1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和十九年二月三日(木曜日)
午後一時七分開議
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議事日程 第七號
昭和十九年二月三日
午後一時開議
第一 訴訟費用等臨時措置法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第二 會社等臨時措置法案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第三 經濟關係罰則の整備に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第四 朝鮮に於ける裁判手續簡素化の爲の國防保安法及治安維持法の戰時特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第五 石炭配給統制法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第六 企業整備資金措置法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第七 朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第八 船舶職員法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第九 簡易生命保險法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十 北支那開發株式會社法及中支那振興株式會社法中改正法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會の續(委員長報告)
第十一 昭和十七年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第十一 昭和十七年度特別會計第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第十一 昭和十七年度特別會計豫備費支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第十一 昭和十八年度第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第十一 昭和十八年度特別會計第二豫備金支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第十一 昭和十八年度特別會計豫備金外豫算外支出の件(承諾を求むる件)(委員長報告)
第十二 海外同胞援護資金制度設置に關する建議案(前田米藏君外百四名提出)
第十三 水産物増産確保に關する建議案(青山憲三君外四十二名提出)
第十四 砂防を中心とする治水利水國策の確立竝其の行政の一元化に關する建議案(小泉又次郎君外二十名提出)
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一、議員より提出せられたる議案左の如し
水産物増産確保に關する建議案
提出者
青山憲三君 青木精一君
安藤覺君 綾部健太郎君
伊藤五郎君 池田正之輔君
今井新造君 今井健彦君
今牧嘉雄君 岩瀬亮君
卯尾田毅太郎君 上田孝吉君
植松練麿君 小野寺有一君
小山倉之助君 大石大君
岡田啓治郎君 川島正次郎君
漢那憲和君 喜多壯一郎君
久山知之君 小林絹治君
坂口平兵衞君 酒井利雄君
薩摩雄次君 眞藤愼太郎君
武知勇記君 津崎尚武君
中井川浩君 中川重春君
楢橋渡君 南條徳男君
西川貞一君 羽田武嗣郎君
濱地文平君 深澤豐太郎君
船渡佐輔君 眞崎勝次君
松村光三君 三木與吉郎君
宮澤裕君 森肇君
森川仙太君
飼料確保に關する建議案
提出者
三善信房君 松浦周太郎君
三浦一雄君
劃期的懸賞發明發見募集に關する建議案
提出者
星一君 青木精一君
赤松寅七君 荒川眞郷君
伊豆富人君 池田秀雄君
池田正之輔君 泉國三郎君
今井新造君 内池久五郎君
江口繁君 小笠原八十美君
越智太兵衞君 大島寅吉君
大橋清太郎君 沖藏君
奧野小四郎君 長内健榮君
加藤宗平君 川口壽君
川副隆君 川俣清音君
木下郁君 木下義介君
木村正義君 菊地養之輔君
北れい吉君 北村又左衞門君
藏原敏捷君 小浦總平君
小林絹治君 小林鐵太郎君
小山亮君 齋藤憲三君
信太儀右衞門君 庄司一郎君
鈴木重次君 田中源君
田中亮一君 高木義人君
高野孫左衞門君 高橋熊次郎君
瀧澤七郎君 圖師兼貳君
鶴惣市君 鶴見祐輔君
中井一夫君 永田良吉君
南郷武夫君 西方利馬君
野口喜一君 橋本欣五郎君
林信雄君 坂東幸太郎君
平野力三君 深澤吉平君
深水吉毅君 二田是儀君
堀内一雄君 本多市郎君
本領信治郎君 前田善治君
正木清君 松浦伊平君
松方幸次郎君 松野鶴平君
松本治一郎君 宮澤裕君
桃原茂太君 森肇君
山口左右平君 山田竹治君
吉田敬太郎君 吉田貞次郎君
地主の海外移住計畫樹立に關する建議案
提出者
松山常次郎君
地質調査機關擴充措置に關する建議案
提出者
齋藤憲三君 植松練麿君
小野寺有一君 竹内俊吉君
(以上一月三十一日提出)
大陸鐵道一貫運營に關する建議案
提出者
小林鐵太郎君 新井堯爾君
中谷武世君 山本粂吉君
最上政三君 多田滿長君
中島彌團次君 深澤豐太郎君
四王天延孝君 植松練麿君
森林を中心とする國土計晝策定に關する建議案
提出者
松浦周太郎君 小山邦太郎君
横川重次君 馬岡次郎君
北村又左衞門君 三宅正一君
小笠原三九郎君 吉田正君
警察官の職務に因る公傷者に對し傷痍記章附與に關する建議案
提出者
村松久義君 菊地養之輔君
阿子島俊治君
帝國在郷軍人會に對する國庫補助金増額に關する建議案
提出者
伊吹元五郎君 赤松寅七君
吉田貞次郎君 松浦周太郎君
荒川眞郷君 田中勝之助君
大石齊治君 長沼權一君
石榑敬一君 鈴木忠吉君
馬場元治君 堀内一雄君
砂防を中心とする治水利水國策の確立竝其の行政の一元化に關する建議案
提出者
小泉又次郎君 勝正憲君
東郷實君 紫安新九郎君
木村正義君 池田秀雄君
青木精一君 小笠原三九郎君
田中好君 木原七郎君
窪井義道君 小柳牧衞君
田村秀吉君 森下國雄君
野村嘉久馬君 武知勇記君
伊藤東一郎君 堀内一雄君
小泉純也君 松浦周太郎君
長内健榮君
(以上二月一日提出)
一、去一日政府より昭和十七年度國有財産増減總計算書竝會計檢査院の檢査報告を受領せり
一、去二十九日東條内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
運輸通信省海運總局船舶局長 瀧山敏夫
第八十四囘帝國議會運輸通信省所管事務政府委員被仰付
一、去二十九日議長に於て選定したる委員左の如し
昭和十七年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)外五件委員
逢澤寛君 石田善佐君
稻葉圭亮君 小野秀一君
越智太兵衞君 川崎巳之太郎君
木下義介君 毛山森太郎君
小篠雄二郎君 佐久間道夫君
菅又薫君 田部朋之君
野口喜一君 濱地文平君
古河和一郎君 星一君
森部隆輔君 山口忠五郎君
一、去二十九日に於ける特別委員の異動左の如し
鐵道敷設法戰時特例案(政府提出)外一件委員
辭任頼母木眞六君 補闕川副隆君
石炭配給統制法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)外一件委員
辭任中井亮作君 補闕木下義介君
辭任笹川良一君 補闕河盛安之介君
昭和十七年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)外五件委員
辭任木下義介君 補闕中井亮作君
一、去三十一日常任委員理事補闕選擧の結果左の如し
決算委員
理事 酒井利雄君(委員野口喜一君去三十一日理事辭任に付其の補闕)
一、去三十一日委員長及理事互選の結果左の如し
昭和十七年度第一豫備金支出の件(承諾を求むる件)外五件委員
委員長 野口喜一君
理事
越智太兵衞君 川崎巳之太郎君
一、去一日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第二部選出決算委員 小笠原八十美君
第四部選出決算委員 勝又春一君
第六部選出請願委員 田中好君
第八部選出懲罰委員 山田順策君
一、去一日特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
戰時特殊損害保險法案(政府提出)委員
理事 三木武夫君(委員岩瀬亮君去一日理事辭任に付其の補闕)
一、去一日に於ける特別委員の異動左の如し
戰時特殊損害保險法案(政府提出)委員
辭任岩瀬亮君 補闕中谷武世君
辭任小坂武雄君 補闕吉田賢一君
一、昨二日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第二部選出
決算委員 田中好君(小笠原八十美君補闕)
第四部選出
決算委員 山田順策君(勝又春一君補闕)
第六部選出
請願委員 小笠原八十美君(田中好君補闕)
第八部選出
懲罰委員 勝又春一君(山田順策君補闕)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=0
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001・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 是ヨリ會議ヲ開キマ
ス御諮リ致シマス、決算委員長、戰時特
殊損害保險法案委員長、農林中央金庫特別
融通及損失補償法中改正法律案外一件委員
長ヨリ、本日本會議中委員會ヲ開キタイト
ノ申出ガアリマス、之ヲ許可スルニ御異議
アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=1
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002・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ之ヲ許可致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=2
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003・森下國雄
○森下國雄君 議事日程變更ノ緊急動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際日程第十一ヲ繰
上ゲ上程シ、其ノ審議ヲ進メラレンコトヲ
望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=3
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004・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 森下君ノ動議ニ御異
議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=4
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005・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ日程ノ順序ハ變更セラレマシ
タ-日程第十一、昭和十七年度第一豫備
金支出ノ件外五件、承諾ヲ求ムル件ヲ一括
シテ議題ト致シマス、委員長ノ報告ヲ求メ
マス-委員長野口喜一君
昭和十七年度第一豫備)
金支出ノ件
昭和十七年度特別會計
第一豫備金支出ノ件
昭和十七年度特別會計
豫備費支出ノ件承諾
昭和十八年度第二豫備ヲ求元気づき
第十一ムル長家
件告
金支出ノ件
昭和十八年度特別會計
第二豫備金支出ノ件
昭和十八年度特別會計
豫備金外豫算外支出ノ
件
報〓書
一昭和十七年度第一豫備金支出ノ件承
諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和十九年二月二日
委員長野口喜
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一昭和十七年度特別會計第一豫備金支出
ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長野口喜
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一昭和十七年度特別會計豫備費支出ノ件
(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長野口喜一
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一昭和十八年度第二豫備金支出ノ件余
諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長野口喜一、
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一昭和十八年度特別會計第二豫備金支出
ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和十九年二月二日
委員長野口喜一
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一昭和十八年度特別會計豫備金外豫算外
支出ノ件(承諾ヲ求ムル件)
右ハ本院ニ於テ承諾ヲ與フヘキモノト議
決致候此段及報告候也
昭和十九年二月二日
委員長野口喜
衆議院議長岡田忠彥殿
〔野口喜一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=5
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006・野口喜一
○野口喜一君 只今議題トナリマシタ昭和
十七年度第一豫備金支出ノ件外承諾ヲ求ム
ル件ノ五件ニ付キマシテ、委員會ニ於ケル
審議ノ經過竝ニ結果ヲ御報〓申上ゲマス
是等ノ議案ニ對シテハ、旣ニ大藏大臣ヨ
リ本議場ニ於テ說明サレタコトデアリマス
カラ、此處ニハ單ニ其ノ〓要ダケヲ申述べ
マス、卽チ昭和十七年度ニ於キマシテ第一
豫備金及ビ豫備費ヨリ支出サレマシタ金額
ハ一般會計第一豫備金ニ於テ四千四百九
十餘萬圓、朗鮮總督府特別會計外二十三特
別會計ノ第一豫備金ニ於テ四千七百七十餘
萬圓、臺灣米穀移出管理及ビ通信事業ノ二
特別會計ノ豫備費ニ於テ千五百餘萬圓デアリ
マス、次ニ昭和十八年度ニ於キマシテ第二豫
備金ヨリ支出サレマシタ金額ハ、一般會計
ニ於テ七億七千百四十餘萬圓、朝鮮總督府
特別會計外五特別會計ニ於テ五千百八十
餘萬圓デアリマス、昭和十八年度ニ於キマ
シテ豫備金外ニ於テ其ノ國庫剩餘金ヨリ豫
算外ノ支出ヲサレマシタ金額ハ、南洋廳特
別會計ニ於テ二百五十餘萬圓トナツテ居リ
マス、總計九億三千三百餘萬圓デアリマス
委員會ハ去ル一月三十一日以來三囘ニ亙
ツテ開會致シ、其ノ間委員各位ト政府トノ
間ニ各項目ニ付キ種々堀下ゲタル質疑應答
ガ重ネラレ、愼重審議ヲ盡シタノデゴザイ
マス、其ノ詳細ニ付キマシテハ速記錄ニ依
ツテ御覽ヲ願フコトト致シ、此處ニハ其ノ
中ノ重要ト認メラレル數點ニ付キ御報告申
上ゲタイト存ジマス、其ノ第一トシテ委
員ヨリ近年ノ如ク厖大ナル豫備金ノ支出
ニ關シテハ、其ノ愼重ヲ期スル爲メ審議
會ヲ設ケル必要アリト思フガ、政府ノ
所見如何トノ質問ニ對シ、豫備金ノ增大ハ
豫算其ノモノモ增大セル今日、之ニ對スル
割合ハ必ズシモ增加セリトハ斷ゼラレズ、
法的ニハ之ヲ支出スル場合次ノ議會ニ承諾
ヲ求ムルコトニナツテ居ルノデアリ、殊ニ
第二豫備金ヲ支出スル場合ノ如キハ何レモ
急ヲ要シ、之ヲ調査會或ハ審議會等ニ掛ケ
テ居テハ急場ノ間ニ合ハズ、又事務增加ノ
爲メ支出ガ遲レル虞モアリ、二ノ理由トシ
テ之ヲ審議會ニ掛ケル場合、其ノ標準ヲ金
額ノ多寡ニ依リ區切ルコトモ妥當ナラズ、
又事項ニ依リ區別スルコトモ考究ヲ要スル
問題デ、是等ノ點ニ鑑ミ豫算制度ノ現制度
ヲ出來得ル限リ尊重スル建前ヨリ、政府ハ
今ノ所審議會ヲ設ケル考ヘハナキモ、御趣
旨ノ點ハ十分ニ拜承致シテ置キマストノ答
辯ガアリマシタ
次ニ內務省所管ノ疎開事業費ハ東京都ノ
ミニ付キ考ヘルモ少キニ過ギルデハナイカ
トノ質問ニ對シ、是ハ疎開ノ場合ノ事務的
費用デアリ、別ニ防空關係ノ費用ハ年々飛
躍的ニ增加シ、其ノ分ハ十八年度追加豫算、
十九年度追加豫算ニ於テ相當多額ノ御承認
ヲ得テ居ル次第デアツテ、此ノ種ノ費用ハ
當局ニ於テモ出來得ル限リ費用ヲ惜シマズ
出シテ居ル次第デアルトノ答辯ガアリマシ
ク、次ニ防空監視費ニ關シ、防空監視哨ハ
寧ロ軍隊ニ編入シテハ如何トノ質問ニ對シ
マシテ、防空監視哨ハ國民總動員ノ建前ヨ
リ監視哨令ニ依リ實施シテ居ルノデアルガ、
此ノ制度ハ適否ハ考ヘテ居ル、之ニ對スル
費用ハ少キニ過ギルトノ向キモアルガ、是
ハ從來ノ費用ニ鑑ミ決定シタモノデ、今日
ノ物價高カラ見テハ全ク本人ノ辨當代位ニ
過ギズ、奉仕的デアル、之ニ對シテハ大日
本防空協會ニ於テモ色々衝ニ當ツテ居リ、
地方ニ依ツテハ相當激勵ヤ同情ノ費用モア
ルガ、個々町村ニ取ツテハ負擔過重ノ所モ
アリ、將來ハ國ナリ地方ナリ大キナ單位ニ
シテ考ヘテ居ル、殊ニ貧弱町村ニ對シテハ
中央負擔ヲ考ヘテ居ルトノ答辯ガアリマシ
タ、次ニ國民運動補助費タル大政翼贊會補
助費、日本發送電株式會社配當補給金補足
費等ハ、世論ニ鑑ミ、又後者ノ如キハ設立
當時ト餘程趣キヲ異ニシテ居ル、再檢討ス
ル必要ガアルノデハナイカトノ質問ニ對シ
マシテ、前者ハ曩ニ國民運動强化ノ必要ヲ
認メ、翼賛會ニ計上シタ以外ノ費用ヲ生ジ
タ爲メ第二豫備金ヨリ支出シタガ、政府ハ
成ベク豫算計上デヤルヤウ希望シテ居ル旨、
後者ハ御意見ノ點ハ參考トシテ善處スル旨
ノ答辯ガアリマシタ、次ニ中國地方災害復
舊費ニ關聯シテ、今日ノ資材難デアル折柄、
全國國民學校ノ如キハ校舍ノ有效活用ノ爲
メ、二部〓授ニシテハ如何トノ質問ニ對シ
マシテ、財務當局トシテハ夙ニ其ノヤウナ
考へ方ノ下ニ現狀活用主義ヲ主張モシ、又
反省モ求メテ居ルトノ答辯ガアリマシタ、
次ニ科學技術〓究ニ關スル諸費目ノ支出ハ
少キニ過ギザルヤ、又電波物理〓究所臨時
費ニ關シ〓究ノ結果如何トノ質問ニ對シマ
シテ、科學〓究費目ハ主トシテ南方派遣ト
シテ〓究スル豫備金支出デアリ、又電波ハ
急速ニ〓究スル必要ガアリ、數個ノ大學、
學者等一齊ニ〓究ヲ開始シテ居ルガ、詳細
ノ發表ハ出來ヌ、但シ近キ將來ニ於テハ案
ズルニ及バヌ程度ニ〓究ガ出來テ居ル、總
テ〓究ハ資金、資材ノミデハ出來ズ、基
中心ハ〓究者其ノ人ニアリ、故ニ若キ後繼
者ノ養成モ必要デアリ、目下中心タル學者
ニモ大イニ働イテ貰ツテ居ルガ、要スルニ
學者、資金、資材ノ三者ガ揃ハナケレバナラ
ヌトノ答辯デアリマシタ、此ノ點ハ大臣マ
デ御傳ヘヲ願ツテ置キマシタ
最後ニ第一、第二豫備金ノ支出ニ付テノ
大藏當局ノ監査ノ根本精神、及ビ其ノ成果
ニ對スル責任如何トノ質問ニ對シマシテ、
大藏當局ハ各省事務ニ對シテハ監査ハ出來
ヌガ、卽チ大臣ハ財務ノ總括、大臣トシテ財
務ニ付テ監督總括ノ責任ヲ持ツガ、其ノ施
策ニ付テハ監督ハセヌ、成ベク內容ヲ詳細
ニ審査シ、國費ノ濫費ヲ戒メテ居リ、各省
ノ施策ガ政府ノ要求ニ合ツテ居ルカドウカ
ヲ頭ニ置イテ審査シテ居ル云々ノ答辯ガア
リマシタ、以上ノ外各種ノ角度カラ色々ト
熱心ナル質疑應答ガアリマシタガ、是等ハ
速記錄ニ讓ルコトト致シマス
斯クテ昨二日討論ニ入リ、川崎巳之太郞委
員ヨリ、戰力增强ノ必要ニ伴ヒ豫備金額ハ益〓
增大セラレル重要性ニ鑑ミ、政府ハ速カニ
審議會ヲ設置シ、是ガ適正敏速ヲ期セラレ
ンコトヲ望ムトフ希望意見ヲ含メマシテ、
原案ニ承諾ヲ與フル旨ノ贊成意見ガアリマ
シタ、斯クテ昨二日討論終結シテ採決ヲ致
シマシタル結果、全會一致ヲ以チマシテ政
府提出ノ各件ヲ承諾スルニ決シマシタ、以
上此ノ段御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=6
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007・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 採決致シマス、昭和
十七年度第一豫備金支出ノ件外五件ハ承諾
ヲ與フルニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=7
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008・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ六件トモ承諾ヲ與フルニ決シマシ
タ-日程第一乃至第四ハ同一委員ニ付託
シタル議案デアリマスカラ、一括議題トナ
スニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=8
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009・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、日程第一、訴訟費用等臨時措置法案、
日程第二、會社等臨時措置法案、日程第三、
經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律案、日程
第四、朝鮮ニ於ケル裁判手續簡素化ノ爲ノ
國防保安法及治安維持法ノ戰時特例ニ關ス
ル法律案、右四案ヲ一括シテ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長谷原公君
第訴訟費用等臨時措置法案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第二會社等臨時措置法案(政府提出、
貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
第三經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法
律案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第四朝鮮ニ於ケル裁判手續簡素化ノ
爲ノ國防保安法及治安維持法ノ戰時
特例ニ關スル法律案(政府提出、貴
族院送付)第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一訴訟費用等臨時措置法案(政府提出、貴
族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長谷原公
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一會社等臨時措置法案(政府提出、貴族
院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長谷原公
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律案
(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長谷原公
衆議院議長岡田忠彥殿
報告書
一朝鮮ニ於ケル裁判手續簡素化ノ爲ノ
國防保安法及治安維持法ノ戰時特例ニ
關スル法律案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長谷原公
衆議院議長岡田忠彥殿
〔谷原公君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=9
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010・谷原公
○谷原公君 只今上程ニ相成リマシタ訴訟
費用等臨時措置法案外三件特別委員會ノ經
過ノ大要竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
議題ト相成リマシタ四法案ニ付キマシテ
ハ、其ノ趣旨竝ニ提案理由ヲ、過日司法大
臣及ビ內務大臣カラ詳細御說明ニ相成ツテ
居リマスカラ私ハ之ヲ省略致シマス、委員
會ハ去ル一月二十九日カラ本月二日マデノ
間ニ於キマシテ三囘ニ亙ツテ審議ヲ遂ゲタ
ノデアリマスルガ、司法省關係ノ三案ハ之
ヲ一括致シマシテ內務省案ト別個ニ議題ト
シ、先ヅ政府ノ內容說明ヲ聽キマシテソレ
カラ質疑ニ入ツタノデアリマス、委員諸君
ハ種々ノ見地カラ熱心ニ且ツ詳細檢討ヲ行
ヒマシタガ、政府モ亦之ニ對シマシテ極メ
テ懇切丁寧ナル御答辯ガゴザイマシタ、今
是等法案ニ付テ行ハレマシタ所ノ質疑應答
ノ主ナルモノヲ御紹介申上ゲマス
會社等臨時措置法案ニ付キマシテ一委員
カラ、本法案ニ於テ勅令ニ委任シタ事項ノ
內容如何ト云フ質疑ガアリマシタガ
〔議長退席、副議長著席〕
政府ハ具體的ニ其ノ內容ヲ說明スルト共ニ、
只今豫定致シテ居ル事項ハ之ヲ勅令ニ委任
スルコトナク、直チニ法文ノ中ニ採入レル
コトハ必ズシモ不可能デハナイガ、戰局ノ
推移ニ依ツテハ多少ノ變更ヲ加ヘル必要ガ
アルト考ヘルノデ、其ノ餘裕ヲ存スル爲ニ
勅令ニ委任スルコトニシタト附言セラレマ
シタ、次ニ第三條ニ付キマシテ、政府ノ說
明デハ、株主ノ員數ヲ五千人位ニ限定スル
トノコトデアルガ、其ノ員數ハ如何ナル時
期ヲ標準トシテ算定スルノデアルカト云フ
ヤウナ問ニ對シマシテ、政府ハ總會招集ノ
爲ノ公〓ヲナシタ時ニ五千人バカリアルナ
ラバソレデ宜イト云フ豫定デアルトノ答辯
デアリマシタ、ソレカラ第二條等ハ定款ニ
定メアル場合ニ限ツテ適用セラレルコトニ
ナツテ居ルガ、左樣ヲ定メヲナスニハ普通
ノ定款變更手續ニ依ルノデアルカ、斯ウ云
フ問ニ對シマシテ政府ハ、唯一囘ノコトデ
アリ、且ツ株主ノ意思ヲ確ムルヲ相當トス
ルカラ、從來通リノ定款變更ノ手續ニ依ラ
ナケレバナラヌト云フ答辯デアリマシタ、
尙ホ第四條ニ付テ或ル委員カラ、政府ノ說
明ニ依ルト、營業ノ一部ノ讓渡或ハ營業全
部ノ讓受ノ場合デモ、比較的輕微ナモノデ
アル場合ニハ、總會ノ決議ニ依ラズトモ差
支ヘナイト言ハレルガ、是ガ爲ニ會社ノ目
的變更ヲ生ズルヤウナ場合デモ、左樣ナ手
續デ宜イノカト云フ質問ガアリマシタガ、
之ニ對シマシテ政府ハ、左樣ナ場合ノ定款
變更ハヤハリ一般ノ定款變更ノ手續ニ依ル
ベキモノデアル、換言スルト、定款ノ變更
ヲ要シナイ場合ニ、營業ノ一部讓渡或ハ全
部ノ讓受、左樣ナコトガ行ハレル場合ニハ、
斯樣ナ簡易ナル手續ニ依ラシムル豫定デア
ルト云フ趣旨ノ答辯ガアリマシタ、次ニ訴
訟費用等臨時措置法案ニ關聯シテ或ル委員
カラ、裁判所ノ開廷時刻ガ嚴守厲行サレナ
イ爲ニ、戰力增强ニ忙ガシイ訴訟關係人マ
デガ迷惑ヲ受ケテ居ル現狀デアルガ、之ヲ
匡正スルニ付テ何トカ考慮ヲシテハドウカ
ト云フヤウナ質問ガアリマシタガ、之ニ對
シ政府カラハ、是ハ平素常ニ警戒ヲ致シテ
居ル點デアルガ、一日ニ數件或ハ數十件宛
審理ヲシナケレバナラヌ今日ノ裁判所ノ機
構カラ見テ、一面洵ニ已ムヲ得ナイ次第デ
アル、併シ今後ハ一層裁判所及ビ訴訟當事
者ノ協力ヲ强調シテ、此ノ種ノ不利不便ガ
ナイヤウナコトニ十分努力ヲスルト云フ趣
旨ノ答辯ガアリマシタ、次ニ經濟關係罰則
ノ整備ニ關スル法律案ニ付テ或ル委員カ
ラ、本案成立後ノ檢擧ノ方針、特ニ所謂大
物ノ檢擧ヲスルニハ、檢事ニ强制捜査權ヲ
附與シナケレバ其ノ目的ガ達セラレナイノ
デハナイカト云フ質問ニ對シマシテ、司法
大臣カラ、此ノ法案ノ運用ニハ勿論萬全ヲ
期シ、其ノ事犯ニ對シテハ高位高官ニ在
ル者ニ付テモ、檢擧ハ常ニ嚴正公平ハワフ
ベキコトハ司法ノ性質上當然ノコトデアル、
搜査機關ノ强制權ノ問題ハ深イ關心ヲ持ツ
テ居ルガ、其ノ影響ガ中々大キイノデ、司
法省內ノ民事法令及ビ刑事法令改正準備委
員會ニ於テ、此ノ點ハ折角〓究中デアルト
云フ趣旨ノ答辯ガアリマシタ、次ニ右ノ質
問ニ關聯致シマシテ或ル委員カラ、官吏ノ
漬職其ノ他官吏ノ犯罪ノ檢擧ヲ全ウスル爲
三ハ、獨立ノ司法警察官ノ制度ヲ設置シナ
ケレバナラヌト思フガ、政府ノ所見如何ト
云フ問ガアリマシタノニ對シテ、政府カラ
ハ官吏ノ瀆職其ノ他ノ犯罪ニ付テハ嚴正ナ
ル檢擧ヲ必要トスルコトハ全ク同感デアル
ガ、獨立ノ司法警察ノ制度ハ事重大デアツ
テ、愼重ナル檢討ヲ必要トスル、隨テ今直チ
ニ立案ニ進ムカドウカハ斷言ガ出來ナイ、
斯ウ云フヤウナ答辯デアリマシタ、次ニ本
法案ニ關聯致シマシテ、去ル第八十三囘帝
國議會ニ於テ成立致シマシタアノ戰時刑事
特別法中改正、裁判所構成法戰時特別中改
正、斯樣ナ法令ノ實施ノ狀況、殊ニ二審制
度トナツタ爲ニ、眞實發見ニ不十分ナ點ガ
アリハシナイカ、勾留ガ長キニ失スル爲ニ、
事實上一審制度トナツタヤウナ弊ハアリハ
シナイカト云フヤウナコトニ付テ、詳細ナ
質問ガアリマシタガ、之ニ對シ政府カラハ
綿密ナル答辯ガアリマシテ、右實施ノ成績
ガ著々擧ツテ居ルコト、玆ニ司法當局ニ於
テ運用上遺憾ナキヲ期シ、種々努力中デア
ル旨ノ御答辯ガアリマシタ、次ニ或ル委員カ
ラ本法案ニ更ニ一步ヲ進メテ、不正ノ配給
ニ付テモ處罰スル所ノ規定ヲ設クル用意ハ
ナイカトノ質問ガアリマシタ、之ニ對シ
政府ハ、斯カル處罰規定ヲ設クベシトノ意
見ハ、旣ニ司法省内ノ經濟關係罰則調査委
員會ノ答申トシテ出テ居ルノデアルガ、規
定ノ仕方ニ依ツテハ廣範圍ニ失シ、一般、
及ボス響キガ非常ニ大キイノデ、今後之ヲ
提案スルカドウカニ付テハ今直チニ明答ハ
出來ナイ、併シナガラ更ニ一層ノ〓究ヲ遂
ゲタイト考ヘテ居ル、斯樣ナ答辯ガアリマ
シタ、次ニ一委員カラ經濟統制法令ハ煩瑣
ニシテ厖大デアル、之ヲ簡素化スル所ノ必
要ガアルト思フガ、司法當局ノ方針ハドウ
カ、又經濟事犯ニ對シ、一般刑法ト違ツタ
經濟刑法トモ云フヤウナ根本法ヲ制定スル
必要ハナイカ、或ハ經濟事犯ニ對スル刑罰
トシテ、從來ノ體刑、金刑ノ外ニ閉門、謹
愼ト云フヤウナ新タナ制裁ヲ考ヘル必要ハ
ナイカ、更ニ又經濟犯罪ニ付テハ事前防止
ニ力ヲ注グベキデアルガ、其ノ對策如何、
斯樣ナ質問ガアリマシタノニ對シマシテ、
政府カラハ經濟統制法令ノ整備統合ハ望マ
シイコトデアルガ、關係方面モ多イカラ、
篤ト協議ノ上デ適當ニ考慮スル、又經濟事
犯ニ對シ現在ノ刑罰以外ニ、新タナル刑罰
ヲ制定スベシトノ御意見ニハ深ク敬服スル
ガ、事重大ナ問題デアルカラ是レ亦篤ト〓
究調査ヲ進メタイ、尙ホ又經濟犯罪ノ事前
防止ニハ大イニ努力ヲ傾注シテ行ク積リデ
アルガ、其ノ根本ハ遵法精神ノ涵養ト云フ
コトニアルト考ヘテ、司法省トシテハ本年
度豫算ニ於テ統制經濟遵法懇談會ノ費用ヲ
要求中デアルカラ、是ガ實現スルナラバ各
地方ノ有力者ノ協力ヲ得テ、經濟犯罪ノ事
前防止ニ努メタイト思ウテ居ル、斯樣ナ答
辯ガアリマシタ、次ニ一委員カラ司法部ノ
機構ノ戰時態勢ヘノ切替ハ一應完了シタ感
ガアルガ、機構ヨリモ人ノ問題ハ尙ホ大切
デアル、此ノ點ニ關スル司法省ノ用意如何
ト云フヤウナ質問ガアリマシタガ、之ニ對
シ政府委員カラ種々事例ヲ擧ゲテ、司法部
ノ時局認識ニ付テノ決意ノ存スル所ヲ披瀝
セラレマシタ
次ニ朝鮮ニ於ケル裁判手續簡素化ノ爲ノ
國防保安法及治安維持法ノ戰時特例ニ關ス
ル法律案ニ付キ御報〓致シマス、或ル委員
カラ此ノ法案ハ內地ニ於テハ他ノ立法手續
ニ依リ、本法案ノ成立ト同樣ノ結果ヲ旣ニ
得テ居ルニ拘ラズ、單ニ朝鮮ノミノ爲ニ殊
更ニ本案ノ協賛ヲ求ムルノデアルガ斯ク
ノ如キ獨立ノ立法手續ヲ執ルコトナク、法
ノ解釋運用等ニ依リ、所期ノ目的ヲ達シ得
ルノデハナイカ、統治上出來得ル限リ內鮮
一體ノ措置ガ望マシイガ、政府ハ將來ニ於
テモ本案ノ如キ立法手續ヲ維持スル方針デ
アルカト云フノデ、四ツノ對策ヲ提示シテ
ノ質問ガアリマシタガ、之ニ對シ政府ハ對
案中ノ二ツハ反對ノ解釋ヲ取ルガ、他ノ二
ツハ考慮ノ餘地ガアル、將來必ズシモ本案
ノ立法手續ヲ先例トスルモノデハナイ旨ノ
答辯ガアリマシタ、次ニ朝鮮ノ民心ニ關シ
國防保安、治安維持ノ見地カラ質問セラレ
マシタコトニ對シテ、政府ハ國防獻金、金
屬囘收等ニ現ハレタ半島同胞ノ忠誠心ヲ種
種說明セラレマシタガ、中ニ付キ一ツダケ
具體例ヲ御紹介致シマスト、內地學徒ガ「ペ
ン」ヲ捨テ筆ヲ投ジテ、勇躍征途ニ上ル壯
擧ヲ聞キ知ツタ朝鮮ノ學生達ハ、當時志願
ニ依ルノ外、兵役ニ就ク途ナカリシニ拘ラ
ズ、朝鮮ニ於ケル在學生ノ九割八分、內地
在學生ノ九割五分ハ、大東亞戰爭ノ必勝ニ決
死ノ御奉公ヲナス爲メ、進ンデ徵兵志願ヲ
致シタトノコトデアリマス(拍手)、以上ノ
外各案ニ付キ種々熱心且ツ適切ナル質疑應
答ヲ交サレマシタガ、其ノ詳細ハ速記錄ニ
讓ルコトニ致シマス
斯クテ質疑ヲ終了シ、四案ヲ一括シテ討
議ニ入リマシタ所、委員佐久間渡君ヨリ原
案通リ可決スベシトノ意見ノ開陳ガアリ、
採決ノ結果、全會一致可決致シマシタ、以
上御報告申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=10
-
011・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 四案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌガ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=11
-
012・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ四案ノ第二讀會ヲ開クニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=12
-
013・森下國雄
○森下國雄君 直チニ四案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=13
-
014・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 森下君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=14
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015・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ直チニ四案ノ第二讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
訴訟費用等臨時措置法案
第二讀會(確定議)
會社等臨時措置法案第二讀會(確定議)
經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律案
第三讀會(確定議)
朝鮮ニ於ケル裁判手續簡素化ノ爲ノ國防
保安法及治安維持法ノ戰時特例ニ關スル
法律案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=15
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016・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 別ニ御發議モ
アリマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、四案トモ
委員長報告通リ可決確定致シマシタ(拍手)
日程第五及ビ第六ハ、同一委員ニ付託シタ
ル議案デアリマスカラ、一括議題トナスニ
御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=16
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017・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、日程第五、石炭配給統制法中改
正法律案、日程第六、企業整備資金措置法
中改正法律案、右兩案ヲ一括シテ第一讀會
ノ續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマ
ス-委員長久山知之君
第五石炭配給統制法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第六企業整備資金措置法中改正法律
案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報告書
一石炭配給統制法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長久山知之
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一企業整備資金措置法中改正法律案(政
府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長久山知之
衆議院議長岡田忠彥殿
〔久山知之君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=17
-
018・久山知之
○久山知之君 只今議題ト相成リマシタ石
炭配給統制法中改正法律案竝ニ企業整備資
金措置法中改正法律案、此ノ二件ニ對スル
委員會ノ經過竝ニ結果ニ付キマシテ御報告
ヲ申上ゲマス
委員會ハ去ル二十七日ニ成立致シマシテ
以來四日間、此ノ間祕密會ヲ一囘開催致シ
マシテ、延ベ時間約十八時間ニ互ル審議ヲ
ちハロ繼續致シタ譯デアリマス、石炭ト云ヒ、鐵
ト云ヒ、或ハ企業整備ノ善後處置ト云ヒ、
直チニ明日ノ戰局ニ至大ナル影響ヲ及ボス
重大問題デアリマスルガ爲ニ、委員會ハ最初
ヨリ最後マデ非常ニ緊張シタ會議ヲ繼續致
シタ譯デアリマス、此ノ問委昌諸君ヨリ憂
國ノ至情ヨリ發スル熱列眞摯ナル質疑ノ開
陳ガ行ハレマシタ、又政府當局ニ於キマシ
テモ非常ニ懇切丁寧ナル御答辯ヲ得タ譯デ
アリマス、私ハ其ノ全部ヲ皆樣ニ御報〓申
上ゲタイ氣持ニ燃エテ居リマスルガ、時間
ノ關係上、又祕密會議ノ內容等ニ付キマシ
テハ、事情ガ之ヲ許シマセヌノデ、是ハ
切速記錄ニ讓リマシテ、是非皆樣ノ御一讀
ヲ御願ヒ申上ゲタイノデアリマス、唯其ノ
間ニ於キマシテ、現下國民ノ最モ重大ナル
關心ヲ持ツテ居リマスル石炭ノ問題、或ハ
鐵鋼ノ問題ニ付キマシテ、此處ニ國務大臣
ノ御答辯ヲ御披露申上ゲマシテ、御參考ニ
供シタイト思フノデアリマス
一委員ヨリノ、今日ノ石炭事情ハドウナ
ツテ居ルカ、果シテ政府ノ計畫通リ生產ガ
行ハレテ居ルカドウカト云フ御質問ニ對シ
マシテ、岸國務大臣ハ、十八年度初頭ニ立
テタ物動計畫ノ基礎ヲ成シテ居ル石炭ノ內
地ニ於ケル產出ハ、上期ニ於テハ殆ド豫定
計畫數量ヲ生產スルコトガ出來タノデアル
ガ、其ノ內容ヲ申上ゲルト、四、五、六月
ハ非常ニ石炭ガ良クテ、七、八月カラハ少
シ降リ坂ニナツク結果、上半期全體ヲ通ジ
テハ計書通リノ數量ヲ得テ居ル、所ガ下期ノ
生產目標ニ對シテハ、其ノ後時局ノ要請ニ
基イテ、年初ニ立テタ物動計畫ノ供給量ヨ
リモ之ヲ引上ゲタ出炭計畫ヲシタノデアル、
然ルニ七八月以降ノ出炭狀況ガ思ハシクナ
カツタ、此ノ狀況ガ更ニ九月以後ニモ續イ
テ、十一月ノ初頭ニ於テハ前途頗ル憂慮ス
ベキ狀態ニ相成ツタノデアルガ、行政査察
或ハ不足ノ勞務ノ充足等ヲ講ジタ爲ニ、十二
月カラハ漸次上昇シテ十二月、一月ダケノ
狀況カラ云フト、殆ド計畫ニ近イ數字ガ出
ルヤウニナツテ居ル、併シナガラ十月、十
一月兩月ニ於ケル相當量ノ計畫ヨリモ足リ
ナイ分ガアルノデ、一月以降ニ於テハ計畫
數量ヲ確保スルト共ニ、十、十一兩月ニ於
ケル減產トナツテ居ル部分モ回復スルト云
フ目標ヲ立テヽ今極力官民ガ力ヲ協セテ
遊進シテ居ル次第デアル、大體私共ノ目透
シデハ本年一パイニ於テハ下期ノ增產目標
ノ擴大ヲモ含メタ量ヲ、三月末日マデニハド
ウシテモ之ヲ〓保シタイト云フ目的ニ向ツ
テ進ンデ居ル、斯フ云フ御答辯ヲ得タノデ
アリマス、又鐵鋼ノ現狀ニ對シマシテ一委員
ヨリノ熱心ナル質問ガアリマシタ、今日ノ鐵
鋼ハ將來ノ戰局ニ非常ナル關係ヲ持ツモノ
デアル、政府ハモツト〓〓大掛リニ是ノ增
產ヲスル必要ヲ感ジテ居ナイカ、現在果シ
テ所要量ヲ確保シテ居ルカドウカト云フ御
質疑ニ對シマシテ、同ジク岸國務大臣ハ
大東亞戰爭完遂ノ爲ニ鐵鋼ハ多々益〓辯ズル
ノデアルガ、國家全體ノ生產力カラ見テ幾
ラデモ造ルト云フ譯ニハ行カナイノデアル、
此ノ際鐵ノ絕對量ヲ增加スルノハ勿論デア
ルガ、國內ノ比較的重要ナラザル部面ノ消
費ヲ抑ヘ、之ニ依ツテ緊急方面ノ要求ヲ確
保スルコトガ絕對ニ必要デアル、政府ハ今
萬難ヲ排シテ是ガ確保ヲ期シテ居ル、而モ
一「トン」ノ鐵ノ量ト雖モ爆彈、飛行機、軍艦
トシテ直チニ戰力化スルコトニ努力シ、新
シイ各材ヲ汪ギ込ムヤウナコトハ絕對ニ避
ケタイ、此ノ見地カラ政府トシテモ既存熔
鑛爐ノ全運轉ニ重點ヲ置イテ、一部輕度繰
業ノモノヲ格勵シテ、十分ナ力ヲ發揮サセル
コトガ根本方針デアル、而シテ他面輸送力
ニ依存セズ、且ツ咨材ヲ餘リ使ハナイデ、
急速ニ鐵鋼ヲ增產シ得ル方法ヲ併セテ考究
シタイ、現ニ大陸各地ニ建設サレテ居ル小
型熔鑛爐其ノ他ノ方法デ增產ヲ圖ルコトト
シタイ、尙ホ國內鐵鑛石資源ノ開發ハ十八
年度カラカヲ注イデ居ルガ、十九年度ニハ
劃期的ナ関發ヲ期シテ居ル次第デアル、斯
ウ云フ意味ノ御答辯ガアツタノデアリマス、
其ノ他凡ユル角度ニ於キマシテ、微ニ入リ
細ヲ穿ツタ御質問ガ繼續サレタノデアリマ
スルガ、前中上ゲマスルヤウニ、此ノ際其
ノ一切ヲ省略致シマスルコトハ甚ダ私ノ遺
憾トスル所デアリマス
斯ク致シマシテ委員會ハ一切ノ質疑ヲ終
了シ、右雨案ヲ一括致シマシテ討論ニ入ツ
タ譯デアリマス、其ノ際川俣〓音君ヨリ、
此ノ二案ニ對スル贊成意見ノ開陳ガアリマ
シテ、採決ノ結果滿場一致ヲ以テ原案贊成
ノ決議ヲ得タ次第デアリマス、右甚ダ簡單
デアリマスルガ、委員會ノ御報告ヲ申上ゲ
マス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=18
-
019・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 兩案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=19
-
020・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ兩案ノ第二讀會ヲ開クニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=20
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021・森下國雄
○森下國雄君 直チニ兩案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンゴトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=21
-
022・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 森下君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=22
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023・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ直チニ函案ノ第二讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
石炭配給統制法中改正法律案
第二讀會(確定議)
企業整備資金措置法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=23
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024・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 別ニ御發議ぞ
アリマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、兩案ト
モ委員長報告通リ可決確定致シマシタ拍
手)日程第七乃至第九ハ同一委員ニ付託シ
タル議案デアリマスルカラ、一括議題トナ
スニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=24
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025・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、日程第七、朝鮮私設鐵道補助法
中改正法律案、日程第八、船舶職員法中改
正法律案、日程第九、簡易生命保險法中改
正法律案、·右三案ヲ一括シテ第一讀會ノ續
ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長今井健彥君
第七朝鮮私設鐵道補助法中改正法律
案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第八船舶職員法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
第九簡易生命保險法中改正法律案
(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案(政
府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長今井健彥
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一船舶職員法中改正法律案(政府提出、
貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報告候也
昭和十九年二月二日
委員長今井健彥
衆議院議長岡田忠彥殿
報〓書
一簡易生命保險法中改正法律案(政府提
出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長今井健彥
衆議院議長岡田忠彥殿
〔今井健彥君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=25
-
026・今井健彦
○今井健彥君 只今上程サレマシタ三案ニ
付キマシテ、委員會ノ經過竝ニ結果ニ付キ
マシテ順次御報告申上ゲマス
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案、本案
ハ現在朝鮮ニ於キマシテ政府ノ補助ヲ受ケ
テ居リマスル私設鐵道ガ全部デ十二社、其
ノ延長ガ千五百五十九「キロ」餘アリマス、
其ノ補助期間ハ營業開始ノ日カラ十五箇年、
其ノ後總督府ニ於テ必要アリト認メマシタ
ル時ニハ、更ニ十年延長スルコトガ出來ル
ト云フ規定デアリマス、此ノ中ニ朝鮮鐵道
黃海線及ビ忠北線、朝鮮京南鐵道所屬ノ鐵
道京城電氣ノ金剛山電鐵線、新興鐵道ノ
咸南線、此ノ四社五鐵道ガ本年ノ十二月乃
至二十年ノ三月デ二十五箇年ノ補助年限ガ
滿了致スノデアリマス、然ル所此ノ四鐵道ハ
何レモ國營線ノ代行線タルノ特質ヲ有シテ
居リマスノミナラズ、特ニ生產力擴充上緊
要ナ物資竝ニ生活必需物資輸送ノ重大使命
ヲ帶ビテ居ルノデアリマス、仍テ政府ハ更
ニ其ノ補助ヲ繼續セント致シテ、此ノ提案
ヲナサレタモノデアリマス、委員會ニ於キ
マシテハ、之ニ關聯致シマシテ、朝鮮鐵道
ノ增强策、半島ト內地トノ結付キ、或ハ大
陸ト朝鮮トノ連絡、港灣設備、荷役ノ狀況、
其ノ他ニ付キマシテ詳細ノ質疑應答ガ交サ
レタノデアリマス、朝鮮鐵道ニ於キマシテ
ハ、從來客本位ニ鐵道ガ造ラレテ居ツタ、
然ルニ此ノ時局勃發後、貨物ノ大部分ヲ陸
ニ轉移シナケレバナラヌ結果ニナツタ爲ニ
俄カニ本鐵道ノ改築ヲ必要トシ、政府ノ說
明スル所ニ依リマスレバ、今年ダケデ一億
圓ノ金ヲ增加致シマシテ、新義州、釜山間
ノ鐵道ノ複線工事ニ著手シ、近ク其ノ竣功
ヲ見ルコトニナツタト云フコトデアリマス、
更ニ又南鮮方面ニ於キマスル港灣、蔚山ノ
岸壁ノ整理ヲ初メト致シマシテ、釜山、馬
山、三千浦或ハ麗水、木浦、是等ノ港灣ノ
設備ヲモ近ク完成スルコトニナツタト云フ
コトデアリマス、之ニ依リマシテ本年ノ下
半期ニナリマスレバ、其ノ輸送力モ非常ニ
强大ニナルト云フ說明ガアリマシタ、尙ホ
朝鮮ノ輸送力其ノ他ニ付キマシテ、祕密會
ヲ開キマシテ詳細ノ檢討ヲ加ヘタノデアリ
マスルガ、其ノ內容ハ此處ニ申上ゲルコト
ヲ遠慮致シマス
次ニ船舶職員法中改正法律案、本案ノ改
正ノ要點ハ、從來船舶ニハ無線通信士ト云
フモノハ、職員トシテ定員ノ中ニハ加ハツ
テ居ラナカツタノデアリマス、無線電信運
用ノ重要性ニ鑑ミマシテ、今後ハ無線通信
士ヲ船舶職員トシテ、其ノ乘組ヲ强制スル
コトニ相成ツテ居リマス、第二ハ運轉士ノ
名稱ヲ航海士ト改メル、第三ハ今マデ海技
免狀ノ種類ト云フモノガ非常ニ多種多樣デ
アツタ、之ヲ整備致シマシテ十四種、通信
士ノ免狀ガ三種、合計致シマシテ十七種ニ
限定ヲシテ、免狀ノ行使範圍ニ彈力性ヲ有
セシメルコトニナツタノデアリマス、第四
ハ船舶職員ノ定數ヲ、從來ハ船ノ「トン」
數別ニ依ツテ船長、運轉士ノ數ヲ決メ、
船ノ公稱馬力ノ別ニ依リマシテ機關長、機
關士ノ定員ヲ定メテ居ツタノデアリマスガ、
之ヲ航行區域及ビ「トン」數別ノ一表ト致シ
マシテ、從來ノ公稱馬力制度ニ囚ハレル
コトナク、其ノ制度ヲ改メルト云フノデア
リマス、本案ニ關係致シマシテ、委員會デ
ハ海上輸送力增强、或ハ船舶ノ國家管理デ
アルトカ、木造船、甲造船ノ建造ノ狀況、
機帆船ノ運航統制ノコト、港灣行政ノコト、
其ノ他各種ノ質疑ガ行ハレマシタ、祕密會
ニ於キマシテモ特ニ海軍當局ノ出席ヲ求メ
マシテ、詳細ナル說明ヲ煩ハシタノデアリ
マスルガ、其ノ詳細ハ之ヲ速記錄ニ讓リタイ
ト思ヒマス、唯其ノ中デ特ニ港灣法ノ制定
ニ付キマシテ八田運輸通信大臣カラ一ノ言
明ガアリマシタ、港灣ノ一元的運營ヲ圖ル
爲ニ港灣法ノ制定ハ是非必要デアル、今議
會ニ提出スルコトハ出來ナカツタガ、事前ニ
ナスベキ施設ヲ進メ、最モ近イ機會ニ提出
スル考ヘデアル、港灣法ノ內容トシテハ建
設修築、運營等港灣ニ關スル一切ヲ包含
スルモノタラシメテ、輸送能率增强ノ爲ニ
港灣ニアル現有施設ノ一切ヲ、必要ニ應ジ
テ管理運營スルコトガ出來ルヤウニスル積
リデアルト云フコトノ言明ガアリマシタ、
更ニ又木造船ノ建造ニ付キマシテハ、海運
總局長官カラ致シマシテ、昨年ノ十二月ニ
木船實務者ト技術者ノ懇談會ヲ開イタ結
果海務院ノ標準型船ノ設計改良ヲ斷行ス
ルコトニナツタ、旣往ノ行掛リニ囚ハレズ、
斷乎トシテ之ニ改革ノ手ヲ進メテ行ク決心
ヲ持ツテ居ルト云フコトノ表明ガアリマシ
タ、更ニ又甲造船ニ付キマシテモ、昨年ハ
非常ニ成績ガ良好デアリマシテ豫定以上ノ
成績ヲ擧ゲテ居ル、本年ハ更ニ昨年度ニ比
ベマシテ倍ノ建造ガ出來ル豫定デアルト云
フ言明ガアリマシタ
次ニ一委員ヨリ致シマシテ、現在護送船
ニ乘組ンデ居リマスル船員ノ狀況ニ付キマ
シテ政府ニ質問ヲ致シマシタル所、岡海軍
軍務局長ハ斯ウ云フ答辯ヲ致サレマシタ、
海軍ガ船員ニ對シ殊勳者トシテ金鵄動章ヲ
授與シタル者ハ既ニ二十七名、或ル特設輸送
船ハ聯合艦隊司令長官カラ感狀ヲ授ケラレ
テ居リマス、船員ノ相手ハ飛行機デアリ潜水
艦デアリマスルカラ、竝大抵ノモノデハアリ
マセヌ、或ル船ノ如キハ敵潛水艦二隻ト遭
遇スルヤ、敢然砲擊ヲ加へ、其ノ一隻ヲ擊破
スルノ殊動ヲ擧ゲ、自ラモ亦三名ノ戰死者ヲ
出シテ居ル、或ル輸送船ハ敵機カラ爆擊サ
レテ火災ヲ生ジ、將ニ沈沒ニ瀕セントシタ
ガ、乘組ノ二等機關士ハ他ノ一名ノ者ト火
焰ノ中ニ飛込ンデ發動機ノ操縱ヲ續ケマシ
タ爲ニ、沈沒前大發救命艇ヲ降スコトガ出來
マシタ、又機帆船ガ敵潜水艦カラ機銃掃射
ヲ受ケタ時、敵潜水艦ニ體當リヲ行ハント
シタ爲メ、敵ハビツクリシテ逃ゲタト云フ
コトガアル、斯クノ如キ勇敢ナル行爲ハ日本
船員魂ノ發露デアツテ、其ノ例ハ枚擧ニ遑
ガナイノデアリマス、申スマデモナク海上
輸送ハ戰爭遂行上重大ナル要素デアリ、ソ
コニ船員、乘組員ノ重大任務ガアル、大體
航海ハ平常デサヘ困難デアルガ、特ニ開戰
以來潛水艦、航空機ノ橫行スル中ヲ航行ス
ルノハ、平時ニ比ベテ幾十倍ノ困難ガアル、
船長以下乘組員ハ不眠不休デ活躍シ、荷役
ハ極度ニ早メナケレバナラナイ、船長船員
ノ斯カル努力ニ對シテ我々一同ハ感謝シ敬
意ヲ表シテ居ル次第デアルガ、一船ノ乘組
船員ハ極メテ少數デアツテ、晝夜ヲ別タズ
航空機、潛水艦ニ對シテ警戒シナガラ海上
輸送ノ重責ヲ遂行シテ居ルノデアリマスル
カラ、此ノ機會ニ國民全體ガ船員ノ努力、
立場ヲ理解シテ、船員ノ志氣昂揚ニ努メ、其
ノ家族救援ニ十分協力セラレンコトヲ希望
スル(拍手)又陸軍ノ吉積整備局長ハ斯ウ申
サレマシタ、大東亞戰下我ガ船舶ハ敵ノ潜
水艦ト戰ヒナガラ、晝夜ノ別ナク戰力增强
ト國民生活必需物資ノ確保ノ爲ニ第一線ニ
活躍シテ居リ、之ニ伴ツテ船員ノ勞苦モ非
常ナルモノガアル、能ク底力ヲ發揮シテ其
ノ任ニ當ツテ居ル、殊ニ陸軍ノ徵用船ハ北
ハ千島カラ南ハ「ビルマ」マデ數千哩ニ亙ツ
テ淚グマシキマデノ苦鬪ヲ重ネテ居リマス、
最近敵米國ハ補給線遮斷ニ徹底シタ施策ヲ
講ジタラシク、潜水艦ニ依ル我ガ船舶ノ損
耗ヲ增シテ居リマス、人手ノ少イ船員ノ中
カラ對潜水艦見張員ヲ出サネバナラナイ
等船員ノ仕事ハ二重三重ニ增加シテ居ル、
船長ノ如キハ航海中食事モ寢ルノモ一切甲
板デヤツテ居ル、船長以下ノ技術ハ實ニ優
秀デ、屢〓敵潜水艦カラ船ヲ救ツテ居ル、中
ニハ敵潜水艦ニ自分ノ船ヲ打突ケテ難ヲ免
レタ例モアリマス、斯ウシタ關係カラ敵潜
水艦ノ見張ヲ增加シナケレバナラナイ、運
航能率ヲ增進スル爲ニ內地ノ荷役ヲ短時間
ニ縮メ、歸リニハ努メテ南方物資ヲ少シデ
モ多ク積ンデ歸ル等ノ爲ニ、船員ノ休養期
間ハ皆無ト云ツテ宜イ狀態デアリマス(中略)
要スルニ苛烈悽慘ナル決戰下ニ於ケル海上
輸送ハ益〓危険ガ增大シテ居ルガ、船員諸君
ガ船ニ貨物、軍隊ガアル限リ、死ヲ賭シテ
船ヲ死守スル精神ニ對シ最大ノ敬意ヲ表シ
テ居ル次第デアリマス、斯ウ述ベラレテ居
リマス(拍手)洵ニ戰爭ニ際シマシテ護送船
ノ乘組員諸君ガ、非常ナ奮鬭ヲ續ケラレテ
居ルト云フコトハ之ニ依ツテモ明カナノデ
アリマスガ、然ルニ之ニ對スル所ノ給與ト云
フモノガ伴ハナイ、之ニ對シマシテ、議
員カラ詳細ノ質問ガアリマシタ、船長ノ平
均年齡ハ大體四十七歲ダサウデアリマス、然
ルニ此ノ船長ガ輸送ノ大任ヲ帶ビマシテ、潜
航艇ノ橫行スル海面ニ突入シ、サウシテ戰
死シタ場合ニ此ノ人達ノ受ケル給與ガ幾ラ
デアルカト云ヘバ、二十年保證年金ニ致シ
マシテ、船長デアツテ月額僅カニ八十圓六
十二錢シカ貰ヘナイノデアリマス、軍人ニ
比スコトハ如何ト思ヒマスガ、海軍ノ大尉
ノ年金ニモ遙カニ及バナイノデアリマス、
又甲板長ハ船ニ於キマスル中堅デアリマス、
此ノ甲板長ガ戰死致シマシタ時ニモ、僅カ
ニ月額ニ致シマシテ三十一一圓六十五錢ノ保
證年金ガ貰ヘルニ過ギナイノデアリマス、
准士官ノ三分ノ一ニモ足リナイ所ノ給與デ
アリマス、洵ニ同情ニ堪ヘナイ、其ノ上ニ
食糧ニ致シマシテモ、被服ニ致シマシテモ、
軍手ニ致シマシテモ、軍靴ニ致シマシテモ、
雨合羽ニ致シマシテモ、色々ノ物ノ補給ガ
今日十分ニ整ツテ居ラナイノデアリマス、
之ニ對シテ政府ハモツト此ノ給與ヲ良クシ、
是等ノ物資ヲ潤澤ニスベキデハナイカト云
フ質問ニ對シマシテ政府ハ、洵ニ御尤モナ
コトデアリマス、是等ノ給與ニ對シテハ、
近キ機會ニ於テ、閣議決定ニ依ツテ純軍需
ニ應ジテ配給スルヤウニ致シタイ、斯ウ云
フ答辯デアリマシタ(拍手)其ノ他祕密會ニ
於キマシテハ、沈船其ノ他ニ關シマシテ詳
細ナ質疑應答ガアツタノデアリマスガ、是
モ玆ニ御報告致シマス自由ヲ有サナイノデ
アリマス
次イデ簡易生命保險法中改正法律案、本
案ハ被保險者一人ニ付テ加入シ得ル保險金
ノ最高制限額一千圓ヲ二千圓ニ引上ゲル、
唯是ダケノ案デアリマス、保險金最高制限額
ヲ若シ無條件デ千圓以上ニ引上ゲマス時ニハ、
現在民問ノ生命保險會社ガ實施シテ居リマス
千圓以上ノ無審査保險ト是ガ競合致シマス、
仍テ其ノ弊ヲ除ク爲ニ、簡易生命保險ノ被
保險者一人ニ付テ加入シ得ル限度ヲ二千圓
トスルト同時ニ、一年間ニ加入シ得ル限度
ハ千圓ヲ超ユルコトヲ得ザルモノト致シマ
シタ、民間ノ無審査保險ハ從來通リトスル、
斯カル修正デアリマス、之ニ對シマシテ委
員諸君カラ種々ナル質疑ガ行ハレマシタ、
先ヅ今日無集配局ノ中ノ特定局ト直轄局、
之ニ依ツテ其ノ從業員ノ待遇ガ差別サレテ
居ル、之ヲ撤廢スルコトハ出來ナイカ、之
ヲ更ニ待遇ノ改善ヲスルコトハ出來ナイカ
ト云フ質問ニ對シマシテ、政府當局ハ、本
年ハ先般郵便料値上其ノ他ニ依ツテ得マシ
タル收入ノ中カラ一部ノ金ヲ割イテ、從業
員ノ二千人ダケハ判任官ニ待遇ヲ改メル、
來年度ニ於キマシテハ特定局ノ從業員九千
人ヲ判任官ニ全部昇格サセル豫定デアルト
云フ言明ガアリマシタ、其ノ他雜費ノ支給
作業ノ簡素化、制度機構ノ改正等、通信ノ
戰時體制確立ニ關シマス緊急剴切ナル質疑
應答ガ交ハサレタノデアリマス、ソレ等ノ
詳細ハ全部之ヲ速記錄ニ讓ルコトト致シマ
ス
三案ニ付テ質疑ガ終了致シマシタ後討論
ニ入リマシテ、小林委員カラ、現業員ノ待
遇改善、半島ト本土トノ連絡、大陸ト半島
トノ鐵道輸送計畫ト云フヤウナコトニ付キ
マシテ希望ヲ附シマシテ、三案トモ何レモ
原案、卽チ貴族院カラ送付サレマシタ原案
通リ委員會ニ於テハ贊成ノ御意見ガアリマ
シタ、採決ノ結果、全員三案トモ貴族院送
付案通リ、卽チ原案通リ之ヲ可決スルコト
ニ決定致シタノデアリマス、以上御報告申
上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=26
-
027・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 三案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=27
-
028・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ三案ノ第二讀會ヲ開クニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=28
-
029・森下國雄
○森下國雄君 直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報〓ノ通
リ、可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=29
-
030・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 森下君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=30
-
031・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ直チニ三案ノ第二讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
朝鮮私設鐵道補助法中改正法律案
第二讀會(確定議)
船舶職員法中改正法律案
第二讀會(確定議)
簡易生命保險法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=31
-
032・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 別ニ御發議モ
アリマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、三案ト
モ委員長報告通リ可決確定致シマシタ(拍
手
日程第十、北支那開發株式會社法及中支那
振興株式會社法中改正法律案ノ第一讀會ノ
續ヲ開キマス、委員長ノ報告ヲ求メマス-
委員長深澤豐太郞君
第十北支那開發株式會社法及中支那
振興株式會社法中改正法律案(政府
提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報〓)
報〓書
一北支那開發株式會社法及中支那振興株
式會社法中改正法律案(政府提出、貴族
院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月二日
委員長深澤豐太郞
衆議院議長岡田忠彦殿
〔深澤豐太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=32
-
033・深澤豐太郎
○深澤豐太郞君 北支那開發株式會社法及
中支那振興株式會社法中改正法律案ノ委員
會ノ審査ノ經過竝ニ結果ヲ御報告申上ゲマス
本改正案ノ〓要ハ、過日ノ本會議ニ於ケ
ル提案ノ理由ニ於テ明カデアリマス、要ス
ルニ、戰局ノ進展ニ伴ヒマシテ、支那ニ於
テモ製鐵、輕金屬ノ增產ヲ初メトシテ、各
種重要ナル戰力資源ノ急速ナル開發ヲ促進
スル必要愈〓切ナルモノガアリマスノデ、北
支那開發株式會社及ビ中支那振興株式會社
ノ機能ヲ擴張シテ、政府ノ命令ニ依リ、是
等緊要ナル事業ヲ促進スル爲メ必要ナル事
項ヲナサシメ、之ニ依ツテ生ズル損失ヲ政
府ニ於テ補償スル制度ヲ設ケ、他方今後增
大スベキ兩社ノ資金需要ニ應ズル爲メ、兩
社ノ社債發行限度ヲ擴張セントスルモノデ
アリマス、換言スレバ、兩社ノ平和的機能
ニ加フルニ戰時ノ要請ニ基ク戰時的機能ヲ
附與セントスルモノデアリマス、「大東亞
戰爭遂行上緊要ナル事業」此ノ條文ノ追加
ニ依リマシテ兩會社ノ使命ハ飛躍的ニ加重
セラレ、戰力增强上ニ於ケル兩社ノ地位
ハ益〓重要トナツテ參ツタノデアリマス
委員會ニ於テハ先ヅ祕密會ヲ開キ、重要
ナル祕密事項ニ付キ靑木大東亞大臣ノ詳細
ナル說明ヲ聽取致シマシタ後審議ニ入リ、
三日間ニ亙リ委員各位ノ愼重ナル質疑ガ續
行セラレ、委員ト政府當局トノ間ニ、日華新
條約ト兩會社ノ關係、在支邦人ノ活動狀況、
食糧問題、鐵道、港灣、電氣、小型熔鑛爐、
木造船、民族資本ノ活用等、各般ノ問題ニ
付キ熱心ナル質疑應答ガ重ネラレタノデア
リマス、支那ノ食糧問題ニ對スル政府ノ
所見ヲ質シマシタノニ對シ、大東亞大臣
ハ食糧問題解決ノ爲メ支那官民ノ力强キ
奮起ノ狀況ヲ述べ、之ニ對シ帝國トシテモ
中華民生ノ確保安定ヲ圖ルト共ニ、各種重
要戰力資源ノ開發上必要デアリマスノデ、
是ガ解決ニ付テハ各般ノ技術的援助、竝二
外國ヨリノ食糧輸入確保等ニ付キ積極的協
力ヲ惜マザル旨ノ答辯ガアリ、又對支新政
策ニ伴フ兩會社關係ノ事業ノ調整方針如何
トノ質疑ニ對シマシテハ、中國官民ノ日華
協力ニ對スル熱意ノ昂マリツヽアル現狀ニ
對應シ、中國側ノ創意ト工夫トヲ活カシ、
以テ日華提携ノ趣旨ヲ徹底セシムルコトヲ
主眼トシテ、各事業ノ實體ニ卽シ、適當ニ
移讓或ハ調整ヲ行フベキ旨ヲ明カニ致サレ
タノデアリマス、其ノ他詳細ハ速記錄ニ於
テ御承知ヲ御願ヒ致シマス
斯クテ委員會ハ昨日午後一時討論ニ入リ、
依光好秋君ヨリ贊成ノ意見ガアリ、採決ノ
結果滿場一致可決致シマシタ、右御報〓申
上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=33
-
034・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 本案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=34
-
035・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
クニ決シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=35
-
036・森下國雄
○森下國雄君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通リ
可決セラレンコトヲウ王ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=36
-
037・内ヶ崎作三郎
○副議長(內ケ崎作三郞君) 森下君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=37
-
038・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ議案全部ヲ議題ト致シマス
北支那開發株式會社法及中支那振興株
式會社法中改正法律案
第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=38
-
039・内ヶ崎作三郎
○議長(內ケ崎作三郞君) 別ニ御發議モア
リマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報
告通リ可決確定致シマシタ(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=39
-
040・森下國雄
○森下國雄君 議事日程變更ノ緊念動議ヲ
提出致シマス、卽チ此ノ際政府提出海軍刑
法及海軍軍法會議法中改正法律案ヲ議題ト
ナシ、委員長ノ報〓ヲ求メ、其ノ審議ヲ進
メラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=40
-
041・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 森下君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=41
-
042・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシ
ト認メマス、仍テ日程ハ變更セラレマシ
タ-海軍刑法及海軍軍法會議法中改正法
律案ノ第一讀會ノ續ヲ開キマス、委員長ノ
報〓ヲ求メマス-委員長中原謹司君
海軍刑法及海軍軍法會議法中改正法律
案(政府提出、貴族院送付)
第一讀會ノ續(委員長報告)
報〓書
一海軍刑法及海軍軍法會議法中改正法律
案(政府提出、貴族院送付)
右ハ本院ニ於テ可決スヘキモノト議決致
候此段及報〓候也
昭和十九年二月三日
委員長中原謹司
衆議院議長岡田忠彥殿
〔中原謹司君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=42
-
043・中原謹司
○中原謹司君 只今議題トナリマシタ海軍
刑法及海軍軍法會議法中改正法律案ニ關ス
ル特別委員會審議ノ經過竝結果ヲ御報告申
上ゲマス
委員會ハ去ル二十九日ヨリ本日午前中マ
デ四囘ニ亙ツテ開會ヲシ、其ノ間委員諸君
竝ニ政府委員ノ間ニ熱切ナル質疑應答ヲ重
ネテ參ツタノデアリマス、本案提出ノ理由
ニ付キマシテハ、曩ニ海軍大臣ヨリ詳細ナ
ル御說明ガアリマシタガ、其ノ要點ヲ重ネ
テ此處デ御許シヲ得テ說明ヲ致シマスレバ、
第一ハ海軍軍人ノ名稱中新ニ制定サレマシ
タ見習尉官ヲ海軍刑法ノ適用下ニ置クコト
ニナリマシタ、其ノ爲ニ海軍軍法會議法中
見習尉官ヲ被〓人トスル場合ノ軍法會議判
士ノ區分ニ關スル規定等ヲ整備シタノデア
リマス、第二點ハ軍法會議ノ職員タル判士ニ
ハ、戰時事變ニ際シテ必要アルトキ上席判
士ヲ除クノ外、將校相當官ヲモ之ニ充ツル
コトヲ得ルト云フ改正デアリマス
以下本改正案ニ對スル質疑應答ノも要ナ
リト認メラルヽ二三ノ點ニ付テ〓要ヲ申述
ベマス、見習尉官制度ヲ初メ一般海軍武官
ノ種類、其ノ採用ノ方法及ビ進級ノ狀況如
何ト云フ質疑ガアツタノデアリマス、之h
對シテ政府委員ヨリハ極メテ懇切丁寧ナル
御答辯ガアツタノデアリマスガ、ソレハ略
シマス、併シ特ニ今般召集サレタ學徒入團
兵、入營兵ノ中カラ最近豫備學生生徒及ビ
見習尉官ヲ採用中デアル、何レモ極メテ成
績ガ宜シイ、〓ネ採用サレルデアラウト申
スコトガ出來ル、見習尉官ノ科目ハ醫科、
藥劑科、主計科、技術科、齒科醫科、法務
科ノ六科ニ分ツテ、最近ニ見習尉官トシテ
採用サレルト云フ耳新シイ報告ガアリマシ
タ、他ハ速記錄ニ就イテ御覽ヲ願ヒタイト
思ヒマス、第二點ノ軍法會議法中改正ノ三
十二條ニ關スル質疑デアリマス、ソレハ
直接指揮機ノナイ將校相當〓ヲ判士トシタ
理由ハ何處ニアルノカト云フコトト、將校
目覚官ヲ研トニ切ヘナガラ、尙日ツ依然ト
シテ將校ヲ以テ上席判士トスル理由ハ何處
ニアルノカト云フ質疑デゴザイマシタ、之
ニ對シテ政府ハ軍法會議法ニ於テハ統帥中
核ヲナス將校ヲ判士トスルノガ原則デア
ル、又ソレガ最善デアルガ、戰局ノ進展ニ
伴ツテ將校ハ第一線ノ配備ニ皆就イテ居ル
爲ニ、判士ヲ召集スルコトニ困難ヲ來シテ
居ル、其ノ爲ニ次善ノ策デハアルガ、戰時事
變ニ際シ必要アルトキ特例トシテ今般ノ改
正ヲ行ハントスルモノデアルトノ答辯デア
リマス、第二點ノ將校相當官ヲ新タニ判士
トスルモ、軍法會議ノ性質上統帥ノ中核ヲナ
ス將校ヲ以テ、依然上席判士タラシムルコ
トヲ適當ト認メタカラ、上席判士ニハ將校
ヲ充テルコトニシタノデアルト云フ政府ノ
說明デアリマス、第三ハ本案ニ關聯シマシ
テ南方占領地域竝ニ皇軍援助ニ依ツテ新獨
立國家ニ於ケル一般治安ノ狀況ハドウカト
云フ質疑デアリマス、此ノ項目ニ對シテハ
陸海軍各政府委員ヨリ是レ亦各地域別ニ亙
リ極メテ詳細ナル御報告ヲ受ケタノデアリ
マスガ、此處デハ發表ノ餘裕ガアリマセヌ、
結論ダケ御紹介申上ゲマスレバ、要スルニ
全般的ニハ治安ノ維持ハ極メテ良好デアツ
テ、殊ニ原住民ノ政治參與ヲ許シタ地域ノ
如キハ、自ラ進ンデ防衞義勇軍ヲ起シ、或
ハ靑少年團、婦人團體等ガ創設サレテ、皇
軍ニ協力ノ實ヲ擧ゲテ居ルト云フコト、又
時々敵機ノ爆擊ヲ受クル地區ニ於キマシテ
ハ、其ノ空襲ヲ受ケ爆擊サレ、或ハ後方攪亂
ノ目的ヲ持ツ宣傳「ビラ」ヲ撒布セラレルニ
モ拘ラズ、何等動搖ノ色ナク、我ガ統治ニ
對シテ滿幅ノ信賴ヲ寄セテ居ル、治安し憂
フベキモノヲ認メナイト云フコトデアリマ
シタ、唯極メテ僅カナル一部分デアリマス
ガ、敵國ノ指導ヲ受ケテ今尙ホ治安上注意
ヲ要スル所ガナイデハナイガ、是モ皇軍ノ
援助ト其ノ地區指導者ノ獻身的努力ニ依ツ
テ漸次改善向上ノ途ニ向ヒツヽアリ、而シ
テ比較的文化ノ低イ地域ハ、食物ガ缺乏ス
レバ動トモスレバ不平不滿ノ爲ニ騒動等ヲ
起ス憂ガアルノニ鑑ミマシテ、此ノ地方ニ
ハ今カラ精神的指導ヲ十分行ヒ、是ト相俟
ツテ〓糧ノ自給自足ノ對策、家庭工業指導、
輕工業ノ現地移轉等ニ依リ、一定限度ノ生
活資料ノ確保ト生產ノ增加ニ努メ、治安ノ
向上確立ニ邁進シテ居ルト云フ答辯デアリ
マシタ、尙ホ大東亞戰爭後海軍軍法會議ノ
取扱ヒタル被〓事件ノ數、犯罪ノ種類、或
ハ南方占領地域ノ司法機關ノ現狀ト軍法
會議ノ關係、其ノ他占領地域ノ思想檢察、問
題犯罪豫防ノ方策、行刑者ノ改過遷善策、
或ハ軍隊ノ禁酒問題等々、結帥ニ關スル軍
紀軍律保持昂揚ノ見地カラ熱心ナ、有力ナ
幾多ノ質疑應答ガ重ネラレタノデアリマス
ガ、其ノ全貌ハ速記錄ニ依ツテ御覽ヲ願ヒ
タイト思ヒマス
斯クテ本日午前討論ヲ用ヒズシテ採決ニ
入リ、全會一致ヲ以テ政府提出原案ノ如ク
可決致シタ次第デアリマス、此ノ段御報〓
申上ゲマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=43
-
044・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 本案ノ第二讀
會ヲ開クニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=44
-
045・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ本案ノ第二讀會ヲ開クニ決
シマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=45
-
046・森下國雄
○森下國雄君 直チニ本案ノ第二讀會ヲ開
キ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長報告ノ通
リ可決セラレンコトヲ望ミマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=46
-
047・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 森下君ノ動議
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=47
-
048・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 御異議ナシト
認メマス、仍テ直チニ本案ノ第一一讀會ヲ開
キ、議案全部ヲ議題ト致シマス
海軍刑法及海軍軍法會議法中改正法律
案第二讀會(確定議)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=48
-
049・内ヶ崎作三郎
○副議長(内ケ崎作三郞君) 別ニ御發議モ
アリマセヌ、第三讀會ヲ省略シテ、委員長
報〓通り可決確定致シマシタ(拍手)日程
第十二乃至第十四ノ三案ハ何レモ建議委員
長ヨリ本會議ニ於テ卽決ノ要求ガアリマシ
タ仍テ是ヨリ順次議題ト致シマス-日程
第十二、海外同胞援護資金制度設置ニ關ス
ル建議案ヲ議題ト致シマス、提出者ノ趣旨
辯明ヲ許シマス-提出者津崎尙武君
第十二海外同胞援護資金制度設置ニ
關スル建議案(前田米藏君外百四名
提出)
海外同胞援護資金制度設置ニ關スル建
議案
海外同胞援護資金制度設置ニ關スル
建議
御稜威ノ下皇軍ノ赫々タル大戰果ニ應ヘ
雄渾ナル構想ニ依ル大東亞ノ建設ヲ推進
シ十億民族ノ强靱ナル結束ト無盡藏ナル
資源ノ開發ヲ促進シ以テ戰力ノ飛躍的增
强ヲ期スルハ現下ノ急迫セル戰局ニ鑑ミ
絕對不可缺ノ要件ナルト共ニ曩ニ大東亞
會議ニ於テ宣明セラレタル五大原則ヲ實
現シテ大東亞悠久ノ興隆ヲ期スルハ當ニ
皇國ニ課セラレタル一大使命ナリト謂フ
ベシ卽チ大東亞ノ建設ハ我ガ肇國ノ精神
タル·八紘爲宇ノ大理想ヲ顯現シ世界新秩
序ヲ確立スベキ一大聖業ナルヲ以テ今ヤ
大東亞建設戰士トシテ挺身海外ニ活躍ス
ル我ガ同胞ノ責務ハ愈〓、其ノ重大性ヲ加フ
ルニ至レリ玆ニ於テカ我ガ海外同胞ハ須
ク從來ノ自由主義經濟時代ニ於ケルガ如
キ利己的行動ヲ放擲シ儼然タル國家的大
方策ノ下滅私奉公一身一家ノ榮達ヲ顧ミ
ズ堅忍持久凡ユル困苦缺乏ヲ克服シ一意
專心建設ノ聖業ニ眞摯敢鬪セザルベカラ
ズ然ルニ海外同胞敢圖ノ地タルヤ多クハ
僻遠不毛剩ヘ家庭上衞生上子弟〓育上其
ノ他各般ノ施設完カラズ殊ニ苛烈ナル戰
局ノ現段階ニアリテハ航海中又ハ建設中
不幸殉職スル者逐次其ノ多キヲ加へ之ガ
爲生活ニ困窮スル遺家族ノ數亦尠カラザ
ル實情ニアリ此ノ際海外同胞ヲシテ後顧
ノ憂ナカラシメ以テ其ノ業務ニ挺身セシ
ムルハ刻下ノ急務ナリト謂フベシ旣ニ出
征軍人ニハ軍人援護會アリ應徵戰士ニハ
徵用援護會アリ海員ニ對シテモ亦日本海
員掖濟援護會アルニ拘ラズ挺身以テ皇道
ノ發揚ニ活躍スル海外同胞ニ對シテ未ダ
之ニ比肩スベキ何等ノ施設ナキハ國民ノ
齊シク遺憾トスル所ナリ仍テ政府ハ速ニ
海外同胞援護ノ方途ヲ確立シ以テ刻下ノ
要求ニ卽應セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔津崎尙武君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=49
-
050・津崎尚武
○津崎尙武君 只今上程セラレマシタ海外
同胞援護資金制度設置ニ關スル建議案ニ付
キマシテ、其ノ提案ノ理由ヲ御說明申シタ
イト思ヒマス、本案ニ對スル說明ニ付キマシ
テハ、先ヅ案自體ヲ明カニスルコトガ順序ト
思ヒマスカラ、其ノ案ヲ先ヅ朗讀致シマス
〔副議長退席、議長著席〕
海外同胞援護資金制度設置ニ關スル
建議
御稜感ノ下皇軍ノ赫々タル大戰果ニ應ヘ
雄渾ナル構想ニ依ル大東亞ノ建設ヲ推進
シ十億民族ノ强靱ナル結束ト無盡藏ナル
資源ノ開發ヲ促進シ以テ戰力ノ飛躍的增
强ヲ期スルハ現下ノ急迫セル戰局ニ鑑ミ
絕對不可缺ノ要件ナルト共ニ曩ニ大東亞
會議ニ於テ宣明セラレタル五大原則ヲ實
現シテ大東亞悠久ノ興隆ヲ期スルハ當ニ
皇國ニ課セラレタル一大使命ナリト謂フ
ベシ卽チ大東亞ノ建設ハ我ガ〓國ノ精神
タル八紘爲宇ノ大理想ヲ顯現シ世界新秩
序ヲ確立スベキ一大聖業ナルヲ以テ今ヤ
大東亞建設戰士トシテ挺身海外ニ活躍ス
ル我ガ同胞ノ責務ハ愈〓其ノ重大性ヲ加フ
ルニ至レリ玆ニ於テカ我ガ海外同胞ハ須
ク從來ノ自由主義經濟時代ニ於ケルガ如
キ利己的行動ヲ放擲シ儼然タル國家的大
方策ノ下滅私奉公一身一家ノ榮達ヲ顧ミ
ズ堅忍持久凡ユル困苦缺乏ヲ克服シ一意=
專心建設ノ聖業ニ眞摯的鬪セザルベカラ
ズ然ルニ海外同胞敢鬪ノ地タルヤ多クハ
僻遠不毛剩ヘ家庭上衞生上子弟〓育上其
ノ他各般ノ施設完カラズ殊ニ苛烈ナル戰
局ノ現段階ニアリテハ航海中又ハ建設中
不幸殉職スル者遂次其ノ多キヲ加へ之ガ
爲生活ニ困窮スル遺家族ノ數亦尠カラザ
ル實情ニアリ此ノ際海外同胞ヲシテ後顧
ノ憂ナカラシメ以テ其ノ業務ニ挺身セシ
ムルハ刻下ノ急務ナリト謂フベシ旣ニ出
征軍人ニハ軍人援護會アリ應徵戰士ニハ
徵用援護會アリ海員ニ對シテモ亦日本海
員液濟援護會アルニ拘ラズ挺身以テ皇道
ノ發揚ニ活躍スル海外同胞ニ對シテ未ダ
之ニ比肩スベキ何等ノ施設ナキハ國民ノ
齊シク遺憾トスル所ナリ仍テ政府ハ速ニ
海外同胞援護ノ方途ヲ確立シ以テ刻下ノ
要求ニ卽應セラレムコトヲ望ム
右建議ス
建議案ハ以上ノ如クデアリマスガ、是カ
ラ少シク其ノ理由ヲ明カニ致シタイト思ヒ
マンク、四面環海ノ我ガ帝國ハ、其ノ生存發
達ノ上カラモ、又世界的使命達成ノ上カラ
シ、海外トノ關係ガ極メテ重大ナコトハ申
スマデモアリマセヌ、殊ニ大東亞戰爭以來
皇軍ノ征ク所遠ク海外各地ニ及ビマシタニ
連レマシテ、大東亞區域ダケデモ在留同胞
三百萬餘ニ達シテ居ル狀況デアリマス、而
シテ其ノ數ハ益〓增加シ、將來大東亞建設ノ
爲ニハ、國策上相當多數ノ同胞ヲ送リ出ス
必要ガアルノデアリマス、是等ノ海外同胞
ハ舊時代ト異ツダ見地カラ、一身一家ノ利害
ヨリモ寧ロ國家ノ要員トシテ海外ニソレ〓
健闘シテ居ル事情デアリマス、卽チ軍ニ依
リテナサレマシタ戰爭ト相俟チマシテ、大東
亞建設ノ要員トシテ鬪ツテ居ルト云フノガ
事實デアリマス、而シテ是等ノ要員ハ皆其
ノ生レ故〓ヲ離レテ、國策遂行ノ爲ニ異域
ニ働クノデアリマスカラ、是等同胞ノ責任
ハ今日極メテ重大トナツタノデアリマス、
然ルニ其ノ責任ノ重大ナルニ比シマシテ、
之ヲ遇スルノ途ガ整ツテ居ナイコトガ我ガ
國ノ現狀デアリマス、卽チ故〓ニ對スル愛
著ヲ捨テヽ國策上海外ニ身命ヲ捧ゲテ働ク
同胞ニ對シテ、施設ガ未ダ完カラザルモノ
ガアリマスカラ、此ノ大東亞戰爭ヲ完遂シ、
所期ノ目的ヲ達成スル爲ニハ、其ノ進出ニ必要
ナル國家的施設ヲ講ズルコトガ今日ノ急務ナリ
ト確信スルノデアリマス、此ノ頃我々ノ同志
ニ依リマシテ南方要員ノ鍊成ヲ致シテ居リマス
狀況ニ顧ミマスト、是等ノ行クベキ靑年達ハ皆
覺悟ハ立派ニ出來テ居リマス、時代ヲ認識
シ、責任ヲ解シ、挺身報國ノ信念ハ極メテ
旺盛デアリマス、併シナガラ是等ノ人々ノ
有スル他ノ共通ナル氣持ガアリマス、ソレ
ハ自分ハ身ヲ挺シテ行ク、行ク以上ハ固ヨ
リ覺悟ハ固イノデアルガ、唯萬一ノ場合ニ
〓里ニ居ル親達ヲドウシテ吳レルカト云フ
コトデアリマス、此ノ氣持ハ人間トシ、特
ニ日本人トシテ當然ノコトデ、而モ極メテ
尊イコトデアルト思フノデアリマス、斯樣
ナ次第デアリマスカラ是等海外ニ行ク同胞
ヲシテ後顧ノ憂ヒナク、勇躍其ノ地ニ赴カ
シメ、身命ヲ顧ミズ其ノ業務ニ奮鬪セシム
ルト共ニ、不幸ニシテ海外ニ於テ斃レマシ
タ場合ニハ其ノ遺族ヲ見テヤリ、又病氣其
ノ他ノ事故ノ爲ニ救助ヲ要スル事情ニ至リ
マシタ場合等ニハ、之ヲ援護スル制度ヲ樹
立スル必要ガアルノデアリマス、今日大東
亞ニ於ケル決戰ノ間ニ、建設ニ從事スル相
當多クノ同胞ガ斃ルヽノミデナク、航海ノ
途中ニ於テ殉職スル者サヘアルコトハ諸君
御承知ノ通リデアリマス、此ノ事情ニ徵シ
マシテモ、海外同胞援護制度實現ノ急務ナ
ルコトガ明瞭デアルト思ヒマス
以上述ベマシタコトガ、主トシテ海外同
胞援護資金制度ヲ設置シタイ要件デアリマ
スガ、更ニ將來此ノ制度ヲ擴充シマスレバ、
是等行クベキ要員ノ〓育鍊成カラ、海外病
氣療養者ノ補助、養老者、孤兒ノ救濟ナド、
厚生方面等ニモナスベキコトガ多クアリ、
更ニ又世界各地ニ在住スル同胞ト、內地ト
ノ關係ニ於テ、幾多ノ施設ヲ要スルコトガ
アルノデアリマス、併シナガラ是等ノ諸施
設ハ之ヲ後日ニ讓ルコトニ致シマシテモ、
差當リ戰爭ト建設ニ伴フ事項ノ措置ニ付キ
マシテハ、速カニ實現スルノ必要ヲ痛感致
スノデアリマス、旣ニ軍人、應徵士、海員
等ニ對シマシテハ、ソレ〓〓援護ノ施設ガア
リマスケレドモ、海外同胞ニ對シテハ未ダ
何等ノ施設ガアリマセヌカラ、特ニ此ノ際
援護ノ制度ヲ設ケルコトヲ要望スルノガ、
本建議案提出ノ理由デアリマス
尙ホ此ノ制度ノ設置竝ニ運營等ニ付キマ
シテハ、我々ノ〓究シ、考慮シテ居ルコト
ガアリマスケレドモ、ソレハ政府側ノ御〓
究ト相俟チ後日具體的ニ進メルコトニ致シ
マシテ、今日ハ其ノ設置ノ一日モ早カラン
コトヲ希望スルコトニ止メマシテ、全院一
致ノ御賛成ヲ希望致ス次第デゴザイマス(拍
手発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=50
-
051・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 採決致シマス、本案
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=51
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052・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ可決セラレマシタ(拍手)大
東亞大臣ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマ
ス-靑木大東亞大臣
〔國務大臣靑木一男君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=52
-
053・青木一男
○國務大臣(靑木一男君) 只今本院ニ於テ
可決相成リマシタ海外同胞援護資金制度設
置ニ關スル建議案ニ付キマシテ、此ノ際政
府ノ所見ヲ簡單ニ申上ゲタイト存ジマス
大東亞ノ結集ヲ鞏固ナラシムルト共ニ、
大東亞圈內ニ於ケル各種ノ建設ヲ促進
シ、我ガ戰力ノ飛躍的增强ヲ圖ルコトハ、
現戰局下最モ急務トスル所デアリマス、此
ノ間ニ於キマシテ大東亞建設ノ第一線ニ挺
身活躍スル海外同胞ノ任務ハ往年ノソレト
趣キヲ異ニシ國家的使命ノ遂行ヲ要請セラ
レ居ルモノデアリマシテ、其ノ責務ハ極メ
テ重大ナリト言ハネバナリマセヌ、海外同
胞ガ此ノ責務ヲ遺憾ナク果シ得ル爲ニハ、
日當幾多ノ困苦缺乏ニ耐フベキコトハ固ヨ
リ、常ニ國策實現ノ尖兵タルノ自覺ノ下ニ、
一身一家ヲ顧ミズ、其ノ使命達成ニ邁進ス
ルノ覺悟ガナケレバナリマセヌ、而シテ是
ト同時ニ國家及ビ國民ニ於キマシテモ、是
等同胞ノ決意ニ對シテハ、深キ理解ト同情
トヲ持チ、彼等ヲシテ後顧ノ憂ヒナク任務
遂行ニ專念セシムルヤウ努メネバナラヌト
存ジマス、殊ニ戰局苛烈ヲ加フルニ從ヒマ
シテ、建設途上、不幸遭難、殉職スル者モ
漸次增加セントスルノ趨勢ニアリマスル折
柄、速カニ是等同胞ニ對スル援護ノ方途ヲ
確立スベシトノ建議ニ對シマシテハ、政府
モ其ノ趣旨ニ於テ同感ニ存ズル所デアリマ
ス(拍手)仍テ政府ニ於キマシテモ今後關係
方面ト十分協議ノ上、實情ニ卽シタル適切
妥當ノ方途ヲ講ジ得ルヤウ〓究ヲ進ムル考
ヘデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=53
-
054・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 日程第十三、水產物
增產確保ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、
提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-提出者眞
藤愼太郞君
第十三水產物增產確保ニ關スル建議
案(靑山憲三君外四十一一名提出)
水產物增產確保ニ關スル建議案
水產物增產確保ニ關スル建議
榮養給源ノ飛躍的增强ハ現下ノ國民食糧
需給上寔ニ喫緊ノ要務タリ仍テ政府ハ速ニ
水產物ノ增產計畫ヲ確立シ勞務、漁船、
燃料、其ノ他漁業用資材ノ供給確保ニ必
要ナル對策ヲ樹テ其ノ實行ヲ期セラレム
コトヲ望ム
右建議ス
〔眞藤愼太郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=54
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055・眞藤愼太郎
○眞藤愼太郞君 只今議題トナリマシタ水
產物增產確保ニ關スル建議案提案ノ趣旨辯
明ヲ致シタイト存ジマス、先ヅ其ノ案文ヲ
朗讀致シマス
水產物增產確保ニ關スル建議
榮養給源ノ飛躍的增强ハ現下ノ國民食糧
需給上寔ニ喫緊ノ要務タリ仍テ政府ハ速ニ
水產物ノ增產計畫ヲ確立シ勞務、漁船、
燃料、其ノ他漁業用資材ノ供給確保ニ必
,
要ナル對策ヲ樹テ其ノ實行ヲ期セラレム
コトヲ望ム
右建議ス
主要食糧ノ增產確保ニ關シテハ、東條首
相竝ニ山崎農商相ノ力强キ言明ニ依リマシ
テ、一億國民ニ深キ信賴ト自信トヲ與ヘタ
コトハ洵ニ慶ビニ堪ヘナイ所デアリマス、
併シナガラ此ノ主要食糧自給體制ノ確立ト
共ニ、更ニ國民體位ノ保持ニ絕對ニ缺クコ
トノ出來ナイ動物性蛋白質ノ主要給源デア
ル水產物ノ增產確保ヲ期スルニアラザレバ、
食糧對策ハ決シテ完璧トハ申サレナ
イト存ズルノデアリマス(拍手)國力
ノ根幹デアル國民體位ノ保持上、魚
介類ニ依ル蛋白質ノ供給ガ、少クトモ一日
二十「グラム」以上ヲ要スルコトハ、斯道ノ
權威者ガ齊シク提唱シテ居ル所デアリマシ
テ、斯クセザレバ國民體位ノ維持モ、健民
强兵ノ實モ擧ゲルコトハ不可能デアリマス
(拍手)然ルニ現在ニ於テハ內地人口一人一
日當リノ魚肉蛋白質ノ攝取量ハ僅カニ數「グ
ラム」程度ト推定セラレ、必要量ノ一部ヲ
充タスニ過ギナイ狀態デアリマス、主要食
糧ノ配給ヲ規制シテ居ル今日、水產〓糧ニ
期待スル所ハ甚ダ多大ナルニモ拘ラズ、斯
カル實情ニアルコトハ洵ニ憂慮ニ堪ヘザル所
デアリマス、政府ハ前通常議會ニ於テ、
昭和十八年度ノ生產目標ヲ九億貫トシ
テ、其ノ確保ヲ期スル所存デアルト言
明セラレタノデアルガ、是ハ前申シマ
シタ動物性蛋白質ノ所要量約十一億九千
萬貫ヨリ見マスレバ、甚ダ過少ノ生產
目標デアルト思ハレルノデアリマス、然ル
ニ此ノ目標量スラ現在ノ如キ勞働力、漁船、
資材ノ狀態ニ於テハ、遺憾ナガラ確保スル
コトガ困難デハナイカト思ハレルノデアリ
マス、是ハ畢竟戰時食糧政策ノ一環トシテ、
漁業ニ關スル生產目標ガ決定シテ居ラナイ
爲メデアリマシテ、勞務資材ノ確保、漁船
運營竝ニ建造等ニ關シ、積極的對策ガ確立
セラレズ、延イテハ生產計畫ノ樹立、實施
ヲ困難ナラシメルノデアリマス、斯クノ如
キ狀態ニテハ、官民ノ異常ナル熱意ヲ以テ
シマシテモ、漁業ノ增產ハ單ナル掛聲ニノミ
終ルノ虞ナキヲ保シ難イト存ズルノデアリ
マス(拍手)漁業生產ニ必要ナル勞務ノ最小
限度ヲ保有セシムルコトハ、獨リ漁業ノ增
產確保ノ爲ノミデハナク、海洋國家タル我
ガ國民族ノ基盤タル漁村ノ確立上ヨリ見テ
〓、極メテ重要ナル意義ヲ有スルモノーア
リマス、然ルニ漁業勞務ノ確保ニ付テハ、
農業ニ於ケル戰時農業要員ノ確保ノ如キ、
法令ニ依ル根本的措置ガ講ゼラレテ居ナイ
バカリデナク、漁業專業者ノ徵用ニ當リテ
千、何等特別ノ考慮ガ拂ハレテ居ラナイコ
トハ、私共ノ洵ニ遺憾トスル所デアリマス
(拍手)漁業勞務ハ農業勞務ニ比シマシテ、
特ニ專門的技術ト、精强ナル勞働力ト、敢
爲ナル冐險的氣性トヲ必要トスル部面ガ多
ク、婦女子ヤ學徒勤勞ニ補充的勞務ノ給源
ヲ求ムルコトハ全ク無理ト言ハネバナリマ
セヌ、殊ニ漁船ノ船長、機關士ノ徵用ガ漁
船ノ出漁ヲ不能ナラシメ、又一般漁業者ニ
付テモ漁期中ノ徴用ガ其ノ操業ヲ不能ナラ
シメツヽアル事例ハ決シテ少クナイノデア
リマス、農業者ト共ニ食糧ノ增產ニ挺身シ、
凡ユル困難ト鬪ヒ、國家ノ要請ニ應ヘツヽ
アル漁業者ニ對シテ、斯クノ如ク取扱上農
業者ト著シキ差別ガ認メラレルコトハ、彼
等ノ增產志氣ニ非常ノ影響ヲ與ヘ、漁村靑
年ノ離村或ハ轉業ヲ招來スルノ虞ナシトシ
ナイノデアリマス(拍手)卽チ漁業勞務對策
ノ確立ハ急務中ノ急務デアツテ、漁業生產
計畫ノ遂行上必要ナル勞務ノ最小限度ハ、
水產業系統團體竝ニ海洋漁業統制機關ニ命
ジテ之ヲ確保セシムルノ方途ヲ講ズルト共
ニ、其ノ要員ハ農業其ノ他ノ重要產業ト同
樣ニ、生產計畫ニ卽應シテ適正ナル配置ヲ
ナサシメ、以テ水產〓糧ノ增產ニ萬遺憾ナ
カラシムルヤウ、速カニ所要ノ法令ヲ制定
スベキデアルト信ズルノデアリマス(拍手)
漁船ニ關シテハ政府ハ曩ニ是ガ計畫的建
造ノ必要ヲ認メラレ、木造船ノ計畫造船ノ
一部トシテ實施セラレツヽアルノデアリマ
スルガ、其ノ成果ハ決シテ滿足トハ申サレ
ナイノミナラズ、御承知ノ如ク優秀ノ漁船
ハ徵用等ニ依ツテ著シク減少シテ居ル今日、
セメテ一定計畫ニ基キテ建造ヲ認メラレテ
居ルモノハ是ガ完成ヲ促進セシメラレル
コトハ勿論、小型漁船ノ建造ニ關シテモ、
尙ホ一層ノ指導鞭撻ヲ加ヘラレンコトヲ要
望致ス次第デゴザイマス(拍手)又計畫〓船
ノ促進ニ竝行シテ最モ重要ナルコトハ、漁
船竝ニ其ノ機關ノ修理ニ關スル諸施設ノ整
備デアリマシテ、沿岸ニ於ケル木造船工場
ノ新設擴張ニ影響ヲ受ケ、修理職工ヤ船大
エガ拂底シ、船體、機關ノ修理ニハ全國的
ニ其ノ困難ヲ愬ヘツヽアルノデアリマス、
漁業生產ニ於ケル漁船ノ重要性ハ贅言ヲ要
シマセヌ、然ルニ此ノ漁船ノ建造、修理施
設ガ斯カル現狀ニ置カレテ居ルコトハ、洵
ニ寒心ニ堪ヘザル所デアツテ、政府ハ宜シ
ク所要ノ豫算ヲ計上シ、速カニ是ガ施設ノ
整備擴充ヲ講ゼラレンコトヲ望ムモノデア
リマス(拍手)
次ニ燃料其ノ他漁業用資材ノ供給確保ニ
付テデアリマスルガ、水產團體ノ調査ニ依
リマスルト、鰮揚繰網、一般定置網、機船
底曳網等、主要ナル漁業ノ生產ハ沿岸漁獲
ノ約八〇%ヲ占ムルモノデアツテ、假ニ九
億貫ノ生產目標ヲ達成セントスル場合ニ於
テハ、此ノ漁業ニ依リ七億九千萬貫ヲ確保
シテケレバナラヌノデアリマスルガ、之h
要スル資材及ビ勞力ハ、戰前ニ比シ資材ニ
於テ二割、勞力ニ於テ五割ノ供給スラモ之
ヲ確保スル能ハザル現狀デアリマス(拍手)
斯クノ如キ狀態デハ漁業生產ノ增强ヲ期ス
ルコトハ到底不可能ト申サネバナリマセ
又、而シテ海洋漁業ニ於テハ今日戰局ノ甚
大ナル影響ヲ受ケ、其ノ生產著シク減退シ
テ居ルガ、是トテ決シテ輕視スベキモノデ
ナク、此ノ部面ニ對シテモ相當ノ資材ヲ要
スルコトハ勿論デアリマス(拍手)資材ノ配
給ト勞力ノ配置トガ綜合的ニ計畫、セラレ、
漁業ノ實情、漁況ノ變化ニ卽應シテ、機動
的ニ集中動員セラルヽニ於テハ、漁業ノ增產
ハ決シテ困難事デハナイト確信致スモノデ
アリマス(拍手)政府ハ食糧事情ノ緊迫セル
今日、水產物ノ增売確保ノ爲メ、燃料其ノ
他漁業用資材ノ增配ニ付キ、積極的ニ考慮
ヲ拂ツテ戴キタイト思フノデアリマス拍 白
手)我ガ國ハ四面廣大ナル好漁場ヲ有シテ
居ルノミナラズ、世界ニ冠絕スル優秀ナル
漁民大衆ガアリマス、之ヲ國策ノ線ニ動員
シ、之ニ漁船資材ヲ與フレバ、之ニ依ツテ
獲ル資源ハ直チニ生鮮豐富ナル榮養食糧ト
ナツテ戰力化サレルコトハ最早呶々ヲ要サ
ナイノデアリマス(拍手)仍テ政府ハ水產物
增產ノ隘路ニ深ク思ヒヲ致サレ、關係官廳
ノ連絡ヲ一層緊密化セラレ、卽時增產計畫
ヲ確立シ、勞務、漁船、燃料其ノ他漁業用
資材ノ供給確保ニ必要ナル對策ヲ立テ、其
ノ實行ニ當ツテハ、生產〓體ニ生產ノ責任
ヲ負荷セシメ、之ヲ誘披シ、以テ潑剌タル
創意ト工夫トヲ講ゼシメ、其ノ强力ナル組
織力ト實踐力トニ依リ、增產計畫ノ達成ニ
邁進致スベキデアルト存ジマシテ、本建議
案ノ提出致シタ次第デアリマス、何卒滿場
ノ諸君ノ御賛成ヲ御願ヒ致シタイト思ヒマ
ス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=55
-
056・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 採決致シマス、本案
ニ御異議アリマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=56
-
057・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ可決セラレマシタ(拍手)農
商大臣ヨリ發言ヲ求メラレテ居リマス-
山崎農商大臣
〔國務大臣山崎達之輔君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=57
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058・山崎達之輔
○國務大臣(山崎達之輔君) 只今水產物增
產確保ノ重要性ト、其ノ具體的方策ニ關スル
建議案ガ御可決ニナリマシタガ、政府ト致シ
マシテモ主要食糧ノ增產ト共ニ、水產物ノ
增產ニ付キマシテハ、從前ノ施策ヲ更ニ擴
充强化致シマシテ、御建議ノ御趣旨ニ副フ
ヤウ十分努力致ス積リデアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=58
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059・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 日程第十四、砂防ヲ
中心トスル治水利水國策ノ確立竝其ノ行政
ノ一元化ニ關スル建議案ヲ議題ト致シマス、
提出者ノ趣旨辯明ヲ許シマス-提出者紫
安新九郞君
第十四砂防ヲ中心トスル治水利水國
策ノ確立竝其ノ行政ノ一元化ニ關ス
ル建議案(小泉又次郞君外二十名提
出)
砂防ヲ中心トスル治水利水國策ノ確立
竝其ノ行政ノ一元化ニ關スル建議案
砂防ヲ中心トスル治水利水國策ノ確
立竝其ノ行政ノ一元化ニ關スル建議
治水ノ完璧ハ先ヅ砂防工事ノ完遂ニ俟タ
ザルベカラズ然ルニ從來ノ治水事業ハ本
事業ノ遂行ニ缺クル所極メテ大ナリ仍テ
政府ハ將來砂防事業ニ重點ヲ置キ速ニ之
ガ貫徹ヲ計ルノ要アリ尙內務省所管ノ治
水事業ト農商省所管ノ治水利水ニ關スル
凡ユル事業ヲ一省ニ統合シ以テ治水利水
萬全ノ機能ヲ發揮セラレムコトヲ望ム
右建議ス
〔紫安新九郞君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=59
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060・紫安新九郎
○紫安新九郞君 私ハ只今上程セラレマシ
タル砂防ヲ中心トスル治水利水國策ノ確立
竝其ノ行政ノ一元化ニ關スル建議案ニ付キ、
提案ノ理由ヲ申上ゲントスルモノデアリマ
ス
私ハ兵庫縣但馬ヲ貫流致シテ居リマスル
圓山川沿岸ノ農村ヲ〓里トシテ居ル者デア
リマス、又悲慘ナル水害ノ體驗ヲ持ツテ居
ル者デアリマス、隨テ砂防、治水、利水ニ
關シテハ平素聊カ關心ヲ持ツテ居ル者デア
リマス、我ガ國ニハ年々水害ガ起ツテ居リ
マス、昨十八年ノ水害ハ一道一一十九縣ニ及
ビ、最モ悲慘ヲ極メタノハ島根縣デアリマ
ス、何故ニ斯クモ水害ガ起ルノデアリマセ
ウカ、砂防ノ權威者ノ言フ所ニ依リマスレ
バ是ハ治水政策ヲ誤ツタ結果デアルノデ
アリマス、現在ノ誤レル治水政策ヲ以テス
レバ、當然起ルモノガ起ツタノデ、何等不
思議トスルニ當ラナイ、ソレデアリマスカ
ラシテ現狀ノ儘ニ放任センニハ、今後益〓大
災害ヲ誘致スルノ危險ガ豫想セラルヽノデ
アリマス、何故ニ治水政策ヲ誤ツタカト言
ハイ、河川改修ヲナスニ當リテ、單ニ河川
ノ流域面積ト降雨ノ分量トヲ計算ノ基礎ト
ナシ、之ニ河床ノ狀態トカ緩急ノ程度ヲ考
ヘ、幾分ノ安全率ヲ加ヘルニ過ギテイカラ
デアリマス、降雨ニ依ル流水ノ分量ノ外ニ
流出ス土砂ヲ算定シ、兩者ヲ合併シテ正確
ナル洪水ノ分量ヲ決定シタモノガナイカラ
デアリマス
今其ノ二、三ノ實例ヲ擧ゲレバ、昭和九
年石川縣手取川ノ大洪水デハ、花崗岩ノ大
石ガ上流カラ流出デ、現在川ノ中央ニ小山
ノヤウニ聳エ立ツテ居ルノデアリマス、又
昭和十三年兵庫縣六甲山周圍ノ大洪水ノ如
〃神戶市ノ東部大半ヲ埋メ盡シタ現狀ヲ
見マシテハ、洪水ノ分量ヲ決定スルニ當リ、
流出ス土砂ノ分量ヲ河川改修ノ計畫ニ考慮
セズ、流出ス土砂ノ分量ノ計算ヲ誤ツタ
コトガ知ラルヽノデアリマス、尤モ是ハ水
源地域ニアル山ノ崩壞ヲ豫メ知ルコトガ出
來ナイカラ、流出土砂ノ分量ヲ計算スルコ
トハ極メテ困難デハアリマスルガ、洪水ノ
分量ハ單リ降雨ノ分量ニ依ラズ、流出スル
土砂ノ分量ノ爲ニ著シク左右セラレルト云
フコトデアリマス、我ガ國ノ河川ハ地形ノ
上ニ於テ大陸ノ洋々タル大河ニ比シテ〓シ
テ急流ナル河川ニ屬スルガ故ニ、一層流出
スル土砂ノ分量ヲ重視シナケレバナラヌノ
デアリマス、昨年無數ノ山ノ崩壞ヲ來シ、
多クノ同胞ヲ失ヒマシタル島根縣ノ慘狀ヲ
考ヘマスルト、島根縣ハ從來甚ダシキ災害
モナク、出雲大社ノ所在地ダケニ、何トナ
ク鬱蒼タル森林國ノヤウナ觀ヲ呈シテ居タ
ノデアルガ、一朝ニシテ非常ナル慘狀ヲ呈
シタノハ、水源地方ニ於ケル砂防工事ノ行
屆カザリシコトガ主ナル原因ト言ハナケレ
バナラナイノデアリマス(拍手)山ノ崩壞ト溪
流ノ荒廢ノ爲ニ、慘狀ヲ呈シタルノ事實ハ
單リ昨年ノ島根縣ノ水害ニ限ラズ、昭和四
年以來群馬縣、兵庫縣但馬、京都市鴨川、
近クハ兵庫縣六甲山地方等ノ各地方ニ頻出
シタ大水害ハ何レモ其ノ揆ヲ一ニスルモノ
デアリマス
然ラバ流失スル土砂ノ對策ハ如何ニスベ
キカ、斯道ノ權威者ノ言フ所ヲ端的ニ言ヘバ、
水源地方ノ山林ヲ保護シ、山腹ニ砂防工
事ヲ施シ、適當ナル箇所ヲ選ンデ堰堤ヲ築
クコトガ最モ急務デアリマス、砂防工事ニ
於テ災害ヲ免レタル實例ハ、島根縣ニ於ケ
ル柿木村、愛媛縣ニ於ケル溪筋村、同ジク
愛媛縣ノ原町村、大分縣別府市內ヲ流ルヽ
境川、石川縣手取川ノ水源地タル柳谷、新
潟縣南魚沼郡地方ニ於ケル河川等ニ見ルコ
トガ出來ルノデアリマス、又兵庫縣六甲山
脈カラ發スル武庫郡西宮市ノ仁川、芦屋市
ノ芦屋川ハ、共ニ昭和十年ノ地域ヲ限ツタ
豪雨ノ爲ニ崩壞ヲ續出シ、多クノ耕地ト宅
地トヲ流シ、汽車、電車ヲ不通ナラシメ、是
ガ復舊ニ際シテハ、單ニ兩河川ニ限ラズ六
甲山一帶ノ危險性ヲ慮リマシテ、相當ノ砂
防工事費ガ要求セラレタノデアルガ、財政
ノ都合上仁川及ビ芦屋川ノ一部ニ對シテノ
ミガ承認セラレ、仁川ト芦屋川ニ多數ノ堰
堤ガ築カレタ、隨テ昭和十三年ノ六甲山脈
一帶ノ大水害デハ、仁川ハ殆ド水害ヲ免レ、
芦屋川ハ兩方ニ隣接シテ居ル夙川、住吉
川ノ慘害ニ比較シテ輕小ニ止マツタ、此ノ
事實ニ徵スルニ、若シ曩ニ要求セラレタル
全額ノ豫算ガ承認セラレ、六甲山脈一帶ノ
河川ノ要所々々ニ豫メ砂防堰堤ヲ築キ、崩
壞防止ニ備フレバ、一朝ニシテ多數ノ人命
ヲ失フコトナク、神戶市ノ大水害ヲ防止輕
減シ得タコトト信ズルノデアリマス、然ラ
バ適正ナル治水政策ハ何デアルカト云フト、
是モ斯道ノ權威者ノ言フ所ニ依リマスレ
バ、何川ノ洪水ノ分量ハ流域ノ面積ト最大
ノ降雨トノ分量カラ算出決定シ、ソレニ基
イテ河川改修ヲ施行スルコトニ依ツテ沿岸
一帶ノ地方ハ永久ニ水ノ禍ヒカラ免レ、改
修ノ利福ハ年ト共ニ增進シ得ルモノデアリマ
ス、元來河川改修ニ當リテハ、砂防工事ト河
川工事トニ區分シ、兩者何レモ輕重ナク不可
分一體ノ工事デナケレバナラヌノデアリマ
ス、此ノ兩工事ノ完成ニ依ツテ初メテ治水
ノ目的ヲ全クシ得ルモノデアリマス、然ラ
バ砂防工事ト河川工事ト何レヲ先ニ施行ス
ベキカト言ヘバ、第一ニ山ノ崩壞ト溪流ノ
荒廢ヲ防止スル砂防工事ヲ先ニ行ヒ、後一
下流ノ河川工事ニ及ブベキモノデアルノデ
アリマス、此ノヤリ方ヲ誤ツタ實例ハ富山
縣當願寺川デアリマス、此ノ川ハ明治二十
五年ニ多額ノ工費ヲ投ジテ下流河川ノ改修
ヲナシタノデアリマスルガ、其ノ當時上流
ノ砂防工事ニ手ヲ著ケザリシ爲ニ、流出スル
土砂ニ依リ著シク河床ガ埋沒シテ、現在再
ビ改修工事ヲ施行中デアリマス
諸君、今日コソハ我ガ國ノ治水政策ヲ轉
換スルノ時デアリマス、我ガ國從來ノ治水
政策ヲ見ルニ、國民ハ專ラ河川工事ノ速成
ト災害ノ復舊ヲ要望スルコトニ熱烈ニシテ、
假令水源ヲ治ムル砂防工事ノ名ヲ知ルモ、
其ノ多クハ山ニ樹木ヲ植付ケル工事位ニ簡
單ニ解シテ、砂防工事ノ如何ニ大切ナルカ
ヲ知ラズ、又當局ハ國民ノ聲ニ應ジテ河川
工事ト災害復舊工事ニ主力ヲ注ギ砂防工事
ニ十分ナル注意ヲ拂ハナカツタノデアリマ
ス(拍手)是ハ丁度所謂樹靜カナラント欲ス
ルモ風止マズデ、災害ノ禍根ヲ絕タズ、施
工ノ順序ヲ誤ツタ現在ノ治水政策デハ、ドウ
シテ年々起ル所ノ災害ヲ防ギ、治水ノ完璧
ヲ期スルト云フコトガ出來マセウカ、ソレ
デアリマスカラ今後ハ現在ノ變則ニシテ彌
縫的ナル治水政策ハ斷然破棄シ、治水ノ正
道ニ復歸シ、砂防工事ヲ先ニ行フ所ノ治水
政策ニ還元スベキデアリマス、幸カ不幸カ
我ガ國民ノ一半ハ河川工事ノ竣功セル地域
ニ、他ノ一半ハ河川ノ現狀ニ直面スル環境
ニ生存シテ居ルノデアリマス、仍テ國家
遠永ノ治水目的達成ノ爲ニハ、河川ハ現狀
ヲ維持スル程度ニ止メ、水害原因ノ根本タ
ル山ノ崩壞、溪流荒廢ノ跡ヲ絕ツニ至リマ
スレバ、每年平均水害ノ損失三億圓ニ達ス
ル我ガ水害國ガ、初メテ國土安定シ、產業
ノ基礎ヲ確立シ得ルノデアリマス
尙ホ私ハ最後ニ重ネテ如何ニ砂防工事ノ
大切ナルカノ一例トシテ、明治十四年オ〓
ランダ」ヨリ傭入レタル「ヨハ·ラ·レイケㄴ
ト云フ技師ガ淀川改修工事費及ビ砂防工事
費分配ノコトニ付キ、時ノ內務石井大書記
官ニ提出シタ意見書ノコトヲ申上ゲマス、
之ニ依レバ、砂防工事費ハ改修工事費ノ四
倍ヨリ下ルベカラズ、卽チ河川工事ニ二萬
圓ヲ支給スレバ、八萬圓ヲ以テ砂防工事費
ニ充ツベシト言フノデアリマス、又以テ砂
防工事ガ如何ニ大切ナルカト云フコトヲ知ル
ベキデアリマス
更ニ私ハ砂防、治水、利水國策ノ一元化
ニ付テ申述べマス、内務省所管ノ河川工事、
砂防工事等ノ治水事業ト、農商省所管ノ治
水利水事業ハ、其ノ施工地域、工事ノ種
類等ハ實ニ密接不可分ノ關係ヲ有スルガ故
ニ、從來ノ如ク單ニ兩者間ノ連絡ヲ保ツガ
如キ姑息ノ手段ヲ排シ、之ヲ一省ニ統合シ、
初メテ砂防、治水、利水萬全ノ機能ヲ發揮
シ得ベキヲ以テ、政府ハ此ノ際速カニ是ガ
實現ヲ圖ルヲ急務ト信ジマス、例セバ外局
ヲ置キ、此處ニ統轄スルコトガ其ノ機能ヲ
十分發揮スルニ都合ガ好クハナイカト思ハ
レルノデアリマス、私ハ成ルベク速カニ是
ガ實現ヲ期待スル者デアリマス(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=60
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061・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 採決致シマス、本案
ニ御異議アリマセヌカ
(「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=61
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062・岡田忠彦
○議長(岡田忠彥君) 御異議ナシト認メマ
ス、仍テ本案ハ可決セラレマシタ(拍手)是
ニテ議事日程ハ議了致シマシタ、次會ノ議
事日程ハ公報ヲ以テ通知致シマス、本日ハ
是ニテ散會致シマス
午後三時二十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008413242X00919440203&spkNum=62
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