1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
鹽專賣法中改正法律案(政府提出)(第一〇號)
昭和二十年度法律第十八號中改正法律案(昭和二十年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する件)(政府提出)(第一六號)
貿易資金設置に關する法律案(政府提出)(第一九號)
國民貯蓄組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)(第二〇號)
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昭和二十年十二月十三日(木曜日)午前十時四十四分開議
出席委員左の如し
委員長 崎山嗣朝君
理事 田村秀吉君 理事 西川貞一君
理事 小野秀一君
赤松寅七君 片山一男君
田村みのる君 深澤吉平君
池田正之輔君 松浦伊平君
池本甚四郎君
出席國務大臣左の如し
大藏大臣 子爵 澁澤敬三君
出席政府委員左の如し
大藏政務次官 由谷義治君
大藏參與官 山本粂吉君
大藏省主計局長 中村建城君
大藏省外資局長 野田卯一君
專賣局長官 植木庚子郎君
專賣局鹽腦部長 長沼弘毅君
商工政務次官 木暮武太夫君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
鹽專賣法中改正法律案(政府提出)
昭和二十年法律第十八號中改正法律案(昭和二十年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する件)(政府提出)
貿易資金設置に關する法律案(政府提出)
國民貯蓄組合法中改正法律案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=0
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001・崎山嗣朝
○崎山委員長 開會致します、國民貯蓄組合法中改正法律案の提案理由の御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=1
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002・山本粂吉
○山本(粂)政府委員 國民貯蓄組合法中改正法律案の提案理由の御説明を申上げます、國民貯蓄組合法中改正法律案に付きましては、國民貯蓄組合が戰時中國民貯蓄増強上の施設と致しまして、極めて重要なる使命を果して参りましたことは説明を要せざる所でありまするが、戰後に於きましても惡性「インフレーション」防止等の爲の施設と致しまして、是が自主的なる活動に依り廣く一般的に國民貯蓄の増強を圖りますることは、益益緊要と認められまするので、本法律案を提出致した次第であります
改正の要點を申述べますれば、國民貯蓄組合法第一條に、國民貯蓄組合とは戰時又は之に準ずべき事變の場合に於ける國民貯蓄の増強に資する爲め組合員の貯蓄の斡旋をなすものを謂ふと規定せられて居るのでありますが、此の「戰時(戰爭に準ずべき事變の場合を含む)に於ける」と云ふ制限規定を削除致しまして、戰後に於ても引續き國民貯蓄組合は其の活動を繼續し得ることと致した次第であります、何卒御審議の上御贊成あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=2
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003・崎山嗣朝
○崎山委員長 此の法案の質疑は後廻しに致しまして、鹽專賣の方からやることに致します――松浦君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=3
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004・松浦伊平
○松浦(伊)委員 鹽の需給調整の御計畫は一月から十二月までの計畫を御立てになるのか、又四月から翌年三月までの御計畫を御立てになるのか、之を御答へ戴くと共に、次年度の需給調整は所謂工業鹽にして一箇年にどれだけ要るか、食料鹽に幾ら要るか、特に食料鹽の中で家庭配給と、それから醤油其の他水産業への配給量がどれだけ要るか、是等數字を擧げて御示しを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=4
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005・植木庚子郎
○植木政府委員 鹽の需給計畫を暦年に依つて立てるのか、會計年度に依つて立てて居るかと云ふ御質問に對しては、我々當局と致しましては諸般の都合上從來會計年度に依つて需給計畫を立てることに致して居ります、併しながら年度を四半期にそれぞれ區切りまして實行致して居りますので、隨て之を暦年に直して見て、色々な觀察を致して居る場合も澤山あることを申添へて置きます
それから二十一年度の鹽の需給計畫と致しましては、只今我々が考へて居ります數字は、需要の面に於きましては食料用鹽百十萬「トン」、工業用鹽百萬「トン」、合せて二百十萬「トン」の需要を見込んで居ります、之に對しまして供給面に於きましては、專業製鹽に依る生産を五十萬「トン」、自給製鹽に依りまする分を四十萬「トン」、合せまして九十萬「トン」を國内生産に依らうと計畫致して居るのであります、專業製鹽に依ります分は勿論全部を食料用と考へて居ります、自給製鹽に依る分は四十萬「トン」の内食料用と致しましては二十二萬「トン」、工業用と致しましては十八萬「トン」を考へて居る次第であります、隨て供給面に於きまして不足する分は、食料用鹽に付きましては三十八萬「トン」、工業用の分に於きましては八十二萬「トン」、合せまして百二十萬「トン」を輸入に依らんとする計畫を持つて居る次第でございます、是等の數字は何れも一應の計畫でありまして、今後尚ほ或は年度開始前に變更を加へることがあるかも知れないことを申添へて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=5
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006・松浦伊平
○松浦(伊)委員 鹽の大體の需給調整に付て御説明がありましたが、私此の際御尋ね申したいのは、昭和十二年支那事變の起る前の日本の鹽に對する專賣行政と申しませうか、所謂國内生産、或は外地輸入、此の計畫は如何樣な計畫を以て御進めになつたか、尚ほ大東亜戰爭の起る前の支那事變中の鹽業計畫、輸入と國内生産とどう云ふ計畫になつて居るか、それから大東亜戰爭中の需給調整を如何にしてやつて行かうと云ふのか、此の三點に付て一つ詳しく御説明願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=6
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007・長沼弘毅
○長沼政府委員 御答へ申します、昭和十二年頃の資料に付きましては一寸手許に持つて居りませぬが、昭和十四年頃までの間は、所謂大東亜圏内に於きまして、即ち日滿支を通じまする鹽の需給計畫と云ふものはまだ確立されて居りませぬでした、隨ひまして相當「スペイン」とか、「アメリカ」とか、「ペルー」と云ふやうな非常な遠隔地から輸入して居つたと云ふ實情でございます、それが昭和十四年頃から外國の鹽を輸入すると云ふことは、日滿支の需給體制確立上いけないことであると云ふ風な觀點から致しまして、大東亜圏内に於ける、殊に日滿支に於ける需給體制を確立する準備を致しまして、概ね昭和十七年頃に大體日滿支を通じまして三百五十萬「トン」乃至四百萬「トン」の自給自足體制を立て得る如き計畫を立てたのであります、其の後昭和十八年度頃までは、日滿支に於ける所の交通状況も尚ほ確保されて居りましたので、自給面から申しますると、約六十「パーセント」乃至七十「パーセント」位のものは關滿支に於ける鹽に依存して居つたのであります、其の後最近に至りまして、日本の國内に於ける需給體制と云ふものを急速に確立しなければならぬと云ふ風に段々供給圏が狹まつて參りまして、御承知の如く自給製鹽等に努力を致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=7
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008・松浦伊平
○松浦(伊)委員 只今色々鹽の需給調整に付ての沿革の御話がありましたが、鹽の重要性は今私が改めて申上げるまでもなく、既に昨日來他の委員から其の重要性に付て相當突込んだ御意見を拜聽したのであります、唯私は斯樣に終戰後日本の國土と云ふものが非常に狹くなり、更に終戰後の御計画は御發表になりましたが、果して是だけの鹽が外地に依存出來得る可能性があるかどうか、之を私は明確に御示し願ひたいのであります、同時に外地に若し鹽があるとしましても、之に對する船舶の用意があるかどうか、唯空想では困る、國内に是だけしかないから是だけの鹽が要る、だから是だけのものは外地から仰がなければならぬと云ふことでは、國民は滿足しないのであります、二百十萬「トン」の鹽が工業用、食料用に要るものならば、之を切詰めて何處までにすれば鹽の需給がやつて行けるか、本當に實行可能の計畫を立てて欲しいのであります、唯理想のみを計畫致し、輸入の出來ないものに依存したのでは國民はより以上迷惑なのであります、此の點の御見透しに付て御意見を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=8
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009・植木庚子郎
○植木政府委員 只今の御發言に對しましては全く仰せの通りでありまして、鹽の輸入に付きましても來年度の計畫として相當數量、即ち百二十萬「トン」からを計畫致して居りますが、之に付きましては見返り物資の關係でありますとか、或は現地に於ける荷役の關係、更に現地に於て容易にそれだけの鹽の量を入手が出來るかどうかと云ふやうな問題等に付きまして、非常に色々な要素を含んで居りますので、之に依存すると云ふことに付きましては、色々計畫上危ない點があり得るのであります、併しながら一應只今立てて居ります計畫は、斯うした計畫を立てざるを得ないので實は一應之を立てて居りますが、仰せの通り此の輸入の可能性に付きましては、色々考究を要する問題があります、隨て先程も申加へた如く今後變更を生ずることがあるかも知れないことを申上げた次第であります、隨て國内に於ける増産に付きましては、凡ゆる工夫を重ね或は努力をする必要がありますので、專業製鹽に付きましても、自給製鹽に付きましても、來年度の兩者合せての九十萬「トン」と云ふ計畫は萬難を排して其の充實に努力し、或は之を突破して少しでも輸入量を減らすと云ふやうな努力が必要であらうと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=9
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010・松浦伊平
○松浦(伊)委員 國内生産に對して色々御計畫があらうと思ひますが、今の長官の御答辯を承つて重ねて申上げたいことは、外地の輸入と云ふものは百萬「トン」はおろか十萬「トン」の鹽も入りはせぬのではないか、本當のことを私は聽かせて貰ひたいのです、輸入見込のないものならば、更に政府は計畫を立てなければならぬと思ふのであります、のみならず先程鹽腦部長から御答辯がありましたが、大體日本の主要食糧及び食鹽を今日まで外地に依存して居つた、其の政府當局の所謂鹽の行政が誤つて居ると云ふことを、私は此處で明確になす必要がありはしないかと思ふ、又同時に之を國内に於て生産を擴充する必要があると考へるのであります、今一度外地から輸入に付ての本當の見透しの所を聽かせて貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=10
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011・植木庚子郎
○植木政府委員 輸入計畫量に對しましての確實性の見込の御質問でございますが、例へば本年度に於きましても、上半期に於て食料用が二十五萬「トン」、工業用十七萬「トン」兩者合せて四十二萬「トン」ばかりの輸入を、あの戰爭の最中でも非常な苦勞は致しましたが實行致して居ります、併し下半期に於きましては、過日も申上げました通り、色々な情勢から最近までに輸入し得ました數量は僅かに二千「トン」を稍稍上廻つた程度のものでございます、併し尚ほ下半期今後一、二、三月中に「マッカーサー」司令部にも色々要請致しまして、段々と輸入の見込が付いて參つて居ります、まだ是は確實でございませぬが、司令部の方でも、期限ははつきり致しませぬが、近く約十萬「トン」位に付きましては支那の鹽を内地へ持つて來ることに付て、大體諒解を與へて呉れさうな空氣が最近確實になつて參りました、尚ほ是は差當つての問題でありまして、我々が「マッカーサー」指令部に要請して居りまする百二十萬「トン」に付きましても、見返り物資其の他事情さへ許せば、尚ほ之に追加をして相當程度の輸入はさして呉れるのではなからうか、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=11
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012・松浦伊平
○松浦(伊)委員 色々政府の御配慮に依りまして、外地から應急措置として輸入を可能ならしめる御努力に對しては感謝を致すのであります、私此の際更に御尋ね申上げたいのは、最近政府は鹽の國内増産に相當の努力を拂ひ、又相當の經費を計上致してやつて居るのであります、農地委員會等に於きましても屡屡論議され、又凡ゆる方面に於て、農業經營に致しましても、常に專業農家と云ふものを奨勵致して居るのであります、而して国内の鹽も然りであります、現在自給製鹽の設備を致さしめ、又之を奨勵致して居るのでありますが、昨日來の自給製鹽の賠償價格、或は專業製鹽業者の賠償價格等を對照致しました時には、到底比較にならない、此の際政府は一つ國家百年の大計と云ふよりは、寧ろ永遠の大計の爲に、國内の鹽の生産計畫、所謂專業製鹽計畫と云ふものを根本的に御建直しになつて、さうして國民の渇望して居る此の食鹽に付ては、絶對に不安がないやうになす必要があると私は思ふのであります、之に對する昨日の答辯を聽きますると、昭和二十年度及び二十一年度に於て――數字が違つて居るかも知れませぬが、慥か十億圓ばかりの助成金を政府は出して事業をやる、斯う云ふやうな御答辯であつたやうに思ふのであります、又新聞を見ましてもさう書いてある、斯樣な大事業をなさんとするのに、唯一箇年や二箇年の計畫では、私は此の專業製鹽と云ふものは出來得るものでないと思ふのであります、今日の如く凡ゆる物資の不足、凡ゆる生産條件の惡い時に急に出來ない生産の基本となる所謂開田開拓、其の他土地の造成に致しましても、さう簡單に行かないのであります、寧ろ私は政府は此の鹽の自給を國内に於て完全になさんとするならば、豫算外の國家負擔の契約を認むると云ふやうな方法にしましてでも、三箇年とか或は五箇年とか、事業に依りましては假令十箇年計畫を立ててでも、永遠の食鹽國内の需給生産計畫と云ふものを建て絶對不安がないのだ、斯う云ふ計畫を樹立するのが當然ではないかと思ふのでありますが、唯一年二年、十億と言へば相當莫大な金でありますが、其の金の用途が私等に於ては、長年食料として使はんとする此の食鹽計畫としては、極めて杜撰なやうに思ふのであります、長官は是等に付て如何なる方針でありますか、來る議會にでも豫算外の國庫負擔とする契約をなすを認むるやるな、大規模の事業計畫を御立てになる積りか、之を一つ御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=12
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013・植木庚子郎
○植木政府委員 只今の御質問に對しましては全く同感でございまして、我我專賣當局、否政府と致しましても食用鹽の内地に於ける自給體制の確立と云ふことに付きましては、是が非でも實現したい希望を持つて居ります、又工業用鹽に付きましても、出來得るならば成べく其の所要の數量を國内で自給したい、斯う云ふ考へを持つて居るのでありまして、兩者を通じまして政府と致しましては財政困難の際ではありましても、此の爲には經費を惜むことなく支出致しまして、成べく其の規模實現に遺憾なきを期したい考へで居る次第であります、差當つて持つて居りまする計畫上の所要經費に付きましても、豫算當局と色々打合せを致しまして、要すれば今次の議會に於きまして豫算外契約を提案して御協贊を得たく考へて居つたのでありますが、單なる豫算上の一、二の技術から、豫算外契約は此の際見合せて居ります、併しながら次期議會に於きましては是非とも豫算外契約を豫算當局と折衝の上、案を作りまして是非議會に於て御協贊を願つて萬全なる鹽の自給體制を確立したい希望に燃ひて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=13
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014・松浦伊平
○松浦(伊)委員 只今長官より非常に鹽に付て御熱心なる御意見の御開陳があり、更に明年度は次の議會に相當大規模の御計畫があると云ふことを承りまして、恐らく食鹽を渇望して居る一般國民及び工業鹽の關係者はさぞ滿足するだろうと思ふのであります、唯私は製鹽に付ての技術でありますが、色色技術上の問題を兎や角此の席で批判することは如何かと思ひますけれども、從來の入濱式と云ふ探鹹方法と最近砂層貫流式の新しき方法でやる計畫もある、又温泉を利用致して御造りになつて居るやうなことも承つて居る、更に海水を直煮して生産を致して居ると云ふやうなことも承るのであります、色々新しき科學の力に依る製鹽方法もありませうけれども、御承知の通り私共の香川縣としましては、全國の三分の一を占めて居る生産地でございます、其の生産地の状態から見ましたならば、砂層貫流式も可でありませう、其の他の方法も可でありませうけれども、我が地方の如き雨量の極めて少い所は、鹽の生産地として極めて適地であります、寧ろ舊式でありますが、入濱式が最も適當の生産方法であると思ひます、更に煎熬方面にも變つた角度に於て研究するならば、是はまだ改良の餘地もあると思ふ、然る所何分專賣當局としましても、民間としましても、製鹽と云ふものは最前鹽腦部長の仰しやつたやうに、國内の生産よりは、寧ろ外地依存主義が政府の施策であつた爲に、國内の生産技術と云ふものは極めて遲々として進歩して居らない、偶偶專賣局に於きましても、民間にも相當優秀な技術家もないことはないのでありますが、其の技術家は極めて少數であります、斯樣な状態で現在の陣容では到底私は今政府の計畫して居る所謂需給二百十萬「トン」の此の大量の鹽は、國内での生産は不可能であります、技術方面に付きましては煎熬、採鹹共に特殊なる研究機關の擴充を圖つて、増産計畫に寄與せられんことを切望致すのであります、然る所先般來色々議會でも問題となつて居りまして、所謂行政整理に伴ふ官吏の減員でありますが、まさか大藏大臣も一律に行政整理をなすと云ふ御方針でないと私は思ふのであります、唯本日は大臣御見えでありませぬから、適當の機會で宜しうございますが、此の鹽の關係の役人は寧ろ増す必要があると私は思ふのでありまして、之を減員すると云ふことは毛頭御考へはなからうと思ひますけれども、專賣關係、所謂鹽關係の役人に對しては行政整理をやらないで、うんと之を増員致して増産計畫を立てるのだと云ふ方針であるかないかを、御示しを願ひたいと思ふのであります
尚ほもう一つ此の際御尋ね申上げたいのは、御承知の通り官吏の減員を斷行し民主化し、所謂民治を強化してやらんとして居るやうな御方針でありますが、それのみにては遂行困難だと存じます、併しながら私決して現在の機構を批判するのでありませぬが、遺憾ながら專賣局の指導して居る所の鹽業組合中央會、又縣には聯合會と云ふものがあるのでありますが、其の組合の活動が、萬全を期して居る活動が出來て居らぬ、鹽業組合中央會の如きは、會長等は殆ど名義のみにして、一切實務に當つて居らぬ、斯う云ふことを實は憂ふるのであります、斯樣な終戰後總ての國民の氣持を新たにして總てのものを生産の擴充をなさんとし、又特に渇望して居る食鹽を國民に滿足とは行かないが、出來得るだけの希望の數量を配給せねばならぬ重要使命を持つて居る專賈局及び團體は更に思ひを新たにせねばならぬのであります、此の中核となつて貢獻せねばならぬ此の鹽業組合中央會あたりの刷新を圖つて、さうして政府の意圖に副ふやうな團體の強化を圖られ、其の機能を發揮するやうに御指導を御變へになる方針であるか、此の點を私は承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=14
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015・植木庚子郎
○植木政府委員 技術陣容の強化の問題に付きましては、御質問の要旨を大臣に傳へまして、適當な機會に御答へ申上げることに致します、又鹽の増産の爲に非常に努力して居られる所の鹽業組合中央會、或は鹽業組合の各府縣の聯合會と云ふやうなものの活動に付て、尚ほ一層政府が力を入れる必要がありはしないかと云ふ御言葉でありますが、全く御同感であります、最近の鹽田の罹災の際に於きましても、或は本年度の鹽の増産の問題に付きましても中央會其の他の關係團體が非常な努力をして居られることは、我々も十分承知して居るのでありますが、尚ほ承る所に依りますと、或は靜かに飜つて考へまする時に、尚ほそこに活動の餘地が更にあるやうな氣も致しますし、是等の充實強化と云ふことに付きましては、盛上つた業者からの本當の氣分に依つて、其の活動が盛になることを一番期待するのでありますけれども、我々當局と致しましても陰ながら其の活動が十分になるやうに、其の御便宜に付て出來る限りの配慮を致したい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=15
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016・松浦伊平
○松浦(伊)委員 盛上る精神の下に、其の組合、其の機構の全活動を發揮させると云ふやうな御意見でありますが、從來鹽業者と云ふものは、動もすれば舊能依然とする氣持が多い業者も相當にあるのであります、是等をして終戰後の鹽の重要性を認識させる爲には、相當政府と致しましても現在其のもののみに於ては、私は到底政府の意圖する増産の協力體の確立は出來得ないと思ふ、現在の役職員全部を私は批判するのではないのでありますが、一部に於ては自ら鹽業をなさずして、唯土地のみを持つて一つの鹽業者と云ふやうな「メンバー」に入つて、眞に活動が出來て居らぬやうな状態も見受けるのであります、是等の點に付きましては重ねて御願ひ申上げますから、一つ政府の意圖を十分末端に滲透出來得るやうな陣容の體制に整理あらんことを、御願ひ申上げたいのであります、以上申上げて、私は長官に對する質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=16
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017・崎山嗣朝
○崎山委員長 今大藏大臣が一寸空いて居られるらしいので、御呼び致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=17
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018・松浦伊平
○松浦(伊)委員 大臣が御見えになりましたから簡單に御尋ね致します、專業製鹽に依る鹽の賠償金及び自給製鹽に依る賠償金を御示し願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=18
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019・植木庚子郎
○植木政府委員 自給製鹽に依りまする生産鹽の買上價格は原則として只今の所「トン」當り六百圓と致して居ります、專業製鹽に依りまする生産鹽の賠償價格は最近の引上げに依りまして概ね「トン」當り二百六十數圓になつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=19
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020・松浦伊平
○松浦(伊)委員 其の價格の差を付けました理由を一つ承りたい、尚ほ昨日自給製鹽に對する生産費と云ふものが到底六百圓などでは出來るものでない、千圓でも生産者は引合はない、斯う云ふやうな御意見があつたやうであります、又專業製鹽に依る所謂從來の入濱式の賠償金が、今長官の説明では二百圓と云ふことであるが、到底今日の此の燃料、勞力其の他凡ゆる條件からも生産擴充の出來得る價格でないと云ふことを專賣御當局は御認めでありますか、之を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=20
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021・植木庚子郎
○植木政府委員 專業製鹽の賠償價格と自給製鹽の買上げ價格との斯くの如き差があります理由如何と云ふ御質問でございますが、專業製鹽に付きましては、御承知の通り、長い間の色々經過を以て居りまして、常に實情に即しつつ即ち石炭の値上り或は勞賃の値上り、其の他色々の情勢を加味して、漸次増額して參つて居りますが、尚ほ今日先程申上げたやうな程度に止まつて居るやうな次第でございます、自給製鹽に付きましては、最近全國各地に行はれて居ります數多の例を集めまして、之に依りまして大體計算致しましたる結果、法式の如何を問はず、概ね六百圓見當は先づ已むを得なからうと云ふ前提の下に決めたものであります、專業製鹽に付きましても今後其の賠償價格の問題に付きましては、尚ほ常に刻々の情勢と睨み合せつつ善處して參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=21
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022・松浦伊平
○松浦(伊)委員 大藏大臣に御尋ね申上げます、先般議會で總理大臣は明年三月までに行政整理をして、所謂官吏の數を半減するんだ、斯う云ふことを申して居られるのであります、申すまでもなく大藏大臣屡屡各委員會其の他の席に於て御聞きの通り、鹽は全く大饑饉であります、砂糖なくして生活は出來て行けますけれども、鹽なくして生活は出來得ないと云ふことは大臣既に御承知の筈であります、然るに私の觀察に依りますれば、鹽の増産は國内に於て可能なりと思ふ、外地に依存しないで結構である、二百十萬「トン」の鹽全部を國内に於て生産することが可能である、大臣は可能ならしむるやうに今後御進みになる御方針であるか、其の一と致しましては、所謂採鹹及び煎熬に對する技術陣營の強化であります、一律に行政整理をして、專賣局の鹽の關係の官吏までもずらつと切つてしまひましたら、是れ即ち減産の一途を辿るのみであります、是等に付て特別の御考へを持つて居りますか、更に之を増員致しまして、生産の擴充をなさる方針であるかと云ふことを、大臣から御答辯願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=22
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023・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今の御尋ね至極御尤もでございます、我々と致しましては、鹽が如何に國民の生命に必要であるかと云ふことは能く存じて居ります、是は絶對に増産しなければならぬ、のみならず其の方法如何に依つては御説の通り國内でも十分に賄ひ得るだけは、技術竝に方法に依りましては出來得ることと私も考へて居ります、唯今の所急速に之を上げると云ふことは出來ない、尚ほ其の技術に於きましても、今までの技術以上に更に良い技術があり得ると私は考へて居るのであります、それに付きまして關聯して行政整理をする時に、專賣局の技師其の他を一律に馘つて、増産に差支へはないかと云ふ御話でありますが、さう云ふことはありませぬ、行政整理は致しますが、斯う云ふ増産に付きましては十分に考慮を致して居りますし、又技術も單に今までのやうな所謂入濱制度に於ける技術だけでなしに、もつと別の技術がある、相當に是等が必要だと思ひます、それ等に付ては十分に増して參る積りで居ります、現在の所特に鹽の技術に付ては減員を致しませぬ、寧ろ増員する位の覺悟で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=23
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024・松浦伊平
○松浦(伊)委員 大臣の御言明で非常に安心致すのでありますが、更に御尋ねを申上げたいのは、最前大臣が御見えにならない席で、長官から國内の消費は工業用鹽、食鹽合せて二百十萬「トン」要るが、國内生産は九十萬「トン」と云ふ御説明がありました、本年あたりの生産の状態でありましたならば、到底九十萬「トン」どころか、七十萬「トン」の生産も覺束ないと私は思ふ、故に斯樣に鹽々と云ふ聲が各處に滿ちて居るのであります、而も主食の需要と共に、否な主食に先んじて此の鹽の必要なことは申すまでもない、此の主要食糧の増産に付ては全國で百五十五萬町歩の開畑、開田をして、増産計畫を圖らんとして居るのであります、又開畑に對しましては傾斜地の山林を開墾致すのでありますから、豪雨の際には相當下流に被害を及ぼすことも承知で、政府は計畫を立てて居られるのであります、然るに此の鹽田の擴張であります、採鹹地の擴張は所謂海面を利用して新規造成を致すのでありますから、決して他の土地に被害を受けることはないのであります、特に瀬戸内海の如き所謂波穩かな土地に於きましては、其の築造も比較的容易であります、國で之を擴張する計畫が決まれば、決して至難な問題ではありませぬ、又所謂増産計畫の容易な海面も相當あるのであります、そこで最前長官から御答辯を戴いたのでありますが、來る議會に於きましては豫算外國庫の負擔と爲る契約を求むる所の所謂三年又は五年、更に十年計畫を立ててなり實行せねばならぬと思ひます、鹽は益益需要が多くなるのでありますが、國内に於ける鹽の消費は國内に於て生産する、所謂過去の鹽の專賣の行政、即ち鹽の行政が誤つて居たと云ふ認識を新たにして、大臣は思ひ切つて豫算を計上して國民に安心を與へ、平和の日本を建設する氣持がおありかどうか、之を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=24
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025・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 戰後世界の情勢が安定致しまして、輸出入貿易が自由に出來るやうになりました時にも、鹽の問題だけは中々問題だと思ひます、是は私一個の考へと致しましても日本の工業鹽、食糧鹽共に出來るだけ國内生産に依存すべきものであると云ふ風に考へて居ります、それに付きまして今の御説の如きものは、十分に考究する要ありと私は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=25
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026・池田正之輔
○池田(正)委員 簡單に大臣に御尋ね申上げます、鹽が不足して居ることは申すまでもないので、是は外地鹽を輸入すると同時に、又國家全體としては食糧其の他をどうしても輸入に仰がなければならぬものが多々ある、然るに之に對して輸送其の他の面は別として、要するに見返り物資がない、是が今日日本の最大の惱みとなつて居ると云ふことは、先般來論議されて居るのでありますが、又明瞭な事實であります、之に付て私は大藏大臣に對し、特に此の際注意を喚起し、はつきりした御答辯を願ひたいと思ひますのは、曾て私共が大東亜戰爭の始まつた支那事變當時から金塊を政府が買上まして、我々民間からも全部之を供出した、所が私の承知する範圍では、最も多く金塊を持つて居る日本の富豪階級、或は大名華族、或は豪族の中に隠して居るのがあると云ふことを國民が知つて居つても、全然出して居ないのが相當ある筈です、是等は敗戰責任の叫ばれて居る今日ですが、是等の連中こそは敗戰責任の第一に位すべきもので、軈ては國民から指彈されなければならぬ連中だと思ひますが、さう云ふことは別として、此の輸入物資に對する見返りとして、之を一つ先づ以て政府は有效に出さして御使ひになつたら宜いぢゃないか、此の點に付て如何御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=26
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027・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 戰爭中に金を政府が買ふと云ふ運動が起りまして、相當に金は集まつた積りで居りますが、今御指摘の如き事實があるかどうか私は存じませぬが、事實上あるとすれば、是は無論更に買上げるべきだと思つて居ります、さうして之を見返り物資に使ふと云ふことは大贊成であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=27
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028・池田正之輔
○池田(正)委員 御買上げなさると云ふ此の方法が、詰り方法論がむづかしいのだと思ひますが、政府が強制的に何等かの手段に愬へてやる位にしなければ、是は簡單には參りませぬ、國が滅んでも蓄へて居る奴がある、左樣な非國民な奴ですから、政府が生緩いことで買上げるとか、出せとか言つても出ないと思ひます、さうして現實に闇の値段は最早や一匁二百圓乃至三百圓を唱へられて居ると云ふ實情でありますから、それを政府が公定値段で買上げようと云つても來ませぬ、是は明瞭です、それで左様なものは大臣は具體的に御存じないと仰しゃいますけれども、是は具體的に名前を出せと言はれれば名前は幾らでも出します、最も多く日本で持つて居る連中は出して居らぬのですから、是は特に大藏大臣は相當な決意を以てやらなければ、出て來ないです、色々な見返り物資を私自身も研究して見たのですが、先づ是に目を著けるべきぢやないか、而も是はさう云ふ富豪連中が持つて居つて、或は相續税の場合、財産税を是から課けようとする、其の他の場合でも、全部倉の中に藏つて隠匿されて居る財産なんです、あなたの方で財産税を課けようと思つても課かりませぬ、是は永久に奴等は持つて居る、而も闇値で段々太つて行く、斯う云ふ不自然は、是は國民的正義の觀點に立つても許さるべきではないし、之に對しては斷乎たる處置を一つ執つて戴きたい、重ねて大藏大臣の御決意を一つ御尋ねしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=28
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029・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 事實さう云ふ多量の金を本當にさう云ふ意味で以て持つて居るなら、我々も本氣になつて公憤を感ずるのであります、さう云ふ場合に於きましては一つ大いに研究しまして、何等かの處置に出ようと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=29
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030・池田正之輔
○池田(正)委員 もう一點だけ、松浦君の御質問に關聯してですが、行政整理と睨み合はせて、大藏大臣は只今鹽の面に於ては斷じて減員などはなさらないと云ふ御言明でありましたが、是はあなたがさう云ふ風に御言明になつても、大きな全般的な行政整理と云ふことになりますと、是は政府が東條内閣みたいなああ云ふ箟棒な性格ぢゃありませぬから、性格が違ひますから左樣なことはないと思ひますが、實は行政整理の場合でも、我々屡屡實際やつて來た技術的な跡を顧みますと、是は胡麻化しが利くのですね、例へば大藏省の中ででも、此の部門は必要だ、此の部門は要らなくなつた、さうすると誰が見ても必要なやうな所に人間を集めて置くのですね、さうして振分けるのです、是は屡屡官僚が今までやつて來た手なんです、そこで世間では鹽々と言つて居るから、鹽の面にぐつと人間を集めた形を執つて、さうして實際はそつちの方へ横流しをして居るのです、さう云ふことがあるのですね、是は大藏省ではなかつたらうと思ひますが、是はもう屡屡我々は今までの行政整理で見て居る、そこで左樣なことが賢明な大臣にはなからうと思ひますが、それと、同時に、それだけでは足りない、今後更に其のことを見て行けば、實際運營の面から見て、專賣局の中に鹽腦部と云ふものがあつて、而も其の鹽腦部が鹽を實際に指導し、之を造ると云ふ場合になつて來ると、資材の面では商工省、輸送の面では運輸省と云ふ風に、行政官廰との色々な關係がある、出來れば是は一本にしなければならぬ、併し之を全體引括めて一本と云ふことも中々容易なことぢやない、是は私共も想像出來ます、そこで出來れば今言つたやうに非常に人間を殖やして、唯殖やすだけでなく強化すると云ふことになれば、是は一つの局か何かにはつきりさして行く、松浦君から豫算をもつとうんと取つてやつたら宜いぢやないかと云ふ話がありましたが、私も至極同感なんです、そこをどう云ふ風に御考へになつて居るか、もつとはつきりして力を持たしてやらなければ、唯抽象的な概念論だけでやつて居つたのではいけないのではないか、斯樣に私は實は考へるのですが、之に對して大臣はどう云ふ風に御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=30
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031・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 官廰に於ける行政整理の實際のやり方、それ自身に付きましては、私も入つて間もないので、どう云ふ風にやつて居るか知らないので、極く大雜把なことだけしか考へて居りませぬ、殊に今の横流しの問題は私存じませぬ、さう云ふことはないと思つて居るのでありますが、今度は一生懸命になつてやります、今度の行政整理も人数を減らすだけでは意味をなさない、さう云ふ意昧で、拙いことには色々豫算關係から行政整理で人を減らす方が先へ出てしまつた、實際忙しかつたのでありますが、本當は行政機構の改革が先へ出なければならぬ、それに依つて人數がどうと云ふことにならなければならないので、それが人數が先へ出てしまつたので非常に拙いのであります、鹽の方も相當考へなければならぬ點が多々あると思ひます、殊に根本的に色々な問題を含んで居ると思つて居ります、さう云ふやうな意味で今後機構の問題にしても、十分にやつて行きたいと思つて居ります、今仰しやつたやうに、或る面で或る部分だけを取れば、必ず聯關が起つて、而も中々面倒な問題が起つて來ると思ひます、今のやうに鹽などは殊に大事な問題でありますから、十分に其の點は氣を付けてやつて行かうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=31
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032・池田正之輔
○池田(正)委員 只今大藏大臣は行政方面の細かいことは、入つて間もないので御存じない、其の御存じない大藏大臣が機構の改革に先づ著目すべきであると言はれたのは、洵に見上げた政治家だと思ひます、どうぞさう云ふやうな意味で、賢明な次官及び長官が居られるのですから、能く御相談なすつて、是非一つ新しい局を作る位の御考へで御進みあらんことを希望して私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=32
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033・崎山嗣朝
○崎山委員長 西川君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=33
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034・西川貞一
○西川委員 私は所謂赤字公債発行に關する件に付まして、大臣の時間節約に協力致しまする意味合に於きまして、大體の質問の要點を列記して一寸御尋ねしたいと思ひます、赤字公債は財政の最後の締括りをして行くものでございますから、今後に於ける赤字公債の發行が如何になつて行くかと云ふことは、此の政府の財政計畫に依つて自ら規定して來るのであります、然るに先般當局は豫算委員會に於て、昭和二十一年度以降五箇年度間の骨格豫算の概略案を御示しになつたのでございますが、之に付て見ますると、漸次赤字は減つて、數年後には相當の所謂黒字に轉じて行くと云ふ風に、骨格豫算に於ては御説明になつて居るのであります、但し此の骨格豫算に盛られて居ない所の、非常に大きな要素が幾つもありますので、其の點は別問題と致しましても、此の骨格豫算の點に付ても、此の當局の御出しになつた財政計畫には基本的な誤謬があるのではないかと云ふことが考へられます、即ちそれは今日及び今後に於ける日本の經濟界の本質を、どのやうに把握するかと云ふことから此の點は起つて來るのであります、私は先般本會議に於ける農地調整法に關する質問に於て、現在の日本の經濟界は「インフレーション」の中に「デフレーション」が進行しつつあると云ふ風に申上げたのでありますが、更に私は考へて見ますと、今年、昭和二十年を境と致しまして、日本の經濟界は「インフレーション」より「デフレーション」に轉ずると思ふのであります、詰り「インフレーション」と申しまする其のものの實體は、政府が購買力を政治的に設定を致しまして、此の購買力に基いて多くの需要を致しまする所から、通貨の膨脹が起り、物價の騰貴が起つて來まするのが、即ち「インフレーション」の實體であります、其の要件は政府が購買力を政治的手段で設定をする、即ち現在の發行制度の下に於て公債の増發をすることは、政府が政治的の手段に依つて購買力を設定する、斯う云ふことになるのであります、然るに今後に於ける此の新たなる購買力の設定と云ふことは極力抑制をされまして、政府が購買力の放出をしなくなる、其の結果國民一般の收入は減じて來ます、收入が減じて來るにも拘らず、反面に物價は著しく騰貴して來る、詰り「デフレーション」の中に於ける物値騰貴が起つて來るのであります、是が如何に國民經濟を苦しめ、延いて國民生活に非常なる苦みを與へるかと云ふことは想像も及ばざるものがあると思ふのであります、私共は此の實體を先づ正確に把握しなければならぬと思ひます、即ち政府の財政政策に依つて購買力は減じて來る、少くも新しき購買力の設定は行はれない、購買力は極力收縮される、是が爲に國民一般の收入が著しく減少して來るにも拘らず、一面生活上の必要物資等に對する價格は、著しく騰貴せざるを得ざる情勢にある、即ち戰時中は國民の所得は非常に増大するが、價格差補給金其の他に依つて物價を抑へて居りましたから、所得よりも生活費が割合に低くて濟んだと云ふ状態にあつたのでございましたが、今後に於ては全く裏が來て、所得は著しく減少するにも拘らず、必要物資の價格は、著しく騰貴すると云ふ結果を來さなくてはならぬと斯樣に思ふのであります、併しながら此の慘憺たる敗戰日本の現實と致しましては、國民は如何なる苦みにも堪へて行かなければなりませぬ、此の矛盾を克服して生き拔かなければならないのでありますが、今日國民が最も不安に思つて居りますことは、一體物價はどの程度まで騰貴するのであらうか、どの邊で一體落付いて來るのであらうか、大藏省は戰爭中に於きましては、一面通貨の面に於きましては國家資金の動員計畫等を樹立し、資金の流れ等に對しましては、相當精密な科學的なる調査を致して居つた筈であります、又今日は物價部が大藏省に置かれまして、物價と云ふものに對する趨勢に付ても十分に注意致して居る筈であります、尚ほ國民貯蓄局等に於きましては、國民生活がどう云ふ風になつて行くかと云ふことに付て其の指導なり、或は國民の生活費の問題に付ては眞面目に研究して居る筈でございまして、是等の大藏省の諸調査の方法と致しまして、私が茲で御尋ねしようと思ふことに付ては、概括的な御答へを戴くことが出來るであらうと私は期待致すのであります、即ち私が御尋ねしたいことは、此の財政計畫に依りまして價格差補給金等が出來るだけ抑制される結果、第一、石炭等の凡ゆる生産の基礎となるものの値段と云ふものは、どの程度まで上がる見込であるか、消費者價格はどの程度まで上がる見込であるか、石炭の價格が上れば、それは凡ゆる物資に響いて來るのでありますが、本委員會に於て只今檢討中の鹽の値段の如きは一體どの程度まで上る見込であるか、鹽の値段の騰貴は直ちに「ソーダ」灰、苛性「ソーダ」等の騰貴に反映して來るのでありますが、是等の値段の騰貴は直ちに化學肥料、特に硫安等の價格に石炭の値段の騰貴と相伴ひまして大なる影響を起して來ますが、其の肥料が高くなれば米は當然値上されなくちやならぬのでありますが、一體米などはどれ位な所で折合ふ見込であるか、斯かる價格系列の上にどの程度の影響を與へるのであるか、大臣は先般本會議に於きましては戰前の物價に戻ることは到底困難であると仰せられたのでありますが、戰前の物價などと比較される生やさしい數字ではないやうに私共は思ふのであります、私が曩に指摘しましたやうな、大藏省の諸機關に於て御研究調査になつて居ります結果から、是等一々に付て具體的の御答へを求めることは或は無理かと思ひますので、決して私は無理を強ひるものではございませぬ、さう云ふ事柄を綜合致しまして、國民が節約の上にも節約をしてもどうしても生命を維持して行かなくちやならない、其の國民最低生活の費用と云ふものは、大體一戸當りどれ位なものがあるならば、生活が營んで行けるやうに將來の社會はなる息込であるか、さう云ふ見地から官吏の待遇とか、其の他一般の勞働條件其の他のものも規定されて行かなくちやならぬのでありますが、是等に付てどう云ふ考へを持つて居られるかと云ふことを先づ御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=34
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035・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 非常な理論的な傾聽に値する御論議であると思ひます、甚だ残念でありますが、私就任以來物價問題は大切だと思ひまして、漸くにして物價部と云ふものが最近に出來た譯でありまして、實はそれまでの物價は御承知の通りに或るものは農林省にあり、或るものは商工省にあり、實は大藏省それ自身は物價と云ふものを其の意味では持つて居なかつたと云ふ點があります、さう云ふ意味で大藏省獨りで持つと云ふ意味ではないのでありますが、國家としてどうしても統一して考へなくちやならぬと云ふことを主張して、漸く出來たのが今度の物價部でありまして、さう云ふ點から今仰しやいましたやうな科學的な研究は今準備中であつて、本當に出來て居らぬと云ふことを申上げざるを得ないのであります、甚だ遺憾でありますが、其の點は、はつきり申上げざるを得ない、個々の現象に付て色々な研究はございませうが、本當に之をどう持つて行つてどの點で折合へるかと云ふことは、今探りを入れて居る程度だと言はざるを得ないと思ひます、同時に財政計畫から言うて、何時までも價格差補給金を出して置くと云ふことは、それ自身が間違ひであると云ふ議論もあります、それで一應價格差補給金を現在二十圓位でありますが、それを取りますと大體八十五圓位になるだらうと考へて居ります、併し是も一遍にやりますと非常に高くなりますから、斯う云ふことは出來ぬと云ふのでやつて居ると云ふ程度であります、又今仰せの如くに、石炭は産業の基礎原料であります、餘り強く値上をすると云ふことは、各方面に影響することも無論考へて居ります、其の程度がものに依つて色々違ひます、鹽の如きも其の影響をやはり受けると私は存じて居ります、唯それが全體の價格系列に於て、どう云ふ風に按配をして行つたらなるか、殊にそれが食糧の問題とどう云ふ點で、本當に理想的な安定的な水準を得られるかと云つたやうな、數理的な研究それ自身に付きましては、今の所はつきり分らぬと申上げざるを得ないのであります、甚だ申譯ないのでありますが、正直に申上げますと斯う云ふ程度でございます、唯今の儘置きまして、公定價格で頑張つて居ても、到底物は出ないと云ふ點が一方あり、利潤其の他の關係を考へましても、此の儘で置く譯にいかぬ、無論戰前の價格に戻ることが出來ないと云ふことは申上げたのでありますが、私の極く大雜把な見透しでは、やはり食糧の輸入が出來て、食生活が或る程度安定しました時の食糧値段に、凡ゆるものを鞘を合せて行くと云ふ以外にないのぢやないか、所が現下の情勢に於きましては食糧其のものに困難がある、現在それが非常に不安定な状態にあると云ふことは、本當の意味の價格政策を科學的にやつて行くことも非常に困難がある、斯う考へて居る次第であります、それで一にも二にも食糧が出來たり其の他の事情の改良に依りまして、食生活其のもの、食糧の値段と云ふものに或る程度の安定を得ましたら、それに寄せて行くと云ふ政策を執るのが本當だと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=35
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036・西川貞一
○西川委員 もう一言だけ御尋ね致したいと思ひます、只今の大臣の御答辯は率直に申上げまして、實に不滿足と申上げざるを得ませぬ、併し現實の状態の下に於て、どうも致し方がないと云ふ大臣の御答へには私共それを諒承せざるを得ない、私は絶えず申し來つたことでございますが、戰時中非常に厖大なる歳出を賄つて行く、是は軍が要求するだけのものは出さざるを得ぬ、出すだけのものは公債を發行する、公債證書と圓札を印刷能力のあらん限りを擧げて刷つて行くと云ふことだけで、大藏省の仕事と云ふものは割合に簡單であつた譯です、併しながら此の逆が來まする時には、私は國務の大半が大藏省の仕事に集中されて宜いと思ふのです、大藏省の舵の取り方一つ、あなたの手綱の捌き方一つに依つては、本當に國家の存亡、民族の死活を決するのでありますから、只今申上げましたやうなことに對する科學的の調査に付ては、私は全國民の智能を集中して之をやらなければならぬと思ふ、非常に困難ではございませうけれども、困難だからやらずに濟むと云ふ譯には行きませぬ、どうしてもやらなければならぬ、例へば石炭の只今の値上りは、恐らく鹽の賠償價格が現在二百五、六十圓で濟むものが、五百圓位を要するものになりはしませぬか、恐らく事務當局ではさう云ふ風に見て居るでございませう、さうすると曹達灰と云ふものは、つい先般非常に大幅の値上をして一「トン」八百圓か九百圓にしたのでありますが、直ちに是は二千五、六百圓の價格になると思はなければならぬ、其の及ぼす影響と云ふものは非常に端倪すべからざるものがあつて、而も業者と云ふものは割合にそれを口實にしてより高い値段、より高い値段へと持つて行かうとする傾向がありまするので、若し財政當局がしつかりした價格調査機關を持つて、權威のある何處から突かれても缺點のない用意を致して置かなかつたならば、之に依る物價騰貴と云ふものは停止することが出來ないのであつて、遂に我が國の財政は勿論、經濟全般、國家民族を破滅に導くことになるのでございまするから、どうか大臣は此の點に徹底した御考へを御持ち戴きたい、單に一内閣の問題ではありませぬ、私は澁澤藏相は單なる幣原内閣の大藏大臣のみとして見て居るのではないのでありまして、以前には日本金融界の中樞に居られ、将來は更に大なる責任を國家、政治の上に擔當して行かれる方であると私は思ひますので、其の點に付ては特に御留意あらんことを切望して置きます
次に御尋ね致しますことは、所謂戰時利得税や財産税に付ての詳細は、私此處で御尋ねしようと思ひませぬが、将來の日本經濟界の變動をとすべき重要なる一點でございますが、是等には現在相續税に於て認められて居りますやうな物納を御認めになる方針かどうか、是は基本的な問題になつて參りますので、其の點に付て大藏大臣の大體の御考へを伺ひたいのであります、此の物納を御認めにならぬ場合には、納税者が自分の所有致して居りまする財産等を賣却して、其の代金を以て税金を納付しなければならぬと云ふことになりますと、財産のある者悉く其の財産を賣りに出す、此の場合には賣りのみあつて買ひはないのであります、皆が税金を納めなければならぬ、皆が税金に要する所の金がないのでありますから、賣りのみあつて買ひがない、即ち賣りのみがあつて買ひがないと云ふ事態を呈しました時に、是等の價格の暴落は如何に激しい暴落を致すかは想像も及ばざるものがあるのでございます、又假に物納を御認めになるに致しましても、國家は是等の物を持つて居つても何の役にも立たないのであつて、現に國有財産をすら之を賣却して歳入の財源を調達しようとして居られます當局として、一旦物納で之を引取りますが、併し是は拂下げなければならぬ、何れに致しましても是等の税金が行はれました後に於ては、書畫骨董と云はず、或は土地建物と云はず、其の他凡ゆる財産には賣りだけが出て參りまして、買ふ力がない、是は財産のある者が皆金を要するのでありますから、賣りがあつて、買ひがないと云ふことになつて來る、さうすると何處まで是が下落するか分らない、即ち是が恐るべき「デフレーション」の端緒となりはしないかと云ふことを私は心配して居るのであります、單に是は心配のみならず、必至であると思ひまます、どんなにしても此の一千億に上る所の財産税を課して行かうとするならば、其の「デフレーション」は誰がどんな政策を執りましても免れることは出來ないと思ひます、然る場合に、私が財政五箇年計畫を見まして非常に奇異に感じますことは、普通歳入の租税收入等が、二十年度と比較して二十一年度は相當の減少が見込まれて居る、是は戰災竝に終戰に伴ひます經濟界の色々な變化から、國民所得が減少すると云ふ建前から之を見て居られると思ふのであります、所が二十一年度以降に於きましては大體現行の租税制度の下に於て、收入は稍稍増加するやうな計畫が出て居ります、さうすると大藏當局は、二十一年度以降に於ては國民所得と云ふものは大體變化しない、現状の儘安定して行くものと云ふ豫想を持つて居られるかに見える、さうでなかつたならば、現行制度の下に於て歳入が安定し、稍稍増加して行くと云ふ傾向は出て來ないのでありますけれども、私只今申しましたやうな、戰時利得税なり財産税と云ふ一つの要素を捉へて見ましても、是は「デフレーション」必至であり、所得は減退し、物價騰貴と云ふ點はありましても、是は生活費が非常に高くなるのであるから、所謂國民の擔税力と云ふものは著しく減少して來るのでございますが、さう云ふやうな點が此の計畫の骨格豫算の面のみから見ましても間違つて來るのぢやないか、此の點に付あ大臣はどう云ふ御考へを持つて居られますか、御伺ひしたいのであります、此の一問で打切る積りでございましたが、質問の性質上もうあと一問殘しまして、是だけに付て一應御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=36
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037・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 財産税の徴收、此の問題に付きましては目下非常に研究もして居りますし、又其の取る方法及び程度、範圍其の他に付きまして目下研究中であります、戰爭利得税の方は成べく短期間にぎゅつと取ると云ふことが宜いと思つて居りますが、財産税の方に付きましても、是も物納及び延納と云ふことは或る程度許さうと云ふことを考へて居ります、と申しましても是も餘り長く延納をしましたならば、「ドイツ」の財産税の如くになりまして、殆ど意味をなさなくなるのであります、相續税は慥か十年まで出來るかと思ひましたが、さう云ふ風に相續税と同じ扱ひに出來るかどうか疑問であります、もう少し短くなければならぬと思ひますが、延納も或る程度認める、物納も其の状況に依りまして、國債等に依る物納は問題ないことと思つて居りますが、それ以外のものに付きましては、必要已むを得ざる場合には延納も認めるし、物納も認めると云ふ大體の方針で居ります、唯、今仰せの如くに全部之を現金のない者は物納で宜しい、それを一齊に持つて來いと云ふやうな恰好を致すことは、仰しやつた通りの問題が起ると思ふのであります、さう云ふ意昧に於きまして、納税の必要上非常な財産の賣却が一齊に行はれて、さうして大暴落を來すやうなことがないやうに、十分考究を重ねて居る次第であります、尚ほ一應此の財産税等は、之に依つて經濟秩序を安定させる、非常な「インフレーション」の來る所へ一種の「デフレーション」をさせて、「インフレーション」の昂進を阻止させると云ふこと、及びそれに依つて一つの均衡を圖ると云ふことが一つの大きな要素でありまして、其の意味も含んで居る譯であります、「インフレーション」が非常に強くなると、次は「デフレーション」に對する利き方と申しますか、作用の仕方と云ふことは非常にむづかしい問題でありまして、今此處ではつきりと理論的に申上げる力がございませぬが、大體の狙ひと致しましては、新税の課税後に於てはそれだけは通貨が收縮され、一つの安定を得ると云ふ所に狙ひを持つて居る譯であります、無論國債の償還と云ふことは大きな問題でありますが、それ以外に物價問題も持つて居る譯で、それがいきなり暴落に行つてしまふと云ふことは避けなければならぬと思ひます、尚ほ關聯しての御尋ねでありますが、財産税を計上した場合には、之に伴ふ所の所得の減少が起ります、隨て税收が減少すると云ふことも無論見なければなりませぬ、之を織込んで研究して居る譯であります、此の間御目に入れました財政五箇年計畫は、あれはほんの骨格的のものでありまして、實は「アンノーン・ファクター」が多いのでありまして、二十年度を基準にして一應見たと云ふに過ぎないので、私自身甚だ意に滿たないのでありまして、此の點は財政五箇年計畫と云ふ名前が大き過ぎたのでありまして、此の點名稱の付け方が甚だ不用意であつたと思ひます、單純に二十年度の分で行けばどうなると云ふので、唯あれは「アンノーン・ファクター」で何等考慮に入れてないのでありますから、其の意味で輕く見て戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=37
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038・西川貞一
○西川委員 どうも大藏當局が帝國議會に對して、一つの五箇年計畫と云ふ名稱を付けて出されますと、なかなか國民としては、さう輕く取られないのでありまして、斯かる點はやはり大藏當局としては相當自信のあるものを御出しになつて、自信のないものは此の際御出しにならぬ方が却つて宜いと思ふのです、私は先刻申しましたやうに大臣が非常な努力をして物價政策特に通貨の管理政策に御努力になり、又現在の方針を堅持して財政の調整を圖つてお行きになるならば、日本に於ては破壞的な「インフレーション」は免れ得るのではないかと云ふ多少の稍稍前途に見込みを私自身としては最近付け得て居るのであります、要するに今後に於ける破壞的な「インフレーション」が來るか來ないかの問題は、只今進行しつつある高物價の激騰が惡循環をするかしないかと云ふことになる譯でありまして、是はどうしても此の惡循環は政府がどこまでも、之をしてはならぬと云ふ信念を堅持して居るならば、手綱は利くのであつて惡循環は來ないと私は思ふのであります、唯一つ政府の手の及ばざる惡循環が一つあると思ふ、それは進駐軍の經費に關する問題であります、此の進駐軍の經費は、進駐軍の日本に於て購入致します物の價格が非常に高くなる、其の軍隊の經費と云ふものは、段々高くなる是が高くなればなる程餘計の經費をこちらは出さなければならぬ、公債を増發しなければならぬ、益益價格は高くなる、高くなればなる程經費は高くなる、是は政府が抑制しようとして抑制し得ざる一つの大きな惡循環の要素になつて來ると思ふのです、茲に於て我々國民が深く戒めると共に國民が協力致しまして、之を抑へなければならぬことは、今日國民の中に於きましては進駐軍に賣却をするもの、進駐軍の使用に供するものは、幾ら高くても外國の金を取るのであるから、大いに日本を益するものであるかの如く感じて居る風潮が、非常に多いのであります、それが爲に眞面目に國内で生産をするよりも、或は「ダンスホール」を經營するとか、或は其の他色々の進駐軍向の慰安の設備とか、或は土産品の生産販賣とか云ふやうな所では、大いに金が儲かる、其の方に行きさへすれば宜い、又こんなものは幾ら高くたつて宜いのだと云ふやうな氣分があるのでございますが、斯の如くして是等の方面の價格が非常に上る、さう云ふ方面に携つて居る者の收入が著しく増加致しますことは、擧國滔々として眞面目な生産を離れてさう云ふ方面に向はうとする氣分を作るのみでなく、是が日本の財政の破綻を來す一番大きな導因になるのではないかと云ふことを恐れる者でありまして、是等は國民の考へ方に對しても、又政府の施策の上に於きましても、進駐軍に協力して、斯かる方面に「インフレーション」を極力抑へて行く措置を御執りになる必要があると思ひまするが、之に對する大臣の御所見竝に御用意を御伺ひたいと思ひます
それからもう一つ、非常に「インフレーション」を恐れます一つの要素は食糧の輸入であります、是はもう絶對的なものでありますから、幾ら高くても國民を餓死させない爲には輸入しなくちやならぬ、所が可なり高いものに付くのではありませぬか、朝鮮から米を一つ入れるに致しましても相當に高いものに付くのではないか、例へば此處に專賣局の方々皆御揃ひでありますが、海外から鹽を輸入すると云ふ場合に、鹽は幾らに付くのでありますか、此の鹽は勿論、食糧の輸入致しました所の非常に高い價格を、現在の配給價格の如き、非常に安い價格を以て國民に配給をするのでございましたならば、其の價格差の補給、其の補給の爲に國庫の受ける所の重壓と云ふものは、非常に大きいものがあるのではなからうかと思ふのでございます、そこで是等の食糧の海外輸入が許可された場合、之に對する一應の財政計畫は用意されて居るか、さうして其の配給と云ふものは、どう云ふ風な價格で行く御積りであるか、是が國民生活を甚だしく脅威せず、且又國庫の財政もあまり壓迫しないと云ふやうなことに對しては、どう云ふ基本的な考へを以て臨まれて居るかと云ふことを御伺ひしたいのであります
それからもう一つは鹽のことでございますが、鹽の生産の増強は、是はもう何は措いても強行しなければならぬ、是が爲に生産の施設に對しまして、八割の補助を行ひますと云ふことは、相當高率な補助であつて、現在の財政の建前から、色々御議論がある方面もあらうかと思ふのでございますけれども、併し鹽は是が專賣品でありまして、本來ならば國自らが、生産施設をして是が生産の責任を持たなくちやならぬのであつて、此の專賣品である鹽の生産施設に對する補助は、他の生産に對する補助とは、其の意味が違ふのであつて、是は八割でも十割でも、詰り國家自らが施設をするのを、國營でやるよりも民間の創意と工夫に依つてやらせる方が、能率が好いから民間にやらせる、併しながら其の經費は國庫で見て行く、斯う云ふ建前でありまして、此の八割の補助と云ふものは、他の生産施設に對する補助とは、意味合の違つたものとして今後行くべき必要があるのではないか、詰り鹽だけは――米も同じでございますけれども、特に專賣品で政府が生産配給の責任を負つて居りまする所の鹽に對しましては、他のものに對する補助とは違つた考へで行く必要があらうと思ひまするが、此の點に對する基本的な御考へだけを御伺ひして置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=38
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039・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 進駐軍の經費に對しまする第一の問題でありまするが、非常に御尤もな問題でありまして、特に私も其の點は夙に心配して居つた點であります、此の點に付きまして殊に今仰せの如く初めの時期に於きましては、お土産を賣つたり何かすることが外貨獲得だと云つたやうな感じを持つて居つた人が多数あつたやうに見受けられまして、非常に奇異に感じた次第でありました、隨て是れではいかぬと思ひまして、實は内々私自身としましては、各方面に相當其の筋に對して御注意を申したことがございます、併し是は言ひ方が非常に難かしい問題でありまして餘り大きく取扱ひますと又問題が厄介になつて來る點もあります、此の點の扱ひ方が非常に難かしい問題でございます、今御注意の點は十分呑み込んで居りますが、何とか之を國民にも其の意味に於て分らせるやうにしたいと思つて居りますが、唯之を表面的に強く斯う云ふことを言ひ出しますと、又片方に妙な問題が起らぬとも限らないのでありまして、此の點だけは非常に取扱ひが難かしいと云ふやうに考へて居ります、御趣旨の點は其の通りだと思ひます、全く御同感であります、それから輸入の價格、是が高くなると云ふことは無論の話だと思ひますが、之に對しましては今の考へ方と致しましては、結局あちらも「クレヂット」を設けない以上、どんどん輸入はしないと思ひます、結局こちらから出す物資との見合ひだと思ひます、是は幾らの「レート」で切ると云ふやうなことでなからうと私は信じます、はつきりした細目は分りませぬ、分りませぬが、恐らくこちらから出したものが「ドル」で幾ら買へるかと云ふ點でありますから、其の點に於て物が非常に高くつくかつかないかと云ふことであります、そこに大きな「デフエクト」は出來ないと思ふ、隨て非常に高いものにつく、之に對してどうするかと云ふ問題は無論研究中であります、唯全然今入つて居りませぬから困つて居る次第でありますが、どんどん入つて來れば非常に問題になりますが、此の點はこちらの輸出價格との關係で以て、相當に或る程度解決する問題が多々あると考へて居ります、それから今の鹽の生産の強行に對しましての補助でございますが、八割或は公共團體は十割と云ふことは御説の通りであります、此の補助が一番望ましいことは、補助して宜しいのでありますが、築造した鹽田なり何なりが本當に上手に經營せられることでありまして、今年の九月のやうな風水害などを受けますと、眞に全くの「ロス」になるのであります、さうでなしに出來るだけ之を上手に有效に使へるやうに補助すべきだと思ひます、殊に今仰せの如くに鹽は專賣であり、或る意味では國有民營と云つたやうな恰好の形體を取ることは私は贊成であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=39
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040・田村秀吉
○田村(秀)委員 簡單に一、二點大臣に鹽のことで御伺ひ致して置きたいと思ひます、今終戰後特に鹽が非常に困つて、自給鹽を盛んにやつて居る譯でありますが、それだけでは迚も急場の間に合ひませぬから、そこで輸入をやらねばならぬ、輸入に對して今まで聯合國にどの程度の交渉申込をして居られるか、申込をせられてどの程度の許可を得て居られるか、許可を得たとすれば今どの程度に輸入の現實の見込が立つて居るかと云ふことであります、許可を得て居る範圍が、こちらの希望通り進んで居ないで、ほんの部分的の許可と致しますれば、今後どの程度の輸入許可の申込をする御計畫になつて居るのでありますか、而も其の計畫の基準量は大體食用鹽は百萬「トン」、それから工業鹽五十萬「トン」と存ぜられますが、民間の經濟團體の要求としては、工業鹽が五十萬「トン」では迚も足らぬ、或は百萬「トン」百三十萬「トン」と云ふやうな――此處にも一つ陳情みたいなものが來て居りますが、是は經濟團體の聯合會からの鹽増産に對する意見として來て居りますものは、百三十萬「トン」の工業鹽、是は民需、戰爭には無論關係のない民需用鹽でありますが、百三十萬「トン」さうすると二百六十萬「トン」になる譯であります、隨て政府の基準として居られる五十萬「トン」では大きな食違ひがありますが、實際は百五十萬「トン」で宜いと御確信の基準の下にどの程度の御申込をする豫定でありますか、即ち内地生産の見込との兼合ひになる譯でありますが、其の點が一點、許可、申込の見込基準其の點が一點と、それから終戰後頻りに新聞紙上等に於て輸入許可をされると云ふことが出ますと、自給製鹽と云ふやうなものは何と申しましても厄介な仕事でありまして、單に政府が八割の補助を致しましても中々厄介な仕事である、そこで輸入が出來れば自給製鹽なんて面倒臭いことは止めたいと云ふことになるのであります、そこで輸入を許可するに付ても、向ふが許可する最低限度の條件と云ふものがあることを私は聞いて居る、私の耳にする所に依りますと、先づ國民が鹽を作るに付てどの程度の最大の努力をして居るか、最大の努力の目安がつかなければ許可しないと云ふことも聞いて居るのであります、それと最小限度どの程度の鹽が國民の生活必需として要るか、此の二つ、私の聞いて居るのは二つ聞いて居るのでありますが、此の二つの條件が認められなければ許可しない、斯う云ふことが傳はつて居るのでありますが、此の點をどう云ふ條件の下にこちらの申込を受入れて許可をするか、之を此の際一つ御説明を願つて置きませぬと、自給製鹽に國民に及ぼす影響がございますから、やはり自給製鹽に努力しなければ許可しないと云ふことにならぬと、色々影響する所があると思ひまするから、此の際此の點をはつきりして置いて載きたいと思ふのであります、其の中の一つとして國民生活必需の生存維持の爲に、最小限度大體百萬「トン」は一人に付き五百「グラム」と見て居る譯でありますが、其の點は向ふでは認めるのであるかどうか、此の點も重ねて御説明を願つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=40
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041・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 今仰せられました輸入に付きまして、こちらが努力をしなければ承知しないと云ふ態度は、鹽のみに限らず、凡ゆる點で一貫して居ると思ひます、お米に付てもさうでありませう、他の食糧其の他凡ゆるものがさうだと思ひます、殊に鹽などは餘程の努力をしない限り、承知しないと云ふ態度であることは明かであります、それから初めに御尋ねになつた所の計畫に於きましては、來年の三月三十一日までこちらの申込は三十四萬「トン」、一年を通じて百に十萬「トン」を申込んで居りますが、許可に付ては何等言つて參りませぬ、それから五百「グラム」で宜いかどうかと云ふ點に付て、向ふはどう見て居るかと云ふ點は私は存じませぬ、其の點に付ては知識を持合せませぬから、其の他の今の細かい計數に付きましては、政府委員から御答辯させます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=41
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042・長沼弘毅
○長沼政府委員 輸入の點に付て申上げます、只今大臣から申上げました本年度下半期」三十四萬「トン」の輸入を申込んで居るのでございますが、是は食料鹽二十五萬「トン」、工業鹽九萬「トン」、最初實は四十八萬「トン」の要請を致したのでございますけれども、第三四半期に於きまして、殆ど輸入致すことは出來ませぬでしたので自然三十四萬「トン」に減つて參つた訳でございます、二十一年度に於きましては、全體の需給二百十萬「トン」、それに對して國内の生産九十萬「トン」、殘りの百二十萬「トン」を輸入したいと云ふ希望でございます、是が輸入許可を申請致しまする基準でございまするが、先程仰せの經濟團體聯合委員會でありますが、其の方面で言つて居りまする工業鹽の百三十萬「トン」と云ふ數字は、實は二十一年度に於て、私共百萬「トン」の數字を豫想致して居りますが、經濟團體と致しましては、それに相當の輸出用の原料を含めまして、百三十萬「トン」と云ふ希望的數字を考へて居るやうに承知して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=42
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043・松浦伊平
○松浦(伊)委員 輸入鹽の價格はどの位ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=43
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044・長沼弘毅
○長沼政府委員 輸入鹽の價格の見透しは、實は今後如何に爲替率が決定せられるかと云ふことに懸つて居りますので、何とも申上げ兼ねます、今一つ五百「グラム」で宜いか惡いかと云ふ點でございますが、最近まで折衝致して居ります過程に於ては、五百「グラム」を切るべしと云ふ意見を先方では持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=44
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045・田村秀吉
○田村(秀)委員 今の條件でさうなのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=45
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046・長沼弘毅
○長沼政府委員 五百「グラム」を減すべきであるかないかと云ふ議論は全然出て居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=46
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047・崎山嗣朝
○崎山委員長 此の程度で……又一時半から開くことに致します
午後零時三十四分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=47
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048・会議録情報2
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午後一時五十分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=48
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049・崎山嗣朝
○崎山委員長 是より開會致します――池本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=49
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050・池本甚四郎
○池本委員 本委員會には關聯的でありますが、煙草事情に付て少々伺ひたいと思ひます、煙草は鹽程ではないのでありますけれども、やはり實際上は國民生活に關係あるものであります、戰時には當時の生産戰士と云はれたやうな人々で、是がなければどうも能率が上らぬと云ふやうなことさへ言はれたものでありますので、少々御伺ひ致したいと思ひます、數字等のことに付きましては事務當局の方から御話を願ひ、生産等のことに付きましては政務官などから御答へを願へれば結構であらうと思ひます、そこは取捨適宜に御答辯を御願ひ致します
第一には一般煙草の需給状況でありますが、現下の煙草と供給能力はどう云ふ風になつて居りますか、隨分戰災を受けたと思ひますが、戰災前の平常的能力と戰災を蒙りました程度等を併せて御説明を願ひたいと思ひますが、尚ほ是は金額的でも結構でありますけれども、數量に重點を置いて御聽かせを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=50
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051・植木庚子郎
○植木政府委員 煙草の工場等の戰災を蒙りました前の能力と致しましては、年生産數量八百億本と云ふものが能力でございます、昭和二十年度の豫算は、概ね其の能力の全部を發揮して、御承知の通り、相當多額の專賣益金の納付を豫定致して居つたのでありますが、御承知の通りの戰災が各地に頻發致しました、それに依りまして、終戰當時に於きましては、能力を喪失した分が四百五十億本分、半分以上であります、四百五十億本分の能力を喪失致しまして、殘存致しました能力は、三百四十九億五千萬本と云ふものがあります、本に直した能力であります、三百四十九億五千萬本分の能力とは申しますものの、色々な勞務の事情でありますとか、或は其の他色々の關係等に依りまして、是が事實是だけの力が殘りましても、全部の能力を發揮することが出來ませぬで、終戰當時に於きましては、月割に致しまして十三億本位の生産を致して居つたやうな有樣であります、併し終戰と同時に、各方面に對して色々御不便を御掛けして居る、或は戰災の復興でありますとか、食糧の増産でありますとか、其の他諸般の施策の爲にも煙草を必要とする向が多多ありますので、一日も早く復舊しようと云ふ計畫を立てて著々と緒に付きまして、本年度内に於きまして、何とかして四百億本の能力まで復活致したい計畫で進んで居ります、本年度の大體年度を通じましての、生産見込と致しましては三百五十六億本の豫定であります、之に依りまして我々と致しましては、本年末には全國の成年男子一人當り三十本程度の特配を考へて居ります、更に明年一月からは、現在が月當り九十本の配給になつて居りますのを、百二十本づつの配給に上げ得る見込であります、更に四月頃からは更に一日當りもう一本、即ち三十本位のものを月當り増配致したい、斯う云ふ考へで著々として整備を急いで居る次第であります、戰災を受けました工場は、三十三の全工場の中で十四工場が戰災で燒失致しました、其の結果が先程申上げたやうな能力喪失になつた次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=51
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052・池本甚四郎
○池本委員 念の爲に伺ひますが、刻み煙草なども今の本數の中に換算されて加はつて居るのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=52
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053・植木庚子郎
○植木政府委員 仰せの通りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=53
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054・池本甚四郎
○池本委員 さう致しますと、戰災前には年八百億本、戰時中それの凡そ半分の生産能力を喪失した、併し設備の上ではさうであるけれども、實際上の生産としては、月十三億本と承りましたので、さう致しますと實際上の供給能力と致しましては、平常の供給よりも約四割以下に落ちて居るものと承知致したのであります、それが段々御努力に依りまして、今後殖やして參りますことを承りましたことは結構でありますが、どうぞ此の見透しだけでも、今日の需給状態から申しまして尚ほ甚だ不足だと思ひますので、御努力を御願ひ致したいと思ひます、大體供給面は承りましたが、需要の面の増減と云ふやうなことに付ては、餘り變りありませぬかどうですか、若し需要の方が増して居るやうな御見込であるならば、更に需要關係は窮屈になると思ひますので、御分りならば承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=54
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055・植木庚子郎
○植木政府委員 需要の方の見込とでも申しますか、推定に付きましては、御承知の通り只今は配給制度に依つて居りますのではつきり分りませぬが、戰前に於きましては、概ね成年男子、全體の數として計算致しますと、一人當り九本九分、約一日當り十本程度の需要があつたのであります、それが配給制度實施以來、所謂配給制度の一つの缺點でございますが、喫はない人でも配給を受けて、つい呑んで見るやうな喫煙癖を誘發するやうな面もありますから、恐らく現在に於ては喫煙者の數と云ふものは、事變前若しくは戰前等より相當殖えて居るのではなからうかと想像致される次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=55
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056・池本甚四郎
○池本委員 供給の方は御努力に依りまして今後努めて囘復を圖られる、併し需要の方面は、更に戰前より増して居ると云ふ御見込であれば、實際の需給の状態と云ふものは非常に窮屈を免れないと云ふ話であります、そこで私は實際上から申して居るのでありますか、どうも巻煙草が多くて刻煙草がない、是は農山村方面でありまするならば、從前の農民などと云ふものは一つも巻煙草を吸はずに刻煙草で行つて居つた、所が今日に於ては其の方面にさへも刻煙草がなくて巻煙草だけ與へて居る、斯う云ふ不足時代には、私はもう少し實需方面に力を置いて下されたらばどうかと思ひますのが、巻煙草のみになつて居るのは、どう云ふやうな事情なんですか、それは生産設備とか技術とか云ふやうな意味ですか、それとも巻煙草を普及しようと云ふ意味なんですか、此の點は國民消費の點から考へられることなんで、一應實情を承はりたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=56
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057・植木庚子郎
○植木政府委員 例を本年度の生産豫定數量三百五十億本ばかりに取つて見ますと其の中刻みの方の占めます割合は、百九十億本分に相當致しまして、兩切若しくは口附に相當致しまする分は百五十億本見當と云ふことになります、即ち總體の數に於きましては、兩切、口附の方が寧ろ少いのであります、實は今仰せの如き現象が或る地域にありと致しますると、それは輸送の關係の爲に斯樣な現象を來して居ると思ひます、即ち戰時中に於きましては、成るべく地域毎に製造工場から搬出致しまして、それを遠方へ交錯輸送が起らぬやうにと云ふ用意から所に依りますと、當該工場が主として口附を造つて居つたと云ふ場合には、農村方面等に於きまして仰せの如く刻みの要求があるのに拘らず、已むを得ず巻煙草を配給して居る、斯う云ふことになつて居るのかと存ずるのであります、之に付ては却て都會地方面に於きましては巻煙草が少くて、刻みが多くて困ると云ふやうなお小言も頂戴して居ります、無理からぬ實情と考へますので、我々當局と致しましては、終戰後輸送に付きまして配慮を致し、輸送當局とも折衝を重ねて、成べく都會地方面へは巻煙草が廻りますやうに、或は農村方面には刻が廻るやうにと云ふやうな心組みで努力を致して居りますが、それが尚ほ其の效力を擧ぐるに至つて居らない結果だらうと考へます、甚だ恐縮に存ずる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=57
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058・池本甚四郎
○池本委員 さう云ふ狙ひを以て配給面の地域的の御工夫があることは結構でありますが、申します如く實際上末端の實情に於きましては、實情に副はないと云ふ憾みがありまするので、今後も此の方面に付きまして、折角一層の御努力を御願ひ申上げて置きます
そこで次の方面に移りますが、是は新聞で少し以前に見たことでありますが、何だか新しい巻煙草それも高價な巻煙草を發賣せられる御計畫があると云ふことでありますが、是は事實でありますか、尚ほ又それは一面から考へるならば考へられないこともないが、又何だか直感した所では思ひ付きのやうな感じもする、そこでそれは思ひ付きであるのか、思ひ付きだと云ふ御答辯はありますまいが、思ひ付きのやうに思はれる、それとも熟慮の上の眞の計畫であるのか、それを承りたい、併せて其の計畫がありますならば、其の數量及び價格、それから出ます純益、それに付て承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=58
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059・植木庚子郎
○植木政府委員 只今の御質問は、何か新製煙草を出す計畫があるのかと云ふことでありますが、實は昭和二十年度の專賣局益金の納付見込額は、二十一億圓を豫算致されて居つたのであります、それが前述の如き戰災等の爲に、恐らくは本年度益金見込は、六億圓乃至七億程度に止まらざるを得ないかと云ふやうに窺はれる姿なのであります、是に於きまして、財政的に非常な缺陷を生じて居りますので、財政收入の増加を圖ると云ふことは、此の際政府の財政政策或は計畫の面に於きまして、非常に重要な要求であるのでありますが、他面に於きまして、現在煙草が配給制度であります爲に、非常に喫煙を希望せられる方に於ては、窮屈な感じを持つて居る向きが多いと思ふのであります、之に對して若干でも此の窮屈感の緩和に資することが出來るならば、それも一つの考へ方であらう、他面又世上漏れ聞く所に依りますと、煙草の闇と云ふやうなことも若干行はれて居るかに聞くのでありまして、而も闇價格でありますから、相當の高價であるやに聞きますので、さうすれば本當に煙草を喫みたい方は、相當の金を出しても煙草を喫んで居られると云ふやうな實情もあるやに窺はれるのであります、即ち言換へれば、浮動購買力の吸收もすることが出來ると云ふやうなことも考へられまして、以上概ね三點のことを頭に置きまして、主としては財政收入の増加と云ふ問題に重點を置いて、何等か新しい種類の煙草を出して、之を自由販賣にして見たい、斯う云ふ風に考へて居ります、其の數量に付きましては、是は何と申しましても、一般の愛煙家に對して相當窮屈な思ひをして戴いて居る際でありますから、多量をこちらへ割くことは適當とは存じませぬ、隨て先程申した如く一般の配給に付きましては、一日も早く其の配給數量を殖やすことに努力し、製造能力の極めて一部分を用ひまして、此の新製煙草に當てたい、斯う思つて居りますので、目下の計畫と致しましては、大體月三億本程度位のものを三月頃から出したい、尤も其の中一億本位の程度ならば一月からも都合が付きますので、一月から一億本位始めて見まして、三月頃になりますと月々三億本程度のものを賣出したい、斯う考へて居るのであります、價格の點に付きましては、色々考慮すべき點もございます、其の爲に折角今考慮中でありまして、咋日貴衆兩院の若干の御方々及び民間の學識經驗者等の御集りを願ひまして、一應の御意見を承つて居りますけれども、是は未だ決定には至つて居りませぬ、而も此の新製品の價格に付きましては、一般の煙草の定價を改正するかどうかと云ふ點、改正するとすれば如何なる程度まで引上ぐべきかと云ふやうな點との關聯もあります、又聯合軍司令部との關係もございますので、それぞれ所要の手續を經ました上で適當な所に決めたい、斯様に存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=59
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060・池本甚四郎
○池本委員 それでは數量は凡そ見込んでおいでになる、三億本と申しますと、三百五十億本に比べましては僅一分以下になるのですが、念の爲に伺ひますが、數量的には此の割合である、併しそれが爲に使はれる所の勞力、設備と云ふものがそれ以上になつた場合には、實際上一般向の煙草の製造に食ひ入るので、それだけ「パーセンテージ」が増す訳なんですが、さう云ふことはないのでありますか、尚ほもう一つは價格の點がまだ未定である、さうすると益金二十一億圓の見込のものが六億圓になつた、それを埋め合すのにどれ程の金と云ふやうな、新煙草から出る純益金は當然まだ決まつて居らない、斯う云ふ訳になるのですか、承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=60
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061・植木庚子郎
○植木政府委員 新製品の爲に特に手數が多いとか或は經費が非常に多額に掛ると云ふやうなことはないのでありまして、勿論從來の品種よりも稍稍品質上級なものを造ります關係上、原材料等に於きまして、稍稍原價を高く致しますが、さう甚だしい差はないのであります、それから益金の見込額に付きましては、先程本年度の例を取つて申上げましたが、今囘の試みが特に本年度の、例へば六、七億圓に減る益金を幾ら幾らに殖やさうと云ふ努力と申すよりはほんの附足りでありまして、主たる目標は昭和二十一年度の財政計畫に對して與ふ限り寄與したい、而して浮動購買力の吸收にも資したいと云ふやうな氣持が多分にあることを申上げて置きます、まだ價格が決まりませぬので、益金額の推定が出來ないことを御詫び申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=61
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062・池本甚四郎
○池本委員 先程の御答辯の中で今までよりは若干高くすると仰しやいましだが、新聞に出て居つたのでは、慥か十本入一箱が十圓とか二十圓と出て居つたのですが、さうすれば僅かな引上ではない、それはさうではないのですか、其の點は新聞に出て居つたので見ますと、高い突拍子な値段になつて居るのですが、其の點はどうでございますか、是は將來のことでありますから決まつて居らぬと言ふのでせうが、あなたの方で想定されて居る所の大凡のものはそんな僅かなものであるか、僅かのものなら又仰しゃる所の財政收入目的に餘り達しない、それの方を狙はれるなら大きな額にならなければならないのだか、一體新聞で見たことは突拍子もなく大きいので、其の點今のあなたの御考へはどうですか承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=62
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063・植木庚子郎
○植木政府委員 新聞に出て居りました例の一應の價格、十本入一箱十圓と云ふのが出て居りましたが、あれが非常な突拍子の價格であるかないかは、色々見る人の見方に依つても違はうかと考へます、我々が今考へて居ります新定價に付きましては、先程申上げました通りに決定は致して居りませぬが、相當高い値段と申しました、其の相當或は御想像が新聞等に出て居つたやうな數字を想像して居られると致しますと、大體それに近いとも言へますし、又場合に依りますとそれよりも少し下目かどうかと云ふことにも考へて居ります、又新聞に出て居りました程度よりは、もつと上にしたらどうかと云ふやうな御意見等も、昨日の如き協議會の席上でも多數出て居りますので、折角今考慮中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=63
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064・池本甚四郎
○池本委員 十圓、二十圓が高いか安いかは仰せの如く考へ方に依つて違ふと云ふのは、結局は言ひたくはないが、現實の今日の價格、闇價格、國民價格、それから見て高い安いは、想像が出來る、是は實生活上から申しまして其の通りであります、だから此の點は闇の價格が一方に流れて居るのを目を暝らない限りに於ては高くはない、併し國民生活を見ると云ふことを考へなければならぬと思ひますが、其の點は此處で一應預けて置きます、そこで先程上級者に呑まして見るとか其の意見を聽くとか言はれますが、それだけではいかぬ、民の聲を聽き、一般の生活者がさう云ふものに對して何と考へて居るか、其の點は一つ御考になると宜い、先程御擧げになりました方々に呑まして見れば宜からう、是は十圓は安い、三十圓、五十圓にせよと言ふかも知れぬ、さう云ふことを惧れますから、さうに云ふ一部の所謂特權階級と云ふやうな者のみに呑まして見るとか何とか云ふやうなことは止めて、一般民の聲を十分に御聽きなさらんことを私は此の序ながら希望を致して置きます、そこで大事なことであるが、財政收入の増加を圖られることは御尤もな話である、需要の緩和と云ふ點に付きましては、恐らく今日一般國民の購買力と云ふものは、段々ともう底を突いて來て居ります、煙草以上に必要な所の此の主要食糧品などに付ても、遺憾ながらそろそろ底を突いて來て居る所の情勢に見える、だから需要緩和と云ふやうな點は、決め方如何に依つては、何と云つても一部の階級のみの使用を充すに過ぎないものになるだらうと思ふ、だから使用緩和と云ふやうな點に付ては、私はそれならばこんな物を拵へられるよりは、少しでもより多く一般向の物を拵へられるのが本當の國民生活上の需要の緩和になるだらうと私は思ふ、だから此の使用緩和の點に付ては、餘程其の狙ひを御考へにならないと私はいけないと思ふ、だがそれより先になります所の財政收入の點に付きましては、實は痛し痒しの感がある、それはそれで宜しいが、一面に於て是が爲に購買力の吸收にもなりませうが、一面「インフレ」と云ふことに付てどう考へて居られるのか、財政收入の増加を圖られる反面に於ては、今日斯樣に國民生活がかさかさと神經過敏になつて居る際でありますから、其の呼値に依つて又それがそれを生んで、所謂物價高誘發の一因となり、「インフレ」防止の爲に購買力を吸收しようと云ふ其の反面に於ては、「インフレ」防止の措置に反するやうな、惡循環と言ひ得るかどうか分りませぬが、又一面に於て「インフレ」を助長することになる、「プラス」「マイナス」になる虞がありますが、それ等の點に付てはどう考へて居られるのか、斯樣な點に付ては色々考へられるでありませうが、私は今日の此の段々差迫つて參つた、而して急激に落下しつつある所の急迫せる惨憺たる國民生活状態から見れば、一般國民の感情からは、先づ受容れられないのが多いのではないかと云ふ感じを持つのであります、それを併せて申上げて、今の財政收入の増加の低下、「インフレ」防止と云ふ反面に出て來る所の逆作用と云ふものに付て、どう云ふ風に大藏當局は御考へになつて居るのか、是は專賣局長官だけならやれと言ふかも知れぬが、大藏省全體から見られる所の御觀察を承り得るならば結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=64
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065・山本粂吉
○山本(粂)政府委員 只今の御質疑、御指摘になつた點、一應御尤もだと拜承致しました、成程民の聲を聽くと云ふ御議論は全く其の通りであります、政府と致しましては、今度の新製煙草發賣に付ては先づ民の聲を聽き、凡ゆる階層の高見を拜聽致しまして、一面に於て一般庶民階級の煙草需要を壓迫せず、即ち需要を十分とまでは行かないまでも、能ふ限りの努力をして需要を充す面に努力をする傍ら、一面に於て國家財政收入を圖ると云ふ兩面からの考へ方から、僅かに總生産量の一割足らずの數量を以て、而して相當國家の收入を増大せしめられると云ふことになれば、其の税收入は結局之をなさないことに依つて、他の面から他の方法に依つて一般庶民階級に、間接税を課けると云ふ結果にならなければ、結局國家財政の「バランス」が取れない、已むを得ず僅かな數量に依つて浮動購買力を吸收する、「インフレ」を防止すると云ふ一つの目的の狙ひを決めて、而して國庫收入を増大せしめると斯う云ふ一石二鳥と申しますか、相當考慮の上に新製煙草の發賣をやらう、唯それに依つて一般愛煙家の需要を非常に壓迫する結果になつては、洵に御説の通りである、併しさうはならないで、先程來專賣局當局より御説明申上げて居る通り相當増加する、増加せられた上に僅かの數量で國庫收入も殖える、斯う云ふことを御諒承願ひまして、政府としては凡ゆる方面の御意見を聽き、一般民の聲、新聞等に論ぜられる點も考虜した上で、新製煙草の値段を決めて行かう、斯う云ふ考へ方であります、尚ほ御質疑の中にありましたやうに「インフレ」防止、逆作用等のことも御議論になりましたが、是は色々見方がございませうけれども、今日日本の經濟状態が昭和二十一年度に於て急激に惡性「インフレ」より「デフレ」傾向になるとは想像出來ない、勿論今日の經濟状態は表面惡性「インフレ」の風が流れて居ることは事實であります、併しながら其の底流に於て「デフレーション」の傾向にあることも今日の凡ゆる生産の「ストップ」されて居る現状に於きましては、見逃がすことの出來ない状態である、さう云ふ状態であるが故に、一般庶民階級の懷工合と言ひますか、收入工合と言ひますか、是も御説の如く、或は「デフレ」傾向に輪を掛けて來るやうな結果になるかも知れない、併しながら昭加二十一年度に於ける状態に於きましては、さう急激に新製煙草の値段と勘案しても、非常な惡結果を來すやうな状態にはなつて來ないのではないか、仍て新製煙草を相當價格で發賣しても、それが御説のやうな逆效果を來すとは考へて居らないのでありまして、御説の點は十分考慮致しますけれども、さう云ふ意味合で新製煙草を發賣したいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=65
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066・池本甚四郎
○池本委員 後戻りして伺ひますが、假に新聞に出て居つたやうに、あれが十圓とすると其の總價格、それから出て來る純益がどの位になりますか、一寸伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=66
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067・植木庚子郎
○植木政府委員 實は新製品として賣出さうと計畫して居りますものは二種類ございます、是は月三億本として年に三十六億本となります、此の生産費がどれ位になりますか、生産費「コスト」を引いたものでございますから、相當多額の益金を生み出し得るかと思つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=67
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068・池本甚四郎
○池本委員 年に三十六億本と仰しやると、一本平均一圓として三十六億圓でありますが、之を二種類あるのを一方は二十圓、一方は十圓と計算しますと平均が一本一圓五十錢で五十億圓以上になる譯ですが、あなた方の方で大體今日までの御經驗から純益幾らと云ふことは直ぐ出て來るだらうと思ふ、總價格から見てどの位の利益になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=68
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069・植木庚子郎
○植木政府委員 新製品は勿論、出來得る限り良い品物を考へて居りますから、現在の光級よりは原價は相當高くなります、假に新製品の煙草が五圓とか十圓とか云ふやうに相當の値段に決まるものと假定致しますと、當該煙草に付ての純利益率と云ふものは相當多い、言ひ換へれば、斯う云ふやうな種類の煙草を拵へて是で以て多額の益金を上げると云ふことは、財政的に見まして必ずしも常道と言へぬことは、實は承知して居るのでありまして、已むを得ず斯う云ふやうな方法を講じてでも、成るべく一般の煙草の値上を低い程度に止めて置きたいと云ふ心構へのあることを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=69
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070・池本甚四郎
○池本委員 尚ほ御伺ひしたいのは返す返すも是が爲に一般向の生産は、先刻仰しやいました計畫寧ろそれ以上のものを必ず確保せらるること、尚ほ其の確保だけでなしに、少しでも一般向のものを多からしむることに本當に御盡力下さるか、此の點を念の爲に伺つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=70
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071・植木庚子郎
○植木政府委員 御注意の點は、先程こちらからも申上げました通り常に配意致して居る所でもありまするし、只今の御高見を十二分に參考と致しまして、能ふ限り盡力をし、一般の大衆煙草を出來得る限り一日も早く配給數量が増加するやうに、先程申上げました計畫以上に少しでも早くさう云ふ時期が來るやうにと云ふ努力は、常に怠らぬやうにして參りたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=71
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072・池本甚四郎
○池本委員 尚ほもう二點伺ひたい、是は廣い立場から御考へを願ふ譯ですが、大體煙草の專賣收入と云ふものは、是は申すまでもなく鹽の專賣とは違つて、本來生れた時からが財政的性質を持つたもので、全く租税と名前が違ふだけのものである、のみならず近年の實情を見ますると、戰時以來は矢繼早に數囘上げられたと記憶致して居ります、其の増額も巨額に上つて居る、此の點は物價政策などの點から見ましても餘程論議すべき餘地はあつたのでありますが、それは戰時中であるからまあ其の儘通つたと云ふやうなものもあるであらうと思ふ、私の記憶に依りますと、一年に二囘も引上げられたことがあり、其の收入は數億に及んで居るものがあると思ひます、それで本質から見ても、又實情から見ても、是は全く財政的の目的のもので、一種の租税であるのです、所が税金は勿論、是と同じやうな印紙税は税と云ふやうな名前は付いて居るが、あれなどは其の改廢は法律に依るもので一々議會に掛けられると云ふことになつて居る、併し、此の煙草のみが、同じやうな性質であるに拘らず、法律にも依らなければ、議會にも掛つて來ないと云ふことで勝手な振舞が出來る、是はあなた方の方では、便利だらうが、斯う云ふ風に國民生活に食ひ入つて來た場合には、是は古い議論でありますけれども、實情から見て益益租税的、財政的な性格が從前よりは一層強くなつて參つた、だからそれだけに之を法律化し、之を議會に掛けて能く民意に問うて決しろと云ふ所の要求は、從來より一層新しい意味を持つて參つたと思ふ、そこで私は古い問題ではありまするが、さう云ふ新しい觀點に立つて更に之を再檢討して、本當に平常的な法律の手段に戻して來いと云ふことを要求し、且つそれに付ての當局の御考へを伺ふのであります、古いことを蒸返すのではないが、新しい觀點、實情が出て參つたから、更に之を再びあなた方の前に投出して要望し、且つ御伺ひを致した譯であります、其の點に付きましての當局の御見解を承りたいと思ひます、成るべく簡潔に御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=72
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073・山本粂吉
○山本(粂)政府委員 御要求に應じまして簡潔に御答へ申上げます、仰せ御尤もでありますが、現在のやうな配給機構に依り配給して居る際には、煙草の新定價を決める際に、之を議會に掛けて、所謂法律に依つて決めると云ふ決め方も極めて妥當であらうと存じます、故に原則論としては御説の通り、議會の協贊を經て然る後上げると云ふことが適當であると存じますが、印紙と煙草との違ひは、印紙税は値上げになりますと、元のものが通用しない、増加しただけのものを餘計に必要とするのでありまして、煙草と甚だしく其の趣きを異にするのであります、煙草は値上をすると云ふことが明かになつたならば、買溜、買惜も極めて容易に行はれるものであります、若し是が自由販賣の時代に於て、議會に煙草の値上の法律案が出ると致しますと、其の間、即ち新定價の決定するまでの間は、餘程特別なる考慮を拂はないと、賣惜み買溜め等に依つて愛煙家の希望を滿すことが出來なくなり、非常に大きな結果を來すことを惧れるのであります、左樣な意味合に於きまして、原則論としては議會の協贊を經べきだと云ふ議論は、一應了承出來るのでありますが、只今直ちに之を議會の協贊を經て決すると云ふことは困難だと存じます、仍て議會の協贊を經たると同樣の效果を齎す爲に、今度の新製煙草の發賣から、貴衆兩院議員竝に各界、各層の人々に御委嘱申上げて、一つの委員會を作りまして、そこに御相談申上げて、どの程度の値上を必要とするか、どう云ふ程度ならば宜しいかと云ふことの民の聲を十分に聽いた上で新定價を決めて行く、斯う云ふ行き方で行きたい、それで御質問になつたやうな目的と同樣の效果を齎したい、斯う云ふ風に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=73
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074・池本甚四郎
○池本委員 只今の御答辯で段々所謂民意尊重、議會尊重と云ふ線に沿うて行くと云ふ御趣旨であることを承りまして、洵に結構だと思ひます、だからさう云ふ風にせられるやうに願ひます、そこで此の點に付きましてはもう多くは申上げませぬが、併し御答辯中に洵に腑に落ちぬ點がある、其の點は御答辯は宜しいが一應申上げて置く、それは印紙ではひょつと上げれば、後は貼増しをしなければ通用しない、煙草などに付ては値上の爲に賣惜み買溜めが出て來る危險がある、議會の方に相談をすればさう云ふ虞が多分にあつて、そちらさんの方が勝手にやるならば、俺の方は間違ひなしにびしびしとやるのだからと言ふ、斯う云ふ風に一寸獨善的に聞ヱる、併せて一面から言ふと、議會輕視論、不信任のやうな氣がする、議會に相談すれば漏れるやうな餘地があつて、それから色々弊害が出て來るのではないか、さう云ふことは甚だ宜しくない、だから根本思想としては、さう云ふ考へは政府にないであらうと思ひます、それは言葉の綾だと思ふが、若しさう云ふ御考へで議會へ出す、出されないと云ふことに付て、尚ほ考慮の餘地があると言はれるならば、それは宜しく再考せられるやうに老婆心ながら私から申上げて置きます、御答辯は強ひて要りませぬ
そこで時間を急ぎますから、一寸方面を變へて御伺ひします、今度はがらりと場面を變へていつそ斯う云ふものを民業に移される考へはないか、と云ふのは戰後此の窮迫したる財政處理の問題として、色々と官有財産の拂下とか、民業、民營とか何とか云ふことがある、大きいのは鐵道事業のことに付ても論議されて居りますが、それの一環として斯う云ふものに付て之を民業に移すやうな御考へが一寸でも出て居らないか、此の點に付て更に念の爲に御伺ひを致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=74
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075・山本粂吉
○山本(粂)政府委員 議會輕視の御注意がありましたが、議會に法案を提出して是が外に漏れる漏れないと云ふことは、池本委員に於て萬々御承知だらうと存じます、法案を出して直ぐに漏れないやうな法案の出しやうがないのでありまして、隨てさうすることに依つて愛煙家の需要を充すことを、一時でも阻止するやうな賣惜み買溜め等が起つて來ることが、今日の状態に於てうまくないから、そこで原則論としては贊成だが、それ等の點に付て、十分な考慮を必要とする問題だ、斯樣に御答へした次第であります、次に煙草專賣事業を民營にする意思はないかと云ふ御尋ねでありますが、是は嘸議論がござりませう、官業民營の問題に付ては大きな面から考へなければならぬ問題だと思ひます、仍て此の問題に付て、池本委員と議論を致しますと、相當時間を要すると思ひますので、私は此の問題に付て、現在只今の考へ方としては、此の專賈事業を民營にする意思はございませぬ、但し遠き將來に於て國家の財政とも睨み合せ、又一般産業とも睨み合せて、必ずしも煙草を專賣にして置かなければならないと云ふ國家の必要條件が消滅して來る時期があると想像致されるのでありまして、遠き將來に於てはいざ知らず、只今の所に於きましては之を民業に移す考へを政府は持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=75
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076・池本甚四郎
○池本委員 結構であります、能く承りました、そこで念の爲に申上げるのですが、敢て議論の爲めの議論をしようと云ふ譯ではないが、先程の法律に依るやうに値上げ値下げはどうかと云ふ此の點に付ての只今の御答辯中に、議會に事前に事柄が洩れないやうな方法で出すことが出來ぬ、だから云々と云ふのがありましたが、それは技術上の問題である、ですから民營とか何とか云ふやうな根本的な點からではないのでありまして、其の技術の點からのやうな御話を承りましたから、それならばそれを防止する又他の技術があるであらうと私は思ひます、是は深くは申しませぬが、だからしてどうか議會尊重、議會信用、官僚獨善に陷らないやうにと云ふやうな觀點から、之を法律化することに付きましては、技術の末節に堕することなく、それならば技術の缺陷は技術を以て補ふやうな方法を更に御考へになりまして、將來一層明確な方策が執られまするやうに、切に希望致しまして私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=76
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077・山本粂吉
○山本(粂)政府委員 只今の御注意御希望は十分考慮致しまして、之に副ふやうに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=77
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078・崎山嗣朝
○崎山委員長 是で質問は全部終つたやうでありますが、各派とも政務調査會あたりに報告さるる必要があるだらうと思ひますから、三時半からもう一遍集まりまして、成べく明日の本會議で之を報告して通過させたいと思ひますが、どんなものでせうか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=78
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079・崎山嗣朝
○崎山委員長 それでは是で休憩致しまして、三時半から引續き開會致します
午後二時四十五分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=79
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080・会議録情報3
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午後四時十九分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=80
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081・崎山嗣朝
○崎山委員長 休憩前に引續き再開致します、本日は是にて散會致します、明日は十時半より開會致します
午後四時二十分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008910133X00319451213&spkNum=81
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