1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
付託議案
○兵役法中改正法律案
○陸軍軍法會議法中改正法律案
○海軍軍法會議法中改正法律案
○現役青年學校職員俸給費國庫補助法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=0
-
001・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) ソレデハ只
今カラ會議ヲ開キマス、昨日ニ引續キ
マシテ御質問ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=1
-
002・内田重成
○內田重成君 私ハ昨日ノ質問ニ續キ
マス質問デアリマス、成ルベク簡單ニ
致シマス、昨日國民學校〓員ノ待遇上
ノ問題トシマシテ御說明ヲ承ツテ、追
追ニ國民學校〓員ノ俸給面ノ待遇等ガ
向上致シテ參リマスルコトニ付キマシ
テ、文部當局ハ至大ノ御盡方ヲ致サル
ル點ニ對シテ頗ル有難イコトニ存ジテ
居ルノデアリマスルガ、此ノ點ニ付キ
マシテハ、隴ヲ得テ蜀ヲ望ムト云フ譯
デハアリマセヌ、全ク初等、中等ノ〓
育ガ日本ノ國力ノ將來ニ鑑ミテ一番大
切デアルト云フ點カラ、國民學校ノ〓
員ハ、他ノ官吏ト比較ヲ取ラズニ、全
然獨立ノモノト考ヘテ、其ノ物質上ノ
待遇モ身位上ノ待遇そ考ヘナケリヤイ
ケナイモノダラウト私ハ考ヘテ居ルノ
デアリマス、ソコデ是迄ノ政府ノ政策
アタリガ、他ノ判任官等ノ物質上ノ待
遇トカ云フヤウナモノ、又身位上ノ待
遇ト云フヤウナモノト兎角比較シテノ
〓究ガ進メラレテ居ツタヤウニ考ヘル
ノデアリマスルガ、是ガ宜シクナイト
云フ感情ヲ始終持ツテ居ルノデアリマ
ス、ソレデ國民學校ノ〓員アタリニ、
一生涯之ニ從事サセルト云フ爲ニハ、
ドウシテモ定著性ヲ持タサナケレバナ
ラヌノデ、其ノ爲ニハ自分ノ子供ノ〓
育位ハ、相當年齡ニ達スルナラバ出來
ル位ニシテヤラナクチヤイケナイト思
フノデス、人ノ子ヲ〓育シテ居ルノダ
カラ、況ヤ我ハ唯子孫ノ賢ナルヲ愛ス
ト云フ觀念ハ、最モ强イノデアリマス、
人ノ子ニ賢クナレ、立派ヲ人ニナレト
言フテ薦メテ居ルノダカラ、自分ノ子
ガ親ノ言葉ヲ聽イテ、自分モ其ノ道ニ
進ミタイト言フテ親ヲ責メルノハ無理
カラヌコトデアルト私ハ思フ、一番苦
勞スルノハ其ノ點デアル、縣ニ依ツテ
ハ、今ノ互助會等デ、色々學資金ノ世
話等ヲシテ居リマスルケレドモ、是一
ナカ〓〓物足リマセヌ、矢張リ其ノ生
活ノ餘力ヲ以ツテ子弟ヲ〓育スルダケ
ノ餘裕ヲ與ヘテヤラナクチヤナラヌト
思ツテ居ルノデアリマスルガ、ソレガ
一向ニ出來テ居ラヌ、國民學校〓員ノ
一番不遇ト致シテ居ルノハ此ノ點デア
マリス、之ニ多少ノ餘裕ヲ與ヘル爲ニ、
昨日御話ノヤウニ、最上級ガ三千圓餘
ニ相成リマシテモ.ソレハ一縣ニ極ク
僅カ、數ヘル程シカ、其ノ最後ノ所謂
退職當時ニナル位ノモノダラウト思フ、
全般的ニ卽チ平均率ガウント上ラナク
チヤ、是等ノ人ノ生活ヲ安定シテ終
身國民〓育ニ沒頭スル譯ニハ參ラヌ、
ソレデ昨日ノ御答辯ニ依ツテ、今日ニ於
テナサルヽ待遇上ノ向上ノ點ハ私諒ト
致シマスルガ、尙不滿足ヲ免レナイ、
ソレデ進ンデ一ツ大々的ニ御考慮ヲ下
サツテ、外ノモノトノ權衡ヲ全然外レ
タ待遇ヲナサルヽコトヲ、是ハ意見ノ
ヤウデアリマシテ濟ミマセヌガ、將來
ノ御考究ヲ御言明ヲ願ヒタイト思フ、
而シテ是ハ大藏當局ニハ强ク御要望ニ
相成ツテ最モ當然ノタテ理ガ附クモノ
デアルト考ヘテ居ル、是ハ希望ト同時
ニ、將來ノ御抱負ガ若シ尙御アリデア
リマスルナラバ、承ツテ置キタイ、次
ニ國民學校、靑年學校ノ〓員ノ身位上
ノ待遇デアリマスルガ、身位上ノ待遇
モ棒給上ノ待遇ニ付キマシテ述ベマシ
タト同樣ニ、今日迄ノ身位上ノ
待遇ハマダ不十分デアル、官等、勳章
等モ外ノ普通ノ官吏程ニモ行ツテ居ラ
ヌト思フノデアリマスルガ、ソレハ矢
張リ特別ニ考ヘラルベキモノデアツテ、
場合ニ依レバ、國民學校ノ功勞者、又
優秀者ニ對シテハ勅任ヲ以テ待遇スル
位ノ思ヒ切ツタ施設ヲ一ツナサルベキ
モノデナカラウカト云フコトヲ感ジテ
居リマス、此ノ點ニ付テノ御考ヲ承リ
タイ、ソレカラ、今一ツハ、之ニ關聯
致シマスルガ、昨年ノ豫算委員會ニ於
キマシテ文部當局ニ對シテ私ガ伺ツタ
言葉ノ中ニ、中等學校長ノ勅任待遇ノ、
又ハ勅任官ノ、今迄實行ガナイノデア
ルガ、是ハドウモ、外トノ權衡上カラ
見テモ、又中等〓育ノ重要性ニ鑑ミテ
モ、大イナル〓育上ノ缺陷デアルト迄
自分ハ考ヘテ居ル、私共ノ知ル人ノ中
こいろ、中等學校長ニシテ帝國大學ヲ優
秀デ卒業シテ、長ク地方ノ中等學校長
ヲ勤メテ、別ニ榮利名達ノ考ヲ以テ彼
此スル人デナイ、サウ云フ人ノ居ルニ
拘ラズ、何時迄モ高等官三等待遇ト云
フコトニナツテ居ル、是等ハ矢張リ其
ノ學校ニ置イテ置イテ、少クトモ勅待
位ニスル途ヲ拓カレタラ宜クハナイ,
カ、ソレガ最モ適當デアルト思フ、誰
モガサウ感ジテ居ルノデアリマス、ソ
レヨリ以下ト考ヘル人ガ勅待ニナツテ
他ノ方ニ進級シテ行クトカ云フヤウナ
コトガアルノデアリマスガ、ソレハ學
校其ノモノガ變ツテ專門學校等ニナラ
ナケレバ、勅任ト云フコトニナラナイ
ノデアル、ソレデハイケナイノデアツ
テ、矢張リ中學校〓育ヲ專心ニヤツテ
行クト云フ人ヲ、長ク其ノ地位ニ、立
派ナ人デアルナラバ置クト云フ方針デ
行カレタ方ガ、ドウモ宜イヤウニ思
フ、サウ云フコトヲ申上ゲタ、ソレニ付
テハ文部當局ハ〓究スルト云フコトニ
ナツテ居ツタ、ソレハ其後ドウ云フ風
ニ相成ツテ居リマスカ、唯ソレ切リモウ
話ハ進マヌデ、別ニ御〓究ニモナツテ
居ラヌノヂヤナイカ知ラント云フヤウ
ナ氣分ヲ持ツノデアリマス、今迄ノ成
行キヲ一ツ承ツテミタイト思ヒマス、其
ノ兩點ダケヲ一ツ先ニ御話ヲ願ヒタイ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=2
-
003・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 御答ヘ致シマ
ス、昨日來特ニ國民學校〓員ノ精神、
又給與、其ノ他物的方面ニ於テ十分ノ
優遇ヲ爲スベキコトニ付テ縷々御述ニ
ナリ、只今モ亦段々ト御意見ヲモ拜承
致シマシタ、先ヅ俸給其ノ他ノ給與ニ
關シマシテハ、昨日〓況ハ申上ゲマシ
テゴザイマスガ、文部當局ト致シマシ
テモ、是迄ノ優遇ヲ以テ事足レリト致
シテ居ル譯デハゴザイマセヌ、將來更
ニ優遇ノ途ヲ講ズベク折角努力ヲ致ス
考デゴザイマス、次ニ精神的方面ニ於
テ、官等、敍勳其ノ他ニ付テ、他官ニ
拘ラズ、思切ツテ優遇ノ途ヲ講ズベキデ
ハアルマイカト云フ御意見デアリマス、
御趣旨ニ於キマシテ全ク御同感ヲ申上
ゲル次第デアリマス、此ノ際申上ゲテ
置キタイコトハ、國民學校ノ校長或ハ
訓導等ニ付キマシテハ、最近所謂奏任
待遇ノ員數ヲ相當ニ增加ヲ致シマシテ、
校長ニ於テ約一萬三千四百名、〓頭ニ
於テ五千人、平訓導ニ於テモ二千人程
度ノ奏任ノ待遇ヲ作ルコトニ致シマシ
タ、通ジテ二萬四百人ノ奏任待遇ノ定
員ヲ確保致シマシタ、之ニ依リマシテ
出來ル限リノ優遇モ講ジ、又最高官等
ハ從來四等デアリマシタモノヲ、只今
デハ三等迄進ミ得ルコトニ實ハ致シタ
ノデアリマス、サリナガラ是モ決シテ
此ノ程度ヲ以テ滿足ヲ致ス譯デモゴザ
イマセヌノデ、將來ニ於キマシテハ
御示ノ如ク更ニ優遇ノ途ヲ講ジタイ、
斯樣ニ考ヘテ居リマス、ソレカラ次
ニ昨年ノ豫算委員會ニ於テ述ベラレタ
中等學校長ノ勅待等ノコトニ付テ、ド
ノヤウニ進捗ヲ致シテ居ルカトノ御尋
ヲ戴キマシタガ、當時當局ヨリ申上ゲ
マシタ如ク、文部省ト致シマシテハ中
等〓育ノ重要性ニ鑑ミ、校長等ニ於テ
ハ其ノ優秀サヲ認メタモノハ勅待ノ途
ヲモ講ジタイト思ヒマシテ、旣ニ其ノ
一案ヲ得マシテゴザイマス、只今關係
ノ方面ト折角折衝ヲ續ヶテ居リマスル
次第デゴザイマス、左樣ナ事情デ何ト
カ實現ヲ期シタイト思ツテ折角努力ヲ
致シテ居ル、斯樣ニ御承知ヲ願ヒタウ
ゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=3
-
004・内田重成
○内田重成君 待遇上ノ問題ニ付キマ
シテハ色々御苦心ニ相成ツテ居ル點ヲ
承ツテ滿足致シマス、ドウカ速カニ其
ノ途ヲ講ジテ、極メテ廣イ範圍ニ其ノ
待遇ノ最上位ガ普遍的ニ參リマスルヤ
ウニ、願ハクバ曉天ノ長星ノ如ク一縣
下ニ二人、三人ト云フヤウナ僅カナ者
デナイヤウニ一ツ御取扱ニナツテ、十
分ニ中等、初等ノ〓育ノ方面ニ向ツテ
優秀ナ〓員ヲ其處ニ凝集スル途ヲ速カ
ニ御取リ下サルコトヲ切望シテ已マナ
イノデアリマス、此ノ點ハ是デ止メマ
シテ、次ニ學徒動員ノ問題ヲ極ク簡單
ニ承リマスガ、此ノ學徒動員ニ關シマ
シテ勤勞ノ管理、健康ノ管理、風紀ノ
振肅等ノ點ニ付キマシテ、學徒ガ動員サ
レテ出動致シテ居ル會社、工場等ノ如何
ニ依ツテ此ノ點ニ大キナ差別ガアルヤ
ウデアリマス、學徒中ノ不平モ屢〓承承
ノデアリマスガ、自分等ノ見聞スル所
モ亦各工場等ニ依ツテヒドイ違ヒガ生
ジテ居ルノデアリマス、ドウモ今日ノ
ヤウナ、是ハマア試驗的ナモノカモ知
レマセヌカラ已ムヲ得ヌデアラウトモ
考ヘルノデアリマスルガ、勤勞卽〓育、
行學一體ト云フ文部省ノ御方針ニ依ツ
テ此ノ戰時〓育ヲ學徒動員ノ面ニ於テ
行ハルヽト云フコトハ、是ハ戰時〓育ノ
一方便トシテ日本トシテハ劃期的ナモ
ノデアリマスルカラ、只今申シタ勤勞
管理、健康管理、風紀振肅等ニ付キ
マシテ十分ナ施設ガ出來テ居ラヌ、勤
勞卽〓育、行學一體ニハナラナイノ
デアルト云フコトヲ私ハ惧レル、
屢〓學校當局ニ付キマシテモ承リ、自
分ガ方々ノ工場等ヲ步イテ見マシテ實
見スル所ニ依ルト、例ヘバ健康問題ニ
於キマシテ非常ナ差別ガアル、食事ナ
ドニ付キマシテモ非常ナ差別ガアル、
又學徒ノ風紀ノ上ニ於キマシテモ稍〓
寒心スベキモノガアルノデハナイカ、
是ハ具體的事實ハ申上ゲマセヌ、此ノ
點ニ付キマシテハ當局トシテモ賢明ナ
ル方途ヲ講ゼラレル必要ガアルコトヲ
痛感スルノデアリマスガ、之ヲ詳細ニ
御尋ラスルコトハ時間ノ許サザル所デ
アリマスカラ御尋ハ略シマスガ、今
文部當局ガ學徒動員ニ關シ、全般的ニ
勤勞管理、健康管理或ハ風紀振肅ノ問
題等ニ付テ、是ガ勤勞卽〓育、行學
一體ノ主義ヲ害セザルヤウニドウ云フ
風ニ監督シテ行クノデアラウカト云フ
コトヲ、如何ナル御方針ニ依ツテ各地
方當局ニ御指示ニ相成ツテ居ルカ、其
ノ點ヲ若シ御示ガ出來ルナラバ仕合セ
ト存ズル次第デアリマス、而シテ是ハ
必ズヤ各地方當局ノ責任ニ於テ行ハル
ルモノト思フノデアリマスルケレドモ、學
徒ヲ配置サレタル工場、會社等ガ多數
アリマスルノデ、從ツテ其處ニ出張
シテ學徒ヲ指導スル〓員ガ分散シテ、
僅カナ人々ガ學徒ト起居ヲ倶ニサレ、
相當日數掛ツテ學徒ガ勤勞ニ勵ムヤウ
ニ指導シテ居リマスガ、行學ト云フ方
面ニ付キマシテハ一向其ノ氣分ガ進ン
デ居ラヌ、此ノ點ハ第一次世界大戰ノ
當時、「ドイツ」ガ將來ノコトヲ考ヘ、學
徒ノ〓育ニ付キマシテ力ヲ入レテ居ル
アノヤリ方等モ十分御參考ニナツテ色
色御指導ニナツテ居ルコトトハ思フノ
デアリマスガ、問題ガ餘リ廣過ギ大キ
過ギテ御說明ガ御困難カトハ存ジマス
ガ、其ノ點ダケデモ御示ヲ願ヘレバ仕
合セデアルト云フ考デ御尋ヲ致シタ次
第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=4
-
005・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 學徒ノ勤勞動
員ニ關シマシテハ勤勞管理、健康管理、
風紀ノ振肅等ガ各工場等ニ依ツテ隨分
區々デアル、是ハ確カニ當局ト致シマシテモ
左樣ニ考ヘテ居リマス、是ハ誠ニ遺憾ナ
現象デアリマシテ、當局トシテハ左樣ナ行
屆カナイ所ヲ今後十分ニ是正シテ參リタ
イト考ヘテ居リマス、而シテ是等ノ諸點
ニ關シマシテ當局トシテ只今ドウ云フ
指示ヲシテ居ルカトノ御尋デゴザイマ
スガ、是等ノ指示ニ關シマシテハ、實
ハ是ハ詳細ニ亙ツテ學校側ニ於テ措置
スベキ事柄、工場、事業場側ニ於テ措
置スベキ事柄、又監督ノ立場ニアリマ
スル道府縣等ニ於テ指導上考慮ヲ〓ラ
スベキ事項、ソレ〓〓廣範圍ニ亙リマ
シテ示シテ居ルノデアリマス、併シナガ
ラ御承知ノ如ク學徒勤勞ハ昨年ノ四、
五月頃カラ急激ニ强化ヲサレマシテ、
而モ其ノ出動、配屬ト云フモノハ、軍
需生產ノ緊急ナル事態ニ卽應スルモノ
トシテ、數次ニ亙ツテ之ヲ行ツタト云
フヤウナ事情モゴザリマシテ、段々ノ
具體的ナ事情ニ於テハ甚ダ不十分ナル
モノガゴザイマス、是ハ今後十分是正
ヲシテ參リタイト思ツテ居リマス、其
ノ是正ニ付キマシテ、當局トシテハ今
囘豫算ニ新タナル經費トシテ、中央竝
ニ地方ニ於ケル學徒勤勞ニ關シマスル
行政ノ整備ヲ圖ルベク、機構上ニモ若
干ノ經費ヲ計上致シマシタ、地方ノ例
ヲ申上ゲマスレバ、例ヘバ事務官十二
名トカ、屬ハ全府縣ニ配當スルト云フ
ヤウナ方法モ、實ハ講ジテ居ルノデア
リマス、又地方ノ行學ニ關シマスル行政
實例ヘバ視學官デアリマスルトカ、
或ハ內政部長ノ職ニアルヤウナ人々
ヲ、軍需監理官ヲ兼務セシムルノ方法ヲ
執リタイト存ジマシテ、只今手續中デゴ
ザイマス、何樣其ノ人員ハ相當ノ數ニ
上リマスノデ、手續ニ若干ノ日時ヲ要
シテ居リマスルガ、是等モ近ク實現ヲ
スルモノト考ヘテ居リマス、斯樣ナ方
法ヲ〓ラシマシテ、段々御注意ノ喚起
ノゴザリマシタヤウナ事項ハ、今後改
ムベキハ必ズ改メルト云フ方ニ向ツテ
進ンデ參リタイト思ヒマス、最後ニ前大
戰當時ニ於ケル「ドイツ」ノ學生、生徒、
青少年等ノ〓育ニ於ケル深キ慮リヲ例
ニ取ラレマシテ、當局ニ對シテノ留意
ヲ求メラレマシタ點ハ、誠ニ御同感ヲ
致スノデアリマス、當局ト致シマシテ
モ單ナル勞務ノ提供ト云フガ如キ考ハ
毛頭ゴザリマセヌノデ、何處迄モ是ハ
行學ノ立場ニ立ツテ、勤勞卽〓育、行
學一致ノ實ヲ收メタイ、斯樣ニ考ヘテ
居リマス、現ニ具體的ニハ、或工場ノ
如キハ、能ク此ノ趣旨ヲ了得セラレマ
シテ、工場ニ於ケル實際ノ作業ノ指導
書ト云フヤウナモノハ、實ニ工場ニ於
ケル技師ト、派遣職員トノ合作ニナル
モノデアリマシテ、生產ノ現場ニ於テ
如何ニ學理ガ應用セラレテ居ルカト云
フヤウナ點モ、細々ト〓科書風ニ認メ
テ、ソレヲ讀ミナガラ、又且實際ノ勤
勞ニ從事シテ、觀念的ニナラズ、又理
論ニ趨ラズ、原理、學理ト云フモノガ、
如何ニ生產ノ現場ニ於テハ應用サレテ
居ルカト云フ點ヲ、詳細ニ學徒ニ〓ヘ
込ム、斯ウ云フヤウナ所モ少クハゴザ
イマセヌ、又規律、訓練ト云フ點ハ、
相當ニ派遣〓職員ノ指導ノ下ニ、複雜
ナル現場ニ於キマシテモ、之ヲ實施ヲ
サレテ居リマス、今後ハ段々ノ御注意
ヲ受ケマシタ點ハ、我々モ能ク同感ヲ
致スノデアリマスカラ、深ク悠久ナル
皇國ノ將來ノ發展ト云フコトニモ思ヒ
ヲ致シマシテ、出來得ル限リ勤勞卽〓
育ノ實ヲ擧グルヤウニ努力致ス考デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=5
-
006・内田重成
○內田重成君 此ノ法案ヲ餘リ離レテ
ノ問題デアリマスルノデ、甚ダ恐縮デ
ゴザリマスルカラ、只今承リマシタ程
度デ學徒動員ノ問題ニ付キマシテハ、
多數ノ問題ヲ包含シテ居リマスルケレ
ドモ、私ハ是デ御尋ヲ止メマス、終リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=6
-
007・井上清純
○男爵井上〓純君 只今ノ學徒動員ノ
コトニ關シマシテ、二三御尋シタイト
思ヒマス、此ノ學徒ガ非常ナ勢デ以テ、
此ノ工場ニ入ルノデゴザイマスルケレ
ドモ、工場ニ於キマシテハソレダケノ
氣持ヲ受込ンデ居ラナイヤウデアル、
或ハ溝掃除ヲヤラシタリ雜用ニ使ツ
タリスルノデ、スツカリ氣分ヲ惡クシ
テシマフ者ガ多イヤウデアリマス、ソ
レデナクテモ今日迄ノ勞務者ノ氣分ト
云フモノハ非常ニ荒ンダモノデ、到底
今日ノ學徒ノヤウナ氣分ハ持チ得ナイ、
サウ云フ者者多數工場ニ居リマスカ
ラ、ソレニ入リ込ミマスト、ドウシテ
モ純眞ノ學徒ノ氣分ハ殺ガレテシマフ
コトハ當然デアル、ソレガ將來非當ニ
伸ビナケレバナラナイ國家ノ中堅トナ
ルベキ人達ガ、一度工場ノ中ニ入ルト
スツカリ溷濁サレテシマフ、ソレハ國
家ノ前途ニ對シテ非常ニ寒心スベキ事
柄デアリマス、今日學問ハシナケレバ
ナラヌ、其ノ時間ヲ割イテ工場ニ行ク
ノデアリマスカラ、工場デモ其ノ積リデ、
學校ノヤウナ氣分デ、工場長始メ之ニ
向ハナケレバナラヌト思フノデス、處ガ
今日迄ノ產業者ト云フモノハ、サウ云
フ氣分ヲ持ツテ居ラナカツタ、急ニサ
ウ云フ氣分ニナラウト思ツテ、骨折ツ
テ居ルヤウデアルケレドモ、ナカ〓〓
ナリ得ナイ、ソレハ根本的ニ世界觀ガ
違フノデアリマス、折角〓員ガ附イテ
行キマシテモ、ドウモ〓員ノ方ハ技術
ガアリマセヌカラ、矢張リ向ウノ古イ
職工ノ指導ヲ受ケタリ何カスル、矢張
リイケナイ、成ルベクナラバ工場ニ入
ラナイデ、學校ノ方へ器具ヲ取寄セテ、
學校ノ〓場デヤルヤウナ方式ヲ採ルコ
トガ、餘程成績ガ擧ルノヂヤナイカト
思ヒマス、場所ヲ名指シテ申上ゲテモ
宜シイノデアリマスケレドモ、一、二
サウ云フ所ガゴザイマス、非常ナ成績
ヲ擧ゲテ居ル、サウシテ生徒ガ實ニ渾
身ノ希望ヲ以テ其ノ仕事ニ勵ンデ居ル、
將來ハ學徒ノ進出ニ付キマシテノ作業
ノ成績ト云フモノハ、非常ナモノデア
ラウト思フ、其ノ大事ナ人達ヲ將來ド
ウ持ツテ行クカト云フコトガ、矢張リ文
部省トシテハ御考ヘニナラナケレバナ
ラヌコトデアリマシテ、殊ニ學校ノ〓育
ヲ中途デ止メテ居ルヤウナ恰好デアリ
マスガ、併シナガラ國家ハ永遠ノ存在
デアツテ、ドウシテモ學問ト云フモノ
ヲ建テテ置カナケレバ、前途ト云フ
モノハ非常ニ危險デアル、文化ヲ高メ
ルト云フコトハ、高度國家ノ根柢デナ
クテハイカヌ、今時間ガ無イカラ已ム
ヲ得ズ其ノ方ハウツチヤラカシテア
ルヤウデアリマスケレドモ、根本ハ其
所ニナクテハナラヌ、ソレデ靑年學校
ノコトニモ及ブモノデアリマスガ、靑
年學校ノ〓育ハ、マア公立ノ方ハ兎モ
角トシテ、其ノ公立ト雖モドウモ形式
ノ上ノ訓練ダケニ止ツテ、魂ノ〓育ノ
方ニハ時間ガ無イヤウデアリマス、又
其ノ方ニ向ツテ適當ナ〓育ハサレテ居
ナイヤウデアリマス、此ノ點ニ付テド
ウ云フ狀態デアルカ伺ヒタイノデアリ
マスガ、今日ノ日本ノ靑年ハ非常ナ煩
悶ヲ持ツテ居ル、思想的ニ色々ノ疑問
ヲ持ツテ居ル、或ハ人生觀ニ付テ、或
ハ國家觀ニ付テ、或ハ宗〓觀ニ付テ色
色人生ノ煩悶ヲ持ツテ居ル、其ノ煩悶ヲ
解決シテ下サル所ガ何所ニモナイ、唯靑
年學校邊リエ行キマスト、形式的ノコト
バカリヲ〓ハツテ居ル、ダカラ不良ノ者
ハ一番敬禮ナンカガ正シイ、不良ハナカ
ナカ利巧デアルカラ、形式的ナ敬禮デモ
何デモ正シクヤレバ賞メラレル、ソレデ
後デ舌ヲ出シテ居ルカモ知レヌ、内輪デ
ハ非常ニ紊レテ居ル、サウ云フ者ニ限ツ
テ人ガ見ナイ時ニ勉强シナイ、サウシテ
孜々トシテ本當ニ勉强シテ居ル者ハ敬
禮ナンカハ拙イ、サウ云フ者ヲ賞揚シナ
イデ、表テニ現レタ所ノ形式ノ正シイ
ヤウナ、要領ヲ得タヤウナ靑年ヲ賞揚
スルヤウナコトガアツタナラバ、根本
的ニ〓育ト云フモノガ崩レテシマフ、
今日增產ガ擧ラナイノハ結局魂ヲ〓育
シナイカラデアリマス、ソレデ一方此
ノ魂ノ〓育ニ觸レタナラバ、人間ハ十
倍二十倍ノ驚クベキ力ガ出テ來ル、
其ノ點ニ付テハドウモ今日ノ文部省ノ
御方針ガ何處ニ在ルノカ、チヨツト私
共ハ摑ミ得ナイデ居ルノデアリマス、
ソレデ地方ヲ歩イテ見タリナンカシマ
シテモ、皆靑年達ハ學校カラハ何物モ
貰ツテ居ラナイ、魂ノ何物モ貰ツテ居
ラナイト云フコトヲ言ヒマス、大學ノ
學生ニ付キマシテモ同樣ノコトヲ言ツ
テ居ル、今日ノ學問ハ現在ノ國ノ動キ
トハ何ノ關係モナイ、日本ノ國體ガソ
レデ以テ分ツタカト云フト分ラナイ、
人生ガ分ツタカト云ヘバ分ラナイ、宗
〓ト云フモノニ付テ何等ノ〓育ハ施サ
レテ居ナイ、今大東亞ニ横ハツテ居ル
三大思想ト云ヘバ、申ス迄モナク佛〓
ト儒〓ト惟神ノ道、此ノ三ツノ問題ニ
付テドウ取扱ツテ宜イカト云フヤウナ
コトニ付キマシテモ彼等ハ迷ツテ居ル
ノデアリマス、誰モ知ラナイ、〓ヘテ
吳レナイ、此ノ三大思想ガ東亞ノ文化
ノ根柢ニナツテ居ルノデアリマス、而
モ其ノ文化ハ世界第一ノ精神文化デア
ツテ、今ノ戰ヒハ實ハ文化ト文化ノ戰
ヒデアルノデアル、魂ト物トノ戰ヒデ
アリマス、ソレヲ物々ト言ツテ居ルカ
ラ、物ノ大キナモノニ負ケテシマフ、
ドウシテモ學校ノ「教育ノ根本ハ魂ノ
〓育ニ置カナケレバイカヌト思フ、今
ノヤウナ行狀ヲ齊ヘタリ、或ハ形式ノ
コトバカリヲヤツテ居ルト云フコトハ、
到底今日ノ事態ニ卽應シナイ、ソレデ
私ハ靑年學校ノコトデアリマスケレド
モ、ドウモ根柢ニ非常ニ大キナ問題ガ
横ハツテ居ルヤウデアリマシテ、此ノ
問題ニ觸レナケレバ、區々タル靑年學
校ノ〓員ノ待遇ナント云フコトハ話ガ
出來ナイ、ソレデ今日我ガ國ニ押寄セ
テ居ル所ノ問題ハ、「ヨーロッパ」文明ト東
洋ノ文明トノ優劣デアリマス、其ノ優劣ヲ
シツカリト靑年ニ〓ヘテヤリマセヌト、矢
張リ向フガ先進國ダト思フ、西洋ノ方ガ
文明ガ高イト思ツテ居ル、高イト思ツテ
居ル間ハ到底日本ハ勝テナイ、戰爭ニ勝
テナイ、大事ナ所ヲ傳ヘテ東洋ノ文明ガ
非常ニ髙イノダ、西洋ノ文明ハ足許ニ
モ及バヌヤウナモノデアルト云フヤウ
ニシツカリト精神文明ガ、殊ニ根柢ニ
ナツテ物質文明ト戰ハナケレバイケ
ナイ、其ノ精神文明ヲ失ツタ「ヨーロツ
パ」文明ト云フモノハ、非常ニ詰ラヌ
文明デアルト云フコトヲ根柢カラ靑年
ニ〓ヘテ行カナケレバ、本當ノ力ハ出
テ來ナイ、日本人ノ本當ノ力ハ出テ來
ナイ、ソレヲ靑年學校ニ於テハ殊ニ力
ヲ注ガナケレバナラヌノデアル、今日
デハ唯右向ヶ左向ケデアル、サウ云フ
コトバカリ〓ヘテ居ルモノダカラ、彼
等ハ其ノ號令ニ從ツテヤリマスケレド
モ、少シモ心カラ立上ガルト云フ氣分
ハ起ツテ來ナイ、今實際ハ日本人ハ本
當ニ立上ツテ居ラナイ、併シ靑年ハ非
常ナ純眞デアリマスカラ立上ガラムト
シテ居ル、立上ラムトシテモ立上レナ
イ、ドウカシテ靑年ノ純眞ナ氣分ヲ立
上ラセルヤウニ、一ツ導イテ戴キタイ
ト思ヒマス、ソレガ靑年學校ノ一番大
事ナ所デアルト思フ、私立ノ靑年學校
ノコトデアリマスガ、私立ノ靑年學校
デ學ンデ工場ニ入リマスト、今度工場
ノ伍長トカナントカ云フモノガ威張ツ
テ居リマシテ、折角外デ學ンダコトモ
何モナラヌ、皆頭カラ貶シ付ケラレテ
シマフ、ソレデハヲカシイヂヤナイ
カト云フノデ又ソコニ煩悶ヲ生ジ、勞
務員ノ中ニ於テモドウシテ宜イカ分ラ
ヌト云フコトガ增產ガ出來ナイ原因デ
アラウト思フ、而モ工場長ダトカ重役
ダトカ云フヤウナ人ガ、依然タル昔ノ
產業人デアツテ、矢張リ功利主義デ固ツ
テ居ル人デアル、サウ云フ人ガ上ニ居
ルカラ、如何ニ純眞ナ靑年ガ立上ラムト
シテモ立上ルコトガ出來ナイ、本當ニ
自分達ニ任シテ吳レタナラバ、今ノ十
倍二十倍ノ生產ヲ發揮シテ上ゲルト云
フコトヲ言フ人ガアリマス、而モ其ノ
力ヲ出スコトガ出來ナイト云フコトハ
何ンタルコトデアルカ、今ヤ國家危急
存亡ノ岐レル所デアル、本當ニ今迄ノ
ヤウナコトデハ到底イカヌ、今迄ノヤ
ウナ〓育デハ迚モイカヌト思フ、平時
ノ問題デモ何ンデモナイ、速カニ魂ノ
〓育ノ問題ニ付テ十分ナ力ヲ御注ギニ
ナラナケレバイケナイ、殊ニ佛〓ニ付
テ之ヲ排擊スルヤウナコトガアツテハ
大變デアル、西洋人ガ一番恐レテ居ル
ノハ佛〓デアル、「ユダヤ」アタリガ明
治維新ノ時カラ佛〓ヲ成ルベク日本カ
ラ取ラウトシテ掛ツテ來タノガ今日ノ
ヤウナ排佛的ノ思想ヲ植エ付ケタ原因
デアツテ、マンマト今迄思想戰デ負ケ
タ、日本ハ思想戰デ負ケタト云フコト
ヲ考ヘナケレバイカヌ、而シテ文化ノ
復興、三、儒、佛惟神ノ文化ヲ復興シ
ナケレバ到底イカヌ、然ルニ其ノ排佛
思想ノ人ガ帝國大學ノ中ニ澤山ニ居ツ
テ、サウシテ學問ヲ抑ヘ付ケテ居リマス
カラ本當ノ日本精神ガ植ヱラレナイ、
其ノ點ニ付キマシテ私ハ大變ナ誤リヲ
持ツテ居ルモノデアルト云フコトヲ痛
感スル一人デアリマス、其ノ點ニ付キマ
シテ甚ダ廣汎ナ、又少シ御答辯ガ困難
ナヤウナ所モアルヤウデアリマスケレ
ドモ、大體ノ所ヲ要領ダケデモ宜シウ
ゴザイマスカラ、政府ノ意ノアル所ヲ
御洩ラシ下サルコトヲ御願シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=7
-
008・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 皇國ノ興廢ノ
岐レル此ノ現時ニ於テ、〓育ノ反省ス
ベキ點ヲ、誠ニ高邁ナル觀點カラ段々
ト御指摘、御述べ戴キマシタ點ハ、誠
ニ私共有難ク拜承ヲ致シタ次第デアリ
やって、第一點ノ今日學徒ガ將來ヲ荷フ
ベキ大切ナル身デアリナガラ、暫ク授
業ヲ廢シテ迄工場ニ出動シテ居ル、而
モ其ノ工場ノ現場ト云フモノガ甚ダ學
徒ノ出動ニ相應シカラザル現狀デア
ル、之ニ付テ非常ナ御憂慮ヲ戴キマシ
タガ、此ノ點ハ私共モ誠ニ御同感ニ存
ズルノデアリマシテ、其ノ點ノ憾ミト又
遺憾ノ感ヲ同ジウ致シテ居ルノデアリ
せっく、工場ガ苟クモ〓育卽產業、〓育
卽勤勞ト云フヤウナ建前カラ學徒ノ出
動ヲ迎ヘマスルニハ、工場ハ單ナル生
產ノ場デアツテハナラナイ、同時ニソ
レハ〓育ノ場デモナケレバナラヌ、又
訓練ノ道場デモナケレバナラヌ、是仁、
全ク御同感デゴザイマス、實ハ昨年ノ
三月ニ決戰非常措置デ、學徒ノ勤勞動
員ノ强化ヲ決メマスル際ニ、殆ンド時
ヲ同ジウ致シマシテ、御承知ヲ戴イテ
居リマスル勤勞昂揚ニ關スル要綱ト云
フモノガ決定ニ相成ツテ居リマス、右
要綱ニ依リマスルト、一般工員ノ訓練
〓育ト云フコトニ一般ノ力ヲ注ギ、サ
ウシテ工場內ニ於テモ一般工員ガ規律
節制ノ下ニ、又而モ相當ノ〓養ヲモ積
ミナガラ學徒ト共ニ働キ得ルモノト期
待シタノデアリマシタガ、實ハ其ノ方
面ノ精神昂揚ニ關スル實績ハ、甚ダ以
テ今日迄不十分デゴザイマシタ爲ニ、
學徒ハ生產ノ場デアリ、同時ニ〓育ノ
場デアル工場ニ赴クコトガ出來ルト期
待致シマシタガ、赴イタ現場ノ姿ハ矢張
リ生產ノ場ニ止マルト云フヤウナ現狀
デアルコトヲ誠ニ遺憾ニ存ジマス、併シ此
ノ點ニ關シマシテハ關係ノ當局ニ於キ
マシテモ、今後工員ノ〓育訓練ニ付テハ、
十分力ヲ致スト云フ意向デ居ラレルノ
デアルヤウデアリマシテ、其ノ爲ノ色
色ノ施設モアルヤウデアリマス、又文
部當局ト致シマシテモ、一般社會〓育
的立場カラ致シマシテ、工場內ノ勤勞
監督ノ立場ニアル人々及至ハ役付ノ人
人殊ニ若キ職工、工員ト云フヤウナ
人々ニ對シテ、或ハ輔導學級ヲ作リマ
ストカ、或ハ隨時ニ現場ニ派遣致シマス
ル〓職員ト勤勞部長課長トヲ集メマシ
テ、鍊成等ノ方法ヲ行ヒマスルトカ、
色々方法ヲ盡シテ居ルノデアリマス、
今後斯ウ云フ方面ニ向ツテハ十分力ヲ
致シマシテ、御指摘ノ點ノ御心配ヲ戴
クコトノナイヤウニ努メタイト考ヘテ
居リマス、第二點ノ靑年學校〓育ニ付
テ、誠ニ核心ニ觸レ又深イ所カラノ御
考ヲ承リマシテ、深ク傾聽ヲ申上ゲマ
シタ、靑年學校ノ〓育ガ兎角形式ノ訓
練ニ流レテ深ク魂ノ根源ヲ培フ、深ク
魂ヲ訓練スルト云フコトニ於テ缺ケテ
居ルデハナイカトノ御指摘ハ、誠ニ私
共モ深ク反省シ、又將來ノ靑年學校〓
育トシテ十分ニ力ヲ用フベキ所デアル
ト御同感ヲ致シマス、唯靑年學校〓育
モ決シテ此ノ形式訓練ヲ重ンズル〓育
トシテヤツテ居ル譯デハナク、御承知
ノ如ク靑年學校ニ於キマスル修身、公民
等ノ學科ニ於キマシテハ實際ノ生活ニ
觸レナガラ、靑年ノ人生觀ナリ國家觀
ナリト云フモノヲ十分ニ涵養出來マス
ルヤウニ〓材モ配當致シ、又深ク魂ヲ
培フ意味ニ於キマシテ日本固有ノ文化、
更ニハ東洋ノ文化ト云フモノガ西歐ノ
文化ニ比シテ如何ナル特色ヲ持ツテ居
ルカ、又如何ナル發展ヲ遂ゲ、又嘗テ
ハ寧ロ世界ノ文化ヲ支配シタ時代モア
ツタコトヲ想起セシメテ、今日ノ若キ
靑年ガ徒ニ歐米ノ文化ニ心醉シ、過當
ナル崇拜ニ陷ルト云フガ如キコトナカ
ラシムルヤウニ努メテ居ルノデアリマ
ス、併シナガラ何サマ御指摘ノアリマ
シタ工場內ニ設ケラレタ靑年學校等ハ
誠ニ複雜デアリ、又忙シイ現場ニ〓ネ
接觸スル場面ガ非常ニ强イノデアリマ
シテ、斯ウ云フ方面ガ兎角等閑ニナリ
勝チデアルト云フコトハ十分私共モ
想像シ得ル所デアリマシテ、今後ハ斯
ウ云フ點ニ特段ナ力ヲ入レ、殊ニ歷史
ノ〓育、或ハ國語〓育等ニ於テハ、特
ニ御指摘ノ點ニ留意致シテ參リタイ、
斯ウ考ヘテ居リマス、ソレカラ第三點
ノ靑年ノ心ヲ立上ラスヤウニスルニハ、
ドウシテモ工場關係者ノ氣持ヲ、モウ
一遍改メテ貰ハナケレバナラヌ、此ノ
御指摘ハ誠ニ御尤モト存ジマス、今日
ノ生產現場ニ於ケル人々、殊ニ生產責
任者ヲ始メトシテ、企業ノ經營管理ニ
責任ヲ持タレル人々ノ中ニハ、立派ナ
心構ヘノ人モ少クハゴザイマセヌ、同
時ニ又甚ダ以テ今日ノ生產、國家ノ爲
ノ企業デアル建前ヲ十分ニ諒得ヲシナ
イ向モナイトハ申セマスマイ、此ノ點
モ本省ト致シマシテハ時ニ工場管理ノ
責任、或ハ生產責任ヲ御持チニナツテ
居ル方々ニ御會同ヲ願ヒマシテ、實
膝ヲ交ヘテ靑年工員等ノ思想ノ指導ト
云フヤウナモノニ付テ御懇談ヲ致シナ
ガラ、同時ニ又是等ノ若キ工員ノ指導
ニ當ラレマスル工場經營側ノ御心構ヘ
ト云フモノモ、斯クアツテ欲シイモノ
ダト云フヤウナ箇條々々ヲ揭ゲテ、實
ハ御懇談ヲ致シタヤウナコトモ一再デ
ハゴザイマセヌガ、今後ハサウ云フ方
面ニ特段ナ注意ヲ致シ、更ニサウ云フ
施設ニ付テモ今後推進メルヤウニ考ヘ
テ參リタイ、斯ウ云フヤウニ思ツテ居
リマス、最後ニ佛〓思想ノ大事デアル
コトニ付テ縷々御述ヲ戴キマシタガ、單
リ佛〓思想ノミト申シマセズ、宗〓的
情操ト云フコトハ國民感情ヲ淨化シテ、
サウシテ眞ニ氣品ノアル良キ國民資質
ノ鍊成ノ上ニ最モ肝要デアルト考ヘマ
スノデ、狹隘ナ考ヘニ捉ハレズ、純眞
無雜ナル而モ崇高ナル宗〓的情操ノ涵
養ニハ一段ノ力ヲ致スト云フ考ヘデゴ
ザイマス、以上デ大體御了承願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=8
-
009・山田三良
○山田三良君 私ハ文部常局ニチヨツ
ト伺ヒマスガ、一昨年來時局ニ際シテ
學術ノ〓究ヲ奬勵サレル爲ニ、大學ヲ
卒業シタ者ノ中カラ優秀ナル者ヲ選拔
サレテ特別〓究生トシテ、國家ガ俵給
ノヤウナ手當ヲ與ヘテ、專心〓究ニ從
事セシメルト云フ制度ヲ御立テニナリ
マシタコトハ、誠ニ學界ノ爲ニ喜ブベキ
コトト思ツテ居ルノデアリマスガ、ソ
レハ時局柄自然科學ニ關スル〓究ガ大
多數デアリマシテ、人文科學ニ關スル
方面ハ比較的少數デアルコトハ、是日
固ヨリ當然デアリマシテ、今御承知ノ
ヤウニ人文科學ノ方ハ、徵兵適齡者ハ
皆入營致シマスカラ、學生ガ非常ニ少
クナツテ居リマス、自然科學ノ方ハ從
來ノ通リデアリマスカラ、其ノ多數ノ
學生ノ中カラ多數ノ者ガ現ハレテ來ル
ノハ固ヨリ當然デアリマスガ、併シ人文
科學ニ於キマシテモ、全部ノ學生ガ居ル
時ト同ジヤウニ多數ノ優秀ナ者ヲ得ル
ト云フコトハ困難デアリマスケレドモ、尙
少數ノ極メテ優秀ナ者ヲ選拔スルコト
ハ出來得ルノデアリマシテ、現ニ一昨年
來自然科學ノ特別〓究生ト同樣ニ人文
科學ニ於キマシテモ、法文系統ニ於キマ
シテハ各〓十名內外程ノ者ガ選拔サレテ
〓究ニ從事シテ居ル次第デアリマス、然
ルニドウ云フ理由デアリマスカ此ノ折角
設ケラレタル特別〓究生ト云フ制度ヲ、
昨年ニナツテ俄カニ人文科學ノ方ニ付
テハ中止サレルト云フコトニナツタト云
フコトヲ伺ツテ居ルノデアリマス、又二
年前ニ選拔サレタル特別〓究生ガ今年
ノ九月以後、前期ノ二年ヲ終ヘマシテ
更ニ後期ノ三年ニ移ラムトスル時ニ、
果シテ後期ニ移ルコトヲ御認メニナル
カナラナイカモ只今ノ所デハ未定ノヤ
ウニモ伺ツテ居ルノデアリマス、併シ
是ハ誠ニ殘念ナコトデアリマシテ、御
承知ノヤウニ將來ノ優秀ナル大學〓授
ハ此ノ特別〓究生ノ中カラ出ルヨリ外
ハナイノデアリマス、此ノ以外ニ出ル
途ハナイノデアリマス、自然科學デア
リマシテモ人文科學デアリマシテモ、
將來ノ優秀ナル〓授ハ此ノ特別〓究生
ノ中カラ段々ト〓究ヲ進メテ、助手ト
ナリ助〓授トナリ遂ニ〓授トナル、斯
ウ云フ順序デ來ルノデアリマス、而シ
テ人文科學ノ方ノ大學ハドウ云フ形勢
デアルカト云フト、例ヘバ東京帝國大
學ニ付テ申セバ、法學部ノ如キハモウ
五、六年經ツト俄カニ六、七名ノ〓授ガ
引退スルコトニナリマス、文學部デモ經
濟學部デモサウ云フ事情ニナツテ居リ
マスカラ、今五、六年程經テバドカツト
人ガ減ツテシマフコトニナリマスガ、
サウ云フ際ニ如何ニシテ優秀ナル〓授
ヲ補充シ又學問ノ水準ヲ高メテ行クコ
トヲ誰ニ負擔セシメルカト云ヘバ、今
學校ヲ出マシテ特別〓究生トシテ〓究
ニ從事シテ居ル者ノ中カラ出ル外ハナ
イノデアリマス、之ヲ止メテシマフト
云フコトハ、恰モ學問進步ノ命ヲ斷ツ
ヤウナモノデアリマス、且戰爭ガ何時
迄續クカ分リマセヌガ、サウ急ニ終了
スルト云フコトモ考ヘラレヌトナリマ
スト、今ノヤウナ狀態デ、戰時中ハ人
文科學ノ方ニ付テハ特別〓究生迄モ認
メナイ、認メテモ入營延期ト云フコト
ハシナイ、斯ウ云フ風ニナツテ行キマ
スト、私ハ人文科學ニ關スル學問ガ非
常ニ一時穴ノアイタヤウナ、補充シ得
ベカラザル缺陷ガ出テ來ルコトヲ虞レ
ルノデアリマス、御承知ノヤウニ優秀
ナル〓究者ハ百人ノ學生ノ中ニ一人
カ、千人ノ中ニ一人位シカ出ナイノデ
アリマス、サウ云フ者ガ出タ時ニ國家
ガ之ヲ保護シ、奬勵シテ、他日ニ備ヘ
シメルト云フコトヲ努メテ行カナケレ
バナラヌノデアリマスガ、ソレヲ今ノ
ヤウナ風ニナツテ居リマスト、人文科
學ニ付テハ其ノ根本ノ源ガ涸レテシマ
ヒマシテ、ドウスルコトモ出來ナイト
云フ狀態ニナルコトヲ非常ニ虞レルノ
デアリマス、政府ノ一部分ニ於キマシ
テハ、今勝ツカ負ケルカノ戰爭ノ際ニ、
自然科學ノヤウニ飛行機ヲ造ルトカ
火藥ヲ造ルト云フ方ハ續ケテ〓究シテ
宜イガ、人文科學ノ如キハドウデモ宜
イ、今ナクテモサウ急ヲ要スルモノデ
ナカラウト云フ御考ガアルカモ分リマ
セヌガ、是ハ私ハ非常ニ御再考願ハナ
ケレバナラヌ考デアルト思フノデアリ
やっ、御承知ノヤウニ自然科學ト人文
科學トハ、大別ハ致シテ居リマスケレ
ドモ、齊シク科學デアリマス、人文科
學ト自然科學ト何處デ分レルカ、分ラ
ナイヤウニナツテ居ルノガ、今日ノ科
學ノ〓究ノ狀態デアリマス、又一見戰
爭ニ關係ノナイヤウニ思ハレマス心理
學トカ、音樂デアルトカ云フヤウナモ
ノモ、直チニ戰爭ノ用ニ立ツテ行キマ
スコトハ、飛行機ノ音ヲ聽クトカ、或
ハ又成層圏ニ於キマシテ飛行スル時ニ、
心理狀態ガドウナルカト云フコトニ付
テノ對策ハ、サウ云フ學問カラモ出テ
來ルノデアリマシテ、戰爭ニ無關係ノ
學問ト云フコトハナイ筈デアリマス、
今日ハ直接カ間接ニ總テノ學問ガ皆戰
爭ニ役立ツテ居ルノデアリマス、又戰
爭ハ永久デハアリマセヌノデ、戰爭ガ
濟ミマシタ時ハ、戰後ノ總テノ內外ノ
關係ガ起ツテ來マスガ、是等ニ付キマ
シテハ今カラ大イニ〓究シマセヌト、
折角陸海軍ガ赫々タル戰果ヲ收メラレ
マシテモ、其ノ戰果ヲ十分ニ國家隆興
ノ爲ニ利用出來ナイト云フ虞ガ出テ來
ルノデアリマス、一例ヲ申シマスレバ
敵米英ニ於キマシテハ、戰爭ガ濟ンダ
時ニ世界ノ通貨、貨幣ヲドウスベキカ
ト云フコトニ付キマシテ、各〓米國ハ
米國ノ自分ノ立場カラ一ツノ案ヲ出シ
テ居リマス、英國ハ英國ノ立場カラ一
ツノ案ヲ出シテ居リマス、我ガ大東亞
諸國ニ於キマシテハ日本ノ將來ノ爲ニ
最モ適スル世界ノ通貨ハ何デアルカト
云フコトハ、今カラ一所懸命ニ〓究シ
テ追付カヌ位デアリマス、況シテ大東
亞共榮圈內ニ於ケル通貨ダケニ付テモ
ドウシテ宜シイカ、現在ノ圓ト儲備券
トノ「パー」デ行ハレテ居ルト云フ支那
ノ狀況ダケ見マシテモ、是ハ理想的デ
ナク、完全ナモノデナイト云フコトハ
何人モ疑フベカラザル所デアリマス、如
何ニシテサウ云フ通貨ト云フコトヲ最
モ適正化スルカト云フコトニ付キマシ
テモ、忙シイ大藏當局ノ人バカリガ考
ヘテ居ル譯デハゴザイマセヌデ、人文科
學ニ屬スル者ガ一所懸命ニ努力ヲシテ國
家ニ貢獻スベキ政策ヲ考ヘテ居ルノ
デアリマス、現ニ文部省ニ於キマシテモ、
ソコニ鑑ミラレマシタカ、一昨年來學
術〓究會議ニ於キマシテハ自然科學ノ
外ニ人文科學ト云フモノヲ加ヘラレマ
シテ、現ニ私モ其ノ一部門ノ〓究ノ主任
ヲ委託セラレテ居リマス、法律トカ政
治トカ云フ方面ニ付キマシテハ、其ノ
多クノ〓究者ト共ニソレヲ指導シテ居
ル次第デアリマス、ソレカラ見マシテ
モ人文科學ハ一々戰爭ト離レ難イモノ
ガアリマス、ソレヲ一所懸命ニヤツテ
居リマシテモ、マダ追付カヌノデアリ
やっく、是ハ現ニ活動シテ居ルモノノコ
トデアリマスガ、一步先ヲ考ヘテ見マ
シテモ、今、申シマシタヤウニ、數年ノ
先ニハサウ云フ人間ヲ補充スル途モ杜
絕シテ居ルト云フコトデハ誠ニ心細イ
次第デアリマス、是ハ國家ト致シマシ
テ實ニ忽セニ出來ナイコトデアリマス、
畏イコトデアリマスガ、明治大帝ハ明
治三十七年ニ帝國大學ニ行幸ニナラレ
マシテ、戰時ト雖モ〓育ハ忽セニスベ
カラズ、諸員努力奮勵セヨト云フ御沙
汰ヲ賜ツタコトガアリマスガ、今日ノ
戰時ニ際シマシテ、學徒ハ出陣シ、或
ハ勤勞ニ挺身シテ居リマス、殘ツテ居
ル所ノ〓授、殘ツテ居ル所ノ學生ハ一
所懸命ニナツテ、此ノ際知識ニ依ツテ
國家ニ貢獻スベキコトヲヤツテ居リマ
ス、此ノ點ニ付キマシテハ自然科學ノ
ミガ必要デアツテ、人文科學ノ方ハ先
ヅ暫ク措イテ宜イト云フコトハ決シテ
出テ來ナイ筈デアリマス、然ルニドウ
モ當局ニ於キマシテハ、學術〓究會議
ニ於テハ人文科學ノ必要ナコトヲ認メ
ラレマシテ、旣ニ其ノ〓究ヲ開始セラ
レテ居ルノニ拘ラズ、將來學問ノ命ヲ繫
グベキ唯一ノ源泉デアル特別〓究生ト
云フモノハ、人文科學ニ於テハ廢メテ
シマフ、或ハ廢メムトスルト云フコト
ハ、是ハ誠ニ以テ學術〓究會議ニ對ス
ル態度ト一致セザルモノデアリマシテ、
私ハ實ニ理解ニ苦シム所デアリマス、
此ノ點ニ付キマシテ文部當局ハドウ云
フ風ニ御考ニナツテ居ラレマスカ、承
リタイト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=9
-
010・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 只今山田委員
ヨリ文科系ノ特別〓究生ガコヽ兩年以
來中止ニナツテ居ルコトデ、當局ノ考
ヲ質スト云フ意味合ニ於テ縷々御述ニ
ナリマシタ、仰セノ通リ學術ト云フモ
ノガ自然科學ノミデ發達ヲ期スルコト
ノ出來ナイモノデアル、自然、人文兩
方面ノ學問ガ發達スルコトニ於テ初メ
テ學ノ進步ガアリ、又人文科學ト言ヒ
自然科學ト申シマシテモ、其ノ限界ト
云フモノハ殆ド之ヲ捕捉スルコトノ出
來ナイ程今日デハ掘下ゲラレテ居ルコ
トモ誠ニ御指摘ノ通リデアルト考ヘテ
居リマス、本省ト致シマシテハ只今御
述ノゴザイマシタヤウニ、學術ノ振興
ノ爲ニハ自然、人文兩方面ニ亙リ、振
興發達ヲ期セネバナラヌト云フ考ノ下
ニ御引例ノアリマシタ、例トシテ御述
ノゴザイマシタ學術〓究會議ハ勿論、
或ハ諸學ノ振興ヲ圖ル施設ノ上ニ於テ
モ、或ハ其ノ他民間有力ノ團體ノ學術
振興ニ付テノ設備ニ付キマシテモ、何
レモ殆ド例外ナク人文、自然兩方面ニ
亙リマスル學術ノ振興ヲ奬勵モ致シ、
又努力モ致シテ參ツテ居ルノデアリマ
ス、是アルガ故ニ實ハ特別〓究生ノ制
度ヲ設ケマスルニシマシテモ、兩方面ノ
特別〓究生ヲソレ〓〓設ケタノデゴザ
イマシタガ、戰局ノ推移ニ依リマシテ、
遺憾ナガラ只今デハ山田先生御指摘ノ
如クニ、人文科學方面ノ時別〓究生ハ
一應之ヲ取止メルト云フコトニ相成ツ
テ居ルノデアリマス、此ノ點ハ私共モ
山田先生ノ御述ト同樣ニ、實ハ非常ニ
遺憾ト致シテ居リマス、唯併シ此ノ點
ハ實ハ入營延期ノ制ヲ認メラレルト云
フコトト關聯ヲ致シマスル譯デゴザイ
マシテ、文部當局ノミニ於テ之ヲドウ
斯ウト申上ゲル譯ニモ參リマセヌ、御
趣旨ハ正ニ深ク御同感ヲ致シテ居ルノ
デアリマス、御指摘ノ點ニ付キマシテ
ハ、今後本省ト致シマシテモ、出來得
ル限リ文科系ノ方面ノ少數ノ者デアツ
テモ、特別〓究生ヲ設ケルト云フコト
ニ付テ努力ヲ拂ツテ參リタイト斯ウ考
ヘテ居リマス、左樣御了承ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=10
-
011・山田三良
○山田三良君 只今ノ御說明デ一應ハ
了解ヲ致シマシタガ、併シ文部省ノ當
局ノミデ決定モ出來難イコトガアルト
云フコトハ、是モ御尤モデアリマスガ、
ドウカ是ハ政府ニ於カレマシテ是非今
ノヤウナ片手落ニナツテ居リマス所、
殊ニ學術ノ進步ヲ非常ニ一時妨ゲスル
ト云フヤウナ、之ヲ見ナガラ其ノ儘ニ
シテ置クト云フコトハ、是ハ文部當局
ト致シマシテモ、私ハ文〓ニ御熱心ナ
ル限リニ於テハ、此ノ現狀ニ於テ、サ
ウ云フ今ノヤウナ事情ノ下ニ、今ノヤ、
ウナ形デ看過セラレルト云フコトハ、
是ハ有リ得ベカラザルコトデアルト思
ハレマス、學問ノ爲ノミナラズ、戰爭
其ノモノノ爲ニモサウ是非アリタイト
思ヒマスカラ、關係ノ當局方ト能ク御
熟議下サイマシテ、是非其ノ御趣意ヲ
御完遂下サルヤウニ御願シタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=11
-
012・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 御質問ハゴ
ザイマセヌカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=12
-
013・建部遯吾
○建部遯吾君 私ハ極ク單純ナ一二ノ
點ニ付テ質問ノヤウナコトヲ述べテ御
說明願ツテ見タイト思フノデアリマス、
沿革ト云フモノハ容易ニ離レニクイモ
ノデアリマスガ故ニ、今急激ニ國民學
校ト竝ニ問題トナツテ居リマス··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=13
-
014・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 建部委員ニ
申上ゲマスガ、モウ少シ大キイ聲デオ
ツシヤツテ戴キタイ.コチラヘオイデ
ヲ願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=14
-
015・建部遯吾
○建部遯吾君 青年學校ト云フモノヲ
同ジク一ツノ校長ノ統括ノ下ニ置クト
云フコトモ、別段慌テテ之ヲ離シテ各、
獨立ノ學校ニ致シテ置キタイト云フ所
迄急グニモ及ブマイト思ハレマスガ、
此ノ靑年學校ト國民學校ト相對シテ、
各〓其ノ特色ヲ發揮スルト云フゴトハ、
申ス迄モナク是ハ發達ノ運命ノ上ニ於
テハ、サウアル方ガ宜イニ相違ナイノ
デアラウカト考ヘマス、唯國民學校ト
云フ名前ガ表シマスヤウニ、國民學校
其ノモノハ少年ヲ相手ニスル、尤モ近
頃少年ト云フモノハ國民學校ノ學齡ニ
達シタモノノ一番若イ二學年ノ者ニ名
附ケテ言フベク、第三學年カラ先ハ靑
年ト言フテモ良イト云フヤウニ言葉ヲ用
ヒテ居ル〓育者モアルヤウデアリマス、
左樣ナコトニ付キマシテハ、尙又〓究
スル心持ガアツテモ差支ハアリマセヌ
ガ、國民學校ハ要スルニ總體ガ一筋ノ
モノデアルト見テ差支ナク、之ニ反シ
テ靑年學校ノ方ニナリマスト、申スハ
甚ダ平地ニ波瀾ヲ起ス憂ガアリマスカ
モ知レマセヌガ、其ノ間ニソレ〓〓ノ
專門學校ガ兎モ角出テ參ルト云フコト
ハ避ケ難イ所デアラウト思ハレマス、
我ガ日本ノ〓育機關ノ發達ノ經歷ニ付
テチヨツト囘顧シテ見マシテモ、明治
維新カラシテ、次第ニ各種學校ガソレ
ゾレ發生シ、又發達シテ參リマシタ其
ノ經歷ニ於キマシテ、靑年ヲ相手トシ
テ其ノ自ラ伸ビテ行カウ、自ラ實現シ
テ行カウト云フ主眼ト、國ガソレ等ノ
設備ヲ提供シテ其ノ主眼ヲ全ウセシム
ルト云フコトヲ計畫致シマシタモノハ、
是モ必要デアル、アレモ必要デアルト云
フコトデ樣々出來テ來タヤウニ、私共
ハ何等ノ局ニ當ツタコトハアリマセヌ
ガ、年少ノ時代カラ貧弱ナル專門ノ範
圍ノ中ニ於テ、稍る若干興味ヲ持ツテ
之ヲ眺メタコトヲ聊カ記憶ヲシ、又聊
カ思ヒ出スヤウナ次第デアリマス、例
ヘバ三府五港ト云フコトガ能ク言ハレ
マシタ、三府ハ東京、京都、大阪、五
港ハ横濱、神戶、長崎、函館、新潟、
斯ウ云フヤウナ所ガ我國ノ維新以後比
較的早イ時ノ要所々々デアリマシテ、
是ダケノ開港ノ土地、若シクハ其ノ限
リノ中デ若干ハ又ハ他日ニ繰下ゲテモ
宜イト云フヤウナ譯デ、八若シクハ七、
偶ニハ又六デ滿足ヲスルト云フヤウナ
コトデ、次第々々ニ各種ノ中等程度ノ
專門學校ガ生レテ參ツタコトデアツタ
カノヤウニ記憶サレルノデアリマス、
多クノモノハ皆明治十年西南戰爭ニ至
ル前ノ發生ニ屬スルト云フヤウナ次第
デ、學校ノ種類ヲ申シマスルト、外國
語學校、是デ東京ノ中央ニ於テ各種ノ
外國語、語學、文學ヲ通シテ之ヲ自分
ノモノニスル、ソレヲ一ツノ目安トシ
テ期待スルコトデアツタモノニ相違ナ
イ樣子ナンデアリマス、地方ニ依リマ
シテハ、英語ダケヲ之ニ設置スルト云
フ譯ノモノデアツタノガ少クナカツタ
ヤウカト記憶スルノデアリマス、師範
校ト云フモノニ付キマシテハ、師範校
ニハ當然男子師範校竝ニ女子師範校ガ
アリマスガ、男子ノ方ハ特ニ名前ヲ附
ケルニハ及バヌ、又唯師範校ト云ヘバ
男子師範學校、女子ノ方ハ女子師範學
校斯ウ云フヤウニ申ス、ソレカラ之ニ
付テ段々當局ガ〓究工夫ヲサレマシテ、
最モ適切ニ各〓ノ主眼、各、、ノ目的ニ向ツ
テ進ンデ行クニ都合ガ好ク、又能率ガ
擧ガルト云フコトノ爲ト云フ所カラ割
出シタ時代ガ、確カ明治十四年ノ頃、
時期ガ到來シタカト思ヒマス、福岡文
部卿ノ時代ニ於テ、小學校ヲ、其ノ前
ハ下等小學八級四箇年、上等小學六級
三箇年、前後ヲ通ジテ十四級七箇年ト
云フモノデアリマシタノガ、初等小學
六學級、マア學期ト申シテモ宜シイ、
其ノ學級ヲ曆ノヤウナ風ニ申シマスレ
バ六學期三箇年、中等小學ガ同ジク六
學級三箇年、高等小學ガ四學級二箇年、
前後ヲ通ジテ十六學級八箇年、斯ウ云
フヤウナコトニナリマスト、玆ニ師範
學校デ養成サレタル人材モ各〓資格ト云
フモノニ付テハ、其ノ資格ガ或者ハ初
等小學ノ訓導トシテノ資格ヲ公認サレ、
或者ハ更ニ中等小學ノ訓導ノ資格ヲ公
認サレ、更ニ進ンデ、或者ハ高等小學
ノ訓導タルノ資格ヲ公認サレル、其ノ
初等小學ト云フ方ハ、所謂初等ト云フ
言葉ガ、一般ノ〓育其ノモノニ對シテ
ノ或方面カラ見テノ初等デアルノミナ
ラズ、之ヲ養成スル爲ニ、特ニ初等小
學科ト云フモノヲ師範學校ニ置クニモ
及ブマイト云フ譯デ、是ハ後デ斯ウ云
フモノヲ置クニシテモ、差當リハ其ノ方
ハサウ急イデ置クニ及ブマイ、ソレデ
多クノ師範學校ニ於テハ、師範中等科
竝ニ師範高等科ト云フ二種ヲ男子ニ付
テハ置クト云フコトニナリ、大體ソレデ
滿足ヲシタト云フヤウナ狀態デアリマ
ス、謂ハバ發生竝ニ發達ニ付テハ、是デ
一通リ出來タ、斯ウ云フヤウニナツテ
居ル、ソレカラ又、其處ニ今度、先刻來
又先日來本委員會ニ於テ屢〓御質問ニナ
ラレタ所デアリマスガ、科學ト云フモノニ
重キヲ置クト云フ方面ニ付テハ、
殊ニ此ノ點ハ、新潟ノ如キハ、其
ノ文化ノ發達ガ天下ニ率先シテ進
ンデ居ツタ所デハアリマセヌケレ
ドモ、地形ノ關係ヤ、又其ノ土地ノ
任務トデモ申スベキ其ノ關係ノ上カラ
行キマシテ、夙ニ百工化學ト云フモノ
ガ設置サレテ居ツタノデアリマス、先
ヅ是ハ、程度ハ中等程度ノモノニ相違
ナイ、今日ノ專門〓育ト云フ迄ニ行キ
マセヌ、精々中等〓育程度ノモノデシタ
ガ、又其ノ中ニハ非常ニ秀才モ居リマ
シテ、其ノ爲ス所、造詣スル所、是ガ
ウント先キヘ進ンデ居リ、其ノ方ノ專
門ノ〓師竝ニ專門ノ知識等ヲ持ツテ居
ル人ヲシテ舌ヲ卷カシメ、又其ノ專門
〓師ノ下ニ居ツテ、今日ノ一般的ナ言
葉ヲ若シ當嵌メルコトヲ許サレマスナ
ラバ、助手ニ當ルヤウナ人ノ如キハ夙
ニ舌ヲ卷イテシマフト云フヤウナ秀才
ガ居ツタ、明治十一年ニ明治天皇ガ特
ニ駕ヲ西ノ方ヨリ北ノ方ニ進メサセラ
レ、遂ニ新潟ニ成ラセラレマシテ、更
ニ今少シ北ノ方、ニ成ラセラレマシテ新
發田カラハ更ニ別ノ道ヲ御取リ遊バサ
レマシタガ、其ノ行幸ノ際ニ、御前講
演ヲ申上ゲタ秀才ガ現ニ居ツタノデア
リマス、サウ云フコトヲ申上ゲルノハ、
私ノ話ノ中ニ强ヒテ入レルノハ、敢テ
其ノ意義ヲ散漫ニスルト云フコトニナ
リマスガ、現ニサウ云フコトガアリマ
シタ、家學、家ノ學問トモ申スベキ秀
才ノ父君ハ漢學ノ造詣者デアツテ、中
年カラ國學ノ方ニ轉ジテ、漢學一本筋
ヲ以テシテハ十分ニソレヲ以テ獨立ノ
完全ナル學問トハ出來ナイ、敢テ漢學
ヲ輕蔑スル譯デハナイガ、是カラハ是
非共漢學ト國學ト更ニ洋學ヲ若干加ヘ、
三ツヲ一ツノ學問ニシテ行カナケレバ
ナラヌト云フ、是昼発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=15
-
016・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) チヨツト建
部委員ニ御注意申上ゲマスガ、成ルベク
御意見ヲ簡單ニ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=16
-
017・建部遯吾
○建部遜吾君 是ハ私ノ意見デハアリ
マセヌガ、サウ云フ一方ニ漢學ノ精神
ダケヲ持ツテ居ル、傾向ヲ持ツテ居ル
者ノ息子ガ百工化學ト云フノヲヤリマ
シテ、サウシテ更ニ、右ノヤウナ化學所
謂「ケミストリー」ノ專門家、今度ハ東京カ
ラ聘セラレテ參リマシタ專門先生ガ、
此ノ人ガ舌ヲ卷イタ、東京ノ、近頃デ
ハ皆高等師範ト云ツテ居リマスガ、ソ
レノ前身デアリマシタ所ノ東京師範學
校之ノ〓授、今日ノ言葉デ申セバ〓
授ニ該當スル、ソレガ來テ〓育啓發ノ事
ニ任ジテ大イニ功績ヲ擧ゲタノデアリ
やべり、陛下ニモ大層其ノ御前講演ニ
御滿足デアラセラレタト云フコトヲ時
ノ當局者ガ皆之ヲ書留メテ居ツタ次第
デアリマス、然ルニ右ノ師範學校其ノ
モノモ大層複雜ニナリ、斯ウ云フヤウ
ニ幾多ノ芽生ヘガアツテ、ソレガ各〓ニ
發生シ發達シマシタノガ綜合的ニナツ
テ來ルト云フ其ノ時期ガ自然ニ又必然
ニ到著シマシタノガ明治十九年頃デア
ツタラウト思ハレマス、明治十九年ノ
改革ハ各府縣ニ尋常師範學校ト云フモ
ノヲ置クコトニナリマシタ、其ノ尋常
師範學校ガ出來ル前ニ、然ラバ右ノ三
種男子女子ヲ一種ヅヽニ數ヘマスレ
バ四種、ソレガドウ云フ風ニナツテ居
ツタカト申シマスト、之ヲ一ツニ纏メ
マシテ新潟學校ト申シマシタ、全體
デ新潟學校デ其各學部ハ百工化學部、
師範學部、女子師範學部、中學部ノ四
ツノ學部デ、アリマス、外國語學校ト
云フノハ外國語學部トカ英語學部トカ
申シマセヌデ、ソレガ丁度中學部ニナ
リマス、其ノ頃ハ百工化學部ハ夙ニ廢
止ノ運命ヲ荷ウテ居リマシタ、ソレガ
濟ムト完全ナル獨立充實セル師範學部
卽チ尋常師範學校ト云フ
ト云フモノ、
モノヲ是非共創立シナケレバナラヌ氣
運ニ進ンデ參リマジタ時ニ、種々ノ財
政經濟ノ方面カラ影響モアリマシテ、
英氣勃々タル縣會議員ノ諸君ノ如キハ
此ノ際新潟學校ヲ新潟縣尋常師範學校
ニ換ヘ改メル、改メテソレヲ完全ニ發
達セシメナケレバナラヌト云フコトヲ
力强ク論ジマシテ、ソレガ一般ニ認メ
ラレ、格別ノ面倒ガナク進ンデ行ツタ
次第デアリマス、其ノ沿革ヲ見マスト
之ハ中等學校デ、サウシテ中等程度ノ
一種ノ大學、大學ト云フト大ハ品質ノ
上ニ偉イモノノヤウニ考ヘテモ一向差
支ナイモノデアリマス、併シ此處デハ
其ノ品質ノ方ト云フコトヨリハ程度
ノ方デ、大ハ大、中ハ中、綜合大學ト
云フコトハ近頃皆言フ品質ノ大デナク
此處ニハソレヲ程度ノ意味ニ於テノ綜
合大學デハナイ、若シ敢テ申シマスレ
バ是ハ綜合中學、ガ出來タト云フ所
迄進ミマシタモノノ中デ、師範〓育
ハ最モ大切デアルト云フ、其ノ方向、
內容ニ向ウテ進ンデ行ツタト云フ
實狀デアツタ譯デアリマス、
ソレデ本委員會ニ於テモ誠ニ卓拔ナル
御批評御批判等モ、每日一ツヤ二ツノ
御意見ヲ承リマシテ、私共大イニ益スル
所モアツタ次第デアリマスガ、其ノ生
徒ノ方カラ見テ行キマスト國民學校、
元ハ長イ間小學校、又小學生ト云フヤ
ウニ申シマシタガ、其ノ方ハ單純ナル
一筋道ヲ行ク、其ノ間ニ、固ヨリ個性
ト云フモノハ言フ迄モナク〓育上ニハ
自ラ出テモ參リ、又〓育ノ成績ニ於テ
色々出テモ行キマスガ、是ハ要スルニ
所謂中學大學ト云フノヲ程度ノ問題ト
スルト云フ用ヒ方ヲヤツタ場合ニ於テ、
國民學校、曾テハ小學校ト申シマシタ
ノトハ餘程趣キノ違ツテ居ル點ハ、卽
チ此ノ頃御意見或ハ御質問等ニ於テ伺
ヒマシタ其ノ事柄デ、最早小學〓育、
國民〓育ト云フモノニ於テナルヤウニ
サヘナラヌト云フヤウナ所迄モ極メテ
平凡化スル、平凡化シマシテモ、其ノ
生徒ノ各〓、ニハ個性ガアリ、苟モ〓育
者ガ相當ナ〓育者デアレバ、ソレガ單
ニナルヤウニサヘナルト云フコトノミ
デハアリマセヌ、其ノ家庭ノ狀況ヤ其
ノ町村ノ狀況ヤ、又其ノ者ノ個人トシ
テノ經歷ヲ一日一日ト或ハ一年一年ト
作ツテ行キマシテ、其ノ如何ニ依ツテ
種々ノ人物ガ出來テ行クト云フコトニ
ハ相違アリマセヌガ、要スルニソレガ
一ツノ重大ナル理想ヲ貯ヘテ、其ノ理
想ノ政治、理想ノ經濟、理想ノ道德、
之ヲ要スルニ理想ノ人格ト云フモノニ
向ツテ勇往邁進スベキコトガ〓育トシ
テ大切デアルト云フ所迄ハ、國民〓育
ニ於テハ先ヅ何ヲ措イテモ人並ミノモ
ノニシテ置イテ、サウシテソレガソレ
ゾレ世ノ中ニ出ル時分ニ餘リ間違ツタコ
トヲセヌヤウニト云フコトガ國民〓育
ト云フモノニ於テハ期待サレル、先ヅ
ザツト是ガ關ノ山ニナツテ居ツタト思
ウテ宜イカノヤウニ私ハ思フノデアリ
やっく、然ルニ靑年〓育、靑年〓育ト云
フノハ、國民〓育ノ今日ノ初等科六年、
高等科二年、八箇年ト云フコトデ靑年
ノ時期迄ハ隨分入ルニハ入ルノデアリ
マスガ、ナカ〓〓靑年〓育ト申シテ居
リマスノハ、極ク一口ニ言ヘバ、徵兵檢査
迄ノ所ヲ〓育シテ行カナケレバナラナ
イ、進ンデ幾多ノ抱負ヲ持ツテヤルノデア
リマスカラ、ドウシテモ靑年〓育ガ少ク
トモ程度ノ高イ者ニナラザルヲ得ナイ、
又此ノ程度ノ高イト云フコトガ認メラ
レテ行クカラニハ、玆ニ相當ノ抱負、
任務、運命、意氣、努力、是等ガ伴ウ
テ行クト云フコトハ、是ハ當然過ギル
程當然ノコトデアルト思フノデアリマ
ス、然ルニ其ノ青年〓育ニ於テ、例
バ一番眼ニ付クノハ人格〓育ノコトデ
アラウト思ヒマス、殊ニ近頃今迄ノ何デ
モ彼デモ西洋ノ眞似サヘスレバソレデ
宜イト申シテ眞似シテヤツテ居ツタコ
トニ付テ、〓育者自ラニ於テモ是デハ
ナラヌ、殊ニ其ノ方面ノ目ニ付クコト
ハ何デアルカト云フト、所謂國體〓育
ノ點デアリマス、國體ト云フ方面ノミ
ニ付テハマルデ西洋ニモ言葉ガアリマ
セヌ、マア是モ言葉ト云フモノニ付テ
ハ樣々ノ言葉ヲ以テ言ウテ見タクテ堪
ラナイ學者モナイコトハナイノデアリ
マスガ、ソレガ碌ニ實現致シマセヌデ、
其ノ問題ニ携ツテ居ル間ニ泰然トシテ
老ノ至ルヲ忘ルト云フ狀態デ格別ノコ
トガナイノミナラズ、第十九世紀ノ終
リ頃ニ於テハマルデ支離滅裂ノ狀態ニ
ナル、サウ云フ〓育界ヲ持ツテ居ルダケ
ノ國又ハ國民ト云フモノハ段々〓〓片
端カラ出テ來テ、ソシテ出タ上デハ潰レ
テシマフト云フヤウナ狀態ガ誠ニ氣ノ
毒千萬デハアリマスルガ、往々出テ來
ルト云フヤウナ狀態デアツタノデアリ
マン、我ガ國ノ過去ニ付テ顧ミマスル
ト云フト発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=17
-
018・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) チヨツト建
部委員ニ御尋ネ致シマスガ、マダ餘程
長ク掛リマセウカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=18
-
019・建部遯吾
○建部遜吾君 モウ直キ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=19
-
020・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) モウ時間ガ
過ギマスト、缺員ノ方ガ大分見居マス
カラ、人ノ數ノ關係デ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=20
-
021・建部遯吾
○建部遯吾君 ソレハ······御迷惑ヲ掛
ケマセヌヤウニ氣ヲ付ケマス、幕末ニ
於テ、內ニアツテハ所謂松下村塾、又
極メテ塾ト云フコトデナクトモ、個人
ガ志ヲ立テテ誠ニ赫々タル個性ヲ出シ
テ居リマスガ、越前ノ橋本左內ノ啓發
錄斯ウ云フヤウナ方面ニモ志ノアル
者ヲシテ志ヲ遂ゲシメ、又志ノナイ者
ハ眞ニ〓育ラシイ〓育ヲ施シテヤルト
云フ點ニ付テ考ヘテ行キ、又實現ヲシ
テ行クト云フコトハ、苟モ國民〓育ト
云フモノヲ若シ平タク扱へバ平凡〓育、
平凡ダカラ惡イト云フノデハアリマセ
ヌ、平凡迄行ケバ寧ロ結構、或程度迄
行ケバ結構ナンデアリマスガ、サウ云
フ方面ニ付テ折角出來ツヽアル此ノ新
シイ大キナ制度、而モソレニ經濟上ノ
經費ノ支出ト云フコトガ、特殊ノ事情
ノ範圍ニ於テトハ申セ、今囘ノ法律案
ノ問題ニナツテ來ルノデアリマスル以
上、ソレニ注意ガ向ケラレルカラニハ、
玆ニ國民、國ト云フモノノ將來ノ發展
ニ對シテ、是非共一大貢獻ヲセナケレバ
ナラヌ、モト〓〓〓育ト云フモノハ
其ノ儘ニ野放シニ捨テテ置イテ宜イナ
ラバ、要ラナイノデアル、〓育ト云フ
モノハ兎ニ角ヨリヨクト云フコトニ向
ツテノ介添役ニ〓育者ト云フモノヲ養
成シテヤツテ行カナケレバナラヌ、就
中〓育者ノ養成ト云フモノハ、師範〓育
ニ於テ殊ニ顯著デナケレバナラヌノデ
アリマスルノニ、折角斯ウ云フ機會ニ於
テソコ迄目ヲ付ケテ行カヌト云フコト
ナラバ、師範ナント云フ偉イ文字ハ止メ
タガ宜イ、セメテ模範ナラバマダ宜シ
イ、師範ノ師ナント云フモノヲ擧ゲテ、
僭越千萬ナル學校ノ種類ヲソコヘ立テ
ルナント云フコトハ、全體本來、チト
出過ギタ沙汰デアルト私ハ敢テ言ヒタ
イノデアリマス、是ハ併シ意見ニナル
ノデアリマシテ、兎ニ角斯ウ云フヤウ
ナ方面ニハ、立法者ト云フ者ハ聊カ考
ヘマスノデ、無暗ニ急激ニヤル必要モ
アリマセヌガ、進ンデ行カナケレバナ
ラヌモノデアルト云フ點ニ、自ラ足ラ
ナサヲ感ズルモノデアル、斯ウ云フ點
ハ一體如何ナモノデアリマセウカ、之ヲ
質問ト云フ中ニ入レマスニハ、右樣ニ
申スコトガ穩當ト考ヘテ居リマス、
ソレカラ又一體云ヒマスト、倫理ナン
ト云フ事柄ガ誠ニ安ツポイモノニナツ
テ居マス、之ニハ所謂東洋デ、東洋ト
云ヒマスカ、我ガ國ニ於テモ、儒〓儒
〓ト云ヒマシテ、儒〓ノ者ニ云ハセ
したっ儒〓サヘアレバ何モ要ラナイ、
サウ云ツテ大平樂ヲ決メ込ンデ滿足ヲ
シテ居ル、ソレハ結構ナンデアリマス、
サウ云フ人ノ數ガ殖エル方ガ、ソレ迄
ニモ行カナイヤウナ者ガ殖エルヨリモ
ソレハ結構ナンデアリマスガ、實際少
シ吟味シテ見マスト云フト、隨分心細
イ儒〓ガ多イノデアリマス、西洋デ云
ヒマスルト、日本ニ佛〓ガアリマスル
ヤウニ、西洋ニハ「キリスト」〓ガアル、
之ガ頗ル心細イモノナンデアリマシテ、
殊ニ第十九世紀ノ終ニハ「ヨーロッパ」
デハ或意味ニ於テ世ノ中ガ飽滿ノ狀態
ニアリマス、飽滿ノ狀態ニナリマスト
云フト、思想界ガ誠ニ沈鬱ノ狀態ニナ
ル、サウシテ其ノ中ニ於テノ活動ヲヤ
ツテ行カウト云フ連中ノ爲ス所ガ、殆
ド實際ドレダケノモノニ利イテ來ル
カ、斯ウ云フ所カラ第十九世紀ト云フ
コトニ拘泥シテ彼此批評スルニハ決シ
テ當ラヌコトデアリマスルケレドモ、
殊ニ物量、物ノ分量ガ大イニ發達スル
ト同時ニ、所謂大分ヤカマシイ風潮ガ
盛ンニ出テ來ルヤウニナラウト思フ、
ソレデ、此ノヤウナコトヲ見マスト云
フト、ソレニ多少又因ンダ現象モナイ
デハナイノデアリマシテ、倫理、道德
ト云フコトハ極メテ大切千萬ナルコト
デアラウト思ヒマスルノニ、其ノ倫理、
道德ト云フモノノ基礎ニナルモノハ何
デアルカ、其ノ基礎ニナルモノハ哲學
ガ基礎ニナツテ居ル、此ノ哲學ト云フ
モノガ一體チヨツト妙ナモノナンデシ
テ、是ハマア餘リ諄イ話ニナリマスカ
ラ簡單ニチヨツト觸レテ置クニ止メマ
スガ、哲學ト云フモノノ發達ヤ變遷ノ
形式、是ハ誠ニスツキリシタモノデア
ルト見ルト、甚ダ違フ經歷ヲ取ツテ
來ルト云フトハ甚ダ遠フ、一ツノ目ニ付
易イコトハチヨツト哲學ト云フモノ
ハ紙屑ノヤウナモノデアリマシテ、紙
屑ダカラ或部分ガ是ハ間違ツテ居ル、
是ハ何トカ少シ直シタ方ガ宜イトカ、
モウ哲學者ガ一人出ルゴトニ新シイ哲
學ト云フモノガ出來マシテ、其ノ哲學
ト云フモノヲ、御弟子サンノ又英才ノ
人ガ出マスト云フト、此ノ哲學說ハド
ウモ宜クナイ、無論基礎カラ決メテ行
クモノニハ相違ナイノデアリマスケレ
ドモ、其ノ基礎其ノモノニ付テ拔差ヲ
始メルノデアリマス、例ヘバ「カント」
ノ後ニ「ヘーゲル」ガ出タ、「ヘーゲル」ガ
出テ何トカ云ヒ出ス、尤モ「ヘーゲル」
ハ非汎ナ人間デアリマシテ、御案內ノ通
リニ十六歳カラ二十一歲ニ至ル迄五箇
年「イエナ」大學ニ居ツタ、此ノ五箇年
ニ於テ大學或ハ〓師ノ講義或ハ圖書館
ノ典籍、ソレ等デ以テ學術トシテ各〓
一個ノ部門ヲ形造ツテ居ルモノガ一方
ニ於テハ理想論デアリ、一方ニ於テハ
ソレガ實現論デアルト云フコトデアル
限リ論ガナイ、何デモ一通リ眼ニ寫シ心
ニ印シタ其ノ眼ヤ心デ「カント」ヲ見ル
ト、誠ニ先輩デハアルケレドモ、食ヒ
足リヌコト山タト云フ感ジガ出ルノハ
當リ前ナ話デアリマス、當リ前ノ年少
氣銳ノ學生デアリ、「イエナ」大學ノ秀
才ト名ヲ擧ゲタ此ノ人ガ十六歳カラ二
十一歲迄ノ潑刺氣銳ノ盛リノ時ニ一生
懸命勉强シタ結果サウ云フコトニナル
ノハ當リ前デス、新潟ニ於ケル某秀才
ドコロノ話ヂヤナイコトニナル、サウ
シテ「カント」ノ學說ガソレデ訂正サレ
タ、サウスルト「カント」ハ一部分ハ少
クトモ紙屑ニナツテ、切ツテ捨テタイ
モノト云フコトニナリマス、一寸言葉
ガ强過ギマスケレドモ紙屑ノヤウナモ
ノニナリマス、ソレデ一個ノ完全ナル
個體デアリマスル所ノ特定ノ人格ト云
フモノニ對シテ、其ノ標型ノ其ノ人格
トノ理想、理想的完璧ト云フモノガ此
處ニ出來タト思ツタガ、實ハ出來ナイ
デシマウタト云フコトニナル、スルト
今度ハ西洋ヲ相手ニ或特定ノ國ヲ使ツ
テ、特定ノ理想學ヲヤツテ行ク、其ノ中
ニ勝手ナル倫理學修身說モ雜ツテ見エ
マット、物ニ於テモソレニ類スルコトガ
著々トシテ見エマス、殊ニ一方、成立
宗〓ト云フモノニナルト、成立其ノモ
ノノ爲ニハ誘惑的ノ結構ナモノガ必ズ
伴フモノデアリマスカラ、其ノ誘惑的
ナモノガアル爲ニ、人氣ト云フモノト
共ニ一弛一張セナケレバナラヌ、其ノ
人氣ト云フモノニ付テハ、是ハナカ〓〓
機關モ大キイモノデアリマシテ、又サ
ウ云フ事柄ニ付テハ奇妙ナ事務員低級
ナルガ、幾ラデモ集ツテ來ルモノデア
リマスカラ、成立宗〓ニハ誠ニ飛ンデ
モナイ危險ガ伴フ、斯ウ云フコトニモ
ナツテ來ルノデアリマシテ、哲學ガ一
方ニ於テ兎角徵妙ナル運命ニ見舞ハル
ベキ氣ノ毒ナル狀態ニアリ易イト共
ニ、一方宗〓、又宗〓デナイト云フコ
トヲ言フノニハ一寸骨ガ折レルヤウナ
懸念ガ他ノ方面ニモアル次第デアリマス
ガ、ソレ等ヲ以テ一國ヲ經綸シ、靑年〓
育ト云フモノノ骨子ニシテ行カウトス
ル、サウナルト更ニ容易ナラヌコトニ
ナル、ソレデ玆ニ國民學校ノ〓育者ヲ
養成スル師範〓育ニセヨ、殊ニ靑年學
校ノ〓育者ヲ養成スル爲ノ、折角直轄學
校ニ迄昇格シタ其ノ師範〓育ニ致シマ
シテモ、是等ノ點ヲ目安トシテ二三別
別ノ紙屑袋ヲ集メテ、ソレカラ拔キ出
シテ、ソレカラ講義ノ「ノート」ヲ拵ヘテ、
ソレデ〓ヘルナント云フコトデ行クベ
キモノデナイ、丁度靑年ト云フ潑剌タル
時代ニ於テ國家ノ爲ニ大イニヤツテ行
カウト云フ靑年ニシテ、若シ意氣ノアル
者デアリ、志ノアル者デアルトシマス
ルナラバ、是等ニ對シテノ何等カノ〓
育ラシイ〓育ヲ施スト云フコトガ出來
ナカツタト云フヤウナコトデ、直轄學
校ヲ一ツ、國民〓育師範學校ト云フモ
ノト相竝ソデ特ニ拵ヘテ行ツテ、サウ
シテ相當ノ經濟的資金等ノ供給迄モ國
デ以テヤツテ行カウト云フノハ聊カ惜
シイヤウナ氣ガスル人モアリハセヌカ
ト思ハレル次第デアリマス、是等ノ點
ニ付テノ何トカモツト一ツ進ンデ、斯
ウ云フヤウナ國家重大ノ時期ニ際シテ、
〓育上ノ一大改革、一大改正デアルト
思ハレマスガ、其ノ點ノ考慮ガ如何ア
ルモノデアラウカ、如何アルカト云フ
コトヲ御示シ願フコトハ光榮ノ至リデ
アリマスガ、若シ如何アルベキト御考
ニナル點ノ一端ヲ御示シ願フコトガ出
來レバ私ニ取ツテハ非常ニ幸福デアル
ト云フヤウナ氣ガスルト云フコトニ、
一寸思ヒ至ラザルヲ得ナカツタノデア
リマス、マア是ハ銘々ノ趣味ヤ、好キ
デ本ヲ讀ムノデアリマスガ、ソレデ西
洋ナドヲ見ルト呆レ果テタ淺薄ナモノ
ガ澤山アルノデアリマス、ソレデサウ
云フノヲチヨツト二年バカリ海外留學
ト云フコトデ行ツテ來テ、歸朝シテ來
テ講義ヲスル、專門學校〓育ノ〓師ト
シーリ殊ニ摑ヘドコロノ支離滅裂ト薄
紙一枚ヲ隔テタイ、大變ナ扱ヒニクイ
無形學デ實〓ヲ擧ゲヨウトハ、實以テ
容易ナ事デナイ、キツイ所ノ科學デア
レバ、是ハサウ云フ弊害ニ流レルト云
フコトハナササウデアリマスガ、此ノ
無形ノ方ハ餘程目ヲ光ラシテ、〓育行
政當局ノ方々ハシツカリ統率シテ下サ
ラヌト、同ジヤウナモノトシテ同ジヤ
ウナ祿ヲ食ンデ居ル者ガ大分樣々ニナ
リハセヌカト云フヤウナコトモアリハ
セヌカト心配ノ種子モアリマス、其ノ
外ズツト輕イ事柄ニ付テ、尙一、二ノ
點ハ、餘リ目出度ナイコトトシテ念頭
ニ浮ンダコトモアリマス、ソレハ私ノ
陋巷ヅクメノ、〓里ノ町村生活ニ於テ
若干、身ヲ以テ體驗シタコトデアリマ
スガ、是ハ國民〓育ノ師範學校卒業者
ニハ相違アリマセヌガ、併シソレガマ
ダ專門學校ドコロデハナイ、從來ノ卽
チ明治十九年ニ成立ヲシテ二十年ノ四
月一日カラ開校シタ新潟縣尋常師範學
校、其ノ後、縣ト云フ字ト、尋常ト云フ
字ノ三字ガ消サレマシテ、新潟師範學
校高田師範學校、長岡女子師範學校
ト云フヤウナ名前デ縣下ニ三ツアルノ
ニ過ギナイ、私ノ〓里ノ農村ノ國民學
校ニ靑年學校ハ附設デアリマジテ、青
年〓育ヲヤツテハ居リマシタガ、ソレ
ガ國民學校ノ中ニ居候ヲシテ居ルダケ、
此ノ居候ノ首席訓導デアル人ガ、經歷
カラ言ウテモ相當有爲ノ士デアツタノ
デ、校長ハ校長デ國民〓育ノ方ノ國民
學校ノ校長ヲシテ居リマシタ所へ、一方
靑年〓育ノ方ニハ居候ノ中ノ人々ノ信賴
カラ經歷カラ相當立派ナモノヲ持ツテ居
リマシタノガ、チヨツト兩立スルニ苦
シムト云フヤウナコトデ、本年ノ三月
三十一日迄勤續シテ吳レレバ誠ニ靑年
連モ··発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=21
-
022・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) チヨツト申
上ゲマスガ、文部省ノ政府委員ガ何九
外ニ呼バレテ居ラレルサウデゴザイマ
スカラ···発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=22
-
023・建部遯吾
○建部遯吾君 モウ直グ終リマス、ソ
レデ其ノ間ニ任期ノ問題ガアリマシテ、
其ノ靑年學校カラ居ナクナルト云フヤ
ウナコトモアリマシテ、一方ニ於テ極
ク些々タルコトデハアリマスガ、居候
ノヤウナコトニ付テハ又行政上ノー
行政的ト言ツタ方ガ宜イデセウガ-
問題トシテハ、チヨツトバカリ考慮ス
ルコトガ、蓋シ文部ノ高位高官ノ方デ
アリマスト若干アリ得ルト云フヤウナ
コトデモアルカモ知レマセヌ、若シア
リマシタラ御聽カセヲ願フコトニナレ
バ、尙更光榮デアリマス、併シ是ハ前
ニ申シマシタコトヨリハ輕イコトデア
リマスカラ、唯一言御〓ヲ乞フニ止マ
ルノデアリマス、以上思ヒノ外長談義
ニナリマシテ、甚ダ相濟ミマセヌデシ
タ、玆デ私ノ質問ト云フ程デモアリマ
セヌガ、マア所感混リノ、右ノ如キ、
假ニ質問ト云フコトニ御許ガ願ヘレバ
質問ト云フコトニシテ、サウシテ一二
ノ點ニ觸レテ御聽カセヲ願ヘレバ大變
結構ダト思ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=23
-
024・藤野惠
○政府委員(藤野惠君) 只今〓育、宗
〓哲學方面ニ亙リマシテ誠ニ該博ナ
ル御所見ヲ拜承致シマシテ、十分了承
致シマシタ、〓育ノ將來ノ改革ト云フ
コトハ、是ハ極メテ重要デアリ、各般
ノ事項トモ關聯ヲ致シマスノデ、斯ウ
云フ點ニ付テハ十分注意致シマシテ將
來ノ〓究ニ資シタイト存ジテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=24
-
025・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 大體御質問
モ終ツタヤウデゴザイマスカラ、午前
ハ是デ休憩致シマシテ、午後一時半カ
ラ開會致シマス
午後零時二十三分休憩
午後一時三十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=25
-
026・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) ソレデハ午
前ニ引續イテ會議ヲ開キマス、大體御
質問モ終了シタヤウニ思ハレマスガ、
如何デゴザイマスカ、全部ヲ通ジテ尙
何カ殘ツテ居ル御質問ガアレバ此ノ際
御願ヒシタイト思ヒマス······別ニゴザ
イマセヌケレバ、是ニテ質問ハ全部終
了シタモノト認メテ討論ニ入リタイト
思ヒマスガ、御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=26
-
027・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) ソレデハ最
初ニ兵役法中改正法律案、之ヲ議題ト
致シマス、討論ニ入リマス、御發言ヲ
願ヒマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=27
-
028・立花種忠
○子爵立花種忠君 簡單ニ自分ノ意見
ヲ述ベマスルガ、無論兵役法ノ改正ニ
付キマシテハ何等異議ノアル所デハア
リマセヌデ、贊成ヲ致スモノデアマリ
ス、但シ此ノ兵役法ノ改正ト云フモノハ、
最近昭和·十二年頃カラノ調ベニ依リマ
シテモ、本年迄約七年間ニ殆ド連年改
正案ガ提出サレテ居ルノデアリマス、
昭和十五年ダケハアリマセヌ、十二年
十八年ニハ臨時議會ガアリマシタノデ
アリマスガ、此ノ時モ各二囘ヅヽ矢張
リ提出サレテ居ルノデアリマシテ、今
囘ノ改正案ト共ニ之ヲ合計致シマスル
ト、七年間ニ九囘モ提出セラレタト云
フヤウニ私ハ存ジテ居リマス、勿論支
那事變ガ勃發シ、引續キ大東亞戰爭ト
云フ古今未曾有ノ此ノ大戰爭ガ起ツタ
ノデアリマスカラ、其ノ推移ガ激甚ナ
ルニ從ツテ、斯ウ云フ改正モ度々起ル
ノハ蓋シ己ムヲ得ナイモノト存ジマス
ルケレドモ、併シナガラ苟クモ改正案
ヲ帝國議會ニ御提出ニナルニハモ
ウ少シ大局ニ眼ヲ注ガレテ事ヲ處セ
ラレタナラバ、斯ウ小刻ミニ七年間ニ
九囘モ改正案ヲ出サナクトモ濟ムノ
ヂヤナイカト云フ風ニモ思ツテ居リマ
ス、其ノ點ハソレ〓〓當局ノ御苦心ノ
存スル所ハ拜察ハ致シマスルケレドモ、
餘リ改正案其ノモノガ小刻ミニ出ルコ
トハドウカト思ハレルヤウナ"氣ガ致
シマスノデゴザイマスノデ、將來ニ於
テハサウ云フ點ニ付テ、モウ少シ御注
意ヲ戴イタラドウカト云フコトヲ要
望シタイト存ジマス、此ノ簡單ナル意
見ヲ述ベマシテ、私ハ本案ニ贊成ヲ致
ス者デアリマス、終リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=28
-
029・山田三良
○山田三良君 私モ此ノ兵役法中改正
法律案其ノモノニハ、可決ニ贊成ヲ致
ス者デアリマスガ、併シ此ノ際ニ私ノ
希望意見ヲ、附加ヘサシテ戴クコトニ
致シタイト思ヒマスト、ソレハ左ノ通
リデアリマシテ、「政府ハ人文科學ニ關
シテモ自然科學ト同樣ニ特別〓究生ノ
入營延期制度ヲ認メラレムコトヲ希望
ス」、此ノ希望意見ヲ附シマシテ、本案
ニ贊成致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=29
-
030・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 他ニ御發言
ガナケレバ採決ヲ致シマス、政府ノ原
案通リデ御異議ガゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=30
-
031・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 御異議ナイ
ト認メマス、兵役法中改正法律案ハ可
決セラレマシタ、次ハ陸軍軍法會議法
中改正法律案竝ニ海軍軍法會議法中改
正法律案ノ二法案ヲ議題ト致シマス、
討論ニ入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=31
-
032・井上清純
○男爵井上〓純君 私ハ此ノ法案ニ付
キマシテハ贊成ヲ表スルモノデアリマス
ガ、-此ノ思想ト云フモノハ非常ニ重
大ナルモノデアリマシテ、軍隊內ニ若シ
モ惡思想ガ入ツテ來ルヤウナコトガア
ツテハ、現下殊ニ戒愼ヲ要スルノデア
リマス、此ノ點ニ付キマシテハ唯處罰
主義デナクシテ、誘導主義デナケレバ
イカヌト思ヒマス、矢張リ〓ヘテ啓イ
テ行カナケレバナラヌノデアリマスガ、サ
ウ云フ途ニ付テドウモ缺ケテ居ルヤウ
ナ憂ヒガアルヤウニ思ヒマス、將來ハ
積極的ニ誘導ヲシテ行クト云フ方針ヲ
御執リニナラムコトヲ希望シテ、此ノ改
正法案ニ贊成ヲ表スルモノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=32
-
033・中川望
○中川望君 私モ此ノ際希望ノ一端ヲ
申述ベテ本案ニ贊成ノ意ヲ表シタイト
存ジマス、質疑ノ折ニ申述ベマシタ如
ク、又只今井上委員ノ御話ノ如ク、思
想問題ガ戰爭中最モ憂慮スベキモノデ
アルコトハ申ス迄モナイコトデアリマ
ス、思想問題ノ中、殊ニ軍隊ニ取リマ
シテ最モ戒心スベキハ赤化思想デアル
ト存ジマス、政府委員ノ御說明ニ依リマ
スレバ、從來ノ取扱例ニ於テ、此ノ種
事件ニ付テハ特ニ取立テテ言フ程ノコ
トモナイ、意ヲ安ンジテ可ナリト云フ
コトデアリマシテ、誠ニ結構ナコトト
存ジマスケレドモ、他面仔細ニ赤化運
動最近ノ動向ヲ窺ヒマスレバ、決シテ
晏如タルヲ許サザルモノアリト思考致
サレマス、玆ニ一例ヲ所謂中共卽チ中
國共產黨ニ採ツテ見マスルニ、中共ハ
御承知ノ如ク「ソ」聯竝ニ米國ヲ背景ト
シテ、近時頓ニ勢力ヲ增大シテ、重慶ヲ
壓迫シテ居リマス、又一面廣ク民心ノ
收攬ニ努メ、其ノ勢力侮ルベカラザル、
モノガアリマス、而シテ帝國ニ對シテ
ハ絕對總反抗ヲ稱ヘ、我ニ對シテ「ゲリ
ラ」戰ヲ繼續スルノミナラズ、赤化運動
ニ努力シツヽアルノデアリマス.關係
當局ノ御說明ニ依リマシテモ、延安ニ
於ケル日本人民解放聯盟ノ活動ガ何ヲ
爲シツヽアルカ、又中共ノ行フ在支日
本人、特ニ軍隊ニ對スル宣傳ノ如何ニ
執拗ニシテ且巧妙デアルカヲ觀、又赤
化運動ノ爲ニ設ケラレタル彼等ノ學校
ニ於ケル生徒數竝ニ其ノ種別等ヲ觀ル
ニ於テハ誠ニ寒心ニ堪ヘザル所デアリ
マシテ、彼等ノ現ニ行ヒツヽアル思想
戰ノ如何ニ熾烈デアルカ、且或程度ノ
成果ヲ擧ゲツヽアルコトハ看過スルコ
トヲ許サズ、極メテ成心スベキモノト
申サネバナリマセヌ、殊ニ注意ヲ要シ
マスルノハ彼等ノ赤化運動ノ手段ガ常
ニ變化シツヽアルコトデアリマシテ、
殆ド端倪スベカラザルモノガアリマス、
御承知ノ如ク赤化運動ニ當ル者ハ〓シ
テ極メテ明敏ナル頭腦ヲ有スル輩デア
リマス、從ツテ此ノ種思想戰ノ防衞ニ
當ツテハ深キ專門的知識ト銳キ鑑識ト
ヲ有スル組織體ガ不斷ノ注意ヲ拂フコ
トガ極メテ必要デアルト存ジマス、殊
ニ今日ノ軍隊ハ平時ト異ツテ軍人軍屬
ノ數ハ極メテ多數デアリマシテ、ソレ
ダケ危險性ガ多イト見ネバナラナイト
思ハレマス、軍法務當局ニ於カレマシ
テハ、固ヨリ現ニ此ノ邊ノ御用意アル
趣デアリマスガ、事ノ重要サニ深ク考
慮ヲ廻ラサレテ、檢察、審理、竝ニ事
前ノ防衞ニ此ノ上トモ其ノ準備ヲ强化
セラレ、十全ノ效果ヲ擧ゲテ萬一ノ悔
ヲ貽スコトナカラシムルヤウ、切ニ御
配慮ヲ願フ次第デゴザイマス、本案ニ
ハ此ノ希望ヲ申述ベマシテ、贊成ノ意
ヲ表シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=33
-
034・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 他ニ御發言
ガナケレバ採決ニ入リマス、二法案ト
モ政府ノ原案通リデ御異議ハゴザイマ
セヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=34
-
035・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 御異議ナイ
ト認メマス、次ハ現役靑年學校職員俸
給費國庫補助法案之ヲ議題ト致シマス、
討論ニ入リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=35
-
036・内田重成
○內田重成君 私ハ本法案ニ付キマシ
テ贊成スルモノデアリマス、但シ政府
ハ本會議ニ現レマシタ各面ノ質問應答
ノ詳細ニ亙リマシテ速記錄ニ依リマシ
テ更ニ御檢討ヲ戴キ、サウシテ各委員
ノ陳述致シテアリマス其ノ趣旨ニ付キ
マシテ、政府ノ御答辯ニ相成ツタ點ノ
將來ニ對スル〓究、實行ハ勿論各委員
陳述ノ趣旨ヲ十分ニ御斟酌ノ上ニ、速
カニ採ルベキモノハ御採上ゲニナツテ
〓究シテ戴キタイ、而シテ實行シテ戴
キタイ、斯ウ云フ希望ヲ申述ベルモノ
デアリマス、就中目下ノ最大ノ關心ハ
學徒動員ノ問題デアラウト私ハ考ヘル
ノデアリマス、此ノヤリ方如何ガ將來
ニ影響スル所ノモノハ頗ル多大デアル、
勤勞卽〓育、行學一體ノ主義ヲ如何ニ
實踐スベキカト云フ〓育方法ニ至ツテ
ハ、實ハ漠然トシテハツキリシテ居ラ
ヌト思ハレルノデアル、速カニ此ノ行
學一體ニ關スル〓育方法ヲ確立シテ、
日本〓學ノ基礎ヲ樹立スベキ最モ緊要
ナル時機デアルト考ヘルノデアルカ
ラ、唯單純ニ產業ノ手傳ヲスルト云フ
ダケノ見地デ學徒ヲ工場勞働者ニシ切
ツテシマフト云フヤウナコトデハ、將
來ニ由々シキ禍根ヲ貽スモノデアルト
考ヘテ居ルノデアル、此ノ點ニ付キマ
シテハ先程質問ノ際ニモ申述ベテ置キ
マシタガ、勤勞管理、健康管理、風紀
振肅等ノ諸問題ヲ始メト致シマシテ、
學徒ノ動員ニ對シテ賢明ナル對策ヲ速
カニ講ゼラレムコトヲ切ニ望ンデ已マ
ナイモノデアリマス、此ノ希望ヲ申述
ベマシテ、本案ニ贊成スルモノデアリ
マン、終リ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=36
-
037・立花種忠
○子爵立花種忠君 私モ本案ニ付テ贊
成スルモノデアリマスガ、一、二自分
ノ希望ヲ申述ベテ置キタイト思ヒマス、
先日內田委員カラノ御質疑ニ對シテ當
局カラ細マノ〓御說明ガアリマシタ
ガ、ソレニ依リマシテモ此ノ〓職員ノ
待遇ト云フコトニ付テハ異常ノ努力ヲ
拂ハレテ居ルト云フコトハ、ハツキリ
分ルノデアリマシテ、私共モ誠ニ滿足
スル所デアリマス、從ツテ將來立派ナ
ル〓職員ヲ得ラレ、之ニ關聯シテ立派
ナル靑年ガ育成、養成サレテ此ノ重大
時局下ニ國家ヲ背負ツテ起ツダケノ立
派ナ者ガ出來ルトハ存ジマスルガ、唯
私ガ玆ニモウ一ツ申シテ置キタイコト
ハ、所謂氣魄ノ足リナイ所ノ靑年ハ何
萬人出來テモ役ニ立タナイ、先程井上
男爵モ魂ノ〓育ト云フコトヲ言ハレマ
シタガ、其ノ通リデアリマシテ、從ツ
テ其ノ氣魄ノ存スル所ノ靑年ヲ拵ヘル
こ、之ヲ指導育成スル所ノ〓職員
其ノモノニ氣魄ガ足リナケレバ立派ナ
靑年ハ作リ得ナイト信ズルノデアリマ
ス、此ノ氣魄ニ十分充チタ所ノ靑年ガ
出來マシタナラバ、如何ナル難局モ突
破シ得ルノデアリマスガ、若シモ然ラ
ズンバ國家ノ將來ト云フコトヲ心配シ
ナケレバナラヌノデアラウト存ジマス、
故ニ此ノ〓職員卽チ校長ヲ始メ指導者
ト云フモノニ付テハ、嚴タル國家觀念
ヲ持ツコト、旺盛ナル氣魄ヲ藏スルト
云フコトガ最モ必要デアリマスノデ、
斯ウ云フモノヲ此ノ指導〓育ニ當ラセ
ルヤウニ、文〓當局トシテハ、特ニ御
留意ニ相成リタイト存ズルノデアリマ
ス、尙靑年師範學校ノ獨立及同校ノ內
容充實ト云フコトハ是亦非常ニ大切ナ
コトデアリマスルノデ、是等ノ三點ニ
付キマシテハ文〓當局トシテ特ニ御留
意ガアツテ、御努力アラムコトヲ切望
スルト云フコトヲ申上ゲテ、本案ニ贊
成ヲ致ス次第デアリマス、以上発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=37
-
038・山本清
○委員長(伯爵山本濟君) 他ニ御發言
ガナケレバ採決ヲ致シマズ、本法案ハ
原案通リデ御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼フ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=38
-
039・山本清
○委員長(伯爵山本〓君) 御異議ナイ
ト認メマス、仍テ兵役法中改正法律案、
陸軍軍法會議法中改正法律案、海軍軍
法會議法中改正法律案、現役靑年學校
職員俸給費國庫補助法案、此ノ四法案
トモ政府ノ原案通リ可決スベキモノト
決定ヲ致シマシタ、是ニテ委員會ヲ終
了致シマス、本日ハ是ニテ散會致シマ
ス
午後一時五十四分散會
出席者左ノ如シ
委員長伯爵山本〓君
副委員長男爵淺田良逸君
委員
侯爵淺野長武君
子爵立花種忠君
山田三良君
內田重成君
建部遯吾君
男爵井上〓純君
中川望君
上野喜左衞門君
政府委員
陸軍政務次官子爵大島陸太郞君
陸軍法務中將大山文雄君
陸軍少將那須義雄君
海軍政務次官岸田正記君
海軍參與官中野敏雄君
海軍少將矢牧章君
海軍法務少將島田〓君
文部政務次官今井健彥君
文部次官藤野惠君
文部參與官子爵三島通陽君
文部省總務局長永井浩君
文部省專門〓育局長關口勳君
文部省國民〓育局長阿原謙藏君
文部書記官伊藤日出登君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008603099X00419450125&spkNum=39
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。