1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十年十二月十七日(月曜日)午後一時七分開議
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議事日程 第十三號
昭和二十年十二月十七日
午後一時開議
第一 鹽專賣法中改正法律案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第二 昭和二十年法律第十八號中改正法律案(政府提出、衆議院送付)第一讀會の續(委員長報告)
第三 貿易資金設置に關する法律案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第四 農業團體法中改正法律案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第五 水産業團體法中改正法律案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第六 戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
第七 蠶絲業法改正法律案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=0
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001・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 一昨十五日公爵三條實春君褒爵仰付られたるに依り、貴族院議員に就職せられました、仍て其の部屬を第四部に定めました
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=1
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002・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告を致させます
〔小野寺書記官朗讀〕
昨十六日農地調整法中改正法律案特別委員會に於て當選したる正副委員長の氏名左の如し
委員長 男爵稻田昌植君
副委員長 子爵保科正昭君
同日委員長より左の報告書を提出せり
鹽專賣法中改正法律案可決報告書
昭和二十年法律第十八號中改正法律案可決報告書
貿易資金設置に關する法律案可決報告書
勞働組合法案可決報告書
農業團體法中改正法律案可決報告書
水産業團體法中改正法律案可決報告書
戰時森林資源造成法中改正法律案可決報告書
蠶絲業法改正法律案可決報告書
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=2
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003・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 是より本日の會議を開きます、昨十六日近衞公爵薨去せられました、同公爵は、諸君の御承知の如く昭和六年一月より本院副議長に任ぜられ、又昭和八年六月以降十二年六月迄四箇年本院議長の職を勤められました、此の度薨去せられましたことは、誠に哀悼の至りに堪へませぬ、仍て弔辭を贈りたいと存じます、御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=3
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004・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=4
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005・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 日程第一、鹽專賣法中改正法律案、日程第二、昭和二十年法律第十八號中改正法律案、日程第三、貿易資金設置に關する法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會の續、委員長報告、是等の三案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=5
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006・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、委員長高橋子爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=6
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007・会議録情報2
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鹽專賣法中改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 子爵高橋是賢
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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昭和二十年法律第十八號中改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 子爵高橋是賢
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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貿易資金設置に關する法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 子爵高橋是賢
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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〔子爵高橋是賢君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=7
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008・高橋是賢
○子爵高橋是賢君 只今議題となりましたる鹽專賣法中改正法律案外二件の特別委員會に於ける審議の經過及び結果に付て御報告を致します、本委員會は去る十五日開催致しまして、正副委員長の互選を行ひ、引續き會議を開き、政府御當局より各法案に付きまして詳細なる説明を聽取致し、昨十六日配審議を續けまして、三法案は孰れも可決すべきものと決定致した次第でございます、以下各法案に關する主なる質疑應答の二三を御紹介申上げます、先づ鹽專賣法中改正法律案に付て申述べます、此の法案の目的は、鹽の増産を促進する爲に隘路となるやうな諸點を改正する爲の法案でありまして、即ち色々の從來の制限や規則等に拘らず勅令を以て別段の定めを爲し得ることと致し、又第十八條に價格を一石當り二圓五十錢と規定してありますのを、此の額を超えて賠償を爲し得ることと致した次第でございます、是より質疑の主なるものを申上げますれば、一委員より輸入鹽の状況に付て御質疑がございました、政府は輸入量の一番多かつたのは昭和十四年度でありまして、即ち百八十六萬「トン」輸入致したさうであります、以來逐年に減少を致しまして、今年の上半期に於きましては、四十三萬「トン」、下半期に於きましては二十萬「トン」と云ふ減少を來したのであります、尚目下聯合國最高司令部に對しまして、輸入許可を懇請中のものが約三十四萬「トン」程あります、其の中の約三分の一は確實に許可され得る見込みださうであります、又國内製鹽の状況に付ても御質問がありました、國内製鹽量は失張り昭和十四年度が最高でありまして、六十三萬「トン」であります、其の後漸次減少の一途を辿りまして、今年上半期には十二萬「トン」、下期には九月の暴風雨の被害等に依りまして一層減少を來たし、詰り鹽田の六割七分が罹災を致しまして、其の町歩は二千八百町歩程あるのであります、それが爲に僅かに四萬五千「トン」でありまして、合計本年度の産額は十六萬「トン」餘と推定せられるのであります、尚之が政策と致しましては、被害鹽田の全部を急速に復舊する計畫を以て各地方にそれぞれ著手しつつあるとの御答辯でありました、又一委員より民間の自給製鹽に對してはどう云ふ方法を以てやるかと云ふ御質問がありました、政府は自給鹽に對しては、復舊費の八割、即ち四千三百餘萬圓の費用の中に三千五百餘萬圓を補助して、今後數年間に當業者の損害を償ひ得るやうに鹽の値段を引上げる方針である旨御答辯がありました、尚製鹽に關する恆久的の計畫があるかと云ふ御質問がありまして、政府は大いに計畫を樹立して、來議會には之を提案し御協贊を得たい積りであると云ふ御答辯でありました、又一委員より鹽の賠償政策の大要に付ての御質問がありました、政府は專用鹽に付ては嚴格な原價計算を致しまして之を賠償し、又自給鹽に付ては原價に六七分の利潤を見込みまして賠償をする方針であるとの答がありました、又一委員よりは、鹽の取扱に關しては色々各方面の官廰に跨つて居るやうであるが、之を統括して一つの省に纒める考がないかと云ふ御質問でありましたが、政府は鹽の生産、配給等に付ては商工省、農林省及び地方廰等の手を煩すことが非常に多いので、併し之を孰れの省に纒めたが宜いかと云ふことに付ては、大いに考慮を要する問題だと思ふが、元來鹽の專賣の目的は國庫の收益を目的としたのであるが、近來其の目的に副はず常に赤字を出して居るやうな有樣であるが、唯從來の沿革上から大藏省が此の大元締めをやつて居ると云ふに過ぎないのであると云ふ御答辯でありました、尚一委員から日本の全使用量及び將來の需要量と云ふものはどうであるかと云ふ御質問でありました、で政府は遠き將來のことは豫測に難いが、先づ茲數年間の見透しの豫想は、一箇年百十萬「トン」と推定される、尚工業鹽として、百萬「トン」其の外にあるから、合計先づ二百萬「トン」は必要だと考へると云ふ御答でありました、又一委員から、鹽は國民保健上なかなか貴重なものである、であるが、此の増産に當り自給鹽の生産指導が、今迄の所は單に形式に流れて居る憾みがある、もう少し實演をして指導したらどうかと云ふ御質問もありましたが、政府は御尤もである、之が爲には各方面に專門家を派出して指導し、又實際を視察せしめて懇切なる指導を行つて居るのであると云ふことでありました、尚成績の好いものに對して、表彰をしてやる考はないかと云ふ御尋がありました、此の表彰に付ては、其の考案とか創意工夫と云ふものを、唯紙の上でなく、之を一旦實行に移して、其の上で慎重に行ふ方針である、斯う云ふ御答がありました、又鹽の消費の方面に付て、大分無駄があるやうである、之を排除する目的を以て、生活科學協會等を通じて節約を奬勵して居ると同時に、最近發見に及んだ所の、鹽魚の爲に使ふ鹽を從來の三分の一で足りるやうな方法が發見されたので、早速是は北海道方面に實施を致して著々實行を致して居る譯である、又一委員より、二十年度の食糧用鹽の配給量と、二十一年度に於ける配給量とどつちが多くなるのかと云ふ御質問がありましたが、政府は來年度は幾分配給は増加し得る見込だとの御答辯でありました、又他の委員から政府は増産促進の目的を以て買上値段を引上げると仰せだが其の程度はどう云ふものであらうか、之に對して政府は、現在二百「グラム」に付て五錢と云ふのであるが、之を先づ五倍位に引上げる考である、さうして之を引上げた結果はどうなるかと言へば、現在十五億六千萬圓の赤字になつて居るものが、價格引上の結果四百三十五萬圓の黒字になると云ふ計算が出るのであると云ふ御答辯でありました、先づ鹽に付きましては此の位のことを申上げて置きます、次に昭和二十年法律第十八號中改正法律案に付て申上げます、是は所謂赤字公債でありまして、別に大した御質疑がありませぬでしたが、一委員より、此の公債は本年度に發行するのであるかと云ふ御質問がありました、之に對して大藏大臣は、發行する意思であると云ふ御答辯がありまして、其の外に何等御質疑はありませぬでした、最後に貿易資金設置に關する法律案に付て申上げます、貿易物資の製作に必要なる原料と云ふやうなものは、政府から特別に心配して配給して貰へるのかと云ふ御質疑がありましたが、政府は、是は本當の眞の貿易とは言ひ難いので、唯聯合國司令部との間に話合で以て成立つ貿易であるから、眞の貿易とは言ひ難いのであるが、併しさう云ふ場合に原料、材料が必要とあれば、政府は極力其の獲得に努力する考であると云ふ御答辯でありました、又貿易物資の價格に付て御質問がございました、是は貿易物資を製作する上に、今日迄丸公であるとか、或は九・一八とか云ふもので釘附にされて居る爲に、非常に不利である、又製作者の努力する意思が鈍る、是は政府はどう考へて居るかと云ふ質問でありました、政府は價格を勿論丸公や九・一八で將來やつて行かうと云ふことは無理である、仍て今後之が價格の決定に付きましては、委員會を設けまして、さうして決定をする、又爲替に付ても今考慮中であるが國際價格に依ることとして、「アメリカ」に對しては「ドル」を用ひる「ドル」建にすると云ふことの御答辯でありました、同一委員より、委員會結構であるが、此の委員會の組織と云ふものに付ては餘程愼重に御願をしなければならぬと思ふ、どう云ふ風な御考であらうかと云ふ御質問でした、政府は、此の委員の仰せられた通り、今日のやうに産業道徳の頽廢と云ふやうなことは大いに此の製作に關係を持ち、惡影響を及すのであるが、此の道徳の昂揚、或は科學知識の推進に付て、或は石炭の如きも製作上甚だ必要な物であるから、是はもう貿易上から見て忽せに出來ないものであつて、大藏當局としては十分之が獲得に努力する考であると云ふ御答辯がありました、又一委員より、今日の日本の商工經濟の現状は實に寒心すべき色々な缺點があるが、政府としてはどう御考にならうかと云ふ御質問でありましたが、政府は出來得る限り劣惡品を作ると云ふことを排除し、優良品の製作を奬勵して、さうして商工組合等の戰時色を拂拭して、さうして例へば繊維とか、鐵とか云ふやうな量的に乏しい物に付ての統制も、官の指示に依つてでなく、民間團體の創意に依るのを宜いと考へる、それで來議會には具體案を得て之に關する法案を提出、協贊を得たいと考へて居ると云ふ御答辯でありました、尚一委員より石炭の見込はどうであるかと云ふ御質問でありましたが、當局は去る十一月中旬がどん底である、それからして今日漸増の傾向を辿つて居る、政府としては之が爲に從業者の待遇及び賃銀の値上等種々改善の手を盡して居ると云ふ御答辯でありました、先づ其の位な所で止めて置きまして、此の三案に付きまして討論に入りましたが、何も御意見も出ず、次で採決に入りましたが、各案共に原案の通り滿場一致を以て可決すべきものと決定致した次第でございます、甚だ簡單でありましたが、此の御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=8
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009・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ、三案の採択を致します、三案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=9
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010・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=10
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011・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=11
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012・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=12
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013・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=13
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014・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=14
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015・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 三案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、三案全部、委員長の御報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=15
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016・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=16
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017・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第三讀會を開かれむこ事を希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=17
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018・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=18
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019・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=19
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020・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 異議ないと認めます
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=20
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021・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 三案の第三讀會を開きます、三案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=21
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022・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=22
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023・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 日程第四、農業團體法中改正法律案、日程第五、水産業團體法中改正法律案、日程第六、戰時森林資源造成法中改正法律案、日程第七、蠶絲業法改正法律案、政府提出、衆議院送付、第一讀會の續、委員長報告、是等の四案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=23
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024・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、委員長徳川伯爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=24
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025・会議録情報3
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農業團體法中改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 伯爵徳川宗敬
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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水産業團體法中改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 伯爵徳川宗敬
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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戰時森林資源造成法中改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 伯爵徳川宗敬
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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蠶絲業法改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 伯爵徳川宗敬
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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〔伯爵徳川宗敬君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=25
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026・徳川宗敬
○伯爵徳川宗敬君 只今議題となりました農業團體法中改正法律案外三件に關する、特別委員會の經過竝に結果を御報告申上げます、特別委員會は十二月十五日及び十六日の両日に亙り開催致し、審議を進めまして、四案共可決すべきものと決定致しました、先づ各法案の要點に付御説明を申上げます、第一に農業團體法關係でありますが、其の要點は現行法に於きましては農業團體は農業に關する國策即應の機關たる旨が強調せられ、從つて官廳的色彩が極めて濃厚なる性格を有して居るのであります、それ故此のやうな根本的性格を改め、眞に自治的活動を本義とする團體たるの趣旨を明かにし、此の趣旨に基きまして第一に役員の制度に改正を加へむとするものであります、即ち現在役員には會長、副會長、理事、監事等がありまして、會長は單獨代表權、或は副會長理事の任命權の如き強き機能を與へられて居るのでありますが、是等を改め、役員としては理事及び監事を置き、一般法人と同樣事務執行を理事の合議に依らしめると共に、其の代表權も各理事に有せしむるやうに致して居るのであります、改正の第二點は、役員の選任方法に關する改正でありまして、行政官廳が會長を任命し、或は副會長理事の選任に付、認可制度を採つて居る現行制度を改め、役員は一般には、專ら會員の意思に依り總會に於て選任せしむるものと致し、市町村農業會の理事に付きましては、特に會員の意思を十分に反映せしめる爲に、直接選舉に依ることと致して居るのであります、以上の外、改正の内容となつて居ります點は、認可其の他行政官廰の權限縮小乃至廢止、總動員勅令に基く全國農業會を、本法に基く農業團體に改組せる等の點であります、次に水産業團體法關係に付きましては、農業團體と略略同樣の改正を爲して居りますが、唯是と異ります點は、水産業團體の特殊性に基き、漁業會の理事の選任は選擧に依らず、總會に於て之を爲すこととして居ることであります、戰時森林造成法關係に付きましては、本法が戰時中制定せられたものでありますが故に、名稱其の他のものが戰時的になつて居りますものを、平時化すると共に、若干の所要の改正を爲して居るのであります、次に蠶絲業法關係に付きましては、改正の内容の第一は、日本蠶絲統制株式會社の解散に伴ふ善後措置でありまして、同社の保有する繭絲價格安定資金を蠶絲業新團體に承繼せしめる爲に、經過措置の規定を設くること、及び今囘同社の解散に伴ひ、廢止となりまする蠶絲業統制法中、蠶絲の需給調整、又は輸出振興上必要なる命令、繭檢定、生絲檢査、企業許可等に關する規定を本法中に移して居る點であるのであります、第二は、戰時中の蠶絲業統制機構を廢止し、關係業者の自由活溌なる自主的活動に依りまして、蠶絲業に對する国家の要請を充たし、斯業の指導奬勵及び統制を行ふと共に、當面の輸出生絲の確保に必要なる統制賣買を行ふ爲に、新に蠶絲業會の制度を設けて、日本中央蠶絲會を解散整理する點であります、第三は、原蠶種管理制度の改正でありまして、原原蠶種の製造配付は、政府以外に出來ないことになつて居りましたのを改めまして、民間の優良品種選出育成者に其の製造配付をなし得る途を開くと共に、政府は民間發見の優良原蠶種を公開せしめ、或は政府へ提出せしめて、之を製造配付し得ることと致し、尚原蠶種の譲渡の禁止をも廢して自由とする點であります、第四は、蠶種に關する制度の改正でありまして、蠶種製造業は、地方長官が免許することとなつて居りましたものを、今後は需給を全國的に見る必要上、免許を主務大臣の權限として居る點であります、右の外本改正案は、蠶種の檢査制度其の他に付きまして、若干の改正を爲して居るのであります、以上の四法案に付きまして、特別委員會に於きましては、各委員より極めて熱心なる質問及び意見の開陳がありまして、政府當局亦懇切なる答辯があつたのでありますが、今それ等の質疑應答の中、主なものを御報告申上げたいと存じます、農業團體法に關しましては、同法第十條中、農業團體の目的の中に、「國策に即應し」云々とありますのを削つて居るのが、農業會は食糧事情が逼迫して居る今日、國策に關係なく、自由奔放に行動して宜いと云ふ意味なのか、又さう云ふ思想を與へる虞はないかと云ふ質疑に對しまして、政府は全く其のやうな意味ではなく、農業團體法が偶偶戰時中に制定せられた爲、農業會は、強度に官廰的機關たる色彩を持ち、農民の自主的協同組織たる性格を失つた憾みがある、其のやうな官廰的色彩を持たしめる根源は、本條に掲げられた「國策に即應し」と云ふ語に源を發して居ると見られるからして、終戰後の今日、官廰の別働體たるが如き色彩は拭ひ去るべきものと考へて之を削つたのであつて、勿論、現下の食糧事情の下に於ては、農業會に大いに活動して貰はなくてはならないのは當然であり、今後の指導には官廰の信用の囘復にも努力致し、遺憾なきを期する所存であるとの答辯がありました、次に農業會は團體統合に依り、茶業、養蠶、畜産等をも包含することになつたが、其の爲農業會の内部が不統一となつたり、事務分量が大きくなり過ぎて却て十分なる活動が出來ないやうな状態にあるが、是等を分離して別個の團體を形成せしむる意思はないかとの問に對しまして、政府よりは、統合の理由は、農家が各團體から、不統一な指導を受けるばかりでなく、經費、其の他經濟的負擔が過重となつて居つたのを救濟する爲に、輿論に從つて、統合したものである、統合後、日尚淺く、而も戰時中十分統合の成果が擧つて居ない場合のあるのは事實であるが、是は今後の指導に依り矯正して參り、統合の實を擧げるやうに努めたい、從つて、現に改組せられた統合體を再び分裂せしむるが如き意思はないとの答辯がありました、更に現在の團體には、馬に關するものが、農業の範圍から除外されて居るが、軍馬資源保護の必要のなくなつた今日、之を農業の範圍に入れては如何との問に對しましては、馬に付ては、輓馬業者、馬産專業者等の關係もあり、又馬以外の畜産とも併せて今後の方針法定に依り處理したいと思ふ、從つて本改正案に於ては、一應問題とし考慮はしたが、結局其の具體化は今後の研究に委ねることとしたと云ふ答辯がありました、尚農業會の役員に付ては、農業會の活動の活溌なると否とは、役員の如何に依ること至大なるものがあることは勿論でありますが、會員と農業會とが遊離して居る現状を考へまするならば、生産供出に責任を感じて居る耕作者に役員の被選擧資格を限定してはどうかと云ふ問に對しまして、今囘の改正に依り、市町村農業會の理事は會員の投票に依る選擧に依つて選出されるのであつて、從來役員が官廰より任命されて、會員から遊離して居たやうなこともなく、眞に農民の要望を擔つた人物が選擧せらるることと思はれる、從つて今被選擧權を制限するの要ありとは考へないと云ふ答辯がありました、次に食糧問題の解決上、農業會の指導育成は極めて重大である、從つて内務、農林兩省間に於て密接なる關係を保持する必要があると共に、從來地方長官の更迭が頻繁であつて、一般に地方長官、經濟部長など、内務行政官の農業會指導に對する熱意が不足して居つたやうに思はれるが、之に對する所見如何との質問に對しまして、農林大臣より農業の技術改善には試驗場も動員し、特に力を入れたいと考へて居る、さうして又内務、農林兩省間には特に十分なる連絡を保つやうに努めて居る、例へば過般農林省の役人と、地方經濟部長との間に大量の交流を行つたが、將來はもつと大規模に之を實行して、農林省の役人には實地の經驗を積ましめ、地方官には農林省の事情を十分知つて貰ふ考である、而して農林省の立場からも、出來るだけ地方の役人は其の土地に長く止まることを希望して居ると云ふ答辯がありました、次に水産業團體關係に付てでありますが、主として其の團體構成は農業團體と略略同樣でありますので、從つて其の質疑も農業團體と共通なる問題として行はれたのであります、森林關係の質疑に付きましては、先づ國有林野に於て開墾に適するものは積極的に開放するの意思ありやとの質問に對しまして、農林大臣より、其の方針の下に目下具體的に調査を進めつつあるのであつて、今日の時局の要請に應ずるやう遺憾なきを期して居るとの答辯がありました、又木材統制の將來に付ての質疑に對しましては、實情に即し、能く考究して善處致したいとの御答辯がありました、更に造林の重要性から見て豫算上の單價は、今日の造林費用の實際に適合せぬ虞はないかと云ふ質問に對しまして、政府當局より實情に副はない點も生じて居ると思ふから十分善處するとの御答がありました、次に蠶絲業關係でありますが、申す迄もなく、蠶絲業の振興は我が國經濟再建の上から見ましても、亦當面の食糧輸入の見返り物資としての重要性から見ましても、蠶絲業の振興が重要でありますので、特に此の點を中心として活溌なる質疑が行れたのであります、先づ養蠶奬勵の具體的方策如何との問に對しましては、養蠶業の振興には、第一に養蠶精神の振起が必要であり、戰時中に於けるが如き蠶絲業に對する觀念を一擲し、我が國經濟再建の爲に、蠶絲業の擔つて居る重要性を十分に認識徹底せしむる方途を講じたいと考へて居る、同時に又養蠶農家をして、安んじて養蠶に邁進せしむる所の政策が必要であつて、之には食糧との關係の調整、繭の價格、現物の供給乃至は地方還元、必要生産資材の手當等に亙り適切なる對策を講じ、進んで養蠶を營むことが出來るやうに政府として十分努力致すとの答辯があつたのであります、尚今後の繭絲業の囘復、繭の増産の爲には、繭と食糧との綜合供出制度を認め、繭を供出した者は、主食糧の供出と同一に取扱ふ必要があると認められるが、政府の意見如何と云ふ問に對しまして、政府より、現在の綜合供出制度は直接食糧たり得るものに付認めて居り、從つて繭の如き輸入見返り品としての間接食糧を綜合供出中に加へて、食糧管理特別會計に於て取扱ふことは困難であると思ふが、要は養蠶家に對する食糧の問題である、併しながら之に對する食糧の増配は全國的に見るとなかなか大量ともなるので、目下色々と研究中である、何れ之に依つて適當な解決を圖りたいと考へて居るとの答辯がございました、以上の外、四法案に付きまして、具體的に法文の各規定に亙り熱心なる質疑應答が行はれましたが、詳細は速記録に依つて御承知を願ひたいと存じます、斯く致しまして質疑を終り、討論に入りましたる處、各法案に付贊成の意見の開陳がありました、而して各法案の運用に遺憾なきを期すると共に、特に農業團體の運營に付ては、第一に現在の食糧事情よりして、其の擔ふ重要使命に鑑み、團體の綜合性の發揮及び行政廳との連絡に遺憾なきを期すること、第二に、將來農耕馬を農業團體の事業中に包含するやう研究すること、第三に、市町村農業會の役員が今囘選擧制度になるのであるが、團體運營の中心は飽く迄も其の人に在るのであるから、通例選擧に伴ひ起り勝な弊害を防止するやうに努むること、第四に、農業團體、水産團體共に今囘の改正に依り、大いに民主的傾向を有するやうになることは至極結構であるが、其の基本方向に誤を來さないやうに特段の留意を要する等の意見の開陳がありました、斯くて採決致しました結果、付託四案共全會一致を以て原案通り可決せらるべきものと議決致したのであります、以上を以て御報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=26
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027・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ、四案の採決を致します、四案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=27
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028・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=28
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029・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=29
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030・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=30
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031・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=31
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032・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=32
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033・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 四案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、四案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=33
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034・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=34
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035・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに各案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=35
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036・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=36
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037・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=37
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038・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認みます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=38
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039・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 四案の第三讀會を開きます、四案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=39
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040・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、明日は午前十時より開會致します、議事日程は決定次第彙報を以て御通知に及びます、本日は是にて散會致します
午後一時五十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01319451217&spkNum=40
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