1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和十九年一月二十六日(水曜日)午前十時四十五分開議
出席委員左の如し
委員長 中島彌團次君
理事 阿子島俊治君 理事 石坂繁君
理事 宇田耕一君 理事 駒井重次君
理事 田村秀吉君 理事 中村庸一郎君
内池久五郎君 小野義一君
小野寺有一君 岡本傳之助君
加藤七郎君 勝正憲君
河盛安之介君 唐橋重政君
清寛君 小林絹治君
小浦總平君 齊藤正身君
坂本宗太郎君 下出義雄君
田中貢君 田中和一郎君
瀧澤七郎君 手代木隆吉君
奧野小四郎君 豐田收君
中川寛治君 中西敏憲君
廣野規矩太郎君 船田中君
本多市郎君 松田正一君
松尾三藏君 増田義一君
村瀬武男君 山口喜久一郎君
吉田正君 渡邉健君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
内務省地方局長 新居善太郎君
大藏次官 谷口恒二君
大藏省主税局長 松隈秀雄君
大藏書記官 福田赳夫君
大藏書記官 池田勇人君
文部省教學局長 近藤壽治君
農商次官 石黒武重君
━━━━━━━━━━━━━
本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法外二十九法律中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=0
-
001・中島彌團次
○中島委員長 是ヨリ會議ヲ開キマスー
吉田正君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=1
-
002・吉田正
○吉田(正)委員 新年度ノ貯蓄目標ハ三百
五十億圓デ、本年度ノ二百七十億圓ニ對シ
マシテ飛躍的ナ增加デアリマス、是ガ達成
ニハ決死的ナ努力ガ必要ダト思フノデスガ、
其ノ貯蓄目標達成上何等カノ新シイ施策ガ
アリマシタラ御聽キシタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=2
-
003・松隈秀雄
○松隈政府委員 明年度ニ於ケル貯蓄目標
ハ三百五十億圓ノ巨額ニ達スルノデアリマ
シテ、隨ヒマシテ此ノ貯蓄目標ヲ達成致シ
マスル爲ニハ、官民共ニ凡ユル努力ヲ傾注
シナケレバナラヌコトハ申上ゲルマデモナ
イ所デアリマス、貯蓄增强策ト致シマシテ
ハ色々考ヘラレルノデアリマスルガ、從來
ヤツテ參リマシタ各種ノ手段ヲ强化スルト
云フコトガ一番中心ニナルト思フノデアリ
そう、其ノ外ニ色々新手ヲ考ヘルト云フコ
トモ必要デアリマスガ、所謂新手ト云フモ
ノニ付キマシテハ、餘リ多クノ期待ヲ掛ケ
ルコトハ出來ナイカト思フノデアリマス、
今囘臨時資金調整法ヲ改正致シマシテ、新
種預金モ更ニ出來ルコトニナツテ居リマス
ルガ、是等ニ付キマシテノ效果ガドノ程度
ニ上ルカト云フコトニ付テハ、マダ十分見
當ヲ付ケ兼ネテ居ル次第デアリマス、尙ホ
租稅ノ方面カラモ貯蓄增强ニ役立チマスル
ヤウニ今囘當委員會ニ提案ニナツテ居リマ
スル所得稅法外二十九法律中改正法律案ニ
於キマシテモ、國民貯蓄組合法ヲ改正致シマ
シテ、國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依リマスル貯蓄
ノ種類ヲ擴大致シテ居リマス、卽チ從來投資
信託ノヤウナモノハ必ズシモ國民貯蓄組合
ノ幹旋スル貯蓄ニ適スルカドウカ疑問デア
ルト云フノデ除イテアツタノデアリマスル
ガ、今囘ハ投資信託ニ付キマシテモ或ル程
度ノ制限ヲシマスナラバ、之ヲモ國民貯蓄
組合ノ斡旋スル貯金ノ中ニ加ヘテモ宜カラ
ウト云フコトニナリマシテ改正ヲ行ツテ居
リマス、更ニ國民貯蓄組合ノ預入ノ限度ハ
現在七千圓ニナツテ居リマスルガ、之ヲ一萬
圓マデニ擴張スル改正ヲ行ヒマシテ、他ノ
預金ニ對シマスル課稅ト比較致シマシテ、
國民貯蓄組合ノ預金ニ對シマシテハ比較的
優遇ヲ致シマシテ、此ノ方面カラモ貯蓄增
强ニ資セントシテ居ルノデアリマス、色々
手段方法等ニ付テモ考ヘラレルノデアリ
マスガ、終局ハ國民ノ熱意ト申シマスカ、
戰意ノ〓揚ニ依リマス貯蓄目標ガ達成セラ
レナケレバ、戰爭ニ勝拔クコトハ出來ナイ、
戰爭ニ勝拔ク爲ニハ、是非戰費ヲ納稅ト貯
蓄ニ依ツテ負擔シナケレバイカヌト云フ、
其ノ意氣組ミ如何ニ掛ツテ居ルカト思フノ
デアリマス、所得ノ增大シタ方面ハ貯蓄ガ
シ易イノデアリマスルガ、增大シナイ方面
ニモ貯蓄目標增大ニ依リマシテ貯蓄ノ重
壓ガ或ル程度マデ掛ルト思ヒマスルガ、結
局戰ヒニ勝拔ク爲ニハ、此ノ貯蓄目標ヲ達
成シナケレバナラヌト云フコトニ徹底シマ
シテ、消費ヲ節約シテ、ソコニ出來ナイナ
ガラモ餘力ヲ生ミ出シテ、貯蓄奉公ニ邁進
スルト云フ外、此ノ成績ヲ擧ゲル鍵ハナイ
ト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=3
-
004・吉田正
○吉田(正)委員 大體分リマシタガ、貯蓄
ノ問題ニ付キマシテハ、國民生活ノ最低生
活ヲ確保シテヤル、ソレデ其ノ餘ツタ所ノ
金トフ云モノハ稅金カ公債カ、又ハ其ノ殘
リハ擧ゲテ貯蓄ニシテ吸收シテシマフト云
フヤウナ體系ガ考ヘラレルノデアリマスル
ガ、此ノ場合强度ノ貯蓄ヲヤツテ行ク場合
ニ於キマシテハ、今度ハモウ少シ國民生活ノ
面ニ對シテ相當積極的ナ施策ガ必要デアラ
ウト思フ、卽チ現在ノヤウニ生活ヲスル上
ニ於キマシテ、生活必需品ヲ確保スル爲ニ
行列ヲ作ツテヤツト手ニ入レル、サウシテ闇
デナケレバ手ニ入ラナイトカ、自然ニ生活
費ト云フモノハ實質上高クナツテ居ル、ニ
モ拘ラズ昨年度ニ比ベマシテ國民生活ハ全
體デ百十億デ賄ツテ行クト云フヤウナ御話
デアリマスノデ、ソレニ對シマシテハ、農
商省ニノミ生活必需品ノ配給ト云フヤウナ
問題ニ付キマシテモ任セズニ、モツト政府
全體トシテ最低ノ國民生活ヲ確保スルト云
フヤウナ面ニ對シテ、相當積極的ナ施策ヲ
講ジナイ限リニ於キマシテハ、中々難カシ
インヂヤナイカ、單ニ精神的ナ愛國心ノ昂
揚又ハ源泉貯蓄ノ面、又零レタ所ノモノ
ヲ拾フ爲ニ國民貯蓄ノ組織ヲ相當强化スル
ト云フ所バカリデナシニ、モウ一步進ンダ
面ニ於テ施策ヲ講ズルコトガ必要ダラウト
云フコトヲ考ヘルノデスガ、其ノ點ハ如何
デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=4
-
005・松隈秀雄
○松隈政府委員 御說洵ニ御尤モデアリマ
ス、明年度ニ於キマスル國民所得ハ約六百
億圓デアリマスルガ、其ノ中國民消費資金
ニ充テラレマスルモノハ約百十五億圓、本
年度ヨリモ十五億圓減少スルヤウナ數字ニ
ナルコトハ昨日大藏大臣カラ說明ノアツタ
通リデアリマス、ソレダケ國民ノ消費生活
ガ壓縮サレナケレバ、國家資金ノ配分計畫
ガ立タナイト云フコトニナツテ居リマスル
カラ、國民ノ消費生活ニ於キマシテ、- 段
ト緊縮ヲ加ヘナケレバナラナイノデアリマ
ス、其ノ場合ニ於キマシテ、國民ノ最低生
活ノ確保ニ付テ政府全體トシテ考慮ヲ拂フ
必要ノアリマスルコトハ當然デアリマス、
殊ニ生活必需物資配給部面ノ適正ヲ期シマ
シテ、國民ガ闇ヲヤラナイデモ生活出來ル
ヤウニ、又必要ナル物資ノ獲得ニ當ツテ無
駄ニ勞力ヲ費スト云フコトノナイヤウニ萬
全ノ施策ヲシテ、ソレト相俟ツテ貯蓄ノ增
强ヲ進メテ行カナケレバナラヌト云フコト
ニ付テハ御說ノ通リデアルト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=5
-
006・吉田正
○吉田(正)委員 一般銀行ノ預金利子ニ對
スル分類所得稅率ノ從來一五%ヲ、五千圓以
下ハ一〇%引下ゲテ五%ノ稅率ニ致サレタノ
デアリマス、是ハ大衆資金ノ吸收上非常ナ
效果ガアルト存ジマシテ、此ノ點此ノ施策
ニ對シテハ敬意ヲ表スル次第デアリマスガ、
反對ニ町村ニ於ケル農業會ノ此ノ種五千圓
以下ノ貯蓄利子ニ對シマシテハ、從來稅ガ
課カラナカツタ所ガ、今度新シク逆ニ五%
課稅サレルコトニナツタト云フコトハドウ
云フ理由ニ基キマスカ、御說明ヲ願ヒタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=6
-
007・松隈秀雄
○松隈政府委員 今囘所得稅ノ增徵ヲ行フ
ニ當リマシテ、元本五千圓以下ノ預貯金ニ
對スル課稅ノ調整ヲ圖ツタ次第デアリマス、
御承知ノ通リ、現在元本五千圓以下ノ市町
村農業會ナリ產業組合、市街地信用組合等
ノ預金及ビ貯蓄銀行ノ預金ト云フモノハ非
課稅デアリマス、然ルニ一般ノ銀行卽チ普
通銀行ノ預金ハ、元本五千圓以下ノモノデ
アリマシテモ現在分類所得稅一五%ノ課稅
ヲ受ケ、更ニ綜合所得稅ノ課稅モ受ケルト
云フコトニナツテ居リマス、ソコニ課稅上
稅引利子ノ手取ニ間差ガゴザイマスルノデ、
殊ニ曩ニ普通銀行ガ貯蓄銀行業務ヲ兼營ス
ルコトニナリマシタ關係上、普通銀行ノ定
期預金ヲ期限ガ來ルト据置貯金ニ書換ヘル
ト云フヤウナ傾向ガ現レマシテ、不必要ニ
預金ノ橫流レヲ來スト云フ狀況ガ出テ參ツ
タノデアリマス、其ノ上今囘更ニ分類所得
稅ノ稅率ヲ引上ゲ、又綜合所得稅ノ稅率ヲ
引上ゲラレルト云フコトニナリマスト、愈
以テ預金ノ橫流レ、ソレカラ五千圓以下ニ
細分スルト云フヤウナ弊害ガ生ジマスルノ
デ、今囘ハ元本五千圓以下ノ預貯金ノ如キ
モノハ、之ヲ取扱ヒマスル金融機關ノ如何
ニ關セズ、大體ニ於テ先程モ御話ノアリマ
シタ通リ、大衆ノ預貯金ト認メラレルノデ
アリマスカラ、是ガ課稅上ノ待遇ハ同程度
ニ致シマシテ、强ヒテ不必要ナ書換等ノ行
ハレナイヤウニスル必要ガアル、斯樣ニ考
ヘマシテ普通銀行ノ元本五千圓以下ノ預金
ニ付テモ五%ノ課稅トシ、綜合所得稅ハ免
除スルコトト致シタノデアリマスガ、是ト
共ニ貯蓄銀行、市町村農業會、市街地信用
組合等ノ預金ニ付キマシテモ新タニ五%ノ
課稅卽チ今囘分類所得稅フ引上ゲマスル稅
率ニ相當スルモノダケノ租稅ノ負擔ハシテ
戴クコトニ改メタ次第デアリマス、斯樣ニ
致シマスト、市街地信用組合、或ハ市町村農
業會等ニ於キマシテハ、現在郵便貯金ト課
稅上ノ特典ガ同樣デアツテ營業シテ居ル
ノデアリマスルガ、一方ニ新タニ五%ノ課
稅ガ開始セラレルト云フコトニナリマスト、
課稅ヲ受ケナイ郵便貯金トノ間ニ稅引利子
ニ付テ間差ガ出マシテ、營業上業務ヲ執行
スル上ニ於テ困ルト云フヤウナ虞ノアリマ
ス點モ考慮致シマシテ、一方郵便貯金ノ利
子ニ付キマシテモ調整ヲ行フヤウナコトニ
致シマシタノデ、此ノ方面カラ申シマシテモ、
今囘新タニ從來非課稅デアツタ元本五千圓
以下ノ預貯金ニ對シマシテ課稅ヲ開始致シ
マシテモ、金利ヲ紊ルト云フヤウナ虞ハナ
イト思フ譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=7
-
008・吉田正
○吉田(正)委員 一般銀行ノ預貯金ノ利子
ニ對スル引下ヲ行ヒマシテ、貯蓄銀行ト同率
ニシタト云フコトハ、是ハ非常ニ結構ナコ
トト思ヒマス、當然サウアルベキダト思ヒ
マイ、農村ニ於ケル零細ナ資金ヲ吸收スル
ト云フ面ニ於キマシテ、相當今後ノ貯蓄增
强上重大ナ影響ガアリマスノデ、此ノ點ニ
付キマシテ、モウ少シ御質問申上ゲタイト
思ヒマス
ソレハ貯蓄組合トノ關係デアリマスガ、
國民貯蓄組合ノ斡旋ニ依ル貯蓄ト云フモノ
ハ、七千圓マデノ非課稅ヲ一萬圓マデ擴張
ヲシテ貯蓄奬勵ノ爲ニ是ガ積極的ナ施設ヲ
行ツタコトモ非常ニ結構ナコトト思ヒマス
ガ、町村ニ於ケル所ノ農業會ノ貯金ニ關スル
問題デスガ、是ハ組合員及ビ家族ト云フ特
定ノモノカラ貯金ヲ預ツテ居ル、ソレカラ
零細ナ大衆貯金ヲ本位ト致シテ居ル、現在
大體ニ於キマシテ百萬圓程度ノ一農業會ガ
取扱ツテ居リマス口數ハ八千口モアル、通
帳ガ八千アル、大體サウ云フノガ多イ、或
ハ一萬位ノ通帳ヲ持ツテ居ルヤウナ非常ナ
零細ナモノガ集マツテ居ルト云フヤウナ大
衆貯金ヲ本位トシテ居ル點ト、ソレカラ組
合員ニ對スル積極的ナ指導性ヲ持ツテ居ル、
サウ云フ指導的ナ機能ヲ持ツテ居ルト云フ
ヤウナ點ニ於キマシテ、國民貯蓄組合ト同
一ニ看做シテ宜イノヂヤナイカト云フヤウ
ニ考ヘルノデスガ、而モ此ノ問題ニ付キマ
シテハ、少クトモ市街地信用組合ハ別トシ
マシテ、農村ニ關スル限リニ於キマシテハ、
農業會ハ國民貯蓄組合ヨリモ却テ優秀ナル
成績ヲ擧ゲテ居ル、是ハ國民貯蓄組合ノ發
達ノ歷史カラ見マシテ當然カト思ヒマスガ、
ソレバカリデナシニ、現ニ農產物ノ代金ハ
振替貯金、卽チ源泉貯金ト云フコトガ基本
ニナツテ振替拂ニ依ツテ農產物ノ代金ガ一
應農業會ニ入ツテシマフ、サウシテ生活費
ダケヲ拂戾ヲスルト云フ體制ガ漸次出來上
ツテ參リマシテ、生活費ダケヲ拂出シマシ
テ、今度ハ更ニ各自ガ生活シマシテ、殘ツ
タモノハ又國民貯蓄組合運動ト同ジヤウナ
形ニ依ツテ吸上ゲテ行ク、サウシテ農村ノ
ㄱインフレ」ヲ防止スルト云フヤウナ形ガ漸次
出來ツヽアル、其ノ形ハ最近ノ形デアツテ、
漸次是ガ强化サレナケレバナラヌト云フ風
ニ考ヘマス、卽チ農村ニ於ケル貯金吸收ノ
問題ハ、源泉貯蓄ヲ中心ニシテ居リマスガ、
是ハ農產物ヲ全部農業會ニ於テ統制シテ居
ル關係上、ソレガ容易ク行ハレル、同時ニ
ソレヲ强化シタ上ニ、今度ハ生活ノ面ヲ統
制致シマシテ、生活物資モ成ベク農業會ニ
於テ統制シテ、サウシテ現金ヲ農業者ニ渡
サナイヤウナ形ニ於テ、而モ農業者ニ渡シ
タ現金ハ、更ニ此ノ零細ナモノヲ別ナ形ニ
於テ貯蓄トシテ吸收スルト云フヤウナコトガ
繰返シ行ハレテ、初メテ立派ナ資金政策ガ
確立スルト云フヤウニ考ヘルノデアリマス、
隨テサウ云フ點カラ非常ナ熱意ヲ以テ此ノ
貯蓄運動ニ奉公シ、今年ハ三百五十億ニ對
シマシテ農村面ニ於ケル貯蓄奉公ハドノ位
カ知リマセヌガ、今度ハ相當强化サレテ來
ル、併シ强化サレテモ此ノ運動ヲモツト積
極的ニ行ツタラ、敢テ其ノ程度ノモノハ樂
ニ出來ルト云フヤウナ確信ガアル、サウ云
フ熱意ヲ以テ而モ積極的指導性ヲ持ツテ居
ル農業會ノ此ノ貯金ニ對シマシテ、新タニ
今マデ他ノ銀行其ノ他ガ利下ゲノ形ニナル
場合ニ於キマシテ單リ是ダケヲ上ゲテ、サ
ウシテ其ノ貯蓄ニ若シ重大ナ影響ガアルト
云フコトニナレバ大變ナコトニナリマスノ
デ、此ノ問題ニ付キマシテハ、法律ヲ變ヘ
ルトカ變ヘナイトカ云フ問題デハナシニ、
何トカ便法ガアリハシナイカ、詰リ國民貯
蓄組合ト同一ニ取扱フヤウナ施策ガ講ゼラ
ルベキデハナイカト云フヤウニ考ヘルノデ
アリマスガ、此ノ點ニ關シマシテ此ノ非常
時局ニ於キマシテ、資金ノ吸收上必要ナ責
任ヲ負ヒ、而モソレヲ完遂スル立場カラ考
ヘマシテ、敢テ御質問申上ゲル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=8
-
009・松隈秀雄
○松隈政府委員 市町村農業會貯金ガ零細
ナル大衆貯金デアルト云フコト、ソレカラ
市町村農業會ガ特別ナ使命ヲ帶ビテ居リ、
且ツ市町村農業會ヲ通ジテノ貯金ト云フモ
ノガ源泉貯金デ、時局下相當ノ成績ヲ擧ゲ
テ居ルト云フコトハ、之ヲ認ムルニ吝カデ
ナイノデアリマスルガ、今囘ノ增稅ハ各方
面ノ所得ニ亙リマシテ增稅ヲ行ヒマシテ、
出來ルダケ廣ク戰費ヲ負擔セシムルト云フ
意圖モアリマスノデ、從來非課稅デアリマ
シタモノニ付キマシテモ種々檢討ヲ遂ゲマ
シテ、課稅スルノヲ適當ト認メル向キニハ、
或ル意味デノ非課稅整理ト云フヤウナ意味
モ加ヘテ課稅ヲスルコトニ致シタノデアリ
やく、ソコデ預貯金ノ稅引利子ノ釣合ヒヲ
圖ルト云フ外ニ、從來非課稅デアツタモノ
モ、今度決戰段階ニ入ツテノ增稅デアルカ
ラ、或ル程度ノ負擔ハシテ戴キタイ、斯ウ
云フ意味モアリマシテ、今囘分類所得稅ヲ一
般ニ百分ノ五程度引上ゲタノデアルカラシ
テ、其ノ程度ノ負擔ハシテ戴キタイ、斯ウ
云フ積リデゴザイマス、其ノ場合ニ於テ國
民貯蓄組合ノ斡旋致シマスル預貯金ニ付キ
マシテハ、依然之ヲ非課稅ト致シタノデア
リマスルガ、ソレハ多少條件ガ伴ツテ居ル
ノデアリマシテ、御承知ノ通リ國民貯蓄組
合ノ幹旋ニ依リマスル預貯金ハ、原則トシ
テ戰時中之ヲ引出サナイト云フ制限ガ附セ
ラレテ居ル譯デアリマス、隨ヒマシテ市町
村農業會貯金ト雖モ、國民貯蓄組合ヲ通ジ
テノ斡旋デアレバ、所得稅ノ免除ノ特典ハ
受ケラレル譯デアリマス、ソレモ國民貯蓄
組合ヲ通ジナイデ、卽チ制限ノ方ハ受ケナ
イデ、課稅ノ方ヲ國民貯蓄組合ト同ジヤウ
ニスルト云フコトデハ、折角國民貯蓄組合
ヲ通ジテノ貯蓄ト云フコトニ、又支障ヲ來
ス虞ガゴザイマスノデ、此ノ間ニ所得稅ノ
免除ノ區別ヲ付ケルコトハ、是ハ已ムヲ得
ザルコトトシテ御諒承ヲ願ヒタイト思フノ
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=9
-
010・吉田正
○吉田(正)委員 國民貯蓄組合ヲ通ジテヤ
レバ、非課稅ニナルト云フコトデアリマス
ルガ、サウ致シマスルト却テ貯金ノ增加ト
云フコトニ困難ヲ來スコトニナルト考ヘル
ノデアリマス、少クトモ農村ニ於キマシテ
ハ農產物ノ販賣代金ノ入ツタ時ニ、源泉貯
蓄デ以テ直グ取ツテシマツテ、其ノ中カラ
生活費ヲ渡スト云フヤウナ形ヲ執ラナイ限
リニ於キマシテハ貯蓄ハ旨ク行カナイ、國
民貯蓄組合ヲ通ジテヤルト云フ形ニ於テハ、
一應源泉貯蓄ヲヤラズニ全部拂出シマシテ、
ソコカラ今度ハ撒布シタモノヲ國民貯蓄組
合ニ於テ吸收スルト云フ形ヲ取ツテ行クト
云フコトハ、非常ニ煩瑣デアルバカリデナ
ク、却テ貯金ノ效果ヲ失フコトニナリマス、
サウ云フ體系ハ取ラシタクナイ、サウスベ
キデハナイト考ヘテ居リマス、ダカラ仰シ
ヤル通リノ國民貯蓄組合ヲ通ズレバ宜イト
云フヤウヲ考ヘ方ハ、少クトモ農村ニ於キ
マシテハ適用ハ出來ナイノデアリマス、隨
テサウ云フヤウナ面カラ考ヘマシテモ、或
ハ一定期間ハ拂出ヲ禁止スルト云フヤウナ規
定ガアリマシテモ結構デアリマス、ヤハリ
實際ノ實情ニ應ジタヤウナ貯金政策ガ執ラ
V、ソレニ對應スル所ノ稅率ガ課セラレル
ベキデハナイカト考へルノデアリマス、ト
申シマスルノハ、是ハ貯金トハ關係ハアリマ
セヌガ、國民健康保險組合ノ問題デアリマ
ス、國民健康保險組合ハ厚生省ノ方デアリ
マスガ、之ヲ農村デドウスルカト云フコト
ニ付キマシテ、國民健康保險組合ニ付キマ
シテハ、同ジヤウナ公的ナ仕事ヲ農村產業
組合ガ嘗テヤツテ居ツタ爲ニ、之ニ對シマ
シテ代行セシムルト云フヤウナ制度ヲ執ツ
テ居リマス、又食糧營團ノ問題ニ付キマシ
テモ、農村ニ關スル限リハ單位農業會ヲ配
給ノ代行ニ使ツタト云フヤウナ所ガアリマ
スカラ、モウ少シ貯金ノ吸收ヲ積極的ニヤ
ルト云フ御考ヘデアリマシタナラバ、其ノ
點ニ對シマシテ運用上何等カノ對策ガ講ゼ
ラレルベキデハナイカト云フ風ニ考ヘルノ
デアリマスガ、此ノ點如何デゴザイマセウ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=10
-
011・松隈秀雄
○松隈政府委員 源泉貯蓄ノ方法ヲ執ル場
合ニ於テ、國民貯蓄組合ニ加入ガ出來ナイ
ト云フコトハ言ヘナイト思フノデアリマス、
現ニ官廳、會社等ニ於テ俸給支拂ノ際ニ天
引トシテ貯蓄致シマスル貯蓄モ、國民貯蓄
組合ノ貯蓄ト云フコトニナツテ居リマス
ルカラ、農村ニ於キマシテモ農產物ノ販賣
代金ヲ天引スル場合ニ於テ、ヤハリ國民貯
蓄組合ノ貯蓄ト云フコトニ致シテ置キマス
レバ、其ノ分ニ付テハ國民貯蓄組合ノ貯蓄
ト云フコトニナツテ、所得稅ノ輕減ヲ受ケ
得ルト思フノデアリマス、唯ソレニ付テハ
一定ノ限度ガアル、ソレカラ又引出ノ制限
ガアルカラ、其ノ方ヲ餘リ奬メラレテハ困
ルト云フ所、其ノ以外ノモノモアルト思フ
ノデアリマスルガ、之ニ付キマシテハ貯蓄
ノ增强ヲ圖ラナケレバナラナイ時デアリマ
シテ、一方決戰下デアリマスカラ、國民ガ
所得ノアル所カラハ負擔力ニ應ジテ、租稅
ヲ分擔シテ戴キタイ、斯ウ云フコトニナツ
テ居ルノデアリマス、併シ課稅ヲ受ケマシテ
モ利子ニ對スル僅カ五%程度ノ負擔デアリ
マスルノデ、モウ利子ニ對シテ五%ノ負擔
ガ付クナラバ、此ノ際貯蓄ノ增强ニハ協力
シナイト云フコトヲ言フノハ、或ル意味カ
ラ言フト餘リニ狹量デハナイカト思フノデ
アリマス、ソコデ寧ロ今囘ノ增稅ノ巳ムナ
キ所以ト申シマスカ、國民ハ消費ヲ節約シ
テモ戰費ヲ負擔シナケレバナラヌト云フ點
ヲ明カナラシメ、假令利子ニ對シテ新タニ
五%ノ課稅ガ加ハツタト致シマシテモ、貯蓄
ハ貯蓄デ之ヲ增强シテ行ツテ、貯蓄目標ト
云フモノヲ達成シナケレバイカヌ、結局納
稅モ大事デアリ貯蓄モ大事デアル、ソレヲ
國民ガ努メルコトニ依ツテ、初メテ戰ニ勝
テルノダト云フ風ニ、指導者ガ大衆ヲ指導シ
テ戴イテ、此ノ場合ヲ切拔ケル外ハナイト
思フノデアリマス、私共ハ此ノ程度ノ利子
ニ對スル課稅デ直グニ貯蓄ニ嫌氣ガサシテ、
モウ貯蓄ノ方ハ餘リ努メナイ、斯ウ云フ結
果ヲ來スコトハ萬ナカルベキデアツテ、又
サウ云フコトニナラナイヤウニ、指導ヲシ
テ參ラナケレバナラヌト考ヘテ居ル次第デ
アリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=11
-
012・吉田正
○吉田(正)委員 今仰シヤツタ言葉ノ中ニ、
サウシナケレバ貯金ヲシナイト云フヤウナ
コトヲ仰シヤツタノデアリマスガ、私ハサ
ウ云フ意味デ申上ゲタノデハナイ、要スル
ニ全國民ガ此ノ三百五十億ノ貯金ヲ背負ツ
テ、徹底的ニ之ヲ達成スル、其ノ爲ニハ少
シデモ其ノ障碍ニナル點ヲ、御互ヒニ取ツ
テ行キタイト云フ考ヘ方カラ申上ゲタノデ
アリマシテ、其ノ點ハ誤解ノナイヤウニ御
願ヒシタイト思フ、此ノ問題ニ付キマシテ
ハ勿論稅率ノ如何ニ拘ラズ、全面的ニ決定
シタ以上ハヤラナケレバナラヌノデスガ、
併シ決定スルマデノ所謂法律ニスルマデノ
經過ト致シマシテ十分ニ之ヲ盡シ、サウシ
テ斯ウ云フ譯ダカラト云フコトヲ納得サシ
テ、下カラ盛上ル所ノ貯蓄意識ト云フモノ
ヲ昂揚サセルコトガ必要ナリト思フ、サウ
云フ點カラ敢テ御質問申上ゲタノデアリマ
ス.此ノ點ニ付キマシテハ大體御意向ガ分
リマシタカラ、質問ヲ打切リマス
次ニモウ一ツ特別法人稅ノ稅率引上ノ問
題デヌガ、是ハ先ニ御質問ニナツタ方モアリ
マスケレドモ、特別法人稅ノ稅率引上ガ過
當デハナイカト云フコトニ對シマシテ、主稅局
長ハ是ハ大體適當ダト考ヘルト云フヤウナ
御答辯ガアツタト思フノデアリマス、此ノ
特別法人稅ノ課カル對象タルベキモノニ付
テ考ヘテ見マヌト、町村ニ於ケル農業會ノ
役職員ノ平均給料ハ、現在五十一圓デアリ
マシテ、其ノ薄遇ニ甘ンジテ居ル譯デアリ
マスガ、五十一圓以上餘計取リマスト、現
在一農業會平均剩餘金ガ大體三千圓程度デ
アリマシテ、出資配當ガ二分三厘四毛程度
ニナツテ居リマス、ソレハ其ノ程度ノ出資
配當ヲシテ置キマセヌト、先刻申シマシタ
所ノ貯金ノ吸收モ出來ナイ、又農業會經營
ノ安全性カラ云ヒマシテモ、ソレ以上ノ給
料ハ拂ヘナイト云フヤウナ現狀ニナツテ居
リマス、隨テ斯ウ云フ組織ノ斯ウ云フ立場
ニアル所ノモノニ對シマシテ、普通ノ會社
ト同樣ニ負擔能力ガアルト御考ニナツテイ
ラツシヤルカドウカ、其ノ點ヲ御伺ヒ致シ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=12
-
013・松隈秀雄
○松隈政府委員 前ノ說明ノ所デ、私ガ新
タニ所得稅ヲ負擔スルナラバ貯蓄ヲシナト
云フヤウナ氣持ヲ起スト云フヤウナコトヲ
申上ゲタ點ハ、少シ言葉ガ强過ギマスルカ
六、其ノ點ハ訂正致シテ置キマス、御話ノ
ヤウニ租稅ヲ負擔セシメルコトガ果シテ貯
蓄增强ノ障碍ニナルカドウカト云フ問題
デアリマスルガ、是ハ所得稅ヲ課稅シナ
イ、卽チ免稅ノ特典ヲ與ヘレバ、ソレニ
越シタコトハナイ譯デアリマス、併
シ先程モ申上ゲマシタヤウニ、戰費負
擔ノ爲ニ出來ルダケ增稅ニ依ツテ財源ヲ捻
出スルト云フコトニナリマシテ、各方面ニ
亙ツテ檢討致シマシテ、非課稅ノモノデモ
此ノ際或ル程度負擔力ノアルト認メラルヽ
モノニ付テハ、已ムヲ得ズ課稅ヲスル、斯
ウ云フヤウナ狀況ニ至リマシタノデ、其ノ
點ハ課稅シナイニ越シタコトハナイノデア
リマスルガ、增稅ノ額モ多イシ、廣ク國民
ニ戰費ヲ負擔シテ戴クト云フヤウナ趣旨カ
ラ課稅ヲ致シマシタ、ソレト先程御話シマ
シタ各種預貯金間ノ稅引利子ニ付キマシテ
ノ從來ノ不權衡ヲ是正スル、斯ウ云フヤウ
ナ意味ニ出夕譯デアリマスカラ、其ノ點是
非御諒承ヲ願ヒタイト思フノデアリマス
次ニ特別法人稅ノ稅率ニ付キマシテハ、
之ヲ一般ノ營利法人ト同ジヤウナ擔稅力デ
アルト云フコトハ決シテ認メテ居ル譯デハ
ゴザイマセヌ、且ツ特別法人ハ普通ノ營利
法人ト違ツテ、其ノ使命ノ中ニ公的性質ノ
アルト云フコトモ是認シテ居ル譯デアリマ
ス、隨ヒマシテ從來ハ非課稅デアツタノガ
アリマスルガ、一般法人ノ稅率ガ段々高ク
ナツテ參リマシタ、ソコデ特別法人ニ付キ
マシテ、之ヲ全然課稅外ニ置クト云フコト
デモ、其ノ間餘リニ開キガ生ジマスルノデ、
昭和十五年ニ新タニ特別法人稅ヲ設ケタノ
デアリマスルガ、從來非課稅デアツタ沿革
ヲモ參酌致シマシテ、最初ハ一般法人トノ
間ニ相當ノ開キガゴザイマシタ、其ノ後次
第ニ課稅ニモ慣熟シテ參リマシタ上ニ、
般法人ノ稅率ガ引上ガリマスノデ、ソレト
釣合ツテ稅率ヲ引上ゲテ居ルノデアリマス
ルガ、從來ノ沿革モアリマシテ、稅率ガ非
常ニ低ク出來テ居リマスモノデスカラ、先
年一般法人ガ百分ノ七上ツタト云フヤウナ
場合ニ於キマシテモ、其ノ增加割合ヲ其ノ
儘適用スルト云フコトニナルト、率ノ上リ
方ガ少イモノデスカラ、增加割合ニ依ラズ
シテ引上ゲテ居ルト云フヤウナコトデゴザ
イマス、今囘モ一般ノ法人ハ百分ノ五引上
ゲタノデアリマスルガ、ソレニ對シマシテ
特別法人ノ方ハ百分ノ七·五ノ引上ニナツテ
居ルノデアリマシテ、引上ゲタ率カラ云
ヘバ少シキツイノデアリマスルガ、是ハヤ
ハリ元ガ低イカラ已ムヲ得ナイ所デアリ
マス、改正ノ結果、從來ハ特別法人ハ一般
法人ノ二分ノ一ノ稅率ニ當ツテ居リマシタ
ガ、今度ハ三分ノ二マデ行キマシテ、間差
ガ稍〓縮マツタノデアリマス、併シ依然一般
ノ法人トハ違ヒマスルノデ、間差ハ置クコ
トニ致シテ居リマスルシ、先日モ御話シマ
シタ如ク、一般法人デアレバ、此ノ外ニ更
ニ資本ニ對スル課稅トカ、或ハ臨時利得稅
營業稅ト云フヤウナモノノ負擔ガ相當ゴザ
イマスルノデ、我々ハ一般法人ト特別法人
トヲ決シテ同視シテハ居ラナイト云フコト
ハ御諒承ヲ願ヒタイノデアリマス、今後ノ
コトハ何トモ言ヘマセヌケレドモ、ヤハリ
性質上ニ差ガゴザイマスルカラ、此ノ率ガ
一般法人ト一緒ニナルト云フヤウナコトニ
ナルカドウカハ疑問ダト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=13
-
014・吉田正
○吉田(正)委員 大體了解致シマシタ、特
別法人ト一般法人トノ差別ト言ヒマスカ、
ソレニ付キマシテハ、兎ニ角特別法人ニ稅
ガ課カルト云フコトハ戰時下當然ノコトデ
アリマス、唯特別法人ノ特質ガ今申上ゲタ
ヤウナ形ニ於テ形成サレテ居ル、詰リ財產
ノ內容ニ付キマシテモ、經營ノ內容ニ付キ
マシテモ、又其ノ仕事ノ公益性--公益性
ト言ヒマシテモ、一般會社モ公益的ノ性格
ヲ段々帶ビテ來マスノデ、此ノ點ニ付テノ
差ハ餘リナクナツテ來ルト思ヒマスガ、併
シ其ノ經營內容カラ考ヘテ見マシテ、現狀
ニ於キマシテ非常ニ困難ナ經營ヲヤツテ居
ルト云フコトニナツテ居リマス、此ノ一般
法人ト特別法人ノ差ハ今三分ノ二ニナツテ
居ルト云フヤウナ御話デアリマシタガ、大
體私共ハ二分ノ一程度ガ適當ヂヤナイカト
云フヤウニ考ヘテ居リマスガ、三分ノ二ニ
シタ理由、詰リ二分ノ一ヲ三分ノ二ニシタ
ト云フコトニ付キマシテノ考ヘ方ヲモウ一
應伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=14
-
015・松隈秀雄
○松隈政府委員 所得ニ對スル稅率カラ申
シマスルト、一般法人ハ百分ノ二十五ガ百分
ノ三十ニナリマシタ、特別法人ハ百分ノ十
二、五ガ百分ノ二十ニナルノデアリマス、
隨テ百分ノ三十ト百分ノ二十ト云フモノヲ
比ベマスレバ、特別法人ハ一般法人ノ三分
ノ二ニ當ル譯デアリマスルケレドモ、先程
モ申上ゲマシタヤウニ一般法人ハ其ノ外ニ
資本ニ對スル課稅、臨時利得稅、營業稅ノ
ヤウナモノガゴザイマスルカラ、改正後ノ
一般法人デアリマスルト、ドウシテモ所得
ニ對シマスル租稅負擔ノ割合ハ四割カラ四
割五分ニハナルデアラウト思フノデアリマ
ス、其ノ場合ニ於テ特別法人ハ百分ノ二十
ノ課稅ダケデ濟ム譯デアリマスルカラ、會
社全體ノ負擔カラ申シマスレバ、特別法人
ハ依然一般法人ノ二分ノ一以下デアルト云
フコトガ言ヘルノデアリマシテ、此ノ程度
ノ引上ゲデ著シク不利ニナツタト云フコト
ハ言ヘナイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=15
-
016・吉田正
○吉田(正)委員 私ノ質問ハ是デ打切リマ
スルガ、モウ一ツ最後ニ、貯金利子ニ對ス
ル新タナル課稅デアリマスガ、是ノ事務手
續ニ關スル問題ニ付テ御伺ヒ致シタイト思
ヒマス、是ハ今後ハ此ノ課稅ノ爲ニ町村農
業會當事者竝ニ稅務當局者ガ手續上非常ニ
煩瑣ニナツテヤリ切レナクナリハシナイカ、
現在米ノ集荷、或ハ農產物ノ集荷ノ爲ニ夜
業マデシテズツト續ケテ居ルト云フヤウナ
狀態デアリマシテ、ソコヘ持ツテ來テ稅務
當局ガ三日モ四日モ帳簿ヲ見ル、或ハ農業
會ニシテモソレニ對シテ色々ナ煩瑣ナ手續
ガ增シテ來ル、其ノ爲ニ新シク人ガ必要デ
アルト云フヤウナコトニナリマスルト、是
ハ徵稅手續ノ簡易化ト云フ趣旨ニ對シテ非
常ニ困ツタコトニナリマスノデ、此ノ點ニ
付キマシテハ成ベク簡素ナ單純ナヤリ方ヲ
御願ヒシタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=16
-
017・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今御述ベノ點ハ洵ニ御
尤モデアリマシテ、從來ハ市町村農業會
等ノ預金ニ對シテ、利子ノ支拂ノ爲ノ計算
ハスルノデアルケレドモ、稅金ヲ控除スル
ト云フ計算ハ必要デナカツタノデアリマス
ルガ、今度課稅ヲスルト云フコトニナリマ
スルト、稅金ノ計算ダケ餘分ニ事務ガ加ハ
ル譯デアリマス、其ノ點已ムヲ得ザルコト
デアリマスルガ、事務ノ煩雜化ニナリマス
ルノデ出來ルダケ利子計算ヲ簡單ニ致スヤ
ウニ工夫シテアルノデアリマシテ、例ヘバ
利子ノ計算ニ付キマシテ、百圓當リ何錢ト
云フヤウナ錢止メノ利子ヲ決メテ置キマシ
テ、ソレヲ引クト云フコトモ一ツノ方法デ
アリマス、例ヘバ三分三厘ノ預金デアルナ
ラバ、百圓當リ十六錢ヲ引イテ、稅引利子
ヲ拂ヘバ宜イト云フヤウナコトニナリマス
ルト、割合ニ計算ガ樂ニナルノデアリマス、
サウナルト、三分三厘ノ預金ニ對シテ百圓
當リ十六錢ヲ引クト云フコトニナリマスル
ト、課稅ノ方ノ割合ハ百分ノ五以下ニ落チ
ルノデアリマス、併シサウ云フコトガアツ
テモ、利子ニ對スル課稅ノ手續ノ簡單ナ方
ガ宜シイ、斯ウ云フヤウナ風ニ便法ヲ設ケ
ルコトニシテアルノデアリマシテ、ソレガ
爲ニ臨時租稅措置法ノ第一條ノ十ト云フ規
定ニ於キマシテ、新タニ五%ノ課稅ヲ受
ケルコトニナリマシタ預金ノ利子ニ付キマ
シテハ、分類所得稅ノ稅率ハ百分ノ五デア
ルニ拘ラズ、之ヲ百分ノ四マデ、卽チ百分
ノ一程度ハ率ヲ輕減スルコトガ出來ルト云
フ規定ヲ置イテ居リマス、是ハ先程モ申上
ゲマシタヤウニ利子支拂ヲ簡單化スルソ
レガ爲ニ稅率ガ百分ノ五ヲ下ツテモ宜シイ、
併シ餘リ下リ過ギテハ又困リマスカラ、百
分ノ四マデノ間デハ利子ニ對スル課稅ヲ簡
單化出來ルヤウニ、稅率ノ方デ遠慮スルト
言ヒマスカ、輕減シテ宜シイノダ、斯ウ云
フ規定ヲ置クコトニ依ツテ出來ルダケノ考
慮ハ拂ツテ居ル次第デアリマス、尙ホ市町
村、農業會等ニ於テ、新タニ課稅スルコト
ニナツタカラト言ツテ、稅務署ノ檢査其ノ
他ニ依ツテ手數ヲ煩ハスコトノナイヤウナ
コトニ付テハ十分留意シタイト思ツテ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=17
-
018・中島彌團次
○中島委員長 駒井重次君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=18
-
019・駒井重次
○駒井委員 實ハ大藏大臣ニ質問ヲ致シタ
イト思ツタノデアリマス、其ノ理由ハ、私
ノ伺ヒタイト思ヒマスコトハ、稅務行政ノ
新方向ト申シマスカ、進路ト申シマスカ、
進ムベキ途ヲ明確ニシテ戴キタイト考ヘタ
カラデアリマシテ、此ノ點ヲ大藏大臣カラ
此ノ際明カニシテ戴クコトガ必要デアルト
實ハ考ヘタノデアリマス、昨日ノ當委員會
ノ松隈主稅局長ノ答辯デ、租稅ノ新シイ理
念ト云フコトニ付キマシテハ色々ト御說明
ガゴザイマシテ了承致シタノデアリマスガ、
併シ此ノ租稅ノ新シイ理念ト云フコトニ付
キマシテモ、大藏大臣ハ旣ニ一年或ハ一年以上
前カラ租稅ノ新理念ニ付テ色々ト示唆ハ與
ヘテ居ラレタノデアリマスケレドモ、之ヲ
明確ニシテ下サル機會ガナカツタノデアリ
やっ、況シテ此ノ租稅ノ新シイ理念ニ付キ
マシテハ一般ノ稅務官吏ト云フモノハ殆ド
關知シテ居ラナイ、大臣ガ、租稅ト云フモ
ノハ從來ノ租稅ト變ツタ、斯ウ云フ風ナ方
向ヲ取ツテ居ルノダ、ト云フコトヲ述ベテ
居ラレナガラ、之ヲ實際ニ運營スベキ稅務
官吏ノ方々ニ至リマシテハ、租稅ノ新シイ
理念ハドウ云フモノデアルカト云フコトニ
付テハ殆ド理解ヲシテ居ラレナイノデハナ
イカト考ヘラレテ居ツタノデアリマス、斯
ウ云フヤウナ譯デ、大藏大臣カラ此ノ場合
租稅ノ新シイ理念ノ下ニ稅務行政モ一ツノ
新シイ方向ニ進ムベキデアルト云フコトヲ
明確ニシテ戴クコトガ實ハ必要ダト考ヘテ
居ツタノデアリマス、併シ松隈主稅局長ガ
居ラレマスカラ、主稅局長カラ稅務行政ノ
進路ヲ一ツ明確ニシテ戴イテ、之ヲ一般稅
務官吏ノ方々ニ徹底ヲシテ戴クト云フコト
ヲ御願ヒヲ致シマシテ私ノ御尋ネヲシテ見
タイト思フノデアリマス、稅務行政ト申シ
マスト、此ノ租稅ノ新シイ理念ノ下ニ運營
サルベキデアルト云フコトハ申スマデモナ
イト思フノデアリマス、從來ノ稅務行政ノ
ヤリ方ヲ考ヘテ見マスルト、大體ニ於テ稅
務官吏ノ獨斷專行デアリマシテ、殆ド他ノ
協力ヲ求メルト云フ考へ方ハナカツタノデ
アリマス、併シナガラ一昨年稅務代理士法
及ビ納稅施設法ガ議會ヲ通過致シマシテ、
玆ニ新シイ稅務行政ノ進路ヲ示サレタルモ
ノトシテ我々ハ欣快至極ニ考ヘテ居ツタノ
デアリマス、ソレハ何カト申シマスルト
從來ノ稅務官吏ノ殆ド專行ニ任セテ居リマ
シタ稅務行政ト云フモノニ對シテ、廣ク國
民ノ協力ヲ求メル、或ハ納稅者ノ强イ協力
ヲ求メヨウトスル所ニ此ノ二ツノ法律ガ非
常ニ意義ガアルト實ハ考ヘラレルノデアリ
マス、ソレデアリマスカラ、今後ノ稅務行
政ノ行クベキ途ト云フモノハ、ヤハリ國民
ノ協力ヲ求メナケレバ稅務行政ノ完璧ハ期
シ難イ、或ハ納稅者ノ强イ協力、或ハ新タニ
出來マシタ稅務代理士制度ノ活用ニ依リマ
シテ、稅務行政ニ强イ關與ヲセシメテ、稅務
官吏ノ獨斷專行ニ任シテ居ツタ此ノ行政部
面ニ國民ノ協力ヲ求メルト云フ所ニ私ハ一
ツノ新シイ方向ガ示サレテ居ルノデハナイ
カト實ハ思フノデアリマス、此ノ點ハ如何
ニ考ヘテ居ラレマスカ、先ヅ伺ヒタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=19
-
020・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務行政ノ根本指針ト致
シマシテ、時代ニ卽應シタ新シイ租稅理念
ヲ打立テルト云フコトノ必要デアリマスコ
トハ、昨日モ申上ゲタ通リデアリマス、ソ
レガ爲ニハ日本本來ノ租稅觀ト云フモノヲ
調査致シマシテ、之ヲ〓究スル一方、ソレ
ノ平易ナル解說書ノヤウナモノヲ作リマシ
テ、徵稅ノ任ニ當リマスル稅務官吏ニモ、
租稅本來ノ使命ヲ能ク理解徹底セシメ、又
納稅者ニモ日本的租稅ノ本質ヲ理解シテ戴
キマシテ、强力ナル援助ト申シマスカ、協
力ヲ得ナケレバナラヌト云フコトニ付キマ
シテハ、全ク同感デゴザイマス、此ノ趣
旨ノ下ニ稅務行政ヲ運營シテ參ルト云フコ
トニナリマスレバ、稅務官吏ノ訓練ニ依ツ
テ頭ヲ切替ヘテ參ル必要ガアリマス、ソレ
ト同時ニ稅務相談所ノ如キモノヲ擴充强化
致シマシテ、稅務官吏ト民衆トノ間ニアツ
テ稅ノ理解ト協力トヲ圖ル機關ヲ作ル、ソ
レカラソレヲ擴充シ、大イニ活動セシメル
ト云フ必要ガ生ジテ參リマス、之ニ付キマ
シテハ昨日大藏大臣カラ話モアリマシタ通
リ、從來ノ官設相談所ヲ出來レバ民間ニ移
ス、卽チ公益法人ノ事業ニ移スト云フコト
三八其ノ場合ニ於テ必要ナル補助ヲ致ス
爲ノ豫算モ、議會ニ提出サレテ居ルヤウナ
次第デアリマス、又一方一昨年稅務代理士
ノ制度ガ出來タノデアリマスルガ、稅務代理
士自體モ公的ナ使命ヲ持ツテ居ルノデアリ
マスルカラ、稅務代理士ノ人々ヲ通ジマシ
テ一般國民ノ納稅ニ對スル理解ヲ深メ、協
力ヲ得ルヤウニ施策シテ行クト云フコトモ
必要デアルト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=20
-
021・駒井重次
○駒井委員 大體日本ノ稅法或ハ稅制ト申
シマスモノハ、非常ニ綿密ニ出來上ツテ居リマ
ス、理論的ニハ非常ニ秀デタ稅法デアリ、稅
制デアルト思フノデアリマスガ、是ガ實際
ニ運營セラレル稅務行政ノ部面ヲ見マスルト、
實際ニ於テハ中々立派ナ稅法ナリ、稅制ナ
リガ完全ニ運營セラレテ居ラナイ、此處ニ
表ガアリマスガ、所得稅ノ決定件數ガ昭和
十七年分ニハ六百十八萬七千件、ソレニ對
シテ審査請求ノ件數ハ實ニ五十六萬五千件
提出セラレテ居ルノデアリマス、又昭和十
八年分ニ於キマシテハ決定件數六百九十六
萬件ニ對シマシテ、五十五萬六千件ト云フ
夥シイ審査請求ノ件數ガ提出セラレテ居
ル、ソレデアリマスカラ、課稅ガ多過ギテ
不平ヲ申出夕者ガ大體是ダケアル、此ノ外
ニ課稅ガ少クテモ不平ハ申出ナイ、知ラヌ
顏ヲシテ喜ンデ居ルト云フ、所謂課稅漏レ
ニナツテ居ル部分ト云フモノハ、更ニ是ノ
何倍カニ達スルデアラウト思フノデアリマ
ス、サウシマスルト六百萬件餘ノ決定件數
ノ中、大體半分位ハ適正ナル課稅ヲ受ケテ
居ラナイノデハナイカト實ハ思ハレル位デ
アリマス、サウ云フ譯デ實際ノ稅制トカ稅
法トカ云フモノハ、極メテ緻密ニ理論的ニ
出來テ居リマスルケレドモ、之ヲ實際ニ運
營シマス場合ニ於キマシテハ、非常ナ缺陷
ガ我ガ國ノ稅務行政ノ上ニ於テ現ハレテ居
ルト云フコトハ、否ミ難イ事實ダラウト思
フノデアリマス、斯ウ云フヤウナ狀態デハ
今囘ノ增稅ニ依ツテ更ニ國民ノ負擔ヲ增加
シマス際、何等カノ方途ヲ玆ニ講ズルノデ
ナケレバ、實際ノ稅務行政ノ運營ニ於テハ
非常ニ大キナ非難ガ起ルノデハナイカト考
ヘラレマス、此ノ點ニ付テハ如何ニ御考ヘ
デアリマスカ、御意見ヲ伺ツテ見タイト思
フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=21
-
022・松隈秀雄
○松隈政府委員 租稅制度ガ如何ニ完備シ
テ居リマシテモ、運用ガ旨ク行カナケレバ
實效ガ上ラナイト云フ點ハ御說ノ通リデア
リマス、我ガ國ノ租稅制度ニ付テハ、制度
上ハ相當立派ニ出來テ居ルノデアルケレド
モ、之ヲ實際ニ運用シテ居リマスル稅務官
吏ノ數デアルトカ、或ハ其ノ素質等ノ關係
カラ致シマシテ、種々遺憾ナ點ガアルノデ
アリマス、之ニ付キマシテハ出來ルダケ制
度ノ改善ヲ圖リ、人員ノ充實ニ努メルコト
ニ致シテ居ルノデアリマシテ、今囘ノ增稅
ニ當リマシテモ、增稅ニ伴フ人員經費ノ豫
算ヲ計上シテ協贊ヲ御願ヒ致シテ居ル次第
デアリマス、斯樣ニ致シマシテモ尙ホ稅務
ノ實際ノ運用ニ當ツテ、色々缺點ガ出ナイ
トハ限ラナイノデアリマスカラ、是ガ處置
ノ爲ニハ先程モ御話申上ゲマシタヤウニ、
納稅相談所ト云フヤウナモノヲ活用シテ、
此ノ活動ニ依ツテ最初カラ申〓ガ正シク出
ルト云フヤウナコトニナリマスルト、徴稅ノ
上ニ於テモ手數モ省ケ、間違ヒモ少クナル
ト云フヤウナコトニナリマスルノデ、此ノ方
面ニ付テハ從來ヨリモ一層力ヲ注ギタイト
云フ積リヲ以テ、豫算モ計上シ、又其ノ豫
算ノ協賛ヲ得マシタ曉ニ於キマシテハ、實
效ノ上ルヤウニ工夫シテ參リタイト思ツテ
居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=22
-
023・駒井重次
○駒井委員 主稅局長ノ考ヘテ居ラレルコ
トハ非常ニ結構デアリマシテ、是非サウ御
願ヒ致シタイト思フノデアリマス、併シ今
日ノ徵稅ニ要スル費用ハ、大體總額ノドレ
位ニナツテ居ルノデアリマスカ、ソレヲ一
ツ伺ツテ見タイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=23
-
024・松隈秀雄
○松隈政府委員 租稅ヲ徵收スル爲ノ經費
ガ幾ラデアルカト云フコトニ付キマシテ、
從來稅額ノ少カツタ時代ニ於テハ或ル程度
高カツタノデアリマスガ、最近ハ稅額ガ增
大致シマシタ割合ニ人員經費ハ殖エナイノ
デ、昭和十八年度ニ付テ見マスト、各稅平
均シタ所デ申上ゲマシテ、百圓當リ八十七
錢程度ニナツテ居リマス、明年度ニ於テハ
ソレガ少シ下リマシテ百圓當リ七十六錢程
度デアラウカト思ヒマス、是ハ交付金マデ
籠メテノ經費デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=24
-
025・駒井重次
○駒井委員 只今ノ數字ヲ伺ツテ見ルト徵稅
費ハ極メテ低イモノデアルコトヲ感ズルノ
デアリマス、我國ノ稅務官吏ハ非常ニ勤勉
デアリ、能ク働イテ居リマスガ、實際ニ於
テハ數ト質ニ於テ非常ニ足リナイノデアリ
マス、其フ結果ガ極メテ誤謬ノ多イ決定ニ
ナツテ現ハレ、或ハ間接稅ノ方面ニ於ケル
非常ナ脫稅トナツテ現ハレテ居ルノデアリ
マシテ、之ヲ何等カノ方法ニ依ツテ救濟ス
ルノデナケレバ、到底圓滑ナル稅務行政ノ
運營ハ期シ難イト考ヘテ居リマス、其ノ點カ
ラ考ヘテ見マシテ、ドウシテモ稅ニ關スル
限リハ官民ガ對立シテ居ルト云フヤウナ考ヘ
方ハ少クトモ一掃スベキデハナイカ、此ノ
點ニ關シ特ニ愼重ナル御考慮ヲ拂ツテ戴イ
テ、官民ノ納稅或ハ賦課徵收ノ諸問題ニ對
シテ對立的ナ考ヘ方ヲ一掃セシメルト云フ
方途ヲ考ヘテ戴ク必要ガアルト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=25
-
026・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務官吏ノ數ガ比較的少
イ、其ノ待遇亦必ズシモ好クナイト云フ御
話デアリマスガ、是ハ或ル程度戰時下ノ官
吏トシテハ已ムヲ得ナイ所デアリマス、ソレ
ガ又稅務行政ノ運營ニ惡イ結果ヲ生ジ、國
民ニ迷惑ヲ掛ケルヤウナ結果ニナツテハ困
ル問題デアリマスノデ、今囘ノ增稅ニ當リ
マシテモ、一方增稅ニ依ツテ納稅者數モ相
當殖エマスノデ人員ノ要求ヲ致シテ居リマ
ス、判任官ダケデモ約千名位增員致シタイ
ト考ヘテ居ル次第デアリマス、其ノ外ニ必
要ニ應ジテ大都市等ノ稅務署ヲ分離シテ稅
務署ノ數ヲ殖ヤシタイト考ヘテ居リマス
又質ノ良イ者ガ稅務行政ニ長ク携ハリ得
ルヤウニ高等官ノ數モ增シテ戴クヤウニ御
願ヒシテ居ル次第デアリマス、次ニ御話ノ
アリマシタ納稅ニ關シテ官民ノ對立ト云フ
ヤウナ現象ヲナクナスコトニ付テ工夫ガ要
ルト云フコトハ全ク御說ノ通リデアリマス、
從來ノ間違ツタ權利義務ノ思想、稅ハ取ル
モノデアル、或ハ取ラレルモノデアルト云
フ考ヘ方ハ非常ニ宜シクナイノデアリマス
先程御話申上ゲマシタヤウニ、是ガ爲ニド
ウシテモ日本本來ノ租稅觀念ヲ能ク〓究調
査シ、其ノ意義ヲ明カナラシムルト共ニ、
之ヲ廣ク徵稅者側ニモ納稅者側ニモ知ラセ
マシテ、對立觀念ヲ拂拭スル必要ガアリマ
スノデ、ソレガ爲ニ特別ノ施策ヲ講ジテ調
査會ヲ設ケ、折角成案ヲ得、其ノ成案ヲ實
施ニ移シタイト考へテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=26
-
027・駒井重次
○駒井委員 官民ノ對立觀念ヲ一掃シテ戴
キタイコトハ當然デアリマス、同時ニ國民
ニ對シモウ少シ稅務ニ協力セシメルト云フ
方面ニ向ツテ積極的ニ進ンデ戴クコトガ必
要ト考ヘマス、今囘ノ增稅案ノ色々ノ點ヲ
拜見シマシテモマダ〓〓國民ノ協力ヲ要求
スル點ニ付テハ何トナク力足リナイヤウニ
感ジマス、モウ少シ國民ガ稅ニ付テ理解シ、
稅務行政ニ對シテ協力スルト云フヤウニ御
指導ヲ願フ必要ガアルト思ヒマス、殊ニ稅
務代理士法ガ出來テ以來旣ニ一年餘ヲ經テ
居リマスガ、當時大藏大臣モ、御說明ニナリ
マシタ通リ、稅務行政ノ補助機關トシテノ
役割ヲ果サセルト云フ所ニ此ノ制度ノ重要
ナ點ガアツタノデアリマス、然ルニ今日マ
デノ稅務代理士制度ノ實際ノ狀態ヲ見マス
ト稅務行政ノ補助機關トシテノ役割ヲ果ス
所ニ達シテ居ラナイ、單ニ稅務代理士ノ取
締法ト云フ觀念ガ强ク、國民ヲシテ稅務ニ
協力セシムルト云フ方途ハ何等講ジテ居ラ
ヌト思ヒマス、其ノ爲ニ日本稅務代理士聯
合會ヨリ大藏大臣ニ對シテ具體方策ガ建議
シテアリマス、此ノ內容ハ、稅務代理士ヲ
シテ稅務ニ協力セシメテ貰ヒタイ、其ノ一
ツトシテ指定稅務代理士制ヲ設ケテ貰ヒタ
イ、此ノコトハ簡單ニ申シマスト、指定稅
務代理士制トハ特殊事件ノ處理ニ對シテ、
財務局長ヨリ納稅者ノ同意アリタル場合稅
務代理士ヲ指定セラレ、同事件ノ處理ヲ擔
當セシムル制度デアリマス、是ガ稅務ノ指
定代理士トシテ稅務行政ニ關與スル、例
バ審査請求ノ事件ガアレバ納稅者ガ指定稅
務代理士ヲ設ケテ貰ヒタイト希望ヲ申出タ
際ハ適當ナル稅務代理士ヲ指定シテ其ノ事
件ヲ調査セシメ、其ノ結果ニ依ツテ稅務署
長ガ決定スルト云フ制度デアリマス、之二
依ツテ稅務官吏ノ手ヲ省キ、事務ノ簡素ト
ナリ、實際ニ於テハ稅務官吏ノ調査以上ノ
結果ヲ上ゲサセタラドウカト云フ考ヘ方デ
アリマス、モウ一ツノ制度ハ囑託稅務代理
士制ト申シマスガ、是ハ課稅ニ關スル一般
事務ノ調査又ハ監査ニ對シ稅務署長ヨリ稅
務代理士ヲ囑託シ、協力セシムル方法デアリ
マイク、是ハ大體一般的ナ調査デアリマスノ
デ、無報酬デ稅務代理士ヲシテ稅務行政ノ
或ル部分ノ事務ノ調査、又ハ監査等ヲセシ
メルト云フ制度デアリマスルガ、斯ウ云フ制
度ヲ一ツ御活用ヲ願ツテ、稅務行政ガ稅務
官吏ノ獨斷專行ニノミ委スベキモノデハナ
ク、廣ク一般ノ協力ヲ求メルト云フ考ヘ方
カラモ、斯ウ云フ具體的ノ制度ヲ御活用ニ
ナツテハドウカト考へテ居ルノデアリマス、
此ノ點ニ關スル御意見ヲ御聽キシタイト思
ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=27
-
028・松隈秀雄
○松隈政府委員 稅務代理士ガ稅務行政ノ
補助機關タル使命ヲ帶ビテ居ルト云フコト
ハ御說ノ通リデアリマス、之ヲ如何ナル形
ニ於テ具現シテ行クカト云フコトニ付キマ
シテハ、政府ニ於テモ考慮中デアリマスル
ガ、何シロ稅務代理士ノ制度ガ出來マシテ
マダ一年餘デアリマシテ、內部ノ結束其ノ
他ニ付テモ漸ク〓ニ就キ、段々ト制度ノ確
立ヲ見ツヽアル際デアリマスルノデ、ソレ
等ノ內部ニ於ケル各般ノ整備等トモ相俟ツ
テ、具體的ナ方法ヲ考ヘタイト思ツテ居ツ
タ所デアリマスルガ、今囘稅務代理士ノ聯
合會ニ於キマシテ、〓究ノ結果、只今御述
ベニナリマシタヤウナ指定稅務代理士ノ制
度デアルトカ、或ハ囑託稅務代理士ノ制度
ヲ採用シテハ如何カト云フ建議ガ出テ參ツ
タノデアリマス、是等ニ付キマシテハ一應
御尤モト認メラルヽ所ガゴザイマスルカラ、
斯ウ云フ制度ヲ如何ニ採用シテ行クカト云
フコトニ付テハ、具體案ニ付テ〓究ヲ遂ゲ
マシテ、宜シイト云フコトニナレバ、之ヲ
實現スルコトヲ工夫努力シタイト思ツテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=28
-
029・駒井重次
○駒井委員 主稅局長ノ御答辯非常ニ滿足
致シマシタガ、私ハ斯ウ云フ制度其ノモノ
ガ良イカ惡イカト云フコトハ第二ノ問題ト
シマシテ、斯ウ云フ方向ニ一ツ進ンデ戴ク
ノデナケレバ、折角稅務代理士制度ガ出來
タ趣意、目的ハ達セラレナイノダト云フコ
トヲ實ハ申上ゲタノデアリマス、又稅務行
政ノ新シイ進路、新シイ方向ト云フモノハ
斯ウ云フ方面ニ進ムノデナケレバ、唯單ニ
稅務官吏ノ手デ今日ノ複雜多岐デアリマス
ル稅務行政ヲ賄ツテ行ク、擔當シテ行クト
云フコトダケデハ、足リナイノデハナイカ
ト云フコトヲ考ヘルノデアリマス、少クトモ
色々ノ方面カラ稅務ニ關スル限リ、是ガ新
シイ理念ノ下ニ立ツテ居ル租稅デアルノデ
アリマシテ、從來ノ如ク國家ト國民トガ對
立的ニ稅ノ問題ニ對シテ考ヘル必要ハナイ
ノデアツテ、少クトモ一致協力シテ此ノ稅
務行政ノ立派ナ運營ヲシテ行クト云フコト
ガ、今日以後私ハ必要ヂヤナカラウカト考
ヘルノデアリマス、只今主稅局長カラノ御
說明ニナリマシタ今日ノ租稅、或ハ今日以
後ノ稅務行政ト云フモノノ進ムベキ途ヲ、
是非トモ一ツ一般ノ稅務官吏ノ方ニ示シテ
理解ヲシテ戴イテ、サウシテ過チナキヤウ
ニシテ戴キタイト思フノデアリマス、今日
ノ政治ノ一番足リナイ點ハ、東條總理大臣
ノ言ツテ居ラレルコトガ或ハ局長課長アタ
リニハ通ジテ居ルケレドモ、更ニ下級ノ官
吏ノ方ニハ是ガ通ジテ居ラヌ、或ハ今ノ稅
務ニ關スル限リハ、大藏大臣ノ考ヘテ居ル
コトガ財務局ノ局長、部長アタリハ十分ニ
理解シテ居ルケレドモ、更ニソレカラ下ヘ行
クト一向理解ヲシテ居ラナイト云フ所ニ缺
點ガアルノデアリマシテ、此ノ點ニ付テハ先
程一寸御話ガアリマシタガ、モウ少シ明確
ニ之ヲ稅務官吏一般ニ知ラセル方途ニ付テ、
一ツ御伺ヒシテ置キタイト思フノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=29
-
030・松隈秀雄
○松隈政府委員 複雜多岐ニナリツヽアリ
マスル稅務行政ヲ圓滿適正ニ執行シテ參ル
上ニ付テ、單リ稅務官吏ダケガ努力シテ見
タ所デ、納稅者ガ全ク對立的ナ態度ニ立ツ
タリ、或ハ稅務官吏ニ反撥スルト云フヤウ
ナコトニナリマシテハ、其ノ能率ノ上ラナ
イコト、所期ノ目的ガ達セラレナイコトハ
仰セノ通リデアリマシテ、ドウシテモ稅務
行政有終ノ美ヲ濟シマスル爲ニハ、官民相
協力致シマシテ、戰時下ノ稅務行政ノ運營
ニ付テ好成績ヲ擧ゲルヤウニスルト云フ氣
持ニナラナケレバナラナイ譯デアリマス、
之ニ付キマシテ第一線ノ稅務官吏ノ所マデ
趣旨ガ能ク徹底スルヤウニ、ソレニ付テハ
如何ナル方途ヲ講ゼントスルノデアルカト
云フ御尋ネデアリマスルガ、是ハ折ニ觸レ、
時ニ應ジテ大臣カラモ訓示ヲサレテ居ルノデ
アリマシテ、財務局長會議或ハ財務局ノ部
長會議等ガアリマスレバ、能ク大藏省デ考
ヘテ居リマスルコトヲ第一線ニ徹底スルヤ
ウニ取計ラツテ居リマス、其ノ會議ニ列シ
マシタ財務局長或ハ部長等ハ又財務局ニ會
議ヲ招集シテ、署長又ハ課長ヲ集メルト云
フコトニ致シテ居リマスルシ、署長、課長
ハ歸ツテ自分ノ署ニ於テ署員ヲ集メテ、趣
旨ノ傳達ヲ圖ルト云フヤウニ致シテ居ルノ
デアリマス、又講習會ヲ度々開キマシテ、
講習ニ依リマシテ新シイ租稅ニ對スル考ヘ
ノ徹底スルヤウニ從來モ努メテ居リマスル
ガ、今後モ努メタイト思ツテ居リマス、講
習ト申シマスルト、兎角新規採用ノ者トカ
或ハ採用シテ年數ノ幾ラモ經タナイ者ガ中
心ニナルノガ普通デアリマスルガ、更ニ相
當ノ年數ヲ經タ幹部級ノ者、更ニ署長デア
ル者ニ付テモ之ヲ時折集メテ、最近ノ經濟
情勢ノ變化、稅務行政ニ關シテ留意スベキ
事項等ニ付テ、趣旨ノ徹底スルヤウナ制度
ヲ設ケテ、稅務行政ノ運營方法ニ付テノ改
善ヲ圖ツテ居ルノデアリマス、益〓其ノ必要
ガ認メラレマスルノデ、今後ニ於キマシテ
モソレ等ノ施設ハ勿論、新タニ施策ヲ考ヘ
マシテ、御趣旨ノ點ノ實現スルヤウニ盡力
シテ參リタイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=30
-
031・駒井重次
○駒井委員 時間モゴザイマセヌカラ最後
ニ一ツ伺ツテ私ノ質問ヲ打切リタイト思ヒ
やっく、ソレハ今後所得稅ノ改正ガゴザイマ
スガ、所得調査委員制度ヲ改正セラレナカ
ツタノハ、何カ理由ガアツテノコトデゴザ
イマセウカ、此ノ制度ハ先程カラ私ガ申上
ゲマシタ稅務行政上ノ一ツノ過去ノ制度デ
アリマスルガ、今日ニ於キマシテハ此ノ制
度ハ、寧ロ今後稅務行政ノ進路トシテ御示
シニナリマシタ、先程カラノ主稅局長ノ御
考ヘトハ、何トナク相反スルヤウナ形ガア
ルノデハナイカト實ハ考ヘラレルノデアリ
マシテ、今囘此ノ制度ノ御改正ヲナサラナ
カツタ御趣旨ヲ伺ツテ見タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=31
-
032・松隈秀雄
○松隈政府委員 所得調査委員ノ制度ハ、
所得稅法ノ制定以來ノ古イ制度デアリマシ
テ、今日各種ノ諮問機關等ノ形ノ變ツテ參
ツテ來テ居ルモノノアル時ニ於テ、依然古
イ制度ヲ其ノ儘存置スルノハ如何デアルカ
ト云フ論議ガアルノデゴザイマシテ、之ニ
付テハ色々ノ改正案ガアリマスルノデ、我々
モ斷エズ〓究ヲ致シテ居ルノデアリマス、唯
是ノ改正案ト致シマシテハ、納稅者ノ選擧
ニ依ツテ居ル調査委員ノミヲ以テシテハ足
リナイカラ、職能代表ノ意味ノモノヲ出サ
セルトカ、或ハ官選ノ委員ヲ置イテ選擧ノ
委員ニ替ヘルトカ云フヤウナ案ガアルノデ
アリマスガ、今囘ハ所得稅法ヲ初メト致シ
マシテ、各稅法ニ付テ根本的ナ制度ノ改正
ハ之ヲ行ハナイ、現行稅制ノ下ニ必要ナル
稅率ノ引上ヲ行ヒマシテ增收ヲ圖ルト云フ
コトヲ中心ト致シマシタ關係上、所得調査
委員ノ如キ永年ノ制度デアツテ、而モ是ハ
是デ又民意ヲ代表セシメルト云フ一ツノ特
色モ持ツテ居ル譯デアリマスカラ、是等ノ
改正ニ付テハ愼重ニ〓究ヲスル必要ガアラ
ウト云フコトデ、今囘ハ此ノ改正案ヲ提出
スルコトヲ見合セタ次第デアリマスルガ、
制度ノ根本的ナ改正ヲスルト云フ機會マデ
ニハ、何等カノ成案ヲ得テ改正シタ方ガ宜
シイト云フヤウナ點ニ付キマシテハ、適當
ナル改正ヲ加ヘタイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=32
-
033・駒井重次
○駒井委員 分リマシタガ、所得調査委員
ノ制度ト云フモノハ、大體ガ納稅者ト政府
トノ對立觀念カラ出發シタト云フ風ニモ考
ヘラレルノデアリマシテ、今日以後存在ス
ベカラザル制度デハナイカト實ハ考ヘテ居
ルノデゴザイマス、此ノ點ハ一ツ將來ノ御
〓究ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマス、ソレカ
ラ稅務行政ノ新シイ方向ト云フコトニ付キ
マシテハ、一ツ廣ク一般ニモ普及サシテ戴
イテ、誤リナキヤウ十分御指導ヲ御願ヒ致
シマス、之ヲ以テ私ノ質問ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=33
-
034・中島彌團次
○中島委員長 ソレデハ是デ休憩致シマス、
午後ハ一時半カラ會議ヲ開キマスカラ、正
一時半ニドウカ御出席願ヒマス、質問ノ通
告シテアル御方ハ必ズ其ノ時間ニ御出席ヲ
願ヒマス
午後零時十五分休憩
午後一時四十二分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=34
-
035・中島彌團次
○中島委員長 是ヨリ引續イテ會議ヲ開キ
マス-田中貢君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=35
-
036・田中貢
○田中(貢)委員 今囘ノ增稅ハ增稅金額ニ
於キマシテ平年度二十五億七千六百萬圓デ
アリマシテ、大體從來ノ稅金ニ比べテ三割
近クノ增稅ニ當ルノデアリマス、ケレドモ、
其ノ殆ド全額ガ臨時軍事費ニ繰入レラレル
ト云フノデアリマスカラ、國民ハ苦シイナ
ガラモ欣ンデ負擔スルニ相違ナイト思ツテ
居リマス、ノミナラズ從來ノ租稅法ハ動モ
スレバ今日最モ必要デアル生產力擴充ノ支
障トナツタ憾ミガアツタノデアリマスガ、
今囘ノ增稅案ニ依リマスト、此ノ點ニ特別
ノ考慮ガ拂ハレテ居ルト云フコトハ洵ニ結
構ナ次第デアルト思ツテ居リマス、ケレド
モ尙ホ不十分ナ點ガアルト思ヒマスガ故ニ、
之ニ付テ質疑致シタイト思ヒマス、例ヲ石
炭事業ニ取ツテ見タイト思フノデアリマスガ、
石炭ニ付キマシテハ申スマデモナク、個別
價格制ガ行ハレテ居リマシテ、各炭礦每ニ
原價計算ニ依ツテ生產費ニ二圓乃至二圓五
十錢ノ利潤ヲ加算シテ價格ヲ定メル、サウ
シテ其ノ價格ヲ以テ日本石炭會社ガ一手ニ
山元デ買取ルコトニナツテ居ル次第ナノデ
アリマス、隨ヒマシテ石炭業者ノ利潤ト云
フモノハ「トン」當リ二圓乃至二圓五十錢ナノ
デアリマスカラ、稅金ガソレ以上ニ及ブト
云フコトハ一寸考ヘラレヌノデアリマス、然
ルニ實際ノ稅金ヲ見マスルト十七年度モ十
八年度モ營業稅及ビ營業稅附加稅ヲ除キマ
シテ「トン」當リ五圓見當ニナツテ居ルモノガ
少クナイト思フノデアリマス、此ノ點ハ從
前ノ商工省ト大藏省トノ間ニ必要ナ經費ト
認メテ控除致シマス範圍ヲ異ニスル結果デ
ハナイカト思フノデアリマス、何レニ致シ
マシテモ生產增强ノ支障トナツテ居ルヤウ
ニ思フノデアリマスガ、此ノ點ニ付キマシ
テノ御意見ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=36
-
037・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 今囘ノ增稅ハ相當程度ノ
負擔トナルノデアリマスルガ、今御話ノヤ
ウナ國民ヲ代表シテノ御希望ハ洵ニ私共ト
シテモ感激ニ堪ヘナイ所デアリマス、生產
力ノ增强ニ付キマシテ出來ルダケノ配意ヲ
致ス積リデアリマスコトモ今御述べノ通リ
デアリマスルガ、今御話ノ石炭ノ問題ニ付キ
マシテハ、稅法ノ上ノ規定デハ左樣ナ結果
ヲ生ズルヤウナコトニハ勿論ナツテ居ナイ
ノデアリマシテ、課稅ノ適用ノ上ニ於キマ
シテ、或ハ今御述べニナリマシタヤウナ、
經費ヲ如何ニ見ルカ、隨テ利益ヲ如何ニ見
ルカト云フ點ガ主タルモノデアルト思ヒマ
スルガ、之ニ付キマシテハ一番問題ニナリ
マスル減價償却ナドモ事變以來特ニ其ノ點
ハ從來平時ノ考ヘ方ト違ヒマシテ適切ナ處
置ヲ執ツテ居ルノデアリマシテ、大藏當局
ト致シマシテハ、御述ベニナツテ居ルヤウナ
結果ハ生ジナイ積リデ課稅ノ實際ニ當ツテ
居ル譯ナノデアリマス、或ハ炭礦ソレ/。
ノ狀況ガ場合ニ依リマシテハ他ノ事業トノ
兼營ナドモアリマスル場合ニ、一企業會社
トシテ課サレマス結果相當大キナ利益ガア
ルモノモアルカト思フノデアリマスガ、尙
ホ今後ノ適用ニ付キマシテハ、唯取レバ宜
イト云フ態度デハナク、適正ニ課稅サレル
コトニ付キマシテ更ニ一段ト注意ハ致シテ
參リタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=37
-
038・田中貢
○田中(貢)委員 只今例ニ取リマシタノハ
個人企業デアリマシテ、大體年產十二、三
萬「トン」掘ツテ居ル山ナノデアリマスガ、營
業稅及ビ其ノ附加稅込ミデ十七年度ニハ五
圓四十錢餘、十八年度ニハ五圓六十錢餘支
拂ウテ居ルノガアルノデアリマスカラ、大
藏大臣ノ御話ノヤウニ是非共生產增强ニ資
スルヤウニ手心ヲ加ヘテ適當ニヤツテ戴キ
タイト思ヒマス、ソレカラ今度ハ會社企業ニ
付テ申シマスト、會社企業ニ於キマシテハ
少シ異ツテ居リマシテ、稅金ガ「トン」當リ二
圓五十錢以上ニ及ンデ居ルモノハナイダラ
ウト思ヒマス、ケレドモ石炭坑ト工場トハ
性質ヲ異ニシテ居リマス、工場デ增產ヲス
ルト云フ場合ニハ現有設備ノ能率ヲ上ゲテ
行ケバ宜イガ、鑛山デ增產ノ實ヲ上ゲテ行
カウト云フ場合ニハ現有設備ニ〓込マネバ
ナラヌ、斯ウ云フコトニナルノデアリマシ
テ全ク性質ヲ異ニシタモノデアリマス、隨
テ鑛山ニ於テ生產增强ヲ致シマスノニハ新
坑ヲ開發シテ行ク外ハアリマセヌ、其ノ新
坑ヲ開發致シマスノニ事變前ニハ年產ヘト
ン當リ十圓位ノ企業費デ足リタト思ヒマ
スガ、最近ニナリマスト、ドウシテモ六、
七十圓ハ掛ルト云フコトデアリマス、假
六、七十圓ト致シマシテ百萬「トン」掘ルト
致シマスト六千萬圓乃至七千萬圓要ル、其
ノ際「トン」二圓ノ利潤ヲ認メラレマシタノデ
ハ六千萬圓トスレバ三分三厘三毛、七千萬圓
トスレバ二分八厘五毛ノ收益率ニシカナラ
ヌ譯ナノデアリマス、此ノ點ガ利潤ヲモツ
ト認メロト云フ議論ニナルノデアリマスケ
レドモ、ソレハ此處デハ差控ヘマシテ、セ
メテ稅金ノ範圍內ニ於テデモ出來ルダケノ
手心ヲシテヤラレルト云フコトガ生產增强
ニ必要缺クベカラザルコトデハナイカト思
フノデアリマス、十七年度マデハ增產奬勵
金モアリマシタシ、新坑開發奬勵金モアリ
マシタガ、十八年度以降是ガ廢止セラレマ
シタ、是ニ於テ尙更政府トシテハ稅金ヲ課
ケル際ニ手心ヲシテ、サウシテ新坑開發、
隨テ增產ノ結果ガ上ガルヤウニスルコトガ
必要ノヤウニ思フノデアリマス、此ノ點モ前
ニ述ベタ個人企業ト同樣デハアリマスケレ
ドモ、念ノ爲ニ一度御所見ヲ伺ツテ置キタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=38
-
039・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 日本石炭ガ石炭業者ヨリ
買入レル價格ニ付キマシテハ、生產量ノ「ト
ンㄴ當リノ利益ヲ計算ヲ致シテ居リマスル
ガ、是ハ結局ハ資本ニ對スル利潤ガ適正
ニナル、所謂勞賃其ノ他ノ生產原價ニ加フ
ルニ資本ノ利潤ガ如何ニ高クナルカト云フ
點ニ付キマシテ、十分〓究ヲ致シマシテ、
結局新シイモノハ御話ノヤウニ新坑開發、
新シキ切羽ヲ開キマスシ、運輸輸送ノ設備
ヲ致シマス、是等ニ付キマシテ十二分ニ考
ヘテ決定ヲ致シテ居ルノデアリマシテ、ソ
レ等ノ利潤ノ點ヲ考ヘマシテ、從來ノ奬勵
金モ廢シマシタヤウナ次第デ、一方ソレデ
生產力モ上リマシタヤウナ次第デアリマス、
唯總テノ山ニ付キマシテ個別的ニ實行スル
コトガ困難ナル爲ニ相當ナ部分ニ於テ集團
價格制ヲ採ツテ居ルモノガアリマスルノデ、
多少其ノ結果有利ナモノト比較的不利ナモ
ノトノ差ヲ生ズルト思フノデアリマス、是等
ノ事情ニ付キマシテハ、課稅ノ際ニ出來ル
ダケ實情ヲ究メマシテ適當ニ課稅サレマス
ルヤウニ、尙ホ十分注意ヲシテ參リタイト
存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=39
-
040・田中貢
○田中(貢)委員 次ニ今囘ノ稅法ノ改正ニ
依リマスト、或ル一定額ヲ超エマスト手取
ガアマリ殖エヌ、斯ウ云フ結果ニナルヤウ
ニ思フノデアリマス、此ノ點ニ於キマシテ、
生產ノ增强ニ支障ヲ來シハシナイカト思ハ
レル廉ガアルノデアリマス、ソレヲ細カク
計算致シマシタモノヲ此處デ述ベル煩瑣ヲ
避ケマス爲ニ、委員長ノ手許へ鑛業ニ關スル
稅金負擔額調ト云フノヲ渡シテ置キマシタ
カラ、ソレヲ速記ニ載セテ戴キマスト同時
ニ、ソレニ依リマシテ論議ラサセテ戴キタ
イト思ヒマス、ソレニ依リマスト、所得決
定額五十萬圓之ヲ利益金ノ方カラ見マスト、
戰時利得稅ノ關係デ七十五萬圓ト云フコト
ニナリマス、個人企業デ七十五萬圓ノ利益
ヲ得ルマデハ兎モ角手取ガ多少デモ殖エテ
行クト云フ勘定ニナリマスガ、其ノ後ハ綜
合所得稅ノ七割四分ノ最高率ヲ課セラレル
コトニナリマスノデ、假令利益金ハ殖エマ
シテモ、手取ハ殆ド殖エヌト云フ勘定ニナ
ル譯ナノデアリマス、之ヲ例ヘテ見マスト、
利益金七十五萬圓ノ場合ニ利得稅ヲ拂ヒマ
レテ、更ニ分類所得稅、綜合所得稅、營業
稅營業稅附加稅、東京ダト都市計畫ノ負
擔經濟會議所ノ負擔、斯ウ云フ風ナモノ
ヲ悉ク計算ニ入レマスト、七十五萬圓ノ利
益ノ場合ニ六十八萬一千圓ノ稅ノ負擔ニナ
ル次第デアリマス、ソレガ八十五萬圓ト十
萬圓殖エマス時ハ幾ラニナルカト云フト、
七十八萬一千圓ニナル譯デアリマス、九十
五萬圓ニナツタ時ハ幾ラニナルカト云フト
八十九萬一千圓ニナル、斯ウ云フ譯デアリ
マシテ、七十五萬圓ガ八十五萬圓ニナリマ
シテ十萬圓殖エマシテモ、其ノ十萬圓ガ丁
度消エルト云フ勘定ニナルノデアリマス、
若シ此ノ計算ニ間違ヒガナイト致シマスナ
ラバ、少クトモ或ル限度ヲ超エマスト所
得ハ增加シテモ殆ド手取ハ殖エヌト云フ結
果ニナルノデハナイカト思フノデアリマス、
ソコデ是デハ面白クナイコトデアリマシテ、
ヤハリ出來ルナラバ、租稅ノ負擔額ハ八割
五分ナラ八割五分マデ、各種ノ租稅ヲ全部
合セテ八割五分止リ、或ハ時局ガ要求スル
ナラ九割止リ、或ハ九割五分止リトカ、斯
ウ云フ風ニ自ラ最高限ヲ設ケテ行クト云フ
コトガ生產增强ニ必要ナノ·デハナカラウカ、
斯樣ニ考ヘル次第ナノデアリマス、固ヨリ
營業稅デアルトカ、或ハ其ノ附加稅ト云フ
風ナモノハ經費トシテ差引クコトニナツテ
居リマスカラ、其ノ計算ハ極メテ面倒ナコ
トト思ヒマスケレドモ、何トカ之ヲ單純化
シテ最高限ヲ決メルト云フ風ナコトニシテ
行ク方法ガアリマスナラバ、必ズ生產增强
ニ大ニ資スルト思フノデアリマス、此ノ點
ニ付キマシテ御所見ヲ承リタイノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=40
-
041・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 所得ガ高額ニナリマス程
負擔力ヲ非常ニ增大スルト云フ根本方針ハ、
是ハ一般ニ認メテ居ル所デアリマシテ、所
得ガ增セバ增ス程稅金ガ殖エ、手取リ額ノ
增シ方ガ少クナル、是ハドウモ已ムヲ得ヌ
ト思フノデアリマス、國稅ニ付キマシテハ
手取リハ段々ニ割合ガ減リマスルガ、若干
ハ殖エル餘地ガマダ殘ツテ居リマス、尤モ
今囘ノ分類所得稅ノ增率ト綜合所得稅ノ增
率ヲ合セマシテ、不動產所得ニ於テハ可ナ
リ高額ニナル、併シナガラ綜合所得稅ノ增
率ニ付キマシテ、所謂所得額ノ眞中邊ヨリ
モ寧ロ上ノ方ヲ輕クシテアルト云フヤウナ
點ニ付キマシテハ、所謂高額所得者ノ負擔
割合ガ非常ニ增加スルト云フ行キ方カラ見
レバ、多分ニ御話ノヤウナ觀念モ採リ入レ
タ積リデアリマス、何シロ多イ所得ニナリ
マスト稅金ガ多クナルコトモ亦已ムヲ得ナ
イノデアリマス、今御示シノアリマシタ點
ニ付キマシテハ政府委員ヨリ御答ヘヲ申上
ゲタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=41
-
042・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今大臣カラ御話モアリ
マシタヤウニ、現在累進稅率ヲ持ツテ居リ
マスル綜合所得稅ニ付キマシテハ今囘更ニ
引上ゲヲ行ヒマシタ上ニ、分類所得稅ノ稅
率モ上ツタノデアリマスカラ、高額ノ所得
ノ上ニ乘ル所得ニ付キマシテハ稅引ノ手取
リト云フモノガ非常ニ減ツテ參ルノデアリ
マスルガ、併シ御話ノヤウニ十萬圓殖エタ
ケレドモ、十萬圓ガ稅金トカ、或ハ十萬圓
以上ノ稅ニナルト云フコトハ、理論的ニモ
實際的ニモアリ得ナイ譯デアリマス、ソレ
ニ付ギマシテハ率ノ上カラ平面的ニ考ヘル
トサウ云フ場合モ出テ來ルノデアリマシテ、
例ヘバ事業所得デアリマスト、分類所得稅
ガ百分ノ十八、ソレカラ五十萬圓ヲ超エル
所得ニ付キマシテハ綜合所得稅ガ百分ノ七
十四デアリマスルカラ、ソレダケデ百分ノ
九十二ト云フコトニナツテ居リマス、卽チ
九割二分ハ所得稅デアリマス、其ノ他ニ營
業稅ガ今囘ノ改正ニ依リマシテ附加稅ガ法
定制限マデ課カツタト致シマシテモ國稅ト
合セテ百分ノ八加ハル譯デアリマスルカラ
百ニナリマス、其ノ外ニ都市計畫特別稅或
ハ商工經濟會ノ負擔ト云フヤウナモノヲ加
ヘルト云フト百「パーセント」ヲ超エル、更
ニ又臨時利得稅ト云フ點ヲモ考慮ニ入レマ
スト云フト、稅率ノ單純合計ニ於キマシテ
ハ高額所得ノ上ニ乘ル所ノ其ノ所得ニ付キ
マシテハ百「パーセント」ヲ超エルヤウニナ
リマスケレドモ、制度上ハ臨時利得稅ガ掛
リマシタ場合ニ於テハ、ソレヲ引キマシタ
殘リヲ以テ所得ト見ルト云フコトニナツテ
居リマスルシ、又營業稅ニ付キマシテハ附
加稅諸共ニ之ヲ營業ノ經費トシテ差引イテ
計算スルコトニナツテ居リマスルカラ、ソ
レヲ勘案考慮ニ入レマスレバ高額所得者
ガ其ノ上モウ十萬圓所得ヲ殖ヤシテモ全部
ガ稅デアル、或ハ時ニ依ツテソレ以上稅ニ
ナルト云フ點ハナイ譯デアリマス、併シ幅
ガ非常ニ狹メラレテ來テ居ルト云フコトハ
爭ヘナイ事實デアリマス、今囘ノ增徵ニ依
リマシテ其ノ幅ハ可ナリ縮マツテ參ツテ居
ルト云フコトハ是認出來ル所デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=42
-
043・田中貢
○田中(貢)委員 只今ノ御答辯ノヤウニ是
非アツテ欲シイト思ツテ居ル次第デアリマ
ス、就キマシテハ委員長ノ手許マデ表ヲ出
シテ置キマシタカラ成ベク誤解ヲ避ケル
爲ニ、若シ出來レバ此ノ委員會ガ濟ミマス
前ニ、實際ハ斯ウ云フ風ニナルノダト云フ
コトヲ御示シ下サツテ國民ノ疑惑ヲ解クヤ
ウニシテ戴キタイト思ヒマス、稅法ノコト
ハ御承知ノヤウニ幾ラ讀ンデモ分リマセ
ヌ、其ノ分ラヌノガ、一生懸命計算シテ見
マスト、事業利益ガ七十五萬圓以上ノモノ
ニ付キマシテハ超過分十萬圓ニ對スル稅金、
公課ヲ計算致シマスト、十萬圓ニ付テ九萬
九千九百九十九圓四十五錢ニナルノデアリ
マス、稅法ハ非常ニ複雜デアリ難カシイモ
ノデアリマスガ、私ト同樣ノ計算ハ相當ノ
專門家モ亦スルダラウト思ヒマスカラ、是
非其ノ疑ヒヲ解イテ戴キタイト思ヒマス、
次ニ殘サレタ問題ハ稅金ヲ或ル程度ニ於テ
打切ツテ見タラドウカ、「ドイツ」デハ稅金
ハ六割五分止リト云フコトニナツテ居ツタ
ヤウデゴザイマス、サウシテ其ノアトハ公
債ヲ持タスノダ、或ハ貯金ヲサセルノダ、
サウシテ公債ハ成ベク銀行ガ持タズニ個人
ニ持タスト云フ方針ヲ執ツテ居リマシテ、
ソレヲ考慮ニ入レタ稅法デアラウト思フノ
デアリマスガ、其ノ最高限ヲ決メテ置クカ、
或ハモツト稅率ヲ刻ンデ行クカ、實ハ個人
デ八十萬、九十萬ノ利益ヲ擧ゲル人ガアル
ダラウカト云フ疑ヒモ出ルノデアリマスガ、
事實アルノデアリマス、又サウ云フ人ガド
シドシ殖エテ行カナクチヤイケナイノデア
リマス、伸ビ行ク日本デスカラサウ云フ人
ガドシ〓〓殖エルヤウニ持ツテ行カナケレ
バナラヌト云フコトヲ考ヘマスト、何等カ
ソコニ稅金負擔額ガ日ニ〓〓上ツテ行クガ
手取リモ少シヅツ殖エテ行クト云フ方法ヲ
特ニ御考慮願ヒタイト思ヒマス
次ニ今度ノ增稅法案ニ依リマスト、特別
價格報奬金ニ付キマシテハ留保額ノ五割マ
デハ免稅スルト云フコトニナツテ居リマシ
テ大變ニ宜イコトダト思ツテ居リマス、從
來ハサウ云フ方法ヲ執ラレテ居リマセヌ
デ、例ヘバ石炭ニ付テ增產奬勵金トカ或ハ
增送奬勵金ト云フヤウナモノガアリマシテ
是ガ免稅ニナツテ居リマセヌ、隨ツテ三十
萬圓ノ利益ノアル人ガ二十萬圓奬勵金ヲ貰
ヒマスト五十萬圓トシテノ稅率ガ課ケラレ
ルコトニナルノデアリマシテ、大變ナ稅金
デ殆ド取ラレテ行ク、斯ウ云フコトデアリ
マシタ、而モ增產奬勵金ヲ貰ツタト云フコ
トデ、鑛山監督局ノ方カラソレダケ諸般ノ
福利施設ヲシロト云フヤウナコトマデ命ゼ
ラレマシテ、却テ增產奬勵金ヲ貰ハナカツ
タ方ガ宜カツタト云フ結果ニナツタ事例ガ
少クアリマセヌ、ソレニ比ベマスト今囘ノ
處置ヲ執ラレタコトハ非常ニ宜イコトダト思
ヒマスガ、併シ是ガ留保額ノ五割マデヲ免
除シテ何故全額ヲ免除セラレナカツタカト
云フコトヲ一ツ承ツテ見タイノデアリマス
五割ノ程度マデハ兎モ角トシテ、報奬金ヲ
貰ツタ爲ニ、少クトモ其ノ中ノ留保額ノ五
割ダケハ高イ稅率ガ掛ル、斯ウ云フコトニ
ナルノデアリマシテ、此ノ點ハ生產奬勵ト
云フ意味カラ云ヒマスト、折角報奬金ヲ認
メタ其ノ趣旨ガ、元ハ十割、今ハ其ノ一部
分ガ此ノ稅法ニ依ツテ消サレルト云フ憾ミ
ガアルト思フノデアリマス、此ノ點ニ付キ
マシテ、先ヅ何ガ故ニ留保額ノ五割マデハ
免稅スルコトニシタカ、又留保以外ニ勞働
者其ノ他ニモ報奬金ヲ分ケテヤツテ居ルノ
デアリマスガ、留保ニ限リ五割ノ免稅ノ特
典ヲ認メタト云フコトニ付キマシテ、ーソ
御說明ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=43
-
044・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 前段ノ御意見ニ付キマシ
テハ能ク拜承シテ置キマシテ、又將來稅制
ヲ考ヘマス時ノ材料ト致シタイト思ヒマス、
後段ノ御尋ネデアリマスガ特別價格報奬金、
是ハ率直ニ申シマスルト、大體從業員ノ努
力ガ報奬金ヲ貰フ主要ナ原因ニナリマス、
或ハ勞務者技術者、經營者此ノ人達ノ努力
ガ原因ニナルノデアリマス、ソレ故ニサウ
云フ方面ニ或ハ賞與トシテ色々配分サレル
場合ガ多ク想像サルヽノデアリマス、又ソ
レヲ認メル積リデアリマスガ、併シソレカ
ト申シマシテ是ガ會社ノ資產ニナル、別ナ
言葉デ申シマスト、株主ノ利益ニナルト云
フコトモ一〓ニ否定ヲスル必要モナイ、ト
云フコトハ或ハ是ガ人ノ上ニモ影響シ、社
內留保ノ上ニモ影響スル譯デアリマス、サ
ウ云フ立場カラ見マスト、全體ノ觀點ト
シマシテ經營者、技術者、勞務者等ノ場
合ヨリモ、ソコニ所得ガアリ、利益ガアル
課稅ノ對象ニナルト云フ見方ガ、ドウシテ
モ株主勘定ニナリマス場合ニハ、稍〓濃ク出
ル傾キガアリ得ルコトト思フノデアリマス、
ソレデ兎ニ角ソコニソレダケノ負擔力ガア
ルノデアリマス、併シ一方ハ報奬金制度ノ
趣旨モアリマスカラ、兩者ノ考ヘ方ヲ折衷
致シタ點ガ只今ノ所ニ現ハレテ居ルノデア
リマス、尙ホ他ニ只今カラ見マスレバ國家
的ニ役ニ立ツヤウニ色々會社ノ資產ノ使用
方ガ出來マシタ場合ニモ免稅制度ハアリマ
ス是等モモノニ依ツテ必ズシモ全部ニハ
ナイ、從來モナク、今囘モナイ譯デアリマ
ス、先ヅソレ等ノ權衡ヲ見マシテ、大體只
今ノ程度ガ然ルベキモノデハナイカ、斯ウ
考ヘテ居ル譯デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=44
-
045・田中貢
○田中(貢)委員 價格報奬制度ヲ決メラレ
タノハ昨年ノ四月十六日デアツタカト思ヒ
マイク、政府ガ其ノ要綱ヲ發表シタ時ニハ、
其ノ報奬金ノ處分ハ事業家ニ任スト云フノ
デ、特ニ認可ヲ得ル必要ハナイト云フ建前
ヲ執ツテ居ルノデアリマス、然ルニ其ノ後
事實ヲ調ベテ見マスト、認可ハ受ケナイデ
宜イニシテモ、悉ク官廳ノ指示ヲ受ケナケ
レバナラヌト云フノデ、現場ニ働イテ直接
增產ニ努力シタ職員、職工ニ之ヲ分ケルヤ
ウニ指示サレテ居リマス、之ヲ留保スルト
云フコトニ付テハ特ニ承諾ヲ要スル、而モ
現實ニ留保サレタ額ト云フモノハ極メテ少
額デアルト云フ風ニ聞イテ居ルノデアリマ
スガ、サウスルト大部分ハ留保サレズニ居
ルノデス、旣ニ留保スル折ニ承認ガ要ルナ
ラバ、序デニ之ヲ全部免稅シテ、奬勵ノ趣
旨ニ副ウタラドウデアラウカ、其ノ點ガ一
ツ、更ニ又是ガ職工職員ニ分配サレタ際ニ
ハ、ヤハリ是モ高キ稅率ヲ課セラレルコト
ニナリ得ルノデアリマシテ、折角奬勵シタ
ケレドモ、其ノ結果ニ於テハ殆ド奬勵ニナ
ラヌト云フ事實ガ生ジ得ル、丁度曾テ增產
奬勵金ヲ貰ツタ爲ニ稅金ノ負擔ガ多クナツ
テ殆ド手取リガナクナツタト云フ實例ト同
ジコトガ起リ得ルノデアリマス、サウ云フ
コトヲ併セテ考ヘマスト留保ニナツタル場
合ト、或ハ勞働者職員ニ分配サレタル場合
トヲ問ハズ、一應是ハ全部免稅ナサツタ方
ガ宜イノデハナカラウカ、少クトモ直チニ
免稅シ得ナイト云フナラバ多少手心ヲ加ヘ
テ、折角增產ノ趣旨ノ爲ニ拵ヘタ制度ヲ活
カシテ行クコトニナサルノガ宜イノデハナ
イカ、是ハ稅金ガ幾ラニナルカ知リマセヌ
ガ、今日ノ大キイ豫算カラ見ルト大シタ金
額デハナイト思フ、而モ隨分色々免稅ノ特
典ヲ持ツタモノガ少クナイノデアリマシテ、
其ノ點彼此レ合セテ考ヘマスト、特ニ政府
ガ增產奬勵ノ爲ニ設ケタ報奬金ニ付テハ出
來得レバ全部免稅スル、ソレガ出來ナケレ
バ出來ルダケ手心ヲ加ヘテ、增產ノ趣旨ニ副
フヤウニ御取計ヒニナルコトガ必要ナコト
ト思フノデアリマス、重ネテ一ツ御答辯ヲ
煩ハシタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=45
-
046・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 今日ノ增產ニ付キマシテ
ハ度々申シマスヤウニ、根源ハ此ノ戰局ニ
對處スル國民トシテノ貢献、愛國的精神要
素ガ主タルモノデアルコトハ申スマデモナ
イノデアリマシテ、色々國家ニ貢献サレマ
シタコトニ對スル國家ノ報奬トシマシテノ
形而上ノ、精神的方面ヲ主トシテ考ヘテ居
ルノデアリマス、併シナガラ其ノコトハ總
テ單純ニ一本調子ニモ參リマセヌノデ、經
濟的利益ト云フコトモ亦考フベキ點デアリ
マスノデ、價格報奬制度ニ付テモ、或ハ特
別價格報奬制度又一般價格報奬制度、更之
原單位ノ低下ニ關スル奬勵制度等モ考案ヲ
致シテ居ル譯デアリマス、隨テ其ノ點カラ
會社ニ奬勵金ガ參リ、ソレガ職員ヤ勞務者
ニ賞與トシテ出マシタ場合免稅スルト云フ
コトモ一方法デアリマスガ、旣ニ奬勵金ガ
出タト云フコトガ國家ノ一ツノ施策デゴザ
イマス、サウ致シマスレバ他ニ色々賞與ナ
ドガ參リマシタト同ジク課稅ヲスルカ、或
ハソレモ免稅ヲスルカト云フコトハ程度ノ
問題デアリマスガ、今日トシテ多クノ所得
ガアル、ソレカラ國家ニ御奉公スル爲ニ稅
ヲ餘計納メマスルコトモ亦國民ノ誇リデモ
アリマスシ、ソレカラ勞務者職員等ニ於テ
ハ數十萬ト云フ多額ノ報酬ヲ受ケナイノガ
普通デアリマシテ、稅トシテ納メマス部分
モ比較的小部分デモアリマスノデ、是ハ特
ニ免稅ヲシナイ方針ニ致シタノデアリマス、
尤モ貢献ノアル特別ノ報奬ヲ貰フ主要ノ原
因トナツテ居リマス人々ニ對スル處置デア
リマスカラ、サウ云フ勞務者職員ニ分配サ
レズ、所謂株主勘定ニ入リマシタヤウナ場
合ニハ、ヤハリ是ハ奬勵ノ必要モアリマスル
ガ、全然免稅スルト云フコトハ、先程申シ
マシタヤウニ他ノ場合トノ權衡等ヲ考ヘマ
シテ少シク行過ギハシナイカト存ジテ半額
ノ免稅ヲ致シタ譯デアリマス、是ガ株主ニ
分配サレヽバ特別ノ免稅ノナイコトハ勿論
デアリマス、左樣ナ考ヘデ、御考ヘノコト
モ一ツデアリマスガ、先ヅソレ以上特殊ノ
處置ハ只今ハ執ラヌデモ宜シイノデハナイ
カト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=46
-
047・田中貢
○田中(貢)委員 此ノ點ハ重ネテ一言申シ
テ置キタイノデアリマスガ、從來ノ生產奬
勵金ガ課稅サレル爲ニ、事實增產奬勵ノ效
果ガ擧ラナカツタト云フコトハ爭フベカラ
ザル事實デアリマシテ、到ル處ニ其ノ實例
ヲ見タノデゴザイマス、其ノ程度ノ低イモ
ノガ、今度直接增產ニ貢獻シタリ生產期間
ヲ短縮シタト云フ職員職工ニ課ツテ來ルノ
デアリマス、而モ其ノ職エト云フノハ非常
ニ金勘定ハ敏感デアリマシテ、是ガ非常ニ
移動率ノ多イ原因デアリマス、折角ノ增產
奬勵制度デアリマスカラ、特ニ一ツ御考慮
ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、固ヨリ是
ハ精神ノ問題デアリマシテ、精神デ行カナ
ケレバナラナイノデアリマスガ、何サマ隣
ニ炭坑ガアリ、コチラニモアリ、又隣ニモ
工場ガアル、コチラニモ工場ガアルト云フ
ノデアリマスカラ、互ニ比較對照サレルト
云フ立場ニ置カレテ居ル、其ノ連中ヲ取扱
フニハ、精神デ行カナケレバナラヌケレド
モ、又其ノ精神ヲ助長スルヤウナ制度ヲモ
併セテ講ジテ行カナケレバナラヌト思ヒマ
スガ故ニ、諄イヤウデアリマスガ重ネテ相
當ノ手心、法律ノ許ス範圍ニ於テノ御便宜
ヲ圖ルヤウニシテ戴キタイト云フコトヲ申
添ヘテ置キマス
次ニ特別價格報奬金ニ付テハ左樣ナ御取
扱ヒガアルノデアリマスガ、一般報奬金ニ
付キマシテハソレガナイ、價格報奬金ノ中
ノ一般報奬金ト云フノハ生產費ヲ下ゲタ場
合生產費ノ上ルノヲ抑ヘタ場合ニ報奬金
ヲ吳レルト云フコトニナツテ居リマス、是
ニ付キマシテハ何等ノ免稅ノ特典ガアリマ
セヌ、ノミナラズ政府ガ最近發表致シマシ
タ所ニ依ルト原單位切下報奬金制度ト云フ
ノヲ設ケマシタ、一般價格報奬制度ニ付テ
ハ政府ハ盛ニ宣傳シテ居リマスケレドモ、
事實殆ド行ハレテ居ナイノダラウト思ヒマ
ス、最近電氣銅其ノ他ニ實施スルヤウナ御
話デゴザイマスカラ、行ク〓〓是モ範圍ガ
廣ク行ハレルト思ヒマス、原單位切下報奬
制度ハ、鐵鋼關係、航空機關係等ニ付キマ
シテ大幅ニ實施スルト云フ意氣込ミデアリ
マシテ、必ズ本年度內ニ實施サレテ相當行
渡ルコトト思ヒマス、隨テ一般價格報奬金
ト原單位切下報奬金モ亦特別價格報奬金ト
同樣ニ取扱フベキモノト思ヒマスノニ、特
ニ是ガ除カレテ居ルト云フコトハドウ云フ
譯デアリマセウカ、其ノ點ヲ一ツ伺ヒタイ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=47
-
048・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ御尋ネノ點デアリ
マスルガ、此ノ一般價格報奬制度モ特別價
格報奬制度モ、極メテ重要デハアリマスル
ガ、多少ソコニ氣持ノ差異モアリマス、特
別價格報奬ノ制度ニ於キマシテハ數量ヲ
增產スル、同ジ生產要素ノ量ノ場合、餘計
生產ヲスル、或ハ急速ニ生產ヲ要スルモノ
ヲ非常ニ生產日數ヲ縮メルトカ、一段ト濃
厚ナ點ガアルノデアリマス、一般價格報奬
制度、是ハ能率ガ一般的ニ上ツテ居ル譯デ
アリマス、是モ無論考フベキコトデアリマ
スガ、自ラソコニ感ジノ多少ハアリマス、
ソレデ課稅ガアツテモ、報奬金ガ行ク、或
八〓プール」平準價格制ヲ採ル場合ニ其ノ利益
率ヲ餘計見ルト云フコトニ依ツテ相當ノ利
益ガソコニアルノデアリマスカラ、其ノ上
ニ免稅スルカシナイカト云フコトモ程度
問題ニモナリマスノデ、一般價格報奬制度
ニハソレヲ採リマセヌ、殊ニ是ハ多ク法人
デゴザイマスガ、普通ハ法人稅ハ比例稅デ
モ參ツテ居リマスノデ、七割ト云フモノハ
手許ニ殘ル譯デアリマスカラ、コヽラハマ
ア稅法ノ複雜化ガ稍〓防ガレル意味ニ於マキ
シテモ、先ヅ此ノ邊デ妥當デハナイカ、斯
ウ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=48
-
049・田中貢
○田中(貢)委員 一般價格報奬制度ハ多少
特別價格報奬制度ト趣旨ヲ異ニスルト云フ
御說明デアリマスガ、併セテ原單位切下報
奬金ノ方ニ付テノ御所見ヲ承リタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=49
-
050・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 原單位低下ノ問題ハ、是
ハ特別價格報奬制度ノ如ク-一般價格報
奬制度デモ本ハ同ジデゴザイマスガ非常ニ
緊迫シテ其ノ貢獻ガ考へラレル譯デアリマ
ス、是ハ特別價格報奬制度ナドト同ジヤウナ
扱ヒニ致シタイト云フ心組ヲ持ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=50
-
051・田中貢
○田中(貢)委員 是非左樣ニ御願ヒ致シマ
ス、報奬金ニ關スル質疑ハ其ノ程度ニシテ置キ
マシテ、次ニ稅務行政ノ簡素化ト云フコト
ニ付テ一ツ承ツテ見タイト思ヒマス、稅務
行政ノ簡素化ニ付キマシテモ大變御努力ナ
サツタ點ヲ多トスルノデアリマシテ、大
變ニ良イ傾向ニ進ンデ居ルト思ツテ居リ
マスガ、尙ホ一、二ノ點ニ付テ承ツテ置キ
タイト思ヒマス、自分ノ收入カラ推シマシ
テ何程稅金ヲ拂ヘバ宜イカト云フコトガ分
ル人ハ、日本人デ極メテ少イダラウト思フ
ノデアリマス、院內デモ隨分オ役人ノ方ニ
聽イテ見マシテモ、分ラヌト言フ人ガ多イ
ノデアリマスシ、又自分等モ能ク分リマセ
ヌ、恐ラク特別之ニ付テ知識經驗ノアル人
デナケレバ分リニクイト思フノデアリマス、
是デハドウモ納稅精神ノ確立ト云フコトニ
缺ケルノデハナカラウカ、大體、自分ノ收
入ヲ見テ何程稅金ヲ拂ハナケレバナラヌノ
ダ、ダカラ斯ウ豫定シナケレバナラヌノダ
ト云フコトガ一目瞭然ニナルヤウニナレバ、
何事モ非常ニ圓滑ニ行クヤウニ思フノデア
リマス、所ガ稅務署ニ稅ノ取扱ニ付テノ表
ガアル筈デアリマス、十圓刻ミトカニナツ
テ居ルヤウナ表ガアル筈デアリマス、之ヲ
大衆ニ分ルヤウニ、少クトモ勤勞所得、分
類所得ト云フヤウナモノニ付テハ、何程收
入ガアレバ何程ノ稅金ニナルカト云フ表ヲ
拵ヘテ、本屋ニデモ安ク賣ラセル、更ニ出
來レバ、ソレハ大衆向キナモノデ、專門的
ノモノハモツト厚イモノニシテ御出版ナサ
ツテ明カニサレヽバ、先程色々質疑應答ガ
ゴザイマシタガ、色々稅金ニ付テノ面倒ガ
減ルコトト思ヒマスガ、サウ云フ風ナ御意
思ハゴザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=51
-
052・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ御尋ネハ全ク御同
感デゴザイマシテ、稅法ノ上ニ於キマシテ
ハ負擔ノ均衡、應能負擔ト云フヤウナコト
ヲ考ヘマスト、ドウシテモ面倒ニ規定ヲ致
シマシテ、累進率ニ致シマシテモ所得ノ段階
每ニ變ヘテ行カナケレバナリマセヌ、稅法ヲ
見テ分ラヌコトハ實ハ私共モ同ジナノデア
リマシテ、是ハ適當ナ例デナイカモ知レマ
セヌガ、我々ノ日常ノ行爲ヲ規律サレル民
法、商法ヲ見マシテモ、法律ヲ見テモ中々
分ラナイ、法律ハソレデ簡單ニハ書ケマセ
ヌガ、稅ノ方ハ御話ノヤウニ簡單ニ分ル方
法ヲ執ルコトハ工夫ガ十分ニ出來ルコトデ
アリマシテ、御趣旨御尤モデゴザイマスカ
ラ、サウ云フ御趣旨ニ合ヒマスヤウニ色々
工夫ヲシテ參リタイト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=52
-
053・田中貢
○田中(貢)委員 次ニ政府委員ノ方ニ承リタ
イノデスガ、納稅告知書ト云ヒマスカ、納稅
令書ト申シマスカ、是モ稅金ノ額ノ少イモ
ノニ付テハ囘數ヲ減ラサレタノデアリマシ
テ、是ハ非常ニ結構ナコトト思フノデアリ
マスガ、マダ〓〓何トカ合理化ノ餘地ガア
ルノヂヤナイカト思フノデアリマス、先ヅ
第一ニ、一年間ニドレ位納稅令書ヲ出スモノ
カ、其ノ數ヲ承リタイ、次ニ之ヲ一年分一
枚ニシテシマツテ、一枚出シテ置クト、受
取ツタ人間ハソレヲ見テ一年分ノ稅金ヲ一
枚ノ紙デ出ス、二囘カ三囘ニ割ツテ出セト
言ヘバサウスルシ、何カサウ云フ風ナコト
デ、一人一枚ト云フコトニハ行カナイデセ
ウカ、今囘相當御努力ナサツタコトハ認メ
テ居ルノデアリマスガ、モウ一段進ンデ一
枚デ何モ彼モ片付ケルト云フコトニ-
枚ト云ヲノハ少シ極端カモ知レマセヌガ、
成ベク減ラス方法ハナカラウカ、ソシテ後
デ租稅ヲ追加スルトカ、途中デ增稅ガアツ
タ場合ニハ、例外デアリマスカラ別トシテ、
一年間稅金ガ動カヌトスレバ、成ベク一枚デ
何モ彼モズツト行ケルト云フヤウナコトガ
出來ルモノカ出來ヌモノカ、其ノ點ニ付テ
政府委員ノ方デ結構デスカラ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=53
-
054・松隈秀雄
○松隈政府委員 目下ノ所徵稅令書ヲ出シ
テ徵收シテ居リマス數、卽チ納稅告知書ノ
發布數ハ一年ヲ通ジテ約五千萬通ト云フコ
トニナツテ居リマス、之ニ付キマシテハ今
囘田租以外ノ地租及ビ家屋稅ノ納期ヲ年一
囘トスルトカ、或ハ所得稅ニ付テ年額六十
圓以下ノモノニ付テハ年四期ノ代リニ年二
期ニ納メテ貰フト云フヤウナコトニ依リマ
シテ、ソレ〓〓相當ノ納稅〓知書ヲ減ラス
コトニ致シマシテ、官民ノ手數ヲ省クコト
ニ致シタノデアリマスルガ、マダ一年分ヲ一
枚ノ切符ニシテ、ソレニ依ツテ通帳式ニシ
テ隨時納メルト云フヤウナコトガ果シテ旨
ク行クカドウカト云フコトニ付テハ、〓究
ガ十分積ンデ居リマセヌ、只今マデノ所ハ
從來ノ納稅告知書ヲ樣式ヲ簡單化スルト共
ニ、之ヲ出ス囘數ヲ出來ルダケ減ラスト云
フコトニ付テ工夫ヲ進メテ居ツタノデアリ
マス、御說ノヤウナコトニナリマスレバ相
當簡單ニナル譯デアリマスガ、ソレニハ又
支障ヲ生ズル點ガゴザイマスノデ、將來ノ問
題トシテ〓究致シタイト思ヒマス、要ハ或
ル程度細カイ點ニ不便ガ出來マシテモ、出來
ルダケ簡素化シテ行クト云ブコトガ戰時下
ノ稅務行政トシテハ必要ナコトカト思ツテ
居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=54
-
055・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ御尋ネノ點ハ一寸
考ヘルト非常ニ輕微ナヤウニ見エマスガ、田
中君ハ輕微ト御考ヘニナツテハ居ナイト思
ヒマスガ、私モ極メテ大キイ問題ダト思ツ
テ居リマス、是ハマダ私モ自分デ一寸打消
ス考ヘガアリマシタカラ事務當局ニハ相談
シテ居リマセヌガ、所得稅四期分納メマス
場合ニモ切取制ニ作ツテ四囘ノ納期ノモノ
ヲ一遍ニヤル、一遍ニ納メル場合ハ、全部持
ツテ來テモ宜シイ、或ハ四期ニ納メナケレ
バ金額ノ工合デ負擔ニ堪ヘナイト云フ人ハ
ソレ〓〓納メテモ宜シイト云フ風ニスレバ
相當簡單ニ行クノデハナイカト思フ、併シ
一方斯ウ言フト少シ納稅者ヲ輕ク視テ居ル
トオ叱リヲ受ケルカモ知レマセヌガ、サウ
致シマシテ初メ一囘四分ノ一納メテアト三
枚持ツテ居ル、次ノ納期ガ來タ時ニ新シイ
徵稅令書ガ行カヌト忘レテシマフ、實際言
フトサウ云フコトモ考ヘネバナラヌ點モア
リマシテ、實行案トシテ今直グ實行スルコ
トハ考ヘテ居リマセヌガ、出來レバソンナ
コトヲシテ見タイト云フ風ニ、サウ云フコ
トニ付キマシテモ熱心ニ考ヘル積リデアリマ
ス、又良イ御案ガアリマシタラ〓ヘテ戴キ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=55
-
056・田中貢
○田中(貢)委員 此ノ問題ハ事務ノ簡素化
ト同時ニ、例ヘバ私ナラ私ガ各種ノ稅金ヲ集
メテ-一體幾ラ入ルカ、ソレデ豫算ヲ立
テマシテ其ノ上デ幾ラ公債ヲ持テル、其ノ
上ニ幾ラ貯蓄ガ出來テ幾ラ獻金ガ出來ルト
云フヤウナコトヲ知リマス上ニモ必要ナコ
トデアリマス、是ハ相當〓究ノ餘地ガアリ
マセウ、〓究題目トシテ私モ考ヘテ居リマ
スケレドモ、專門家ノ當局ノ方ニ〓究ヲ御
願ヒシテ置キタイト思ヒマス
次ニ租稅ニ付キマシテ一ツ簡單ナ愚見ヲ述
ベサシテ戴キタイト思ヒマス、ソレハ今囘平年
度二十五億七千六百萬圓ノ增稅ヲ行ハレマシ
テ、尙且ツ擔稅ニ餘力ガアルト云フコトヲ承リ
マシテ非常ニ力强ク感ジ嬉シク思ウテ居ル次
第デゴザイマス、唯ソレハドノ方面ニ擔稅ノ
餘力ガアルカト云フコトモ一ツ承リタイト思
ヒマス、私ヲシテ言ハシメマスナラバ、租稅ノ
根本要件トシテハ應能負擔トカ負擔ノ衡平
トカ云フコトガ考ヘラレネバナラヌノデア
リマスケレドモ、今日ノ此ノ時局下ニ於キ
マシテ最モ重要ナコトハ何ト言ヒマシテモ
收入ヲ增加スル、租稅收入ノ增加ト云フコトニ
アルト思フノデアリマス、此ノ增加ヲ圖リマ
スルノニハ成ベク負擔ノ過重ヲ感ゼシメズ
ニ、增收ヲ圖ルト云フコトガ必要ナノデア
リマシテ、ソレニハ知ラズ識ラズ稅金ヲ收
メサスト云フ方法ヲ執ルコトガ一ツ、モウ
一ツハ個人當リノ負擔額ガ少クトモ集積ス
レバ巨額ニナル、斯ウ云フ二ツノコトガ考
ヘラレナクチヤナラヌト思フノデアリマス、
無意識ノ徵稅ト言ヒマスカ、數ノ力ト言ヒ
マスカ、此ノ二ツノコトガ竝ベテ考ヘラレ
ナケレバナラヌ問題ダト思フノデアリマス、
ソレニハ成ベク源泉課稅デ行クト云フコト
ヲ考ヘテ見タラドウカ、無論今囘ノ稅法ノ
改正ニハ源泉課稅ノ方面ニ向ツテ大幅ニ進
出サレテ居ルノデアリマスケレドモ、尙ホ更
ニ其ノ他ノモノニ付テモ色々理窟ハアラウ
ガ、出シ宜イヤウニシテヤルト云フ點カラ、
見テ、出來ルダケ源泉課稅ノ方ニ進ンデ行
クト云フコトガ一點考ヘラレナケレバナラ
ヌコトノヤウニ思ヒマス、其ノ次ニハ所得
稅ノ免稅點ト云ヒマスカ、基礎控除額ト云
ヒマスカ、其ノ引下ハ今囘ハ避ケラレテ居
リマスガ、是ハ徐々ニ引下ゲテ行ツテ、而
モ極メテ少額ノ負擔ヲサセテ行ク、例ヘバ
賃金稅ト云フヤウナ形ニデモナリマスカ、
何カサウ云フ風ナ形ニシテ行クノガ宜イノ
デハナカラウカ、第三ニ今日ノ物品稅ハ何
ト言ツテモカ贅澤課稅ト云フコトカラ出發シ
テ居リマスノデ今尙ホ其ノ色彩ガ相當ニ殘
ツテ居リマス、大變ニ變化シテ參リマシテ賣
買賣上稅ノ方向ニ進ンデハ居リマスケレド
モ、今尙ホ其ノ色彩ガ相當ニ殘ツテ居ルノ
デアリマスガ、是モ順次其ノ範圍ヲ廣ゲテ行ツ
テ、而モ低率ノ課稅ヲシテ一層增收ヲ圖ルト
云フコトガ必要ニナツテ來ルノデハナカラ
ウカ、固ヨリ贅澤品ニ付キマシテ高率ノ稅
ヲ課スルコトモ必要デアリマスガ、其ノ以
外ノモノニ付キマシテモ極メテ低率ノ課稅
ラシテ、サウシテ廣イ範圍ニ課スルコトニ依
リマシテ、增收ヲ圖ルコトガ必要デハナカ
ラウカ、又之ヲ外ノ方面カラ見マスナラバ、
租稅ノ中心ハ勿論直接稅ニナツテ居リマス、
所得稅ニ次イデ最モ大キイ稅源ニナリ得ル
モノハ賣買賣上稅デハナカラウカ、斯樣ニ
思フ次第デアリマス、第四ト致シマシテ事
變以來幾度カ增稅ガ繰返サレマシテ、殆ド
每年例外ナク增稅ガ行ハレタノデアリマス、
其ノ時々ノ經濟ノ事情、竝ニ財源ノ要求ニ
依リマシテ行ハレタコトデアリマシテ勿論
已ムヲ得ヌコトデアリマスケレドモ、理想
ヲ申シマスナラバ、成ベク一度決メテ置
イテ自然增收デ行ク形ガ最モ望マシイコト
デハナカラウカト思フノデアリマス、又之
?
ニ似寄ツタ先例モナイデハナイト思ヒマズ、
一部改正ハスルトモ大本ハ殆ド動カヌヤ
ウニ持ツテ行クコトガ理想デアルト斯樣ニ
思フ次第ナノデアリマス、ソコデ是等ノ諸
點ヲ合セ考ヘマシテ、將來ノ租稅制度ヲ考
ヘ出サナナケレバナラヌト思フノデアリマ
ス、來年直グ之ヲ何トカシテ吳レト言フノ
デハナイノデアリマスガ、イツカ又租稅收
入ノ增加ヲ圖ラネバナラヌ時期ニ到達スル
コトハ間違ヒナイト思ヒマス、其ノ時ニ備
くり、大體一度拵ヘタナラバ動カサヌ、而
モ國民ガ負擔ノ過重ヲ感ジナイ、ソシテ收
入ハ非常ニ殖エルト云フヤウナ案ヲ切々御
〓究ヲ願フト云フ譯ニハ行カヌモノデアリ
マセウカ、同時ニ其ノ際ニハ出來ルダケ稅
務行政ヲ單純化シタイ、殊ニ稅務官吏ヲ優遇
スル途ハ色々アリマスガ、一ツハ何ト言ツ
テモ其ノ事務ヲ簡單ニシテヤルコト、他方
ニ於キマシテハ收入ヲ增加スル、地位ヲ上
ゲルト云フコトデス、此ノ二點ニ付キマ
シテハ委員會ニ於テ色々質疑應答ガアリマ
シタカラ重ネテ申シマセヌガ、兎ニ角簡易
化スルト云フ點モ併セテ將來ノ稅制ヲ一ツ
確立シテ戴キタイト思フノデアリマス、重
ネテ申シマスト直グ來年ドウシロト云フコ
トヲ申上ゲテ居ルノデハナイノデアリマシ
テ、イツカサウ云フ時期ガ來ルデアラウガ、
其ノ時ニハ動カヌモノニスル用意ヲシテ戴
キタイト思ヒマスガ、此ノ點ニ付キマシテノ
御所見ヲ伺ツテ置キタイト思フノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=56
-
057・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今ノ御尋ネノ中ニハ大
分細カイ問題モゴザイマシタカラ一應私カ
ラ御答ヘ申上ゲタイト存ジマス
第一ノ問題ハ、今囘ノ增徵ニ依リマシテ
相當ノ增收ヲ擧ゲタノデアルケレドモ、將
來增徵ノ餘地ト云フモノガマダ相當ニアル
ト云フコトヲ政府ガ言ツテ居ルコトハ甚ダ
心强イガ增徵ノ餘地ト云フモノハドノ方面
ニ主トシテアルダラウカト云フ御尋ネデア
リマス、是ハ中々難カシイ問題デアリマシ
テ、具體的ニ申上ゲルコトハ困難デアリマス
ルガ、政府資金ノ撒布モ殖エテ參リマスル
ノデ、國民ノ所得ト云フモノガ相當增大ス
ル傾向ニアリマス、卽チ政府ノ豫算ノ中ニ
國民ノ貯蓄トナリ、納稅トナル元ガ入ツテ居
ルト斯ウ見ルコトモ出來ルノデアリマシテ、
ソコニ一般的ノ餘力トモ稱スベキモノガア
ルノデアリマス、尙ホ政府資金撒布ガドノ
方面ニ現ハレルカト云フコトヲ最近ニ於ケル
課稅ノ狀況等カラ觀察致シマスルト、比較
的大所得者ノ所得ハ伸ビガ惡イヤウデアリ
やく、寧ロ中小ノ所得ニ於テ伸ビテ居ルト
云フ狀況ガ窺ハレルノデアリマス、其ノ中
先程モ御話ガアリマシタヤウニ、今囘ノ增
徵ニ依リマシテ、高額所得者ノ負擔ハ可ナ
リ重クナツテ居リマスルノデ、餘力ノ點カ
ラ觀察致シマスルト、高額所得者ニ之ヲ求
メルヨリモ中小所得者ニ求メルト云フヤウ
ナ傾向ニナルカト思フノデアリマス、サウ
致シマスルト御話シノヤウニ、或ハ源泉徵收
ノ制度ヲ擴充强化シ乃至ハ物品稅等ノ間接
稅ノ擴充、卽チ大衆負擔ヲ、增大スル、個々
ノ稅額トシテハ少イケレドモ集積スレバ相
當ノ金額ニナルト云フヤウナ方向ニ向ツテ
〓究サルベキモノデアラウト思フノデアリ
マス、今囘モ其ノ趣旨ニ依リマシテ、自傭
勞務者等ノ所得ニ付キマシテハ、新タニ丙
種事業所得ヲ加ヘマシテ源泉徵收ノ制度ヲ
擴充致シタノデアリマス、其ノ外ニモ源泉
徵收出來マスルモノハ擴充致シタイト思ツ
テ隨分〓究致シタノデアリマスガ、差當リ
ハ日傭勞務者ト原稿料、講演料、著作權ノ
使用料等ノ程度ニ止メマシテ、小營業者等
デ請負デアルカ勞賃デアルカ分ラナイヤウ
ナモノニ付テハドウモマダハツキリ源泉
徵收シテ宜シイト云フ譯ニモ行キマセヌ
デシタカラ、今度ハソコマデ擴張致シテ
居リマセヌ、外國ノ制度デアリマスルト、
家賃ヤ地代ノヤウナモノマデ源泉課稅ト
云フコトニナツテ居リマスガ、日本デハ
果シテ地代ヤ家賃ヲ源泉徵收出來ルカドウ
カ、其ノ邊ニ付テモ確タル自信ヲ持チ得マ
セヌデシタノデ、今囘ハソコマデ擴張シテ
居リマセヌガ、將來ノ問題トシテハ十分〓
究シタイト思ツテ居リマス、勞賃稅若シク
ハ賃金稅ト云フモノヲ起スト云フノモ一ツ
ノ考へ方デアリマシテ、現ニ「ドイツ」アタ
リハ賃金稅ヲ施行シテ居リマスガ、日本デ
ハ甲種勤勞所得ガ源泉課稅デアリ、今囘ノ
丙種事業所得ガ源泉課稅ニナリマシタカラ、
特ニ賃金稅ト云フ名前ヲ起サナイデモ、大
體其ノ目的ハ達セラレテ居ルヤウニ思フノ
デアリマス、間接稅ニ於キマシテモ、最モ
大衆化シ得ル租稅ト致シマシテハ物品稅ノ
課稅範圍ヲ擴張シ、免稅點ヲ引上ゲテ行ク
カ、或ハ一般取引稅、卽チ賣上稅ニ置キ換
ヘルカト云フ問題デアリマス、是モ多年懸
案ノ問題デアリマシテ、〓究ハ怠ラズニ致
シテ居ルノデアリマスガ、成案ヲ得テ提案
スルト云フマデニハ至ツテ居リマセヌ、將
來ノ問題トシテ十分ニ〓究ヲ續ケタイト思
フノデアリマス
最後ニ租稅制度ニ付テ、出來レバ每年ノ
增稅ヲ行ハナイデ或ル程度動カナイ制度ヲ
拵ヘテ、其ノ後ハ自然增收ニ俟ツヤウニス
ルコトガ出來ナイカ、斯ウ云フ御尋デアリ
マスガ、之ニ對シテモ我々ハ出來レバサウ
云フ風ニシタイト云フ考ヘヲ持ツテ居ルノ
デアリマスガ、中々一度ニ增稅ヲスルト云
フコトニナリマスルト負擔增加割合ガ多ク
出マシテ、經濟界ニ與ヘル影響トカ、或、
國民生活ニ變動ヲ來スト云フヤウナ點ガア
ツテヤリニクイノデアリマス、注射ノ如キ
モノデモ一遍ニ澤山ノ量ヲ注射スルト云フ
コトニナレバ迚モ堪ヘラレナイノデスケレ
ドモ、數囘ニ亙ツテヤレバ是ガ堪ヘラレル
ト云フヤウナ點モアリマシテ、且ツ每年財
政需要ノ增大ガ相當大幅デアリマスル關係
上、自然增收ノミニ依ルト云フ譯ニ參ラナ
イデ、最近ノ增徵ガ數囘ニ亙ツテ繰返サレ
テ居ルト云フヤウナ狀態デアリマス、數囘
ニ亙ツテ增徵ヲ行ヒマシテモ是ガ經濟界ニ
惡影響ノナイヤウニ、國民生活ヲ脅威シナ
イヤウニ留意致シマスレバ、相當ノ自然增
收ハ出テ居リマス、是ハ最近數次ノ增稅ニ
拘ラズ、豫算ト決算トヲ比較致シマスルト、
數億圓ノ自然增收ガアリマスコトハ御承知
ノ通リデアリマス、今後ニ於キマシテ果シ
テ或ル時期ヲ捉ヘテ、比較的一定不動ノ稅
制ヲ樹立シ得テ、ソレカラ後ハ自然增收ニ
俟ツテ賄ヘルカト云フコトハ、財政需要ノ
變化ニモ依ルコトデアリマスノデ、〓究ハ
シテ見マスルガ、今カラ豫斷スルコトハ中
中困難ノ問題デアルト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=57
-
058・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今田中君ノ仰セニナリ
マシタ問題ハ、〓ネ御話ノヤウニ參レバ、
色々ノ意味ニ於テ非常ニ宜イト云フ箇條ガ
多イト拜承致シマシタ、一應稅務當局ノ考
ヘテ居リマスコトハ、只今主稅局長カラ申
上ゲマシタ通リデ、是ハ今後ノ問題ト致シ
マシテ篤ト〓究致シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=58
-
059・田中貢
○田中(貢)委員 次ニ國民所得ト增稅トニ
付テ承リタイノデアリマス、國民所得ハ年
年增加スルト云フコトヲ承リマシテ、宣ニ
心强ク思ツテ居リマス、殊ニ十九年度ハ六
百億ヲ豫想サレテ居ルノデアリマシテ、前
年度ニ比ベマシテ約百億ノ增加デアリマス、
ガ之ヲ大藏大臣御指摘ノヤウニ、國民所得
ノ最近ノ增加ハ主トシテ國庫撒布資金ノ增
加ニ俟ツノデアリマシテ、而モ國庫ノ撒布
資金ノ增加ト云フモノハドノ位ニナルカト
云ヒマスト、十九年度ノ歲出ト十八年度ノ
歲出ト比ベテ見マスト、大雜把ニ申シテ十
八年度三百七十億、十九年度五百九億トシ
マシテ、其ノ差額百三十九億ト云フヤウニ
ナリマス、百三十九億ト云フ點カラ見テ、
國民所得百億增加ト云フ勘定ハ少シ大膽過
ギルノデハナイカトモ思ヘルノデアリマスガ、
一體ドンナヤウナコトデ國民所得ヲ六百億
ト云フ風ニ御勘定ニナツタノカ、又ドンナ
項目ガ殖エテ居ルノカ、所得人員ガ殖エタ
カラ國民所得ガ殖エタノカ、何カソコニ相
當政府トシテ據ルベキ根據ヲ御持チダト思
ヒマス、其ノ根據ヲ一ツ大體ノ所デ宜イデ
スカラ御示シヲ願ヒタイト思フノデアリマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=59
-
060・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 國民所得ノ總額ト致シマ
シテ大體ノ推定額ヲ申上ゲマシタガ、國民
所得ノ中ノ金錢所得ニ付テハ、アノ外ニ若
干ノ實物所得ト申シマスカ、例ヘバ農家ノ
自ラ耕シ、自ラ收穫シテ自家用ノ食物ニ致
スヤウナモノ、又家屋ヲ所有シテ自ラ住居
シ使用スル、斯ウ云フモノヲ假ニ見積ルト
スレバ若干アルノデアリマス、偖テ見積リ
マシタモノノ中ノ一番主タル內容トシテハ
生產所得デゴザイマシテ、是ハ製造運輸等
ノ生產事業カラ出ル所得デゴザイマス、是
ハ物資動員計畫其ノ他總テノ生產ノ全體ヲ
〓計致シマシテ、ソレカラ出發ヲ致シテ居
リマス、其ノ他用益所得、是ハ私共官吏デ
アリマストカ云フ直接ノ生產部門ニ從事シ
テ居リマセヌ者ノ所得ガゴザイマス、ソレ
カラ振替所得ト申シテ居リマスガ、國債ノ
利子トカ恩給、斯ウ云フ所得、是等ノ前年
マデノ計算、今後ノ變化ヲ見テ大體豫測ヲ
致シタノデアリマス、ソレデ或ハ只今ノ御
說ノ中ニ斯ウ云フ御疑問ガアルデアラウト
存ジマス、豫算ハ御話ノヤウニ寧ロ百三四
十億殖エテ居ル、殖エタモノガ國內ニ撒布
サレルナラバ、其ノ關係デモ百億ヨリモツ
ト國民所得ハ殖エルノデハナイカト云フ考
ガ出マス、是ハ實ハ內譯ハ申上ゲ兼ネルノ
デアリマスガ、豫算ノ使用面ト云フモノガ
アリマシテ、使用シタ金額ガ何處ニ撒布サ
レルカ、只今軍隊ハ御承知ノヤウニ滿洲國、
中華民國、「タイ」國、「フイリピン」國、「ビ
ルマ」國、其ノ他南方諸地域等ニモ出テ居
リマシテ、現地ニ於テ使用スル歲出モ相當
ノ額ニ上リマス、現地ニ於テ使用スル歲出
ノ財源ニナリマスルモノノ重要ナル一ツデ
アリマスル現地借入金ノ如キニ付キマシテ
モ、御承知ノ如ク昨年ハ三十三億ト見積リ
マシタモノガ、今年ハ七十億見積ツテ居ル
ト云フ關係デアリマス、此ノ邊ハ具體的ニ
申上ゲ兼ネル事情ガアリマスガ、非常ニ多
イノデアリマス、サウ云フ關係デ內輪カラ
見マシテ、政府豫算モ唯金ヲ見積ルノデハ
ナク、所謂物資ヲ調辨スルトカ製造スルト
カ、其ノ製造力モ資材勞務等ノ關係カラ見
テ行キマシタ譯デアリマス、兩方綜合シテ
考ヘマシテ、大體ノ推定額ガアノ所ニ落着
キマシタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=60
-
061・田中貢
○田中(貢)委員 歲出ノ增加ガ百三十九億
デ、國民所得ノ增加ガ百億ト云フノデ、其ノ
釣合ガ取レヌト私ノ言ヒマス意味ハ、百億
ノ見積ガ少シ過大デハナイカト云フ意味デ
アリマス、實ハ昭和十一年以來ノ國民所得
年々ノ增加ヲ見マスト、大體五十億デアリ
W h 、多少ノ變化ハアリマスケレドモ、五
十億前後ト見テ居リマス、ソレガ今年ニ限
ツテ特ニ百億增加ト云フ見積ハドウデアラ
ウカ、殖エルコトハ非常ニ良イコトデアリ
マシテ、又更ニソレ以上殖エルコトヲ望ン
デ居ル次第デアリマスガ、正確デナイト資
金計畫其ノ他ニモ影響シテ行ク、更ニ結局
ハ國民ノ私的生活ニマデ影響シテ來ルノデ
アリマス、其ノ點ヲ聽イタノデアリマス、
政府ハ國民所得ノ總額ダケヲ述ベテ居ラレ
ルノデアリマシテ、其ノ基礎ニ付キマシテ
モ、項目ニ付テモ述ベラレタノハ今日ガ初
メテノヤウニ記憶シテ居リマスガ、一體ド
ンナ項目デドンナ計算カト云フコトヲ御發
表ニナル譯ニハ行カナイノデスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=61
-
062・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 今日ノ生產ハ軍需生產ガ
非常ニ大キイモノヲ占メテ居リマス、是等
ハ發表シナイ方ガ宜シイト思ヒマス、發表
致サナイ積リデアリマス、尙ホ御尋ネノ前
段ノ殖エヤウガ多イト云フ點ハ私ハ寧ロ豫
算額カラ推測スレバ一應殖エヤウガ少イデ
ハナイカト云フ意味カト存ジマシタガ、ソ
レハ從來豫算額ガ殖エマスヨリハ國民所得
ノ增加ノ方ガ多イ場合モ相當アリマシタ、
段々ニ詰リ國民ノ生產力ヲ轉換ヲシテ、戰
爭生產ニ他ノ生產ガ轉換サレルト云フ部面
ガ多クナリマシタカラ、平時或ハ平時ニ近
イ場合ノヤウニ、政府支出ガ殖エレバ殖エ
タダケノ政府支出ニ依ツテ購買スル、ソレ
ニ附隨シテ他ノ生產ガ殖エルト云フ關係ガ
寧ロ逆ニナル、只今デハ企業整備ナドガ一
方ニアリマスカラ、政府支出ガ殖エタダケニ
生產ガ殖エナイダラウト云フ意味デ御述べ
ニナツタノデハナイカト思フ、ソレハ傾向
論トシテ、或ル意味デ合致スル考ヘモアルト
思ヒマス、私モ其ノ點ヲ考ヘテ居リマス、
ソレデ實際何ガドウ生產サレルカト云フ點
デ計算シテ參リマス、併シ此ノ計算シタ結
果、唯橫カラ眺メテ批判スレバ、結局軍需
品ノ增產デス、航空機ノ增產デアリマス、
戰爭ニ勝ツ爲ニドウシテモ是ノ增產ガ必要
デアル、是ダケハ必ズヤル、ヤルト云フコ
トハ唯架空デハイケマセヌカラ、各種ノ工
夫ヲ加ヘマシテ、出來ルト云フ自信ヲ持チ
マシテ計算シマスト、ソレダケ生產ヲ多ク
スルニハ結局國民ノ勤勞能力ヲ從來出シ
タヨリモ今年ハ多ク出サナケレバナラヌ、
ソレガ入ツテ居ル、是ハ必ズヤルト云フ考ヘ
デアリマス、サウ云フヤウナコトデドウシ
テモ働カナケレバナラヌ、生產シナケレ
バナラヌ、百億圓嫌デモ增サナケレバナリ
マセヌシ、增ス自信ガアルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=62
-
063・田中貢
○田中(貢)委員 國民所得ノ計算ノ基礎ハ
數字ニ依ツテ發表スルコトガ難カシイト云
フコトノ理由ハ能ク了承致シマシタガ、是
ハ諸般ノ將來ノ計畫ノ基礎ニナルコトデア
リマス、一寸考ヘマスト、此ノ忙ガシイ人
手間ノ要ル際ニ、ソンナコトヲ大藏省ノ人
手ニ俟ツコトハイカヌカモ知レマセヌケレ
ドモ、極メテ大事ナコトデアリマスカラ、
發表スルトナサラヌトハ別トシテ、相當確
實ナルモノヲ作ツテ置イテ下サルヤウニ切
望シテ此ノ點ハ止メテ置キマセウ、サウシ
テ政府ノ仰シヤルコトヲ御信賴申上ゲマシ
テ、六百億或ハソレ以上アルトシテ、ソレ
ニ付テノ資金計畫ヲ承ツタノデアリマスガ、
ソレヲ見ルト、生產擴充資金ガ六十億ト云
フ風ニ昨日御發表デアリマシタガ、昨年ハ
七十億超エタノデハナイカト思ヒマス、ダ
カラ六十億デ宜シイノデアリマセウカ、若
シ六十億デ足ラズ更ニ殖エルト云フコトニ
デモナルト、國民ノ私的消費百十五億ニ影
響シテ來ルノデアリマス、今私ガ聽カント
スル所ハ、國民ノ私的消費ヲドノ邊マデハ
切詰メテ戰力增强ニ吐出スコトガ出來ルカ、
若シ其ノ限度ヲ越エルナラバ、越エタダケ
ノモノハドノ方面デ撚リ出スカト云フコト
ニ話ヲ進メテ行キタイ爲ニ聽イテ居ルノデ
アリマス、其ノ私的消費ヲ來年百十五億ト
見ル、今年ニ比ベテ十五億減ツタト云フ風
ニ言ハレテ居ルノデアリマスガ、豫テ政府
ヨリ承リマシタ資金計畫ノ內譯ヲ見テ行ク
ト、昭和十一年度ノ私的消費ハ百二十六億
圓デアリマシテ、十四年ノ一番多カツタ時
ガ、百四十八億ト云フ風ナ計算ニナツテ居
ルノデアリマス、サウシテ去年ガ百三十億
ト云フト、ドウモ釣合ガ取レヌヤウニ思フ
ノハ、私的消費ヲ十四年ヲ大雜把ニ百五十
億ト見テ、昨年ヲ百三十億ト見ルト、モウ少
シ私的消費ハ切詰メラレテ居ルヤウニ感ゼ
ラレル、是ハ勘デアリマス、更ニ今年ノ百
十五億ト云フノハ、數字カラ申スト百五十
億ニナルガ、非常ニマダ切詰メラレテ居ルヤ
ウナ氣ガスルノデアツテ、此ノ數字モ多少
何處カモツト狂ヒガアルノヂヤナカラウカ
ト云フヤウナ感ジモスルノデス、ソレニ致
シマシテモ、數字ダケデ議論ハ出來マセヌデ、
兎モ角モ國民ノ私的消費ハ相當マデ押詰メ
ラレテ來タ、又戰爭ノ爲メフ要求ガアルナ
ラバ、一切吐出サナケレバナラヌ、其ノ點
ニ於テハ申スマデモナイコトデアリマシテ、
國民モ皆其ノ覺悟デ居ルノデアリマシテ、
一切ヲ擧ゲテ戰力增强ニ盡シタイ、サウ
云フ覺悟デハ居リマスガ、之ヲ政府ノ立
場カラ見マスナラバ、或ル限度ヲ超エテ
私的消費ヲ壓縮スルト云フコトハ考ヘナク
テハナラナイノヂヤナカラウカ、例ヘバ
今日「ドイツ」ハ非常ニ能ク保チ耐ヘテ居リ
マス、其ノ原因ハ色々アリマスガ、其ノ一
ツハ「ドイツ」ノ國民ノ食糧其ノ他ノ生活事
情ガ前大戰ヨリモ宜イ、今度ハ前ヨリモ宜
イノダト云フコトガ「ドイツ」ノ粘リヲ强ク
シタ大キナ原因ダト云フヤウニ言ハレテ居
リマス、マア前大戰ノ經驗ガアルカラ負ケ
テハナラヌト云フコトモ無論大キナ原因デ
アリマスガ、〓糧其ノ他生活事情ノ宜イト云
フコトモ一大原因デアルト言ハレテ居ル、
サウダトスルト、日本ニ於キマシテモ着物
トカ住宅トカ云フ方面ニハ大イニ壓縮ノ餘
地ガアリマス、又〓物ニ付テモ贅澤ナモノ
ニ付テハ壓縮ノ餘地ガアルト思フノデアリ
マスガ、自ラソコニ大體論トシテ限度ガア
ルト思フ、其ノ限度ニ付キマシテ從來政府
ノ示サレタ數字ヲ迪ツテ行クト、ドウモ今
日ノ實情ト違フヤウニ思フノデアリマス、
數字ヲ拔キニシテモ大體政府ハドノ程度マ
デハ壓縮シテモ宜イト思ツテ居ルカ、無論
其ノ時々ノ戰局ノ事情ニ依ツテ異ルノデア
リマシテ、一樣ノ議論ハ出來マセヌケレド
モ、大體此ノ程度マデ、ソレ以上ハ外ノ方
面ニ戰力增强ニ資スルモノヲ漁ツテ行カウ
ト云フヤウナ大體ノ目安ガアツテ宜イト思
フノデアリマス、其ノ目安ニ付テノ御所見
ヲ承リタイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=63
-
064・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 御答ヘ申上ゲマス、生產
擴充資金デアリマスガ、少シ少ナイヤウダ
ト云フ御話デアリマスガ、是ハ差支ヘナイ
ノデスガ、響キヤウガアリマスカラ御聽キ
流シヲ願ヒタイト思フ、場合ニ依ツテ速記
ヲ止メテ戴イテモ宜イ、神經質ニナリマス
ケレドモ響キニ依ツテハ色々關係ガアリマ
スカラ····ト云フノハ現在ハ來年トカ五年
先ノ生產力擴充時代ヂヤナイノデス、今年
ノ生產ヲ增サネバナラヌ、生產力擴充ト云フ
コトハ大變宜イヤウデスケレドモ、勞務ナ
リ技術ナリ、ソレカラ鐵、石炭、電力、サ
ウ云ウ資材、勞力ヲ大體今年ハ役ニ立タヌ
コトニハ使ハナイ、サウシテソレダケ今年
ノ飛行機ノ生產、艦船ノ生產、戰車ノ生產
ニ向ケレバ今年ノ戰力ハ餘計殖エル譯デス、
此處ノ兼合ヒハ私ハ餘程考ヘテ行カナケレ
バナラヌ時期ニナツテ居ルト思フ、ソレデ
率直ニ申上ゲマスト、會社ニ御關係ノ方モ
アリマセウガ、將來會社ガ盛大ニナル爲ニ
モ、進ンデハ國家ノ爲ニモナルノダカラ、
設備ヲ擴張シヨウト云フコトハ極メテ結構
ニ考ヘラレル、今飛行機ガ要ル、船ガ要ル
ト云フ時ニハ、ソレガ三年、五年先ニ役ニ
立ツモノノ爲ニ使フノハ或ル意味デハ寢
カスコトニナル、餘程考ヘナケレバナラヌ、
其ノ意味ニ於キマシテ、今年度ノ生產力擴
充資金ト云フモノノ考へ方ハ大分今マデト
違ツタ考ヘ方デアル、今マデ通リニ行キマ
スト、ソレニ及ブドコロカ足リマセヌ、ソ
レ等ノ考慮ガ入ツテ居リマス、無論將來ノ
生產ト云フコトモ大事デアリマスケレドモ、
ソコハ將來ト現在ノ必要ノ兼合ヒ及ビ擴充
スベキ生產施設ノ種類ニ依ツテ其ノコトガ
決マル譯デアリマスガ、實際カラ見テ少シ
少ナ過ギルト云フ御議論ハ御尤モナンデ
ス、實ハ左樣ナ考ヘ方ヲシテ居ルノデアリ
きく、ソレカラ國民ノ消費ニ付キマシテハ
是ハズツト前ニハ寧ロ百二、三十億ノコト
モアツタ、減シタ〓〓ト言ヒナガラサウ減ラ
ヌト云ヒマスケレドモ、是ハ物價ノ問題モ
多少ハ關係ヲシマス、何處マデ減セルカト
云フト、中々難カシイ問題デアル、大體ニ
於テ日本人ノ九割ト云フカ多數ハ食糧ニ於
テ減ス餘地ハ少イト思フ、併シ若干ノ部分
ノ人ハマダ相當ニ減ス部分モアルノヂヤナ
イカ、ソレカラ問題ハ住居デアリマスルガ、
住居ノ問題ハ結局新築ヲ控ヘルト云フヨリ
外ハアリマセヌ、今アルモノヲ出來ルダケ
利用シテ行ク、此ノ方向デ參リマス、ソレ
カラヤハリ苦シイナガラモ最モ節約ノ餘地
ガアルノハ被服ノ方面デス、是ハ原料關係
カラ云ツテモサウナラナケレバナラヌノデ、
今ノ衣料ニ對スル配分、別ノ言葉デ云ヘバ
切符制度ノ割當ノ如キモノモ亦其ノ意味カ
ラ非常ニ儉約ノ餘地ガアル、之ヲ尙ホ切下
ゲラレルカ、實ハ私モ能ク分リマセヌ、今
田中君ノ仰セニナルヤウニ表ニハ發表シマ
セヌガ、國家ノ總力ト云フモノハ數字上デ
綺麗ニ分ルコトノミデハアリマセヌ、當第一
考ヘテ行カナケレバナラヌ、モウ一杯ノ所
ニ始終來テ居ルノデアリマスカラ、是ガ一
杯デナケレバソツチデ十億減セバコツチデ
十億使ヘルト云フ譯デアリマスガ、ソレハ生
產力ガ直グ轉換出來ル時ニ初メテ出來ルノ
デアツテ、此處デ十萬圓ノ家ヲ潰シタラ他デ
十萬圓ノ家ヲ建テルノニ直グ使ヘルカト云
フト、建物ニ依ツテハサウハ行カヌ、サウ云
フ一ツノ理窟ガ働キマスカラ、金デナク物質
的ニ此ノ生產力ガドノ位、アノ生產力ガドノ
位ト云フコトデ考ヘナケレバナラヌ場面モ
アル、ソコマデ行ツテ居リマスルカラ、非
常ニ實質的ニ考究ヲスル意味デ、御話ノ
如ク相當面倒デ表ニ出ヌヤウデ、考ヘヤウ
ニ依ツテハ畫一的ナコトノヤウデアリマ
スガ、サウデナク、之ニ相當力ヲ入レテ
大藏省ニ於テモ〓究シテ居ル譯デアリマス、
斯ウ云フ例ヲ申上ゲルノハドウカト思ヒマ
スガ、其ノ机掛ケ一ツデモ是ハナクタツテ
御話ハ十分出來ルト思フ、考ヘヤウニ依ツ
テマダ相當ニアルト思フ、サウ云フ意味デ
結局ハ私ハ健康ト戰爭ヲスル爲メノ技術ノ
〓養、次ノ國民ノ〓育、是ダケハ何トシテ
モヤラナケレバナリマセヌ、其ノ爲ニハソ
コガヤハリ考ヘヤウデ若干ノ酒モ要レバ
煙草モ要ルトカ、若干ノ映畫モ見ナケレバ
ナラヌト云フ點モアリマセウガ、結局健康
ト技術及ビ次ノ國民ノ〓養ト云フ點ニ付テ
ハ事ヲ缺カセズ、アトヲ切詰メルト云フ段
ニナリマスルカラ、マダ私ハ相當ノ彈力性
ヲ持ツテ居ルト考ヘルノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=64
-
065・田中貢
○田中(貢)委員 私的消費ノ壓縮ヲ戰前ニ
比ベテ三割壓縮、四割壓縮ト云フヤウナコ
トハ、學者ノ議論トシテハ成立ツト思ヒマ
スガ、戰局ノ移リ行キ、又國內經濟事情ニ
依ツテ變ハルノデアリマシテ、ソレヲ數字
デ表ハスコトハ出來マセヌケレドモ、、是
非大體ノ傾向ニ注意シテ、何年戰爭ヲシテモ
平氣デアルト云フ態勢ニ少シノ罅モ入ラヌト
云フヤウニスルコトガ、實ニ必要ダト思フ
次第デゴザイマス、此ノ點ニ付テ細カイ一、
二ノ例ヲ擧ゲテ見タイト思フノデアリマス、
私共盛ンニ聽カサレルコトハ、四、五軒家
ヲ持ツテ居ル何處カノ家主サンガ、家賃ハ
九·一八價格停止令デ抑へラレテ居ルガ、家
屋稅、所得稅ガ年々上ツテ行ク、其ノ上ニ
公債ダ、寄附金ダト云フコトニナルト、實
ニ苦シイト云フコトヲ盛ンニ聽カサレル譯
デアリマス、又或ル家庭ニ付テ事實調ベタ
ノデアリマスガ、十八年度ニ於テドノ位ノ
公債ヲ買ヒ、貯金、寄附金ヲシタカト云フ
コトヲ調ベタ事實ニ依ルト、約七千圓位ノ
收入ノアル家庭ニ於キマシテ、簡易保險ニ
二百四十九圓、國債ヲ七百十二圓買ハサレ、
組合貯金ガ三百四十六圓、信用貯金ト云フ
ノガ二百十圓、生命保險ガ三百八十八圓、
其ノ他ニ定額貯金ガ五百圓ト二百圓、合計
計算ヲシマスト二千五百九十五圓出シテ
居ルト云フ勘定ニナツテ居リマス、今度ノ
稅法ノ改正ニ依リマスト、七千圓ノ所得ダ
ト、ドノ位ノ稅金ニナルカ、此ノ稅金ヲ差
引イテ行キマスト、相當ニ重イ負擔デアル、
ソレデモ尙ホ不平ヲ言ハズニ能ク努メテ吳
レテ居ル次第デアリマス、先刻ノ家主サン
ノ例ニ見テモ苦シイニモ拘ラズ、兎モ角モ
多クノ不平モ云ハズニ努メテ吳レテ居ルト
云フコトハ、非常ニ嬉シイコトデアリマス、
是ダカラコソ日本ハ强イノデアリマス、此ノ
一點デモ「アメリカ」ニ勝ツニ決ツテ居ルト
思フノデアリマスガ、先刻申シマシタヤウ
ニ自ラ限度ノアルコトデアリマス、又出來
ルコトナラバ限度マデ到達セズニ餘力ヲ殘
シテ置ク、サウシテ外ノ途ヲ考ヘル、外ノ
途トハ何カ、一ツハ國民所得ヲ殖ス方法ヲ
考ヘル、ソレト同時ニ成ベク共榮圈內各
國ノ金ノ力、物ノ力ヲ利用スル、斯ウ云フ
方面ニ持ツテ行クコトガ必要デハナイカト
思フノデアリマス、此ノ點ニ付テ七十億ノ
金ヲ南方開發金庫カラ借入レルト云フ處置
ヲ執ラレタ、而モ本年度三十億デアツタモ
ノヲ、來年度七十億ニ殖シタト云フコトデス
カラ非常ニ良イ傾向ニ進ンデ居ルトハ思ヒ
マスガ、其ノ他ノ大東亞圈內諸國ニハ相當
ナ方法ヲ以テスレバマダ〓〓金ノ力ト物ノ
力ヲ利用スル餘地ガアル、私ハ斯樣ニ見テ
居ル次第デアリマス、折角良イ方向ニ向ツ
テ居リマスカラモウ一段ト御奮發ヲ願ツテ、
共榮圈內諸國ノ力ヲウント利用スルト云フ
風ニ向ケテ行ケヌモノデセウカ、誤解ガア
ツテハナラヌカラ、モウ一度繰返シテ申シ
マスト、國民ハ如何樣ナコトデモ忍ブ決心
ヲシテ居リマシテ、ソレガ日本ノ强イ所以
デハアリマスケレドモ、政治家トシマシテ
ハ其ノ限度ニ達スルト云フコトヲ成ベク避
ケテ、成ベク積極的ニ國民所得ヲ增加スル
トカ、或ハ共榮圈內諸國ノ經濟力ヲ利用シテ
行クト云フ方法ヲ併セテ努メナケレバナラ
又、斯樣ニ思フノミナラズ、此ノ方向ニ進
ム餘地ハ相當ニアルト信ジテ居リマスガ、
此ノ點ニ付テノ御所見ヲ承リタイノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=65
-
066・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 全ク御說ト御同感デアリ
マシテ、今年度ノ豫算ニ致シマシテモ、之
ヲ解剖致シマスルト、昨年度ヨリ百四十億
モ殖エテ居リマス、百四十億殖エテソレダ
ケ大規模ニ物的戰力ヲ增ス譯デアリマスガ、
國民生活ノ壓縮ノ面ハ十五億、其ノ一割位
シカソツチニ取ツテ居リマセヌデ、大東亞
圈內ノ他ノ地域ニ四十億モ行ツテ居ル譯
デアリマス、ソレカラ國家ノ生產力モ、
今ノヤウニ百億ヲ增シテ、大體ハアナタガ
言ハレマス生產力ヲ增スト云フコトヲ主ニ
シテ居リマス、又南方諸地域其ノ他共榮圈
諸地域ハ進ンデ共同ノ目的デアル-大東
亞戰爭ハ我ガ國ノ存亡ノ爲ノ戰爭デアリマ
スルト同時ニ、大東亞全域ノ解放ノ爲ノ戰爭
デアリマスカラ、共同ノ戰爭デアリマス、
其ノ氣持カラ來ル協力ガ今御話ノヤウニ增
ス、別ノ言葉デ言ヘバ經濟開發ガ增シ、其
ノ地域ノ生產ガ增ス、ソレヲ日本軍ノ活動
ニ-其ノ日本軍ハ大東亞全體ノ解放ノ爲
ニ戰ツテ居ルノデアリマスカラ、ソレニ協
力スル、今年デモ一番大キナ分ガ國內生產
力ノ增加、其ノ次ハ大東亞圈內諸地域ノ戰
爭ニ對スル協力、國民消費ノ節約ガ一番小
サイ數字ニナツテ居リマス、是ハ方針ハ全
ク御話ノヤウニ行カナケレバナラヌシ、何
ト申シマシテモ基礎額ガ國民消費ノ方ハ
約十五億デアリマス、之ヲ零ニシマシテモ
百億以上殖エナイ譯デアリマスカラ、御話
ノヤウニ圈內全體ノ力ヲ出シテ之ヲ集結シ、
國內ノ生產力ヲ增スト云フコトヲ主タルモ
ノトシテ行ク、併シ所謂一機デモ多ク一艦
デモ多キヲ必要トシテ居ルノデアリマスカ
ラ、假令今ノヤウナ一割ニ過ギナイト雖モ
國內ノ消費ト云フモノハ極力節約スル、サ
ウシテ戰力ニ轉換スルト云フコトハ同時ニ
今極メテ必要デアリマス、大東亞諸地域ノ
各住民ニ於テモ決シテ戰爭デ樂ヲシテ居ル
譯デハナク戰爭ノ爲ニ色々生活ノ不自由ヲ
忍ビ協力致シテ居ル譯デアリマス、ソレコ
ソ大キナ意味デ負擔ノ公平トカ云フコトデ、
進ンデ凡ユルモノヲ戰力ノ爲ニ捧ゲルト云
フ意味ニ於テ、ヤハリ國內モ生活ノ切下ゲ
ガ必要デアラウト思ヒマスシ、其ノ意氣ガ
アツテコソ國內ノ所得ノ增加、生產力ノ增
强ガ出來ルト存ズルノデアリマス、御趣旨
御同感デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=66
-
067・田中貢
○田中(貢)委員 南方開發金庫カラノ借入
金ノ七十億ニ付キマシテハ、臨時軍事費ニ
計上サレテアリマス爲ニ豫算委員會其ノ他
ニ於キマシテモ聞ク機會ガナカツタノデア
リマス、大體ドウ云フ目標デ七十億ト云フ
數字ガ出タノデアリマスカ、經濟開發ノ爲
メノモノカ、或ハ其ノ他ノモノノ費用ナ、ノ
カ、大體ノコトヲ御示シ願ヒタイト思ヒマ
ス、同時ニ南方バカリデナシニ、支那モヤ
リ方ガ良ケレバ私ハモツト利用出來ルト云
フコトヲ信ジテ疑ハナイノデアリマス、案
モナイデモナイト思ヒマス、支那ノ經濟力
利用ハ難カシイトサレテ居ルガ、ヤリ方ニ
依ツテハ相當ノコトガ出來ルノデハナイカ
ト思ハレルノデアリマス、此ノ二點ニ付キ
マシテ重ネテ御答ヘ願ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=67
-
068・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 七十億ニ付キマシテハ現
地ノ物資勞務ヲ調辨致シマスル可能力ト云
フモノガ一番主タルモノデアリマス、ソレ
ハマア其ノ程度デアリマス、ソレカラ今南
方バカリデハナクト云フ御話ガアリマシタ
ガ、是モ御考ヘノ通リニモノガ運ンデ居リ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=68
-
069・田中貢
○田中(貢)委員 尙ホ租稅ニ關聯致シマシ
テ一言聞キタイノデアリマス、貯蓄ニ付キ
マシテハ當局ノ御努力、國民ノ努力ニ依リ
マシテ非常ニ順調ニ行ツテ居リマシテ、常
ニ目標額ニ達シテ居ルノデアリマス、ケレ
ドモ公債ハ常ニ發行額全額ガ消化サレタ
コトハナイト云フヤウナ形ニナツテ居リマ
ス、ソコニ一寸ハツキリシナイ點ガアルノ
デアリマス、是ハ貯蓄ガ目標額ニ到達シタ
折ニハ公債モ全額消化サレル、出來レバ少
シ餘ルト云フヤウナ方法ニハ行カヌモノデ
アリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=69
-
070・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 是ハ國庫ノ歲入歲出ノヤ
ウニ全部入ルモノカ帳面ニ付キ、全部出ル
モノガチヤント款項デ付クヤウニ致シマス
レバピシット行クノデスケレドモ、少シ大袈
裟ニ言ヘバ政府ノ方カラ一億ノ人間ガ其
ノ金ヲ出シタリ入レタリスル結果ヲ大キク
睨ンデ行ク譯デアリマス、簡單ニ申シマシ
テ十三年度以來目標額ノ立テ方ガ間違ハズ
全部ガピシツト行ケバ宜イガ、ドウカト言
ヘバ大體五十億位ノ違ヒガ來テ居ル、六年
餘リノ間ニ五十億位ノ違ヒデスカラ、今ノ
ヤウニ一年ニ或ハ五百億、三百億ト云フ國
家資金計畫ニ致シマスレバ、違ヒハ-是ハ
ドウモ私ガ申上ゲテハ甚ダ恐縮デスガ、見
當ハ割合ニ少イ狂ヒデ來テ居リマス、大體
狂ヒハ五十億程度ダト思ヒマス、併シ
ソレデハ、サウ狂ツテモ宜イカト批判スレ
バ、今ノヤウニ自分ガ全部收入支出ヲヤル
ノヂヤナイ、國民全活動ノ集結ノ結果デア
ルノデアリマスカラ、大體ノ大キナ經濟金
融ノ統制ノ結果デ行クノデアルカラ、少々
ノ狂ヒハアル、是ハ批判的ニ言ヘバサウモ
言ヘマセウガ、ソレデハ始終ソレガアツテ
公債ノ未消化ガ累積シテモ宜イカト云フト、
是ハ決シテ宜クナイコトハ申上ゲルマデモ
ナイコトデアリマス、十分此ノ點ニ付テハ
戒心ヲシテ行キタイト思ヒマス、最近ノ原
因ハ簡單ニ申シマスト、生產擴充資金ガ豫
定ヨリ少シ餘計出テ居リマス、サウシテ貯
蓄ハ豫定ダケ、是等ノ食違ヒガ一ツノ原因
デアラウト思ヒマス、幸ニ國民ノ協力ニ依
リマシテ大體千五百億位放出シタ所デ五十
億位ノ狂ヒト云フコトデ濟ミマシタト云フ
ノハ、全ク國民ノ納稅ト貯蓄ノ實行ノオ蔭
ダト思ヒマス、今後私共ト致シマシテハ、
狂ヒヲ減スヤウニ、出來レバナクスルヤウ
ニ凡ユル方面ニ努力ヲシ、又國民ノ御協力ヲ
求メテ參リタイ、其ノ點ニ付キマシテハ切
ニ今考慮シテ居ル次第デゴザイマシテ、殊
ニ昨年末ノ通貨狀況其ノ他ヲ見マシテ、今
年アタリハ特別ニ力ヲ入レテ行カナケレバ
テラチイ時期デハナイカト思ツテ居ル次第
デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=70
-
071・田中貢
○田中(貢)委員 尙ホ一、二點承リタイト思
ヒマス、ソレハ國民ガ奉公ノ精神ニ燃エテ、
心持ヨリ稅金ヲ納メル、出來ルダケ公債モ
買ヒ、貯蓄モシテ居ル、斯ウ云フ實情ナノ
デアリマスカラ、歲出ニ付テモ直接戰費ノ
方へ成ルベク澤山持ツテ行クト云フコトガ
必要デアリ、又サウスレバスル程、稅金
ノ負擔ノ重サモ感ゼズ、公債モ能ク消化サ
レルト思フノデアリマス、殊ニ此ノ點ニ於
キマシテ、大雜把ニ、十七年度ト十八年度ノ
戰費ヲ比較シテ見マスト、「アメリカ」ノ戰
費ハ大體一千六百七十億」ドル」見當、「イギ
リス」ハ百億「ポンド」ヲ超エテ居リマセウ、
ソレニ對シテ日本ハ十七年度、十八年度ニ
於テハ合計四百五十億圓デアリマス、是ハ
貨幣價値モ違ツテ居リ、又人件費モ違ヒ、
又其ノ他ノ事情モアリマスカラ、コレヲ其
ノ儘比較スルコトハ出來マセヌケレドモ、
今囘ノ戰爭ハ長期ニ亙ツテ決戰ヲ連續的ニ
ヤラナケレバナラナイ、而モ何時マデ續ク
カ分ラナイト云フ戰爭デアリマスカラ、出
來ルダケ早ク之ヲ片付ケルニハ、全部ノ力
ヲ擧ゲテ戰力ニ傾注スルト云フコトデナケ
レバナラナイ、財政モ其ノ通リニ向ケテ行
カナケレバナラナイ、斯ウ思フ次第デアリ
マヽ、ソコデ直接戰費ト其ノ他ノ費用ヲ比
ベテ見マスルト、「アメリカ」ハ九割二分ト
申サレテ居リ、日本ノハ十九年度ノ分ヲ計
算致シテモ大體七割四分ト云フヤウナコト
ニナツテ居ル、サウスルト、是ハ豫算ノ組
ミ方モ違ツテ居ルノダシ、又其ノ內容モ違
フノデスカラ一〓ニ之ヲ以テ論議スルコト
ハ出來マセス、又直接戰費デナイ經費モ隨分
切詰メタ豫算デハアルガ、尙此ノ上ニモ切
詰メラレルモノガアルナラバ成ベク切詰メ
テ其ノ金ヲ戰費ノ方へ〓ハシテ行ク、豫算
ヲ減セト言ツテ居ルノデハナク、又戰爭ノ
要求ニ從ヒマシテ幾ラデモ殖ヤシテ行カナ
ケレバナラナイ、サウシテ戰費ハドシ〓〓
殖エルガ、一般ノ經費ハ殆ド殖エテ居ラナ
イト云フ形デ行クコトガ必要デハナイカト
思フノデアリマス、ソコデ一般ノ經費ハ國
民經濟ニ轉嫁スルコトガ出來ヤシナイカト
云フコトヲ一、二後ニ聽イテ見タイト思フ
ノデスガ、ソレヲ御聽キスル前ニ、今ノ財
政ノ戰時體制化ト言ヒマスカ、無論今日モ
戰時體制化サレテ居ルノデセウガ、ソレ以上
ニ戰時態勢化スル餘地ノアリ次第是ヲ行ハ
ナケレバナラヌト云フコトニ付キマシテ、
御所見ヲ承リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=71
-
072・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 他ノ機會デアリマシタ
ガ、臨時事件豫備費ト云フモノヲ設ケタラ
ドウカ、前ノ戰爭ノ時ニハ何時デモサウ云
フモノガアツテ、一般會計ノ普通ノ豫備費
ノ外ニ臨時事件豫備費ト云フモノガアツタ、
サウシテ其ノ臨時事件詰リ戰爭ニ關係ノア
ルモノハソレカラ出ス、普通ノ豫備金的ノ
モノハ普通ノモノカラ出ス、斯ウ云フコト
ヲシタラドウカト云フコトヲ私ハ聽カレタ
コトガアルノデアリマス、私ハ其ノ時ニ答
ヘマシタ、日本ハ國家總力戰ヲヤツタノハ
今囘ガ初メテデアル、世界的ニ言ヘバ、前世
界大戰ハ交戰各國ガ總力戰體形ヲ相當執ツ
タノデアリマスガ、日本ハ戰爭ニ參加スル
程度ハ非常ニ低ク、經濟上ハ事實上中立國
ニモ近イ狀態デアリマシタ、本當ノ國家ヲ
擧ゲテノ戰爭ハ日露戰爭以後經驗ヲシナイ、
日露戰爭ハ資金、資材ノ大部分ヲ外國カラ
輸入ヲ致シマシテ、總力戰體形ヲ執ツテ居
リマセヌ、ソコガ大變違ヒガアルノデ、今
日ノ總力戰體形ニ於テハ實ハ戰爭ニ關スル豫
備費、戰爭ニ關セザル豫備費ト云フ觀念ハ
殆ド取除イテ宜イ、國家總動員デアル、ダ
カラ今ノ豫備金ハ全部前ノ臨時事件豫備費
ト見テ宜シイト云フ譯デアリマス、一般會
計ノ經費自體ハ、是モ例ヘテ申セバ、先ヅ
外ノ戰爭ノ費用ガ臨時軍事費デ、國內ニア
ルモノハ一般會計ダトマア謂バ言ツテモ宜
イ譯デアリマス、全ク是ハ準戰費ト云ヒ
マスカ、廣義ノ意味デ戰費其ノモノト申シ
テ宜イト思フノデアリマス、併シ御話ノヤ
ウニ觀念ヲシ易イコトカラ、謂ハバ準戰費
デナクテ純戰費ノ方ニ餘計計上シテアル方ガ
確カニ分リ易イノデアリマス、私共モ其ノ
點ニハ努メタイト思フノデアリマス、併シ
是ハ、今御言葉ガアリマシタヤウニ、「アメ
リカ」ナドノ豫算デアリマスト、御承知ノ
「ステーツ」ト云フモノガアリマシテ、是ガ
一ツノ國家デアリマスカラ、日本ノ行政費
ト云フモノハ寧ロ「ステーツ」ノ豫算ニ大部
分ガ計上サレテ居リマシテ、中央政府ノ豫
算ト云フ。モノハ平時的ニハ割合ニ少イノデ
アリマス、是等ノ關係デ、日本ノ一般會計
ノ一部ガ「アメリカ」ノ中央政府ノ一般會計
デアルト云フコトデアリマスカラ、ドウシ
テモ割合ガ違ツテ參リマス、ソレカラ尙ホ、
現在鐵デモ石炭デモ御承知ノヤウニ生產者
價格ノ補給金ヲ出シテ居リマス、金額ノ多
イモノハ石炭デアリマス、ソレカラ又銅ニ
モ出シテ居リマス、是等ノ金ガ非常ニ巨額
ニ上ルコトハ御承知ノ通リデアリマスガ、
是等モ直接ハ軍ヤ政府ノ需要デハナイノデ
スガ、只今デハ殆ド廻リ廻ツテ軍ノ需要ニ
ナツテ居ル、ソレダカラ是等ハモウ軍需品
ノ買入價格ニ計算シテモ宜イ、臨時軍事費
ニ入レテモ宜イ譯ダト思フノデアリマス、
其ノ意味ニ於テハ實際要ルノデアリマスカ
ラ、臨時軍事費デサウ云フモノヲ買入價格
ヲ上ゲテ買ヘバ宜イ、併シ現在ノ實際ハド
ウカト云フト、廻リ〓ツテハサウナルノデ
アルガ、一應或ル工場ノ設備ノ擴張ノ爲ニ
鐵材ヲ買フ、ソレガ其ノ工場ノ計算ニナル、
ソレニ石炭ガ要ルト云フヤウナ譯デ單純ニ
軍需品ノ價格ニ織込ム譯ニハイカヌ、鐵ヤ
石炭ノ需要者價格ヲ引上ゲルト一般ノ價格
ヲ改訂シテ行カナケレバナラヌト云フ風ニ、
物價ニ非常ニ影響ガ多イノデアリマス、ソ
レガ少イノハ、例ヘバ「アルミニウム」ノ如
キハ生產者價格ノ補助ヲ政府ガヤラナイ、
是ハズツト軍需品、飛行機ノ價格ニ織込
ムノガ比較的簡單デアリマスカラ、是ガ鐵
ヤ石炭ノヤウニ生產者價格ノ補助金デアレ
バ是ハ何千萬圓カ一般會計ガ殖エルノデ
アリマスガ、サウシナイデ、飛行機ノ買入
價格ヲ增加シテ直グ軍需品ノ方ヘ入レル、
併シ石炭ヤ鐵ハソレデハ他ノ物價ニ響イテ
來ルカラ、ドウシテモ今ノ價格ノ點カラ云
ヘバ軍需品ノ買上價格ト云フ形態ヲ採ラナ
イデ一般ノ生產者補助金トシテ出シタ方ガ
宜イ、サウスレバ豫算ノ上デハ臨時軍事費
デナクシテ一般會計ニナルト云フヤウナ觀
點デ、已ムヲ得ズ計上シテ居ルノデアリマ
スカラ、殆ド臨時軍事費ト實態ハ同ジデア
ル、單純ナ豫算技術上ノ區分ニ過ギヌト御
承知ヲ願ツタ方ガ宜シイト思フノデアリマ
ス、今デハ一般會計豫算二百一億、臨時
軍事費繰入ヲ除イタ實際ハ百三十億近イノ
ガ實態ダト思ヒマスガ、恩給費デアルトカ、
國債ノ利子デアルトカ、豫備金トカ、義務
的經費ガ多イノデアリマシテ、是等ハ目的
論カラ云ヘバ實態ハ臨時軍事費其ノモノデ
アル、唯豫算技術上區分サレテ居ルニ過ギ
ヌノデアリマス、ナゼサウスルカト云ヘバ、
今鐵ヤ石炭ニ例ヲ採リマシタヤウニ、同ジ
コトデハアルガ「アルミニウム」ト扱ヒガ異
ニセラレル事情ニアル、其ノ外ハ全ク技術
上ノコトニ過ギナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=72
-
073・田中貢
○田中(貢)委員 御話ノヤウニ直接戰費ニ
アラザルモノ假ニ文治費トデモ申シマスカ、
ソレヲ節約シテソレダケ直接戰費ヲ增加ス
ル、ソレニ最モ向イタモノハ補助金ダト思
ヒマス、其ノ一二ノ例ニ付テ聽イテ質疑ヲ
打切リタイト思ヒマス、一般會計ノ中デ之
ヲ削減シテソレダケ戰費ニ持ツテ行キ得ル
モノハ補助金ダト思ヒマス、補助金ヲ其ノ
儘ノ形デ戰費ニ繰込ムト云フコトニハ私ハ
贊成ヲ表シ兼ネルノデアリマス、先刻御
話ノヤウニ陸海軍ノ買ヒマス軍需品ノ買上
價格ヲ引上ゲルト云フ形デ入ルコトデアリ
マシタナラバ、是ハ當然ノコトデアリマス、
サウデナクシテ補給金ト云フ形デ軍事費ニ
繰入レルコトニナリマスト大イニ議論ノ餘
地ガアリマス、若シソレガ爲メニ戰費ヲ批
評スル端ヲ開イテハナラヌ、如何ナル場合デ
モ日本ハ戰費トアラバ無質問無修正デ卽決
可決ト云フコトニナツテ居ルノデアリマス、
若シ補給金ト云フ形デ繰込マレテ、諸般ノ
議論ガ出ルト云フコトニナツテハ、由々シ
キ禍根ヲ將來ニ胎スモノダト思ヒマス、大
藏大臣ノ御話ノヤウニ軍需品ノ買上價格ヲ
引上ゲルト云フ形デ戰費ノ方ニ御入レニナ
ルノガ一番宜イノダト思ヒマス、其ノ點ニ
付テ各方面カラ色々ノ議論ガアリマスガ、
詳シイ物價論ヲ此處デ大藏大臣トシヨウト
ハ思ヒマセヌ、唯一言申上ゲタイコトハ、
鐵ヤ石炭ハ今日收支償ハヌカラ補給金ヲ出
シテ居ルノデアリマス、之ヲ改メテ二重價
格トシテ政府ノ買上價格ダケヲ引上ゲ、民
間ニ賣リマスモノハ引上ゲズニ置ク、ソレ
ニ依ツテ收支ノ「バランス」ヲ取ル、斯ウ行
クコトガ「インフレーション」防止ノ爲ニモ
好結果ヲ及ボスノデハナイカ、此ノ點ニ付
テノ御所見ヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=73
-
074・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 豫算ノ臨時軍事費ニ計上
スベキカ一般會計ニ計上スベキカノ區分ハ
只今御話ノ通リニ私共ヤツテ居ル、御意見
ニ贊成デアリマス、只今ノ石炭等ノ價格ニ
付キマシテハ、民間消費ト申シマスルカ、
ソレハ民間ノ會社ガ買フノデアルガ、軍需
品ヲ作ル會社デアルト云フコトデ結局民間
消費ニナラナイ、ソレヲ民間ノ會社ニ賣ル、
其ノ會社ハ全部軍需品ヲ造ルノダ、斯ウ云
フ一階段デ行クナラバ-「アルミニウムㄴ
ノヤウナ會社ナラバ、其ノ石炭ヲ使ツテ造
リマシタモノノ買上價格ヲ高メル、高メル
ト云ツテモ正當ナ價格、自然ノ價格ニシテ
行クヨリ仕方ガナイノデアリマスガ、ソレ
ガ又部分品ヲ造リ、原材料ヲ造ツテ次ノ會
社ニ賣ル、其ノ會社ガ又ソコデ或ル物ヲ造
ツテ次ノ會社ニ賣ル、四ツモ五ツモ變ツテ
初メテ軍ニ納入スル製品ニナルト云フモノ
ガアル、而モ機械ヲ造ル會社ニナレバ或ル
機械ハ直グ政府ニ賣ルガ、或ル機械ハ之ヲ民
間ノ工場ニ賣ル、其ノ工場ガ或ル物ヲ造ツテ
造ツタ物ガ政府ニ行クト云フヤウナ色々複
雜ナ關係ニナリマスルカラ、其ノ初メテ賣
ル方ノ石炭價格ト云フモノヲ高クスル譯ニ
行カナイシ、又實際上高クシナイデ行ク場
合ニハドウシテモソレニ補助金ヲヤラナケ
レバナラヌト云フコトガ起ツテ、結局今ノ
ヤウナ狀態ニナル、ソコガ非常ニ難カシイ
所デアリマス、其ノ經路ガ極メテ簡單ナラ
ドツチカニ片付ケ易イ、ソレガ複雜デアツ
テ一部ハ純民需用ニモ行クト云フ形ニナル
モノデスカラ、只今ノ所デハ色々考ヘラレ
マスガ、ドウモ鐵ヤ石炭ハ今ノ恰好デ行ク
ヨリ仕方ガナイト思ツテ居ル、併シ是ハ今
ノヤウナ扱ヒ振リデアルカラ事情ガ違ヒ、
妙案ガ出來マスレバ無論ソレヲ變ヘル考ヘ
ヲ持ツテ居ルコトモ考慮ノ中ニ入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=74
-
075・田中貢
○田中(貢)委員 今惡循環ノ御話ガアリマ
シタガ、軍需品ヲ買ウテ陸海軍デ使フ場合
ニハ惡循環ガ起ラヌト云フコトニハ議論ノ
餘地ガナイ、其ノ以外ノ場合ニ於テ、昨年
一月ノ議會ニ於テ鐵ト石炭トヲ補助金ノ不
必要ナ程度ニ値上ヲシタ場合ニ如何ナル品
物ニ幾ラ響クカト云フコトヲ當時ノ岸商工
大臣ハ數字ニ依ル政府ノ御調ヲ御出シニナ
ツタ、所ガソレデハ生產費ガ分リマスカラ
成ベク公ノ席デノ論議ニ使ウテ吳レルナト
云フコトデアリマシテ、其ノ通リニ公ノ席
デハ其ノ材料ヲ使ツテ論議シナカツタノデ
アリマス、ソレヲ一ツ御覽下サイマスト
惡循環ト云ハレルモノノ程度ガ極メテ低イ
コトガ分リマス、鐵ガ一「トン」幾ラカ上ルト
シテモ、ソレヲ使ツテ二千圓ノ機械、三千
圓ノ機械ヲ造ル、或ハ安クテ三百圓ノ機械
ヲ造ル時ニハ、値上ノ影響ハ殆ンド問題ニ
ナリマセヌ、石炭モ同ジコトデアリマス、
サウ云フ程度ノ影響ヲ基礎ニ置イテ惡循環
ノ議論ヲシテ居ルノハドウカト思フノミナ
ラズ、財政ト云フ建前カラ言ヒマスト、何
ト云ツテモ價格補給金ハ實ニ大キイ負擔デ
アリマス、何トカ其ノ點ハ頭ノ所謂切替へ
ト言ヒマスカ、失禮ナ話デアリマスガ、何
カソコニ妙案ヲ一ツ考ヘ出サウト云フ頭ニ
ナツテ戴イテ、價格問題ニ付テノ妙案ヲ考
ヘ出ス、ソシテ惡循環ト云ツテモ大シタコ
トガナク、惡性「インフレーション」モ起ラヌ
ト云フ案ガ私ハキツトアルト思フ、ケレド
モ之ヲ今日此ノ增稅委員會デ論議シテモ相
濟ミマセヌカラ此ノ程度ニシテ置キマスガ、
是非サウ云フ方向ニ御考ヘヲ向ケテ戴キタ
イ、無論財務當局トシテハ「インフレーショ
ン」防止ト云フコトハ最モ大事ナコトデ
ハアリマスケレドモ、モノニハ自ラ程度ガ
アツテ理論通リニ行カヌコトハ釋迦ニ說法
デ申スマデモナイコトデアルガ、餘リヘ〓
ンフレーション」ノ聲ニ怖レテ實際ト懸離
レルヤウナコトガアツテハナラヌ、ノミナ
ラズ財政ノ今日ノ現狀カラ見テ、殊ニ公債、
貯蓄、サウ云フ方面ノ點カラ見マシテ、此
ノ問題ハ相當考ヘラルベキ問題デアルト思
フノデアリマス、尙ホ是レ以上ハ議論ヲ致
シマセヌガ、殊ニ電氣銅ノ如キハ從來價格
ヲ上ゲテモ割合ニ他ニ惡循環ノ影響ナシト
見テ、最近マデハ値上ノ方法デ來テ居ツタ、
ソレガ來年度カラ之ニ補給金ガ支給サレル
コトニナツタノデアリマス、更ニ最近承ル
所ニ依リマスト炭礦ノ坑夫ノ賃金ヲ五割
程上ゲル、而モソレハ政府ノ補助金デヤル
ノダト云フ風ナコトマデ傳ヘラレル位デ、
補助金ノ範圍ハ減ラヌノミカ、益〓殖エテ行
ク傾向ニアル、而モ更ニドウカト言ヘバ、
賃金ニマデ補助金ヲ出サウト云フコトニ若
シナルトスレバ、行ク〓〓一體財政ハドウ
云フコトニナルノデアラウカ、寧ロソレヨ
リカ國民經濟ノ負擔ニ轉嫁シ得ルモノハ成
ベク轉嫁スル、其ノ爲ニ恐ロシイ「インフ
レーション」トカ惡影響ノアルモノハ是ハ
考ヘナケレバナラヌケレドモ、私共ノ見ル
所デハ、ソンナ理論的ニ主張サレルヤウナ
恐ロシイ惡循環ハナイト見テ居リマスシ、
又アリ方次第ニ依ツテハ極メテ圓滑ニ行ク、
斯ウ思ツテ居ルノデアリマス、ソコデサウ
云フ色々ナ名案ヲ考ヘテ、成ベク今ノ補助
金ミタイナ性質ノモノヲ減シテ、之ヲ直接
軍費ノ方ニ振込ム、コトガ必要ダト思フノ
デアリマス、詳シイ議論ヲシヨウトハ思ヒ
マセヌガ、是非大藏大臣ガ其ノ方向ニ進ム
ヤウニ名案ヲ見出サウト云フ氣持デ、一ツ
其ノ名案ヲ見出スヤウニ御盡力願ヘレバ、
財政トシテモ此ノ上モナイ仕合セダト思ヒ
マシテ、此ノ點ニ付テノ御所見ヲ承ツテ置
キタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=75
-
076・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 補給金ヲ減シテ參リマス
コトハ、私共トシテハ實ニ希望シタイノデ
アリマス、非常ニ樂デ都合ガ好イノデアリ
さく、名案モ考ヘタイト思ヒマスルシ、又
名案ガオアリニナル場合ニハ、他ノ機會ニ
〓ヘテ戴キタイ、唯一ツ所感ヲ申添ヘテ置
キマスガ、今世界各國ノ形勢ヲ見マスルト、
「ソヴィエト」ハ中々樣子ガ分ラヌガ、アトノ
日獨米英ト云フ國、一部ハ敵國デモアリマ
スルガ、何トシテモ世界的ニ本當ノ意味ノ
國內政治力ノ優レテ居ル國ハ何トカヤツテ
居リマス、其ノ以外ハ交戰國固ヨリデアリ
マスガ、交戰國デナイ、軍費ノ支出ナドハ
殆ドナイ國ガ非常ナ惡性「インフレ」ニナツテ
居ル、是ハ御調ベニナルト能ク分ル、國費
ハ餘リ膨脹シナイノニ通貨ハ國費ノ膨脹割
合以上ニ膨脹シテ居ル、物價ハ通貨ガ膨脹
シタ割合以上ニ騰貴シテ居ル、所ガ四大交
戰國ハ戰爭デ國費ハウント膨脹シテ居ルガ、
通貨ハソレヨリ膨脹率ガ非常ニ少イ、物價
ノ率ハ尙ホ非常ニ少イ、是ハ何トシテモ單
ニ政府ノ統制バカリデハアリマセヌ、國民
ガ進ンデヤリ、政府モヤツテ居ツテ、事實上
ノ所謂本當ノ意味ノ政治力ト云フモノガ働
イテ居ルカラ今言ツタ現象ガ起ル、外ノ國
ハ皆逆デ、國費ハ此ノ位、通貨ハソレ以上
デ、物價ハ又ソレ以上膨脹シテ居ル、是ハ
私ニ言ハセマスト、日本ハ國民ガ非常ニ御
努力ニナツタ結果、六年有半、七年未滿ニ
モナリマスガ、惡性「インフレ」トカ3)
フレ」トカ云フモノハ餘リ氣遣フ必要ガナク
濟ンダカラ、現狀カラ見マスト「インフレ」
ト云フノハ心配シナイデモ宜イヤウデアリ
マスガ、私ハ中々サウハ思ハナイ、是ハ國
民ノ非常ナ努力ノ結果デアリマス、政府ガ
縮尻ツタリ、國民ガ一寸弛ンダラドンナコ
トニナルカ分ラヌ、疊槍ト同ジヤウニ何處
カラ來ルカ分ラヌヤウニシテ槍ガ突キ當ル、
ソレデ四大國ノ中デモ「ドイツ」ヤ「イギリ
スㄴハ其ノ點相當締ツテ居ルガ、「アメリ
カハ御承知ノヤウニ相當政府ニ對スル國
民ノ感ジモ違ヒマシテ、野郞自大ノ驕ツテ
居ル氣持モアル、御承知ノヤウナ狀態デ今
一番是ガ「インフレ」懸念デアリマス、併シ
我々ハ「アメリカ」ガ「インフレ」ニナツテソ
コデクタバルカラ、コツチガ氣ヲ弛メテ宜
イナドトハ毫モ考ヘテ居マセヌ、彼等ガ一
生懸命ニヤツテモ、ソレニ對應シテヤリ拔
ク心組ミデヤツテ居リマスガ、中々危險ガ
アル、ソレハ石炭デモ鐵デモ之ヲ計算シテ
行ツタラ殆ンド影響ガナイヂヤナイカ、米
デモサウデス、昨年アレダケ上ゲタ、生產
者價格ハ一俵二十五圓デ十何圓上ゲタガ、
消費者價格ハ三圓シカ上ゲマセヌ、是ハ理
窟カラ言ヘバ、今ノ家計デ米代ガ幾ラ要ル
カ、一人二合三勺デ、一升十錢上ツタ所デ
幾ラ殖エルカ、私ハ今ノ家計論カラ言ツタ
ラ問題ニナラヌト思ヒマス、鐵モ石炭モ御
話ノヤウデアルカモ知レマセヌ、唯茲ニ感
ジノ問題デ、本當ニ物價ガ奔馬ノ如ク上リ
掛ケルト云フヤウナ時ニ、何ト云ツテモ必
需物資ノ價格ガ上ルト云フ其ノ氣持ガドウ
作用ヌルカト云フヤウナ點ヲ考ヘテ見マヌ
ト、之ヲドツチニ踏ン切ルカト云フノニハ
餘程考ヘナケレバナラヌ、併シ是ハ御話ノ
ヤウニ何モ補助金ヲ出シタインヂヤナイ、
出サヌ方ガ差向キノ我々ノ懷ロ工合モ宜イ
シ、又出サズニ行クノガ自然デアリマシテ、
其ノ名案ヲ考ヘルコトニ決シテ吝ナ譯デ
ハアリマセヌガ、一應今申上ゲタヤウナ觀
點カラモ戰爭中ハ餘程考ヘテ行カナケレバ
ナラヌノデ、私共ガ狹義ノ財政ノ立場カラ
出サヌ〓〓ト云フ一點張リノ主張ヲシナイ
デ居ル點モソコニアリマス、電氣銅ハ殖エ
マシタガ、全體ニ於テハ非常ニ考ヘテ居リ
マシテ、補給金制度ノ範圍ヲ濫ニ擴張シナ
イト云フコトハ非常ニ努力シテ居ル、今度
モ味噌ヤ醬油モ幾ラカ少シヅヽ上リマシタ、
是モドレ位上ルカ、今度生產費ヲ償フヤウ
ニスレバドレ位消費者ノ負擔ニナルカ、色
色考ヘヲ刺戟ノナイヤウナコトデアリマス
カラ、價格引上ノ方針デ行ク、又之ヲ上ゲ
ルコトニ依ツテドウデアラウカト云フ非常
ナ疑問ノアルモノハサウシナイ、デスカラ
品物ノ數ハ極メテ少ナイノデアリマスケレ
ドモ、濫ニ擴張致サヌ方針デ居リマス、先
ヅ鐵、石炭、銅米、麥、之ニ付キマシテ
ハ色々國民的ニモ努力ノ目標モ決マリ、
惡性「インフレーション」モ來ナインダ、グン
トヤラウ、是ガ確タル觀念ニナツテ差支ヘ
ナイト云フ時ニハ、私ハ何デモナイト思フ、
マアソレ等ニ付キマシテハ疑問デアリマス
カラ、能ク實情ヲ見定メテ處理シタイ、斯
ウ云フヤウニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=76
-
077・田中貢
○田中(貢)委員 物價論ニ付テ詳シイ御話
ヲシヨウトハ思ヒマセヌガ、今日ノ物價政
策、殊ニ今仰シヤイマシタ米トカ鐵、石炭
ト云フ風ナモノニ付テ執ツテ居ル所ノ價格
政策ハ所謂適正生產費ト適正利潤ト云フ建
前デアリマシテ、損ハサセヌト云フ消極的
ナ建前デ行ツテ居ラレル、殊ニ個別價格制
ヲ採ツテ居ルモノニ付テハ、生產費ヲ下ゲ
レバ買取價格ヲ下ゲル、斯ウ云フノガ事實
デアリマス、是ハ悉ク「インフレーション」
防止ノ爲ニヤツテ居ルンダト云フコトデ中
中動カサヌ方針ノヤウデアリマス、ケレド
モ其ノ結果ハ御承知ノ通リデアリマス、公
ノ席デ生產ガドレ位殖エタカ減ツタカト云
フコトヲ申スコトヲ好ミマセヌ、色々理窟
モアルガ、ヤツタ結果ハ御覽ノ通リデアリ
マスシ、國民ノ負擔モ重クナルコトデアリ
マスカラ、何カ玆ニモツト氣ノ利イタ方法
ガナクテモ見出ス、大藏大臣ノ所謂無理ニ
モ貯蓄スルト云フ意氣込ミデ、一ヅ新シイ
理念ト實際トヲ考ヘテ戴キタイト云フコト
ノ希望ヲ申スニ止メテ置キタイト思ヒマス、
又ソレニ關聯致シマシテ今色々ナ御話ガア
リマシタガ、マア「インフレーション」ト云
フノハ通貨ガ膨脹シタ、物價ガ高クナツタ
カラト云ツタ程度デハ恐ラクナイノデアリマ
ス、貨幣其ノモノガ信用ヲ失フテ金ハ屁ニ
モナラヌト云フ其ノ時ガ一番恐イ時ナノデ
アリマス、而モ通貨ハ金貨ト取換ヘテ吳レ
マシタカラ貨幣ノ信用ヲ維持シテ居リマシ
タガ、最近ハ金貨ト取換ヘテ居リマセヌデ、
物ト取換ヘテ吳レルカラ初メテ信用ヲ維持
シテ居ル狀態デアリマス、ソレデ若シ物ト
モ取換ヘラレヌト云フコトニナレバドウナ
ルカ、更ニ貨幣ヨリモ酒ヲ持ツテ居ル方ガ、
魚デモ砂糖デモ買ヘルト云フコトニナツタ
ラドウナルカ、サウ云フ物ノ方ガ流通力ヲ
持ツト云フコトニナルト、由々シキ問題ニ
ナツテ來ルト思フノデアリマス、此ノ點ニ
付テ特ニ御考慮ヲ願ヒタイ、金ヨリモ物ト
云フコトニ付テハ配給其ノ他ノ不備カラ來
テ居ル點モアラウケレドモ、生產ヲ阻止シ
テ居ル價格政策カラモ來テ居ルト云フコト
ヲ御考慮願ヒタイ、尙ホ又政府ガ煙草ヲ値上
ヲシタ、田舍へ行ツテ實ハ驚イタノデアリ
マスガ、一寸一圓祝儀ヲヤラウトスルト、
敷島一ツニシカ當ラヌ、ソレデハ迚モイカ
ヌト云フ譯デ、自然祝儀ノ額モ上ツテ來ル、
ト云フ次第デ金ノ値段ガ段々下ツテ來ル、
ソレニシテモ日本ノ財政ハ膨脹シ、國民ノ
富ノ程度モ殖エテ行キ、世帶モ大キクナツ
タノデアリマス、サウシテ是ハ喜バシイコ
トデアリマス、サウ云フ情勢ノ下ニ徒ラニ惡
循環トカ惡性「インフレ」トカ云フ理論ニ拘
泥シテ米ノ値ヲ抑ヘ、鐵石炭ノ價格ヲ補
給金デ抑ヘテ行カウト云フコトハドウカト
思ヒマス、幾ラ押問答ヲシマシテモ果テシ
ガアリマセヌ、又押問答ヲシヨウトモ思ヒ
マセヌ、是非何トカ無理ニデモ名案ヲ考ヘ
テ戴キタイト云フ希望ヲ述ベマシテ、私ノ
質疑ヲ打切リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=77
-
078・中島彌團次
○中島委員長 河盛君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=78
-
079・河盛安之介
○河盛委員 只今田中委員ノ質問ニ依リマ
シテ、國民所得竝ニ國民消費、更ニ又國民
貯蓄ノ問題ガ極メテ明快ニ闡明サレマシタ
ノデ、私ハ極ク事務的ナ極メテ簡單ナ問題
ヲ二、三御尋ネヲシタイト思ヒマス
第一事ハ國政務ノ委任ニ伴フ財源ニ關ス
ル件デアリマスガ、地方制度ガ改正セラレ
マシテ、國政事務ガ地方ニ委任セラルヽ範
圍ガ非常ニ擴大セラレ、戰時下市町村ノ事
務ハ非常ニ激增致シタノデアリマス、是等
ニ關スル財源ニ關シマシテハ、適當ナル措
置ヲ政府ニ於テ講ズルト云フ規定ガ市町村
制ニアルノデアリマスケレドモ、併シ其ノ
都度ソレニ對スル財源ガ考慮サレテアルカ
ドウカト云フコトガ疑ハシイ場合ガ非常ニ
多イノデアリマス、最近ノ例ヲ取リマスル
ト兵役ノ服務年限延長ニ關シマシテ、兵
役法竝ニ陸軍武官服務令及ビ海軍武官服務
令ノ改正ガ行ハレマシテ、兵役年限ガ延長
セラレマシタ結果ト致シマシテ、各市町村
ニ於キマシテハ之ニ伴フ人的、物的ノ經費
ガ非常ニ多額ヲ要スルヤウニ相成ツタノデ
アリマス、更ニ又徵兵適齡ノ年限ガ低下セ
ラレマシテ、是レ亦之ニ要スル所ノ費用ガ
非常ニ激增致シタノデアリマス、又最近戶
籍法ノ施行細則中ノ改正ガアリマシテ、戶
籍ノ編成ノ日カラ二十五年ヲ經過シタル戶
籍ニ付キマシテハ、市町村長ハ遲滯ナク其
ノ副本ヲ監督區裁判所ニ送付ヲセヨトノ命
令ガアルノデアリマス、是レ亦是ガ調製ニ
ハ大キナ經費ト人トヲ要スルノデアリマス、
更ニ又靑壯年ノ國民登錄調査ニ關スル件ニ
付キマシテモ、從來ノ二囘ノ調査ノ上ニ、
更ニ今囘四十五歲マデ延ビマシタ結果ト致
シマシテ、是ガ調査ニ要スル費用ハ相當莫
大ナモノガアルノデアリマス、尙ホ國民徵
用ノ强化ニ伴ヒマシテ、是ガ事務ハ徵用援
護事務ト相俟チマシテ、愈〓激增ノ一七〇ノ
辿ツテ居ルノデアリマスガ、是等ノ經費ハ
之ヲ合算シマスルト、各市町村ノ負擔ト致
シマシテハ、實ニ莫大ナ數字ニ上ルノデア
リマス、勿論之ニ對シマシテ、政府ハ適當
ナ措置ヲ講ジテ吳レルトハ考ヘマスルガ、
是等ノ經費ニ對スル政府ノ適當ナル措置ト
ハ、ドウ云フ方法ニ依ラルヽノカ、或
分與稅ノ制度ニ依ラルヽノカ、或ハ又補助
ノ方法ニ依ラルヽノカ、ハツキリシナイ點
ガ非常ニ多イノデアリマスノデ、此ノ際ソ
レヲ闡明シテ戴キタイト同時ニ、來年度ニ
於キマシテハ勿論三稅ノ增徵及ビ分與稅ノ
增額ニ依リマシテ、相當ノ準備ガアルヤニ
聞イテ居ルノデアリマスガ、ヤハリ斯樣ナ
事務ヲ地方ニ仰付ケルト同時ニ、何等カノ
措置ヲ執ツテ戴キマシテ、右カラ左ヘ其ノ
費用ガ地方ニ〓ルヤウニ一ツ御配慮ガ願ヒ
タイ、斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、
之ニ對スル內務、大藏當局ノ御意見ヲ拜聽
シタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=79
-
080・新居善太郎
○新居政府委員 只今ノ、國政事務ガ地方
公共團體ニ澤山行キマス結果、地方公共團體
ト致シマシテハ、此ノ事務ノ遂行ニ色々ノ
觀點カラ御苦心ナサツテ居ルト云フコトハ、
政府ト致シマシテモ十分承知致シテ居リマ
ス、隨ヒマシテサウ云フ仕事ヲ各省ニ於テ
ヤリマス時ニハ、內務省ト緊密ナ連絡ヲ執
リマシテ、地方公共團體ニ於テ御困リニナ
ラヌヤウナ方法ヲ常ニ協議シ來ツタノデア
リマスガ、殊ニ其ノ經費ノ點ニ於キマシテ
ハ非常ニ苦シマレル場合モアリマスノデ、
先般ノ地方制度ノ改正ニ當リマシテハ、國
ノ事務ヲ地方公共團體、又ハ其ノ吏員ニ處
理執行セシメル場合ニ於キマシテハ、之上
要スル經費ノ財源ニ付キマシテ、必要ナル
措置ヲ講ズルト云フコトヲ、制度ノ上ニ於
キマシテモ明瞭ニ致シマシタシ、而モ亦實
際問題ト致シマシテハ、斯カル國ノ事務ヲ
地方ニ執行セシメル其ノ內容ヲ檢討致シマ
スト、量的ニモ質的ニモ非常ナ急激ノ變化
ヲ來シテ參ツテ居リマスルノデ、從來ヨリモ
一層緊密ナ連絡ヲ各省間ニ執リマシテ、其
ノ仕事ヲヤリマス上ニ於テノ方法ナリ、又
機構ナリニ付キマシテモ十分檢討ヲ加ヘマ
スシ、又只今御尋ネノ主眼デアリマス經費
ノ點ニ付キマシテモ、其ノ事柄ニ依リマシ
テハ一々其ノ具體的ノ事項ニ付キマシテ、
補助金或ハ交付金ト云フヤウナ形式ヲ以チ
マシテ財源ノ充實ヲ圖リ、或ハ又事柄ニ依
リマシテハ色々ノ事柄ガアリマスカラ、之
ヲ一括致シマシテ、綜合的ニ或ハ配付稅ノ
增額補給、或ハ增稅ト云フヤウナ方法ヲ以
テ、地方ノ之ニ必要トスル財源ノ充足ニ努
力シテ居ル譯デアリマス、今囘來年度ニ於
キマシテ三稅ヲ增稅スル、或ハ配付稅ヲ增
額スルト云フコトモ亦、此ノ趣旨ガ多分ニ
含マレテ居ルノデアリマシテ、今後ニ於キ
マシテ、十分地方ニ於キマシテ御困リニナ
ラヌヤウニ、各省間ノ連絡協議ヲ密接ニ行
ヒマシテ十分努力スル積リデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=80
-
081・河盛安之介
○河盛委員 洵ニ御懇切ナル御答辯ヲ戴キ
マシテ滿足致シマス、次ニ御尋ネ致シタイ
ノハ物品稅ニ關スル點デアリマス、現行法
ニ依リマスト、國民學校ノ兒童用ノ机
腰掛、是ハ極メテ〓細ナヤウデアリマスガ
全國的ノ問題デアリマス、是ガ課稅ノ對
象ニナツ居ルヤウニ聞イテ居ルノデアリ
マス、苟モ義務制ヲ施行シ、國民〓育デア
ル關係カラ見マシテ、國民學校ノ兒童用ノ
机腰掛ニマデ課稅スルコトハドウデアラ
ウカト云フコトヲ先般陳情ヲ致シタノデア
リマスガ、現行ノ制度ノ下ニ於テハ之ヲ免
稅スルコトハ出來ナイト云フ御言葉デアリ
マシタ、是等ニ對シマシテ特別ノ御處置ヲ
講ジテ戴ク餘地ハナイカドウカ、一應御當
局ノ御意見ヲ拜聽致シタイト思フノデアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=81
-
082・松隈秀雄
○松隈政府委員 椅子及ビ机ノ免稅點ニ付
キマシテハ、從來一箇十圓トナツテ居リマ
スノデ、大體國民學校兒童用ノ机、椅子ニ
對シテハ課稅ニナラナイト思ハレルノデア
リマス、然ルニ最近ニ於キマシテハ、値上
リ等ノ關係モアリマシテ、サウ云フモノガ
課稅ノ對象トナルト云フヤウナ場合モ出テ
參ツタヤウデアリマスノデ、今囘ハ命令ヲ
改正スル機會モゴザイマスノデ、國民學校
ニ於テ使用スル兒童用ノ机及ビ椅子ニ限リ
マシテ免稅スル取扱ニ致シタイト考ヘテ居
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=82
-
083・河盛安之介
○河盛委員 能ク諒承致シマシタ、ソレデ
ハ次ニ所得稅ノ納期ノ改正ニ關スル點ニ付
キマシテ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス、政
府ニ於カレマシテハ今議會ニ於テ增稅ト竝
行シテ各稅ノ納期改正ヲ立案セラレマシタ
コトハ洵ニ敬意ヲ表スル次第デアリマスガ、
所得稅ニ付キマシテ稅額ヲ六十圓未滿ト決
メラレタコトニ對シマシテハ何カ意味ガア
ルノカドウカ、私ハ堺市ニ住ンデ居ルノデ
アリマスガ、堺市ヲ例ニ取ツテ見マスト、
所得稅ノ納稅者ノ實情ヲ調査致シマスト、
分類所得稅ニ於キマシテハ納稅人員ガ九千
二百二十一人デアリマシテ、其ノ中六十圓
未滿ノモノヲ擧ゲマスト二千九百八十八人
デアリマス、其ノ比率ハ三割二分四厘デア
リマス、又綜合所得稅ニ於キマシテハ納稅
人員ガ四千百八十八人デ、其ノ中六十圓未
滿ノモノヲ擧ゲマスト千四百二十五人デア
リマシテ、其ノ比率ハ三割四分デアリマス、之
ヲ分類綜合合計ノ比率ニシテ見マスト納稅
人員ガ一萬三千四百九人デ、其ノ中六十圓
未滿ノモノガ四千四百十三人デアリマス、
其ノ比率ハ三割二分九厘ニ當ツテ居ルノデ
アリマス、之ニ依ツテ見マスト、分類所得
納稅者ノ中デ所得三千圓ヲ超過スル者ハ、
申スマデモナク分類所得稅ノ外ニ尙ホ綜合
所得稅ヲモ負擔スルコトニナツテ居リマス、
仍テ兩種ノ稅ノ中デ稅額ガ相當多額ニ上ツ
テ居ル綜合所得ヲ從來通リ四期ニ致シマシ
テ、大衆的デ且ツ比較的納メ易イ分類所得
稅ヲ全部年二期ト云フコトニ改メマスト、
徵稅ノ事務ニ於キマシテ非常ナ簡素化トナ
リマシテ、人及ビ物ノ節約ガ非常ニ多クナ
ルノデアリマスガ、御當局ノ御意見ハ如何
デアリマセウカ、其ノ點ヲ御答へ願ヒタイ
ト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=83
-
084・松隈秀雄
○松隈政府委員 今囘決戰下ニ於ケル行政
事務ノ簡素化ノ一ツノ方法ト致シマシテ、所得
稅ノ納期ニ付テ改正ヲ加ヘマシテ、命令ノ定
ムル金額以下ノ場合ニ於テハ、普通ハ年四
期デアリマスルノノ年二期ニ納メシメルコ
トガ出來ルト云フコトニ致シタノデアリマ
ス、命令案要綱ト致シマシテハ、同居家族
ノ分ヲ合算致シマシテ年額六十圓程度ニ致
シタイト考ヘテ居ル次第デアリマス、六十
圓ト云フコトニ付キマシテハ、理論上大シ
タ根據ハナイノデアリマスルガ、大體ノ達觀
ヲ加ヘマシテ、一囘ノ納稅額ガ三十圓程度
デアルナラバ、納メル上ニ於テモ左程ノ苦
痛ハナイデアラウト、斯樣ニ存ジテ六十圓
程度ニ致シタイト云フ腹案ヲ持ツテ居ル次
第デアリマス、只今ノ御話ニ依リマスルト
堺市デハ分類所得稅ノ納稅者數ニシテ三割
二分程度、綜合所得稅ノ場合ニ於テ三割四
分程度ト云フ御話デアリマスルガ、全國ノ
狀況カラ申シテ見マスト、只今命令案ニ考
ヘテ居ル程度ノ狀況デアリマスルト、分類
及ビ綜合所得稅ノ見込納稅者數ノ四割位ニ
當ツテ居リマス、之ニ依リマシテ納稅告知
書ノ數ヲ減少シ得ル見込ノ總數ハ約七百六
十三萬通ニナツテ居リマス、所得稅ノ納稅
告知書總數ニ對シテハ三割程度ノ減少率ニ
ナルノデゴザイマス、之ニ付キマシテハ、
手數ノ上カラノミ申上ゲマスレバ、モウ少
シ金額ヲ上ゲマシテ納稅告知書ヲ出ス手數
ヲ省クト云フコトモ考ヘラレルノデアリマ
スガ、又一方納稅者側ノ便宜モ考ヘナケレ
バナラヌノデ、大體年額六十圓程度デハ如
何デアラウカト考ヘテ居ルノデアリマス、
是ハ先程モ申上ゲマシタ通リ、同居家族ノ
分ハ合算致シマスルシ、ソレカラ賦課課稅
ニ於テ分類所得稅ト綜合所得稅ト同時ニ納
メルト云フヤウナモノニ付テハ、分類所得
稅ト綜合所得稅トヲ合セタ上デ六十圓ト云
フノヲ見タイト考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=84
-
085・河盛安之介
○河盛委員 大體諒承致シマシタガ、是ハ
斯ウ云フコトニハ出來ヌモノデセウカ、綜
合所得ノ分ハ年四囘ニシマシテ、分類所得
ハ年二囘ニ分ケルト云フ譯ニハ行キマセヌ
カ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=85
-
086・松隈秀雄
○松隈政府委員 今囘行政事務簡素化ノ爲
ニ、納稅告知ハ從來綜合所得稅ノ分ト分類
所得稅ノ賦課課稅ノ分トヲ別々ニ出シテ居
ツタノデアリマスルガ、之ヲ合セマシテ
一本ノ告知書ニ致シタイト考ヘテ居ルノデ
アリマス、ソレカラ申シマスルト、兩者ヲ
合算シタ所デ年額六十圓ヲ境ニ二囘ニ徵收
スルカ、四囘ニ徵收スルカヲ分ケタイ、斯
樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=86
-
087・河盛安之介
○河盛委員 能ク分リマシタ、出來ルダケ
金額ヲ上ゲマシテ、徵稅事務ノ簡素化ヲ圖
ツテ戴クヤウニ御願ヒ致シマス、ソレカラ
最後ニモウ一ツ簡單ナコトデアリマスルガ
御尋ネ致シマス、相續財產ノ評價ノ場合ニ、
市場ニ上ラヌ株劵ノ評價ニ當リマシテハ、
稅務當局ノ從來ノヤリ方ニ依リマスルト、
其ノ會社ノ資產負債ヲ比較考量致シマシテ、
時價ニ依ツテ、計算スルヤウニナツテ居ツ
タノデアリマス、隨テ此ノ時價ニ依ツテ計
算セラレマシタ評價ト云フモノハ相當高イ
モノニ付キマシテ、地方ノ詰ラヌ會社ノ株
式ガ一流株式ノ倍ニモ三倍ニモナルト云フヤウ
ナ結果ヲ招來スルノデアリマス、稅務當局ニ色
色御話シ致シマシテモ、現在ハ此ノ方法ヨリ方
法ガナイト云フノデアリマスルガ、斯樣ナ
コトハ社會通念カラ考ヘマシテ、一流會社ノ
株劵ニ比較シマシテ或ル程度ノ評價下ゲヲスル
ト云フヤウナ方法ガ執レナイモノデアリマ
セウカ、一流會社ノ株劵ヲ其ノ會社ノ資產
負債ニ依ツテ時價ニ換算シテヤリマシタナ
ラバ、是ハ大キナ評價ニナルノデアリマス
ルガ、ソレガ株式ノ中値ニ依ツテ計算セラ
k、市場ニ上ラザル所ノ株式ハ先程申シマ
シタヤウナ方法ニ依ツテ評價セラレマスト
大キナ數字ヲ見ルヤウニナルノデアリマス
ガ、此ノ間ノ調節ヲ何トカ徵稅ノ上ニ行ツ
テ戴キタイト考ヘテ居ルノデアリマス、之
ニ對スル御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=87
-
088・松隈秀雄
○松隈政府委員 相續財產ノ中ニ株式ガア
リマシタ場合ニ於キマシテ、御話ノ如ク市
場ニ流通シテ居ラナイ隨テ市場價格ノ決ツ
テ居ラナイモノニ付キマシテノ評價ハ困難
ナ問題デアリマシテ、實ハ稅務當局トシテ
モ如何ニ評價スベキカニ苦心シテ居ル所デ
アリマス、市場上場株デ株式相場表ニ載ツ
テ居リマスルモノハ御話ノ如ク中値ヲ取ツ
テ居ルノデアリマス、是ハ一種ノ公定價格
トモ云フベキモノガアルノデアリマスカラ、
ソレニ依ラザルヲ得ナイノデアリマス、其
ノ以外ノ株式ニ付キマシテハ、外ニ評價ス
ル標準モゴザイマセヌカラ、勢ヒ純資產價
額ヲ株式ニ按分シテ株價ヲ見ル、卽チ資產
負債ヲ調ベマシテ差引シタ純資產價額ニ依
ル、其ノ時ニ於テ會社ガ解散シタナラバ幾
ラノ〓算價格ガアルカト云フ所ニ依ツテ見
ルノガ理論的ニハ宜イ譯デアリマスガ、ソ
レデ計算ヲ致シマスルト、多少市價ノアル
株ヨリモ高ク出ルト云フヤウナ傾向ガゴザ
イマス、其ノ方法ニ依ルヨリ他ニ方法ガナ
イ以上ハ一番妥當デアルト思フノデアリマ
スガ、ソレニ依ツテ課稅ガ無理ニナラナイ
ヤウニ十分氣ヲ付ケテ參ルヤウニ致シタイ
ト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=88
-
089・中島彌團次
○中島委員長 田村秀吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=89
-
090・田村秀吉
○田村(秀)委員 旣ニ多數ノ方々カラ質問
セラレテ大體質疑ハ終了スル程度ニ至ツタ
ト思ヒマスノデ、モウ餘リ質疑ノ餘地ガナ
イノデアリマスガ、私モ念ノ爲ニ此ノ際或
ハ他ノ委員ノ方々カラ御質疑申上ゲタ點ト
重複スル點モゴザイマスガ、大藏大臣ニ
二質疑ヲ致シタイト思フノデアリマス
第一點ハ今囘ノ增稅ニ伴ヒマシテ煙草ノ
大幅ノ値上ゲガ行ハレテ居ル、又間接稅ノ
增徵ニ依リマシテ生活必需品ノ部面ニモ多
少ノ稅ガ上ゲラレテ居リマス、所デ此ノ國
家資金計畫カラ申シマスト國民所得ハ昭和
十七年以來四百五十億ガ五百億、昭和十九
年度ニハ六百億ト計算セラレテ居リマス、
隨テ所得ノ累增ニ伴ツテ、人トシテハヤハ
リ所得ガ殖エルト其ノ所得ヲ使ヒタガル傾
向ガ一方ニアル、而モ消費資金ニ付キマシ
テハ、昭和十七年ノ百五十億カラ百三十億
トナリ、百十五億トナツテ居リマス、此ノ
點カラ見マスルト厖大ナル戰費ノ放出ニ基
キマシテ國民所得ハ累增シテ行ク、而モ此
ノ決戰態勢下ニ於キマシテハ國民ノ消費生
活ハ飽クマデモ之ヲ切下ゲテ行カナケレバ
ナラヌ、決戰生活態勢ヲ確立シテ行カナケ
レバナリマセヌ、而モ生活ノ引下ゲヲヤツテ行
ク要件ト致シマシテハ、生活必需品其ノ他
ノ物價ノ安定ト云フコトガドウシテモ基礎
要件ヲ成スノデアリマス、然ルニ煙草ハ値
上ゲセラレル、運賃ノ引上ゲガアル、郵便
料金ノ引上ゲガ行ハレル、斯ウ云フヤウナ
狀態ガ一方ニ行ハレマスノデ、消費生活ノ
抑制ト云フコトト相矛盾スル關係ガ出テ
來ルノデアリマスガ、併シ私共ハドウシテ
モ此ノ決戰態勢下ニ於キマシテハ國民生活
水準ヲ引下ゲテ行キ、其ノ爲ニ物價ノ安定
ヲ圖ル爲ニハ低物價政策ト云フコトハド
ウシテモ根本的ニ之ヲ維持シテ行カナケレ
バナラナイト思フノデアリマス、而モ一方
ニ於テ戰爭資材ニ付テハ生活擴充ノ關係上、
今日世上ニ於ケル價格ノ適正ナル再檢討ヲ
行ハナケレバナラヌ、是モ亦生活必需物資
ニ對スル價格ノ安定ノ上ニ多少ノ影響ヲ齎
シテ來ルト思フノデアリマス、斯ウ云フヤ
ウナ國家資金計畫ノ上カラ或ハ生產擴充ノ上
カラ、一方財政ノ强化、購買力ヲ吸收シナ
ケレバナラヌ、斯ウ云フ點カラ色々觀察致
シマスト、從來ノ低物價政策ヲ如何ニ維持
シテ行クカト云フコトガ、決戰生活下ノ間
題トシテ非常ニ重要ナ問題ニナツテ來ルト
思フノデアリマス、此ノ時局ニ處シテ低物
價政策ニ關シマシテ、此ノ增稅案ヲ練ラル
ルニ付テ大藏大臣ハ如何ナル御所信ノ下ニ
ヤラレタカ、此ノ際伺ツテ置キタイト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=90
-
091・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 戰時ニ於キマシテハ國民
ノ所得ガ御話ノ如ク增加ヲ致シマシテ、特
ニ戰爭ノ規模擴大、戰局ノ苛烈ニナルニ隨
ヒマシテ、戰費ハ增大シ、一層國民ノ所得
ハ增加シテ行クノデアリマス、然ルニ斯カ
ル際ニ於キマシテハ兵器彈藥、其ノ他ノ
軍需品ヲ極メテ多量ニ製作スルコトガ必要
デアリマシテ、戰費ノ增加、國民所得ノ增
加モ之ニ原因スルノデアリマス、隨テ國家
全體ヲ通ズル生產部面カラ考ヘマスルト、
生產總量ハ增シマスルガ、國民生活ノ爲ニ
必要ナル生產ハ必要ノ最小限度ニ切リ詰メ
ラレ、生產餘力ハ資金ト云ハズ、勞務ト云
ハマ、資材、動力ト云ハズ全部兵器彈藥
其ノ外ノ軍需品ノ生產ニ集中セラレルト云
フ傾向ヲ取ルノデアリマス、隨テ國民所得
全體ノ購買力ノ方向ハ、戰爭生產ニ依ル物
ノ購買力ニ之ヲ充テ、消費生活ノ購買力ニ
ハ極メテ一部ヲ充テル、更ニ的確ニ申セバ、
戰爭生產ノ量ニ應ジタル如ク、戰爭生產ニ
對シテ購買力ヲ量ニ於テ集中シマシデ、國
民消費生活ニ充テル生產ノ量ニ應ジテ、消
費生活ニ對スル購買力ヲ規正致スノデアリ
マス、戰爭ニ必要ナル物資ノ購入ニ對スル
購買ハ政府ガ專ラ當ツテ居リマスカラ、隨
テ國民ノ所得ハ、稅及ビ國民貯蓄ヲ通ズル
公債消化ニ依リマシテ、其ノ購買力ニ向ケ
ラレ、自ラノ消費生活ニ對スル購買力ハ之
ヲ極メテ一小部分ニ止メルベキデアリマス、
本年度ノ國家資金計畫ニ付キマシテモ、之
ニ付テノ金額ノ〓要ヲ昨日申上ゲマシタヤ
ウナ次第デアリマス、是ハ其ノ購買力ノ配
分、生產ノ配分ノ面カラ申上ゲタノデアリ
マスガ、斯カル狀態ニアリマスル際ニ於キ
マシテ、非常ナル戰爭物資ノ生產ヲ致シマ
スルガ、戰局ノ要請ハ常ニアレバアル程多
多益〓辨ズルノデアリマス、否最少限度ニ
モモツト餘計要スル、斯クノ如キ增產-
他ノ生產力ヲ戰爭生產ニ集中シマシタ戰爭
生產ノ大增產ニ拘ラズ、ソレ以上ノモノヲ
要請スルノガ常デアリマシテ、今日ノ戰局
モ之ヲ證シテ居ルノデアリマス、隨テ常ニ
需要ガ多ク供給ハ少ク、供給ハ絕對量トシ
テハ戰爭關係デハ平時ヨリ非常ニ殖エテ居
ルノデアリマスガ、戰局ノ要請ニ應ジテ一
層需要ノ急ナルモノガアリマス、是ニ於テ
所謂需要供給ノ結果、動モスレバ非常ナル
物價ノ暴騰ヲ來サントシマス、コヽデ需要
供給ノ關係カラ製品及ビ原材料、勞務ノ配分
ガドウシテモ計畫的ニ行カナケレバナリマ
セヌノデ、必然ノ要求トシテ戰時ニ計畫統
制經濟ガ起ル已ムヲ得ザル理由ガ玆ニ存ス
ルノデアリマス、同樣ナコトガ又消費經濟
部面ニ起ルノデアリマス、消費經濟ニ對ス
ル生產ハ平時ヨリ量ニ於テモ質ニ於テモ數
於テモ低下スル、然ルニ國民ノ懷ロニハ平
時ニ數倍ヲスル購買力ガアル、貨幣ガアル、
實ニ非常ナ不釣合ニナルノデアリマス、之
ヲ規正スルモノハ一ニ國民ノ愛國心ニ依ル
納稅及ビ貯蓄、生活ノ切下デアリマス、政
府ノ各種ノ施策ハ其ノ根本ノ愛國心、戰爭
ニ勝タズンバ已マザル心ヲ培ヒ、一々ノ行動
ガソレニ合フヤウニ便宜ヲ圖ルベク、之ヲ鞭
撻スル爲ノ政策ガ要リマスコト申スマデモ
ナイノデアリマス、此ノ面ニ於キマシテモ
左樣ナ譯デアリマスルカラ、現在ニ於テモ
一部遺憾ナル闇行爲ヤ色々ナモノガアリマ
スルヤウニ、非常ニ需要ト供給ノ不均衡ヲ
生ゼントスルノデアリマス、是ニ於テ物價騰
貴ノ必然性ハ益〓起リ、是ガ各種ノ配給制度
ナド戰時ノ消費經濟部面ニ於ケル統制計畫
經濟ガ起ラザルヲ得ザル所以デアルコトモ
今更申上ゲルマデモナイノデアリマス、斯
樣ナ理由デアリマシテ、物價ガ非常ナル暴
騰ヲセントスル根本情勢ト云フモノガ、戰時
下ニ於テハ溫床ト云フヨリ以上ニ燃エ上ラ
ントスル力デアルノデアリマスルカラ、之
ヲ燃エ上ラシタノデハ所謂惡性「インフレ」
ニナル、ソレデ多クノ國家モ失敗ヲ致シテ
居ルノデアリマス、此ノ意味ニ於キマシテ
所謂物價水準ヲ亂サナイ、之ヲ燃エ上ラセ
ルヤウナ力カラ見マスレバ、低イ所ニ引止
メヨウ、是ガ所謂低物價政策デアリマスカ
ラ、其ノ意味ニ於キマシテハ何トシテモ低
物價政策ガ堅持サレナケレバナラヌト思ヒ
マス、然ラバ其ノ低物價ノ水準ヲ何處ニ置ク
カト云フコトニナリマスレバ、外國カラ物資ヲ
輸入シテ行ク、日露戰爭ノヤウナ場合ガ其
ノ最モ顯著ナ場合デアリマス、又支那事變下
ニ於ケル米國ノ資產凍結以前ノ如キ、日本カ
ラ金ヲ送リ、物資ヲ送ルナラバ、ソレニ依ツ
テ米國ニ於ケル日本ノ購買力ヲ獲得シマシテ、
石油、銅、鐵機械其ノ他ノ我ガ戰力增
强ニ必要ナルモノヲ入レ得ル時代デアリマス
ルナラバ、玆ニ國際物價水準ヲ維持ス
ルノ必要ガ起ルノデアリマス、併シ
只今デハ其ノ途ガアリマセヌノデ、
又敵國ト相成リマシタノデ、米英基準ノ國
際物價水準ヲ維持スル必要ノナイコトハ勿
論デアリマス、唯今ノ物價ガ止メ度モナク
上ルノダト云フ狀態ニナツテ行カナイヤウ
ニ、物價ガ安定ヲシテ居ル、水準ヲ保ツ、
詰リ現在ノ水準ト云フモノヲ大體ニ於テ保
ツテ行クト云フコトガ極メテ必要デアリマ
ス、是ニ於テ屢〓御說ガアリマスルヤウニ、
一面其ノ運用ガ不器用ニナリマスルト、多
クノ物ニ生產費割レノ狀態ヲ生ジテ、生產
ノ阻碍ヲ來スノデアリマシテ、是等ノ點ニ
付キマシテハ、之ヲ適正ニ持ツテ行ク所ノ、
低物價ノ基礎ニ於ケル適正物價政策ガナケ
レバナラヌノデアリマスガ、其ノ適正物價
モ平時ト違ヒマシテ、生產者價格、需要者
價格ノ二ツニ分ケテ考ヘル、先程田村君ノ
說モアリマシタヤウニ、之ヲ多クノ場合ニ
ハ同一ニシテ國家負擔ヲ殖シテ、ソコニ國
家負擔ヲ介在セシメテ兩者ニ差等ヲ設ケテ
行クトカ、色々ソコニ政策ノ變更ハ起ラウ
ト思フノデアリマス、何ニシマシテモ其ノ
意味ノ低物價ノ堅持ハ必要デアリマシテ、
國民ノ消費生活ニ於キマシテモ、其ノ基準
ヲ失ヒマセヌヤウニ致シ、又貨幣ノ價値ニ
付テ信念ノ動搖ヲ來サナイヤウニ致シマス
コトガ極メテ必要ナノデゴザイマス、其ノ
意味ニ於キマシテ低物價政策、國民生活必
需品ノ物價安定、變動ヲ好マナイ次第デア
リマス、唯玆ニ間接稅ト云フモノハ御承知
ノ如ク其ノ觀點カラ見マスルト甚ダ妙ナモ
ノデアリマシテ、酒一升原價ハ一圓六十錢
ト假定致シマス、三圓四十錢ノ稅ヲ課ケマス
ト五圓ニナル、サウスルト一圓六十錢ガ酒ノ
代三圓四十錢ガ稅デアルノニ、五圓ガ酒
ノ値ト申シマス、ソコデ物價ガ上ツタヤウ
ニ考ヘマスガ、是ハ物價ガ上ツタノデハナ
イノデ、酒ノ値ハ上ラナイノデアリマス、
稅ガ上ルノデ、稅込ミノモノデアルカラサ
ウデアル、唯ソレガ價格々々ト言フカラ非
常ニ誤解ヲ生ジマシテ、先程モ御話ノヤウ
ニ敷島ガ一圓ニナツタカラ「チップ」モ一 〓
デハ少イ、朝日ガ何圓何錢ニナツテ米一升
ガ朝日ト同ジデハヲカシイ、實ハ是ハ錯覺
デアリマシテ間違ヒデアリマス、併シ間違
ヒデアリマスルガ、兎ニ角一應價格ト申シ
マスルモノデアリマシテ、又已ムヲ得ナイ
モノデアリマスカラ、ソコデ此ノ點ハ識者
ハ明瞭ニ分ツテ居ラレマスガ、多數ノ民衆
ニハ中々困難デハアリマスケレドモ、戰時
ノ一ツノ心得トシテ、截然ト分ケテ行ク觀
念ヲドウシテモ普及スルコトニ努メ、又普
及スルコトニ御協力モ願ヒタイ、此ノ點デ
動搖ヲ致シマスルト、間接稅政策ト云フモ
ノガ採レナイノデアリマス、一面ハ間接稅
ト云フモノガ負擔ノ上ニ於テモ感ジノ樂ナ
點ガアリマシテ、重要ナ働キヲナシマス、
又間接稅ヲ奢侈稅的ニ用ヒマスナラバ、十
圓ノ消費ヲスル所ニ、稅ヲ四十圓拂ツテ五
十圓出シマス爲ニ、所謂個人的ノ俗ナ觀念
ノ上カラ甲シテモ、馬鹿々々シイト云フコ
トニナツテ是ガ止マル、又五十圓ノ餘力ア
リマス場合ニハ、實際ハ十圓デアルノニ、
ソレガ五十圓金ヲ使フコトニナリマスカラ、
モウ使フ金ノ餘リガナクナツテシマフ、ソ
コデ奢侈的消費モ抑壓ガ出來ルノデ、ドウ
シテモ此ノ政策ハ執ツテ行キタイノデアリ
マス、サウ致シマスコトガ結局所謂稅ノ引
上ニ依ツテ價格、所謂價格ト思フモノガ上
ルガ、是ハ價格ノ騰貴ニアラズト云フコト
ヲ、面倒デモ正確ナル認識ノ徹底ヲ致ス外ハ
ナイト思フノデアリマス、ソレガ困難デア
リマスカラ、消費稅ノ引上ノ或ル過程ニ於
キマシテハ、稅ガ上ツテモ成ベク稅込ノ販賣
價格ヲ上ゲナイヤウニト云フコト、多少其
ノ氣持ガ强カツタコトモアリマスガ、是ハ
無理ナノデアリマシテ、只今マデ其ノ商品
ノ生產者ガ暴利ヲ貪ツテ居ツタ場合ハ、利
潤ヲ少クセシメルト云フ意味デ減スコトハ
出來マスガ、稅ヲ其ノ生產者ニ負擔シロト
云フガ如キハ到底無理デアリマスノデ、現
在デハ稅ガ上リマシタダケ截然ト販賣價格
ヲ上ゲテ宜シイ、ソレヲ販賣價格ト言ヒマス
カラ、ソコデハツキリ觀念ガ行カナイノデ
アリマスガ、所謂稅ガ上ツタダケハ稅ヲ附
ケタ値ニシテ宜シイト云フコトニ致シテア
ル譯デアリマス、此ノ點ハ困難デモ觀念ヲ
分ケルコトニ努メマシテ、一方間接稅政策
ハソレデ執ツテ行ク、サウシテ愼マシヤカ
ナ生活ヲ致シマス上ニ於テハ一般大衆課
稅ハ已ムヲ得スト云フ見解ノ下デ行ヒマス
ル外ハ課稅ヲシナイ、奢侈的消費ノモノニ
課稅ヲシテ、其處デ購買力ヲ吸收シ、其ノ
意味ニ於テ奢侈的ノ勞力資材ノ需要ヲ少ク
致シマシテ、自ラ物價ノ引下ニ貢獻スル、
斯ウ云フヤウナ觀點デ參リタイト存ズルノ
デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=91
-
092・田村秀吉
○田村(秀)委員 次ニ戰爭資材ノ生產增强
ヲ圖ラナケレバイカヌ、生產增强ニ伴フ生
產施設ノ擴充ハ、必然的ニ人的資源ノ奪合
ヒヲ生ズルコトハ申上ゲルマデモアリマセ
ヌ、ソコデ如何ニ勞務ノ統制ヲヤツテ居リ
マシテモ、大キナ工場カラ小サナ町工場ニ
至ルマデ、各會社ガ勞務者ノ奪合ヒヲヤル
ト云フコトハ、結局勞務者ニ對スル課稅ガ
雇主ノ方ニ轉化サレルト云フ傾向ヲ馴致ス
ルト云フノハ、必然ノ傾向デアルト思フノデ
アリマスガ、若シ雇傭主ニ此ノ稅ガ轉化ス
ルト云フ場合ニハ、ヤハリ浮動購買力ガ勞
務者ノ方面ニ出テ來ル譯デアリマス、之 h
對シテ租稅政策上一段ノ工夫ヲスル必要ガ
アルト思ヒマスガ、此ノ點ニ對スル御考慮
ヲ拂ツテ居ラレマスナラバ、御說明ヲ承リ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=92
-
093・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今御尋ネノヤウナコトニ
ナツテハ甚ダ困ルノデアリマス、併シ又先
程物價ノ騰貴ノ傾向ヲ申上ゲマシタヤウニ、
兎モスレバ左樣ナコトガ起リ勝チノ現狀ニ
アルコトハ、又已ムヲ得ナイ實狀デアリマ
ス、勞務者ニ付キマシテハ現在ノ大戰爭生
產ニ對シテ、人手ガ足リナイノデアリマ
ス、何トシテモ勞務ノ質及ビ量ノ適性配置ガ出
來マスルナラバ、是コソ所謂一億國民ノ戰
鬪配置デアリマス、其ノ戰鬪配置ガ紊リニ
動カナイヤウニ、賃金ガ良ケレバ直グ隣ノ
工場ニ移ルト云フヤウナコトノナイ施策ヲ
執ツテ參ル、詰リ賃金等ニ依ツテ勞務者ノ
奪合ヒヲスルト云フヤウナコトデハ、到底
戰時下ノ戰爭資材ノ增產ハ出來ナイノデ之
ヲ絕滅スル少シデモ少カラシメルト云フ
コトガ、是ハ稅務行政ノ見地ヲ除ケマシテ
モ、只今ノ重要ナル戰時下ノ勞務行政トシ
テ、最モ狙ヒヲ付ケナケレバナラヌ所デア
リマス、從來トテモ其ノ方針デヤツテ居ル
ノデアリマスガ、勞務行政ノ左樣ナ觀點カ
ラノコトハ、何樣支那事變以來、時ニ戰局
ガ進ミマシテ戰爭生產ノ盛ンニナリマシタ
大東亞戰爭下デアリマスカラ、厚生當局ニ
於キマシテモ非常ナ苦心ヲシ、民間ノ協力
ヲ得マシテ其ノ方ニ步ヲ進メテ居ル譯デア
リマス、左樣ナ見地カラ賃金統制令ノ運用
ニ付キマシテモ、不當ニ廉價ノ賃金ヲ決メマ
ス爲ニ支障ヲ起スコトヲ避ケルコトハ勿論
デアリマスガ、今囘ノ直接稅ノ如キ、皆各
自ノ所得カラ國費ヲ負擔スルト云フヤウナ
趣旨ノモノヲ、賃金ヲ增加シテ轉嫁スルト
云フコトガ、形式デモ實際デモ起リマスコト
ハ、全ク筋違ヒデアリマスカラ、賃金統制
令ノ運用ノ如キモ其ノ方針デ參リタイ、是
ハ今ノ賃金統制令ノ運用ト、一面勞務者ノ
質及ビ量ノ適性配置ト云フコトヲ、極力正
シクヤツテ參ル、此ノ二ツノコトニ依ツテ
防止致シタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=93
-
094・田村秀吉
○田村(秀)委員 今囘ノ間接稅ノ增徵デ、
每年ノヤウニ間接稅ガ上ツテ來テ居ルノデ
アリマスガ、一方國民ノ消費ノ抑制ヲ圖ラ
ナケレバイカヌ、所ガ間接稅ガ每年ノヤウ
ニ上ツテ參リマス、再三ノ增稅ハ結局物資ノ
買溜ト云フコトヲ-是ハ街頭ニモ相當行ハ
レテ居ルト見ルノデアリマスガ-助長シテ居
ルノデアリマス、所ガ買溜ヲ助長致シマス
ト、間接稅ヲ値上シテ消費ノ抑制ヲヤルト
云フ狙ヒドコロト、逆現象ヲ來スノデアリ
マスガ、之ニ對スル何等カノ防止策、對策
ヲ講ゼラルヽ御考ヘデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=94
-
095・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 只今ノ御尋ネノ點モ洵ニ
御尤モデ、其ノ心配ハ十分アルノデアリマス、
昭和十六年ノ臨時議會ノ時ニ增稅案ガ發表
サレマシテ、其ノ增稅ノ施行セラレマス間、
非常ニ買溜ガアツタ、各物資、商品ノ販賣
店ニ多數ノ人ガ蝟集ヲ致シマシテ、甚ダ面
白カラヌ、醜キ結果デアルト云フコトモ言
ハレタノデアリマス、此ノ點ニ付テハ餘程
心配ヲ致シマシタ、結局是ハ販賣者、業者
側ガ自肅ヲシテ、販賣量ヲ特ニ客ノ要求ニ
應ジテ殖スコトガナイヤウニ、又進ンデ盛
ニ賣レルヤウナ買氣ヲ煽ルコトガナイヤウ
ニスルコトハ勿論デアリマスシ、又一般民
衆ガ國民トシテ時局認識ニ徹底ヲ致シマシ
テ、買溜ノ不道德ナルコトヲ痛感ヲ致シ、
自肅ヲスル、斯ウ云フ方法ガ適切デアツタ
ノデアリマス、其ノ後ノ間接稅ノ增稅ニ當
リマシテハ、私共ノ方カラ注意致シタ場合
モアリマスルガ、時局ノ進ムニ應ジマシテ
當業者ノ方デモ左樣ナコトガナイヤウニ、
特ニ多ク賣ルトカ、進ンデ買氣ヲ煽ルト云
フコトノナイヤウニ店頭ノ裝飾、其ノ他總
テサウ云フコトニ注意ヲ致スコトニナツテ
居リ、實際モ注意サレテ居ルヤウデアリマ
ス、又一般民衆ノ方ニ於キマシテモ能ク時
局ノ認識ガ徹底ヲ致シマシテ、其ノ後ノ間接
稅ノ增徵ノ場合ニ於キマシテハ、著シキ買
溜ガナイヤウデアリマス、地方デモ色々
注意ハ致シテ居リマスガ、大體當業者及ビ
國民ノ認識ヲ得マシテ、段々結果ハ良クナ
ツテ居ルヤウデアリマス、今囘ノ增稅ニ際
シマシテモ、又前囘ニ於キマシテモ、各種
ノ商店等ニ付キマシテ客足ノ狀況デアリマ
ストカ、又實際ノ販賣ノ量等ヲ調査ヲ致シ
テ居リマスガ、幸ヒニ著シイコトガアリマ
セヌ、平常ト變ラヌ狀況ノモノガ多イノデ
アリマス、是ハ一面時局認識ガ徹底シタ點
モアリマス、一面各種ノ販賣店ニ於キマシ
テモ販賣量ナドガ昔ト違ヒマシテ自然ニ規
制サレテ均一ニナリマシテ、賣急グト云フ
必要ガナクナツタト云フ實際ノ狀況ガ、買
煽リニ拍車ヲ掛ケルコトガナクナツテ、餘
程事情ガ變ツテ來タヤウニ存ズルノデゴザ
イマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=95
-
096・田村秀吉
○田村(秀)委員 今囘ノ國家資金計畫ニ於
テ貯蓄ノ目標ハ、十八年度ノ二百七十億カ
ラ三百五十億ニ飛躍致シテ居リマス、浮動
購買力ノ抑制、戰費ノ調達ノ上カラ申シマ
シテモ、此ノ貯蓄目標ハ是非トモ達成シナ
ケレバナラスノデアリマスガ、今囘ノ增稅
ノ中ニハ銀行貯蓄預金等ノ非課稅ノ廢止ガア
リ、又郵便貯金ノ利子ノ引下等モアリマシ
テ、是等ガ一般民衆ノ貯蓄心ニ影響スル所
ガナシトハ言ヘナイモノガアリマス、又國
債利子等ニ付キマシテモ多少ノ增稅ガ行ハ
レテ居ル、斯ウ云フ心理的ナ觀點カラ見マ
シテモ、貯蓄增强ニ對スル一段ノ工夫ヲ大
藏大臣トシテモ御持チデアラウト思ヒマス
ガ、此ノ際今囘ノ增稅案ト貯蓄增强トノ關
係ニ付テノ對策ヲ御說明願ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=96
-
097・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 增稅案ヲ立案致シマスル
時ニ、只今御話ノヤウナ點ガ非常ニ苦心ヲ
致シタ一ツノ主ナル點デアルノデゴザイマ
ス斯樣ナ問題ハ計算的ニ利子的ニモ考ヘ
ラレマスルガ、同時ニ又心理的影響ト云フ
理窟ガ潜在的ニアルト申シマスカ、理窟拔
キノ影響モ相當考ヘナケレバナラヌノデア
リマス、無論只今ノ貯蓄ガ普通ノ經濟ノ利
益追求ノ觀念ヲ離レマシテ、假令自分ハ資
產豐カニ、收入豐カデアツテモ、戰爭ニ勝
ツ爲ニ消費ヲ節約シ、更ニ大イニ有效ナル
勤勞ヲ致シテ、收入ヲ增加シ、大イニ貯蓄
シナケレバナラヌト云フ全ク愛國心ヲ本ニ
シテ行クベキコトハ申スマデモナイノデア
リマス、又事實ソレデ行ツテ居ルノデアリ
マス、併シ物事ハ單純ニ參リマセヌノデ、
各種ノ方法ヲ講ジ、ソレニ付キマシテハ色
色法律案ヲ既ニ御協賛ヲ經、今期議會ニモ
御協賛ヲ願ツテ居ルヤウナモノガアルヤウ
ナ次第デアリマス、ヤハリ色々考慮ヲシナ
ケレバナラヌ點ガアルノデアリマス、郵便
貯金ニ付キマシテハ實ハ斯ウ云フ關係ニゴ
ザイマス、近年金利水準ト云フモノハ安定
不動デゴザイマス、唯稅ガ上リマス爲ニ、
預金トカ國債利子トカ、或ハ社債トカ、其
ノ利〓ハ變リマセヌガ、之ニ對スル稅金ガ
上リマスカラ、稅ヲ引去ツタ殘リノモノハ
減ル譯デアリマス、郵便貯金ハ御承知ノ通
リ非課稅デアリマスカラ、ソコデ郵便貯金
ト他ノ利息トノ釣合ガ事實上變ツテ來ル、
出入レノ便宜トカ色々ナコトデ自ラ長イ間
ニ自然ニ出來タ釣合ト云フモノハ、又一ツ
ノ大切ナ標準デアリマスガ、是ガ變ツテ來
ル、ソレデ實ヲ申シマスト、前囘ノ增稅ノ
時ニ郵便貯金ノ利率ト云フモノハ引下ゲル
ベキモノデアツタカモ知レマセヌ、純經濟
的ニ見マスナラバ、是ハ引下グベキデアツ
タト云フ說ガ或ハ正シイカモ知レマセヌ、
率直ニ申シマシテ私モ餘程考慮ヲ致シマシ
タ、所ガ其ノ時ハ大東亞戰爭トナリマシテ
貯蓄ノ目標額ガ一躍非常ナル增加ヲスル時
デアリマス、ソレデ郵便貯金ノ利子引下ト
云フコトハドウ影響スルカ、是ハ人ニ依ツ
テハ郵便貯金ヲヤル時ハ、何モサウ何分何
厘ト細カイコトハ考ヘテ居ナイ、斯ウ云フ
說モアリマス、私ハ分量トシテ多クノ人ノ
心理トシテ左樣デハナイカト思フノデアリ
そう、併シ國家ガ郵便貯金ノ利子ヲ引下ゲ
ルト云フコト其ノモノガドウ云フ影響ヲス
ルカト云フコトヲ考ヘレバ、中々引下ノ決
心ハ付キマセヌノデ、私ハ率直ニ申シマス
ガ、金融業者ノ人々モ、之ヲ引下ゲルト云
フコトハ經濟上ノ觀點カラハ當リ前デアラ
ウガ、國民貯蓄ノ增加ヲ圖ル其ノ初ニ於テ
引下ゲルカドウカト云フコトハ餘程考慮ヲ
要スルノデ、今囘ハ引下ゲナカツタノデア
ルト云フコトヲ率直ニ申シマシタ、無理ガ其
ノ時ニ一寸無理ガ行ツテ居ツタノデアリマ
ス、次ニ今囘ノ增稅ニナリマシタ、又稅ガ
上リマシタ、稅引利廻ハ又減ル、ソコデ餘
程權衡ヲ失シテ來ルノデアリマス、ソレデ
又餘リニ其ノ權衡ヲ失シマスコトハ適當デ
アリマセヌノデ、今囘ハ御承知ノ程度ノ引
下ヲ致シマシタ、是ハ多少ハ惡イ影響ガア
ラウト思ヒマス、併シ餘リニ一方ト權衡ヲ
失スルコトヲ考ヘマスコト、モウ是ハ引下
ゲナクチヤナラヌ、又大東亞戰爭以後、國
民ノ熱意ヲ見マスノニ、ソレダカラモウ貯
金ハ厭ダ、郵便貯金ハシナイト云フヤウナ
コトデハナイ、餘程國民ノ熱意モ上ツテ居
リマスルノデ、影響ガ全然ナイトハ申シマ
セヌガ、結局私ハ一時ハ多少ノ影響ハアル
カモ知レマセヌガ、併シ戰時ノ施策ト致シ
マシテ、何レノ施策デモ、ドチラヲ見テモ
良イコトバカリト云フコトハナイノデアリ
マスカラ、全局カラ判斷ヲシマシテ、引下
ト云フコトニ政府デ相談ヲ致シタ譯デアリ
てい、其ノ他稅ガ上レバ、ソレダケ收入ガ
少クナルカラ熱意ガ下ゲラレルト云フコト
ガアリマスガ、此ノ稅ハ全國民ガ負擔スル
ト云フコトデアツテ、本當ノ勝チ拔ク熱意
ガアレバ、是ハ喜ンデ負擔スル、ソレダカ
ラ手取ガ少クナルト云フコトハ已ムヲ得ヌ
ト云フコトハ國民ガ十分ニ認識ヲシテ下サ
ルト思ヒマス、是ハ單リ貯蓄ノ利子バカリ
デハアリマセヌ、社債ヤ銀行預金ヤ公債ノ
利子バカリデアリマセヌ、株式ニ對スル課
稅モ上ル、事業所得ニ對スル課稅モ上ルノ
デアリマス、勤勞所得ニ對スル課稅モ上ル
ノデアリマス、一樣ニ上ルノデアリマス、
一樣ニ是ハ御奉公デアリマスカラソレハソ
レトシテ、益〓〓意意持ツテ貯蓄ニ進ンデ
戴ク、斯ウ考ヘテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=97
-
098・本多市郎
○本多(市)委員 只今ノ御質問ニ關聯シ
テ.発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=98
-
099・中島彌團次
○中島委員長 ソレデハ簡單ニ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=99
-
100・本多市郎
○本多(市)委員 極ク簡單ニ御伺ヒ致シマ
スガ、只今ノ質問ニ關聯シテ居ル問題デア
リマスガ、今日非課稅ノ貯金ガアリマスガ、
ソレガ五千圓以下ノ利子課稅モナケレバ、
綜合課稅モナイト云フ種類ノモノデアリマ
シタ爲ニ、ソコヲ狙ツテ非常ナ脫稅デモア
リマスルガ、財產ノ隱匿ガアルヤウニ私ハ
考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ利子課稅、
綜合課稅等ヲ免レル爲メ四千五百圓トカ四
千八百圓トカ、五千圓未滿ノ通帳ヲ二十册
モ三十册モ違ツタ名義デ拵ヘル、甚ダシキ
ニ至ツテハ百册モ一人デ異ツタ名儀デ拵ヘ
ル、而モ印鑑モソレニ應ジテ拵ヘテ居ルト
云フヤウナコトヲ聞クノデアリマシテ、私
ハ之ヲ聞イテ實ニ驚イタノデアリマス、是
ハ確カニアルト思ヒマスルガ、斯ウ云フ風
ナモノニ對シマシテドウ云フ風ニ取締ラレ
ル考ヘデアリマスルカ、唯是ハ綜合所得稅
ヲ免レルバカリデナク、最モ私ノ惧レテ居ルノ
ハ相續稅ヲ非常ニ多額ニ此ノ爲ニ免レテシ
マフ結果ニナルト思フノデアリマス、何等
ノ資料モ稅務署ニ行カナイ五千圓未滿ノ何
十册ト云フ通帳ヲ作ツテ、サウ云フ風ナコ
トヲヤツテ居ルト云フコトヲ聞キマシテ、
非常ニ惧レテ居ルノデアリマスルガ、此ノ
點ニ對スル當局ノ御見解、對策ヲ御伺ヒ致
シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=100
-
101・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 御話ノヤウナコトモアル
ヤウニ聞及ンデ居リマス、今囘ノ改正ニ於
キマシテハ、從來非課稅ノモノモ百分ノ五
ダケノ課稅ニナリマス、全然非課稅ト云フ
コトハナクナリマシタガ、從來ノ百分ノ十五
ト云フ差額ハ五千圓以上ト五千圓以下デヤ
ハリアル譯デアリマス、同樣ナ虞ガアル譯デ、嚴
重ニ之ヲ取締ルコトニ致シマス、大體サウ云フ
人ハ名前ハ別ケマスガ、住所ハ大體似タ所
デアツテ、サウ何百何十ト違ツタ所デハ實
際ニ家モナイ、始末ニイケマセヌカラ、是
ハ銀行ガ注意スレバ分ルノデス、是ハ嚴重
ニ注意サセマシテ、サウ云フ事實ガアツタ
時ニハ、モウ五千圓以下ノハドウアツテモ
是ハ五萬圓ノ預金トシテ處置ヲサス、更ノ
ソレガ程度ニ依リマシテハ罰則ニ引掛ル、
是ハ嚴重ニ今度ヤラウト思ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=101
-
102・本多市郎
○本多(市)委員 サウシマスト、今度ハ五
千圓以下ニモ課カルコトニナリマシタカラ、
利子ノ課稅ハ確カニソレデ出來ルト思ヒマ
スガ、綜合所得ノ方ヘ其ノ利子ヲ持ツテ行
クト云フコトニ付テ、調ベ上ゲテ資料ヲ銀
行カラ出サセルト云フヤウナ方法ガアリマ
スカドウカ、其ノ點モ伺ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=102
-
103・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 綜合課稅ハ、元本五千圓
ヲ超エナイ銀行貯蓄預金、產業組合貯金等
ノ利子ハ非課稅トスルコトハ從來通リデア
リマス、結局實際ハ五萬圓、十萬圓ト云フ
モノヲ假裝ノ名義ヲ拵ヘテ分割シテ預ケル
弊害ヲ防止スルト云フ點ガ主要ナ點デアリ
マス、ソレヲ今申上ゲマシタヤウニ、十分
ニ取締ヲスルノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=103
-
104・田村秀吉
○田村(秀)委員 今囘ノ稅制改正案ノ一ツ
ノ狙ヒハ、稅務行政ノ簡素單純化ト云フコ
トヲ狙ツテ居ルノデアリマシテ、私共ハ更
ニ一段ト之ヲ今度簡素單純化シテ、官民間
ノ疏通ト所謂皇國租稅理念ノ實現ガ圓滑ニ
行クコトヲ期待スルノデアリマシテ、法律
ニ依ラナイ勅令、省令、取扱事項等ニ依ル
税種ガゴザイマスガ、是等ノ稅制及ビ徵稅
方法ニ付テ-今囘ノ稅制ノ改正ト相關聯
シマシテ是等ノ法律ニ依ラザル稅法ニ關シ
テ、簡素化ノ何等カノ工夫ヲ講ゼラレル御
考ヘデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=104
-
105・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 前ノ質問ニ御答へ申上ゲ
ル點ガ一點落チテ居リマシタガ、ソレハ今
申上ゲマシタヤウニ從來非課稅ノモノニ付
キマシテ新ニ課稅ハ致シマスルガ、ソレハ
他ノ課稅ヲサレルモノガ今囘增稅シタダケ
ノ分ヲ課稅サレルノデアリマシテ、從來ト
同ジ特典ハヤハリ同ジ程度ニ殘ツテ居ル譯
デ、ソレガ一點ト、ソレカラ從來ハ普通銀
行預金ニ付キマシテハ百分ノ十五課稅ヲ致
シテ居リマシタガ、是ガ只今ハ貯蓄銀行ト
普通銀行ト實際ノ差別ハ薄クナリマシテ、
場合ニ依リマシテハナクナリマスルノデ、
五千圓以下ノモノハ一般的ニ百分ノ五ト云
フ低率ノ課稅ニ致シタコトハ、是ハ積極的
ニ好影響ガアルト存ジマス、尙ホ只今デハ
數十萬ト云フ貯蓄組合ガ全國ニ組織サレマ
シテ、是ガ大キナ貯蓄推進ノ役割ヲ勤メテ
居リマス、組合貯蓄ニ付キマシテハ一萬圓
マデ非課稅デス、一萬圓マデハ全國民ニ皆
貯蓄シテ貰ヒタイ、簡單ニ申セバサウモ言
ヘル旗印デ參リタイト思ツテ居リマス、只
今御質問ノ點デアリマス簡素化ニ付キマシテ
ハ凡ユル努力ヲ拂ヒタイト存ジマスノデ、
勅令以下ノコトニ付キマシテモ今後〓究ヲ
シ、出來ルダケハ今考ヘテ居リマセヌコト
モヤルベク努メル次第デアリマスガ、尙ホ
今考ヘテ居リマスコトハ主稅當局ヨリ御說
明申上ゲタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=105
-
106・松隈秀雄
○松隈政府委員 法律案ト致シマシテ提案
シテアル事項ノ中ニモ、相當事務簡素化ノ
見地カラ官民相互ノ便益ニナルヤウナ改正
ガ提案サレテ居ルノデアリマスガ、法律以
外ニ於テモ、勅令又ハ省令ノ改正ニ依ツテ
事務ノ簡素化ヲ圖リマスコトガ戰時下ノ稅
務行政トシテ極メテ必要ナコトデアリマス
ノデ、出來ルグケ調査ヲ致シマシテ、可能
デアルコトハ實施ニ移シテ參リタイト思フ
ノデアリマス、勅令、省令ニ關スルコトデ
小サナ問題ガ多イノデアリマスカラ、一々
ソレヲ申上ゲマスコトハ煩ニ堪ヘマセヌノ
デ、大體ノ考ヘ方ヲ申上ゲマスレバ、各種
ノ承認事項ヲ決メテ居ル場合ガアルノデア
リマス、殊ニ間接稅等ニ於テ其ノ場合ガ多イ
ノデアリマスガ、是等ハ今日マデノ取締ノ
結果等ニ顧ミテ報告デモ宜シイヤウナモノ
ハ事前承認デナク事後報告ト云フヤウナ
コトニ致シマスト、餘程手數ガ省ケルノデ
ハナイカト思ツテ居リマス、ソレカラ法人
ノ寄附金ニ付キマシテハ、國防獻金、恤兵
金ハ之ヲ損金ト致シマスガ、其ノ他ノ公益
目的ヲ以テスル寄附金ニ付テハ、法人ノ申
請ニ依ツテ法人稅ヲ免除シテ居ルノデアリ
マス、之ニ付テモ手續ノ簡素化ヲ考ヘタノ
デアリマス、此ノ標準ヲ勅令ニ示シテ不要
許可ノ範圍ヲ置クト云フコトモ考ヘタノデ
アリマスガ、ソレハドウモヤハリ實行上支
障ガアルヤウニ考ヘラレマスノデ、今ノ所
デハ、法人稅ヲ免除シテ貰フ爲ニハ寄附前
ニ申請スルト云フコトニ施行規則デ定メラ
レテ居リマス、是ガ時ニ依ルト法人トシテ
ハ寄附前ニ申請スルコトヲ忘レルト云フヤ
ウナ場合ガアツテ、折角ノ法人稅免除ノ恩
典ニ浴シ得ナイ場合ガアツタ、又寄附前ノ
申請ト云フコトハ中々申請ガシニクイト云
フヤウナ事情モアリマスノデ、法人ノ所得
ノ申〓ト同時ニ申請スレバ宜シイ、サウ云
フ風ニ改メルト餘程手續ヲスル上ニ於テ便
宜ニナルカト考ヘテ居リマス、ソレカラモ
ウ一ツ比較的實質的ナ意義ガアル問題ト致
シマシテハ、法人ノ減價償却ニ關聯シテノ
問題デゴザイマス、是ハ臨時租稅措置法第
一條ノ四ノ中ニ、時局產業ニ關シマスル特
別償却ノ規定ガアルノデアリマシテ、時局
產業ノ固定資產ニ付キマシテハ三年間ニ取
得價額ノ三分ノ一ヲ均等償却シ得ルト云フ
特典ヲ認メテ居ルノデアリマスガ、是ガ施
行ノ實情ニ鑑ミマスルノニ、時局會社ニ於
キマシテ、殊ニ創立間モナイヤウナ會社デ
アリマスルト、折角三年間ニ時局產業ノ固
定資產ニ付テハ每年取得價格ノ三分ノ一ヅ
ツ償却出來得ル恩典ヲ持ツテ居ルノデアリ
マスルガ、會社ガ出來テ間モナクテ、餘リ
利益ガ上ラナイト云フコトノ爲ニ、償却出
來得ベクシテ償却スルダケノ利益ガナイト
云フノデ、ミス〓〓此ノ恩典ヲ使ハナイデ、
若シクハ使ヒ方ガ少クテ三年過ギテシマフ、
斯ウ云フヤウナ事情ガアリマスノデ、是
ハ是非何トカ制度ヲ變ヘテ貰ヒタイ、出來
レバ五年位ニ延バシテ貰ヒタイト云フヤウ
ナ希望モゴザイマス、又此ノ制度ハ固定資
產ノ取得價格ヲ調ベテ、其ノ三分ノ一ヲ三
年間ニ均等償却スルノデアリマスルノデ、
固定資產別ニ細カイ計算ヲスルコトニナツ
テ居リマス、會社ニ依リマシテハ事業設備
ヲ一括致シマシテ、細ク固定資產別ニ分ケ
ナイデ償却シタイト云フ向モアルノデアリ
マスルガ、此ノ一條ノ四ニ只今決メテアル
特別償却ノ方法ニ依リマスルト、ソレガ出
來ナイト云フ點デ、計算ガ甚ダ煩雜デアルト
云フ非難ガアリマスノデ、今囘此ノ點ハ施
行規則ヲ改正致シマシテ、寧ロ時局產業ノ
固定資產ニ付キマシテハ、償却割合ヲ一般
ノ償却割合ニ對シテ割增ヲスルト云フコト
ニ致シタイト考ヘテ居リマス、其ノ程度ハ
大體二割程度ヲ割增シマス、別ニ三年ト云
フ年限ヲ限ラズニ償却ヲ認メテ行クト云フ
コトニナリマスルト、手續モ簡素化サレ、
短期間ニ利益ノ出ナカツタモノニ付テモ特
典ガ及ブト云フコトニナルノデ、兩方面カ
ラ會社ニ取ツテ便宜デアリ、ソレカラ計算
ガ簡單ニナルト云フ點ニ於テハ、法人稅ヲ
決定スル稅務署ニ於テモ手數ガ省ケルト云
フヤウナ關係ガアリマス、大體主ダツタ點
ニ付テ申上ゲタ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=106
-
107・田村秀吉
○田村(秀)委員 是モ稅務行政ニ關聯シテ
デアリマスガ、今囘ノ增稅ニ依ツテ、租稅
額ハ一年約百四十億圓ト云フ風ニ著シク增
加シテ來テ居ルノデアリマス、ドウモ此ノ
稅ヲ上ゲルノニハ稅務ニ携ハツテ居ル所ノ
徴稅機關ノ運營ガ問題デアリマス、東京ナ
ドハ昨年來稅務署ヲ多少增加シタヤウデア
リマスガ、更ニ增稅ニ伴フ稅務ノ繁雜
簡素化シタト申シマシテモ、事務ガ多クナ
ルニ從ツテ機構ヲ相當擴充スル必要ガアル
ノト、機構擴充ニ伴ウテ人員卽チ徵稅擔任者
ノ數ヲ增加スルト云フコトト、其ノ徵稅員
ノ質ヲ良クシテ、徵稅事務ノ上ニ國民トノ
間ニ摩擦ガ起キタリ、或ハ官民ノ離間ガ生
ズルコトノナイヤウニスル、是ハ他ノ委員
ノ方々カラ色々御質疑ガアリマシタノデ、
私ハ承ツテ置キタイノデスガ、私ノ承ル所
ニ依ルト、稅務署員ノ待遇問題モ、稅額ト
徵收費用トノ比較ヲ東京財務局ニ就テ調ベ
テ見マスルト、昭和十四年度ガ百圓ニ對シ
テ七十一錢掛ツテ居ツタモノガ、昭和十七
年度ニ於テハ四十一錢、十八年度ハ更ニ是
ガ低下シテ居ルト思ヒマス、今囘ノ增稅ニ
依ツテ更ニ減ツテ三十錢以下ニモナルノデ
ハナイカト想像セラレルノデアリマスガ、
之ニ伴ウテ一方一人ニ對スル給與額ハ、成
程戰時手當等ニ依ツテ相當增額シテ居リマ
スケレドモ、大シタ增額デハアリマセヌ、
而モ件數ハ昭和十三年度ハ是モ東京財務局
關係デアリマスガ、一人當リノ取扱件數ハ
千四百八十四件デアツタノガ、昭和十七年
度ニナリマスト二千二百十一件ニナツテ居
ル、今後更ニ是ガ增加スルモノト見ナケレ
バナリマセヌ、而モ徵收費ハ先程申上ゲタ
ヤウニ減ツテ來テ居ル、此ノ減ツテ來テ居
ル點カラ申シマスルト、從來ノ待遇等ニ鑑
ミマシテ、相當待遇ヲ改善スル餘地ガ費用
ノ上カラ申シテ生ジツヽアルトモ見ラレル
ノデアリマス、隨テ稅務機構ノ擴充、ソレ
ニ伴フ所ノ徵稅員ノ增加、增加セラレタ徴
稅員ノ質的向上ニ對シテハ、先ヅ待遇ガ第
一デアリマス、待遇ト更ニ稅務講習ヲ充實
致シマシテ、稅務署員ノ訓練ヲ行フト云フ
コトガ、此ノ增稅ノ實施ニ伴ウテ一層必要ヲ
痛感スルト思フノデアリマスガ、是等ニ對
シテ何等カノ對策ヲ御持チデアリマスカ、
承リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=107
-
108・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 稅務官吏其ノ他係員ノコ
トニ付キマシテハ、前ニモ御尋ネガアツタ
ノデアリマスルガ、實ニ行政ハ煩雜トナリ
マシテ只今御述ベニナリマシタヤウニ、
人ノ者ガ二千何百人ノ所得ニ付テ其ノ課稅
ノ金額等ヲ決メナケレバナラヌト云フ風
ナ、非常ナ負擔デアリマス、場所ニ依レバ
三千人、四千人ヲ受ケ持ツヤウナコトニナ
ツテ居リマス、又之ニ付キマシテハ或ハ扶
養家族ノ控除デアルトカ、其ノ外色々臨時
措置法ナド、平時ニアラザル複雜ナ問題ガ
生ジテ居リマシテ、一件ニ付テノ事務ノ內容
モ高度化シ、複雜化シテ居ルノデアリマス、
洵ニ稅務署員ニ對シテ重キ負擔ヲ掛ケテ居
リマス、是ハ稅務署員ニ對シマシテ、彼等
ガ傳統的ノ美風ヲ重ンジ、懸命ノ御奉公ヲ
致シテ居リマスコトニ對シテ、私ハ淚グマシク
感激ヲ致シテ居リマス、サリナガラ稅務行
政ハ複雜トナリ、高度トナリ、負擔ハ重ク
ナリ、又事務ニ慣熟致シタ者ハ應召或ハ色
色ノ事情デ少クナツテ、經驗ノ乏シキ者ガ
多數ヲ占メルト云フコトハ、一方納稅者ニ
對シマシテモ課稅ノ適正、衡平ヲ缺クノ憾
ミガアルノデアリマス、稅率ノ重クナリマ
シタ今日ニ於キマシテハ、其ノ點ニ付キマ
シテモ亦非常ナル考慮ヲ拂ハナケレバナラ
ヌノデアリマス、コヽデ質ノ向上、量ノ充
實ト云フコトハ洵ニ急務デアルノデアリマ
ス、數ノ充實ニ付キマシテハ、是ハ經費ト
致シマシテハ、只今御述ベニナリマシタヤ
ウニ、段々少クナリツヽアル位デアリマシ
テ、是ハ御要求ヲ致スコトモ不當デナイト
存ジマスルシ、御協贊モ願ヘルト思フノデ
アリマス、唯實際ニ於テ非常ニ數ヲ殖ヤシ
得ルカト申シマスルト、御承知ノ如クニ多
數ノ壯丁ガ第一線ニ働イテ居ラレル、又銃
後ニ於テ戰爭生產ノ爲ニ、又戰爭生產ニ必
要ナル食糧增產ノ爲ニ、國民擧ゲテ勤勞ノ
實ヲ倍加シ、三倍化シナケレバナラヌ實情
デアリマス、婦女子ノ如キ者モ挺身隊ヲ作
ツテ今日ハ各種ノ方面ニ於テ働イテ居ル、
事業ニ依リマシテハ、最早壯年男子ハ之ニ
從事スルコトハ許サヌト云フ次第デ、多ク
ノ學生モ學園ヨリ去ツテ、或ハ生產ニ、或
ハ前線ニ從事シテ居リマスルヤウナ次第デ
アリマシテ、稅務署員ノ充實ト云フコトハ
是等ノ點カラ考ヘマシテモ、ソコニ非常ナ
ル困難ガアリ、又遠慮ヲシナケレバナラヌ
點モアルノデアリマス、洵ニ兩面ノ兩立シ
マセヌ矛盾シタ狀況ノ間ニ立ツテ、眞ニ苦慮
致シテ居ルノデアリマス、併シナガラ是ハ
其ノ兩面ノ事情ヲ考へマシテ、出來ルダケ
ノ努力ヲ致シタイト思ツテ居リマス、又今
囘ノ豫算ニモ若干ソレニ付キマシテ要求ヲ
致シテ居ル次第デアリマス、質ノ向上ニ付
キマシテハ、是ハ非常ニ相努メナケレバナ
ラヌト思ヒマス、唯給與ノ增額ニ付キマシ
テハ、他トノ權衡ヲ顧ミルベキ點モアリマ
シテ、稅務官吏ヲ主トシテ考ヘル立場カラ
見レバ、甚ダ不十分ナコトニモ相成ルカト
思フノデアリマスガ、併シナガラ或ハ旅費
トカ、色々ナ點ニ於テ洵ニ實情ニ適セザル
モノガアリマスノデ、是等ニ付テハ改善ヲ
施シタイト思ツテ居リマス、又其ノ訓練ニ
付キマシテハ特ニ意ヲ用ヒマシテ、御話ノ
如ク中央、地方ノ稅務講習ハ出來ルダケ之
ヲ充實致シマシテ、質ノ向上ニ付キマシテ
最モ力ヲ入レタイト考へテ居ル次第デアリ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=108
-
109・田村秀吉
○田村(秀)委員 最後ニ戰時財政ノ租稅政
策ノ關係ニ付テ一、二承ツテ見タイト思フノ
デアリマス、昨昭和十八年度ノ我ガ國財政
ハ歲出三百六十餘億、ソレト公債トノ振當
ヲ見マスト、租稅ガ約二割六分、公債ガ六
割六分、是ハ其ノ後追加豫算ガアリマシタ
カラ多少變ツテ居リマスガ、サウ云フヤウ
ナ割合ニナツテ居リマス、如何ニ戰時財政
デアリマシテモ、國民ガ進ンデ戰費ヲ負擔
スルト云フコトヲ租稅ノ上ニ表ハス、是ガ
每年ノ增稅ノ狙ヒ所デアリ、國民モ亦其ノ考
ヘニ依ツテ、我ガ國財政ノ悠久ノ强靱性ヲ
確保シテ行カナケレバナラヌト思フノデア
リマス、ソコデ今囘ノ增稅案ニ於テハ、斯
ウ云フモノガ原則ダト云フモノハナイカモ
知レマセヌガ、昨年ノ二割六分ノ稅ニ對シ
テ公債ガ六割六分、斯ウ云フモノト相照應
致シマシテ、大藏大臣ハ本年ノ租稅ト公債
トノ割合ニ付テ何等カノ目安ヲ御持チニナ
ツテ居ラレルノデアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=109
-
110・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 國費ノ財源タル租稅ト公
債ノ割合デアリマスガ、本年度ノ增稅モ相
當ナモノデアリマシテ、稅ト銘打チマシタ
モノノ外、專賣益金ノ增加、更ニ鐵道運賃、
郵便料、金等今囘ノ値上ノ內容カラ申シマス
レバ相當ニ稅的性質ヲ持ツテ居ルモノモア
リマス、是等ノモノヲ皆合セマスルト、三
十四、五億デアルカト思ヒマスガ相當ナ額
ニ上リマス、併シナガラ戰費ノ增加ハ御承
知ノ如ク又一桁上ヲ越シテ參リマスノデ、
斯樣ナ大キナ實質上ノ增稅ガアリマシタニ
拘ラズ、公債ト稅トノ割合ハ殆ド改善ヲシ
テ居ナイト存ジマス、細カク見マスレバ、
或ハ幾ラカ工合ガ惡クナツタカト思フガ、
良クナツタトシマシテモ改善ト云フコトニ
ハナラヌト思フノデアリマス、之ニ付キマ
シテハ出來ルダケ租稅ニ依ツテ戰費ヲ賄フ
コトガ適當ト認メマスルガ、然ラバ何割租
稅ニ依レバ財政トシテ宜シイノデアルカト
云フヤウナコトハ、左樣ナ數字ノ限界ハア
リマセヌ、隨テ戰時ニハ戰爭生產力ト國民
ノ健康及ビ人口ノ增加ヲ維持シ得ル、其ノ
意味ノ生產力ガ大切デアリマス、言葉ヲ換
ヘレバ、經濟ガ大切デアリマス、ソコデ何
割租稅、何割公債ト云フコトニ腐心スル、
斯ウ云フコトハ戰時ニ於テ適切デハナイ、
簡單ニ申シマスレバ、出來ルダケ稅ヲ徵收
スル、併シソレハ今ノ國民生活、生產力、
貯蓄力斯ウ云フモノニ現實ニ惡影響ヲ及ボ
サザル範圍ニ於テ極力稅額ヲ殖ヤス、此ノ方
針デ行ク外ナイト思ヒマス、累次ノ增稅ニ
對シマシテモ同樣ナ考ヘ方ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、步合ガドウナリマスカ、假
增稅ノ結果昨年度ト同ジニナツタト致シマ
シテモ、ソレヲ目標トシテ增稅額ヲ考ヘタ
次第デハナイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=110
-
111・田村秀吉
○田村(秀)委員 今囘ノ增稅ニ依ツテ增徵
率ハ相當高度ニ達シテ居ルノデアリマシテ、
所得稅ノ最高稅率ハ九五%トナリ、間接稅モ
相當高クナツテ居リマス、曩ニハ直接稅ヲ
上ゲ、次ニ間接稅、今囘直接稅ヲ中心トシ
テ同時ニ間接稅ヲ增徵スルコトニナツタノ
デアリマス、ソコデ世間デハ最早現行稅制
ニ於テハ是レ以上ノ增率ハ困難デアル、今
度ガ大體「マキシマム」デハナイカト云フヤ
ウニ見ル傾向ガ多イヤウニ思フノデアリマス
ガ、此ノ點ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=111
-
112・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 現行稅制ノ下ニ於ケル稅
率ノ增加ヲ主體トスル增稅ノ餘地ハ絕對ニ
ナイトハ言ヘマセヌ、マダ多少アルト思ヒ
マス、併シ大キナモノガ殘ツテ居ルカト云
くり、是ハ今御述べニナツタヤウニ、率
直ニ申上ゲレバ、稅制ヲ此ノ儘デ稅率ノ增
加ニ依ツテ非常ニ大キク行ケルトモ思ヒマ
セヌ、今後ノ戰局ニ依リ戰費ノ負擔ガドウ
ナリマスカ、又自然增加等ガドウナルカ、
是等ノ點モアリマスノデ、今回大增稅ヲ致
シタ時デアリマスカラ、今後ノ增稅ノ必
要ニ付テハ具體的ニハ申上ゲ兼ネマスガ、
所謂大增稅ヲ致シマス場合ニハ稅制自體
ニ付テモ餘程考ヘナケレバナラヌト云フヤ
ウニ感ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=112
-
113・田村秀吉
○田村(秀)委員 大體只今ノ御言葉カラ推
測致シマシテ、現行稅制デハ相當「マキシ
マム」ニ達シテ居ルヤウニ私ハ拜承致シマ
シタ、今囘世間デ議論ニナツテ居リマシタ
ガ、國民皆稅ト云フ點カラ見テモ、又消費
生活ノ切下ト云フ點カラ見マシテモ、免稅
點ノ低下ヲヤツタラドウカト云フ說ガ相當
アツタガ、此ノ點ハドウ御考ヘデゴザイマ
スカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=113
-
114・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 氣持ト申シマスカ、モツ
ト進ンデ精神的ト申シマスカ、サウ云フ風
ニ考ヘルト、間接稅ト直接稅トデハ大分差
モアルノデアリマス、間接稅デハ一般國民
ガ事實上相當擔稅致シテ居ル譯デアリマス
ガ、直接稅ト致シマシテハマダ國民ノ中ニ
負擔セザル者ガ相當アルノデアリマス、是
等ノ見地カラ假令些少ナリト雖モ此ノ戰時
ニ於テ直接納稅ヲスルト云フコトノ意義、
ソレヲ認メタ上ニ於テ免稅點ノ引下ト云フ
コトモ確ニ一ツノ〓究題目デアラウト存ジ
マス、唯之ニハ眞正面ノ理由デハアリマセ
ヌガ、今モ御話ニナリマシタ稅務行政ノ問
題ガ一ツアリマス、之ヲ引下ゲルト人數ガ
相當殖エ、又中々手數ガ掛カル譯デアリマ
ス、殊ニサウ云フ少額ノ稅ニ大變ナ間違ヒ
ガアリマスト、是ハ餘程生活ニ影響スルノ
デアリマスシ、今デモ人手ガ非常ニ足ラナ
イノデ、稅務署員ニハ非常ニ氣ノ毒デアリ、
納稅者ニハ如何ニシテ課稅ガ適正デアリ得
ルカ、間違ヒガナケレバ宜イガト心配シテ
居ル位デアリマス、ソコヘ多數ノ納稅者ガ
殖エマシテ、其ノ仕事ノ量ガ殖エ、而モ前
申上ゲタヤウニ、又申上ゲズトモ御分リノ
ヤウニ、ドン〓〓稅務署ノ人員ヲ殖ヤシテ
行クト云フコトハ出來ヌ、其ノ點デモ餘程
是ハ實行上躊躇致サナケレバナラヌコトデ
アリマス、實ハソレガ實際問題トシテハ此
ノ問題ノ最後ノ決定ニ餘計力ガアルト思フ
ノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=114
-
115・田村秀吉
○田村(秀)委員 現行稅制デハ稅率ハ大體
最高度ニ達シテ居ル、免稅點ノ低下ト云フ
コトモ稅務行政ノ上カラ中々困難デアル、
併シ戰費ハ尙ホ今後增大スルト見ナケレバ
ナリマセヌ、ソコデ其ノ戰費ノ負擔ノ爲ニ
ハヤハリ私共國民トシテハ、今後增稅ハ尙
ホ必至ノ趨勢デアルコトヲ覺悟シテ行カナ
ケレバナラヌコトハ勿論デアリマス、サウ
ナツテ參リマスト、先程モ大臣カラ一寸御
話ガアリマシタガ、現行稅制ニ對シテ改正
スルカ、何等カ新シイ方途ヲ講ズル必要ニ
迫ラレテ來ルト思フノデアリマス、玆ニ所
謂新稅ニ對スル工夫ガ必要ニナツテ來ルト
思フノデアリマス、今囘ノ增稅案ガ決定ス
ルニ」至リマスマデニモ、世間ニハ或ハ財產
稅、或ハ賣上稅、或ハ國民稅等ノ議ガ相當ニ
アリマシタコトハ御承知ノ通リデアリマス、
賣上稅、國民稅ノコトニ付キマシテハ他ノ
委員ノ方々カラ御質問モアリ、御答辯モア
ツタノデアリマスガ、此ノ財產稅ハ相當世
間ノ頭ニ響イテ居ル問題デアリマスノデ、
此ノ際大臣カラ財產稅ト云フモノヲ創設ス
ルノ可否等ニ付テノ御觀測ヲ承ツテ置キタ
イト思フノデアリマス、實ハ財產稅ハ、財
產ニハ收入ヲ伴ハナイ、所得ノナイ者ニ稅
ヲ課ケルト云フコトハ從來ノ租稅觀カラ言
ツテ不適切デアル、斯ウ申シテ居リマスガ、
最近ノ觀念カラ申シマスト、財產ヲ持ツテ
居ル者ハ或ル意味ニ於テ消極的ノ所得ダト
云フ考ヘ方モアツテ、財產稅ヲ提唱スル者
モ相當アルヤウニ見受ケラルヽノデアリマ
ス、隨テ今後財產稅ノ動向如何ト云フコト
ハ國民ノ深キ關心ヲ寄セテ居ル所デアルト
一思ヒマスノデ、此ノ際出來マスナラバ大臣
カラ新稅トシテノ財產稅ニ對スル御觀測ヲ
明確ニ承リ得レバ仕合セデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=115
-
116・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 財產稅デゴザイマスガ、
是ハ只今提案モ致シテ居リマセヌコトデモ
アリマスルシ、マア私ノ一個ノ只今ノ感想
トシテ御聽キヲ願ヒタイト思フノデアリマス、
ハツキリ意見トシテ申上ゲルノモドウカト
思ヒマスカラ感想トシテ御聽取リヲ願ヒタ
イト思ヒマス、財產稅ト云フコトモ私ハ一
般論トシテハ確カニ考ヘラルヽコトデアル
ト思フノデアリマス、相續稅ニ致シマシテ
モ一ツノ財產稅デアリマスガ、唯之ニハ色
色考ヘナケレバナラヌ點ガアリマス、稅ヲ
徵收スルノハ國家活動ヲスル爲ノ費用ヲ得
ル爲デアリマスルガ、總テノ活動ト云フモ
ノハ經濟的ニ言ヘバ新タニソコニ生產所得
ト云フモノガアル、ソレデアリマスカラ、
經濟的ニハ何等ノ生產所得ト云フモノヲ生
ゼザルモノカラ取ツタノデハ國家ノ役ニ立
タナイ、ドウシテモ生產所得ガアル所カラ
其ノ一部ヲ國家ニ持ツテ來テ國家活動ノ資
料ニシナケレバナラヌ、然ラバ財產稅ハド
ウ云フ意味カト言ヘバ、財產ガ餘計アル者
ト少イ者ガ國民ノ中ニアリマスカラ、寧ロ
富ノ再分配ノ意味ニ於テ、生產活動ガナイ
所カラ財產稅ヲ取ツテ、他ノ大キナ生產活動
ヲスル人ノ納稅額ヲ少クスル、寧ロ富ノ再分
配ノ方カラ來テ居ルト思フノデアリマス、
ソレモ一ツノ考ヘ方デアリマスガ、只今デ
ハ一面カラ言フト、國民ガ非常ニ働イテ財
產ヲ殘シテ貰ヒタイ、私ハサウ云フ感ジヲ
持ツテ居ルノデアリマス、貯蓄奬勵ニシマ
シテモ是ハ御國ノ爲ト同時ニ自分ノ爲デア
リ、卑近ナ言ヒ方デアリマスガ、サウ思ツ
テ居ル、一千億貯マレバ日本人ハ平均一千
ヅヽ資產ガ殖エル、今ニ二千億ノ貯蓄ニ直
グナル、二千圓ヅヽ殖エル、五人家內ナラ
バ貯蓄組合モ一萬圓マデ非課稅デ行キタイ
ト思ツテ居ル、ソレ位ニナラナケレバ私ハ
此ノ東亞ノ共榮圈ハ出來ナイト思ヒマス、
ソレハ直接土地ヲ持ツナドト言ツテモ日本
ノ土地ガ殖エル譯デハアリマセヌ、併シナ
ガラ此ノ戰爭、ソレニ伴フ必要ナ經濟活動、
日本人ノ技術、才能、從來ノ資本、サウ云
フモノガ皆圈內各地ニ伸ビマシテ、圈內各
地ノ其ノ土地ノ住民ノ幸福ヲ增進シマスル
ト共ニ、ソコニ非常ニ經濟力ガ伸ビテ行ク、
ソレデ私ハ社債ニシマシテモ株式ニシマシ
テモ非常ニ增加シナケレバナラヌ、直接戰
爭ガ今盛ナ時ニハ比較的社債、株式ノ方ガ
少ク、公債ガ多イノデアリマスガ、公債ト
テモ同樣デアリマス、將來戰爭ガ建設時代
ニナレバ社債、公債ハ益〓增增シナケレバ
ナラヌ、私ハ皆ンナガ有價證劵ヲ澤山持ツヤ
ウナ時代ニナツテ貰ヒタイ、ソレガ戰費ヲ
作リ、生產擴充資金ヲ作ル、ソコデ大キナ
經濟力ガ出來テ來ル、各自ガ經濟力ヲ有價
證劵ニシテ持ツテ居ルト云フ體制ニシタイ、
今財產稅ヲ拵ヘマスト、結局色々アリマス
ルガ、實際問題トシテ不動產ト有價證劵ニ
課ケルヨリ外ナイト思フ、殊ニ不動產ノ方
ガ一番ハツキリシテ居ルカラ餘計課カルガ、
之ニ重課シテモ收入ハ餘計取レマセヌシ、或
ハ自作農ナドニサウ餘計課ケルト云フノモド
ウカト思ヒマスルシ、ソレカラ有價證
劵ハ今申スヤウナコトデアリマス、是
カラ大キナ稅額ヲ得ヨウトスレバ、
是ハ財政ノ辻褄ヲ合ハス上ニ於テハ
相當有效カモ知レマセヌガ、所得ノ增加シ
タ面カラ徵收スルノデハナイノデ、是ハ
部有價證劵ヲ資產トシテ殖ヤス方カラ見レ
バ餘リ奬勵ニハナラヌ、サウ云フコトヲ考
ヘルト、ドウシテモ每年ノ生產活動、所得
活動ヲ旺盛ニシテ行クト云フコトヲ考ヘ、
ソレカラ生ミ出シタモノデ事ヲヤツテ行ク
ト云フコトニドウシテモ主力ヲ置カナケレ
バナラヌ、サウスレバ左程稅額デ大キイモ
ノモ期待出來ナイ、寧ロ富ノ再分配ナドト
云フコトガ主タル理由デ動クヤウナコトデ
アリマスルカラ、其ノ財產稅ヲ相當大規模
ニ起スト云フコトニ付テハ、餘程戰爭中ハ
愼重ニ考ヘナケレバナラヌノデハナイカ、
無論是ハ考究ノ題目デハアリマセウガ、今
大キク財產稅ヲ起シテ、是デ財政ノ收入ガ
出來タ、堅實ナリト云ツテモ、少シクソレ
ハ經濟的ニ見レバ適切デアルカドウカモマ
ダ疑問ノ餘地ガアル、斯ウ云フ風ナ感ジヲ
持ツテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=116
-
117・田村秀吉
○田村(秀)委員 財產稅ニ對スル大臣ノ御
所見、私モ全ク御同感申上ゲル次第デアリ
マシテ、ドウシテモ動ク所、物ヲ生ム所、
生產活動ガ所得ヲ生ンデ、其ノ所得ガ稅ヲ
構成シテ行クト云フコトデナケレバ、國民
活動ノ上ニ國家構成ノ上ニ相當影響スル所
大ナルモノガアルト思フノデアリマス、ソ
コデ私ハ現行稅制デ或ル程度ノ「マキシマ
ム」ニ達シタ、而モ戰費ノ調達ハ今後ハ益〓、
之ヲ必要トスルニ至リ、國民ハ之ヲ負擔シ
テ增稅ノ覺悟ヲシナケレバナラヌ、是ハ現
行稅制デハ滿足出來ナイ、然ラバ今マデ此
ノ委員會ニ於テ各委員ノ方々カラ色々議論
ガアリマシタ點ハ、戰費ノ厖大ナル放出ニ
伴ヒ、一般戰爭資材其ノ他ノ生產增强ノ爲
ニ或ハ企業ノ整備ガ行ハレル、或ハ勞務ノ
配置等ニ伴ヒマシテ、國民所得構成ト云フ
モノガ、コヽ二三年前ト比ベマスルト非常
ナ激變ヲ來シツヽアル、二三年前ニ考案シ
テ出來タ今日ノ現行稅制デハ「キャッチ」ノ
出來テイ所得階層ガ今日激增シツヽアルヤ
ウニ見受ケラレルノデアリマス、戰時下ニ
於テ我々ハ國家ニ對シテ財政的御奉公ヲス
ル、御初穂ヲ出スト云フ觀念ニ於テ皇國ノ
國民ハ一人ト雖モ之ヲ忌避スル者ハナイノ
デアリマス、唯要點ハ公正ナル負擔ヲ全國
民ガ持ツト云フコトナンデアリマス、部
ノ者ガ今日ノ戰時下ニ於テ租稅ノ公正ナル
負擔ヲ脫シテ、所謂戰爭成金ミタイナ者ガ
簇出スルト云フヤウナコトニナツテ來マス
ルト、單ニ經濟的ニ斯ウ云フ浮動購買力ガ
激增スルト云フコトノミデナク、國民思想
ノ上ニ及ボス影響ハ大ナルモノガアルト申
サナケレバナラヌノデアリマス、隨テ新興
所得階層ノ發生ニ伴フ國民負擔ノ公正ト云
フモノヲ、如何ニシテ稅制ノ上ニ具現シテ
行クカト云フコトガ、現在ノ戰時下ニ於ケ
ル租稅政策上最モ重大ナル點デアルト思フ
ノデアリマス、大藏省當局トシテモ既ニ此
ノ點ニハ御着眼ニナツテ色々工夫ヲシテ居
ラレルト思ヒマスガ、私ハ急速ニ此ノ點ニ
付テハ現行稅制カラ一歩ヲ進メテ深ク工夫
ヲ凝サナケレバナラヌト思フノデアリマス、
現在ハ所謂新興所得階級ト云フモノガ色々
變化シテ行ツテ居ルノデアリマスカラ、之
ヲ捉ヘ得ル所ノ頭ヲ政府トシテ拵ヘナケレ
バナラヌ、隨テ役人ノミデナク民間ノ智囊
ヲ此ノ際集メテ、現在ノ戰時生產下ニ於テ所
得階層ガ變ツテ行ツテ居ル、而モ負擔ヲ公
正ニシテ行カナケレバイカヌ、其ノ爲ニ現
行ノ稅制デ最早增徵出來ナイト言フノミデ
ナク、增徵スル新シイ工夫ヲ凝ス上ニ官民
一體ノ强力ナル理解ガ必要デアル、租稅ハ
ドウシテモ國民ノ理解ヲ基調トシテ居ル、
其ノ理解ノ基調ノ上ニ力ヲ協セテ行カナケ
レバナラヌ、官民協力態勢ノ基調ハ出來タ
カラオ前等贊成セヨヂヤナクシテ、是カラ
作ルコトニ協力セシメテ、新シイ租稅體系
ヲ作ル必要ガ現在迫リツヽアルノデハナイ
カト私ハ思フノデアリマス、隨テ若シ此ノ
際出來マスナラバ議會後此ノ增稅案ガ實施
セラレタ上ハ新シイ今後ノ租稅政策ニ對シ
單ニ稅制ノ上ノミデナク、稅務行政ノ上ニ
モ、又戰時下ニ於ケル所ノ所謂皇國租稅理
念ノ確立ノ上カラ申シマシテモ、サウ云フ
官民共同ノ一大調査機關ヲ設置シテ之一
基イテ新シイ稅制ノ工夫ヲ凝スト云フコト
ガ、目下ノ急ニ迫ツテ居ルノデハナイカト
思フノデアリマシテ、是ハ私ハ特ニ大臣ニ
此ノ際要望致シマシテ、御所見ヲ承ツテ置
キタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=117
-
118・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 稅制ハ國民生活經濟ニ大
キナ影響ガアルト云フコトハ、平時モサウ
デアリマス、只今ノ戰爭遂行ノ上ニ於テモ
非常ニ重大ナ關係ヲ持チマス、又事情ノ變
化ガ御話ノ如ク平時ト違ツテ急激且ツ其ノ
程度ガ高イノデアリマス、所得階層ノ變化、
ソレガ御話ノ如ク所得ノ正確ナル捕捉手段
ノ新工夫ニ色々問題ガ生ズルノデアリマス、
今御話ガアリマシタヤウナ凡ユル方面ノ智
囊ヲ動員シテ考ヘルト云フコトハ、洵ニ必要
ナコトト存ジマス、併シナガラ此ノ事ハ其
ノ方法、構成又他ニモ色々ノ事ガアリマス
ノデ今ノ御意見ハ篤ト承ツテ置キマシテ、
十分ニ考慮シタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=118
-
119・田村秀吉
○田村(秀)委員 終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=119
-
120・中島彌團次
○中島委員長 大臣ニ保留シテアル御方ニ
質問ヲ許シマス-田中和一郞君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=120
-
121・田中和一郎
○田中(和)委員 昨日大臣ガ御出席ニナリ
マセヌノデ、私ノ質問ハ中途デ打切ツテシ
マツタノデスガ、ソレハ國鐵ノ運賃値上ニ
伴フ私鐵ノ運賃値上モ當然デアラウ、其ノ
値上ニ依ル益金ノ處分ニ付テ御伺ヒシタノ
デアリマス、運通省ノ當局ハ値上ハヤラナ
ケレバナラヌデアラウ、其ノ値上ニ依ル金
額ノ處分ニ付テハ大藏省ト協議スル考ヘデ
アルト云フ御返答デアリマシタ、時間ノ關
係上私ハソレデ打切ツタノデアリマスルガ、
今囘ノ增稅ガ全部軍事費ニ向ケラレテ居ル
コトヲ觀點ニ入レマスト、私設鐵道或ハ郊外
鐵道ノ賃金値上ニ依ツテ生ジマスル益金ノ
處分ニ付テハ、餘程御考慮ヲ願ハナケレバ
ナラナイダラウト思フ、私ハ昨日言葉ガ足
リマセヌデシタガ、公債ヲ持タシメルトカ
云フコトモ一ツノ方法デアルト申上ゲテ置
イタノデアリマスルガ、旣ニ此ノ事ハ當局ニ
於テモ此ノ前ノ値上ノ際ニハ實施セラレテ
居リマス、今囘ハ勿論サウ云フ方法モ宜イ
ト思ヒマスガ、更ニ一步ヲ進メテ、今囘ノ
此ノ增稅ノ全部ガ直接戰費ニ向ケラレルコ
トヲ考ヘマシテ、私鐵賃金値上ノ場合ノ益
金ハ公債ノ買入トカ或ハ從業員ノ福利施設
ノ增進トカ云フコト以外ニ、更ニ一步ヲ進
メテ直接今囘ノ戰爭ニ必要ナ方面ニ向ケラ
レルコトガ必要デアルト考ヘルノデアリマ
スガ、大藏大臣トシテ又國務大臣トシテノ
御考ヘヲ何ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=121
-
122・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 國有鐵道ノ運賃ガ値上ニ
ナリマスルト、ソレト權衡ノ上カラモ所
謂私鐵ノ運賃値上ガ相當程度ニ行ハレルモ
ノト考ヘルノデアリマスガ、國鐵運賃ノ値
上ノ動機カラ申シマシテモ、是等ガ私設鐵
道ノ經費ノ膨脹デアルトカ、或ハ企業體ノ
利益ニ歸スルト云フコトヲ無條件ニ考ヘマ
スコトハ、適當デハナイト思ヒマス、其ノ
點ニ於キマシテハ御考へト同樣デアリマズ、
御話ノ如ク先年ノ時分ニハ公債保有等ノ方
法ヲ執ツテ居リマシテ、今囘モ亦臨機サ
ウ云フ方法ヲ執ルカモ知レマセヌガ、ソレ
ダケデハ尙ホ不十分デアル、此御說モ御同
感デアリマス、御趣旨ノヤウニニナルヤウ
ニ一ツ方法ヲ考ヘマシテ、又場合ニ依リマ
シテハ次ノ議會ニ於テ御協賛ヲ經ルト云フ
ヤウナ段取ニモ致スコトガアルカトモ存ジ
マス、御同感デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=122
-
123・中島彌團次
○中島委員長 是デ大臣ニ對スル質疑ハ終
了致シマシタ、大臣ハ御退席御自由デアリ
マス、次ハ岡本傳之助君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=123
-
124・岡本傳之助
○岡本(傳)委員 大東亞戰爭以來、先程來
度々論ゼラレマシタヤウニ、新興所得階級ノ
收入ガ非常ニ激增致シマシテ、更ニ今囘ノ
所得稅ニ於テ新タニ設ケラレマシタ丙種事
業所得者等ノ勤勞階級ガ非常ニ惠マレテ居
ルコトハ申スマデモナイノデアリマスガ、
ソレニ比ベマシテ一般ノ勤勞階級ノ中デ會
社等ノ俸給生活者ナドハ、今日生活ノ上ニ
於キマシテ中々苦シイ立場ニ立ツテ居ルノ
デアリマス、其ノ他恩給生活者デアルトカ、
或ハ少額ノ利息ニ依ツテ生活ヲシテ居ル者、
又少額ナル家賃、地代ノ收入ニ依ツテ生活
ヲシテ居ル者ヤ、或ハ平和產業關係デ企業
整備ニ依ツテ轉換ヲシテ居ルト云フヤウナ
者ハ、今日日常ノ生活ノ上ニ可ナリノ困難
ヲ感ジテ居ルノデアリマス、今囘ノ增稅ハ
全ク國家興亡ノ際デアリマスノデ、如何樣
ナ增稅ガアリマセウトモ、誰一人トシテ國
民ハ此ノ納稅ノ問題ニ付テ異議ヲ申ス者ハ
ナイノデアリマスルガ、先程來度々論ゼラ
レマシタヤウニ、徵稅ニ當リマシテハ捕捉
スベキモノハ極力之ヲ捕捉シテ貰フト共ニ、
又サウ云フ惠レナイ、時局ニ依ツテ非常
ニ悲境ニアル階層ニ付キマシテハ、極力今
後モ同情アル政策ヲ御執リ戴キタイト思フ
ノデアリマス、又間接稅等モ累增致シテ居
リマスルノデ、一般ノ生活物資ノ入手ガ、
少額ノ所得者トシマスト中々困難デアリマ
ス、特ニ此ノ際政府ニ御伺ヒシテ御願ヒシ
タイコトハ、如何ナル重稅ニモ喜ンデ堪ヘ
ルト云フ其ノ銃後ニ於ケル國民生活ヲ確保
スル意味ニ於キマシテ、生活必需物資ノ公
明正大ナル配給ヲスルコトヲ一ツ進メテ戴
キタイト思フノデアリマス、一方ニ於テ非常
ニ惠マレタ階級ガアリ、一方ニ於テ非常ニ
苦シンデ居ル階級ガアルノデアリマス、サ
ウ云フ人達ニ於キマシテハ、現在ノヤウナ
生活必需物資ノ配給機構デアリマスルト、
中々日常ノ生活ニ苦痛ガ多イノデアリマス、
民需ノ物資ガ現在數量ニ於キマシテモ、品
質ニ於キマシテモ低下致シテ居リマシテ、
特ニ十九年度ニ於ケルガ如ク決戰段階ニ入
リマシテ、愈〓民需ト云フモノハ窮迫ヲ〓ゲ
ルコトニナル、一方ニハ膨脹シタ購買力ガ
アルノデアリマス、隨テ公定價格ヲ設ケ、
或ハ色々ノ方策ヲ執ツテ居ラレマシテモ、
中々政府ノ希望シテ居ルヤウニ品物ガ旨ク
流レテ居ラナイノデアリマス、所謂闇ヤ橫流
レヤ物々交換ト云フヤウナモノガ一般ニ行
ハレテ居ルヤウニモ聞及ンデ居ルノデアリ
マス、勿論ソレニ付キマシテハ民需物資ノ增
產ト云フ手ガアルノデアリマスガ、是ハ到底
不可能ナコトデアリマス、以上ハ、末端ノ配
給機構-今日デハ此ノ末端配給機構ノ改
善ト云フコトガ一番急務デナケレバナラヌ
ト思フノデアリマス、一般ノ消費者ト致シマ
スルト、買物ニ對スル勞苦ハ今日中々大變
デアリマシテ、ドウカ公明正大ナ配給ヲシテ
貰ヒタイト云フ希望ガ國民全般ノ聲デアル
ノデアリマス、又配給業者ノ方ノ立場カラ見
マシテモ、元ノ農林省系統ノモノハ其ノ絕對
數量ノ減少ト云フコトハ少イノデアリマスル
ガ、元ノ商工省系統ノ平和產業ニ屬シテ居
リマスル方ノ業者ハ洵ニ悲慘ヲ狀態ニアル
ノデアリマス、又陷ラントシツヽアルノデア
リマシテ、其ノ上一般ノ消費規正ガ愈〓强化サ
レ、更ニ應召、徵用ト云フヤウナコトハ免レ
ナイノデアリマス、此ノ場合業者トシテモ何
等カソコニ打開ノ途ヲ講ジテ貰ヒタイ、是ハ
企業整備ト云フコトノ行ハレルコトハ勿論
必然デアリマスルガ、サリトテ配給業者ヲ
全然ナクスルコトモ考ヘラレナイノデアリ
さい、ソレニ對シテ何等カ新シイ考ヘヲ政
府ノ方カラ願ヒタイト望ンデ居ルノデハナ
イカト思フノデアリマス、又國家ト致シマ
シテモ國民ノ納得出來ルヤウナ配給機構ヲ
此ノ際作ル必要ガアルノデハナイカ、サウ
シテ今日生產ガスツカリ計畫化サレテ居ル
ノデアリマスカラ、配給モ餘程ソコニ計晝
性ヲ持タセル必要ガアリ、又其ノ年其ノ地
域ニ應ジテ適當ナ配給方法ヲ考ヘル必要ガ
アルノデハナイカト考ヘルノデアリマス、
靑果物ヤ魚介類ニ付キマシテハ、豫算總會
ニ於キマシテ農商大臣カラ御話ガアツタヤ
ウデアリマスガ、其ノ以外ノ舊商工省關係
ノ平和產業ノ商品デアリマス、例ヘバ纖維
製品ト云フヤウナモノニ付キマシテ、ドウ
云フ風ニ配給機構ヲ御考ヘデイラツシヤイ
マスカ、伺ヒタイト思ヒマス、從來ハ唯單
ニ消極的拔取整理ト云フヤウナ形デアリマ
シタ、勿論是モ一ツノ手段デアルト思フノ
デアリマスルガ、時局ノ進展ガ急速デアリ
マスルノデ、整理ノ上ニ又第二次、第三次、
第四次ト云フヤウナコトニナリマシテハ
何時マデモ安定ヲ缺ク次第デアリマス、隨
テ小賣業ノ第二次企業整備ト云フコトト並
行シテ、國民生活確保ノ見地カラ、新シイ
構想ヲ以チマシテ戰時中ノ特別ノ配給體制
ト云フモノニ付テ何カ政府ノ方ニ於テ御考
ヘガオアリニナルカ、而シテ所謂個人企業
體尊重ト云フコトハ非常ニ結構ナコトデア
リマス、併シ是ハ戰後ニ於テ再ビサウ云フ
風ニ還元スルコトガ出來ルト云フコトニナ
リマスレバ尙ホ結構ト思フノデアリマスルガ、
戰時中ハドウシテモ現在ノ方針デ-併シ
企業整備ノミデアリマシテハ、ドウモ國民生
活、殊ニ纖維製品等ノ關係ニ於キマシテ無
理ガアルノデハナイカ、商品ガ非常ニ激減
シテ參ルニ付キマシテ何カソコニ御考ヘガ
オアリニナリマスカ、御伺ヒ致シタイト思
フ次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=124
-
125・石黒忠篤
○石黑政府委員 企業整備ノ場合ニ於キマ
スル拔取整理ノ方法ト云フモノハ、ヤハリ
ソコニ色々意味合ノアルコトハ御承知ノ通
リデアリマスガ、併シナガラ御說ノ如ク纖
維業界ノ如キ、此ノ最近數年ノ間ソレ〓〓
ノ部門、又生產カラ配給ニ亙ルソレ〓〓ノ
段階ニ於キマシテモ、何レモ一囘ナラズ業
界ノ變遷ニ應ジテ整備ヲシテ參ラナケレバ
ナラナカツタト云フヤウナ業界ニ於キマシ
テ、殊ニ又最近ニ於ケル衣料供給ノ趨勢等
ヲモ考へ合セテ見マスト業者ノ立場カラ致
シマシテモ、配給ノ今後ノヤリ方ト云フヤ
ウナコトニ付キマシテ、必ズシモ從來ノヤ
ウナ傾向ヲ持ツテ行ケナイノデハナイカト
云フヤウナ懸念ノアリマスコトハ、御話ノ
通リデハナイカト思フノデアリマス、一面
ニ於キマシテ、是モ御話ノアツタコトデア
リマスガ、最近ノ國民衣料供給ニ付テノ大體
ノ狀況ヲ考ヘテ見マシテモ、或ル種ノ必需
衣料等ニ付キマシテハ、何トカ致シマシテ
需要者ニ的確ニ之ヲ供給スルコトヲセネバ
ナラヌヤウニナツテ參リマシタ、此ノ意味
カラ申シマシテモ、末端配給ヲ如何ニ的確
ナモノニ致シテ參ルカト云フコトガ、ッ
ノ課題トナツテ居ル譯デアリマス、旁〓以チマ
シテ私共ト致シマシテモ、只今ノ御話ノ御
趣旨ハ十分酌ミ入レマシテ、現ニ多少考へ
テモ居リマスケレドモ、今後十分ソレ〓
ノ狀況、又地方ノ狀況ニモ依リマセウガ、
色々ノコトヲ十分考ヘテ、適當ニ處置致シ
テ參リタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=125
-
126・岡本傳之助
○岡本(傳)委員 只今ノ御答辯デ、私共ノ
考ヘト同ジヤウナコトニ付テ御心配シテ戴
イテ居ルコトニ付キマシテ滿足ニ思フノデ
アリマス
次ニ第二次ノ小賣業ノ企業整備デアリマ
スガ、第一次ノ企業整備ノ時ニ殘リマシタ
者達ハ、必ズシモ時局認識ガナカツタカラ、
第一次ノ企業〓備ニ應ジナカツタ譯デハナ
イノデアリマス、中ニハ廢メタイ、企業整
備ヲ受ケタイト云フコトヲ申出タニ拾ラズ、
色々ノ比率ノ關係上殘レト言ハレテ殘ツタ
者モ相當アル、併シ其ノ後戰力增强企業整
備ト云フヤウナ劃期的ナ大キナ生產部面ニ
於ケル企業整備ガ行ハレマシテ、隨テ第一
次企業整備ヲ御立案ナサイマシタ時トハ、
マルデ樣相ノ變ツタ大キナ變化ガ生ジタ
ノデアリマス、隨ヒマシテ第二次企業整
備ヲ今日ヤラザルヲ得ナクナツテ居ルノ
デアリマシテ、僅カノ商品ノ配給デハ現
在ノ殘存業者ハ適限經營ハオロカ、第
次ノ時ノ共助金ノ負擔、或ハ其ノ他ノ經
營費ノ增加ト云フヤウナコトノ爲ニ、
今後或ル數量ノモノハ必然的ニ企業整備ヲ
受ケザルヲ得ナクナツタト云フヤウナ狀態
ニ相成ツテ居ルノデアリマス、第一次ノ時
ニハ例ノ引受限度貸付金ト云フノヲ更生金
庫カラ貰ヒマシテ、サウシテ適限經營ノ所
ニ於キマシテ、大體ソレト同額程度ノ業者
ノ共助金ヲ貰ツテ居ルノデアリマスガ、今
囘ハ殘有業者ノ共助金ト云フヤウナコトハ
望ムベクモナイノデアリマス、隨ヒマシテ
前囘ノ場合カラ見マスト、業者ノ共助金、
所謂暖簾料ト云フモノニ對シテ、更生金庫ヲ
通ジテ補助ヲ受ケマシタ所ノ暖簾料ト云フ
モノダケシカ手ニ入ラナイ、尙ホ其ノ外ニ
生活援護共助金ト云フモノガ、只今マデノ
三百圓ガ六百圓ニナツタト云フ僅カナモノ
ハアリマスガ、業者カラ第一次ノ企業整備
ノ時ニ共助金ヲ貰ツタト云フヤウナコトハ
ナイノデアリマス、隨テ是等ハ全ク第一次
ノ形ト同ジヤウナ意味ニ於キマシテ企業整
備ヲ受ケルコトニナルノデアリマス、尙ホ
其ノ當時カラ見マスレバ諸物價モ〓騰シ、中
中生活モ苦シイ、又轉換ニ付キマシテモ不
利ナ狀態ニアルノデアリマスカラ、是等ニ
付キマシテ篤ト農商當局竝ニ大藏當局ノ御
考慮ヲ煩ハシタイト思ヒマス、要スルニ小
賣業者ノ實收入ガ前囘ト同等、若シクハソ
レ以上ニナルヤウニ御配慮願ヘルモノカ如
何カ、政府ノ御意見ヲ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=126
-
127・石黒忠篤
○石黑政府委員 今囘ノ企業整備ニ於キマ
シテノ小賣業ノ整備ノヤリ方ト致シマシテ
ハ、大體原則ト致シマシテハ、第一次ノ場合
ノヤリ方ト〓ネ同ジヤウニヤツテ參ルコト
ニナツテ居ルノデアリマスガ、唯第一次ノ
場合ニ於キマシテハ、御承知ノヤウニドウ
云フ業種ヲ整備スルカト云フヤウナコトマ
デ、中央デハツキリ決メテヤリマシタガ、
今度ハ成ルベク地方ノ實情ニ應ジテ、小賣
業ノヤウナ業種ハ整備ヲシテ參リタイト云
フコトデ、是ハヤリ方ト致シマシテハ、如
何ナル業種ニ付テ取扱フカト云フコトカラ
始メマシテ、大體地方長官ニ任セテ居ルヤ
ウナ次第デゴザイマス、所デ第一次ノ場合
ニ於キマシテモ、此ノ小賣業ニ付テハ地方
ニ依リ、又業種ニ依ツテ多少ソコニ色々ト事
情ガ違ツタヤウナ譯デアリマス、第一次ノ
際ト雖モ、割合ニサウ云フ風ニ地方的ナ、或
ハ業種別ノ狀況ニ應ジタヤウナ整備ガ行ハ
レタノデアリマスガ、ソレハ今後モ行ハレ
ル譯デアリマス、隨ヒマシテ共助ノヤリ方
等ニ付キマシテモ、只今御話ノ政府ヨリノ
融資援助ト云フヤウナ共助金ニ付テノ六百
圓限度ノ援助ト云フヤウナコトニ付キマシ
テハ、勿論是ハ共通的デハアリマスガ、其
ノ他ノ事柄ニ付キマシテハ、ヤハリ狀況ニ
依ツテ色々差異ノアルコトハ或ル程度ハ免
レナイト思ヒマス、併シナガラ地方長官ニ
任セタトハ申シナガラ、勿論農商省ト致シ
マシテハ全國ヲ見渡シテ、ソコニ當然ノ色
色ノ差異ノアルコトハ巳ムヲ得マセヌガ、
全體トシテ適正ナル運營ノ出來ルヤウニ、
何處マデモ監督ヲ致シテ參ラナケレバナリ
マセヌ、今御話ノヤワナ點ニ付キマシテハ、
私現在詳細ノコトハ存ジマセヌケレドモ、
努メテ十分留意ヲ致シマシテ、督勵上遺憾
ノナイヤウニ努メタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=127
-
128・岡本傳之助
○岡本(傳)委員 重ネテ只今私ノ希望申上
ゲマシタコトニ付キマシテ、當局ニ於カレ
マシテモ是非達成出來マスヤウニ御配慮ヲ
願ヒタイト思ヒマス、私ノ質問ハ是ヲ以テ
終リト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=128
-
129・中島彌團次
○中島委員長 瀧澤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=129
-
130・瀧澤七郎
○瀧澤委員 此ノ間主稅局長ガ御說明ニナ
リマシタ所ニ依リマスト、今日ノ納稅ノ觀
念ヲ新タニ切替ヘテ行カナケレバナラナ
イ、卽チ今マデノ納稅ト云フ考ヘ方ヨリモ、
皇國的、日本主義ノ立場カラ納稅ト云フコ
トヲ十分國民ニ理解サセテ、サウシテ負擔
ヲシテ貰フベキデアルト云フ御話デアリマ
シタガ、私ハ其ノ納稅ト云フコトニ關シテ、
曾ツテ二、三年前ノ增稅ノ委員會ニ於テ文部
省ニ御注文申上ゲマシテ、國民〓育ノ中ニ
於テ、此ノ納稅ト云フコトニ付テ、昔ハ稅
金ト云フモノハ取ラレルモノダト云フヤウ
ナ觀念デアツタガ、サウデナク本當ニ明ル
イ氣分デ稅金ヲ納メルノダト云フヤウニ、
先ヅ國民ヲ〓育シテ戴ク、ソコヲ十分ニ〓
科書ノ上ニ表ハシテ置イテ戴キタイト云フ
コトヲ申上ゲテ置キマシタ、昨年以來大東
亞戰爭ハ新タナル段階ニ入リマシテ、サウ
シテソレ等ノ任務ヲ果スベキ御考慮ノ中
デ、所謂戰爭讀本トデモ申スニ相應シイ〓
科書ガ出版セラレマシタ、是ハ私ハ非常ニ
宜イコトト存ジテ居リマスガ、唯其ノ中デ、
私ガ何トカ御考慮ヲ戴キタイト思フ一點ガ
アリマス、ソレハ今マデ私共ガ〓育セラレ
タコトハ、參政ノ義務デアルトカ、納稅ノ
義務デアルトカ、兵役ノ義務デアルトカ云
フヤウニ、義務付ケラレテ納稅ヲ致シテ居
ツタ譯デアリマスガ、義務ト云フ字ヲ用ヒ
マスト、ドウシテモ私ハソコニ權利ト云フ
ヤウナ考ヘ方ガ相對的ニ直チニ起ルノデ、
此ノ義務ト云フ文字ニ付テ何トカ御考慮ガ
戴ケナイカト云フコトデアリマス〓師用ノ
修身書ニ「納稅ハ國家ノ形體ヲ整へ總テノ國
ガ國民ニ課スル所ノ義務デアル」ト云フ風ニ、
此處ニ義務ト云フ字ガ用ヒテアリマス、ソ
レカラ後ノ方ニナリマスト「我ガ國ニ於テ納
稅ハ一途ニ皇運扶翼ノ大義カラ發スルモノ
トシテ」斯ウ云フ風ニ洵ニ現代ニ適スルヤウ
ニ書イテアリマスルガ、其ノ前段ノ國民ニ
課スル所ノ義務デアルト云フ、此ノ義務ト
云フ字ヲ何トカ權利ト云フ相對的ナ言葉デ
ナイヤウニ御考ヘヲ戴ケルカ否カ、勿論此
ノ義務ト云フ字ハ、其ノ發スル所ハ憲法ノ
第二十一條ニ「日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ
從ヒ納稅ノ義務ヲ有ス」ト制定サレテ居ル所
カラ、此處デ義務ト云フ文字ガ使ハレテ居
ルコトト思ヒマスガ、通念的ニ申シマシテ
義務、權利ト云フ風ナ以前ノ考へ方ガ自然
ソコニ湧イテ參マリスト、此處デ〓ヘラレ
ル「納稅ハ一途ニ皇運扶翼ノ大義カラ發スル
モノトシテ」ト云フコトト何トナク矛盾スル
ヤウナ風ニ考ヘラレルノデアリマスガ、此
ノ點ニ付テ何トカ御考慮戴カレマセウカド
ウカ、御伺ヒ致シタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=130
-
131・近藤壽治
○近藤政府委員 只今瀧澤サンカラ、色々
御話ガアリマシタガ、文部省ニ於キマシテ
モ、納稅ニ關スル知識竝ニ心構ヘヲ靑少年
ニ〓育シマスコトハ最モ肝要ナコトデアル
ト豫テカラ感ジマシテ、國民學校ノ五年、
六年ノ〓科書竝ニ〓師用ノ方ニモ、更ニハ
靑年學校ノ修身公民書ノ中ニモ、其ノ他中
等學校ハ申スニ及バズ、皆此ノ納稅ノ問題
ニ付テハ相當注意ヲ致シテ是マデ取計ラツ
テ居ルノデアリマス、先程國民學校初等科
第六年ノ〓師用ノ〓科書ニ付テ色々御意見
ガアリマシタガ、御尤モナコトデアリマシ
テ、ドウモ在來ノ說明ト云フモノハ、所謂
兵役、納稅ガ二大義務デアルトカ云フコト
ヲ始終言ツテ說明ヲ致シテ居ツタノデアリ
マスル·ガ、愈〓我々ガ此ノ大東亞戰爭ト云フ
ヤウナ大戰爭ニ當面致シマシテ、諸々ノ物
ニ對スル見方ガ一層深刻ニナリマスト同時
ニ、一層本質的ニ考ヘテ見ルヤウナ時勢ニ
ナツテ參リマシタ、隨テ我々ガ是マデ納稅
ト云フモノニ付テ考ヘテ居リマシタ考ヘ方
モ、事實餘程是ハ考ヘテ見ナケレバナラヌ
點ガ澤山出來テ參リマシタノデ、先般來モ
大藏省御當局トノ企畫ニ依リマシテ、納稅
ニ對スル眞ニ皇國納稅理念ノ闡明ニナルヤ
ウチ方圖ニ付テ色々御相談ガアリマシタ、
徵稅ノ上ニ斯ウ云フ皇國租稅理念ヲ確立サ
レルコトハ必要デモアリマセウガ、文部省
ト致シマシテハ、一方國民〓育ノ上ニ於テ眞
ニ皇國ノ租稅理念ト云フモノヲ確立致シ
マシテ、シツカリ〓育ヲ致スコトガ喫緊ノコト
ト存ズルノデアリマス、只今御話ニナリマ
シタヤウナ御趣旨デ十分檢討ヲ致シ、ハツ
キリト闡明致シテ參リマシテ、之ニ基イテ
〓育ノ方面モ十分徹底スルヤウニヤツテ行
キタイ、斯樣ニ存ジテ居ル次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=131
-
132・瀧澤七郎
○瀧澤委員 私ガ申上ゲルコトハ甚ダ釋迦
ニ說法ノヤウデアリマスルガ、一、二氣ガ付イ
タ點ヲ申上ゲマシテ御參考ニシテ、尙ホ一層
只今御述べ下サイマシタ御趣旨ニ從ツテ
國民〓育ニ於テ十分ニ少國民ノ心理ヲ把握
シテ、サウシテ納稅ニ對スル本當ノ信念ヲ
養ツテ戴キタイト思フノデアリマス、更に
見マスルト、初等科ノ〓科書ノ算術ノ中ニ
稅金ノコトニ關シテハ唯通行稅表ト云フモ
ノガアツテ初メテソコニ稅ト云フ文字ガ表
ハレテ參ル、唯通行稅ト云フコトガ書イテ
アルノデス、然ルニ貯蓄トカ郵便關係ノ問
題ハ相當ニ多イノデアリマスガ、算數上ノ
ニハ唯僅カニ通行稅ヲ加算スルトカ云フ問
題ガ一ツアルダケデアリマス、是等ヲモウ
少シ何トカ御考ヘヲ戴キタイト思ヒマス、
ソレカラ貯蓄ト云フヤウナコトハ子供ガ學
校デ郵便貯金トカ何トカ言フカラ直接影響
ガ具體的ニ現ハレルガ、稅金ノ方ハ子供ニ
直チニ影響ガ現ハレル譯デハナイ、隨テ少
シク閑却サレタ形ガアリハシナイカト思ヒ
マス、尙ホ氣ガ付イタコトハ初等科六年ノ
本ニ日〓戰爭カラ大東亞戰爭ニ至ル間ノ戰
費ノ〓數摘記取扱ト之ニ關聯セル少國民ノ
心構ヘニ付テ稅ト國庫、戰費ニ付テ一言モ
表示サレテ居ラナイコトハ稅〓育ニ付テ最
初ノ機會ヲ取逃ガシタヤウニ感ジテ居リマ
ス又例ヘバ算數以外ニ於キマシテ元寇ノ
役ニ於テ上下一致シタ例トカ、更ニ日〓、
日露ノ國家ヲ擧ゲテ當時興亡ヲ期シタ戰ヒ
ニ於ケル戰力ヲ基礎トシタ國民各自ノ戰力
增强ノ事實トシテノ納稅ト國庫、戰費ヘノ
御奉公ナドニ付テ强ク兒童ノ心ニ納稅ヲ以
テ御奉公ヲスルモノデアルト云フ心持ヲ、
此ノ邊デ目立タセルヤウニ工夫シテ御說キ
下サルヤウニシテ戴イタナラバ如何カト思
ヒマス、ソレカラ現行〓科書ニ引用サレテ
居ル明治天皇ノ御勅語、是ハ〓師用バカリ
デナク、簡單ナコトデアリマスカラ兒童ノ
方ニモ入レテ戴キタイ、〓師用ニハ租稅ハ
國家ノ大事人民休威ノ係ル所ナリト仰セ給
フト示シテアリマスガ、是ハ寧ロ兒童用〓
科書ニ御說キ下サルコトガ却テ少國民ニ好
イ影響ヲ與ヘルノデハナイカト考ヘマス、
以上私ノ氣付イタ二三ノ點ニ付テ御一考
ヲ願ヒタイト思ヒマス、尙ホ〓材ニ見ル稅
ト云フ文字ノ使用サレテ居ル具體的ノ事實
ト其ノ文章ヲ見テ、兒童ガ稅ト云フモノハ
國民ノ生活ヲ暗クスルモノデハナイカト云
フ印象ヲ受ケハセヌカト云フ心配、洵ニ素朴
ナ氣持デ私見テ居リマシタガ、サウ云フ點
ガアリマスノデ、モウ少シ明ルイ氣分ヲ生徒
ニ持タセルヤウ御示シヲ御願ヒ致シマス、
我々ノ〓育セラレタ時代ノ權利義務ナドデ
ナク、此ノ戰爭ガ何年掛カルカ分リマセヌ、
又戰爭ガ濟ンダトシテモ、稅金ガ今ヨリズ
ツト安クナルトハ考へラレマセヌシ、只今
御話ノアツタ小國民靑年學校ヲ通ジテ十分
注意シテ居ルト云フ御說明デ私モ非常ニ滿
足デアリマスガ、尙ホモウ一層國力ト稅ト
ノ密接ナ關係ヲモツト具體的ナ例證ヲ兒童
ノ心ニ刻ミ込マセル、例ハ義農ノ作兵衞サ
ンノ話一ツガ載ツテ居ルダケデスガ、日本
全國ヲ通ジテ作兵衞サン一人デハナカラウ
ト思ヒマスカラ、斯樣ナ點ニ付テ特ニ將來
ノ國民ヲ〓育シテ戴キタイト思ヒマシテ、
甚ダ老婆心ノヤウデ恐縮デアリマスガ、之
等ニ付テノ御考ヘヲ承リタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=132
-
133・近藤壽治
○近藤政府委員 只今縷〓御意見ナリ御希望
ナリヲ拜聽致シマシテ私モ同感デアリマス、
今後一層御趣旨ニ副フヤウニヤツテ行キタ
イト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=133
-
134・中島彌團次
○中島委員長 阿子島俊治君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=134
-
135・阿子島俊治
○阿子島委員 私ハ極メテ簡單ニ御伺ヒ致
シマス、今囘御提案ノ所得稅法外二十九法
律中改正法律案ハ、其ノ法案ノ中ニハ命令
事項ガ頗ル多イノデアリマス、是ガ實施ニ
當リマシテハ先般大藏省主稅局長カラ御配
付ニナリマシタ所得稅法外二十九法律中改
正法律案命令案要綱ニ據ルモノト信ズルノ
デアリマス、之ニ對スル政府當局ノ御明答
ヲ乞ヒタイノデアリマス、尙ホ此ノ命令事
項ニ付テハ法案ニ基イテ一ツ御尋ネ致シタ
イト思ヒマスガ、時間ノ關係上省略シマス、
就キマシテハ此ノ配付ニナリマシタ所得稅
法外二十九法律中改正法律案命令案要綱ヲ
速記錄ニ留メラレンコトヲ求メル次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=135
-
136・松隈秀雄
○松隈政府委員 只今阿子島委員カラ御尋
ネノアリマシタ所得稅法外二十九法律中改
正法律案ニゴザイマス命令ヲ以テ定ムル事
項ト云フモノニ付キマシテハ、其ノ主ナル
事項ハ所得稅法外二十九法律中改正法律案
命令案要綱ト致シマシテ御參考マデニ御手
許ヘ配付致シタ次第デアリマス、是ハ勅令、
省令等ヲ作ル時ノ大體ノ考ヘ方デアリマス
ガ、法案ヲ審議シテ戴ク上ニ於キマシテ當
局ガ斯樣ナ考ヘヲ持ツテ居ルト云フコトヲ
明カニシテ御參考ニ供シタ次第デアリマス
ノデ、法案通過ノ曉ニ於キマシテ、其ノ命
令事項ヲ規定スルニ際シマシテハ、提出致
シマシタ資料ノ趣旨ヲ能ク尊重シテ立案致
シタイト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=136
-
137・中島彌團次
○中島委員長 只今阿子島君御話シノ所得
稅法外二十九法律中改正法律案命令案要綱
ハ之ヲ速記錄ニ揭載スルコトニ致シマス、
以上デ次ノ質疑ノ通告者モアリマセヌ、是
ニテ質疑ハ終局致シマシタ、明日ハ午後一
時ニ開會致シマス、ソレカラ政府ヨリ提出
サレマシタ參考資料中、極祕取扱ノモノガ
アリマスガ、此ノ取扱ニ付テハ十分ニ御注
意下サランコトヲ御願ヒ申上ゲマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後六時二十一分散會
〔田中(貢)委員發言參照〕
95萬圓633,333221,666728,333131,028-14,567116,461469,97714,56758,267880,938
13,03313,03352,133780,937,853
85萬圓566,666198,333651,666117,228104,195413,243
-
575,00011,50091,928356,51011,50046,000,843
75萬圓500,000175,000103,428680,938
-
96,52810,73385,79510,73342,932,837
70萬圓466,666163,333536,666328,144630,937
鑛業稅金負擔額調(十九年改正案ニ依ル)400,00082,7289,20073,5289,20036,800532,938,824
60萬圓140,000460,000273,410稅割合ハ營業稅及同附加稅ヲ經費トシ控除シテノ計算
333,333116,666383,33368,9287,66761,261220,5097,66730,666436,769,811
50萬圓
控除差引
益額額稅稅稅稅計
課稅基本額得得ニ對スル
利稅加合
得所所業益)
得附額合
得營業類合(利)割
稅別得ノ註
利利所分綜營同稅所稅
〔阿子島委員發言參照〕
所得稅法外二十九法律中改正法律案命
令案要綱
ー所得稅關係
1第十條第一項關係
(一)丙種ノ事業所得ニ屬スル報酬、
料金等ハ左ニ揭グル者ヨリ支拂ヲ受
クルモノトスルコト但シ「(二)ノ(二)」
ニ揭グル報酬、料金等ニ付テハ總テ
丙種ノ事業所得トスルコト
イ法人
ロ甲種ノ勤勞所得ニ付源泉課稅ヲ
爲ス個人
ハ左ニ揭グル個人ニシテ稅務署長
ノ指定シタルモノ
(1)人夫供給業者
(2)作業請負業者
(3)常時五人程度以上ノ丙種ノ事
業所得ニ屬スル勞務者ヲ使用ス
ル者
(二)所得稅法施行地ニ於テ支拂ヲ受
クル左ニ揭グル報酬、料金等ニシテ
甲種ノ事業所得及勤勞所得ニ屬セザ
ルモノトスルコト
イ大工、左官、石工、鳶職、土工
仲仕、荷扱運搬夫、船夫等其ノ他
此等ノ勞務者ニ準ズル者ノ受クル
報酬、料金
ロ派出看護婦、派出婦、接客從業
員其ノ他此等ノ勞務者ニ準ズル者
ノ受クル報酬、料金
ハ外交員、集金人其ノ他此等ノ勞
務者ニ準ズル者ノ受クル報酬、料
金
ニ原稿、筆稿、作曲及音盤吹込ノ
料金、著作權ノ使用料及講演料竝
ニ此等ノ性質ヲ有スル報酬、料金
2第十二條第八項關係
(一)前年一月一日ヨリ十一一月三十一
日迄ニ住所又ハ一年以上居所ヲ有ス
ルニ至リタル者ノ所得ニ付テハ其ノ
年一月一日ヨリ十二月三十一日迄ノ
所得ヲ豫算シテ計算スルコト
(二)其ノ年一月一日ヨリ其ノ年分所
得金額ノ決定前ニ住所又ハ一年以上
居所ヲ有スルニ至リタル者ノ所得ニ
付テハ住所又ハ一年以上居所ヲ有シ
タル日ヨリ其ノ年十二月三十一日迄
ノ所得ヲ豫算シテ計算スルコト
3第十七條第二項但書關係
原稿、筆稿、作曲及音盤吹込ノ料金、
著作權ノ使用料及講演料竝ニ此等ノ性
質ヲ有スル報酬、料金トスルコト
4第二十一條第三項關係
左ニ揭グル法人ニ對スル預金ノ利子ト
スルコト
(一)鹽業組合、工業組合、商業組合、
統制組合、貿易組合、漁業協同組合、
漁業會、製造業會、自動車運送事業組
合
(二)鹽業組合聯合會、工業組合聯合
會商業組合聯合會、貿易組合聯合
會自動車運送事業組合聯合會、農
林中央金庫、商工組合中央金庫
(AI)恩給金庫、庶民金庫
5同條第四項關係
信託財產ノ運用方法ヲ預入、貸付又ハ
公債若ハ社債ノ買入ノミニ限定シタル
合同運用信託ノ利益トスルコト
6同條第五項關係
(1)元本額ハ支拂ヲ受クベキ預金ノ
利子金額又ハ合同運用信託ノ利益金
額ヲ年額ニ換算シタルモノヲ當該預
金又ハ合同運用信託ノ年利率又ハ年
利率ニ相當スル利率若ハ收益交付率
ヲ以テ除シ之ヲ計算スルコト
(二)右ノ場合ニ於テ同一人ガ同一支
拂者ニ對シ二口以上ノ預金又ハ合同運
用信託ヲ有スルトキハ此等ノ預金又
ハ合同運用信託ヲ合算シタルモノニ
依リ之ヲ計算スルコト
7第三十條第七項關係
「2第十二條第八項關係」ノ場合ト同樣
トスルコト
8第三十四條第一項但書關係
所得ノ種類及金額、所得ノ基本タル資
產又ハ事業ノ所在地、所得ノ發生スル
場所竝ニ所得算出ノ基礎ヲ詳記シ申〓
セシムルコト
9同條第三項關係
(1)其ノ年一月一日ヨリ二月末日迄
ニ法人ヨリ利益若ハ利息ノ配當又ハ
剩餘金ノ分配ヲ受ケ新ニ納稅義務ヲ
有スルニ至リタル者ハ所得ノ種類及
金額、所得ノ基本タル資產又ハ事業
ノ所在地、所得ノ發生スル場所竝ニ
所得算出ノ基礎ヲ詳記シ申〓セシム
ルコト
(二)納稅義務者ニシテ右以外ノモノ
ハ其ノ年一月一日ヨリ一一月末日迄ニ
法人ヨリ受ケタル利益若ハ利息ノ配
當又ハ剩餘金ノ分配ニ付申告セシム
ルコト
10第七十二條第二項關係
丙種ノ事業所得ニ對スル分類所得稅ハ
左ノ金額ニ稅率百分ノ十五ヲ乘ジテ徵
收スルコト
(一)「1第十條第一項關係(二)イ及
ロ」ノ報酬、料金ニ付テハ一日三圓
程度ヲ控除シタル金額
(二)「1第十條第一項關係(二一)ハ及
ニ」ノ報酬、料金ニ付テハ其ノ十分
ノ二程度ヲ控除シタル金額
11第七十二條ノ二關係
分類所得稅ノ還付ヲ受ケントスル者ハ
其ノ事由ヲ具シ翌年一月三十一日迄ニ
申請スルコト
12第七十三條第一項但書關係
年二期ニ於テ徵收スルハ所得稅ノ年額
ガ六十圓程度(同居家族分ヲ合算シタ
ルモノニ依ル)未滿ノ場合トスルコト
13第七十六條ノ二關係
(一)其ノ年一月一日ヨリ其ノ年分所
得金額ノ決定前ニ住所及居所ヲ有
セザルニ至ル者ニ付テハ其ノ年分所
得中所得稅法第十二條及第三十條ノ
規定ニ依リ豫算スベキ所得ニ付テハ
所得稅ヲ課稅セザルコト
(二)其ノ年分所得金額ノ決定後其ノ
年中ニ住所及居所ヲ有セザルニ至
ル者ニ付テハ住所及居所ヲ有セザ
ルニ至リタル後ニ於テ納付スベキ所
得稅中所得稅法第十二條及第三十條
ノ規定ニ依リ豫算シタル所得ニ對ス
ル稅額ヲ免除スルコト
14第七十九條及第八十條第一項關係
「1第十條第一項關係(一一)」ニ揭グル報
酬料金トスルコト
二法人稅關係
第七條關係
法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併法
人ガ被合併法人ノ積立金額ヲ承繼シタ
ル場合ハ當該積立金額ヲ合併ノ日ヨリ
合併法人ノ資本金ニ算入スルコト
三特別法人稅關係
第十條關係
(一)解散シタル特別ノ法人ノ〓算剩餘
金ハ殘餘財產確定シタルトキ其ノ分
配前ニ申〓セシムルコト但シ殘餘財
產ヲ數囘ニ分チテ分配スルトキハ分
配ノ都度申告スルコト
(二)合併ニ因リテ消滅シタル特別ノ法
人ノ〓算剩餘金ハ合併ノ日ヨリ十四
日以內ニ合併後存續スル特別ノ法人
又ハ合併ニ因リテ設立シタル特別ノ
法人ヨリ申告スルコト
四臨時利得稅關係
第六條關係
法人合併ヲ爲シタル場合ニ於テ合併法
人ガ被合併法人ノ積立金額ヲ承繼シタ
ル場合ハ當該積立金額ヲ合併ノ日ヨリ
合併法人ノ資本金ニ算入スルコト
五地租關係
第七十三條ノ二關係
地租ノ徵收ノ猶豫ハ各納期ニ於ケル地
租額二百圓ヲ超ユル場合トスルコト
地租ノ徵收ノ猶豫ヲ受ケントスル者ハ
納期開始前三十日迄ニ土地所在ノ市町
村ヲ經由シ稅務署長ニ申請スルコト
六家屋稅關係
第五十四條ノ二關係
家屋稅ノ徵收ノ猶豫ハ納期ニ於ケル家
屋稅額二百圓ヲ超ユル場合トスルコト
家屋稅ノ徵收ノ猶豫ヲ受ケントスル者
ハ納期開始前三十日迄ニ家屋所在ノ市
町村ヲ經由シ稅務署長ニ申請スルコト
七通行稅關係
1第二條ノ二第一項關係
區間制ニ依リ運賃ヲ定メタル線路、路線
及航路ニシテ左ニ揭グルモノニ付テハ
通行稅ハ法案第二條ノ二第一項ノ規定
ニ依リ課稅スルコト
(1)線路及路線
(二)起終點間ノ粁程百粁程度以下ノ
航路
2第六條第二號關係
(一)均一制ニリ依運賃ヲ定メタ區間
ヲ乘車船スル契約ヲ爲シタル場合ニ
於テハ該乘車船契約ニ依リ乘車船
シ得ベキ區間中最モ短キモノニ依リ
乘車船區間ノ粁程ヲ計算スルコ
(二)右以外ノモノニシテ運賃ヲ均一ニ
定メタル區間ヲ乘車船スル契約ヲ爲
シタル場合ニ於テハ該乘車船契約ノ
運賃計算ノ基準ト爲リタル粁程ニ依
リ乘車船區間ノ粁程ヲ計算スルコト
3第六條第四號關係
連絡運輸ノ契約ヲ爲シタル場合ニ於テ
ハ乘車船區間ノ粁程ハ運輸業者每ニ之
ヲ計算スルコト
4第六條第五號關係
同一契約ニ依リ汽車、電車、乘合自動
車又ハ汽船ノ中二以上ニ乘車船シタル
場合ニ於テハ乘車船區間ノ粁程ハ汽車
及電車、乘合自動車、汽船各別ニ之ヲ
計算スルコト
5第八條但書關係
連絡運輸ノ場合ニ於ケル通行稅ハ各運
輸業者ガ自己ノ取得スベキ運賃、急行
料金又ハ寝臺料金ヲ領收シタル月ノ翌
月末日迄ニ最寄ノ日本銀行ノ本店、支
店又ハ代理店ニ拂込ムベキコト
八酒稅關係
1第四條第二項關係
〓酒ニ混和スル物品トシテアルコール
ノ外燒酎等ヲ指定シ酒類製造者ヲシテ
混和ノ數量(アルコール又ハ燒酎ハア
ルコール分ニ於テ〓酒ト同量以內ニ制
限ス)等ヲ定メテ申請ヲ爲サシムルコ
ト
2第二十七條第二項及第八十三條第一
項關係
同項ノ酒類ニシテ酒類指定價格上ノ成
分規格トシテ定メラレタルアルコール
分ヲ一定程度超ユルモノニ對シテハ當
該成分規格トシテ定メラレタルアルコ
ール分ヲ超ユル一度每ニ同項ニ定ムル
金額ヲ加算シタル稅率ヲ適用スルコト
3第二十七條ノ三第一項關係
所轄稅務署ニ於テ酒類ノ種類及數量竝
ニ移出及移入ノ時期、場所及方法等ヲ
指定スルコト
4第二十七條ノ三第四項關係
配給統制實施機關タル酒類販賣會社等
ヲ指定シ所轄稅務署ノ指示ニ依リ價格
特配酒ノ販賣ヲ爲シタルトキハ當該事
實ヲ證スベキ書面ヲ添附シ所轄稅務署
ニ申請ヲ爲サシムルコト
5第二十七條ノ四關係
(1)政府ヨリ拂下ヲ受ケ又ハ外地ヨリ
移入シタルアルコール又ハ酒類等ヲ
原料トシテ製造シタル酒類ニ付テハ
製造者ノ申請ニ依リ酒稅ヲ一定程度
輕減シ又ハ免除スルコト(第一號)
(2)所轄稅務署ノ指定シタル製造方法
ニ依リ製造スル酒類ノ原料ニ供スル
酒類ニシテ特定ノ要件ニ該當スルモ
ノニ付テハ酒稅ヲ一定程度輕減スル
コト(第二號)
6第三十五號第一項關係
酒類指定價格上ノ成分規格トシテ定メ
ラレタルアルコール分ヲ一定程度超ユ
ル酒類ニ付テハ當該アルコール分每ニ
移出石數ノ申〓ヲ爲サシムルコト
7第三十六條ノ二關係
(1)第一號ニ該當スル場合ニ於テハ所
轄稅務署長ニ於テ酒稅保全上必要ア
リト認ムルトキハ直ニ酒稅ヲ徵收シ
得ルコト
(2)第二號ノ場合ニ於テハ酒稅法第二
十七條ノ四第二號該當ノ原料酒類ヲ
同一製造場內ニ於テ當該原料ニ供シ
タルトキハ一定ノ納期ヲ定メテ酒稅
ヲ徵收スルコト
8第四十三條關係
所轄稅務署長ニ於テ酒稅保全上必要ア
リト認ムルトキハ範圍及期間等ヲ指定
シテ擔保ノ提供又ハ酒類ノ保存ヲ命ズ
ルコトヲ得ルコト
9第四十八條ノ二關係
酒類ノ製造石數及アルコール分ハ製成
ノ時容器ノ容量ニ依リ一容器每ニ之ヲ
實測スルコト
九砂糖消費稅關係
1第四條ノ二關係
大藏大臣ノ指定スル者ガ製造場又ハ保
稅地域ヨリ引取ル砂糖、糖蜜又ハ糖水
ノ消費稅ニ付テハ擔保ヲ提供セザルト
キト雖モ引取リタル月ノ翌月末日迄其
ノ徵收ヲ猶豫スルコト
2第四條ノ三關係
一定ノ包裝ヲ爲シ移入場ヨリ引取ラル
ル砂糖ニシテ其ノ包裝ノ種類竝ニ一包
裝每ノ容量及取引斤數ニ付大藏大臣ノ
承認ヲ受ケタルモノノ斤數ハ其ノ取引
斤數ニ大藏大臣ノ定ムル斤數ヲ加ヘタ
ルモノニ依ルコト
3第十七條ノ五關係
徵收補助團體ノ帳簿ニハ徴收事務ノ補
助等ニ關シ必要ナル一定ノ事項ヲ記載
スベキモノトスルコト
4第十七條ノ七關係
(一)徵收補助團體ノ代表者ニ於テ當
該團體員ノ申〓書ヲ取纏メ提出シダ
ルトキハ所轄稅務署長ハ各團體員ノ
納付スベキ特別消費稅額ノ內譯書ヲ
添附シテ其ノ合計額、納期日及納付
場所ヲ指定シ告知スルコト
(二)徵收補助團體ノ代表者前號ノ通
知ヲ受ケタルトキハ直ニ各團體員ニ
對シ其ノ納付スベキ特別消費稅額、
團體ニ拂込ムベキ期日等ヲ通知スベ
キコト
十織物消費稅關係
1第一條關係
第一條但書ノ規定ニ依リ消費稅ヲ課セ
ザル織物ハ全重量百分中五十以上ノ綿
トステープルファイバートノ混紡絲又
ハ之ト綿絲トヲ以テ組成スル織物トス
ルコト
2第二十三條關係
徵收補助團體ノ帳簿ニハ徵收事務ノ補
助等ニ關シ必要ナル一定ノ事項ヲ記載
スベキモノトスルコト
十一物品稅關係
1第二條第三項關係
法第一條第一種第二十五號ニ揭グル物
品中一反ノ價格十五圓未滿ノ着尺地、
裏地及夜具地ニシテ大藏大臣ノ指定ス
ルモノニ付テハ法第二條第三項ノ規定
ニ依リ百分ノ二十ノ稅率ニ依ルコト
2第六條關係
法第六條ニ定ムル物品ハ改正前ノ法第六
條ニ規定スル物品ノ外ジヤム、食品加工
料、防蟲劑、殺蟲劑、防臭劑等トスルコト
3第七條關係
法第七條第二號ニ定ムル第二種ノ物品
ハ紙ヲ原料トシテ使用シタル文房具又
ハ〓品加工料、飴葡萄糖、麥芽糖若
ハ蜂蜜ヲ原料トシテ使用シタル嗜好飮
料又ハ菓子等トスルコト
4第十二條第一項關係
法第十二條第一項第一號但書ニ定ムル
物品ハ法第一條ニ揭グル第二種ノ物品
(紙ヲ除ク)ノ製造ノ用ニ供スル板硝子
及紙竝ニ嗜好飮料又ハ菓子ノ製造ノ用
ニ供スル調味料、食品加工料、飴葡
萄糖、麥芽糖及蜂蜜等トスルコト
5第十六條ノ二關係
(一)大藏大臣又ハ稅務署長必要アリ
ト認ムルトキハ第一種ノ物品ノ小賣
業者又ハ第二種若ハ第一一種ノ物品ノ
製造者ニ對シ其ノ販賣又ハ移出シタ
ル當該物品ノ代金ヲ受取リタルトキ
ハ受取書ヲ支拂者ニ交付シ又ハ受取
書等ニ納稅證紙ヲ貼用スベキコトヲ
命ズルコトヲ得ルコト
(二)前項ノ規定ニ依リ納稅證紙ヲ貼
用スル場合ニシテ受取書一通等每ニ
算出シタル稅額ニ十錢ニ滿タザル端
數ヲ生ズル場合ハ其ノ端數ガ五錢以
上ナルトキハ之ヲ五錢トシ五錢ニ滿
タザルトキハ之ヲ切捨ツルコト
6第十六條ノ三關係
(一)納稅證紙ハ第一種ノ物品ノ小賣
業者又ハ第二種若ハ第三種ノ物品ノ
製造者ニ對シ稅務署長之ヲ交付スル
コト但シ稅務署長必要アリト認ムル
トキハ徵收補助團體ノ代表者ヲ經由
シテ之ヲ各其ノ團體員ニ交付シ得ル
コト
(二)納稅證紙ヲ貼用スルトキハ受取
書ノ紙面等ト納稅證紙ノ彩紋トニカ
ケテ自己ノ印章又ハ署名ヲ以テ判明
ニ消スベキコト
7第二十五條ノ三關係
徵收補助團體ノ帳簿ニハ徵收事務ノ補
助等ニ關シ必要ナル一定ノ事項ヲ記載
スベキモノトスルコト
8第二十五條ノ五關係
(一)徵收補助團體ノ代表者ニ於テ當
該團體員ノ申告書ヲ取纏メ提出シタ
ルトキハ所轄稅務署長ハ各團體員ノ
納付スベキ物品稅額ノ內譯書ヲ添附
シテ其ノ合計額、納期日及納付場所
ヲ指定シテ告知スルコト
(二)徵收補助團體ノ代表者前號ノ〓
知ヲ受ケタルトキハ直ニ各團體員ニ
對シ其ノ納付スベキ物品稅額及團體
ニ拂込ムベキ期日等ヲ通知スベキコ
ト
十二遊興飮食稅關係
1第二條第二項關係
法第二條第二項ノ料理店ハ納稅切符ヲ
使用スベキ料理店トシ稅務署長之ヲ指
定スルコト
2第九條ノ二關係
(一)法第一條第一項ニ規定スル場所
ノ經營者遊興、飮食又ハ宿泊ノ料金
ヲ領收シタルトキハ大藏大臣ノ定ム
ル料金領收書ニ納稅證紙ヲ貼用シ支
拂者ニ交付スベキコト但シ所轄稅務
署長ノ指定ヲ受ケタル場所ニ於テハ
納稅切符ヲ支拂者ニ交付スベキコト
(二)前項ノ規定ニ依リ納稅證紙ヲ貼
用スル場合ニ於テ料金領收書一通每
ニ算出シタル稅額ニ十錢ニ滿タザル
端數ヲ生ズルトキハ之ヲ切捨ツルコ
ト
3第九條ノ三關係
(一)納稅證紙又ハ納稅切符ハ法第一
條第一項ニ規定スル場所ノ經營者ニ
對シ稅務署長之ヲ交付スルコト但シ稅
務署長必要アリト認ムルトキハ徵收
補助團體ノ代表者ヲ經由シテ之ヲ各
其ノ團體員ニ交付シ得ルコト
(二)納稅證紙ヲ貼用スルトキハ料金領
收書ノ紙面ト納稅證紙ノ彩紋トニカ
ケテ、納稅切符ヲ使用スルトキハ納
稅切符ト其ノ控トニカケテ自己ノ印
章又ハ署名ヲ以テ判明ニ消スベキコ
ト
4第十八條關係
徵收補助團體ノ帳簿ニハ徵收事務ノ補
助等ニ關シ必要ナル一定ノ事項ヲ記載
スベキモノトスルコト
5第二十條關係
(一)徵收補助團體ノ代表者ニ於テ當
該團體員ノ申告書ヲ取纒メ提出シタル
トキハ所轄稅務署長ハ各團體員ノ納
付スベキ遊興飮食稅額ノ內譯書ヲ添
附シテ其ノ合計額、納期日及納付場
所ヲ指定シテ告知スルコト
(二)徵收補助團體ノ代表者前號ノ〓
知ヲ受ケタルトキハ直ニ各團體員ニ對
シ其ノ納付スベキ遊興飮食稅額及團
體ニ拂込ムベキ期日等ヲ通知スベキコー
十三入場稅關係
1第二條關係
法第二條ニ揭グル第二種第三號ノ場所
トシテ卓球場、釣堀場ノ外左ノ場所ヲ
定ムルコト
射的場、半弓場、ローラースケート
場其ノ他之ニ類スル遊技場
二貸ボート場、貸船(釣網船ヲ含ム)
場
2第八條ノ二關係
(一)第三種ノ催物若ハ設備ノ主催者
若ハ經營者ハ入場料領收ノ際稅金相
當額ヲ表示シタル入場劵ヲ發行スベ
キコト但シ稅務署長ノ承認ヲ受ケタ
ルトキハ此ノ限ニ在ラザルコト
(二)大藏大臣又ハ稅務署長必要アリ
ト認ムルトキハ第二種ノ場所ノ經營
者等ニ對シ入場料ヲ領收シタルトキ
ハ料金領收書ヲ支拂者ニ交付シ又ハ
之ニ納稅證紙ヲ貼用スベキコトヲ命
ズルコトヲ得ルコト
(1)前項ノ規定ニ依リ納稅證紙ヲ貼
用スル場合ニシテ料金領收書一通每
ニ算出シタル稅額ニ十錢ニ滿タザル
端數ヲ生ズル場合ハ其ノ端數ガ五錢
以上ナルトキハ之ヲ五錢トシ五錢ニ
滿タザルトキハ之ヲ切捨ツルコト
3第八條ノ三關係
(一)納稅證紙ハ第二種ノ場所ノ經營
者等ニ對シ稅務署長之ヲ交付スルコ
ト但シ稅務署長必要アリト認ムルト
キハ徵收補助團體ノ代表者ヲ經由シ
テ之ヲ各其ノ團體員ニ交付シ得ルコ
ト
(二)納稅證紙ヲ貼用スルトキハ料金
領收書ノ紙面ト納稅證紙ノ彩紋トニ
カケテ自己ノ印章又ハ署名ヲ以テ判
明ニ消スベキコト
4第二十條關係
徵收補助團體ノ帳簿ニハ徵收事務ノ補
助等ニ關シ必要ナル一定ノ事項ヲ記
載スベキモノトスルコト
5第二十二條關係
(一)徵收補助團體ノ代表者ニ於テ當
該團體員ノ申〓書ヲ取纏メ提出シタ
ルトキハ所轄稅務署長ハ各〓體員ノ
納付スベキ入場稅額ノ內譯書ヲ添附
シテ其ノ合計額、納期日及納付場所
ヲ指定シテ告知スルコト
(二)徵收補助團體ノ代表者簡號ノ〓
知ヲ受ケタルトキハ直ニ各團體員ニ
對シ其ノ納付スベキ入場稅額及團體
ニ拂込ムベキ期日等ヲ通知スベキコ
ト
十四特別行爲稅關係
1第一條第七號關係
命令ヲ以テ定ムルモノハ左ノモノトス
ルコト
(一)寫眞引伸機及映寫機
(二)寫眞機、寫眞引伸機、映寫機、蓄
音器又ハ樂器ノ部分品又ハ附屬品
2第一條第八號關係
命令ヲ以テ定ムルモノハ保險證劵、預金通
帳、貯金通帳、積金通帳、預金證書、貯金
證書、積金證書、信託證書、無盡契約證
書登錄濟通知證及登錄濟證等トスル
マト
3第十二條ノ二關係
(1)大藏大臣又ハ稅務署長ハ必要ア
リト認ムルトキハ法第一條ニ揭グル
行爲ヲ爲ス業ヲ營ム者ニ對シ法第三
條ニ規定スル料金ヲ領收シタルトキ
ハ料金領收書ヲ支拂者ニ交付シ又ハ
其ノ料金領收書ニ納稅證紙ヲ貼用ス
ベキコトヲ命ズルコトヲ得ルコト
(二)前項ノ規定ニ依リ納稅證紙ヲ貼
用スル場合ニシテ料金領收書一通每
ニ算出シタル稅額二十錢ニ滿タザル
端數ヲ生ズル場合ハ其ノ端數ガ五錢
以上ナルトキハ之ヲ五錢トシ五錢ニ
滿タザルトキハ之ヲ切捨ツルコト
4第十二條ノ三關係
G納稅證紙ハ法第一條ニ揭グル行
爲ヲ爲ス業ヲ營ム者ニ對シ稅務署長
之ヲ交付スルコト但シ稅務署長必要
アリト認ムルトキハ徵收補助團體ノ
代表者ヲ經由シテ之ヲ各其ノ團體員
ニ交付シ得ルコト
(二)納稅證紙ヲ貼用スルトキハ料金
領收書ノ紙面ト納稅證紙ノ彩紋トニ
カケテ自己ノ印章又ハ署名ヲ以テ判
明ニ消スベキコト
5第二十條關係
徵收補助團體ノ帳簿ニハ徵收事務補助
等ニ關シ必要ナル一定ノ事項ヲ記載ス
ベキモノトスルコト
6第二十二條關係
(1)徵收補助團體ノ代表者ニ於テ當
該團體員ノ申〓書ヲ取纒メ提出シタ
ルトキハ所轄稅務署長ハ各團體員ノ
納付スベキ特別行爲稅ノ內譯書ヲ添
附シテ其ノ合計額、納期日及納付場
所ヲ指定シ告知スルコト
(二)徵收補助團體ノ代表者前號ノ通
知ヲ受ケタルトキハ直ニ各團體員ニ
對シ其ノ納付スベキ特別行爲稅額、
團體ニ拂込ムベキ期日等ヲ通知スベ
キコト
十五骨牌稅關係
1第四條關係
第二項ニ規定スル骨牌ハ外國ニ輸出ス
ル四色牌、白牌及紙製ドミノトスルコ
ト
十六印紙稅關係
1第五條第十四號關係
(一)命令ヲ以テ定ムル法人ハ特別法
人稅法第二條ニ揭グル法人ノ外施設
組合、商業小組合、相互會社等トス
ルコト
(二)命令ヲ以テ定ムル者ハ農業國體
法施行令第二十五條及水產業團體法
施行令第二十八條ノ規定ニ依リ出資
ノ義務ナキ者等トスルコト
2第六條關係
(一)稅印ノ押捺ヲ受ケントスル者ハ
印紙稅額ニ相當スル現金ヲ稅務署ニ
納付シ其ノ領收書ヲ添ヘ大藏大臣ノ
指定スル財務局又ハ稅務署ニ其ノ旨
ヲ申請スルコト
(二)一定ノ表示ヲ爲サントスル者ハ
其ノ旨ヲ所轄稅務署ニ申請シテ承認
ヲ受ケ印紙稅額ニ相當スル現金ヲ納
付シ當該證書帳簿ニ大藏大臣ノ定ム
ル表示ヲナスベキコト
3第六條ノ二關係
(一)特別當座預金通帳又ハ通知預金
通帳ニ付印紙稅法第六條ノ二ノ規定
ニ依リ政府ノ承認ヲ受ケントスル者
ハ申請書ヲ每年三月十五日迄ニ所轄
稅務署ニ提出シ承認ヲ受クベキコト
(二)前項ノ承認ヲ受ケタル者ハ其ノ
年三月三十一日現在ニ於テ其ノ發行
ニ係ル當該帳簿ニ付印紙稅法第六條
ノ二ノ規定ニ依リ算出シタル印紙稅
額ニ相當スル現金ヲ四月二十日迄ニ
所轄稅務署ニ納付スベキコト
(1)稅務署長ハ第一項ニ依リ承認シ
タル帳簿ニ付取締上必要ナル表示ヲ
爲サシムルコト
十七臨時租稅措置關係
1第一條ノ二關係
(一)運用ノ範圍ハ時局產業ノ設備ノ
新設、擴張又ハ國債證劵、政府保證
社債劵、國債貯金トスルコト
(二)運用期間ハ事業年度終了ノ日ヨ
リ設備ノ新設、擴張ニ付テハ二年以
內其ノ他ノモノニ付テハ六月以內ト
スルコト
2第一條ノ四關係
石炭鑛業、銅鑛業、化學肥料製造業及
造船業等ヲ營ム法人等ノ特別價格報奬
金中留保シタル金額アルトキハ其ノ留
保金額ノ百分ノ五十程度ヲ所得稅法ニ
依ル所得、法人稅法ニ依ル所得、營業
稅法ニ依ル純益及臨時所得稅法ニ依ル
利益ノ計算上之ヲ益金ニ算入セザルコ
ト
3第一條ノ九關係
(一)個人ノ銀行定期預金又ハ特定ノ
合同運用信託ニシテ預ケ入又ハ信託ノ
期間ヲ三年以上約シタルモノ(契約
ノ更新ニ依リ三年以上繼續スルコト
ヲ約シタルモノヲ含ム)ノ利子又ハ
利益ニ付テハ最初ニ支拂ヲ受クルモ
ノヨリ稅率ヲ百分ノ五輕減スルコト
但シ所得稅法第二十一條第四項ニ規
定スル預金又ハ合同運用信託ノ利子
又ハ利益ニ付テハ輕減セザルコト
(二)契約ノ更新ニ依リ繼續シタル個人
ノ銀行定期預金又ハ特定ノ合同運用
信託ノ利子又ハ利益ニ付テモ最初ノ
預ケ入又ハ信託ノ時ヨリ三年ヲ經過
シタル後ニ於テ支拂ヲ受クルモノヨ
リ稅率ヲ百分ノ五輕減スルコト
4第一條ノ十二關係
貯蓄銀行又ハ貯蓄銀行業務ヲ營ム銀行
ノ供託シタル公債及社債ノ利子ニシテ
供託期間內ニ生ジタル利子額ニ付免除
スルコト
5第一條ノ十三關係
銀行(日本銀行ヲ除ク)、生命保險會社
及無盡會社ノ登錄シタル公債及社債ノ
利子ニシテ其ノ登錄期間內ニ生ジタル
利子額ニ付免除スルコト
6第一條ノ十七乃至第一條ノ二十三、
第一條ノ二十八及二十一一條ノ三關係
防空法ノ規定ニ依リ不動產ノ讓渡ヲ爲
シタルトキ等トスルコト
7第一條ノ二十五關係
其ノ年分ノ山林ノ所得ガ昭和十七年中
ノ山林ノ所得ヲ超過スル場合ニ於ケル
其ノ超過額ニ相當スル部分ノ金額ノ十
分ノ三トスルコト
8第一條ノ三十一關係
控除ヲ受ケントスル者ハ所得ノ申〓ト
同時ニ其ノ旨申請スルコト
9第一條ノ三十二關係
當該特別ノ法人ヨリ剩餘金ノ分配前ニ
主務官廳ノ證明書ヲ所轄稅務署ニ提出
シ承認ヲ得シムルコト
10第一條ノ三十三關係
稅務署長ニ於テ合併ノ目的ヲ以テ株式
ヲ取得シタルモノニシテ所得稅、法人
稅又ハ營業稅ノ著シク輕減トナルモノ
ト認メタル場合ニ適用スルコト
11第一條ノ三十四關係
銀行(日本銀行ヲ除ク)、生命保險會社
及無盡會社トスルコト
12第一條ノ三十五關係
特別法人稅ノ輕減ヲ受ケントスル特別
ノ法人ハ〓算剩餘金ノ申告ト同時ニ主
務官廳ノ證明書ヲ添附シ其ノ旨申請ス
ルコト
13第一條ノ三十六關係
控除ヲ受ケントスル者ハ利得金額ノ申
告ト同時ニ其ノ旨申請スルコト
十八國庫出納金端數計算法關係
1第一條關係
命令ヲ以テ指定スル國稅ハ左ノ通トス
ルコト
(1)所得稅(源泉徵收分ヲ除ク)
(2)法人稅
(3)相續稅
(4)建築稅
(5)鑛區稅
(6)酒稅
(7)〓涼飮料稅
(8)砂糖消費稅
織物消費稅
物品稅
特別行爲稅
取引所稅
入場稅
(18)(17)(16)(15)(14)(13)12)(11)(10)(9)
廣告稅
馬劵稅
關稅
噸稅
臨時利得稅
特別法人稅
(20)(19地租
3家屋稅
:22)2營業稅
業〓益稅
412
乙種資本利子稅
(25(法人資本稅
2第四條關係
命令ヲ以テ指定スル國稅ハ左ノ通トス
ルコト
(1)所得稅(源泉徵收分ヲ除ク)
(2)個人ノ臨時利得稅
(3)個人ノ營業稅
(4)酒類造石稅
十九附則
-法案第三十五條第三項關係
燒酎等ノ酒類造石稅ニ付テハ法定ノ納
期ニ拘ラズ延納ヲ認メ得ルコトトスル
コト
二法案第三十五條第四項關係
滓引及貯藏減量控除竝ニ割水等ノ關係
ヲ考慮シ一定ノ標準ニ依リ計算シタル
造石稅實際負擔額ニ相當スル金額ヲ定
ムルコト
二十間接國稅犯則者處分法關係
1第八條關係
命令ヲ以テ定ムル間接國稅ハ遊興飮食
税入場稅、物品稅及特別行爲稅トス
ルコト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411589X00419440126&spkNum=137
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。