1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案
○國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案
○昭和十二年法律第七十八號廢止法律案
○映畫法廢止法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十年十二月五日(水曜日)午前十時十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=1
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002・向山均
○委員長(男爵向山均君) それでは只今から引續きまして當特別委員會を開催致します、昭和十二年法律第七十八號廢止に關する法律案に付き政府側の御説明を政府委員より伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=2
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003・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 只今議題になつて居りまする昭和十二年法律第七十八號廢止に關する法律提案の理由を御説明申上げたいと思ひます、此の際御了解願つて置きますことは、商工大臣本日十時から衆議院の豫算委員會の方に出席致して居ります爲に、私から代つて提案の理由を御説明申上げますことを御了解を願ひたいと思ひます、尚大臣の御出席を是非共御要求がございますれば連絡を取りまして、成るべく御期待に副ふやうに致しますでございます、紀元二千六百年記念日本萬國博覽會は、紀元二千六百年記念奉祝事業の一つと致しまして、昭和十五年三月十五日から、同年八月三十一日に至る百七十日の間、東京及び横濱を會場と致しまして、直接經費四千四百五十萬圓を以て開催せむと計畫されましたものでございまして、其の事業は社團法人日本萬國博覽會協會が主催することになつて居りましたのでございます、而して同協會は東京都、横濱市、東京都商工經濟會、神奈川縣商工經濟會等の公共團體を以て構成分子として居るものでございます、博覽會に對しまする政府の財政的援助と致しましては、昭和十二年度に於て、國庫補助金五十萬圓を協會に交付すると共に、抽籖券附囘數入場券の發行を認むることと致しまして、協會に抽籖券附囘數入場券發行の權限を與へたのであります、斯う致しまして同協會は昭和十三年三月十日から同三月二十四日に至る迄の十五日間に全國の郵便局、銀行、信託會社等をして、抽籖券附囘數入場券十二券一綴りを一册十圓とする五十六萬四百七十册を賣上げまして、五百六十萬四千百七十圓の實收を得た次第でございます、然るに昭和十二年三月日支事變の勃發を見まして、政府は翌十三年七月に本博覽會の開催を延期する旨決定を致しましたが、昭和二十年八月十五日大東亞戰爭の終戰以來、到底現下諸般の情勢の下に於きましては博覽會は開催不可能でありますので、之を中止致しますと共に、社團法人日本博覽會協會に資金調達の權限を付與する爲に制定致しました只今議題になつて居りまする紀元二千六百年記念萬國博覽會抽籖券附囘數入場券發行に關する法律は、其の必要なきに至りましたので、此の際之を廢止せむとするものであります、尚中止に伴ひまして日本萬國博覽會協會の過去に得ました利得に付きましては、發行致しました抽籖券附囘數入場券を一册十圓、即ち發行價格を以て買戻すことに致したいと存じまして、目下其の手續を進行せしめつつある次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=3
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004・向山均
○委員長(男爵向山均君) 御質問に移りたいと存じます、御發言ございませぬか、御發言ないと認めます、本法律案の討議に移りたいと存じます、御意見のある方は御發言を願ひたいと思ひます、御發言がないやうでございますから本案を原案通り可決すべきものと認めて差支へないと致しまして宜しうございますか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=4
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005・向山均
○委員長(男爵向山均君) 御異議ないと認めます、では昭和十二年法律第七十八號廢止法律案は原案通り可決致すことに決定致しました、速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=5
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006・向山均
○委員長(男爵向山均君) 只今から速記を開始致します、是より入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案の質疑に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=6
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007・野村益三
○子爵野村益三君 私は厚生省關係に付て二、三率直な御尋をして、御答を得たいと思ひます、第一此の職業手帳使用に關して、參考書を戴くと、法規に依つて手帳を使用することを要する者が一千萬人の勞務者でございます、隨分是は大變なことでありますが、相當の效果を擧げて居らるるものと考へます、處で此の手帳の使用と云ふことは、私共も十數年以來から、之が普及奬勵を叫んでどうも思ふやうに行かぬ、唯丁度此の我々の審議して居る法案に示すやうに、今迄のやり方と云ふものは何だか強制的で、記帳上やらなけりやならぬと云ふやうな立場にあつてぎこちないのです、併しながら今御話したやうに、相當の效果を擧げたことは結構だと思ひますが、之を今度止めちまふと云ふことになると、手帳利用と云ふことに付て、甚だ物足らない感じが起る、もつと喜んで此の手帳を利用するやうに、だから政府に於かれても、さう云ふ趣旨で將來出來得るだけ使用の奬勵、普及と云ふことを圖らるべきものぢやないか、さうして一方に於て我々の國民の間に缺けて居る、最も缺乏して居る創意工夫と云ふことを引出すことに役立つ、創意工夫を欲して居る所は、即ち生活の改善だ、どうも我々さう云ふ點に於てもう少し厚生關係で將來の御考を立てらるべきものであらうと斯う思ふのであります、其の點に付て御意見を承りたいと思ひます、引續いてありますが、先づ其の點を一つ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=7
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008・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 御趣旨は全く私共御同感であります、唯現在紙の點と又人の關係等に於て差當り之を繼續して行くとか、或は奬勵するとか云ふやうなことは考へて居りませぬで、御趣旨の點は將來に於て實現を圖つたらどうだらう、斯う云ふ風に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=8
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009・野村益三
○子爵野村益三君 成程一千萬に近いものを急に拵へると云ふやうなことは事情が許さないのでありますが、何もさう悉くに此の際交付すると云ふことでなく、其の中で我々の生活状態に極く緊密な關係を持つて居る方面にでも段段に之をやつて行く、だから一朝一夕に私はうまく行かぬと思ふのです、勞務手帳を見ても之をうまく適用して居るかどうかむづかしいと思ふのです、勞務者がですね、併しながら一方から云ふと、我々手帳に大分慣れて居る、例へば御互の子供が學校に行く通信簿がある、處が是は一千萬以上もあるでせう、それから國民體力法に依る國民體力手帳がある、是はどうでせう、其の後の計算は知りませぬが、一千萬に近いのぢやないでせうか、それから軍隊に行けば今は止めたかも知れませぬが軍隊手帳がある、隨分手帳と云ふものが我々に親しみがあるのだけれども、どうも其の適用がうまく行かない、職業の勞務の方の關係から言ひますと、例へば我々共の下女の拂底でお互の家内が奔命に疲れて居る、婦人參政權と云ふものを斯う云ふ點に於て、疲れた主婦に向つて果して豫期の如く行くかどうか問題である、さう云ふやうなことでありますが、今の下婢の問題、下女の問題、どうせ我々の家庭でも斯う云ふ按排で家内が一人で切廻して行くと云ふことは不可能である、將來は矢張り下女と云ふものが一つの立派な職業になる、それには先進國で二十年、三十年前からやつて居る下女の手帳と云ふことも必要であらうと思ふ、今下女と云ふものは、お互の所に來る奴は皆嘘をついて居る、體の宜いことを言つて條件が惡いとやめて、さうして他の所に行つて嘘をつく、さう云ふことは私は甚だ宜くない、だからさう云ふ手帳を設けて、さうしてそれに本當のことを書いて行くならば、立派な職業として立派な生活が出來るのであります、それが一つの嫁入りの重要な資材になると思ふ、是も厚生省の人に私共十年前から言つて居るが、なかなか實現をしない、他にも色々手帳の利用と云ふこともあるでせうが、取締と云ふことがない、彼等を能く利用して又彼等の地位を、生活を向上せしむると云ふ趣旨で、さう云ふ深切心を持つたやうな考へで手帳を拵へて、成るべく之が使用を許さす、斯う云ふことが最も必要だと思ふ、それは他日の問題だと仰しやらずに出來る方面に於てぼつぼつおやりになつて宜い、どうかそれを一つ政務次官の方で御考になつて是非一つ實現するやうに御骨折を願つて貰ひたい、もう一つは是は石炭問題でありますが、石炭の勞務者の問題、お互に困つたものです、どうしても一箇月四百萬「トン」掘らねばならぬものが、此の夏から百五十萬になり、今は五十三萬「トン」しか出ない、手持のものを併せて九十何萬「トン」であります、日本の工業を能く動かすには百五十萬「トン」要る、鐵道さへも七十五萬「トン」要る、瓦斯でも十三萬「トン」要る、それが今手持で以て九十萬「トン」しかない、是は非常に恐慌を來して居る、一體どう云ふことに立到つて居るのであらうか、無論勞務者の關係だと思ひます、其處で厚生省の方に御尋ねするのであるが、一體其の勞務關係はどう云ふやうな計算に依つて此處迄持つて來たものであるか、我々も多少は知つて居りますが、それを一つ具體的に御話を願ひたい、さうして此の對策をどうするか、差向十三萬人の勞務者を得ると云ふので今募集されて居りますけれども、七萬人に對してまだ七千幾らしか申込がない、是は非常に心配なことです、炭礦の事業を繼續するには九十七萬人の勞務者が要ると云ふ、それが今非常に困つて十三萬人を補給するのに來年の三月迄掛かる、現在の募集の七萬人に對して七千幾らしかない、是は容易ならない、そこで是は政務次官は苦勞人で居られるから伺ふのですが、今迄の勞務關係、殊に石炭の勞務者關係で厚生省が商工省なり、運通省なりに交渉された其の點に於て何か至らない點があるのぢやないか、今から御考になつて、それを一つ率直に……何か咎める譯でなく、御互に憂ふる點から、將來の對策を考へる上から考へる譯ですが、何か協調連絡と云ふ點に於て、今から考へて見ると、どうも足りない所があるのぢやないかと云ふやうな御氣づきはないかどうか、さう云ふことを率直に伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=9
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010・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 只今野村さんから家庭使用人に付て手帳を持たしたらどうか、十年以來之を議會に於て言つて居るが、厚生省に於て一向に取上げない、是はどうかと云ふ御尋であります、只今申上げたやうに單にそれが役人の數の關係から、一般的に考へては差當り手帳を各職業者に亙つて持たせると云ふことは考へられぬと思つて居るのでございますが、能く省の方に歸りまして、事務當局と相談致しまして何か善處出來るかどうか調べて見たいと思ひます、それから石炭勞務者の不足に付ては誠に御説の通り憂慮すべき状態にあります、元來野村さんも能く御承知の通り、今迄の失業問題は人が澤山に餘つて失業者が出來た、處が今日は人を求むる所があるのに、さうして遊んで居る人間が澤山居るのに、就職する希望者がないと云ふ所に此の終戰後の失業問題の特異性があるのぢやないか、斯う考へて居ります、所謂勞務意慾と云ふものが起らないと云ふ所に今日の失業問題の特異性があるのぢやないか、それには其の原因として色々あるでありませうが、私は終戰に對して色々の會社等に於て、まあ軍需會社に於て法外と云つては言ひ過ぎかも知れませぬが、非常に澤山の退職手當金を出した、そこに誤りがあるのぢやないか知らぬ、從ひまして其の退職手當金を食ひ盡したならば職を求むる人間が非常に澤山に殖えて來て、人を求むる方に餘裕が出來るのぢやないか、要するに假すに相當の時日を以てしなければ此の解決は至難ではないかと思ひますが、さりとて厚生省が懷手で之を傍觀すると云ふ譯には參りませぬ、色々勞働意慾を昂揚する爲に事務次官等が「ラジオ」で放送したり、或は商工大臣も先般非常に熱心なる所の放送をされたのを私は直接聽いたりなど致して居りますが、差當つての問題で實は非常に困つて居ります、率直に申上げますと困つて居ります、只今の處、どれだけ人數の充足が出來たか、後で局長から數字を御示し致しますが、豫定は、言はれましたる通りに本年中に六萬人、來年三月迄に七萬人を募集しなければならぬ、それだけ人を入れなければならぬと云ふことに相成つて居るのであります、まあ有らゆる手段を盡して努力を致したいと思つて居ります、又商工省との方の連絡に於て或は圓滿を缺いたとか或は意見が違つたとか云ふやうなことは私はないと承知を致して居ります、是だけ御答を致しまして、數字等に付ては局長から申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=10
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011・佐伯敏男
○政府委員(佐伯敏男君) 炭坑勞務の問題でございますが、只今御話がございましたやうに今日石炭の減産を來して居りまする主要なる原因は、勞務の問題に胚胎致して居ると存じて居ります、終戰時に於きましては石炭山に約四十萬人近くの在籍者が居つたのでございますが、丁度昨年の九月、十月頃から工場勞務者の徴用に依りまして相當石炭山に持つて來て居つたのでございますが、其の期限が滿了したのもございますし、又終戰と云ふことに依りまして石炭山から段々出て行く者等もございまして、九月末現在に於きましては三十三萬人に急激に減つて居ります、それと今日石炭生産に一大支障を與へましたものは、言ふ迄もなく華人、半島人勞務者が現地に於きまして色々騷擾を起しまして、又怠業すると云ふことに依りまして、殊に山に居ります人は朝鮮人が先山の大部分を占めて居ると云ふやうな山もあるのでございます、其の爲に一時石炭の生産が殆ど「ストップ」をした、坑夫の華人、朝鮮人の騷擾、暴行等に依りまして内地人の勞務者も山の中に入ることを危險を感じまして、北海道等に於きましては逃廻ると云ふやうな騷ぎもありまして、其の爲に石炭の生産に非常に支障を來したことは事實でございます、併しながら御聞及びのやうに其の後段々各方面共折衝致しますし、又聯合國側の協力等を得まして華人、朝鮮人を大分送還致しましたし、十二月十日前後に於て殆ど送還を終了すると云ふことに相成つて參りましたし、又治安の面に於きましても非常に落著を見つつあるのでありまして、今後まあさう云ふやうな騷ぎはないと思ひますが、さうなりますと云ふと、今迄石炭山に朝鮮人が十二萬五千人、華人が一萬人近く居りましたが、十三萬以上の穴が明く譯でありまして、即刻之に對しまして勞務者の充足を圖らなければならぬと云ふことは當然問題になる譯でございます、從ひまして御話がありましたやうに本年末迄に六萬人、更に來年一月及三月迄に七萬人、十三萬人急速に充足しなければならぬと云ふことで、先月の五日に全國の各縣の勤勞課長を招集しまして、各縣に供出數を割當てましては、何と言ひましても石炭の増産をやらなければ日本が立上ることは出來ないと云ふことで、十分に石炭の事情を認識せしめまして、それに依りまして各縣でも勞務者の募集に相當大童になつて活動を致して居る現状でございます、的確な現在迄の供出の數字は昨日無電で各縣から取ることになつて居るのでございますが、色々故障等もありまして的確な數字をまだ得られませぬが、今明日中に的確な數字が得られると思ひますが、新聞にも出て居りましたやうに十一月の五日勤勞課長會議を開きまして、十一月十九日迄の數字が約七千九百二人、まあ八千人近くになつて居りますから、是は全體の數から見ますと非常に少いのでございますけれども、唯私共の執りました方針と致しましては、十一月の五日から二十日迄の供出の府縣と受入の府縣と、受入の山の割當なり何なりに付きまして能く連絡を執つて、十一月二十日から本格的に募集に掛ります順序で居りますので、十一月二十日迄に約八千人近く應募者を見たと云ふことは辷出しとしては必ずしもさう悲觀すべき數字ではないと云ふ工合に實は内々考へて居る次第でございます、併し其の後の状況は的確な數字もありませぬので、非常に心配を致して居るのでありますが、殊に年末になりまして勞務者を募集し之を山元に送ると云ふことは非常に困難でありますので、私共の目標と致しまして今月中旬迄に是非六萬人を獲得したいと云ふことで各縣に更に指令を發しまして督促を致して居る次第であります、若し此の六萬人が今日の状況で得られないと云ふことでありますなれば、是は已むを得ませぬので、場合に依りましては強權的な措置を講ぜざるを得ないと思つて居ります、勿論戰爭の終了に依りまして徴用と云ふことはなくなつたのでございますが、「ポツダム」宣言に基く緊急勅令に從ひまして厚生省令と致しまして勞務充足に關する省令を出して居ります、其の第四條に從業命令の規定がございます、それは内容は端的に申上げますと徴用と同じ規定でございますので、場合に依りましては從事命令を發動しまして石炭山の勞務者を確保を圖る、斯樣に考へて居るのでありますが、出來得る限り自由募集に依りまして、各方面の協力を得まして勞務の充足を出來るやうに致したいと思ひます、斯う云ふ考へであることは申上げる迄もございませぬ、それから只今政務次官からも御話がございましたが、商工省、運通省其の他關係各省共連絡に付きましては勿論十分にやつて居ると云ふこともございまするが、昨年來厚生省に於きましては石炭勞務對策委員會と云ふ委員會を設けまして、各省共緊密な連絡を圖つて居りまするばかりでなく、毎日のやうに顔を合せまして、勞務者の問題に付きましても相談を致して居るのでございます、今後共十分さう云ふ點に付きましては、協力致したいと思ひます、御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=11
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012・野村益三
○子爵野村益三君 どうもまだ我々共心配に耐へないので、結局徴用令、徴用しなければならぬと云ふことになるんでせうな、それが一つと、それから今の石炭の問題に付ては石炭勞務の問題に付ては、關係官廳と出來るだけの連絡協調を執つて居られると云ふことはさうでせう、併し厚生省の從來の立場から見ますと、どうも其の關係官廳と十分な協調連絡を遂げると云ふやうな點に於て、我々共の頗る遺憾に耐へないことが澤山ある、是は後で申上げたい、どうでせう先づ徴用令に依らなければなるまいと、斯う云ふ氣がするのですが、さう云ふ風に考へて宜しいでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=12
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013・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 只今局長から御答辯申上げましたやうに、もう數日の中に各府縣からの状況が報告されますので、其の報告を待つて其の上で所謂強權を用ひるかどうかを決定したい、斯う云ふ風に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=13
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014・野村益三
○子爵野村益三君 丁度好い機會であるので私は此の厚生省の仕事に付て御同情を申上げ、又期待する點に於て、少し徴用政策と言ひますか伺つて見たい、厚生省の徴用施策としては三つあるだらうと思ふ、一つは國民生活の改善である、第二は國民體力の向上である、第三は今の勞務者に對する施設、そこで是は一層の御努力を願はなければならぬことに結論はなるのですが、先刻も一言觸れたやうに、我々の、殊に婦人の創意工夫の力と云ふものは極く頼みにならぬ、尤も斯う云ふやうに戰爭が多年に亙つて行はれて、非常に我々の生活も脅威されて居ますから、端的に言へば創意工夫が出にくい、官邊の方も、民間の者も、殊に我々の主婦に向つて、創意工夫をやれと云ふことは、是はむづかしいことかも知れませぬが、併し其の國民生活の改善をやるのには、創意工夫と云ふことを十分にやらなければ改善が出來ない、國民生活と言へば言ふ迄もなく衣食住であります、此の點を捉へて見ても創意工夫が誠に覺束かない、住宅にしても今度三十萬戸簡易住宅を拵へられると云ふのでありますが、それもそれ迄は出來ない、出來るだけやらうと云ふのが只今の方針、此の住宅の改善等と云ふことも、とんと行はれない、斯う云ふ場合に私は所謂昭和の住宅と云ふものの型が出なければならぬ、早い話が押入れでせう、押入れは二間に一間づつ區切つてある、押入れと云ふものは一間に定つて居る、處が一間の押入れと云ふものは甚だ不都合なんです、蒲團を入れても中途半端になつてしまふ、我々の所で一番必要なのは箪笥でせう、現在使つて居る箪笥があれで宜いかどうか、ちよつと手を入れるともつと便利なものが出來るに拘はらず、舊態依然たる状態である、そんなことにも改良が出來ない、其の他便所の問題、臺所の問題、臺所改良の聲が起きてから何年になりますか、便所と謂へども矢張り舊態依然として居る、さう云ふやうなことも改良が出來ない、是は國民に委して置いてはいけない、矢張り先程御話したやうに、親切心に役所が相當指導して行かなければいかぬと思ふのです、住宅の問題でさう云ふことさへも改善が出來て居らない、着物の問題でもさうです、國民服と云ふものは厚生省で拵へられたのです、私は國民服と云ふものは着たことがない、第一不都合、不自由である、我々の持物は御互ひに定つて居ります、其の持物をどこに收めるかと云ふことは「ポケット」の問題である、國民服にはさう云ふことは、ちつとも掲げて居ない、色の問題、地質の問題にしても考慮すべきものが多々ある、こんなことも創意工夫の點に於て私は缺けて居ると思ふ、第二の制服と云ひますか、そんなものを拵へたら宜いとも考へて居る、最も國民生活に重要性を投げるものは食生活です、漸く「カロリー」問題等と云ふことが、ぼつぼつあなた方の頭に入つて來ましたが、我々は十何年來説いてやつて居るのにぴんと來ない、農林省でもさうでせう、何時も米と麥と大根と南瓜のことばかりを言つて、榮養と云ふ問題に觸れられない、觸れる餘地がない、農林行政と云ふものが果してさう云ふものであるかどうか疑ふのであります、私はさう云ふものではないと思ひます、是も今迄の状態がそれを許さぬ、そこで榮養問題は何處でやるかと云ふと厚生省がやらなければならぬ、其の厚生省で一體食生活に於て、最低生活に必要なる量はどうだと云ふことを御尋ねしたけれども、是は御發表になり得ない、そこらの點に於て厚生省は非常に勇氣が缺けて居るのです、もう之だけ無くちやならぬと云ふことを示して、さうしてもつと積極的に「マッカーサー」司令部なんかに了解も得る、得させるやうにする、さうして農林省にも働き掛けて之に對する生産計畫を樹てさせなければ效果が上らない、何「カロリー」が必要だと云つても、それだけぢやいかぬ、處で問題は、我々生活するには千四百二十「カロリー」が要ると云ふのです、それに補助的のものを加へると千六百、厚生省あたりでは二千、私達も二千要ると思ひます、厚生省でも二千位に抑へて居られるやうです、それが千五百幾「カロリー」ですか、それになる、三百萬「トン」の食糧が入れば辛うじて千六百幾らにならうと、斯う云ふ譯なんです、處が「カロリー」説と云ふものも是も餘り偏るとどうも面白くない、私の事を申上げて恐入りますが、丁度好い機會だから御話するんだが、實はさう云ふことを眞面目に研究する人がないのです、それで、此の三箇月以來まあ食糧のさう云ふことに沒頭した譯なんです、現に私の所では、我々の攝つて居るのは一日七百「グラム」では、さうして千「カロリー」でやつて居るのです、それで配給内でやつて居る、闇の物を買つたことは一遍もない、御覽の通り私は太つたと云ふ評判をされて居る、是は矢張り創意工夫ですよ、もう米と麥だけ食べたつて、「カロリー」は上りますけれども仕樣がない、そこで色々代用食を考へて、さうして配給内で行つて、而も榮養を損じない程度に鹽梅して行く、創意工夫をして行く、之が一つ、それから斯う云ふ風に續いちや困るのです、大豆は大豆で續く、藷は藷で續く、是では榮養失調を起すのは目に見へて居る、そこで榮養配合の獻立をして鹽梅をして行くと云ふと、そこに榮養も出れば「カロリー」も出る、創意工夫を働かすことで、米が足りない、麥が足りないと云ふけれども、もつと調理の方面で考へれば、足りないには足りないながらにそこに融通が付く、私はさう云ふ點に於て國民も考が足りなければ、指導の立場にある厚生省の努力も足りないのだと思ふが如何ですか、どうかさう云ふ點に於てもう少し御研究になれば宜いと思ふのです、第二は國民體力の向上ですが、國民體力法は言ふ迄もなく世界にない立法であります、日本があれを出したのは非常な雄大なる見識と、遠大なる形態の下に作られた、我々も厚生省でも特別に委員長もやり、議會に於ても特別委員長で、大分研究もしました、あの結果は一體どうなつて居るか、現在杳として話を聽かない、斯う云ふ時に出來るだけ御やりにならなければ相成らぬと思ふ、體力の向上と云ふものは、さう云ふ點から榮養論を言ふのですが、此の經過を一つ御話を願ひたい、第三は今の勞務者に對する施策でありますが、是が足りない、一體勞務教育と云ふものは、何處で何をして居るのですか、青年學校と云ふ一片の名に隱れて、文部省が之を掌つて居るが、厚生省の側から見ると云ふと、殆ど何もして居ない、勞務教育、それから此の勞務者の利用、是も重要なる問題であります、第三には勞務者の保護、地位の向上と云ふことも考へなければならぬ、是はまあ保險がありますから、今の所は厚生省の大部分のお役人は保險の方に掛つて居られる、併し私はそれだけでは足りないと思ひます、今の御話したやうに厚生省の三大施策と云ふものは、第一は國民生活の改善、第二は國民體力の向上、第三には勞務者に對する施策、此の三つが厚生省の使命である、此の點に於てもつと一層の御努力を願ひたいと云ふことと、それから話は元に戻りますが、矢張り之を實行するには他の官廳との協調、連絡と云ふものを十分にやらぬと出來ない、そこでさつきも觸れたのでありますが、例へば國民體力の向上と云つたら無論文部省と近寄る、國民學校の生徒でも一千萬……處がそこがどうなるであらうか、文部省には學校の身體檢査と云ふものがある、それが國民體力法に規定してある檢査とどうやつたら宜いかと云ふことを十分打合せた上でなければならぬ、今後是はどうなるか分らないが、初めに文部當局と厚生當局とが話合が出來ずに委員會に掛けると云ふのは間違つて居る、委員長としてはさう云ふことではいかぬと思ふ、過去に於てはさう云ふ點に付ても十分なる協調、連絡が缺けて居つた、是からもどうか其の點に於て十分に御協力願はぬといかぬ、食糧の問題でも、生活の問題でも、是は農林省と云ふものがあるが、是も一層の協調、協力を願ひたい、勞務者の關係で言つても、是は方々の方面と協調、連絡を爲さる必要がある、それで問題は厚生省の使命である三大重要施策を實行なさる上に於て、尚一層の努力を願ひたいが、最も必要的に願ひたいのは、是迄もでありませうが、より以上關係官廳との協調、連絡を御執りになることを願ひたい、是は質疑でありますか、希望でありますか知れませぬが、さう云ふことを直接に感ずる、一つ政務次官も能く御考へ下さいまして、大臣にも能く御話願つて御努力を願いたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=14
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015・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 只今野村さんから厚生省の三大施策に付て、多年の御研究又御體驗に依つて色々私共今迄氣付かないことに付て御高説を伺ひましたことを非常に感謝致します、生活の改善に付ては、終戰後の今日、私も最も關心を持つて居る一つの問題でございます、只今御示しになりました榮養食、「カロリー」に關する事柄も、素人ではございまするけれども、私個人としても研究をして見たい、斯う存じまして、先般厚生研究所の榮養學の博士を政府委員室へ呼びまして、色々榮養に關することを伺つたのであります、是は食糧の不足の今日、野村さんの言はるる通りに本當に厚生省が研究をして、さうして國民を指導して、榮養食に關する知識を普及しなければならぬと思つて居ります、是は釋迦に説法でございますが、私始めて聞いたのでありますが、例へば一日に三十匁の肉を食べるにしても、朝と晝と晩とにそれを等分して食べるのと、一度に食べるのとは我々の血を増し、肉を増し、又「カロリー」を増す點に於て大變違ふ、一遍に食べちやいかぬのだ、三囘なら三囘に等分して食べなくちやならぬと云ふやうなことも始めて聞いたのであります、是はなかなか國民に榮養食の知識を普及して、之を實際の臺所に於て實行さすには、餘程力を入れなければならぬと思つて居ります、先づ榮養士の養成からして掛らなければなりませぬ、相當經費の掛ることと存じますが、是非やつて見たいと思つて居ります、それから住宅問題は實は押入を一間では不都合なので、二間にやらなければならぬと云ふことは私は始めて伺つたのでありまして、さう云ふ知識を持つて居りませぬが、住宅の問題は厚生省の直接の問題ではありませぬ、今度は復興院と云ふものが出來て、小林さんの總裁の下にやつて戴くことになつて居りますので、直接住宅を建てると云ふことは、厚生省の問題ではありませぬけれども、今御説の通りに生活改善と云ふことは、之を一つ切離して考へることは出來ませぬ、總てに亙つて研究しなければなりませぬので、厚生省に於きましても只今御示しのやうなことは十分研究して、國民にさう云ふことを知らしめることが必要であると思ひます、それから只今勞務者に對する教育が不十分だと云ふ御話でございました、是は第三の御示しでございましたが、誠に私も不十分だと思ひます、是は何とか一つ厚生省としては考へ直して行かなければならぬと斯樣に存じて居ります、それから體力檢査ですが、是は御承知の通り戰爭中非常に日本の國民の體位が低下致して居りまするので、元來國民體力檢査を始めた時は、戰力増強の一つとしてやつたのであらうかと思ひますけれども、終戰後も引續いて之をやつて行きたいと斯樣に存じて居ります、其の經過に付て報告せよと云ふ御話でございますが、實は甚だ申上げにくいことでございますけれども、就任勿々で其の經過に付ては私承知致して居りませぬので、其の點は他の機會に於て他の政府委員から御答申上げたいと思ひます、大變不十分な答辯でございまするが、一つ御諒承を願ひます、それから各省との連絡を執れと云ふ御話でございましたが、一體日本の役所はどうも連絡が執りにくいやうに出來て居るやうであります、私役人としては經驗が乏しいのでございますが、どうも連絡が執りにくい、何かと云ふと是は外務省の仕事だ、是は俺の仕事だと云ふやうなことを言ふやうであります、例へば朝鮮人を送還する、又朝鮮在留の日本人を還すと云つたやうなことでも、内地に在住して居る朝鮮人を還すのは厚生省の仕事であるけれども、向ふに住んで居る人間を還すのは外務省の仕事だから、厚生省は知らぬと云ふやうなことを言ひますが、さう云ふことでは今後日本を再建して行くに付ては非常に不都合であるから、此の點は十分私も改革して行きたい、斯樣に考へて居ります、何かと不十分の點が澤山あらうと思ひますが、是を以て御答と致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=15
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016・渡邉覺造
○渡邉覺造君 時局の要請に基いて國民勞務手帳法のやうな、勞務統制と云ふ枠を外すのは、誠に結構であらうと存じますけれども、戰災地に於ける勞務の動員とか供出とか云ふことに付て政府は何か之に代る、もつと強力な方法は御考になつて居りますか、一例を取つて申上げて見ますと、水戸市に於て、水戸市は八月二日に戰災に罹つたのですが、其の復興、殊に住宅の建築に付て、資材及び勞務の色々の窮屈さから、一種の闇が行はれて居る、是は既に政府でも御存じだらうと思ふのです、で之を見兼ねまして、市當局が土地の有力者から寄附金を求めまして、さうして復興住宅協會と云ふものを樹てまして、それは九月十三日ですが、縣とも協力しまして、知事も是非とも、是は水戸市でやつて呉れと云ふので、市民の住宅建築に取り掛つた、其の當時の民間に於ける建築費用と云ふものは疊、建具を入れないで、「バラック」で以て千圓から千四五百圓掛つて居る、是では誠に市民が困ると云ふので、其の復興住宅協會を作りまして其の當時戰時建設團と云ふのがありまして、それに建設を御委せしたのです、それで其の計算に依りますと、坪五百圓内外で出來ると云ふ譯てす、九月十三日で、年内に千五百戸建築し得ると云ふ見込が立つた、木材の方は地元の地方木材會社へ頼んで一定數量を出すと云ふ、それから勞務の方は、是は警察部長に話しまして、是も或る程度確保すると云ふので、千五百戸年内に建つと云ふ目論みが立ちました、それから坪當り、先程申しましたやうに五百圓見當で出來ると云ふ確信を得ましたのです、之を市民にも話しまして、此の建築に取り掛つたのです、併しながら是は農林省關係ですから木材のことは又他の機會に農林當局にも申上げる積りですが、此の勞務の方はなかなか思ふやうに出ませぬ、是は既に御存じでございませう、殊に勞務報國會が解散になりまして、勞務協會が出來て、其の所管が警察署から勤勞動員署に移つたらしいのです、さうなりまして動員の睨みと云ひますか、それが利かなくなつた爲か、殊更最近に於ては勞務が出ない、千人動員を掛けても五六十人やつと出ると云ふやうな程度であります、それでは市當局が何か手ぬかりがあるぢやないかと云ふので色々研究しました、勞務者に對する食糧の加配、軍から拂下げた被服なども給與して、相當の待遇は與へて居りますが、併し之を民間に於ける使用状態から申しますれば迚も及ばぬ、それが爲に住宅は今やつと五六十戸、まあ今年一杯で二百戸建つか建たぬかと云ふ状態であります、それから一方民間側と申しますか、市民の間に於て、自由に建てて居る方でも、勞務者が色々過度の要求を致して居ります、具體的に申しますれば、晝と晩は食事を出せ、或は米一升に四十圓とか五十圓とか、それでやり得る者は非常に宜いけれども、やり得ない者が澤山出て來ます、殊に最近の食糧事情に於ては、米を要求されるので傭ひたくとも傭へない、それから棟上大工と云ふものが流行つて居りまして、是は棟を上げてしまふと他所に行つてしまふ、それだから市内に於て屋根は葺くばかりなつて居るが、手の著かない家が多數出來て居る、所謂棟上大工の流行です、棟上迄は一生懸命やるが、それからは又他所に移つて仕事をやると云ふので市民が非常に困り拔いて居ります、それで今關係資料を戴きましたが、之を見ますと、勞務手帳の戰時中果したる效果として、從業員の恣意の移動防止、使用者の側に於ける從業員の引拔防止、第三に移動及引拔に伴ふ賃金昂騰の抑制、第四に勞務需給の調整とか、非常に立派なことが擧げてあります、斯う云ふ立派な效果を十分に擧げて居るとは思ひませぬけれども、假に斯う云ふ效果が、勞務手帳がある現在に於てすら斯う云ふ状況なのに、之を無くしてしまつたら果して我々市民の熱望して居る住宅が所期通り建設し得られるや否や、誠に寒心に堪へない、之に付ては色々譯もありませう、食糧事情ばかりでなく、敗戰に因る國民の國家觀念とか或は道義の減退、色々ありませうが、兎に角此の戰災復興の急場を凌ぐ爲に斯う云ふものを外した後、何かもつと強い手をお打ちにならないと、住宅の建築は思ふやうに行きませぬ、殊に先程御話がありましたやうに、三十萬戸の簡易住宅建設に於ても、恐らく政府の所期する所のものは私は建たないと思ふ、どうしても建たなければ今政府で仰しやいました從業命令のやうなものを發する御決意でありますかどうか、之を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=16
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017・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 只今渡邊さんから復興に付て、實際に於て色々取扱はれました實例を示し、御高見を拜聽致しました、私も餘り戰災地は歩いて居りませぬ、此の間松山と徳島に參りましたが、松山、徳島、何れも今御話のやうに坪四百圓又は五百圓の復興住宅を建築する豫定を樹てて居ります、松山は材木の生産地でありまして、非常に澤山出來ます、阪神地方へ相當量供給する約束も知事の方でやつて居るやうでありますが、材木が非常に多い、松山市は相當に出來て居りましたが、徳島の方は一向に捗つて居りませぬ、それに付て聞きました處が、まだ市區改正の計畫が出來上つて居らぬので、其の點も復興建築の起らない原因の一つだと申して居ります、それはさうかも知れませぬ、東京は今渡邊さんの申されたやうに坪千五百圓は實に粗末な「バラック」であります、私も今朝、人と一緒に中央線の電車で通つたのでございますが、其の時に、其の私の知り合の人が建築の方面に詳しい人であつて、實際に出來て居る家を指して、あれで矢野君六千圓は掛るのだと申しますが、それが五坪乃至六坪でございます、あれで六千圓は掛るのだと云はれまして、豫て千五百圓と云ふものを聞いて居りましたけれども、實際のものを見て驚きました、渡邊さんの言はれた通りに勞務者は出て居りませぬ、勞務協會は厚生省の所管になつて居りますが、勞務は本當に出ませぬのでございます、それには色々原因があると思ひますが、食糧關係、又先刻野村さんの御質問に對して私が申上げましたやうに、勞働意慾の昂揚と云ふことが全然起つて居らぬので、さう云ふ點も影響して居るであらうと思ひます、御説のやうに此の儘で置いたならば、復興建築は容易なことでないと思ひます、處で強制的に勞務を出すと云ふ考があるかないかと云ふ御質問でございますが、是は事頗る重大でございますので、此の席に於て私個人の意見を申上げましても何の用も爲しませぬので、十分に一つ大臣に御質問のことを傳へまして、さうして他の機會に於て御答を申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=17
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018・渡邉覺造
○渡邉覺造君 誠に有難うございました、戰災者に取つて見ますれば、住宅の建たぬと建つと云ふことは非常に思想上にも影響致すと存じます、是非早急に或何かの對策を講じまして、早急に建つやうな方法を是非御考へ願ひたい、それには先程申しました通り資材も強力に出すと同時に、勞務も是非是は強力に出るやうな方法を考慮して戴くやう、重ねて御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=18
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019・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 十分承りまして、大臣の方へ傳へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=19
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020・佐竹義榮
○侯爵佐竹義榮君 此の席でちよつと伺つて宜いかどうか分りませぬが、厚生當局の將來の御方針に付てちよつと承りたいと思ひます、先程野村子爵からもちよつと御發言がございましたやうに、厚生省の將來の大なる仕事の一つと致しまして、社會保險制度の整備擴充強化と云ふことが考へられて居ります、殊に恩給法の廢止せられた後に於きましては、只今ございます勞働者年金保險制度の整備強化とか云ふやうなことも考へられると思ひます、就きましては、社會保險制度に對しまする厚生當局の將來の御考を、御差支ない範圍に於きまして、ちよつと承れれば幸ひであると存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=20
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021・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 佐竹侯爵に御答へ申上げます、御承知の通りに、軍人恩給の停止問題、それに關聯して一般文官の恩給制度の改革等に絡みまして、只今社會保險と云ふことは厚生省の最も重大視して居る問題の一つでございます、近く民間の有識者等に御願を致しまして、委員會を作りまして、早急に案を作りたい、斯樣に考へまして、目下折角努力中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=21
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022・松本學
○松本學君 渡邊さんの御尋に關聯してちよつと伺ひたいと思ひます、勞務手帳を今度廢止されることになりまして、此の勞務手帳が今日迄の勞務の確保の上に相當貢獻したと云ふことの參考の資料を頂戴致しましたが、どの程度の貢獻があつたかと云ふことは、必ずしも私もさう重く見る一人でないのでありますけれども、併し兎に角勞務手帳と云ふものがあつた爲に、頂戴した參考書にあるやうな結果が出て居つたのだらうと思ひます、然るに之を全然廢止してしまつた後に、勞務の確保と云ふやうなことに付て、此の枠を外せば、今後色々問題が起つて來るのぢやないか、殆ど是が出來ないのぢやないか、殊に今日に於ては食糧の増配の問題とか、或は退職金等を貰つて居ります關係上、一時勞働意欲が減退して居ると云ふやうなこともありませうが、併し何かの手を打たないと、勞働力の確保と云ふことはむづかしいのぢやないかと思ふのであります、強權を發動して又徴用をすると云ふやうな策もあらうと思ふのでありますが、どうも今日迄の徴用の制度にしても、必ずしも良く行つて居なかつたのであります、今後に於て、或は強權を發動して徴用されるにしても、昨日迄は呉服屋の番頭をして居つたやうな人を炭坑に持つて行つて見た處で、殆ど能率は上らない、さう云ふやうな譯でありますから、強權に依つて唯徴用したからと云つて、數字の上では、炭坑なら炭坑の勞務者の數がどれだけになつたとは言つても、實際の效率から言ふならば非常に少いものぢやないか、唯數字の上とか形式的にだけ勞務が確保されたやうな形が出來るだけで、實際の力と云ふものは、殆ど期待出來ないのぢやなからうかと思ふのであります、何か良い方法はないものでありませうか、今日迄既にやり盡した強權發動とか徴用とかと云ふことだけではなく、もつと良い方法を御考になつて居ないものでせうか、或は勞務手帳に付て、特殊の勞働だけに付ては未だ之を殘して置かうとか、又例へば炭坑夫なら炭坑夫が戰爭の爲に應召して兵役に服した、從來所謂玄人である炭坑夫……申す迄もなく炭坑夫は熟練職工とは言へないにしても、相當な熟練技術を要するのでありまして、素人が唯山へ入つたからと言つて、石炭が十分掘れるものではない、相當玄人で戰爭の爲に其の山から離れて居る者が澤山ある、それで石炭の出炭率も戰爭中非常に少かつた、でありますから、戰爭前に働いて居つた炭坑夫が、戰爭の爲に一體どれだけ其の山を離れて居つたか、又今日どれだけそれが歸つて來たか、是は一例でありますけれども、さう云ふ風に仕事の種類に依つて、今日一番大事な勞務を要する仕事を選り出されて、今一番大事なのは炭坑夫でございませう、それから今渡邊さんから御話が出た大工とか左官とか云ふやうな、さう云ふ急場を要する建築に必要なる勞務でありませう、さう云ふ特殊のものを選り出されて、それに玄人を一つ探し出されてそれに特に勞務手帳を與へるなり、或は非常に優遇をするなりなんかされて、專門家を專門の所へ使つて行くと云ふやうなやり方を爲されることは出來ないものかどうか、私は徴用の制度に非常に不滿を持つて居つた一人であります、戰爭の時でありますので、權力を以て人を引つ張り出せばなんでも出來るやうな考へ方でああ云ふ施設をされたと思ふのでありますが、決してさう云ふ形だけを整へたことに依つて勞働力の確保は出來ない、只今申上げたことは一、二の私の考へて居ることを申上げて、さう云ふ風な御考があるかないか承つて見たい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=22
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023・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 松本さんに御答申します、特殊の職業を限つて勞務手帳のやうな制度を殘して見たらどう云ふものであらうかと云ふ御尋でございますが、松本さんの言はれたやうに、成るべく權力を用ひないで必要な勞務を得たいとは私共考へて居ります、處がなかなかそれが現在の状態でばむづかしいのでありまして困つて居ります、先日國民登録と云ふことをやりましたが、それに依るとどう云ふ職業の者が現在日本に何人居るかと云ふことが分ることになつて居ります、二十日過ぎにはそれが分ります、さう云ふ結果を待つて何か一つ考へなければならぬ、極めてぼんやりした考でありますけれども、只今の所さう云ふことを考へて居ります、私も強權を用ひたら必ずしも松本さんの言はれるやうな良い結果を得るとは考へて居りませぬで、成るべく強權を用ひずして所期の目的を達つしたいと考へて居ります、大變不十分な答辯でございますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=23
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024・松本學
○松本學君 強權を用ひると云ふことは私は却て惡い結果が起ると考へる、今日迄の經驗から見ましても良い結果は得ないばかりぢやなくして、惡い結果を來して居るのぢないかと思ひます、參考の爲に局長に伺つて御知らせを願ふと宜いのですが、炭坑の例を採りまして、斯う云ふ風な戰爭に依つて、所謂專門家である炭坑夫がどれだけ一體職に離れたと云ふ御調が出來て居りますか、それから又復員なりの關係で以てどれだけが今歸つて來て居りますか、是は炭坑夫だけの例でありますけれども、さう云ふ風な職業別に依つての勞働力の移動に付ての、戰爭前、戰爭中、戰爭後、何か御調が出來て居れば知らせて戴いたらどうか、假に今十三萬の炭坑夫が入用だと云ふ御話がありましたが、其の中で專門家が一體どれだけ復員して居るのであるか、さうすると云ふと、優先的に其の專門家を權力に依つて引つ張り出すと云ふことでなく、何かの勞働意慾を持たせるやうな方法を採つて、專門家に專門の仕事をさせると云ふことは出來はしないかと思ひます、さう云ふ御調がありましたら知らせて戴きたいのであります、それから私は將來の一體日本の工業と云ふものがどう云ふ形になつて來るかと云ふことを政府としては御研究になつて居ることだらうと思ふのであります、從つて此の勞働問題と云ふものもそれに關係して變つて來るだらう、實質的に日本の工業が一體どう云ふ風な形で以て終戰後、數年數十年の間位は、殊に聯合國との關係もありませうし、今日戰爭に依つて非常な打撃を受けて居る状態でありますから、經濟力が弱つて居る此の日本國に於てどう云ふ形態を以て日本工業が行くべきものであるか、事實どうなるか、大體政府として之をどう云ふ方面に持つて行くべきかと云ふことは、工業國策として御考になつて居るだらうとも思ふし、又御考にならなければならぬと思ふ、さうすると云ふと私は此の勞働政策と云ふものも變つて來るぢやないか、それは是だけの戰災を受けて全然所謂工業……農村は是はまあ完全に殘つて居りますが、工業のあると云ふやうな都市は殆どやられてしまつた、工場の戰爭に依る損害と云ふものは今私は數字を存じませぬが、非常に大きな損害を受けて居る、是が再び所謂工場工業、まあ英語を使つてをかしいですが、「ワークショップ・インダストリー」と云ふ形で出て來ると云ふことはなかなか先のことではないか、今後の日本の工業と云ふものは、國策として或見透しを立てて工業政策、施策と云ふものを立てる上に於ては、どうしても所謂「ドメスティック・インダストリー」、家内工業と云ふものをやらなければならぬぢやないかと私は斯う云ふ風に思ふ、さう云ふ風な行き方で、家内工業から出發して段々と餘力が出來て、經濟力が充實するに從つて工場工業と云ふものにどんどん發展して行く、家内工業に於て部分品を作つて、小さい工場とか、或は組立とか、仕上をする、斯う云ふやうなことが當分續くのぢやなからうかと云ふ風にも思はれるのでありますが、さう云ふことに付て何か我が國將來の工業國策として政府の御考があつて、それに關聯してやるならば商工省と厚生省とが能く連絡を御取りになつて、將來の勞働政策と云ふものを御考へになつて居りませうかどうでせうか、之を承つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=24
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025・矢野庄太郎
○政府委員(矢野庄太郎君) 松本さんの御尋は非常に重大な問題で、私から御答辯申上げることは適當でないと思ひますが、松本さんの言はれるやうに、日本の將來の工業は結局は手工業になつて來る、十年の間か二十年の間か是は分りませぬが、手工業と云ふ形になつて來るのではないか、斯樣に考へて居ります、總理大臣も手工業でやつて行かなければならぬと云ふやうなことを公開の席上で御述になつたやうに私も承知致して居るのでありますが、從ひまして厚生省としての勞務對策、失業對策と云ふものは、矢張り此の線に副うて行かなければならぬことは、勿論であります、差當りの私の省の失業對策としては、先般新聞に於て發表せられたやうに、農林省所管の開墾事業、又内務省計畫の土木事業、斯う云ふ方面に失業者を相當吸收させるやうにしたい、斯樣に考へて居る次第であります、事大變大きな問題でありまして、私から御滿足の行かれるやうな答辯は出來ませぬ、それから炭坑勞働者のことに付て御尋がございましたが、是は後で統計を調べ得ましたならば御答をすることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=25
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026・松本學
○松本學君 只今の問題に付きましては、政府に於ても色々御研究になつて居りませうから、又他の何かの機會に御尋します、又此の議場でなしに御尋ねする機會があらうと思ひます、それから只今數字を御知らせ願ひたいと申したので、是は希望になりますが、只今申上げましたやうなことに付て十分の御考慮を願つて置きたいと思つて居ります、それから此の法案に付てちよつと承りたいのですが、附則の第二項に「本法施行前に爲したる行爲に對する罰則の適用に付ては國民勞務手帳法は本法施行後と雖も仍其の效力を有す」とある、本法施行後即ち廢止後に於て罰則に付てのことは效力があると云ふことでありますが、是は何か期限でも切るのでありませうか、何時迄此の效力が續くのでありますか、或は刑罰の方のあの時效に依るのでありますか、そこの所をちよつと……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=26
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027・佐伯敏男
○政府委員(佐伯敏男君) 一般の規定に依ります、時效に依るものと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=27
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028・向山均
○委員長(男爵向山均君) 他に御發議がなければ質疑は終つたものと考へまして討論に入りたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=28
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029・野村益三
○子爵野村益三君 先刻御話になりました國民職業登録ですが、二十日迄に御出來になります… 、あれが出來ましたら諸君に御配付を願ひたい、それだけ御願ひして置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=29
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030・松本學
○松本學君 それから又數字は後で戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=30
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031・向山均
○委員長(男爵向山均君) 只今政府委員から二、三別の機會でと云ふ御話がございましたが、是は又何れ何かの機會に大臣に御出でを願ひますが、どうぞ御意見がございましたら──別に御發言がなければ入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案は原案通り可決することに御異議はごさいませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=31
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032・向山均
○委員長(男爵向山均君) 御異議ないと認めます、休憩致したいと存じます、午後一時から開會致します
午前十一時四十五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=32
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033・会議録情報3
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午後一時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=33
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034・向山均
○委員長(男爵向山均君) 只今から午前に引續き委員會を開催致します、法制局長官から國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案の御説明を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=34
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035・楢橋渡
○政府委員(楢橋渡君) 提案の理由を説明致します、委員會に付託せられました國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案に付き御説明致します、國家總動員法は昭和十三年四月法律第五十五號として公布、同五月施行せられたのでありますが、其の第一條に於て其の目的として、戰時に際し國防目的達成の爲、國の全力を最も有效に發揮せしむるやう人的及物的資源を統制運用すると掲げられました如く、施行以來國防目的達成の爲に各般の統制の基礎として、戰爭中最も活用せられたる、所謂戰時統制法令の根幹を爲す法律であり、又戰時緊急措置法は去る第八十七議會の協贊を經て、昭和二十年六月法律第三十八號として公布せられ、戰時の最終的段階に於て國家の危急を克服せむが爲に應機の措置を講じ得る根據法となり、政府に對し強力なる非常措置の權限を與へたものであります、終戰後の今日に於きましては、戰時中の法令は何れも能ふ限り速かに整理改廢を致すべきでありますが、特に此の二法律は之を至急整理するを適當と考へ、茲に兩法律廢止法律案の提案を爲した次第であります、而して兩法律を廢止することに依つて起る混亂を避ける爲、附則に於て必要なる規定を設けたのであります、以下各項に付其の大要を御説明致します、本文は國家總動員法と戰時緊急措置法を廢止する旨を規定したものであります、附則第一項は、本法施行の期日は勅令を以て定むることと致したのでありますが、施行に必要なる手續等を急速に進め、能ふ限り速かに施行致したいと考へて居ります、附則第二項の前段は、兩法律に基き現に存する勅令に關する限り、是等の法律に依り得ることを認める爲、其の法的根據として本法施行後六箇月間國家總動員法及戰時緊急措置法の效力を認むることと致したのであります、既に終戰以來國家總動員法に基く勅令以下の命令に付きましては、續々其の整理を行つて參り、既に整理濟の勅令、省令等は相當數に上るのみならず、今後と雖も其の整理を急いで居るのでありますが、終戰後の各般の情勢に鑑みまして、其の善後處置を充分に講ずることなく、有らゆる規則を遽に撤去致しますと、却つて急激なる社會不安、秩序崩壞を招來する虞がありますので、本法施行の際現に存する勅令に關する限り、且終戰後の事態に對應し、國民生活を維持安定せしむるに必要なる限度に於て、六箇月間を限り是等の法律に依り得ることを認め、其の間に於て整理すべきものは之を整理し、法制的、行政的措置を要するものは之を行ひ、圓滑平穩に事態を推移せしめ、以て國民生活の維持安定を圖らむとする次第であります、即ち以上のやうな限度に於て、兩法律は其の效力を存續せしむることと致したのでありますが、國家總動員法の目的を掲げた同法第一條、それに必要なる總動員物資と總動員業務の定義を規定した同法第二條及第三條は、今囘に於て全く意義無き爲、是等の條項は之を除外致すことと致した次第であります、附則第二項の後段は、右の如く兩法は現存勅令適用の限度に於て存續せしむる要ありとは申せ、其の目途とする所は戰爭の遂行ではなく、終戰後の事態に對應して、國民生活の維持及安定を圖る爲に之を存續せしめむとするものでありまして、それぞれ必要なる讀替へを爲し、今後の效力存續上支障なからしめむとした次第であります、附則第三項は、存續する勅令の内容に關し存續を許さるる六箇月間に於て、其の適用上必要なる改正を爲すことを得る旨を定めたものであります、改正する場合に於きましても、「其の規定する事項の範圍内に於て」と致しまして、國民に新なる拘束を加ふるやうなことは出來ぬ趣旨であります、附則第四項は兩法律の廢止に依つて各勅令に規定せられた權利義務等の關係に混亂を惹起せしめぬ爲、本法施行前兩法に基いて行はれました命令、處分、行爲に係る措置の中其の法律關係の未だ完了せざるもので今後も從前の例に依り措置すべきもの及兩法に違反して行はれました行爲の處罰に關しては何れも本法施行後と雖も之を處理し得ることと致したのであります、而して現存勅令が本法廢止後六箇月間の經過中行はれる各種事項の處置及違反行爲の處罰に付ても同樣に行ひ得る如く括弧内の規定に依つて其の旨を明確に致した次第であります、何卒宜しく御審議の上御可決あらむことを切に希ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=35
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036・向山均
○委員長(男爵向山均君) 只今御説明を承りました法律案は關係が各省に亙りますので、各省から出ます見込の法案と一緒に出來得べくは纒めて審議したいと考へて居りまするが、如何でございませう
〔「贊成」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=36
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037・向山均
○委員長(男爵向山均君) 御異議ないと認めます、只今文部大臣の御出席を待ちまして、映畫法に關して質疑を致したいと存じます、速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=37
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038・向山均
○委員長(男爵向山均君) 速記を始めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=38
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039・野村益三
○子爵野村益三君 映畫法廢止に關する審議を始めるのでありますが、其の初めに當りまして、「マッカーサー」司今部より通牒を受けられた其の大略を承つて置くと我々も非常に好都合と考へますが、當局に於て御差支へがなければ要領だけ御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=39
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040・鈴木幹雄
○政府委員(鈴木幹雄君) 私共の關係致しました範圍に於きまして映畫法を廢止致します迄の經緯を御説明申上げまして御了解を得たいと思ひます、此の映畫の問題が具體的に起りましたのは、去る十月四日に所謂政治的、公民的自由の制限除去と云ふ通牒が參りました、それに端を發して居るのであります、實はそれ以前に於きまして、私共の方と致しまして、寄り寄り映畫の業者或は映畫の關係團體と云ふやうな方面と、斯う云ふやうな統制團體の自治的改組と云ふやうな問題に關しましても協議を致して居りました、今迄官廳の外郭團體としてありましたのを、業者の自治的團體に直さうと云ふやうな話で進んで居つたのであります、其の時に色々と話が業者の間からも出まして、「マッカーサー」司令部の方に於きまして、映畫と云ふものは非常に民主々義國に於ての非常に重大な文化機關であると云ふやうな見地から重大な關心を拂つて居るのであります、今後に於ても相當な變革が豫想されるのではなからうかと云ふやうな考を持つて居つたのであります、十月四日に只今申上げましたやうな覺書を戴きましたが、其の中には新聞と竝びまして映畫に關する所の檢閲を廢止せよと云ふやうな一項があります、之に關する所の事務も直ちに廢止するやうにせよ、斯う云ふやうに來たのであります、從ひまして私共の方と致しましては、從來映畫法に於きましてやつて居りました映畫の檢閲竝に興行の一切の檢閲を停止致しまして、又之に關聯を持つて居りまする事務も停止をする、同時に地方廳の方面にも興行の檢閲に關する事務を停止するやうにと云ふやうな通牒を發したのであります、それが檢閲の廢止の問題が起りましたのでありますが、それに次ぎまして、更に暫く經ちましてから映畫法竝に其の附屬法令を撤廢せよと云ふやうな覺書を戴きました、茲に御審議を煩はして居りまする映畫法の廢止も此の覺書に依りまして致すと、斯う云ふやうな段取りになつたのであります、此の問題に關しましては、私實は聯合軍最高司令部の方と兩三度に亙りまして話を其の方面の擔當者と致したのであります、色々と話を致して居りまする中に私の理解して居りまする範圍に於きましては、映畫に關しましての檢閲、製作の指導、斯う云ふやうな方面は現在の所、全部聯合國最高司令部の方に於て之を擔當すると云ふやうな體制を整へて居るやうに見受けられるのであります、之に關しまして日本政府は直接にやると云ふ分野は現在の所はないやうに考へて居ります、殊に警察の方面は、非常に此の文化事業に對して從來取締の觀點から關與致して居ります點を、民主主義的でないと云ふやうな理由から極端に排撃を受けて居りまして、警察が斯う云ふ方面に「タッチ」するのは民主主義的でない、斯う云ふやうな結論を下されまして、私共の方と致しましては映畫竝に興行に關しましては、其の保健衞生の立場から、或は安全保障の立場から、各種の方面から警察が手を引けと云ふやうな交渉を受けて居るやうな次第でございます、昨日も提案の理由の説明の中にありましたやうに、是等の問題に關しましては厚生省其の他關係各省の方面に目下協議を願つて居りまして、さうして私共と致しましては、現在内務省令一本で規定を致して居ります興行等取締規則も新しい立場から致しまする所の規則を制定致しまして、それで以て今後律して行く、斯樣に取計ひたいと云ふやうに考へて居るやうな次第であります、大體私の關係致しました範圍に於きまして、承知致して居ります經過は以上申上げたやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=40
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041・野村益三
○子爵野村益三君 覺書の内容の大略を御紹介願へませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=41
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042・鈴木幹雄
○政府委員(鈴木幹雄君) 先程十月四日に檢閲の停止の問題が出て來たことを申上げましたが、それに遡ります、九月二十七日にもう一つの指令が參つて居りまして、是は非常に抽象的でありますが、今後は映畫なんかに付きまして、有らゆる形式の言葉に對する檢閲は最高司令官が特に承認した場合に限つて出來るのだと云ふことを言つて來まして、一應茲に於て何と申しますか、制限をせられたと云ふやうなことになつて居ります、此の時にはまだはつきりと映畫は新聞、無線電話、電信、郵便と云ふやうな事項が相當出て居りまして、特に映畫と云ふ問題が大きく「クローズ・アップ」されて居らなかつたのでございますが、九月二十七日に特に司令官が承認した場合の外は制限をしてはいかぬと斯う云ふやうな通牒が來て居ります、越えて十月四日に先程申上げました政治的、公民的、宗教的自由に對する制限除去の件と云ふのに依りまして、此の映畫の檢閲は效力を停止する、斯う云ふやうな命令になつて參つたのであります、それから越えて十六日には先程全文を朗讀致したのでありますが、映畫法竝に其の附屬法令、中には警視廳の出して居りました警察命令に類するものもありますが、是等に付きましては廢止の方途を講ずるやうにと云ふやうなことになつて參つたのであります、内容と申しますると大體以上のやうなことに考へて居りますが、まだ御疑問の點がございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=42
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043・野村益三
○子爵野村益三君 大體今迄の經過は了承致しました、是から私の質疑に入ります、只今御紹介になつた成行を考へて見ますと、結局此の映畫法と云ふものは所謂民主主義或は自發的にと云ふやうな點に於てどうもそぐはないと云ふ所から話が進んだことと了解しました、映畫法は御承知の通り昭和十四年の三月二十三日に本院の特別委員會を通過し、それから同じく十四年に法律第六十六號を以て發令されたものであります、それに約七年の年月を經て居る、其の間に我々の國民思想、或は社會の進展に寄與したることも是も少くないと、思ふのであります、但し我々が映畫法を承認した時にも、贊成演説の中にもある、實際を見ますと云ふと、映畫法二十六箇條の中に、或は制限と云ふ文字を使ひ、許可と云ふ文字を使ひ、斯う云ふ風な條項が十箇條もある、現に特別委員會にも此の話が出て、或委員は斯う云ふことを言つて居ります、是は如何にも此の法律は消極でありまして、唯取締と制裁に流れて居つて、温かき手を以て之を養成し育成して行くと云ふ點には、私は遺憾な點が多いと存じますと言はれて居ります、其の通りであります、之を一見しますとどうも不都合なものとも思はれぬ、併し又良い點も澤山ある、此の良い點と申しますのは、第一條の目的を達成する爲の色々の條項もある、第一條は御承知の通り、本法は國民文化の進展に資する爲映畫の質的向上を促し、映畫事業の健全なる發達を圖るを目的とす、此の目的に付ては誰しも依存がない、「アメリカ」の人達も之に付ては寸毫も異議はない、斯う云ふ事業をやらなくてはならない譯なんであります、結局映畫と云ふものの重大性を、彼も認め我も認めると云ふ點は是は同じですけれども、其の見方とか或は本法に對する所管を異にするから、謂はば我々共から言へば、何だか玉石混淆の處置を行はれたやうに思はれる、無論本法と云ふものは改正しなければいかぬと云ふことも我々は叫んで居る、現に斯う云ふことを一委員が言つて居ります、此の法律を行ひまして、段々と經驗が積むに從ひまして、次囘には此の問題を相當御訂正になつて、さうして更に又根本的の解決を遊ばして改正案を御出しになると云ふことも御願ひしたいと存じます、是は改正しなければいかぬと云ふことを知つて居るけれども、之を一朝にして止めてしまつて、偖て後がどうなるかと云ふ問題、それは今申したやうに彼も我も映畫の重大性は認めて居ると云ふことは、是はもう共通の事實なんであります、かるが故に、我々も相當な時に相當な改正をして、さうして本法の目的を達成するやうにしたいと云ふことは豫期して居る、そこでどうでせうか、是は文部竝に内務當局の御所見を承りたいのでありますが、何れ之を廢した後には、善後策と云ふものを考へられる譯なんでありませうけれども、それに先立つて一つ御尋ねしたいが、一體此の檢閲を廢してしまつて宜しいのでせうな、第二は輸入「フィルム」の選擇であります、之を無制限に止めてしまつて宜いものであるか、我々は嘗て輸入「フィルム」に對して慊らなくて大いに其の非を叫んだこともある、之を無差別に輸入すると云ふと飛んだことになる、それこそ映畫の重大性と云ふのは、良い意味の重大性ではありませぬが、威力であります、それが思はぬ所に行つてしまふと云ふことも考へる、だから輸入と云ふことに付ても、無差別の輸入と云ふやうなことは是はいけないので、能くそこの取捨選擇は、我が國の文化に貢獻する、將來の進運に有利なものを選んで行くと云ふことをなさらなければいかぬ、是は文部當局も十分に御考にならなければいかぬと思ひます、それから成るたけ良い「フィルム」を拵へなければいかぬ、是は「アメリカ」の映畫の文化映畫の中に、三十幾つかの良いものがあると云ふ御話でありますが、それはいつ何時でも御利用をされたいと云ふ話もあつた、さう云ふのは結構である、併し話が横になりますけれども、食糧の三百萬「トン」が輸入されてもこつちで以て出來るだけのことをやらなければならぬ、それに安心して苟も努力と云ふものが不足のやうなことになると、又飛んだことになる、それは「マッカーサー」司令部でも言つて居る、我々もさう考へて居る、それで外國の「フィルム」が輸入されたことに頼んで、日本でもそれに敗けないやうな良「フィルム」を拵へると云ふ覺悟で、實績が擧らなければ是は無意味だと思ふ、却つて其の成績と云ふものは思はぬ所に走つてしまふ、だから良「フィルム」の作成と云ふことに付て十分に選奬されなければならない、さう云ふ選奬と云ふことも、此の廢止に因つて形ではなくなつてしまふ、又良い「フィルム」を成るべく上映させると云ふことも是はやらなければならない、今迄は上映に對する命令がありましたけれども、是もどう一體なされるか、文化映畫等と云ふものも、是は今御話したやうに十分普及させなければならないものも矢張り相當ある、是は今の程度で何か一つ上映するやうな規定を設けないと、或は妙な劇映畫がずつと是から入らなければならないと思ふ、而して劇映畫の惡影響と云ふものは、是は著しい話で、是も動ともすると飛んだことになる、其處で此の良「フィルム」の上映と云ふことに付ての規定と云ふものを考へなければならない、是等は私は良い施設だと思ふ、映畫法に規定してある……、一體其の所謂俳優、技術者と言ひますか、さう云ふ者を一體どう御覽になるか、あの修養の程度で宜いものか、私等はどうも遺憾に思ふ、矢張り映畫法に依るやうに之を教養して行つて十分之を善用しなければいかぬと思ふのですが、それには學校のこともあるし、取締もある、そんなことは是からどうなさるか、それから是は甚だどうかと思ひますが、露骨に言ひますと、今では少しは良くなつたのでありますが、此の映畫業者と云ふものは實際困り者だ、或る時代には警視總監も尻尾を卷いたやうな時代があつた、なかなかむづかしい、是が勝手なことを言つて勝手な行動をやつては、日本の映畫と云ふものは我々の考へるやうな發達は遂げられないと私は思ふ、之に對する何か對策と云ふやうなものがなければならぬ、それも先刻御話したやうに徹頭徹尾制限、取締ではいかぬ、或委員の言つたやうな温き手を以て之を養成し育成して行く、斯う云ふ方法でなければいかぬ、さう云ふ設備は一體どうなさるのであるか、私は映畫の重要性竝に是から普及奬勵されなければならぬと云ふ立場から考へてここ等に付て甚だ心配がある、さう云ふことと、もう少し積極的に言ひますと、一體映畫の普及と云ふことはどうなるか、どう云ふ方法に依つて普及されるか、最も良い映畫の普及と云ふものをどう云ふ方法でするか、是が甚だ覺つかない、それから私が何時も言ふのですが、常設館と云ふものの中の状態と云ふものは實に危險でもあるし心配である、大臣も近頃常設館に行かれたかどうか知りませぬが、私は歴代の大臣に御勸めして居るのでありますが、常設館を能く御覽下さい、ああ言ふことでは、最近では迚も安心して映畫を樂しむと云ふ氣にもなれなければ、實際なれない、觀客は無制限に入ります、空氣は惡いし、不衞生的であるし、甚だ覺束ない、それで私は言ふのです、是は査察制度の行はれる前でしたけれども、其の前に各興行の方面にでも所謂査察制度を行へと云ふことを私は提言したのです、ああ言ふ所にでも當局者が時々行つて見れば分る、どう云ふことでさう云ふことを見出す役目をして居るかと云ふと、劍を下げて居る巡査の臨檢です、是は「マッカーサー」司令部の人が見てをかしいと思ふのも無理はない、彼等は何も知らない、斯う云ふ所はどうしたならば宜からうとか、或は斯う云ふ風に改善したら宜からうと云ふ柄ではない、だから映畫に關する方が時々行つてさうして常設館の状態を見られたら大變宜からうと云ふことを提案したのですが、御忙がしいからでせう、況や内閣が迭つて局長なり、次官なり、大臣なりが映畫を覗いて見ると云ふことは殆どない譯だ、だからああ云ふ中の状態と云ふものは依然として混沌たるもので、我々が本當に映畫に親しみ、即ち言葉を換へて言ふと映畫の效力を十分徹底せしめると云ふことに甚だ不足である、それからまあ假にです、之が廢止されて、縦し之に代る代案が出來ても斯う云ふことは必要だと思ふのです、文部省に於て教育映畫と云ふものをもつとやらなければいかぬ、今は名ばかりで兎に角國民學校でも一千數百萬の子供を抱へて居られる今日である、學校教育即ち教育映畫に力を盡さなければいけないのに、どうも其の局長が迭つてしまふともう映畫と云ふものは何處かに飛んでしまふ、課長等と云ふものは酷い、數箇月で迭つてしまふ、或局長は映畫に非常に熱中して何だか妙なことを考へる、或局長は方針が違ふ、そんなことですから文部省の教育映畫は振はないと云ふことは是は無理はない、どうしても教育映畫と云ふものは文部省でなければ出來ない、商賣人に任しては到底目的を遂げられない、其の本家本元の文部省が一方に於て映畫と云ふものは重要だと云ふことを始終言はれて認めて居るに拘はらず、教育映畫に對しては頗る冷淡、冷淡と云ふか力が足りないのでせうか、まあ金のことを言ふと此の際どうか知りませぬが、私共は或は百萬圓位出して宜いぢやないかと云ふことを言つたこともある、文部省では教育映畫にどれだけ經費を使つて居られますか、段々少くなつて二十餘萬圓と云ふのが、今は六、七萬圓でせう、それで教育映畫は出來るものぢやない、もう一つはこんなことになりますと、殊に映畫に關する協會と云ふものを働かせなければいけない、一方に於て業者と云ふものは只今申上げた通り檢閲もなくなる、それを巧く按排して治めて行くには矢張り之に關する協會と云ふものを働かせなければならぬ、我々がやかましく言つて大日本映畫協會が出來ました、是で御承知の通り俳優など養成しようと云ふ譯であります、一方に於ては大日本映畫教育會、之が出來て、是は文部大臣を會長に戴いてさうしてやつて居る、處が何處からかの横槍で、どうも是は民主的でないと云ふので、會則を改正して文部大臣を會長とすると云ふやうなことは民主的でない、それは削る、削るのも宜いでせうと云ふ風なことで、片方の大日本映畫協會も混沌として振はない、文部大臣を規則として會長に戴かうとして十分教育映畫に盡瘁しようと思つた其の映畫教育會も何んだか今度自滅するのでないかと云ふ風な譯で、是では一體映畫の前途はどうなるか、重要である、其の重要性を活かして、我が國民の文化、世界の平和に貢獻しようと云ふ重大使命を持つて居る所の映畫が一體そんなもので宜いのか、そこで私は伺ひたいのは、是は廢止になる、映畫法の第一條の目的趣旨は變らない、國民文化の進展に資する爲、映畫の質的向上を促し、映畫事業の健全なる發達を圖ると云ふ此の趣旨に於てはいつ何時何れの場合に於ても是は變らない、此の目的を達成せらるる爲に此の映畫法が廢止になつて、さうしてどう云ふことを規定されるのか、是は御腹案がなければならぬ、只今便宜上私は數箇條に亙つて御話を致しましたが、是等を完全に遂行する爲には代案としてどう云ふ御腹案があるか、それが一番必要であります、殊に今の文部省として教育映畫にどれだけの力を盡されるのか、業者々々と云ふやうなことを言ひますけれども、此の仕事を推進發達せしめるには、どうしても協會と云ふものの働きに俟たなければならぬ、一方に於ては教育映畫の方では會がある、其の他のものに於ては大日本映畫協會と云ふものがある、之を十分活用せられなければならぬ、それに對する御考はどうか、或は豫算にでももう計上してあるのかどうか知れませぬけれども、さう云ふやうなことを率直に一つ伺つて、我々が多少なりとも安心したいと思ふ、安心ではない、詰り日本の文化を向上し、世界平和に貢獻する爲に我々共は御聽きしたい、どうか一つ御腹藏なく大臣の御話を伺つて見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=43
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044・前田多門
○國務大臣(前田多門君) 此の取締の關係のことに付きましては、何れ又内務省の政府委員の方から何か話があると思ひますけれども、それ以前の事柄に付きまして、只今御尋の點に付きまして、私の考へて居ることを在りの儘申上げたいと思ひます、今囘の映畫法の廢止は御案内のやうな事情でありまして、寧ろ自由の制限壓迫と云ふやうな意味が強い爲にそれは廢止を命ぜられ、廢止せざるを得ないやうな状態になつたのでございますが、映畫法の廢止と云ふことが即ち映畫其のものの重要性を無くしたと云ふことを意味するものでは毫末もないやうに私は考へます、否寧ろ法律が無くなりますれば、いつそのこと映畫を重んじ、之を教育方面に大いに活用致さなければなりませぬ、殊に層一層努めなければならぬことと考へて居る次第でございます、それで御話の如く此の映畫を唯取締の方面から見ることなくして、助長し、之を奬勵し、之を利用する、斯う云ふ方面に於きまして一層努めて參りたいと思ふのであります、それ等の具體的の問題に付きましては、政務次官から又御答辯申上げることが出來るであらうと考へます、呉々も申上げたいと思ひますことは、映畫法の廢止と云ふことに依りまして、意氣沮喪して、當局と致しましては、映畫の利用と云ふことに付ては熱意を冷ましてしまふのだ、或は御話の如く教育映畫にもつと進出して參る、或は映畫の俳優を善導して參ると云ふやうな最も重要な事柄に付きましては、法規がございませぬでも、一層是から努めてやらなければならぬことだと考へて居る次第であります、又御示しの映畫に關係致しまする協會、殊に野村子爵が非常に御骨折を色々と煩して居るやうに承知致して居りますけれども、大日本映畫教育會と云ふやうなものの其の活動と云ふことに付きましては、一層我々共囑目致し、又御援けの出來るものならば、出來るだけ御援けを致したいと斯樣に考へて居る次第であります、御話の中に何處かの横槍か何かあつて、會長に文部大臣が當ると云ふことになつて居つたことが變つたと云ふ御話でありますが、是は決して文部大臣が會長をせないことになりましたと云ふことが、少しも文部省が此の會に對しまする所の關心を失つたとか、熱意を冷却したと云ふことには少しもならないのであります、實は是は在りの儘申上げると、何處からかの横槍でも何でもないのでありまして、私自身の發意からして致したことであります、今後文部省に關係のありまする所謂外郭團體の一切に對しまして、特別の事情で出來ませぬものは已むを得ないけれども、原則的と致しましては、今後若し役人が其の會長をやるとか、副會長をやると云ふやうなことは一切廢めたい、若し役人が會長になるやうな仕事ならば、文部省自身がやれば宜しい、外郭團體が、或は民間團體がやると云ふ場合に於ては、民間の一番此の事に堪能な方が、徳望のある方が御當りになつて、さうして文部省を御援け下さると云ふ方が宜いのであると云ふので、役人が其の會長、副會長を致しますことを原則として一切廢める、斯う云ふ方針を私は採りました爲に、其の適用の一つとして、恐らく映畫教育會の方も文部大臣が手を引く……と云ふと語弊がありますけれども、名前を持たないと云ふことに相成つたのであると思ひますけれども、併し是は如上の理由から來て居るのでございますから、決して其の爲に文部省が關心を失つたと云ふやうな意味に一つ御取り下さらないやうに御諒解を御願ひ致したいと思ふのであります、費用等の點に付きましても御示しの如く丁度此處で見ましただけでは、成程如何にも總ての費用が、是等映畫の問題に付て國家が投ずる費用としては貧弱であると云ふことを痛感致しますやうな次第であります、他面に於きまして、財政は御承知の通り殆ど破局的に近いと申すやうな實に困難な財政状況でございますから、今後直ちに豫算的にどれだけ多額に費用を計上出來ますかどうかは、是はちよつと考究を要するやうなことであると思ひます、又此の點に付きましては、私共と致しましても、非常に努力致さなければならないと考へて居ります、行く行くは斯う云ふ經費等の上に於きましても、もう少し仕事の能く出來ますやうに今後努力を致したいと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=44
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045・野村益三
○子爵野村益三君 御趣旨は諒承致しました、さうすると先刻來御話した内容を有して居る映畫法が廢止になりまして、尚映畫の眞目的を達成する爲に之に代る所の所謂代案、法律でないにしても、さう云ふものを何か具體的に……今の御話でやる積りだと仰しやるけれども、何か多少拘束力のあるものでなければ安心が出來ないと思ふ、其處はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=45
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046・三島通陽
○政府委員(子爵三島通陽君) 御質問の點でございますが、此の映畫法が廢止されまして、文部省として先づやらなければならないことが相當あると思ひますが、是は必ずしも映畫法の廢止になりましても、映畫法がなくともやれることでございまして、之に付きまして、二、三やりたいと考へて居りますことを申上げます、先づ優良映畫の選奬であります、是は從來も文部省がやつて參つて居るのであります、兎角文部省の推薦した映畫はつまらないと云ふやうな評判を聞きます、却て業者あたりでは文部省で推奬して貰はない方が宜い位だと云ふやうなことを云ふやうな聲も今迄も耳にしたのでございますけれども、併し優良映畫を推奬して之をどこ迄も廣めて行くと云ふことは是は非常に必要なことだと思ひますから、今囘は委員を全然新しく御願を致しまして、さうして權威のある藝術家とか、批評家とか、學者とか、さう云ふ方々に御集りを願ひまして、文部省もそれに加つて、矢張り優良映畫の選奬と云ふことをやりたい、斯う云ふ考を持つて居ります、先般も映畫會社の首腦部に集つて戴きまして、さう云ふやうなことを御諮りを致しました處が、文部省がさう云ふ態度でやつて戴くならば非常に結構だから是非やつて戴きたいと云ふやうな御話もありました、是は藝術的に立派な映畫も選奬しなければなりませぬし、或は教育的に立派な映畫、色々の角度から映畫と云ふものが見られると思ひますから、それぞれの専門的の方々に御願ひして、斯う云ふ方面はやつて行きたい、是は必ずしも映畫法がなくともやつて行けるのでないかと考へて居ります、文化映畫の認定でございますけれども、此の文化映畫を映畫法で無理に上映させると云ふことは是は善し惡しのやうにも一應考へられるのであります、文化映畫を法律で以て無理に入れろと言つて居りますのは、私は能く世界のことは存じませぬが、「ドイツ」と日本だけではなかつたかと思はれます、併し外の國でも澤山良い文化映畫はあるのでございます、却つてそれを法律があつた爲に、文化映畫の粗製濫造になつて、何でも彼でも文化映畫を入れなければならないものでありますから、無理をしたと云ふこともちよいちよい今迄聞いて居ります、將來はより良い文化映畫を文部省あたりが十分力を盡して作つて貰ふことに努力した方が極めて宜いのぢやないかと今は考へて居るのでありますが、此の點も十分研究致しまして、文化映畫と云ふものの向上は非常に必要のことでもございますから、是は野村子爵の御述の通り非常に必要のことと思ひますから、此の點は十分に研究してやつて戴きたいと考へて居ります、それから一般映畫の認定でございますけれども、是はなかなかむつかしくなつて來ると思ひます、殊に今迄は兒童と云ふやうなものも映畫館に自由に出入りが出來て居つたけれども、今後若し映畫の檢閲の枠が外れて參りますと、或は子供に見せてはいけないと云ふ映畫が相當出來て來るのぢやないかと思ひますから、此の點に付きましては、文部省としては非常に關心を持つて參らなければならぬことになつて來ると考へます、さう云ふ方面からして兒童向の映畫と云ふやうなものを矢張り選奬して行くと云ふ積極的の考で是は非常に必要ぢやないかと考へらるるのでありまして、さう云ふ方面も研究を十分致しましてやつて行きたいと考へて居るのであります、又子供に爲にならぬ映畫を見せない、さう云ふ惡い映畫を見せないのはどうしたならば宜いかと云ふことでございまして、之を十分研究しなければなりませぬけれども、私は「アメリカ」のことは能く存じませぬけれども、私が「アメリカ」を旅行して居つた時の樣子では、是は「アメリカ」は州に依つて違ひますけれども、確か子供は映畫館に自由に入ることが出來ないやうになつて居つたかと思ひます、家族が連れて行つて呉れる場合には宜いと云ふことがどうも普通のやうでありまして、「ヨーロッパ」でも是は野村子爵の方が能く御承知だと思ひますけれども、矢張り子供の映畫館の入場は其の映畫により自ら制限があるのぢやないかと思ひます、我が國では斯う云ふ規定がなくなるとすると、將來は文部省と致しましても十分に考慮致しまして善處致したいと斯う考へて居る次第でございます、併し是はどこ迄もさう云ふ映畫を觀せないと云ふ方でございますが、積極的に御話のやうな良い映畫を兒童に見せたい映畫を推奬し之を普及させ、向上させて行くと云ふ面の方がより一層大切のやうに考へられますから、此の點に付きましても十分に御趣旨の程を尊重致しましてやつて參りたいと斯う考へて居る次第でございます、大體文部省に於きまして此の法案を廢止致しますことに付ての實際問題としての處置と云ふやうなことは其の位ではないかと思ひますが、もう一つ映畫學校のことを仰しやいましたけれども映畫學校は野村子爵の御承知の通り映畫協會が持つて居つたのであります、あれは各種學校の廢止の時に廢止されたのでありますが、最近映畫協會が映畫公社となりまして、此の映畫公社が又先月でございましたか廢止に相成りました、處があの學校は燒けずに校舍だけ殘つたさうであります、何かあの學校の復興と云ふやうなことも考へ、言はれて計畫されて居るやに聽いて居りますが、斯う云ふ學校のやうなものも文部省と致しましては出來るだけあつて欲しいと云ふ考で助長して行きたいと云ふやうなことも考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=46
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047・野村益三
○子爵野村益三君 大體御趣意は諒承致しましたが、兎に角十分此の際映畫の重要性を更に更に認められて、出來るだけの御助力を願ひたいと思ふのですが、それに付てどうですか、文部當局竝に内務當局に御相談旁々御意見を伺ふのですが、突然相當の人を常設館に廻らしめると云ふことは私は效果があると思ひます、例へば映畫法廢止に依つてどう云ふ影響を蒙つたかと云ふやうなことが行けば分る、如何にして之を善導して行かう、改良發達を圖ると云ふ點から云つても現状を見れば直ぐ分る、今三島政務次官が幼兒のことを言はれましたが、子供を映畫館に連れて行くと云ふのは子供の爲にも宜くないし、又觀覽者の爲にも宜くない、ああ云ふ汚い所に抵抗力のない乳呑兒を連れて行くと云ふことは、どう云ふ悲慘なお母さんの心情だらうと云ふことを考へ、尤もお母さん達も子供を連れて行かなければ家に置いて行く譯にも行かず、どうしても一緒に連れて行かなければならぬと云ふ心情も認めなければなりませぬけれども、實に衞生上、空氣の上から云つても憂慮に堪へない、兎に角あの状態を見られなければ本當のことは分らない、一つ御奮發になりまして、映畫常設館査察官と云ふ譯にも行かないでせうけれども、さう云ふことを一つ御考になつて即刻御實行になる、さうして本當の映畫の眞目的を發揮する、是が私は第一歩であると思ひます、其の點に付てどうですか、少くとも大臣の御考へはどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=47
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048・前田多門
○國務大臣(前田多門君) 御尤ものことであると思ひます、さう云ふ特別の官を置くと云ふことは如何かと思ひますが、殊に社會教育の任に當つて居ります者は入れ代り立ち代り能く實際の現場を見ると云ふことは非常に大切のことであると思ひます、私を初め精々勉強致しまして映畫を研究することに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=48
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049・野村益三
○子爵野村益三君 只今の文部當局竝に文部大臣の御答辯に滿足致します、どうぞ御實行を願つて私の質疑を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=49
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050・向山均
○委員長(男爵向山均君) 何か御發議ございませぬか──御發議ございませぬければ本法律案は原案通り可決することに御異議の方はございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=50
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051・向山均
○委員長(男爵向山均君) それでは映畫法廢止法律案は原案通り可決することに決定せられました、本日は是で終りたいと存じます、明日は本會議があるさうでございますから、本會議で當委員會に併託さるべきものが數件あるやうであります、政府の説明を聽きました後に開きたいと思ひますから、明日は午前十一時から開くことに致します、本日は是にて散會致します
午後二時二十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=51
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052・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 男爵 向山均君
副委員長 子爵 宍戸功男君
委員
侯爵 四條隆徳君
侯爵 佐竹義榮君
伯爵 二荒芳徳君
子爵 野村益三君
子爵 河瀬眞君
男爵 矢吹省三君
男爵 三須精一君
男爵 古市六三君
竹内可吉君
大木操君
瀧正雄君
松本學君
合田健吉君
伊藤傳七君
渡邊覺造君
國務大臣
文部大臣 前田多門君
政府委員
法制局長官 楢橋渡君
法制局次長 入江俊郎君
内務書記官 鈴木幹雄君
文部政務次官 子爵 三島通陽君
文部省社會教育局長 關口泰君
厚生政務次官 矢野庄太郎君
厚生參與官 田中和一郎君
厚生省勤勞局長 佐伯敏男君
商工政務次官 木暮武太夫君
商工參與官 男爵 山根健男君
商工省總務局長 菅波稱事君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008902882X00319451205&spkNum=52
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