1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○勞働組合法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十年十二月十六日(日曜日)午前十一時八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=1
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002・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 是より委員會を開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=2
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003・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 私は二三條文の字句に付て御伺ひ致したいと思ひます、十九條でございますが、勞働組合に付きまして、勞働協約は書面を作成することに依つて效力を生ずるやうになつて居りますが、非常に細かい御話になりますが、書面は一通作つて、之を何處かに供託するのでございますか、勞資雙方に兩者間に同一の書面を作成して御互ひに持合ふと云ふやうなことになるのでありますか、是は實際の取扱は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=3
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004・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 勞働協約ですから、向ふでは「サイン」と云ふ字を使ふのを日本の普通の法文の書方では、書面作成と云ふことになつて居ります、場合に依つては二通作つても、三通作つても必要に應じて宜しいと思ひますが、一通だからいけないと云ふ制限は別にないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=4
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005・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 丁度遺言状の作成のやうなものですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=5
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006・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 大體同じことになると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=6
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007・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 二十一條でございますが、「勞働協約締結せられたるときは當事者互に誠意を以て之を遵守し勞働能率の増進と産業平和の維持とに協力すべきものとす」、是は誠に當然のことを規定した規定でありまして、なくても宜いやうな感じが致すのでありまして、勞資雙方勞働協約を誠實に書面を以て作成すれば、協約當事者は御互ひに誠實に之を守ることは當り前のことであると云ふやうな感じが致しますが、何か之を本條を規定して置いたことに矢張り實益があり、且是がなくてはならないやうな規定であるのでありませうか、ちよつとなくても宜いやうな感じが致しますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=7
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008・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 法律の中にも例へば六法と云つたやうな基本的の法律と、更に又勞働組合法の如く其の時々の社會の情勢、政治的な傾向等を多分に織込んで出來る法律とがあると思ふのでございます、從つて最近の社會情勢等に鑑みて無用と思はれる規定であつても、一部の不安を除去し、産業平和の爲に特に挿入することが望ましい規定は之をはつきり法制の中に書いて置く、斯う云ふ行き方もあると思ひます、今橋本伯爵の御指摘になりました二十一條の如きは恰も第一條第二項の規定、或は第十二條の規定と同じやうに、主として使用者及び勞働者に對する心構を示し、同時に或部分に對しては此の規定に依つて將來に安心を與へる效果を狙つて茲に掲げたものであります、嚴格に考へれば第二十一條の規定の如きは書かなくとも勞働組合法として成立し得る規定だと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=8
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009・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 分りました、それから二十六條の勞働委員會の問題でございますが、此の委員會のことが、私は勞働組合のことを能く承知致しませぬが、例へば工場の勞働組合もございませうし、それから此の規定に依りますと、給料生活者は誰でも勞働組合を作り得ることになつて居りますから、例へば家庭の使用人、斯う云ふものも勞働組合が作れると存じます、さう云ふ業種を異にした勞働組合が同一の勞働委員會に附するのでありませうか、それとも業種別に茲に書いてありまするやうに「一定の地區又は事項に付特別勞働委員會を設くることを得」と云ふことに、此の法に準據致しまして、家庭の使用人は使用人で別箇の勞働組合を組織し、又勞働委員會が出來る、斯う云ふ風に了解して宜いのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=9
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010・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 御答致します、家庭使用人は一般の勞働組合に加入するのが多いだらうと思ひます、特に家庭使用人だけの勞働組合を作る如き事態は頗る稀だらうと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=10
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011・橋本實斐
○伯爵(橋本實斐君) さうしますと、例へば工場内部に勞働組合がございます、それから只今の仰せのやうに一般の勞働者を以て組織する勞働組合は、どう云ふやうな……是は工場毎に特別の勞働組合を設置し得る、それから抽象的に色々な各種の業態別の勞働者をして一箇の勞働組合を作ると、自然家庭の使用人も其の勞働組合に入る、斯う云ふ關係になるのでせうか、其の點尚私了解致しませぬので、御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=11
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012・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 本法の勞働組合は自然發生的の勞働者の自由意思に依つて決定させたい、斯う云ふ風に考へて居りますので、御話のやうな一定地域にあります所の家庭の勞務者、例へば女中とか、下男と云ふやうな者が、一定の地域を限つてそこに勞働組合を作ることも支障はないと思ひます、さうして其の場合に色々の勞働協約に付て異議が起つた場合に勞働委員會に掛けたいと云ふ場合に、一般の勞働委員會に掛け特別の勞働委員會と云ふものは必要はないのぢやないかと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=12
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013・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 さう致しますと今の御話で茲に指定してあります「一定の地區又は事項に付特別勞働委員會を設くることを得」と云ふのは何か特別の場合に備へる規定なのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=13
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014・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 今一定の地區と云ふことに付て一般的に豫想して居りますのは、勤勞署の單位、此處にあります地方勞働委員會は大體府縣を單位と致します、地區とは其の下の勤勞署の單位を一定の地區と考へて居ります、それ以外に必要があれば更に拵へたいと思ひますが、一應さう考へて居ります、それから特別の事項と申しますのは、例へば今はつきり考へて居りますのは船員の關係であります、船員の關係は船員法の規定もありますし、非常に複雜になつて、一般の勞働者と非常に違ふ點がありますので、之に關しては地方、中央共に別に委員會を作りたい、斯う云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=14
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015・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 了承致しました、それから勞働委員會は常設的のものと考へますが、さう云ふやうに了解して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=15
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016・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 原則として左様でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=16
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017・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 それから三十一條でございますが、是はちよつと字句が分りませぬですが、「第三章の規定は勞働委員會と關與したる勞働條件其の他の勞働者の待遇に關する基準に關する協定にして勞働組合其の當事者たらざるもの」其の當事者たらざるものと云ふのはどう云ふのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=17
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018・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 茲に例を引いて御説明申上げます、此處に一つ製絲工場がありまして、其の間に何等の勞働組合の法成がない、勞働者の間に賃銀に關して紛議がありました、さうして其の間に勞働委員會が干與しまして、勞資兩方の間を調停して、一定の勞働賃銀を決定したいと云ふやうなことに付きまして、勞働賃銀は第三章の規定してあります勞働協約の效力の問題、其の他勞働協約の諸規定を準用して右協定を保護致したい、斯樣に考へた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=18
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019・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 それから前に戻りますが、第七條に「規約には少くとも左の事項を記載すべし」とあつて、第一に「名稱」とございます、此の名稱の中には、必ずしも條文で勞働組合を示すことの文字を要求致して居りませぬから、どんな名前を附けてもいい、斯う云ふ風に了解して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=19
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020・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 名稱に勞働組合と云ふ文字を使へとは必ずしも申して居りませぬが、大體それに類似するやうな文字が使はれるのが普通でございます、或は組合總同盟と言ひ、或は何々組合、勞働と云ふ字が入る場合も入らない場合もありますが、大體類推出來るやうな用語を使ふのが、普通になるであらうと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=20
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021・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 了解致しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=21
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022・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 橋本伯爵の御尋に關聯して伺ひたいと思ひます、第二十六條の勞働委員會に付てですが、使用者側を代表する使用者團體、是は勞働委員會と云ふ相場重要な機關を構成するに付ての基礎團體となつて、使用者側に取つては相當重要だらうと思ふのです、そこで使用者團體と云ふものに付ての規準でも御拵へになるのですか、例へば經濟聯盟とか或は商工會議所なども、使用者團體と見て宜いのかも知れませぬが、矢張り使用者團體とは斯う云ふものであると云ふやうな、何か規準でも作る御積りですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=22
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023・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 今具體的に考へて居りますのは、經濟聯盟であるとか、紡績聯合會であるとか、或は鐵鋼の聯合會と云つたやうなものを頭に置いて居りますが、別に命令を以て、どう云ふものを使用者團體とすると云ふ規定を出す計畫はないのであります、大體一般の社會通念に依つて、企業者が利害を共通にする問題を常に相談して居ると認められるやうなものを含ませよう、此の程度に考へて居る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=23
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024・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 勞働組合は是から澤山出來るだらうと思ふのです、恐らく大抵組織されるのぢやないかと思ふのですが、委員を推薦する時には、勞働組合の代表でも御招集になつて、選擧でもやらせるのか、或は書面で勝手に言つて來いと云ふやうな方法を御採りになるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=24
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025・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 是は別に一定の形式を決めないで、適宜代表者が口頭で言つて來ても亦書面で出しても、それが眞實の意思表示と認められた場合は、どちらでも自由にやらせ得るやうにしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=25
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026・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 是は常設的な委員會であつて、其の都度出すのぢやないから、矢張り全國の勞働組合から推薦させる積りでせうね、恐らく勞働組合は澤山あらうと思ひます、何千とあるかも知れない、殊に中央の委員會でも作る場合には、何か方法を決めて置かないとならぬと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=26
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027・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) さう云ふ風に澤山出來ると、同じ思想系統に屬するものは、恐らく其の聯合會が出來やしないかと思ひますから、其の聯合會の意思を聽けば、全體の意思が分りはしないかと思ひます、併し餘り濫立される場合には、特別の相談會でも開かねばならぬかも知れませぬが、大抵聯合會が出來ようと思ひますから、其の意向を聽けば分るだらうと云ふ風に想像して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=27
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028・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 聯合會自體も、是は相當出來はせぬかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=28
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029・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 併し日本全體を纒める聯合會が出來る氣運が動いて居るやうです、昔の總同盟のやうに……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=29
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030・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 使用者團體にもさう云ふ氣運がありますか、使用者の團體の聯合會でも出來さうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=30
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031・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 使用者の方は私は存じませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=31
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032・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 何か規準のやうなものを御考になつて置くことが必要ぢやないかと思ひます、どう云ふ方法で推薦させるかと云ふことに付て……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=32
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033・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 實際問題としては、大體組合加入の員數などを參考にして、其の組合員の大小に依つて代表權を按分して行くと云ふやうなことをする外に仕方がないと思ふのですが、さうすると勢ひ極く少數の組合員しか持たない小組合は、推薦した代表者を入れて貰へないことになるのぢやないかと思ふのですが、大體の目安は、其の組合員の數に規準を置いてやる外に、ちよつと標準の置き方がないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=33
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034・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 中央、地方の勞働委員會の委員は、使用者側が何人、勞働者側が何人、第三者が何人と、大體の御積りがあるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=34
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035・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 一應事務當局として考へて居りますのでは、中央が七人宛、府縣が五人宛、それから勤勞署に設けるのが三人宛位に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=35
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036・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 此の推薦と云ふことに付ては、利害が非常に複雜になりませうから、推薦する時は色々なむつかしい問題が起りはせぬかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=36
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037・大橋八郎
○大橋八郎君 只今の委員長の御質問に關聯して、此の勞働委員會には隨分色々な問題があるのぢやないかと思ふのです、第二十六條の第五項に「勞働委員會に關する事項は本法に定むるものの外勅令を以て定む」とありまして、今のやうなことは多分勅令で御定めになるのぢやないかと思ひますが、何か既に要綱のやうな腹案があるならば、此の機會にすつかり御話し願つた方が、質問の省略になつて宜いのぢやないかと思ひますが、御願ひ出來ませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=37
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038・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 事務當局として考へて居ります命令の内容を申上げます、第一の點は、中央勞働委員會は厚生省に、地方勞働委員會は都道府縣に付き設け、特別勞働委員會は勤勞署に、事項に付き設くる特別勞働委員會は當該事項の主務官廳に之を置くものとすることが一つでございます、第二は、勞働委員會の委員は、中央勞働委員會にありては二十一人以内、即ち七人宛、地方勞働委員會にありては十五人以内、即ち五人宛、地區に設くる特別勞働委員會にありては九人以内、即ち三人宛、事項に付設くる特別勞働委員會にありては主務官廳の指定する人數以内とし、各主務官廳之を委囑す、是は只今はつきり豫想して居るのは海員關係であります、主務官廳は勞働委員會の決議に依り前項の委員の外臨時委員を委囑するものとす、第三、勞働委員會に議長を置く、議長は第三者たる委員の中より委員之を互選すること、議長は會務を總理すること、それから第四は、勞働委員會は議長之を召集し、其の議事は過半數に依ること、可否同數の時は議長の決する所に依ること、第五、勞働委員會に幹事及書記若干名を置くこと、幹事及書記は議長の同意を得て主務官廳之を任命又は委囑すること、幹事の上司の命を受けて庶務を處理すること、書記は上司の命を受けて庶務に從事すること、前各號の外勞働委員會に對し必要なる事項は勞働委員會の決議に依り議長之を定む、以上の數項を只今考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=38
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039・大橋八郎
○大橋八郎君 さう致しますと、今の要綱中には、先程委員長から御質問になりました、使用者を代表する者は使用者團體の推薦に基くと云ふやうな、推薦の方法等に付ての規定はない譯でございますね、設けられない積りですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=39
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040・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 今の所それを命令に定めると云ふやうなことは考へて居りませぬが、必要がありますなれば通牒等に依りまして、其の方法等を決めて過誤なきを期したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=40
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041・大橋八郎
○大橋八郎君 使用者團體の推薦、勞働組合の推薦と云ふことも先程委員長の御心配のやうに實際問題としてはなかなか困難な場合が多いんぢやないかと思ひます、先程政府委員の御話のやうに、勞働組合の聯合會が一つ出來、或は使用者團體の聯合會が全國に一つ出來ると云ふことになれば非常に便利ですが、必ずしも直ちにさう云ふことが期待出來ないのではないかと思ひます、非常に數が多い場合に、其の推薦の方法はどうするかと云ふことは、實際問題として隨分色々面倒な事柄が起りはしないかと思ひます、是は實際問題としては相當肚を決めて御置きにならないと、愈愈と云ふ時になつて面倒が起りはしないか、斯う云ふ風に考へて實は伺つたのであります、何れ實際之を施行する迄には何か又御考も決ると思ひますが、其の邊は適當に御考へ置きを願つた方が宜いと思ひます、同じ勞働委員會の二十七條に勞働委員會の事務として勞働爭議の調停とか仲裁と云ふことがあつて、自然爭議の調停、仲裁は勞働委員會でやる、斯う云ふ趣旨と思ふのですが、現在昭和十五年でありましたかに出た勞働爭議調停法と云ふものがありまして、此の規定に依りますと、調停委員會を作つて勞働爭議の調停をやる、斯う云ふことになつて居ります、そこで此の勞働組合法案が施行された場合に、此の勞働委員會と爭議調停法との關係はどう云ふ風になりますか、御考でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=41
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042・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 大臣から説明のありましたやうに、勿論勞働爭議調停法は近く改正致したい、斯う云ふ風に考へて居ります、其の場合に現在勞働爭議調停法で決めて居ります所の委員會、あれは事件毎に出來る臨時のものでございます、さうして今度の改正の場合に於きましては此の勞働組合法案にあります勞働委員會が常設として存在して居つて、さうして勞働爭議の只今御話のやうなことも致す次第であります、從ひまして現在あります臨時のものは不必要になりますので廢止致したいと思ひます、さうして新しい勞働爭議調停法に特別の勞働委員會を規定せずに、本法に決つて居る所の勞働委員會が勞働爭議の豫防、調停、仲裁をするやうに致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=42
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043・大橋八郎
○大橋八郎君 實は勞働組合の運用に付きましては、將來爭議の調停、仲裁と云ふことが非常に大きな役割を擔ふものと考へるのであります、從つて今囘相當進んだ勞働組合法が提出された曉は、當然從來の爭議調停法の改正に付て同時に御提案になるのではないかと云ふことを實は豫想して居つたのでありますが、其の方は御提案にならなかつたのであります、特に之を御提案にならなかつた理由が何かあるのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=43
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044・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 御答致します、出來るならば速急に之を提案致したいと考へたのでありますが、正直に申しますと、それ迄の準備が整はなかつたと云ふことの一言に盡きるのであります、此の組合法の如きも會期半ばを過ぎてやつと間に合つた、それには先づ第一著に聯合軍司令部と相當打合せを重ねた上でなければ政府の最後の決定をしない方針になつて居ります、さうして爭議調停法を改正することに付きましては、今日組織されて居る勞務法制審議會に十分の審議を盡さしめた上で其の大綱を決める方針を執つて居ります、又差當りの爭議調停の方法として十一月に出しました、是は法律ではありませぬが、臨機現に發生しつつある爭議の豫防及仲裁調停の爲に全國各府縣に特別の調停委員會を作らして、新しき爭議調停法が制定せられる迄に、其の方法で調停を行はしめるやうな方法を執つて居ります、さう云ふ譯で爭議調停法の提案も遲れまして、政府としては誠に遺憾に思つて居りますが、事情は只今申上げたやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=44
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045・大橋八郎
○大橋八郎君 其の爭議調停法の改訂される迄の間に、其の爭議調停法と勞働組合法と二つ併立する譯でありますが、調停に關して二重な機關があるやうな恰好に思はれるのですが、或は政府の方針としては大體勞働組合法の勞働委員會を働かして、一方の爭議調停法は、あれは申請に依つてやると云ふことになつて居るから、事實に於てはあれは適用しないのだ、動かして行かないのだと云ふ肚ですか、其の點を……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=45
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046・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 今大臣から御説明がありましたやうに、又御質問にありましたやうに、今の勞働爭議調停法は原則が事件當事者の申請に基きて之を爲し、唯公益に關する事業に付てのみ當事者の一方又は官廳の職權に依り調停を爲し得ることになつて居ります、從ひまして運用される場合が非常に少うございまして、實際の事情に合はぬと云ふのがあります、從ひまして今通牒に基く委員會に依つて勞働爭議の解決をして居ると云ふ現状でございます、さうして本法が施行になります、今通牒に依つて動いて居る所の委員會は本法に依る委員會に發展的解消せしめる、斯う云ふことに考へて居ります、さうして勞働爭議調停法に基き事件事件に依つて出來る所の臨時の委員會は實際上は動かしめないで、本法に依る勞働委員會が動いて行くと云ふやうに致させて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=46
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047・大橋八郎
○大橋八郎君 近い機會に爭議調停法の改正を行はれると云ふ御意見のやうでありますが、何か其の大體の御腹案でもあれば、此の際承ることが出來ませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=47
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048・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今腹案として頭に置いて居りますことは、今度の改正法に依つて、第一には爭議の事前調停を制度化することにしたいと云ふこと、第二には強制調停の範圍を擴大して行きたい、第三には必要に應じて爭議行爲の禁止又は中止命令を出し得るやうにする、第四には勞働委員會を常設爭議調停機關として活用する點、第五には勞働委員會の爭議調停の決定に拘束力を持たせる、斯う云ふ點を頭に置いて新しく改正案を提出したい考であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=48
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049・大橋八郎
○大橋八郎君 能く分りました、序でに外のことをちよつと伺ひたいのですが、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=49
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050・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=50
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051・大橋八郎
○大橋八郎君 第四條の規定でありますが、官公吏の問題であります、是は警察官吏、消防職員、監獄に勤務する者に付きましては、勞働組合の加入を禁止して居る譯でありますが、其の他の官公吏に付ては之を禁止しないで、「命令を以て別段の定を爲すことを得」と云ふことになつて居るのであります、是は大體どう云ふ定をなされる御腹案でありませうか、若し伺ふことが出來ますれば、伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=51
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052・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 第四條の規定する命令の豫定事項は大體三點に分けまして、第一は、之に該當する者は、調停又は仲裁に掛けて、それが成功しなかつた場合の外爭議行爲を爲すべからずと云ふのが、第一點であります、第二點は、爭議が起らむとし、又は爭議が起つた時に、行政官廳は必要の場合に爭議の中止命令、其の他必要なる命令を出すことが出來ると云ふこと、第三點は政治運動の限界であります、是等の者が政治運動を爲す場合には、勞務委員會の決議に依つて、行政官廳から禁止又は制限を行ふことが出來る、斯う云ふ點を規定致したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=52
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053・大橋八郎
○大橋八郎君 まあ第三の政治問題は別問題として、第一、第二の點に付ては、官公吏のみならず、例へば公共事業即ち電車のやうな事業でありますが、斯う云ふものに付ても同樣の必要があるのぢやありませぬか、例へば國有鐵道に付ては今の御話の適用があると思ひますが、郊外電車なり或は地下鐵と云ふやうなものに付てはさう云ふ適用がないと云ふことになるやうでありますが、其の邊の釣合と申しますか、御考はどうでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=53
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054・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 御尤もな御質問でありますが、其の點は現行の爭議調停法に規定して居る公益事業の從事員の場合を更に廣く擴大して、爭議調停法の中に規定して置きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=54
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055・大橋八郎
○大橋八郎君 序でに伺ひたいのは、勞働組合に加入し得る人の範圍であります、詰り第三條の解釋になるかも知れませぬが、どの程度迄を加入し得る人の範圍に入れるのか、例へば官公吏でありますれば、大臣は無論除外されると思ひますが、それ以外にどの程度迄……或は局長迄は入らないとか、或は課長級迄は入らないとか、何か其の邊の御考はあるのでありませうか、是は官公吏のみならず、一般の會社なり其の他の法人に付ても同樣なことと思ひます、會社の取締役等は無論入らないと思ひますが、其の以下の局部課長と云ふやうな者が入るのかどうか、其の邊の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=55
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056・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 官吏の場合は、例に御出しになりました局長の階級は無論入らないと解釋して居ります、課長の場合は其の仕事の性質に依つて一概には定め得ないと思ひますが、大體政府の意向及び利益を代表して下級官吏に臨む如き立場に在る者は入らない、一般民間の事業に於きましては、第二條各號に書いてあるやうな地位、即ち使用者又は其の利益を代表すると認められる者は入らない、從つて重役とか、重役以外でも支配人若くは工場長、さう云ふ立場に在る者は勞働組合に加入しない、此の程度に漠として居るのでありまして、まだ具體的に一々の場合を突き詰めて考へては居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=56
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057・大橋八郎
○大橋八郎君 第十二條でありますが、「使用者は同盟罷業其の他の爭議行爲にして正當なるものに因り損害を受けたるの故を以て勞働組合又は其の組合員に對し賠償を請求することを得ず」、斯うありますが、此の書き方から見ますと、如何なる場合にも賠償を請求することが出來ないと云ふのではないので、正當なものに因つた場合にのみ損害賠償を請求することを得ない、斯う云ふことになつて居りますから、或場合には損害賠償を請求し得る場合もあると云ふやうに解釋して宜いのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=57
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058・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 御説の通りであります、例へば暴行、脅迫或は傷害と云ふやうな事實を含む違法のものに付ては當然賠償の責を負はなければならぬ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=58
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059・大橋八郎
○大橋八郎君 さう致しますと、第二十五條の勞働協約の中に「紛爭ある場合調停又は仲裁に付することの定あるときは調停又は仲裁成らざる場合の外同盟罷業、作業所閉鎖其の他の爭議行爲を爲すことを得ず、」此の規定に違反して若し損害を生じた場合に、正當なるものに因り損害を生じたと言へるのでありませうか、若くはさうでなく、正當なものに因つて損害を受けたものと其の場合は言へないと云ふ御解釋でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=59
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060・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 御説の場合は正當なものの範圍に入ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=60
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061・大橋八郎
○大橋八郎君 詰り協約に違反した爭議行爲をやつたことに依つて損害を生じたと云ふ場合でありますが、それも矢張り正當なものに因つて損害を生じた、斯う云ふことになるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=61
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062・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 爭議行爲其のものが正當なものでありますると、正當なものである、斯う云ふ風に爾餘のことは別として、爭議行爲其のものを此處に規定して居ります、さう云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=62
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063・大橋八郎
○大橋八郎君 此の二十五條の協約に調停又は仲裁に付する定ある場合にも拘らず、調停又は仲裁成らざる場合には、爭議をやつたと云ふことに對しては、制裁規定はない譯ですね、此の二十五條の違反に付ては、罰則の方にもないやうでありますが、……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=63
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064・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 御話の通り此の違反の場合を罰則に規定して居りませぬ、併しながら本會議に於て大臣から御説明のありましたやうに、當事者が協約に違反した場合に、制裁條項のある場合には、其の制裁條項に從はなければならないと考へて居ります、尚附加へて申しますが、此の二十五條には、作業所の閉鎖と云ふのがございます、是は使用主の方がやるものでありますが、此の使用主の方の側が、約束を破つた場合に於ても同樣になると云ふことになつて居ります、勞資兩方共に制裁が爲される譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=64
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065・大橋八郎
○大橋八郎君 さう致しますと、此の二十五條の規定と云ふものは、之に反しても罰則もなし、又之に反して生じた損害も、賠償の責任もない、斯う云ふ規定になる譯ですね、さう致しますと、是は道徳的の制裁と言ひますか、責任を負ふだけの規定と、斯う諒解して宜い譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=65
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066・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 御話の通りでございます、但し前段申しましたやうに、其の勞働協約の中に、制裁條項のあります場合には、前段申上げましたやうに其の制裁があると云ふ譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=66
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067・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 第四條に關係致しまして、昨日の御説明に依りますと、公共團體に使用せらるる者に付ては、同盟罷業を禁止すると云ふ話でありましたけれども、今日の御説明に依りますと、必ずしも禁止しないのだと云ふことになりはしないかと思ひますが、其の點如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=67
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068・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 昨日御答へ致しましたのも、今日御答へしたのも、實は同じ虎の卷を見て申上げましたので、私自身は同じことを御答へしたやうな氣持で居りますのですが、何かさう云ふ風に或は言ひ違へたかも知れませぬ、爭議行爲中止、其の他必要な命令を出すことが出來ると云ふ點ははつきり致して居りますが、若し昨日間違つた印象を與へたと致しますれば、それは何か言ひ違ひがあつたことと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=68
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069・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 さう致しますと官業の勞働者に於きましては、武器とも申すべき同盟罷業が出來ないことに相成るのでありますが、之に對して何か其の待遇改善に對する要求を政府に於て聽き得る、何か特段の考慮が廻らされて居るのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=69
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070・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 經濟上の待遇改善等に關する團體の要求を出すことは出來るのであります、さうして、或場合には調停、若しくは仲裁に付することも出來るのであります、さうして其の仲裁が成功しなければ爭議行爲をすることも出來るのであります、唯其の組合の性質に依りまして、治安維持に關係があるとか、或は公共的な性質が特に顯著であるとか云ふやうな役人の組合には、爭議行爲を中止したり、或は其の他必要な命令を出すことが出來る、併しながら煙草專賣局で使つて居る勞働者が爭議行爲を行つたと云ふやうな場合は、他の事業會社の勞働者との立場がそれ程はつきりと相違がないとも考へられますから、さう云ふものの爭議行爲をも命令を以て中止するかどうかと云ふことは、餘程考へる餘地がある問題だと考へますが、要するに其の職務に依つて制限の程度が變つて來ると解釋致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=70
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071・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 制限をされて居る所を何處かで救つて居る所がありませうかと云ふことを伺つて居るのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=71
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072・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 斯樣な制限は矢張り官吏服務紀律、其の他の身分に依つて制約を受けるのでありますから政府が官吏服務紀律に於て是だけの服從義務をどうしても負はせる必要があると認めたものに付ては、法律又は命令に依つて救濟を認めることは出來ないであらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=72
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073・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 諸願とか、さう云ふ途は開けて居る譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=73
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074・芦田均
○國務大臣(芦田均君) それも官吏の身分たる立場に於て爲し得る種々の請願の方法は無論ある譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=74
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075・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 次に今日配付戴きました資料に付て、是がどう云ふ意味で御配付に相成りましたのか、此の資料に付て御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=75
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076・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 昨日秋元子爵からの御要求で配付致しましたのです、少し簡單過ぎるかも知れませぬが、尚説明を致しますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=76
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077・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 本資料は、只今大臣から御話のありましたやうに、秋元子爵からの御要求に基いて、子爵からの御要求は外にまだ大藏省の關係、其の他ありますのですが、當日迄に間に合ひましたのは、此の運輸省關係と遞信院關係だけ間に合ひましたので、御了承願ひます、さう云ふ事情で出した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=77
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078・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 勅令に基きます共濟組合はまだ澤山あると存じます、二十位あるのぢやないかと思ひます、それで遞信院關係に於きまして、主たる事業、是は事業ぢやないかも知れませぬが、鐵道の方と較べますると、少しく落ちて居りやしないかと思ひます點がございます、鐵道の方では、年金制度があると云ふことははつきり書いてございますが、遞信院の方にもございます、兩方共健康保險の代行及厚生年金の代行みたいなことをやつて居るのでありまして、尤も厚生年金なんかよりも、鐵道或は遞信院で年金制度を作りましたのが、ずつと先になつて居りますけれども、其の點何か誤解を生じはしないかと存じます、昨日も御話がありましたやうに、此の官業共濟組合を勞働組合の方に吸收するのだと云ふやうなことが考究されて居ると云ふ風に御話がございましたけれども、官業共濟組合の中には、斯う云つた福利施設を主としたものが主なるものでありまして、中にも年金制度に付きましては、餘程考へる必要があるのではないかと存じます、例へば是が勞働組合の方に吸收せられましたる場合に、何等かの機會に於きまして勞働組合が解散を命ぜられると云ふやうなことに立至りますれば、年金制度と云ふものが其處で停止になりまして、最初から目的と致しました生活安定と云ふことはそれで頓挫を來すのであります、是は餘程御考になる必要があるのではないかと存じます、尚又斯う云ふやうな勅令に基く共濟組合に對しましては、政府から補給金を出して居りますので、此の持つて居ります金と云ふものは相當巨額に上つて居ります、之を他に流用されるやうなことがあつては、又是も福利施設の、福利施設ぢやありませぬ、生活安定と云ふ問題に付きまして非常な缺陷が生ずることと存じます、尚又斯う云ふやうな官廳の共濟組合でございませぬで、民間にあります共濟組合に於きましても、年金制度を持つて居るものがあると存じます、例へば電氣事業とか、さう云ふものに年金制度が附いて居ると私は記憶して居ります、東京市のものだとか、或は神戸にもそんなものがありはしなかつたかと存じて居ります、斯う云ふものに付きましても、是が勞働組合の方に吸收されますと、何等かの場合に年金制度が頓挫を來して、生活安定と云ふものが脅かされると云ふやうなことになりますので、其の勞働組合の營みます事業に付きましては、何等かの考慮が廻らされなければならないのではないかと存ぜられますので、其の點は如何に御考になつておいでになりますか、一應御所見を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=78
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079・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 御尤もな御注意であります、現在行はれて居ります鐵道遞信等の共濟事業其の他の構成加入者と勞働組合たるべきものの間に、多少はみ出すものがあるのではないかと思ふのです、共濟組合に今日迄參加し基金を拂込んだ人、それが其の儘勞働組合員になり得るかどうか明かになり得ない人も入つて居る點もあります、それから只今齋藤子爵の御指摘のやうな點もありますから、現在迄鐵道及遞信關係の首腦者の間の考では、是等の有體財産其の他のものは一應從來通りの共濟組合として殘して、勞働組合は別箇に之を組織した方が適當であらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=79
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080・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 昨日御伺ひ致すことを洩らしたのでありますが、其の點此の際に一點だけ厚生大臣に伺つて置きたいと思ひます、我國の産業界は今や大財閥の解體に依りまして資本家の指導力が減退弱化したのでありまするからして、勞働者の協力なくして工場の勞務管理が完遂することが出來なくなりましたのみならず、其の經營上に於きましても亦勞働者の協力が必要となつて來たのであります、更に賠償物資竝に主要食糧品等の必需物資の輸入に對する見返り物資の生産に付きましては、是非共高能率生産を必要とするに至つたのであります、斯う云つたことから考へて見ましても、今後の勞働組合の重要性と云ふものは倍加するものであると信じて居ります、果して然らば寧ろ先を見透しまして、最近の機會に於きまして勞働省を創設し、以て高能率生産の向上發展の萬全を期すべきではないかと考へるのであります、就ては勞働省新設に付ての厚生大臣の御所見をば伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=80
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081・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 勞働省を設置すべしと云ふ意嚮は勞働運動に從事する人或は民間の識者の間にも要求がある問題であります、政府としては是等の意嚮を十分考慮致して居りますが、今直ちに勞働省を設けると云ふ考は持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=81
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082・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) それでは是で休憩致します、午後は一時から開會致します
午後零時六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=82
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083・会議録情報3
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午後一時七分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=83
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084・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) それでは委員會を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=84
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085・久保田敬一
○男爵久保田敬一君 此の勞働組合法が通りますと、大體今の有樣では生産の能力が非常に減りはしないかと心配して居る人が多いのであります、今の日本に一番要求される所は、勞働組合法の制定と云ふものは、主義「イデオロギー」に捉はれると云ふよりも、寧ろ實際の生産が、日本の生産がどうなるかと云ふことが主眼ぢやないかと思ふのであります、勞働組合法が制定された爲に、生産が減退すると云ふやうなことは、今の日本に對しては重大なる影響を及すものと思ふのであります、之に對する厚生大臣の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=85
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086・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 久保田男爵の御話になりました如き懸念は、事業家の間に相當廣く行き亙つて居る心配の一つだと思ひます、御承知の通り現在の我が國の勞働條件を考へて見て、賃銀に於て必ずしも低賃銀であるとは思ひませぬ、と云ふことは、工場勞働者、其の他は比較的實物給付の制度が廣く行はれて居りまして、日用品等は會社の手に依つて從業員に配給されることがあります、日傭勞働者の如きも不幸にして相當の闇賃金が廣く行はれる、さう云ふ關係で現在低賃金であるとは考へて居りませぬ、唯物價騰貴の趨勢が非常に急激である爲に、勢ひ賃金の移動を行はなければならないやうな事態は生じて居ると思ひます、就業時間に於ても必ずしも長時間勞働とは言へないと思ひます、殘る所は能率如何と云ふことが日本の産業の將來に不安を與へる、併しながら今日の勞働意慾の昂揚せざる理由などを考へて見て、果して強制的な力を以てすることが能率を増加せしめる所以であるか、或は又彼等の自發的の意思に依つて勞働意慾を振ひ興さしめることが宜いのかと云ふ點になれば、問題なく彼等自らの發意に依つて勤勞精神を振ひ興すことの外に途はない、斯樣に私共考へるのでありまして、さう云ふ意味に於て勞働組合法の如きものを一日も早く制定し、彼等に將來の希望を與へ、彼等をして責任を執らしめ、自ら秩序と統制ある言動をなさしめることが、日本の産業發達の爲に、將來の産業平和の爲に望ましいのではないか、斯樣に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=86
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087・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 只今の久保田男爵の御質問に關聯致しまして、私も其の點を御尋ね致したいのであります、終戰に依りまして、日本は新たに民主主義の國として再出發することになりました、是は一面から致しますと、從來の所謂封建的な行き方を是正する意味に於きまして、誠に結構な點もございますが、其の民主主義傾向と云ふことが、今日尚世上決つた意味に解されませぬで、動も致しますると、人民の權利だけを主張し、義務の點は甚だ蔑口にされると云ふ傾向に世の中が走つて居るやうに思ふのです、殊に戰爭に依りまして、國民の道義が甚だ低下致し、一般の民衆、殊に若い人達の行動と云ふものは、社會の秩序に必ずしも合致しないと云ふ傾向に走つて居るのです、戰爭中若い人達は無論勤勞動員其の他で隨分能く働きは致しましたものの、更に一歩立入つて實際の工場の樣子なんかを見ますと、學徒の勤勞者は別と致しまして、普通の所謂工員の行動と云ふものは、矢張り監督の目から離れると、どうも怠業状態に入ると云ふやうなことも、段々世間の注意の焦點になつて居りまして、此の終戰と同時に所謂民主主義的な傾向が澎湃として起りました結果と致しまして、方々の工場に罷業が頻々として起つて參つたのであります、さなきだに完全な勞働組合法規がなくてもさう云ふ氣運を釀成致しました所に、此の勞働者に取りましては非常に強い後楯の制度が出來ましたのを、之を履き違へまして、自分達に非常な武器が與へられたと云ふことに氣勢を添へまして、更に爭議が方々で激化するのではないかと云ふことが惧れられるのであります、固より勞働條件其の他に於て改善すべき點は多々ございませうけれども、矢張り先程私が申上げましたやうに、民主主義の履き違へ、權利のみを考へて社會の全體の義務と云ふものがどうも若い人達の間からはまだ尊重され勝ちでない結果、此の有利な武器を動もすると濫用されはしないか、其の結果只今久保田男爵の仰せのやうに、忽ち工場の生産に影響を來し、是等は軈て日本の國力を囘復すべき産業界に取りまして一つの大きな障碍になりはしないかと云ふことが恐れられるのであります、是は固より此の完成しました所の勞働法規に依りまして、勞働界に確固たる地位が與へられ、又責任も監督せられると云ふ方向に當局の御指導もございませうし、組合の「リーダー」其の他もさう云ふ氣構へで同僚の人達を指導するではございませうが、其の點がなかなか今日迄道義の低下致しました所を引戻すことは非常に骨が折れ、時を要すると思ふのであります、只今大臣の御答に依りますると、それは強力を以てするよりも、斯う云ふ制度を以て彼等に據り所を與へた方が自主的に立直る、斯う云ふ仰せでありまして、私も此の御方針には全幅的に贊成ではございますが、扨、實際の運用上それが右から左へ直ぐ參るであらうかどうか、此の點に付て大きな懸念を有つて居る次第であります、今日勤勞意慾の低下致して居りますることは事實でありまして、石炭の増産に付きましても、炭山に人を募集致しましても、必ずしも所期の通りに應募者がないと云ふやうなことも矢強り勤勞意慾の缺除に原因することで、工場等に於きましても、此の勞働法規が通つたからと云つてなかなか勤勞意慾が昔のやうに旺盛に立直るとは直ぐには考へられませぬ、是等の實情に對しまして、當局と致しまして、是等の若い人達の勤勞意慾を振興させると云ふ何か確たる御方針がございませうか、又御確信がございませうか、其の點に關しまして御所見を伺つて置きたい、尚私共是は自分の過去の經驗を申上げまして誠に恐縮でございますが、甞て私は十七八年前に「ドイツ」に居りまして、偶偶彼の地に於きまして病氣を致しまして、半年程「ベルリン」の郊外の病院に入つて居つたことがございます、其の病院に於きましては、病棟を新設し、或は古い箇所を修理して居るやうなことがございまして、毎日大工、左官等が働きに參つたことを日々餘所目で見て居りました所、「ドイツ」人の國民性と致しまして鈍重であつて日本人程機敏な所はございませぬが、非常に堅忍不拔な性格を能く現して居りまして、一見實に鈍いやうでございますが、朝決つた時間に參りまして、途中の煙草休みもなく、畫迄ずつとぶつ通しで働く、又畫間の時間はゆつくり休み、午後の働く時間になると能く働く、のろまのやうでありますが、成果から見ますと、著々仕事の能率を擧げて居ります、又自分が一旦引受けて致しました仕事の場所は、頭株から催促を受けなくても自分でちやんと見廻つて、手落ちのあつた所は仕事をやり直す、資材も十分使つて、例へば屋根の工事なんかは、もう一切雨漏りなんかは、他り上げてしまつてからは起らないと云ふ見極めを付げて、自分の得心の行く迄仕事を能くやつて居る、此の點日本の職人等の手先は器用であるけれども、動もすると目の屆かない所は手を拔くと云ふやうな器用な氣持はない、非常に鈍重でありますが、確實な仕事をやつて居る、それは軈て積り積つて非常に堅實な成果を收めるのであります、是等のことを振返つて見ますと、今日日本の若い工員達が、なかなかそこ迄は行かなくて、矢張り取締の目の屆かぬ時は仕事の手を緩めると云ふやうなことが有り勝ちであると思ふのであります、勿論大臣の此の法案の立法理由の御説明の時に、此の法案、此の制度に依つて勞働界に一つの新しい氣風を與へて、責任感を持ち自主的にさせると云ふ御話は能く承りましたが、さう云ふやうなことを段々考へて見ますと、實際の社會の事情と直ぐ調和して參りますかどうかを非常に懸念致して居るのであります、勤勞意慾の昂揚に付きまして、何か確たる御確信がございますれば改めて御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=87
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088・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今橋本伯爵の御話の通り近頃の風潮として所謂民主主義なるものを履き違へて徒に放縱な、我儘勝手なことをするのが民主主義であり、自由主義であると云ふ風な弊害が現れて來ることは全く同感に存じます、歸する所は各人が如何に自己に忠實であるか、どの程度に責任感を持つて居るかと云ふことが、勤勞意慾、勞働能率の問題に重大な影響を與へるのであると考へて居ります、併しながら法律制度の力に依つて、直ちに斯くの加き精神を鼓吹し得る如く作り上げることは非常に困難でであります、制度と法律は謂はば枠のやうなものである、枠が出來上つたから其の内容が直ぐ良くなると考へることはどうも正當を缺いて居るやうに私は考へます、併し居は心を移すと言ひます通り、今迄仲間部屋の隅つこに押込められて居た人間でも、之に一人前の御座敷に通して、否でも應でも御行儀を良くしなければならないやうな境遇に置けば良くなる人間が相當にある、卑俗な譬へで申しますれば、此の勞働組合法の根本の狙ひはさう云ふ所にあると我々共は考へて居るのであります、併しながら其の法律が出來たから、直ぐにそれに依つて精神生活の方面迄著しい變化を與へると云ふ風な期待を置くことは出來ないと思ひます、無論それは精神運動に俟たなければならない、教養にも俟つ所が多い、又境遇の變化にも重大な影響を受ける問題でありますから、橋本伯爵の御説の如く法制の完備に依つて直ぐに其の效果が現れて來るかどうかと云ふことに付ては、左樣に早急に效果が擧るとは考へて居りませぬ、併し好むと好まざるとに拘らず、此の途を行くより外手がないと云ふ事情も考へまして、是より以上の方法があるとすれば矢張り一日も早く組織ある組合の中に勞働者の秩序と統制を維持さして行くと云ふことが、國家としては爲し得る唯一の方策と左樣に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=88
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089・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 此のことは了承致しましたが、法制から離れまして今日の青年の勤勞意慾を昂進する、昂揚させると云ふことに付きましては、自主的な方法に放任することもございませうが、官廳として何か指導面に御立ちになつて御盡しになる御手段もございませうが、其の點の御方針は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=89
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090・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 其の點に付きましては内閣に於きましても、組閣以來屡屡論議されて居る問題でありまして、或は國民運動等の方法に依り勞働意慾の昂揚を圖りたいと云ふ風な説もあつたのであります、併しながら從來の國民運動の中には動もすると唯縣聲ばかりに止まつて、必ずしも所期の目的に達しなかつたやうなこともある弊害に鑑みまして、今迄やり來つた通り一遍の方法ばかりでは目的を達しない、勞働意慾が昂揚しないと云ふのは矢張りそれぞれの原因が手傳つて居るのであつて、之を勞働者の能率の擧らないと云ふ點から考へて見ますと、第一には食糧問題に依つて惹き起された同盟罷業が、罷業の中の大部分を占めて居る、或は食糧以外の物資の配給が不公平に行はれて居ると云ふ點もあります、又戰時中戰爭に勝つ爲に隨分無理な方法で人を集めたと云ふやうな事實もあります、今迄は戰爭に勝たむが爲に、難きを忍んで沈默を守つて居つた、戰爭終了後の時期になつて見ると、最早此の儘では忍耐が出來ないと云ふやうな氣持から今迄不當なる取扱ひを爲して居つたと思はれるものに對して不平不滿が爆發したやうな罷業もある、それ等の原因を個々に除いて行かなければ、精神運動だけでは勞働意慾を昂揚させることも無理だ、斯樣に考へまして、食糧問題の解決、物資配給面の改善、それぞれ施策は致して居りますが、御承知の如き今日の事情に於ては其の點が思ふやうに迅速に運ばない所がありまして、石炭不足の問題の如きも、矢張り之が爲には多大の障碍を受けて居ると云ふ事情であります、それと同時に精神運動として勞働者自體の修養反省に待つ點も無論重要な部面を持つて居るのでありますから、此の方向に於ても將來啓發教育に力を注ぎたいと考へて居ります、政府直接の事業として種々の教育機關を之が爲に設けると云ふ考は持つて居りませぬが、勞働組合自體の施設として或は修養の團體を作り、若くは圖書館其の他の施設を行つて此の方面に幾分なりとも改善の途を講ぜしめたいと云ふ考で居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=90
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091・久保田敬一
○男爵久保田敬一君 昨今非常に方々に勞働爭議が起つて居りますが、其の主なるものは炭坑に於ける勞働爭議と交通機關關係の勞働爭議だと思ふのであります、炭坑の方は非常に今石炭の増産の爲に其の手を盡されて或は其の勞働爭議の解決も緒に付いたやうに思ふのですが、交通關係の方の勞働爭議は益益ひどく起つて居るやうであります、現に運輸省の中に於ても工場、機關區等に勞働爭議があるやうであります、又私設鐵道の方面にもさう云ふ勞働爭議があるやうに思つて居るが、是は一般の公衆に對して非常な脅威を與へて居るのでありますが、之に關する大體どう云ふ爭議が起つて、どう云ふ風な解決の方面に向ひつつあるかと云ふことを伺ひたいと思ひますが、運輸省の政府委員でも …発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=91
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092・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今の久保田男爵の御質問の點は、厚生省方面でまだ十分調査を致して居りませぬ爲に、御答をすべき材料が揃つて居りませぬ、運輸省の關係政府委員から説明をして貰ふことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=92
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093・富山清憲
○政府委員(富山清憲君) 只今久保田男爵の御質問に於きまして、現在迄に調査の屆きました分に付きまして御答へ申上げます、國有鐵道に付きましては、一番最初に大宮の工機部で給與の増額竝に勤務時間の短縮に付きまして若い技工の職員が工機部長に之が改善方を迫りました、本件に付きましては東京鐵道局の首腦部對工機部の技工の代表職員の間に圓滿に解決を遂げました、續いて大きな事件と致しましては、郡山の工機部に同樣の事件が發生致しました、是は只今申上げました二件の外に、工機部内に於ける戰時中の勤務竝に上長の命令等の問題に付きまして、戰爭責任とかと云ふやうな點の要求に關する提示もありましたが、本件に關しましても、仙臺鐵道局對爭議の當事者竝に大宮工機部の爭議當事者であつた人々が郡山へ參りまして、大宮局に於ける事情を能く説明をし、鐵道の如き交通上重要な機關の機能を止めるやうな考へ方を持つことは、鐵道職員自體として根本的に誤りであると云ふ同僚の忠告に依りまして是又圓滿に解決を致しました、其の他札幌鐵道局に於きまする工機部關係の同樣な要求の提示、又門司鐵道局小倉工機部等に於きます同樣な要求の提示、或は各大都市附近の主要な機關區に於きまする同樣な要求の提示がありましたが、是等に關しましては各鐵道局の首腦部が篤と從事員と面談折衝を遂げ了解に到達致しまして、現在の所では國有鐵道に關する限りは、作業上何等困難を見て居らないやうな状況でございます、勿論從事員全般の強い希望でありまする給與の改善、勤務時間の短縮等の問題に付きましても、目下國有鐵道限り實施し得るものに付きましては、既に之を實施し、又政府全體として決定を見なければ實施し得ざるものに付きましては、政府部内で折角折衝中で國有鐵道に對しまして爭議或は最惡の罷業と云ふやうな事態に至らぬやうに最善の努力を致して居る次第であります、地方鐵道に付きましては主として東京を中心に致しまして、爭議的の事態が現に二三發生を致して居ります、御承知のやうに、最も早くさう云つた事態の發生致しましたのは、京成電車でありまして、京成電車は現在當初の無賃乘車を認めると云ふ状態から、料金を從事員獨自で收受致しまして、それを從事員間で分配し、殘額を供託すると云ふやうな違法な方法に出まして極めて惡化した状態にある譯であります、それ以上に付きましては、東京高速度交通營團に於きまして、從事員から基本給料の三倍の引上、其の他に關する要求が出て、東京急行に付きましては手取の五倍の引上を要求すると云ふやうな事態が發生を致しました、又茨城交通茨城鐵道に於きましては、賃銀の二倍の引上を要求致して居りますが、茨城、東京高速度交通營團、此の兩者は極めて圓滿に解決を致しました、東京急行に付きましては十八日が雙方の正式會談に依る、要求に對する囘答日であるやうに承知致して居りますので、現状と致しましては、何等爭議的な行動には出て居らず、極めて順調に運轉を致して居ります、京成電車に付きましては、當初三分の一程度の電車の運轉しか見なかつたのでありますが、最近では稍稍改善されて居るやに聽いて居ります、本件に付きましては、我々と致しまして、厚生當局とも協議の結果、出來得る限り懇談的に任意調停の方法に出ることが最も望ましいと考へまして、屡屡爭議委員長の許迄職員を派しまして、會社側の言ひ分だけでなく、從事員側の言ひ分も能く聽いた上で、調停に掛けることが、社會公共の重要な機關である交通從事員の爭議に於て一番望ましいことであり、過激なさう云つた無賃乘車であるとか云ふやうなやり方は、適當であるまいと云ふことを屡屡申入もし、懇談も致したのでありまするが、從事員側と致しましては、今暫く待つて欲しいと云ふ一言でありまして、當方へ出て參る樣子も見えませぬので、我々としては、此の儘で捨てて置く譯にも參りませぬので、聯合軍司令部の「レーバー・セクション」の方へ參りまして、事態が不法措置に出て居るので、之に對して然るべき措置を採りたいと云ふことを申入れたのでありますが、それに付きましては、餘り贊成の意を表して居らないのでありまして、出來得る限り雙方任意的な調停に依つて處理されることを希望する、併しながら一方が任意調停に應じなければどうにも、他の事業と違ひまして、交通事業の如きは、社會公衆に重大なる利害を有し、御迷惑を掛けることになるので、我々としては此の儘捨て置く譯には行かないので、強制調停の方法も考へる、場合に依れば刑事上の問題に付ても考へなければならぬ、斯樣な我々の方の意向を昨日表明して參つたやうな次第でありまするが、尚之が處理等に付きましては、厚生當局等とも協議致しまして、出來得る限り速かに適切な處理を致したいと斯樣に考へて居る次第でございます、其の他關西方面等に於きましては、まださう言つた爭議と云ふ程に申上げる程度には至つて居りませぬが、それぞれ最近の窮迫した一般交通從事員の生活状況に關聯致しまして、増俸、勤務時間の短縮等に付ての要求が各所にぼつぼつ出て參つて居るやに承知致して居ります、大體私共の承知して居ります限りのことに付きまして、御報告申上げた次策であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=93
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094・久保田敬一
○男爵久保田敬一君 只今の御話で大體分りましたが、今の爭議は大體さう云ふ風にして納まるとしましても、結局此の從業員の要求します給料の値上、詰り生活の改善と云ふやうなことから行きますと、今の有樣では今の給料で暮して行くと云ふことは到底出來ないのであつて、今要求して居ります給料の三倍増額とか、五倍増額と云ふことは、非常に突飛なやうに思はれますけれども、今の闇相場とか、色々なことを考へますと、必ずしも三倍、五倍がそんな不當な要求ぢやないやうに思はれるやうな點もあるのであります、それで國有鐵道は別としまして、地方鐵道、民間私設鐵道にしますと、其の賃銀の増額の要求を容れれば必然鐵道の經營が出來なくなると云ふやうなことになるのでありまして、勞働者の側から言つても、鐵道の側から言つても、之を調停委員會に掛けまして、又調停しても、どうにも調停の仕樣が、兩方とも無理がないと云ふやうな結果になるのぢやないか、結局落著く所は賃銀の、勞銀と申しますか、運賃の値上と云ふことに落著くのぢやないかと思ふのでありまして、政府が地方鐵道の勞銀を押へて居つて、今まあ普通に考へられる所に依りますと、不當に安いと云ふやうに考へられて居りますが、之を何とかして處理しない以上は、此の爭議と云ふものは一時は落著いても、結局は何處かで勃發して行詰らなけりやならぬことになるだらうと思ふのであります、それ等に對して當局の御考はどうでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=94
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095・富山清憲
○政府委員(富山清憲君) 久保田男爵の御質問に付きましては、政府と致しましても大體同樣な考を持つて居りまして、それぞれ會社の財政の事情に應じまして、或は配當の制限、勿論單に配當の一分や二分の制限だけでは到底負擔し切れないやうな状況にありまするので、其の鐵道鐵道の實情に應じまして運賃の値上等に付きましても許可を致す方針で、目下實情を調査致して居るやうな状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=95
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096・中山輔親
○侯爵中山輔親君 今の久保田男爵の御質問に關聯が……多少似て居る所があるので、それを御伺ひしたいと思ひますが、今鐵道のことで御話がありましたが、是も私が伺ひたいと思ふのは、矢張り同じやうな意味で、日本の軍需會社の多くのものが平和産業に轉換して參つて居る會社に付て、矢張り同じやうな爭議が四つ五つあるやうに思はれるのであります、それで多くの軍需會社は御承知の通り終戰後直ちに自己の生産して居る物は賣れないのでありますから、結局農具を作るとか、鍋とか、釜を作るとかと云ふやうなことを盛んにやつたのでありますが、其の結果鍋とか、釜とかと云ふものを作つて、之を一般の市場に買却しようと云ふことになると、それぞれ指示價格を申請して、さうしてそれに依つて價格を決めて貰つて市場へ出す、處が其の價格が非常に安いので、大體決められてあつた豫定が、例へば大きな鍋を作つても、それがたつた五圓の指示價格であると云ふやうなことがあつたりして、却てそれを作つて居るが爲に、其の會社は非常に損害をする、それならば寧ろそれを工員に分けて、工員は百姓に持つて行つて米と交換した方が工員の生活状態は善くなると云ふやうな結果になる、さうして又農具を作ると縣では是は非常に宜いから、是非澤山作つて呉れと云ふことになつて、さて作つて見ると結局縣でも豫算がないからとか、或は何とか云ふことで、百姓は非常に其の農具を欲しがつて居りながら、價格が非常に安く決定されなければらなぬと云ふやうに、官廳の方々の頭が十分切り替はつて居ない爲に、相當さう云ふことに對して同情がなくて、止むなく農具は農家へ只で寄附したと云ふやうな例もあるのでありますが、而もさう云ふ會社に色々聞いて見ますと、結局今御話があつたやうに、五倍なり何倍なりの賃金の要求が出る、又それをしなければならないやうな状況になつて來る、さうすると今御話のやうに運賃の値上と同樣に、矢張り是等の生産品の値段も變へて行かなければならなくなつて來る、さうなるとそれを解決しなくちやならないが、さうなれば今度は値段を上げなければ、企業其のものが成立しないと云ふ所にぶつつかつて來ると思ひます、そこで其の點に付て商工當局も段々枠を外して行くと仰せられて居ります、處が一面大藏省から言はせると、さうやつて行つては惡循環になる、段々さうやると物價も上り、賃金も上げなければならない、競爭になると、此の點を非常に惧れて居られる、是は昨年私は北京や、天津を廻り、上海を見て、其の點は確かに大いに憂慮すべきものがあると考へます、それで一體政府は斯う云ふ場合に、どの程度に賃金の値上を裁定されて、さうしてどの程度に物價を持つて行かれるかと云ふことが一番大事なものと思ひます、其の點に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=96
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097・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 今日のやうな「インフレーション」の時代に、俸給賃銀をどの點に基準を置いて定めて行くかと云ふことは、最も困難な問題であります、現在執つて居ります方針は、御承知の通り昭和十五年の賃銀統制令と云ふものがありまして、それに依つて最低賃銀を決めて居りますが御承知の如き生活費の向上に伴つて現在の最低賃銀では生活困難な事情は能く分つて居ります、從つて遠からず、賃金統制令を改正致しまして、工場勞働者に付ても、恐らく相當程度の値上は早く行はなければならないと考へて居ります、鑛山勞働者の方は賃銀の値上を八割ばかり實行致しまして、現在坑内夫の十二圓坑外夫が七圓の賃銀になつて居ります、併しそれでも尚彼等の生活が必ずしも樂とは言へない状況にありますから、工場勞働者の賃金を引上げる場合に、鑛山勞働者の賃銀も矢張り引上げなければならぬと存じて居ります、併しながら御承知の通り物價の騰貴に伴つて、賃銀を引上げますと、賃銀の引上は又物價騰貴を誘發すると云ふ惡循環になりますので、根本對策は「インフレーション」を何處で喰止めるかと云ふことが決まらない限り、賃銀値上はどうしても行はなければならない破目に陷るではないかと心配致すのであります、尚「インフレーション」防止の問題に付きましては、本會議、豫算委員會等に於て、所管大臣よりそれぞれ説明されたことと思ひますから、無論私は之に觸れる意思はありませぬが、大體さう云ふ風に目先々々の事情に即應して賃銀の問題を考へる以外に、こう恆久的の賃銀政策を決めることは殆ど不可能の状態にあると云ふことを御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=97
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098・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 此の法律の「施行の期日は勅令を以て之を定む」とありますが、大體政府の意向として何時頃之を實際に行はれるものでありませうか、今のやうに經濟事情が非常にむづかしい時代に立至つて居る時に、此の法律を施行される期日と云ふものは相當むづかしいのではないかと思ふのであります、只今の勞銀問題、物價問題、其の他色々の問題が之に關聯して居るのであります、大體御意向は何時頃でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=98
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099・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 八代男爵の御意見至極御尤もな所があると思ひます、それと同時に尚内外の情勢に鑑みまして、此の實施を遲延させることも如何かと考へますから、只今の所では明年二月一日以降實施したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=99
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100・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 先程久保田男爵より交通事情に關する御話がございましたが、只今の物價騰貴の趨勢から致しますと、段々さう云ふ事例も頻發して參る、さうして「ゼネラル・ストライキ」に移るやうな形勢も起り得るかと思ふのでありますが、是は一方に於きまして無論勞働者自身が自己の利益を保護する當然の權利として行はれる「ストライキ」でありますが、他面公衆の交通の利益、延いては公衆の治安、安寧にも及す所があるかと思ふのであります、個人の利益と公衆の利益とを天秤に懸けますと、矢張り公衆の利益を一段と重く見なければならぬやうな事態も考へられますので、さう云ふ場合を豫想して、「ストライキ」の權利は別でございますが、それを差し措いても公衆の利益を保護するやうな見地から致しまして、それの取締のやうな條項は此の法制には御考はないのでございますか、別にさう云ふことに關聯しました規定は罰則の中にないのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=100
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101・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 橋本伯爵の御質問になりました點は、二つになるやうに思ひます、一つは總同盟罷業をやつた場合と、もう一つは公共事業等の罷業の場合と、兩方含んで居るやうに了解致したのでありますが、公共事業の方の同盟罷工に付きましては、先刻御答へしました勞働爭議調停法の中に特に爭議の中止を命ずる規定等を設けまして、適當に處分をすることが出來ると思ひます、總同盟罷工が起るやうな場合に、何等か策があるかと云ふ御質問でありましたが、總同盟罷工は、此の法律に認めて居る勞働組合の目的、即ち勞働條件の維特改善、其の他經濟的の地位の向上を圖るものとは認められないと思ふ、多分に政治的の色彩を帶びて居るのでありますから、此の法律に依る正當なる罷業行爲と認めるかどうかに付ては私は外國の例などを見まして、寧ろ是は別個の法律で取締るべきであると斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=101
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102・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 先程私の質問の申上げ方が惡くつて、明瞭を缺いたやうでありますが、只今の御答で能く分りました、此の機會に外國の立法例を參考に、例へば「アメリカ」「イギリス」「フランス」邊りの總同盟罷業の關係に付きましての制度が御分りでございましたら、一つ參考に御聽かせ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=102
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103・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 「イギリス」「アメリカ」「フランス」の此の勞働組合法の重要なる點に付ての、外國立法例の資料がございますから、差上げたいと思ひます、御尋の「ゼネラル・ストライキ」の問題でありますが、「イギリス」でも違法として居ります、恐らく他の諸外國でもさうだと思ひます、日本に於ても同樣に解すべきであると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=103
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104・中山輔親
○侯爵中山輔親君 此の法案には規定はないのでありますが、勞働者が企業の經營に參加したいと云ふ要求に關して、及び又一つの勞働組合に屬してない者を、その會社に採用する場合に、其の勞働組合の幹部が承認をしなければ入つちやいけないと云ふやうな要求をする場合がある、其の二つの場合は此の法案にはないのでございますが、さう云ふことが出來るのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=104
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105・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 中山侯爵の後の方の御質問は諸外國に於ても非常に論議されました問題でありまして、是には色々關聯した事項がありますから、政府委員から詳しいことを説明致させます、初めの御質問の勞働者の企業參加の問題でありますが、是は政府と致しまして、産業平和の爲、或は能率増進の爲に、企業參加は望ましいことと存じます、併しながら法律を以て企業參加の權利を認めると云ふことは、採用する迄に至つて居りませぬ、企業參加を認めるか認めないかと云ふことは事業主と勞働者との間に、自由に取決めをなすべきものであつて、之に對して、別に法律上の規定は何にも設けない、斯う云ふ趣意であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=105
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106・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 問題であります此の「オープンショップ」と「クローズドショップ」でありますが、本法に於きましては「オープンショップ」と「クローズドショップ」との問題は全然規定に置かなかつたのであります、此の問題は勞務法制審議委員會に於きましても色々論議がありましたですが、日本の現状に於きましては、此の問題は使用者竝に勞働者の間の自由に協約し得る範圍に委した方が、日本の現状に於ては適當であると云う委員會の答申もありまして、政府自體と致しましてもそれを適當と致しまして、本法には何等規定を置かなかつたのであります、從ひまして、それは當事者間の勞働協約の自由に規定し得ることとしたのであります、若し御話のやうな場合に、使用者側が之を同意して、此の協定が出來ますれば、御話のやうなことが出來ます、出來なければ出來ない譯であります、英國の例に於きましては、公共團體の事業に付きましては、「オープンショップ」を採つて居ります、「アメリカ」の立法は、其の點に付ては、我が日本の此の法案と同じく全く自由に任してあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=106
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107・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 厚生大臣にちよつと伺ひますが、昨日の新聞ですが、「マッカーサー」司令部から、明年上期の危機に對處して可なり詳細なる指令が出ましたですが、之に對して大體どんな御計畫がありますですか、此の中に斯う云ふ字句があります、「聯合軍司令部は政府が働くことが不可能な爲、職を得ることが不可能な爲、又は政治、宗教、經濟、政策上の見解の爲に食糧其の他の必需品の配給に差別待遇をすることを阻止する爲に、總ての必要な措置を採るやう命令として居る、」それから又最後の方の項の所に、「救濟費用月額の縣別推定數」とあつて、「此の覺書の意圖する所は云々」と、又眞中の所に「收入ある職を得ることが出來ぬ爲、又は政治的、宗教的或は經濟政策上の見解の爲に、入手可能な供給物資の配給上の差別待遇が行はれることを阻止する爲の措置を直ちに講ずべきである云々」とありますが、どう云ふ意味を含んで居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=107
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108・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 其の指令は日本の實情に餘り通じない人が筆を採つたやうな氣配があると思ひます、と云ふのは、既に御承知の通り、我が國に於ては、人種、宗教等の差に依つて食糧物資の配給を異にする等と云ふことは絶對ないことでありまして、特に人種、宗教等の差別に依る待遇を廢止する爲と云ふ言葉は適用のない言葉だと思ひます、後の失業對策竝に貧窮對策、之を具體的にどう云ふ方法に依つて行ふか、其の經濟は凡そ幾らになる、人數は何名になるか、斯う云ふことを要求して居る、一口に申せばさう云ふことになると思ひます、そこで失業の方は今日の所職業を與へる爲の計畫しかまだ實現する域に達して居りませぬ、詰り失業救濟事業として、土木事業若しくは開墾干拓の仕事を行ふことは、既に政府に於て計畫し、豫算化されつつある所でありますから、是は直ぐはつきりと數を掴むことが出來るのであります、併しながらそれ以外の方法、例へば失業保險を行ふとか、或は失業手當を出すとか云ふ問題は未定でありますが、現在の所では寧ろ斯樣な方法に訴へない考で居ります、併しながら職にあぶれて衣食に窮する者を其の儘に捨て置く譯に參りませぬので、其の措置としては昨日の閣議で決定致しまして直ぐに發表致しましたものが今朝の新聞に出て居ります、生活に困窮する者に對する援護、就中戰災者、軍人の遺族、寡婦、海外同胞の引揚來つたる者、さう云ふ者に對して救護の手を伸べて、直ちに全國の市町村長、部落會長、方面委員等を其の援護の第一線に立たしめる方針を決定致しまして、昨日發表致した譯であります、但しそれが爲に幾許の金を必要とするかと云ふ點は豫め豫定することが非常に困難で、御承知の通りに戰災者の中の衣食に窮する者、又一般生活に困窮して居る者の數を最近に於て調査した數字がありませぬ、是は方面委員若しくは部落會長等の活動に俟つて、本當に間違のない數字を直ぐに調査して、之に對應する爲に、主として物資をやると云ふことであります、金をやることよりも寧ろ物が手に入らないのであるから物をやらう、小さな例を申せば、戰災地で麥を蒔きたい、野菜を作りたいと思つても種がないと云ふやうな立場に居る者には、さう云ふ物迄給與してやる、斯う云ふ案を立てた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=108
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109・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 政治的、宗教的、經濟的差別待遇はないと云ふことは能くあちらに了解させるやうに話してありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=109
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110・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 或は其の點が分つて居ると思ひながら分らない點があつたかと思ひますが、尚今後も引續きさう云ふ點は十分はつきり理解させるやうに努める積りであります、此の機會に一言申上げて置きたいことがあります、法案の第一條第二項及び第十二條に關聯した問題であります、第一條第二項及び第十二條は正當なる行爲と云ふ文字を使つて居りますが、正當なる行爲と云ふのは違法性がないと云ふに過ぎないのでありまするから、純法律的に申せば、全く念の爲の規定でありまして、之に依つて組織なき勞働者に付て反對の解釋を下すと云ふ意味ではありませぬ、斯樣な規定を設けました趣意は、一方に於て關係者に安心を與へると云ふことと、又他面から申せば、斯樣な行爲は總て違法と解釋しようとする者に對して啓蒙的な意味を持たせようと云ふ趣意に基くものであります、此の二箇條に定めて居るやうな規定を爭議調停法に一般的規定として設けてはどうかと云ふ御意見は極めて御尤もな點があると考へますけれども、今後組合の結成は相當迅速に進展する情勢にありますから、寧ろ是等の規定を組合法に規定する方が適當である、斯樣に考へて本案に挿入致しました譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=110
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111・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 十三條に關聯しまして、外國の例を伺ひたいと存じます、例へば政治資金に對し共濟事業其の他の爲に醵出した金を利用すると云ふやうな例はありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=111
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112・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 十三條の關係、特に政治資金の關係に於ける立法例のことでありますが、第一に「イギリス」の方に於きましては、色々の紆餘曲折を經まして政治資金の利用の問題が發展して來た譯ですが、現在に於きましては、政治關係の金は、政治資金のみから之を使つて、他から流用してはならないと云ふのが現行法と承知して居ります、「アメリカ」に於きましては何等の規定はございませぬが、實際問題と致しまして、選擧等のある場合に、選擧の爲に組合員が特に金を出し合つて組合員の中から立候補する爲の文書其の他の運動費を徴集すると云ふことが實際に行はれて居るやうに承知して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=112
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113・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 「イギリス」に於きまするさう云ふやうな規定を設けるに至りました沿革に付て御話し願へれば有難いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=113
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114・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 御承知のやうに、千九百九年の末に「オスボン」事件と云ふのがありまして、組合基金を政治運動に使つたのが違法と判決された譯ですが、其の結果として組合が非常な窮境に陷つた譯であります、そこで其の反動と致しまして、斯う云ふ傾向を是正する意味に於きまして、政治賃金からのみ使つて、他の基金を此方に使つてはならないと云ふやうな現行法が招來されたと云ふ沿革が、主なる歴史の沿革であると存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=114
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115・齋藤齊
○子爵齋藤齊君 諄いやうでありますが、今日午前中も申上げました通り、年金給付を持つて居りまする既設の共濟組合に於きましては非常に大きい資金を持つて居るのであります、年金事業に對する基金と云ふものは、恐らく數百萬圓と云ふやうなものもあり得るかと存じます、さう云ふやうなものがどんどん政治運動に流用されてはいけないぢやないかと云ふ風に考へますが、其の點は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=115
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116・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 齋藤子爵の御意見全く御同感であります、今朝御意見を伺ひまして、關係の大臣とそれ等の點に付て重ねて打合せを致して置きましたから、御懸念の如き事件の起らないやうに精々配慮致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=116
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117・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 先程大臣の御説明のありました第十二條の「正當なる」と云ふ意味が、啓蒙的な意味が含まれて居ると云ふ御話でございましたが、此の正當、不正當と云ふのはどう云ふ風な基準に依つて決めるものであるかと云ふことを、何かの方法で明示して置かなければ甚だ危險ぢやないかと云ふやうな感じもするのでございますが、何處でそれをなさる御豫定なのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=117
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118・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 啓蒙的と申しました意味は、條文全體が啓蒙的な意味で掲げられて居ると云ふ意味であります、「正當なる」と云ふ文字に付て、特に啓蒙的であるとか云ふ意味を持つて居ると申上げたのではなかつたのでありまして、正當なる行爲と云ふのは違法性のない行爲と云ふ意味であります、此の文字は刑法にも矢張り使つて居りますし、其の他各種の法律に、矢張り正當なる行爲と云ふのは始終違法性のない行爲と云ふ場合に使つて居るやうに解釋して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=118
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119・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 大體分りましたが、此の正當、不正當或は違法性、適法性と云ふ意味が、簡單に事象其のものを既成の條文、法令に依つて判斷することの出來ない場合が澤山あると思ひます、例へば同盟罷業の結果、使用者と勞働者が御互に損害を受けた場合是は當事者同士ですからはつきりすると思ひますが、第三者が蒙むる損害と云ふものは非常に澤山ある、例へば電力の供給を受けて居る仕事で、同盟罷業の爲に、電力が停つた、其の時に其の仕事全體が停止してしまふ、此の損害などは相當莫大なものになる虞があるのであります、さうすると、其の結果から言つて、此の爭議行爲の適法、不適法と云ふものも判斷が曲げられると云ふやうなことが起つて來はしないかと思はれる、さう云ふことに付ての何かの決定をするやうな方法を講じて置かなければならぬのぢやないかと云ふ氣がするのであります、何も此の組合法にさう云ふ明文を設ける必要があると申すのぢやありませぬ、別の方法で御示になつて置いた方が、使用者の方も勞働者の方も安心が行くのぢやないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=119
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120・芦田均
○國務大臣(芦田均君) さう云ふやうにうまく全部を正當なるもの、正當ならざるものと書き分けるやうな言葉があれば都合の好いことだと思ひますが、矢張り法律を讀む人の方面では、社會常識で之を判斷して貰つて爭ひのあつた時には裁判所が之を裁く、斯う云ふ所を狙つて滿足して居る譯でありますが、併しながら罷業行爲と云ふものが何處迄正當かと云ふ點に付ては、無論御説の通り曖昧な問題が起り得ると思ひます、それでありますから、例へば見張り、立番、「ピケッティング」などが爭議行爲として正當であるかどうかと云ふ風な疑を將來殘さない爲に、特に議場に於て、「ピケッティング」は此の法律制定の際には正當なる爭議行爲と認めると云ふことを聲明して居る譯でありまして、出來る限り、さう云ふ風に曖昧な點を除きたいと考へて居りますが、併し結局は裁判所の判斷が最終的なのでありますから、立法の趣意が斯うであつたと申しましても、或は裁判所の最終の判定が立法者の意思に拘らず違ふやうな場合も起り得ると思ひますが、差當りの所、此の程度で滿足する外はないと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=120
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121・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 勞働條件の中の最も重要な問題の一つの勞働時間に付て伺ひたいと思ひます、大體今日では「アメリカ」に於ては八時間制を採つて居ります、それから歐洲大陸の方も矢張り八時間制が行はれて居りますが、我が國に於ては必ずしも八時間制でなく、十時間の所もある、戰時中は十二時間働いた所もあつた、大體今後の趨勢はどう云ふ風に參る傾向のやうに御見透しでございますか、又厚生省として勞働時間は何時間位が適當であると云ふ御見解を御持ちでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=121
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122・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今の就業時間はどの位が適當かと云ふ御質問であります、御承知の通り我が國の工場法に於きましては、第一次世界大戰後の趨勢に鑑みまして、出來るだけ長時間勞働を避けようと云ふ方針で出來たのでありますが、それでも經濟機構、社會情勢の歐米諸國と多少異る點があることに鑑みて、歐米諸國よりも長時間勞働を規定して居つた譯であります、今後の失業問題と關聯して、就業時間數は相當重要な問題になつて來ると思ひますが、若し失業群を救はうとするならば、就業時間を短かくして、短時間高能率、出來るならば、高賃金と云ふ方針で行くことが理想であると思ふのでありますけれども、其の中心は矢張り能率の問題でありまして、短時間であればある程高能率であることを必要とするやうに思ふのであります、現在の趨勢から言へば、能率の點が最も問題になつて居ります、そこで現在の失業問題が果してどの程度に就職者を出すかと云ふことであります、現状から申しますと、人を求めて居るものの數が多くて、職を求める數が少い、誠に不思議な現象でありますけれども、併し遠からず職を求めるものの數が人を求めるより多くなると見て居ります、さう云ふ場合には矢張り思ひ切つた短時間勞働を採用することが起るかも知れませぬ、現在の所は略略戰爭前の工場法で規定した程度の就業時間で、當分やつて行きたいと、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=122
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123・橋本實斐
○伯爵橋本實斐君 只今の御説明に依つて了解致しました、私も企業の種類等に依つても就業時間の特徴が自ら出ると思ひますが、只今の御説のやうに失業者が巷に溢れる時に於きましては、成るべく多くの人に勞働の機會を與へる爲に、どうしても一人當りの就業時間は短くせざるを得ない、又今厚生大臣から御話のやうに、能率から申しますと、短時間に精力を集中した方が宜いかと考へるのであります、さうなつて參りますと、從來の就業時間より幾分短縮される傾向にあるだらうと思ふのであります、尤も能率的に申しまして、三交代位にして八時間宛やるのが宜いかも知れませぬが、又夜間と晝間と各各制限時間が違つて來ると思ひますが、自然傾向はさう云ふ風になるのぢやないかと、私も竊に考へて居ります、ちよつと御意見を申添へて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=123
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124・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) もう御質問はございませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=124
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125・瀧川儀作
○瀧川儀作君 私の質問申上げむとすることは大分各方面から出ましたので、簡單に質問申上げたいと思ふのであります、勞働組合法を制定して勞働者を保護することには何等異議はありませぬが、現状から見ますと、少し進み過ぎたやうな感じもあるのであります、是で此の運用如何に依りまして、先刻もどなたからか御意見がありましたが、勞働爭議を激發する虞はないと限らないのであります、一般の批判から見ますると、事業家なり資本主が勞働者の非常な低賃銀を利用して搾取しつつあるやうに考へられますが、それでは殆ど今日のやうに事業が發達する譯でない、相當事業家に於て注意を拂つて居るやうに考へられるのであります、殊に今日の場合は殆ど事業界を見ますと、破産の状態にあります、之を復興せしむるにはなかなか容易な事業でないと信ずるのでありますが、勞資間の色々な爭議が繼續されるやうなことがありましては由々しき大事であると思ふのであります、此の運用に付て政府當局に伺ひたいのでありますが、在來、戰爭中にも生産擴充が十分に行かないで、運用問題が各方面から出たのでありますが、そこがうまく行つて居ない、寧ろ敗戰の原因の主なるものでないかと思ふ位下手に行つて居るのであります、我が國の爲政者、爲政者と云ふと何ですか、批判を申上げて相濟みませぬけれども、併し官吏は公平であります、清廉でもあります、行政的事務には非常に精通して居られますが、經濟界の問題には餘りに疎い、實情を能く御存じない方が多い爲に、兎角運用を誤つて、當業者の専門の經驗を利用することが出來て居ないのぢやないかと思ひますが、そこで私は簡單に申上げれば、課長とか局長と云ふえらい御方になると、さう云ふ風にせられないやうに、寧ろ勞働組合なり又事業家に就て見習ひでも靜かになさつてから、其の地位を與へる位になさつたら、實情が分つて運用がうまく行くのぢやないかと、斯う云ふ風に考へられるのであります、厚生大臣は此の方面の事情には精通して居られて、釋迦に説法でありますが、日常事務的に仕事をやつて居られる局課長方面に於ては、さう云ふことを見習ひする、研究する機會がないので御無理もないのでありますが、そこに缺點があるのぢやないかと思ひます、見習ひすると云ふと俗の言葉でありますが、もう少し實情を、責任ある地位の御方に於ては調査する、勉學をしつかりなさる、ちよつと三日か五日旅行した位で、専門家の意見を聽いたりしたのでは、迚も駄目ぢやないかと思ひます、其の點に付ては細心の注意を拂はれてなされなければ、此の復興は困難ではないかと考へられるのであります、私は最近第一線に立つて居りませぬが、多數の勞働者と接觸した者で、寧ろ勞働者の味方であるのですが、役所に向つてはさう云ふ風な希望を持つて居るのであります、そんな風なことが出來るか否か、疑問ではありますけれども、そこ迄行かなければ、運用がうまく行かぬのぢやないか、斯う云ふ風に考へて居りますが、私共の皆の希望するやうなことが果して行へるかどうか、そんなことを伺つて見たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=125
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126・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 瀧川さんの御意見で、役所に座つて居る者は民間の事情に疎い、實情が分らない憾があると云ふ點は全く其の通りに存じます、之をどうして是正するかと云ふ方法に付きましては、私も多少考へて見たこともありますが、要するに上に立つて責任を持つ者が思ひ切つて實情を調査するやうに指導をする心懸けが大事であります、又其の方針に基いて熱意を以て努めて社會の實情を知らうとする心懸けが大事であると思ひます、其の二つの調子が揃ひさへすれば、今日の弊害は或程度除けると思ふのであります、此の運用に付きましても、さう云ふ方針に則つて、出來るだけ實情に即して世間の期待に副ひたいと、斯樣に心懸けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=126
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127・大野緑一郎
○大野緑一郎君 先程第一條第二條に付て「正當な」と云ふ言葉の解釋に付ての大臣の御説明は能く了承致しました、そこで私は念の爲確めて置きたいと思ひますのは、第一條の第二項に於て、此の讀み方ですが、昨日委員長の質問に對する厚生大臣の御答で、此の三十五條の規定は勞働組合を組織して居るものは勿論の話であるが、未組織の勞働者にも適用がある、斯う云ふ風な御説明であります、其の趣旨も私は能く了承致しまするが、此の法文を讀んで、さう云ふ字義通りの解釋でさう云ふことがはつきり致しますか、或は此の法文に潛在して、さう云ふ趣旨に解釋することになりますか、そこの點が少し明瞭を缺いて居るやうに思ひます、此の字句だけを見ますと「勞働組合の團體交渉其の他の行爲にして」とあり、從つて勞働組合の團體交渉其の他の行爲に付ては、刑法第三十五條の適用がある、さうすると組合を組織して居らないものに付ては當然なんだと云ふ解釋も出來るし、又裏面解釋として、組合を組織して居らないものに付ては適用がないと云ふ解釋も起り得る餘地が起るのではないか、字句の解釋の問題ですが、其の點もう少し明瞭に御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=127
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128・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 大野君の御質問は根據のある御質問だと思ひます、併し極く普通の條理から言ひますと、勞働組合の爲す團體交渉若くは「ピケッティング」さう云ふ行爲は正當なる爭議行爲として刑法の適用はない、斯う決めてあるのであります、勞働組合に入らないものが「ピケッティング」をなして罷業をなした、それを正當なる爭議行爲と認めないと云ふ根據は實は何處にもない譯であります、そこで條理から言へば勞働組合の組合員が爲したる正當な行爲であつても、或は勞働組合を組織して居らないものの罷業行爲でも、同じに取扱ふべきものだ、但し此の二項に規定して居ることが全部未組織勞働者に適用があるかどうかと云ふ問題に對しては、矢張り此の第二項の趣意全部が未組織勞働者に適用がある、其の根據は普通一般の條理で左樣に解して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=128
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129・大野緑一郎
○大野緑一郎君 さうすると矢張り此の字義の解釋は別として、さう云ふ條理が存在して居る、潜在して居ると云ふ御解釋で、未組織勞働者にも適用がある、斯う云ふ御趣旨に解釋して宜いですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=129
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130・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 御意見の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=130
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131・肝付兼英
○男爵肝付兼英君 季節勞働者と云ふやうなものは現在日本にどの位居るでせうか、數をちよつと伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=131
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132・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 失禮でございますが、ちよつとさう云ふ調はございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=132
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133・肝付兼英
○男爵肝付兼英君 實は季節勞働者の數に依つては相當厄介な問題が起るのではなからうかと云ふことを心配して居るのであります、季節勞働者の大部分が矢張り農村から主として來るだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=133
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134・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 例へば冬農村の閑な時に、關西の方の酒屋に季節として行く、斯う云ふやうな勞働者の關係の御質問だと存じますが、其の場合に、冬の二箇月の間だけまあ工場、事業場に於ける勞働者が其の場合に勞働組合が結成出來るか、斯う云ふ御尋の御趣旨かと思ひますさう云ふ場合に於きましても、本法の適用があつて、勞働組合を結成して勞働條件の向上等に資すると云ふことは望ましいことであり、本法上何等支障のないことと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=134
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135・肝付兼英
○男爵肝付兼英君 其の季節勞働者と云ふものはどの位ある御見込でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=135
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136・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 遺憾ながらちよつと即答致し兼ねる状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=136
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137・肝付兼英
○男爵肝付兼英君 今囘勞働組合が結成されて、季節勞働者が此の勞働組合の「メンバー」となると同時に、是等が農村等に入つた場合に、是が又農業團體法の方から其の農民組合なんかに又加入すると云ふことになると、二重人格が出來る譯であります、さう云ふやうな場合に、是等の適用の範圍と云ふものに付て、將來の統計の上に、一面には勞働者として數の上に上つて來ると同時に、又農民組合の方の農家として、又之の數が上つて來ると云ふことになると、統計上からも非常に複雜なものになると思ひます、斯う云ふ點に付てはつきりした「デフィニッション」を與へて置いて戴くと云ふことも私は必要ぢやないかと考へたので、此の點を御伺ひした譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=137
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138・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 實際の問題としては、季節勞働者が家に歸つた時に、農民組合、小作人組合に參加する、一面には勞働組合の組合員であり、小作組合の組合員だと云ふことは是は寧ろ當然のことであつて、之を拒む必要もなし、又拒み得ないことだと考へるのでありまして、重複しても致し方ないと思ひます、又統計としても間違つて居るとは言へないと思ひます、農民組合の方の組合員が何人あつて、勞働組合の會員が何人あると云つたところが、是は間違つた統計ではないのであつて、唯人口統計と較べ合せて數が合はないと云ふ問題は起つて來ますが、重なることはちつとも差支ないやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=138
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139・肝付兼英
○男爵肝付兼英君 勿論統計的に見れば別々な意味として取れるのでありますが、矢張り勞働問題等を色々な角度から見る時に、其の勞働者の數が相當多かつた場合には、色々な點に支障を生ずる問題も起ると思ひます、又或る一事業場なり、或る地域に付て其の四分の三以上が或る勞働條件に服從すると申しますか、或は勞働條件を提示した場合に、其の四分の三以下に當る者が此の季節勞働者であつたやうな場合には、季節勞働者には當嵌め得ない、而も季節勞働者には其の必要がないと云ふやうな問題に對しても強制的に之を行はせると申しますか、權利が付いてしまふと云ふやうな不合理なことが出て來ることも起るぢやないかと云ふ風に想像されるのでありますが、其の邊の心配はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=139
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140・芦田均
○國務大臣(芦田均君) そこ迄實は詳しく考へて見て居りませぬが、御意見に依つて精々一つ其の點を考慮致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=140
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141・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 他に……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=141
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142・秋田三一
○秋田三一君 從來の勞働爭議を見ますと、第三者が之に立入つて相當指導を致しますと同時に、煽動して居るやうな傾向があるのであります、是は階級鬪爭を益益激化する虞がありまして、寧ろさうしたことは除いた方が健全な組合の發達に宜いのぢやないかと云ふ氣持も致すのであります、無論良い指導者もあるのでありますが、從來の例から見ますと云ふと、惡い方が多いのぢやないかと云ふ感じも持つのであります、此の十條でありますか、十條に「勞働組合の委任を受けたる者」としてありまして、是が勞働協約の締結其の他の事項に關して交渉する權限を持つて居るのでありますが、是は「委任を受けたる者」と云ふことは除きまして、勞働組合の代表者だけにした方が宜しいぢやないかと思ふのですが、此の點の御所見を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=142
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143・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 所謂惡勞働「ブローカー」、爭議「ブローカー」と云ふやうな者の排除の御希望の御尋と思ひます、惡「ブローカー」があります他の一面には、勞働者ではないが非常に勞働事情に精通して居り、適正な勞働運動の指導者も亦ある譯なんであります、恐らく勞働運動が適正に發達して參りますならば、前段申上げましたやうな惡「ブローカー」は段々排除されて淘汰されて行くだらうと思ひます、後者の方が段々榮えて行くと云ふ結果に相成るだらうと思ひます、又さうなることを期待して居ります、そこで第十條の「勞働組合の委任を受けたる者」と云ふものを削除した方が、只今申しましたやうな趣旨を助長することになつて宜いぢやあるまいかと云ふ御意見のやうでありまするが、單に勞働組合の代表者、斯う云ふ風にして置きましても、勞働組合には勞働者のみならず勞働運動の善惡共の指導者も入る譯であります、それが代表者になつた場合には、矢張り御尋のやうな心配はあり得る譯であります、他の一面又勞働組合、特に小さい中以下の勞働組合になりますと、法律問題其の他勞働關係のことに付て餘り詳しくなく、又指導者としてなかなか有能者がないと云ふやうなことがあり得ると思ひます、さう云ふ場合には「勞働組合の委任を受けたる者」と云ふことを存置することに依りまして、法律問題でありますならば辯護士、それから或特殊の知識經驗を要する問題でありますれば、さう云ふ人を委任しまして、さうして使用者側と交渉すると云ふ方が寧ろ勞働組合を助長促進すると云ふことに相成ると思ひまして此の「又は」以下を入れた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=143
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144・秋田三一
○秋田三一君 今御話の惡勞働「ブローカー」の跋扈を抑へるやうな方法に付て、別に御考はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=144
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145・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 本法は勞働組合運動を助成促進する趣旨に於て立案致しましたものでございます、而して御尋の惡「ブローカー」排除の取締規定と云ふ風なものは本法に規定せず、寧ろ勞働界の自然の淘汰と申しますか、自然の發達の間に段々排除されて行くと云ふことを期待しまして、取締規定は置かなかつた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=145
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146・秋田三一
○秋田三一君 實際の面に於て、果して今御話の如き惡「ブローカー」が段々に引込むやうなことになれば大變結構なんでありますが、色々の手を以て勞働者の歡心を買つて行きますからして、又現在の多くの勞働者の知識程度から致しますと云ふと、まだまださうした惡「ブローカー」の跋扈する傾が段段延びて行く餘地が多分にあると思ふのであります、是非是は何等かの方法で抑へて戴きたいと私は思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=146
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147・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 一言附加へて申上げて置きます、御尋のやうな懸念のあることは、私も一部全く御同感でございます、さればと言つて取締規定を置くと云ふのはどうかと思ひまして置かなかつた次第であります、尚勞働委員會と云ふものの規定を相當詳しく置きまして、さうして勞働委員會の運營に色々の點で多大の期待を掛けて居る譯であります、而して御尋のやうな惡「ブローカー」の排除と云ふやうなことに付きましても、此の勞働委員會の活用を侯つて相當此の目的を達したいと云ふ風に考へて居ります、と申しますのは、勞働爭議の豫防から發した場合に於ける所の調停、仲裁迄やつて居りますので、寧ろ此の間に於て勞働委員會が適正に嚴格に動くならば、自づと惡「ブローカー」は排除されて行くやうな結果になるのぢやあるまいかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=147
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148・秋田三一
○秋田三一君 十五條に「裁判所は勞働組合の解散を爲すことを得」と云ふことになつて居りますが、解散命令權を裁判所に與へて居りますのは、是はどう云ふ理由でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=148
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149・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 昭和六年に提案せられました組合法には、裁判所の代りに内務大臣となつて居ります、それに變つて居る點がありますので、非常な自然な御質問と存じます、御承知のやうに聯合軍司令部の指令に依りまして、治安警察法が廢止致されました、從ひまして我が日本に於きましては、現在政治結社は勿論、總ての結社に付きまして、解散を命じ得ると云ふことは何にもない譯でありますが、唯一つ、此の本法案の十五條に、勞働組合に對する解散の規定がある譯であります、從ひまして例外の例外でございますので、其の條件は相當嚴格でなければ相成らぬと存じます、其の嚴格なる條件の一つとして、行政官廳でなしに裁判所が原被兩告の辯論を聽いて、さうして公正な所に從つて決すると云ふ風な、愼重な手續を執る必要がありますので、茲に裁判所と致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=149
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150・秋田三一
○秋田三一君 十八條に依りますと法人たる勞働組合に免税の恩典を與へて居りますが、是はどう云ふ理由でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=150
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151・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 大體勞働組合は金に縁のない組合でございます、其の程度は丁度産業組合に相當する位のものであると、寧ろ考へ樣に依つてはそれ以下のものと存じます、そこで勞務法制審議會の答申に於きましても、産業組合に準ずる免税の規定を置くべきであると云ふやうな答申があつた譯であります、其の答申に基きまして、政府に於きましても之を認めまして、此の所得税及法人税、附則に於きます所の登録税と云ふやうなものの免除の規定を置きまして、産業組合と同じ程度の免税の恩典を與へた譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=151
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152・秋田三一
○秋田三一君 勞働委員會の委員の任期は、先程御話になつたかと思ひますが、ちよつと聽き漏らしたかと思ひますが、どう云ふ風になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=152
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153・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 別に任期は置きませぬで、一應任期なしでございますが、産業勞働事情の變化又は其の他の變化に依りまして、必要ある場合に於きましては勞働組合、それから主腦者側の團體の意嚮を參酌しつつ、適當の時期に更新する必要もあるのではないか、斯う云ふやうに存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=153
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154・秋田三一
○秋田三一君 いま一つ勞働委員會の件でございますが、其の勞働者を代表する者を推薦する場合に勞働組合のない地方と云ふものはどう云ふ風になるのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=154
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155・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 御尤もな御尋と思ひます、例へば關東地方に於きまして群馬縣の勞働委員會を拵へやうと致しました場合に、群馬縣に勞働組合が全然ないと云ふやうな場合はどうするかと云ふ御尋でありますが、其の場合には二つ考へることが出來ます、一つは關東を一圓とする勞働組合或は勞働組合聯合會があると云ふ風な場合に於きましては、其の聯合會の推薦に基くと云ふのも一つだと思ひます、それから組合はないが組合に準ずべきものがあると云ふ風な場合には、其の意嚮を參酌しつつ、前段申上げましたやうな組合若しくは勞働組合聯合會と云ふ風なものの推薦を通じてやると云ふ風になるのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=155
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156・秋田三一
○秋田三一君 若し其の推薦の定數に滿たぬ場合があるかも分りませぬが、さう云ふ時は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=156
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157・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 推薦の定數と申しますか、推薦した人が七人なら七人だけの人間がないと云ふことですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=157
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158・秋田三一
○秋田三一君 はあ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=158
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159・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 勅令の決め方を、地方テスト公式に五人以下と、斯う云ふ風にしないで、色々な關係で五人が不適當、五人迄はなかなかないだらうと云ふ風な場合には、而もそれが餘り勞働爭議其の他は豫想されないと云ふ場合には、規定は五人以下として居りますから、或は五人づつを要しないで三人づつ、若しくは二人づつと云ふ風にして行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=159
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160・秋田三一
○秋田三一君 私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=160
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161・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) あなたの御質問に關聯してちよつと、さつきの秋田君の勞働委員會の勞働者を代表する者の推薦の方法でありますが、之を見ますと勞働組合の推薦と云ふことになつて居るので、勞働者と云ふ者は代表する權能がない、代表される資格がない、さう云ふやうには考へられませぬか、此の法案は、ですから例へば群馬縣に全然勞働組合と云ふものが出來なかつた場合に群馬縣には勞働者を代表する者はない、斯う云ふことになりはしませぬか、勞働組合の推薦だから、群馬縣に於ける勞働組合はないと云ふ場合には全然勞働者を代表する勞働委員と云ふものは出來ない、さう云ふことになりますね、此の法文をすらすら讀むと……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=161
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162・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 群馬縣の場合でございますが、矢張り勞働組合がなくても、其の群馬縣の勞働界には色色の問題が起るであらうと思ひます、從ひまして、それを色々解決して行くには矢張り勞働委員會と云ふものは是非共必要と思つて居ります、而して關東一圓を單位として勞働組合若しくは勞働組合聯合會があるならば、其の組合若しくは組合聯合會の推薦に基くものに依つて群馬縣に勞働委員會を組成、組織致しまして、勞働問題を解決して行くと云ふ風なことが出來ると思ひますので、群馬縣にさう云ふ勞働組合がなくても是非一つ勞働委員會を拵へて行くのが適當だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=162
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163・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 私も先程伺つて居つたのですけれども、ちよつと頭に入り損ねましたので、もう一度伺ひたいのですが、此の第一條の刑法第三十五條の規定が「正當なるものに付適用あるものとす」とありますが、もう一度ちよつとはつきり仰しやつて戴きたいのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=163
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164・高橋庸彌
○政府委員(高橋庸彌君) 例を申上げませう、從來勞働爭議の行爲は取締が割合に峻嚴であつたやうに思ひます、從ひまして勞働者が團體行爲を爲すべく數人社長の所へ行つて面會を求めて話をする、斯う云ふ風な場合に取締當局は警察犯處罰令の故なく面會を強要するものと云ふのに引掛けまして、之を檢擧すると云ふ風なことがあつたのです、處が本法の精神を汲んで見ますと、或は暴行脅迫を以て、社長に面會を求めると云ふのは、是は違法だと思ひます、併しながら勞働條件の向上を期して、第一條の目的に副つて其の意味に於きまして社長に面會を求めると云ふ風なことは當然本法の正當なる行爲である、斯う云ふ風に認めます、從つて警察犯處罰令の故なく面會を強要するものとして之を處罰すると云ふ風なことはしない、斯う云ふ意味でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=164
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165・秋元春朝
○子爵秋元春朝君 どうも有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=165
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166・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 外に御質疑はございませぬか、ございませぬければ質問を終りまして討論に入りたいと思ひます、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=166
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167・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) 御異議がなければ討論に入ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=167
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168・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 勞働組合法の制定は大正の末期から昭和に掛けまして度々問題となつたのでありますが、遂に其の實現を見るに至らなかつたのであります、然るに今囘政府の大決斷に依りまして之が提案を見ましたことは、眞に機宜の措置、適當な措置であつて、誠に慶賀に堪へない次第であります、蓋し之に依つて敗戰後正に崩潰に頻して居りまする所の我が國の産業を囘復し、新日本を建設することに對し多大の貢獻を爲すべきことを信じて疑はないのであります、尚本案の目標とする所は勞働者の團結權と團體交渉權とを保護助成し以て勞働者をして其の地位を向上せしめ、經濟の興隆に資せしめむとするにあるのであります、即ち産業を資本家の獨裁から解放し、勞働者をして之に參加せしめ、而して産業の民主化を圖らむとするのであります、然るに我が國の産業界は今や大財閥の解體に依りまして、資本家の指導力が減退弱化したのでありますからして、勞働者の協力なくしては工場の勞働管理は完遂することが出來ないのみならず、其の經營上に於きましても、之が協力を必要とするに至つたのであります、更に賠償物資竝に主要食糧品等の輸入に對する見返り物資の生産には是非とも高能率生産が必要であつて、之が爲にも勞働組合の健全なる發達を急務とするのであります、斯くの如く勞働組合の設立は單に勞働者の爲のみならず國家的要請にも應ずるものであると確信致しまするが故に、衷心から本案に贊成を致すのであります、尚此の機會に希望を申添へたいと存じます、それは今後勞働組合の重要性に鑑みまして、最近の機會に於きまして勞働省を創設し、之が新設に依つて高能率生産の向上發展に資し萬全を期して戴きたいと云ふことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=168
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169・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 此の勞働組合法は今迄色々の紆餘曲折のあつた法案でありまして、今囘是が臨時議會に提案されて是が無事成立すると云ふことを豫想しまして、衷心から喜びを感ずるものであります、殊に先程伺ひました此の法律の執行されるのは明年の二月一日からだと云ふことでありまするが、世上では來年の二月頃は日本の國の一番危い時期だ、斯う云ふことを申して居るものが相當にあるやうであります、此の危い時期に此の意義のある法律が實行に移されると云ふことは、取りも直さず民主國日本として新發足をする上にも一つの贐をされるやうな氣がするのであります、願くは政府當局に於て此の法律が死物にならないやうに、進んでは我が國經濟界の發展に多大の貢獻をなすやうに、行政上の御努力を希望して巳まないものであります、此の希望を添へまして本案に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=169
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170・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今本委員會の討議に於て梅園子爵竝に八代男爵より御發表になりました政府に對する運用の萬全を期する爲の御希望に對しましては、今後其の局に當る者と致しまして萬全の方策を講じ、全力を擧げて御期待に副ふやうに努めたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=170
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171・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) それでは採決を致します、本案に御異議はございませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=171
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172・河原田稼吉
○委員長(河原田稼吉君) では御異議ございませぬから、可決致しました、本日は是を以て散會致します
午後三時十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=172
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173・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 河原田稼吉君
副委員長 男爵 久保田敬一君
委員
公爵 岩倉具榮君
侯爵 中山輔親君
伯爵 橋本實斐君
子爵 立花種忠君
子爵 秋元春朝君
子爵 梅園篤彦君
子爵 高木正得君
子爵 齋藤齊君
吉田茂君
大野緑一郎君
大橋八郎君
男爵 八代五郎造君
男爵 肝付兼英君
男爵 西酉乙君
藤沼庄平君
長岡隆一郎君
松本健次郎君
瀧川儀作君
河西豊太郎君
奧主一郎君
秋田三一君
國務大臣
厚生大臣 芦田均君
政府委員
厚生省勞政局長 高橋庸彌君
厚生省書記官 中西實君
運輸省勤勞局長 富山清憲君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008903768X00219451216&spkNum=173
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