1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○昭和二十年勅令第五百四十二號(承諾を求むる件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十年十二月六日(木曜日)午前十時十二分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=1
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002・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 是より開會致します、司法省所管の事項に付て説明を求めることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=2
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003・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 昨日は連絡が十分取れて居りませぬでした爲に、調査に間に合ひませぬで申譯ありませぬ、深く御詫び申上げます、昭和二十年勅令第五百四十二號の「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件と云ふ此の緊急勅令に基きまして、司法省關係の廢止せられました法令は、前後四囘に亙つて制定せられて居るのであります、命令の發布せられました日附の順序で申上げますと、先づ第一は、本年の十月十三日に公布になりました昭和二十年勅令第五百六十八號に基きまして、國防保安法竝に不穩文書臨時取締法、國防保安法施行令及戰時刑事特別法の第七條の四が廢止せられました、尚司法省と陸海軍省との共同主管になつて居りまする軍機保護法、軍用資源祕密保護法も廢止せられまして、内務省と共管になつて居りまする言論、出版、集會、結社等臨時取締法も廢止になつて居ります、次は十月十五日に公布に相成りました昭和二十年勅令第五百七十五號に基きまして、治安維持法、思想犯保護觀察法、思想犯保護觀察法施行令が廢止せられました、それに伴ひまして司法省官制に若干の削除の改正がなされて居ります、其の次は同じ十月十五日公布に相成りました昭和二十年司法省令第五十二號に依りまして、思想犯に關する法律廢止に伴つて、假出獄思想犯處遇規程、保護觀察費用規則、辯護士指定規程、豫防拘禁手續令、豫拘防禁處遇令、豫防拘禁費用規程等を廢止致しまして、省令の整理を致したのであります、最後に十月二十二日公布になりました昭和二十年勅令第五百九十號に基きまして、保護觀察所官制、保護觀察審査會官制、豫防拘禁所官制、豫防拘禁委員會官制、豫防拘禁所教導給與令、豫防拘禁所官吏服制等を廢止致しまして、豫防拘禁所竝に保護觀察所の廢止に伴ふ官制の整理がなされて居るのであります、司法省關係の廢止命令は以上の通りでございます、是等の法律命令を廢止致しました理由は、本年の十月四日聯合軍最高司令部から帝國政府に對して交付せられました覺書、是は「政治的、公民的及宗教的自由に對する制限除去の件」と題する覺書でありますが、此の覺書の趣旨に基きまして、以上のやうな既存の法律命令の廢止を實施致したのであります、此の「政治的、公民的及宗教的自由に對する制限除去の件」と題しまする覺書の第一項には「左記一切の法律、勅令、命令、條例、規則の一切の條項を廢止し且直に其の適用を停止すべし」と云ふことがありまして、其の内容は三項目に分つて居ります、「一、思想、宗教、集會及言論の自由に對する制限を設定し又は之を維持せむとするもの、天皇、國體及日本帝國政府に關する無制限なる討議を含む、二、情報の蒐集及公布に對する制限を設定し又は之を維持せむとするもの、三、其の字句又は其の適用に依り種族、國籍、信教乃至政見を理由として何人かの有利又は不利に不平等なる取扱ひを爲すもの」、以上の法律、勅令、命令、條例、規則、一切の條項を廢止し、其の適用を停止すべしと云ふ規定があるのであります、それから第二と致しまして、「前項に規定する諸法令は左記を含むも右に限定せられず」と云ふ項目がありまして、廢止すべき法律命令の著しいものとして、特に法律、命令の件名を掲げられて參つたのであります、其の内容は、「一、治安維持法、二、思想犯保護觀察法、三、思想犯保護觀察法施行令、四、保護觀察所官制、五、豫防拘禁手續令、六、豫防拘禁處遇令、七、國防保安法、八、國防保安法施行令、九、治安維持法の下に於ける辯護士指定規程、十、軍用資源祕密保護法、十一、軍用資源祕密保護法施行令、十二、軍用資源祕密保護法施行規則、十三、軍機保護法、十四、軍機保護法施行規則、十五、宗教團體法、十六、前記法律を改正、補足、執行するための一切の法律、勅令、命令、條例及規則」斯う云ふ風に廢止すべき法令の主なるものを掲げられまして、尚之に限らないと云ふ注意書も爲されて居るのであります、更に第三項と致しまして、「目下拘禁、禁錮せられ保護又は觀察下にある一切の者を直ちに釋放すへし、拘禁、禁錮、保護及觀察下の状態に非さるも自由の制限せられ居る者に付ても亦同し」と云ふことが第三項に謳はれて居るのでありまして、「一切の前記該當者の釋放は昭和二十年十月十日迄に完全に實施せらるるものとす」、此の項目に基きまして、司法部關係では、思想犯の拘禁せられて居る者を十月十日の期限迄に大量に釋放したのであります、それから第四項目と致しまして、「前記法令、條項實施の爲設置せられたる一切の機構の本所、支所及前記條項の執行を補助支援する他の官廳及機關の局課の部署又は機能を廢止すへし」、斯う云ふ條項もありまするので、之に從つて司法省と致しましても、本省の刑事局の思想課を廢止し、又刑政局の豫防拘禁所及保護觀察所を所管して居る第三課を廢止致したのであります、それから裁判所及檢事局に於て從來思想事務を專管して居つた部署を廢止致しました、只今申上げました中で、尚數字を申上げますると、此の「マック」司令部の覺書にある指示に基きまして、本年の十月十日迄に釋放致しました政治犯人の數は、合計四百三十九名ございまして、其の内譯は、治安維持法違反關係が二百七十二名、國防保安法違反其の他該當犯罪の關係が七十七名ございます、更に言論等の犯罪關係が九十名ございまして、合計四百三十九名を直ちに釋放致したのであります、本緊急勅令に基きまして司法關係で措置致しました法令の關係は大體以上の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=3
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004・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御質疑を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=4
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005・中川良長
○男爵中川良長君 只今色々御説明を伺ひましたが、治安維持法が廢された結果、此の第一條の罪ですが「國體を變革することを目的として結社を組織したる者」、又第七條の「國體を否定し又は神宮若は皇室の尊嚴を冒涜すべき事項を流布することを目的として結社を組織したる者」と云ふやうなものは、罪にならぬと云ふことに相成る譯でありますが、左樣に御認めになるのであるか、左樣な罪も他の刑法の條項に依つて罰する場合もある、全部それが免れるのでなくして、刑法の部類に屬するものであると云ふやうに御解釋になつて居りますか、それは第一條、第七條の如きは、誠に重大な事項だと思ひます、又司法大臣の御言葉に依ると、大變に豹變をされたやうな御意見も本會議で伺ひました、此の法律はまだ出來上つて五年にしかなりませぬ、司法大臣と共に此の治安維持法制定に付ては論議したのでありまして、殊に其の必要を高調された御方であるのでありますが、僅か五年の後に、今日命令の爲に廢止をすると云ふ状況になつたのでありまするが、併し其の行動は他の法律に於て處罰することが出來るのである、或は全般のものはいけますまいが、それの主なるものは罰することが出來ると云ふやうな風に御考になつて居りますか、現在政治上に於きましても、國體を否認し、皇室を否定するやうな論議も堂々と行はれて居るやうな情勢でありますが、是は今日時代の進運として放任をして置いて差支はない、決してさう云ふものは廣く蔓延をしないと云ふ一應の御考でございませうが、場合に依ると、是が相當な數に蔓延すると云ふやうなことも想像出來ることでありまして、さう云ふことはないと云ふのも想像であれば蔓延性を有つと云ふことも想像であります、そこらに付きましても御考の程を伺ひたいのでありますが、一つ當局の忌憚ない御話を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=5
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006・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 只今申上げましたやうに、聯合軍司令部の覺書の趣旨に依りまして、治安維持法其の他の思想犯と申しますか、政治犯の取締の法規 廢止致したのでありますが、現在の情勢の下に於きましては、單なる思想運動に止る者は、特別法を以て之を取締ると云ふことが出來難い状態になつて居りますが、併しながら現存致して居ります刑法の條項に從ひまして、思想運動と申しましても、それが一歩進んで皇室に對する罪に觸れるとか、或は内亂、騷擾等の行爲に迄發展致しますならば、勿論刑法其の他の現存の法規に依つて嚴重に取締らなければならぬと存ずるのであります、私共と致しましても、國體護持の爲に有らゆる努力を盡して萬全を期したいと思つて居るのであります、現在の情勢の下に於きましては、思想運動を取締るのに、特別なる法規を全部廢止思致しました現在の状態に於きましては、其の思想運動が單なる思想運動に止らずして、それが進展し、又一般に蔓延する惧なきや否やと云ふことに付ては、治安維持の點から考へまして非常に心配致して居るのであります、其の取締に付ては萬全を期するやうに努力致したいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=6
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007・中川良長
○男爵中川良長君 御氣持は非常に能く分るのであります、斯う云ふ國體を否定し、神宮皇室の尊嚴を冒涜することに付ての行爲に付ては、刑法上の規定に於て十分に處罰をするやうに苦心をして居ると云ふ御氣持は分りますが、法は適切な條文に照らして論ずるのでありまして、若し其の條文に合はないときには、之を如何ともすることが出來ない、それが故に此の治安維持法と云ふものが別に出來たのでありまして、其の時に盛に論議を重ねたのでありまするが、是は刑法では斯う云ふ者を罰することが出來ない、故に國家の安寧秩序の爲に是は必ず必要であると論じたのでありまして、今命令の爲に之を取去ると云ふことは、已むを得ないことであることは明瞭でありまするが、左樣な顯著なことがあつた時に、刑法の何の條文に依つて御處罰になる御考でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=7
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008・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 皇室の尊嚴を冒涜するやうな行爲、例へば皇室に對しまして誹毀、誹謗、侮辱に亙るやうな言動が爲されますると、勿論刑法の皇室に對する不敬罪として處罰の對象になるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=8
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009・中川良長
○男爵中川良長君 さうすると、其の御言葉を伺ふと、今日の或演説と云ふものは其の御言葉の範圍に入つてしまふ、演説に於て皇室を誹謗し、或は必要を認めぬと云ふやうな言論が行はれて居る、さうすると、御話の要點に觸れる譯で、皆罰せられなければならぬと云ふ問題になつて來ます、現在堂々と行はれて居るのです、それが今政府委員の御言葉に依れば、さう云ふものは罰して行く、斯う云ふことですと、事實と御考とは反對の現象を現はして居るのぢやありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=9
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010・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 思想の發表に付きまして、皇室に關しまして制度として色々論議致しますことは、それが宗教的な信念に基き、或は政治的な思想から出るに致しましても、兎に角制度に付て批判論議をすると云ふやうなことは、現在の情勢の下に於きましては、どうも違法性を認めることが出來ないのぢやないかと云ふ風に考へて居りますが、それが御話のやうに、如何に制度としての論議でありましても、皇室に對し奉りまして、其の尊嚴を冒涜するやうな誹毀、誹謗、侮辱の言動が現れますれば、それが即ち皇室の御名譽を毀損することに相成りまするので、矢張り不敬罪を構成するものと解して居ります、でありますから、皇室に對する論議に付きましては、それは單なる制度としての批判、論議に止るか、或は更に進んで誹毀、誹謗、侮辱意思を以て尊嚴冒涜の行動に出て居るのであるか、そこを甄別して取締をしなければならぬ、斯樣に考へて居りますが、實際上の取締となりますれば、單なる制度としての論議であるか或は皇室の御名譽を毀損する意思を以て尊嚴冒涜の行動に出たのであるか、其の間の見境はなかなか微妙な關係がありまして、取締の上に於て非常に困難を致して居るのでございます、具體的な事例になりますと、其の違法性の甄別が困難と思ひますが、當局と致しましては、先程申上げましたやうに、其の取締に付ては萬全の注意を以て取締を勵行して行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=10
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011・中川良長
○男爵中川良長君 さう云ふものは取締ると云ふ御氣持であると云ふことを仰しやりますけれども、今の仰しやる所では成文に觸れないと思ふのです、專門家に向つて私素人が伺ふのですが、七十四條の如きは、「天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子」其の他「に對し不敬の行爲ありたる者は、三月以上」何がし、「不敬の行爲ありたる」だから、今の言論も之に入るのでありますが、私等は不敬の行動を爲したるものと云ふ風に是は解釋をして居るのですが、さうでなくして、もう既に皇室に對して如何なることを爲しても處罰する、言論を爲しても處罰する、さう云ふことであれば非常に是は明瞭になつて參りますが、さう云ふ御解釋でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=11
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012・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 私共と致しましては、此の不敬罪の構成要件としての不敬の行爲と云ふものは、公然誹毀、誹謗、侮辱等の尊嚴冒涜をする言動の現れた場合の行爲と解釋致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=12
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013・中川良長
○男爵中川良長君 それならば此の點で十分に御取締が出來るだらうと思ひます、御精神がそこにありますならば、其の解釋で誠に十分な方針に御進みを願ひたいと思ひます、さうすれば、是は唯結社を組織する、結社を組織することを罰するのであつて、結社でなければ如何やうにも處罰する、又結社と雖も左樣な行動がある時には如何やうにも處罰が出來ると、詰り治安維持法では結社の組織を豫防しようと云ふことでありましたが、今日はそれを豫防しないで、有らゆる左樣な行爲は第七十四條に依つて處罰が出來る、斯う解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=13
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014・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 是迄治安維持法等に於て取締を致して居りましたのは、結社を組織した場合は勿論でありますが、結社の組織或は加入の虞のあるやうな、一歩手前の言動に付ても取締を致して居つたのでありまするが、治安維持法を廢止しまして、而も今日の思想發表、言論自由を唱へられて居りまする現在の情勢下に於きまして、左樣にまだ結社を組織しない程度のものならば、現在の所ではちよつと取締の對象としては困難ではないかと存じて居ります、併しながら結社と申しましても、其の目的なり結社の組織態樣等に依りましては、刑法の皇室に關する罪、皇室に對する危害を加へる豫備陰謀の程度に進展したものと認められまする場合には、勿論刑法の章條に依つて取締の對象となるものと解釋致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=14
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015・竹下豐次
○竹下豐次君 本日の東京新聞でちよつと氣が付いたのですが、「刑法に依る威嚇は公然たる指令違反、星條紙上「ルノビン」氏、我が指導者を攻撃」と云ふのがございます、是は御覽下さつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=15
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016・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 見て居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=16
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017・竹下豐次
○竹下豐次君 之に依りますると「ルノビン」と云ふ人がどう云ふ人であるか、私能く存じませぬけれども、先日の貴族院の本會議に於ける天皇制廢止の論議に關する松村氏の質問に對して、岩田法相が答辯された、其のことを批評して居ります、で天皇制廢止に付て論議すると云ふことは當然であるのに、さう云ふことをしてはいけないと云ふ考を持つのは、是は間違ひであると云ふのが一つと、其の外に斯う云ふ風な文句が使つてある、此の儘に讀上げて見ますと、「「トルーマン」大統領は、天皇の存置の問題は日本國民自身に依つて決定されることを望む旨を言明したが、岩田法相は、天皇の大權に疑問を抱く者に對して、刑法の不敬罪の適用に依る處罰を以て脅やかして居るものである、而も威嚇竝に不敬罪の項目が依然存續して居ることは、十月四日附の聯合國最高司令部の指令に對する公然たる違反であり、挑戰である」、斯う云ふ言葉を使つて居るのであります、此處に書いてあります、十月四日附の聯合國最高司令部の指令と云ふものは先程の御説明のあれに當るのかと思つて居りますが、先程の御説明を承つた範圍では別に不敬罪の項目が依然として存續して居ることがいけないのだと云ふ風にも考へられないやうに承つたのであります、其の點がどうでございませうか、是は權威のある言葉であるかどうかと云ふことは、私にはちつとも分りませぬけれども、斯う云ふことを新聞で見ましたので、ちよつと疑問に致したやうな次第であります、今迄の御説明に依ると、一般の言論を抑へる譯に 行かないのだ、併し刑法の條文に違反する場合は嚴重に取締ると云ふのが、司法大臣の御説明にもあり、あなたの御説明にもあつたのですが之に依るとそれではいけないのだ、もう一歩考へて見ると、刑法の條文にそんなことを殘して置くのはいけないのだと云ふやうな考で此の發表をして居るやうに窺はれるのです、さうなりますと、十月四日の指令と云ふものは文意を餘程能く研究して掛らないと、くだらない議論をする、さうして向ふの感情を損ひ、妙な感情を掛けて參ると云ふやうなことにならないとも限らないと思ふのですが、我々としても十分氣を付けて反省しなければならぬ問題ぢやないかと思つて居ります、宜しく御願します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=17
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018・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 先程申上げましたやうに、聯合國最高司令部から本年の十月四日に帝國政府に指示されました覺書の内容に付きまして、先程大體を申上げたのでありますが、其の條項を見ましても、現在の刑法の不敬罪なり名譽毀損罪迄も停止して自由放任にしろと云ふ風には、私共は解釋致して居りませぬので、國防保安法、治安維持法等を廢止した當時に於きましても、十分最高司令部の方と連絡を取つて其の諒解を得て廢止したやうな次第でありまして、其の際に刑法の規定迄も改正する必要があると云ふやうなことは何等指示を受けて居りませぬ、此の覺書の趣旨から見ましても私共と致しましては、刑法以外に、言論、思想、集會、宗教の自由を制限して居りました治安維持法、國防保安法其の他の法令を廢止すれば十分と考へて居るのでございます、只今御示しの新聞記事は私は見て居りませぬでございますけれども、現在我が刑法に於て一般人の名譽毀損に付て處罰の規定がございます、尚皇室に對しましては一般の名譽毀損ではなく、特に不敬罪の規定を以て重く處罰して居るのでありまするが、如何に民主主義の政治になりましても、又一般人が如何に自由を熱愛する情勢の下に於きましても、國民一般の名譽を重んずると云ふことは、當然是は擁護しなければならぬことでありまして、先般の政治犯人釋放の指令を受けました際にも、最高司令部と交渉の時に、政治犯であつても、暴行を伴ふやうな、又名譽毀損、さう云ふ刑法罪を伴ふ政治犯人ならば、釋放する必要がないと云ふことは、十分諒解を得て居るのであります、私共今後治安維持の任に當りまする上に於て、如何に思想犯、政治犯と言ひましても、それに暴行であるとか、或は名譽毀損、或は財産に對する犯罪と云ふやうな刑法犯を伴ふやうな行爲が現れましたならば、現存の刑法の規定に依つて嚴重に取締をして行きたいと思ふのであります、恐らく聯合國最高司令部の方に於きましても、さう云ふ刑法の規定迄も外して自由放任にしなければならぬと云ふやうな考は持つて居らないのではなからうかと云ふ風に推察致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=18
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019・竹下豐次
○竹下豐次君 此の十月四日附の聯合國最高司令部の指令と云ふのは、是は矢張り新聞に掲載されましたでせうか、實は私當時田舍に居りまして、新聞が手に入りませぬでしたので、見落して居る譯でありますが、若し新聞に出て居りますならば、又古新聞でも探しましてと思ひますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=19
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020・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 是は確か其の當時新聞に大體出て居つたやうに記憶して居ります、若し御入用でしたら探して、寫しがあれば差上げても宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=20
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021・竹下豐次
○竹下豐次君 左樣でございますか、御迷惑でせうが、どうぞ……、それから此の前「ラヂオ」の放送で、徳田球一、清瀬一郎、宮澤裕三氏の座談會がありましたが、ああ云ふ放送は豫め其の内容を檢閲されて放送されるのでございますか、それとも全く自由に取扱はれて居るのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=21
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022・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 新聞の檢閲、「ラヂオ」放送の檢閲と申しますと、さう云ふ監督に付ての實際の手續なり内容は私は存じませぬけれども、聞く所に依りますると、現在の新聞記事、「ラヂオ」放送の内容は總て聯合國最高司令部の檢閲と申しますか、指導の下になされて居るので、當局者に於ても其の削除訂正等に付ては、全く手を觸れることが出來ないやうな殘念な状態だと云ふことを聞いて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=22
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023・竹下豐次
○竹下豐次君 「ポツダム」宣言と直接關係のない御尋でありますけれども、此の際警察關係のことに付きまして質問することを御許し願ひたいと思ひます、極く簡單な御答で結構でございますが……、警察の威信が非常に失墜して居る、其の質も下つて居る、只今最も警察に信頼して働いて貰はなければならないのに拘らず、今日は其の信頼が薄くなつて居ると云ふやうな状態だと思つて居ります、司法警察の方面、是が戰爭中特に經濟事犯の問題とか云ふやうなこと、警察關係事項だけをやつて居られた、食糧の増産と云ふやうな元來の警察の仕事でないことに迄積極的に乘出して居つたのは、當時としては已むを得なかつたのかも知れませぬが、彼此さう云ふことで、司法警察の部面と云ふものは大變力が弱くなつて居る、警察官も其の方に興味を感じないのぢやないかと云ふ風な疑を受ける節もあるやうに見られるのですが、司法警察のことに付きましては、古くから行政警察の部面と、警察官を擧げて檢事の指導權を事實上もつと有力ならしむるやうにした方が宜いのぢやないかと云ふやうに存ぜられたこともあつたのですが、其の問題は今どう云ふ風になつて居りますか、簡單で宜しうございますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=23
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024・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 御説のやうに、司法警察官と行政警察官とが現在の處内務省の管下にありまして、同一人が一面に於て司法警察官吏であり、他面に於て行政警察官吏であると云ふ職務を持つて居りまするので、同一人が司法、行政兩方兼ねて居る爲に、犯罪搜査等に付きまして色々微妙な、便利な點もございまするけれども、其の間に色々非難の的になるやうな報道もございましたので、從來から司法警察官と行政警察官吏を分離すべきではないかと云ふ論議がなされて居るのでございます、最近終戰以來の論議の傾向を見ますると、司法警察官吏と行政警察官吏の分離の問題が非常に盛に行はれるやうになりましたので、目下司法省に於きましても、司法制度改正審議會に於きまして、犯罪搜査に付て國民の權利を擁護する方策はないかと云ふ諮問事項の中で、司法官吏、行政警察官吏を制度として之を分離をする議題に付て目下鋭意研究致して居るのでございます、其の點に付きましては、當局に於きましても非常な關心を持つて、何等かの成案を得るやうに努力致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=24
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025・竹下豐次
○竹下豐次君 それから裁判所と檢事局の分離の問題、是も矢張り今御研究中でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=25
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026・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 只今申上げました司法省内に目下開かれて居りまする司法制度改正審議會に於きましては、只今の人權擁護の問題と同時に、司法部の制度として、裁判所、檢事局の制度を如何に改革すべきか、其の一課題として、裁判所と檢事局の分離も制度の改正の第一問題として論議されて居ります、目下其の點に付ても左樣な方法に向ひつつ論議を重ねて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=26
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027・竹下豐次
○竹下豐次君 今御質問しました二つの問題に付きましては、「マッカーサー」最高司令部の方からは何も申入れはないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=27
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028・佐藤藤佐
○政府委員(佐藤藤佐君) 其の點に付きましては、別に司令部の方から指圖は受けて居りませぬが、司法部と致しましては、此の情勢下に、司法制度に付ても根本的な改正をし、又機構、制度のみならず、職員の素質向上等にも努力して、司法部をしつかり根本から刷新して、新日本の建設に邁進しようと云ふやうな趣旨で研究致して居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=28
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029・清原邦一
○政府委員(清原邦一君) 本年十月四日附の聯合國最高司令部より帝國政府に對する覺書に依りまして、司法部の執りました處置の中、先程佐藤政府委員から御説明申上げましたが、其の中一二件補足御説明申上げたいと思ひます、先づ第一は保護觀察所の關係でございますが、是は右覺書に基きまして、本年十月十日迄に、全國に於きまして、合計二千二百二十六名を觀察保護處分より解除致しました、それから尚右覺書に依りまして同月二十二日に保護觀察所關係の職員を罷免することと致しまして、補導官二十六名、保護司四十一名、書記三十九名、囑託保護司八百七十一名、保護觀察審査會職員百九十九名、合計一千百七十六名の職員を罷免致しました、次に豫防拘禁所關係でございますが、是れ亦右覺書に基きまして、合計十七名の當時豫防拘禁に付して居りましたものを釋放致しましたから、右御報告致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=29
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030・中川良長
○男爵中川良長君 重ねて伺ひますが、治安維持法が廢止されました結果、刑法第七十四條、此の適用を最も嚴正に行はれむことを熱望して已まないのであります、之を解釋に依りますれば、相當の範圍迄處罰が實行出來るやうに伺ひます、私の考と當局の御考と少し隔りがありましたが、當局の御考では、或は不敬の言動行爲に付て共に處罰をすると云ふことでありますので、さうすれば、殆ど今日の或演説場の演説の如きは此の條項に觸れるのぢやないか、唯適用されるかされないかに過ないのであつて、適用されれば、之に合致するのではないかと云ふやうな嫌ひもありますので、どうか國家の前途を考へまして、此の法律一つに懸つて居ると思ふのであります、故に此の適用をばもつと廣く運用をされむことを熱望して居ります、全く今日の治安は一に是より外になくなりました、どうか當局の深き御考を願ひまして、躊躇なく之に實效を現はされむことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=30
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031・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 他に司法省關係に付て御質疑はございませぬか、なければ司法省關係は此の程度に止めます、次に復員省關係に移ります、吉本政府委員発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=31
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032・吉本重章
○政府委員(吉本重章君) 御説明を申上げます、昭和二十年勅令第五百四十二號の緊急勅令に基きまして發せられました陸海軍關係の命令は六つの勅令でございまして、省令はございませぬ、此の勅令は、軍法會議法に代るべき復員裁判所令以外のものは、既存の法令の廢止に關するものでございます、其の概要を御説明申上げますと、先づ十月十三日の勅令第五百六十八號及十月十三日の勅令第五百七十六號は、言論等の自由に關する聯合國の覺書に依るものでありまして、國防保安法、軍機保護法、要塞地帶法等を廢止せられたものであります、次に勅令第六百四號、同じく六百三十四號、同じく六百五十三號の三勅令は、直接聯合國側の要求に基いて發せられたものではございませぬが、軍の武裝解除の命令に基く必然的の措置と致しまして、兵役法、軍事特別措置法、兵器等製造事業特別助成法等の廢止を規定せられたものでございます、最後に勅令第六百五十八號は、是れ亦直接聯合國側の指令に依つて發せられたものではございませぬが、軍の解體に伴ふ必然的の措置と致しまして、軍法會議に代るべき復員裁判所を設くる件を規定せられたものでございます、簡單でございますが、以上を以て御説明を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=32
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033・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御質疑を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=33
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034・明石元長
○男爵明石元長君 此の復員裁判所の問題でありますが、此處に臨時と云ふことを謳つてあるのでありますが、是は復員省がある限りと云ふ意味でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=34
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035・大山文雄
○政府委員(大山文雄君) 左樣な趣旨でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=35
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036・明石元長
○男爵明石元長君 此の復員裁判所で御取扱になるものは、内容的には從來の軍法會議と同じやうなものであると思ひますが、今日の事態に於て、特に斯う云ふものを必要とする理由が十分分りませぬが、御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=36
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037・大山文雄
○政府委員(大山文雄君) 御承知の通りに復員省が設けられましたが、其の實質は矢張り軍の業務を致しまするもので、從來軍に設けられて居りました軍法會議の其の實質も、復員省の存する間に於きましては、矢張り臨時の復員裁判所で取扱ふのが適當であると考へます、尚軍法會議の廢止と同時に未決の事件もございましたが、それは此の復員裁判所が出來ますることに依りまして、其の方に後を繼がせる、斯う云ふことに致してあります、復員省の存續するのは所謂臨時でございまして、極く短期間だと思ひますから、其の間矢張り復員裁判所でやるのが極めて適當であると、斯う云ふ風に考へた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=37
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038・明石元長
○男爵明石元長君 復員省が今後どの位續くかと云ふことを、大體御想像で結構ですから、御答へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=38
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039・大山文雄
○政府委員(大山文雄君) 是は勿論豫想でございますが、只今の所では明年の三月末迄と考へられて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=39
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040・明石元長
○男爵明石元長君 先程御答辯の第二段の方は諒解出來るのでありますが、第一に御答になりました御答辯は、具體的にどう云ふことを指しての御答辯かと云ふことをちよつと諒解致し兼ねますが、此の復員裁判所の對象になるものは、詰り外地などに在つてまだ復員を完了しない者に對してと云ふ意味に解して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=40
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041・大山文雄
○政府委員(大山文雄君) 復員裁判所の對象となりまする犯罪人でありまするが、是は内地に於きましては、軍人の身分を猶存續して有つて居ります者に對して、復員裁判所の裁判權が及ぶと云ふ趣旨でございます、即ち從來軍法會議が軍人に對して特に裁判權を有つて居りました其の實質が其の儘復員裁判所に移る趣旨でございます、從つて軍人の身分を有つて居らぬ者は、是は普通裁判所の方に裁判權は移ります、それから外地に在りまする者、まだ復員しない者に付きましては、是は矢張り軍法會議が今後も猶存續致します、此の復員裁判所は内地に於きましての制度でございます、左樣御了承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=41
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042・明石元長
○男爵明石元長君 さう致しますと、期間は來年の三月位迄であり、内地に在つて猶軍人の身分を有する者に對して、特に斯う云ふものを御置きになると云ふことは、ちよつと其の必要を理解致し兼ねるのでありますが、一般の裁判を以て之に適用し得ないと云ふことは、是はどう云ふことでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=42
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043・吉本重章
○政府委員(吉本重章君) 只今御疑問の、内地に於きまして軍人の身分を有つて居る者は、一般に了解しにくいことでありますが、實情を申上げますと、復員省關係の官廳に於きましては、文官の官廳と致しましてそれぞれ職員が其の職に充當されますが、尚それ以外に聯合國側の調査の爲に多數の軍の關係者を必要と致して居ります、是等の者に、或所要の事項に關し短期間而も命令的に要求に應ずる調査を致させまする爲には、軍人として徴集を致して居ります、尚軍需品の引渡し等もまだ完全に終つて居りませぬ、之が爲に必要な者は成るべく文官のやうな性格の者に致して居りますけれども、尚相當の兵が殘つて居ります、是等のものが一應總て三月頃迄には終るものと考へて居りまして、又御尋にもございますやうに、非常に我々と致しましても困つて居りますので是非其の時期迄には斯くの如き調査、軍需品の引渡し等に付て、軍人が殘つて居らなくても宜いやうに終つて貰ひたい、斯う云ふ風に折衝を致して居るやうな状況でございまして、一般にありさうにないと思はれますけれども、實情は其の調査等の爲の人の所要は相當なものでございまして、之に關係して居る者が居る、斯う云ふ實情でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=43
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044・明石元長
○男爵明石元長君 只今の御答辯で、相當の人數が尚軍人の身分に於て働いて居られると云ふことは了承致しましたが、それにしましても、今日世の中では第一復員省、第二復員省となることさへも疑問に思つて居るやうな向きもあるのでありまして、それ等の業務は、まあ私は部外から見て居るので、よく分りませぬけれども、一般文官に近い立場に於てされるのではないかと思ふのであります、從つて特に斯う云ふ裁判所を設置せられると云ふことは、只今の御答辯では尚了解致しにくいのであります、併し唯疑問として伺ひましただけでありますから、是で宜しうございます、尚是は一般の問題でありますが、序でに伺つて置きたいと思ひますが、今日尚外地にまだ復員されない人が大分澤山居つて、非常な苦勞をして居られることであらうと思ひますが、どう云ふ状況になつて居りますか、御説明を願へれば結構と思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=44
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045・吉本重章
○政府委員(吉本重章君) 陸軍の關係に於きまして承知致して居ることを申上げます、此の點に付きましては既に若干御耳に入つて居ることと思ひますが、綜合致しまして現在考へて居りますことは、當初に於きましては、「ソ」聯邦の占領地域即ち北鮮、滿洲、樺太、千島方面に於きましては、相當な混亂、亂暴な事態が起りまして、特に是等の地域の極寒期を控へまして、事態を極めて憂慮致しまして、政府としては、數十囘に亙る是等の事態の改善竝に情報の入手、連絡の方法打開と云ふ風な處置を執られたのでありますが、而も之には聯合國側を通じましての處置も含まれて居りますが、何等之に付ての解決を得ずして今日に至つて居りまして、此の方面に於きましては、はつきりと公報に依つての状況を知ることが依然として不可能であります、併しながら身を以て歸還致しました者からの情報を逐次整理致して居りますと、最近の情報に於きましては、相當事態が改善された、少くとも生命に危險のある如き状況は改善されつつあると云ふやうに印象を受けるのであります、之を想像致しますのに、「ソ」聯軍の下級の部隊、竝に其の侵入に伴つて北鮮竝に滿洲の現地住民の我が軍官民に對する一時的の暴虐行爲と云ふものが、終戰直後の事態を起した原因でありまして、「ソ」聯の最高司令部や政府の意嚮が逐次傳達するに從つて、今申上げましたやうな治安の状況は改善されつつある、斯う云ふ風に想像されます、其の一、二の具體的の反證と致しましては、例へば非常な亂暴な行動をした下級の兵等に對して、目前に於て直ちに之を銃殺すると云ふ風な處置も向ふでは執つて、軍紀を肅正して居るやうであります、さう云ふ風な點から考へまして、一應生命の危險と云ふやうな點は除かれつつあるとも思はれますけれども、軍隊と致しましては其の組織を全く破壞されまして、情報に依りますと、千島方面等に於きましても、輸送船に依りまして「シベリヤ」等に輸送されて居るのではないか、滿洲等に於きましても、それぞれさう云ふ方面で「ソ」聯側の必要と致します勞務に服して居ると云ふ風なことは、概ね確實のやうであります、上級の將校等は終戰直後からそれぞれ分離されまして、所要の地點に連れて行かれて、何等かの情報の調査、或は政治教育と云ふ風なことをやつて居るのではないか、斯う云ふ風に考へられます、支那の方に於きましては、御承知のやうに蒋介石竝に何應欽の理解ある中央最高司令部の態度に依りまして、終戰後の處理が順調に參つて居りまして、當初は安心を致して居りましたが、御承知のやうに最近北支方面に於ての共産軍の内亂的の行動に依りまして、事態は私共の實感と致しましては、共産軍の特質から申しまして、大なる不安を感じて居ります、此のことに付きまして、中國の國民政府の全權を持つて居ります何應欽總司令の降伏の命令に依りますと、日本軍の投降、武裝の解除、引渡しは、總て國民政府軍に對して行ふのであつて、他の雜軍、共産軍に對して之を行つてはならないし、又現在有つて居る都市及要域は必ず之を確保して居れ、斯う云ふ風に命令を受けて居りますし、又終戰後に於ける支那總軍の態度は、聖旨を奉じまして「ポツダム」宣言の忠實なる實行を基礎と致しました爲に、此の指令を忠實に實行し、國民政府軍に對して眞に協力して行くと云ふ方針の下に終戰を處理致して居りますので、そこに共産軍の武裝の奪取を目的とする直接の降伏要求、或は確保して居ります都市の攻略と云ふ企圖に對して、そこに戰鬪が起きて居りまして、之が爲に相當な死傷者を出して居ると云ふやうな状況でございます、其の他の地域に於きましては、方面に依りまして太平洋等の給養の思ふやうに行かない所もございますが、是は軍の力に依りまして、さう云ふ方面から歸還をしつつあると云ふことは御承知の通りであります、尚「ジャワ」に於きましては、獨立の運動に伴ひまして、其の局部の一部のものではございますけれども、「スラバヤ」附近に於て、英蘭軍と現地住民との間に、恰も北支に於けると同じやうな立場になりまして、此の降伏條項を忠實に實行する爲に、今迄協力して居りました現地印度「ネシア」軍の爲に、一部の部隊が虐殺を受ける、又それに伴つて若干の戰鬪が起きると云ふ状態がありましたことは、新聞紙にございました通りであります、其の外は色々環境がございますけれども、北支、「ソ」聯の占領地域のやうな憂慮すべき問題は、大きな問題は一應ないと考へて居ります、併しながらそれぞれ生活、さう云ふ點に付きましては、必ずしも樂觀を許されない、斯う云ふ風に窺はれるのであります、尚最後に、最近新聞報道で、酒井中將以下將官を含む數萬の者が、共産軍に加はつて戰鬪をして居ると云ふやうな報道を一説として傳へて居りますが、支那方面とは相當な通信連絡も取れて居りますし、未ださう云ふ報告は何等接して居りませぬのと、最初申上げましたやうな方針の下に終戰後處理されて居りますので、是は事實に相違するものと、事實さう云ふことはないものと考へて居りますが、念の爲に目下照會を致して居ります、一部延安方面に走つて居ります者が或はさう云ふ風な行動に出でて、誇大に傳へられて居るのではないか、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=45
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046・明石元長
○男爵明石元長君 海軍の方は発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=46
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047・山本善雄
○政府委員(山本善雄君) 第二復員省關係を申上げます、北支、滿洲、中南支、此の方面に付きましては、第一復員省の政府委員から申上げたのと違つたことはございませぬ、現地の海軍は非常に數が少いのでございまして、而も割合に都の方に集つて居ると云ふ關係上、不安は非常に少いのでございます、それから中部太平洋方面及其の他の南西方面、南東方面、其の方の状況を申上げますと、終戰前には、太平洋方面に於きます島々の者は、食糧に非常に惱まされて居りまして、將に餓死一歩手前と云ふ状況の下に在つたのでありますが、終戰になりまして聯合軍側から接收をされますと、適當な食糧を配給して貰つて居ります、又復員の爲に派遣をされました舊海軍の艦艇、是等が參ります所には、内地より補給を致して居りますので、食糧事情は急速に改善されまして、心配はないと、斯う云ふ程度にはなつて居ります、それから自活の出來ませぬ小さな島々は、速かに全部歸る必要がありますので、配船を其の方面に種々致して居りまして、大體に自活の出來ない島々は本年位で全部完了致すことになつて居ります、食糧事情はさう云ふ状況でございます、それから現地から内地の方に電報を打ちますことは許されて居りませぬ關係上、復員の爲に派遣される軍艦が行かない所の状況は、實は能く分つて居りませぬのでありますが、「ラバウル」方面即ち南東方面、及「ニューギニア」方面、此の方面は其の後少しも分つて居りませぬ、但し終戰前から自活體制が良く出來て居りましたから、敵の空襲、之に依つて惱まされて居りましたので、終戰前は自活體制が完全には行つて居なかつたのでありますが、今は空襲もなくなつたので、自活體制も改善されたものと思つて居ります、それから比島の状況でございますが、比島に於きましては、一箇所に拘留されて居りまして、是は比島全體が非常に食糧事情が惡いのでございまして、聯合國側から配給されます食糧は、内地等よりも非常に少いと云ふことを聞いて居りまして、他の所よりも苦しんで居るのではないかと思はれます、それから「マレー」、「ジャワ」、「スマトラ」方面は、是は能くは分つて居りませぬのですが、此の方面は色々な事情が比較的良い方になつて居りますので、心配することはないぢやないかと思つて居ります、終り発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=47
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048・明石元長
○男爵明石元長君 分りました、實は第一復員省の政府委員から最後に御觸れになりましたことでございますが、私共も新聞で左樣な記事を拜見致しました、此の復員に當つて、非常な困難な状況の爲に、今迄の軍隊の統率がばらばらになつて、外國の内亂に加擔せざるを得ないやうな状態になつて居るのではないかと云ふことを非常に心配して居つたのでありますが、只今先づ左樣なことはないと云ふやうな御見込のやうに承りました、もう一つ伺ひたいのでありますが、「ジャワ」に於ける問題は、新聞で拜見致しますると、日本軍が積極的に協力せざるを得ないやうな、「インドネシア」の反亂に對して之を鎭壓する爲に、積極的な協力をせざるを得ないやうな状態に在るやうに拜見するのでありますが、さう云ふやうな事態なんでありませうか、それとも詰り「ポツダム」宣言を受諾した結果、武裝解除をする關係上、さう云ふ結果になつたと云ふやうな、消極的な事態なのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=48
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049・吉本重章
○政府委員(吉本重章君) 其の邊のはつきりした事情は分りませぬが、先程中國に付て申上げましたやうに、英蘭軍がはつきり現地の暴動に對して、日本軍は武力を以て英蘭軍に協力せよと言ふ風なことはないのではないかと思ひます、唯現實の局地の状況上、或は已むを得ずさう云ふ風な命令に依つて、それに協力したもの……若し英蘭軍が協力を命じたとすれば、さう云ふ事態が起きたのではないかと思ひますが、實際私共が今考へて居りますのは、自衞行動でないかと斯う云ふ風に考へられます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=49
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050・明石元長
○男爵明石元長君 それから「ソ」聯の占領地域内の状態でありますが、確か「ポツダム」宣言に、完全な武裝解除をされた曉には、軍隊、兵士は其の家郷へ歸ることを許される、と云ふやうな意味のことがあつたやうに思ふのであります、是が若し何處かに送られるとか云ふやうなことであると、さう云ふ「ポツダム」宣言の精神にも幾らか違つて來る所が出來ると、解釋も出來るやうに思ふのでありますが、要するにさう云ふやうな情報なり、交渉なりと云ふものは、復員省自體でやつて居られますか、どう云ふ徑路に依つてやられるか、或は交渉も出來得ない状態に在るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=50
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051・吉本重章
○政府委員(吉本重章君) 主として外務省に於て御やりになつて居るのでございまして、聯合國軍最高司令部を經てやる方法とか、或は「スエーデン」の大使、さう云ふ第三國を通じてやる方法、萬國赤十字を通じてやる方法とか、既に各種の方法を數十囘に亙つて執つて居られます、其の詳しい事情に付きましては又別に御尋ね戴きたいと思ひますが、私が知つて居りますことでもさう云ふ状況でございまして、政府の方として我々が色々御願を致しますことを、更に積極的に御盡力を、即ち復員省として御願ひ致しますことを、更に積極的に各般の處置を執つて戴きましたけれども、今日のやうな状態になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=51
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052・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 他に復員省に對する御質疑はございませぬか、それでは是で第一、第二復員省共終つたことに致します、是にて休憩致しまして、午後一時に開會致します
午前十一時四十六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=52
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053・会議録情報3
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午後一時十五分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=53
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054・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 是より會議を開きます、復興院關係の住宅緊急措置令に付ての措置を伺ふことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=54
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055・松村光磨
○政府委員(松村光麿君) 緊急措置令に付きまして執りました理由、竝に其の内容に付きまして、大體御説明を申上げたいと存じます、終戰後住宅が非常に拂底致して居りまして、之に對しまして政府は曩に三十萬戸の簡易住宅を造ると云ふ決定を致したのであります、又畏くも 陛下に於かせられましても、皇室より百萬石の御下賜材のことを御沙汰あらせられまして、誠に恐懼感激致した次第であります、政府に於きましては、此の方針に基きまして簡易住宅の建設を致して居ります、簡易住宅の建設は、或は住宅營團に、或は各府縣の公共團體等に於きまして、之をやることに相成つて居つたのでありますが、どうも終戰後の状況は非常に惡くて、殆ど簡易住宅の建設や進行が意の如く行かなかつたのであります、一方又澤山の壕舍住ひをして居る者がございまして、是等の人達も材木の入手に、或は資材の入手に非常に困難を來しまして、なかなか建築が出來ないと云ふ状況に相成つて居るのであります、而も冬を控へまして、是等の人の居住の問題が極めて眞劔に叫ばれて參りまして、何等かの措置を講ずる必要があつたのであります、戰災復興院は十一月の五日に設置せられたのでありますが、さう云ふ状況の中に生れましたので、何とか住宅に付ての緊急な措置を執らなければならぬ必要に迫られて居つたのであります、勿論簡易住宅の計畫は、一方に強力に資材其の他盡すべき手を打つたのでありますけれども、なかなか之を急速に進めることに非常な困難を覺えたのでありますから、茲に住宅緊急措置令を出しまして、更に違つたやり方に依つて住宅問題の緩和を圖らうと云ふことが決定せられた次第であります、戰災地を見て見ますれば、鐵筋「コンクリート」造の建物で燒けたものも相當ございますし、又燒け殘つたものもございますが、それ等の建物の中で、手を加へますれば、之を「アパート」のやうに使ひ得るものが多數ございますので、之等の罹災建物を修理致しまして、それに「アパート」を造りたい、或は建築物以外の工作物、鐵道の高架線の下等でも、若し住宅に供給することが出來るならば、それ等のものも改造することもどうだらうかと云ふことを考へた次第であります、又工場地帶に參りますれば、工員寄宿舍等、或は工場等に於きまして、之を改造すれば、又手を入れないでも若し之を開放せしめることが出來れば、之に罹災者を收容することも出來る、又廣い家で空いて居る家、是は殆ど事實上は無いのでありますが、空家若くは空家に準ずるやうなものがあれば、是等のものも住宅に供給せしめることが適當ではないかと考へまして、是等のものに付きまして必要と認めた場合には地方長官が之を指定致しまして、之を住宅の目的に使ふことが出來るやうにしようと云ふのが、此の緊急措置令の趣意でございます、大體は話合ひの上出來るだけ解決するのでありますけれども、若し話合ひが出來ない場合には、地方長官が使用權を設定する、家を借ります者は、例へば東京都であるとか、或は住宅營團とか、或は戰災援護會とか、其の他地方長官が適當と認めた者に對しましては、使用權の設定を認めると云ふことであります、使用權設定を爲し得るものは、先程申上げました「ビルディング」の燒けたもの、或は工員寄宿舍、空屋、或は空屋に準ずるもの、或は住宅以外の建物、倉庫其の他のもの、或は先刻申上げました「ガード」下等の工作物、又それに對する附屬の物件、或は隣接の空地が必要の場合には隣接の空地の使用も認めると云ふ規定を致した次第であります、又使用者の範圍も、先程申上げましたやうな者に居住を許すと云ふことに相成つて居ります、實際の成績から申上げますれば、此の規定を出しました結果、工員寄宿舍等は、從來此の規定を出しまする前は、なかなか借りられなかつたのでありまするが、此の規定が出ました結果、工員寄宿舍等も急速に話が進みまして、東京都廳、或は住宅營團、或は戰災援護會等が是等の寄宿舍を借りまして、只今頻りに改造して、罹災者或は復員者等の住宅のない者に對して貸出を致して居るやうな次第でございます、「ビルディング」の方の分も只今やつて居りますが、是等も只今著手致して居りまして、出來るだけ速かに、激しい冬を無事に切拔け得るやうにと云ふことで、此の措置令を出したやうな次第でございます、一日も速く此の冬の對策を立てる必要ありと認められて居つたのでありまするが、聯合軍司令部に於きましても、食糧問題、住宅問題が緊切である、住宅問題に對して何等かの手を打たなければならぬ、越冬對策上此の儘ではいかぬではないか、適當の措置を講ずるやうにと云ふ指令も受けましたので、色々打合せました結果、此の緊急措置令を出したやうな次第であります、尚御質問がございますならば、出來るだけ詳細に申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=55
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056・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御質疑を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=56
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057・大野緑一郎
○大野緑一郎君 只今の内容に入る前に、「ポツダム」宣言の實行に伴ふ緊急勅令と云ふ所が少しはつきり致しませぬが、其の點はどうなのですか、どう云ふ關係があるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=57
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058・松村光磨
○政府委員(松村光麿君) 實は聯合軍の司令部の方で、住宅問題に付ては非常な關心を持たれまして、治安の維持、民心の安定の上から考へまして、住宅問題に對する緊急對策を要望せられましたので、色々我々の方でも研究し、聯合軍司令部とも打合せの結果、此の規定を出したやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=58
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059・大野緑一郎
○大野緑一郎君 宣言の實行と云ふこととは、直接關係がないやうに思ひます、緊急の必要のあることはそれは認めますが、ちよつと其の點が私にははつきりしませぬが、それはどう云ふことになりませうか、實際必要があるならば、單行の緊急勅令でやられるのも結構であると思ひますが、どうでせうか、此の勅令第五百四十二號に依る、「ポツダム」宣言の實行に必要なる緊急勅令とはちよつと考へられないやうに思ひますが、どうなんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=59
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060・松村光磨
○政府委員(松村光麿君) 其の點は、或は御議論のやうな議論も出やうかとも思ひますけれども、綜合的な見地から、恐らく聯合軍司令部の之に關する指圖もあり、又當方と致しましても打合せをした結果、出したやうな次第でございますから、左樣御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=60
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061・大野緑一郎
○大野緑一郎君 私は質問はそれだけで、意見は別に持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=61
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062・松村眞一郎
○松村眞一郎君 今の關係ですが、此の勅令の前文はどう云ふ風に書いてあるのですか、緊急勅令を公布された前文ですね、司令部の指令に基くとあるのではないですか、其の前文を書かないで措置令と云ふものだけを此處に示してあるのですが、矢張り何々に基き勅令を出すと、斯う云ふことで公布されて居るのぢやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=62
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063・松村光磨
○政府委員(松村光麿君) 「ポツダム」宣言受諾に伴ふ措置に基いて此の勅令を出したやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=63
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064・松村眞一郎
○松村眞一郎君 前文が此處に示してないのです、何々に基き勅令を發すと云ふ、斯う云ふのがあるのでせうが、それが之に書いてないので大野さんの御質問が起つた譯ですが、さうではないですか、勅令にはいつも前文がありますから、前文がどう云ふ風に書いてあるかと云ふことではつきりするのぢやありませぬか、そこに御持ちになつて居りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=64
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065・松村光磨
○政府委員(松村光麿君) 「ポツダム」宣言の受諾に伴い發する命令に關する件に基き住宅緊急措置命令を公布すると云ふことが出て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=65
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066・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それがあれば宜しいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=66
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067・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御質疑はありませぬか、なければ復興院關係は此の程度で終ります、次に遞信院の方に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=67
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068・松前重義
○政府委員(松前重義君) 昭和十六年十月三日附を以ちまして、此の戰時事變に際し國防上の利益を保護する爲、郵便物の差出を禁止し又は制限することを得る、さう云ふ臨時郵便取締令を公布致しまして、其の後郵便物の檢閲を行つて參つたのでございまするが、昭和二十年十月四日、聯合軍最高司令部の日本帝國政府に對する覺書と致しまして、「政治、信教竝に民權の自由に對する制限の撤廢」の第一條「エー」の中の(二)、即ち「情報の蒐集竝に頒布に對する制限を確立又は維持する法令、」之に該當致しまするものと認めまするので、昭和二十年勅令第五百四十二號「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件に基きまして、之を十月二十四日に廢止することと致したのであります、斯く致しまして、我が國は郵便檢閲を廢止したのでございまするが、之に代るに、聯合軍總司令部の要求に基きまして、即ち我が國の通信を檢閲する爲に、我が國の通信機關の協力を要請して參つたのでありますが、我が方と致しましては、「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件に基きまして、十月十二日附で、所管大臣は聯合軍の行ふ通信檢閲に當該官吏をして之に協力せしめることを命ずることが出來ると云ふ閣令を公布した次第でございます、此の件は、聯合軍が進駐と同時に、情報局總裁と私とを呼びまして、此の問題に關して命令を致したのであります、それに伴ひまして發しました所の閣令でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=68
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069・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御質疑はございませぬか、速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=69
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070・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 速記開始、御質疑はありませぬか、なければ遞信院關係は是で終ります、暫く御待ち願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=70
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071・土岐章
○子爵土岐章君 私は議事進行に付て發言したいのでありますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=71
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072・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=72
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073・土岐章
○子爵土岐章君 此の委員會の發言に付きましては、色々微妙な點があると斯う思ひます、從ひまして我々委員と致しましても、十分に注意を致して發言をして居る積りでございまするけれども、或は言葉の足りない所とか、或は言葉の過ぎた點も起るやに考へるのであります、それで委員長に於かせられましては、十分にそれ等の點に對して、速記録其の他に對して、不都合の點がありましたら、御修正願つたらどうか、斯う云ふ風に考へます、他に御異存もなければさう云ふ風に御取計らひ願ひたいと云ふ風に私は考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=73
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074・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 只今土岐子爵から議事進行に付ての御發言がありましたが、委員長よりも或時機に委員各位に御協議しようと思つて居つたのであります、政府の方でも速記録に付て多少取消しを必要とするやうなこともあるかの如き口吻も聞いて居りますから、それ等の要求がありました時には、政府と委員長との間に於て協議を遂げまして、然るべく取計らふと云ふことに致したいと存ずるのであります、それで御異議はございますまいか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=74
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075・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) それでは左樣に取計らひます、文部省から見えましたから、是より文部省に關することに付ての質疑に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=75
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076・黒田清
○伯爵黒田清君 數日間此の委員會に於て取扱ひました問題は、總て「マッカーサー」司令部からの指令に依つて廢止せられました法律に付ての問題でありましたが、終戰後「マッカーサー」司令部からの指令に依りまして、我が國の色々な制度及法律に種々の改廢が行はれたのであります、然る處、茲に文部省關係のものが別に現れて居りませぬ、是は特別の指令が文部省には來なかつたかのやうにも思はれますが、併し此の文教に關しますることに關しまして、「マッカーサー」司令部から何等かの希望なり指示なりがあつたことと私は推察するのであります、其の點を文部省に御伺ひ致したいと思つて居ります、若しもさう云ふ點がございましたらば、出來る範圍内に於ての御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=76
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077・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 只今御質問にございましたやうに、今日迄聯合軍側から指令と致しまして覺書の形式で送付せられましたもので、文部省のみに關係するものも數件ございますし、又覺書の形に依らない口頭の指令も亦數件ございますし、其の以外に文部省に關聯はして居りますが他の省の所管に屬して居るやうなものもございますが、御質問に依りまして、あらまし御答へ申上げたいと存ずるのでございます、先づ覺書の形式で送付せられました文部省のみに關係するものと致しましては、第一に日本教育制度に對する管理政策と致しまして、十月二十二日の覺書がございます、是は一言にして申しますと、我が文教政策に關しまする根本の方針を示したものでございまして、教育内容に付きましては、軍國主義的及極端なる國家主義的「イデオロギー」の普及を禁止すること、殊に軍事教育の學科及教練は總て廢止すること、それから議會政治、國際平和、個人の權威の思想、及集會、言論、信仰の自由のやうな基本的人權の思想に合致する諸概念の教授及實踐の確立を奬勵すること、と云ふやうなことになつて居ります、それから教育機關の關係者に付きましては、軍國主義的なり過激國家主義的の思想を持つて居る所の教職員を其の地位から排除すること、又さう云ふ者は其の地位に就くことは出來ない、又職業軍人も矢張り其の地位に就き得ないし、又現に地位に在る者は排除せられると云ふやうなことになつて居ります、尚自由主義的又は反軍的言動の故を以て解職せられたり或は休職せられたりした者は直ちに復職せしめる、又優先的に復職せしめると云ふやうなことになつて居ります、其の外教科課程に付きまして色々技術的の意味の指示もございます、現行の教科目とか、教科書、教授指導書、其の他の教材に付きましては、軍國主義的乃至極端なる國家主義的「イデオロギー」を助長する目的を以て作成せられました科目をそれぞれ削除する、是は消極の方面でございます、積極的の方面と致しましては、教養あり平和且責任を持つ教職員の養成を目指す新教科目、新教科書、新教師用參考書を出來るだけ早く準備し、今行はれて居るものを變へると云ふやうなこと、それから特に先方と致しましては、教育施設に關しまして、初等教育及び教員養成と云ふことを重要視しまして、是等の再建に付きましては優先的に考へると云ふ風なことになつて居るのでございます、次に宗教の自由侵害の件に關しまして、十月二十四日の指令が參つて居ります、是は簡單に申しますと、詰り戰時中特に所謂「ミッション・スクール」的の學校、詰り是は「キリスト」教に關しまするものでございますが、さう云ふ學校に於きまして、時局の影響の結果、非常な變革が行はれましたので、此の點に付きまして聯合國側と致しまして十分事情を調査すると云ふやうなことを命じて參つたのでございます、第三に、是は最初に申上げました一般の管理政策の一つの現れでございますが、教員及び教育關係職員の適格審査に關する件に付きまして、指令が參つて居るのでございます、是は十月三十日でございます、此の適格審査の問題に付きまして、先程ちよつと簡單に申上げました其の原則に倣ひまして、先づ是々の者は教職員たる適格を持つて居ないと云ふ「ネガティヴ」的な方面を露呈して居るのであります、從つて現に其の地位に在る者は罷免されなければならない、又新たに地位に就くことは禁止されなければならないと云ふ譯でございます、罷免さるべき者は軍國主義者及び過激國家主義者であります、それから更に職業軍人が加はるのでございます、それから反軍思想、自由主義其の他思想的理由に因つて地位を去らしめられた者を復歸させろと云ふことが命ぜられて居るのでございます、次に美術品、記念建造物及び文化的、宗教的遺蹟竝に施設の保護に關する方針及び措置に關する件に付きまして十一月十二日の指令が參つて居るのでございます、是は日本政府に對しまして、是等の作品とか遺蹟とか云ふものを管理維持すべしと云ふことになつて居ります、それから又受けた所の損害に關する詳細なる報告を可及的に早く司令部に提出しろと云ふやうなことになつて居ります、それ等は覺書の形式に依る指令でございますが、其の以外に口頭で意向を通じて參つたものと致しましては澤山ございます、全部網羅出來ないかも知れませぬが、拾つて見ますると、或は武道教授を、正科なり隨意科なり何れたるとを問はず、學校内に於て禁止すると云ふこと、それから色々な軍關係の諸學校から普通の學校への轉入學に關する件、それから醫學、科學專門學校の内容を充實すべしと云ふやうなこと、それから教科書の印刷を停止し、又改訂を加へると云ふやうなこと、それから學術團體の研究、例へば學研だとか學士院だとか、さう云ふやうな團體の研究の成果を報告すべしと云ふやうな事柄でございます、更に他省との關係ある事項でありまして、文部省に關係のあります事柄と致しましては、先づ政治的、公民的及宗教的自由に關する制限除去の件、是は十月十四日の指令でございまして、文部省と致しましては宗教團體法の廢止と云ふことに是が關係して參りますのでございます、それから次に商業竝に民間航空に關する件、十一月十八日でございます、是は文部省と致しましては、航空に關する學科を廢止すると云ふやうなことに付きまして關係がございます譯であります、それから治安警察法の問題に關係しまして結社の自由の問題がございますが、教員、學生、生徒の政治結社に關係することの禁止が同法第五條に規定されて居りますが、それが廢止されますると、自由が認められると云ふことになる譯であります、それから尚映畫法が廢止されます譯になります、此の映畫法も社會教育課の所管になつて居ります、今囘の議會に提出されまして審議が進められて居りますことは御承知の通りでございます、今御説明申上げました中で宗教團體法の廢止と云ふことが問題になつて居りますのでありますが、併し現在迄の所はまだ廢止されて居りませぬから、文部省關係に於きまして、緊急勅令の結果廢止せられた法律は、只今迄の所はないと申上げ得る譯でございます、併し是が廢止されましたと致しますと、影響する所は大きいのでございまして、矢張りそれに對する對策を講じなければならないのでございます、從つて宗教の自由の面からして、宗教團體法を廢止されましても、宗教團體の詰り教團だとか寺院教會などの財産を保全する、又從來享有して居りました税法上の利益を矢張り依然として享有しなければならないと云ふやうな必要もございますので、目下それに關する詰り宗教法人に關しまする所の規定を準備中でございます、是は先方と致しまして急速を要するものと考へて居るやうでございます、併しながら又他方法規の制定に當りましては、飽く迄「デモクラティック」な手續を執つて貰ひたいと云ふ要求でありまして、從つて其の爲には宗教の各派の當局の意見も聽くと云ふことが必要になつて參ります、さう云ふ意味に於て目下準備中でございます、それから教職員の適格審査の問題でございます、是は先程申上げました十月三十日の指令の結果、急速に實現しなければならない譯でございます、併しながら其の細かい内容に付きまして、其の指令に從ひまして立案をして見ますると、非常な面倒な問題が多々ございます、どう云ふ種類の教職員が適格を持つて居ないかと云ふことに付きまして、相當詳しい所の實體的の規定が必要になつて參りますので、他方此の實體的規定を遂行致しまする爲に、手續の規定が必要になつて參りまする、それ等の細かい點に付きましてこちらでも十分考へまして、司令部の方から諒解を得つつあるのでございます、さう云ふ點に付きまして、矢張り十分實情に即した、我が國の教育界の現状に即したやうな規定を設けなければならないのでございます、さう云ふ點に付きまして、一々司令部の方と十分話合ひまして、成るべく完備したものを出したいと云ふ風に存じて居る次第であります、是も併しさう長くは掛らないと存じます、不日公表されるのではないかと思つて居るやうな次第であります、大體から申しまして、聯合國側の意圖は、一口で申しますると、我が教育界の民主化と云ふことに歸著するのでございまして、聯合國側に於きましては、我が教育界をさう云ふ線に沿つてどう云ふ風に改善しようかと云ふことを企圖して居る譯でございまして、我々もさうでございますが、我が國が斯う云ふ風な状態に陷つたと云ふことに付きましては、教育が不徹底であり、教育が曲げられて居つたと云ふことが重大なる原因の一つになつて居りますからして、聯合國側に於て教育の問題に付きまして非常な熱意を持つて居ると云ふことは、是は甚だ理解に容易なることと存じます、さう云ふ點に付きまして、文部省の方針と致しましては、先方の指令を受けたからと云ふ譯ではなく、又受けさうだから先手を打つと云ふやうな、さう云ふ意味でもありませぬ、元來教育の本義に照らして、從來と雖も教育の方針は斯うでなければならなかつたのであります、併しながら不幸にしてさう云ふ風になつて來て居なかつたのです、と云ふ意味に於きまして、從來の教育の方針に根本的の再檢討を加へまして、大々的反省を致しまして、平和國家、文化國家を建設しようと云ふ眞劍な意圖の下に、色々な施策を考案致しまして、及ばずながらぼつぼつ實現に移しつつある譯でございます、併しながらまだ終戰後日淺いことでございまして、なかなか問題が堆積して居りまして、或はまどろかしいと御考になりますかも知れませぬけれども、文部省と致しましては全力を注いで居るやうな譯でございます、さう云ふやうな譯で、形に於きましては、先方から指令を受けて、已むを得ずやると云ふ風に見えるやうな場合がございましても、實際は教育は本來さうなければならないものであると云ふ信念に基きまして、指令の有無を問はず、研究し、又實施に移さむと努力して居るやうな次第でございます、で此の爲に聯合國側とも、必要がありますならば十分内談を遂げまして、先方の意見も十分聽きまして、此の内談を致しますることが大變宜い「サゼスチョン」を與へることもございます、又場合に依りましては我々の方から實情を十分説明しまして、先方でも諒解すると云ふやうなことも隨分ございますのであります、さう云ふやうな方針で以て十分實情を説明致しまして、諒解を求めることに努力して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=77
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078・黒田清
○伯爵黒田清君 只今の御説明で「マッカーサー」司令部からの指示、又「マッカーサー」司令部の大體の希望と云ふものが能く分りましたのですが、勿論日本が今後新しい日本の建設を爲して行く上に、文教の問題が非常に重大な、最も根幹を成すものであると云ふことは申す迄もないことであります、今日現政府が種々の施策を計畫されて居りますが、是は私から申しますれば、一つの技術的の問題でありまして、其の本當の技術を活かして行くのは矢張り人間でありますから、其の人に正しい思想と、豐かな教養とを注ぎ込むことが、其の技術を如何に完全に運行させて行けるかと云ふ問題になるので、其の點の今後の文部省の御抱負も定めし大なるものがあると思ひますし、私も今後の文部省の諸施策に付ては十分信頼するに足るものがあると思つて居るのでありますが、茲で伺ひたいのは、大體「マッカーサー」司令部の申して參りましたことは、軍國主義の拂拭と云ふことと、今後日本の文教が民主主義の上に行はれると云ふことでありますが、文部省に於かれましても、大體此の自由主義、民主主義の上の教育、是は今政府委員から御話がありましたやうに、「マッカーサー」司令部から教はつたことでなく、教育の本來の使命であるのでありますが、今日迄時々新聞紙上で拜見致しますと、民主主義に於ても日本的なる民主主義に依つてと云ふやうな言葉がありますのですが、今後日本の教育に於きまする民主主義と云ふものを昂揚するのには、どう云ふことが中心思想と申しますか、精神はどう云ふ所にあるのでございませうか、大體の御方針を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=78
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079・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 只今の御質問は今後の文教政策に關しまして文部省がどう云ふ根本方針を執つて居るかと云ふ御質問と承つて宜いかと思ふのでございます、で勿論我が文教政策は、一口に申しますると、民主主義の實現、平和國家、道義國家、文化國家の建設と云ふことに向つて居なければならないのでございます、併し更に具體的に申しますと、個々の點に付きましてどう云ふ方針でやつて居るかと云ふ御尋かと存じます、それに付きましては、先づ軍國主義又過激國家主義的要素を拂拭する、是は或は教職員即ち教育界の構成の人員の方面に於きまして、或は如何なる内容の教育が今迄行はれて居つたかと云ふ、其の内容的の意味に於きまして、其の二つの意味から軍國主義竝に過激國家主義的の要素を拭ひ去つてしまふと云ふ消極的の方面が一つでございます、併しながら此の消極的方面だけでは足りませぬので、積極的にどう云ふ風な教育の内容をして行かなければならないかと云ふことに付きましては、私共、斯う云ふ時代の移り變りと云ふことに關係のない本當の教育の本義に照らしまして、どうなければならないと云ふ點からして考へて見るべきではないかと存ずるのであります、處で此の點に付きましても、今迄の我が國の教育界が一體どう云ふ方面に於て缺陷を持つて居るかと云ふことを考へて見ますると、要するに眞理と云ふものが十分それ自身として尊重せられなかつたのではないか、或は道徳的原理にしろ、或は科學的眞理にしろ、又宗教にしろ、文化にしろ、國家とか民族の發展の手段であるかのやうに考へられて居りまして、自己目的として追究されなかつたと云ふ所に遺憾があつたのではないか、從ひまして例へば歴史の研究なり、或は歴史の教育に於きましても、さう云ふ精神を以て爲され、何か手近な政策的の意圖を以て歴史が研究せられ、又歴史の教育が爲されて居たと云ふやうな嫌ひがあつたのではないかと思ふのであります、斯う云ふ點に付きましても根本的の反省をする必要があるのではないかと存じますので、若し御尋がございましたならば、此の國史の教育に付きましては、又後程申上げる機會があるかと思ひます、それから一番大切なことは從來國民道徳と云ふものが形式主義化されて居りまして、唯形の上のことばかりを要求して參りまして、詰り其處にも亦軍隊式が入つて參りまして、號令で以て道徳が遂行されると云ふ印象を與へるやうな風になつて參つて居るのであります、從つて形骸化した國民道徳に代るに、もつと内容的な、良心其のものから發して居る所の我々の行動でなければ、道徳的に價値がないと云ふことを、國民教育に於て特に強調する必要があるのではないかと思ふのでございます、詰り或は眞理を、或は眞實を、それ自身として探究致します、尊重致しますと云ふことに依りまして、詰り所謂國家が總て眞理や眞實を支配する、眞理や眞實は國家の奴隸になるのだ、或は何か具體的政策を實行して行く上の手段になるのだと云ふうやうな風に考へまする所の從來の風潮を、根本的に是正しなければならないと云ふ、此の點が非常に大きな今後の教育の根本的の方針にならなければならないかと存ずるのであります、それからもう一つは、總て國民の教養の水準が、他の諸國に比較致しまして、必ずしも高くはない、世間では餘程高いやうに考へて居りましても、實際を見ますると、必ずしもさうでない、識見なり、或は智識と云ふやうなものが甚だ狹隘になつて居る、眼界を廣く世界に放ち、有らゆる世界各國の有益なるものは、日本で以て偏見なしに受容れると云ふやうな態度がなかつた、其の態度に於て缺けて居りましたことも、矢張り今日の國民の教養の水準の低下の原因となつて居るのではないかと思ひます、今後に於きましては、世界的の人物を養成する、日本人となる前に、一個の人間でなければならない、人格者でなければならない、同時に其の日本人は矢張り世界人類の一員であると云ふやうな氣持を、教育者なり、又被教育者なりが有つやうになつて、特にさう云ふ意味に於きまして教育者の頭を切換へる必要があるのではないかと思ふのでございまして、今後の教育者の頭の切換に付きましては、或は教育研修所とか云ふやうな從來の施設を利用致しまして、又教育家を集めまして、講演會なり、或は講習會なり、座談會と云ふやうな催しを度々開きまして、或は「ラヂオ」だとか、映畫だとか、其の他色色な方法に依りまして、此の教養の水準の向上、又眼界を廣くすると云ふやうなことを實現したいと存じて居る次第でございます、尚教育に於きまして、特に民主主義をどう云ふ風に實現して行くかと云ふやうなことに付きましては、色々な考も成立ち得るかと存じますが、私が二、三考へ付きましたことを申上げますと、教育と云ふものを獨立せしめる必要があるのではないか、即ち教育の權威の維持、言ひ換へますると、教育と云ふものが從來如何にも政治の手段、或は政治の一角を成して居つたと云ふやうな、さう云ふ考へ方をなくしまして、教育自身がそれ自體價値があるものと考へるやうな思想に立つことが必要ではないかと存ずるのであります、で此の教育の尊重、是は我が國に於て度々口頭禪として唱へられて參つた譯であります、併しながら實現はなかなかむつかしかつたのでございます、今後之を是非實現したいものと存じます、でさう云ふ意味から、現在の我が教育系統の面を再反省致しまして、例へば中央に於ても、或は地方に於ても、政治なり行政と教育の方面との關係をどう云ふ風に改善して行くかと云ふことを、詰り教育の權威を維持すると云ふ意味に於きまして、再檢討を加へる必要があるのではないかと存ずるのでございます、それからもう一つは教育關係、詰り教育者と被教育者との關係でございます、其の關係に於きまして、「デモクラシー」の理想をどう云ふ風に實現して行かなければならないものであるかと云ふ點でございます、頻々として此の頃起つて居ります、是は甚だ遺憾なことでございますが、所謂學校紛擾なんかに付ても、文部省と致しまして適當なる大方針を示さなければならないのでございます、それに付きまして、抽象的ではございますが、詰り此の教育者と被教育者との間に於きまして、所謂軍國主義的な權力的な關係と云ふものは、是は本當の關係ではないと云ふ風に我々は存じて居るのでございます、詰り被教育者は教育者に盲目的に服從して居る、奴隸的に隸屬をすると云ふのではないので、矢張り教育される學生、生徒、學童等も一個の人格者でありまして、さう云ふ風に取扱はれなければならない、是が矢張り眞の「デモクラシー」の理想ではないかと存ずるのでございます、さう云ふ風に教育されるものを一個の人格者として見ると云ふのが從來缺けて居つたのではないか、從來不十分であつたのではないかと存ずるのでございます、詰りさう云ふ點から申しまして、人格の完成、個性の健全なる發達と云ふことも考へられなければならないのでございます、それから教育者は然らばどう云ふ風に考へらるべきかと申しますと、此の教育者も、被教育者の單なる功利的の意圖、即ち被教育者が知識を獲得する手段、教育者の方では學問を切賣りすると云ふやうな、さう云ふやうな態度であつてはならないので、被教育者が教育者を利用すると云ふ風なものであつてはなりませぬ、で矢張り此の人格的な關係がそこにあり、被教育者は教育者を權威者として敬ふ、是は軍隊式の權威ではございませぬ、道徳的或は知識的の意味に於きまして、本當に權威を持つてる者として、被教育者が教育者を尊敬すると云ふやうな關係が成立つて居なければならないと思ふのでありまして、で學校と云ふ社會、即ち學園に付きましては、私共は其の學園が一つの家族的の團體であると云ふ風に考へたいのでございます、其の家族的の團體に於きましては、愛とか敬とか云ふことが基調になつて居り、教育者は專制君主的の權力で以て被教育者を壓迫すると云ふのではありませぬし、又幾ら自由主義の世の中であるから、民主主義の世の中であるからと言つても、勝手な行動を被教育者が執る、自由が放恣に流れると云ふやうなことがあつてはなりませぬ、教育者は被教育者の人格を尊重すると同時に、被教育者も教育者を自分の父兄として敬ふと云ふやうな態度がなければならないと思ふのでございます、要するに道徳とか秩序とか云ふものが、學園と云ふ家族的な團體の中に於きまして支配しなければならない、其の範圍に於て民主主義なり自由主義と云ふものが許されるのであると云つて宜いのではないかと存ずる次第であります、でさう云ふ氣持から、さう云ふ根本方針、根本觀念から致しまして、現在色々教育制度を反省して見ますと、或は教育の現實を反省致して見ますると、或は教育が畫一主義に餘り流れてしまつて居る、或は合理的に物を考へる習慣が足らなくなつて居つた、或は女子が特に男子よりも教育上に於て劣つた地位に置かれて居つたと云ふやうなことも反省されなければならない譯でございますし、又教育に關する只今申上げましたやうな目的を遂行して行く上に於て、師範學校制度と云ふものが十分其の目的に適つて居るかどうかと云ふことも檢討を要することではないかと存じます、又宗教教育と云ふものは、從來宗教と教育が分離せられて居りまして、其の分離は極端に達して居りましたのであります、私立學校で以て宗教的の要素を採り入れて居りまするやうな學校も、從來時局の影響の結果、其の宗教教育に付て自由を與へられず、壓迫せられて居つたやうな譯でありまして、さう云ふ方面の宗教に於て宗教教育を尊重し、自由なる活動を認めると云ふやうなことが必要になつて參ります、其の外、教科書の根本的改訂なり、國史教育の方針を反省する、又公民教育を學校教育及社會教育兩方面に於きまして普及させ、健全なる國家的及政治的の思想を涵養すると云ふやうなことが必要になつて參ります、又科學教育の方面に於きましても、まだまだ其の振興と云ふやうなことに付きましては、合理的に又有效に其の目的を達する爲に改善すべき點が多々あるかと存ずるのであります、尚體育等も、軍國主義的の意味ではありませぬ、本當の健全なる精神が宿るべき健全なる肉體を鍛錬すると云ふやうな意味に於きまして、從來の「イデオロギー」と違つた意味の體育が重んぜられなければならないやうな譯でございます、根本の方針に付きましてもまだ色々ございますかと思ひますし、又個々の施策に付ては尚更澤山考へられるのではないかと存じますが、只今の御質問に對しまして思ひ付きましたことはそれだけでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=79
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080・黒田清
○伯爵黒田清君 大體の根本の方針は、伺ひまして能く分りました、總理の施政演説にもありましたやうに、今後公民教育、社會教育と云ふことに重點を置いて、……其の公民教育と云ふことは、私は今日迄の文部省が殆ど取扱はなかつたと言つても過言ではないと思ふのであります、是は非常に重要な問題でありますが、扨此の公民教育をされますのに、どう云ふ方法と云つて、一々具體的の方法を伺ふ必要もないのでありますが、公民教育に付て、私は是は文部省が今後なさるべき新しい一つの仕事ではないか、今日迄日本の文部省が餘りしなかつた一つの教育ではないかと思ふのであります、此の公民教育に付て最も必要なものは、教養と云ふことだらうと思ひます、今日迄日本人に一番缺けて居るものは教養と云ふことだらうと思ひます、是は言ふは易くして、なかなか之を教育し授けることは非常にむづかしいと思ひますが、此の公民教育に付て色々の御方針もあると思ひますが、極く簡單で宜しうございますから、公民教育をどう云ふ風になさいますか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=80
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081・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 只今仰せになりましたやうに、公民教育と云ふことが、現下の時局に直面致しまして、或は又さうでなくとも平常からして、重大な意義を持つて居ると云ふことは、全く仰せの通りでございます、扨之をどう云ふ風なものに改善して參るかと云ふことになりますと、實に困難なる問題であります、困難であればある程、又眞劍に考へなければならない問題でございます、從來の公民教育が甚だ遺憾な状態にあつたと云ふことは、御説の通りでございます、特に中等學校に於きましては、公民教科書と云ふやうなものがございまして、法制經濟の專門的な書物の目次を集めたやうな内容のものでございまして、全く盛り澤山で、而も砂を噛むやうな乾燥無味なものであつた嫌ひがありました、從つて是は教科書の改訂問題にもなつて參りますが、もつと活きた現實の社會に即した、又國民として實踐して行き得るやうな、さう云ふやうな方面に教科書の改訂をしなければならない、餘り煩瑣な教科要目等を細かに定めると云ふことは、是は公民の方のみならず、有らゆる他の科目に付きましても同樣なのでございますが、特に公民教科書を見ますると、先刻申しましたやうな傾向が濃厚なのでございます、此の公民教育に付きましては、或は從來の修身と公民と云ふものを分けるべきものであるか、或は修身を公民の中に採り入れて一緒にして教授すべきかと云ふやうな問題もございますが、何れにしろ、修身にしろ、從來の公民にしろ、非常な乾燥無味な、形式的なものになつて居ります、それにもつと血の通つた、肉がたつぷり付いて居るやうな、さう云ふものにしなければならないと云ふ風に考へて居ります、併しながら公民教育は、學校教育のみには限りませぬのでございまして、廣く社會教育的方面の活動を俟たなければならないのでございまして、是は色々な講演、「ラジオ」或は映畫、其の他或は藝術的……先程伯爵が御指摘になりましたやうな、國民の一般的な教養を高めると云ふ方面に向つて、公民教育の意味を廣く解釋しますこと迄入つて參ります、さう云ふ「シティズン」を教養する、「シティズン」を養成すると云ふ方面に向つて、此の社會教育を十分振興して行かなければならないと考へるのであります、從來此の社會教育局の活動は、さう云ふ方面に向いて居りませぬでしたが、從來は社會教育局と云ふ局がございませぬでしたが、最近文部省の官制の改革に依りまして、社會教育局と云ふ獨立したものが出來まして、今此の公民教育の普及徹底と云ふことに付きまして、專門家に集つて戴きまして立案中のやうな譯でございます、是は聯合國側に於きましても、特に非常な重要なる意義を持つ事柄と致しまして、期待して居る所が大きいのでございます、殊に「アメリカ」などでは、公民教育、「シヴィックス」と申しますか、さう云ふ方面を非常に研究されて居るさうでありまして、教科書なども隨分特色のある良いものが澤山出て居ると云ふことを聞きましたのですが、さう云ふ良い教科書なども參考に致しまして、他日教科書の改訂の際に利用せられることと存じて居ります、其の點に付きましては、まだ實は「スタート」致しましたばかりで、公民教育の改革と云ふことに付きましては、今後專門家の委員の方々に研究をして戴き、さう云ふ御協力を得て、文部省としても、十分考へたいと思つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=81
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082・黒田清
○伯爵黒田清君 今の公民教育に付ての大體の御方針は分りましてございますが、どうか此の公民教育と云ふものは非常に重要なものでありますのと、是が兎もすると今の御話のやうに砂を噛むやうなものになつてしまふ虞がありますから、どうぞ此の公民教育に付きましては、一方情操教育と云ふか、潤ひのある點を加味した教育方針を御立て願ひたいと、私は希望するのであります、次に今教科書の問題が起りましたが、教科書は勿論改訂されなければならないのでありまするが、其の中で最も重大な問題が二つあると思ひます、一つは日本歴史を今後どう取扱ふかと云ふ問題であります、一つは國語の問題でございます、私は茲に只今政府委員に日本歴史を今後どう取扱はれるかと云ふことを伺ひたいのでありまして、國語の問題は、私は希望として申述べて置きたいと思ひますから、別に御答辯は要らないのでございます、と云ふのは、此の國語の問題は、今日迄日本で、文部省に於て色々研究せられて、色々な案が出たのでありまするが、或時は右に行き、或時は左に行き、殆ど其の去就を知らずと云ふやうな状態であります、併し一國の文化問題から申しまして、國語と云ふのは最も中心を成す重要な問題でありますから、今後は大英斷を以て此の國語問題を一つ決定して戴きたいと私は思ふのであります、是は私の希望と致しまして、只今伺ひたいことは、今後日本歴史と云ふものをどう云ふ風に御取扱になるかと云ふことを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=82
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083・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 我が國史の研究なり、或は教育なりが從來に於きまして甚だ不自由な状態にあり、國史の學者達、或は國史を教授します際に於て教職員達が、本當の良心に從つて研究し、或は教授すると云ふやうなことが十分出來なかつたと云ふ事情に付きましては御推察の通りでございます、是は何故かと申しますると、詰り國史の研究なり、或は國史の教育と言ひまするものが、本當の眞理を尊重し、眞實に即すると云ふやうな、さう云ふ學問的の良心に於て甚だ不十分であつたと云ふことに歸著するのではないかと思ひまするのであります、詰り、或「イデオロギー」から國史の研究を爲す、或は國史に於ける重要性を拾ひ上げる、又さう云ふ方面のみを「イデオロギー」に都合の好いやうな方面のみを強調すると云ふやうな傾があつたのであります、今後の行き方としましては、總て學問に對する態度は同じでありまするが、國史に付きまして、特に今迄のさう云ふ傾向、或は弊害を是正する必要があると云ふことを痛切に感じますのでございます、從つて國史に付きまして、我々は過去に起つた出來事に付きまして、眞實を眞實として教へると云ふ點を根本に致しまして、從つて偏らないで萬遍なく國史を探究し、又國史を教授すると云ふ方向に向はなければならぬのではないかと思ひます、從來は「イデオロギー」的に偏して居りました結果、政府史の方面が國史に於きまして非常に重要性を持つて參りました、從つて文化史的な方面及び社會史と云ふやうな方面に於ての國史の記述、國史教科書に於きまする記述の點は甚だ手薄であつたと云ふ感じがします、さう云ふ政治史に偏らない、廣く日本民族の歴史、過去の事實を闡明する、それを詰り學生、生徒及學童に教へる、さう云ふ態度で參らなければならない、過去に於ては成功もありましたでせう、或は失敗もありましたでせう、成功のみを強調し、失敗は隱蔽すると云ふことでなくして、眞實を其の儘教へますることが、是が非常な教訓になることでありまして、過去の失敗を包み隱さず教へると云ふことに依りまして、將來再び其の失敗を繰返さないと云ふやうな意味に於きまして歴史が多大なる教訓になるのでありまして、決して好い所ばかりを拾ひ上げない、事實其のものの中に偉大なる教訓があると云ふ方針を採ることが、是が國史の教育上大切なことではないかと存ずるのでございます、で事實と云ふことになりますると、神話とか傳承と云ふものと歴史との關係が問題になつて參ります、是は極めて「デリケート」な問題になつて來ます、殊に建國の始め、或は神代のこととか云ふことになつて參りますと甚だ「デリケート」な問題になつて參ります、さう云ふ點に於きましても事實に即して居ない、事實に依つて立證されないと云ふやうな點は、事實だと云ふ風に牽強附會な主張はしない、是は史實に依つてまだ確められて居ない、國民の間に存在する傳承に過ぎないのだと云ふやうな態度で以て教へるべきではないか、併しながら傳承と云ふものは必ずしも價値がないものであるかと云ふと、さうではありませぬ、さう云ふ風な傳承を生み出だした日本民族の精神或は傾向と云ふやうなものは、是は史實として嚴に存在して居ります、どの國の歴史の教科書を見ましても、遠く昔のことに遡りますと、史料に依つて立證されないやうなものも多々あります、立證せられなければ立證せられない儘の傳承として率直に示して置くことが必要ぢやないかと存ずるのであります、處が今度は又反對の誤に陷り易いのでありまして、民主主義が國策の大綱であると云ふことになりますると、今度は民主主義的の方面だけを拾ひ上げて、さうして民主主義的教育の徹底に資しようと云ふ、さう云ふ誤に又陷る虞があります、我々はさう云ふ誤にも、矢張り過去に於て陷つた所の誤と同じやうに警戒しなければならないのではないかと思ふのであります、丁度「マルクス」主義者が總て歴史を階級鬪爭の立場を以て見る、さう云ふ色眼鏡を以て見る、それが正しい方法ではないと同じやうに、民主主義的の方面からさう云ふ色眼鏡で以て、我が國史の上に於て民主主義的の精神が現れて居るのは是々の箇所であると云ふ風にして、さう云ふ方面だけを強調するのも、矢張り公平なる眞實に即する歴史の教育ではないのぢやないかと存ずるのでございます、從つて文部省と致しましては、新しい時代の國史の編纂なり或は國史の教育は斯う云ふ風にしなければならないのだと、民主主義の方を特に強調すると云ふやうなことも、是も矢張り公平なる態度ではないと存ずる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=83
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084・關義壽
○男爵關義壽君 先程御説明中にございました宗教團體法の廢止とか、是も宗教の自由から來たのでございませうが、それに對して寺院とかさう云ふものの財産の保持、保護の爲に法人とか何か組織を以てやると云ふやうに伺ひましたが、其の點もう一遍具體的に詳しく御説明願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=84
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085・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 從來御承知のやうに宗教團體法の中には色々な規定が入つて居りまして、一つは宗教の取締りの方面でございます、もう一つは宗教團體の財産の保全、又税法上の特權と云ふやうなものが規定されてあるのでございますが、宗教上の自由、信教の自由が徹底的に認められると云ふことになりますると、從來の宗教團體法は其の全般に於きましては、是は廢止されなければならないことになるのでございます、併し然らばと申しまして、宗教團體が法人格を失ふ、詰り財産上の主體でなくなると云ふやうなことになりますると、是は宗教團體の爲に非常に不利なのでございます、從ひまして若し是が廢止されたと云ふことになりますと、どう云ふ風な結果になりますかと云ふと、民法上の公益法人の規定が教會なり寺院なりに適用されなければならないと云ふことになります、從つて民法上の公益法人の設立に關する規定に準據致しまして一般原則で法人設立認可の手續を經なければならないことになります、若しさう致しませぬと税の關係上甚だ困つたことになりまして誰かの名義に財産がなつて居りますると、其の代表者が税を拂はなければならないやうに立至ると云ふことは御承知の通りでございます、從つてどうかして此の民法上の法人とは言はずとも兎に角法人にする必要がございます譯で、そこで民法上の公益法人の設立に關する手續が繁煩になつて居りまして又厄介でありまして、なかなか許可にならない、又容易に許可致しますると、弊害がございますやうな譯でございまして、各官廳に於きましては、色々内規が決つて居りまして、公益法人の設立は容易にしないと云ふやうなことになつて居ります、處がさう云ふ風なことになりますると、又非常に此の宗教團體の健全なる發達及び財産保全の爲に支障を生じます譯で、宗教團體の方面からの需要を滿たすことは出來ないのぢやないかと思ひます、それで詰り民法上の公益法人の規定よりももつと宗教團體に有利な財産保全を目的とする所の法人を設立することが出來るやうにする必要がありはしないか、さうして免税の方面に於きましても矢張りそれは民法上の公益法人と同等、或はそれ以上の特權を與へる必要があるのではないかと云ふ意味に於きまして宗教法人に關する規定を考へて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=85
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086・黒田清
○伯爵黒田清君 先程教員の資格審査と云ふことが御話がありました、勿論教育と云ふものは教育者が非常に大事なものでありまする、嚴格な審査で、待遇がそれに伴つて改善されないと云ふことは非常に氣の毒なんでありますが、過日の新聞で教員等に對する待遇の改善が出て居りましたけれども、私はあの程度の改善では十分なものではないと見ますが、是は今後どう文部省で御考へになりますかは、今此處で以て伺ふ必要もありませぬけれども、私の希望としては之れだけは劃期的の大改革をなすつて、思ひ切つた改善をなさらなければ、今日迄文部省が計畫せられたこと、又今後の文教施策と云ふものは、殆ど私は出來ないのではないかと迄思ふのであります、さう云ふ點は文部省でも相當の改善をなさる積りで居られると思ひますが、尚十分其の點は思ひ切つた改善をなさるやうに私は此の際に希望する次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=86
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087・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 只今教職員の待遇の改善問題に付きまして甚だ適切なる御發言がございまして、文部省の方に於きましても大いに熱意を持ちまして何とか實現致したいと努力して居る次第でございます、先程申上げました教育の獨立と云ふことは教職員の獨立であり、教職員の獨立は經濟的の獨立、及び制度上の獨立、兩方になるのではないかと思ひます、經濟上の獨立、詰り體面を維持する、生活上無用なる心配をしなくても宜しいと云ふやうなこと、之が矢張り重要な影響を受けることになるのでございます、其の意味に於きまして、他の同一の官公吏と云ふやうなものよりも教職員は特に優遇されて然るべきものでないかと云ふ風に存じますのであります、併し是は中々豫算の關係もございますし、色々實現は困難ぢやないかと思はれますが、併し十分努力致しまして只今の御要望に副ふやうに致したいと存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=87
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088・黒田清
○伯爵黒田清君 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=88
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089・竹下豐次
○竹下豐次君 主として國民學校の教育に付てでございますが、國民學校の校長の殆ど大部分と云ふものが今日の所、師範學校を出て居るのでありまして、惡い言葉であるかも知れませぬが所謂從來言はれた師範學校教育型と云ふやうなことで、餘り世間が廣くないと云ふやうなことがあるかも知れないと思ふのであります、處が今度戰災に遭はれた人とか、或は社會の變遷に依つて、自ら進んで、或は已むを得ず地方に中央から相當な立派な人達が御歸りになると云ふのが今日の状態だと思つて居ります、さう云ふ人達を縣廳あたりの方で積極的に御頼みして、積極的に學校の校長になつて貰ふと云ふやうなことを爲さつたら或は良い結果が擧るのではないか、之も餘り澤山校長にさう云ふ種類の人を入れられましては若い先生達が校長になる希望を失ひまして、其の方の弊害も起つて來るかと思ひますが、又さう澤山さう云ふことを引受けて下さる人があらうとも思はれない、幾らかさう云ふ方面の人を御頼み爲さつて、特殊の自分の理想を持つて之を實現すると云ふ人もあるかも知れないと思ひますが、餘り型に嵌らない、力の入る場面が現れて來るのではないか、さうすると其の外の先生達も校長先生に右倣へすると云ふことになつて來るのではないかと考へて居るのでありますが、さう云ふ方面に付ては文部省の方で何か御考慮はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=89
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090・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 只今の「サゼッション」して戴きました點は、教育界に清新の氣を溢らしめます意味に於て非常に結構な考であると思ひますが、實は文部省と致しましても及ばずながら直轄學校の校長を異動する場合に於ても、最近に於ても相當廣範圍の異動がせられたのでありますが、各方面からの、まだそれ程年は取つて居らない、而も教育に付て非常に熱心な、官吏を引退された方でも宜ければ、實業界を引退された方でも宜いのでありますが、今暇であられるやうな方の中から二、三人でも宜いが、願ひたいものだと云ふ風に努力致しまして、目星を付けて交渉致しましたこともありますが、發表を急いで居るやうな色々の事情の關係もございまして、初めの「プラン」通りには參らぬやうな譯でございまして、其の點殘念に存じて居ります、併し私共さう云ふ風な考へで行きたいと思つて居ります、是は地方の中等學校或は初等學校に付ても同樣、今の御話の通りでございまして、さう云ふやうになつて行くと世間と云ふものも教育をもつと尊重するやうになりはしないかと存じます、それに付きましては唯地方の教育界と云ふものを本當に教育者の團體にし、自治的に教育に關する意見を決めると云ふ風な權威あるものにしたいと云ふやうな考へも持つて居ります、教育界を詰り官僚的なものでなく、教育者の自治的のものとしよう、又教育者にはさう云ふ本當の玄人でない、所謂素人で本當に文教なり或は公民教育と云ふやうなことに付て熱意を持つて居られる人々を入れると云ふやうな風にしたいと存じて居ります、それで最初に仰せになりました師範教育のことでございますが、私共所謂師範型の弊害と云ふことは痛感して居ります、是は御話がございましたやうな所謂教育者として寧ろ眼界が狹い、一般の教養に於て缺ける所があると云ふ缺點でございます、それに付ては十分反省致しまして、師範教育に付ての根本的の刷新の案を今立案中でございます、それで相當に世間の輿論もそちらの方に向いて居るやうな次第でございまして、文部省としては大變心強く思つて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=90
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091・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 文部省に付ての御質疑がなければ、更に他に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=91
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092・中川良長
○男爵中川良長君 只今學校の廢止、休止の状態はどう云ふ状態でありますか、殊に東京等は殆ど休止が主だらうと思ひますが、現に國民學校の如きも地方に居りました生徒が約一箇月程前に全部引揚命令を受けて居ります、それで皆東京へ歸つて參りました、それで燒殘りの學校に移動しまして、其處で教育を受けるであらうと思ふのでありますが、それ等の窮状も察するに餘りある實情でありますが、一般そこいらの教育はどう云ふ風な今日状況になつて居りまするか、一應伺つて置くと大變に結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=92
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093・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 學校廢止、休止の状態に付きましては、計數的に御答へ出來ませぬのは甚だ殘念でございますが、戰災學校の善後策をどう云ふ風にしたら宜いかと云ふやうなことに付きましては、直轄學校に付きましては、中央で委員會に於て、軍の施設を利用するとか、或は中等學校以下に付きましては、地方で最寄の矢張り軍の施設を利用するとかと云ふ方法で、色々善後策を講じて居る次第であります、併し是はなかなか急速に參らないのでございまして、今迄の處實現されたものは極めて僅かではないかと思ひます、臨機應變にさう云ふやうな方針を持つて居ります、尚休止の原因に付きましては、食糧事情等の關係もございまして、此の冬の休を中に挟みまして、相當長い休暇を學生や生徒に認めて居るやうな状態になつて居ります、是は矢張り比較的食糧事情の良い地方に父兄が居りますやうな場合に於きましては、そちらに歸つて休養して來ると云ふやうな必要も考慮した譯でございます、國民學校がさう云ふ食糧事情等の關係なく、純然たる戰災の爲にどの位休んで居るかと云ふやうなことに付きましては、實はまだ十分正確なる材料を持合せて居りませぬので甚だ申譯ありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=93
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094・中川良長
○男爵中川良長君 其の材料は今日御持ちにならないのですか、文部省で現在御分りにならないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=94
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095・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 今日持合せて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=95
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096・中川良長
○男爵中川良長君 それでは適當な方法で、表とか何とか御拵へになつて、委員に御分ち戴きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=96
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097・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 左樣取調べまして差上げることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=97
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098・中川良長
○男爵中川良長君 現在の重大な問題でございます、只今御話になつたことは將來の計畫の問題でありますが、今學生をどうしよう、今の學校設立を將來どうしよう、是が焦眉でありまして、今の御計畫なんぞ御腹案があつても、それは無效であります、御腹案があればある程、學校と云ふものを設立してそれに出校するのでありますから、御腹案だけは御持ちになると云ふことは實效ないことである、學校それ自身が今どんな状態になつて居るか、將來學校を何處に建て、どう云ふ風にして教育をして行くか、茲に根本があると思ふのでありますから、學校の破壞の状態が如何にあるかと云ふことは第一問題でなければならぬと思ひますので、特に此の點を高調致す次第であります、而も今日それを伺ふことが出來ないと云ふのは甚だ殘念で遺憾の意を表する譯であります、何か御持ちですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=98
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099・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 罹災學校の數に付きましては、統計はございますが、併しどれだけの學生、生徒が出席して居るかと云ふやうなことに付きまして細かな材料を持合せて居らないのでございまして、國民學校に付きましては九百九校でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=99
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100・中川良長
○男爵中川良長君 ちよつと御話中でございますが、それは東京だけのことですか、全國ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=100
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101・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 是は全國です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=101
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102・中川良長
○男爵中川良長君 さうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=102
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103・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 全燒が九百九になつて居ります、其の外直轄學校其の他に付ても調べがあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=103
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104・中川良長
○男爵中川良長君 ちよつと明瞭を缺きますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=104
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105・田中耕太郎
○政府委員(田中耕太郎君) 官公立大學、高等學校、其の他直轄學校總て罹災國民學校を含めまして、又それぞれ罹災の學校の統計が出來て居ります、官公立、私立全部の大學の中で、全燒若くは全壞が二校でございます、それから大部分が十四、一部が八、輕微が一つと云ふことになつて居ります、それから官立、公立、私立の高等學校に付きましては、全燒又は全壞が五校、大部分燒けましたのが五校、それから一部分が五校、それから專門學校に付きましては、官公立を含めまして四十九校、是は全燒又は全壞でございます、それから大部分損害を受けましたのが二十三校、一部分が二十六校と云ふことになつて居ります、尚國民學校に付きましては、繰返して申上げますと、九百九でございます、是は全燒又は全壞でありまして、總數は二萬五百八十五校であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=105
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106・中川良長
○男爵中川良長君 御苦心の程御察し申上げます、なかなか之を囘復して學校状態を適當になさるに付ては容易ならぬことであります、御努力の程も御計畫の程も容易ならぬことだと思ひます、先づ此の問題は私の質問は是で終つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=106
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107・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) それでは文部省關係は此の程度に止めます、恩給の方に入りますが、御質問があるさうです、處が恩給局長は政府委員になつて居られないさうです、説明員として説明をすると云ふことですが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=107
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108・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=108
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109・關義壽
○男爵關義壽君 過日新聞紙上で拜見したのですが、恩給停止の件でございます、それは矢張り昭和二十年勅令第五百四十二號に基いて發令されたものでありますか、それが一點、果して發令されましたならば、其の後どう云ふやうな經過を經て居りますか、内容に付ての御説明を御差支へない限り願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=109
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110・三橋則雄
○説明員(三橋則雄君) 御答へ致します、未だ緊急勅令に基きまして勅令の發令は致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=110
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111・關義壽
○男爵關義壽君 有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=111
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112・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) それでは次に神祇院關係の御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=112
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113・關義壽
○男爵關義壽君 只今文部省關係で、信教自由の問題に付て御話がございました、神祇院の方は宗教でないかも知れませぬが、一抹の聯繋があると思ひますから、神祇院の關係で、何かそれに付ての經緯がございますならば、御差支ない限り御發表願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=113
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114・飯沼一省
○政府委員(飯沼一省君) 神社の問題に付きましては聯合國軍の最高司令部側の意見と致しまして、日本の政府の取扱は兎に角として、矢張り是は一つの宗教と見るべきものであらう、此の宗教に對して日本の政府が特別な保護を與へ、又特別な監督を致して居ることは、「ポツダム」宣言に明記せられて居りまする信教の自由の確立と云ふことに抵觸をする、從つて日本の國が只今神社に對して與へて居ります所の保護も撤廢をして貰ひたい、監督も最小限度に止めるやうに、斯う云ふ意向を持つて居るのであります、さうして日本の政府として然るべき措置を講ずることを希望致して居りますので、内務省と致しまして、目下其の對策を研究中でございます、御承知の通り、神社に對しまする國の特別な保護と致しましては、神宮に對し、又全國二百數社あります所の官國幣社に對しまして、年々國庫供進金を供進致して居るのでありますが、斯う云ふ點から申しますれば、此の國庫供進金も將來は廢止しなければならぬかも知れぬと考へます、それから神宮、神社に奉仕致して居ります神官、神職は、國の官吏若しくは待遇官吏としての身分を受けて居りますが、是も將來は廢止しなければならぬやうになるかと考へます、それから神宮に付きましては、式年御造營の仕事が二十年毎に行はれて居りまするし、それから又官國幣社に付きましても、腐朽の特に甚だしい神社、さうして大きな新築若しくは改築をしなければならぬやうな神社に付きましては、國が直轄工事として其の仕事を致して居りますが、斯樣なことも從來著手致して居りまするものは兎に角と致しまして、新しく豫算を取ると云ふやうなことも將來は或はむづかしくなるのではなからうかと考へて居ります、大體さう云ふやうな事柄に付きまして只今研究を致し、又最高司令部の方と打合せを只今致して居る所であります、尚其の外に一般的に從來行はれて居りました或は神宮大麻の頒布でありますとか、或は神社に對する團體參拜、或は又學校でありますとか、職場に於ける神社の建設、或は神棚の設置と云ふやうなことに付きまして、是等自體は少しも差支へないことと思ひますが、唯やり方に依りましては、國民の思想、信仰の自由を拘束すると云ふやうな虞のある事柄でありますので、其の方法に付きましては、將來一層愼重な取扱を致さなければならぬと考へて居るのでありまして、政府の力を以て之を強制する、若くは干渉すると云ふやうなことは將來ないやうにしなければならぬと考へて居るのであります、大體只今研究中でございまして、其の主なる事柄は只今申上げたやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=114
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115・關義壽
○男爵關義壽君 只今の御説明で概要分りましたが、御研究中ならば此の際伺ふのも無理だと思ひますから此の程度で止めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=115
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116・山田三良
○山田三良君 只今の御説明に付て伺ひますのですが、從來政府は神社は宗教に非ずと云ふ立場でずつと來て居るのです、從つて國費を以て神社を總て經營なさつたが、所謂神道と云ふものの中には宗教もあります、司令部の方ではそこに根本の誤解があるのではないかと思ひます、信教の自由と云ふ點から見て、神社を信仰することがいけないと云ふことは、是は非常に神社に對する誤解であらうと思はれます、神社は決して宗教として信仰を日本國民一般に強制して居るのではないのであります、それを十分に説明なさつて居ても、或は向ふで宗教の自由として引附けて、さう云ふ風に引附けて承知しながら今のやうなことになつたのかも分りませぬが、併し根本は寧ろ宗教と神社との關係を誤解して居る爲ぢやないかと思はれます、伊勢大廟を始めとして官幣社と云ふものは、日本では祖先崇拜の方から來て居るのですね、皇室の祖廟であると同時に、各地の官幣大社と云ふものは各各其の地方に於ける古來の祖先の中の神と祭らるべきやうなものを尊敬して居ると云ふことから來て居るのですが、ここを西洋人の方では理解出來ない、宗教のやうな形に見えますから……又神社と云ふものは皆「テンプル」だとか書いてお寺と同じやうに見る、だから普通の説明ではそれは向ふに理解させることはなかなか容易でないと思ひます、日本の歴史から、祖先崇拜と云ふものから出て居る、彼等の中に於きましても古い家では立派な墓を持つて居ります、さうして恰も其の墓を日本で言へば社のやうに尊重して居る者もあります、日本は建國以來何千年間祖先崇拜の國家組織で來て居りますから、其の祖先崇拜の立場から……、神社と云ふものは國幣社と官幣社とありますから、之をああ云ふ命令の來る迄にそこは能く事情を十分説明されて居れば、其の理解があつたのぢやないかと思はれます、其の點私は甚だ遺憾として居るのです、今後に於きましても伊勢大廟を初めとしまして、さう云ふ意味からあれを國家が經營して行くと云ふことになりますと、之を別なものにして國家の事業でないものにすると云ふことは甚だ遺憾と思ひますから、其の點は今後も政府に於ては十分の努力を以て當つて貰ひたい、是は日本の文化の根本に關係する問題であります、なかなか「ヨーロッパ」人には……ちよつと歐米人には理解し難い所があります、併し宗教とはまるで違つて居ることを……若も宗教ならば憲法も信教の自由を認めて居りまして、其の憲法の規定にも矛盾することになる、さう云ふことではないのであつて、宗教であれば國民に其の信仰を強ふるものでないのでありますから、今御話のやうな伊勢の大麻の頒布と云ふやうなことを、之をどの位程度か知れませぬが、強制的にやる、さう云ふことは御考に依つては改めて宜いだらうと思ひます、少くとも伊勢大廟に付きまして國費を以て之を經營することが信教の自由に反するからいけないと云ふことは甚だ以て根本的の誤解でありますから、之を十分に御説明になつて、さう云ふことのないやうに願ひたいと云ふ希望を述べて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=116
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117・竹下豐次
○竹下豐次君 官國幣社に供進金などを御廢めになると云ふやうなことになりますと、其の維持と云ふものは非常に困難になつて行くだらうと思ひます、併し國民の方で、又或は地方的に、例へば明治神宮奉讚會とか云ふやうなものを自發的に組織致しまして、それで維持、修繕し、又崇拜、御祭りして行くと云ふやうなことを計畫致した場合には、それも矢張り「マッカーサー」司令部の方では好まないのぢやなからうかと云ふやうな氣持も致しますけれども、さう云ふ問題に對する向ふの氣持、それから政府當局はどう云ふ御處置を御執りになる御考でありますか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=117
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118・飯沼一省
○政府委員(飯沼一省君) 向ふの最高司令部の方で申して居りますことは、日本國民の神社に對する信仰を妨害し、若くは干渉すると云ふ積りは毛頭ない、それは幾ら信仰しても構はない、唯國が神社に對する信仰と申しますか、崇敬と申しますか、それを強制するやうなことがあることが宜しくない、斯う申して居るのであります、御話の通り官國幣社に對する國庫供進金が只今年々百三萬圓出て居りまして、之を二百數社の官國幣社に配分致して居るのでありますが、社入の多い神社に對して少く、社入の少い維持の困難な神社に對しまして澤山配分致して居ります、さう云ふ社入の少い神社は國庫供進金がなくなりますと、御話の通り維持はなかなか困難になると思ひますが、一面に於て神社の經費を節約し、規模を小さく致しましてやつて參りますると同時に、只今も仰せになりましたやうに氏子崇敬者に、自分達の力で其の神社を盛り立てて行くのだと云ふ考を起させまして、さうして其の人達が責任を有つて負擔に任じ、其の經營に任じて行くと云ふやうなやり方を今後は執つて行かなければならぬと私共は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=118
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119・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) それでは此の程度で神祇院關係は終ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=119
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120・中川良長
○男爵中川良長君 午前に伺ひました鐵道汽車時間の變更に關係しまして、石炭が大變に乏しくなつた、それが爲に已むを得ず時間を改正して度數を少くすると云ふやうな御話を承りましたのですが、それに付て關係當局から北海道、其の他に於ける炭坑の出炭状況は何か異變があるのぢやないか、其の爲に思ふやうに石炭が要所に配給することが出來ないと云ふやうな状態をも想像出來ますので、此の炭坑の状況に付て、當局から詳細承れますれば、大變幸福に思ひます、御差支ない限り詳しく御話を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=120
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121・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) 現在の石炭の出炭の状況は我が國と致しましても、まあ未曾有の減産率を示して居るのであります、斯う云ふやうな急激な減産を致しました原因に付きましては、戰爭中主として石炭の採掘に當つて居りました外國人勞務者、大部分は朝鮮人でありまして、其の全體の數を申しますと、約十四萬人居りましたのですが、其の中十三萬人が朝鮮人、約一萬人が支那人を主力とする其の他の南方、或は「ヨーロッパ」人の俘虜でありまして、それ等の人達が主として石炭の採掘に從事を致して居りましたが、戰爭終結と共に是等の人達が勞務者としての就役を拒絶を致しました、それのみでなく、各地に於て騷擾、暴動を起しまして、内地人勞務者の就役をも妨げたやうでございます、斯う云ふやうな原因から終戰後間もなく各地の炭坑の生産と云ふものが實際に停止に近いやうな状態に迄急激に減産するに立至つたのでございます、數字等が何でございましたら、後程私共の方から書面で提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=121
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122・中川良長
○男爵中川良長君 殆ど炭坑は停止状態と云ふ結論を御話でございましたが、それは何處の炭坑がさう云ふ状況にありますか、それをもうちつと詳はしく御話願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=122
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123・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) 北海道、常磐、九州に亙つた主な炭坑に於て、殆ど一時は停止に近い状況に相成りましたことを申上げたのでございます、炭坑の名前も申上げませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=123
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124・中川良長
○男爵中川良長君 大變簡單過ぎましてね、御話が……さうすると全體が休業状態で、今の炭坑から採掘するものは零であると云ふことでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=124
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125・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) さう云ふ意味ではございませぬ、炭坑に於て先程の半島人、華人の騷擾の事件が起りました當時に於きましては、一時的に炭坑の機能が停止をする状態に迄立至つたのでございます、併しながら日本全國の總ての炭坑に半島人、華人の勞務者が就役して居つた譯ではございませぬ、半島人、華人の入つて居らない炭坑もございましたのですが、寧ろ主要な大炭坑には殆ど半島人、華人の勞務者が入つて居ります、中には半島人、華人の勞務者が居りましたけれども幸にして騷擾暴動に迄は立至らなかつた所もございます、併しながら北海道に於て大體十位の炭坑、九州に於て五つ位の炭坑、常磐に於て二炭坑、是等の炭坑に於きましては最も其の騷擾等が甚だしいものがありまして、或は是等の炭坑に於きましては一時は殆ど炭坑に於ける操業が出來ない程度に迄立至つたのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=125
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126・中川良長
○男爵中川良長君 現在はどう云ふ状態でありますか、又日本人の働いて居る状態は鮮人などの何「パーセント」位になつて居るか、今どの位出炭して居るのか、私達の伺はうとするのは唯其の状態は斯うだと云ふことを伺ふのでなくして、今は一歩進めば鐵道が不通になると云ふ情勢です、それを心配する、鐵道の方に石炭が來ない、故に今日急速に時間表を改正して、非常な制限をして、運送其の他人を運ぶのも制限して居る、斯う云ふ情勢を憂ふるのでありますから、將來長くさう云ふ情勢が續くものであるか、又それに補給が行かなければ鐵道はもつと窮況に陷るのぢやないかと云ふことも想像出來るのであります、故に只今のやうな片言の御答辯でなく、もうちよつと具體的に、日本人はどの位動いて居るか、どの位石炭は出るか、それで鐵道にはどの位廻せると云ふ御見込を伺つて、共々に國家の前途を心配すると云ふ御氣持で御答辯を願はなければいけませぬ、唯簡單なことを仰しやつては、我我は又そんなことを聽かうと思つて居るのぢやない、國家の前途がどうなるかと云ふ上から伺ふのである、態々おいで願つてこんなことを伺ふのなら、おいで願はなくても宜い位です、もつと詳細に、我々の氣持が御分りでせうから、能く碎けて御話を願はなければ、おいでになつた意味もなくなつてしまひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=126
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127・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) 大變失禮致しました、委員長から簡單にと云ふやうな御示しがあつたやうに思ひましたものですから、つい略しまして……詳しく御説明致します、先づ先程も申上げました通り、現在のやうな急激な減産の直接の原因をなしました我が國の炭坑勞務者の數と其の構成との變遷に付て申上げます、大體大東亞戰爭の始まりました時分、昭和十七年を取つて申上げますと、昭和十七年の平均に於きまして、全國の炭坑に就役をして居りました勞働者の數が約三十四萬人ございまして、其の中の内地人勞働者の數は約二十八萬五六千人でございました、それ以外の約五萬四千と云ふものが朝鮮人勞務者であつたのであります、それが大東亞戰爭の進行に伴ひまして、漸次内地人坑夫は戰線に應召して參りまして、其の拔けた後を内地人勞務者を以て充足することが困難でありましたので、引續き半島の勞務者を入れ、それに、其の後支那、南洋等に於て日本軍の手に落ちました俘虜を送りまして、さうして此の内地人の不足に置換へて行つたのでございます、其の結果、一括して俘虜、半島人の關係を今外國人と申しますと、此の外國人勞務者の數が漸次殖えまして、十八年には約十一萬人位になり、十九年には是が十四萬人位になつたのでございます、さうして二十年上半期を申上げますと、全體の勞務者の數は約三十九萬人でございます、十七年に於ては、平均三十四萬人と申上げましたが、それが三十九萬人に増して居ります、其の内容を申上げますと、内地人勞務者の數は二十五萬人に減つて居ります、十七年に於きましては、二十八萬五六千人ございましたのが、十九年に於きましては二十六萬人位になつて居ります、併し又細かく申上げますと、其の中の二萬五千人程度は、極く短期の勤勞報國隊とか學徒とか云ふ勞務者でありまして、眞實に炭坑の坑夫の身分を持つて居つたのは二十四萬人程になつて居ります、さうして朝鮮人及其の他の外國人は、先程申上げました通り大體朝鮮人が十三萬人、其の他の人達が一萬人程度居つたのであります、數の比例はさう云ふ風でございますが、實際に坑内に於て石炭の採掘に從事を致して居りましたのは、其の約六割位を外國人勞務者が占めて居つたのであります、體格の強壯な關係で、主として軍隊に應召致しましたのは坑内勞務者に多かつたのでありますから、軍隊に應召の爲に穴が明きましたのは大部分坑内勞務者でありました、是の補充として今申上げましたやうに外國人勞務者を入れたのでありますから、勞務の構成の上から申しますと、實際石炭の採掘に從事して居つた者の六割幾らを外國人勞務者が占めるのであります、是等の人達が戰爭の終結と同時に、先程申上げましたやうに勞働に對する就役を拒絶し、騷擾、暴動を起したと云ふことの結果、數から言へば全體が三十九萬人もある中の十四萬人でありましたが、其の實際の働きの上から申せば、石炭を現實に掘つて居つた者、直接に石炭採掘に從事して居つた者の中の六割以上を占めて居つたのであります、從つて終戰と同時に石炭掘りの數が約三分の一になつてしまつたと云ふのが、數の上の變遷でございますが、それに搗てて加へまして、戰後の食糧事情の不安な點、其の他騷擾、暴動の起つた炭坑等では、それ等の治安の不良から、勞務者の中には止めてしまつた者もございますし、山に殘つて居つたのも、食糧の不足等から買出しに歩くと云ふやうなことで、非常に缺勤も多くなりまして、實際に山に出て働く稼働率と云ふものは、當時の状況では約三割減であります、數の上で殘つた者が三割減、而も其の中に於て出て働く者が又三割減と云ふやうな状況でございました、從つて石炭の生産の方から申しますと、終戰以前に於ては大體月平均三百五六十萬「トン」出して居つたのであります、是は昭和二十年の數字でございますが、四月が約三百六十萬「トン」、五月が約三百七十萬「トン」、六月が約三百五十萬「トン」、七月が約三百七十萬「トン」、八月は、十五日迄は戰爭中と同じ就勞が行はれましたが、十五日以後はぱつたりと止まりましたので、約半分の百七十萬「トン」、九月には急激に減少して九十萬「トン」、十月が五十四萬五千「トン」、十一月は、是は通信の非常に不便な所から、まだ若干正確な數字が到達して居ない所がありますので、推定を加へて申上げますと、十一月は五十萬「トン」ちよつと切れて、四十九萬七八千「トン」程と存じます、さう云ふ工合に八月以來がたがたと落ちて參つたのでありますが、私共の現在得て居りまする各種の報道を集めて見ますと、十一月の生産が一番底だと思つて居ります、十二月になりましてからは十一月よりも増産が出來ると云ふことを確信致して居ります、現に十一月中に於きまして、北海道を除いた其の他の地區は、中旬よりも下旬の生産は約一割程度増して居ります、北海道は逆に二割程度下つて居ります、そこで北海道のみはまだ十二月は十一月よりも上廻ると云ふことを確實に言ひ得るだけの資料を握つて居りませぬが、全國を通算して申しますならば、假令北海道の生産が十一月程度であつたとしましても、十二月は十一月よりも出炭は上廻ると云ふ風に、是は確實に申上げ得ると思つて居ります、尚勞務者の充足の状況に付きましては、厚生省と商工省と打合せの上、十二月迄に六萬人の勞務者を充足する、それから引續きまして來年の三月迄に七萬人、合計しまして此の年度内に十三萬人の勞働者を充足し得ることを目標にしまして、目下各地方の勤勞署を動員を致しまして、之に努めて居るのでございますが、其の成績は餘り芳しいとは申上げられないと存じます、現在私共が得て居ります報告では先月の二十日頃迄に應募しました數が約七千八百人程度しか集つて居りませぬ、各地から通報を寄せたものでありますから電信電話の不便の故かそれ以後の數字はまだ受けて居りませぬ、其の趨勢で推測しましても一萬人ちよつと越えた程度であります、到底六萬と云ふ數字には追著かぬ、そこで一方に於て極く短期の或は一箇月精々、三箇月程度の臨時の應援の人を炭坑方面に出動して貰ふやうに各方面に勸奬致して居ります、其の方の應募者として確實に我々の方に分つて居ります申込は、現在迄に約八千人位であります、是は鐵道だけでももつと御計畫はあるさうでありますが、確實に行先等を決定した者が約八千人と云ふことになつて居ります、是と先程のものを加へましても、到底豫期の數字迄擧げられないと云ふことになつて居ります、其の原因は結局に於ては食糧の不足と云ふ所が一番應募の障害を成して居る、其の次が賃銀の問題と云ふことが應募の少いと云ふことになつて居ります、賃銀は既に十一月中に從來の約二倍に引上げました、それで坑内夫にも色々あつて、唯炭車を押して歩く連中と實際に石炭を掘る連中とありまして高下はございますが、平均して坑内夫が十二圓、坑外夫が六圓八十錢と云ふ所であります、是は從來の約倍程度であります、そこで坑内夫と坑外夫との差は、地下勞働である坑内夫は坑外夫に對して八割増しと云ふことを標準にして計算して居ります、食糧に付きましては、炭坑勞務者には特別に坑の内外を通じ、平均しまして五合、家族には一人當り二合三勺、二合一勺になつて居りますのを二合三勺にすると云ふことに致しまして、それぞれ加配して居りますが、併し北海道方面は割當ではさうなつて居りますが、現實の米がございませぬ、聞く所に依りますと、北海道では米は二割程度で、其の外は雜穀乃至昆布と云ふものを配給されて居ります、そこで炭坑に於きましては折角さう云ふ加配米と云ふことがございましても、それが雜穀、南瓜、薯と云ふやうなことでありましては辨當を作つて坑内に入り働くことが出來ないと云ふことがありますので、先程五合の配給と申しましたが、其の中二合五勺が特別の加配米でございますので、其の二合五勺は純粹の米で支給して貰ふ爲に手配を了して、新潟、山形地方から米を差當り六千石輸送して貰ひました、さう云ふやうな状況で、それぞれ賃金、食糧の増加、増配を致し、又作業衣も、一年に半着位の割合でやつて居つて非常に不足でありました、どうしても純綿のもので年に一着半は要る、地下足袋も二箇月に一足は要るので、、作業衣を一年に一着半、地下足袋は一年六足と云ふ基準で配給する、其の外酒、煙草、石鹸等もやり繰りの出來るだけ増配するやうに努めて居ります、斯う云ふやうに出炭の方は今申上げたやうな状況でありますけれども、幸ひまだ十一月、十二月には北海道にも、九州にも貯炭がありますので、それを運んで現實に配給したものは十月に約百十萬「トン」、十一月は九十八萬八千「トン」になつて居ります、併し現實の石炭の逼迫事情から申しますと、九、十月頃はまだ石炭の需要者である工場、瓦斯會社、鐵道等では、配給はそれだけであつても、自らの貯炭を消費しながら事業を繼續し、十一月になつてもまだ若干の貯炭がありましたが、それが段々逼迫して參りまして、十二月になると殆ど貯炭もなくなつて來ると云ふので、どうしても出炭も擧げなければなりませぬし、又貯炭の拂出も可能の所を總動員してやつて居る譯であります、と云ふのは港に積んである貯炭は機械に積込んで出せますのでそれが先づなくなる、次は汽車の沿線にある貯炭、是も機械或は人力で簡單に出すことが出來るのでありますが、此の外例へば北海道あたりの山元にある貯炭の拂出に目下極力努力を、増産と相竝んで集中して居るのであります、是等のことの強行に依りまして、十二月も略略百萬「トン」の配給は是非やると云ふことの下に諸般の計畫を進めて居る次第であります、是だけの配給を確保すれば、此の間決定されました非常に制限された輸送力でありますが、あの輸送力には支障ないだけの石炭の配當が出來ると確信して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=127
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128・中川良長
○男爵中川良長君 詳細御話下さいまして大變能く分つて參りました、時間も大變過ぎて大分御迷惑の點もありますが、十一月は四十八萬「トン」ですか、新たに掘ると……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=128
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129・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) 十一月は新たに掘りましたのは四十九萬七八千「トン」程でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=129
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130・中川良長
○男爵中川良長君 それで進駐軍の要求するのは先程十萬「トン」と云ふことを御伺ひしたが、其の外に要求がありますのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=130
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131・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) 進駐軍の方から要求致して居ります石炭は、現在月に國内で六七萬「トン」位でございます、其の外に朝鮮に月々七萬「トン」、それから香港向、香港から又南方に積出されるかも知れませぬが、我我が香港に送つて居りますのは一萬八千「トン」是だけが進駐軍、英國の聯合軍側の方の要求でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=131
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132・中川良長
○男爵中川良長君 すると大體此の程度で減少するやうなことのない御見込が確立して居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=132
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133・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) 聯合軍の要求でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=133
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134・中川良長
○男爵中川良長君 いや……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=134
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135・岡松成太郎
○政府委員(岡松成太郎君) 生産ですか、生産は是以上減産することはないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=135
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136・中川良長
○男爵中川良長君 どうぞ御盡力ばかりでもいかないことで、各方面に非常な御手配を要することで、御苦心のことは御察し申します、殊に今日の新聞の如きは、鐵道員迄出て來るやうな新聞迄見まして、誠に感激の極に達して居りますが、或は場合に依れば鐵道が止まる状況に近いやうな有樣に立至るのではないかと云ふことを大變心配して居ります、御明言に依りまして安心致します、尚此の上にも御努力を偏へに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=136
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137・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御質疑は終つたやうでありますが、是で各省大體御質疑なり御説明は承つた譯でありますが、尚一般的質問等に於て、殘つて、聽いて見たいと云ふやうな御方がありませうか──なければ此の委員會に於きます質問は是で以て終了したものと認めたいと思ひますが、御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=137
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138・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御異議ないと認めます、さうしますと時間も大分移りましたから、本日は委員會を此の程度に止めまして、明日は午前十時に開くことに致しまして、討論採決に入るやうなことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=138
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139・土岐章
○子爵土岐章君 私は議事進行に付て申上げたいと思ひますが、若し委員の御方で御差支がなければ本日採決致しましては如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=139
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140・山田三良
○山田三良君 今の土岐さんの御説に贊成であります、討議と申しましても簡單でございますから、今日直ぐ採決願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=140
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141・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 實は委員長に於ても其のことを希望したのでありますが、時刻が遲くなりましたから、散會の御希望の方が多くはないかと思ひましたから申上げたので、皆樣がさう云ふ御考でありましたら、是から討論に入りたいと思ひます、其の前に松村君から一應國務大臣に言明を求めたいと云ふことがございますが、國務大臣に來て貰ふことに致しますから、暫く御待ちを願ひます、速記を御止め願ひます
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=141
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142・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 速記開始、松村君から發言を求めて居られましたから、此の際御發言願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=142
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143・松村眞一郎
○松村眞一郎君 全般に亙ります質問は一應御終了になつたのでありますが、此の際討論に入りますに當りまして、私は政府のはつきりした御取扱振りを決めて戴きたいと云ふことの意味に於て、國務大臣の御答を戴きたいと思ふのであります、前に質問中にも申上げました如く、此の緊急勅令は議會開會中と雖も、命令を以て法律を變へることが出來ることになり、殊に省令でも宜しいと云ふことになる譯であります、先般來此の勅令に基いて發せられました諸法令調と云ふものを、政府の方から御廻しになつて居るのでありますが、大體法律は勅令で廢止して居られる、處が大藏省の分は省令で法律を改廢致して居られますので、他の省は法律を尊重する意味に於て、法律に對しては勅令で改廢をして居られる、法律が勅裁を經て御裁可になると同じく、勅令も亦勅裁を經るのであります、其の關係に於て法律を尊重されれば、成るべく勅令で法律の改廢をなさる方が宜いのぢやないか、大藏省の政府委員は、將來はさう云ふやうに致しませうと云ふことを申されたのであります、併し是はまだ政府の方針として一定して居ないから斯う云ふことになつたのであると思ひますので、私は議會開會中は、出來るだけ法律を以て議會の方に御提案になつて改廢をして戴きたい、非常に急を要する場合は、是は勅令で御やりになつても差支ないと思ひますが、現に政府は今期議會に映畫法廢止法律案と云ふものを御出しになつて居る、それは其の理由書には、聯合國最高司令官の要求に基き、映畫法は之を廢止する必要ありと云ふので提案されて居るのでありますが、是も議會開會中でありますから、別に法律を御出しにならなくても、勅令で出來る譯でありますが、政府は矢張り法律を尊重する意味に於て現に御出しになつて居る、併し是は政府が統一したる方針の下に御出しになつたものであるか、或は此の主管大臣の方で法律を尊重すると云ふ態度を御執りになつて、文部大臣、内務大臣、厚生大臣と云ふので、是は出て居るのですが、或は大藏大臣が御參加になれば斯う云ふことは起らなかつたかも知れぬと云ふことも考へられるのであります、さう云ふ點から考慮致しまして、政府は政府として、政府の統一した御取扱振りとして、只今私が申上げましたやうな工合にして、將來やつて戴きたいと思ふ、それを一つ仰しやつて戴けば討論の際に於ける私の態度もはつきりする譯なのであります、其の意味で國務大臣に御答を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=143
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144・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今松村君の御質問の第一點、即ち議會開會中に於ては、出來る限りは法律案を提出して法律の改廢を致すと云ふ方針を執ると云ふことは、此の前も御質疑に應じまして私述べた所で、是は私一個が申すことではございませぬので、政府として出來ればさう云ふやうにすることが、政治上良いことであらうと云ふことを考へて居りまして、成るべくさう云ふことにしたい、唯非常に急を要するやうな場合は出來ないことが有り得るかも知れぬと云ふことを御答しましたが、其の點はさう云ふやうに御考願ひます、もう一つ法律自體を廢めてしまふのに、省令を以てしたものがあつた、是は此の省令は大體まあ何處か法律に引掛かるからこそ、あの緊急勅令に依つて、矢張り省令を出して居るのでありますから、其の緊急勅令に基いて出ました省令は、矢張り何處かしら法律に引掛かつて居るのです、併しながら其の引掛り方がまあ小さいと云ふやうな風で、且急を要する場合には省令に依る、併しながら例へば一つの法律全部を廢止すると云ふやうなものは、大體に於て時間が許す限りは勅令を以てすると云ふ考で、從來も大體さう云ふ方針で居ります、尚今の御話もありまして、向後もさう云ふやうな方針を執りたいと思ひます、今の大藏省の省令の例は確か私の記憶では法律全體を廢止したものではなくて、或規定を變へたものではなかつたかと思ふのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=144
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145・松村眞一郎
○松村眞一郎君 外貨債處理法等廢止とありますが、省令第百一號ですが、大體私の心持と國務大臣の御考は一致して居る譯ですから、政府の方針として、一つ統一してさう云ふやうな工合にやるやうにして戴きたいと、各省がそれぞれのてんでてんでの思付でやらないやうにして戴きたいと云ふのが私の要點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=145
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146・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) ちよつと申上げますが、大藏省令で一部を改めたものがあつたと思ひますが……成程今注意を受けて見ますと、大藏省令第百一號と云ふもので、外貨債處理法、敵産管理法等廢止致して居ります、是は非常に重大なことなのでありますから、何故省令でやつたかと云ふことに付て、大藏省の委員から或は御説明があつたかも知れぬと思ひますが、是は實は非常に急を要した、もうどうしても直ぐやらなければならぬと云ふやうな差迫つた必要で、勅令を出す隙さへ實はなかつた、さう云ふやうなことが稀にあり得ると云ふことは、先頃御質問に對して此處で述べたのでございますが、是が確か其の一例でありました、さう云ふやうな場合には、已むを得ず斯う云ふ例外的の措置をやるかも知れませぬが、大きな改廢、即ち法律全體を取つてしまふとか、或は相當重大な變更を加へると云ふやうな時は、出來得る限り愼重にやりたい、即ち出來れば勅令でやりたい、さう云ふ方針で既に今迄も居るのでございます、左樣に御承知を願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=146
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147・松村眞一郎
○松村眞一郎君 大藏省の政府委員が、將來左樣に改めませうと云ふ意味で仰しやられまして、從來は幾らか其の點輕く考へて居つたかも知れぬと云ふやうな意思表示もありました、さう云ふことでありますから、どうぞ纒めて御考へ願ひたい、斯う云ふ趣旨であります、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=147
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148・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) それでは是より討論に移ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=148
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149・土岐章
○子爵土岐章君 私は本案に對して贊成するものであります、而して委員會に於ての政府の御深切なる御説明に依つて、十分政府の意のある所は承知したのであります、どうも聯合國軍との間の意思の疎通と云ふことに對して格段の御努力をされることが、我が國との間に於て最も緊要だと云ふ風に私は信じます、勿論從來とても十分やつて居られますけれども、更に一層將來此の點に對して御努力を願ひたいと云ふ希望を申上げて、本案に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=149
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150・山田三良
○山田三良君 私も此の案に贊成であります、さうして今土岐子爵の言はれたやうに、政府は從來より尚一層司令部との意思疎通を御圖りになるやうに十分の御努力をなされむことを希望致しまして、本案に贊成致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=150
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151・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 他に御發言ございませぬか、御發言なければ討論は終局したものと認めます、直ちに採決に入ります、本案を承諾することに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=151
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152・八條隆正
○委員長(子爵八條隆正君) 御異議ないものと認めます、全會一致であります、是を以て散會致します
午後四時二十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=152
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153・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 子爵 八條隆正君
副委員長 男爵 東郷安君
委員
公爵 二條粥基君
伯爵 黒田清君
子爵 土岐章君
子爵 松平親義君
山田三良君
松村眞一郎君
村上恭一君
大野緑一郎君
男爵 中川良長君
男爵 關義壽君
男爵 明石元長君
竹下豐次君
唐澤俊樹君
中島徳太郎君
松井貞太郎君
國務大臣
國務大臣 松本烝治君
政府委員
遞信院總裁 松前重義君
遞信院次長 新谷寅三郎君
遞信院郵務局長 小池行政君
遞信院電務局長 長得一君
遞信院工務局長 篠原登君
遞信院貯金保險局長 岡井彌三郎君
遞信院電波局長 宮本吉夫君
遞信院電氣通信復興局長 林一郎君
戰災復興院次長 松村光麿君
神祇院副總裁 飯沼一省君
第一復員官 大山文雄君
同 吉本重章君
第二復員官 山本善雄君
司法參與官 伯爵 渡邊昭君
司法省刑事局長 佐藤藤佐君
司法省刑政局長 清原邦一君
文部政務次官 子爵 三島通陽君
文部省學校教育局長 田中耕太郎君
商工參與官 男爵 山根健男君
商工省燃料局長 岡松成太郎君
鐵道監 伊能繁次郎君
説明員
恩給局長 三橋則雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008901745X00719451206&spkNum=153
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