1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十九年一月三十一日（月曜日）午前十時十六分開議
出席委員左の如し
委員長 谷原公君
理事 沖藏君 理事 坂口平兵衞君
理事 長井源君 理事 宮崎一君
大川光三君 金子定一君
木下信君 木崎爲之君
佐久間渡君 坂下仙一郎君
曾木重貴君 高野孫左衞門君
高見之通君 土屋源市君
中井一夫君 中瀬拙夫君
仲井間宗一君 長沼權一君
西方利馬君 濱野徹太郎君
村松久義君 山田竹治君
八並武治君
出席國務大臣左の如し
司法大臣 岩村通世君
内務大臣 安藤紀三郎君
出席政府委員左の如し
法制局長官 森山鋭一君
法制局參事官 佐藤基君
内務次官 唐澤俊樹君
内務省管理局長 竹内徳治君
朝鮮總督府政務總監 田中武雄君
朝鮮總督府財務局長 水田直昌君
司法次官 大森洪太君
司法省民事局長 齋藤直一君
司法省刑事局長 池田克君
司法省刑政局長 正木亮君
司法省調査官 佐藤藤佐君
司法書記官 石田壽君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
訴訟費用等臨時措置法案（政府提出、貴族院送付）
會社等臨時措置法案（政府提出、貴族院送付）
經濟關係罰則の整備に關する法律案（政府提出、貴族院送付）
朝鮮に於ける裁判手續簡素化の爲の國防保安法及治安維持法の戰時特例に關する
法律案（政府提出、貴族院送付）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=0
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001・谷原公
○谷原委員長 只今カラ訴訟費用等臨時措
置法案外三件ノ委員會ヲ開會致シマス、議
題ト致シマシテ訴訟費用等臨時措置法案、
會社等臨時措置法案、經濟關係罰則ノ整備
ニ關スル法律案、之ヲ一括議題ト致シマシ
テ質疑ヲ續行致マシス--山田竹治君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=1
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002・山田竹治
○山田(竹)委員 一昨日ドナタカノ質問ニ
對シテ司法大臣ハ大物違反デモ遠慮ナク檢
擧スルト云フ洵ニ力强イ御答辯ヲ戴キマシ
テ私ハ滿足ヲスル一人デアリマス、司法大
臣トシテハ斯クアルベシト思ヒマスルガ、
是ハ大臣ノ心持ダケデ、實際ニハ此ノ檢擧
ハ行ハレテ居ラナイヤウデアリマス、私ハ
大物バカリヂヤナイ、寧ロ小物ノ方マデ十
分ニ檢擧ガ出來テ居ラヌト思フ、私ハ此ノ
檢擧ノ出來ナイ理由、今一ツハ分ツテ居ツ
テモ之ヲ調査セナイ所ノ實例、官紀肅正ヲ
ナシ得ル機構ノ私案、此ノ三ツニ對シマシ
テ司法當局ノ御答辯ヲ煩ハシタイト思ヒマ
ス、檢擧ノ出來ナイ理由、例ヘバ警察官ニ
違反行爲ガアツタ時ニハ何處ニ訴ヘテ出ル
カ、勿論檢事局モアリマセウケレドモ、大
部分ハ警察ニ訴ヘテ居ル、警察ニ訴ヘテ來
テモ中々取上ゲテ吳レナイ、取上ゲテ吳レ
ヌドコロデハナイ、訴ヘテ行クト大抵受付
デ以テ辯解ヲスル、サウシテ其ノ訴ヘノ要
旨ト云フモノヲ薄ライデシマフ、斯ウ云フ
ヤウニシテ兎角警察デ葬ラレテシマフ、他
ノ管內ノ警察ニ持ツテ行クト、是ハ所管ガ
違フカラト言ツテ警察デ受付ケテ吳レナイ
斯ウ云フヤウニナツテ警察官ノ違反行爲ト
云フモノハ殆ド擧ツテ居ラヌデハナイカ、
偶〓警察官ノ違反行爲ノ擧ルノハ外ノ方ノ事
件デ關聯ヲシテ來テハ擧リマスルガ、其ノ
〓偶〓、擧ル數モ相當ノ數ニナツテ居ルヤウデア
リマス、併シ實際ハ行ハレテ居ラヌ、私
東京府會ニ五回程出テ居リマシテ、私ノ所
ニハ警察ノ違反行爲ヲ投書或ハ態〓ヤツテ來
テ愬ヘル者ガ澤山アリマス、澤山アリマス
ルガ、ドウモ警察ハ之ヲ餘リ取上ゲナイ、
所謂一ツ穴ノ狐ナンダ、訴ヘル人モ取調ベ
ル人モ一ツ穴ノ狐ナンダ、ソレダカラ實行
出來ナイ、ドウ云フ行爲ガアルカト云フト、
一例ヲ擧ゲテ申シマスト、先般モ私ノ直グ
同ジ町內ノ醫者デスガ、南京豆ヲ二升下ゲ
テ歸ツテ來タ、途中デ警察ニ取ツ捕マツテ
一晩泊メラレタ、翌日一晩泊メラレテ歸ル
時ニハ南京豆ガ半分モアリハシナイ、誰カ
盜ツタノカ、コボシタノカ、ナクナツテシマ
ツタノカ知ラヌケレドモ、半分モアリハシ
ナイ、ケレドモ是ガ足ラヌト言ヘバ、調べ
テヤルカラモウ一晩泊レト來ルカラ、マア
少クテモ泣キ寢入リシテ歸ツテ來タ、ソシ
カラ或ル人ガ地方カラ「トランク」ヲ下ゲテ
來ルト駐在所ニ呼込マレタ、調ベテ見ルト
持ツテ來テハ餘リ宜クナイ〓物ダト云フカ
ラ、恐ラク米デハナイカト思ヒマスガ、幾
分ノ米ガ出テ來タ、其ノ中ニ牛肉ガ三百匁
程出テ來タ、何處カラ牛肉ヲ買ツテ來タカ
ト調ベラレタ、ドウモ申譯アリマセヌト、
外ノモノト牛肉ヲソツチヘ放ツテ置イテ
ㄱトランク」ヲ置イテ逃ゲテ來タ、サウスル
ト巡査ハ追掛ケテ來ナイ、後デ牛肉ガドウ
ナツタカ分ラヌガ、恐ラク後カラ牛肉ヲ取
リニ行ツタツテモノニナラヌダラウト思フ、
地方ノ驛ヲ出ルニハ其ノ附近ノ駐在所ノ諒
解ヲ得ルト色々ナ品物ガ持ツテ來レル、斯
ウ云フヤウナ今ノ實情ニナツテ居ル、ケレ
ドモ斯ウ云フヤウナコトヲ一々訴ヘテ出
レバ江戶ノ仇ヲ長崎デ、又何カデヤラレ
ル、ソレガ爲ニ警察ニ訴ヘルコトモ出來ズ
ニ、國民ハ皆泣寢入リヲシテ居ル、是ガ現
在ノ實情デアリマス、國民ハ皆時局ヲ認識
シテドンナ不自由デモ宜イ、ドンナ苦勞モ
戰爭ニ勝ツ爲ニハシナケレバナラヌト固ク
信ジテ居ル、馬デハナイケレドモ、草ヲ〓
ツテモ戰爭ニハ勝タナケレバナラヌ、苦勞ヲ
シナケレバナラヌト云フ覺悟ヲ國民ハシ
テ居リマスルガ、其ノ反面ニ、果シテ我々
ト同ジヤウニ官吏ガ苦勞ヲシテ居ルカドウ
カト云フコトニハ、國民ハ非常ニ疑惑ノ眼
ヲ以テ見テ居ル、近來ノ言葉ニ官、面闇
ト云フヤウナ言葉ガアツテ、此ノ頃ノ物資
ノ間ニ合フノハ官、面闇-一番物資ガ
間ニ合フノハ官吏、其ノ次ニハ顏ノ利ク者
所謂顏役、其ノ次ニハ闇取引ト云フヤウナ
言葉マデアル斯ウ云フヤウナ次第デ相當
アルケレドモ、所謂取調ベル人ト調ベラ
レル人トガ一ツ穴ノ狐デハ是ハ到底私ハ
實行ハ完全ニ出來ナイト思フ、更ニ分ツテ
居ツテ取調ベヲシナイ實例ヲ一ツ申上ゲマ
セウ、昭和十七年、アノ總選擧ノ時ニ私非
推薦デ立候補政シマシタ、非推薦ノ立候補
ト云フノハ相當彈壓ヲ食ツタコトハ御承知
デアリマセウ、百有餘名私ノ後援者ハ察
ニ喚バレタ、其ノ中デ拷問ニ付セラレタ者
ガ約二十名程アリマス、其ノ二十名程ノ拷
問ニ付セラレタ者ノ中デ、五人ノ者ハ其ノ
拷問ノ責苦ニ堪ヘ兼ネテ山田竹治カラ金ヲ
貰ヒマシタト心ニモナイ自白ヲ致シマシタ、
心ニモナイ自白ヲシテ其ノ晩一晩休マシテ
貰ツテ、翌日檢事ガ書記ヲ連レテ聽取書ヲ
作リニ參リマシタ、此ノ檢事ノ名前ハ柳川
檢事ト云フヤウニ聞イテ居リマスガ或ハ違
フカモ知レマセヌ、此ノ柳川檢事ガ聽取書
ヲ作リニ掛ツタ所ガ、ドウモ言フコトガ符
合シナイ、洵ニ此ノ檢事ハ名檢事ダト私ハ
今デモ思ツテ居リマスガ、ドウモオ前等ノ
言フコトハ符合シナイガ、實際オ前等ハ金
ヲ貰ツタカ、本當ニ貰ツタカドウカ、斯ウ
念ヲ押スト、全クハ貰ヒマセヌ、貰ハナイ
ノニナゼオ前等ハ昨晩斯ウ云フ風ニ金ヲ貰
ツタト言ツタノダ、ソレヲ言ハナケレバ私
ノ體ハモウ堪ヘナイト思ヒマシタ、ダカラ
貰ツタト心ニモナイコトヲ申上ゲテ洵ニ申
譯ナイ、何ダオ前等ハソレデモ日本人カ、
金ヲ貰ハナイノニ貰ツタト言ヘバ誰ガ迷惑
ヲ蒙ルカ知ツテ居ルカ、山田ガ迷惑ヲ蒙ル、
サウダラウ、山田ガ迷惑ヲスルコトハ明カ
デハナイカ、オ前等ハ天野屋利兵衞ヲ知ツ
テ居ルカ、天野屋利兵衞ハ自分ガ行ツタコ
トデスラ、人ニ迷惑ガ掛ルト云フノデ女房
子供ガ責苦ニ遭ツテモ言ハヌデハナイカ、
ソレヲ何ダ、日本人ガソンナ意思ノ弱イコ
トデドウスルカト、大變御叱リヲ蒙リマシ
テ、ソレデハオ前等ハ昨夜拷問ニ付セラレ
タノカ、イエソレ程デモアリマセヌ、ソレ
程デモナイナラナンデソンナコトヲ言ツタ
ノカ、ト云フノデ、一旦其ノ調ベハ中止ニ
ナツテ、暫クスルト又呼ビ出シ、又檢事サ
ンガ調ベタ、其ノ時ニハ警察ノ署長近藤源
藏ヲ初メトシテ、警部補、刑事、斯ウ云ノ
者ヲチヤント竝ベテ置イテ、オ前等ハ昨夜
拷問ニ付セラレタノカ、イエ付セラレマセ
ヌ、拷問ニ付セラレナイカ、ハイ付セラレマ
セヌ、間違ヒナイナ、宜シイ、斯ウ云フ調
書ガ出來タ、署長ヲ前ニ置キ、警部補ヲ前
ニ置イテ檢事ガ調ベテ、ソレデモ拷問ニ付
セラレマシタト言ツタラ後ノ崇リガ恐シイ
カラ、ヨウ言ハナイドウデセウ、名檢事
ト私ハ今デモ信ジテ居ル、此ノ人ガコヽデ
モウ一步ドウシテ進ンデ調ベヌカ、此ノ帝
都ノ眞中デ拷問ニ付セラレテ、家ヘ歸ツテ
來テ、二十日モ三十日モ溫泉ニ療養シナケ
レバ滿足ノ體ニナレヌヤウナ目ニ遭ツテ居
リマス、中ニハ島田八郞ナント云フ男ハ憤
慨シテ家ヘ歸ツテ剃刀デ腹ヲ切ツタ、恐ラ
ク此ノ腹ヲ切ツタノハ警察デ拷問ヲシタカ
ラダトハ調書ナドニハナツテ居ラヌダラウ
ト思フ、何故ニ是マデニナリ、何故ニ金ヲ
貰ハヌノニ昨夜貰ツタトノ自白ヲシタノデ
セウカ、警察ガ拷問ヲシタカ、或ハ山田ヲ
陷レントシタカ、此ノ二ツノ目的以外ニハ
ナイ、之ヲ調ベナイト云フコトハ、之ヲ本
當ニ調ベテ行ケバ少クトモ警察ニ相當ノ疵
物ガ出來ル、ダカラヤラナイ、斯ウ云フ所
マデ分ツテ居ツテモ、結局官吏同志ノ檢擧
ト云フモノハ出來ナイ、先般モ私共ノ所轄
太平警察署ハ、警察主任以下殆ド全部ガ收
賄罪デ調ヲ受ケテ居ルガ、是カラ見テモ他
ノ事ト關聯ヲスルカラ已ムナク調ベテ居ル
ノデアツテ、恐ラク警察自體ガ自ラ進ンデ
調ベルト云フコトハ殆ンド行ハナイト思ヒ
マス、ソコデ私案ト致シマシテハ今ノ機構
デハドウシテモ駄目ダ、官紀ヲ肅正スルノ
ニ、陸軍ニ於テハ憲兵ガアツテ、軍紀風紀
ヲ維持シテ居ルノデ殆ンド非難攻撃ト云フ
モノヲ聞イタコトハナイ、官吏ニ限ツテ非
常ナ惡評ヲ聞クケレドモ、是ハドウシテモ
軍ノ憲兵ノ如ク、官吏ノミヲ取締ル獨立シ
タ警察ヲ設置スルト云フ御考ヘガ司法當局
ニナイカ、之ヲ設置シテ本當ニ獨立シタ警
察ニ依ツテ取締ラナケレバ、此ノ時局ヲ乘
切ルニハ非常ニ困難ダ、國民ハ官吏ノ横暴、
官吏ノ違反行爲ニ付テ非常ニ疑惑ヲ持ツテ
居ル、眞面目ナ官吏ニ對シテハ洵ニ私ハオ
氣ノ毒ダト思フガ、此ノ眞面目ナ官吏ノ面
目ノ立ツヤウニ、是非トモ獨立シタ警察ヲ
設置スル必要ガアラウト思フガ、司法當局
ノ御考ヘハ如何カ、御伺ヒヲ致シタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=2
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003・大森佳一
○大森政府委員 只今現在ノ檢擧ノ實績ニ
付キマシテ、御懇篤ナル御注意ヲ忝クシタ
ノデアリマス、御承知ノヤウニ經濟事犯其
ノ他ノ犯罪ノ檢擧ニ付テ、今日ノ檢擧ガ果
シテ完璧デアルカドウカト云フコトニ付テ
ハ私共固ヨリ疑ヒヲ持ツノデアリマス、更
ニ十分ノ努力ヲ傾注シナケレバナラナイト
存ジテ居リマス、只今主トシテ御擧ゲニナ
リマシタ警察官吏ノ事犯ニ付テノ具體的ノ
事例ニ付キマシテハ、私ハ今日茲デ御答辯
ヲ申上ゲル資料ヲ持ツテ居リマセヌカラ、
何トモ申上ゲ兼ネルノデアリマス、併シ今
日ノ實際ニ鑑ミマシテ、官吏ノ非違ニ對シ
テ一層ノ檢擧ヲ嚴重ニスベシト云フ御注意
ハ是ハ私共忝ク拜承致シタノデアリマス、
ソレニ付テドウスレバ宜イカト云フコトニ
付テ只今御示シニナリマシタノハ、官吏ノ
非違ニ對シテ獨立ノ警察官ヲ設置スベシト
云フ御意見ノヤウニ承リマシタ、是レ全ク
御尤モニ存ジマスルケレドモ、此ノ制度ノ
確立タルヤ他トノ權衡モアリマシテ、相當
熟慮ヲ要スルデアラウト思フノデアリマス、
御方針トシテハ確カニ御尤モノ點ダトハ存
ジマスルケレドモ、今日直チニソレニ從ツ
テ我々ガ立案ニ進ムト云フコトヲ玆デ御明
答ヲ致スダケノ確信ヲ持ツテ居ナイノデア
リマス、御注意ハ御尤モトシテ確カニ承ツ
テ置キマス、尙ホ之ニ牽聯致シマシテ今日
檢察當局ノ手不足ト云フコトモ確カニアリ
ママー併シ斯樣ナ時節デアリマスカラ我々
手不足ニ對シテ毫モ不平不滿ヲ言ハナイノ
デアリマス、ソレコソ三人前モ四人前モ働
クト云フ一生懸命ノ御奉公ヲシテ、此ノ難
局ヲ切拔ケテ行キタイト思ツテ居リマス、
右ノ諸點御了承ヲ願ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=3
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004・山田竹治
○山田(竹)委員 宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=4
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005・谷原公
○谷原委員長 濱野君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=5
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006・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 私ハ二三ノ項目ニ付キマ
シテ御伺ヒヲ致シタイト思ヒマス、此ノ苛
烈ナル決戰態勢下ニ於キマシテ、銃後ノ治
安確保ト云フ重大ナル責任ヲ果シマスル爲
ニ、司法省ニ於キマシテモ相當ナ御苦心ヲ
拂ツテ居ラレルコトモ能ク諒ト致スノデア
リマス、今マデノ大東亞戰爭開始以來ノ議
會ノ經過ニ顧ミマシテ、司法部自體ノ機構
ト申シマスルカ、サウ云フ方面ニ付キマシ
テハ相當切替ガ行ハレタヤウニ存ジテ居リ
P 々例ヘバ原則的ノ三審制度ヲモ、戰時
中トハ言ヒナガラ二審制トナシ、或ハ略式
命令ガ體刑ニマデ及ブト云フコトニ依ツテ
今ノコトハ略〓察セラレルノデアリマス、併
シ總理大臣ガ常ニ申サレテ居リマスルガ、
結局ハ總テガ機構ヨリモ人デアリマス、卽
チ運用ニ與ル其ノ人達ガ問題ナノデアリマ
シテ最後ノ點デアラウト思ヒマスルガ、然
ラバ此ノ大戰中ノ司法部ニ於ケル其ノ點ハ
ドウ云フ風ニナツテ居ルカ、一昨日モ當局
ヨリ從來改正サレタル劃期的ノ法律ノ運用
ヲ全ウスル爲ニ、練達堪能ノ判檢事ヲ區裁
判所ニモ大分配置ヲ濟マシタト云フヤウナ
御言葉デアリマス、併シ果シテソレダケデ
宜イデアラウカト云フヤウナ氣持ガ致スノ
デアリマス、ソレハ司法官ハ他ノ行政方面
ノ官吏ト違ヒマシテ、採用ニ當ツテモ嚴重
ナル資格ヲ必要トシマスガ、更ニ任用セラ
レマシテカラハ身分ノ保障ガアリ、地位ノ
保障ガアリマシテ、此ノ點他ノ行政方面ノ
官吏ト趣キヲ異ニシテ居リマス、凡ソ人ハ
身分ノ保障ガアリ、地位ノ保障ガアリ、司
法大臣ト雖モ判事ノ地位ヲバ濫リニ獨斷デ
更迭スルコトガ出來ナイト云フヤウナ地位
ニ居リマスレバ、何ト申シマシテモ人情自
ラ安全感ヲ自然ニ感ゼラレルト思フノデア
リマス、是ガ人情デアリマス、私ハ其ノ點
.ニ付テ司法當局ガ常ニ御考ヘニナツテ居ル
トハ思フノデアリマスガ、兎角上司ノ意思
ガ末端ニマデ滲透セラレナイ勝ノコトガア
リマシテ、此ノ點カラ先ヅ今ノ司法當局ノ
意思ガ透徹シテ實際裁判檢察ノ局ニ當ツテ
居ル人達ガ、本當ニ此ノ苛烈ナル時局ヲ認
識シ法ノ運用ニ付テ萬全缺クルナキヤニ付
キ十分ノ用意ヲシテ居ルノカト云フコトニ
付テ考ヘサセラレル點ガアルノデアリマス、
先ヅ是等ノ諸君ノ中ニハ今山田君ノ申サレ
タヤウナ實例モアリ、我々ガ在野法曹ノ諸
君カラ度々聞カサレル點ニモ同樣ナコトガ
度々アリマス、例ヘバ此ノ間モ同僚ノ方カ
ラ伺ツタノデアリマスガ、竊盜ノ犯罪ヲ調
ベルノニ、極メテ短時間ノ內ニ十何人ノ個
個ノ竊盜犯人ヲ調ベル、如何ニ快速調トハ
云ヒナガラ餘リニ甚ダシイ、盜ンダト云フ
事實ダケヲ調ベルダケデアツテ、由ツテ來
ル事情ナドニ付テハ何等調ベル樣子ハナカ
ツタ、斯ウ云フヤウナコトモ聞キマス、ソレ
カラ又例ヘバ檢擧ニ當リマシテモ、闇ノ實
例デアルガ、或ル重要ナラザル食品ノ闇取
引キヲヤツタ、其ノ時ノ罰金ノ請求竝ニ判
決ノ結果ヲ聞キマシタガ、一貫目ノ取引ヲ
シタ者ニ付テハ罰金ガ百圓ト云フ見當デ、
百貫目ノモノハ其ノ百倍ダト云フヤウナ、
本當ニ心太押シノヤウナ求刑デアリ、判決ノ
實際ノ言渡シデアツタト云フコトヲハツキ
リト伺ツタノデアリマス、此ノ邊ノ所ハ一體
刑事訴訟法ノ本當ノ眞髓卽チ執行猶豫ト云
フガ如キ法律ノ淚マデモ織込マレテ居ル
與ヘテ居ル其ノ精神ニ生キテ居ルノカ、餘
リニ審理ト求刑ヲ急ギ過ギタ結果、劃一單
一ニ亙リ過ギテ居ルノデハナイカト思ハレ
ル所モアルノデアリマス、又裁判ノ方面ニ
モ同樣ナ所ガアリ、能ク司法當局ノ會同ニ
當リマシテモ、上司ノ諸君ハ嚴刑ヲ以テ臨
メ、此ノ銃後ノ治安ヲ紊ス所ノ闇ノ處罰ニ
當ツテハ重イ、嚴シイ體刑、重イ罰金ヲ以
テ臨メト云フヤウナコトヲ訓示サレテ居リ
マス、私達モ此ノ闇ヲ嚴重ニ處罰シナケレ
バナラナイト云フコトハ至極同感デアリマ
ス、今日闇ノ橫行ノ爲ニ國民生活ガドレダ
ケ不安ヲ感ジテ居ルカ、斯ウ考ヘマスト、
闇ノ事犯ノ處罰ニ當リマシテ、嚴罰ト云フ
コトハ十分ニ贊意ヲ表スル者デアリマスガ、
併シナガラ誤ツテ上司ノ言ハルヽ所ノ嚴罰
ト云フコトガ唯單ニ重イ罰金、嚴重ナ體刑
デ濟マセルト思フナラバ、是ハ私ハドウデ
アラウカト思フ、想フニ、上司ノ訓示セラ
ルヽ所ノ嚴刑ト云フモノハサウ云ツタ意味
ダケデナカラウト思フ、由來-皇國ノ刑法ノ
眞髓ハ、英米主義ノ刑法ノ解釋ト趣キヲ異
ニシナケレバナラヌ、英米主義ノ刑法ノ刑
罰ノ理論ハ、結局彼等ハ「ローマ」ノ昔ニ遡
ツテ、斯ウ云フ犯罪ヲシタ者ニ對シテハ所謂
化外ノ民トシテ堕シテシマフ、「ローマ」市
民トシテノ誇リヲ自ラ捨テタヤウナ人間ハ
蕃地ニ落シテシマフノダト云フヤウナ氣持
デヤツテ居ルト思フ、日本ノ刑法ハサウデ
ハナイ、日本ノ裁判ハ畏クモ天皇ノ御名ニ
於テ裁判ガ言渡サレル神聖ナモノデアリマ
ス、是ダケノ懲役期間ガ濟ンダナラバオ前
ハ本來ノ日本人ノ精神ニ復歸出來ルノダト
云フヤウナ有難イ意味ガ含マレテ居ルト思
ス、ソレヲ唯單ニ重イ體刑或ハ又劃一的ナ
罰金刑ヲ科スルト云フダケガ目的デナイ、
其ノ彼岸ニ本來ノ日本人ノ皇國精神ヲ蘇ラス
ト云フ所ニ、日本刑法ノ眞髓ガアルト思フ、
玆ニ嚴刑ト云フモノノ意味ガ生キテ來ルノ
デハナカラウカト思フ、旣ニ然リトスルナ
ラバ、是ハ重イ體刑トカ罰金刑ダケデハ足
リナイノデアツテ、寧ロ本來ノ嚴刑ト云フ
意味ハ其ノ犯人ガ時局ニ目覺メテ、本當ニ
日本人トシテ恥シカツタト云フ良心ガ刺戟
サレタカドウカト云フコトニ眼目ガアルノ
デアツテ、其ノ點ヲバ十分ニ裁判ノ精神デ
アルト考ヘルナラバ、一貫目ナラバ百圓、
十貫目ナラバ千圓ト云フヤウナ均一ナ罰金
トカ、唯單ニ重イ體刑ダケデハ濟マサレナイ、
然ルニ最近ノ裁判ヲ見マスト、矢鱈無性ニ
罰金ヲ殖ヤシ、矢鱈無性ニ體刑ヲ食ハスソ
レデ以テ能事了レリトスルサウ云フ傾向ガ甚シ
クナツテ來タト云フコトハ、私ハ裏カラ申
シマスナラバ、今日ノ裁判官諸君、檢察ニ
當ル諸君ガ本當ニ時局ニ十分ナル認識ヲ持
ツテ居ラレナイノデハナイカト云フヤウナ
氣持ガ致シマス、又他ノ檢擧ノ方面カラ見
マスト、最近我ガ國ニ於テ大々的檢擧ガ行
ハレテ居ルト傳ヘラレテ居リマスル或ル重
要ナル物品ノ闇取引デアリマスガ、是ナドモ
仔細ニ世上ノ人ノ話ヲ聞キマスト、檢擧ト
云フコトガ嚴重ニ行ハレテ居ルガ、果シテ
呑舟ノ魚ハドウナツテ居ルノダ、斯ウ云フ
ヤウナ噂ガ隨分聞エルノデアリマス、檢事
ノ檢擧ニ當ツテ事犯ノ輕重乃至原因等ヲ能
ク慮ツテ居ルカ、本末ヲ〓倒シテ居ラナイ
カ、例ヘバ大キナ波ノウネリガアツテ、ソ
レガ爲ニ小サナ船ガ思ハズ山ニ上ツタト云
フヤウナ時ニ、其ノ波ノ勢ヒニ押サレテ山
ヘ上ツタ船ヲ罰スルニ急デアツテ、其ノ人
造ノ波ガ何處カラ來タカト云フ原因ヲ探究
スルコトヲ怠ツテ居ルノデハナイカト云フ
聲ガアリマス、是ハ事實ヲ探究シテ見ルト、
此ノ不平ハ尤モダト思ハレルヤウナ場合ガ
實在スルノデアリマス、斯クシテ巷間ニ於
テ明察達識ガ聊カ足リナイノデハナイカト
思フトノ噂モ聞クノデアリ、折角治安維持
ノ爲ニ努力セラルヽ當局ノ爲メ殘念ニ思フ
ノデアリマス、勿論憲法ニ依リテ其ノ地位
ヲ保障サレテ居リマス判檢事諸君デアリマ
スカラ、司法ノ上司ノ諸君ト雖モ是ハ積極
的働キ掛ケガ出來ナイコトハ十分ニ御察シ
ハシマス、併シナガラソコニ考ヘテ見レバ
幾多ノ工夫ガアルト思フノデアリマス、昔
ハ能ク明治ノ大岡裁判ト云フヤウニ名裁
判ガアツタモノデアルガ、近頃ハ一向左樣
ナ事ハ聞カナイ、サウ云フコトハ何處カラ
來タカト云フト、能ク我々ノ耳ニモ當ルノ
デアリマスガ、例ヘバ漸ク練達堪能ノ時ニ
入ツタ人ガ今度ハ田舍ノ所長サンニ榮轉ス
ル、田舍ノ所長サンニ行ツテシマフト餘リ
法廷ニ出ナイ、實際ノ裁判ヲ掌ルコトハ少
ナクテ一種ノ司法行政官ト云フ立場ニナツ
テシマウ、サウ云フ者ニ憲法上ノ判檢事ノ
身分ノ保障ヲ與ヘル必要ガアルカト云フコ
トヲ思ヒ當ルノデアリマス、此ノ點ニ付キ
テ當局ニ何等カ御考ガアリマセウカ、其ノ
外能ク首相ガ申サレル野ニ遺賢ナカラシム
ルト云フコトハ之ヲ司法部ニ適用スルト、在
野法曹ヲ思切ツテ上層部ノ判檢事ノ地位ニ
任用スルコトモ必要デハナイカ、從來能ク
在野法曹ノ民間人ヲ判檢事ニ任用サレルト
聞クノデアリマスガ、ソレハ餘リ上級ノ方
デハナイ、上層ノ方ニハ行ツテ居ナイ、辯
護士ノ中デ練達堪能ノ人ガ志望スルナラバ
司法部カラ働キ掛ケテモ、一脈ノ活ヲ與ヘ
ルト云フ意味カラデモ進ンデ之ヲ上層ノ地
位ニ任用スル、ソレダケノ勇氣ト勇斷トヲ
持ツテ欲シイト思フノデアリマス、此ノ點
御伺ヒ致シタイコトハドウ云フ風ナ御工夫
ヲ以テ此ノ地位ノ安全感ヲ持ツテ居ラレル
判檢事ニ對シテ、モウ一層時局ノ認識ヲ〓
メル上ニ於テ御考ヘアリヤ、併セテ民間ノ
上層方面ノ任用ト云ツタヤウナコトニ付テ
御考ヘガアレバ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=6
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007・大森佳一
○大森政府委員 只今ノ御言葉ニ於キマシ
テ司法制度ト申シマスルカ、司法ノ機構ト
申シマスカ、此ノ戰時的措置ハ一段ト片ガ
付イタト思フガドウカト云フ點ガ第一點ノ
問題ノヤウニ承ツタノデアリマス、全ク御
說ノ通リデアリマシテ、先般來數囘戰時法
ノ御審議ヲ煩ハシマシテソレ〓〓公布ニ相
成リ實施ヲサレテ居リマス、先ヅ私共ト致
シマシテハ司法制度司法機構トシテ戰時ニ
對スル體制ハ是デ備ツタヤウニ存ズルノデ
アリマス、勿論斯樣ナ時局デアリマスルカ
ラ、其ノ進展ハ豫想ハ出來マセヌ、是ヨリ
後更ニ急激ナル事情ノ變化ガアリマスルナ
ラバ、ソレニ對應スル施策ヲ又考ヘナケレ
バナリマセヌケレドモ、今日ノ程度ハ先ヅ
此ノ程度デ進ンデ行ツテ宜イト考ヘテ居ル
ノデアリマス
次ニ御尋ネニナリマシタ人ノ問題ニ付テ
デアリマスルガ、色々私共ノ參考ニナル尊
重スベキ御意見ガアツタヤウニ承ツタノデ
アリマス、御承知ノヤウニ司法官ニハ地位
ノ保障ガ與ヘラレテ居リマスルガ、是ハ司
法權ノ作用ト密接不可分ノモノデアリマシ
テ、極メテ重要ナモノデアリマスルコトハ
御熟知ノ通リデアリマス、然ルニ此ノ地位
ノ保障、固ヨリ司法權トシテ必要デモアリ
又重要デモアリマスガ其ノ反面ノ作用ト致
シマシテ地位ノ保障ノアルガ爲ニ、トモス
レバ安逸ニ傾クノ虞レガアルト云フ御心配
ハ確カニ私共トシテモ憂ヒナケレバナラナ
イコトト思ツテ居ルノデアリマス、然ルニ
斯樣ナ決戰體制下デアリマスカラ、苟クモ
地位ノ安逸ヲ貪ルガ如キコトノアツテハナ
ラナイコトハ是ハ申上ゲルマデモナイノデ
アリマシテ、私共及バズナガラ司法官全部
ニ對シテ時局ノ認識ト云フコトニ付テハ共
ニ互ニ相勵マシテ居ルノデアリマス、私共
ノ微力及バザルコトハ慙愧デハアリマスケ
レドモ、併シ事變前、殊ニ戰爭前ニ比シマ
シテ、司法官ノ氣分ニ大變ナ相違ガアルト
云フコトハ私共ハ十分ニ感ジテ居ルノデア
リマス、聊カ意ヲ强フシテ居ル次第デアリ
マス、併シ只今申シマス通リ我々ノ微力ヲ尙
ホ此ノ方面ニ十分ニ傾注シナケレバナラナ
イノデアリマス、御趣旨ニ從ツテ十分ニ努
力ヲ捧ゲタイト存ジテ居リマス
次ニ一二ノ事例トシテ裁判檢察ニ粗漏ナ
ルモノガアリハシナイカ、又徒ラニ形式ニ
流ルヽモノガアリハシナイカ、斯ウ云フ御
注意デアリマシタ、私ハ具體的事例ニ付テ
一々存ジテ居リマセヌケレドモ、若シ御指
摘ノヤウナ事例ガアリマスルナラバ、是一
洵ニ歎カハシイコトデアリマシテ、裁判、檢
察デアリマスルカラ、具體的ノ事案ニ卽シ
テ寛嚴宜シキヲ得ナケレバナラナイコトハ
申スマデモナイノデアリマス、尙又嚴罰ト云
フ點ニ付テ御說ガアリマシタ、是レ亦御尤
モニ拜承ヲ致シタノデアリマス、成程時々私
共モ嚴罰ト云フコトヲ申シテ居リマスルケレ
ドモ、其ノ趣旨タルヤ惡質ニ重キヲ置クノデ
アリマシテ、惡質ノモノハ嚴重ニ之ヲ取締ル、
卽チ一罰百戒ト申シマスルカ、惡質ノモノヲ
極メテ嚴重ニ取扱フト云フ意味デアリマシ
テ、悉ク一切ヲ擧ゲテ必ズ重クスルト云フ
趣旨デハナイノデアリマス、只今モ申述ベマ
シタル通リ、事業々々ニ依リマシテ其ノ內容
ガ千差萬別デアリマスカラ、或ハ嚴、或ハ寬、
事案ニ卽シテ適當ノ處置ヲ執ラナケレバ
ナラナイコトハ言フマデモナイノデアリマ
シテ、此ノ點ハ十分ニ徹底致シマスルヤウニ
私共努力ヲ致シテ居ル次第デアリマス、次ヘ
在野法曹ノ採用ノ問題デアリマス、是レ亦私
共極メテ御同感デアリマス、今日ノヤウナ
時勢ニナリマシテ、國家試驗ハ一年度ハ停
止ト云フコトヲ承ツテ居リマス、隨テ一年以
後ニ於テ停止ト云フコトハナイト考ヘテ居
リマスルケレドモ、併シ應召ノ關係モアリ
マスルシ、手不足ヲ生ズルト云フコトハ固
ヨリ今日カラ考ヘテ置カナケレバナラナイ
コトデアリマシテ、在野法曹ノ方ヲ司法部
ニ迎ヘルト云フコトニ付テハ、我々ハ十分
ノ熱意ヲ持ツテ居ルノデアリマス、然ラバ
ソレヲ相當上ノ方ニ持ツテ行クヤウニ努力
シテハドウカ、是レ亦御同感デアリマス、
實ハ是マデニ於キマシテモ、我々ハ餘程上
ノ方ニ御迎ヘヲシタイト思ツタコトガアリ
マシタケレドモ、實際ノ例トシテハサウ云
フ方ガ來テ下サラナカツタト云フコトガア
ルノデアリマス、事實ハ實現サレマセヌデ
シタケレドモ、今後ハ在朝ト云ハズ、在野
ト云ハズ、共ニ此ノ司法ノ爲ニ共同ノ目的
ニ邁進シテ居ル者デアリマスカラ、本では
ニ城壁ヲ開イテ、オ互ヒニ相助ケ合フト云
フ氣風ヲ更ニ盛ンニシタイト考ヘテ居リマ
ス
次ニ斯カル決戰態勢下ニアツテ、司法官
ノ氣風ヲ更ニ一層緊張セシムル具體的ノ方
策アリヤ否ヤト云フ問題デアリマス、是ハ
何分ニモ精神的ノ問題デアリマスカラ、具
體的ニ斯ク措置シテ、其ノ措置ニ依ツテ斯
カル效果ガ直チニ現ハレテ來ルト云フ譯ニ
ハ參リマセヌガ、私共出來得ル限リ或ハ會
同、或ハ出張、總テ我々ト司法官トノ接觸
ノ機會ヲ多ク致シマシテ、オ互ヒニ胸襟ヲ
開イテ時局ノ認識ヲ高メテ行キタイト考へ
テ居リマス、尙ホ只今モ申シマシタ通リ、
此ノ會同ト云フノヲ其ノ方面ニ極メテ强ク
利用ヲ致シタイノデアリマス、前臨時議會
ノ終了直後ニ於キマシテ全國ノ院長、檢事
長ヲ招集致シマシテ-是ハ全ク臨時ノモ
ノデアリマシタガ、前臨時議會ニ於ケル御
論議ノ次第モ詳細ニ披露ヲ致シマシテ、斯
カル戰時法ノ運用ニ付テオ互ヒニ一生懸命
ニヤラウヂヤナイカト云フコトヲ具サニ申
合セマシテ、院長、檢事長大イニ緊張シテ
歸任ヲ致シマシタ、左樣ナコトモアツタノ
デアリマス、サウシテ此ノ議會終了ノ殆ド
直後ニ於テ、更ニ臨時ニ强力ナル會同ヲ催
シタイト思ツテ居リマス、是ハ斯カル決戰
態勢下、全ク我々ハ頭ヲ一新シテ、必勝目
的ノ爲ニ邁進シナケレバナラナイノデアリ
マスルカラ、其ノコトヲ更ニ强ク申合ハシ
タイト云フ會同ヲ特ニ開キタイ積リデアリ
マス、左樣ナ次第デアリマシテ、精神的ノ
事柄ニ關シマスルカラ、ドウスレバドウナ
ルト云フコトハ具體的ニハ現ハレテ參リマ
セヌケレドモ、折角我々微力ヲ擧ゲテ其ノ
方面ニ努力中デアルト云フコトヲ御諒承願
ヒタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=7
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008・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 只今司法部ノ人事ト機構
ニ付テ伺ツタノデアリマス、次ニ私ハ法規
ノ整備ト云フコトニ付テ方面ヲ變ヘテ御考
ヘヲ承ツテ置キタイト思ヒマス、經濟罰則
ノ調整ノ案ガ出テ居リマスガ、此ノ案ガ通
過致シマスト、非常ニ適用ノ上ニ於テモ運
營ニ於テモ、一言ニシテ申スナラバ、今マ
デ統一ノ缺イテ居ツタモノガ纏マリマシテ、
非常ニ樂ニナリ、又國民モ適歸スル所ガ明
カニナツテ非常ニ結構ダト思フノデアリマ
ス、併シナガラ是ハ罰則ダケデアリマスガ、
進ンデ當局ハ勇氣ヲ鼓シテ經濟統制ノ法規
ト云フモノ全體ヲ統制スル必要ガアルノヂ
ヤナイカト思フノデアリマス、大體今日ノ
統制經濟ヘ進ンデ來タ徑路ヲ見マスト、所
謂自由經濟主義カラ支那事變ノ當初ノ統制
經濟へ移リマスマデノ間ノ過渡時代ニ於テ
ハ、例ノ一口ニ申シマス臨時措置法、サウ
云フモノノ殘骸ガ今日殘ツテ居ル、サウシ
テ統制經濟ノ所謂決定版トシテハ國家總動
員法カ母法デアリ、之ニ基イテ各種ノ法律、
勅令、命令ナドガ出テ居ルサウデアリマ
ス、或ル所デ伺ヒマスト、斯ウ云ツタ統制
法規ノ法律、勅令、或ハ省令トカ告示ニ至ル
マデスツカリ計算スルト約六千件ニ近イト
云フヤウナコトヲ承リマシタ、此ノ數ヲ見マ
シテモ、如何ニ此ノ統制經濟ノ法規ト云フモ
ノガ複雜ナモノデアルカト云フコトガ察セ
ラレルノデアリマス、是レ程數多イコトハ
必要モアツタデアリマセウガ、是ノ何トカ
根本法ヲ決メテ、モウ少シ簡素化スル方法
ガ考ヘラレナイコトハナイト思フノデアリマス、
卽チ今デモ其ノ殘骸ト云ツテハオカシイデ
スガ、殘ツテ居リマスル臨時措置法、ソレ
カラ統制經濟ノ決定版デアリマス國家總動員
法斯ウ云フヤウナモノヲ何トカ國家總動
員法ノ一本ニ纒メテシマフコトガ出來ナイモ
ノカ、聞キマスト例ヘバ酒ノ公定相場ニ關シテ
ノ法律ノ如キハ酒造稅法ニモアリマスシ、ソ
レカラ物價ノ價格ノ方面カラ來タノモアツ
テ、適用スルコトニ非常ニ困難ヲ感ズルト
云フヤウナ場合モアリマス、斯ウ云フヤウナ
實例ガ相當アリマシテ、檢察ノ當局ニ於テモ
非常ニ煩雜ヲ感ズルラシイヤウナ實情デア
リマスシ、尙更國民ニ於テ迷惑スルコト多
大デアラウト思ハレマスノデ、是ハ勿論司
法省ダケノオ仕事トシマシテハ、各省ニ關
係モ御持チノコトモアリアセウカラドウカト
思ヒマスガ、併シヤハリ法律ト云フ方面ヲ
主トシテ擔當サレテ居ラレマス司法省ノ當
局ニ於テ、何トカ進ンデ統制法規ト云フモ
ノ全體ノ調整ヲ圖ル爲ニ御考ヘニナル必要
ガナイカ、是ガ一ツデアリマス
更ニ私ハ進ンデ今ノヤウナ理由カラシテ、
經濟刑法ト云ツタヤウナ別個ノ刑法觀ニ基
ク法域ヲバ開拓シテ、新タナル經濟刑法ト
云フヤウナ總論的ナモノヲバ定メル必要ガ
ナイカ、此ノ理由ハ實際家カラ色々承リマシ
タガ、今此處デハ詳說スルコトヲバ省キマ
スガ、此ノ統制經濟ト云フモノノ違反ガ、
昨日モ司法大臣ヨリ御意見ヲ承リマシタガ、
是ハ新タニ出來夕犯罪デアルカラ、專ラ檢
擧ノミデハドウモ旨ク行カナイ、指導ト檢
擧ト相俟タナケレバナラナイト云フ御話デ
ゴザイマシタガ、斯ウ云フヤウナ點カラ考
ヘ合セマシテモ、普通ノ從來ノ刑法ノ總則
ダケデハイケナイノデアツテ、新タナル經濟
刑法ト云ツタヤウナ法域ノ創設ガ必要デア
ラウト思フノデアリマス、此ノ點ニ付テ何
等カノ御考ヘガアレバ承リタイ、其ノ細目
ノ一端トシテ、先ヅ經濟罰則ニ關スル刑ト
云フモノニ付テ考ヘテ見タイト思ヒマス、
ドウモ最近檢察當局ノオ仕事ノ大部分ハ、
闇ノ檢擧デアルコトハ、吾々モ實情ハヨク御
察シシテ、御多忙デアラウトハ存ズルノデ
アリマスガ、ト云ツテ一カラ十マデ之ヲ體
刑、罰金刑ト云フ以外ニ何等カ新シイ刑ガ
必要デハナイカ、一昨日モ大川君ノ御話ノ
中ニモアリマシタガ、此ノ種ノ犯人ハ從來
ハ立派ナ地位ヲ持ツテ居リ、社會的ニハオ
互ヒ尊敬サレテ居ツタヤウナ地位モアリ、
恒產モアル人デアツタガ、過ツテ刑辟ニ觸
レタヤウナ人ガ多イ、是ハ別ニ常習ト云ツ
タヤウナ人デハナイノデアリマス、ソコデ
斯ウ云ツタ人達ニ對シテハ、何等カ別箇ノ
刑法ヲ考ヘル、偶〓、般般內閣カラ、官吏ニ對
シテ、心構ヘヲ滲透サス爲ニ吏道訓ト云フ、
新タナル構想ヲ入レタモノガ發表セラレル
ト共ニ、官吏ノ服務紀律ニモ、所謂閉門ト
カ、謹愼トカ云フ日本人ノ氣質ニ合ツタ所ノ
懲戒ト云ツタヤウナモノガ新タニ布告セラ
レテ、私達ハ實ニ時宜ヲ得タモノト存ズル
ノデアリマス、サウ云フヤウナ構想ニ思ヒ
ヲ致シマシテ、此ノ經濟罰則ノヤウナ、從
來社會上ニ地位モアリ、名譽モアリ、財產モ
アツタヤウナ人達ガ、過ツテ斯ウ云フヤウ
ナ法域ニ觸レタヤウナ場合ニハ、從來ノ體
刑罰金刑以外ニ、例ヘバ言葉ヲ換ヘテ申
シマスト、閉門トカ、謹愼トカ云ツタヤウ
ナ刑ヲ新タニ設ケマシテ、簡單ナル手續デ
本當ニ社會ニ對シテ斯ウ云フ人間ダト云フ
コトヲ表示シテ、銳キ日本的ノ良心ノ省察
ヲ求メル機會ヲ與ヘテ、サウシテ體刑、罰
金刑ニ代ヘルヤウナ刑ガ必要デナイカ、能
ク闇取引デ處罰セラレタ中ノ家庭ノ人達ノ
言葉ヲ聞キマスルト、自分達ハ知ラヌノダ、
今マデ何々ト云ツテ附近カラ尊敬サレテ居
ツタ父ガ斯ウ云フコトニナルトハ知ラナカ
ツタト云ツテ、家族ノ嘆クノヲ見ルノデア
リマス、サウ云フヤウナ實情カラ考ヘ合セ
マシテ、例ヘバ門標ニ大キナ黑ノ星ノ付イ
タヤウナモノヲ張出ストカ、隣保ト云フヤ
ウナモノモアリ、町內會ト云ツタヤウナモ
ノモ組織サレテ居ルノデスカラ、サウ云フ
ヤウナモノノ力ニ依ツテ刑ヲ執行スルト云
ツタヤウナ、新タナ工夫ガアリサウナモノ
ダト思フノデアリマスガ、是ハ經濟刑法ノ
領域トシテ早速ニ一ツ御考ヘ願フベキデハ
ナイカト思フノデアリマス、是ガ第二デア
リマス
第三ハ今ノハ闇取引ヲヤツタ人ニ對スル
モノデアリマスガ、之ヲ事前ニ於テ防グヤ
ウナ方法ハナカラウカ、同ジク闇ト申シマ
シテモ地方ニ於ケル產物トカ、或ハ地方ノ
實情等ニ於テ闇取引ノ對象ニナルベキモノ
ガソレ〓〓違フダラウト思フノデス、サウ
云フ土地ニ於テ闇取引ナカラシメル爲ニ、
之ヲ指導スルニ當ツテハ、何等カ地方ノ有
力者ト云フヤウナ人達ノ指導者階級ノ協力
ヲ求メテ、事前ニ指導ト云フコトニ專ラ當
ラシメル方法ガナイカ、其ノ特殊ノ地域、
其ノ特殊ノ產物ト云ツタヤウナモノニ應ジ
テ、何等カ便宜ナ方法ガ考ヘ合ハサルベキ
デハナイカト思フノデアリマス、何カ此ノ
點ニ付キマシテ御當局ノ御考ヘガアリマス
レバ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=8
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009・大森佳一
○大森政府委員 御答ヘ致シマス、第一點
デアリマスガ、經濟各關係法規ノ調整統一
ニ付テ何等カ考ヘテ居ルカト云フ御趣旨ニ
拜承致シタノデアリマス、是レ亦御尤モデ
アリマシテ、御承知ノヤウニ經濟關係ノ法
規ハ非常ニ多岐ニ亙ツテ居リマシテ、實ハ
私共ノ如キモ煩ニ堪ヘナイヤウナ感ヲ持ツ
コトスラアルノデアリマス、併シ今日之ヲ
ドウ云フ工合ニ調整スルカ、統一スルカ、
是レ亦相當困難ナ問題デアリマス、御承知
ヤウニ經濟關係ノ法令ハ其ノ時々ノ必要ニ
應ジマシテ逐次出テ參ツタノデアリマス、
之ヲ今日集成スルコトハ相當困難ダラウト
思フノデアリマス、併シ出來得ルナラバ左
樣ナ困難ヲ排除致シマシテ、集成統一スル
コトノ結構ナルコトハ申上ゲルマデモナイ
ノデアリマス、尤モ御指摘ノヤウニ是ハ他
省トノ關係モアリマスカラ、司法省ダケデ
ハ何トモ申兼ネマスケレドモ少クトモ司法
省ト致シマシテ、出來得ルナラバサウヤリ
タイト云フ考ヘハ十分ニ持ツテ居ルノデア
リマス、左樣ナ關係カラ致シマシテ、其ノ
問題ソレ自身デハアリマセヌケレドモ、之
ニ屬スル問題デ比較的具體的ノ效果ノ上ガ
リ易イト思ハレル事項卽チ經濟罰則ノ整備
ノ問題デアリマス、之ヲ先ヅ手始メニ著手ス
ルコトニ致シマシテ、色々御苦勞ヲ願ヒマ
シテ、是ハ著々成果ヲ上ゲテ居ルヤウニ思
フノデアリマス、デアリマスカラ先ヅ第一
著手トシテハ此ノ罰則ノ整備統一、之ヲヤ
リ遂ゲマシタナラバ、其ノ經驗ニ基キマシ
テ、更ニ根本的實體ノ問題ニ入リ、果シテ調
整統一ガ出來ルカドウカ、出來ルトスレバ
斯樣ナ方法ニ進メナケレバナラヌト云フ工
合ニシテ、徐々ニ步ヲ進メテ行クベキモノ
ダト考ヘテ居ルノデアリマス、卽チ御示シ
ノ點ハ私共モ其ノ必要ヲ痛感ハ致シテ居リ
マス、但シドウ云フ工合ニ之ヲ成就セシム
ルカト云フコトニ付テハ、只今苦慮シテ居ル
ヤウナ次第デアリマス
第二點デアリマスルガ、經濟刑法ノ特殊
ノ地位ニモ鑑ミ、之ヲ今日ノ刑法ノ組織カ
ラ放シテ別ニ考ヘテハドウカ、是レ亦至當
ナル御意見ダト拜承致シタノデアリマス、
殊ニ其ノ刑罰ノ種類、現在行ハレテ居リマ
スル刑罰ノ種類デ足リルカドウカ、或ハ其
ノ他ニ工夫シテハドウカト云フ御說ノヤウ
ニ拜聽ヲ致シマシタ、今日御承知ノ旣ニ定
メラレテ居リマス體刑金刑ノ外他ノ種類ノ
刑罰ヲ制定シテハドウカト云フコトハ、是
マデ種々論議ノアツタ所デアリマス、之ヲ
大ニシテハ流刑、之ヲ小ニシテハ閉門、謹
愼ト云フヤウナコトヲ考ヘテハドウカト云
フヤウナ御議論ハ、色々我々モ拜聽致シテ
居ルノデアリマス、尤モ經濟統制ノ方ハ、
流刑ト云フコトハ考ヘラレナイデセウガ、
閉門謹愼ト云フコトニ付テハ十分ニ考慮シ
テモ宜カラウト思フノデアリマス、但シ是
レ亦他トノ牽聯ガ中々難カシイ問題デアリ
マシテ、容易ニ斯ウト云フコトハ申上ゲラ
レマセヌケレドモ、折角ノ御注意モアツタ
ノデアリマスカラ、十分ニ他トノ權衡ヲ考
ヘツヽ〓究致シタイト存ジテ居ルノデアリ
マス
第三ニ經濟事犯ノ豫防ノ點ニ付テ、極メ
テ有力ナル御注意ガアリマシタ、私モ洵ニ
之ヲ感謝スル次第デアリマス、御承知ノヤ
ウニ事犯ガ現レテカラ罰スルノデハ實ハア
マリ效果ガナイノデアリマス、事犯ガ現ハ
レズニ濟ムナラバ之ニ越シタコトハナイノ
デアリマス、デアリマスカラ此ノ事犯豫防
ノ爲ニ私共出來得ルダケノ努力ハ致シテ居
リマスケレドモ、先ヅ根本的、先決的ト申
シマスルカ、遵法精神ノ涵養ト云フコトガ
必要ダラウト思ヒマシテ、皆樣方ニ色々御
苦勞ヲ願ツテ居ルヤウナ次第デアリマス、
厭ヤ〓〓ナガラ法律ニ遵フト云フヤウナコ
トデハ、是ハ十分デナイノデアリマシテ、
進ンデ法ヲ愛護スル、法ニ親シム、斯ウ云
フ觀念ヲ深メテ參リタイト思ツテ居リマス、
サウシテ只今御示シニナリマシタヤウニ、
我ガ國ハ內地ニ於キマシテモ南北頗ル長キ
ニ亙ル國デアリマシテ、諸々方々ニ特殊ノ
名產ノアリマスルコト、全ク御指摘ノ通リ
デアリマス、何デモ汽車辨當ニ、事變前ニ
ハ九十何種アツタト云フコトヲ承ツテ居リ
マスガ、ソレ〓〓特殊ノ名物、色々特產ガ
アリマスルカラ、ソレ等ノ事情ニ應ジテ各
地各地デ遵法精神ヲ根本義トシテ、經濟事
犯ノ豫防ニ專念スルト云フ必要ハ、私共モ
十分ニ痛感ヲ致シテ居ルノデアリマス、全
ク仰セニナリマシタヤウナ御趣旨ノ下ニ、
極メテ小規模デハアリマスルケレドモ、ソ
レ等業者ナリ、又ハ地方ノ有力者、之ヲ迎
ヘマシテ判檢事ト協同シ、種々協議ヲシテ
經濟事犯豫防ノ爲ニ貢獻ヲシタイト云フ畫
策ヲ致シマシテ、豫算ニ於テ御協賛ヲ御願
ヒシツヽアル次第デアリマス、ソレハ統制
經濟遵法懇談會ト申シマシテ、各地方裁判
所ニ於キマシテ一囘先ヅ百人バカリ御集リ
ヲ願ヒ、之ヲ年八囘開イテ行ク、斯ウ云フ
計畫デアリマシテ、之ニ要スル費用ガ八萬
七千七百二十圓デアリマス、是ハ豫算ニ計
上シテ居ルノデアリマス、固ヨリ是ハ小規
模デアリマシテ、謂ハバ試金石デアリマシ
テ、是デ成果ヲ擧ゲマスルナラバ、段々ト
擴大ヲシタイト云フ積リデアリマス、全ク
御趣旨ノ通リデアリマスルガ、殘念ナガラ
小規模デアリマス、併シ小規模ナガラ之ヲ
始メテ漸次其ノ效果ヲ擧ゲテ參リタイト存
ジテ居リマス、右一應ノ御答ヘヲ申上ゲマ
シタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=9
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010・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 最後ニ一點ダケ伺ヒタイ、
司法權ノ適正ナル運用ノ爲ニハ裁判官、檢察
當局ノ御熱誠ニ俟ツベキト思ヒマスガ、併
シ玆ニ在野法曹ノ存在ヲ忘レテハナラナイ
ト存ジマ』ス、〓卽チ裁判所ト檢察局トサウ
シテ辯護士ガ所謂司法ノ三位一體ダト云フ
ヤウナ言葉ガアル所以デアルト存ジマス、
特ニ今日ノ銃後ノ治安確保、今次官ノ仰セ
ラレマシタヤウナ遵法精神ノ昂揚ト云ツタ
ヤウナコトニハ在野法曹ノ熱心ナ協力ヲ得
ラレルコトガ先ヅ適切ナコトデアラウト存
ズルノデアリマス、實ニ今日ノ在野法曹ノ
負荷スル使命ト責任ハ洵ニ重且ツ大デアリ、
辯護士諸君モヨク此ノ時局ノ重責ニ應ヘン
ト折角精進致シテ居リマス勿論私達モ今
日ノ辯護士ノ制度ト云ツタヤウナ點ニ付キ
マシテ、時局ニ相應シタ何等カ創意ト構想
トヲ織込ンダ立法ガ必要デハナイカト思ハ
レルヤウナ節モナイデハアリマセヌ、併シ
ソレハ根本ニ亙ルコトデアリマスルカラシ
テ此ノ際遠慮致シマスルガ、聞キマスルト
全國ノ辯護士ノ大部分ノ諸君ガ大同團結サ
レマシテ-名前ハ失念致シマシタガ、大
日本辯護士報國會ト云ツタヤウナ名稱ノ下
ニ一致團結シテ法曹報國ニ邁進シヨウト云
フ企テガアリ、最近其ノ結成式ガ行ハルヽ
ト云フコトデゴザイマス、此ノ大同團結ハ
從來ノ辯護士-全國ニ數千ニ餘リマスル
辯護士ガ常ニ企テヽ居リナガラ出來ナカツ
タ所ノ一大團結ガ從來ノ小異ヲ捨テヽ大同
ニ走リ、本當ニ銃後ノ治安確保ニ司法ノ當
局ト熱誠ナル協力ノ下ニ御奉公シタイト云
フ此ノ誠意ニハ本當ニ心嬉シク存ズルノデ
アリマス、就キマシテハ司法ノ當局ニ於カ
レマシテモ、此ノ辯護士側ノ熱意ニ相照應
セラレマシテ、將ニ生レントスル時期ノ近
イ所謂大日本辯護士報國會ニ對シマシテハ
十分、積極的ナル御支援ト御熱意ヲ御持チ
下サルコトガ司法權權威ノ爲メニモ又其
ノ活潑ナル動キノ爲ニモ必要デアルト存ズ
ルノデゴザイマスルガ、此ノ邊ノ當局ノ御
用意ヲ御漏シヲ願ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=10
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011・大森佳一
○大森政府委員 御示シノヤウニ在朝在野
ノ法曹ガ互ヒニ協力シテ參リマセヌケレバ、
司法ノ興隆ノ期セラレナイコト全ク私共
ノ御同感ニ存ジテ居ルノデアリマス、實
在朝在野ト云フ言葉スラ水臭イ位ニ考ヘテ
居ルノデアリマシテ、オ互ヒニ法律家トシ
テ共同ノ目的卽チ正義昂揚ノ爲ニ邁進シテ
居ルモノダト思ツテ居ルノデアリマス、御
承知ノヤウニ嘗テハ司法官、辯護士ト相剋
摩擦-ト云フ程度デモナイデアリマセウ
ケレドモ、必ズシモ一致致サナカツタ時代
モアツタノデアリマス、併シナガラ私共ソ
レガ極メテ惡イコトノヤウニ存ジテ居リマ
シタシ、又辯護士諸君ノ方デモ進ンデ、胸
襟ヲ開イテ吳レラレマシタカラ、今日ニ於
テハ互ヒノ協調全ク圓滿ニ相成ツテ居リマ
スルコト御同慶ノ至リデアリマス、此ノ方
針ハ今日益〓ソレヲ深メテ行キタイト思ツテ
居ルノデアリマシテ、現ニ斯ル決戰態勢ノ
下ニ銃後ノ親善ヲ最モ必要トスル時ニ於テ、
法曹ノ中デ在朝在野、是ガ最モ緊密ニナラ
ナケレバナラナイモノデアルト云フコトハ
私共其ノ必要ヲ痛感シテ居ル次第デアリマ
ス、尙ホ御示シニナリマシ夕報國會ト申シ
マスルモノノ結成ニ付テハ、私共十分ニ承
知ヲ致シテ居リマス、承リマスレバ全國總
テノ辯護士諸君ヲ網羅スルニ至ラナカツタ
トカ聞イテ居リマスルガ、是ハ併シ司法省
トシテハサウシテ戴キタイ、サウシナケレ
バナラナイト云フ方針ハ固ヨリ避ケテ、辯
護士諸君ノ自發的ノ合同ニ待ツ積リデアリ
マスルガ、何レニ致シマシテモ報國會ノ目
的ハ結構デアリマスルカラシテ、我々出來
ル限リノ御援助ハ申上ゲタイ、斯樣ニ存ジ
テ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=11
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012・谷原公
○谷原委員長 大體三案ニ對スル質疑ハ盡
キタヤウニ思ヒマスルガ、是デ質疑ヲ終ツ
テ御異議ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=12
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013・谷原公
○谷原委員長 ソレデハ三案ニ對スル質疑
ハ終了致シマシタ、討論及ビ採決ハ次回ニ
致シマス、午後一時カラ朝鮮ニ於ケル裁判
手續簡素化ノ爲ノ國防保安法及治安維持法
ノ戰時特例ニ關スル法律案ノ審議ニ入リタ
イト思ヒマス、ソレマデ休憩致シマス
午前十一時十三分休憩
午後一時十一分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=13
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014・谷原公
○谷原委員長 休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
マス、朝鮮ニ於ケル裁判手續簡素化ノ爲ノ
國防保安法及治安維持法ノ戰時特例ニ關ス
ル法律案ヲ議題ト致シマス、政府ノ提案理
由竝ニ法案ノ說明ヲ求メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=14
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015・安藤紀三郎
○安藤國務大臣 朝鮮ニ於ケル裁判手續簡
素化ノ爲ノ國防保安法及治安維持法ノ戰時
特例ニ關スル法律案提案ノ理由ニ付キマシ
テハ、本會議ニ於キマシテ御說明申シタ通
リデゴザイマスガ、更ニ幾分敷衍致シマシ
テ御說明申上ゲタイト存ジマス、戰時下司
法ノ一層敏活ナル處理ヲ圖リ、裁判檢察ノ
運行ヲ適確迅速ニ致シ、以テ銃後治安ノ確
保ヲ圖リマスルコトノ必要デアリマスルコ
トハ、外地ニ於キマシテモ內地ト同樣ノ狀
況ニアルノデゴザイマス、而シテ內地ニ於
キマシテハ曩ニ裁判所構成法戰時特例、戰
時刑事特別法等ニ必要ナル改正ヲ加ヘマシ
テ、民事及ビ刑事ノ訴訟ニ關シマシテ全面
的ニ所謂二審制ヲ採用スル等ノ措置ヲ講ジ
マシタノデ、今般朝鮮ニ於キマシテモ內地
ニ於キマスルト同樣ノ制度ヲ採用スルコトト
シ、別途ニ制令ヲ以チマシテ、朝鮮總督府
裁判所令戰時特例、朝鮮戰時刑事特別令等
ノ制定ニ付キマシテ目下ソレ〓〓手續中デ
ゴザイマス、然ル所國防保安法及ビ治安維
持法ハ朝鮮ニモ法律トシテ施行セラレテ居
リマスルガ、此ノ兩法律中ニハ裁判手續ニ
關スル規定ガアリマシテ、其ノ中ニ三審制
ヲ規定スル條文卽チ國防保安法第三十
四條及ビ治安維持法第三十四條ガゴザイマ
ス、是等ノ規定ハ內地ニ於キマシテハ法律
タル裁判所構成法戰時特例ニ依リマシテ排
除セラルヽコトトナツタノデアリマスルガ、
朝鮮ニ於キマシテハ二審制ヲ採用セントス
ル朝鮮總督府裁判所令戰時特例ハ制令デア
リマスル爲ニ、明治四十四年法律第三十號
ニ依リマシテ、制令ハ朝鮮ニ施行セラル
法律ニ違背シ得ザル拘束ヲ受ケテ居リマス
ル關係上、前述ノ如ク三審制ヲ許容致シテ居
リマスル國防保安法及ビ治安維持法ノ法律
規定ハ之ヲ排除シ得ナイ次第デゴザイマス、
仍テ此ノ度本法ニ依リマシテ是等ノ規定ヲ
排除シ、法律ト制令トノ牴觸關係ヲ調整致
シマシテ、以テ朝鮮ニ於ケル裁判ニ付キ全
面的ニ二審制度ヲ實施セントスル次第デゴ
ザイマス、何卒御審議ノ上御協賛ノ程ヲ御願
ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=15
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016・谷原公
○谷原委員長 是ヨリ質疑ニ入リマス、通
告順ニ依リマシテ順次許可致シマス-金
子定一君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=16
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017・金子定一
○金子(定)委員 私ハ是等ノ法律案ヲ審議
スル前ニ、此ノ對象トナルベキ朝鮮ノ民心
ノ動向、特ニ滿洲事變カラ支那事變、大東
亞戰爭ニ入リマシテ格段ノ變化ヲシタコト
ガアルヤウニ考ヘマスノデ、ドウゾ此ノ點
ニ付テ御伺ヒ致シタイト思ヒマス、是ハ政
務總監ニ伺フノガ一番宜クハナイカト思ヒ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=17
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018・安藤紀三郎
○安藤國務大臣 ソレデハ政務總監カラ御
答ヘ致サセマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=18
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019・田中武雄
○田中(武)政府委員 朝鮮ノ最近ノ民心ノ
傾向ハ、特ニ支那事變以來、又最近大東亞
戰爭勃發以來段々ト皇國民化ト申シマスル
カ、皇軍臣民トシテノ一般ノ考ヘ方ガ漸次
シツカリ致シテ參リツヽアリマス、滿洲事
變以來今日マデ、事變ニ協力致シマスル所ノ
朝鮮全域ニ於キマスル大衆ノ協力姿勢ハ、或
ハ國防ノ獻金デアリマストカ、又ハ金屬類ノ
囘收デアリマスルトカ云フヤウナコトニ、淚
グマシイ程ノ誠意ヲ披瀝シテ參ツテ居ルノ
デアリマス、其ノ程度ハ段々ト濃厚ニナリ
深クナツテ來テ居ルヤウニ思ハレマスルガ、
之ヲ國防獻金ノ如キ一例ニ取リマシテモ、
支那事變勃發後昭和十六年ノ末頃ニ至リマ
スル四箇年デ慥カ千二、三百萬圓ノ獻金ガ
アツタノデアリマスルガ、大東亞戰爭勃發
後二箇月足ラズデ其ノ期待額以上ノ額ニ達
シテ居ルヤウナ獻金ヲ立ドコロニ見タト云
フヤウナ狀況デアリマシテ、時局ニ協力ス
ル姿ガ非常ニ濃厚ニナツテ來テ居リマス、
尙又最近特ニ現ハレタ現象ト致シマシテハ、
御承知ノ通リニ本年カラ徵兵制ガ施行サレ
マシテ、今年檢査ヲシ、此ノ暮頃ニ入隊ス
ルノデアリマスルガ、是ヨリ先內地ニ於キ
マスル所ノ學徒ガ出陣ヲ致シタノデアリマ
シテ、之ニ關聯シテ朝鮮ノ學徒モ志願ヲス
ル者ハ採用スルト云フ制度ガ布カレタノデ
アリマス、是等ノ制度ニ付キマシテモ實ハ
如何デアラウカト考ヘテ居ツタノデアリマ
スルガ、色々ノ事情ノ者モゴザイマスケレ
ドモ、全體ト致シマシテハ非常ナ好成績ヲ
收メマシテ、現ニ朝鮮ノミニ在學ヲ致シテ
居リマスル者ハ其ノ九割八分、又內地ニ在
學ヲ致シテ居リマスル者ハ約九割五分ト云
フ成績ヲ以チマシテ入營ヲ致シタノデアリ
マス、斯樣ナ現象ハ內地ノ學徒ガ勇ンデ出
陣ヲ致シマス其ノ事實ニ感激ヲ受ケタ點モ
多々アリ、又今日マデヤツテ參リマシタ所
ノ皇民〓育ト云フモノノ成果ノ現ハレモ無
論アルノデアリマスルガ、又父兄母子、朝
鮮ノ社會全體ガ目覺メテ參リマセヌト、制
度上決メテナイ所ノモノガ出陣ヲスルト云
フコトハ中々困難デアリマス、是ガ只今申
シマスヤウナ成績ヲ以テ入營ヲ致シマシタ
ト云フコトハ、本人ノ自覺モサルコトナガ
ラ、父兄母子ト云フヤウナ方面ノ自覺ト云
フモノガ與ツテ力ガアツタノダラウト斯樣
ニ考ヘルノデアリマス、固ヨリ多勢ノコト
デアリマスノデ、中ニハ世間カラ批判ヲサ
レルヤウナ言動ヲ致シマス者モ絕無デハナ
イノデアリマスガ、全體ノ數カラ申シマス
レバ極メテ〓々タルモノデアリマシテ、大
體ハ非常ニ順調ニ參ツタト云フコトガ實際
ノ狀況デアリマス、一應大體ノ趨勢ヲ申上
ゲタノデアリマスガ、尙ホ具體的ノ事項デ
モ御示シガゴザイマシタナラバ、ソレニ應
ジマシテ又御答ヘ申上ゲタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=19
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020・金子定一
○金子(定)委員 只今ノ御答辯ノ大體デ朝
鮮ノ現在ノ光明ノ姿ガ能ク窺ハレマスルガ、
物ニハ兩面アリマスルノデ、司法方面、警
察方面カラ御覽ニナツタ朝鮮ノ民心ノ動向
デ顯著ナモノガアリマシタナラバ伺ツテ置
キタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=20
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021・田中武雄
○田中(武)政府委員 警察竝ニ司法ノ方面
カラ見マシタ民心ノ傾向デアリマスルガ、
是モ金子サン夙ニ御承知ノ通リニ、滿洲事
變以來世間ノ情勢ガサウ云ウ工合ニサセタ
ト思フノデアリマスガ、全ク從前ノ姿ト變
リマシテ、非常ニ穩カニナリマシテ、時
民族主義、共產主義兩運動ガ相當展開致サ
レテ居リマシタノガ、殆ド面目ヲ改メタト
云ツテ宜イ程、サウ云フ方面ニ付テハ誠實ヲ
維持致シテ參リマシタ、隨ヒマシテ警察
竝ニ檢事局兩方面ニ現ハレマシタ所ノ犯罪
ノ趨勢ノ如キモ、漸次減少ヲ致シテ參ツタ
ノデアリマス、唯思想事件ノ一部、或ハ
經濟統制ニ伴ヒマス各般ノ經濟事犯ト云フ
ヤウナモノハ、多少兩三年殖エテ參ツテ居
ルヤウナ現象デアリマス、經濟事犯ノ如キ
ハ其ノ違反ノ行爲モ確カニ相當件數ハアラ
ウカト思ヒマスガ、併シ一面ニ於キマシテ
經濟警察等ノ機構ヲ强化致シマシテ、出來
ルダケ惡質ナ犯罪ノ檢擧ト云フコトニ當ラ
スコトニ相成リマシタノデ、サウ云フヤウ
ナコトデ犯罪件數トシテハ少シ殖エテ參ツ
タノデハナイカ斯樣ニ考ヘテ居ルノデアリ
マス、又思想犯ニ至リマシテハ、是レ亦御
承知ノ通リニ左翼運動、共產主義等ノ事件
ハ少イト申スヨリハ殆ド跡ヲ斷ツタト云ツ
テモ宜イ位少クナツテ居ルノデアリマスガ、
治安維持法該當ノ事案ニ關シテ民族思想ニ
基キマス犯罪ハ、コヽ一兩年以前ヨリハ少
シ件數ガ上リ掛ケテ來テ居ルヤウナ現象ヲ
呈シテ居リマス、是ハ我ハ司法事件取扱ニ
關スル手續ガ變リマシテ、司法警察官限
リニ於テ處理致ス分量ガ殆ドナクナリマシ
テ、全部之ヲ檢事ニ送ルト云フ建前ニ相成
リマシタ關係上、從來檢事局ノ統計ニ上リ
マセヌ件數ガ上ツテ參ツタ結果、幾分數字
ニ於テ殖エテ居ルノデハアルマイカ、斯樣
ニ考ヘテ居ルノデアリマス、表裏色々ノ事
情ハゴザイマスケレドモ特ニ取リ立テヽ治
安上憂慮スルト云フヤウナ事態トハ考ヘテ
居ラナイノデアリマス、大勢ト致シマシテ
ハ逐年皇民化ガ徹底ヲ致シテ參リマシテ、
大道ヲ驀ラニ進ンデ居ルヤウニ私共ト致
シマシテハ考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=21
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022・金子定一
○金子(定)委員 大東亞戰爭以來大東亞ノ
政治的面目ガ一新致シテ居リマスガ、特上
政治上ノ關心ヲ非常ニ持ツテ居リマス朝鮮
ノ民衆ガ何カノ影響ヲ受ケナイ譯ガナイ、
隨テ東京カラ朝鮮ヲ見マシテ、コチラデ噂
シマスコトハ今ノ朝鮮ニ於ケル政治上ノ希
望要望ガ何等カノ形式デ現ハレハシナ
イカ、ソレガ事ニ依ツタナラバ潜在、乃
至犯罪ヲ構成スルコトガアルノデハナイカ
ト云ツタヤウナ不安ガ現ニ東京ニアルノデ
ゴザイマスガ、其ノ邊ノコトヲ御伺ヒシタ
ウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=22
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023・田中武雄
○田中(武)政府委員 少シ質問ガ具體的ノ
內容ニ入ツテ參リマスノデ、一寸速記ヲ止
メル程度デ御話シ致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=23
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024・谷原公
○谷原委員長 只今政府ヨリ速記中止ヲ求
メラレマシタガ、速記ハ此ノ儘繼續致シマ
シテ、此ノ部分ハ密封シテ保存致スコトト
シ、會ノ記錄ヨリハ之ヲ省キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=24
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025・金子定一
○金子(定)委員 只今ノ御答辯ニ關聯シマ
シテ、食糧ノ供出、配給、其ノ他現在半島
ニ於ケル民衆ノ生活、是ハ政治的方面ト可
ナリ深ク交涉ガアルト思フノデアリマス
ガ、供出、配給ニ伴フ國民生活ノ實情ヲ〓
略御伺ヒシタイノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=25
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026・谷原公
○谷原委員長 是モ前ト同ジ取扱ヒヲ致シ
マス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=26
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027・金子定一
○金子委員 只今ノ御答辯ノ大體ハ寧ロ公
表ナサイマシテ、內地、朝鮮ノ民心ニ能ク
能ク理解サセタ方ガ宜イノデハナイカト思
ヒマス、御差支ヘナイ程度デ此ノ種ノ事情
ハ、總督府側ナリ內務省側ナリカラ一般ニ
御示シヲ願ヒタイト云フ希望ヲ申上ゲテ置
キマス
次ニ、今マデ御話ノアリマシタ朝鮮ノ眞
ノ姿ト云フモノハ、東京等ニ於キマシテハ
割合認識理解ヲサレテ居ナイ、斯ウ云フコ
トハ朝鮮問題ノ最モ大キナ癌的障碍デアル
上海、テ居リマス、私モ相當年數朝鮮ニ
モ居リ、滿洲ニ於ケル朝鮮人ノ問題モ扱ヒ、
サウシテ東京ニ歸ツテ來テ深ク感ジマス
コトハ、東京中心ノ日本ノ知識階級ナリ、
凡ユル部面ニ於キマシテ、朝鮮ノ現在ニ對ス
ル認識ガ非常ニ淺ク、或ハ又非常ニ間違ツ
テ居ルト云フ事柄デアリマス、當局ニ於カレ
マシテモ絕エズ此ノ點ハ御努力ニナツテ居
ルコトハ認メマスガ、尙ホ此ノ上百尺竿頭
一步ヲ御進メニナルコトヲ實際要望ニ堪ヘ
ナイノデアリマス、ソレガ反映致シマスト、
今囘ノ學徒出陣ニシマシテモ、半島方面ニ
於テハ只今御答辯ノ通リ九八%ニ上リマシタ
ガ、日本內地ニアリマシテハ一時ハ容易ニ
斯樣ナ數字ニハ上リ兼ネテ居リマシタ、
ソレハ朝鮮ノ學生達ガ日本內地ニ參リマシ
テ、朝鮮ニ對スル日本內地人ノ認識ノ不足
其ノ他ノ事カラ、色々ナ精神的惡影響ヲ受
ケマシタコトモ多分ニ加味サレテ居ルト考
ヘルノデアリマス、第一線ニ行キマシテ彼
等ガ斯樣ニ祖國愛ヲ持チ來ルト云フコトハ、
是ハ半島人ト雖モ第一線將兵ト共ニ起居致
シマシテ、生甲斐ヲ感ズルト云フ所ニ一番
大キナ動機ガアルト、私ハ自分ノ體驗カラ
サウ思ヒ込ンデ居ルノデアリマス、半島人
ヲシテ生甲斐ヲ感ゼシメルコトハ、皇國臣
民トシテノ扱ヒヲ我々內地人ガ身ヲ以テ致
スコトニアルト思フノデゴザイマス、東亞
ノ共存共榮、此ノ半面ハ共ニ尊ビ共ニ愛ス
ル共尊共愛デアリマス、共ニ尊ビ共ニ愛ス
ル共尊共愛カラ東亞ノ共ニ存シ共ニ榮エル、
共尊共愛ガ招來サレルト思フノデアリマス
ガ、內鮮ノ間柄ニ於キマシテモ更ニ現在ノ
半島ナリ、半島人ニ對シマスル認識ヲ確カ
ニ持チ、其ノ長所美點ヲ認メテ、尊ブベキ
モノハ尊ビ、愛スベキモノハ愛シマシテ、
本當ノ內鮮一體、皇國一億一心トナレルモ
ノト考ヘルノデゴザイマス、朝鮮ノ現在ノ
姿ヲ內地人ニ一日モ早ク知ラシメ、又當局
ノ施設モ之ニ伴ヒマスルヤウニ祈ツテ巳マ
ナイノデゴザイマス、私ノ申シマシタコト
ハ言葉ガ足リマセヌケレドモ、大抵御察シ
ト思ヒマス、之ニ對シマシテ御答辯ナリ御
感想ガアリマシタナラバ伺ヒタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=27
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028・谷原公
○谷原委員長 只今ノ金子君ノ發言以後ノ
發言ハ會議錄ニ揭載致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=28
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029・田中武雄
○田中(武)政府委員 只今御話ニナリマシ
タ犠牲的精神發揮ノ事例等ニ付キマシテハ何
レ十分發表ノ出來得マス時期ニ篤ト又御話
ヲ申上ゲタイト思フノデアリマス、全體ノ
朝鮮ガ時局ニ協力ヲ致シテ居リマスル事情
等ニ付キマシテハ、五大重點產業ハ勿論、
各種產業ニ於キマシテ、殆ド鐵、輕金屬、
石炭、特ニ鐵、輕金屬デアリマスガ、サウ
云フヤウナ方面ニ於キマシテハ朝鮮ノ內地
ニ對シ負擔致シテ居リマスル地位ガ段タト
深ク伸ビテ參リマシタノデ、此ノ點ニ付キ
マシテモ非常ナ決心ヲ以テ增產ニ努力ヲ致
シテ居リマス、數字ノ內容ヲ申上ゲル譯ニ
ハ行キマセヌケレドモ、全體ノ中ノ餘程大
キナ部門ノ負擔ヲ命ゼラレテ居ルヤウナ次
第デアリマス、其ノ他勞務等ノ點ニ付キマ
シテモ朝鮮內ノ勞務ノ需給ハ勿論、內地ニ
對シマスル所ノ勞務ノ提供等ニ於キマシテ
千、以前ニ比ベテ見マスルト驚クベキ數量
ノ貢獻ヲ致シテ居リマス、ソレカラ全面的
ノ內鮮兩者ノ關係ニ付キマシテハ、是ハモ
ウ御話ノ如クニ始終我々ト致シマシテハ此
ノ融合理解ノ透徹ト云フコトヲ望ンデ居ルノ
デアリマシテ、是ガ爲ニハ朝鮮ト致シマシ
テハ出來ル限リ朝鮮大衆ノ〓養訓練ニ當リ
マシテ、是ガ道義的ナ水準ヲ上ゲテ行クト
云フコトニ努メルノハ勿論デアリマシテ、
現在ニ於キマシテモ御承知ノ如クニ兵タル
資質ノ啓培ヲ兼ネ、一面產業戰士トシテノ
資質ノ修鍊ト云フコトヲ目的ト致シマシテ、
義務トシテノ靑年特別鍊成ヲ實施致シテ居
リマス、尙又近ク女子ニ對シマシテモ男子
同樣ノ鍊成ヲ施シテ行クト云フコトニ相成
ツテ居ルヤウナ次第デアリマシテ、何ト致
シマシテモ民族性自體ヲ純化シテ行ク、是
ガ道義水準ヲ上ゲテ行クト云フコトガ絕對
ニ必要ナコトデアル、ト同時ニ內地ノ側ニ對
シマシテハ半島同胞ヲ尊イ慈愛、大愛ノ精
神カラ之ヲ兩翼ニ抱ヘテ進ンデ行クト云フ
コトノ認識自覺ヲ段々深メテ行ツテ貰フヤ
ウニシナケレバ相成ラヌト斯樣ニ考ヘテ、
從來共全力ヲ注イデ居ルヤウナ次第デアリ
マス、併シナガラ何ト申シマシテモ相當地
域ガ隔絕致シテ居リマスノト、又根本ニ於キ
マシテ多少感情ノ疎通致シテ居リマセヌ點
ガアル結果、勞務者等ガ內地ニ渡リマシタ場
合ニ於テ、集團的ナ暴行等ヲ行ヒマスルコ
トハ我々當局ト致シマシテモ洵ニ遺憾ニ考
ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス、併シ斯樣
ナコトハヤハリ內鮮兩方カラ御互ニ啓發ヲ
シテ參リマシテ、內鮮ノ固イ紐帶ヲ結ンデ
行クト云フコトデナケレバナラヌト斯樣ニ
考ヘテ居ルヤウナ次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=29
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030・金子定一
○金子(定)委員 只今ノ御答辯ヲ伺ヒマシテ
モ洵ニ其ノ感ヲ深クスルノデゴザイマスガ、
此ノ際內務當局ニ一ツ御伺ヒシテ置キタイ
總督府ト致サレシマシテハ朝鮮ノ現段階ニ於
ケル姿ヲ何トカシテ日本內地ニ紹介シタイ、是
ハ勿論ノ御希望デアラウト思ヒマスガ、其
ノ效果ガ十分ニ上ツテ居ルカト申シマスト、
遺憾ナガラサウハ申セナイ點ガゴザイマス、
現ニ昨年ノ九月、京城ニ國民總力聯盟ノ主
催ヲ以テナサレマシタ朝鮮問題ノ懇談會、
之ニハ翼贊會系統ノ名士ガ多數ニ列席ヲサ
レマシタ、現ニ代議士ノ高木義人中將ナド
モ行カレマシタガ、歸ツテ來テノ話ニ、君
ガ平生言ツテ居ル朝鮮ヨリモ本當ノ朝鮮ハ
モツト〓〓立派ヂヤナイカ、アレダケ時局
ニ朝鮮ガ熱ト力ヲ捧ゲテ居ルコトヲ見テ本
當ニ感激シタ、君方モツト朝鮮ヲ良ク宣傳シ
テ宜イト言ツテ居ラレマシタガ、朝鮮ノ仕
事モ內務省ノ方ニ移管ニナリ、內務省トサレ
マシテモ朝鮮ノ眞相ヲ日本內地ニ紹介スベ
ク、之ニ對シテ常ニ適當ナル施設ヲナサル
ヤウ御考慮中トハ思ヒマスガ、尙ホ私ノ申
上ゲマシタコトニ付テ御答辯ナリ御感想ガ
アリマシタナラ伺ヒタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=30
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031・唐澤俊樹
○唐澤政府委員 只今半島同胞ニ對スル內
地人ノ認識啓發ノ點ニ付テ御發問ガアリマ
シタ、内務當局ト致シマシテハ全ク同感デ
アリマス、御承知ノヤウニ半島同胞ハ大東
亞戰爭以來相當多數內地ノ鑛山、工場、港
灣、殊ニ鑛山ニ集團的ニ移入セラレマシテ、
時々例外的ナ間違ヒハアリマスルケレドモ、
其ノ大勢カラ申シマシテ半島同胞ハ衷心ヨリ
產業戰士トシテ大東亞戰爭ヲ勝拔ク爲ニ全
力ヲ擧ゲテ協力致シテ居ルヤウナ譯デアリ
マス、唯洵ニ遺憾ナコトニハ時々思ハシク
ナイヤウナ事態ヲ惹キ起シマス、中ニハ警
察取締ノ對象トナルヤウナコトモ絕無デハ
ナイノデアリマス、其ノ原因ヲ考ヘテ見マ
スルト、一面ニ於キマシテハ半島同胞ガ言
葉ニ熟達シテ居ラナイ或ハ內地ノ風俗習慣
等ニ馴染ンデ居ラナイト云フヤウナ點モア
リマスルガ內地人側トシテ反省シテ見マス
ルト、ヤハリ先程御話ノアリマシタヤウニ、半島
竝ニ半島人ニ對スル認識ノ徹底ヲ缺クト云フ點
ガアルト考ヘラレマス、其ノ結果從來カラ
偶〓アリマスルヤウナ偏見ヲ持チマシタリ、
或ハ半島同胞ニ對シテ不用意不注意ナ言動
ノアリマシタヤウナコトニ端ヲ發シテ時ニ
暴行ニ及ンダヤウナコトモアルノデアリマ
シテ、其ノ根本ハ內地同胞ノ半島同胞ニ對
シテ先程政務總監カラ御話ガアリマシタヤ
ウ三、大乘的ナ見地カラ大キナ友愛ヲ以テ
之ニ臨ム、半島及半島人ニ對スル徹底シタ
認識ヲ以テ之ニ臨ンデ居リマシタナラバ、
左樣ナ間違ヒモ起キナカツタデアラウト考
ヘルヤウナ節モアルノデアリマシテ、是ハ
內鮮双方ヨリ心ヲ開イテ融和ノ途ヲ講ズル
コトニ依ツテ此ノ問題ハ打開出來ルト確信
致シテ居リマス、斯樣ナ考ヘカラ内務省ニ
於キマシテハ是非其ノ方向ニ向ツテ努力ヲ
致シタイト考ヘテ居リマスルガ、內地ニ參
リマシタ半島同胞ニ對スル取扱ト致シマシ
テハ、御承知ノヤウニ內地ノコトデアリマ
スカラ各省ニ於テソレ〓〓ノ權限ガ分レテ
居リマシテ、旣ニ御承知ノコトト思ヒマス
ルガ、學生ニ關スルコトニ付テハ文部省ガ
アリ、朝鮮總督府ト連絡ノ下ニ奬學會ガア
リマス、勞務者ノ關係ニ於キマシテハ現在
ノ所厚生省主管ト致シマシテ協和會ガ世話
ヲ致シテ居ルノデアリマス、併シナガラ内
務大臣ハ朝鮮竝ニ半島同胞ニ關スル仕事ヲ
統合シテ居リマスル立場ニアルノデアリマ
スルカラ、文部、厚生兩省トモ豫ネ/〓カ
ラ此ノ點ニ付キマシテハ〓究懇談ヲ重ネテ
居ルヤウナ次第デアリマシテ、是等各種ノ
公益團體ノ所屬等ニ付キマシテ、過般貴族
院ノ委員會ニ於キマシテモ色々ト有益ナ御
意見モ承リ、今後モ厚生文部兩省ト十分懇
談ヲ續ケテ參リタイト考ヘテ居ルヤウナ次
第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=31
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032・金子定一
○金子(定)委員 只今ノ御答辯ノヤウナ御
方向ニ御盡力ニナルト云フコトハ御尤モデ
ゴザイマス、深ク御期待ヲ申上ゲマスガ、
尙ホ世局ニ鑑ミ急速ニ政治的ナ解決方法ヲ
御講ジニナリ半島人ノ前途ニハツキリシタ
光明的目標ヲ持タセルト云フコトガ可ナリ
必要ノヤウニ考ヘルノデゴザイマスガ、或
ハ斯樣ナコトガ日本ノ媚態デアツテ、半島
人ニ如何ハシイ氣持ヲ持タセルノヂヤナイ
カト云フヤウナ說モ聞カナイデハゴザイマ
セヌケレドモ、大所高所カラ見マスルニ斯
樣ナ些細ナコトハ懸念スル要ハナイ、兎モ
角モ其ノ前途ニハツキリシタ光明ト目標ヲ
持タセ、彼等ニ生甲斐ヲ感ゼシメ、此ノ曠
古ノ聖業ニ眞ニ心カラ湧キ立ツ協力ヲナサ
シムルコトガ現段階ニ於テ最モ大切ナコト
デハナイカ、斯ウ考ヘルノデゴザイマス、
如何デゴザイマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=32
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033・唐澤俊樹
○唐澤政府委員 洵ニ同感デアリマシテ、
半島同胞ニ將來ノ光明ヲ與ヘテ心カラナル
協力ノ覺悟ヲ決メサセル、斯ウ云フコトハ
恐ラク半島同胞ニ對スル問題ノ根本義ト考
ヘル譯デアリマシテ、御說ニ對シマシテハ
全ク同感ニ存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=33
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034・金子定一
○金子(定)委員 尙ホ少々枝葉ニ亙ルヤウ
デアリマスガ、二ノコトヲ御尋ネ申上
ゲマシテ私ノ質問ヲ終リタイト存ジマス、
ト申シマスノハ朝鮮ニ於キマシテハ一般ニ
內地人同樣ノ氏ト名トヲ新設サレマシタ、
日本內地ニ於キマシテハ之ニ關シテ色々ト
說ヲナス者モゴザイマスケレドモ、私ハ大
體ニ於テ是ハ結果ガ良好デアルト信ジテ居
リマスガ、當局ノ御所見ハドウデゴザイ
マスカ、是ガ一ツ、モウ一ツハ內鮮人ノ結婚
問題ニ關シテ、東京ノ新聞雜誌ニハマダ論
議サレテ居リマセヌガ、樣々ナ外來思想ノ
影響ト申シマスカ、或ハ眞ニ眞面目ニ日本
ノ本國ノ歷史ニ鑑ミテナサレル議論モアル
ヤウデアリマス、私思ヒマスノニ斯樣ナコ
トハ先ヅ此ノ時局ニ於テハ、論議スベカラ
ザルモノト考ヘルノデゴザイマス、昔內鮮
間ノ結婚ガ法律上認メラレナカツタ時代デ
モ、一年ニ七十件乃至百件ハアツタノデア
リマス、今半島ノ民間運動トシテハ內鮮結
婚ヲ奬勵致シテ居リマスガ、一年間恐ラク
二百件ヲ出ナイト思ヒマス、之ニ關シマス
ル日本內地ノ論議ハ少シク神經過敏デハナ
イカト考ヘル次第デアリマス、禁止シテモ
百件、奬勵シテモ二百件ト云フ程度ノモノ
デゴザイマス
ソレカラモウ一ツハ國語ノ普及ノ問題デ
ゴザイマス、一面カラ申シマスルト此ノ時
局ニ於キマシテ朝鮮民衆ハ國語ヲ解スルト
解セザルトニ拘ラズ非常ナ熱誠ヲ以テ協力
ヲ致シテ居リマス、寧ロ半言半語的デハア
リマスルガ、國語ヲ解シ得ナイ朝鮮ノ農民
其ノ他ノ民衆ガ、更ニ眞劔デアル、斯ウ云
フ見方サヘアルノデアリマス、又國語ヲ一
向知ラナイ朝鮮ノ老儒者連中ガ〓育勅語ヲ
漢文ニ譯シマシテ床ノ間ノヤウナ所ニ掛ケ
マシテ朝鮮ノ言葉デ之ヲ日夜奉讀シテ經典
以上ニ大切ニ奉戴ヲシテ居ルト云フ例モ少
クハナイノデアリマス、隨テ一部ニハ國語
ヲ普及スレバ却テ朝鮮ノ人ハ統治シニクク
ナルト云フ人ガアリマスケレドモ、併シ大
筋ハ何ト言ツテモ、國語普及ト云フコトガ
內鮮一體化ノ最モ大事ナ事柄ニ屬スルノテ
アリマスガ、現在トテモ總督府ハ一生懸命
御努力ナサツテイラツシヤルト思ヒマスケ
レドモ、國語普及ノ現段階ニ付テ御伺ヒ致
シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=34
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035・田中武雄
○田中(武)政府委員 只今御尋ネノ第一ノ
創氏ノ問題デアリマスガ、實ハ此ノ制度ガ
實施セラレマシテカラ後ニ色々ノ批判ガ行
ハレマシタノデアリマスケレドモ、是ハ氏
ヲ創設致シマス理由ヲ徹底セシメマスル手
段方法ノ巧拙ニ付テデアリマシテ、氏ノ制
度ヲ設ケタコト自體ハ是ハモウ非常ニ朝鮮
ニ於キマシテモ必要ナコトデアリマスルシ、
又中樞院等ニ於キマシテモ從來朝鮮ニ於キ
マシテ婿養子緣組ノ出來マスルヤウニ是非
制度ヲ變ヘテ貰ヒタイト云フ要求モアリマ
シタヤウナ次第デアリマシテ、氏ノ創設自
體ハ私共適當ナ施設デアル、又朝鮮人モ此
ノ制度自身ニハ喜ンデ居ルト考ヘテ居リマ
ス、唯氏ヲ變ヘル時ハ半年內屆出デ變ヘサ
ス、斯ウ云フコトニ制度ガナリマシタノ
ヲ、其ノ半年內ニ出來ルダケ多クノ者ヲ
變ヘサスト云フコトノ奬勵ガソコニ過ギタ
ヤウナコトニ對スル批判ハ從來トモゴザイ
マシタ、是等ノ點ニ付キマシテハ、世間ノ
批判ガ全部間違ヒデアルトハ申シ難イノデ
アリマシテ、中ニハ一寸行過ギタヤノ事例
モ聞クノデアリマス、旣ニ今日ハモウ半年
ノ日時ガ經過致シマシテ、變ヘル者ハ全部
變ヘテシマヒマシテ、今日ハスツカリ落付
イテ居リマスノデ、此ノ制度ニ關シマスル
所ノ問題ハ只今何モゴザイマセヌ、制度ト
致シマシテ適當ナ制度ノ創設デアツタト私
共モ考ヘテ居ルノデアリマス
第二ノ內鮮ノ雜婚ノ問題デゴザイマスガ、
是ハ御說ノ如ク、態度ガドウ云フ態度ヲ執
リマシテモ、今日マデ餘リ件數ハ變ツテ居
ラナイヤウニ私モサウ考ヘテ居リマス、只
今ノ所特別ニ大騒ギヲシテ奬勵ヲシテ居ル
ト云フコトモヤツテ居リマセヌシ、サリト
テ無論ヤツテハイケナイト云フヤウナ消極
的ノ態度ハ執ツテ居リマセヌノデ、謂ハバ
自然ノ推移ニ任セテ居ルト云フ程度デアリ
ひく、唯私共ハ此ノ問題ニ關聯ヲ致シマシ
テ餘リニ偏狹ナ議論ガ、是ハ內鮮何レカラ
デモアリマスルガ、兎角内地ニ於テ起リ易
イノデアリマスガ、今日モウ朝鮮統治ノ目
標ハハツキリト御示シニナツテ居リマスル
シ、歴代ノ總督ノ諭〓モ一視同仁ノ聖旨ヲ
奉戴シテ諭〓ガ出テ居リマスノデ、此ノ治
鮮ノ根本方針ト云フモノハモウ搖ギナイモ
ノデアリマスルカラ、斯ウ云フ問題等ニ關
聯ヲ致シマシテ餘リニ料簡ノ狹イ偏狹ナ議
論ガ行ハレマスコトハ、朝鮮ノ當局ト致シ
マシテハ常ニ遺憾ニ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、出來ルダケ左樣ナコトノナイヤウニ共
共ニ努メテ行キタイ、斯ウ考ヘテ居リマス
ソレカラ第三ノ國語普及ノ問題デアリマ
スルガ、只今ノ所國語ヲ解スル者ハ全人口
ノ約三割デアリマス、國語ノ普及ニ付キマ
シテハ、徵兵制ノ實施ヲ致シマスニ付キマ
シテモ、何ト申シマシテモヤハリ國語ヲ理
解スルト云フコトガ先決ノ問題デアリマス、
勞務者トシテ內地へ參リマシテ時々間違ヒ
ガアリマスルノモ、大シタ對立意識ガアル
ト云フヨリモ、國語ヲ解シマセヌ爲ニ一寸
シタ間違ヒカラ爭ヒガ起ルト云フヤウナコ
トガ實際上多イノデアリマス、ソレ等ノ點
カラ考ヘマシテモ、國語ノ普及ト云フコトニ
ハ全力ヲ注イデ居リマシテ、徵兵ノ豫備訓
練ト致シマシテノ靑年特別鍊成ニ於キマシ
テモ、先ヅ〓練ト云フヤウナコトヨリモ國
語ト云フモノニ非常ナ重點ヲ置キマシテ多
クノ時數ヲ國語ノ〓育ニ充テヽ居ルヤウナ
次第デアリマス、是ハ將來トモ益〓努メテ參
リタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=35
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036・金子定一
○金子(定)委員 長イ時間ヲ頂戴シテ質問
致シマシテ有難ウゴザイマシタ、ドウカ朝
鮮ノ人々ニ前途ニ明ルイ期待ヲ多ク持タセ
ルヤウニ、又朝鮮ノ現段階ニ於ケル姿ガ深
刻ニサウシテ早ク日本內地ニ能ク理解認識
サレマスルヤウニ特別ノ努力ヲ要望シテ質
問ヲ終リマス、特ニ日本內地ニ來テ居リマ
ス朝鮮ノ人々ノ指導ニ付キマシテ尙ホ〓
考究スベキ手段方法ガアルト考ヘマス、是
レ以上ハ申上ゲマセヌガ、幾重ニモ此ノ點
ヲ御願ヒシマシテ質問ヲ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=36
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037・谷原公
○谷原委員長 議事ノ都合ニ依リマシテ
寸休憩致シマス
午後二時十九分休憩
午後三時五分開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=37
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038・谷原公
○谷原委員長 休憩前ニ引續キ會議ヲ開キ
マス、私カラ本案ノ立法手續ニ關シ政府ニ
御尋ネ致シタイ點ガアリマスカラ、此ノ席
カラ御尋ネ致シマス、朝鮮統治ノ關係カラ
考ヘルト、出來ルダケ內地トノ差別待遇、
差別關係ヲナクスル方ガ宜イト思ハレルノ
デアリマス、所ガ此ノ法案ハ內地ニ於キマ
シテハ帝國議會ガ協贊ヲ與ヘマシタ他ノ法
律ノ關係ニ依リマシテ、旣ニ此ノ法案ノ成
立ヲ俟ツマデモナク、國防保安法及ビ治安
維持法ノ三十四條ト云フモノハ其ノ效力ガ
排除セラレテ居ルノデアリマス、隨テ本案
成立ヲ要求セラレル政府ノ意圖ハ、朝鮮ニ
於テノミ效力ノアル國防保安法或ハ治安維
持法ノ或ル條項ノ效力ヲ排除シヨウト云フ
ノデアリマシテ、新タニ朝鮮ニ積極的ニ或
ハ規範ヲ設ケル、統治上、斯樣ナ新タナ法
律ヲ要スルト云フヤウナ關係ノナイ、極ク
消極的ナモノデアリマスガ、左樣ナ法律ノ
成立ヲ態〓〓要望シナケレバナラヌノデアル
カ、何カ他ノ立法技術ノ運用ニ依ツテ其ノ
目的ガ達セラレルノデハナイカ、斯ウ云フ
點ニ付テ疑問ガ起ルノデアリマス、恐ラク
斯樣ナ法案ノ成立ハ一ツノ帝國議會ノ審議
ノ上ノ新例ニナルノデハナイカト思フノデ、
念ノ爲ニ御伺ヒスルノデアリマス、私共ノ
一ツノ考ヘ方デアリマスガ、斯ウ云フ方法
ニ依ツテ其ノ目的ガ達セラレルノデハナイ
カト思ヒマスノハ、內地デ效力ノアル法律
ヲ勅令ヲ以テ朝鮮ニ其ノ效力ヲ及ボシテ居
リマス場合ニ、其ノ內地ノ基本法律ガ排除
サレ改正サレタ場合ニ於テハ當然朝鮮ニ於
テモ其ノ影響ヲ受ケルト思フノデアリマス
ガ、此ノ問題ノ國防保安法、治安維持法ハ、
廢止若クハ改正ト云フ手續ハ經テ居リマセ
ヌケレドモ、ヤハリ一ツノ法理原則ニ基イ
テ現ニ戰時中ハ三十四條ハ、內地ニ於テハ
排除セラレテ居ルノデアル、而シテ其ノ影
響ハ當然ニ朝鮮ニ及ブノデハナイカ、斯ウ
云フ觀方ガ一ツノ疑問、第二ト致シマシテ
ハ明治四十四年法律第三十號朝鮮ニ施行ス
ベキ法令ニ關スル法律ニ依リマスト、朝鮮
ノ立法事項ニ付キマシテハ全面的ニ勅令若
クハ政令委任ノ法律ガ出來テ居ルノデアル、
第四條ニ依ルト「法律ノ全部又ハ一部ヲ朝鮮
ニ施行ヲ要スルモノハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム」
ト云フコトニ相成ツテ居ルノデアル、法律
ヲ制定致シマスル場合ニ、勅令ニ委任スル
場合ハ屢〓アリマスルガ、左樣ナ場合ニ其ノ
法律ノ委任ヲ受ケマスル勅令ト云フモノハ、
出シタ切リ後デ改正ガ出來ナイカト言フト
サウデハナイ、法律デ規定致シテ置クト其
ノ改廢ガ又手數ガ掛ルカラ、勅令委任ニシ
テ置イテ時宜ニ應ジテ勅令改正ニ依ツテ運
用シテ行カウト云フ意圖ノ下ニ勅令委任ニ
ナツテ居ル場合ガ屢〓アル、第四條モ恐ラク
サウ云フ趣旨ガ含マレテ居ルノデハナイカ、
サウ致シマスルト、一部ヲ施行致シテ置イ
テ、又必要ガアルナラバ全部ヲ施行スルコ
トガ出來ルト共ニ、全部ヲ施行致シテ居ル
ガ、併シ都合上其ノ中ノ一部ヲ施行シナイ
コトニスル、サウ云フコトガ此ノ第四條ノ
中ニ含マレテ居ルノデハナイカ、法律ノ委
任ハ其處マデ行ツテ居ルノデハナイカ、法
律ノ施行規則トカ、或ハ法律ノ一部ニ此ノ
法律ハ朝鮮ニ施行スルト書イテアリマスル
場合ニ於キマシテハ、其ノ法律ヲ改正シナ
ケレバ勅令ヲ以テ動カスコトハ出來ナイノ
デアルケレドモ、全部又ハ一部ヲ朝鮮ニ施
行スルヲ要スルヤ否ヤガ勅令ニ委任セラレ
テ居ル場合ニ於テハ、勅令ニハ其處ニ彈力
性ガアルモノデアル、他ノ委任命令ニ於テ
ハ彈力性ヲ現ニ持ツテ居ルノデアルカラ、
此ノ方モ同樣ニ解シテ宜イノデハナイカ
次ニ考ヘマスルコトハ、內地ニ於テ本法
案ノ如キモノノ成立ヲ必要トシナイト言ヒ
マスルノハ、裁判所構成法戰時特例第四條
ガアル結果デアル、隨テ此ノ四十四年ノ法
律第三十號ノ第四條ニ基キマシテ其ノ一部
ヲ朝鮮ニ施行スル、卽チアノ第四條ヲ朝鮮
ニ施行スルト云フヤウナ勅令デ處理ガ出來
ナイカドウカ、成程朝鮮ニハ裁判所構成法
ト云フモノハ行ハレテ居ナイノデアルケレ
ドモ、併シナガラ此ノ法律ノ一部ニ二審制
度ノ全面的改正ヲシタ法律條文ガアルノデ
アルカラ、ソレヲ特ニ第四條ニ依ツテ施行
スルコトガ出來ナイカドウカ
尙ホモウ一ツ伺ヒタイノハ、是非特別手
續ヲ必要トスルヤウナ場合ノ已ムナキモノ
トスルナラバ、此ノ裁判所構成法戰時特例
ヲ改正致シマシタ時ニ、國防保安法及ビ治
安維持法三十四條ニ付テ、今提案セラレテ
居リマスモノト同ジ改正條文ヲアノ改正ノ
中ニ附加ヘルコトガ出來ナカツタノデアル
カドウカ、アヽ云フヤウナモノニ左樣ナ改正
條文ヲ加ヘテ改正スルコトガ穩ヤカナ改正
方法デナカツタカドウカ、斯ウ云フヤウナ
點ニ付テ御伺ヒ致シタイモノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=38
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039・森山鋭一
○森山政府委員 只今委員長カラ御尋ネニ
相成リマシタ事項ハ中々難カシイ法律問題
デアリマシテ、今御意見ヲ伺ツテ居ツテ少
シ理解シ兼ネル點モアリマスノデ、或ハ御
尋ネニピツタリ合ハナイヤウナ御答ヘヲス
ルカモ分リマセヌガ、サウシマシタラ尙ホ
御注意ヲ願ツテ、其ノ上デ改メテ申上ゲテ
見タイト思フノデアリマス
第一點ハ內地ノ方ノ法律ノ改正又ハ廢止
ノ效果ガ朝鮮ニ對シテドウ云フ影響ヲ持ツ
カト云フコトガ疑問ノ點ニナルノデアリマ
ス、卽チ法律ヲ朝鮮ニ施行シタ場合ニ、其
ノ法律ガ改正トカ又ハ廢止サレヽバドウ云
フ效果ヲ朝鮮ニ付テ生ズルカト云フ點デア
リマスガ、是ハ當然內地ノ改正又ハ廢止ノ
效果ハ朝鮮ニモ及ブノデアリマス、從來サ
ウ云フヤウナ解釋ヲシテ居ルノデアリマス、
卽チ法律ヲ朝鮮ニ施行スルト云フコトハ、
法ノ施行地域ガ廣マツテ居ルノデアリマス
カラ、一應施行サレマスト朝鮮ト內地ハ其
ノ法律ノ關係ニ於テハ同一法域トナツテシ
マフノデアリマシテ、其ノ法律ノ改正廢止
ハ內地、朝鮮、兩方ノ法域ヲ通ジテ其ノ效
果ヲ發生スルノデアリマス、サウ云フ風ナ
£
解釋ヲ取ツタ場合ニ、具體的ノ今度ノ問題
ニ其ノ理窟ヲ應用スレバ、何カ便宜ナ措置
ニ出ヅルコトガ出來ヌカト云フコトニナル
ノデアリマスガ、ソレハサウ云フ風ニ參ラ
ヌノデアリマス、國防保安法及ビ治安維持
法ニ付テ、其ノ二ツノ法律ヲ或ハ改正スル
等ノ措置ヲ執レバ、ソレハ當然朝鮮ニモ其
ノ效果ヲ及ボスノデアリマスガ、今度ノ裁
判所構成法戰時特例ノ關係ニ於キマシテハ、
是ハ內地ノ特別ノ法制ガ立テラレタダケデ
アリマシテ、其ノ效果ハ朝鮮ニ施行サレテ
居ル所ノ國防保安法トカ治安維持法ノ效果
ヲ左右スル效力ハナイノデアリマス、卽チ
內地ノ方デ法律的手段ヲ執ラレテモ、外地
ノ方ニ效果ヲ及ボスヤウナ法律的手段ハ執
ラレナイト云フコトニナリマスカラ、其ノ
關係カラ解釋シテ當然朝鮮ニ於テモ三審制
度デハナクテ二審制度ニナルンダト云フ風
ナコトニ論斷スルコトハ出來ナイト私ハ考
ヘルノデアリマス、是ガ第一ノ疑問ニ對シ
テノ所見デアリマス
其ノ次ニ第二ノ疑問ノ點デアリマス、明
治四十四年法律第三十號第四條ハ、是ハ法
律ノ全部又ハ一部ヲ朝鮮ニ施行スルコトニ
付テ勅令ニ委任サレテ居ルノデアリマシテ、
施行サレテ居ル法律ノ效果ヲ朝鮮ニ於テ一
部停止シタリ、又ハ朝鮮ニ施行スルト云フ
コトヲ或ル時期カラナクシテシマフ、朝鮮
ニ關シテ廢止スルト云フヤウナ法律效果ヲ
生ズルヤウナ措置ハ、此ノ第四條ノ規定デ
ハ委任サレテナイ、斯ウ云フ風ニ政府ハ解
釋シテ居ルノデアリマス、是ハ前ニ先例ガ
一ツアリマシテ、朝鮮ニ所得稅法ヲ施行シ
タコトガアルノデアリマスガ、稅制ノ改正
ニ伴ヒマシテ、其ノ施行シテ居ル所ノ所得
稅法ノ效果ヲ-是ハ臺灣等ノ關係モアツ
タノデアリマスガ、朝鮮ニ關係シテナクシテ
シマヒタイト云フ場合ニ、或ハ明治四十四年、
法律第三十號第四條ノヤウナ規定ノ擴張解
釋ニ依ツテ、朝鮮ニ施行ヲ要スルモノトアル
ガ、是ハ施行スル場合ダケデハナクテ、施行
ヲ廢止スルト云フコトモ含マレテ居ルト解
釋ハ出來ナイカト云フノデ隨分〓究ヲシタ
ノデアリマスガ、是ハサウ云フ解釋ハ出來
ナイト云フノデ、特ニ朝鮮ニ行ハレテ居ル所ノ
所得稅法ノ效果ヲ奪フ爲ニ、特別ノ立法手段
ガ執ラレタ例ガアルノデアリマス、今囘ノ
立法ノ措置モ其ノ先例ヲ踏襲シテ居ルノデ
アリマシテ、此ノ點ハ解釋上已ムヲ得ナイ
コトデアラウカト思フノデアリマス、委員
長カラ解釋ヲモウ少シ緩ヤカニシタラバト
云フ御話デアリマスガ、サウ云フ風ニ考ヘ
テ行キマスト、例ヘバ今度御審議ヲ願ツテ
居ル此ノ法律ノ附則ニ、「本法施行ノ期日ハ
勅令ヲ以テ之ヲ定ム」ト書イテアル、施行ノ
期日ハ勅令ヲ以テ定ムノデアルカラ、應
施行シタ法律ヲ今度施行ヲ廢メルコトモ亦
勅令ニ含マレテ居ルノデハナイカト云フヤ
ウナ解釋モ或ハ許サルベキモノダト云フヤ
ウナコトニモナリハセヌカト云フ虞モアル
ノデアリマス、是ハヤハリ嚴格ニ解シテ一
應法律ガ施行サレテ居レバ其ノ施行ノ效果
ヲ奪フノハヤハリ立法ノ手段ヲ要スルト解
スルノガ宜シイノデハナイカ、斯ウ云フ風
ニ考ヘテ、其ノ考ヘガ主トナツテ立法ノ先
例ガ生ジテ居ルノデアリマス
ソレカラ次ニ裁判所構成法戰時特例ノ
中、第四條ト云フ規定ヲ朝鮮ニ施行スルコ
トニ依ツテ今囘新シイ法律ニ依ツテ企圖シ
テ居ル所ノ效果ガ發生シ得ナイカト云フ御
疑問デアリマスガ、是ハ私餘リ詳シクマダ
〓究シナイノデ能クハ分リマセヌガ、此ノ
點ハ或ハソレヲ施行スレバ何カサウ云フ風
ナ效果ヲ生ズルノデハナイカト思フノデア
リマス、併シサウナリマスト立法ノ體裁ガ
色々複雜ナモノニナリマシテ、ヤハリ立法
ノ體裁ノ上ニ於テハ朝鮮ニ關スル限リハ、
此ノ一審、二審、三審等ノ關係ハ全部制令
ノ方法ニ依ツテ措置スルコトガ宜シイト云
フ風ナ見解デ、今度ノ措置ヲ執ラウトシタ
次第デアリマス、併シ今私ハ四條ノ規定ヲ
施行シタラサウ云フ效果ガ生ズルカドウカ
ト云フコトヲ深ク〓究シテ居リマセヌカラ、
唯委員長ノ御話ヲ承ツテノ私ノ只今ノ判斷
ニ依ツテ申上ゲテ居ルノデ或ハ誤リガアル
カモ分リマセヌガ、此ノ方法ハ或ハ成立ツ
ノデハナイカト思フノデアリマス
次ニ第四番目ノ御疑念デアリマスガ、是
ハ極メテ御尤モナ御疑問デアルト思ヒマス、
何故ニ裁判所構成法戰時特例ノ措置ヲ執ル
時ニ、豫メ朝鮮ニ付テモサウ云フ風ナコトヲ
考慮シテ置カナカツタカト云フコトニナル
ノデアリマス、裁判所構成法戰時特例ノ或
ハ附則等ヘ持ツテ行ツテ特ニサウ云フ風ナ
措置ヲ考ヘテ、其ノ規定ハ朝鮮ニ施行スル
コトヲ目的トシタ法律デアルト云フコトニ
致シマシテ、措置スレバ宜カツタトモ思フ
ノデアリマス、當時ハ尙ホ朝鮮ニ內地ト同
ジヤウナ措置ヲ執ルカドウカト云フコトニ
付テ、十分ナ〓究モシナカツタノデハナイ
カト思ヒマスガ、其ノ後新シク朝鮮ニ內地
ト同ジヤウニ二審制度ヲ採ルト云フ問題ガ
起ツテ遲レバセナガラ今囘ノヤウナ措置ヲ
執ラウト云フコトニナツタ次第デアリマシ
テ、委員長ノ御話ノ第三、第四、御疑問、
此ノ方法ハ或ハ今囘ノヤウナ一寸シタコト
ニ付テ、特別ノ法律案ニ付テ特ニ議會ノ協
贊ヲ仰グト云フヤウナ煩瑣ナ手續ヲ避ケル
良イ方法デアツタノデハアルマイカト云フ
ヤウナ氣ガスルノデアリマス、今日ニナツ
テ見マスト色々考ヘサセラレル點ガアルノ
デアリマスガ、事茲ニ至ツテハモウ此ノ方
法ヨリ外ニハナイデハナイカト考ヘテ居ル
ノデアリマス、委員長ガ特ニ色々ナ方面カ
ラ立法技術ノ點ニ付テ非常ニ示唆ニ富ンダ
御意見ヲ御述べ願ツタノデアリマシテ、或
ハ便宜ナ措置ガ同樣ノ問題ニ於テ執リ得ル
ヤウニナルカモ分リマセヌノデ、十分我々
ノ將來ノ仕事ノ上ノ參考ニ致シタイト思ツ
テ居リマス、第一、第二ノ點ニ付テノ解釋
ハ政府トシテハツキリシタ解釋デアリマシ
え、是ハ今日ノ場合一寸動カスコトノ出來
ナイ解釋ダト御諒承置キヲ願ヒタイノデア
リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=39
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040・谷原公
○谷原委員長 最早質疑ハ盡キタト思ヒマ
スルガ、之ヲ以テ質疑ヲ終ルコトニ御異議
ハゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=40
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041・谷原公
○谷原委員長 ソレデハ質疑ハ終了致シマ
シタ、討論及ビ採決ハ次會ニ致シタイト思
ヒマス、本日ハ是ニテ散會致シマス
午後三時二十七分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412104X00319440131&spkNum=41
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