1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○軍需金融等特別措置法案発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=0
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001・東郷安
○委員長(男爵東郷安君) 開議致シマ
ス、軍需金融等特別措置法ニ關シマシ
テ、尙御質疑ガアリマシタナラバ、此
ノ際御述ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=1
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002・松本烝治
○松本烝治君 私ハ大藏大臣ノ御意見
ヲ伺ヒタイ、ソレハ色々ノ事情カラ、
私ノ改正案ノ提出ハマダシテ居リマセ
ヌ、能ク御所見ヲ伺ツタ後ニ、直チニ
其ノ提出ヲシタイト實ハ考ヘテ居リマ
ス、其ノ上ハ或ハ議題ニ其ノ改正案ガ
ナルカト思ヒマス、ドウ云フ改正ヲ私
ガ欲シテ居ルカト云フコトハ、實ハ屢〓、
此ノ委員會デ述べマシテ、又其ノ理由
ニ付キマシテモ相當委員各位ヲ御煩ハ
シスル程幾度カ申上ゲテ居リマス、今
更此ノコトヲ申上ゲルノハドウカト思
ヒマスガ、ソレヲ申上ゲタクナイノデ
アリマスルガ、私ノ想像スル所ニ依リ
マスト、大藏大臣モ或ハ出席サレタ政
府委員カラ御聽ニナリマシテ、私ガド
ウ云フ風ナ修正案ヲ提案シタイト考ヘ
テ居ルカト云フコトハ御承知カト思ヒ
やく、若シ御承知ガナケレバ、其ノ案
自體ノコトヲ申上ゲルノミナラズ、其
ノ理由ヲ詳細ニ述ベナケレバナラヌノ
デゴザイマスガ、是ハ餘リ時間ヲ取リ
マシテドウカト思ヒマスガ、大藏大臣
或ハ御承知デアルカドウカ、其ノ文句ダ
ケヲ申シマスト、是カラ後デ提出シタ
イト思ツテ居リマス修正案ハ、此ノ法
案ノ第十五條ノ第二項ヲ改メマシテ、
「工場抵當法第五條ノ規定ハ前項ノ規
定ニ依リ同項ノ財團目錄ニ一括表示セ
ラレタル物件ニ付之ヲ準用ス」ゴルド
タイ、其ノ理由ハ、大藏大臣ニ多分御
傳言ニナツテ居ルカト思ヒマスノデ申
上ゲマセヌガ、唯一言申上ゲテ置カナ
ケレバナラヌコトハ、サウ改メマスコ
トハ、政府ノ此ノ立法ヲ爲サツタ御趣
旨トハ內容ニ於テ一ツモ違ハナイ、唯
文言ガ改マルダケデアル、然ラバ內容
ノ違ハナイコトニ文言ヲ改メルト云フ
コトハヲカシイト或ハ御考ニナルカモ
知レマセヌガ、サウデハナイ、政府ハ
此ノ第十五條ニ依ツテ御考ニナツタコ
ト自體ハ結構デアル、其ノ內容ニ付テ
ハ毫モ私ハ異議ハナイノミナラズ、贊成
スルノデアリマスルガ、此ノ原案ノ第二
項ノ書キ方ハ、財團目錄ニ記載ノアル
通常ノ場合ニ於キマシテ、此ノ記載ノ
アル財團ニ付テハ、卽時取得ニ關スル
規定ハ絕對ニ適用ナイノダト云フコト
ヲ前提トシテ、書カレテ居ルヤウニ考
ヘラレル、政府委員ニ伺ヘバ左樣ダト
言ハレル、其ノ結果此ノ新タチル立法
ニ依ツテ通常ノ場合ニハ卽時取得ノ規
定ガ全然適用ヲ除外セラレテシマフコ
トニナル、ソレハ甚ダシキ害毒ヲ流ス
デアラウ、動產取引ノ安全ハ全ク保護
サレナイヤウニナリマスノデ、實ニ恐ル
ベキコトニナルダラウ、譬ヘテ申セバ
其ノ規定自體ハ非常ニウマイ河豚ノ御
料理ミタイナモノデアルガ、不幸ニシテ
河豚ノ毒ガ入ルヤウナ工合ニ料ラレテ
居ル、ソレハ困ルカラ其ノ毒ダケヲ除
イテ河豚ノ御料理ダケ大丈夫ノモノニ
シヨウト云フ意味デ私提案シテ居ルノ
デアリマス、左樣ナ趣意デ細カイコト
ハ多分大藏大臣夙ニ御承知ト思ヒマス
ガ、斯クノ如キ提案ヲ是カラ私ハシタ
イト思ツテ居リマスガ、之ヲシマシテ
幸ニシテ多數ノ方々ノ御同意ヲ得ルヤ
ウナコトモアルカモ知レマセズ、或ハド
ウナルカ分リマセヌガ、是ガ幸ニシテ
多數ノ方ノ御同意ヲ得マシテ、七條畷子
修正案ガ成立ツヤウナ時ニ於テハ政府
ハドウ云フヤウニ御考ニナルカ、ソレ
ハ絕對ニイカナイトカト云フヤウナ御
考デアルカドウカト云フコトヲ、審議
ヲシマシタリ又提案ヲ致シマスルニ付
テ必要ナコトトシテ伺ツテ置キタイ
ノデ御答ヘ出來レバ伺ツテ置キタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=2
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003・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 松本委員
ノ御意見ニ付キマシテハ私ハ此ノ委員
會ニ出席致シ兼ネタ場合ノ話ニ付キマ
シテモ政府委員カラ總テ話ハ聞イテ居
リマシテ承知致シテ居ルノデアリマス、
工場財團ノ財團目錄ニ記載セラルベキ
物件ニ付テハ民法百九十二條ノ適用ガ
ナイト云フ司法御當局ノ御答辯ニ付キ
マシテハ大藏省ト致シマシテモ同意見
デアリマシテ、工場抵當法立法以來四
十年間之ニ付テ特ニ問題モナク經過シ
テ參ツテ居リマスノデアリマシテ、
又現ニ器具機械類ノ取引ノ實情ニ顧ミ
マシテモ、右ノヤウニ解釋致シマシテ
何等差支ナイト存ゼラレルモノデアリ
マスカラ、工場財團制度創設ノ趣旨ヨ
リ考ヘマシテモ、今日此ノ解釋ヲ變更
スル必要ハナイト思フノデアリマス、
從ツテ御意見ノ如ク本法案第十五條第
二項ノ規定ヲ修正スル必要ハナイト考
ヘテ居ル次第デアリマス、松本博士ノ
御修正ノ意見ニハ贊成致シ兼ネルノデ
アリマス、多數ヲ以テ修正ヲ致サレタ
場合ニハドウスルカ、斯ウ云フ御尋デ
アリマスガ、政府トシテハ左樣ナ修正
ガ現實ニ行ハレマシタ場合ニハ行ハレ
マシタ場合トシテ、其ノ時ニハ考ヘル
必要モアルカト思ヒマスガ、政府ト致
シマシテハ、此ノ條文ヲ變更致ス、修
正ヲ致ス必要ハナイト考ヘテ居ル次第
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=3
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004・松本烝治
○松本烝治君 私ノヤウナ修正ヲスル
必要ハナイト御考デアラウト云フコト
ハ是ハ當然デアラウト思フノデ、其ノ
コトヲ伺ツタ譯デハアリマセヌ、只今
御述ニナツタ理由ガ餘リニヒドイ間違
ヒノヤウニ思フノデ、四十年來卽時取
得ノ適用ガナイト解シ來タツタノデア
ル、サウシテ問題ハ一遍モ起キナイト
云フヤウナコトハ、一體サウ云フコト
ガアツタカト云フコトヲ政府委員ニ實
ハ昨日モ能ク聽キマシタガ、御答辯ガ
出來ナイ、無イノデス、問題ガ四十年
來ナカツタコトハ事實デアリマス、是
ハ恐ラクハ事實デアルト私ハ信ジテ居
ル、私モ相當斯ウ云フコトニ付テハ注
意ヲシテ居リマスガ、判例等ニナツタ
コトハドウモナイヤウニ思ヒマス、ナ
イノハ何故カト云フト、適用ガアルカ
ラ、皆アルト考ヘテ居ル、善意デ公ノ
市場ナリ或ハ其ノ向ノ商人カラ機械ヲ
買ヒマス、サウシテ自分ノ所ニ据着ケ
=
テ居ル奴ヲ、オ前是ハ財團目錄ノ記載
ニアルモノダ、何處ノモノカ知ラヌガ
何處カノ奴ニ記載ガ此ノ通リアルヂヤ
ナイカ、番號ガ合ツテ居ルヂヤナイカ
ト云フヤウナコトヲ言ツテ、此ノ機械
類ト云フモノハ何十萬アルカ私ハ存ジ
マセヌガ、ソコノ何處カニアルヂヤナ
イカト云ツテ、サウシテ唯取リニ來ル
ヤウナ非常識ナコトニハ通常ノ人ハ解
釋致シマセヌ、其ノ爲ニ問題ガ今迄ナ
カツタト私ハ信ジテ居ル、之ラ適用ガ
ナイノダト云フヤウナコトニ立法デ御
決ニナツタラ·····是カラハソロソロ出
テ參ルト思フノデズ、四十年來問題ガ
ナカツタト云フヤウナコトハサウ云フ
解釋デ問題ガナカツタ、ト云フコトハ何
モ根據モ示サレズ、何モ立證サレテ居ラ
ヌノデ、唯サウ云フコトハ何モ根據モ示
サレズ、何モ立證サレテ居ラヌノデ、唯
サウ云フコトヲ言ハレテ居ツタ、ソレ
ト同ジコトヲ大藏大臣カラ伺ヒマシタ
ノデ、驚キ入ル話デアル、是ハ問題ノ
ナイモノヲ今度ハ拵ヘヨウト云フ立法
ダカラ宜シクナイ、左樣ナ毒ノナイヤ
ウニ直シテ宜イヂヤナイカ、私ノ修正
案ノ結果ハ政府ノ考ヘテ居ラレル通リ
ニナル、又政府ノヤウナ適用ノナイト
云フ解釋ガマア假ニアリトスレバ、ソ
レヲ排斥スルモノデモナイ、サウ云フ
解釋サヘ尙容レ得ルヤウニ直シタイト
云フノデ直スノデアリマス、細カイコト
ハ必要ガアレバ話シテモ宜シイガ、政府
ノ御解釋ヲ何モ變更スルモノデモ何デ
モナイ、政府ノヤウナ若シサウ云フ條理
ニ反シ、常識ニ反シタヤウナ御解釋ガ
天下ニ行ハレナケレバナラヌト云フヤ
ウナコトニナレバ、サウ云フ解釋モ私
ノ修正案ノ下デハ容レ得ル、此ノ原案
デハ適用ノナイト云フコトヲ確定シテ
シマフ、左樣ナコトヲ態々爲サル必要ガ
ドコニアルカト云フコトヲ實ハ私ハ申
シテ居ル、ソレハマア屢、申上ゲマシタ
カラ、他ノ委員各位ニ對シテ相濟ミマ
セヌカラ、其ノコトノ議論ヲ私シヨ
ウトハ思ヒマセヌ、又大藏大臣ニハサウ
云フ議論ヲ申シテ、サウ云フ理由ヤ何
カヲ伺ハウト實ハ思ツタ譯デモゴザイ
マセヌ、此ノ案ニ付テ政府ノ御趣旨ヲ
少シモ害シテハ居ナイ、害スルモノデ
ナイノダ、尙且政府ノヤウナ解釋論ガ
全ク正シイトスレバ、ソレモ抱擁シ得
ルノデアル、唯政府ノ言ハレル此ノ適
用ガナイト云フコトヲ確定ヲシナイヤ
ウニシタイト云フダケノ意味デ、詰リ
サウ云フ毒ヲ取リタイト云フダケノ修
正案デアリマス、サウ云フ修正案デア
ルガ尙且政府ハマア反對ヲ爲サル、是
ハ仕方ガゴザイマセヌ、原素ヲ支持サ
レルノハ當然ダラウト思フ、私ハ御反
對デアル、修正ノ成立タザルコトヲ欲
スルト仰シヤルコトハ是ハ御無理ハナ
イト思フカラ、其ノ點ハ更ニ色々申シ
マセヌガ、サウ云フ政府ノ御趣旨ヲ少
シモ害サナクテ、唯文言ヲ改メルコト
ニ依ツテ副產物タル毒ヲ出サナイヤウ
ニスルト私ハマア考ヘテ居ル、サウ云フ
ヤウナ修正ヲスルト云フ案ガ若シ本院ノ
多數ノ議員各位ノ御同意ヲ得テ出來タ
時ニハ、政府トシテハ何ト言ハレルダラ
ウ、是ハ衆議院ニ戾ツテ參レバ必ズ聽ク
コトデアリマス、此ノ貴族院ノ修正ニ對
シテ政府ハドウ考ヘルノカ、是ハ假ニ
衆議院ニ於テ之ニ同意シタ時ニハ政府
ハソレデモイカヌト言フノカ、卽チ御
裁可ヲ奏請シナイ、此ノ法律ヲ壞シテ
シマツテモサウ云フ改正ハ撥付ケルノ
ダト云フヤウナ御考デアルカドウカト
云フコトハ、是ハ通常聽クノヂヤナカ
ラウカト思フノデ、審議ヲスルノニハ
サウ云フ御考ヲ聽イテ置ク必要ガアル、
其ノコトヲ私ハ聽イテ居ル、併シ大變
假定的ナ先ノ話デアリマスカラ、マダ
提案モシテ居ラヌノニ聽クノダカラ、
サウ云フ話ニハ返答ヲシナイト仰ツシ
ヤレバ是ハ致シ方モゴザイマセヌノ
デ、返答ヲ是非シテ戴キタイト言ツテ
モ無理ナ話デ、馬ヲ水ノ側ニ持ツテ行
クコトハ出來ルガ、馬ニ水ヲ飮マスコ
トハ出來ヌト云フ諺モアルノデ、返答
ハシナイ、返答スルコトハ嫌ナンダト
云フコトデ爲サラナケレバ、別ニ伺フ
業モアリマセヌガ、併シ若シ御返事ガ
出來ル、卽チサウ害モナササウダカラ、
若シ多數デ兩院ガサウ云フ風ニナツタ
ラ、必ズシモ政府ハ其ノ爲ニ此ノ法律
ヲ潰シテシマツテモ宜イト云フ程ニ重
キヲ置イテ居ルモノデナイトカ何トカ
云フ位ナコトハ御考ニナツテ居ルノダ
ラウト實ハ思ツタノデ伺ツタノデアリ
やっ、併シサウ云フコトハ其ノ時ニナ
ツテデナケレバ考ヘナイコトナンダ、
先ヅ行キ當リバツタリニ物ハヤツテ行
クノデ、考ヘルノハ必要ヲ生ジタ時ニ
始メテ考ヘルノダト云フコトナラ是モ
致シ方ガナイノデ、御答辯ガナケレバ
ソレデモ宜シウゴザイマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=4
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005・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 司法當局
ガ左樣ナ法律的ナ見解ヲ致シテ居リマ
スコトハ御承知ノ通リデアリマス、私
モ數十年來左樣ナ見解ヲ致シテ來テ今
日實行致シテ居ル、其ノ事ガ餘リ問題
モ起サナイデ今日來テ居リマスコト
ハ、アナタノ仰ツシヤル通リデアリマ
ス、左樣デアツタナラバ、私ハ强ヒテ
アナタガ修正ヲ爲サラウト思ツテ此處
デ修正案ヲ出サレルコトモ、實際問題
トシテハサウ大シタ問題デハナイノデ
ハナカラウカト思フノデアリマスガ、
マア是ハアナタトシテハドウシテモ修
正ヲ爲サレヨウト云フモノヲ、私ハ別
ニ止メテ戴キタイト御願シテモ、ソレ
ハムヅカシイカモ知レマセヌガ、アナ
タノ修正案ガ通ツタ場合ニ、政府ハド
ウスルカト云フコトハ、修正案ガ若シ
多數ヲ以テ通過致シマシタ場合ニハ、
其ノ時ニ及ンデ考ヘルヨリ仕方ガナイ
ト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=5
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006・松本烝治
○松本烝治君 甚ダ諄イヤウデアリマ
スガ、矢張リ大藏大臣ハチヨツト私ノ
申スコトガ御分リニナラヌカト思フノ
ハ、四十年來司法當局ガサウ云フ意見
ヲ持ツテ居ツタト云フコトハ何モ證據
ガナイノデス、ソレヲ政府委員ニ伺ツ
テ、何處ニソンナコトガアリマスカト
云フト、何ニモソレハ示シテ御答ガ出
來ナイ、ソレハ今ノ之ヲ書カレタ方ガ
サウ云フ考ヲ持ツタコトハ是ハ事實ノ
ヤウデス、併シナガラ四十年來凡ソ斯
ウ云フ法律ニ關係シタ者ハ、左樣ナ卽
時取得ニ關スル規定ガ適用ガナイナン
ト云フ條理ニ反シ、常識ニ反スルヤウ
ナ解釋ヲ恐ラクハシテ居ラナカツタト
信ズルノデ、何處ニサウ云フコトガア
リマスカ、サウ云フ說ガ世ノ中ニ行ハ
レテ、而モ問題ガナカツタト云フノデ、
問題ノナカツタコトハ事實デ、サウ云
フ間違ツタ說ガ行ハレテ問題ガナカツ
タノカ、或ハ正當ナ說ダツタカラ問題
ガナカツタノカ、私ノ言フヤウナ考ヲ
常識上誰デモ持ツカラ問題ガナカツタ
ト思ツテ居ルノデスガ、ソレデドウ云
フ證據ガアルノカト云フコトヲ昨日モ
伺ツタ所ガ御答ガナイ、又御答ヘ出來
ル譯ガナイノデス、ソレデ其ノ理由ダ
ケハ本會議等デ若シ仰シヤルト、サウ
信ジテ居ラツシヤルナラバマア一向差
支ゴザイマセヌガ、色々改正モシナケ
レバナラヌヤウナコトガ起リマスカ
ラ、御控ナサツタラ宜クハナイカト餘
計ナコトデスガ考ヘル、ソレカラ假ニ
私ノヤウナ修正案ガ通ツタ時ハ其ノ時
ニ考ヘルト、ソレナラバ別ニ是ハ伺フ
必要モゴザイマセヌ、併シ私ハ其ノ時
ニ考ヘルト云フコトニ仰シヤルノハ、
二ツノ中ノドツチカデアラウ、一ツハ
ソンナ修正案ガ出タツテ通リハシナ
イ、ダカラ考ヘル必要ハナイト云フコ
トカ、或ハモウ一ツハ、萬一通ルカモ
知レヌ、輕蔑ハ出來ナイ、通ルカモ知
レヌガ、併シ物事ハ突キ當ツテ、馬ヲ
壁ニ乘リ當テタ時ニ考ヘレバ宜シイノ
ダ、何モ豫メ考ヘテ置ク必要ハナイト
云フ御主義デ、色々政治ヲナサル人モ
近頃ハアルヤウデアルガ、其ノドツチカ
ト私思フノデスガ、是ハ甚ダ失禮ナコ
トヲ申シマスガ、御答辯ヲ戴カウトハ
思ヒマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=6
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007・石渡莊太郎
○國務大臣(石渡莊太郞君) 只今ノ御
話デアリマスガ、政府ハ修正案ノ御提
出ヲ希望シテ居リマセ、ヌ、又修正ニハ
反對デアリマス、從ツテ左樣ナ態度ヲ
執ツテ居ルノデアリマスカラ、アナタ
ガ一體修正シタ場合ニ政府ハドウスル
カト御聽キニナルノニ御返事ヲスルノ
ハ甚ダ苦シイノデアリマス、ソレデア
リマスカラ、アナタノ修正案ガ通ツタ
場合ニハ、其ノ時ニハ政府ハ考ヘルト
申上ゲルヨリ外ニハ申上ゲヨウガナイ
ノデアリマス、別ニ場當リ主義デ考ヘ
テ居ル譯デハアリマセヌ、大體政府ハ
反對デアリマスカラ、左樣ニ申上ゲテ
居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=7
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008・松本烝治
○松本烝治君 イヤ御趣旨ハ分リマ
シタ、考ヘテ居ルガ言ハヌト云フコトニ
今御答辯ニナツタヤウデ、マア審議ヲ
スル際ニハ成ルベク物ヲ言ツテ戴ク方
ガ、實ハ心得ニナツテ、私ナドハ本會
議等デ若シ物ヲ言フ時ニハ、大變ニ其
ノ方ガ宜イトハ思ヒマスケレドモ、是
ハマア人ノ色々ノ意見デ先ニ申シタヤ
ウニ、決シテ水ヲ無理ニ呑マス譯ニ行
キマセヌシ、御答辯戴カナイト云フコ
トデ分リマシタ、是デ大藏大臣ニ對ス
ル質問ハ私トシテハ終リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=8
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009・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 大藏大臣ニ
對スル質問ハゴザイマセヌカ、ナイト
認メマス、其ノ他御質疑ハゴザイマス
カ、本案ニ關シテ御質疑ハ終了シタモ
ノト認メテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=9
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010・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 御異議ナイ
ト認メマス、是ヨリ討論ニ入リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=10
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011・松本烝治
○松本烝治君 此ノ機會ニ於キマシテ私
ハ只今迄屢〓〓述述ベマシタヤウナ、第十
五條第二項ノ修正ノ提案ヲ致シタイト
思ヒマス、其ノ文言ハ屢〓申シマシタガ、
重ネテ申シマスレバ、第十五條第二項
ヲ次ノヤウニ改メマス、卽チ「工場抵當
法第五條ノ規定ハ前項ノ規定ニ依リ同
項ノ財團目錄ニ一括表示セラレタル物
件ニ付之ヲ準用ス」斯クノ如ク改メタイ
ト考ヘテ居ルノデアリマス、此ノ提案
ノ理由ニ付キマシテハモウ屢〓此ノ委員
會ニ於テ申述ベマシタノデ、重ネテ之
ヲ申述ベテ時間ヲ空費スルコトヲ避ケ
タイト思ヒマス、若シ併シ私ガ申述べ
マシタコトガ足リナイト云フヤウナコ
トデゴザイマシタラ何時デモ補足スル
コトニ致シテ、此〓理由ハ既ニ述ベタ
所ニ讓ルト云フコトデ御容赦ヲ願ハウ
カト考ヘテ居リマス
〔「贊成」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=11
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012・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 只今御聽キ
ノ通リ、松本委員ヨリ修正意見ノ提出
ガゴザイマシタ、之ニ贊成ノ御方ノ擧
手ヲ願ヒマス
〔贊成者擧手〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=12
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013・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 宜シウゴザ
イマス、ソレデハ只今ノ松本委員ノ修
正意見ニハ贊成ガアツタモノト認メマ
ス、他ニ御討論ナサル方ハアリマセヌ
カ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=13
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014・青木一男
○靑木一男君 私ハ先日來松本博士ノ
御所見ヲ詳細ニ拜聽致ンテ居ルノデア
リマス、又政府委員ノ答辯モ伺ツテ居
ツタノデアリマスガ、私ハ結論トシテ
松本博士ノ提案サレタ修正案ニハ反對
デアリマス、從ツテ政府原案ノ通リガ
宜シイト云フ意見デアリマス、其ノ理
由ヲ簡單ニ申上ゲタイト思ヒマス、松
本博七モ軍需金融等特別措置法案第十
五條第二項ノ內容ソレ自體ニハ御異存
ナイヤウデアリマス、反對サレル唯一
ノ根據ハ斯ウ云フ立法ヲシタ結果トシ
テ、工場抵當法ニ規定サレテ居ル工場
財團等ヲ構成スル品物ガ第三者ノ手ニ
移ツタ場合ノ法律解釋ニ付テ、斯カル
場合ニ第三取得者ガ卽時取得ノ適用ヲ
受ケナイト云フ、コノ解釋ヲ下サレタ
結果、動產ノ取引ノ安全ヲ害スルカラ
イケナイ、斯ウ云フ點ニ反對、卽チ修
正ノ理由ガアツタヤウニ拜承致シタノ
デアリマス、御議論ノ前提トシテ、現
在ノ工場財團ニ關スル規定、卽チ其ノ
財團ヲ構成スルモノガ第三者ノ手ニ移
ツタ場合ノ法律的效果ニ付テ、現行法
ニ規定ガナイ、松本博士ノ御所見ニ依
ルト、寧ロ其ノ場合ニモ第三者ノ利益
ヲ保護スベキモノデアル、少クトモ其
ノ解釋ノ餘地ヲ存シテ置カナケレバイ
ケナイ、斯ウ云フコトガ法律論ノ前提
デアルヤウニ拜承致シマシタ、私ハ今
囘政府ノ提案サレタ如キ立法ヲ致シマ
スレバ、現行ノ工場抵當法ニ關スル解
釋ニ否定的ナ、卽チ反對ノ解釋ノ根據
ヲ與ヘルト云フ御判斷ニハ、其ノ點ハ
私モ左樣ニ考ヘマス、併シナガラ其ノ
結果、惡イ結果ヲ與ヘル、然ルガ故ニ
修正シナクチヤナラナイト云フ結論ニ
ハ、私ハ不同意デアリマス、先ヅ現在
ノ工場抵當法ニ關スル規定ガ曖昧デア
ルト云フコトニ付キマシテ、私ハ今日
ノ出來テ居ル工場抵當法ハハツキリシ
テ居ルト思フノデアリマス、卽チ工場
財團ヲ構成シ其ノ正規ノ手續ニ依ツテ
表示サレタルモノガ第三者ノ手ニ移ツ
タ場合ニハ、民法百九十二條ノ適用ハ
ナイ、卽チ完全ニ斯カル場合ニモ抵當
權者ガ保護サレテ居ルト云フノガ現行
法ノ定規デアルト私ハ解シマス、第五
條ニ於テ、卽チ財團ヲ構成セザル簡易
工場抵當ノ規定ニ於テ、反對ナ規定、
卽チ民法百九十二條ヲ適用スルト云フ
明文ヲ置イタニモ拘ラズ、財團ヲ構成
致シマシタル場合ニハ斯カル規定ヲ置
カナイ、此ノ二ツノ箇條ヲ對照シテ見
マスレバ、斯カル明文ノナイ場合ニ反
對ナ結論ニナルコトハ、法律解釋ノ常識
デアルト思ヒマス、今囘政府ノ原案ノ
書キ方ガイケナイ、政府ノ原案ノ如キ
書キ方デアリマスレバ、工場財團ヲ構
成スルモノニ付テノ解釋ガ反對ニナル
カライケナイト云フ御議論ハ、現行法
ノ旣ニ出來テ居ル法規ニ於テ其ノ見本
ガアルノデアリマス、一方ニハ其ノ規
定ガアリ、一方ニハ其ノ規定ガナイ、
其ノ點ニ於テハ私ハモウ旣ニ現行法ト
シテ其ノコトハ決メラレテ居ル問題デ
ハナイカト思フノデアリマス、更ニ明
治三十八年、工場抵當法制定當時ノ速
記錄ヲ精讀致シテ見マスルト、當時貴
族院ニ於キマシテ、松本博士ノ御心配
ニナツタヤウニ、此ノ工場抵當ノ制度
ト民法百九十二條トノ關係ハ、各委員
共非常ニ憂慮サレ、小委員迄モ特ニ設
ケテ愼重審議サレタ論點デアツタノデ
アリマス、サウシテ富井博士ヲ主査ト
スル小委員迄モ設ケラレテ〓究ノ結果、
政府ノ原案ヲ修正シテ今日ノ法制ガ出
來テ居ルノデアリマス、其ノ修正ノ要
點ト云フモノハ今日ノ議論ニナツテ居
ル點ニ偶〓一致スルノデアリマス、富井
博士ノ小委員會報告ニ依リマスルト、
工場抵當ヲ設定シタ場合ノ債權者ノ保
護ト動產ノ第三取得者ノ利益保護トハ
是ハ調和ハムヅカシイ、何レカ一方ヲ
犠牲ニシナクチヤイケナイモノダ、然
ルガ故ニ第五條ノ場合、卽チ簡易抵當
ノ場合ニ於キマシテハ、第三者ノ保護
ヲ重シトシテ民法百九十二條ノ適用ヲ
認メル、併シ財團ヲ構成シタ場合ニハ
反對ダ、此ノ場合ニハ飽ク迄モ債權者
ヲ保護シテ、第三取得者ノ利益ヲ犠牲
ニスル外ハナイノダ、併シ第三者ノ利
益モ保護スル爲ニ、其ノ場合ニハ出來
ルダケ財團目錄ト云フモノヲ詳細ニ作
ルヤウニ司法省ハ考ヘロ、ト云フコト
ヲ貴族院トシテ註文サレテ居リマス、
其ノ代リ財團目錄ヲ作ツタモノハ其ノ
モノガ如何ニ轉々シテモ無效ダ、皆取
戾サレルモノデアルカラ、初メ政府ノ
原案ニアツタ會社ノ當事者等ガ工場財
團ニ屬スルモノヲ他ヘ賣ツタ場合、其ノ他
處分シタ場合ノ罰則ハ、其ノ取引自體ガ
無效デアルカラシテ罰則ハ必要ハナイ、第
五條ノヤウナ場合ニハ罰則ノ規定ハアル
ガ、其ノ場合ハ罰則ハ必要ハナイト言ツ
テ其ノ罰則ヲ削除サレテ居リマス、斯ク
ノ如ク當時ニ於テ旣ニ動產取引ノ安固
ヲ圖ルト云フ必要ハ、十二分ニ貴族院
ニ於テモ考慮サレ、ソレト比較〓究シ
タ結果、結局財團ヲ構成シタ場合ニハ、
第三者ノ利益、動產取引ノ安全ト云フ
コトハ是ハ犠牲ニシテ、債權者ノ利益
ヲ保護スベシト云フ意見ノ下ニ、政府
ノ原案ヲ修正シテ現行法ガ出來テ居ル
ノデアリマス、私ハ松本委員ノ仰セラ
レタ如ク、此ノ條文ノ解釋ガ曖昧ナモ
ノデアルトカ、未定ノ儘ニアルト云フ
御所見ニハ、私ハ承服致シ兼ネル者デ
アリマス、從ツテ先程來質問應答ガア
リマシタヤウニ、此ノ問題ガ裁判ニモ
ナラナイト云フコトハ立法當時カラ
ハツキリシタ、斯カル沿革ニ基イテ政
府委員ノ答辯セラレタ如ク、斯カル場
合ニ民法第百九十二條ノ適用ガナイト
云フ前提ノ下ニ今日迄我ガ國ノ法律生
活ハ經過シテ居ルモノト私ハ解スルモ
ノデアリマス、次ニ松本博士ハ斯カル
法律制定當時ノ事情ハドウアラウト、
今日動產取引ノ安全ヲ圖ル爲ニハ、自
分ノ意見ノヤウニ解サナケレバイカ
ヌ、工場財團ヲ作ツタ場合ニモ之ニ屬
スル動產ノ善意ノ第三取得者ヲ保護シ
ナケレバナラナイト云フコトヲ力說サ
レテ居リマス、私ハ法律ノ解釋ト云フモ
ノハ時勢ノ變化ニ應ジテ、殊ニ國家
ノ利益ヲ主トシテ變化アルコトハ豫想
致シマス、併シナガラ本案ノ問題ニ於
テハ結論トシテ、松本博士ノ仰セラレ
タ所論トハ全ク反對ナル見解ヲ持スル
モノデアリマス、卽チ斯カル立法常時
ノ沿革ガ博士ノ御所論ノ如キモノデア
ツテモ、今日ハ寧ロ反對ニ解釋スベキ
國家的必要ガ生ジテ居ルノデハナイカ
ト思フ位デアリマス、動產取引ノ安全
ヲ圖ルト云フコトハ是ハ固ヨリ大事
ナコトデアリマス、併シナガラ立法當
時ニ於テモ旣ニソレヲ犠性ニシテ債權
者ノ保護ヲ重シトセラレタノデアリマ
ス、私ハ今日ハ債權者ノ保護トハ申シ
マセヌ、今日軍需工場等ニ屬スル重要
ナル機械、器具、其ノ他ノモノガ非合
法ニ、不法ニ持出サレルト云フコトハ
如何ナル見地カラ見テモ國家的損害デ
アリマス、今日ノ工場抵當法ト云フ
モノハ、我々今日要求スル如ク、國家的
見地カラ其ノ財產ノ散逸ヲ防グガ爲ニ
制定シタル法律デハアリマセヌ、併シ
ナガラ結果ニ於テハ偶、〓債權者保護ノ
爲ニ作ラレテアル工場財團ニ關スル法
制ト云フモノガアツタガ故ニ、今日軍
需工場ニ屬スル財產ガ散逸スルコトヲ
防グ爲ニ如何バカリ效果ガアツタカト
云フコトヲ私ハ考ヘルモノデアリマス、
從ツテ若シ今日ノ如キ工場財團ニ關ス
ル規定ガナイナラバ、其ノ財產ノ散逸
ヲ防グ爲ノミニモ、私ハ法律ヲ制定ス
ル必要ガアルノデハナイカトサヘ考ヘ
ル位デアリマス、此ノ國家的戰時下ニ
大事ナ工場財產等ノ散逸ヲ防グ必要ハ、
明治三十八年工場抵當法制定當時カラ
見テ何十倍殖エテ居ルカ分リマセヌ、
然ルニ當時ノ議會ニ於テハ、財產取得
者ノ權利ヨリモ債權者ノ保護ヲ重シト
シテ現行法ヲ作ツタノニ、此ノ戰時下
財產ノ散逸ヲ防止スル必要ガ何十倍カ
殖エテ居ル今日、第三取得者ノ利益ヲ
保護シ、動產ノ取引保護ヲ重シトスル
ヤウナ意見ハ、私ハ今日想像スルニ苦
シム次第デアリマス、次ニ松本博士ノ
御所見ヲ先日來伺ツテ居リマスルト、
工場財團ニ屬スル動產ガ第三者ノ手ニ
移ツタ場合ニハ、第三者ハ所有權ヲ取
得スル、併シ抵當權ハ附イテ行クノデ
アル、抵當權モ存スルト云フ御說明ヲ
爲サツテ居リマス、此ノ點ニ付キマシ
テハ私ハ一方ニ於キマシテハ工場財團
ト云フモノハ土地、建物、機械、器具
其ノ他ノ財產ヲ一體トシテ運用スル點
ニ非常ナル經濟的、法律的意義ガアル
ト思フノデアリマス、若シ之ヲバラム
ナ一ツノ物トシテ取扱ツテ差支ナイナ
ラバ、財團ノ如キ特殊ナ制度ヲ置ク必
要ハアリマセヌ、是等ノ各種ノ財產ガ
一括シテ管理サレ、運營サレ、監督サ
レテ始メテ玆ニ特殊ナル經濟價値ヲ生
ジ、債權者モ特殊ナル保護ヲ受ケルノ
デアリマス然ルニ其ノ財團ニ屬スル
一部ノ財產ガ、第三者ノ手ニ渡ツテ、
其ノ儘財團ノ抵當權ガ及ンデ財團ノ一
部ヲ引續キ構成スルガ如キ法律ノ構想
ハ財團制定ノ趣旨ト相容レザルモノデ
アルト思フノデアリマス、又民法第百
九十二條ノ卽時取得ノ規定ハ瑕疵ナキ
權利、卽チ抵當權ノ如キ瑕疵ノ伴ナハ
ザル完全ナル權利ノ取得ヲ豫想シタル
規定デアルト思フノデアリマス、然ル
ニ御說ノ如ク抵當權ガ附イテ行クト云
フコトデアリマシテハ、是ハ常識的ニ
モ亦立法的ニモ民法第百九十二條ノ精
神殊ニ博士ノ非常ニ力說サレテ居ル
如ク、動產ノ取引ノ安全ト云フヤウナ
目的カラ見マスレバ、相隔ツル非常ナ
ルモノガアルト思フノデアリマス、卽
チ工場財團ノ側カラ見テモ、又動產ノ
取得者ノ立場カラ見テモ、極メテ不徹
底ナル經濟的結果ニ終ルノデアリマシ
テ、是ハ斯クノ如キ解釋ノ下ニ今日ノ
工場財團ニ關スル法制ヲ解決シ、又解
釋スルコトハ適當デナイト私ハ考ヘマ
ス、又博士ノ修正說ハ工場抵當法ノ第
五條ノ規定ヲ準用サレヨウトスルノデ
アリマスガ、私ハ斯クノ如キ修正ヲサ
レテモ工場財團ニ屬スル財產ガ第三者
ノ手ニ渡ツタ場合ノ法律的效果ニ付テ
ハ、依然トシテ御懸念ノ如キ不安ナル
結果ヲ遣スノデハナイカト思フノデア
リマス、御心配ノ如キ影響ヲ除去スル
ニハ足リナイ修正案デハナイカト思ヒ
マツ、更ニ博士ハ此ノ修正案デモ結果
ハ同ジデハナイカト云フ御主張ヲ、殊
ニ政府委員ニ對シテ屢〓御述ニナツテ
居ルノデアリマスガ、是ガ政府原案ト
シテ提案サレルモノデアリマスレバ、
私ハ其ノ何レデモ結果ハ同ジヤウニナ
ルト思フノデアリマス、併シナガラ今
日トナリマシテハ、政府ノ原案ガ此ノ
原案ノ通リデ、之ニ對シテ松本博士ノ
御意見ノ如キ根據ニ基イテ議會ガ之ヲ
修正シタトナレバ私ハ其ノ結果ハ等シ
クナイト思ヒマス、卽チ松本博士ノ御
主張ノ如キ根據ニ基イテ修正サレタト
ナルト、工場財團ニ關スル現行法ノ解
釋ニ於テ影響スル所ガ少クアリマセ
ヌ、殊ニ裁判所ニ對スル影響ガ少クア
リマセヌ、其ノ影響ニ付テハ、當初私
ガ述ベマシタ如ク、私共ハ立法當時以
來政府委員ノ述ベラレタ如キ解釋ノ
下ニ運行スルノガ今後モ宜シイ、斯ウ
考ヘルモノデアリマスカラ、博士ノ御
主張ノ如キ修正ニ依ツテ、先程申上ゲ
マシタガ、影響ヲ與ヘルコトハ宜シク
ナイト考ヘマスルノデ、其ノ見地カラ
モ、御指摘ノ如キ修正案ニハ反對スル
者デアリマス、私ノハ是デ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=14
-
015・松本烝治
○松本烝治君 委員長、伺ヒマスケレ
ドモ、討論ニ付テデスネ、再討論的ノコ
トハ、先ヅ御許ニナツタ例モ私ハ知ツ
テ居リマスガ、ソレハ御許ニナラヌヤ
ウニ御考デゴザイマセウカ、今仰シヤ
ツタコトニ、事實ノ、議論ヲ通シテデ
ナクハ事實ニ於テモ誤ガアツタヤウニ
思ヒマスガ、實ハ只今仰セラレタコト
ガ、政府委員カラ仰セラレタナラ直チ
ニ私ハ能ク質問ヲシ直シマス、サウシ
テ御間違ヒダラウト云フコトヲ申上ゲ
タイノデアリマスガ、不幸ニシテ、政
府委員ハ私ノ質問ニ對シテハ殆ド答辯
ヲシテ戴ケナカツタ、唯斯ウダト云フ
コトヲ言ハレルダケデ、理由等ハ何モ
述ベテ戴ケナカツタ、只今始メテ政府
委員デモ仰シヤリサウナ理由ヲ御述ニ
ナツタノヲ伺ツタノデアリマス、之ヲ
伺フト、非常ニ色々ナ點デ私ノ趣旨ガ
徹底シテ居ナイ爲ニ起ツタ誤解ト、ソ
レカラ事實ニ付テ間違ツタ御述べ方ト
ガアツテ、ソレデ固ツテ居ルヤウニ實
ハ私ハ思フノデスガ、併シ討論ニ對シ
テ更ニ討論スル、又討論ヲ重ヌルト云
フコトハ御許ニナラナケレバ勿論致シ
マセヌシ、又若シ一遍位御許ニナルナ
ラ申上ゲタ方ガ宜イト思フノハ、政府
委員ガ何モ答辯サレナカツタモノデ、
私トシテサウ云フ反對說ニ對シテ何モ
言フ機會ヲ實ハ與ヘラレテ居ラナカツ
タト云フコトデ、サウ云フコトヲ申上
ゲタイノデスガ、是ハドウナリ御決メ
通リニ從ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=15
-
016・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 御答ヘ申上
ゲマス、本院ノ議事上ノ先例ニ依リマ
スト、討論ニ於テハ一人一囘トサレテ
居リマス、旣ニ松本委員ハ修正案ノ提
出ニヨリ一囘討論サレタモノト認メマ
ス、但シ修正案ノ理由ノ補足又ハ修正
案ヘノ質疑ニ對スル答辯ナラバ發言シ
得ルコトトナツテ居リマス、左樣御承
知ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=16
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017・松本烝治
○松本烝治君 ソレデハ私ノ修正案ノ
理由ヲ申述ベタコトモアルノデスガ、チ
ヨツト複雜ニナツテ居リマス爲ニ、只
今ノヤウナ御議論モ或ハ出タカト思ヒ
マスノデ、討論ニ對シテ更ニ決シテ討
論スルト云フ意味デナク、私ノ修正案
ノ理由ガ十分ニ說明サレテ居ラナカツ
タト云フ點ダケニ付テノミ言ハシテ戰
カウト思ヒマス、ソレハ外デモナイノ
デスガ、抵當權ヲ保護シナケレバナラ
又、抵常權ト卽時取得トハ全然相容レ
ナイ觀念トシテ、片方ヲ立テレバ片方
ハ全然潰サナケレバナラヌト云フヤウ
ナコトヲ前提トシテノ今御議論ガアツ
タヤウニ思ヒマスガ、サウデナイト云
フコトハ、實ハ最初述ベタ時ニ申上ゲ
テ居ル積リデアリマスケレドモ、申シ
方ガ甚ダ不足ダツタ爲ニ、私ノ趣旨ガ
徹底シテ御了解ガナカツタノデハナイ
カト思ヒマスノデ、其ノ點ヲ先ヅ一ツ
ダケ申上ゲタイト思ヒマス、抵當權ノ保
護、ソレカラシテ卽時取得ト云フコトハ
片方ヲ立テレバ片方ハ立タナイト云フ
コトヲ前提トシテ只今頻リニ御議論ガ
アツタ、抵當權ヲ完全ニ保護スル爲ニ
ハ、ドウシテモ卽時取得ヲ殺サケナレ
バナラヌト云フコトニ聞エタ、ソレガ
一番主ナ御議論ノ根據ニナツテ居ツタ
カト思ヒマスガ、其ノ點ハ實ハ私ハ說
明デ簡單ニ申上ゲテ置イタ、兩方ヲ適
當ニ保護出來ルベキモノデアルシ、又
現行法ノ解釋ハサウスベキモノデアル
ト云フコトヲ申上ゲテ置イタ積リデア
リマス、ソレヲ更ニ中上ゲマスガ、工
場抵當法第五條ノ場合ニハ所謂簡易
工場制度デアリマシテ、是ハ工場抵當
以外ニハ斯ウ云フ例ハゴザイマセヌ、
他ノ鐵道抵當等ハ斯ウ云フ例ハゴザイ
マセヌガ、此ノ場合ニハ五條ノ規定ニ
依リマシテ、民法第百九十二條乃至第
百九十四條ノ規定ノ全面的ニ適用サレ
ルコトヲ抵當權ノ存在ハ豪モ妨ゲナイ
ト云フコトヲ書イテアリマス、此ノ時
ハ詰リ卽時取得ノ方ガスツカリ勝ツテ
シマツテ抵當權ハ全ク及ビ得ナイト云
フ意味デアリマス、併シナガラサウデ
ナイ場合ニハドウカ、サウデナイ場合ハ
反對ニナラナケレバナラヌ、苟クモ抵
當權ノ方ガアル以上、卽時取得ハナイ
ノダト云フヤウニ、又ナイト見ナケレ
バ抵當權ノ方ハ出來ナイト云フヤウナ
コトノ前提デ、只今モ御話ガアリマシ
タガ、ソレハ私ノ說明ガ足リナカツタ
爲ニ或ハサウ云フ誤解ガ出來タカト思
フ、サウデナイト云フコトハ實ハ申上
ゲタ積リデ居ルノデスガ第一ニ卽時取
得ノ規定ト云フモノハ、性質上他ノ權
利ヲ邪魔ヲスル權利ハ排斥ヲスルモノ
ダト云フコト是ハ其ノ通リデアリマス、
若シ卽時取得ノ目的ノ上ニ物權ノヤウ
ナモノガアレバ、是ハ排斥シナケレバ
ナリマセヌ、併シナガラ此ノ財團系統
ノ場合ニハ、財團ニ屬スルモノノ上ニ
抵當權ハ存シテ居ルノデハナイノデア
ル、抵當權ハ財團ト云フ法律ニ依ツテ
一ツノ不動產ト看做サレ、或ハ又物ト
看做サレテ居ルモノノ上ニ抵當權ガ存
在シテ居ル、財團ニ屬スル財產ノ上ニ
ハ何等抵當權ハ存シテ居ラナイ、唯其
ノ財團自體ヲ一ツノ物ト見テ、其ノ上
ニ抵當權ガ存シテ居ル結果、財〓ニ屬
シテ居ルモノニハ抵當權ノ拘束ガ及ブ
ニ過ギナイ、仍テ斯クノ如キ拘束ガ存
在スルコトト卽時取得ガ完全ニ行ハレ
ルト云フコトハ、決シテ矛盾スル觀念
デハナイノデアリマス、卽チドウ云フ結
果ニナルカト云フコトヲ實ハ說明ヲ申
上ゲタノデアリマスガ、全然御聽キニ
ナツテ居ラナイノデハナイカト思ヒマ
スガ、若シモ抵當權ヲ此ノ抵當權ノ目
的タル、財團ニ屬スル財產ガ卽時取得
ニ依ツテ取得サレタル時ニハ、財團目
錄ニ記載ノアル、通常ノ今迄ノ場合ト
致シマシテハ、完全ナ所有權ヲ取得ス
ルノデ是ハモウ問題ハナイ、併シナガ
ラ同時ニ抵當權ノ目的タル財團ノ一ツ
ノ組成分子デアツタト云フコトヲ消シ
テシマフ理由ハ毫モナイノデアリマス、
其ノ拘束ハ受ケル、其ノ拘束ヲ解イテ
ルノハ卽チ工場抵當法第五條ノ規定デ
アリマス、私ノ修正案デハ、工場抵當
法第五條ノ場合ト同ジヤウニ、抵當權
ノ拘束ヲ全然解イテシマフ、私ハ此ノ
場合ニ解イテシマフト云フコトヲ第五
條ノ準用ニ依ツテ言ヒ表シタラソレデ
宜イヂヤナイカト云フコトハ申シテ居
ル、本則ニ立戾ツタ時、卽チ財團目錄
ニ記載ノアル場合デ申セバ、抵當權ノ拘
束ハアル、併シナガラ所有權ハ完全ニ
取得スル、其ノ結果トシテ、若シ抵當
權ノ行使ニ依ツテ其ノ財產ガ財團ニ伴
ツテ處分ヲサレテ他人ノ手ニ入ツテシ
マツタ時ニハ、是ハ卽時取得者ハ仕方
ガナイ、併シナガラ卽時取得者ニハ物
上保證人ト同ジ權利ガアルカラ、卽チ
物上保證人ノ求償權ノ規定ハ當然類推
適用サルベキモノデアルカラ、サウ云
フ保護ハアル、卽チ無償デ取ラレテシ
マフノデナイ、取ラレタ以上ハ其ノ求
償ハ出來ルト云フコトニナル、玆ニ於
テカ卽時取得者ニモ保護ハアル、又抵
當權者ノ方ニモソレダケノ保護ハアル、
卽チ其ノモノハ假令他人ノ手ニ入ツテ
モ、附イテ行ツテ矢張リ處分サレルト
云フコトニナル、而モ實際ニ於テ抵當
權ノ行使ニ依ツテ處分サレルヤウナコ
トハ、實際上ハ殆ドナイ、今迄モ小サ
ナ財團等ニ付テハ或ハアツタラウガ、
大キイモノデハナイ、而シテ抵當權設定
契約ニハ必ズ條項ガアリマシテ、其ノ條
項ニ依ツテ抵當權者ハ其ノ財團ニ屬ス
ル財產ヲ始終檢査ガ出來、報〓ヲサセ
ルト云フコトガ出來ルコトニシテ居ル、
抵當權者ノ保護ハ其ノ檢査等ニ依ツテ
十分果サレル、而シテ又其ノ契約ノ條
項ニ依リマシテ、若シアルモノガナカツ
タト云フヤウナ時ニハ、直チニ其ノ無
クナツタ物ハ之ヲ財團カラ取除イテ、其
ノ代リニ新ラシイ物ヲ入レ足スト云フ
コトガ出來ルコトニシテ居ル、是ハ總テノ
財團ノ抵當權設定契約ニハ皆サウ云フ條
項ガアルカラ、抵営權者ノ保護ハソレ
デ十分デアル、詰リ此ノ本則ノ財團目
錄調整ノアル場合、卽チ從來ノ場合
及ビ今後モ本則ハサウナルノデアラウ
ト思ヒマスガ、其ノ場合ニ於キマシテ
ハ、抵當權者ハ今申シタヤウナコトニ
依ツテ十分ナ保護ヲ受ケ、而シテ第三
者ハ、若シ抵當權ガ實行サレルヤウナ
時ニハ、意ニ反シテ其ノ物ヲ持ツテ行
カレルヤウナ不便ハアルケレドモ、併
シナガラ十分ナ求償ハ勿論出來ルシ、
又通常ノ場合ニハ無クナツタ物ハ財團
カラ之ヲ解放シテ取除イテシマフト云
フコトニナツテ居ルカラ、何等不便ヲ
感ジナイ、サウ云フヤウナコトニナツ
テ居リマスカラ、今迄ト雖モ澤山ノ卽
時取得ハ私ハアツタト思フ、併シ其ノ
卽時取得者ハ何等抵當權ノ行使或ハ其
ノ他ノコトニ依ツテ權益ヲ妨ゲラレル
コトハナシニ居ツタノデアツテ、故
問題ガ一ツモ出ナカツタ、嘗テ問題ガ
出ナイデ濟ンダ、サウ云フヤウニ私ハ
見テ居ルト云フコトヲ嘗テ御說明申シ
タト思ヒマスガ、餘リ細カイ點デアル
ノデ或ハ御聽取ニナラナカツタカモ知
レナイノデス、ソレニ基イテ詰リ抵當
權ノ存在ト卽時取得トハ絕對ニ相容レ
ナイモノデアル、ドツチカヲ立テレバ
他ノモノハナクナツテシマフノダト云
フヤウナ前提デ、色々御議論ガアツタ
ヤウニ思フノデ、ソレハ私ノ說明ガ足
リナカツタ爲ト思ヒマスノデ補足シタ
イノデアリマス、モウ一ツ補足シテ置
キタイコトハ、是ハ實ハ政府委員ニ對
シテ質問シタ時ニ申シタ積リデ居リマ
スガ、貴族院ノ修正報告等ノ速記錄ノ
コトデアリマス、是ハ富井博士ハ勿論
此ノ抵當權ヲ保護スルヤウニシナケレ
バナラヌト云フコトハ言ツテ居ラレマ
スガ、抵當權ノ保護ノ結果只今述ベタ
ヤウニ、卽時取得ヲ全然排斥シテシマ
フノダト云フヤウナトコトハ、必ズシ
モ言ツテ居ラレナイ、此ノ點ニ付テハ、
ソレハ讀ミ方ニ依ツテハ誤解ガアリ得
ルト云フコトハ、最初カラ申シテ居ル、
其ノ際ニ政府委員ノ答辯ノ中ニハ、寧
ロ私ノ考ヘテ居ルヤウナ前提カラデナ
イト云フコトモ言ツテアル、此ノ細カ
イコトヲ論ジマスルト、其ノ速記錄ヲ
以チマシテ、實ハ非常ナ大部ノ速記錄
デアリマス、小委員會ノ速記錄ガ···
サウ云フモノヲ今持出シマシテ、細カ
イ御說明ヲシテ此ノ點ヲ爭フコトハ甚
ダ不本意デアルカラ、是ハ政府委員ニ
私ハドウ云フ所ニサウ云フモノガアル
カ、若シチヤント言ハレルナラバソレ
ニ付テ議論ヲスルケレドモ、併シ是ハ
ドツチニモ讀メル、讀ミ方ニ依ツテハ
讀メルヤウニナツテ居ルノダカラ、其
ノコトハ止メラレタ方ガ宜インヂヤナ
イカト云フコトヲ言ヒマシテ、政府委
員トシテハ場所ヲ示シテ其ノコトハ言
ハレテ居リマセヌ、只今何カ非常ニ明
カニ其ノ修正報告等ニ於テ左樣ナコト
ガ現ハレテ居ルカノ如キ御說明デアツ
タノデアリマスガ、是ハ誤解ヲ招ク虞
ガアルノデ、私ハ其點ノハ質疑ニ於テ、
サウ云フ點ガアルノデ示サウトオツシ
ヤルナラバ示シテ戴クガ、サウスルト
又政府委員ノ答辯等ニ於テ矢張リ卽時
取得ノ規定ガ適用ガアルト見ナケレ
バドウシテモ讀メナイ所ガアルノダ
カラ、サウ云フ點ヲ一々言フト大變デ
アルガ、言フ積リナラバ御言ヒナサイ、
サウスレバ速記錄ヲ此處ヘ持ツテ來テ
細カク議論シテモ宜シイト云フコトヲ
申シタノデ、政府委員ハ其ノコトハ御
止メニナツタヤウニ私ハ記憶シテ居リ
やった、只今ハソレヲ、極メテ明カニ何
カ當時立法ノ際ニハサウ云フコトニ決
メテアツタト云フヤウニ御考ノヤウダ
ガ、決シテサウデハナイノデ、卽時取
得ト抵當權ノ存在トハ兩々必ズシモ相
妨ゲナイト云フ頭デ政府委員ハ答辯サ
レテ居ル點ガ確カニアル、此ノ材料ナ
ドヲ材料トシテ御議論ニナルコトハド
ウデアラウカト考ヘマスガ、是ハマア
討論ガマシク聞エルカラ申上ゲマセヌ
ガ、實ハ昨日デゴザイマシタカ、政府
委員ニ對スル質問ノ際ニ、サウ云フ質
問應答ヲ致シタト云フコトヲ或ハ御承
知ガナクテ、只今ノ御發言ガアツタカ
ト思フノデ、補足シテ申上ゲタイト思
フノデアリマス、マア其ノ他色々ノコ
トモ御話ガアリマシタガ、私ガ矢張リ
說明ヲシナクチヤイケナカツタカモ知
レヌコトガ一ツアリマス、ソレハ工場
財團ノ散逸ヲ斯ウ云フコトデ非常ニ保
護シテ置カヌト防止サレナイト云フヤ
ウナコトデス、此ノ點ニ付テハ私ハモ
ウ少シ說明シテ置ケバ宜カツタト思
フ、善意取得者ノ權利ハマルデ認メラ
レナクナルノダト云フ說ヲ採ツタナラ
バ、工場財團ハ散逸シマス、何故ト云
フト、別ニエラク注意ヲシテ居ラヌデ
モ、盜ミ出スヤウナヤツヲ監督シナイ
デモ、第三者ノ手ニ入ツタヤツヲ見付
ケテ取出セバ宜シイ、サウ其ノ注意ヲ
シテ取出サレナイヤウニシナクテモ宜
イト云フコトニ解釋ハナルノデス、サウ
云フコトニナリマシテハ、却テ不取締
ニナルヤウニ思フ、今ハ若シモウツカリ
盗ミ出サレデモスルト大變ダ、其ノ結果
ハ抵當權者ガヤツテ來テ檢査ヲシテ、足
リナイヂヤナイカ、補足シロト云フヤウナ
コトヲヤラレルカラ、是ヂヤタマラナ
イト云フノデ、十分ナル注意ヲ出來ル
ダケ善良ナル管理者タル工場主ハシテ
居ルト私ハ信ジテ居ル、其ノ爲ニマア
フシダラノヤウナコトノナイヤウニ思
フ、若シ此ノ工場財團ノ目錄ニアル所
ノ財產、是ハ全國ニ於テ何十萬點アル
カ存ジマセヌガ、苟モサウ云フ目錄ニ
アル以上ハ、何時デモ行ツテ取出セル
ンダト云フコトニナツテハ、先ヅサウ
注意ヲシナイデモ宜イ、寧ロ工場主ヲ
シテ注意ヲナサシムルコトニナルンヂ
ヤナカラウカ、私ハ或ハソレニ近イコ
トヲ申シタカト存ジマスガ、十分記憶
ヲ致シテ居リマセヌノデ此ノ事ヲ申シ
きぐう。其ヲ他色々ノコトガゴザイマス
ガ、若シ委員長ガ御許シ下サツタ卽チ
說明ノ補足ト云フコトヲ濫用スルヤウ
ニ聞エルヤウニナリマシテハ非常ニ相
濟ミマセヌ、卽チ討論ニ對スル討論ガ
マシクナリマシテハ相濟ミマセヌ、サ
ウ云フ意味ナラ私ハ申上ゲタイコトモ
ゴザイマスガ、大體其ノ位ニシテ、後
ハ意見ノ相違ト云フコトニナルト思ヒ
マシー、事實ニ付テダケノコトヲ只今ノ
仰セデ申シタモノト御認メ願ヒタイ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=17
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018・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 別ニ御發言
ゴザイマセヌカ、討論ハ終結シタモノ
ト認メテ宜シウゴザイマスカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=18
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019・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 御異議ナイ
ト認メマス、是ヨリ採決ニ移リマス、
先ヅ松本委員ノ第十五條ニ關スル修正
案ヲ議題ト致シマス、修正案ニ御贊成
ノ御方ハ御起立ヲ願ヒマス
〔起立者少數〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=19
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020・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 起立者少數
ニ依リマシテ修正案ハ否決セラレマシ
タ、就キマシテハ原案全部ヲ問題ニ供
シマス、原案全部ニ御贊成ノ御方ハ御
起立ヲ願ヒマス
〔起立者多數〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=20
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021・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 多數ト認メ
やっく、仍テ原案ハ可決致サレマシタ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=21
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022・瀧正雄
○瀧正雄君 此ノ際チヨツト委員長ニ
御願シタイコトガアリマス、ソレハ松
本委員ガ本會議ニ修正案ヲ御提出ニナ
ルカドウカハ、ソレハ別問題ト致シマ
シテ、此ノ際少數意見ヲ述べル機會ヲ
失ハシテシマフト云フコトハ如何カト
存ジマスカラ、其ノ機會ヲ失ハセナイ
ヤウニ、委員長カラ松本委員ニ少數意
見ヲ述ベル意思アリヤ否ヤヲ御確カメ
置キヲ願ヒタイト思ヒマスガ如何デス
カ、其ノ手續ヲ御執リニナラヌト少數
意見ヲ述ベルコトガ出來ナクナル虞ガ
アリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=22
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023・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) 御答ヘ致シ
マス、規則ニ依リマスト、少數意見ヲ出
ス場合ニ於テハ委員會ノ三分ノ一ノ贊
成ガアリマスレバ宜シウゴザイマス、
只今ノ採決ノ結果ハ其ノ要件ヲ充タシ
ざ
テ居リマス、就キマシテハ、松本委員
ハ少數意見ヲ御出シニナル御意向デス
カ、御伺ヒシテ置キマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=23
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024・松本烝治
○松本烝治君 只今瀧委員カラ御注意
ヲ受ケマシタガ、私ハ少數意見ヲドウ
シテモ述ベザルヲ得ナイカト考ヘテ居
リマスノデ、述ベル機會ヲ與ヘテ戴キ
タイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=24
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025・東郷安
○委員長(男爵東〓安君) ソレデハ本
委員會ハ之ヲ以テ閉會致シマス、色々
有難ウゴザイマシタ
午後二時二十七分散會
出席者左ノ如シ
委員長男爵東〓安君
副委員長子爵裏松友光君
委員
侯爵德川賴貞君
侯爵中山輔親君
侯爵西〓吉之助君
伯爵柳澤保承君
子爵宍戶功男君
子爵大岡忠綱君
子爵松平親義君
子爵水野勝邦君
靑木一男君
坂西利八郞君
男爵高木喜寬君
松本烝治君
河田烈君
男爵宮原旭君
有賀光豐君
瀧正雄君
竹下豐次君
磯貝浩君
中島德太郞君
古莊健次郞君
岩田三史君
國務大臣
大藏大臣石渡莊太郞君
政府委員
大藏政務次官小笠原三九郞君
大藏省總務局長山際正道君
大藏省銀行保險局長迫水久常君
大藏書記官吉村成一君
同福田赳夫君
同櫛田光男君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008600307X00819450206&spkNum=25
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