1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
戰時民事特別法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)(第二三號)
會社等臨時措置法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)(第二四號)
司法官試補及辯護士試補たる資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付)(第二五號)
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昭和二十年一月三十日(火曜日)午前十時二十八分開議
出席委員左の如し
委員長 金井正夫君
理事 伊藤清君 理事 南雲正朔君
理事 信正義雄君
江口繁君 清瀬一郎君
菊地養之輔君 佐久間渡君
田村みのる君 谷原公君
桃原茂太君 山田竹治君
山本芳治君
出席政府委員左の如し
司法政務次官 中井一夫君
司法參與官 伯爵 徳川宗敬君
司法省民事局長 齋藤直一君
司法省刑事局長 船津宏君
司法省刑政局長 正木亮君
司法省調査官 佐藤藤佐君
司法書記官 堀内信之助君
司法書記官 辻朔郎君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
戰時民事特別法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
會社等臨時措置法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)
司法官試補及辯護士試補たる資格の特例に關する法律案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=0
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001・金井正夫
○金并委員長 只今カラ戰時民事特別
法中改正法律案外二件ノ委員會ヲ開キ
やっ、先ヅ政府當局ノ御說明ヲ願ヒマ
グ
ス-中井政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=1
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002・中井一夫
○中川政府委員 本委員會ニ御付託ニ
ナリマシタ三案ニ付キマシテ司法大臣病
氣缺席ノ爲メ、私ヨリ提案ノ理由ヲ御說
明申上ゲマス、先ヅ戰時民事特別法中
改正法律案ニ付キマシテ申述ベマス、
司法ノ部門ニ於キマシテモ大東亞戰
爭進展ノ段階ニ應ジ、特別法ノ制定竝
ニ之ガ改正ト、數次ニ亙ル特別ノ措置
ヲ講ジテ參ツタノデアリマスガ、最近
ノ諸情勢ニ鑑ミマシテ、民事司法ノ上
ニ若干ノ簡素化ヲ圖ルノ必要ヲ認メ、
玆ニ戰時民事特別法ニ若干ノ改正ヲ加
ヘントスルモノデアリマス、其ノ要點
ハ大體次ノ如クデアリマス
第一ハ民事訴訟ニ於テ、口頭辯論又ハ
準備手續ノ期日ニ、當事者雙方ガ出頭
セズ、又ハ辯論若シクハ陳述ヲ爲サズ
シテ、退廷スルコト、卽チ所謂休止ヲ爲
スコト二囘ニ及ビマシタトキハ、訴ノ取
下アリタルモノト看做サントスル點デ
アリマス、第八條ノ二ガ之ニ當リマス
現行法ニ於キマシテハ、休止ノ囘
數ニ何等ノ制限ナク、唯休止後三月內
ニ期日指定ノ申立ヲ爲サナイ場合ニ於
テノミ、訴ノ取下アリタルモノト看做
サレルノデアリマスガ、實情ニ於キマ
シテハ、休止ト期日指定ノ申立ノ交互
反覆ヲ爲シ、訴訟ノ實體ハ進行遲々タ
ル事件ガ尠カラズ存在シテ居リマス、
斯クノ如キハ、裁判所、當事者共ニ此
ノ決戰下勞力等ノ浪費ヲ重ネ、紛爭解
決ハ、却テ遷延スルト云フ極メテ好マ
シカラザル結果ト相成リマスノデ、此
ノ弊ヲ矯メント致サントスルノデアリ
ママ、併シナガラ、他面空襲其ノ他ノ
災害等、當事者ノ責ニ歸スルコトノ出
來ナイ事由ニ因ツテ出頭スルコトノ出
來ナカツタ者ガ、右ノ效果ヲ受ケマス
コトハ、頗ル酷デアリマスカラ、斯カ
ル當事者ハ、當該事由ノ止ミタル後一
週間內ニ期日指定ノ申立ヲ爲セバ訴
ノ取下ト看做サルヽコトナク、手續ヲ
續行シ得ルモノト爲サムトスルノデア
リマス
第二ハ除權判決ノ前提タル公示催告
ニ關スルモノデアリマシテ、第十一條
ノ二ニ當リマス、喪失シタ手形株劵其
ノ他法律ニ於テ無效ト爲シ得ベキコト
ヲ定メタル證書ノ無效宣言ノ爲ニスル
公示催〓ノ期間ハ、民事訴訟法第七百
八十三條ノ特別規定ニ依リ、六箇月ト
定メラレテ居ルノデアリマスガ、空襲
等ニ基因スル災害ニ因リ、是等ノ證書
ノ滅失ノ危險ガ增大シテ來マシタ今
日、此ノ期間ハ長キニ失スルト考ヘラ
レマスノデ、右特別規定ノ適用ヲ排除
シ、同法第七百六十七條ノ一般規定ニ
依リ、二箇月トセントスルノデアリマス
第三ハ調停委員ノ指定ニ關スルモ
ノテ、第十七條ノ二及ビ第十九條ノ改
正規定デアリマス、調停委員會ヲ開ク
場合ニ於キマシテ、調停主任ハ每年豫
メ地方裁判所長ノ選任シタル者又ハ當
事者ノ合意ニ依リ選定セラレタル者ノ
中カラ、事件每ニ二人以上ノ調停委員
ヲ指定スルノデアリマスガ、期日ニ出
頭ヲ命ゼラレタ調停委員ガ不出頭ノ爲
メ、其ノ期日ニ委員會ヲ開クコトノ出
來ヌ場合ヲ生ズルコトガアリマス、斯
カル場合ニ於テ、個.調停ヲ行フ現場
ニ來合セタ者トカ、附近ノ者ノ中ニ
ハ、右ニ述べタ指定セラルヽ條件ニハ
副ハヌガ、知識經驗ガアツテ、調停委
員タルニ適當ト認メラルヽ者モアリマ
セウカラ、調停主任ハ卽座ニ斯カル者ヲ
調停委員ニ指定シ、期日ヲ無爲ニ過ス
コトナク調停手續ヲ進ムルコトガ、戰
時下紛爭ノ速カナル解決ニ資スル所以
ト考フルノデアリマス、仍テ戰時民事
特別調停ニ付キ、第十七條ノ二ノ規定
ヲ設ケ、之ヲ他ノ總テノ調停ニモ準用
センガ爲メ、第十九條ノ準用規定ニ追
加ヲ爲サントスルノデアリマス
第四ハ登記ニ關スル特例デアリマシ
テ、第二十條乃至第二十二條ガ之ニ當
リマス、先ヅ勞力資材ノ節約、印刷能
力ノ關係等ヨリシテ、裁判所ガ然スベ
キ登記事項ノ公〓ハ、戰時中ハ之ヲ爲
サザルモノトシ、登記及ビ公〓ヲ對抗
要件トスル商業登記ニ付テハ、登記ノ
時ニ登記及ビ公〓アリタルモノト看做
スコトト致シ、次ニ謄抄本ノ交付ノ煩
雜ヲ制約センガ爲メ、登記ニ付テモ、
登記事項ノ變更ナキコト、及ビ或ル
事項ノ登記ナキコトノ證明ノ制度ヲ擴
充シ、登記簿ノ謄抄本ノ再認證ノ制度
ヲ設ケ、尙ホ登記ノ手續中、登記申請
書ノ添附書類、登記ノ共同申請人ノ範
圍及ビ登記ノ移記、轉寫ニ付キ簡便
ナル方法ヲ認メ、其ノ細目ハ勅令ヲ以
テ之ヲ定ムルコトト致サントスルノデ
アリマス
次ニ會社等臨時措置法中改正法律案
ニ付テ御說明申上ゲマス
最近我ガ本土ニ對スル敵ノ空襲モ、
日ヲ逐ウテ熾烈トナツテ參リマシタノ
デ、將來大規模ナ空襲等ニ因ル災害ノ
アツタ場合等ニ、會社其ノ他ノ法人ガ
災害ニ因リ所要ノ法律上ノ手續ヲ履踐
スルコトガ出來ヌ爲メ、機能ヲ停止ス
ルガ如キコトガアリマシテハ、產業上
經濟上憂慮ニ堪ヘヌ次第デアリマスカ
ラ、是等災害ノ下ニ於テモ、會社其ノ
他ノ法人ヲシテ、其ノ業務ヲ機動的ニ
運營シ、責務ヲ果スニ支障ナカラシム
ルノ途ヲ拓カンガ爲メ、會社等臨時措
置法中ニ若干ノ特例規定ヲ追加セント
スルモノデアリマス
本法案ハ先ヅ之ヲ會社ニ付キ規定
シ、次ニ之ヲ他ノ法人ニ準用スルコト
ト致シマシタ、會社ニ關スル特例ハ、
大體次ノ如クデアリマス
第一ハ戰時災害其ノ他ノ災害ノ影響
ヲ受ケタ會社ノ爲メ、株主總會ノ招集
ニ付キ、二ツノ特例ヲ設ケントスルモ
ノデアリマス、其ノ一ハ第三條ノ二ノ
規定スル所デアリマシテ、此ノ種災害
ニ因リ株主名簿ヲ喪失シ、記名株主ノ
全部又ハ一部ノ氏名住所ヲ確知スルコ
トノ出來ナクナツタ株式會社ニアリマ
シテハ、其ノ株主ニ對スル通知ヲ爲ス
コトガ出來ナイ爲メ、株主總會招集ノ
途ヲ封ゼラレルコトガ考ヘラレルノデ
アリマスカラ、當該株主ニ對スル招集
通知ヲ省略シテ、總會ヲ招集スルコト
ガ出來ルコトト致サントスルノデアリ
せく、其ノ方法トシテハ、此ノ種會社
ニハ遲滯ナク株主名簿喪失等ノ事項ヲ
公〓サセテ、株主ニ所要事項ノ申出ヲ
促スト共ニ、總會招集ノ場合、株主ノ
氏名住所ノ不明ナ株式ガ、資本總額ノ
二十分ノ一ヲ超ユルトキハ、總會ヲ開
クベキ旨、及ビ會議ノ目的タル事項ヲ
公〓スルコトヲ要スルモノトシ、斯ク
シテ招集サレタ總會ニ於テ、特別決議
ヲ爲ス場合ノ定足數ノ計算ニ付テハ
氏名住所不明ノ株主ハ、總株主ノ員數
ニ算入サレナイコトトシタノデアリマ
ス、其ノ二ハ第三條ノ三ニ規定スル株
主總會招集地ニ付テノ特例デアリマ
ス、現在總會ハ必ズ本店所在地、又ハ
之ニ隣接スル地、若シ定款デ他ノ地ヲ
指定シテアル場合ニハ、其ノ地ニ之ヲ
招集スルコトヲ要スルノデアリマス
ガ、前述ノ災害ニ因リ是等ノ地ニ總會
ヲ招集スルコトガ著シク困難トナツタ
場合ニハ、便宜他ノ適當ナ地ニ之ヲ招
集スル途ヲ開カウトスルノデアリマス
第二ハ株主總會ノ省略ニ關スルモノ
デ、第四條ノ二、第四條ノ三及ビ第九
條ガ之ニ當リマス、本來株主總會ハ株
式會社最高ノ議決機關トシテ、株式會
社制度ノ核心ヲ成スモノデアリマスカ
ラ、濫リニ是ガ省略等ハ考フベキデナク、
災害下ニ於テモ飽クマデ之ヲ開催シ
得ルヤウニスル爲メ、前述ノ特例ヲ開
イタノデアリマスガ、災害ノ程度ガ更
ニ深刻ナ場合ニハ、斯カル特例ニモ拘
ラズ、尙且ツ總會ノ招集ガ著シク困難
ニ陷ル場合モ起リ得ルノデアリマス、
斯樣ナ場合ニ總會ノ決議ヲ要スル事項ヲ
執行セントスルニ當リ、會社ノ理事者
ガ空シク手ヲ拱イテ總會ヲ招集シ得ル
時期ノ至ルノヲ待ツノ外ナシト云フ
ノデハ、會社業務ノ運營ハ著シク阻碍
サレルコトナリ、獨リ戰力增强ノ爲
メ憂慮スベキコトデアルノミナラズ、
株主ヤ會社債權者トシテモ、理事者ガ
非常災害下ニ於テ、之ニ卽應スル對策
ヲ講ズルニ支障ガアルヤウデハ、頗ル
不安トナラザルヲ得ナイノデアリマ
ス、仍テ本法案ハ此ノ場合ノ特例トシ
テ、會社ノ取締役又ハ〓算人ハ總會デ
決議スベキ事項ヲ總會ニ依ラズシテ自
ラ決スルコトヲ得ルモノト致シマシタ
ガ、是ハ飽クマデ總會ヲ招集スルコト
ヲ得ルニ至ルマデノ臨機ノ措置デアリ
マスカラ、會社ノ目的ノ變更、合併、
解散等、會社存立ノ根本ニ觸レル重要
事項ヤ、其ノ他性質上、理事者ヲシテ決
定セシムルコトノ不適當ナ事項等ニ付
テハ、一應之ヲ理事者ノ權限ノ外ニ置
キ、唯法令又ハ法令ニ基ク命令ニ依ル
場合ニ限リ理事者ガ之ヲ決スルコトヲ
得ルコトト致シマシタ、又本特例ニ依
リ理事者ガ總會決議事項ヲ自ラ決シ得
ル場合ニ於キマシテハ、愼重ヲ期スル
爲メ理事者ハ豫メ監督官廳又ハ裁判所
ノ認可ヲ受ケル必要アルモノトシ、其
ノ認可ノ申請ニ際シテハ、監査役ヲシ
テ所要ノ調査ヲ遂ゲタ上、意見ヲ認可
所管廳ニ報告セシメ、理事者ハ本特例
ニ依リ當該事項ヲ決定シタコトヲ次囘
ノ株主總會ニ報告スルコトヲ要スルモノトシ
タノデアリマス、尙ホ此ノ特例ニ依リ理事
者ノ權限ハ非常ニ擴張サレマスノデ、萬
一理事者又ハ監査役ニ於テ此ノ制度ヲ
惡用センカ、其ノ害恐ルベキモノガア
リマスカラ、是等ノ者ガ所管廳ニ對ス
ル認可ノ申請又ハ意見ノ報〓ヲナスニ
當リ、不實ノ申述ヲナシ、又ハ事實ヲ
隱蔽シタ場合ニハ、相當ノ刑事制裁ヲ
以テ臨ムコトト致シタノデアリマス
第三ハ債券ナキ社債ノ募集ヲ認メン
トスルモノデアリマシテ、第五條ノ二
及ビ附則第二項以下ガ之ニ當リマス、
最近ノ紙ノ事情竝ニ印刷能力ノ狀況デ
ハ、社債劵ノ製造ガ非常ニ困難デ、
社債ヲ募集シテ其ノ拂込ヲ徵シナガ
ラ、債券ヲ交付セズニ其ノ儘トナツテ
居ル例ガアリマスケレドモ、斯樣ナコ
トハ事業資金ノ吸收ノ上カラモ、社債
流通ノ上カラモ、好マシカラヌ現象デ
アリマスカラ、玆ニ特例ヲ設ケ、社債
募集ノ場合ニハ、其ノ社債ニ付キ債券
ヲ發行シナイコトヲ定メ得ルモノト
シ、斯カル社債ニ付テハ、發行會社、
又ハ社債募集ノ委託ヲ受ケダ會社カラ
社債ノ登錄ヲ請求スルコトヲ要スルモ
ノトシ、尙ホ此ノ種ノ社債ニ付テハ、
社債權者ハ登錄ノ抹消ヲ請求出來ナイ
コトニセントスルモノデアリマス
最後ニ第四ハ、第六條第二項ニ規定
スル株主名簿其ノ他ノ書類ノ備置キ場
所ニ關スル特例デアリマス、最近ノ空
襲等ノ狀況ニ鑑ミ、株主名簿、社債原
簿及ビ信託證書等、原本ヲ會社ノ本店ニ
備置クコトヲ要スル重要書類等ヲ、他
ノ安全ナ場所ニ疎開サセテ不測ノ損害
ニ備ヘシムルコトトシタノデアリマ
ス
以上ノ四點ハ何レモ必要ニ應ジ營
團金庫、組合等、會社ニ非ザル法人
ニ準用致シマスガ、其ノ場合ハ勅令ヲ
以テ之ヲ規定致シマス、第八條ノ改正
規定ハ其ノコトヲ規定致シタモノデア
リマス
終リニ司法官試補及辯護士試補タル
ノ資格ノ特例ニ關スル法律案ニ付テ御
說明ヲ申上ゲマス、高等試驗ガ昨年度
ニ引續キ本年度モ停止セラレルコトト
相成リマシタ所、昨年度ニ於キマシテ
ハ、地方裁判所及ビ區裁判所ノ本職ノ
判檢事竝ニ其ノ補充源タル豫備判檢事
ニ相當數ノ過剩員ガアリマシタ爲メ、
新規ニ司法官試補ヲ採用スル必要ヲ認
メナカツタノデアリマス、然ルニ昨年
十二月末ニ於キマシテハ、判事ノ過剩
員ハ僅カニ三名ニ減少シ、檢事ノ現在
員ハ定員ニ一致スル狀態ニナツタノデ
アリマス、而シテ本年以降將來生ズベ
キ判檢事ノ補充源トシテハ、現在、豫
備判檢事合計約百四十名竝ニ近ク任官
ノ見込ナル司法官試補約五十五名ヲ有
シテ居ルノデアリマスガ、是等ノ豫備
判檢事、及ビ司法官試補モ昭和二十二
年三月末頃マデニハ大體補職シ終ル見込
デアリマスカラ、其ノ後ノ缺員ノ補充
ニ充テル爲ニハ、司法官試補ノ實務修
習期間ヲ考慮ニ入レ、本年ノ適當ナル
時期ニ新規ノ司法官試補ヲ採用シテ置
カネバナリマセヌノデ、本年度ノ高等
試驗ノ停止ニ伴ヒ、司法官試補ノ資格
ニ付キ特例ヲ設ケル必要ヲ生ズル譯デ
アリマス、尙ホ辯護士試補ニ付キマシ
テモ、辯護士ヲ志望スル者ノ進路ヲ引
續キ鎖シテ置クコトハ妥當ナル處置デ
アリマセヌノデ、併セテ其ノ資格ニ關
スル特例ヲ設ケルコトト致シタ次第デ
アリマス
以上三案ニ付キマシテ一應御說明ヲ
申上ゲタ次第デゴザイマスガ、何卒愼
重御審議ノ上御可決アランコトヲ切望
致ス次第デアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=2
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003・齋藤直橘
○齋藤(直)政府委員 只今政務次官カ
ラ三法律案ニ付キマシテ、詳細御說明
ガアツタノデゴザイマスガ、其ノ中戰
時民事特別法中改正法律案及ビ會社等
臨時措置法中改正法律案ノ中ニハゝ勅
令ニ讓ツテアリマス事項モアリマス
シ、立案ノ際解釋上斯ウ云フ點ガ問題
ニナルデアラウト豫想セラレマシタ點
モ多少ゴザイマスノデ、重複スル嫌ヒ
ハゴザイマスガ、御審議ノ御便宜ノ點
ヲモ考ヘマシテ、多少細カイ點ニナリ
マスガ、若干說明ヲ補足サセテ戴キタ
イト存ジマス
先ヅ戰時民事特別法中改正法律案デ
ゴザイマスガ、第八條ノ二ノ關係ニ於
キマシテ、所謂休止「二囘ニ及ビタル
時ハ」トアリマスノハ、口頭辯論及ビ
準備手續雙方ニ亙ツテ各一囘ヅツ休止
ガアリマスト、是ハ通算シテ本條三
囘ニ及ビタルトキ」ト云フ趣旨デゴザ
イマス、尙ホ新法施行前ト新法施行後
ニ此ノ休止ガ跨ガリマスヤウナ場合ニ
於キマシテモ、ソレハ附則ノ第二項ニ
特ニ經過規定ヲ設ケマシテ、此ノ二囘
ノ囘數ノ計算ハ本法施行後ニ付テノミ
之ヲ扱フル趣旨デゴザイマス、尙ホ、
休止ニ付テノ現行法ノ規定デアリマス
ガ、民事訴訟法二百三十八條ハ本改正
規定ニ拘ラズ併存スル趣旨デゴザイマ
スカラ、若シ本法ノ施行後ト雖モ休止後
裁判所ガ職權デ期日ヲ指定スルコトモ
ナク、又當事者ガ三箇月內ニ期日指定
ノ申立ヲモ致サナイ場合ニハ只今ノ
二百三十八條ニ依リマシテ訴ヘノ取下
ト看做サレルコトハ、今マデト變リガ
ナイノデアリマス、尙ホ第一項但書ニ
依リマシテ、不可抗力ナリトシテ當時
者カラ期日指定ノ申立ガアリマシタ場
合ニ、裁判所ガ不可抗力ニアラズトシ
テ、期日指定ノ申立ノ理由ノナイコト
ヲ認メマシタ場合ニハ、解釋上問題ニ
ナルト思ヒマスガ、現在ノ大審院ノ判
例ノ趣旨ニ依リマスレバ、是ハ訴訟ノ
終了シテ居ルコトヲ官言スルモノデア
リマスカラ、判決ニ依ルベキモノデア
ルト考ヘマス
次ニ第十七條ノ二ニ付テデゴザイマ
スガ、是ハ條文ニモ特ニ「遲滯ヲ避クル
爲特ニ必要アリト認ムル場合」ト書イ
テアリマスヤウニ、餘リ濫リニ使フヤ
ウナ趣旨デハナイノデアリマシテ、已
ムヲ得ナイ、例ヘバ出張先ニ於テ、呼
出シテ居ル調停員ガ出テ來ナイ爲ニ、
空シク其ノ日ニ調停ガ出來ズ引上ゲナ
ケレバナラヌヤウナ場合ニ適用ヲ見ル
趣旨デアリマシテ、且ツ調停主任ガ指
定スルニ當リマシテモ、其ノ基準ハ地
方裁判所長ガ選任スルデアラウト思フ
ヤウナ適任者デナケレバナラヌ趣旨デ
アリマス
次ニ第二十條ニ付テデアリマスガ、
只今裁判所ガ登記事項ノ公告ヲ致シテ
居リマスノハ商業登記ト、各種法人登
記ノ系統ノ登記ニ付テダケデアリマス
ガ、現在ノ戰時民事特別法第三條ニ依
リマシテ、官報ニノミ之ヲ致シテ居リ
そく、ソレヲ戰時中今度ハ全部止メル
コトニ相成ル譯デアリマスガ、其ノ中
商業登記ノ關係ニ於キマシテハ、商法
第十二條ニ依リマシテ登記及ビ公告ヲ
以テ對抗要件ト致シテ居リマスノデ、
公〓ガナクナリマシタ結果、ソレヲ登
記ノ時ニ登記及ビ公告アツタモノト看
做ス必要カラ第二十條第二項ヲ設ケタ
次第デアリマスガ、是ハ本法施行ノ際
ニ、旣ニ登記ハ濟ンデ居ルガ、マダ
公告シテナイト云フモノニ付キマシテ
ハ、附則第三項ニ依リマシテ、本法施
行ノ時ヲ以テ登記ノ時看做スト云フ
コトニ致シタノデアリマス、尙ホ外ノ
法令、例ヘテ申上ゲマスト、民法施行法二
十六條或ハ商法施行法十七條ノ如ク、裁
判所ノナスベキ登記事項ノ公告ト同一
ノ方法デ公告ヲナスコトヲ要スルト云
フヤウナ規定ノアリマス場合ニハ、裁
判所ガ今日全部ヲ公告ヲシナイコトニ
ハナリマスガ、併シソレハ依然官報ヲ
以テ公告スベキモノト解釋スルノガ正
當ト存ジマス
次ニ會社等臨時措置法中改正法律案
ニ付キマシテ申上ゲタイト存ジマス
ガ、第三條ノ二ニ於キマシテ戰爭ニ起
因スル災害ノ外勅令ヲ以テ定ムル災
害ト致シテゴザイマスガ、ソレハ地
震、津波、火災、洪水、暴風雨等ヲ豫想シ
テ居リマスノデ、ソシテ具體的ニドノ
地ニ起ツタ地震ニ適用スルカト云フヤ
ウナ場合ハ、更ニ抽象的ニ勅令デ書イ
テ居ル外ニ司法大臣ノ告示ノ如キモノ
ガ要ル趣旨デアリマス、只今ノ第三條
ノ二第一項ノ終リニ「勅令ノ定ムル所
ニ依リ公〓スルコトヲ要ス」トナツテ
居リマスガ、只今考ヘテ居リマス勅令
事項ノ內容ハ、會社ガ災害ニ依ツテ株
主名簿ヲ喪失シテ氏名、住所ノ分ラヌ株
式ガアルト云フコトト、ソレカラ株主
ノ方カラ斯ク〓〓ノ事柄ヲ申出テ貰ヒ
タイト云フヤウナコトデアリマス、ソレ
ハ株主名簿ノ再製ニ必要ナ事柄デ、株主
ノ方ニ分ツテ居リマス株主ノ氏名、住所、
株式ノ種類、數、株劵ノ番號、拂込ミマシ
タ株金額、拂込ノ年月日ノ如キモノデアリ
マイク第四條ノ二ノ關係ニ於キマシテ
ハ、第一項ニ「會社ノ業務若ハ〓算ヲ
監督スル官廳又ハ裁判所ノ認可」トア
リマスガ、是ハ單ニ主管官廳ト云フヤ
ウナ程度デナク、當該會社ノ業務ソレ自
體ニ付キマシテ監督權ヲ有スルコトガ
法令ニ規定セラレテ居ル官廳ノ意味デ
アリマシテ、ソレヲ具體的ニ明確ニス
ルノハ勅令ニ讓ツテアル次第デアリマ
ス、此ノ認可ハ取締役又ハ〓算人ノ決
スル事柄ノ有效要件デアリマシテ、取
締役又ハ〓算人ガ決シマスノハ、其ノ
會社デ決メテ居リマスカ或ハ商法デ決
メテ居リマス業務執行法ト同一ノ方法
ニ依ル趣旨デアリマス、其ノ事柄ハ法
律ノ規定デ、總會決議事項トシテアリ
マス事柄ノ外ニ、定款ニ依リマシテ總會
ノ決議事項トシテ居ル事柄ヲモ含ム趣
旨デゴザイマス、サウシテ取締役又ハ
〓算人ガ決定致シマスコトハ、總會ノ
決議自體ニ代ルノデハアリマセヌノデ、
之ニ對シテハ別段決議取消シノ訴ヘト
云フ如キモノハ許サヌ趣旨デアリマス
第四條ノ三デ勅令ニ讓ツテ居リマス
點ハ、監査役ガ報告スルノハ、書面ニ
依ラシムルト云フヤウナコトヲ豫想シ
テ居リマス、第五條ノ二ニ付キマシテ
ハ、分割シテ數囘ニ社債ヲ發行致シマ
ス場合ニ、第一囘、第二囘ニ付テハ債
劵ヲ發行シタガ、其ノ以後本條ニ依ツ
テ債券ヲ發行シナイト云フコトモ差支
ヘナイ趣旨デアリマス、本條デ勅令ニ
讓ツテ居リマスコトハ、例ヘバ債券ヲ
發行セザル旨ヲ社債申込書又ハ信託證
書等ニ記載サセルト云フヤウナ事柄デ
アリマス
第六條關係ニ付キマシテハ、本條
ニ依リ疎開サセルコトノ出來ル書類ノ
中、勅令ニ讓ツテ居リマスモノハ、例
ヘバ相互會社ノ社員名簿ノ如キモノデ
アリマス、サウシテ疎開ヲサセマシタ
場所ニ於キマシテ閱覽サセル、其ノ他
ノ事務ヲ執ツテモ差支ヘナイ、斯ウ云
フ趣旨デゴザイマス、以上デ敷衍シタ
說明ヲ終リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=3
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004・金井正夫
○金井委員長 委員ノ各位ニ御諮リ致
シマスガ、政府カラ多少參考資料ガ出
テ居リマスケレドモ、尙ホ改メテ參考
資料ノ御要求ガアリマシタナラバ此ノ
際承ツテ置キタイト思ヒマス-ソレ
デハソレハ後ニ御願ヒ致シマセウ、如
何デゴザイマセウカ、審査ニ付テハ之
ヲ總括的ニ色々ノコトヲ先ヅ政府カラ
承リ、其ノ次ニ法文ニ付テ逐條的ニ說
明ヲ承ルコトニ致シマシタラドウデア
リマセウカ
〔「異議ナシ」ト呼ブ者アリ〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=4
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005・金井正夫
○金井委員長 ソレデハ其ノ通リニ致
シマス、今日ハ谷原サンカラ御質問ノ
要求ガアリマスカラ、先ヅ谷原サンニ
御願ヒ致シマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=5
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006・谷原公
○谷原委員 私ハ總括的ニ御尋ネスル
ノデアリマスガ、併シ其ノ重點ヲ戰時
民事特別法中改正法律案ニ置イテ、
御聽キヲ致シタイト思フノデアリマ
ス、御提案ノ理由ヲ拜聽致シマスト、
最近ノ諸情勢ニ鑑ミマシテ紛爭ハ早ク
終了セシメ、色々事務ノ簡捷化モ圖ラ
ナケレバナラヌト云フヤウナ御趣旨デ
アリマシテ、其ノ點ハ御尤モト存ジマ
ス、所ガ此ノ休止滿了ニ依ル訴訟ノ取
下ゲ等ニ付キマシテハ、今日ニ於テハ
之ヲ惡用スルト云フヤウナ事情ハ、モ
ウ存在シナイノデハナイカト思フノデ
アリマス、寧ロ戰力增强等ノ面カラ、
此ノ休止制度ト云フモノガ利用セラレ
テ居ルノガ大部分デナイカト思ハレル
ノデアリマス、古イ時代ニ於キマシテ
ハ、或ハ此ノ事件ハ機ガ熟スレバ和解
ガ出來ルト云フヤウナ場合ニ、此ノ休
止制度ヲ利用致シマシテ、當事者双方
若シクハ訴訟代理人等ニ於キマシテ、
合意デ之ヲ利用スルト云フコトモアリ
マシタガ、今日ニ於キマシテハ調停制度
ガ發達シテ居リマシテハ係爭事件等ヲ
職權デ調停ニ依ツテ留保スルコトモ出
來マスシ、色々ト活用サレテ居リマス
カラ、調停和解ト云フヤウナ狙ヒデ此
ノ制度ヲ利用スルト云フコトモアリマ
セズ、又被〓ガ如何ニ窮シタカラト云
ツテ、一方デ之ヲ利用スルコトガ出來
ナイノデアリマスカラ、窮シタ被〓ガ
此ノ制度ヲ惡用シヨウト致シマシテ
モ、左樣ナコトハ出來ナイノデアリマ
ス、寧ロ當事者若シクハ訴訟代理人等
ニ於キマシテ、公判廷ニ於テナスベキ辯
論ハ短時間デ出來ルノデアルケレドモ、
裁判所ガ中々自分共ノ辯論ヲ開始シテ
吳レナイ、故ニ當事者デアルト、今日
ハ時局ニ伴フ戰力增强等ニ是ダケノ豫
定計畫ガアルノデアルカラ、今日ハ
ツ申合セノ上此ノ審理ハ後日受ケルコ
トニシテ、其ノ方ヘ自分ノ勞務勞力ヲ
活用シヤウト云フヤウナ場合ガ、往々
ニシテ實際存シテ居ルヤウニ思フノデ
アリマス、世間デハ裁判所程時間ヲ属
行シナイ所ハナイト云フ定評ガアルト
私ハ思フノデアリマス、併シナガラソ
レハ決シテ人其ノモノガ怠惰ニシテ時
間ヲ厲行セヌト云フノデハナイ、裁判
所ノ職務仕事ソレ自體ガ、中々時間ノ
厲行ガシニクイヤウニナツテ居ル、卽
チ事實ノ認定、法律ノ適用、斯ウ云フ
ヤウナコトニ付テハ千思萬考ヲ要ス
ル、隨テ御承知ノ如ク宅調ト云ツテ、
役所ニ出ズシテ自宅ニ於テ書類ヲ調べ、
色々〓究スルコトガ公然許サレテ居ル
ト云フヤウナ次第デアリマシテ、役所
ニ出勤ヲシテ後モ、或ハ證人調ベヲス
ルニ付テハ、先ヅ以テ又記錄ヲ調ベル
ト云フヤウナコトデ、九時ニ呼出シヲ
受ケテ、九時カラ開始シテ吳レルト思
ツテ待チアグンデ居ル當事者等ニオ構
ヒナク、ヤハリ其ノ九時ノ呼出シヲ尻
目ニシテ、十時或ハ都合ニ依リマスト
ソレガ十一時ニ開廷サレルト云フコト
ハ、是ハ事實上珍シクナイコトデア
ル、サウ云フヤウナ場合ニ當事者ニ於
テハ、先程申上ゲマシタヤウニ、此ノ
頃ハ一刻ヲ爭フヤウナ戰力增强ノ爲ニ
大キナ仕事ガアリマスルシ、又訴訟代
理人デアリマスルト、自分ノ事務所ニ
ハ、左樣ナ時局ニ働ク人ガ事件ノ〓究
或ハ訴訟進行上ノ打合セ等デ事務所ヘ
來テ待ツテ居ル、故ニ一刻モ早ク退廷
ヲシテ左樣ナ人ノ用ヲ濟マシ、家ニ歸シ
テ戰力增强ニ働カセタイ、斯ウ思フガ、
中々裁判所ノ開廷ガ思フヤウニ行カナ
イ、或ハ開廷サレルト致シマシテモ、
ソレ〓〓順序ガアリマスルカラ、午前
中ニ濟マナイト云フヤウナ場合ニナリ
マスルト、ソコニ成ベク其ノ日ノ期
日變更ヲシテ貰ヒタイト云フ所ノ避ク
ベカラザル事情ガ生ジテ來ル、而モ今
日ノ制度ニ於キマシテハ、御承知ノ期
日變更ト云フコトハ嚴格ナ條件ガアル
爲ニ、容易ニ許サレナイ、殊ニ地方ニ
依リマスルト構成ガ旨ク行ツテ居ラナ
イ所ガアル、或ハ調停ノ爲ニ判事ガ出
張シテ居ナイ、或ハ病氣ノ爲ニ缺席ス
ルト云フヤウナ際ニ、大キナ裁判所ナ
ラバ直キニ其ノ補充ガ出來ルケレド
モ、小サイ裁判所デアリマスルト、相當
離レテ居ル區裁判所カラ其ノ補充ヲ計
畫シナケレバナラヌ、サウシマスルト
又ソコニ其ノ人ガ出勤シテ來ルマデ
二、相當ナ時間ヲ見ナケレバナラヌト
云フヤウナ都合デ、裁判所側ニ於ケル
時間厲行嚴守ガ出來ナイ爲ニ、當事者或
ハ代理人ト致シマシテハ隨分時間ノ空
費ヲスルコトガアル、左樣ナ場合ニ休
止ヲ利用スルト云フコトハ惡意ナク善
意デアツテ、而モ其ノ效果ハ相當擧ツ
テ居ルト思フノデアリマス、隨テ今日
所謂敵前議會トモ云フヤウナ場合ニ、
特ニ休止滿了條件ヲ强化スルト云フ必
要ハナイノデナイカ、或ハ此ノ前段
ニアリマスルヤウニ、口頭辯論準備手
續等ノ期日ニ出頭セヌト云フヤウナ場
合ニ於キマシテハ、是ハ新樣ナ所謂訴訟
終了ト看做スヤウナ取扱ヲスル必要ガ
アルカモ知レマセヌガ、其ノ後段ニア
リマスルヤウニ、「辯論、若シハ陳述ヲ
爲サズ」ト云フヤウナコトマデ此ノ休
止滿了ノ條件ニ入レテ、之ヲ强ヒテ推
進シテ行カネバナラヌト云フヤウナコ
トハ、今日ノ此ノ時局ヲソレ〓〓擔當
致シテ居リマスル當事者、訴訟代理人
等カラ考ヘマスルト、サマデノ必要ガ
ナイヤウニ思ハレルノデアリマスガ、
政府ノ所見ト致シマシテハ、裁判所ノ
時間厲行、之ニ依ツテ當事者或ハ代理
人等ニ時間ヲ空費サセナイヤウナコト
ニ付テ何カ一ツノ御工夫デモアルト致
シマスナラバ、此ノ際承リタイト思ヒ
マス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=6
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007・齋藤直橘
○齋藤(直)政府委員 只今御尋ネノ裁
判所ノ時間厲行ノ問題ニ付キマシテ
ハ、舊來ヨリ常ニ御指摘ニ與リ、問題
ニナツテ居ル點デゴザイマシテ、裁判
所ト致シマシテモ色々ノ工夫ヲ以テ何
トカ時間厲行ガ出來マスヤウニ努力ハ
致シテ居ルノデゴザイマスガ、殊ニ民
事訴訟ニ於キマシテハ、例ヘバ證人ガ
出頭ヲシテ居ル場合ニ、當事者何レカ
ノ差支ヘデ揃ハレナイト云フ時ニハ
假ニ證人ダケヲ先ニ調ベマシテモ、當
事者雙方ガ揃ハナイ所デ調ベマシタガ
爲ニ、又訊問漏レノ點ガアツテ、モウ
一度其ノ證人ニ來テ貰ハナケレバナラ
ヌト云フヤウナ事例ガ再三アリマシタ
ノチ、裁判所ガ雙方揃ハレルノヲ待ツ
テ居ルト云フヤウナ實情モ大分アルヤ
ウニ聞イテ居リマス、成ベク雙方ガ法
廷ニ揃ハレルノヲ待ツテ居ル爲ニ時間
ガ遲レルト云フヤウナコトモ聞イテ居
ツタリ、色々ナ事情ガアルト思ヒマス
ガ、裁判所ガ時間厲行ノ爲ニヤツテ居
リマス努力ニ付テハ、尙ホ司法行政上
ノ措置ト致シマシテモ出來ルダケノコ
トハヤツテ參リタイト思ツテ居リマ
ス、本法案立案ノ趣旨ハ先程提案理由
デ政府側カラ申上ゲタ通リデゴザイマ
スルカ尙ホ裁判所方面カラモ斯カル趣
旨ノ規定ノ必要デアルコトハ數年來要
望ノアリマシタ點デアリマシテ、之ヲ
具體的數字ニ付テ調ベテ見マシテモ、
御手許ニ御配付申上ゲマシタ本法案ノ
參考資料中ニモ擧ゲテ置キマシタガ、
昨年十月末現在デ控訴院、地方裁判
所區裁判所ニ分ケテ、其ノ常時ノ未
濟事件ニ付キマシテ、十月末マデニ繫
屬シテ居ル期間ト、其ノ間ニ何囘以上
休止ガアツタカト云フコトヲ調ベテ見
マスト、御覽戴キマス通リ相當休止ガ
多イノデ-尤モ此ノ休止ノ原因ノ中
ニハ只今御指摘ニナリマシタ如ク、所
謂下方デ示談ガ進行中デアル、デアル
カラロ頭辯論ノ進行ガアルト却ツテ其
ノ示談ノ進行ヲ妨ゲルヤウナコトニナ
ルノデ、見當ガ付クマデ、片ガ付クマ
デ休止ヲ反覆スルト云フ狀態デ置キタ
イト云フヤウナモノモアリマセウ、色
色事情モアリマセウガ、一面斯ウ云フ
コトノ豫メ分ツテ居リマス場合ニハ
特ニ戰時下期日ノ當日ニナツテカラ裁
判所ヤ當事者ノ折角準備ヲシテ來タコ
トヲ無駄ニスル前ニ、豫メ期日變更ノ
申請ト云フ方法モ民事訴訟法デ認メテ
居ルノデアリマスカラ、成ベクソレヲ
活用シテ貰ヒタイ、ソレニ依ツテ今マ
デ所謂休止ヲナスノガ成功デアツタト
云フヤウナコトモ救ハレルノデ、今囘
ノ改正規定ガ訴訟遲延ノ一ツノ原因デ
アル所ノ戰時下特ニ防止シタイト云フ
趣旨カラ出タコトミ依ツテ、著シイ不
便ヲ掛ケルモノデハナイト云フヤウナ
見解ヲ持ツテ居ル次第デゴザイマス
ガ、尙ホ斯ウ云フ新シイ規定ノ運用ニ
當リマシテハ、裁判所、實務家ヲ會同
シテ協議スル機會ナドモ度々アルノデ
アリマスカラ、御趣意ノ存スル所十分
實務家全般ニ徹底スルヤウニ努力シタ
イト考ヘテ居リマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=7
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008・谷原公
○谷原委員 裁判所ノ色々從來苦心工
夫セラレテ居リマスル點ハ私共モ諒ト
スル所デアリマス、例ヘバ證人ノ呼出
シ或ハ當事者ノ呼出シ等ニ付キマシテ
モ、午前午後ニ分ツト云フヤウナコト
モ實際ヤラレテ居ルヤウデアリマスル
ガ、然ルニドウモ色々愼重審議ヲスル
爲ニデアリマセウガ、屢〓法廷ニ立ツ
ト云フコトガ何ダカ十分愼重ニ考慮ス
ルト云フ調ベニ惡イ影響ガアルヤウニ
感ゼラレルノカドウカ知リマセヌガ、
ドウモ屢〓法廷ニ出テ行クト云フコト
ヲ多少ウルサガルト云フヤウナ氣分デ
モアルカト思ハレルノデアリマスガ、
成ルベク朝早ク始メタナラバ晝飯ヲ拔
キニシテデモ早ク法廷ヲ片付ケテシマ
フ、サウシテ自分ノ擔任シテ居ル事件
ヲ愼重ニ考慮シヨウ、斯ウ云フ氣分ガ
働クヤニ見エマシテ、一時ハ午前午
後ニ分ケテ證人、當事者ヲ呼出スト云
フヤウナコトモ行ハレマシタガ、間モ
ナクサウ云フヤウナコトハ止メテシマ
ツテ、先程申上ゲル如ク一氣呵成ニ法
廷ヲ濟マサウト云フヤウナ點ガ見エル
ノデアリマス、サウナリマスルト結局訴
訟代理人等ニ於キマシテハ、先程申上
ゲマシタヤウナ理由デ休止ト云フヤウ
ナコトヲ使ヒタイト云フ關係ガ出來テ
來ルノデアリマス、殊ニ期日ノ變更ト
云フコトガ相當嚴格ナ條件デ容易ニ許
サレヌト云フコトニナリマスト云フ
ト、甚ダ窮屈ナ場面ガ生ジマスノデ、
假ニ本案ガ成立致シマシテ運用サレル
ト云フヤウナ場合ニ於キマシテハ、此
ノ期日ノ變更等ニ付キマシテ從來ヨリ
モヨリ以上緩和サレタ取扱ヒヲサレル
カ、或ハ又時間厲行等ニ付キマシテ從
來ヨリモヨリ以上工夫考慮ヲ要スル必
要ガアルカト思フノデアリマス、斯ウ
云フ點ハ政府ニ於キマシテ十分考慮ヲ
シテ貰ハナケレバナラヌト思フノデア
リマス、司法官ハ御承知ノ如ク獨立ノ
地位ヲ保障サレテ居リマスケレドモ、
政府殊ニ司法大臣等ニ於キマシテ何カ
ソコニ示唆訓示等ノ如キモノデモアリ
マスト云フト、ソレヲ直チニ金科玉條
タル常識トシテ自分ニ取入レマシテ、
サウシテソレニ基イテ自分ノ職務ヲ推
進運用シテ行カウト云フ風ガ甚ダヒド
イノデアリマス、例ヘバ何カ玆ニ法律
ガ改正サレ、其ノ課罰規定ガ長期多額
ニ於テ增加サレルト云フヤウナコトニ
ナリマスト、是ハ餘程重罰嚴刑ヲ以テ
臨マナケレバナラヌノダト云フヤウナ
コトヲ自分ノ常識トシテ取入レマシ
テ、サウシテ俄カニ法ノ豫期以上ニ重
ク其ノ刑罰規定ヲ運用スルト云フヤウ
ナ弊ガ我々地方ニ於テ屢〓見受ケラレ
ルノデアリマス、要スルニ獨立ノ地位
トハ云ヒナガラモ司法大臣等ノ示唆訓
示等ガアリマスト、其ノ方ニ引摺ラレ
ルヤノ觀モアリマスノデ、斯樣ナ點ニ
付テハ十分ニ御注意ヲ願ヒタイト思フ
ノデアリマス、尙ホ此ノ人的資源ノ活
用問題ニ付キマシテ、政府當局ニ御伺
ヒ致シタイト思フノデアリマス、無論
司法ノ分野ニ於キマシテモ此ノ點ニ於
テハ多大ノ御留意ノアルコトト思ハレ
ルノデアリマスガ、然ルニ實際ノ事情
ヲ見マスルト被疑者ノ拘束ト申シマス
八七、無論是ハ正規ノ手續デヤツテ居
ルノデハアリマセヌガ、近時ハドウ云
フ名目デヤツテ居リマスルカ、留置場
ニ入レマシテ、其ノ被疑者ヲ司法警察
官ガ長イ間拘束ノ儘取調ベルト云フヤ
ウナコトガ頗ル多イノデアリマス、固
ヨリ戰爭ノ段階ガ進ンデ參ルニ從ヒマ
シテ治安ノ維持確保ト云フコトニ益〓、
重點ガ加ツテ來ルコトダラウト思ヒマ
スカラシテ、犯罪搜査ニ當リマシテ周
密ナル措置ヲ講ズルト云フコトハ是ハ當
然ノコトデアラウト思ヒマス、併シナ
ガラ一方又戰爭ノ長期化、戰爭地域ノ
擴大、之ニ伴ヒマシテ人的資源ヲ出來
ルダケ多ク活用シナケルバナラヌト云
フコトモ國家トシテ當然ノ要求デアル
ト思フノデアリマス、隨テ今日ノ如
ク、警察デ百日ヤ八十日拘束サレルコ
トハ珍ラシクナイト云フ實情ハ、是一
戰爭ニ勝拔ク國家態勢ノ上カラ申シマ
シテ、決シテ好マシキコトデナイト思
フノデアリマス、又如何ニ此ノ搜査ニ
手間ヲ掛ケナケレバナラヌト言ヒマシ
テモ、眞劍ニ檢事ガ司法警察官ヲ有效
適切ニ指揮指導致シマシテ、其ノ能率
ヲ上ゲサスト云フコトニナリマシタナ
ラバ、今日ノヤウニ被疑者ヲ長ク留置
場ニ入レテ置カナクテモ、相當ノ期間
ニ犯罪ノアルヤ否ヤ或ハ之ニ伴フ證據
ノ取集メト云フコトハ出來ルデアラウ
ト思フノデアリマス、今日ハ司法省方
面へ所謂犯罪翌捜査上ノ成績等ニ付テ、
表面的ニ現ハレテ來ルモノハ、サウ事
件捜査ニ長イ手間ハ掛ツテ居ナイヤウ
ニナツテ居ルダラウト思ヒマスケレド
モ、併シナガラソレガ表面的ニ現ハレ
テ來ルマデニハ非常ニ長イ間關係者ガ
迷惑ヲシ、且ツ生產ニ從事スルコトガ
出來ナイヤウナ實體ニナツテ居ルノデ
アリマシテ、是ハ此ノ際一大改革ヲセ
ナケレバナラヌト思フノデアリマス是
等ニ付キマシテ司法當局トシテハ如何
ナル御考ヘヲ持ツテイラツシヤルノデ
アリマスルカ、一應伺ツテ置キタイト
思フノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=8
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009・船津宏
○船津政府委員 御答ヘ致シマス、裁
判檢察ニ於キマシテ、處理ガ適正デア
ルコトハ固ヨリ、敏速ヲ貴ブコトハ正
ニ只今谷原委員ノ仰セノ通リデアリマ
シテ、我々司法當局トシマシテモ、御
趣旨ノ點ニ付キマジテハ平素カラ十分
心掛ケマシテ、其ノ適正ヲ得ルヤウニ
努メテ居ル積リデアリマス、殊ニ此ノ
決戰下ニ於キマシテ、寸秒ヲ爭ツテソ
レゾレ各自ガ職域ニ奉公ヲ致サナケレ
バナラヌ際ニ於キマシテハ、特ニ御承
知ノ通リ取調ベノ敏速ガ要請セラレテ
居ルノデアリマシテ、當局ト致シマシ
テモ、凡ユル機會ヲ摑ヘマシテ、其ノ
趣旨ガ徹底スルヤウニ努メテ居ル次第
デアリマス、例ヘバ此ノ東京都下ニ於
キマシテハ、現內閣ニナリマシタ後ノ
處置デゴザイマスガ、檢事局モ能ク其
ノ趣旨ヲ警視廳ニ徹底サセマシテ、現
在特ニ經濟事犯ノ取調ベノ如キハ、得
テシテ期間ガ長引ク虞ガアリマスノ
デ、是等ニ付キマシニ〓モ嚴重ナ制約ノ
下ニ一日モ早ク取調ベガ完了スルヤウ
ニ致シテ居ルヤウナ次第デゴザイマ
ス、御趣旨ノ點ハ洵ニ御尤モニ拜聽致
シタノデアリマスガ、今後ニ於キマシ
テモ尙ホ一層徹底サシテ、戰局ノ要請
ニ適フヤウニ極力努メテ行ク所存デゴ
ザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=9
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010・谷原公
○谷原委員 今一ツ御尋ネ致シタイノ
ノハ、保釋ノ問題デアリマスガ、足ノ
政府ト致シマシテモ、表向キノ答辯ト
致シマシテハ、恐ラク刑事訴訟法ニ所
定ノ事由ガアルナラバ、私ハ保釋ヲ許
シテ當然ダト御答ヘニナルダラウト思
ヒマスガ、併シナガラ實際ヲ見マスル
ト、刑事訴訟法所定ノ條件ヲ具備スル
場合ニ於キマシテモ中々許サナイノデ
アリマシテ、而モ許サナイ狙ヒハ、事
件ヲ速カニ終了セシメタイ、斯ウ云フ
ヤウナ考ヘカラ、特ニ此ノ保釋ト云フ
コトヲ出シ惜ミスルヤウデアリマス、
併シナガラ今日二審制度トナリマシ
テ、ドウモ被告ハ身カラ出タ錆デア、リ
マシテモ、所謂直チニ心服致シ難イ關
係デ上訴デ判決ヲ受ケタイ、是ハモウ
如何ニ犯罪人デアリマシテモ、人トシ
テ人情當然ノコトデアラウト思ヒマス
ガ、サウ致シマスト、結局上告審ノ判
決ヲ受ケルマデノ間、唯徒ラニ監房ノ
中デ其ノ月日ヲ待タナケレバナラヌ、
是レ程人手ノ要ル折柄、マルデソレ等
ノ人ハ別世界ニ住マナケレバナラヌト
云フヤウナコトニナルノデアリマス、
固ヨリ證據湮滅、逃亡等ノ虞ノアリマ
スモノニ付キマシテハ、身柄ヲ拘束シ
テ置カナケレバナラヌト云フコトハ當
然デアリマスガ、客觀的ニ左樣ナ事實
ノ存セナイ場合ニ於キマシテモ、唯此
ノ事件ヲ一日モ速カニ終了セシメタ
イ、言ヒ換ヘマスルト云フト、上告ノ
取下ゲデモシテ早ク服罪シテ貰ヒタイ
ト云フヤウナ狙ヒカラ、左樣ニ無駄ニ
暮ラサスト云フ實際ノ弊害ガ存スルモ
ノト思ハレルノデアリマス、デアリ
マスカラ、私共ハ證據湮滅、逃亡等ノ
虞ノナイヤウナモノニ付キマシテハ、
保釋ヲ出シ惜ミセズニ許シマスルト共
二、尙ホ又之ニ一個ノ條件ヲ付ケマシ
テ、サウシテ法的ナモノデナクトモ結
構デアリマスガ、何處カ適常ナ場所デ
勤勞ニ服セシメル、サウシテ此ノ戰力
增强ニ役立タシメルト云フヤウナ一ツ
ノ法案ヲ立テマシテ、サウシテ此ノ保
釋ト云フコトヲモウ少シ問口廣ク運用
スルト云フヤウナコトニスルコトガ
今日ノ諸般ノ情勢カラ考ヘマシテ適當
ナ措置デナカラウカト思ブノデアリマ
スルガ、之ニ對スル政府ノ所見ヲ承リ
タイノデアリマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=10
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011・船津宏
○船津政府委員 只今仰セノ保釋ヲモ
ツト數多ク許サレテ然ルベキデナイカ
ト云フ問題ニ付キマシテハ、議會每ニ度
度意見ノ交換ガ行ハレテ來テ居ルノデ
ゴザイマスガ、是ハ先程仰セノ、取調べ
ノ敏速ノ問題トモ一面關聯シテ居ルヤ
ウニ考ヘテ居リマス、現在マデノ實情
ヲ以テシマスレバ、裁判所ガ保釋ノ條
件ニ適ツテ居ルト云フ認定ノ下ニ保釋
ヲ致シマスト、色々ナ事情ヲ構ヘマシ
テ中々取調ベガ進捗シナイ、中ニハ裁
判官ノ見込違ヒデ、所在ヲ晦マスヤウ
ナ者モ必ズシモ少クナイト云フヤウナ
實情デアルノデアリマス、ソレ等ノ點
モアリマシテ、或ハ在野法曹ノ側カラ
御覽ニナリマスト、十分ノ期待ニ副ヒ
兼ネテ居ルヤウナ實情デアラウカト思
フノデアリマスガ、是等ノ問題ハ、度
度議會デ同ジヤウナ蒟蒻問答ヲスルコ
トハ餘リ意味ノナイコトダラウト考ヘ
ルノデアリマス、斯樣ナ戰局ノ際デモ
アリマスカラ、在野法曾ニ於カレマシ
テモ、今後ハ裁判所ガ保釋ヲ致シタヤ
ウナ場合ニ於テ絕對ニ正當ト認メニク
イヤウナ事情デ訴訟ヲ延バシタリ、或
ハ所在ヲ晦マスヤウナコトノナイヤウ
ニ、裁判ノ公正、裁判ノ進捗ノ上ニ此
ノ上トモ十分御協力、御支援ヲ得タイ
ヤウニ、私ハ衷心希望スルノデアリマ
ス左樣ニシテ在朝在野本當ニ相協力
シテ行キマスナラバ、此ノ戰局下ニサ
ウ云ツタ無駄モ出來ルダケ減リマシ
テ、サウシテ時局ノ要請ニ應ヘルコト
ガ出來ルダラウ、斯樣ニ考ヘテ居ル次
第デゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=11
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012・谷原公
○谷原委員 所謂重罪ノ刑ニ當ルヤウ
ナモノデアリマスト、保釋ヲ機會ニ逃
亡スルト云フヤウナコトモアリマセウ
ガ、然ラザル場合ニ於キマシテ逃亡ヲ
致シマシテ今日其ノ目的ガ達セラレル
譯ノモノデモナシ、結局ニ左樣ニ致シ
マスナラバ自ラ危地ニ入ルト云フヤウ
ナコトニナリマスルノデ、左樣ナ愚ナ
モノハアリマセヌ、又裁判官モ檢事モ
公然言ハレル譯デハアリマセヌガ、其
ノ心中ヲ推察シテ見ルナラバ、結局刑
事訴訟法所定ノ事項ニハ該當シナイ、
言換ヘルト、證據湮滅、逃亡等ノ虞ノ
ナイト云フ場合デモ、唯事件ヲ早ク濟
マセタイト云フヤウナコトデ許サナイ
ヤウナ實際ノ弊害ガ甚ダ多イヤウデア
リマス、事件ヲ早ク濟マスト云フコト
モ戰爭ニ勝ツ一ツノ理由、方法デアリ
マセウ、併シナガラ人的資源モ弊害ガ
ナイ限リ活カシテ行クト云フコトモ、
是ハ戰爭ニ勝ツ有力ナ手段デアリマス
カラ、此ノ點ニ付キマシテハ十分ニ御
考慮ガ願ヒタイト思フノデアリマス
更ニモウ一ツ附加ヘテ此ノ際伺ツテ
置キタイノハ、此ノ刑事、民事ノ訴訟
促進、左樣ナモノヲ早ク片付ケル、事
務的ニ見レバ洵ニソレハ結構ナコトデ
アリマス、併シナガラ司法ノ一大使命
カラ申シマスルト云フト、如何ニ戰爭
中デアルカラト言ツテ、唯徒ラニ卽決
ガ宜シイ、所謂巧遲ヨリハ拙速ガ宜シ
イト云フベキモノデナイト思フノデア
リマス、所ガ旣ニ三審制度ガ一審制度
ニナツテ居ルノデアリマシテ、我々ハ
ソレヲ今更元ニ還セト云フヤウナ愚カ
ナ主張ヲスルモノデハアリマセヌガ、
併シ此ノ二審制度ハ二審制度トシテ存
置シツヽモ、之ヲ成ベク司法ノ太質
カラ考ヘマシテ、有效適切ニ運用ノ出
來ルヤウナ工夫ヲシ、ソレニ依ツテ裁
判ニ心服セシメ、司法ノ威信ヲ高メテ
行クト云フ考慮ヲ出來ルダケ致シタイ
ト思フノデアリマスガ、ソレニ付テハ
此ノ刑事事件等ニ付キマシテ、マア上
告ノ理由ト致シマシテハ、啻ニ法律違
反ノミニ限ラズ、刑ノ量定ガ著シク不
當デアルトカ、或ハ事實ノ誤認ヲ疑フ
ベキ顯著ナ理由ガアルトカ云フヤウナ
場合ニハ上告ノ理由トモナルノデア
リマスルガ、併シナガラ是等ノ條文
八殆ド歷史的ニ見マシテモ、例外的
ニ出來テ居ル條文デアリ、非常ニ嚴格
ナ運用ガ要望セラレル結果ト致シマシ
テ、一審デ有罪ノ判決ヲ受ケ、上告等
ヲ致シマスル場合ニ、其ノ上告趣意書
ニ認メマスルコトハ、素人デハ、容易ニ
自分ノ思フェトヲ認メルコトガ出來ナ
イヤウナ人モアリマスルシ、又只今述
ベマシタ二ツノ點ニ付キマシテモ、其
ノ條件ガ甚ダ嚴格デアリマスル爲ニ、
中々容易ニ破毀ヲ受ケルヤウナコト
ガ、望マレナイノデアリマス、隨テ今
日旣ニ二審制度トナツテ居ルノデアリ
マスルカラ、上告審ニ於ケル上告審理
ノ理由ヲモウ少シ緩和ヲシテ、今二ツ
ノ點デモ宜シイガ、此ノ二ツノ點ニ付
テ、モウ少シ審理條件ヲ緩和致シマシ
テ、サウシテ原審ノ裁判ヲ是正スルト
云フヤウナ途ヲ開イテ置イタナラバ、
ソレハ二審制度ニ對スル關係者ノ心服
ノ度ガ强マリ、又司法ノ威信ヲ昂揚ス
ルコトモ出來易イト思フノデアリマス
ルガ、是等ニ對スル司法當局ノ御所見
ハ如何デアリマスカ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=12
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013・船津宏
○船津政府委員 御指摘ノ刑事上告ノ
問題デゴザイマスガ、是レ亦仰セノ通
リニ裁判ト云フモノハ絕對ニ拙速デア
ツテハナラナイモノデゴザイマス、千
ニ一ツモ誤判ガアルヤウナコトハ、絕
對ニアツテナラナイヤウニ私共司法當
局トシテハ考ヘテ居ルノデゴザイマ
ス、隨ヒマシテ刑事裁判ガ一一審制ヲ採
用スルヤウニナリマシテカラト云フモ
ノハ、特ニ一審裁判ノ方ニ練達堪能ナ
裁判官ヲ廻シマシテ、敏速ニ且ツ適正
ニ裁判ヲ致スヤウニ心掛ケテ居ルノ
デゴザイマス、一審ニ於テ裁判ヲ出來
ルダケ速カニ而モ實體ノ眞實ヲ促ヘマ
どと、之ニ對シテ有罪ナリ無罪ナリ、
又有罪ノ場合ニハ諸般ノ點ヲ考慮致シ
マシテ、最モ妥當ナ刑ヲ盛ルヤウニシ
テ行クト云フコトガ、是ガ先決問題デ
ゴザイマシテ、一審ノ裁判ガドウモ十
分盡ス所ガナイ爲ニ、之ヲ上訴審ニ於
テ救濟スルト云フコトハ、刑事裁判ノ
行キ方ト致シマシテ、是ハ第一義的ニ
考慮スベキ方法デハナイコトト考ヘテ
居リマス、併シナガラ人間ノスル裁判
ノコトデゴザイマスカラ、又人ニ依リ
マシテハソレ〓〓意見ノ立テ方モ違ヒ
得ルト云フコトハ想像サレルコトデゴ
ザイマスカラ、之ニ上訴ノ起ルコトハ
已ムヲ得ナイコトト考ヘマスガ、併シ
只今當局ト致シマシテハ、上告ノ條件
ニ付テ之ヲモツト緩和スルト云フコト
ニ付テハ、マダ考慮ハ致シテ居ラナイ
ノデゴザイマス発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=13
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014・谷原公
○谷原委員 質問ハ終リマシタ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=14
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015・金井正夫
○金井委員長 ソレデハ本日ハ此ノ程
度度終ルコトニ致シマシテ、次會ハ
明日午前十時開クコトニ致シマス、
今日ハ是ニテ散會致シマス
午前十一時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008612050X00219450130&spkNum=15
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