1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
所得税法外十六法律中改正法律案（政府提出）（第九號）
地方税法及地方分與税法中改正法律案（政府提出）（第一〇號）
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昭和二十年一月二十四日（水曜日）午前十一時六分開議
出席委員左の如し
委員長 勝正憲君
理事 今成留之助君 理事 田中藤作君
理事 田部朋之君 理事 吉植庄亮君
安孫子孝次君 小野義一君
小野寺有一君 菅野和太郎君
駒井重次君 阪本勝君
曾木重貴君 田子一民君
中井亮作君 原口純允君
船渡佐輔君 本多市郎君
増田義一君 水谷長三郎君
森田福市君 吉田正君
同月二十四日委員吉植庄亮君辭仕に付其の補闕として瀧澤七郎君を議長に於て選定せり
同日理事吉植庄亮君の補闕として瀧澤七郎君理事に當選せり
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 石渡莊太郎君
内務大臣 大達茂雄君
出席政府委員左の如し
内務政務次官 武知勇記君
内務省地方局長 灘尾弘吉君
内務省管理局長 竹内徳治君
内務書記官 大野連治君
大藏政務次官 小笠原三九郎君
大藏參與官 田村秀吉君
大藏省總務局長 山際正道君
大藏省主税局長 田中豐君
大藏書記官 福田赳夫君
大藏書記官 平田敬一郎君
軍需省輕金屬局長 中西貞喜君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
所得税法外十六法律中改正法律案（政府提出）
地方税及地方分與税法中改正法律案（政府提出）発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=0
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001・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ是ヨリ開會致シ
せく、開會ノ初メニ一寸申上ゲテ置キ
タイコトガアルノデスガ、速記ノ中止
ニ付テ一言申上ゲマス、委員會ニ於ケ
ル發言ニ對シ、速記中止ノ要求ガアリ
マシテモ原則トシテ中止ハ致シマセ
又、ガ委員長ニ於テ軍事、外交、政策
等ニ關シ祕密ヲ要スルモノト認メマシ
タモノハ、是ハ速記ダケハ取リマス
ガ、會議錄ニ記載ハ致シマセヌ、尙ホ
單ニ揭載禁止事項デアルト云フコトヲ
〃e
理由トシテ會議錄ヨリ削除サレタイト
ノ要求ハ先例ニ依リ認メルコトハ出來
マセヌ、右豫メ御諒解ヲ得テ置キマス
是ヨリ所得稅法外十六法律中改正法
律案竝ニ地方稅法及地方分與稅法中改
正法律案ヲ議題ニ供シマス、先ヅ大藏
大臣ヨリ御說明ガアルサウデアリマス
カラ、其ノ御說明ヲ求メマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=1
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002・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 本委員會ニ付託トナ
リマシタ所得稅法外十六法律中改正法
律案ニ付テ御說明致シタイト存ジマス
本會議ニ於テモ說明致シマシタ如ク
戰局ハ愈〓苛烈ト相成リ、臨時軍事費、
其ノ他決戰下避クベカラザル諸經費ハ
相當多額ニ上ルノデアリマシテ、之二
對處致シマシテ國庫收入ノ增加ヲ圖ル
ト共ニ、最近ニ於キマスル通貨、金融
等ノ諸情勢ニ顧ミマスレバ、戰時經濟
ノ圓滑ナル運營ヲ圖ル爲メ、國民購買
力ノ吸收ニ資スル方途ヲ講ズルノ要緊
切ナルモノガアルト認メラレルノデア
リマス、支那事變以來八囘ニ亙リ六十
七億餘萬圓ニ達スル增稅ニ依リマシテ、
國民ノ租稅負擔ハ著シク增加シテ居ル
際デハアリマスガ、政府ト致シマシテ
ハ此ノ際重ネテ增稅ヲ行フコト洵ニ已
ムヲ得ザルモノト認ムル次第デゴザイ
やっ、而シテ苛烈ナル戰局下ニ於キマ
シテ、旦ツ稅制ノ根本的改正ヲ行ヒマ
シテカラ未ダ數年ヲ經ザル今日ニ於キ
マシテハ、租稅制度ニ改廢ヲ加ヘマセ
又け、現行制度ニ簡素且ツ重點的ニ、
分類所得稅、法人稅、酒稅等ノ主ナ稅
目ニ付キマシテ、其ノ稅率ノ引上ヲ行
フコトヲ適當ト信ジタノデアリマス、
尙ホ本增稅ノ實施ト共ニ戰時下緊要ナ
ル諸政策ノ圓滑ナ遂行ニ資スル爲メ租
稅ノ減免等ヲ行ヒマシテ、又官民相互
ノ手數ヲ省略シ、非常ノ際ニ於ケル稅
務ノ運營ヲ支障ナカラシムル等ノ爲メ
ソレ〓〓必要ナル稅制ノ改正ヲ行ツタ
次第デアリマス
今增稅案ニ付テ御說明致シマス、最
初ニ分類所得稅デアリマスガ、稅率ヲ
原則トシテ百分ノ三引上ゲタノデアリ
マシテ、總稅額ニ於キマシテ二割程度
ノ增收ト相成ルコトト思フノデアリマ
ス、卽チ勤勞所得ノ現行稅率ハ百分ノ
十五デアリマスガ、十五ヲ十八ニ致シ
タイト存ジマス、事業所得ハ百分ノ十
八デアリマスガ、二十一ニシタイト存
ジマス、株式配當ハ現行法ハ百分ノ十
九ニ相成ツテ居ルノデアリマスガ、是
モ三引上ゲマシテ二十二ニシタイト存
ジテ居リマス、不動產所得ハ百分ノ二
十一デアリマシテ、是ハ三上ゲマスト
二十四ニナルノデアリマスガ、不動產
所得ノ今日ノ二十一ガ理窟上實ハドウ
カト思ツテ居リマスノデ、是ハヤハリ
普通ノ資產所得ト同樣二十三ニ止メ
テ、二上ゲルコトニ致シタノデアリマ
ス、ソレカラ元本五千圓以下ノ預貯金
ノ利子デアリマスガ、是ハ五千圓以下
デアリマスノデ、殊ニ貯蓄奬勵ノ時代
デモゴザイマスノデ、稅率ガ低クナツ
テ居リマシテ百分ノ五デゴザイマスガ、
之ヲ七ニ上ゲタイト存ジテ居リマス、
元本五千圓ヲ超エマスル銀行貯蓄預金、
市町村農業會貯金等ノ利子ニ付キマシ
テハ、從來一般銀行預金カラ比ベマス
ト、百分ノ五低イ稅率デアツタノデア
リマスガ、今囘ハ銀行預金ト同率ノ課
稅ヲ致シタイト思ヒマシテ、多少增稅
率ガ高ク相成ツテ居ルノデアリマス、
他面投資信託ノ利益ハ、其ノ所得ノ性
質カラ見マシテ若干增稅率ヲ低下致シ
タノデアリマス、尙ホ、其ノ他免稅點、
控除ハ大體現行通リ据置タコトト致シ
タ次第デアリマス、法人稅ハ分類所得
稅ト同ジク百分ノ三引上ゲルコトニ致
シタノデアリマスガ、特別法人稅ニ付
キマシテハ百分ノ二ヲ引上ゲテ居ルノ
デアリマス、通行稅ハ普通稅率ヲ三等
一「キロメートル」二厘五毛ヲ五厘ニ、
二等一錢二厘五毛ヲ二錢ニ、一等二錢
五厘ヲ四錢ニ引上ゲタノデアリマスガ、
其ノ他定期乘車劵、乘船劵等ニ付テモ
之ニ準ズル引上ゲヲ致シタ次第デアリ
やく、次ニ酒稅デアリマスガ、酒ニ付
キマシテハ一級酒、二級酒、三級酒ト
云フ三階段ニ分ツテ居ルノデアリマス
ガ、此ノ一級酒ト二級酒トヲ今度ハ合
併致シマシテ、之ヲ一級酒トスル、三
級酒ハ二級酒トシマシテ二種類ノ區分
ニ致シタイト存ジテ居ルノデアリマス、
一級酒ハ一石ニ付テ一千二百四十五
圓又三級酒ハ五百八十五圓、左衽子、
稅率ニ引上ゲタイト思ツテ居ルノデア
リマス、其ノ結果〓酒ノ小賣價格ハ一
級酒ハ一升ニ付テ十五圓程度ニ、二級
酒ハ約八圓ト云フコトニ相成ル見込デ
アリマス、又合成清酒ニ於キマシテハ
現在二階級ニ分レテ居ルノデアリマス
ガ、之ヲ一階級ニ致シ、〓酒ニ準ジテ
稅率ノ引上ゲヲ行ヒタイト思フノデア
リマス、「ビール」ニ於キマシテハ一石二
百八十八圓ノ稅率デゴザイマスガ、四
百五十圓ニ引上ゲタイト存ジテ居リマ
ス、其ノ結果ガ四合壜一本、四合壜ト
申シマシテモ四合弱デゴザイマスガ、
一圓三十五錢デアリマシタ小賣ノ値段
ガ、二圓程度ニ上ルカト思フスデアリ
マン、其ノ他味淋、燒酎、雜酒ニ付テ
モ其ノ品質ニ應ジテ、ソレ相當ノ稅率
ノ引上ゲヲ行フコトニ致シタノデゴザ
イマス、其ノ他價格特配酒ハ從來カラ
色々ナ問題ヲ包藏致シテ居ツタノデア
リマスガ、此ノ際之ヲ止メタイト存ジ
せい、併シナガラ其ノ方面ニ向ケテノ
酒ノ增配ハ引續イテ致シタイト思フノ
デアリマス、其ノ次ハ入場稅デアリマ
スガ、是モ其ノ消費ノ性質上、此ノ際
稅率ヲ引上ゲテモ宜カラウト存ジマシ
テ、相當ナ引上ゲヲ致シタノデアリマ
ス、卽チ現行稅率ハ第一種ハ五十錢未
滿ノモノハ百分ノ三十、一圓未滿ノモ
フハ百分ノ六十デゴザイマスガ、之ヲ
何レモ百分ノ百ニ致シマシタ、一圓以
上ノモノハ現在其ノ稅率ハ百分ノ百カ
ラ百分ノ二百デアツタノデアリマスガ、
總テ之ヲ百分ノ二百ト致シタノデアリ
そう、第二種ノ撞球場、麻雀場等ニ付
テハ現行稅率百分ノ四十乃至百分ノ百
五十ヲ百分ノ百乃至二百ニ之ヲ引上ゲ
タノデアリマス、其ノ總稅額ニ於テハ
九割程度ノ增徵ト相成ル見込デアリマ
ス、以上申上ゲマシタヤウナ增稅ト
同時ニ稅法ノ改正ヲ行ヒタイト存ズル
ノデゴザイマス
其ノ第一ハ企業ノ再編成、資金ノ蓄積
等目下ノ狀況ニ於キマシテ極メテ緊要
ナ諸政策ノ圓滑ナル遂行ニ資スル爲メ
租稅ノ減免ヲ行ハント致スノデアリマ
ス、企業ノ整備、疎開、徵用等ノ場合ニ
於キマシテハ、現在所得稅、法人稅、
臨時利得稅等ノ輕減、免除又ハ課稅標
準ノ計算ニ關シ特例ヲ設ケテ居ルノデ
ゴザイマスガ、其ノ期間ヲ一箇年延長
スルト共ニ、其ノ適用範圍ヲ擴張致シ
タノデアリマス、又政府ノ指導斡旋
ニ依リマシテ、法人ガ合併、解散ヲシ
タ場合ニ於キマシテ、課稅輕減ノ範圍
ヲ擴張致シマスルト共ニ、積立金ヲ株
式ノ拂込ニ振替ヘマシタ場合ニ於キマシ
テ課稅輕減ノ途ヲ開クコトト致シタノ
デアリマス、更ニ企業整備等ノ爲メ不
動產等ヲ讓渡シタ者ニ對シマシテハ利得
金額ノ若干ヲ控除シマシテ、臨時利得
稅ヲ課シテ居ツタノデアリマスガ、其
ノ控除率ヲ擴張致シマスルト共ニ、强
制疎開ノ爲ニ建物ヲ讓渡シタ場合ニ於
キマシテハ臨時利得稅卽チ其ノ不動產
ノ賣却ニ依ル讓渡稅ヲ免除スルコトニ
致シタノデアリマス、是ハ昨年ノ議會、
殊ニ秋ノ議會ニ於キマシテ衆議院カラ
色々御要望モゴザイマシテ、斯樣ニ致
シタヤウナ次第デゴザイマス、山林ノ
增伐所得ニ於キマシテハ從來三割ヲ控
除シテ課稅シテ居ツタノデゴザイマス
ガ、五割ニ擴張シマシテ、山林ノ增伐
ニ便宜ヲ與ワルコトニ致シタ次第デゴ
ザイマス、其ノ他輕金屬製造事業ノ設
備ノ新設增設ノ場合ニ於キマシテ、法
人稅、營業稅ヲ免除スベキ期限ヲ五年
延長スルコトト致シタノデアリマス、
次ニ預貯金ノ利子等ニ關スルモノトシ
マシテハ、從來長期預貯金ノ利子等ニ
對スル分類所得稅ノ輕減ノ條件ヲ三年
以上ノ定期預金等トシ之ニ付キマシ
テ分類所得稅ノ輕減ヲ致シテ居ツタノ
デアリマスガ、其ノ三年ヲ一箇年短縮致
シマシテ、二箇年以上ノモノニ付テ分
類所得稅ノ輕減ヲ行フコトニ致シタイ
ト存ジマス、尙ホ銀行貯蓄預金、市町
村農業會貯金等ニ付テモ各〓、左樣ナコ
トニ致シタイト思ツテ居ル次第デゴザ
イマス、又、市町村農業會等ノ貯金ニシ
テ國民貯蓄組合法ノ免稅條件ニ該當致
シマスルモノニ付テハ、國民貯蓄組合
貯金ニ準ジマシテ、元本一萬圓ヲ限リ
テ所得稅ヲ課セザルコトト致シタノデ
アリマス、其ノ他合同運用信託ノ信託
財產デアル登錄公社債ノ利子ニ付テ、
分類所得稅ヲ免除致スヤウナコトヲ致
シテ居ルノデアリマス
第二ハ官民相互ノ手續ヲ省略スル爲
ノ租稅ノ賦課徵收ノ簡素化、合理化ニ
關スルコトデアリマシテ、先ヅ第一ハ
從來株式ノ〓算取引所得ニ付キマシテ
ハ、一箇年ノ損益ヲ通算致シマシテ、
翌年其ノ所得ニ綜合課稅ヲ致シテ居ツ
タノデアリマスガ、是ガ非常ニ複雜ナ
ル手數ヲ要スルノデアリマシテ、左樣
ナ方法ヲ改メマシテ、差金決濟ノ都度
課稅ヲ致スコトニ致シタ、卽チ源泉課
稅ヲ致スコトニ改メタノデアリマス、
サウ致シマスト損ヲ致シタモノハ課稅
ヲ致シマセヌ、儲ケノアツタ時ニダケ
課稅ヲ受ケルヤウニ相成ツテ居ルノデ
ゴザイマスカラ、隨テ其ノ稅率ニ付キ
マシテハ百分ノ五乃至百分ノ二十ト云
フ比較的低イ稅率ニ改メタノデアリマ
ス、次ニ法人ノ合併解散ノ場合ニ於キ
マシテ、配當ヲ受ケタモノト看做シテ
課稅ヲ致スト云フコト、昭和十五年ノ
稅制改正以來左樣ナコトニ相成ツテ今
日マデ來テ居ルノデアリマスガ、ドウ
モ配當ヲ受ケタモノト看做シテ課稅ヲ
致シマスコトハ、色々ナ觀點カラ致シ
マシテ無理デアルト存ゼラレルノデア
リマスノデ、其ノ點ヲ改正致シマシテ、
左樣ナ稅金ハ法人ニ於テ負擔致ス、合
併解散ノヤウナ場合ニ於テ、現實ニ配
當ヲ受ケナイ所ノ個人ニ課稅ヲ致サナ
イデ、其ノ分ニ付テハ源泉課稅ト云フ
意味ニ於テ會社ニ課稅ヲ致スコトニ致
シタノデアリマス、是ハ昭和十五年以
前ニハ左樣ナ稅制デアツタノデアリマ
スガ、昭和十五年ニ法人ノ課稅カラ、
個人ノ課稅ニ移シタノデアリマス、個
人ノ課稅ニ移シマシタガ、ドウモ稅務
ノ實際上、又負擔ノ關係カラ致シマシ
テモ、實行上色々ナ困難ナ點ヲ感ジマ
スノデ、再ビ源泉課稅ニ引戾シタイト
思フノデゴザイマス、扶養家族及ビ生
命保險料ノ控除ハ、從來所得者ガ申請
ヲ致シマシテ、其ノ申請ヲ要件トシテ
控除ヲ致シテ居ツタノデアリマシテ、
申請シナイ者ハ控除ヲ致シテ居リマセ
ヌデシタガ、是モ久シイ間ノ問題デア
ツタノデアリマスガ、今囘本人ノ申請
ガアリマセズトモ、特別ノ事情アリト
認メタ場合ニ於キマシテハ控除ノ出來
ルヤウニシタイト存ジテ居ルノデアリ
やく、殊ニ特別ノ事情ノ中ノ最モ著シ
キモノハ、新規ノ納稅者デアリマテシ、
新シク自分ガ所得稅ノ賦課ヲ受ケルヤ
ウニ相成ツテ參リマシタ場合ニ、所得
ノ申〓ト同時ニ申請ヲ致ス譯ニ行カヌ
ノガ普通ノ狀況デアリマシテ、左樣ナ
場合ニ於キマシテ申請ヲ要件ト致スト
云フコトハ如何ニモ酷デゴザイマス
ノテ、稅務署ニ於キマシテ申請ガナク
トモ控除ヲシタイト存ジテ居ルノデア
リマス、ソレカラ地租及ビ家屋稅ハ賃
貸價格ノ合計額ガ五圓ニ滿タナイモノ
ニ付キマシテハ徵收シナイト云フコト
ニ相成ツテ居ツタノデアリマスガ、其ノ
五圓ヲ十圓ニ改正致シタイト存ジマス、
卽チ小サイモノハ此ノ際賦課徵收シナ
イ、斯ウ云フコトニ致シタイト存ジテ
居ルノデアリマス、ソレカラ所得稅及
ビ個人ノ臨時利得稅ノ納期ハ四期ニ相
成ツテ居ルノデアリマスガ、色々ノ點
カラ致シマシテ此ノ際四期徵收ト云フト
云フコトガ人手ノ關係カラモ、納稅令書
ノ關係カラモ、非常ニ困難ニ相成ツテ來
テ居リマスノデ、之ヲ二回ニ改メタイ
ト思フノデアリマス、ソレカラ遊興飮
食稅ニ付キマシテハ、日本式旅館ノ場
合ニ於キマシテ、宿泊料金ト食事料金
トヲ個別ニ課稅ヲ致ス手續ヲ執ツテ來
テ居ツタノデアリマスガ、非常ニ複雜
デアリマシテ、官民共ニ不便デゴザイ
マスノデ、宿泊料金ト食事料金トヲ一
括シテ課稅ヲ致シタイト思ツテ居ルノ
デアリマス、其ノ他納稅證紙ノ問題、
骨牌稅ノ稅印押捺ノ問題等ニ付テ、ソ
レゾレ手數省略ノ條文ヲ設ケタ次第デ
アリマス
第三ハ現下ノ情勢ニ應ジマシテ稅務
ノ圓滑ナル運營ヲ期スル爲ノ改正デア
リマスガ、其ノ中デ最モ主ナモノハ會
社ノ申告納稅ヲ認メヨウト致スノデア
リマス、從來法人ニ對シマスル法人稅、
臨時利得稅等ノ決定ニ當リマシテハ、
共ノ法人ノ決算確定後相當ノ期間ヲ要
シ從ツテ自然相當ノ期間ヲ經過致シテ
納稅ヲ致スト云フコトニ相成ル譯デア
リマシテ、其ノコトハ一面今日ノヤウ
ナ場合ニ於キマシテ國庫收入ノ遲延ヲ
來シマスト共ニ、他面會社ノ經理上ニ
於キマシテモ不都合ガ少クナカツタノ
デゴザイマシテ、今囘資本金額ノ相當
大キナ會社等ニ付テハ決算ノ確定後六
十日以內ニ自分デ稅額ヲ算定シテ納稅
スルコトニシタイト存ズルノデアリ、マ
ス、尤モ後日稅務官廳ガ調査ヲ致シマ
シン、納メ過ギタモノハ返ス、少イモ
ノハ徵收スルト云フコトニ致シタイト
思フノデアリマス、)戰時災害ノ場合ニ
於キマスル租稅ノ減免ニ付キマシテハ
旣ニ法令ノ制定ヲ見テ居ルノデアリマ
スガ、最近ニ於キマスル色々ノ情勢ニ
對處致シマスル爲メ、戰時災害被害者
等ノ納付スベキ國稅ニ付キマシテハ課
稅標準ノ調査、決定ニ對シマシテ色々
ナ特例ヲ設ケタイト存ジテ居ルノデア
リマス、又法人ガ罰金ヲ納メマス場合
ニ付キマシテハ、從來ハ罰金ヲ損金デ
引クモノデアリマスカラ、結局經濟事
犯等ノ違反ニ當リマシテモ、不都合ナ
コトガアツテ、裁判所ノ判決ニ依ツテ
罰金ヲ納メマシタ場合ニ於テモ、一方
損金トシテソレカラ支出致ス、隨テ稅
金ガソレダケ安ク相成ルノデアリマス
カラ、殆ド罰金ヲ納メテモ納メナイデ
モ同ジヤウナ負擔ニ相成ルト云フコト
ガ分ツタノデアリマシテ、左樣ナコト
ハ不都合ダト存ジマスノデ、此ノ法人
ノ納メマシタ罰科金ニ付キマシテハ損
金ト認メナイ、ソレ等ノ罰科金ニ拘ラ
ズ稅金ハ稅金トシテ納メルヤウニ致シ
タイト存ズルノデゴザイマス、其ノ他
納稅團體ノ管理スル納稅資金等ノ亡失
シタル場合ニ付テ納稅者ニ對スル救濟
規定ヲ整理スル等ノ改正ヲ行ハントス
ルモノデアリマス
斯クノ如キ增稅及ビ稅制ノ改正ニ依
リマシテ、平年度ニ於テ分類所得稅八
億四千餘萬圓、法人稅一億二千七百餘
萬圓、特別法人稅二百餘萬圓、通行稅
一億三百餘萬圓、酒稅七億四百餘萬圓、
入場稅一億三百餘萬圓、合計十八億八
千百餘萬圓ノ收入ヲ擧ゲル見込デゴザ
イマス、初年度デアリマスル昭和二十
年度ニ於キマシテハ、此ノ十八億八千
百餘萬圓ガ十七億百餘萬圓ノ增收ト相
成ルノデアリマスガ、此ノ各般ノ稅制
ノ改正ニ當リマシテ、平年度ニ於キマ
シテハ七千六百餘萬圓ノ減收ト相成ル
ノデアリマスガ、昭和二十年度ニ於キ
マシテハ二億二千百餘萬圓ノ增收ト相
成ルノデアリマス、ドウシテ增收ニ相
成ルカト言ヒマスレバ、法人ノ申〓課
稅ヲ認メルノデアリマシテ、此ノ法人
ノ申告課稅ガ相當ノ收入ヲ示ス結果ニ
相成ル次第デアリマスノデ、隨テ初年
度ニ於キマシテ相當多額ノ增收ヲ來ス
コトニ相成ルノデアリマス、左樣ナコ
トデゴザイマスノデ、昭和二十年度ニ
於キマシテハ此ノ全般ヲ通ジマシテ十
九億二千三百餘萬圓ノ增收ト相成ル次
第デゴザイマス、此ノ增收金額ハ其ノ
一切ヲ擧ゲマシテ臨時軍事費ノ財源ニ
充テタイト思ツテ居ル次第デゴザイマ
ス、以上ヲ以テ大體ノ御說明ヲ終リマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=2
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003・勝正憲
○勝委員長 內務大臣発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=3
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004・大達茂雄
○大達國務大臣 本委員會ニ付託ニナ
リマシタ地方稅法及ビ地方分與稅法中
改正法律案、之ニ付キマシテ〓要ヲ御
說明申上ゲマス
本會議デ申上ゲマシタ如ク、昭和十
五年ニ稅制改正ガアリマシテ、其ノ以
後ノ時局ノ進展ニ伴ヒマシテ地方財政
事情ガ變化シテ參ツテ居リマスルノト、
地方財政ノ財政需要ガ增シテ居リマス、
此ノ點ニ對シマシテハ、極力地方團體
ヲシテ不急事業ノ抑制、旣定經費ノ節
減斯ウ云フコトヲサセテ居リマスト
共ニ、年々必要財源ノ擴充供與ニ努メ
テ參ツタノデアリマス、然ルニ最近ノ
情勢ハ益〓地方負擔ガ激增ヲ來シテ居リ
マス、又地方分與稅制度ノ經過年度ガ
終了致シマスル結果ト致シマシテ、地
方財政調整上ニ相當支障ヲ及ボス關係
ガアリマスルノデ、此ノ際地方團體ヲシ
テ時局下其ノ活動ノ上ニ遺憾ナカラシ
ムル爲ニ、當面スル地方財政需要ニ卽
應致シマスルヤウニ財源ノ擴充ト、其
ノ配分ノ適正ヲ圖ル必要ガアリマス、
其ノ理由ヲ以チマシテ今囘地方稅法及
ビ地方分與稅法中差當リ改正ノ必要ノ
アリマス點ニ付キマシテ改正案ヲ作成
致シタ譯デアリマス
改正ノ第一點ハ、市町村民稅ノ賦課
總額ノ限度ヲ引上ゲルコトデアリマス、
現行法ニ於キマシテハ一人當リ平均大
都市ニ於テ八圓、都市ニ於テ六圓、町
村ニ於テ四圓ト云フコトニナツテ居ル
ノデアリマスガ、ソレヲソレ〓〓大都
市ニ於テハ十二圓、都市ニ於テハ九圓、
町村ニ於テハ六圓、五割增ニナルノデ
アリマスガ、此ノ平均ヲソレマデ引上
ゲルコトニ致シタノデアリマス、最近一
實施セラレマシタ地租、家屋稅及ビ營
業稅ノ增稅ト云フモノハ事實的ニハ是
ハ地方稅デアリマスルノデ、此ノ增稅
ニ對應致シマシテ、市町村民稅ニ付キ
マシテモ、之ニ準ジテ其ノ賦課總額ノ
限度ヲ引上ゲルト云フコトハ、地方稅
全體ノ上カラ見マシテ、合理的デアル
ト考ヘラレマスルノト、國民所得ノ增
加乃至市町村經費膨脹ノ狀況カラ見マ
スルト、之ヲ引上ゲルト云フコトハ市
町村民ガ市町村ノ負擔ヲ分任スルト云
フ此ノ市町村民稅創設ノ本旨ニモ合致
致シマスルノデ、其ノ賦課總額ノ限度ヲ
引上ゲルコトニ致シマシテ、益岩 27
ツテ來ル地方財政需要充足ニ資セント
スルモノデアリマス、之ニ依リマシテ
市町村ハ新タニ約四千萬圓ノ財源ヲ得
ルコトニナル見込デアリマス
其ノ第二點ハ配付稅ノ繰入率及ビ分
與率ヲ改訂スル點デアリマス、曩ノ此
ノ決戰非常措置ニ依リマシテ、高級享
樂ト云フモノハ停止ニナツタノデアリ
マスガ、其ノ結果ト致シマシテ、遊興
飮食稅ヨリノ配付稅收入ニ於キマシテ、
昭和十九年度二千六百萬圓、昭和二十
年度以降三千百萬圓ノ減收ヲ見ルコト
ニナツテ居リマス、之ヲ補塡ヲ致シマ
スル爲ニ、入場稅及ビ遊興飮食稅ヨリ
ノ配付稅繰入割合ヲ增率ヲ致シマスル
ト共ニ、今次ノ國ノ施策ニ依リマシテ、
地方職員ノ給與ヲ改善スルコトニナツ
タクデアリマスガ、此ノ給與改善ニ要
シマスル經費ノ中デ、地方純負擔ニナリ
マスル部分ノ全部ヲ配付稅財源ヲ以テ
充足致シタイ、其ノ必要ノ爲ニ約一億
五百萬圓ヲ所得稅、法人稅、入場稅、
遊興飮食稅ヨリ、各〓、配付稅收入額ニ
按分ヲシテ、ソレ〓〓繰入レ割合ノ率ヲ
增スコトニ致シタノデアリマス、之ニ伴
ヒマシテ分與率ノ方モ改訂ヲ行フ次第
デアリマス
改正ノ第三點ハ、配付稅ノ道府縣分
ト市町村分トノ割合ヲ變ヘタイト云フ
點デアリマス、地方分與稅法ガ制定サ
レマシタ當時ノ割合ハ、道府縣分ガ百
分ノ六十二、市町村分ガ百分ノ三十八
ニ決メテアツタノデアリマスガ、其ノ
後市町村ノ財政ガ道府縣ノ財政ニ比ベ
テ相當窮屈ナ狀態ニ立至リマシタノ
デ、昭和十七年度カラシテ、總額ノ百
分ノ二ヲ、道府縣ノ方カラ市町村ノ方ニ
委讓致シマシテ、爾來六十對四十ト云
フコトガ、現行ノ割振ノ率ニナツテ居
ルノデアリマス、然ルニ其ノ後昭和十
八年度カラ御承知ノ通リ國民學校職員
ノ俸給及ビ赴任旅費以外ノ諸給與ト云
フモノガ、市町村ノ負擔カラ道府縣ノ
負擔ニ移管ヲサレマシタ、更ニ又昭和
十九年度カラ靑年學校職員ノ諸給與ト
云フモノガ、ヤハリ市町村分ノ方カラ
道府縣ノ負擔ニ移管サレマシタ、彼此
レ致シマシテ、市町村ノ方面ニ於キマ
シテハ、其ノ負擔ガ九千九百萬圓程度
輕減セラレタノデアリマスガ、道府縣
ノ方面ニ於キマシテハ、一億二百萬圓
程度增加シタヤウナ事情ガアリマス、
是等ノ經費負擔區分ノ改正ト云フコト
ニ依リマシテ、當然ニ道府縣財政ノ方
ガ、次第ニ今度ハ困難ニナツテ參リマ
ス、ソコデ此ノ際其ノ割振ヲ、當初地
方分與稅法ガ制定セラレマシタ當時ニ
引戾スコトガ、適當デアルト思ハレル
ノデアリマス、サウシテ更ニ之ニ配付
稅ノ總額中ニ加ヘラレルコトニナリマ
シタ地方職員ノ給與改善ニ伴フ所要經
費中、地方ノ純負擔ニ屬スルモノヲ合
セテ檢討ヲ致シマシタ結果トシテ、道
府縣分ガ百分ノ六十三、市町村分ガ百
分ノ三十七ト云フコトニ改訂ヲ致シタ
イト云フ點デアリマス
ソレカラ改正ノ第四點デアリマスガ、
市町村配付稅ノ大都市、都市、町村、此
ノ三ツヘノ分割方法ヲ改正スル點デア
リマス、市町村配付稅ヲ大都市配付稅、
都市配付稅及ビ町村配付稅ニ分割ヲ致
シマス場合ニ、其ノ半額ハ課稅力ト云
フ點カラ三收益稅ニ依ル所ノ單位稅額
ヲ標準ニシテ分割ヲ致シ、アトノ半分
ハ財政需要トシテ人口ヲ標準ニシテ分
割スルコトニ致シマシタ、其ノ人口ヲ
標準ニスル場合ニ、大都市、都市、町
村ノ各總人口ニ按分スルコトニナツテ
居ルノデアリマスガ、之ヲ單純ニ人口
ニ按分スルコトト致シマセヌデ、各「ブ
ロック」內ノ個々ノ團體ニ對スル分與
基準ト同ジヤウニ、割增人口デ按分ス
ルコトニ致シタイ、斯ウ云フノデアリマ
ス.此ノ割增人口ニ依リマスト、財政
需要ヲ標準トスル分割方法ト致シマシ
テハ、合理的デアルト考ヘラレマスル
ノミナラズ、三收益稅增稅ノ結果ト致
シマシテ、人口ノ多イ〓體ノ方ニ財源
ガ遍在スル傾向ガ一層强クナツテ居リ
マスノデ、其ノ點ヲ併セテ調整シ得ル
コトニナルト考ヘルノデアリマス
改正ノ第五點ハ、道府縣、大都市、
都市及ビ町村ノ割增定數ノ增加デアリ
マシテ、現在ソレ〓〓三十萬、四十萬、
一萬五千、町村ノ方ハ八百、斯ウナツ
テ居リマスノヲ、ソレ〓〓六十萬、六
十萬、三萬及ビ二千、斯ウ云フ風ニ改
メントスル點デアリマス、課稅其ノ他
ノ狀況カラ見マスルト、人口ノ少數ナ
團體ニ於キマシテハ、人口ノ多イ團體
ニ比ベマシテ、其ノ財政狀況ガ相當窮
屈デアリマスシ、ソレニ加ヘルニ、配
付稅分與ノ經過年度ガ終了致シマスル
關係デ、比較的小團體ニ從來餘計ニ分
與セラレテ居リマシタ、新稅額ガ舊稅
額ニ比ベテ不足スル額ニ按分シテ分與
スル、詰リ經過分與ト云フモフガアツ
タノデアリマス、是ガ經過年度終了ニ
伴ツテ消滅ヲ致シマスル上ニ三收益稅
ガ增稅ニナリマスル結果、更ニ此ノ人
口ノ多イ所ニ財源ガ遍在ヲスルト云フ
傾向ガ一層顯著ニナツテ參リマスノデ、
此ノ際配付稅ガ人口ノ少イ〓體ニ成ベ
ク餘計ニ分與セラレマスルヤウニ、人
口割增ノ一定數ヲ增加シヨウトスルノ
デアリマス、此ノ增加ニ際シマシテハ、
人口ノ少イ團體程、經費ノ割高ニナル
傾向ガ强イ譯デアリマスノデ、現行割
增定數ヲ町村ニ於キマシテハ二倍半、
都市ニ付テハ二倍、大都市ニ付テハ
倍半、ソレカラ道府縣ノ方ハ大體都市
ニ準ジマシテ二倍、斯ウ云フコトニ改
正シヨウトスルノデアリマス、大體〓
要御說明ヲ申上ゲタノデアリマスガ、
何卒宜シク御審議ヲ願ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=4
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005・勝正憲
○勝委員長 ソレデハ是デ休憩致シマ
こと、午後二時三十分ヨリ會議ヲ開キ
マシテ大藏大臣ニ對スル質問ヲ始メマ
ス、是デ休憩致シマス
午前十一時五十一分休憩
午後三時開議発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=5
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006・勝正憲
○勝委員長 是ヨリ會議ヲ開キマス、
質疑ニ入ルニ先ダチマシテ御諮リ致ス
コトガアリマス、理事ノ吉植庄亮君ガ
本日本委員ヲ辭任セラレマシタノデ、
其ノ補闕選擧ヲ行ハナケレバナリマセ
又は、是ハ前例ニ依リマシテ委員長指
名ト云フコトニ致シタイト思ヒマスガ
御異議ゴザイマセヌカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=6
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007・勝正憲
○勝委員長 御異議ナシト認メマス、
ソレデハ瀧澤七郞君ニ理事ヲ御願ヒ致
シマス、是ヨリ質疑ヲ始メマス-本
多市郞君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=7
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008・本多市郎
○本多(市)委員 私ハ先ヅ財政運營ノ
方針ニ付キマシテ、大藏大臣ノ御方針
ヲ御伺ヒ致シタイト思フノデゴザイマ
ス、現在我ガ國ノ財政政策ハ統制經濟
ト自由經濟ノ二ツノ理念ガ併用サレ、
運營サレテ居ルヤウデアリマシテ、
此ノ爲ニ國民思想ハ自由經濟、卽チ利
潤追求ノ觀念ト、統制經濟ノ觀念、此
ノ二ツノ兩立シ得ザル經濟觀念ニ混亂
シツヽアルノデアリマシテ、現下ニ於
ケル幾多ノ生產隘路ト云フモノハ、實
ニ玆ニ原因ガアルヤウニ考ヘラレルノ
デアリマス、此ノコトハ國トシテノ財
政政策ノ上ニドウモ併用サレテ居ル爲
二、此ノ混亂ノ原因ヲナシツヽアル事
實ガ非常ニ多イヤウニ見受ケラレルノ
デアリマス、一面ニ於テ政府ハ物價、
勞銀等ノ統制ヲヤツテ居リマスケレド
モ、是ハ重點的ニヤルノカモ知レマセ
ヌガ、或ル事業ノ完成ヲ見ル爲ニハ種
種請負制度等ノ方法ニ依ツテ、此ノ統
制經濟ノヤリ方ヲ破壞スルヤウナ財政
政策ト云フカ、財政運營ノ方法ヲ執ラ
レル場合ガ非常ニ多イヤウデアリマス、
殊ニ軍事費ノ支出等ニ於キマシテハ、
ソレガ極端デアルヤウニ見受ケラレル
ノデアリマス、斯クノ如ク指導的立場
ニアリマス所ノ國家ノ財政ノ運營方針
ト云フモノガ、何時マデモ中性的ナ道
ヲ辿ツテ居ルヤウデアリマシタノデハ、
折角ノ國家ノ計畫經濟ト云フモノモ、
自分カラ之ヲ破壞シテシマフノ結果ニ
ナルノデアリマシテ、最早此ノ中性的
ナ方針ヲ脫却致シマシテ、徹底シタ理
念ニ基ク財政運營ヲシナケレバナラヌ
一大轉換ノ時期デハナイカト思フノデ
アリマスガ、此ノ點ニ付テ御所信ヲ御
伺ヒ致シタイト思フノデアリマス、卽
チ利潤刺戟ニ依ル增產計畫ト云フモノ
ハ、結局所謂膏藥ノ上塗リニ過ギナイ
ノデアリマシテ、各省或ハ各事業間ニ
之ヲ競爭デヤツテ、行キマスナラバ、統
制經濟ヲ破壞スルバカリデナク、際限
ガナイノデアリマス、此ノ利潤追求ノ
觀念ヲ全ク脫却致シマシテ、眞ニ責任
生產ノ實ヲ擧ゲシムル爲ニハ、生產機
構ノ面ニ於テモ最早名實共ニ生產軍ノ
組織マデ行カナケレバナラヌノデナイ
カト云フコトマデ考ヘラレルノデアリ
マスガ、何レニ致シマシテモ國家ノ財
政政策ハ國民ノ經濟ヲ指導スル根本デ
アリマシテ、大藏大臣ハ此ノ困難ナル
財政運用ニ付キマシテ如何ニ御考ヘデ
アリマスルカ、國民ノ經濟觀念ヲドウ
云フ風ニ指導シテ國家財政運營ノ目的
ヲ達セントセラレルノデアリマスカ、
此ノ點ニ付キマシテ先ヅ御方針ヲ御伺
ヒ致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=8
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009・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 本多君ノ御質問ニ對
シテ御答ヘ致シマス、經濟政策ノ運行
ノ根本ヲドコニ置クカ、斯樣ナ問題ハ
私ハ今日ニ於キマシテハ勿論計畫經濟、
統制經濟、又國民トシテモ國ヲ思フ
念ニ基イテ進ンデ行ク、ソレガ根本デ
アルト思フノデアリマス、隨ヒマシテ
此ノ報奬制度的ナモノハ、私ハ根本的ナ
基盤ニ相成ル政策デハナイ、左樣ナコ
トハ其ノ根本政策ヲ進メテ行ク上ノ一
ツノ波紋デアル、左樣ナコトヲ行ヒナ
ガラ此ノ根本ノ施策ヲ進メテ行クノデ
アルト思フノデアリマス、隨ヒマシテ
今アナタノ仰シヤルヤウナ日本ノ政策
ガ中間ヲ行ツテ居ルデハアルマイカト
云フ御話デアリマスガ、私ハ左樣ニハ
考ヘナイノデアツテ、ヤハリ根本ハ統
制ノ經濟デアリ、計畫經濟デアツテ、
此ノ報奬制度ノ如キハ其ノ根本ノ政策
ヲ實行シテ行ク爲ノ一手段デアル、而
ヒ輕イ一手段デアル、左樣ナ意味デ此
ノ報奬制度等ガ採用致サレテ居ルモノ
ト考ヘテ居ルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=9
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010・本多市郎
○本多(市)委員 大臣ノ御方針ノアル
所ガ能ク分ツタノデアリマスガ、報奬
制度ト云フヤウナコトハ根本方針ニ蹉
跌ヲ來サナイ程度ノモノデアレバ、大
臣ノ仰セラレル通リデアラウト思ヒマ
スケレドモ、動モスレバ其ノ便宜ノ爲ノ
報奬制度ガ根本的ナ政策ノ遂行ヲ不可
能ナラシメルヤウナ結果ニナラナイト
モ限ラナイ情勢ニ陷ル虞ガアルノデア
リマシテ、例ヘバ賃金等ノ暴騰ノ結果
殆ド旣定豫算ヲ以テ目的ノ仕事ヲ完成
スルコトガ困難デハナカラウカト云フ
ヤウナ虞ガアルモノモ見受ケラレルノ
デアリマスカラ、御方針ハ能ク分リマ
シタケレドモ、ソレ等ノ點ニ付テ特ニ
報奬制度其ノモノガ根本ノ經濟ヲ破壞
スルコトノナイヤウニ御留意ヲ願ツテ
置キタイノデアリマス
次ニ私ガ御伺ヒ致シタイト思ヒマスコ
トハ、今日ノ我ガ國ノ經濟政策ハ所謂
自由主義經濟ノ時代ニ發達シタモノデ
アリマスル結果カ、甚ダ複雜多岐ニ亙
ツテ居ルヤウデアリマス、此ノ複雜多
岐ニ亙ツテ居ル財政政策ヲ今日ノ決戰
體制ノ段階ニ於キマシテハ根本的ニ之
ヲ簡素化シ、國家財政ノ全體ヲ主體ト
シタ一體綜合的ナ運營ニ改メテ行クト
云フコトガ國財家政ノ彈力ノ上カラモ、
又重點的ナ緊急施策ノ上カラモ、能率
的經營ノ上カラモ最モ急務デハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、ドウ云フ點ヲ
指シテ私ガ斯ク主張スルカト申シマス
ト、例ヘバ今囘增稅ニナリマシタ所ノ
通行稅ノ如キ、斯ウ云フモノハドウセ
國家ノ收入ニナルノデアリマスカラ、
乘車料ノ簡單ナル値上一本デ參リマシ
テ、纏マツタオ金ヲ國庫ニ鐵道會計カ
ラ繰入レサセルト云フコトニスレバ簡
單ニ行クノデハナカラウカ、一「キロ」當
リ五厘ノ通行稅、之ヲ距離ニ從ツテ切
符每ニ計算シタモノヲ印刷シ、又其ノ
爲ニ運通省ノ中ニモ厖大ナル人ガ此ノ
計算ノ爲ニ當ツテ居ルト云フコトデア
リマスガ、是等ヲ簡單ニ、今日ノ情勢カ
ラ行キマスト乘車料ヲ二倍ニ値上ヲシヨ
ウト云フコトガ政府デ決マリマシタナ
ラバ、年額十四億圓ノ乘車料ガ增スコ
トニナルカラ、十四億萬圓ダケ一ツ國
庫へ繰入レテ貰ヒタイ、斯ウ簡單ニ仕
事ガ出來ルト思フノデアリマスガ、斯
クノ如キ綜合一體的運營ニ改善サレテ
行クコトガ決戰財政ノ今日、凡ユル面
ニ於テ非常ニ能率的ニナル部面ガ多カ
ラウト思フノデアリマス、簡單ナ實例
ハ收入印紙、郵便切手、收入證紙ノ如
キ、是等ヲ一々區分シナクテモ一枚デ
以テ共通ノ制度ニ改メル、是等ハ收入
ノ部面デアリマスガ、支出ノ部面ニ於
キマシテハ、是トハ意味ガ違ツテハ居
リマスガ、補助金、助成金、奬勵金ト
云フヤウナモノモ所管別又種目別、地
域別、豫算書デ見マスト項目別ニ嚴密
ニ區分サレテ居リマシテ、今日地方ノ
情勢ニ卽應スル機動性ノ發揮ガ出來ナ
イ、徒ラニ手續ノ煩鎖ノミデアツテ、
適當ナ事業ニ、適當ナ時期ニ效果ヲ擧
ゲルト云フコトガ困難デアルト云フ實
情ニ陷ツテ居ルノデアリマシテ、是等
モモウ少シ大キナ見地カラ地方ニ對ス
ル是等助成金、補助金等モ纏メテ交付
ヲシテ、サウシテ其ノ地方々々ノ實情
ニ應ジテ、重點的ニ最モ效果ノ上ルヤ
ウニ使用サセル、是ハ支出ノ面デアリ
マスガ、今度ハ收入ト支出トノ双方ニ
跨ツタ問題ト致シマシテハ、健康保險
トカ厚生保險トカ或ハ恩給制度トカ是
等法律ノ定ムル所ノ條件ニ依ツテ使途
ヲ限定シ、其ノ支拂ニ政府ハ責任ヲ持
ツト云フヤウナ制度ハ、之ヲ相互組織
ノ理念カラ脫却致シマシテ、全部政府
ノ一方的支出ノ制度ニ改メテシマフ、
スルト正味ノ制度ニナルノデアリマシ
テ、非常ニ簡單デアリマス、戰爭損害保
險ノ如キモ私ハ相互保險ノ性質デハ其
ノ目的ヲ達スルコトモ或ハ困難デハナ
イカトサヘ考ヘテ居ルノデアリマスガ、
戰爭損害保險ノ如キハ、戰爭ニ依ツテ
損害ヲ受ケタ場合ニハ、政府ガ査定シ
テ或ル程度ノ損害ノ補償ヲシテヤルト
云フ簡單ナ制度ヲ確立致シマスト、今
日ノ如ク全國ノ者ガ保險會社ノ勸誘員
ヲ通ジ加入ノ手續ヲシ、保險金ヲ拂込
ムト云フヤウナ事務的ナ浪費ハ要ラナ
イノデアリマス、此ノ戰爭保險ニ付キ
マシテハ一寸感ジタコトガアリマスノ
デ一言附加ヘテ置キマスガ、特ニ戰爭
保險ニ付テ今日混亂狀態ト申シマセウ
カ、滅茶苦茶ニ超過保險ガ增加シテ居
ルヤウニ、考ヘラレルノデアリマス、此
ノ戰爭保險ヲ扱フ外交員ノ中ニハ、昨
年ノ十一月二十九日ノ空襲カラ正月ノ
三四日マデノ間デ、二二一萬圓位ヅツノ保
險ノ步合ヲ稼イダ者ハ少クナイト云フ
コトデアリマスガ、ソレハドコニアル
カト申シマスト、今日戰爭損害保險ニ
加入スル者ハ超過保險トシテノ金額ノ
制限ガナイノデアリマス、支拂フ時
ニハ査定シテ拂ハルヽヤウデアリマス
ガ、一萬圓ノ財產ニ對シテ五萬圓十萬
圓ノ保險ニ加入シテモ保險會社或ハ外
交員ハ喜ンデ之ヲ付ケテシマフ、其ノ
結果イザ損害ヲ受ケテ保險金ヲ支拂フ
段ニナルト、政府デ査定シマシタ結果、
超過保險デアツタト云フノデ無效ニナ
ル契約ガ澤山アル譯デアリマスケレド
モ、ソレヲ取扱ツテ步合ヲ稼グ保險會
社或ハ保險會社ノ外交員ハ步合ハ戾サ
ナクテ宜イノデアリマスカラ、益〓超過
保險ト云フモノガ多クナツテ行クノデ
アリマス、其ノ損害ノ發生シタ後ニ政
府ガ嚴密ニ査定ヲシテ保險金ヲ拂ハル
ルモノデアツテ、超過保險契約ハ無效
デアルト云フコトヲ十分認識シテ居リ
マスト、又自分ノ財產ノ實際ノ客觀的
價値ト云フモノヲ認識シテ居ル人デア
リマスト、無暗ニ超過保險ハ掛ケナイ
ノデアリマスケレドモ、今マデ保險會
社ハ契約シタ以上ハ後カライザコザナ
ク拂ツテ居ル慣習ガアリマシタ爲ニ、
契約サヘアレバ先ヅソレダケノ保險金
ハ燒ケタラ取レルモノデアルト云フ考
ヘヲ持ツテ居ル人モアルノデアリマス、
サウ云フ結果ハ家財道具ヲ疎開シタリ、
妻子ヲ疎開シタリ或ハ空家ニシタリシ
テ、燒ケタラ得デアルト云フヤウナ氣
持ニナツテ居ル人モ或ハナイトモ限ラナ
イノデアリマシテ、是等ハ防空ト云フ
見地カラ行キマシテモ洵ニ宜シクナイ
制度デアルト考ヘルノデアリマス、是
等ニ付テ十分認識ヲ與へ、サウ云フ弊
害ヲ生ジナイヤウニシテ貰フ必要ガア
ルノデアリマスガ、此ノ事ニ付テハ序
デアリマスルカラ、ドウ云フ御考ヘヲ持
ツテ居ラレルカ、又ドウ云フコトニナ
ツテ居ルノデアリマスカ、戰爭保險ニ
付テモ御伺ヒヲ致シテ置キタイノデゴ
ザイマス、斯ノ如ク支出ノ面ニ於テモ
收入ノ面ニ於テモ、又是等保險制度等
ニ於キマシテモ、是ハ國家ノ戰時財政
ノ上カラ見マシテ、綜合一體的ニ運營
スル場合、正味ノ補償制度等ニ依ツテ
モツト簡單ニナルト思フノデアリマス
ガ、是等ニ付キマシテ如何ニ御考ヘデ
アリマセウカ、又今日浮動購買力ノ吸
收浮動資金ノ吸收ト云フヤウナコト
モ最モ重要ナ問題ノ一ツデアリマスガ、
是等ノコトモ此ノ國家全體ノ機構ガ
體的ニ運營セラレル場合ニハ、其ノ全
機能ヲ合理的ニ動員スルコトニ依リマ
シテ、最モ容易ニ其ノ目的ヲ達スルコ
トガ出來ルト思フノデアリマスガ、大
藏省ハ各省ヲ糾合シテ斯クノ如キ財政
運營ノ大轉換ヲナサレル御考ヘハアリ
マセヌデセウカドウカ、此ノ點ヲ一ツ
御伺ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=10
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011・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 第一ノ御尋ネハ出來
ルダケ收入ニ付テモ簡素化ヲ圖ツタラ
ドウダ、斯ウ云フ御尋ネデアリマシテ、
御尤モナ御意見デアルト存ジマス、唯
通行稅ト鐵道ノ運賃トヲ一本デヤツタ
ラ宜イデハナイカト云フ御話デアリマ
スケレドモ、是ハ一方ハ鐵道ノ收入デ
アリ、一方ハ稅デアルノデアリマシテ、
其ノ間自ラ其ノ目的ノ別ノ點モゴザイ
やっく、又全然是ハ一致致シテ居ル譯デ
モゴザイマセヌ、稅金ハ或ル程度ノ所
ノモノハ免稅ヲ致スト云フコトニモ相
成ツテ居ルノデアリマスカラ、左樣ナ
意味合カラ行キマシテモ、通行稅ト運
賃ト云フモノハヤハリ別ニ考フベキモ
ノデアラウト考ヘテ居ルノデアリマス、
「ドイツ」等ニ於キマシテモ國有鐵道ノ
通行稅ハ、ヤハリ別々ニ勘定シテ居ル
ヤウニ聞イテ居ルノデアリマス、其ノ
他收入ノ方面ニ於テモ色々ト考ヘタラ
ドウカト云フ御話デアリマスガ、是
御尤モナ點モ多數アルノデアリマシテ、
將來十分考ヘタイト存ジマス
保險ノ問題ニ付テ、殊ニ戰爭保險ノ
問題ニ付テ色々御話ガアツタノデアリ
マスガ、政府ト致シマシテハ戰爭保險
ヲ以テ財產ノ戰時損害補償ト云フコト
ヲ考ヘマシタ考ヘ方ハ、此ノ二三年前
カラ考ヘテ來テ居ルノデアリマシテ、
之ヲ實行致スニ致シマシテモ、·偖テ家
ガ燒ケタ、ソレニ對シテ補償シロト言
ハレテモ、モウ燒ケタ家ハ中々評價モ
困難デアリマスノデ、左樣ナ實際上ノ
見地カラシマシテ、結局保險ガ損害ノ
補塡ノ上ニ於テ、最モ調査モシ易イシ、
又金モ拂ヒ易イ、又評價ニ付テモ保險
會社ノ熟練シタ人モ居ルノデアリマス
カラ、其ノ途ヲ選ンダ方ガ宜カラウト
云フコトデ斯樣ニ相成ツタモノト心得
テ居ルノデアリマス、保險ノ拂ヒ方、
又超過保險ガ相當ニ行ハレテ居ルヂヤ
ナイカト云フ御話デアリマスガ、超過
保險ノ問題ニ付キマシテハ時折聞クノ
デアリマスガ、會社側ニモ十分注意ヲ
致シマシテ、出來ルダケ左樣ナコトノ
起ラヌヤウニ致シテ居ルノデアリマス
ガ、今日ノ場合如何樣ニ考ヘマシテモ、
保險會社ヲ用ヒルヨリ外ニハ、此ノ戰
時ノ財產ノ補償ヲ致ス途ハナイヤウニ
思フノデアリマス、ヤハリ此ノ手ガ一
番簡便デアリ、又一番官民オ互ニ手數
ノ少イ途デアルト考ヘテ居ルノデアリ
せっ、色々ナ弊害ニ付テハ將來十分注
意シテ行キタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=11
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012・本多市郎
○本多(市)委員 只今ノ戰爭保險ニ付
キマシテハ、事前ノ調査ハ保險會社ニ
於テ殆ド坪數ヲ控ヘルダケデ、動產等
ニ致シマシテモ家財一式トヤルダケデ
ヤツテ居ルノデアリマシテ、損害ノ生
ジタ後デ稅務署員ナドモ關係シテ調べ
テ居ルヤウデゴザイマスカラ、保險會
社ニ依レバ事前ニソレ等ノ調査ガ出來
ルカラト云フヤウナコトニハナラヌヤ
ウデアリマス、私ガ希望致シテ居リマ
スノハ、之ヲ保險ノ制度ニ依ラズ、立
法的ナ制度トシテ-ドウセ損害ノ出
來テカラ調ベテ拂フ今ノ實情デアリマ
スカラ、ソレナラバ保險ナドハ止メテ、
實際戰爭デ損害ヲ受ケタ人ハ、保險金
ヲ拂ツテ居ヤウト居マイト國家ニ依ツ
テ救濟ヲサレル、其ノ恩典ニ漏レズ浴
セシメル爲ニ國家ガ簡單ニ補償シテヤ
ル制度ニシタラ如何カト云フコトヲ申
上ゲタノデアリマシテ、此ノ點ハ更ニ
御考慮ヲ願ツテ置キマス
次ニ私ハ今日ノ財政政策ニ依リマス
ト、國庫ト國民ノ間ニ於ケル貨幣ノカ
ラ廻リト云フモノガ不必要ニ多イヤウ
ニ考ヘラレルノデアリマス、之ヲ解決
スル爲ニハ先ヅ稅制ノ改革ガ第一デア
ラウト思フノデアリマス、殊ニ源泉課
稅ノ勤勞所得ナドハ、何等カノ工夫ニ
依ツテ、之ヲ課稅ノ方法ニ依ラズシテ
目的ヲ達スル方法ガアルノデハナイカ
ト考ヘルノデアリマス、此ノ點ニ付テ、
例ヘバ官吏ニ對スル課稅ノ如キ、政府
カラ支拂ツタ金ノ幾分ヲ同ジ率デ取上
ゲル、是ハ全クヤリ分ガ多過ギタノカ、
兎ニ角取ラナクテモ宜イ程度ニ拂ツテ
置ケバ宜イノデアルガ、其ノ爲ニコヽ
ニ非常ナル手數ヲ要シテ居ルシ、其ノ
他ノ軍管理工場等ニ於テ賃金等ノ統制
サレテ居ル徵用工、其ノ他ノ工員等ニ
對スル課稅モ、何等カ稅金ヲ取ルト云
フヤウナ方法デナシニ解決スル途ハナ
イカ、其ノ他之ニ類スル國庫トノ貨幣
ノカラ廻リト云プモノハ澤山其ノ事例ガ
見受ケラレルノデアリマスガ、是ハ當
局ノ御〓究ニ俟ツコトニ致シマシテ、
只今申上ゲマシタ源泉課稅ノ或ルモノ
ハ課稅ニ依ラズシテ其ノ目的ヲ達スル
方法ハナイカ、ソレニ付テ如何ナル御
〓究ガナサレテ居ルカ、此ノ點ヲ御伺
ヒ致シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=12
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013・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 官吏ノ月給カラ稅金
ヲ取ルノデアルナラバ、源泉デソレダ
ヶ少ク渡シタラ濟ミヤセヌカ、サウ云
フヤリ方ヲスル方ガ適切デハナイカ、
斯樣ナ御話デアルノデアリマスガ、
應御尤モノヤウニ思ハレルノデアリマ
ス、併シナガラ今日是レダケ負擔ノ重
ク相成ツテ居リマス際ニ、官吏ダケ分
類所得稅ヲ拂ハヌノダ、斯樣ナコトハ
一方ニ於テ官吏ノ月給ガ安イト云フコ
トヲ幾ラ說明致シマシテモ、稅金ヲ拂
ハヌト云フヤウナ印象ヲ與ヘルコトハ
非常ニ國民一般ニ差障リガアルノヂヤ
ナイカト思ヒマス、曾テ「プロイセン」ノ
所得稅法ニ於テハ今アナタノ仰セニナ
ツタヤウナ簡便主義カラデアツタノデ
アリマセウ、官吏ノ月給ニハ稅金ヲ賦
課シナイト云フ〓トヲヤツタノデアリ
マス、卽チソレダケ拂ツテ、稅金ヲ取
ルト云フコトハドウモ複雜デアルト云
フ考ヘカラ左樣ナコトヲヤツテ居ツタ
ノデアリマスガ、暫ク其ノ法律ヲ實行
致シマシテ、直キニ再ビ改正ヲシマシ
テ、官吏カラモ、ヤハリ稅金ヲ取ルコ
トニ致シタノデアリマス、如何ニシテ
改正シタカハツキリ分リマセヌガ、ヤ
ハリ官吏カラ稅金ヲ取ラヌト云フ觀念
ニ
ガ一般ニ好クナイ感ジヲ與ヘタ結果デ
ハアルマイカト思ハレルノデアリマス、
隨ヒマシテ稅金ト云フヤウナモノハ、
ヤハリ私ハ一應複雜デアツテモ課稅ヲ
致シテ行クト云フ方ガ適當デハアルマ
イカト存ジテ居ル次第デアリマス、其
ノ他斯樣ナ色々ナ點ニ於キマシテ手續
ノ煩瑣ヲ避ケルト云フ上カラ行キマス
レバ、色々問題モアルカト存ズルノデ
アリマス、出來ルダケアナタノ仰シヤ
ルヤウナ途ニ進ンデ行キマスコトガ、
此ノ戰時財政ニ於テハ必要ヂヤナイカ
ト思フノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=13
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014・本多市郎
○本多(市)委員 次ニ私ハ稅制改革ノ
問題ニ付キマシテ御伺ヒ致シタイト思
ヒマス、稅制ハ御承知ノ如ク應能負擔
ニ順應スル應能課稅主義ニ依ルコトハ、
是ハ原則デアラウト思フノデアリマス、
此ノ點カラ參リマスト、綜合所得ニ對
スル累進率課稅、是ガ中心ヲナサナケ
レバナラナイト思フノデアリマス、今
日ノ稅法ハ改正サレテマダ幾年モ經タ
ナイモノデハアリマスルケレドモ、其
ノ間ニ於ケル經濟界ノ事情、國民生活
ノ實體ト云フモノハ非常ナ變化ヲ來シ
テ居ルノデアリマシテ、是ニハ稅制ノ
改革ガ件ハナケレバ、唯單ナル稅率ノ
或ル部分ノ引上ノミデハ此ノ實體ニ副
ハナイ點ガアルト思フノデゴザイマス、
殊ニ今囘ノ增稅ノ如キハ所謂大衆課稅
ノ議リヲ免レナイノデアリマシテ、分
類所得稅、通行稅、入場稅、總テサウ
デアリマス、消費稅ニ於キマシテモ全
ク大衆課稅デアル、分類所得ノ所得者
ハ必ズシモ大衆デナク、髙額所得者モ
アリマセウケレドモ、併シ其ノ分類所
得者ノ大部分ハ所謂勤勞所得デアリマシ
テ、所得ノ金髙ニ對スル累進率ガ適用
サレテ居ナイ稅デアリマスカラ、是心
卽チ大衆課稅デアリマス、斯クノ如キ
時代ニ增稅ヲヤルニ付キマシテハ大衆
ニ課稅スルノモ結構デアリマスガ、ソ
レト同時ニ大キナ所得者、今日ノ大成
金ト云フヤウナ者ニモ斯クノ如ク增稅
ヲスルノデアルト云フ目標ヲ一ツ示シ
テ、サウシテ大衆ニ課稅スルト云フ增
稅ノ技術ヲ用ヒナカツタナラバ、是八
唯取ルニ易キ簡單ナル稅率ノ引上ニ依
ル、而モ大衆ノ犠牲ニ於テ增收ノ目的
ヲ達スルモノデアルト云フ憾ミヲ免レ
ナイト思フノデアリマス、私今日ノ此
ノ世相ヨリ考ヘマスト、旣ニ分類所得
稅ト云フヤウナモノハ其ノ意義ヲ失ツ
テ居ルノデハナイカト思フノデアリマ
ス、唯其ノ中デ源泉所得ノ出來ル勤勞
所得ダケハ徵稅ノ便宜上或ハ存置スル
コトモ、最前申シマシタヤウナ別途ノ
解決方法ガナイトスレバ己ムヲ得ナイ
カト思ヒマスルケレドモ、其ノ他ノ分類
所得、而モ其ノ所得每ニ一分カ二分ノ
稅率ノ差ヲ設ケテ稅制ヲ複雜ニシテ取ル、
是ハ全ク今日デハ意義ヲ失ツテ居ル、
今日デハ所得ノ種類デナクシテ全所得
ヲ集メタ其ノ金高デアル、卽チ其ノ金
高ガドレ位ノ負擔ニ應ジ得ルカト云フ
コトヲ決定スル、應能負擔、應能課稅
ハ總所得デナクテハナラヌノデアリマ
ス、昔デアリマシタナラバ不動產ノ所
得等ニ依ツテ遊ソデ食ツテ居ル者ニハ、
少シク社會政策的ニモ高イ稅率ヲ課ケ
テヤラウト云フヤウナ考ヘモアツタカ
モ知レマセヌケレドモ、今日ニ於キマ
シテハ如何ナル金持ノ子弟デモ遊ンデ
居ル者ハナイノデアリマシテ、皆動員
サレテ働イテ居ルノデアリマスカラ、
昔ノ考ヘハ當ラナイノデアリマシテ、分
類所得トシテ別ニ課稅スル意義ヲ失ツ
テ居ル、此ノ分類所得ノ中デ只今申シ
マシタ勤勞所得ノ源泉課稅ノ出來ル部
分、綜合ニ持ツテ來ルコトノ煩瑣ナ少
額ノモノハ、是ハ殘シテモ仕方ガナイ
ト思ヒマスガ、大局ニ於テ綜合所得ノ
累進課稅ニ中心ヲ置イテ、コヽニ增稅
ノ狙ヒヲ置カナカツタト云フコトハ
今日ノ時勢ニ適應シナイモノデハナカ
ラウカト云フ風ニ私ハ考ヘルノデアリ
ママ、旣ニ綜合累進稅率ハ相當高クナ
ツテ居ルカラ餘地ガナイトモ言ハレルノ
デアリマスルケレドモ、分類所得トシ
テ取レルダケノ金ハ綜合所得ノ累進率
ニソレダケノモノヲ統合シテ取ツテ取
レナイコトハナイノデアリマシテ、私
ハヤハリ今囘ノ增稅ノ狙ヒハ所得〓大
キナ者ニハ大キイ程是ダケ取ルノダト
云フ、ソコニ目標ヲ置イテ增稅ヲサレ
ナカツタト云フコトハ、洵ニ遺憾ナ感
ガスルノデアリマスガ、是等ノ點ニ付
キマシテドウ云フ風ニ御考ヘデアリマ
スカ、御所見ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=14
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015・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 我ガ國ノ稅制ガ昭
和十五年マデハ今本多君ノ言ハレタヤ
ウナ所得稅一本ノ稅制デアリマシタ、
卽チ綜合所得ト云フモノガ所得稅デア
ツテ、分類所得稅ト云フモノハアリマ
セヌデシタ、昭和十五年ノ稅制改正ノ
際ニ分類所得稅ト云フモノガ新稅トシ
テ現ハレタ譯デアリマス、此ノ稅制改
正ニハ私モ多少ノ關係ヲ持ツテ居ツタ
ノデアリマスガ、私共モ此ノ稅制ノ方
ガ斯カル時代ニハ宜イト、斯樣ナ考ヘ
ヲ持ツテ居ツタノデアリマス、此ノ綜
合所得稅ト云フモノハ理窟ハ非常ニ宜
イ稅デアリマスケレドモ、稅額ガサウ
餘計ニ伸ビ難イノデアリマス、ドウシ
テモ所得ノ多イ者ハ人數ガ少イ、所得
ノ少イ者ハ人數ガ多イ、ソレデ所得ノ
多イ者カラ幾ラ取ツテ見テモ、入數ガ
少イモノデスカラ限度ガアルノデアリ
マンク、此ノ前ノ「ヨーロッパ」戰爭ノ始
マル當時カラシマシテ「ヨーロッパ」諸
國、戰中、戰後ニ於キマシテ「ヨーロツ
パ」「アメリカ」ヲ通ジマシテ、此ノ
所得稅ガ非常ナ變化ヲ受ケタノデアリ
やく、其ノ變化ヲ受ケタ一ツノ大キナ
點ハヤハリ分類所得稅ノ各國ニ於ケル
採用デアルト思ヒマス、ト云フコトハ
戰時所得稅トシテ餘計ニ所得稅額ノ徵
收ノ出來ルモノハ、實ハ綜合所得稅ニ
アラズシテ、分類所得稅デアリマス、
理窟ハアナタノ仰シヤルヤウニ綜合所
得稅ノ方ガスツトシテ居ルノデアリマ
スガ、斯ウ云フ戰時ニ於テ國ガ稅金ヲ
餘計ニ必要トスル場合ニ於テハドウ
モ分類所得稅ノ方ガ效果ヲ發揮致スモ
ノデアルト私ハ考ヘテ居ルノデアリマ
ス、ソレデ昭和十五年當時、此ノ稅制
ガ改正致サレマシタ時ニ、分類所得稅
ト云フモノガ登場致シタノデアリマス
ガ、其ノ時ニ登場シタ理由モ、此ノ分類
所得稅ト云フモノガ將來相當所得稅ノ
中樞ニナツテ、大キクナツテ行クノデア
ラウト想像サレテ居ツタ、果シテ其ノ
後三四年デアリマスガ、分類所得稅ト
云フモノハ非常ニ大キナモノニ相成ツ
テ來テ居ルノデアリマシテ、今日此ノ
所得稅ノ總稅額四十七億ノ中三十六億
ト云フモノガ分類所得稅デアリマス、
綜合所得稅ト云フモノハ隨分增率ハ致
シテ居リマスガ、十億デアル、ヤハリ
戰時〓大ナルモノヲ賄ツテ行キマスニ
ハ、私ハ稅ノ根幹ト云フモノハ、理窟ハ
多少アルニ致シマシテモ、分類所得稅
ト云フモノデ賄ツテ行クヨリ外ニ、實
際問題トシテハ賄ツテ行ク稅ガナイ、
直接稅トシテハ分類所得稅ガ其ノ根幹
ノ稅デアルト考ヘテ居ルノデアリマ
ス、隨ヒマシテ今囘モ主トシテ其ノ增稅
ヲ分類所得稅ニ求メタ次第デアリマス、
唯從來ノ行キ方ト致シマシテ、此ノ一
兩年間綜合所得稅ニ付テモ相當ナ增率
ヲ致シテ來テ居リマス、此ノ綜合所得稅
ハ、昭和十二年來、卽チ支那事變以來
或ハ支那事變ノ直前ト言ツテモ宜イカ
モ知レマセヌガ、支那事變ノ直前以來
增稅ニ增稅ヲ重ネテ居ルノデアリマシ
テ、今日ノ狀況ニ於テハ、綜合所得稅
ノ方ガ少シク草臥レテ居リハセヌカト
思ツタモノデアリマスカラ、時ニ今囘
ハ綜合所得稅ニ付テ增稅ヲシナカツタ
譯デゴザイマスガ、併シナガラ今日ノ
綜合所得稅ト云フモノガ全然增稅ノ餘
地ハナイカト云ヘバ左樣ニ考ヘテ居ル
譯デハゴザイマセヌ、ソレハ增稅ノ餘
地ハゴザイマセウガ、分類所得稅ノ方
ガ更ニ增稅ノ餘地ガアルト考ヘタ次第
デアリマス、其ノ他消費稅ニ付テノ增
稅ガ少シ多過ギハセヌカト云フ御話デ
アリマスガ、洵ニソレハ御尤モナ御尋
ネデアルト思ツテ居ルノデアリマシテ、
私モ實ハ消費稅ガ少シ多過ギハセヌ
カト考ヘタノデアリマスケレドモ、只
今議會ニ提出致サレテ居リマスル豫算
デ御覽ノ通リ、消費稅ハ今年ハ非常ナ
減少ヲ致シテ居ルノデアリマス、卽
チ酒、砂糖、織物、物品稅、飮食稅等
ズツト著シイ減少ヲ致シテ居ル次第デ
アリマシテ、消費稅額ガ斯クノ如ク減
ツテ居ルト致シマスレバ、ヤハリ消費
方面カラ取上ゲル稅金ヲ增サナケレバ、
此ノ方面ニ於テ、浮動購買力ト言ツテ
ハ少シ語弊ガアルカモ知レマセヌガ、
此ノ方面ニ於テ擔稅力ヲ抑ヘテ居リマ
シタモノガ、其ノ擔稅力ヲ抑ヘル場所
ガゴザイマセヌ、卽チ直接稅デ抑ヘ得
ナイモノヲ間接稅タル消費稅デ抑ヘテ
居リマシタガ、物品稅ノ減少其ノ他ニ
依ツテ抑ヘラレナイト云フモノガ、勢
ヒ浮動購買力トシテ「インフレーション」
方面ニ現ハレテ來ルト云フ虞ガアルト思
ツタモノデアリマスカラ、煙草デアリ
マストカ、酒デアリマストカ、左樣ナ
方面ニ重點ヲ置キマシテ、此ノ消費稅
ノ增徵ヲ致シタヤウナ次第デアリマス、
ドウゾ左樣ニ御諒承戴キタイト思ヒマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=15
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016・本多市郎
○本多(市)委員 今二、三點御伺ヒ致
シタイト思ヒマスガ、只今ノ分類所得稅
ト綜合所得稅ノ關係ニ於ケル大臣ノ御
說明ヲ御伺ヒ致シテ居リマシテモ、所
得ノ種類別ニハ稅率ガナツテ居ルケレ
ドモ、同ジ稅率デ課稅サレル所ノ分類
所得ニ、稅ノ大部分ノ基礎ヲ置クト云
フ稅制ハ、所謂應能負擔ノ精神ト一致
シナイモノデアリマス、應能負擔ノ精
神カラ參リマスト、稅金ハ納メル力ノ
アル所カラ取ル、卽チ財產ガアルカ、
所得ガアルカ-此ノ財產稅ハ別ト致
シマシテ、所得ノ金高ガ、所得ノ高ノ大
キナモノハ大キナ負擔力ガアルノデア
リマスカラ、此ノ金高ノ大キサニ從ツ
テ、累進率ヲ以テ課稅サレルト云フ、
綜合所得稅ノ精神ガ良イコトハ間違ヒ
ナイノデアリマス、唯色々ノ困難ガア
ルヤウニ拜察サレルノデアリマスガ、
稅制編成ノ最高ノ技術ヲ〓究發揮セラ
レマシテ、何トカシテ此ノ稅制ノ理想
ニ合致スル所ニ持ツテ行ツテ戴キタイ
ト思フノデアリマス、現ニ分類所得稅
デ澤山ノ稅金ガ上ルト云フコト、此ノ
コトガ大衆課稅デアリマシテ、應能負
擔ノ精神ニ副ツテ居ナイコトニナルノ
デアリマスカラ、私ハ常ニ之ヲ遺憾ト
シテ居ルモノデアリマシテ、必ズヤ十
分ノ〓究ヲ積マレ、非常ナル經驗ニ基
ク徵稅技術ノ發揮ニ依リマシテ、綜合
所得トシテ立派ナ制度ガ必ズ生レナケ
レバナラナイト考ヘマスノデ、此ノ點
更ニ一段ト御〓究ヲ御願ヒシテ置キマ
ス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=16
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017・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 只今ノ御尋ネノ稅ノ
大キサノ問題デアリマスガ、結局稅ノ
大キサト、稅ノ質ト二ツノ課稅ノ對象
ガアルト存ジマス、ソレデ稅ノ質ト致
シマシテハ只今分類所得稅デヤツテ
居リマスヤウナ勤勞所得、資產所得、
營業所得-資產、勤勞ノ所得ガ質デ
アリマシテ、質ニ依ツテモ負擔力ノ差
ガゴザイマス、是ハ勤勞ニ依ル所ノモ
ノト、資產ニ依ルモノトハ同ジ額デア
リマシテモ、內容ニ差ガゴザイマスカ
ラ、隨テ其ノ間ニ負擔力ノ差ガアルコ
トハ是ハ明カデアリマスカラ、分類所得稅
ニ於テ、其ノ質ノ差ニ依ル所ノ課稅ヲ
致スト云フコトモ當然デアルト存ジマ
ス、ソレカラ大キサニ依ル所ノ所得ハ、
一方ニ於キマシテ綜合所得稅、分類所
得稅ノ上ニ、或ル一定ノ大キサノ所得
以上ノモノニ綜合所得稅ヲ課ス、斯樣
ナコトニ相成ツテ居ルノデアリマシテ、
勿論綜合所得稅ハ稅ノ大キサニ依ツテ
累進稅ヲ課稅致スノデアリマスカラ、
分類所得稅ト累進稅ト調和シテ、
兩方ノ稅ガ一定額以上ノ納稅者ニ行
ク、斯樣ナコトニ相成ル譯デアリマス
カラ、隨テ大キサニ依ル所ノ稅、質一
依ル所ノ稅、此ノ二ツノ部門ガ課稅ノ一
ツノ標準ニ相成ツテ居ルコトハ申上ゲ
ルマデモゴザイマセヌ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=17
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018・本多市郎
○本多(市)委員 分類所得ニ付キマシ
テハマダ申上ゲタイコトモアリマスケ
レドモ、此ノ程度ニ致シテ置キマシテ、
次ニ私ハ利得稅ト營業稅ニ付テ御伺ヒ
致シタイト思ヒマス、今日利得稅ノ意
義ガ旣ニナイノデハナイカト私ハ思ヒ
せい、又營業稅ト云フ理念モ成立タナ
イヤウニ考ヘラレルノデアリマスガ、
營業稅トカ利得稅トカ云フ稅金ヲ、ヤ
ハリ綜合所得稅ノ一本ノ中ニ吸收ザレ
テシマフト云フ譯ニハイカナイモノデ
アルカドウカ、利得稅ハ御承知ノ如ク
戰前少額ノ所得者デアツテ戰後ニ所得
ノ增大シタ者ニ付テ、增大シタ部分ニ
對シテ非常ニ髙イ稅率ヲ取ラレテ居ル
ノデアリマスケレドモ、是ハ事業營業
所得ニ限ルノデアリマス、最前分類所
得ニ付テ私ガ申上ゲマシタ通リ、勤勞
所得ト其ノ他ノ所得トハ多少違ヒガア
リマセウケレドモ、今日デハ不動產ノ
所得デアツテモ、配當所得デアツテモ、
或ハ利子ノ所得デアツテモ、其ノ性質
ニ大ナル違ヒハ認メラレナイ、斯ウ云
フ時代デアツテ、此ノ勤勞所得ニ戰爭
ノオ蔭デ非常ナル增大ヲ來シタ者ガア
ツテモ利得稅ハ課カラナイガ、事業所
得營業所得デアレバ、小サナ一萬圓
カ二萬圓ノ所デモ利得稅ガ課カルト云
フ此ノ理論ガ成立タナイト同時ニ、決
戰下ノ今日ノ國民ノ生活ハ最低生活ノ
確保デアツテ、戰前ニテ所得者デアツ
タカラト云ツテ、其ノ人ノ稅金ヲ斟酌
シテ高級生活ヲ確保シテヤルトカ云フ
ヤウナ、サウ云フ旣得權ヲ保護シテヤ
ルト云プヤウナ必要ハナイノデアリマ
シン、今日ハ現在ニ於ケル其ノ人ノ所
得ノ總金額ガ擔稅力ノ標準デアリマス
カラ、戰前ニドンナ所得デアラウト構
ハナイ、其ノ總額ヲ目標ニ稅金ヲ課ケ
ル、隨テ其ノ利得稅ト云フ餘分ナモノ
ハ-利得稅ヲ免除シロト云フノデハ
アリマセヌ、此ノ利得稅トシテ課ケテ
アル稅率ヲ、綜合所得ノ累進率ノ中ニ
統合スルコトニ依ツテ、稅額ハ落サナ
イヤウニシテ、サウシテ其ノ所得ガ事
業所得ニ限ルト云フヤウナコトデナシ
ニ行ク方法ハナカラウカト思フノデア
リマス、營業稅ニ付キマシテハ、是一
昔ノヤウナ外形課稅主義ノ時代デアリ
マシタナラバ、國家ノ施設ヲ濫用シテ
無暗ニ取引ヲスル、之ヲ防止スルト云
フヤウナ意味合モアツタデアリマセウ
ケレドモ、今日ノ營業者ハ御承知ノ如
ク統制ノ下國家ノ配給機關トシテ働イ
テ居ルニ過ギナイ、而モ其ノ課稅ノ目
的ガ昔ノヤウナ取引高デナク、本當ノ
純益ヲ目標ニ課ケルノデアル、純益ヲ
目標ニ課ケルナラバ、其ノ純益ニ對ス
ル所得稅ノ一本ニ吸收シテシマツテ宜
イノデアツテ、外形課稅主義ナラバ營
業稅モ幾ラカ意義ガアルカモ知レマセ
ヌカ、純益課稅ナラバ別ニ營業稅トシ
テ殘ス必要ハナイ、是ハ寧ロ廢スルト
云フコトガ今日合理的デナイカト考ヘ
ラレルノデアリマス、此ノ二ツノ問題
ニ付テ御意見ヲ御伺ヒ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=18
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019・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 臨時利得稅ニ付キマ
シテハ、法人ニ付テハ旣ニ今日現在ノ
儲ケノ多イモノニ課稅ヲ致ス、斯樣ナ
方向ニ進ンデ居ルノデアリマスガ、ド
ウモ個人ニ付キマシテハ左樣ナ譯ニモ
行カズ、是ハ色々考究致サレタト思フ
ノデアリマスガ、ヤハリ從來通リ支那
事變前トノ間ノ儲ケヲ、今日依然トシ
テ對象トシテ課稅ヲ致シテ居ルノデア
リマス、ナゼ事業所得ニノミ課稅ヲス
ルカト云フコトデアリマスレバ、此ノ
戰時事變ニ當ツテ一番ボロ儲ケト申シ
シマスカ致スノハ、結局此ノ事業所得
デアル、斯樣ナ見地ニ基イテ居ルノデ
アリマシテ、外國ニ於キマスル戰時利
得稅モ〓ネ此ノ事業所得ノミヲ目的ニ
致シテ居ル次第デアリマス、此ノ課稅
法ヲ今日變更致ス時期デハナイカト云
フ御尋ネデアリマスガ、是ハ今後ニ於
テ能ク考究シテ見タイト思ツテ居リマ
ス、支那事變前ト云フト大分古ク相成
ツテ居リマスカラ、十分考究致シテ見
タイト思フノデアリマス
ソレカラ營業稅ノ御話デアリマスガ、
今日ノ營業稅ハ實ハ國デ取ツテ居リマ
スガ、全部道府縣市町村ノ收入ニ繰入
レテ居ルノデアリマス、此ノ道府縣市
町村ノ歲入トシテハ地租ト家屋稅、
ソレカラ此ノ營業稅ト云フモノガアツ
テ、表面ハ國デ取ツテ居リマスガ、實
ハ國ノ稅デハゴザイマセヌ、國ノ稅ト
シテハ此ノ前廢止ト云ヒマスカ委讓ト
云ヒマスカ、地方ニ委讓シテシマツタ
ノデアリマス、隨ヒマシテ是ガ課稅ノ
桂據ハ、道府縣市町村等ノ地方的ノ影
響ヲ相當受ケル、詰リ應益負擔ノ原則
ニ基イテ此ノ地租、家屋稅、營業稅ト
云フモノヲ其ノ道府縣市町村ノ收入ニ
致シテ居ルノデアリマシテ、國稅トシ
テハ今仰セノアル通リ、今日ハ意味ガ
ナイト思ツテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=19
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020・本多市郎
○本多(市)委員 更ニ御伺ヒ致シタイ
ト思ヒマスノハ、是亦嚴密ナル稅法ヲ
以テシテモ中々徹底的ニ徵稅ガ行ハレ
ナイ爲ニ、此ノ決戰下ニ非常ナ金持モ
出來テ居ルノデアリマスガ、之ニハ一
段課稅ノ徹底ヲ希望シテ已マナイ所デ
アリマス、特ニ此ノ一點ニ付テ御伺ヒ
致シタイト思ヒマスコトハ、此ノ企業
整備ノ後ニ於ケル軍需工場等ハ、御承
知ノ如ク國家ノ豐富ナル資金ヲ利用
シ、更ニ國家權力ニ依ツテ徵用工、學
徒マデモ動員シ、是等ノ人々ハ空襲下
ニ全ク國家ノ爲ニ挺身シテ働イテ居ル
ノデアリマシテ、此ノ關係カラ見マシ
テ、斯クノ如ク國家ノ力、國民ノ力ニ
依ツテ事業ヲ運營シ、サウシテ厖大ナ
ル利益ヲ收メタル者ガ、其ノ利益ガ無
條件ニ營業主體タル法人或ハ個人ニ歸
屬スルト云フコトデハ、今日ノ生產機
構ト致シマシテモ、思想的ニ見テモ、
洵ニ不健全ナ感ガスルノデアリマスガ、
之ニ付テ事業ノ國家管理ガ徹底スレバ
必ズ解決セラレル問題デアリマス、斯
クノ如キ利益ニ付テハ將來例ヘバ適當
ナル時期ヲ劃シテ、一線ヲ引イテ、大
東亞戰爭ノ始ツタ時トカ、或ハ企業整
備ノ時トカニ一線ヲ引キマシテ、其ノ
後ノ利益ト云フモノハ其ノ事業主體自
身ノ力ニ依ルコトバカリデナク、實ニ
國家權力ノ力ニ依ツテ利益ヲ擧ゲタノ
デアルカラ、一定ノ利率ニ基ク利潤以
外ハ、國家ニ將來歸屬セシムベキモノ
デアルト云フヤウナ方針ヲ決メテ置キ
マスコトガ、今日國民動員、學徒動員、
サウシテソレ等ノ人々ガ遺憾ナク働ク
上ニ於テ、思想的ニモ健全ナル制度ニ
ナツテ行ク所ノモノデアリマスガ、此
ノ點ニ對スル大臣ノ御所見ヲ御伺ヒ致
シタイト思ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=20
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021・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 今日ニ於キマシテ異
常利益ノアリマスモノニ付テ、相當高
率ノ臨時利得稅、所得稅等ヲ負擔サシ
テ居リアスコトハ御承知ノ通リデアリ
きく、ソレデ法人卽チ會社ニ付キマシ
テハ、三割超過致シテ居ル部分ニ付テ
ハ營業稅、法人稅、臨時利得稅等ヲ合
計致シマスレバ八八二%ヲ徵收スルコ
トニ相成ツテ居ルノデアリマス、又個
人ノ場合ニ於キマシテモ九五%ヲ稅ニ
依ツテ徵收ヲ致シテシマフ、斯樣ナコ
トニ相成ル譯デアリマスノデ、大體其
ノ目的ヲ達シテ居ルノデハアルマイカト
思ツテ居ルノデアリマス、相當所得ノ
多イ者ニアリマシテハ、何レニ致シマシ
テモ國ニ於テ相當ナ稅金トシテ之ヲ取
上ゲツヽアリマスコトハ、左樣ナル譯
ニ相成ツテ居リマスコトヲ御承知戴キ
タイト思フノデアリマス、更ニ將來ソ
レヲドウスルカ、斯ウ云フ問題ニ付キ
マシテハ、一ツ將來ノ問題ト致シマシ
テ、更ニ考究致スコトニ致シタイト思
ヒマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=21
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022・本多市郎
○本多(市)委員 私ハマダ質問ガゴザ
イマスケレドモ、大臣ノ御時間ノ都合
モアラレルコトト思ヒマスカラ、後ノ
機會ニ他ノ政府委員ニ御伺ヒスルコト
ト致シマシテ、大臣ニ對スル質問ヲ此
ノ程度デ打切リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=22
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023・勝正憲
○勝委員長 森田福市君発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=23
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024・森田福市
○森田(福)委員 私ハ增稅ノコトニ付テ
直截率直ニ御尋ネシテ見タイ點ガ數ア
ルノデアリマスガ、成ルベク大臣ニハ主ナ
ル點ダケニ止メテ置キタイト思ヒマス、
先ヅ今度御出シニナツテ居ル增稅ノ點
ニ付テデアリマス、歳出ノ財源ニ充テルコ
ト、購買力ノ吸收ノ一端、其ノ兩樣ノ爲
ニ增稅ヲシタノデアルト云フコトハ御說
明ニモアツタシ、又我々モサウ考ヘテ
居リマスガ、稅制ノ改革ヲヤラズニ增
稅ヲヤラウトセラレタ爲ニ、稅率ノ增
徵ダケニ止ツテ居ル爲ニ、眞ノ增稅ノ
目的ガ達セラレヌノデハナイカト云フ
疑ヒヲ持ツテ居ルノデアリマス、今本
多君カラモ屢〓、御話ガアリマシタガ、分
類所得稅ダケノ增率、要スルニ主トシ
テ月給、配當金、預金利子、公債利子
ト云フヤウナ方面ノミヲ狙ツタ形ニナ
ルノデアリマスガ、增收ヨリモ購買力
ヲ吸收スル意味ニハ私ハ全然トハ申
シマセヌガ、ナリ兼ネルノデハナイカ、
月給取トカ今私ガ申上ゲタヤウナモノ
ハ、本當ヲ言フナラバ餘リ浮動購買力
ニハナツテ居リマスマイ、ソレハ新興
階級ノ方面カラ、今ノ稅法デモ取レヌ
コトハナイケレドモ、併シ今ノ儘デハ
難カシイノデハナイカ、今日新興階級
ト云フコトヲヨク世間デ申シマスガ、
我々ガ世間ニアツテ見テ居ツテ、非常
ナ所得ヲ得テ居ルモノデアラウト云フ
ノハ、仲立業ト云フカ仲介業ト云フカ、
此ノ稅法ニアル看板ヲ揭ゲテ居ラヌモ
ノデ、時局ノ關係上工作機械ナドノ賣
買斡旋ヲシテ居ル者ナドト云フモノハ非
常ナル利益ヲ得テ居ルガ、勿論是ハ企
業許可令ニ依ル許可ヲ受ケテヤツテ居
ルノデナイカラ、稅ヲ取ツテ居ナイ、
同ジ日給、月給ヲ取ツテ居ル者デモ、
自由勞働者トカ職工、工員ナドデモ、
大體今日ハ普通ノ基本賃金ニ付テ分類
所得稅ヲ取ツテ居リマスガ、ソレハ基
本ノ仕事ヲ與ヘテ、ソレカラ先ハ請負
制度ニスル、三十圓、四十圓取ルノハ
基本賃金以外デアリマス、隨テソレハ
別ニ此ノ所得稅法ノ請負業ニ入ツテ居
ル譯デモナイカラ、分類所得稅ヲ取ツ
テ居リマセヌ、要スルニ增稅ノ狙ヒ所
ガ聊カ的ガ外レテ居ルノデハナイカ、
月給トカ配當トカ、今マデアル以外ノ
所ヲ狙ハナケレバナラナカツタノヂヤ
ナイカト思ヒマス、ソレニハ稅制ノ改
正ヲヤラナケレバ出來ナイト思ヒマス
ガ、其ノ點ニ付テハドウ御考ヘニナツ
テ居ルノデゴザイマセウカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=24
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025・石渡莊太郎
○石渡國務大巨 只今、新興階級ヲ狙フ
ベキデアルノニ的ガ外レテハ居ナイカ
ト云フ御尋ネデアリマス、此ノ新興階
級ト普通言ハレテ居リマスモノハ二段
ニ分レルカト思フノデアリマスガ、何
レニ致シマシテモ現行法ニ依ツテ課稅
サルベキ人々デアリマシテ、先般豫算
總會ニ於テ御尋ネノ際ニモ、所謂新興
階級ニ對スル所ノ課稅ト云フモノハ、
稅法ノ問題デモ稅制ノ問題デモアリマ
セヌ、ソレハ稅務行政ノ問題デアル、
卽チ實際上ノ問題デアル、實際ニ其ノ
人ヲ抑ヘテ課稅シテ行クカドウカト云
フ所ノ行政ノ面ニ於ケル問題デアルト
云フコトヲ御答ヘ致シタノデアリマス、
ソレデ今アナタノ御擧ゲニナツタヤウ
ナモノモ、是ハ何レモ課稅サルベキモ
ノデアリマス、又今日稅務署ニ於テ課
稅致シテ居ルモノモアルト思フノデア
リマス、唯多クノ場合ニ於キマシテ、
率ガ分ラナイト云フコトノ結果ガ課稅
ヲ受ケナイ、稅金ヲ納メナイト云フコ
トニナツテ居ルノデアリマス、ソレニ
付テハ、昨年自由勞務者ニ付テハ源泉
課稅ノ方法ヲ講ジマシテ、雇ツタ者ガ
金ヲ拂フ時ニ引ク、斯ウ云フヤウナコ
トニ改正ヲ致シタノデアリマス、左樣
ナコトニ於テ自由勞務者ノ一部ハ實際
ニ課稅ヲ受ケルコトニ相成ツテ來テ居
ルノデアリマス、是モ世ノ中デ批判ヲ
致シマスニハ、左樣ナモノニ源泉課稅
ヲスルモノダカラ、結局本人ガ出サズ
ニ親方ガ拂ツテシマフヂヤナイカ、ソ
レデハ幾ラ稅金ヲ取ツテモ「インフレ」防
止ニハナラヌ、斯ウ云フコトヲ言ツテ
居ル者モゴザイマス、一部ニハ左樣ナ
モノモアルカト存ジマスガ、併シソレ
ハ政府ノ目的ト致シテ居ル所デハゴザ
イマセヌ、卽チ左樣ナ源泉課稅ヲスレ
バ本人ニ拂フ賃金カラ引クト云フ建前
ニナツテ居ルノデアリマスガ、實際上
ノ負擔ガ本人ニ歸サナイ、是ハ勞務行
政上ノ實際問題トシテハ中々難カシイ
所ガアルカト思フノデアリマシテ、稅
法ノ改正等ニ付テモ色々考ヘテ見マシ
タガ、中々旨イ案ガゴザイマセヌ、結
局今日考ヘテ居リマスコトハ、要スルニ
各方面カラ色々ナ資料ヲ集メマシテ、
サウシテ勞報、產報各方面トモ十分ニ
連絡ヲ執ツテ、サウシテ其ノ所得ノ實
體ヲ捉マヘニ掛ラウ、斯樣ナ考ヘ方ヲ
致シテ居ル次第デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=25
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026・森田福市
○森田(福)委員 今大藏大臣ガ御答辯
ニナツタヤウニ、自由勞働者ナドハ、
大體防空壕ヲ掘ルノニ日傭稼ギノ者ヲ
一日傭ツテモ、ソレハ全部傭主ノ負擔
デス、今日自分ガ負擔シテナラ來ナイ、
ドウシテモ稅ハソチラデ持ツテ吳レ、
ソレダケハ賃金ヲ高クト云フコトニナ
ツテ居リマスカラ、購買力ノ吸收ニモ何
ニモナラヌ、私ハサウ云フ方面ノ意味
カラデナク、要スルニ賃金トシテ分類
所得稅ヲ會社ヤ工場ヤ請負者一般ノ方
面デ引イテ居ル、賃金ハ基本賃金ノ方
ヲ引イテ居ル、サウシテソレヨリ餘分
ニ作ツタモノノ請負賃金ニ對シテハ引
イテ居ナイ、ソレカラサウ云フ方面ノ
浮動購買力ヲ吸收シヨウト云フノニハ、
今ノヤウナ月給取バカリヲ相手ニシ
タ增稅デハ目的ハ達シラレヌノデハナ
イカト云フ意味ヲ私ハ御尋ネシタノデ
ス、ソレカラ今ノ大藏大臣ノ御話ハ分
ツテ居リマスヨ、分ツテ居ルガ、實際
ニハ何等購買力ノ吸收ニハナツテ居ラ
ヌ點ヲ私ハ御話シヨウト思フ、要スル
ニ大藏省ノ考ヘト云フモノハ、通貨ガ
膨脹スル、之ヲ貯蓄ト稅ニ依ツテ囘收
シヨウト云フ御考ヘナノデアリマスガ、
其ノ根本ヲ私ハ改メテ行カナケレバナ
ラヌト思ヒマス、稅ト貯蓄ニ依ツテ囘
收スル必要ノナイヤウナ考ヘヲオヤリ
ニナツテハドウカ、卽チ公債ヲ澤山發
行スルカラ通貨ガ膨脹スル、併シ公債
ヲ發行シナケレバ戰爭ガ出來ヌト仰シ
ヤルデセウガ、今日ハ統制經濟ノ世ノ
中デアリマスカラ、軍需品ノ如キモノ
デモ單價ノ切下ヲヤリサヘスレバ宜
イ、單價ノ切下ヲヤツテ、ソレダケ公
債ヲ少ク發行スル、要スルニ此ノ生キ
ルカ死ヌルカト云フ戰爭ヲヤツテ居ル
時ニ、國民ニ貯蓄ノ餘裕ヲ與ヘルヤウ
ナ、所謂儲ケサス、收入ノ增加ヲ圖ル
ト云フ觀念ヲ捨テテシマハナケレバイ
カヌノヂヤナイカ、働ク者モ賃金本位
デ働クカラ、作ル品物ニ魂ガ入ラヌカ
ラ良イ物ガ出來ヌ、要スルニ大藏省ガ
元締デ、大藏省ノ方面ニ於テ全部統制
ニナルノダカラ、ソシテ注文スルモノ
ハ軍需以外ノモノハ殆ド生產ハナイ、
直接カ間接カ皆軍需ニ關係ガアリマス
テ、軍需品ノ注文ノ單價ヲ相當切下ゲ
テ行クコトニ依ツテ、工員其ノ他ノ者
ノ賃金モ下ツテ行ク譯デス、サウシテ行
ケバ貯蓄ヲセイトカ、或ハソレヲ稅ニ依
ツテ搔キ集メルトカ、右ノ手デ通貨ヲ
バラ撒イテ置イテ、左ノ手デソレヲ拾
ツテ步カウトスルノガ今日ノヤリ方デ
アルガ、ソレハ到底ヤリ切レルモノデ
ハナイ、給料ノ如キモノデモ、今囘月
給取、會社銀行員ノ百分ノ十五ノモノ
ガ十八ニナツテ、三上リマシタ、併シ
會社經理統制令デハ御承知ノ通リ百五
十圓以下ノ者ガ一割、百五十圓以上ノ
者ハ七分ノ昇給デス、其ノ平均昇給カ
ラ考ヘテ見ルト、物價ノ上リニハ關係
ナクシテ、簡單ニ計算シテ見ルト、大
藏省ガ今度分類所得稅ヲ三上ゲル、煙
草ヲ日ニ七本配ツテ居ルカラ、之ヲ月
ニ二十箱ト假定スレバ、是ガヤハリ三
圓餘リ上ツテ來ル、サウスルト大體平
均昇給ダケハ全部煙草ト分類所得稅デ
濟ンデシマフカラ、本當ノ昇給ハ一文
モナイコトニナル、デアルカラ私ハ、
サウ云フ月給取方面ニノミ此ノ分類所
得稅ヲ上ゲテ、此ノ方面バカリヲ相手
ニシタ增稅デハ目的ハ達セラレヌ、サ
ウ云フ方面デハナク、一般ノ新興ト云
フノハドウデアルカ知ラヌガ、兎モ角
モ近來色々ナコトデ-早イ話ガ內地
人ニハ少イト思ヒマスガ、內地人デナ
イ者デ、闇ナドノ取引ヲヤツテ隨分儲
ケテ、銀行預金ガ殖エテ居ル者ガアル、
斯ウ云フ者ニ對シテハ、當然分類所得
稅モ綜合所得稅モ課ツテ居ラヌコトハ
分ツテ居ル、勿論檢擧サレタ者モアル
ガ、ソレハ其ノ中ノホンノ何百分ノ何
萬分ノ一カ分ラヌ狀態ニナツテ居ルカ
ラ、今言フ物價ナドデモ値段ハ幾ラデ
モ宜イカラ買フト云フノハ大抵サウ云
フ方面ノ人デス、隨テ貯蓄ト云フカ、
稅ト云フカ、サウ云フ方面カラ購買力
ノ吸收ヲシテ掛ラネバイカン、私ノハ
狙ヒ所ガ違ツテ居ル、月給取バカリヲ
相手ニシタリ、株式配當金、公債ノ利
子、預金ノ利子ト云フヤウナモノニノ
ミ目標ヲ置イタ今囘ノ增稅ハ、增收ノ
目的ハ達セラレルガ、購買力吸收ノ目的
ハ達セラレヌノデハアルマイカト云フ
コトヲ御尋ネシテ居ルノデアリマス、
目的ノ半バハ私モ同意シテ居ルガ、後
ノ方ニハ大藏大臣ハ同意デアリマスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=26
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027・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 購買力ノ吸收トシマ
スト、今囘分類所得稅、酒デアリマス
トカ其ノ他購買力吸收ヲ主ニシテ狙ツ
タ稅モアルノデアリマス、此ノ分類所
得稅ノ增稅ハ、一面ニ於キマシテハ國
庫ノ收入ヲ圖リ、又一面ニ於テハ購買
力ノ吸收策ト致シテ居ルノデアリマス、
森田君ハ、國庫ノ收入ヲ圖ルコトハ分
ルガ、分類所得稅デ購買力ノ吸收ヲス
ルト云フコトハ分ラナイト仰セラレマ
シッ、併シナガラ分類所得稅ハ一切ノ
所得ニ課稅ヲ致シテ居ルノデアリマシ
テ、決シテ今アナタノ言ツテ居ラレルヤ
ウナ低額ノ月給取、利子配當ダケデハ
ゴザイマセヌ、今私ガ場合ニ依ツテハ
少シ違ツタ道ヲ步イテ居ルヤウナコト
モ申シタノデアリマスガ、卽チ自由勞
務者カラモ昨年五千萬圓徵收致ス豫定
デアリマシタガ、實ハ一億圓ノ源泉課
稅ヲ致シテ居ルヤウナ次第デアリマス、
其ノ中ニハ今アナタノ仰シヤツタヤウ
ニ、本人ガ負擔シナイデ、其ノ稅金ヲ
第三者ニ負擔致サセテ居ル者モゴザイ
マセウガ、又本人ガソレヲ負擔シテ居
ル者モ相當アルト云フ調ベニ相成ツテ
居ルノデアリマスカラシテ、此ノ分類
所得稅ガ、浮動ト云フ言葉ハ良イカ惡
イカ分リマセヌガ、浮動購買力ノ吸收
策トシテ效果ガナイト仰シヤルアナタ
ノ御言葉ニ對シテハ、遺憾ナガラ御同
意致シ兼ネルノデアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=27
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028・森田福市
○森田(福)委員 ソレハ提案ナサツタ
ノダカラ同意ハ難カシイカモ知レマセ
ヌガ(笑聲)併シナガラ今ノ物價高ヲ呼
ンデ居ル購買力ノアル方面ハ-併シ
ナガラ私ノ見ル所デハ、高給ヲ取ツテ居
ル人ハ別デアリマスガ、普通一般ノ大
衆月給取ハ、今ノ購買力ガアリ過ギテ
物價高ヲ呼ブ程物ヲ買フ力ハアリマセ
ヌ、殊ニ會社銀行員ハ役人ヨリモ昇給
率ハ少イノデアリマス、アノ會社經理
統制令ハ今度オ變ヘニナル考ヘガアリ
マスカアリマセヌカ、今度ノヤウニ稅
ガアンナ風ニナツテ來ルト、今度ノ百
分ノ七トカ、百分ノ十トカ云フモノハ、
事實ニ於テハソレダケ昇給セヌコトニ
ナル、所ガ物價ノ上ガル方ハ、此處ニ
アナタノ方カラ御出シニナツテ居ル物
價指數ガアリマスガ、此ノ物價ノ指數
ハ卸賣ハ明治三十三年十月ヲ一〇〇ト
シ、小賣ハ大正三年ヲ一〇〇トシタ指
數デアルナラバ、昭和十九年ノ十二月
ナドハ卸賣ガ四四一、小賣ガ三〇〇幾
ラトナツテ居リマスガ、ソンナ三倍ヤ
四倍ノ物價高デナイ、是ハ公定價格ヲ
御出シニナツタノデスカ、所謂公價ナ
ラバサウカモ知レヌガ、實際ノ國民ノ
使ツテ居ル金ハ民價デアリマス、闇デ
アリマス、其ノ物價高ト云フモノハ三
倍ヤ四倍ヂヤナイ、サウデアルナラバ
今ノ會社經理統制令ト云フモノハ撤廢
ヲスル方ガ宜イノデハナイカト思フ、
イツソ撤廢シテシマツテ無クサス、サ
ウデナケレバ、何トカ名目ヲ付ケテヤ
ラヌト、實際生活ガ出來ナイ、今ノ昇
給率デハ物價ト稅ノ上ツテ行ク方ガ早
イ、要スルニ分類所得稅ヲ上ゲテ行ク
給料ヲ上ゲテ行クト云フ追ツ掛ケゴツ
コデハナイカト私ハ考ヘル、追ツ掛ケ
合ヒヲヤツテ居ル、稅ト物價ノ騰貴デド
ウシテモ收入ヲ多ク與へテヤラナケレ
バナラヌ、ソコデ政府デモソレヲ御考
ヘニナツテ賞與モ中間ニオ渡シニナツ
テ居ル、從來ナラバ年ニ一囘ダツタノ
ガ、半期ニ一囘ヅツヤルヤウニナツタ、
詰リ稅ヲ取リ、物價ヲ上ゲテ行クカラ
生活ガ困難ニナリ、生活ガ困難ニナル
カラ賞與ヲヤツタノデ、私ノ考ヘデハ、
此ノ方面ノ者ニハ浮動購買力ナドア
リハシナイ、サウスルト增稅ノ目標ガ
違ツテ來ハシナイカト思フ、是ハ一旦
アナタ方デ出サレタノダカラ固執ナサ
ルノハ御尤モデアリマスガ、能ク〓究
シ、能ク考ヘテ見タナラバ、私ノ言フ
ヤウニシテモ立派ニ其ノ目的ノ半バハ
達セラレルノデハナイカト私ハ內心思
フノデスガ、如何デスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=28
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029・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 此ノ經理統制令ヲ變
ヘテ增稅ニ對應セシムル考ヘヲ持ツテ
居ルカト云フ御話デアリマスガ、左樣
ナ考ヘハ持ツテ居リマセヌ、稅金ハ稅
金デ、稅ノ上リマスト云フコトハ、是
ハ一面ニ於テ國庫ノ收入ヲ圖リマスト
同時ニ、購買力ノ吸收ヲ致ス、斯ウ云
フ所カラ來テ居ルノデアリマシテ、本
人ノ收入ガ此ノ稅ノ爲ニ減少スルト云
フヤウナコトモ已ムヲ得ザルコトデア
ルト思フノデアリマス、ソレヲ月給ヲ
上ゲテ行ク、サウシテ又稅デ取ル、月
給ヲ上ゲテ行ク、稅デ取ル、是デハ詰
リ物價騰貴ノ所謂「インフレ」ニ依ル所
ノ惡循環トナル次第デアリマスノデ、
左樣ナコトハ致シタクナイト思ツテ居
ル次第デアリマス、アナタノ今仰シヤ
ツタ中ニハ幾多傾聽スベキ御意見ヲ含
ンデ居ルト思ツテ居リマスケレドモ、
此ノ惡循環ヲ防グト云フコトガ戰時ニ
於キマスル政府ノヤハリ最大ノ要務ノ
一ツデアルト存ジテ居リマス、隨ヒマ
シテ增稅ノ爲ニ此ノ方面ニ於ケル所ノ
循環ヲ來サシメナイコトニ付テハ、萬
全ノ配意ヲ致シタイト存ジテ居ル次第
デアリマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=29
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030・森田福市
○森田(福)委員 此ノ問題ハサウシツ
コク問ウテモ要領ヲ得ヌカラ、モウ聽
キマセヌガ、私ノ言フコトハ、今ノ大
部分ノ月給取ハ浮動購買力ヲ持ツテ居
ナイト云フコトデス、官吏ノ方ノコト
ハ詳シク知ラヌガ、會社員トカ銀行員
トカ一般ノ其ノ他民間ノ安イ月給取ハ、
アナタガ心配ナサルヤウナ購買力ナド
ハ到底持ツテ居ラヌ、今日ハ前借ヲシ
ナケレバヤツテ行カレナイヤウナ狀況
ニナツテ居リマス、ソレハ我々ハ幾多
ノ方面ノ事業ニ關係シテ居ルノデ相當
事情ハ知ツテ居ルガ、若シサウデナケ
レバ、渡切リト云フヤウナコトデ、色々
ナ名目デ手當ヲヤツテ、合法的脫法
行爲デモヤレバ別問題デアリマスガ、
サウデナカツタナラバ、其ノ方面ニ今
度ノ分類所得稅ヲ三上ゲタト云フコト
ハ、私ニハ或ハ會社經理統制令ノ內容
ヲ解セヌノデハナイカトモ認メラレル、
本當ノ昇給ト云フモノハ百五十圓以上
ノ人ガ百分ノ四、百五十圓以下ノ人ハ
百分ノ七ニナル、是デハ物價高ノ今日
到底ヤツテ行カレル筈ガナイ、其ノ點
ニ思ヒヤリガナイノダト云フコトナラ
バ、私ハ彼此レ追究シマセヌガ、此ノ
方面ニハ購買力ガアルドコロデハナ
イ、ナサ過ギテ困ツテ居ル、或ル方
面-惡イコトヲシタリ色々ナコトヲ
ヤツテ儲ケテ居ル方面、或ハ新興所得者
カラ稅制ヲ改正シテ取ツテ、サウシテ
斯ウ云フ取ラヌデ宜イ所カラ取ツタ、
唯大藏省ノヤツテ居ルコトハ、取リ易
イカラ之ニシヨウト云フコトニ盡キル
ノデアリマス、ソレハ簡單デス、稅率
サヘ書變ヘテ行ケバ增收ガ出來ルノデ
アリマスガ、本當ノ目的ハ達セラレヌ
ダラウト云フコトヲ言ツタノデアリマ
ス、其ノ邊ニ付テ一ツ御考慮ヲ願ツテ
置キマス
ソレカラ此ノ戰時ニ際シテ現在ノ制
度ハ如何ニモ私ハ複雜多岐ニ亙ツテ居
ルト思フ、今囘ノ如キ多少整理セラレ
マシタガ、大體根本ハ平時ノ稅制デア
リマス、大體ハ平時ノ稅制ニ異ナツテ
居ラヌ、斯ウ云フ納メル方モ取ル方モ
人手ガ不自由デ困ツテ居ル時ニ、法人
稅ヲ一ツ屆ケルニシテモ、個人ノ所得
稅ヲ屆ケルニシテモ、色々ナモノヲ引
イタリ加ヘタリシテ居ル、個人ノ稅デ
簡單ニ申上ゲルナラバ、公債ノ利子ヲ
所得カラ引キ、或ハ分類所得稅ヲ引キ、
ソレヲ加ヘテ又之ニ稅率ヲ掛ケテ行ク、
是ハ玄人ナラバ出來マスガ、素人デハ
中々出來ヌコトデアリマス、私ハ斯ウ云
フ方面カラ見テモ、多種多岐ニ亙ツテ居
ル此ノ稅ノ種類ヲ相當ニ整理ヲシテ、
單純ニシテシマツテ、アレヲ引ク、之
ヲ引クト云フコトヲシナイデ-引ク
方ノモノデモ、今本多君モ話サレタヤ
ウデアリマスガ、通行稅ノ如キモサウ
デス、是ハ鐵道省ガ特別會計カラ一般
會計ニ通行稅ニ相當スル額ヲ納メサヘ
スレバ宜イ、今日ハ特別會計ヲ殘サレテ
置クコトスラ私ハヲカシイト思フ、本
當ハ一本ニシテシマツタラ宜イ、併シ
特別會計ヲ殘シテ置カレルトスレバ、
鐵道省ノ特別會計カラ一定ノ通行稅ト
シテ取ラウト思フダケノ金ヲ取ツテ、
汽車賃ヲ髙クスレバ宜イヂヤナイカ、
私ハ昨日或ル驛ノ驛長ノ話ヲ聽イタノ
デアルガ、アレニ關係シテドウモ大變
ナ人手ガ掛ルト云フコトデアリマス、
其ノ他法人稅ノ査定ナドガ遲レルト云
フノハ、稅務署員ノ話ニ依ルト、面倒
デ迚モイカヌ、是ガ溜ツテ來ルノハ稅
法ガ年々變ル、稅率ガ變ル、法人ニ課
ケルノニモ十五年ノ時ニハ十五年ノ規
則ヲ出シテ揃ヘナケレバナラヌ、十六
年ニハ十六年ノ規則ヲ出シテ揃ヘテ行
ク、頭ヲ時々變へテ行カナケレバナラ
ヌカラデアル、ドウモ臨時議會ガアル
カナイカハ知ラヌガ、私ハ此ノ戰時稅
制對策ト云フコトヲ考ヘテ、政府ハ急
速ニ之ヲオヤリニナル御考ヘハナイカ、
サウシテ頗ル單純ニシテ徵稅モ納稅
モ-株式配當ノ如キモ源泉課稅デ行
ケバ宜イ、國家ノ收入ハ現在以上ニナル
ヤウニシテモ宜イカラ、源泉課稅デ行
ケバ一本デ行ケル、總テヲ源泉課稅一
本デ行ツテ、國家ノ收入ハ現在ヨリ以
上取ルヤウニシテ、成ベク手間暇ガ、
納メル方モ取ル方モ掛ラヌヤウニス
ルコトガ今日最モ必要ナコトデハナイ
カト考ヘラレル、ソコデ斯ウ云フ時局
デアルカラ根本ノ戰時稅制ヲ改正スル
御考ヘハアリマセヌカ、ドウデスカ発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=30
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031・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 大分簡單ニ致シタ積
リデゴザイマス、只今森田サンガ仰シ
ヤツタヤウナ法人ノ課稅決定モ遲レル
ノデアリマスカラ、今囘ハ會社ガ決算
ヲシマシテカラ、二箇月以內ニ自分デ
稅金ヲ納メルコトガ出來ルト云フコト
ニ相成ツテ居ルノデアリマス、隨テ其
ノ時ニ稅金ヲ納メテシマヘバ、會社ハ
モウソンナ何年前ノ稅法ナンカヲ引張
リ出サナイデモ濟ムカト思ツテ居ルノ
デアリマス、出來ルダケ簡單ニ致シテ
行キタイト思ツテ居リマスコトハ全ク
御同感デアリマス、今囘モ少シ稅率ア
タリノ上リ下リ、凸凹ガアルノデアリ
マスガ、預金等ノ利子ニ對シテモ出來
ルダケ簡單ニスルヤウニ計ラツタ積リ
デゴザイマス、餘リ簡單ニ致シマスト、
實ハ負擔ノ衡平ノ原則カラ大分離レテ
來ルノデアリマシテ、今アナタノ仰シ
ヤツタヤウニ、株式ハ總テ源泉課稅一
本デ、綜合課稅ハ廢メテシマヘト云フ
コトハ、簡單ニハナルノデアリマスガ、
同時ニ負擔ノ公正トハ大分遠クナツテ
來ルノデアリマシテ、左樣ナコトハ
是ハ餘程考へ物ダト思フノデアリマス、
隨ヒマシテ稅ノ簡素化ト云フコトモ自
ラ限度ガアルト思フノデアリマス、其
ノ限度內ニ於キマシテ、出來ルダケ簡
單ニシテ行クト云フコトニハ贊成デゴ
ザイマシテ、今後トモ左樣ナ方向ニ進
ンデ行キタイト存ジマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=31
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032・森田福市
○森田(福)委員 今ノ澤山ノ配當金ヲ
貰フ人ト少イ人トヲ同率ニ取ルコトハ
イカヌ、所謂綜合所得ニ關係スルカラト
云フ意味デアリマスガ、預金ナドデモ、
預金カラ分類所得稅ヲ取ル前ニ、預金
ノ利子ヲ下ゲテ銀行カラ納メサセタラ
ドウデスカ、預金ノ利率ヲ下ゲル、公債
ノ如キモ中々手數デス、アナタ方、大
臣初メ大藏省ノ連中ハサウ手數ハ掛ラ
ヌデセウガ、銀行ナドト云フモノハ非常
ナ手數ガ掛カル、公債モ分類所得稅ヲ
取ルダケ利子ヲ下ゲタラドウデスカ、
ソレガ一番簡單デ宜イト思フ、銀行ノ
場合モ分類所得稅ガ元本五千圓以下ノ
モノハ安イ、五千圓以下ナラ一行一店
ニ付キ五千圓マデハ宜イ、ソコデ銀行
ノ方ハ預金ヲ吸收スル策トシ、支店ヲ
二十持ツテ居レバ、十萬圓アツテモ、
五千圓ヅツデ宜イ、用紙ノナイ時ニ是
ハ非常ナ馬鹿ゲタコトヲヤツテ居ルダ
カラ根本的ニ預金ニ對スル分類所得稅
ハハ貯蓄ノ目的ヲ達スル意味カラモ廢
メタラ宜イ、併シ廢メタラ國家ノ收入
ニ不足ヲ來スト云フナラバ、ソレダケ
利子ヲ下ゲテ、下ゲタ額ダケ銀行カラ大
藏省ヘ一本ニシテ納メルト云フヤウニ
スレバ宜イ、今ノ定期預金トカ色々ナモ
ノニ使ツテ居ル用紙ノ節約モ大分出來
ルノデハナイカ、從來ハ通知ノ紙マデ
ヤツテ居ツタ、ソレヲ今ハ大藏省カラ
通牒ガアツタト云フノデヤツテ居リマ
セヌガ、唯一店デ五千圓ト云フ限度ガ
アル、支店ヲ持ツテ居ルモノハ支店名
義デヤツテ居ル、合法的デアルカラ皆
ヤツテ居ル、サウ云フ點カラ見テモ、
手數、紙ヲ今日消費スベキモノデナイ、
ソレハ要スルニ貯蓄ノ意味ニ於テ預金
ノ吸收ヲサス爲ニ奬勵ヲシテ居ルカラ、
預金ノ勸誘ヲヤル、ソコニ稅ト云フモ
ノニサウ云フ面倒ナ等差ガアル、本
ナラ問題ハナイ、ダカラ斯ウ云フ問題
ナドモ總テ國ノ收入ニヨリ以上ノ收入
ヲ來タサヌヤウニ、預金ノ利子ヲ下ゲ
テ行クコトヲ考ヘテ行キサヘスレバ宜
イ、簡素化シテ行クコトハ澤山アルト
思フノデアリマス、私ノ今日ノ質問ハ
コヽデ打切リマスガ、其ノ點モ尙ホ考
ヘテ行ケバ極ク單純ニ行クノヂヤナイ
カト云フ考ヘヲ持ツテ居リマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=32
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033・石渡莊太郎
○石渡國務大臣 銀行預金ノ課稅ニ付
キマシテハ、今度ハ大分簡素ニ致シタ
積リデアリマスガ、只今アナタノ御話
ニナリマシタ五千圓以下ノモノニ對ス
ル低イ稅率ハ殘ツテ居リマス、是ハ元々
免稅カラ出發致シタモノデアリマス
カラ、實ハ課稅ヲ致スト云フコトニ付
テ相當躊躇致シテ居ツタノデアリマス、
今日是ダケノ負擔ニハ相成ツテ來テ
居リマスガ、實際上トシテハ、今アナ
タノ仰シヤツタヤウナ銀行ノ支店每ニ
分ケテ課稅ヲ低ク致シテ居ルト云フ事
實ガ相當アルカトモ存ジテ居ルノデア
リマス、併シアナタノ今仰シヤツタヤ
ウナ、利子ヲ引下ゲテ是ガ簡便ニ行ク
カドウカト云フコトニハ、相當私ハ疑
ヒヲ持ツテ居ルノデアリマス、將來篤
ト考究ハ致シマスガ、簡便ニ行クカノ
如クシテ却テ複雜ニ相成ル所モ出來テ
來ハセヌカ、殊ニ銀行ノ利子ノ問題ニ
相成ツテ來マスト、政府ガ增稅ノ度ニ
利子ヲ上ゲタリ下ゲタリスルト云フコ
トモ、是ハ中々大キナコトデハナイカ
ト存ジテ居ルノデアリマス、併シ折角
御意見モゴザイマスノデ、篤ト考究致
スコトニ致シマス発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=33
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034・勝正憲
○勝委員長 本日ハ是ニテ散會致シマ
ス、明日ハ午前十時ヨリ開會致シマス
午後四時三十五分散會発言のURL：https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008611587X00219450124&spkNum=34
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