1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十年十二月十四日(金曜日)午後一時十四分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第十一號
昭和二十年十二月十四日
午後一時開議
一請願委員長報告
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=0
-
001・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告を致させます
〔小野寺書記官朗讀〕
從二位勲一等 廣田弘毅君
正三位勲一等 安藤紀三郎君
古野伊之助君
昨十三日願に依り貴族院議員を免せらる
同日本院に於て可決したる左の政府提出案は即日之を衆議院に送付せり
戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案
同日議員より左の質問主意書を提出せり
在外同胞救援に關する質問主意書
(關屋貞三郎君提出)
同日議員より左の試案を提出せり
食糧輸入に關する決議案(石黒忠篤君發議)
本日第四部に於て豫算委員下村宏君の補闕選擧を行ひしに山川端夫君當選せり
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=1
-
002・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 是より本日の會議を開きます、昨日關屋貞三郎君より提出せられました、在外同胞救援に關する質問主意書に付、其の趣旨を説明致したき旨申出がございました、此の際其の説明を許します、關屋君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=2
-
003・關屋貞三郎
○關屋貞三郎君 總理大臣が御見えになつて居りませぬから、おいでになつてから致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=3
-
004・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 總理大臣は直ぐに見えられますから御始を願ひます
〔左の質問主意書は朗讀を經さるも參照のため茲に載録す〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=4
-
005・会議録情報2
━━━━━━━━━━━━━
在外同胞救援に關する質問主意書
在外同胞救濟援護に就ては政府に於て相當努力せられつつあるは之を認むるも、其の成果の甚だ擧らざるは頗る遣憾とする所なり、在外同胞の生活滲澹たる状況は已に新聞紙上見るに忍びざるものあるのみならず、其の状況を審かにし得ざる滿洲北鮮樺太方面は殆ど想像に餘りある境遇に在るが如し、窮乏迫害の結果異域に客死せるもの、凍死飢餓に瀕せるもの頗る多數に上るを聞くに至りては轉た痛嘆に堪へざる所なり
去月末の現在に於て在外同胞の數は朝鮮臺灣樺太千島滿洲中國南方諸地域を通じ約三百三四十萬に達し復員軍人を合し實に七百萬に上る
多年外地に在住し拮据經營せる事業財産を喪失せるもの、交通産業金融の諸機關に從事し失職せるもの、官途に在勤し職を去りたるもの等幸に萬難を排して歸還し得たるものも殆ど無一物にて本土に上陸するも已に内地家郷を離るること久しく親戚故舊の寄る邊なき人も尠からず、將來處世の方向に迷ふもの極めて多きは想見するに餘りあり
政府は在外同胞援護事業の特殊性に鑑み
一、援護救濟の急速を要すること
一、一般國民の關心を高め殊に郷黨官民の同情を集中せしむること
一、政府と民間と緊密なる連繋を圖り單に民間機關に委ねず政府當局自ら其の指揮に當り官民協力迅速有力に活動を促進すること
更に現地に於ける援護としては
一、可成正確なる情報を蒐集公表すること
一、生活資金を入手する爲其の凍結緩和の途を講ずること
一、幼者病者女子の歸還を特に優先的にすること
一、現地私有財産の保護補償に努むること
等最も緊急の事項となす、尚歸還後の援護に就ては別に希望する所あるも、先づ政府の援護對策を確立し外務厚生主務官廳の責務を明かにし、一般戰災援護に優るとも劣らざる方法を講じ其の生活の援護指導を行ふ等懇切周到なる措置を講ぜられんことを希望す、以上は人道上の見地よりも捨て置き難き施策と確信す
右諸點に關し政府の所見如何
右議院法第四十八條に依り及質問候也
昭和二十年十二月十三日
提出者 關屋貞三郎
贊成者
公爵 徳川家正 公爵 大山柏
侯爵 佐佐木行忠 侯爵 淺野長武
伯爵 林博太郎 伯爵 溝口直亮
伯爵 二荒芳徳 男爵 白根竹介
子爵 八條隆正 子爵 伊東二郎丸
子爵 保科正昭 子爵 西尾忠方
子爵 裏松友光 子爵 松平康春
田中館愛橘 平塚廣義
村上恭一 男爵 飯田精太郎
大野緑一郎 安井英二
三井清一郎 岡喜七郎
田邉治通 男爵 久保田敬一
男爵 關義壽 田中武雄
男爵 岩村一木 男爵 島津忠彦
男爵 神山嘉瑞 男爵 明石元長
山岡萬之助 黒田英雄
有賀光豐 藤沼庄平
丸山鶴吉 長岡隆一郎
古島一雄 大平駒槌
三橋四郎次 熊谷三太郎
佐々木駒之助 米原章三
片倉兼太郎 大谷五平
飯塚知信 秋田三一
━━━━━━━━━━━━━
〔關屋貞三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=5
-
006・關屋貞三郎
○關屋貞三郎君 在外同胞救援に關する質問主意書を提出致して置きましたが、之に付きまして若干敷衍を致して説明を加へ、尚足らざる所を補ひまして、希望意見も附加へて政府の御答辯を得たいと思ふのであります、殊に總理大臣首め關係大臣の御答辯を願ひたいと思ひます、復員軍人諸君は、第一、第二復員省が出來まして十分御世話をなさるさうでありますから、遺憾ないことを期せられることと思ひます、此のことには言及致しませぬが、外地に在つて殆ど言語に絶する御心勞と敗戰の苦痛は、實に軍人として其の御心持を察するに餘りあるのでありまして、我々は唯感謝感激の外はないのであります、一日も早く復員せられまして、それぞれの業に就き、生活の安定を期せられむことを願望する次第であります、在外同胞救援に付きましては、政府に於ても勿論相當努力せられつつあることは、私も之を認むる者でありまするが、其の成果の擧らざるものあることは、頗る遺憾とする所であります、在外同胞の状況は其の地域に依りまして非常に違ふのであります、氣候の暖かい所や、寒い所、又食糧の多い所、少い所、殊に其の地域を支配して居る政府の態度如何に依りましては、比較的平穩の所もありまするし、又之に反して慘澹極りない所もあるのであります、それから状況の判明致して居りまする所と通信連絡が絶えて居りまして、事情の審かにし得ざる所とあります、從つて或は政府も手の下しやうがないと云ふこともあることは私も承知するのであります、又質問者と致しましても、有らゆる各地に亙つて、委曲を盡すことも出來ませぬ、從つて取敢へず手に入りました報告、是には書面もありまするし、或は私が相當多數の人に面會も致して居りまするが、此の報告に依りまして、承知を致したものに付て御説明を申上ぐるの外はないのであります、從ひまして勿論彼を重しとし、之を輕しとすると云ふやうな氣持は毛頭ないので、等しく在外同胞に對しては滿腔の同情を表するものであります、在外同胞救援のことたる、結局此の敗戰と云ふ、我が國未曾有の現實に依つて惹き起されたるものでありまして、政府も民間も全く經驗のない問題である、極めて難事業であるのであります、又我々と致しましても悲痛憤慨を禁ずることが出來ないのでありまするが、唯徒に興奮することなく、冷靜に事情を調査致しまして、而も熱心、敏速に此のことに當らなければならぬと思ふのであります、質問者も勿論一時の興奮に驅られて申上げるのでないと云ふことは、十分に御了承を願ひたいと思ひます、本議場に於て詳細に申上げますことは煩瑣に亙りまするし、又會期も切迫致して居るのでありまするから、長く申上げる時間もないのであります、且又皆さんも相當御承知のことが多いと思ふのであります、要するに在外同胞が極めて慘澹たる有樣であると云ふことだけは申上げられ得るのであります、殊に其の状況を審かにすることを得ざる滿洲、北鮮西鮮即ち三十八度以北、樺太方面は、想像に餘りある境遇でありまして、窮乏、迫害殆ど言葉に盡せないものがあると思つて差支ないのであります、今各地に亙りまして極めて簡單に私の知つて居るだけを申上げて見たいと思ひます、先づ三十八度以北の朝鮮でありまするが、是は男子は大概勞役に服して居ります、女子は暴行を受け、僅かに男裝して、其の難を免れて居ると云ふやうな有樣でありまして、是は此處で申して善いか惡いか分りませぬが、某高官の夫人、令孃が凌辱を受けむとする其の前に自殺を遂げたと云ふやうな例もあるのであります、又地方長官は全部抑留せられまして、勞役に服して居るのであります、其の部下を率ゐて皆何等かの働きをさせられて居ると云ふやうな有樣であります、又大小の工場は接收せられ、機械設備等も取外して持つて行かれる、それから其處に附いて居る技術者も一緒に或方面に拉致されたと云ふやうな有樣であります、北鮮の某地より三十八度の線を越えて南下した者の一例を聞きましたが、初め出ました時には七百何名かあつたさうでありまするが、京城に、京城ぢやありませぬ、京城の手前でありますが、中間の或町に著いた時には、僅かに一割だけが安全に著いた、而も七歳以下の子女は大半死亡し、老人は他に迷惑を掛けるのを恐れ自殺致したさうであります、又山越をする場合に、子供が病氣になつたと云ふので、子供二人を置き去りにして其處を立去つたと云ふやうな例もあるのであります、而も其の人達が京城に著きました時には、非常に骨を折つて持つて來た荷物が大部分失はれて居つたと云ふやうな現状であります、食糧も兎に角若干配給されるさうでありますが、甚だ不十分で、到底それだけでは足らないので、家財道具や衣類などを賣却し、僅かに飢餓を免れて居ると云ふやうな有樣であります、到底長くは續きませぬから、坐して死を待つて居ると云ふ以外に方法はないのであります、三十八度以南、即ち米軍の進駐して居る方面でありまするが、是は米軍の進駐迄の間は、隨分困つた問題が起りましたが、進駐以後は稍稍平穩に歸して居るのではありまするが、何樣廣地域に亙り、少數の米軍が駐屯して居るのでありますから、一々取締を完全にすることも出來ず、又中央の折角の好意も地方の方には徹底しないと云ふ憾みがあるのであります、從ひまして最初は朝鮮に殘りたいと思つて居つた人々も、結局是では堪らぬと云ふので、引上げる決心をしたやうな訳で、状況は決して良くないのであります、是は事業をどんどん接收せらるる、又今迄工場で使つて居つた所の勞務者等が解散手當を、而も多額の解散手當を要求するのであります、それから家屋は占據せられるし、不動産は之を放棄せざるを得ないやうなことになつて來る、生活必需品は或場合には殆ど販賣して呉れない、販賣を拒否するやうなこともあつたのであります、而も強盜、竊盜が横行して居るのでありまして、要するに食糧は不足、輸送難、それから住む家もない、又襲ひ來る所の此の朝鮮の寒さには、殆ど之を防ぐ方法もない、物價は昂騰する、醫療の機關もないと云ふやうな訳でありますから、實際飢餓線上に彷徨致して居るのであります、是は米軍の更に深い同情を得まして、米軍の中央の指示が下迄徹底するやうにしたいと云ふことを念願致す次第であります、それから引揚げる者は是は御承知でありませうが、所持金は大體千圓と限られて居るのであります、それから荷物は一個である、此の荷物すらも、釜山に來る迄に隨分なくなつてしまふと云ふやうな有樣であります、それから京城から引揚げる汽車の度數も從來少かつたのでありまして、復員軍人を乘せる車には朝鮮人は乘ることは出來るけれども、所謂内地人は乘ることは出來なかつたのであります、近來段々復員が濟むと同時に數も多くなり、又聯合軍の好意に依りまして、輸送する船も増して貰ふことが出來たので、近來大分多數の人が内地に歸れるやうになつたのであります、而も其の汽車も、時々故障が起るのださうであります、さうして其の度に乘客から若干の金を集めて、漸く汽車を動かして貰ふと云ふ有樣である、實に話にならないのであります、十一月半ば迄に引揚げた者が十七萬ばかりある、尚朝鮮だけで殘つて居る者が三十萬もあるのでありまして、本年中には今の船繰の模樣では、大部分は引揚げ得ると思ふのであります、此の機會に私が得ました、最近の、私の知つて居る人から來た手紙を讀むことを御許を願ひたい、之に依つて其の事情が能く分るのであります、大分略しまするが、「私も幸ひ復員家族として去る十月二十五日京城を出發し、十一月一日敗戰國民の辛勞を味ひつつ、殆ど焦土化せる」…、此の人は水戸の人です、水戸に歸國致しました、水戸の家も自分の細君の家も燒失して、目下は伯父の家に厄介になつて居る、此の人は長らく教育に從事し、校長を致して居つたのでありますが、「在鮮三十二年であります、教育の效果も水泡と化し、終戰直後朝鮮人は全く戰勝國民化し、日本人を憎惡し、殊に米軍進駐後は警察權も鮮人の手に入り、殆ど内地人に對しては無警察の状況である、官公吏、實業家の有力者も何等かの罪名で拘禁されて居る、現に京畿道の知事も、部長も、課長も、二十何名かは鐘路の警察署に入つて居る、寺内總督時代に基礎付けられた事業も、終戰と同時に、全く一變して、學生生徒も反旗を飜へし、日本人としても十分反省悔悟の資料となるものも乏しくはありませぬが、兎に角教育の力の如何に乏しいかと云ふことを感じて居る、海州、土城、開城等三十八度以北、それぞれ占領下の官民の状況も誠に氣の毒千萬である、海州の○○氏は娘二人、是が行方不明、男子官公吏は日中強制勞働、女子は慰安隊となつて」只今申上げた「某高官の令孃夫人の如きは純潔を保つ爲自殺を致したことは涙無くしては聽くことを得ざる慘状である、三十八度以南の者は米人の好意に依り生命には危險なきも鮮人の暴擧には痛憤禁ぜざる状況である、歸國に際して郵便貯金の外に現金一人當り一千圓だけ持參を許可せられ、荷物は兩手肩に持參し得る限度に制限せられ、汽車は貨車である、さうして釜山では大抵二泊乃至三泊、而も驛の構内、露天「ホーム」石の上に寒風に暴らされながら船便を待つと云ふ状況であつて、全く敗戰國民、四等國民に墜落せしことが、身に染みて居ります、幸ひ私共は十月二十五日京城を出發した爲、寒さもひどくなかつたけれども、唯今の歸國同胞の身の上を思ふと、誠に何とも申しやうない、私共は幸ひ米軍の幹部に刀劒其の他衣類等を「プレゼント」致して、贈呈感謝状四通迄持つて居る爲に、釜山、博多に於ける檢査も頗る寛大であつて、生活に窮せざる程度に現金は持參して居るが、二萬數千圓の郵便貯金も本月十四日より支拂停止になりまして、在鮮せし日本人は均しく政府に對して遺憾の意を表して居る、閣下の御力に依つて來たる帝國議會に於ても同胞の爲に盡力をして貰ひたい、「マッカーサー」司令部に對しても御交渉願ひたいのである、米人は誠意と熱意を示して呉れた、實に優秀民族であるから、個人の私有財産も或程度に緩和して呉れることと信ずるが、尚御高配に依つて、せめて在鮮せし、即ち朝鮮に居つた日本人の郵便貯金だけでも、無效とせざるやう政府より熱心に司令部に交渉方を呉々も御願ひ申上げる、私も五十五歳であるから何か最後の御奉公をしたい」と申して居るのであります、臺灣のことは御承知でありませうが、幸に大體平靜裡に推移して居りまして、偶偶散發的に暴行が起りますが、中國軍が進駐後も一般行政に付きましては從來の制度を踏襲して居るのであります、從つて先づ平穩と申しても差支ないと思ひます、是は全く中國の公正なる態度でありまして、我々感謝致して宜いかと思ふのであります、但し配船の關係で引揚げる時期、不明であるさうであります、それから樺太は終戰前に既に「ソ」軍の侵入がありまして、停戰協定の成立したのは八月二十幾日かであります、其の後は兎に角一應平靜に歸したのでありまして、大體に於ては住民の生業は之を繼續せしめると云ふ方針ださうでありまするが、それでも矢張り邦人の財物を強奪せられることや、或は婦女子に對する暴行、又建物の接收等は相次ぐ状況であつて、住民は頗る不安であります、それで引揚を了した者が七、八萬あるさうであります、それから滿洲の状況は、是は實は私餘り審かに致して居りませぬ、恐らくは朝鮮の三十八度以北と同樣と見て差支ない、或はそれよりひどいかも知れませぬが、まあさう云ふ状況である、それから中國即ち支那です、中國方面に於きましては、大體に於て平穩で生活の脅威迄はないやうでありまするが、矢張り困苦缺乏に呻吟して居ると云ふことは確かであります、滿洲には百二三十萬、北支、中支、南支には四十六、七萬同胞が居ります、それが多年個人として拮据經營した事業もあります、又會社、銀行等に從事して居つた人もあります、所謂國策會社と云ふものもありまするが、例へば私の手許に入りました材料で申上げますると、一番大きな滿鐵、それから華北交通、華中鐵道と云ふやうな從業員だけでも十八萬、約二十萬と見て宜しうございます、家族を合せましたならば非常なものであらうと思ひますが、尤も家族は主に内地に居りまして、一部分があちらに殘つて居ると思ふのでありますが、あちらに居る者は、まだ歸國した者は極めて少いし、退職金と云ふものもなし、又留守宅の送金も殆ど出來ないと云ふやうな次第でありまして、非常に困難を致して居るのであります、それから尚引揚者全體を通じて申上げますと、病人が非常に多いのです、殊に寒さに當りまして各種の傳染病もありまするし、兎に角先刻申上げました醫療も出來ない、病人が多いことは想像出來ますが、殊に婦人、小兒の疾患が非常に多いのであるのみならず、婦人は甚だ遺憾ながら此處で申上げることも憚る位の惡質の病氣に罹る者が多いのでありまするから、内地に歸還した後に於きましても、醫療方面の救護が必要であらうと思ひます、是は又特殊の問題でありまするが、在外同胞の中でも、在外の日本官吏は總て所謂廢廳になつたので、幸に歸還した者も全然職を失つて居るのであります、而も内地を離れて長くなつた者は、内地で職を得ることはなかなかむづかしい、勿論内地の日本の役所に於ても、今囘は相當多數の整理を爲さるさうでありまするから、失職者も澤山出るでありませうが、併しながら在外の官公署に勤めて居りました者は、全然其の役所が無くなるのでありますから、何割か殘ると云ふ譯にはいかない、全然職を失ふと云ふことになる譯でありまして、是等は誠に同情に堪へないので、政府の力に依りまして、内地との均衡などもありますが、何とか出來るだけ御心配を切望する次第であります、質問の要點は主意書に明記致して居りまして、議員各位の御手許にも參つて居りまするし、又政府にも申上げて居るのでありますから、之を繰返すことは致しませぬが、どうか此の救援事業は迅速果敢にして戴きたい、又必要なことを聯合國、殊に米軍に御申入れになりまして、其の了解と援助を請ふことが必要であらうと思ひます、而も此の救援事業たる、單に物質的の利害問題でなしに、只今申上げるやうに實に人道上默視することが出來ない問題でありますので、世界の公正なる判斷に愬へて戴きたいと希望する次第であります、尚在外同胞も一種の戰爭犠牲者でありまするが、内地の戰災者とは自ら趣を異に致し、現に暴行脅迫を受けて居る者が少くない、且又財産なり、事業なりも全然喪失してしまふのであります、甚だしきに至つては、もう將來癒すことの出來ないやうな損害を肉體に受けて居ると云ふやうな者もあるのであります、而も長く居住すればする程、郷里の方との關係はなくなりまして、折角歸還致しましても、身を寄する所もないと云ふやうな訳でありまするから、殊に政府及び一般國民の注意と御同情は願はざるを得ないのであります、此の救出と援護とに付ては、出來るだけの手段を講じて戴きたい、我我も難事業であることは十分に了解致して居りますが、政府の力で出來ることで、注意が足らないとか、或は熱意が足らない爲に、出來ないと云ふので、甚だ遺憾千萬であります、どうか政府に於きましては、萬全の注意を拂つて、最善の努力を惜まないやうに希望して已まない次第であります、是を以て主意書の説明を終り、尚若干希望を附加へて述べた次第であります、どうか明確なる御答辯を御願ひ致します
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=6
-
007・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今關屋君の御質問に御答を申上げます、終戰に伴ひまして、外地殊に滿洲、北鮮、樺太等に於ける在外同胞の窮状は、只今御話の通り誠に同情に堪へませぬ、私共は何とかして相當の對策を講じたいものと深く心を痛めて居る次第であります、其の援護救濟 急速を要することでありまするし、又此の際は同胞愛に燃ゆる温い手を差押べて、官民協力一致して之が援護救濟に當りたいものと念願して已みませぬ、幸に宗教團體等に於きましては、既に活動を開始せられて居るのでありまして、誠に結講なことと存じます、尚在外同胞援護會及び戰災援護會等も十分協力致して居るのであります、固より現地に於ける保護、歸還途中の輸送等に付きましては、現地軍、第一及び第二復員省竝に運輸省等に於て適當なる部面のあることは申す迄もありませぬ、現地に於ける救護に付きましては、正確なる情報の蒐集、公表の爲に今日迄有らゆる手段を講じて居るのでありまするけれども、甚だ不十分な、不滿足な點が多々ありますることは誠に遺憾に存じて居る次第であります、勿論今後に於ても一層努力を致す所存であります、次に生活資金に關する件でありまして、現地に於ける在留同胞の其の生活樣態は各地域に依つて事情を異に致して居り、遺憾ながら今日迄事情の判明しない地域もあるのでありまして、支那等に於きましては、大體比較的安全なる地帶に集結致し、團體生活を營 せて居 のであります、之が經費は固より政府に於て負擔すべき部分の存することを豫想せらるるのでありまするが、何分只今の處、送金の途が開けて居ないのでありまするから、之が對策を講じ、尚凍結緩和のことに關しましても、今後善處致したいと考へて居ります、それから歸還順位の點に關しましては、聯合國側の方針は、原則として復員軍人を先に致しまするが、現地聯合國司令官に現地の事情に即應する處置を爲すことを許してありまして、事實上傷者、病者、老幼婦女子が優先的に歸還致して居る現状であります、現地の私有財産の保護の點に關しましでは、從來聯合國側に要請して參つたのでありますが、尚賠償に充當せられ、又は終戰に伴ひまする混亂、其の他に依りまして不測の損害を蒙りました者に對しまして、將來事態の判明を俟ちまして、國家の財政、其の他の點をも勘案致しまして、之が保障又は救恤等に付て愼重なる考慮を加へ、善後處置を講じたいと考へて居るのであります、大體政府に於て努力致して居りまする目標は、以上に述べた通りでありまするが、事態は極めて重大であり、又窮迫致して居るのでありまして、人道上の見地から見ても誠に默過し難い問題と考へまするから、今後も政府は引續いて之が救護、救濟に全力を盡したいと云ふ決心であります
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=7
-
008・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 昨日石黒忠篤君より提出せられました食糧輸入に關する決議案を此の際議事日程に追加し、之が會議を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=8
-
009・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、發議者に對し趣旨説明の發言を許します、石黒君
(左の決議案は朗讀を經さるも參照のため茲に載録す)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=9
-
010・会議録情報3
━━━━━━━━━━━━━
食糧輸入に關する決議案
右提出候也
昭和二十年十二月十三日
發議者 石黒忠篤
贊成者
侯爵 佐佐木行忠 侯爵 淺野長武
伯爵 堀田正恒 伯爵 後藤一藏
關屋貞三郎 子爵 大河内輝耕
子爵 松平乘統 子爵 八條隆正
子爵 伊東二郎丸 子爵河瀬眞
子爵 保科正昭 子爵 富小路隆直
子爵 宍戸功男 子爵 西尾忠方
子爵 裏松友光 子爵 北小路三郎
子爵 松平康春 子爵 土岐章
子爵 大岡忠綱 子爵 本多忠晃
子爵 伊集院兼高 子爵 藤井兼誼
子爵 水野勝邦 子爵 松平親義
平塚廣義 小原直
男爵 東久世秀雄 男爵 飯田精太郎
安井英二 男爵 向山均
川村竹治 山川端夫
男爵 伊江朝助 男爵 關義壽
男爵 松平外與麿 村瀬直養
男爵 中御門經民 男爵 杉溪由言
男爵 肝付兼英 男爵 坊城俊賢
中川望 有賀光豐
丸山鶴吉 松本學
瀧川儀作 山隈康
中山太一
貴族院議長公爵徳川圀順殿
━━━━━━━━━━━━━
食糧輸入に關する決議
政府は食糧増産供出に萬般の施策を講じ來れるも更に終戰後の諸事情により國民の榮養は日に不足を來し街に餓死者を見るに至らむとす誠に寒心に堪へず之が爲め特に海外より補填するの要ありと認む
仍て政府は速に米穀等輸入の實現を圖り國民をして不安なからしむる樣萬全の方途を講ずべし
右決議す
━━━━━━━━━━━━━
〔石黒忠篤君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=10
-
011・石黒忠篤
○石黒忠篤君 私は只今議題となりました食糧輸入に關しまする決議案の趣旨の辯明を致したいと存じます、先づ之を朗讀致します
政府は食糧増産供出に萬般の施策を講じ來れるも更に終戰後の諸事情により國民の榮養は日に不足を來し街に餓死者を見るに至らむとす誠に寒心に堪へず之が爲め特に海外より補填するの要ありと認む
仍て政府は速かに米穀等輸入の實現を圖り國民をして不安なからしむる樣萬全の方途を講ずべし
右決議す
と云ふのでございます、只今我が國に取りまして食糧の問題が有らゆる事の基底に於きまして最も大事なことであり、之に關しまして朝野共に深き關心を持つて居ることは皆さん御承知の通りでございまして、當貴族院と致しましても、曩に食糧調査會に於きまして、前總理宮殿下、近衞國務大臣、千石農林大臣等に此の點に關しまして十分の、又速かなる御施策のあらむことを要望を致し、又現内閣に對しましても、松村農林大臣の御來會を得まして、種々御抱負を伺つた上に、十分の御努力を希望を致して置いた次第であります、我が國の食糧問題が昭和十五年を劃期と致しまして、長き戰爭の結果、次第に憂ふべき方向を辿つて參り、遂に十八年度からは雜穀、芋類等を混食をすると云ふことに依存するの度を増しまして、十九年に入りましては滿鮮穀物の國内搬入が誠に十分なるを得ないやうな状態になり、昭和二十米穀年度に入りましては、其の困難が愈愈累加致しまして、多大なる不足額を如何とも爲し難いやうなことに相成りまして、遂に榮養上極めて遺憾の措置ではありまするが、米穀配給量の一割減を斷行することに依つて、端境期迄辛うじて經過するを得るやうな状態に立到つたのであります、而して其の間國情は急轉を致しまして、遂に誠に慘澹たる敗戰の終結と相成り、加之本州の米穀の收穫量は第二囘豫想の示す所に依りますと云ふと、約四千三百萬石と報ぜられて居るのでありまして、所謂平年作よりも二千萬石の大減收を見、世間では三十六年振りの大凶作であると稱するに至つたのであります、然らば麥は如何であつたかと顧みますると云ふと、收穫二千萬石、生産目標に達すべく努力を致したのでありまするが、肥料の不足、地力の衰弱等、誠に累年の結果が目標に達せざること一千萬石と云ふ結果になつて居るのであります、甘藷は如何であるかと云ふと十三億貫の生産でありまして、是非共達したいと云ふことで、政府の努めました目標に達せざること七億貫に達して居るやうな譯であります、而も是等の食糧の不足を補ふべく國外から輸入を致さうと致しましても、又朝鮮に於きましては稀に見る大豐作であると云ふことを耳に致しましても、之を自由に持つて來ることの出來ない状態に置かれつつあるのが我が國の現状であります、斯樣な事情でありまして、秋に入り新米が穫れるやうになりましても、斯樣な事情の爲に、榮養上誠に遺憾な措置である已むを得ざるに出でた配給量の一割減と云ふこと、之を復舊すること出來ざる状態で今日迄經過して居るのであります、其の爲に、都會に於きましては、所謂榮養失調症が續出を致し、之に伴ふ各種の病氣に惱む人々が多數を算するに至り、遂に死亡をする者も少くないのであります、而して此の儘に經過して參りましたならば、巷に餓死者を續いて出だすと云ふ誠に悲慘なる不祥事が發生致さないとは言へない状態に立到つて居るのであります、今日此の恐怖は我が國民の食事を脅かして居るので、而して明日の運命に付て國民の心を極めて暗からしめて居るのであります、斯くの如き食糧事情が若し一度其の措置を誤りましたならば、此の戰敗國を内部から更に亡國の奈落に陷れることのなきを保し難いと考へるのでありまして、誠に寒心に堪へない次第であります、茲に於きまして、政府も、生産者も、消費者も、國内全部が一致を致しまして、能く此の困難極る食糧事情を辨へて、それぞれの方面に於て速かにそれぞれがやり得る有らゆる手段を盡さなければ、國は混亂滅亡に至るなきを保せないのであります、此の爲に私は農民に課せられたる誠に不作の米收、米の收穫に對して重い荷物である所の三千萬石の供出に付きまして、何としても是は出さなければ相成らぬと云ふことを説いて廻つて居つたのであります、北陸の諸所、東海の方面、東北の方面等に廻りまして、私は農民に對しまして、農民の爲すべきことは、此の際諸君の國を思ふの誠意と、諸君の鍬とが國を救ひ飢を凌がしめるのであるから、是非出して貰ひたい、戰爭終末に際しまして、色々な諸君の感觸を害することがあつたかも知れぬ、戰時中に於ける無理と云ふものが諸君の供出を、或はこだはらせるやうなことになつたかも知れないが、最早只今はさう云ふことにこだはつて居る時ではない、又自由の思想が今日入つたと云うて、此の非常なる危機に於て、諸君の米が、諸君が作つた物だから自由勝手になるものであると云ふやうなことを考へたならば、此の危急の場合、それは許すべからざることである、諸君には諸君の保有米と云ふものを國家は認めて居るが、社會も之を敢て異としない、と云ふ所以は、それは諸君が作つた、諸君の物であるからと云ふのではなくして、寧ろ次の收穫を作るのになければならないものであり、次の收穫を擧げて貰ふのは諸君に御願をする以外に、願ふ人がないから之を認めて居るのであるから、其の餘の物は出來るだけ供出を致して國を救つて戴きたい、今日勝つ爲の供出と云ふことは、既にもう戰敗に陷つて理由を失つて居ることは當然であるが、それ所ではない、國を亡さない爲に出して戴きたいのであると云ふことを申して廻つて居るのであります、私は由來一國の食糧はどうしても、如何なる無理をやつても、獨立をするだけの自給力を持たなければならないと固く信じて居る者でありまするが故に、太平の際に於て誠に安價なる食糧の輸入、移入と云ふことに俟てば宜しい、困難なる國内生産に力を入れなくて宜しいと云ふ御説に對しては頑強に反對をして居つた者であります、今日の決議案に對しまして、憂を同じうして居る院内の諸君が、私をして提案者たらしめ、私を此の壇上に強ひて送つて、其の自給論者をして、此の際は何と申しましても、最早殘つた方法はないから、聯合軍最高司令部に政府を督勵をして御願をして、國外より食糧の輸入を速かに實現をして貰ひたいと云ふことを、政府に要望する決議案の説明に起たしめたのは、其の自給論者さへも、此の際は輸入の必要と云ふものを痛感して居る時だと云ふことを表明させたい爲であつたらうと私は信ずるのであります、私は誠に食糧の點に於ては強い自給論者でござりますが、此の際農民は出來るだけの物を出す、消費者は何としても我慢をする、國外からの輸入は是は政府の御發動を俟つ以外に方法はないのでありまして、政府より是非最高司令部に對して委曲を盡し、必要を強調爲されまして、速かに輸入の實現を國民に示して、社會の安定を速かに期せられたいのであります、前内閣は本年の米の收穫を五千萬石と推定を致して、其の結果生ずる所の不足填補の爲に、三百萬「トン」の輸入に付て最高司令部に懇請をされたのでありました、之に對しまして、十月に於て略略それに關しまする方針の明示があつて、國内に已むを得ざる分だけと云ふものは入れることの大體の同意があつたやうであります、併し是の爲には國内爲すべきことは總て食糧供給上爲して、其の上で要望を致すべきである、正に當然のことであります、非常に困難ではあらうが、無論輸入食糧に對する代金の支拂に付ても、輸送に付ても十分に準備を致すべきである、是亦無論のことであります、其の下に前内閣は色々努められたやうでありますが、實現を見なかつたのであります、現内閣に於かれましては、詳細なる調査と、國内に施すべき食糧供給上の手段は略略著手されたやうに存じます、併しながら其の國内食糧供給に付ての諸策は、手を著けられたと云ふだけで、私は遺憾ながら其の實行に付て、速度の極めて速かならざることを遺憾とするものであります、現内閣は食糧の重大性を各閣僚皆口を開けば仰しやつて居ります、文部大臣は文部大臣、商工大臣は商工大臣、石炭は最も緊急な必要であるが、それの増産には第一に食糧だ、近い新聞を拜見致しましても、炭礦勞務者の爲に六合の配給をする、其の家族の爲に三合三勺の配給をする、其の爲に必要なる朝鮮米の十萬「トン」の輸入は、是は特に別に速かに行ふと云ふ位、食糧問題の重要性を能く御承知下さつて居るのでありますが、時に其の御認識が實際の上に於て稍稍遺憾を感ずるやうな事實のあるのを殘念に思つて居るのであります、事例は申上げませぬが、どうぞ十分に此の點に關して閣僚諸公の一體となつて重大問題だと云ふことを、しつかり御考になつて十分の御努力が願ひたいのであります、新日本の建設と云ふことは大事なことでありまするが、之に發足するのには、先づ當面する所の食糧の危機を切抜けなければ、そこには發足が出來ないと思ひます、「ポツダム」宣言は我が民族を滅亡せしめないことを精神とするものであり、米國の如き立派なる民主國は、自由と共に公平、友愛の念に滿ちたる國であると思ひます、議會の直前に最高司令部から政府の得られた所の一般的輸入認容の大方針の指令は、之を適切なる時機に速かに實現するの努力を致されて、其の行爲を國民に實際に御示になることに依つて、正に報いられることであらうと、私は考へるのであります、私は農業者諸君に、自由と云ふことと同時に友愛、松村農林大臣の屡屡繰返される同胞愛と云ふものがなければ、本當の自由ではないと云ふことを申して居る、國際的の友愛が戰敗國に對しても、行はれ得るものと私は確信するのでありまするが故に、議會直前の一般的許容と云ふことを速かに實現して、農林大臣が年内に實物の輸入になるやうに、速かに取計らひたいと云ふ御言葉を新聞紙上に拜して、日々其の實際に入つたと云ふことの報知を、待ち焦れて居るのでありますが、未だ其の報に接しないと云ふことを、誠に殘念に思つて居ります、どうぞ此の點に關しまして、只今以上の御努力を閣僚御一致の固い團結を以て、速かに實現に相成つて、帝國の將來に對して不安なからしめ、進んで新日本建設の第一歩を速かに歩き出すやうにして戴きたいと考へるのであります、どうぞ決議案の趣旨は以上の如きものでございまするが故に、滿場の諸君の御贊同を御願ひ致す次第でございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=11
-
012・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ、是より採決を致します、本決議案に贊成の諸君の起立を請ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=12
-
013・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 總員起立と認めます、即ち決議案は全會一致を以て可決せられました、松村農林大臣
〔國務大臣松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=13
-
014・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 只今の御決議に對し政府の決意を申上げたいと存じます、只今御説明のありました通り、食糧事情の窮迫は、一歩誤れば日本の國の滅亡、民族の衰廢に關することでございまして、眞に憂慮に堪へないのでございます、勿論今日迄國を擧げて此の問題の解決に努めましたが、天我が國に幸ひ致しませぬで、此の敗戰の其の年に、此の凶作を以て致しまして、今日のやうな状態を見るに至りましたことは、誠に憂慮に堪へざる所でございます、之に對處致しまするには先づ國内に於きまして、有らゆる手段を講じて、國民も政府も共に盡すべき所は現に盡して居ります、此のやうに盡して居りますけれども、何と申しましても、此の食糧の自給は國民が如何に現在の物を有らゆる方法を以て努力を致しましても、此の食糧年度を繋ぐことの出來ませぬことは是は申す迄もないことでありまして、今後の食糧の問題の解決は、一に懸つて聨合國側の好意ある輸入の許可を得るに非ざれば解決し得ない所と存ずるのでございます、之に付きまして、今日迄幸に輸入の原則は許されまして、さうして其の數量、其の時期等の問題に付きまして、一日も早く具體的の解決を得たいものと希望し、努力を致して居る次第でございます、而も其の數量は只今石黒君の御説明のありました通りに、此のやうな凶作を未だ豫期せざる前内閣の當時に、推定せられました推算から割出されて三百萬「トン」と致したのでございまして、今日に至りましては更に收穫の減少を見た以上、此の數量は日本の食糧を繋ぐ最低のものであることは申す迄もありませぬので、此の最低の數量を是非聯合國に於て要請を許し、さうして最も適當な時に之を國内に運ぶことが出來ますやうに、今日苦心、努力致して居るやうな次第でございます、政府と致しましては、今日迄も出來るだけの努力を致しまして、政府全體一丸となつて此の解決に努力を致して參つて居るのでございますが、尚今後は更に本決議の御趣旨に從ひまして一層の努力を致し、政府全體と致して此の問題の速かなる解決に努力を致す決意でございます、是だけ政府の考ふる所を申上げたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=14
-
015・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 午後三時半迄休憩を致します
午後二時三十一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=15
-
016・会議録情報4
――――◇―――――
午後三時四十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=16
-
017・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告を致させます
〔寺光書記官朗讀〕
本日刑事訴訟法中改正法律案特別委員會に於て當選したる正副委員長の氏名左の如し
委員長 子爵秋月種英君
副委員長 男爵近藤滋彌君
本日左の質問主意書を政府に轉送せり
在外同胞救援に關する質問主意書(關屋貞三郎君提出)
本日衆議院より左の政府提出案を受領せり
鹽專賣法中改正法律案
昭和二十年法律第十八號中改正法律案
貿易資金設置に關する法律案
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=17
-
018・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 休憩前に引續き會議を開きます、衆議院より送付せられました鹽專賣法中改正法律案、昭和二十年法律第十八號中改正法律案及び貿易資金設置に關する法律案を此の際議事日程に追加し、一括して第一讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=18
-
019・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、澁澤大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=19
-
020・会議録情報5
━━━━━━━━━━━━━
鹽專賣法中改正法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議員議長 島田俊雄
貴族院議長公爵徳川圀順殿
…………………………………
鹽專賣法中改正法律案鹽專賣法中左の通改正す
第二十四條の二 鹽の需給調整上特に必要あるときは第四條、第五條、第七條、第九條、第十一條第二項、第十二條、第十四條第一項及第十八條第二項(第九條及第十一條第二項に付ては第四十條及第四十條の二に於て、第十二條に付ては第四十條の二に於て準用する場合を含む)の規定に拘らす勅令を以て別段の定を爲すことを得
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
━━━━━━━━━━━━━
昭和二十年法律第十八號中改正法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法第五十六條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵徳川圀順殿
…………………………………
昭和二十年法律第十八號中改正法律案
昭和二十年法律第十八號中左の通改正す
第一條中「百十二億千三百八十萬圓」を「百十四億千九百二十萬圓」に改む
附 則
本法は公布の日より之を施行す
…………………………………
參 照
昭和二十年法律第十八號は昭和二十年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する法律なり
━━━━━━━━━━━━━
貿易資金設置に關する法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議員法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵徳川圀順殿
…………………………………
貿易資金設置に關する法律案
第一條 政府の行ふ貿易の決濟の爲貿易資金を置く
第二條 本資金は五千萬圓とし爲替交易調整特別會計昭和十九年度の決算上の剩餘の中を以て之に充つ
第三條 本資金に不足を生じたるときは政府は爲替交易調整特別會計の負擔に於て借入金を爲し一時之を補足することを得
前項の借入金は遲くとも翌年度に於て之を償還すべし
政府は第一項の規定に依る借入金に代へ當該年度内に限り國庫餘裕金を繰替使用することを得
第四條 本資金は之を貿易物資、外貨又は勅令の定むるものに運用することを得
木資金の運用に關する事務は大藏大臣の定むる所に依り日本銀行をして之を取扱はしむ
第五條 本資金の運用に伴ふ資金運用利殖金及附屬雜收入竝に本資金の運用に伴ふ事務取扱費、資金運用手數料、附屬諸費及資金運用損失金は之を爲替交易調整特別會計に屬せしむ
爲替交易調整特別會計に於て前項の規定に依り屬せしめられたる經費を支辨する爲必要あるときは政府は同會計の負擔に於て借入金を爲すことを得
第六條 本資金に屬する資産にして滅失し又は價格の減損を生じたるものあるときは爲替交易調整特別會計設置等爲替交易調整法第四條の規定に拘らず爲替交易調整特別會計の決算上生じたる剩餘を以て之を償却し又は資金より之を償却すべし
附 則
本法は公布の日より之を施行す
━━━━━━━━━━━━━
(國務大臣子爵澁澤敬三君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=20
-
021・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今議題となりました鹽專賣法中改正法律案外二件に付きまして、提案の理由を御説明致します、先づ鹽專賣法中改正法律案に付、御説明を致します、終戰後鹽の需給は海外よりの輸入の杜絶、國内生産の減退、殊に先般の風水害に依る鹽田被害に伴ふ生産の激減に依りまして、極度に逼迫し、國民生活の確保上相當憂慮すべき状態に立到つて居るのでございます、斯かる事態に對處し、國内に於きます鹽の増産及び之が輸入に付きましては特段の努力を致して居るのであります、其の鹽増産計畫の一つとして、戰時行政特別法に基きまして、鹽專賣法の特例として、實施して參りました所謂自給製鹽に付て、鹽專賣法自體に之が實施に必要なる法的措置を講ずると共に、現在著しく低廉に失せる鹽の價格の引上げを行ひ、以て鹽の生産意慾を昂揚し、一層自給製鹽の普及を圖り、又鹽の效率的利用と消費節約とを更に徹底せしめ、併せて國庫負擔の輕減に資することは現下最も緊要なる措置でありますから、茲に本法律案を提出した次第でございます、次に昭和二十年法律第十八號中改正法律案に付、御説明を申上げます、今囘提出致しました昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案第二號に計上しました經費の財源と致しましては、同經費相當額の公債發行を要するのでございますが、之が爲には同法第一條に規定しまする公債の發行限度を増額するの必要がありまするので、本法律案を提出した次第でございます、次に貿易資金設置に關する法律案に付、御説明を申上げます、今囘聯合國最高司令官の指示に基きまして、政府に於きまして物資の輸出及び輸入を行ふこととなりました處、之が運營に付きましては、新たに輸出及び輸入の決濟に關する資金を設け、輸出物資の買入及び輸入物資の買入等を此の資金の運用として行ひ、之に伴つて生ずる歳入歳出は、之を爲替交易調整特別會計の所屬と致し、貿易の圓滑なる運營に萬遺漏なきを期するを適當と認めまして、茲に本法律案を提出致しました次第でございます、以上三件の法律案に付きましては、何卒御審議の上速かに協贊を與へられむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=21
-
022・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました鹽專賣法中改正法律案外二件の特別委員の數を十九名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=22
-
023・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=23
-
024・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 戸澤子爵の動議に御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=24
-
025・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔寺光書記官朗讀〕
鹽專賣法中改正法律案外二件特別委員
侯爵 小松輝久君 侯爵東郷彪君
伯爵 山本清君 男爵白根松介君
子爵 高橋是賢君 子爵舟橋清賢君
子爵 綾小路護君 男爵周布兼道君
津島壽一君 男爵伊藤一郎君
齋藤樹君 吉野信次君
男爵 鶴殿家勝君 黒田英雄君
澤田牛麿君 諸橋久太郎君
平沼亮三君 中山太一君
飯塚知信君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=25
-
026・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 四時迄休憩を致します
午後三時五十一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=26
-
027・会議録情報6
――――◇―――――
午後四時三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=27
-
028・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告致させます
〔寺光書記官朗讀〕
本日委員長より左の報告書を提出せり
衆議院議員選擧法中改正法律案修正報告書
昭和十三年法律第八十四號中改正法律案可決報告書
昭和二十年勅令第五百三十七號(承諾を求むる件)可決報告書
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=28
-
029・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 休憩前に引續き會議を開きます、此の際議事日程に追加し、衆議院議員選擧法中改正法律案及昭和十三年法律第八十四號中改正法律案を一括して第一讀會の續を開き、委員長の報告を求むることに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=29
-
030・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、衆議院議員選擧法中改正法律案に付委員會に於て修正がございます、印刷を致して配付致す筈でありますが、其の時がございませぬから、修正の箇所を書記官をして朗讀致させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=30
-
031・会議録情報7
━━━━━━━━━━━━━
衆議院議員選擧法中改正法律案
右別册の通修正議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十四日
委員長 伯爵林博太郎
貴族院議長公爵徳川圀順殿
━━━━━━━━━━━━━
〔河野書記官朗讀〕
「第二十七條第一項」中「議員候補者」の次に「一人又は數人」を加へ
「投函すべし」の次に「一選擧すべき議員の數三人以下の選擧區に於ては一人」を加へ
同項第一號の「一」を「二」と改め「議員の數」の次に「四人以上」を加へ
第二號の「二」を「三」に改め
「三人以内」の次に『第五十二條第一項中「左の投票」を「第二十七條第一項第一號の規定の適用ある選擧區に於ける投票にして左に掲ぐるもの」に改む』を加ふ
「第五十二條」を「第五十二條の二」と改め「左に掲ぐる」の前に「第二十七條第一項第二號又は第三號の規定の適用ある選擧區に於ける投票(以下連記投票と稱す)にして」を加へ「投票」を「もの」と改む
第二項「左に掲ぐる」前に「連記投票中の」を加へ
同項第一號中「一」の次に「第二十七條第二號又は第三號の規定に依り」を加ふ
「第五十二條の二」を「第五十二條の三」と改む
附則中「選擧の方法其の他」を削る
━━━━━━━━━━━━━
昭和十三年法律第八十四號中改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十四日
委員長 伯爵林博太郎
貴族院議長公爵徳川圀順殿
━━━━━━━━━━━━━
〔伯爵林博太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=31
-
032・林博太郎
○伯爵林博太郎君 只今日程に上りました衆議院議員選擧法中改正法律案及び昭和十三年法律第八十四號中改正法律案、右兩案の特別委員會の經過竝に結果を御報告致します、衆議院議員選擧法中改正法律案の骨子に付きましては大體三點あります、選擧權、被選擧權の擴張、選擧權の年齡を二十五年より二十年に、被選擧權の年齡を三十年から二十五年にしたのであります、さうして女子も同一のことに相成ります、第二には大選擧區の制度の採用であります、之に伴ひまして選擧すべき議員の數六人以上の選擧區では制限連記に改めたいと云ふのであります、大選擧區に於きましては、比例代表制が窮極の理想であるやうでありますが、現在の選擧人の政治訓練の程度から見ましたならば、まだ今日は時期尚早であると考へたので制限連記の方法にしたのであると云ふことであります、議員の數五人以下の選擧區では單記になつて居ります、勿論是は政府案であります、六人以上十人以下の所では二人以内、十一人以上の所では三人以内の議員候補者の氏名を記載して投票を爲し得ることとなつて居ります、第三には選擧運動取締規定の徹底的簡素化であります、戸別訪問の禁止運動費の制限等必要の規定だけは存置することと致しまして、要するに選擧運動の明朗闊達性を期待すると云ふことであります、之に伴ふ選擧運動費用の改正、即ち運動費制限額超過支出の罰則を撤廢致しまして、當選無效の訴訟だけを殘すことになつたのであります、選擧運動の費用の不法支出の罪に付きましては、罰金刑を加へ、禁錮刑との選擇刑と致したのであります、餘程緩和されて居るのであります、以上は骨子でありますが、之に伴ひまして有權者が今度年齡が下りますから激増するのでありますが、郡市の區域を開票區とする原則を改めまして、開票區の區域を原則として、市町村の區域に依るものとなつたのであります、開票事務の圓滑敏速を期する爲であります、大選擧制になりますので、補闕選擧は議員の闕員數が選擧區内の議員の定數の四分の一即ち其の數が二人に滿たざる時は二人に達する迄行はない、從つて定數八人迄の選擧區では二人、九人以上十二人迄の所では三人と云ふことになります、十三人以上の所では四人迄、補闕選擧を行はない、是等が主なことであります、是が今に又修正の時に物を言ふのであります、それから附則、朝鮮人、臺灣人は今度講和條約で國籍が決定する迄は、兎に角帝國の臣民でありますから、選擧權を奪ふと云ふ譯には行かない、併しながら此の場合其の行使を停止すると云ふことは當然のことであるから、其のことになつたのであります、で昭和二十年十二月二十日以後、二十一年十二月十九日迄の選擧には、刑餘者、禁治産者の如き選擧權なき者、朝鮮人、臺灣人の如き選擧權を停止された者が、若し誤つて選擧權名簿の上に載せられまして、投票した場合、選擧訴訟、當選訴訟を提起することを認めないことになりました、沖繩縣、千島等特別の事情ある地域では勅令を以て指定するものは、勅令を以て定める迄は選擧は行はないと云ふことになつたのであります、それから昭和十三年法律第八十四號中改正法律案の趣旨は陸海軍人の現役中の者、及び召集中の者は孰れも選擧權を持つて居りませぬ、選擧人名簿に登録することを得ないが、現行法でも召集中の者が解除されれば、臨時に選擧人名簿を作りまして、其の選擧權行使に支障なき措置が講ぜられて居るのであります、それで現役を退いた軍人なり、召集解除者を同樣にすることになりました、又外國、外地から歸還する邦人にも、歸還後には選擧人名簿を作る途を開くことになつたのであります、そこで只今のは政府案でありますが、衆議院の修正がこちらに參つたのでありますから、其の主な點だけを申上げて置かなければなりませぬ、立候補屆出前の選擧運動の禁止をすると云ふこと、氣勢を張る行爲、不法行爲を煽動する行爲は、現行法通り禁止をすると云ふこと、事務所の制限を存置して原則として一箇所、命令の定むる所に依り五箇所迄増設を認める、選擧當日投票所の入口から三丁以内に設けないと云ふことも現行法通りにする、休憩所其の他之に類似の設備の設置は禁止する、選擧公報の發行は内務省の方針通りとし、公報以外の候補者の文書の頒布は禁止をする、無料郵便は今囘に限り禁止をする、之に代へまして公營に依り各候補者に付、同一條件を以て新聞廣告をすること、立看板及び立候補告知の爲の貼札は禁止をする、公營に依り各市町村適當の場所に連名掲示をすること、それから演説會の告示は候補者開催の分も、第三者の分も貼札のみを用ひ、貼札の數は限定しないが、其の大きさは新聞紙一頁大とすること、事後の挨拶行爲は貼札二百枚を限つて行ひ、挨拶文書頒布は禁止をする、自筆郵送のみとすること、制限連記制は、定員十人以下は二名連記、十一名以上は三名連記とする、之が又後で修正案の時に問題になります、沖繩の選擧方法は是は勅令に依つて定めると云ふことになつたのであります、それで特別委員會は去る十二日午後一時から今日迄開會を致しました次第であります、先づ質問應答に付て申上げます、時間がありませぬから是はほんの一部分だけを申上げなくちやならないことを遺憾と致します、抑抑此の衆議院の制度を改革すること、選擧法を改正すると云ふことになると云ふと、是は貴衆兩院と云ふものが一貫して考へらるべきものであつて、衆議院だけでは片手落であるのだ、仍て之に關聯して貴族院の改革と云ふことも考へなければならないのである、之に付て如何なる考を持つて居るか、又樞密院の改革に付て如何なる考を持つて居るか、色々の方面に付て深く質問があつたのであります、之に對して政府より色々説明がありましたのであります、それから今度は總てが民主化をしなければならない、總て自由にしなければならないと云ふ點から見て、衆議院の改革が、選擧法の改正が、自由主義、民主主義的になるならば、今日の官僚政治、官界に於ても餘程自由の空氣、民主的空氣を入れて行かなくちやならないのである、其の點に付ての質問應答がありました、それから選擧法の改正に付て今度の主なる點は、年齢が下つたと云ふことと、女子に參政權を與へたと云ふことでありますので、女子の參政權に付きましても質問も隨分ありました、女子は今迄は殆どもう公民的の知識がなくて、選擧なぞと云ふことに付ては、全く無頓著であるのだ、此の際女子を廣く斯くの如く二十歳以上選擧權を持たせることになつて、果して之が皆選擧場へ行つて選擧することになるかどうか甚だ疑はしい、男子もまだ本當の立憲的の訓練迄達して居らない結果として、之にも多少の棄權する者も起ると思ふし、結局五十「パーセント」以下に或は下りはしないか、さうなつて來ては日本國民の半分だけしか選擧をしないし、或はそれより少くなると云ふことがあつては甚だ面白くないのであります、是等に付ての考はどうであるか、政府は、最近に於て特に女子に付きましても、男子に代つて民間の仕事もして居るし、常識も發達して居るし、色々此の政治的方面にも關心を持つて來たのであるから、以前の如く考へるのは間違つて居るので、之に付ては相當に向上して居ると思ふから、五十「パーセント」なんと云ふことはないと思ふし、又ないやうに…甚だ其の期日は眞際に迫つて少いのであるけれども、公民啓發運動と云ふやうなものを繼續して行つて、大いに教養を高めて行きたいと思ふのである、それに關聯して選擧の今迄の腐敗の状況、それから買收等のことが行はれたと云ふことに付ての質問應答がありまして、どうしても肅正と云ふことに付て十分に考慮をしなければならない、又政府はそれにも同意せられまして、出來るだけの努力をすると云ふことであります、それから男子もでありますが、女子は特に政治的の訓練が足りない、地方に於て、先づ村會とか縣會とか云ふ所は女子を出して、さうしてさう云ふ所で以て政治的の訓練を經て、それから衆議院に出ると云ふのが順序であるのだ、然るに突如として衆議院に女子の送るなどと云ふのはどうも尚早ではないかと云ふ意見がでましたのでありますが、之も矢張り公民啓發運動等に依りまして、訓練を加へて行かうと云ふことの答辯であります、それから今度は二萬五千圓と云ふ所が選擧の運動費の限界でありますが、そんなものをいつそなくしてしまつて、幾らでも使へることにしたらどうだらう、幾らでも使へることにしたとしても、今日の「インフレ」の時代と雖も個人の財産に限りがあるから、そんなに無暗に濫費すると云ふ弊害はないと思ふ、こんな妙な二萬五千圓と云ふ限界がをかしいし、恐らく今日では二萬五千圓位では選擧は出來ないのだ、孰れも超過して選擧に當選するのではないかと思ふが、どうして斯う云ふものが決められたのであるかと云ふことの質問應答があつたのであります、併し是は形式の上から見ても、何とか何處かで決めなければならないから、二萬五千圓が適當なものだと思つて之を決めたのである、そこで今度は此の犯罪や罰則のことが非常に自由になり緩和されたのであるが、若し二萬五千圓以上使つたと云ふ場合に於て、それは誰が發見し、誰が調査して、誰が告發するのだ、さう云ふ規定が一向ないのであるが、其の點はどうもどうして宜いか分らないがどうかと云ふ質問がありました、それに對しましては、是は成る程それを調査すると云ふことはむつかしいのであつて、困難であるが、それは矢張り之を訴へる原告が能く調査をして、先方を訴へると云ふことで行かなければ仕方がないのであると云ふことであります、又二萬五千圓と云ふことを原則として置けば、あの男は三萬圓使つたとか五萬圓使つたらうと云ふやうな疑が起ると、それで訴訟でも起されると、其の爲に反對派の人が選擧に出られなくなつて來ると一種の干渉になると思ふが、さう云ふことが行れると思ふが、さう云ふやうなことに付ての質問應答があつたのであります、其の他澤山質問應答がありましたが、まあ其の邊で一つ割愛しようと思ひます、本日午後に討論に入りました、此處で修正案が發案されまして、それに贊成があつて議題となつたのであります、先程も朗讀をされたのでありますが、之も一應御説明を申したいと思ひます、第二十七條の衆議院の修正、制限連記の修正に付きまして政府の是は原案通りとし、同條第一項第一五號の「五人以下」を「三人以下」に、第二號の「六人以上」を「四人以上」に改むること、第五十二條、第五十二條の二、第五十二條の三の衆議院の修正、投票の效力決定の修正、政府の原案の如く改む、附則第十項の衆議院の修正、沖繩縣に關する修正に付き政府原案とすること、斯う云ふのであります、是だけではちよつと御分りにならないと思ひますから説明をしますが、此の修正案が出た原因は、補闕選擧、再選擧の方から發見されたのであります、補闕選擧と云ふものはどうしても起るのでありますが、其の闕員が定員の四分の一になるのを待つて行ふと云ふことになつて居りますが、現在の選擧區に付きまして調べて見ますと云ふと、闕員が二人になつたらば選擧を行ふと云ふものが二十五區あります、三人になつたらば選擧を行ふと云ふものが二十二區ある、四人に達したならば選擧を行ふと云ふものが七區あるのでございます、處で制限連記に於きまして十人以下も全部二人の連記にすると云ふことに、衆議院に於て修正をしたのでありますが、それが此の場合に、例へば二人の場合に於きまして、二人の連記制を使へると云ふことになりますから、さうすると云ふと、多數黨が二人書くと皆自分の黨派ばかりの人が出ることになる、三人になつた時に二人の連記でやりましても三人の中二人を壟斷すると云ふことになりますから、矢張り多数黨が非常に有益なことになつて偏つてしまふと云ふやうな訳でありまして、どうも制限連記制と云ふことになると公平に行かない、從つて是は單記にした方が適當であると云ふことにどうしても是はならなければならないのであります、尚又再選擧の場合に行くと尚それが明瞭に分るのであります、再選擧の場合に於きましては、多くは一人の議員を選擧するのでありますが、是は御承知の通りであります、一人の選擧をする時に、十人以下の場合は全部二人の連記を以てやると云ふことに今衆議院の修正案でなつて居るのであります、それですから唯一人の再選擧をやる場合に二名の連記をすると云ふことは是は出來もしないことであるし、誠に不合理なことであります、斯う云ふことを考へて見ると、矢張り數の少い所では單記にしなければどうしても理窟が合はないと云ふことが發見されたのであります、即ち之に依りまして先程も申しました沖繩の場合もありますが、沖繩の場合に於ては二人でありますが、其の場合に二人の連記と云ふことは完全連記になつて是も不合理である、仍て衆議院に於ては、それならば勅令に委任して其の方法は別に之を定めると云ふことにしてしまつたのであります、今度は又此の補闕選擧竝に再選擧の場合を考へて見ると、なかなか沖繩所ぢやない、外にもさう云ふ場合が起つて來るのは當然でありますから、只今申上げました通り、一人の再選擧に對しまして二人連記をすると云ふやうなことを其の儘規定にすると云ふことは、甚だ不合理なことであると云ふことは明瞭なことであります、そこで只今申しました制限連記制の修正案と云ふものはそれを直すことが趣旨でありまして、左樣に改めます修正案が出たのであります、それから討論に入りましたのでありますが、其の修正案以外に今度は意見の陳述がありました、先づ贊成意見を述べます、此の選擧法は新日本建設の基本となるべき自由主義、民主主義の發揮の爲に出たものである、で衆議院は國民大多數の代表者を集めまして、力のある政治的立法機關としなければならない、大衆の政治的參與の根柢を作らなければならない、即ち國民の各自の考へ方が此の際民主的に一變するやうにしなければならない、自己の自發的責任でやるやうに獎勵をしなければならぬと思ふ、從つて政治公民教育の徹底を圖つて自分に負荷された所の國家に對する責任に目覺めるやうに努力をしなければならない、是は選擧法案は内務省の管轄であるにしましても、宜しく内務省だけでなく、文教の府に於ても、財政の府に於ても悉く政府が一丸となつて此の方面に努力をして貰ひたい、其の意味に於て本案に贊成する、又他の一委員より、衆議院の選擧法の改正を爲す以上は、貴族院の方面に於ける改正もしなければならない、無論立法的の立場から考へて見ても衆議院が中心であります、さうして貴族院が之に對して應援をしなければならない、積極的に衆議院が活動すれば、又それが行き過ぎる場合があれば、貴族院は宜しくそれに對して「ブレーキ」を掛けなければならない、「ブレーキ」を掛けると云ふことが必要であるが、必すしも是は邪魔をすると云ふこととは違ふのである、嘗て我が國に於ては、元は官僚と貴族院が結託をして、兎角衆議院に對して邪魔をした時代があつたのは明かなことである、若しも貴族院の改革の仕方が其の當を得ないと云ふと、再び衆議院に對して邪魔をするやうな機會が來ると思ふ、此の點に十分に政府に於ては注意をして貰ひたい、それから第二には、立憲政治の確立の爲には、寧ろ小選擧區から始めた方が宜いと思ふ、高きに登るには低きよりの理窟でありまして、其の點を大いに考へて行かなければならない、先づ小選擧區で現實にやり始めて行くことの方が宜いと思ふ、けれども此の案は非常に急を要することであるから贊成はするが、此の意見を添へて贊成をすると云ふことであります、それから希望が二つ出て居ります、此の案は劃期的のものである、さうして公明正大を期すると云ふ點に於ては、大いに政府に對して敬意を表するものである、併しながら政府の苦心は、此の際咄嗟に之を實行するのであるからして、或は完全に之を達成することはなかなか困難であると考へる、但し此の法案は何しろ今日之を行ふことが急務であるから、どうか政府に於ては非常な努力を以て完璧を期するやうにして貰ひたい、それから次に又、女子は色色放つて置きますと云ふと、兎角五十「パーセント」以下に選擧權の行使がなりやしないかと云ふことが一般に氣遣はれて居るが、それは何を言つて居るかと言へば、即ち女子の參政權と云ふものを行はせるのは尚早であると云ふことを裏書して居るやうに思ふ、併し必要は必要であるのだから、どうか當局に於ては、出來るだけ女子が棄權をしないやうに防止すると云ふこと、選擧權を貰つたのであるから、此の權利を積極的に健全に行使をするやうに努力をして貰ひたい、此の希望を持つて居る、又一委員より、女子の地位の向上が伴はなければ、有權者になつても意味を成さないのである、色々の方面から是は考へられる、民法、刑法の内容の中に於きましても、女子の權利の向上に付て立法の上に考へて貰はなければならない、それから又文教の上に於きまして、女子教育を向上させて、さうして此の政治的方面に於ても女子の天職を十分に行ひ得るやうにして貰ひたいと云ふ希望を述べると云ふことであります、それから此の選擧法改正案の採決に入りまして、修正案の採決を致しました、修正案の採決は多數を以て可決をされたのであります、次で此の修正の點を除き衆議院送付案に付きまして採決を致しましたる處、全會一致を以て可決に相成りました次第であります、更に昭和十三年法律第八十四號中改正法律案、之を審議を致しました、質問討論を經て採決致しましたる處、多數を以て可決に相成りました次第であります、以上を以て報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=32
-
033・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 質疑の通告がございます、明石男爵
〔男爵明石元長君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=33
-
034・明石元長
○男爵明石元長君 私は甚だ時間切迫の際恐縮でございますが、若干の時間を頂戴致しまして、只今の議題に關聯し、貴族院改革の問題に付て、政府の所見を伺ひたいと思ふのであります、過日本議場に於きまして小原議員より、同じ問題に付て御質問がございました、即ち政府は貴族院を改革する意思ありや否や、意思ありとすれば其の時期如何、此の二點でございます、而して小原議員の所論は、早急を要する貴族院令の改正と、憲法改正に伴ふ根本的改革の二つの場合を立論せられたのであります、之に對し幤原總理は、政府は貴族院令改正の意思あり、而も其の内容は相當大幅の改正を爲す考である、而して其の時期は次の議會に提案することを豫定して居る、貴族院令の改正と憲法改正との關聯に付ては、孰れが先行するが其の時期の問題は、政治情勢如何に依つて影響されると御答辯になりました、私も亦貴族院の根本的改革を爲すべしとの態度を執る者であります、而して小原議員は現に二つの場合に付て立論せられて居りまして、それから幤原總理は此の二つの關聯を認めて、而も孰れが先行するかと云ふ點を明言せられて居らないのであります、然らば私は、何れにせよ此の問題は憲法に關する重大問題であり、國家統治機構の構成に直接關聯を有する重要の問題であり、それ故に當然政治理念が明確にされなければ解決し得ない種類の問題であると存じます、而して孰れの場合に於ても改正の必要を是認せられて居るのでありまするから、二院制度其のものは之を是認する立場におありになると存じます、然らば今後日本の立憲政治に於て、二院制度を運用せらるる其の政治理念如何、第二院たる貫族院は、如何なる政治理念に依つて運用せらるべきか、此の點に付て御所見を伺ひたいのであります、私も小原議員と同樣、改正の内容に付ては今日御伺を致しませぬ、今申上げました政治理念に付て御伺を致すのであります、以下若干私見を述べまして、質問の趣旨を明かに致したいと存じます、尚私は先輩小原議員の御説を批判致す考は毛頭ございませぬが、議論の立場を明かに致します爲に、自然小原議員の御立場を引用致しますので、此の點豫め御了承願ひます、小原議員は本問題に付て、二つの場合に付て御所論になりました、而してそれは實際論として誠に傾聽すべき含みを以て御述になつたのでありますが、孰れの場合に付ても、民主主義其のものの理解に付ては、深く掘り下げて御述になりませぬでした、貴族院改革は多年の懸案であると同時に、今日の時勢に即應した、即ち民主主義的傾向に即應した改正を爲すべしと御述になつただけであります、私は現在日本の國情と民主主義との關聯を明かにせずして貴族院改革の問題を取扱ふことは、議論の根柢が確立致さないやうな氣が致します、單に民主主義の爲にと云ふ漠然たる態度は危險であるとさへ考へるものであります、そこで私は今後日本の政治が如何にあるべきかと云ふ問題に觸れて見たいと思ふ者であります、むづかしい問題でありまするから極めて抽象的に申上げますが、今日迄の日本全體の組織は固い固い三角形の「コンクリイト」建でありました、之に依つて國權を伸張して參つたのであります、そこに政治がありました、併し今後の形態は大きな固い三角形の「コンクリイト」建は之を崩して、小さな固い三角形の「コンクリイト」建を幾つも列べ、さうして其の上に板を渡し、さうして其の上に國家の尊嚴を奉戴する、即ち我が國民道徳の源泉であり、如何なる時代に於ても我が國民の牢固として抜くべからざる忠誠心の凝結する處、即ち我が皇室が君臨遊ばされ、統一遊ばされる、斯樣な形態が、甚だ抽象的な考のやうでありますが、實は我が國が當面する事態を最も合理的に、又最も現實的に解決する方向ではなからうかと存ずるのであります、世界に於ける民主主義國家「アメリカ」、大英帝國、又「ソ」聯も聯邦組織の傾向を有して居ります、之に對し國土益益狹小となつた我が日本、人情、風俗、經濟の基盤を同じうする所の日本に於て斯樣な傾向に依つて民主主義を實現することは困難であり、國民全體の階級對立に依る闘爭を經るにあらざれば民主主義を實現し難しと、或は左翼の人々は言ふでありませう、併し私は餘りにそれは現實を無視した議論であり、民主主義の實現に當つても民族が持つ東洋的傾向を無視することは出來ないと思ひます、私は此の傾向を東洋本來の傾向である自治、從つて其の發展としての徳治、之に依つて小さな三角形の「コンクリイト」を固め、民主主義を實現し得るものと信ずるのであります、經濟、教育、財政、各般に亙る思ひ切つた、且高度の地方分治、地方自治が日本的民主主義確立の要諦であり、根幹であると存ずるのであります、假に九州地方に其の例を採れば、九州を以て一州となし 之に殆ど獨立國に等しき權限を與へ、現在の官治に代るに純然たる民治を以てすべしと提唱する者であります、而して此の問題は敗戰後の我が日本の國家理想を何處に求むべきかと云ふ問題と深い關聯を有します 是が爲には二つの要素を確認しなければなりませぬ、第一點は、日本は聯合國、特に「アメリカ」の國力に依つて徹底的に敗北したと云ふことであります、日本の幼稚な資本主義に依つて支へられた微弱なる國力が、「アメリカ」の鞏固なる物量科學文明に太刀打することが出來なかつたと云ふことが第一點であります、第二點は、其の結果、「ポツダム」宣言の受諾に依り、民主主義的傾向を助長し、基本的人權の確立を求め、それに依つて終戰の大詔に御示になりましたやうに、萬世に亙り太平を開く所の萬世太平國家を造成しなければならぬと云ふことが第二點であります、第一點と第二點は密接なる關聯を有しますが、結論は第二點にあります、此のことは我が國民が冷嚴に且眞面目に至上命令として努力せねばならぬ所であります、不幸にして將來此の地球上に國際間の對立を生む事態を生ずることありとするも、我が國家は超然として紛爭の圏外に立ち、平和國家の歩みを續けることが即ち國家理想であります、差當つては世界平和の脅威とならざるやう軍國主義を拂拭すると共に、苟且にも世界平和の禍因乃至動因とならざるやう自ら國を治め、以て消極的に世界平和保持の一員となることが絶對に要請せられて居るのであります、飜つて考へまするに、我か日本は明治の御一新に依り鎖國より開國に轉じ、封建制度を打破し、近代國家の態樣を整へると共に、後進國として世界列強に伍し世界の競爭場裡に立つこととなりました、政治上の主義として最も我が國情に適した立憲君主制を採り、一方に萬機公論に決する「デモクラシー」を擴大し、一方に封建時代より遙かに強力な國家主權を確立し、國内統一を完成し、中央集權制の徹底を圖つたのであります、是は獨立國家として理想的な態樣でありました、而して世界競爭場裡に立つ爲の國家理想としては富國強兵主義を採らざるを得なかつたのであります、富國強兵主義の採用は誰の罪でもありませぬ、當時の世界情勢が然らしめたものであります、富國とは即ち資本主義の攝取であり、強兵とは軍國主義の採用であります、富國強兵の思想には其の後色々變遷はありましたが、全體の日本の歩みとしては今次終戰の瞬間に至る迄、其の國家的歩みを續けて參つたのであります、併しながら今次の敗戰に依つて此の富國強兵策は全く茲に終止符を打ちました、此の點が重要であります、即ち戰時中内外より受けたる攻勢に依り、國内の巨大なる産業設備は大なる破壞を受けました、殘餘のものも聯合國より、或は軍國主義拂拭の爲、或は賠償の代償として之が撤去を命ぜられつつあります、尚又巨大な財閥は解體を命ぜられました、富の無限の集積なき所に眞の資本主義は成り立ちませぬ、一方軍國主義は聯合國の攻勢、即ち軍事的敗戰と 陛下の御決斷とに依りまして、軍隊の降伏、完全なる武裝解除となつて崩壞致したのであります、斯くの如くして富國強兵の理想は全く崩壞し盡したのであります、抑抑一國が他國の間に伍し、是と對立し競爭する限り、主權の強力なる確立、中央集權制の徹底は絶對に要請せられるのであります、「アメリカ」の如き大國、「イギリス」の如き政治的傳統を有する國は別としまして、弱小なる後進國が此の競爭場裡に立たむとすれば、勢ひ此の傾向を強めざるを得ないのであります、即ち國家全體として三角形の「コンクリイト」を彌が上にも固め擴大せしめるには、其の中心力を鞏固にし、中央集權を徹底せしめて、ぐいぐい上へ上へと力の凝集せざるを得ないのであります、日本然り、「ナチスドイツ」亦然りであつたのであります、茲に一つの官僚專制政治を生みました、國家社會主義の亞流を掬んで「ナチス」的一黨專制と全く同樣の軍官抱合の官僚專制政治を展開したのであります、日本が日清、日露の戰ひを經て、東亞の安定勢力たる實力を稍稍備へ、自ら其の責に任じ、其の規模に於て他の列強と無限の對立を強化し、茲十數年遂に戰爭の誘發するに及んで、中央集權的傾向、中央集權的統制は益益官僚專制を強め、民意、民力を無視したる結果、遂に敗戰の事態を招來致したのであります、自己擴大の本能が主權の確立を強調する餘りに、或場合には袞龍の袖に隱れ、或時は却て主權の存在を晦冥ならしめ、聖明を蔽ふの結果となり、從つて民意を蹂躪し、戰力を喪失致したのであります、終戰の大詔は一面主權の再確立であり、一億蒼生の救濟であり、中間勢力を排除する民意の打通でありました、斯くして我が日本の發展政策は全く終止符を打つことになつたのであります、それ故に今日の日本は又國内に於て中央集權的官僚政治を一擲するやうな時機に相成つたと思ふのであります、外諸外國と對立し、國力の伸張を圖る必要のない我が國、又之を爲すべからざるに至つた我が國に於ては、中央集權的強力政治を必要としないのであります、又逆に中央集權的強力政治が存續する可能性ある時は、平和國家を造成することを妨げるのみならず、戰勝國の猜疑を増すこととなります、先に私は今囘の戰爭に於て我が貧弱なる國力が「アメリカ」の強力な物質科學文明に壓倒された事實を指摘致しましたが、今日我が日本が再び對列強富國策を採ることは誠に愚策であり、又出來ない相談であります、若し此の底意を含むならば、當然勝者たる「アメリカ」に刄向ふことになり、立國の基礎が粉碎されることになります、もう一點指摘したいことは、共産黨の主張するが如く治者、被治者、特權階級、被壓迫階級、資本家、勞働者、男と女と云ふが如き對立觀念を前提とし、國内相剋を統一の手段に選ぶならば、疲弊せる戰敗國たる我が國家は到底生存を完うし得ざるのみならず、一黨一階級の專制を招來し、再び新らしき官僚主義、中央統制主義を復活することとなり、平和國家造成の目的に反して、國際的紛爭を惹起せざるを得ないと思ふのであります、民主主義の平面的な攝取と共産主義の擴大は、共に日本をして眞の平和國家を造成せしむる手段ではないと信ずるのであります、日本が平和國家たらむが爲には、建國本來の精神、徳を樹つると云ふこと、即ち道義國家に徹底することであります、其の根本は自治精神の昂揚であり、從つて政治的には中央集權的強力政治を排し、地方分權、地方自立を目途とする政治態勢であり、小さい三角形の「コンクリート」建を幾つも作ることであります、此の問題に付ては尚論ずべき點が多々ございますが、只今のは本論ではありませぬから是以上は申上げませぬ、唯中央集權的畫一教育が如何に人物の拂底を齎したか、誠に明瞭なことであります、中央政權の威力全く衰へつつある現在竝に將來どの方面から眺めても、民意の發動に依る地域的地方別善政の確立が、日本全體を再建する鍵であると存じます、以上申述べて參りましたのは、即ち地方分治の政治態勢確立と云ふ政治理念が、即ち根本的貴族院改革の方向乃至上院の設置方式を初めて發見することに相成ると思ふからであります、換言すれば、我が日本の國家が今迄通りの態勢を維持して行くのか、それともここで全く新しい態勢に切り換へられるのか、此處が根本問題であります、今迄通りの態勢を維持するとすれば、小原議員が貴族院令改正に關して私見を表明されました如く、各種議院の數の單なる増減に止り、而もそこには確たる論據を示すことは出來ないと思ひます、勅選議院の數を殖やすことも結構でありますが、單により有能であると云ふに止り、他の政治的考慮が忘れられて居ると思ふのであります、上院を職能代表にせよとの論もありますが、是も窮餘の議論であります、第二院に一部利益の代表者が集つて如何なる政治效果を生むのか、職能代表制の議會は確か「フアシスト」國家に其の前例を見たと思ひます、又若し平面的に民主主義を採り入れるならば、一院制以外に其の結論を見出し難いと思ふのであります、一體現在の貴族院とは何か、先に申しました國家全體の三角形の上部構造であります、從つて其の構成分子も明治維新の國家統一に、或意味で功勞のあつた封建諸侯乃至其の子孫を、維新以後の政治の上に一種の安定勢力として吸收したること、及び其の後の國家理想たる國力發展策に貢獻ありし者、乃至其の子孫を報償乃至安定勢力として吸收したること、此の後者の解釋の中には、華族議員のみならず、勅選議員も他の種類の議員も含まれます、特に近年官僚態勢が強化するに從ひ、勅選議員の銓衡は我が貴族院内の空氣に官僚的感覺を増大せしめたことは否定することは出來ませぬ、私など極めて微弱なる議員生活でありまするが、事實を以て指摘することが出來ます、今日聯合國側から戰爭責任者として指摘する方々が極めて有力なる方々であり、華族議員よりも寧ろ勅選議員に多いことは此の理由に依ると思ひます、現在の如何なる種類の議員も、同じ政治的、社會的範疇に屬し、輕重の差こそあれ、國家を今日の事態に陷れた責任は齊しく負ふべきものであると信じます、國内の在り方が依然たる方向を辿るならば、現在の貴族院は改革の目安を求めることに困難を感ずるのであります、今後の問題は、日本が如何なる國家構造を持ち、而して貴族院は如何なる役割に立つべきかと云ふことが根本の問題であります、如何なる民主主義國家にも、廣い意味の貴族はあり得るのであり、又事實あるのであります、國家の有機的活動は之を必要とするのであります、最も健全なる貴族を必要とするのであります、併しそれは時代に依り、國家の在り方に依り内容を異にします、貴族院の構成分子、即ち廣い意味の貴族は、今後の日本の何處に求めらるべきであるか、依然たる中央集權的強力態勢か、地方分權的平和態勢か、之に依つて自ら決定される問題であると存じます、政府は今後の二院制度の理念を何處に置かれるのか、貴族院乃至上院の運用の理念は何處にあるのか、私は之を伺ひたいのであります、而して此の問題は、正に崩れむとする悲痛なる祖國の事態、敗戰と疲弊と混亂と相剋と、有らゆる悲慘なる事態に迫れる我が日本、大いなる三角形が腐り切つて正に倒れむとする此の事態を、無爲にして倒れるが儘に任せるのか、假令河原の石なりとも、同胞手を取つて積み重ね、新たなる三角形を積み上げる途を開くが救國の政治的熱情の問題に歸著することを申添へたいと思ひます、以上申述べまして、政府の御答辯を得たいと存じます
〔國務大臣松本烝治君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=34
-
035・松本烝治
○國務大臣(松本烝治君) 只今の明石男爵の御質問に對しまして、私から御答を申上げます、只今の御質問の御趣旨は、憲法改正後に於ける貴族院の組織構成と云ふやうなことに付て、どう云ふやうな理念で之をする積りかと云ふことに歸著するやうに伺つたのであります、男爵は、先日の本會議に於ける總理大臣の御答辯に依りまして、二院制度を採ると云ふことを確定して居るものと認めると云ふ御話でありました、實は此の憲法改正のことに付きましては、確か此の選擧法の委員會に於きまして、或程度のことを私も述べたやうに記憶を致して居ります、其の時に申述べましたやうに、憲法の改正に付きましては、目下鋭意準備研究を致して居りますが、まだ政府の考として申上げるやうなものは何にも出來て居らぬ、極めて大體の構想に付て私の一個の頭の中に浮んで居るものはないとは申せないので、それを申上げると云ふやうなことで、幾らか申上げやうたに記憶を致して居ります、又衆議院關係でも左樣なことに付て幾らか申述べましたやうに、此の憲法改正に付きましてどう云ふやうに致すかと云ふことは、まだ全く政府としては決つて居りませぬので、從つて帝國議會の制度に付きましても、果して二院制を採ると云ふことに確定して居ると云ふことさへ、或は申上げることは出來ないだらうと思ひます、即ち帝國議會に付きまして、一院制の説もありまするし、又二院制を其の儘にすべきものだと云ふ説もあります、之に付ては兩説共に色色の論據もあるやうでありまして、研究を致して居ります、併し私一個の考としましては、是は遽に一院制に飛んで行くと云ふやうなことになるべきものではなからう、矢張り二院制が維持されるべきものではなからうかと考へて居ります、「ポツダム」宣言の受諾に依りまして生じましたる我が國の責務として、民主主義的の傾向の強化を圖らなければならぬのでありまするが、其の意味に於きまして二院制を採ることが妨げとなることはないだらう、寧ろ二院制の方が宜くはないかと私一個としては考へて居ります、近來憲法改正に付きましては色々過激なやうに聞える説もあるやうに思ひまするが、梯子段を降りる時に二段、三段、四段を一度に飛び降りると云ふやうなのは、餘程已むを得ない時にはあり得ることでございませうが、左樣なことをして大怪我をするのは大變なことであります、相當しつかりと足を踏み締めて進んで行かなければなるまいと云ふやうに考へて居ります、そこで二院制を先づ採ると云ふことに致しましても、然らば貴族院の權限及び組織をどう致すか、權限を斯うすれば、組織は斯うあるべきだ、又組織を斯うして置けば、權限は斯うしなければならぬと云ふやうな關聯性が此の間にあるやうに考へて居ります、是は今色々研究し、考へて居ります、其の組織、權限等に付きましてどうなるのが宜からうと云ふやうなことに付ては、政府の定見は勿論ないと云ふことを申上げなければなませぬが、私一個と致しましても色々の考が混雜して居りまして、まだ何とも申上げる程度に達して居りませぬ、左樣なことで、此の組織、權限に應じまして、或は貴族院と云ふ名稱にも變更を加へなければならぬことになるかも知れぬ、そこらの點に付きまして、私一個としてもまだ申上げるだけのことはございませぬ、明石男爵は民主主義的傾向の強化を圖る爲には、將來に於て大いに此の地方自治、地方分權と云ふ觀念で進んで參らなければなるまい、中央集權と云ふことが非常な今日の誤りを爲したことの一つの大きな原因であらうと云ふ御話でありました、即ち地方自治、地方分權を以て民主主義の根柢とすべきものであらうと云ふ御話でありましたが、此の點に付ては相當考へなければならぬこともあらうと思ひまするが、勿論地方の自治と云ふものは益益發達させて參らなければならぬものと思ひます、民主主義の諸國に於きまして地方自治と云ふものは非常に發達して居る、さう云ふ方向に向ふべきことは、是は當然であらうと思ひまするが、併しながら全部何か地方に分權を致しまして、中央政府の機能を全く小さいものにしてしまふと云ふことが宜しいかどうか、是は相當の考を要する問題であらうと考へます、中央集權の結果として必ず獨裁、專制と云ふやうなことが起ると云うやうに見ることは、是は必ずしも正當な見方ではないのではなからうか、併し中央集權で地方自治と云ふものを全く認めないとか、或は現在の程度で其の發達を認めないと云ふことが宜しいと云ふやうな意味ではございませぬ、地方自治の制度が健全に發達して參ることは非常に結構と思ひまするが、併しながら全部何か地方に分權をしてしまふと云ふことが宜しいかどうかは、是は相當考慮を要することかと考へて居ります、明石男爵は貴族院の構成、組織に關しまして、地方分權と云ふやうなことを基礎として、根本から大いに考直すことが必要ではないかと云ふ御論旨であつたやうに拜聽致しました、此の點に付きましては、前にも述べましたやうに、貴族院の如何なる方向に向つて改革をしたのが宜しいかと云ふことに付きまして、政府として勿論斯う云ふ見解だと云ふことを申上げる時期ではございませぬし、私自身も御斷を致しましたやうに、まだ極めて未熟な考しかございませぬので、之に付て、例へば現在の華族議員、或は勅選議員などをどうする、地方分權の基礎に立つて貴族院の構成を改めることがどうであるかと云ふやうなことに付きまして、十分に御答の出來るだけの研究をまだ致して居りませぬ、唯御意見は十分拜聽致しましたから、能く參考と致しまして尚考へて見たいと思ひます、甚だ不満足の御答でございませうと思ひまするが、憲法の改正は非常な重大な問題でありまするので、實は憲法自體を唯見ますと、七十數條に過ぎない、何でもないだらう、一週間位で出來るだらうなんと云ふ御説も過日拜聽したのであります、なかなかさう云ふことではないやうでありまして、研究をすれば研究をする程むづかしいのであります、即ち憲法と云ふ此の國家の基本的の法律、と申すか、其の憲法をどう改めるかと云ふことに付きましては、有らゆる法律、制度に考を及しまして、さうして十分に末の末迄を考へて決めなければならぬのであります、假に憲法中の或ものを變へるとしましたなら、それに伴つて今あります所の色々な法律、或は勅令と云ふやうなものに付ても、矢張り變へなければならぬことになつて來るやうに思はれる、研究をしますと、研究をしまする程、憲法改正と云ふことの範圍が非常に廣くなつて、憲法改正自體は同じでありませうが、其の研究すべき事項の範圍が非常に廣くなるので、日夜苦心をして勉強は致して居りまするけれども、一つ一つの問題に付てまだなかなか或程度固つた意見を自分一個として樹てることさへむづかしいやうな次第でありますので、從つて此の帝國議會の制度、殊に貴族院の制度と云ふやうなことに付きましても、憲法改正後の貴族院の制度と云ふこととしましては、十分に確信を何か此處で議論をしようとするやうな資格を持つて居りませぬので、どうぞ其の點を御了察を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=35
-
036・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ兩案の採決を致します、兩案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=36
-
037・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=37
-
038・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに兩案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=38
-
039・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=39
-
040・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=40
-
041・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=41
-
042・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 兩案の第二讀會を開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、兩案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=42
-
043・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=43
-
044・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに兩案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=44
-
045・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=45
-
046・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=46
-
047・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=47
-
048・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 兩案の第三讀會を開きます、兩案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=48
-
049・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=49
-
050・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 此の際議事日程に追加し、昭和二十年勅令第五百三十七號、承諾を求むる件の會議を開き、委員長の報告を求むることに御異議ございませぬか
〔「異議なしと」呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=50
-
051・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、委員長林伯爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=51
-
052・会議録情報8
━━━━━━━━━━━━━
昭和二十年勅令第五百三十七號
右承諾すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十四日
委員長 伯爵林博太郎
貴族院議長公爵徳川圀順殿
━━━━━━━━━━━━━
〔伯爵林博太郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=52
-
053・林博太郎
○伯爵林博太郎君 只今上程されました昭和二十年勅令第五百三十七號に付きましての特別委員會の經過竝に結果を御報告致します、昭和二十年十二月二十日以後、昭和二十一年十二月十九日の間に行はれる衆議院議員の選擧に用ふ條べき選擧人名簿の調製に關しましては、衆議院議員選擧法第十二條第一項中其の日迄引續き六箇月以上其の市町村内に住居を有する者とあるは、其の市町村内に住居を有するものとす、附則と致しまして、本令は公布の日より之を施行すとあります、其の事柄は、此の戰災に依りまして人口の移動が激しい 昭和二十年十二月二十日から來年の十二月十九日迄の間に行はれる衆議院議員の選擧に付きましては、其の名簿を調製することに關しまして、衆議院議員選擧法第十二條の特例を設けることがどうしても必要である、即ち憲法第八條第一項に依りまして此の勅令が公布されたのである、仍て憲法第八條第二項の命ずる所に從つて、議會の承認を求むる爲に之を提出するのであると云ふことであります、之に付きましては愼重に審議致しまして、質問討論を經て承諾を與ふべきものと議決致しました次第でございます、之を以ちまして御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=53
-
054・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ是より採決を致します、本案承諾を求むる件に對し、承諾を與ふることに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=54
-
055・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=55
-
056・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 只今内閣總理大臣より、本月十八日迄四日間帝國議會會期の延長を命ぜらるる旨、詔書を傳達せられました、本日は是にて延會致します、次會の議事日程は法定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後五時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01119451214&spkNum=56
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。