1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
昭和二十年勅令第五百四十二號(「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)(第二號)
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昭和二十年十二月十三日(木曜日)午前十時四十分開議
出席委員左の如し
委員長 小山谷藏君
理事 南雲正朔君 理事 中谷武世君
内ヶ崎作三郎君 江口繁君
木下信君 窪井義道君
清水留三郎君 松田竹千代君
森下國雄君 依光好秋君
米田吉盛君 喜多壯一郎君
小山亮君 濱田尚友君
船田中君 本領信治郎君
三田村武夫君 岸井壽郎君
三宅正一君
同月十二日委員竹内俊吉君辭任に付其の補闕として小山亮君を議長に於て選定せり
同月十三日委員中西敏憲君辭任に付其の補闕として松田竹千代君を議長に於て選定せり
出席國務大臣左の如し
司法大臣 岩田宙造君
國務大臣 松本烝治君
出席政府委員左の如し
法制局長官 楢橋渡君
法制局次長 入江俊郎君
法制局參事官 佐藤達夫君
外務政務次官 犬養健君
外務參與官 松浦周太郎君
外務省政務局長 田尻愛義君
司法政務次官 手代木隆吉君
司法省刑事局長 佐藤藤佐君
厚生政務次官 矢野庄太郎君
鐵道監 滿尾君亮君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
昭和二十年勅令第五百四十二號(「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=0
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001・小山谷藏
○小山委員長 それでは是から開會致します、先づ政府の提案理由説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=1
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002・楢橋渡
○楢橋政府委員 「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件に付きましては、曩に本會議に於て大要御説明致しましたが、尚ほ稍稍詳細に亙りまして説明を申上げたいと存じます、御承知の通り去る九月二日調印せられました降伏文書の中には、帝國政府が聯合國最高司令官の要求する所に從ひ「ポツダム」宣言所定の事項の實現の爲め、必要なる一切の措置を執るべきものとする旨の條項があります、而して帝國政府としては、右最高司令官の要求に係る事項に付きましては、當初行政の運用に依りまして之を處理するの方針を擇んだのでありますが、爾後の情勢から見ますると、其の要求の内容は、多岐多端に渉り、到底豫斷を許さざるものがありまして、單に行政の運用に委するを以ては足らず、必要ある場合に於ては、強制力を行使し得るだけの法制上の態勢を調へて置く必要があるのであります、斯く致すことに依りまして、聯合國最高司令官の要求あるに從ひ、隨時應機敏速且つ適實に「ポツダム」宣言の忠實なる履行に遺憾なきを期しますることが、世界に對し我が全幅の誠意を披瀝して、以て帝國の對外信威を繋ぐこと極めて喫緊の要諦であることは、言を俟たぬ所であります、而も最高司令官の要求は、時に極めて急速の處理を要することがあり、萬一遷延致すやうのことがありますれば、延いて帝國の公共の安全にも影響を及ぼすに至るを保し難き事情にあるのであります、仍て政府は帝國憲法第八條第一項の規定に基き、本件勅令の御制定を仰いだ次第であります
今本件緊急勅令の内容に付きまして一言致しますれば、其の前段に於きましては、政府が「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ、聯合國最高司令官の要求に係る事項を實施する爲め特に必要ある場合に於ては、本來法律を要すべき事項に付いても命令を以て隨時所要の定を爲し得る旨、其の後段に於きましては、右の如き諸項の實現に必要なる限度に於ては、命令を以て必要なる罰則を設くることを得る旨の規定を置いて居るのであります
以上が本勅令の内容でありますが、政府は本件の制定と同時に、別に勅令の制定を仰ぎまして、本件の委任に依り發し得る命令は勅令、閣令及び省令に限らるべきこと、竝に本件に基く閣令及び省令に規定することを得る罰は、三年以下の懲役、禁錮、五千圓以下の罰金、科料及び拘留の範圍に止むる旨を明示致し、其の運用に愼重を期することと致しました
以上を以て本件緊急勅令に關する一應の御説明を終ります、尚ほ御質問に應じて委細申上げたいと存じます、何卒宜しく御審議あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=2
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003・喜多壯一郎
○喜多委員 議事進行に付て御願ひがあります、今は恐らく法制局長官は勞働組合法特別委員會の方に行かれると思ふのですが、一體此の委員會に議せらるべきものが、我々としては貴族院に先に廻つたと云ふことは不可思議千萬である、是は恐らく幣原内閣の性格が議會尊重、民意尊重と云ふことを口にするけれども尊重して居ない所以の一つなのである、「ポツダム」宣言と云ふものは古い日本を否定して新しい日本に行くと云ふ歴史的な宣言の履行なのであつて、而も一方は今も政府の提案理由の中にあるやうに峻嚴にして冷い鐵のやうな、こつちが押しても押し切れないやうな客觀性を持つて居る、さう云つたものですから、一方軍事的に言へば武裝解除の國家であり、同時に歴史的に見れば政治革命とも云つて宜いやうな「ポツダム」宣言受諾に伴ひ發する命令に關する件ですから、此の委員會には私は恐らく全委員諸君が希望致されるだらうと思ふのですが、一時に總理大臣以下關係閣僚全部此處に集めて呉れと云ふやうな無理なことは申しませぬ、豫算が貴族院に廻はるとか、選擧法が貴族院は廻はると云ふ際ですから、一時にとは申しませぬが、少くとも總理大臣と大藏大臣と同時に、内務大臣と文部大臣と云つたやうな、恐らく皆さんの質疑に關係があると見られる閣僚は、別々でも宜いから必ず半日なり一日なりを此處に金縛りにしてやつて行くやうな方法を取つて戴きたいと云ふことを希望して已みませぬ、それは委員長から理事と御協議の上政府がこちらへ御出席なさるよう御計ひ願ひたい
〔「贊成」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=3
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004・小山谷藏
○小山委員長 只今喜多君の御發言は尤も千萬な御意見であると委員長も認めます、此の重要なる提案を既に貴族院に先に廻はして、さうして貴族院から廻付して來たことに付て御不滿の御意見がありましたが、是は事實さう云ふことになつてしまつたのですが、併し少くとも之を審議すると云ふことに付きましては、只今喜多君の言はれた通り總理大臣首め關係閣僚諸君は、此處に顏を御出しになつて審議を進むべきものなりと云ふことは、委員長も同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=4
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005・楢橋渡
○楢橋政府委員 今喜多委員から申されましたことは御尤もでありまして、私と致しましても出來るだけ御趣旨に副ふやうに、總理及び各閣僚をこちらへ出席願ふやうに御話致したいと思つて居ります、丁度貴族院の方に豫算も廻はつて居りますが、兎に角出來るだけ時間を見てこちらへ參りまして、十分な御審議を賜るやうに取計ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=5
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006・小山谷藏
○小山委員長 御質問の點は今法制局長官の言はれる通り、松本國務大臣が今お見えになるさうですが、松本國務大臣及び法制局長官に御質問の方は御質問を進めて參りますか、或は又喜多君の言はれた通り、贊成の方もあつたやうでありますが、他の國務大臣が全部と云はぬでも顏が揃ふのを待つて質問を進めるか、御意見如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=6
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007・清水留三郎
○清水委員 私は主として内務大臣を要求して居りますが、伴し内務大臣がお見えになるまでは政府委員でも結構であります、政府委員に二、三のことを聽きたいと思ひますが、他の御方で法制局長官なり或は松本國務大臣が只今御出席になつた場合御質問がありますれば、それへ先づ御質問願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=7
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008・小山谷藏
○小山委員長 どなたかありませぬか――ありませぬければ在席の儘暫時休憩致します
午前十時五十二分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=8
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009・会議録情報2
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午前十時五十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=9
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010・小山谷藏
○小山委員長 開會致します、松本國務大臣がお見えになりましたから、松本國務大臣に對する質問の方から一つ願ひます――本領君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=10
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011・本領信治郎
○本領委員 「ポツダム」宣言の受諾に伴つて發する命令に關する件の提案理由の説明に依りますと云ふと、聯合國の最高司令官の要求を實施して行く上に、行政措置では到底間に合はぬ、そこで強制力のある法制的な措置に出でざるを得ないと云ふので、此の法案が提出された如くでありますが、理由の説明に依りますれば、其の聯合國最高司令官の命令の實施が法制局長官の言葉を借りて言ひますれば、時に極めて急速を要することがあると云ふことであります、確かにさうだと思ひますが、其の言ふ所の時に極めて急速を要すると云ふことの解釋は政府に於てどう云ふ風に下して居らるるか、其の點を先づ御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=11
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012・松本烝治
○松本國務大臣 此の緊急勅令に依りまして、勅令其の他の命令を以て規定を致さなければならぬ場合は、命令が立法を要する場合であります、立法を要しない、即ち立法事項に亙らない命令ならば、敢て此の勅令を煩はす必要はないのであります、立法事項に付て關係を持つて來る、即ち法律を廢止し、變更し或は制定しなければ出來ぬやうなことに付ての命令がありましたやうな時には、此の緊急勅令に依りまして、勅令以下の命令に依つて立法事項を定める、さう云ふ趣意でございます、今までの實際から申しますと、さう云ふ場合は屡屡出來ます、殊に議會が開會されて居りませぬ場合に、直ちに或は極めて近い期日を指定して或ることを命ぜられます、是がどうしても法律を要する事項であると云ふ時には、此の緊急勅令に依りまして、勅令其の他省令に依りまして立法事項のことを規定する、さう云ふやうなことでありまして、今まで出て居りまする澤山の勅令或は省令は概ね非常に早く、即ちもう直ぐとやらなければならぬやうな指令であつたのであります、已むを得ず此の緊急勅令に依つてやつたと云ふのであります、此の緊急勅令は詰りさう云ふ委任をすると云ふ意味の緊急勅令と御承知を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=12
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013・本領信治郎
○本領委員 只今の御答辯ですが、敢てさう云ふことを聽きます所以は、今般此の線に從つて勅令が發布せられたものの中には敢て聯合軍司令部の命令を俟たなくても、それより先に我が國の法令に依つて十分措置し得るやうなものもあると認められるのであります、それを政府の方に於て怠慢其の他の理由に依つて措置しないで置いて、そして聯合國の司令部からの命令があれば如何にもそれが極めて急速を要することであるかの如くに印象づけて、倉皇の間に措置をすると云ふことは不見識も甚しいし、又實際にさうした措置に依つて處置せられる國民の側から云つて甚だ迷惑千萬、さう云ふことになるのであります、具體的の例を取つて見ますれば、例へば住宅緊急措置令と云ふやうなものでも、從來の日本にある法律に依つて、此の程度のことなら幾らでもやれた、それをやらずに置いて聯合國の方から指令があつたからと云ふので、如何にも急速を要するが如き裝ひをすると云ふことは、甚だ私は政府側の政治に對する不熱心である、信頼の出來ない態度である、斯樣に考へられるのであります、此の點は特に今度に於て、此の法案が通ります後に於ても御注意を願ひたいと思ふ
それからもう一つ、今のは單に時間的な關係に於て措置を急ぐと云ふことでありますが、いま一つの點は此の中に見受けられた言葉として「特に必要ある場合に於ては」と云ふ言葉がありますが、此の「特に必要ある場合」と云ふ言葉の意味は時間的關係以外に何等かの内容を持つて居るものでありますか、此の點を二つ御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=13
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014・松本烝治
○松本國務大臣 只今御擧げになりました住宅の臨時措置令の内容の細かいことは私承知致して居りませぬ、是はやはり立法事項と思ひますので、斯う云ふ法律が前の議會で既に出來て居つたら出來ませう、併し前の法律に斯う云ふ法律がなかつたとすれば、是はやはり法律を要したであらうと思ひますが、何か今例に御擧げになりましたもので、此の通りのことを法律なしに出來るやうなことがございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=14
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015・本領信治郎
○本領委員 それは戰時臨時措置法に依つて十分出來る、又それに依つてやつて居つたのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=15
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016・松本烝治
○松本國務大臣 總動員法を若し使ひましたなら出來たかも知れませぬ、併しながら終戰後に於きましては、總動員法を用ひると云ふことは、或る程度出來ぬことではないかも知れませぬが、總動員法制定の際の精神から申しまして、戰さが濟んでからは總動員法を使はないと云ふことが先づ精神に適つたことと考へますので、恐らくは當時の政府はどう考へて居つたか存じませぬが、終戰後に於て總動員法に依つて斯う云ふことをやることよりも、寧ろ此の緊急勅令に基いて斯う云ふ住宅緊急措置令と云ふものを出したことと考へて居ります、詰り此の緊急勅令はどうしても立法しなければならぬ、其の場合に議會はない、指令に從はんと欲すれば立法をしなければならぬと云ふ時に、之に依つて勅令、或は省令に依つて立法事項に關する規定を設けると云ふ爲に出て居るのでありまして、「特に」と云ふのはさう云ふ意味かと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=16
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017・本領信治郎
○本領委員 私の申上げた點が徹底して居ないかと思ひますが、司令部の命令を俟たずしてやれることはやつて貰ひたいと云ふことが私の申上げる趣旨なんです、それを如何にも司令部の方の指令を俟たなければと云ふやうな、どうせ指令があるものだらうと云ふやうな考へ方だとか、さう云ふ消極的なやり方は此の際思ひ切つて清算して貰ふ必要がある、殊に聯合國の指令と云ふものが非常に強い「オーソリティ」を持つと云ふ限り、動もすれば其の「オーソリティ」に藉口して、對策の不備怠慢を免れんとする所の傾向が今後ないとも保障出來ぬ、斯ふ云ふ憂ひを持つから、私は今さう云ふことを國務大臣を通じて政府に要求した譯なんです、それから斯うした勅令其の他の措置が執られるのは、帝國議會閉會中云云と云ふ憲法の第八條第一項に依られたものと思ひますが、今後の我が國の政治情勢を見てみますと、此の聯合國司令官の指圖に從つて處置しなければならない事項と云ふものは、非常に我が國政治の大きな部分を占めると考へられます、隨て政府も斯う云ふ提案をされたのでありますが、行政措置でどうにもならない、そこで斯う云ふ措置に出る、其の行き方の外にまだ考へるべき餘地がないであらうか、それ以外の方法が考へられないだらうか、此の點に付て政府は十分に御考へになつたかどうか、行政措置でやれないから、直ちに此の種の方途に出られたのか、他にそれ以外の方法を考へたけれども、是が差當つて最も適當として、此の措置に出られたのであるかどうか、其の點を一つ御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=17
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018・松本烝治
○松本國務大臣 只今御述べになつた聯合軍司令部の指令と云ふものを待つて、初めてのろのろ事をやると云ふやうなことではいかぬと云ふ御意見は洵に御尤もで、私共も左樣に考へて居ります、御同感でございます、少くとも政府に於ては左樣なことのないやうに努めて居る積りでありまして、今後も努めて參りたいと考へて居ります、而して緊急勅令の出來ました時に他にやりやうはなかつたかと云ふ御話と思ひまするが、是はどうも仕方がなかつたらうと思ふ、即ち此の緊急勅令以前に於て何等かの一般的の委任をして居る法律でもあつたら、或はそれを用ひることも出來たでありませうが、先程述べました通り、終戰後に於て總動員法とか、或は戰時緊急措置法と云ふやうなものを用ふることは、是は立法の精神に反する、此の議會でああ云ふ非常的な立法がされました精神から見まして、終戰後に於てはああ云ふものに依ることは寧ろ此の帝國議會の御意思に反くことであると思はれる、さうなればどうしても立法をしなければならぬ指令が來た時にどうして立法するか、是は仕方がないから、命令に委任して立法せしむる、さう云ふ法律に代るべき緊急勅令を出したと云ふことと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=18
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019・本領信治郎
○本領委員 今まではさう云ふ方途に出られることを、已むを得ないこととして了承すると致しまして、今後まだ斯う云ふ問題が非常に多いと云ふ場合に、何處まで斯う云ふ方法に依つて行かれるか、對案として他に何等かの方法を考へて居られるか、私の方から具體的に申上げるならば、大體此の種の問題の處置ばかりでなしに、議會の開會の期間が短期に過ぎはしないか、もつと長期の議會が開會せられて居るならば、其の都度議會に諮ることも出來る、又實際命令に依らずして議會に依ると云ふことがそれが望まれて居る、民主主義的方向にも適ふ所以でもあるのでありまするから、議會の會期をもつと長期にする、更に又閉會中に於ても常置委員會のやうなものを設けて、それに依つて出來るだけ立憲的なやり方の軌道を外さないやうに心掛ける、斯う云ふことが必要でないかと思ふのですが、之に付ての御所見は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=19
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020・松本烝治
○松本國務大臣 只今仰せになりましたことは、憲法改正を待つて出來ることと思って居ります、而して憲法改正に付ての政府の意見と云ふことは申上げ兼ねますが、此の改正の調査に携つて居ります私一己の考へとしましては、只今御述べになつた通りでありまして、通常議會を憲法に於て三箇月と限定して居るのは、是は確かに短きに過ぎるのではないか、是等は宜しくもう少し長いことにする方が宜いのではなからうか、又或る考へやうでは、何時でも議會がある、即ち萬年議會と云ふ考へやうもあります、併しそれが果して日本の國情に於て適當であるかどうかと云ふことは多少の疑ひがあります、假に如何に長く議會の期間を定めましても、やはり議會のない時が出來るのでありますから、其の議會のない時に即應する爲に、成べく議會の意思を反映するやうな委員會の如きものの組織を認めると云ふことは、確かに一つの考へやうでありまして、私一個としては之に付て相當考へて居ることもあるのであります、只今御話の御意見は憲法改正と云ふ問題と致しましては私も同じやうな考へを大體持つて居ると云ふやうに御承知を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=20
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021・本領信治郎
○本領委員 等しく聯合軍司令部の意向を體して政治上の措置をして行くに當りましても、唯政府だけがそれを餘儀なきこととしてやつたと云ふ形態よりも、國民がそれを納得し、同意してやつたと云ふ形態を採つた方が、遙かに「ポツダム」宣言受諾に誠意を示す所以になるかと思ひます、隨ひまして之を從來の單なる法制に從つて帝國議會が閉會中で已むを得ないから、勅令、閣令、省令等に依つてやるのだと云ふ其の簡單な一本筋の考へ方よりは、或は憲法改正には觸れますけれども、さう云つた議會の之に參畫し得る所の機會の幅を廣くするとか、或は此處で具體論を敢て私案を申上げませぬが、それまでの期間には何等かの他の民意がそれに反映するが如き措置を執られることが、一つ政府に於て考へて貰ふ大きな材料でないか、斯樣に考へます、其の點一つ御含み置き願ひたい
問題は變りますが、「ポツダム」宣言受諾に際しまして、我が方から受諾に先んじて申入を行つた、それに對して聯合國側から「メッセージ」が日本政府に傳達せられた事實がありますが、其の際に其の「メッセージ」の中に斯う云ふ文句がある、降伏と同時に日本皇帝及び日本政府の統治權は降伏條件實施に適當と思惟する措置を執る所の聯合軍最高指令官の下に置かれるものである、是は日本側が受諾に際して附けた希望條件と云ひませうか、詰り「ポツダム」宣言の受諾が君主統治者としての天皇の大權を損ずるが如き如何なる要求をも此の宣言は含んで居ない、さう云ふ諒解の下に受諾を申込むのだと云ふことに對する囘答に該當する項目だと思ひますが、此處で私は敢て御尋ねしたいのは、日本皇帝竝に日本政府の統治權が最高司令官の下に置かれる、其の下に置かれると云ふ言葉の解釋であります、是は原語に依れば「サブゼクト」と云ふ言葉を使つて居つたと思ひますが、之に對してどう云ふ解釋を下して居られるか、之を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=21
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022・松本烝治
○松本國務大臣 此の下に置かれると云ふのは、今仰せられた通り慥か「サブゼクト・ツー」と云ふやうな言葉を使つて居るかと思ひます、即ち聯合軍最高司令官が命ずる所のことには從はなければならぬ、左樣な意味と思ふので、別にそれ以外の意味はないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=22
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023・本領信治郎
○本領委員 更に御尋ねしたいのはやはり其の「メッセージ」の中に於きまして「ポツダム」宣言の條項に則り、究極に於ける日本政府の政體が、自由に表明された日本國民の意思に副つて定めらるべきものであると云ふ言葉がありますが、謂ふ所の日本政府の政體と云ふ言葉の解釋でありますが、是はどの程度のことを指して居ると政府の解釋して居られるか、言葉を代へて言ひますと、我が國に於て一般が理解して居ります所の國體の觀念は聯合國側の言ふ所の日本政府の政體と云ふ言葉の中に含有せられて居ると解釋して居られるのでありますから、此の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=23
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024・松本烝治
○松本國務大臣 此の囘答の中には最終的の日本國の政府の形體はと云ふやうに書いて居ります、之に對してこちらから出しました方のものには、今此の文書自身がございませぬが、私の記憶では、詰り我が國體を維持すると云ふことに付ては、是は「ポツダム」宣言を受諾することに依つて粉淆されないと云ふことの諒解の下に此の申出を受けようと云ふ意味のことが言つてあつたことに對する囘答だと記憶して居るのです、果して然りとすれば國體とか政治の形體と云ふやうな言葉に付ては少くとも囘答を致した聯合國側に於てはさう違つたやうな意味を必ずしも付けて居るのではなからうと思ふのです、即ち我が憲法を如何に變更するか、憲法中の國體に關するやうな規定を如何に變更するかと云ふやうなことは、惟ふに日本國國民の自由に表明する意思に依つて、決定せられると云ふことに向ふは言つて來て居るものと思ひます、今此の文書を見ますと、右宣言は天皇の國家統治の大權を變更するの要求を包含して居らざるやとの諒解の下に受諾すと云ふやうに言つて居ります、それに對して斯う云ふ囘答が來て居るのでありますから、此の所謂政府の形體と云ふ中には、我々が國體と云ふやうに考へて居ることも、包含して居るものではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=24
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025・本領信治郎
○本領委員 私が懸念して居ります點は、日本政府の政體が日本國民の意思に依つて定めらるべきであると云ふ先方の囘答は、國體の變更等に關しては結局それは日本の問題だ、聯合國側の關知する所でない、斯う云ふ風な返答として此の文書が書かれて居るのか、果して然りとすれば先程の、日本皇帝及び日本政府の統治權が聯合國の最高司令部の下に「サブゼクト・ツー」すると云ふことと果して矛盾しないか、それは兩者の關係はどう理解されて然るべきか、此の點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=25
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026・松本烝治
○松本國務大臣 是は全然矛盾しないと思ふ、我が國の只今の状態に於きまして、天皇が統治權を總攪せられて居ると云ふことは、何等變更も何も受けて居りませぬ、唯所謂「サブゼクト・ツー」と云ふのはどう云ふことかと申せば、向ふから言ふことには應じなければならぬと云ふことでありまして、是は國内の關係に於て統治權の完全にあると云ふことと何等關係のないことである、例へば條約に依つて或る義務を負うて居れば、其の相手方に對しては、其の條約上の義務を履行するやうなことをしなければならぬ、それと同じやうなことで、降伏に依つて向ふの最高司令官の命ずる所に從はなければならぬと云ふことに相成つて居るので、我が憲法上の天皇の統治權に對して、何等粉淆を加へて居るものとは考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=26
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027・本領信治郎
○本領委員 條約は是は雙方的意思の合致に依つて決定せらるるものでありますが、此の場合は統治の内容に付ては一方的意思に依つて決定せらるべき運命にあります、「サブゼクト・ツー」の解釋は、是は全く一方の意思と云ふものを無視した形態を執るものでありますから、私は此の點をもつと明確にして置かなければ、折角茲に日本政府の政體が自由に表明された日本國民の意思に俟つて定められるのであると云ふ、如何にも公正なるが如き文書があるにも拘らず、實際の措置が他國の一方的意思に依りて我が國の政體乃至は其の中に含まれる所の國體が決定せられる危險を私は感ずるのであります、此の點は今日の政府に於て是非共明瞭にしなければ國民が非常な不安の下に長く低迷しなければならない状態に曝されるのであります、私は只今の國務大臣の解釋では、其の點に付てまだ言ふべきことを十分に言つて居られないと思ふ、私は斯う云ふ點に付ては愼重な態度を執られるのは結構であるれけども、愼重と云ふことと曖昧にすると云ふことは、是は話が違ふのですから、現在の國民の方でも亦あまり斯う云ふ點に觸れて居ない氣持があり、政府の方でも觸れたくないやうな氣持があつて、もやもやして居ると云ふことは諸多の問題の解決に、非常な支障を來すと思ふから、思ひ切つて觸れたくない所でも觸れて、さうして解決を付けて置く必要があると私は斯樣に信じますが、重ねて御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=27
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028・松本烝治
○松本國務大臣 只今の御話は何か既に我が國の國體が、變更されて居るかの如きやうな御考へに立つてのことと思ひまするが、私共は左樣なことは絶對にないと、斯樣に思つて居るので、例へば條約を結びまして、さうして或る斯う云ふ内容の法律を拵へなければならぬと云ふ義務を負ふと云ふやうなことは澤山あります、從來に於てさう云ふ條約は幾つも結んで居ります、之に基いて之を御批准になつてしまへばやはりさう云ふ法律を作らなければならぬ義務が出來る、さう云ふことの例は今までもあるのです、降伏と云ふことを致しました以上、降伏の結果として聯合國最高司令部の命ずる所に依らなければならぬと云ふことになつて居ると云ふだけの話であります、之に依つて我が國の天皇の統治權と云ふものが何等完全性を失つたと云ふことは言へぬと思ひます、私共は左樣に解して居るので、唯聯合國最高司令部の命じて來た所には、其の通りにしなければならぬ、外に對して其の通りにしなければならぬ、是が降伏の結果生じた當然の結果でありまして、内に對する此の統治權自體の圓滿、完全性と云ふものは、之に依つて害されて居るものとは思ひませぬ、是れ以上は或は御意見と違ふかどうかは承知しませぬが、左樣に解して居ると御諒承願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=28
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029・本領信治郎
○本領委員 一應國務大臣の御意見としては拜聽致しましたが、私一つ實際問題に付て伺ひます、是は私は何も其の天皇の大權のみに付て言ふのでなくて、政府の持つて居る所の統治權に付ても私は言はんとするものでありまするが、其の前に一寸事務的に伺ひたいのであります、現在の戰爭犯罪人逮捕の聯合國司令部の要求は、確かに日本政府を通じて逮捕せしむるが如く要求して居るのだと思ひますが、それに間違ひありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=29
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030・楢橋渡
○楢橋政府委員 御答へ致します、日本政府を通じて逮捕すると云ふ意味ではないのです、日本政府に逮捕方を頼んで居ると云ふことであつて、日本政府を通じて動かしてやつて居ると云ふ意味ではない、取次をやつて居ると云ふだけなのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=30
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031・本領信治郎
○本領委員 それでは聯合國總司令部が逮捕しようと思へば、直接に逮捕し得る状態に現在あるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=31
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032・楢橋渡
○楢橋政府委員 さうです、さう云ふことになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=32
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033・本領信治郎
○本領委員 さう致しますと、先程國務大臣が否定せられた、日本の統治權と云ふものが國内に於て完全に行はれて居ないと云ふ事實を證明するのではないのですか、此の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=33
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034・松本烝治
○松本國務大臣 完全に行はれて居ると云ふことと何等矛盾しないと思ひます、日本の統治權はやはり其の儘行はれて居る、日本の法律に依つて日本の犯罪に付て逮捕等がされると云ふことは、何等妨げられて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=34
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035・本領信治郎
○本領委員 聯合軍總司令部が日本政府を通ぜずして自由に日本國民を逮捕をすることが出來る、さう云ふ状態にあるのだ、唯政府を通じて政府に依頼して居るのだと云ふやうな法制局長官の御話でありましたが、其の依頼をされたとしても、其の依頼を實際に實行する場合には、日本政府としては日本の國法を無視されるのか、それともやはり向ふの依頼を全うすると同時に、日本國法に從つて其の依頼を全うされようとするのか、此の點をもう一遍御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=35
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036・楢橋渡
○楢橋政府委員 現在の日本は保障占領をされて居りまして、其の保障占領の發動としてやつて居るのでありまするから、其の點に付てはやはり制約を受けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=36
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037・本領信治郎
○本領委員 具體的に伺ひますが、憲法第五十三條に依りますれば「兩議院の議員は現行犯罪又は内亂外患に關する罪を除く外會期中其の院の許諾なくして逮捕せらるることなし」是は憲法の規定でありますが、現に此の議會の開會中に於て、聯合軍總司令部から戰爭犯罪人と指定せられました池崎忠孝、太田正孝兩氏が拘引せられる場合、日本の憲法に從へば、是は其の院の許諾なくして逮捕せられることはない譯でありますが、此の院の許諾を政府としては得られたのであるか、得られなかつたのであるか、私は得られて居らないと云ふ風に事實を見て居るのでありますが、此の場合此の憲法と云ふものが無視せられて居ると云ふ事實は、是は已むを得ないこととされて居るのであるか、政府の解釋はどう云ふことになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=37
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038・楢橋渡
○楢橋政府委員 憲法第五十三條は、是は日本政府自體がやる時でありまして、現在聯合軍がやる場合に於ては致し方ないと思ひます、是は聯合軍が、例へば日本は警察官其の他に依つて、頼まれて補助と言ふか手傳ひはして居りますが、やる主體はやはり聯合軍がやつて居るのでありまして、日本政府自體がやる場合の五十三條の規定でありまして、自ら此の場合は別だらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=38
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039・本領信治郎
○本領委員 具體的問題に突當りますと、私は先程の松本國務大臣の解釋がどうも諒解し兼ねる、五十三條の規定があるにも拘らず、日本政府がやるのでないから是は已むを得ない、斯う云ふ解釋であるならば、然らば他の條項、天皇の統治權、大權其の他國内の全般の問題、即ち憲法の内容の全體に付て、聯合軍司令部がやらうと思へばやられてしまふと云ふことになると、是は現在の所に於ては「サブゼクト・ツー」の解釋が、日本の統治權と云ふものはあつてなきが如しと云ふことに解釋するのは、是は當り前ではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=39
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040・松本烝治
○松本國務大臣 左樣に御解釋になる御見解もあるかも知れませぬが、私共は左樣に考へて居りませぬ、即ち占領軍が、駐屯軍が、進駐軍が茲に占領致して居る、占領を致して居る軍の働き自體と云ふことは、是は日本政府の統治權とは關係のないことです、其の占領して居る所の軍の働き自體を拘束することは、是は出來ないのであります、其の働きで直接にやる場合であつて、日本の統治權が其の範圍に於て妨げらるることは是は事實であります、例へば日蝕がある、日蝕があるが故に太陽がなくなつて居ると言ふことは間違つた見方で、日蝕があつて光は遮ぎられて居ると云ふことはあります、併しながら太陽自身はなくなつて居らない、我が憲法上の天皇の統治權と云ふやうなものはなくなつても居らぬ、何にも變更もされて居らぬ、併しながら其の日蝕のやうな進駐軍の占領して居ると云ふ事實に依つて行使が妨げらるると云ふことは、是は有り得ることで、左樣に私は解して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=40
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041・喜多壯一郎
○喜多委員 議事進行に付て……委員長を通じて、今國務大臣は進駐軍と云ふのと占領軍と云ふのと二つの言葉を御使ひになつた、私は之を明かにして戴きたい、一體今日の日本は「ポツダム」宣言受諾に依つて、敗戰したのか、終戰したのか、政府はそれをどう見るか、終戰なりや敗戰なりや、隨て無條件降伏と云ふことと、今本領委員が續けて御尋ねして居る點で、あなたは注意して言葉を御使ひになつたが、此の戰爭は終つて居るのか、無條件降伏と云ふ「ミズーリ」艦上に於ける事實をどう見るか、此の點に關する政府の所信を伺ひたい、松本國務大臣の學説的な説明なぞは伺ひたくない、と言ふのは斯う云ふことです、此の委員會は兎に角政府の不見識極まる態度に依つて、貴族院に先に掛けられた、さうして一つは本院から貴族院に廻付せられる法律案がなかつた爲であらうが、それが十分貴族院では審議せられず、不幸にして衆議院では此の重大問題に關する審議は明日一杯しかない、そこで政府は今日のやうな政府委員の出席の仕方では、そこに求めて居る、總理大臣以下國務大臣への質問も難しいが審議は進められない、松本學説などは私は聽きたくない、政府の所信として、さう云ふやうな點に付て疑があるから、委員長から質して戴いて本領君の質問を進められんことを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=41
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042・小山谷藏
○小山委員長 喜多君に御相談致しますが、只今の喜多君の御要求は總理大臣に對して委員長から交渉せよと云ふことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=42
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043・喜多壯一郎
○喜多委員 それよりも今總理大臣は御出席がなく、其の代りとして恐らく御出でになつたのだらうと思ひますので、政府の代表として松本國務大臣の御所信を議事進行上御求めあらんことを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=43
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044・松本烝治
○松本國務大臣 私の申すだけのことは申しました、更に重ねて申すことはございませぬ、且つ此のことに付ては相當愼重に考へて見たいと思ひますので、餘り學術的な論議を重ねること自體も相當考慮せねばなるまいかと思ひます、私の今まで申したいことで、答辯をして居るものと御考へを願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=44
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045・本領信治郎
○本領委員 國務大臣の御意見は私にも分ります、併し之を以て本問題に關する質疑應答を終了すべき状態には達して居ない、是も亦認めざるを得ないのであります、併しながら此の議會に不用意な言葉を發せらるることを望むものではありませぬから、後の機會にでも是は十分に所信の程を明かにして貰ひたい、是は私の疑問にあらずして、國民の現在の思想動向の底流に――是は敢て希望せざる如き方向へ解釋しようとするものばかりではありませぬ、本當に從來の言葉で言へば、日本を思ふ忠誠心で滿ち滿ちて、此の問題の明確なる判斷を期待して居るのでありまするから、此の點を明かにして、國民の疑惑に答へられる必要があると思ひます、或はそれが一つの聲とならないかと言つて自らの眼を掩ふて行くと云ふ行き方では、私は今後の謂ふ所の民主政治は出來ないと思ふ、此の點にもつと大膽に國民の前に日本の現状を知らして、架空の白己頼みでなくて、本當に日本の陷つて居る現状から日本が再出發するやうな印象を與へることが、本當に日本が立直り得る所の「ベース」を與へるものだと私は解釋します、殊更に私は政府の方の失言的囘答を望まんとする者ではありませぬから、此の際は敢て此の問題をそれ以上には申上げませぬ、唯一言だけ御伺ひして置きたいことは、法制局長官の先程の御答へで大體明かでありますが、議員の會期中の逮捕は、政府としては憲法第五十三條の規定と云ふことに付て十分考へを廻らされて居るにも拘らず、此の際は其の必要なしと見られてさう云ふ判斷を的確に下して行くと云ふことと解して宜しいか、此の點を念の爲め御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=45
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046・松本烝治
○松本國務大臣 先程進駐、占領と云ふ言葉が曖昧であつたと云ふ御疑問があつたやうでありますが、私共の解して居る所は、進駐軍は國際法上から所謂保障占領をして居る、仍て進駐軍と云ひ或は占領軍、或は占領と云ふ言葉を使つたと思ひますが、其の意味は保障占領と云ふ意味に於て御聽取を願ひたい、而して憲法の保障して居る所の法律に依らずして逮捕せられることなしと云ふことは我が國自體の、政府のやることに付ての保障規定であります、進駐軍自體の保障占領に伴つてやる所の行爲と云ふものには關係のないものであります、恰も日本の臣民が外國に於て外國軍隊に逮捕せられると云ふやうなことと同じで、憲法の規定自體とは直接交渉がない、左樣に解して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=46
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047・濱田尚友
○濱田委員 最近の新聞は、元進駐軍と云ふ言葉が隨分見えて居りましたが、殆ど統一されて占領軍と云ふ言葉が使はれて居るやうでありますが、是はどう云ふことでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=47
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048・松本烝治
○松本國務大臣 其の理由は能く承知致しませぬが、要するに進駐軍は保障占領して居ると云ふのだから、どちらの言葉を使つても同じになるのだらうと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=48
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049・楢橋渡
○楢橋政府委員 本領委員の御尋ねになりました點でありますが、憲法第五十三條は日本政府がやる場合でありますから、私最前答へまして、今囘の逮捕に付ては致し方ない、占領軍がやるのだから致し方ないと云ふことを申しましたが、然らば政府は之を全然老慮せずに、何もしなくて放任した、向ふの勝手にやれと言うて、それに對して何もしなかつたのかと云ふ御尋ねでありますが、實は御答辯申上げるのが「デリケート」でありますから、差控へますが、出來るだけのことを致したと云ふことを御答へ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=49
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050・本領信治郎
○本領委員 其の逮捕せられると云ふ事實を阻止することは、或は出來なかつたとしても其の逮逮せられる場合に、院の許諾なくして云々と云ふことがありますが、其の許諾を求めらるる手續は御執りになつたのか、それも執る必要なしとして放任せられたのか御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=50
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051・楢橋渡
○楢橋政府委員 是は院の許諾を求むることは正式に致して居りませぬ、唯衆議院の書記官長と非公式に色々相談致したことはあります、尚ほ先方へ、言つて宜いかどうか分りませぬが、議會開會中であるから、何とか我々の希望としては、議員の人は議會が濟むまで、實は逮捕を向ふ側に於ても延ばして貰ひたいと云ふことに付ては十分の考慮を拂つたことをやつたと云ふことを申上げたいと思ひます、さう云ふことは中々「デリケート」でありますから、詳しくは申上げられませぬので、御諒承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=51
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052・本領信治郎
○本領委員 一應是で私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=52
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053・木下信
○木下(信)委員 一寸本領委員の御質問に關聯して、松本國務相が居られますので、此の際伺つて置きたいと思ひます、聯合軍最高司令官の命令のある場合に於ては、憲法は一切之を無視されても致し方ないと云ふことに解釋して宜しいのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=53
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054・松本烝治
○松本國務大臣 一寸抽象的な御話で分り兼ねますが、聯合軍司令官の命じました場合に、憲法に依つて措置を致したいと云ふ趣意で此の緊急勅令の如きものは出て居ります、若し憲法に依らずして措置すると云ふことなら、敢て法律に代るべき命令に依りまして、命令に法律と同一なことをさせると云ふやうな委任をする必要はなかつたと思ふのであります、憲法に基いて司令部の指令を實現する爲に此の緊急勅令は出來て居つた、さう云ふやうに御承知を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=54
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055・木下信
○木下(信)委員 私の質問が簡單であつた爲に國務相に能く分らなかつたかも知れませぬが、只今の議員の逮捕の問題に付ても、畢竟するに最高司令部でやる場合に於ては、憲法を無視しても實行出來ると云ふ状態にあるものと考へられます、私は是は相當大きな問題に觸れると云ふことを惧れますので伺ふのでありますが、例へば憲法第三條の「天皇は神聖にして侵すへからす」斯う云ふ場合に恐らく是は法的に解釋すれば、政治上にも刑事上にも責任のないと云ふことを宣明されてあるものと思ふ、私は爾く確信して居るのであります、然るに聯合國が場合に依つて此の憲法上の 天皇の地位と云ふものを無視された場合に、我々はそこに非常なる大きな問題に接觸しなければならぬと云ふ場合があると思ふのであります、さう云ふやうな場合を考へますると、聯合國が例へば戰爭犯罪人として既に宮樣にも及んで居ると云ふやうな状態から色々類推致しまして、我々の恐怖しなければならぬやうな事態をも想像し得るのであります、さう云ふ場合を考へると、聯合國の司令官と云ふものの命令一下の下に、憲法と云ふものは手もなく蹂躙さるると云ふ風に考へて居ることは、如何にも我々は苦痛に堪へないのであります、左樣な立場からして御伺ひするのでありますが、其の邊は非常に「デリケート」な問題でありますから、愼重に御考へになつて御答へを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=55
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056・松本烝治
○松本國務大臣 先程御答へしましたやうに、今囘の或る議員が逮捕せられたと云ふことは、憲法の規定とは交渉のないことでありまして、憲法の規定は日本の國の働きとして、例へば日本の警察官と云ふやうなものが議員を逮捕する、或は檢事の働きに依るとか、或は豫審判事の許可を得て拘置するとか、さう云ふやうなことに付て、さう云ふことは議院の承諾がなければ出來ぬと云ふことを規定して居るので、今度のことは此の憲法の適用とは交渉がないことなんです、憲法が蹂躙されたとか何とか云ふ問題ではないのです、左樣に御承知を願ひたい、而して他のことは、私共は左樣なことを想像をして論議をすることは避けたいと思ひます、どうぞ左樣に御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=56
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057・木下信
○木下(信)委員 今少し十分に伺ひたいのでありますが、松本國務大臣の御話もあることでありますから、其の問題は進んで追究致さないことに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=57
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058・濱田尚友
○濱田委員 只今の憲法の解釋に付ては私共幾多の疑問を殘すのでありまするが、茲で一點御伺ひを致したいのであります、「ポツダム」宣言を受諾されましたのは 陛下の御意思に依る所である、詰り憲法第五十五條の「國務各大臣は天皇を輔弼し其の責に任す」此の憲法第五十五條の輔弼の責から行きますれば、政府も度々豫算總會や本會議の席上に於て、此の問題に付ては御答辯をなさつて居られるのですが、終戰の際に此の「ポツダム」宣言を受諾するや否やと云ふ問題に付て御前會議が開かれ、更に其の前に閣議が開かれて、總理大臣以下閣僚の意見が一致しなかつた、一致しないで 陛下の御裁斷を仰いだ、閣僚の意見一致せざる儘陛下の御裁斷と云ふことで之を受諾しましたのは、所謂國務大臣の輔弼の責と云ふ建前から言つてどう云ふ風に御考へになりまするか、左樣な意味で受諾を致されたと言はれて居る「ポツダム」宣言が日本の國内に働きを致しまする憲法上の解釋と、それから今色色と仰せられた國務大臣の御見解に從つてどう云ふやうな形式を以て、どう云ふ解釋を此の問題に對して與へて居られるか、此の點を先づ伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=58
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059・松本烝治
○松本國務大臣 「ポツダム」宣言を受諾して、さうして所謂降伏をしたと云ふことに付て如何なる經緯でなされたかと云ふことに付ては、私自體は直接には能く承知して居りませぬが、併しながら此のこと自體は勿論國務大臣が輔弼の責に任ずべきものである、内部のことは承知して居りませぬが、併しながら此のことが出來ました此の行爲に付ては、是は國務大臣が全部輔弼の責任を負はれたものと私は解して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=59
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060・濱田尚友
○濱田委員 此の問題に對する質問は又他の機會に讓るとして、暫く留保を致して置きます、日本の民主主義的傾向を助長する其の障碍となるものを除去すると云ふ建前に於て、先般此の委員會に出席をして居られる同僚中谷委員が、豫算委員會で市制中改正法律案、町村制中改正法律案が第八十一通常議會に提出をせられました時の状況に遡つて、内務大臣に豫算總會で質問をして居られました、所が此の質問應答を速記録ではありませぬが聽いて見ますると、内務大臣は本問題に付ては次の議會に改正法律案の提出をすると云ふことを言つて居られるさうでありますけれども、是は國務大臣に一寸私の話を御聽き願へば直ぐ分るのであります、第八十一議會は端的に申上げますと、鐵と石炭と船舶と航空機と「アルミ」の五大重點産業を増強することを當時目的として、之に論議を集約して開かれた議會であります、所が八十數件の法律案が出まして、内務省が之に便乘を致しまして官權の伸張を致します爲に、わざわざ市制中改正法律案、町村制中改正法律案を提出致しました、此の要點は所謂官選選擧で衆議院議員選擧を行ひまして、其の直後に殆ど全國的に市會議員の選擧と町村會議員の選擧が行はれまして、是亦衆議院議員選擧に劣らざる官選的推薦選擧の形態が執られた、其の市會議員、或は町村會議員が推薦選擧しました市長の候補者、町村長の候補者が、市長に關しては内務大臣の認可を要し、更に六大都市に限つて内務大臣が之を上奏致しまして、御裁可を經て閣議に掛けて發令すると云ふ手段を執つたのです、是が改正案の重點です、それから町村制に關しましては、町村會議員が選擧を致しました町村長の候補者が、府懸知事の認可を要すると云ふ法律案でありまして、之を端的に申上げれば、頗る便乘的の官權伸張の法律案であると云ふので、當時世間は非常に東條内閣に媚び諂つたやうに思つて居るが、實は新たに選ばれた一年生の議員でも、古い議員でも、非常に此の問題を論議した、殊に衆議院の中には御承知の通りに市會議員、町村會議員、或は又町村長、市長其の他自治體の公職に居られる人が澤山居るのでありまして、所謂選擧法を通過さして今後新たに選擧をやらないとも限らないと云ふ極めて「デリケート」な段階に來て居るのですが、何故一體斯う云ふ問題を次の通常議會の法律案として出すと云つたやうな方法を執つて、此の議會に選擧法の改正と竝行して之を御出しにならなかつたか、此の何故御出しにならなかつたかと云ふ御見解、御答辯を伺つて、此の問題に對する質疑を私は後で進めたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=60
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061・松本烝治
○松本國務大臣 是は實は甚だ恐縮でございますが私は關知して居りませぬので、御答へは或は内務大臣からでも御答へした方が然るべきだと思ひます、御尤もなことで左樣な惡法は速かに改める方が宜いと思ひますが、其の事に付て私自身は能く關知して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=61
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062・濱田尚友
○濱田委員 此の問題は……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=62
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063・小山谷藏
○小山委員長 濱田君、一寸お待ち下さい、先程本領君と國務大臣との間に、天皇の大權と進駐軍司令官の命令に關する重大な質疑應答がありまして、本領君は質問を留保されたと云ふ意味ではありませぬが、其の質問應答に付ては木下君の關聯質問もございまして、不得要領の儘に終つて居ると委員長は見て居ります、それに關聯した御質問だと思つてあなたの發言を許したのでありますが、それでなければもう丁度時間も十二時でありますから、此の程度で休憩を致します、それで重要なる決議案が本會議に上程せられるさうでありますから、午後二時に再開することに致します
午後零時三分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=63
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064・会議録情報3
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午後二時四十六分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=64
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065・小山谷藏
○小山委員長 それでは午前に引續いて開會致します、まだ政府委員の御出席がございませぬが、政府委員の御出席がなくとも開會を宣告致しましたのは、午前中の會議に於て本領委員と、松本國務大臣との間に極めて重大な且つ機微なる問題に觸れて、質問應答を重ねられたことは、皆さん御承知の通りであります、其の問題は午前中の質問應答に於て、不得要領の儘休憩致したのでありまするが、其の時に委員長と理事諸君と相談致しまして、此の午前の問題に關聯して政府と我々委員との間に正式の委員會を開かないで、其の問題に關して懇談をするやうな手續で進めて見ようぢやないか、斯樣に相談致しまして、其のことを政府側に通告致しました、所が政府側の方からは、其の問題を懇談すると云ふやうな形では一層惡い、政府としては其の懇談會に出席することは避けたい、斯う云ふことであります、言葉を換へて言ふならば、午前中の不得要領の儘に休憩致しました、其の問題に觸れては是れ以上此の委員會で、それを取扱ふと云ふことも頗る困難であります、それかと云うて只今申した通り之を懇談的にどう進めるかと云ふことに付て、政府との意見の交換と云ふことをも避けたい、斯う云ふ所に行詰つて居るのであります、そこで委員長一個の考へと致しましては、問題は極めて重大であります、又現在敗戰日本の政治、經濟の凡ゆる問題に關する運用に付ては極めて微妙であります、そこで此の點を此の委員會に於て更に追究審議を進めると云ふことは、果して國家の利害から鑑みて、如何であらうかと云ふ點に大きな迷ひを持ちます、諸君の此の點に關する御意見を拜聽致しまして、適當に計らひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=65
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066・江口繁
○江口委員 是は私は政府の御考へはどう云ふ御積りか分りませぬが、貴族院竝に豫算總會等を通じて凡ゆる角度から相當論難された問題にも關聯のあることです、又國民の立場から致しましても、或る程度明白にせられなくてはならぬ點があらうと思ひます、又一面政府の御考慮になつて居るやうな對外的なる、又占領下に於ける日本の立場と云ふものに對しても相當影響する所も、是は或る點に於ては避けられないかも分らぬと思ひます、併し寧ろ積極的に論議を盡すと云ふことが國民に對し――又「マッカーサー」司令部に對しても論議を盡したる上に十分なる諒解を得て、さうして國民と共に此の「ポツダム」宣言を明確なる理解の下に忠實に履行して行かう、斯う云ふ方向に私逹は進みたいと思ひまするから、此の委員會の活溌なる論議をどう云ふやうな形にせよ、制限されることのないやうに希望します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=66
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067・中谷武世
○中谷委員 私も江口君の御意見と同じであります、唯多少敷衍致しますならば、立法府は立法府としての本然の使命に從つて、十分議を盡すべきであると考へます、是が對外的に如何なる影響を與へるや否やの政治的考慮は政府がなすべきであつて、立法府の關知すべき所ではない、又議員も政府も此の現實の聯合軍占領下に於ける議會である、此處に於ける論議が如何なる法律的及び現實的效果を生むかと云ふことは、各自が胸にあることでありますから、其のことを餘りに重大な考慮の下に置き過ぎて、立法府本然の任務遂行に阻碍を與へるやうなことのないやうに私は期したいと思ひます、だから委員長に於かれましては、此の本然の任務と云ふことに重點を置いて、此の委員會の議事を進められんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=67
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068・清水留三郎
○清水委員 先程委員長理事と懇談の結果、政府と打合せたと云ふ話でございますが、元來今日の議會に於て懇談とか秘密會とか云ふものをなすべきものではないと私共思つて居ります、是が却て誤解を招く所以と思ひます、議會の言論は自由であります、故に只今も御話のあつたやうに、立法府は立法府の權限を以てやれば宜いのでありますから、やはり此の席上に於て腑に落ちざるものは質疑應答する、唯政府が困つて返事が出來ない場合があるので、やはり此の點は明瞭にするやう、進行せられんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=68
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069・小山谷藏
○小山委員長 江口君、中谷君、清水君の御意見は、其の點に於て全く一致して居ると思ひます、思ふに多數委員の諸君も大同小異の御意向であるかと御察し致しますが、其の通り計つて宜しうございますか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=69
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070・小山谷藏
○小山委員長 では其の通り致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=70
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071・南雲正朔
○南雲委員 此の際國務大臣の出席を求める爲め暫時休憩せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=71
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072・小山谷藏
○小山委員長 それでは是で暫時休憩致します
午後三時十四分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=72
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073・会議録情報4
――――◇―――――
午後三時五十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=73
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074・小山谷藏
○小山委員長 それでは休憩前に引續いて開會致します――江口君に發言を御許し致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=74
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075・江口繁
○江口委員 松本國務大臣に御尋ね致しますが、此の緊急勅令は必要なる場合に於ては命令を以て所定の措置をなし得る、其の命令は勅令、閣令又は省令と云ふことになつて居りますが、斯う云ふ全般的な緊急勅令と云ふことで、具體的な事實に即せぬ緊急勅令は果して適正でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=75
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076・松本烝治
○松本國務大臣 此の緊急勅令に於きましては、「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ聯合國最高司令官の爲す要求に係る事項を實施する爲特に必要ある場合と云ふことで、此の場合を限定して居るのであります、勿論斯くの如き廣い委任と云ふことは、是は異例的のものだらうと思ひます、總動員法なども相當廣い委任立法を致して居りました、又戰時緊急措置法に至つては一層廣い委任をして居りました、斯くの如き委任立法は若し必要がないのに左樣なことを致したとすれば穩當のものとは思はれませぬけれども、併しながら之を爲した以上適法なものでありまして、是等の法律は帝國議會に於て御認めになつたやうな次第である、此の緊急勅令は大變廣い委任を致して居ります、併し是はもう已むを得ぬことで、「ポツダム」宣言の受諾に伴つて聯合國司令官の指令がある以上、どうしても之を實行して行かなければならぬと云ふ義務を負ふのでありますから、其の結果と致しまして是が如何なる事項を言つて來るかと云ふことは豫想も出來ませぬ、如何なる事項を言つて來ても、政府としては是はどうしてもやらなければならぬ、さうすると其のやらなければならぬ時に、法律事項に關係して來ると云ふならば、やはり命令に委任して之をやらしむるの外はないと云ふので、已むを得ず斯う云ふものが出て居ると思ひます、一般的の見地から申すと必ずしも穩當なものとは言へないと思ひますが、此の特殊の事情から申しますれば、是は致し方のないもので、勿論適法と云ふことは言ひ得べきものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=76
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077・江口繁
○江口委員 さうしますと此の緊急勅令に基く勅令、閣令、省令は其の時期、其の内容に付ては無制限にやれると云ふことになりますか、此の無制限と云ふのは聯合國最高司令官の要求に係る事項に付ては、其の時期其の内容には制限がないと解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=77
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078・松本烝治
○松本國務大臣 左樣に解するの外ないと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=78
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079・江口繁
○江口委員 それでは議會開會中のやうな場合に於て、聯合國最高司令官が要求した事項に付ても、やはり此の緊急勅令に基く命令を御出しになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=79
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080・松本烝治
○松本國務大臣 議會開會中に於きまして、立法をする、即ち法律案を提出して議會の御審議を經て法律を拵へ上げることの出來る状態に於ての指令でありますれば、是は政治上の見地から政府は此の緊急勅令に基く命令を出すと云ふ考へは持つて居りませぬ、併しながら單に法律の解釋から申しますれば、廣い委任をして居るのでありますから、さう云ふ際でも出來ることに或はなるかも知れませぬ、それは實際の必要のない限りは、決して委任に依つての命令を出す積りはないので、此處にも特に必要ある場合と書いて居りますやうなことで、立法の手段を正當に履んで行く餘裕がある場合は、或は此の緊急勅令自體の解釋からも果して委任があるかどうか疑問があり得ると思ふのであります、さう云ふ餘裕のある場合に、此の緊急勅令を使ふと云ふ考へはないと云ふことを言明して宜しいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=80
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081・江口繁
○江口委員 私は此の緊急勅令には法律的に非常に疑義を持つて居りますから、是は立法府の審議の上に於ては明かにして置かなければならぬと考へます、隨て御尋ね致して居るのでありますが、特に必要ある場合と云ふ洵に抽象的で、而も其の特に必要ある場合と云ふものは、政府が自由なる御判斷に依つて何時でもやれると云ふことになれば、議會開會中でもやれると云ふ此の明文の上からは解釋が出來るのであります、そこで議會開會中は、先づ議會を尊重して民意に基いて、十分なる理解の下に最高司令官の要求事項が實施せられるやうに努められると云ふ只今の御答辯は、唯政治的に考慮すると云ふ意味でありますか、或は此の緊急勅令はさう云ふ場合には、しないと云ふ趣旨と解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=81
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082・松本烝治
○松本國務大臣 十分なる餘裕がありまして、正當なる立法の出來まする場合は、特に必要ある場合と言ふことは出來ないだらうと思ひます、唯只今の御質問では特に必要があるかどうかは、政府が勝手に解釋すると云ふ御話でありましたが、左樣なことは出來ないので、斯う云ふ緊急勅令がありまする以上、客觀的に特に必要があつたかどうかと云ふことは判斷され得るので、若し特に必要なきに拘らず、濫りに委任命令を出すと云ふことがありましたならば、其の政府の判斷の誤つて居ると云ふことに付きましては勿論責任を生ずるのみならず、或は其の命令自體の效力に付ても問題を生じ得る、左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=82
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083・江口繁
○江口委員 政府の出した所の命令自體が、果して此の緊急勅令に基く適法なるものなりや否やと云ふことに付て、疑義を生ずるやうな廣汎な所の緊急勅令を出すと云ふことが、果して我が國の憲法上に於て適法であるかどうかと云ふことに付て、私は聊か疑義を持つものであります、此の緊急勅令は議會開會中に一時の應急の手段として認めると云ふのが本來であらうと思ひます、隨て此の參考書類にある事例として法律の改廢竝に法律に代る命令を出される必要があると云ふことになりますならば、其の時其の要求に基いて具體的な事實に基く個々の緊急勅令が出されると云ふことが、憲法上合法ではないかと思ひますが、御所見如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=83
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084・松本烝治
○松本國務大臣 洵に御尤もな御考へやうでありますが、此の聯合國最高司令官の指令なるものは實に突如として來て、何等の期間の猶豫も與へられないことがあり得るので、現に今までもあつたのでありまして、左樣な場合に於きましては、一々緊急勅令を出すと云ふことさへ間に合ひ兼ねると云ふことが、事實に於てあり得た、殆ど即日やる必要が出來て來ることが屡屡ある、緊急勅令を其の爲に一々出す必要さへないと云ふやうな意味に於きまして、斯くの如き委任を定めたのでありまして、此の點は左樣な意味を諒として、恐らくは樞密院等も、之に同意したことかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=84
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085・江口繁
○江口委員 從來國家總動員法又は戰時緊急措置法の如きに付きましても、相當憲法上疑義があつて、是は憲法違反ではないかと云ふことが強く論議されて居るのでありまするが、刻下の情勢上、戰時中茲に戰前の要請に依つて通過を致したものと思ふのであります、さう云ふ特殊の其の時の情勢があつたと思ふのであります、然るに「ポツダム」宣言に盛られてあるそれ自體は、洵に民主主義的政治を實現すると云ふことが根本でなければならぬ、隨て其の「ポツダム」宣言に基く所の所謂國民的なる所の、自由なる民主的なる判斷、それと協力に基いて政治が運用されると云ふことが、是が此の「ポツダム」宣言に依つて課せられたる所の、國家國民の義務であらうと思ふのでありまするが、さう云ふ本來の「ポツダム」宣言の精神に基いて行くならば、極く稀有なる所の、突如として要求があつたと云ふやうな異例の場合のことを以て此の白紙委任状的な緊急勅令をせられると云ふことは、洵に理由が薄いやうに考へられる、又緊急の場合と云ふことでありますから、突如として請求をされましても、緊急勅令を出すだけの餘裕と其の時間がないと云ふやうなことは、是は聯合國の最高司令部に於ても不可能を強ゆる、さう云ふ不可能を強ゆるやうなことは、私は聯合國としても意圖する所ではなからうと思ふ、最善を盡して緊急なる命令を出すだけの餘地はあるべき筈だ、又左樣に聯合國最高司令部の方に理解せしめることが、私は可能であると考へるのであります、隨て此の政府の此の種の一般的抽象的なる所の緊急命令が、曾ても議會で問題になつたことがあるやうでありまするが、是は明治四十三年の朝鮮併合の際に、政府は明治四十三年第三百二十四號の朝鮮に施行すべき法令に關する件として非常に廣汎な抽象的な緊急勅令を出して、是が當時の議會に於きましては、憲法違反なりとして否決せられて居る、議會に於きましては此の緊急勅令の別に全く同じ條件の法律案を提出して、さうして其の法律案は貴族院も之を可決したと云ふ事例があるやうであります、斯う云ふ事例に照しましても、又「ポツダム」宣言に於ける所の精神から行きましても、民主主義的なる政治を具現すると云ふ今日の情勢から言つても、此の種の一般緊急勅令を出して、どう云ふ内容でも、如何なる時期でも自由に出來るやうなことにして置くと居ふことは、是は餘りに無統制になつて來る、結局議會に於ける審議權と云ふものも甚しく輕視すると云ふことになる虞があると思ふ、此の點は議會尊重が今日民主主義政治の根本であると云ふ點から考へて、其の議會尊重の精神と、此の一般的な緊急勅令とは矛盾するものではないかと思ひますがどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=85
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086・松本烝治
○松本國務大臣 此の「ポツダム」宣言の受諾に依りまして、聯合國最高司令官の指令して參ることは、絶對的に服從すると云ふ義務を國が負うて居ると思ひます、其の内容如何を審査して何等申す餘地はない、然りとすれば其の内容の實現自體の命令と云ふものは、もう是は當然どうしても出すより外ないものであると云ふことでありますから、一般的の委任をしますることは、通常の場合に於ては餘程考へなければならぬことでありまするが、此の場合に於ては是は寧ろ差支へないのではないか、左樣に考へるのであります、若し之に何等か違つたことが出來る餘地があると云ふのなら是は別でありまするが、指令自體に絶對に服從しなければならぬと云ふことになりますれば、其の指令の命ずる所を立法致しますと云ふことは、是は命令を以てすることにしても差支へはないと云ふ風に考へられるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=86
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087・江口繁
○江口委員 成程最高司令官の指示は絶對性があると云ふ點は或る程度了解しなければならぬと思ひまするが、さうすると議會の審議權と最高司令官の指示とは、どう云ふ關係になりますか、議會は其の點は全然無用と云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=87
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088・松本烝治
○松本國務大臣 此の指令がありました以上はどうしても左樣にしなければならぬのでありまするから、其の結果として議會の審議權は、實質上に於て自然制限を受ける、左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=88
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089・江口繁
○江口委員 さうすると此の「ポツダム」宣言に伴ふ緊急勅令、之に基く所の事後監督的なる所の議會の權限と云ふものは、全然審議の餘地はないと云ふことに解釋されますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=89
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090・松本烝治
○松本國務大臣 此の緊急勅令の事後承諾と云ふこととは、問題が違ふだらうと思ひます、是は斯う云ふ緊急勅令を出せと云ふ指令はあつた譯ではない、此の方法に依らないやうにしたいと云ふやうな御考へがあると云ふことなら、是は別の問題になると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=90
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091・江口繁
○江口委員 大體に於て議會開會中に此の種の緊急勅令が、出されると云ふことが適當であると云ふことに承つて置いて、是れ以上質問を申上げませぬ、午前中に於ける本領委員の質問に對して松本國務大臣は、「ポツダム」宣言を受諾して、之を履行する所の日本の天皇及び天皇の大權に付ては冒されない、統治權は嚴存して居ると云ふ御解釋のやうでありましたが、是は豫算委員會に於て外務大臣は、委員の質問に對して日本は獨立國家ではない状態に陷つて居ると云ふやうなことを言つて居りますが、それと矛盾しませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=91
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092・松本烝治
○松本國務大臣 外務大臣が如何なる言葉を使はれたかと云ふことは、私は能く承知して居りませぬが、恐らくは對外的の意味の主權と云ふやうなことで御答へになつたのではなからうかと思ふ、私の先程申したことは、日本の天皇の總攬せられて居る國の内に對する統治權と云ふものに付ては、何等直接之を失つて居るやうなものではないと云ふことを申上げたので、あの際特に統治權と云ふ言葉を使つたと思つて居ります、對外的の主權の問題を申上げた積りではございませぬ、恐らくは外務大臣の言はれたこととの間には、矛盾はないだらうと思つて居ります、尚ほ必要がありますれば、外務大臣に確めまして御答へする方が愼重かと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=92
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093・江口繁
○江口委員 「ポツダム」宣言受諾に伴ふ政府と、聯合國との往復文書を見ますると天皇及び日本國政府の國家統治の權限は、聯合軍最高司令官の制限の下に置かれると云ふことをはつきり書いてあるのでありますが、占領中に於きましては、統治權は一時停止されて居ると云ふ風なことになるやうな危險はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=93
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094・松本烝治
○松本國務大臣 此のことに付きましては、午前中或る程度に御答へをしましたので、其の程度に止めて置きたいと思ひまするが、勿論斯う云ふやうな文句に付きましては、人々自ら見る所で違ひがありますので、之を法律解釋の構成論的に見ますれば、色々な見解が立ち得るかと思ひます、敢て私の私見を此處で申述べまして、誤解を生ずるやうなことがあつてはならぬと思ひます、此處に書いてある通りのこと、之を如何に法律的に構成をして解釋するかと云ふのは、是は一つの學説的のことであります、私の前に述べましたことは一つの見方で、學説的のことを述べたものと御承知を願ひたい、此の點に付て重ねて學説的のことを述べることを控へて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=94
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095・江口繁
○江口委員 午前中の國務大臣の答辯は、學説的な御意見で、國務大臣の個人の御意見であつたのでありますか、政府の御意見であつたのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=95
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096・松本烝治
○松本國務大臣 學説的の解説と云ふも、是は政府として考へて居ることを述べたには違ひありませぬが、之に付て學説的の議論をするのは、曾て天皇機關説と云ふやうなことで、色々議論が沸いたこともあります、斯う云ふ解釋的の法律構成論に付て議論を致すことは、徒らに事端を繁くするのみでありまして、事の實際に於ては餘り益がないやうに考へまするので、此の位で一つ議論は打切つて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=96
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097・江口繁
○江口委員 是は私は議論するのではありませぬか、それでは別の角度から一つ御尋ねしたいと思ひます、合衆國政府からの日本國政府に對する囘答に依りますると、最終的の日本國の政府の形體は、「ポツダム」宣言に從ひ日本國國民の自由に表明する意思に依つて決定せらるべきものとすと言ふのであります、此の最終的と云ふのは一體如何なる時期であると政府は御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=97
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098・松本烝治
○松本國務大臣 日本の國體に付て、例へば憲法改正と云ふやうな問題がありまして、日本の政體と云ふやうなことに付て何等か決定される、さう云ふ時と考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=98
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099・江口繁
○江口委員 さうしますと事實に於て憲法改正は、一體何時實現されるやうな情勢でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=99
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100・松本烝治
○松本國務大臣 是はまだしつかりしたことを申上げられませぬが、出來るだけ急いで調査研究を進めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=100
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101・江口繁
○江口委員 憲法改正が出來て、それに基く所の政府の政體と云ふものが明かになつて來る、此の國民の自由に表明する意思に依つて決定とは、憲法審議に依つて決定と見るのでありまするか、それとも別に政府、或は天皇に關する所の國民的何等かの總意を明かにする處置を執らるるものと御考へになつて居るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=101
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102・松本烝治
○松本國務大臣 勿論國民的總意に依つて判斷せられなければならぬと思ひまするが、其の憲法改正と云ふこと自體に關しましては、憲法の定むる所に依つて其の改正をなすの外はないことと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=102
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103・江口繁
○江口委員 憲法が適法に改正せられたならばそれで國民の意思は決定されたのですが、其の憲法に基く所の何等かの國民的意思の決定が別に要りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=103
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104・松本烝治
○松本國務大臣 何等か別の宣言等をなす必要はないだらうと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=104
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105・江口繁
○江口委員 其の最終的の日本國の政府形體と云ふものが國民の總意に依つて決定せられたと、其の時期が天皇及び日本國政府の國家統治の權限が、聯合軍總司令官の制限の下に置かれると解して宜しいのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=105
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106・松本烝治
○松本國務大臣 此の囘答書自身に依りますると必ずさうであるかどうかは分らぬと思ひます、即ち聯合國最高司令官の所謂進駐軍の居る間と云ふことは、是は向ふの見方で、明瞭に「ポツダム」宣言の趣旨が到達せられたと云ふことを見て、初めて撤兵せられることのやうに考へて居ります、隨て其の時期は聯合國側に於て決定することと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=106
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107・江口繁
○江口委員 さうしますと聯合國軍隊は、「ポツダム」宣言に掲げられたる諸目的が完遂せらるるまで、日本國に止まるべしと云ふ軍隊の日本國内に於ける在留と、それから天皇及び日本國政府の國家統治の權限に關する制限とは併行して同一になるものですか、或は天皇の統治權に關する制限が除かれたけれども、尚ほ「ポツダム」宣言に於ける所の諸目的が完遂せられるまでは軍隊だけは居ると云ふ風に解釋するのが相當ではないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=107
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108・松本烝治
○松本國務大臣 「ポツダム」宣言に擧げて居りまする條件が完遂せられるまでの間は、聯合國の軍隊は居るに違ひない、其の間は此の状態にある、即ち聯合軍最高司令官の制限の下に置かるるものとする、さう云ふ状態にあることは當然であらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=108
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109・江口繁
○江口委員 最終的の日本國の政府の形體と云ふものが出來たならば、それに基いて日本の天皇及び日本國政府の國家統治權と云ふものが完全に行使せらるる状態に置かれ得ると云ふことも考へられる、隨て其の日本國政府が「ポツダム」宣言に掲げられたる諸目的を完遂する爲に、色々の政治をして行くと云ふことになると思ふのであります、さうしますると此の最終的の日本國の政府の形體が出來たならば、天皇及び日本國の政府の國家統治權に關する所の制限なるものは撤廢せられて、其の後の聯合軍軍隊と云ふものの駐在、此の日本國政府の「ポツダム」宣言に於ける所の諸目的完遂を監視する意味に於て、何年か居ると云ふことになる場合も考へられると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=109
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110・松本烝治
○松本國務大臣 只今の問ひを言葉を換へて申せば、日本政府の形體が斯う云ふことで決つたならば聯合國最高司令官は、最早何等指令などを出せない地位に立つと云ふやうな御考のやうにも聽えましたが、若し果して然りと致しますれば、私はさうは思ひませぬ、聯合國の見る所に依つて總ての條件が充されて、即ちもう進駐軍も要らぬと云ふことになつて、初めて引下がられるだらうと考へます、其の時に初めて完全に、先程申した日蝕がなくなつてしまふと云ふ状態になると云ふ風に私は解して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=110
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111・江口繁
○江口委員 此の「ポツダム」宣言に盛られたる目的の實現が一日も早いことが國家の爲め、又聯合國の爲にも喜ぶべきことであらと思ひます、隨て國を擧げて忠實且つ急速なる此の實現に邁進しなければならぬと思ふのであります、是は將來のことに關して重大なことではありますが、大體聯合軍軍隊の日本國内に駐在する期間と云ふものは、凡そどう云ふ範圍の期間に止るであらうか、政府は一體どう云ふ期間内に於て成るべく速かに其の實現を期すると云ふ決意を持つて居られるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=111
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112・松本烝治
○松本國務大臣 勿論其の速かに終ることを希望することは當然でございますが、此の期間がどの位に亙るかと云ふことは、豫め之を申上げることは何人にも出來ないことだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=112
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113・江口繁
○江口委員 此の「ポツダム」宣言に依る所の民主的國民の自由と云ふやうな點に付きましては、是は一に日本の民族だけに與へられたる義務にあらずして、世界全各國、全人類が、自由に民主的に、人類の義務としてさう云ふ方向に世界の恆久平和確立の爲に、精進努力して行く責任があると思ふのでありますが、此の點に付て、「ソ」聯の方との滿洲北鮮に於ける所の在外同胞の立場に付ては、政府としても十分此の救出に努力せられて居ることと思ふのでありますが、現實の状態として是は餘りにも「ポツダム」宣言に於ける所の精神と、背馳して居るのぢやないかと云ふことを吾々は痛感するのでありまするが、之に對して「ソ」聯當局との何等かの折衝竝に十分なる理解を遂げられたか、之を救出するに付ての處置と云ふものに付て、其の經緯を簡單に説明して戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=113
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114・松本烝治
○松本國務大臣 滿洲及び北鮮に於ける我が邦人の極めて悲慘なる状態にあることは、是は確かに事實のやうに聽えて居ります、此の状態を明かにし、成べく早く引揚げせしむると云ふことに、政府が萬端の努力をして居ることは、豫算總會等でも屡屡私以外の大臣其の他から御答へがあつたやうに思つて居ります、其の以上のことは、只今此處で申上げることは一寸出來ませぬと云ふことを御諒察願ひたうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=114
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115・江口繁
○江口委員 尚ほ其の點に付きましては、適當な機會に政府に於きまして、「ソ」聯に對する所の講和の斡旋は、一體どの程度に處置を執られて居るものであるか、國民としましては、今少しく外交上の果斷なる處置に依つて、今日に至らざるやう、國家の命運を救ふ處置はなかつたかと云ふ點に付ては非常な憾みを持つて居ります、それで政府として適當な機會に此の「ソ」聯邦に對する所の外交的處置の經緯を一つ出來るだけ明確にして戴きたいと思ひます、それから最後に御尋ねしたい點は、是は我々としては洵に口にするのも甚だ好ましからぬことでありますが、「アメリカ」其の他の世界の色々の評論を聽き、又國内に於ても共産主義其の他に於ける所の主義者、其の他の言動と云ふものに鑑みて、私達の私見を以てしますならば、我が國の憲法上又は大臣輔弼の責任に依る所の實際政治の運營上、或は軍の統帥部に於ける所の運營等色々の觀點から考へ、又三千年傳統の我が皇室の平和愛好の尊い御精神竝に行はせられたる所の實際に付きまして、私逹の確信する所では、戰爭犯罪者としての立場に 陛下が問議せらるると云ふやうなことは私逹はないものと、法理的にも、實際的にも固き確信を持つて居るものでありまするが、最近新聞紙の傳へる所に依ると、共産主義者の一部は戰爭犯罪人の名簿に天皇及び皇后、皇太后の御名を畏多くも連ねてある、是等に付きまして政府は豫算委員會其の他に於て片々の答辯に依つて天皇に戰爭犯罪の責任なしと云ふことは言はれて居りまするが、明確に詳細に政府の所信を國民に知らして戴くことは出來ませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=115
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116・松本烝治
○松本國務大臣 只今の御質問の御趣旨は全く同感であります、又考へて居ります所は御質問の通り左樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=116
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117・小山谷藏
○小山委員長 江口君、質問は終りでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=117
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118・江口繁
○江口委員 終了しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=118
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119・小山谷藏
○小山委員長 岸井さん御相談があります、あなたの質問は簡單ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=119
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120・岸井壽郎
○岸井委員 いや、可なり色々あります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=120
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121・小山谷藏
○小山委員長 それでは今日は此の程度で散會致します
午後四時四十四分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008911744X00219451213&spkNum=121
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