1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十年十二月十二日(水曜日)午前十時十九分開議
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議事日程 第九號
昭和二十年十二月十二日
午前十時開議
一 國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案(政府提出)
第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=0
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001・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告を致させます
〔寺光書記官朗讀〕
昨十一日本院に於て可決したる左の政府提出案は即日之を衆議院に送付せり
國民貯蓄組合法中改正法律案
防空法廢止法律案
大日本航空株式會社法廢止法律案
石油業法外十三法律廢止法律案
同日委員長より左の報告書を提出せり
國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案可決報告書
同日衆議院より左の政府提出案を受領せり
衆議院議員選擧法中改正法律案
昭和十三年法律第八十四號中改正法律案
昭和二十年勅令第五百三十七號(承諾を求むる件)
本日内閣總理大臣より左の通第八十九囘帝國議會政府委員仰付られたる旨の通牒を受領せり
大藏省所管事務政府委員
專賣局部長 長沼弘毅君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=1
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002・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 是より本日の會議を開きます、昨日衆議院より送付せられました政府提出に係る衆議院議員選擧法中改正法律案及び昭和十三年法律第八十四號中改正法律案を此の際議事日程に追加し、一括して第一讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=2
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003・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、内閣總理大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=3
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004・会議録情報2
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衆議院議員選擧法中改正法律案
右政府提出案本院に於て修正議決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十一日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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衆議院議員選擧法中改正法律案
衆議院議員選擧法中左の通改正す
第二條第二項中「を設け又は數町村の區域を合せて一投票區」を削る
第三條第一項中「郡市」を「市町村」に、同條第二項中「郡市」を「市」に、「數郡市」を「數町村」に改む
第五條 帝國臣民にして年齡二十年以上の者は選擧權を有す
帝國臣民にして年齡二十五年以上の者は被選擧權を有す
第七條第二項を削る
第二十四條第一項を左の如く改む
議員候補者は各投票區に於ける選擧人名簿に記載せられたる者の中より本人の承諾を得て投票立會人たるべき者一人を定め選擧の期日前二日迄に投票管理者に屆出づることを得
前項の規定に依り屆出ありたる者(議員候補者死亡し又は議員候補者たることを辭したるときは其の屆出に係る者を除く以下之に同じ)十人を超えざるときは直に其の者を以て投票立會人とし十人を超ゆるときは屆出ありたる者に於て投票立會人十人を互選すべし
前項の規定に依る互選は投票に依り之を行ひ得票最多數の者を以て投票立會人とす得票數同じきときは投票管理者抽籤して之を定む
第二項の規定に依る互選は選擧の期日の前日之を行ふ
第二項の規定に依る互選を行ふべき場所及日時は投票管理者に於て豫め之を告示すべし
議員候補者死亡し又は議員候補者たることを辭したるときは其の屆出に係る投票立會人は其の職を失ふ
同條第二項中「前項」を「第二項」に改む
第二十七條第一項を左の如く改む
選擧人は投票所に於て左の區分に從ひ投票用紙に自ら議員候補者一人又は數人の氏名を記載して投函すべし
一 選擧すべき議員の數五人以下の選擧區に於ては一人
二 選擧すべき議員の數六人以上十人以下の選擧區に後ては二人以内
三 選擧すべき議員の數十一人以上の選擧區に於ては三人以内
第三十五條中「投票管理者」を「投票管理者たる者開票管理者たる場合を除くの外投票管理者」に改め「町村の投票區に於ては投票の翌日迄に、市の投票區に於ては」を削る
第四十四條 市町村長は開票管理者と爲り開票に關する事務を擔任す
第四十五條 開票所は市役所、町村役場又は開票管理者の指定したる場所に之を設く
第四十八條 開票は投票の當日又は其の翌日(一開票區に數投票區あるときは總ての投票函の送致を受けたる日又は其の翌日)之を行ふ
第四十九條第一項中「前條の計算終りたるときは開票管理者は」を「開票管理者は開票立會人立會の上投票函を開き」に改む
第五十二條第一項中「左の投票」を「第二十七條第一項第一號の規定の適用ある選擧區に於ける投票にして左に掲ぐるもの」に改む
第五十二條の二 第二十七條第一項第二號又は第三號の規定の適用ある選擧區に於ける投票
(以下連記投票と稱す)にして左に掲ぐるものは之を無效とす
一 成規の用紙を用ひざるもの
二 議員候補者に非ざる者の氏名を記載したるもの
三 議員候補者の氏名の外他事を記載したるもの但し官位、職業、身分、住居又は敬稱の類を記入したるものは此の限に在らず
連記投票中の左に掲ぐる氏名の記載は之を無效とす
一 第二十七條第二號又は第三號の規定に依り選擧すべき議員の數を超え記載したる末尾の氏名
二 被選擧權なき議員候補者の氏名
三 自書せざる議員候補者の氏名
四 議員候補者の何人を記載したるかを確認し難き氏名
五 衆議院議員の職に在る者の氏名
前項第五號の規定は第七十五條又は第七十九條の規定に依る選擧の場合に限り之を適用す
第五十二條の三 投票に同一議員候補者の氏名の二以上の記載あるときは之を一の記載と看做す
第五十三條但書を削る
第五十四條但書を削る
第五十八條 一府縣又は一市一選擧區たる場合に於ては其の地方長官又は市長、其の他の選擧區に於ては地方長官の指定したる官吏選擧長と爲り選擧會に關する事務を擔任す
第五十九條中「縣廳」を「都道府縣廳」に改め「、支廳」を削る
第六十四條但書中「第五十八條第一項第三號の規定に依り」及「(支廳長を除く)」を削る
第六十八條第二項中「有效投票」を「各議員候補者の得票」に改む
第六十九條第一項中「有效投票の最多數を得たる者」を「得票最多數の者」に、「有效投票の總數」を「各議員候補者の得票の總數」に改む
第七十二條第一項中「、得票數及其の選擧に於ける有效投票」を「及得票數、其の選擧に於ける各議員候補者の得票」に改む
第七十四條中「二十日以内」を「十日以内」に改む
第七十九條第一項中「同一選擧區に於て二人」を「當該選擧區内の議員の定數の四分の一(其の數二人に滿たざるときは二人以下之に同じ)」に、同條第五項及第六項中「同一選擧區に於て二人」を「當該選擧區内の議員の定數の四分の一」に改む
第八十四條第二項中「選擧事務長又は選擧事務長に非ずして事實上」を削る
第九十八條の二及第九十八條の三を削る
第八十八條乃至第九十七條 削除
第百條及第百条の二を削る
第十一章中第百一條の前に左の二條を加ふ
第百條 議員候補者は選擧運動の費用の支出に關する責任者(以下支出責任者と稱す)一人を選任すべし但し議員候補者自ら支出責任者と爲り又は推薦屆出者(推薦屆出者數人あるときは其の代表者)議員候補者の承諾を得て支出責任者を選任し若は自ら支出責任者と爲ることを妨げず
議員候補者の承諾を得ずして其の推薦の屆出を爲したる者は前項但書の承諾を得ることを要せず
議員候補者は文書を以て通知することに依り支出責任者を解任することを得支出責任者の選任したる推薦屆出者に於て議員候補者の承諾を得たるとき亦同じ
支出責任者は文書を以て議員候補者及選任者に通知することに依り辭任することを得
支出責任者の選任者(自ら支出責任者と爲りたる者を含む)は直に其の旨を選擧區内警察官署の一に屆出づべし
支出責任者に異動ありたるときは前項の規定に依り屆出の爲したる者直に其の屆出を爲したる警察官署に其の旨の屆出づべし
第百條の二の規定に依り支出責任者に代りて其の職務を行ふ者は前項の例に依り屆出づべし其の之を罷めたるとき亦同じ
第百條の二 支出責任者故障あるときは選任者代りて其の職務を行ふ推薦屆出者たる選任者(自ら支出責任者と爲りたる者を含む)も亦故障あるときは議員候補者の承諾を得ずして其の推薦の屆出を爲したる場合を除くの外議員候補者代りて支出責任者の職務を行ふ
第百一條 立候補の屆出ありたる後に於ては議員候補者又は支出責任者と意思を通ぜずして支出する費用を除くの外選擧運動の費用は支出責任者に非ざれば之を支出することを得ず
但し支出責任者の文書に依る承諾を得たる者は此の限に在らず
第百四條 左の各號に掲ぐる費用は之を選擧運動の費用に非ざるものと看做す
一 選擧の期日の公布又は告示ありたる日前に於ける選擧運動の爲に要したる費用
二 選擧の期日後に於て選擧運動の殘務整理の爲に要したる費用
三 議員候補者又は支出責任者と意思を通ぜずして支出したる費用(立候補の屆出前に於て其の者と意思を通ぜずして支出したる費用を含む)
四 議員候補者か乘用する船車馬等の爲に要したる費用(其の者の立候補の屆出前に於ける當該費用を含む)
第百五條中「選擧事務長」を「支出責任者」に改む
第百六條第一項中「選擧事務長」を「支出責任者」に、「第八十八條第五項」を「第百條第五項」に改む
第百七條第一項中「選擧事務長」を「支出責任者」に改む
第百八條 削除
第百九條中「選擧事務長」を「支出責任者」に、「第九十五條」を「第百條の二」に改め「選擧事務所、選擧委員、選擧運動の爲使用する勞務者其の他に關する事務と共に」を削る
第百十條中「選擧事務長」を「支出責任者」に改む
第百十六條第一項中「、選擧事務長若は選擧委員」を「若は選擧運動者」に、「選擧事務所」を「選擧運動事務所」に改む
第百二十一條第二項中「又は憲兵」を削る
第百二十四條及第百二十五條 削除
第百二十六條中「前條但書の例に依る」を「仍其の編輯人及實際編輯を擔當したる者を罰す」に改む
第百二十九條中「第九十五條の二、第九十六條第一項、」、「若は第九十八條の二」及「又は第九十四條の規定に依る命令に從はさる者」を削る
第百三十條 削除
第百三十一條中「第八十九條第一項、」を削る
第百三十二條第二項中「第八十八條第五項乃至第七項又は第八十九條第四項」を「第百條第五項乃至第七項」に改め同條第二項を削る
第百三十三條 削除
第百三十四條中○「一年以下の禁錮」の下に「又は五百圓以下の罰金」を加ふ
第百三十五條第五號を削る
第百三十六條 當選人其の選擧に關し本章に掲ぐる罪を犯し刑に處せられたるときは其の當選を無效とす選擧運動を總括主宰したる者第百十二條乃至第百十三條の罪を犯し刑に處せられたるとき亦同じ但し當選人が選擧運動を總括主宰したる者の選任及監督に付相當の注意を爲したるとき若は選擧運動を總括主宰したる者なることを知らざりしとき又は其の者が當選人の制止に拘らず選擧運動を總括主宰したる者なるときは此の限に在らず
第百三十七條第一項中「第百三十條及」を削る
第百四十條第一項中「選擧事務長」を「推薦屆出者」に改む
第百四十三條中「選擧事務長」を「選擧運動を總括主宰したる者」に改む
第百四十五條第二項中「及市制第六條」を「竝に市制第六條及第八十二條第三項」に改め同條第一項を削る
附 則
本法は次の總選擧より之を施行す
陸海軍軍人にして現役中のもの及召集中のものの選擧權及被選擧權に付ては仍從前の規定に依る
本法に依り初て議員を選擧する場合に於て衆議院議員選擧法第十八條の規定に依り難きときは勅命を以て別に總選擧の期日を定むることを得
前項の規定に依る總選擧に必要なる選擧人名簿に關しては勅令を以て特別の規定を設くることを得但し其の選擧人名簿は次の選擧人名簿確定迄其の效力を有す
戸籍法の適用を受けざる者の選擧權及被選擧權は當分の内之を停止す
前項の者は選擧人名簿に登録せらるることを得ず
昭和二十年十二月二十日以後昭和二十一年十二月十九日迄の間に行はるる選擧に關しては選擧人名簿に登録せらるることを得ざる者選擧人名簿に誤載せられ投票を爲すも之を理由として衆議院議員選擧法第八十一條又は第八十三條の規定に依る訴訟を提起することを得ず
衆議院議員選擧法第百四十條第一項の規定は次の總選擧に限り之を適用せず
沖繩縣、北海道廳根室支廳管内國後郡、沙那郡、擇捉郡、蘂取郡及色丹郡竝に花咲郡齒舞村水昌島 勇留島、志發島、多樂島及秋勇留島竝に海上交通杜絶其の他特別の事情ある地域にして勅令を以て指定するものに於ては勅令を以て定むる迄は選擧は之を行はず
前項に掲ぐる地域に於て初て行ふ選擧に關し○必要なる事項は勅令を以て之を定む
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昭和十三年法律第八十四號中改正法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十一日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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昭和十三年法律第八十四號中改正法律案
昭和十三年法律第八十四號中左の通改正す
第一條第一項を左の如く改む
衆議院議員又は東京都制、北海道會法、府縣制、市制、町村制若は此等に基きて發する勅令に依り設置する議會の議員の選擧を行ふ場合に於て左に掲ぐる者あるときは市區町村長其の他の名簿調製義務者は臨時に其の者の選擧人名簿を調整すべし
一 現役陸海軍軍人なるに因り選擧人名簿に登録せられざりし者にして歸休を命ぜられ又は現役に服せざるに至りたるもの
二 大東亞戰爭に際し召集中なるに因り選擧人名簿に登録せられざりし者にして召集を解除せられたるもの
三 兵籍に編入せられたる學生生徒なるに因り選擧人名簿に登録せられざりし者にして當該學生生徒たらざるに至りたるもの
四 衆議院議員選擧法施行地域に住居を有せざるに因り衆議院議員選擧人名簿に登録せられざりし者にして同法施行地域に住居を有するに至りたるもの
附 則
本法は公布の日より之を施行す
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參 照
昭和十三年法律第八十四號は大東亞戰爭に際し召集中の者の選擧權及被選擧權に關する法律なり
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〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=4
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005・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今御上程に相成りました衆議院議員選擧法中改正法律案に付きまして、提案の理由を御説明申上げます、私共の考では、我が國民の間に於ける健全なる民主主義的傾向の復活強加を圖るのには、議會をして眞に國民の總意を正しく反映するの機能を發揮せしめ、立憲政治の健全なる運營を期せなければなりませぬ、然るに現行の選擧法に依りましては、現下の新事態に即應した自由闊達なる選擧を行ひ、普く國民をして遺憾なく其の意思を暢達せしめ得べき清新なる議會の形成を期待致しまするのには十分でない憾みがあるやうに存ぜられます、仍て此の際急速に事態の進展に即應した選擧制度の根本的改正を圖り、此の新選擧法に依りまして、明朗闊達にして自由公正なる選擧を行ひ、眞に國民の總意を反映する議會を一日も速かに作り上げ、憲政の清新にして強力なる運營を圖ることを最も必要なりと考へましたから、政府は組閣以來鋭意選擧制度の改正の立案を急ぎまして、此の度愈愈成案を得ましたので、茲に御審議を御願ひするの運びとなつたのであります、衆議院議員選擧法に付きましては、豫てより種種論議せられて居つた點は少くありませぬが、以上のやうな趣旨に依りまして、今囘の改正は、新事態の要請する最も緊切なる根本問題と認められましたるものを骨子として立案致したのであります、其の中最も重要なる點は、婦人參政權の賦與竝に選擧權及び被選擧權の年齡低下でございます、即ち近頃婦人及び青年男子の社會的、政治的地位の向上の跡が著しきものがあるのに顧みまして、新たに男子と同一の條件を以て婦人にも參政權を認めると共に、國民參政の年齡を低下し、選擧權及び被選擧權の大擴張を行ふことに致したのであります、斯くの如き選擧權の擴張は、其の意義に於きまして、又其の效果に於きまして、普通選擧制度採用の趣旨を愈愈擴充徹底致したものであります、誠に劃期的改正と稱し得るものと存じます、惟ひますのに、立憲政治は普く國民をして政治に參與せしめ、其の意思に聽きまして、其の自覺と責任とに俟つて政務の進展を期することを根本とするものであります、今や國家非常の秋に於て、内外の情勢に顧み事態の急轉に察して、男女を問はず苟くも政治的自覺と能力とに缺くる所なき者は、悉く之に參政の權能と責任とを與へ、以て眞に民主主義的なる議會政治の確立を期せなければならぬと存じて居るのであります、尚新事態に即應して、新たなる基礎に立つて清新なる選擧を執行するが爲に、大選擧區制を採用することと致しまして、又世局に鑑み選擧運動の明朗闊達化と簡易化とを圖る爲に、選擧運動の取締規定の徹底的簡素化を圖つたのであります、以上の趣旨を以ちまして、衆議院議員選擧法中改正法律案を提出致した次第でございます、何卒御審議の上御協贊あらむことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=5
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006・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 堀切内務大臣
〔國務大臣堀切善次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=6
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007・堀切善次郎
○國務大臣(堀切善次郎君) 衆議院議員選擧法中改正法律案提出の理由に付きましては、只今總理大臣より述べられた通りでありますが、本件は極めて重大なる問題であると存じますので、私より、法案中主要なる事項に付きまして、稍稍詳細に亙つて説明を申上げたいと存じます、惟ふに衆議院議員選擧法は、憲法附屬の重要なる法律でありまして、明治二十二年に憲法と同時に公布せられまして以來、明治三十三年、大正八年の重要なる改正を經まして、大正十四年に普通選擧の實施を含む劃期的なる改正がありまして、爾後選擧の革正を主たる目的と致しまして、昭和九年に一部の改正がありました後に於きましては、今日に至ります迄屡屡改正の案が用意せられたのでありますが、未だ遂に其の實現の機を見なかつたのであります、然るに今囘終戰後の急轉せる新事態に即應致しまして、國民の總意を反映せる、眞に自由公正なる總選擧を行ひ得まするやうに、急遽之が根本的改正を行ふことに致した次第であります、而して今囘の改正は、新事態の要請致します最も緊要と認められます根本的問題を骨子と致しまして、之に伴ふ已むを得ない若干の改正を行ふことに止めることを立案の方針と致しまして、選擧法の全面に亙りまして詳細なる研究を遂げますことは、之を他日に讓ることに致した次第であります、其の骨子と致して居ります點は、只今總理大臣より述べられました如く、選擧權及び被選擧權の擴張、大選擧區制及び之に伴ふ制限連記投票制の採用及び選擧運動取締規定の徹底的簡素化の三點でございます、以下其の内容を簡單に説明申上げたいと存じます、第一の選擧權及び被選擧權擴張に付きましては、選擧權の年齡を二十五歳より二十歳に、被選擧權の年齡を三十歳より二十五歳に、それぞれ五年づつ引下げますると共に、新たに女子に對しましても、男子と同一の條件を以て、選擧權及び被選擧權を認めることに致したのであります、今日の青年は文化の普及状況、一般民度の向上、社會的、經濟的活動の實際等に徴しまするに、其の知識能力著しく向上致しまして、今日滿二十歳に達しました青年は、國政參與の能力と、責任觀念とに於きまして、聊かも缺くる所がないものと存ぜられるのであります、寧ろ是等の清新溌刺、純眞熱烈なる青年有權者の選擧への參加に依りまして、政界の空氣を一新し、新日本建設の新らしき政治力を形成する重要なる力が加るに至るべきことを期待致して居る次第であります、女子も今日に於きましては、一般的に教養も進み、殊に近時或は男子に伍し、或は男子に代り、或は男子なき後を守りまして、活動致しました實情に徴しまする時は、選擧權行使に支障なき段階に達して居るものと認められるのであります、而して女子が男子と齊しく新らしく參政權を取得し、政治に參加致しますことは、婦人の地位を向上し、國民の總意を眞に如實に政治に反映せしめる所以でありまして、今後婦人問題、家庭問題、社會問題等に付きまして、政治に一新機運を與へ、新日本建設に寄與すること尠からざるものがあらうと存ぜられるのであります、第二は大選擧區制の採用でございます、選擧區の大小に付きましては、それぞれ利害長短が存するのでありますが、大選擧區制を採用致しますれば、議員候補者の選擇の自由を増大致しまして、一層廣汎なる、新たなる基礎に立ちまして、國家的人物乃至は所謂新人の選出の可能性を強め、新事態に即應した選擧區制度と致しまして、適當であらうと考へた次第であります、而して此の際清新なる議會の形式を所期致します上から致しましても、固定致しました基礎を變へて、新たなる基礎の上に選擧を行ひますことが、寧ろ適當であると考へたのであります、更に戰災等に因りまして、人口の移動が全國的に極めて大規模に行はれました結果、從來の選擧區の儘で選擧の執行しますことは、事實上困難でありまして、何等かの調整を要する次第でありますので、此の點より考へましても、大選擧區制の採用が、今日に於きましては實際的であるやうに考へた次第であります、而して原則と致しまして、都道府縣を以て一選擧區と致しまして、議員定數十五人以上の都道府縣は、之を二選擧區に分つことに致したのであります、各選擧區に對しまする議員定數の配當は、成るべく現在の議員總數を變動せしめない方針の下に、議員總數四百六十六人を以て選擧法施行地域の全人口七千二百四十九萬一千二百七十七人を除しまして、仍て得ました十五萬五千五百六十人に付、議員一人を配當することと致しました、端數は四捨五入の方法に依ることと致したのであります、其の結果議員の總數が四百六十八人となり、議員の總數が現在よりも二人増加することに相成つたのでありますが、是は全く四捨五入の結果であります、議員定數が十五人以上の都道府縣は七つありまして、之をそれぞれ二選擧區に分つたのでありますが、選擧區の分割に付きましては、現行の選擧區を基礎と致しまして、人口、交通、地勢等を勘案して決定致したのであります、大選擧區制の採用に伴ひまして、投票の方法と致しまして、選擧すべき議員の數六人以上の選擧區に於きましては、制限連記制を採用致すことと致したのであります、それは大選擧區になり、議員數が多くなりますと、從來の如き單記投票法に依ります時には、其の爲に投票が一部の候補者に集中し過ぎる弊が痛感せられますので、此の弊を或程度是正することが適當と認められ、又選擧すべき議員數が多くなるに拘らず、尚一人のみの選擇しか認めないと云ふことは、選擧人の議員候補者選擇の意思を餘りにも制限する結果となりまするので、之を或程度緩和することが必要なりと存ぜられるからであります、大選擧區制を採用致しますれば、比例代表と云ふことが能く言はれるのでありますが、現在の政界の實情、選擧人の政治訓練の程度を以て致しましては、今直ちに比例代表制を採用致しますることは時期尚早であると考へられますので、之が適切なる提案は今後の研究に俟つことと致した次第であります、連記の方法と致しましては、政府の原案に於きましては、選擧すべき議員の數五人以下の選擧區に於きましては、現行法通り單記と致しまして、六人以上十人以下の選擧區に於きましては二人以内、十一人以上の選擧區に於きましては三人以内の議員候補者の氏名を記載して投票を爲し得るものと致したのであります、第三は選擧運動取締規定の徹底的簡素化であります、即ち選擧運動の制限規定と致しましては、戸別訪問の禁止、選擧事務に關係ある官公吏の關係區域内に於ける選擧運動の禁止竝に選擧運動の費用に關する制限等、選擧運動の公正及び機會均等を維持する上から必要と認められます規定のみを存置することと致しまして、所謂第三者運動と立候補前の選擧運動とは之を自由ならしめ、其の他選擧運動の方法に關する各種の取締制限、即ち法定選擧運動者の制度、勞務者の選任、選擧事務所の設置、休憩所其の他の類似設備の設置、個々面接又は電話に依る運動、文書圖畫の頒布又は掲示、演説會出演者の數、選擧期日後の挨拶行爲等の各種の制限は、之を撤廢致すことと致したのであります、選擧運動の取締に關しまして斯くの如く相當思ひ切つた簡素化を致しましたのは、一面に於きまして選擧權者の年齡低下及び婦人參政權の實施竝に大選擧區制の採用等の新事實に對處致しますると共に、世局に鑑み、選擧運動の明朗化、闊達化と簡明化とを圖らむとするにあるのであります、現行選擧法は專ら選擧肅正の見地より致しまして、各種の繁雜多岐に亙る制限を設けまして、却て之が爲に或は自由闊達なる選擧運動を阻碍し、一般國民の志を盡さしめず、或は選擧に對する敬遠主義乃至は無關心的態度を招來するの風なきにしもあらずであります、時に社會常識又は國民の心情に反するが如き結果を生ずる場合等もありまして、候補者の人格、政見を選擧民に徹底せしめる上に於きましても缺くる憾みなしとしなかつたのでまります、豫てより選擧運動の明朗闊達性を望む上より致しまして、其の簡明化を要望せられる所が少くなかつたのであります、殊に今日當面致して居りますが如き政治的轉換期に於きましては、選擧運動の各種の制限を撤廢し、能ふ限り其の自由を認めまして、之に依り一般國民の政治的責任の自覺を促すを以て適當なりと考へた次第であります、尚右の選擧運動の取締に關する規定の改正に照應致しまして、第一、選擧運動の費用に付きまして、選擧事務長の代りに選擧運動の費用の支出に關する責任者の制度を設けました、第二に、選擧の期日の公布又は告示ありたる日前に於ける選擧運動の爲要したる費用は、選擧運動の費用にあらざるものと致しました、第三、選擧運動の費用の制限額超過支出に對する罰則を撤廢し、當選無效の制裁のみと致しました第四、選擧運動の費用の不法支出の罪に付きまして、罰金刑を加へ、禁錮刑との選擇刑とすることに致しました、以上を以ちまして今囘の選擧法改正の骨子と致すのでありますが、尚右の改正に伴ひまして、第一、有權者の激増及び制限連記投票制の採用に伴ひまして、開票區の區域を原則として市町村の區域に依るものと致しまして、開票事務の圓滑敏速なる處理を圖つたのであります、第二に、大選擧區制の採用に伴ひまして、各種立會人の數を十人に制限致しまして、其の決定を互選に依るものと致したのであります、第三に、通信、交通の現状に鑑みまして、當選人の當選承諾期間の十日間短縮致しまして、選擧の結果を成るべく速かに確定せむとした次第であります、第四に、政府原案に於きましては、選擧に關しまして、氣勢を張る行爲に關する罰則及び選擧に關する不正行爲を煽動する行爲に關する罰則を廢止したことであります、其の他若干の改正を加ふることに致してある次第であります、以上が選擧法改正案の大體の内容でございますが、尚右に關聯致しまして、臨時特別の措置と致しまして、二三特殊の問題を同法律案の附則で規定を致して居るのであります、其の一つは戸籍法の適用を受けない者、即ち朝鮮人及び中華民國臺灣省民、即ち臺灣人の選擧權及び被選擧權を當分の内停止することと致したのであります、「ポツダム」宣言の受諾に依りまして、朝鮮及び臺灣は早晩帝國の領土より離脱することになり、其の結果、朝鮮人及び臺灣人は原則として、帝國の國籍を喪失することに相成ると存ぜられますので、是等の者の依然帝國臣民として選擧に參與せしめますことは適當とは認められないやうに存ぜられるのであります、尤も講和條約の締結迄は尚帝國の國籍を保有して居るものと考へられますので、今日直ちに選擧權及び被選擧權の享有を禁止することは適當とは認め難く、之を持つて居るが、其の國籍が國際法上確定する迄當分の内、之を停止する取扱に致したのであります、其の二は、昭和二十年十二月二十日以後昭和二十一年十二月十九日迄の間に行はれます選擧に於ては、刑餘者、禁治産者等、選擧人名簿に登録することを得ざる者が、選擧人名簿に誤つて記載せられ投票した者がありましても、之を理由としては選擧訴訟又は當選訴訟を提起することを認めないことに致したのであります、其の三は、用紙の需給の實情に鑑みまして、無料郵便の制度を次の總選擧に限り之を停止することと致したのであります、其の四は、沖繩縣、千島、其の他海上交通杜絶、其の他特別の事情にある地域にして勅令を以て指定するものは、現下の特殊の事態に鑑みまして、勅令を以て定める迄は選擧を行はないことに致したのであります、以上選擧法改正案の大體を申上げたのでありますが、本案に付きましては衆議院に於きまして制限連記に關する規定、選擧事務所、休憩所、立候補屆出前の選擧運動、文書の頒布等、選擧運動の取締に關する規定、氣勢を張る行爲及び不法行爲を煽動する行爲に關する罰則の規定、選擧公營に關する規定に付きまして、修正を加へられたのでありますが、之に關します詳細に付きましては、委員會に於て御説明を申上げたいと存ずる次第であります、次に昭和十三年法律第八十四號中改正法律案に付きまして、其の内容の大體を申上げたいと存じます、本法律案は、復員現役軍人及び歸還在外邦人等に付きまして、臨時に選擧人名簿調製の途を拓き、其の選擧權の行使に遺憾なからしむとするものであります、陸海軍軍人にして現役中の者及び召集中の者は、孰れも選擧權を有せず、從つて選擧人名簿に登録することを得ないのでありますが、現行法に於きましても、召集中の者が召集を解除せられますれば、臨時に選擧人名簿を調製し、其の選擧權の行使に支障のない措置が講ぜられて居りますのでありますが、現役を退いた軍人に付きましても、召集解除者と之を區別する理由がありませぬので、同樣の措置を講ぜむとするものであります、更に外國及び外地より歸還する邦人に付きましても、其の歸還後は同樣に選擧權の行使に支障なからしめます爲、臨時に選擧人名簿調製の途の拓くことと致した次第であります、
以上衆議院議員選擧法中改正法律案及び昭和十三年法律第八十四號中改正法律案に付きまして、其の提案の理由及び大要を説明申上げたのでありますが、孰れも現下の新事態の要請に應じて、速かに眞に民主的なる議會政治を確立し、以て重大にして且困難を極めます戰後國政の強力なる運營を期せむとするものであります、何卒御審議の上速かに御協贊あらむことを希望して已まざる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=7
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008・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 質疑の通告がございます、是より通告順に依りまして發言を許します、小原君
〔小原直君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=8
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009・小原直
○小原直君 只今議題に供せられましたる衆議院議員選擧法中改正法律案は、新たなる事態に即應する諸政策改革の一端として、議會制度を眞に民主主義的に改革する爲、政府が重要政策の一として、特に臨時議會の召集を奏請せられて御提案になつたのであります、而して只今内務大臣より御説明になりましたる通り、本案は婦人參政權の創設、選擧人、被選擧人の年齡の低下、大選擧區制、一部制限連記の創設、選擧運動の徹底的取締の緩和等、幾多重要なる變革を加へられて居るのでありまして、時局の要請に即應する賢明なる提案であつたと思ふので、敬意を表する次第であります、私は本案に付きまして若干の疑問はあるのでありますが、是は此の議場に於て特に御尋ね申上げる次第ではないのであります、併しながら政府が議會制度を改革することを緊急の要件として、帝國議會の一翼たる衆議院の選擧制度に重大なる變革を施されましたる以上は、議會の他の一翼たる我が貴族院制度に對しましても速かに一大改革を加へらるる必要があると思ふのであります、此の點に付きまして本案に關聯する質問として、茲に政府に御尋をする次第であります、質問の事項は、第一、政府は貴族院制度を改正せらるる意思ありや、第二、改正せらるるとせば其の時期如何と云ふ二點であります、我が貴族院は憲法第三十三條以下の條章に從ひまして、明治二十二年二月十一日勅令第十一號貴族院令に依つて其の組織、權限が大體定められて居るのであります、貴族院令は御承知の通り、爾後數囘の改正は經て居りまするが、皇族、華族及び勅任せられたる議員を以て組織すると云ふ根本の精神は依然として改められては居らないのであります、蓋し憲法制定、帝國議會開設當初に於きましては、封建制度撤廢の善後策として設けられましたる華族を處遇する一方法として、之を貴族院の重要なる組織に加へられましたることは、其の當時の情勢と致しましては、誠に然るべきことであつたかも知れないのであります、伊藤公の憲法義解にも貴族院の性格としては、愼重、恆久、練熟の三要素を必要とすると云ふ趣旨が書いてあるのであります、此の趣旨から申しましても、華族を以て貴族院制度の一要素とすると云ふことは必ずしも失當であつたとは申されなかつたのでありませう、併しながら時勢の進展に連れ、一面憲政運用の跡から之を見まする時に、少くとも此の點に關する限り相當大きな斧鉞を加へる必要ありと申すことは期せずして動かざる國論となるに至つたのであります、他面所謂勅選議員に付きましても、其の選任の方法、就中勅選議員が終身であると云ふ點に付きまして、我が貴族院に清新、溌剌、勤勉、積極の風格を發揮し得ざらしむる原因の一が存すると批判せられ、此の點に付きましても何等かの改正を加ふる必要があると言はれて居るのであります、更に今日の所謂多額議員に付きましても、單に土地又は工業、商業に付多額の直接國税を納むると云ふ資格のみに依りまして、互選せられたる者が貴族院の組織に入つて居ると云ふことも、果して滿足すべきものなりやと申しますれば、此處にも幾多の疑問が存すると言はれて居るのであります、斯く論じて參りますると、貴族院制度の改革は、制度の運用に付ても幾多存するのでありまするが、何を措いても、先づ其の組織を改正すると云ふことが根本の要件であると思ふのであります、從來貴族院制度改正に關しまする世上の議論も主として此の點に重點が置かれたのでありまするが、貴族院制度の改正は、根本的に申しますれば、憲法の改正に俟たなければならぬのであります、貴族院制度改正だけの爲に憲法を改正すると云ふことは、今日迄の所は言ふべくして行はれ得なかつた所であります、從ひまして從來は單に貴族院令の改正に依つてのみ之を行つたに過ぎなかつたのでありますが、其の貴族院令の改正すらも貴族院の議決を必要とし、而も之が議決を得ることに相當の困難がありましたが爲に、歴代の政府も容易に手を下し得なかつた所であります、近くは近衞内閣が時の情勢に依つて議會制度審議會を設けられて、衆議院の制度と共に、貴族院制度の改革に乘出されたのでありまするが、當時政府の熱意も足らず、審議會に於きましても論議錯綜、遂に結論を得るに至らずして沙汰止みとなつたのであります、併しながら制度の缺點、改正すべき方向等は大體此の審議會に於て出し盡されて居るのでありまして、今日以後制度の改正を考へる時に、當時出ました議論は最も參考に値するのであります、此の度の戰爭に當りましても、時局の重大性に鑑みまして、貴族院改革の聲は院の内外に相當昂まつたのでありまするが、改革には相當の相剋摩擦があり、其の爲に國論不統一の形を暴露すると云ふことは、重大時局の折柄差控へるが宜しいと云ふ聲が勝を制しまして、是亦其の儘に推移して今日に至つたのであります、其の後戰爭の樣相は次第に苛烈險惡となり、到底坐視するに忍びなくなりましたが爲に、小磯内閣の末期頃から、我が院内に於きましても、有志相會して、貴族院制度を改正し、其の運營を改めて時艱匡救に邁進すべきであると云ふ聲が昂まつて、色色論議を盡されたのでありまするけれども、遂に結論を得ずして、是亦其の儘今日に至つたのであります、今や一切の制度文物を民主主義的且自由主義的に變革することが緊急の要務であります、我が貴族院制度の改革も亦此の線に沿つて爲さなければならないと云ふことは、必至の勢であり、而も速急に之を斷行しなければならぬ時であると思ふのであります、今日では、我が貴族院に於きましても、此の空氣は相當濃厚に漲つて居ると觀察せらるるのであります、過日本議場に於きまして、同僚宮田光雄君は憲法改正の問題に付て、政府に御質問になつた際に、貴族院制度に觸れて、而も貴族院の如きはなくなつてしまふであらうと迄極言せられたのでありますが、質問が主として憲法改正の問題に向けられましたが爲に、貴族院制度のことに付きましては、遂に確たる政府の御答に接しなかつたのであります、それ故私は此の機會に於きまして、政府に對し貴族院制度を改正せらるる意思ありやと云ふことを御尋ねせぬければならぬと思ふのであります、實は政府に於かれましても、固より其の意思ありと御答になるに違ひないと思ふのであります、今日私が斯かる問題を御尋ね致しますることは、誠に愚問であると言はれるでありませう、私自身も愚問であると考へて居ります、併し之を御尋ね致しまするのは、次に第二の問題として、改正せらるるとせば其の時期如何と云ふ問題の前提を作るが爲に、此のことを御尋ねする次第であります、次に改正の時期如何と云ふ問題であります、諸般の情勢は極めて緊迫致して居ります、貴族院制度の改正は出來得るだけ速かに之を斷行せらるる必要があると思ふのであります、殊に衆議院議員選擧法の改正案が成立致しますれば、次の議會には衆議院は改正選擧法の下に選出せられたる清新なる議員に依つて組織せらるるのであります、此の時貴族院が舊態依然たるものであつては、議會の形態と致しましても跛行的であつて、形に於ても、性格に於ても誠にそぐはないものであるのであります、それ故政府に於かれましても、此の臨時議會に少くとも貴族院令の改正案を御提案になつて、之に依つて出來得る限りの改正をなさるることが宜しくはなかつたかと云ふ議論も出る位であります、併しながら既に御提案にならなかつたのでありまするから、それならば何時改正をなさむとせらるるのでありまするか、若し貴族院制度を根本的に改正せむとするならば、固より憲法の改正を俟たなければならぬのであります、貴族院の根本組織は申上げる迄もなく憲法第三十三條以下に規定せられて居るのでありまして、憲法を改正するならば當然貴族院制度のことが織込まれなければならぬのであります、政府は憲法は國家組織の大綱を定めて居る重要なる法典であるから、是が改正は愼重に考慮研究を要すると申されて居るのであります、併しながら憲法の改正を俟つて然る後に貴族院制度の改正をすると云ふことでは、餘りに時期が遲れ過ぎはせぬかと考へらるるのであります、元來貴族院の改革と申しますることは、先にも申しました通り、皇族議員のことは別と致しまして、第一には、華族議員の數が多過ぎるから之を大幅に減少することが至當であると云ふ點にあつたのであります、今日華族議員の互選資格を有せらるるものは一千人弱であると記憶致して居ります、公侯爵の所謂世襲議員現在四十餘名、伯子男の互選議員百五十名、合計百九十餘名でありまして、大體五名に一名の議員が議席を持つて居らるることになつて居るのであります、世人は之を以ちまして學識經驗才能等に於て大體同等の人は一般國民中には幾十百萬人あるに拘らず、華族が華族たるの故を以て、五人に一人の貴族院議員を出して居ると云ふことは甚だ不合理である、斯かる特權的の制度は速かに之を改めなければならぬと申して居るのであります、次に所謂勅選議員が終身である結果と致しまして、高齡又は病弱になつて其の職に堪えざるに至りましても、尚議員として其の職に留まると云ふことは不都合である、成る程貴族院令第五條第三項には、第一項の議員、即ち勅選議員は「身體又は精神の衰弱に因り其の職に堪へさるに至りたるときは貴族院に於て其の旨を議決し」「勅裁を請ふへし」と云ふ規定がありまするが、此の規定は今日迄の處は殆ど空文に等しくなつて居るのであります、而して勅選議員の終身制度で最も宜しくないと言はれて居りますことは、終身であるが爲に自然に精勵恪勤の氣風が減退すると云ふことと、新陳代謝の行はれざる結果として沈滯の空氣が漂ふと云ふことであると稱せられて居るのであります、それ故之を救濟する方法として、所謂勅選議員には停年制を設けらるるか、又は任期を附すべしと云ふ説があるのであります、同時に又勅選議員の銓衡は時の政府が專斷に決するのであるが、それが不都合であるから、其の選定には銓衡委員會の如きものを設けるが宜くはないかと云ふ説もあるのであります、是等の内容に付きましては考慮を要することがあることと思ふのでありまするが、若し改めると致しますならば、私は停年制を作るよりは任期制にする方が宜いと思ふのであります、其の任期に付ても是亦色々意見はありませうが、或は七年、或は五年と云ふやうのことにするのが至當ではなからうか、而して諮問委員會の如きものは、之に決定權を持たせずして銓衡委員會にすると云ふことも一策であるのではなからうかと云ふ風に考へて居ります、第三に、多額議員に代ふるには公選に依る地方代表か、或は職能代表者を選出することである、又は此の兩者を併せ選出することを工夫すべしと云ふ説もあるのであります、斯くして華族議員を減少し、其の選出方法を改め、又勅選議員に停年を附け、或は任期を附すべし、竝に多額議員に代ふるに地方代表、職能代表を以てすると云ふ如きことは、孰れも貴族院令の改正に依つて所期の目的を達することが出來るのでありまするから、私は政府に於かれましては當面の急に應ずる爲に、差當り貴族院令の改正を斷行せらるることが一策ではなからうかと考へるのであります、而して此の方法に依らるるものとするならば、次の議會に於ても相當大幅の改革を行ひ得ると思ふのであります、以上の如き改正を行ふことに依りまして、貴族院議員の定員は自ら減少し得るのであります、其の減少せられたる限度を如何なる所に置くかと云ふことも、是亦議論のある所でありまして、何名にせなければならぬと云ふ絶對の理由はないと思ふのであります、併し今日の四百餘名より減じて、或は之を三百名にする位のことが相當ではなからうかと云ふのが、大體の聲であるやうに觀察するのであります、若し憲法改正と共に、貴族院制度を根本的に改めると云ふことに致しますれば、其の時には、私が只今申述べまするより更に廣く深く民主主義的に之を改むる段階に至るべきであり、又其のことは必至でなからうかと考へて居ります、而して左樣の場合に於ては、誠に恐縮を致す次第でありまするが、或は皇族議員を廢止する、華族議員の特權的性格も改めて、之を一般勅任議員の中に何等かの方法に依つて織り込む、從ひまして又貴族院と云ふ名稱の如きも當然之を改めなければならぬと思ふのであります、貴族院の名稱を變へると致しますると、どう云ふ風に變へるか、是等は此處で彼此申す場合ではないのでありますが、試みに申しますると、上院と言つては、衆議院と云ふ名前が結構な名前でありまするから、是は存置すると、何か適當ではないやうに考へられるのであります、其の他色色考へて見ますると、參議院と云ふ名前の如きはどうでありませうか、而して其の時には、貴族院令と云ふ唯一院の決定に依つて貴族院の組織を定めると云ふやうな制度は、自ら改められて、是亦法律に依ると云ふことにせられることになるのではなからうか、先日宮田君の述べられたる貴族院消滅云々の御意見の如きも、或は私が申述べたやうな貴族院の名前を變へると云ふ意味に於て貴族院が消滅すると申されたのであらうかと思ふのであります、若しも是がさうでなくして、帝國議會の組織を一院にすると云ふ御意見でありまするならば、私は是は何處迄も二院制度にして置くべきものであると主張致したいと思ふのであります、之を要しまするに、改正の時期如何と云ふことは、改正の方法及び其の内容如何が必然的の關係を有しまするが爲に、論議が改正の程度、内容の一般に迄及びまして、質問の趣旨を超脱して居るやうな感があるのでありますが、併し此の際改正の内容に迄立入つて御質問申上げると云ふことは時期を得て居らぬと思ふのであります、のみならず政府に對しまして此處迄の御答を要求致しますと云ふことは適當でないと考へまするが爲に、此の點は誠に重大でありますが、此の機會に於て御尋ね申すことは差控えます、併し今申述べました私の意見の中に自ら改正の方法及び内容に觸れたのは、要するに此のことを御尋ねするならば、御答の中に、改正の意思ありとか、時期をどうするとか云ふことが出まするでありませうが、左樣に致しますれば、其の御答で自ら改正の方法、内容の如何が推知出來ないとも思はないのであります、それ故に内容に若干立ち入つて御質問申上げた次第であります、要するに貴族院制度を改正すると云ふことは、我が貴族院に卓越したる人才を網羅することに依つて、貴族院の形態を立派に作り、之に依つて時局の要求に應ずる道義立國、責任政治の確立を期したいと云ふ點にあるのであります、何卒政府に於かれましては、私の申上げた第一、第二の點に付て御答辯を御願ひ致します、成るべく幣原内閣總理大臣から御答を願ひたいのでありまするが、御都合に依りましては他の國務大臣より御答下すつても差支はありませぬ、以上申述べました中、或は同僚諸君の尊嚴を冒涜するやうなことがあつたかも知れませぬが、志、固より其處にないのでありますから、左樣なことがありましたならば幾重にも御容赦を御願ひ致す次第であります、之を以て質問を終ります
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=9
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010・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今の小原君の御質疑に對しまして、私から一應御答を申上げます、先づ政府は貴族院令改正の意思ありや否や、若し其の意思あらば其の時期如何と云ふ御質疑であつたと承知致します、政府と致しましては、貴族院令改正の意嚮を持つて居ります、而して次の議會に其の案を提出致したい考であります、それから貴族院令改正の問題と憲法改正の問題との取扱の順序に付ても御話がありました、貴族院令の改正は、衆議院議員選擧法の改正と相俟つて私共の極めて重要視する所であり、又成るべく急いで行はるべきものと考へまするから、憲法改正の問題に先立つて其の問題を取扱ふことが本則であらうと考へまするけれども、政治の状態如何に依りましては、先づ憲法が改正せられ、之に基いて貴族院令の改正が行はれるやも保し難いことは御了承を願ひます、それから貴族院令改正の重點と認めらるべき内容の問題に觸れての御意見を拜聽致しました、私共も現下の時勢に即應して相當に大幅の改正を行ふ必要があると考へて居ります、唯其の具體案に付きましては、まだ完成致して居りませぬから、内容に付ては御説明を致し兼ねまするけれども、御意見の程は誠に有益なる資料として、十分參考に供したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=10
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011・小原直
○小原直君 内閣總理大臣の御答辯に依つて滿足致します、私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=11
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012・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 田口君
〔田口弼一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=12
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013・田口弼一
○田口弼一君 先刻總理大臣より今囘御提出に相成りました衆議院議員選擧法改正法律案御提出の精神を承つたのであります、又内務大臣より法案に付きまして重要な點の御説明を承つたのでありまするが、總理大臣の御説明に依りますると、此の法案は政治に對しまして民主主義の強化を圖るのであると云ふことでございます、私御尋ね申上げたいと思ひますことは多々ございますが、法案に付きましての質疑は委員會の方に讓ることに致しまして、私は此の總理大臣の御話のありました政治の民主主義化に關しまして少しく御尋を申上げたいと思ふのであります、我が國歴代の政府が執り來りました是迄の議會に對する對策と申しますか、議會に對する態度でございまするが、其の考へ方が非常に誤つて居つたのではないかと云ふ考を私は持つのであります、我々從來議會憲政の運用に當りまして、縁の下の力持ちを致したやうなことでありまして、微力を盡したのでありますが、何時かは此の從來の政府の議會に對する考へ方が改つて來る時期があるだらうと云ふことを期待して居りましたが、其のこともなく矢張り終始一貫誤つたる考の下に進んで來たやうな感じを持つて居るのでありまして、今囘の遂に終戰の後に至る迄もそれが改らなかつたと云ふことは誠に遺憾のことであり、殘念至極に考へるのであります、若し其の機會が早く來まして、議會に對する考へ方が改つて居つたならば、或は斯う云ふ大戰も起らずに濟んだのではなからうかと云ふことを、今日に於て悔いても及ばないやうなことでありますが、扠然らばどう云ふ誤りを致して居つたかと云ふことに相成るのでありますが、それは折角の議會政治が布かれて行はれて居るに拘らず、政府が此の議會を如何にも疎外し、議會を非常に厄介視して居る、又場合に依つては議會を敵國視して居るやうな感じが見えたのであります、勿論表には敬意を拂つて居るのでありますが、内心非常に遠けて居つたのであります、政治の實際は官僚獨善であつて、國民の代表たる議會は唯其の官僚政治の責任を分擔させると云ふやうなことに考へて來て居つたやうにあるのであります、是が私此の從來議會に對する政府のやり方が誤つて居つたのであると云ふことを申すのであります、御承知の通り、明治維新の直後に民權の自由の聲が澎湃として起りました、遂に憲法を制定致して議會政治を布くに至つたのであります、常時藩閥や官僚は内心之を喜ばなかつたけれども時代の勢己むを得ず議會政治を布かなければならぬと云ふやうな状態になつたのでありますから、其の當時の藩閥、官僚は議會に對して面白くない感じを持つたと云ふことは、當時としては諒とすることが出來るのでありますが、其の後長い間、即ち憲政が布かれまして既に五十餘年に及んで居りまする其の間、尚此の議會の敬遠策がずつと執られて來たと云ふことを誠に遺憾至極に考へるのであります、勿論此の間に於きましても、政府に依りましては議會對策が多少の相違があつたのであります、ありますが、大體に於ては矢張り議會敬遠主義が一貫して居つたのであります、最も不思議なことは、政黨内閣時代に於きまして尚且此の議會對策が變更せられなかつたと云ふことでありますが、當時の状況を考へて見まするのに、矢張り自己の政黨は無論自分の味方でありますけれども、議會には反對黨が居るのであります、其の反對黨を疎外するが爲に議會全體を疎外すると云ふやうな結果に相成つたと思ふのでありますが、結局議會の布かれました當時に於きまして藩閥、官僚と同じやうな行動を此の議會に對して政府は執り來つたのであります、此の間に政黨は沒落致しまして、軍が政治の推進力となつたのでありますが、軍が推進力になりまして後は、更に議會の機能は發揮することが困難な状態で、一層議會の權限は有名無實化せられたやうなことに相成りまして、寧ろ逆轉を致しまして、封建時代の所謂由らしむ可し、知らしむ可からずと云ふやうな主義の下に政治が運營されて來たのであります、我々議會の祕密會に於きまして色々話を承つたのでありまするが、さう云ふ場合に於きましても殆ど新聞發表以外の事柄は何ものも聽くことが出來ないと云ふやうな状況でありまして、議會の權能發揮の上に全く考慮せられて居らなかつたやうに考へます、斯う云ふ因襲が除かれなければ、選擧權を擴張致しまして、何倍の選擧有權者を出し、さうして國民が政治參與の權限を與へられましても、政治の民主主義化と云ふものは私は出來ないと思ふのであります、政府は此の點に付て如何なる考を以て居られるのであるか、私は之を承りたいのであります、近く憲法も改正され、議院法も改正せられ、又貴族院令其の他の議會關係等の法規も改正が行はるると存じまするが、政府從來の御考の下に此の種の法案の改正が行はれましても、全く異議はないのであります、それで私は此の點に付きまして、政府は今後どう云ふ御意見を以て議會に臨まれるのであるか、現政府は先刻來承る所に依りましても、政治の民主化を主張せられて居るのであります、仍て從來の因襲を打破致しまして、さうして新日本建設に相應しい議會と相成るやうに、御盡力下さることと思ふのでありますが、此の點に付きまして私は此の議場に於きまして、政府がはつきりと御所信を御述べ下さることが非常に必要だと思ひますので、此の點に付きまして私は政府の御所見を承りたいのであります、又今囘の選擧法改正の理由の中には述べられて居らないのでありますが、從來選擧の改正の意見が説かれます時に大選擧區制の採用の理由と致しまして、大人物を出すことが出來ると云ふことが唱へられて居るのであります、此のことは殆ど總ての人がさう云ふ考を持つて居るのでありまするので、今囘政府の御採用になつた大選擧區制の考への中にも、此の考は私は含んで居ることと思ふのであります、歴代政府は選擧の度毎に良い人物を議會に送れと云ふことを述べられ來つて居るのであります、立派な人を議會に送れと云ふことは誠に結構なことである、又さうなければならぬことであります、併しながら議會に其の人を送ればそれだけで宜いのであるかと申しますると、それだけでは私はまだ不十分と考へるのであります、議會に臨みまして、其の議員としての職責を完うすることの出來るやうに、それ相當な施設がなければ、議會は到底十分に其の機能を發揮することは出來ないのであります、現在の實情を御話申しますと、是は既に御承知の通りでありますが、議員が調査研究を致さうと致しましても、如何なる設備がございます、兩院に僅か小さな圖書館あるのみでありまして、而も其の圖書館たるや頗る貧弱なものである、それで熱心な議員は各自自分で事務室を持ち、色々圖書等を備へて居るのでありますが、併しながら個人の力は自ら限りがあるのであります、私はどうしても是は國家に於て爲さなければならぬと思ふのであります、歐米諸國に於きましては、議會には立派な圖書館があり、又それに附設した議員の事務室等もありまして、十分に勉強することが出來るやうになつて居ります、就中優れて居るのが「アメリカ」合衆國の議會でありまして、其の圖書館「コングレス・ラィブラリー」があり、議員の勉強する「オフイス、ビルディング」と云ふ大建物がありますが、此の圖書館には其の藏書數は四百萬を超えると云ふことを唱へて居ります、我が國の最も大なる圖書館と言はれて居る上野の圖書館では四十萬内外の書籍しかないのであります、約十倍の圖書を藏して居るのであります、又「オフイス・ビルディング」には各議員に二室又は三室を貸與致しまして、座右に必要な圖書數千册を議員各自の部屋に備へ付けてある、さうして事務員が調査研究のことに當つて居るのであります、我が國の議會はどうでありますか、殊に地方在住の議員が議會中上京しました場合は宿屋住をして居る、さう云ふ所で何か調べようとしても出來ない、法律案の審議も十分に出來ないやうな状況であります、議會に於ける議員の言論等に現れて來る事柄が如何に違ふことが起るであらうかと云ふことは、それに依つても判斷が出來ると思ふのであります、聞く所に依りますれば、「アメリカ」の議員、殊に上院議員が非常に議會に重きをなすやうなことになつたのは、此の「オフイス・ビルディング」が出來て、各議員に所屬した事務室を置いてから著しく重きを加へるやうになつたと云ふことを聞いて居るのであります、又米國の下院に於きましても、議員の研究調査に從事する事務員が居りまして、殊にさう云ふ人が一定年限の下に議會のことを習得しまして、相當自信が出來れば立候補しようと云ふやうなことに相成るのでありまして、議員に當選して來る者も相當の見識を持つて居りまして、議會の活動が出來るやうな状況になつて居るのであります、それで我が國でも斯かる傾向がなければ、私は縱し議員として出ても、其の人は相當な人でありましても、なかなか調査が屆かず、十分の意見が此の議會に現れることが出來ないと、斯う云ふ風に私は考へるのであります、此のことに關しましては、衆議院では議會事務室を作り圖書館を備へて呉れと云ふことを、度度政府に建議を致して居るのでありますが、是は實現せられずに居ります、近衞公爵が本院の議長であり、秋田清氏が衆議院の議長であつた當時に、兩院の議長から岡田内閣の大藏大臣であつた高橋是清氏に交渉致しまして、此の設備を致して十分に議會の機能を發揮するやうにして貰ひたいと云ふことを申述べられたのでありますが、内閣更迭致しまして、廣田内閣になりまして大藏大臣たる馬場えい一氏に交渉があり、第七十囘帝國議會に提出された總豫算の中には議會圖書館、及び議員事務室の建築費が計上せられて居つたのであります、ありますが、廣田内閣が辭任致しまして、林内閣が成立して、一度其の豫算案が撤囘されて、新たに豫算案が提出された時に、此の建築費がどう云ふ譯でありますか、削除せられて居つたのであります、それで遂に今日迄此の建築は出來ないことに相成つたのでありまするが、是も歸する處、私は政府が議會を輕んじて、議會人の調査研究と云ふやうなことを餘り考へて居らない、又望まない、丁度昔の藩閥官僚内閣の時代に於ては藩閥官僚が議會を敵國視して居つた、さうして其の力を弱からしむることに腐心して居つた名殘りが傳つて居るのではなからうかと、斯う云ふ風に考へるのであります、之を一掃しなければならないのでありますが、現内閣は議會政治に理解を御持になり、政治の民主主義化が宣傳せられて居るのでありまするから、私は其の爲には議會に對して、議會は敵でなく、友人であり、議會は相談相手であると云ふ考の下に、議會人にも勉強して貰ふ、又政府も十分勉強致して、互ひに相切磋琢磨して、國政の運營に當り、國策の愈愈立派に樹つて行くと云ふことに、努力することが最も良い方法であると考へるのでありまするが、是が私は矢張り此の民主主義化致したる政治の基本となるのであらうと考へるのであります、それで斯う云ふ事柄に對して、政府は如何なる御考を持つて居られるか、是亦私は議會を通して、さうしてはつきり言明をして戴きたいのでありまして、私の申述べることを要しまするに、今迄は議會の發展を阻止するやうな傾向が政府にあつたのでありまするが、之を除くことは勿論のことでありますが、更に進んで政府は議會政治の發展の上に於きまして、十分なる力を效す、さうして相共に、相携へて國運の隆昌を來すやうにやつて行かれることを望んで已まないのでありまするから、政府の御所見の孰れにあるやを承ることが出來ますれば、誠に仕合せと存じまするので、此の點に付きまして、總理大臣から御答辯があれば誠に仕合せと存じます
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=13
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014・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今田口君より議會政治の發達の問題に付きまして、御意見 御開陳がありました、誠に民主主義政治の確立の爲には國民の總意を反映する議會に對しまして其の當然なる權能、立場を十分に尊重しなければならぬと云ふことは、是は申す迄もないことでありまして、今後は議會を基礎として政治が推進せられることと私は信じて居ります、此の信念に依つてまつりごと、政治の局に當つて居る次第であります、それから議員の調査研究の資料たるべき機構に付きまして御意見を拜聽致しました、私は十分の興味を以て拜聽致したのでありますが、今日の状況に於きまして、御意見は如何なる程度迄實行可能であるかと云ふことに付きましては、更に研究致して見たいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=14
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015・田口弼一
○田口弼一君 只今總理大臣の御答辯に依れば、議會尊重の御精神は能く了解致しました、尚議員としての機能發揮に關しまする諸設備に付きましては、政府は今後十分御調査を下さいまして、一日も速かに其の施設の出來ることになるやうに、議員として十分の職責を發揮するやうなことに相成りたいと云ふことを御願ひしまして、是を以て私の質疑を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=15
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016・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました衆議院議員選擧法中改正法律案は、其の特別委員の數を二十七名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=16
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017・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=17
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018・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 只今戸澤子爵は衆議院議員選擧法中改正法律案のみ申されましたが、昭和十三年法律第八十四號…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=18
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019・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 外一件を追加致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=19
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020・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=20
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021・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔寺光書記官朗讀〕
衆議院議員選擧法中改正法律案外一件特別委員
公爵 徳川家正君 侯爵 佐佐木行忠君
侯爵 淺野長武君 伯爵 林博太郎君
關屋貞三郎君 子爵 大河内輝耕君
子爵 伊東二郎丸君 子爵 富小路隆直君
子爵 水野勝邦君 子爵 京極高鋭君
小原直君 安井英二君
川村竹治君 男爵 伊江朝助君
田口弼一君 男爵 松平外與麿君
男爵 中御門經民君 男爵 渡邊修二君
男爵 北大路信明君 中川望君
山岡萬之助君 丸山鶴吉君
瀧正雄君 三橋四郎次君
山隈康君 齋藤万壽雄君
奧主一郎君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=21
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022・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 昨日衆議院より送付せられました昭和二十年勅令第五百三十七號承諾を求むる件を此の際議事日程に追加し、之が會議を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=22
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023・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、堀切内務大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=23
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024・会議録情報3
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昭和二十年勅令第五百三十七號
右本院に於て承諾すへきものと議決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十一日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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昭和二十年勅令第五百三十七號
朕茲に緊急の必要ありと認め樞密顧問の諮詢を經て帝國憲法第八條第一項に依り衆議院議員選擧法第十二條の特例に關する件を裁可し之を公布せしむ
御名 御璽
昭和二十年九月十三日
内閣總理大臣 稔彦王
國務大臣 公爵 近衞文麿
海軍大臣 米内光政
外務大臣 重光葵
運輸大臣 小日山直登
大藏大臣 津島壽一
司法大臣 岩田宙造
農林大臣 千石興太郎
國務大臣 緒方竹虎
内務大臣 山崎巖
商工大臣 中島知久平
厚生大臣 松村謙三
文部大臣 前田多門
國務大臣 小畑敏四郎
陸軍大臣 下村定
勅令第五百三十七號
昭和二十年十二月二十日以後昭和二十一年十二月十九日迄の間に行はるる衆議院議員の選擧に用ふべき選擧人名簿の調製に關しては衆議院議員選擧法第十二條第一項中其の日迄引續き六月以上其の市町村内に住居を有する者とあるは其の市町村内に住居を有する者とす
附 則
本令は公布の日より之を施行す
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〔國務大臣堀切善次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=24
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025・堀切善次郎
○國務大臣(堀切善次郎君) 只今議題となりました昭和二十年勅令第五百二十七號衆議院議員選擧法第十二條の特例に關する件に對し帝國議會の承諾を求むる件に付きまして、提案の理由を御説明申上げたいと存じます、本年九月十五日の選擧人名簿の調製期日當時に於きましては、恰も戰災疎開等に因る人口の異動が全國に亙りまして極めて夥しき數に上つて居りました爲に、名簿に登録せられまするに必要なる六箇月以上の住居に關する要件を充し得ず、名簿に登録せられ得ない者が甚だしく多數に相成つて居たのであります、仍りまして臨時の措置と致しまして、名簿の登録には六箇月以上の住居に關する要件を要せざるものとし、是等の戰災者等をも齊しく名簿に登録しまして、其の選擧權の行使に支障なからしむることを緊要なりと認めまして、憲法第八條第一項の規定に依り本勅令の制定を見ることと相成つた次第であります、何卒宜しく御審議の上速かに御承諾を與へられむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=25
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026・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました昭和二十年勅令第五百三十七號は、衆議院議員選擧法中改正法律案外一件の特別委員に併託せられむことの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=26
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027・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=27
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028・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=28
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029・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=29
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030・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 日程第一、國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案、政府提出、第一讀會の續、委員長報告、向山男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=30
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031・会議録情報4
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國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十一日
委員長 男爵向山均
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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〔男爵向山均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=31
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032・向山均
○男爵向山均君 只今上程せられました國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案に付きまして、入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案特別委員會に於ける審議の經過竝に結果を御報告申上げます、本法律案は多くの省と關係がございます爲に、其の審議の進行は、當委員會に於きまして併記に相成りました他の多數法律案の審議に引き續きまして、便宜本法案中の同一省に關する部分の審議を行ひましたので、自然本法案の審議は、去る五日より昨十一日に亙りまして、斷續的に度度行はれました、次に政府の説明及び質疑の主なるものを申上げます、本法案の趣旨は、法制局長官より次のやうに聽きました、國家總動員法は昭和十三年四月、法律第五十五號として公布せられ、其の目的は戰時に際し國防目的達成の爲、國家の全力を最も有效に發揮せしむるやう、人的及び物的資源を統制運用するにある、施行以來國防目的達成の爲、戰時中最も活用せられた戰時統制法令中の根幹を爲す法律である、又戰時緊急措置法は昭和二十年六月、法律第三十八號を以て公布せられ、戰時最終段階に於て國家の危急を克服せむが爲、政府に對し強力なる非常措置の權限を與へたものである、終戰後の今日、戰時中の此の二法律は、之を至急整理するを適當と考へ、茲に兩法律廢止法律案を提出した、而して兩法律廢止後の混亂を避ける爲、附則に於て必要なる規定を設けてある、以下各項の大要を説明する、本文は國家總動員法と戰時緊急措置法を廢止する旨を規定した、附則第一項は本法施行期日は勅令を以て定むることを規定した、其の手續を急速に進め、速かに施行したいと考へて居る、附則第二項の前段は、兩法律に基き現に存する勅令に關する限り、是等の法律に依り得ることを認むる爲、其の法的根據として本法施行後六箇月間、國家總動員法及戰時緊急措置法の效力を認むることとした、終戰以來國家總動員法に基く勅令以下の命令は續々其の整理を行ひつつあるが、終戰後の事態に對應し、國民生活を維持安定せしむるに必要なる限度に於て、本法施行の際現存する勅令に關する限り、六箇月間を限つて是等の法律に依り得ることを認め、其の間に整理すべきは整理し、法制的、行政的措置を要するものは之を行ひ、圓滑平穩に事態を推移せしめ、以て國民生活の安定を圖らむとする、以上の限度に於て兩法律は其の效力を存續せしめ、國家總動員法第一條と、それに必要なる總動員物資と總動員業務の定義を規定した、同第二條及び第三條は意義なき爲之を除外することとした、附則第二項後段は、右の如く兩法律は現存勅令適用の限度に於て存續せしむる目途は、戰爭の遂行でなく、終戰後の事態に對應して國家生活の維持安定を圖る爲である故、それぞれ必要なる讀替を加へ、今後の效力存續上支障なからしむることとした、附則第三項は、存續する勅令の内容に關し、存續の許される六箇月間に於て其の適用上必要なる改正を爲すことを得る旨を定め、而も改正する場合は、「其の規定する事項の範圍に於て」と致したので、國民に新たなる拘束を加へるやうなことは出來ぬ趣旨である、附則第四項は、兩法律廢止後各勅令に規定した權利義務の混亂の惹起を防ぐ爲、本法施行前兩法に基く命令、處分、行爲に係る措置の中、法律關係の未だ完了せざるものは今後も從前の例に依ること、及び兩法違反行爲に對する處罰に關しても、本法施行後と雖も處理し得ることとしたのである、而して現存勅令が本法廢止後六簡月間の經過中行はるべき各種事項の處置及び違反行爲の處罰に付ても、同樣に行ひ得る如く括弧内の規定に依つて其の旨を明確にしたと云ふのでごさいました、尚參考資料として總動員法關係現行主要勅令の調の配付がございました、之に依りますと内閣關係五、大藏九、厚生三、農林七、商工八、運輸五、合計三十七件でございます、質疑の主なる點を申上げます、一委員より國家總動員法廢止に伴ひまして、本法關係の諸勅令の取扱方に關し、會社經理統制令の如く、戰時中效果最も大なりしものは民間にて或條項に付て改正の要求の相當聲の大きいものがある、本法關係勅令の存續、廢止又は修正等のやり方に付てどうするかと云ふ質問に對して、次のやうに答へられました、配付せる資料に列記した所の勅令の大部分は、一應六箇月間は效力を有せしめ、若干の改正を行ふものもある、米穀搗精等制限令、馬事團體令、戰時建設團令等は直ちに之を廢止する、六箇月後は皆廢止する、此の間長期の議會も開かるべく、新法律制定の提案を爲す考である、此の際修正を要するものは、附則第三項にて之を行ふこととする、又既定事項以外に新しい事項の附加は、勿論穩當でないからやらないと云ふ答でございました、地代家賃統制令の如きは如何に扱ふかと云ふ問に對しましては、一應六箇月間は殘す、將來は之に代るべきものを目下研究中であるが、建物の古きものと、新築のものとの振合等に付ては十分考慮したいと考へて居る、農地調整法改正法律案との關係事項も研究中である、馬事團體令の廢止に伴ひ、馬の扱ひ方、馬事關係團體の指導の方針、競馬の將來等に付きましては、馬は軍がなくなつた爲、將來は農耕用、及び輓馬として重要である、公益法人たる日本馬事協會を設立する手續は濟んで居る、競馬は馬の改良方向が變つても止める考はない、「スポーツ」として、或は金融の方面から必要と考へて居る、但し其のやり方に付ては目下聯合國司令部と打合せ中である、外地の投資の見透し、支那の「インフレ」の状況等に付きましては、日本及び日本人の海外の財産は賠償に取られることがあるべく、之に對する處理法に付ては、政府は目下愼重に研究して居る、支那に關する情報は正確を缺くが、物價は終戰と共に一時下落し、最近又上昇の傾向にある、厚生省關係と致しましては、過般國民勞務手帳法廢止法案の審議の際、保留された體力檢定法、家屋建築費の騰貴の問題等に關する説明を政府はされましたが、體力檢定法に關しましては、其の成果は極めて大であつたけれども、此の度徴兵檢査がなくなる、其の結果として體力の檢査は益益之をやらなければならない考である、國民の體力は十八年度を境として低下し、結核患者も増加を始めて居る、從つて保健、衞生、榮養の問題等は此の際食糧事情等も鑑み、益益緊要なものであるから、厚生科學研究所に於て之が研究、榮養士の養成に大いに努めると共に、榮養協會にも活動をさせて居る、外地より復員の軍人、引揚人には榮養劑を送つて居る、粉食の奬勵、榮養多き團栗の囘收利用等も大いにやることにして居る、建築費の極めて高くなつた件は、結局米、麥、酒等の不足に因る、之が爲に勞銀が極めて高くなつたのが主な原因である、船舶船員の問題に付きましては、聯合國の意嚮が尚明かでないけれども、假に只今の造船所の大なるものから順次二十箇所撤去すると致しますと、一年の建造の能力は十三萬「トン」になつてしまふ、日本の必要とする船舶の量は貨物船三百萬「トン」、其の他百萬「トン」、合計約四百萬「トン」を要するのに對し、終戰當時殘つて居つた船は百五十萬「トン」に過ぎなかつた、此の差の補充、海難、老朽船舶の補充等を考へると、年に四十萬「トン」の建造を必要と考へる、此の爲には造船所として四十萬「トン」程度の設備が殘したい、之に付て努力したいと考へて居る、其の他の質問は之を速記録に讓りたいと存じます、質疑を終りまして討論に入り、別に發言もなく、國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案は全員一致之を可決すべきものなりと議決致した次第でございます、報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=32
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033・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=33
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034・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=34
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035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=35
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036・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=36
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037・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=37
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038・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=38
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039・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、本案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=39
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040・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=40
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041・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=41
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042・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=42
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043・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=43
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044・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=44
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045・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=45
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046・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、次會の議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後零時六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X00919451212&spkNum=46
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