1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○昭和二十年勅令第五百四十二號(承諾を求むる件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十年十一月三十日(金曜日)午後一時四十九分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=1
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002・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 是より開會致します、昨日に引續き質疑を繼續することに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=2
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003・松村眞一郎
○松村眞一郎君 昨日本文の方の「命令を以て所要の定を爲し」と云ふ命令と云ふ文字と五四三號勅令の命令とは勅令、閣令又は省令と云ふ文字の關係に付きまして村上委員は是は解釋であると云ふことを申されたのでありましたが、政府の方の御答辯は是は解釋ではないんであつて、本文の命令と云ふ範圍を是で縮小したものである、制限即ち縮小したものであると云ふ御主張であつたのであります、然らば其の縮小せざる範圍は何を想像して居るかと言へば是は當然都道府縣令であると云ふことになる譯であると云ふやうに御説明になつたやうに思ふのであります、私は都道府縣令で出すことがあるかも知れぬと云ふが如き餘りに漠然たる御答辯では實は滿足致さないのでありますが、實際問題として都道府縣で法律を要すべき事項を規定すると云ふやうな場合はどんな時にあるだらうと云ふ御想像であつたのでありますか分らぬ、さう云ふこともあるかも知れぬと云ふやうなさう云ふ漠然たることで緊急勅令を御出しになられると云ふことは如何かと思ふのであります、どう云ふことがあるかも知れぬ、何か具體的な澤山な事例もありませうから、其の中のこんなものはと云ふやうな何か御想像でも浮んで立法の際になさつたんでありますか、其の點を伺ひたいのであります、即ち都道府縣令で法律を動かす、私は未だ嘗て斯う云ふ例はないと思ふのであります、凡そ憲法を實施して以來都道府縣令で以て勅令を動かしたと云ふことは私は未だ嘗て聞いたことがないのであります、そんなこと迄想像されるのは何かそこに據り所がなければならぬと思ひますので、具體的な何かを頭に描いての御答辯であつたのか伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=3
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004・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の御質問に御答致します、此の緊急勅令の公布されました當時に於きましては、所謂地方總監府令と云ふやうなものもありました、此の地方總監府令と云ふやうなものが設けられ、又地方總監府と云ふやうな制度が設けられたことに付きましては、私も能くは承知致しませぬが、相當の大きな權限を與へて、或場合には交通其の他の關係上、或地方が孤立するやうなことがありましても、まあ何か或程度に於ては差支ないやうにしたいと云ふやうな考もあつたやうに承知して居ります、さう云ふ地方總監府令等は、矢張り若し交通其の他の關係が非常なことの爲に妨げられて、それに據らなければならぬと云ふことはあり得たやうに考へます、それから假りに地方總監府令がなくなつたことは申す迄もございませぬが、只今と雖も例へば北海道と本州との間の交通が何等かの事故に依つて絶えてしまふと云ふやうな場合に於きまして、絶對に此の必要がないと云ふことも言へないだらうと考へて居ります、當時出ました時は相當此の地方總監府令等のことも考慮されたことと考へますが、現在に於きましても之を緊急勅令、又は松村君の御説の如く別に法律を以て定むるとしまして、特に此の勅令、閣令又は省令に限つてしまふと云ふことにされても、又實際上の不便があり得ると思ひます、さう云ふことの濫用は致さぬやうにと云ふ趣意で、此の後の勅令第五四三號が出て居ります、此の程度が矢張り然るべきことかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=4
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005・松村眞一郎
○松村眞一郎君 只今の御懇切な御答辯で大體の御趣旨は分りました、只今大臣が申される通りに、もう既に總監府令と云ふものも事實上ないのでありますから、御想像された一つの點はなくなつた譯だと思ひます、其の次に、交通の不便のことを仰しやつたのでありますが、是は戰時中であればさう云ふことも想像しても宜いかと思ふのでありますけれども、是は終戰後であり、北海道と本土との間の交通の杜絶と云ふことは、戰爭中でもなかつたのでありますから、色々大分貨車航送に使ひまする、貨車を乘せる船、あれも大分やられましたけれども、殘つて居るものもあり、私共關係して居る馬事團體に於きましても、機帆船を以て函館と青森との間を矢張りやつて居つたのであります、そんなやうなことでありますから、戰時中のあの爆彈投下の下に於ても交通が杜絶すると云ふやうなことはなかつたのであります、今日に於て、其の間に交通が杜絶することあるべしとの想像は餘りにも綿密に過ぎたる想像でないかと私は思ひますので、どうも私は成るべく、斯の如き委任立法でありますから、委任立法の法律をです、地方令に迄委任すると云ふやうなことを想像した法律を出すと云ふことは、是は私は松本國務大臣と同じ意見で、緊急勅令を出すことは即ち法律を出すことと同じと考へて居りますから、さう云ふ法律を出すと云ふやうなことは、私は如何に聯合國最高司令官の命令が、「スピーディー」なことを、昨日御話の如く「スピーディー」のことを要求すると致しましても、さう云ふ場合でも、省令で御出しになるなり、閣令で御出しになるなり、或は勅令で御出しになるなりの便法等に、北海道と本土との間の、電話の線とか電信の線もありませうし、私は其の間の交通が、意思疏通が止まると云ふ程のことは、餘りに想像が御綿密に過ぎて居るのぢやないかと云ふ感が致すのであります、殆ど地方令に依るやうなことはないと云ふやうな御心持はありませぬでせうか、殆どなからう、想像する必要もない程のものだと云ふ程度の御感じはありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=5
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006・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 誠に御尤な御意見で、私が今斯う云ふものが出るとしましたならば、或は仰せられるやうなことにして置いて宜かつたのではなからうかと思ひますが、當時の事情は左樣なことも考慮されたのではなからうかと考へます、而してまあ一旦斯う云ふものが出ました以上、特に此の爲に之を改めると云ふことを爲されないでも、濫用の虞は萬是れなきこと即ち第五百四十三號の勅令を更に改めて地方令に迄及すやうな勅令を出されることは、是は先づ絶無に近いことと思ひます、其の點を申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=6
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007・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それで昨日の法理的の解釋としては、是は法律と同じことであるからと云ふことを國務大臣は仰せられたのであります、私も同じ所見を持つて居るのであります、さうなりますと云ふと、此の緊急勅令は、議會開會中と雖も、省令を以て法律を廢止することが出來ると云ふことに、法理上の議論を承ると、廢止し得るものであると私は思ひますが、其の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=7
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008・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 其の點に付きましては、確か昨日御答を既にしたかと思ひまするが、私の考では、法理上は勿論出來るのであるが、實際の必要は餘りないだらうし、政治的の意味から申せば、左樣なことをしないで濟む時にはしないことにすることが當然であると思ふと云ふことを申上げました、唯非常に「スピーディー」な指令が來ると云ふことがありまして、期限を附けられてしまつて、立法の暇もないと云ふやうな例外的の場合に於ては、已むを得ず此の委任をして居る所の緊急勅令に基いて委任命令を出さなければならぬことが起るかも知れぬ、是は併し稀有、絶無と言つて宜くはないか、又絶無であることを、希望は勿論致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=8
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009・松村眞一郎
○松村眞一郎君 さう致しますと云ふと、法理上から申しますと議會開會中と雖も省令を以て法律を廢止し得るものである、併しながら政治上の考から、さう云ふことは成るべくないことを希望する、加之先づ絶無なりと思ふのだと云ふことでありますから、先づ絶無なりと思はれるやうなことを含めた緊急勅令の效力存續、法律としての效力存續と云ふことは、私は穩かでないと思ひます、併しそれは山田先生から叱られますから、それは意見だと云ふことでありますが、さう云ふ意見を持つて居るのでありますが、併しながら之を法律に若し直すとすれば、さう云ふことは議會自身が自ら議會開會中と雖も、法律に代る命令を出すことを委任すると云ふが如き法律は、議會は決して制定しないだらうと思ひます、此の緊急勅令は法律と同じでありますから、緊急勅令の存續を、此の帝國議會が承認したなれば、此處に書いてある文字が法律と同じなのであります、勅令第五百四十二號とあるけれども、法律に書いて昭和二十年法律第何號とやるのとちつとも變らない、さう云ふ法律を議會を出された場合に、議會がさう云ふことを直ちに贊成し得るかどうかと云ふことは、私は非常に疑問だと思ひます、それは又、さう云ふことはあるべきことぢやないと思ふ、それでありますから、此の勅令の存續を承認すべきものではないと、意見としては思つて居りますが、是は質問中でありますから、討論の際にはさう言ふ主張をやるかどうか、是は別でありますが、それで私の意見は、若し是が法律であるならば要求に係る事項を實施する爲、議會閉會の場合に於て特に必要なる場合に於ては、斯う云ふことで私は宜からうと思ひますが、只今もさう云ふ文字を加へて、私は宜からうと思ふ、其の文字は憲法第八條の文句を其の儘書くのでありますから、憲法第八條は帝國議會閉會の場合に於てのみ認めて居ることなんです、閉會の場合に於てのみ法律に代る勅令を發することを認めて居るのに、議會閉會でない、開會の場合に於て法律に代るべき勅令を發すと云ふことは、是は憲法が認めて居ないことなのであります、認めて居ないことを緊急勅令で書いて、それを法律に書くと云ふことは、私は是は、或る意味に於ては憲法違反だらうと思ひます、帝國議會閉會の場合に於てのみ法律に代る命令を出すことを、勅令を出すことを認めて居るのに、帝國議會開會の場合に於て、法律に代るべき、斯くの如き緊急勅令を其の儘認めると云ふことは、私は是は出來ないことと思ひますが、そこで御伺ひ致しますことは、今申された議會に掛けても間に合はないことがあると云ふ程急ぐものがあるかどうかと云ふことです、それは我々が軍事費等の協贊を致します時に即日可決してしまふ、さう云ふ軍事費のやうなものは、今戰爭の最中でありますから、或は議會に掛ける暇もないこともあるかも知れぬ、それを矢張り法律の、憲法の命ずる所に依つて豫算である以上は議會に提案されて、それで議會は衆議院も貴族院も即決可決してしまふ、一日でやつてしまふ、それは樞密院に御諮問になり、色々される、緊急勅令を出すのよりも場合に依つては非常に速かだらうと思ふ、議會は又事急なる場合に於て即決することを開會中に於きまして誰も勞を厭はないと思ひますから、議會開會中に於て議會に諮ることの暇もなきと云ふが如き緊急の事態を、私は想像する必要はないと思ひますが、其の點に付て國務大臣はどう云ふやうに御考になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=9
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010・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の御意見は私として承服し兼ねる、只今の御意見に依ると議會開會中に法律の委任に依つても委任命令は出せぬと云ふやうなことを前提とされて居るやうに聽きました、果して然りとすれば左樣なことを私は伺つたことはない、又委任をして居る所の法律に於て議會開會中に於ては此の委任に依ることを得ずと云ふやうなことを定めて居る立法の先例は私不敏にして未だ知りませぬ、苟も法律が命令に委任しまする場合に於きましては、議會の開會中であると否とを問はず、其の委任に依つて命令が出せることにして居るやうに私は思ふのです、若し間違つて居れば正して戴きたい、果して然りとすれば緊急勅令で法律と同一の效力を有するものを定めます場合に於きまして、法律が命令に委任する場合と同じ委任のやり方をしますることが何が故に惡いのか、私にはちよつと諒解が附きませぬ、さうして只今も申しましたやうに實際のやり方としましては、此の委任に基くやうな法律に代るやうな委任命令を出すことは議會開會中は出來るだけ之を避けたいと云ふことを申して居るのです、是は如何なる政府でありましても政治上の考慮からさう云ふ方針を恐らくは執られることと思つて居ります、併し已むを得ぬ場合には即ち即時どうかしなければならぬ指令と云ふやうなものは今迄實はあつた、現にあつた、斯くの如きものを此の法律案を印刷しましたり、御裁可を得て議會に提出すると云ふやうなことは是は出來ないことも決して絶無とは申さぬ、それを出來ぬやうなことに立法を若しされるとすれば、是は却つて不穩當な立法であらうと考へる、而して又斯くの如き立法の先例は不敏にして私は知りませぬ、若し松村君にして議會開會中には此の委任に依る命令は出せぬと云ふやうなことを書いた法律でもあると云ふことを御承知ならば示して戴きたいので、さう云ふ先例でもあれば是は私甚だ至らなかつたことであるので、今申したことを取消さなければならぬかも知れませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=10
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011・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私は議會開會中には出せないと云ふやうな規定をすることを申して居ない、議會閉會の場合のみのことを書いて居る、何も出せないと云ふことを書くのぢやない、是れ々々の場合に於てやれると云ふことを書かうと云ふのです、私の申して居ることと國務大臣の申して居られることとは一致して居ない、そんな法律はありませぬ、議會開會中に委任命令は出されないと云ふやうな法律はない、さうぢやない、議會閉會中だけやらうと云ふことを書かうと云ふのです、それから委任の法律を作つた時に議會開會中でも命令で出來る場合もあるかと云ふと、それはあります、それは例へば國家總動員法の如きはそれであります、それ故に國家總動員法に對してなかなか議論がある、議會開會中でも命令で法律を動かすことが出來るやうな法であるが故にと云ふやうな概括的な委任の法律には皆反對するのです、要點はそこにあるのであつて、何も憲法はさう云ふことを餘り希望しては居ないと思ふ、さう云ふ議會がある際に命令で以て法律を動かし得るやうなことを想像…成るべくそんなことをせぬでも宜からうと思ふ、さう云ふ趣旨なんでありますから、それは私は松本さんの言はれることが……さう云ふことはありませぬ、そんな先例は松本さんも御存じない如く、私も存じませぬ、議會開會中は發せないと云ふやうなそんな法律はある譯ないのです、そんな法律はないのでありますから、私もそんな法律は知らないし、松本さんが知らないのも當然だと思ふ、今度出さむとする法律、私は法律論なんですから、法律を御出しになつたら宜からうと思ふ、其の法律の中には議會閉會の場合に於てと云ふことを書かうと云ふだけのことなんです、それですからあなたの今仰しやることとは全然違ふのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=11
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012・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 此處でさう云ふ論理的の議論を餘り致したくございませぬが、議會閉會中に限つて出せると云ふことと、議會開會中には出せないと云ふことは言葉の表現が違ふだけでありまして、内容に於ては全然同じだらうと私は思ふ、私の言葉が惡かつたならば、議會閉會中に限つて命令で斯う云ふことを定め得ると云ふやうな、左樣な委任をした立法例があるかと云ふことを伺つても宜しいのです、私は左樣な立法例はないと思ふ、又左樣なことをする必要は何もないと思ふ、即ち此の法律と同一の效力を有する緊急勅令が議會閉會中に限つて云々と書いて居らなかつたから、憲法の趣旨に反すると云ふやうなことは一向ないと思ひますので、是以上併し議論を致しましても、さう申してはなんでありますが、學術討論會のやうなことになりはせぬかと思ひますので、それで政府としては、政治上の考慮は斯う云ふ場合に勿論非常に十分致しまして、議會開會中で立法が出來るやうな時に殊更委任を使はうと云ふことは致さない考であると云ふことは既に屡屡述べた通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=12
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013・松村眞一郎
○松村眞一郎君 議會開會中には之を使ふことは成るべく避けると云ふことであれば、議會開會中は此の規定で出來るけれども、矢張り正則の手續を經て議會に出すことにする心持であると云ふことで宜しいのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=13
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014・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 其の通りであります、唯其の通りに行かぬやうな極めて急速、即ちもう即日とか明日からとか云ふやうなことが起りました時には、左樣には如何に考へても出來ないと云ふことがあり得るので、斯くの如き變態状態が我が國の政治に於て行はれるに到つたと云ふことに付ては實に遺憾に堪へませぬ、私は實に…是は私だけではないと思ふ、日本全國民は斯くの如き變態なことが行はれるに到つたことに付ては眞に遺憾の考を有つて居ると思ひまするが、併し事實は事實で致し方のないと云ふことは、御諒察を願はなければならないと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=14
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015・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それから書き方は、……今申された場合の御意見は、内容は同じでないかと云ふことを言はれましたが、私はそれは違ふと云ふことを申上げて置きます、それは何故かと云ふと、出來る場合を數へて居るのと、出來ない方から數へて居るのとは前提が違ふので、それは私は内容は結果に於て同じになりませうが、包容する範圍は、……併しながら其の意味は列擧主義なのでありますから、全然違ふと云ふことを申上げて置きまして、今申された如く此處は學術討論會でごさいませぬから、其の點は止めた方が宜からうと思ひます、其の點に於ける質問は此の程度で終ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=15
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016・黒田清
○伯爵黒田清君 昨日山田委員から、「ポツダム」宣言に關しまして、聯合國最高司令部からの命令が種々出て居りますが、それはどの程度迄出るものかと云ふやうな御質問がありまして、それと同時に、今後の國體維持と云ふことに關聯しての御質問がございましたが、私も此の點に付て山田委員と同じやうな疑問を實は懷いて居つたのでございます、私だけ、…我々だけでなく、一般廣く日本の國民が懷く疑と問申しますか、多少不安を加味した、さう云ふやうな氣持が廣くあることだらうと思ふのであります、昨日松本國務大臣より、種々御説明がございましたが、此の聯合國最高司令部から發せられます命令と云ふものは、實に次々と參りまして、政府の方では其の應答に非常に忙しく、御困りの場合も非常に多からうと存じますのでございますが、一般の國民は何となく、聯合國最高司令部に先手々々と打たれて、どうも日本の政府が後手ばかり引いて居るのではないかと云ふやうな考が相當にあるやうに思ふのであります、それで勿論終戰後、我々國民と致しましても、今日迄此の大東亞戰爭が何故敗れたかと云ふことは勿論でありますが、明治以後、畏多くも明治大帝のなされた此の一大偉業と云ふものを、今日の日本の此の状態に追込んでしまつたことはどう云ふことが原因であるかと云ふことは、國民總てが深く反省し、又考へて居ることだらうと思ふのでありますが、政府に於きまして之に付ての眞劍なる研究なり、檢討なりと云ふことはされて居らなかつたやうに私は思ふのでありますが、幸ひに最近に至りまして、戰爭研究會と云ふものが設置せられたのであります、是も私は非常に遲きに失するやうに考へますので、何だか「アメリカ」の調査團が非常に熱心にして居るが、それに刺戟されて出來たと云ふやうな私は感じも致すのでありますが、是は遲くとも出來た方が結構なのでございますが、此の調査會と云ふものは、唯單に大東亞戰爭に如何にして日本が敗けたかと云ふことの調査をなさつて、さうして其の調査の結果を國民に御知らせ下さるのでございませうか、此の調査會の研究の對象となる事項に付て御伺ひ致したいと思ふのでございますが、私は此の調査會の希望と致しましては、研究事項と云ふものを多少廣範圍にして戴きまして、唯大東亞戰爭に何故日本が敗けたかと云ふことのみを研究するのではなくして、私は大東亞戰爭に於て何故日本が敗けたかと云ふことを研究することは意味がないやうに思ふのであります、勝つ見込のない戰を始めたことが敗けたことになるのでありますが、是は幾ら研究しても大して効果はないと思ふのであります、如何にして大東亞戰爭になつたか、如何にして日本が今日の此の窮状に自ら陷るやうになつたかと云ふそこを勿論是も昔に遡りますれば、非常に昔に遡らなければなりませぬから、自ら範圍に限度があると思ひますが、さう云ふことを少し範圍を擴めて御研究下すつて、それを全部完成しないでも宜しいのでございますから、議事の發表を國民に御知らせ戴くやうな方法がないものでございせうか、若しもさう云ふやうな方法でも採られますれば、今日「アメリカ」其の他の聯合國で日本を見て居りまする眼は、如何にも日本の國民全體が好戰國民のやうに見て居ります、「ポツダム」宣言の主なる目的は、日本が再び戰爭と云ふものを始めないやうに、日本に軍國主義と云ふものが起らないやうにと云ふことが其の趣旨であらうと思ふのであります、將來日本が新しい國家を建設して參ります上に、日本は世界に對して再び此の戰さを起すと云ふやうなことは斷然しないであらう、又範圍を狹くして見ますれば、太平洋の浪を永久に荒立たせないであらうと云ふことが、世界に約束されなければならないことでありますが、過去の總ての日本の聯合國側で申しまする罪惡とでも申しませうか、軍閥の跋扈であるとか、財閥が是と提携をしたとか、種々の事を申されて、又それに對する手嚴しい命令が來て居るのでありますが、どの程度迄日本と致しましても、それを是認しても宜いか、日本としては、日本の立場として、今日過去の日本の總ての爲した事が、聯合國側の言ふ如く總て惡かつたのか、其の中に日本としても申し開くと云ふことではないのでありますが、斷然日本の立場として言はなければならぬことがある、勿論私はあると思ふのでありますが、さう云ふことも斯う云ふ調査會から生れて來ることと私は思ふのであります、で現在政府と致されましては、此の反動の時期に於て出來るだけ行き過ぎないやうにと云ふ御考慮が拂はれて居りますことは、私は能く分りますけれども、世の一般の風潮はそれを上越しまして、行き過ぎ過ぎとなつて居るやうであります、さうして此の事變前、或は戰爭中に日本が築きましたことを、根こそぎそれを覆してしまはなければならぬと云ふ風に考へて居るのでありますが、さう云ふことは私として決して當を得た處置とは思はないのであります、一般國民に對しましても、政府の考へて居られることを、もう少し能く知らせて戴きたいと思ひます、丁度此の調査會と云ふものが出來ましたから、此の調査會の調査の結果として發表して戴くやうな方法はないものでございませうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=16
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017・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今伯爵から御述になりましたことは、大體に於きまして、總て私は御同感であります、伯爵の御話に依りますると、如何にも政府の施設がのろのろして居して、常に先手を打たれて居るやうに見えるがと云ふ御話でございましたが、或程度に於きましては、確かにさう云ふ感を私も抱きます、併し如何にして斯くの如くになつたかと申しますれば、是は私の考では、向ふは戰さに勝つて、本國に於ては少くとも何等の傷痍をも受けない状態にある國である、英國を申せば、是は相當の傷痍を受けて居りませうが、米國に至つては本國は何等の傷痍を受けて居りませぬ、加之、平時よりは色々なことが進んだことが頗る多いのであります、之に反しまして、我が國は日支事變以來から申しても八年間戰さを續けて居りまして、是は實は身分不相應な苦しい戰さを續けて居つたと思はれる、而して最近に至つては、戰勢我に可ならず、爆撃を受けましたり、色々なことがありまして、殆ど國の總てが打ちのめされたと云ふやうな状態にあります、昨日も色色申述べましたが交通と言ひ、通信と言ひ、何から何迄總て半分の働きも出來ないやうな状態になつて居る、甚しきに至つては、戰爭中或は戰前に比べると十分の一の働きも出來ないと云ふやうになつて居るものが頗る多い、殘念なことでありますが、役所の仕事なども矢張り平常と違ひまして、非常に能率が上らない状態になつて居ります、そんなやうなことで、屡屡思ふやうに事が運ばい爲に、先手を打たれてしまふと云ふやうなことが多かつたと思ひます、是は實に殘念なことでありまして、是等の總ての戰爭に依つて生じたる缺陷は成るべく速かに之を補完しまして、もう少し働けるやうにしたいと云ふことの方向に向つて努力して居る次第であります、只今の御質問の主たる點は、大東亞戰爭調査會が一體どう云ふことをするか、若し是が、單に如何にして敗戰したかと云ふことを調べることにあれば、是は餘り意味がないやうであると云ふ御話でありましたが、此の大東亞戰爭調査會の目的として居りまする所は、單に左樣な點にあるのではないのでありまして、我が國が一體如何にして斯くの如き大東亞戰爭の如きものに入るやうになつたかと云ふことを、遡りまして遠因も之を探究しますし、近因は勿論之を探究する、即ち如何にして大東亞戰爭が起つたかと云ふことを遡りまして……何處迄遡るかと申せば、ずつと先迄遡るだらうと思ひますが、自ら調査のやり方には繁簡の別はあつて、非常な前の所のことは、それ程細かい所には入るまいと思ひますが、要するに歴史的に見まして、原因となつたと云ふことに付ては、相當前に遡つて研究したい、即ち我が國の情勢が戰さをするやうなことに向つて來た、所謂軍國主義と云ふやうなことが擡頭して參つた、どう云ふ原因でどうしてなつて來たかと云ふことは、是は勿論十分に調査研究しなければなるまいと思ひます、再び斯くの如き誤りを繰返さざるが爲には、其の原因を十分に探究しまして、其の結果を見まして、再び斯くの如きことが出來ぬやうにと云ふことの制度なり、何なりを決めなければならぬ、必要があらば憲法に迄及んで此のことは解決を圖る方策を講じなければなるまいと云ふやうに考へて居るのであります、そこで只今も仰せのやうに、動もすれば我が帝國は非常な好戰國である、實に危險極まる國であると云ふやうに誤解されて居ります、是は私は明瞭なる誤解だと思つて居ります、一體我が國は昔から左樣な攻撃的の戰爭と云ふことを幾度やつたか、全くやらないと云ふことは勿論申せませぬが、例へば豐太閤の朝鮮征伐とか云ふやうなこともありました、其の後明治に至つて多少の日清、日露等の戰役もありましたが、其の中に眞に或は不必要なる挑戰的の攻撃をしたと云ふことが言へるものありとすれば、それは寧ろ少かつたのではなからうか、或は豐太閤の朝鮮の役とか、或は今囘の支那事變の中途から先のこととか、大東亞戰爭と云ふやうな所に、まあ私の見る所では、しない方が宜い攻撃的のことをしたのではなからうかと思ふ點があるやうに考へて居ります、其の他に於ては是は寧ろ我が國の自衞の爲に已むを得ずしてやつたことである、而して其の囘數は極めて少い、之を外國の歴史と比較しまして、我が國のやうな國は寧ろ私は平和愛好國であると言つても、敢て妨げのないものではないかと考へる位であります、又我が國民の性格は、昔から戰を澤山して居りませぬから、決してそんなに戰を好むことはない、勿論戰國時代其の他に於て、内國で多少の戰は勿論ありましたけれども、之を外國、殊に支那などの歴史などから較べますれば、此の戰と云ふのは、何と申しますか、極めて小仕掛な「スポーツ」のやうな戰もあるので、外國に於て行はれたる殘虐極まるやうな戰爭は、日本では私は殆ど極めて例外の場合の外なかつたやうに、私は日本の國史を見て居るのであります、斯くの如き點に付きまして外國人の認識が、どうも我々の考へて居る所と一致して居らぬと云ふことは、多々あるやうに思ふのであります、是等の點は此の大東亞戰爭調査會に於て、十分に此の戰爭の原因なり、經過なり、其の他に付て實情の調査を致しました結果、出て參れば是は一つの所謂申開き、伯爵の言はれた申開きをするのに好い材料が出來るのではなからうか、私は成るべく此の調査が出來るだけ周到に、而も迅速に出來まして、言ふべきことあらば勿論言ふ、何でも日本が惡いと云ふことで私はないと思ふ、總ての事情、戰爭の原因から經過に付きまして、明細に亙りました所謂申開きをすると云ふことに非常に役に立つのではなからうかと云ふことを考へて居ります、此の大東亞戰爭調査會の目的も、又私の考へて居るやうな所に主要なる點があると私は考へて居ります、尚此の點に付きましては今迄閣議等で精細な討議をしたことではございませぬ、私の申した所が洩れて居るやうな點もあらうと思ひまするが、私の申して居るやうな點の、此の調査會を設くるに至つた一つの理由であると云ふことには御認め下さつて間違ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=17
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018・黒田清
○伯爵黒田清君 只今松本國務大臣より御丁寧な御答辯を戴きまして能く分りました、私は如何にも今の政府の事務がのろいと言つて之を咎めるやうな意味で申上げたのではないのでございまして、私も多少さう云ふ事務を執りますることに關係を致して居りますが、自分の所でもなかなか事務が捗らないので非常に困つて居るのでありますが、此の根本の問題、例へば今の何故に日本が斯う云ふ戰を始めるやうになつたかと云ふことは、終戰後直ぐに日本の政府が或機關なり、何なりを作つて考へるべきではなかつたか、其の點が私は少し遲きに失する、併し今日出來て私は非常に宜かつたと思ふと云ふことを申上げたのであります、それからもう一つ伺ひたいことは、只今仰しやいました大東亞戰爭には勿論支那事變と云ふものも含んで居るのでございますか、其の點もちよつと伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=18
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019・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 此の大東亞戰爭調査會と云ふ名前だけから申しますと、大東亞戰爭と云ふのは昭和十六年十二月八日の宣戰布告に依つてまあ生じたかのやうに見えるのでありまするが、併し少くとも私の見る所に依りますれば、支那事變と大東亞戰爭とは是は全く一體を成して居るので分割は出來ない、何となれば大東亞戰爭に於ての相手國たる支那に對しては、既に支那事變以來戰爭を繼續して一日も止めて居りませぬ、然らば其の支那事變が一體何であるか、名前は支那事變、確か一番最初は北支事變と申しましたか、そんなやうなことになつて居りまするが、少くとも支那事變の或段階以後に於きましては、眞に是は國家間に於て戰爭があつたと私は思ふので、名前の事變たると否とを問はず、是は戰爭であつて、此の戰爭はつい此の八月十五日迄續けられて居つたと思ひます、依つて大東亞戰爭調査會と申しましても、其の調査の範圍は勿論此の支那事變に遡るべきことは當然であらう、而して其の原因を申せば、是は滿洲事變にも行くでありませうし、其の點へ以前に於ける我が國に於ける軍閥の跋扈とか言はれて居ります所謂軍國主義の擡頭と云ふやうなことに遡るべきことは、それは當然であらうとさう考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=19
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020・黒田清
○伯爵黒田清君 只今の御答辯で能く分りました、最後に私は一つ希望として述べさせて戴きたいのでありますが、是は只今の日本の状態と申しますものは、歴史あつて以來空前絶後の大轉換と申しますか、大變革の時期であると思ひます、昨日山田委員から國體の維持と云ふことに付て御話がございましたが、私は日本の持ちます傳統と云ふものを此の際十分御考へ下すつて、此の聯合國側からの命令にありましても、傳統を毀すと云ふやうなことに付ては十分に御説明あつて、是だけは維持をして戴きたいと思ふのであります、明治以後、明治の初年に於きまして、日本の制度が非常に大變革を致しました際に、「アメリカ」から數名、數多くの學者其の他が參りまして、日本の制度を改革する上に於ての指導、協力をして呉れました、例へば「モーレー」、「モース」「フェネロサ」、「メーソン」其の他の「アメリカ」人が、總て急激な變化を遂げても、日本の傳統と云ふものを維持せよと云ふことを教へて呉れたのであります、然るに今日は其の聯合國側の指令はそれ程の情愛を以て日本に出されて居るとは私は思はないのであります、非常に峻嚴なものであると思ふのであります、處が日本人其のものも單なる變革を喜んで、日本の傳統其のものに付ての考慮は非常に拂はれることが少いやうに私は見受けますので、此の邊出來るだけ政府に於かれまして、考慮せられ、日本の持つ傳統を毀さないと云ふことに十分に御注意を願ひたいと思ひます、是で私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=20
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021・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今御述になりましたことは全然私も同感でありますが、各人が各人の人格を持ち、要望を持つて居ると同じやうに、各國は又各國の國格を持つて居るのでありまして、之を同じやうにしようと云ふことは出來ない相談であります、髪の毛を染めたり白粉を着ければ西洋人のやうに見えるかも知れませぬが、生地にすれば矢張りさうはならぬので、日本の國を何でも「アメリカ」とか、「イギリス」と同じやうしようと云ふことの出來ないことは是は恐らくは米國の識者は之を知つて居るだらうと思ふ、唯此の頃色々出ます指令其の他に付て見ましても、時にどうであらうかと云ふことを感ずるものがありまするのは、是は遺憾ながら米國の、殊に米本國に於ける日本に對する感情を反映して居るのではなからうか、只今仰せられましたやうに明治初年に於きましては、米國は我が國に對して後進國として之を援助して行くと云ふことで非常な好い感じで深切に誘導して呉れたのでありまするが、今日に於きましては、米國に對して違法なる攻撃を加へて、而も戰爭中に米國俘虜等に對して非常な虐待をした、是等も誤解に基くものが相當多いと思ひまするが、さう云ふやうな考が米國に於ては強く擴まつて居るやうに見受けられます、從つて日本に對する感情は決して良好なものとは思へませぬ、其の結果として必ずしも明治初年に於けるやうな米國の仕向方を期待することの出來ない状態にあることは是は實に遺憾でありまするが、併し是は我が國の實情が先程申しましたやうに、能く分りまして、此の申開きが事實に基いて極めて公正に爲されるに至りましたならば、決して斯う云ふ米國の一時的の感情の疎隔は解けないものであるとは私は思ひませぬので必ずや釋然として解けて參りまして、米國其の他聯合國と我が國との間の關係は必ずや極めて良好なる状態に戻るべきものである、又我々としては努力をして之を戻すやうにしなければならぬ、而して之に依つてのみ我が國の平和、延いて世界平和が保ち得るものと考へて居ります、左樣な方向に向ふことになることを希望致して居るのでありまして、其の意味に於きましても、此の調査會の如きは相當の公益があるものと考へて居るのであります、尚先程申上げましたことで、ちよつと申上げて置かなければならぬことは、大東亞戰爭と云ふものは事實に於て支那事變と連續して、是は一體になつて居ると考へまするが、現に米國などから色々申して居りまする此の戰爭犯罪と云ふやうなことに付きましては、專ら大東亞戰爭と云ふ狹い意味の方に重きを置いて居るかの如く見えまするので、此の點を我が國として強ひて非常に前迄遡るやうにしたいと云ふやうな考は絶對にないのであります、若しさう云ふ點に於きまして、私の申したことが誤解を招くやうなことがありとしますれば、遺憾でありますから、左樣な趣意ではなかつたと云ふことを此處で申上げて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=21
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022・村上恭一
○村上恭一君 只今の黒田委員の御質問に直接關係しまする一點に付て御伺ひしたいのでございます、それは大東亞戰爭と云ふ名稱の意義に付きまして、松本國務大臣の御答辯になりました所は、私が豫て解して居りまする所とは違ひまするので、此の機會に御尋ねしまして、私の蒙を晴らして戴きたいと思ふのであります、昭和十六年十二月八日に米英二國に對して宣戰を布告されまして、戰爭が開始されました、其の後で特に法律を發せられまして、將來支那事變をも大東亞戰爭と稱すると云ふ趣旨を規定せられたのでありますが、從つて此の法律の施行以後に於ては最早支那事變と稱するものはなく、それは當然必然大東亞戰爭の中に包含する、大東亞戰爭は米英二國に對する戰爭だけではなく、支那の舊政權に對する戰爭も含むと云ふことになつたと私は思ひますので、そこでちよつと餘談に移りますが、世間では一般に昭和十六年十二月八日を以て大東亞戰爭の勃發した日と斯う見ます、併し私は是は間違ひであると思ひます、大東亞戰爭は右申しました法律の規定の結果、嘗ての支那事變をも含むのでありますから、大東亞戰爭が開始したのは決して昭和十六年十二月八日ではなく、昭和十二年九月何日でありましたか、其の日であるべきものと斯う思ひます、斯樣な解釋が私の考であります、從つて今日大東亞戰爭と稱するもの、又特に先刻の質疑應答に採上げられました大東亞戰爭調査會の目的とする所の大東亞戰爭、それはもう當然必然支那事變を含むもの、斯う考へまするが、此の考は間違ひでありませうか、御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=22
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023・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今御述になつた御考は昭和十七年法律第九號に依りますると、左樣に解する方が正しいのではなからうかと思ひます、只今注意を受けまして之を見ますると、斯う云ふやうに書いでございます、「朕樞密顧問の諮詢を經て帝國議會の協贊を經たる大東亞戰爭の呼稱を定めたるに伴ふ各法律中改正法律を裁可し茲に之を公布せしむ」、「勅令を以て別段の定を爲したる場合を除くの外各法律中「支那事變」を「大東亞戰爭」に改む」と云ふやうにありますので、此の法律の意味に於きましては、支那事變と法令中に書いてありますものが當然大東亞戰爭と昭和十七年二月十八日の法律に依りましてなりました、左樣な意味から申せば法律中の支那事變と云ふのが矢張り大東亞戰爭と云ふことに改められて居ります、併し是は此の法律の適用に付ての考へ方でありまして、法律上大東亞戰爭と云ふものの定義と云ふものは是は必ずしも本法律で決めたものとは思はれませぬ、是は此の法律の適用に付て「支那事變」と各法律中にあるものを「大東亞戰爭」に遡つて改めると云ふことを書いてある、其の結果に於て前に遡つて參りますけれども、併しながら之を書いて居ること自身から考へても、支那事變と大東亞戰爭とは違ふので、前には支那事變である、それが大東亞戰爭になつた、而して法律中に「支那事變」とあつたのは「大東亞戰爭」に改めると云ふことにして居ります、斯くの如き法律を定めた趣旨から考へましても、或意味に於きましては大東亞戰爭と支那事變とは矢張り區別して考へるべきものである、此の法律の結果犧牲的に支那事變を大東亞戰爭に改めた結果、前の支那事變に關して出來て居つた特別の法律が大東亞戰爭に及んで來て居ると云ふことになると思ひます、それで此の法律及び之に伴ひまして、勅令が出て居るやうでありますが、是等に依つて此の法律、勅令の適用の範圍に於きましては、此の支那事變と大東亞戰爭とは一體を成して區分すべからざる状態になつたことはあると思ひます、其の意味に於きまして村上君の仰しやることは正當と思ひます、併しながら大東亞戰爭と支那事變とは矢張り觀念に於て區劃があるからこそ此の法律に依つて及ぶことにしてあるので、矢張り別の時期があると考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=23
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024・村上恭一
○村上恭一君 私は斯う思ひます、其の法律の精神は、法律、命令其の他公用語の上では一切支那事變と云ふ言葉を排斥する、今後は此の戰爭一本、總てを大東亞戰爭と稱する、斯う云ふことにあるのであらうと斯う思ひますが、世間通用の言葉は暫く別としましても、少くとも政府が使用する公用語に於きましては、大東亞戰爭一本、それは必ず總ての戰爭を包含するもの、さう云ふことに將來定める、是が此の法律の精神だと思ひますが、只今松本國務大臣の御説に依りますと、どうも私は腑に落ち兼ねますが、併し是れ以上は雙方意見の相違を繰返すに過ぎませぬ、そして又本案の緊急勅令から申しますればちよつと横に入つた事柄でありまするから、もう是で宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=24
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025・山田三良
○山田三良君 一般的のことに付てまだちよつと伺ひたいことがございますが、それは聯合軍司令部から色々な要求が出て來ました時には、其の前にさう云ふ要求に付ては、政府に於ても豫め交渉、交渉と云ふ言葉は米國で非常に避けるさうです、總ては「ネゴシェーション」ではない、對等ではない、兩國の間は服從と命令があつて交渉はない、交渉と云ふことは避けるさうですが、併し事實に於て或命令を司令部で發する時には、米國司令部の方で内談と言つて宜いか、説明と言つて宜いか、さう云ふことをせられて居ると承つて居ります、さうあるべきものであると思ひます、其の點に付て先づ伺ひたいのでありますが、それは「アメリカ」の方でも良い考でやるので、日本に對し何も意地惡くすると云ふ考はなくて、向ふの考で是は當然だらうと思ふことが、此方の方では此方の制度總てが違つて居ります爲に、さうでないと云ふことが出て、そこに意見のうまくぴつたり合はない點が起る、是が總ての點に於て非常に今色々な心配の原因になつたり、或は困難を餘計に感ずると云ふことになるだらうと思ひますが、一例を以て申しますと、幣原總理大臣が「マッカーサー」に初めて御會ひになつた時の話を、其の當時ちよつと新聞に出て居りましたが、「マッカーサー」の方では婦人に參政權を與へることが必要であり、其の爲に日本の憲法を改正せられることが必要である、斯う言つた所が、幣原總理大臣は、いや婦人に參政權を與へることがあつても、それは日本の憲法の改正を俟たずして出來ますと斯う言つた時に、「マッカーサー」は驚いて、そんなことが出來ますかと言つて居つたと云ふ、私は此の話を新聞で見て居りまして、總てが此の通りだと思ふ、それは何かと申しますと「アメリカ」の方の憲法は非常な多數なこと、何事も憲法に書いてありますから、選擧權の擴張、婦人參政權のやうなことは勿論向ふでは憲法に書いてある、だから婦人參政權を與へる時には憲法を改正しなければ出來ないだらうと云ふのは固より當然である、幣原總理大臣はさう云ふことは憲法の改正を俟たずして出來ると斯う其の時仰しやつたから驚いたのだが、勿論選擧法の改正だけで宜しいので、憲法の改正は要らない、併し其の時に幣原總理大臣が若しも、日本の憲法は「アメリカ」や他の國の憲法と違つて、選擧權の擴張、選擧權の資格と云ふやうなことは日本の憲法には書いて居りませぬから、そこで憲法附屬の議院法の改正で出來ますと仰しやつたならば、彼は釋然として、それならそれで結構であると斯う言つただらうと思ふ、併し此方は此方の憲法の立場から憲法の改正を俟たずして出來ますと云ふので、向ふの人は驚いて居る、憲法の改正を俟たずして選擧權の擴張が出來ると云ふのは、向ふでは世界に類のないやうに思つて居る、斯う云ふことが双方の間で意思が諒解され疏通されれば、さうでありますかと云ふことになる、私が此の事を申しましたのは、是から宗教の自由だとか教育とか、さう云ふことに付きまして、色々な要求が出て來る、そこで非常にむづかしい問題が起つて來ますが、神、神社と云ふことは向ふではちよつと分らぬ、是は宗教であるかないかと云ふことも向ふでは分りませぬ、そこで神社に關することは、從來日本の政府でも御承知のやうに、國家の政治の一部門としての神社と言ふ、神宮の如き、それから又神道と云ふことで宗教の神道もある、金光教とか天理教とか皆さうでありまして、神を言つて居りますが、あれは宗教である、宗教である神道と、それと宗教でない神宮のやうなもの、神と言ふ、それを混淆して居りますから、宗教の自由、宗教と同じやうにと言はれると、神社、神祇院も廢止しなければならぬやうに解釋することは、是は餘程日本の政府の説明が足らなかつたからと思ふものでありまして、それは日本の國體と相俟つて行くべきものでありまして、それを離れて、そこを切離して宗教と同じやうにしろと云ふことはない筈であります、若しもそれが宗教であるならば、宗教は憲法の規定に依つて信仰は自由でありまして、神宮を廢するか、廢止しないかは、國民の自由であると云ふことになる、さう云ふ立場ではないのでありまして、神宮に對する國民の敬神の念と云ふものは、憲法上の宗教の自由ではないのであります、當り前の神道の宗教であれば勝手であります、金光教を信じやうが、何を信じやうが、我々はちつとも構はないのであります、それと混淆して話をすると米國人には話が通じないことになる、さう云ふ點に付て政府は餘程努力しないと飛んでもない結果になると私は虞れるのであります、又佛教、「ヤソ」教に對してもさうで、文部省では宗教團體法は廢止すると云ふやうなことを言つて居られますが、それは「マッカーサー」からの要求で廢するさうでありますが、果して廢止するかどうか、まだ廢止法の中に掲げてないから、今日は問題になつて參りませぬが、之に付ても宗教團體法と云ふものは「ヤソ」教を抑壓する爲の法律である、斯う向ふは取つて居る、是は其の成立の歴史に於てもさう云ふ點があります、宗教團體法を拵へた時、無理に「ヤソ」教の各派をして、統合せしめて一つの團體にして居る、斯う云ふことをして居るから、一方から見れば「ヤソ」教の抑壓、或は不當な壓迫を加へると感じて居りますから、「ヤソ」教徒は擧つて其の點に付ては、宗教團體法には不滿を持つて居ります、又私も其の點不滿に思ふ點がありますが、併し此の宗教團體法があれば、各各宗派に依つて團體を拵へて、國家は之を保護して居ります、法人として租税を免除するとか、又團體に對する統制を取る爲の權力を與へると云ふやうなことを宗教團體法に依つて認めて居ります、是等を一遍に廢止してしまうと「ヤソ」教の方の教會に於ても困ることになる、又佛教に於ても、神道に於ても一旦成立したる宗教團體法を、今司令部の要求に依つて廢止してしまうと、之に代はる何ものかが必要になつて來る、斯う云ふ點を能く理解させれば、「ヤソ」教徒に對する壓迫のやうになつて居る點だけを改めて、彼等の安心と、滿足を得るやうにすれば、「ヤソ」教徒自身に於ても不便な點もあるから、斯う云ふ點に付ては雙方の意思が疏通するやうに、能く我が國の制度と、我が國の實際の有樣を了解せしめて、然る後にどうしても尚やつて呉れと云ふならば別の問題でありますが、併し適切な説明を與へて、彼等の理解を得るならば、さうか、それなら宜しいと云ふことになるに決まつて居ると思ふのであります、是は政府だけの仕事でなく、國民全體も米國人の理解を得るやうに努力することが必要と思ふのでありますが、併し其の衝に當る政府當局者は此の點に付きまして非常に能く準備せられて、さうして實際の有樣を適切に彼等に理解するやうに御話になれば、私はそれで理解が出來るのだらうと思ひます、ちよつと一例でありますが、日本に今進駐して來て居ります有力なる將校の話に、日本人が「萬歳」と言つて死ぬのは是は矛盾ではないか、死ぬ時に萬歳と言ふのはあれはどうしても理解出來ない、斯う言つてそこに説明を求めた人がありましたが、それに答へた人がいやそれは一應御尤で、死ぬ人間が萬歳と云ふことは甚だあなたの方で理解が出來ないのは御尤である、併しながら我々の死ぬと云ふことは、有形な限りある命が終ると思ふから死ぬ時に萬歳と云ふので、是から此の體を棄てて今度は精神的に萬世に生きると云ふ意味に於て、日本人は死に際して萬歳を唱へて安心して死ぬのである、茲に初めて永久の生命と云ふものがあるのであると云ふことを言ひましたら、いやさうであるか、始めて解つたと言つて向ふの有力な將校の人が非常に感心して居つたと云ふことであります、總てのことがさう云ふ相違がありますから、日本人が努力して日本の實際の有樣を、總てのことを彼等に了解して貰ふやうにしたならば、色々な此方で無理だと思ふやうな要求は段々向ふの方でも解つて、それでは無理であると云ふことになるのだらうと思ひます、先達ても餘計な話でありますが、日本に來て居る軍人が、色々な日本人に付て一日米が何合あれば宜いかと、勞働者、官吏等の色々な職業方面の個人個人に對して訊いて居る、さうして大體に於て、一日三合なくちやどうしてもいけないと云ふことはもう米國の軍隊の方で日本人の生活は維持出來ないと云ふことの定論になつて居る、ちやんと向ふの方は理解して居ります、だから其の方に向ふでも米の補給を考へて居ります、日本の實情、眞相と云ふものを彼等がはつきりと把握することが出來ますれば、非常に態度が違つて來る、私は今の米國人は明治初年以來の八十年前の過去の米國の態度と違つて居る、さうあるべきであると思ひます、併し同じ此の敵でありましても米國人の全體としては、私は日本に對して非常な敵意を有つて何處迄も辛辣に故意に殘酷に取扱ふと云ふ態度ぢやないと私は期待し、又さう思つて居る、併し彼等の恐れる所は日本の軍國主義であります、軍國主義、是は徹底的に破壞しなければ、もう一遍そんなことがあつては大變だ、「ドイツ」は二十五年にして「ヒットラー」のやうな者が出て、又元のやうにした、此の強い日本人が再び奮起すると云ふことがあつては大變だ、此の際に徹底的にやつつけてしまはなければならないと云ふ意味に於て、軍國主義をどうしても何處迄も打破したいと云ふ意味に於て有らゆる日本人から見れば實に心外であり、殘酷であり迚も耐へられないと云ふやうな色々な要求を求めて來て居ります、併し彼等は段々と日本の軍國主義はさう驚くことはないと云ふことを理解して來た、其の證據に日本に上陸する時には皆特攻隊、斬込隊、で夜になると斬込んで來ると思つて居つたが、今日では日本の斬込隊は戰場だけであつて、さう云ふ人間は居らぬと云ふことが分つて、武器を振廻すことは減つて來て居る、日本に來たら何百萬の武裝した軍人が居つて、之が俄かに武裝を解けと言つても許す筈がないと、直ちに砲撃の準備をして上陸して居る、然るに一兵卒と雖も反抗する者はない、是は天皇陛下の有難い御命令でさうなつたと云ふことを聞くに連れて、皇室の威嚴に驚いて居る、驚くと同時に皇室を中心とする日本人が將來亦さうなる、何百萬の軍隊が武裝を平氣で解くと云ふやうな國民であるから、又其の 陛下の命に依つて生命を捨てて行く何百萬人が出て來るものであらうと云ふことを非常に心配して居ると聞いて居ります、此の意味に於きまして、矢張り殘念でありますけれども、彼等は日本の皇室、天皇制に對しても出來るだけ弱くしたいと云ふことを露骨に現して來て居ると、各方面にさう思はれる、併しながら是も段々と眞相を理解して行くと云ふことになつて來ますれば、さうでないと思ひますから、此處は日本國民が「アメリカ」に對して、官民共に日本の眞相を理解せしめるならば、彼等の誤解を解く、今國務大臣が日本の平和の國民である、好戰國でないと云ふことを「アメリカ」は誤解して居ると、其の通りである、それは最も根本的の誤解でありますが、軍國主義に對する嫌惡と、そして其の誤解と、其の二つが相結ばつて、今から段々ともつともつと酷い要求が出て來るかも分らぬ、それを避けるか、避けないかと云ふことは、是は日本の官民一體が、其の米國人の誤解を解き、眞相を理解せしむると云ふことに努力することが第一の必要條件と思ひますから、私はさう云ふことを政府自らがなさる外に、色々の民間の力も利用せられまして、例へば「アメリカ」の事情に通じて居る日本人は隨分澤山居りますから、さう云ふ者も動員せられまして、有らゆる方面に、官民共に米國人の誤解を解くと云ふことに大いに努力せられむことを、此の際御願をして置きたいと思ひます、それだけを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=25
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026・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の山田博士の仰しやつたことの要旨は、要するに近頃聯合國最高司令官の申して參ることが、相當或場合には我が國に適切でないと云ふやうな感じを受けることが多いのは、是は誤解に基くものであつて、恐らくは我が國の眞相、實情を明かにされて、能く分れば左樣なことを無理に押附けると云ふことはなからう、仍て官民共に努力して誤解を解く、我が國の眞相を彼に知らしむるやうに努めることが必要であらうと云ふ御趣旨と考へます、此の御趣旨はもう全く同感であります、私の考へまする所に依りますると、其の通りでありまして、若し適切に我が國の實情を理解されたならば、必ずや其の司令部の命ずるものも變つて來ることが多からうと思ふ、即ち聯合國最高司令官の言つて居られることにして、我々から見まして不適切だと考へることがありとしますならば、それは決して惡意に依つてさう云ふことがあるのではない、是は全く善意であつて、事情が分らぬ、或は不十分である、事情の理解が不十分であると云ふやうなことで、左樣なことが出來て來る、恰も子を愛する所の父が子に對して或場合に色々訓戒したり、命令するとか、必ずしも實情に適しない、是は親子の間の年齡も違ひ、思想も違ふ、總てのことが違ふ、其の違がちよつと分り兼ねて居つて、自分を以て他を律すると云ふやうなことがある爲に、さう云ふ親と子の間の關係が、必ずしもすらつと行かぬと云ふやうなことがあります、是は決して憎いのではない、極めて善意でさう云ふことが起る、私は先程來申した聯合國最高司令部の欲して居る所と、我が國が之を見て、動もすれば適切ならずと云ふやうに感ずることもあると云ふことを申しましたのは、其の原因は總て是れ善意の誤解、若し誤解と云へるならば善意の誤解から生ずることが多いのではないか、殆ど全部さうであると思ひます、私共聯合國最高司令官の其の點に於ける誠意を疑つたことは嘗てありませぬ、寧ろ聯合國最高司令官は我が國に對して非常に好意を持つて、さうして我が國の爲になるやうに、又我が國をして彼の本國に於ける誤解を成るべく解くやうな方向に向つて進まして行きたいと云ふやうな考で、我が國に對處せらるることが非常に多いのだと思ひます、先程來私は米國に於て我が國に對する米國民の感情は、明治初年などと違つて非常な辛辣なもののあると云ふことを申しましたのは、是は事實であるので、米國民の相當大きな範圍に於て我が國に對して、是は矢張り誤解から出るのでありますが、非常に危險な人間である、非常な殘虐な人間であると云ふ誤解から、我が國に對して非常な憎惡の念を持つて居るものが頗る多い、併しながら米國民の全部が左樣であると云ふやうなことは勿論考へませぬ、のみならず識者は其の點に付て大體能く分つて居ることと思ふ、願はくば山田博士の仰せらるるやうに官民協同して我が國の眞相實状を彼に明かに示しまして、以て斯の如き誤解を解きまして、さうして只今迄申して居つたやうな若し適切ならざるやうな司令部の指令其の他が生ずると云ふやうなことの將來に起らぬやうに努めて參りたい、此の點は非常に切望して居る所であります、又單に私だけでなく、政府の閣僚全部はさう云ふ意味に於て常に最高司令部の側と連絡を圖つて、意志の疏通を圖りまして、誤解のないやうに努めて居ることと見受けて居るのでございます、其のことを申しまして山田博士が仰せらるるやうな考で進んで居ると云ふことを申上げたい、唯、今御設例になつた一、二の點に付きましては、是は必ずしも山田博士の仰せられたことと全然同見であると云ふことを申上げ兼ねることもございますが、此のことは特に申述べませぬ、御趣旨に於ては仰せらるる通りである、どうかして善意の誤解がありとすれば、其の誤解を解いて、聯合國と我が國との間の關係が速かに圓滿になつて、さうして進駐軍などと云ふものの必要がないやうな状態に早く一つなつて貰ひたい、それには我が國としては大いに努力をする必要があらうと云ふことを痛感して居るのでありまして、此のことを述べます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=26
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027・竹下豐次
○竹下豐次君 私戰爭責任者の問題に付て御尋ね致したいのでありますが、現在聯合國の司令部の方に於きまして、戰爭犯罪人を抑留されて居るのでありまするが、戰爭犯罪人と云ふものがどの範圍のものであるか、私にははつきり理解致し兼ねますけれども、恐らく國際法違反の行爲を敢てしたものと云ふことになるのぢやないかと思ふのであります、さう致しますると云ふと、其の他に戰爭犯罪人、其の意味の戰爭犯罪人ではありませぬが、戰爭責任者として國内的にはつきりしなければならない人も相當あるのぢやないかと斯樣に考へて居るのであります、此の問題ははつきり調査し、又責任者がありますのならば、之を相當な程度に制裁を加へると云ふやうなことに致しませぬと云ふと、又此の後更にさう云ふことを繰返すやうな危險もありはせぬかと斯樣に考へるのであります、就きまして政府は國内的の調査を御進めになる御意思がありますのか、若しさう云ふ御考がありますならば、先程國務大臣から御話になりました大東亞戰爭調査會で以て色々御調査になる、其の時に一緒に御調査になつて、其の結果又特別の之に關する機關でも御設けになるやうな御考でありますか、それとも此の際急いで大東亞戰爭調査會とは別途に特別な機關を御設けになるやうな御考でありますか、其の點を御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=27
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028・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の御質問の趣旨は戰爭責任者を特に調査をすると云ふやうな機關を設くるの考があるかどうかと云ふことにあるかと承知致します、戰爭責任者と云ふ言葉自體に付ては甚だ不明な點もあるのであります、聯合國側に於きまして、所謂戰爭犯罪人「ワー・クリミナルス」と言つて居る者に付ては、大體に於きまして聯合國側の説明に依つて範圍が分つて居るやうであります、即ち強ひて開戰に至らしめたとか、之に付て非常に努力をしたとか云ふやうな者、及び俘虜に對して虐待をするとか、或は國際法に違犯するやうな殘虐な戰爭をしたと云ふやうな人を指すと云ふやうに言つて居るやうでありますが、所謂戰爭責任者と云ふ言葉が必ずしも「ワー・クリミナルス」を指すものだけではないかも知れませぬ、如何なる範圍で戰爭責任者と云ふことを言ひ得べきかと云ふことは、是は非常にむつかしい問題と考へて居ります、何しろ例へば戰爭と云ふことが始りました上に於きまして、此の戰爭を遂行することは我が國の興廢の決する所でありまするから、之に對して全力を盡したと云ふことは、是は我が國民として當然の責務であると考へます、斯くの如き意味に於て、此の戰爭に付て一生懸命に働いた人々が戰爭責任者でないと云ふことだけは、是は明かに言へると思ふ、違法に此の戰爭を開始さすやうなことをして來た、さうして爲に此の戰爭が起つたと云ふやうな人は、是は戰爭責任者であることは、是も亦明かであるかと思ふのであります、是等の範圍如何は非常にむつかしい問題であると思ひますので、是は或程度調査や何かが進みました上でなければ、何とも言へぬことと思ひまするが、何れにせよ斯くの如き戰爭責任者と云ふべきやうな人が、今後に於きまして何等制裁を受けずに其の儘居ると云ふことは、是は公正なこととは考へられませぬ、只今の大東亞戰爭調査會と云ふやうなもので、戰爭の實相が能く分つて參りましたならば、自ら所謂戰爭責任者と云ふやうな者も、或程度判明して參るかと考へられます、さう云ふ場合に其の者に對して何等かの制裁を加へる如き制度を設けるや否や、又それを制定するやうな機關を設けるや否やと云ふやうなことは、只今まだ、考慮して居るのでありまして、決定をして居ることはないと云ふことを申上げるの外ないかと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=28
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029・竹下豐次
○竹下豐次君 私はそれだけ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=29
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030・松平親義
○子爵松平親義君 此の緊急勅令の條文の中に「聯合國最高司令官の爲す要求に係る事項」と斯うございますが、此の事に關聯しまして、簡單に伺ひたいと思ふのでございます、それは先般の「ポツダム」宣言、此の中に天皇の統治權は聯合國最高司令官の制限の下に置かれると云ふ言葉があつたのでありますが、此の天皇の統治權と申しますのは、詰り行政權は勿論のこと、立法權も、司法權も含まれた意味での、非常に廣い所謂統治の大權と云ふ風な意味であると私は思ふのであります、そこで此の勅令の言葉でありますが、「最高司令官の爲す要求に係る事項」、さうしますと、此の要求に係る事項と云ふ此の「事項」と云ふのは是は行政權、或は行政作用と申しますか、さう言つたものに對する要求も勿論是はあると思ひますが、其の他立法權、或は立法作用と申しますか、我々が帝國議會に於て法律案を審議する時の審議權と言つたやうなものに對しても、是は一種の立法作用だと思ひますが、斯う言つたやうなものに對しても、一つの「ポツダム」宣言の要求に基いて要求が生じて來ないことはないと云ふやうにも考へます、又司法作用に付てもさう云ふ風にちよつと考へられるのでありますが、其の邊は今日迄の何で見ますと、專ら行政作用にのみ色々な要求があると思ひますが、今後如何でありませうか、其の邊は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=30
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031・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の御質問は極めて重大なことででありまして、私として果してしつかりしたことを申上げ得るかどうか、自分ながら疑つて居るのでありまするが、私の解する所では此の「最高司令官の爲す要求」は如何なることにでも行き得るのである、從つて行政行爲を以て爲し得ることに對しては勿論で、或場合には立法自體をも命じて來る、斯くの如き立法を爲すべし、さうなつて參つたならば其の立法はどうでもしなければならぬと云ふことになるであらう、さう考へて居ります、然らば司法權にも及んで、斯く斯くの者が斯く斯くのことをしたが、是は宜しく死刑に處すべしと云ふやうなことを言つて來るかどうかと申しますと、是は或は言ひ得ることかも知れませぬが、斯くの如きこと迄は恐らくは言ふまいと思ふのでありますが、畢竟するに、茲に所謂「降伏の時より天皇及び日本國政府の國家統治の權は降伏條項の實施の爲其の必要と認むる措置を採る聯合軍最高司令官の制限の下に置かるるものとす」とあるのでありますから、苟くも降伏條項の實施の爲に必要であると云ふことになりますれば、一應何事をも命じ得るやうに見へます、但し其の範圍に於きましては、自ら天地の公道と言ひますかさう云ふことの制限はあると考へますので、其の範圍を越えて如何に見ても不正であると云ふやうな事を命ぜられることは、事實に於てなからうと云ふやうに考へるだけでありまして、其の範圍に付てはどうも制限がないかのやうに考へますが、尚外務省の政府委員が居る筈でございますから、私の考へて居りますことが何か違つて居りますれば、訂正をして貰ふことに致したいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=31
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032・田尻愛義
○政府委員(田尻愛義君) 別に附加へることはありませぬ、色々の意見はあります、併し實際政治の問題に付きまして、降伏條件に關する限りは如何なる事でも命令して來得るものだと考へるべきだと思ひます、尚今の御話の通り、天地の公道に悖つたものが來るとは思ひませぬ、大體の範圍と致しましては、日本の非軍國化、それから日本の民主化、斯う云ふことが「ポツダム」宣言乃至は其の後出ました「アメリカ」の對日管理法案の狙つた二つの大きな目的であります、大體に於てさう云ふ所に目標を置いた範圍に止まるだらう、止まつて欲しいと、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=32
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033・松平親義
○子爵松平親義君 只今の御答辯一應諒承致しましたが、只今の國務大臣の御話に依りまして、今後さう云ふ風に非常に廣い範圍に亙つて要求があつたやうな場合、行政行爲に限らず、我我の立法行爲と申しますか、さう云ふ方面に對する要求があつたやうな時には、政府としてそれに對してどう云ふ風に處置をなさる御考でございませうか、若し只今それに對して御準備と言ひますか、御考がございますれば、伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=33
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034・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 聯合國の要求して參ることの範圍は、是は「ポツダム」宣言と云ふもので大體の範圍を示して居るのでありますから、之に悖るやうなこと、例へば我が國體に對して變更を加へるが如きことを申して參ると云ふことは、是は明瞭に「ポツダム」宣言の趣旨に反すると私は考へます、國體と云ふ言葉は狹い意味で申したのでありまして、我が國の政治機構に對してもつと民主的になるやうにと云ふやうな意味に於て、色々要求されることはあらうと思ふ、此の要求に對しては勿論是は從はなければなりませぬが、併しながら我が國體の本義とも言ふべき統治權の所在と云ふやうなことに對しては、是は「ポツダム」宣言の上で要求をすることは出來ないことである、即ち我が國民の自由に公正に決めた所の總意に依つて決定されると云ふことの意味を、「ポツダム」宣言自體が確か言つて居るやうに考へるのでありまして、それを彼の命令に依つて決定するやうなことは、是は萬ないことと思ひます、尚各個の場合に於て色々の要求がありました場合に於きまして、是が不適切であると云ふやうなことを感じまする場合には、常に相當の交渉をして居るのであります、指令が突如として來ることは殆どない、其の位の意味に於て十分な意思の疏通があるのでありますから、先づ突如として、我我として耐へ得ないやうな要求が來ることは、今の状態に於ては實際上は起り得ない、而して先程山田博士の御質問に對して御答へしましたやうに、出來るだけ此の誤解を解くと云ふことになりますれば、元々聯合國最高司令官の考へて居ることは、我が國に對する善意に基いて出て來ることでありまして、決して我が國をいぢめるとか、苦しめるとか云ふやうな考でないと固く我々は信じて居るのでありまするから、左樣な意味の耐へ得ないやうなことの事情は萬生ずることはないと云ふやうに、我々は考へて居るのであります、左樣に御承知を願ひたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=34
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035・松平親義
○子爵松平親義君 只今の御答辯中伺ひましたのですが、具體的に伺ひたいのでございますが、例へば婦人參政權の問題、是は今度選擧法が改正されて、婦人にも參政權が與へられることにもなりますが、是等はもう既に聯合國最高司令官の要求として、斯う云ふことを申して來たのでありますから、我々として婦人參政權が、今更それは時期尚早であると云ふ風なことで、其の法律案が出まして、それに對しての我々の審議權と云ふものは、自ら矢張りそこに制限を受けることになると思ひますが、それはさう云ふやうに解釋して宜しいのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=35
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036・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 今の例に御擧げになりました婦人參政權のことは、正式に最高司令官が要求されたもんではないと云ふやうに承知をして居ります、唯最高司令官との間の會見中に、左樣な意向を示された、即ち我が憲法を民主的に改めて參ると云ふことの例などとしての御話もあり、其の他婦人參政權及選擧權の範圍の擴張と云ふやうなことに付て、公式ではございませぬが、或程度の希望が表明されたことがあるのでありまして、政府としては是等の表明された希望は、此の際我が國の實情に照して、寧ろ進んで之を我が國自體の提案として、實行して參ることが宜いのではなからうか、所謂民主主義の恢復、強化を圖ると云ふやうな意味に於きまして、適當なる立法であらうと云ふやうな考で提案をした次第でありますので、敢て審議權を束縛すると云ふやうなことは、さう云ふやうに見なければならぬやうな要求があつたとは、言へないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=36
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037・松平親義
○子爵松平親義君 只今の御答辯有難うございました、尚それに關聯しましてもう少し伺ひたいのでありますが、此の「聯合國最高司令官の爲す要求」と云ふ、是は何か一定の形式があるのでありませうか、口頭で言つて參つたことも要求と言へば要求と言へますが、何か是は形式があるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=37
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038・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 今迄の慣例と申しますかに依りますると、必ずしも書面に依るものだけではないやうであります、書面又は口頭に依る、極く小さいことに付ては口頭に依つての話もあつたやうに思はれます、併しながら權限のない、唯司令部に屬する、司令官の意思を發表するに適しないやうな人が唯言はれると云ふことでは、是は勿論「最高司令官の爲す要求」とは見られませぬ、此の點を明かにはしなければならぬのでありまするが、苟くも最高司令官の意思に基いてなされたる要求と云ふ場合には、必ずしも書面に依らないでも其の要求であると云ふやうに今迄解して居つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=38
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039・松平親義
○子爵松平親義君 最後に私少し希望的に伺つて見たいのでありますが、先程來他の委員の方からも段々御話がございましたが、今日我が國が將來此の「ポツダム」宣言の枠の中で新しい文化日本を建設して行くと云ふ此の情態に於きまして、どうも是は政府ばかりさうだと云ふ譯には參りませぬが、まだまだ我が國内の情勢を眺めて見ますと、どうもまだ多少意氣が銷沈して其の儘になつて居る、總ての方面に於て事柄がどうも再び立上ると云ふ其の氣魄が本當に腹の底から起つて居ないかのやうに見受けられるのであります、それで此の緊急勅令、先程來も法律論として勿論其處に色々の問題が考へらるるのでありますが、私は寧ろ政治的に之を考へました場合に、此の聯合國最高司令官の爲す要求に基いて「特に必要ある場合に於ては命令を以て所要の定を爲し」と是は甚だ消極的ではないか、寧ろ必要ある場合に於ては進んで、詰り「ポツダム」宣言の線に沿ひまして、例へば民主的傾向の復活の障礙となるべきものは、之を除去すると云ふやうなことがありまする以上、之に沿つて寧ろ聯合國の最高司令官の要求を俟たずして、我が帝國政府自ら積極的にどんどん施策を講ずる、其の施策を講ずる上に於きまして、若し障礙となるべき法律、命令があるならば、此の勅令は勅令と致しまして、帝國議會閉會の場合に於きまして、若し必要あれば、其の他緊急勅令でもどんどん御出しになつて、其の政府の必要となさる所の施策を直ちに實施すると云ふことが、最も私は必要であるのぢやないかと云ふ風に考へて居るのであります、唯是だけに依りまして、要求に係る事項のみを緊急勅令を以て廢止すると云ふやうなことは、どうも消極的な譏りを私は免れない、斯う思ふのです民主的傾向を助長するものであるならば、どうぞ一つ今後積極的にやつて戴くことが宜いのぢやないか、況や今日はまだ講和條約と申しますか、平和條約と申しますか、法律的に言へば本當の對等の國際關係にないのでありまして、まだ戰爭休戰の状態であると云ふ風にも考へられるのでありますから、之を全く平時と考へると云ふことが非常な間違であります、必要に應じましては緊急勅令あたりを以て、どんどん必要な施策を實行し其の實行の爲に障礙となる法律、勅令があるならば、之をどんどん改廢すると云ふ位のことは、私はやり樣に依つては一向差支ない、民主的傾向を復活する爲にやるならば、又それが民主的傾向に反しないやうな方法に依つてやるならば一向差支ないのぢやないかと云ふ風に私は考へる、まあ希望的に申上げましたのですが、其の邊どうぞ一つ政府に於きまして今後十分御考へ下すつて、もつともつと積極的に聯合國最高司令官の要求を待たずして、自ら一つ問題を解決すると云ふ風に向つて戴きたいと私は思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=39
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040・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の松平子爵の御希望は誠に同感でありまして、聯合國司令官の働き掛けを待つて常に何か鞭撻を受けてのみやると云ふやうな恰好になりますことは、是は勿論いかないのであります、苟くも我が國が「ポツダム」宣言を受諾しまして、降伏と云ふことをしました以上、男らしく進んで出來るだけ「ポツダム」宣言の趣旨に副ひました施設を積極的にやつて行くことが必要であると私も確信して居ります、其の意味に於きまして今囘の議會に於きましても、選擧法以外に於ても他に數箇の法律案が提出されると考へます、尚若し議會閉會中に非常な緊急の必要があると云ふ場合には、別に緊急勅令を奏請しまして、さうしてさう云ふ施設を行ふと云ふこともあり得ませうし、成るべく頻繁に議會を開いて、極めて民主的に、其の方法に於ても成るべく民主的に、さう云ふ施設を進めて行きたいと云ふやうに考へて居ります、全く御同感でございます、此の旨御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=40
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041・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 今日は此の程度に質問を止めまして、明日は午後一時三十分に開會致します
午後三時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=41
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042・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 八條隆正君
副委員長 男爵 東郷安君
委員
公爵 二條弼基君
侯爵 西郷吉之助君
伯爵 黒田清君
子爵 土岐章君
子爵 松平親義君
山田三良君
松村眞一郎君
村上恭一君
大野緑一郎君
男爵 關義壽君
男爵 明石元長君
竹下豐次君
唐澤俊樹君
中島徳太郎君
松井貞太郎君
大谷五平君
國務大臣
國務大臣 松本烝治君
政府委員
法制局長官 楢橋渡君
法制局次長 入江俊郎君
情報局次長 赤羽穰君
外務省政務局長 田尻愛義君
内務省警保局長 小泉梧郎君
内務書記官 鈴木幹雄君
文部政務次官子爵 三島通陽君
文部省學校教育局長 田中耕太郎君
厚生政務次官 矢野庄太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00219451130&spkNum=42
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