1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十年十二月十八日(火曜日)午前十時十五分開議
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議事日程 第十四號
昭和二十年十二月十八日
午前十時開議
第一 請願委員長報告
第二 昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案(第一號)
會議(委員長報告)
第三 昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案(第二號)
會議(委員長報告)
第四 昭和二十年度特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號)
會議(委員長報告)
第五 勞働組合法案(政府提出、衆議院送付)
第一讀會の續(委員長報告)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=0
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001・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告を致させます
〔宮坂書記官朗讀〕
昨十七日本院に於て可決したる左の政府提出案は即日裁可を奏請し又可決の旨を衆議院に通知せり
鹽專賣法中改正法律案
昭和二十年法律第十八號中改正法律案
貿易資金設置に關する法律案
農業團體法中改正法律案
水産業團體法中改正法律案
戰時森林資源造成法中改正法律案
蠶絲業法改正法律案
同日委員長より左の報告書を提出せり
昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案(第一號)、昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案(第二號)、昭和二十年度特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號)可決報告書
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=1
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002・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 是より本日の會議を開きます、日程第一、請願委員長報告、請願委員長加藤子爵
〔子爵加藤泰通君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=2
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003・加藤泰通
○子爵加藤泰通君 請願委員會の第一囘御報告を申上げます、正副委員長互選は去る十一月三十日に之を行ひました、請願委員會は三囘開會致しましたが、十二月八日の第一囘委員會に於きましては、分科を設けざること、竝に審査方針等を決定致しました、詳細に付きましては速記録に依つて御承知を御願ひします、第二囘の委員會は十二月十一日、第三囘の委員會は十二月十二日に開會致しました、請願文書表は其の第一囘を十二月十日に作成の上報告致しました、請願書の受理件數は一件でございまして、此の請願連署の人數は二十八名でございます、委員會に於きましては右の請願に付きまして愼重審査を致しましたが、尚研究を要する點がございますので、未だ決定するに至つて居りませぬ、以上は昭和二十年十二月十七日迄の御報告でございます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=3
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004・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 議事の都合に依りまして此の際議事日程を變更し、日程第五を議題と爲すことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=4
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005・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=5
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006・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 日程第五、勞働組合法案、政府提出、衆議院送付第一讀會の續、委員長報告、委員長河原田君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=6
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007・会議録情報2
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勞働組合法案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十六日
委員長 河原田稼吉
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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〔河原田稼吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=7
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008・河原田稼吉
○河原田稼吉君 只今上程せられましたる勞働組合法案に付きまして、委員會に於きまする審議の經過及び結果に付て御報告申上げます、本法案に付きましては、過日本議場に於きまして政府から御説明がありましたが、御審議の便宜上先づ本案の趣旨及び内容の大體に付きまして申上げたいと思ひます、本案制定の趣旨は、即ち經濟上、社會上に於きまする民主主義を徹底せしめ、勞働者の經濟上、社會上に於きまする地位を向上せしむるが爲に、勞働者の團體行動を是認し、之を保護し、仍て經濟上の優位に立つて居ると認められて居る所の事業主に對し、是と對等の地位に立たしめむとするものであります、本案の内容に付きまして其の重要なるものを申上げたいと思ひます、第一は、勞働組合とは何ぞやと云ふことを定義致して居るのであります、即ち勞働條件の維持改善、其の他經濟上の地位向上と云ふものを、自主的に圖ると云ふことを目的とする團體であると云ふことを明かにして居るのであります、從ひまして、從來ありました所の産業報國會とか、或は共濟組合の如き團體は、本法に所謂勞働組合でないことは申す迄もありませぬ、第二は、斯かる團體、即ち勞働組合に對しまして保護を加へて居ることであります、其の保護の主なるものは次の四點であります、第一は、勞働組合の組合員であると云ふ理由で以て、使用者は之を解雇し、又は之に對し不利益なる取扱をすると云ふことが出來ないと、斯う云ふことを規定して居るのであります、保護の第二點は、勞働組合が、勞働爭議等を致しました場合に、正當なる行動であります時は、其の行爲に對し、刑法上の責任を免がれしめると云ふことであります、保護の第三點は、同盟罷業等の爲に、使用者側が、損害を受けましたる場合でも、其の行動が勞働運動上當然と認められる場合に於きましては、勞働組合又は其の組合員と云ふものは、賠償の責任がないと云ふことを明かにして居るのであります、保護の第四點は、使用者と勞働組合との間の團體契約と云ふものを公認致しまして、個人と個人との契約以上に之より有力なるものと致して居るのであります、即ち之に依りまして勞働組合を權威あるものと致し、組合の統制を保ち、兼て使用者と勞働者との間の爭議を未然に防止し、仍て産業上平和を維持しようと云ふのであります、法案の内容に付きまして更に第三點を申上げますと云ふと、新たに勞働委員會と云ふ公的機關を設けたことを、此の勞働組合法案の中に規定して居るのであります、此の委員會と云ふものは、勞働者を代表する者、使用者を代表する者、及び第三者の立場にある者の中からして、各各同數を以て組織せられるものでありまして、之を中央及び地方にそれぞれ設けようとするものであります、此の委員會の仕事と云ふものは、勞働問題に付きまして、或は官廳に建議し、或は其の諮問に應ずる等のことを致しまする外、特に重要なるものは勞働爭議の發生致しましたる場合に、爭議の調停、或は仲裁等の仕事に當らしめ、其の他使用者と勞働者との間に立ちまして、實際上の世話役をさせようとするのであります、本案の内容中重要なるものは大體以上の通りであります、要するに本法案は我が國勞働運動の方向を示し、勞働運動に付ての根本的規定を爲すものと云うことが出來るのであります、唯勞働法規と致しましては、勞働者の團體組織、即ち勞働組合の結成と云ふ問題と相竝びまして、最も重視せられなければならぬものは勞働爭議の問題であります、勞働組合に關する法規を制定する以上は、勞資間の紛爭の解決と云ふことに付きまして、今日の時代に即應する何等かの法規を必要とすることは當然と考へられるのであります、此の兩者、即ち勞働組合法と云ふものと、勞働爭議に關する法規の二つが相竝んで初めて茲に勞働運動の基本法として完璧を成すやうに思はれるのであります、本法案に依りますと、勞働委員會なるものが新らしく設けられまして、此の委員會に於きまして、爭議の調停、或は仲裁を爲すと云ふことに定められて居るのでありまするが、調停の方法、或は調停の效果と云ふやうなことに付きましては、何等規定せられて居らないのであります、我が國は既に大正十五年に勞働爭議調停法と云ふものが制定せられまして、今日尚現存致して居るのでありまするが、當時と今日とを比較致しますれば、社會上の情勢に於きまして殆ど問題にならぬのであります、加之此の調停法と云ふものは、勞働組合法と云ふものが未だ制定せられなかつた以前の立法であります、從ひまして今日勞働組合法と云ふものが制定されまするならば、是と共に現時の情勢に適應する所の爭議調停法と云ふものが制定せられて然るべしと考へらるるのであります、此の點に關しまして、厚生大臣の御答辯に依りますと、組合法と相竝んで新らしき勞働爭議法を制定したい積りであつたが、事急を要し、組合法の制定と云ふものは一日の早きを爭ふと云ふ事情がありましたので、先づ本法案を提出した次第であります、從ひまして、次の議會には必ず時宜に應じた勞働爭議調停法を提案する積りであると云ふことでございました、尚勞働組合は賃金又は給料に依つて生活致しまする者は、如何なる職業を問はず之を作ることが出來るのであります、が併し、警察官吏、或は消防官吏は勞働組合を作ることは禁止せられて居るのであります、又一般の官吏、或は公吏等に付きましては、勞働組合は作ることが出來まするが、是等の者に對しましては、別に規定を設けようと云ふことになつて居るのであります、以上は本法案の内容の主なるものであります、之に對しまして、委員會に於きましては熱心なる質疑應答が行はれたのであります、其の主なるものを御參考迄に御披露申上げたいと思ひます、第一に、警察官、消防官吏等に付きましては「ストライキ」は禁止せられて居るけれども、禁止しても宜いが、併し組合の作成は許しても宜いではないかと斯う云ふ御質問がありました、之に對しまして、政府は、警察官と云ふ者は國内の治安に最も深い關係を持つて居るものであるからして、勞働組合の結成も許さぬ方が宜しいと思ふ、尚外國の立法例を見ましても、組合を許して居る所に於きましても、組合の行動に對しましては、相當嚴重なる制限を設けて居ると云ふ答辯でありました、第二は、警察官以外の一般官公吏に付きましては、勞働組合の結成は之を認めて居るけれども、「ストライキ」に付ては一體どうする積りであるか、斯う云ふ質問に對しまして、政府の答辯は、官公吏等の勞働爭議は或は將來制定せられます所の勞働爭議調停法中に於きまして、調停又は仲裁裁判に附し、若し是が成功しなかつた場合に初めて之を許すとか、或は場合に依りましては、爭議の中止を命じ得るやうな規定を設けたい積りであると云ふことでありました、尚公益事業の從業員の「ストライキ」に付きましても、其の仕事の性質と云ふものが、公衆の利益に直接至大の關係を持つて居るが故に、是等の職場に於きまする爭議に付きましても、相當の規定を次いで制定せらるべき勞働爭議法中に設ける積りであると云ふ答辯でありました、第三は、現在運輸省關係の鐵道現業委員會とか、或は遞信院とか、大藏省等にありまする現業員の團體に付きまして、政府は本法施行後は、如何なる方針處置を執る積りであるか、斯う云ふ質問に對しまして、政府は、是等の團體に付きましては、本法に依る勞働組合と云ふものと、更に共濟組合と云ふやうな二つの團體に分けて行きたい、斯う云ふ御答でありました、第四に、現在の世相は所謂自由主義、民主主義を履違へて、權利のみを主張し、義務を忽せにする傾向がある、殊に青壯年の間に然るやうに思はれる、本法制定と共に、特に青壯年に勤勞意慾を昂揚することが誠に必要と思ふが、政府としては最も留意すべき所と思ふ、之に對し政府は何等かの工夫成案があるか、斯う云ふ質問に對しまして、政府は、國民各自をして其の個性に目覺めしめ、之に依つて各自の責任觀念を深くして行くやうに國民的教養を昂めて行きたい積りであると云ふ答辯でありました、第五に、俸給、賃銀の引上運動と云ふものは、將來益益盛となると思ふが、是はうつかりすると、所謂惡循環と云ふものになつて、政府が折角努力して居る所の惡性「インフレ」に對する防止策と矛盾する結果になる處が大いにあると思ふ、就ては俸給、賃銀の無制限上昇を阻止するが爲に、何等かの基準を設けてはどうか、斯う云ふ質問に對しまして、政府は、現行の賃銀統制令と云ふものは、現在の物價に對しまして適當でない、斯るが故に、五割乃至八割の引上を行ふ積りであるが、併し賃銀と云ふものは常に物價と比較して考へる必要がある故に、永久不變の基準を設けると云ふことは困難であると云ふ答辯でありました、第六は、事業場に於きまして、從業者は總て勞働組合員たることを必要とすると云ふやうな所謂「クロスドショップ」の問題に付きまして、是は一體政府はどうする積りであるかと、斯う云ふ質問に對しまして、政府は、此の問題は、各事業場に於ける使用者と、從業員兩當事者の任意の協定に委せる積りであると云ふ答辯でありました、第七は、共濟事業、或は福利事業の爲特設致しました所の基金を、政治上の目的に使用することは差支ないか、斯う云ふ質問に對しまして、政府は、總會の決議を得れば差支ない、斯う云ふ答辯でありました、第八は、勞働運動には往々所謂惡「ブローカー」と云ふものが介在して私利を營み、之が爲却て勞働者に迷惑を及すと云ふことが往々にしある、就ては是等を排除するやうにしてはどうかと云ふ質問がございました、之に對しまして、政府は、惡「ブローカー」の排除と云ふものは、是は法律に依つて規定する譯には行かない、自然陶汰に委す方が宜しいと云ふ答辯でありました、尚現在の如き經濟界大變轉の際に於きまして、事業の經營は誠に困難であり、産業の復興と云ふものは容易でないと云ふ此の時代に於きまして、本法施行を契機と致しまして、勞働爭議の激發を見るやうになれば、國民一般の不幸誠に大なるものがある、仍て本法の運用に付きましては、政府に於て特に適切なる考慮を盡されるやうにしたい、殊に本法の運用に當る官吏は、從來のやうに所謂腰掛けでなく、産業界や、或は勞働界の事情に精通して居り、それこそ所謂事業會社とか、或は勞働界に年期を入れて修業したと云ふやうな人物を當らしめるやうにして貰ひたい、斯う云ふ希望の開陳もありました、又勞働組合法と共に、産業基本法とも謂ふべきものを作りまして、勞働者の地位の向上と共に、産業界の發達を助長すべき國家の根本方策を定めたらどうかと云ふやうな意見の開陳もありました、其の他重要な質疑應答や、或は意見の御開陳もありましたが、是等は速記録に就て御覽を願ひます、斯くして討論に入りましたる處、兩委員から、勞働組合の結成と云ふものは、勞働者の地位の向上の上にも、亦産業發展と云ふ上にも、共に極めて必要であり、且多年の懸案を解決することが出來たと云ふ點で、誠に同慶に堪へない、願くば勞働者の經濟上、社會上の地位の向上と共に、法の中にも謳つて居りまする所の一般經濟の興隆に一層貢獻するやう、行政上の措置を望む、斯う云ふ意味の意見を述べられまして、本案贊成の意を表明せられました、厚生大臣は之に對し、本法運用に付ての政府への御希望は篤と了承し、萬全を期する積りであると云ふことを申述べられたのであります、採決致しましたる處、全員一致本法案を可決すべきものと決定致しましたる次第であります、之を以て私の報告を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=8
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009・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ、本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=9
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010・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=10
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011・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=11
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012・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=12
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013・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=13
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014・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=14
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015・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 本案の第二讀會を開きます、御異議がなければ、全部を問題に供します、本案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=15
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016・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=16
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017・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=17
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018・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=18
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019・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=19
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020・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=20
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021・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=21
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022・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、議事の都合に依りまして、午後一時迄休憩を致します
午前十時三十七分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=22
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023・会議録情報3
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午後一時三十五分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=23
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024・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 報告を致させます
〔宮坂書記官朗讀〕
本日委員長より左の報告書を提出せり
農地調整法中改正法律案可決報告書
本日本院に於て可決したる左の政府提出案は直に裁可を奏請し又可決の旨を衆議院に通知せり
勞働組合法案
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=24
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025・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 休憩前に引續き會議を開きます、日程第二、昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案第一號、日程第三、昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案第二號、日程第四、昭和二十年度特別會計歳入歳出豫算追加案特第一號、會議、委員長報告、是等の三案を一括して議題と爲すことに御異議ございませぬか
[「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=25
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026・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、副委員長矢吹男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=26
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027・会議録情報4
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一昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案(第一號)
一昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案(第二號)
一昭和二十年度特別會計歳入歳出豫算追加案(特第一號)
右衆議院より受領したる各案を審査し總て衆議院議決案の通可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月十七日
委員長 子爵八條隆正
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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〔男爵矢吹省三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=27
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028・矢吹省三
○男爵矢吹省三君 委員長八條子爵が、御登院になりましたけれども、急に御不快で、此の壇上で御報告が出來ませぬので、副委員長たる私から委員會の經過竝に結果を御報告申上げます、甚だ不十分な報告と存じますけれども、御許しを戴きまして、足りませぬ所はどうぞ速記録で御承知を願ひたいと思ひます、豫算委員會に付託されました議題は、昭和二十年度歳入歳出總豫算追加第一號、同追加第二號、昭和二十年度特別會計歳入歳出總豫算追加案特第一號、此の三案でございます、經過を申上ますと、去る十二月十二日衆議院から送付を受けまして、十三日から委員會を開會致し、短期議會のことでございますから、先例に依りまして、分科に付託せず、委員會に於て總て審議することに御承認を得たのでございます、十七日迄五囘委員會を開きまして、大藏大臣の説明を先づ豫算案に付求め、質疑應答を重ねまして審議の上、討論に移り採決の結果、全會一致を以て昨日可決致したのでございます、豫算案の内容をちよつと申上げますと、追第一號は臨時議會開會に要する經費でありまして、歳入歳出共十八萬二千餘圓、歳入は前年度の剩餘金を以て充てることになつて居ります、追第二號は歳入歳出共二億五百四十餘萬圓でございまして、内容は、大藏省所管に於て鹽田の風水害復舊補助三千五百四十餘萬圓、鹽緊急増産對策に要する經費一億二千萬圓、合計一億五千五百四十七萬餘圓が大藏省所管であります、農林省所管と致しまして、農地制度改革に要するものが三百四十餘萬圓、粉食促進施設に要する經費が四千六百五十餘萬圓、合計四千九百九十五萬餘圓を計上してございます、之に對する財源は、歳入補填公債金を以て支辨することになつて居ります、之を曩に八十六囘帝國議會に於て成立致しました昭和二十年度一般會計豫算額二百八十九億五千餘萬圓に加算致しますと、本年度一般會計豫算總額は二百九十一億五千六百餘萬圓と相成る次第でございます、而して公債發行額は、第八十六議會に成立致しました總豫算で計上した歳入補填公債百十二億千三百七十餘萬圓に今囘の分を加へますと、歳入補填公債の金額は百十四億千九百十餘萬圓となるのでございます、尚本年度に於ては戰災の影響等に依り相當多額の歳入の減少も見込まれますし、從つて今後更に歳入補填公債の發行を餘儀なくされるものと考へられます、併し目下の處、其の明確なる數字は判明致しませぬので、何れ次期の議會に於て、其の措置に付、協贊を願ふことに相成るものと大藏大臣からの御言明がございました、次に特別會計追加豫算案即ち特第一號は、公債費特別會計の追加でございます、是は以上申しました一般會計の追加第二號の財源全部を歳入補填公債金を仰ぐ爲に、公債金特別會計に於て斯かる追加を要することと相成つたのでございます、豫算案の説明の後、大藏大臣から我が國の財政の前途、經濟界の前途等に付て御所見の御開陳があつたのであります、それを簡單に申上げます、二十一年度の豫算の骨格となりますものは、普通歳入は租税及び專賣益金共に減少が著しくありまして、大體百二十億圓程度を見込んで居ります、是は二十年度豫算に比較致しますと、五十七億餘萬圓の減少になつて居るのでございます、歳出の方は價格差補助金の徹底的檢討を致し、其の他の補助金の廢止、又大幅の削減をする積りでありまして、又行政整理も致しまして、歳出は百三十六億圓程度に壓縮する考であります、併しながら尚歳入不足は十六億圓程あるのであります、其の他に來年度に於ては新規に巨額の歳出増加を見込むものがあるのでありまして、即ち戰災復興費、食糧増産對策費、引揚邦人援護費、恩給制度全般に亙る徹底的檢討に伴ふ合理的の施設の爲に要する經費、其の他社會施設費、又賠償及び在外資産に對する措置等まだ確定して居りませぬけれども、是も考慮に入れる必要がございます、從つて今後の國庫負擔は厖大なる額に上ることが豫想されるのでございます、戰時中我が國の財政が國債に依存することが多かつた結果、多額の國債の償却の爲に革新的手段を講じなければならぬ必要がここに起つて居るのでございます、然らざる限り國家財政の破綻、或は惡性「インフレーション」の昂進は避けられない状態でありまして、それ故に新たに戰時利得税及び財産税を起しまして、我が國民の資産推定額四、五千億圓の約四分の一たる一千億圓程度を、それ等の兩税から歳入を得まして巨額の國債を償却して通貨價値の安定を圖らうと思つて居る次第でございます、斯くの如き劃期的の措置を斷行致しましても、尚相當巨額の國債が殘るのであります、且今後毎年豫算に於て、普通歳入を以て、普通歳出を賄ふの鐵則を堅持致さなければならぬのであります、毎年度の經常歳入を相當強化する必要があるのであります、それ故に、一時的なる以上の兩税を設けます外に、恆久的な歳入増加の方法として、税制の改革をする必要があるのでございます、即ち不動産、配當利子等資産取得に重課して分類所得税を増徴する、尚浮動購買力を吸收する爲、酒、其の他嗜好品等に重税を課する、又煙草の値上げをして專賣局益金を増加する、是等の措置を斷行致しましても尚歳入不足の處があると思つて居るのであります、賠償及び在外資産等に對する措置に付ては萬全の措置を講ずる考でございます、又補償の問題に付きましては、軍需企業等に對する補償は、今日民需生産の活動を急速に促し、且國民經濟の圓滑なる運行を確保する必要上、嚴正なる處理の下に適當なる補償を實行することを必要と考へて居るのであります、國民生活の安定、生産促進の爲には、通貨價値の安定、物價秩序の再建を必要とします今日崩壞とも稱すべき事態に立到つて居る物價の體系に付ては、單に個々の物價の價格形成の問題として考へるべきものではなく、又財政金融の面からのみではなく、生産、輸送、配給、勞務、貿易、賠償等、國民經濟の有らゆる方面から綜合的に檢討して合理的に物價體系を形成しなければならぬものと思つて居ります、之に付て政府は責任と熱意を以て眞正面から之に當る者であると云ふことを、大藏大臣は披瀝された次第でございます、以上が大藏大臣の豫算委員會に於ける御説明でございます、次に豫算委員會に於ける質疑應答の大要を申上げたいと存じます、今後の歳出の見透し、或は歳入の見透し等に付ての御質問があつたのであります、それに對しての御答は、財産税、戰爭利得税に依つて國債が大分減少致すのでありまして、利拂が三十六、七億減少する、恩給費も亦減少致すのであります、合せて八十數億圓の歳出減となる見込であります、之に對して社會施設として、三、四十億圓を要するだらうし、そこに餘裕が尚四、五十億圓ある、之を以て賠償金、駐屯費の如きものを賄つて行けるかと考へて居る、尚其の外に不足の時は官業拂下、其の他の方法を行ふ考であります、次に戰爭利得税、戰時利得の基準は何であるか、又財産評價の方法、徴税の時期は如何であるか、又課税するに付ては戰後復興が或程度出來た擔税力ある時期を選ばなければならぬと思ふが、それ等に付て政府はどう考へるかと云ふ御質問がございました、之に對して大藏大臣席の御答辯は、戰時利得税は戰爭に關聯し、又は戰爭の結果得た利益に課税せむとするものである、併し普通の財産増加と、戰時利得との關係は是は觀念的のもので、戰爭利得の基準は、資料の關係、其の他種種の理由に依つて、昭和十五年に基準を置き、明年の或時期との間の財産の増加を目標として居るのであります、而して適正なる財産増加を考慮する爲、控除額、又は物價騰貴の關係、其の他に付ては、十分考慮しようと思つて居ります、戰時利得税を創設せむとする趣旨は、惡性「インフレ」及び財政の破綻の防止せむ爲の「デフレ」政策、先づ之を實行して、財政經濟を健全なるものとしようと思つて居る、戰時中國民の中に一方に財産を喪失した者があるにも拘らず、他方に巨利を博して居る者もある、是等の不平等、不平均を此の際芟除しようと思つて居る、財産税は課説に堪へる擔税力ある人から徴收して、累進的に課税をするのでありまして、固より其の財産に付ては負債を控除するのであります、財産の沒收と云ふ意味ではない、而して是等の兩税に依つて物價は安定し、其の後は健全なる經濟發展をなすものと豫想して居る、又財産評價の點は重大であるから、出來るだけ全國を細かに分けて、中央、地方に評價委員會を設けて、各地の事情に適合して定めようと思つて居るのであります、徴税の時期は技術的に準備も要するので明言はし兼ねるけれども、餘り遲くはしない考である、軍需産業の補償に關しての質問がありました、軍需産業に關する補償問題は、大藏大臣は補償をすると言つて居るが、補償を爲すと大藏大臣が言明されたので、低迷氣分にある産業界に安定感を與へたが、併し他面是と共に國家財政上實行不可能なりと云ふ議論もあつて迷ふ次第だが、財政上の危惧なしとする大藏大臣の所信を聽きたい、大藏大臣の御答は、軍需産業と云つても純然たる兵器を造るもの以外は民需企業の變形である、終戰後は民需企業に復歸するものでありまして、軍需企業補償は即ち再生産復活を狙つたものであるのであります、而して企業にして戰災を蒙りたるものが火災保險金、戰災保險金の受取るのは、是は契約に依るものである、軍需産業に對する補償は、軍需生産に關する契約の打切、或は設備擴張の補償金等でありまして、是等は嚴重に審査して壓縮を加へなければならぬものと考へて居る、さうして今後民需産業は大中小企業孰れも極めて必要で、之が再開の爲に國家補償も必要なものと思つて居るのであります、即ち軍需産業補償は再生産復活の爲の必要からであるのであります、計數的にはつきり申上兼ねますけれども、生産が擧り、物價が安定すれば、財政も亦安全性を確保するものであると考へて居る、在外資産の中特に朝鮮、臺灣に於ける企業、經濟上の投資をしたことは戰爭に依る侵略的のものとは全く異つて居る、從つてそれは沒收せらるべき筋合のものではない、又朝鮮に於て朝鮮人が内地人の財産を掠奪した事實があるが、是等に對して相當賠償を主張すべきではないか、此の質問に對して總理の御答がありまして、臺灣、朝鮮の投資は全く是は侵略ではない、併し聯合國から言ふと大東亞戰爭は侵略的と見て居る、其の賠償の爲に在外資産を充てようと思つて居るので、臺灣、朝鮮に於ける我が國の投資が侵略的のものでないとしても、賠償の一部に充てられることは已むを得ないものであると云ふ總理の御見解であります、又北鮮方面に於て、終戰直後邦人の生命財産の損害を受けたのは事實であるが、今まだ十分明確な報告がない、又調査の方法もないし、是は明瞭になつた上で對策を定むべきものであると思ふ、次に産業經濟運營の根本方針に付て御質問がございまして、戰時中の統制がうまく行かなかつたことは事實だ、併し是は統制がまづかつた爲で、統制がなければ斯く迄戰爭は遂行出來なかつた、産業の民主化は全然自由放任を意味しないと思ふが、今後産業經濟運營の根本方針を何處に置くのか、此の質問に對して、商工大臣より、單なる自由放任は産業の民主化ではない、國民生活の安定を圖り、其の公正な利益を確保するには強度の統制を依然として必要とする、現在の如く物資需給が著しく均衡を失して居る際、是に自由放任に委すのは物資の偏在と價格の昂騰を招き、一般國民生活を危殆に陷れる虞が多いのである、故に國民生活の最低限度の確保の爲、所要の統制を持續することは、絶對に必要だと考へる、併し需給困難なる産業上の基礎物資、民生の必需物資は、出來るだけ統制の枠を外して自由競爭に依つて出廻りを促進したい、唯統制は今迄の官治統制は缺點があるから、出來るだけ自主的統制に依らしめむと考へて居る、尚今後産業基本法を作らうと思つて居るが、戰後産業安定と向上を圖る爲、必要なる産業組織は民主主義化を根本精神とし、中小商工業の維持育成を中心とする共同利益を保護助長し、業界に對する國家の直接介入を少くして、必要なる統制は自主的にせしむる考である、而して産業基本法は次期の議會に提出したい考である、次に今日の公定價格は不合理だ、爲に不良品を不公正なる闇値で以て販賣する者が跋扈し、良品を公定價格にて販賣せむとする眞面目な商工業者は其の維持が出來ない、それ故に不合理なる公定價格は寧ろ廢したが宜しい、而して公定價格を改めるとすれば、新しい價格は孰れに標準を置くのか、又無用の統制組合の如きは廢したが宜しいと思ふ、之に對して商工大臣は、公定價格の實情に適せないことは同感である、改訂したいと思ふ、但し現在の價格統制を野放しにすると云ふことは宜しくない、仍て無用の統制を廢し、業者の自主的統制に依つて堅實なる業界の發達を期し、消費者の便宜を圖らうと思つて居る、日用品は數十萬種に及んで、一々其の價格の改訂は容易でない、從つてそれを放つて置けば闇相場が出るので、腰だめで決定しようと思つて居る、又統制組合に付ては、之を改組せむと思つて居る、而して必要なるものに付ては其の組合を自主的に作らせようと考へて居る、大藏大臣から之に關聯して又御答辯がございまして、一々の商品の價格形成は不合理だ、但し物の少い今日特に或意味の統制が必要で、即ち官僚の机上の統制は止めて、主要物資に付て自主的統制に依らしめむと考へて居る、大藏省に物價部を作つて、從來各省に於て所管したものを一元的に其處で研究しようと思つて居る、次に戰後に於ける輸入物資の裏附けとして輸出工藝品の振興が必要だ、而して是は綜合的に合理的にやる必要がある、政府と民間團體との協力を要すると思ふが、之に對する具體的方策は如何であるか、商工大臣が御答へになりまして、美術工藝品の振興は必要である、工藝品は日本の國民性に適して、又戰時中其の技術の保存に方法を講じて來た、今後一層之が助長發達を期したいと思つて居る、企業許可、資材の許可等十分斡旋を致したい、又轉廢業者の復歸にも便宜を與へたいと思ふ、商工省の工藝指導所の整備指導に力を入れて、熟練徒弟の養成所を作る考である、又見本品の展示會を各地で開催して、民間の美術工藝品統制協會及び其の下部の會社の機能を發揮せしめたいと思ふ、又取敢ず東京に輸出商品陳列所を開設して、追つて京都其の他の都市にも官公立でそれ等の陳列所を設けたい考である、近來街の中に往々見る粗惡な進駐軍相手の土産品の如きは誠に遺憾な感じが多いので、土産品に付ては全國的に人を派して優良な土産品の買入を斡旋しようとして居る次第であります、石炭増産に付て御質疑がございまして、石炭の増産に付ては、結局食糧の配給が重要な問題になつて居る、現在の配給状態はどうであるか、商工大臣竝に農林大臣から御答で、十月十五日の閣議の決定で、石炭礦夫に對して一人一日五合とした、現在に於て九州方面に於ては實行せられて居る、常磐炭の方面は、甘藷と併せて五合の割合でやつて居る、北海道は米の現物がないので、炭礦のみならず食糧が困難な實情にあり、曩に秋田、青森方面から米を送つたけれども、十分炭礦に迄行き渡らなかつた、其の後新潟から六千石ばかり輸送して炭礦へ送つたのであります、唯礦夫のみならず家族にも三合以上の配給をして貰ひたいと云ふ要求があるのでありますが、農林省としては之に應じ難い現在の状況であります、石油の問題に付ての御質問がございました、終戰後石油の國内生産、輸入、人造石油、「アルコール」等の代用燃料、其の配給等に付て政府の考を聽かれました、商工大臣から、國内生産は三十萬「キロリットル」で、年間の民間の需要は二百六十萬「キロリットル」である、從つて其の多くは輸入に依らなければならないので、聯合軍の司令部にそれを懇請して居る、原油の輸入に對して日本には精製能力は相當今でもある、既に輸入許可を得たものは一萬一千「キロリットル」、其の中で漁業用に充てるものが六千六百「キロリットル」を指定せられて居るのであります、故に其のあと尚輸入に付て極力懇請をして居る所であります、「アルコール」は三萬五千「キロリットル」を燃料として豫定して居ります、又軍の手持の中から十萬「キロリットル」は民需に渡されてあります、本年は國内精油竝に輸入許可があれば、百萬「キロリットル」が國内の需要に振向けられる豫定でございます、人造石油工場は大體硫安工場に轉換をさせつつありまして、又石油の配給に付ては、專賣法が廢止されても配給統制規則は尚存續するのでありまして、民間業者の自由な配給は認めない考で居ります、電力利用に付きまして御質問がございました、石炭不足の際電力の活用は極めて重要で、之に付ては差當り、電力普及の爲周波數を統一し、又鐵道電化に付て、普通の電化の外に蓄電池を利用した電化を考へたら宜くはないか、又電力料金を引上げて、是は他の物價に比して現在低廉と思ふので、之を引上げて財源とすると共に、施設を計畫する等、それ等の計畫のやつて然るべきことぢやないか、それに對する政府の意見を聽かれました、商工大臣、運輸大臣、大藏大臣からそれぞれ答辯がございまして、周波數の統一は此の機會に實行したいと思ふ、故に極めて最近の機會に專門委員會を設置して、早急に實行に移したい考である、鐵道電化に付ては、昭和二十一年度から昭和二十五年度に亙つて、二期の計畫で鐵道の三割を電化し、之に依つて石炭は半分を節約し得べしと考へて居る、又蓄電池利用の電化は、海軍の潛航艇に使ひました蓄電池の優良な物を利用致しまして、之を以て短距離の輸送に大いに利用したいと思ふて居る、又從來發送電に對して配當補給をして居つたけれども、是は一種の價格差補給金である、今囘之を廢止して消費者價格を上げようと考へて居る、而して質問者は消費者等の事情を考へつつ更に料金の引上をすることを要求されて居るが、之に付ては商工省と十分協議したいと云ふ運輸大臣の御答辯でありました、次に米穀政策に付ての御質問でございます、政府當局の努力に拘らず、米の供出は種々の事情依つて困難となると思ふ、それ故に統制を緩和して、市以上は配給統制とし、町村は自主統制に依つて農業會等に委せてはどうであるか、農林大臣の御答は本年は今迄の供出制度に依つて行くより外はない、即ち綜合供出制度に依りまして、農家の必要品、肥料とか、農機具とか、酒とか云ふものと「リンク」せしめて、供出促進に努力をして居るのであります、今後の統制の方向としては、主要都市を確保して、他を解放するのも一案である、併し今後食糧の減少する場合に限らず、世界的に餘ることがあつて、低廉なる食糧品が日本に入ることになれば、生産費の高い日本の農業は成立たない虞がある、從つて食糧全體を通ずる管理は政府の手に把握して、内地食糧と海外食糧品とを併せて配給することを考へなければならぬものと思ふ、主要食糧の管理統制は今後も継續して、又供出の方法に付きましては改めなければならないかと思ふが、此の點十分考へたいと思ふ、食糧問題に對する恆久的對策は科學の應用にある、農事試驗場の擴張等に對する方針は如何であるか、農林大臣の御答は、試驗場の成績は相當であるけれども、其の普及が十分でない、從つて増産に間に合はない、それ故に今囘全國に相當數の試驗場所在地に試驗團を設けて、特別の指導を徹底させようと思つて居るのであります、農林省の技術官に對して固陋であるとか、或は排他的であるとか云ふ非難があるのに鑑みまして、民間の經驗を採入れて、之に農林省の技術も加へて今後實際に指導する考であります、又品種交換會其の他品評會も大いに之に附隨して行ふ積りである、主要食糧の配給を二合三勺に復歸をしたら宜くはないか、又生鮮食料は統制撤廢の爲出廻りが好くなつたけれども値段が高い、又水産物の増産に力を入れたら如何であるか、是等の質問に對して農林大臣は、米の配給量は聯合國司令部の輸入許可があつたけれども、まだ輸入量が定つて居ない、輸入量の見透しが付けば國民生活の最低限度の二合勺三に引上げられる考である、それ迄は年未に於て主要食糧、罐詰等若干の特配をする考である、生鮮食料品は糶で行くか、協定價格で行くか二つの途があるが、糶の方法は過渡的經過から言つて之に依り難い事情があるので、協定價格に依らむが爲に標準價格を出した次第である、水産物に付ては、第一に、漁船は戰時中三分の二を失ひ、戰後陸海軍の小型船を轉用して漁船に間に合はして居る次第である、漁船の新造は造船所の機能が止められて頓挫したが、最近修繕が進んで不足が緩和して來て居ります、漁網も其の生産が囘復して來て居ります、又油も進駐軍から分けて貰つたので、漁獲を今後増して食糧の缺乏を補ひたい考である、次に食糧輸入の見返り物資は如何なるものに力を入れるのか、貿易廳は業務官廳でないので單に命令官廳であるから、商工省内の商務局があれば之を充實することを以て足りるのではないか、之に對する商工大臣の答辯は、輸入の見返り物資は本年内に四億七千八百萬圓、明年度に二十五億二千二百萬圓、合計三十億萬圓である、而して輸出品の中の主なるものは繊維製品、化學製品、機械金屬、農水産物、雜貨、美術工藝品であつて、其の各各の金額に付て大體豫定は付いて居る、而して是だけの物をどうしても輸出しなければ米等必要なものの輸入が出來ないのである、貿易廳に付きましては、聯合國司令部管理の下に特殊の貿易が許され輸入を確保し、見返り物資の爲輸出入を強行に振興する爲に、十月九日聯合軍司令部の覺書に依つて輸入物資の一元的責任官廳の設置をすべしと云ふ命令があつたので、責任官廳として此の貿易廳を作つたのである、當面の處、貿易の方式は特殊貿易であつて、爲替がなく輸出入物資の授受を爲すに過ぎないのである、資金は五千萬圓を之に充てる積りであると云ふ御答辯、次に榮養研究及び衛生上の指導に付て、又厚生科學研究所の充實、農林省と厚生省との榮養研究機關を統合一元化の問題、生鮮食料市場に對する指導等に付て御質問がありました、厚生大臣の御答は、國民の榮養は十分でないので粉食に望みを繋いで居る、從つて製粉の研究をさせて居る、榮養方面の機關として各地に榮養士を置て之の指導に當らして居る、研究機關の不十分は痛感して居るが、財政上の制約もあり、殊に組閣以來財政緊縮の方針を執つて居るので、今日の處巳むを得ない、農林省と厚生省との研究機關の重複するものがあれば是は整理をしたい、生鮮食料品は公定価價を廢したる後出廻りが好くなつた、併し消費者の側から言つて、消費者の資力の點から生鮮食料品の普遍しないことがあれば、社會的榮養上重大問題であると思ふ、「カード」階級のやうな人には廉くそれ等のものを手に入れるやうにしたいと思ふ、本日の閣議で困窮者に對する救濟方法が相當廣範圍に亙るやうに決定された次第であると云ふ御答辯でありました、又一般農地の高度活用に付て電力、或は科學力等の利用、又品種の選擇、農具、機械の應用等科學的の經營をして、收穫増加を圖つては如何であらうかと云ふ質疑に對しまして、農林大臣は、目前の一時的施策のみでなく、根本的方策を要するものと思ふ、農地の高度利用に付ては十分考へたい、農村へ多くの人口を吸收し、又農村の電化に付ては大いにまだ餘地があると思ふ、唯増産の基本を成すのは矢張り肥料である、從つて肥料の増産に力を入れたいと思つて居るのである、戰災地の農園化に付きまして御質疑がありました、全國一億五千萬坪の戰災跡地を菜園化をして食糧問題の緩和を圖つたらどうか、農林大臣の御答は、戰災地利用をやりたいと思ふが、併し之には三つの困難がある、第一は燒跡整理の問題、第二は土地所有者の了解を要すると云ふこと、第三は種子がない、是等の困難があるのであるが、差當りの方策として來年は全國都市に南瓜を播いて貰ふ積りで居る、近く六大都市の關係者を會合して計畫を樹てることになつて居ります、尚御質疑は文教問題、社會問題、行政整理問題等に亙つて居りますが、大分時間が長くなりましたので、それぞれの問題に對して極く一、二を御報告申上げることに致したいと思ひます、先づ國民教育の刷新に付ての御質問でございまして、終戰後の社會の世相の昏迷「ラジオ」、新聞等の報道を見ても何やら國家崩壞の過程にあるやうな感がする、過去に於ける國史教育の教授法、科學教育の不十分、社會教育の不完全に因るものと思はれる、喪はれたる國民の道義心を如何にして昂揚するか、國民教育の刷新に付て伺ひたいと云ふ御質疑でございます、文部大臣から師範學校長や視學官を會同して協議したのであるが、國史教育も前は或意圖を以て誤つた教育をした、史實に基くものと傳承に依るものとを區別して教へても日本人には動搖がないと思ふ、科學的基礎に基いて教育をすべきものと思ふ、教科書も全面的に之を改正して、社會教育に付ても大いに刷新をしたいと思ふ、戰時中教育は犠牲となり、其の結果、今後不完全なる教育を受けた者が社會の上層に立つことがあると思ふ、國家の爲に誠に危險が大きい、教育のやり直しを要すると思ふ、或が國民性には事大性や盲從性がある、是は立憲政治の脆弱性となるので、教育上から此の點に付て考へなければならぬものと思ふと云ふ御質問に對して文部大臣の御答辯は、戰時中の教育に付てはねこそぎ再教育を要すると思ふが、實行は困難である、公民教育を刷新し、殊に青年層に公民生活を教ふべきものと思ふ、又學校教員の頭も切換へさせる必要がある、國民學校の時から正しい判斷力を養はしむべきであつて、何が正しいかと云ふ批判力を養はなければならぬ、教科書に付ては省内に教科書局を置いて速かに全面的に教科書を改めたいと思つて居る、教育問題に付ては尚御質疑がございまして、教員の生活の安定に付ての御質問がございました、教員の生活は惠まれないで誠に氣の毒な状況にある、而して今後國家の前途は一に教育に俟つの外はないが、教育者の待遇を改善して其の生活を安定せしむることが必要と思ふ、之に對する御答辯は、今後教育の趨勢に鑑みて是は改善を要するものと思ふ、併し何分人數が多いので、財政上の關係もあり、財政當局と折衝して之が改善に付て努力をしようと思ふ、大藏大臣からの御答辯もありまして、國民教育に力を入れるべき大切な今日の時に當つて、それ等の人々の生活に脅威を與へると云ふことは宜しくないことで、出來るだけ盡力しようと云ふことでありました、次に學術研究奬励機關の振興に付ての御質問がありまして、專門學校、大學等の研究費が少い、又帝國學士院に對しての豫算も少い、文化日本建設の爲に是等に對して深く考へなければならぬが、當局の御考はどうであるか、文部大臣の御答は、專門學校以上の研究費の不足に付ては増額に努力をしよう、又帝國學士院の經費は少いが、學士院の重要なることに鑑みて是等の増額に付ても考慮をしようと云ふ御答辯でありました、次に恩給問題に付ての御質疑がざごいました、恩給停止は重大なる社會問題で、愼重に取扱はなければならぬが、政府の對策は如何であるか、厚生大臣の御答辯は、聯合軍司令部から軍人恩給、扶助料給與の停止を命ぜられたのは大衝撃で、總理大臣も最高司令官に面談したが、遂にそれを變更して貰ふことが出來なかつたのは誠に殘念である、恩給權者に對しては生活安定の爲の保障を考へる、目下の處、權利者に對しては厚生年金保險類似の方法に依つて年々或程度の支給をしようかと思ふので、委員會を設けて研究をして居ると云ふことでありました、次に失業救濟問題でありまして、復員在外同胞の歸還、離職、行政整理等に因る大量の失業者は前途に横たはる最大深刻なる問題であるのに鑑みて、農林、商工等の各省の所管事務に付て是等の救濟を適當に考へて戴きたい、政府の御考はどうであるかと云ふ御質疑がありまして、之に對して農林大臣から、農村は今日既に人口飽和状態である、零細農が多い、此の上農村へ人口を吸收することは甚だむづかしい、農業が高度に集約化し、小面積で農業經營が出來ることになれば、そこに若干の餘裕は出るであらうが、現在は困難である、唯開墾の面に於て百五十五萬町歩を開墾して、新たに百萬戸を入植せしめようと思つて居る、又干拓事業に付ても、收容力が相當あると思ふ、之にも百萬戸は入れられるだらうと思ふ、此の開墾、干拓の終る迄の三年間は勞力が一時に必要である、水産方面は澤山の人數ではないが是亦人を吸收出來ると思ふ、又土地の改良とか、森林復興の爲の植林、其の方面にも相當勞力が需要されるものと思ふ、商工省の方面に於て商工大臣からの御答であります、企業許可令は全面的に徹廢が出來難く、何等かの措置を執つた上でないと撒廢は出來ない、併し轉廢業者の復歸は、屆出位の程度の輕き取扱に現在止めて居るのである、尚失業問題の面から、民需生産の爲の企業に付て、社會政策的金融政策ありやと云ふ御質問がありましたが、之に對して大藏大臣は、終戰後大企業に付、戰時金融金庫を戰後金融金庫と改めて、之を利用したいと思つたが、過般聯合軍總司令部から閉鎖を命ぜられた、終戰後各金融機關に對して、民需生産に對して金融方を示達した、現在比較的活動して居るのは農林中央金庫であるが、是は餘り目立たない、又庶民金庫には、今少しく活動せしめたいと思つて居る、次に在外同胞の救出及び家族の救護に付ての御質疑でございまして、在外同胞の今日到る處で非常な暴虐なる取扱を受けて居る状況を述べられまして、之が救出の爲、聯合軍に對して正義に愬へて、其の救出の目的を果したら宜いではないか、殊に滿洲、支那、朝鮮に在る同胞は其の數が誠に多く、送金が制限せられて、内地に居住して居る家族の生活にも困つて居る次第である、現に之が具體的救濟方法を政府としては樹てなければならぬと思ふが、如何に御考になつて居るかと云ふ質問に對して、總理大臣から、同胞の救出、救護に付ては深く心を痛めて居る、極力聯合軍司令部に連絡して、之が救出方を努力して居るが、實行上種々の事情があつて急速に進行が出來ないのである、それ等の事情に付ては何卒御了察を願ひたいと云ふ總理からの懇切なる御答辯でこざいました、次に行政整理は、人數の縮減に止めず、根本の機構改革を斷行して貰ひたい、又各方面に於ける所謂閥を打破して貰ひたいと云ふ御質疑に對して、政府は思ひ切つた行政整理を斷行しようとして居る、さうして近くそれは發表する積りだ、目下鋭意研究を進めて居る、特殊の行政に付ては、之を一機構の下に統一して簡素化しようとして居る、例へば戰災復興院の如き、或は石炭廳の如き、それである、政府の各方面に閥があり、是が政治の癌だと云ふことであるが、是は自分も痛感して居る點であつて、政府は力の及ぶ限り閥の發生、發達を防止せむと思ふ、併し是は國民全體の協力を得て除去に努めたいと思ふのである、又河川改修に付て、上流に力を入れなければならぬ、然るに戰爭以來、森林の伐採、鑛山の濫掘等があつて上流が大いに荒れて居る、今後統一機關を設け、例へば水政省の如きものを設けて、是等の點に付て十分災害防止に努力しては如何であるかと云ふ御質疑に對して、總理は、災害復舊に付て其の本を治めると云ふことは誠に同感である、各官廳間の災害復舊に付て、同じ所を二重に手を加へなければならぬと云ふことは誠に遺憾なことで、綜合的にやりたい、尚それを水政省の如き一省とするかどうかと云ふことは明言し難いが、御趣旨に副ふやうに致したい、それから戰時法違反の事例が、最近聯合軍の發表等から見て、非常に多い、是等の戰時法規の違反者は、陸海軍の軍法會議で嚴重に處罰すべきは勿論であるが、我が國民性は斯くの如き殘虐性はない筈と思つて居る、現に過去の日清、日露或は日獨戰爭、歐洲戰爭等の場合に於て、戰時法規を守る點に於て、日本人は世界に誇るべきものがあつた、誠に其の點遺憾である、又終戰後、在外邦人が各方面で殘虐なる取扱を受けて居るが、今日我が國は戰敗國として孰の國へも愬へることが出來ない、實に戰敗國の悲哀を感ぜざるを得ない、そこで自分の希望する所は、此の事實を調査して將來それ等の調査を活用する用意を御願ひしたいものである、それ等の御質疑に對しまして、總理の答辯は、誠に今囘の戰爭に於て我が軍の殘虐行爲を犯したと云ふ事例は誠に殘念なことであるが、是は過去の戰爭に於て左樣なことがなく、此の際左樣なことがあつたと云ふことは、從來の戰爭は列國の同情を得て居つたが、此の度の戰爭はさうでない、又戰爭が非常に長くなつたと云ふことに依つて軍に大きなる刺戟も與へたと思ふ、併し此の汚れたる事實は歴史から抹殺したいものである、大東亞戰爭調査會に於て、及ぶ限りそれ等の事を究明し、將來の戒めとしたいと思ふ、まだ質疑應答の問題は殘つて居りますけれども、餘り長くなりますから、此の邊で省略致しまして、御報告を申上げませぬ御質疑に付ても、幾多重要なものが殘つて居るのでありますが、どうかそれ等は速記録に於て御承知を願ひたいと思ひます、以上質疑應答がこざいまして、討論の際、一委員から贊成の御意見が出ました、それをちよつと御紹介申上げます、茲に提出されて居る豫算案は國民榮養上缺くべからざる鹽の不足を補ひ、又粉食の生産に依り當面して居る食糧事情を幾分緩和し、又農地制度の根本的改正に依つて健全なる農家を育成し、食糧事情を緩和しようと云ふ政策が盛られて居る、從つて之に贊成する、併しながら此の追加豫算だけでは焦眉の急に應ずることが出來ない、仍て政府は我が國の當面せる食糧難の克服、又此の嚴冬を控へての戰災者の住宅の建築、及び刻々増大深刻化せる失業大衆救濟、是等に對して孰れも迅速果敢なる對策を實施して貰ひたい、更に漸次激増汎濫し行く通貨に依り生ずる惡性「インフレーション」に對應して、通貨政策の勘案に依り、經濟財政の破綻を未然に防止するやうにして貰はなければならぬ、又現下の憂ふべき國内治安状態に付ては、各地とも無警察の状態と云ふべきものであつて、速かに警察力を再建、増強して、國民生活の不安を除いて貰ひたい、更に勤勞大衆の勤勞意慾の不振、其の基く所國民道義の頽廢に存するものと思ふが、社會教育の再建に依つて之を匡正する外はないと思ふ、又石炭増産の出來る、出來ないは、再建日本の産業復興と、國民日常生活とに密接なる關係があるので、之が増産に付ては一段の努力をして貰はなければならぬ、それらの事を實施するに當つて聯合軍司令部と絶えざる連絡を保持して、其の圓滑なる運營を期して貰ひたいと思ふ、是等の希望を附して、自分は本案に贊成する者であると云ふ贊成意見の御陳述がございました、次に一委員は又贊成の意を表されまして、それに附隨して希望を言はれました、今や此の度の豫算委員會に於ける質疑應答に依りましても、戰爭の災害の如何にも大なることを痛感する故に、其の敗戰の原因を政治上より將又技術上より能く調査して、其の結果を公表し、天下後世の戒めとする資料と致したい、豫算委員會に於ける審議の經過を見ましても、今や國家の前途には難問が百出して居る、併し自分は前途を必ずしも悲觀はしない、併し無條件に樂觀するものではなくて、それに付ては政治方面に於ても外交方面に於ても、或は穏健政治、或は穏健外交と云ふものがなければ、是が打開は出來ないと思ふ、而して穏健政治はどう云ふことかと言へば、各機關共其の分を守ると云ふことである、又外交に付ては國際信義の蓄積がなければならぬ、國民は政府を援けて、是等のことを行はしめなければならぬものと思ふ、斯くして東亞の一角に樂土を建設し、世界平和に貢獻することが出來ると思ふ、此の希望を附して本豫算に贊成する者であると云ふ贊成意見の御陳述でございました、以上贊成の御意見は二人の委員からのみの御陳述でございまして、採決に移り、滿場一致豫算三案は可決されたのでございます、以上を以て御報告を終ります、長い間御清聽を願ひまして有難うございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=28
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029・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 質疑の通告がございます、關屋君
〔關屋貞三郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=29
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030・關屋貞三郎
○關屋貞三郎君 只今豫算各案を審議するに當りまして、極めて簡單に質疑を試み、意見をも申上げまして、政府、殊に總理大臣、司法大臣の御答辯を御願ひ致したいと思ふのであります、尤も私が此の質疑の通告を致しました時に考へて居りましたことが、幸に政府の御盡力に依りまして一部分解決致しましたから、其の方面に付きましては私の質問は其の時に考へたことと多少違つた形を取りまして、質問も稍稍簡單になつた譯でございます、只今上程されました豫算の中には、帝國議會の開會に關する經費もありまするが既に此の本議會に提出されました各案と共に、是は「ポツダム」宣言の所謂民主的、平和的政治の復活強化に必要なるものであります、是等の施設は「ポツダム」宣言を俟つ迄もなく、既に業に實行せられて然るべきものでありましたが、終戰迄は寧ろ反對の方向に進みつつあつたのであります、今や「ポツダム」宣言を受諾致し、終戰の御詔書を拜し、萬世の爲に太平を開かせ給ふとの大御心の下に、我々共新日本建設に當らなければならぬのでありまして、臨時議會を開會せられたのも其の御趣旨であるだらうと思ふのであります、民主的、平和的政治を實現する爲には、私は先づ帝國議會を強化して其の地位を向上することが第一の要義であると信じて居るものであります、取敢ず此の衆議院議員選擧法改正の如きも重要なるものの一つで、追つて貴族院も劃期的の改正が行はれると云ふことを信じて居るのであります、帝國議會を強化向上するに付きましては、議員をして能く民意を反映代表せしめることは申す迄もありませぬが、御互ひ議員一人々々が常に修養に努めて、議員たるの責務を盡すに於て遺憾なきを期することが根本である、之に依りまして帝國議會は内外一般の信頼を博するやうになると思ひまするが、私は帝國議會の地位を向上強化する爲には兩院議長の地位を高めると云ふことが必要であると確信して居つたものであります、從ひまして副議長、議員も自然同樣になる譯でありますが、さう云ふやうな考を從來持つて居つた者であります、又先般本議場に於て同僚田口君よりも御意見があつたやうでありまするが、兩院事務局を強化すると云ふことも考慮されなければならぬのでありまして、我々が議員として單に政府の説明のみに依存しないで、議員自體が自ら調査研究を遂げ、國際的にも國内的にも各種の事情に精通し、議會獨自の意見を以ちまして、更に政府の説明を十分に承り、適當に判斷を下さなければならぬものであります、徒に盲從を事と致しますれば、取り返しの付かぬ失敗に陷ることは御同樣經驗した通りであります、如何に此の議會が所謂白堊の殿堂で立派に建築が出來ましても、其の運用内容が伴はなければ意味を成さぬと思ふのであります、どうしても兩院事務局の強化が、矢張り帝國議會を強化すると云ふ意味に於て最も必要なのでありまして、或場合には兩院の書記官長の地位、若しくは任用と云ふやうなことも大いに考慮されなければならぬものと思ふのであります、貴族院に於ける衆議院議員選擧法改止の特別委員會の席上で、私は兩院議長、從つて副議長、或は議員も伴ひまするが、兎に角此の兩院議長の地位の向上に付きまして内務大臣に質問致しました處が、至極同感で、何となしに其の當時から實現が近いのであると云ふことを感じましたが、本日新聞紙上で此の問題に付きましては既に樞密院の御諮詢も濟み地位向上が既に公布せられたことを知りまして、頗る欣快に堪えないのでありまして、現政府に對し深く敬意を表する者であります、併しながら兩院議長の地位の向上と共に、私は寧ろ同時にと言ひたいのでありますが、實現しなければならぬものは大審院長、從つて檢事總長も伴つて參る譯と思ひますが、大審院長の地位向上であります、今日此の問題に付きまして政府の御所見を承りたいと思ふのであります、是が私の今日の質問の目的であります、質間者は大正十年に宮内省に入りまして、當時兩院議長と大審院長の地位が國務大臣に比して非常に低いのに驚いたのであります、私が直接關係致しましたことを此の席で申上ぐると云ふことは、實は如何であるかと思つて差控へようと思つたのであります、此の問題に付政府に於ても、矢張り相當關心を持つて居つたのでありまして、唯如何にも其の進行が遲遲として進まなかつたのでありますので、其の經緯を申上げることも將又帝國議會を強化すると云ふこと、若しくは運營を十分に致して行く上に於ても、亦今日私が質問せむとする大審院長の地位向上に關しましても、何れ是は政府の御盡力を願はなければならぬものでありますから、少し其の經緯を申上げて置いた方が、或は御參考になるかと思ひまして、暫く清聽を煩はしたいと思ふのであります、稍稍古い事を申上げて恐れ入りますが、原内閣、濱口内閣、それから齋藤内閣の當時でありまするが、當時の内閣書記官長であつた、横田君、川崎君、柴田君等が屡屡宮内省に來訪せられまして、色々政府の希望する所を御話があり、又我々共の考を申述まして懇談致したことがあります、併しながら其の當時は總理大臣よりは公式に宮内省に對して何にも申出がなくて、從つて宮内大臣と致しましては、此の事に付て奏請して樞密院に御諮詢になる迄には至らなかつたのであります、是は政府の熱意も足らず、又一つには私共が甚だ微力であつた爲でありまして、今更汗顔に堪へないのであります、宮中席次は皇室儀制令の中にあるのであつて、樞密院の決定を要するのであります、當時政府は樞密院に難色があると云ふ理由で、常に躊躇せられたやうであります、私はどう云ふ點が難色であるかと云ふことを十分理解は出來なかつたのでありますが、兎に角政府は頻に樞密院を憚つて居つたのであります、今日は時勢も一變致しまして、民主的、平和的政治の確立を必要とする時期でありまするし、既に兩院議長、副議長、議長等に付て席次の向上を圖られたのでありまするから、我が最も尊敬する明敏なる樞密院の諸公には、必ず大審院長の地位に付ても、私は御了解が得られると云ふことを確信し、且之を希望するのであります、尚少し諄いやうでありまするが、私は前年貴族院の豫算總會に於て、平沼内閣の當時も此の事を質問致しまして、政府も十分考慮するとの答辯を得ましたが、實は今日迄實現しなかつたのであります、私は甚だ微力な者でありますることは御承知の通りでありまするが、唯此の問題は立憲政治の根本義であると考へましたから、色色な機會に於て當路の方には申上げたのであります、又大審院長の席次に付ては殆ど歴代の司法大臣の所に伺ひまして、此の實現を御願ひ致したのであります、兩院議長の問題は幸に解決致しましたが、大審院長、次で是は檢事總長の問題も含んで居りまするが、之に付きましては、未だ政府の御意嚮を十分に承ることが出來ないので、今日貴重な時間を御願ひ致して御質問を致すやうな次第であります、私から詳しく申上げる迄もないのでありまするが、一國の政治がうまく行くか行かぬかと云ふこと、殊に是が立憲的に、即ち民主的に、平和的に動いて參りますのには、行政、立法、司法三權が強化獨立して、而も此の間に十分協調が保たれて順調に進んで行かなければならぬことは、申す迄もないのであります、結局正義の確立であります、正義の確立であります、正義には國際正義と國内正義と云ふものがあると思ひまするが、国際正義に付きましては、今囘の此の敗戰に於きまして聯合國の見方では、我が國の國際正義は確立して居らなかつた、或は國際正義に背いたものが多かつたと見て居るのであります、又さう云ふ風に指摘致して居るやうであります、將來大小孰れの國家に致しましても、此の國際正義を嚴重に守ることでなければ、世界の平和は期し得ないと思ひます、我が國に於きましても、誠心誠意將來之を守つて、苟くも國際間の信用を失墜するやうなことのないやうにしなければならぬと考へます、又是と同時に國内正義を確立することが極めて必要でありまして、是がなければ治安秩序の維持も出來ず、民生の安定も出來ないのであります、國家の發展、世界平和の貢獻と云ふやうなことは絶對に出來ないのであります、是は政府、民間全般に關する事柄でありまして、殊に司直の府が餘程しつかりして戴かないと、此の國内正義は到底維持出來ない、司直の府が國民の畏敬と信頼を受くることがなければ駄目であらうと思ひます、それには在朝在野の法曹の向上を望むことは申す迄もありませぬが、矢張り最高峰とも謂ふべき大審院長の地位を高めると云ふことが必要になつて來ると思ふのであります、勿論地位の向上と共に、或種の權限を與へる必要もあるかと思ひまするが、是は司法省等に於ても御研究であることと思ひまして、私は實は餘り十分に研究して居らぬのであります、兎に角大審院長が常に司法大臣の下風に立つと云ふやうな考へ方は甚だ宜しくない、然るに從來司法大臣は大概檢事總長から榮轉であるかどうか知りませぬが、轉任せられるのでありまして、何となしに大審院長とか判事と云ふ方の側は勢がないやうな氣が致すのであります、大審院長は勿論司法省の中から御選になつて結構でありまするが、萬一政府に其の人がなければ、在野から出ても宜いと思ふのでありまするが、私はどなたでありましたか、司法大臣に御話したこともあります、在野にも立派な人が澤山居るぢやないか…澤山と申しませぬが、居るぢやないか、さう云ふ人を御選になつて宜いぢやないかと云ふことも申した位であります、甚だ露骨な事を申上げてどうかと存じまするが、前の樞密院議長の原嘉道氏の如き、若しくは此處にもおいででありますが、岩田君とか松本君とか云ふやうな在野法曹界に於ける錚々たる人が、大審院長になつても宜いぢやないかと云ふやうな事迄申したこともあります、兎に角人物の立派な人が大審院長になつて、國民が此の人に判決を受けるならば安心であると云ふ者でなければ、所謂國内正義を保つと云ふことは出來ないのであります、甞て豚箱事件と云ふやうなものがあつたやうであります、又帝人事件、斯う云ふやうなものは司直の府の信用を害したことは甚だしいのであります、又檢察當局の名譽でもないと思ひます、尚彼の二・二六事件とか、或は幾多の所謂事件と云ふ名前の付きました不詳事が起りました時には、何となしに司直の府は殆ど手を拱いて見て居つたんぢやないかと云ふ風にも我々は感ぜられたのでありまして、國内正義の確立を危んだのであります、況んや近時戰爭後の犯罪も段々殖えて參つて居ります、又食糧難に伴ふ闇の問題、又思想の混亂と云ふやうなことが段々起るので、實に寒心に堪へないものがあります、此の際司直の府を強化する意味に於きまして、大審院長、檢事總長も相次で起ると思ひまするが、大審院長の地位を高めることが、極めて必要であると私は考へるのであります、米國や英國の例等は政府で夙に御承知の通りでありませうが、どうか此の民主的、平和的政治の確立と云ふことを圖つて參る際でありまするから、此の問題に付きまして政府の御所見を承りたい、殊に總理大臣、司法大臣の御答辯を冀ふ次第であります
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=30
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031・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今の關屋君の御質疑に御答へ申上げます、大審院長の宮中席次を引上げる問題に付きましては、實は政府に於きましても、此の宮中席次の問題と關聯する外の事項と共に、一應考へて見たのでありまするが、之が實行に付きましては種々研究を要する點がありましたので取敢ず先づ貴衆兩院の正副議長竝に議員の宮中席次を引上げることに取計らつたのであります、尚只今關屋君の御意見も承りましたので、更に研究を重ねる積りであります
〔國務大臣岩田宙造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=31
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032・岩田宙造
○國務大臣(岩田宙造君) 私からも關屋君に御答へ申上げます、關屋君の述べられました通り、絶對敗戰の地位に立ちました我が國は、今後武力と云ふものは全然なくなりまするし、財力も枯渇致しまして、是は今後武力と云ふものは性質上さうでありまするが、財力の點に於きましても、外國に對する關係に於ても、内國だけの關係に於きましても、當分從前の地位の囘復すると云ふことは困難なことと考へます、從つて我が國民が對外竝に對内の點に於て其の地位を向上し得る、今日からでも直ちに向上することの出來る唯一の途は、關屋君の言はれました通りに、正義を發揮すると云ふことのみであると思ふのであります、正義でございまするならば、只今今日からでも、若し我が國が世界に誇るだけの正義を發揮することが出來まするならば、其の點に於て必ず我が國は國際間に於ても相當の地位を贏ち得るであらうと思ふのであります、其の意味に於きまして、「ポツダム」宣言の線に沿うて今後我が國に於ては色々の努力が盡されることと思ふのでありますが、今議會に於て衆義院議員選擧法が改正されたのも、御承知の通りに其の一つの手段でありまするし、今後は又憲法以下重要なる法令が段々と改正されて參ることと考へるのでありまするが、如何に法令が立派に完備致しましても、それが適正に行はれなければ何の役にも立たないことでありまするし、是が公正に行はれると云ふことは、是は司法權に依つて保障されなければならぬのでありまするから、司法權の公正にして強力なることを要することは、今日に於て最も適切に感ぜられることと考へるのであります、其の司法權が公正にして強力なることを得ると云ふことは、是は其の司法權行使の任に當る者の素質の向上が大切であることは申す迄もござりませぬが、尚其の機構の上に於きましても相當の地位を有して、國民に尊敬を得るやうにならなければならぬことも當然でありまするから、是は是非共關屋君の言はれました通りに、司法權の最高峰に立つて居りまする大審院長の地位と云ふものは、是非共從前よりも一層是は高くして戴かなければならぬと云ふことは、私共最も痛切に感じて居る所でございまして、是は出來るだけ私と致しましては色々の障碍を排しまして、是は檢事總長の問題は姑く措きまして、司法權は何處迄も裁判が中心でありまするし、從つて判事が中心でなければならぬのでありまするから、大審院長の地位の向上と云ふことに付きましては、全力を盡して出來るだけ早く實現するやうに努力したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=32
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033・關屋貞三郎
○關屋貞三郎君 簡單でございますから此の席から…、只今總理大臣の御答辯を伺ひましたが簡單ではごさいますが、私共の考と略略同樣のやうに承つたのであります、又只今の岩田司法大臣の御答辯も懇切でありまして、寧ろ私共の言ひ足らぬ所を補つて下すつたやうな感があるのであります、結局司法權の尊重と、獨立と云ふことを希望する意味に於きまして、私は大審院長の地位を高めると云ふことを申上げたのでありまして、どうぞ此の實現が速かに行はれるやうに希望して巳まないのであります、此の問題は長い間の寧ろ懸案とも言つて宜い位の問題でありますが、どう云ふ譯であるか、歴代の政府がそれを實行しないのでありますが、時代も變つて來て居りまするし、現政府は相當に勇敢に各種の改正行つておいででありますから、現政府に於て出來るだけ速かに御實行あらむことを希望して私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=33
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034・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 是より採決を致します、御異議がなければ、三案全部を問題に供します、三案とも委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異義なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=34
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035・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=35
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036・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 此の際議事日程に追加し、農地調整法中改正法律案の第一讀會の續を開き、委員長の報告を求めることに御異議ございませぬか
〔「異義なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=36
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037・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異義ないと認めます、委員長稻田男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=37
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038・会議録情報5
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農地調整法中改正法律案
右可決すへきものなりと議決せり依て及報告候也
昭和二十年十二月八日
委員長 男爵稻田昌植
貴族院議長公爵徳川圀順殿
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〔男爵稻田昌植君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=38
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039・稻田昌植
○男爵稻田昌植君 農地調整法中改正法律案特別委員會の經過竝に結果を御報告申上げます、此の法案を政府が出された趣旨及び内容は過日の本會議で政府から説明がございました通りでありますが、此の農地制度に關しまする改正は、歴代の政府が常に希望を持つて居つたのでありますが、何せ當面の供出竝に配給に追はれて居りまして、土地を基本と致しまする農業である限り、農地に關する改革が最も緊急であることは知りながら、つひ今迄實現の機會を得なかつたさうであります、それが今囘の敗戰後民主主義の主義を採入れまして今囘の提案になつたのであります、決して一夜漬けのものではないとの御趣旨も伺つたのでありますが、其の内容は主な點は三つございます、其の一つが自作農創設の強化であり、其の二が小作料の金納化であり、其の三が農地委員會の刷新であります、以上の提案の趣旨及び内容を盛つた此の改正法律案は或は今期議會に提案されました三大法案の一であり、或は劃期的の立法であるとの鳴物入と云つては少し語弊がありますが、大分肩書が附いて居ります、從つて質問者も多數であり相當の時間を要したのであります、從つて其の質問の内容を是から御報告申上げるのでありますが、先程委員會が漸く終了したばかりであり、且委員長であつた私の力も足りない故もあり、全部の御質疑を此處で御披露する譯には參らない、從つて委員各位の非常な貴重なる質問も或は省略の已むを得ない結果になるかも存じませぬ、從つて細かい點を速記録に譲りますと同時に、重要なる質問も速記録で御覽を願ふことにならうかと思ひます、どうぞ此の點惡しからず御了承を願つて置きます、御質疑の内容は大體項目別に御報告申上げたいと存じまするが、其の一つは法案の字句其のものに關係なく、此の農地調整法改正案を通じまして、農村、或は食糧、或は憲法との關係などの質疑が第一種の質疑と致しますれば、第二種の質疑と致しまするものは、所謂法案其のものに直接關係あるもの、此の大體二つに分けて御報告を申上げたいと存じます、其の第一種の方の所謂將來政府は農村、或は農民などに對する基本觀念はどうかと云ふものは包括される質問でありますが、詰り將來如何なる農民を要求するか、如何なる農村を要求して居るか、或は更に具體的に言へば米の專賣はどうか、土地の國有はどうかと云ふやうな御質疑に對しまして、政府の答辯は、要するに將來の農村、農民と云ふものは、所謂國の礎たる健全なる農民を作るにあるのである、而も恆産を持たせて生活の改善向上に資する積りである、且此の法案が通りますと大體其の目的は達せられるやうに思ふ、更に米の專賣に付きては、只今明言する限りではないのでありますが、要するに現在の主要食糧の統制は恐くは將來と雖も後退することはないと思ふ、且土地の國有と云ふ方法に依らずして、農地調整の方法で今囘の提案になつたものであると云ふやうな御答辯があつたと存じて居ります、それから憲法の改正に付きましては、憲法に於きまする所謂所有權の不可侵權と抵觸することがないかと云ふ御質疑に對しまして、政府の答辯と致しましては、憲法上に於きまする此の公益に關する解釋は、近來大分廣義に解釋されて來て居るのであります、今囘のやうな價格を決めての公用徴收とも見らるべきものも必ずしも先例のない譯ではないので、決して憲法には抵觸してないと云ふことを確信すると云ふ御答辯であり、更に其の次の憲法關係の御質疑の兵役の義務と云ふものは、將來勿論なくなるのであるが、食糧増産上憲法に勞務の義務と云ふやうなものの規定を置いてはどうかと云ふ御質問に對しましては、政府側に於かれましては之に贊意を表せられて居つたのであります、次には第二種の質問、詰り法案其のものに付ての御質問の御紹介に移りますのでありますが、第一は食糧増産のことであります、但し是は豫算總會に於きまする御質疑と或點重複致しますので、成るべく重複を避けて要點だけを御紹介申上げます、政府は聯合國側の許可を得て三百萬「トン」の食糧を輸入すると云ふことであるが、其の何處から取つて來るか、其の見返品竝に輸送力の關係はどうであるかと云ふ御質疑に對しましては大體東亞方面に於て百五十萬「トン」の輸入を見込んで居るが、滿洲、朝鮮、臺灣及び佛印、泰方面に於けるものを總て引括めて稍稍之には足りない懸念を持つて居る、從つて是れ以外のものは小麥に頼らざるを得ない、小麥と致しますれば、世界の産國であります、「カナダ」、「アメリカ」、「アルゼンチン」、濠洲でありますが、其の内大體南半球は本年は不作でありますが故に、多大を期待する譯にはいかない、從つて「アメリカ」及び「カナダ」から相當の小麥を入れて、三百萬「トン」を極力是は盡力をして居る、併し其の船も不足でありますので、是は「チャーター」に依らざるを得ない、見返品に付きましては農村に特に關係深いものは生絲である、今年の生絲は三萬五千梱程度のものしか役立つことが出來ないと思ふのでありますが、來年の生産額も入れて、十五萬梱位のものは之の方に向られることが出來るであらう、斯う云ふ御答辯であります、次は折角斯う云ふやうな方法を講じて小作農を自作農化しても、從來の例に依りますると云ふと、自作農其のものがなかなか困難であるが故に、新しい自作農を作りましても、直ちに其の日から小作農に再び顛落する虞がないのであらうか、此の點をどう考へるかと云ふ御質疑に對しまして、是は一方米價の改訂を中心として、新たなる自作農家の生計を豐富にし、同時に農村工業の一部も農村に採入れて更に其の點を強化し、第三には、經營の科學的合理化を行つて、再び小作農に顛落することを防ぐ積りである、斯う云ふ御答辯であります、それから其の次には今囘の農地調整法を見ますと、どうも小作人の側の方の肩を持ち過ぎる、種々の價格の點及び種々の點から云つて、地主は極めて不利ではあるまいか、此の點に對する御質疑は相當多數ありましたのであります、政府側の御答辯は、今囘の提案は斷じて小作人の肩のみを持つたものではない、兩者の色々の事情其の他を按配して作つたものであり、物價騰貴のある點は已むを得ないのに拘らず、買收價格が現在の價格に依つたと云ふことは如何なものであるかと云ふ質疑に對しても、大點此の邊で公平を期し得られるものと思ふと云ふやうな御答辯があつたのであります、其の外小作農を自作農に致しまする目標として、所謂飯米農家との關係、或は賣渡し價格の凍結の問題、其の他種々非常に澤山の質問がございましたのでありまするが、是は先程申しました通り總て速記録に譲らして戴きたいと思ひます、以上のやうな各種の御質疑がありました後、採決に移りましたのでありまするが、採決に當りましては、政府提案の原案を衆議院で修正をせられて居ります、其の修正の要點は、五六箇所あるのでありまするが、主な點は二箇所であります、即ち其の一つは、小作料が金納一本建になつて居りましたものを、衆議院に於きましては物納をも認め二本建としました點と、農地委員會が地主、小作及び自作農各五人づつ十五名を以て組織せられて居りますのを、其の市町村内の徳望、名望あります者を更に三名入れて十八名に致しました、此の二點を主なものとして、之に關する字句の修正などが衆議院の修正の全部と考へて宜しいのであります、此の衆議院の修正案を議題と致しました處、滿場一致可決確定を見たのであります、以上で御報告を終りますが、更に其の際一委員から希望の意見が討論の時に出たのでありますが、それは二項目ありました、詰り地主、小作人雙方の希望を適當に調整して民間の協力を得て之が實施に當つて貰ひたいと云ふ所が一つ、もう一つは農村指導に當りましては、特に格段の意を用ひて我が國農民本來の醇風美俗の徳性を失はないやうにして貰ひたいと云ふ希望の意見を述べて贊成意見があり、且此の討論の際ではございませぬが、質疑に當りましても、其の質疑の中に此の法案の運營に當りましては、特に愼重な態度で運營に當つて貰ひたい、無理に無理を重ねることは極力避けて貰ひたいと云ふやうな御希望も出たことを申添へて置きます、最後に更に一言申添へて置きたいことは、此の法案が衆議院で審議最中聯合國司令部側から、所謂農民解放に關する指令が出て居りました、其の指令と此の法案との關係に於きましては、其の指令の中にありまする或項目は既に此の法案の中に盛られてありました、更に殘りの數箇條は、是から善處をすることが出來るのであります、決して聯合國司令部の指令と此の法案とは抵觸するものではないと云ふ政府側の意見を申添へて、私の御報告を終りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=39
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040・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 別に御發言もなければ本案の採決を致します、本案の第二讀會を開くことに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=40
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041・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=41
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042・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第二讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=42
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043・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=43
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044・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=44
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045・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=45
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046・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 本案の第二讀會開きます、御異議がなければ全部を問題に供します、本案全部、委員長の報告通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=46
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047・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=47
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048・西大路吉光
○子爵西大路吉光君 直ちに本案の第三讀會を開かれむことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=48
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049・植村家治
○子爵植村家治君 贊成発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=49
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050・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 西大路子爵の動議に御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=50
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051・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます
――――◇―――――発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=51
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052・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 本案の第三讀會を開きます、本案全部、第二讀會の決議通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=52
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053・徳川圀順
○議長(公爵徳川圀順君) 御異議ないと認めます、本日は是にて散會致します
午後三時四十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903242X01419451218&spkNum=53
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