、宮中ニ御參內セラレネバナラヌ
關係ガアリマスノデ、午後三時マデ休憩致
シマシテ、三時カラ大藏大臣ニ對スル質問
ヲ致スコトニ致シマス、ソレカラ資料ニ付
キマシテ、御要求ノアル方ニ對シマシテ
ハ、委員長若シクハ理事ノ方ヘ御申出ラレ
タイノデアリマス、午前ハ是ニテ休憩シマ
シテ、午後三時カラ再會致シマス
午前十一時二分休憩
午後三時二十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=3
-
004・中島彌團次
○中島委員長 休憩前ニ引續キ是ヨリ會議
ヲ開キマス、直チニ質疑ニ入リマス、通〓
順ニ從ツテ質疑ヲ許シマス-船田中君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=4
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005・船田中
○船田委員 今囘政府ノ御提案ニナリマシ
タ增稅案ハ、直接稅ヲ中心ト致シマシテ相
當ナ增徵ニナルノデアリマス、初年度ニ於
テ二十二億數千萬圓、平年度ニ於テ二十五
億數千萬圓ト云フコトデアリマシテ、國民
ニ相當多クノ負擔ヲ課スルコトニナリマス
ルノデ、我々ト致シマシテハ之ニ付キマシ
テ十分政府ノ所信ヲ伺ヒマシテ贊否ヲ決シ
タイト存ジマス、併シ當委員會ニ於キマシ
テハ多數ノ方々ノ御質疑ガ御通〓ニナツテ居
リマスルカラ、私ハ其ノ〓要ニ付キマシテ出
來ルダケ簡單ニ、政府ノ御所信竝ニ御所見
ヲ御伺ヒ致シタイト存ジマス
其ノ第一ニ御伺ヒ致シタイコトハ、今朝
程ノ大藏大臣ノ增稅案ノ御說明ニ依リマシ
テモ、戰爭財政ノ需要ニ應ズルト云フコトガ
第一ノ目標ニナツテ居ルヤウデアリマス、
併シナガラ增稅案ハ勿論戰爭財政ノ要求ト
云フコトガ主タル眼目デハアリマセウケレ
ドモ、同時ニ國民所得ノ構造、國民所得ノ
構成ト申シテモ宜イカモ知レマセヌガ、其
ノ國民所得ノ構造ノ實體ト、生產力ノ增强
トヲ勘案致シマシテ、其ノ目標及ビ限度ヲ
定ムベキモノト考ヘルノデアリマスガ、今
囘ノ增稅案ノ御計畫ニ付キマシテハ、其ノ
目標及ビ其ノ限度ヲドウ云フ點ニ置イテ居
ラレマスルカ、ソレ等ノ點ニ付テ先ヅ大藏
大臣ノ御所見ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=5
-
006・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 御答ヘラ申シ上ゲマス、本
年度ノ經費ノ最モ主要ナルモノハ、金額ニ於
キマシテモ臨時軍事費デアリマス、之ニ付キ
マシテハ成ベク最近ノ機會ニ御審議ヲ願フ
運ビニ致シテ居ルノデアリマシテ、其ノ金
額ハ非常ニ巨額ニ上リマスルコトハ、御想
像ニ難クナイト思ヒマスルシ、又極ク近イ
機會ニ明瞭ニ申上ゲルコトモ出來ルト存
ズルノデアリマス、是等ノ國ノ全歲出ノ
上カラ考ヘマスルト增稅金額ハマダ〓〓多
キヲ期待致シタイト存ズルノデゴザイマス、
併シナガラ只今御質問ノ趣旨ニモアリマシ
タヤウニ、戰時ニ於キマシテハ生產ノ增加
ガ極メテ重要デアリマシテ、又一面國民ノ
最小限度ノ生活ト云フコトニモ、十分ナ考
慮ヲ拂ハナケレバナリマセヌノデ、是等ノ
事情ヲ勘案シマシテ、只今ノ所デ無理ガナ
イト申シマスカ、或ハ無理ガ少ナイト申シ
マスカ、其ノ最大限度ノ租稅ノ增收ニシタ
イ、斯樣ニ存ジタ次第デアリマス、全體ノ
計畫モ其ノ點デゴザイマス、尙ホ其ノ增收
ヲ圖リマスル上ノ重要ナル觀點トシテ國民
ノ總所得モサルコトナガラ、其ノ所得構成
ガドウ云フ風ニナツテ居ルカ、之ニ如何ニ
著眼シタカト云フ意味ノ御尋ネデアツタト存
ジマスルガ、之ニ付キマシテハ國民ノ所得
ハ、御承知ノヤウニ國家資金ノ撒布等ニ依
リマシテ、一般ニハ非常ニ增加致シテ居ル
ノデアリマスルガ、各人同ジ割合ニ增加シ
マセヌデ、所謂所得ノ大イニ增加シタル層
ガアルコトハ、御存ジノ通リデアリマス、是
等ノ點ニ鑑ミマシテ此ノ增稅案ニ於キマシ
テモ、所得自由勞務者ト申シマスカ、サウ
云フ風ナ從來課稅上比較的ニ見逃サレテ居
ツタ向ニ對シマシテ、適正ナル課稅ヲスル
ト云フコトガ極メテ必要デアルト存ジマス、
其ノ意味ニ於キマシテ所謂丙種ノ事業所得
ヲ創設致シ、比較的簡單ニシテ、課稅ノ捕捉
ノ便宜ナル源泉徵收制度モ勘案致シタヤウ
ナ譯デアリマス、尙ホ此ノ源泉徴收制度ニ
依リマシテ捕捉シ難イ、先ヅ小企業ト申シ
マスルカ、サウ云フ風ナ業種ノ面ニ付キマ
シテハ、從來ノ賦課課稅ヲ一層適實ニ致シ
テ行クト云フ方法ニ依ルノガ適切ト存ジマ
ス、是ハ稅法ノ上ヨリモ實際ノ徵稅ノ方面
カラ此ノ點ヲ充足致シテ參リタイト存ジテ
居リマス、但シソレ等ニ付キマシテハ、比
較的新シイ所得ノ增加層デアリマスルノデ、
資料ノ蒐集等ニ付キマシテハ一段ノ工夫ガ
要リマスノデ、是等ノ點ニ正確ヲ得マスル
爲ニハ、若干ノ規定ヲ本改正案ノ中ニモ挿
入致シテ居ルヤウナ次第デゴザイマス、大
體以上ノヤウナ觀點カラ計畫ヲ致シタノデ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=6
-
007・船田中
○船田委員 戰爭ガ段々長期化致シテ參ル
ニ從ヒマシテ、財政ハ申スマデモナク、年
年非常ニ膨脹ヲ致シツヽアルノデアリマシ
テ、十八年度ニ於テ直接ノ戰費及ビ間接ノ
戦費トモ言フベキ一般經費ヲ加ヘマスレバ
三百六十八億圓、前年ニ比較ヲ致シマスル
ト約五割增ト云フヤウナ非常ナ急「テンポ」
ヲ以テ膨脹致シツヽアルノデアリマス、此
ノ勢ハ今後ニ於キマシテモ決戰ガ益〓激シ
ク行ハレルニ伴レテ戦費ノ增徵又間接ノ戰
費トモ言フベキ一般ノ經費ノ增大ハ測リ得
ナイト存ジマスルガ、今後ノ財政ノ見透シ
ト、增稅計畫ニ對スル政府ノ凡ソノ見透シ、
ソレニ對スル御所見等ヲ御說明願ヒタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=7
-
008・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ段階ニ於キマシテ
ハ、今囘御審議ヲ願ツテ居リマスル增稅案
ニ依ツテ處理致ス積リデアリマスノデ、只
今ノ所次ニ國費ノ膨脹ガドノ程度ニ參リ、
隨テ大ナル增稅ヲナスノ必要アリヤト云フ
コトニ付キマシテハ、具體的ニハ申上ゲ兼
ネル次第デゴザイマスケドレモ、一般的ニ
觀察致シマシテ現行ノ稅制ノ下ニ於キマシ
テモ、マダ增稅ノ餘地ナシトハ申サレマイ
ト思フノデアリマス、ト同時ニ國民ノ全體
ノ所得ガ殖エマスレバ、相當ノ自然增收モ期
待シ得ルモノトシテ、現行稅制ノ下ニ於テ
租稅收入ガ相當將來モ增加シテ參ルト言ヒ
得ルト思フノデゴザイマス、併シナガラ假
リニ大ナル增稅ヲ更ニ計畫致スト云フ必要
ガ起ツタト假定致シマスルナラバ稅制ノ全
體ノ構成等ニ付キマシテモ亦考究ノ必要ガ
起ル、斯ウ云フ場合モ想像セラレルト存ジ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=8
-
009・船田中
○船田委員 先程大藏大臣ノ御說明ノ中ニ
モアリマシタ如ク最近ノ國民所得ノ構成ガ
漸次變リツヽアル、漸次ト申スヨリハ非常
ナ急變ヲシテ居ルモノモ少クナイト考ヘラ
レルノデアリマスガ、納稅ヨリ見タル國民
所得ノ構成ノ變化ト云フモノヲ政府ハドウ
云フ風ニ御覽ニナツテ居ラレルカ、殊ニ增
稅案ノ立案ト睨ミ合セテ國民所得構成ヲ如
何ニ見テ居ラレルカ、若シ出來マスルコト
ナラバ十九年度ノ國家資金計畫ト併セテ御
說明ヲ願ヒ、且ツ政府資金ノ撒布ノ〓況ニ
付キマシテモ御說明ヲ願ヘレバ洵ニ幸ヒト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=9
-
010・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 稅ノ收納其ノ他カラ考ヘ
マスト、大體ニ於テ事業所得ノ方ハ增加シ
ナイト申シマスカ、增加ガ著シクナイノデ
アリマス、實質上ノ意命ニ於ケル勤勞所得
ノ方ハ大イニ增加スルト云フ趨勢ニアルト
思ヒマス、恐ラク是等ハ所謂企業整備等ニ
依リマシテ、平時ノ小企業ト云フモノハ非
常ニ數ガ減リマシテ、殆ド總テノ事業ガ軍
需生產及ビ最小限度ノ國民消費生活ノ爲ノ
生產ニ限ラレル、國民ノ總生產量ハ殖エマ
スガ、生產ノ態樣ガ右ノ如キ傾向ヲ持ツテ
居リマス爲ニ、今ノヤウニ事業所得-實
質上ノ事業所得ハ企業所得ガ殖エナイデ勤
勞所得ガ殖エルト云フコトガ一ツノ趨勢デ
ゴザイマス、他ノ一ツハ比較的ニ大所得ト
云フモノガ殖エマセヌデ、中小ノ所得ガ餘
計殖エル、是ガ一ツノ傾向デアリマス、是
等ハヤハリ共通ノ原因ガアルカラデアリマ
ス、只今ト致シマシテハ課稅上從來其ノ措
置ガサウ適切十分デナカツタ、所謂自由勞
働者方面或ハ各種ノ小企業方面、是等ノ面
ニ於ケル所得ガ事實上餘程增加シテ居ルヤ
ウニ存ゼラレルノデアリマス、是等ニ付キ
マシテハ、前ノ御答辯ノ時ニ申上ゲマシタ
ヤウナ適切ナル捕捉方法ヲ講ジテ參リタイ
ト思ヒマス、國家資金計畫全體ト致ツマ
シテハヤハリ今ノコトヲ裏付ケマスノデ、
只今ノ國民所得ノ增加ハ要スルニ政府-
是ハ主トシテ軍需デアリマス、其ノ支拂資
金ノ增加ト云フコトガ國民所得ノ原因ニナ
ツテ居リマスノデ、丁度稅ノ面カラ申上ゲ
マシタコトト同ジ筋途ニ相成ルト存ジテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=10
-
011・船田中
○船田委員 臨時軍事費ヲ御提出ニナリマ
スレバ、全體ノ國家資金計畫ト云フモノガ、
分ルト思ヒマスガ、ソレハ暫ク措クト致シ
マシテ、只今大臣ノ御話ニモアリマシタヤ
ウニ、最近企業整備ノ進行、物價ノ〓騰、
又政府ノ增產政策ニ關聯致シマシテ、補助
金支出ノ增大、國民動員ノ强化ト云ツタヤ
ウナコトガ漸次進行致シマシテ、ソレニ依
リマシテ國民所得ノ構成ニ非常ナ激變ヲ齎
スベキ事實ガ進行致シテ居ルノデアリマス
ガ、サウナリマスルト、今日ノ稅制ニ於テ、
ソレニ或ル增徵ノ方途ヲ講ズルト云フコト
ニ依リマシテ果シテ大臣ノ御說明ニナリマ
シタヤウナ新興所得階級ヲ十分ニ捕捉スル
コトガ出來ルデアラウカドウカト云フコト
ニ付テハ疑ヒナキヲ得ナイト思フノデアリ
やく、卽チ是等ノ國民所得構成ノ激變ニ對
處致シマシテ租稅體制ヲ改變スルト云フ必
要ガアルノデハナカラウカト云フ考ヘモ起
ル譯デアリマスガ、ソレ等ニ對スル政府ノ
御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=11
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012・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 現行稅制ノ下ニ於キマシ
テモ、所謂增稅ヲ致シマセヌ、又減稅ヲ致
シマセヌデモ、所得ノ增減ニ應ジマシテ、
賦課ガ其ノ點ニ變ツテ參リマスノデ、相當
ノ調整ハ取リ得ルト思フノデアリマス、唯
御話ノアリマシタヤウニ、從來、例ヘバ自
由勞務者方面デ申シマスト、是ハ一日ノ收
入モ多額ノモノデアリマセヌ、又仕事ガ多
クナイ爲ニ一年中、一月中ノ稼働日數ガ少イ
ノデ、大體課稅ノ最低限度ヲ免レルト見テ
差支ヘナイヤウナ狀態ノモノガ多クアルノ
デアリマス、隨テ是ノ捕捉ノ方法ガ稅制ノ
上デ適切ノモノガナカツタ譯デアリマス、
隨ヒマシテ今囘ノヤウナ改正モ致シタ譯デ
アリマス、併シ之ヲ困難ナ方面カラ申シマ
スルト、新シイコトデアリマスルカラ、稅
務官吏モ左樣ナ所得ヲ正確ニ捕捉スルコト
ニ慣レテ居リマセヌノデ、直チニ是ガ遺憾
ナク行クカドウカト云フコトニ付キマシテ
ハ餘程ノ努力ヲ要スルト思フノデアリマス、
又新興所得階級ノ中、所謂小企業者方面ニ
於キマシテハ、其ノ企業ノ利潤、所得ヲ正
確ニ計算シマスコトニ付キマシテハ、是亦
從來ト違ツタ態樣デアリマスルノデ、相當
ニ其ノ方面ニ付テ努力ヲ要スルト思フノデ
アリマスルガ、然ラバ是ハ所得稅ニ依ラズ
シテ他ノ補完稅ニ依ルカ、其ノ他ノ點ヲ考
ヘマスルト、只今ノ所デハ、左樣ナ方面ニ
對シマシテハ別ニサウ云フ意味ノ所得稅ヲ
中心ニシタ制度ヨリモ、非常ニ變ツタモノ
ニ依ツテ適切ニ捕捉スルトモ考ヘテハ居ラ
ヌノデアリマス、經濟事情ノ變化デアリマ
スルカラ、始終〓究ハ必要デゴザイマス、
其ノ結果又色々ナ結論モ出ルカト思ヒマス
ガ、只今ハ右申上ゲマシタヤウナ考ヘ方ヲ
致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=12
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013・船田中
○船田委員 先程御說明ガ足ラナカツタヤ
ウニ伺ヒマシタガ、政府資金撒布ノ狀況ニ
付テモウ少シ御說明ヲ御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=13
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014・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ或ハ御質問トハ懸離
レルカモ知レマセヌガ、大體ハ前ニモ申上
ゲマシタヤウニ、國內撒布ガ非常ニ大キナ
割合ヲ占メテ居ル、國內撒布ニ於キマシテ
モ、直接給與等ニ支拂ハレマスモノハ御承
知ノ如ク政府ノ支拂デアリマスルカラ、寧
ロ其ノ方面ハ、金額ハ增シテ居リマスルガ
單價的ニ大イニ增シテ居ルト云フコトモナ
イノデアリマス、結局軍需ニ對スル請負ト
カ、ソレカラ製造納付トカ、斯ウ云フ方面
ニ餘計出マスノト、一般階級ニ於キマシテ
ハ、最モ大キナ特徵ハ所謂生產者價格ノ補
給デアリマス、其ノ外公債ノ利子等モ殖エ
テ居リマスガ、大體ノ特色ハ大キナ會社等
ノ企業ニ是ガ固マツテ參リマシテ、ソレガ
原材料ノ購入トナリ、勞務者ニ支拂ハレル、
其ノ原材料ノ製造者ガ又原材料、勞務者ニ支
拂フト云フノデ、一般ノ撒布ノ樣相トシ
マシテハ勤勞所得ノ方面ニ非常ニ量ガ多ク
ナル、斯ウ云フ傾向ヲ辿ツテ居リマス、直
接ノ撒布ハ今ノ會社企業方面ニ相當餘計行
ク、斯ウ云フ現象ヲ迪ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=14
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015・船田中
○船田委員 先程御說明ガゴザイマシタ新
興所得階級ニ對スル適切ナル負擔分任ノ施
策ヲ講ズルト云フコトノ必要ハ御認メニナ
ラレタノデアリマスガ、最初新聞等ニ依ツ
テ傳ヘラレマシタ所デハ、國民稅又ハ愛國
稅トモ言フベキ一般的負擔分任ノ新稅ヲ設
ケルト云フヤウナ御計畫ガアツタヤウデア
リマスガ、ソレヲ今囘ノ增稅案ニ於キマシ
テハ止メラレマシテ、所得稅中心ノ增徵ト
云フコトニナリマシタ、殊ニ先程大臣ノ御
說明ニモアリマシタヤウニ、事業所得ニ丙
種ト云フモノヲ新設致シマシテ、原稿料ト
カ自由勞働者ノ給料ト云フヤウナモノヲ對
象トシテ之ヲ補捉スルト云フコトニナラレ
タノデアリマスルガ、ソレダケノコトニ依
リマシテ負擔ノ公平或ハ課稅ノ適正、所謂
國民皆稅ノ目的ヲ十分ニ達成シ得ルト御考
ヘニナラレルノデアリマセウカ、ソレニ付
テノ政府ノ御所見ヲ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=15
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016・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ所得稅ノ所謂基礎
控除、年六百圓以上ノ所得、斯ウ云點カラ
考ヘマシテ、ソレ以上ノ所得ハ十分ニアリ
ナガラ、實情カラ見レバ課稅ガ不十分デア
ルカ、或ハ課稅ヲ免レテ居ルト云フ方面ガ所
謂新興階級ニ相當多數ニアルヤニ考ヘラレ
ルノデアリマシテ、ソレニ對シマシテハ、
只今申上ゲマシタヤウナ丙種ノ事業所得ノ
制度ヲ創設シ、又徵稅機構ノ擴充其ノ他デ
捕捉ヲ致シタイ、斯樣ニ存ズル次第デアリ
やく、又國民一般ノ所得ガ增加シマシタ結
果只今ノ基礎控除額ヲ据置キマシテモ、
家族控除其ノ他ガ現行法ノ儘デアリマス爲
ニ相當多數ノ納稅人員モ事實ニ於テ殖エテ
參ツテ居ルト存ズルノデアリマス、又間接稅
ニシマシテモ、今囘ノ案ニ依リマシテ、事
實上國民各層ノ負擔ハ生活ニ缺クベカラ
ザルモノ等デハ極メテ薄クハアリマスガ、
相當多數ノ納稅モアリ得ルヤウニ存ズルノ
デアリマシテ、一般ニ實質上ノ負擔ガ行渡
ルト云フ點デハ、只今提案致シテ居リマス
制度デモ相當ナモノガアルト存ズルノデア
リマス、唯今御話ガアリマシタ普通世間
デ愛國稅或ハ國民稅等ト稱セラレテ居リマ
スル考へ方デアリマス、是等ノ考ヘ方ハ此
ノ說ヲ唱ヘラレル人ニ依リマシテ相當ノ相
違モアラウカト存ジマスガ、是ハ必ズシモ
只今ノ基礎控除額ニ達シナイ以下ノ所得層
ニ付キマシテモ相當ナ課稅ヲシテ、此ノ際
全部ノ國民ガ決戰下ノ戰費ヲ負擔スル、而
モ是ハ直接ニ負擔スルト云フコトガ必要デ
ハナイカト云フヤウナ點、是等ニ付キマシ
テハ、其ノ趣旨等ニ於テハ極メテ〓究ニ値
スルモノト思ハレル節モ多イノデアリマス、
唯實際ノ徵稅方法、賦課ノ標準等ヲ〓究致
シマスルト、ソレ等ニ付キマシテモ尙ホ〓
究ノ餘地アリ、考慮ヲ要スル點モアリマス
ルノデ、今囘トシマシテハ提案ヲ差控ヘタ
次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=16
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017・船田中
○船田委員 只今ノ點ハ是レ以上ハ意見ニ
亙リマスカラ差控ヘタイト存ジマスケレド
モ、先程來ノ御說明ヲ伺ヒマシテ、政府モ
最近國民所得構成ノ非常ニ激變シタト云フ
コトニ付テハ御認メニナツテイラツシヤル
ヤウデアリマスガ、今日ノ稅制ハドウモ最
近激變シタ國民所得構成ト云フモノノ上ニ
シツカリト乘ツカツテ居ルカドウカト云フ
コトニ付テ、私等トシテハ多少ノ疑問ヲ懷
ク者デアリマス、企業整備ノ非常ニ進捗シ
テ居ルト云フヤウナコト、或ハ政府資金
ガ相當或ル方面ニハ多額ニ撒布サレテ居ル
ト云フヤウナコト、或ハ國民動員ノ强化
ニ依ツテ店主若シクハ店員ガ徵用サレルト
云フヤウナコト、學徒ノ動員スラモ行ハレ
テ來ルト云フヤウナコトニ依リマシテ、此
ノ大東亞戰爭ガ始マリマシテカラ二年有
餘ノ間ニ、非常ナ納稅カラ見マシタ國民所
得ノ構成ガ、激變ヲシテ居ル、併シ稅制ハ
其ノ前ノ前世紀ノモノデアル、假令昭和
十五年ニ全面的ノ改正ガ行ハレタトハ申
シナガラ、其ノ考ヘ方ニ於キマシテハ、
ヤハリ自由主義經濟時代ノ殘滓ガ殘ツテ居
ルト云フヤウナ感ジガ致スノデアリマス、
卽チ激變セル國民所得ノ構成ノ上ニシツカ
リ乘ツカツテ居ラナイヂヤナイカト云フ感
ジガ致スノデアリマス、ソレヲ先程大臣ガ
御說明ニナツテイラツシヤイマス丙種ノ所
得ヲ新設スルト云フコトダケニ依リマシテ、
新興所得階級ノ負擔ヲ衡平ニスル、適正ナ
ル捕捉ヲスルコトニナルト云フコトニ付キ
マシテハ、一點ノ疑ヒガアル譯デアリマス、
若シ之ニ付キマシテ、我々ノ納得ノ行クヤ
ウナ御說明ガアリマスレバ幸ヒデアリマス
ガ、若シ此ノ事業所得ノ中ニ丙種ヲ加ヘル
ト云フコトデアリマスルナラバ、之ヲ三ツ
ノ區別ニ、更ニ一一ツデモ三ツデモ或ハ細分
スレバ尙ホ結構デアリマスガ、事業所得ヲ
更ニ細分ヲ致シマシテ、例ヘバ職域別ニ、
或ハ業種別ニ區分ヲスルト云フヤウナコト
ニ依リマシテ、課稅ノ合理化ヲ圖ツタナ
ラバ、更ニ適正ナル課稅ガ出來ルノデハナ
イカ、所謂負擔ノ衡平ヲ維持スルコトガ出
來ルデハナイカト云フヤウニ考ヘラレルノ
デアリマスガ、ソレ等ニ付テノ御所見ハ如
何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=17
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018・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ所得層ノ變化ニ對
應致シマスル所要ノ方法ト致シマシテハ
所謂丙種ノ事業所得ノ制度ヲ創設致シマシ
タノト、又前ニ申上ゲマシタヤウナ所謂丙
種ノ事業所得、是ハマア俗ニ言ヘバ寧ロ勤
勞所得デアリマスガ、ソレデナク小企業家
ト申シマスヤウナ方面ガ一ツノ重點ト思フ
ノデアリマス、之ニ對シマシテハ、結局所
得ノ捕捉ガ正確ニ行クト云フコトガ主眼デ
アリマシテ、只今ノ所之ヲ別種ノモノトシ
テ、別ノ稅ヲ設ケルトカ、特殊ノ補完稅ヲ
考ヘルトカ云フ必要ハ、ドウモ未ダ認メラ
レナイノデアリマス、結局捕捉ノ問題ニナ
ルノデアリマス、幾ラノ所得ガアルカト云
フ問題ニナルノデアリマス、隨テ是ハ徵稅
組織上認定ノ適正ヲ得ルコトガ主眼ニナリ
マス、徴稅ノ實際デ參リタイ、ソレニハ從
來ノ課稅資料ト同ジモノデハ不十分デアリ
マスノデ、前申上ゲマシタヤウナ資料ヲ得
マスコトニ付キマシテ、若干ノ規定ヲ置イ
タヤウナ次第デアリマス、大體此ノ二ツデ
參リマスレバ、目的ヲ達スルト思ヒマス、
唯内種ノ分ニ付キマシテハ、是モ賦課課稅
ヲ致シテ、其ノ際ノ所得額ノ認定ガ正シケ
レバ宜シイノデアリマスガ、是ハ丙種ノ事
業所得ガアリマスル所謂勞務者ノ實際ノ日
常生計ノ收支狀態其ノ他カラ考ヘマシテ、
ドウシテモ源泉ニ於テ之ヲ使用スル人ガ賃
金或ハ勞銀ヲ支拂ヒマスル際ニ差引クト云
フコトガ必要デアルノデアリマス、稅率ヨ
リモ其ノ點ニ重キヲ置キマシテ、丙種ノ事
業所得ヲ置キマシタヤウナ譯デアリマス
ソレデ其ノ他ノ所謂所得ノ激增シタ階級ニ
付キマシテハ、稅率ヲ變更スルト云フ問題
ヨリモ、結局課稅ノ客體ノ認定ト云フコト
デアリマスカラ、今別種ノ稅ヲ起シテ考ヘ
ルト云フ點ハ必要ハナカラウ、斯樣ニ存ジテ
居ルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=18
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019・船田中
○船田委員 其ノ點ハ分リマシタガ、最後
ニ私ノ質問申上ゲタイノハ、事業所得ヲ甲
乙丙ニ今度分ケラレタ、ソレヲ更ニ合理
化スレバ丁戊ト云フモノヲ更ニ加ヘテモ宜
イ、場合ニ依リマシテハ、各職業別、職域
別ニ所得ヲ分ケルト云フヤウナ細分ヲスレ
バ、ソレダケ合理化スル譯デスガ、サウ云
フヤウナ御考ヘハゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=19
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020・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 丙種ノ事業所得ハ實ハ大
體ハ寧ロ普通ノ觀念カラ申セバ一ツノ勤勞
所得デアルノデアリマスルガ、是ガ或ハ會
社員、或ハ官廳從事員ノ如キ收入ト方法ガ
違ヒマスルガ爲ニ、其ノ計算其ノ他ニ特色
ヲ設ケナケレバナラヌト云フ點カラ、所謂
普通ノ勤勞所得ノ方法ニ依リマセヌ爲ニ、
丙種ノ事業所得ヲ設ケマシタル次第デアリ
マシテ、是ハ大體今申シマスヤウニ、稅率
其ノ他デ加減スルト云フヨリモ、源泉徵收
ノ方法、態樣カラノ區別カラ來タ譯デアリ
やっ、只今ハ甲乙ト既ニ御話ノヤウデアリ
マスルガ、是等ニ付キマシテハ、只今ノ所
之ヲ分ケテ、違ツタ種類ノモノヲ作ルト云
フコトニ付キマシテ必要ヲ認メマセヌ譯デ
アリマス、將來色々經濟事情ト云フモノハ
變化ガアリマスルシ、殊ニ戰時斯ウ云フ曠
古ノ大戰爭下デアリマスカラ、將來ノコト
ハ豫斷スル譯ニハ參リマセヌガ、只今ノ所
デハ別個ノ事業所得ヲ考ヘルト云フ必要ヲ
マダ現實ニハ感ジテ居ラナイノデゴザイマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=20
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021・船田中
○船田委員 次ニ御伺ヒ致シタイコトハ、
今マデ御話ノアリマシタ新興所得階級トハ
別ニ、寧ロ反對ノ方デアリマスガ、今囘ノ
此ノ增稅ノ强化ト云フコトニ伴ヒマシテ、
又一面物價ノ騰貴、其ノ他ノ關係カラ致シ
マシテ、俸給、給料或ハ恩給等ニ依リマシ
テ生活ヲ致シテ居リマスル所謂社會ノ中堅
層ヲ成シテ居ル者ガ、相當影響ヲ受ケルト
思フノデアリマス、ソレ等ノ者ハ寧口弱體
化スル嫌ヒガアルノデアリマスガ、ソレ等
ニ對シテ何等カノ對策ヲ講ズルカ、或ハソ
レ等ノ者ニ對シテ增稅ノ點カラドウ云フヤ
ウナ御考ヘヲ御持チニナツテ居ラレマスル
カ、ソレ等ヲ御伺ヒ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=21
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022・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今御指摘ニナリマシタ
中堅層ト申シマスルカ、是ハ單リ經濟、財
政ノ觀點カラノミナラズ、國家ノ施策全般
ノ上カラ極メテ愼重ニ考慮スベキ部面デア
ルト存ズルノデアリマス、今囘ノ負擔ニ付
キマシテハ、此ノ階級ニ特殊ニ重イト云フ
コトハ勿論アリマセヌ、國民全般ガ多クノ
負擔ヲ致シマシテ、今ノ戰爭ノ費用ヲ生ミ
出サナケレバナラヌト云フ時デアリマス
ルカラ、是等ノ層ト雖モヤハリ同ジク負
擔ハシテ貰ハナケレバナラヌト云フ意味
デ、稅制ヲ立テマシタ次第デアリマス、
是等ノ層ト雖モ人數モ多數デアリマスシ、
所謂消費ヲ節約シマシテ個人生活ノ消費
ニ充テ、平時的ニ言ヘバ充テラルベカリ
シ生產力、是ハ資材、勞力總テデアリマス
ルガ、之ヲ凡ユル家庭カラ戰時生產力ニ轉
換スル必要ハ勿論アルノデアリマスカラ、
其ノ意味ニ於キマシテ是等ノ層ニモ負擔ハ
掛ル譯デアリマシテ、又負擔ヲシテ貰ハナケ
レバナラヌト存ズルノデアリマス、間接稅
等ノ課稅ニ於キマシテハ、從來トテモ左樣
ナ方針デアリマスルガ、戰時下ノ極メテ堅實
質素ナル生活ヲシマス方面ニ付キマシテハ)
負擔ガナシ或ハ負擔ガ輕クナツテ參リマス
ノデ、是等ノ中堅層ガ戰時下ノ中堅層ラシ
キ質實簡素ナル生活ヲ送リマスルナラバ、
其ノ意味合ニ於ケル間接稅負擔ノ如キハ、
是ハ甚ダ少クテ濟ムト存ズル次第デアリマ
ス、尙ホ從來綜合課稅ニ付キマシテハ、
萬圓以下ノ所得ハ一割控除シマシテ、課稅
セラレルベキ金額ヲ決定致シテ居ルノデア
リマスルガ、是等ハ尙ホ六千圓以下ノモノ
ニハ從來同樣ナ處置ヲスルヤウニ、六千圓
ト云フ金額ヲ殘シマシタノモ、三千圓乃至
六千圓ノ收入ノアル方面ニ對スル考慮ガ、
ヤハリ殘ツテ居リマス次第デアリマス、相
續稅ナドニ付キマシテモヤハリ小財產ト申
シマスルカ、今提案致シテ居リマス案デハ
一萬圓程度以下ニ付キマシテハ、餘程稅率
等ヲ考慮致シテ居リマス、尙ホ積極部面デ
ハ貯蓄增進ト云フヤウナ意味デ、所得五千
圓或ハ一萬圓ト云フヤウナ中堅層デ、大イ
ニ努力シテ行ケマスルヤウナ面ニ付キマシテ
ハ、計算上ニ於テモ相當ナ勵ミニナリマス
ヤウニ考慮ヲ拂ツテ居ルノデアリマシテ、
中堅層ガ十分ニ時局ニ目覺メテ堅實ナル生
活ヲ送リマスル限リ、別ニ之ニ對シテ害ハ
ナイト信ジテ居ルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=22
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023・船田中
○船田委員 中堅層ノ人々ガ所謂皇國租稅
觀ニ徹シマシテ、國費ヲ負擔スルト云フ點
ニ付キマシテハ、決シテ人後ニ落チルモノ
デハナイト思フノデアリマスガ、先程御話
ノアリマシタ新興所得階級ト云フノハ其
ノ調査ガ極メテ困難デアル、例ヘバ源泉ニ
於テ之ヲ捕捉セントシテモ、是ハ非常ニ脫
漏ガ多イ、ヽ而モ稅務行政ノ末端ノ國民ニ接
著スル方面ニ於キマシテハ、サウ云フ方面
ニ對スル努力ヨリモ、寧ロ舊來所得稅ヲ納
メテ居ル方面ニ付テノ調査〓究ノ方ガ行屆
クノデアリマシテ、法律ノ上カラ申シマ
スレバ、ソレ等ノモノニ對シテ特別ノ取扱
ヲスルコトハ出來ナイト云フ御話デアリマ
スルガ、實際的ニハ中堅階級ガ非常ニ大キ
ナ負擔ヲスルト云フコトニナルノデアリマ
ス、ソレハ徵稅ノ實際カラ見テサウ云フ結
果ニナル虞ガアルノデアリマス、是ニ於テ
增稅實施ニ關聯ヲ致シマシテ、脫稅防止ノ
施策ヲ强化スルト云フコトハ勿論デアリマ
スルガ、又稅務行政運營ノ全般ニ亙リマシ
テ、改善刷新ヲスル必要ガアルノデハナイ
カ、其ノ方法トシテ色々アリマセウガ、直
接國民ニ接著スル末端ノ稅務行政ヲ扱ツテ
居ル方々ノ待遇ノ改善ト云フコトモ、多年
主張セラレテ居ル、然ルニモ拘ラズ最近ニ
於キマシテハ、人員ノ不足等カラ、相當ナ
經驗ヲ持ツタ者ガ其ノ調査ニ當ルコトガ出
來ズ、非常ニ若イ經驗ノ薄イ人ガ、第一線
ノ稅務行政ヲ扱フト云フヤウナコトニナツ
テ居ルヤウニ見受ケルノデアリマス、此ノ
稅務行政運營ノ改善或ハ刷新ト云フヤウナ
コトニ付キマシテ、政府ハ如何ナル對策ヲ
御持チニナルカ、又之ニ付テノ御所見ハ如
何デアルカ、ソレニ付テ御伺ヒヲ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=23
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024・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ御話ハ兎角誠意ガ
アリマシテモ、所謂舊慣ニ怩ミマシテ從來
捕捉シ續ケテ慣レタ方面ニハドウシテモ行
屆イテ居リ、新シイ方面ニハ注意致シテモ
見逃シガアリマシテ、稅負擔ガ稅法ノ上ニ
於テハ變ラヌトシテモ、實際ニ於テハ新興
所得階級ナドニ有利ニナルト申シマスルカ、
負擔ガ輕クナル傾向ガアリハシナイカト云
フ點ニ付キマシテハ、是ハ今御述べニナリ
マシタト同樣私共モ非常ニ心配ヲシ、ソレ
ニ氣ヲ使ツテ居ル譯デアリマス、是ハ良イ
意味ニ於テ頭ヲ切替ヘマシテ、稅務官吏ガ
慣レテ居ル方面ハソコ〓〓ニシテ、新シイ
方面ニモ十分ニ脫漏ナク、又不十分ナ調査
ノ爲ニ非常ニ行キ過ギノ課稅ノナイヤウニ、
極メテ公正適切ニ行キマスヤウニ、所謂頭
ノ切替ヘニ付テ指導訓練ヲシナケレバナラ
ヌト存ジテ居リマス、唯御話ノヤウニ各方
面トモ程度ノ差コソアレ同樣デアリマスガ、
是ダケノ戰ヲシマス爲ニハ、ドウシテモ人
的資源ガ足リナイ、而モ慣レタル中堅層ガ
應召デアルトカ必要已ムヲ得ザル方面ニ出
マシテ、現在ノ稅務機構ガ人數ニ於テ非常
ニ不足シ、質ニ於テモ熟練者ガ足リマセヌ
努力ト云フ點カラ見マシテハ、私共同ジ部
內デアリマスガ、實際眞面目ニ淚グマシイ
程待遇モ十分デナイニ拘ラズ、實ニ誠意
ヲ以テ事務ニ從事シテ居リマスコトハ、私
共感激ニ堪ヘナイ感ヲ持ツテ居ルノデアリ
マスガ、何サマ只今申上ゲマシタヤウニ、
又御述ベニナリマシタヤウニ、不十分ナ點
モ認メナケレバナラヌト思フノデアリマス、
併シ此ノ不十分ナルコトハ、殊ニ今ノヤウ
ナ新シイ方面ヲ捕捉シナケレバナラヌト云
フコト慣レナイ方面ニ向ハナケレバナラ
スト云フコト、其ノ他ノ稅法全體ガ非常ニ
複雜ニナリマシテ、臨時租稅措置法ノ如ク
相當經濟上各般ニ亙ツテ理解ヲ持ツニアラ
ズンバ、十分ナル運營ガ出來ナイト云フヤ
ウニ、非常ニ高度複雜ナル知識經驗ヲ要
スルヤウニナツタ斯ウ云フ際デアリマスカラ、
出來ルダケ質ノ向上又人員ノ充實ヲ圖リタ
イト存ズル次第デアリマス、殊ニ稅率ガ高
クナリマシタ關係上、課稅ガ適切デナイ場
合ニハ、國民ニ及ボス影響ハ甚ダ多イノデ
アリマス、其ノ點ハ大イニ痛感致シテ居ル
ノデアリマス、併シ何サマ國家ノ總員ヲ擧
ゲマシテ、第一線ノ直接ノ戰鬪ニ從事スル
人ヲ一人デモ多ク出シ、又直接ニ敵ヲ擊摧
シマス兵器彈藥ノ製造輸送ト云フコトニ、
手ノ足リナイ現狀デアリマスノデ、人員ノ
增加モ洵ニ思フニ任セナイ狀況デアルノデ
アリマス、是ハ一般何處デモアルコトデア
リマスガ、特ニ稅務方面ニ付キマシテハ、
御指摘ノヤウナ事情ガアリマシテ、其ノ調
和ニ苦心致シテ居リマスガ、是ハ兩方面カ
ラノ調和ヲ十分ニ考ヘマシタ上、出來ルダ
ケ人員ノ充實ニモ努メタイト思ヒマス、同
時ニ頭ノ切替ヘモ十分ニ之ヲ指導致シ、尙
ホ從來トテモ新シク任命サレマシタ稅務員
ノ訓練ニ付キマシテハ、相當ノ講習施設モ致
シテ居リマシタガ、是等ヲ一層强化擴充シ
テ行キタイ、又訓練シマシタ者デ所謂稅務
署長級ノ者ニ付キマシテハ、其ノ道ニハ熟
練シテ居リマスガ、其ノ道其ノモノガ今モ
御話ガアツタヤウニ、動モスレバ此ノ急激
ナル變化ノアル時ニハ、古クナラントスル
ノデアリマスカラ、是等モ昨今ハ旣ニ年齡
五十歲ニモナラウト云フ方面ニモ、新シイ
指導訓練ヲヤルヤウナ計畫モ致シテ居リマ
ス、所謂〓育竝ニ再〓育、訓練ト云フ面ニ
十分ニ力ヲ入レタイト存ジテ居リマス、
方人員ノ增加等ノ如キハ非常ニ心苦シイノ
デアリマスガ、今囘ノ追加豫算ニモ若干ノ
御要求ヲシテ居リマスヤウナ次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=24
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025・船田中
○船田委員 稅務行政全般ニ亙ツテノ刷新ヲ
セラルヽト云フコトニ對シテ、大臣カラ其
ノ御所信ヲ承ルコトガ出來マシタコトハ、
洵ニ喜バシイ次第デアリマスガ、是ハ大臣
モ御話ニナリマシタヤウニ增稅ガ段々强化
サレヽバサレル程、稅務行政ノ刷新運營ノ
適正ヲ期スルト云フコトガ必要デアリ、其
ノ爲ニハ思ヒ切ツタ第一線ノ稅務官吏ノ改
善、ソレニ依ツテ質ノ向上、頭ノ切替ヘト
云フコトヲ御願ヒ致サナケレバナラヌト存
ズルノデアリマス、之ニ關聯致シマシテ、
所謂納稅協力體制ヲ强化スルト云フ必要ガ
アラウカト存ジマスガ、其ノ方策ノ一ト致
シマシテ、昨年ノ秋以來全國ニ各種ノ經濟
團體ガ系統的ニ整備サレテ居ルノデアリマ
ス、農業、水產業ノ二系統團體ハ勿論ノコ
ト、各府縣ニ於ケル商工經濟會モ整備サレ、
又商工組合法ノ實施モアリマシテ、現ニ各
種ノ組合ガ整備サレツヽアル、是等ノ各種
公法人デアル經濟團體ヲ納稅協力體制强化
ノ爲ニ活用スルト云フコトニナリマシタナ
ラバ、今御話ノヤウナ末端ニ於ケル第一線
ノ稅務行政ノ改善刷新其ノ適正ヲ期スル上
ニ於テ、相當ナ援助ガ得ラルヽコトニナル
ノデハナイカト存ジマスガ、ソレニ付テノ御
所見ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=25
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026・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノヤウニ稅額ガ增シ
稅率ガ增シ、所得ノ相當ナ人ニハ、俗ニ申
ス支出ノ項目デ一番大キイモノハ稅金デア
ルト云フヤウナ時デモアリマスシ、又今マ
デ稅金ヲ納メタコトガナイ人ガ、稅金ヲ納
メル、ソレニハ役所流ノ相當面倒ナ手續モ
要ルト云フヤウナ時代デアリマシテ、ドチ
ラカラ見マシテモ、所謂納稅觀念、納稅知
識ノ普及ト云フコトハ極メテ重大デアルト
存ズルノデアリマス、今御話ノヤウナ經濟
團體、是ハマア色々ナ意味デ稅ト云フコト
ニ緣ガ近イモノデアリマスノデ、サウ云フ
各種團體ノ御協力ヲ得ルト云フコトハ、是
ハ私共極メテ望マシイコトト存ジテ居リマ
ス、尙ホ今御質問ハ直接アリマセヌデシタ
ガ、大體御質問ノ御趣旨ニ關聯スルト思フ
ノデアリマスルガ、一方ニ此ノ納稅ト云フ
コトニ付テ本當ノ日本的戰時的ノ思想、考
ヘ方ト云フモノヲ確立シテ行ク面、ソレカ
ラ又稅法及ビ納稅ニ付キマシテノ實際ノ知
識ヲ普及シテ行クト云フヤウナ面、ソレカ
ラ又納稅施設法等ニ依リマスル、納稅シ易
イヤウニ納稅資金ヲ準備ヲスルト云フヤウ
ナ面、又一般知識階層デアリマセヌ-マ
ア知識階層等ニ致シマシテモ、ドウモ此ノ役
所的ノ手續ナドト云フモノハ面倒ナモノデ
アルノデアリマスルガ、實際ノ納稅ヲシテ
知識的手續的ニ困ラセナイデ行クト云フ
ヤウナ、俗ニ申ス納稅相談、納稅便宜、モ
ツト卑近ニ言ヘバ申告ナドモ場合ニ依レバ
其ノ人ニ必ズ書イテ貰へルト云フ風ナ手續
上ノ問題、凡ユル角度カラ此ノ納稅ト云フモ
ノニ對シテ正確ナ理解、納稅シ易イヤウニ
進メテ參リタイト存ジテ居リマス、納稅觀
念ニ付キマシテモ、今其ノ意味ニ於テ〓究
中デモアリマスルシ、又多數ノ民衆ニハ最
モ是ガ適切ナ實際問題デアリマスカラ、其
ノ徵稅手續ノ簡易化ニ對スル援助トシマシ
テノ施設ニ付テモ、只今若干豫算ニモ要求
ヲ致シテアリマスヤウナモノモアリマスノ
デ、是等ニ付テノ施設ニ努メテ參リタイ、
斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=26
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027・船田中
○船田委員 次ニ御伺致シタイコトハ增稅
ノ實施ニ關聯致シテ、ソレト國民生活確保
ノ問題トノ關聯、或ハ生產增强ト增稅トノ
關聯ノ問題デアリマスガ、特ニ生產增强ト
增稅トノ問題ニ付テ極ク簡單ニ一二伺ツテ
置キタイト思フノデアリマス、增稅ト調辨
價格ノ關聯デアリマス、是ハ恐ラク豫算總
會ニ於テモ御質問ガアツタカト思ヒマスガ、
私ハ增稅ノ立場カラ御質問申上ゲタイト思
フノデアリマス、統制經濟ガ徹底的ニ行ハ
V、原價計算ガ適正ニ實施セラレルト云フ
コトニナリマスルト、殆ドソコニ軍需會社
ニ對シテハ增稅ノ餘地ガナクナルヤウニ考
ヘラレルノデアリマス、軍需生產ノ注文ヲ
スル場合ニ所謂調辨價格デヤラレル、所ガ
ソコニハ適正利潤ガ見テアルケレドモ、稅
務署ノ方デハ一向ソレニ對シテ、サウ云フ
コトニハ構ハズ稅金ヲ課ケルト云フコトニ
ナルノデアリマシテ、ソコニモ生產增强ト
稅務ノ教行ト云フ二ツノ行政施策ノ間ニ密
接ナル聯關性ガ〓ケテ居ルノデハナイカ、
極端ニ申セバ今日軍需會社ノ軍需生產ニ從
事シテ居リマスルモノニ於キマシテ、原價
計算ヲ嚴重ニ實施シ、而モ公定價格ヲ維持
シテ參リマスルナラバ、殆ド增稅ノ餘地ガ
ソコニナイヤウニ見ラレル、若シソコニ十
分ナル增稅ノ餘地ガアリトスルナラバ、ソ
レハ寧ロ先程大臣モ御指摘ニナリマシタヤ
ウニ、中小以下ノ企業體デアリマシテ、極端
ニ申セバ闇ヲヤルカ何カシテ儲ケテ居ルト
云フモノハ、ソコニ增稅ノ對象ニ十分ナル
ト思ヒマスガ、嚴格ナル調辨價格ヲ維持シ、
原價計算ヲ實施シテ參リマスルナラバ、極
メテ增稅ノ餘地ハ少ナイノデハナイカト云
フヤウニ考ヘラレルノデアリマス、要スル
ニ生產增强ト增稅兩施策ノ間ニ十分ナ關聯
性ガナケレバナラヌト思フノデアリマスガ、
ソレガ實際ニ於テハ左樣ニナツテ居ラナ
イ、例ヘバ鑛山ノ開發ト云フコトガ非常ニ
必要デアルニ拘ラズ、鑛山ヲ讓リ渡ス、其
ノ爲ニ讓渡利得ガ相當ニ高ク徵稅セラレマ
スルカラ、隨ツテ鑛山開發ノ適格者ノ手ニ
其ノ鑛山ガ渡ラナイ、山師ノ手ヲ轉々スル
ト云フヤウナコトデ、其處ニモヤハリ生產
增强ヲ阻碍スルヤウナ事實ガ起ツテ來ル、
斯樣ナ例ハ決シテ一二ニ止マラナイノデア
リマスガ、增稅ガ强クナレバ强クナル程ソレ
等各種ノ行政施策ノ間ニ十分ナ聯關性ヲ持
チ關聯ヲ以テ綜合サレテ行カナケレバナラ
ヌ、斯ウ考ヘルノデアリマスガ、ソレニ付テノ
政府ノ御所見ヲ伺ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=27
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028・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 政治各方面綜合性ト云フ
コトハ何時デモ必要デゴザイマスガ、只今
ノ時局ノヤウニ各方面ガ最高度ニ、稅モ高
イ、能率モウント上ゲナケレバナラヌト云
フ風ニ最高度ニ行キマス場合ニハ增稅ノ比
率ト云フモノガ大キク影響シマスノデ、綜
合調和ト云フコトガ一層重大ニナリマス、
是ハ御說ノ通リデアルノデアリマス、稅制
ニ付キマシテモ相當ニ其ノ方面ハ考慮スル
ニ吝デナイノデアリマシテ、所謂租稅ノ臨
時措置法、是ハ全ク平素デハ考ヘラレナイ
ヤウナ各種ノ場合々々ニ付キマシテ減免ノ
措置等モシテ居リマス、企業整備、其ノ他
ニ付テモ、同ジ利益ヲ擧ゲマシテモ其ノ利
益ガ再分配サレルカ、或ハ社內ニ留保サレ
テ有效ノ方面ニ使ハレルカ、色々企業自體
ノ育成、又企業ノ動キ方如何ニ依ル國家全
體ノ經濟的影響等、各般ノコトヲ考慮致シ
マシテ實施致シテ居リマスコトハ大體御承
知ノ通リデアラウト思フノデアリマス
尙ホ現在ノ原價計算ノ下ニ於キマシテモ、
ソレガ大體ハ個別的ニト申シマシテモ集團
的性格ヲ持ツテ參リマス、又コヽニ妙用モ
アリマシテ、生產費ヲ努力シテ下ゲマシタ
モノノ利潤ノ如キハ當然是ハ認メラレル譯
デアリマス、場合ニ依ツテハ特別ナ價格報
奬モ考ヘヨウ、ソレニ對シテモ稅制上特別
ノ措置ヲ執ツテ居ルト云フヤウナ點モ多々
アルノデアリマス、殊ニ今囘ノ增稅ニ付キ
マシテハ法人稅率ガ個人ニ比較シマシテ引
上ノ度ガ甚ダ輕イノデアリマスガ、法人稅
一般ハ二十五ガ三十ニ上ツテ二割程度ノ增
稅デアリマス
資本ニ對スル課稅ハ二倍デアリマスガ、
是ハ御承知ノ如ク非常ニ輕微ナル稅デアリ
マス、餘程其ノ點ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、唯一般ガ所得、或ハ利潤ノ中カラ稅ヲ
出スト云フ譯デアリマスカラ、全然ソコニ於
テ利潤ハ原價計算デ變リマセヌガ、其ノ中
ノ稅負擔ト云フモノハ直接稅負擔ハ稍〓
重クナルト云フコトハ是ハ已ムヲ得ナイト
思フノデアリマス、ソレニ付キマシテ今申シ
マシタヤウニ、法人ノ稅率ノ引上ハ餘程考
慮ヲ致シテアル次第デアリマス、又同樣ノ
コトハ產業直接ノ企業ノ利潤ニ對スル課稅
ト同樣ニ、所謂投資、社債、預金、是等ノ
課稅モ亦其ノ點ハ權衡ヲ得ルコトニ非常ニ
留意ヲシテ居ルノデアリマシテ、戰時デ一
般國民負擔ガ增加スルト云フ其ノ負擔ノ一
部ヲ擔フト云フコトニ付キマシテハ是ハ已
ム得ナイノデアリマスガ、其ノ程度及ビ他
ノ角度カラハ各方面十分ニ考慮致シテアル
積リデアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=28
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029・船田中
○船田委員 法人稅ニ對シテノ大臣ノ御考
慮ノ點ハ能ク分リマシタガ、先程御話ノゴ
ザイマシタ軍需會社ノ利益ト納稅トノ關係
ト云フヤウナコトニ付キマシテ、是ハ此ノ
當委員會ノ席上ニ於テノ問題デナク、實際ノ
問題トシテ是ガ末梢ニマデ徹底スル所ニ行
ツテ戴キマセヌト今囘ノ增稅ハ相當强イノ
デアリマスカラ、其ノ結果生產力ヲ阻害ス
ルヤウナコトニナツテハ一大事ト考ヘマス、
此ノ點特ニ御願ヒ致シマス、特ニ企業整備、
都市疎開等時局的要請諸施策トノ綜合性ヲ
確保スルト云フ點ニ付テモ十分ナル御考慮
ヲ煩ハシタイト存ジマス、尙ホモウ一、二伺
ヒタイコトハ、大臣ガ非常ニ力ヲ入レテ居
ラレマス通貨膨脹ニ對スル根本對策、增稅
ト國民貯蓄ノ增强ト云フコトハ賀屋大藏大
臣自ラ陣頭ニ立タレマシテ御努メニナツテ
居リマスコトハ私モ承知シテ居リマスガ、
通貨膨脹ニ對スル根本對策ニ付キマシテ此
ノ機會ニ御明示アランコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=29
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030・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 會社、法人等ノ課稅ニ付
キマシテ生產增强等ニ障碍ガナイヤウニ、
適用ノ上ニ十分注意セヨト云フ御注意ニ付
キマシテハ、是ハ實行上十分ニ注意ヲシテ
參リタイト存ジマス、只今御尋ネノ通貨膨
脹ノ點デアリマスルガ、此ノ點ニ於キマシ
テハ最モ注意ヲ致スベキ面デアリマス、只
今ノ通貨ノ膨脹ニ於キマシテハ、例ヘバ昭
和十七年度ハ國家歲計ノ實情ガ二百四十億
圓デアリマシタノガ、十八年度ハ三百六十
億圓ニ上リ、一躍百二十億圓ト云フヤウナ
大增加デアリマス、又十九年度モ非常ナ增
加ヲ見ルト存ジマスルガ、斯樣ナ關係カラ
經濟活動全體ガ非常ニ增加致シマシテ、我々
ノ日常生活關係ノモノコソ生產量ニ於テ
モ非常ナ減少デアリマスルガ、軍需生產、
一國生產全體カラハ非常ナ增加デアルコト
ハ申上ゲルマデモナイノデアリマス、是等
ノ關係カラ通貨ガ膨脹シマスコトハ勿論當
然デアリマス、又色々配給狀態ガ變リ、日
常取引ノ狀態ガ變リマシテ、又現金取引ガ
增加シタ結果、通貨ガ增加シタト云フコト
モ已ヲ得ヌ現象デアリマス、又戰時下デア
リマスカラ、所謂非常ノ用意ト云フヤウナ
意味カラ、通貨ノ退藏ト云フ言葉ガ當ルカ
當ラヌカ知リマセヌガ、兎ニ角法人ニシロ
個人ニシロ、各人ガ相當現金ヲ持ツテ居ル
ト云フ點モアルコトト存ジマス、是等ノ點
ハ通貨政策、購買力ト云フ大キナ點カラ見マ
スレバ、是ガ浮動ノ購買ニ向ハナイトスレ
バ通貨ノ膨脹モ經濟全體ノ施策上差シタル
コトハナイノデアリマスルガ、併シナガラ
昨今ノ通貨ノ膨脹ノ程度ニ付キマシテハ相
當不斷ノ努力ヲ拂ハナケレバナラヌト思フ
ノデアリマス、兎ニ角戰時ニ於テハ惡性「イ
ンフレ」ニナルベキ原因ハ餘程ノ努力デ消
サヌ限リハムク〓〓ト頭ヲ持上ゲテ來ル、
是ガ戰時ノ狀態デアルノデアリマシテ、非
常ナ戒心ヲシナケレバナラヌ點デアルト思
フノデアリマス、只今御話ノヤウニ、撒布
サレマシタ資金ノ吸收面ニ付キマシテハ納
稅貯蓄ノ兩方法ニ依ツテ參ル、其ノ貯蓄
ノ本ハヤハリ一面ニ於テ個人生活ノ消費ノ
抑制ト云フコトガ主タル問題ニナリマス、
是等ノ問題ニ付キマシテハ幸ニ國民ノ御協
力ヲ得テ居リマスルガ、尙ホ一層注意ヲ致
シ、殊ニ稅ニ付キマシテモ御說ノヤウナ收
入ノ殖エタ階級ニ向ツテノ施策ハマダノ
餘程徹底ヲシナケレバ效果ガ不十分デア
リ、又一面無理ガ生ズルト思フノデアリマ
ス、此ノ點ニ關シマシテハ十分ナ努力ヲ拂
ヒタイト存ジテ居リマス、同時ニ資金ノ使
用面デアリマスルガ、是ガ今日ニ於テハ國
家ニ取ツテ必要ナリト思フコトハ民間ノ企
業ニシマシテモ、資金ノ供給ハ事實上確保
セラレルト云フ狀況デアリマス、此ノコトハ
非常ニ喜ブベキコトデアリマスルガ、文、
資金ノ獲得ガ容易デアルト云フコトハ、人
情ノ弱點トシテ尊重ノ念ニ弛ミガ生ズルト
云フ結果ヲ生マナイトモ限ラナイノデアリ
やっ、是等ハ非常ニ注意ヲ要スル點デアリ
Tami, a, 7,5,結局資金ヲ效率ヨク使用シマスルコ
トガ資材、勞務ヲ效率ヨク十全ノ效果ヲ發
揮スル所以デアリマス、隨テ各種ノ生產事
業其ノモノニ付キマシテ、新タナル事業ノ
擴張ハ-擴張ヲ要スルカ要シナイカト云
フコトハ、昨日モ豫算委員會デ岸國務大臣ノ
答辯ガアリマシタヤウニ、今決戰下ニ於テ
何年先ノ事業ト云フヤウナモノヲ計畫スベ
キ時デモナイト云フヤウナ點ヲ考ヘレバ
非常ナ新規ノ投資ニ付キマシテモ考ヘ方ヲ
シナケレバナラナイシ、又必要デアルト決
マツタモノニ付キマシテモ、金ダケハタツ
プリ樂ニ行カウト云フヤウナ考ヘハ是一
取除イテ行カナケレバナラヌト思ヒマス、
不自由ハシテハイケマヌガ、最小限度ニ行
クコトガ、資金、同時ニ資材勞務ヲ最小限
度ニ活用スル所以デアルト思フノデアリマ
ス、尙ホサウ云フ生產擴充デナク、生產其
ノモノガ本年ハ何百億ト云フ大キナ軍需生
產ガ行ハレルノデアリマスカラ、是等ガ資
材勞務ニ於テ、卽チ資金ニ於テ、五分節約
サレテモ、七分節約サレテモ大キナモノデ
アラウト思フノデアリマス、其ノ節約サレ
タモノガ、ソレダケ增產ヲスレバ、生產量
ハ逆ニ其ノ割合デ殖エテ參ルノデアリマス、
全ク戰力增强上大キナ結果ヲ生ズルト思フ
ノデアリマス、是ハ資金ノ使用面ニ對シマ
シテ、ソレ等ノ點ニ付テ從來ヨリモ一段ノ
努力ヲ政府モ拂ヒ、又民間當業者自身ガ使
ハレル金デアリマスカラ、十分ニ此ノ點ヲ
考ヘテ行ツテ戴キタイ、斯ウ云フヤウナ點
ニ付キマシテモ大イニ考慮ヲ拂ツテ參リタ
イ、斯樣ニ存ジテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=30
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031・船田中
○船田委員 只今ノ御話デ通貨膨脹ニ對ス
ル施策ニ御苦心ノアル點ハ十分分ルノデア
リマスガ、今マデノヤウナ納稅ノ完遂ト國
民貯蓄ノ增强ト云フヤウナ方法ヲ續ケテ行
カレテ果シテ十分目的ヲ達スルカト云フコ
トニナリマスルト、私ハ多少ノ疑念ヲ持ツ
ノデアリマス、殊ニ國民貯蓄ノ增强ニ付キ
マシテ、何等カ之ヲ物ニ關聯セシメテハド
ウカ、例ヘバ「イギリス」デハ、此ノ前ノ戰
爭ノ直前デアツタト思ヒマスガ、百四十萬
戶ノ住宅ヲ建テル、サウシテソレハ戰爭ガ
終ツテカラヤルノダト云フコトデ、相當ナ
會計ヲ豫メ取ツタト云フヤウナ例モアリマ
スルシ、又「ヒットラー」ガ政權ヲ取ルヤウ
ニナリマシテカラ、勞働者ニハ全部自動車
ヲ供給スル、其ノ爲ニ每週何「マーク」ノ金
ヲ出シテ自動車ノ所有者ニナル、併シソレ
ハ戰時中ハ一時停止ヲスルト云フヤウナ例
モアリマスルノデ、戰後ニ於テ何等カ物ニ
關聯シタ方法ニ依リマシテ貯蓄ノ增强ヲ圖
ル、例ヘバ小サイコトデ言ヘバ、自轉車ガ手ニ
入ルトカ、或ハ或ル所ニ學校ガ出來ルトカ、
或ハ自作農創設ト云フヤウナコトト關聯セ
シメテモ宜シイノデアリマスガ、何等カノ
御工夫ガアツテ然ルベキデハナイカト云フ
感ジガ致スノデアリマス、之ニ付キマシテ
ハ更ニ一段ノ御工夫ヲ御願ヒ致シタイト存
ジマス
最後ニ地方財政ノコトニ付キマシテ、是
ハ大藏大臣カラ御答辯ヲ御願ヒ致シタイト
思ヒマス、申スマデモナク地方ノ行政ガ最
近非常ニ複雜多岐ニナリ、又仕事ガ非常ニ
增シテ來テ居ルノデアリマス、一例ヲ申シ
マシテモ、帝都ノ疎開ト云フヤウナ問題ガ
非常ニ切實ニナツテ居リマス、ソレ等ノ時
局的ナ諸施策ヲ實現スル爲ニ地方ノ財源ハ
是非是ハ確保シナケレバナラヌト存ジマス、
又中央地方負擔ノ區分ヲ調整シテ行カナケ
レバナラヌト思フノデアリマス、內務大臣
ハ先般三稅ノ附加稅デ十分ダト云フ御話デ
ゴザイマシタガ、是デ果シテ十分デアリヤ
否ヤ、地方ニ於ケル各種ノ事務ノ激增ニ對
處致シマシテ地方財源ハ是非確保シテ行カ
ナケレバナラヌ、殊ニ彈力性ヲ保タシテ行
クト云フコトガ、極メテ肝要デアルト存ズ
ルノデアリマスルガ、是等ニ對シテ大藏大
臣ハ如何ナル御配慮ヲセラレルノデアルカ、
御意見ヲ承リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=31
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032・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 地方財政ノ膨脹、其ノ財
源ノ問題ニ付キマシテハ、他ノ機會ニ內務
大臣ヨリ答辯ガアリマシタガ、私モ同樣ナ
考ヘデアリマシテ、只今ノ所ハ分與稅ノ增
額モ致シテ居リマスシ、又只今御述べニナ
リマシタヤウナ地租、家屋稅、營業稅ノ三
收益稅ノ增徵ガアリ、又之ニハ相當程度ノ
附加稅ノ增收モアリ得ル譯デアリマスノデ、
先ヅ明年度ト致シマシテハ相當ナ所マデ行
ツテ居ルト存ズルノデアリマス、又〓育等
モ地方ノ歲出膨脹ノ主ナ原因デアリマスガ、
是等ニ付キマシテハ、或ハ師範學校、或ハ
靑年學校ノ〓員ノ養成所等、其ノ外各〓員
ノ給與等ニ對スル負擔區分ノ如キモ、相當
地方ノ財政ノ緩和ニナル結果ヲ生ズルガ如
キ改正モ致シタ點モアリマス、防空ナドニ
關スル經費ガ非常ニ增加シマスルコトハ御
述ベノ通リデアリマスガ、之ニ對スル國庫
ノ補助率モ非常ナ大幅ノ增加ヲ致シテ居ル
ヤウナ次第デアリマシテ、明年度ノ所ハ是
デ支障ガナク參ルト存ジテ居リマス、但シ
戰時下デアリマスカラ、今後ノ地方財政膨
脹ノ點ニ付キマシテモ又想像外ノモノモ
アリ得ル譯デアリマス、又只今ノ稅制ハ恰
度經過時期デアリマスガ、之ヲ二十年度マ
デ見マシテ其ノ事情ニ依ツテ又新ニ考究ヲ
シテ參リタイ、斯樣ニ存ジテ居ル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=32
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033・船田中
○船田委員 最後ニ、是ハ技術的ナ問題デ
アリマスカラ政府委員カラデモ宜シウゴザ
イマスガ、產業組合ニ對スル課稅ガ他ノ金
融機關或ハ他ノ法人ニ對スル課稅ニ比較シ
テ稍〓重クナツテ居ルノデハナイカト存ズ
ルノデアリマスガドウ云フ譯デアリマスカ、
政府ノ所見ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=33
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034・松隈秀雄
○松隈政府委員 產業組合等特別法人ノ稅
率ニ付キマシテハ、百分ノ十二·五デアリマ
シタノヲ百分ノ二十ニ引上ゲテ居リマスノ
デ、一般法人稅率ノ引上ガ百分ノ二十五カ
ラ百分ノ三十ニ引上ゲラレマシタノニ比較
致シマシテ稍〓其ノ引上割合ガ多イノデアリ
マスガ、是ハ產業組合等ノ特別法人ノ課稅
ガ最近特別法人稅法ニ依ツテ課稅セラレマ
シタ關係上、從來ノ稅率ガ或ル程度低イモ
ノニナツテ居リマシテ、之ヲ漸次一般ノ法
人ノ負擔トノ權衡ヲ見ツヽ引上ゲルコトヲ
考慮致シテ居ルノデアリマス、現在デハ一
般ノ法人ノ半分ノ率程度デアリマス、今度
ハ一般ノ法人ノ三分ノ二ノ程度マデ參ツタ
ノデアリマスガ、此ノ程度デアリマスナラ
バ、著シク重クナツタトハ言ヒ得ナイノデ
ハナイカト思フノデアリマス、殊ニ一般ノ
法人デアリマスレバ、所得ニ對スル法人稅
ノ外ニ、資本ニ對スル法人稅ノ課稅ガアリ
マスシ、又臨時利得稅、營業稅等ノ負擔モ
致シテ居リマス、是等ガ今囘ノ增徵ニ依リ
マシテ相當引上ゲラレテ居リマスノデ、旁〓
以テ一般ノ法人ト比較致シマシタ場合ニ於
キマシテ產業組合ノ負擔ニ限ツテ特ニ之ヲ
重クシタト云フ考ヘハナイノデゴザイマス、
以上御答ヘ申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=34
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035・船田中
○船田委員 以上ヲ以テ私ノ質問ヲ終リマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=35
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036・中島彌團次
○中島委員長 原惣兵衞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=36
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037・原惣兵衞
○原(惣)委員 率直ニ、簡單ニ二、三質問
致シタイト思ヒマス、只今船田委員カラ、
國民所得ノ件ニ付テ御話ガアリマシタガ、
國民全體ガ協力スル所ノ基礎ハ、國民所得
ニアルノデアリマスカラ、結局國民所得カ
ラ國民生活費ノ總額ヲ差引イタモノガ、卽
チ國民トシテ國家ニ協力ガ出來ルモノト
斯樣ニ者ヘマスガ政府ト致シマシテハ國民
所得ノ總額ハ幾ラト御覽ニナツテ居ルカ、
又國民生活ノ總額ガ幾ラト御覽ニナツテ居
ルカ、若シ其ノ關係ガ明白ニシテ戴ケレバ
非常ニ工合ガ好イト考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=37
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038・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 國民所得、國民消費資金、
隨テ國家的資金等ニ關スル御質問デアリマ
シテ、極メテ重要ナル御尋ネデアリマスガ、
之ニ付キマシテハ最モ近イ機會ニ臨時軍事
費ノ追加案ノ提案ヲ致シマス、是ガ目下ノ
財政資金トシテ一番大キナモノヲ占メテ居
ル譯デアリマスカラ是等ノ關係ヲ中心ト
シテ申上ゲマスコトガ、最モ端的ニ把握シ
易イト思ヒマスノデ、今日ハ一寸御答ヘヲ
留保致シマシテ、次ノ機會ニ申上ゲタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=38
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039・原惣兵衞
○原(惣)委員 私ハ國民所得ト國民生活費
トノ關係ガ明白ニナツタ時ニ於テ、初メテ
增稅ノ負擔力トカ、或ハ國民ノ貯蓄力ガドノ
程度マデ行クカ、又將來尙ホ增稅ヲナスベ
キ餘地ガドノ位アルカト云フコトガ具體的
ニ聽カシテ貰ヘルト思ヒマシタガ、今其ノ
總額ノ御示シガアリマセヌカラ、是ハ此ノ
程度ニ致シテ置キマスガ、國民貯蓄ト云フ
モノガ、結局一面ニハ國民生活ヲ低物價政策
ノ下ニ安定セシメテ、サウシテ國家ノ軍事
費其ノ他ニ協力スルト云フ意味カラ、大藏
大臣ハ此ノ點ニハ特ニ全力ヲ御注ギニナツ
テ、又貯蓄奬勵ノ爲ニ各地ヲ御遊說下サツ
テ居ル點ニ對シテハ、私等ハ之ヲ非常ニ多
トスルモノデアリマス、ソコデ此ノ國民貯
蓄ニ付テハ、私マダ實ハ市長ニナツテ二、
三箇月シカ經チマセヌノデ、十分ナコトハ
分リマセヌガ、シツカリ貯金ヲセイ、貯金
ヲセイト云フ命令ガアツテ、此ノ間モ貯金
課長モオイデニナツタノデアリマス、-
體此ノ貯金ヲ勸誘スルコトニ付テハ、私
等モ全力ヲ注ガウト思ツテ居リマスガ、今
少シ全國民ニ貯金ヲシナケレバナラヌノダ
ト云フコトニ付テ、一口ニ言フナラバ、モ
ツト宣傳ヲ盛ンニシテ戴クト共ニ、ソレカ
ラ寄越シテ吳レル辯士-辯士ト言ツテハヲカ
シイデスガ、貯金課長トカ云フ偉イ人ガ來
ラレルノデスケレドモ、肩書ダケ偉クテ、
其ノ喋リ方ガ下手デ、二時間モ二時間半モ
ヤラレテモ、私等ガソレ集マレト云ツテ集
メタノデスガ、其ノ效果ガ更ニナイト云フ
ヤウナコトニナリマスノデ、全國ノ遊說ニ
付キマシテハ十分ニ國民ヲ納得セシメテ、
卽チ貯金ヲスルコトガ所謂戰力增强ノ勞務
ニ從事スル者以外ノ國民トシテ、協力スル
一方法デアルト云フコトヲ、眞ニ徹底サセテ
戴クヤウナ方法ヲ、此ノ場合御考ヘ願ツテ
置キタイト思フノデアリマス、ソコデ此ノ貯
金其ノモノト關聯致シマスノハ、恤兵金及ビ
軍用機獻納基金ノ醵出デアリマス、私ハ政府
トシテモ强ク此ノ點ヲ狙ツテ戴キタイト思
フノデアリマス、ト云フノハ、從來貯金トカ總
テノ醵金ト云フヤウナモノノ目安ヲ何處ニ置
イタカト云ヒマスナラバ、稅金ナラ稅金ノ率
ニ置キマシテ、サウシテ是ハ是ダケノ稅金ヲ
納メテ居ルカラ、是レ位ナ貯金ハ宜イダラ
ウ、ソレカラ是レ位ナ軍用機獻納基金ヲ要
求スルコトハ宜イダラウト云フ見方ヲシテ
居リマシタガ、只今中產階級以下ニ、增稅
其ノ他、マダ〓〓增稅ヲシテモ徵收出來得
ベキ餘地ガアルト大藏大臣モ言ハレテ居リ
マス點ハ、私モ全然同感デアリマス、ト云
フコトハ稅金ノ率ニ依ツテハ決マラナイ、
實際調ベルト、中小工業以下企業整備其ノ
他、今度新タニ戰時ニ興ツテ來タ事業ニ依ツ
テ儲ケタモノガ-是ガ闇デアルヤ否カハ
私ハ分リマセヌガ、相當ナ利益ヲ得テ居リ
マスノデ、サウ云フ人ヲ稅率以外ノ目安デ
町內會デ調ベテ見テ、一體彼處ハドノ位デ
アルカ、稅金ハ少イケレドモ相當儲ケテ居
ルヂヤナイカ、ソレデハ此ノ位ヤツテ見タラ
ドウダト考ヘテ、貴方ノ家ハ何千圓出シテ吳
レト云フヤウナコトヲ言フト、例ヘバ二千圓
以上ト云フ要求ヲシマスト、ソレガ三千圓、
五千圓モ寄附ヲシテ吳レル、私等ハ斯ウ云フ
情勢ヲ見マシテ、サウ云フヤウナ稅金ノ徵
收以外ニ、國家ニ協力シヨウト云フヤウナコ
トニ付テハ、貯金モ結構デアリマスガ、軍用
機獻納其ノ他ニ付テモ、一ツ馬力ヲ掛ケテ御
願ヒシタイ、斯樣ニ思フノデアリマス、ソ
コデ私ハ此ノ軍用機獻納ニ付テヤリマスニ
付テ、市ノ一ツノ事業トシテヤツタ場合ニ
於キマシテ、軍用機、恤兵金其ノ他ヲ政府其
ノモノニ直接出シテヤツタ場合、法人ガヤ
ツタ場合ハ、是ハソレダケノ損失ノ免除ヲ
シテ吳レマスケレドモ、個人ハ一切免除シ
テ吳レテ居ラナイノデアリマス、ソレデア
リマスカラ個人ノ方ハ、色々脫稅其ノ他ガ
アツテソレガ免除ノ代リニナルカラト云フ
ヤウナ點ガアリマスナラバ、其ノ點ハ斟酌
ヲシテ戴イテ、少クトモ稅金ヲ拂ツタヨリ
以上ノ寄附ヲスルト云フ形ニ於テ此ノ點ヲ
斟酌シテ下サツテ、個人ニモ相當認メテヤ
ル方法ハナイノカ、斯樣ニ考ヘルノデアリ
マス
ソレカラ今一ツハ公共團體ノ市町村ニ寄
附シタ場合、法人ハ是ハ一ツモ免除ガナイ
ノデアリマシテ、唯直接國家ニ持ツテ行ツ
タ場合ダケガ免除ニナツテ居ル、斯ウ云フ
コトハ私等ガ市民ニ對シテ寄附ヲ要求スル
場合ニ非常ナ關係ガアリマス、之ヲ區別ス
ル所以ハ何處ニアルカト思フノデアリマス
ガ、此ノ二ツノ點ニ付テ大臣ヲ煩ハサナク
トモ宜シイノデアリマス、ドナタカ政府委
員カラ仰シヤツテ戴イタラ結構デス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=39
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040・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今、原サンハ市長ニ御
就任ニナリマシテ、實際貯蓄奬勵ノ局ニ當
ツテノ御話デアリマスガ、貯蓄ハ戰時ノ經
濟政策トシマシテ、私ハ大政策ト信ジテ居
ルノデアリマス、過般モ申上ゲタノデアリ
マスルガ、我ガ國ノ支那事變以來昭和十八
年度末マデノ撒布資金ハ千五百億餘ト思フ
ノデアリマス、是ガ其ノ儘ニナツテ居リマ
シタナラバ、全ク金ノ洪水ニナリマシテ、
物價ハ暴騰致シ、千五百億デハ濟マナクナ
ル、途中デ物價ハマダ〓〓上リマスカラ、正
ニ惡性「インフレ」ニナツテ居ルノデアリマ
ス、大體貯蓄ノ力デ千億ヲ吸收シ、租稅ノ
力デ三百三十億ヲ吸收シテ居リマス、又私
共ガ今ハ國民貯蓄トハ申シテ居リマセヌガ、
法人ノ內部留保、是ハ實際ノ蓄積デアリマ
スガ、約八十億前後アルト思ヒマス、斯ウ
云フコトデ、千四百億以上ハ吸收ガ出來マ
シタ爲ニ、現在ノ經濟狀況ヲ維持シテ參リ
獸費モ空ノ金デナイ實際ノ戰費ガ出來、生
奈擴充資金モ出來タノデアリマシテ、而モ
金額カラ申上ゲレバ、貯蓄ハ租稅ノ三倍ニ
モ當ツテ居ルノデアリマス、之ヲ常ニ計畫
的ニ、國民所得ガ幾ラアリ、幾ラヲ財政資
金ニ充テナケレバナラヌ、幾ラハ租稅デ徵
收サレル、隨テ幾ラ公債ニ依ラナケレバナラヌ、
又生產擴充資金ガドウシテモ幾ラ要ル、隨テ
貯蓄額ハ幾ラニシナケレバナラヌト云フ資金
計畫ガ大體ニ於テ目的ヲ達シマシタコトガ、
今ノ經濟秩序ノ維持デアリマス、而モ尙ホ此
ノ目的ヲ達スベク大イニ努力ガ要ル譯デ
アリマスルカラ、重點的ニ考ヘマシテ、全
ク貯蓄ノ遂行ト云フコトガ、金額ノ上カラ
申上ゲレバ、最モ重大ナルコトト相成ツテ
參ツテ居ルノデアリマス、ソレデ貯蓄ノ標
準ナドニ付キマシテモ、何ヲ標準ニシテヤ
ルカト云フコトヲ機械的ニ參リマスルト、
到底今日ノ貯蓄ハ出來マセヌ、極力ヤルト
云フコトデ出來ル、昨年度デモ五百億ノ金
錢所得ニ對シテ二百七十億ノ貯蓄デアル、
半分以上貯蓄デアリマスカラ、是ダケヤル
トカ、是ダケシカ出來ナイトカト云フ考ヘ
方デハ到底出來ナイ、又出來ナケレバ惡性
「インフレ」ニナル、何トシテモ死物狂ヒデ
ヤルト云フ氣持デヤラナケレバナラヌ、ソ
レデヤツテ貰ツテ居リマス、ソレデ之ヲ租
稅ノ如ク標準ヲ立テマシタナラバ、ドンナ
コトヲシマシテモ四百億、五百億、今ノ半
分モ出來ナイト思フ、要ハ死物狂ヒデヤル
ト云フ點デアリマス、唯死物狂ヒデヤルカ
ト申シマスト、ソコガ中々面白イ所デアリマ
シテ、私ナドモ東京デ成ベク實際接觸ニ努
メテ居リマスガ、是ガ理窟ノ外デアリマシ
テ、町内會長トカ隣組長トカ、ソコラニ中
々良イ人ガアリマス時ニ於テハ、理窟ハ如
何樣ニモ付イテ居リマスガ、結局ハ非常ニ
宜ク出來テ居ルノデアリマス、サウシテ摩
擦ハ非常ニ少ク貯蓄額ヲ達成シテ居ルノデ
アリマス、サウ云フ實情カラ申シマシテ、
理窟デ行クヨリモ實際ガ必要デアルト云フ
點カラ、サウ云フ事柄ニ慣レタヤウナ人ヲ
主ニシマシテ、全國的ニ貯蓄ノ指導員ト云
フモノヲ作リマシテ、實際ノ世話ヲシテ行
クト云フ、此ノ網ヲ非常ニ擴充シテ居リマ
スガ、旣ニ全國的ニ組合ノ數モ數十萬、指
導員ノ數モ相當デアリマシテ、是モ併シ餘
リ急激ニ增シマスト、指導者ニナル人ガ未
ダ十分ナル經驗ヲ積マナイ人ニモナリマス
ノデ、唯數ヲ增シマスノト適切ナル指導者
ヲ得ルト云フコトニ付テ困難性モ十分アル
ノデアリマス、サウ云フ風ニ組織網的ニ今
ハ相當ニ進ンデ居リマス、一面ハ今、原サ
ンノ御述ベニナリマシタヤウナ所謂宣傳ト
申シマスカ、理性ノ上カラ貯蓄ヲスベキ戰
時下ノ絕對必要ト、之ヲ實際ニヤラウト云
フ感ジヲ起サシメ、夢ヲ描カシメル迫力ノ
アル、所謂宣傳ト申シマスカ、話ノ必要ガ
アルノデアリマス、官吏ナドガ參リマシタ
場合ナドニハ理窟ハ立ツテ居リマシテモ、
話ハ上手デナイ場合モ相當アルト思ヒマス
ガ是ハ當院內ニ於キマシテモ、相當議員
ノ方モ多數ニ何年モ此ノ方ニ御協力ヲ御願
ヒシテ居ル方ガ澤山アルノデアリマシテ、
尙ホ其ノ適當ナル講師ノ派遣ト申シマスカ
斯ウ云フコトニ付キマシテモ此ノ上ナガラ
力ヲ盡シテ參リタイト思フノデアリマス
國防獻金其ノ他ニ付キマシテハ、國民ノ
殉忠ノ精神カラ出マス洵ニ立派ナコトデア
リマスガ、國家ト致シマシテハ、必要ナル
軍費ハ租稅ニ依リマシテ、法ノ御協賛ヲ經
マシテ是ガ徵收ニ努メテ居リマスノデ、ソ
レニハ餘リニ是ハ强制的ニ出ルト云フコト
ハ、私ハ考ヘモノデアラウト思ヒマス、ア
ト公債ハ國家ガ借リルモノデアル、卽チ貯
蓄ニ依リ其ノ人ノ財產トシテ增スモノヲ國
家ガ借リテヤル、是ガ今ノ態勢デアリマス
ガ、要求サレルモノハ今ノ貯蓄ト租稅デア
リ、貯蓄ハ自分ノモノデアル、併シ其ノ上
ニ尙溢レル殉忠ノ精神カラ獻金ガアリマ
スコトハ、是ハ非常ニ美ハシイコトデアリ
マス、左樣ナ見地デアリマスカラ、之ヲ餘
リ進展セシメルト云フコトニ付キマシテハ、
ヤハリ相當考慮ヲ要スルト思フノデアリマ
ス
尙免稅其ノ他ノコトニ付キマシテハ、
一方カラ申シマスト、餘リ免稅ノ特典ガ多
クナリマスルコトハ、稅收入ニモ影響ヲ致
ス點モアリマスシ、又國家ノ資金ノ使ヒ方
カラシマシテ、國防獻金ノ如キハ洵ニ立派
ナモノデアリマス、平時トシテハ立派ナル
資金ノ使用方デアリマシテモ、戰時ニハ總
力ヲ戰爭ニ集中シマス爲ニ、平時的ニハ立
派デアツテモ、戰時トシテハサウ云フ獻金
ハ今ハ餘リシナイ方ガ宜イト云フモノモ相
當ニアラウト思フノデアリマス、是等ノ點
ニ付キマシテハ、免稅ガナクナツテモイケ
マセヌノデ、此ノ前ノ議會ニ於キマシテモ
御協賛ヲ經マシテ、免稅ノ範圍及ビ如何ナ
ル具體的ノ寄附ガドノ程度ノ免稅ヲ受ケル
カト云フコトニ付キマシテハ、法律ニ基イ
タ委員會等ヲ設ケマシテ、認定ヲ致ス運ビ
ニ相成ツテ居ルノデアリマス、尙此ノ點ニ
付キマシテハ、主稅局長ヨリ補足シテ說明
ヲ申上ゲタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=40
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041・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今御尋ネノアリマシタ
國防獻金、恤兵金ヲ經費ト見ルカ否カト云
フ點ニ關シマスル細カイ點ニ付キマシテ、
私カラ申上ゲテ見タイト思ヒマス、個人モ
法人モ同樣ニ寄附金ヲ經費トシテ認メタラ
ト云フ御話デゴザイマスガ、是ハ個人ト法
人トハ所得ノ計算ノ建テ方ガ全然異ツテ居
リマスノデ、個人ニ付キマシテハ、寄附金
ヲ經費トシテ認メマスコトハ困難ナ事情ニ
ゴザイマス、法人ノ場合ニ於キマシテハ、
國防獻金、恤兵金ニ限リマシテ、成規ノ手
續ニ依ツテ獻納サレタモノハ、經費トシテ
認メルコトニナツテ居ルノデアリマス、是
ハ法人ガ直接成規ノ手續ニ依リマシテ獻納
シタ場合ハ勿論デアリマスガ、市ヲ通ジ、
或ハ新聞社ノ如キモノヲ通ジテ成規ノ手
續ヲ執リマシタモノニ付テモ、經費トシテ
認メテ居リマス、但シ市等ガ介在スル場合
ニ於キマシテハ、國防獻金、恤兵金トシテ
成規ノ手續ヲシテ獻納スル、仲介ト云フヤ
ウナ意味デナクテ市ガ之ヲ受入レマシテ、
適當ニ市ノ考ヘデ慰問袋ヲ作ツタリ、或
ハ其ノ他ノ方法ニ依リマシテ、恤兵金式ニ
使フト云フヤウナ場合、之ヲ喧シク申シマ
スト所謂成規ノ手續ニ依ツタモノデナイト
云フ場合ニ於キマシテハ之ヲ經費ニ認メ
ナイト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、
其ノ場合ニ於キマシテモ市ガ寄附金ノ受入
先デアリマシテ、目的ガ公共目的或ハ公益
目的デアルト認メラレマスル場合ニ於テ
ハ法人稅ダケハ寄附金ヲ審査委員會ニ掛
ケテ免除シ得ル途ガ開イテアル譯デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=41
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042・原惣兵衞
○原(惣)委員 ドウモ有難ウゴザイマシタ、
能ク分リマシタ、私ハ只今船田委員ノ言ハ
レタ所得ヲ把握スル方法、言換ヘレバ稅務
署ノ實際上ノ査定ガ過チナキヤ否ヤト云フ
點ハ、今ノ御說明デ能ク分ツタノデアリマ
ス、實際稅務官吏ノ薄給デ努力シテ居ラレ
ルコトニ付テハ同感ノ點ガアリ、御苦勞デ
アルト思フノデアリマスガ、此ノ點ニ於テ
ノ間違ヒナドハ十分御注意下サルト云フコ
トデモアリ、私ハ非常ニ滿足スルノデアリ
マス、私ハ此ノ眞相ヲ把握スル方法トシテ、
稅務官吏ニ、會社ノ帳簿ヤ何カニ付テ、一々
命令權ノ範圍內デナシニ、今少シ進ンデ、
本當ニ所得ガドノ位アルノカ、アレハ何處
何處ノ會社ノ株主デハナイカト云フヤウナ
目安ヲ付ケタナラバ、ドン〓〓ト之ニ調査方
ヲ命ジテ、其ノ株主ナリ銀行ノ預金者ナド
ノ關係者ノ所得ヲ、稅務署ノ命令ニ依ツテ
調査報告ノ義務ガアルト云フヤウナ工合ニ、
一面ニ稅務官吏ガ徹底シテヤリ得ルヤウナ
方法ヲ政府ノ立場上考ヘタラドウカト思フ
ノデアリマスガ、如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=42
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043・松隈秀雄
○松隈政府委員 私カラ御答へ申上ゲマス、
所得ノ調査ニ當リマシテ、稅務官廳ト致シ
マシテハ直接納稅者ニ付キマシテ調査ヲ致
シマシテ、課稅ノ充實ヲ圖ルコトモ一ツノ
方法デアリマスガ、一方資料ノ蒐集ヲ出來
ルダケ完全ニスルト云フコトモ必要デゴザ
イマシテ、其ノ爲ニ支拂調書ノ提出ノ義務
ガ所得稅法ニモ規定シテゴザイマス、納稅
義務者又ハ納稅義務アリト認メラルヽ者ニ
金錢等ノ支拂ヲナス者ハ資料ヲ提出スルコ
トニナツテ居リマスノデ、之ニ依リマシテ
或ル程度マデハ資料ガ捕捉出來ルコトニ
ナツテ居リマス、尙ホ今囘其ノ點ニ關シマ
シテモ幾分制度ヲ擴張スル改正ヲ行ツテ居
リマス、又資料ノ提出義務ハアリマシテモ、
之ヲ怠ツテ居ルヤウナ向キモナイデハアリ
マセヌ、ソレ等ニ付キマシテハ時々督促ヲ
シ、又資料ノ提出ノ間違ツテ居ルモノ等モ
ゴザイマスノデ、是等ニ付テハ監査ヲ致ス
ト云フヤウナ方法ニ依リマシテ、調査ノ完
璧ヲ出來ルダケ期シテ參ルヤウニ致シタイ
ト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=43
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044・原惣兵衞
○原(惣)委員 大臣ノ所謂新興所得階級ニ
對シテ新タニ課稅ヲスルト云フコトニナリ
マシタコトハ、國民ガ全般的ニ、普遍的ニ、
サウシテ時局下國民精神ト云フモノノ力ヲ
一ツノ基礎ト土臺ニ置キマシテ、此ノ課稅
ヲナシタト云フコトニ對シテ、私ハ稅ト云
フモノノ觀念ノ上カラ云フテモ、國民全般
ガ之ヲ負擔スルノダト云フ考ヘ方ニ於キマ
シテ非常ニ結構ナコトダト思ツテ喜ブモノ
デアリマス、併シ實際ノ自由勞働者ニ課稅
スル方法ハ一體ドウシテスルノカ、一口ニ
言ヘバ工場デ働イテ居ル場所的ニソレヲ捕
ヘテヤルノカ、或ハ聞ク所ニ依リマスト、
親分、卽チ集團勞働者ヲ統轄主宰シテ居ル
親分ニ一括シテ課スノデアル、斯ウ云フコ
トモ承ルノデアリマスガ、ソレモ一策デア
リマスケレドモ、ソレナラ自由勞働者ガ常
ニ親分ノ所ニ出入ヲ全然シナイデ、一日十
圓、二十圓トアツチコツチ出步イテ儲ケテ、
家ニ歸ツテ迚モ皆ノ食へナイヤウナ鮪ノ刺
身ナンカペロ〓〓〓ツテ居ルノガアル(笑聲)
斯ウ云フヤウナ者モアルノデアルガ、サウ
云フ課稅ヲ親分ニスルノデアルカ、或ハ例
ヘバ町內會ニ於テ町內會長或ハ隣保會ニ於
テ之ヲ報〓セシメテ、課稅ノ標準ニシタラ
ドウカトモ考ヘルノデアリマシテ、政府ノ
御考ヘ方ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=44
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045・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 町內會、部落會、隣組ト
云フモノハ、戰時ニ於キマシテ非常ニ發達
ヲ致シマシタ、或ハ納稅或ハ貯蓄或ハ必要
點ノ配給、防空、色々ノ面ニ於テ役ニ立ツ
活動ヲ致シテ居ルノデアリマスルガ、併シ
是等ハ又一面ニ其ノ行過ギト云フコトモ動
モスレバ起ラヌデモナイ點モアリマシテ、
如何ニ之ヲ活用スルカト云フコトニ付キマ
シテハ、活用ノ方面、其ノ他ニ於テ相當愼
重ナル考慮ガ要ルト思フノデアリマス、事
實ハ指導者、會長ナラ會長其ノ人ニ非常ニ
適當ノ人ガアリマス場合ニハ、何ヲ任セテ
モ理窟ヲ言ハヌデ、全部色々ナコトヲ任セ
テ相當巧ク行クト云フコトモアリマスシ、
又隣保ノ結合ハ昨今デアリマシテ、日ガ淺
ク能ク事情ガソレホド雙方ニ分ラナイ、又
指導者ガサウ適當デナイト云フ場合ニハ、
又其ノ活動ノ範圍ハ相當局限スルコトガ適
切ナ場合モアルト思フノデアリマス、隨ヒ
マシテ只今御話ノヤウナ面ニ付キマシテハ、
今度ノ法制ノ上ニ於テモ其ノ利用ヲ全部排
除ハ無論致シテ居リマセヌガ、運用ハ餘程
注意ヲシテ參ラナケレバナラヌ、從來ノ寧
ロ田舍ノヤウニ隣保ノ狀況ガ能ク分ツテ、
結合モ能ク出來テ居ルト云フヤウナ方面ニ
ハ、相當ニ之ヲ善用活用スル途モアラウカ
ト思ヒマスガ、極ク昨今ノ隣保結合ト云フ
ヤウナ所ハ、餘程注意シテ參ラナケレバナ
ラヌモノト思フノデアリマス、ドウモ是ハ
一律ニハ行キ兼ネルト思ヒマスルガ、尙ホ
所謂良イ意味ノ活用ニ付テハ今後モ考ヘテ
行キタイト思フノデアリマス、其ノ他今ノ
御話ノヤウニ所謂自由勞働者方面ハ中々捕
捉ガ困難デアリマシテ、所謂親方トノ結合
關係モ確定不動ト云フモノデアリマセヌ、
是等ガ今マデ課稅ヲ逃レテ居リ、又課稅ニ
付テノ新構想ヲ致シマスノニモ、惱ミノ多
カツタ點デアリマス、結局サウ云フ親方ト
ノ連繫ノナイモノニ付キマシテハ、結局賦
課課稅ニ行カナケレバナラヌト云フ面ガ、
ヤハリ率直ニ申シテ殘ルト思フノデアリマ
ス、玆ニ困難ノ點ハアリマスガ、併シ今ノ
料金ノ支拂ニ於テ、之ヲ使フ人ノ方面カラ
出來ル割合ガ相當多數デアルト存ジマス、
是等ノ實際ノ徵稅方法ニ付キマシテハ、私
ガ申シマスヨリモ政府委員カラ御答ヘシマ
ス方ガモツト適切デアリマスノデ、政府委
員ヨリ御答ヘヲ致サセマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=45
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046・松隈秀雄
○松隈政府委員 自由勞働者等ニ對シマス
ル課稅ト致シマシハ、是ガ働イテ居リマス
ル職域ニ於テ課稅ヲ致スト云フ方法ト、賃
金等ノ支拂ヲ致シマスル場合ニ於テ、工場
等ニ自由勞働者ヲ供給ト申シテハ少シ字ガ
當ラナイカモ知レマセヌガ、供給スル側ヲ
以テ徵收義務者トスルト云フ考ヘ方ガアル
ノデアリマスルガ、今囘ノ考ヘ方ト致シマ
シテハ、作業請負業者、勞務供給業者ヲ以テ
徵收義務者ニ致シタイト考ヘテ居リマス、
サウ致シマスルト、作業請負業者ニ屬シ、
或ハ勞務供給業者ニ屬シテ居ル者ハ宜イケ
レドモ、ソレニ屬サナイデ、アツチコツ
勝手ニ働イテ步ク者ニ付テハ源泉徴收ガ出
來ナイト云フ憾ミハアリマスルガ、勞務報
國會ニ付テ調ベテ見ルト、自由勞働者等ハ
八、九割マデハ之ニ所屬致シテ居リマシテ、
甲種會員ノ方ハ獨立營業ヲスルモノデアリ
マスシ、乙種會員ノ方ハ使用人的ナ立場ニ
アルモノデアリマスルガ、大體作業請負業
煮勞務供給業者ヲ以テ源泉徵收義務者ト
致シマスレバ自由勞働者ニ對シマスル所
得ノ捕捉ノ目的ハ達セラレルト思フノデア
リマス、僅カノモノガ漏レルコトハ先程申
上ゲタ通リデアリマスルガ、之ニ付キマシ
テハ已ムヲ得ズ賦課課稅ニ依リマシテ缺點
ヲ補ツテ參ル外ハナイト思ツテリ居マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=46
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047・原惣兵衞
○原(惣)委員 物品稅中、小賣商人ノ脫稅
防止ノ對策アリヤト云フ質問ヲ致シテ置イタ
ノデアリマスガ、ソレハ物品稅法改正中ノ第
十六條ノ二ニ依リマスレバ、第一種ノ物品、
例ヘバ丙類ニ屬スル下駄ダトカ帽子ダトカ
杖ダトカ傘ダトカ云フヤウナモノノ課稅ヲ
小賣業者ニ任シテアリマスガ、私ガ之ヲ言フ
所以ノモノハドウモ小賣業者ハ企業整備
ノ爲ニ後ヘ殘ツテ、專賣特許カ專賣權ヲ持
ツタヤウナ氣ニナツテ、殘ツタ者ダケ非常
ニ旨イコトヲシテ居ル、ソレハ製造業者ニ
任セテ置イタ方ガサウ云フ脫稅ト云フコト
ハ起リマセヌガ、此ノ小賣業者ニ任セタト
云フコトニ於キマシテ、實際上脫稅ヲスル
憂ヒハナイカドウカ、ナゼ之ヲ製造業者ニ
入レナカツタノデアルカト云フ點ヲ一點伺
ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=47
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048・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今ノ御尋ネハ物品稅ノ
品目ノ中、尙ホ相當ノモノガ小賣課稅トシ
テ殘ツテ居ル、之ニ付テハ物品稅逋脫ノ危
險性ガ相當多イノデアルカラ、出來レバ第
二種、卽チ製造場移出課稅ニ改ムベキデハ
ナカツタカト云フ御尋ネデアリマシテ、或
ル點御尤モナ點ガアルノデゴザイマス、其
ノ點ニモ顧ミマシテ、今囘物品稅法ノ改正
ニ當リマシテハ、第一種ト第二種トノ種別
ノ組替ヲ致シマシテ、小賣課稅カラ製造場
移出課稅ニ變更シタ品目モ相當アルノデゴ
ザイマス、例ヘバ第二種乙類ニ新タニ入レ
ラレマシタ時計、照明器具、電氣器具、文
房具、身邊用細貨類、喫煙用具、扇子及ビ
團扇、鞄及ビ「トランク」、飾物、玩具、運
動具、漆器陶磁器、菓子等ハ從來小賣課稅
デアツタノデアリマスルガ、製造課稅ニス
ル方ガ徵稅上便宜デアリ、且ツ逋脫ノ機會
ヲ少カラシメルト云フ見地カラ變更致シタ
次第デアリマス、尙ホ第一種ニ殘ツテ居リ
マスル帽子、杖、履物其ノ他ノモノニ付キ
マシテハ、製造場移出課稅ニ移スベキヤ否
ヤニ付テ考慮ヲ遂ゲタノデアリマスガ、是
等ハ製造場ノ數ガ相當多ク、隨テ製造課稅
ニ移シマシテモ手數ガ餘リ簡略化サレナイ
虞ガアルシ、ソレカラ物ニ依リマシテハ製
造家ノ所ハ却ツテ小資本デ小サクヤツテ居
ル、寧ロ販賣業者ノ方ガ店ガシツカリシテ
居ツテ、其處ニ課スル方ガ比較的課稅ニ間
違ヒガナイト云フヤウナ事情ノモノモアリ
マスノデ、旁〓或ル物ガ依然小賣課稅ニ殘
ツタ次第デアリマス、併シ是等ノモノニ付
キマシテモ、今後ノ經濟情勢ノ變化其ノ他
ニ依リマシテ、製造課稅ニ移スノヲ適當ト
認メマスレバ、漸次製造場移出課稅ノ方ニ
移シテ參リタイト思ヒマス、尙ホ小賣課稅
ノ狀態ニアリマスル際ニ於キマシテモ、出
來ルダケ脫稅防止ニ付テハ努力ヲ圖リタイ
ト存ジテ居ルノデアリマシテ、今囘稅法改
正ニ當ツテ、脫稅防止ニ關スル規定モ或ル
程度整備スルコトニ心掛ケタヤウナ次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=48
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049・原惣兵衞
○原(惣)委員 時間ノ都合モアリマスノデ、
最後ニモウ一ツダケ御伺ヒ致シマス、前ノ
歐洲大戰當時ノ國家財政ハ中央ガ非常ナ勢
ヒデ膨脹シテ居リマシテ、ソレニ引替ヘテ
地方財政ハ非常ニ細クナツタト私等ハ考ヘ
テ居ルノデアリマス、所ガ今度ノ大戰ニ於
キマシテ、戰爭卽建設、サウシテ國民全部
ヲ擧ゲテ戰爭經濟ニ建直シテ來タト云フ關
係カラ、凡ユル生產部門ガ地方的ニ非常ナ
發展ヲ致シテ參リマシテ、隨テ地方ノ財政
モ非常ニソコニ裕リガアル財政狀態デアル
ト私ハ者ヘテ居ルノデアリマス、隨テ之ニ
伴ウテ、只今モ大臣ノ仰シヤツタヤウニ、
防空ニ致シマシテモ、食糧ノ配給ニ致シマ
シテモ、或ハ薪炭ノ配給ニ致シマシテモ
炭ヲ買フニ致シマシテモ、凡ユル地方ガ全
部負擔シテ居ルト云フ關係デアリマス、
ツノ例ヲ申シマスト-是ハ大藏省ニ言フ
コトデナク、農商省ニ言フコトデアリマス
ケレドモ、例ヘバ兵庫縣ト大阪府トガ兩方
競爭シテ土佐ヲ指シテ炭ヲ買出シニ行ク、
サウシテ早ク行カナケレバ間ニ合ハヌカラ
ト云フノデ、縣廳ノ役人ガマルデ商人ガ品
物ヲ買集メニ廻ルト云フヤウナ競爭狀態デ
行キマシテ、サウシテソレニ伴フ費用ハ運
賃其ノ他ガ足ラヌカラト云フノデ荷出シノ
運賃ヤ積出シノ足ラヌ分ダケハ縣ガ持ツ、
縣ハ之ヲ市ニ言ウテ來ル、市ガ一萬圓モ二
萬圓モ之ヲ負擔シナケレバナラヌ、一面カ
ラ言ヘバ闇デアリマス、闇デアリマスケレ
ドモ、苟クモ國家ノ公共團體若シクハ府縣
知事ガ之ヲ認メレバ、是ハ私ハ公定相場ト
見テ宜イノダカラ、ソンナコトヲ論議スル
ノヂヤアリマセヌガ、サウ云フ薪炭ノ買出
シノ費用、竝ニ薪炭ノ補助費ト云フヤウナ
モノハ市ガ持タナケレバナラヌト云フヤウ
ナ現狀ニアルノデアリマシテ、防空ニ關シ
マシテモ、其ノ他總テノモノニ對スル地方
ノ經費ノ膨脹ハ實ニヒドイモノガアリマス、
斯ウ云フ情勢ノ時ニ地方稅ト云フモノニ付
テ、先程大藏大臣モ分與稅ニ付テノ方法ヤ
其ノ他ノ處置ヲ執ツテヤルト云フ御話ガア
リマシタガ、一ツ地方ニ相當伸縮、裕リノ
アル稅制ヲ新設シテ貰フカ、若シクハ今ノ
分與稅ノ範圍ヲモウ少シ擴大シテ貰ヘヌカ
ト云フコトガ二デアリマス
今一ツ、從來ノ戶數割ト云フモノガナク
ナツテ市民稅ニ代ツタノデアリマスガ、此
ノ戶數割ノ制度ト云フモノハ地方ノ事情ト
地方ノ情勢ヲ斟酌シマシテ、所得稅調査委
員ヤ町村ノ有力者ガ集マツテ戶數割ノ査定
ヲスルト云フコトハ非常ニ伸縮自在性ガア
リマシテ私ハ宜カツタト思ヒマス、勿論ソ
レニ伴ツテ弊害モ起リマセウ、サウ云フ意
味ニ於キマシテ共ノ代リニ市民稅ト云フモ
ノガ出來タノデアリマスガ、是ハヤハリ戶
數割ノ時ノ特長ヲ酌入レマシテ、一ツ市民
稅ノ最高額モ、例ヘバ私等姫路デアツダラ
千五百圓デアリマスガ、ソレヲ一萬圓位マ
デ上ゲテ貰ヘナイカ、斯ウ云フコトニ對シ
マシテ政府ハドウ云フ御考ヘガアルカ、ソ
レヲ伺ツテ置キマス、同時ニ稅率ニ致シマ
シテモ、所謂總額ノ一人前ガ六圓トナツテ
居ルノヲ、稅率ノ程度ヲ十圓位ニ變ヘテ貰
フ、斯ウ云フコトヲ適切ニヤツテ貰ツテ、
出來ルダケ時局ニ對處シテ努力ヲ致シタイ
ト斯ウ考ヘテ居ルノデアリマスガ、其ノ點
ニ付テ大藏大臣カラノ御說明ヲ承リタイト
思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=49
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050・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 大東亞戰下色々ノ方面ニ
施策ノ要求ヲ起スノデアリマシテ、其ノ爲
ニ地方自治團體ノ歲出ガ大イニ膨脹致シマ
ス、之ニ對シテハ市町村當局ニ於キマシテ
モ、亦府縣當局ニ於キマシテモ、非常ナ御
苦心ガアリマスコトト御察シ申上ゲテ居ルノ
デアリマス、地方團體全體トシテ恐ラク四
十億圓位ノ豫算ニナツテ居ルノヂヤナイカ
ト思ヒマスルガ、國トシマシテモ先程モ申
上ゲマシタヤウニ、出來ルダケハ色々ノ負
擔ノ區分モ國家ガ持ツヤウニ調節ヲ致シマ
シテ、分擔金ヤ補助金モ出スト云フヤウニ
努メテ居ル譯デアリマス、何サマ昨年度ハ
三百六十數億、今年度ハ又非常ナ大增加ヲ
シテ居リマスノデ、國カラノ財源ノ附與モ
中々思フニ任セヌ點モアルノデアリマスル
ガ、先程申シマシタヤウニ、先ヅ〓〓來年
アタリハ今ノ制度デ行ク外ナイト思ヒマス、
其ノ次カラ先ハ事情ニ依ツテ檢討シダイ、
戶數割等ニ付キマシテハ是ハ內務當局ノ
御考ヘモアルト思ヒマスガ、實ハ私ハ戶數
割ノ制度ニハ甚ダ素人ナノデアリマスガ
是ガ理外ノ理ト云フカ、前ニハ相當惡ク言
ハレタノデアリマスルガ、今御話ノヤウニ
理窟ヲ拔キニシテ却テ適切ナ面ガアルト云
フコトハ私モサウ云フ感ジヲ持ツテ居リマ
ス、今ノ市民稅、住民稅ノ中ニモ相當戶數
割的色彩ノマダ殘ツテ居ルモノガアリハセ
ヌカト思ヒマス、是等ニ對シマシテハ一
方相當弊害モアツテ止メラレタ制度デアリ
マスルシ率直ニ申シテ今ノヤウナ感ジヲ
持ツテ居リマスルガ、之ヲ直グ復活シテ行
クカドウカト云フコトハ只今ノ所一寸御答
ヘヲ申上ゲ兼ネル次第デアリマス、先程モ
御答ヘシマシタヤウニ明年度ハ已ムヲ得マ
セヌ、今後尙ホ十分內務當局トモ相談致シ
マシテ、地方財政ノコトニ付キマシテハ考
ヘテ參リタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=50
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051・中島彌團次
○中島委員長 小野義一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=51
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052・小野義一
○小野(義)委員 大分時刻ガ移リマシテ委
員各位ニ相濟ミマセヌガ、大臣ハ此ノ委員
會ニハ今日限リ、御出席ガ難カシイト云フ
コトデアリマスカラ極メテ簡單ニ一問一答
式ニ御尋ネヲ致シマス
先ヅ第一ニ伺ヒタイノハ、私ハ擧ゲ足ヲ
取ル積リデハ決シテアリマセヌ、昨年ノ今
頃ノ增稅ト今囘ノ增稅トノ狙ヒ所ニ於テ御
說明ニ違ツタ所ガアルノデアリマス、昨年
ノ分ハ消費ノ節約購買力ノ吸收ヲ圖ルト共
ニ國庫ノ收入ヲ增加スルト斯ウ言ツテ居ラ
レマス、本年度ノ分ハ一昨日ノ御說明ニ依
ルト國庫ノ收入ヲ圖ルト共ニ消費節約、購
買力ノ吸收ヲヤル、丁度逆ニナツテ居リマ
ス、是ハ或ハ主稅局長、國稅課長ガ無意識
ニ御書キニナツタノデアツテ、決シテ其ノ
間ニ輕重ハナイ、同ジダ斯ウ云フ御考ヘデ
アルカ、詰リ言葉ノ綾ニ過ギナイノデアル
カ、或ハサウデナクテ私考ヘマスノニ昨年
ト今日デハドウモ財政ノ堅實性ガ幾ラカ薄
クナツタ、何トナレバ公債ガ非常ニ多クナ
ツタ、旣ニ先月末ニ於テハ七百七億、其ノ
外ノ證劵ヲ入レルト七百十六億ニテル、昨
年ヨリ餘程ノ增加デアル、ソコデ今度ハ國
庫ノ收入ヲ圖ルト云フコトガ先ヅ第一、購
買力ノ吸收ト云フコトハ第二ダ、斯ウ云フ
コトデアリマスルカドウカ、先ヅ之ヲ伺ヒ
タイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=52
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053・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ御尋ネ、率直ニ申
シマシテ理窟拔キニ考ヘテ御話ノヤウナ氣
持デ自然ニ筆ガ逆ニナツタノダト思ヒマス、
昨年モ增稅ノ必要ハ無論認メテ居リマシタ
ガ、各般ノ事情ヲ考ヘマシテ或ル意味ニ於
テ國民ノ息拔キト申シマスカ、ドチラカト
申シマスト國庫ノ收入ニモナリマスルガ、
購買力ノ吸收、消費ノ抑制ガ色ガ勝ツヤウ
テ間接稅ノ增徵ヲ致シタノデアリマス、本
年ハ御話ノ如ク債劵モ昨年ヨリハ非常ニ膨
脹スル豫定デアリマス、ドウシテモ普通歲
入モ增加ヲ致ス必要ガアルト云フコトデ、
理窟拔キニシテ氣持ガ御話ノヤウニ筆ノ上
ニモ現ハレタ、斯ウ御承知ヲ願ヒタイ.発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=53
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054・小野義一
○小野(義)委員 能ク分リマシタ、ソコデ
公債ノ問題ニ移リマス、公債ハ段々激增シ
テ居ル、一昨日ノ本會議ノ御說明デハ一般
會計、特別會計ニ於テ、今決ツタ所デ七十
四億圓、臨時軍事費ガドレダケ出テ來ルカ
是ハ餘程大キイダラウト思ヒマス、サウナ
リマスト餘程此ノ公債消化ト云フコトハ其
ノ分量ガ多クナルニ從ツテ難カシクナル、
ト云フノハ物ガ多クナレバ先ヅ其ノ價格ガ
下ルト云フコトハ何人モ考ヘル、「ドイツ」
ノ「インフラチオン」ノ例ヲ見テモ、五十億
「マルク」デアツタ時マデハ皆平氣デアツタ、
ズル〓〓ト上ツテ千億ニナツタノデ大イ
ニビツクリシタ、ソコデ增稅ヲ大イニヤラ
ウト思ツタ、所ガモウ既ニ後レテ居ツタト
云フコトデアリマス、大藏大臣ガ昨年本年
引續イテ增稅ヲオヤリニナル、洵ニ私結構
ト思ヒマス、所ガ現在ノ稅制ノ儘デハ先程
御話ノアツタ通リ、多少ノ彈力性ハアルケ
レドモ、サウ多分ニハナイ、私モサウ思ヒ
W.N.ソコデ何カ新稅ヲ作ルベキ段階ニナ
ルノデハナイカ、何ガ問題ニナルカト云フ
ト、是ハ何モ奇想天外ヨリ落チル譯デハア
リマセヌ「ドイツ」ナドノ例ヲ見テモ財產
稅或ハ一般取引稅、若シクハ賣上稅、斯
ウ云フコトニナルダラウト思ヒマス、所デ
私講釋メイタコトヲ申スヤウデアリマスガ、
財產稅ト云フモノハ先ヅ日本ノ財產ガ千億
トシタ所デ其ノ一割ヲ取ルト百億、是ハ中
々容易ナコトデハナイト思ヒマス、財政學
デハ收益ノ程度、若シクハ收益化シ得ル程
度デナイトイカヌト云フコトニナツテ居ル、
サウスルト餘リ多クヲ期待出來ナイ、「ドイ
ツデ「インフラチオン」ノ後ヲ受ケテ財政
改革ヲ斷行シタ、ソレハ一九二四年ダト思ヒ
マスガ、其ノ時ニ非常ニ高額ナ稅率ノヴ
ムザッツストイヤー」所謂賣上稅ヲ實施シ
タコトハ御承知ノ通リデアリマス、是ハ非
常ナ物價ノ暴騰ヲ刺戟シタ爲ニ、大變ダト
云フノデ二年經ツタ後ニ稅率ヲ半分ニ下ゲ
テシマツタ、斯ウ云フコトガアリマスカラ、
私ハ一般賣上稅ヲ實施サレテモ、是ガ物價
ノ暴騰ニ拍車ヲ掛ケルト云フコトニナツテ、
餘程物價ニ對スル統制ヲ强化シナケレバ、
今日ノ物價局ノ活動デハドウカト思フ、サウ
考ヘマスト、新稅ヲ起スナント云ツタ所ガ、
中々ソレデ以テ財政ノ强化ト云フコトハ難
カシイ、ヤハリ公債ノ方ガ遙カニ「スピー
ドアップ」デ以テ疑ヒナシニ增加シテ行ク、
モウ本年ノ末ニハ恐ラク千億ニナルト思ヒ
マス、ソコデ問題ハ結局公債ノ消化對策如
何ト云フコトニ歸著スルノデアリマス、ソ
コデ此ノ前ノ本會議ノコトヲ蒸返スヤウニ
ナルノデアリマスガ、公債ニ對スル信用ヲ
落シテハナラヌ、ソレニハ公債ガ全部消化
スルト云フ情勢ヲ續ケナケレバイカヌ、
昨日大臣ハ九割三分ノ消化デアルト言ハレ
タ、所ガソレデハ七分殘ル、段々賣レ殘リ
ガアツテ、日本銀行ノ藏ノ中ニハ七十幾億
今賣レ殘ツテ居ルト思ヒマス、是ハ先ヅ公
債發行額ノ一割ニ當ル、是ガ二割、三割ト
ナルト「ドイツ」ノヤウナ騷ギガ起ル、併シ
私ハ決シテソンナコトハナイト思ヒマス、
大藏大臣ハ眞劍ニ其ノ方面ニ努力シテ、常
ニ惡性「インフレーション」ヲ警戒シテ居ラ
レル、私モ大臣ニ劣ラズ此ノ「インフレー
ション」ヲ心配シテ居ル、恐ラクソンナヤ
ウナコトハ急ニ起ルトハ思ヒマセヌガ、併
シ斯ウ云フ方法ヲ御執リニナルコトハ出來
ナイモノダラウカ、本年二百七十億ノ貯蓄
ノ中六十億ハ生產資金、アトノ二百十億ガ
公債消化ト云フコトニナル、併シ今賣レ殘
リガアル、ソレハ消化ノ目標ノ中ニハ御入
レニナツテ居ラヌ、古イ話ニナリマスガ、
昭和七年ニ初メテ赤字公債ガ三千萬圓出
タ、ソレガ段々累積シテ來テ、長イ間大藏
大臣ヲヤツテ居ラレタ高橋先生ハ是デハイ
カヌト云フノデ、赤字公債漸減政策ヲ執ツ
ク、併シ一擧ニシテ赤字公債ヲ根絕スルコ
トハ出來ヌ、明年ハ八億、來年ハ七億、六
億ト段々減ラサウト云フコトデアツタ、考
ヘハサウデアツタガ、併シ實際ハ其ノ通リ
高橋サンモ出來ナカツタノデアリマス、ソ
コデ日本銀行ノ賣レ殘リノモノヲ十億、二
十億追加シテ行ツテ戴キタイ、例ヘバ明年
公債消化ノ爲ニ貯蓄三百億トナサルナラバ
其ノ三百億ニ十億、二十億ト云フモノヲ加
ハト新シイ發行額ノミデハナクテ、旣
玆ニ賣レ殘リノモノヲ消化スルノダ、サウ
セヌト「インフレーション」ガ起ル、是ガ「イ
ンフレーション」ノ芽立チデアルト云フコ
トヲ國民ニ知ラセル、ソレハ如何ナモノデ
アリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=54
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055・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ今更小野サンニ申上
ゲルマデモナイノデアリマスルガ、此ノ通
貨ノ問題ニ付キマシテ、極力緊縮ヲ圖ルト
云フ面ガ必要デアリマスト同時ニ、締メ上
ゲルト云フコトガ急ニ行クカ行カヌカト云
フ點ニ又考慮ヲ要スルト思フノデアリマス、
率直ニ中シマシテ、私ハ現在程度ノ消化以
上ニ消化出來ナイ、今後百「パーセント」デ
ズツト行ケバ先ヅ上乘ダト思ヒマス、併シ
俗ナコトヲ中シマスヤウデ、是ハ私ハ眞ダ
ト思ヒマスガ、大〓モノハ百考ヘテ百行ク
モノデハアリマセヌ、ソレデ今後ノ狀況ニ
依リマシテハ、御話ノヤウニ貯蓄ガ三百億
デ一應宜イ計算デアルケレドモ、旣發ノ公
債二十億消化ヲ今年ハヤラウデハナイカト
云フヤウナコトモ、御話ノ如ク執ルベキ場
合ガアルト私ハ思ヒマス、併シソレデハ每
年ヤツテ、ソレヲドン〓〓使ツテ行クカト
云フト、私ハ是ハ必ズシモ今後ズツト漸減
主義的ニヤツテ行クノガ宜イカドウカト云
フコトニ、-言葉ハ惡ウゴザイマスガ、
ヤハリ匙加減ガ要ルト思ヒマス、是等ノ點
ニ付キマシテハ色々其ノ時ノ情勢ヲ考ヘテ
參リタイト思ヒマスルノデ、十九年度ノ施
策トシマシテ、ソレヲ今執リマスカドウカ
ト云フコトハ一寸ハツキリ申上ゲ兼ネルノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=55
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056・小野義一
○小野(義)委員 能ク分リマシタ、先程松原
サンカラ貯蓄ヲドウ云フ具合ニ奬勵スルカ
ト云フヤウナ御話ガ出タヤウデアリマスガ、
之ニ關聯シマシテ一寸私ガ平生カラ考ヘテ
居リマスコトハ、細カイコトノヤウデスガ
普通銀行ガ貯蓄業ヲ兼ネルコトニナツタ、
是ハ八月二日カラデアリマス、ソコデ普通
銀行ノ預金ノ種類ガ十一カ十二ニナツテ居
リ、實ニ銀行當事者ハ面倒デ困ルト云フコ
トヲ愬ヘテ居リマス、是ハ御耳ニ入ツテ居リ、
銀行局長ナドモ御承知ト思ヒマス、ソレデ
又コヽニ妙ナコトハ普通銀行ハ特別預金ノ
外ニ今普通貯金ヲヤルコトニナツテ居ル、
サウスルト普通貯金ノ利子ノ方ガ高イ、ソ
コデ特別當座預金ガ普通貯金ニ移ツテシマ
フ、今度ハ又貯蓄組合ニ入ツタナラ、モツト
金利ガ多クナルノデソツチヘ逃ゲル、其ノ
爲ニアツチヘ行キコツチヘ行キシテ盥廻
シニナル、是ハヤハリ何トカ簡素化ヲヤル
必要ガアル、銀行ハ實際困ツテ居ル、預金
者ハ金利ノ高イモノニ直グ飛ビ込ンデ行ク
所ガソレガ据置ガ長イト止メテシマツテ又
元ニ戾ル、何ノコトハナイ、盥廻シデアル、
是ハ大藏當局トシテ整理統合ヲナサル必要
ガアル、簡素化ナサル必要ガアル、銀行當
事者ハ實際困ツテ居ル、殊ニ近頃ハ男子ハ
徴用サレテ、女子ガ窓口ニ居ルノデ本當ニ
仕事ガ鈍イ、慣レタラ宜イカモ知レマセヌ、
銀行業務ノ如キハ非常ニ單調ナモノデアリ
マスカラ、却テ婦人ニ似合ハシイ仕事カモ
知レマセヌガ、今ノ所デハ實ニ困ツテ居リ
マス、是等ニ付テ別ニ率直ナ御答辯ヲ願フ
必要モアリマセヌガ、御考ヘ置キヲ願ヒタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=56
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057・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ問題ハ至極御尤モ
デアリマス、唯銀行當事者モ新種貯金ヲ工
夫シテ貰ヒタイト云フコトヲ盛ニ言ツタ時
代モアリマス、ドツチカト申シマスト、從
來私共ハ世間ノ要望ヨリハ新シイ手ヲ貯蓄
ニ使ハナカツタ方デアリマス、是モ甚ダ俗
ナコトヲ申上ゲテ恐入リマスガ、私ハ眞ニ
サウ思ツテ居ルノデアリマス、是ハヤハリ
色々ナ要求デアリマシテ、私共ガ町內會長
ナド貯蓄ニ熱心ナ人ニ接シマシテモ、本當
ニ眞劍デ眞面目ニヤツテ居ル人ハ貯蓄ハ一
ツデ宜イデハナイカ、モウソレニ全力ヲ集
中シタラ宜イデハナイカ、斯ウ申シテ居ラ
レマシタ、ソレハ御尤モナノデアリマス、
併シ是モ俗ナコトノヤウデアリマスガ、私
ハ信ジテ居ルノデアリマス、又實際ノ策ト
シマシテハ、アノ手、此ノ手ト行クノデ、
此ノ手ダケデハドウシテモ十圓ヨリヤレナ
イガ、アノ手ガアルカラモウ二圓ヤルモ
ウ五十錢ヤル、モウ三十錢ヤル、是モ亦實
相ナノデアリマス、ソコノドレガ結局ヨリ
多ク貯蓄ガ出來ルカト云フ觀點カラノ考ヘ、
又今ノ手數ノ點モ考ヘテ、ドノ邊ガ宜イカ
ト云フコトガ一番重大ダト思ヒマス
〔委員長退席、田村(秀)委員長代理著
廣
是ハ理窟ヲ言ヒマシタナラバ、人ノ觀ル
所ニ依ツテ違ヒマスガ、實ハ其ノ點ニ付テ
私共トシテハ最善ヲ盡シテ行キタイ、實、
新手ト云フコトニ付テハドツチカト云フト
私ハ過小評價シテ居ル、例ヘバ新種ノ貯金
ヲシマスト、御話ノヤウニコツチカラアツ
チニ移リマシテ、新種ノ貯金ハ何十億出來
タト云フガ、ソレハコツチカラアツチニ移
ツタモノガ多イノデ、ソレガ出來タ爲ニ、
本當ニ殖エルモノハ其ノ中ノ一割カ二割カ
三割、ドンナ場合デモ中々五割ハナイ位
ニ思フ、ソコデ債券ノ問題デモサウデアリ
マスルガ、新手ト云フモノニ對スル或ル意
味デ過小評價的ノ考ヘヲ持ツテ居リマス、
ソレデハ全部移ルダケカト云フト、ヤハリ
出來タ爲ニ殖エル部分モアリマス、實際ノ
貯金ノ種類ナドニ付キマシテ、存置スルカ
移スカト云フコトニ付テハ中々考慮ガ要ル
ト思ヒマス、今ノヤウナ理論ノ一貫デ行キ
マセヌデ、實際ノ睨ミト云フカ、考ヘ方デ
行ツテ、兎ニ角最善ヲ盡シテ行ク積リデ居
リマス、大體ノ趨勢ハ御話ノヤウニ、吸收
面カラ言ヘバ凡ユル銀行ハ或ル意味ニ於テ
貯蓄銀行化スル、使用面カラ言ヘバ、凡ユル
銀行ハ興業銀行ニナリツヽアルノデアル、
是ハ實情デアリマシテ、ドウシテモ貯蓄面
ニ付テ普通銀行ガ努力シテ貰ハナケレバナ
ラヌ、今囘ノ課稅モ或ル意味デ貯蓄銀行ト
普通銀行ト云フモノガ一ツノ同ジヤウナ働
キニナツタト云フコトモ出テ居リマスガ、
實際ソコマデ私ハ來テ居ルト思ヒマス、ソ
レカラ今ノ簡素化ニ付キマシテモ色々工夫
ヲ致シマシテ、例ヘバ私ハ間接稅ニ付キマ
シテモ、酒ガ一石幾ラ、「ビール」ハ一石幾
ラト云フヨリモ、一壜ノ「ビール」ガ何錢デ
賣レル、端數ノナイハツキリシタ所デ行ク
酒ノ一升ガ幾ラ、斯ウナルヤウニ、是ハ私
一人デアリマセヌデ、段々歷代工夫ヲシテ
參ツタ譯デアリマスガ、ソレト同ジヤウニ、
預金課稅トシマシテモ、是ガ預金ノ利子ダ、
稅ガ幾ラダ、差引幾ラデハモウ今御話ノ
ヤウナ女ノ子ヲ使ハナケレバナラヌ時代ニ
銀行ハヤレマセヌ、稅引利廻リガ一本デ出
ル、ソレモ簡單ナ計算デ出ルト云フヤウニ
シテ、稅金ハ纏メテ取ツタ結果、細カク一々
ノ預金ニ付テ正確ニヤツテ行ケバ、少々
何百圓カ、何十圓カ、或ハ何千圓カ取過ギ
取足ラナイコトモアルカモ知レマセヌガ、
ソレヲ容認スルヤウナ制度デ行クヨリ外仕
樣ガナイ、今囘ノ措置ニモ現ハレテ居リマ
ス、五千圓以下ニ百分ノ五掛ケマシタガ、是
モ百分ノ四マデ下ゲテ宜シイト云フノハ
*
今ノ掛ケ方ガ行員ガ高イ能力ヲ要セズシテ
簡單ニ計算ガ出來テ行クト云フコトモ顧慮
シタノデアリマシテ、サウ云フ面ニ付テモ出
來ルダケ工夫ハシテ參ル積リデアリマス
〔田村(秀)委員長代理退席、委員長著
席発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=57
-
058・小野義一
○小野(義)委員 有難ウゴザイマシタ、終
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=58
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059・中島彌團次
○中島委員長 西村茂生君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=59
-
060・西村茂生
○西村委員 所得稅ノコトニ付キマシテ御
伺ヒ申上ゲタイト思ヒマシタガ、原君アタ
リカラ御尋ネニナツテ重複シマスシ、大藏
大臣ハ只今答ヘルコトハ難カシイト云フコ
トデアリマスカラ、其ノ方面ハ拔キニシテ、
主トシテ地方稅ノコトニ付テ御伺ヒ申上ゲ
タイト思ヒマス、實ハ陸海軍ノ方ニ來テ戴
キマスト非常ニ宜イノデアリマスガ、出席
ハ難カシイデセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=60
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061・中島彌團次
○中島委員長 少シ遲レマスケレドモ、見
エルサウデス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=61
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062・西村茂生
○西村委員 陸海雙方ノ方ガ見エルト非常
ニ都合ガ好イノデスガ--サウスルトオ見
エニナルマデ他ノコトニ付テ伺ヒマスガ、
政府ハ地方財政ノ確立ヲ非常ニ熱心ニ申シ
テイラツシヤイマスガ、私共ハ年來都會集
中ノ頭ダケデ太ル福助人形式ノ政治、財政
ノヤリ方ハ面白クナイト云フ愚見ヲ持ツテ
居ツタ譯デアリマスガ、今日ノ戰爭下ニ於
テハ痛切ニソレヲ感ジマス、人口疎開及ビ
其ノ他官廳疎開ト云ヒ、益〓地方的ニ御考
ヘヲ願ハナケレバナラヌコトガ迫ツテ參リ
マシタ、內務大臣及ビ大藏大臣ヨリ抽象的
ニハ申サレテ居リマスガ、地方財政確立ノ
爲ニ地方稅ニ付テ今後適當ナ改革ヲナサラ
ナケレバナラヌ、今少シ彈力性アル稅ヲ與
ヘナケレバナラヌト思フ、其ノ一番良イ證
據ハ市民稅ヲ今以テ昔ノ戶數割的ニ賦課シ
テオイデニナル、現ニ私共ノ山口縣デモ大
部分サウデアリマスガ、マダ戶數割ノ性格
ヲ持ツテヤツテ居ル所ガ大部分デアリマス、
之ヲ以テ見マシテモ、非常ニ地方ノ財政
ガ困難デアリ、彈力性ノアル稅ヲ持チタイ
ト云フコトヲ考ヘテ居ルト思フノデアリマ
スガ、今後ドウ云プ風ニヤツテ行ク方針デ
只今〓究ヲ進テメオイデニナルカ、其ノ一
端デモ御漏シガ出來レバ願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=62
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063・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ所ハ先刻申上ゲマ
シタ今囘ノ三收益稅及ビ其ノ附加稅作用ノ
ト分與稅ノ增額デ參リマス、又歲出方面ノ
負擔區分ノ點カラ參ツテ居リマシテ、明年
度ハワレデヤツテ行キタイト思フノデアリ
マスルガ、此ノ點ニ付キマシテハ、彈力性
ト云フコトガ非常ニ必要デアリマスルト同
時ニ、又過去ノ例デ見マシテモ、其ノ彈力性
ノアルモノガ出來マシテモ、是ハ中央モ地
方モサウデアリマスガ、直グ又限度ガ一パ
イニナリマシテ制限外ニナリ、彈力性ガナ
クナルト云フヤウナ點モアル、餘程色々ナ
點ヲ考ヘテ行カナケレバナラヌト思フノデ
アツテ、前申シマシタヤウナ此ノ年度ノ經
過ヲ見、分與稅制度ノ一應平年度ニナリマ
スル邊カラ考究シテ參リタイ、斯樣ニ考ヘ
テ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=63
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064・西村茂生
○西村委員 分與稅ノ增額ド營業收益稅ノ
作用カラ參リタイト云フ御話デアリマスガ、
私ガ申ス例ハ少シク特殊ナ事情カモ知レ
マセヌガ、殊ニ大臣ニ事情ヲ申上ゲマシテ、
如何樣ナ御考ヘヲ持ツテ居ラレルカ伺ツテ
見タイト思ヒマス、企業整備其ノ他ノ結果
トシマシテ、營業收益稅ハ相當ニ減額ヲ致
スヤウニ思ヒマス、殖エマシテモ大シタコ
トハナイト思ピマス、殊ニ或ル地方デハ法
人ノ方面ニ於キマシテモ、平和產業ガ悉ク
軍ノ管理工場ニナルト云フヤウナ關係ニナ
リマシテ、マア殆ド營業收益稅ガ取レナク
ナルノミナラズ、二、三年前新設ノ會社ニ
シマシテモ、今年漸ク三箇年間ノ免除期間
ガ滿了シマシテ四年目ニナルト云フ時ニナ
ツテ、前年ニ製造品ノ物價統制ノ關係上、
赤字ニナツテ稅ガ取レナイノミナラズ、更
ニ今度ハ民間會社ガ軍ノ命令デ軍需會社ニ
ナルトカシテ、スツカリ市ノ見當ガトレテ
來テ、或ル市ノ如キハ右ノ收入ヲ公債財源
ノ何十萬圓何百萬圓ノ償還ニ引當テタモノ
ガ殆ド取レナクナリ、財政的ニ非常ニ困難
ナ狀態ニナル地方ガ多々アルト思ヒマスガ
サウ云フ市ガアルト御認メコナルト思フガ、
實情ヲ十分ニ御調査ニナツテ戴キタイ、サ
ウ云フコトニテルト、斯ウ云フ市町村ハ殆
ド借錢デヤルヤウニナルシ、サウカト云ツ
テ一方大藏省へ行クト赤字ノ公債ハ許サナ
イト云フヤウナ風ニナリマシテ、二進モ三
進モ行カヌヤウナ狀態ガ全國ニアルト思ヒ
マい、殊ニ瀨戶內海ノヤウナ所ニ於テハ、
昨今ノヤウナ戰時下ニ於テハサウ云フ市町
村ガ相當ニアルノデハナイカト思フガ、其
ノ點ニ付テハ大藏省トシテハ、イヤ戰時中ダ、
國家ノ爲ニ戰爭ハ勝タナケレバナラヌカラ、
今マデノ通リノ健全財政バカリ言ツテハ
居レヌカラ、已ムヲ得ナイナラ赤字公債モ
許サウト云フヤウナ御取計ヒヲ認メラレテ
居ラレルカドウカ御所見ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=64
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065・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 地方財政ニ於キマシテ歲
入ガ減リマシタ時ニハ、自働的ニヤハリ歲
出ヲ調整シマシテ、成ベク自分ノ力デ之ヲ
處理シテ戴キタイト云フコトハ、ソレ〓〓
團體ガ獨立シテ居リマスル以上當然ノコト
デアリマス、併シ只今御述ベノヤウニ、企
業整備ト云フヤウナ、國家的ノ戰時特別ノ必
要カラ起リマシテ、ソレデ地方ノ收入ガ大
イニ減ズル、而モ戰時デアツテ出來ルダケ
仕事ヲ減シタイケレドモ、ドウシテモヤ
ラナケレバナラヌ仕事ハ或ル程度ハアルト
云フヤウナ時ニハ、何トシテモ其ノ事態ニ
應ズル處置ハ國家トシテハ執ツテ行カナケ
レバナラヌ、或ル程度ハ分與稅等ノ配付ニ
依ツテ自働的ニ調整サレル場合モアリマス
ガ、ソレ以上何トカ處置ガ必要ナル場合ニ
ハ、其ノ團體ニ於テモ極力御努力力ヲ願ハナ
ケレバナラヌノデアリマスガ、努力シテモ
イカヌト云フ面ニ付テハ、國家トシテモ何
トカ考ヘル積リデアリマス、其ノ實情等ニ
付キマシテハ內務省ノ政府委員モオイデニ
ナリマスカラ、寧ロソチラカラ申上ゲタ方
ガ宜カラウカト思ヒズガ、根本方針ハ、
前ノ議會ニモ申上ゲタ通リ、其ノ處置ハ十
分執ツテ行キタイト思ツテ居リマス、機械
的ニ財源モヤラヌ、斯ウ云フ起債ハ、絕對ニ
ナラヌ、ドツチモ立ツテ行カヌト云フヤウナ
關係デハ實際行キマセヌ、十分處置致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=65
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066・西村茂生
○西村委員 實情ヲ的確ニ御承知ガナイト
分リマセヌデセウガ、防諜ノ關係モアルカラ
ト思ツテ差控ヘタガ、此ノ程度ハ宜カラウ
ト思ヒマスカラ、其ノ實情ヲ中上ゲテ御答
辯ヲ願ヒマス、一、二年前マデハ二、三萬位
ノ市デ財政的ニ辻褄ガ合ツテ來タ所ニ、俄
カニ陸海軍ノ施設ガ出來、又ソレニ附隨ス
ル軍ノ命令工場モ新設サレタリ、ソレニ轉
向シタ工場ガアツタリシテ、一、二年間ニ人
口ガ優ニ六、七萬ニモナリ、而モ會社カラ
ハ營業收益稅モ取レナクナツタ、サウ云フ
ヤウニ人口モ激增シ、又サウ云フ急激膨脹ノ
關係カラシテ、學校、道路、港灣ノ施設等
モシナケレバナラヌ、ソレハ起債ノ許サレ
ルモノモアルガ、一々サウデナイモノモア
ル、サウシテ自然ニ赤字ニナルト云フ、止
ムヲ得ナイ市ガ具體的ニアルガ、是デハ迚
モ平素ノヤウナ所謂入ルヲ量ツテ出ヅルヲ
制スルト云フヤウナコトハ實情ガ許サナイ、
ソレナラソレハ國ガ見テヤルト云フコトニ
ナルト、結局分與稅ノ問題ニナルガ分與稅
ヲ十五萬ヤ二十萬貰ツタ所デ、迚モ財政ノ
將來ニ付テハ二進モ三進モ行カヌ、結局公
債償還財源ハナイコトニナルノミナラズ、
現ニ目ノ前ニ困ルヤウナコトガ起ツテ居ル、
軍ノ方デモ平素當該市町村ニ對シテハ之ヲ
認メラレ、色々同情サレテ居ルガ、事實ハ
未ダ何ノコトモナイト云フ譯デス、サウ云
フ地方ガアル、ソレモ三、四十年前カラ師
團所在地デ徐々ニ增シテ來タト云フノナラ
宜シイガ、ソレガ急激ニ來タ所ニ地方財政
ニ無理ガ出來タリ困ツタリスルコトガ起ル、
急激ニサウ云フヤウニナルコトニ常ニ困ル
コトガ起ル、一方デハ收入ガ減リ、野ツ原
ニ飛行場ガ出來タリ、又他ノ軍ノ施設ガ出
來タリシタノナラマダシモデアルガ、從來
地租モ取レタ優良ナ田畑ガナクナルト云フ
實情デアツテハ更ニ困ルコトニナル、是一
內務當局ニ御伺ヒシテモ宜シイガ、地方財
政ト云フ點ノミカラスルト、事實困ウテ居
ル地方ガアル譯デスガ、之ヲ如何樣ニ御考ヘ
ニナツテ居ラルヽカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=66
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067・新居善太郎
○新居政府委員 只今ノ點ニ付テ私カラ御
答へ致シマス、只今御話ノヤウニ、此ノ生
產力擴充、國防態勢强化ニ伴ヒマシテ、軍
關係ノ施設或ハ生產力擴充關係ノ施設ガ急
激ニ殖エテ參リマシテ、著シイノハ純然タ
ル農漁山村ガ急激ニ一大都市ニ轉ズルト云
フ風ナ現象ガ所々方々ニ起ツテ居ルノデゴ
ザイマス、ソレデ從來サウ云フ點ニ對シマ
シテ地方デモ御困リデアリマスシ、政府ト
致シマシテモ曩ノ稅制改正ニ依リマシテ、
今御話ノヤウナ地方分與稅ノ制度ガ設ケラ
レマシテ、サウ云フ所ニ對シマシテハ、現
在ノ制度ト致シマスト、一應只今御話ノヤ
ウニ稅ガ取レナクナルト云フ風ナ關係ニテ
リマスト、課稅力ニ逆比例シテ配付稅ヲ分
配スルト云フコトモアリマシテ、自然配付
稅ノ流レモ、ソチラヘ多ク行クトカ、或、
又特別ノ配付稅ニ於キマシテ、官業施設ノ
大キイモノガアル所トカ、或ハ公用地ノ面
積ガ非常ニ大キイトカ、或ハ人口ガ急激ニ
增加シタト云フ特別ノ事情ヲ加味致シマシ
テ、特別ノ配付稅モソチラヘ行クト云フ制
度ニナツテ居リマス、供シ是ハ又程度ガ
ゴザイマスノデ、現今ノヤウナ非常ニ急速
ナ激變ガ參リマス時ニハ、地元ノ公共團體
ト致シマシテモ、財政的ニ苦シムコトハ明
瞭デゴザイマスノデ、只今斯ウ云フ所ニ對
スル應急ノ措置トシテ如何ニスベキカト云
フコトニ付キマシテハ、ソコノ施設ニ付キ
マシテモ、或ハ急激ニ道路ヲ造ルトカ、或
ハ下水ヲ造ルトカ、上水道ヲ造ルトカ、或
ハ港灣ヲ造ルトカ云フ風ニ、施設ノ綜合的
ナ計畫又ハ其ノ實現化ニ付テモ、相當ノ政
府ト致シマシテ相談相手ニモナリ、又指導
モスルト云フコトヲスル、ソレニ相伴ヒマ
シテ是ガ財政的ノ措置ト云フコトニナルト、
十分力ヲ盡サナケレバラヌノデハナイカト
思ヒマシテ、是ハ政府部內ノコトデアリ
マスガ、目下委員會ヲ設ケマシテ、關係ス
ル軍當局ハ勿論、財政ノ方面モ、又我々地
方ヲ監督指導シテ居ル方面モ集マリマシテ、
是等ニ對スル〓究ヲ致シマシテ、其ノ〓究
ノ出來タ順ニ之ヲ豫算化シ、或ハ實際ノ計
畫ノ實現化ヲスルト云フ道程ニアルノデア
リマス、以上ノヤウニ今後トモ十分努力致
シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=67
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068・西村茂生
○西村委員 次ノコトモ陸海軍ノ方ガ御見
エニナラヌカラ、内務當局カラ御答ヘヲ戴
イテモ宜シウゴザイマス、防諜ノ關係デ名
前ヲ言フコトハ避ケマスガ、同ジ海軍關係
ノ方ノ役所デ、或ル市町村ノ方ニハ補助ヲ
スル、助成金ヲヤル、或ル市町村ニハ助成
金ヲ出サナイ所ガアルガ、是ハ片方ハ營內
居住者バカリダカラ與ヘヌ、一方ハ營外居
住者ガ多イカラヤルト云フヤウナ何カ內規
デモアリマスカ、御承知ナラ代ツテ御所見
ヲ伺ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=68
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069・新居善太郎
○新居政府委員 只今ノ點ニ付キマシテハ、
内規等ガアルカドウカト云フコトハ承知致
シテ居リマセヌ、併シサウ云フ事實ノアル
コトハ承知致シテ居リマス、斯ウ云フ點ニ
付テハ相當從來ノ沿革モアリマセウシ、ソ
レヲ始メタ時ノ理由モアリマセウガ、斯ウ
云フ風ニ情勢ガ激變シテ參ツタノデアリマ
スカラ、斯ウ云フ方面ト我々ノ方トモ十分
懇談ヲ致シマシテ、地元ガ本當ニ戰力增强
ニ急速ニ邁進出來ルヤウニ、又其ノ障碍ト
ナルベキモノガアリマスレバ、一刻モ早ク
ソレヲ除去スルヤウニ、十分相談シマシテ
善處シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=69
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070・西村茂生
○西村委員 內規ガアルカドウカ分ラヌト
云フコトデアリマスカラ、仕方ガアリマセ
ヌケレドモ、サウ云フヤウニ實際ハ劃然ト
區別ガ出來ナイ實情デ、何レモ地方ト密接
ナ關係ガアルト云フコトヽ能クサウ云フ點
ハ地方財政ノ點ニ同情ヲ以テ御考慮ヲ願ツ
テ置キタイト思ヒマス、ソレカラ私仄カニ
承ルト陸軍ノ方ハ、海軍ト同ジ軍デモ助
成金ノ出シ方ガ違フヤウデアリマスガ、陸
軍ハ營外居住者、營內居住者何レノ關係ニ
於キマシテモ、ドチラモ出シテ居ラレマセ
ヌヤウデスガ、サウデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=70
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071・新居善太郎
○新居政府委員 改マツテ陸軍當局ニ聽イ
タコトガアリマセヌカラ、或ハ間違フカモ
知レマセヌガ、私共ノ承知致シテ居ル所デ
ハ、出シテ居ル例ヲマダ聞イテ居リマセヌ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=71
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072・西村茂生
○西村委員 內務當局ハサウ云フヤウナ特
殊事情ノ地方ノアルコトハ、御認メニナツ
テ居ルト思ヒマス、昨年末陸海軍兩御當局
トモ相當同情考慮サレテ、其ノ方面ノ調査
會ニモ參畫シテ、御心配ニナツテ居ラレルト
承知シテ居リマスガ、成ベク急速ニ調査ヲ
進メテ戴キタイト思ヒマス、仄カニ承リマ
スト此ノ分與稅モ、昭和十九年度デ更ニ增
サレ、殆ド千萬ニ近イヤウナモノヲ出サレ
マシテ、全國十都市ヲ選ンデ相當助成ヲス
ルト云フ御計畫ト承ツテ居リマスガ、是一
事實デゴザイマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=72
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073・新居善太郎
○新居政府委員 只今ノ御話ノサウ云フ風
ナ都市、或ハ是カラ都市ニナラントスル所
ガ、非常ニ多イノデアリマスルガ、先程來
申上ゲマシタヤウナ趣旨デ十分〓究致シマ
シテ、最近只今御話ノヤウニ、十箇所ニ付
キマシテ綜合計畫ノ成案ヲ得マシタノデ、
取敢ズソレニ對シテ事業ニ對スル助成ノ方
法ヲ講ジテ居ルノデゴザイマシテ、分與金
ノ方デ其ノ方ヲ特別ニヤルト云フコトデハ
ナイノデアリマス、左樣御承知ヲ願ヒマスゝ
尙ホ爾餘ノ所ニ付キマシテモ、我々ト致シ
マシテハ關係方面ト密接ナ連絡ヲ執リマシ
テ、十分承知致シテ居ル積リデゴザイマス
カラ、之ニ付テモ只今引續イテ具體的ノ〓
究ヲ續ケマシテハ同樣ノ措置ヲ執リマシテ
地元ガ御困リニナラヌヤウニ、急速ニ戰力
增强ニ邁進サレルヤウニ致シタイト考ヘテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=73
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074・西村茂生
○西村委員 十箇所ト云フコトデゴザイマ
スガ、此ノ十箇所ノ市ヲ御選ビニナル方法ニ
付テハ、强ヒテ追究シテ伺ヒマセヌガ、唯全
國六大都市ト云フヤウナ型ニ嵌マツタヤウ
ナコトデオヤリニナルコトモ宜シイカモ知レ
マセヌガ、サウデナク實情ヲ能ク御調査ニ
ナリマシテ、市ノ大小ヲ問ハズ選ンデ戴ク
コトカ適當デハナイカ、全國六大都市ト云
フコトデナク、小サナ市デモ必要ナ所ガア
ルノデハナイカ、是カラ十分調査シテヤル
ト云フコトデアリマスガ、十箇所ニ止マラ
ズ、今後一ツ斯ウ云フ特殊ナ方面ニ目ヲ配
ラレマシテ、更ニ來年度ハ數モ增サレマシ
テ、是レ以上ニ御配慮ヲ願ハナケレバナラ
ヌト思ヒマスガ、左樣ニ伺ツテ宜ウゴザイ
マスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=74
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075・新居善太郎
○新居政府委員 箇所ノ選擇ニ付キマシテ
ハ、只今御話ノ通リニ從來ノ形式的區別ニ
拘泥スルコトナク、其ノ場所ノ性質ニ依リ
マシテハ、軍ノ基地トモナリ、或ハ又軍ノ
兵站基地ノヤウテ關係ニモナル次第ガアリ
マスノデ、軍其ノ他ノ方面ト十分實質的ニ
相談ヲ致シマシテ、順位ヲ立テマシテ實際
國家ノ要請スル所カラ、急速ニヤリタイト
思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=75
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076・西村茂生
○西村委員 只今ノ御答辯デ非常ニ滿足ニ
思ヒマス、是ハ陸海軍ノ方ガオイデニナラヌ
所デ申上ゲテハ何デアリマスガ、私ハ斯ウ
思ヒマス、地方ノ財政ニ付テノ助成トカ援
助トカ色々名前ハアリマセウガ、斯ウ云フ
方面ハ何ト致シマシテモ內務當局ガ一番事
情ニ御詳シイ譯デアリマスカラ、陸軍ハ今
マデヤツテ居ラヌト云フコトデアリマスガ、
是カラヤラレルヤウニナルカモ知レマセヌ
シ、又既ニヤツテ居ラレル海軍ニ致シマシテ
モ、斯ウ云フコトハヤハリ陸海軍トモニ一
樣ナ態度ニ出ラレテハドウ万、ソレニハ事
情ニ通ジテ居ラレル役所ガ一本デ一纏メニ
シテオヤリニナルコトガ、一番公平デモアリ
兩軍ニ對スル地方民ノ氣持モ一樣ニナリ、
能ク行キ亙ルヤウニ思ヒマス、兎ニ角何レ
モ中央ノ國ノ金デアリマスカラ、斯フ云フ
扱ヒハ內務省デ一本ニ纏メテ扱フヤウニナ
サレル御考ヘハナイノデアリマセウカ、此
ノ點御答辯ガ出來レバ御願ヒシタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=76
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077・新居善太郎
○新居政府委員 只今ノ點ニ付キマシテハ
先程來申上ゲマシタヤウニ、關係方面ガ集
マツテ相談ヲシテ居リマス、ト云フノハ調
査費モ計上サレテ居リマスノデ、ソレニ依
リマシテ內務省デ委員會ヲ作リマシテ、關
係各省、陸海軍ハ勿論大藏省ノ方カラモオ
イデヲ願ヒマスシ、我々モ出マシテ〓究ヲ
續ケテ居リマスノデ、御心持ノ點ハ能ク了
承致シマシタカラ、關係方面ニモ其ノ點ヲ
傳ヘ、今日政府委員ノオイデニナラヌ所ニ
モ御傳へ致シマシテ、十分相談致シタイト
思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=77
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078・西村茂生
○西村委員 ドウカ私ノ申上ゲタコトヲ善
意ニ御取リニナリマシテ、御出席ノナイ軍
部ノ方ニモ能ク御傳へ願ヒマシテ、急速ニ
實情ニ卽シタ御調査ヲ遂ゲラレマシテ、私
共ノ希望ヲ達成スルヤウニ御配慮願ヒタイ
ト思ヒマス、之ヲ以テ私ノ質問ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=78
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079・中島彌團次
○中島委員長 次ハ瀧澤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=79
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080・瀧澤七郎
○瀧澤委員 極ク小サイコトデスガ、二三
點御伺ヒ致シマス、先程船田委員ヨリ能
ク御話ヲ願ヒ、大藏大臣ノ御答辯ガアリ
マシタノデ盡キテハ居リマスケレドモ、
實際地方ノ稅務官署ノ中堅ノ吏員ハ待遇ガ
非常ニ惡クテ落着キマセヌ、ソレカラ又今
マデノ大藏省ノ御方針トセラレマシテモ、
同ジ吏員ヲ同一ノ場所ニ置クコトハ、特殊
事情ガ發生シテ、却テ弊害ヲ釀スト云フヤ
ウナ御考ヘ方モアラレテ、轉任ヲ早クセシ
メラレルヤウナコトデアリマスガ、殊ニ上
ニ進ム人達ガ多ク稅務署長ニナラレル場合
ガアリマスト、極メテ又此ノ署長ノ轉任ガ
早イノデアリマスカラ、サウ云フ場合ニ於キ
マシテハ、少クトモ其ノ次ノ課長サン位ノ
高等官ヲ御置キニナツテ、其ノ高等官ハ、
各官廳ニ於テ事務官ハ早ク迭ルガ、判任官
ノ古イ人ハ長ク迭ラナイデ生字引ニナツテ
居ルト云フコトガアリマスガ、サウ云フヤ
ウニ長ク居ルヤウニシテ貰ヒタイ、所ガ稅
務署ニ於キマシテハ、署長ガ迭リ、課長ガ
迭リ、主任ガ迭ル、而モ中堅ノ吏員ガ長ク
居リマセヌノデ、實情ニ適スル調査ガ非常
ニ不十分ダト思ツテ居リマス、大藏大臣モ
先程ノ御答辯デ其ノ點ハ御認メニナツテイ
ラツシヤルヤウデスガ、更ニ此ノ點ニ付テ
稅務署吏員ノ優遇、例ヘバ課長ダト云ツテ
偉サウニ思フケレドモ、マア百十圓位ノ月
給デアリマス、主任ダト云ツテ偉イト思ヒ
マシテモ、九十五圓位ガ最高デス、サウ致
シマスト、是等ノ人ハ今日皆逃出シテシマ
フヤウナ實情デ、ソレガ爲ニ例ヘバ調査ヲ
ナサルニ、ソコノ家ニ行カナイデ、唯机ノ
上ダケデ調査セラレテ、ソレガ好イ加減ノ
數字ニナツテ現ハレテ、酷イ目ニ遇ツテ居
ル者ガ澤山アリマスガ、稅ヲ喜ンデ納メル
ト云フ點ニナリマスト、地方ノ稅務署ノ吏
員ヲドウシテモ優遇シテ戴キタイト私ハ考
ヘテ居リマスガ、此ノ點ニ對シテノ御考ヘ
ヲ大臣カラ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=80
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081・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 稅務署ノ官吏ニ付キマシ
テノ御話、洵ニ御同感ノ點ガ多分ニアルノ
デアリマス、官吏全體ニ付キマシテハ相當
ニ待遇ノ問題ガアリマシテ、昨年モ臨時手
賞是ハ官吏バカリデハアリマセヌガ、家
族手當ノ問題モアリマシテ努メテハ居リマ
スルガ、何サマ國費多端ノ際デモアリマシ
テ、思フニ任セヌ事情ガ多イノデアリマス、
今ノ御意見カラ言ヒマスト遙カニ實情トハ
懸隔ハアリマスガ、尙ホ此ノ上ナガラ出來
ルダケノ改善ヲ加ヘテ參リタイト思ヒマス、
官吏ノ轉任ニ付キマシテハ只今細カイコト
ヲ申シマスヤウデアリマスガ、住宅ニ致シ
マシテモ、又轉任ノ爲ノ輸送ト云フノモ大
袈裟デアリマスガ、家財其ノ他ヲ移シマス
面カラ考ヘマシテモ、ドノ面カラ考ヘテモ
成ベク轉任ハサセタクナイト云フ今特殊ノ
戰時下ノ事情ガアリマスノデ、平時ヨリハ
餘程其ノ點ニ付キマシテハ方針ヲ變ヘテ、
平時デアリマスト稅務署ノ各署長トカ何ト
カ、一人動カセバ七人モ八人モグル〓〓廻
ハス、是レ亦相當理由モアルノデアリマス
ガ、只今ソレヲ出來ルダケ差控ヘタイト存
ジマス、出來レバ一人ガ迭リマスレバ其
ノ次ノ者ヲ上ゲテ行クト云フコトニシタイ
ノデアリマスガ、ソレデハ又ソコニ非常ニ
權衡ヲ失スル面モアリマシテ、一方ノ觀點
カラ考ヘテ不十分ノ點モアリマスガ、其ノ
點ハ餘程注意ヲシテ居ル譯デアリマス、凡
ユル點ガ經費或ハ人的資源等ノ不足ノ爲ニ
思フニ任セナイ、寧ロ私トシマシテハ、稅
務官吏其ノ人々ノ爲ニモ、眞ニ同情ヲ禁ズ
ル能ハザルモノガアルノデアリマス、ソコ
デ出來ルダケノ施策ハ講ジテ參リタイ、本
年ノ豫算デモ幾ラカ改善ノ出來ル點モアル
カト存ズルノデアリマス、此ノ上ナガラ努
メテ參リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=81
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082・瀧澤七郎
○瀧澤委員 次ニ斯ウ云フ點ヲ御考慮戴キ
マシテ、大臣カラモウ少シ文部省ノ方ニ注
文ヲ付ケテ戴キタイト思ヒマスコトハ、先
程モ大臣カラ御話ガアリマシタケレドモ、
私共ガ〓育セラレタ時代ハ參政ノ權利デア
ルトカ、納稅ノ義務デアルトカ、兵役ノ義
務デアルトカ、權利義務ト云フヤウナ言葉
ノ中カラ納稅ノ義務ダト云フ風ニ考ヘサセ
ラレテ來マシタガ、今日ノ狀態カラ見マス
レバ之ヲ全然打變ヘテ、國ニ報ユル爲デア
ル、公ニ報ユル爲デアルト云フヤウナ理念
ノ下ニ稅金ヲ上納スルト云フ風ニナツテ行
カナケレバナラヌノデアリマス、昨年〓科
書ニ於テモ多少其ノ理念ヲ以テ變ヘラレタ
ヤウデアリマスケレドモ、マダ私ハ國民〓
育ニ對スル納稅ノ考ヘ方、頭ノ切替へ方ガ
十分ニ行ツテ居ラヌト思ヒマスガ、之ヲ十
分ニ徹底的ニ、國民〓科書ニ取入レルヤウ
ニ是非大臣ヨリ御注文願ヒタイ、此ノ理念、
頭ノ切替ヘ方ヲ今日ニ於テ國民ニ指導シ
ナケレバナラヌヤウニ考ヘテ居リマスガ、
之ニ對スル御考ヘハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=82
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083・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 洵ニ御同感デゴザイマス、
所謂西洋流ノ文物制度ヲ輸入シマスコト
ハ、同時ニ文化ノ發達ニナリマス立場カラ、
一時ハ色々ノモノノ考ヘ方ガ所謂西洋流ノ
對立觀念、權利義務的ニ考ヘラレ、又或ル
程度ハソレニ徹底スル必要モアツタノデア
リマスルガ、根本ハ御話ノヤウニ、各國民
ガ財物ヲ通ジテ國家ニ御奉公スル、此ノ觀
念ニ外ナラナイノデアリマス、餘程個人ヲ
本ニシタ、ギス〓〓シタ義務觀念ヨリ、進ン
デ赤誠ヲ以テ御奉公スル觀念ニ根本ヲ切替
ヘル必要ガアルト思ヒマス、併シ根本ハ左
樣ナ赤誠デアリマスルガ、ゾレデハ赤誠ダ
カラト云ツテ、理窟モ何モナク唯ヤレバ宜
イカト云フコトニナルト、是ハ多數ノ國民
ノ負擔トシテ餘程考ヘモノデアリマシテ、
今マデアリマス租稅理念モ中段、末段ニ於
テハ存置ヲシテ行カナケレバナラヌモノモ
多分ニアルト思ヒマスガ、根本ハ今御話ノ
ヤウナ理念ヲ切替ヘテ行クト申シマスカ、
前カラアルノデスガ、其ノ點ハ特ニ表ニ出
シテ、明瞭ニ自覺シテ、今ハ進ムベキ時代
デアルト思ヒマス、昨今文部省ノ御協力ヲ
得マシテ、特ニ其ノ點ニ目覺メタ皇國租稅
觀念ヲ、言葉ノ上ニ於テモ言擧ゲシテモ分ル
ヤウニ、實ハ調査會モ今始メテ居ル譯デア
リマス、文部當局モソレニハ熱心ニ御協力
ヲシテ貰ツテ居リマス、ソレ等ノ點ニ付キ
マシテ適當ノ表現方法ヲ早ク得マシテ、御
話ノ如ク〓科書ナドニモ全ク日本人ラシイ
根本ガ明瞭ニ現ハレルヤウニ、更ニ十分ニ
シテ參リタイ、斯樣ニ存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=83
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084・瀧澤七郎
○瀧澤委員 一ツ之ヲ御伺ヒシタイ、是ハ
主稅局長カラデモ宜シイト思フノデスガ、
相續稅ヲ五百萬圓ヲ超ユル金額トシテ、共
ノ上ニ全額ヲ御定メニナラナカツタト云フ
御考へ方ヲ承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=84
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085・松隈秀雄
○松隈政府委員 今囘ノ相續稅ニ付キマシ
テハ、稅率ヲ或ル程度引上ゲマシテ、總稅
額ニ於テ二割弱ノ增收ヲ圖ツタノデアリマ
ス、稅率ヲ引上ゲルニ當リマシテ、現在ノ
相續稅ノ課稅價格ノ段階ヲ家督相續ニ付テ
ハ其ノ儘維持シテ居リマス、卽チ家督相續
ノ場合ニハ一萬圓以下ノ階級カラ始マリマ
シテ、五百萬圓ヲ超ユル金額マデニ區分サ
レテ居リマス、今囘ハ其ノ區分ヲ其ノ儘踏
襲致シマシテ率ヲ盛ツタノデアリマスルガ、
少額ノ相續財產ニ付テハ引上程度ヲ低クシ、
中頃ハ稍〓多ク致シマシテ、又大キナ相續
財產ニ付キマシテハ、旣ニ相當稅率ガ高イ
ノデアリマスノデ、其ノ引上割合ヲ稍〓緩〓
和スルト云フコトニ致シテ居ルノデアリマ
ス、遺產相續ノ場合ニ於キマシテハ、從來
ハ家督相續ト同樣ニ五百萬圓ヲ超ユル金額ト
云フ區分ガアツタノデゴサイマス、今囘ハ
五百萬圓ヲ超ユル金額ト云フ欄ヲ一ツ削ツ
ク次第デアリマス、是ハ遺產相續ニ付キマ
シテハ五百萬圓ヲ超ユルヤウナ場合ガ家
督相續ニ比ベルト少イノデアリマス、殊大
遺產相續ノ第三種トモナリマスルト、是一
御承知ノ通リ赤ノ他人ノヤウナ、殆ド被相
續人ト關係ノナイヤウナ者ガ相續スル場合
ノ稅率デアリマス、サウ云フ者ガ五百萬圓
ヲ超ユルヤウナ財產ヲ相續スルト云フヤウ
ナコトハ實際問題トシテハ殆ド考ヘラレ
ナイノデアリマスルガ、率ノ上デ申シマス
ルト、相續スル金額ガ大キク、而モ相續ノ
親等ガ遠イノデアリマスルカラ、非常ニ高
イ稅率ヲ盛ラナケレバナラス、サウシマ
スルト、三百萬圓ヲ超ユル金額デ止メマシ
テモ、今回ノ增稅ノ結果ハ、遣產相續ノ第
三種ト云フモノハ千分ノ六百七十ト云フ稅
率ニナツテ居リマス、之ヲ若シ五百萬圓ヲ
超ユル金額ト云フ從來ノ階級ヲ存シマスル
ト千分ノ七百以上ニナル譯デアリマス、
ソレハ見掛ケノ上ニ於テ非常ニ體裁ガ惡イ
ト云フコトニナル譯デアリマシテ、日木ノ
相續稅ノ最高稅率ハ幾ラデアルカト言ハレ
マスルト形式的ニハ遺產ノ五百萬超ト云
フヤウナ欄ヲ設ケテ罟キマスルト、千分ノ
七百幾ツデアルト云フヤウナコトヲ言フノ
デアリマス、實際ニ殆ド適用ナク、徒ラニ
鬼面人ヲ脅カスヤウナ稅率ニナル虞モアリ
マスルノデ、今囘ハ遺產相續ニ限リマシテ、
五百萬超ト云フ階級ハナクシテ、稅率ヲ盛
ルコトニ致シタヤウナ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=85
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086・瀧澤七郎
○瀧澤委員 只今ノ御話ハ承リマシタガ、最
初ノ家督相續ノ方ノ五百萬圓ヲ超ユル金額
ヲ、五百萬圓デ止メラレタト云フノハ、是
レ以上ニナレバ····、此ノ稅率ヲ殖ヤスト
云フ必要ガイト云フ御考ヘナンデスカト云
フコトヲ御伺ヒシタノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=86
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087・松隈秀雄
○松隈政府委員 私ノ說明ガ不十分デアリ
マシテ御質問ニ副ヒ得ナカツタコトハ遺憾
ニ存ジマス、家督相續ノ五百萬圓ヲ超ユル
モノニ付キマシテハ、第一種ニ付テ申上ゲ
マスレバ、從來千分ノ四百デアリマスルノ
ヲ、今囘千分ノ四百四十ニ引上ゲテ、其ノ
引上ゲ割合ハ一割程度デアリマス、之ヲモツ
ト彈ク引上ゲル餘地ハナイカ、斯ウ云フ
御考ヘデアリマスルガ、相續稅ニ付キマシ
テハ最近比較的短カイ期間ニ增稅ヲ繰返シ
テ居リマシテ、相當稅率ガ高クナツテ居ル
ノデアリマツテ、五百萬圓ヲ超エル金額ニ
付キマシテハ稅率ヲ下ノ方ヲ引上ゲマシ
タ割合ニ依ツテ引上ゲルト、千分ノ五百、或ハ
ソレヲ超スト云フヤウナコトニナツテ參ル虞
ガアルノデアリマシテ、ソレハドウモ日本
ノ家族制度トノ關係ヲモ考盧致シマスル時
ニ於テ、相續稅ガ行過ギデハナイカ、斯樣
ニ考ヘマシタノデ、五百萬圓ヲ超エル金額ニ
仕キマシテモ、千分ノ五百ヲ超エナイコト
ハ勿論、出來レバ千分ノ四百五十以下位ノ
所ノ率ニ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ率ヲ盛ツ
タ次第デアリマス、此ノ稅率ニ致シマシテ
モ、家督相續ニ於キマシテハ五百萬圓ヲ超
エルヤウナ財產ノ相續ハ稀レト云フ譯デハナ
クシテ、相當或ル稈度ノ作數ガアルノデゴザ
イマス、今囘ノ增徵後ノ負擔ト現行ノ負擔
トヲ比較致シテ見マスト、例ヘバ家督相
續ノ第一種ニ於キマシテ一億圓ノ相續財產
デアルト致シマスト、現在ハ稅額ガ三千九
百餘萬圓デアリマスルガ、今囘ノ改正ニ例
リマシテ四千三百餘萬圓ニナツテ、其ノ負
擔ハ一割程度增シテ居リマス、一億圓ノ相
續財產ヲ殘シタトシテモ、相續稅ガ今囘ノ
增稅ニ依リマシテ四千二一百萬圓ヲ越ニルト
云フコトニナレバ、相當ノ負擔デアルト思ヒ
マン、假令年賦延納ニ依ツテ之ヲ納メルト
致シマシテモ、其ノ負擔ハ容易デハナイヤ
ウニ思ハレマスノデ旁〓此ノ程度ニ止メタ次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=87
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088・瀧澤七郎
○瀧澤委員 御說明ハ一應御尤モノヤウニ
承リマスガ、モウ一ツ伺ヒタイノハ、最近
ニ於テ百萬圓以上、或ハ五百萬圓ト云フヤ
ウナ人達ガ相續ヲ致シマシテ、ソレ等ノ人
ガ非常ニ貧乏ニナツテ困ルト云フヤウナ實
例ガアルデアリマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=88
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089・松隈秀雄
○松隈政府委員 相續稅ニ付テハ昭和十二
年以來數回增稅ヲ行ヒマシテ、漸次其ノ負
擔ハ增シテ來テ居リマス、今囘ノ增稅ニ依ツ
テ更ニ增ス譯デアリマスルガ、今日マデ
ノ程度ヲ以テシマスレバ相續稅ガ高イ爲ニ
家產ヲ蕩盡スルニ至ツタト云フヤウナ結果
ハ聞イテ居ラナイヤウデゴザイマス、併シ
今囘ノ增稅ニ依リマシテ先程モ申上ゲマシ
タ通リ、旣ニ相當高クナツテ參リマスノデ、
サウ云フ結果ガ萬一ニモ出ルト云フヤウナ
コトガアツテハ是ハ容易ナラスコトデアリ
マスルノデ、サウ云フ結果ニ立至ラナイヤ
ウニ配意シツヽ稅率ヲ按配シテ居ルヤウナ
次第デアリマス、殊ニ一囘ノ相續デアレバ、
尙ホ何トカ年賦延納等ノ方法ニ依ツテ相續
稅ヲ納メテ、相續財產へノ響キ方ガ或ル程
度少クテ濟ミマスガ、相續ガ比較的短カイ
期間ニ立テ込ムト云フヤウナコトガアルノ
デアリマス、是モ七年以內デアレバ全額ヲ
免除スル、十年以內デアレバ半額ヲ免除ス
ルト云フヤウナ緩和規定ハ置イテ居リマス
ケレドモ、十年ヲ越エタ期間ニ於テ相續ガ
續イテ起ルト云フヤウナ場合ニハ、緩和ノ
規定モゴザイマセヌシ、サウ云フヤウナ場
合ニハ非常ニ相續財產ニ喰ヒ入ルト云フ場
合ガアルノデアリマシテ、彼此レ考ヘマス
ルト餘リ高イ率ニシテ置クト仰シヤツタヤ
ウナ危險ガナイデモナイ、斯樣ニ考ヘマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=89
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090・瀧澤七郎
○瀧澤委員 非常ニ御同情ヲ以テ相續稅ノ
率ヲ御定メニナツタヤウニ承ツテ居リマス、
サウ云フ觀點カラ致シマスト私共ハ都市ノ
コトカラ考ヘテ見マスト、今度農商省ノ方
デハ地方ニ白作農ヲ創設スルトカ、補助金
ヲ澤山出ストカ云フヤウナコトモアルノデ
スガ、今日ハ物價ガ非常ニ違ツテ來テ居リ
マスカラ、茲デ云フ所ノ一萬圓カラ十萬圓若
クハ二十萬圓位ノ程度ノモノハ、都市ニ於
キマスルト本當ニ二十年三十年非常ナ奮闘
ヲシテ、サウ云フ財產ヲ作ツテ、今カラ十
年前ナラバ、一二萬圓ノモノガ今日ハ十萬
二十萬圓ト云フヤウナモノニ價格ノ上カラ
ナツテ居リマスガ、奮闘努力シ是等ノ人ガ
本當ニ働イテ家ヲ成シ產ヲ成シタ所ノ者ダ
ト思フ、只今ノヤウナ御親切ナル御考ヘヲ
以テ稅率ヲ定メラレテ、初メノ方ハサウ澤
山上ゲナカツタ、上ノ方モ上ゲナカツタノ
ダト言ハレマスケレドモ、私ハ若シ只今ノ
ヤウナ御考ヘカラナラバ、少クトモ二十萬
圓程度マデノ所ハ、モウ少シ稅率ガ低クテ
モ宜シカツタデハナカラウカト云フヤウナ
感ジヲ持ツテ居ルノデスガ、其ノ點ニ付テ
ノ御考ヘヲ伺ヘレバ結構デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=90
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091・松隈秀雄
○松隈政府委員 相續稅ニ付キマシテシモ
或ル程度ノ增徵ヲ致スト云フコトデアリマ
スレバ、各階級トモ負擔ガ增ス譯デアリマ
スルガ、其ノ點ニ付キマシテハ先程モ申上
ゲマシタ通リ、少額ノ相續財產ニ付テハ負
擔力ニ考ヘマシテ引上割合ヲ低クシテ居ル
ノデアリマシテ、卽チ家督相續一萬圓以下
ノ場合ニ於キマシテハ千分ノ十二デアリマ
シタ率ヲ、僅カニ千分ノ一引上ゲテ、千分
ノ十三トシタ程度デアリマス、隨テ一萬圓
程度ノ相續財產デアレバ僅カニ一·三%ト
ト云フ相續稅ニナル譯デアリマス、中程ニ
付キマシテハ引上割合ヲ稍〓高メタノデア≧
リマスガ、ソレニ致シマシテモ二十萬圓ノ
相續財產ノアリマスルモノデ改正後ノ負擔
ガ二萬一千圓程デアリマス、是ハ家督相續
ノ第一種ニ付テ申シテ居ルノデアリマスガ、
卽チ相續財產二十萬圓デ一割程度ノ負擔デ
アリマス、モウ少シ上リマシテ相續財產ガ
七十萬圓アル家督相續ノ第一種ニ付テ見マ
スルト、今度ノ改正後デ相續稅ガ十五萬圓
デアリマスカラ二割程度デアリマス、七十
萬圓ノ相續財產ヲ受繼イデ二割程度デアル
ト云フコトデアルナラバ中程モサウキツ
イトハ申上ゲ兼ネルカト思フノデアリマス、
隨ヒマシテ率ノ上ニ於テ加減ヲ致シ且ツ各
階級ノ實際負擔狀況ヲモ加味シテ、今囘ノ
增稅案ヲ提案シテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=91
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092・瀧澤七郎
○瀧澤委員 御話ハ分リマシタガ、モウ一
言申上ゲテ次ノコトニ移リマス、只今ノ御
話デ私モ算盤シテ見マシタガ、二十萬圓程
度デハ一割デアリマスガ、此ノ程度ノ人ガ
一割ノ二萬圓ト云フモノハ、今日家屋ダト
カサウ云モノガ高クナリ、サウシテ出スモ
ノハ現金ナンデスカラ、ソコデ同ジク一割
ダト申サレマシテモ、餘程出ス時ニナルト
困難ヲ感ズル、七十萬圓ノ者ガ二割出スト
是等ノ七十萬圓程度ノ者ハ家屋ダトカ宅地
ダトカ云フヤウナモノデハナク、現金ニ替
ヘ得ベキ資金ヲ相當持ツテ居リマスカラ、
是等ノ人ハ出スコトガ容易ダカラ私共ハ百
萬圓、七十萬圓ト云フヤウナ人ハモウ少シ
重クテ、モ、二十萬圓以下ノ人ハモウ少シ輕
クシテ戴ケレバ宜カツタト思ヒマスガ、是
レ以上中上ゲルコトハ避ケテ置キマスガ、
サウ云フ考ヘヲ私共ハ持ツテ居リマス
次ニモウ一ツ御伺ヒ致シマスコトハ、百
七頁ニ拂込資本金額百萬圓以下ノ法人ト云
フコトガアリマスガ、昭和十六年十一月一
日以後昭和十八年十二月三十一日迄ニ合併
又ハ解散シタルトキハ所得金額ノ百分ノ十
五トナツテ居リヤス、所ガ第二ノ拂込資本
金額百萬圓ヲ超エル法人ハ昭和十七年一月
一日以後十八年十二月三十一日迄ニ合併又
ハ解散シタルトキトアツテ、百萬圓以下ノ
人ハ九十九萬圓デアツテモ十六年度カラノ
モノニナリ、片方ハ十七年カラトナツテ、
此ノ一年ノ差ヲ御設ケニナツタト云フコト
ハドウ云フヤウナ御考へデ出來テ居ルノデ
アリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=92
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093・松隈秀雄
○松隈政府委員 是ハ臨時租稅措置法第
條ノ十七ノ規定デアリマシテ、法令ニ基ク
命令又ハ行政官廳ノ指導若クハ斡旋ニ依リ
マシテ、企業整備ノ必要其ノ他命令ヲ以テ
定ムル事由ニ依リマシテ合併又ハ解散シマ
シタ法人ノ〓算所得ヲ輕減スル規定デアリ
ひと、只今御話ノアリマシタ拂込資本金額
百萬圓ヲ境ト致シマシテ、一ハ昭和十六年
十一月一日以後ニナツテ居リ、一ハ昭和十
七年一月一日以後ニナツテ居リマスルノハ、
此ノ前ノ直接稅ヲ中心ト致シマスル增徵ガ
昭和十七年ニ行ハレマシタ時ニ於キマシテ
〓算所得ニ對スル稅率ガ引上ゲラレタノデ
アリマスガ、其ノ場合ニ於テ企業合同ニ依
リマシテ合併又ハ解散スル法人ニ付キマシ
テハ特ニ其ノ事情ニ鑑ミマシテ〓算所得ノ
輕減ヲ致スト云フコトニシテ、第一條ノ十
七ノ規定ヲ設ケタノデアリマスガ、其ノ場
合ニ於テモ元來〓算所得トシテハ擔稅力ガ
アルノデアリマスカラ、之ヲ輕減スル理由
ハナイ、斯ウ云フ理窟モ成立ツノデアリマ
スケレドモ、事情ガ企業合同其ノ他ニ依ツ
タノデアルカラ之ヲ輕減スルコトニスル、
併シ其ノ場合ニ於テ拂込資本金ノ小サイモ
ノハ輕減率ヲ多クシヨウ、拂込資本金ノ大
キナ法人ニ付テハソコマデ輕減シナイデモ
宜シカラウ、斯ウ云フコトカラ區別致シマ
シテ、拂込資本金百萬圓以下ノ法人ニ付テ
ハ其ノ當時〓算所得ニ對スル稅率ハ百分ノ
十八デアツテ、普通デアレバ百分ノ二十五
ニナル所ヲ特ニ百分ノ十八ヨリモ又是ダケ
引下ゲテ十五ニシテ優遇シタノデアリマス、
所ガ拂込資本金百萬圓ヲ超エルヤウナ法人
ニ付テハソコマデ優遇スル必要ハナイ、併
シ放ツテ置ケバ百分ノ十八ガ百分ノ二十五
ニナツテシマフ、是ハ氣ノ毒デアルカラ、
其ノ分ニ付テハ百分ノ二十程度ニ輕減シヨ
ウト云フコトニナツタノデアリマス、其ノ
百分ノ十八ガ百分ノ二十五ニナルト云フノ
ガ昭和十七年一月一日以後ノ合併又ハ解散
ノ分デアリマスカラ、其ノ時ノ分ヲ百分ノ
二十トシテ輕減スレバ足リルノデアツテ、
其ノ前ハ、例ヘバ昭和十六年ノ十二月一日
ニ於テハ百分ノ十八ノ稅率デアリマスカラ、
二十ニ輕減スルト云フ恩典ハ必要ナイ、商
法人ノ方ハ昭和十六年ノ十一月ニ於テ十八
ヨリモツト下ゲタイト云フノデアリマスカ
ラ、是ハソレヨリ前カラ適用シテ百分ノ十
五ニスルト云フ必要ガアツタノデアリマス、
ソレヲ其ノ儘今度モ存續サセテ居リマスノ
ハ法人ノ決定ガ遲レテ居ルモノガアリマ
シテ、古イ時代ノモノガ殘ツテ居ル關係上、
今囘尙ホ改正法ニ引繼ガレテ居ルト云フ譯
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=93
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094・瀧澤七郎
○瀧澤委員 私ノ質問ハ是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00219440124&spkNum=94
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095・中島彌團次
○中島委員長 本日ハ此ノ程度ヲ以テ散會
致シマス、明日ハ午前十時ヨリ開會致シマ
ス
午後六時四十二分散會
〔參照〕
所得稅法外二十九法律中改正法律案委員
會要求參考資料
石坂繁君要求
日本及歐米主要國ニ於ケル間接稅、
直接稅及其他稅額竝ニ比率
二、日本及歐米主要國ニ於ケル間接稅(消
費稅)目及稅率(本邦貨幣衛量ニ換算併
記ノコト)
三、日本及歐米主要國ニ於ケル所得稅(國
民稅等ヲ含ム)ノ稅率ノ大體及總稅額
中ニ占ムル比率
四、日本及歐米主要國ニ於ケル最近二三
年度ノ戰費竝ニ之カ財源(租稅公債等)
ノ數額及其ノ比率
五、日本及歐米主要國ニ於ケル浮動購買
力吸收ニ關スル施設ノ〓要、
六、同右ニ於ケル賣上稅、物品稅等ノ〓況
七、同右ニ於ケル富籤、競馬稅等ノ〓況
小野寺有一君要求
濁酒密造(反則)者檢擧數等調
昭和十七年分及同十八年分府縣別人員
竝其ノ石數
都府縣歲入出調
昭和十二年度豫算總額
同十八年度豫算高
同十九年度豫算高
一、市町村歲入出調
前段同樣
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