1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十年十二月十五日(土曜日)午前十時二十三分開議
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議事日程 第十二號
昭和二十年十二月十五日
午前十時開議
第一 勞働組合法案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
第二 農業團體法中改正法律案(政府提出、衆議院送付)第一讀會
第三 水産業團體法中改正法律案(政府提出、衆議院送付)第一讀會
第四 戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會
第五 蠶絲業法改正法律案(政府提出、衆議院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=0
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001・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告を致させます
〔寺光書記官朗讀〕
正三位勳三等功五級男爵井田磐楠君去る十二日願に依り貴族院議員の辭職御允許あらせらる
昨十四日本院に於て可決したる左の政府提出案は即日裁可を奏請し又可決の旨を衆議院に通知せり
昭和十三年法律第八十四號中改正法律案
同日本院に於て承諾することを議決したる左の政府提出案は即日之を奏上し又承諾することを議決したる旨を衆議院に通知せり
昭和二十年勅令第五百三十七號
同日本院に於て修正議決したる左の政府提出案は即日之を衆議院に囘付せり
衆議院議員選擧法中改正法律案
同日衆議院より左の政府提出案を受領せり
勞働組合法案
農業團體法中改正法律案
水産業團體法中改正法律案
戰時森林資源造成法中改正法律案
蠶絲業法改正法律案
同日衆議院より本院の送付に係る左の政府提出案は同院に於て之を可決し奏上せる旨の通牒を受領せり
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案
昭和十二年法律第七十八號廢止法律案
映畫法廢止法律案
裁判所構成法戰時特例廢止法律案
戰時民事特別法廢止法律案
戰時刑事特別法廢止法律案
判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案
鐡道敷設法戰時特例廢止法律案
防空法廢止法律案
大日本航空株式會社法廢止法律案
石油業法外十三法律廢止法律案國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案
戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案
國民貯蓄組合法中改正法律案
同日内閣總理大臣より左の通第八十九囘帝國議會政府委員仰付られたる旨の通牒を受領せり
農林省所管事務政府委員
農林書記官 安孫子藤吉君
文部省所管事務政府委員
文部省科學教育局長 山崎匡輔君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=1
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002・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 是より本日の會議を開きます、日程第一、勞働組合法案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、芦田厚生大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=2
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003・会議録情報2
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勞働組合法案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長 公爵徳川圀順殿
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勞働組合法案
勞働組合法
第一章 總 則
第一條 本法は團結權の保障及團體
交渉權の保護助成に依り勞働者の地位の向上を圖り經濟の興隆に寄與することを以て目的とす
刑法第三十五條の規定は勞働組合の團體交渉其の他の行爲にして前項に掲ぐる目的を達成する爲爲したる正當なるものに付適用あるものとす
第二條 本法に於て勞働組合とは勞働者が主體と爲りて自主的に勞働條件の維持改善其の他經濟的地位の向上を圖ることを主たる目的として組織する團體又は其の聯合團體を謂ふ但し左の各號の一に該當するものは此の限に在らず
一 使用者又は其の利益を代表すと認むべき者の參加を許すもの
二 主たる經費を使用者の補助に仰ぐもの
三、共濟事業其の他福利事業のみを目的とするもの
四 主として政治運動又は社會運動を目的とするもの
第三條 本法に於て勞働者とは職業の種類を問はず賃金、給料其の他之に準ずる收入に依り生活する者を謂ふ
第四條 警察官吏、消防職員及監獄に於て勤務する者は勞働組合を結成し又は勞働組合に加入することを得ず
前項に規定するものの外官吏、待遇官吏及公吏其の他國又は公共團體に使用せらるる者に關しては本法の適用に付命令を以て別段の定を爲すことを得但し勞働組合の結成及之に加入することの禁止又は制限に付ては此の限に在らず
第二章 勞働組合
第五條 勞働組合の代表者は組合設立の日より一週間以内に規約竝に役員の氏名及住所を行政官廳に屆出づべし
前項の規定に依り屆出でたる事項に變更を生じたるときは一週間以内に之を行政官廳に屆出づべし
第六條 前條第一項の屆出ありたる場合に於て當該組合第二條に該當せざるときは命令の定むる所に依り勞働委員會の決議に依り行政官廳之を決定す
前項の規定は勞働組合として設立したるもの第二條に該當せざるに至りたる場合に之を準用す
第七條 規約には少くとも左の事項を記載すべし
一 名稱
二 主たる事務所の所在地
三 法人たる組合に在りては法人たること
四 目的及事業
五 組合員又は構成團體に關する規定
六 會議に關する規定
七 代表者其の他役員に關する規定
八 組合費其の他會計に關する規定
九 規約の變更に關する規定
第八條 規約法令に違反するときは命令の定むる所に依り勞働委員會の決議に依り行政官廳は其の變更を命ずることを得
第九條 勞働組合は事務所に組合員又は構成團體の名簿を備付くべし
第十條 勞働組合の代表者又は勞働組合の委任を受けたる者は組合又は組合員の爲使用者又は其の團體と勞働協約の締結其の他の事項に關し交渉する權限を有す
第十一條 使用者は勞働者が勞働組合の組合員たるの故を以て之を解雇し其の他之に對し不利益なる取扱を爲すことを得ず
使用者は勞働者が組合に加入せざること又は組合より脱退することを雇傭條件と爲すことを得ず
第十二條 使用者は同盟罷業其の他の爭議行爲にして正當なるものに因り損害を受けたるの故を以て勞働組合又は其の組合員に對し賠償を請求することを得ず
第十三條 勞働組合は共濟事業其の他福利事業の爲特設したる基金を他の目的の爲に流用せんとするときは總會の決議を經べし
第十四條 勞働組合は左の事由に因りて解散す
一 規約を以て定めたる解散事由の發生
二 破産
三 組合員又は構成團體の四分の三以上の多數に依る總會の決議
四 第六條の規定に依る決定
五 第十五條の規定に依る解散の處分
第十五條 勞働組合屡法令に違反し安寧秩序を紊りたるときは勞働委員會の申立に依り裁判所は勞働組合の解散を爲すことを得
前項の場合に於ける手續に關し必要なる事項は命令を以て之を定む
第十六條 勞働組合は其の主たる事務所の所在地に於て登記を爲すに因りて法人たるものとす
本法に規定するものの外勞働組合の登記に關し必要なる事項は命令を以て之を定む
勞働組合に關し登記すべき事項は登記の後に非ざれば之を以て第三者に對抗することを得ず
第十七條 民法第四十三條、第四十四條、第五十條、第五十二條乃至第五十九條及第七十二條乃至第八十三條竝に非訟事件手續法第三十五條、第三十六條、第三十七條の二、第百三十六條第一項、第百三十七條及第百三十八條の規定は法人たる勞働組合に之を準用す
第十八條 法人たる勞働組合には命令の定むる所に依り所得税及法人税を課せず
第三章 勞働協約
第十九條 勞働組合と使用者又は其の團體との間の勞働條件其の他に關する勞働協約は書面に依り之を爲すに因りて其の效力を生ず
勞働協約の當事者は勞働協約を其の締結の日より一週間以内に行政官廳に屆出ずべし
第二十條 勞働協約には三年を超ゆる有效期間を定むることを得ず
第二十一條 勞働協約締結せられたるときは當事者互に誠意を以て之を遵守し勞働能率の増進と産業平和の維持とに協力すべきものとす
第二十二條 勞働協約に定むる勞働條件其の他の勞働者の待遇に關する規準(當該勞働協約に依り規準決定の爲設置せられたる機關の存するときは其の定めたる規準を含む以下同じ)に違反する勞働契約の部分は之を無效とす此の場合に於て無效と爲りたる部分は規準の定むる所に依る勞働契約に定なき部分に付亦同じ
第二十三條 一の工場事業場に常時使用せらるる同種の勞働者の數の四分の三以上の數の勞働者が一の勞働協約の適用を受くるに至りたるときは當該工場事業場に使用せらるる他の同種の勞働者に關しても當該勞働協約の適用あるものとす
第二十四條 一の地域に於て從業する同種の勞働者の大部分が一の勞働協約の適用を受くるに至りたるときは協約當事者の雙方又は一方の申立に基き勞働委員會の決議に依り行政官廳は當該地域に於て從業する他の同種の勞働者及其の使用者も當該勞働協約(第二項の規定に依り修正ありたるものを含む)の適用を受くべきことの決定を爲すことを得協約當事者の申立なき場合と雖も行政官廳必要ありと認むるとき亦同じ
勞働委員會前項の決議を爲すに付當該勞働協約に不適當なる定ありと認むるときは之を修正することを得
第一項の決定は公告に依りて之を爲す
第二十五條 勞働協約に當該勞働協約に關し紛爭ある場合調停又は仲裁に付することの定あるときは調停又は仲裁成らざる場合の外同盟罷業、作業所閉鎖其の他の爭議行爲を爲すことを得ず
第四章 勞働委員會
第二十六條 使用者を代表する者、勞働者を代表する者及第三者各同數より成る勞働委員會を設く
使用者を代表する者は使用者團體の推薦に基き、勞働者を代表する者は勞働組合の推薦に基き、第三者は使用者を代表する者及勞働者を代表する者の同意を得て行政官廳之を委囑すべきものとす
勞働委員會は中央勞働委員會及地方勞働委員會とす特別の必要あるときは一定の地區又は事項に付特別勞働委員會を設くることを得
勞働委員會の委員及命令を以て定むる職員は之を法令に依り公務に從事する職員と看做す
勞働委員會に關する事項は本法に定むるものの外勅令を以て之を定む
第二十七條 勞働委員會は第六條、第八條、第十五條、第二十四條及第三十三條に規定するものの外左の事務を掌る
一 勞働爭議に關する統計の作成其の他勞働事情の調査
二 團體交渉の斡旋其の他勞働爭議の豫防
三 勞働爭議の調停及仲裁
勞働委員會は勞働條件の改善に關し關係行政廳に建議することを得
第二十八條 勞働委員會は公益上必要ありと認むるとき又は關係者の請求あるときは其の會議を公開することを得
第二十九條 勞働委員會其の事務を行ふ爲必要あるときは使用者又は其の團體、勞働組合其の他の關係者に對し出頭を求め、報告を徴し若は必要なる帳簿書類の提出を求め又は委員若は第二十六條第四項の命令を以て定むる職員(以下職員と稱す)をして關係工場事業場に臨檢し業務の状況若は帳簿書類其の他の物件を檢査せしむることを得
第三十條 勞働委員會の委員若は委員たりし者又は職員若は職員たりし者は其の職務に關し知得したる祕密を漏泄することを得ず
第三十一條 第三章の規定は勞働委員會の關與したる勞働條件其の他の勞働者の待遇に關する規準に關する協定にして勞働組合其の當事者たらざるものに付之を準用す
第三十二條 一定の勞働者の勞働條件其の他の待遇特に適切ならざるときは勞働委員會は其の實情を調査し改善の具體案を作成して行政官廳に建議することを得
前項の建議ありたる場合に於て行政官廳必要ありと認むるときは關係使用者に對し勞働條件其の他の待遇に關する規準を指示することを得
使用者前項の指示を受けたるときは遅滯なく之を勞働者に周知せしむることを要す
第二項の規定に依り指示ありたる規準は關係使用者及關係勞働者に付勞働協約と同一の效力を有す
第五章 罰則
第三十三條 第十一條の規定の違反ありたる場合に於ては其の行爲を爲したる者は六月以下の禁錮又は五百圓以下の罰金に處す
前項の罪は勞働委員會の請求を待て之を論ず
第三十四條 第三十條の規定に違反したる者は千圓以下の罰金に處す
第三十五條 第二十九條の規定に違反し報告を爲さず若は虚僞の報告を爲し若は帳簿書類の提出を爲さず又は同條の規定に違反し出頭を爲さず若は同條の規定に依る檢査を拒み、妨げ若は忌避したる者は五百圓以下の罰金に處す
第三十六條 法人又は人の代理人、戸主、家族、同居者、雇人其の他の從業者が其の法人又は人の業務に關し前條前段の違反行爲を爲したるときは其の法人又は人の自己の指揮に出でざるの故を以て其の處罰を免るることを得ず
前條前段の規定は其の者が法人なるときは理事、取締役其の他の法人の業務を執行する役員に、未成年者又は禁治産者なるときは其の法定代理人に之を適用す但し營業に關し成年者と同一の能力を有する未成年者に付ては此の限に在らず
第三十七條 左の場合に於ては勞働組合の代表者又は清算人を五十圓以下の過料に處す
一 第五條又は第十九條第二項(第三十一條に於て準用する場合を含む)の規定に違反し屆出を爲さず又は虚僞の屆出を爲したるとき
二 第九條の規定に違反し名簿の備付を爲さざるとき
三 本法又は本法に基きて發する命令に依る登記を爲すことを怠りたるとき
四 第十七條に於て準用する民法第七十九條又は第八十一條の規定に違反し公告を爲さず又は不正の公告を爲したるとき
五 第十七條に於て準用する民法第八十一條の規定に違反し破産宣告の請求を爲さざるとき
六 第十七條に於て準用する民法第八十二條又は非訟事件手續法第三十六條の規定に依る裁判所の檢査を妨げたるとき
第十九條第二項(第三十一條に於て準用する場合を含む)の規定に違反し屆出を爲さず又は虚僞の屆出を爲したるときは勞働組合以外の勞働協約の當事者(常事者團體なるときは其の代表とす)を五十圓以下の過料に處す
使用者第三十二條第三項の規定に違反したるときは五十圓以下の過料に處す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
本法施行の際現に存する勞働組合は本法施行の日より一週間以内に第五條第一項の規定に準じ屆出を爲すべし
登録税法中左の通改正す
第十九條第七號中「産業組合聯合會」を「産業組合聯合會、勞働組合」に、「産業組合法」を「産業組合法、勞働組合法」に改む
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〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=3
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004・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今議題となりました勞働組合法案の提案の理由を説明致します、我が國の近代産業は、日清、日露兩戰役に依つて特に發育の契機を與へられ、第一次世界大戰を以て飛躍的發展の時機に入りました、資本と勞働との調整、社會政策としての勞働問題が採上げられましたのは、「ベルサイユ」條約以降の時期であります、斯くして大正八、九年の頃より勞働組合の結成が促進せられ、之に伴うて勞働組合法の制定が朝野の問題となつたことは、御承知の通りであります、曩に昭和六年の第五十九帝國議會に於ては政府提案の勞働組合法案を討議致しまして、衆議院を通過したのでありましたが、貴族院に於て審議未了となり、引續き滿洲事變の勃發に依つて勞働組合の發達が阻害せられ、勞働組合法に對する朝野の關心も冷却致しまして、遂に今日に至つたものであります、然るに最近の終戰と共に、我が國に於ける民主主義的傾向の復活強化は、勞働組合の再組織となつて現はれ、全國各地に亙り、新らしき組合の結成せらるるもの相次いで増加する傾向にあります、思ふに新日本建設に當り、最も緊急を要する平和産業の再建に當りまして、乏しき資本資源を活用する爲には、勞働に期待する所極めて大なるものがあることは申す迄もありませぬ、斯かる時、勞働者をして喜んで勞務に赴かしめ、進んで其の能率を發揮せしめて、時代の要請に即應する爲には、先づ勞働者大衆に對し其の組合結成に付、十分なる自由を保障し、其の言動に統一と秩序を保たしめることが絶對に必要であります、此の目的の爲には、一面に於て勞働條件の適正化を圖り、他面勞働意慾の昂揚を圖ることが最も緊要な基本的要件であると信じます、即ち政府は現在勞働組合の結成が急速に進展しつつある事情に鑑み、進んで是が健全なる育成を助成することを喫緊の要務なりと認めたのであります、斯かる際聯合國最高司令官より政府に示された五項目の中に、「勞働者の搾取と酷使からの防衞及び其の生活水準の向上の爲、有效なる發言を許容する如き權威を與ふる爲に、勞働組合を促進助長すべきこと」が要請せられたのであります、仍て政府は朝野の專門的知識經驗を有する人々を以て勞務法制審議會を組織致しまして、其の具體的成案の作成を求めたのであります、然る處最近一つの答申案を得ましたので、之を骨子として勞働組合法案を作成しました、以下其の要點を申上げますれば、本法案は、第一に團結權の保障に依り勞働者の地位の向上を圖り、經濟の興隆に寄與することを目的としたことであります、第二に勞働組合の團體交渉「ピケッチング」其の他の爭議行爲等にして、正當なるものには、刑罰及び警察取締規定の適用を排除し、又使用者に於て、勞働者が前述の行爲に妨害を加へたり、損害賠償を要求することは出來ないものとした點であります、第三に組合の結成運營は成るべく自主的に行はしめると共に、其の經營する共濟事業等の福利事業は之を保護し、又相當の免税の恩典を與へて、其の健全性と永續性を助成せむとしたことであります、第四に組合と使用者との間に結ばるる勞働協約には、其の勞働能率の向上と産業平和の維持の上に、重要なる意義を持つことを明かにし、特に之に法的拘束力等を附與した點であります、第五に勞働組合を中心とする勞働に關する諸般の問題を、圓滑且民主的に調整せしむる爲、勞働側、使用者側及び中立の各代表者より成る勞働委員會を、それぞれ中央及び地方其の他に設けまして、之に所要の職權を附與することとした點であります、以上申述べました諸點を骨子として、本勞働組合法案を立案致した次第であります、何卒御審議の上速かに御協贊あらむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=4
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005・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 質疑の通告がございます、秋田三一君
〔秋田三一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=5
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006・秋田三一
○秋田三一君 私は本勞働組合法案の提出に當りまして、其の成立の曉、運用如何に依りましては、生産に大なる影響を及し、延いては我々民生に大なる關係を齎すことを深く心配して居りますが故に、此の點に關しまして、此の機會に於て總理大臣竝に關係各大臣に御尋ね申上げたいと思ふのであります、先づ第一に今後我が國は如何にして民生の安定向上を圖らむとするやと云ふ點であります、申す迄もなく我が國は遺憾ながら敗れたのであります、其の結果として明治以來發展し來つた千島、臺灣、朝鮮、滿洲、樺太、支那等より驅逐せられまして、今や幾多我が同胞は、多年築き上げた事業、資産を打捨てまして、丸裸となつて數百萬將兵と共に、食ふや食はずで、或は貨物船に、或は米國の上陸用舟艇に依つて、文字通り壽司詰となつて、日々此の本土に送還せられて居るのであります、昔人口四千萬の時代でも既に困り果てて、「アメリカ」等に出稼に出掛けた此の日本が、四國、九州、本州、北海道の四つの小さな島に、八千萬に近い者が無理やりに押返へされ、押籠められまして、恰も昨今の電車の如く、中に居る御互は胸を押され、呼吸さへ出來ぬ迄に混雜と窮迫に押詰められて來るのであります、現實に食ふことは今日我等の最大の問題でありまして、議會に於きましても毎日論議せられて居るのでありまするが、必要量の半分にも足らない僅か二合三勺の食糧すら食はしてやると云ふ當局の確言は與へられないのであります、夜な夜な殺人強盜は各所に出沒し、帝都と云ふに日暮れたら最早歩けぬと云ふ物騷な状態になりました、先日の如きは苟も官吏の最高級たる勅任官の閲歴のある者が、騨頭他人の食物を盜み食ふことが常習になつて居つたと云ふ驚くべき事實さへ新聞に載つて居つたのでありまするが、今や所々に餓死者が出で、所謂榮養失調に罹る者は都市生活者の殆ど全部と言つても差支ないのであります、各人は國家所ではない、理想所でもない、人生最後の生命保持に汲々たる有樣であります、無論當局は餓死を免かるる策としましては、開墾、干拓或は農地調整等に有らゆる増産の手は打たれました、或は又「マッカーサー」司令部に懇請して三百萬噸の食糧輸入にも努力を拂はれて居りますが、併し斯んなことで結局我が大和民族が存續出來るのでありませうか、無論科學の進歩と人の努力に依りまして、國土の極度の開發は致して來ては居りまするけれども、結局是だけでやり切れるのでありませうか、朝鮮に出で、滿洲、支那に出掛けて行つたのも結局食へぬからであります、即ち日本は所謂貧乏人の子澤山であります、食ふに食足らず、着るに衣無しであります、是でやり切つて行くにはどうしても人の捌け口を求むるか、大いに働いて貿易に依つて衣食を求むるより外はないのであります、元々資源には貧弱な國であります、是でやり拔くには眞に命懸けでやらねばならないと思ふのであります、今は贅澤を云ふ時ではありませぬ、子供は小僧や女中にやつても活かして行かねばなりませぬ、難儀な話ではありまするが、支那で働かして貰ふのも結構でありませう、「アメリカ」や、南米、濠洲等廣漠たる人口稀薄な所で農業をやらして貰ふのも結構であります、又南北極と云はず、廣い海洋で捕鯨や其の他漁業を許して貰ふのも一策であると思ふのであります、若し是等が出來ないとするならば、人道上許すべからざることでありますけれども、嬰兒を壓殺するか、或は可哀さうならば一家玉碎すると云ふことより我が家は立つて行く途はないのではないでせうか、滿員電車の解決は、切符を制限するか、電車を増發するより途はないのであります、即ち國としては、移民の場所を與へらるるか、自由な貿易を許さるるか、さもなければ消極的に人口に制限を加ふるか、孰れか途を求めなければならないと思ふのであります、聯合國では、日本を侵略國とし、戰爭の再發を極度に心配致しまして、或は軍部を解體し、或は武器を取上げ、財閥を叩いて重工業を潰滅し、封建的制度を改廢して、只管民主主義を鼓吹して居ります、孰れも可でありませう、我々としては平和は固より希求する所であり、戰爭はどこ迄も避けたい所であります、最早戰をする意思は毛頭ないのでありまするからして、戰爭防止となる是等の工作は固より否むものではありませぬ、今や寧ろ進んで之を斷行して居るのであります、唯併し是のみで戰爭が根絶せられるのでありませうか、私はどうしても我が國の人口處理の根本策を解決しなければ、永遠の平和、國民福祉の問題は解決付かぬと思ふのであります、此の點總理大臣は如何御考になりまするか、又曾て此の點を御主張になり、或は將來講和條約締結に當りまして、主張せらるる御意思はございませぬか、御伺ひ致したいと存ずるのであります、固より今日我が國は戰爭をやつたと云ふ罪があるのでありまするから、今罰として苦難を嘗めさせられて居るのは致し方ありませぬ、我々は既に十分覺悟はして居るのであります、生きながら解剖臺上に上つた心持で「メス」の下されるのを待つて居るのであります、次から次と色々の指示がやつて來ます、誠に涙が出る慘めさであります、併し是も聯合軍が我に課する罰であり、又彼等の主張する國民を救ふ途としての大手術としてならば、痛さを堪へて我慢するより他ないのであります、否、我々は苦しい中にも進んで之に協力して居るのであります、是は結局に於て我が國が悔ひ改むるに於ては、再び立派な國にしてやらうとの彼等の博愛心を信ずるからであります、政府は是非彼等を信じ、國家の實状を愬へて根本的に是等の難問題を解決せられむことを切望して已まぬものであります、第二の問題は此の多數の國民を食はして行き、其の生活の向上を圖るには如何なる方策を以てすべきやと云ふ點であります、聯合國側では、最初日本を農業國とすると云ふことでありました、今や現實の問題と致しまして、我が國は好むと好まざるとに拘らず、目先食ふ爲に、國を擧げて、農業に關心を持ち、又全力を擧げて居る形であります、國民各自は食ふ爲に猫の額のやうな小さい庭、道路の側迄耕作して、或は藷を作り、或は野菜を作り、以前工場勞務者であつた者すら工場復歸を拒んで、地方に行つて食物の手近で暮して居るやうな有樣であります、併し斯うしたことだけで大和民族が濟まされるのでありませうか、「マッカーサー」司令部より農民を奴隷的立場より解放せよと指令は出ましたけれども、農業だけを以てしては、多くの國民は決して奴隷的生活から脱することは出來ないのであります、現に今年も米産が足らず、外米輸入を許可せられると致しましても、既に見返り品の輸出に困惑して居る次第であります、單に食糧の面からのみ見ましても、此の狹い國土に八千萬に近い者が生活して行く爲には、年々相當の食糧を海外に仰ぐより外はないのでありまして、是等輸入食糧の見返りだけでも既に工業品生産の必要はありまするが、此の他國民生活の向上を圖らむとするならば、どうしても工業を盛にし、貿易を振興し、併せて外貨獲得の爲にも我が國特殊の發展を遂げた海運を復活し、又海洋漁業の發展に努力しなければならないのであります、即ち我が國は農業のみでは立行かぬのであります、大いに工業、貿易、海運、漁業に力を入れねばならぬのであります、此の點も我が國が誠意を以て「ポツダム」宣言竝に賠償の責を履行して行くならば、聯合國側と致しましても、十分認めて呉れると思ふのでありますが、政府の御所見は如何でありませうか、以上は將來に對する國家の大方策でありまするが、取敢ずの急務と致しましても、現今國民の生活は餘りに慘めであります、餓死線上を彷徨して居りまするが故に、それ以上今問題とする餘裕はなく、殆ど唯食ふことにのみ齷齪しては居りまするけれども、衣服はどうでありますか、住居はどうでありますか、衞生はどうでありますか、更に交通其の他文化設備はどうでありまするか、物資的國民生活の總てが永年の戰禍に依りまして全面的に破壞せられて、國民は全く最下等の生活をして居るのであります、我々は我々の努力に依つて一日も早く生活を水準迄復活しなければならないのであります、此の爲には何としても第一に生産をやらねばなりませぬ、産業の復活をしなければならないのであります、幸に「マッカーサー」司令部でも民需の生産は認むるのみならず、督促迄して居るのであります、然るに現在の我が國生産状態は如何でありませうか、終戰後早四箇月經過して居りまするのに、何一つ生産して居ないではありませぬか、基礎産業たる石炭生産の如きも減退の餘り國民生活を脅すものとして、遂に「マッカーサー」司令部より警告迄受けたことは我々日本國民として誠に汗顏に堪へない次第であります、政府は此の生産不振、産業界の怠業状態を如何に見て居られるのでありますか、私は一日も速かに此の滑出しを爲して、産業の復興を爲し、國民生活を平常化し、更に進んでは其の向上に寄與しなければならぬと思ふのであります、先づ其の怠業の原因を探求して見まするのに、原因の一つを勞働力の不足に擧げなければならないと思ふのであります、今や勞務給源に付きましては、戰爭中と異り、勞働に適する元氣旺盛なる男子だけでも、軍人の復員や徴用工の解除等に依りまして十二分であります、今や寧ろ問題となつて居るのは失業對策である位であります、然るに生産不振の第一原因を、勞働力の不足に指さざるを得ないと云ふ悲しむべき矛盾は、實に此の勞務適格者の勤勞意慾缺如であります、勤勞意慾缺如の原因と致しましては、終戰後の一時的休養の念もありませう、退職金に依り當分働かずとも食へると云ふ懐具合の良いのにも依るでありませう、併しながら終戰後四箇月になつた今日、何と言つても一番大きな原因は、都會に出て働いては腹が減つてやり切れない、少々賃金を貰つても食つて行けないと云ふのが最大の原因であります、之を何とかしなければ、勞働適格者は幾ら居つても、今日石炭礦夫で困つて居るが如く、決して容易に勞働者を獲得出來るものではありませぬ、從つて此の儘で産業の滑出しは期待出來ないのであります、政府としては此の點既に十分御承知のことでありまして、對策は講じようと努力はして居られまするけれども、何としても無い袖は振れないのである、然らば致し方ないとして此の儘放つて置いて宜いでありませうか、見返物資の不足に依つて外米は入つて來ないかも知れませぬ、即ち今日の工業勞働者は、農家が米を作ると同樣に、國家國民に對する道徳的の義務があるのでありまして、單り彼等の我が儘勝手を許さぬ問題であります、私は此の際官民一體となり、一大國民運動を起して、勞働適格者の自覺を促し、各自働くことに依つて、先づ産業の滑出しを致したいと思ふのであります、私は最近「アメリカ」兵の進駐に依りまして、著しく感じたことでありますが、彼等は表裏なく能く勤勉することであります、驚くべき機械を使用することでありますが、之を又一人で蔭日向なく能く操縱して働いて居ります、彼等は勤務時間中決してだらだらしないのみならず、時間一杯働いて居るのであります、我が國の勞働者が動ともするとだらだらとなり、終業時間前より仕事を切上げて歸り仕度をするなどと比較しますると、勤勞の内容に於て大なる差異があると思ふのであります、彼等は日本人を見て、日本には何故こんなに怠け者が多いかと驚いて居ると云ふ話を聞いたのでありますが、さもあるべしと恥しく存ずる次第であります、資源豐富にして、資本十分なる「アメリカ」にして尚且此の勤勞があります、我が貧弱なる産業設備にして、而も此の不徹底なる勞働を以てしては、如何に悔んでも生産に於て破れを取ることは何人も首肯するに難くない所で、我我の大いに注意しなければならない所であります、産業怠業の第二の原因と致しましては、企業家、資本家の企業意慾の減退であります、其の由つて來たる所は、企業轉換は致しましても、勞務の不足、原料、資材の入手困難であります、中でも大なる原因は、前途見透しの付かざることであります、先般「アメリカ」の賠償委員たる「ポーレー」大使が工業設備の賠償充當方針を聲明致したことだけを見ましても、將來我々の進むべき途を示されたやうで、餘程の目安も付いたのでありますが、更に賠償價格、賠償方法、竝に之に對する我が處理方針等が判明致しましたならば、茲に愈愈再出發の車は滑出すのであらうと思ふのであります、政府は速かに講和條件提示を懇請し我等の行くべき途を明示して貰ふ意思はありませぬか、政府は戰後財政處理の一方法として、相當強度の戰時利得税、財産税を賦課せらるるの御方針のやうでありまするが、速かに健全財政、に立戻つて正常なる經濟状態に復歸致しますことは誠に結構なことと思ふのでありますが、「インフレ」傾向急激に増大の折柄、一日も速かに實行すべきであります、若し之に時日を要するとせば、取敢ず通貨對策を講ぜられることが、今日各種賃銀値上げの要求があり、産業苦難の折柄一層重要と思ふのであります、唯茲に特に考へるべきことは、生産資金の問題であります、角を矯めむとして牛を殺してはなりませぬ、今や企業家は軍需工業の補償問題、在外資金の凍結、或は補償の不安等に依つて資金は相當に苦しくなつて居るのであります、此の點十分留意して戴いて、同時に企業家は働き甲斐があると云ふことが企業意慾の本であるのでありますから、徴税は大幅でも差支はありませぬけれども、一囘切りで之を打切つて、其の後働く者に對しては十分働き甲斐のあるやうに致すことが絶對肝要であるのであります、尚昨今の賃銀値上げ運動は、物價面より誠に已むを得ぬことではありますが、若し之を認むるとせば、企業者は當然之を製品に轉嫁し、消費者に振向くるの途を取るでありませうからして、結局惡循環を生じ、「インフレ」を促進することとなると思ふのでありますが、是等に關し、大藏當局は如何御考になつて居りまするか、抑抑企業家をして十分に才能を發揮し、産業を隆昌なさしむる爲には、何としても經濟自由の原則の下に、各自の企業意慾を阻止するものを排除しまして、十分に其の得意とする創意、才腕、技能を發揮せしむるにありまして、其の企業意慾の根源は實に利潤追求の一事にあるのであります、然るに或は價格協定、經理統制令等に依りまして、利潤や分配を抑へ、或は又勞働組合法の制定に依りまして勞務者に高賃金を支拂はしむるなどと云ふことは、さなくとも事業は困難となり、危險性は多く、近き將來「デフレ」の虞さへある時分に於て、企業家としては最も愼重を要する際に、儲かれば税金で抑へ、一面勞務者よりは階級鬪爭に依つて攻撃を受くるやうなことでありましては、決して企業は興るものではありませぬ、此の點社會政策と産業發展とは相容れないものがあると思ふのでありますが、商工大臣は我が國の目下の状態と致しまして、此の孰れに重きを置いて考へらるるか、御所見を伺ひたいと思ふのであります、茲に私の本案に對して不審と致して居ります所は、十二條の原案では、勞働協約中に紛爭のある場合、調定又は仲裁に付する旨の定めある場合に於て、此の規定に違反して罷業等を行つた場合は、組合又は組合員は爭議に依る賠償責任を免かれることは出来なかつたのでありまするが、此處に出ました本案に於きましては、此の事を規定した但書の一項を削除して、如何なる場合に於ても組合又は組合員は爭議に依る損害賠償の責任がないことになつて居るのでありまするが、是は今日勞働爭議の實情を究めないものでありまして、徒に企業家を苦しめ、生産を阻害するものであると思ふのでありまするが、當局の御説明を願ひたいと思ふのであります、最後に私は本組合法と失業との關係に付て伺ひたいのであります、我が國産業は敗戰の結果として、將來當分關税等の特別保護を受くることは期待困難でありまして、どこ迄も不利なる世界市場で孤軍奮鬪して行かねばならないと思ふのであります、而して此の競爭に打克つてこそ、初めて我が平和國家の建設が出來、國民生活の向上が圖られるのでありまするが、萬一之に敗れましたならば、市場を逐はれ、産業は萎靡し、企業者、勞働者共に貧窮に陷るのであります、此の市場競爭の爲には、どうしても生産條件を良好にしなければならないのであります、其の爲には乏しき資本を擁護し、蓄積増大しなければならないのであります、此の爲又企業意慾を盛ならしめ、又資本家を擁護しなくてはなりませぬが、一面勞務の面に於きましても之を尊重し、待遇改善を致しまして能率を向上さすことが、結局實質的には勞力を節約し、賃金を割安とするものでありますが、結果として一般には勞力は過剩となり、所謂失業者は愈愈増大する傾向を免かれぬと思ふのであります、政府は失業保險制度を設くるの意思がありますか、又産業不振、財政愈愈窮迫の此の我が國に於て、果して失業保險を以て多數の失業者を賄ふ自信がありますか、此の點亦大藏大臣の御所見を伺ひたいと思ふのであります、之を要しまするに我が國は貧乏國であります、物がないのであります、ない中で如何に立派な勞働組合法を作つて勤勞大衆の生活向上を圖らうと致しましても、徒に少い餌を相爭つて奪ひ合ふに過ぎないのであります、どこ迄行つても誰かは腹は足りないのであります、腹が減り、生活の安定なくして何の民主であり、何の平和でありませうか、此の儘では決して政治、經濟、民生の安定はないのであります、私は此の點より致しましても、前申しました通り、此の際どうしても内には勞資相戒め、兄弟牆に鬩ぐことなく、相助け相睦んで、外聯合國側に向つては、我が人口處理の解決策を懇願するより他ないと主張する所以であります、私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=6
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007・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今の御質疑に御答を申上げます、我が國は敗戰の結果として領土は局限せられ、人口は集約せられ、而も國内の工業化に於て、又海外貿易の上に於て重要なる制限に服して居るのであります、之が爲に民生の安定を期しまする上に於て、是亦重大なる妨害を受けて居ると云ふことは明瞭なる事實であります、今後の人口問題は眞劍に考慮を要するものとして私も痛感致して居るのであります、是は食糧對策とも睨み合せまして、有らゆる角度から愼重に研究し、又聯合諸國との了解を得まして、之が解決に必要なる手段を執りたいと思ふのであります、今日の時局に對する政府の對策は過日來本議場に於きましても、亦種々の委員會に於きましても、全部打明けまして皆樣に愬へて居る次第であります、今日は誠に我が國は窮境のどん底にあると思ひます、併しながら前途は決して暗闇ではないと思ひます、其のうちには必ず一陽來復して我々が新らしい平和的な、文化の高い、又國民生活の標準に於ても高まつて行くやうな新日本の建決が爲し遂げられると云ふ、私は必ずさう云ふ時期が來ると確信致して居ります、私は大體の私等の考へて居りまする所を申上げたのでありまして、其の他の問題に付きましては、同僚から更に御説明申上げたいと存じます
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=7
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008・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今法案第十二條の原案と今囘訂正致しましたものとの間の差異の點を御指摘になりまして、本法案には「同盟罷業其の他の爭議行爲にして正當なるものに因り損害を受けたるの故を以て勞働組合又は其の組合員に對し賠償を請求することを得ず」となつて居るが、審議會の原案には、其の下に但し爭議行爲が勞働協約の定に反して爲されたるときは損害賠償を請求することを得る旨の規定があつた、之を削除した經過はどう云ふことであるかと云ふ御質問であります、但書を取りました理由は、雙方の協約を以て斯樣な場合には損害賠償を支拂ふべき義務ありと決めることが出來るのでありますから、其の協約に基いて何時でも損害賠償を請求することが出來るのであります、左樣に協約の自由が認めてある限り、特に本條に但書を附加へる必要がない、斯う云ふ意味であります、又使用者側は場合に依つては工場閉鎖を致します、併し斯かる場合に勞働者側が工場閉鎖の理由を以て使用人に損害賠償を訴へることが出來ないのでありますから、勞働者側に於ても正當なる同盟罷業行爲を行つた場合に、使用者から損害賠償の請求を受けない、斯樣に規定致しまして、兩者の均衡を保たした理由であります
〔國務大臣子爵澁澤敬三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=8
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009・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 御答を申上げます、現時局下は有らゆる面に於きまして強い矛盾が互に強烈に錯雜して居るのでありまして、其の點に於きまし異常な混亂を示して居ることは御承知の通りでございます、戰時經濟と致しましては、資金關係から申しますと、一應賀屋大藏大臣が曾つて申されました如くに、使へる金と使へない金に分けたのであります、使へる金は全部軍需に廻し、軍需以外に民需を抑へた金は全部使へない金として對鎖した譯であります、終戰後軍需と云ふことが全くなくなり、而も大きな發注者が突然消滅し有らゆる物が民需として考へられた時に、理論的に曾つて使へない金が全部使へるものになつたと云ふことは言へるのでありますが、同時に不幸にして物それ自身が非常に不足を來して居ると云ふのが現在の状況だと存じます、而も八年に亙る戰爭の結果、有らゆる資材、又國民の財物は灰燼に歸し、消耗し盡して居ります、從つて現在の日本の状態は所謂實のない金が非常に多くなり、物と金とが極端に乖離して居ると云ふ状態でございます、のみならず不幸なことには食糧事情が非常に惡い、「インフレーション」の根本原因は何處迄も本質的には財政の破綻だと私は存じて居りますが、併し現象的に見て起ることは、矢張り物の不足が大きな強い誘因であると思ひます、現在は財政面に於て大きな問題があると同時に、もつと大切な食糧面の缺乏と云ふことに依つて、此の「インフレーション」の速度が相當に強く掛つて居ると云ふ状況でございます、此の儘に放置致しますれば、財政は破綻する、其の時に本當の惡性の「インフレーション」が來るとなれば、もう國民全部が其の爲に倒れてしまふことになると云ふことは、はつきりした事實であります、之を如何にして食ひ止めるか、之に如何にして挑戰するかと云ふことは、強烈なる「デフレーション」の藥を入れまして、恰も肺炎に對して「ペニシリン」を刺すが如き效果を擧げなければならないのであります、其の意味に於きましで考へられたのが一つの財産税と云ふ問題であります、財産税其のものは決して良い税とは存じませぬ、殊にそれが徴税の如何に依りましては、非常に惡い税になると云ふことも承知して居りますし、又斯かる税を掛けると云ふことそれ自身に付きましても、實に苦慮を致した次第であります、戰爭利得税の方は是は多少財産税とは別でありまして、戰時中戰爭に關聯し、或は戰爭の結果特別に利潤を獲得した者から、此の不公平極まる……外地から裸になつて歸つて來る人もある、家を燒かれて困つて居る方がある、此の不公平に對しまして、其の儘默つて置く譯に行かぬと云つたやうな公平感、それが可なり大きく働いて居る問題であります、其の意味に於きまして戰爭利得税は、戰爭の利得を吸收すると云ふのが目的でございますが、財産税は、單なる公平だけでなく、一つの財政的な措置であります、財政を健全ならしむる措置でありまして、從つて「インフレーション」に對する大きな手術になるのであります、而も其の狙ひは、單に財政の均衡を得ると云ふことだけでなしに、一つの含みとしての大きな狙ひは、物價の安定でございます、結局今後の、只今秋田さんの仰せられました今後の生産を復活させると云ふことは、絶對必須條件でございますが、現在の状況に於て生産の復活は單純には望み得ないのであります、戰爭中に強い統制を以て公定價格を決め、さうして有らゆる統制をしたのでありますが、統制それ自身が惡かつたのではないと存じますが、其の實施の方法、或は運營に於て非常にまづかつた點が多かつた爲に、終戰前には多少此の點は亂れたのでありますが、終戰後に於きましては、全く是が體系竝に水準が崩れてしまつて、即ち物價の體系もなくなつたし、水準もなくなつてしまつた、之をどうしても樹て直さなければならないのであります、併しそれには統制が矢張り大きな意味で必要だと私は存じて居ります、唯餘りに統制の拙劣さから、又長い統制から、終戰後澎湃として起りました統制の枠を外せと云ふ氣分と云ふものは可なり強かつたのであります、事實其の意味に於きまして相當の枠を外して參つて居ります、又事實、前の統制の枠で此の生産が出來ると云ふことは考へられないのであります、從ひまして現在に於きましては、其の統制を一時或程度壞しまして、次の段階に於ける水準、體系を樹立しなければならぬと云ふのが目下の急務だと存じます、目下それに對する研究、と申しますか、探りを入れて居る時代だとも申せると思ふのであります、而も其の水準の決め方と云ふものは、概ね食糧の値段へ有らゆる物を體系付けて行くと云ふのが最も妥當だと考へて居る次第でございます、而もそれに對しましての大きな掩護射撃として考へられますのが財産税であります、さうしてそこに物價の安定を見て、初めて生産の復活と云ふことが本格的に行はれると考へて居ります、併し先程角を矯めて牛を殺すことがあつてはならぬと仰せられましたことは、誠に至言であります、財産税の方法如何に依りましては、確かに牛を殺すと云ふことがないとは限りませぬ、其の點に付きましては、政府と致しましては、深甚なる注意を拂つて居る次第であります、昨日も申上げたのでありますが、手術は成功したが病人は死んだと云ふのでは何にもならないのでありまして、何處迄も此の八年間相當の痛手を蒙り、疲れ切つた病人の、而も其の體内の極めて惡性の病菌を取除き、病氣を治しまして後、再び非常に愉快な健康な體になつて、世界全體に對して活躍が出來なければ何にもならないのであります、其の意味に於きまして、政府と致しましては、十分に注意を致して居る積りでございます、殊に生産資金の問題に對して御注意がございましたが、此の點に付きましても、其の意味に於きまして注意を致して居る積りでございます、物價の對策と致して此の問題が大きな支柱となつて、さうしてそれを後楯に致しまして、急速に物價に對しまする對策を立て、惡循環をしないやうに我々としては何處迄も正面からぶつかつて行きたいと云ふ風に考へて居る次第でございます、失業保險をやる財政的の基礎を持つかと云ふ御話でございましたが、此の點に付きましては、此の失業保險の規模、竝に形態、對象其の他に付きまして目下厚生省に於て十分に研究中でございます、之に依りまして、其の問題が色々に變つて來ると存じます、まだ其の點は政府としまして研究中なのでありまして、茲にはつきりしたことを申上げることを得ませぬことは、御許を願ひたいと存じます、大體の御答を申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=9
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010・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 木暮政務次官
〔政府委員木暮武太夫君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=10
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011・木暮武太夫
○政府委員(木暮武太夫君) 只今商工大臣は豫算委員會で質疑を受けて居ります爲に、私が代りまして只今の秋田さんの御質疑に對しまして御答辯申上げます、御滿足の行きませぬ點がございましたらば、又他の機會に商工大臣から補足して御答辯を申上げることに致します、只今御質疑のありました中の御意見の通りに、日本が農業ばかりで食べて行けないと云ふことは當然でございます、農業だけで吸收し得る人口と云ふものは相當の限度のあることも既に定論のある所でございますので、我が國の今後の産業のあり方と致しましては、食糧を輸入致しまする爲の見返り物資の生産、之が輸出の爲の貿易と云ふやうなことに食糧増産と同じ重點を置いて、農商工の均整の取れた産業のあり方を執つて行かなければならぬと考へて居る次第であります、又勞働組合法が出來て爭議が頻發すると云ふやうなことは、仕事に携つて居る人達の企業心を萎靡させて、産業が興らないではないかと云ふやうな御質疑がございましたが、今後に於きまして民主主義、自由主義を能く理解して居る所の企業家の人達は、恐らくは從來ありました勤勞者の桎梏を取除く程度の勞働組合法が成立致しまして、堅實なる勞働組合が出來て、さうして責任のある人達と企業者の間で團體協約に依つて勞働條件、其の他が決定致しますることを寧ろ喜んで居るのではないかと我々は考へる次第であります、勞働組合法が出來て、健全なる勞働組合が出來て、さうして團體協約に依つて事前に色々の話合が出來ましたならば、恐らく各國の例の如く爭議に至らずして問題が解決するやうなことが、今後は多いのではないかと云ふことを政府としては期待して居るやうな次第でございまして、此の點に付きまして理解ある企業家の企業心を萎縮させると云ふやうなことは、先づあるまいと我々は考へて居る次第であります、加へますのるに、色々戰時中企業心を萎靡縮小させた桎梏であります統制法規を成るべく大幅に撤廢を致すことに政府は努めて居りますので、今後は企業心を旺盛ならしむることが出來るであらうと、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=11
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012・秋田三一
○秋田三一君 簡單でありますから此處で發言を御許を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=12
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013・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 宜うございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=13
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014・秋田三一
○秋田三一君 只今私の御尋ね致しました人口調節の點に付きまして、總理大臣から答辯がありましたが、餘り具體的でないので、多少足らない所があるのでありますが、既に御退場になりましたので、厚生大臣が居りますので簡單に御伺ひ致しますが、結局に於て現在の日本と致しましては、産兒制限等に依つて人口に或程度の制限を加へることの必要はありませぬか、又當局に於て其の御考を目下御持になつて居りませぬか、此の點を明かにして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=14
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015・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 厚生大臣
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=15
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016・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 御答へ致します、現在人口調節の方策として産兒制限を認める意思があるかないかと云ふ御質問であります、御承知の通りに、産兒制限は理窟としては極めて理解し易いものでありまして、人心に受入れられることも極めて容易に且迅速に流れる虞れがあると思ひます、一度出生率が減少する傾向になつた場合には、如何なる民族でも之を人口増加の傾向に囘復することが困難である事實は、既に「フランス」、「スエーデン」、「デンマーク」、「イギリス」等の例に依つて御承知の通りであります、從つて今日の時代、人口が過剰であるからと言つて直ぐに政府が公然と産兒制限を認めることは、愼重に考慮を要することと存じます、更にもう一つの點は産兒制限を行ふと致しましても、兎角逆淘汰の現象が行はれ易いと云ふ點であります、具體的に申しまするならば、精神缺陷者の如き、或は精神病患者の如き、斯樣な人々は容易に産兒制限を實行致しませぬ、其の結果惡質なる者の子孫が増加して、良質なる子孫が減退すると云ふ現象を起しましては、國家の將來に由々しき問題であると考へられる點であります、成る程現在失業問題が我々の惱みとなつて居り、又食糧難も痛切に感じられて居りますが、失業問題竝に食糧難の對策として、産兒制限が果して有效であるかどうか考へますると、今生れたばかりの子供は、一年、二年の間多量の食糧を必要としないのであります、又一年、二年の生れたばかりの子供に對しては、失業對策を講ずる必要もないのでありまして、産兒制限の結果が直ちに失業問題の對策、若しくは食糧難の對策に多く寄與する所がないやうにも考へられるのであります、是等の理由に依りまして、現在の處、政府は産兒制限を公然と認めることを考へて居ない譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=16
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017・秋田三一
○秋田三一君 私は只今の厚生大臣の御答辯に滿足致すのであります、之を以て質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=17
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018・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました勞働組合法は、其の特別委員の數を二十七名とし、其の委員指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=18
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019・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=19
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020・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=20
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021・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔寺光書記官朗讀〕
勞働組合法案特別委員
公爵 岩倉具榮君 侯爵 徳川頼貞君
侯爵 中山輔親君 伯爵 橋本實斐君
子爵 立花種忠君 子爵 秋元春朝君
子爵 梅園篤彦君 子爵 高木正得君
子爵 齋藤齊君 下條康麿君
吉田茂君 河原田稼吉君
大野緑一郎君 男爵 久保田敬一君
大橋八郎君 男爵 八代五郎造君
男爵 肝付兼英君 男爵 西酉乙君
男爵 村田保定君 藤沼庄平君
長岡隆一郎君 松本健次郎君
瀧川儀作君 河西豊太郎君
松本勝太郎君 奧主一郎君
秋田三一君
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=21
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022・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 日程第二、農業團體法中改正法律案、日程第三、水産業團體法中改正法律案、日程第四、戰時森林資源造成法中改正法律案、日程第五、蠶絲業法中改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會、是等の四案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=22
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023・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、松村農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=23
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024・会議録情報3
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農業團體法中改正法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵 徳川圀順殿
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農業團體法中改正法律案
農業團體法中左の通改正す
第一條中「全國農業經濟會及中央農業會」を「及全國農業會」に改む
第十條中「農業に關する國策に即應し」を削る
第十一條第一項乃至第三項を左の如く改む
地方農業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 農業の指導奬勵及統制其の他農業の整備發達に關する施設
二 會員の販賣する物の賣却又は其の加工に關する施設
三 會員に必要なる物の購買又は其の加工若は生産に關する施設
四 會員に必要なる資金の貸付又は會員の貯金の受入に關する施設
五 會員に必要なる設備の利用に關する施設
六 農業に關する調査及研究
七 農業に從事する者の福利増進に關する施設
八 前各號の事業に附帶する事業
第十五條第一項但書を左の如く改む但し其の者が法人なるときは命令を以て定むるものに限る
同條第二項中「行政官廳の認可を受け」を削る
第二十一條第二項中「及第二號」を削る
第二十二條及第二十三條 削除
第二十五條中「會長」を「理事」に改む
第二十七條 地方農業會に理事及監事を置く
第二十八條 市町村農業會の理事は命令の定むる所に依り會員の中より會員之を選擧す
市町村農業會の理事特別の必要ありと認むるときは會則の定むる所に依り前項の規定に依る理事の外一人を限り總會の承認を得て理事を選任することを得
第二十五條の規定は前項の場合に付之を準用す
市町村農業會の監事は總會に於て之を選任す
道府縣農業會の理事及監事は總會に於て之を選任す
第二十九條 理事の任期は三年とし監事の任期は二年とす但し會則を以て別段の定を爲すことを得
前條第三項の場合に於て理事の選任に付總會の承認を得ざるときは當該理事は其の職を失ふ
監事は任期中と雖も總會に於て之を解任することを得道府縣農業會の理事に付亦同じ
第三十條 民法第五十二條第二項、第五十三條乃至第五十五條及第五十九條の規定は理事及監事に付之を準用す
第三十一條第二項中「第十一條第一項第一號、第二號及同條第二項第三號、第四號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第五號の事業」を「第十一條第一項第一號、第六號及第七號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業」に改む
第三十四條第二項中「會長」を「理事」に改む
第三十八條 削除
第三十九條中「地方農業會は」を「地方農業會農業の統制に關する事業を行はんとするときは」に、「農業の統制に關する規程」を「統制規程」に改む
第四十一條 削除
第四十五條中「會長」を「理事」に改む
第四十六條 削除
第四十七條中「會長、副會長、」を削り「決議を取消し、」の下に「理事若は監事の改選を命じ、」を加ふ
第三章中「全國農業經済會」を「全國農業會」に改む
第四十九條 全國農業會は農業の整備發達を圖り且會員の事業の發達に必要なる事業を行ふことを目的とす
第五十條 全國農業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 農業の指導奬勵及統制其の他農業の整備發達に關する施設
二 會員の販賣する物の賣却又は其の加工に關する施設
三 會員に必要なる物の購賣又は其の加工若は生産に關する施設
四 會員に必要なる設備の利用に關する施設
五 農業に關する調査及研究
六 農業に從事する者の福利増進に關する施設
七 前各號の事業に附帶する事業
第五十三條第二項を削る
第五十四條乃至第五十六條 削除
第五十七條 第十六條乃至第十九條、第二十條第一項、第二項本文、第二十一條、第二十四條、第二十五條、第二十七條、第二十八條第五項、第二十九條第一項、第三項、第三十條乃至第三十三條、第三十五條、第三十六條第一項本文、第二項、第三十七條、第三十九條、第四十條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は全國農業會に付之を準用す但し第十六條及第十八條中第十四條とあるは第五十三條とし第三十一條第二項中第十一條第一項第一號、第六號及第七號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第五十條第一號、第五號及第六號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける第七號の事業とす
第四章 削除
第五十八條乃至第六十六條 削除
第六十七條第一項中「地方農業會の會長、副會長、理事若は監事、全國農業經濟會の理事長、理事若は監事又は第四十五條(第五十七條に於て準用する場合を含む)の規定に依る地方農業會の會長若は全國農業經濟會の理事長の職務を行ふ者」を「農業團體の理事若は監事又は第四十五條(第五十七條に於て準用する場合を含む)の規定に依る理事の職務を行ふ者」に改む
第六十八條及第六十九條 削除
第七十條中「及第六十六條」を削る
第七十三條中「會長、理事長、會長若は理事長の職務を行ひ若は代理する副會長若は理事、清算人又は第四十五條(第五十七條及第六十六條に於て準用する場合を含む)の規定に依る會長若は理事長の職務を行ふ者」を「理事、清算人又は第四十五條(第五十七條に於て準用する場合を含む)の規定に依る理事の職務を行ふ者」に改む
第七十四條 削除
第七十五條中「、第五十二條第二項又は第六十條第二項」を「又は第五十二條第二項」に改む
附 則
第一條 本法施行の期日は勅令を以て之を定む
第二條 本法施行の際現に存する全國農業會令に依る全國農業會は之を本法に依り設立したるものと看做す
第三條 第二十八條第一項又は第五項(第五十七條に於て準用する場合を含む)の改正規定に依る最初の理事の選擧又は選任は命令を以て定むる期間内に之を爲すべし
本法施行の際現に地方農業會又は全國農業會令に依る全國農業會の會長、副會長又は理事たる者は各之を前項に掲ぐる改正規定に依り選擧又は選任せられたる理事と看做す
前項に規定する者は第一項に掲ぐる改正規定に依り選擧又は選任せられたる當該農業團體の理事就任したるとき(第一項の期間内に其の就任なきときは同項の期間滿了したるとき)は其の職を失ふ
第四條 本法施行前に爲したる行爲に關する罰則の適用に付ては本法施行後と雖も仍從前の例に依る
第五條 前三條に規定するものの外本法施行の際必要なる規定は勅令を以て之を定む
第六條 郵便貯金法、印紙税法、特別法人税法、農業倉庫業法及農林中央金庫法中左の通改正す
「全國農業經濟會」を「全國農業會」に改む
第七條 全國農業會令は之を廢止す
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水産業團體法中改正法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵 徳川圀順殿
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水産業團體法中改正法律案
水産業團體法中左の通改正す
第十一條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第十二條第一項乃至第四項を左の如く改む
漁業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得但し第六號及第七號の事業は會員に出資を爲さしむる漁業會(以下出資漁業會と稱す)に非ざれば之を行ふことを得ず
一 漁業の指導奬勵及統制其の他漁業の整備發達に關する施設
二 水産動植物の蕃殖保護、漁場の利用其の他會員の漁業生産の確保強化に關する施設
三 船溜、船揚場、漁礁其の他會員の漁業に必要なる設備に關する施設
四 會員の遭難防止又は漕難救恤に關する施設
五 會員の福利増進に關する施設
六 會員の漁獲物其の他の生産物の加工、保藏、運搬又は販賣に關する施設
七 會員に必要なる物の供給若は資金の貸付又は會員の貯金の受入に關する施設
八 前各號の事業に附帶する事業
第十八條 削除
第二十三條第二項中「及第二號」を削る
第二十四條及第二十五條 削除
第二十七條中「會長」を「理事」に改む
第二十九條 漁業會に理事及監事を置く
第三十條 理事及監事は總會に於て會員又は會員たる法人の役員の中より之を選任す但し設立當時の理事及監事は創立總會に於て會員たるべき者又は會員たるべき法人の役員の中より之を選任すべし
特別の事由あるときは理事又は監事は前項の規定に該當せざる者の中より之を選任することを得
第三十一條 理事の任期は三年とし監事の任期は二年とす但し會則を以て別段の定を爲すことを得
理事又は監事は任期中と雖も總會に於て之を解任することを得
第三十二條 民法第五十二條第二項、第五十三條乃至第五十五條及第五十九條の規定は理事及監事に付之を準用す
第三十三條第二項中「第十二條第一項の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同條四項の事業」を「第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業」に改む
第三十六條第二項中「會長」を「理事」に改む
第四十條中「漁業會は」を「漁業會漁業の統制に關する事業を行はんとするときは」に、「漁業の統制に關する規程」を「統制規程」に改む
第四十二條 削除
第四十五條中「會長」を「理事」に改む
第四十六條 削除
第四十七條中「會長、副會長、」を削り「其の決議を取消し、」の下に「理事若は監事の改選を命じ、」を加ふ
第四十九條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第五十一條 製造業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 當該水産物製造業の指導獎勵及統制其の他當該水産物製造業の整備發達に關する施設
二 會員の製品、其の原料若は材料又は製造若は加工の設備に對する檢査に關する施設
三 會員の副利増進に關する施設
四 會員の販賣する物の加工又は販賣に關する施設
五 會員の行ふ當該水産物製造業に必要なる物の供給に關する施設
六 會員の行ふ當該水産物製造業に必要なる資金の貸付、會員の爲にする當該水産物製造業に係る債務の保證又は會員の貯金の受入に關する施設
七 前各號の事業に附帶する事業
第五十三條 第十二條第二項、第十六條、第十七條、第十九條乃至第二十三條、第二十六條乃至第四十一條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は製造業會に付之を準用す但し第十六條第一號中會員の漁業とあるは當該水産物製造業とし第十七條及第二十條中第十五條とあるは第五十二條とし第三十三條第二項中第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第五十一條第一號乃至第三號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける第七號の事業とし第四十條中漁業の統制とあるは當該水産物製造業の統制とす
第五十四條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第五十五條第一項乃至第三項を左の如く改む
道府縣水産業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得但し第四號及第五號の事業は會員に出資を爲さしむる道府縣水産業會(以下道府縣出資水産業會と稱す)に非ざれば之を行ふことを得ず
一 水産業の指導獎勵及統制其の他水産業の整備發達に關する施設
二 水産物生産の確保強化に關する施設
三 水産業に從事する者の福利増進に關する施設
四 會員の販賣する物の加工、保藏、運搬又は販賣に關する施設
五 會員に必要なる物の供給若は資金の貸付又は會員の貯金の受入に關する施設
六 前各號の事業に附帶する事業
第五十八條及第五十九條 削除
第六十條 第十二條第二項、第十六條、第十七條、第十九條乃至第二十三條、第二十六條乃至第三十五條、第三十七條乃至第四十一條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は道府縣水産業會に付之を準用す但し第十六條第一號中會員の漁業とあるは水産業とし第十七條及第二十條中第十五條とあるは第五十七條とし第三十三條第二項中第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第五十五條第一項第一號乃至第三號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第六號の事業とし第三十八條第一項及第三十九條中出資漁業會とあるは道府縣出貸水産業會とし第四十條中漁業の統制とあるは水産業の統制とす
第六十一條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第六十二條 中央水産業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 水産業の指導獎勵及統制其の他水産業の整備發達に關する施設
二 水産物生産の確保強化に關する施設
三 水産業に從事する者の福利増進に關する施設
四 會員の販賣する物の加工、保藏、運搬又は販賣に關する施設
五 會員に必要なる物の供給に關する施設
六 前各號の事業に附帶する事業
第六十五條及第六十六條 削除
第六十七條 第十二條第二項、第十六條、第十七條、第十九條乃至第二十三條、第二十六條乃至第三十五條、第三十七條乃至第四十一條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は中央水産業會に付之を準用す但し第十六條第一號中會員の漁業とあるは水産業とし第十七條及第二十條中第十五條とあるは第六十四條とし第三十三條第二項中第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第六十二條第一號乃至第三號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける第六號の事業とし第四十條中漁業の統制とあるは水産業の統制とす
第六十八條第一項中「會長、副會長、理事若は監事」を「理事、監事」に「會長の職務」を「理事の職務」に改む
第六十九條及第七十條 削除
第七十五條中「會長、會長の職務を行ひ若は代理する副會長若は」を削り「會長の職務」を「理事の職務」に改む
附 則
第一條 本法施行の期日は勅令を以て之を定む
第二條 第三十條(第五十三條、第六十條又は第六十七條に於て準用する場合を含む)の改正規定に依る最初の理事の選任は命令を以て定むる期間内に之を爲すべし
本法施行の際現に水産業團體の會長、副會長又は理事たる者は各之を前項に掲ぐる改正規定に依り選任せられたる理事と看做す
前項に規定する者は第一項に掲ぐる改正規定に依り選任せられたる當該水産業團體の理事就任したるとき(第一項の期間内に其の就任なきときは同項の期間滿了したるとき)は其の職を失ふ
第三條 本法施行前に爲したる行爲に關する罰則の適用に付ては本法施行後と雖も仍從前の例に依る
第四條 前二條に規定するものの外本法施行の際必要なる規定は勅令を以て之を定む
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戰時森林資源造成法中改正法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵 徳川圀順殿
━━━━━━━━━━━━━
戰時森林資源造成法中改正法律案
戰時森林資源造成法中左の通改正す
題名を左の如く改む
森林資源造成法
第一條中「大東亞戰爭に際し森林資源の戰力化の徹底及之が造成の確保を期する爲」を「森林資源造成の確保を期する爲」に改む
第七條中「證券の交付ありたる後」を「前項の場合を除くの外證券の交付ありたる後」に改め同條に第一項として左の一項を加ふ
第五條第一項の規定に依る命令ありたる後當該森林に付命令に係る造林行爲の完了前新に森林所有者と爲りたる者は證券の交付を受けたる森林所有者の權利義務を承繼するものとす
附 則
本法は公布の日より之を施行す
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蠶絲業法改正法律案
右政府提出案本院に於て可決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十四日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵 徳川圀順殿
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蠶絲業法改正法律案
蠶絲業法
第一條 本法に於て蠶絲とは蠶種、繭、生絲其の他命令を以て定むる蠶絲類を謂ふ
第二條 蠶種製造業を營まんとする者は命令の定むる所に依り主務大臣の許可を受くべし
第三條 原原蠶種たる蠶種の品種は主務大臣之を定む
第四條 原原蠶種は政府又は當該原原蠶種の品種の選出育成者に非ざれば之を製造することを得ず
原原蠶種の品種の選出育成者は命令の定むる所に依り主務大臣の許可を受け他の者をして其の選出育成に係る品種の原原蠶種の製造を行はしむることを得
第五條 政府は命令の定むる所に依り蠶種の品種の選出育成者をして其の選出育成に係る品種の蠶種を提出せしめ當該品種の原原蠶種を製造し之を配付することを得
第六條 蠶種の品種の選出育成者は其の選出育成に係る品種の原原蠶種に付蠶種製造業者より其の買受の申込ありたるときは正當の事由あるに非ざれば之を拒むことを得ず
第七條 原蠶種は都道府縣又は命令を以て定むる蠶種製造業者に非ざれば之を製造することを得ず
原蠶種は原原蠶種より産出したる繭を用ふるに非ざれば之を製造することを得ず
第八條 普通蠶種の製造は主務大臣の定むる交配形式に依るべし
普通蠶種は原原蠶種又は原蠶種より産出したる繭を用ふるに非ざれば之を製造することを得ず
第九條 蠶種製造業者は自己の製造する蠶種に關し命令の定むる所に依り都道府縣若は其の者の所屬する團體の檢査を受け又は自ら檢査を行ふべし
前項の規定に依り蠶種製造業者が其の者の所屬する團體の檢査を受け又は自ら檢査を行ひたる場合に於て監督上必要ありと認むるときは都道府縣は更に檢査を行ふことを得
第一項の檢査(前項の檢査ありたる場合に於ては其の檢査)に合格したる蠶種及其の蠶兒に非ざれば之を譲渡し又は飼育することを得ず
第十條 行政官廳は蠶兒の飼育又は生繭の取扱を爲す者に對し蠶病の驅除又は豫防に關し必要なる施設を命じ其の他取締上必要なる命令を爲すことを得
第十一條 學術研究の爲に蠶種の製造又は蠶兒の飼育を爲す場合に於て行政官廳第三條、第四條又は第六條乃至第九條の規定を適用する必要なしと認むるときは命令を以て其の適用を除外することを得
第十二條 都道府縣は命令の定むる所に依り蠶種に關する檢査其の他蠶病の驅除又は豫防の爲必要なる吏員を置くべし
第十三條 蠶種の輸出又は輸入は命令の定むる所に依り主務大臣の許可を受くるに非ざれば之を爲すことを得ず
第十四條 行政官廳は桑苗の檢査又は桑苗若は野蠶の病蟲害の驅除若は豫防に關し取締上必要なる命令を爲すことを得
第十五條 繭は命令の定むる所に依り都道府縣の行ふ檢定に依る品位に依るに非ざれば其の賣買取引を爲すことを得ず
第十六條 生絲は命令の定むる所に依り國の生絲檢査所の檢査を受けたるものに非ざれば之を輸出することを得ず
生絲は前項の檢査又は命令を以て定むる檢査に依る正量及品位に依るに非ざれば其の賣買取引を爲すことを得ず
第十七條 主務大臣前二條の規定を適用する必要なしと認むるときは命令を以て其の適用を除外することを得
第十八條 主務大臣必要ありと認むるときは勅令の定むる所に依り蠶絲業を營まんとする者に對し行政官廳の許可を受くべきことを命ずることを得
第十九條 行政官廳は第二條又は前條の許可を受けたる者の行爲が本法若は本法に基きて發する命令又は之に基きて爲す處分に違反し又は公益を害したるときは其の許可を取消し又は其の業務を制限し若は停止することを得
第二十條 主務大臣は蠶絲の需給の調整、價格の安定又は輸出の振興上特に必要ありと認むるときは蠶絲の生産、加工、輸出、輸入又は取扱を業とする者(以下蠶絲業者と稱す)に對し勅令の定むる所に依り蠶絲の生産、配給、消費、使用、價格、輸出又は輸入の統制に關し必要なる命令を爲すことを得
第二十一條 蠶絲業者は其の蠶絲業の改良發達を圖る爲共同の施設を爲す目的を以て蠶絲協同組合を設立することを得
蠶絲協同組合は法人とす
第二十二條 蠶絲協同組合は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 組合員の生産又は取扱に係る蠶絲の加工又は販賣
二 組合員の事業に必要なる物の共同購入及共同設備の設置
三 組合員の生産したる蠶絲の檢査
四 前各號に掲ぐるものの外蠶絲協同組合の目的を達するに必要なる施設
第二十三條 蠶絲協同組合は命令の定むる所に依り其の名稱中に蠶絲協同組合たることを示すべき文字を用ふべし
蠶絲協同組合に非ざるものは其の名稱中に蠶絲協同組合たることを示すべき文字を用ふることを得ず
第二十四條 蠶絲協同組合を設立せんとするときは蠶絲業者七人以上設立者と爲り定款を作成し出資第一囘の拂込を爲さしめたる後二週間以内に勅令の定むる所に依り主たる事務所の所在地に於て設立の登記を爲すべし
蠶絲協同組合は前項の設立の登記を爲すに因りて成立す
第二十五條 蠶絲協同組合の組合員は出資一口以上を有すべし
蠶絲協同組合の組合員の責任は其の出資額を限度とす
第二十六條 蠶絲協同組合に總會を置く
總會は總組合員を以て之を組織す
蠶絲協同組合は定款の定むる所に依り總會に代るべき總代會を設くることを得
第二十七條 組合員は總會に於て各一個の議決權を有す但し定款の定むる所に依り一人に付議決權總數の十分の二を超えざる範圍内に於て出資口數に應じ二個以上の議決權を有せしむることを得
第二十八條 蠶絲協同組合に理事及監事を置く
理事及監事は組合員又は組合員たる法人の業務を執行する役員の中より總會に於て之を選任す但し組合設立當時の理事及監事は定款を以て之を定むべし
特別の事由あるときは理事及監事は前項に該當せざる者より之を選任することを得
第二十九條 蠶絲業者又は其の團體(農業團體を含む)は蠶絲業の改良發達及統制を圖る目的を以て蠶絲業會を設立することを得
蠶絲業に密接なる關係ある事業を營む者又は其の團體は蠶絲業會の定款の定むる所に依り其の會員と爲ることを得
蠶絲業會は法人とす
第三十條 蠶絲業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふ
一 蠶絲業の指導奬勵に關する施設
二 蠶絲業の聯絡及統制に關する施設
三 蠶絲業に關する調査及研究
四 前各號に掲ぐるものの外蠶絲業會の目的を達するに必要なる施設
蠶絲業會は前項各號に掲ぐる事業の外第二十二條第一號乃至第三號に掲ぐる事業を行ふことを得
第三十一條 蠶絲業會を設立せんとするときは蠶絲業者十人以上設立者と爲り地區内の會員たる資格を有する者の三分の二以上の同意を得て創立總會を開き定款其の他必要なる事項を議決すべし
全國を地區とする蠶絲業會を設立せんとする場合に於て特別の事由に因り主務大臣の認可を受けたるときは蠶絲業者二十五人以上設立者と爲り設立に關する一切の行爲を爲すことを得
第二十四條の規定は蠶絲業會の設立に之を準用す
第三十二條 蠶絲業會は其の會員に對し經費を賦課することを得
蠶絲業會其の事業を行ふ爲必要あるときは會員をして出資を爲さしむることを得
前項の規定に依り會員をして出資を爲さしむる蠶絲業會の會員は出資一口以上を有すべし
第二項の規定に依り會員をして出資を爲さしむる蠶絲業會の會員の責任は第一項の規定に依る費用負擔の外其の出資額を限度とす
第三十三條 蠶絲業會は定款の定むる所に依り會員に對し過怠金を課することを得
第三十四條 蠶絲業會に總會及評議員會を置く
總會は議員及特別議員を以て之を組織す
評議員會は評議員を以て之を組織す
第三十五條 議員は定款の定むる所に依り會員の中より會員之を選擧す但し特別の事由ある場合に於ては定款を以て別段の定を爲すことを得
特別議員は蠶絲業に關し學識經驗ある者の中より總會に於て之を選任す
評議員は議員及特別議員の中より總會に於て之を選任す
第三十六條 議員及特別議員は總會に於て各一個の議決權を有す
第三十七條 主務大臣は命令の定むる所に依り蠶絲業會の申請に因り其の會員たる資格を有する者に對し當該蠶絲業會に加入すべきことを命ずることを得
第三十八條 全國を地區とする蠶絲業會にして命令を以て定むる者を會員とするものは繭及生絲の價格の安定を圖る爲命令の定むる所に依り繭絲價格安定資金を設定することを得
前項の規定に依り繭絲價格安定資金に繰入れたる金額は勅令の定むる所に依り特別法人税法に依る剰餘金の計算上之を益金に算入せざることを得
第三十九條 第二十三條及第二十八條の規定は蠶絲業會に之を準用す
第四十條 蠶絲協同組合又は蠶絲業會は勅令の定むる所に依り登記を爲すことを要す
前項の規定に依り登記すべき事項は登記の後に非ざれば之を以て第三者に對抗することを得ず
第四十一條 行政官廳は蠶絲協同組合又は蠶絲業會の決議又は役員の行爲が法令、法令に基きて爲す處分若は定款に違反し又は公益を害したるときは其の決議を取消し、役員の改選を命じ、業務を停止し又は解散を命ずることを得
第四十二條 本法に規定するものの外蠶絲協同組合又は蠶絲業會の設立、管理、解散、清算其の他蠶絲協同組合又は蠶絲業會に關し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第四十三條 蠶絲協同組合及蠶絲業會には所得税、法人税及營業税を課せず
第四十四條 行政官廳必要ありと認むるときは蠶絲業者、蠶絲協同組合、蠶絲業會其の他命令を以て定むる者に對し其の業務及財産の状況に關し報告を爲さしめ又は帳簿書類其の他の物件の檢査を爲すことを得
第四十五條 第二條、第四條第一項、第七條、第八條、第九條第三項、第十三條、第十五條若は第十六條の規定又は第十八條、第二十條若は第三十七條の規定に依る命令に違反したる者は五千圓以下の罰金に處す第四條第二項の規定に依る許可を受けずして原原蠶種の製造を行はしめたる者亦同じ
第四十六條 第九條第二項の規定に依る檢査を拒み、妨げ又は忌避したる者は三千圓以下の罰金に處す
第四十七條 第六條の規定又は第十條若は第十四條の規定に依る命令に違反したる者は千圓以下の罰金に處す
第四十八條 左の各號の一に該當する者は五百圓以下の罰金に處す
一 第四十四條の規定に依る報告を爲さず又は虚僞の報告を爲したる者
二 第四十四條の規定に依る檢査を拒み、妨げ又は忌避したる者
第四十九條 人又は法人の代理人、戸主、家族、同居者、雇人其の他の從業者が其の人又は法人の業務に關し第四十五條、第四十七條又は前條第一號の違反行爲を爲したるときは其の人又は法人は自己の指揮に出でざるの故を以て其の處罰を免るることを得ず
第四十五條、第四十七條又は前條第一號の罰則は其の者が法人なるときは法人の業務を執行する役員に、未成年者又は禁治産者なるときは其の法定代理人に之を適用す
但し營業に關し成年者と同一の能力を有する未成年者に付ては此の限に在らず
第五十條 蠶絲協同組合又は蠶絲業會本法中蠶絲協同組合若は蠶絲業會に關する規定若は之に基きて發する命令又は之に基きて爲す處分に違反したるときは理事、監事又は清算人を五千圓以下の過料に處す
第五十一條 第二十三條第二項(第三十九條に於て準用する場合を含む)の規定に違反したる者は千圓以下の過料に處す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
原蠶種管理法、輸出生絲取引法及蠶絲業統制法は之を廢止す
從前の蠶絲業法、原蠶種管理法又は蠶絲業統制法に基きて爲したる處分、申請、檢査其の他の行爲は勅令の定むる所に依り之を本法の相當規定に基きて爲したるものと看做す
從前の蠶絲業法に依り設立の登記を爲したる蠶絲共同施設組合にして本法施行の際現に存するものは之を本法に依り設立したる蠶絲協同組合と看做す
前項の蠶絲共同施設組合無限責任又は保證責任の組合なるときは其の組織に關しては仍從前の例に依る
前項の組合は從前の例に依り其の組織を變更し有限責任の組合と爲ることを得
日本蠶絲統制株式會社は主務大臣の指定する日に於て解散す
蠶絲業統制法第四條、第七條乃至第十一條、第二十二條乃至第四十三條及第五十條乃至第五十四條の規定は前項の日迄仍其の效力を有す
日本蠶絲統制株式會社解散したるときは蠶絲業統制法第四十二條第一項の規定に依り積立てたる繭絲價格安定資金を第三十八條に規定する蠶絲業會にして主務大臣の指定するものに引渡すべし
前項の規定に依り日本蠶絲統制株式會社が引渡すべき繭絲價格安定資金は勅令の定むる所に依り法人税法に依る清算所得及營業税法に依る清算純益の計算上之を益金に算入せざることを得
前二項に規定するものの外日本蠶絲統制株式會社の清算に關し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第九項に規定する蠶絲業會が同項の規定に依り日本蠶絲統制株式會社より承繼したる財産に付ては特別法人税法に依る剰餘金の計算上之を益金に算入せず
蠶絲業組合法中左の通改正す
第三章を削る
日本中央蠶絲會は主務大臣の指定する日に於て解散す
蠶絲業組合法第三章の規定は日本中央蠶絲會の清算の結了に至る迄仍其の效力を有す
印紙税法中左の通改正す
第四條第一項第十二號中「中央水産業會、」の下に「蠶絲協同組合、蠶絲業會、」を加ふ
登録税法中左の通改正す
第十九條第七號中「蠶絲共同施設組合」を「蠶絲協同組合、蠶絲業會」に改む
特別法人税法中左の通改正す
第二條第六號を左の如く改む
六 蠶絲協同組合及蠶絲業會(所屬の會員をして出資を爲さしめざるものを除く)
本法施行前(附則第八項の場合に於ては第七項の日前)に爲したる行爲に關する罰則の適用に付ては仍從前の例に依る
本法に規定するものの外本法の施行に關し必要なる規定は勅令を以て之を定む
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〔國務大臣松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=24
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025・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 只今議題となりました農業國體法中改正法律案及び水産業團體法中改正法律案の提案理由を御説明申上げます、先づ農業團體法中改正法律案に付て申上げます、本法律案は時局の要請に鑑みまして、農業團體の民主主義化を圖り、系統農業團體の活溌なる自主的活動を促進して、以て農業者の利益増進と、國民食糧の確保に遺憾なからしむることを目的と致すものでございます、御承知の通り、現行農業團體法は、從來農村に於ける諸團體の分立の弊に鑑み、之が統合に關する與論に即應致しまして、其の機構を全農業者を打つて一丸と致した單一綜合性ある機構に再編成致す目的を以ちまして、昭和十八年制定せられたものでありますが、此の法律に依つて農會、産業組合、畜産組合、養蠶業組合及び茶業組合の各系統團體は新たに一元的な系統農業會の組織に統合整理せられ、爾來今日に及んだのでございます、併しながら當時國民經濟の戰時的編成替に於て一般的に採用されました方法に則りまして、其の組織機構に付ては多分に國家機關的性格を附與し、其の事業運營に關しましても、多分に官廳的色彩が採入れられることになつたのでございまして、之が爲農業團體は漸次其の本來の自主性を失ひ、動もすれば會員たる農民より遊離し、却て其の活動に困難を來すと云ふ状態をさへ招來するに至つたのでございます、仍て終戰後の事態に即應致しまして、從來最も官廳的色彩の濃厚でありました農業團體の役員制度、役員の選任方法、又之に對する行政官廳の監督制度等に付きましては、根本的に檢討を加へ、其の結果從來行政官廳の任命又は認可係つて居りました役員の選任を、會員の公選主義に改むること、會長中心の業務運營方法を改むること、及び團體に對する煩瑣な行政官廳權限の縮減乃至廢止等を行ひ、以て眞に名實共に農民の爲の團體と致して、其の自主的な活動を容易ならしめ、農業の整備發達と、農業者の利益増進に寄與せしめたいと存ずる次第でございます、次に水産業團體法中改正法律案に付て申上げます、本法律案は只今申上げました農業團體法中改正法律案と、全く同樣の趣旨を以て現行法に改正を加へむとするものでございまして、改正の内容に付きましては、水産團體特殊の事情に基く二三の細かい點を除きまして、全く農業團體法中改正法律案と殆ど同樣でありますので、詳細は省略さして戴きたいと存じます、以上が是等兩法律案の提案理由の概要でありますが、固より現下當面の困難なる食糧事情を打開致す爲には眞に農業團體及び水産業團體の活溌なる活動に俟たねばなりませぬ處極めて大なるものあることは申す迄もないのでございまして、之が爲政府と致しましても、今囘の改正を機として更始一新、以て今後に於ける農業團體及び水産業團體の積極的な活動を深く期待致して居る次第でございます、何卒御審議の上速かに御協贊あらむことを御願ひ致します、次に戰時森林資源造成法中改正法律案に付て説明申上げます、本法は第八十六帝國議會に於て成立致しました衆議院議員提出の法律でありまして、施行直前、終戰の事態に立到つたのでございます、本法は戰時中森林の伐採を強行致して參りましたが、伐採跡地の造林は是非共之を實行して參らねばなりませぬが、勞務其の他の事情に依りまして、急速には造林を實行することが出來ませぬ關係等を考慮致しまして、立木の處分を爲したる森林所有者をして、其の收入の中から造林費用の半額を農林中央金庫に提供して證券の交付を受けしめ、勞務、種苗等の都合の付き次第造林を實行させまして、政府が費用の半額を補給し、造林を奬勵して參ると云ふ制度でございまして、證券交付總額は額面三億圓、之に依る造林豫定面積は九十餘萬町歩と云ふことになつて居るのであります、斯樣に、本法は戰時立法ではありますが、終戰後に於ても御承知の通り、戰災復興等木材の需要は益益増加しつつありますが、樺太の大資源を失ひ、且は外國より木材及び「パルプ」の輸入を仰ぐことも容易ならざる今日、森林の伐採は戰時中と同樣に之を強行せざるを得ない状態でありまする處、殊に近年水害が愈愈増加し、本年は亦未曾有の大水害を見たやうな事情にありますのに鑑みますに、終戰後に於ても、本法の必要は愈愈増加致して居る次第でございます、仍りまして、茲に本法に若干の改正を致しまして、終戰後の林業界の非常事態に對處し、治山治水に遺憾なきを期したいと存じます、是れ本案を提出する所以でございます、何卒御審議の上御協贊あらむことを庶幾ふ次第でございます、次に蠶絲業法改正法律案の提出の理由を御説明申上げます、蠶絲業は對米輸出貿易の大宗と致しまして、今後我が國經濟を再建する上に極めて重大なる使命を擔つて居るのでございます、當面喫緊の重要問題でありまする食糧の輸入を確保する爲に、其の見返り物資として生絲が最も主要なる役目を勤めますことは、是亦申す迄もない所でございます、而して戰爭中に於きましては、蠶絲業は輸出産業たる本來の性格を一變し、專ら國内繊維資源の充足を目標として其の運營に當ると共に、一面生産額も著しく減少して參つたのでありますが、今や生絲輸出の再開を見むとする秋に當りまして、蠶絲業を速かに囘復せしめ、其の使命達成を期しまするが爲には、今後に於ける我が國政治經濟の動向に即應して、現在の斯業統制方式に根本的の改訂を加へ、關係業者の自主的運營に依つて活氣ある發展の途を開いて參る必要があるのでございます、此のことは過般蠶絲業に對する聯合國最高司令部の指示の次第もありまして、早急處理を要する問題でございます、本法案は以上の趣旨に基きまして、日本蠶絲統制株式會社を中心として運營して參りました、蠶絲業統制機構の廢止及び之に伴ふ善後措置、蠶絲關係業者の自主的新團體組織に關する法的措置、竝に原蠶種管理制度の根本的改正、蠶種に關する制度の改正等を内容と致しまして、必要なる規定を設けむとするものでございます、何卒愼重御審議の上御協贊あらむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=25
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026・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今日程に上りました農業團體法中改正法律案外三件は、其の特別委員の數を十九名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=26
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027・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=27
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028・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
(「異議なし」と呼ふ者あり)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=28
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029・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔寺光書記官朗讀〕
農業團體法中改正法律案外三件特別委員
侯爵 大炊御門經輝君 侯爵 大久保利謙君
伯爵 徳川宗敬君 子爵 加藤泰通君
子爵 入江爲常君 子爵 土屋尹直君
男爵 淺田良逸君 村上恭一君
安井英二君 白根竹介君
黒崎定三君 男爵 佐竹義履君
男爵 島津忠彦君 男爵 倉富均君
橋本清之助君 合田健吉君
米原章三君 片倉兼太郎君
渡邊甚吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=29
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030・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 衆議院より農地調整法中改正法律案の送付を待つ爲に、午後二時半迄休憩を致します
午前十一時四十八分憩休発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=30
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031・会議録情報4
――――◇―――――
午後四時三分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=31
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032・島津忠重
○假議長(公爵島津忠重君) 徳川議長より、議長故障に付、本員を假議長に指名せられました、仍て此の席を汚します、萬事不慣れでございますから、諸君の御援助を御願ひ致します、報告を致させます
〔寺光書記官朗讀〕
從三位勳二等 星野直樹君
從五位 鮎川義介君
本日願に依り貴族院議員を免せらる
本日委員會に於て當選したる正副委員長の氏名左の如し
鹽專賣法中改正法律案特別委員會
委員長 子爵 高橋是賢君
副委員長 男爵 周布兼道君
勞働組合法案特別委員會
委員長 河原田稼吉君
副委員長 男爵 久保田敬一君
農業團體法中改正法律案特別委員會
委員長 伯爵 徳川宗敬君
副委員長 男爵 淺田良逸君
本日内閣總理大臣より左の通第八十九囘帝國議會政府委員仰付られたる旨の通牒を受領せり
商工省電力局長 古池信三君
本日衆議院より左の政府提出案を受領せり
農地調整法中改正法律案
本日衆議院より本院の囘付に係る左の政府提出案は同院に於て本院の修正に同意し奏上せる旨の通牒を受領せり
衆議院議員選擧法中改正法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=32
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033・島津忠重
○假議長(公爵島津忠重君) 是より休憩前に引續き會議を開きます、此の際議事日程に追加し、農地調整法中改正法律案の第一讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=33
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034・島津忠重
○假議長(公爵島津忠重君) 御異議ないと認めます、松村農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=34
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035・会議録情報5
━━━━━━━━━━━━━
農地調整法中改正法律案
右政府提出案本院に於て修正議決せり因て議院法第五十四條に依り及送付候也
昭和二十年十二月十五日
衆議院議長 島田俊雄
貴族院議長公爵 徳川圀順殿
…………………………………
農地調整法中改正法律案
農地調整法中左の通改正す
第二條 本法に於て農地とは耕作の目的に供せらるる土地を謂ふ
本法に於て小作料とは耕作の目的を以て農地が賃借せらるる場合に於ける借賃(農地以外の土地又は建物其の他の工作物が農地に附隨して賃借せられ其の借賃が農地の借賃と契約上分別し得ざる場合に在りては農地以外の土地又は建物其の他の工作物の借賃を含む)又は耕作の目的を以て永小作權が設定せらるる場合に於ける小作料を謂ふ
第三條第一項中「兵役」を「疾病」に、「市町村」を「市町村、市町村農業會」に改む
第四條 都道府縣、市町村、市町村農業會其の他命令を以て定むる團體が命令を以て定むる自作農創設維持の事業に要する土地を取得するの必要あるとき又は當該土地の開發に必要なる他の土地の使用收益の權利を取得するの必要あるときは地方長官の認可を受け土地の所有者其の他之に關し權利を有する者に對し土地の讓渡又は使用收益の權利の設定若は讓渡に關する協議を求むることを得
地方長官前項の認可を爲さんとするときは當該土地の所在する市町村に設置せられたる市町村農地委員會の意見を聽くことを要す
第一項の場合に於て協議調はず又は協議を爲すこと能はざるときは同項の團體は當該土地の讓渡又は使用收益の權利の設定若は讓渡に關し命令の定むる所に依り都道府縣農地委員會の裁定を申請することを得
第一項の團體前項の申請を爲したるときは同時に當該申請に係る土地の所有者其の他之に關し權利を有する者に通知すべし
第四條の二 前條第三項の規定に依る裁定の申請ありたるときは都道府縣農地委員會は命令の定むる所に依り之を公示すべし
前條第三項の規定に依る裁定の申請に係る土地の所有者其の他之に關し權利を有する者は前項の公示の日より二週間内に都道府縣農地委員會に意見書を差出すことを得
前條第三項の規定に依る裁定の申請に係る土地の上に建物其の他の工作物(以下工作物と稱す)を所有する者は前項の意見書に於て都道府縣農地委員會に對し當該土地の讓渡又は使用收益の權利の設定若は讓渡を爲すべき旨の裁定ある場合に於ては當該工作物に付ても讓渡を爲すべき旨の裁定又は當該工作物の移轉料に關する裁定あるべき旨の申請を爲すことを得但し當該工作物が前條第四項の通知ありたる後に設置せられたるものなるときは此の限に在らず
第四條の三 都道府縣農地委員會は前條第二項の期間を經過したる後審議を開始すべし
都道府縣農地委員會は前項の審議を開始したる日より二週間内に裁定を爲すべし
都道府縣農地委員會が前項の期間内に裁定を爲さざるときは地方長官は之に代りて裁定を爲すことを得
第四條第二項の規定は前二項の場合に之を準用す
裁定は其の申請の範圍を超ゆることを得ず但し第六項の規定の適用を妨げず
土地の讓渡を爲すべき旨の裁定を爲さんとする場合に於て當該土地の上に存する工作物に付前條第三項の規定に依る申請ありたるときは當該工作物に付ても讓渡を爲すべき旨の裁定又は當該工作物の移轉料に關する裁定を爲すことを要す
土地の讓渡又は使用收益の權利の設定若は讓渡を爲すべき旨の裁定に於ては左に掲ぐる事項を定むることを要す
一 讓渡を爲すべき土地の區域又は設定若は讓渡を爲すべき使用收益の權利の種類及當該權利の目的たる土地の區域竝に讓渡を爲すべき工作物
二 對價(工作物の移轉料を含む以下同じ)竝に其の支拂の方法及時期
三 土地又は工作物の引渡の時期及土地の使用收益の權利の存續期間
裁定は其の理由を附し文書を以て之を爲すべし
都道府縣農地委員會が裁定を爲したるときは其の裁定書の謄本を添へ地方長官に報告すべし
第四條の四 第四條第一項の規定に依る認可又は前條第二項若は第三項の規定に依る土地の讓渡を爲すべき旨の裁定は左の各號の一に該當する農地に付ては之を爲すことを得ず
一 自作地
二 農地の所有者が其の住所又は居所の存する市町村及其の隣接市町村の區域内に於て勅令を以て定むる面積(以下一定の面積と稱す)を超えざる農地を所有する場合其の所有に係る當該區域内の農地
三 農地の所有者が其の住所又は居所の存する市町村及其の隣接市町村の區域内に於て一定の面積を超ゆる農地を所有する場合其の一定の面積を超えざる範囲内に於て保有せんとする當該區域内の農地
四 都市計畫法に依る土地區劃整理施行地區内に在る農地にして地方長官の指定する區域内に在るもの
五 自作地に非ざるも市町村農地委員會に於て近く其の所有者が自作を爲すものと認め且其の自作を相當と認むる農地
六 其の他命令を以て定むる農地
第四條の五 地方長官第四條の三第九項の規定に依る報告を受け又は同條第三項の規定に依る裁定を爲したるときは命令の定むる所に依り之を公示し且裁定書の謄本を申請人及當該裁定に係る土地の所有者其の他之に關し權利を有する者に送付すべし
土地若は工作物の讓渡又は土地の使用收益の權利の設定若は讓渡を爲すべき旨の裁定又は工作物の移轉料に關する裁定に付前項の規定に依る公示ありたるときは其の裁定に定むる所に依り當事者間に協議調ひたるものと看做す
第四條の六 前條第二項の場合に於て土地又は建物の所有權其の他の物權の取得に付對價の全部の支拂又は供託ありたるときは其の登記は登記權利者のみにて之を申請することを得
第四條の七 第四條の五第二項の場合に於て土地又は工作物の所有權其の他の權利の取得に付對價を支拂ふべき者裁定に定むる時期迄に對價の全部の支拂又は供託を爲さざるときは裁定は其の效力を失ふ
第四條の八 第四條の三第二項又は第三項の規定に依る裁定に對して不服ある者は主務大臣に訴願することを得
違法の裁定に依り權利を傷害せられたりとする者は行政裁判所に出訴することを得
第四項の規定に依り通常裁判所に出訴を許したる事項に關しては行政訴訟を提起することを得ず
第四條の三第二項又は第三項の規定に依る裁定中對價の決定に對して不服ある者は通常裁判所に出訴することを得但し裁定書の騰本の送付を受けたる日より三月を經過したるときは此の限に在らず
對價を支拂ふべき者前項の出訴を爲すときは其の對價を供託することを得但し對價を受くべき者の請求あるときは自己の見積金額を支拂ふべし
第四條の九 第四條の二、第四條の三又は第四條の五乃至第四條の七の規定に依り爲したる手續其の他の行爲は土地の所有者其の他之に關し權利を有する者の承繼人に對しても其の效力を有す
第四條の十 第四條乃至前條の規定は第四條第一項の團體又は市町村農地委員會が第三者の申出に依り同項の自作農創設維持の事業として當該第三者をして土地の所有權又は使用收益の權利を取得せしむる場合に付之を準用す但し第四條の五第二項中當事者とあるは當該土地又は工作物の所有者其の他之に關し權利を有する者及當該第三者とす
第四條の十一 第四條乃至第四條の三及第四條の五乃至第四條の九の規定は農地開發營團、都道府縣、市町村農業會其の他命令を以て定むる者が開發(第四條第一項の團體が同項の自作農創設維持の事業として行ふ開發を除く)せんとする未墾地其の他其の開發に必要なる土地の譲渡又は使用收益の權利の設定若は譲渡に付之を準用す
前項に於て準用する第四條の三第二項又は第三項の規定に依り地方長官又は都道府縣農地委員會が未墾地の譲渡の對價に關し裁定を爲す場合に於ては當該未墾地の對價は近傍類似の農地の價格より命令を以て定むる開墾費を減じたる額を超えて之を定むることを得ず
第四條の十二 第四條乃至第四條の三及第四條の五乃至第四條の九の規定は第四條の五第二項(前二條に於て準用する場合を含む)の規定に基き取得する土地又は之に關する權利に付擔保權が存する場合當該擔保權の處理に付之を準用す
前項の規定に依り擔保權が消滅するときは當該土地又は之に關する權利の對價を支拂ふべき者は其の對價を供託することを要す但し協議又に裁定に於て別段の定を爲したるときは此の限に在らず
前項の場合に於ては當該擔保權者は供託金に對し其の權利を行ふことを得
第五條 農地の所有權、賃借權、地上權其の他の權利の設定又は移轉は命令の定むる所に依り當事者に於て地方長官又は市町村長の認可を受くるに非ざれば其の效力を生ぜず
第六條 前條の規定は左の各號の一に該當する場合には之を適用せず
一 第三條の團體が同條の事業を行ふ爲前條に掲ぐる權利を取得する場合
二 第四條第一項の自作農創設維持の事業を行ふ爲農地を取得する場合又は命令を以て定むる自作農創設維持の事業に依り農地を取得する場合
三 農地を耕作の目的に供する爲前條に掲ぐる權利を取得する場合
四 前條に掲ぐる權利の取得に關し當事者の一方が國、都道府縣又は農地開發營團なる場合
五 土地收用法其の他の法令に依り農地を收用する場合
六 其の他命令を以て定むる場合
第六條の二 農地の價格は第六條の四に定むる場合を除くの外當該農地の地租法に依る賃貸價格に主務大臣の定むる率を乘じて得たる額を超えて之を契約し、支拂ひ又は受領することを得ず但し農地の價格に付命令の定むる所に依り譲渡人又は譲受人に於て地方長官の許可を受けたる場合及命令を以て定むる場合は此の限に在らず
主務大臣前項の率を定めたるときは之を告示す
第一項の規定は前項の規定に依る告示ありたる際現に農地に付存する讓渡契約にして當該農地に付既に讓受人の權利に關する登記ありたるもの又は當該農地の引渡を完了したるものに付ては之を適用せず
第六條の三 地方長官市町村農地委員會の申請ありたる場合に於て特に必要ありと認むるときは都道府縣農地委員會の意見を聽き當該申請に係る區域に付前條第一項の率に代るべき率を定め又は同項に規定する以外の規準に依り同項の額に代るべき額を定むることを得
地方長官前項の規定に依り率又は額を定めたるときは之を公示す
前項の規定に依り公示ありたるときは其の率又は額を以て前條の率又は額と看做す
第六條の四 地租法に依る賃貸價格なき農地を讓渡す場合には其の價格に付命令の定むる所に依り譲渡人又は譲受人に於て地方長官の認可を受くべし
前項の場合に於て農地の價格は同項の認可ありたる額を超えて之を契約し、支拂ひ又は受領することを得ず
第七條中「前條」を「第四條第一項又は第六條」に改む
第七條の二 第四條第一項の自作農創設維持の事業に依り農地を取得したる者が取得の時より二年内に當該農地を耕作以外の目的に供する爲譲渡したる場合又は當該農地が取得の時より二年内に收用せられたる場合に於て當該農地の譲渡價格又は補償金額が當該農地の譲渡に因り舊所有者の取得したる金額を超ゆるときは舊所有者は農地を譲渡し又は收用せられたる者に對し其の超過額を請求することを得但し當該農地の譲渡又は收用ありたる日より二年を經過したるときは此の限に在らず
第九條第三項中「豫め其の旨を市町村農地委員會に通知すべし」を「市町村農地委員會の承認を受くべし」に改む
第九條の二 小作料は金錢以外の物を以て又は金錢以外の物を基準として之を契約し、支拂ひ又は受領することを得ず
前項の規定に違反する契約に付ては命令の定むる所に依り金錢に換算せられたる小作料の額又は減免條件(金錢に換算せられたるものが第九條の三各號に掲ぐる小作料の額又は減免條件に比し農地の賃借人又は永小作權者に不利なる場合に在りては同條各號に掲ぐる小作料の額及減免條件を以て契約を爲したるものと看做す
第九條の三 小作料は左の各號に掲ぐる小作料の額又は減免條件に比し農地の賃借人又は永小作權者に不利と爲るべき額又は減免條件を以て之を契約し、支拂ひ又は受領することを得ず但し特別の事由ある場合に於て農地の所有者又は賃貸人が命令の定むる所に依り地方長官の許可を受けたるときは此の限に在らず
一 小作料統制令廢止の際小作料の定ある農地に付ては其の小作料の額及減免條件(金錢以外の物を以て又は金錢以外の物を基準として定められたる小作料の額及減免條件に在りては命令の定むる所に依り金錢に換算せられたる小作料の額及減免條件)
二 前號に該當せざる農地に付ては小作料統制令廢止後に於ける最初の小作料の額及減免條件
第九條の四 市町村農地委員會必要ありと認むるときは地方長官の認可を受け當該市町村に在る農地に付前條各號に掲ぐる小作料の額又は減免條件に代るべき小作料の額又は減免條を定むることを得
地方長官前項の認可を爲さんとするときは都道府縣農地委員會の意見を聽くことを要す
地方長官第一項の認可を爲したるときは命令の定むる所に依り其の旨を公示すべし
前項の規定に依る公示ありたるときは其の小作料の額又は減免條件を以て前條各號に掲ぐる小作料の額又は減免條件と看做す
前四項の規定は公示せられたる小作料の額又は減免條件を變更する場合に之を準用す
第九條の五 行政官廳前二條の規定に依る小作料の額又は減免條件著しく不當なりと認むるときは第九條の三各號に掲ぐる小作料の額又は減免條件に代るべき小作料の額又は減免條件を定むることを得
地方長官前項の規定に依り小作料の額又は減免條件を定めんとするときは都道府縣農地委員會の意見を聽くことを要す
前條第三項乃至第五項の規定は第一項の場合に之を準用す
第九條の六 前二條の規定は裁判、裁判上の和解又は小作調停法に依る調停に依り定まりたる小作料の額又は減免條件に付ては之を適用せず
第九條の七 第九條の二乃至前條の規定は敷金、補償金穀、修繕費及用排水費の負擔竝に小作料の額及減免條件以外の農地の賃貸借若は永小作又は之に附隨する契約の條件にして命令を以て定むるものに付之を準用す
第九條の八 何等の名義を以てするを問はず第六條の二第一項、第六條の四第二項又は第九條の二第一項若は第九條の三(第九條の七に於て準用する場合を含む)の規定に依る制限を免るる行爲を爲すことを得ず
第十五條 市町村に市町村農地委員會を置く
市町村農地委員會は地方長官の監督に屬し左に掲ぐる事項を處理す
一 本法に依り其の權限に屬せしめたる事項
二 其の他農地關係の調整に關し勅令を以て定むる事項
第十五條の二 市町村農地委員會は會長及委員十五人を以て之を組織す
會長は委員に於て互選し其の選に當りたる者を以て之に充つ
委員は○左の各號の區分に従ひ各號の一に該當し被選擧權を有する者に就き當該各號に該當し選擧權を有する者之を選擧す
一 農地の所有者にして當該市町村の區域内に於て所有する農地に付耕作の業を營まざるもの又は當該市町村の區域内に於て所有する農地の面積が其の區域内に於て耕作の業を營む農地の面積の二倍を超ゆるもの
二 耕作の業を營む者にして當該市町村の區域内に於て農地を所有せざるもの又は當該市町村の區域内に於て耕作の業を營む農地の面積が其の區域内に於て所有する農地の面積の二倍を超ゆるもの
三 當該市町村の區域内に於て農地を所有し且耕作の業を營む者にして前二號に該當せざるもの
前項各號の規定に依り選擧せらるべき委員の定數は各五人とす
委員は名譽職とす
第十五條の三 市町村の區域内に住所を有し當該市町村の區域内に於て命令を以て定むる面積の農地を所有する者又は命令を以て定むる面積の農地に付耕作の業を營む者は市町村農地委員會の委員の選擧權及被選擧權を有す
第十五條の四 左に掲ぐるものは選擧權及被選擧權を有せず
一 六年の懲役又は禁錮以上の刑に處せられたる者
二 六年未滿の懲役又は禁錮の刑に處せられ其の刑の執行を終り又は執行を受くることなきに至る迄の者
左に掲ぐるものは被選擧權を有せず
一 未成年者
二 禁治産者又は準禁治産者
三 破産者にして復權を得ざるもの
第十五條の五 選擧に關する事務は市町村長之を擔任す
第十五條の六 選擧は投票に依り之を行ふ
投票は一人一票に限る
投票は選擧人自ら投票所に到り投票用紙に被選擧人一人の氏名を自書し之を行ふべし但し未成年者及禁治産者に在りては法定代理人、法人に在りては其の代表者之を行ふものとす
選擧人(前項但書の法定代理人及代表者を含む)にして命令の定むる事由に因り選擧の當日自ら投票所に到り投票を行ふこと能はざるべきことを證する者の投票に關しては前項本文の規定に拘らず命令を以て特別の定を爲すことを得
投票用紙には選擧人の氏名を記載することを得ず
第十五條の七 投票の多數を得たる者を以て當選人とす得票數同じきときは年齡多き者を取り年齡も亦同じきときは抽籤を以て之を定む
第十五條の八 委員に當選したる者は正當の事由なくして之を辭することを得ず
第十五條の九 委員の任期は選擧期日の屬する月より一年とす
補闕委員は其の前任者の殘任期間在任す
委員は其の任期滿了したるときと雖も後任の委員就任する迄仍其の職務を行ふ
第十五條の十 ○委員被選擧權を有せざるに至りたるとき又は其の屬したる第十五條の二第三項の區分に屬せざるに至りたるときは其の職を失ふ
第十五條の十一 市町村農地委員會は定員の過半數に當る委員出席するに非ざれば會議を開くことを得ず
議事は出席員の過半數を以て之を決す可否同數なるときは會長の決する所に依る
第十五條の十二 委員は自己及自己と同一戸籍内に在る者に關する事件に付議事に與ることを得ず
第十五條の十三 都道府縣に都道府縣農地委員會を置く
都道府縣農地委員會は主務大臣及地方長官の監督に屬し左に掲ぐる事項を處理す
一 本法に依り其の權限に屬せしめたる事項
二 其の他農地關係の調整に關し勅令を以て定むる事項
第十五條の十四 都道府縣農地委員會は會長及委員を以て之を組織す會長は地方長官を以て之に充つ
委員は左に掲ぐる者を以て之に充つ
一 郡(北海道に在りては支廰長の管轄區域)毎に町村農地委員會の會長たる者の中より一人を互選し其の選に當りたる者
二 市農地委員會の會長たる者の中より一人を互選し其の選に當りたる者(市農地委員會一なる場合に於ては其の市農地委員會の會長たる者)
三 學識經驗ある者の中より主務大臣の選任したる者 五人乃至十人
第十五條の十五 第十五條の二第五項、第十五條の八乃至第十五條の十二の規定は都道府縣農地委員會に之を準用す
第十五條の十六 市町村農地委員會及都道府縣農地委員會は第十五條又は第十五條の十三に規定する事項を處理する爲必要あるときは農地の所有者又は耕作者其の他關係者に對し其の出頭を求め若は必要なる報告を徴し又は委員をして農地其の他必要なる場所に就き所要の調査を爲さしむることを得
第十五條の十七 市町村農地委員會に關する費用は市町村、都道府縣農地委員會に關する費用は都道府縣之を負擔す
第十五條の十八 第十五條乃至前條に規定するものの外市町村農地委員會及都道府縣農地委員會に關し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第十六條中「第四條」を「第四條第一項」に改む
第十七條 行政官廳必要ありと認むるときは農地其の他の土地若は物件に關し必要なる報告を徴し又は當該官吏をして日出より日沒迄の間農地其の他必要なる場所に臨檢し其の状況若は帳簿書類其の他の物件を檢査せしむることを得
第十七條の二 第十五條の二第三項各號の區分の何れかに付被選擧權者の數同條第四項に規定する定數に滿たざる市町村其の他特別の事情ある市町村には勅令の定むる所に依り市町村農地委員會を置かざることを得此の場合に於ては本法に依り市町村農地委員會の權限に屬せしめたる事項は市町村長之を處理す
第十七條の三 本法中町村又は町村長に關する規定は町村制を施行せざる地に在りては之に準ずるものに、市又は市長に關する規定は東京都の區の存する區域、京都市、大阪市、横濱市、名古屋市及神戸市に在りては地方長官の指定する區又は區長に之を適用す
東京都の區の存する區域は第四條の四の規定の適用に付ては之を一市と看做す
第十七條の四 第六條の二第一項、第六條の四第二項、第九條の二第一項若は第九條の三(第九條の七に於て準用する場合を含む)又は第九條の八の規定に違反したる者は二年以下の懲役又は一萬圓以下の罰金に處す
第十七條の五 左の各號の一に該當する者は六月以下の懲役又は五百圓以下の罰金に處す
一 第九條第三項の規定に違反したる者
二 第十七條の規定に依る報告を怠り若は虚僞の報告を爲し又は當該官吏の臨檢檢査を拒み、妨げ若は忌避したる者
第十七條の六 法人の代表者又は法人若は人の代理人、使用人其の他の從業者其の法人又は人の業務に關し第十七條の四又は前條第一號若は第二號前段の違反行爲を爲したるときは行爲者を罰するの外其の法人又は人に對し各本條の罰金刑を科す
附 則
第一條 本法施行の期日は各規定に付勅令を以て之を定む
第二條 第六條の四の改正規定は同條の規定施行の際現に農地に付存する讓渡契約にして當該農地に付既に讓受人の權利に關する登記ありたるもの又は當該農地の引渡を完了したるものに付ては之を適用せず
第三條 第九條の二の改正規定は昭和二十年以前の産米を以てする小作料の支拂及其の受領に付ては之を適用せず
第四條 從前の規定に依る市町村農地委員會又は都道府縣農地委員會は本法に依る市町村農地委員會又は都道府縣農地委員會の成立に至る迄存續するものとし本法に依り市町村農地委員會又は都道府縣農地委員會の權限に屬せしめられたる事項を處理す
前項に規定するものを除くの外第十五條乃至第十五條の十八の改正規定施行の際市町村農地委員會又は都道府縣農地委員會に關し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第五條 小作料統制令、臨時農地價格統制令及臨時農地等管理令は之を廢止す
前項の規定施行前小作料統制令、臨時農地價格統制令又は臨時農地等管理令に基き爲したる許可若は認可又は許可若は認可の申請は之を本法の相當規定に基きて爲したるものと看做す
第一項の規定施行前に爲したる行爲に關する罰則の適用に付ては小作料統制令、臨時農地價格統制令及臨時農地等管理令は仍其の效力を有す
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〔國務大臣松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=35
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036・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 農地調整法中改正法律案に付きまして、大體の御説明を申上げたいと存じます、今日食糧問題が極めて重大でありますことは申す迄もありませぬ、此の問題を眞に解決致しますには、啻に眼前の問題を處理するのみでなく、其の由つて來たる根本問題を解決し、之に依つて堅實なる農家及び農村を育成し、此の基礎の上に有らゆる食糧問題、農村問題を解決しなくてはならないと申すことは、大體世の一致せる意見であると思ふのでございます、然るに戰時中には、是等の根本の問題に觸るる暇がない、主として供出、配給など目前に差迫りました問題のみを取扱ひまして、農村の根本に培ふことを怠りましたことが、今日の窮迫せる食糧問題の大きな原因を爲し、農村の健全なる發達を阻害致しましたことは遺憾ながら之を認めざるを得ないと存ずるのでございます、今日の農村は物資に惠まれたりと言はれて居りますけれども、事實に於て農村の基本は何等改善せらるることなく、寧ろ惡化の傾向にあるを憂うるものであります、而して此の農村を建て直すには、農地の制度を改善し、耕作者の地位の安定と農業經營の合理化を圖り、之に依り速かに農村の發展の基礎を作ることが何よりの根本的急務であるのであります、農地制度の改革は我が國農業問題の多年の縣案でありまして、一日も速かに最も穩健著實なる方法を以て之が改革をなし、農業の基礎を定むるに非ざれば食糧の増産は勿論、思想の上からも、文化の上からも極めて安定せざる状態に置かるる虞があるのでございます、今日の場合、農村の安定は即ち新日本の安定であり、此の基礎の上に日本の再建が行はれなければならぬと考へますとき、此の農地制度の改革が一日も忽せに出來ないことは明かでございます、若し此の儘放置せらるる時は、農村の不安定、延いては社會の不安定が一層助長せらるる虞があるのでありまして、一日も忽せにすべからざることと考へらるるのでございます、今囘政府が此の臨時議會に本案を提出致しました所以も、實に茲に存するのでありまして、之に依り農家が多年熱望して措かなかつた農地を所有し、其の生産に安んじて努力する基礎を得ると共に、地主も亦自作農創設の爲の土地の提供に對しては相當の代償を得、國家も亦安定したる農村と食糧問題解決の基礎を得る次第でありまして、農地改革は此の方策を措いて他に途なしと信ずるものでございます、更に自作農創設の外、尚殘る小作關係に付きましても、之を金納化し、小作農制度の適正を圖らむとするものであります、以上本案の内容の主なるものを御説明致します、自作農創設の強化、自作農創設は五箇年間に約百五十萬町歩に付て實施せむとするものでありまして、其の中百萬町歩は不在地主の土地と、全國平均で五町歩以上の農地を所有する地主の五町歩を超ゆる小作地を豫定致して、殘り五十萬町歩は自作農創設の爲に地主が自發的に提供する農地を豫定して居るのであります、此の農地の讓渡に關しましては、兩當事者の話合で圓滑に行はれることを希望して居る次第でありますが、萬一協議の整はぬ場合には、農地の提供を促進する爲、都道府縣農地委員會に於て、讓渡を裁定し得る途を開いたのであります、次に農地の讓渡價格に付きましては、從來田に付ては全國平均賃貸價格の三十三倍、畑に付ては四十倍で統制致して居つたのでありますが、本案では之を引上げまして、田は賃貸價格の四十倍、畑は四十八倍と致すと共に、農地を提供したる地主に對しましては、此の價格の外に更に相當額の報獎金を國庫より交付することと致したのであります、更に本施設に要する資金の融通に付きましては、成るべく小作農家の自己資金を活用せしむることと致し、必要なる場合は長期年賦償還の方法に依り、政府資金を融通することと致したのであります、尚地主の土地賣却代金に付きましては、其の使用處分を制限し、之を長く保有せしむると共に、「インフレーション」の防止にも役立たせたいと存じて居る次第であります、二、小作料の金納化、現物小作料契約は金納契約に改定せしむることと致し、其の換算の基準は米に付ては昭和二十年産米の地主價格、麥類に付ては昭和二十年産麥の政府買上價格、其の他の現物に付ては、本法施行當日に於ける公定價格に依ることと致したのであります、三、市町村農地委員會の刷新、市町村農地委員會は之を改組し、委員は地主、自作、小作の各各の立場を正當に代表し得るやうな選擧方法を以て選出せしめますと同時に、之に廣汎なる權能を與へまして、自作農創設の促進、小作料の適正化等、農地問題の自主的解決を行はしむることと致した次第であります、本案の内容は大體以上の通りでございます、何卒愼重御審議の上速かに御協贊あらむことを切望する次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=36
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037・戸澤正己
○子爵戸澤正己君 只今議題となりました農地調整法中改正法律案は、其の委員の數を二十七名とし、其の委員の指名を議長に一任するの動議を提出致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=37
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038・秋田重季
○子爵秋田重季君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=38
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039・島津忠重
○假議長(公爵島津忠重君) 戸澤子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=39
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040・島津忠重
○假議長(公爵島津忠重君) 御異議ないと認めます、特別委員の氏名を朗讀致させます
〔寺光書記官朗讀〕
農地調整法中改正法律案特別委員
公爵 桂廣太郎 侯爵 細川護立
侯爵 池田宣政 伯爵 堀田正恒
子爵 野村益三 子爵 保科正昭
子爵 土岐章 子爵 大岡忠綱
子爵 稻垣長賢 石黒忠篤
三井清一郎 内田重成
男爵 小畑大太郎 男爵 稻田昌植
男爵 杉溪由言 男爵 岩村一木
三浦新七 宮田光雄
松村義一 唐澤俊樹
千石興太郎 菅澤重雄
鹽田團平 二瓶泰次郎
岩田三史 佐藤助九郎
柴田兵一郎
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=40
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041・島津忠重
○假議長(公爵島津忠重君) 次會の議事日程は、決定次第彙報を以て卸通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後四時二十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01219451215&spkNum=41
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