1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○鹽專賣法中改正法律案
○昭和二十年法律第十八號中改正法律案
○貿易資金設置に關する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十年十二月十六日(日曜日)午前十時二十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=1
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002・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) それでは昨日に引續き會議を開きます、昨日は三法案に付てそれぞれ政府當局の御説明を伺つたのでございますが、本日は御質問のある方に御質問を願ひたいと存じます、就ては先づ鹽專賣法中改正法律案を議題と致しまして御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=2
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003・綾小路護
○子爵綾小路護君 私は本案に付きまして御質問を申上げます前に、先づ以て政府から外鹽の輸入の状況竝に國内需給の現状、尚過般蒙つた鹽田災害の模樣、竝に製鹽に付ての將來の對策、尚只今執つて居られる御處置、殊に自給鹽の生産に付きましては、過般來政府は格段の努力をせられて居られたことは、私認めるのでありまするが、それ等の實情、以上の諸點に付きまして一應御説明を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=3
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004・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 御答へ申上げます、先づ第一に只今の御質問の、外國からの鹽の輸入の状況に付て申上げます、從來我が國が食料用鹽、竝に工業用鹽と致しまして、輸入致して居りました鹽の數量の一番多かつた年は、昭和十四年度でございまして、此の年に百八十六萬「トン」を輸移入致して居ります、それが其の後段々減つて參りまして、昭和十八年度に於きましては、百四十一萬「トン」程度、十九年度に於きましては百二萬「トン」程度を輸入致しました、昭和二十年度に於きましては、御承知の通り戰爭の益益苛烈化になるに伴ひまして、非常に輸入が困難と相成りまして、上半期に於きまして、四十三萬「トン」を輸移入致して居ります、更に下半期に於きましては終戰後の色々な情勢等に依りまして、聯合軍司令部との關係等もあり、只今迄に内地に持込み得ました鹽の數量は、二千數百「トン」でございます、併しながら其の後交渉致して居りまする所の數字は、最初の計畫と致しましては本年度内に四十八萬「トン」位の輸入を致したい、斯樣に考へて居りましたが、諸般の情勢から更に其の數字を減少致しまして、只今の處申出て居りまする數字は三十四萬「トン」でございます、其の中或程度の數量──まだ確定致しませぬが、大體に於て三分の一程度のものは近く輸入を大目に見て呉れることになるのではなからうか、斯樣な風に察せられる情勢にある次第でございます、それが輸入の状況でございまして、次に國内生産の状況を申上げますと、國内生産と致しましては、從來内地の專業製鹽に依りまして生産せられました最高の記録は、昭和十四年度でございます、其の年度に於きまして、六十三萬「トン」餘の生産を致しました、それが十五年、十六年と事變の進行に伴ひまして、諸般の状況から條件が惡化致して參りましてなかなか思ふやうに生産が參りませぬけれども、十八年度には三十八萬「トン」になりました、即ち四十萬「トン」を切つたやうな状態であります、それが十九年度に於きましては、更に減りまして、三十五萬「トン」に落ちました、昭和二十年度に於きましては是亦石炭の入手の不圓滑の問題、或は勞務の問題、色々の惡條件が加はりまして上半期に於きましては十二萬「トン」の生産を爲し得たに止つて居ります、下半期に於きましては御承知の通り過般の九月十七、十八日の風水害の爲に、鹽田地方に於きまして鹽田面積の五割を超ゆる六割にも近いやうな廣い面積に亙りまして災害を蒙り、其の爲にそれが主たる原因となりまして、殊に下期の生産は惡く相成つて居ります、當局と致しましては有らゆる施策を加へて業者と協力、増産に努めて居りますが、只今の處確實に見得る數字は精々下半期は四萬五千「トン」程度ではなからうかと斯樣に考へて居るのであります、從つて本年度に於きましては上下合せまして十六萬五千「トン」と云ふ程度に考へて居ります、併し是は非常に堅く見て居りますから、恐らくは内地に於きましての專業製鹽事業に於ける一番どん底と云つて宜い位惡い生産状況に止つて居るのでなからうかと考へて居る次第であります、それが内地の生産状況でございます、次に第三の災害の状況に付て申上げますが、九月十八日の災害の當時に於きましての被害は、相當驚くべき廣面積に亙りました、我が國の鹽田面積は全國で只今の處四千二百二十八「ヘクタール」と稱せられて居ります、其の中被害面積は當初の報告に依りますれば二千八百四十五「ヘクタール」でありまして、被害割合は六割七分の大きに達して居ります、其の後併し段々と精査致して參りました結果、二千八百町歩迄全然駄目になつたと云ふ程ではないやうであります、若干此の數字はもう少し少くて宜いのではないかと考へて居りますが、併し浸水致しました面積としては其の程度のものに至つて居るのでありまして、幸ひ其の後有らゆる施策を加へまして復興に努力を致して居る次第であります、其の災害對策に付きまして當局の執りました措置の大要を申述べますれば、早速中央、地方密接な連繋を取りまして、一日も早く先づ計畫を立てる、さうして其の計畫に應じまして著々として復舊を急がう、斯う云ふ手筈に致しまして諸般の準備を整へました、其の樹立致しました復舊計畫と致しましては、先づ罹災鹽田の全部を復舊しよう、一部分を抛擲しようと云ふうやうなことをしなくて、此の際全部を復舊しよう、而も其の時期は成るべく早い方が宜い、場合に依れば單なる假潮止工事をしてでも中の鹽田に於ての採鹹作業を始める、即ち復舊業務は復舊業務として、中でどんどん採鹹を致しまして、外から臨時の人夫を入れて堤防等の本當の復舊工事をやる、斯う云ふやうな方法を考へまして取急ぐことに致して居ります、概ねの見當と致しましては、大阪地方專賣局の管内であります所の兵庫縣、非常な災害でありましたが、兵庫縣等に付きましては、來年の一月末迄には是非復舊工事を完了したい、廣島、高松の各地方局管内に於きましては、本年の年末迄には完成をしてしまはう、其の他に於きましては比較的災害も輕くありましたので、十一月末を以て完了しよう、斯う云ふ計畫を立てました、概ね其の他の地域の十一月末と云ふのは若干の時日の遲延はありましたが、復舊致して居ります、廣島、高松の管内及大阪の管内に於きましても、鋭意努力致して居りますので、相當成績を擧げ得るかとは考へますが、資材勞務等の隘路の關係もあり、或は其の勞務者に對する食糧の配給上の難點等もありまして、此の計畫の數字は、日限は若干遲れるかと云ふ風に只今の處見込まれて居ります、併し採鹹可能の鹽田に於きましては本工事が完成致しませぬでも、どんどん採鹹致すやうにと云ふやうな意氣込で、現にそれぞれ採鹹には各業者とも非常な熱意を以て當つて戴いて居る有樣でございます、災害復舊に付きましては、何と申しましても業者の復舊に對する意慾、言換へれば一般の庶幾する所の鹽の増産の意慾を昂揚する必要がありますから、それには鹽業者が相當多年の經營上に於きまして困難を感じて居ります點も察知せられますので、出來得る限り多額の補助金を出すと云ふやうな方針を執りまして、堤防工事に於きましては九割を補助し、其の他の鹽田施設の工事に付きましては八割五分を補助することに致しました、而も其の補助金に付きましては概算拂の方法等も講ずることに致し、又預金部からの資金の融通等もそれぞれ御世話を致して居ります、尚業者の負擔に殘ります所の鹽田堤防工事に付きましての一割、其の他の工事に付きましての一割五分と云ふ負擔に付きましては、昭和二十一年度以降五箇年度間に其の元利償却が出來まするやうに、賠償價格に於て適當に考慮致して行く、斯う云ふ風な計畫に致して著々として進んで居ります、復舊所要資金と致しましては、約所要工事費の總額は四千三百餘萬圓でありますが、それに對しまして國庫から補助致しまする金額は別途豫算に御願ひ致して居ります所の三千五百萬圓でございます、復舊に關しましては資材、勞務或は其の勞務に要する食糧等に付きましても、それぞれ關係の方面と連絡を執りまして、能ふ限りの援助を與へて居りますので、此の點は今囘は比較的「スムーズ」に參るかと考へて居るのであります、尚我々當局と致しましては、地方に於きましての專賣官署の陣容の状況等に鑑みまして 本省等の應援を得まして、特に優秀なる官吏を災害復舊を要する局の方へ臨時に特派致しまして、專ら業者或は關係官廳との間に立ちまして、復舊の一日も速に參りまするやうな努力を致させて居ります、次に一般的の鹽増産の對策に付きまして申上げますが、何と申しましても鹽増産の爲に最も大事な問題は專業製鹽の本當の努力であると云ふ風に考へまするので、專業製鹽の實情が擧りますやうにと云ふことに付きましては、戰時中は勿論、戰後に於きましても有ゆる努力を續けて居るのであります、例へば鹽生産の上に於きましての最近に於きましての一番大きな隘路であつた所の石炭の入手問題、之に付きましては、生産計畫に即應した石炭の物動割當を、先づ中央と致しましては有ゆる困難なる状況にも拘らず、關係當局の了解を得て其の入手に努力を致しました、併しながら御承知の通り何分にも戰時中のことでありますし、又石炭の生産状況が思はしくありませぬでしたので、我々の希望通りには入りませぬでした、概ね希望數字の七割見當の石炭の物動の割當状況に止つて居るのであります、而も悲しいことには其の少かつた石炭が更に現物入手となりますると、もつと少いのでありまして、大體に於きまして本年度の上期に於きまする數字の如きは、概ね半量程度であつたのであります、併し半量程度ではありましたが、本年度は非常に御承知の通り氣候が惡く降雨が多くて、其の爲に採鹹の成績が擧らなかつたと云ふことは、非常に大きな今年度の不成績の一つでありますが、それや是やの關係から出來ました鹹水に付きましては、大體大した支障なく煎熬をし得る所の石炭は入手し得て居ります、終戰後に於きましても計畫上の割當の問題、或は更に現物入手等に付きまして有ゆる努力を盡して居りますので大體に於て只今の所は石炭に付てはさしたる困難も感じて居りませぬ、併しながら御承知の如く、最近の石炭事情でありますので、今後業者の訓練に依りまして、非常な鹹水の増産になつて參りますと、或は石炭の問題が益益大きな問題として取上げなければならぬやうになるのではなからうかと考へるのであります、他面我々と致しましては、石炭事情等にも鑑みまして、所謂專業製鹽の方面に於きましても、電氣を煎熬に使ふと云ふことに付ての斡旋竝に計畫を致して居ります、即ち中國以西の方面に於きましては、比較的水力發電が少いのでありますけれども、近時の状況に依りますれば相當現在の所は餘剩もあります、從つて電力の當局と能く話合を致しまして、出來得る限り萬一の場合、石炭の不足に對應して、電氣煎熬をやらうと云ふやうな計畫の下に、それぞれ順次第一次、第二次、第三次等の計畫を樹てまして、著手可能の方面から大急ぎで電氣煎熬施設をやることに致しました、之には矢張り相當多額の補助金をも支出することに致して居ります、尚專業製鹽の賠償價格の問題がございますが、是亦矢張り相當の價格を以て業者に報いるのでなければ、其の實が擧らないと云ふことは勿論でありますが、近年大體の方向と致しましては、成るべく各地域の實情に副ふやうにと云ふ考へ方から、賠償價格を、全國を從來三地域に分けて居りましたのを四地域にする、四地域に分けて居つたものを更に五地域に分けまして、段々に其の地方々々の實情に應じた賠償價格にして行かう、斯樣に考へて實行致して居ります、將來の問等と致しましては、更に之を要すれば細分致しまして、成るべく各業者の實情に即應した賠償價格の方に進んで參りたい、斯樣に考へて居る次第であります、專業製鹽に付きましては、其の程度に致して置きまして、次には自給製鹽の方法に依る増産對策に付て申上げますが、所謂自給製鹽と申しますのは、本年三月の閣議決定に依りまして、大々的に一種の國民運動として鹽の自給をして戴かう、海岸地方では鹽の自給自足を圖つて貰ひたいと云ふ大きな運動として始めたものであります、幸にして、全國沿海府縣に於きましては、縣當局の非常なる御協力があり、相當の成績を擧げつつあるのであります、當初二十萬「トン」の本年度生産の計畫で始めて居りましたが、本年度二十萬「トン」の自給製鹽完遂と云ふことは、稍稍困難があることは初めから或程度豫想せられたのでありますけれども、何と申しましても、是は一つの大きな目標として掲げるのには、少いよりも多いのが宜いと云ふので二十萬「トン」の計畫を立てて居つたのであります、府縣に依りましては、其の成績が非常に好く參りまして、なかなか自給製鹽が盛んになつて居る地方もあります、例へば靜岡縣でありますとか、或は福島縣、秋田縣、或は富山縣等の如き非常な熱意を以てやつて居られますので、其の成績も頗る見るべきものがあります、恐らく本年度の自給製鹽に依る生産鹽は各個人、隣組等に依りますものなどは、なかなか數字上の推定は困難ではありますけれども、大體の見込と致しましては、二十萬「トン」の半分十萬「トン」餘は確實に出來て居るのではないかと考へられます、併しながら其の十萬「トン」餘の自給製鹽がありましても、今日迄の所では、之を政府が現實に買上げまして、政府の自由なる方面に配給をすると云ふやうなことになつて居る其の數字は、それこそ九牛の一毛でありますが、併し之に依りまして、或は其の關係者或は其の近隣の者達が、鹽の不自由を緩和せられて居ると云ふことに於きまして、此の目的を達して居る面も多大なものがあると考へるのであります、今後自給製鹽の大體の計畫と致しましては、本年度、來年度を通じまして、相當大きな計畫を考へて居ります、即ち此の自給製鹽に依りまして、今明年中に九十四萬「トン」の年産能力と云ふものを何とかして完成したい、斯樣に考へて居ります、此の九十四萬「トン」餘の年産能力を發揮する爲の設備費と致しましては、極めて是は概算でございますが、十億六千萬、十一億位の金が要るのではなからうかと推定致して居ります、御承知の如き物價事情、勞務事情等に在りますので、此の設備費が是で濟みますか、或は是よりもう少し内輪で濟みますかに付ては、多大の疑問がありますが、只今の推定では十億六千萬圓と考へて居ります、從つて之に要しまする補助金は、八割を補助すると致しますと、八億五千萬圓程度の補助金が要るのでありますが、此の八億五千萬圓程度の補助金の中で、本年度に於きまして、既に八千萬圓の豫備金支出に依る支出を致して居ります、尚別途此の議會に提案して御願ひ致して居りまする金額が一億二千萬圓でありますから、兩者合せますると、二億圓の設備補助金を本年度に於て支出する見込みに致して居ります、爾餘の所要經費に付きましては、次期議會に提案致しまして、或は豫算外契約等に依ることに相成るかも知れませぬが、是非共業者が安心して此の計畫を進行出來得るやうにして參りたいと考へて居るのであります、我々當局と致しましては、出來得るならば今期議會に於て豫算外契約等を御願ひして、自給製鹽者の計畫に安心を與へたいと考へたのでありますが、單なる豫算上の或技術論からして、今囘は之を見合はせることに致しましたが、次期議會には是非御願ひ致したいと考へて居ります、只今申上げました今明年度を通じましての年産能力九十四萬「トン」と云ふものが完成致しますれば、來年度に於て一體幾ら取れるか、一應今見込んで居ります生産を申上げますれば、四十萬「トン」と考へて居ります、即ち九十四萬「トン」の能力がございましても、完成が來年度の末になるものもあると云ふやうな關係から、是から生産し得る來年度の見込は、四十萬「トン」と考へて居る次第であります、尚此の自給製鹽計畫は、食料用鹽、工業用鹽兩者を通じての計畫であることを申し添へて置きます、以上大要だけを申述べましたが、尚御質問に依りまして、詳細御答へ申上げたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=4
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005・綾小路護
○子爵綾小路護君 懇切に御説明を戴きまして、感謝致します、尚一點伺ひたいのですが、鹽が不足した場合に、保健上どう云ふ障碍が起るか、即ち鹽不足により人體に及す影響如何、是は厚生省の所管かと思ひますが、一應參考になりますので大藏當局からも承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=5
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006・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 鹽の不足致しました場合の影響の問題でございますが、實は我が國に天明の飢饉と云ふ風な際の記録が僅にございますが、近代的な醫學的な研究を致しました實例は、殆ど聞いて居らないのであります、唯專門家に聽きました概略の、是は正確を期し難いと存じますが申上げますと、胃液の分泌状況が非常に惡く、消化不良を起す、それから保温作用が非常になくなる、それから傅染性疾患に對して非常に抵抗力が弱くなる、それから倦怠感と申しますか、例へば戰爭を非常に厭やがると云ふ風な敗戰的な思想、それから物に直ぐ飽きて根氣がなくなる、斯う云ふやうなことを聞いて居ります、最近聞き及びました實例に依りますと、沖繩の上陸が行はれました際に、日本の子供が能く倒れます時に、尻を付かずに頭をいきなりぶつけて倒れる、是は要するに安定感がなくなると云ふことださうでございます、それから九州地方の某炭田に於きましては、坑夫が抗内に於て相當重筋勞働を致しますると、膝に痙攣を來しまして、勞働の繼續が不可能になると云ふ風な實例を聞いて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=6
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007・綾小路護
○子爵綾小路護君 尚製鹽に對しまする資金方面の點に付きまして御尋ね申上げたいと思つたのですが、是は先刻既に御説明の際對策上の根幹として恆久財源設置に付篤と御考慮のやうでありまするからして、重ねて伺ひませぬ、寧ろどうか此の恆久財源の確保と云ふことに付きましては、十分に御考を戴きまして、次の議會には是非とも御提出になると云ふやうに御手配を願つて置きたいと思ひます、私の質問は是で一應打切つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=7
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008・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 只今綾小路委員の御質疑に對して鹽の生産状況竝にそれ等に付ての政府の御方針の大體を承つたのでありますが、此の食料用鹽と云ひまするか、鹽の賠償に關する政府の政策と云ふものは專賣法が出來てから今日迄に若干變つて來て居るんぢやないかと思ひます、賠償政策に關する政府の御方針と、賠償決定に付ての規準、更に具體的に申しますると、製鹽業者を激勵し奬勵すると云ふことも、先程の御答辯中に御言葉があつたのでございまするが、業者と雖も戰時下又今後に付ての國策の上から幾多の犧牲を拂ふことは忍ぶと思ひますが、或一定の利潤と云ふものを認めてやらねばならぬ、又それに付きましては現下に於ける製鹽の方法に付て色々各種の種類、段階があると思ふのであります、それ等に付て利潤の許容の限度如何と云ふやうなことに付て當局の御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=8
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009・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 專業製鹽に付きましては、從來御承知の通り政府に於きまして精密なる原價計算を致しまして、それに依つて而もそれは色々技術上の點等もありまして、比較的地區の分ち方が少い賠償價格が決めてありました爲に、必ずしも個々の製鹽業者に對しまして實情に適しないと云ふやうな場合もあつたかと考へられるのでありますが、是では所謂今日の急務たる鹽の増産に非常な障礙があると考へられまして、段々其の方針で個々の業者に合ふやうに成るべく各地域に合ふやうにと云ふ方針で段々と進んで參つて來て居りますことは、先程申上げた通りでございます、然らば業者の適正な利潤をどの程度に考へるかと云ふことに付きましては、政府の其の他の各種の産業に對しましての見方と自ら揆を一にせざるを得ないのでありまして、大體に於て正確なる原價計算が出來ます場合には、六分乃至それより若干上廻つた程度の利潤は是が非でも必要なんではなからうかと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=9
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010・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 大體のことは分りましたのですが、此の製鹽に付ての機械化と云ひまするか、近頃電氣製鹽、或は機械製鹽と云ふやうなことも段々行はれて來て居るのでありまするが、之に對する、例へば電氣製鹽と云ふことに付きましても、現在の電力料金ではなかなか「コスト」が高く付く、從つて自給計畫に依るそれ等の製鹽した鹽を手に入れました業者も、それを原料として或は之を曹達工業の原料にすると云ふやうな場合には可なり採算上無理をしなければならぬと云ふことも言つて居りまするが、電力料金の低下と云ふことに付て當局としてどう云ふ風に考へて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=10
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011・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 電氣製鹽の場合に於きましての電力料金に付きましては商工省當局と相談の上、使用量の如何にも依りまするが、大體に於きまして一錢乃至一錢三厘程度に供給致しまするやうに話合を進めて進行して參つて居ります、其の程度に致しましても、設備費等の關係から相當電氣製鹽は生産費が高値に付くものがありますが、所謂電氣製鹽と申しまする分の中、先程ちよつと説明に申述べました專業製鹽に依るものでない、即ち自給製鹽に依るものに付きましては、其の自給製鹽者の希望に應じまして政府が之を買上げることに致して居ります、さうして其の買上げ價格を決めまする場合に、能く業者の計算等の内容を調査致しまして、それに依つて無理でないやうにと云ふ適當な所を見込んで、假にそれが「トン」當り七百圓掛りましても、八百圓掛りましても、其の計算さへ適當な時には之を其の値段で買上げてやると云ふ方法に致して居るのであります、尤も比較的割高に付く場合に、其の内容等に、設備の改良を要するもの、或は經營方法に缺點のあるやうな場合に於きましては、之に一緒に「ヒント」を與へまして、一緒に調査して、「コスト」を引下げる爲の設備の改良をやらせると云ふやうなこともやつて居るのであります、其の方針でありますが、現在の處、自給製鹽と致しましては、尚政府の買上げを希望して居る向が件數と致しましてはさう澤山に及びませぬので、今一般的に政府が示して居りまする自給製鹽の買上價格は「トン」當り六百圓と致して居ります、それより超ゆるものに付きましても、それぞれ内容を檢査致しまして、相當高く付くものは、高い値段で買ふと云ふ方針で參つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=11
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012・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 此の電氣製鹽に付きましても二、三地方の設備を見て來たこともありまするが、最終の鹽を生産する迄總て電力に依ると云ふことは、なかなかむづかしいのだ、或程度迄鹹水を濃縮しますると、濃縮した鹹水の爲に電極を破壞せられると云ふやうなことがある爲に、矢張りそれを別の設備に移して、石炭其の他の燃料に依つて製鹽をすると云ふやうな段階に又還るやうに聞いて居りまするが、さうすると矢張りさう云ふ場合に於ける燃料、殊に行炭と云ふやうなものが必要になつて來る、現下の石炭事情から云ふと、誠にさう云ふ點に付きましては心細い次第でありますが、先程の御話の通り、極力石炭の割當をすると云ふ御方針は結構でありますが、實際割當てられた石炭の何「パーセント」がそれ等の事業に現實として渡されると云ふことに依つて生産が決まると思ふのでありますが、それ等に付ての石炭の優先的配給と云ふことに付ては、是は大藏省と商工省ですか、それ等の産業省等の御關係が極めて密接に行はれて行かないと、なかなか理窟通り計畫通りに行かないと思ふのでありますが、是等の點に付てはどう云ふ風な御方針で處置なさる御積りでありますか伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=12
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013・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 只今の濃縮度に應じまして電極が壞れるやうな御話を伺ひましたのですが、是は電氣製鹽の開始されました初期に於きまして屡屡其の問題が起りました、最近は濃縮度に應じまして電極を操作することに致しまして、電力の調節をすると云ふ風なことで、左樣な事例は殆どなくなつて居ります、唯終始電力に依りまして操作すると云ふ方法でございまして、御説の如く他の燃料で補つて參るとか、或は事前に相當の濃縮を加へると云ふ風な色々の方法を合せた操作と云ふものが相當發展する餘地があらうかと思ひますが、是は技術的に色々研究致して居ります、尚石炭に付きましては御承知のやうな現在の石炭事情でございますが、私共と致しましては商工省と特に密接な關係を持つて連絡を致しまして、最優先的に配當を受けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=13
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014・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 只今の説明で大體のことを了承致しましたが、更に一二點伺ひたいのですが、製鹽行政に關しての大藏省と、それから産業省である商工省とに、工業用鹽の自給製鹽と申しますか、さう云ふ方面に付ては商工省の所管事項もあると思ふのであります、其の兩省との關係及び地方廳の農務課あたりが製鹽業に可なり色々事業の指導や御手傳をやつて居るやうでありまするが、專賣局の地方出張所と申しますか、地方廳とそれ等との關係に付て時に手續上に色々面倒が起ると云ふやうなことがありますると、生産業者にも惡い影響があり、どうも手續が面倒くさくて、又政府の方針が時に大藏省と或は他の産業省との間に喰違ひがあると云ふやうなことがありますると、面白うない影響を與へる、斯う云ふ風に思ひまするので一應共の間の大藏省と他の産業省との事務的の御關係に付てどう云ふ方針で現にやつておいでになりまするか、其の點を伺ひたいと思ひます、是は大藏省當局と、それから他の農林省、商工省の政府委員の方がおいでになりましたらそれぞれ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=14
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015・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 大藏省で鹽に關しまして扱つて居ります行政は、政府の鹽の專賣行政でありまして、是は鹽の生産、配給輸移入等の全般に亙つて、其の基本計畫は全部大藏省で只今の所やつて居るのであります、商工省に於きまして所管致して居りますのは、所管と申しまするよりは、實際上世話を致して居りまする分は工業用鹽の配給の部面でございまして、工業用鹽と雖も概ね從來輸移入に其の供給源を仰いで居りましたが、其の輸移入に付きましては總て大藏省が御世話をする、其の輸移入された工業用鹽の配給の面倒を商工省の方でやつて居られる、斯う云ふことに相成つて居る次第であります、それから農林省と致しましては、寧ろ味噌、醤油等の食料の面に於きまして、是等の製造業者の消費する鹽、其の配給の面に於きまして關係を持つて居るだけでありまして、こちらから之に對する配給數量等の相談をして居る程度に過ぎないのであります、地方廳としましては、自給製鹽に付きましては、大藏省の地方專賣局官署に於ける陣容必ずしも之をやらせるのに十分ならずと認められる點もありましたし、又戰時中殊に當時に於きまして地方長官でありますとか、或は當時の地方總監と云ふ風な方面の政治力と申しますか、地方に於きましての實際の推進力と云ふものに多分に依存する必要を考へましたので、官制上の問題は手續はしてございませぬが、事實上の問題として自給制鹽の配給生産と云ふ風なことに付きましては、地方廳にやつて戴き、地方專賣局官署は側面的に技術の方面から、或は技術上從來聞き知つて居りまする所の鹽に關する經驗等の面から協力致しまして、兩者一體になつて仕事をしようと、斯う云ふやうな状態にあつたのであります、尤も鹽の生産の面に於きましても、生産上の重要な資材であります所の石炭、鐵、「セメント」等々の資材に付きましては、其の所管が商工省にありますし、同じく生産の面に於きまして農林省の關係と致しまして他の農業との關係、或は鹽の生産上に要します所の勞務の關係、或は藁工業等との關係、大體さう云ふやうな關係に於きまして農林省とも關係は深いのであります、消費の面に於きましては先程申しましたやうに、味噌、醤油、或は漬物、或は水産用の鹽と云ふやうな關係で、農林省と密接な關係がございます、從つて鹽の生産の面に於きまして、或は消費の面に於きまして、それぞれ他の各省に關係があるのでありますが、それが大藏省で其の元締とでも申しますか、鹽に關する行政の一元化をやつて居りまする理由は、恐らくは其の專賣制度の成立の沿革に依るものと考へられるのでありまして、御承知の通り鹽の專賣は最初は、制度の創設當時は、收入專賣の目標があつたのでありますが、制度創設後間もなく所謂收入專賣と云ふ實はなくなつて參つて居りました、併しながら收入專賣と云ふことで發足した關係上、煙草が收入專賣で大藏省が所管してやつて居ると云ふ關係で、經理上の點から見ましても、會計制度の上から見ましても、或は政府職員の合理的な使用方法の點から考へましても、先づ大藏省がやるのが宜いと云ふことで、大藏省に於て御世話をして參つたことと思ふのであります、殊に近年に於きましては、鹽では相當大きな財政上の赤字を出して居りましたが、是が煙草の專賣の益金と消し合つて、尚專賣事業としては相當の益金を財政的に寄與して居りますけれども、從來の此の主たる沿革の關係で大藏省が全部鹽は御世話をして居る、斯う思ふのであります、然らば之を商工省所管に移したら宜いか、或は農林省所管に移したら宜いかと云ふ色々問題もございませうが、今日の如く政府の機構が非常に細密に、行政の各方面に關係するものでありますから、今日の加き状態に於きましては、必ずしも何處へ持つて行けば總てそれが統一されると云ふやうなことは、非常に今日の行政機構の仕組上困難だと考へる次第であります、尤も大藏省としまして、今日の状態に於ては、尚大藏省が所管して居るのを適當と考へますけれども、將來國内に於ける鹽の増産と云ふ點に於て、專賣制度が根本的に檢討せられる際に於きましては、十分考へて行つても宜い問題であらうとは考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=15
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016・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 只今專賣局長官の御説明で、製鹽行政に關する現下の事情及び御方針を伺ひましたが、私は將來此の專賣行政に付て、專賣と云ふことに付ては、別に異論は持つて居りませぬが、斯う云ふ産業に關する事柄に付ては、將來は産業省管下の事業と云ふことにすることの方が合理的であり、又必然的ぢやないかと自分としては考へて居ります、併し現在の行政に付ては、各關係省とも極めて緊密な連絡の下に圓滑に行つて居ると云ふことを承りまして、誠に滿足をする次第であります、唯此の鹽の増産と云ふことに付ては、色々手續其の他の事務的の手數が掛かると思ふのであります、又各地方々々に付きまして、山間部方面に於ける鹽の供給、殊に食料鹽の供給と云ふものは、山間部に於きまして、偶偶温泉と云ひますか或は冷泉に付きましても、鹽水が出る場合に、それを其の地方の自給製鹽計畫と云ふことで、一部地方ではやつて居るやうであります、今後益益さう云ふ方面の地下湧出の鹽水を利用すると云ふやうな自給計畫も發展して行くと云ふやうに思はれるのであります、又既往の鹽田其の他海岸地方に於きましても、地域に依つて色々地方の食糧事情其の他が異るのでありますからして、之を中央で總てのことをやつて行くと云ふことに付ては、なかなか無理があると思ふ であります、先程も長官の御説明中に、地方廳の協力を求めることが甚だ大であると云ふ御話があつた通りに、出來るだけ地方廳の權限と云ひますか、さう云ふ方面に最大限度の事務の委讓をすることが私は必要でないかと思ふ、さうして地方廳に於て地方事情を勘案して、それに依つて製鹽行政に或程度の彈力性を持たして、是で適當にやつて行くと云ふことが差當り必要ではないかと思ふのであります、之に對する當局の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=16
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017・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 自給製鹽に付きましては、先程も申述べました通り、地方廳に第一線に出て戴いて仕事を致して貰つて居りますが、是は戰時中のあの状態下に於きましての巳むを得ない一つの措置でもあつたのであります、今後に於きましては、之をどう云ふ風に持つて參りますか、我々と致しましても地方專賣官署に於ける陣容の充實と云ふことも今日最も急務と考へられますので、技術的にも、事務的にも相當陣容を強化致しまして、さうして今後、從來と同じく地方廳と地方專賣官署との協力に依つてやつて參りますか、或は場合に依つては地方專賣官署の方が主になつて、地方廳の方が從になつてやつて戴く、或はそれを所々、當該地方々々の實情に應じてやつて行くと云ふやうな問題に付きましては、今後十分研究を致しまして善處致したいと考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=17
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018・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 それから尚一點伺ひたいのですが、それは今度の改正法律案自體のことでありますが、鹽專賣法の戰時特例と云ふ特別の内容と今度の鹽專賣法中改正法律案と云ふものの内容に付ての何か相違の點がありますか、と云ふのは、詰り製鹽行政に付ての取扱に付ての相違の點がありましたら、其の點を一つ指摘して御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=18
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019・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 今囘の鹽專賣法中改正法律案に載つて居ります主たる要點は、二點あるのでありまして、第一には、只今も御質問にございました從來戰時特例に依つて實行致して居りました部分を、今後も繼續して行かう、即ち別途議會に提案されて居りまする通り、鹽專賣に關する戰時特例の根據法令でありまする所の戰時行政特例法が廢止になりますので、其の根據を今度は專賣法自體の中に適當に盛入れると云ふことが必要になつて參つたのであります、其の爲に今囘の法律案の改正案が出て居るのが一點であります、此の部分に付きましては從來の、現行の鹽專賣の戰時特例に依つてやつて居りまする行政と何等變りがございませぬ、從來の儘を唯根據法令を變へて繼續して行きたいと云ふ點でございます、第二の點は現行の鹽專賣法中に政府の鹽の賣渡價格に付て制限がございます、御承知の通り一石に付て二圓四十錢を加算した金額を超えて政府の賣渡價格を決めてはいけないと云ふことになつて居りまするのを、之を當分の間撤廢致しまして、別段の定めが出來ると云ふ此の法律の規定に依りまして、此の制限を取外して、鹽の生産上、配給上、或は鹽の消費の節約上、最も適切妥當と思はれる所に依つて價格を決めて參りたいと云ふ風にしようと云ふのが第二の點であります、即ち第二の賣渡價格の制限撤廢と云ふ問題が今囘新しく茲に盛込まれて居る改正要點であります、尚其の條文を申上げますれば、鹽專賣法中改正法律案の第二行目の中程に第十八條第二項と云ふのがございますが、是が鹽の賣渡價格に關する條文でございます、其の他のものは總て從來通りの自給製鹽を繼續して行かうと云ふことの爲に必要を生じた各條の規定でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=19
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020・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 大體のことは分りました、有難うございました、それから尚一點承りたいのですが、豫算のことです、是は或は豫算委員會で御尋ねするのが當然かと思ひますが、此機會を利用して御伺ひするのですが、鹽及び樟腦の緊急増産對策費として一億二千萬圓を歳出臨時部昭和二十年度大藏省所管で御提出になつて居りまするが、此の鹽は分つて居りますが、樟腦の緊急増産と云ふことになると、是はどう云ふことになるのでありますか、是は單に樟腦と云ふものの名目だけが斯う云ふ費目の關係で殘つて居るのですか、或は實際樟腦は何處か九州あたりでも生産が相當に可能の地域があつて、さうしてそこで色々の對策の施設をおやりになる御方針なのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=20
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021・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 鹽及樟腦緊急對策費ですが、今御指摘になりました、其の經費の名前に樟腦が入つて居りまする意味は、過般戰時中に豫備金支出と致しまして、鹽の緊急増産、樟腦の緊急増産、此の兩者の爲に必要なる經費として、豫備金支出を致して居るのであります、其の場合に鹽と樟腦が一本の費目名で以て支出致されましたので、政府當局と致しまして、今囘の豫算提出に當りまして、今囘の其の内容の中には樟腦關係はないのでありますが、昭和二十年度の決算が致されまする場合に鹽と樟腦とに付て、そこに一つの費目で出て居りますから、其の費目を其の儘此處で借りて來ようと云ふやうなことにして豫算が編成されて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=21
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022・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 此の樟腦の生産と云ふものは現在の國内で或る程度迄出來得る御見込なんでせうか、合成樟腦と云ふものを米國あたりでもやつて居りますが、自然の樟腦と云ふか、天然の樟腦と合成樟腦との二つに付て御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=22
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023・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 從來樟腦の關係は臺灣と内地の生産を大體に於て合體致しましたもので賄つて居つた譯でありますが、此の可なりの部分は輸出に充てられて居つたのであります、最近此處暫くは輸出の關係がございませぬので、國内事情を賄つて參りますだけのことでございますれば、臺灣が無くなりましても、内地生産だけで相當賄つてやれる豫定でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=23
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024・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 合成樟腦は日本では出來得るのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=24
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025・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 合成樟腦は極く微量的に出來て居ると云ふ程度でございまして、まだ生産の見るべきものは殆どございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=25
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026・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 合成樟腦に對する所の生産増強の御方針と云ふやうな點はあるのですか、どうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=26
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027・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 是は樟腦全體の問題、殊に第二次製品との關聯に於て考へなければならぬと存じますが、内地の生産に依りまして内地の消費を賄つて行くと云ふ程度でございますれば、品質的に申しましても、又所要の副資材等から申しましても、合成樟腦の方が實は非常に不經濟である、左樣な意味から内地消費と云ふ點からのみ考へますれば餘り、助長する餘地はないのではないかと云ふ風に考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=27
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028・舟橋清賢
○子爵舟橋清賢君 私の質問は是で一應終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=28
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029・黒田英雄
○黒田英雄君 鹽の目下の不足に對する對策は先程御説明で伺つたのですが、私は我が國の鹽に付て根本的にどう云ふ風に考へて居られるかと云ふことを伺ひたい、或は大藏大臣の方が宜いかも知れませぬが、却つて實際の仕事をやつて居られる長官の方が御知りになつて居るかと思ひます、それは今後我國の鹽がどの位需要があるのであるかと云ふことに付ての御見込をどう樹てられて居るか、即ち食糧とか或は漬物とか色々なものに使ひます鹽、それから工業鹽、其の他色々の用途に使ふ鹽がどの位あれば我が國の需要が滿たされるものであるかと言ふことに付て考へられて居りますか、其の必要な需要量に對して、内地の製鹽で以て自給して行くと云ふ方針で居られるか、或は從來のやうに矢張り内地の製鹽は或程度で、不足のものは半島資源なり或は支那の鹽と云ふやうなものを矢張り輸入してそれを賄つて行くと云ふ御考で居られるのである、今後の工業がどう云ふ状態になつて、工業鹽がどの位要るかと云ふことは、今日的確に策を樹てて行くと云ふことは或は困難かとも思ひますけれども、併し國民の生活に必要な鹽はどれ位要るかと云ふことは、大體人口等に於て見當が付くことと思ふのでありますから、其の量と、それから工業に付ても相當見込を立てられて居るならばそれを加へたもの、其の他のものにどれだけ鹽が今後我が國にはどうしても必要である、是だけの鹽はどうしても確保しなければならぬ、併しそれだけの内をどれだけ内地で以て製鹽がして行けるか、應召で色々な自給用の鹽などを作られて、本年から來年に掛けて先程御説明に依りますと九十四萬「トン」を作ると云ふ設備をされようと云ふのでありますが、此の設備に付きましては、先程御質問もありましたやうに、生産費は非常に高く掛るものだと思ふのであります、其の設備に對しては政府が二億圓も補助をしてやらせると云ふことでありますが、何時迄も斯う云ふものを存續して行かれるものではないのではないかと私は思ふのでありますが、是は今日の事態に巳むを得ざる應急策としてやられるものぢやないかと考へて居りまするが、併し是等も矢張り將來一つ生産の中に加へて行く積りであるのであるかどうか、それは政府の御考は分りませぬが、相當高い生産費を要するものである、若し將來是が輸入と云ふものが相當出來るやうになつて來て、安い鹽が入つて來ると云ふと、是等は到底引合はないものである、之を止めてしまふ、止めてしまふに付ては、設備などは一體どうされることになりますか、設備其のものは政府の補助があるのですから、僅かの一部分の損失で濟むのかも知れませぬが、是等の處置も問題があらうと思ふのです、兎に角輸入と云ふものは矢張り將來考へて行かなければならないものと政府は考へて居られるのでありますかどうか、將來の鹽の根本の方針と云ふものを伺つて見たいと思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=29
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030・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 鹽全體に付きまして將來の需要供給の見透し、或はそれに對しての政府の方針如何と云ふ御質問でございますが、御承知の通り我が國の直面して居る現状に於きまして、遠い將來を考へることは到底出來ないのであります、從つて我々當局と致しましては、遺憾ながら差當つてここ數年間位を一體どう凌いで行くか、更に端的に申しますならば、來年度をどうして行くかと云ふことを考へることのみが精々の状態であります、併し極めて「ラフ」な申し方をしますならば、食料用鹽としてどれ位、工業鹽としてどれ位と云ふやうなことを計畫を立てられぬこともありませぬけれども、今日の状態に於きましては、今後の日本に聯合國が許して呉れる工業の種類或は規模と云ふやうなものも密接な關係を持ちまするし、旁旁非常な困難があるのであります、それで試みに假りに來年度の計畫、或は私の考では恐らく是がここ數年間の大體の趨勢と見て宜いのではなからうかと思ふのでありますが、其の計畫に於きましては、食料用鹽と致しまして過去の實績竝に人口の推定等から考へまして、一年度間に百十萬「トン」を供給したいと云ふ考へ方を持つ次第であります、工業用鹽と致しましても、一應の只今の計畫と致しましては百萬「トン」、從つて兩者合せまして二百十萬「トン」の年所要の鹽の數量があると云ふ風に考へるのでありますが、之を一體どう云ふ風にして供給をして行くかと云ふことに付きましては、來年度の計畫と致しましては別途資料で差上げて居りまするやうに、專業製鹽に依りまして五十萬「トン」、自給製鹽に依りまして四十萬「トン」、兩者合せて九十萬「トン」の國内生産を見込んで居ります、從つて二百十萬「トン」との差額百二十萬「トン」は之を輸入に仰がうと云ふやうな考へ方で居るのであります、それで今後更に是がどうなつて參りますかと申しますれば、自給製鹽に依りましての年生産能力は九十四萬「トン」と先程申上げましたが、是と内地の專業製鹽に依ります分を假に五十萬「トン」と致しますれば百四十萬「トン」、百四十萬「トン」位が國内生産と云ふことになりまして、從つて是が昭和二十二年度に於て其の通り「フル」に動きますれば、二百十萬「トン」との差額七十萬「トン」ばかりを輸入すれば宜い、斯う云ふやうなことになる次第であります、併し大きな方針と致しまして何を一體睨んで居るかと云ふことに對しての御答と致しましては、我々と致しましては將來或は外地から安い鹽が輸入し得るやうな事態が來るかも知れませぬが、ここ當分の間の問題と致しましては、なかなかさう云ふやうな状態が實現することは困難だらうと思ひます、即ち持つて來ると致しますれば、概ね支那でありますが、或は臺灣と云ふことになりますが、其の方面に於きましての鹽の生産が今後も、ここ數年間にありました如く、相當量の鹽を作つて呉れるかどうかと云ふ問題もありますし、現地に於きましての食料用鹽、更に今後現地に於きましての工業の推移と云ふやうなことも考へなければなりませぬし、又我が國の今後保有を許されるかどうか、どうなりますか、我が國の船腹量の多少にも關係致しますし、現地に於きましての荷役でありますとか云ふ問題も非常に密接な關係が、現に最近の經驗に依つてもありますし致しますので、なかなか困難な問題があらうと思ふのであります、さう云ふことを考へて見ますと、是が非でも食料用鹽として必要なものは國内で生産すると云ふことが、是が非でも目標とする必要があらうと考へるのであります、更に加ふるに、工業用鹽に付きましても、國民生活上必要缺くべからざる最低限度の製品を造るが爲に必要な工業用鹽と云ふものは、國内自給が最も望ましいのでありまして、それには假に平年度に於きまして工業用鹽の所要數量を百萬「トン」と假定致しますならば、其の中の相當大部分と云ふものは國内で出來るのが最も望ましい、斯樣に考へるのであります、併し今直ちに諸般の條件がはつきり致しませぬ際に、確定的なことを計畫立てるのも如何かと考へられますので、差當つては先程から申上げますやうに、年能力と致しまして百四五十萬「トン」と云ふ所を目標に今の處進んで居る次第であります、尚併し今後更に能く研究調査等を致しまして、又諸般の情勢の推移とも睨み合せまして、此の計畫には變更を加へる必要が起るかも知れないと考へる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=30
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031・黒田英雄
○黒田英雄君 政府の御考も大體之に依つて分りましたが、今日正確な計畫を御立てになることは御無理であらうと實は思ふのであります、まあ大體それに依つて了承致しましたが、工業用鹽などは、戰時中と終戰後とはどう云ふ風な變化があるものですか、少くなるものですか、或は殖えて來ると云ふ御見込みですか、どちらですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=31
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032・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 工業用鹽の所要數量と致しましては、工業用鹽を最も澤山に使用を致しました年は昭和十三年度でございますが、其の時には百七十七萬「トン」ばかりの工業用鹽を使つて居ります、併し其の後年々減少致しまして、昭和十六年度には九十三萬「トン」臺に落ちまして、十七年度には七十八萬「トン」、十八年度には七十一萬「トン」と云ふことに調査が出來て居ります、昭和十九年度に於きましては、必ずしも正確な、數字ではございませぬが、恐らくは工業用鹽として約六十萬「トン」位を使つたのかと考へられるのであります、是は寧ろ工業用鹽としての需要額が減つたと云ふことも一面にはありますが、寧ろ輸入が非常に困難になり、從つて思ふやうに入手出來なかつたと云ふことが又大きな一つの原因であろうと考へるのでありまして、工業用鹽の最低所要量如何と云ふ問題に付きましては、所謂商工省の方面に於きまして折角研究して居られまするが、只今兩當局間に於きまして、一應平年度乃至明年度あたりの所要額としては百萬「トン」と云ふものを計畫を立てれば先づ十分であり、又巳むを得ぬ數字ではなからうかと云ふ風に話合ひが出來て居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=32
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033・吉野信次
○吉野信次君 ちよつと今黒田さんの御尋で、食料鹽が百十萬「トン」ですかと云ふ御話を承りましたが、消費の抑制をしない時代、金さへ出せば何ぼでも買へると云ふ時に日本の國民と云ふものは鹽を何ぼ食つたか、それは總體ぢやいかぬと思ひます、御承知の通り人口の數が違つて居りますから、どうしても此の「パー・ヘッド」の一人當りの消費量の問題になると思ひますが、日本の今迄の我々の歴史と申しますか、昔の歴史に於て鹽と云ふものを大體平生一人當りどの位の分量を食つて居つたか、それが今長官の御話の百十萬「トン」と云ふ食料鹽と云ふものが、それと比較してどう云ふ風になつて居るかと云ふことが分れば伺ひたいと思ひます、と申すのは私共の知識が少し古いですけれども、嘗て鹽の問題を研究致しました時に、どうも日本人は少し鹽の食ひ方が少いと云ふことを學者から聽いたことがある、砂糖の方は、是は統計にあります通り、少いのでありますけれども、砂糖の消費量が少いと云ふことは、是は文明と比例するとか何とか言ふこともありますけれども、是は體力の方から言へば問題はありませぬけれども、鹽の食ひ方が少いと云ふことは、國民の保健上非常に重要な問題でありまして、私が昔聞いたのには、其の當時は朝鮮の方は内地の方よりも一年に平均致しますと、一「キロ」か一「キロ」半だけ多く鹽を食つて居りますので、朝鮮の方の人の體力と云ふものが、正確に言へばそれはどうか知りませぬけれども、日本人よりは強いと云ふやうなことは、さう云ふことも一つの原因だと云ふやうな話を聞いたことがございます、是からの日本の色々な産業、經濟の構成の問題を考へますと云ふと、何としても半農國か何か知らぬが、農業國と申しますか、國民の大多數の人はさう云つたやうな今迄の工場勞働と云ふよりも、體力を使ふ勞働の方に走る、又國民と云ふものの多數の失職者と云ふものを吸收する仕事をすると云ふのにも、土木の方の仕事とかが多いと思ひます、さう云ふことを考へますと、今迄の鹽の消費量では足りないので、今迄よりももつと多く鹽を食はなければ、國民と云ふものは今言つたやうな新しい局面に生きて行けないのぢやないかと、極端に言へばさう云つたやうな心配を持つて居るのであります、それで米の問題、食糧問題が非常にやかましいのでありますけれども、考へ樣に依つては鹽の問題と云ふものも、食糧問題と云ふものと同等の重要な問題でありまして、今黒田さんからの御尋があつて御答がありましたが、國内の方の生産が只今の事情其の他でどうでも足りないものなら、矢張り或程度は輸入すると云ふことを國としては考へられて、さうして其の輸入に對して如何なる見返りの輸出の物資を作るか、斯う云つたやうな是からの産業と云ふものは綜合的な立て方になるべきではないか、無論それは御如才なくさう云ふ點は考へて居ると思ひますが、唯鹽に付て鹽だけのことを御考にならずに、全般の是等の見返り物資と云ふものに對する輸出の方の問題と云ふものも考へるのが適當ぢやないか、少くも最低限度の生活は保障すると、斯う見て居るのでありますから、其の最低限度の生活と云ふ面から見て、私は鹽の問題と云ふものは相當重要な問題ぢやないか、斯う云ふ氣持が致すものでありますから、只今の御尋に關聯致しまして、其の百十萬「トン」と云ふ總體の鹽の個人當りの量と云ふものは、どう云ふものになるか、其の量と云ふものは、我々の生活と云ふものを維持し、又是から後の新しい局面に國民全體が働いて行くのに足りるのかと云ふことに付て、何か御伺ひが出來れば御伺ひしたいと斯う思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=33
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034・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 昔どの位鹽を消費して居つたかと云ふ御尋の點でございますが、實は甚だ寡聞に致しまして十分の調査も致し兼ねて居りますが、天正十八年に家康が江戸城に入りまして、二三日經ちましてから、船橋の近所の行徳鹽田に參りまして、あすこを一つの軍用第一と云ふ風な氣持で開拓致した譯であります、其の時に江戸の市民の鹽の需要量は、家康の計算では一人一石乃至一石五斗、斯う云ふことを言つて居るのでございます、當時の一石乃至一石五斗がどの程度の分量になりますか能く分りませぬですが、其の時の特徴と致しましては、現在のやうに一般的な平均的配給の外に、荷役人夫を仰せ付けますとか、或は城普請をさせるとか、勞働の強度に從ひまして、何と申しますか、相當特配的な配給をやつて居ると云ふ風なこと、何人扶持と云ふ扶持の中には鹽も含めて考へると云ふ風な記録を見たことがございます、それから御説の如く、今後農業的な性格に段々切り替られて參りますと、鹽の攝取量と云ふものも相當多くする必要があると云ふ御説でございますが、是は現に東北地方の農民と、例へば近畿地方等の都市の市民との間に消費量が相當に違つて居ります、殊に漬物、自家用の味噌醤油等の農村の方面等に對しましては、さう云ふ特配も相當致して居ります、味噌醤油等の消費量は、一般の農家に於きましては、全般の都市に對する販賣品としての味噌醤油の原料である所の鹽の約半分のものは農村に自家用として配給されて居ると云ふ風な状況であります、唯消費量全般が殖えて參ると云ふ御説に對しまして、實は一つ私共として特に苦慮致して居りますことは、一面に於て效率的使用とか、乃至は消費節約と云ふ問題でありまして、御承知の如く例へば都會に於きましては、漬物の殘つた汁を殆ど使はないとか、或は家畜に對しまして態態立派な結晶の鹽を混ぜて居る、鹽水の殘りを使ふと云ふやうなことは殆どしない、或は魚の鹽藏の如きものも、技術的に見ましても非常な無駄を致して居ると云ふやうなことを致して居ります、從つて此の問題は消費節約を致しますると共に、今後の燃料事情等から申しまして、態態結晶鹽を使ひませぬでも、海岸の方面等に於きましては鹽水乃至は相當濃縮した鹹水を結晶鹽の代りに使ふと云ふ風なことに依りまして、生み出された餘力と云ふものも相當出るのではないか、斯樣な方面を一般消費に充當することに依りましても、相當の隨分攝取量を殖やす餘地はあるのではないか、併せて此の消費節約とか效率的利用と云ふ面に付ても十分考へて參りたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=34
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035・吉野信次
○吉野信次君 私の御尋ねしたのは、家康の御話も結構ですけれども、消費規制と云ふものをやらない前ですね、詰り年代で言うたら何時が宜いでせうね、昭和十一年でも、或は十二年でも宜しい、大正昭和を通じて國内の生産と輸入した數量は分つて居りませう、だから、それを人口で割つた頭割の、一人當りの消費量と云ふものと、仰しやる百十萬「トン」の消費量と云ふものはどう云ふ風になつて居りますか、それが非常に少いものであると、是は今色々消費節約の御話もありましたし、又其の餘地もありませうけれども、國民の食生活と云ふものはなかなか机の上で考へるやうに右から左に切換へると云ふことはなかなか問題ですね、さう云ふ點もありますから、そこを數字上で、若し此處で無ければ晝休みの時でも一つ一遍算盤を彈いて、それがどの程度に…、百十萬「トン」と云ふ總體のことは分りますけれども、それが前に私共がふんだんに鹽が入手が出來た時の量と云ふものに對し、國民一人當りにどう云ふ風に減つて居るかと云ふことを御伺ひしたい、斯う思ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=35
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036・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 御答致します、一人當りの消費量と致しましては、只今人口との對照したものがございませぬので、御答致し兼ねるのでありますが、我々の持つて居ります資料に依りましての食料用鹽の年消費状況から見ますと、昭和五年頃に於きましては七十四萬「トン」を國内に於て消費致して居ります、昭和五年から大體に於きまして十年頃迄は概ね其の七十萬「トン」臺を繼續致して居りまして、昭和十一年度あたりを見ますと云ふと八十萬「トン」臺に跳び上つて居ります、さうして支那事變の始まりました昭和十二年度の状況を見ますと八十八萬「トン」の消費になつて居ります、其の後支那事變の進行と共にどう云ふ關係でありますか、まだ其の原因に付ての調査が十分出來て居りませぬが、昭和十四年度に於きましては、食料用が百二萬「トン」、百萬「トン」臺に跳び上つて居りまして、其の最も消費量の多かつた年が昭和十八年度で、是が百十萬一千「トン」と百十萬「トン」臺になつて居るのであります、十九年度は段々と供給が困難になつた次第もありまして、九十三萬「トン」臺に相成つて居ります、斯樣な状態でありますので、一體どれ位を最も適當とするのか、先程別の政府委員からも申上げましたやうに、消費節約の關係もありますし、色色な關係もあります、又今後の人口を七千五百萬と見るか三百萬と見るかと云ふ問題にも關係がありますが、何と申しましても一番大きな一つの問題は、所謂通説として考へられて居ります日本人の鹽分攝取の所要量は、月に少くとも四百五十「グラム」乃至五百「グラム」と云ふものは鹽分として大體に攝取する必要があると云ふことを言はれて居りますが、其の四百五十「グラム」乃至五百「グラム」の鹽分を攝取せむが爲には、我々日本人の食生活の關係から、例へば漬物でありますとか、醤油でありますとか云ふやうなもの、或は鹽魚でありますとか云ふやうなものからも多量に攝りますが、處が今申しました種類の食品に於きましては、御承知の通り非常に鹽の無駄が行はれて居ります、從つて四百五十「グラム」乃至五百「グラム」の鹽分を攝取せむが爲には、所要の鹽としては、其の五割増なり或は極端に申しますと七割も八割も餘計な鹽を使つて、初めて四百五十乃至五百「グラム」の鹽分を攝取することしか出來ないのでございます、此の點は食生活の改善と共に、消費量の節約とか、色々のことが考へられますけれども、なかなかさう云ふことは言ふべくして行はれ難いと云ふこともありまするし、旁旁我々としては百十萬「トン」と云ふ數字を考へて行けば先づ十分にして、ここ一兩年の問題としては十分な數字であらうと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=36
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037・吉野信次
○吉野信次君 ちよつと諄いやうですけれども、今御話のあつた百十萬「トン」の消費節約を單位にすれば、五百「グラム」とか四百五十「グラム」と云ふものが、各人に行くやうになるのでせうか、詰り消費節約をしたとして、あなたの御考になつて居るやうに國民全部がやつたとして、今學者の言ふ所謂四百五十「グラム」とか五百「グラム」を攝るには、百十萬「トン」で必要にして且十分な數量だと、斯う云ふ風に伺つて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=37
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038・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 昭和二十一年度に於きましては、假に百十萬「トン」の食料鹽を確保することが出來ますれば、仰せの通り優に五百「グラム」以上の鹽分攝取が可能であると考へられるのであります、併し寧ろ政府當局の心配致して居りますのは、其の百十萬「トン」を果して確保出來るかどうか、寧ろそちらにあるやうな状態である次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=38
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039・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 中山君の御質問は長いのなら午後に致したいと思ひますが如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=39
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040・中山太一
○中山太一君 どちらでも委員長の御意向で結構でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=40
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041・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) それでは此處で一應休憩致しますから、午後にどうぞ、では此處で一旦休憩を致します、午後は一時に開會致します
午前十一時五十九分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=41
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042・会議録情報3
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午後一時十七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=42
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043・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) では午前に引續き會議を再開致します、午前に中山君の御質問でありましたから、中山委員の御質問を御續け願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=43
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044・中山太一
○中山太一君 鹽の生産又は輸入の不足の爲に、國民生活又は國民の建康保持の上に重大な關係を持つて居ると、官民共に心配をして居る所でありますが、此の大切な問題を解決する爲に、政府はそれぞれの施策を講ぜられて居るやうでありますが、又一般の民間に於ても之が生産をやり、製鹽を自由に行ふことが出來るやうにされて居ります、處が其の製鹽を民間が自由に集團的にして居るのを見ますと、是は現下の國民生活が有らゆる方面に窮迫して居る時に、此の儘放任してあつて宜しいかどうか、今少し指導的な方法が講ぜられる必要があるではあるまいかと考へるのであります、それは或所で製鹽をして居りまする、所謂隣組が集團としてやつて居るのを見ますると、此の燃料不足の時に非常な燃料を消費して居ります、それから僅かの製品に七人も十人も掛つて唯右往左往して居りますが、是は交代制でやれば二人乃至三人で立派に出來ます、燃料も或は半分なり三分の一で濟み得るものであると存じます、さうして是は一箇所でなく、各方面に行はれて居ると、燃料不足は益益一層其の窮屈さを加へることと存じます、此の製鹽に依る燃料の濫費浪費と云ふものは容易ならぬものであると云ふことに付て御氣付きと存じますが、是が半分になり三分の一になると云ふことは、大藏御當局としては積極的に御指導になつて然るべきだと思ふ、現在の儘自由に放任されて居るより、勸奬でなく、指導性を以て之に當ることは必要であります、又大藏省では此の大事な問題を解決されるには各府縣に於てそれぞれ創意工夫を凝らさしめるやうな方法、所謂生産量の多い、勞力も少く、燃料の節約の出來ると云ふことに付て、相當之を指導されると云ふよりも、もう一つ進んで創意工夫を凝らさしめるやうにすることが必要と思はれる奬勵法なり、或は其の實績の擧つた各府縣に對して相當な報奬を與へる、又各府縣に於てはそれぞれの集團に對して色々の優れた方法を講じて成績が擧つて居るものに對しては、矢張り適當な報奬をすると云ふこと等は御施策願つて然るべきものでないかと存じますが、之に對して既に御腹案があり、又御計畫があるものでありませうか、又今迄ないとすれば、將來斯う云ふことを行はれる御意思があるのでせうか、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=44
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045・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 御答へ申上げます、現在各地方で行はれて居ります所の大衆向の自給製鹽に於きましては、御話の如く勞務の無駄或は燃料の無駄等があることは一、二我々も承知して居るのであります、大藏省と致しましては、技術者を督勵致しまして、各府縣にそれぞれ技術者を置き、其の技術者を大藏省の專門の技術者が十分に指導教育と申しますか、知識の普及に努めまして、其の府縣に於きまする技術者は又是が當該市町村等に適當に出張致しましたり、或は熱心な市町村等に於きましては當該市町村に於て專門の技術員を設置致しまして、是等に先程の縣の技術員或は我々の專賣局の技術員が指導をすると云ふやうな方法に依つて、成るべく無駄を少くすることに努めては居るのであります、從ひまして、所に依りまして非常に良く行つて居りまして僅かな無理をしながら女手一人で鹽を造つて居ると云ふ面もあります、燃料の面に於きましても段々それぞれの自給製鹽者も困つて居ることから致しまして、自然節約の方法に付て色々研究もやつて居ります、まだまだ我々當局としては尚一層此の方面の指導にも心を致したいと考へる次第であります、又第二の御質問の非常な優秀な方法で最も合理的に鹽を造つて良い成績を擧げた、或は新しい創意工夫をやつた向に對して表彰を行つて居るかと云ふ御話でございますが、既に計畫致して居るものと致しましては、毎日新聞社の別働團體でありますが、生活科學化協會と云ふ團體がありますが、此の團體及毎日新聞の力に依りまして、各地方に於きましての自給製鹽に付ての功勞者或は其の方法に於て優秀な者或は團體を表彰すべく、專賣當局大藏省の後援の下に計畫を進めて居ります、全國的に斯の如くにして調べました上で、各府縣の表彰となり、或は中央に於ける表彰として更に推進して參りたいと斯樣に思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=45
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046・中山太一
○中山太一君 御當局に於きましては燃料勞力の浪費を省く爲に御留意になつて、それぞれ施策をされて居ると云ふことを承りましたが、結構であります、兎角斯う云ふ指導は形式に流れて實際に不徹底である場合が多いのであります、或は食糧増産に於ても、甘藷の増産も講演とか、一部の指導と云ふことが徹底せずに、隨分長く掛つて、數年掛つて、漸く今日甘藷の多收穫の方法が普及しかけた位であります、それも結局效果があるのは多くの技術者のみならず、熱心な人達を集めて、實際の畑に於て、其の耕作方法或は植付などを教へると云ふこと迄して徹底するのでありますから、素人の製鹽に對しましても、實際にさう云ふ所を講習講演等を盛んに行つて貰ふと同時に、實演をして戴いて、さうしてそれを見たならば耳だけでなく、目で覺える、それから後は各府縣が分擔して、積極的に是が普及徹底に御盡力願ふと云ふことでなかつたならば、當局では其の心持はあつて、或程度いつ迄も御試みになつても、其の實績がなかなか擧つて居らぬのが、今日迄の諸般のことに照して明かであります、此の窮迫して居る鹽不足に對して極めて緊急に解決せねばならぬ問題でありますから、更に積極的方法の御考を戴きたいと思ひます、それから今の報奬法等に付ても、或程度御努力になつて居るやうでありますが、他の團體等に於てやると云ふ、さう云ふ一局部でなく、其の實績が擧つたらやると云ふのでなく、寧ろ呼び掛けて、勞力なり燃料なり其の他のことに付て工夫して、非常な苦心をされて居る者には、斯くの如き奬勵法を行ふのだと言つて呼び掛けることに依つて、皆足並揃つて其の心懸けで進んで行く、結果が現はれてから之をするとすれば、三箇月半年後に其の中の成績が擧つた者にするのでありますが、皆がさう云ふ氣持ですると云ふことは、此の窮迫した時に成績が早く擧る、又新しい方法が各地方で多く擧つて來ると思ひますから、此の點は裏と表のやうでありますが、後の先きの點に於て御考を御持ち變へになつて一つ大藏省から呼び掛けて戴く、「ラジオ」であれ、新聞であれ、私は斯う云ふ方法でやる、各縣も斯う云ふ風にやるのだと御呼び掛けになれば、皆が氣が付かず、漫然とやつて居るものが、はつきり計畫的に工夫を凝らして行ふと云ふことで、御趣旨が早く徹底すると思ひますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=46
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047・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 全く其の點は御説の通りでございまして、我々當局と致しましても、例へば先程觸れませぬでしたが、部内に於きましても、各府縣の關係者を數囘に亙りまして、實地講習の爲に仙臺及び山口縣の政府の製鹽場、或は試驗場に招集致しまして、之に對して實地に付て、其の鹽の作り方を十分體得させると云ふやうな方針を執り、さうしてそれが又それぞれの各關係府縣に歸り、濱濱に參りまして、實地に手を取つて教へると云ふことを十分努めて居るのでありますが、尚及ばざる所から御話のやうな場合もあらうかと考へますから、今後とも尚一層留意して參りたいと存じます、又表彰或は褒賞と云ふ御言葉で仰しやいましたが、此の點に付きましては、色々な此の際新しい試み或は考があるやうでありますが、矢張り是等に付きましては、或程度其の實績を見ませぬと云ふと、唯頭の上の考案、紙の上の計畫だけでは唯之を唯々として推奬するのも如何かと考へられますので、大體に於きましては、其の考案、創意の良い時には十分こちらでも協力致しまして、一日も早く實行に移して、其の實行の經過を見つつ一緒に仕事をして行き、結果に依つて、表彰にも値するやうな場合には、それぞれの措置を講ずると云ふ風にした方が宜いのではなからうかと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=47
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048・中山太一
○中山太一君 第一の問題に付きましては、餘程熱心に普及徹底に御努めになつて居ることは、再度の御説明で能く了承致しました、本員は本月の上旬に二時間程熱海に居りまして、驛の附近で隣組が製鹽をして居る實情を見ましたが、東京の近くに於てさへ、あの状態である、私はあれを見て、餘りに戰爭に負けた後に於てもまだこんな無駄なことをして居るか、それと戰爭中に防火の訓練として「バケツリレー」をやつて居つたことを思ひ合はして、實に指導者がないものかと云ふことを痛切に感じて、今尚それを目の當り見るやうな氣持がして居るのでありますが、それで當局の御考へのやうに、なかなか徹底して居らぬ、東京と近く連絡のある熱海に於てすらそれでありますから、況や遠方地方に於ては御想像が出來ることと存じまして、此の點は更に今後御考慮願ひたいと思ひます、例の奬勵のことに付ては、質問の意味が十分徹底しなかつたと思ひます、それは實績に依つて表彰されねばならぬことは當然であります、其の實績を作らすべく呼び掛けて貰つて、何時々々第一囘をやる、何時々々第二囘をやると云ふ風にして貰へば、そこに皆が其の氣持になつて創意工夫を凝さう、何處かの者が半年後になつて表彰されて、斯う云ふ良いものがあつたからと云ふことでやつてはそれだけ遲れるのであります、それから一部の人よりも多くの人にさう云ふ心構へを、競爭心を起さして行くのが宜いのではなからうかと云ふ意味で申上げる積りであつたのが、其の點が私の言葉が足りない爲に、十分に徹底致さなかつたのであります、又午前中に御説明がありました昭和十年食料用鹽としては七十萬「トン」であり、十一年から十萬「トン」殖へ、更に十四年には百二萬「トン」になつたと御説明がありまして、國民がそれだけ多く戰時中、所謂晝夜兼行勤勞に從事する爲に、さう云ふものに消費した點もありませうし、又軍需品としての漬物、梅干其の他鹽干魚介或は味噌、醤油等がより多く作られて、是が外地域は第一線に送られた爲に、普通の國民生活の必要よりも遙かに超えた消費があつたものと思まれます、それで必ずしも百二萬「トン」なり百十萬「トン」が平時の所要量であつたかどうか、是は餘程檢討せられる必要があると思ひますが、此の點が色々の製鹽の奬勵竝に輸入の計畫等に付ても、餘程大事なことでありますから、御當局に於ては此の終戰後の今日の國民生活に果してどれだけがなければならぬものであるかと云ふことを正確に御檢討を願ふことを必要と思ひますが、之に對して御當局の御意見を承りたい、又消費の方面に於きましても、日本人の、殊に都會生活の者程、味噌はそれ程ではありませぬが、醤油を粗末にする者はない、鹽もさうでせうが、鹽よりも、まだまだ醤油を粗末にする者はなかつた、是は不足して居るものだから、漸く大事にし始めたと思ひますが、日常の僅かに使ふものでも必要の二倍、三倍を出して居る、又或食料業者の所ではまだ必要の量よりも二倍も三倍も之を使つて居る、斯う云ふことに對しては、製鹽に付ての御苦心と共に消費の無駄を省くことに付て御留意の上御指導をして戴くことが必要ではないか、又都市の家庭には鹽を肴にすると云ふことは稀でありますけれども、地方に於ては、殊に漁村近くでは魚に鹽をする場合、必要以上の鹽を使つて居る場合があります、斯う云ふことも實際に終ひには餘り辛過ぎて、鹽出しを長くしなければ使へないと云ふ、此の鹽不足の際に製鹽と相俟つて是も御指導願ひ、反省を促して戴く値打がある問題ではないかと思ひます、兩々相俟つて行く所に當局の御苦心が報ひられて來るやうになると思ひます、之に對して御當局の今御執りになりつつある措置があれば御考を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=48
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049・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 食料用鹽の充足目標百十萬「トン」の是非等に付きましては、御説の如きことも十二分に考慮に入れまして、今後共尚一層適實を期して參りたいと存じて居る次第であります、鹽に付きましての效率的な方法の研究、或は消費の節約と云ふ問題に付きましても、當局としては、有らゆる工夫を重ねて居るのでありまして、例へば過般の戰爭中と雖も、先程申述べました生活科學化協會と云ふ人達に特別に委囑を致しまして、それに屬する生活士と云ふ方は概ね若い婦人の方でありましたが、あの戰爭で空襲の激しい折柄にも拘らず、全國各地域を廻りまして、或は講演し、或は實際色々な見本其の他を展示致しまして、之に依つて消費節約等に付きましても非常に努力して戴いたのであります、我々部内の者も機會ある毎に、此の消費節約、鹽の效率的使用に付ての方法を、例へば我々部内の中央研究所に居りまする技師の新しい考案に係る魚類の鹽藏に付て、從來の方法に依りまするより三分の一位の鹽の量で以て足りると云ふやうな新しい工夫もされました、是は現にもう北海道方面に於て其の方法をどんどん實行して貰ふことをやつて居りまするし、其の他各地の水産業の盛な方面に對しても、機會ある毎に其の方法を説いて行くと云ふやうなことを考へて居ります、又漬物等に於きましても、成るべく鹽を效率的に使ふと云ふ方法を考へまして、鹹水を其の儘利用しまして澤庵を漬けると云ふやうな方法も考へまして、之も出來得る限り機會ある毎に其の普及に努めて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=49
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050・中山太一
○中山太一君 電熱を利用して製鹽されるものと、天日を利用して製鹽されるものと、國内に於て只今御當局の御計畫されて居る量はどう云ふ割合になりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=50
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051・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 實は電氣と天日と截然と分つて居りませぬで、兩方併合して居るものも大分ありますので、はつきり分りませぬが、大體電氣に依るものは生産量にしまして四十「パーセント」、其の他が六十「パーセント」と云ふ大體の見當であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=51
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052・中山太一
○中山太一君 電氣と天日との併用はどう云ふ状態で是がされて居りませうか、例へば電氣に依つて製鹽されて居る鹽田に、其の上に機械を利用して電熱でそれを反射的に移動し、電熱がそれを早く乾燥さす、天日に依ると時間が掛かるのを僅かな時間で仕上げると云ふ風にしてあるのでありませうか、一部は電氣、一部は天日と兩方兼ねてやつて居ると云ふ意味でありませうか、其の點を御聽かせ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=52
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053・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 只今の御話のやうな所迄はまだ行つて居りませぬのでございますが、鹹水を或程度二倍乃至三倍迄濃縮致しまする段階を天日でやりまして、其の濃くなりました鹹水を電氣で製鹽する、斯う云ふ方式を大體採つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=53
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054・中山太一
○中山太一君 此の製鹽が國民生活の上に極めて重大な關係のあるものであるとするならば、普通の工業家が思付でぼつぼつやると云ふことでなしに、此の併用することも御研究願ふことと、更に水分の蒸發を早めると云ふ時の問題もありますが、場所も狹くて出來る、之を現在の鹽田の一部に於て、丁度機械工場に於て物を移動されるやうに、ああ云ふ風にして電熱を何尺か上に反射して、何分間か何時間目づにどんどん移動させると云ふ方法も考へられるのではないか、何處よりも大藏省に於ては此の鹽の問題に對しては一般工業家の考へ得ない創意工夫を以て、所謂成績を擧げて戴くやうに、一つ御指導を願はなければならぬ、我々工業關係の者が考へましても、此の天日製鹽に對しまして、電熱を併せて利用する、而も普通でなしに反射的な方法を講じてやれば著しい成績が擧るものぢやないかと思はれますものでありますから、之に對して今迄御試みになつて居らないのでありませうか、又御試みになつたけれども效果がないから御取止めになつたのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=54
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055・長沼弘毅
○政府委員(長沼弘毅君) 只今御述になりました御著想に似たやうな研究は致して居りますが、まだ現實に其處迄行つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=55
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056・中山太一
○中山太一君 幸にさう云ふやうに御考があるならば、少々の無駄はあつても宜いと思ひますから、各方面にそれなり、又變つた方法で色々の著想に依つて之を御奬めになるやうに、それに必要な經費等は此の際大藏省當局は惜しまるるのではないと存じますから、御考へでしたならば之を研究的に直ちに手分をして御奬め願ひ、さうして實績が早く擧るやうに御盡力願つたらどうかと思ひますが、之に對しては大臣幸ひおいででございますが、斯う云ふ場合にどう云ふやうに大臣は御考でありませうか、本員は先程から種々色々な角度から御尋ね致しましたが、之を以て質問は打切りたいと思ひますが最後に大臣から御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=56
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057・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 鹹水から水を排除すると云ふことは非常にむづかしい問題でございまして、古來之に苦心をして居り、現在でもそれに對しての最も有效な方法と云ふものはなかなか見付からないやうな状態でありまして、先程御話の通り、燃料の節約等の問題も考へなければいけないことで、其の他如何にして濃縮し鹽を取り易くするかと云ふ問題、是は電熱が單なる熱として使はれるだけでは面白くないのでありまして、もう少し別の方法はないか、或は電氣其のものがもう少し別な效果を現はす方法はないか、又其の熱「エネルギー」を使ふと致しましても、其の熱の保温なり、或は循環的な使ひ方なり、熱の節約と云ふことは、是はどうしてもしなければならぬので、さう云ふやうな意味に於きまして、今技術家などを擴充致しまして、さうして此の方面に對しては出來るだけ有らゆる「テストケース」をやつて見たいと考へて居る次第であります、唯鹹水から水だけを分離すると云ふことはなかなかむづかしいのでありまして、最近電氣分解的な方法もありはしないかと云ふやうな研究も起つて來たやうでありますが、色々な方面で之を研究して居る最中であります、唯各地に於ける自給製鹽の極く小い仕掛のものでありますと、是が直ちに應用の出來ないやうなものがあると思ふのでありますが、冀くは良い方法が見付かりましたならば、之を相當の場所に於て相當大規模にやると云つた方が能率が好いのでありまして、今の所可なりの努力をして居りますが、是なら一番良い方法だと云ふ方法が本當の所見付からぬと言つた方が宜いのでありまして、色色な案は私能く存じませぬが、ちよくちよく聞いて居りまして、相當にあるやうでありまして、技術的に色々な點に難點があつたり致しまして、なかなかしつかりしたものが出て來ない、今の御話は能く了解して居りますから、出來るだけ之に對して努力しようと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=57
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058・中山太一
○中山太一君 大變含蓄のある色々の御答辯を得ましたので、本員は非常に力強く感ずる次第でありますが、幸に政府の御關係の科學研究所の機關、又は大學其の他もありますから、是も皆協同して各方面で研究さるるべきものだと思ひますので、斯う云ふのも一つ直ちに問題として御提供願つて御進めを戴きたい、此の希望を併せて述べまして、私の質問を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=58
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059・鶴殿家勝
○男爵鶴殿家勝君 今の其の製鹽に付ては結局燃料問題で、燃料の節約と云ふことに御苦心のことと承つて居りますが、私など自分で見たのでございませぬけれども、温泉の熱、之を利用して製鹽が出來る、それには鐵管其の他の資材が要るのでございますが、斯う云ふ方面のことに對して、後の結果に對して報償と云ふ方の御心持があれば、それを先づ製造方法の基としての資材の入手に付ての便を御與へになる御意思はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=59
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060・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 製鹽の設備を講じます場合の資材の斡旋等に付きましては、敢て温泉熱利用のみの場合を考へず、電氣製鹽の場合でありましても、或は其の他從來の工場の製鹽への轉換の場合に於きましても、常に我々の方と致しましては關係の方々の御要求も聽き、或は各省の状況等を問合せを致しまして、能ふ限りの措置を講じて居るのでありまして、現在我々の當局の手で斡旋をします資材の量も相當に達して居ります、併しながら各方面で相當色々な御計畫が澤山に勃興致して居りますので、其の全部に亙つて御要求通りの數量の御世話は出來ない場合もありますが、實績は相當程度の盡力をして居ると云ふことを申上げ得る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=60
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061・東郷彪
○侯爵東郷彪君 來年度の鹽の生産は自給製鹽が十萬「トン」、專業製鹽が四十萬「トン」、合計五十萬「トン」出來る御計畫のやうでありますが、無論是は工業用とか或は味噌釀造、醤油製造の方面にも御利用になると思ひますが、直接一般家庭に配給されます食料用のものは凡そどの位のものになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=61
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062・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 來年度の食料用鹽百十萬「トン」と云ふ計畫の場合に於きましての家庭配給を致します基本量は、二十萬「トン」を計畫致して居ります、尤も家庭配給致しますものは、此の基本量の外に味噌、醤油、漬物等の爲に隨時特配を致しますので、其の特配に廻します分が只今手許にあります資材では、業務用のものと普通の家庭用のものとが一緒になつて居ります、ちよつと區分を申上げ兼ねることを遺憾に存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=62
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063・東郷彪
○公爵東郷彪君 數字が分らないと云ふことでございますが、來年度に於て鹽の一般家庭配給は二十年度の配給と同樣な状態になるでありませうか、二十年度位の足らぬ勝ちでありますけれども、まあまあ間に合つて居ると云ふ程度に二十一年度も配給量があるのでありますか、それとも見込としては減るでありませうか、未だ一般家庭の配給量は御分りになつて居りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=63
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064・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 本年度と來年度の窮屈さの程度に付きましては、只今考へて居ります百十萬「トン」計畫と云ふものの成否如何に係るのでありまして、其の中の專業製鹽に依りまする五十萬「トン」と云ふものは氣候の條件さへ或程度好く行きますれば、又もう一面石炭の問題も非常に關係は深いのでありますが、氣候と石炭の問題、此の二つがうまく行きますれば勞務其の他に付きましては、相當可能性のある數字だと思ひます、又自給製鹽の四十萬「トン」、此の中の約半量は食料用鹽に考へて居りますが、此の自給製鹽に付きましては、本年度は實は二十萬「トン」を基本目標にして、概ね其の半分位迄成績を擧げたかと思ひますが、來年度に於ての二十萬「トン」程度の食料用製鹽は易々たるものがあるではないかと云ふ風にも思はれますから、是等も併せて且他面に於て輸入の方も或程度可能の見透しが付きつつありまするから、是等を綜合致しますると、本年度よりは來年度の方が緩和されるだらう、相當緩和されるのではあるまいかと云ふ風に期待して居ります、唯何しろ冒頭に申上げましたが、專業製鹽は氣候の關係の影響が多大なものがありますから、此の點も確實なことは申上げ兼ねると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=64
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065・黒田英雄
○黒田英雄君 大藏大臣御見えになつて居りますので、ちよつと一點だけ御伺ひ致します、此の專賣法改正の理由書に依ると、之に依つて國庫の收入の増強を圖ると云ふことがあるのであります、賠償價格と賣渡價格との差額の制限に拘らず、之を増して宜いと云ふ風な途を拓かれるやうでありますが、鹽などは非常に生活必需品の中でも最も缺くべからざるものであるのでありまするが、是等に對して餘り重い負擔、重税を掛けると云ふことはどうかとも考へるのであります、此の制限に拘らずやられると云ふことになりました場合に於て、どれ位負擔を増加させて、國庫の收入をどれ位得ようと云ふ風な御考であるのでありますか、此の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=65
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066・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今の御説明の如く鹽は確かに生命の問題でありますので、廉い程本當であると思ふのでありますが、只今月一人二百「グラム」が確か五錢位になつて居ると思ふのであります、多少今の全體の調子から見ますると、一月五錢で二百「グラム」づつ配給しますと、五錢と云ふのは、それでも出來れば勿論結構でありますが、多少低廉に過ぎる位の感じもあります、それで之をどれだけに上げるかと云ふ問題であります、之に依りまして現在鹽だけで見ますと赤字を出して居ります部分を防ぎ、尚且或程度財政的寄與が出來ると云ふ迄には色々の段階があると思ふのでありますが、之に付きましては今後鹽をどれだけ上げるかと云ふことに付きましての委員會を作りまして、さうして皆さんと能く御相談の上で決定したいと云ふ風に考へて居ります、例へば四倍に致しますと、一人一月二十錢と云ふことになります、國庫の點は調べまして後から申上げることを御許し願ひたうございます…失禮致しました、現在の價格で參りますと、一億六千萬圓位を損して居ります、五倍に致しますと、約四百三十五、六萬圓の黒になると云ふ位の程度なんであります、之を何處に持つて行つたら宜いかと云ふことは、他の物資との關係もございます、物價との關係もございます、是は委員會に掛けて十分に案を練つて決めたい、專斷はしない積りであります、間違ひました、十六億今赤字になつて居ります、それが五倍に致しますと、四百三十五六萬圓の黒になると云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=66
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067・黒田英雄
○黒田英雄君 委員會を設けて適正に御決めになると云ふことでありまして、結構だと思ひまするが、鹽の如き一日も缺くべからざるものに餘り重くして、國庫の收入の増強の目的に使はれると云ふやうなことはどうかと思はれるのですが、此の點は十分御考意下さいまして、御決めを願つたら宜しいのではないかと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=67
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068・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 外に御質問ございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=68
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069・諸橋久太郎
○諸橋久太郎君 現在の官鹽の生産「コスト」と、自給製鹽の「コスト」とはどの位に御判斷になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=69
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070・植木庚子郎
○政府委員(植木庚子郎君) 官鹽と申しましても政府の賣捌いて居る官鹽は、專業製鹽から買入れたものと、一部輸入に依つたものとに依るのであります、内地の專業製鹽に依りまする生産費は、即ち言換へますれば賠償價格でありますが、賠償價格は先般値上致しました、現在の實情では平均二百六十二圓何がしに相成つて居ります、自給製鹽に付きましては、十二分の調査が出來て居りませぬので、餘り正確なものではありませぬが、今日基準に取つて居りまする自給製鹽に依ります生産費は、「トン」當り六百圓と云ふことに見て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=70
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071・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 他に御質疑がございませぬか、御質問もないやうでありまするから、鹽專賣法中改正法律案は此の程度にして置きまして、次に貿易資金設置に關する法律案、之を議題と致します、此の法案に付きましては、昨日政府當局の御説明を承つたのでございますから、今日は直ちに御質問を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=71
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072・中山太一
○中山太一君 只今の國内の生産機構は、各方面に於て餘程破壞されて居るものが尠くないのであります、從つて之が貿易に必要なる生産品を相當量増産すると云ふことに付ては、此の儘でありますれば、餘程期間が掛かりはしないかと思ひます、從つて此の貿易に必要な製品の生産を行ふ工業に對しては、政府は一段と積極的に其の復興に協力される御考がありまするか、如何でありませうか、其の復興に付ては資材の點に於ても容易に獲得が出來ず、それに必要な原料、資材の獲得も得られない爲に、生産が實現出來ないものもあります、殊に其の一部分のものが出來ない爲に、輸出市場に於て信用を贏ち得るやうな優良品を作り得られないやうな點があります、さう云ふ時に當業者のみに委せて置けば、唯それを得る爲に色々苦心をして驅けずり廻ると云ふことになつたら、何時さう云ふ製品が澤山出來るか分らないが、同業者が之に對しては、輸出の賠償の商品であるか、或は輸入の見返り品になるか、或は進んで更に輸出して新しい貿易の對象になるものか、是は何れを問はず、さう云ふ物に對しても不足資材、原料等は政府が一段と面倒を見て戴き、若し國内にないならば、矢張り聯合國側から出來得るだけ適當な方法で早くそれを輸入して之が圓滑な生産が行はれるやうに御配慮になる御考があるでありませうか、第一に其の點を聞かして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=72
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073・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今の御質問は誠に御尤もな點でございます、まだ所謂昔の考へ方の貿易と云ふものは、是から始まるが現在は始つて居りませぬが、今の所は全く聯合國司令部と日本政府との間に於きまして、之を輸出し之の輸入を許すと云ふ譯で、所謂斯う云ふ物を輸出したら宜らうと云ふ此方の想像と申しますか、或考へ方で輸出をすると云ふ段階に至つて居りませぬ、從つて本當にあちらが斯う云ふ物が欲しいと云ふ物に對しては、政府としては全力を擧げてそれを生産すると云ふ方向に向つて行かなければならぬことと思ひます、此の點に向つて或程度の材料なり、原料がありましても、或部分が足りない、不足を來たすと云ふことも必ずしもなきにしも非ずと云ふ状態だと思ふのであります、之に對しましては、是は大藏當局が答辯するよりは商工當局より答辯する方が宜しいと思ひますが、無論全力ら盡して是は不足なからしむると云ふことに努力致す積りであります、其の輸出の分量及び値段が分りまして、それと見合ひで、物は違ひますが、向ふから輸入が出來る、斯う云ふ機構になつて居ると考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=73
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074・中山太一
○中山太一君 輸出物資の價格に付きましては、大藏當局はどう御考へになつて居るでありませうか、今日迄の我が國から大陸又は南方諸地域に輸出されて居りました物には正當な價格と云ふことを見出すことが出來なかつたやうであります、それは國内に於て不合理な價格統制が行れて、適正價格と云ふものが一部にはあつても殆ど是がなかつたのであります、それで戰前の儘の價格で釘付けされた物があり、又其の後幾分か上昇した物もあり、九・一八の價格で釘付けされた物があり、又公定價格等もありましたが、其の價格を以て輸出の價格に、標準價格にされて居つたのでありますが、私は斯う云ふ不合理なことが行はれて居つた爲に、輸出に優良品を進んで生産すると云ふ氣風が日本の産業界に殆ど廢つたやうな氣持が、感じがしたのであります、此の點如何でありませうか、今迄日本の物が戰前八圓であつたものが若干騰つて十圓になつた、それが公定されて居る、それで釘付けされて、之を輸出する時に政府は或機關を設けて、それが海外市場ではもう少し高い時には二十圓に賣られることになることもあるが、是は生産者が少しも恩惠に浴するのではありませぬ、中間の機關が輸入する物資に對するそれを補償のやうな形に於て之を留保して居るのであります、處が一方貿易市場に於ては、所謂海外市場に於ては百圓であり、二百圓であり、甚しいのは三百圓、五百圓になつて居るのがある、それがさう云ふ儘で押へられて居る、斯う云ふことが行はれて居ることは國家も不利であるが、貿易を眞に助長する、重要なる品で外國で信用を博し得るやうな製品を多量に増産して貿易を發展せしむると云ふ今日に於て、大いなる過誤があると思ひますが、之に對して今後どう云ふ御考で、値段に對してはさう云ふ無理な釘付のやうなことでなしに、自然の正當な價格と云ふものを認めて行かれる御積りであるか否やと云ふことであります、それから一つは、外國の通貨と云ふものに何等の標準も關心も持たずに行かれると云ふことであります、それで戰時中には、支那の通貨と日本の通貨とが等價で換算され、殊に北支の聯銀券はそれであつた、今のやうな換算をして、生産業者はさう云ふ不利なあれで、輸出した物は今のやうな大きな差額がある、非常な高價に賣れて行く、それを日本の現地に居る者が、矢張り價格統制に依つて縛られて居るから、それから一割とか何等かの利潤を得るのみで、それ以上に賣れば經濟違反として處罰される、それでありますから、國籍の變つた人が假に其の店舖で買つて、其の直ぐ店先で他の人に何倍かで賣つても處罰されない、さう云ふやうな矛盾がありながら、それが僅かな期間でありますれば何ですが、是が長く行はれながら斯う云ふことが放任されて居る、それで戰時中には内地の人が外國で利得したのは極めて少い價額だ、それで他の國の人が得た、天津等に於てさへも、既に二年前一億圓以上の富を得たと云ふ人が、二十數名あると云ふことを同地方の人が言つて居る、支那事變前に一人しか居なかつたと云ふのが二十人にもなつた、其の後も更に多くなつたと思ひますが、さう云ふやうな矛盾を來して居るのであります、それで相手國の通貨又は爲替の關係等と、我が國の物價の所謂輸出品の價格と云ふことに對しての十分な御考慮を願はなければ、當業者の損害だけでなく、國家の損失は極めて大きなものと存ずるのであります、之を十分の一しか價値のないもの、通貨の價値が十分の一になつて居つても、等價に依る場合には、我が國から百萬圓の物を出しましても十萬圓しか代金を貰はなかつたと同樣であります、それと反對で、先方で百萬圓のものを買入れましても、我が方が輸入しました時には十萬圓の品を買うたに過ぎない、それが先方の通貨であれば宜いのですが、等價の爲に我が方の金を百萬圓出して行つたならば、是でも大きな損害がある場合がありますから、此の通貨或は爲替の操作と云ふことは、大藏當局の極めて明敏に、極めて適切に、今後此の貿易關係に於ては御措置願はないと、折角新日本の再建、平和日本の再建に足を踏出さうとして居る、それと相反する結果を招來しやしないかと憂慮する次第でありますが、之に對して大藏大臣は如何御考でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=74
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075・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今の御説は誠に御尤もな點でありまして、此の點に付ては十分に考へて居る次第であります、尚現段階に於きます爲替貿易の資金關係から申しますと、大體の構想と致しましては、日本の物資を「ドル」建で向ふへ賣る譯であります、又外貨建で向ふから物を買つて來ると云ふ格好になります、それに對する價格は委員會を設けて決めると云ふ大體の方針であります、之に付きましての詳しいことは政府委員から御答辯致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=75
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076・野田卯一
○政府委員(野田卯一君) 今の御話の通りでございますが、こちらから向ふへ出しまする物に付きましては、内地でそれを買入れる場合には内地の物價、現在の値段、それを増産する爲に幾ら位値段を出すべきかと云ふやうなことを十分勘案致しまして、關係者が集つて決めると云ふことになると思ひます、それから其の物を「アメリカ」側に賣る値段に付きましては、大體に於て國際價格に依ることになります、それで國際價格の既に建つて居るものもあれば、現在はなくてもそれと類似品ならあると云ふやうなことを勘案致しまして國際價格を決めまして、それで「アメリカ」へ賣る場合には「ドル」で評價して向ふへ賣ると云ふことに相成つて居りますので、只今御述べになつたやうな外國人が非常に儲けると云ふやうなことはない、無くすると云ふやうな方法を考へて居ります、又輸入する物に付きましては、是は向ふにあるのですから、外國の價格で、外貨建で買ひます、それを内地で賣ります場合には色々價格政策の點もありますし、其の他色々な點を考慮致しまして適正な値段を圓で決めると云ふやうな仕組に相成つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=76
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077・中山太一
○中山太一君 「アメリカ」との貿易に於ては國際價格に依ると云ふことは、輸入の場合には少しの狂ひもない、極く適當な價格が現はれて來ると思ひます、此の場合には爲替換算の當否に依つてのみ其の適否が定められるのでありますけれども、此の爲替も自然と輸出力に依つて定められるのでありませうが、是も公正なものに定められるべきだと思ひます、唯輸出の場合は、國際商品としての日本の特産品である時には國際價格と云ふものは、日本の輸出する物の價格から漸次國際的な價格が貿易市場に定つて來ると思ひますから、此の點は向ふに於て定められるのでなくして、我が方に於て能く檢討して行かなければならぬと存じますから、特に御考慮願ひたい、其の際に委員會を設けて御決めになるのでありますが、委員會には理論の十分立つ人はあります、今迄色々税制の上でも、物價問題でも、統制問題でも、隨分職業的に其の途で專門的に研究して居る人が大藏省にも、商工省にも能く委員に擧げられて居りまするが、此の人達が計畫した案が殆ど失敗に等しいことになつて居ることを、大藏大臣は一度一つ考へ直して貰ひたい、見直して貰ひたい、實際の立場を忘れて、机上の論と云ふことを言ふけれども官僚の机上の空論、是は官僚ぢやない、職業的に斯う云ふものを架空的に研究して居る人の案を、尤ものやうであるから、成る程理屈に合つて居る、是なら安心だと云ふやうに一番信じ易くなるので、それを御採上げになつて居るやうに思ひます、今日でも尚さう云ふ傾向が色々な委員會にありますが、此の職業的な研究家を一度全部首のすげかへをして戴く必要がある、丁度此のことは、良い醫者でも藥學者でも、藥を發明した場合に、實際に良い發明だけれども、それを直ちに人間には應用しない、動物試驗をする、それから學用患者に試驗して、それから一般に、安全だ、副作用もない、效果は確かにある、と云ふことで賣出す、處が今迄の職業的なさう云ふ研究家は、副作用も考へない、一面確かに良い所はあるが、其の一面の良い所のみ採上げられて、其の副作用を考へないから、政府の期待される效果が現れずに、惡影響がひどくて、官民共に非常に迷惑することが少くないと思ひますので、委員會、特に委員會の構成に對して持に御考を戴きたい、さうでないと、委員會で檢討すると言はれても、今迄の例から申しますと、私は委員會に信頼出來ないと云ふ感じを深く持つて居る、之に對しては、甚だ失體でありますけれども、大臣の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=77
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078・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今の御指摘の點は、今迄の委員會に於きまして其の感なきにしも非ずと云ふことは自覺して居ります、最近に於きまして大藏省の各種の委員會に於きましても、出來るだけ實際家、本當に實務に當り、又それに對して本當に利害を敏感に感じ得ると云ふ人になつて戴いて居ります、今度の貿易の關係に於きましては、其の意味を以ちまして政府と致しましては多年の經驗のある向井忠晴君を長官に致しまして、出來るだけ民間の經驗者を以て組織すると云ふ考へ方であります、委員會に於きましても今の御趣旨を十分に採入れて考へたい、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=78
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079・中山太一
○中山太一君 能く大臣の御心持、政府の御決意を承りまして、諒承致しました、今日の我が國の産業人が貿易市場に送り出す商品が、果して世界的に信用される優良品を作ることが出來るかどうかと云ふことは、大きな疑問であります、それは技術の足らないとか、設備の不足と云ふことでないのであります、只今のやうな我が國民、殊に産業人が感情が荒んで居る、道義が頽つて居る、責任を重んじない、斯う云ふ者が作つて、果して世界の信頼を博する製品が送り出せるかどうか、非常に憂慮に堪へない點があります、茲に於きまして、輸出貿易を盛ならしむる爲には、之が生産に從ふ者の道徳、所謂産業道徳の昂揚は一層政府當局に於て御留意を願ひ、産業人も深く新日本再建の爲に其の重大使命を自覺して、之が改善に當らなかつたならば、此の大事な出發點に、日本品は粗惡だ、ごまかし品だと云ふことになつたならば、最早再び經濟的に發展する機會を得ないことになりはすまいかと思ひますが、是は餘程御決意を戴きたいと存じます、又産業道徳を絶對に昂揚せねばならぬが、それでは産業道徳だけを昂揚すれば宜いかと云ふと、それでは矢張りいけない、科學知識が足りなかつたならば、其の精神だけでは完全な、立派な製品は出來ないから、其の産業道徳の昂揚と、科學知識が有らゆる商品に應用された優れたもので、所謂精神と科學とが渾然一體化した商品が作られ、送出されて、初めて新日本建設に相應しい貿易品が出來ることと存じますから、大臣の之に對する御決意、又貿易長官の之に對する御考を承れば幸と存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=79
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080・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今御指摘の點我々も夙に其の點は考へて居りました所で、誠に御尤もな點であります、殊に最近の如き状態に於きましては、仰しやる通り産業道徳の頽廢又科學々々と申しながらそれを何處へどう利用するかと云ふことに付きましては、それ自身の科學性が缺けて居ると云ふやうな状態であります、之に對しましては大藏當局、商工當局のみならず、政府全體として、如何なる政府が實現致しましても、是は如何に聲を大にし、眞に一生懸命になつても足りない位でございます、此の點は出來るだけ其の線に副うてやつて見たいと云ふ風に考へて居る次第でございます、是は單に一人二人だけの問題ではございませぬ、全體にさうなつて來なければならぬのであります、無論其の中に極く少數の人でも本氣になつてやれば、それが段々に他人に移つて來れば宜いのでありますが、どうしても全體的にやつて行かなければ本當の意味のものにはなつて參りませぬ、さう云ふやうな意味に於きまして必死に努力をしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=80
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081・中山太一
○中山太一君 貿易長官の一つ、今後直接御當り願ひますから、御考を聽かして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=81
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082・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 貿易長官は向井忠晴君ですが、今居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=82
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083・中山太一
○中山太一君 それでは又適當な機會に……、色々の貿易品を生産するに於きましても、輸送の關係も圓滑でなければならぬ、又色々な意味から燃料としても、是が缺くる所がありましては生産が出來ない、今日のやうな石炭の状態ではいかないのであります、是も大藏當局は貿易の促進と石炭問題と云ふものが又不離不即であると云ふことを御考慮願ひまして、石炭の増産、所謂石炭飢饉打開に對して深甚な御考慮、御盡力を戴かなければならぬと存じますが、之に對する御高見を伺ふことが出來ますれば、幸と存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=83
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084・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 目下人間の命を繋ぐ爲の食糧と、産業の命を繋ぎ且それを發展せしめる「エネルギー」の源泉としにの石炭とは二つの大きな問題であります、此の點に付きましても今眞劍にやつて居りますが、まだ是では足りない點が多々あります、之に對して相應の手段を、而も多少犧牲的な手段迄やりましても、石炭だけは出さうと云ふ決心であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=84
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085・中山太一
○中山太一君 もう一つ最後に承つて置きたいと思ひます、是は大藏御當局だけでなしに、商工省關係かと思ひますから、委員長、どう致しませう、商工省の御關係の方を御呼びになつてからに致しませうか私は質問を一時留保しまして……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=85
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086・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) ああさうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=86
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087・中山太一
○中山太一君 大藏大臣には、唯其の片鱗だけを申上げたい、貿易の促進に付きましては、全國各主要都市の商工經濟會が活動することが必要だと思ひます、又各業界の組合の積極的活動に俟たねばならぬと存じます、にも拘らず只今の商工經濟會は戰時中に所謂官製と云ふよりも、實に去勢された機關であつて、殆ど積極的に民意を代表して、産業貿易の發展に寄與貢獻するには不十分と云ふよりも、色々の點から言へば半身不隨のやうな形でありますが、之に對して此の際一二改革を行ふ必要があると存じます、殊に其の内部に澤山な事務員が居る隨分經費は一般商工業者から取り上げて使つて居りますが、皆閑で困つて居る、する仕事がないと云ふ状態であります、是は過去と餘程違つて居りますから、私は寧ろ過去の状態に、政府が一段と積極的に指導して戴けば、其の時の方が寧ろ民主主義的であり、機能も一段と發揮されるのではないか、又各事業界の組合も今の統制組合の如きは、唯高給を係員が貰つて居るだけであります、過去には同業組合の如きは皆奉仕で、其の業界の代表者が業界の發展、自他共榮の爲に盡力して、あの平和産業が盛んになつて來たのでありますが、是が今度の統制組合になつて、其の一部の事務を執る者が高給を貪つて居る、さうして成績が擧らない、又今日では閑で困つて居ると云ふ状態であります、斯う云ふことでありましては、健全な貿易の發展も如何かと思ひますが、之に對して大藏大臣の御意見を承りまして私の質問は終りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=87
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088・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 戰時中の組織竝に考へ方に付きましては、もう屡屡政府が申述べました如くに、出來るだけ早く之を切換へて行かなければならないのであります、今の御指摘の商工經濟會も、確か他の場所に於きまして商工大臣も言明されて居りました如くに、早急に之を改組する積りであります、又改組の仕方それ自身も今御述になりましたやうな趣旨に副つてやると云ふことを商工大臣も言つて居られます、我々も其の行き方で宜からうと思ひます、唯問題は其の組合それ自身の結成の仕方なり、又其の運用の仕方に付きましては、今後の世の中全體の動きを見まして、單純に言つて元の形に還るかどうかと云ふことは、多少私自身としては別な考へ方もあるではないかと思ひます、併し今の形が善いとは全然思ひませぬ、多少形を變へて、さうして今御述になりましたやうな線に副つて對處すると云ふことだけ決心をして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=88
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089・吉野信次
○吉野信次君 ちよつと政府につかぬことを伺ひますがね、ちよつと運用で私に呑込めないのですが、「貿易の決濟」と書いてありますが、甚だ愚問であるのですけれども、要するに、御承知の通り貿易と云ふものはない譯ですからね、其の意味の國際市場への參加を許されないのですから、唯こつちで、我々がですね、所謂最低の生活をする爲に必要な物資の輸入を御願ひする、其の身代りの物をやらにやいかぬと云ふ譯ですね、其の時に向ふで許される分量は、こちらで持つて居る身代りの物に稽へて、さうして許されるのだらうと思ふのであります、さうすると大體色々爲替の關係とか、或は評價の關係もありますけれども、大體向ふに入れる物、こちらから行く物と云ふものは、大體話があつた時に初めて具體的に何が行くとかと云ふことが決るのぢやないかと云ふやうに思ふのでございますがね、それで實際の運用はですね、さう云ふても多少の出入はありませうが、出入があつて足りないと云ふ時に此の資金と云ふものを出すと、斯う云ふ意味か、私には能く其處が分らないのです、唯貿易と云ふものが出來て國内の問題として色々收支の決算をする時に、國内の方の計算上の決算をする時に斯う云ふものが要ると、斯う云ふ御考か、其處等がちよつと呑込めないのですが、愚問ですが、説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=89
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090・野田卯一
○政府委員(野田卯一君) 今度設けます資金で品物を買ひまして、其の品物を「アメリカ」側に引渡す、「アメリカ」に引渡すと「アメリカ」側から米「ドル」を貰ふ、其の米「ドル」で向ふの物を買つてそれを持つて參りまして、それを内地で賣つて日本の圓を收入する、斯う云ふことを今度の會計ではやると云ふことになるのであります、勿論何を入れる、何を出すと云ふことは「マッカーサー」司令部と能く話合で具體的に取決めて行くと云ふことになります、斯う云ふ使命を持つて居り、向ふで百萬「ドル」得た、日本が輸入したい物が二百萬「ドル」、金が足りないと云ふ場合は、多少の「クレヂット」でも、一時の借越を認めて呉れと云ふやうなことを話をして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=90
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091・吉野信次
○吉野信次君 決濟と云ふものですからね、何か貿易があつて後始末をすると云ふやうな考が起るから……、今の御話だとさうでなくて、詰り是だけの金を貿易をするのに國内的に使ふのだと云ふことは能く分つたのでありますが、文字が「政府の行ふ貿易の決濟の爲」と書いてあるものですから、其處で何だか物を入れ、出して、さうして後の締括りをする場合に、足りない場合に使ふのかと云ふ風な誤解を起したものですが、今の御説明で大體分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=91
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092・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 外に御質疑ございませぬか、では御質疑がないやうでございますから、貿易資金設置に關する法律案は此の邊に止めて置きまして、次に昭和二十年法律第十八號中改正法律案、之を議題に供します、是も昨日政府當局の御説明を聽取致しましたので、直ちに質問を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=92
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093・黒田英雄
○黒田英雄君 此の法律を改正されまして二億餘萬圓の公債發行の増額に相成る譯であります、是は追加豫算の關係上、歳入歳出を合せる爲に御必要なことは當然だらうと思ふのですが、實際の公債の發行に付きまして、昭和二十年度の公債發行額の中既に發行されて居るのもありませうが、終戰に伴つて歳出の方も色々緊縮されて行かれることと思ふのでありますが、實際に於て此の二億餘萬圓は増發されますか、此の二億圓は公債を實際に於て發行される必要があるものですか、唯豫算を合せる爲に計上されたものでせうか、今後の公債の實際の發行額と豫算上の公債の發行額との關係に付て御説明を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=93
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094・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 御答へ申上げますが、今の處、歳入減のはつきりした見透しが付いて居りませぬので、其の點に付きましてはつきりしたことは申上げられませぬが、恐らく發行する必要があると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=94
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095・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) それでは此處に、商工省の方が見えましたから、中山君でしたか保留されて居るのは……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=95
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096・中山太一
○中山太一君 大臣の御質問の關係がありませうから、私の方は後で宜しうございます、折角御質問が始つて居りますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=96
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097・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) それでは簡單ですから此の方を先に進めます、外に御質疑ございませぬか、御質問もないやうですから、此の法律案は之に止めまして、中山委員の商工當局に對する御質問に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=97
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098・中山太一
○中山太一君 商工省當局に御尋ねしたいと存じます、此の貿易の健全な發展を見る上には、先程大藏大臣にも御尋ね致しましたが、商工業者が眞面目な、所謂道義を重んじ、責任を尊重して、飽く迄も新日本建設に貢獻する考へがなけらねばいかないのみならず、科學知識を出來得るだけ利用し、活用して、さうして精神と科學との渾然一體化した所に、日本品として貿易市場に將來雄飛すべき基礎が出來るものである、茲で粗惡品を出したならば、日本の將來は全く暗闇化して行くと云ふやうに考へられます、之に付ての商工省當局は相當に大きな施策を御持ちのことと存じます、第一に此のことに對しての御意見、第二には民間の産業人を指導啓發し、又其の適切なる意見等は之を政府にも具申する、又民間に向つても、産業人に向つても之を啓蒙して行くと云ふやうな點に於て、民間の自治的な團體が健全に發達する必要があるやうに思はれます、處が只今全國に商工經濟會がありますが、是は戰時中に設けられました所謂官製の商工經濟會でありまして、過去の商工會議所は必ずしも完全とは言へないけれども、商工經濟會よりは今一段と各業界の總意を反映して居つた、さうして其の構成機構も一般中小商工業者から代表者が出て、それが構成分子となつて、各各の立場から意見を交換して、其の一番良い點を具申するやうになつて居り、又業者もそれに依つて勵まされる點が多かつた、國際的にも、外國の貿易關係の者が來ましても、之と交驩をし、實に良い状態に民間外交が經濟外交として行はれて居つたことは御承知の通りであります、處が戰時中でもあつたと思ひますけれども、商工經濟會になつて政府の期待されましたやうな種々なる強力な統制であるとか、或は民間の指導とか、各府縣と表裏一體の關係に於て其の機能を發揮するとか云ふ御考は殆ど架空になつてしまつて、所謂半身不隨のやうな状態であります、是で而も會頭初め役員、殆ど官からの指名に依つて是が行はれて居る、何等の實力があつたからやつたのではない、民間の要望があつてやつたのでもない、さう云ふことが終戰後の今日も其の儘放置してあつて、さうして是から貿易の新しい活動に入らねばならぬ場合に、果して是で宜いかどうか、商工當局としての御考を聽かして戴きたい、又それに對する御方針でも決つて居れば御漏し願へれば結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=98
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099・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 大臣がまだ見えませぬので、私から御答辯を申上げて置きます、御滿足が參りませぬでしたら、何れ他の機會に又大臣から補足的に御説明を致すことにして御了承を願ひます、只今中山委員からの御質問にありました、今日此の時代に於きまして、輸出致しまする品物の惡い物があると云ふことは非常に大きな影響を持つことである、誠に御説の通りでございまして、今日に於きましては、輸出致しますることが米の増産と同じ「ウェイト」を持つ輸出でありますので、見返り品の輸出と云ふことには政府と致しましては萬全の措置を講じなければならぬことは申す迄もないのであります、輸出品の劣惡化を排しまする爲には、標準的の規格を決めますとか、或は嚴重な檢査の制度を採用致しますとか云ふやうなことに依りまして、優良品の輸出せらるるやうに出來るだけ努め、而も優良品を生産致しました者に對しましては資材等を特に優先的に配給致します等に依り、之を鼓舞奬勵すると云ふやうなことを致したいと斯う考へて居る次第であります、第二點と致しまして御質問になりました、商工經濟會を例に御擧げになりまして、民間から盛上る自主的の團體でも出來て、さうして民間の意向を反映し、貿易に當り、又國民外交の一斑をも受持つことが有意義であらうと云ふ御意見は誠に御同感申上げる次第であります、政府と致しましても、今迄の商工經濟會なり、或は商工組合法に依る組合なり、全く戰時に於ける必要上出來ました由來に鑑みまして、此の戰時色を拂拭をして行かなければならぬと考へて居るのでございます、例へて申しまするならば、人事に於て官廳が任免權を持つて居りますことであるとか、或は又組合員、或は其の團體を組成して居る人達の意向を無視致しました指導者原理と云ふやうなことで、押切つて行きます方法とか云ふやうなことは、是はもう早急に止めなければならぬことで、總會なり、評議員會なりの決定する者に一任して、さうして官と致しましては極めて消極的な態度を以て臨んで行くと云ふことが必要なのではないか、斯う考へて居るのでございます、而も今後に於きまして、例へば纖維品でありますとか、或は鐵でありますとか、或は石炭でありますとか云ふ自然量的に乏しきものに付きましては、統制の方式が或は強く採用されることの必要なることは中山委員の御了承の通りであります、さう云ふ量的に乏しきものに付て統制を致す場合に於きましても、從來のやうに官から計畫を立てて統制をすると云ふことは極力排しまして、自律と申しますか、自治と申しますか、業界の人達の國民同胞の民生安定を計畫致しまする目標の下に統制をやつて居るやうな氣分の統制に戻して行きたいと、斯う考へて居るやうな次第であります、さう云ふ趣旨で商工經濟會に致しましても、其の他の産業團體に致しましても、其の線に沿ひまして、今折角檢討を加へて居りまして、次の近き議會に於きまして兩院の御協贊を得て斯う云ふ法律として出したいと斯う考へて居る次第であります、それ迄は例へば商工組合法に依る商工組合のやうなものが運營を致して居りまする場合に於きましても、成るべく、只今私が申上げましたやうに、官廳側としては極めて消極的な監督だけに止めたいと云ふ趣旨を盛込んだ指導を致しまして、さうして人事のことに付きましても、或は指導者原理を強く行くと云ふやうなことに付きましても、成るべくやらせぬで行くやうにした方が宜からうと云ふことを、過渡的には、運營の上からやつて行きたい、次の議會にはそれをはつきり致しました所謂經濟民主主義の表現されますやうな企業團體、或は商工經濟會と云ふやうなものの法案を提出して、御審議願ひたいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=99
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100・中山太一
○中山太一君 商工次官からの御説明に依りまして、商工經濟會が官製の、殊に戰時の戰力増強の目的と云ふことで出來たものを其の儘置くことはされないやうな御氣持も分ります、又官の指名に依つて其の役員に決められた、さう云ふ状態も放置して置くことは改めると云ふことを承りまして、商工經濟會の問題に對しましてはそれ位にして置きまして、今度は商工組合、此の點に於ても同樣な意味から設けられたと申しても宜いが、實際の效果は、此の商工組合は政府の御考になつたことを裏切つて居り、民間も非常な迷惑をして、之が爲に今迄あつた同業組合なり、又は商業組合、工業組合等の機能のそれぞれ發揮されたもの迄全部解散して、却つて間違つた機關に變つて、今ではにつちもさつちも行かない、非常な迷惑をして居るのであります、此の點に付ても此際當局はどう御考になつて居りますか、嘗ては商工省に於ては色々の點に付て深く考へられて、産業合理化に付ても御苦心になり、又規格の統一等に付ても率先指導されたこともありますが、組合改組に對してはいつも的が外れて居るやうに思ひます、同業組合は公益法人である、それで組合としては營利をやることは出來ない、眞に公益の爲に業者協同の健全な發達に資すると云ふことになつて居ります、處が商業組合、工業組合等を御設けになる時營利をやらないやうな組合は存在價値がない、營利をやらなければ駄目だと云ふので工業組合を御設けになりました、其の後には營利をやる組合は不可なりと言はれて、商業組合に改組となりましたが、其の間同業組合を潰す御考のやうであつたが、到頭昨年迄殘された、而も去勢して何にも活動出來ないやうに放任せられた形であつた、處が又商業組合が出來まして、それから後は同業組合を一層壓迫して、各府縣で強要して、商工省關係の同業組合は、大部分解散され、又は商業組合に改組され、農林省關係は其の儘殘つたやうであります、其の因は名前を申しては何ですが、四條局長の際に根ざして居る、それはどう云ふ工合かと申しますと、同業組合が政治運動をするのは怪しからぬ、ああ云ふものがあるのはいかぬから潰してしまへと云ふので、それから獨善的に目の仇にして居つたのであります、それで官としてあるまじき斯う云ふ妙な印象を以て扱はれた爲に、内容的に云へば自治的に業者として良く健全に發達せしめて居るものを、一向政府は認識されないで、喰はず嫌ひのやうな形で來た、屡屡起る商業組合と工業組合の對立に對しても、同業組合は何時も超然として、兩者を圓滿に協調協力せしむるやう善處して居りましたが、其の後改組案を立て、町田商工大臣の時に之を見られ、非常に面白いと云ふので、當時の政務次官の勝さんが贊成されて、此處に委員で御ありの當時の局長か、事務次官であつた方も、是ならば誠に宜しいと云ふことでありました、それで直ちに改善せられるものと業者は期待して居りましたが、其の後結局握り潰すと云ふことになり、其の後工業組合、商業組合は、營利をやる組合であるから不可なりと云ふことで、昭和十八年でありましたか、商工經濟會と同時に、商工組合として新たに出來ることとなり、同業組合、商業組合、工業組合も遂に解散された、私は其の時同業組合の兩翼に、下部組織として商業組合、工業組合が存置せられることは、理想的で業界の健全なる發展上非常に意義がある、兩方あってこそ、此の運營は非常に面白いと思つて居りましたが、結局は商工組合となりましたが、併し今日になると殆ど其の機能は發揮して居らない、全く改惡であつて、業者は其の發展を阻礙されたやうな形である、それで今後之が改正されると云ふことであれば實に結構なことでありますが、御改正の時は商業組合、工業組合の長所もあり、同業組合の長所もあるから、それを一つ系統的に宜く御調べ願つて、同業組合なり、商工業組合が其の機能を十分に發揮し得るやうに、さうして貿易發展の上に、將來大活躍出來るやうに御考慮戴きたいと思ふのでありますが、之に對する御當局の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=100
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101・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 御答へ申上げます、今後に於きまする日本の企業形態の在り方は、申す迄もなく大體に於て中小商工業者を中核とする企業組織の在り方のやうに、漸く最近の聯合軍司令部の指令で分つて來るやうな譯で、さうなつて來ると中小商工業者の人達が理解を同じうする關係に於きまして、組合を作つて、さうして御互ひの利益を圖り金融を圖つて行く、又御互ひの間に自治的統制をやつて行くと云ふやうなことは當然起るやうに考へるのであります、現在行はれて居ります商工組合と云ふやうな、官の力が強く加はつて、或は組合に於きましても指導者原理と云ふやうなことに據つたものを運んで行くやり方が、敗戰後の日本の經濟の進み方としては極めて不適當であることは先程仰しやつた通りであります、只今御話のありましたやうな線に沿ひまして今折角檢討を加へて居ります、次の議會に商工經濟會の方と同じやうに提案致しまして、御審議を願ふ運びに必ず參りますことだけを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=101
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102・中山太一
○中山太一君 色々御深切に御答辯を戴きまして有難うございました、是は先程大藏大臣の時に御尋ね致しましたが、此の生産を進めて行くには、又輸送の圓滑を圖り石炭問題は絶對に見逃すことの出來ぬ問題であります、色々御苦心になつて居るやうでありますが、石炭の増産には餘程御見込が付いたことと存じますが、之に對しては如何でありませうか、次には貿易を通じても考へねばならぬのでありますが、我が國が隣邦との親善に付て、是は物を賣る買ふと云ふだけでなく、確かに好感情を持合はなかつたならば貿易の發展は出來ない、それで今後は外國人となる朝鮮人と、我が國民との感情、それから支那なり、滿洲、將來中華民國との感情問題等を、唯品を作り、良い物を出すだけではいけない、之も一つ外務省ばかりに委せられずして、矢張り貿易發展の上に極めて大事な關係がありますから、御留意願はなければなりませぬが、商工當局としては、之に如何御考がありませうか、どうでありませうか、今朝の「ラジオ」でも我等の聲と云ふので、御承知の通り、實に中國人が我々の間違つたことを率直大膽に指摘して居ります、斯う云ふ風なことで、唯「アメリカ」だけを大事に目の先に置いて、隣邦のことを何故忘れたかと云ふことで、中國の決意迄も率直に發表して居るのであります、私は是は速記でもさした方が宜かつたと思ふ程同感でもあり、深い感銘を持ちました、之に對して將來の對外貿易關係を持ち、相手國と我が國との親善を圖る、其の本となるものは國民相互の感情でありまするから、是は商工當局としては如何御考になつて居りまするか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=102
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103・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 第一の石炭のことに非常に御心配下さいますことは、誠に有難いことでございます、大臣は本會議竝に委員會を通じまして度々御答辯を申上げて居りまするやうに、今商工省の仕事と致しましては、全力を石炭の増産に傾注を致して居るのであります、御説の如くに民生の安定と、或は民需産業への轉向に依る失業者の吸收と云ふやうなことも、總て一番の問題は石炭であることは申す迄もないのであります、幸に致しまして、石炭が出ませぬ一番大きな原因でありました終戰後に於ける華人、朝鮮人にして、山元に其の儘殘って、暴行、脅迫などを致して居りました者も、聯合軍側の協力に依りまして、殆ど是は山には朝鮮の人達、華人と云ふ者は居らなくなりましたので、是からは好くなるだらうと思ふのであります、食糧の問題に付きましても、或は地下足袋とか、被服とか云ふやうな問題に付きましても、十分のことは出來ませぬが、既に發表致しましたやうに、平均炭鑛勞務者に對して五合を給與する、家族に對しては二合三勺を給與すると云ふやうな、農林省の御協力に依りまして出來て參りました、又北海道の如き地元に米のない所へは、東北の方から米を輸送を致しまして、さうして漸く米が最近著いたやうな状態であります、又賃銀の問題に付きましても、御承知の通りに引上を致しましたり、其の他色々の勞働條件の改善と云ふことに付て骨を折りました結果と致しまして、只今商工省の見透しと致しましては、十一月の中旬が最惡の生産量であり、段々上へ向いて來るのではないかと云ふ風に考へて居りますやうな譯であります、從つて最近の報告に依りますると、常磐炭鑛の如き處に於きましても、一時は坑に入る勞務者の稼働率は三割位に低下致しましたが、漸次恢復して參りまして、或山の如きは七割九分位に稼働率が恢復を致して參りました、是などを見ましても漸次石炭の問題に對しまして、微かながらも光明を認め得るのではないかと云ふ風に考へて居りまするやうな次第であります、第二の點に付きまして御答辯申上げますが、朝鮮或は中華民國との親善を増進して參りますことが敗戰後の日本が國際的に立直る上から見まして極めて必要なことでありまして、色々の方面から色々の手段を盡して隣國との親善、和親を結びますと云ふことが、我が國としてどうしても採るべき方策であると思ふのであります、商工省として考へて居りまする一つのことを申上げますと、例へば賠償物資として或は近く決定されて、朝鮮なり或は滿洲なり、或は支那なりに殘されるやうなものに付きましては、今日日本が中華民國に對して、是なら中華民國より優れて居ると云ふものは日本の技術であります、さう云ふ所に居りまする技術者であるとか、或は經理に當つて居る人などと云ふ者は、出來るならば成るべく其の賠償物資と共に先方に殘つて、さうして先方に對して技術を指導し、經理の方からも指導を致しまして、さう云ふ人を通じて産業の上から親善關係を増進して行くやうなことは、一つの方法ではないかと云ふやうなことを考へて居りますが、何しろ未だ「ポーレー」大使の中間報告に依る賠償問題は、果して外地にあるどう云ふ物をどう云ふ形で賠償物資として指定されるかと云ふことが分つて居りませぬ今日でございますけれども、外地に在る日本の所有物件を賠償にすると云ふやうなことを表明されました時分から、一つの方法として隣邦に比して一段と優れて居る所の技術と云ふものを以て、先方の民心に好い影響を與えて行くと云ふ方法も、是も隣邦との親善、和親を増して行く一つの方法ではないかと云ふ風に考へて、折角研究を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=103
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104・中山太一
○中山太一君 最後に只今朝鮮に、又は中國等に對する親善に付ての深い關心を持つて居りますと云ふことは、誠に感謝に堪へない次第であります、どうか十分に有らゆる角度から隣邦との間に、親善の實が一層上るやうに願ひたいと思ひます、唯炭鑛暴動の如きは朝鮮人なり、中國人が暴動しても是が直ぐ追返せるやうな意味でなしに、今少しく彼等を理解し、彼等を鎭壓して、歸す時期に歸すのは宜いけれども、それが爲に追返さずに、もう少し反省をして仕事をされるやうな所の政治的な措置が講ぜられたならば、彼等が又歸つて一層兩國の親善に寄與する所も大であつたと思ひます、今日は民主主義國家として發足する我が國に於て勞働組合法が制定されて、勞働者の自由と向上を確保することは當然でありますが、それかと申しても場合に依れば爭議が起り、暴動が起らぬとも申すことは出來ない、さう云ふことは皆矢張り正しい政治に依つて解決さるべきものだと思ひますから、此の點にも今後さう云ふことがあつた時には、十分に信念を以て善處されることが望ましいのであります、同時に先程申しました組合關係が民主主義國家として發足する我が國に於て、勞働組合法を制定して、勞働者の自由と向上を確保することは當然でありますし、又同じく民主主義國家として發足する、我が國に於て同業組合法が制定されて、さうして産業人の所謂生産者の自由と向上を確保することが當然でありますから、此の意味は車の兩輪の如くあらねばならぬ、それが兩方正しい主張、眞に公正なる協力に依つて日本の産業の健全な發展が出來得るものと思ひますから、此の點を希望し、商工次官の御答を戴きまして、私の質問を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=104
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105・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 第一段の朝鮮勞務者或は華人勞務者の點に付きましては、恐らくは終戰當時に於きまする日本の敗戰に依る虚脱の状態、混亂の状態と云ふものが誠に殘念な状態に至らしめたものだと思ふのでありまして、御意見の點は深く肝に銘じまして、今後色々隣邦の人達を扱ひまする場合の參考にして行きたいと思ふのであります、第二の點に付きましては御説のやうに勞働組合法が成立を致しまして、健全なる勞働組合が出來て、さうして勞働組合が出來たことに依つて事端を滋くするやうなことはなく、事の起らざる前に責任のある人達の間で團體協約に依つて勞働條件の改善、其の他の問題が解決されることを私共は期待を致して居りまする譯であります、同時に只今御話のやうに、産業側に於きましても今の自主的な、民主的な團體を作つて、さうして利益を同じくする者の間で御互ひに研究をし、御互ひに金融、其の他の利便を講ずると云ふやうな制度を設けることは當然でありまして、此のものは先程御説明申上げましたやうに、全く自由な盛上る力に依りまして、總會なり、評議員會なりが決定權を持つやうな、所謂大衆の力に依つて其の機構が運營されるやうな精神の下に於ける一つの團體と云ふものを作り得るやうな法律を次の議會に出したいと、斯樣に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=105
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106・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 外に御質疑もないやうでございますから、是から討論に入ります、鹽專賣法中改正法律案、貿易資金設置に關する法律案、昭和二十年法律第十八號中改正法律案、此の三案を一括して議題に供することに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=106
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107・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) それでは此の三案を一括して討論に入ります、どなたも御意見ございませぬですか、それでは此の三案共に原案通り御贊成の方の御起立を願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=107
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108・高橋是賢
○委員長(子爵高橋是賢君) 滿場一致可決と決定致しました、では今日は是で散會致します
午後三時二十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=108
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109・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 子爵 高橋是賢君
副委員長 男爵 周布兼道君
委員
侯爵 小松輝久君
侯爵 東郷彪君
男爵 白根松介君
子爵 舟橋清賢君
子爵 綾小路護君
津島壽一君
男爵 伊藤一郎君
吉野信次君
男爵 鶴殿家勝君
黒田英雄君
諸橋久太郎君
中山太一君
飯塚知信君
國務大臣
大藏大臣 子爵 澁澤敬三君
政府委員
大藏政務次官 由谷義治君
大藏省金融局長 久保文藏君
大藏省外資局長 野田卯一君
專賣局長官 植木庚子郎君
專賣局部長 長沼弘毅君
商工政務次官 木暮武太夫君
商工參與官 男爵 山根健男君
商工省總務局長 菅波稱事君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008900134X00219451216&spkNum=109
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