1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○昭和二十年勅令第五百四十二號(承諾を求むる件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=0
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001・会議録情報2
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委員氏名
委員長 子爵 八條隆正君
副委員長 男爵 東郷安君
公爵 二條弼基君
侯爵 西郷吉之助君
伯爵 黒田清君
子爵 土岐章君
子爵 松平親義君
山田三良君
松村眞一郎君
村上恭一君
大野緑一郎君
男爵 中川良長君
男爵 關義壽君
男爵 明石元長君
竹下豐次君
唐澤俊樹君
中島徳太郎君
松井貞太郎君
大谷五平君
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●昭和二十年十一月二十九日(木曜日)
午前十時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=1
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002・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 是より昭和二十年勅令第五百四十二號承諾を求むる件の特別委員會を開會致します、御諮り致しますが、此の委員會を一旦休憩致しまして、午後一時三十分に再開することに致して如何かと存じますが、如何でございませう
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=2
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003・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御異議ないと認めます、然らば一旦休憩致しまして、午後一時三十分より委員會を開會致します
午前十時十五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=3
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004・会議録情報3
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午後一時四十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=4
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005・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 是より委員會を開會致します、先づ政府より提案の御説明を伺ふことに致したいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=5
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006・楢橋渡
○政府委員(楢橋渡君) 提案の理由を御説明申上げます、「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件に付きましては、曩に本會議に於て大要御説明致しましたが、尚稍稍詳細に亙りまして御説明申上げたいと存じます、御承知の通り、去る九月二日調印されました降服文書の中には、帝國政府が聯合國最高司令官の要求する所に從ひ、「ポツダム」宣言所定の事項の實現の爲、必要なる一切の措置を執るべきものとする旨の條項があります、而して帝國政府としては、右最高司令官の要求に係る事項に付きましては、當初行政の運用に依りまして之を處理するの方針を擇んだのでありますが、爾後の情勢から見ますると、其の要求の内容は多岐多端に渉りまして、到底豫斷を許さぬものがありまして、單に行政の運用に委するを以ては足らず、必要ある場合に於ては強制力を行使し得るだけの法制上の態勢を整へて置く必要が生じたのであります、斯く致しますことに依りまして、聯合國最高司令官の要求あるに從ひ、隨時應機敏速且適實に「ポツダム」宣言の忠實なる履行に遺憾なきを期しますことが、世界に對し我が全幅の誠意を披瀝して、以て帝國の對外信威を繋ぐこと極めて喫緊の要諦であることは、言を俟たぬ所であります、而も最高司令官の要求は、時に極めて急速の處理を要することがあり、萬一遷延致すやうなことがあれば、延いて帝國の公共の安全にも影響を及すに至るを保し難き事情にあるのであります、仍て政府は帝國憲法第八條第一項の規定に基き、本件勅令の御制定を仰いだ次第であります、今本件緊急勅令の内容に付きまして一言致しますれば、其の前段に於きましては、政府が「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ、聯合國最高司令官の要求に係る事項を實施する爲特に必要ある場合に於ては本來法律を要すべき事項に付ても、命令を以て隨時所要の定を爲し得る旨、其の後段に於きましては、右の如き諸項の實現に必要なる限度に於ては、命令を以て必要なる罰則を設くることを得る旨の規定を置いて居るのであります、以上が本勅令の内容でありますが、政府は本件の制定と同時に、別に勅令の制定を仰ぎまして、本件の委任に依り發し得る命令は、勅令、閣令及省令に限らるべきこと、竝に本件に基く閣令及省令に規定することを得る罰は、三年以下の懲役、禁錮、五千圓以下の罰金、科料及拘留の範圍に止むる旨を明示致し、其の運用に愼重を期することと致しました、以上を以て本件緊急勅令に關する一應の御説明を終ります、尚御質問に應じて委細申上げたいと存じます、何卒宜しく御審議あらむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=6
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007・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 是より質疑に入ります、山田三良君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=7
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008・山田三良
○山田三良君 今の御説明に對してちよつと伺ひたいのですが、「ポツダム」宣言と云ふのは大變廣範圍に亙つて居ると云ふ御話であります、御尤もなことと思ひますが、併し「ポツダム」宣言と云ふものは自ら一定の範圍があつて、何處迄行くか分らぬと云ふものでもなからうと思ふのでありますが、併し實際の状況を見ますと云ふと、「マッカーサー」の方から、我々がちよつと豫期しないやうなことを段々と日本政府に要求して參りますから、何事があつても向ふの要求通りに從はなければならぬものであるかどうかと云ふことは、非常に疑問であらうと思ふ、そこでどう云ふ範圍迄「ポツダム」宣言は及ぶのであるか、無條件降服と云ふことがありますけれども、あれは無條件降服は武力の無條件降服となつて居りますね、「ポツダム」宣言には、無條件の降服は陸海軍、空軍が無條件に降服する、日本國家が無條件に全般的に何事にも無條件降服するとは書いてないのであります、然るに實際の模樣を見ると、陸海軍が無條件に降服しただけでなくて、其の外何でも彼でも、無條件に、日本政府は「マッカーサー」の要求に應じなければならぬやうに、政府に於てもさう解釋せられて居るのではないかと云ふ疑念を持ちますから、是は非常に重大な問題でありまして「ポツダム」宣言に服從しますけれども、「ポツダム」宣言以外のものに日本國家が絶對に服從すると云ふことはない、殊に「ポツダム」宣言に對しても、國體の擁護に付ては、日本政府は、それだけを唯一の條件として「ポツダム」宣言を容れて居る、無論之に對して聯合國の方で、日本政府の要求は容れるとも、容れないとも、何とも言つて居りませぬ、甚だ狡い譯でありますが、何とも言はずして、さうして日本政府の降服文書に向ふが承知したのである、でありますと、どう云ふ意味になつて居るか、其の邊は分らないことでありますが、併し是はどう解釋すべきか問題であります、私は陸海軍の無條件降服すると云ふ、其の「ポツダム」宣言を日本は受諾するが、併し日本の國體の擁護と云ふことに付ては、是だけは條件として、それは絶對的に、それを尊重して貰ふと云ふ、それだけを條件として後は「ポツダム」宣言を其の儘容れる、それに彼は反對せずして默つて居るのでありますから、解釋に於ては暗默の裡にそれを承諾したと見なくてはならないのであります、日本政府の希望した條件は、彼は默つて居りますけれども、暗默の裡に承認した、さうして其の「ポツダム」宣言に對する降服文書と云ふものが成り立つて居る、さうしますと云ふと、日本の國體を變更すると云ふやうなことに付て、彼は何等の要求を爲さない筈であると思ひます、然るにさう云ふ點に迄も觸れたる要求も段々出て來る、憲法の根本改正であるとか、さう云ふ問題が出て來る、それは其の儘に唯々諾々として承知しなければならないと云ふことには、降服文書の解釋からは出て來ないと思ふ、それを事實に於て現すことが得であるか損であるかは別であります、時宜を得て居るか、得て居ないかも別であります、併し糺すべきは糺さなければならないと云ふ點から云へば「ポツダム」宣言の範圍と云ふものを非常に明かにしまして、苟も「ポツダム」宣言に含まれて居ないやうなものを要求された時には、是は「ポツダム」宣言の範圍外であると云ふことに依つて、日本政府が拒絶すべきは當然である、政府は此の點に關してどう云ふ解釋を御執りになつて居るか、そこを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=8
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009・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の御質問は非常に重大な問題と考へますので、私から御答を申上げたいと思ひます、我が國は「ポツダム」宣言の條項に基いて降服をしたいと思ふのであります、從つて、我が國が「ポツダム」宣言の條項に拘束せらるべきことは、是は當然であらうと思ひます、然らば「ポツダム」宣言は更に聯合國をも拘束するや否やと云ふことは、是は次の問題になりまするが、此の點に付ては必ずしも明瞭にどうであると云ふことを申上げるだけの文字上の理由は出て來ないと思ひますので、此の問題に付きましては、或は具體的の場合に於て、何等か後に意見の相違等が出て來ることもあり得るかも知れぬと考へて居ります、併しながら只今御質問になりました國體の維持と云ふことに付ては、是は私は疑なく聯合國に於ても我が國體の維持に對して何等かのことを申して參ることが出來るものと考へて居るとは考へないのであります、憲法改正の如きことに付て何か申して來て居るかと申しますと、公式の指令等のないことは御承知の通りであります、若し憲法改正等に付て聯合國から何等かの要求があると致しますれば、それは所謂「ポツダム」宣言の第十項でございますか、「日本國政府は日本國國民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に對する一切の障礙を除去すべし、言論、宗教及思想の自由竝に基本的人權の尊重は確立せらるべし」と云ふ、此の條項に基きまして、民主主義的傾向を強化する爲に或程度のことをしなければならぬではないか、障礙があれば之を除去しなければならぬではないか、又所謂自由主義に基きまして國民の言論、宗教、思想の自由竝に基本的人權と云ふことの尊重に對して、例へば日本の憲法の規定が理想的になつて居るかどうかと云ふやうなことは言つて參ることがあり得ると思ふ、さう云ふ範圍に於ては、是は此の「ポツダム」宣言を我が國に於て受諾したる以上、聯合國から申して參ることは之を尊重して、相當の考慮を拂はなければならぬことと信じて居ります、併しながら我が國體の維持に付きましては、是は「ポツダム」宣言に於きまして、彼の欲する所のやうにしなければならぬと云ふことは一つもないのでありまするのみならず、私の記憶する所に依りますれば、第十二項に於きまして、「前記諸目的が達成せられ且日本國民の自由に表明せる意思に從ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せらるるに於ては聯合國の占領軍は直ちに日本國より撤收せらるべし」と云ふやうなことを書いて居りまして、日本國政府の構成に付ては、日本國民の自由に表明せる意思に從つて責任のある政府が出來ると云ふことを書いて居るのでありまして、聯合國の意思に依つて我が國體を命令すると云ふことは出來ないことと考へて私は居るのであります、若しも左樣な點迄問題が及びましたならば、是は勿論我が國として敢然として起つて抗議をしなければならぬと考へて居ります、今迄聯合國から申しまして來たことの中には、果して此の「ポツダム」宣言の範圍に屬するや否やと云ふことに付て、多少疑はしく思はれる點もないとは申しませぬ、併しながら是は解釋次第でありまして、我の解釋からは少し範圍を脱却するのではないかと思はれるやうなこともありましても、彼の解釋からは矢張り範圍内であると云ふことを言ふのであらうかと考へますので、さう云ふことに付きまして多少のことを申したことは或はあるかも知れないと思つて居りますが、併し正面から意見が一致し難い程のことは今迄はまだなかつた、少くとも此の國體と云ふやうなことに對しては、聯合國から何等の命令等のことはなかつたと云ふことを斷言して宜しいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=9
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010・山田三良
○山田三良君 只今の説明を伺ひまして結構と思ひますが、其の解釋上尚疑義があると云ふ點は、私も一、二の問題は既にあると思ひますが、是等に付きましては、「マッカーサー」の司令部と日本政府が今の立場に於て理窟でのみ爭ふと云ふことは、甚だ愼むべきことであらうと思ひます、併し常に政府はそれを、何處迄も理窟に合はない所の、範圍を逸脱して居るやうな點に付ては、諄々として彼に説いて、さうして其の逸脱した所を是正するやうに、最善の努力を拂はれむことを希望して置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=10
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011・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今山田君の仰せられたことは、全く我々の考へて居ることと致して居るのでありまして、苟も聯合國の請求にして「ポツダム」宣言の趣旨を逸却するやうなことがありましたならば、力を以て爭ふことは是は勿論出來ないのでありまするが、理を以て爭ふと云ふことに付ては、十分の努力をすると云ふ覺悟で居ります、此の點は左樣に申上げて置いて宜しいかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=11
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012・山田三良
○山田三良君 只今の御説明を伺ひまして大いに結構と思ひます、續いてもう一つ質問致しますが、聯合軍最高司令部に依つて、政治的、公民的、宗教的自由に對する制限の除去と云ふことになつて、一切のさう云ふ今迄の制限を除去した、又政治犯罪人等を解放せられたることは、是は已むを得ないことと思ひますが、其の結果として、天皇制を彼此言ふのみならず、共産主義的のことを公然と主張して居る、現行刑法の規定の下に於ては明かに不敬罪を構成するやうな言論を勝手にすると云ふことも、現に行はれて居る次第であります、殊に放送局などの放送は、動もすれば、さう云ふ方面に同情を表しまして、恰も共産主義者であるかの如き言論を以て放送して居ることを聽きまして、甚だ遺憾に思つて居る次第であります、如何に言論思想が自由になりましても、さう云ふもの迄も勝手にして置かなくてはならぬと解釋することは、私は甚だ了解出來ないと思ひますが、此の點に付きまして政府はどう云ふ御意見でおいでになるか、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=12
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013・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今山田君から仰せられましたやうに、近時共産主義者其の他の者の極めて過激なる言論が發表されることがあるやうに思ひます、而して其の言ふ所は、動もすれば我が刑法の規定、例へば不敬罪などにも觸れる虞があるのではないかと思はれることもあります、併しながら之に付ては十分に取調を致しまして、法規に觸れることが明瞭であつて、其の證據が確實であるならば、假借する所なく法規を適用して參りたいと云ふ方針で居ります、唯其の間に於きまして、動もすれば反動の結果、共産主義者や何かの言論が非常に過激になると共に、是は致し方がない、どうすることも出來ぬものであると思ふやうな誤解がないとは言へませぬ、さう云ふやうなことの爲に、或は證據を蒐集すると云ふやうなことに付て十分に行つて居らぬ點もありはしないかと云ふことを心配して居りまして、此のことは屡屡我々が其の當局に對して督促をして居る所であります、今の山田君の御心配のやうなことは少くとも是からはないやうに、又從來と雖もあつたならば、之が證據等が確實になりましたならば、假借なく法規を適用して參るやうに致したいと考へて居ります、尚放送局のことに付きましては、私も直接所管ではございませぬので、十分なことは申上げ兼ねますが、之に付ても相當の心配を致しまして、或は近頃は一時よりは多少違つて居るやうになつて居るかと思つて居ります、此の點に付ては色々申上げにくいやうな機微な關係もございまして、甚だ遺憾なことがなかつたと云ふことは寧ろ言へないやうに私は思つて居ります、今後出來るだけの注意は拂つて、法規に反するやうなことが公認せらるるかの如き感を與へるやうなことはないやうに是非致したいと云ふので、努力を致して居ります、此の點は諒とせられむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=13
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014・山田三良
○山田三良君 只今の御説明に依つて、大分よく事情が分りまして安心致しました、全くひどい形勢にありますから、之を打ちやつて置かれると云ふことになると、どう云ふ形勢になるか、甚だ憂ふべき點もあると思ひますから、尚政府に於て最善の努力を願ひます、もう一つ伺ひたいと思ひますことは、勅令第五百四十三號ですか、此の命令には、閣令、省令等に付きまして、罰則は「三年以下の懲役又は禁錮、五千圓以下の罰金、科料」として、それ以上のものは罰則として規定しないと云ふ趣意から斯う云ふ勅令が出て居ると思ひますが、其の外の單行の勅令では罰金一萬圓と云ふこともありますが、さうすると各單行の勅令で別々に各各罰則が出來るなら、斯う云ふ一般的の制限は要らないことになりますが、其の關係はどうなつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=14
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015・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 只今の御質問に御答へ致します、昭和二十年勅令第五百四十三號に於きまして罰則の限度を定めましたのは、閣令及省令に規定する場合の罰則の限度を定めた譯であります、此の緊急勅令に依りますと、勅令を以て定めます場合がありまして、緊急勅令に基く各種の勅令には、罰則の制限を一應外してあるのであります、で御承知の通り、明治二十三年の法律第八十四號と云ふのに、罰則を命令で規定する場合の制限がございますが、此の緊急勅令に於きましては、其の場合の例外にもなりますので、勅令を以てならば如何なる罰をも定めることが出來る、此の緊急勅令の趣旨は左樣になつて居るのであります、唯閣令、省令で定める時には、其の罰の限度は三年以下、五千圓以下、斯樣に相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=15
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016・山田三良
○山田三良君 よく分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=16
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017・大野緑一郎
○大野緑一郎君 私は「ポツダム」宣言の效力の發生の時期と云ふことに付て御尋ね致したいと思ひます、それは主として外地に關することに關して御聽きしたいのですが「ポツダム」宣言の内容に於て「カイロ」宣言を認める、それに依ると、朝鮮、臺灣等が日本の領土でなくなることになつて居りますのですが、其の時期が何時からなくなるのであるか、極端なと言ひますか、私は三つの考へ方が出來るのぢやないかと思ふのですが、八月十五日に遡つてそれがなくなると云ふ考と、それから今御話の九月の二日に調印を致しました其の時に致しますか、或は更に何か特殊の條約と申しまするか、手續に依つて引渡すと云ふことになるか、どう云ふ形になるのでありますか、それに依りまして朝鮮が既に日本の領土でなくなつて居るのであるか、又國内に居る朝鮮人が帝國の臣民たる身分を喪失したのであるか、それ等の點が頗るはつきりしないやうに考へて居るのであります、又聯合軍の側に於ても、或は國内に於ける朝鮮人或は臺灣人等に對して、お前達はもう外國人なんだからと云ふやうな取扱をして、それが爲に取締上も非常に困難を感じて居る實例も見て居ります、又例へば朝鮮等に於ても、八月十五日から既にもう日本の領土でないのだから、それ迄に色々總督府の役人等が國費の支出を致して居り、或は色々の措置を致して居ることに付て、不當なる措置であると云ふやうな理由を以て抑留せられ、或は色々な待遇を受けて居ることは事實なのであります、從つて之に付ては私ははつきりした諒解と申しまするか、取極めをして戴かないことには、實際上に於て非常な不都合を生ずるやうに考へて居りますので、其の點に付て政府の御考がどう云ふことになつて居りまするか承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=17
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018・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の大野君の御質問も是れ亦頗るむつかしい問題であります、只今の御質問の御言葉を伺つて居りますと、「ポツダム」宣言の效力自體に依つて、直ちに我が國の是等朝鮮其の他に對する領土權が喪失するかの如き御考のやうにも聞えたのであります、是も一つの或は見方かも知れぬと思ひまするが、併し我々としては、此の「ポツダム」宣言の第八項に、「カイロ」宣言の條項は履行せらるべく又日本國の主權は本州、北海道、九州及四國竝に我等の決定する諸小島に局限せらるべし」云々とありまするが、此の規定自體を受諾したことに依りまして、直ちに領土の喪失が是で行はれるものとは實は解したくないのであります、即ち領土の歸屬が法律的に確定すると云ふ、我々若し私法的に之を申します之を申しますれば、物權的の效力を生ずると云ふことは、是は講和條約等に依つて確定せられるのではなからうか、我が國としては此の「ポツダム」宣言を受諾することに依りまして、左樣に決定せらるる場合に於て、之に從はなければならない、私法的の言葉を以てしますれば、債權的の義務を負うて居ると云ふことに過ぎないのであつて、確定を見るのは、是は講和條約か、何等かのことがあつて、之に依つて確定せられるであらう、從つて是等の領土の上に居る所の朝鮮人とか、臺灣人とか云ふやうな者の國籍も、政府の考では尚是は日本人である、國際法上は日本人であると云ふやうに考へて居ります、其のことが明瞭に現れて居るのは、今度提出を致しました選擧法中の改正法律案でありまして、此の選擧法中改正法律案の附則中に一箇條がありまして、戸籍法の適用を受けざる人に付ては、此の選擧權及被選擧權が確か停止せられる、確かさう云ふやうな規定を設けたのであります、其の趣意はどう云ふことかと申しますと、さう云ふ特別規定を設けざる以上、朝鮮人及臺灣人と雖も、我が日本の本土に居りまする以上、矢張り選擧權も被選擧權もあると云ふことになる、併しながらそれは種々の點から考慮して必ずしも妥當ではなからう、他日此の「カイロ」宣言に基いた所の領土の決定がされまして、朝鮮及臺灣に對する日本の領土權が失はれました場合、是等の人々の國籍もどうなるか、或は所謂「オプション」を認めて日本人となることも許すかも知れませぬが、默つて居れば或は日本の國籍を離れるかも知れぬ、左樣な不確定な状態にある人達に選擧權、被選擧を與へることは穩當でなからうと云ふ趣意で、左樣な意味の一項の規定を選擧法中改正法律案の附則中に加へたのであります、さう云ふことを加へて居ります趣旨も、政府の解釋と致しましては、まだ此の領土權が物權的に失はれたものである、從つて其の上に居る所の人々の國籍もなくなつたものであると云ふやうには考へないと云ふことを表明して居る一つの證據であります、但し是は我々の解釋でありまして、果して聯合國總ての國の解釋が之に一致するや否せと云ふことに付ては保證することは出來ませぬ、然らば只今も仰せられましたが、聯合國等が朝鮮臺灣等に對しては殆ど全く日本の領土を離れたやうにして色色の取扱をして居るが、是はどうであるかと云ふことは直ちに生ずる御疑問と考へますが、此の點に付ては是は軍事占領をされて居る、其の結果として、我が領土と法律上言へるものでありましても、全く領土でないと同じやうな状態にあると云ふことは有り得る、左樣な變態の下にあると云ふやうに大體解して居ります、併し此の點は非常な重要なる問題でありますので、尚外務當局其の他の意向で若し違ふことがございましたならば、或は私の今申したことが訂正されるかも知れませぬ、訂正されませぬ以上今日は左樣に考へて居ると御承知を願つて宜しいかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=18
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019・大野緑一郎
○大野緑一郎君 只今の御説明に依りますると、衆議院議員の選擧法の改正に於て、選擧權及被選擧權を朝鮮及臺灣の人には認めないと云ふことに御決めになつた譯でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=19
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020・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 日本に居る朝鮮人臺灣人等の選擧權及被選擧權は之を確か停止すると云ふことにして居ります、其の權利はあるけれども、行使することを、確か當分の内と云ふやうな言葉を使ひましたかと思ひまするが、此の際詰り停止と云ふやうな規定を設けたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=20
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021・村上恭一
○村上恭一君 此の緊急勅令は、帝國政府が「ポツダム」宣言の受諾に伴ひまして、聯合國最高司令官の爲す要求に係る事項を實施する爲に必要とせられるものと存じます、此の聯合國最高司令官の要求、之に對しまして、帝國政府はどう云ふ態度を執つて居られまするか、又將來執らむとせられるのでありまするか、と云ひまするのは、彼の申しますることは我が方に於て無審査に之を受容れるより外はないのでありますから、彼の言ふ所の妥當なりや否やと云ふことに付ては、或は論議を挾む餘地がないかも知れませぬ、併しそれが果して「ポツダム」宣言の範圍内に屬するかどうか、又彼等の要求を我が方に於て實施する爲には國内法規を整備する、斯う云ふ必要がありまする、それには相當の期間を要すると云ふ場合があるに違ひない、之が爲に彼の要求を實施することの延期を求めると云ふ、それには我が方に於ても獨得の意見を立てる餘地があるのではないか、是等の點に付きまして、我が方より彼に考慮を求める、斯う云ふやうな手段を執ることが出來ないものでありませうか、今迄執らなかつたのか、又是からも執らない積りであるのか、之を要するに聯合國最高司令官の要求に對する帝國政府の態度、今申しましたやうな點に關する態度、之を御伺したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=21
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022・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の村上君の御質問も亦、是は實は外務省の所管に屬するのでございますから、若し私が申すことが間違つて居つたらば、外務省の政府委員が今來られたさうでございますから、訂正をして貰ひます、私の承知して居る所では、實際から申しますと、所謂「マッカーサー」からの命令なるものは、さう常に突如として來るものではないやうであります、是は又突如として來たらば非常に困る事を生じますから、實際に於て色々の連絡をして居りまして、どう云ふやうな意嚮を持つて居るかと云ふことの、何と申しますか、之を探つて、さうして之に對して出來るか出來ぬかと云ふことを確かめて、甚だ不便な點があれば再考を求めると云ふやうな交渉は、事實に於て或は外務省の連絡事務局を通じ、或は通ぜずと雖も、私から此の裏面に於て各省の當局などと、又彼の方の幕僚などとの間に話を致しまして、さうして若し聯合國の欲して居る所が不便であれば、出來るだけ直して貰ふと云ふことで、まあ申せば「ネゴシェーション」を始終して居ると云ふやうに見受けて居りますが、其の「ネゴシェーション」もなかなかこつちの思ふやうに參らぬことが多いやうではありまするが、併しどうしても出來ぬやうな、餘りに困るやうな事に付ては、相當事情が分れば、相手方も之を改むるに憚らないやうなことが多いやうでございまして、どうやら圓滑に……と云ふことは餘り申せませぬかも知れませぬが、どうにかして出來るやうになつて居ります、其の結果に於ては、私共から見ますれば、非常に不滿足なこともないとは申せませぬが、左迄にぶつつかつてどうにもいかぬと云ふことにはならぬやうに大體なつて居ると思ひます、併し是は私が傍から見て居ることでありまして、又さう云ふことを欲して居るので、それを申して居るので、尚外務省の政府委員から此の點に付て御答をした方が間違ひなくて宜しいかと思ひます、さう願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=22
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023・田尻愛義
○政府委員(田尻愛義君) 大體今松本國務大臣から御話がありましたやうな手續が内面的に行はれて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=23
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024・村上恭一
○村上恭一君 私の質問に對しまして、政府の側から先づ結構な御答辯を戴いたと思ひますから、私は稍稍滿足致します、其の仰しやいました「ネゴシェーション」、先方との交渉が纒りまして、彼の要求を實施する爲に我が方の國内法規を整備する、其の餘裕を握ることが出來る、斯うなりますれば、此の緊急勅令を活用する必要が少くなる、普通の立法手續で間に合ふのでありますから、成るべく其の方針を御執りになりまして、即ち其の交渉を纒めることに御努力なさいまして、言ひ換れば、此の緊急勅令を活用して、普通の立法手續に依らないと云ふ場合を少くすることに、此の上とも精々御努力されむことを私は希望致します、尚續いて御尋ね致しますが、此の緊急勅令はそれ自身が直接に現實の規定を爲すものではなくして、之を命令に委任すると云ふことが眼目であります、緊急勅令から勅令又は閣令、省令に立法を委任すると云ふことは、寡聞な私に於きましては、初めて見受けることであります、今迄斯樣な實例がありましたかどうかと云ふことを先づ以て伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=24
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025・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今村上君の御述になりました御希望は、我々の考も同樣でありますから、出來るだけ、突如として彼の指令が參つて、急遽立法をしなければならぬと云ふやうなことにならぬやうにしたいと云ふ方針で、話はして居りますが、併しながら多くの場合に於きまして、結果に於ては矢張りやるんなら直ぐやれと云ふ、所謂「アメリカ」人の好きな「スピーディ」と云ふ觀念で、躊躇、遲延を許さない、それでどうも已むを得ず緊急勅令に依つての省令なり、閣令なり、或は勅令なりを出さなければならすと云ふことが非常に多かつたのであります、今後と雖も出來るだけこちらの状況を話しまして、時が許しますれば、當り前の方法に依りたいのでありまするが、此のことはなかなか御約束が出來難いかと實は考へて居ります、それからもう一つのことに付きましては、今迄の前例はあるさうでありまして、是は政府委員から申述べます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=25
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026・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 普通の法律でありますと、斯う云ふ委任をする場合がよくありますが、緊急勅令で斯う云ふやうな委任をした例はあるかと云ふ御質問でございますが、是は明治四十三年に勅令三百二十四號と云ふのが出まして、之が矢張り緊急勅令でございまして、朝鮮に施行すべき法令に關する件、斯う云ふ緊急勅令を發布せられたのであります、是は所謂制令の根據になるのでありまして、是は直ぐ法律になりましたけれども、若干の期間緊急勅令に依りまして、制令を發布し得ると云ふ委任命令の根據を制定したことがあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=26
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027・村上恭一
○村上恭一君 前例のあることは大して問題でもありませぬので、前例がなくても又前例を開くことがあり得るから、さう重きを置くべき筋合でもないと思ひます、そこで緊急勅令に依つて命令を委任する、此の委任に基く命令を發するのに、矢張り帝國憲法第八條第一項にありまするやうな要點、即ち公共の安全を保持し又は其の災厄を避くる爲緊急の必要ある場合でありますか、其の緊急の必要あると云ふ場合は、帝國議會の閉會中と云ふことに書いてあるのであります、さう云ふやうな憲法第八條第一項の勅令の要素、それを必要とする、斯う云ふ御見解でありませうか、此のことは帝國議會の開會中でも構はぬのでありますか、あの條件は委任に基く命令にはもう適用はないとして、帝國議會の開會中でも構はぬと云ふ反對の對策を生じはしないかと云ふ所に一つ問題があると思ふのであります、即ち帝國議會の開會中であつても、普通の立法手續に依る十分の時間がある場合でも、矢張り委任に基く命令で議會の議を經ずに之を發すると云ふことも出來るのであると云ふ反對の誤解も生ずる虞があるやうに思ひます、此のことたるや、帝國議會の權限に關することでもありますから、只今私が申しました形に於ける問に對して明確な御答を得たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=27
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028・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 此の問題に付きましては、法理論と、それから政治的の考慮を入れた實際論とを區別して考へぬといくまいかと思ひます、純然たる法理論から申せば、此の緊急勅令は法律と同一の效力があるのであります、然らば其の委任に基いて勅令なり省令なりを發しますることは、是は何時でも出來る、帝國議會のあるとないと左樣なことを一つも考へる必要はないのである、苟も此の條件を備へて居る、即ち「ポツダム」宣言の受諾に伴つて爲さなければならぬことである以上、何時でも此の委任命令を出すことが出來ると云ふのは、法理上當然出て來る論結だと確信して居ります、併しながら政治の實際から申せば、只今村上君も恐らくは不穩當極るからと云ふやうなことで、左樣な私の申すやうな論が出る虞もあると仰しやつたのは、さう云ふことかと思ひますが、政治の實際から申せば不穩當なことかと思ひます、立派に立法する餘裕があつて立法すれば宜しいのにも拘りませず、此の緊急勅令に依る委任命令を濫發して參ると云ふことは、穩當なこととは多くの場合に於て言へないと思ひます、故に實際の運用の上に於きましては、帝國議會が開かれて居りまして、立派に立法をする見込があり、又それをしても宜いだけの餘裕を與へて居る場合に於きましては、成るべく其の立法でやつて參ると云ふ手段を採りたいと考へて居ります、唯實際のことから申しますと、先程も申したやうに、非常な「スピーディ」な要求がありまして、どうも或場合には所謂御無理御尤もで行かなければならぬこともありますので、議會開會中と雖も此の勅令、法律と同一の效力を有する緊急勅令に基いて委任命令を出さなければならぬやうなことが起らぬと云ふことを保し難い、此の點だけを御諒解を願つて置かなければなるまいかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=28
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029・村上恭一
○村上恭一君 私は只今松本國務大臣から御答辯になりましたことに付きまして、其の前段の所謂法律上の見解と云ふ所の其の御意見には、失禮ながら承服し兼ねます、斯樣な特殊の立法の場合に於きましては、單り此の緊急勅令に憲法所定の要件を必要とするばかりでなく、此の勅令に基いて發せられる命令、之に付きましても矢張り同樣の要件を要するもので、當然要件を必要とするものと、斯う解釋することが、帝國憲法第八條第一項の精神に最も忠實なる解釋であると思ひます、憚りながら只今の御見解には承服し兼ねるのでございます、併し政治的には決して其の委任の權能を濫用することはしない、斯う云ふ後段の御言明がございまして、稍稍心を安んずる次第でございます、殊に又其の御説明の中に、議會の議を經て法律を發する、さう云ふことをする暇がない、議會の開會中でも彼の求めることが所謂火急なので、さう云ふ手段に依る遑がない場合には、此の委任の權能を活用することがあるかも知れぬと、斯う云ふことでございます、矢張り緊急の必要と云ふことを考へては居ります、唯それを普通の解釋の如く議會の閉會と限らず、もつと廣く解釋する、併し議會の議を經る遑がない、それ程緊急の必要の場合を見ての御説明でありますので、稍稍心を安んずる次第でございますが、どうか此の點も議會の先刻のことを御考になりまして、假令そちらの御解釋では法律上差支ないとしましても、政治上努めて妥當なる處置を御執りになりますことを呉々も希望して置きます、續いて御質問申上げたいのでございますが、此の緊急勅令は一般的の委任を規定をして居りますが、何故に此のやうな一般的の委任を御規定になる必要があつたのでありませうか、彼の要求に應じてこちらの法規を立てなければならぬ、それには法律を要する、併しそれは間に合はぬからして緊急勅令を發する、是が憲法の規定する所であります、就きましては、彼の要求を受けて、現に或立法措置を執る必要があつてさへ、其の都度緊急勅令を發すれば宜しいのではないのでありませうか、敢て此のやうな一般的の委任の規定を設くる必要はなかつたのではないか、緊急勅令を發することは、法律を發することに較べれば、遙かに簡單に出來ます、即ち何時でも出來ます、又立法部以外に於きまして、行政部に於きまして、政府の外に是は特に樞密院の御諮詢を經ると云ふ要件はありますが、併し樞密院の議を經ることにさう時間を要しはしない、手間は取れはしないのでありますから、彼の要求を受ける毎に、其の都度必要な緊急勅令を御發しになつても宜かつたのではないか、事は前内閣の時代に屬するのでありまして、現内閣の御方に御尋するのは失禮かも知れませぬが、私共としてはさうするより外ありませぬから、此の點に付きまして今の當局の方の御意向を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=29
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030・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 誠に御尤もな御考であります、併しながら御承知のやうに、聯合國の希望と申しますか、指令と申しますかは、踵を接して殺到して參ると云ふやうな工合で、或時にはもう一日に二つも三つも來ると云ふやうなことがあるのであります、斯くの如き場合を考へまして、且時間を付けましてさうして言つて來ると云ふ場合には、此の委任にでも依つて普通の命令でやらぬと到底間に合はないことが多いのであります、で今仰しやつたやうに、成る程議會の開會中でない時ならば、それは一々緊急勅令を奏請しまして、樞密院を開いて戴く位のことは、或は出來得るやも知れませぬ、併しながら是は前段と關聯するので私の解釋は何處迄も法理論から申せば、議會開會中であると否とを問はず、此の委任命令が出せると云ふ解釋であるのであります、議會開會中の如き、一日、二日で直ぐやらなきやならぬことが起つた時は、どうしても此の位は緊急勅令の委任に依つて通常の命令を以てやるの外はないのであります、勿論御承知のやうに、議會開會中に更に緊急勅令を出して戴くと云ふことは、是は出來ないことは當然であります、左樣な時にはどうしても斯う云ふ廣い委任が要るのであります、其處は前の意見と違ひますけれども、我々の考では何處迄も、所謂緊急勅令なるものは緊急勅令、即ち法律と同じ效力を有つもので、是は議會に於て承諾されれば確定致します、併しながら承諾前と雖も、不承諾になる、從つて將來に效力を失ふと云ふことになります前は、法律と同一の效力を有つ、さうすると、法律に於て色々の命令に對する委任事項を決めて居ります時には、議會開會中であると否とを問ひませず、其の委任命令を出すことが出來るのは、是はもう當然で、爭のない所だと思ひます、唯それが、或場合に於て政治上宜いか、惡いかと云ふ議論は、是は別であります、それと同じであつて、苟も斯くの如き緊急勅令がある以上、是は法律と同一の效力を有つて居るのでありますから、議會の開會中であると否とを問はず、其の委任に基いて、委任命令を出すことは、是は憲法第八條の條件を備へる必要は毫もない、法理論としては、先程も申した通りさう云ふ譯であります、そこで假に此の各個の場合に一々緊急勅令を奏請すると云ふことに致しまして、一々樞密院を煩はすと云ふことに致しましても、議會開會中はそれは出來ませぬ、左樣な點から見ても、矢張り其の一般的な委任が必要なのです、さう云ふやうな無理なやうな、「スピーディ」なことの指令の來ないことは、實に政府として希望する所で、常にそれに對しては幾らかの餘裕を與へて貰ふやうに言つて居ります、或實例に於ては、猶豫をしてもう一日待つて呉れれば、こちらでちやんと任意的にやると云ふやうなことがあつたものを、もう其の日にやられてしまつて、さう行かないと云ふやうな實例さへあつたのです、一つの詰らぬ御話をすれば、向ふの人とこちらの或當局とが話合ひをしまして、今度斯う云ふやうな役所を設けて、其處で全部さう云ふことを纒めてやりたいと云ふことを申した、其のやうに役所はまだ本當には出來ない、もう出來ることにして居りますが、まだ出來ませぬ、まだ出來ない位に之をずつと前にさう云ふことを話したのです、さうすると、其の話をした相手が其の翌々日に電話を掛けて來て、其の役所は何處に在るか、其の役所の電話番號は幾つだと云ふやうなことを言つて來たと云ふ位で、向ふの人の考とこちらの人の考とは、所謂「テンポ」が違ふのですな、こちらでどうも或事をやらうと思へば、どうしたつて何日か掛る、或は何週間か掛る、立法などと來ると何箇月と掛ると云ふ、其の頭がどうしても向ふに通じませぬ、又向ふの本當の行政の實際をやつて居つた人がこつちでやつて居るならば、それは或程度了解して呉れるかも知れない、併しながら御承知のやうに向ふの軍人が來てやつて居ると云ふやうな姿でありますから、もう命令さへすれば何でも出來ると思ふやうなことは、必ずしも聯合國の軍人だけでなく、相當日本でもさう云ふことはあつたやうに思ひます、さう云ふやうな考へ方もあらうし、又こつちも實際は愚圖です、此の頃は電話が壞れて居つたり、自動車が壞れてなかつたり色々なことで、各省の間で相談すると云つても、迚もそれは出來ない、況や樞密院に願つてどうしようと云つても、それは迚も早急に行きませぬ、さう云ふ事情はなかなか向ふには通じない、向ふは技術か何かでずつと行つちやふ、話を此の頃聽きますと、向ふでは、「ヘッド・クォーター」と鐵道省の間なんかでも、片方で書いて居ると、向ふで寫る機械を使つて居るさうです、もう何にもないので、ずつとこつちで書いて行けば、向ふへずつと寫つて行く、其の位早いことで、何でもそれでやつて居るものですから、こつちも其の位早くやれるとも思はぬかも知れませぬが、さう愚圖々々しないで出來さうだと云ふ考で、相當指令が連發される、踵を接してやつて來ますので、或場合には到底立法の通常の手續は出來ないことが多い、此の緊急勅令の出た時の事情は、只今御話の如く、私も一向承知して居りませぬが、此の緊急勅令が斯う云ふやうに出て居たことに依りまして、どうやら向ふの要求に或程度應へて居ると云ふのが實情でございます、此處らの點は十分御推測下さいまして御許を得たい、而して實際に於ては非立憲的なことはしたくないのでありますから、許す限り議會中などに斯う云ふものを出さないで濟むやうに、方針としてやつて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=30
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031・村上恭一
○村上恭一君 只今の御答辯の一つの要點を摘み上げますれば、議會の開會中と雖も、委任命令に依つて非立法を行ふ必要があらう、さう云ふ場合があらうと云ふことが、此の緊急勅令を發し、之を續けることの一つの理由になるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=31
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032・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) さう云ふ次第でもありませぬが、通常の場合と雖も、矢張り樞密院の議を經ますと云ふやうなことは、今の向ふが明日やれ明後日やれと來ます場合には、或はなかなか間に合ひ兼ねることもあり得る、恐らく此の緊急勅令に付て樞密院で御同意下さつたのは、さう云ふやうな事情の説明もあつてのことかと推測致しますが、當時のことは實は存じませぬ、結果に於ては私共は斯う云ふやうになつて居つた方が宜かつたと云ふことを考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=32
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033・村上恭一
○村上恭一君 先刻來の御答辯の中の、先方からは火急の要求があり、我が方之に應じ兼ねる場合があると云ふ御説明がありましたが、それに付きましては、我が方行政部の事務の取扱が緩慢である、「テンポ」が遲いと云ふ弊害があるのではありませぬか、此の事は獨り此の場合ばかりでなく、始終世間で云はれて居る所であります、日本の行政の運用が實に遲いと云ふことは始終我々が耳にして居ることであります、其の事に現内閣の方々は御同感でありますか、從つて又、出來る限り之を改善すると云ふ御考がありませうか、伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=33
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034・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今仰せのことは全く御同感で、是は役所の弊害でありませう、村上君の如き、能く御承知のことと思ひますけれども、役所で何かしようとしますると、色々な所へ引掛つて打合せを要する、さうすると少し工合の惡いやうなことと云ふと、なかなか返答をして呉れないと云ふことで、さう云ふことで、非常に暇が要ると云ふことは屡屡あるので、是は甚だ宜しくないことであります、我々としては、今度行政整理と云ふことを致しますのは、敢て財政上の意味で官吏の數を唯減らしてどうしようと云ふ考ではない、能率を上げると云ふやうにして參りたいと云ふ意味に於て、行政整理及行政機構の改革と云ふことをしたいと云ふので、組閣以來屡屡會議を開いて此のことを審議致して居ります、殊に官吏の執務のことに付きましても、色々の考査の方法等を設け、さうしてやつて參りたいと云ふやうな、色色なことを考へて居ります、是は是非改良したいと思つて居ります、唯先程もちよつと申したやうに、此の頃事務が尚一層遲延すると云ふのは、通信機關等が壞れてしまつて困るのであります、電話を掛けても通じない、一々使ひを出さなければならぬ、又使ひを出しても交通機關が非常に惡くて、いつ迄經つても使ひが著かぬ、電話も通じない、或は自動車等も殆ど役所には此の頃はなくなつてしまつた、そんなやうな状態で、思ふに委せないので、そんなやうな物質的の理由から役所の事務の遲れることもあるので、之に付ても何等か良くしたいと云ふので、色々やつて居りますが、思ふに委して居りませぬ、此の點も御諒解を願つて置かなければならぬと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=34
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035・村上恭一
○村上恭一君 松本國務大臣から縷々御言明を戴きまして滿足致しました、煎じ詰めれば、日本の行政部の事務の取扱が遲い、普通の手續をして居つては間に合はぬと云ふことが、結局此の緊急勅令を發する一つの事情になつたとも言へるのであります、誠に情ないことに思ひます、で其のことは自分も認めて居る、之を改めようと考へて居ると云ふ御言明、誠に結構でございます、どうか之を決行し斷行して戴きたい、それには今こそ絶好の時機ではないでせうか、日本が歴史上曾てないやうな變轉を爲す際、是こそ本當に絶好な機會でありまするから、今こそ政府に於きましても思ひきり振ひ起つて、御話の通り行政の能率を上げると云ふことに、思ひ切つた處置を執つて戴きたいと斯う考へるのでございます、是は私の希望として申し添へて置きますが、次に御伺したいのでありますが、此の緊急勅令に基きまして普通の勅令が出て居ります、即ち昭和二十年勅令第五百四十三號が是でありますが、是は要するに本案の緊急勅令の解釋を定めたものと思ひます、一體法令の解釋を定める、一つの法令の解釋を別の法令を以て定めると云ふ場合には、前後の法令は同一の形式であるのが本則ではないでせうか、此の法律の解釋は法律を以て定める、勅令の解釋は勅令を以て定めると云ふのが、立法上の本則ではありますまいか、さうしますれば、緊急勅令の解釋は緊急勅令を以てすべきものである、之を普通の勅令を以てすると云ふことは如何なものであるかと云ふ疑を持つのであります、其のことに關聯致しまするが、此の解釋の勅令、是は形に於て極めて簡單なものでありますが、之を本案の緊急勅令の中に差込んでも一向差支はない、容易に出來ることである、何故にさう云ふ立法の體裁を御取りにならなかつたのでありまするか、此の點を併せて御伺したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=35
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036・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 此の點は、當時の事情を存じませぬ私の答辯では、或は間違つたらば、政府委員が若し承知して居つたら直して戴きます、私の考では是は解釋ではないと思ひます、寧ろ此の緊急勅令自體では有らゆる命令に委任をされて居るんだ、併しながら勅令に依つて更にそれを制限して、勅令、閣令又は省令だけにする、其の以下のものにはしないと云ふことを勅令に依つて決めたんではなからうか、さう云ふやうにちよつと考へます、而してそれは、それならば何故緊急勅令自體に書かなかつたかと云ふ理由に付ては、私もどうもあなたと同樣にちよつと分らぬ點もございますが、強ひて申せば、緊急勅令としては廣くして置きたい、或は必要があつたならば此の以外にも行くかも知れぬ、さうして置いて、まあ勅令の方で之を制限したと云ふやうなことであるかも知れませぬが、此の出來ました當時のことに付きまして政府委員が承知して居つたならば申上げますが、私は解釋ではない、是で制限されたもんだと云ふやうに私は讀みたいやうに思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=36
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037・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 只今の勅令の性質は、只今松本國務大臣の仰しやられました通りと考へて居ります、尚此の勅令を緊急勅令の中に一緒に入れなかつたのは、實は罰則の限度が「三年以下の懲役又は禁錮、五千圓以下の罰金、科料及拘留」としてありますけれども、實は聯合國側の要求する所に依りますと、色々の要求がありまして、場合に依つては省令で決める罰則の限度も、或は三年を五年にすることをせざるを得ないことになりはせぬか、又五千圓を一萬圓にせざるを得ないことになる場合がありはせぬか、それ等を色々考慮致しまして、兎に角緊急勅令ではどの程度の罰でも宜しいとなつて居りますのを、一應省令に付きましては此の程度、併し相手方の出方如何に依つては、最も迅速に處理をする省令にもう少し罰則の程度を高めると云ふこともありはせぬかと云ふ考慮から、特に之を分けた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=37
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038・村上恭一
○村上恭一君 此の昭和二十年勅令第五百四十三號は緊急勅令の解釋ではない、制限と思ふ、斯う云ふ御答辯でございましたが、それならば尚更同じ形式を以てする必要があるのでないでせうか、法律の制限は即ち變更でありませう、法律を變更するには法律を要する、緊急勅令を變更するには緊急勅令を要すると云ふことになるのであります、解釋ならば實は既に分つたことなんで、それを明かにする、斯う云ふ宣言的の意味を持つのでありまするが、制限となれば一遍定められて居るものを縮小するのでありますから、是は創設的な意味を持つやうに思ひます、解釋ならばまだしも、制限ならば尚更同じ形式の法令に依るべきものと云ふことは言へないでせうか、是は松本先生の御教を仰ぐ所ですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=38
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039・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 私は矢張り制限であると思ふのであります、制限と思ひますのは、緊急勅令で決めてあるものを、緊急勅令と同じ效力、即ち法律たる效力を以て制限せむと欲すれば、是は緊急勅令に依るか、或は法律に依る外ありませぬが、左樣な意味でなくして、緊急勅令では是で十やると云ふことにして置いて戴いて、其の中で五しか使ひませぬと云ふことを決めると云ふのは、其の委任を受けて居る所の範圍に於て、勅令なり、何なりで決め得るので、それを一般的に勅令で先づ決めて、省令などでは斯うしろと云ふことを決めたので、是は一向差支ないと思ふ、此の制限の結果が法律の效力を有つのなら、それは勿論出來ぬことは申す迄もないが、左樣な意味ではない、十下さつた中の五を使はうと云ふことを決めた意味の制限と云ふことに解釋して、一向差支ないやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=39
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040・村上恭一
○村上恭一君 諄いやうでありますが、さうしますと、法律で斯く斯くすることを要すと規定してあるのは、さうするには及ばない、それより狹めても宜しい、斯う云ふ制限ならば法律を要する、けれども法律で斯く斯くしても宜しいと決めてあることを少々手前で遠慮する、斯う云ふ意味の制限ならば法律を要しない、斯う云ふ御趣旨と考へて宜しうございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=40
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041・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 詰り法律の適用に於て、各個の場合に委されて居ることを少くすることは、勿論差支ないと思つて居ります、是は法律が絶對的に確か委任して居るのでございませうから、罰則の如きも何處迄行つても宜いのでございませう、併しながら是で此處迄、省令以下は此處迄と云ふやうなことを制限すると云ふことは、適當なることではなからうか、省令とか、閣令でえらい大きなことをするのは餘り適當と思はれませぬ、それを制限して勅令で決めて置くことは寧ろ然るべきものではなからうか、又同じ意味に於て、緊急勅令自體が何でも出來る、命令と書いて居つて、或は府縣令等でも出來ると云ふことを許されて居つても、さう云ふ必要のない場合に於て、必要のないことをやらぬやうに勅令で決めると云ふことは、是は宜いのぢやないか、併しもう少し先迄行く必要があつたら延ばすと云ふことになるかも知れぬ、さう云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=41
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042・村上恭一
○村上恭一君 一應了承致しました、偖本案に命令とありますのは、勅令には限らぬ、閣令、省令迄及ぶ、否、省令より下のもの迄は及さぬ、斯う云ふことを御決めになつたのでありまするが、其の結果、是は緊急勅令から出て來る結果でありまするが、省令を以て法律を廢止すると云ふことも出來るのですね、現にやつておいでですね、さう迄する必要があるでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=42
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043・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 是は必要の有無でやることになると思ひますが、重大な事は勅令を以て少くともやる方が宜いと思ひます、併しながら何等かの理由で非常に急を要して、勅令をも待てぬと云ふこともあるのかも知れませぬ、其の細かい事情は能く承知して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=43
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044・村上恭一
○村上恭一君 さうしますると、其の場合、其の法律を廢止すると云ふやうな場合、勅令を以てするか、又は閣令、省令を以てするかと云ふことは、どう云ふ標準で御區別なさるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=44
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045・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 實際の取扱と致しましては、省令を以てする場合と雖も、閣議に諮ることに致して居ります、其の結果閣議に諮られて決めることに致して居ります、唯閣議に諮るの遑のないことが有り得るかどうか、今迄は左樣なことはないと思ひまするが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=45
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046・村上恭一
○村上恭一君 省令を以て……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=46
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047・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 省令を以て今の重大なることを決める……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=47
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048・村上恭一
○村上恭一君 法律を廢止すると云ふことは……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=48
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049・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) さうではございませぬ、省令を以て此の緊急勅令に基く規則を規定を致します場合には、省令でありますから、元來から申せば閣議に諮る必要はないのです、併しながら此の件に基く省令に付ては、矢張り閣議に諮りまして、各閣僚の了解、同意を得、さうして其の省令を發すると云ふことにして居ります、是は併し法律上の要件ではないと思ひますが、さう云ふ取扱をして鄭重には致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=49
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050・村上恭一
○村上恭一君 さう云ふ實際の御取扱でありますれば、省令を以てするか、勅令を以てするかは、唯勅裁を經るか經ないかと云ふだけの違ひになるやうに思ひますが、さうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=50
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051・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 若し閣議に諮ると云ふことを必ずやるとしますれば、仰せのやうにならうと思ひます、併しながら或場合には、閣議に諮らないでも勿論法律論としては出來るので、成るべく閣議に諮ると云ふやり方をして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=51
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052・村上恭一
○村上恭一君 行政部内部のことに餘り立入りまして恐縮でございますが、省令案を閣議に御掛けになる場合、是は内閣の部局でありまする法制局の議を經るのでございますか、經ないのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=52
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053・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 省令でやりまする場合でも、關係省から其の省令の案を法制局に戴きまして、法制局ではそれを擔當の參事官が急遽審議致しまして、其の結果を閣議の方にも申上げて、閣議に御話が出た場合に十分補佐をして居ります、それから先程國務大臣から御答辯がありました、省令で急にやらなければならぬやうな事例が今迄餘りなかつたやうな御話でありますが、最近實は大藏省關係で、外貨債處理法等の廢止、詰り外國人と日本人との取扱に關する其の關係に付きまして、日本人と外國人との取扱が不平等であつては怪しからぬと云ふ御話があつて、之を急遽省令で以て外貨債處理法等の廢止を行つたことがありまして、斯う云ふ場合は全く勅令で以て御制定を仰ぐ遑がなかつた一つの事例であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=53
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054・村上恭一
○村上恭一君 私の質問は一應終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=54
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055・松村眞一郎
○松村眞一郎君 此の緊急勅令の公布の日は何時ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=55
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056・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 昭和二十年の九月二十日でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=56
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057・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それでありますと、此の緊急勅令と勅令第五百四十三號とは同じ日に公布されて居る譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=57
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058・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 左樣でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=58
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059・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それでありますと、先程村上さんの言はれた問題と關聯するので、既に緊急勅令を發する際から、命令は勅令、閣令、省令であると云ふことが御分りになつて居ると思ふのですが、それならば、同時に公布する緊急勅令であるならば、緊急勅令の中に命令と云ふ字に代るに、勅令、閣令、省令と御書きになつて當然であると思ひます、それは樞密院に御掛けになる時に偶偶命令と御書きになつたが、樞密院でも矢張り御説明になつて居ると思ひますが、勅令、閣令、省令と云ふことは、同じ日に出しながら、さう云ふやうな餘計な解釋的なものは、制限的なものは、初めから制限して宜いと思ふのですが、どうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=59
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060・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 只今の御尋でございますが、是は同日に公布致しまして、其の當時としては此の命令は勅令、閣令、省令にしよう、さう云ふ風に考へたのでありますけれども、實は之を立案致します過程に於きましても、場合に依つて地方長官の命令と云ふ風なものでどうしてもしなければならない事態が出て來はしないかと云ふことを實は心配したのでありますけれども、其の當時と致しましては、聯合國側から要求も無かつた時でありますから、一應相當な委任の命令でございますから、地方長官の命令でやることは避けたいと云ふ趣旨で、此の勅令を御制定願つて、其の範圍を限局しましたけれども、軈て又聯合國側の要求如何に依つては、急遽府縣令其の他に依つて適宜やらなければならぬ事態が發生しはしないか、それ等の場合も考へまして、緊急勅令にするとさう云ふ場合に困る事態が起つてはいけないと云ふ趣旨から、特に分けたのであります、罰則の點に付きましても、場合に依つて此の罰則の限度を高める必要がありはしないかと云ふことを考慮しまして、特に二つに分けた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=60
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061・松村眞一郎
○松村眞一郎君 さう云ふ説明では私は滿足出來ませぬ、さう云ふやうな色色なことを想像するやうな規定であるならば、緊急と云ふことは私は言へないと思ふ、緊急勅令と云ふものは當面のことを考へて發するものでありますから、矢張り其の際に明確であること、それの限度を非常に制限しなければならぬと思ふ、同じ日に出して置きながら、地方の長官令を出すかも知れないと云ふことを顧慮した規定と云ふものは、私は餘り感服しないのですが、之を國務大臣に御伺したいのですが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=61
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062・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) それは意見の相違でせうが、私は是で宜いと思ふのです、詰りどうなるか分らぬのです、實際の事情がどうなるか分らぬのです、聯合國最高司令官の要求と云ふものは實に譯の分らぬ…と言つちや甚だ恐縮かも知れませぬが、實に何時來るかどうなるか分らぬのです、其の分らぬものに付てであるからこそ、斯くの如き緊急勅令が樞密院に於ても御同意になり、さうして發布されたものと思つて居ります、さう云ふものであるから、或は場合に依つて差當りは省令迄で宜しい積りで居つても府縣令にしなければならぬと云ふことも起らぬとも保し難い、又色々交通の此の頃の状態などから考へますと、或場合には殆ど遠隔な地方との通信が出來ないやうなことさへ起つたのです、さう云ふことを考へますと、或場合には已むを得ず府縣令でやらなければならぬことが起るかも知れぬ、さうなれば緊急勅令に於ては廣く命令に御委任を願つて置いて、さうして必要な状態に勅令として置く、併し其の状態が違つて急遽何か府縣令でも要するやうな時には、直ちに勅令を變更してそこ迄行くと云ふやうな必要が生じないとも思はれませぬので、私は當時何等聞知して居る所はないのですが、辯護して申せば、是も一つのやり方であらうと思ふ、併しながら是は意見の相違で、松村君の仰しやることも決して不妥當なことであると云ふ議論をする譯ではございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=62
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063・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私は地方官に今の「ポツダム」宣言の實行をやらせると云ふやうなことは、政府では私は御考になつて居ないと思ふ、幾ら通信が不便であるからと云つても、斯う云ふ重大な事件を成るべく閣議に御掛けになる、國務大臣が御説明になつて居るやうなものを、地方長官が法律を廢すると云ふやうなことは、私は想像は出來ませぬ、意見の相違と云ふことを申上げて置きます、さう云ふ風に考へられて居る緊急勅令であるならば、私は極めて不穩當であると申上げて置きます、それから提出理由の中の「聯合國最高司令官の爲す要求に係る事項に付ては、特に應機敏速に適實なる措置を爲し得るの途を拓くの緊急の必要ありと認め」と斯うあります、此の中の緊急と云ふのが緊急勅令を發せられる理由であると思ひます、それから「緊急」と云ふ字を取つて、「措置を爲し得るの途を拓くの必要あり」と云ふ、是が私は緊急勅令の實質の問題であると思ひます、それで宜からうと思ひますが、如何でせう、私は國務大臣に御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=63
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064・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 私は實はどう云ふものが書いてあつたかを、正直に申せば承知致しませぬ、今日は實は急遽委員會、重要なものであるから國務大臣の一人が出るのが宜からうと云ふことで出て參りました、抑抑是は私の所管ではないので、甚だ恐縮でございますが、政府委員が一つ調べて御答辯申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=64
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065・松村眞一郎
○松村眞一郎君 是は先程來の國務大臣の御答辯に依つて私は明瞭だと思ふのです、特に應機敏速に適實なる措置を爲し得るの途を拓くの必要あり、と云ふことを緊急勅令の實質として先程から御説明されて居る、議會開會中と雖も或はやらなければならぬと云ふことは、特に應機敏速に適實なる措置を爲し得るの途ぢやないのですか、是は當然な話なのであつて、緊急勅令の實質を示して居るのです、其の緊急が緊急勅令を發した原因である、是は何も國務大臣が法制局長官と御相談なさらぬでも明瞭ぢやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=65
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066・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 實は私はそれを持つて居りませぬので、何だか能く分らぬのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=66
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067・松村眞一郎
○松村眞一郎君 法制局長官に御伺します、文字を見てもさうぢやないですか、實質は緊急の必要があるから出されたのでせう、それが緊急勅令の……臨機の措置を爲すと云ふのが緊急勅令の内容ぢやないですか、是は法制局長官でなくても、次長でも宜い、そんなことが直ぐに答辯出來ないと云ふことはをかしいじやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=67
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068・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 其の通りです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=68
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069・松村眞一郎
○松村眞一郎君 國務大臣が御躊躇なさる必要はないので、明瞭なことです、如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=69
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070・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 實は物を見て居らないので、甚だ恐縮ですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=70
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071・松村眞一郎
○松村眞一郎君 實質論と思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=71
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072・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) さうでございませうね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=72
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073・松村眞一郎
○松村眞一郎君 そこで次に起ります問題は、私は此の緊急勅令の解釋に付ては、國務大臣の意見の方に共鳴するのであつて、村上さんの意見とは違ふのです、國務大臣の言うて居る説に私は同じ解釋をして居りますが、然らば此の勅令を茲に政府が承諾を求められた點は、私は二つあると思ふのです、それは緊急勅令を出したことが憲法の規定に適切なりや否やと云ふことが第一です、それから此の緊急勅令を將來存續させたいと思つて居るがどうかと、此の二つの要求から來て居ると思ふが、如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=73
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074・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 是は從來屡屡議論のあつた所で、緊急勅令を出す理由は、將來に效力を有たすと云ふだけの意味で出すと云ふのと、いやさうではない、既に效力を失つてしまつた緊急勅令と雖も之を出さなければいかぬと、其の措置自體の宜かつたかどうかを議會の批判を仰ぐ趣意であると云ふ説と、兩方ありまして、御承知のやうに、政府の今迄やつて居つたことも必ずしも貫徹して居りませぬが、左樣な學問上のことを今決める必要は私はないと思ふが、私一個としては、嘗て、緊急勅令に付て從來の政府の所見、即ち將來の效力保持の爲と云ふことで出すのであると云ふことを、確か貴族院の壇上に於ても説明をしたことが、二十年程前でございましたか、あつたやうに記憶をして居りますけれども、併しながら此の頃私の考へて居りまする所では、是は兩方の意味があると云ふやうに解する方が宜しい、さう云ふやうに是からしたいものである、少くとも憲法が改正されるやうなことが若しありとすれば、其の趣旨を明かにした方が宜くはないかと、私自身は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=74
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075・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私は幸にして同じ見解になりますから、其の點は結構でありますが、此の緊急勅令は兎も角將來に效力を續ける爲の提案でありますね、是は明瞭なんです、今國務大臣の仰せられたのは、緊急勅令が將來に效力を續けない場合の議論になると思ふ、消えてしまつたものでも承諾を求むるや否やと云ふ議論のことを仰せられて居るのであつて、本件には關係ない問題であると思ふ、本件は出して尚將來に效力があるので、是は矢張り掛けなければならないのは當然なんで、其の將來に效力を有たせると云ふことに付ての今度は御尋をするので、今迄申した所はどうでございませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=75
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076・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=76
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077・松村眞一郎
○松村眞一郎君 そこで此の緊急勅令を私は法律に書いて御出しになつた方が宜いと云ふ考を持つて居る、此處に承諾を求められたのは、私は今の二つの點であつて、第一點の方に付ては結構である、先づ此の委員會が決めた場合に、將來に對する效力の存續の點は、私は斯くの如き重大なるものは、緊急勅令として此處に存置せしめず、同じ内容を法律で此處に御提出になることが適當であると思ふ、其の理由は、先程來村上委員に國務大臣から色々答辯されて居るやうな意味の、私としては意見の相違と申しますか、さう云ふ意見の相違が出て來るのは、緊急勅令があるが故にさう云ふことが出て來るのである、是が法律であれば、村上さんもさう云ふことは仰しやらないと思ひます、ですから、是は寧ろ法律にしてしまつたら宜いのではないか、緊急勅令は此處に御提案になつて、同じ條文で、先程色々地方長官の命令で出す必要があるかも知れないと云ふやうなことは今日大體御決めになつて、それこそさう云ふ必要があれば緊急勅令を御出しになつても宜いのです、命令とある以上、勅令、閣令、省令と云ふことも書き、必要があれば罰則の限度も、今迄の御經驗で大體分つて居るのですから、それをちやんと明確に御書きになつて、正常立法として議會に提案されるのが是は當然である、緊急勅令と云ふ状態で長く續けながら、今度議會に色々なことを提案されて、それが總て緊急勅令に基いた法律が出ると云ふことになるのですから、元は緊急勅令であつて、各省から出て居る色々の澤山の參考書類になつて居るのを、今度は法律で出さうと云ふ、元は緊急勅令であつて、今度此の議會に出るのは法律であると云ふことは、是は變態であると思ひますから、寧ろ政府は、是は是で宜しうございますが、此の内容を法律として同時に御提案になつて、此の委員會で審議して私は宜いと思ひます、是は意見の相違か存じませぬが、さう云ふ御考なきや、法律として出して、變態立法を正常立法とすると云ふことが帝國議會を尊重する所以であると私は思ひます、帝國議會も開かれて居るのですから、開かれて居つて、若し之を存續すべき必要があるとするならば、正當な手續をして、法律で之を書いて、我々は法律として協贊したい、緊急勅令の承諾の意味に於て法律と同じ效力を茲に存續して居る、同じ状態に見て居ると云ふことは、帝國議會として是は宜しくないと思ひます、内容を若し參考とするならば、私は是は法律で直して行きたいと云ふ意見を持つて居ります、それと同時に、此の緊急勅令を今日迄實施された間に於て、緊急勅令ではもう少し變へて貰ひたいと云ふやうなことがあれば、此の際附加へて御提案になれば宜い譯でありますから、私はさう云ふやうに考へますが、同じものを内容とした場合に法律を出してはいかぬと云ふ意見があれば、それを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=77
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078・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の御意見の、法律を別に出すと云ふことがいけないと云ふ理由はないと思ひます、併しながら松村君も多分御承知と思ひますが、緊急勅令の承諾がありまして、將來に向つて效力が持續される場合に於きまして、それと全く同じ法律を出してわざわざ書いた實例は、私は不敏にして未だ之を知りませぬけれども、斯樣な方法を執る方が宜しいと云ふ理由も、私には必ずしも分り兼ねる、と云ふのは成る程法律は議會の協贊を經ます、併しながら此の緊急勅令も亦兩院の議決を經るのであります、其の點に於て、民意を尊重して、民意に依つて此の效力を決定されると云ふ點に於ては、實質的には何等違ひはない、緊急勅令が議會の承諾を得て、而して後に效力を持つ場合に、全然法律と一緒になります、又性質、要件も、名前こそ違へ、實際に於ては全然一緒であります、其の一緒のものを、更に別に出すと云ふことにしなければならぬと云ふ程の理由があるかどうか、此の點は必ずしも松村君の御意見に贊成し兼ねるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=78
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079・松村眞一郎
○松村眞一郎君 先例なしと云ふ御議論でありますが、先程入江次長は先例を既に申述べられた、朝鮮の制令に關する罰則の問題、緊急勅令を出して置いて後で法律にした前例は澤山あります、尚更に遡つて申しますと云ふと、花井卓藏君が此の議會に於て緊急勅令を存續せしめることは宜しくない、速かに正常立法にせよと言はれたことは、私共は役人をして居る若い時に度度貴族院で聽かされて居る、それですから、若し正常立法にすると云ふことが寧ろ議會の要望である、同じ效力であるならば、正しいことに變へられるのが當然であつて、一日も早く法律を出すと云ふことにせらるべきであると思ひますが、入江さん、どうですか、先程其の例として言はれましたが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=79
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080・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 私から御答へ致しますが、先程の後で法律が出たと云ふ實例は、衆議院提出の法律ださうであります、政府が出したのではないのです、政府が抑抑緊急勅令を出すのはどう云ふ趣意か、從來に於て出したものの事態の當否を判斷して貰ふのと共に、將來に向つての效力の持續をも希望して、其の意味で出すとすれば、出して置いて、又同じ法律を別に出すと云ふことは、是は矛盾した考へ方と私は思ふ、どうしてもそれはをかしな話で、議會で別に提案されれば、是は別な話として、どうも一方に於て此の緊急勅令は法律と同一の效力を有つて居つた、是からもそれを有たせて行きたいのですと云つて、議會に提出をして置いて、而して別に法律を出して、直ぐ廢めて下さいと云ふことを申すのは矛盾した思想のやうに思ふので、是は松村君の御考が一つの議論で、憲法第八條の改正に付ては一つの議論にならうと思ひます、即ち緊急勅令の事後承諾に依つて將來の效力の點は問はぬことにして、必ず別に同一内容の法律案を出すと云ふことに憲法でしろと云ふ御議論ならば、是は一つの御議論として伺ふが、今の現行の憲法の下に於て、一方に於ては將來に效力を有たせたいと云ふことを議會に表明すると共に、一方に於ては其の效力を無くして戴いて之に代りたいと云ふやうなことを提出すると云ふことは、私は矛盾であると思ふのである、是は私はどうも御同意し兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=80
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081・松村眞一郎
○松村眞一郎君 是は決して矛盾しない、法律に本法施行の日は何々、勅令は其の效力を失ふとやれば宜いのです、變則立法を正常立法に變へると云ふことが矛盾して居ると云ふことは、餘程をかしいと思ひます、入江さんの言はれたのは、どうですか、緊急勅令を法律にしたのでせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=81
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082・入江俊郎
○政府委員(入江俊郎君) 只今のは國務大臣の御答辯の通りでありまして、四十三年に緊急勅令に依りまして、勅令三百二十四號で、朝鮮に施行すべき法令に關する件と云ふので、制令の根據となる緊急勅令が出まして、それを次の議會に承諾に付したのであります、其の時に衆議院の方では、まあ只今の松村委員の御考だと思ひますが、事柄が重大であるから、是は法律で決めたが宜しいと云ふ見解から、衆議院提出の法律として出たのであります、そこで政府として結局同意、贊成をしたと云ふ結果でありまして、政府の方から緊急勅令の承諾を出しながら、同時にそれと同じ法律案を出した譯ではないのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=82
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083・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私も事例を調べて居りませぬから、先例の有る無しと云ふことで是は議論すべき問題でない、どつちが宜いか惡いかと云ふことを考へて、先例がなければ、若しある方が宜ければ宜いと云ふことにすれば宜いのでありますから、さう云ふことは彼此申しませぬ、併し沿革として今花井卓藏さんの質問がありますから、御調べになれば分ります、是は明瞭なことであります、貴族院の本會議でやられたのです、それ以上のことは私は申しませぬが、私は意見として、衆議院が言うたやうな工合に、是は法律にした方が宜いと私は思ふ、それだけ申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=83
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084・山田三良
○山田三良君 今日は討論ではございませぬから、意見を申すべきではないのですが、私は緊急勅令に付てちよつと一言私見を加へさせて戴きます、朝鮮の時には、制令と云ふことを制定することは非常に重大な、朝鮮に對する新憲法のやうなものでありますから、其の基礎を法律に依つて決めて置くと云ふことが尤もな考であつて、緊急勅令の形を衆議院に於て法律と認め、制令と云ふことになつたのだらうと思ひます、私は其の當時に於ては極めて適當であつたらうと思ひます、併し只今の緊急勅令は「ポツダム」宣言の受諾に伴つて發する命令で、是はどの位長く「ポツダム」宣言を實施になるか分りませぬが、一旦緊急勅令として決りましたことは、議會が總て之を承諾すると云ふことになりますれば、殊更に他の形式で再びやると云ふよりも、此の儘で此の臨時のものは置いて戴たことが最も適當ではないかと思ひます、意見の相違でありますが、松村君の御意見がありましたから、私は其の儘で行くと云ふことが特に此の場合最も宜しいと云ふことを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=84
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085・松村眞一郎
○松村眞一郎君 若し議會開會中に此の緊急勅令を發する必要があるやうな事態が生じた場合には、法律を出して居られると云ふことは是は當然なのです、是はもう議論のないことだと思ひます、議會開會中に此の事態が起つたならば、それであれば、今度議會に出た場合には、法律にちやんとやりまして、政府として法律案を出して緊急勅令を改められる方が宜いと思ひます、今議論をやつてはいかぬと云ふことですから、政府としての御答辯を求めれば質問になる譯です、御答辯を求めなければ意見になるのでありますが、私はどちらでも宜いと思ふのです、私はさう云ふ考を持つて居りますが、政府は如何ですかと云へば質問になるのですから、如何ですかと云ふことに致しませう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=85
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086・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 少くとも私見は述べたので、一方に於て將來に向つて效力を持續するやうにして戴きたいと言つて、之を出して置いて、他の一方に於て同時に殺して下さいと云ふことを言ふのは、私は矛盾だと思ふので、左樣な意味にしようと云ふならば、憲法の第八條を先づ改正して、緊急勅令の事後承諾で將來に效力を及すと云ふ方は取つてしまつて、必ず法律案を別に出すと云ふことにしないと、どうも筋が通らぬ、私としてはどうも同意をし兼ねますが、併し貴族院等でさう云ふ法律を御提案になると云ふことに對して、別に反對も出來ない次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=86
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087・松村眞一郎
○松村眞一郎君 意見の相違になりますが、矛盾でないと云ふことを先程私は申したのでありまして、私としては法律に出して、法律の附則に本勅令は本法施行の日より效力を失ふと云ふことは、何も實質上に於ては廢して新しく出すと云ふのではなく、效力はずつと續いて居る、唯形を變へた、衣を變へただけでありますから、衣を假の衣で續けるのでなく、本當の衣に着更へようと云ふことになるから、私は寧ろ其の方が宜しいと思ひます、矛盾して居るのぢやない、本當の着物に着更へる、今迄は假着をして居つたが、此の場合にどうして宜いかと云ふ時に、本當の着物に着更へる方が宜いと思ひます、是は意見の相違でありますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=87
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088・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 本日は此の程度に止めまして、明日は午後一時三十分より開會致します、本日は是にて散會致します、
午後三時三十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=88
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089・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 子爵 八條隆正君
副委員長 男爵 東郷安君
委員
公爵 二條弼基君
侯爵 西郷吉之助君
伯爵 黒田清君
子爵 土岐章君
子爵 松平親義君
山田三良君
松村眞一郎君
村上恭一君
大野緑一郎君
男爵 中川良長君
男爵 關義壽君
男爵 明石元長君
竹下豐次君
中島徳太郎君
松井貞太郎君
大谷五平君
國務大臣
國務大臣 松本烝治君
政府委員
法制局長官 楢橋渡君
法制局次長 入江俊郎君
外務省政務局長 田尻愛義君
内務省警保局長 小泉梧郎君
内務書記官 鈴木幹雄君
大藏政務次官 由谷義治君
大藏省金融局長 久保文藏君
司法省刑事局長 佐藤藤佐君
文部政務次官子爵 三島通陽君
文部省學校教育局長 田中耕太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00119451129&spkNum=89
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