1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十九年一月二十四日(月曜日)午後一時一分開議
出席委員左の如し
委員長 中村梅吉君
理事 泉國三郎君 理事 田中伊三次君
理事 古田喜三太君
安藤覺君 伊藤清君
北村又左衞門君 藏原敏捷君
白川久雄君 田中勝之助君
田中藤作君 田村みのる君
田下政治君 中埜半左衞門君
南郷武夫君 西川貞一君
藤井伊右衞門君 本領信治郎君
松浦伊平君 松延彌三郎君
前田善治君 村澤義二郎君
桃原茂太君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 賀屋興宣君
出席政府委員左の如し
臺灣總督府財務局長 高橋衞君
大藏次官 谷口恒二君
大藏省國民貯蓄局長 氏家武君
大藏省理財局長 田中豐君
大藏書記官 窪谷直光君
專賣局長官 濱田幸雄君
專賣局理事 稻森實君
專賣局理事 濱田徳海君
專賣局理事 深澤家治君
鐵道監 堀木鎌三君
委員長の許可を得て出席したる者左の如し
軍需書記官 椙杜正太郎君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
昭和十九年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する法律案(政府提出)
學校特別會計法案(政府提出)
厚生保險特別會計法案(政府提出)
農業家畜再保險特別會計法案(政府提出)
簡易生命保險及郵便年金特別會計法案(政府提出)
臺灣事業用品資金特別會計法案(政府提出)
作業會計法外十法律中改正法律案(政府提出)
國有財産整理資金特別會計法外三法律の廢止に關する法律案(政府提出)
臨時資金調整法中改正法律案(政府提出)
戰時喪失無記名國債證券臨時措置法案(政府提出)
煙草專賣法及鹽專賣法中改正法律案(政府提出)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=0
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001・中村梅吉
○中村委員長 ソレデハ是ヨリ會議ヲ開キ
マス、本委員會ニ付託サレテ居リマス議案
ハ昭和十九年度一般會計歲出ノ財源ニ充
ツル等ノ爲ノ公債發行ニ關スル法律案外十
件デアリマス、審議ニ先ダチマシテ大藏大
臣カラノ御說明ヲ伺フコトニ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=1
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002・賀屋興宣
○賀屋國務大臣 本委員會ニ付託ニ相成リ
マシタ昭和十九年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル等ノ爲ノ公債發行ニ關スル法律案外
十件ニ付キマシテ提出ノ理由ヲ御說明致シ
マス
先ヅ昭和十九年度一般會計歲出ノ財源ニ
充ツル等ノ爲ノ公債發行ニ關スル法律案ニ
付キマシテ申上ゲマス、昭和十九年度一般
會計歲出ノ財源ニ充ツル爲ノ公債發行デア
リマスルガ、同年度歲入歲出總豫算案及ビ
同追加第一號ニ計上致シマシタ歲出總額
百九十九億七百二十餘萬圓ニ對シ、普通歲
入百三十九億四千百六十餘萬圓、及ビ前年
度剩餘金一億四千百五十餘萬圓ヲ.充當シ
テ、尙不足スル五十八億二千四百餘萬圓
ハ、公債財源ニ依ルノ必要ガアリマスル所、
此ノ中現行ノ公債法ニ依リ調達シ得マスル
モノニ、震災善後公債分六十餘萬圓及ビ道
路公債分二千四百九十餘萬圓ガアリマスカ
ラ、之ヲ差引キ五十七億九千八百五十萬圓
ヲ限リ、新タニ起債ノ權能ヲ得ルノ必要ガ
アルノデアリマス、尙ホ昭和十九年度歲出
豫算中、若干ノ金額ハ翌年度ニ繰越サレル
結果ニナルノデアラウト存ゼラレマスル所、
其ノ繰越額ノ財源タル公債ハ、必ズシモ之
ヲ昭和十九年度內ニ於テ發行スルノ必要ハ
アリマセヌノデ、之ヲ其ノ翌年度ニ於テ發
行シ得ルコトトスルヲ適當ト認メ、所要ノ
規定ヲ設ケントスルノデアリマス
次ニ昭和十五年法律第六十九號中改正デ
アリマスガ、大東亞戰爭ニ關シ功勞アリタル陸
海軍軍人軍屬ニテシ死歿シタル者ニ對シ、一時
賜金トシテ公債ヲ交付スル爲メ、同法ニ依ル公
債ノ發行限度ヲ一億三千八百萬圓ダケ增加
スルノ必要ガアリマスコトト、從來ノ分ニ
シテ未ダ發行ノ運ビニ至リマセヌモノハ
之ヲ昭和十九年度ニ於テモ發行シ得ルコト
トスルノ必要ガアリマスルコトニ依リマシ
テ、所要ノ改正ヲ行ハントスルモノデアリ
マス
次ニ鐵道ノ買收代價トシテ交付スル爲ノ
公債發行デアリマスガ、內地ニ於ケル地方
鐵道及ビ朝鮮ニ於ケル私設鐵道中、輸送力
ノ增强上特ニ必要ナルモノノ中、此ノ際國
有トスルヲ適當ト認メマスル膽振縦貫鐵道
株式會社外十三會社ノ經營ニ屬シマスル鐵道
ヲ、昭和十九年度ニ於テ買收スルコトニ計
畫致シマシタル所、是ガ買收代價トシテ交
付スル爲メ公債ヲ發行スルノ必要ガアリマ
スルノデ、所要ノ規定ヲ設ケントスルモノ
デアリマス
次ニ篠山鐵道株式會社所屬鐵道ノ營業廢
止ニ依ル損失ノ補償金トシテ交付スル爲ノ
公債發行デアリマスガ、國有鐵道篠山線ハ近
ク開通ノ豫定デアリマシテ、之ニ接近竝行
スル篠山鐵道株式會社所屬鐵道ハ、到底併
立經營困難デアリマスノデ、其ノ營業ヲ廢
止セシメ、其ノ營業廢止ニ依リテ生ズル損
失ノ補償金トシテ交付スル爲メ公債ヲ發行
スルノ必要ガアリマスノデ、所要ノ規定ヲ
設ケントスルモノデアリマス
次ニ朝鮮事業公債法中改正デアリマスル
ガ、朝鮮總督府特別會計ニ於ケル既定繼續
費タル鐵道建設及ビ改良費、道路修築改良
費港灣修築改良費等ノ追加額其ノ他五億
九千三百十餘萬圓ニ付キマシテハ、公債財
源ニ依ルコトト致シマシタル所、既定額ノ
中昭和十八年度ニ於テ公債財源ニ依ル豫定
ノモノニシテ、決算上不用トナスベキモノ
等ガ千二百十餘萬圓アリマスノデ、之ヲ差
引五億八千百十萬圓ダケ、同法ニ依ル公債
ノ發行限度ヲ增加スルノ必要ガアリマスノ
デ、所要ノ改正ヲ行ハントスルモノデアリ
マス
次ニ昭和十八年法律第九十三號中改正デ
アリマスガ、朝鮮總督府特別會計ニ於ケル
米穀ノ生產確保補給金、大麥、裸麥及小麥
ノ生產確保補給金、石炭及化學肥料ノ價格
調整補給金竝企業整備ニ要スル經費二億七
百四十餘萬圓ニ付キマシテハ、同特別會計
歲計ノ現狀ニ鑑ミマシテ、公債財源ニ依ルノ
必要ガアリマスノデ、同法ニ依ル公債ノ發
行限度ヲ、二億七百五十萬圓ダケ增加スル
等、所要ノ改正ヲ行ハントスルモノデアリ
マス
次ニ臺灣事業公債法中改正デアリマスガ、
臺灣總督府特別會計ニ於ケル基隆港及ビ高
雄港ノ擴張工事費千八百六十餘萬圓、竝ニ
臺灣重要物資營團及臺灣石炭統制株式會社
ニ對スル公債ノ交付ノ方法ニ依リマスル出
資額七百萬圓、是等ヲ合計致シマシタ二千五
百六十餘萬圓ニ付キマシテハ、公債ヲ發行ス
ルノ必要ガアルノデアリマス、所ガ既定額ノ
中、節減等ニ依リ不用トナスベキモノガ千
八十餘萬圓アリマスノデ、之ヲ差引キ千四
百九十萬圓ダケ同法ニ依ル公債ノ發行限度
ヲ增加スル等、所要ノ改正ヲ行ハントスル
モノデアリマス
最後ニ昭和十八年法律第九十四號中改正
デアリマスガ、臺灣總督府特別會計ニ於ケ
ル米穀ノ生產確保補給金及ビ企業整備ニ要
スル經費四千六百二十餘萬圓ニ付キマシテ
ハ、同特別會計歲計ノ狀況ニ鑑ミマシテ、
公債財源ニ依ル必要ガアリマスノデ、同法
ニ依ル公債ノ發行限度ヲ四千六百三十萬圓
ダケ增加スル等、所要ノ改正ヲ行ハントス
ルモノデアリマス
次ニ學校特別會計法案外六件ニ付キマシテ
御說明ヲ致シマス、是等ノ法律案ハ、何レ
モ豫算單純化ノ趣旨ニ則リ、特別會計ノ整
理統合ヲ行ヒマシテ、會計ニ關スル事務ノ
簡捷及ビ會計制度ノ簡明ヲ圖リマスト共ニ、
特別會計ノ運營ヲ一層時局ノ要請ニ卽應セ
シメントスルモノデアリマス、先ヅ學校特
別會計法案ニ付テ說明致シマス、現在學校
ニ關スル會計ノ經理ニ付キマシテハ帝國
大學及ビ官立大學竝ニ學校及ビ圖書館ノ三
特別會計ヲ設ケテ居ルノデアリマスガ、會
計ニ關スル事務ノ簡捷ヲ圖リ、一層學校會
計ノ運營ヲ圓滑ナラシムル爲ニ、是等ノ三
特別會計ヲ統合致シマシテ、一ツノ學校特
別會計ヲ設置致スコトガ目的デアリマス、
併セテ現在學校及ビ圖書館特別會計ノ所屬
ト相成ツテ居リマスル帝國圖書館ニ關スル
歲入歲出ハ、之ヲ一般會計ノ所屬ニ移スノ
ガ適當ト認メルノデアリマス、是等ノ爲ニハ、
大學特別會計法竝ニ學校及ビ圖書館特別會
計法ヲ廢止致シマシテ、新タニ學校特別會計
法ヲ制定スルノ必要ガアリマスノデ、本法
律案ヲ提出致シタノデアリマス
次ニ厚生保險特別會計法案デアリマスルガ、
現在政府ニ於テ管掌スル健康保險事業、勞
働者年金保險事業及ビ船員保險事業ノ經營
ニ付キマシテハ、ソレ〓〓各特別會計ヲ設
ケテ經理ヲ致シテ居ルノデアリマスルガ、
會計ニ關スル事務ノ簡捷ヲ圖リ、各事業ノ
經營ヲ一層圓滑ナラシムル爲ニ、是等ノ三
特別會計ヲ統合シマシテ一ツノ特別會計ヲ
設置致シマシテ、健康勘定、年金勘定、船
員勘定及ビ業務勘定ニ區分經理スルノガ適
當ト認メラレルノデアリマス、又別途提出
致シテ居リマスル勞働者年金保險法中改正
法律案ニ依リマシテ、勞働者年金保險ノ被
保險者ノ範圍ヲ擴張シ、且ツ之ヲ厚生年金
保險トナスニ伴ヒマシテ、勞働者年金保險
特別會計ニ付キ、所要ノ措置ヲ講ズルノ必
要ガアリマス、是等ノ爲ニハ現行ノ健康保
險特別會計法、勞働者年金保險特別會計法
及ビ船員保險特別會計法ヲ廢止致シマシテ、
新タニ厚生保險特別會計法ヲ制定スルノ必
要ガアリマスノデ、本法律案ヲ提出致シタ
次第デアリマス
次ニ農業家畜再保險特別會計法案ニ付テ
說明致シマス、現在農業保險法ニ依ル農業
再保險事業及ビ家畜保險法ニ依ル家畜再保
險事業ノ經營ニ付キマシテハ、ソレ〓〓農
業再保險及ビ家畜再保險ノ兩特別會計ヲ設
ケテ經理致シテ居ルノデアリマスガ、事務
ノ簡捷ヲ圖リ、又兩事業ノ經營ヲ一層圓滑
ナラシムル爲ニハ是等兩特別會計ヲ統合
致シマシテ、一ツノ特別會計ヲ設置シ、農
業勘定、家畜勘定及ビ業務勘定ニ區分經理
スルノガ適當ト認メラレマスノデ、其ノ爲
ニハ現行ノ農業再保險特別會計法及ビ家畜
再保險特別會計法ヲ廢止致シ、新タニ農業
家畜再保險特別會計法ヲ制定スル必要ガア
ルノデアリマス、是レ本法律案ヲ提出シタ
理由デアリマス
次ニ簡易生命保險及ビ郵便年金特別會計
法案ニ付キマシテ申上ゲマス、現在簡易生
命保險事業竝ニ郵便年金事業ノ經營ニ付キ
マシテハ、簡易生命保險及ビ郵便年金ノ兩
特別會計ヲ設ケテ經理致シテ居リマスト共
ニ、兩事業ニ關スル經費ノ經理上ノ便宜ヲ
考慮致シマシテ、昭和十八年法律第十七號
ニ依リ、遞信局及ビ郵便局ニ於テ扱ヒマス
ル簡易生命保險及ビ郵便年金ノ事務ニ關ス
ル經費等ハ、之ヲ通信事業特別會計ノ所屬
ト致シマシテ、其ノ經費ノ財源ノ爲ニハ當
該特別會計カラ、通信事業特別會計ニ繰入
レルコトト致シ、又兩事業ノ進展ニ伴フ會
計上ノ措置ト致シマシテ、昭和十六年法律
第二十八號ヲ制定シ、臺灣總督府、關東局
及ビ南洋廳ノ各特別會計トノ間ニ、會計上
ノ調整ヲ行ヒマシテ、兩事業ノ圓滑ナル經
營ヲ圖ツテ參ツタノデアリマス、然ルニ今
囘更ニ事務ノ簡捷ヲ圖リマス爲ニ、簡易生
命保險及ビ郵便年金ノ兩特別會計ヲ統合致
シマシテ、一ツノ特別會計ト致シマスト共
ニ、通信事業時別會計ニ所屬致シマスル經
費等ノ範圍ヲ更ニ擴張スルノ必要ガアルノ
デアリマス、其ノ爲ニハ現在ノ簡易生命保
險特別會計法、郵便年金特別會計法、昭和
十六年法律第二十八號及ビ昭和十八年法律
第十七號ヲ廢止シマシテ、新タニ簡易生命
保險及ビ郵便年金特別會計法ヲ制定スルノ
必要ガアリマスノデ、本法律案ヲ提出致シ
タ次第デアリマス
次ニ臺灣事業用品資金特別會計法案ニ付
テ申上ゲマス、現在臺灣總督府ニ於テ經營
シマスル鐵道及ビ自動車交通事業ノ用品ノ
調達ニ付キマシテハ、臺灣官設鐵道用品資
金特別會計ヲ設置致シマシテ、是等ノ事業
用品ヲ適宜ノ時期ニ購入シ、之ヲ或ハ貯藏
シ、或ハ製作致シマシテ、隨時適切ニ事業
ノ需要ニ應ジテ參ツテ居ルノデアリマスル
ガ、戰時下臺灣ノ現狀ニ顧ミマシテ、鐵道
及ビ自動車交通事業ノミナラズ、通信事業、
專賣事業、營繕土木等ノ各事業ノ用品ニ付
キマシテモ、其ノ用品ヲ豫メ購入貯藏致シ
マシテ、サウシテ是等ノ事業ノ迅速圓滑ナ
ル遂行ヲ圖ルコトガ緊要ト認メラレルノデ
アリマス、是ガ爲ニ現行ノ臺灣官設鐵道用
品資金會計法ヲ廢止シマシテ、新タニ臺灣
事業用品資金特別會計法ヲ制定スルノ必要
ガアルノデアリマス、是レ本案提出ノ理由
デゴザイマス
次ニ作業會計法外十法律中改正法律案ニ
付テ申シマス、先ヅ作業會計法中改正デアリ
マスガ、各作業所ノ事業量ハ、近時著シク增
大シテ參リマシタ、其ノ關係上各作業所ノ
据置運轉資本ノ額竝ニ專買局、印刷局ノ
据置運轉資本一時補足ノ限度額ガ不足ニナ
リマシテ、時ニハ各作業所ノ作業ニ支障ヲ
來ス虞ガアル狀況デアリマス、仍テ專賣局及
ビ印刷局以外ノ作業所ニ付キマシテモ、据
置運轉資本一時補足ノ途ヲ開キマスルト共
ニ、据置運轉資本一時補足ノ限度額ヲ增額
スルヲ適當ト認メマシテ、之ニ關スル規定
ヲ設ケントスルモノデアリマス
次ニ造幣局特別會計法中改正デアリマス
ルガ、近時時局ノ要請ニ基キ補助貨ノ囘收
ガ强化セラルヽニ伴ヒマシテ、造幣局資金
ニ不足ヲ來ス場合モ豫想セラレマスル狀況
トナリマシタノデ、造幣局資金ヲ臨時補足
シ得ル途ヲ開クコトヲ適當ト認メ、所要ノ
改正ヲ爲サントスルモノデアリマス
次ニ食糧管理特別會計法ノ改正デアリマス
ルガ、先ヅ米麥ノ買入價格ガ引上ゲラレマシ
タ、隨テ食糧證劵ノ發行限度額ヲ七億圓ダケ
增額スルノ必要ガアルノデアリマス、次ニ又
本會計ニ於テ朝鮮又ハ臺灣ノ外ニアル軍ノ
用ニ供シマスル爲ニ、朝鮮又ハ臺灣ヨリ買
入レマシタ米穀價格ノ中ニ含マレテ居リマス
ル米穀生產確保補給金、及ビ麥類ノ價格調
整ノ爲ニ本會計ノ負擔トナツテ居リマスル
金額ニ相當スル金額ヲ限度トシテ、一般會
計ガ實質上ノ負擔ヲスルガ爲ニ、繰入金ヲ
スルコトヲ適當ト認メマシテ改正ヲナサン
トスルモノデアリマス
次ニ薪炭需給調節特別會計法中改正デア
リマスガ、薪炭ノ價格調整ノ爲メ本會計ノ
負擔致シマス金額ニ相當スル金額ヲ限度ト
シテ一般會計ヨリ繰入金ヲ爲スコトト致シ
マスルノヲ適當ト認メマシテ、所要ノ改正
ヲ行ハントスルモノデアリマス
次ニ燃料局特別會計法中改正デアリマス、
是ハ軍需省燃料局ニ於テ、時局ノ要請ニ
基キマシテ「グリセリン」等ノ製造ヲモ行フ
コトト致シマシタノニ伴ヒ、是等ノ歲入歲
出ハ燃料局特別會計ノ所屬トシテ經理スル
ノヲ適當ト認メ、所要ノ改正ヲ行ハントス
ルモノデアリマス
次ニ通信事業特別會計法中改正デアリマ
スガ、現在通信事業特別會計ニ於キマシテ、
通信事業特別會計法第八條ノ規定ニ依リ每
年度八千二百萬圓以內ニ於テ、豫算ニ定ム
ル金額ヲ一般會計ニ納付スルコトト相成ツ
テ居ルノデアリマス、時勢ノ變遷等ニ伴ヒ
マシテ此ノ納付金制度ヲ廢止シ、同會計ノ
運營ヲ一層圓滑ナラシムルヲ適當ト認メマ
シテ、所要ノ改正ヲ行ハントスルモノデア
リマス
次ニ臺灣米穀移出管理特別會計法中改正
デアリマスルガ、今囘臺灣ニ於テ現在ノ臺
灣米穀移出管理令及ビ臺灣米穀等應急措置
令ヲ廢止シマシテ、新タニ臺灣食糧管理令
ヲ制定致シマシタルニ伴ヒマシテ、現行ノ
臺灣米穀移出管理特別會計法ノ名稱ヲ變更
致シマスル等ノ必要ガ生ジマシタ爲メ、所
要ノ改正ヲナサントスルモノデアリマス
次ニ臨時軍事費特別會計法中改正及ビ昭
和十七年法律第六號中改正デアリマス、時
局ニ顧ミマシテ戰地、外ニ於キマシテモ、空
襲震災等ニ依リ損害ガ生ジマシタ場合、共
ノ他特別ノ事情ニ基キ必要アル場合ニ於キ
マシテハ、軍ニ於テ保有スル物資ヲ拂下ゲ
マシテ應急ノ措置ヲ講ズルコトモ必要ト存
ゼラレマスルノデ、現行ノ臨時軍事費特別
會計法第四條ノ改正ヲ行フノ必要ガアリ、
又現在戰地ニ輸送ノ必要上、戰地ニ於テ必
要ナル軍需品以外ノ物資ヲ軍ガ、內地等ニ
於テ取得シ、之ヲ戰地ニ輸送シテ賣拂ヒマ
スコトモ必要デアリマスルガ、是等ノ場合
ニ於ケル物資ノ取得及ビ賣拂ニ關スル歲
入歲出ハ戰地ニアル軍需品以外ノ物資ノ取
得及ビ賣拂ニ關スルモノト同樣ニ當分ノ內
臨時軍事費特別會計ノ所屬トナスヲ適當ト
存ゼラレマスノデ、昭和十七年法律第六號
附則第二項ノ改正ヲ行ハントスルモノデア
リマス
次ニ昭和十二年法律第十號中改正デアリ
マスガ、大藏省預金部特別會計ニ於キマシ
テハ、昭和十二年度以降每年度一般會計歲
出ノ財源ニ充テマスル爲メ六百萬圓ノ繰入
ヲ行ツテ參ツタノデアリマスガ、近時郵便
貯金ノ增加等ニ依リ、同會計ノ積立金及ビ
剩餘、金ハ相當巨額ニ達シテ居ル狀況デアル
ノデアリマス、ソレ故ニ右繰入金ヲ增加ス
ルコトヲ適當ト認メマシテ所要ノ改正ヲナ
サントスルモノデアリマス
次ニ昭和十三年法律第一一十三號中改正デ
アリマスガ、今囘朝鮮總督府臺灣總督府及
ビ關東局ニ於キマシテモ、內地ト同樣ノ趣
旨ニ依リ鐵道運賃及ビ通信料金ノ引上ヲ行
フコトト致シタノデアリマスガ、之ニ依ル
增收金額ノ一部ハ臨時軍事費ノ財源ニ充ツ
ルヲ適當ト認メマシテ、是ガ爲ニ所要ノ改
正ヲ行ハントスルモノデアリマス
次ニ海軍火藥廠及ビ海軍燃料廠ノ据置運
轉資本ノ臨時補足ニ關スル規定デアリマス
ガ、海軍火藥廠及ビ海軍燃料廠ノ作業量ハ、
近時著シク增大致シテ參リマシタ關係上、
現行ノ海軍火藥廠ノ据置運轉資本額四百萬
圓及ビ海軍燃料廠ノ据置運轉資本額六百
萬圓ヲ以テシマシテハ、作業ノ圓滑ナル遂
行ヲ期スルコトガ困難ト存ゼラレマスノ
デ、大東亞戰爭中ノ臨時措置ト致シマシテ、
兩作業所ノ据置運轉資本ニ不足ヲ生ジマシ
タル場合ニ於キマシテハ、臨事軍時費特別
會計ヨリ、臨時ニ之ヲ補足シ得ルノ途ヲ開
カントスルモノデアリマス
最後ニ國有財產整理資金特別會計法外三
法律ノ廢止ニ關スル法律案デアリマス、近
時時局ノ要請ニ依リマシテ特別會計ノ數ガ
大分增加ヲシテ參リマシタ、仍テ旣存ノ特
別會計中存置ノ理由ガ比較的乏シイモノト
考ヘラレマスルモノニ付キマシテハ、此ノ
際出來得ル限リ之ヲ整理致シマシテ、會計
制度ヲ簡明ナラシムルコトガ適當ト存ゼラ
レルノデアリマス、此ノ趣旨ニ依リマシテ
時局ノ進展ニ伴ヒマシテ、存置ノ理由ガ比
較的薄弱ト相成リマシタ國有財產整理資金
特別會計、又軍需省ノ設置ニ伴ヒ存置ノ理
由ガ乏シクナリマシタ陸軍航空工廠資金特
別會計、及ビ蠶絲業統制ノ强化ニ伴ヒ、殆
ド其ノ機能ヲ失フニ至リマシタ絲價安定施
設特別會計ヲ、昭和十八年度限リ廢止スル
コトニ致シマシタ所、是ガ爲ニハ是等ノ特
別會計ノ廢止モ法律ノ手續ニ依ル必要ガア
ルノデアリマス、仍テ本法律案ヲ提出致シ
タ次第デアリマス
次ニハ臨時資金調整法中改正法律案ニ付
キマシテ說明致シタイト存ジマス、改正ノ第
一點ハ政府ハ土地其ノ他ノ物ノ賣却代金補
償金其ノ他ノ金錢債務ニ付キ、支拂ハレマシ
タル當該金錢ノ處分ニ關シ必要ナル命令ヲ
ナシ、又ハ當該金錢債務ニ付キ企業整備資
金措置法第五條ニ規定スル所謂特殊決濟方
法、若クハ其ノ他ノ方法ニ依リ之ヲ決濟ス
ベキコトヲ命ズルコトヲ得ルコトト致シマ
スルト共ニ、政府ガ此ノ種ノ債務ヲ負擔致
シマシタ場合ニ於キマシテモ、企業整備資
金措置法第三條ノ規定ニ準ジマシテ特殊決
濟ヲナスコトヲ得ルコトトシタコトデアリ
マス
資產ノ處分代金、各種補償金等所謂新タ
ナル生產行爲ニ基カザル移動資金ノ浮動化
防止ニ關スル措置ト致シマシテハ、旣ニ政
府ハ現行第十條ノ二ニ於テ土地其ノ他ノモ
ノヲ收用セラレ、若クハ賣却シタル者、又
ハ其ノ利害關係人ニ對シマシテ其ノ代償ト
シテ受クル金錢ノ處分ニ關シ、國債ノ購入
等必要ナル命令ヲナシ得ルコトトナツテ居
リマス、尤モ之ニ關シマシテハ政府ハ成べ
ク直接ニ命令スルノ方法ニ依ラズ、勸奬ノ方
法ニ依リ其ノ目的ヲ達スル方針ヲ執ツテ居
ルノデアリマシテ、移動資金ノ浮動化防止
上相當ナル效果ヲ收メテ參ツテ居ルノデア
リマス、又昨年戰力增强企業整備ガ實施致
サレマスルヤ、政府ハ企業整備資金措置法
ヲ制定シ、企業整備ニ伴フ移動資金ノ浮動
化防止ニ付キ萬全ノ措置ヲ圖ツタノデアリ
マスルガ、更ニ時局ノ進展ニ顧ミマシテ、
一層此ノ種資金ニ對スル措置ヲ整備擴充ス
ルノ要アリト認メマシテ、現行第十條ノ二
ノ對象タル金錢債務ノ範圍ヲ資產ノ處分代
金收用ノ補償金ノミナラズ其ノ他ノ補償
金退職給與金其ノ他一時的收入ノ性質ヲ
有スル給付金ニシテ、新タナル生產行爲ノ
對價タラザル金錢債務ニ擴張スルト共ニ、
從來代償トシテ受クル金錢トシテ現金化セ
ラレタルモノニ對シテノミ、國債ノ購入保
有等ヲ命令シ得ルコトニナツテ居リマシタ
ノヲ、金錢債務ノ決濟ニ付キ債權者、債務
者双方ニ對シ其ノ決濟前ニ必要ナル命令ヲ
ナシ得ルコトト致シ、其ノ內容トシテ國債
ニ依ル交付ノ外、企業整備資金措置法ニ依
ル所謂特殊決濟又ハ國債ニ依ル交付等ヲ命
ジ得ルコトト致シタノデアリマス
尙ホ之ニ伴ヒ政府ノ金錢債務ニシテ是ト
同種ノモノニ付キマシテモ、企業整備資金
措置法第三條ノ規定ニ準ジ、特殊決濟ヲナ
シ得ルコトト致シタノデアリマス
次ニ改正ノ第二點ハ預貯金、金錢信託、
生命保險其ノ他一定ノ長期貯蓄ノ貯蓄者ハ
災害、疾病其ノ他ノ事由ニ因リ資金ヲ必要
トスル時ハ、當該貯蓄ノ全部又ハ一部ニ付
キマシテ、期限前ニ於ケル拂戾ヲ請求シ、
又ハ當該貯蓄ニ關スル契約ヲ解除シ、若ク
ハ變更スルコトヲ得ルコトト致シマシテ、
此ノ場合貯蓄取扱機關ガ貯蓄者ニ拂戾シ又
ハ給付スベキ金額、利息其ノ他ノ條件ハ貯
蓄者ニ期限前拂戾請求等ノ爲メ特ニ不利益
ヲ與ヘザルヤウ命令ヲ以テ定ムルコトトシ、
之ニ依リテ貯蓄取扱機關ニ損失ヲ生ジタル
場合ハ、政府ハ之ヲ補償シ又ハ補助金ヲ交
付スルコトヲ得ルコトトシタコトデアリマ
ス
國民貯蓄ノ增强ヲ圖リ資金ノ浮動化ヲ防
止スル爲ニハ、益〓長期貯蓄ヲ奬勵スルノ要
アルハ多言ヲ要セザル所デアリマスルガ、
長期ノ預貯金、定期積金、信託、保險等ニ
付テハ、只今ノ狀況ニ於キマシテハ不時ノ
入用ニ際シ之ヲ資金化シマス爲ニハ相當困
難ガアリ、又資金化シマシタ場合ニモ利息
等ニ於テ相當不利益ヲ蒙リマスノデ、此ノ
事ハ長期貯蓄ヲ躊躇シタリ、忌避スル原因
トナルノデアリマス、依ツテ貯蓄者ガ災害、
疾病等豫期セザル事由ニ依ツテ資金ヲ必要
トスル場合ニ、貯蓄者ニ特ニ不利益ヲ與フ
ルコトナク、之ヲ資金化シ得ル途ヲ開キマ
スレバ、安ンジテ長期貯蓄ヲナシ得ルノ態
勢ヲ整ヘ得ルコトトナルノデアリマス
改正ノ第三點ハ數人-是ハ多數ノ者ヲ
含ム意味デアリマスルガ、是等ガ銀行其ノ
他ニ對シテ貯蓄ヲナシマスル場合ニ、代表
者ノ名義デ取纏メテ致スコトガ出來レバ大
變便利ナンデアリマス、仍ツテ命令ノ定ム
ル所ニ依ツテ當該貯蓄取扱機關ニ對シテ、
其ノ貯蓄ノ拂戾ノ請求ヲ各貯蓄者ガナシ得
ルコトトスルトカ、又ハ各貯蓄者每ノ利子
又ハ利益ノ計算方法、代表者ニ對スル取締
其ノ他斯ウ云フ種類ノ貯蓄ノ適正ニ運ビマ
スルコトニ付テ必要ナル事項ハ、命令ヲ以
テ規定シ得ルコトト致サシトスルノデアリ
マス、現在是等ノ代表者名義ノ貯蓄ト云フ
モノニ付キマシテハ、若干法律關係ガ不明
確デアリマス、貯蓄者ノ保護、或ハ貯蓄者
ノ貯蓄心理ノ尊重等ニ、不十分ナル點ガナ
イトモ言ヘナイノデアリマス、併シナガラ
是等ノ代表者名義ノ貯蓄手續ヲ簡素ニ致シ
マスル上ニ於テ、其ノ普及ヲ奬勵スベキデ
アリマスカラ、此ノ法律關係ヲ明カニシ、
各貯蓄者ガ直接ノ拂戾ガ出來ルヤウニシ、
又代表者ノ拂戾請求權ニ制限ヲ或ル程度加
へ、利子ヤ利益ノ計算方法ヲ簡單化スル等、
色々規定ヲ設ケマシテ、以テ此ノ種ノ貯蓄
ヲナシ易カラシメントスルモノデアリマス、
改正ノ第四點ハ、國債證劵ノ不當ニ低廉
ナル價格ニ依ツテノ買漁リデアリマストカ、
色々國民貯蓄ノ實踐ヲ阻害スルノ虞ガアル
行爲ガ發生シナイトモ限ラナイノデアリマ
ス、是等ヲ制限又ハ禁止スルコトヲ得ルコ
トト致サントスルモノデアリマス、國民貯
蓄ノ增加、其ノ實踐ノ高度化ニ伴ヒマシテ、
他面事實上之ヲ阻害ヲヲスル虞ノアル行爲
ガ相當アルノデアリマス、國債ノ不當ノ低
價ノ買漁リナドガ不都合デアリマスルコト
ハ勿論デアリマス、場合ニ依リマシテハ献
納運動等ノコトモ却ツテ惡結果ヲ生ズルノ
デアリマス、斯ウ云フコトハ今後極メテ多
額ニ國債、債劵ノ直接消費化ヲ必要ト致シ
マスル際、甚ダ惡影響ガアリマスノデ、是
ガ取締ニ付キマシテ特ニ規定ヲ設ケントス
ルモノデアリマス、改正ノ第五點ハ貯蓄債
劵、報國債劵ノ發行限度ヲ兩者ヲ通ジ五十
億圓ト致シマスルト共ニ、兩債劵ニ對スル
規定ノ整理ヲ致サントスルモノデアリマス、
御承知ノ通リ勸業銀行ノ發行ニカヽリマス
ル貯蓄債劵、報國債劵ハ廣ク民衆ニ直接消
化サレテ居ルノデアリマスルガ、其ノ發行
限度ハ貯蓄債劵ガ二十億圓、報國債劵ガ十
五億圓トナツテ居リマス、其ノ限度ハ之ヲ
增加スルノ必要ガアルノデアリマス、又從
來ハ兩債劵ニ別々ニ發行限度ガ規定サレテ
居ルノデアリマスルガ、是等ハ寧ロ限度ヲ
合併致シマシテ、其ノ間ニ融通性ヲ持タシ
ムルコトガ寧ロ適當デアルノデアリマス、
今囘ハ兩者ヲ通ジテ五十億圓ニ致サントス
ルモノデアリマス、又抽籤償還ノ方法ヲ簡
單ニ致ス必要ガアリマスルト同時ニ、割增
金ノ交付ニ付キマシテモ、其ノ方法ニ付テ
必要ナル改正ヲ加ヘントスルモノデアリマ
ス
改正ノ第六點ハ課稅上ノ特例ニ關スル規
定ヲ擴張スルコトト致シタコトデアリマス.
臨時資金調整法ノ規定ニ基ク貯蓄又ハ貯蓄
ヲナス者ニ對シテ、當該貯蓄ノ利子又ハ利
益ニ關シ租稅ノ減免ヲナシ、又本法ニ基キ
發行セラル、一定證劵ニ對シ、印紙稅ヲ課
セザルコトトスル規定ハ從來存シタノデア
リマスルガ、此ノ際是等ニ對スル印紙稅ノ
非課稅ノ範圍ヲ擴張致シ、又一定ノ場合ニ
於ケル有價證劵移轉稅ノ非課稅規定ヲ新設
致シマスルト共ニ、本法ニ基ク特定ノ貯蓄
ノ利子又ハ利益ニ對シマシテハ、法人稅法
ニ依ル所得ノ計算ニ關スル特例ヲ設クルコ
ヲ得ルコトト致シタノデアリマス
改正ノ第七點ハ第十條五第中一項ニ規定
スル割增金ヲ附シタル證劵、貯蓄債劵又ハ
報國債劵ノ發行者ハ戰時災害其ノ他戰時中
ノ災害ニ依リ之ヲ喪失シタ場合ニ於テ、本
議會ニ別途提案シ、此ノ委員會ニモ御審議
ヲ願ヒマスル戰時喪失無記名國債證劵臨時
措置法ニ準ジマシテ、新證劵ヲ交付、其ノ
他ノ措置ヲナスベキコトガ此ノ際適當デア
リマスノデ、斯カル措置ヲナスベキコトト
シ、發行者ニ不當ノ損失ナカラシムル爲ニ、
斯カル措置ニ依ツテ債劵ノ發行者ニ損失ガ
生ジマシタ場合ニハ、政府ガ之ヲ補償セン
トスルモノデアリマス、先程申上ゲマシタ
通リ、貯蓄債劵、報國債劵ハ國債證劵ト同
ジク、國民ノ間ニ直接普及消化サレテ居リ
マスノデ、戰時災害ニ依リ喪失セル無記名
國債證劵ニ、該法律ニ於ケルガ如キ戰時下
ニ於ケル特例ヲ認メントスルモノデアルノ
デアリマス
次ニ戰時喪失無記名國債證劵臨時措置法
案ニ付キマシテ說明ヲ致シマス、支那事變
以來國民ノ熱誠ニ依リマシテ、多額ノ國債
ガ消化セラレ、國債所有者ハ國民ノ全般ニ
亙ツテ居ルノデアリマスルガ、無記名國債證
劵ガ喪失致シマシタ場合、現行ノ法制ノ下
ニ於キマシテハ、一定ノ條件ノ下ニ元利金
ノ支拂ノミヲナシ得ルコトニナツテ居リマ
ス、又喪失證劵ノ名稱、記號等ノ不明ナ場
合ニ於キマシテハ、何等救濟ノ途ガナイノ
デアリマス、是デハ多數ノ國債所有者ニ對
シマシテ其ノ保護ガ缺クル所ガアリ、延イ
テハ國債ノ消化ニ惡影響ナシトモシナイノ
デアリマス、隨テ斯ル場合ニハ出來得ル限
リ代リ證劵ヲ交付シマスルトカ、國債所有
者ニ損害ガナイ方法ヲ講ズル必要ガアルノ
デアリマス、隨テ證劵ノ名稱、記號等デ不
明ナ場合ニ於キマシテモ、出來ルダケ之ヲ
救濟スル途ヲ開クル必要ガアルノデアリマ
ス、本法律案ハ右ノ趣旨ニ依リマシテ提出
致シマシタモノデアリマシテ、是等ノ戰時
中ニ無記名國債證劵ガ災害ノ爲ニ喪失致シ
マシタ場合ニハ戰時喪失國債證劵審査會
ニ、其ノ證劵ノ損失ニ付テ査定ヲ求ムルコ
トガ出來ルコトト致シ、其ノ査定ガアリマ
シタ場合、政府ハ新證劵ヲ交付シ、又ハ之
ニ代ヘマシテ、元利金ノ支拂又ハ國債ノ登
錄若シクハ預金ヲ舊所有者ノ爲ニ設定ヲ
致スト云フコトヲ、得ルコトト致シタノデ
アリマス、又右ニ伴ヒマシテ、必要ニ應ジ
マシテハ、特別ノ措置ニ依ツテ生ズルコト
アルベキ損失ヲ補塡スル爲ニ、當事者ヨリ
確實ナル擔保ヲ提供シ、又ハ保證人ヲ立テ
シムルコトト致サントスルモノデアリマス、
又政府ガ損失ヲ生ジマシタ場合ニ於テハ、
新證劵ノ交付等ノ措置ヲ受ケタ者ハ、其ノ
損失ヲ負擔スルコトヲ要スルコトト致シタ
ノデアリマス
次ニ煙草專賣法及ビ鹽專賣法中改正法律
案ニ付キマシテ說明致シマス、先ヅ煙草ノ
關係ヲ申上ゲマス、大東亞共榮圈ニ於ケル
煙草用卷紙ニ付キマシテハ、從來ノ需給ノ
狀況ヲ見マスルニ、本邦ヲ除ク圈內各域ニ
ハ其ノ生產ハ極メテ少イノデアリマシテ、
大部分ハ本邦製品ヲ以テ供給ヲ致シテ居ル
有樣デアリマス、然ルニ本邦ニ於キマシテ
千、煙草用卷紙ノ生產狀況ハ一般ノ製紙業
界ノ生產事情ノ變化ニ伴ヒマシテ、其ノ所
要量ノ生產確保ト云フコトハ中々困難ガア
ルノデアリマス、現狀ノ儘ニ置キマスト、
共榮圈內ノ煙草ノ製造ニ相當ノ支障ヲ來ス
虞ガアルノデアリマス、斯ウ云フ狀況デア
リマスカラ、煙草用卷紙ニ付キマシテ、生
產ノ確保ヲ圖リマスルト共ニ、本邦竝ニ圈
內各地域ニ對スル配給ヲ適正圓滑ニ致サン
トスル爲ニ、專賣制度ヲ實施セントスルモ
ノデアリマス、其ノ內容ニ付キマシテハ、
煙草用卷紙ノ製造ニ付キマシテハ、政府ハ
今直營工場ヲ設クルノ考ヘハナイノデアリ
マス、現在ノ民間ノ製造業者ニ其ノ製造ヲ
許可シ、其ノ有スル設備、技術及ビ多年ノ
經驗ヲ活用シタイト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、斯クシテ生產サレマシタル煙草用卷紙
ハ、相當ナル賠償金ヲ交付シテ政府ニ收納
シマシテ、其ノ製品ハ本邦ノ所要ニ充テマ
ス外ハ、共榮圈內各地域ニ對シ各種ノ煙草
ノ製造數量等ニ應ジテ、適正圓滑ニ配分供
給ヲシタイト存ズルノデアリマス、隨テ其
ノ輸出ヤ移出ニ當リマシテハ、政府自ラ行
フカ又ハ政府ノ命ヲ受ケタル者ヲシテ行ハ
シムル方針デアリマス、本專賣ハ煙草ト事
實上不可分ノ關係ヲ有シテ居リマスルノデ、
煙草專賣法ノ改正ニ依リ實施セントスルモ
ノデアリマス、尙此ノ專賣ト同時ニ、煙
草耕作等ニ關スル許可事項ノ簡素化ヲ圖ル
コトガ一ツデアリマス、又煙草耕作者ニ對
スル罹災補償制度ヲ擴充致シマシテ、補償
スベキ災害ノ種類ヲ增加シ、且ツ收穫後ノ
災害ニ對シマシテモ補償ヲナシ得ルコトト
致シタイ、是等ノ事柄モ併セテ規定致ス必
要上、煙草專賣法中所要ノ改正ヲ致サント
スルモノデアリマス
次ニ鹽ニ付テ申上ゲマス、戰局ノ緊迫ニ
卽應シマシテ航空戰力ノ飛躍的增强ヲ圖
ルコトガ刻下ノ急務デアリマスルガ、航空ー
機材ノ重要資源タル金屬「マグネシウム」、航
空機燃料ニ缺クベカラザル「ブロム」爆藥
ノ原料タル加里等ハ、鹽ノ製造ノ際同時ニ
生產セラレマス苦汁ノ中ニ相當多量ニ包含
セラレテ居ルノデアリマス、御承知ノ通リ苦汁
ハ所謂鹹水カラ鹽ヲ採取致シマシタ殘液デ
アリマス、鹽ノ生產ト苦汁ノ生產トハ密接
不可分ノ關係ニアリマスルノデ、鹽ノ產地
ニ配置セラレテ居リマスル鹽專賣機構竝ニ
技術ヲ、苦汁生產ニ付キマシテモ全面的
ニ動員シマシテ、鹽ト一體的關係ニ於テ苦
汁ノ出來ルダケノ增產、又增產セラレタモ
ノノ確保ヲ圖リマシテ、必要ナル方面ニ出
來ルダケ十分ニ供給シタイ、此ノ意味ニ於
キマシテ、苦汁ノ專賣ヲ實施致ス爲ニ鹽專
賣法中所要ノ改正ヲ行ハントスル次第デア
リマス、苦汁專賣ノ〓略ハ、先ヅ苦汁ノ製
造及ビ其ノ廢止ヲ許可制トシテ、生產ヲ確
保シマスルト共ニ、生產セラレマシタ苦汁ハ
總テ政府ガ收納シ、必要ナ箇所ニ苦汁貯藏
槽ヲ建設スル等、其ノ貯藏管理ノ完全ヲ
期セントスル次第デアリマス、而シテ苦汁
ノ賣渡ニ付キマシテハ、特別ノ機關ヲ設ク
ルコトナク、需要者又ハ其ノ團體ニ對シテ
政府ヨリ直接定價ヲ以テ供給セントスルモ
ノデアリマス、以上專賣ヲ致サントスルモ
ノハ鹽ト共ニ生產セラレマスル天然苦汁
デアリマシテ、人工苦汁ニ付キマシテハ、其
ノ生產ノ實情ニ鑑ミ專賣品トナサザル方針
デアリマス、尙鹽專賣法中ノ改正ニ付キ
マシテハ、苦汁ノ關係ノ外、自家用鹽ノ製
造ニ關スル制限ヲ緩和スル等所要ノ改正ヲ
行ハントスル次第デゴザイマス
以上十一件ノ法律案ニ付キマシテハ何卒
御審議ノ上速カニ御贊成アランコトヲ希望
致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=2
-
003・中村梅吉
○中村委員長 此ノ際資料ノ要求ニ付テ念
ノ爲ニ申上ゲテ置キマスガ、委員各位ノ中デ
資料ヲ御要求ニナラントスル方ハ、一ツ至
急委員長マデ書面ニ依ツテ御申出ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、ソレカラ政府ノ方ニ申上ゲ
テ置キマスガ、豫算委員會ニ御提出ニナリ
マシタ參考資料ハ、是非コチラヘモ御配付
願ヒタイト思ヒマス、議事ノ進行ニ關シテ
委員懇談會ヲ開キタイト思ヒマスカラ、暫
時休憩ヲ致シマス
午後一時五十一分休憩
午後三時三十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=3
-
004・中村梅吉
○中村委員長 休憩前ニ引續キマシテ會議
ヲ開キマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=4
-
005・泉國三郎
○泉委員 資料ノ要求ヲ致シマス
提出法案ニ關聯スル命令要綱
債劵買上制度ノ實績
預金部資金ノ運用狀況
是等ニ付テノ資料ヲ至急調査ノ上、御配布
アランコトヲ御取計ラヒ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=5
-
006・中村梅吉
○中村委員長 成ベク至急御提出ヲ願ヒタ
イト思ヒマス、是ヨリ質疑ニ入リマスー
西川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=6
-
007・西川貞一
○西川委員 此ノ委員會ハ相當重大ニシテ
內容複雜ナル法律案ガ盛澤山ニ付託サレテ
居リマスノデ、我々何處カラ手ヲ着ケテ宜
イカ、聊カ當惑スル程ノ狀態ニアルノデア
リマス、時局柄快速審議ノ趣旨ニ則リ、又
當然國務大臣カラ御答へヲ戴カナクテハナ
ラナイ問題デアリマスケレドモ、出來得ル
限リ大臣ノ時間ヲ尊重スル意味ニ於キマ
シテ、政府委員ノ御答辯ニ依ツテ滿足出來
ルダケハ致シタイ考ヘデアリマス、特ニ私
ガ劈頭御尋ネシタイ問題ハ、是ハ當然大藏
大臣ノ御答ヘヲ戴クベキ性質ノモノデアル
ト思ヒマスルケレドモ、都合ニ依リマシテ
ハ其ノ事務ヲ擔當サレテ居リマスル當局
ノ御答ヘヲ戴イテモ宜シイト考ヘルノデア
リマス、所謂赤字公債ナルモノガ發行サレ
ルニ至リマシテヨリ、年々歲々其ノ金額ヲ
增大シテ來ツヽアルノデアリマシテ、今ヤ
赤字公債ナルモノニ對シマシテ、國民モ財
政當局モ少シ馴レツ子ニナリマシテ、此ノ
公債ノ本質ニ付テ、無反省ノ儘ニ年々發行
サレテ居ルノデハナイカト云フ感ジガ致スノ
デアリマス、言フマデモナク赤字公債ハ財政
ノ上ニ於ケル一ツノ變態的ノ現象デアリマ
シテ、漫然ト金ガ足リナイカラ亦字公債ニ
持ツテ行クト云フヤウナ考ヘデ之ヲ出シマ
シタナラバ、國家財政ノ將來ニ非常ニ惡イ
影響ヲ持ツテ來マスコトハ申スマデモナイ
ノデアリマス、大體健全財政ト云フ言葉ガ、
不當ニ其ノ言葉ノ意味ヲ非難サレタ傾向ガ
アリマシテヨリ、財政ノ健全性ニ對スル良
心ガ、財政當局ニ於カレテモ、國民ト致シ
マシテモ、多少鈍化シテ居ルノデハナイカ
ト云フ感ジガ致スノデアリマス、併シナガ
ラ國家ノ出費ガ多額デアレバアル程、非常
時デアレバアル程、特ニ戰時下ニ於テハ健
全財政ノ原則ハ何處マデモ恪守サレナケレ
バナラナイ、財政ノ芯ハ健全デナケレバナ
ラナイ、併シナガラ戰時デアリマスルカラ、
戰爭完遂ニ必要ナル經費ハ、是ハドウ云フ
手段ヲ以テモ賄ヒ出サナクテハナラナイ、
ソレガ爲ニ租稅ガ增徵サレルコトハ、國民ト
致シマシテ負擔力ノアル限リハ之ニ應ズル
ノデアリマス、又公債ノ增發ニ依ルノモ已
ムヲ得ナイノデアリマス、併シナガラサウ
云フ場合デアレバアル程、戰爭完遂ニ必要
ナル直接ノ經費ガ臨時軍事費ヲ以テ支辨サ
V、其ノ他ノ特別會計等ニ依ツテ支辨サレ
ル場合ニ於テ、一般會計ダケハ大體通常ノ
經費ヲ以テ收支相償フコトガ望マシイノデ
アリマス、事實ニ於キマシテ、此ノ年度ニ
於キマシテモ、一般會計カラ相當ノ金額ヲ
臨時軍事費ニ繰入レラレルヤウデゴザイマ
ス、年々サウ云フ風ニナツテ居ルノデアリ
マスカラ、此ノ年度ニ於テモ相當ノ金額ヲ
臨時軍事費ニ繰入レラレル、所ガ此ノ一般
會計ニ於キマシテハ、此ノ法律ニ依リマス
レバ、五十七億九千八百五十萬圓ト云フ可
ナリ厖大ナル公債ヲ、歳出ノ財源ニ充テル
爲ニ、他ノ法律ニ依リ起債シ得ル金額ノ下
ニ、是ダケノ所謂赤字公債ヲ出サレヨウト
スルノデアリマス、之ニハ財政上サウシナ
クテハナラヌ理由ガアルコトト存ジマスル
ガ、國民ノ常識トシマシテハ、セメテ一般
會計ダケハ平常ノ歲入ニ依ツテ收支ヲ均衡
セシメテ、財政ノ芯ハ固クシテ置ク、核心
ハ何處マデモ固クシテ置ク、健全ニシテ置
ク、サウシテ戰爭完遂ニ必要ナル經費ハ、
公債デアリマセウト、增稅デアリマセウト、
ソレハ非常ノ措置トシテ已ムヲ得ヲイ、
般會計ダケハ少クトモ舊來ノ赤字公債ヲ漫
然ト發行セズニ、健全性ヲ保持シテ行クベ
キデアルト云フ觀念ハ、國民トシテハ當然
持ツテ居ルニ違ヒナイ、持ツテ居ル、一般
會計カラ相當多額ノ金額ヲ臨時軍事費ニ繰
込ミナガラ、其ノ一般會計ハ赤字公債ヲ可ナ
リ厖大ナモノヲ出シテ行ク、是ハ當然國民
ハ一ツノ疑問ヲ持タザルヲ得ナイ、此ノ疑
問ヲ解キマスルコトハ、財政當局ノ當然ノ
責任デアルト考ヘルノデゴザイマシテ、此
ノ點ニ對シテ御說明ヲ戴キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=7
-
008・田中豐
○田中(豐)政府委員 一般會計ニ於ケル赤
字公債ノ御質問デゴザイマシテ、洵ニ御尤
モダト存ズルノデアリマス、御話ノ如ク臨
時軍事費ノ方ヘ一般會計カラ繰入ヲ致シマ
セヌナラバ、御話ノ如ク一般會計ニ於テハ
歲入補塡公債ヲ出ス必要ガナイト云フコト
ニ相成ルカト存ズルノデアリマス、併シナ
ガラ繰入額ノ大宗ヲ占メマス租稅收入其ノ
他ニ致シマシテモ、何レモ戰費ノ財源トシ
テ增稅ヲスル、或ハ又他ノ會計カラ一般會
計ヘ一應繰入レマシテ、更ニ臨時軍事費ノ
方ヘ繰入レル金ニ致シマシテモ、戰時中ノ
特別ノ措置トシテ、戰費ヲ助ケルト云フヤ
ウナ趣旨カラ繰入レラレルモノガ多イ譯デ
アリマス、隨テ臨時軍事費ノ方へ繰入ヲシ
ナガラ一般會計ニ於テハ赤字公債ヲ出スト云
フヤウナコトニ相成ツテ居ルト思フノデア
リマス、サウ云フヤリ方ガ宜イカ惡イカト
云ツタヤウナコトニ付キマシテハ、色々
考ヘ方ハアリマセウガ、兎ニ角增稅其ノ他
デ點費ヲ負擔シテ戴クト云フ趣旨ノ下ニ、
增稅セラレルト云フヤウナコトガ好マシイ
コトナノデアリマシテ、サウ云フ趣旨カラ
繰入ヲ致ス譯デアリマス、隨テ一般會計ニ
於テハ相當赤字ガ出ルト云フコトニ相成ツ
テ居リマス、併シナガラ全體ヲ通ジテ考ヘ
マスレバ、一般會計ニ於キマシテモ、是尺
勿論平當時ノ歲出ト云フモノガ相當アリマ
スガ、此ノ戰時下ニ於テ特ニ準戰費トモ認
ムベキモノモ相當アル譯デアリマス、般
會計、臨時軍事費ヲ通ジマシテ普通歲入ガ
幾ラ、國債ニ依ルモノガ幾ラト云フコトヲ
達觀致シマシテ色々ヤツテ居ル譯デアリマ
ス、卽チ赤字公債ハ唯會計上ノ區分ケニ過
ギナイノデアリマシテ財政ノ運用及ビ國民ニ
對スル關係ニ於テハ、一般會計ト臨時軍事
費トヲ一體トシテ考ヘテ居ルノデアリマス、
以上御答へ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=8
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009・西川貞一
○西川委員 御答辯ノ次第ハ左樣ナ事情デ
アラウト了承スルノデアリマスケレドモ、
ソコデ疑問ハ依然トシテ殘ルノデアリマス、
詰リ租稅歲入等モ、國民ガ戰爭完遂ノ爲ニ
必要デアルカラ之ヲ負擔スルト云フ意識ノ
下ニ納稅ヲシタ其ノ歲入デアルカラ、是等
ノ歲入ハ臨時軍事費ノ方ニ廻ス、サウスル
ト殘ツタ平常時ノ財政ト云フモノヲ假定的
ニ考ヘマスト依然赤字デアル、斯フ云フ結
論ガ出テ來ル、現在ノ財政ノヤリ方デハ之
ヲ平常時的ニ考ヘテ見ルト、平常時ニ於ケ
ル我ガ國ノ財政ハ依然赤字デアル、斯フ云
フヤウナ意識ヲ持チマスコトハ、決シテ財
政ノ中核ヲ健全ニ保ツテ行クト云フ見地カ
ラシマシテハ、是ハドウモ此ノ儘結構デア
ルト納得シ難イモノデアルト思フノデアリ
マス、此ノ點ニ付キマシテ押問答ヲ致スコ
トハ致シマセヌ、唯私ハ戰時デアレバアル
程財政ノ芯ハ健全デナクテハナラヌト云
フ見地ノ下ニ、明年度以降ニ於ケル財政ニ
關シマシテハ、歲入歲出ニ更ニ檢討ヲ加ヘ、
刷新ヲ加ヘラレマシテ、サウシテ國民ノ平
常的意識於ノ下ニケル財政ハ赤字デナイノ
ダト云フ觀念ヲ國民ガ持チ、財政ノ芯ガ健
全デアルト云フ意識ヲ持チ得マスルヤウニ
特別ノ努力ヲ財政當局ニ於テ加ヘラレン
コトヲ此ノ際希望ヲ致シテ置キマス、我々
ハ赤字公債ノ問題ヲ審議致シマス場合ニハ、
常ニ是ガ惡性「インフレーション」ノ防止
ト云フ問題ト關聯シテ考ヘザルヲ得ナイノ
デアリマス、赤字公債問題ノ殆ド總テガ惡
性「インフレーシヨン」防止ノ問題デアルト
考ヘマス、若シ惡性「インフレーション」ノ
危險ガナイノデアルナラバ、赤字公債ノ增
發ヲ惧レルノ必要ハ多クナイノデアリマス、
ソコデ惡性「インフレーション」ノ防止ト云
フ見地カラ一、二ノ點ニ付テ當局ノ御考へ
ヲ伺ヒタイノデアリマスガ、在來論議盡サ
レテ居リマスノハ、公債ノ增發ヲスルト、
ソレガ完全ニ消化サレナイ、通貨ノ膨脹ヲ
來ス、是ガ爲ニ物價ノ騰貴ヲ誘致シテ惡性
ㄱインフレーション」ガ來ルト云フヤウナ一
ツノ公式論ガ、非常ニ長イ間唱ヘラレテ來
テ居ツタノデアリマスケレドモ、今日ノ場
合ニ於キマシテハ、我々ハ此ノ赤字公債ノ
消化ガ困難デアルトカ、ソレガ爲ニ通貨ノ
增發ヲ來シテ物價ノ騰貴ヲ來スト云フヤウ
ナ危惧ヲ、此ノ問題ニ付テ持ツテハ居リマ
セヌ、今日ノ場合惡性「インフレーション」
ノ問題ハ、要スルニ經濟界ニ於ケル物資ノ
配給ト價格トノ統制ガ、健全ニ保タレルカ
否カト云フコトガ、惡性「インフレーシヨ
ン」ノ問題ノ殆ド總テデハナイカ、配給ノ統
制ガ健全ニ保タレ、價格ノ統制ガ完全ニ
保タレテ、所謂闇ガ行ハレナカツタナラバ、
幾ラ公債ヲオ出シニナツテモ惡性「インフ
レーション」ノ危險ハナイモノト我々ハ考へ
ルノデアリマス、併シナガラ闇ガ白晝公然
ト横行致シマシテ、何モ彼モ皆闇ナラザル
ハナシ、或ハ闇ニ依ラザレバ殆ド生活ヲ續
ケルコトガ出來ナイト云フヤウナ事情ニナ
ツテ參リマスト、是ハ戰時經濟ノ運營ニ非
常ニ危險ナコトニナルノデアリマス、赤字
公債ノ發行ニ對シマシテ協賛ヲ致サントス
ル我々ハ、一面政府ノ此ノ統制ノ確保ニ付
テ、闇ノ防止ニ付テ、是等ニ依ル惡性「イン
フレーション」ノ根源ヲ絕滅スルコトニ付テ
ノ對策ニ付テ、御用意ノ程ヲ承ルノ必要ガ
アルト思フノデアリマス
然ラバ闇ヲ起ス一番因ニナツテ居ルノハ
何デアルカト云フコトヲ、我々實情ヲ調査
致シテ見マスト、第一ハ一般的ニ惡性「イン
フレーション」ノ因ニナリマスノハ金ト物ト
ノ不均衡デアリマスガ、特ニ强力ナル闇ノ
因ニナツテ居リマスノハ、政府ニ於テ計畫
ヲサレテ居リマスル事業ノ遂行ニ付テ、政
府ノ方デハ豫算ヲオ出シニナツテ居ルガ、
金ハオ出シニナルケレドモ、ソレニ對スル
物資ノ割當ガ十分デナイ、又割當通リニ現
場ニ其ノ物資ガ配給サレテ居ナイ、是ガ爲
ニ政府ノ强權ヲ背景トシテ事業ヲ遂行スル
ノニ、正當ナ配給サレタモノガナイカラ、
何處カデ物資ヲ取ツテ來ルト云フヤウナコ
トガ、是ハアリ得ベカラザルコトデアリマ
スケレドモ、事實ニ於テハ屢〓サウ云フコト
ノアル現實ニ我々モ打突カツテ居ルノデア
リマス、是ハ物ノ方ガサウデアリマスト共
ニ、勞力ノ點モサウデアリマシテ、凡ユル
方面ニ於テ此ノ頃勞働者ノ爭奪ガ行ハレル
ノデアリマスガ、其ノ爭奪ガ權力ノナイ者
同士ノ間ニ於ケル爭奪ハ、ソレダケノ大キ
ナ力ヲ發揮シナイノデアリマスケレドモ、國
家權力ヲ背景トスル一ツノ仕事ニ於テ-政
府ノ直接ノ仕事デナクテモ、間接ニデモ、
請負ニデモサウ云フコトガ行ハレマス場合ニ
ハ、非常ニ不可解ナ、又非常ニ憂慮スベキ現
象ガ起ルノデアリマス、特ニ今一番大キナ闇
ノ因ニナツテ居リマスノハ、何ト言ヒマシテ
モ自由勞働者ノ賃金ガ著シク高イ、先般私
共ノ方ノ山口縣アタリデ農村ノ事情ヲ聽イテ
見マスルノニ、ヤハリ內部的ニハ米價ノ問題
ナドガ色論議サレルト云フ事情ノ下ニソレガ
論議サレルカト云フト、農民ガ自分ノ收入ヲ增
大シヨウトカ、自分ノ利益ヲ得ヨウトカ云
フ觀念ハ全然ナイ、唯勞働賃金ハ、ドウシ
テモ一日十圓位ノ賃金ヲ拂ハネバ自由勞働
者ガ來テ吳レナイ、今デハモウ二日程勞働
者ヲ傭ヘバ、米ヲ一俵拂ハナケレバナラヌト
云フ狀態ニアル、斯ウ云フ狀態下ニ於テハ、
ドウシテモ現在ノ米價デハ米ヲ作ルコトハ
出來ナイト云フ風ナコトヲ言ツテ居ル、サ
ウスルト又米價ノ問題ガ起ツテ來ル、次カ
ラ次ヘト所謂惡循環ヲシテ來ルノデアリマ
スガ、財政、理財ノ責任ヲ取ラレテ、此ノ
經濟界ヲ健全ニ運營シテ行カナクテハナラ
ヌ財政當局トシマシテ、又厚生次官モ御見
エニナツテ居ルヤウデゴザイマスルガ、金
ト物トノ均衡ニ付テ、特ニ國家デ支出サレ
ル資金ト、此ノ豫算面ニ計上サレル資金ト
物動計畫トノ關係、ソレカラ特ニ自由勞働
者ノ勞働賃金、今一番困ツタ問題トナツテ
居リマスルソレ等ノ統制等ニ付テハ、何カ
此ノ年度ニ於テー此ノ新シイ段階ニ於テ
對策ヲ講ゼラレント用意サレテ居ルカドウ
カ、其ノ點ヲ一ツ御伺ヒシタイト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=9
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010・田中豐
○田中(豐)政府委員 御質問ノ點ニハ大臣
若シクハ他ノ政府委員カラ御答ヘスル點ガ
多々アルト思ヒマスガ、資金ノ面ニ關スル
限リニ於キマシテ御答ヘ申上ゲテ置キマス、
御話ノ如ク、物資面ニ於キシテテ配給ナリ統
制ト云フモノガ完全ニ參レバ、「インワレー
ション」ト云フモノハ起ラナイト云フコ
トハ、確カニ其通リダト存ジマス、併シナ
ガラ凡ユル物資ニ付キマシテ、國民ノ生活
必要物資ニ付キマシテ、總テ配給統制、生
產カラ消費ニ至ルマデノ統制ガ完全ニ行ハ
レルト云フコトハ困難ナコトデアリマス、
結局ドウ致シマシテモ總テノ物資ニ付テ、
サウ云フ完全ナ統制ヲ行ヒ得マセヌ結果、
資金ノ面デ資金ガ澤山出マスナラバ、物價
騰貴、所謂「インフレ」的傾向ヲ起スト云フコ
トハ免レ得ナイト存ジマス、隨ヒマシテ此ノ
方面ニ付キマシテモ、配給其ノ他ノ統制ヲ
完全ニスルト共ニ、ドウシテモ萬般ノ物資
總テヲ完全ニヤルト云フコトハ不可能デア
ルガ故ニ、資金ノ面ニ於キマシテモ色々ナ對
策ガ考ヘラレナケレバナラナイト存ジマス
又御話ノ自由勞働者ノ例、其ノ他闇カラ起
リマス色々ナ循環的ナ問題、是等ニ關シマ
シテハ一方ニ於テ統制ヲ完全ニシ、或ハ闇
ヲ取締リ、又先程申シマシタヤウニ、サウ
致シマシテモドウシテモ資金面デ「インフ
レ」的傾向ガ出テ參ルノデアリマスカラ、
資金ノ上ニ於テモ適當ナ處置ヲ執リ、各方
面萬般ノ措置ヲ講ジナケレバナラヌト存ズ
ルノデアリマス、資金ト物資ノ繫ガリニ付
キマシテハ、御承知ノヤウニ先年來豫算編
成ニ當リマシテ、物動計畫其ノ他ト十分ナ
睨ミ合セヲシ。テ居リマス、豫算編成上ニ於
キマシテハ眞ニ此ノ實施可能ナルモノノミ
ヲ計上致シテ居ル、殊ニ本年ハサウ云フコ
トデ方針ガ決定サレマシテ、其ノ方針ニ依ツ
テ豫算ガ編成サレテ居ル、又轉業資金ノ放
出其ノ他ニ致シマシテモ、總テ、物ガ現實
ニ入手出來ルカドウカ、例ヘバ資金調整デ
增資ノ許可ヲスル、社債ノ發行ヲスル、或
ハ借入金ヲ返スト云フヤウナ場合ニ於キマ
シテモ、ソコニ物ガ十分入手出來ルカドウ
カ、勞力ガアルカ、電力ガ供給出來ルカト
云フヤウナ點ノ、各方面ヲ檢討致シテヤツ
テ居ルノデアリマス、併シナガラ何ト申シ
マシテモ大キナ世帶デアリマシテ、其ノ點
ニ色々ノ遺漏モ從來アツタコトト存ジマス
ガ、サウ云フ觀點ヲ更ニ强化致シマシテヤ
ツテ參リタイト思ツテ居ルヤウナ次第デア
リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=10
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011・武井覚太郎
○武井政府委員 日傭勞務者ノ賃金ガ非常
ニ高イ、是ガ惡影響ヲ及ボスト云フ御說デ
アリマス、御話ノヤウナ點ガ近時各所ニア
リマスルノデ、政府ト致シマシテハ一昨年及
ビ昨年ニ於テ中央賃金委員會ノ議ヲ經マシ
テ、工場鑛山ニ於ケル日傭勞務者、引續イ
テ農林水產業ニ從事スル日傭勞務者ノ賃金
等ヲ公定致シタノデアリマス、之ニ付キマシ
テモ色々ト日傭勞務者ノ實情ガ、各地方ニ依
ツテ違フト云フヤウナ事情モアリマスルノデ、
大體ニ於ケル標準ヲ中央デ定メテ、ソレニ
基イテ各地方廳ニ於テ公定ヲ致シタヤウナ
譯デアリマス、併シ御話ノヤウニ地方ニ依ツ
テハ是ガ厲行サレテ居ラナイト云フ事實ハ、
私共屢〓、聞ク所デアリマス、而シテ今御話ガ
アリマシタヤウニ、其ノ本ハ官廳ノ仕事ニア
ルト云フヤウナコトモ屢〓聞イテ居リマス、
調ベテ見マスト色々トサウデモナイモノモ
アリマスケレドモ、所謂突貫工事ト稱シマ
シテ、事實ニ於テ其ノ公定ガ破ラレテ居ル
ト云フヤウナコトモ、耳ニシナイ譯デハナ
イノデアリマスルノデ、是ガ厲行ニ付キマ
シテハ官廳其ノ他官ニ關係スル工事ニ從
事スル者ガ、先ヅ自肅スルコトガ第一ト思
ツテ居リマス、此ノ點ニ付キマシテハ厚生
省モ關係官廳ニ向ツテ屢、注意ヲ促シテ居
ル譯デアリマス、一面ニ於キマシテハ此ノ
賃金ヲ受取ル日傭勞務者ノ自肅ヲ促サナケ
レバナラヌ點ガアル譯デアリマ〓スルノデ、
一昨年各府縣ニ於テ勞務報國會ナルモノヲ結
成シテ參ツタ譯デアリマス、昨年夏ハ之ヲ
打ツテ一丸トシテ大日本勞務報國會ヲ結成
致シタノデアリマス、此ノ會ニ於キマシテ
ハ日傭勞務者ノ鍊成、其ノ他今ノ賃金等ニ
對スル厲行等モサセテ居ル譯デアリマスル
ケレドモ、是レ亦今日ノ事情デハ、結成後
日尙ホ淺イ爲ニ思フヤウナ效果ハ擧ツテ居
リマセヌ、隨ヒマシテ結局是等決メタモノ
ヲ各府縣ノ步調ヲ一ニシテ厲行スルト云フ
決心ヲ定メ、之ヲ實行スルコトガ最モ大切
デアルト思ツテ居リマス、斯樣ナコトデ進
ンデ居ル譯デアリマスガ、マダ十分ナ效果
ヲ擧ゲテ居ラヌコトハ遺憾デアリマス、有
體ニ實情ヲ申上ゲテ御諒承ヲ得タイト存ジ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=11
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012・氏家清吉
○氏家政府委員 惡性「インフレーションㄴ
防止對策ニ付テ、色々御尋ネヤ外ノ方カ
ラノ御答ヘガアリマシタガ、其ノ爲ニハ配
給ト價格ノ統制ガ必要デアルト云フコト、
ソレモ其ノ通リダト思ヒマス、殊ニ勞銀ナ
ドニ付キマシテハ餘程能ク取締ヲシナケレ
バナラヌト思フノデアリマスガ、唯ソレ等
ニモ決シテ劣ラナイ程ニ必要ナノガ、貯蓄
ノ增强デアルト思フノデアリマス、何ト申
シマシテモ物ト金トノ不釣合ヲ矯正スルト
云フ點カラ考ヘマスト、益〓此ノ貯蓄ノ增强
ト云フコトニ力ヲ入レテ行カナケレバナラ
ヌト思ヒマスシ、又物動計畫ナリ、或ハ資
金計畫ナリト見合セタ上デ作ラレタ此ノ貯
蓄ノ目標額ガ、完全ニ達成サレルト云フコ
トデアリマスレバ、惡性「インフレーショ
ンレノ防止ノ問題ハ大半片付クノデハナイ
カト云フ風ニモ考ヘラレルト思フノデアリ
そう、隨ヒマシテ今後ノ惡性「インフレ」防
止對策トシマシテハ、益、、貯蓄ノ强化ニ力ヲ
入レル、其ノ爲ニ色々法律ノ改正モスルコ
トニナツテ居リマスシ、又其ノ外豫算上ノ
措置モ執ツテ居ルヤウナ次第ナノデアリマ
ス、殊ニ生產ニ關係ノナイ資金ヲバラ撒カ
ヌコト、是ハ物ト金トノ釣合ヲ保ツテ行ク
上ニ、非常ニ大事ナコトダト思フノデアリ
マシテ、戰力增强、企業整備ニ付キマシテ、
特別ナ方策ヲ執ラレマシタコトハ御承知ノ
通リデアリマス、又只今御審議ヲ願ツテ居
リマス臨時資金調整法ノ十條ノ二ノ關係ヲ、
從來ヨリモ擴張スルト云フコトニナツテ居
ルノデアリマスガ、是ナドモ御心配ニナツ
テ居リマス惡性「インフレ」防止對策ト致シ
マシテ、物ノ生產面ニ關係ノナイ資金ヲ成
ベク吐出サナイヤウニスル、速カニ之ヲ囘
收スルト云フヤウナコトヨリ來テ居ル譯デ
アリマス、一寸一言此ノ言葉ヲ附加ヘテ置
ク次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=12
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013・西川貞一
○西川委員 惡性「インフレ」ノ防止ニ付キ
マシテ貯蓄ガ重要デアルト云フ點ハ、御說
明ノ通リデアルト思フノデアリマスガ、尙
ホ貯蓄萬能デモイカヌ點ガアルコトモ考ヘ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス、ソレ
ハ假ニ私ガ持ツテ居ル金ヲ何カ一度使ヒマ
シテ、其ノ者ガ更ニ其ノ金ヲ二、三遍囘轉
シタ後ニ預ケテモ、ヤハリ一定ノ貯蓄ニハ
ナルノデアリマスケレドモ、ソレガ一、二
囘動イテ居ル間ニ、ソコニ物ノ動キガアリ、
其ノ他ノ動キガアリマシテ、ヤハリ是ハ一
ツノ惡性「インフレ」ノ原因ニモナリマスノ
デ、玆ニ配給ノ統制ト云フ點ガ、同時ニ非
常ニ强力ニ保持セラレナケレバナラヌト考
ヘルノデアリマス、サウ云フ點デ其ノ本ニ
ナリマスノハ、ヤハリ勞働賃金デアルト思
フ、更ニ其ノ勞働賃金ノ本ニナルノハ生
活費デアリマスカラ、戰時下ニ於テ戰時經
濟ヲ健全ニ保ツテ行ク上ニハ、ドウシテモ
國民ガ低廉ニシテ簡素ナル生活ヲ營ミ得ル
狀態ニ置イテヤラナケレバナラヌ、此ノ低
廉簡素ナル生活ト云フコトハ非常ニ今叫バ
レテ居リマスガ、其ノ簡素ナルベキ生活ガ
非常ニ高價ナル生活ニナリマスト、ドウシ
テモ惡性「インフレーション」ノ原因ヲ作ツ
テ來ルノデアリマス、故ニ政府ハ國民ノ戰
時生活ヲ、低廉ニシテ簡素ナル生活ヲナシ
得ルヤウニ、萬全ノ措置ヲ講ゼラレナケレ
バナラヌト思フノデアリマスガ、サウ云フ點
カラ考ヘマシテ政府自體ノナサルコトガ、國
民ノ生活ヲ高價ナラシメル原因ヲ屢〓作リツ
ツアリマスルコトハ、大イニ考慮ヲ要スル點ガ
多々アルト思フノデアリマス、煙草ノ値上
ノ如キモ是ハ十分ナ理由ガアルノデアリマ
シテ、私共煙草ノ値上ニ付テ全然反對ノ意
見ヲ持ツテ居ル者デハゴザイマセヌガ、ア
レモ無闇ニ高クナリマシテ敷島一箱ガ一圓
ト云フコトニナリマスト、元ハ敷島一ツト
云フモノハ極メテ輕イモノデアツタノガ、
此ノ頃ノヤウニナルト赤帽ニ一寸シタ荷物
ヲ持タセテモ一圓デス、一寸シタ使ヒノ御
禮ガ今マデハ煙草一ツノ煙草錢デアツタノ
ガ、煙草一個ト云ウタツテ今日ハ一圓出サ
ネバ煙草錢ニナラヌ、敷島ガ買ヘヌ、ソコ
デ煙草錢ガ五圓ニナリ十圓ニナルト云フコ
トニナリマス、サウスルト煙草ノ値上ゲト
云フコトハ、一面十分ノ理由ガアルノデア
リマスガ、併シナガラ是ハ僅カダガ煙草錢
ダト言ウテ渡ス金ガ、五圓デアリ十圓デナ
クチヤナラヌト云フコトニナツテ來マシテ、
是ガ非常ニ通貨ニ對スル觀念ニ影響ヲスル
ノデアリマス、同時ニヤハリ高クナツタカ
ラモウ煙草ヲ止メヨウト云フノデ、一日ヤ
二日ハ止メタ人ハ相當アルヤウデアリマス
ガ、三日目カラモウ喫ハズニ居ラレナイト
云フコトニナツテ、ヤハリ生活ガ高價ニナ
ル、又近ク行ハレントスル郵便料金ノ値上
ノ如キモ生活ヲ高價ナラシメル、或ハ不急
不要ノ旅行ヲ押ヘル意味ニ於キマシテ、交
通運賃ノ引上等ハ當然デゴザイマスケレド
モ、併シナガラ是ハドウシテモ必要ナル旅
行ノ負擔ヲ非常ニ大ナラシメルト云フヤウ
ナ點ニ付テハ、是ハ一面戰時經濟ヲ健全ニ
運營シテ行クト云フ點ニ付テ、相當ニ考ヘ
ラレナクテハナラヌ段階デハナイカト思フ、
ソコデ考ヘラレマスコトハ、尙ホ將來續々
ト煙草ノ値上ヲシナケレバナラヌヤウナ情
勢ニナルカモ知レマセヌガ、煙草錢ガ五圓
ニナリ、十圓ニナリ、三十圓ニナリ、五十
圓ニナルト云フヤウナコトハセズニ、此ノ
頃用ヒラレテ居リマス貯蓄劵ヲ同時ニ買ハ
セルトカ、或ハ貯蓄ニスルヨリモ、稅金ト
シテ完全ニ吸收シテシマツタ方ガ宜イト云
フヤウナ見地ニ於テハ、煙草一個ニ對シテ
納稅證劵ガ付クトカ云フヤウナコトニナツ
テモ、ソレハ已ムヲ得ナイト思フノデアリ
マスルガ、兎ニ角煙草一ツガ非常ニ高イモ
ノニナルト云フヤウナ觀念ヲ植付ケルコト
ハ餘程考へ物ヂヤナイカ、大體此ノ頃ハ煙
草ノ價格ハ平常時ノ價格ハ是レ〓〓デ、戰
時負擔ハ是レ〓〓ト云フ風ニナサレタコト
ハ、非常ニ良イ一ツノ思付キダト思ヒマス
ケレドモ、ソレモモウ慣レツコニナリマシ
テ、ヤハリ敷島一ツハ一圓ダト云フ觀念ガ
アルノデアリマス、此處ニ付託サレテ居リ
マス法律案ニモ關係ノアルコトデアリマス
ルガ、低廉ニシテ簡素ナル生活ヲナサシメ
ルコトニ政府ハ努力スル、單ニ簡素ナル生
活ダケデハイカヌ、其ノ簡素ナル生活スラ
モ非常ナ高價ナモノニナツタノデハ、モウ
戰時經濟ノ安定ヲ確保スルコトガ困難ニナ
ル、低廉ニシテ簡素ナル生活ヲ營マシメルコ
トニ、今後ノ施策ハ進メラレナクテハナラ
ヌト思フノデアリマスガ、政府ノ御所見ヲ
承リタイト思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=13
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014・濱田幸雄
○濱田(幸)政府委員 只今西川委員カラ煙
草ノ値上ノコトニモ關聯致シマシテ御質問
ガアリマシタノデ、或ハ私カラ此ノ問題ニ
付キマシテ御答辯申上ゲマスコトハ適當デ
ナク、大藏大臣カラデモ御答辯致スベキモ
ノカトモ存ズルノデアリマスルガ、一應事
務當局ト致シマシテ御答辯申上ゲタイト思
ヒマス、御說ノ通リニ煙草ノ値上ヲヤリマ
シタ、其ノ爲ニ通貨ニ對スル國民ノ考ヘ方
ニ變化ヲ來スヤウナ虞レガアル、確カニサ
ウ云フ一面モアルト思フノデアリマスガ、兎
ニ角今囘ノ煙草ノ値上ハ、一般ノ間接稅ノ
增徵ト同ジヤウナ趣旨デ、一面國家ノ增收
ヲ圖リ、,又購買力ノ吸收ヲモ期スルト云フ
趣旨カラ行ハレタモノデアリマシテ、今西川
委員カラノ御意見ノヤウナ半面モアリマスル
ガ、又政府ノ狙ツテ居ルヤウナ點モアリマ
シテ、結局是ハ全般的ニ達觀致シマシテ、最後
ノ判斷ヲ致スベキモノデナイカト思フノデ
アリマス、只今ノ所政府ト致シマシテハ、
國庫ノ增收ヲ圖ルト共ニ、購買力ノ吸收ヲ
行フト云フ點ニ重點ヲ置キマシテ、今囘ノ煙
草ノ値上ヲ行ツタモノデアルノデアリマス、
將來此ノ煙草ノ値上ノヤウナコトハ避ケ
マシテ、煙草ノ買受ヲ致ス者ニハ、貯蓄劵ノ
ヤウナモノヲ買ハスヤウナコトニ依ツテ購
買力ノ吸收ヲ圖リ、貯蓄ノ增强ヲヤツテ見
テハドウカト云フ御意見、確カニソレモ御
尤モナ御考ヘダト思フノデアリマス、唯私
共ト致シマシテ將來煙草ノ値上ハ絕對ニ
行ハナイ、今申シマシタ方法ニ依ツテ善處ス
ルト云フコトハ、今直チニ御答辯ガ出來ナ
イノデアリマス、今後ノ問題ト致シマシテ
ハ右ノ點ハ十分考慮致スベキモノデアルト
思フノデアリマス、簡單デアリマスガ、御答
辯申上ゲマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=14
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015・西川貞一
○西川委員 御答辯ノ次第ハ了承致シマシ
タ、要スルニ私共モ煙草ノ値上ハ巳ムヲ得
ザル措置デアルト云フコトハ十分了承スル
ノデアリマスガ、ソレカラ受ケル感ジノ點
カラ考ヘマシテ、ヤハリ一ツノ限界ハアル
ヤウニ思ハレル、例ヘバ酒ノ一級酒ガ十二圓
ニナツテ、一合ノ酒ガ一圓、杯一パイガ、
此ノ酒杯ガ十錢ダト云フヤウナ風ノ感ジヲ受
ケ出スト、或ル限度マデハ斯ウ云フモノハ
當然ダト云フコトデ濟マサレルノデアリマ
スガ、或ル限度ヘ行クト、是レ一杯十錢ダ
ト云ツテ、是ガモウ通貨ノ觀念ヲ非常ニ輕ン
ズルヤウナコトニナル、其ノ限界ガ稍〓來テ
居ルノデハナイカ、ソコデ一ツノ新シイ手
ヲヤハリ御〓究ニナル必要ガアルダラウト
存ジマスノデ、將來ニ於テハ更ニ御考究ア
ランコトヲ希望スルノデアリマス
ソレカラ次ニ臨時資金調整法ニ關係スル
コトデアリマスガ、是レ亦私共ノサウ云フ
コトデ感ズル點ヲ申上ゲテ御參考ニ資シ、
又將來ノ御考究ノ資料ニシテ戴キタイト思
フノデアリマス、土地其ノ他ヲ買却致シマ
シタ代金、補助金其ノ他ノ金錢ニ對シマシ
テ一ツノ凍結ヲ致シマスルコトハ是レ亦
惡性「インフレーション」防止ノ爲ニ當然ナ
サナケレバナラヌ措置デアリマシテ、此ノ
方法ニ付キマシテハ我々全然贊成ナンデア
リマス、所ガ反面斯ウ云フ現象ガ此ノ頃生
ジテ居ルノニ面接シマシテ、非常ニ當惑ス
ルノデアリマス、ソレハ物ヲ賣ツテ金ニ替
ヘテモ、其ノ金ヲ金トシテ使フコトガ出來
ナイ爲ニ金ニ魅力ヲ感ジナイ、其ノ事カラ
物ヲ離スコトヲ非常ニ嫌フ、今日農村ニ於
ケル國家ノ要請デアル自作農創設ガ、ドウ
モ思フヤウニ行カナイト云フノハ、土地ヲ
持ツテ居ル者ガソレヲ手離スコトヲ非常ニ
嫌フ、ソレカラ又工場其ノ他時局ノ必要上、
土地其ノ他ノモノヲ買收シナクチヤナラ
又、其ノ者ガ持ツテ居ツテモ、本來所有ス
ルコトニ依ツテ別ニ利用シテ居ラナイ土地
デモ、兎ニ角持ツテ居リタガル、ソレヲ賣
ルコトヲ非常ニ嫌フ、斯ウ云フヤウナコト
ガ是等ノ土地ノ利用ノ圓滑ヲ害シ、又表向
キノ價格ダケデハドウシテモ賣ラナイ、裏
ノ方カラ何トカソレニ代ル利益ヲ與ヘテヤ
ラナイト、其ノ土地、其ノ物ヲ手離サヌト
云フコトモ一ツノ大キナ闇ノ原因ニナツテ
居ルノデアリマス、是ハ一面必要ナル措置
ヲ行フ反面ニ、サウ云フコトガドウシテモ
免レ得ナイノデアリマスガ、免レ得ナイ現
象ト雖モ、サウ云フコトモ亦統制スルヤウ
ナ手段ヲ講ジナカツタナラバ、ソレ等ノコ
トノ方面カラ戰時經濟ニ惡影響ヲ累加シテ
行クヤウナコトニナリマスノデ、サウ云フ
點ハ御考ヘニナツテ居ラレルカドウカ、
寸御尋ネシマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=15
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016・氏家清吉
○氏家政府委員 只今御話ノヤウナコトガ
アルコトハ、私共モ各方面カラ伺ツテ居ル
ノデアリマス、併シ土地其ノ他纏マツタ金、
詰リ生產ニ直接ノ關係ノナイ金ガ吐キ出サ
レマシタ際ニ、之ヲ其ノ儘ニシテ置クト非
常ニ惡影響ヲ與ヘルノデアリマスカラ、ド
ウシテモ是ハ是非貯蓄化サセル必要ガアル
ト云フノデ、斯ウ云フ規定ヲ置キ、又更ニ
之ヲ擴張シタイト考へテ居リマス、其ノ場
合ニ、ドウセ土地ヲ賣ツテモ其ノ金ガ自由
ニ使ヘナイ、ソンナラモウ賣ルノハ止メタ
ト云フヤウナコトニナツテハ、是ハ非常ニ
差支ヘガ起ル場合モアルト思フノデアリマ
ス、コレハヤツパリ其ノ人ニ時局ヲ認識サ
セル、又サウ云フ金ヲ速カニ貯蓄化スルコ
トガ、戰時ノ財政經濟ヲ運營シテ行ク爲ニ
ドウシテモ必要ナンダト云フコトヲ、能ク
徹底サセルヨリ外ハ方法ガナイデハナイカ、
ソレガ中々難カシイカラ斯ウ云フ方法ヲ執
ルコトヲ差控ヘルト云フ譯ニモ參リ兼ネル
ト思フノデアリマス、隨ヒマシテ昭和十九
年度以降-ト申シマセヌデモ、モウ直チ
ニデモ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、金ノ
貴重ナコト、金ヲ粗末ニシテハイケナイ、
金ノ値打ト云フモノ、斯ウ云フモノニ付キ
マシテ何トカ一般ノ國民ニ對シテ、受け、
遍者へ直サセルト云フコトニ相當力ヲ入レ
テ行キタイ、今後ノ貯蓄增强運動ノ一ツト
シテ、金ヲ甘ク見ナイト云フコト、斯ウ云
フ方面ニ大イニ力ヲ入レテ行キタイ、斯樣
ニ考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=16
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017・西川貞一
○西川委員 次ニ專賣法ノ改正ノ問題ニ關
聯致シマシテ御尋ネシタイノデアリマスガ、
本法ニ依リマシテ從來ノ鹽ノ專賣ニ加ヘテ
苦汁ノ專賣ヲ御始メニナルノデゴザイマス
ガ、御說明ニ依リマスレバ、苦汁ハ航空機
ノ材料、資材、或ハ航空機用燃料ニ對シマ
シテ絕對ニ必需品デアツテ、戰爭完遂ノ爲
ニ是非トモナクテハナラヌモノデアル、隨
テ之ヲ專賣サレルト云フ趣旨ノヤウニ承ル
ノデゴザイマス、鹽自體ニ付テ見マシテモ、
是ハ生活上絕對ニ代用品ノナイ必需品デ、
米ニハ代用品ガアルケレドモ、鹽ニハ代用
品ガナイノダト云フコトヲ能ク國民ハ愬へ
テ居リマス、サウシテ是ハ割合ニ我々ノ一
般ノ爲政者ノ耳ニ響キ良イ都會地方ヨリ
モ、寧ロサウ云フ聲ノ中ニ中央ニ屆カナイ
山間、農村、山村ノ方面ニ於テ、非常ニ鹽
ノ缺乏感ヲ持ツテ居ル所ガ比較的ニアルノ
デゴザイマス、サウ云フ意味ニ於キマシテ
ハ、鹽自體モ大イニ尙ホ增產ノ必要ガアリ、
現在外地カラ取ツテ居ラレマスルモノヲ、
輸送力ノ關係カラ申シマシテモ、內地ニ於
テ更ニ增產スルノ必要モ鹽自體ニ於テモア
ルノデアリマセウ、尙苦汁ガ左樣ニ重要
デアルトスルナラバ、是レ亦大イニ增產ノ
必要ガアルノデゴザイマセウガ、大體政府
ト致シマシテハ現在ノ苦汁ヲ專賣ニ移セバ、
ソレデ滿足スベキ狀態デアルノカドウカ、又
將來增產ヲ必要トスルノデアルカ、增產ヲ必
要トスルノデアルナラバドウ云フ風ナ對策
ヲ以テ臨マレルノデアルカ、是等ノ點ニ付
キマシテ御說明ヲ得タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=17
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018・濱田幸雄
○濱田(幸)政府委員 鹽苦汁ノ增產ノ必要
ナコトニ付キマシテハ今御話ノアリマシタ
通リデ、今囘苦汁ノ專賣ヲ行ヒマスノモ、
單ニ從來專賣品デナカツタ苦汁ヲ專賣ニス
ルト云フダケノ趣旨デハ勿論ナイノデアリ
マス、之ヲ專賣ニ致シマシテ、從來ヨリモ
ヨリ以上苦汁ノ生產ヲ圖リ、而モ生產セラ
レマシタ苦汁ハ一石ト雖モ之ヲ捨テナイデ、
完全ニ消化スルト云フ趣旨デ、今囘ノ專賣
ヲ實施致シタイト思ウテ居ルノデアリマス、
苦汁ノ增產ニ付テドウ云フコトヲ將來考ヘ
テ居ルカト云フ御尋ネデアリマスガ、色々
ノ點デ今後對策ヲ講ジテ行キタイト思ウテ
居ルノデアリマス、其ノ一二ヲ一應腹案ト
致シマシテ御說明申シタイト思フノデアリ
マス、兎ニ角現在內地デ苦汁ヲ生產シテ居
リマス狀態カラ考ヘマシテ、結局ハ苦汁ノ
增產ハ卽チ鹽ノ增產デアルト云フコトニモ
相成ラウカト思フノデアリマシテ、將來ハ
鹽苦汁ヲ一體ト致シマシテ是ガ生產ノ確保
ヲ圖リ、更ニ增產ヲヤツテ行キタイト思ウ
テ居ルノデアリマス、現在ノ內地ノ鹽田ヲ
更ニ擴充シテ行クト云フコトモ出來ルダケ
ヤリ、又現在ノ鹽田ノ改造モ致シマシテ、
其ノ生產力ヲ增加シテ行クト云フコトヲ第
一ニ考ヘテ居ルノデアリマス
又之ニ付キマシテ、勞務對策ト云フコトモ
相當難カシイ問題ニナツテ居ルノデアリマス、
從來內地ノ鹽田ニ於ケル鹽ノ生產狀況ヲ見マシ
テモ、我々ト致シマシテハ、石炭トカ其ノ他ノ所
謂資材ノ點ヨリモ、現下ノ情勢カラ申シマ
スルト、寧ロ勞務者ノ確保ト云フコトガ、非
常ニ大キナ問題ニナツテ居ルヤウニ思フノ
デアリマス、從來政府ト致シマシテモ、之
ニ對シテ或ハ勞務調整令ニ依ツテ適當ナ措
置ヲ執ルトカ、或ハ其ノ他ノ凡ユル方法ヲ
講ジテ居ルノデアリマスルガ、將來ニ於キ
マシテハ勞務調整令ナンカノ適用範圍ヲ現
在以上ニ擴メ、之ヲ强化スルト云フヤウナ
コトモ必要デアルト思フノデアリマス、又
勞務ニ付キマシテハ、現在モ鹽業組合ト云
フモノガアルノデアリマスガ、鹽業組合ナ
ンカヲ更ニ積極的ニ活動ヲ致サセマシテ、
サウシテ勞務ノ確保ヲ圖ルト云フコトヲ、
思ヒ切ツテヤツテ參リタイト云フ考ヘヲ持
ツテ居ルノデアリマス、現在一例ヲ申シマ
スルト、內地ノ鹽田デ働イテ居リマス從業
員ガ應召シマシテモ、之ニ對シテ家族ニ別
ニ生活上ノ補助ヲスルヤウナ施設モ考ヘラ
レテナイノデアリマスルガ、將來ハ斯ウ云
フ方面ニ付キマシテモ、鹽業組合カラ一定
ノ生活ノ補助ヲ致シマス、サウシテソレニ
對シテ必要ナル經費ハ、國カラモ補助ヲス
ルト云フヤウナコトモ考ヘテ見タイト思ウ
テ居ルノデアリマス
又御承知ノヤウニ、苦汁ノ生產ト鹽ノ生
產ハ不可分ノ關係ニアル、絕對量カラ言ヒ
マスルト、大體ニ於テ鹽ヲ多ク造レバ苦汁
ガ多ク採レルト云フコトニナツテ居ルノデ
アリマス、併シ苦汁ヲ多ク採リマスルト、
ソレダケ鹽ノ採收量ガ比較的ニ減ルト云フ
ヤウナ關係ニナツテ居ルノデアリマス、卽
チ鹹水ヲ煎熬致シマスル時ニ、煮詰メテ行
ケバ行ク程苦汁ノ採收量ハ減ルノデアリマ
ス若採リスレバスル程苦汁ノ採收量ハ殖
エルガ、逆ニ鹽ノ生產量ハ減ル、少クナル
ト云フヤウナ關係ニナツテ居リマスガ、結
局將來鹽モ苦汁モ同ジ專賣品ト致シマスレ
バ、其ノ間ノ調整ト云フコトモ出來、又苦
汁ニ對スル賠償金ト、鹽ニ對スル賠償金ノ間
ノ調整モ取レマシテ、必要ナル苦汁ノ生產
量ノ確保ト云フコトモ或ル程度容易ニ行ハ
レルノデハナイカト思フノデアリマス、例
ヘテ申シマスルト、サウ云フヤウナコトヲ
考ヘテ居ルノデアリマス、更ニ又全體トシ
テ考ヘマスルノニハ、鹽及ビ苦汁ニ對シテ
所謂生產責任量ト云フヤウナモノヲヤツテ
見タイト云フコトヲ考ヘテ居リマス、鹽業
者ニ對シテ、其ノ年ニ於ケル責任生產量ト
云フモノヲ示シ、ソレ以上生產シタ者ニハ
一定ノ奬勵金ヲヤル、正當ノ事由ナクシテ
生產ヲ確保シナカツタ者ニ對シテハ、或ル
程度ノ制裁ヲ加ヘルト云フヤウナコトモ考
ヘテ見タイト思フノデアリマス兎ニ角凡
ユル點ニ於キマシテ、苦汁及ビ鹽ノ生產ノ
確保ト云フコトヲ今後ヤツテ見タイト思ツ
テ居ルノデアリマス、先程申シマシタ通リ
ニ、苦汁ノ專賣ヲヤリマスコトハ、單ニ今
マデ專賣品デナカツタ苦汁ヲ專賣品ニシテ、
大藏省ノ方デ此ノ生產確保ヲ指導奬勵シテ
行クト云フダケデハナイノデアリマシテ、
又我々ト致シマシテハ專賣ヲヤリマス以上
ハ相當ノ增產ヲ圖ルコトガ出來ルト云フ
確信ヲ持ツテ居ルノデアリマス、簡單デア
リマスガ之ヲ以テ御答ヘト致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=18
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019・西川貞一
○西川委員 苦汁ニ對スル將來ノ御方針ニ
付テハ大體了承シタノデゴザイマスガ、此
ノ場合鹽、苦汁ノ增產ヲ强力ニ推進サレマ
スノニハ、凡ユルモノガ今日增產ノ必要ニ
迫ラレテ居リ、資材、勞務ガ他ノ部門トノ
間ニ相當ニ競合ヲ致シマスルノデ、單ニ專
賣當局ガ其ノ方針ヲ强力ニ持ツテ居ラレル
ノミデハ、其ノ目的ヲ達成スルコトハ、非
常ニ困難デアラウト思フノデアリマス、前
ニモ申シマシタヤウニ、是ガ物資ト資材ト
又勞力ノ配分トノ間ニ均衡ガ取レテ居リマ
セヌト、經濟的ニモ色々憂慮スベキ現象ガ起
ツテ來ルノデアリマシテ、此ノ點ニ付テ一番
心配サレルノハ、木造船ノ例ニモアルノデ
アリマスガ、內閣ニ於テハ五十萬「トン」ノ建
造ヲスルト云フ方針ヲ以テ强力ニソレヲオ
ヤリニナル、併シナガラドウモソレニ對ス
ル資材ノ物動計畫等ガ、完全ニ行ツテ居ナ
カツタヤウニモ承ツテ居ルノデアリマス、
其ノ爲ニ非常ニ面白クナイ結果ヲ來シテ居
ルヤウナ事例モ多々アルヤウデアリマスル
ガ、苦汁ノ問題ハ現下ノ航空機ノ增產ノ問
題ト關聯シマシテ非常ニ重大問題デアリマ
スルノデ、之ニ對スル大藏當局ノ計畫ト、
軍需省方面ニ於テ資材ノ取扱ヒヲシテ居ラ
レマスル其ノ方ノ問題ト、厚生省ニ於テ勞
務ノ配分ニ付テ御取扱ヒニナツテ居リマス
ル方面、ソレ等トノ關聯ガ巧ク行ツテ居ル
カドウカト云フ點ヲ非常ニ心配スルノデア
リマス、此ノ點ハ軍需省ナリ、厚生省ナリ
ノ政府委員ノ方カラ、其ノ對策ニ付テ御說
明ヲ承ツテ置キタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=19
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020・武井覚太郎
○武井政府委員 鹽ト苦汁ノ重要性ニ付キ
マシテハ改メテ申上ゲル必要モナイト思ヒ
いく、殊ニ仰セノヤウニ鹽ニ付キマシテハ
生活ノ必需品デアルノミナラズ、私共ノ關
係ノ勞務者等ニ付キマシテ、高熱作業ニ從
事スル者ニ付キマシテハ、此ノ鹽ナクシテ
ハ能率發揮ガ出來ナイノデアリマシテ、非
常ニ重要視致シテ居リマス、今囘政府ガ苦
汁ノ專賣ヲ始メルト云フコトニナリ、今御尋
ネノヤウニ勞務ノ點ハドウカト云フコトデ
アリマスガ、專賣局當局ヨリ色々ト勞務ニ付
テ御腹案ノアルコトヲ御話ガアリマシテ、厚
生省ト致シマシテハ能ク打合セヲ致シマシ
六、勞務ノ爲ニ專賣ノ目的ヲ達スルコトガ
出來ナカツタト云フオ叱リダケハ受ケナイ
ヤウニ致サウト思ツテ居リマス、一方勞務
ノ動員ニ付キマシテハ、從來中央デ主トシ
テヤツテ居ツタノデアリマスガ、今囘出來
ル限リ之ヲ地方中心ニシテ地方計畫ヲ立テ、
サウシテ地方ノ實情ニ卽應スルヤウニ準備
ヲ進メテ居リマスノデ、此ノ際鹽等ノ事業ハ
全國的デナシニ地方ニ片寄ツテ居ルモノデ
アリマスルノデ、地方當局トノ間ニ能ク打合
セヲ致シ、中央ニ於テモ十分ニ打合セヲ致
シマシテ、勞務ダケカラ見マスレバ、サウ
澤山ノモノデハナイト思ツテ居リマスノデ、
勞務ニ關スル御心配ハ要ラヌト思ツテ居リ
マイク精々努メテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=20
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021・中村梅吉
○中村委員長 西川君ニ申上ゲマスガ、軍
需省ノ政府委員ハ今居リマセヌケレドモ、
軍需省椙杜ト云フ書記官ノ人ガ說明員トシ
テ御見エニナツテ居リマスカラ、其ノ方ノ
御說明ヲ願ツテハ如何デスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=21
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022・西川貞一
○西川委員 宜シウゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=22
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023・椙杜正太郎
○椙杜說明員 苦汁ノ增產ニ關シマスル資材
ノ點ニ付テノ御質問ニ對シテ御答ヘ申上ゲ
やっ、西川サンカラ申サレマシタ如ク、苦
汁ノ增產ニモ鐵鋼、「セメント」其ノ他若干ノ
資材ヲ要スルノデアリマシテ、是等ノ資材ノ
配當ニ付キマシテハ、物動計畫ガマダ決定
致シマセヌノデ、關係方面ト打合セ中デハ
ゴザイマスガ、先程御話ニナリマシタヤウ
ニ、苦汁ガ航空機用ノ原料、卽チ鹽化「マ
グネシウム」ノ原料ニナルノデアリマシテ、
非常ニ緊要ナ物資デゴザイマスノデ、是等
ノ資材ニ付キマシテハ出來ルダケ物動計畫
ニ計上スルト云フコトデ關係方面ト打合
セテ居リマス、鐵鋼其ノ他モ非常ニ貴重ナ
資材デハゴザイマスガ、餘リ大シタ量デモゴ
ザイマセヌノデ、極力計上致シタイト思ツ
テ相談ヲ致シテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=23
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024・西川貞一
○西川委員 能ク關係官廳御連絡ノ上、計
畫シマシタモノノ遂行ガ不可能ニ陷ラヌヤ
ウニ、又現在ノ鹽田ノ生產量ヲ十分ニ上ゲ
ルヤウニモ、石炭其ノ他ノ物資ガ足ラナイ
ト云フコトノナイヤウニ、一段ト御努力ヲ
御願ヒシタイト思ヒマス
ソレカラ尙ホ鹽ニ付キマシテハ此ノ製鹽
業ガ非常ニ歷史的ニ古イモノデアリマス爲
ニ、製鹽業自體ニ色々古イ因襲モアリマセ
ウ、殊ニ鹽業勞働者ノ色々ノ態勢ガ非常ニ
舊式デアツテ、今日ノ時局下大イニ刷新ヲ
要スル點モ多々アリマセウ、是等ハ特ニ此
ノ法律ノ改正ト同時ニ御留意ヲ願ヒタイノ
デアリマス、尙ホ特ニ專賣局ハ地方的ニソ
レゾレ官署ヲ持ツテ居ラレマスノデ、非常
ニ地方的ニ能ク手ガ行屆ク半面ニ、從來自
分ノ特別ノ官署ガアリマスルダケニ、地方
廳トノ連絡等ニ付キマシテハ、多少隔靴搔
痒ノ感ガアル點モアツタデアリマセウシ、
特ニ製鹽地ノ市町村當局トノ連絡等ニ付キ
マシテモ、十分ナラザルモノガアルヤウニ
感ゼラレルノデアリマス、併シナガラ今日
ハ總テガ、勞務ノ問題ニシロ、資材ノ問題
ニシロ、勞務者ノ食糧ノ問題ニシロ、其ノ土
地ニ於ケル自治團體ナリ、地方行政團體ナ
リ或ハ地方廳トノ綜合的ナ關聯ナシニハ
何事モ行ヘナイノデアリマスカラ、是等ノ
連絡ヲ緊密ニスルト云フヤウナ點ニ付テハ、
更ニ一段ノ御考究ヲ御願ヒシテ置キマス、
專賣法ニ關スル點ハ是デ終リマス
最後ニ一ツ運通省ノ方ガオイデニナツテ居
ルヤウデアリマスカラ、御聽キ致シタイノデア
リマスガ、玆ニ地方鐵道ノ買收ニ要スル經費ニ
付テノ公債ノ發行ナリ、或ハ鐵道ノ補償ニ
關シテノ公債ノ發行等ニ付テノ法律ガ御提
案ニナツタノデアリマスガ、尙ホ地方ノ私
設鐵道ニ對シマシテ休廢止ヲサセテ居ラレ
ルモノガ數件アルヤウデアリマスガ、是等
ニ對スル補償ハ此ノ法律ニ於テナサルノデ
ゴザイマスカ、又其ノ補償ノ問題ハ後ニ出
テ來ルノデゴザイマスカ、其ノ點ヲ一ツ御
尋ネシテ置キタイ、ソレカラ此ノ鐵道自體
ニ對スル補償ハソレデ宜イノデアリマスガ、
鐵道ヲ廢止致シマスル結果ハ、其ノ地方ノ
經濟ニ對シマシテハ、地方民ニ經濟的ニ及
ボス影響ハ極メテ甚大ナルモノガアルノデ
アリマス、例ヘバ農產物ニ致シマシテモ、
今日ハ販賣スル價格ハ決ツテ居ル、ソレヲ
或ル地點マデ搬出致シマス運賃ガ、從來ハ
鐵道ニ依ツテ居ツタソデ比較的安ク出テ居
ツタモノガ、鐵道ガ無クナツタ爲ニ非常ニ
高クナル、是ハ生產スル者ノ負擔ニ歸スル
コトニナツテ來ルノデアリマス、是ガ現實
ニ最モ露骨ニ現ハレテ來ルノハ山林デアリマ
シテ、特ニ山林ハ逆算價格ヲ以テ山ノ立木
ヲ買取ルコトニナツテ居リマス爲ニ、鐵道
ノ運賃ガ直接山林ノ價格ニ響イテ來ルノデ
アリマス、今日ノ時局デアリマスカラ國民
ハ如何ナル負擔モ損失モ、國家ノ爲ニ必要
デアリ、戰爭完遂ノ爲ニ必要デアルナラバ、
ソレヲ厭フモノデハゴザイマセヌ、併シ
ナガラ鐵道ノ企業體自體ニ對シテハ補償ヲ
スル、其ノ適正ナル補償ガ行ハレルノデア
ルナラバ、其ノ地方ノ者ノ蒙ムル色々ナ負
擔損害等ニ付テモ尙ホ考慮スルコトハ、爲
政者トシテ當然考フベキコトデナクチヤナ
ラヌト思フノデアリマスガ、ソレ等ノ點ハ
ドウ云フ風ニナツテ居リマスカ
ソレカラモウ一ツ非常ニ重大ナル點ハ、此
ノ鐵道ノ休廢止等、地方ノ交通運輸ニ非常
ニ大キナ變動ヲ與ヘルヤウナ問題ニ付テ、
其ノ地方ノ行政ノ責任ヲ持ツテ居リマスル
地方長官トハ、完全ナル諒解ガアルノデア
ルカ、其ノ連絡ガ十分デアルカ、今日ハ地
方長官ハ國策遂行ノ第一線ニ立チマシテ、
凡ラユル問題ニ責任ヲ負ウテ居ル、米ノ供出
ニシマシテモ、木材ノ供出ニシマシテモ、
薪炭ノ供出ニシマシテモ、是等ノ供出ノ責
任ハ、現在ノ交通運輸機關ガ存在スルコト
ヲ前提トシテ色々計畫ヲ立テルノデゴザイ
マスガ、萬一其ノ地方長官トノ連絡十分ナ
ラズ、又完全ナル諒解ヲ得ズシテ、鐵道ガ
休廢止サレルト云フヤウナコトニナリマス
ト、其ノ地方ニ於ケル國策ノ完遂ガ總テノ
計畫ガ齟齬シテ參ルコトニナルノデアリマ
ス、是等ノ點ニ付テハ、從來我々ノ手ニ觸
V、耳ニ觸レマシタ現實ノ問題ハ-具體
的ニ申上ゲテモ宜イノデアリマスガ、十分
ナラザルモノガアツタヤウデアリマス、其
ノ結果ハ地方民ノ間ニ色々ナ思想的ナ動搖
ヲ起ス、地方長官ノ所へ泣キ付イテ行クト、
俺ハソンナコトハ知ラナイト云フヤウナコ
トニナリマスト、非常ニ地方民ニ與ヘル心
理的ナ影響ガ宜クナイノミナラズ、ソレニ
對スル對策トシテノ道路ノ改修トカ、其ノ
他交通對策等、非常ニ齟齬ヲ生ズルノデア
リマス、從來私共ガ具體的ニ承知致シテ居
リマスル點ハ、遺憾ノ點ガアル、是ハドウ
云フヤウナコトニナツテ居ルノデアリマス
カ、ソレ等ノ點ニ付テ此ノ際御答ヘヲ願ヒ
タイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=24
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025・堀木鎌三
○堀木政府委員 第一點ノ今囘致シマシタ
地方鐵道、軌道ノ休廢止ニ關シマシテハ、
實ハ御手許ヘ差上ゲテアリマス買收及ビ補
償ノ問題トハ、別個ニ處理サレテ居ル次第
デアリマス、此ノ問題ハ御承知ノ通リニ陸
運ノ强化ガ、飛行機ノ增產ヲ初メトシテ、各
重點產業ノ急速ナ發展ニ伴ヒマシテ、各方
面ニ要望致サレテ居リマスガ、現下ノ時局
ニ於キマシテ所要ノ資材ヲ確保スルト云フ
コトハ到底相許シマセヌノデ、結局現有施
設ヲ重點的ニ再編成スル、ヨリ重要ナ方面
ニ資材ノ轉用ヲ圖リ、旁、實ハ今囘ノニハ
方ニ於キマシテ南方ニ於キマス輸送施設ノ
整備ニモ當テル積リデゴザイマスガ、兎モ
角モ此ノ急速ナ整備ニ伴フ重點的ナ廢止、轉
換ソレカラ御承知ノ通リニ金屬ノ特別囘
收ニ關聯致シマシテ、屑化致シマス必要上、
相當多數ノモノヲ地方鐵道、軌道部門ニ於
テ出スト云フ風ナコトニナリマス、處理ト
シテハ其ノ施設ニ對シテハ產業設備營團ガ
其ノ買受責任者ト相成リマシテ、處理ヲ致
スコトニ相成ツテ居リマス、隨テ實際此ノ
問題ハ第二點ニ關聯致シマスヤウニ、地方
ニ一ツノ交通機關ガゴザイマスト、此處ニ
一ツノ產業ガソレニ依ツテ起ツテ居リマス
シ、又地方ノ生活ガソレニ依ツテ結バレテ居
リマスノデ、斯カルコトハ地方ノ方ニ取ツ
テハ非常ナ御迷惑デアリ、又御不便ヲ掛ケ
ル、犧牲ノ多イコトデアリマス、仰セノヤ
ウニ是ガ又他ノ輸送機關ニ代リマス時ニハ、
地方ノ人々ノ生活費、或ハ產業ノ問題ト云
フ風ニ掛ル譯デアリマス、例ニ御擧ゲニナ
リマシタ木材ノ關係其ノ他、實ハ今度撤去
致シマスノハ單リ地方鐵道、軌道ノミデ
ハアリマセヌデ、國有鐵道ノ部面ニ於キマ
シテモ相當多數ニ亙ツテ致シテ居リマスガ、
多クノ場合ニ是ガ木材ノ主トシテ產出スル
場所ニ相成ツテ居リマス、無論國家ノ非常
ニ熾烈ナ需要及ビ農商當局トハ、十分ナ連
繫ヲ取ルト云フコトノ下ニ、時局ヲ見ツ
致シマシテ、重點的ニハ致シマシタガ、
何ト申シテモ撤去致シマシタ線路ハ、主ト
シテ木材ガ出ルト云フ場所デアリマシテ、
是等ノ點ニ付テ搬出其ノ他ニ付テ運賃諸掛
リガ殖エルト云フコトモ、能ク感ジテ居ル
ノデアリマスガ、ソレ等ノ點ニ付テモ、全
國的ニ見ル時ニハ、比較的程度ノ輕イ方ト
申シマスカ、利用度ノ少イ方カラ撤去致ス
ト云フ風ナ情勢ニ致シテ居リマス、尙ホ運
輸通信省ト致シマシテハ之ニ代ル代行ノ機
關ノ整備ニ付テハ、地方ノ方ノ御面倒ヲ見
ルト云フ風ナコトニ致シテ居リマス、第三
ノ御質間ノ地方行政官廳トノ圓滑ナル連繫
ノ問題デゴザイマス、今囘ノ地方鐵道、軌
道ノ休廢止致サセマスコトニ付テ、地方廳
トノ圓滑ナル交涉ガ行ハレテ居ナカツタノ
デハナカラウカト云フ御疑念デゴサイマス
ガ、此ノ點ニ付テハ私共モ實ハ地方ノ行政
ノ責任ノ衝ニアル所ノ地方長官ト、總テガ
圓滑ニ參ツタトハ言ヒ難イ事情ニ置カレテ
居ルノデアリマス、一ツハ私共自身ガ振返リ
マシテモ、マダ十分デナイト云フ點ガアル、
私共自身モ手續ヲ運ブ上ノヤリ方ニ、モウ
少シ地方廳ト圓滑ナル連繫ヲ執ル必要ヲ感
ジテハ居リマス、同時ニ一方ニ於キマシテ
ハ明〓ノニ地方長官トシテハ、何ヲ申シマ
シテモ地方ニソレダケノ便益ヲ供シテ居リ
マスル軌道、鐵道等ヲ撤去致スコトデアリ
マスノデ、何ト申シマスカ、地方行政ヲ預
カラレル方ト致シマシテハ萬無理モナイコ
トトハ存ジマスガ、其ノ點ニ付キマシテ運
輸通信省ト幾分意見ノ差ガアリマシタケレ
ドモ、敢テ實施ニ移サナケレバナラナカツ
タ分ガアル譯デゴザイマス、實ハ一ツハ私
共自身ノ手續ノ不行屆、一ツハ事柄ノ性質
上已ムヲ得ズ圓滑ナル連繫ヲ執リ得ナカツ
タ、此ノ二ツノ點ガアルト存ジテ居リマス、
尙ホ御注意ノ點ハ今後一層留意シテ行キタ
イト存ジマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=25
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026・西川貞一
○西川委員 私ハ農業保險ト貯蓄ノ關係ニ
付テ、尙ホ農商省當局御出席ノ際ニ一點伺
フコトヲ保留シマシテ、是デ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=26
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027・中村梅吉
○中村委員長 ソレデハ本日ハ此ノ程度デ
散會致シマス、明日ハ午前十時カラ開會致
シタイト思ヒマス
午後四時五十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008411698X00219440124&spkNum=27
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