1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第五號)
昭和十二年法律第七十八號廢止法律案(紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籤券附囘數入場券發行に關する法律廢止の件(政府提出、貴族院送付)(第六號)
映畫法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第七號)
裁判所構成法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一一號)
戰時民事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一二號)
戰時刑事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一三號)
判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案(政府提出、貴族院送付)(第一四號)
鐵道敷設法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一五號)
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昭和二十年十二月十二日(水曜日)午前十時三十一分開議
出席委員左の如し
委員長 小柳牧衞君
理事 坂本宗太郎君 理事 仲井間宗一君
理事 藤井伊右衞門君
毛山森太郎君 酒井利雄君
高城憲夫君 中瀬拙夫君
南條徳男君 船渡佐輔君
別所喜一郎君 柳川宗左衞門君
山田竹治君 三田村武夫君
松本忠雄君 瀧澤七郎君
松本治一郎君
同月十一日委員高岡大輔君辭任に付其の補闕として三田村武夫君を議長に於て選定せり
同月十一日裁判所構成法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)、戰時民事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)、戰時刑事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)、判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案(政府提出、貴族院送付)及鐵道敷設法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)の審査を本委員に付託せられたり
同月十二日防空法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)、大日本航空株式會社法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)及石油業法外十三法律廢止法律案(政府提出、貴族院送付)の審査を本委員に付託せられたり
出席國務大臣左の如し
文部大臣 前田多門君
出席政府委員左の如し
司法政務次官 手代木隆吉君
司法省民事局長 奧野健一君
司法省刑事局長 佐藤藤佐君
司法省刑政局長 清原邦一君
文部政務次官 子爵 三島通陽君
文部省學校教育局長 田中耕太郎君
文部省社會教育局長 關口泰君
文部省教科書局長 有光次郎君
厚生政務次官 矢野庄太郎君
厚生省勤勞局長 佐伯敏男君
厚生省保険局長 青柳一郎君
保護院副總裁 數藤鐵臣君
商工政務次官 木暮武太夫君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
裁判所構成法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
戰時民事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
戰時刑事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=0
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001・小柳牧衞
○小柳委員長 それでは是から會議を開きます、本日は裁判所構成法戰時特例廢止法律案、戰時民事時別法廢止法律案戰時刑事特別法廢止法律案、判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案を一括して審議に入りたいと思ひます、初めに政府當局の提案理由の説明を御聽き致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=1
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002・手代木隆吉
○手代木政府委員 大臣が貴族院に出席中でありますので、私代つて四案の提案理由を御説明申上げたいと思ひます、議題になりました法案の中、初めの三案は戰時特例の廢止に關する法案であります、最後のものは人員の整理に伴ふ判事、檢事の退職、轉所に關する法律でありますが、以下順次御説明を申上げます
第一に裁判所構成法戰時特例廢止法律案の提案理由を申上げます、本法案は司法制度の戰時態勢を平時態勢に復せしめることを目的とするもであります、裁判所構成法戰時特例は大東亞戰爭勃發後、司法制度を戰時の體制下に置くべく審級制度の整理、単獨裁判所の權限擴張等を主要な内容として昭和十七年二月公布せられ、爾後戰局の推移に即應して昭和十八年十月及び昭和二十年六月の兩囘是が改正を行ひ、右の趣旨の徹底を期すると共に手續の簡素化の爲め若干の規定を追加したのであります、是等の措置は同法と竝行して制定され、且つ改定された戰時民事特別法及び戰時刑事特別法と共に、戰時下勞務、資材、交通、通信の困難な状況下に於ても能く司法をして其の機能を維持せしめるに與つて力があつたのでありますが、之に伴ふ訴訟關係人の不利不便は之を蔽ふことを得なかつたのであります、今や終戰に伴ひ戰時中の諸般の障碍の中、或るものは漸く解消しつつあるのみならず、戰後の民力囘復の爲にも右の如き訴訟關係人の不利不便は速かに之を除却し、其の保護の萬全を期さなければならないのであります、茲に政府は本法律案を提出し戰時中の特例を一擧に廢止し、必要已むを得ざる經過規定等を設くるに止めんとするものであります、舊法廢止の效果として注意すべき點は以下三點であります
第一點は戰時中已むを得ず採用した二審制度を三審制に復歸せしむることであります、唯現に繋屬中の上告事件及び抗告事件に付ては、舊法に依つて手續を進行するの他ないのでありますから、附則に之を規定したのであります
第二點は戰時中擴大されました區裁判所の事物管轄が刑事に付ては舊に復することであります、其の結果比較的重要なる刑事事件は總て合議裁判所たる地方裁判所に於て審議されることとなるのであります、唯民事に付ては戰時中擴張された事物管轄の限度二千圓は、其の後の經濟状態に鑑みます時は規在既に過小の感があり、寧ろ之を更に引上げる必要あることを思はせるのでありますが、今後の情勢の推移の俄かに逆睹し難い今日、直ちに是が引上を決定することも其の時期にあらずと考へますので、當分の内現状の儘に据置くことと致しました、附則第三項中第二條に關する部分が即ちそれであります
第三點は裁判所の設立廢止及び管轄區域竝に其の變更は事の重要性に鑑み、爾今戰前同樣法律を以て定めることを要することとなつた點であります、以上三點の他舊法廢止の結果として、戰時中擴大された判事代理の制度も舊に復し、裁制所書記の立會省略の如きも將來は之を認められなくなるのであります、唯裁判所の廳舍外の執務、法服省略等の制度は、現状に鑑み當分の内之を存置することと致しました、以上が本法案の趣旨であります
次に戰時民事特別法廢止に關する法律案提案の理由を御説明申上げます、戰時民事特別法は戰時に於ける民事に關する特例を定むるものとして、只今御説明申上げました裁判所構成法戰時特例と同時に制定公布せられ、相共に戰時非常時局下に於ける司法の運營に當つて參つたものでございますが、今や終戰に伴ひ裁判所構成法戰特例に付き御説明申上げましたと全く同一の理由の下に、之を廢止致さんとするものでございます、而して本法案本文に於ては原則として舊法は一應之を全面的に廢止することと致して居りまするが、同法中特に已むを得ないものに限り暫定的に尚ほ當分の内效力を有せしむることとし、之を其の附則に規定致したのであります、以下之を簡單に説明致しますると、第一に舊法中には戰時に於ける諸物資、就中新聞紙等諸用紙の供給の極端に窮屈なることに起因する幾多の規定があります、即ち裁判所が官報及び新聞紙を以て公告を爲すべき場合、新聞紙に於ける公告を取止めた、第三條裁判所の爲すべき登記事項に關し公告全體を取止めた、第二十條等は此の種の規定の最も顯著なものであります、然るに右新聞紙初め其の他諸用紙の需給事情は、終戰後の今日に於ても戰時中と殆ど異らないものがあります、隨て本法案に於ても前述の各規定は當分の間尚ほ其の效力を有せしむることと致しました
第二に舊法中には必ずしも戰時中に限り是が適用を必要とする規定ではなく、豫て實務取扱の經驗上、多年是が立法を要望せられて來ました幾多の事項中、特に緊要なものを規定したものがあります、斯くの如き規定の一つとして調停に關する事項を規定した同法第十四條乃至第十九條の規定は、其の適切なる運用が戰時中に於けるよりも寧ろ終戰に接著する今日に於て一層期待せらるると共に、他日恆久立法に繰入れられること等をも考慮して、其の間前後連絡を缺くことのないやう、本法案に於て一應其の效力を有せしむることと致しました
最後に本法案には舊法廢止に關し立法技術の上から當然考慮せらるべき經過的規定として、例へば舊法の規定に基き停止した強制執行の爾後に於ける進行に關連して規定せられた舊法第十一條第二項の規定等や、又裁判所構成法戰時特例廢止法律案が、二、三の事項に付き舊法の規定を尚ほ當分の内其の效力を有せしむる旨規定しましたのに對應して、是が運營に必要な規定、例へば訴訟物の價格算定に關する舊法第五條の規定等は、當分の内其の效力を有せしむべき旨の經過規定を設けました、以上が本法案提出の理由であります
次に戰時刑事特別法廢止に關する法律案の提案理由に付て御説明申上げます、戰時刑事特別法は昭和十七年三月二十一日施行せられ、爾來數次の改正を經て今日に至つたのでありまするが、同法律は申すまでもなく刑法竝に刑事訴訟法が主として平時を對象として規定されて居り、戰時下に於ける犯罪の豫防竝に鎭壓を目的とする法規としては不十分であります爲に、戰時下に於て國内の治安等を著しく阻害する犯罪に對しては刑法所定の刑罰を加重整備し、一般豫防の目的を徹底化すると共に、刑事手續に付ても應急の措置として戰時に相應せる特例を設けて、事件の迅速なる處理を期する爲め制定せられたのであります、然るに御承知の如く大東亞戰爭は既に終局を告げ、國内に於ける諸般の情勢は逐次平時の状態に復しつつあるのであります、隨ひまして戰時刑事特例法を制定するに至りましたる理由は一應竝に消滅した譯でありまするので、是が廢止法律案を提出した次第であります、本法案の條文は極めて簡單でありますが、先づ本文に於ては戰時刑事特例別法を廢止することを規定したのでありまして、一先づ全般に亙り之を廢止することと致して居るのであります
次に附則第一項は、本法施行の期日は勅令を以て之を定めることとし、附則第二項以下に於きまして若干の經過規定を設けたのであります、即ち附則第二項は、本法施行の日までに戰時刑事特別法第一章に規定する罪を犯したる者に對しましては本法施行後と雖も、從來通り同法第一章の規定に從つて之を處斷することと致しまして、處罰の公平を期した次第であります、附則第三項は、戰時刑事特別法第十九條の二の裁判所が土地管轄に關する規定に拘束されることなく、自ら事件を審判し又は他の裁判所に之を移送し得る旨の規定と、同法第二十三條第三項の、裁判所が審判の必要上、商工會議所其の他の團體より求めたる報告書は、原則として公判廷に於て取調べなければならぬ旨の規定及び同法第三十一條中陸海軍の軍法會議の刑事手續に付き、右の規定を準用する部分、竝に同法第二十五條の地方裁判所の事件に付き被告人等の供述を録取したる書類にして法令に依り作成したる訊問調書にあらざるものに付き、既存の證據力の制限を排除する旨の規定は、本法施行前に公訴を提起したる事件に付ては本法施行後と雖も尚ほ其の效力を有するものとし、附則第四項は、先に御説明致しました裁判所構成法戰時特例廢止に關する法律案の附則第五項に依り裁判所構成法戰時特例に定むる裁判の二審判に關する規定が、現に繋屬中の上告事件に付ては同法律廢止後と雖も尚ほ其の效力を有することと相成りますので、之に對應致しまして、本法施行の際裁判所構成法戰時特例の規定に基き、現に繋屬中の上告事件に付ては、上告理由及び上告審の手續に關する戰時刑事特別法第二十七條の規定も亦、本法施行後と雖も尚ほ其の適用あることを明かにし、附則第五項は本法施行前戰時刑事特別法の規定に依りなしたる手續は本法施行後と雖も尚ほ其の效力を有するものと致しまして、何れも手續の無用なる紛淆混亂を避けんとしたものであります
以上本案提出の理由の概要を御説明申上げたのであります
次に判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案提案理由を御説明申上げます、本法案は終戰に伴ひ一般官吏の減員を行ふに際し、判事及び檢事に付ても減員を行ふ爲め減員豫定數二百二十八人に付き裁判所構成法に定められた判事及び檢事の地位の保障を一時制限せんとするものであります、元來判事は終身官として憲法上其の身分を保障せられ、刑法の宜告又は懲戒の處分に依るの外其の職を免ぜられないことになつて居ります、又之に退職、轉所等を命ずることも裁判所構成法に依つて制限されて居り、檢事の退職に付ても同法に同樣の制限がございますので、今囘の行政整理を判檢事にも及ぼす爲には法律を以て裁判所構成法の右制限を排除する必要があるのであります、仍て本法案では此の制限を最小限度に排除する爲め判檢事を通じ減員豫定數二百二十八人に付き、昭利二十一年三月三十一日まで限りに之に退職を命じ得ることとなさんとするものであります、加之憲法の精神は行政權を以て濫りに判事の地位を動かし得ないことを保障するにあるのでありますから、判事に退職を命ずるにしましても、司法大臣の專權に委ねることは適當にあらずと考へますので、其の願ひに依る場合の外大審院の總會の決議を經ることを要するものとし、更に其の決議を愼重ならしむる爲め其の總會は大審院の判事三分の二以上出席して之を開き、其の決議は出席者の三分の二以上の意見に依り之をなすこととしたのであります、尚ほ以上の措置に依り判事及び檢事に退職を命じた場合には、之に伴ひ判事及び檢事の配置替への爲め之に轉所を命ずる必要がありまするので、判事の轉所に付ても同年四月三十日まで前述裁判所構成法に定むる保障を一時撤廢せんとするものであります
以上四案の提案理曲を御説明申げたのでありまするが、何卒愼重御審議の上速かに可決せられんことを御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=2
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003・小柳牧衞
○小柳委員長 是より質疑に入りたいと思ひます、只今の四案に付て御質問ございませぬか――別にございませぬければ、昨日の厚生省所管で質問の殘つて居ることに入りたいと思ひます――松本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=3
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004・松本治一郎
○松本(治)委員 一寸私から昨日の質問の大略を申上げます、私が咋日本委員會に於きまして御尋ね致しましたのは、聯合軍司令部より恩給及び扶助料の廢止の指令があつたと云ふことを事實と致しますならば、戰死者の遺家族及び戰傷病の爲め不具撥疾となつた其の人達に對する經濟的保護の取扱に付てでありましたが、それに對する政府委員の御答辯は、恩給が廢止になると軍人が困られるであらうから、厚生省では其の救濟の途を社會保險なるものを設けて、其の方へ移管することとし、それに付ては社會保險審議會なるものを作り、廣く民間の有識者を集めて、目下折角調査研究審議を進めて居る、戰歿者の遺家族救濟に付ては、軍事保護院が厚生省の所管に移つて居ります故に、是れ亦厚生省に於きまして萬遺憾なきを期して進んで居ります、斯う申されたのであります、さうして詳しいことは專門の委員を以て答辯させますから、其の專門の委員から聽いて戴きたい、斯う云ふことでありました爲に、私の昨日の質問を留保致して居つた次第であります、本日御尋ねしたいことは、答辯の中にありました社會保險のことに付てであります、其の一つは社會保險加入者の資格、其の一つは社會保險金拂込の方法、今一つは社會保險金支拂の方法、此の三點に付てであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=4
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005・青柳一郎
○青柳政府委員 軍人に對する恩給の停止に伴ひましての措置と致しましては、昨日他の政府委員より御答辯申上げたやうに、現在社會保險審議會に於きまして折角審議中でございます、もう既に二囘も委員會を開きまして、明日から小委員會を設けまして、立案に著手することになつて居ります、今月下旬までには案が出來るものと存じて居ります、只今加入者の資格、拂込方法、支拂方法と云ふ御尋ねでございましたが、是は其の軍人恩給に代るべき社會保險を立てた場合に、どう云ふ加入者の資格を要するか、拂込方法をなすか、支拂方法をなすかと云ふ風な御尋ねと考へるのでございます、政府は之に付きましても現在審議中でありまして、まだ案を得て居ないのでありますから、もう少し具體的の御尋ねがございますれば御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=5
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006・松本治一郎
○松本(治)委員 厚生省のそれに對する構想だけでも宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=6
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007・青柳一郎
○青柳政府委員 現在審議中の委員會に於きましては、軍人恩給に代るものと致しまして、現在厚生年金と云ふ社會保險がございます、此の厚生年金に準じた制度を以て軍人恩給に代ることが出來るのではないか、出來るとすればどう云ふ案が立つのかと云ふことに付て審議致して居ります、さう致しますると軍人恩給に代る新制度に付きましては、具體案がまだ出來て居りませぬので、或は御參考に厚生年金と云ふものはどう云ふものであるかと云ふことを申述べれば、質問の御意圖に或る程度合ふのではなからうかと思ひますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=7
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008・松本治一郎
○松本(治)委員 それで結構です、參考になる程度のもので結構です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=8
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009・青柳一郎
○青柳政府委員 それでは現在行はれて居ります厚生年金の概要を申述べます、勿論此の厚生年金其のものが軍人恩給に代ると云ふことになつて來るのではありませぬで、此の厚生年金に準じた制度が打樹てられるであらう、斯う考へられるのであります、御參考になると思ひますから申上げます、現在の厚生年金と申しますものは昭和十六年に勞働者年金保險法として誕生したものであります、其の當時は此の名前の示しますやうに、男子の勞働者を被保險者と致して居りました、所が昨年から此の法律の名前を厚生年金と改めまして、獨り男子勞働者のみならず、女子勞働者に付きましても亦銀行、會社、商店に勤めまする職員に付きましても、此の年金制度を行ふと云ふことに擴充されました、どう云ふ者を現在の厚生年金は被保險者として居るかと申しますと、五人以上使用致して居ります工場、事業場、銀行、會社、商店に使用されて居る者を被保險者と致して居ります、是はさう云ふ工場、事業場、商店、會社、銀行に勤めますと當然被保險者の資格を得ます、所謂強制加入と云ふ制度でございます、戰時中は相當勞働者も多數でございましたので、昨年の末頃は此の被保險者の數は八百萬人を超えたこともございます、併し終戰に伴ひまして是は五百八十萬、六百萬程度に減ずるものと存じて居ります、次はさう云ふ被保險者から如何なる程度の保險料を徴收するかと云ふ問題でありますが、それは其の被保險者の月收の百分の十一、詰り百圓取つて居りますと十一圓、之を保險料として政府が徴收致します、其の百分の十一を事業主と從業者とが半分づつ受持ちます、半分づつ負擔致します、即ち百圓取つて居りますと、從業者が五圓五十錢づつ毎月出す譯であります、此の保險料の收入は本年度の豫算に於きましては七億七千萬圓の豫定でございますが、勞働者減員に伴ひまして大體五億圓程度にならうかと存じて居ります、どう云ふ給付をするのか、どう云ふ金を此の制度から被保險者に出すのかと言ひますと、五種類あります、年を取つた人に與へます養老年金、それから不具撥疾になりました者に對する傷害年金、傷害手當金と云ふ制度がございます、重い不具撥疾には傷害年金、輕い不具撥疾には一時金を出すことに致して居ります、第三番の給付と致しましては脱退手當金と云ふのがございます、是は使用されて居る從業員、被保險者が二十年働きますと養老年金が付くのでありますが、二十年働かない中に仕事を止める時に出す一時金であります、さう云ふ脱退手當金の制度、それから被保險者が死にました場合に其の遺族に與へる遺族年金制度、もう一つ第五番目には結婚手當金であります、女子の勤勞者は長期に亙つて仕事に從事することが中々少いのでありまして、女子が損をするといけませぬので、結婚した場合には一時金を出す、さう云ふ五種類の制度がございます、大體本年度の豫定としましては三千萬圓程度を只今申しました五種類の給付の爲に充てる豫定でございましたが、終戰に伴ひまして脱退する者が多くなりましたので、現在の所は本年中に二億圓程度の支出をしなければならぬかと存じて居ります、厚生年金と申しますのはさう云ふ風に所謂長期給付でございますので、二十年先になつてから金を拂ふと云ふやうな恪好になつて居りますから、相當手許に多額の金を持つて居らなければならぬのであります、現在は其の積立金が十一月末に於きまして約十一億圓ございました、此の制度に對します國庫の負擔は、給付金の十分の一と云ふことになつて居ります、事務費は全額國庫補給、斯う云ふことであります、大體現在の厚生年金の大要のことを申上げました、斯う云ふ厚生年金に準じた制度を以て軍人の恩給廢止に對處致したいと存じまして、今折角審議立案を急いで居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=9
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010・松本治一郎
○松本(治)委員 厚生年金のことに付ては詳細に御説明がございまして分りましたが、此の恩給が廢止されると軍人は困られる、だから社會保險審議會に依つて作られる厚生年金に準じて新設されるものの恩給受給者を入れようと斯う云ふ御考へでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=10
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011・青柳一郎
○青柳政府委員 厚生年金と似通つた考へ方で――其ものではございませぬ、似通つた考へ方で年金制度を作りまして軍人恩給に代へる、斯う云ふ考へでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=11
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012・松本治一郎
○松本(治)委員 現在受けて居る恩給受領者、さう云ふ人達は全部其の厚生年金制度に通似つて新設されるものに入れられる御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=12
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013・青柳一郎
○青柳政府委員 現在既に受けて居ります方に付きましては、實は今考究中でございますが、新しい制度に依りまして又金額を算定致しまして改訂して支給すると云ふことにならうかと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=13
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014・松本治一郎
○松本(治)委員 私は元來恩給亡國論を唱へて來まして、恩給制度の廢止を主張して今日まで參つて居るのであります、大體斯う云ふ機會に恩給みたやうなものは廢止すべきだと、斯う云ふ考へを持つて居るものであります、敗戰日本の將來は重い荷を負つて遠い道を歩かなければならぬのであります、併し國家の爲に不具撥疾となり又國家の爲に其の一家の中心となる支柱が亡くなられた爲に生活に困る人達、是等の人々には國家が何とかしなければならぬ、斯う考へて居るのであります、私は此の際今まで恩給を取つて樂々と暮して居る人達は打切るべきだと斯う考へて居るのであります、又今の御話の模樣では大體今までの恩給を取つて居る人達は厚生年金に似通つた新設のものに入れられてしまふもののやうに感じを持つ者であります、それであるならば恩給が厚生年金に準じて作られる新設のものに吸收されると云ふことになりはしないかと思ふのであります、それであれば聯合軍最高司令部から恩給と扶助料を廢止しろ、斯う云ふ命令が出て居るのに、其の胡魔化しが利くかどうかと云ふことを私は考へるのであります、さう云ふことに付て何か御考へがあるのでありますか、御答へを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=14
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015・青柳一郎
○青柳政府委員 聯合軍司令部から參つて居りまする指令の内容に徴しますると、勞働能力を制限するやうな不具撥疾者に對する補償金は出しても宜しい、唯其の際には非軍事的理由から起きた同程度の不具撥疾者に與へられる最低のものより高い率であつてはならないと云ふのであります、之を案じまするのに勞働能力を制限するやうな人に對して、別に或る程度の金額を支給しても宜しい、唯其の程度が外の一般の人に對する給與の最低のものより高くなつてはいかぬと云ふのであります、大體厚生年金なども一般の人に支給致しまする金額としては、厚生年金制度以外には一寸見當らないのであります、それから厚生年金に準じた制度が出來るのではないかと思つて折角研究致して居る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=15
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016・松本治一郎
○松本(治)委員 私の先程御尋ねしましたのは聯合軍最高司令部から恩給及び扶助料を廢止すべしと云ふ指示が出て居る、それに今の御話は、働く力なく、何等かの救濟の途を講じなければ生きて行かれないと云ふ人達に對する支出は宜いが、其の他は出來ないと云ふことになる譯ですが、さうすると先程の話では恩給や扶助料受領者は別途のもので救濟するやうに私には聞えましたから御尋ねした譯ですが、財産があり、自分の體力を以て生活を立てて行ける人達には、現在恩給を取つて居る人と雖も、厚生年金に似通つて新設されるものには入れないと云ふことになる譯ですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=16
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017・青柳一郎
○青柳政府委員 實は今御指摘のやうな點に付きましても、審議會で折角研究中でありまして、まだ具體案は出て居らぬ状態であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=17
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018・松本治一郎
○松本(治)委員 私の質問は是で終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=18
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019・小柳牧衞
○小柳委員長 高城君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=19
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020・高城憲夫
○高城委員 入營者の職業諸法の廢止に當りまして、之に關する戰時下に於ける色々な想出もある譯であります、更に手帳の方もやはり同樣でありまして、是が今日廢止せらるるに當りまして、此の戰爭期間中、國民の勤勞が此の法の施行に依りまして能く國家の大事に集中せられまして、而も其黽勉努力に依つて其の實の相當に上つて來たと云ふ點に付て感謝の氣持があるのであります、併しながら其の結末は敗戰と云ふことになつて、洵に感無量なものがあります、今此の廢止に當りまして、是等に關する總括的な政府の所感を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=20
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021・佐伯敏男
○佐伯政府委員 御話のやうに入營者職業保障法竝に勞務手帳法は戰時下に於きまして、大きな道を遺して來た譯であります、終戰に伴ひまして之を廢止せざるを得ない、斯う云ふことになつた譯であります、大體の法律の經過に付きまして若干申上げますと、入營者職業保障法は此の法律の示しますやうに、入營應召に依りまして、本人が不利益な取扱を受けしめないことを眼目と致しまして色々な制度を出して居る譯であります、是は入營應召者本人に對して非常な安心感を與へると云ふ、精神的な大きな效果を持つたものと斯樣に存じて居ります、それから一面從來は應召入營に依りまして、應召入營しない者に比較しまして、兎もすれば待遇が惡くなると云ふこともあり勝ちであつたのでございますが、此の法律の施行に依りまして、應召中のものに付きましても待遇改善を圖ると云ふやうな點も、非常に改善せられたことと存じて居ります、今後入營應召、殊に外地關係の復員の方々が漸次歸つて參られるならば、是等の方々に對しましては、特に職業の保障に付きまして、我々としまして萬全の努力を拂ひまして、今後の生活に對する後顧の虞のないやうに致したい、斯樣に存じて居るのであります
それから勞務手帳の方は御承知のやうに技術者を初めと致しまして、一般勞務者に付きまして手帳を交付致しまして、之を就職なり或は將來の條件と致しまして、一面勞務者の移動を防止を圖ると云ふ點に此の法律の眼目があつた譯でありますが、十六年に此の法律を施行致しましてから、さう云ふ部面に於ける從業者諸君の移動は確かに抑制せられた觀があるのでありまして、是は御手許に差上げました資料に依りまして、解雇率を見ましても、法律が施行になりましてからは相當低下致して居る、斯樣なる情勢に相成つて居ります、此の手帳の交付を受けました總數は一千萬近くに上つて居るのでございまして、勞務手帳法自體の效果はどうかと思ひますが、是が戰時中に於きます勞務調整の基本法律と致しまして、其の他に色々の意義を持つものと考へて居ります、併しながら終戰後になりまして、是等の勞務法制は全然意義がなくなりましたので、此の法律を廢止することになつた次第でありまして、大體所感と申しますか、兩法の法律の經過を申上げて御諒承を御願ひ致したいと存ずる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=21
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022・高城憲夫
○高城委員 大體退營と云ふことでなしに、復員と云ふことになつた譯ですが、復員の員數、都市と農村別に概略どう云ふ風になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=22
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023・佐伯敏男
○佐伯政府委員 御承知の内地關係の復員は大體完了を致した次第でございますが、内地の陸海軍の復員數は合計しまして三百九十六萬人ございます、陸海軍に於きましては是等の復員軍人に付きましても、全國の詳細なる調査をして居りますので、それを數字的に申上げて見たいと思ふのであります、農林業關係の前職を持つた復員軍人が百四萬人ございます、水産業が約七萬、鑛業が十三萬、工業が百五十三萬人、商業方面が二十九萬人、交通業關係が二十八萬人、公務自由業が五十四萬人、大體斯う云ふやうな前職の數になつて居ります、それから外地關係の復員でありますが、是は總數三百六十五萬ございますが、其の前職を申上げますと、農林業關係は九十六萬、水産業が七萬、鑛山業が十二萬、工業が百七十一萬、商業が二十六萬、交通業が同じく二十六萬、公務自由業は約五十萬人、斯う云ふ大體の數字になつて居ります、此の都市別、農村別にどう云ふ復員の状況になるかと云ふことは、只今其の資料がございませぬので、大體産業別に申上げまして御參考にして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=23
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024・高城憲夫
○高城委員 さうしますると、其の復員後の求職と言ひますか、職業に復歸した状況ですが、歸農者と云ふやうなものが大體幾ら位になつて居るか、尚ほ此の所謂鑛山竝に工業方面に付てはどう云ふ風になつて居るか、分りましたら御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=24
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025・佐伯敏男
○佐伯政府委員 御質問の點に付きましては、實は私共の方でも是非的確な數字を知りたいと云ふことで、陸海軍とも連絡をして見たのでございますが、御承知のやうな情勢でありまして、陸軍關係に於きましても海軍關係に於きましても、全然退營した者に付きましては其の所在を突止めて居らないと申しますか、さう云ふことは出來ない状況でありますので、正確な資料は殘念ながらないのであります、但し今申上げましたやうに、大體農村から來ました者は農村に歸農して居ると云ふことは常識的に考へられます、それから鑛山業方面に付きましては、御承知のやうに石炭の勞務が非常に不足して居る現状でありますので、復員軍人の方に是非鑛山方面に挺身して戴きたい、況や斯う云ふ方面に前職を持つ人々に付きましては、是非前職に歸つて、鑛山方面で働いて貰ひたいと云ふことでやつて居りますが、最近調査しました所ではまだ的確な數字が是れ亦分つて居りませぬ、まだ鑛山方面に歸つて居らないやうな實情にあると云ふことを聞いて居ります、それから工業方面でありますが、是は百五十三萬近く内地に於きましても前職者があるのでございますが、御承知のやうに重工業の閉鎖に依りまして、それでなくとも相當の數が離職して居る現状でありますので、恐らくさう云ふ方面に對しまする復員者の數は殆ど見られないんぢやないか、斯う云ふやうな推定を持つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=25
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026・高城憲夫
○高城委員 此の保障法に基いて、所謂保障法が謳つたさうした生活の保護と云ふやうなことに關する本省に對する復員者からの要求等はありませぬですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=26
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027・佐伯敏男
○佐伯政府委員 實は戰時中は非常に人手が不足を致しまして、それでなくとも色々な方面に問題があつたやうな次第でございまして、實際問題と致しましては、特に此の保障法の保障を受けなければ、職業の保障が出來ないと云ふやうな實情にはなかつたやうに存じて居ります、さう云ふやうな實情もありまして、旁旁特に此の法律に關しまする復員軍人の方面からの色々な要求と云ふことは、聞いて居りませぬ現状でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=27
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028・高城憲夫
○高城委員 是は敗戰と云ふ特殊な事情に依つて此の法律が自然消滅になつて行くやうな形になつて、總てが已むを得ないと云ふことになつて居るのでありますが、併しながら大體法律の建前としましては、最初謳つてあるやうに、其の退營竝にそれに準ずる復員に付ては、それに對する動向を見屆けて行くと云ふやうなことに關する國家としての組織はなければならぬ譯であると思ふのであります、此の際としては勿論非常に困難な點があつたから、結局已むを得ないと云ふことで、尻拔けになつてしまふと云ふ點、已むを得ないと思ふのであります、併しながら堂堂たる所謂文化國として、常に如何なる場合であつてもそこに一つの方向を執つて行くと云ふ芽生えはなければならぬ譯でありまするから、さうした復員者に關する職業保障に關して、廢止法の提案の今日に至るまでの間には、相當の事務的な處理が進んだことと思ふし、又さうでなければならぬと思ふのであります、さう云ふ點に付て密かに政府に向つて期待したいのであります、此の石炭の問題に付ても非常にやかましいのであります、之に付てもつと此の職業保障法を積極的なものに置換へて、さうして此の保障法の内面的連繋を持つて、新しい日本建設の爲の保障法を考へて行くと云ふやうな、さうした新たな立法の計畫はありませぬかどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=28
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029・佐伯敏男
○佐伯政府委員 保障法の廢止、御話のやうに終戰と云ふ事實に伴ひまして兵役機構が廢止になりました、殊に最近の色々な状況を見ますと、軍人たるの故を以ちまして特別の取計ひをすることは如何かと云ふやうな各般の情勢もあり、旁旁廢止せざるを得なくなつた次第でございます、併しながら御話のやうに復員軍人の方々も、職業の保障と云ふことは極めて重大な問題でございますので、私共と致しましては先刻申上げましたやうに、別に法律を作ると云ふ所まではまだ考へて居りませぬが、實際上職業の紹介、或は斡旋に當りましては十分に御心配を申上げたいと云ふことで、苦慮を致して居る點を御諒承願ひ上げて置きます、尚ほ復員軍人の方に付きましては、特に長年の間社會生活を離れて居られた方が非常に多いのであります、腕を付けると申しますか、特に職業の補導と云ふ點に重點を置きまして、今後立派な職業生活が出來ますやうに、萬全の處置をしたいと云ふことで、只今具體的に色々計畫を進めて居ります、是は近く具體化するものと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=29
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030・高城憲夫
○高城委員 私は官制の方は能く分らぬのですが、復員省の方はさう云ふ點に付ては別に何等の措置はない譯で、專ら厚生省に於て、今後其の保護、指導に任ずる、斯う云ふことになつて居る譯ですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=30
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031・佐伯敏男
○佐伯政府委員 其の通りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=31
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032・高城憲夫
○高城委員 尚ほ是は單に今御話のやうに、入營者に關する方面だけでなしに、所謂勞務手帳の方から考へても、今日の新たなそれこそ戰爭の當時よりも、より重大なる復興對策の上に、勞務の一つの規則なり、或は組織的な手段と云ふか、さう云ふものが實行せられなければならない譯であります、隨て廣い意味に於て繋がつて、次の勞務の確立に關する厚生省の意圖と云ふやうなものに付て、今少し承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=32
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033・佐伯敏男
○佐伯政府委員 御話の點は洵に御尤もでございまして、今後我が國と致しましては、民需産業の復興の問題とか其の他の問題が色々ございますが、どうしても七千九百萬近くの人口を此の狭小の國土で賄はなければならぬ、其の爲には職業と人口との關係を如何に持つて行くかと云ふやうな、非常に重要な問題もございます、隨ひまして勞務の配置と言ひますか、國民の職業の状態を常に能く把握すると云ふことは最も大事なことであります、其の意味に於きまして、實は十二月一日に全國的に國民登録を行ひまして、其の集計は恐らく今月末には集まると思ひますが、それに依りまして戰後に於きまする國民の職業配置状況、殊に失業状況ははつきり分るのではないか、斯樣に期待致して居る次第であります、戰爭中に於きましても勞務手帳に對しましては、單に法規的な規制、申上げましたやうに、大體是は移動防止を目標とした法規であります、全國民に手帳を持たせるやうな國民の手帳と云ふやうなものまで考へたらどうか、と云ふやうなことも色々問題がありまして、將來に於ては確かに研究問題の一つであらうとは考へますが、只今直ちに之を具體化すると云ふ所までは、私共まだ考へて居りませぬ、唯將來、現在やつて居ります國民登録に代るべき何等かの制度と申しますか、處置を執らなければならぬのではないかと云ふ點は、痛切に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=33
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034・高城憲夫
○高城委員 是は從來餘りさう云ふ點まで物を穿つて見て行くと云ふやうなことはなかつたことかも知れませぬが、併し愈愈是が本格的な一つの練れた一國として、色々な諸般の運營に付きまして、單なる形式的な行き方でなしに、常に實體を伴て行く國に仕上げなければならないと云ふ立場から致しまして、色々な此の法律の規定の内面には、必ず此の人々の素質を育て上げて行くと云ふやうな面が考へられて行かなければならぬと思ふのであります、具體的に申しますれば、例へば手帳法に依りまして、それぞれの持場で色々な業態に勞務を配置して行く譯でありますが、其の場合に、唯單に之を一勞務として形式的に取扱つて行くと云ふことに終らず、其の從事して居りまする勞務を以て其の事業に對する能力を練磨して行くと云ふやうな、さう云ふ内面を涵養して行くと云ふやうな點が考へられなければならぬと考へます、どうも戰爭の失敗の跡を見てみますと、人の働きが形式的であります、成程形式的には工業なり、土木なり、其の他の運送事業やら、貨物取扱の事業とか、さう云ふものに一箇の勞力として唯釘付にした、併しながらそれ自體が其の人を育てなかつた、だから日本人は薄つぺらに勤勞に從事するけれども、それに對する技術の修練と、或は内面的に其の仕事を自發創意を以て展開して行くと云ふやうな點に付ては、どうも巧く行かない、それは學校のことだと云ふやうなことになつてしまつて、直ぐ教育とか何とか云ふやうな所へ追込んでしまふ、さうして實際生活の面に於てさうした國民が練り上げられて行く部分と直結して行かないやうに思ふのであります、折角此の手帳法に依つて一つの勞務統制を圖ると云ふやうなこと等があつたのでありますが、其の間に戰爭と云ふ緊急な要請があつたのではありますが、併しながら尚ほそれでも技術の向上だとか、或は其の技術に對する意欲であるとか云ふやうなものが、果してどれだけ育つたものであるかどうかと云ふやうなことを追憶せざるを得ぬのであります、此の勤勞動員署の署長あたりで、さう云ふ點に付て指導をした人もありませうが、どつちかと言ふと、唯一勞務として網する、網に掛けて行くと云ふやうな程度で、半島人か何か使ふやうな工合に驅使した點がないではないか、隨てそこが破綻の因になつて、本當に眞心を以て技術能力を以て其の勞務に從事すると云ふ點が、洵にお粗末であつたのではないかと云ふことも考へられるのであります,今日以後に於きまして、どうしてもさう云ふやうな他から規制せられた勞務の運營でなしに、銘銘が自覺體として本當に小やかな資材と、機械と、材料の中から、日本の全力を發揮して行かなければならないと云ふやうな、所謂自覺した勞務者と云ふやうなものを作つて行かなければならないことになると思ひます、是は唯文部省でさう云ふやうな基礎的の練成を學校ですると云ふやうな段階だけに託して置いたのでは、是は生きたものにはならぬのでありまして、今後に於ては厚生省の建前でありまする國民生活の保護指導と云ふやうなことから言ひましても、實際に厚生省のやり方の中にもつと教育的なと言ひますか、國民を「リファイン」して行くと云ふような意味で、もつと教養しながら上へ引張つて行くと云ふやうな、さう云ふ面が相當進んで行かなければ、又再び戰爭中の愚を繰返すと云ふやうなことになりはしないかと思ふのであります、それ等に對しましての御所見は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=34
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035・佐伯敏男
○佐伯政府委員 只今御話の點は全く同感の點が多いのであります、實は勞務手帳法を作り、之を施行する場合に於きましても、是は唯單に勞務の規制、御話のやうに單に勞務を勞務として扱ふと云ふことだけであつては、是は洵に意義も少いのであります、面白くございませぬので、やはり此の國民勞務手帳と云ふものに依りまして、國民の教育の能力と言ひますか、科學的の能力を把握をし、又それに依りまして本人の技術の向上なり、或は色々の向上を圖りたいと云ふやうな意味も實は多分に持ちたかつた譯であります、まあ其の一つの案としましては、手帳の中に本人の職業の經歴を仔細に記載して戴くことは勿論、本人の技能の程度を申告して貰ひまして、是は色々作業に依ても違ふのでありますが、大體一級から三級程度に技能の程度を區分けを致しまして、場合に依りましては本人の技能の程度の申告に依りまして、之を國自らが檢査をして技能の判定をすると云ふやうな所まで考へたのでございます、唯遺憾ながら御話のやうに色々錯雜した事情の爲に、さう云ふ方面に對する手當は十分に出來なかつたことは事實でございまして、斯う云ふ點は御話の通り厚生省としましては、勿論御示しの方向に向つて努力をしなければならぬと斯樣に考て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=35
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036・高城憲夫
○高城委員 技能の程度、段階を育てる意味から想定して其の能力と仕事とが結付いて行くと云ふやうなことに付きまして、大いに其の趣旨でやつて行きたいと云ふ御話、洵に期待に堪へないのであります、是非一つ斯う云ふ面に付きましては、厚生省内に新たなる雰圍氣として、性格を一歩前進さして戴きたい、大體厚生省の仕事と云ふものは、最近に起つた仕事でありますから、省としての一つの雰圍氣と云ふものがまだ本當に能く出來上つて居ないのではないかと考へる、併し實際には國民生活の向上を圖ると云ふ面に付ての重大なる内容を持つ所管省になると考へて居ります、隨て國民生活の保護指導と云ふやうなことがありまするが、保護指導と云ふ字句が、更により深い内容を持つて溢れ出て來るやうに、一層の御盡力を願ひたいと思ひます、大體中小の工業を振興さす、而して更に又商業が展開せられると云ふやうなことに依つて、過剩人口の處理竝に巨大財閥の脱落に依る重點を、而も全面的なる多數の國民總力の中から是が浮上つて來なければならない、實に重大な方向を持つて居るのでありまするから、總ての勤勞に立つ者が全部一流一派を開く、或は一藝一能を展開すると云ふ面に付て、自營體として立上らなければならぬ、隨ひましてさう云ふやうな意味から、中小の商工業があつちこつちにそれぞれの趣を以て大いに躍動して來なければならぬ、それには先づ人の意欲が起らなくちゃならぬ、其の意欲に伴うて、それに關する資材、工場或は金融と云ふやうなものが逐次にそれに充足られなければならない、厚生省としては事業を皆が起さうとする意欲に對して十分なる保護指導を與へて下すつて、それが商工省系列に向つて働き掛けて行く面に付て厚生省が重大なる援護、觸發者でなければならない、人の心が閉されて居りましては開きやうがありませぬから、是非さうした面に一層の御精勵が願ひたいと思ふのであります、尚ほ附加へますが、國民勤勞動員署、是は今後ど云ふやうな方向を取つて運營せられることになりますか、其の御指示が得たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=36
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037・佐伯敏男
○佐伯政府委員 戰時中は國民勤勞動員署と致しまして、國民の動員、勞務の動員一本槍に突進んで來たのでございますが、御承知のやうに國民勤勞動員署は、本來職業紹介所たる使命を持つ國家の機關であります、終戰に伴ひまして、當然本來の職業紹介、職業の指導斡旋と云ふ本來の面目に立還るべきは申すまでもございませぬ、隨ひまして戰爭終結伴ひまして勤勞動員署と云ふ名稱は之を廢止致しまして、新しく勤勞署と云ふ名稱の下に、勤勞の一般行政に專念させることに致した次第でございます、隨ち今後は厖大な失業者を擁しまして、是等の失業者の方々の職業の紹介、職業の斡旋に專念致す次第でございます、其の爲には戰時中兎角強權に趨り、過ちも多かつた勤勞署でございますので、特に職員の心構へと申しますか、頭の切替に付きましては強く指導を致しまして、本當に窓口で親切に國民に接觸し、お世話申上げるやうにと云ふ態勢の切替に付きましては、終戰後直ちに各種の指令も發しまして、又我々も出向きまして、さう云ふ方面の指導に努めて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=37
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038・高城憲夫
○高城委員 勤勞署の職員の組織はどうなつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=38
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039・佐伯敏男
○佐伯政府委員 勤勞署は全國で約四百八十箇所ございますが、其の暑長は地方事務官で、全部今高等官署長となつて居ります、其の勤勞署長の下に屬が全國に五千人近く居りまして、是が勤勞署長の指揮の下に仕事を致して居ります、それから職業の適正配置を圖ります爲に、色々な技術的の操作がございますので、極く少數でございますが若干の技師、技手を配置致して居るやうな實情でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=39
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040・高城憲夫
○高城委員 其の屬の中には女子は入つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=40
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041・佐伯敏男
○佐伯政府委員 屬の前に主事補と云つた時代がございますが、其の當時には若干居つたやうに記憶して居ります、現在果して何人位ありますか、只今一寸的確な數字は持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=41
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042・高城憲夫
○高城委員 屬として婦人を採用して、婦人の今後に於ける勤勞指導と云ふ面に關して、唯單に工場に關する勤勞のみらなず、農村に於ける農業勤勞に對しても之を指導すると云ふやうな意思はないかと云ふこと、第二には單に女子に限らず農山漁村の各種の形態に關して勤勞の指導に關することをおやりになるかならないか、それ等の點を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=42
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043・佐伯敏男
○佐伯政府委員 女子の職員に付きましては、殊に今後の色々の情勢と睨み合せます時に、やはり婦人の職業紹介に付きましては婦人が當ると云ふ點が非常に宜い場合も多々あります、是は職業紹介所時代に於きましては、婦人の專門部に於きましては、女子の職員が之に當つて居つたと云ふ事實もございますので、今後斯う云ふ點に付きましては十分考へて參りたいと思ひます、出來ますならば婦人の專門部等を勤勞暑に設けまして、それには出來るだけ女子職員を以て充てることが望ましいと考へて居ます、それから各種の産業と申しますか、農山漁村を含めましても、勞務の指導斡旋に付きましては、勿論勤勞署が當然の任務として當るのでございますが、先刻も職業補導に付きまして若干申上げましたやうに、今後は何と言ひましても國民全部が各各に適當した職業に就職すると云ふことが、今後の日本の行くべき道でなければなりませぬ、さう云ふ點に對しましては十分技術的、科學的に職業の適正と云ふ點に付きましても、研究をし萬全を期して行きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=43
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044・高城憲夫
○高城委員 勤勞署の職員に付きましては、非常に動搖期でありましたから、各方面から雜多な人が其の職に就いて居られたやうに思ひまするが、之に關して何か其の構成に關して研究等はありませぬか、逐次專門家も出來たとは云ふものの、それに關するまだはつきりした基礎はないのぢやないかと思ふのであります、色々な實社會に直面した人から、集約して持つて來ると云ふやうなことで動いて居るやうでありまするが、どう云ふやうな傾向の人が成功して居るかどうか、又今後に於てどう云ふ方面から人材を得て來て、今茲に新たに構想せられる新しき勤勞署が一つの新しき勞務行政をやつて行くと云ふやうな面に即應するか、御所見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=44
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045・佐伯敏男
○佐伯政府委員 勤勞署の職員に關ましては、戰時中も各方面から色々な御批判もありましたし、私共も必ずしも素質が勝れたものとは存じて居りませぬけれども、昭和十三年に職業紹介所が國營になりましてから、戰時中勞務の動員と云ふことで急激に擴張致して參りましたので、其の間の色々な職員の養成教養等に付きましても思ふやうに參りませぬで、必ずしも十全な素質を持つて居ると云ふことは出來ませぬに致しましても、併しながら中央に於きましても色々な講習所も作りますし、各縣に於きましても其の養成に付きましては、十分な努力を致して來た積りでございます、職業紹介所時代に於てましては、從來の公營職業紹介所時代からの引繼きの職員が相當居つたのでありますが、漸次さう云ふ人は整理せられまして、現在では職業紹介所時代の經驗を持つた人は寧ろ少いやうに思ひます、御話しのやうに今後の職業紹介、職業指導と云ふものは、各般の産業に接觸を當然持たなければならない業務でございますので、出來得る限り、各方面からさう云ふやうな實際家の方々を職員として御願ひしたいと云ふ氣持は萬々持つては居りまするが、何分まだ待遇等も菲薄でございますので、さう云ふ點に付きましても色色改善を圖り、立派な職員を將來は養成をして、其の業務に携はらせたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=45
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046・高城憲夫
○高城委員 大變長くなつて濟みませぬが、是非一つ勤勞署の新しき方向に付きましては、特に御力添へを願ひたい、地方に於きましては是が皆の新しい事業意欲の上に、非當に重大な關係官吏だと思ふのであります、殊に地方に分散して居つて國民の窓口になつて居りまするから、是非一つ中小の商工業家、或は其の他色々な趣きの、小やかながら新しい日本を建設する業態と云ふものが勃興して、さうして今日の色々な課題を解決して行きたい、考へ樣に依りましては最も私は重大な指導官でなければならぬと思ふ、隨ひまして私の知る所では、元學校方面で非常に卓拔した訓導であつた人が署長になりまして、成果を擧げた所などもあるやうでありますから、一つ色々な形に囚はれないで、官等や俸給の順序などに囚はれないで、此の役所こそ思ひ切つて人材拔擢の方法等で、一つ國民の憂鬱を取り去つて新しく起ち上る氣持を觸發して、さうして勤勞に直結して國力を囘復すると云ふ面に付ての重大なる使命を勤勞署に十分與へて戴きたい、さうして是が又學校等の關係も、どうもお役人風を吹かしてしまつて從來のものはいけなかつた、頭からお役人風を吹かせて行く、あれでなしに能く協力して、協力的な關係、觀點からやつて戴くやうに一層の御指導を願ひたい、是は私の希望であります、此の程度にして私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=46
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047・小柳牧衞
○小柳委員長 それでは暫時休憩致します、一時から開會致します
午前十一時五十七分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=47
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048・会議録情報2
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午後一時十四分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=48
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049・小柳牧衞
○小柳委員長 それでは午前に引續き、まして會議を開きます――高城君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=49
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050・高城憲夫
○高城委員 文部省の方が見えて居られますから、一つ政府委員に御尋ね申上げます、午前に入營者職業保障法及び國民勞務手帳法廢止に關する法律案で、厚生省の方に御伺ひを致したのでありまするが、それと引續き關聯を持つて居りますことで、要するに國民生活の保護指導と云ふやうな面から、厚生省に對して希望を申す點等に關聯しまして、文部省の方でも御配慮を載かなければならない面が多々あります、それに關する件を中心としまして、少しく御尋ね申上げ、或は希望を申上げると云ふ風に致したいと考へて居ります、復員に依りまして、非常に社會の實情が複雜を極めて參りました、詰り青壯年層の保護指導に關しまして、幾多の問題がある譯でありまするが、其の中で差當りの問題としまして、地方では青年學校の教育と云ふ方面に付きまして、非常に憂慮せられて居るのであります、此の青年學校が入營と云ふやうなことがなくなりました關係上、さう云ふ面から再檢討せられなければならぬ面が、先づ其の第一の問題だと思ひます、新しき青年學校の運用と云ふものが、どう云ふ風に動いて行けば宜いのか、それに關する文部省の御意圖を承りたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=50
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051・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今の御質問に對して御答へ申上げます、従來青年學校の營んで居りました所の機能と致しましては、職業教育の面と、公民教育の面と、特に時局の要請と致しまして、教練の點に非常に重きを置いたやうな次第でございましたことは、御承知の通りでございます、所で此の教練の方面が特に非常時局になりましてから強調せられて、他の職業教育の面と公民教育の面とは、遺憾ながら比較的に閑却せられて居つたのではないかと云ふやうなことも考へられるのでござのます、所で先程御指摘になりましたやうに、此の入營と云ふやうなことがなくなり、又教練と云ふやうなことも必要でなくなりますると、今までの青年學校のやつて居つたことは、總て骨拔きになつてしまふのではないか、隨て此の青年學校の運用の點に付ても、再檢討を要るのではないかと云ふことは、洵に御尤もな御考へであると存ずる次第でございます、文部當局と致しましても、此の點に付きまして、青年學校を今後どう向けて行くかと云ふことは、全國多數の青年に關することでございまして、國家的に見て又教育的に見まして、非常な重大なことだと感じて居る次第でございます、此の點に付きまして職業教育と、公民教育の面が殘り、職業教育なり、公民教育の本來の面目に從つて、青年學校は活動しなければならないと信じて居るのでございます、此の職業教育の面に付きましては、青年學校の特色を大いに活かす必要がある、其の各地方詰り「ローカル」な特色に關係致しまして、青年學校で學ぶ所の青年をして、具體的の實情に即した役に立つやうな職業教育を施す、單に抽象的な學理、理論と云ふやうなものを机上で教へるのではなくして、實地のものに即した本當に社會生活に必要ある職業を體得せしめると云ふやうな方向に進めて行かなければならないと信じて居る次第でございます
それからもう一つは公民教育の面でございます、是も申すまでもなく本當の公民としての訓練が、現在日本國民に於て十分でない、隨て選擧權の範圍が擴張されましたにしましても、之を行使する所の者が本當の公民意識なり、公民としての識見に於て不十分であると致しまするならば、國の政治を善くして行くことは出來ないと云ふ譯になります、此の公民としての意識を高め、又識見を廣めると云ふやうなことに付きましては、是は各方面に於て行はれなければならぬのでありますが、殊に青年學校で學ぶ所の育年層に働き掛けると云ふことが、極めて重大なことと存ずるのであります、隨て青年學校に於ける公民教育は特に重要でありますし、此の公民教育の内容に付ても從來の形骸化した、唯法制經濟の項目を竝べると云ふふやうな意味ではなくして、今後の政治の要望に適ふやうな本當の立派な公民となり得る如き教育を施さなければならないと信じて居ります、此の公民教育に付きましては現在公民教育の刷新に關する委員會が文部省内に設置せられまして、其の方面の練達の士や、學識經驗ある方々を招きまして、成案を得つつあるやうな次第でございます、此の結果に應じまして青年學校に於ける公民教育も改善されることと存じて居ります、尚ほ青年學校全體の制度の檢討と云ふことも、是は必要ではないかと思ひます、此の點に付きましては學校教育全體をどう云ふ風に整備するかと云ふやうなことに懸つて居るのでありまして、是は學校教育刷新に關する委員會が不日設けられることになつて居りまして、其の全體との關聯に於きまして、此の青年學校制度を再檢討することに致したいと存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=51
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052・高城憲夫
○高城委員 今の具體的な問題に付きまして、職業教育の點で所謂即時即物と云ひますか、物に即し時代に即して教育すると云ふことにならなければならぬ、農村では自宅で農業に一生懸命働いて居る譯であります、然るにそれを學校へ引張り出して、又實習地で仕事をやらせる、而して指導者は成程立派な教養を積んだ指導者でありますけれども、どちらかと云へば學校内の生産と云ふやうな色々な出來高等に氣を取られて、學校が何ぼ開拓したとか、學校自體の一つの何と言ふか、それに即き過ぎた興味を以て運營をする、隨て學校はそれで面白いかも知れませぬが、生徒其のものは唯單に勞務を供與したと云ふことに終つてしまつて、果してそれが綜合的に見て人の錬成になつて居るかどうか、或は又それから出發した所謂生産の實體に觸れて行くと云ふことになるかどうか、頗る疑問があるのでありますが、其の點如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=52
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053・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今現在の青年學校に於てなされて居る職業教育の問題に付ての御批判、甚だ御適切な點ではないかと存ずるのであります、何も青年學校の教育は學校内に限られるべきではない、寧ろ農村に於きましては田畑に出て仕事をすると云ふことの方が、實際に即して居る場合もあるかと存じます、隨て此の成績等も、只今御話のやうに生産高だけを擧げると云ふやうなことに若し成績の判定がなつて居るとすれば、是は改めなければならない弊害だと存じます、さう云ふ點は尚ほ青年學校制度を檢討致します際に、色々改善しなければならない點があります、其の一つとして大いに考慮致したいと存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=53
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054・高城憲夫
○高城委員 終戰後青年學校の教育に付ては、今日までどう云ふやうな指令を出して居られまするか、其の實際を承りいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=54
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055・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 御答へ申上げます、八月になりましてから教練を廢止致しました、是は青年學校のみならず、一般學校に付きましても「マッカーサー」司令部の方の指令に基きまして、さう云ふことになりましたことは御推察の通りでございます、それから九月になりましてから復員者の就學を一層徹底せしめる必要がございまして、其の點に關する指令を出しました、それから十月になりましてから女子の就學の一層の徹底化を圖りました譯であります、指令として出しましたものは、其の位のものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=55
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056・高城憲夫
○高城委員 終戰後の青年學校の男子の出席率は殆ど零になつて居るのですが、それに關する措置如何、それから第二に、復員後復員生徒等を中心として喫煙等は勿論のこと、其の他の惡習が非常に青年學校に出て居る趣きがありますが、それ等に關して御認めになつて居るかどうか、或は對策等がありますれば伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=56
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057・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 出席率に付きましては、青年學校の性質上、一般の學校よりも甚だ斯う云ふ事情の下に於きましては劣つて居る、低位にあると云ふことは、左樣に違ひないと云ふ風に存ずる次第であります、どれ位一體出席率が低下して居るかと云ふことは存じませぬが、此の點今後大いに青年學校制度の振興と俟ちまして、文部省と致しまして一層其の點に留意致しまして、出席を極力獎勵するやうに致したいと存じて居る次第でございます、それから喫煙等の惡習慣、是もやはり一般的の弊害でございまして、是はやはり公民教育なり、或は倫理なり、さう云ふやうな方面に於きまして、現在學校全體に付きまして甚だ遺憾な状態になつて居りますので、さう云ふ點も十分今後公民教育なり、倫理教育の徹底に依りまして、一般的には總ての學校に對して、又特に青年學校に付きましては、さう云ふ缺陷が多いかと存じまするので、大いに努力したいと存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=57
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058・高城憲夫
○高城委員 青年學校は御承知の通り、一週に一度登校して居りまするので、中々教育が困難であります、殊に継續的良習慣を啓培しなければならない教育でありますから、斯う云ふ風な機械的なものでは中々實績が擧らない、殊に世間の實情が裏返しになつたやうな、斯う云ふ危い重大な時期でありますので、此の學校を存續せしむるならば、此の際存續の理念を急速に確立して、さうして此の具體的方策に付ても、根本の對策を立てませぬと、今日の青年學校は、此の儘全く自然消減に歸すると云つても過言ではない實情にあります、何樣教練々々と云つて、教練が惡かつたと云ふことになつて居りますけれども、併しながらああ云ふ方面に關聯して青年の氣持の繋がりがあつて、それが即ち營門に續く學校教育の意義を持つて居つたのでありますから、此の八月に教練廃止のことがあつたと致しますれば、それと關聯して直ぐ所謂教育の指向をそこに立てて、そして新たなる方策が立てられなければならなかつた譯であります、隨ひましてそれに關する對策でありますが、學校教育の刷新委員會を作つて、そしてさう云ふものを考へて行くと云ふやうなことでありまするが、さう云ふのも宜いでせうが、是はもう「マンネリズム」で、昔からさう云ふ風に仕來りがなつて來て居る、是ぢやいかぬ、寧ろ青年學校等の對策に付ては、こつちから處置をするとか教へてやるとか云ふことは無理なんですから、現場の各學校の教職員の率直なる意見書を集積して、そして其の中から珠玉篇を見出すと云ふやうに一つの方策を立てられると云ふことも一方ぢやないか、更に又各縣の青年學校關係者から、青年學校に關する緊急對策、所謂上策の獻策書をば徴取する、さう云ふことに依つて今將に絶えなんとして居る所の青年學校の使命を立直すと云ふやうな臨時の取計らひが要るのぢやないかと考へまするが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=58
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059・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 青年學校制度が我が公民教育なり、職業教育の面に於きまして非常に重要な制度でございまして、之を活かすか殺すかは、國家文教全體に對して重大なる影響を持つて居ると云ふことは、只今御話の通りでございます、其の刷新の方法でございますが、確かに先程縷縷御述べになりました刷新すべき點が多々ございます、どう云ふ風に刷新して行くかと云ふ點に付きましては、是は今後の教育の刷新全體にも關係あることでございますが、併し具體的にやはり實情に即した改善に努力しなければならないと云ふことになりますると、やはり只今御示唆になりましたやうに、現場の職員の意見を徴する、又各縣の青年學校教職員の獻策を徴したら宜いぢやないかと云ふ御話でございまして、是は洵に適切なる御示唆と存じます、文部省と致しましては、此の教育制度の刷新に付きましては、出來るだけ「デモクラチック」にやつて行きたい、委員會の構成なども、やはり從來の竝び大名式でなくして、本當に其の道の「エキスパート」なり、或は教育の專門家ばかりではなく、或は實業家とか、或は農村方面の人々だとか、廣く社會の經驗者、有識者を集めたいと云ふやうな方向に段々向いて參つて居ります、さう云ふ意味に於きまして、青年學校制度の改善なり、或は具體的の運營の方法等に付きましても、最も現場と直接に關係のあるやうな方々の意見を出來るだけ參考にしたいと云ふ風に考へて居ります、さう云ふ意味に於きまして只今の御示竣になりました點、甚だ有難く承つたやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=59
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060・高城憲夫
○高城委員 例へば衆議院の構成でありましても、言葉は惡いかも知れませぬが、所謂田舍の田夫野人と言ひますか、さう云ふ者が選擧を致して、さうして代議士を選出して居るのであります、それが帝國議会を構成して居る、斯樣に田夫野人の中から一つの人物を選出する、或は意見提出する、思想を持つて來ると云ふやうな段階に、今日の日本は十分進み得るだけのものがもう地方に扶植せられたと思ひます、學校教育と云ふものが開始せられた明治の中期でありますれば、それは頭下しに持つて行かなければならぬ面が多々ありますけれども、今日は生活と云ふものに本當に血みどろな修業を積んで生きて行かなければならない地方民、又は生々と戰爭乃至敗戰の體驗を積んだ地方民でありまして、そこから生活をどう確立するか、或は社會をどう云ふ風に構成するか、或は地方町村自治體をどう云ふ風に運營するかと云ふことに付ての素材なり、感覺なりは、もうあり餘る程地方にあるのであります、もう迚も普通の簡單なる座談會あたりでものを組立てて行かうと云ふやうな、さう云ふ時の空氣とは違つて、實際の表現こそ出來ないのですけれども、學校は斯う云ふ風にして貰はなければ困る、斯う云ふやり方はいけないと言つて、實に豐富に民間には教育に關する所の内容なり、或は形式に對する意識などと云ふものが生活に直結して居る譯であります、でありまするからさう云ふ面を土臺として教育を考へて行かうとなさる政府委員の御考へは、非常に時宜を得て居ると思ひますし、其の點に付きましては局長として期待せられて重任に就かれて居るのでありますから、此の際從來の行き方を變へまして、根本的にさう云ふ點に付て新たなる手を打つて戴きたいと云ふことを期待に堪へないのであります、實際經營にしましても、例へば私は鹿兒島の者ですが、鹿兒島縣の青年學校と云ふものは天下に一時謳はれたのであります、鹿兒島の青年學校の意見を徴することに依つて、例へば東北の縣の青年學校にも參考になる、又田園地帶の青年學校の意見を聽いて、山間地帶の青年學校にも一つの參考になるやうに、青年學校の實體、其の獨自の切磋琢磨をされなければならぬ、言換へれば文部省がそれを斡旋し運用する、其の活きた實體を運用すると云ふ形になつて行けば、十分青年學校革新の方策は其の實體を地方に持つて居ると考へられるのであります、話が結論めいた所に入つてしまひましたが、是は結局さう云ふやうなことから、又具體的の問題にも入つて參ります、例へば斯う云ふやうな意見などがある、其の一つですが、今のやうに一週間に一遍出て、型ばかりの教育を受けて、情熱が全然育たない中に休みばかり連續するのですが、さう云ふ風なことを止めて、一週四日位連續の教育をやつて、三年位の通年制にしたならばどうであらうかと云ふやうなことを言つて居るのであります、勿論地方の要望は唯それ一つではありませぬ、多々あります、或は第二には青年學校に英語教授を開始して貰ひたいと云ふやうなことも述べて居ります、第三には入營に代るべき一つの國民錬成――入營を一つの國民錬成の機會と見た考へ方でありますが、それに代るべき一つの方策として、青年の身心共に其の國家的要請に叶つて居るか否かをば「テスト」する一つの國家試驗、青年試驗と云ふやうなものを從前の徴兵適齡期に之を施行するやうなことをやつたらどうか、丁度體力檢定證のやうな形で青年の檢定と云ふやうなことをやる、それを目途として青年學校を運營すると云ふやうなこと等は如何、或は又第四には折角學校内に幾多の工場が建設せられて、一つの學校工場までは行きませぬでしたが、既設の建物を利用すると云ふ意味に於て軍需工場なり、協力工場なりが出來たのでありまするが、さう云ふやうな設備等を、徒らに大きなものは別ですが、田舍の小さなものなどは存置され得るのでありますから、さう云ふ點に付て文部省が此の動搖期に積極的に乗出して、何故之を青年學校教育の内容に持つて行くと云ふ構想が働かなかつたのであらうか、どうも文部省は迂濶で後手ばかり打つて居て、折角學校に發電機などを置いて、どうだ希望だつたらやらうかと云ふやうなことを申し出る校長等もあつたのでありますが、さう云ふ面等に付ての敏捷しこい處置が文部省にない、從來の慣例で自ら縣廳の青年學校の係等は觸らぬ神に崇りなしですから、宜い加減に上の方の指示がないとか云ふことで片つ端から片付けられ、結局終戰後の状態は虚脱の状態になつてしまつたのであります、是は極く一例で申したのであります、まだまだ語れば千萬語でも盡きない、是等の實際の體驗的な希望があるのでありまするが、差當りさう云ふ小さな問題の御所管、竝に全體として速急にさうした革新對策で、而も青年學校令の改正と云ふやうなことなどは別としまして、今の虚脱を過程的に放置して置かないと云ふ面から、速急なる革新案を青年學校自體の手に於て確立して、明日と言はず文部省が持つて居らるる學校教育の理想を青年學校で實現して行くと云ふやうな形に、御手配が願へないかどうかと云ふことを御尋ね申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=60
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061・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今御示しになりました所の一週間に一遍と云ふやうなことでなくて、四日位は出席させ、三年位の通年制にしたらどうか、又英語教育を始めたらどうか、又入營に代るべき國民錬成の方法を設け、又檢定を、試驗的のものをやるのも宜いではないかと云ふやうな數々の御指教になつた點、十分考慮したいと思ふのであります、要しまするに今日確かに青年學校は、まだまだ虚脱状態にありますので、是は何とかしなければならないと存じますので最近數日中に今日の青年學校教育に關する教育方針の要目改正に付きまして指示を致したいと存じて居ります、申すまでもなく青年學校は他の學校と異つて、學校教育と社會教育との中間と云ふやうな性質を持つて居りますので、さう云ふ意味に於きまして、他の學校改正の頭で以ては出來ないのでありまして、其の點十分實情に即したやうに考へまして、今日御話がありました點を十分參考に致しまして、今後の方針と致したいと存じます、其の意味に於きまして厚く御禮申上げる次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=61
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062・高城憲夫
○高城委員 今日我々は青年を護らなければならぬと思ひます、青年の士氣を鼓舞しなければならぬと思ひます、それに關する御所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=62
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063・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 仰せの通りに今日、特に終戰後に於きまして青年は、或は學徒は虚脱状態にあるのではないかと思ひます、此の點無理もないことと存じます、と申しますのは今まで非當時局の政府に於きまして執つて居つた方策と全く違つた方策が、此の八月十五日以後に示されて居るやうな譯であります、是は學徒のみならず、教職員全體が適從する所を知らないと云ふやうな状態ではないか、成程平和國家、交化國家の理想は示されましたけれども、一體何故にさう云ふ切替がなされたか、今までの眞理は今日虚僞になつた、或は今までの虚僞は今日眞理になつたのかと云ふやうなことに付きまして、根本的に疑問を教育者が持つて居るのではないか、又其の教育者に指導せられつつある所の學徒も持つて居るのではないかと思ひますので、只今の御話のやうに、我々はどう云ふ風に此の青年を鼓舞しなければならないか、どう云ふ風に國民としての生甲斐を見出すやうにしなければならないかと云ふことが、現下の問題ではないかと思ひます、之に付きましては既に文部省と致しまして、或は大臣、次官等の「ラジオ」講演、其の他或は教育者を集めての訓示なり、又文部省と致しまして、新教育の方針を色々な機會に於きまして闡明したのでございます、問題は詰り眞理に對する尊重の念と云ふことが一番大切でございまして、從來單なる國家目的に、奉仕すると云ふことが、是が道徳なり或は文化と云ふことの目的であつたのでございますが、其の結果國家目的と云ふものが軍國主義であれば、侵略主義の目的に奉仕するのが道徳なり、文化の目的であつたと云ふ風に考へられる譯でございます、所が今日平和國家或は文化國家を建設すると云ふことになりますと、國家が平和なり文化なりに奉仕しなければならない、そこに詰り國民全體、或は學徒の生甲斐が見出さるべきでありまして、國家も亦眞理なり文化なりを尊重しなければならない、隨て國家の一員である人民なり或は學徒なりも、其の眞理に、或は文化に、或は道義に奉仕すること自身が國家の理想的なる人民としてなすべき所である、考へなければならぬ所であると云ふ風に考へるやうに青年學校を指導致しますことに依つて、彼等も新しい時代に於て初めて生甲斐を見出す譯になるのではないか、從來實は卑近なる國家目的の爲に鞭撻されて參つたのであります、青年學校の生徒の如き特にさうであつたかと存じます、それでは本當の生甲斐を見出す所以ではなかつた、今後初めて青年學徒達は生甲斐を見出すやうになるであらう、又さう云ふ風に教育と云ふものを仕向けて行かなければならない、それが我が文教の根本でなければならないと云ふ風に、私共は信じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=63
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064・高城憲夫
○高城委員 國家が眞理を具現する姿であることを我々は期待して居る譯でありますから、隨て眞理の爲め眞理の如くと云ふことが、又國家の如くと云ふやうな形にもならなければならぬのであります、其の點に付きましての論議は偖て措きまして、此の青年を護り、或は又青年の志氣を昂揚すると云ふ方策に付きまして、特に今學校教育の方の所管のお仕事ではありまするけれども、外に政府の方がいらつしやいませぬから、此の際便宜總括的に部局主義でなしに申上げたいと思ひますが、何とかそれに關する方策を立てて貰ひたいと思ふのであります、雪の冬が又來る譯でありますが、さうした冬の季節と、復員であぶれて遊んで居る青年が街頭に彷徨うて居る、さうした雪の夜長などに、或は大學あたりで相當學術を研究された方々とか、其の他然るべき人物がさうした寒村僻地を訪れてさうして直接青年と握手して彼等の情熱に溶込んで行くと云ふやうな企ての如きものが、早速此の冬からでも生れるやうな形のさうした仕組等があつて宜いのではないか、青年は膝を交へて語ることに依つて溶合つて行くのでありますから、型を外したさう云ふやうな勉強に付て、何か具體策でも立てて戴くやうなことにならないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=64
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065・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今の御質問の點に付きまして、公民教育の面から致しまして全國の教育家を動員致しまして各地で以て講演會なり座談會をするとか、其の外又「ラジオ」なり、映畫なり其の他の文化的の方法を以て働き掛ける、其の意味は、詰り先程申しましたやうなさう云ふ文教の新しい方策に基きましてやりたいと云ふ譯でございますが、最も重要なる點は、現在物質的に我が國民は非常に悲慘なる状態にございます、併しながら此の悲慘なる状態の物質面、或は經濟面の改善と云ふことは、是は勿論緊急必要なことでございます、併し此の精神的の方面に於て「パン」の分量は少くても、精神に於て最も充實した内容の生活を我々はやつて行かなけるばならないと云ふ意氣を青年に持たせると云ふことは、極めて重要なことと存じます、さう云ふ意味合からして、全日本の教職員は街頭に進出して、民衆に働き掛けなければならないと云ふ必要を特に感ずる次第でございます、大學等に於きましても、聞きます所に依れば、今まで象牙の塔に籠つて居つた教授が街頭に進出しなければいけない、所謂「ユニヴァーシティ・エクステンション」と云ふ外國でやつて居るやうな方法も此の際考慮に入れて、門戸を開放する必要があるのではないかと云ふことを考へられて居ると傳聞致したやうな次第でございます、文部省と致しましては、大學に對しましては出來るだけ積極的な干渉は避ける、自治を重んずると云ふ態度を執つて居ります、併し大學の方でさう云ふ風に街頭進出を考へられて居ると云ふことは、是は極めて結構なことてはないか、他の專門學校、或は中等學校の教職員に付きましてもさう云ふ街頭進出、本當に民衆と膝を交へて接觸すると云ふことは、是は極めて必要であり、又新教育の方針を徹底せしめるに付きまして有效なることではないかと考へまして、精々さう云ふ方面に於きまして、文部當局と致しましても努力致したいと思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=65
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066・高城憲夫
○高城委員 私は大學教授と申しましたのは、もう既に、御分りの通りに、私が申上げる點も一致して居る譯です、詰り眞理に忠實であつたと云ふ姿を具體的に青年に見せる、だから研究の内容は何でも宜い譯でありまして、それこそ理學者でも、工學者でも、醫學者でも、或は僧侶でも何でも宜いのですが、兎に角さう云ふ眞理に忠實なる生活の姿、行じて居る姿と云ふものを持つて行つて、生で青年に打當る、斯う云ふ意味に於て凡そ眞理に忠實たらんとする大學は――大學に限らず高等專門學校でも宜いし、又町學者でも宜いですが、さう云ふやうな是はと思ふ人物が、さう云ふ姿を其の儘に青年に打突ける、斯う云ふ構造を此の際早急にやつて戴きたいと思ふのであります、大學教授は師範學校を教へる、師範學校の卒業生は地方に行つて青年に教へると云ふ風に、階段式にやつて行くのはもう食傷してしまひましたから、さうでなしに一つ…何も急に擴めぬでも宜い、各縣一箇所でも宜い、一つ行つて何處かの温泉場に集めるとか、或は何處かの村里に集まつて一箇所に火を點ずる、斯う云ふやうな形が起るならば、もう皆踵を接して集まる、先生一寸待つて下さい、まだ話を聽きたい、斯う云ふやうな形で一つの雰圍氣が起されたならば、其の實際の成長は此の次の制度の確立の上に非常に寄與する所があるのではないか、制度を先に確立してさうして人間を採つて行くと云ふやうな形は、此の際一寸採らないのでありまして、其の點を申して居りますが、一寸それに對して……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=66
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067・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今御話の學者が眞理に精進して居ると云ふこと自體が、世の中に對する非常な教訓になるから、さう云ふ姿を見せるやうな風に段々仕向けて行つたら宜いではないかと云ふやうな御説と承りました、全く其の點は仰せられる通りでありまして、大學教授其の他專門の學理の研究に勵しんで居る學者達が、何も倫理道徳を學者に對して説明かなくても、眞理に對する「デヴォーション」其のものが非常な教育になるものと存ずるので、世間は實はさう云ふやうな「デヴォーション」に付て聽く所が少い、隨て或は教育なり或は文化全體に付きまして政府が無關心で無理解で、隨て教育なり文化と云ふものが我が國に於ては他の國よりも尊重せられない、其の尊重せられない結果、今日のやうな状態にもなつたと云ふ所に歸著するのであります、只今の御指摘になりましたやうなことが、段々行はれるやうになれば、世間ももつと學者を尊重する、もつと學理を尊重すると云ふやうなことになるのではないかと思ふのでございます、勿論從來文部省と致しましても、色々講習會を開いたり、或は講師として其の際にそれぞれの學問の「エキスパート」を派遣して、講習會なり座談會なり開くこともございませうけれども、御承知の通り今日我々が考へる所の正しき「イデオロギー」に從つて居たのではない、寧ろ國家の政策を學者の口を通じて言はせると云ふ風にして居つたやうな次第でございます、さう云ふ點は勿論今後是正されなければならないのであります、是正せられた新しい教育の方針に從ひまして、出來るだけ文部省としましても、本當に此の學問的良心を持つた眞理に獻身的に「デヴート」して居るやうな、さう云ふ學者達を選びまして、地方に出張を願つて、出來るだけ一般民衆と接觸すると云ふ風に取計らひたいと存じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=67
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068・高城憲夫
○高城委員 以上は教育の内容に關する、言ひ換へれば教育を實體から此の際に建設しようぢやないかと云ふ面の文部省の行き方に付ての問題のほんの一端になる譯であります、文部省のもう一つ教育の面に、非常に働きの面に於て重大な意味がなければならぬのは、何と申しますか學校の運營に關する物的方面の責任、それから又教師の衣食住に關する責任、或は經營上の、先程申しましたのと包括されますけれども、教育内容とやはり關聯がある教材、教辨物或は教科書とか、色々のものがありますが、さう云ふ方面の責任、斯う云ふ面に付て相當廣汎な企畫と政治性が文部省に昂揚されなければならないと思ふのであります、それで總括的なことは拔きにしまして、一寸話が飛躍しますけれども、其の中の一つとして教師の衣食住の生活に付ての問題でありまするが、今日の時代に於きまして總括的にさう云ふ面に付て、先づ御意見を伺ひたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=68
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069・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今御指摘になりました三つの點でございますが、學校の運營に關する物的方面、是はまだまだ甚だ不備でございますし、殊に戰災の結果燒けた所の學校も多々ございます、さう云ふ點に付きましては、臨時措置として御承知の通りに色々な軍の施設等を轉用すると云ふやうなことも、出來るだけ斡旋してやつて居るやうな次第でございます、尚ほ併し現状では決して滿足出來ませぬ、學校復興部と云ふやうな特別な部面を文部省の中に設けまして、更に斡旋を圓滑にし、強化しなければならないと云ふやうなことも考へて居ります、併し其の外尚ほ各學校、殊に中等學校等に於ける設備等も甚だ不完全な状態でありませうし、さう云ふ方面の充實は豫算の許す限り、或は必要ならば豫算をさう云ふ方面に要求しても整備しなければならないと云ふやうに考へて居ります、教材の問題もやはり同じやうに出來るだけ豐富にしなければならない譯であります、併しながら經濟上の制限がございますから思ふやうには參りませぬが、教材の中教科書のことに付て考へますと、教料書の改訂と云ふことは現在の非常な大きな問題になつて居ります、内容の點に付きまして軍國主義的、國家主義的な内容があるならばそれを削除しなければならず、削除した結果今度は骨拔きになつてしまふと云ふことではいけませぬので、新たに新教育方針に付即應したやうな良い材料を取入れなければならぬと云ふことになりまして、是は大變な困難なことであります、併し飽くまでも愼重にやらなければなりませぬ、出來るだけ早い機會に於て教科書の改訂に關する委員會を設けてやると云ふことになつて居るやうな次第であります、それから一番大切な問題でございまする御話の教師の衣食住の生活問題であります、是は單なる社會政策的の意味に止まらず、教育者が衣食住の點に付て獨立して居なければ、本當の教育家としての品位を保つことは出來ないと存ずるのであります、それは教育家が社會的或は政治的に獨立して、如何なる權門にも如何なる富にも頭を下げないと云ふ所に、教育家の使命と云ふものがある譯でございます、若し衣食住の生活に於て脅かされて居るとか、或は他と比べて非常に劣つて居ると云ふことでありますならば、教育家の使命は完全に果して行くことが出來ない、大多數の教育家はやはり其の使命を十分遂行して行くことが出來ないと云ふことになりはしないかと思ふのであります、隨て教育家の待遇の問題に付きまして、本議會に於ても隨分さう云ふ要望が色々な方々から現はれて居りまして、其の點に付て文部省と致しましても非常に意を強う致して居るやうな次第であります、國民學校の先生方の俸給と云ふものは、現在他と比べて、殊に昇給の年限等を考へて見ますと、非常に低いやうな状態であります、又賞與等も少い、假に實質的の收入の面から考へて見ますと、他の官公吏なり或は實業の方面に從事して居る人々との間に開きがあるのであります、斯う云ふ點に付きましては出來るだけ考慮致しまして、豫算の面に於きましても大藏省當局と十分折衝致しまして、他の官公吏よりも寧ろ優遇されて然るべきではないか、今後は教育界に他の社會に於ける各分野よりももつと多くの人材を吸收する必要がある、是が今後の國策の方針でなければならぬと存じて居るのでありますから、他と同一の點まで行く、それで滿足すると云ふやうな程度を越えまして、教育を國家が重要視しなければならない、隨て教師の待遇を他よりももつと良くしなければならないと云ふやうな方針で以て、努力致したいと存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=69
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070・高城憲夫
○高城委員 今の問題に付きまして文部省としては率直に申しますと、さう云ふ方面に大いに政治的な働きをして貰ひたい、所謂中央に於ける、各般の政務に關聯して居る最後のものでありますから、教育の内容等に付ての運用上の色々な規矩準繩に付ては地方の自治に任し、本當に主力を注ぐべきことは所謂學校教育體制と云ふものを確立する、是は所謂教育が動いて行く總ての要素、特に今申しました資材の面等に關して、或は衣食住の件に關して、或は教員の生活安定に關して、さう云ふ問題に付て根本的な政治力を昂揚されませぬと、今度學校勞働組合等が生れて、始終文部省が後手になつて行くと云ふやうな形になつて行くと云ふことは、教育の紛亂を來して頗るいかぬと云ふことを感じます、此の點に付きましてはどうしても當局の方に於て、好むと好まざるとに拘らず一段の御精勵を願はなければならぬと思ふのであります、例へば一例を申上げますと、地方の學校で先生が外線から電力を投入して一つの施設をやりたいと云ふやうな――青年學校あたりでもさう云ふ希望を持つて居るのであります、所が此の電氣の設備に關して、電燈會社の連中が威丈高になつて學校を制壓するのです、それは單に學校に限らず、總ての企業面に於ても、或は家庭生活等に於てもさう云ふ風になつて居るのでせうが、教育は國の根源なのですし、教育施設は極く僅かな限られたものでありますから、さう云ふ學校に電力線を引込むと云ふことに付ては、學校だけは天下御免でやれるやうな形に持つて行きたい、又實際に其の方の能力者が學校の中に居るのです、先生は電線を持つて居る、先生が持つて居ると云ふのは軍需會社や、軍あたりから貰つたのが相當あるのです、さう云ふやうなものが買はなくてもあるのだから、自分でやらして呉れれば出來ることですが、學校なんかではと云ふことになつてしまふ、是は即ち學校體制と云ふものが社會的に獨立の地歩を確立して居ないと云ふ實態を物語るものであります、學校のすることはもう總てに優越して自由自在にやれるやうにする、それは教育の内容が非常に國家性を帶びた廣汎なものであり、文化の縮圖でありますから、如何樣なことでも學校には觸覺を持ち、感覺が伸びて行かなければならぬのでありますから、さう云ふ意味から天下御免と云ふものを學校には保有したいものだと云ふことを考へるのであります、それから第二には生活必需品の消費組合のやうなものを教員で構成することは出來ないか、或は共濟制度と云ふやうなものに付ての御考へと如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=70
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071・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今の學校と云ふものが他の行政的、或は社會的の制壓を離し、自由自在に其の目的に向つて邁進し得るやうにした方が宜くはないかと云ふ御話でありましたが、是は實に望ましいことでございまして、今後の國策に於て教育が占めて居る重要性を考へますると、どうかさうあつて欲しいと考へます、是は社會全體が教育と云ふものを尊重するやうにならなければ、中々そこまで容易に參りませぬでせうが、併しながら現在の制度も檢討して見る必要があるのではないかと存じます、教育と云ふものが地方の行政なり、或は政治なりに隷屬して居ると云ふやうなことで、兎角府縣なんかでも學務課長と言つたやうな地位が輕んぜられ、榮轉の階段にもなつて居ると云ふやうな御承知のやうな状態であります、それに又指揮、命令されて居る地方の教育家と云ふものは、果してどう云ふものであるか、想像に餘りある點でありまして、一體他の行政部門に比しまして、教育の行政は輕く取扱はれて居る、是は長年の傅統から來て居るので、斯う云ふ點も制度上十分に考へなければならぬと思ふ次第でございます、尚ほさう云ふ點に付ては世間の公正なる輿論が起るやうな風になりたいものだと云ふことを、文部當局と致しましても考へて居る次弟でございます、今御話になりましたやうな風に出來るだけ持つて行かなければならないと存じて居る次第でありまして、どうぞさう云ふ點十分御激勵願ひたいと思ふのでございます
それから第二の消費組合、共濟制度等、是は極めて現在の状態に於て、特に教職員の爲に必要なことでございまして、如何に俸給を上げましても現在の「インフレ」の状態に於ては、二倍に上げても三倍に上げても足らないのでございます、殊に教員の衣食住の生活に於て、後顧の憂ひがないやうにする爲には、教權の獨立を實現する意味に於きまして、非常に必要なことでございます、所で俸給の値上げでありますから知れたものだと云ふことになりますと、どうしても相互救濟的の制度を奬勵すると云ふやうなことに行かざるを得ない、それに付きましては、現在大日本教育會と云ふものは御承知の通りでございますが、是が今度どう云ふ風に向いて行くかと云ふことは、研究問題ではないか、大いなる宿題ではないかと思ひます、さうするならばやはりさう云ふ教職員の經濟的の生活と云ふことにも向いて行かなければならぬではないか、其の方面の「サンプション」をもつとはつきりしなければならないものではないかと云ふ風にも考へられる、要するに御説のありましたやうに消費組合、救濟制度と云ふやうなものは大いに教職員の爲に活用しなければならないと存ずる次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=71
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072・高城憲夫
○高城委員 大日本教育會の存置を再檢討して、さうしてそれに新しき方向の一つとして消費組合に代るべき面を考へて行かれると云ふことは、非常に面白いと思ひます、又さう云ふ面に付ては是非思切つて積極的なことを――局長としてはさう云ふ面に付ても色々過去のこともありませうから、是非はつきりしたものを御作りになつて、さうして地方學務行政に對しても一つの模範的な運營をして貰はなければならぬと思ひます、公正なる輿論に基いて、色々な新しい體系を立てて行きたいと云ふ御話でありますが、之に付て私共始終考へて居りますることは、教育に關する問題は、何時も勅令で處置せられて、さうして議會の問題になつて行かないのであります、是は豫算を伴ふものの場合に、偶偶時折申譯的に議會で論及されると云ふやうな程度でありまして、根本的に學校の教育の構成に付て輿論を高調すると云ふことがない、私は今後の文政に付きましては勅令中心主義の文政を、所謂法律をを以てと言ひますか、議會構成でして行くと云ふ形に運營されて行かなければならぬと思ふのでありますが、之に關する御意向を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=72
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073・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今御指摘になりました點、私自身實は一個人と致しまして、普段から疑問に思つて居つたことに御觸れになつたと存ずるのであります、教育制度と云ふものは恆久性を持つて居なければならぬ、朝令暮改であつてはならないことは當然でございます、所でそれが容易に改正し得られるやうな勅令で出來て居ると云ふことは、甚だ不思議なことではないかと存ずる次第でございます、併しながら現在の状態はさう云ふ風になつて居ります、今後議會制度の尊重、其の適正なる運用と云ふことを考へますると、全く今御話になりましたやうな風に向いて行かなければらないのであります、教育の根幹を規定するやうな制度は、何でも法律で以て決められなければならないのではないかと私一個人として考へて居ります、然らばどの邊まで法律事項にし、どれから先が勅令で以て規定されるべきかと云ふことになりますと、其の理論的限界を何處に求めるか、是は研究を要することではないかと思ひますが、其の微妙なる限界の問題は別と致しまして、只今御話のやうに教育制度の根本はやはり法律で以て規定されなければならぬ、立法事項として議會の協贊を得なければならないと云ふことを確信して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=73
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074・高城憲夫
○高城委員 非常に愉快な話でありまして、是はどうも多年の劃期的な教育の方から申します問題であります、是非一つ局長の御考へを此の際文部省の運營の面に實現して戴きたいと考へるのであります、何々教育刷新委員會、調査委員會と云ふものを作つて諮問をした、答へた、而も委員會の構成と云ふものはどうか、妥協的なる、又貴族院的なる、半ば足を棺桶に突込んでしまつたやうな人達が專ら委員となつて、羽織袴で教育の論議して其の諮問事項を中心として字句の手入れをして、立案をして、以て是が教育でござる、教育の議論はさう云ふせいか何か知りませぬが、衆議院よりも貴族院の方が姑が澤山居て、本論は貴族院の方だと云ふやうな恰好にならぬでもなかつたでありませう、こんな行き方でどうして教育に關する公正なる輿論が生れ、且つ又教育的なる國民が生れ、教育的な社會情勢が生れるものか、迚も問題にならない、衆議院側では兎角教育のことを投げ棄てて來たのであります、隨ひまして問題は文部省それ自體がもつと輿論を根柢とした教育を立法すると云ふやうなことに行きますれば、さう云ふ點が解消されるのであります、是は大臣にも御尋ねしたいことの一つでありまするが、兎も角それに付ては少くとも局長が其の先陣に立つて、さう云ふ面に付て一つ新しき途を開いて戴きたいと云ふことを考へます
次は私立學校の問題でありますが、燒けた私立學校などはどうすることになつて居りますか、殊に地方の小都市の私立學校の燒けたものに付ての文部省の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=74
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075・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今の御尋ねですが、戰災に遭ひました所の學校全體に付ては、先程一寸觸れましたやうな、校舍として軍の施設を轉用するとか、或は斡旋をするとか云ふやうなことはございますが、私立學校に付きまして、戰災の關係に於て特別の處置が執られて居るかどうかと云ふことは、私只今即答致しまする材料を持つて居らないのでございます、尚ほ今後私立學校と云ふものをどう云ふ風に一般の教育方針として取扱つて行くかと云ふことならば、又御質問があれば大方針の點は御答へ出來ますと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=75
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076・高城憲夫
○高城委員 大臣は御見えになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=76
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077・小柳牧衞
○小柳委員長 文部大臣は今見えるさうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=77
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078・高城憲夫
○高城委員 大臣が見えまする間、私ばかりで引張つても如何かと思ひますから、外に關聯の方でもありますれば、其の方に譲ることにして、大臣が見えましたら又御許し願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=78
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079・小柳牧衞
○小柳委員長 三田村君どうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=79
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080・三田村武夫
○三田村委員 私は遲れて此の委員會に出ましたので、既に此の委員會に於ても論議が盡された問題かも知れませぬが、一寸今の質疑に關聯して國民學校の教育に付て御尋ね致したいと思ひます、一口に申しますと、今度の終戰で一寸表現しにくい位の大きな變革が來たのであります、終戰後地方に參つて國民學校の先生と色々話して見たのでありますが、全く教科書を伏せて爲す所を知らないと云ふ状態であります、詰り今まで教へて來たことと全く逆な方向に行かなければならぬ立場に立たされました、是は我々が觀念的に考へることの出來ない大きな「シヨック」だらうと思ふ、私は沁々愬へられまして、非常に感を深くしたのでありますが、我々一體兒童に何と言つたら宜いか、どう言つたら宜いかと云ふ深刻な惱みを持つて居られるのであります、私は此の問題で、二日も三日も國民學校の先生と膝を交へて懇談して來ましたが、率直に表現致しますと、教育者としての自信を全く失つて居る、是では致育にならぬ、其の際唯今日必要なものは人格の完成だ、人間的尊嚴の確立以外に教育の根幹はないだらうと思ふ、敗けたことに依る日本の變革は極めて大きな衝撃であるけれども、其の中に我々は新しい人間個の完成に向はうぢやないか、教育者の本當の使命はそこにあるだらうと云ふ話をして、一應多少の方向と申しますか、それを見出して來たのでありますが、私は既に文部當局からそれ等の點は十分御考慮の上手當されて居ることと考へまするけれども、毎日教壇に立つて居ります教員は、實に深刻な惱みを持つて居ると云ふことを御考へ願ひたいと思ふのであります、さうして色々軍國主義の一掃とか、過激なる國家主義の一掃とか、斯う云ふ抽象的なる、謂はば政治的表現、此の言葉では實は教壇に立つて居る人は分らない、さう云ふ問題を文部省の其の衝に當られる人は、自分で教科書を手にしていたいけな兒童を前にする氣持で一つ御考へ願ひたい、さうして能く分るやうに、取敢ず此の敗戰の悲運の中から起ち上る日本の行先と云ふものを、私は概念にあらず、抽象にあらず、客觀具體的に示して戴きたいと考へます、是がないと率直に申しまして、實際地方の教員諸君は困つて居る、兒童の傷いて居ない童心が先生に依つて傷けられ、敗戰に依つて傷けられ、更に其の兒童の傷いた心に依つて教員が傷けられる、屡屡實に應酬に困る逆襲が兒童の言葉から出ることは、是は想像に難くない、交部當局も御承知のことと思ひます、さう云ふ點を一つ十分御考へになりまして、今まで此の點に付てなされた文部當局の處置と、それから此の問題をどう捌いて行くか、事實毎日戰爭に敗けた悲運の中に立つて居る兒童――田舍の兒童なら蝗を捕りに行き、又草刈に行き、唯御國の爲に、勝つ爲にと斯う教へられ、導かれて來た兒童、其の兒童と一體になつてあるべき國民學校の教員諸君が、此の新しい日本の基礎的教育を擔當する時の心掛けと云ふことに付て、御當局の御所見を此の際關聯して御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=80
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081・田中耕太郎
○田中(耕)政府委員 只今御質問のありました點は、終戰後の我が國教育がどう云ふ風になされなければならないかと云ふ點に付きましての最も根本的な、而も是は思想的に考へましてどう云ふ風に解決を與へなければならないかと云ふことの、最も深刻な問題だと存じます次第でございます、御話のやうに兒童は勿論のこと、教育者自身茫然自失して居る、此の間までの眞理は今日は誤りである、此の間までの忠君愛國は不忠であり、非愛國なことであると云ふやうなことになつた譯でありまして、全く是は價値判斷が顛倒したことになるのであります、所で眞理は時代の移り變りに從ひまして嘘になり、今までの善であつたことが時代の移り變りに從ひまして惡になると云ふやうなことを國民をして考へさせることは、實は罪なことであります、根本的に國民を懷疑思想に導く由々しき大事なのでございます、所で今日爲政者としてどう云ふ風に考へたら宜いか、爲政者自身が率直に申しますと、かつきりした正邪善惡とか、道義とか云ふことに付ての自信を持つて居なければならない、其の自信を持つて居らないならば、本當に國民なり或は教育者を導いて行くことは出來ないではないか、「デモクラシー」にしても「リベラリズム」にしても其の通りであります、此の間まで「リベラリズム」はいけなかつたが、八月十五日以後は宜くなつたのだと云ふことでは整理が付かない、そこでやはり今まででも眞理は眞理なのだ、所が今までは其の眞理が色色なる事情からして、眞理が眞理として通らなくて無理が通つて居て、今日初めて眞理が明かにされたんだと云ふことを強調して居る譯でございます、ですから決して今までの眞理が今日嘘になつて、又其の逆になつたと云ふことではありませぬで、結局今までの非を認める率直に國民も非を認める、政治家も、軍部も、學者も、言論界も總て今まで我々の通つて來た道は理想に叶つて居なかつたんだ、理想に遠ざかつて居たんだと云ふ非を率直に認めなければならないのでありまして、是は我々一個の考へばかりでなくして、個人の場合と同じやうに民族もやはりさうであつて誤りあるものであります、世界に誤りない民族なり、國家と云ふものはないと思ふ、我が國もやはり病理的現象になつたんだ、多少氣が變になつたんだと云ふことは率直に認めて、是から新たに生れ更るんだ、我々の誤りを認めて生れ更る場合に於て、「コンバージョン」の力がやはり湧いて來るのですが、さうすれば却て誤りを犯したこと自身が今後の更生の爲に力になるのではないかと云ふやうな所に指導して行かなければならない、教育にもやはりそれを率直に認め、地方の教職員達が兒童や、學童や、生徒に接します場合に於て、それを率直に言ふ――言ふことは必要はないが、それを胡麻化し、或は懷疑的な態度に止まつて、又世の中は違ふ、又今言つて居ることも違ふかも知れないと云ふやうな、さう云ふやうな疑ひを起させることは絶對にないやうにして行く、詰り此の道こそは本當に世の中の終るまで續くものだと云ふやうな確信を持つて教へる腹を持つて居なければならない、確信を持つて居なければならない、信仰を持つて居なければなてないと云ふ風にまで感ずる次第であります、隨て此の教育方針を實現して行きます爲には、先刻御話のやうに唯「ネガティブ」になる軍國主義なり何なりを拂拭してしまふことだけでは足らないので、新しい教育思想、即ち常にもつくり返して行かなければならない所の人格の完成、個性の健全なる發達と云ふやうなことが目標にならなければならず、然らざればどう云ふ風にして人格を完成し、又個性の健全なる發達を圖るやと云ふことになりますと、卑近なる國家目的、政治目的、行政目的に教育が左右されてはならず、詰り永遠の眞理は個人の區々たる判斷を超越する所の眞理なり、或は道義なりと云ふものがあり、それを追求するのが科學の目的であり又教育の目的であると云ふ風に考へる、それを追求しそれと合致してこそ人格の完成も行はれ、又個性の健全なる發達――それも我が儘な勝手氣儘な發達ではなくして健全なる發達が出來る、それが詰り本當に國家目的に即應することでもあり、又世界人類の平和なり福祉に貢獻する所以でもあると云ふ風なことを心の底に刻み付けると云ふのが、教育の方針でなければならないと云ふ風に存じて居る次第であります、さう云ふ意味に於て今までの教育は、不幸にして脇道に外れて居つた、それを今本當に元に戻すんだ、それが 陛下の思召に叶つて云ることで、不幸にして 陛下のさう云ふ方面の思召は中間の來雜物の爲にはつきり我々に傅へられなかつた、それが今日終戰に際して初めて明かにされたのである、さう云ふ風な態度で以て教育者なり、或は學童、生徒等に指導したら宜いではないかと云ふ風に存じて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=81
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082・小柳牧衞
○小柳委員長 大臣が出席されて居りますから――高城君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=82
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083・高城憲夫
○高城委員 大臣の御出席を煩はしまつて甚だ御忙がしい所でありましたが、相當大きな問題がありまするので、少しく、御尋ね申上げたいと思ひます、先づ第一、實は農地委員會の方で御尋ねを申上げたいと思つて居つたのでありますが、私其の方の委員になる機會を得ませぬでした、併し出來るだけ暇を見ては向ふに出て居つたのです、所が出ました時は此の問題に觸れてないので、本日此の法案に付ての議案審査會の理事として今呼出しが來たのでありまするけれども、今一應茲で御伺ひ致して置きたい譯であります、それは不在地主を解消すると云ふ問題であります、是が實は教育上重大なる影響があるのでありまして、私獨り此の事を非常に心配して居ります、不在地主と申しましても、ぴんからきりまであるのであります、或は六、七反、或は一町内外、關西は五、六反あたりの不在地主、或は七、八反位の不在地主がある、其の中に幾多の問題を起すものがある譯だ、詰り教育の方から見まして問題だと申しますのは教職員であります、教職員で郷里を出でて、さうして都會地域は遠距離の町村で教育に從事して居つた者の殆ど大部分は其の方の該當者になる、隨て若し此の儘迂濶教壇に立つて居れば、もう郷里に歸つて見たら土地は處分されて居つた、或はさう云ふことにならうから、此の際教壇を退いて郷里に歸らうと思ふ、斯う云ふやうな形になる運命を孕んで居るのであります、此の點に付きまして大臣の卸意見を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=83
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084・前田多門
○前田國務大臣 地方の實状に付きまして只今御話を戴たのでございますが、全部が全部までさう云ふやうな譯で非常に危惧の念を感じて、都會で教職員をやつて居るやうな人が其の地位に居れぬと云ふやうなことになるでありませうか、農地法案を贊成致します場合に、私はそこまでは見て居らなかつた譯であります、さう云ふ場合もあると云ふやうな譯ではないでありませうか、さう云ふ場合がありました時には、さう云ふ一面の心配はありませうけれども、一つの大きな斯う云ふやうな制度が出來ますれば、色々の影響が諸般の所に及ぶのは已むを得ないことであらうと思ひますが、全般の教員にさう云ふ非常な衝動を與へると云ふまでのことはないと思ひます、私は尚ほ多少それに疑ひを持つて居るのでありますが、一つ御教へを仰ぎたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=84
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085・高城憲夫
○高城委員 其の點は實は農地委員會の場合に伺ふのが便利だと考へたのでありますが、色々用がありまして、向ふで吟味する機會を得ませぬ中に時間が經つてしまひまして、遺憾に思つて居るのであります、不在地主と云つても關西あたりの不在地主と云ふのは、非常に小さいのでございまして、俗に言ふ不在地主と云ふのはそれは大きいのもありませうけれども、單に是は教員に限らず、所謂都會勤勞者或は官公職に就いて居る人達が、郷里に於て零細の土地を持つて居る、それで軈て老後は其處へ隠退する、又歸農をして町村の中堅的な指導者になる、併しそれまでの間外に出てやつて居る、さう云ふ人が校長級位になりますると、大抵戸主になつて相續を致す段階になるのであります、それは結局不在地主として處理せられるることになるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=85
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086・前田多門
○前田國務大臣 私は農林の方には詳しくございませぬけれども、今囘は五町歩以上のものはさう云ふやうに自作農の方に譲ると云ふことになる譯でありまするが、五町歩までと云ふことで大體切れて居る譯でございます、大體五町歩までのものでありますれば、農村に於ける中産階級として殘る譯でありまするから、社會の全體の階層にそれ程大きな、今御示しになつたやうな場面に於て非常な異動を與へるものであらうかと云ふことは、私疑を持つて居るのであります、多少其の爲に動きがございましても、又其の教職員と云ふものは郷里に歸つて、寧ろ郷土の町村で教鞭を執る方が却て宜いと云ふこともあり得と思ふのでありまして、自らそれは調整されて來るものではないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=86
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087・高城憲夫
○高城委員 其の五町歩と云ふものは在村地主の場合、詰り隣接町村にあらざる、郷里の遠く離れて出て居りまする者は「ルンペン」をして歩きますから、其の者は不在地主として、是は反別は規定されてない、そこでそれの是非は別として、教員が兎に角辭めて歸農したいと云ふ勃然たる思想が横溢をして居ります、先つ戰爭の憂鬱、それから先程同僚からも御話がありましたやうに、教育の態度と云ひますか、心境を失つて居り、經濟生活に逼迫をして居り、他村にあつては住宅に困窮をし、それから物を得られない、さうして郷里に於ては自分の土地は小作人から處置せられると云ふことが茲に成立した場合には、易々と他所に在つて、あの薄給の中で教員をやらうと云ふ意思は毛頭なくなつてしまふ、ですから是は單に教育の問題だけではない、所謂社會の組織を大變革をやらうと云ふ意圖の下に、此の法案は提出されたるものなりと云ふ風に私は見たのであります、それはそれでも成立ちます、大きな眼で見まして、是は今までの小作人の中から地方の指導階層を作るのだ、今までの指導階層は御免なんだ、さう云ふ者は根なし草にして放り出すのだ、斯う云ふ風になれば指導者が生れぬ譯ではございませぬけれども、現在の通念的なる社會構成と云ふものに對して非常な影響がある、而して其の中で教職員は大體に於て中農的なる存在で、是は他日郷里に歸つて地方行政等に關係して、或は役場に出たり色々なことをして、實際上の穩健な指導者として村を率いて行く人ですが、それが迚ものんべんだらりとして外に出て居れないのであります、斯う云ふ形になる、其の點を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=87
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088・前田多門
○前田國務大臣 私農地法案を能く覺えて居らないのでございますが、私が閣議で聽いた時の記憶に依りますれば、成程御示しのやうに、五町歩以下の土地でも不在地主であれば、此の法の適用を受ける、斯う云ふ場合がありますが、それは但書か何かでありまして、何か特別の場合とか農地委員會がそれを認めた場合であるか、或は行政官廳がそれを認めた場合と云ふ特別の場合に於ては、五町歩以下のものと雖も、不在地主の場合には謂はば自作を取上げて小作の方にする、さうなつて居るのではございませぬか、慥かさうだと思ひます、さうであると致しますれば、御示しのやうな場台は許されないのが宜いだらうと思ひます、何も彼も不在地主なら皆取上げてしまふと云ふ法の趣旨ではないのでありまして、純然たる不在地主で、もうさう云ふものも當てにして居らず、都會で以て其の人は立派に商賣をやつて居る、唯幾らかづつそれから米を取らうと云ふやうな人は、是はもう本當の不在地主だから、さう云ふものにはやはり小作人の方を自作にする爲にさう云ふものを取つてしまふ、けれども今の御示しのやうな猫額大の土地を郷里に持つて居る、それを幾らか元にしながら、都會に出て先生をして居る、さう云ふやうな方の分はそれは取上げないのが當り前だと思ひます、それは其の運用の點で旨く行くのではないかと思ひますが、或は記憶がはつきり致しませぬから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=88
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089・高城憲夫
○高城委員 そこの所もここで論議する場所でないので、甚だ恐縮する次第でありまするが、尚ほ最高司令部からの今度の政府に對する所謂指示でありまするが、其の面に於ても不在地主と云ふものに對して、直接的な細かい形容詞は付いて居らぬと云ふ風に私は讀んで居るのであります、さうしますれば今も大臣が仰せられますやうに、少くともさうした面に付ては非常な注意を以て見て戴かないといけないし、且つ又在村と云ふやうなこと等になりますると、農地委員會の處置に依りまして、適宜の處置などやられる場合もあり得る譯でありますから、隨て在村詰り村に歸りたいと云ふやうなことにもなりませう、さうして其の危險を防止すると云ふこともありませう、さうすると云ふと、それが特例として村に歸り得る場合は宜いですけれども、場合に依りましては人員の關係や其の他で、歸り得ない場合もあるのであります、さなきだに歸農したいと云ふ氣持が横溢して居りますから、其の關係を十分一つ注意をして載きたいと云ふことを、茲に提案をして置くに止めたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=89
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090・小柳牧衞
○小柳委員長 高城君に一寸申上げますが、大臣は本會議に豫算が上程されるので、おいで願ひたいと云ふことでありますから、大臣に對する質問は成べく要點を摘んで早く御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=90
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091・高城憲夫
○高城委員 それから是は小さいことでありますが、大臣に御伺ひしたいのですが、教員の恩給です、此の教員の恩給に對する査定竝に支拂が、實に停滯して居るのでございます、二年、三年掛つても解決が付かない、是が御調べになつたら分りますが、並々ならぬ數であります、退職がありました場合には、敏速に是が一つ處置されるやうに、大臣から此の際懇切に此の道がずんずん通りまするやうに、御指示が願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=91
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092・前田多門
○前田國務大臣 御示しの場合は、多く是は地方費支辨、地方の中等學校以下の教員の方々の問題だらうと思ひます、地方廳で取扱ひが遲れるだらうと思ふのですが、其の點は能く文部省から地方廳の方に注意を致すことに致させたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=92
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093・高城憲夫
○高城委員 各地方廳に學務部の設置に付きまして、大臣の御所見はありませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=93
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094・前田多門
○前田國務大臣 只今直ぐ元ございましたやうな學務部として復活致すと云ふ考へはございませぬが、併し地方にありまする教育の行政機構をどうするかと云ふ問題に付きましては、私も多少考へがございますので、是は一般の行政機構の問題と併せまして、能く一つ再檢討致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=94
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095・高城憲夫
○高城委員 今度の選擧に對しまして、學校教員の動いて行きまする大體の輪廊に付きまして、御指示を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=95
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096・前田多門
○前田國務大臣 學校の教職員と云ふものは、今までは全然政治と云ふものに對して何か遠慮して、さう云ふものに携はつてはいかぬと云ふやうな氣持が幾らかあつたやうですが、無論教職員が政治運動に狂奔するが如きは嚴に戒めなければならぬと思ひますが、併し一方に於きまして公民教育に付きましては、相當の熱意を以てさう云ふことに携はつて貰ふ方が宜いだらうと考へます、隨て選擧の場合に選擧運動がましいことは、是は嚴に戒めたいと思ひますが、棄権防止でございまするとか、投票權を尊重しなければならない所以でありますとか、さう云ふやうなことに付て、教職員が寧ろ進んで街頭に出てと申しまするか、それを説く、公民教育を斯う云ふ機會に於て説く、斯う云ふことは致させたいと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=96
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097・高城憲夫
○高城委員 文部省内に戰災に關する復興部と云ふやうなものを敏速に設置したいと云ふ御意向のやうでございますが、それは具體化するでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=97
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098・前田多門
○前田國務大臣 只今特に戰災復興部と云ふやうな機構を設ける考へはございませぬが、それを置いてあるのと同じやうな氣持を以ちまして、是は主に學校教育局と會計課とが結付けば出來ることと思ひますが、此の兩者の間に緊密な連繋を執らせて、專ら戰災復興に邁進して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=98
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099・高城憲夫
○高城委員 本日の新聞に依りますと、東京都に於て教育の民主化の一つの現はれとして、校長の權限を擴大すると云ふ都の方針が出て居りますが、各學校に於ても都に限らず、國内全般に學校長の教職員任用に關する權限を擴大する、こんなやうな記事が載つて居りますが、此の點に付てどう御考へになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=99
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100・前田多門
○前田國務大臣 私の了解して居る所に依りますと、教職員の任免は知事の手にあると思ひます、隨て校長が直ちに任免權を揮ふと云ふことは出來ないと思ひますが、恐らく其の御讀みになつた新聞記事の意味は、私も都の方から報告に接して居りませぬが、事實上に於きまして校長の内申權と申しますか、さう云ふものを餘計重んじるとか、其の範圍を擴げると云ふやうな事柄であらうと思ひますが、是は原則として私は宜しいことで、教育をする以上はやはり自分と一緒になつてやる、同僚であり下僚である所の教職員に對する進退の問題に付て、校長はやはり相當な發言權を持つと云ふことは宜しいことであらうと思ひまするが、併しながら是は又色々の場合がございますので、全部校長に任せ切ると云ふことも相當弊害のあることと考へまするので、能く其の間は善處致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=100
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101・高城憲夫
○高城委員 今の點に付きまして相當國内全般に擴大して戴くと云ふ風になりましたことは、非常に愉快に存じます、それから教員の資格等に付きましても、校長の内申に依つて之を然るべく斡旋して、資格等を得せしめると云ふやうな無試驗檢定式、さう云ふやうな考へ方で人材を用ひて行くと云ふやうな點に付きまして如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=101
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102・前田多門
○前田國務大臣 是等の人の資格の問題、殊に無試驗檢定の問題に付ては、相當私は再檢討が要ると考へて居ります、一口に申しまして、殊に斯う云ふやうな新時代に即しまして、又他面に於て相當知識階級にも失業者があります場合に、相當廣い範圍から物色致しますれば、教員適格者と云ふものは相當得られるのではないかと思ひます、隨て此の無試驗檢定などの點に付きましても、再檢討致したいと云ふ感じがございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=102
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103・高城憲夫
○高城委員 分りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=103
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104・小柳牧衞
○小柳委員長 明日は午前十時から開會を致します、本日は是にて散會致します
午後三時八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00319451212&spkNum=104
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