第84回帝国議会　衆議院　大日本育英会法案外二件委員会　第4号　昭和19年1月26日

1. 会議録本文

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• 000・会議録情報

  昭和十九年一月二十六日（水曜日）午前十時十六分開議
  　出席委員左の如し
  　　委員長　小柳牧衞君
  　　理事　柏原幸一君　理事　庄司一郎君
  　　理事　永山忠則君
  　　　　池崎忠孝君　　　紀藤常亮君
  　　　　黒田巖君　　　小松茂藤治君
  　　　　坂本一角君　　　薩摩雄次君
  　　　　高城憲夫君　　　多田滿長君
  　　　　圖師兼貳君　　　遠山暉男君
  　　　樋口善右衞門君　　　堀内一雄君
  　　　　眞崎勝次君　　　三木與吉郎君
  　　　　水谷長三郎君　　　森田重次郎君
  　　　　最上政三君　　　山野平一君
  　　　　八角三郎君　　　渡邊泰邦君
  　出席國務大臣左の如し
  　　　　　　文部大臣　子爵　岡部長景君
  　出席政府委員左の如し
  　　　　　司法省刑事局長　池田克君
  　　　　　　　　文部次官　菊池豊三郎君
  　　　　　文部省總務局長　藤野惠君
  　　　文部省專門教育局長　永井浩君
  　　　文部省國民教育局長　阿原謙藏君
  　　　　　文部省教學局長　近藤壽治君
  　　　　　文部省科學局長　清水虎雄君
  　　　　　文部省體育局長　小笠原道生君
  　　　　　　　文部書記官　柴沼直君
  　　　　　　　大東亞次官　山本熊一君
  　　　　━━━━━━━━━━━━━
  本日の會議に上りたる議案左の如し
  　大日本育英會法案（政府提出）
  　青年學校教育費國庫補助法中改正法律案（政府提出）
  　公立學校職員年功加俸國庫補助法中改正法律案（政府提出）

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• 001・小柳牧衞

  ○小柳委員長　是ヨリ會議ヲ開キマス、前
  日ニ引續キマシテ質疑ヲ御願ヒ致シマス-
  圖師君

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• 002・圖師兼貳

  ○圖師委員　先日來同僚議員各位ノ質問ニ
  對スル政府ノ答辯ニ依リマシテ、文〓ノ大體
  ノ點ニ付テハ、片鱗ナリトモ御意圖ノ存スル
  所ガ窺ハレタノデアリマス、又私ノ質問セン
  ト欲スル點モ、相當既ニ質問濟ミニナツテ
  居リマスルノデ、唯殘サレタ二、三ノ點ヲ
  簡單ニ御伺ヒシタイト思フノデアリマス、
  文相ハ昨日目下ノ狀態ニ於テハ、大東亞共
  榮圈ノ建設ノミナラズ、世界新秩序ノ建設
  ニ付テモ考慮ヲ要スル時期デアル、斯ウ御
  言明ニナツタノデアリマス、無論今日五、六
  歲ノ子供ニ向ツテモ、兄サンハ何處ニ行ツ
  タカト言ヘバ、南方ニ行ツタ、斯ウ云フヤ
  ウナ時代デアル、東亞共榮圈ノ建設ハ無論
  ノコト、私共ハ將來ノ世界新秩序ノ建設ト
  云フコトヲ、モウ既ニ計畫的ニ御考ヘニナ
  ツテ然ルベキ時期デアラウト思ウテ居ルノデ
  アリマス、此ノ見地カラ學制諸般ノ根本的仕
  組及ビ學科ノ種目、サウ云フコトニ對スル
  所ノ系統的ノ何カ御腹案デモ立ツテ居リマ
  スレバ、片鱗デモ宜シウゴザイマス、或ハ
  御抱負ノ一端デモ宜シウゴザイマス、此ノ
  際御伺ヒ出來レバ非常ニ幸セト存ズル次第
  デアリマス

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• 003・岡部長景

  ○岡部國務大臣　御答へ申上ゲマス、只今
  圖師君ノ仰セラレタ通リノ情勢デアルト考
  ヘマスルノデ、世界新秩序ノ建設ト云フコ
  トニ付キマシテハ、先ヅヤハリ世界ニ關ス
  ル實情、又過去ニ於ケル歷史ト申シマスル
  カ、今日ノ情勢ノ由ツテ來ツタ所以ニ付テ
  ノ認識ヲ十分ニ持タセルコトガ、先ヅ先決
  デアルト考ヘマスルノデ、學校〓科課程ニ
  於キマシテハ、サウ云フヤウナ點ヲ多分ニ
  #取入レマシテ、
  十分ノ認識ヲ與ヘ、隨テ將
  來ニ對スル覺悟ヲ持タセルヤウニ〓育指導
  ヲシテ參ル方針ヲ以テ、之ヲ各方面ニ取入
  レテ居ル次第デアリマス

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• 004・圖師兼貳

  ○圖師委員　私ノ御尋ネシタイノハモウ少
  シ根本的ニ改組、改革ヲ要スル點ハナイカ
  ト云フコトヲ主トシテ御尋ネシタカツタノ
  デアリマスガ、深クハ時間ノ關係モアリマ
  スルノデ追究ハ致シマセヌ
  次ニ此ノ法文系學校ニ付テノコトヲ御伺ヒシ
  タイノデアリマスガ、昨年デアリマシタカ御決
  メニノナツタ閣議決定等コトハ、既ニ天下周
  知ノ事實デアリマス、非常ニ國民ガ將來ノ法
  文系ノ〓育ニ付テ歸趨ニ迷ウテ居ルノデハナ
  イカ、言葉ヲ換ヘテ言ヘバ、非常ニ父兄ノ人
  心ガ安定ヲ缺イテ居ルヤウナ狀態デハナイ
  カト云フコトヲ痛感シテ居ルノデアリマス
  一億總結束ヲヤラナケレバナラヌ今日、聊
  カナリトモ、此ノ國內情勢ノ一部ノ方面ナ
  リトモ人心ノ不安歸趨ニ迷フヤウナコトガ
  アツテハナラナイト思ヒマスルガ、將來法文
  系ニ對スル文相ノ確タル御取扱ヒニ付テノ
  御所見ヲ此ノ際御伺ヒシテ置キタイノデア
  リマス

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• 005・岡部長景

  ○岡部國務大臣　兎角法文科系統ノ丁年ニ
  達シタル者ハ、軍ニ入ツテ幹部候補生トシ
  テノ〓育ヲ受ケルコトニナリマシタ、理工
  科系統ノ者ハ、軍ノ技術要員タルノ資質ヲ
  完備サセル爲ニ、學校ニ殘ツテ授業ヲ受ケ
  ルコトニナツテ居リマスルノデ、入營ヲ直
  チニサセルカ、或ハ暫ク延期サセルカト云
  フ取扱ヒノ相違カラ、法文系ヲ輕視シテ居
  ルヤウナ誤解ヲ與ヘテ居リマスコトハ非常
  ニ遺憾ナコトデアリマシテ、決シテサウ云フ
  ヤウナ考ヘヲ持ツテ居ルノデハアリマセヌ
  ノデ、法文科系統、理工科系統トモ兩々相
  俟ツテ國家ノ〓育ヲ推進シテ行カナケレ
  バナラヌコトハ勿論デアリマス、唯此ノ戰
  局ノ緊急ナル要請カラ、昨年ノ取扱ヒヲシ
  タ譯デアリマスルガ、將來此ノ法文系、所
  謂精神科學ト云フ方面ガ大切デアルコトハ
  申スマデモナイノデアリマシテ、又同時
  ニ理工科系統ノ學問ガ、從來寧ロ非常ニ
  遲レテ居ツタト云フ嫌ヒモナイデハナイ
  ノデアリマスルカラ、戰後ト申サズ、將
  來ニ對スル我ガ國ノ學問ノ體制ト致シマシ
  テハ、法文科系統、理工科系統ト各〓均衡ノ
  取レタ、而モ充實シタル〓育ヲナシ、又總テ
  ノ學問、學術ノ振興ヲ圖ルト云フコトニ、
  今後大イニ力ヲ用ヒナケレバナラヌト考ヘ
  テ居ル譯デアリマシテ、其ノ點ニ付テハ丁
  度好イ機會デアリマスカラ、此ノ席ヲ通シ
  テ廣ク一般國民ニモ認識ヲ持タシ、又誤解
  ヲ解クヤウニシタイト考ヘテ居ル譯デアリ
  マス

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• 006・圖師兼貳

  ○圖師委員　只今ノ文相ノ御答辯デ能ク了
  解致シマシタ、定メテ國民モ不安ノ念ヲ一
  掃シテ、歸趨ニ迷フヤウナコトハナイト確
  信致シマス、此ノ技術科學ノ方面ト精神科
  學ノ方面ニ、偏傾偏重ヲ來サナイヤウニ進
  ンデ行カレルト云フコトニ付テハ、私共滿
  腔ノ贊意ヲ表スルモノデアリマス、殊ニ將
  來東亞共榮圈ノ一環トシテ支那ガ立ツ以上、
  アノ四千年ノ古イ傳統アル高尙ナル文化ヲ
  有シテ居ル所ノ支那ノ國民ト相提携シテ行
  ク上ニ於キマシテ、單ニ武力ノ撲滅ノミヲ
  以テ、日支ノ間ガ將來相提携ガ出來ルナド
  ト云フコトハ、私共ハ痴人ノ夢ニ等シイモ
  ノデハナイカト思ツテ居ルノデアリマス、
  ドウシテモ此ノ方面カラ考ヘテモ、精神文
  化ノ方面卽チ法文系ノ學科ヲ盛ンニ振興シ
  マシテ、サウシテ之ニ備ヘル用意ガ必要デ
  ハナイカ、又南方諸民族ニ臨ムコトニ付キマ
  シテハ、更ニ所謂壓迫民族ト云フモノガ旣
  ニ世界ノ先進國トシテ存シテ居ルノデアリ
  マスカラ、歷史觀、或ハ民族觀、或ハ國家觀、
  凡ユル學科ノ綜合的消化力ヲ持ツテ居ル人
  間デナケレバ、將來南方民族ヲ共榮圈ノ一
  環トシテ、我ガ翼ノ下ニ收メテ行クコトハ
  困難デハナイカト思フノデアリマス、此ノ
  見地カラ考ヘマスルト、法文系ガ何モ科學
  技術ニ對シテ重イトカ、優先トカ云フコト
  ハ考ヘマセヌケレドモ、現在以上ニ相當振
  作作興シテ行ク御方針デ御進ミヲ願ヒタイ、
  是ハ私ノ要望デゴザイマス
  更ニ極ク切詰メテ簡單ニ申上ゲタイト思
  ヒマスガ、育英事業ニ付キマシテ、全ク結
  構ナ法案デアリマス、唯私ガコヽデ一ツ考
  ヘタイコトハ、アノ育英會ノ法案ハ無論通
  過致シマセウガ、左樣致シマスルト是ト不
  可分的ニ考ヘナケレバナラナイ問題ガアラ
  ウト思フノデアリマス、今日ノ國民〓育ノ
  ヤリ方ハ、結論的ニ申セバ敢テ英才トカ、天
  才トカ云フモノヲ發見シテ之ヲ育成スルト
  云フヨリカ、詰リ一人ノ英才ヲ作ルヨリカ、
  千人ノ普通人ヲ作ルト云フヤウナ建前ト見
  ナケレバナラナイヤウナ劃一的學級組織ニ
  ナツテ居ルヤウニ考ヘルノデアリマス、
  方ニ育英ト云フ文字ヲ冠シテ天下ノ英才ヲ
  育テ行ク、是ハ國家ノ要請上喫緊ノ要務
  デアリマス、然ラバ是ト相隨伴シテ、國民
  學校ノ所謂學級編成ト云フモノヲ相當考ヘ
  ル必要ガアルノデハナイカ、現在ノヤウナ
  畫一主義デハ、折角天賦ノ才能ヲ持ツテ生
  レタ兒童モ、芽生エル機會ガ殆ドナイノデ
  アリマス、又之ヲ發見スルコトモ中々困難
  デアリマス、ソコデ端的ニ申シマスルガ、
  特別學級ト云フモノヲ一ツ御設置ニナル御
  用意ハナイカ、ソレハ五人デモ十人デモ宜
  イ、又サウ大シタ時間ハ要シナイ、每日デ
  ナクテモ宜イ、一週間ニ一、二回デモ宜イ
  ノデアリマスガ、自由修學-自由ニ自分
  ノ才能ヲ發揮スル機會ヲ與フルト同時ニ、
  又學科ノ正科目ニ付キマシテモ進メルダケ
  ハ進マシテ見ル、例ヘバ國民學校三年生ナ
  ラ三年生ノ全能力ヲ發揮スレバ何處マデ行
  クノデアルカ、四年、五年ニ匹敵スルダケノモ
  ノガナイトハ限ラナイト思フ、ザラニアル
  ノデハナイカ、サウ云フコトヲ一面オヤリ
  ニナラナイト、將來育英事業デ育テヽ行ク人
  間ヲ發見スル機會ガナイデハナイカト思フ
  ノデアリマス、大體其ノ點ニ付テノ御意見
  ヲ拜聽シタイ

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• 007・岡部長景

  ○岡部國務大臣　〓育ノ內容ニ付テノ、非
  常ニ適切ナル御質問ト考ヘルノデアリマス
  ルガ、是ハ稍〓私見ニ亙リマスケレドモ、今
  日ノ〓育ガ動モスルト試驗制度ト云フモノ
  ニ制約セラレマシテ、學校ニ於ケル〓育ヲ
  受ケテ居ル間ニ、寧ロ得意ナモノニ對シテ
  ハ餘リ力ヲ用ヒズニ、不得意ナモノニ非常
  ナ努力ヲ拂ハナケレバ試驗ガ通ラナイト云
  フヤウナ缺陷ガアリハシナイカト考ヘルノ
  デアリマス、隨テ今御話ノ通リノ畫一主義
  ニナツテシマヒマシテ、特長ガ發揮出來ナ
  イト云フ憾ミガアルヤウニ考ヘルノデアリ
  マス、同ジ〓育ヲ受ケル間ニ不得意ナモノ
  ニ努力ヲシテ、或ル水準マデドウヤラ漕ギ
  付ケルト云フヨリハ、寧ロ得意ナモノニ力
  ヲ注イデ、其ノモノヲドン〓〓伸バセルヤ
  ウナ〓育方針ヲ採ツタ方ガ適當デハナイカ
  ト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、固ヨリ軍
  ノ方ニ入リマスル場合ノ要求モアリマスル
  シ、又國民ト致シマシテ、或ル程度ノ常識
  ハ固ヨリナケレバナラヌノデアリマスルガ、
  今御話ノ通リ、特ニ優レタルモノヲ大イニ
  伸バスコトノ出來ルヤウナ〓育方針ヲ是非
  採ラナイト、國家全體トシテノ非常ナ損失
  デハナカラウカト考ヘテ居ルノデアリマシ
  テ、特ニ特別學級ヲ設ケルトカト云フコト
  ニ付テハ、マダ具體的ノ〓究ハ致シテ居リ
  マセヌガ、成ベク一ツ優レタルモノハ益〓伸バ
  セルヤウナ〓育方針ヲ採リ、社會ニ出テモ、
  又社會デ實際仕事ヲシテ行キマスル上ニ於
  テモ、各人ノ特長ヲ認メテ、其ノ人ガドン
  ドン伸ビテ行クト云フヤウナ一般ノ考ヘ方
  ニナツテ行カナケレバ、今後ノ此ノ日本ノ
  發展ト云フモノニ對シテモ、中々十分ナコ
  トハ出來ナイノデハナカラウカト云フヤウ
  ニ考ヘテ居ルノデアリマシテ、御趣意ノア
  ル所ハ全然御同感デアリマス、何トカ一ツ
  サウ云フヤウナ方法ヲ篤ト〓究シテ、〓育
  ノ方面ニモ一ツノ新シイ行キ方ヲシテ行キ
  タイト考ヘテ居ル譯デアリマス

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• 008・圖師兼貳

  ○圖師委員　モウ一ツ育英ニ關シマシテ御
  尋ネ致シマスルガ、私ハ昭和三、四年頃カ
  ラ、小サイ町デハアリマスルガ、育英事業
  ヲヤツテ來タ體驗ヲ持ツテ居ルノデアリマ
  ス、今モ繼續シテヤツテ居リマスガ、私共
  大正八、九年頃カラ天下ノ英才ハ國家ノ寶
  デアル、是ハ國家デ〓育スベキモノデアル
  ト云フヤウナ見地カラ、盛ンニ叫ンデ居ツ
  タノデスガ、ソレガ幸ヒニ實現サレテ地方
  デ今ヤツテ居リマスルガ、唯憾ムラクハ甚
  ダ現狀ガ最初ノ豫想通リニ行カナイノデア
  リマス、ドウモ思ツタ程ノ英才モ得ラレナ
  イ、英才ト云フコトハ學校ノ卒業ノ結果デ
  スガ、ドウモ得ラレナイ、期待ガ外レルト
  云フヤウナコトガ多イノデアリマス、此ノ
  原因ハ何處ニアルカト申スト、先ヅ第一ハ
  事務的考ヘニアルト思フノデアリマス、豫
  算ガ幾ラアルカラ來年ハ何人出セル、其ノ
  何人ハ必ズ得ナケレバ豫算ノ手前一寸世間
  體ガ惡イ、又其ノ主任ノ人間モ、何ヲボン
  ヤリシテ居ルカト云フヤウニ思ハレルコト
  ガ嫌ヤナ爲ニ、無理ヤリニ何人カヲ揃ヘル、
  又之ヲ銓衡スル者ガ、民間ノ各方面カラモ
  委員トシテ出テ居ルノデアリマスガ、往々
  情弊トカ運動ト云フコトガ伴ツテ困ルノデ
  アリマス、此ノ法案ハ極メテ良好ナ、我々
  ガ年來渴望シテ居ツタ法案デアリマスルガ、
  望ムラクハ嚴選ト云フコトニ付テ、相當ノ
  御用意ヲシテ戴キタイノデアリマス、若シ
  是ガ、育英貸費ヲ受ケテ卒業シタ彼ノ成績
  ハドウダ、何等特色ハナイデハナイカト云
  フヤウナコトデ、世間ノ信賴ヲ失スルヤウ
  ナコトニナリマスルト、此ノ事業ノ將來ハ
  甚ダ憂フベキ結果ニナルノデアリマス、延
  イテ此ノコトハ總テノ社會改良的ノ仕事ニ
  影響ヲ及ボシテ、國民ノ信賴ヲ失スル端〓
  ヲ開クヤウナコトニナリマスルト、國政運
  營上是レ亦非常ニ遺憾ナコトヲ招來スルノ
  デハナイカト考ヘルノデアリマス、私ハ斯
  樣ニ考ヘテ居リマスルガ、曩ニ文相ハ此ノ
  法案ノ說明ニ付テ、一年ニ何人ト云フ內譯
  マデ御示シニナツタノデスガ、アレヲ何處
  マデモ、何人採ツテヤルノダト云フノデア
  リマスカ、アノ範圍ニ於テ嚴選ニ嚴選ヲ加
  人々、若シナケレバ一人モ採ラナクテモ宜
  シイ、其ノ代リアレバアレ以上デモ構ハナ
  イ、一定ノ標準ノ下ニ、相當人格ノアル所
  ノ銓衡委員ヲ置イテ、嚴選ニ嚴選ヲ加ヘテ、
  若シアノ數ノ半數ニモ滿タナケレバ、其ノ
  滿タナイ程度デヤル、決シテアノ豫算ノ範
  圍內デ、何處マデモヤラナケレバナラナイ
  ト云フヤウナ、事務的感情ヲ一掃シテ御掛
  リニナル御決心ガアルカドウカト云フコト
  ヲ、先ヅ以テ御伺ヒ致シテ置キタイト思ヒ
  マス

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• 009・岡部長景

  ○岡部國務大臣　只今ノ御質問、是レ亦全
  然御同感デアリマシテ、此ノ事業ニ依ツテ
  補助ヲ受ケタ者ハ、將來其ノ中カラ優秀ナ
  ル者ガ多數輩出スルコトト私ハ信ジテ居リ
  マスルガ、苟クモ人選ヲ誤ツテ、サウ云フ
  結果ヲ得ラレナイト云フヤウナコトガアツ
  テハ洵ニ申譯ナイコトデアリマス、育英會
  ノ事業ニ對シマシテハ、監督官廳トシテモ
  十分遺憾ノナイヤウニ注意シテ參ラナケレ
  バナラヌト考ヘテ居リマス

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• 010・圖師兼貳

  ○圖師委員　次ニ、主ニ國民學校ノ現狀ニ付
  テ申上ゲタイト思フノデアリマスガ、第
  ニ、倫理〓育ト申シマセウカ、道德〓育、
  詰リ德育ノコトデゴザイマスガ、德育ノ本
  旨ハ無論天下周知ノ通リ、〓育勅語ニ示サレ
  タル德目ニ從ツテ國民ヲ鍛冶鍊成シテ行ク
  ト云フコトデ、此ノ點ニ付テハ何等我々ガ
  彼此レ申上ゲル筋デハナイノデアリマス、
  唯從來私ガ非常ニ、私個人ノ感想カモ知レマ
  セヌガ、遺憾ニ思フ點ハ、折角此ノ德目ニ從
  ツテ修練サレタル所ノ靑少年ガ、之ヲ盛ル器
  トシテ果シテ今日ノ時代、私共カラ見テ適當
  デアルカドウカッ十分デアルカドウカ、斯ウ
  云フ疑問ヲ得テ持ツノデアリマス、モウ既
  ニ大東亞共榮圈ノ宣言ハ世界ニ向ツテ發表
  セラレ、又一步進ンデ世界新秩序ノ建設ニ
  マデ邁進シナケレバナラヌ、立働カナケレ
  バナラヌト云フ此ノ時代ニ於テ、我ガ國民
  ノ風格トカ、所謂氣質トカ、態度トカ、或
  ハ底力ノアル熱意ノアル上ニ、又悠揚迫ラ
  ズト云フヤウナ點モアラウシ、世界各民族
  ヲ、場合ニ依レバ敵トシテモ避ケナイガ、
  併シナガラ各民族ヲ包容スル所ノ雅量ヲ持
  ツテ居ル、斯ウ云フ氣宇ノ雄大ナ線ノ太イ
  人間ガ、果シテ出來テ居ルカドウカ、斯ウ申シ
  マスルト、何トナク私ハ一脈寂寥ノ感ニ堪
  ヘヌ點ガアルノデアリマス、單ニ德育〓育
  ヲ消極的、或ハ反省的、自省的ノ〓育トセ
  ズシテ、此ノ御德目ヲ何處マデモ積極的ニ
  遂行スルニハドウ云フ性格ノ人間ヲ要スル
  カト云フ點ニ御著眼ニナツタナラバ、此ノ
  性質ト申シマセウカ、性格ト申シマセウカ、
  氣質ト申シマセウカ、サウ云フ所ニ向ツテ
  一步進ンダル〓育陶冶ノ方策ガナケレバナ
  ラヌノデハナイカト思フノデアリマス、私
  共ハ學問ガ淺イノデ深ク世界ノコトハ知リ
  マセヌガ、手ツ取リ早ク支那ノ方面カラ考
  ヘマシテモ、孟子ニ大人ヲ說クニハ之ヲ藐
  ズト云フヤウナコトガアツタヤウニ聞イテ
  居ルノデアリマス、詰リ通俗ニ申セバ、偉
  イ人ノ前へ行ツタナラバ之ヲ少シ輕ク見テ
  向ヘ、ト云フコトデアラウト思ヒマスガ、斯
  ウ云フヤウナコトハ、今ノ支那人ノ氣質風
  格カラ考ヘテ見テ、斯ウ云フコトガ非常ニ
  影響シテ居ルノデハナイカト私ハ考ヘルノ
  デアリマス、或ハ「ヨーロツパ」「アメリ
  カニ付テモ、サウ云フコトガ詮議スレバ
  出テ來ルノデハナイカト思フノデアリマス、
  是ハマア善シ惡シハ別ト致シマシテ、サウ云
  フ意味ニ於テ、我ガ國ニ於テモモウ少シ國
  民ノ性格ト云フモノニ付テ、積極的ノ〓育
  方針ヲ御立テニナル御考ヘハナイカドウカ、
  斯樣ニ考ヘルノデアリマスガ、此ノ點ニ付
  テ御所見ヲ承リタイ

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• 011・岡部長景

  ○岡部國務大臣　御趣意ノ點ハ是レ亦私ノ
  常ニ感ジテ居ル所デアリマシテ、氣宇ノ大
  キイ而モ〓養ノ高イ國民トナツテ、共榮圈
  ノ諸民族カラモ尊敬ヲ受ケ、信賴モサレル
  ト云フ日本人ニナラナケレバ、眞ノ共榮圈
  ノ中心トシテノ推進ヲシテ行クコトハ困難
  ナコトデアルノデアリマシテ、是ハ勿論〓
  科課程ノ中ニモ、サウ云フヤウナ方針ヲ多
  分ニ取入レテハアリマスガ、何分ニモ是ハ
  唯〓ヘルト云フダケデ出來ルモノデモナイ
  ノデアリマシテ、此ノ頃ハ躾ケト云フコト
  ニ付テモ相當ヤカマシク申シテ居リマシテ、
  モウ是ハ理窟ヲ超越シテ、所謂信仰的ト申
  シマスルカ、小サイ時カラノ躾ケガ大事ナ
  コトデアリマシテ、人間ヲ造ルノハ從來
  割ニ學校〓育ニ委セ切ツテ居ツタト云フ憾
  ミガナイデハナイト考ヘルノデアリマス、
  ヤハリ是ハ家庭及ビ社會等ニ於キマシテモ、
  學校ト步調ヲ合セテ、又殊ニ學校ニ於キマ
  シテハ起居-朝起キテカラ晩寢ルマデノ
  間、常ニ種々ノ機會ガアル譯デアリマスル
  カラ、斯ウ云フ時ニヤハリ根柢ノアル〓養
  ノアル躾ケヲシテ行クコトガ、人間ヲ造ル
  上ニ於テ非常ニ必要ナコトデアラウト考ヘ
  テ居ルノデアリマス、此ノ社會〓化運動等
  ニ付キマシテモ、サウ云フヤウナコトニ付
  テヤハリ十分今後ハ手ヲ盡シテ行キタイト
  考ヘテ居ル譯デアリマス、如何ニシテ〓養
  ヲ高メ、風格ヲ高メテ行クカト云フコトハ、
  私モ日夜念頭ヲ去ラナイ問題デアリマシ
  テ、何トカシテ適當ナ方法ヲ以テ、御期待
  サレルヤウナ立派ナ人間ニナリ、又世界カ
  ラモ親シマレ、共榮圈カラハ尊敬サレルト
  云フヤウナ日本人ニ、此ノ上トモニ益〓〓
  養ヲ高メテ行クヤウニ努力シテ參リタイト
  考ヘテ居ル譯デアリマス

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• 012・圖師兼貳

  ○圖師委員　能ク分リマシタ、之ニ關聯シ
  マシテ私大變申シニクイコトデアリマスガ、
  是ハ天下一般トハ申シマセヌ、私ノ見聞ス
  ル範圍ニ於キマシテ、國民學校ノ〓職員殊
  ニ校長ニ付テ、遺憾ヲ感ズル點ガ多々アル
  ノデアリマス、詳シク申上ゲタクナイノデ
  アリマスルガ、決シテ人間ノ惡イ人ハナ
  イ、間違ツタコトモ致シテ居リマセヌ、正
  直ニ忠實ニ御勤メヲナサツテ居ル、私共尊
  敬ハ致シテ居リマスルガ、唯所謂隴ヲ得テ
  蜀ヲ望ムノデハアリマセヌガ、モウ少シ欲
  シイト思フコトハ、ドウモ自分ノ所信ニ向
  ツテ邁進スル上ニ於テ、毅然タル態度ガ少
  シモナイノデアリマス、惡ク申セバ、單エ
  時ノ權門〓華ノ下ニ走ツテ學校ノ修理修
  繕校具ノ買入-後援會ト云フノガアリ
  マスルカラ、ソレモ必要ナコトデアリマス
  ガ、或ハ又自己ノ榮轉其ノ他昇進ト云フヤ
  ウナコト、是ノミニ沒頭シテ居ルノデモア
  リマスマイケレドモ、露骨ニサウ云フコト
  ヲナサルヤウナ人ガ可ナリ私ハ多イヤウニ
  思フノデアリマス、人間ノ本能カモ知レマ
  セヌガ得テ長所ヨリアラガ分リ易イノデ
  アリマス、學校ノ校長先生ト申セバ、至尊
  上御一人ニ次イデ生徒ノ爲ニハ偉イ方デア
  ル、所ガ其ノ校長ガ、一縣會議員ガ來タ時
  ニ草履ヲ揃ヘテ玄關ニ迎ヘル、斯ウ云フヤ
  ウナコトデモ假ニ生徒ガ見テドウ云フウヤ
  ナ感ジヲ持ツカ、斯ウ云フコトハ些々タル
  コトデ、ソレハ場合ニ依ツテハ禮儀ノ一端
  トシテサウ云フコトモアリマセウケレドモ、
  度重ナルトアノ無邪氣ナ生徒自身スラモ
  校長ヲ輕ンズルト云フコトガアルノデアリ
  やく、是デ果シテ先刻申上ゲマシタル大國
  民タル所ノ雄大ナル氣宇ヲ持ツ日本臣民ガ
  養ヘルカト思フノデアリマス、斯ウ云フ方
  ニ任シテ、果シテ我々ノ念願スル所ノ大國
  民ノ風格ト云フモノガ養成出來ルカドウカ、
  此ノ點ヲ私ハ非常ニ心配ヲ致シテ居リマス、
  皆ガ皆デナイノデアリマスルカラ、是ハ極
  端ナ例トシテ御考ヘニナツテモ宜シイノデア
  リマス、此ノ點ニ付テハ昨日同僚議員ヨリ
  モ御質問ガアツタヤウニ思ヒマスガ、體
  此ノ校長先生ト云フモノハ、私共非常ニ重
  キヲ置イテ居ルノデアリマス、一般ニ重キ
  ヲ置クノデアリマスルガ、校長先生ガシツ
  カリシテ居レバ、國民學校ノ〓育ハ振作サ
  レテ、根强イ帝國ノ基礎ガ大體出來上ルヤ
  ウニ考ヘテ居リマス、所ガ今申スヤウナ品
  位風格ノ校長先生デハ、人格的ニ非常ニ
  憂慮ヲ禁ジ得ナイ、ソコデモウ少シ世間ニ
  モ慣レ、世相ニモ通ジ、色々ナ經驗ヲ經テ
  居ル人ハ澤山アル、サウシテ人格高邁ナ人
  モアル、風格ノ世人ノ尊崇ニ値スル人モア
  リマスガ、サウ云フ人ヲ名譽校長ト云フモ
  ノデモ宜イト思フ、モウ少シ〓育界ノ視野
  ヲ廣ゲテ、責任者ナラバドナタデモ宜イ、
  サウ云フ人ヲ迎ヘテ校長ニ据エテ、ソコノ
  學校ニ磐石ノ重ミヲ付ケテ、兒童ノ訓育ニ
  當ツタナラバ、非常ニ國民ノ品位、風格ニ
  影響スル所多大ナモノガアルノデハナイカ、
  斯樣ニ考ヘルノデアリマスルガ、之ニ對シ
  テノ御所見ヲ御伺ヒシタイト思ヒマス

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• 013・岡部長景

  ○岡部國務大臣　是レ亦至極必要ナコトデ
  アリマシテ、學校ノ校長ハ固ヨリ〓員等ニ
  於キマシテモ、ヤハリ人格的ニ尊敬サレル
  人ガ局ニ當ルト云フコトガ最モ望マシイコ
  トデアリマス、或ハ中ニハ、今御話ノヤウ
  ナ自信ノ强固デナイ人モ絕無トハ申セナイ
  ト思フノデアリマスガ、是ハ固ヨリ其ノ人
  達ノ考ヘ方、人物ニモ依ルコトデアリマシ
  テ、其ノ人ダケヲ責メルコトハ無理デアリ
  マス、社會ガ〓員ト云フニ對スル尊敬ヲ愈〓、
  深メ、又國家的ニハ之ニ對スル優遇ノ途モ
  講ズルト云フコトニナリマシテ、〓育者其
  ノモノガ自分ノ天職ニ對シテ深キ自信ヲ以
  テ之ニ當ルヤウニ、自他共ニ仕向ケテ行カ
  ナケレバナラヌ問題デアラウカト考ヘテ居
  リマス、御說ノ通リ經驗モアリ、又人格ノ
  高イ色々ノ人ガ社會ニモ多イノデアルカラ
  シテ、サウ云フ人ヲ採用シテ其ノ局ニ當ラ
  シタラ宜クハナイカト云フ御意見、是モ御
  同感デアリマス、此ノ點ニ付キマシテハ旣
  ニ閣議ニ於テモ、サウ云フ方針ヲ採ルコト
  ニ決定致シマシテ、先般文部省令ヲ以テ、
  此ノ採用ノ範圍ヲ擴張シテ、今マデノヤウ
  ナ資格ノアル者デナケレバ校長或ハ〓員ニ
  ナレナイト云フ窮屈ナ制限ヲ多少緩和致シ
  マシテ、經驗ノアル、德望ノアル人ハ、サ
  ウ云フ資格ガナクテモ採用出來ルト云フコ
  トニ致シタ譯デアリマス、此ノ點ハ旣ニ御
  期待ノ措置ヲ執ツテアリマスルノデ、今後ハ
  適當ノ人間ヲ選ンデ、〓育界ニ招クト云フ
  コトニシテ行キタイト考ヘテ居ル譯デアリ
  マス

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• 014・圖師兼貳

  ○圖師委員　其ノ點ハ私マダ氣ガ付キマセ
  ヌデシタ、非常ニ仕合セト存ジマス、ソレ
  ニ付キマシテ昨日來ノ問題トナツテ居ルコ
  トナノデアリマスガ、「クラウン·リーダー」
  ノ問題、此ノ如キハ私ハ非常ニアノ御話ヲ
  聞イテ遺憾ニ思ウタノデアリマスガ、兎ニ
  角問題ハ色々多岐多端ニ亙リマセウガ、何
  故ニ此ノ儘ノ〓科書-英語ヲ〓ヘル技術
  トシテノ建前ナラバドウデモ宜イノデアリ
  マスガ、何トシテモ中等學校ノ〓職員-
  我々ハ文〓ト云フモノハ司法權ニ次イデ大
  事ナモノデ、内閣ニ超越シタ所ノ機關ガ欲
  シイ位ニ考ヘテ居リマスガ、此ノ大事ナ神
  聖ナ〓職ヲ掌ツテ居ル人ガ、兎ニ角斯ウ云
  フコトハ穩當デハナイ、面白クナイト御感
  ジニナツタナラバ、ナゼ上司ニデモ意見ヲ
  具申シナイカ、サウ云フ人ガ一人位アツテ
  モ宜カツタノヂヤナイカ、アツタカモ知レ
  マセヌガ、其ノ上司ガ其ノ上ニ取次ガナカ
  ツタノカモ知レマセヌ、只今私ハ校長先生
  等ニ付テ申シタコトガ、大體〓育界ニサウ
  云フ眞ニ至誠ヲ貫遂スル勇氣ノナイ人ガ充
  チ滿チテ居ルノデハナイカ、是ガ抑〓原因
  ヂヤナイカト私ハ痛感致シテ居ルノデアリ
  マンク斯ウ云フ點モ御考ヘ合セノ上、ドウ
  カ少クトモ中等學校程度ノ〓職員ニ至ルマ
  デ、殊ニ國民學校ノ校長ニ付テハ深甚ノ御
  留意ヲ拂ツテ戴キタイ、是ハ私ノ希望デア
  リマス
  次ニ武道殊ニ劍道ノコトニ付テ簡單ニ御
  伺ヒシタイト思ヒマス、私ハ其ノ方ノ專門
  家デモ何デモアリマセヌガ、之ニ付テハ相
  當ノ趣味ヲ持ツテ居リマスシ、又先輩ニモ
  聽イタ譯デアリマス、只今國民學校等ノ正
  科ニ採リ入レラレテ、相當成績ヲ擧ゲツヽア
  ルノデアリマスルケレドモ、マダ廣クデハ
  アリマセヌ、十分デナイヤウナ點モ多々ア
  ルノデアリマス、殊ニ〓師ノ養成ニ付テハ、
  ドウ云フ心構ヘヲ持ツテ居ラレルノデアリ
  マスカ、又現在ノ仕組ハドウナツテ居ルノ
  カ、詳シク私ハ存ジテ居ラヌノデアリマス
  ガ、殊ニ〓師ノ劍道ニ伴フ精神修養、鍛鍊
  ト云フヤウナコトハドウナツテ居ルノデア
  リマスカ、申スマデモナク劍道ハ日本武士
  道ノ典型的ノ道デアリマス、所謂攻擊ノ一
  途アルノミ、受ケルトカ躱ストカ云フコト
  ハ第二義、ソシテ劍ヲ拔ケバ正義ノ爲ニ拔
  ク劍デアル、正義ヲ貫徹スル爲ニハ敵ヲ斃
  シテモ已マナイ、其ノ喉笛マデモ止メヲ刺
  ス、非常ニ殘虐ノヤウデアリマスガ、正義
  ノ爲ニ拔イタ劍デアルカラ、正義ヲ貫徹ス
  ル爲ニハドウシテモ止メマデ刺サナケレバ
  イケナイノデアリマス、昔ハサウ云フ點カラ
  ヤクザ者トカ博徒トカ云フ者ガ果シ合ヒヲ
  ヤツテ敵ヲ斃シテモ、其ノ作法トシテ止メ
  ヲ刺スコトダケハ許サレテ居ナカツタ、所
  ガ武士ガ一旦刀ヲ拔クト云フコトハ、是ハ
  正義ノ爲メデアル、君ノ爲ニ拔キ國ノ爲ニ
  拔ク、其ノ正義ノ一念ニ依ツテ拔クノデア
  ルカラ、ソレヲ貫徹スルコトガ目的デアル、
  當然止メヲ刺スベキモノデアル、斯ウ云フ
  ヤウナコトノ一端ヲ考ヘマシテモ、如何ニ
  劍道ガ日本武士道ノ精神ヲ端的ニ現ハシテ
  居ル一ツノ技デアリ、道デアルカト云フコ
  トガ分ルノデアリマス、是ハ私ハドコマデ
  モ一日モ速カニ、盛大ニ此ノコトヲ全國ノ
  兒童ニ普及徹底サシテ行カナケレバナラヌ
  ト思フ、是ハ技ト云フヨリハ寧ロ私ハ精神
  ニ重キヲ置クノデアリマス、今日軍隊ノ精
  神皆此ノ劍道ノ精神カラ行ツテ居ルノデ
  アリマス、大勇ハ一劍ヲ賴マズト云フコト
  ガアリ、又今日ノ戰爭技術カラ申セバ、劍
  術ノ術ノ如キハ實際ニ役ニ立ツカ立タヌカ
  知リマセヌガ、少クトモ劍道精神ト云フモ
  ノハ、身體ヲ練リ、心ヲ練ルト云フ上カラ
  行キマシテモ、個人ノ體育上輕視スベカラ
  ザルト同時ニ、日本武士道ノ華トシテ、殆
  ド理想的ノ道デアラウト私ハ思フノデアリ
  マスガ、ドウ云フ風ニ此ノ〓師ヲ現在養成
  サレテ居ルノデアルカ、又其ノ養成科目ニ
  付テ、精神的方面ヲドウ御扱ヒニナツテ居
  ルノデアルカト云フコトヲ、御伺ヒシテ置
  キタイノデアリマス

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• 015・岡部長景

  ○小笠原政府委員　御答ヘ申上ゲマス、只今
  御質問中ニ御述ベニナリマシタ御意見、全
  ク同感デゴザイマシテ、實ハ武道ニ付キマ
  シテハ文部省ニ於キマシテモ、只今御述べノ通
  リノ氣持ヲ以チマシテ〓員ノ養成ナリ
  或ハ學校ニ於ケル實施ナリニ努メテ居リマ
  ス次第デゴザイマス、〓員ノ養成ニ付テ申
  シマスナラバ、實ハ中等學校以上ノ武道
  〓師ハ、特別ニ學校等ガゴザイマシテ養成
  ヲ致シテ居リマス、國民學校ニ於ケル武道
  ノ〓授ヲ致シマス者ハ、特ニ武道專門ノ〓
  員ト云フモノハゴザイマセヌデ、一般ノ〓
  員ノ中デ適當ナ者ガ之ニ當ツテ居ルト云フ
  實情デゴザイマス、中等學校以上ノ〓員ヲ
  養成致シマス官立ノ各學校ニ於キマシテハ、
  何レモ武道ト云フモノガ本來ノ精神的ナ部
  面ノ重要サニ鑑ミマシテ、單ニ武技ト申シ
  マスカ、其ノ術技ノミヲ〓ヘルト云フヤウ
  ナコトニ終始致シマセヌデ-勿論術技
  モ大事デゴザイマスカラ、是ニハ十分鍊磨
  ヲ致スヤウニ努メテ居リマスガ、同時ニ精
  神的ナ部面ノ訓育ト云フコトニ、大イニ力
  ヲ注イデ居ル次第デゴザイマス、同時ニ又
  武道ノ精神的方面ト申スノデハナイカモ知
  レマセヌガ、學校ノ〓師トナルノデゴザイ
  マスカラ、〓育ノ根本義デアルトカ、倫理
  デアルトカ、或ハサウ云フ精神的ナ部面ニ
  關聯ノアルヤウナ學科等モ相當多量ニ加ヘ
  マシテ、或ル意味カラ申シマスナラバ、武
  道ノ〓師ニナルノニ斯ウ云フコトガコンナ
  ニ澤山入用デアラウカト云フ批評ヲスル人
  サヘアル位ニ、ソレ等ノ科目等モ規定シテ、
  實施サセテ居ル次第デアリマス、又中等學
  校以上ノ武道科ノ〓員ニ付キマシテハ、旣
  ニ〓師トナリマシタ者モ、每年文部省ノ主
  催ヲ以チマシテ、三週間ヅヽ東京其ノ他ニ
  集メマシテ講習會ヲ開キ、謂ハヾ再〓育、
  再訓練ト云フ機會ヲ設ケテ居ルノデアリマ
  スガ、此ノ際ニ於キマシテモ、單ニ技ヲ修
  練スルト云フバカリデナク、精神的ナ部面
  ノ修練ト云フコトヲ非常ニ重ンジテヤツテ
  居ル次第デアリマス、國民學校ノ〓員ニ付
  キマシテハ先程申シマシタヤウニ、國民學
  校ノ〓員全部ガ武道ノ指導ニ當ルト云フコ
  トニナツテ居リマシテ、又國民學校ニ於ケ
  ル武道、劍道、柔道何レニ致シマシテモ、
  實ハ技ト云フ點カラ見マスト、極メテ簡單
  ナモノデアリマシテ、或ハ技ト云フ見地カ
  ラ見マスト、斯ウ云フモノハ大シテ意義ハ
  ナイヂヤナイカト云フ批評ヲ受ケルカモ知
  レナイヤウナモノデゴザイマス、寧ロ之ヲ
  行フ際ノ精神的ナ訓練ト云フコトニ重點ヲ
  置イテ、科目內容モ既ニ定マツテ居リマス
  次第デゴザイマス、之ヲ指導スルニ當リマ
  シテノ〓師ノ心構ヘト致シマシテハ、ソレ
  等ノ〓師ガ師範學校ニ在學致シマス間ニ、
  師範學校ニ於テ受ケル〓育ニ於テ、武道ノ
  修練ニ於キマシテヤハリ精神的ナ要素ヲ入
  レマシテ、又師範學校ニ於ケル武道ノ〓授
  要目ノ中ニモ武道史デアルトカ、武道ノ本
  義デアルトカ云フコトノ講義講話等モ加ヘ
  マシテ、十分精神的ナ方面ニ力ヲ入レルヤ
  ウニナツテ居リマスガ、同時ニ又旣ニ國民
  學校ニ就任致シマシタ者ニ對シマシテモ、
  隨時講習會等ヲ開キマシテ、文部省ノ方カ
  ラ適當ナ者ヲ派遣致シ、講習、再〓育等ヲ
  行フコトニナツテ居ルノデゴザイマスガ、
  ソレ等ノ機會ニ於キマシテモ、常ニ精神的
  方面ノ重要ナコトヲ力說致シマシテ、此ノ
  方面ヘノ修練ニ努メテ居リマス次第デゴザ
  イマス、大要左樣ナ實情デゴザイマスガ、
  今後一層其ノヤウナ方向ニ向ヒマシテ、殊
  ニ只今御話ノヤウナ御趣旨全ク御同感デゴ
  ザイマスノデ、一層之ニ努メタイト考ヘテ
  居ル次第デゴザイマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=15

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• 016・圖師兼貳

  ○圖師委員　私ノ質問ハ終リマシタ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=16

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• 017・八角三郎

  ○八角委員　議事進行ニ付テ發言ヲ求メマ
  ス-昨日堀内君ノ質問ニ對シテ御約束ニ
  ナツタノデ、今日書キ物カ刷物デ御示シニ
  ナルカト思ツテ待ツテ居リマシタガ、何ニ
  モアリマセヌノデ、左ノ二點ヲ明カニシタ
  イ、第一ハ問題ニナリマシタ「クラウン·リ
  ーダー」ノ訂正スル箇所ヲ今日ノ委員會ニ
  於テ御示シニナルト云フ御約束デアリマシ
  タガ、マダ御示シニナリマセヌガ、其ノ箇所
  ヲ御示シ願ヒタイ、第二ハ此ノ問題ニナリ
  マシタ所ノ英語〓育ニ對シテ、各府縣ニ指
  示ヲサレタト云フコトデアリマシテ其ノ指
  示ノ內容、日時等ヲ質問ニナツタ筈デアリ
  マスルガ、ソレヲマダ御示シニナリマセヌ
  カラ、其ノ二點ヲ明カニセラレテ御質疑ヲ
  續行セラレンコトヲ望ミマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=17

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• 018・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　昨日申上ゲマシタ指示致
  シマシタ點ニ付テ先ヅ申上ゲタイト思ヒマ
  ス、昨年ノ五月十七日、十八日ノ兩日ニ亙リ
  マシテ、道府縣ノ〓科書ノ主任者ノ參集ヲ求メ
  マシテ、霞山會館デ昭和十九年度ニ使用致
  スベキ中等學校等ノ〓科書ニ關スル事務ノ
  打合會ヲ開催致シタノデアリマス、其ノ席
  上、注意事項ノ一ツト致シマシテ、昭和十
  九年度使用ノ〓科書圖書修正ニ關スル件ト
  シテ指示ヲ致シタノデアリマス、同時ニ既
  ニ生徒ガ十八年度ニ買ツテ居リマスル英語
  ノ〓科書ニ關シマシテモ、此ノ點ニ付キマ
  シテ同樣ノ注意ヲ與ヘマシテ、殊ニ取扱上
  注意ヲ致シテ〓授スルヤウニ、其ノ時ニ指
  示ヲ與ヘタ次第デアリマス、次ニ來年度ノ中
  等學校ニ於キマスル英語ノ〓科書ノ使用ニ
  付キマシテハ、卷ノ一ト卷ノ二ハ十九年度
  ニ於キマシテハ、從來使ツテ居リマシタ〓
  科書ヲ使用セシメマセヌデ、新タニ中等〓
  科書株式會社デ編纂シマシタ〓科書ヲ使用
  サスコトニナツテ居リマス、ソレ以外ノ卷
  ノ三、卷ノ四、卷ノ五ニ付キマシテハ、親米、
  親英的氣分ヲ釀スヤウナ文章、米英ノ物質
  文明ヲ謳歌スルヤウナ記事、米英人ノ日本
  ヲ蔑視スルヤウナ感ヲ與ヘルヤウナ文章、
  斯樣ナ點ニ付キマシテ改メマシテ遺憾ノナ
  イヤウニ致シタイ、斯樣ニ考ヘテ居リマス、
  問題ニナリマシタ國歌ハ卷ノ二デゴザイマ
  シテ、是ハ使用セシメナイコトニ相成ツテ
  居リマス

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• 019・八角三郎

  ○八角委員　昨日ノ堀內君ノ御質問ハ、斯
  ウ云フ所ヲ削除スルトカ、ソレカラドウ云
  フ點ヲ止メルトカ云フ具體的ノ箇條ヲ伺ヒ
  タイト云フヤウナ御質問ノヤウニ思ツテ
  居リマシタガ、堀内君カラ其ノ點ヲ明カニ
  シテ御質疑ヲセラレタイト思ヒマス

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• 020・堀内一雄

  ○堀內委員　昨日私竝ニ同僚最上委員カラ
  ノ質疑ハ、次ノヤウニ承知シテ居リマス、
  私ノハ「クラウン·リーダー」其ノ他現在使
  用シテ居リマスル英語ノ〓科書ノ中デ、削
  除セラレマスルモノハドウ云フ點デアルカ、
  ソレハ今ノ御話デ一、二卷ダケハ全部止メ
  テシマツテ、アトハ全部削除モシナイ、手
  モ入レナイト云フ風ニ承ツタノデアリマス
  ガ、果シテ三卷以後ハ何モサウ云フ風ニ手
  ヲ入レナイノカドウカ、ソレカラ私カラ言
  フノモ一寸ドウカト思ヒマスガ、最上委員
  カラ、英語ノ〓科書バカリデナク、其ノ外
  ノモノニ對シテモサウ云フヤウナ點ガアル
  ト思フガ、其ノ點ヲ一緒ニ示シテ戴キタ
  イ、斯樣ニ御願ヒシタヤウニ思ツテ居リマ
  スガ···

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• 021・最上政三

  ○最上委員　私ノ昨日申シタノハ、只今堀
  內委員ガ言フ通リ、他ノ中等〓科書竝ニ其
  ノ他ノ〓科書ノ中ニ、英米崇拜ノ文章ノミ
  ナラズ、特ニ私ハ、大東亞共榮圈內ニ於ケ
  ル友好關係ヲ結ンデ居ル諸獨立國ニ對シ、
  動モスルト之ヲ輕蔑スルガ如キ感ヲ抱ク文
  章ガアルカニ承知シテ居ルノデアリマス、
  又散見シテ居ルノデアリマス、是等ニ付テ
  如何ニ御取計ラヒニナルカト云フコトヲ御
  聽キシタノデアツテ、是等モ同時ニ速カニ
  削除或ハ訂正セラレルヤウナ御意向ガアリ
  マセウカ、伺ヒタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=21

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• 022・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　先程堀内サンカラ御話ノ
  アリマシタ卷ノ三、卷ノ四、卷ノ五ニ付キ
  マシテモ、只今申上ゲマシタ點ニ付キマシ
  テ削除致シテ居リマス、例ヲ擧ゲテミマス、
  卷ノ三ノ中ニ「ペリー」ノ寫眞ヲ揭載シマシ
  テ、日本ノ開國ノ話ヲ載セタ記事ガ載ツテ
  居リマス、又「ロンドン」ヲ禮讃シタヤウナ記
  事モ載ツテ居リマス、斯ウ云フモノハ削除
  致シテ居リマス、ソレカラ卷ノ四ニ於キマ
  シテモ、英國ノ英國魂ト申シマスカ、サウ
  云フモノヲ謳歌シタ文章ガ載ツテ居リマス、
  是モ削除致シテ居リマス、ソレカラ卷ノ五
  三、、英語ノ效用ヲ非常ニ誇張シテ書イタ
  モノガゴザイマスノデ、〓授上面白クナイ
  ト云フコトデ、是モ削除致シテ居リマス、
  尙又卷ノ四ト同樣ニ、英國魂ヲ謳歌スルヤ
  ウナ歌ガゴザイマスノデ、是モ削除致シテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=22

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• 023・堀内一雄

  ○堀內委員　具體的ニ之ヲ拾ヒ上ゲマスレ
  バ非常ニ多クナルコトデアリマスルノデ、
  私ハ此ノ際更ニ至急ニ再檢討ヲシテ戴キタ
  イト思フノデアリマス、例ヘテ申シマスレ
  バ、今「ロンドン」ノ御話ガアリマシタガ、
  慥カ三ノ卷デアリマスルガ、ソレニ「ニュー
  ヨーク」ノ話モ出テ居リマス、ソレカラ
  ㄱロンドン」ノ歌モアリマス、其ノ外「ニュー
  ヨーク」ノ歌モアリマス、其ノ外私共ガ
  見テドウカト思フヤウナモノガ相當アル、
  同時ニ私ハ此ノ際、昨日モ申シマシタガ、時
  局ニ鑑ミテ、宣戰ノ大詔デアルトカ、東洋
  共榮圈確立ニ關スル根本理念デアルトカ、
  大東亞宣言デアリマストカ、今度ノ戰史ニ
  關シマシテ國民〓育上ニ參考ニナルヤウナモ
  ノハ、日本ノ「ニッポンタイムス」其ノ他ニモ
  載ツテ居ツタ資材等モアルノデアリマスカラ、
  サウ云フモノモ補足資材トシテ御利用ニナ
  ルヤウニ御願ヒ申シタイト存ズルノデアリ
  やっ、サウ云フコトニ對シテ御用意ガアリ
  マスルカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=23

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• 024・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　只今ノ點尙ホ能ク調ベマ
  シテ、十分ニ檢討シタイト思ツテ居リマス、
  又事情ガ許スナラバ、補足的ナモノヲ〓材ト
  シテ使用セシメルト云フコトニ付キマシテ
  モ、十分注意ヲ與ヘタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=24

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• 025・最上政三

  ○最上委員　英語以外ノモノハ如何デセウ
  カ

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• 026・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　其ノ他ノ〓科書ニ付キマ
  シテモ、十分檢討致シテ居リマスガ、今マ
  ダ手許ニ揃ヘテ居リマセヌノデ、揃ヘマシ
  テ申上ゲマス

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• 027・堀内一雄

  ○堀內委員　尙ホ只今ノ御話ノ八角委員ニ
  對スル御答辯ノ中ニ、十九年度ノ事務打合
  會ノ御話ガアリマシタガ、昨日モ申上ゲマ
  シタヤウニ、此ノ問題ハ斷然タル御處置ヲ
  執ツテ戴クト云フコトニナリマセヌト、
  般ノ國民ノ中ニモ相當問題ニナツテ居ルヤ
  ウニ考ヘルノデアリマスカラ、此ノ點ニ付
  テ、責任ノ歸趨ト云ツタヤウナコトニ付テ
  一寸申スノデアリマスガ、昭和十九年度ノ
  英語ノ〓育ニ關スル指示ノ內容ハ、私今ノ
  程度デ具體的ニドウ云フコトガアツタカ分
  リマセヌガ、若シ十分ニ指示シテアルニ拘
  ラズ、各縣、各學校等ニ於テ、特ニ特別ナ
  處置ヲ執ラズニ〓育ヲシテ居ツタト云フコ
  トニナリマスルト、其ノ責任ハ地方廳竝ニ
  學校ニ移ル譯デアリマスルガ、斯ウ云フヤ
  ウナコトニ付キマシテ、今日マデ御監督ノ
  見地カラ御調査ニナツタ結果ハドンナヤウ
  ニナツテ居リマスルカ、其ノ邊ヲ一寸御伺
  ヒ致シタイ

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• 028・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　私マダ關係致シマシテ日
  ガ淺イモノデアリマスカラ、詳シイコトハ
  聽イテ居リマセヌガ、尙ホ能ク其ノ點ハ責
  任ヲ持ツテ調ベタイト思ツテ居リマス

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• 029・堀内一雄

  ○堀内委員　重ネ〓〓申スノデアリマスガ、
  思想ノ中心デアリマスル文部省ニ於キマシ
  テ、苟且ニモ責任逃レ的ナヤウナコトガア
  リ、若シ誤解デモ起ルヤウナ態度ニナラレ
  マスルト、各縣竝ニ各學校ノ當局者ト云ツ
  タヤウナ關係ニ於テ、非常ニ問題ニナルノ
  ヂヤナイカト思ヒマスノデ、申スマデモナ
  イコトデアリマスガ、サウ云フ間違ヒガ又
  起リマスト困リマスカラ、其ノ點十分御留
  意ノ上、嚴重ニ御調査ニナツテ、此ノ弊害
  ヲ除クヤウニ願ヒタイト思ヒマス、私ノ質
  問ハ是デ終リマス

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• 030・多田滿長

  ○多田委員　關聯シテ居リマスシ、昨日ノ
  問題モアリマスカラ一寸······昨日堀内君カ
  ラ思想上ノ問題ハ極メテ重要ナ事柄デアル、
  而モ文部省ハ責任ヲ持ツテ之ヲ取扱ツテ居
  ラレルト言明シテ居ルノデアリマスガ、事
  ハ極メテ重大デモアリマスシ、其ノ他伺ヒ
  タイコトモアルノデ、總理大臣ニ此ノ席ニ
  御出席ヲ願ツテ我々ノ質問ヲシタイ、斯ウ
  云フ提案ヲシテアルノデゴザイマスガ、此
  ノ點ニ付テ委員長カラドウ云フ手續ヲ執ラ
  レテ居リマスカ、又ドンナ狀況ニナツテ居
  ルカト云フコトヲ伺ヒタイ

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• 031・小柳牧衞

  ○小柳委員長　昨日堀內君カラ思想戰ニ關
  シテ統一シタ機關ガ欲シイト云フヤウナ提
  案ガアリ、總理大臣ノ出席ヲ要望サレタノ
  デアリマシテ、直チニ交渉シタノデアリマ
  スガ、今日ハドウモ外ノ委員會等ノ關係デ時
  間ノ都合ガ付カナイ、殘念ナガラ斯ウ云フ
  囘答デアリマシタ

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• 032・多田滿長

  ○多田委員　今日ハオイデニナラヌト云フ
  コトデアリマスケレドモ、總理大臣ハ何モ
  豫算總會ダケニ踏ミ止マツテ意見ヲ聽カナ
  ケレバナラヌト云フ譯ノモノデモアリマス
  マイシ、斯ウ云フ戰時下デアルカラ、私共
  モ手間ヲ取ラセマセヌカラ、短時間デ宜シ
  イカラ、出來ルダケコチラヘモ御出席願ヒ
  タイ、文部大臣モ勿論豫算總會ノ方へ時々
  行カレテ質問ヲ受ケテ居ラレルノデアリマ
  スカラ、此ノ意味ヲ參酌サレマシテ、是非
  御出席下サルヤウニ、重ネテ委員長カラ交
  涉サレンコトヲ希望致シマス

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• 033・小柳牧衞

  ○小柳委員長　薩摩君

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• 034・薩摩雄次

  ○薩摩委員　私ガ大臣ニ質問シタイト思ヒ
  マスルコトハ、多クノ委員ガ大體色々ノ角
  度カラ質問ヲシタヤウデアリマスルガ、マ
  ダ殘ツテ居リマスル點ト、特ニ私ハ私トシ
  テノ角度カラ質問ヲ致シタイト思ヒマスル
  點ガ三、四點アリマスノデ、ソレヲ質問致
  シマス、時間ノ關係上マダ後ニ多クノ質問
  者モアルヤウデアリマスカラ、簡單ニ一、
  二、三、四ト云フ風ニ分ケテ質問ヲ申上ゲ
  マスカラ、ソレヲ御忘レノナイヤウニ簡單
  ニ御答辯ヲ御願ヒ致シマス
  第一ハ法案ニ關スルコトデアリマス、大
  日本育英會法案ハ我々多年要望致シテ居ル
  點デアリマスルガ、今囘文部省カラ提案サ
  レタ法案ニ非常ナル疑點ガアルノデアリマ
  ス、其ノ疑點ハ大日本育英會法案ノ發生シ
  タ其ノ主ナル目的、原因ト云ヒマスカ、「ロ
  シヤ」ニ於ケル育英會、「ドイツ」ニ於ケル
  育英會、サウ云フヤウナコトガ日本ニ非常
  ニ流布サレテ、其ノ結果遲蒔ナガラ日本ガ
  ヤツタト云フ觀ナキニシモアラズデアリマ
  ス、「ロシヤ」ニ於テハ飽クマデ秀才〓育ト
  云フヤウナコトヲヤリマシタガ爲ニ、之ム
  對スル非難ガ囂々ト起キテ居リマス、私直
  接「ロシヤ」ノ「モスクワ」デ其ノ非難ヲ聽イ
  テ來テ居リマスガ、秀才ダケヲ國家ガ養成
  スルノダ、凡才ハドウデモ宜イノダト云フ
  ヤウナ意味ニ取ラレテシマツテ居ルノデア
  リマス、「ドイツ」ニ於キマシテハ「ヘルマ
  ン、ゲーリング」ガ之ヲヤツテ居リマスガ、
  養成シタル人間ハ大抵「ナチス」ノ組織體ノ
  中ニ入ツテ、或ハ「ヒトラー·ユーゲント」ノ
  指導者ニナルトカ、或ハ工場ニ入ツテモ指
  導者ニナルトカ云フヤウナコトヲヤツテ居
  リマシテ、日本デハ〓育ヲ受ケタ人間ガ國
  家ニ金ヲ返還スルト云フ義務ガ課セラレテ
  居ルノデアリマスガ、「ドイツ」ニ於テハサ
  ウ云フ點ハ非常ニ緩ヤカニナツテ居リマス、
  ソレデ今囘ノ法案ヲ見マスト、優秀ナル學
  徒ト云フコトニ第一定義ヲ附ケラレテ居ル
  ノデアリマスガ、此ノ優秀ナル學徒ト云フ
  點ニ付テ、私ハ多分ニ疑問ヲ持ツテ居ルノ
  デアリマス、優秀ナル學徒ノ根據ヲ何處ニ
  置カレルカ、過去ノ例ニ見マシテモ分リマ
  スヤウニ、優秀ナル學徒ハ多ク身體ガ弱イ、
  或ハ業ヲ修メタ場合ニ社會主義者ニナルト
  カ、共產主義者ニナルトカ、國家性ト相反對
  スル思想ヲ持ツテ居ル者ガ多カツタコトハ、
  今日マデノ歴史ニ明カデアリマス、ツレデ
  優秀ナル學徒ノ定義ト言ヒマスルカ、ソレ
  ヲ此ノ際大臣カラハツキリ決メテ置イテ戴
  ク必要ガアルト思ヒマス
  ソレカラ其ノ次ハ「學資ノ貸與其ノ他之
  ガ育英上必要ナル業務」デアリマスガ、此
  ノ必要ナル業務ト云フ點ハ、罰則ノ第二十九
  條ノ二項ニ、「本法ニ規定セザル業務ヲ營ミ
  タルトキ」ハ之ニ罰ヲ加ヘルト云フコトニ
  ナツテ居ルノデアリマス、是ハ當事者ガ受
  ケル罰デアリマスガ、此ノ後ノ業務ト、初メノ
  第一條ノ二項ノ育英上必要ナル業務ト云フ
  點トハ、重大ナル人間ノ懲罰ニ關スル問題
  デアリマスルカラ、其ノ他必要ナル業務ト
  云フ點ニ付テ、如何ナル細則ガ出來上ツテ
  居ルノデアルカ、寄宿舍ヲ設ケルノカ、或
  ハ指導所ヲ設ケルノカ、或ハサウ云フ連中
  ヲ全部何處カノ鍊成院ヘ入レテ錬成スル、
  サウ云フ業務カ、ソレトモ全國ニ草鞋ヲ履
  イテ優秀ナル學徒ヲ探シニ行クヤウナ組織
  ヲ設ケル業務カ、此ノ細則ガ出來テ居リマ
  シタラ、其ノ點ヲハツキリシテ戴キタイト
  思ヒマス、ソレカラ第十六條ノ一一項ニ「學
  資ノ貸與ヲ受クル學徒ノ輔導」トアリマス、
  此ノ學徒ノ輔導ト云フ點ハ實ニ重大ナル問
  題デアリマス、國家ガ今日マデ巨萬ノ金ヲ
  使ツテ經營シテ居ル帝國大學ガ赤化思想ノ
  搖籃ニナツテ居ツタト云フヤウナ點ハ、國
  民ニ對シテ申譯ノナイ點デアリマシタノデ、
  貸與ヲ受クル學徒ノ輔導ヲ誰ガヤルノカ、
  サウシテドウ云フ方法デヤルノカト云フ點
  ニ付テ、法案ヲ作ル時相當審議サレ、論議
  サレ、或ハ其ノ細則ト云ヒマスカ、サウ云
  フヤウナモノモ出來テ居ル筈ダト思ヒマス
  カラ、其ノ輔導ノヤリ方、又輔導ヲヤル人、
  人間、サウ云フ點ニ付テ御答辯ヲ願ヒタイ
  ト思ヒマス、ソレカラ第三項ノ「修學上必要
  ナル施設ノ設置及經營」デアリマス、其ノ必
  要ナル施設トハドウ云フモノヲヤルノカ、
  所謂寄宿舍ヲ作ルノカ、或ハ鍊成院ヲ作ル
  ノカ、塾ノヤウナモノヲ作ルノカ、其ノ他
  ノ方法ニ依ル施設ト云フモノガアリマセウ
  ガ、サウ云フ點ニ付テ御答辯ヲ願ヒタイト
  思ヒマス、ソレカラ總括的ニ經濟的事情ニ
  因ツテ學資ヲ出スコトノ出來ナイ人間ニ補
  助スルト云フコトニナツテ居リマスガ、此
  ノ經濟的事情ニ因ル貧因ト云フ定義ガ何處
  ニアリマスカ、生來小作人トカ、或ハ日傭
  勞働者ノヤウニ、貧乏ナ者モ貧困ノ者ノ中
  ニ入リマセウシ、事業上失敗シタル貧困者
  モアリマセウ、又非常ニ澤山財產ヲ持ツテ
  居ツテモ、全部ソレガ餘所へ擔保ニ入ツテ
  居ツテ、子供ノ〓育ガ出來ナイ、併シ借金
  シテモ子供ノ〓育ヲシタイケレドモ、世間
  體モアツテ、アンナニ借金ヲシテ居テマダ
  子供ヲ學校ニヤルノハ贅澤ダト言ハレルヤ
  ウナ意味合ノ貧困モアリマセウ、此ノ貧困
  ノ調査竝ニ其ノ度合、ソレニ關聯シテ若シ
  其ノ貧困者ガ一朝ニシテ金ヲ儲ケテ貧困デ
  ナクナツタ場合、所謂今日ノ殷賑產業ニ於
  テ、昨日マデ野鍛冶デアツタ者ガ直チニ軍
  需景氣ニ乘ツテ、軍需會社ノ社長ニナルト
  云フヤウニ、數箇月足ラズデ金持ニナル者
  モアル、サウ云フ場合ニ其ノ奬學ヲ停止ス
  ルトカ、或ハソレノ返還ヲ命ズルトカ云フ
  ヤウナコトニ付テモ、然ルベキ〓究ガ出來
  テ此ノ法案ガ出來テ居ルモノト思フノデア
  リマス
  ソレカラ此ノ法案ノ最後ノ質問ト致シマ
  シテ、飽クマデモ本案ハ業成ツタ曉ニハ金
  ヲ返スト云フコトガ本旨ニナツテ居リマス、
  今日日本ガ要求スルモノハ、返スト云フ觀
  念ニ依ツテ月給取ニナル人間ヲ養成スルノ
  ガ日本ノ目的デハナイト思ヒマス、自分ノ
  一身ノ榮達、或ハ收入ト云フコトヲ念頭ニ
  置カズシテ、大東亞共榮圈ノ眞只中ニ飛込
  ンデ挺身的ニ國家ノ爲ニ働キ、或ハ民衆、民
  間ノ組織體ノ中ニ入ツテ活躍スル、或ハ其
  ノ日ノ生活ニモ困ルヤウナ人間、サウ云フ
  ヤウナ精神的ニ旺盛ナル人間ヲ養成スルコ
  トガ、國家ノ最モ切實ナル要求デアラウト
  私ハ思フノデアリマス、所ガ此ノ法案ニ依
  リマスト、卒業シタラ必ズ金ヲ返スト云フコ
  トニナツテ居テ、是ハ過去ノ立身出世主義
  ニ囚ハレタ月給取ヲ養成スルコトニナル、
  又サウシナケレバ金ヲ返スコトガ出來ナイ
  斯ウ云フ場合ニ於テ、國家トシテハ、此ノ人
  間養成ガ唯單ナル世界各國ノ育英會ノ方法
  ヲ眞似テ作ツタノデアツテ、日本ノ本來ノ精
  神、將來伸ビテ行ク日本ニ於ケル中核體タル
  ベキ挺身的人物ヲ作ルト云フ點ニ於テ、少
  シク缺ケテ居リハシナイデアラウカト思ヒ
  マスノデ、此ノ法案ヲ作ラレタ時ニサウ云
  フ點ハ如何ニ考慮ヲサレタノデアルカ、是
  ガ此ノ委員會ニ課セラレタ育英會法案ニ對
  スル私ノ第一ノ質問デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=34

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• 035・岡部長景

  ○岡部國務大臣　最初ノ御質問ノ、如何ナル
  學徒ヲ優秀ナル者トシテ此ノ補助ヲ與ヘル
  資格ヲ與ヘルカ、其ノ條件ニ付キマシテハ
  一昨日モ申上ゲテ置キマシタガ、固ヨリ學術
  ノ優秀デアルト云フコトハ勿論デアリマス
  ガ、思想モ堅固デアリ、品行モ固ヨリ方正デ
  アリ、又同時ニ身體モ强健ナル者ト云フヤ
  ウナ點ニ大體合致スル者ヲ選擇銓衡致シマ
  シテ、將來國家有用ノ人材ヲ育成スルト云
  フコトニアルノデアリマス、國家有用ノ人
  材ト云フノハ、固ヨリ政府ノ役人トシテ使フ
  ト云フ趣意デハ無論ナイノデアリマシテ、
  國家全體カラ見マシテノ問題デアリマスル
  カラ、其ノ點ハサウ狹イ役人養成ノ目的ヲ
  以テヤルト云フヤウナコトハ決シテナイノ
  デアリマス、尙ホ其ノ他ノ點ニ付キマシテ
  ハ政府委員カラ御答辯ヲ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=35

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• 036・永井柳太郎

  ○永井政府委員　育英上必要ナル業務ト云
  フモノハドンナモノデアルカト云フ御話デ
  ゴザイマシタガ、是ハ第十六條ノ第一項ニ
  列擧致シマシタモノノ外、第二項ニ定メマ
  シタ通リニ、本法人ノ目的達成上必要ナ業
  務ヲ指スモノデゴザイマスガ、具體的ニ申
  シマスト、貸費學徒ノ輔導、寄宿舍ノ經營、
  身上相談所ノ設置等ノ如キ業務ヲ意味スル
  ノデアリマス、尙ホ十六條第一項第三號ノ「修
  學上必要ナル施設ノ設置及經營」ト云フ中、
  「必要ナル施設」トハ何カト云フ御話デゴザイ
  マシタガ、是モ只今申上ゲマシタヤウニ、
  或ハ寄宿舍ノ經營デアルトカ、或ハ身ノ上
  相談所ノ設置ト云フヤウナコトヲ意味シテ
  居ル譯デアリマス、是モ亦他ノ委員カラ御
  質問ノ時御答へ申上ゲマシタヤウニ、將來
  是等ノ事項ニ付テノ施設、設置ノ必要ガ起
  リ又ハ經濟上ノ餘裕ガ出來タ場合ニ十分
  考ヘラレル餘地ヲ殘ス爲ニ規定致サレテア
  ルノデアリマシテ、目下ノ問題ト致シマシ
  テハ、此ノ前御話申上ゲタヤウニ、貸費ヲ
  主眼點トシテ運營ヲ致シテ行キタイト考ヘ
  テ居ル次第デアリマス
  次ニ學資ノ貸與ヲ受ケル學徒ノ輔導ト云
  フノハドウ云フコトデアルカ、尙ホ其ノ輔
  導ニハ誰ガ當ルノデアルカト云フ御質問デ
  ゴザイマシタガ、學資ノ貸與ヲ受ケル學徒、
  此ノ者達ニ對シマシテ、例ヘバ親ニ代ツテ
  ノ相談事モ色々ゴザイマセウシ、又色々進
  學上ノ相談モゴザイマセウ、サウ云フヤウ
  ナ事柄ニ付キマシテ、本會ニ於キマシテ是
  等ノ學徒ニ對シテ輔導ヲ致スト云フ意味デ
  アリマシテ、之ニ當ルモノハ本會ノ役員デ
  アリマストカ、又各府縣ニ支部ガ出來マシ
  テ、其ノ支部長ハ先般モ申上ゲマシタヤウ
  ニ知事デアリマスシ、其ノ支部ノ職員ト云
  フモノハ、ソレ〓〓〓育者竝ニ〓育關係者
  等ガ關係致スコトニナルト思フノデアリマス
  ガ、是等ノ者ガ只今申上ゲマシタヤウナ意味
  ノ輔導ニ當ルト云フコトニ相成ルノデアリマス
  次ニ「經濟的理由ニ因リ」云々トアルガ此ノ
  「經濟的理由ニ因リ修學困難ナルモノ」ト云
  フノハドウ云フコトデアルカト云フ御尋
  ネデゴザイマシタガ、經濟的理由ニ因ル修
  學困難ナルモノハ、必ズシモ貧困者ノミト
  ハ限定致シテ居ラナイノデアリマス、固ヨ
  リ貧困ナル家庭ノ子弟ハ經濟的理由ニ依ツ
  テ修學困難デアルコトハ、是ハ申スマデモ
  ナイコトデゴザイマスガ、或ル程度ノ社會
  的地位ヲ有スル階層ニ於キマシテモ、或ハ
  子女ノ數ガ非常ニ澤山アリマスルトカ、或
  ハ其ノ他ノ理由ニ依リマシテ、ヤハリ相當
  ノ社會的地位ニアル者デアリマシテモ、經
  濟的理由ニ依リマシテ、其ノ子弟ノ〓育ニ困
  難ヲ生ズルト云フ者モ相當アルト思フノデ
  アリマスガ、斯ウ云フ種類ノ家庭ノ子弟ニ
  對シマシテモ、是ハ貸費ヲ致ス積リデゴザ
  イマス、尙ホ貸費ヲ返スト云フコトハ、何
  カ月給取ヲ養成スルヤウナ感ガアツテ、裸
  一貫デ難局ニ打込ンデ行クト云ツタヤウナ
  底力ノアル人間ヲ養成スル點ニナルト、金
  ヲ返サナケレバナラヌト云フヤウナ建前
  デハ困難ニナリハセヌカト云フ御心配デゴ
  ザイマスガ、洵ニ御尤モデゴザイマス、實
  際ニ先程大臣カラモ御說明ガアリマシタヤ
  ウニ、此ノ育英會ニ於テ育英致シマスル人
  間ハ、是ハ第一條ニモアリマスルヤウニ、
  國家有用ノ人材ヲ育成スルコトヲ以テ目的
  トスル、是ガ大眼目デアリマス、國家有用
  ノ人材ト云フノハ、御話ノ如クニ身ヲ捨テ
  テ國家ノ爲ニ盡スト云フ底ノ人物ヲ最モ望
  ンデアルコトデアリマスルノデ、其ノ際ニ
  サウ云フヤウナ人材ヲ育成シタイト云フコ
  トガ大眼目デゴザイマス、假ニ先程御話ノ
  ヤウニ、身ヲ捨テテ國外等ニ於テ色々困難
  ナ業務ニ携ハルト云フヤウナ考デアリマシ
  テ、事實上ドウシテモ金ヲ一々ニ付テ返還
  スルコトガ困難デアルト云フヤウナ場合ニ
  付キマシテ、ドウ取扱フカト云フコトニナ
  リマスト、ソレ等ニ付キマシテハ出來ルダ
  ケ寛大ナ考ヘ方デ取扱ツテ參リタイト云フ
  風ニ思ツテ居リマスガ、個々ノ事例ニ付キ
  マシテハ、是ハ個々ノ場合デゴザイマスノ
  デ、ソレハ其ノ時々ニ、只今申シマシタ心
  持ニ依ツテ取扱ツテ行クト云フコトダケヲ
  申上ゲマシテ、御諒承ヲ得テ置キタイト思
  ヒマス

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• 037・岡部長景

  ○岡部國務大臣　一寸私カラモ一言申添へ
  テ置キマスガ、日本ニ於キマシテハ、月給
  取力、サモナケレバ何力事業ヲスルト云フ
  ノデナイト立ツテ行ケナイヤウナ事情モア
  ルノデアリマスルガ、是ハ今御話ノ通リサ
  ウ云フコトニ頓著ナク、命ヲ捧ゲテモ、如
  何ナル苦シイ所ニデモ行ツテ御國ノ爲ニ盡
  スト云フヤウナ人間ガ働ケルヤウナ機構ヲ、
  私ハ一ツ考ヘナケレバナラヌト思ツテ居ル
  ノデアリマス、例ヘバ外國ノ宣〓師ノ如キ
  ハ、隨分支那或ハ大東亞共榮圈各地ノ方ニ
  モ入リ込ンデ骨ヲ折ツテ居ルノデアリマス
  ルガ、斯ウ云フコトガ安心シテ出來ルヤウ
  ナ機構ヲ一ツ考ヘテ行クコトガ大切デハナ
  イカト思ツテ居ルノデアリマス、サウ云フ
  コトガ出來マスレバ、今ノヤウナ人間ハサ
  ウ云フ所ヘ收容シテ、安心シテ行ケルヤウ
  ニナルノデハナイカト考ヘテ居リマス、是
  ハ將來私ハヤハリ日本トシテハサウ云フ
  大切ナ人間ガ理論、利害ヲ超越シテ、御國
  ノ爲ニ命ヲ捧ゲテ行クヤウナ氣持ノ純眞ナ
  ル人ニ、シツカリ働イテ貰フト云フコトガ
  是非望マシイコトダト思ツテ居リマス

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• 038・薩摩雄次

  ○薩摩委員　次ニ私ハ武道〓育ノ問題ニ付
  テ質問シタイト思ヒマス、武道行政ハ厚生
  省ガヤツテ居リマスガ、武道〓育ハ文部省
  ガヤツテ居ルノデアリマシテ、特ニソレガ
  劍道ニ關スルコトハ先程圖師委員カラ質問
  ガアリ、政府委員ノ懇切ナル答辯ガアリマ
  シタガ、私ハ其ノ問題トハ別ニ、最近新タ
  ニ大日本武德會ト云フモノガ出來マシテ、
  是ハ京都ニ古クカラアリマスル武德會トハ
  其ノ性格、內容、組織一切ヲ別ニシタ新シ
  イモノガ出來タ、ソレガ惡イ言葉デ言ヒマ
  スト、マルデ武道ノ統制會社ノヤウナモノ
  デアルノデアリマシテ、日本中ノ各流派ノ
  武道ヲ大日本武德會ニ於テ統制シテ、其處
  デ等級ヲ決メル、其ノ等級ヲ持ツテ居ル者
  ニアラズンバ、各學校ノ先生ニスルコトハ
  出來ナイト云フヤウナコトヲ勝手ニ決メテ、
  各地デ大日本武德會ニ屬スル役員ガ講演ヲ
  シテ步イテ居ル、特ニ講道館ノ段位ハ認メ
  ナイト云フヤウナコトデ、物議ヲ釀シタリ
  致シテ居リマス、御承知ノヤウニ武道精神
  ノ眞髓ト云フモノハ、其ノ歷史ト傳統ト其
  ノ流派ヲ重ンズル點ニアルノデアリマシテ、
  其ノ流派ノ中カラ魂ガ出テ參リマス、其ノ
  魂ノ中カラ極意ガ生レテ來ルノデアリマス、
  私柔道、劍道ヲヤルカラ別ニ茲ニ柔道ノ極
  意ヲ說明スル譯デハアリマセヌケレドモ、
  武道ノ〓育ト云フモノハ普通ノ習字ヲ〓へ
  ルトカ、地理、歴史ヲ〓ヘルトカ云フモノ
  ト全然違ツテ居リマシテ、大和魂ノ根源ノ
  一部ヲナシテ居ルモノガ武道デアルト言フ
  テモ宜イ位ニ、日本人トシテハ最モ大切ナ
  モノデアリマス、甲源一刀流ニハ甲源一刀
  流ノ精神ガアリマス、講道館流ニハ講道館
  流ノ精神ガアリマス、ソレハ長年ノ流祖ノ
  人々ガ、辛苦艱難ヲサレタ結果生ミ出サレ
  タモノデアル、ソレカラ現ハレテ來テ居ル
  ノガ今日ノ所謂各學校デ〓ヘテ居ル講道館
  流ノ柔道デアリ、甲源一刀流ノ劍道ニナツ
  タリシテ居ルノデアリマス、ソレデ文部省
  ガ武道〓育ノ上ニ於テ、武道ヲ〓ヘル場合
  ニ、新シク發足シタル大日本武德會ノ此ノ
  統制ノ下ニ武道〓育ヲヤツテ行カレルノカ、
  ソレトモ文部省ハ獨自ノ立場ニ於テ武道〓
  育ト云フモノヲヤツテ行カレルノカ、或ハ
  其ノヤツテ行ク上ニ於テ、武道ノ昔カラ傳
  ハツテ居ル流派ト云フモノハ全然無視シテ
  シマツテ、唯體育尊重ノ上カラヤツテ行カレ
  ルノカ、ソレトモ武道ノ極意ヲ少シデモ多
  クノ者ニ、精神的ニ或ハ技術的ニ知ラシメ
  ヨウト云フ點カラヤツテ行カレルノカ、サ
  ウ云フ點ニ付テ文部省ノ武道〓育ノ根本精
  神ト云フモノハ何處ニアルカ、今ヤツテ居
  リマス相撲ニシテモ、國技館ノ相撲ハ飽ク
  マデ倒スト云フ決心デヤツテ居リマス、併
  シ海軍ニ於ケル相撲ハ、飽クマデ體育ト云
  フモノヲ中心ニシテ、敵ニ打突カツテ行ク
  ト云フ敢鬪精神ヲ中心ニシテ實施シテ居ル、
  同ジ相撲ニシテモ、ヤリ方ニ於テソレ位ニ
  違フノデアリマス、大日本武德會ガ今度決
  メマシタノハ、柔道ノ有段者ノ試合ニ當身
  ヲ許ス、當身デ宜シイト云フコトニナツ
  タ、ソレヲ學校ノ〓育ニヤツタナラバ、怪
  我人ト引繰返ル人間バカリ出來テ、肪骨ヲ
  折ル人間ハ何百人ト出ル、アヽ云フ當身ト
  云フモノハ、武道ノ極意ニ達シタ者ガ初メ
  テヤレルノデアツテ、有段者以上ノ試合ニ
  ハ當身デ宜シイ、當身デ行ケ、斯ウ決定シ
  テ居ル、恐ラク厚生省モ此ノ問題デハ非常
  ニ困ツテ居ルト思フガ、學校ノ試合ニ於テ
  サウ云フモノヲ許ス、ソレカラ劍道ノ方面
  ニ於テモ袈裟斬リデ宜シイト云フ、若シ劍
  道ノ三段、四段ニナツタ人間ガ、竹刀ヲ以
  テ肩ニ打込ンデ行ツタナラバ、大抵ノ人間
  ハ肩ノ骨ヲ折ツテシマヒマス、是ハオ面ガ
  ヤレルコトニ依ツテ初メテ袈裟斬リガ出來
  ルオ面ヲ打込ンデ行ツタ場合ニ、敵ガス
  ツト頭ヲカハシタ時ニ、ソレガ直チニ袈裟
  斬リトナルノデアツテ、此ノ武道ノ極意ヲ
  知ラナイ武道統制會社ト言ツテ宜イカ、ア
  ア云フ人々ガ勝手ニ決メタコトニ依ツテ日
  本ノ昔カラノ武道ト云フモノヲ劃一的ニ統
  制シヨウトシテ非常ナル物議ヲ醸シテ居ル、
  故ニ、文部省ハサウ云フコトニ囚ハレナイ
  デ、文部省ハ文部省トシテノ武道〓育ノ根
  柢ヲ何處ニ置イテヤツテ行カレルノカ、先
  程圖師委員ノ質問中ニアツタ武道〓師ノ養
  成竝ニ〓師ニ如何ナル精神的〓育ヲヤツテ
  行カレルカト云フ點ニ付テハ私諒承致シマ
  シタガ、此ノ武道ト云フモノハ先刻言ヒマ
  シタヤウニ、普通ノ〓育ト違ヒマスノデ、
  武道ノ新流派ノ精神ヲ〓ヘテ行ク上ニ於テ
  ハ單ニ武道ノ本義デアルトカ、或ハ武術家
  ノ精神的訓練デアルトカ云フ以外ニ一ツノ
  魂ガ必要ニナルノデアリマス、サウ云フ點
  ハ全然度外視シテヤツテ行カレルノカ、文
  部省ノ武道〓育ニ對シテノ方針ヲ承リタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=38

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• 039・小笠原道生

  ○小笠原政府委員　御答ヘ申上ゲマス、先
  ヅ武德會ノ御話ガゴザイマシタガ、大日本
  武德會ハ御承知ノヤウニ、總理大臣ヲ會長
  ト致シマシテ、官廳ト致シマシテハ厚生省
  ヲ初メト致シマシテ、文部省、陸海軍省、
  内務省ノ五省ガ共同デ監督ヲ致シテ居リマ
  スル會デゴザイマス、只今モ御述ベニナリ
  マシタヤウニ實ハ從來カラゴザイマシタ武
  道團體ト云フモノデナク、詰リ新シク本當
  ニ武道ヲ振興スル爲ノ良イ〓體ヲ是非トモ
  作ルト云フコトデ發足ヲ致シマシテ出來上
  ツタ團體デゴザイマシテ、私共ハ所期ノ通
  リノ健全ナ發達ヲ大イニ期待致シマスルト
  共ニ、之ニ向ツテ大イニ協力ヲ致シテ居ル
  次第デゴザイマス、其ノ現狀ニ付キマシテ
  ノ御話ハ實ハ五省デ共管トハ申シマスガ、
  厚生省ガ主管ノ官廳デアリマスノデ、武德
  會ノ本質トカ或ハ現狀ノドウ斯ウト云フ
  問題ニ付キマシテ、私カラ御答ヘ致シマ
  スノハ或ハ少シ筋ガ違フカモ知レマセ
  ヌガ、併シ私共ト致シマシテハ、武德
  會ナルモノハヤハリ日本ノ武道ニ付キ
  マシテハ有力ナ、又大イニ尊重スベキ團體
  ト考ヘマシテ、是ノ今後ノ健全ナル發達ヲ
  大イニ促進シテ行キタイ、斯ウ考ヘテ居リ
  やっ、併シナガラ學校〓育ニ付キマシテハ、
  學校ニ於ケル武道〓育ヲ全部此ノ武德會ノ
  統制ノ下ニ、武德會ニ任セテヤラセルノカ
  ト云フ御尋ネデゴザイマシタガ、〓育ニ關
  シマスルコトハ文部省ガヤリマスコトデア
  リマス、武道ノ〓員ノ資格ヲ定メマスト
  カ、或ハ學校ニ於ケル武道ヲドウ云フ風ニ
  シテ行フカ、其ノ內容ヲ如何ニスルカト云
  フコトハ、是ハ申スマデモナク建前ト致シ
  マシテハ飽クマデモ文部省ガヤツテ參リマ
  スコトデアリマシテ、學校〓育ノ中ノ武道ナ
  ルガ故ニ、擧ゲテ之ヲ武德會ニ任セテシマ
  フトフ云ヤウナコトハ是ハナイノデゴザ
  イマス、併シナガラ先程申シマシタヤウニ、
  少クトモ日本ノ武道ト致シマシテハ、中
  心トナルベキ團體デアリマス、又大イニ尊
  重スベキ團體デアリマス、武道ニ付テ其處
  デ考ヘマスコトニ付キマシテハ、恐ラク間
  違ツタコトハ言ハナイト存ジマスカラ、其
  處デ決マリマシタコトヲ原則的ニ十分良イ
  コトヲ採入レマシテ、之ト步調ヲ合セテ學
  校ノ武道ヲモ行ツテ行キタイト云フコトニ
  ハ極力心掛ケマスシ、又サウアランコトヲ
  望ミマスケレドモ、併シソコデ定マツタモ
  ノデアルガ故ニ無條件ニ絕對的ニ直グ學校
  〓育デ實施スル、斯ウ云フ建前デハゴザイ
  マセヌ、モウ少シ具體的ニ申シマスレバ學
  校ニ於ケル武道ノ實施ニ付キマシテハ、何
  レモ文部省ニ於キマシテ制定致シマシタ學
  校武道ノ〓授要目ニ從ツテ實施ヲ致シテ居
  リマス、其ノ要目ノ決定ノ際等ニ於キマ
  シテ根本的ナ精神ト云フヤウナコトハ、勿
  論大日本武德會デ言ツテ居ラレルヤウナコ
  トモ採入レマシテ、大イニ之ヲ參考ニシテ
  制定ハ致シマスガ、併シ飽クマデモ文部省
  自身ガ制定シタ〓授要目ニ從ツテヤツテ參
  リマス、先程例ニ御擧ゲニナリマシタヤウ
  ナコトニ付キマシテハ、學校ノ〓授要目ニ
  於キマシテ十分考慮致シマシテ、學校〓育
  トシテ弊害ノアルコト、或ハ又實施上差支
  ノアルト思フヤウナコトハ加ヘテ居リマセ
  又、〓授要目ノ制定ニ付キマシテハ或ハ御
  承知カト思ヒマスガ、文部省ノミデ決メル
  ノデハゴザイマセヌ、其ノ道ノ權威ノアル
  然ルベキ專門ノ方々等ニモ御相談ヲ致シマ
  シテ、又一面單ニ武道ノ專門的ナ見地カラ
  ノミナラズ、〓育ト云フ見地カラモ十分檢
  討致シマシテ、ソレ等ノ方々ノ御意見ヲ纏
  メマシテ、檢討ノ上作ツタ〓授要目デアリ
  マシテ、少クトモ現在行ハレテ居リマス學
  校武道ノ〓授要目ニ付キマシテハ、御懸念
  ノヤウナ點ハナイモノト信ジテ居リマス、
  又專門學校以上ノ學校ニ付キマシテハ、中
  等學校以下ノ如ク細カイ〓授要目ト云フモ
  ノハゴザイマセヌガ、是ハ昨年デゴザイマ
  シタカ、サウ云フ上級學校ノ學徒ノ武道ノ試
  合要領ト云フモノヲ文部省デ定メマシテ、
  之ニ從ツテ試合ヲヤツテ居リマス、試合ノ
  方ノ要領ガ定マリマスレバ、自然平素ノ修
  練等ニモ影響ヲ及ボスダラウト思ヒマス、
  出來レバ平素ノコトモ細カク規定スレバ宜
  シイノデゴザイマセウガ、マダソコマデ上級
  學校ニ付テハ行ツテ居リマセヌノデ、取敢
  ズ試合ノ要領ヲ昨年定メマシタ、是ナドニ
  付キマシテモ御懸念ノヤウナ點ハ少シモナ
  イモノト信ジテ居ルノデゴザイマス
  尙ホ今一ツ流派ト云フ御話ガゴザイマシ
  タガ、全ク御說ノ通リデゴザイマシテ、私
  共ニ於キマシテモ武道ニ於テ流派ト云フモ
  ノハ飽クマデモ尊重スベキモノダ、又其ノ
  流派ノ中ニ生命ガアルト云フ風ナ御說ト全
  ク同ジヤウニ考ヘテ居リマス、唯學校ニ於
  ケル實施ニ付キマシテハ、是ハソレ〓〓ノ
  流派ヲ皆合セ行フト云フヤウナコトハ中々
  困難デアリマスシ、又ソレ〓〓ノ流派ヲ各
  學校デ非常ニ區々ニ、或ル學校ハ何々流、
  或ル學校ハ何々流ト云フヤウニ分レマスト、
  是ハ武道トシテハ十分意義アルコトト私ハ
  思ヒマスケレドモ、御承知ノヤウニ今日ノ
  學校〓育ハ或ル意味ニ於テ劃一的ニ多クノ
  學校ヲ一齊ニヤツテ行クト云フ關係ガゴザ
  イマスノデ、學校ニ依ツテ皆流派ガ違フト
  云フノデモ困ル事情ガゴザイマス、是ハ武
  道ノ本質ト云フコトハ別ト致シマシテ、學
  校ノ運營上困ルヤウナ點モゴザイマス、ソ
  レデ各流派ノ長所ト申シマシテハ語弊ガア
  ルカモ知レマセヌガ、各流派ノ內容等モ十
  分參酌致シマシテ、先程モ御話ガゴザイマ
  シタ講道館柔道ナドモサウナンデゴザイマ
  セウガ、各流派ヲ十分參酌致シマシテ、サ
  ウシテ一面學校ニ於テ實施スルノニ運營上
  便利ト云フ點モ考ヘマシテ、先程申上ゲタ
  〓授要目ト云フモノヲ定メテ居ル次第デゴ
  ザイマシテ、現在學校ニ於テ正科ノ時間デ
  實施シテ居リマス際ニ、流派ト云フモノヲ
  ハツキリ致シテハ居リマセヌ、〓授要目ト
  云フモノデ行ツテ居リマスガ、一面ニ於テ
  ソレハ流派ヲ無視シテ居ルト云フコトデハ
  ゴザイマセヌノデ、武道ト云フモノニ於ケ
  ル流派ノ意義ニ付ギマシテハ御說ト全ク同
  樣ニ考ヘテ居ルノデゴザイマス、今色々御
  質問ノ內容ガ多カツタノデ、或ハ御答ヘヲ
  落シタ點ガゴザイマスカモ知レマセヌガ、
  一應御答へ申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=39

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• 040・薩摩雄次

  ○薩摩委員　武道ニ關シマシテ今流派ノ點
  ヲ御尋ネシタノデアリマスガ、外國ノ例ト
  シテ是非參考ニシテ置イテ戴キタイノハ、
  私ガ「ドイツ」ヘ行キマシタ時ニ、「ドイツ」
  デハ日本ノ人間ト言ヘバ全部村社ト言フ、
  ソレデ「ドイツ」ノ「オリンピック」ヲ見ニ行
  キマスト、下ハ國民學校ノ生徒カラ或ハ產
  業戰士ニ至ルマデ「ランニング」ノ型ハ少シ
  モ違ハナイ、村社乏々ト言ヒマシテ、日本
  ノ「ランニング」選手ト云へバ其ノ型ニナツ
  テ居ル、ソレデ各學校ヲ參觀ニ行キマスト、
  アレヲ高速度デ映シテ、ソレヲ皆學校ノ運
  動場デ〓ヘテ居ル、此ノ型ガ一番良イノダ
  ト云フノデ、「ドイツ」ノ「ランニング」ノ型
  ハ日本ノ村社型ニ風靡サレテ居リマス、ソ
  レト同樣ニ武道ニ於キマシテモ、一劍直チ
  ニ敵ヲ殺スヤウナモノ、ソレカラ先程大臣
  モ委員會ノ初メニ一寸仰シヤイマシタヤウ
  ニ、杖術ト云フ「ステッキ」一本デ直チニ敵ヲ
  倒スト云フノモアリマス、竹刀一本持ツ
  テ居ナクテモ敵ヲヤツツケルト云フヤウナ
  昔ノ大東流ト云フ種變リノモノモアリマス
  ノデ、此ノ學校〓育ニ於ケル武道〓育ト云
  フモノハ普通ノ「スポーツ」ト違ヒマシテ、
  ソレヲ〓ハツテ行ク學生ノ修練ノ階段ニハ
  非常ナル違ヒガアリマス、非常ニ簡單ニ言
  ヘバ强クナル者ト何時マデヤツテモ强クナ
  ラヌ者トアル、其ノ非常ニ强クナリ術ニ達
  スル人間ハ、色々ノ流派ヲ容易ク手ニ取リ
  自分ノ體ニ體得スルダケノ素質ガ出來テ居
  ルモノデアリマス、ソレデ特ニ武道ニ付テ
  心配シテ居ラレル大臣ニ於カレテハ、尺貫
  法問題ニ於テモ日本ノ傳統ト歷史ヲブツ潰
  シテハイカヌト云フヤウナ點デ尺貫法ノ存
  續ヲ御主張サレテ居ツタノダト記憶シテ居
  リマスガ、武道〓育ノ上ニ、私ノ希望デア
  リマスルガ、日本ノ古來カラ傳ハツテ居リ
  マスル各武道ノ眞精神ヲ特ニ武道ニ熱心ナ
  ル人間ニ會得セシムル方法ヲ講ジテ貰ヒタ
  イ、武道ニ熱心ナ人間ハ見タダケデ直グニ
  分リマス、サウ云フ點ニ付テ文部省ノ武道
  〓育ノ〓範ノミナラズ、廣ク知識ヲ各方面
  ニ求メルト云フヤウナコトヲ講ジテ戴キタ
  イト云フコトヲ希望トシテ申上ゲテ置キマ
  ス
  次ニ是ハ大臣ニ直接御伺ヒシタイノデア
  リマスガ、私立學校ノ整備統合問題デアリ
  やく、他ノ委員カラ御尋ネニモナリマシタ
  ケレドモ、私ハ私立學校ノ整備統合問題ヲ
  非常ニ重要視シテ居ルノデアリマス、當時
  是ガ新聞デ發表サレタ時ニハ、全紙ヲ擧ゲ
  テ新聞ハ之ヲ書イテ居ツタノデアリマス、
  昔ノ時代ノ新聞ニ書イテ居ル記事ナラバ、
  アレハ新聞記者ガ勝手ニ書イタノダカラ俺
  ハ知ラヌ、是デ濟ムカモ知レマセヌガ、今
  日ハ人ノ死亡廣告ニ於テモ情報局ハ制限シ
  そう、人ガ一人自殺シタト云ツテモ、是ハ
  二段拔キ以上ニ書イテハイカヌト云フヤウ
  ニ制限スルノデ、アノ當時ノ私立學校ノ整
  備統合ノ新聞發表ノ記事ト云フモノハ、單
  ナル新聞記者ガ興味本位ニ書イタモノトハ
  取レナイノデアリマス、アノ記事ヲ見マシ
  テ、學校經營者ニ於テハ學校ノ浮沈ニ關ス
  ル問題ダト言ツテ非常ニ騷イダノデアリマス、
  其ノ爲ニ或ル時ニハ授業ニ差支ヘル位ニ騒
  イデ居リマス、ノミナラズ此ノ整備統合問
  題ハ軍ガ裏面カラ非常ニ關係シテ居ルノダ
  ト云フ「デマ」ガ飛ンデ居リマス、今日ハ「デ
  マ」ヲ一掃シナケレバナラヌ時代デアリマス
  ケレドモ、此ノ聖戰下ニ於キマシテ、軍ガ
  關係シテ居ルト云フコトハ絕對的ノモノデ
  アルト言ツテモ宜イノデアリマス、一ツノ
  企業整備ニ於キマシテモ、軍ガ要求シテ居
  ルノダト云フ聲ヲ聞イタダケデ、企業整備
  ニ當ツテ居ル人間ハ直チニ之ニ應ジテ行キ
  やく、ソレデ是マデノ學校ノ整備統合問題
  ヲ見テ居リマスト、實ニ遲々トシテ進ンデ
  居ラナイ、アレダケ世間ヲ騒ガシ、學校當
  局ガ學校ノ浮沈ニ關スル問題ダト言ツテ騷
  イデ居ツタニ拘ラズ、文部省當局ハ、今日
  ニ於テハ學校經營者ト目下協議中デアリマ
  ス、出來ルダケ此ノ協議ヲ速ク進メテヤツ
  テ行キタイト云フヤウナ言葉ガ此ノ委員會
  デ聽カレタノデアリマス、ソレデ私ハ此ノ
  重大ナル〓育ニ携ツテ居ル人々ニ對スル叫
  ビ聲ガ餘リニ大キ過ギタノデハナカラウカ
  ト云フヤウナ點ヲ心配シテ居リマスノデ、
  軍ガ戰爭目的完遂ニ必要ナル見地カラ學校
  ノ整備統合ヲ文部省ニ要求サレタモノデア
  ルカドウカト云フ點ヲ此ノ際ニハツキリ言
  ツテ戴キ、若シ其ノ御要請ノ下ニナサレタ
  モノナラバ、其ノ決意ヲ以テ當ツテ戴キタ
  イ若シサウ云フコトデナシニ、學校ノ
  整備統合ガ一ツノ流行ノヤウナ積リデヤラ
  レルトシタナラバ、文部省トシテハ直チニ
  反省サレル必要ガアルト思フ、又〓育ノ必
  要上絕對ニ學校ノ數ガ多過ギルト云フ點カ
  ラナサレタノナラバ、其ノ根據ヲ明カニス
  ル必要ガアル、又校舍ガ必要デアルト云フ
  ナラバ、學校ノ整備統合トハ別ノ意味ニ於
  テ、學徒ガ出陣シマス以上ハ〓室ガ空クノ
  デアリマスカラ、是ハ必然的ニ校舍ノ需要
  ハ充タサレルノダト思ヒマス、故ニ學校整
  備統合問題ノ發生シタル其ノ當時ノ事情、
  ソレカラ今日ノ決意ト、而モ此ノ問題ハ私
  立學校轉換資金ガ豫算ノ上ニ謳ハレテ居ル
  ト我々ハ記憶致シテ居リマス、其ノ豫算ノ
  運用ト流通ガ當然ナサレナケレバナラナイ
  問題デアリマスノデ、文部當局ノ此ノ點ニ
  付テノ明快ナル御答辯ヲ承リタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=40

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• 041・岡部長景

  ○岡部國務大臣　私立學校ノ整備統合ト云
  フ問題ガ去ル十月閣議デ決定致シマシタノ
  ハ、御承知ノ通リ其ノ閣議決定ニ於キマシ
  テ、丁年ニ達シテ居リマスル學徒ノ徵集猶
  豫ノ制度ノ停止ト云フコトガ決定致サレマ
  シテ、多數ノ學徒ガ直チニ軍務ニ服スルコ
  トニナツタ譯デアリマス、法文科系統ノ學
  生ハ直チニ入營ヲシ、幹部候補生トシテノ
  〓育ヲ受ケルコトニナツタノデアリマス、
  是ハ絕對ニ軍ノ戰局ノ要請デアリマシテ、
  又理工科系統ノモノモ、是ハ徵集猶豫ハ停
  止サレタノデアリマスガ、軍ノ技術要員ト
  シテノ必要ナル〓養ヲスル爲ニ學校ニ於テ
  〓育ヲ續ケテ受ケサセル、其ノ爲ニ暫ク入
  營ハ延期スルト云フコトニナツタ譯デアリ
  マス、其ノ結果ト致シマシテ、學生、殊ニ
  法文科系統ノ學生ハ激減スル譯デアリマス、
  又其ノ後更ニ徵兵年齢低下ノ問題モ提議セ
  ラレマシテ、愈〓十九歲ト云フコトニ決定シ
  タノデアリマスガ、サウナリマスレバ實
  施サレタ場合ニハ殆ド大學部ノ學生ト云
  フモノハ先ヅ居ラナイヤウニナルノデハナ
  カラウカト考ヘルノデアリマス、此ノ問題
  ノ提議セラレマシタノガ軍ノ要請デアルカ
  ドウカト云フコトニ付テハ、御答辯申上ゲ
  ルコトヲ私差控ヘタイト思フノデアリマス、
  併シ〓育ノ完全ヲ期シマスル上ニ於テハ、
  今申シマシタヤウナ非常ニ少數ニナツテシ
  マツタ學校ガ各所ニ散在シテ居ルト云フコ
  トハ決シテ望マシイ形デハナイト考ヘマス、
  或ハ〓授ヲ委託シテ一〓ニ合同〓授ヲスル
  ト云フヤウナ方法モアリマセウシ、又經營
  ノ都合上統合スルト云フヤウナコトモ考ヘ
  得ルノデアリマス、是等ニ付キマシテハ、
  其ノ後政府ニ於テモ色々〓究ノ結果、去ル
  十二月ノ閣議決定デ發表致シマシタヤウナ
  結論ニ達シタ譯デアリマス、此ノ問題ハ兎
  ニ角私立大學ノ如キハ非常ニ沿革モアリ、
  又ソレ〓〓ノ特長モアル譯デアリマスノデ、
  唯學生ノ數ガ減ツタカラ一緒ニナレバ宜カ
  ラウト云フヤウナ簡單ナコトデ解決ノ付ク
  モノデハアリマセヌ、文部當局ト致シマシ
  テハ統合サレルベキモノハ統合サレルコト
  ハ結構ナコトデアル、之ニ對シテハ政府ト
  シテ御援助モシ、補助モ考ヘヨウト云フコ
  トデアリマスガ、先達テ政府委員カラモ御
  答辯申上ゲマシタヤウナ譯デ、是ハサウ無
  理ヲシテヤルベキモノデハナイ、閣議決定
  ニアリマスヤウニ、可能ナルモノハ成ベク
  統合スルヤウニアリタイト云フコトデアリ
  マシテ、今日ハ其ノ方針ヲ以テ進ンデ居ル
  譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=41

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• 042・薩摩雄次

  ○薩摩委員　整備統合ニ關聯致シマシテ、
  昭和十九年度ノ各專門學校以上ノ入學學生
  ノ數ヲ二分ノ一トカ三分ノ一トカニ減サレ
  ルト云フコトデアリマスガ、其ノ人數ヲ減
  シタ根據ハ何處ニアリマスカ、我々カラ見
  マスルトヨリ多ク大勢ノ學生ヲ入レタ方ガ
  宜イノヂヤナイカ、サウシタ場合ニ兵隊檢
  査ニ合格シテ入營スル人數ガ少ケレバ、同
  時ニ合格シナイデ殘ル人數ハ比率的ニ多ク
  ナル、其ノ人々ガ最モ必要デアル學問ヲ〓
  究シテ大東亞ノ各地ニ於テ活躍スル、ソレ
  デ少シノ人間ヲ入レルヨリハ、入營スル人
  間ノ數ヨリハ多クノ人間ヲ入レテ、多クノ
  人間ガ兵隊檢査ニ合格シナイデ、殘ツタト
  云フ方ガ、〓育ノ進步ノ上ニ於テハ非常ニ
  好イノダ、同時ニ今日是ガ必要ナ問題ダ、
  所謂大東亞共榮圈ノ建設ト聖戰完遂ト云フ
  二本建デ國家ガ來テ居ル以上ハ、學問ト云
  フモノハ成ベク多クノ人ニヤラスト云フ風
  ニスルノガ〓育ノ本旨ダト思ヒマスガ、政
  府ガ人數ヲ減ラシタト云フ根據ハ何處ニア
  リマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=42

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• 043・岡部長景

  ○岡部國務大臣　此ノ點ニ付キマシテハ今
  日ノ學徒ト申シマスヨリハ、寧ロ靑年層ニ
  對スル要請ハ、軍ノ要請モアルコトデアリ
  マスシ、又勤勞方面ノ要請モ非常ニ重イ負
  擔ガ其ノ方ニ掛ツテ居ル譯デアリマス、又
  〓育ノ面カラ申シマスレバ、色々御說ノ如
  ク多々益〓辦ズル譯デアリマスガ、是等ノ各
  方面ノ要請ヲ檢討致シマシテ、大體ニ於テ
  只今御話ノヤウニ、高等學校ハ三分ノ一、
  專門學校ハ二分ノ一ト云フノハ十九年度
  ニ於ケル學生募集ノ數デアリマシテ、來年
  度カラズツトソレデ行クト云フコトニ決定シテ
  居ル譯デハアリマセヌ、又來年度ハ來年度ノ
  事情ニ應ジマシテ適當ナル所ニ落付ケテ行カ
  ナケレバナラヌト考へテ居ル譯デアリマス、
  我々トシテハ寧ロ其ノコトヲ希望スル譯デ
  アリマスガ、他ノ要請ヲ考ヘマシテ、政府
  トシテハ全般的ノ見地カラ決定シテ行カナ
  ケレバナラヌト考ヘテ居ルノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=43

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• 044・薩摩雄次

  ○薩摩委員　私ハ大東亞共榮圈建設ニ付テ
  ノ政府ノ〓育施策ノ問題ニ付テ御尋ネシタ
  イノデアリマスガ、他ノ委員ガ色々ノ角度
  カラ御尋ネニナリマシタガ、私ハ他ノ委員
  ガ御尋ネニナラナカツタ殘ツテ居ル點ダケ
  御尋ネシタイノデアリマス、今日ノ日本ハ
  大東亞共榮圈建設ト戰爭完遂ト云フ二本建
  デ來テ居ルコトハ國策デアリマスト同時ニ、
  一億國民當然認メテ居ル點デアリマス、此ノ
  戰爭完遂ニ必要ナル學問系統ハ理工科系統
  ガ必要デアルト云フコトハ當然デアリマスガ、
  大東亞共榮圈建設ニ必要ナルモノハ法文科
  系統ノモノガ最モ必要デアルト思ヒマス、大
  東亞共榮圈建設ハ政治ノ部面モアリマスシ、
  法律ノ面モアリマスシ、經濟的ノ面モアリ
  マス、サウ云フ人々ガ大東亞共榮圈內ノ各地
  ニ於テ、日本ヨリ後レテ居ル民族ヲ指導シテ、
  共榮圈ノ坩堝ノ中ニ入ツテ行クト云フヤウ
  ニシナケレバ共榮圈ノ建設ハ出來ナイノデア
  リマス、其處ヘ入ツテ行クニハ其ノ土地ノ風俗、
  人情、民情、色々ノモノヲ知ラナケレバナラヌ、
  所ガ政府デハ文部省ノ〓育ガ大東亞共榮圈
  建設ニ必要ナルヤウニヤツテ行クノダト云
  フコトヲ言ツテ居リマスガ、未ダ各專門學
  校大學ニ大東亞建設ニ必要ナル學科目ガ
  ドウ云フ風ニシテ併置サレテ居ルカ、ソレ
  ヲ如何ニ〓ヘラレテ居ルカト云フ具體的ニ
  實現サレテ居ルコトハ、全ク寥々タルモノデ
  アリマス、日本的ニ見タル大東亞ノ歷史ハ
  今編纂中ダト云フヤウニ言ハレテ居リマス
  ガ、今日ハ過去ノ歷史モ必要デアリマスガ、
  脈々トシテ動イテ居ル民族ノ魂ヲ摑ムコト
  ガ最モ必要デハナイカ、地理ナドモ相變ラ
  ズ昔ナガラノ世界地圖ノ一環トシテノ大東
  亞ノ地圖ヲ簡單ニシカ〓ヘラレテナイ、日
  本ヲ慕ツテ來ルヤウナ民族學モ〓ヘラレテ
  居ナイ、民族學ト云フト、化石化シタ頭ノ
  恰好ガドウ、顏ノ恰好ガドウト云フ此ノ恰
  好シカ〓ヘテ居ナイ、經濟學ハ「アダム·スミ
  ス」ノ經濟學シカ〓ヘテ居ナイ、大東亞廣域
  經濟ノ經濟學ハ、東京市內ノ私立學校、大
  學ヲ見テモ、僅カ一二校シカ〓ヘテ居ナイ、
  政府ハ大東亞共榮圈ト云フ此ノ國策ニ向ツ
  テ進ムニハ、勿論、共榮圈ノ最モ大キナ部
  〓〓
  面ヲ擔當スルノハ〓育方面デアルト思ヒマ
  ス、ソレデ文部省トシテ大東亞共榮圈ノ建
  設ニ活躍シ、挺身スル優秀ナル日本民族ヲ
  其ノ中ニ飛込マシメテ行ク〓育方針ガドウ
  作ラレテ居ルカ、簡單ニ例ヲ引キマス、時
  間ガ長ク掛ツテ恐縮デアリマスガ、南方ノ
  島々ヲ廻ツテ「ドイツ」ノ時代、日本ノ時代
  トドツチガ良イカト年取ツタ酋長ニ聽クト、
  異口同音ニ「ドイツ」ノ時代ガ良イト云フ、
  ナゼ日本ノ時代ガイケナイカ、朝カラ晩マ
  デ法律ダ制度ダ、往來ニ小便スルマデ文句
  ヲ言ヒマス、「ドイツ」ハ船ガ品物ヲ取リニ
  來ル時ハ嚴重デス、何月何日何「トン」〓コ
  プラ」ヲ出スト云フ場合ハ嚴重デスガ、ア
  トハ我々ノ風習ヲ重ンジ、我々ノ傳統ヲ見
  テ呉レタト斯ウハツキリ言ツテ居ル、聖戰完
  遂ニ付テ言ヒタイコトガ澤山アリマスケレ
  ドモ、時間ノ關係ヤ何カデ申シマセヌガ、
  大東亞共榮圈ノ民族ガ日本ヲ何人慕ツテ居
  ルカ、恐ラク何十人ノ司政長官或ハ日本人
  ガ行ツテ居ラレマスケレドモ、熱意ハ持ツ
  テ居ラレマスガ、其ノ素質ガナイ、素質ガ
  ナイト云フコトハ所謂〓育ノ缺陷デアリマ
  ス、大東亞共榮圈建設ヲヤツテ行クニハ、
  素質アル人材ヲ養成シナケレバ共榮圈ノ
  建設ハ出來ナイ、ソレヲヤツテ行ク〓育上
  ノ問題ハ、文部省ハ〓究ノ時代デハナイ、
  直チニ實施サレテモ宜イヂヤナイカ、其ノ
  點ニ付テノ文部省ノ是マデ御答辯ニナツタ
  抽象的ノ問題デナクシテ、ドウ云フコトヲ
  昭和十九年度カラナサウトシテ居ルカ、其
  ノナス準備ハドウカ、若シ必要ナラバ追加
  豫算トシテ取ツテモ宜イヂヤナイカ、私ハ
  斯ウ云フ點ヲ考ヘテ居リマスノデ、其ノ點
  ニ付テ大臣ノ御答辯ヲ求メマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=44

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• 045・岡部長景

  ○岡部國務大臣　具體的ノコトニ付テ少シ
  御說明申上ゲタイト思ヒマス、政府委員ヨ
  リ御答ヘ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=45

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• 046・永井柳太郎

  ○永井政府委員　只今烈々タル御話デゴイ
  マシテ、全ク御同感ニ存ズル次第デアリマス、
  只今文部省トシテドウ云フ風ニソレニ對スル
  方策ヲ執ツテ居ルカ、今後執ラウト云フコト
  ニ付テ具體的ノ事例デ以テ話セト云フヤウナ
  御話デアツタト思ヒマスノデ、極ク簡單ニ具體
  的ノ事柄ニ付テ申上ゲテ見タイト思ヒマス
  中等學校等ニ於キマシテノ事柄ニ付キ
  マシテハ、先日來サウ云フ方面ニ付テノ
  質問應答ガゴザイマシタノデ、此處ニ繰
  返サナイコトニ致シマス、高等專門學校
  以上ノ學校ノコトニ付キマシテ申上ゲタ
  イト思ヒマスガ、高等學校ニ於キマシテ
  ハ、御話ノ如クニサウ云フ精神ヲ持ツ所ノ
  人物ヲ養成スルト云フコトガ主眼點デアル
  ト考ヘラレマスノデ、其ノ學科目等ニ於キ
  マシテモ、全般ニ亙ツテ從來ノ學科目ヲ整
  理致シタノデアリマスガ、新タニ經國濟民
  ノ經國科ト云フヤウナモノヲ設ケマス、此
  ノ經國科ト云フヤウナ所ニ於キマシテハ、
  サウ云フ點ニ付テ十分其ノ精神ヲ傳ヘルヤ
  ウナ風ニ致シテ居リマス、尙又歷史等ニ於
  キマシテモ、其ノ〓育內容ニ於キマシテハ、
  特ニ「ヴェルサイユ」體制以後ノ近代ノ歷史、
  尙又米英東亞侵略ノ所、之ニ對スル大東亞
  ノ建設ト云フ點ニ付テ、斯ウ云フコトヲ歷
  史〓育ノ內容ニ致シテ居リマス、色々ノ〓
  材ニ付テモ具體的ニ旣ニ要目等ヲ發表致シ
  マシテ現ニヤリツヽアリマス
  尙ホ專門學校ニ於キマシテハ、今囘各專
  門學校ニ付テ全面的ニ〓育内容ノ刷新ヲヤ
  ラント致シマスモノノ中、外國語學校ノ〓
  育ト云フコトニ付テモ考ヘラレルノデアリ
  ス、外國語學校ノ〓育ガ、從來トモスレバ
  外國語其ノモノノ〓育ト云フヤウナ風ニ流
  レハシナイカト云フ虞ガアツタノデアリマ
  スガ、申スマデモナク外國語ハ、其ノ外國
  語ヲ話ス所ノ民族ト密接不可分ノモノデゴ
  ザイマス、其ノ民族ノ諸事情ヲ知ツテ、初
  メテ其ノ民族ノ話ス外國語ガ能ク會得出來
  ルシ、又其ノ外國語ヲ能ク體得スル爲ニハ、
  之ヲ話ス民族ノ性情、習慣、歷史等ニ付テ知
  悉致サナケレバナラヌコトハ申スマデモナ
  イコトデアリマス、ソレデ外國語學校モ此
  ノ四月カラハ、是ハ假稱デゴザイマスケレ
  ドモ、外事專門學校ト云フ內容ニ致シマシ
  テ、其ノ内容トシテハ第一部、第二部ト云
  フヤウニ分ケ、其ノ第一部ニ於テハ特ニ大
  東亞諸民族ノ諸事情、之ト密接不可分ニ其
  ノ民族ノ言葉ヲ〓ヘル、主トシテ大東亞共
  榮圈內ニ於ケル民族ヲ十分知悉シテ、之ヲ把
  握シテ行クト云フヤウナ所ニ重點ヲ置イテ
  參リタイト云フ風ニ考ヘテ居リマス、サウ
  云フヤウナ方面ニ外國語學校ト云フモノヲ
  改組致シタイト思ツテ居リマス
  其ノ他拓殖方面或ハ興亞專門〓育的ナ
  モノ等ニ付キマシテハ、ソレ〓〓〓育內
  容ニ付テ、目下此ノ四月カラ實施スベ
  キモノニ付テ刷新整備ヲ行ツテ居リマス
  サウシテ各般ノ專門學校ニ於キマシテモ、
  斯ウシタ方面ノコトニ付テ專ラ〓育致シマ
  スル學校ニ付テハ、特ニ重要視シテ參リタイ
  ト思ツテ居リマス
  大學ニ付キマシテハ、是ハ大學ノ〓究所
  ト致シマシテ、例ヘバ東京帝國大學ニハ東
  洋文化〓究所ガアリ、京都帝國大學ニハ人
  文科學〓究所ガアリ、何レモ色々ナ面カラ
  大東亞ノ精神文化ト云フヤウナコトニ付テ
  〓究ヲ致シテ來ツヽアリマスガ、其ノ外ニ
  昭和十八年度ヨリ東大ニ於テ、或ハ只今御協
  贊ヲ御願ヒ致シテ居ル十九年度ノ豫算ニ於
  キマシテハ、京都帝國大學ニ於テ、南方科
  學〓究所ト云フモノヲ設立シ、又ハ設立致
  サント致シテ居リマス、是等ニ付キマシテ
  ハ色々ナ面カラ、文科的ナ面カラモ理科的
  ナ面カラモ、綜合的ニ南方ノ諸科學ニ付テ、
  色々ト考察シテ行カントスル〓究所ノ類デゴ
  ザイマス、是ハ尙ホ更ニ文部省ノ直轄ト致シ
  マシテ、旣ニ民族〓究所ガ設立シテアリマ
  ス、此ノ民族〓究所ニ於キマシテハ專ラ只
  今御述ベノヤウニ、大東亞圈內ニ於ケル多
  クノ民族ノ現狀、其ノ風俗習慣ハ固ヨリ政
  治組織、經濟組織其ノ他ノ點ニ付キマシテ、
  現實學的ニト申シマスカ、詰リ先程御話ノ
  アリマシタヤウニ、唯單ニ頭ノ恰好ガドウ
  デアルトカ、骨ノ長サガドウデアルトカ云
  フ所謂人類學的ナ、考古學的ナ、民族學デ
  ナシニ、現實學的ナル民族學、之ト現實ノ
  民族政策ト云フモノト、學問ト實際ト云フ
  モノガ十分コヽニ融合シテ、適切ナル結論
  ヲ生ミ出スヤウナコトニ向ヒマシテ、總務部外
  五部、全體デ六ツノ部ヲ持ツテ、大東亞共
  榮圈其ノ他ノ各地ノ民族問題ヲ分擔致シマシ
  テ、目下頻リニ〓究ヲ致シ、相當實績ヲ擧
  ゲテ居ルヤウナ次第デゴザイマス
  大變長クナリマシタガ、一々ノコトニ付
  キマシテハ又極メテ簡略ニ御答へ致シタコ
  トデゴザイマスノデ、大體ノ輪廓ニ付テ具
  體的ナ例ヲ以テ、極ク簡單ニ御答ヘ致シタ
  次第デアリマスデ

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• 047・薩摩雄次

  ○薩摩委員　最後ニ唯一ツ、今日ノ時勢カ
  ラ見テ文部當局ニ要請ヲシ、文部當局ニ其
  ノ肚ガアルカドウカヲ聽キタイノデアリマ
  ス、此ノ委員會ニ於テモ外國語ト云フモノ
  ガ相當問題ニナツタノデアリマスルガ、五
  箇條ノ御誓文ノ中ニモ「智識ヲ世界ニ求メ大
  ニ皇基ヲ振起スヘシ」ト云フ言葉ガアリマス
  ルヤウニ、何處ノ國ニ於テモ何時ノ時代ニ
  於テモ、戰爭ト云フコトニナルト小サク凝
  リ固マツテシマフト云フコトハ、是ハ過去
  ノ歷史ニ於テ事實デアリマス、今日日本ガ
  此ノ大キナ戰爭ヲヤツテ居ル時ニ、餘リニ
  小サク日本其ノモノニ固マツテシマツテ、
  知識ヲ世界ニ求メナイト云フコトニナツタ
  ナラバ、當然戰爭ニ勝ツタ後ニ於ケル日本
  ノ將來ニ付テ、憂慮シナケレバナラナイ點
  ガ多々アルノデアリマス、所ガ知識ヲ世界
  ニ求メルト云フ點ノ最モ重大ナル問題ハ、
  ヤハリ外國ノ本ヲ讀ム、サウシテ其ノ中ノ
  精神ヲ取ルト云フコトニアルノデアリマス
  ガ、中等學校ノ修業年限ハ短クナリ、專門
  學校、高等學校、大學ノ入學者ハ少クナル
  サウシテ〓ヘラレルモノハ錬成的ナモノガ
  多クテ、學問ノ蘊奥ヲ〓究スル時期ガ少ク
  ナル、特ニ外國語ヲ勉强スルト云フヤウナ
  コトハ時勢ノ上カラメミナラズ、學習ノ上
  カラ非常ニ不便ニナル、故ニ此ノ際文部省
  ハ民族〓究所ヲ非常ナ豫算ヲ以テ置カレタ
  ヤウニ、飜譯局ト云フカ、名前ハドウデモ
  宜イデスガ、サウ云フヤウナモノヲ設ケラ
  と一、サウシテ世界各國ノ此ノ聖戰完遂ニ
  必要ナル本、又必要ナ知識、竝ニ戰ニ勝ツ
  タ後ニ於ケル戰後經營ニ必要ナルモノ、斯
  云フヤウナモノヲ文部省ガ權威者ニ依ツテ
  飜譯セシメ、サウシテ是ハ國民ニ讀マセテ
  宜イト思ハレルモノヲ出版サレテ出サレル
  コトハ、今日ノ日本トシテ當然ヤルベキ問
  題デハナカラウカ、世界ノ先進國ハ總テソ
  レヲヤツテ居ルノニ、日本ダケガソレガナ
  イノデアリマス、私ハ大東亞省ノ委員ヲシ
  テ居リマスルガ、大東亞省デハ痛切ニソレ
  ヲ感ジテ居リマシテ、大東亞省ハサウ云フ
  點マデ入レナイモノデスカラ、此ノ間モ「イ
  ンドネシア」植物誌-是ハ實ニ厖大ナモ
  ノデス、恐ラク日本ノ學者ガ十年、二十年
  〓究シテモ、南洋熱帶植物ノアレダケノモ
  ノハ出來ナイ、是ハ「オランダ」ノ學者ノ〓
  究シタモノデアツテ、飜譯シナケレバ大東
  亞省デ讀メル者ハ一人モ居ラヌ、帝國大學
  ニ此ノ飜譯ヲ御願ヒシテ居リマス、マダ半
  年掛ツテ漸ク一章シカ飜譯出來ナイト云フ
  ヤウナ狀態デアリマス、外國人ノ書イタ文
  獻デハアリマシテモ、斯ウ云フヤウナ大切
  ナモノハ、之ヲ飜譯シテ國民ニ知ラスベキ
  モノガナケレバ、ヤハリ大東亞共榮圈建設
  ノ上ニモ差支ヘルト思フノデアリマス、今
  日ノ時局柄、外國語ヲ勉强スルコトガ色々
  ナ點ニ於テ難カシクナツテ來タ、不便ニナ
  ツテ來タ、サウ云フヤウナ關係上、政府ノ
  豫算デ以テ文部省ノ內部ニ於テ、或ハ外局
  デモ宜イデスガ、之ヲヤラシテ、サウシテ
  戰後ニ來ル惡イ思想ノ防遏ニモ當リ、共榮
  圈建設ニモ當リ、同時ニ世界ニ知識ヲ求メ
  ルト云フ御〓ヘノ上ニモ具體化スルト云フ
  ヤウナコトニ付テ、私ハ是非ヤツテ貰ヒタ
  イト思フノデアリマスガ、文部省ハ斯ウ云
  フ點ニ付テ御考ヘニナツタコトガアリマセ
  ウカ、又其ノ御用意ガアリマセウカ、承リ
  タイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=47

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• 048・清水留三郎

  ○〓水政府委員　飜譯事業ニ付キマシテ只
  今御述ベニナリマシタ御意見、全ク御同感
  デアリマス、實ハ昭和十八年度ノ豫算ニ於キ
  マシテ飜譯事業ノ經費ヲ計上致シマシテ、
  旣ニ著手シテ居リマス、其ノ內容ハ只今御
  述ベニナリマシタヤウニ、主トシテ外國ノ
  科學文獻ノ飜譯デアリマス、實ハ當初ノ計
  畫ヨリモ豫算ノ都合上縮小セザルノ已ムナ
  キニ至リマシテ、十分トハ考ヘテ居ラナイ
  ノデアリマスガ、一方出版能力ノ制約モア
  リマシテ、非常ナ厖大ナ規模ヲ以テ實施ス
  ルト云フコトハ、今日稍〓困難デハナイカ
  ト云フヤウニ考ヘテ居ル次第デアリマス、
  本年度旣ニ著手致シマシテ、目下飜譯シテ居
  ル科學文獻ノ部數ハ二十五部デアリマス、
  其ノ中約半數ガ本年度內ニ飜譯ヲ完了致シ
  マシテ刊行サレル、明年ハ更ニ之ヲ出來得
  ル限リ擴張致シタイト思ツテ居ルノデアリ
  マス、印刷能力ノ制約モゴザイマスト同時
  ニ、斯ウ云フ科學文獻ノ飜譯ト云フモノハ
  非常ニ難カシイ仕事デアリマシテ、唯語學
  ガ出來ルト云フダケデハ出來ナイ、相當專
  門的ノ知識ヲ持チ、而モ語學ニ熟達シテ居ル
  人ガ其ノ衝ニ當ラナケレバナラナイノデア
  リマシテ、文獻ノ種類ノ選定、竝ニ適當ナル
  飜譯者ヲ選定致シマスル爲ニ、大學ノ〓授
  中ヨリ約五十人ノ飜譯委員ヲ委囑致シマシ
  テ、選定致シマシタ結果、嚴選サレタノガ
  先程申上ゲマシタ二十五部デ、其ノ適當ナ
  ル飜譯者ヲ得ルコトモ必ズシモ容易デハナ
  イノデアリマス、此ノ譯ハ今日サウ云フヤ
  ウナ飜譯ニ從事スルニ適當ナ人ハ一方ニ於
  テ〓究ニ從事シテ居ルノデアリマシテ、
  其ノ方面ニ相當時間ヲ費シテ居ルノデアリ
  マス、其ノ〓究ノ暇ニ飜譯シテ貰ハナケレ
  バナラヌ、只今其ノ程度デアリマス、併シ
  御意見ノ點ハ全ク御同感デアリマシテ、サ
  ウ云フヤウナ色々ノ困難ナ事情ヲ克服致シ
  マシテ、出來ルダケ其ノ規模ヲ擴大致シタ
  イト思ツテ居ルノデアリマス、只今申上ゲ
  マシタヤウナ事情モゴザイマノデ、十九年
  度ニ於テハ大體十八年度ト同ジ程度ノ豫算
  ヲ提出致シマシテ、目下御協賛ヲ求メテ居
  ルヤウナ次第デアリマス、一ツ左樣御諒承
  ヲ願ヒマス

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• 049・薩摩雄次

  ○薩摩委員　モウ時間ガ來マシタノデ止メ
  マスガ、唯私ガ文部當局ニ御願ヒシタイノ
  ハ、同僚委員ノ仰シヤツタ意見ヲ反駁スル
  ヤウデアリマスガ、習字〓育ヲ廢止シタラ
  ドウカト云フヤウナ同僚委員ノ御意見ガアリ
  マシタガ、是ハ私ハ全然反對デ、今日大學ヲ
  卒業シタリ、專門學校ヲ卒業シタ者ノ字ハ
  見ラレタモノデハナイ、履歷書一ツ書カシ
  テモ、十人ノ中八人、九人マデハ實ニミツ
  トモナイ字ヲ書イテ居リマス、日本ガ日本
  語ヲ以テ將來永久ニ進ンデ行ク以上、習字
  〓育ハ、何モ授業時間ガ少イノニ多クスル
  必要ハナイガ、是ハ一ツ徹底的ニヤツテ戴
  キタイ、セメテ日本人ガ日本語ヲ以テスル
  ニ付テ、直グ人ニ分ルヤウナ字ヲ書イテ貰
  ヒタイ、私ハ五年餘リ私立大學デ〓鞭ヲ執
  ツテ居ツタガ、其ノ答案ハ厭ヤニナル位拙
  イ字ヲ書クノデアリマス、サウ云フ點カラ
  點數ノ不公平ガ出テ來ルヤウナコトモアル、
  同僚委員カラ習字〓育ヲ廢シタラドウカト
  云フ意見ガアリマシタガ、私ハ習字〓育ハ
  十分效果ガアルヤウニ考慮シテ貰ヒタイ、
  又同僚委員ノ質問ニ對シテ、大臣ハ〓員ノ
  不足ヲ〓ゲテ居ラレマシタガ、オ寺ノ坊サ
  ン、是ハ恐ラク宗〓大學ヲ出ラレタ人ガ多
  イト思ヒマス、各自ノ職場ニ挺身的ニ働イ
  テ居ル人モアリマスシ、或ハ〓員トナツテ
  居ル人モ相當アリマスガ、〓員タルノ資格
  ハ今日大部分ノ人ガ持ツテ居ルノデアリマ
  スカラ、斯ウ云フ人々ヲ一ツ文部省カラ督
  勵シテ、此ノ不足ナル〓員ヲ補フ上ニ代用
  〓員、囑託ニデモスル、朝六時位ニ起キテ
  本堂ノ前デオ經ヲ上ゲレバ一日ノ勤メハ終
  ル、其ノ後ハ碁ヲ打ツタリ何カシテ居ラナ
  イデ、學校ヘ行ツテ〓ヘル、相當ヤツテ居
  ルト思ヒマスガ、マダ十分トハ言ヘナイト
  思ヒマス、ソレカラ恩給ガ付イテ退職サレ
  タ人デ、マダ人格的ニモ知識ノ上ニ於テモ、
  國民學校ノ〓員タルノ資格ノアル人ハ非常
  ニ多イノデアリマス、サウ云フ人々デ昔ノ
  〓へ子ヲ賴ツテ保險ノ勸誘員ヲヤツタリ、
  何モシナイデ遊ンデ居ルヤウナ人モ地方ニ
  ハ多クアルヤウニ聞イテ居リマス、我々ノ
  見聞スル所ニモアリマス、サウ云フ人々ヲ
  又動員シテ囑託ニデモ代用〓員ニデモシテ
  〓員ノ不足ヲ補フト云フコトヲヤツテ、若
  イ〓員ハ體育的方面トカ、作業方面ニ〓ハ
  スト云フコトニ付テ十分御考慮ヲ煩ハシタ
  イ、此ノコトヲ御願ヒシマシテ私ノ質問ヲ
  終リマス

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• 050・多田滿長

  ○多田委員　習字ノ問題ニ付テ只今薩摩君
  カラ、同僚委員カラ習字ヲ止メタラドウカ
  ト云フ意見ガアツタト云フコトデアリマシ
  タガ、私ハ習字ヲ止メロト云フ意味ヂヤナ
  イ、習字ガ一週間ニ二時間位ヅヽアルノヲ
  一月一遍位ニシテ、大體讀ミ書キガ出來ル
  程度ニシテ、〓科內容ヲ改善シテ戰力增强
  ノ方ニモウ少シ力ヲ盡シタラドウカト云フ
  意味デアリマスカラ、其ノ點ハ御諒承願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=50

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• 051・小柳牧衞

  ○小柳委員長　暫時休憩致シマス、午後ハ
  一時半カラ再開致シタイト思ヒマス
  午後零時三十一分休憩
  午後一時三十八分開議

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=51

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• 052・小柳牧衞

  ○小柳委員長　開會致シマス、午前ニ引續
  キ質疑ヲ行ヒマス-森田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=52

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• 053・森田重次郎

  ○森田(重)委員　時間ノ關係上、大東亞省
  ノ次官ニ外地ニ居リマスル〓育關係者ノ待
  遇問題ニ付キマシテ御伺ヒ致シタイト思フ
  ノデアリマス、私ハ過般皇軍慰問使ノ一行
  ニ加ハリマシテ、支那ノ方ヘ行ツテ參リマ
  シタ、北京、濟南、開封、南京、上海等ノ
  市ヘ參リマシタ際、在留日本人ノ〓育ニ携
  ハツテ居リマスル〓育ノ實際家ニ御集マリ
  ヲ願ヒマシテ、色々大東亞ニ關スル〓育方
  針ノ問題等ヲ御伺ヒ致シテ參ツタノデアリ
  マスルガ、偶〓其ノ席上問題ニナリマシタコ
  トハ、是等ノ土地ニ在留致シテ居リマスル
  〓育者ノ待遇ノ問題デアリマシタ、是等ノ
  方々ハ最初ハ內地カラ引拔イテ行クノデア
  リマスルカラ、相當ノ條件デ相當ノ覺悟デ
  行ツタラシイノデアリマシテ、其ノ事情等
  モ能ク聽イテ參ツタノデアリマス、是ハ私
  ヨリモ次官ノ方ガ能ク御分リダト思ヒマス
  カラ、私ハ何モ申上ゲマセヌガ、唯最近外
  地ノ物價ガ非常ニ高クナリマシテ、生活ガ
  相當壓迫サレテ居ルト云フ實情ヲ看取スル
  コトガ出來ルノデアリマス、而シテソレニ
  付テハ若干之ニ應ズルヤウナ施設ヲヤツテ
  居ナイデモナイヤウデアリマスルケレドモ、
  其ノ施設デハ追付カヌ程、物價ノ方ガ先走
  ツテ行クト云フヤウナ實情デアリマス、實
  生活ノ經濟上ノ詳細ナ調査等ヲ、私數字的
  ニモ持ツテ參ツタノデアリマスケレドモ、
  斯ウ云フ席デ發表スルコトモドウカト思ヒ
  マスノデ差控ヘマスガ、向フニ居ル〓育者
  ノ方々ハ非常ナ不安ヲ感ジテ居ル、而モ一
  般官吏ノ方々ハ、同ジヤウナ狀況ニハアル
  ノデスケレドモ、割ニ早ク手當ガ付クヤウ
  デアリマス、所ガ〓育者ノ方ハ、色々ノ手
  續ナリ何ナリノ關係デ、ドウシテモ他ノ方
  ヨリモ遲レ勝ダト云フヤウナ實際ニアリマ
  シテ、甚ダシキニ至リマシテハ、果シテ是
  ハ先生ノ面目ト云フヤウナモノカラ考ヘテ
  ドウカ、ト思ハレルヤウナ面マデ現ハレテ
  來ルト云フコトニナリマシテ、非常ニ浮足
  立ツテ居ル、其ノ結果ドウ云フコトヲ言ウ
  テ居ル人ガアルカト云ヒマスト、ドウモ大
  東亞省ハ我々ノ面倒ヲ見テ吳レナイノダ、
  外ノ方ガ大事ナモノダカラ我々ハドウシテ
  モ二番目ニ見テ下サル、サウスルト文部省
  ノ方ハ我々ノ本當ノオ母サンダカラ、文部
  省ニ管轄ヲ移シテ貰ツタ方ガ宜イノデハナ
  イカト云フヤウナコトマデ、窃カニ私ニ囁
  イテ居ツタ人モアルト云フヤウナコトデ、
  私ハソレハアナタ方ノ僻ミデ、決シテオ上
  トシテハサウ云フ意味デヤツテ居ルノデハ
  ナイト云フコトヲ懇々ト說イテ參ツタノデ
  スガ、兎ニ角サウ云フヤウナ實際ノ狀況ナ
  ンデアリマス、之ニ對シテハ、大東亞省ト
  シテハ速カニ其ノ措置ヲ講ジテ、今申上ゲ
  タヤウナ實情ヲ一掃シテ、安心シテ向フデ
  〓育ノ出來ルヤウナ態勢ヲ執ツテ戴キタイ
  ト考ヘテ居リマス、之ニ對シテハ何等カ來
  年度ノ豫算ナリ何ナリニ、適當ナ方法ヲ御講
  ジニナツテオイデニナルダラウト思フノデ
  アリマス、ソレ等ノ點ニ對スル大東亞省ノ
  御見解、竝ニ實際ヤラウトシテオイデニナ
  ル御計畫ガオアリデシタラ、其ノ點ヲ承ハ
  リタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=53

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• 054・山本熊一

  ○山本(熊)政府委員　支那ニ於ケル物價高
  ノ現狀等ニ鑑ミマシテ、在支邦人特ニ官吏、
  或ヒハ只今御話シニナリマシタル〓職員等
  ノ待遇ガ甚ダ遺憾ノ狀態ニアリマスルコト
  ハ私共ニ於キマシテモ篤ト認メテ居リ、
  一方日華ノ關係ヲ處理シテ行ク上ニ於キマ
  シテモ、靑少年ノ〓育ト云フコトガ大切デ
  アリ、又其ノ〓育ヲ通ジテ、其ノ支那側ニ
  對スル接觸部面ニ於テ仕事ヲスル人ガ、苟
  クモ後顧ノ憂ヒガアル爲ニ其ノ本分ヲ十分
  ニ盡シ得ナイト云フヤウナコトガアリマシ
  テハ、是コソ日本ノ國家ニ取リマシテモ、
  或ハ兩國ニ取ツテモ好マシカラザルコトト
  存ジマシテ、昨年來、殊ニ一兩年前ヨリ支
  那ニ於ケル物價ガ異常ノ騰貴ヲ致シマシテ
  以來、色々工夫ヲ致シテ、是ガ待遇ノ改善
  ニ努力ヲシテ居ルノデアリマスガ、思フヤ
  ウニ進ミマセヌノデ、今後モ續ケテ〓究シ
  テ、出來ルダケ實行ニ移シタイト考ヘテ居
  リマス、唯實例ヲ申シマスルト、實ハ昨年
  ノ春以來〓究致シマシタ結果昨年ノ十月カ
  ラ待遇ノ改善ヲ一部實施致シテ居リマス、
  御承知ノ如ク支那ニ於キマスル〓職員ハ、
  從來本俸ノ外在勤俸ト致シマシテ十割ダケ
  出シテ居リ、ソレ以外ニ臨時手當ト致シマ
  シテ在勤俸ノ約五割ヲ支給致シテ居リマス、
  其ノ外ニ更ニ家族手當等ハ內地ノ約三倍ダ
  ケヲ支給致シテ居リマシテ、其ノ以外ニ宿
  舍等ハ出來ルダケ現物ヲ支給シテ、關係ノ
  方面カラ之ヲ出シテヤルト云フヤウナ途ハ
  從來講ジテ居ツタノデアリマスルガ、先程
  申シマシタヤウナ現下ノ情勢ニ鑑ミマシテ、
  昨年ノ十月カラ先ヅ本俸、在勤俸、臨時手
  當等ヲ全部含メマシタモノノ約三割ニ該當
  スルダケノ特別手當ヲ出ス、是ハ特別手當
  ト申シマシテモ在勤俸ヲ增ストカ云フヤウ
  ナ方法ニ致シタノデアリマス、殊ニ在勤俸
  ニ付キマシテハ、臨時手當ノ方ハ從來在勤
  俸ノ五割デアリマシタガ、十幾割ト云フヤ
  ウニ增額致シテ居リマス、以上ノ外更ニ本
  俸ノ月額ヲ大體ニ於テ五割乃至十五割引上
  ゲテ居リマス、是ハ初任級ヲソレダケ引上
  ゲ、其ノ結果トシテ全體ノ引上ヲ行フト云
  フヤウナコトモヤツテ居リマス、以上ノ外
  ニ更ニ僻陬手當ハ、特別ニ其ノ土地ノ狀況
  ニ應ジテ、從來ニ比較致シマシテ相當多額
  ニ之ヲ支給シ得ルヤウナ制度ヲ設ケマシテ
  實行サレテ居ルノデアリマス、尙ホ其ノ後
  ニ於キマシテモ色々ノ狀況ハ、以上申シマ
  シタ如キ程度デハ實ハ私共率直ニ申シマス
  レバ、燒石ニ水ダト云フヤウナ狀態ニアリ
  マスノデ、手當其ノ他ノ引上ニ竝行致シマ
  シテ、出來ルダケ現地ニ於テ食糧或ハ必需
  物資-是ハ餘リ多クハ渡リマセヌガ、何
  レモ廉價ニ供給シテヤル、斯ウ云フ方法ヲ
  考案致シテ居リマス、現ニ現地ニ於キマス
  官吏ニ付キマシテハ、昨年暮以來軍其ノ他
  ノ非常ナ御協力ノ下ニ、相當廉價ナ食料品
  ヲ大東亞省ノ出先機關ニ於テ世話ヲ致シマ
  シテ、之ニ支給スルヤウナ方法ヲ講ジテ居
  リマス、此ノ方法ハ現地ノ〓職員ニ既ニ及
  ボシテ行キタイト思ツテ居リマシテ、出來
  レバ遡ツテヤルヤウナ形ニマデシテ、此ノ
  間ノ苦難ニ堪ヘテ居ル〓職員諸君ノ苦衷ヲ
  和ラゲテヤリ、且ツ安ンジテ其ノ本分ニ邁
  進セラレルヤウニ措置ヲシタイト存ジテ居
  リマス
  以上申シマシタノハ一應ハ民團其ノ他ニ
  屬シマス日本ノ國民學校〓職員、及ビ中等
  學校以上ノ〓職員ニ對スル措置デアリマス
  ガ、御存ジノヤウニ支那ニ於キマシテハ日
  本側ノ學校ニ勤務スル者以外ニ、支那側ニ
  日本カラ派遣〓員トシテ出シテ居リマス者
  ガ高等學校、大學、中等學校、小學校等ヲ
  含メマシテ現在相當數居リマス小學校ダケ
  デモ三百五十九人、中等學校四百一人、高
  等學校三百七人、是ハ大學モ含ンデ居リマ
  ス、是ダケノ人ガ居リマスガ、是等ニ付キ
  マシテモ同樣ニ今ノヤウナ方法ニ依リマシ
  テ、其ノ現下ノ狀況ヲ救フト云フ措置ヲ執
  ツテ居ルノデアリマス、何レニ致シマシテ
  モ、日華關係ヲ律シテ行ク上ニ於テ最モ大
  切ナ任務ニ服シテ戴イテ居ル是等ノ〓職員
  ハ、選擇致シマスル時ニ於テモ、內地ニ於
  テ粒選リノ人ヲ特ニ文部省ニ御願ヒシテ派
  遣致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、今後
  其ノ任務ノ遂行ニハ支障ノナイヤウニ、出
  來ルダケノ努力ヲ致シマシテ、サウシテ御
  助ケシタイト云フ考ヘデ、折角具體的措置
  ヲ講ジ、又考案致シテ居ルヤウナ次第デア
  リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=54

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• 055・森田重次郎

  ○森田(重)委員　只今ノ御答辯デ大體私ガ
  參リマシタ以後、相當ノ措置ヲ御講ジニナ
  ツテオイデニナルヤウデアリマシテ、洵ニ
  結構デアリマスガ、向フデ聽クト、一體〓
  育者ト云フモノハ貧乏デアルコトハ皆覺悟
  デヤツテ來テ居ル、併シ內地ニ於テハ民衆
  ニモ相當ノ理解ガアルカラ宜イガ、向フノ
  人ヲ相手ニヤル時ニハ、非常ニ貧弱ナ恰好
  デ、獨立シタ生計モ出來ナイヤウナ形デ先
  生デゴザイマスト云フヤウナコトハドウシ
  テモ出來ナイ、ソレデ家內ヲ內地ニ歸シテ、
  己レ獨リハ折角ヤツテ來タノダカラ最後マ
  デ頑張ルト云フヤウナ人モ居ル、ソレカラ
  師範學校ヲ出テ二、三年ヤツテ、非常ニ優
  秀ナ人ガ向フヘ行ツテ、ヤハリ生活ガ出來
  ナイデ、逆ニ親ノ方カラ月々相當額仕送リ
  ヲ受ケテヤツテ居ル人ガアルト云フヤウナ
  實情デゴザイマスカラ、ドウカ今後トモ是
  等ノ改善ニ付キマシテハ特ニ御努力ヲ御願
  ヒシタイト思ヒマス、ソレトモウ一ツハ、
  折角アナタノ方カラ一定ノ措置ヲ講ゼラレ
  テモ、向フニハ中間折衝機關トシテ所謂民
  團ナルモノガアル、此ノ民團ニアナタノ方
  デ御指令ナリ御措置ナサレテモ、ソレガ直
  チニ先生方ニ及ブコトニハナラナイデ、若
  干ソコニ距離ガアリ、時間ガアルト云フヤ
  ウナコトニナルノデ、是モ相當困ルコトニ
  ナツテ居リマスカラ、是等ノ點ニ付キマシ
  テモ、ドウカアナタノ方カラ特ニ御督勵下
  サイマシテ、アナタ方ノ御意思ガ直グ下ノ
  方ニ徹スルヤウナ措置ヲ講ジテ戴キタイト
  思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=55

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• 056・山本熊一

  ○山本(熊)政府委員　支那ノ如キ現地ニ於
  キマシテ、日本側ノ〓職員自體ガミスボラ
  シイ狀態デアレバ、ソレガ自然的ニ向フニ
  對シテ惡影響ヲ及ボスト云フ事實モ從來澤
  山アリマスノデ、是等ノ點モ考慮致シマシ
  テ、待遇ノ改善ニ努メテ居リマス
  尙ホ先程申落シマシタガ、昨年ノ秋以來
  興亞〓育會ト云フモノヲ拵ヘテ居リマス、
  是ハ支那ニ派遣致シマスル〓職員等ノ待遇
  ノ改善等ヲ眞面目ニ面倒ヲ見テヤル機關ト
  致シマシテ、實ハ私ガ其ノ興亞〓育會ノ會
  長ニナツテ、全支ニ於ケル各方面ノ情報ヲ
  モ集メ、サウシテ或ハ派遣〓員ノ厚生施設、
  或ハ待遇ノ改善、斯ウ云フモノニ常ニ氣ヲ
  付ケテ、之ヲ實施シテ行クト云フ機關ニ致
  シテ居ルノデアリマス、從來サウ云フノヲ
  バラ〓〓ニヤツテ居リマシタノデ甚ダ不徹
  底デアリマシタガ、昨年秋以來興亞〓育會
  ニ統合致シマシテ、其ノ待遇改善ニ專念サ
  セルト云フコトニ致シテ居ルノデアリマス、
  ソレカラ第二點ノ出先機關ヲ通ジテノ仕事
  デアルカラ、底ニ徹底サセル必要ガアルト
  云フコトハ、至極御尤モナコトト存ジテ居
  リマス、單リ是ハ〓員ニ對スルノミナラ
  ズ、一般ノ出先機關ニ於テモ、我々ノ從來
  ノ經驗カラ見レバ、帝國ノ政策ナリ其ノ他
  ノ實行振リガ不徹底ナコトガ多イノデス、
  殊ニ〓員ニ關スル如ク、民間ノ一ツノ團體
  タル民團ヲ通ジテノ仕事ハ、動モスレバ下
  部ニ不徹底ナコトガアリマスノデ、此ノ點
  ニ付キマシテハ從前モサウデアリマシタガ、
  昨年一月九日新政策ノ實施以來ハ特ニ注意
  致シマシテ、屢〓嚴嚴ナル訓令モ致シ、又相
  談モ致シマシテ、政府ノ考ヘテ居ルコトガ
  其ノ儘徹底シテ下部機構マデ行クヤウニ、
  凡ユル機會ヲ通ジ、凡ユル方法ヲ以テ徹底
  スルヤウニ努力致シテ居リマスノデ、其ノ
  點御諒承ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=56

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• 057・森田重次郎

  ○森田(重)委員　大東亞次官ニ對スル質問
  ハ是デ宜シウゴザイマス、有難ウゴザイマ
  シタ
  次ニ司法省ノ政府委員ニ御伺ヒ致シマス
  ガ、問題ハ日本國內ニ於ケル思想ノ實情ト
  云フコトデゴザイマス、私ノ質問ノ目的ト
  スル、所ハ、戰爭、政治、其ノ底ニ橫ハル思
  想是ハ各民族、各國家各〓戰戰爭ノ根柢ニハ
  思想的ナルモノヲ潜在セシメテ居ルト云フ點
  カラ考ヘテ、今囘ノ戰爭ハ未ダ曾テナイ思
  想的特徵ヲ持ツテ居ルモノダト考ヘマスノ
  デ、ソレニ對處スル意味ニ於テ我ガ日本ノ
  國ノ思想體系ノ立テ方、之ニ對シ文部省デ
  ハ色々ナ觀點カラ其ノ方法ヲ立テヽオイデ
  ニナルヤウデアリマスガ、其ノ立テ方ニ付
  テ、私若干ノ意見ガアルノデアリマス、ソ
  コデ皇國世界觀ノ確立トデモ申シマセウカ、
  サウ云ツタヤウナモノヲ立テル意味ニ於テ
  ノ基礎的ナモノトシテ、日本國內ノ思想ト
  云フヤウナ問題ヲ中心トシテ、出來ルダケ
  司法省ノ立場カラ御覽ニナツタ事實竝ニ御
  感想ヲ伺ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=57

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• 058・池田克

  ○池田(克)政府委員　祕密會ニ願ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=58

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• 059・小柳牧衞

  ○小柳委員長　祕密會ノ要求ガアリマスガ、
  御異議ゴザイマセヌカ
  (「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=59

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• 060・小柳牧衞

  ○小柳委員長　御異議ハナイト認メマス、ソ
  レデハ祕密會ニ入リマスカラ、議員及ビ政
  府關係以外ノ方ノ御退席ヲ願ヒマス、尙ホ
  祕密會ニハ速記ヲ付シマスガ、是ハ嚴封ノ
  上保管スルコトニ致シマス、是ヨリ祕密會
  ニ入リマス
  〔午後一時五十七分祕密會ニ入ル〕
  〔午後二時五十三分祕密會ヲ終ル〕

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=60

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• 061・小柳牧衞

  ○小柳委員長　祕密會デハ森田委員ノ質問
  ニ對シマシテ、司法政府委員ヨリ國內思想
  事情ニ付テ說明ガアリマシタ-森田君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=61

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• 062・森田重次郎

  ○森田(重)委員　大臣カ次官ガ見エル前ニ、
  事務的ナコトヲ念ヲ押シテ置キタイト思ヒ
  マス、育英會ノ問題ニ付テ簡單ニ御伺ヒシ
  テ置キマスガ、ドウゾ簡單ニ御答ヘ下サル
  ヤウニ御願ヒシマス、一ツハ寄附金ノ現狀
  ハドウデアルカト云フコトデス、ソレカラ
  將來寄附金ニ付相當ノ方法ヲ立テヽ集メテ
  貰ヒタイト思ツテ居ルノデスガ、是等ニ對
  シテハドウ云フヤウナ御考ヘヲ持ツテオイ
  デニナリマスカ、之ヲ一ツ簡單ニ御說明願
  ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=62

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• 063・永井柳太郎

  ○永井政府委員　只今寄附金トシテ集ツテ
  居リマスノハ、多分五萬圓餘ト思ヒマス、
  唯是ハ何等育英會トシテ勸誘シタモノデハ
  ナイノデアリマスヽ將來ニ於キマシテハ寄
  附金ガ益〓澤山アルコトダラウト思ヒマスシ、
  場合ニ依ツテハサウシタ寄附金ヲ勸誘スル
  ト云フヤウナ場合ガナイデモナイカト思ヒ
  マスガ、萬事是ハ育英會當局ノ考ヘ方ニ任
  セテ行キタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=63

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• 064・森田重次郎

  ○森田(重)委員　ソレデハ其ノ次ノ問題ト
  致シマシテ、國民〓育局長ニ御伺ヒ致シタ
  イト思ヒマス、ソレハ師範學校ノ附屬小學
  校ノ性格ニ關スル問題デアリマス、是ハ御
  存ジノ通リ附屬小學校ハ大體地域性ヲ持ツ
  テ居リマセヌデ、ポツリ〓〓適當ナ人ヲ
  選ンデヤルト云フ形デアル、所ガ附屬小學
  校ノ本來ノ目的カラ致シマスレバ、是ハ出
  來ルダケ實際ニ卽シテ、凡ユル學校ニ普遍
  スルヤウナ形ヲ取ツテ居リマセヌト、本當
  ハ實習學校トシテハ宙ニ浮イタ形ニナツテ、
  本當ノ實習ニハナラナイノデアリマス、是
  ハ私等ガ多年、斯ウ云フ形ノモノデハ、地
  方的特權階級ト云フカ、妙ナ形ノモノガ出
  來テ來テイカヌ、アヽ云フ宙ニ浮イタモノ
  デ練習シテモ、實際ノ學校ニ行ツテ見ルト、
  マルキリ是ト組織ガ變ツテ居ルノダト云フ
  所ニ、非常ニ考ヘナケレバナラヌ問題ガア
  ルト考ヘテ居ル、最近ニナリマシテ特ニ地
  域性ヲ持タセナケレバイケナイト云フコト
  ハ、凡ユル面カラ考ヘ且ツ要請サレテ來テ
  居ルヤウナ事情モアリマスノデ、其ノ二點
  カラ考ヘマシテ、師範學校ノ附屬小學校ニ
  ハ必ズ地域性ヲ持タセルヤウナ風ニ改組ス
  ベキモノダ、斯ウ云フ風ニ私等ハ考ヘルノ
  デアリマス、此ノ點ニ對シテハドウ云フ御
  見解ヲ御持チニナリマスカ、結論的ニ一ツ
  承リタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=64

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• 065・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　只今御尋ネニナリマシタ
  附屬國民學校ノ問題ニ付キマシテハ、師範
  學校制度ノ改善ニ伴ヒマシテ、此ノ問題モ
  全面的ニ考ヘナケレバナラヌト私ハ考ヘテ
  居リマス、殊ニ只今仰セニナリマシタ地域
  性ヲ持タセナケレバナラヌ點、又一般ノ國
  〃民學校ガ相當進ンデ參リマシタ今日ニ於キ
  マシテ、附屬國民學校トシテノ使命モ十分
  ニ考ヘナケレバナラヌ點モ併セマシテ、十
  分ニ是ハ〓究致シタイト思ツテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=65

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• 066・森田重次郎

  ○森田(重)委員　是ハ一ツ漫然トシタ〓究
  ト云フコトデナク、相當實行的ナ意味ヲ以
  テ御〓究ヲ煩ハシタイト思ヒマス
  ソレカラ其ノ次ノ問題デアリマスガ、是
  ハ昨日問題ニナツテ、樋口サンカラモ觸レ
  ラレタヤウデアリマスガ、靑年學校ノ普通
  科ニ關スル問題デアリマス、是ハドウモ國
  民學校ノ義務年限ガ、八箇年ニ延長サレタト
  云フノデ、普通科ヲドウ處理スルカト云フ
  コトハ営時大キナ問題デアリマシタ、併シ
  是ハ一應暫定的ナ處置トシテ、殘存スルト
  云フコトニナツタノデ、一應解決ガ付イタ
  ヤウナ姿デアリマス、所ガ今囘義務〓育年
  限延長ノ實施ガ延期ニナツタ、斯ウ云フコ
  トニナリマシタノデ、竝ニ一ツ問題ガアル
  ソレハ果シテ此ノ國民學校ノ義務〓育年限
  ヲ八箇年ニシタ方ガ宜イカ、サウデナク國
  民學校トシテノ義務〓育年限デナクテモ、
  靑年學校トシテ義務〓育年限ト云フモノガ
  出來テ居ルノデアルカラ、之ヲ唯切替ヘテ、
  今マデノ國民學校ノ高等科ト云フモノハ靑
  年學校ノ前期トシテ之ヲヤラセル、斯ウ云
  フ風ナ形ニ切替ヘルノガ本當デハナイカ、
  是ハ樋口サンカラモ御話ガアリマシタノデ、
  私ハ詳シイコトハ申上ゲマセヌケレドモ、
  是ハ單純ナ事務的處理トシテ解決スベキ問
  題デハナイ、卽チ少年期トシテノ心理ノ動
  キノ上カラ取扱フカ、〓年年期期トシテ取扱
  フベキカト云フコトハ、人間ノ成長過程ノ
  上カラ見テ理論的ニ取扱ハナケレバナラヌ
  モノデアルト思フ、其ノ意味デドウ考ヘテ
  モ-私ハ別ニ實驗的ナ學究ノ立場ニアル
  者デハアリマセヌガ、併シ我々ノ直感ヲ以
  テ致シマスレバ、ドウモ靑年學校ノ前期ト
  シテ普通科ノ取扱ヲ全面的ニ義務付ケテ行
  ツテ、是ハモウ通年制ノモノトシテ取扱フ
  方ガ、或ハ國家目的ノ線ニ沿フヤウニナル
  ノデハナイカト云フヤウナコトヲ考ヘサセ
  ラレル、是ハ獨リ私ノ意見バカリデハナク、」
  學界ノ相當ノ人ニモ色々聽イテ見タノデア
  リマスガ、大體ニ於テサウ云フ取扱ガ妥當
  デハナイカ、斯ウ云フ結論ヲ得テ居ルノデ
  アリマス、ソコデ私ハ結論トシハ御願ヒ申
  上ゲタイコトハ、是ハ文部省トシテモ十分
  〓究シテ欲シイ、斯ウ云フコトデアリマス、
  昨日問題ニナリマシタ學齡ノ低下ノ問題ト、
  ソレカラ今ノ問題、此ノ二ツノ問題ハ非常
  ニ大事ナ問題ダト思ヒマスノデ、ドウカ義
  務〓育年限延長ノ問題ガ停止ニナツテ居リ
  マスル今ノ中ニ、十分理論的根據ト云フヤ
  ウナモノヲ御檢討下サツテ、サウシテ此ノ
  制度ノ再檢討ヲシテ貰ヒタイト云フ私ノ考
  ヘナンデス、ソコデ文部省ト致シマシテハ、
  速カニ此ノ點ニ關スル〓究ノ方法ヲ樹立シ
  テ戴キタイト考ヘルノデアリマス、之ニ對
  シテ國民〓育局長ノ御意見ヲ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=66

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• 067・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　只今御尋ネノ點ハ相當〓
  育上重大ナ點デアラウト考ヘテ居リマス、
  今囘ノ措置ニ依リマシテ、高等科ヘノ義務
  進行ガ一時中止サレテ、普通科ガ從來通リ
  義務制トシテ存續サレルト云フヤウナコト
  ニナリマシタ、此ノ機會ニ於テ、私共ハ眞
  面目ニ此ノ問題ヲ取上ゲテ〓究シテ見タイ
  ト考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=67

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• 068・森田重次郎

  ○森田(重)委員　次ニ御伺ヒ致シタイコト
  ハ、此ノ中等〓育者ノ待遇改善ノ問題ニ關シ
  テデアリマス、是ハ昨年ノ議會ニ於テモ相
  當ノ問題ニナリ、政府ト致シマシテモ大體
  其ノ趣旨ノアル所ハ御認メ下サツタヤウナ
  次第デモアリマシテ、今年ノ豫算ニハ相當
  程度ノ計上ヲナサツテオイデニナリマスル
  ノデ、是ハ或ル意味ニ於テハ、文部當局ノ
  御骨折ノ點ハ私共諒トスル者デアリマスガ、
  併シ私共ノ考ヘテ居リマシタ點カラ見マス
  ルト非常ナ差ガアル、此ノ點デハドウモ滿
  足ナ-滿足ト申シマシテモ一番低イ程度
  ノ滿足ト云ツタヤウナ所ニモ行ツテ居ナイ
  ヤウナ感ガ致スノデアリマス、此ノ程度デ
  果シテ文部當局ハ滿足シテ居ラレルノデア
  リマスカ、ソレトモ將來相當程度ノ擴大ヲ
  致スト云フ御心組デゴザイマセウカ、此ノ
  點ヲ一ツ御伺ヒ致シタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=68

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• 069・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　中等學校職員ノ待遇改善
  ノ問題ニ付キマシテハ、今囘モ努力致シマ
  シテ、相當ノ費用ハ豫算ニ計ム〓シシシシシ、
  現在御協賛ヲ願ツテ居ルノデアリマスガ、
  私共決シテ是デ滿足致シテ居リマセヌデ、
  將來モ十分努力致シマシテ、更ニヨリ一層
  良イ改善ニ向フヤウニ致シタイ、斯樣ニ考
  ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=69

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• 070・森田重次郎

  ○森田(重)委員　ドウゾ此ノ點十分御努力
  ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマス、ソレカラ大
  臣ハ何時頃ニナリマスカ

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• 071・小柳牧衞

  ○小柳委員長　今大臣カ次官、ドチラカニ
  至急來ラレルヤウニト云フコトヲ要求シテ
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=71

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• 072・森田重次郎

  ○森田(重)委員　ソレヂヤモウ一ツ事務的
  ナコトデアリマスガ、國民學校〓育者ノ待
  遇ニ付キマシテハ、過年來大變御骨折ヲ戴
  キマシテ、私共感謝致シテ居ルヤウナ次第
  デアリマス、ソコデ昨年デアリマシタカ、
  特ニ精神的優遇ト言ヒマスカ、社會的地位
  ノ優遇ノ方法ガ、相當程度ノ高サマデ行ク
  ト云フ規程ヲ御拵ヘニナラレテ御發布ニナ
  ラレタ、此ノ點洵ニ結構ナコトダト考ヘテ
  居ルノデアリマス、所ガ此ノ實現ガ、地方
  ニ行ツテ能ク聽イテ見マスルト、至ツテ程
  度ガ低イト言ヒマスカ、雀ノ淚程ノモノデ
  掛聲バカリ大キクテ、實際ハサツパリヤツ
  テ吳レナイヂヤナイカ、斯ウ云フ風ナ聲ヲ
  聞クノデアリマス、ソコデ何等カ文部省ノ
  舊來ノ行キ方カラ言ヒマスト、一定ノ條件
  ヲ拵ヘル、規矩準繩ヲ拵ヘテ、其ノ規矩ニ
  合ハナケレバ其處マデ上ツテ行ケナイノダ
  ト云フヤウナ取扱ノ方法ヲナサルラシイノ
  デアリマス、其ノ方法デ行キマスト、何時
  ニナツタラ最高級ノ所マデ登レルカト云フ
  コトニナリマシテ、洵ニ殘念デアリマス、
  私等ト致シマシテハ今年、來年ガ本當ノ
  決戰體制ダト斯ウ云フ、其ノ決戰體制ノ時
  三、ヤハリ〓育者ノ士氣ヲ大イニ振興シ
  ナケレバナラヌト云フコトハ、是ハモウ明
  カナコトデアリマス、而モ多年國民學校ノ
  〓職員トシテ終始シテ參ツタ澤山ノ人々ガ、
  モウ老後ノ御奉公ヲ此ノ一、二年ニ傾注シテ
  マデヤラウト云フ氣構へガアルノデアリマ
  ス、此ノ氣構ヘヲ文部省トシテハ買ツテ下
  サツテ、平時的ナ規矩準繩ト云フモノヲ乘
  超エタ緊急處置トシテノ特別ナル優遇拔擢
  ノ方法ヲ考ヘテ、最高級ノ人モ日本全國デ
  ハ何人カ拵ヘテ貰フト云フコトデナケレバ、
  折角御作リナサレタモノモ結局畫龍點晴
  ヲ缺クヤウナ嫌ヒナシトシナイト思フノデ
  アリマスカラ、此ノ點ニ付キマシテハ一ツ
  思切ツタ御處置ニ出テ戴キタイト云フ希望
  ヲ持ツテ居ルノデアリマスガ、是等ノ優遇
  ノ狀況ト文部省ノ氣構ヘト、ソレカラ私ノ
  希望ニ對スル御見解ヲ御伺ヒ致シタイト思
  ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=72

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• 073・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　御尋ネノヤウニ國民學校
  〓職員ノ優遇ノ途ハ開カレタノデアリマス
  ルガ、併シ從來規定ガゴザイマシテ、其ノ
  規定ニ依リマシテヤルモノデゴザイマスカ
  ラ、現在ノ實情ハ御話ノ通リ極メテ少イコ
  トニナツテ居リマス、此ノ問題ハ私共單ニ
  國民學校ダケヂヤナシニ、中等學校、靑年
  學校ノ〓職員ノ問題ニ付キマシテモ、相當考
  ヘナケレバナラヌ問題ガアルノデハナイカ
  ト云フ風ニ實ハ考ヘテ居リマス、サウ云フ
  點デ今色々其ノ點ニ付テ私ノ方デ〓究致シ
  テ居リマシテ、何トカ一ツ途ヲ開キタイ、
  斯樣ニ考ヘテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=73

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• 074・森田重次郎

  ○森田(重)委員　其ノ次ハ〓員養成ノ問題
  デゴザイマスガ、是モ簡單ニ御質問申上ゲ
  マス、兎ニ角師範學校ヲ出マシテモ、相當
  或ル方面ニ流レテ行ツテ、現實ニ〓職ニ携
  ハル者ノ數ト云フモノハ益、〓減ッテ來テ居ル、
  サウシテ其ノ領域ト云フモノニ、女ノ方々
  ガ非常ナ勢ヒデ入ツテ來テ居ル、是ハマア
  萬已ムヲ得ナイコトダト思フ、ソコデ舊來
  ノ女ノ先生ノ入リ方ヲ見マスルト、先生ノ
  〓養ト云フモノヲ重視スルト云フヨリモ、
  兎ニ角人ヲ充タサウト云ツタヤウナ氣持ノ
  動キ方ガ非常ニ顯著ニ現ハレテ居ル、是デ
  ハドウモ私等ハイカヌト思フ、益〓戰爭ガ苛
  烈ニナリマスト、男ノ手ト云フモノガ少ク
  ナツテ來ル、是ハ明カナコトデアリマス、
  ドウシテモ女ノ先生ガ之ニ代ルト云フ態勢
  ニナルノデアリマスカラ、文部省ハ舊來ノ
  ヤウナ間ニ合セノ方法デ行クト云フコトデ
  ナク、女子師範學校ノ生徒ノ募集ト云フヤ
  ウナモノヲ、特ニ臨時措置カ何カデ特別ニ
  擴大シテ行ツテ貰ヒタイト云フ感ガ致スノ
  デアリマス、唯將來ノ問題トシテハ、女ノ
  先生ヲ澤山募集スルコトハ、戰爭ノ熄ンダ
  後デ男ノ先生ノソレト食合フヤウナ時代ガ
  來ヤシナイカト云フヤウナコトガ御考ヘノ
  中ニアラレルノデ、煮切ラナイヤウナ態度
  ニナラレルノデハナイカトモ思ハレル節モ
  アルノデアリマスケレドモ、戰後ノ世界ト
  云フモノハ、決シテ衝突シナイヤウナ事情
  ニナルノダト私ハ見透シ得ルト考ヘテ居ル
  ノデアリマシテ、ドウカ此ノノ邊デ相當多
  數ノ女ノ先生ノ募集ヲヤツテ貰ヒタイト考
  ヘルノデアリマスガ、之ニ對シテハドウ云
  フ處置ヲ執ツテオイデニナリマスカ、又私
  ノ希望ニ對スル御見解モ伺ヒタイ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=74

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• 075・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　現下ノ情勢ニ於キマシテ
  段々國民學校ノ女ノ先生ガ殖エテ參リマス
  コトハ、已ムヲ得ナイ狀態デハナイカト私
  ハ考ヘテ居リマス、男子ヲ十分得ラマセヌ
  關係デ、女子ガ其ノ職場ニ代ルト云フ狀態
  デゴザイマス、サウ云フ狀態ヲ考ヘマシテ
  十九年度ノ豫算ニ於キマシテモ、先般申上
  ゲマシタヤウニ東京、大阪、愛知ノ第二師
  範ニ女子部ノ新設ヲ計上致シテ居リマス、
  又女子部ノ學級增加モ十六學級ノ增加ヲ全
  國的ニ考ヘテ居リマス、斯樣ニ今囘ハ豫算
  ヲ計上致シマシタガ、將來ニ於テモヤハリ
  相當女子ヲ澤山使ハナケレバナラヌ必要ガ
  アルト私ハ思ツテ居リマスカラ、將來モ其
  ノコトニ付テハ十分考究致シタイト考ヘテ
  居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=75

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• 076・森田重次郎

  ○森田(重)委員　次ニ〓員組織ノ問題ニ付
  テ御所見ヲ伺ツテ見タイト思ヒマス、御存
  ジノ通リ、今申上ゲタヤウナ實情デアリマ
  シテ、中々男ノ有能ナ經驗者ト云フモノハ
  得ラレナイト云フ實情デアル、所ガ現在國
  民學校ニ於ケル先生ノ責任ノ執リ方ヲ見マ
  スト、助〓ノ方デモ、又ソレ以上ト申シテ
  モ、詰リ正訓導ニ準ズル資格ヲ持ツテ居ル
  方デモ、果シテ今ノヤウナ形デ全責任ヲ持
  タセテヤツテ宜イノカドウカト云フコトニ
  付テハ、餘程考ヘナケレバナラナイ面ガア
  ルト思フ、一方師範學校ヲ出マシテ相當ノ
  指導力ヲ持ツテ居ル人モ、其ノ人ノ充ガハ
  レテ居ル學級ト云フモノハ、其ノ學級ダケナ
  ノデアリマス、ソコニドウモ綜合性ト立體
  性ヲ缺クヤウナ〓員組織ニナツテ居ル、成
  程校長ハ校長デ專任、首席訓導ハ首席訓導
  ト云フモノデ一ツ建前ハ設ケテアルガ、私
  ハ相當大キイ學校等デハサウデナクテ、〓
  頭ト校長ノ外ニ何學級カノ、詰リ指導的ノ
  地位ニ立ツヤウナ人ヲ中心トシタ連帶責任
  的ナ立體性ヲ持ツタ〓員組織ト云フモノヲ
  此ノ際執ツテ、サウシテ全體ノ力ト云フモ
  ノガ付クヤウナ形ニ持ツテ行ク方法モ一ツ
  良イ考ヘ方デハナイカト斯ウ私ハ考ヘテ居
  ル、又實際〓育家ノ〓究會等ニ臨ンデ見マ
  シテモ、サウ云フ要望ガアルノデアリマス、
  ソコデ斯ウ云フ方法ヲ國民學校ニ於ケル〓
  育ノ運用ノ一方法トシテ、一ツ御採用ナサ
  ル御意思ガアルカドウカ、ト云フノハ、私
  ハ是ガ制度化出來ナイカト云フコトガ、具
  體問題トシテ御伺ヒシタイ點デアリマス

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• 077・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　只今ノ御意見、洵ニ御高
  見ニ存ジマス、十分ニ取調ベマシテ〓究致
  シタイ、斯樣ニ考ヘマス

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• 078・森田重次郎

  ○森田(重)委員　次ニ〓育界ノ戰時態勢ノ
  一方法トシテ御願ヒ致シタイ點ヲ申上ゲテ
  見タイト思ヒマス、是ハ昨日樋口委員カラ
  食糧增產協力ノ問題、或ハ學徒戰時協力ノ
  問題等ニ付テ、適切ナ御意見ガアリマシテ、
  私モ同感ナノデアリマス、ソコデ此ノ點ハ
  相當眞劍ニ考ヘテ貰ヒタイト私ハ思フノデ
  スガ、今マデヤツテ居ル學校ノヤリ方ヲ見
  マスト、文部省カラ一定ノ方向ヲ示スノデア
  リマスガ、學校ノ先生ハ生徒全體ニ命令ヲ
  下スヤウナ形デ動イテ居ル所ガアル、是デ
  ハ先生ノ手ヲ離レルトモウ動カヌト云フ恰
  好ニナリマス、ソコデ今年コソ本當ノ決戰
  態勢デ、食糧ガ最モ重大ナ國內問題ニナル
  ノダト云フコトデアリマスカラ、是ハ一ツ
  特ニ別箇ノ方法ヲ考ヘテヤツテ戴キタイ、
  サウシテ能率ヲ上ゲテ貰ヒタイ、其ノ別箇
  ノ方法トハ何デアルカト云フト、「子供ノ隣組」
  ト云フモノヲ作ツテ貰ヒタイト云フコトデ
  アリマス、是ハ小サイ問題ノヤウデアリマ
  スガ、若シ全國的ニ子供ノ隣組ガ出來タラ
  相當ノ力ニナル、ソレデハ具體的ニ目標ヲ
  ドウ揭ゲルカト云フト、子供達ノ手ニ依ツ
  テ空閑地解消運動ヲ起ス、先生モ忙シイノ
  デスカラ、全部ノ生徒ヲ集メテ號令ヲ掛ケ
  ルヤウナ恰好デ動イテ居ツタノデハ持續性
  ガアリマセヌ、時間的ニモ駄目デス、ソコ
  デ子供達ノ自發的ナモノトシテ隣組ヲ作リ
  マスト子供達ハ實ニ能ク時局ヲ認識シテ
  居テ、旨ク指導サヘヤレバ、先生ノ眼ヲ離
  レテモ國家ニ御奉公申上ゲヨウト云フ氣持デ、
  大人以上ノ働キヲシマス、サウ云フ點ヲ考
  ヘマスト、昨日樋口委員カラ御話ガアリマシ
  タ兎ヲ飼フトカ、豚ヲ飼フトカ、或ハ私ノ只今申
  上ゲタ空閑地解消運動、村ノ中ノ空地ハ全部
  我々ノ手ニ依ツテ之ヲ利用スルノダト云フ、
  斯ウ云フ氣持ヲ全國ノ國民學校ノ生徒ニ徹
  底サセマシタラ、此ノ生徒ノ動キカラ逆ニ
  父兄ガ〓育ヲ受ケテ、空閑地ト云フモノガ
  ナクナルバカリデナク、其ノ結果日本ノ食
  糧問題ニ非常ニ大キイ效果ヲ齎スモノダト
  云フコトヲ考ヘルノデアリマス、ドウ云フ
  モノカ學校ノ先生方ハ、子供達ノ自發的愛
  國心或ハ奉公心ヲ啓培シテ行ク方法ニハ出
  テ居ナイヤウデアリマス、直グ軍隊的ナ號
  令デダケ行ツテ、直グ號令デ奉仕申上ゲル、
  ソレガ一ツノ團體訓練デモアルカノヤウナ
  觀念ニ陷ツテ居ルノデハナイカト思ハレル
  節ガアリマスノデ、此ノ點ハ一ツ何トカ出
  來ナイモノカト云フコトデ私ハ實ハ提唱致
  シタイノデアリマス
  ソレト是ハ國民學校ノ生徒デハナイノデ
  アリマスガ、今年ノ食糧問題ハ、モウ豫算
  委員會等デモ極メテ明瞭デアリマス、是一
  大變ナコトダト實ハ私ハ思フノデアリマス、
  其ノ點デ先ヅ學徒ニ適スルモノハ何カト云
  フコト、山菜ヲ集メルコトデス、山菜トハ
  蕨薇蕗デアル、東北邊リノ山地ニ參リ
  マスト-是ハ一定ノ時期ダケデアリマスケレ
  ドモ、相當數量出ルノデアリマス、斯ウ云
  フヤウナモノハ農具ガ別ニ必要ナ譯デモナ
  ク、先生ノ指導方法ニ依ツテハ、幾ラデモ
  採取ガ出來ルト云フヤウナ恰好ニナツテ居
  ルノデアリマスカラ、中等學校ノ生徒ナド
  ヲ動員致シマシタラ、相當數量ノ收穫ガ上
  ルモノダト考ヘサセラレマス、ダカラ其ノ
  點ヲ特ニ考ヘテ欲シイト云フコトデアリマ
  ス、ソレハ先生方ノ戰時協力態勢ノ具體的
  ナ目標トシテ申上ゲルノデアリマス、問題
  ハ非常ニ小サイヤウデアリマスガ、之ヲヤ
  ラナクテハ本當ノ協力態勢ニハナリマセヌ、
  漫然トシタ激勵トカ何トカデハ意味ヲナシ
  マセヌカラ、ドウカ其ノ點ヲ十分ヤツテ戴
  キタイモノダト思ヒマス
  尙昨年以來學徒ガ、生產增强ニ非常ニ精
  進シテ居ル姿ヲ凡ユル方面デ聽キマシテ、
  其ノ效果ノ非常ニ顯著ナコトヲ聽キマシテ、
  私等ハ非常ニ感謝致シテ居ルノデアリマス、
  併シ良キ上ニモ尙ホ良カレカシト御願ヒ申
  上ゲル所以ノモノハ、マダ此ノ方法ノ上ニ於
  テ若干不徹底ナ點ガアルノデハナイカト
  思フノデアリマス、ソコデ結局私ハ項目ヲ
  申上ゲマスト、モツト合理的ニ能率ノ上ルヤ
  ウナ方法ヲ確立シテ欲シイト云フコトデア
  リマス、ソレハ其ノ日働ク目的ヲ生徒ニ、
  先ヅ前以テ徹底サシテ置クト云フコトナノ
  デアリマス、其ノ場ニ臨ンデ先生ガ居テ說
  明スルヤウナ方法デハ、是ハ問題ニナリマ
  セヌ、目的ガ確認サレマシタナラバ、ソレ
  ハドウ云フヤウナ順序デ、ドウ云フ方法デ
  働イタラ最モ能率ガ上ルノカト云フコトヲ、
  生徒自ラノ力デ考ヘサセルト云フコトガ、
  子供等ノ自發心ヲ創造サスベキモノダ、斯
  ウ云フ私ノ見解デゴザイマス、ドウ。カ先生
  方ニ此ノ點ヲ十分徹底サシテ、先生方ガ此ノ
  態度デ生徒ノ自發心ヲ本當ニ啓培致シマス
  ナラバ、能率ハ今ヨリモグツト上ツテ來ル
  コトハ、極メテ明カナコトダト考ヘマスノ
  デ、此ノ點特ニ考ヘテ戴キタイト思フノデ
  アリマス、多分色々ノ御指示等モオアリニ
  ナルダラウトハ思ヒマスガ、地方ヲ廻ハツテ
  居リマシテ、マダサウ云フヤウナ點ニ若干
  改良ノ餘地アリト云フヤウナ話ヲ聽イテ參
  リマシタノデ、御參考ニ申上ゲルノデアリ
  マスガ、是等ニ對シマシテモ御所見ヲ承ツ
  テ置キタイノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=78

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• 079・小笠原道生

  ○小笠原政府委員　學徒ノ食糧增產協力、
  及ビ一般ノ勤勞動員ニ付キマシテ御話ガゴ
  ザイマシタガ、食糧增產ノ問題ニ付キマシ
  テハ、昨日樋口サンカラモ御話ガゴザイマ
  シタシ、御趣旨ハ全ク御同感デゴザイマス、
  食糧增產ニ付キマシテハ、御承知ノヤウニ
  學徒ノ勤勞ノ中デ、特ニ力ヲ入レテ是マデ
  モ指導シテ居リマスガ、其ノヤツテ居リマ
  スコトハ、オ二人カラ御話ガゴザイマシタ
  ヤウニ、實ハ人ノ所へ手傳ヒニ行クト云フ
  種類ノコトガ、從來ハ多ウゴザイマシタ、
  又其ノヤリ方ニ付キマシテハ、實ハ農商省ト
  モ能ク連絡ヲ致シマシテ、文部省ト農商省
  ダケデハ中々細カイ所マデ分リマセヌカラ、
  地方ノ農業會、現地ノ農業ニ從事シテ居ル
  人達ト十分連絡ヲ取ツテ、實地ノコトヲヤ
  レ、斯ウ云フ風ナ指示ヲ致シマシテ、ソレ
  デ具體的ニヤツテ行カウト致シテ居ツタヤ
  ウナ次第デゴザイマスガ、今般ハドウシテ
  モ人ノ所ヘ手傳ヒニ行クト云フコトガ多ウ
  ゴザイマシテ、御指摘ノヤウナ學生自身ノ
  奉公心、或ハ愛國心ト云フモノニ訴ヘテ、
  又出來レバ學生自身ノ創意ニ俟ツテト云フ
  ヤウナ點ニ於テハ、從來ハマダ我々ノ指導
  ノ缺ケテ居ル點ガ多カツタト存ジマスノデ、
  今後ハ一層サウ云フ點ニ注意ヲ向ケマシテ、
  御趣旨ノヤウナ方向ニ益、、努力ヲ致シタイト
  考ヘテ居リマス、一般ノ勤勞ニ付キマシテ
  モ、其ノ方法ニ付キマシテハマダ〓〓今後
  一層ニ改善ヲ加ヘテ行カネバナラヌ點ガ澤山
  ゴザイマセウト存ジマス、ソレ等ニ付キマ
  シテハ、先日來此ノ問題ニ付テ御答ヘ申上
  ゲタ中ニモ申シテ居ルノデゴザイマスガ、マ
  ダマダ現狀デハ足リマセヌノデ、今後一層
  能ク〓究ヲ致シマシテ、適切ナ方法ヲ講ズ
  ルヤウニ致シタイト存ジテ居リマス、只今
  具體的ナ方法トシテ、子供ノ隣組ト云フ御
  話ガゴザイマシタガ、子供ノ隣組ヲ作リマ
  スト云フ風ニ、只今ハツキリ御返事スルダ
  ケノ用意ハゴザイマセヌケレドモ、兎モ角
  其ノ御趣旨ノアル點、モツト子供ノ自治的
  ナ氣持、玆ニ自身ノ創意ト云フヤウナモノ
  ヲ活カス、又〓員モサウ云フ方ニ工夫ヲ凝
  ラシテ活用シテ行クト云フ、其ノ趣旨ニ向
  ツテ努力ヲ致シマスコトハ、モウ極力致シ
  タイト存ジテ居リマス、此ノ點ヲ御答ヘ申
  上ゲテ置キマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=79

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• 080・樋口善右衞門

  ○樋口委員　關聯シテ······昨日實ハ時間モ
  迫ツテ居リマシタノデ止メマシタガ、只今
  少シ餘裕ガアルヤウデアリマスカラ、關聯
  シテ御尋ネ致シテ置キマス、學校ノ兒童ヲ
  通ジテ國策ニ協力スルト云フ意味カラ言ツ
  テ、一ツ學校へ指揮シテ戴キタイコトハ、
  玄米食ヲ奬勵スルト云フ場合中々是ガ實行
  ガ出來ヌノデアリマス、サリトテ今ノ玄米
  其ノ儘デハイケマセヌケレドモ、四%搗イタ
  モノナラ、稍〓白米デアル、アレニ致シマス
  ト、榮養ノ上カラ言ツテモ量ガ少クテ優ニ
  アル、之ヲ奬勵スルト云フコトニナルト、
  辨當ヲ調ベルト云フコトヲ言ツテ貰ヒマス
  ト、大體是デ先ヅ行渡ルノデゴザイマス、
  所ガ先生初メ白イ辨當ヲ持ツテ來テ居ルノ
  デアツテ、最初ハ縣廳ノ方カラ指圖モアツ
  テヤツタヤウデアリマスガ、現在ニ於テハ殆
  ドサウ云フコトヲヤツテ居リマセヌ、ソレ
  ヲ奬勵スルコトヲ幾ラ家庭ニ言ツテモヤラ
  ンケレドモ、兒童ノ辨當ヲ學校デ先生ガ檢
  メマスト、兒童ノ辨當ダケヲ炊ク譯ニハ行
  キマセンシ、兒童ダケサウ云フコトヲシテ
  置ケンニ依ツテ、勢ヒ家庭ニ及ボシテ來テ、
  政府ノ國策ノ四「パーセント」ノ實行ガ出來
  ルモノヂヤナイカト思フノデス、是等ニ付テ
  ハ全國一齊ニ兒童ヲ通ジテ厲行サセルト云フ
  コトニ致シマスレバ、必ズ私ハ出來ルト思
  フノデゴザイマス、尙ホモウ一ツソレニ付
  テ願ツテ置キタイコトハ〓フコトデゴザイ
  マスガ、元來咀嚼ヲセズニ食フコトガ日本
  ノ習慣ニナツテ居ル、現在何處ノ食堂へ參
  リマシテモ、私共能ク考ヘテ見マスルト、
  大抵白米ノ飯ヲ食ベルノト同ジヤウニ口
  杯頰張ル、サウシテ咀嚼ヲセズニ嚥下スル
  コトガ十中ノ八、九デゴザイマス、斯
  樣ニ致シマスレバ、折角總理大臣カラ
  國民ニ向ツテ玄米食ヲ御奬勵ニナリ、尙
  ホ玄米食ノ榮養價値ニ付テモソレ〓
  指示指導ヲセラレテ居ルニモ拘ラズ、是ハ
  消化ヲ妨ゲルノミナラズ、榮養分ト云フモ
  ノハ無論吸收スル譯ニハ行カヌノデゴザイ
  そう、兒童ガ辨當ヲ食フ時ニ、先生自ラ咀嚼
  ヲシテ四十囘トカ五十囘、兎ニ角嚙ンデ食
  ベルノダゾト〓ヘテ、兒童ノ時カラ今少シク
  物ヲ咀嚼シテ食ベル慣習ヲ付ケテ行クコト
  ガ、戰時ノ現在ノ國策タル四、「パーセント」
  搗キヲ實行スルバカリデナク、將來我ガ國
  ノ體位ノ上ニモ必要デアルト思フノデゴザ
  イマス、ソレニハ先生自ラガ〓室デ共ニ辨
  當ヲ食フコトデス、例ヘバ製絲工場デアル
  トカ、サウ云フ特殊ノ所ヘ行キマスト、工
  場長ガ先ヅ先ニ食ベテ、サウシテ工場長
  ト同ジヤウニ食ベサセルノデゴザイマス、
  ソレデ假令呑込ンデシマツテモ、ロハ動カ
  シテ居ラヌコトニハ工場長ガ承知ヲセヌ、
  ソレヲ一週間カソコラ續ケテヤツテ居リマ
  スルト、知ラズ識ラズニ嚙マネバ嚥下シナ
  イヤウニナツテ來ルノデアリマス、デアリ
  マスカラ此ノ四「。パーセント」搗キ、卽チ今ノ
  規定セラレタ米ニ致シマスレバ、節米ノ上
  ニ大變效果ガゴザイマス、辨當ヲ一ツ統一
  サセルヤウニ、例ヘバ〓土食ノ奬勵ニ致シ
  マシテモ、明日ハ芋ノ辨當ヲ持ツテ來ルノダゾ或
  ハ芋ヲ半分混ゼテ來イト言ヘバ、芋ノ產地デ
  アレバ是ガ常食デアリマシテ、何モ怪シム
  ニ足ラヌ、サウスルト兒童ダケニ〓ベサセ
  ル譯ニハ行カヌカラ、勢ヒ家ノ者モソレヲ
  食ベル、サウナルト今ノ節米ノ上ニ非常ナ
  效果ガゴザイマス、若シ夫レ農家ガ一戶デ
  一日一合ヲ節米致シマスレバ、五百萬戶
  デ一年ニ丁度二百萬石違フノデゴザイマス、
  現在ニ於テ國家ガ外米ニ賴ル數ハサウ澤山
  デハナイ、農家ガ一日僅カ一合カ一一合ヲ節
  約スレバ、外米ニ依存スル必要ハナイノデ
  ゴザイマス、ソレヤ是ヤヲ考ヘマスト、ド
  ウシテモ節米ヲサセルニハ、兒童ヲ通ジテ
  學校カラヤルコトガ一番早道デアリマスガ、
  ドウモ先生自ラガソレニハ贊成ガナイト見
  エトノダカラ大抵ノ所ハイカヌガ、中ニハ
  中々勵行シテ居ル學校モアルノデゴザイマ
  ス、例ヘバ何デモサウデゴザイマス、自給
  肥料ヲ作レト言ツテ學徒動員トシテヤラレ
  マスル際、何々中學トカ何々學校ハ何處其處ノ
  山ノ草ヲ刈レト言ツテ刈ラセマス、サウ
  シテ學校ノ校庭へ持ツテ來テ堆肥ヲ作ル、
  ソレハ宜シイ、成程堆肥ハ作リマスルガ、
  ソレハ子供ガ作ツタ堆肥ト云フダケデアリ
  マシテ、今日ノ農村ハドチラカト言ヘバ、
  肥料不足ト言ヒナガラモ、ソレヨリモ生產
  ニ對スル心構ヘガ不足シテ居ルノデゴザイ
  やく、例ヘバ他ニ錢儲ケガアリマスルガ爲
  ニ、農家ハ生產ハ減退シテモ農家ノ財政ハ
  裕カニナツテ居リマス、隨テ屋敷ノ利用ス
  ベキ肥料スラモ之ヲ利用セズシテ、一ニ政
  府ノ配給肥料ニ依存ヲシ、又勤勞奉仕ニ手
  傳ヒニ來テ貰フコトガ段々癖ガ付キマスト、
  是レ又依存シテシマヒマシテ、自ラ勵ム心
  構ヘガ不足シテ來ル、ダカラ同ジ草ヲ刈ラ
  シテ堆肥ヲ自給サセルトシマシテモ、生徒
  ノ自分ノ家ノ附近ノ草ヲ刈ツテ自分ノ家ノ
  堆肥ヲ作レト云フ指揮ヲ致シマスルト、子
  供ハ早クカラ出テ野ノ草ヲ刈リニ行キマス、
  サウスルト親モ自然ニ之ヲ見セ付ケラレテ、
  當然出掛ケルト思フノデアリマス、大抵ノ
  學校ハ校庭ニ堆肥ヲ作ラセルコトヲヤラセ
  テ居リマスガ、〓育ノ方ハソレデ宜イカモ知
  レマセヌガ、今日家庭ヲ刺戟スルト云フコ
  トニナリマスト、個々ノ農家ニ堆肥ヲ作ラ
  セルコトヲ先生ガ指揮ヲシタ方ガ效果ガ
  アルノデゴザイマス、子供ハ御承知ノ通リ
  親ノ言フコトハ聽キマセヌガ、先生ガ斯ウ
  言ツタト言ヘバ、ドンナニ朝寢ノ子供デモ
  必ズ起キテ來マス、ソレデ先ヅ敬神ノ觀念
  ヲ養成スル爲ニ、朝ハ神前ニ拍手ヲ打ツノ
  ダゾト言ツテ〓ヘル、子供等ガ洵ニ幼キ手
  ヲ以テ神前デ拍手ヲ打チマスレバ、家ノ者
  マデモ知ラズ識ラズニ子供ニ〓ヘラレテ、
  敬神崇祖ノ觀念モ動イテツイテ來ルト思フ
  ノデゴザイマス、殊ニモウ一ツ例ヲ言ヒマ
  スレバ、兎ヲ飼ヘト云ツテ、先生ガ、兵隊
  サンハ皆滿洲ノ雪ノ降ル中、骨マデ凍ルア
  ノ曠野ニ夜モ寢ズニ立ツテ居ル、サウシテ
  御苦勞ニナルノダカラ、其ノ人達ニ寒サヲ
  サセテハイカヌカラ、ソレデ兎ヲ皆ガ飼ツ
  テ皮ヲ送ルノダゾト言ツテ聞カセテヤツタ
  村ガアツタノデゴザイマス、私ガ兎ノ皮ヲ
  農會ニ集メニ行キマシタ時ニ、二人ノ小サ
  イ子供ガ兎ヲドウシテモ離サナイ、農會ノ
  技手ヤ何カガ離セト言ツテモ、抱ヘテ居ツ
  テ離シマセヌ、秤ニ掛ケテ商人ガ錢ヲ渡ス
  ト言ツテモ、中々離サナイ、ソレカラ村長
  ガ出テ來テ、坊ヤ、ナゼ渡サヌト言ツタラ、
  私ハオ父サンノ所へ送ルノダト言フ、錢ヲ
  貰ツテ行ケト言ツタラ、私ハ賣リニ來タノ
  デハナイ、親ガ出征ヲシテ居ルカラオ父サ
  ンノ所へ送ル積リデ飼ツタノダ、村長サン
  デナケレバ渡サヌト言ツテ、村長ニ素直ニ
  渡シテ、御願ヒ致シマスト言ツテ錢モ貰ハ
  ズニ歸ツテ行キマシタ、私ガ此處デ斯ウ言
  ツテモ洵ニ情ガ移リマセヌガ、居竝ブ者ガ
  皆之ヲ見テ淚ヲ零サヌ者ハナカツタノデア
  リマス、此ノ兎二匹ヲ二人ノ兄弟ガ一匹ヅ
  ツ抱ヘテ來テ、村長サンニ渡シテ行クノダ
  ト言ツテ渡サナカツタ、サウシテ錢モ貫ハ
  ズ御願ヒシマス、是ハ私ノ戰地ヘ行ツテ居
  ル親ヘ送ルノダト云フヤウニ、子供ニハ先
  生ガ戰地ノ兵隊サンニト言ヘバ、單純ニ深
  クソレガ徹スルコトデアリマスカラ、兒童
  ノ此ノ純眞ナ所カラ家庭ニ及ボス影響ト云
  フモノハ實ニ想像以上ニ重大ナ力ヲ帶ビ
  テ居ルモノダト思フノデアリマス、斯樣ナ
  點カラ私ハ文部省ガ農商省ト御協議ヲナサ
  ランデモ、積極的ニ文部省トシテ、全國ニ
  一千萬モアル兒童ヲシテ國策ニ順應シ、サ
  ウ云フ材料ヲ以テ精神的ニモ、今ノ戰意〓
  揚ニモ、戰力增强ニモ活用スベク、私ハ指
  揮命令ヲ下サレル必要ガ大イニアルト思フ
  ノデゴザイマス、行フコトハ洵ニ零細ナリ
  ト雖モ、昨日大臣モ言ハレマシタ通リ數ノ
  多イコトデゴザイマスカラ、是レ位徹底セ
  ルモノハゴザイマセヌ、私共實地ニ居リマ
  シテ、此ノ食糧ノ增產ヲ致シタイト思ツテ
  居ル中デ猫ノ手モ借リタイ、本當ニ先生ガ
  指揮サレテ、學校ノ子供ノ力ガ借リタイノ
  デゴザイマス、此ノ點ニ於テ私ハ〓育上ハ
  勿論ノコト、食糧確保ノ上カラ切ニ御願ヒ
  ヲ致ス次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=80

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• 081・小笠原道生

  ○小笠原政府委員　色々御話ヲ伺ヒマシテ
  十分拜承致シマシタ、又御趣旨洵ニ御尤モ
  デアリマス、御尤モバカリデナク、洵ニ我
  我ニ有益ナ御注意ヲ戴キマシテ十分拜承致
  シマシタ、今後各般ノ實施ニ、左樣ヲ心持
  ヲ十分滲透サセテヤツテ參ルヤウニ、實施
  方法等ヲ十分適切ニ〓究致シマシテ、將來
  能クヤツテ行キタイト存ジマス、一寸御答
  ヘ致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=81

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• 082・小柳牧衞

  ○小柳委員長　間モナク大臣、次官ガ御見
  エニナルダラウト思ヒマスケレドモ、今此
  處ニ專門〓育局長、國民〓育局長、科學局
  長、體育局長ガ居ラレマスノデ、質問通〓
  ノ方デ此ノ方面ニ御質問ノアル方ハ御質問
  ヲ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=82

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• 083・水谷長三郎

  ○水谷委員　私ハ只今其處ニ居ラレマスル
  阿原局長ニ、中等學校入學試驗問題ノコト
  ニ付テ、又其ノ制度運用ニ付テ御聽キシタ
  イト思フノデアリマス、是ハ非常ニ遺憾ナ
  コトデアリマスガ、昭和十八年ノ十一月十
  六日ノ各新聞ニ發表スル所ニ依リマスレバ、
  所謂帝都ノ入試疑獄、〓育者六十八名起訴、
  父兄二百九名罰金、其ノ〓員ノ內譯ハ中等
  學校程度ガ十四校デ、〓員ハ六十名、國民
  學校ハ八十校デアツテ其ノ〓員二百五十
  名、關係父兄二千名、合計九十四校二千二
  百十名ト云フモノガ此ノ問題ニ關係シテ居
  ツタト云フコトガ新聞ニ報ゼラレテ居リマ
  ス、事柄ハ單ニ兒童ニ大キナ影響ヲ與ヘル
  ダケデハナシニ、〓育社會其ノ他、人心ニ
  大キナ影響ヲ與ヘル關係上、新聞モ數箇月
  發表禁止ヲサレテ居ツタノデゴザイマスガ、
  十八年十一月十六日ニ發表ガ行ハレテ、世
  間ニ非常ナ「センセーション」衝動ヲ捲キ起
  シタヤウナ次第デアリマス、併シナガラ是
  ハ單リ帝都ノ入學試驗疑獄ト云フ問題ダケ
  デハナシニ、私等ノ住ンデ居リマス關西地
  友、或ハ其ノ他ノ地方ニ於キマシテモ、程
  度ノ差ハアリマスガ、斯ウ云フ問題ガ隨所
  ニ起ツテ居ルト云フコトハ、我々ノ非常ニ
  遺憾トスル所デゴザイマス、私ハ今日昔ノ
  學友デアル阿原局長ニ對シテ、其ノ責任ヲ
  問フトカ、或ハ〓育者ニ鞭ツト云フヤウナ
  コトヲスル者デハアリマセヌガ、大體中學
  校ノ入試問題ト絡ミ合ハシテ、此ノ問題ヲ
  ハツキリサセテ置ク必要ガアラウト思セマ
  スノデ、先ヅ御聽キスルノデアリマス、其
  ノ問題ガ發表サレマシタ時ニ文部當局談ト
  致シマシテ、文部省トシテハ其ノ原因ヲ十
  分ニ檢討シテ、實施方法ニ付キ更ニ〓究ヲ
  スルト共ニ、一層〓職員ノ指導監督ヲ嚴ニ
  シ、以テ再ビ斯カル事ナキヤウ致サネバチ
  ラヌト考ヘテ居ル、ト云フコトヲ言ハレテ居
  リマス、是ハ誰ガ言ハレタカ知リマセヌガ、
  恐ラク此ノ衝ニ當ル責任者ノ言葉デアラウ
  ト私ハ思フノデアリマスガ、文部當局ハ此
  ノ遺憾ナル事柄ニ對シテ、原因ヲ十分ニ檢
  討スルト言ツテ居リマスガ、其ノ原因ハ一
  體那邊ニアツタカ、聞ク所ニ依リマスト
  或ハ中ニハ一人デ千圓以上取ツタト云フ人
  ガアリマスガ、大體五十圓內外ノ零細ナル
  金ノ者ガ大部分デアル、更ニ又或ル學校ノ
  先生ニ至ツテハ、生徒ヲ捉ヘテ、オ前ノ家
  ハ何商賣ダ、洋傘屋ダ、ソレデハ洋傘ヲ持
  ツテ來テ吳レヌカ、オ前ノ家ハ何屋カ、砂
  糖屋ダ、ソレデハ砂糖ヲ持ツテ來テ吳レヌ
  カ、ト云フヤウナコトヲ言ツテ居ツタ人モ
  アツタヤウデアリマスガ、サウ云フ人ハ例
  外デアツテ、大體ハ五十圓內外ノ零細ナ金
  ヲ取ツテ、斯ウ云フヤウナ問題ヲ起シタヤ
  ウニ私ハ漏レ聞イテ居ルノデアリマスガ、
  文部省ト致シマシテハ、サウ云フ神聖ナ聖
  壇ニ立ツテ居ル〓職員ガ、何故ニ斯ウ云フ
  ヤウナコトヲ起サナケレバナラナカツタカ
  ト云フ原因ヲ十分檢討サレタト思ヒマスガ、
  其ノ原因ハ一體何處ニアツタカ、更ニ又其
  ノ原因ヲ究明シテ、今後再ビ斯樣ナ不祥ナ
  ル事件ヲ起サナイ對策トシテ、ドウ云フ對
  策ヲ執ラレタカト云フ點ヲハツキリト御答
  へ願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=83

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• 084・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　只今御指摘ノアリマシタ
  東京都ニ於ケル昨年度ノ入學考査ノ不正事
  件ノ問題ガ、御話ノヤウニ昨年ノ十一月十
  六日ニ新聞ニ發表ニ相成ツタ譯デアリマシ
  テ、此ノコトハ私共〓育ニ關係致シテ居ル
  者ト致シマシテハ、洵ニ遺憾ナコトト存ジ
  マシテ、衷心恐縮致シテ居ル次第デアリマス、
  此ノコトハ御話ニナリマシタヤウニ、東京
  都ダケノ問題デハナシニ、關西方面ニモ
  アツタト云フコトハ確カニ其ノ通リデアリ
  マシテ、〓育界全般トシテ考ヘナケレバナ
  ラヌ問題デアルト私ハ考ヘテ居リマス、隨
  ヒマシテ此ノ事件ヲ調ベマシタ關係者ニ付
  キマシテ、色々聞キ質シ、又役所ト致シマ
  シテ色々ノ方法ヲ以チマシテ調ベタ結果ヲ
  極ク〓括的ニ申シマスト、一ツハ現在ノ入
  學考査制度ニ對シテ、多少ノ缺陷ガソコニ
  アツタノヂヤナイカト云フコトガ第一ニ考
  ヘラレタ問題デゴザイマス、其ノ缺陷ト申
  シマスノハ、一ツハ內申書作成ニ絡マル所
  ノ問題ガアツタノデアリマス、御承知ノヤ
  ウニ內申書ハ、勿論ソレヲ作ル爲ニ報〓書
  委員會ト云モノガ、委員組織ヲ以テ組織サ
  レテ居リマスルガ、實際ハ其ノ衝ニ當ル者
  ハ學級擔任デアリマス關係デ、學級擔任ノ意
  見ト云フモノガ、十分其ノ內申ノ作成ヲ左
  右スル、ソコニ付ケ込ンデ父兄ノ方カラ色
  色ノ魔手ガ伸ビテ行ツダ、魔手ト云フノハ
  穩カデハアリマセヌガ、手ガ伸ビテ行ツタ
  ト云フヤウナ事實ガアルヤウデアリマス、
  併シナガラ此ノ點ニ付キマシテ、私共申上
  ゲタイ點ハ、〓職員ハ勿論サウ云フコトヲ
  スレバ、非常ニ神聖ナル〓職ヲ瀆スト云フ
  コトデ責任ヲ持ツテ居ラレマスカラ、責任
  感カラ再三返ヘサレタ、併シナガラ其ノ物
  ヲ贈呈シタイト云フ側ニ於キマシテハ色々
  情實關係、或ハ又自分ノ地位ヲ利用シマシ
  テ、之ヲ受ケナケレバ君ノ爲ニナランゾト
  言ハンバカリノコトガアツタ結果、已ムヲ
  得ズ取ラレタト云フ事實ガ多イヤウニ聞イ
  テ居リマス、此ノ〓職員ノ持ツ弱ミト云フ
  モノハ、何トカ我々〓育ニ携ハツテ居ル者
  ト致シマシテ、〓員ノ優遇ト絡ミ合セマシ
  テ、斯樣ナ問題ノ起ル餘地ヲナカラシムル
  ヤウニ考ヘナケレバナラヌト思ツテ居リマ
  ス
  尙ホ又制度上ノ問題ニ付キマシテ、今囘
  ノ入學考査ニ付キマシテ若干改善ヲ加ヘ
  シテ、例ヘバ報〓書作成ニ付キマシテ、左
  樣ナ情實ノ入リニクイヤウニ是正致シマシ
  テ、例ヘバ學籍簿委員會ヲ常設的ニ作リマ
  シテ、學籍簿委員會デ記載サレタ所ノ學籍
  簿ヲ、其ノ儘報告書ニ轉記スルト云フヤウ
  ナ方法ヲ執リマシテ、ソコニ情實ノ起ラナ
  イヤウナ方法ヲ考ヘタリ、又中等學校方面
  ニ於キマシテ起リマシタ、身體檢査ニ付テ
  ノ色々ナ問題ニ付キマシテモ、從來採點ノ
  方法ガ餘リ階段ガ多ク分レ過ギテ居ツタト
  云フ點ニ無理ヲ生ジテ居ツタト云フヤウナ
  點モ是正致シマシテ、又一般的ニハ出來ル
  ダケ綜合考査制、或ハ又學區制ヲ採リマシ
  テ、成ベク優秀ナ生徒ハ漏レナク何處カノ
  學校ニ入リ得ルヤウニ致シマシテ、父兄ノ
  不安ヲ除クト云フ方法ヲ原則的ニ全國ニ執
  ラセルコトニ致シマシテ、制度上ノ缺陷ヲ
  出來ルダケ是正スル方法ヲ執ツタノデアリ
  マス、尙又一面考ヘナケレバナラヌコトハ、
  此ノ問題ハ大キナ社會問題デアリマシテ、
  特ニ父兄ガ現在入學制度ニ對シマシテ、十
  分ナ理解ヲ持タレルコトガ必要デハナイカ、
  自分ノ子供ヲ可愛ガルコトハ父兄トシテハ
  當然ノコトデアリマスケレドモ、其ノ結果
  自分ノ子供ノ能力以上ノ學校ヲ志願セラレ
  ルト云フ所ニ色々ナ問題ガアルノデハナイ
  カ、或ハ父兄ノ虛榮デアルトカ、或ハ又名
  譽慾ト云フヤウナコトガ絡ミマシテ、サ
  ウ云フ問題モ出テ來ルノデハナイカト私ハ
  思ヒマス、斯ウ云フ點ニ付テハ、私共〓育
  ニ關係シテ居ル者ガ、全體トシテ此ノ問題
  ニ對シマシテ、將來トモ十分愼重ナル〓究
  ヲ致サナケレバナリマセヌト共ニ、父兄側
  ニ於カレマシテモ、十分現在ノ制度ニ對シマ
  シテ心カラ御理解願ヒマシテ、兩者相俟チ
  マシテ、將來不正事件ヲ無クナラシメルヤ
  ウニ致サナケレバナラヌト思ツテ居リマ
  ス、今後トモ私共ハ出來ルダケ努力致シマ
  シテ、斯カル不祥事ノ起ラナイヤウニ十分
  力ヲ致シタイト云フコトヲ、此ノ機會ニ申
  上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=84

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• 085・水谷長三郎

  ○水谷委員　只今詳細ナル御說明ヲ承リマ
  シタガ、結局私等ノ憂フル所ハ、此ノ大日
  本育英會法ノ第一條ニモ「優秀ナル學徒ニシ
  テ經濟的理由ニ因リ修學困難ナルモノ」云々
  ト云フコトガアリマスガ、從來アニュ)
  ヤウナ疑獄ガ起リマシテ、入試問題ト云フ
  モノガ歪メラレタトキニハ、如何ニ優秀ナ學
  徒デアツテモ、家ガ貧シクシテ先生ニ付ケ
  屆ケガ十分行屆カナイ爲ニ入學ガ出來ナイ、
  親ガ今度ノ育英法案ニ依ツテ金ヲ借リルト
  云フノデナシニ、親ガ〓フ物モ食ハズニ子
  供ヲ進學ササウト云フモノニ對シテ、非常
  ナル暗影ヲ投ジテ居ルコトハ事實デアリマ
  シテ、私ノ子供ハ非常ニ良ク出來ルノデス
  ガ、家ガ貧乏デ入ルコトガ出來ナカツタト
  云フヤウナ苦情ヲ度々聞カサレタノデゴザ
  イマシテ、此ノ度ノ育英法案ガ出來ルト共
  二、其ノ問題ハ十分文部當局ニ於テ能ク善
  後處置ヲ執ツテ戴キタイト思フノデゴザイ
  いや、ソレデ今度文部當局案ト致シマシ
  テ-是ハ私ハ京都選出ノ代議士デ京都ノコ
  トヲ自慢スルノデハナイノデスガ、大體前
  ノ內申制度ダケデハ缺點ガアルト云フノデ、
  京都ニ於キマシテハ、口頭試驗ヲ簡單ニ行
  ヒマシテ、人物考査ト申シマスカ、ソレデ
  ヤツテ居ツテ、其ノ弊害ヲ幾ラカ除去出來
  タノデアリマス、此ノ度ノ文部省ノ案ニ依
  リマスト、一ト二トハ京都ノ案通リデゴザ
  イマシテ、三ハ場合ニ依レバ簡單ナ筆記試
  驗ヲ行フ、是ハ岡部文部大臣ガ去年ノ暮デ
  スカ、京都ヘ來ラレタ時ニハ、新聞ノ發表
  スル所ニ依レバ、京都ノ案ヲ非常ニ褒メテ
  文部省案ヲ發表サレテ居ツタコトヲ新聞ヲ
  通ジテ私ハ知ツタガ、場合ニ依レバ簡單ナ
  筆記試驗ヲ行フト云フコトハ、文字デ表ハ
  セバ何デモナイノデスガ、是ハ運用如何ニ
  依リマスト、非常ニ又難カシイ問題デアリ
  マシテ、筆記試驗ヲ行フナラバ行フデ、ハ
  ツキリシタ科目デ十分ナ筆記試驗ヲ行フト
  云フコトニナレバ、ソコニ兒童ノ努力心ヲ
  向上サセ、十分ノ準備モ出來テ、又準備ノ
  見當モ付キマスルガ、簡單ナ筆記試驗ト云
  フコトニナリマスト、中々兒童ノ方ニモ其
  ノ準備ノ方法ガナイ、又〓ヘル先生ノ方ニ
  モ準備ガ非常ニ難カシイノデ、例ヘバ高等
  學校ヲ卒業ヲシテ帝大ノ法科ヘ入ルト云フ
  時ニ、皆一應經驗スルノデアリマシテ、例
  ヘバ「ローマ」文明史ニ付テ試問サレタ時ニ、
  偶然「ギボン」ノ「ローマ」史デモ讀ンデ居レ
  バ其ノ答案ガ書ケルノデスガ、普通ノ高等
  學校ノ生徒ハ、「ローマ」文明史ト云フヤウ
  ナ漠然タル問題ガ出ルト、非常ニ間誤ツク
  カラ、簡單ナ筆記試驗ト云フモノハ寧ロオ
  廢メニナル方ガ宜イノデハナイカ、サウシ
  テ內申制度ト云フコトニ十分ナ監督ヲシテ、
  其ノ上ニ單ニ口頭試驗ダケヲ行ハレヽバソ
  レデ宜イノデアリマシテ、場合ニ依レバ簡
  單ナ筆記試驗ヲ行フト云フコトハ、其ノ運
  用如何ニ依リマスレバ、又昔ノ筆記試驗中
  心主義ト云フコトニナリマシテ、兒童ノ負
  擔或ハ豫備〓育、ソレニ絡マル兒童ト〓員
  トノ交涉取引ト云フヤウナモノガ起ツテ來
  マシテ、其ノ運用如何ニ依リマスレバ、前
  ノ試驗制度ノ弊害ニ戾ルノデハナイカト思
  フノデアリマス、是ガ一點デアリマス
  ソレカラ更ニ又此ノ度ノ文部省案ハ、今
  度ノ疑獄問題トハ獨立シテ入學試驗問題ト
  云フモノハ講ゼラレナケレバナラヌト云フ
  高所ノ立場ニ立ツテ出來タノカ、更ニ又此
  ノ度ノ疑獄事件ノ救濟ノ一時ノ便法、臨時
  措置トシテ斯樣ナ文部省案ガ生レタノカド
  ウカ、此ノ點デアリマス、幸ヒ大臣モ御見
  エニナツテ居リマスカラ、此ノ點ニ關シマ
  シテ出來ルナラバ大臣ノ御答辯ヲ煩ハシタ
  イト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=85

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• 086・阿原謙藏

  ○阿原政府委員　只今洵ニ御注意深イ御示
  唆ヲ戴キマシテ洵ニ有難ウゴザイマス、今
  囘改正致シマシタ入學考査制ニ付テモ、御
  承知ノヤウニ口頭試問、身體檢査、報〓書、
  此ノ三者ヲ綜合判定スルコトニ相成ツテ
  居リマス、唯口頭試問ダケデ十分考査ノ
  實ガ擧ゲラレナイ、考査ノ正確ガ期セラレ
  ナイト云フ特殊ノ場合ニ限リマシテ、筆答
  試問ヲ加ヘルコトヲ認メタノデアリマス、
  ソレハ何處マデモ口問口答ノ趣旨ト同ジ趣
  旨デアリマシテ、唯ソレヲ簡易ニ補フト云
  フ意味ニ於キマシテ、筆答試驗ヲ加ヘタノ
  デアリマシテ、御承知ノヤウニ筆答試驗ヲ
  加ヘルコトニ依リマシテ、御疑念ノヤウニ、
  嘗テアリマシタヤウナ受驗準備ノ弊ニ陷ル
  コトハ兒童ノ身心ノ發育上非常ニ憂慮シ
  ナケレバナラヌ問題デアルト考ヘテ居リマ
  スノデ、サウ云フ點ハ十分注意致シマシテ、
  左樣ナ處置ヲ執ツタ次第デアリマス、尙又
  左樣ナ特殊ナ地方デ、口問口答以外ニ補助
  的ニ筆答試驗ヲ加ヘル場合ニ於キマシテハ、
  本省ト十分協議シテ、協議ノ結果實施スル
  ト云フ運ビニ致シテ居リマス、尙ホ第二ノ
  點ノ考査ハ、不正事件ガアツタカラソレニ
  依ツテ臨時的ニヤツタモノカ、或ハ高所ニ
  立ツテヤツタモノカト云フ御尋ネデアリマ
  スガ、大體今囘ノ改正ハ、從來ノ趣旨ヲ根
  本的ニハ變ヘテ居リマセヌノデ、其ノ點ニ
  於キマシテハ文部省ト致シマシテハ、不正
  事件ガアツタカラ臨時的ニ斯樣ナ處置ヲシ
  タト云フ者ヘデハゴザイマセヌ、其ノ點御
  諒承願ヒタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=86

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• 087・岡部長景

  ○岡部國務大臣　今政府委員カラ申上ゲタ
  ヤウナ趣旨デアリマシテ、私カラ申添ヘル
  ヤウナコトハナイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=87

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• 088・水谷長三郎

  ○水谷委員　他ノ質問ハ留保シマシテ私ノ
  質問ハ一先ヅ是デ打切リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=88

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• 089・小柳牧衞

  ○小柳委員長　森田重次郞君

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=89

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• 090・森田重次郎

  ○森田(重)委員　先程事務的ナ問題ニ付キ
  マシテ局長ノ方々ニ御伺ヒ致シタノデアリマ
  スガ、併シ一應是ハ大臣ニモ御聽取ヲ願ツテ
  置キタカツタノデアリマス、ドウカ後デ一應
  御調ベ下サイマシテ、實施ノ出來ルコトハ速
  カニ實行ニ移シテ戴クヤウニ御願ヒ致シマス
  ソコデ一ツ大臣ノ御意見ヲ御伺ヒ致シ
  タイコトハ、創造〓育ニ關スルコトデア
  リマス、是ハ昨年ノ豫算總會ニ於テモ若
  干私質疑ヲ致シタコトガアリマスガ、日
  本ノ〓育ハ創造〓育ト云フコトヲ忘却致
  シテ來タモノデアルト言ハレテモ、辯解ノ
  餘地ノナイ程形式的ナモノニ陷ツタコトハ、
  大臣御承知ノ通リデアリマス、唯一タビ今
  ヨリ十數年前ニ、日本ノ國ニ創造的ニ〓育
  學ト云フヤウナ一ツノ傾向ガアツタノデア
  リマス、ソシテ是ハ自由主義的〓育學ト云
  フヤウナ名ニ於テ採用セラレマシタ、併シ
  是ハ道德的ナ面デ、人間ヲ放縱ナラシムル缺
  點ヲ暴露致シマシタノデ、文部省トシテモ
  是ハ非常ニ御憂慮ノ餘リデアツタラウト思
  ヒマスガ、斯ウ云フ方向ノ〓育方法ト云フ
  モノハ、阻止シテシマツタト云フ次第デアリ
  マス、當時又學界ニ於キマシテモ、之ニ對
  シテ相當ノ反擊ガアツタ事實モアリマス、
  ソコデ創造〓育ト云フ方面ノ〓究ハ爾來足
  踏ミノ姿デアリマス、談偶創造〓育ニデモ
  及ビマスト、文部省カラ睨マレルデハナイ
  カ、雜談ナドニ書イテモ文部省カラ睨マ
  レテ、オ小言ヲ頂戴スルト云フノデ、學者
  ハ其ノ方面ノ〓究ヲシナイト云フヤウナ傾
  向ニアルヤウデアリマス、デアリマスカラ
  現在日本ノ〓育界全般ヲ通ジテ見マシテモ、
  此ノ〓育方法ヲ助長シテ行カウトスル面ハ
  除カレテシマツテ居ルノデアリマス、是一
  ハ一ツノ理由ガアリマス、ソレハ先程申上
  ゲマシタ通リ人間ノ道德面ヲ放縱ナラシメ
  ルヤウナ缺點ヲ包藏シテ居ルモノデアリマ
  スカラ、此ノ面ハ當然是正シナケレバナラ
  ヌノデアリマス、併シ乍ラ其ノ創造的〓
  育學ノ含ム內容ニ果シテ良イ方向ガナカツ
  タカト申シマスト、是ハ私ハアルト思フ、
  今日此ノ戰局面ニ直面シテ初メテ成程ト考
  ヘサセラレル節ガアル、是ハ大臣ニ率直ニ
  申上ゲマスルガ、文部省ノ今マデヤツテ居
  ラレル〓育デハ駄目ダト云フ聲ガ或ル方面
  デハ非常ニ高イ、ナゼ高イカト言フト、今
  ノ文部省ノ〓育デハ子供ヲヤツテ置イテモ、
  物ノ創造發見ト云フ、內カラ湧イテ來ル自
  發創造ノ面ヲ全ク殺シテシマフヤウナ〓育
  ヲヤツテ居ル、是デドウシテ今ノ智慧ト智
  慧トノ戰ヒ、科學ト科學ノ戰ヒデアル此ノ
  戰爭ニ勝チ拔ケルカ、是ハ只今ノ文部省的
  ナ〓育ハ駄目ダ、又別ナ方法デ相當ナ金ヲ
  取ツテモ宜イカラ、物ノ創造發見ヲ助長ス
  ル〓育方法ハナイカ、アルナラバソレニ對
  スル計畫ヲ立テテ吳レト云フ相談ヲ、或ル
  方面ノ學者ガ受ケタト云フコトヲ漏レ承ツ
  テ居ル次第デアリマス、是ハ文部省トシテ
  モ相當考ヘテ貰ハナケレバナラヌ問題デハ
  ナイカト思ヒマス、成程道德的ナ面ニ於テ
  缺陷ガ現ハレタカラ、之ヲ是正スルコトハ
  結構デアリマス、併シソレダカラト云ツテ
  直グ他面へ反動的ニ行ツタラ宜イト言ヘル
  デセウカ、確カニ私ハ反動的ニ行ツタト思フ
  ノデアリマス、其ノ後ノヤリ方ハ殆ド團體
  訓練ト云フヤウナ形式面ノ躾ト云フヤウナ
  コトニ全力ヲ傾倒シタ、是ハ大臣ガ午前中
  ニモ躾ノ大事ナコトヲ仰シヤツタ、私モ其
  ノ通リダト思ヒマス、併シ躾バカリ付ケラ
  レテモ、內ナル生命力ガ薄弱ニナツタラ駄目
  デアリマス、內ニ生命力ヲ持ツテ居ツテ、外
  カラノ躾ニ依ツテソレガ洗練サレルト云フ、
  內容ト形式ガ一體トナツタモノデナケレバ
  ナラヌ、恐ラク大臣ト雖モ單純ナル躾デ以
  テ御滿足ニナル筈ハナイト思フ、所ガ國民
  學校ガ設ケラレテ此ノ方、外面躾ト團體訓
  練ガ非常ニ强調サレテ參リマシタ、併シナ
  ガラ內ナル創造ノ面ト云フモノガ非常ニ閑
  却サレルヤウナ形ニナツテ來タ、是ハ憂フ
  ベキ現象ダト思ヒマス、大東亞戰爭ニ勝チ
  拔イタ後ニ、世界新秩序ノ建設ヲ圖ツテ行
  カウト云フ時ニ、文化創造ノ面ノ素質ガ缺
  ケテ居ツタナラバ、指導者トナリ得ル資格
  ハ到底アリ得ナイノデアリマス、是ハドウ
  シテモ兩面ヲ兼ネ備ヘタモノデナケレバナ
  ラナイト思フノデアリマス、ソコデ私ハ今
  ノ〓育界ノ中ニ橫タハツテ居ル通弊、沒批
  判的ニ受ケテ居ルト思ハルヽ通弊ハ、軍隊
  ノ〓育ト云フモノハ團體訓練デ、非常ニキ
  ツイ規律ダケ付ケテ居ルノダト云フコトガ、
  〓育界ニ瀰漫シテ居ル一ツノ誤認デアリマ
  ス、ソコデ私ハ昨年ノ議會ニ於テ、佐藤軍
  務局長ト內閣總理大臣ニ此ノ點ヲ質問致シ
  マシテ、軍隊ハ決シテサウ云フモノデハナ
  イ、軍隊ハ一面團體訓練ニハ徹底スルガ、
  最後ノ到達點ハ何デアルカト云フト、上官
  ノ命令ヲ受ケテ第一線ニ行ツテ具體的ナ戰
  爭ヲスル場合ニハ、其ノ與ヘラレタル環境
  ト條件ヲ卽刻ノ間ニ綜合的ニ判斷シテ、卽
  時勝テル樣ニ適應スル獨斷的ナ創造的ナ力
  ヲ持ツモノデナケレバ、本當ノ軍人トシテ
  ノ立派ナ躾ニハナラナイノダ、斯ウ陸軍〓
  育令ノ中ニモ書イテアリマスカラ、此ノ通
  リデアルカト質問致シマシタ所ガ、洵ニ
  其ノ通リダト云フ答辯ヲ得タノデアリマス、
  ソコデ私ハ此ノ國民學校ノ先生方カラ此ノ
  迷ヒヲ一掃シテシマツテ、團體訓練モ宜イ
  ガ、其ノ後ニ來ルモノハアノ軍隊的ナ獨斷
  ニマデ達スル傾向ニ之ヲ導イテ來ルノデナ
  ケレバ、到底今ノ日本ノ國家要請ニ合フ〓
  育ダト言ヒ得ナイト信ズルノデアリマス、
  ソコデ私ハ具體的ナ問題トシテ大臣ノ御意
  見ヲ御伺ヒ致シタイコトハ、私ノ只今申シ
  マシタ前提ガ正シイト致シテ下サルナラバ、
  大臣ハ今マデ文部省ノ中ニ橫タハツテ居ル空
  氣卽チサウ云フ創造〓育ノ〓究ト云フ樣
  ナコトヲ成ベク止メテシマハウト云フ空氣
  ヲ、文部省内カラ一掃致シテ頂キタイノデア
  リマス、今デハ文部省モマサカソンナコト
  ヲ考ヘテ居ラナイデセウガ、學者ノ面デハ
  ソンナコトヲ考ヘテ居ルモノガ澤山アリマ
  ス、ダカラ此ノ空氣ヲ一掃スル意味ニ於テ、
  創造發見ノ最モ適當ナル〓育方法ヲ〓究サ
  セルヤウナ空氣ヲ醞釀シテ貰フヤウニ指導
  シテ戴キタイ、隨テサウ云フヤウナ〓育學
  ノ〓究ト云フヤウナモノガ、將來學者ニ依
  ツテ助長サレテ行クヤウナ一ツノ方向ヲ大
  臣ニ採ツテ戴キタイ、斯ウ思フノデアリマ
  ス、是レ大臣ノ御所見ヲ承リタイ一點デア
  リマス

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• 091・岡部長景

  ○岡部國務大臣　御質問ノ御趣旨ハ全然御
  同感デアリマシテ、確カニサウ云フ大キナ
  缺點ガ從來ノ〓育面ニアツタヤウニ私モ感
  ジテテ居ルノデアリマス、之ヲ如何ニシテ實
  際創造力ニ富ンダ人間ニ育成シテ行クカト
  云フ其ノ方法ニ付キマシテハ、私ハ固ヨリ
  素人デアリマシテ、マダハツキリシタ意見
  モナイ譯デアリマスルガ、確カニ今後日本
  ガ世界ニ處シテ行クノニハ、外國ノ眞似バ
  カリシテ居ツテ太刀打チガ出來ル筈ハナイ
  ノデアリマス、ドウシテモ我々ノ頭カラ外
  國ニ優レタモノヲ生ミ出スト云フ位ノ意氣
  ヲ、國民全體ニ漲ラシテ行カナケレバナラ
  スト考ヘテ居ルノデアリマス、サウ云フヤウ
  ナ見地カラ〓育全般ニ亙ツテ、相當是ハ織
  込マレテ居ルトハ思ヒマスケレドモ、併シ
  是ハ唯知識的ニ〓ヘラレタバカリデハ、サ
  ウ云フ頭ガ本當ニ出來ルモノデハナクシテ、
  ヤハリ將來ニ對スル所謂世界觀ト云フモノ
  ガハツキリシテ來テ、國際間ノ競爭ト云フ
  モノガ如何ニ熾烈ナモノデアルカ、單ニ此
  ノ戰爭下ニ於テ非常ニ熾烈ニナツテ來タト
  云フ目前ノ認識バカリデナク、其ノ根底ノ
  深イ國際競爭ト云フモノノ意義ガ國民ノ間
  ニ徹底シテ來ルコトニ依ツテ、初メテ彼等
  ト太刀打チスルノニハ我々自身ガドレダケ
  力强イモノニナラナケレバナラヌカト云フ認識
  ガ深マツテ來ルモノト考ヘルノデアリマス、
  其ノ認識ガ深マツテ來レバ、初メテ玆ニ外
  國ヨリ優レタモノヲ造ラナケレバナラヌト
  云フ必要性ヲ痛感シテ來ルコトト思フノデ
  アリマス、所謂必要ハ發明ノ母ト云フヤウ
  ニ、此ノ必要性ガ强ク國民ノ間ニアレバ、
  隨テモノヲ見ルコトモ、モノヲ考ヘルコト
  三··今マデヨリモモツト〓〓眞劔味ガ殖
  エテ來ルダラウ、ソコマデ來ナケレバ、唯
  今マデノヤウニ外國ノ眞似ヲシテ、樂ニ進
  步發達ヲ圖ツテ來タト云フヤウナ呑氣ナ考
  ヘ方デハ、將來迚モ間ニ合ハナイト考ヘテ
  居ルノデアリマス、簡單ナ言葉デ言ヘバ日
  本世界觀ト云ヒマスカ、世界ニ對スル日本
  ノ立場ト云フモノハ、將來ハ今マデトハ全
  ク事情ガ違ツタ眞劔ナモノデナケレバナラ
  ヌト云フコトヲ、シツカリ國民ガ認識スル
  コトヲ先ヅ先決トシ、ソレカラ今申シタヤ
  ウナ眞ニ創造力ヲ多分ニ持ツタ有能ナ人ヲ
  ドン〓〓輩出スルヤウニ導イテ行カナケレ
  バナラヌト思フノデアリマシテ、〓育ハ要
  スルニ唯學校ヲ出ル時ニ是ダケノ知識ヲ持
  テバ宜イト云フヤウナモノデハナイノデア
  リマス、寧ロ將來ハサウ云フヤウナ働キノ
  アル、サウ云フ頭ヲ持ツタ人間ヲ社會ニ出
  スト云フノガ、私ハ〓育デナケレバナラヌト
  思フノデアリマス、學校ニ居ル間必要ナ課
  程ダケヲ〓へ込ムト云フコトヲ目的トシテ
  居ツテハ相成ラヌノデハナカラウカト云フ
  風ニ考ヘテ居ルノデアリマスガ、是等ニ付
  キマシテモ此ノ〓育內容、〓育方法等ニ
  付テハ、是ハマダ〓〓大イニ〓究致シテ掛
  ラナケレバナラヌト思ツテ居ルノデア
  リマス、ソレ等ノ點ニ付テハ先達テモ申シ
  マシタヤウニ、今年カラ私ハ一ツサウ云フ
  ヤウナ方面ニ力ヲ注イデ行キタイト考ヘテ
  居ル譯デアリマス

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• 092・森田重次郎

  ○森田(重)委員　ドウカ一ツ折角科學局ナ
  ンカモ設ケラレテ居ル時代デモアリマスシ、
  其ノ面ニ對シマシテ獨特ナ日本ノ〓育ノ方
  法ヲ確立スルヤウナ機會ヲ作ツテ戴キタイ
  ト御願ヒヲ申シマシテ、次ノ質問ニ移リマ
  ス
  實ハ思想問題ニ付テ大臣ノ御意見ヲ御伺
  ヒシタイノデアリマスガ、只今大臣ノ御意
  見ノ中ニモ基本トナルモノハ日本的世界觀
  ダ、斯ウ云フヤウナ御說ガ出マシテ、洵
  結構ナコトデアリマス、ソコデ其ノ內容ニ
  付テ私御伺ヒ致シタイト思フ、皇國世界觀
  或ハ皇道的世界觀、ソレカラ其ノ皇道的世
  界觀ヲ基調ドスル世界對策、或ハ世界經營
  ノ根本的實踐原理、サウ云ツタヤウナモノ
  ヲ確立スルコトガ今ノ日本ニ於テ一番大事
  ナコトダ、私ハ斯ウ考ヘル、是ハ獨リ私バ
  カリデハナイ、モウ日本ノ思想界ニ漲リ溢
  レテ居ル一ツノ要請ダト思ヒマス、然ラバ
  ソレハドンナ姿ニ於テ、ドウ云フヤウナ性
  格ヲ持タシムルカト云フ所ニ若干私ハ問題
  ガアルヤウニ思ヒマス、ソコデ大臣ノ之ニ
  對スル御抱負御經綸ヲ先ヅ第一ニ御伺ヒス
  ルコトガ出來レバ非常ニ幸ヒダト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=92

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• 093・岡部長景

  ○岡部國務大臣　非常ニ大キナ問題ヲ出サ
  と 、實ハ御答辯ニモ當惑スルノデアリマ
  スガ、從來日本ハ何ト申シマシテモ東亞ニ
  偏在シテ居ツタノデアツテ、外國カラノ脅
  威ヲ受ケルコトモ少ク、隨テ割合ニ樂ナ生
  活ガシ得タト思フノデアリマスルガ、今後
  ノ世界情勢ト云フモノハ全然一變シタト考
  ヘテ居ルノデアリマス、ソレダケニ日本人
  トシテモ、ヤハリ世界ニ發展シ得ル素質ヲ
  持チ、氣宇大ニシテ又抱負經綸モ豐カニ持
  チ、且ツ人格的ニモ他民族ヲシテ個々ニ從
  ツテ生キサ、セルヤウナ、眞ニ指導力ノアル
  モノデナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  是ハ確カニ〓育ノ重大ナ使命デアルト考ヘ
  マスルガ、〓育ノミニ依ツテ是ガ實現スル
  コトモ中々困難カト考ヘマス、社會一般ノ
  通念ト云フモノガ、ソコニヤハリ〓揚シテ來
  ナケレバ、學校〓育ノミニ依ツテ完全ナル結
  果ヲ擧ゲルコトハ難イコトデアリ、隨テ今
  日ノ此ノ靑年層、壯年層ニ對シマシテヤハ
  リ國家ノ全體ノ雰圍氣、其ノ世界觀的ナ雰
  圍氣ヲ十分ニ强調スル必要ガアルノデハナ
  イカト云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマシテ、
  是ハ〓育面ト同時ニ社會〓化ト申シマスル
  カ、指導ト申シマスルカ、啓發ト申シマス
  ルカ、サウ云フコトニヤハリ相當力ヲ注イ
  デ行カナケレバナラヌノデハナカラウカト
  云フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマスルガ、マ
  ダ遺憾ナガラ其ノ方面ニ付テハ政府トシテ
  モ十分手ヲ盡シテ居ルトハ考ヘ得ラレナイ
  ノデアリマシテ、啓發、宣傳等ヲ情報局ガ
  ヤツテ居リマスルケレドモ、是レ亦根底ガ
  必ズシモ强固ナモノデアリ、非常ニ力强イ
  モノデアル、滿足シ得ルモノデアルト申ス
  コトハ出來ナイ、甚ダ抽象的カモ知レマセ
  ヌガ又色々御意見ヲ伺ツタ上デ申上ゲタイ
  ト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=93

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• 094・森田重次郎

  ○森田(重)委員　私ノ質問モ少シ漠然トシ
  タモノデアツタラウト思ヒマスノデ、ソレデハ
  私ノ見マシタ皇道的世界觀ノ一ツノ性格ハ
  斯ウアツタラドウデアラウト云フヤウナ愚
  見ヲ申上ゲマシテ、サウシテ御意見ヲ御伺
  ヒ致シタイト思ヒマス、言フマデモナク大
  東亞戰爭ノ根本性格ト云フモノハ、八紘爲
  宇ノ理想、卽チ萬邦ヲシテ各〓其ノ所ヲ得シ
  メ、兆民ヲシテ其ノ堵ニ安ンゼシムル爲メ、
  道義ニ基ク東亞新秩序竝ニ世界新秩序ノ建
  設ヲ圖ルニアルノデアリマシテ、是ハ恐ラ
  クハ、人類有史以來未ダ曾テナカツタ大聖
  戰デアリ、且ツ大偉業デアルト言ツテ宜イ
  ト私ハ思フノデアリマス、ソレデアリマス
  カラ我々ハ此ノ目的ヲ完成スル爲ニハ、今
  直面シテ居ル現戰局ニ全力ヲ傾注シナケレ
  バナラヌコトハ無論ノコトデアリマスガ、
  是ト同時ニ聖戰ノ持ツテ居ル全人類的意義
  ヲ世界ニ宣明致シマシテ.敵國ノ持ツテ居
  ル不法ナル戰爭目的ヲ粉碎シナケレバナラ
  ナイト思フノデアリマス、固ヨリ我ガ肇國ノ
  理想ガ天皇歸一ノ國體ニ體現セラレマシ
  テ、「理事一如」ノ姿ニ於テ實現セラレテ居リ
  マスルコトハ、三千年ノ歷史ニ照シマシテ明
  カナコトデアリマスルカラ、今更言擧ゲノ
  必要ハナイデハナイカト、斯ウ言ヘバ言へ
  ナイコトモアリマスマイ、併シナガラ私ハ
  サウハ思ヒマセヌ、道ガ明カナラウトスル
  ニハ必ズ其ノ道ノ對比者ヲ求ムルト云フノ
  ガ自然ノ原則デアリマス、ソレデアリマス
  カラ、我ガ皇道發展ノ歷史ヲ見マシテモ、
  古來儒〓ガ渡ツテ參リマスル際ニハ、儒〓
  ニ依ツテ日本ノ光ト云フモノハ益〓輝キ、又
  佛〓ノ渡來致シマスルヤ、若干ノ摩擦ハア
  リマシタケレドモ、是レ亦日本ノ本當ノ
  皇道ノ姿ヲ說明、註釋スルニ役立ツタト云
  フ次第ナノデアリマス、明治ノ世ノ中ニ
  ナリマシテカラ、泰西ノ思想ガ入リマシ
  テソコニ色々ノ經緯ガアツタニハ致シ
  マシテモ、兎ニ角ソレ等ノ色々ノ諸思想ト
  云フモノヲ超剋致シマシテ、統一サレタ姿
  ニ於テ今日ノ戰爭ニ私ハ突入スルコトガ出
  來タモノダト、斯ウ見ル、ソコデ我々ト致シ
  マシテハ此ノ湛ヘラレタ生命力、「皇道ノ體現
  者我ガ日本」、ハ對立スル思想ニ遭遇スル每
  ニ、一ツノ根本態度ヲ持ツテ居リマス、ソレハ
  決シテ思想的自己閉鎖ニ陷リマセヌ、能ク
  之ヲ攝取シ、能ク之ヲ選擇シ、益〓其ノ本質
  ヲ闡明ナラシメテ、愈〓生成發展ノ度ヲ加へ
  テ參ツタモノガ今日ノ姿デアリマス、此ノ
  コトヲ考ヘマスルト、全ク是ハ我ガ國體ノ
  特質ト我ガ民族生命力ノ拔群ナルモノデア
  ルコトヲ物語ルモノデアリマシテ、此ノ生
  活態度ト云フモノハ、我ガ民族ノ生活指針
  トシテ將來モ取ラルベキモノデアルト云フ
  コトヲ私ハ確信シテ疑ヒマセヌ、今ヤ固牢
  デアル蔣政權竝ニ米英的覇道主義打倒ヲ具
  體的目標ト致シマシテ、思想的ニモ一大鬪
  爭ヲ展開シテ居ルノデアリマスルコトハ、
  過般ノ大東亞會議ニ於ケル大東亞宣言ニ徵
  シマシテモ、洵ニ大東亞共榮圈建設ノ原則
  的礎石ヲ置カレタト見ルノデアリマシテ、
  私等ハ非常ナ喜ビトスルモノデアリマス、
  ソコデ此ノ際我々ガ考ヘナケレバナラナイ
  ノハ宣言ガ分ルシ、大體ノ綱領ハ分ツテ
  居ルノデアリマスガ、其ノ網領ハ只今大臣
  ノ御意見デモ、必ズシモ十分ダトハマダ考
  ヘラレナイノデ、モツト〓究ノ度ヲ進メル
  必要ガアルト云フ御意見ノヤウニ承ツタノ
  デアリマスガ、洵ニ其ノ通リナノデアリマ
  シテ、我々ハ只今ノ大東亞宣言ノ根本基調
  ヲナシテ居ル皇道ニ對スル根本的思想體系
  ト云フモノヲ玆ニ創造形成シ、而モ此ノ上
  ニ立ツタ政治、經濟、文化等、萬般ニ亙ル
  實踐原理ヲ玆ニ確立シナケレバナラヌ、バ
  ラバラデハ駄目デアル、皇道的世界觀ハ皇
  道的世界觀、其ノ他ノ經濟ノ原理ハ經濟ノ
  原理トバラ〓〓デハ駄目デアル、ヤハリ一
  貫シタルモノトシテ是ハ樹テラレナケレバ
  ナラナイ、斯ウ云フ風ニ根本哲理ガ立ツテ、
  而モ其ノ裏ニハ根本的ナ日本ノ信仰ガ要ル、
  ソレカラ根本哲理、其ノ次ニ此ノ根本哲
  理ガ實際生活ニドウ具現スルカ、世界經營
  ニドウ具現スルカト云フ、其ノ一貫セル一
  ツノ體系ト云フモノガ其處ニ立ツ、是ノ闡
  明ト大宣布ニ依ツテ初メテ世界各民族ノ間
  ニ、本當ニ根本的ナ皇道了解ノ基調ト云フ
  モノガ樹立スルモノダト私ハ思フノデアリ
  マス、此處マデハドナタモ御贊成ダラウト
  思ヒマス、ソコデ私其ノ次ニ一步入ツテ申
  上ゲタイコトハ、一體此ノ思想體系ノ根本
  的性格ト云フモノハドウナラナケレバナラ
  ナイモノカ、ソコデ私ハ此ノ片鱗ニ觸レテ
  見タイ、ソレハ結局、我ガ國體ノ本義ヲ明
  徵ナラシメ、我ガ國ニ妥當スルバカリデハ
  ナク、同時ニ全人類ニ妥當スル普遍價値ヲ
  持ツモノデナケレバナラナイト云フコトデ
  アル、換言スレバ、ソレハ日本的具體特殊
  個性デアルト共ニ、世界的普遍價値ヲ持ツ
  テ居ル具體卽普遍ノ哲理ニ立脚スルモノデ
  ナケレバナラナイノデアリマス、ソレニ依
  ツテ米英的自由主義等々ノ思想ヲ超剋致シ、
  而モソレハ燦然トシテ世界ニ其ノ比疇ヲ見
  ザル底ノ綜合價値ヲ持ツモノトテラナケレ
  バナラナイノダト私ハ思フ、固ヨリ斯ウ云
  フ思想體系ヲ樹立スルニ當リマシテハ色々ノ
  方法ガアリマセウ、日本ニモ色々ノ方法ガ
  アルヤウデアリマス、併シナガラ若シソレガ
  古イ方法ニ泥ンデ、固牢ナル觀念的ナ方法ニ
  立籠リ、他ノ方法ヲ排擠スルコトヲ是レ事
  トスル、所謂私ノ言フ閉鎖的態度ニ陷ルコ
  トガアツタナラバ、是ハ私ハ斷ジテイケナ
  イト思フ、ト同時ニ他面思想統一ノ時代的
  役割-卽チ今ノ日本ハ思想統一ガ大事ダ
  ト云フ意味ニ於テ、其ノ思想統一ノ面ニバ
  カリ目ガ眩レ、其ノ統一ノ方法ニ急ナルノ餘
  リ、我ガ民族ノ持ツテ居ル叡智的創造力ト
  云フヤウナモノヲ抑制スルヤウナコトデアリ
  マシテハ、純ニシテ淳乎タル皇道的世界觀ノ
  樹立ト云フコトハ到底望ミ得ナイコトニナル
  ト思フノデアリマス、若シサウ云フヤウナ態
  度ガアツテ、サウシテ私ノ申上ゲルヤウナ
  値打ノアルモノノ體系ガ出來ナイト云フコト
  デアリマスルナラバ、ソレハ大東亞戰爭ノ根
  本性格ニ鑑ミマシテ、我ガ國ノ將來ニ取ツテ
  洵ニ悲シムベキ現象ダト思フノデアリマス、
  今ヤ大東亞戰爭ノ現段階ハ、私ガ今申上ゲ
  マシタヤウナ思想體系ノ樹立ヲ必至トスル
  所マデ參ツテ居ルノデアリマス、デアリマ
  スカラ、政府ハ此ノ點ニ鑑ミマシテ、速
  カニ日本民族ノ叡智的適格者、繰返シテ
  申シマスガ、日本民族ノ叡智的適格者、之
  ヲ剩ス所ナク動員シテ欲シイ、サウシテ之
  ニ對シテ文部省ハ理解アル態度ヲ以テ〓究
  ノ機會ヲ與ヘテ、私ガ今申上ゲマシタヤウ
  ナ根本的ナ哲理觀、其ノ哲理觀カラ脈絡ヲ
  持ツ一貫セル科學體系、サウ云フモノヲ樹
  立サセルコトガ、文部省トシテハ目下ノ一
  番大事ナ政治問題トシテ取上ゲナケレバナ
  ラナイ問題デハナイカト私ハ思フノデアリ
  マス
  ソコデ結論トシテ申上ゲマスコトハ二ツ
  ニナリマス、一ツハ今申上ゲマシタヤウナ
  叡智的適格者ヲ剩ス所ナク動員スル、是ガ
  一ツデアリマス、ト同時ニ、文部省附設ノ
  國民精神文化〓究所ノ今マデ執ツテオイデ
  ニナラレタ態度ニ付テ、私ハ再檢討ヲシテ
  戴キタイト云フ希望ヲ持ツモノデアリマス、
  ト云フノハ、アノ國民精神文化〓究所ノ御
  執リニナラレタ態度ト云フモノハ、時代的
  ナ役割ヲ持ツテ居リマシタ、其ノ點ニ於テ
  ハ私ハ其ノ功勞ヲ認メマス、ト同時ニ此處
  デ〓究セラレタル文獻等モ私ハ親シク見タノ
  デアリマスガ、洵ニ結構ナモノガ澤山アリ
  マスノデ、此ノ點ニ對シテハ私ハ敬意ヲ表
  スルモノデアリマス、併シ今申上ゲマシタ
  ヤウナ、日本ノ世界的ニ持ツテ居ル役割、
  ソレニ對シテ應ヘル思想體系ノ樹立トシテ
  ハ、其ノ〓究ノ方法ナリ〓究ノ方向ナリ、
  又其ノ規模ニ一大革新ヲ加ヘテ、サウシテ
  私ノ今御願ヒ申上ゲタ方向ニ合フヤウニ、
  是ハ擴充サレテ行カナケレバナラナイモノ
  ダ、斯ウ云フ風ニ私ハ信ズルノデアリマス、
  其ノ具體問題トシテノ國民精神文化〓究所
  ノ〓究方法ノ再檢討、ソレカラ日本ノ叡智
  的適格者ノ動員ト云フコトノ二ツノ點ニ付
  テ、具體問題トシテ大臣ノ御所見ヲ承リタ
  イ、ソレト同時ニ、今私ノ申上ゲマシタ大
  體ノ方向ニ付テノ御批判ヲモ得タイト思フ
  ノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=94

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• 095・岡部長景

  ○岡部國務大臣　只今ノ御意見ハ是レ亦全
  然御同感デアリマシテ、眞ニ日本的ナ世界
  觀ト云フモノハ、〓育勅語ニ仰セラレテ居
  ル通リ「之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ
  施シテ悖ラス」ト云フノガ、眞ノ日本ノ相ダ
  ト私ハ考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ大御
  〓ニ副フヤウナ眞ノ日本人ヲ造ツテ行ケバ
  問題ナイト考ヘテ居リマスガ、今御話ノ通
  リ叡智的適格者ヲ動員シテ此ノ理念ヲ確立
  スルト云フコトニ付キマシテハ、昨日モ御
  答辯申シタノデアリマスガ、思想對策ニ付
  テノ追加豫算モ此ノ度出テ居ルヤウナ譯デ
  アリマシテ、ソレ等ニ依リマシテ出來ルダ
  ケノコトハヤツテ行キ、又サウ云フヤウナ
  適格者ニ〓究題目等モ與ヘテ、所謂動員ヲ
  シテ行キタイト考ヘテ居ル譯デアリマス
  ソレカラ國民精神文化〓究所ノコトデア
  リマスガ、是ハ昨年ノ整理ノ際ニ國民鍊成
  所ト合併致シマシテ、〓學鍊成所ト云フコ
  トニ致シマシタ、是ハ〓究ト同時ニ鍊成ト
  云フコト、所謂行學一致ノ修練ヲ積ミツヽ
  學問〓究ヲ進メテ行クト云フコトニ改マリ
  マシテ、今日ハアノ元ノ儘ノ國民精神文化
  〓究所ハナクナツタノデアリマス、併シ此
  ノ仕事ハ固ヨリ必要ナコトデアリマスノデ、
  益^ヤツテ行カナケレバナラヌト考ヘテ居ル
  譯デアリマス、此ノ思想對策ノ上カラ申シ
  マシテモ、是等ノ點ガヤハリ取上ゲラレテ
  行クコトト考ヘテ居ルノデアリマス、ソレ
  カラ尙ホ斯ウ云フ〓究トカ云フヤウナモノ
  ハ、動トモシマスト作文ニ終ル、或ハ出版
  ニ終ルト云フヤウナコトガ多イノデアリマ
  シテ、ソレガ實社會ノ實生活ニ滲ミ込ンデ
  行クト云フ所ニ、中々困難ガアルノデアリ
  マス、サウ云フヤウナ〓究ヲシ、色々ノ良
  イ智慧ヲ拜借シテモ、唯其ノ人達ガ〓究ノ
  報〓ヲシタト云フダケデハ何ニモナラナイ
  ノデアリマシテ、ソレヲ如何ニシテ活カシ
  テ行クカト云フ所ニ又非常ナ工夫モ要リ、
  努力モ要スルコトト考へルノデアリマス、
  是等ハ文〓ノ府ト致シマシテハ、出來ルダ
  ケイ努力ヲシテ行カナケレバナラヌト考ヘ
  テ居ル譯デアリマスガ、固ヨリ是ハ各方面
  ニ滲透シテ參ラナケレバ、全體ノ效果ハ擧
  ツテ來ナイノデアリマシテ、ソコニ又色々
  政治上ノ努力ヲ要スル點ガ多々アルト考ヘ
  テ居ルノデアリマス

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• 096・森田重次郎

  ○森田(重)委員　只今ノ大臣ノ御意見ハ、
  マダ私ニハハツキリ具體問題トシテ御尋ネ
  ノ點ガ明瞭ニナラナイヤウナ感ガ致スノデ
  アリマスガ、是ハモウ少シハツキリサセテ
  戴キタイト私ハ思ヒマス、ソレトモウ一ツ
  附加ヘテ申上ゲテ置キタイコトハ、日本諸學
  〓究ト云ツタヤウナコトデ、相當ノ豫算ヲ
  取ラレテオヤリニナツテ居ルヤウデアリマ
  ス併シ是ハ成程日本諸學ト云フコトニナ
  リマスカラ、日本ト云フコトデ大體統一付ケ
  ラレタ性格ヲ持ツヤウニモ考ヘラレマス、
  併シ今取ツテオイデニナルヤウナ方法デス
  ト結局バラ〓〓ナモノニナルノデハナイ
  カト云フ風ニ私ハ惧レル、兎ニ角此ノ大東
  亞戰爭ニ勝チ拔イタ後ノ思想對策、或ハ文
  化對策-大東亞共榮圈內カラ日本ノ國ニ
  留學ニ參リマシタ際ニ、舊來ノ文科ノヤウナ
  アフ學問、アノ學校デシタラ、共榮圈內カ
  ラ參リマシタ方々ハ恐ラク非常ナ失望ヲ
  感ズルダラウト思フ、是ハドウシテモ今
  申シマシタヤウヲ根本的ナ理念ト云フモノ
  ヲ確立シテ、其ノ理念カラ發生シタ新シイ
  性格ノ學問ハドウナルカト云フコトヲ、今
  カラ〓究シテ置ク必要ガアルト思フ、ソレ
  ハ幸ヒト云ヘバヲカシイデスガ、此ノ戰爭
  ガ起ツタ爲ニ文科ガ一應半バ閉鎖ノヤウナ
  相ニ變リマシタ、隨テ先生方ハ手ノ空イテ
  居ル方ガアル、是ハ天ノ與ヘタ機會デアル
  ト思フ、之ヲ有利ニ利用スルコトヲ御考ヘ
  下サツタナラバ、私ハ非常ニ意味ガアルコ
  トデアルト思フ、禍ヲ轉ジテ福トナス、是ハ
  ハ一ツノ政治的ナ契機ヂヤナイカト私ハ考
  ハトソコデ今申上ゲマシタ根本的ナ理念
  體系ガ確立シテ、ソコカラ整然タル一ツノ
  〓究方法ト云フモノガ確立サレマスカラ、
  其ノ分ケラレタモノハ常ニ根本的ナモノト
  連繫ノアルヤウナ相ニ於テ部分ケシテ〓究シ
  テ行クノダ、斯ウ云フヤウナ方法ヲ文部省
  ガ指導シ、且ツ今閑ニナラレタ先生方ヲサ
  ウ云フ方面ニ動員スルト云フコトモ、非常
  ニ意味ノアルコトデアルト考ヘマス、結局
  結論トシテ御伺ヒ致シタイコトハ、一ツ大
  東亞文化〓究所ト云フモノヲ御建テニナラ
  レタラドウデセウ、ソレハ科學〓究所ノ中
  ニ文科モ御入レナサレタヤウデアリマスガ、
  アレハ理學ノ方ト若干文科ノ方ハ性格ヲ異
  ニスル部面モアリマスルシ、今ノ戰爭ノ狀
  態カラ見マスト、アノ科學的ナ方面ニ動員
  シタノデハ、必ズ文科ノ方ハ輕視サレル憂
  ヒガアルヤウナ氣持ガスル、サウデナク
  大東亞文化〓究所ト云ツタヤウナモノヲ建
  テ、サウシテ國民精神文化〓究所ハモウ
  アノ儘國民錬成所ノ方ニ任セテシマツテ、
  根本的ノモノハコツチノ方へ御讓リナサレ
  タラドウカト云フコトヲ考ヘテ居ル次第
  デゴザイマス、此ノ點ニ付テ一ツ御意見ヲ
  伺ヒタイ

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• 097・岡部長景

  ○岡部國務大臣　具體的ナ問題ヲ二、三御
  擧ゲニナリマシタカラ、之ニ觸レマスガ、
  日本諸學振興委員會、是ハ今日マデ所謂
  日本學ト云ヒマスカ、日本的ナ學問ニ付テ
  九部門ヲ設ケマシテ、ソレニ依ツテ學者ノ
  〓究ヲ隨時發表シ檢討シテ居ルノデアリマ
  シテ、是ハ今日健全ナル發達ヲシテ、各學
  界ニ於テモ重大ナル存在トナツテ參リマシ
  タノデ、今度ノ思想對策ト致シマシテハ、
  此ノ點ニ更ニ力ヲ加へテ參リタイト考ヘテ
  居ル譯デアリマス、ヤハリ日本諸學ノ〓究
  振興ト云フコトニハ、相當貢獻致シテ居ル
  ト信ジテ居ルノデアリマス
  ソレカラ精神科學者ガ丁度手ガ空イタカ
  ラ〓究サセタラドウカ、是レ亦御同感デア
  リマシテ、旣ニ先般ノ閣議決定ニ於テモ、文
  科系統ノ學者ハ〓育面カラ大分手ガ空キマ
  スノデ、此ノ精神科學方面ノ〓究ニハ補助
  金ヲ出シテ之ヲヤラセヨウト云フコトニシ
  テ居ル譯デアリマス、ソレカラ尙ホ今御話
  ノ學術〓究會議、之ニヤハリ文化面ヲ設ケ
  ルコトニナリマシテ、本年度ノ豫算ニ既ニ
  一部費用ハ取レテ居ルノデアリマス、此ノ
  科學方面ノ〓究ガ、御承知ノ通リ今マデバ
  ラバラデアツタモノヲ、今度ノ必要カラ委
  員會等モ設ケマシテ、連絡ヲ圖ツテ其ノ效
  果ヲ擧ゲテ行クコトニ今ヤツテ居ル譯デア
  リマス、文科系統、精神科學方面ニ於キマ
  シテモ同樣デアリマシテ、〓究ガ連絡アリ、
  又オ互ヒニ力ヲ協セテ行クト云フコトニナ
  リマスト、ソレガ本當ニ役ニ立ツ生キタ立
  派ナモノガ出來上ルト考ヘテ居リマスノデ、
  先ヅ兎ニ角此ノ學術〓究會議ニ於ケル精神
  文化系方面ノ會員ト云フモノモ連絡ヲ十分
  ニ緊密ニシテ、所謂共同〓究的ナ形ニ於テ
  其ノ實績ヲ擧ゲテ行クヤウニシテ戴キタイ
  ト考ヘテ居ル譯デアリマス、今大東亞文化
  〓究所ト云フヤウナモノヲ設ケタラドウカ
  ト云フ御意見、是ハ洵ニ結構ナ御意見ト考
  ヘマス、是ガ實現ニハ努力ハシテ見タイト
  考ヘマスルガ、直チニ御約束ハ致シ兼ネル
  次第デアリマス

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• 098・森田重次郎

  ○森田(重)委員　其ノ〓究所ヲ設ケルコト
  ハ色々ノ御都合モアリマセウガ、ドウカ其
  實質的ナ意見ヲ是非實現シテ戴クヤウナ
  方法ヲ採ツテ戴キタイ、特ニ舊來ノトモス
  レバ內ニ籠リ勝チナ、自己閉鎖ニ陷ル傾向
  ト云フコトニ付テハ、特ニ御留意ヲ御願ヒ
  シタイト思ヒマス、モウ戰爭ニ勝ツノデア
  リマスカラ、前途ニモツト雄大ナ構想デ行
  クト云ツタヤウナ用意ハ、學者ノ面ニモ整
  ヘテ置イテ宜シイト思ヒマス
  次ニ御伺ヒ致シタイ點ハ、師範大學ノ創
  設ニ關スル問題デアリマス、是ハ理論トシ
  テハ分ツテ居ルモノノヤウデハアリマスル
  ガ、遲々トシテ實現ノ方向ニマデハマダ達
  シテ居ナイ、何カシラマダ明朗ヲ缺クモノ
  ガアルヤウデアリマスカラ少シ理窟ヲ申上
  ゲテ見タイト思ヒマス、私ノ理窟ヲ申上ゲ
  マシテ大臣ノ御所見ヲ御伺ヒシタイ、我ガ
  皇道ハ決シテ單ナル理ノ道デハアリマセヌ、
  又單ナル實理ノ道デモアリマセヌ、全ク天
  皇歸一ノ信ニ依據スル理事一如ノ綜合的體
  驗ヲ根本性格トシ、全人類解放ノ願ニ立ツ
  モノデアリマシテ、中外ニ普遍シ、古今ニ
  通ジテ謬ラザル三千年不斷ノ傳統的血脈デ
  アルト私ハ考ヘテ居リマス、併シナガラ是
  ハ先憂藤田東湖先生モ嘗テ正氣ノ歌ニ於テ
  誦ジマシタル通リ、時ニ依ツテ危機ガナカ
  ツタノデハアリマセヌ、唯不思議ニモ其ノ都
  度身ヲ挺シテ國體ヲ擁護スル「國師」「正師」
  ガ現ハレマシテ、以テ皇國ヲ萬代ノ安キニ置
  クコトヲ得タノデアリマス、此ノコトハ實
  ニ不可思議ナコトデアリマシテ、我等國民
  ノ銘記シナケレバナラナイ一大因緣事ダト
  私ハ考ヘテ居リマス、所デ斯ウ云フ風ニ何
  カ國家ノ危機ニ際會シタ時ニノミ自然ニ發
  生シテ來ルト云フ姿ノ儘ニ、所謂「師道」ト云
  フモノヲ任シテ置イテ宜イノデアルカドウ
  カ是ガ問題ナノデアリマス、私ハ玆ニ日本
  〓育界ノ反省スベキ根本問題ガアルト考ヘ
  テ居リマス、大東亞戰爭ノ開始ハ、國民ノ
  總テニ國體ノ本義ニ省ミルノ機會ヲ與ヘテ
  呉レマシタ、此ノ自覺ト云フモノガ私ハ〓
  育ノ根本契機トナルモノダト思フ、ソコデ
  私ハ今囘ノ此ノ戰爭ヲ契機トシテ今マデ自然
  發生的ニ出テ來タ皇道ノ傳統的、血脈、滴々
  相續ノ師道、此ノ確立ヲ意識的ニ取上ゲ
  ル時代ガ來タト存ジマス、サウシテ之ヲ常
  住化スル爲ニ〓育本來ノ場ニ師道ト云フモ
  ノヲ取上ゲテ、確實ニ之ヲ把握シ、之ヲ直
  流サセテヤルト云フヤウナ時期ニ到來シタ
  モノダト私ハ思ヒマス、其ノ意味ニ於テ歷
  史的因緣ト云フモノハ正ニ熟シテ居ルト見
  ルノデアリマス、無論先生ト言ヒ、師ト言
  フノデアリマスカラ、ソレハ其ノ人ノ職域
  ニ關スル「理」ト云フモノニ透徹シテ居ルモノ
  デナケレバナリマセヌ、又其ノ與ヘラレタ
  「技」、卽チ技術ニ徹スルモノデナケレバナラ
  ナイコトハ明カデアリマス、併シナガラ國
  ノ師、人ノ師トナル者ハ是ダケデハ足ラ
  マ、卽チ理ニ通ジ技ニ徹スルト云フダケデ
  ハ足ラナイノデアリマシテ、一番大事ナ
  條件ト致シマシテハ國體ノ本義ニ徹スル、
  肇國ノ理想ニ燃ユル理事一如ノ傳統的血脈
  ヲ最高ノ姿ニ於テ如實ニ體驗スルト云フコ
  トガ、其ノ先行的ナ資格デナケレバナラヌ
  ト私ハ思フノデアリマス、之ヲ缺如スル者
  ニ至リマシテハソレハ單ナル知識ノ師デア
  リ、技術ノ師デアリマシテモ、決シテ本當
  ノ意味ノ國ノ師トナルコトハ出來ナイト私
  ハ考ヘルノデアリマス、明治、大正、昭和
  ノ御代ヲ通ジ、此ノ基準ニ照シテ見マシテ不
  適當デアツタト云フ大學、專門學校ノ先生
  ガ果シテナカツタデアリマセウカ、文理科
  大學、高等師範學校ノ〓育ヲ、果シテ從前ノ
  儘デ宜イトスルノデアリマセウカ、本立ツ
  テ道生ズデアリマス、其ノ本源ヲ忘レ去ツ
  テ枝葉末節ニ拘泥シテ居ルト云フコトハ
  本當ノ大政治デアルトハ言ハレマセヌ、曩ニ
  ハ師範學校ノ昇格ヲ見マシタ、今又靑年學
  校〓員養成所ノ昇格ヲ見マシタコトハ、洵
  ニ一大達見デアリ、文部省ニ敬意ヲ表シマ
  ス、併シナガラ今昇格致シマシタ是等ノ學校ノ
  先生ノ養成ヲ舊來ノ儘ニ放置シテ置クト云
  フコトデアリマスナラバ、結局是ハ道統ノ
  本源ヲ培フコトヲ忘レタ仕儀トナリマスル
  ノデ、恐ラクハ畫龍點晴ヲ缺クモノデアル
  ト云フ譏リヲ免レナイデアラウ、此ノ故ニ
  我々ハ過年來、支那事變及ビ大東亞戰爭ノ
  現局ト我ガ國ノ世界的使命ノ重大ナルニ鑑
  ミ、師道ノ根本ヲ一元的ニ確立スルコトガ我
  ガ國〓育界ノ重要命題デアルト信ジマシテ、
  屢〓當局ニ對シテ具申シ、師道ノ根本道場ト
  シテノ師範大學、或ハ師道大學ナルモノヲ創
  設スルヤウニト云フコトヲ何遍モ御願ヒ申
  上ゲタノデアリマス、而モ前ノ橋田文部大
  臣ハ此ノ前ノ議會ノ委員會ニ於テ、來年度
  ハ是非實現サセルト云フヤウナ責任アル答
  辯ヲ得テ居ツタト思フノデアリマス、然ル
  ニ今囘ノ議會ニ於テハ、マダ是等ニ對シテ
  其ノ具體案ガ講ゼラレタト云フコトヲ聞イ
  テ居リマセヌ、私ハ政治ト云フモノハ機ダ
  ト思ヒマス、其ノ機ヲ失シタナラバ駄目ダ
  ト思フ、ソコデ戰ヒノ現況ト戰ヒノ現段階
  ト云フモノハ、師範大學ヲ設ケル機ニ到ツ
  テ居ルト斯ウ思ヒマス、實際今マデノ先生
  ヲ養フ方法ト云フモノハ、洵ニ殘念ナ方法
  ガ澤山アリマス、本當ニ人ノ先生トナル人
  ヲ養成スル場所トシテハ不充分デアルト思
  ハレル所モアルニモ拘ハラズ、ヤハリ其ノ
  儘ニシテ置クト云フコトハ、非常ニ遺憾ニ
  存ズルモノデアリマス、ドウカ此ノ根源タ
  ル師範大學ヲ先ヅ創設スベキデアルト思
  フノデアリマス、是ガ定マツタ後他ノ色々
  ノ施設ガテサルベキモノダト思フノデアリ
  マス、ソレハ文部省ト致シマシテハ色々ノ
  現實的ナ御苦ミガアリマセウ、アレモヤリ
  タイ、是モヤリタイガ、一遍ニハ中々出來
  ナイノダ、斯ウ云フ所カラ順次ニト云フ御
  考ヘモアリマセウケレドモ、此ノ機ヲ失ツ
  テハイケマセヌ、ドウカ來年ノソレマデニ
  ハ私等ノ申上ゲルコトガ若シ適當デアルト
  云フ御考ヘデゴザイマシタラ、是非是ガ實
  現ヲ圖ツテ戴キタイト考ヘルノデアリマス、
  大變理窟ツポイコトヲ申上ゲマシタガ、何
  カシラ今マデ解決サレテ居ナイト云フ所ニ、
  理念的ニ明瞭ニナラナイ所デモアルカト自
  分ガ考ヘマシタモノデアリマスカラ、少シ
  理窟ツポイコトヲ申上ゲタヤウナ次第デア
  リマス、ドウカ大臣ノ率直ニシテ明快ナル、
  而モ勇氣ニ滿チタ御答辯ヲ承リタイト思ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=98

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• 099・岡部長景

  ○岡部國務大臣　御意見傾聽致シマシテ洵
  ニ其ノ通リト考ヘマヌ、〓育ノ問題、師道ノ
  確立ト云フコトハロデハ屢〓、申シマスケレド
  モ、實際ソコニハマダ到達シテ居ラナイ點
  ガ多々アルト考ヘマス、今ノ師範大學ト云
  フ問題ノ如キハ、殊ニ其ノ最モ頂點ヲ現ハ
  ス重大ナ問題デアリ、必要ナ問題デアルコ
  トトハ考ヘマスガ、今日一ツノ困難ハ施設、
  設備ト云フコトガ非常ニ困難デモアリマス
  ルシ、又他ニモ大學或ハ他ノ高等師範、普
  通師範、其ノ他ノ學校トノ關係等ニ付キマ
  シテモ關聯ガナイトハ申セナイノデアリマ
  ス、是等ニ付テモ色々〓究ハシテ參リマシ
  タ、併シマダ結論ニ到達致シマセヌノデ、
  今囘ハ提案スルニ至ラナカツタノデアリマ
  スガ、昨年ノ大臣ノ御答辯ハ私モ聽イテ居
  リマシタ、決シテ之ヲ無視シテ居ル譯デハ
  ナイノデアリマスガ、遺憾ナガラ今年ハ提
  案出來ナカツタ譯デアリマス、篤ト是ハ〓
  究モシ、唯間ニ合セデナク、本當ニ此ノ師
  範〓育全般ヲ通ジテ考ヘテ行カナケレバナラ
  ヌコトト思ツテ居リマス

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• 100・森田重次郎

  ○森田(重)委員　私ノ御願ヒ致シタイコト
  ハ、來年是非ヤリタイト云フ御答辯ヲ得タ
  イノデアリマスルケレドモ、ソレハ大臣ト
  シテ明瞭ニナラナイト云フコトニナリマス
  レバ、是ハ仕方ガナイト思ヒマス、〓シ是
  ハ只今ノ御答辯ニモアリマスルヤウニ、來年
  度ニハ是非一ツ實現サセテ戴キタイ、此ノ
  問題ニ付テ文部省トシテ現實的ニ御困リニ
  ナル點ハ、只今大臣ノ御答辯ニモアリマス
  ルヤウニ、東西兩文理科大學竝ニ高等師範
  ノ存在トノ關係ガドウナルカト云フ點ニ、
  私ハ御苦心ガアラレルト思ヒマス、學校大
  改造ノ問題デアリマスカラ、ソレ等ノ點ヲ
  御考ヘナサルコトハ固ヨリ大切ナコトダト
  ハ考ヘマスガ、併シ是ハ更始一新ノ時代ガ
  參ツテ居リマス、兎ニ角三千年來ナカツタ
  大偉業ト大創業ヲヤツテ居ル日本デアリマ
  スカラ、〓育ノ體制ト云フモノモ是ニ相應
  ハシイ偉大ナル生命ヲ裏付ケルヤウナモノ
  ヲ必要トスルト思フノデアリマス、一體私
  ハ文部省ハモツト生命力ヲ充實サセナケレ
  バイカヌノヂヤナイカト云フコトヲ考ヘサ
  セラレマス、稅ノ委員會ニ參リマスルト皇
  國租稅觀、財政ノ部ヘ參リマスルト皇國財
  政觀、勤勞ノ部ヘ參リマスルト皇國勤勞觀、
  ソシテ其ノ言フ所ハ總テ魂ダ、斯ウナンデ
  ス、而モ其ノ魂ノ根本ヲ培フ大本山デアル
  文部省ト云フモノヲ、何カシラ大藏省デモ
  繼子扱ヒニスルソデハナイカト思ハレルヤ
  ウナ傾向ガアリマスルコトハ、私ハ非常ニ
  殘念ナコトダト考ヘテ居ル、私ノ見方カラ
  スレバ、文部省ノ最負ニナルカモ知レマセ
  ヌガ、軍部ハ別トシテ、外ノ各省ガ全部束
  ニナツテ丁度文部省一ツト同ジ位ノ力デ對
  立スル位デ宜イノダ、ソコマデ文部省ノ指導
  力ガ出テ來ナナケレバナラヌト考ヘテ居リ
  マス、是ハ是非文部大臣一世ノ知勇ヲ揮ウ
  タ實行ニ入ツテ戴キタイ
  ソコデ最後ニ一ツ御願ヒガアリマス、文
  部省ノ局長サントカ次官ノ方々ヲ少シ地方
  ヘ〓ハシテ、先生方ノ實際ノ苦心ト、働イテ
  居ル場面ヲ見サシテ戴キタイ、大臣モ機會ア
  ル每ニ外出テオイデニナラレルヤウデア
  リマス、是ハ洵ニ良イ事デアリマス、私等
  代議士ヲヤツテ居リマスモノガ、東京ニ
  一寸長ク居リマシテ田舍ニ歸リマスト、實
  情ガ直グ變ツテ居リマス、實ニ今日程目マ
  グルシイ位日本ノ實勢ノ變ルコトハアリマ
  セヌ、ソレヲウツカリ中央ニダケ居リマシ
  テ、中央ノ政務ニ精ヲ出シテ居サヘスレバ
  何デモ巧ク行クノダト御考へニナラレタ
  ラ、本末〓倒ノコトガ起ル危險性ガアル、
  而モ其ノ時官ノ威力ヲ以テヤルノダカラ、
  之ニ從フノデナケレバ駄目ヂヤナイカト云ツ
  タヤウナコトニナリマスレバ、是ハ能率ノ上
  ラナイ大キイ原因トナルノデアリマス、ソ
  レデアリマスカラ第一線ニ立ツテ實證的ナ
  場面、現實ノ苦心ノ所ニ觸レテ見ナケレバ、
  實相把握ガ困難ダト思フノデアリマス、文
  部省ハ其ノ點ニ於テ宙ニ浮イテ居ル點ガア
  ルノデハナイカ、ソレハドウシテモ局長
  サンノ部屋ニ入ツテ居ラレテ、每日見ルモ
  ノハ書類ダケデ、アトハ判ヲ付イテ居ルダ
  ケデハ本當ニ事務的ニナツテ、日本ノ實地
  ノ苦悶ト生命力カラ離レ去ル虞ナシトシナ
  イノデアリマス、此ノ點ヲ私ハ大臣ニ特ニ
  御願ヒ申上ゲタイト思フノデアリマス、是
  ハ餘談ニ亙ツテ恐入リマスガ、私ハ島木赤
  彥先生ニ私淑シテ居リマス、アノ人ノ民謠
  論ニ依リマスト、日本民族ノ生命力ハ古事
  記ト萬葉ニ限ル、ソレ以下ノ古今、新古今
  ニ至ツテハモウ生命力涸渴シテ問題ニナラ
  ナイト言フノデアリマス、詰リ結局貴族化
  シテ、其ノ以後ノ短歌ト云フモノハ日本民
  族ノ素朴ナル生命力ヲ表徵シテ居ナイ、斯
  ウ云フノデアリマス、私ハウツカリスルト
  文部省モ貴族化致シマシテ、平安朝末期ノ
  ヤウナ風ニナツテ、實勢ニ乏シイ、能率ノ上
  ラナイヤウナ姿ニ陷ルノデハナイカト云フ
  コトヲ憂ヘマス、是ハ洵ニ憂フベキ事柄デ
  アリマスカラ、ドウカ文書ノ處理ナドハ課
  長サンニ御任セ下サルナリ何ナリシテ、勇
  敢ニ局長サンヲ地方へ出シテ戴キ、同時ニ
  大臣モ是非各方面ヲ御〓ハリ下サツテ、先生
  方ト膝ヲ突キ合セテ激勵ヲ與ヘルト同時ニ、
  アノ方々ノ率直ナ苦心ヲ一ツ御聽取下サル
  ヤウナ機會ヲ御作リ下サルヤウニ、特ニ御
  願ヒ申上ゲマス

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• 101・岡部長景

  ○岡部國務大臣　至極適切ナ御意見デアリ
  マシテ、私自身トシテハ出來ルダケノ機會
  ニ、色々ノ方面ニ接觸シテ見聞モ弘メ、知
  識モ得タイト考ヘテ居リマス、又局長或ハ
  課長等モ相當ニ出張シテ、實ハ我々トシテ
  ハ役所ニ居ナイ場合ガ相當アツテ、仕事ノ
  上ニモ差支ヘルヤウナコトモナイデハナイ
  ノデアリマス、是モ併シ結構ナコトト思ツ
  テ居ル譯デアリマス、今ノ租稅觀等ニ付キ
  マシテ、或ハ勤勞觀皆今文部省ノ方ノ應援
  ヲ求メラレマシテ、租稅觀編修ノ方面ニモ
  〓學局長、總務局長等モ參加シテ居リマス、
  勤勞觀ノ方ニモ參加シテ居リマス、今ハド
  チラカト申シマスト、事實ニ於テ皆相當文
  部省ニ賴ツテ來テ居リマス、是ハサモアル
  ベキコトト考ヘマスルガ、益サウ云フ風
  ナ方面モ協力シ、或ハ言葉ハ大キ過ギルカ
  モ知レマセヌガ、指導モシテ行キタイト考
  ヘテ居ル譯デアリマス、尙ホ古事記等ノコ
  トデアリマスガ、是ハ中等學校〓科書等ニ
  ハ古事記ヲ相當多ク採入レマシテ、今ノ御
  趣意ニ副フヤウナコトニ編修サレテ居リマ
  ス、一應御意見ヲ承リマシテ尙ホ能ク御〓
  ヘヲ戴キタイト思ヒマス

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• 102・森田重次郎

  ○森田(重)委員　私是デ終リマス

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• 103・小柳牧衞

  ○小柳委員長　ソレデハ水谷君

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• 104・水谷長三郎

  ○水谷委員　私ハ先ヅ最初ニ學制改革ノ斷
  行サレマシタ其ノ後ノ模樣ニ付テ御尋ネヲ
  シタイト思ヒマス、學制改革ハ昭和十七年
  十二月四日ニ閣議決定ニハ相成ツタノデゴ
  ザイマスガ、其ノ後樞密院ニ於テ非常ニ論
  議ヲ重ネラレテ、ヤツト十八年一月十三日
  ノ樞密院ノ本會議デ正式認可ガアツタコト
  ハ御承知ノ通リデゴザイマス、此ノ學制改
  革ハ國防、產業、或ハ人口政策ノ立場カラ
  行ハレタモノデゴザイマシテ、我々ノ目ニ
  强ク映ズルノハ修業年限ノ短縮ト云フコト
  デアル、隨テ樞密院ノ場合ニ於テモ、此ノ
  學制改革ト共ニ學生生徒ノ學力ノ低下ト云
  フコトガ、非常ニ大キナ問題ニナツタノデ
  ゴザイマスガ、文部當局ハ此ノ割期的ナル
  學制改革ヲ斷行スルニ當ツテ、修業年限ヲ短
  縮シテ涑カニ學徒ヲシテ實務ニ就カシメル
  ヤウニスルト云フ以外ニ、文部當局ノ學制
  改革ノ狙ヒハ一體何處ニアツタカ、ソレニ
  對シテノ對策ハドノヤウニサレテ居ルカト
  云フ點ヲ、先ヅ最初ニ御聽キシタイト思ヒ
  マス

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• 105・藤野惠

  ○藤野政府委員　昨年ノ七月カラ實施ニ移
  サレマシタ中等學校制度乃至高等學校、專
  門學校ニ通ジマスル學制ノ改革ハ、仰セノ
  通リ國防、產業、人口等ノ要請ニ基イタモ
  ノデアリマシタガ、此ノ狙ヒトスル所ハ年
  限ノ短縮ノミデナク、是ト共ニ其ノ〓育ノ
  內容ヲ刷新致スト云フ點ニアルノデアリマ
  ス、卽チ其ノ〓育內容ノ刷新ガ、旣ニ改革
  セラレマシク國民學校制度ト一貫セルモノ
  トシテ、所謂國民ノ鍊成ヲ以テ一貫致シマ
  ス建前カラ、中等〓育或ハ專門、高等ノ〓
  育ヲ通ジマシテ、國民ノ鍊成ト云フコトヲ
  以テ一貫スル新タナル〓育內容ヲ盛込ムト
  云フコトニ主眼ヲ置イタ次第デゴザイマス

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• 106・水谷長三郎

  ○水谷委員　此ノ學制改革ノ功罪ト申シマス
  カ、其ノ後ノ有樣ヲマダ一年モ經タナイ今日
  ニ於キマシテ御尋ネスルコトハ、非常ニ無理
  デアルコトハ私モ十分了承スルノデゴザイ
  Wく、併シナガラヤハリ大體ノ目安、見透
  シハ立テ、今後ニ於ケル努力目標トスルコ
  トハ非常ニ必要デアラウト思ヒマス、仰セ
  ノ通リ去年ノ四月カラ行ハレタ學制改革ハ、
  單ニ戰時下ノ臨時措置デアツテハナラナ
  イ、戰時下ノ臨時措置トハ根本的ニ異ツタ
  モノデナクテハナラナイコトハ私モ十分認
  メル、隨テ是ガ單ニ十六年ニ行ハレタ卒業
  ノ繰上ト同ジヤウニ、修業年限ノ短縮ダケ
  デアツテハナラナイト云フコトモ十分ハツ
  キリシナクテハナラヌト思ヒマス、卽チ言
  フマデモナク〓育內容ノ根本的刷新ト云フ
  モノハ、國民學校令ニ依ツテ面目ヲ一新シ
  タ初等〓育ニ對應シテ、中等學校〓育、或
  ハ高等學校〓育及ビ專門學校〓育竝ニ師範
  〓育ヲ通ジマシテ、皇國ノ道ニ則リ、國民
  鍊成ヲ一貫不動ノ〓育目標トシナクテハ
  ナラナイト云フコトハ、私モ十分分ツテ居
  ルノデゴザイマスガ、ソレデハ此ノ一年ニ
  垂ントスル初年ノ一年ニ於キマシデ、此ノ
  劃期的ナル學制改革ト云フモノガ、良イ面
  ニ於テハドノヤウニ現ハレテ來タカ、又惡
  イ面ニ於テハドノヤウニ現ハレテ來タカト
  云フコトハ、大體察知出來ルヂヤナイカ、
  隨テソレニ對スル今後ノ對策ト云フコトモ、
  是ハ十分文部當局トシテハ考ヘナクテハナ
  ラヌノデハナイカト思ヒマス、私ハ劃期的
  ナル學制改革ト云フモノハ、高度國防國家
  完成ノ上カラ申シマシテ、是ハ尤モノコトデハ
  アリマスガ、併シ又他面〓育ノ問題ハ所謂
  國家百年ノ大計デゴザイマシテ、サウ云フ
  點モ能ク考ヘマシテ、文部當局ノ責任ト云
  フモノハ極メテ重且ツ大ナリト言ハナケレバ
  ナリマセヌ、隨テ劃期的ナル學制改革ガ、
  僅カ一年デハゴザイマスガ、其ノ現ハレタ
  ル良イ面、惡イ面ト云フモソニ對シテハ、
  文部當局トシテ十分御〓究ニナツテ居リ
  又其ノ對策ガナクテハナラヌト思ヒマスガ、
  其ノ點ニ關スル御所見ハ如何デアリマスカ

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• 107・藤野惠

  ○藤野政府委員　只今重ネテ御質問ヲ賜リ
  マシタ點ニ付キマシテハ仰セノ通リマダ
  一年ノ經過デアリマスカラ、之ヲ的確ニ申
  上ゲルコトモ出來マセヌガ、大體ノ我々ノ
  觀測致シテ居リマス所ヲ率直ニ申上ゲテ見
  マスト、昨年四月以來學制ノ改革ハ、〓育
  界ハ固ヨリデアリマスガ、學徒一般ニ非常
  ナ影響ヲ及ボシ、其ノ精神的方面ニ於テ此
  ノ非常時局ニ對處スベキ學徒ノ責任ト云フ
  コトニ付テハ、內省的ナル、反省的ナル、
  サウ云フ面ハ非常ニ强クナツタト思ハレル
  ノデアリマス、現ニソレ等ノ現ハレノ一例
  トシテ申上ゲマスレバ、昨年ノ六月實施致
  シマシタ學徒戰時動員體制確立要綱ニ基キ
  マスル、或ハ國防方面ノ訓練乃至勤勞動員
  方面、各方面ニ於ケル學徒ノ精進努力ノ有
  樣ト云フモノハ、是ハ中等程度、高等、專
  門程度ヲ問ハズ、殆ド之ヲ通ジマシテ其ノ
  熾烈ナル責任乃至訓練ヲモノトモセズ、自
  ラ進ンデ之ヲ求メル氣持、ソコニ此ノ非常
  時下ニ於ケル學徒ノ新タナ、本當ニ凛々シ
  クモ又雄々シイ姿ト云フモノヲ我々ハ見ル
  コトガ出來タト思フノデアリマス、殊ニ又
  最近ニ於ケル學徒ノ出陣ト云フヤウナ場合
  ニ際シマシテモ、學徒ノ心構ヘハ洵ニ我々
  トシテ心强ク又力强ク感ズルモノガアリマ
  ス、是等モ亦一面最近ニ於ケル〓育ノ趨向
  ト、ソレカラ學徒ノ自ラ求メテ精進努力ス
  ル氣持ガ、ソコニ具現セラレタモノト云フ
  風ニ思ハレルノデアリマス、同時ニ又一面
  ニ於テ訓練的ナモノ、指導的ナモノニ對シ
  テ、學徒ハ實ニ率直ニ又素直ニ之ヲ受入レ
  ルト云フ氣持ト同時ニ、我々ハ實ハ屢〓、斯ウ
  云フコトヲ聞クノデアリマス、學徒ノ方面
  ニ於テ自立的ナル、自發的ナル一ツノ態度
  ト〓究的ナ働キト活動ト云フモノガ、鈍
  ル虞ガアルマイカト云フコトヲ屢〓耳ニスル
  ノデアリマス、此ノ點ハ最モ留意スベキ點
  ト心得マシテ、其ノ方面ノ者トモ會合其ノ
  他ノ際ニ於テ、此ノ點ニハ十分注意ハ致シ
  テ居リマスモノノ、幾分ソレ等ノ點ニ於テ
  ハ今後一層用意ヲ致サナケレバナラヌモノ
  ノアルヤウニ感ジテ居ル所デアリマス

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• 108・水谷長三郎

  ○水谷委員　只今學制改革其ノ後ニ於テ現
  ハレタル良キ面ト惡イ面トノ文部當局ノ御
  〓究ヲ承リマシテ、是ハ單リ學制改革ダケ
  デナシニ、其ノ他統制場面ニ現ハレタル長
  所ト缺點ガ、ヤハリ其ノ儘之ニ現ハレテ居
  ルヤウニ私ハ拜承スルノデアリマス、是ハ
  一ツ篤ト其ノ對策ヲ文部當局トシテモ御〓
  究ヲ願ヒタイト思フノデアリマス、就中大
  臣ニ於カレマシテ特ニ御留意ヲ願ヒタイノ
  ハ日支事變此ノ方我ガ國內體制ニ統制ト
  云フコトガ非常ニ强化サレテ參ツテ來タコ
  トハ、私ガ玆ニ說明スルマデモナイノデゴ
  ザイマス、併シナガラ其ノ統制ノ進行ノ順
  序ト云フモノガ間違ツテ居リマシテ、先ヅ
  價格ノ統制、或ハ物ノ統制、企業ノ統制ト
  云フヤウナコトガ先ニ立チマシテ、サウシ
  テ此ノ頃ヤツト思想問題ノ確立ト申シマス
  カ、思想ノ統制-ト云フ言葉ハ惡イコト
  デアリマスガ、サウ云フ場面ガ取上ゲラレ
  テ來タ、是ガ私ハ物心兩方面ノ統制體制ニ
  非常ナ矛盾ヲ來タス大キナ原因デアラウト
  思フノデアリマス、東條總理大臣ハロヲ開
  ケバ機構ヨリモ人デアル、總テハ人ノ問題
  デアルト云フコトヲ言ツテ居ラレル、所ガ
  其ノ人ノ問題ト云フモノガ、所謂物質ノ方
  面ノ統制ガ行ハレテ、肝腎ノ人ノ問題ニ對
  スル所ノ頭ノ切替へ、戰時編成替ヘト云フ
  ヤウナコトガ、非常ニ等閑ニセラレテ來タ
  ト云フコトガ大キナ缺點デアラウト思フ、日
  支事變以來大東亞戰爭ニ至ルマデ-人ノ
  問題、人ノ思想ノ問題ノ確立、戰時編成替
  ヘト云フモノガ行ハレナイデ物ノ統制ガ行
  ハレタ、私ハ茲ニ街學的ニ「ドイツ」ノ「ヒト
  ラー」ヲ引キ出スマデモナク、「ドイツ」ハ物
  ノ統制ヲヤル時ニハ、必ズ先ヅ國民ニ呼ビ
  掛ケテ國民ノ頭ヲ切替ヘル、「ヒトラー」ハ、
  自分ハ國民ニ對シ自國ノ兵隊ニ對シテ、
  自分ガ爲スコトガ出來ル以上ノモノハ
  要求シナイト云フ、アノ有名ナ演說ノ中ニ
  モソレガハツキリ現ハレテ居ルノデアル、
  所ガ日本ハ逆ニ物ノ方ダケガ先ニ行ク、サ
  ウシテ總理大臣其ノ他ノ大臣ハ、議場ニ於
  テハ機構ヨリモ物ヨリモ人デアルト云フコ
  トヲ何時モ言ツテ居ラレルガ、ソレガ施策
  ノ上ニ現ハレタコトハ逆ニ現ハレテ居ル、
  是ハ大キナ問題デアラウト思ヒマス、併シ
  ナガラ此ノ大日本育英會法案カラ申シマシテ、
  遲レナガラニモ斯ウ云フ問題ガ現ハレテ來
  タコトハ決シテ惡イコトデハナイノデアリ
  マシテ、文部當局ト致シマシテハ、此ノ遲
  レタル場面ヲ能ク御考へニナリマシテ十分
  ノ御努力ヲサレナイト、結局日本ノ統制體
  制ト云フモノガ物本位ノ統制ニナリマシテ、
  人ト物トヲ兼ネ合セタ能ク調整ノ取レタ統
  制ガ行ハレナイト云フ所ニ、大キナ缺點ガ
  現ハレテ來ルト云フコトヲ惧レルノデア
  リマスガ、此ノ點ニ對シマシテノ文部大臣
  ノ忌憚ナキ御所見ヲ伺ヒタイト思ヒマス

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• 109・岡部長景

  ○岡部國務大臣　全然御同感デアリマシテ、
  實ハ支那事變勃發當初、昭和十二年ノ十月
  ニ國民精神總動員中央聯盟ト云フモノガ出
  來マシテ、當時私事務局長ヲ仰セ付カリマ
  シテ、精神動員ガ非常ニ必要デアルト云フ
  コトヲ痛感シテ居ツタ者デアリマス、然ル
  ニ其ノ後二年バカリニシテ大政翼贊會ガ出
  來テ、私モ其ノ方ハ關係ガナクナツタ譯デ
  アリマスガ、此ノ統制經濟、所謂物質方面
  ノ統制ト云フモノハ、窮屈ナ物ヲ如何ニ適
  當ニ配給スルカト云フヤウナ問題デアリマ
  シテ、個々ノ人間ガ物質的ニ滿足ガ得ラレ
  ル筈ハナイノデアリマス、之ヲ適當ニ圓滑
  ニ遂行スルノニハ、之ヲ扱フ人間ノ心構ヘガ
  先ヅ出來テ居ラナケレバナラヌコトハ申ス
  マデモナイノデアリマス、今御話ノ通リ、
  此ノ方ガ後廻ハシニナツテ居ツタト云フコ
  トハ、私全然御同感ニ思ツテ居ル者デアリ
  ママ、就任以來モ此ノ點ニ付テハ常ニ機會
  アル每ニ考ヘモシ、話モシ、又施策ニ於キ
  マシテモ、出來ルダケ精神方面ノ動員ト申
  シマスカ、指導ト申シマスカ、サウ云フ方
  面ニ付テヤツテ參リタイト考ヘテ努力シテ
  居ル譯デアリマス、御話ノ通リ其ノ順序ガ
  逆ニ發展シテ來タコトハ遺憾デアリマス
  ガ、=遲レタリト雖モ、益〓今日カラ此ノ方面
  ニ力ヲ加ヘマシテ、今日ノ戰時經濟ガ圓滑
  ニ運營セラレマスヤウニ、心構ヘヲ作ツテ
  行クコトニ重點ヲ置イテ參リタイト考ヘル
  ノデアリマス

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• 110・水谷長三郎

  ○水谷委員　之ニ關聯致シマシテ、例ヘバ
  此ノ度ノ劃期的ナ大東亞共同宣言ト云フモ
  ノノ五箇條ヲ見マシテモ、第一ニハ「大東
  亞各國ハ協同シテ大東亞ノ安定ヲ確保シ、
  道義ニ基ク共存共榮ノ秩序ヲ建設ス」トア
  リ、或ハ又第三ニハ「大東亞各國ハ相互ニ其
  ノ傳統ヲ尊重シ、各〓民族ノ創造性ヲ伸暢シ、
  大東亞ノ文化ヲ昂揚ス」ト云フヤウナ言葉
  ガアリマス、更ニ第五ニ進ミマシテ「大東
  亞各國ハ萬邦トノ交誼ヲ篤ウシ、人種的差
  別ヲ撤廢シ、普ク文化ヲ交流シ」云々ト云
  フコトガアリマシテ、此ノ所謂劃期的テ大
  東亞共同宣言ノ五箇條ヲ見マシテモ、文部
  省ノ心構ヘ、又ハソレニ對スル大キナ責任
  ト云フモノガ當然湧イテ來ナクテハナラヌ
  ト思フノデアリマス、此ノ大東亞共同宣言
  ヲ見マシテモ、道義ニ基ク共存共榮ノ秩序
  ヲ建設スルト言ウテモ、此ノ道義ノ具體的
  內容ハ一體ドウ云フモノヲ言フノデアルカ、
  單ニ道義ニ基クトカ、或ハ道義云々ト云フ
  コトハ敵性國家ノ方モ言ツテ居ル、我々日
  本ダケガ言ツテ居ルノデハナイ、唯問題ハ、
  道義ニ基クト云フ其ノ具體的內容ガ何處ニ
  アルカ、五箇條ノ御誓文ヲ中心ニシテ考ヘ
  ルベキモノカ、或ハ忠孝ノ道ヲ中心ニシテ
  考ヘルベキモノカ、色々我々ハ考ヘナケレ
  バナラヌ、是ハ成程我々日本國民同士ナラ
  バ、道義ニ基クト言ヘバ別ニ具體的內容ヲ
  掘下ゲナクテモ、アヽアヽ云フコトヲ言ツ
  テ居ルノダト云フコトガ分リマスケレドモ、
  是ハ單ニ日本國民ダケヲ相手ニスルモノデ
  ハナシニ、大東亞共榮圈ノ諸民族ヲ相手ニ
  スルモノデアリマスカラ、此ノ具體的ノ內
  容ト云フモノガ如何ニ重大ナモノデアルカ、
  是ハ私ガ說明スルマデモナイト思フノデゴ
  ザイマス、斯ウ云フ點ニ關シマシテ、體
  道義ニ基ク共存共榮ノ新秩序ト云フヤウナ
  モノニ對シマシテモ、是ハ文部當局ト致シ
  マシテモ十分ニ御考慮ヲ御願ヒシタイト思
  ヒマス、言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、大東
  亞共同宣言ノ五箇條ハ、所謂道義ニ基ク新
  秩序ヲ建設スル道義的意義ヲ重視スベキモ
  ノデアルカ、或ハ經濟繁榮ヲ重視シテ、大
  東亞共榮圈ノ資源ヲ開放シ、世界ノ進運ニ
  寄與スルト云フ、サウ云フ經濟的場面ヲ重
  視スベキモノデアルカ、更ニ言葉ヲ換ヘテ
  申シマスレバ、大東亞共榮圈ノ理念ト云フ
  モノヲ何處ニ置カナクテハナラナイカト云
  フコトニ對スル文部當局ノ責任ト云フモノ
  モ、是レ亦重且ツ大デナクテハナラヌト思
  フノデゴザイマス、滿洲事變以來人ハ動モ
  スレバ、日本國民ハ誰デモ贊成デアツテ、
  誰デモ反對出來ナイオ題目ヲ、自分ノ一手
  販賣ノヤウニ言フ癖ガ行ハレタコトハ、是
  ハ所謂言葉ノ魔術ト申シマスカ、サウ云フ
  コトハ非常ニ遺憾ナ事デアリマシテ、ソレ
  ガ國內ダケニ蔓延ツテ居ル時ハ宜イノデア
  リマスガ、國外ニ出ルト云フコトニナルト
  是ハ大變ナコトニナル、隨テ是等ノ點ニ關
  シテモ、文部當局トシテハ高イ所カラ十分
  ノ〓究ト對策ガナクテハナラヌト思フノデ
  アリマスガ、是等ニ對ヌル御用意或ハ御考
  ヘハ果シテドウデアルカト云フコトニ對シ
  テノ、明快ナル御答辯ヲ伺ヒタイト思ヒマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=110

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• 111・岡部長景

  ○岡部國務大臣　御答へ申シマスルガ、確
  カニ大東亞共同宣言ガ單ナル作文ニ終ツテ
  ハナラヌト云フコトハ、申スマデモナイノ
  デアリマシテ、豫算總會ニ於テ總理大臣モ
  其ノ點ハ答辯セラレテ居ルノデアリマス、
  又是ハ決シテ單ナル方便的ナモノデハナク、
  日本ノ眞ノ道義的精神ヲコヽニ織込ンデア
  レガ出來テ居ルト云フコトハ、申スマデモ
  ナイノデアリマス、ソレニ付キマシテ今御
  話ノ通リ、之ヲ具體的ニモツト解說スルモ
  ノヲ文部省トシテモ考ヘナケレバナラヌダ
  ラウト云フ御意見、是モ亦御尤モデアリマ
  シテ、現ニ文部省ト致シマシテハ內閣ノ方
  カラノ話モアリマシテ、大東亞共同宣言ノ
  解說ヲ今起草中デアリマス、何レ遠カラズ
  オ目ニ掛ケルコトガ出來ルヤウニナルダラ
  ウト考ヘテ居リマス

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• 112・水谷長三郎

  ○水谷委員　ソレカラ學制改革ニ付キマス
  ル少シ細カイ問題デアリマスガ、科學局長
  ガオイデデアリマスカラ、チヨツト御尋ネ
  致シタイノデアリマス、學制改革ニ付キマ
  シテ一番私等ノ方デ心配シテ居ルノハ語
  學力ノ低下ト云フ問題デゴザイマス、文部
  省ト致シマシテハ飜譯、飜刻、或ハ複寫ト云
  フヤウナコトニ關シテ、外國文化ヲ正シク
  移植スルト云フ立場カラ、最初ハ大々的ニ
  飜譯局ナルモノヲ設ケルンダト云フコトヲ
  漏レ承ツテ居リマシタガ、ソレカラ後ニ又
  ソレハ科學局ノ飜譯課ト云フヤウナモノニ
  スル、或ハ更ニ小サクスルヤウニ考ヘテ居
  ルト云フヤウナコトヲ聞カサレテ居ルノデ
  ゴザイマスガ、文部當局ト致シマシテハ學
  制改革ニ伴フ語學力ノ低下、隨テ外國ノ文
  化ノ正シキ移植ニ付テノ缺點ヲ補フ爲ニド
  ウ云フ御用意ガアルカ、又ドウ云フ仕事ヲ
  今後ナサル積リデアルカ、其ノコトヲチヨ
  ツト御聽カセ願ヒタイト思ヒマス

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• 113・小柳牧衞

  ○小柳委員長　水谷君、午前ニ薩摩君カラ
  ソレト同ジコトノ質疑ガアリマシテ、詳シ
  イ答辯ガアリマシタカラ··

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=113

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• 114・水谷長三郎

  ○水谷委員　ソレデハ其ノ點ハ重複致シマ
  シタカラ、只今委員長ノ御注意ニ依リマシ
  テ、御答辯ハ薩摩君ノモノヲ戴クコトニ致
  シマセウ、ソレニ關聯致シマシテ文部省ト
  大日本言論報國會竝ニ技術院ノ關係ニ付キ
  マシテ、チヨツト御尋ネシタイト思フノデ
  ゴザイマス、思想問題ニ付キマシテハ是マ
  デモ委員ノ方カラ色々問題ガ提供サレテ居
  ツタノデゴザイマスガ、ソレニ關スル御答
  辯モ皆アツタノデゴザイマスガ、此ノ度生
  レマシタ大日本言論報國會ト云フモノト文
  部省トノ關係ハ一體ドウナツテ居ルカ、卽
  チ大日本言論報國會ノ大キナ使命ハ、國民
  ノ思想動員ト申シマスルカ、國民ニ日本的
  世界觀ヲ植エ付ケルト申シマスルカ、サウ
  云フ場面ガ非常ニ强調サレテ居ルニ拘ラズ、
  唯行政的指導ト云フ場面ノ情報局ノ關係ダ
  ケガハツキリシテ居リマシテ、大日本言論
  報國會ト思想ノ總本山デアル所ノ文部省ノ
  關係ト云フモノガ、非常ニボヤケテ居ルノデ
  アリマス、成程現在ノ行政機構ノ下ニ於キ
  マシテ、其ノ行政監督ト云フヤウナ點ハ情
  報局ガオヤリニナルコトハ、是ハ或ハ、九
  モデアルカモ知レマセヌガ、併シナガラソ
  レニモ拘ラズ、文部省ト大日本言論報國會
  ト云フモノノ關係、所謂大日本言論報國會
  ノ目的ニ鑑ミマシテ、餘リ、ニソレガ稀薄デ
  ハナイカト思フノデゴザイマス、卽チ大日
  本言論報國會ト云ヘバ、我々讀書人カラ見
  マスレバ、皆ソレ〓〓ノ立場カラ尊敬措ク能
  ハナイ所ノ思想人バカリヲ集メテ居リマシ
  テ、ソレ等ノ人々ノ發セラレル言動ト云フ
  モノガ、現在ノ戰時下ニ於ケル日本國民ニ
  與ヘル影響ハ可ナリ大キイノデアル、隨テソ
  レト文部省トノ關係ト云フモノハ十分考慮
  シナケレバナラヌト思フ、更ニ又是ト同ジ
  ヤウニ技術院ノ問題ニ關シマシテモ、是一
  內閣直屬ト云フコトニナツテ居リマスルガ、
  其ノ技術院ノ「メンバー」ハ文部省ノ管轄內
  ニアル各大學ノ專門〓授、サウ云フヤウナ
  方ヲ主タルモノトシテヤツテ行ク、ソレニ
  モ拘ラズソレハ內閣直屬ニナツテ居ツテ、
  文部省トノ繫リハ非常ニ緩ヤカニナツテ居
  ルコヽラニモヤハリ大キナ缺點ガアルノ
  デハナイカト思フノデアリマス、曩ニ同僚
  森田重次郞君ハ、文部省ノ仕事ハ他人カラ
  押付ケラレタ仕事バカリデ、コチラカラ自
  發的ニヤツタノハ少イノハ遺憾デアル、相
  撲デ云ヘバ双葉山ガ受ケテ立ツト云フノハ
  橫綱ノ常道デアルケレドモ、官廳ノ仕事
  ニ於テ受ケテ立ツト云フヤウナコトハ大
  キナ間違ヒデアル、就中現在ノ戰爭ガ經
  濟戰、生產戰デアルト共ニ思想戰デアル
  ト云フコトヲ强調シテ居ル今日ニ於キマ
  シテ、ソレ等ノ點ニ關シマシテ、或ハ生產
  戰ノ上カラ申シマシテモ、或ハ思想戰ノ
  上カラ申シマシテモ、此ノ兩方ト文部省ノ
  關係ヲハツキリサセテ、出來レバ文部省ニ
  一元化スルト云フヤウナコトヲ考フベキ所
  ノ問題デハナイカト思フノデアリマスガ、之ニ
  對スル大臣ノ御所見ヲ承リタイト思ヒマス

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• 115・岡部長景

  ○岡部國務大臣　私ハ大キナコトヲ言フヤ
  ウデアリマスガ、敵國側カラ文部省ハ恐レ
  ラレルヤウナモノニシナケレバナラヌト云
  フ風ニ考ヘテ居ルノデアリマス、其ノ目標
  ニ向ツテ、又其ノ使命ヲ感ジツヽ努力ハシ
  テ居ルノデアリマスガ、個々ノ問題ニ付キ
  マスルト甚ダ其ノ期待ニ反スルモノガ少
  クナイノデアリマシテ、洵ニ遺憾ニ存ジテ
  居ルノデアリマス、今ノ言論報國會トカ技
  術院トカ云フ問題ニ付キマシテハ、是ハ又
  ソレ〓〓成立ノ沿革、理由モアリマスルノ
  デ、十分連絡ハ緊密ニシテ居ルノデアリマ
  スガ、固ヨリ思想面ニ於キマシテハ、又言
  論報國會等ニ於テハ特ニ文部省トシテモ重
  要視シテ居ル譯デアリマス、尙ホ具體的ニ
  政府委員ノ方カラ御說明申上ゲマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=115

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• 116・藤野惠

  ○藤野政府委員　先ヅ大日本言論報國會ト
  ノ關係ニ付テ色々承リマシタガ、洵ニ御尤
  モト存ジマスガ、現狀ハ一應言論報國會ハ、
  其ノ成立竝ニ考ヘ方ガ大體啓發宣傳ト云フ
  コトヲ主ニシテ考ヘラレタ爲ニ、一應情報
  局ニ於テ指導監督サレテ居リマシテ、文部
  省ハ直接ノ關係ヲ持ツテ居リマセヌ、併シ
  ナガラ一昨日或ハ昨日大臣カラ御答ヘガア
  リマシタヤウニ、最近ハ此ノ思想關係ノ各
  廳ガ隔月ニ內閣ニ集マリマシテ會合ヲシテ
  居リマスガ、此ノ機會ニ於キマシテ、應
  行政上ノ諸般ノ連絡ト、又注文ナリ要請ナ
  リ致シテ居リマシテ、其ノ點ニ於テハ斯ウ
  云フ機會ヲ通ジテ、言論報國會等ニ付テモ
  文部省カラ、或ハ情報局ニ連絡ヲ取ルヤウ
  ナコトガ出來ル狀況ニアリマスシ、又今後
  ハ之ヲ十分ニ活用シテ參リタイト思ヒマス、
  尙ホ只今ノ水谷サンノ御意見ニ付キマシテ
  ハ、至極私共モ御尤モニ思フ節ガ多イノデ
  アリマス、此ノ點ハ更ニ考究シテ見タイト
  思ヒマス、-技術院トノ關係ニ付テハ先程大
  臣カラモ御答ヘガアリマシタヤウニ、正二
  一體トナツテヤルベキ筋合ノモノデアリマ
  ス、最近ニ於キマシテハ本省科學局、技術
  院トノ關係ニ於テ、殊ニ連絡ノ密接ナルコ
  トヲ要スル所謂科學動員ト科學〓究動員ト
  ノ關係モアリマスルノデ、是ハ大臣竝ニ技
  術院總裁、副總裁トノ話合デ、實ハ每月共
  同ノ會合ヲ以チマシテ、技術院ノ幹部ト文
  部省ノ幹部ト膝ヲ突合セテ色々御話合ヒ
  ヲ致シ、其ノ間ニ色々共通ナ課題或ハ共ニ
  力ヲ協セテ解決ヲスベキ事項、例ヘバ〓究
  資材ノ問題トカ云ウヤウナコトガアリマス
  ノデ、ソレ等ノ點ハサウ云フ月例ノ懇談會
  デ以テ、相當ニ目標ガ話合ヒデ出來テ行クト
  云フヤウナコトモ行ハレテ居リマス、水谷
  君御示シノ如ク今後ハ十分ニ之ニ力ヲ用ヒマ
  シテ、一體的ナ働キヲスルヤウニ致シテ參
  リタイト考ヘテ居リマス

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• 117・水谷長三郎

  ○水谷委員　大日本言論報國會ガ思想ノ啓
  發ト宣傳ヲ主タル仕事トシテ居ルノデアル
  カラ、是ハ情報局ノ管轄ノ方ガ尤モダト云
  フヤウナ考ヘニハ私ハ承服出來ナイ、ソレ
  ハ非常ニ形式的ナ考ヘ方デアル、ヤハリ宣
  傳啓發サルベキ所ノ思想ト云フモノノ確立、
  統一、サウ云フ問題ガ大キナ問題デアリマ
  シテ、私ハ其ノ問題ヲ重視スルガ故ニ文部
  省トノ關係ヲ特ニ伺ツタノデアリマス、單
  ニ思想ノ宣傳啓發ナラバ、何モアヽ云フヤ
  ウナ知識人ヲ煩ハサナクテモ、新聞ヲ通ジ、
  或ハ週報ヲ通ジ、又代議士ナドモ選擧ニハ
  喋ラナケレバナラヌノデ、ロハ達者デアリ
  マスカラ、宣傳ナラ勤マルニ違ヒナイ、隨
  テ問題ハサウ云フ知識人ガ啓發宣傳スル思
  想ガ大キイ問題デアツテ、其ノ點ヲ我々ハ
  考ヘルノデアリマス、ダカラ今更私ハ形式
  的ニ、或ハオ役所式ニ、其ノ仕事ガ思想ノ
  啓發宣傳デアルカラ情報局ノ管轄デ宜シイ
  ト云フヤウナ答辯ヲ要求シタノデハアリマ
  セヌ、其ノ啓發宣傳スベキ思想ガ現在ノ戰
  時下ニ於テ重大デアレバアル程、ソレハ文
  部省トノ繫リガ十分デナケレバナラナイ、
  隨テソレ等ノ人ヲ通ジテ宣傳啓發サルヽ所
  ノ思想ハ斯クアルベキモノデアル、斯クナ
  ケレバナラナイト云フモノヲ文部當局トシ
  テハ十分ニ能ク考ヘテ戴キタイト云フノ
  ガ、私ノ質問ノ要點デアリマス、重ネテ此
  ノ點ニ關シマシテ文部當局ノ御答辯ヲ願ヒ
  マス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=117

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• 118・藤野惠

  ○藤野政府委員　私ノ言葉ガ足リナカツタ
  カト思ヒマスガ、私ガ現狀ハト云フコトヲ
  御斷リシテ申上ゲマシタノハ、現在ハサウ
  云フ風ニモ相成ツテ居ルト云フコトヲ中上
  ゲタノデアリマス、サウシテ後段ニ於テ、
  併シナガラ是ハ發生的ナ理由ガ初メ單ナル
  啓發宣傳ト云フヤウチ意味ニ思ハレテ居ツ
  タモノデアルカラ斯ウ云フヤウニモナツテ
  居ルガ、御說ノ所ニハ私共モ全ク御同感申
  上ゲルノデアリマシテ、此ノ點ニ付テハ今
  後十分ニ〓究ヲ致シ適當ニ考ヘテ參リタ
  イ、斯ウ申上ゲタノデアリマシタガ、私ノ
  申上ゲ方ガ十分デナカツタヤウデアリマス、
  御趣旨ニハ決シテ反對デハナク、實ハ我々
  モ、御示シノ通リ言論報國會ノ機能ノ中ニ
  ハ、相當思想ノ根源ニ觸レルヤウナモノモ
  アリマスノデ、現況ノ儘デ宜イトハ必ズシ
  モ考ヘテ居リマセヌ、是等ニ付テハ關係ノ
  機關トモ能ク協議ヲ致シ、御所見ノ點ハ十
  分遺漏ノナイヤウニ致シタイト考ヘマス、
  聊カ前ノコトヲ補足致シテ置キマス

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• 119・水谷長三郎

  ○水谷委員　其ノ思想問題ニ關聯致シマシ
  テ、日本的世界觀トカ、皇國勤勞觀、是等
  ニ關シテ前ノ委員ノ質問ニ觸レナイ程度デ
  御尋ネシタイノデアリマス、前ニ大臣ハ此
  ノ皇國勤勞觀、或ハ皇國租稅觀、或ハ皇國
  財政觀、サウ云フヤウナモノニ對シテ、ソ
  レゾレノ省カラ賴マレテ目下〓究中デアル
  ト云フヤウナコトヲ御答辯ニナツタヤウデ
  アリマスガ、是ナドモ、今ノ總務局長ノ言
  葉ヲ取ツテ言フノデハナイガ、ヤハリ全部
  立遲レニナツテ居ル、所謂皇國勤勞觀ガド
  ウ云フモノデアルカト云フハツキリシタ理
  念ヲ確立シナイデ、他ノ方デ皇國勤勞觀ト
  云フヤウナ言葉ヲ使ヒ、日本的世界觀ト云
  フヤウナ言葉ヲ使フ、サウシテソレヲ一體
  ドウ云フ具體的内容デ裏付ケシナクテハナ
  ラナイカト云フコトヲ、一年モ二年モ經ツ
  タ後ニ文部省ガ賴マレル、是ハ賴ム方モ賴
  ム方ナラ、賴マレル方モ賴マレル方デアリマ
  シテ、實ニ悠長ナ話デアルト言ハナケレバ
  ナラヌト思フノデアリマス、私ハ皇國勤勞
  觀日本的世界觀ト云フモノヲ今〓究中デ
  アルト云フコトデハ遲イト思フ、斯ウ云フ
  モノハ旣ニモツト早ク確立シテ居ラナケレ
  バナラヌ理念デアラウト思ヒマス、例ヘバ
  皇國勤勞觀、是ハ前カラノ議會ニ於テモ、
  色々勞務關係ノ法案ガ出テ來ル、併シナガ
  ラソレハ飽クマデモ各論デアツテ、其ノ根
  本デアル勤勞根本法ヲ作ラナケレバナラ
  又、サウシテ其ノ勤勞根本法ノ一番大キナ
  眼目ハ、日本國民タルモノハ總テ勤勞ニ服
  スル義務ガアルト云フコトヲ明示シナケレ
  バナラヌ、兵役ノ義務、或ハ納稅ノ義務ト
  共ニ、日本國民ハ國家ノ爲ニ勤勞ニ服スル
  義務ガアルト云フコトヲハツキリ作ラナケ
  レバナラヌト云フコトヲ、斷エズ私達ハ厚
  生當局ニモ言ツテ居ツタ、ソレデ假ニ厚生
  當局ガ勤勞根本法ト云フモノヲ作ル場合ニ
  於テハ、簡單デハアル、法文ノ上デハ、日
  本國民ハ總テ皆勤勞ニ服スル義務ガアルト
  云フコトデ宜シイカモ知レヌガ、併シ其ノ
  理念的裏付ケハヤハリ文部當局ガシナケレ
  バナラヌ、卽チ日本國民ハドウ云フ意義、
  ドウ云フ名譽ヲ以テ國家ノ爲ニ勤勞ニ服サ
  ナケレバナラナイカト云フヤウナコトハ
  文部當局トシテ十分用意ガナケレバナラヌ、
  例ヘバ日本的世界觀ト云フコトハ近頃盛
  ンニ使ハレテ居ル言葉デアル併シナガラ
  日本的世界觀ト云フモノハ果シテドウ云フ
  裏付ケヲシナケレバナラヌカト云フコトニ
  關シテハ、是ハマダハツキリシタコトガナ
  イ、勿論日本人同志デアレバ、日本的世界
  觀ト言ヘバ、成程アヽダナト云フコトハ大
  體見當ガ付ク、曾テ平沼總理大臣ハ豫算總
  會ニ於テ、日本主義トハ何ゾヤト云フ議員
  ノ質問ニ對シテ、日本主義トハト問ハレタ
  ナラバ、日本人デアレバアヽアヽ云フモノ
  デアルト自問自答出來ル所ノ主義デアルト
  言ハレタガ、是ハ平沼サントシテハ滿點ノ
  答辯デアルト思ツテ居リマス、成程日本人
  同士ナラバソレデ宜イケレドモ、併シ日本
  的世界觀ト云フ以上ハ、世界ノ人ニ呼ブ所
  ノ言葉デアル、或ハ皇國勤勞觀ニシテモ、
  單ニ日本人同士デナクゝ大東亞共榮圈ノ人
  達ニモ呼ビ掛ケナケレバナラヌ、ソレハ言
  葉ハ違フケレドモ、ヤハリサウ云フ理念デ
  ナケレバナラヌ、サウ云フモノヲ旣ニ經濟
  ノ方面ニ於テ、或ハ又厚生ノ方面ニ於テ、
  凡ユルモノノ方面ニ於テ唱ヘラレテ久シウ
  ナツテ居ル今日ニ於テ、尙ホ文部當局ガサ
  ウ云フ所カラ賴マレテ、サウシテ目下〓究
  中デアルト云フヤウナコトデハ、私ハイカ
  ヌト思フ、前申上ゲマシタヤウニ、ヤハリ
  文部當局ソレ自ラガ日支事變以來ノ統制體
  系ノ過チヲ犯シテ居ルノデアツテ、サウ云
  フ問題ハ文部當局ガ賴マレナクテモ、先に
  ハツキリシタ裏付ケヲスルコトヲシナケレ
  バナラヌノデアル、賴マレタカラヤルト云
  フコトヲ、是ハ岡部文部大臣ガ極メテ無意
  識ニ言ハレタガ、是マデノ文部省ノヤリ方
  ヲ遺憾ナク表ハシテ居ル所ノ言葉デアツテ、
  賴マレナクテモ積極的ニ、是ガ日本ノ國家
  ノ爲ニ必要ナ問題デアルト云フコトガ分レ
  バ、他ノ省ハ何ト言ハウト、文部當局ノ立
  場カラソレハ、當然手ヲ著ケナケレバナラ
  ヌト思フノデアリマス、斯樣ナ皇國勤勞觀
  トカ、日本的世界觀ニ付テ、是ハ今賴マレ
  タカラ〓究中デアルト云フヤウナコトデハ
  イカヌ、之ニ對シテ文部當局トシテハ何カ
  腹案ガナケレバナラヌト思フノデアリマス、
  此ノ點ニ關シテ大臣ナリ或ハ政府委員、ド
  チラカラデモ結構デスカラ、成ルベクハツ
  キリシタ御答辯ヲ煩ハシタイト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=119

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• 120・岡部長景

  ○岡部國務大臣　御說御尤モデアリマスガ、
  所謂皇國理念ト云フモノニ付キマシテハ、
  思想問題ト致シマシテ是非トモ確立シ、又
  勤勞觀ニシテモ、租稅觀ニシテモ、或ハ法
  律、制度總テノ點ニヤハリ皇國觀ガ滲透シ
  テ、ソレニ立脚シテ編ミ上ゲラレナケレバ
  ナラヌモノデアリマシテ、是等ニ付テハ旣ニ
  諸學振興委員會等ニ於テモ、各方面ノ學者
  ガ〓究サレテ居リマスガ、之ヲ一ツ取纏メ、
  文部省トシテソレヲ編ミ上ゲルト云フコト
  ニ付キマシテ、今囘思想對策ノ豫算等モ御
  審議ヲ願フヤウニ提案致シタ譯デアリマス、
  是ガ通過致シマスレバ、ソレ等ノ方面ニ對
  シテ是カラ相當仕事ヲ進メ得ルト考ヘテ、
  實ハ樂シミニシテ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=120

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• 121・水谷長三郎

  ○水谷委員　次ニ是ハ曩ニ文部大臣ガ同僚
  委員ノ質問ニ對シマシテ、私立大學ノ統合
  ハ各大學ノ自發的意思ニ俟ツト云フ御答辯
  ガアツタノデゴザイマスガ、是ハ私ト致シ
  マシテハ、學都ノ京都ニ生活シテ居ル關係
  上此ノ問題ハ單ニ〓授ノミナラズ、學生
  竝ニ父兄ト云フモノカラ非常ニ關心ヲ持タ
  レテ居ル所ノ問題デアリマス、或ハ扱ヒ樣
  如何ニ依リマスレバ、無用ノ危惧ヲ抱カセ
  ルカモ知レマセヌガ、併シナガラ適當ニ之
  ニ付テノ文部當局ノ御意向ヲハツキリ御伺
  ヒ出來マスルナラバ、學徒ハ勿論其ノ他ノ
  關係者モ、或ル程度安心ヲ得マシテ、其ノ
  運命付ケラレタ道ニ向ツテ進ンデ行ケルコ
  トガ出來ルト思フノデアリマス、先ヅ最初
  ニ御尋ネシタイノハ、此ノ學校ノ統合ト云
  フコトハ、疎開問題ト直接非常ニ關係ガア
  ル、更ニ言葉ヲ換ヘテ申シマスレバ、私ノ聞
  ク所ニ依リマスト、此ノ統合ハ疎開問題ト關聯
  シテ閣議ノ決定ガ行ハレ、場合ニ依レバ法
  的措置マデ執ルト云フ工合ニ、一旦ハ閣議
  デ決定シタト云フヤウニ聞イテ居ルノデア
  リマスガ、此ノ學校統合ト云フ問題ハ、疎開
  問題ト結付ケテ考ヘルベキ問題デアルカ、
  或ハ其ノ他ノ何カモツト大キナ立場カラ
  此ノ學校ノ統合ト云フコトヲ考ヘナクテハ
  ナラナイノカ、ソレ等ノ點ヲ先ヅ最初ニハ
  ツキリサセテ戴キタイト思フノデゴザイマ
  ス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=121

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• 122・藤野惠

  ○藤野政府委員　私立ノ學校ノ統合ト云フ
  コトニ付テハ、大臣カラ御答ヘガアリマシ
  タヤウニ、可能ナ範圍ニ於テ、成ベク勸奬
  等ノ方法ニ依リ、自發的ナ方法ニ於テ是ガ
  實現ヲ圖ルト云フコトハ御承知ノ通リデア
  リマス、サウシテ其ノ學校ノ統合ト云フコ
  トハ、勿論閣議決定ノ中ニ疎開ニ關スル部
  分モゴザイマスガ、是ハ疎開ノ爲ニ統合ス
  ルト云フ次第デハナイノデアリマシテ、疎
  開ハ疎開ノ必要ノ爲ニ行フノデアリマス、
  併シ疎開ト云フコトヲ考慮ニ入レテ學校ノ
  處理ニ當ルト云フコトハ勿論考ヘテ居ル譯
  デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=122

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• 123・水谷長三郎

  ○水谷委員　私立學校ノ統合ニハ、其ノ學
  校ノソレ〓〓ノ傳統モアルカラ、自發的統
  合ニ俟ツト云フ大臣ノ言明デゴザイマシタ
  ガ、若シ各私立大學ガソレ〓〓ノ傳統其ノ
  他ヲ固執致シマシテ、統合ヲ自ラヤラナカ
  ツタ場合ニ於テハ一體ドウナルカ、或ハ文
  科系統ナラバ、生徒ガ少クナルカラ、經營
  難ノ爲ニモウ統合ヲシナクテハナラナイカ
  ラ、ソレマデ待ツテ居ルノカ、或ハ又文部
  省ハ單ナル產婆役ト云フヤウナ役ヨリモ、
  モウ少シ高イ立場カラ指導スルヤウニシテ
  ヤルトカ、或ハ私立大學ガ專門學校ニ轉身
  シタナラバ、進ンデソレノ存立ヲ許ストカ
  云フヤウニ、何等カノ基準ガナクテハ、學
  校當局竝ニ其ノ父兄、或ハ學生ノ立場カラ
  申シマシテ非常ニ不安デアラウト思フ、就
  中此ノ度ノ學徒出陣ニ當リマシテ、學徒ハ
  勇躍シテ國家ノ爲ニ出陣シタ、其ノ留守ノ
  間ニ自分ノ母校ガ統合サレテ無クナルト云
  フヤウナコトニナリマスト、其ノ出陣學徒
  ニ對スル心理的影響ト云フコトモ、是亦輕
  視スルコトハ出來ナイノデゴザイマス、是
  等ノ點ニ關シマシテ差障リノナイ程度デ、
  極メテ明快ニ當局ノ御方針ヲ御聽カセ願ヘ
  レバ非常ニ結構デアルト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=123

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• 124・藤野惠

  ○藤野政府委員　水谷サンノ御尋ネデアリ
  マスガ、其ノ點ニ付テハ昨日モ此ノ委員會
  ニ於キマシテ、大體同樣ノ御趣旨ノ御質問
  ガアツタノデアリマスガ、實ハ只今ノ所ソ
  コヲ確ト申上ゲルマデノ段取リニナツテ居
  リマセヌノデ、御許シヲ願ツタノデアリマ
  ス、繰返シテ申上ゲマスルヤウニ、統合ト
  云フコトハ勿論是ハ學校經營ノ上カラモ、
  或ハ其ノ他授業ノ上カラモ、其ノ方ガ本當
  ニ爲ニナル、又學校自體ノ爲ニナルト云フ
  ヤウナ場合ニ考ヘラルベキ事柄デアリマス
  ルガ、是ハ文部省ハ決シテ無理ニト云フコ
  トハ實ハ考ヘテ居ラナイノデアリマシテ、
  專ラ勸奬等ノ方法ニ依ル自發的ナ方法ニ依
  ツテ、是ガ實現ヲ期シタイト云フ氣持デ居
  ルノデアリマス、ソレ以上ノ基準的ナ方針
  ト云フヤウナモノハ、只今ノ所之ヲ申述べ
  ルマデニ至ツテ居リマセヌ、此ノ點ハ只今
  マデ申述ベマシタ所ニ依ツテ御諒承ヲ願ヒ
  タイト存ジマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=124

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• 125・水谷長三郎

  ○水谷委員　私ハ其ノ點ガイケナイト思フ
  ノデス、例ヘバ公債ノ消化ノ問題デモ、何
  時モ大藏大臣ハ、公債ノ消化ハ强制的ニハヤ
  ラセマセヌト言フ、貯蓄ノ問題デモ、强制
  貯蓄ハ絕對ニ反對デゴザイマスト言ツテ居
  ル、併シナガラ實際行ハレテ居ルノハ、半バ强
  制的ニ行ハレテ居ル、今度ノ所謂學校ノ統
  合問題デモ、責任アル文部大臣ノオロカラ、
  私立大學ノ統合ハ自發的ノ意思ニ俟ツト言
  フコトヲ言ハレテ居ル、サウシテ其ノ實際ハソ
  レガサウ行ハレナイト云フコトニナルト、是ハ
  非常ニ弊害ガ起ル、普通ノ大臣ナラバイザ知
  ラズ、苟クモ文〓ノ府ニ立ツ大臣ガ噓ヲツ
  イタト云フコトニナレバ、是ハ文〓ノ信地
  ニ墜チマシテソレコソ日本ノ思想界ニ與
  ヘル所ノ影響ハ非常ニ大キイ、曾テ政黨內
  閣時代ニハ、中橋サンガ二枚舌問題ヲ起シ
  テ大キナ問題ヲ起サレタト云フコトハ、
  岡部文部大臣モ御承知ノ通リデアリマス、
  併シアヽ云フ船會社ノ人ガ文部大臣ニナラ
  レタカラ、マアソレハ文部大臣ハ文部大臣
  デモ少シハ駈引ハ當リ前ダト云フコトニナ
  リマスガ、苟クモ永年ノ間〓育ニ非常ニ熱
  心デアリ、思想問題ニ對シテ非常ニ努力サ
  レテ·來夕所ノ岡部文部大臣ガ變ナコトヲ言
  ツタト云フコトデハ、是ハ世間ガ承知シナイ、
  ダカラ今度ノ所謂統合問題ハ、色々ノ立場カ
  ラ申シマシテ差障リガアルカモ知レマセヌ
  ガ、併シナガラ統合サレル方ノ學校、或ハ
  學徒、或ハ其ノ親御ノ立場カラ見レバ、是
  ハ堪ツタモノヂヤナイノデス、所謂オ殿樣
  ノオ通リデハ通ラナイ問題デアル、ダカラ
  此ノ點ヲ能ク御考ヘ下サイマシテ、只今文
  部當局ガ、差詰メ四月ニ差迫ツテ居ル-所
  謂統合ナラ統合ヲドウシナケレバナラヌカ、
  或ハ私立大學ガ專門學校ニナツタラ生キテ
  行クカ、現ニ京都ナンカ立命館大學ノ如キ
  ハ專門學校トシテ轉身シテ行カウト云フ
  コトヲ文部當局ヘ出シタト云フコトヲ聞イ
  テ居リマス、恐ラク專門學校トシテ更生ス
  ルノデアリマセウ、或ハ其ノ他ノ學校ニ於
  キマシテモ色々ノ對策ヲ持ツテ居ル、ソレ
  ハ文部當局ノ方針サヘハツキリ致シマスレ
  バ、ソレニ依ツテ行ハレルノデアル、所謂
  凡ユル統制ト云フモノガ日支事變以來行ハ
  レマシタ、中ニハ無理ナ統制モアリマスケ
  レドモ、併シナガラ現在ノ日本ノ時局ニ鑑
  ミマシテ、皆其ノ苦シサヲ耐へ忍ンデ國家ノ
  爲ニ御奉公シテ來タノガ、今日ノ日本國民
  ノ姿デアリ、步イテ來タ形デアリマス、併
  シ獨リ學校ノ統合問題ダケガ-色々ノ勢
  力ニ災サレルト云フ事デハ宜シクナイ、サ
  ウ云フコトヲ顧慮スル所ナシニ、ヤハリ政府
  ガ、是ガ正シイノダ、是ガ現在ノ時局ノ要
  請デアルト云フコトヲハツキリ信ジタナラ
  バ、一日モ早ク其ノ具體的ナ方針ヲ明示サ
  レマシテ、ソレ等關係者ニ一ツノ諦メト、
  一ツノ光明トヲ與ヘルト云フコトガ、文部當
  局ノナスベキ問題デアラウト思フノデアリ
  そく、前ニ同僚議員森田サンハ、質問每ニ
  勇氣ヲ振ツテ明快ニ言ツテ吳レト言ハレマ
  シタガ、若シ勇氣ヲ振ハナケレバナラナイ
  ナラバ、此ノ問題コソ一番勇氣ヲ振ツテ、
  斷々乎トシテハツキリシタ所信ヲ明示サレ
  ナケレバナラナイト思フノデアリマス、文
  部大臣ハ前ニ同僚議員ノ質問ニ對シテ、私
  立大學ノ統合ハ自發的意思ニ待ツト云フコ
  トヲ言ハレマシタガ、ソレハ飽クマデ自發
  的意思カ、ソレトモ文部省ハ產娑役トシテ
  指導的チ立場ニ立ツテ、現在ノ時局ノ要請
  スルヤウニ學校ヲ整理統合ナサルノカ、又
  ソレニ對シテドウ云フ基準ヲ以テ、或ハ私
  立大學デ統合ノ厭ナモノハ、專門學校ニ轉
  身シテ更生ノ道ヲ踏ンデ行クノカドウカ、
  ソレ等ニ對スルハツキリシタ指針ヲ與ヘテ
  戴キタイ、現ニ京都デハ立命館大學ガ專門
  學校トシテ更生スルト云フコトヲ文部省ニ
  御伺ヒシテ居ル、サウシテ四月一日カラ專
  門學校ニナツテ行クノダト云フコトヲ言ツ
  テ居ル、斯ウ云フコトガアルノデアリマス
  カラ、是ハ議會ヲ通ジテ、當然明カニシナ
  ケレバナラヌト思フ、是ハ先ニ申シマシタ
  ヤウニ出陣學徒ノ立場カラ申シマシテモ、
  自分ガ出陣中ニ譯モ分ラナイヤウニ母校ガ
  消エテ無クナルト云フヤウナコトデハ困ル、
  母校愛ガアル學徒コソ、祖國愛ガアルノデ
  アリマス、國家ノ爲ニ勇躍シテ喜ンデ死ヌ
  所ノ學徒ガ、母校ノ爲ニハ一生懸命ニ心配
  シ、努力スル學徒デアルコトハ忠孝竝ビ
  立ツ道ト同ジコトデアリマス、是等ノ問題
  コソハ極メテ重大デアリマシテ、單ニ水臭
  イ吏僚的ナ答辯デナシニ、大臣ノ高所大所
  ニ立タレタハツキリシタ御答辯ガ御伺ヒ出
  來レバ、非常ニ幸ヒデアルト思ヒマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=125

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• 126・岡部長景

  ○岡部國務大臣　統合ノ問題ニ付キマシテ
  色々ナ御質問ガアリマシタガ、昨日デアリ
  マシタカ御答辯致シマシタヤウニ、統合ノ
  問題ハ出來得ル限リ自發的ニ行キタイ、可
  能ナルモノハ統合ヲ圖ルト云フコトニ、閣
  議決定ヲ致シテ居ル譯デアリマシテ、强制
  的ニ之ヲヤルト云フコトハ先ヅ考ヘテ居リ
  マセヌ、專門學校へノ轉換ト云フコトハ望
  マシイコトデアルト考ヘマス、ソレハ今日
  ノ兵役關係カラ申シマシテモ、十九歲デ入
  營スルコトニナリマスト、ソレマデニ一應
  學業ヲ完成スルト云フコトハ結構ナコトデア
  ラウト考ヘマスルノデ、專門學校ノ方ガ寧
  ロ多クヲ收容シ得ルノデハナカラウカト考
  ヘマスカラ、轉換ヲスルト云フ方針ハ大イ
  ニ贊成モシ、援助モシテ行キタイト考ヘテ
  居ル譯デアリマス、ソレカラ今申シマシタ
  ヤウナ譯デ法文系統ノ大學ト云フモノハ、
  今日ノ儘デハ殆ド學生ガ無クナルヤウナ狀
  態ニナリマスノデ、是ハ官私ヲ問ハズ法文
  系統ノ大學ヲ如何ニスルカト云フコトニ付
  テモ、是亦大イニ〓究シナケレバナラヌ
  問題ト思ツテ居リマスガ、十九歲ノ者ガ愈〓、
  入營スルト學校ハ空ニナリマスカラ、之
  ヲ唯此ノ儘デ放ツテ置ク譯ニハ參ラナイト
  思ツテ居リマス、併シ同時ニ大學ト云フモ
  ノヲ非常ニ充實シタモノニシテ、今後日本
  ノ學術ノ進步發達ニ大イニ貢獻スルモノニ
  シテ行カナケレバナラヌノデハナカラウカ、
  從來動モシマスト大學ニ入ル者ハ就職ノ爲
  ニ、大學ノ免狀ヲ得ル爲ノ入學ト云フ者モ
  少クナカツタヤウニモ考ヘマスガ、大學ト
  云フモノハ一體サウ云フモノデハナイノデ
  ハナカラウカ、眞ニ高イ學問ヲ究メル所デ
  ナケレバナラヌノデハナカラウカト考ヘマ
  ス、サウ云フ意味カラ申シマスルト現在官
  立ト雖モ、マダ甚ダ足ラザルモノガアルノ
  デハナカラウカ、私立等ニ於キマシテハ、
  官立ヨリモ更ニ其ノ程度ガ甚ダシイノデハ
  ナイカト考ヘマスノデ、私立大學ノ充實ト
  云フコトニ付キマシテハ、何トカシテ出來
  ルダケノコトヲシテ、國家ノ文〓ノ爲ニ、
  大キク言ヘバ國家全體ノ爲ニ、私立大學ノ
  使命ヲ益〓發揮スルヤウニシテ行キタイト云
  フ風ニ考ヘテ居ル譯デアリマス、統合問題
  モサウ云フ點カラ申シマシテ、統合ト云フ
  コトガ〓育ヲ破壞スルヤウナコトニナラナ
  イヤウニ、關係者ガ皆其ノ心持ニナツテ、
  學校ヲ良クスル爲ニ考へテ行クト云フコト
  ニナリタイト思ツテ居ルノデアリマス、殊
  ニ私立大學ノ如キハ色々長イ歷史ヲ持ツテ
  居ルコトデアリマスカラ、是非自發的ニヤ
  ツテ吳レルヤウニシタイト考ヘテ居ル譯デ$
  アリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=126

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• 127・水谷長三郎

  ○水谷委員　是ハ單ニ私立大學ダケデハナ
  シニ、文科ノ專門學校ナドモ定員ガ二分ノ
  一ニナルカラ、當然起ツテ來ナケレバナラ
  ヌ問題デアラウト思ヒマス、コヽデ一ツ政
  府委員ニ御尋ネスルノデゴザイマスガ、此
  ノ四月ノ時期ニ私立大學カラ自發的ニ專門
  學校ヘ轉身スル學校ハ、名前ヲ聞カセトハ
  申シマセヌガ、大體ドノ位ノ數ニ上ツテ居
  ルカ、更ニ此ノ四月一日ニ統合サレル學校
  ノ數ハ、全體ノドノ位ノ數ニ上ツテ居ルカ、
  更ニ此ノ私立大學ノ統合ハ自發的意思デア
  リ、〓育ノ傳統ヲ重ンジテヤツテ行クト云
  フ大臣ノ御方針ハ、極メテ結構デアルト思
  ヒマス、併シナガラ東京、大阪、神戶、北
  九州ト云フヤウニ、今度ノ疎開區域トシテ
  指定サレタ學校ノ統合問題ト、他ノ土地ノ
  學校ノ統合問題トハ、緩急其ノ差ガアラウ
  ト思フノデアリマス、私ハ疎開ノ第一著手
  ハ官廳ト學校、是ガ一番大キナ問題ニナツ
  テ來ルノヂヤナイカト思フ、隨テ其ノ統合
  問題ガ自發的ニト云フコトハ尤モデアリマ
  スガ、前ニ申シマシタ四大地方ニ於ケルヤ
  ウナ、疎開區域トシテ內務省カラ指定サレ
  タ所ノ學校ノ統合問題ハ、又別個ニ扱ハナ
  ケレバナラヌト思フノデアリマスガ、是等
  ノ三ツノ點ニ關シマシテ御答辯ヲ煩ハシタ
  イト思フノデアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=127

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• 128・藤野惠

  ○藤野政府委員　只今水谷サンカラ文科系
  ノ大學デ轉換ヲスルモノト統合セラレルモ
  ノニ付テ、學校ノ名前ハ聞カヌガ、數ダケ示シ
  テ呉レト云フ御話デゴザイマシタガ、
  只今ノ所之ヲ申上ゲルマデニ至ツテ居
  リマセヌノデ、此ノ點ハ一ツ御許シヲ願
  ヒタイト思ヒマス、ソレカラ疎開ノ爲ニ
  ハ是ハ別ニ考ヘテ然ルベキヂヤナイカ
  ト云フ御話デアリマスガ、是ハ御尤モト
  思フノデアリマス、學校ニ關シマスル措
  置ヲ講ジマスル際ニ、疎開後ノコトモ頭ニ
  入レテ考ヘルト云フコトハ決定ノ中ニアル
  ヤウデアリマスガ、又別個ニ之ヲ防空法
  其ノ他ノ關係ニ於キマシテ、疎開ニ付テハ
  學校、或ハ公共團體、公共ノ色々ノ建物等
  ニ付テ、別途ニ又考ヘラルベキ筋合デゴザ
  イマシテ、是等ハ只今別ニソレ〓〓ノ協議
  機關等モ設ケ、內閣ニ疎開實行本部ト云フ
  ヤウナモノガアリマシテ、文部省ト致シマ
  シテハソレ等ト連絡ヲ執ツテ、別ニ考究ヲ
  進メテ居ルト云フコトニ存ジテ居リマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=128

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• 129・水谷長三郎

  ○水谷委員　次ニ大臣ニ今御伺ヒシタイノ
  デアリマスガ、適齡前ニ專門〓育ヲ完了
  スルト云フ方針ハ恒久的ノ方針デアリマス
  カ、又ハ戰時的ナ臨時措置トシテ御考ヘニ
  ナツテ居ルカドウカト云フコトヲ御聽キシ
  タイト思ヒマス、卽チ十九歳マデニ專門〓
  育ヲ成ベク終ラセルト云フコトニナルト、七
  歲カラ國民學校へ入リ、直グニ入學試驗ニ
  及第シテ中學校へ入リ、專門學校ニ行ク、是
  デ一パイニナツテ來ル、先日同僚委員ノ質
  問ニ對シテ、國民學校ノ年齡ヲ場合ニ依ツ
  テハ引下ゲルト云フコトヲ言ツテ居ラレタ
  ノデアリマスガ、是ハ單ニ戰時的ノ臨時措
  置トシテサウ云フコトヲ御考ヘニナツテ居
  ルカ、或ハ又〓育ノ大所高所カラ立テタ根
  本的方針トシテサウ云フコトヲ御考ヘニナ
  ツテ居ルノカ、更ニ又國民學校ノ入學年齡
  ヲ一ツ引下ゲルト云フヤウナコトモ、是モ
  恒久策トシテ御考ヘニナツテ居ルカドウカ、
  或ハ臨時措置トシテ考へテ居ルカドウカ、恒
  久策トシテ御考ヘニナツテ居レバ、當然國
  民學校入學年齡ノ引下ニ伴ウテ、其ノ豫備
  〓育ト申シマスカ、幼稚園制度ト云フモノ
  ヲ考ヘテ行カネバナラヌト思ヒマス、今幼
  稚園ト云フモノハ大抵オ寺サンカ、「キリス
  ト」〓カ、サウ云フ特殊ナ私立經營ニ任ジテ
  居リマスガ、此ノ國民〓育年齡ヲ引下ゲル
  ト云フコトニナレバ、幼稚園ト云フモノノ
  整備、或ハ是ト文部省トノ關係ト云フモノ
  モハツキリ考ヘラレナケレバナラヌト思フ
  ノデゴザイマス、私ハ現在戰フ日本ト致シ
  マシテ、戰時的ナ臨時措置トシテ、或ル程
  度〓育ノ場面ニ於テモ影響ガ現ハレテ來ル
  コトハ已ムヲ得ナイコトデアラウト思ヒマ
  ス、ソレト共ニ此ノ文〓ノ問題ニ關シマシ
  テハモウ少シ高イ所カラ長イ眼デ見ナケ
  レバナラヌト思フノデアリマス、十九歲デ
  專門學校ヲ卒業サシテシマフ、或ハ國民學
  校ノ年齡ヲ引下ゲルト云フコトハ、臨時措
  置トシテナラバ、兎モ角、恒久對策トシテ
  見ル場合ニ於キマシテハ、ソレニ對スル意
  見モナクテハナラナイト思ヒマス、私ハ臨
  時措置トシテ、サウ云フコトヲ文部當局ガ
  御考ヘニナツテ居ルナラバソレデ宜イ、私
  ハ根本方針、其ノ理念ヲ聽カウトスルノデ
  ハゴザイマセヌ、併シナガラ恒久對策トシ
  テ十九歲マデニ專門學校ノ〓育ヲ卒ラス、
  或ハ恒久對策トシテ國民學校ノ就學年齡ヲ
  一年引下ゲルト云フ御考ヘデアルナラバ、
  私ハソレニ對スル文部當局ノ根本理念、根
  本方針ト云フモノヲ十分此ノ際御說明願ヒ
  タイト思フ次第デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=129

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• 130・岡部長景

  ○岡部國務大臣　御質問ノ點ハ、大體ニ於
  テ臨時措置トシテ考ヘテ居ル譯デアリマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=130

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• 131・水谷長三郎

  ○水谷委員　臨時措置トシテナラバ私ハソ
  レデ結構デアラウト思ヒマス、ソレ以上之
  ニ對スル私ノ質問ハ致シマセヌ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=131

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• 132・小柳牧衞

  ○小柳委員長　水谷君、マダアリマスカ

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=132

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• 133・水谷長三郎

  ○水谷委員　爾餘ノ質問ハ留保致シマス

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=133

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• 134・小柳牧衞

  ○小柳委員長　ソレデハ明日ニ御願ヒ致シ
  やっく、本日ハ是ニテ散會致シ、明日ハ午前
  十時ヨリ開會致シマス
  午後六時五分散會

  発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008412328X00419440126&spkNum=134

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