1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第五號)
昭和十二年法律第七十八號廢止法律案(紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籖券附囘數入場券發行に關する法律廢止の件)(政府提出、貴族院送付)(第六號)
映畫法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第七號)
裁判所構成法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一一號)
戰時民事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一二號)
戰時刑事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一三號)
判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案(政府提出、貴族院送付)(第一四號)
鐵道敷設法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第一五號)
防空法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第二一號)
大日本航空株式會社法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第二二號)
石油業法外十三法律廢止法律案(政府提出、貴族院送付)(第二三號)
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昭和二十年十二月十三日(木曜日)午前十時十九分開議
出席委員左の如し
委員長 小柳牧衞君
理事 坂本宗太郎君 理事 仲井間宗一君
理事 藤井伊右衞門君
小林絹治君 高城憲夫君
遠山暉男君 中瀬拙夫君
南條徳男君 船渡佐輔君
別所喜一郎君 松田正一君
柳川宗左衞門君 山田竹治君
三田村武夫君 瀧澤七郎君
松本治一郎君
同月十三日國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)及戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案(政府提出)の審査を本委員に付託せられたり
出席國務大臣左の如し
司法大臣 岩田宙造君
商工大臣 小笠原三九郎君
出席政府委員左の如し
内務政務次官 川崎末五郎君
内務省國土局長 岩澤忠恭君
司法政務次官 手代木隆吉君
司法參與官 伯爵 渡邊昭君
司法省民事局長 奧野健一君
司法省刑事局長 佐藤藤佐君
司法省刑政局長 清原邦一君
厚生政務次官 矢野庄太郎君
厚生省衞生局長 澤重民君
商工政務次官 木暮武太夫君
商工省總務局長 菅波稱事君
商工省鑛山局長 北野重雄君
商工省燃料局長 岡松成太郎君
運輸參與官 白川久雄君
運輸省航空局長 飯野毅夫君
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本日の會議に上りたる議案左の如し
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
昭和十二年法律第七十八號廢止法律案(紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籖券附囘數入場券發行に關する法律廢止の件)(政府提出、貴族院送付)
映畫法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
裁判所構成法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
戰時民事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
戰時刑事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案(政府提出、貴族院送付)
鐵道敷設法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
防空法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
大日本航空株式會社法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)
石油業法外十三法律廢止法律案(政府提出、貴族院送付)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=0
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001・小柳牧衞
○小柳委員長 それでは是より會議を開きます、昨日併託になりました石油業法外十三件廢止法律案の提案理由に付きまして政府の説明を聽取致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=1
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002・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 商工省關係の提出法律案であります所の石油業法外十三件の廢止に關する法律に付て御説明致します、當省關係法律案の内容は一言にして申しますれば戰時色濃厚な法律で、此の際廢止しても別に混亂の起らぬ性質のものを撤廢致さうとするものであります、即ち石油業法以下九つの事業法の廢止、軍需會社法の廢止、輸出入品等臨時措置法の廢止、國家總動員法の廢止に伴ひ廢止せられる國家總動員法第十八條の規定に依る法人等をして行政官廳の職權を行はしむることに關する法律の廢止及び石油專賣法の廢止が是であります
先づ第一に石油業法外九つの事業法の廢止の問題に付て御説明致します、所謂事業法の内容は、各種事業法に付て共通に申しますれば、事業の開始に付き許可制を採用して居ることと、免税其の他の經濟上の特典を與へられて居ること、及び事業に對する必要な監督規定を置いて居ることが其の骨子をなすのでありまして、其の狙ひは各軍需事業の發達を助成せんとするにあるのであります、併しながら終戰と共に經濟の基調に變化を來し、法律の規定を以て許可制度を採用することは、是等の事業に付ては不適當でありますのみならず、免税其の他の經濟上の保護も企業の自由なる活動を基本とする今後の經濟の下に於きましては、當然撤廢すべきものでありますので、此の際一括して廢止することと致したいと存じます、以下各法律の一つ一つに付き重複致しますが、御説明致したいと存じます
先づ石油業法でありますが、石油業法は、石油精製業及び輸入業の濫立、無統制に陷るの弊を防止し、併せて國防上の見地より義務貯油の制度を設くることを主たる内容とする法律でありますが、今後に於ける斯業の運營は、官廳の指導に依り十分其の目的を達するを得べく、且つ終戰と共に義務貯油制度存置の意義も全く喪失致しましたので、此の際戰時經濟法規撤廢の一環として本法を撤廢し、煩雜なる手續の負擔を免れしめんとするものであります
次に自動車製造事業法でありますが、自動車製造事業法は國防の整備及び産業の發達を圖る爲め、自動車製造事業の確立を圖ることを目的として、是が達成の爲め免税等の經濟上の助成、援助竝に所要の監督を加ふることを規定したものでありますが、終戰と共に從來軍事的色彩が相當濃厚でありました自動車製造事業に付きましては、積極的擴充は不可能となり、且つ本法の根本原則たる許可制の存續も亦其の意義を喪失し、撤廢するも支障なしと考へられますので、此の際戰時諸法令撤廢の一環として之を撤廢ん、國家の手を加へず、自由なる競爭の下に斯業の發達を期待することと致したのであります
次に人造石油製造事業法でありますが、本法は國防國家建設を目標とし、液體燃料の國内自給確立を目指し、人造石油事業の積極的擴充を推進助長せんが爲め制定せられたものでありますが、終戰と共に人造石油事業は其の異常に高い原價よりするも、又原料、資材等の面より考へましても、是が擴充は經濟的に到底許されぬのみならず、却て當面の緊急問題たる硫安工業への轉換等を推進するの必要がある状態でありまして、本法の存置は最早其の意義を有せざるに至りましたので、之を廢止せんとするものであります
次に製鐵事業法でありますが、本法は國防國家の基盤たる鐵鋼の増産を圖る爲め、斯業の健全なる發達を企圖して制定せられたのでありますが、終戰と共に鐵鋼業に付ても經濟民主主義化の要請に依り、許可制度も政府の監督も、又免税其の他の助成も、共に取除かれた自由なる天地の下に經營を遂行せしめるのが、寧ろ斯業の健全なる發達を招來するものと考へますので、之を廢止せんとするものであります、尚ほ製鐵業に付きましては、許可制撤廢の結果、特殊製鐵濫立の虞なきやの疑ひを持つ向きもないではありませぬが、今後補給金其の他經濟面よりする助成が一切撤廢されますれば起業費大なる製鐵關係の事業は、採算問題より致しまして、餘程堅實且つ有利な見込みがなければ新事業を開始する者はないと豫想せられ、且つ萬一採算可能のものあらば、寧ろ其の儘自由に發達せしむるのが合理的であると信じますので、本法は此の際撤廢すべきものと考へる次第であります
次に工作機械製造事業法でありますが、本法も亦國防の整備及び産業の發達を圖る爲め、工作機械製造事業の確立を圖る意圖を以て制定せられたものでありますが、終戰に伴ふ新事態に於きましては、斯業は寧ろ整備縮小不可避の傾向にありまして、又其の基本たる許可制も積極的に存續すべき理由を喪失したと見られ、之を廢止するも支障なきものと考へられますので、是亦戰時諸法令撤廢の一環として廢止せんとするものであります
次に航空機製造事業法でありますが、本法も亦航空機に付き前記各法律と同樣、軍事上の必要より其の助成、監督を規定したものでありますが、終戰と共に其の必要性が失はれたのみならず、聯合軍側の指令に依りまして航空機の製造は全面的に禁止せられることとなりましたので、之を廢止せんとするものであります
次に輕金屬製造事業法でありますが、航空機工業の基礎原料たる「アルミニウム」、「アルミナ」、「マグネシウム」に付き他の事業法と全く軌を一に致しまして、許可制を採用すると共に、助成竝に監督を規定せるものでありますが、終戰と共に其の意義を失ひましたので、之を廢止せんとするものであります
次に有機合成事業法でありますが、是は合成「ゴム」、「ベンゾール」、「トルオール」、醋酸、「アセトン」、「メタノール」、「ホルマリン」等、各種有機製造事業に付き許可制を採ると共に、助成竝に監督を圖り、其の事業の確立に依つて國防の整備を企圖せること、他の事業法と全く軌を一にせるものでありますが、終戰と共に是等事業は寧ろ業者自體の責任に於て遂行せしめ政府の監督、助成は共に撤廢するを妥當と認めまして、之を撤廢せんとするものであります
次に重要機械製造事業法でありますが、各種機械、即ち蒸氣罐、蒸氣「タービン」、内燃機關、電氣機器、炭素棒、眞空管、蓄電池、各種運搬機等に付き事業の助成、監督を圖りたること、他の事業法と全く同樣でありますが、終戰と共に是等事業は業者の自主的活動に依り遂行せしむるを適當と認め、之を撤廢せんとするものであります
以上を以て事業法關係の廢止の問題を終りまして、第二として軍需會社法の廢止に付き御説明申上げます
本法は御承知の通り、戰時中就中既に情勢極度に逼迫し來れる昭和十八年十月末軍需省の設置と共に歩調を合し制定せられたものでありまして、其の内容は周知の如く、軍需生産の増強の爲め軍需企業に付き生産責任體制を確立せんとするにあつたのでありますが、戰爭終結と共に、斯かる戰時中のみに存續の意義を有する法律は之を殘置するの必要は全然失はれましたので、既に昭和二十年八月十五日附を以て其の指定の取消を實施致しました結果、本法は現に死文と化して居るのでありまして、此の際之を廢止せんとするものであります、但し軍需會社法の規定を基礎とし損失補償を伴ふ命令を發したものも少くございませぬので、補償の問題に付きましては取敢ず法律的措置としては、廢止法案中に補償に關する經過規定を設けることと致した次第であります
次に輸出入品等臨時措置法の廢止の問題でありますが、御承知の通り此の輸出入品等臨時措置法と同樣、各種戰時統制法規の基礎をなした國家總動員法は此の議會に其の廢止が提案せられて居るのでありまして、戰爭が既に終了致しました以上、斯かる戰時立法が其の廢止を見るべきは當然でありますが、唯問題は終戰後未曾有の窮境に惱む我が國の經濟に於きまして、物資統制の枠を今直ちに撤廢することは到底許されぬではないかと云ふ點であります、隨ひまして同法廢止の經過規程として同法廢止の際現存して居る命令に付ては、六箇月の期間を限り其の效力を有することと致しまして、目下準備中の新事態の基本となるべき立法の完成を見るまでの暫定の措置を講ずる次第であります、隨て措置法關係の各種統制法令は一應其の效力を存續することとなる譯でありますが、終戰後廢止するも支障なきものは逐次撤廢して居るのでありまして、其の數は今後も相當増加する見込であります、尚ほ總動員法と關聯して、昭和十七年法律第十七號、即ち重要産業團體令に依る統制會に行政官廳の職權を行はしむることを規定した法律の廢止に付て申上げます、統制會廢止に付ては未だ聯合國側とも打合せ中でありまして、斷定的なことは申上げられませぬが、權限移譲の對象となつた各種の事業法、統制法規等は逐次撤廢せられて行つて居るのでありまして、各統制會自身もそれぞれ自主的團體に改組せんとする機運強きに鑑みまして、總動員法廢止の此の機會に戰時統制の殘滓たる權限の移譲の法律をも撤廢せんとするものであります
最後に石油事業法の廢止に付て御説明申上げます、戰時中に於ける石油需給の逼迫に付ては、改めて申上げるまでもありませぬが、此の不足せる石油を軍需産業等に迅速的確に行ひまする爲には、通常の配給統制方式たる民間機構に現物を把握せしめ、政府は配給上の指示のみをなすと云ふ方式では不十分と認め、是が管理把握の徹底を期する爲め、專賣制度を採用するに至りましたことは御承知の通りであります、併しながら斯かる措置は戰時中の必要に基く變則的なものでありますのみならず、專賣制の運用自體も政府自身に貯油設備及び輸送設備等の施設を有せざる爲め、殆ど其の實效を擧げ得なかつたものでありまして、終戰と共に能ふ限り官治統制を廢し、自治統制に移行する爲め、國家專賣の方式を撤廢し、石油配給統制規則を中核とする石油配給統制會社の運用に於て今後の統制を行ふこととし、茲に石油專賣法の廢止を提案致した次第であります
以上多岐に亙る商工省關係法律の廢止に付て申述べましたが、要するに其の内容は戰時色濃厚な法律及び存置する必要のない法律を廢止すると云ふことに落著く譯であります、今後の經濟組織をどうするかと云ふ基本問題に付ては、聯合國側、民間其の他關係各方面の意見を十分に徴し、愼重に立案する必要があります關係上、今議會には提案の運びに至らなかつた次第でございます、以上を以ちまして私の御説明を終りたいと存じます、何卒愼重御審議の上御協贊あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=2
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003・小柳牧衞
○小柳委員長 質疑を許します――瀧澤君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=3
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004・瀧澤七郎
○瀧澤委員 此の機會に一寸御伺ひして置きたいのですが、石油は今内地でどの位採れる豫定になつて居るのでありますか、竝に國内の需要高はどの位の豫想をせられて居るのか、伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=4
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005・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 國内の生産は大體三十萬「キロリットル」でありまして、年に百萬「キロリットル」位の消費を豫定致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=5
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006・瀧澤七郎
○瀧澤委員 其の不足分はどう云ふ風にする御考へでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=6
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007・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 不足分は輸入を致すと云ふ考へ方で、今六十五萬三千「キロリットル」輸入方に付て聯合國側へ懇請をして居る次第であります、尚ほ申上げますが、それでは九十何萬ぢやないかと云ふことがあるかも知れませぬが、それは軍の手持分が約十萬「キロリットル」程ごさいましたので、それを合せますと今申上げた百萬「キロリットル」と云ふことになるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=7
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008・瀧澤七郎
○瀧澤委員 それから自動車事業法は廢止になりますが、自動車は「トラック」が製造許可になつたと言はれますが、只今の臺數はどの位、又乗用車は殆ど製造は僅かでありませうが………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=8
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009・菅波稱事
○菅波政府委員 自動車の生産に付きましては、過般聯合軍司令部に對しまして「トラック」千五百輛、乗用車百輛の製造の申請を致したのでございますが、之に對しまして「トラック」千五百輛分のみの許可を受けました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=9
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010・瀧澤七郎
○瀧澤委員 何時までの期間で拵へるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=10
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011・菅波稱事
○菅波政府委員 是は取敢ず是だけ申請を致したのでありまして、今後材料等の入手状況又需給状況を見まして、折を見て申請を致す積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=11
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012・瀧澤七郎
○瀧澤委員 一萬五千臺と云ふ風に出て居つたのですが、それは千五百臺の誤りなのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=12
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013・菅波稱事
○菅波政府委員 千五百輛でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=13
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014・瀧澤七郎
○瀧澤委員 それからもう一つ御伺ひ致したいのでありますが、製鐵の方で、銑鐵が一昨日八十何圓かの公定價格が八百三十圓になつた譯であります、なつたことは、ちつとも私共は不思議とも思ひませぬが、石炭の方は先般の御話で、百五、六十圓が八十五圓と云ふことです、石炭と云ひ銑鐡と云ひ同じ方面のやうなものでありますが、石炭に付ては多大な報償をされ、それから銑鐵に對しては殆ど報償もなく上つたと云ふことの御取扱ひの事情を御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=14
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015・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 實は瀧澤君御承知の如く聯合軍總司令部から今後ああ云ふ價格差補給金等は成べく廢めろ、補助金、助成金、價格差補給金等に付ては豫算編成に際して一々先方に打合せを要するやうな事情に相成つて居ります、隨ひまして根本方針としては價格差補給金及びさう云ふ補助金的なものは廢めると云ふ考へ方で進んで居るのでありますが、御承知のやうに石炭は影響を及ぼす關係が廣い問題でありますので、石炭だけは遞減的に補給金額を段々減して參りまして、昭和二十四年度には全部廢止してしまはう、二十一年度、二十二年度、二十三年度と年年金額を減して行く、是は産額も増加して參りますから、斯う云ふ考へ方で、石炭だけは諒解を得て殘して貰つたのであります、併し鐡の方は今は、是は瀧澤君の方が能く御承知ですが、國内の原料を以つていると銑鐵六十萬「トン」鋼鐵五十萬トン位のものしか出來ないやうな情勢にありますが、併し今後それを續けて行くことは、是は非常な金額を要しますので、今の日本の財政上は許されないことに相成ります、でありますから、相當影響はありますけれども、まあ、あの程度の價格引上に依つて製鐵業者は今直ぐには、現在を以てしても採算が取れませぬ、併しもう少しやつて行けば採算が取れると云ふことで價格をそこへ落著けた譯であります、單り是は鐡に限りませぬ、銅に付きましても、鉛に付きましても、亞鉛に付きましても同樣の措置を執つた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=15
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016・瀧澤七郎
○瀧澤委員 いや實は上げることは差支へないと申上げると共に、商工大臣も補助金を廢めたいと云ふ御考へを持つていらつしやることは度々御話を承つて居りました、私も元來補助金と云ふものは絶對不贊成で、戰時中も私は屡屡申上げた、補助金と云ふものは公の闇であるから之を撤廢せざる限りは本當に世の中の闇は止まないものである、それから又民間に及ぼす「インフレ」の影響も一年は分らぬけれども、結局其の金が散るんだと云ふ考へ方で、私は常にさう云ふ風に申上げて居つた、所が石炭は只今御話のあつたやうにまだ補助金が殘されて居ることが、私共と致しましてはどうも全體の上から見て根本的に不徹底なものだと思ふ、私は御承知の通りの事業でありますから、銑鐵が上ることは非常な影響を持つて居りますが、それさへ少しも差支へないやうに普段から考へて居る譯でありますから、一日も早くあの補償金制度と云ふものは廢めて戴きたいと云ふことを申上げて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=16
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017・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 大體私も平素から瀧澤君と同じ考へで、それを實は持論として居るのであります、所が石炭に付きまして申しますと、昨今の事情では價格に直して二百十六圓五十錢位にしないといけないことになる、併し今までの消費者價格二十圓十三錢を一躍二百十六圓五十錢と云ふ所まで持つて行くことがやりにくい事情もありますので、今の遞減する方法と同時に、業者としては産額を増加すると云ふことで、數年間を睨み合せて八十五圓と取極めたやうな次第であります、併し八十五圓では現在非常に苦しいのですから已むを得ず補給金を續けて居る、其の方針としては瀧澤君と全然同樣な考へを持つて居るのでありまして、左樣に總て價格一本に持つて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=17
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018・松本治一郎
○松本(治)委員 先達て石炭價格値上げが公表されまして、其の炭價が八十五圓になり、補給金が今までの五十一圓九十五錢が大幅に引上げられ百五十八圓十三錢となり、合計二百四十三圓十三錢となり、是が現在の炭價でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=18
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019・岡松成太郎
○岡松政府委員 現在の炭價は大體下期の生産を五百萬「トン」と推定を致した場合に、二十年下期を通算致しまして二百十六圓五十八錢と云ふ價格になるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=19
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020・松本治一郎
○松本(治)委員 炭價が八十五圓、補償金が百五十八圓十三錢と云ふことが發表されて居たやうであります、それを計算すると二百四十三圓十三錢になるのでありますが、今申された二百十六圓何がしは下期の出炭量との關係でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=20
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021・岡松成太郎
○岡松政府委員 一寸言葉が不十分でございましたが、二百十六圓五十八錢と申しますのは山元の生産價格であります、其の他に二十六圓何がしの、丁度今仰しやつた差額が運送費其の他の諸掛りになりますので、それで八十五圓と云ふ價格は消費地に於ける需要者に手渡しになる時の價格でございます、山元の先程申しました二百十六圓五十八錢に二十六圓五十五錢と云ふものを御加へ下さいますと、只今仰しつた助成金と山元價格とを加へたものが出て參ります、計算は合ふと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=21
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022・松本治一郎
○松本(治)委員 以前は二十圓十三錢で、今度は八十五圓になる、さうすると約四倍の大幅値上になりますが、一方勞賃の方は五割の値上げで八圓から十二圓に引上げられて居る、そこで働く人達は五割の値上げである、炭山を經營する者に對しては四倍の値上をすると云ふことが、石炭飢饉を救ふ途であるかどうかと云ふことを私は考へるのであります、あの地下數千尺の所で働いて居る人達はさう云ふことを常に考へて居るのであります、炭礦經營者の運動が利けば四倍の値上が出來る、我々は地下數千尺の所で働いて居る者で、唯默々と働いて居るから五割位の値上で押へようとする、斯う云ふことが一つの感情となつて今日の石炭の問題が起つて居ると私は考へる、だからもう少し値上をやつて働き宜いやうにすることが、石炭飢饉を救ふ途であると私は考へる、今坑外で所謂普通自由勞働者なんかが取つて居ります勞賃は、二十圓乃至三十圓、是は危險率が低い、所が危險率の高い地下數千尺の所で働く人達は、最高十二圓と云ふことで、働く氣になるかどうか、私は考へなければならぬと思ふ、それでもう少し賃金を上げたらどうかと思ひますが如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=22
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023・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 今八十五圓を一躍四倍にしてどう斯うと云ふ御話がありましたが、松本君も御承知のやうに、今非常に生産が減つて居ります、それが原價であるが、それでは原價にも足りない、斯う云ふ少い産額で行きますと、八十五圓に上げても、元の値段に鑑みて少しも利益がないもので、何等運動に依つて上げられたと云ふ問題ではありませぬ、それは石炭が是だけ減産になつて居ると云ふことを能く御承知下さるならば、御諒解が出來ると思ふのであります、此の點は炭礦業者の運動に依つてどう斯うしたと云ふ問題ではありませぬ、是は全然原價なので、八十五圓でも利益は少しも殖えて居りませぬ、それで價格差補給金まで今やつて、漸く其の赤字を埋めさせて居ると云ふ次第であります、併しながら賃金の問題は松本君が言はれた點に相當理由があると認めて居りますが、御承知のやうに、炭礦勞務者はああ云ふ地下で仕事をやつて居りますから、私共其の點に鑑みまして、地上勞務者に比して八割増額と云ふことを方針として決定し、今の金額となつて居る次第であります、但し地上の勞務者の二十圓、三十圓と云ふ賃金もあるかも知れませぬ、併し永續性のあるものかどうか、是は毎日行きますから、其の日は二十圓、三十圓になりませうが、永續性は缺けて居ると私は考へて居ります、炭礦勞務者の方は永續的の性質を持つて居りますから、所謂日傭取り式な勞務者の率を以て律することはどうかと考へますが、併し現在の炭礦勞務者が決して日傭が良いと私は申して居る譯ではないのでありまして、炭礦が採算が取れるやうになり、國家の助成金が少くなるやうになれば、勿論之を更に上げて行かなければならぬと考へて居りますし、又現に、是はまだ司令部の方から同意を得て居りませぬが、官吏の方も或は銀行會社の社員等にもそれぞれ家族手當なり、或は特別の物價手當なりを増額することになつて居ります、さう致しました時には、勿論炭礦勞務者に對しても其のやうな措置を執りたいと思つて居ります、尚ほ今松本君の仰せの次第もありますが、事實を一つ申上げます、例へば常磐炭礦等に於きましては此の間まで勞務者の就業率が三割以下であつたのでありますが、昨今囘復して來まして、從來殆ど三割しか坑へ入らなかつたのでありますが、十一月中旬には約四割五分に達し、十一月下旬には七割に達して居るのであります、炭坑に依つては七割九分に達して居るのもありまして、是等の賃金の引上或は食糧の供給等が著々效果を擧げて居ると私は見て居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=23
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024・松本治一郎
○松本(治)委員 今三割程度までに入坑者が減つたと言はれたのは是は一時的の現象でありまして、其の原因と云ふものは勞賃が安かつたから、食糧の配給が惡かつたからと云ふのみではない、それは八月十五日以後鮮人の勞働者、華人の勞働者斯う云ふやうな人達の立場がずつと變つた、それで内地の抗夫が入坑の出來ないと云ふ状態であつたので其の爲に入坑率が下つたのであつて、今鮮人も、華人も、捕虜も居なくなつたので其の爲に殖えると云ふことは當然なことであります、賃金が上つたからぢやない、食糧關係が好くなつたからと云ふのではなくして、結局其の恐れて居た者がなくなつた、其の爲めと、石炭饑饉が非常にひどく傳へられたこと、一つは其の關係もあらうと思ふのです、併し働くからと云つて僅かな五割値上位で押へて行かうと云ふことは私は無理であると思ふ、一方炭礦經營者には四倍強の値上をする、働く者に對しては五割、坑に入つて働いて居る者は、斯う云ふことを常に計算をして考へて居るのでありまして、先刻言はれましたが、炭礦の經營は困難だ、困難だと言はれるが、あなたは東京に居つては炭礦は分らない、私は炭礦地に生れて炭礦に育つた男である、明治と大正と昭和、此の間の炭礦經營の歩き方を見なければ炭礦即ち石炭の問題は解決が付かない、問題は機構よりも人の問題である、炭礦地方には暴力團があります、其の暴力團に依つて炭礦の抗夫は常に窘められ、苦しめられて居るのでありまして、それ等を保護し、監督するのが警察であるのであります、所が鑛山監督局や警察に訴へて行つた所で聽かない、聽かないと云ふのは炭礦經營者が其の方面を買收して居る、それだから稼働者が何ぼ申込んで行つても聽入れて呉れないのであつて、最後に私の所へやつて來ることもあります、斯る不法な問題が解決付かない限りは、今後石炭の問題は私は解決が付かないと斷言し得ると思ふ、どうか炭礦方面に行かれまして能く調査されたら宜いと私は思ふ、只今も炭價値上其の他色々な問題で上京して運動して居りますやうです、此の間も九州方面の風水害救濟の爲に、三億七千萬圓と云ふ金が出されるやうになつて居るし、それなども一つの運動ぢやないでせうか、運動に來られた人も私共は能く知つて居る、運動が效を奏して、三億七千萬圓の復舊費を取つて行かれた、さう云ふ金が果してそれだけ使はれるかどうかと云ふことを考へなければならぬと思ふ、さう云ふ點に十分注意を拂はれるならば、炭礦の問題、石炭の問題は解決が付くと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=24
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025・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 松本君の御意見、實地に即されて居る御意見で傾聽致します、但し三億數千萬圓の金はやつたのではないので、御承知の通り是は金融をしてやつたのであります、金融の面からやつたものであります、復舊以外には使はさない建前になつて居ります、それからああ云ふ風に九月、十月と水害がありましたから、水害に對するものと、戰時中盛に濫掘したものであるから、非常に坑内が荒れて居るので、さう云つた復舊とか云ふやうなものに使はぬことになつて居ります、是は所謂金融の措置でありまして、政府が助成したと云ふ譯ではございませぬ、尚ほ今一遍言ふやうですが、八十五圓が四倍になつたと言はれるが、成程表面はさうなるのですが、あれは國の面から見た時には補給金等で相當やつて居るので、八十五圓を上げたと云ふことは補給金を減ずると云ふ方法を執つたのです、炭礦業者に利益を與へる爲にやつたのではない、先刻瀧澤君の御尋ねに對して申上げたのですが、國としては出來るだけ價格一本で買つて、補助金とか補給金と云ふものを廢めよう、而も價格差補給金が昭和二十年度の豫算では二十二億七千萬圓にも上つて居る、是は現在國の財政上左樣なことは許されませぬから、さう云ふやうな措置を執つて居るので、四倍に上げて非常に儲けさすのだと云ふやうな御考へがあつたかと、私の聽き違ひかも知れないがさう云ふ風に取れました、四倍上げて儲けさす意思は毛頭持つて居りませぬから左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=25
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026・松本治一郎
○松本(治)委員 今補給金を下げると云ふ御話でありましたが、今までは五十一圓九十五錢であつたと云ふことではないのですか、それが今度は百五十八圓十三錢になつて居るやうに私は聽いて居りますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=26
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027・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 其の通りでありますが、それは産額と云ふものを御覽下さらぬといかぬ、昨今の如く月に五十萬「トン」そこそこのやうな産額と、此の前のやうに四百六十萬「トン」、本年になつても三百六十萬「トン」から取れた時と、五十萬「トン」そこそこの時と、設備其の他には餘り大きな變りがないのであるから、さう云ふ差を生じて來るので、實際の收入から見ると向ふは非常に減つて居る、一「トン」當りだけ見るからさうですけれども、是はあなたは御分りでせう、五十萬「トン」出した時と三百六十萬「トン」の時とはそれは比率が違ふのは當然でありまして、是は非常に儲けさしたと言はれるが、是は松本君に説明せぬでも御分りだと思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=27
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028・松本治一郎
○松本(治)委員 投資額に對して出炭量が減ればそれだけ「コスト」が上る、斯う云ふ御話でありますが、そこに大きな魂膽があるのです、それがあなた方には分らぬから常に運動が效を奏するのであります、此の炭價が上げられるならば炭が出るでせう、ここ二、三箇月はずつと出ませう、誰が何と言つても出ます、出ますが、出てしまへば又停頓の状態になります、と云ふのは掘進の爲に補助金を取る、補助金で掘進をやる、切羽を付けて行く、其の間は出炭は少い、斯う云ふことでは山は立って行かない、それだから一つ値上して貰ひたいと云ふ運動をやる、値が上ると今度は掘進をやつて切羽を付けた所からぐつと出す、それが二、三箇月過ぎますと、長くても半年經ちますと又石炭の量が減つて來る、それは出炭をするのでなく掘進をやる、さうして其の次の値上の用意をする、是が今まで行はれたやり方なのです、今までの經過をずつと見られると能く分る筈です、それに御氣が付かなければ向ふは長い舌を出して又掛かつたなと云ふことになる、其の證據には足りない足りないと言ひながら炭礦經營者の生活はどうでせう、あの坑夫の人達は地下數千尺の下から炭礦經營者の私的生活を見て居るのです、此の間までぶらぶらして居つた連中が炭礦を經營する、さうなると別莊が幾つも殖えて、其處には綺麗な女が何人も住んで居ると云ふ實情で、さう云ふやうな者は經營困難と申しましても減らないです、さう云ふことは坑夫の人達に分らなければ宜いが、それ等のことは直ぐ分るのであります、さう云ふことでは決して石炭の問題は解決付かないと思ひます、今後は國家管理にするか、國營にするか、私は坑夫の人達に生産管理をさせると云ふことは石炭問題解決の唯一の途だと思ふ、其の方面に進んで貰ひたいと私は思ふ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=28
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029・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 松本君の御意見非常に傾聽されるのでありまして、今後も實情に即して絶えず色々御意見を下さるやう、大變結構で、宜しく一つ御願ひ致します、但し今仰せられたことでも炭礦其の他に、坑夫其の他を參加せしめると云ふことは制度的には作りませぬが、私共は努めて出來るだけさう云ふ風に持つて行きたいと考へて居ります、其の方が效果が擧り、一致して成績が擧るではないかと思つて居りますから、制度の上ではさう云ふ措置は執りませぬが、さう云ふ心持で以てやらせたい、さうして勞資の本當の心の一致を見て成績を擧げさせたいと云ふやうに考へて居ります、尚ほ現在の所國營にすると云ふ考へは持つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=29
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030・松本治一郎
○松本(治)委員 商工大臣に一寸御尋ねして置きますが、外地に居られる軍人の中に炭礦方面に關係のある人が十二萬餘あると云ふことでありますが、さう云ふ人達を優先的に復員させるやうなことを考へて居られないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=30
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031・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 考へて居りまして、曩に聯合軍の方にも歎願書を出しまして、向ふの方からも同意を得て優先的に炭礦に經驗のある人は歸さすと云ふ措置を執り、現に復員省の方でも其の方針で取扱つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=31
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032・松本治一郎
○松本(治)委員 一日も早くやつて貰ふやうに御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=32
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033・小柳牧衞
○小柳委員長 此の際三田村君の司法大臣に對する質問を便宜上許したいと思ひます――三田村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=33
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034・三田村武夫
○三田村委員 本委員會に議題となつて居りまする戰時刑法の廢止其の他に付きまして既に審議が行はれたやうでありますが、私はあとから此の委員會に加はりましたので、少しばかり御尋ね致したいと思ふのであります、問題は稍稍基本的な點に觸れますが、大臣御承知の通り「ポツダム」宜言の受諾に依つて日本の諸制度、諸秩序が百八十度變つて來た、宣言の中にもありまする如く、新しい日本の基本的な課題となるものは基本的人權の尊重であります、此の基本的人權の尊重と云ふものが確立せられざる限り、眞の文化國家建設は不可能でありまして、此の意味から致しますと今後の司法行政、司法權運營の點に關しては、多々考へなければならぬ點があると思ふのです、大臣御承知の通り支那事變から今日まで、就中大東亞戰爭進行の過程に於ける日本司法權の運營と云ふものは、正に行政に隷屬したと斷言しても憚らない位の行過きであつたことは何人も認める所であります、之をどうして改めて行くか、言葉の上では極めて簡單であります、今までやつたことが間違ひであつた、情勢が變つたんだから、即ち國の施政も變つたんだから、其の心構で切替へようと云ふことは極めて簡單であります、役所の通達の上にも文書の上にも書くことは簡單でありますが、實際之をやる場合はさう簡單ではない、私は能く云ふ言葉でありますが、政治は作文ではない、通牒だけ、或は訓示だけでは濟まない、是は事實、實體、客觀、具體的に變つて來なければならぬ、變つて來なければならぬ場合に一つ深刻に困る問題がある、昨日私も此の委員會で文部省の政府委員にも少し申上げたのでありますが、上の人は變つた立場から政治的に、行政的に變つた物の言ひ方をします、人も變つて來ますから變つた物の言ひ方をしますが、それを受ける人、主體は同じです、同じ人が全く變つたことを上から聽かされます、全く變つたことを同じ人がやらなければならぬ、而も對象は同じ民衆であり、國民であり、人であると云ふ所に問題があるのであります、此の點を是非御考へ願ひたい、大臣は在野法曹の權威として自他共に許される大先輩であり、又多年貴族院に於ても人權問題に付て常に健全なる御發言をなすつて來られたのでありますが、其の岩田司法大臣が今日の一大變革に直面して、其の在野當時から眺めて來られました日本司法權の運營、而して大臣が就任されて以來大いなる變革の第一歩に當つて、私の今申した意味は十分御分りと思ひますが、司法權運營を直に正しい方向に置替へる、詰り戰時的な刑法的措置から眞に國家的な文化的な刑法的措置に變へる爲にどう云ふ御所見を御持ちでありますか、又戰爭終結以來今日まで戰時的な刑法的措置から平時的な刑法的措置――平時的な刑法措置と云へば間違ひますが、眞の正しい意味の刑法的措置、司法權的措置です、其の方面に切替へるのでなくて復元する、復活する爲にどう云ふ御處置を執られましたか、唯私は法律の廢止だけではいけないと思ひますが、此の點を先づ御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=34
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035・岩田宙造
○岩田國務大臣 三田村君の仰せられる通りに民主政治、自由主義的政治と云ふものは、個人の基本的權利が確保せられなければ到底行はれないと云ふことは全く同感でありまして、其の爲には裁判所の受持つべき――裁判所と云ふか、司法の受持つべき部分の非常に大きいことは私共も痛感して居るのでありまして、それには從來の司法權の有樣と云ふものが希望と甚だ遠ざかつて居つたと云ふことも、是は何人も認めて居る所であつて、問題は如何にしたならば司法をさう云ふ理想的と云ふ所までは行かなくとも、正しき働きをするやうに取返して來るかと云ふことが問題であつて、是は又三田村君も御承知であり、又今仰しやる通り言ふは易いのでありまするが、實際にどう云ふ風にしたら宜いかと云ふことは、中々困難であります、併し大局から申しますと、只今言はれましたやうに、私共は從來司法と云ふものが、近來は段々行政化して來て居ると云ふ所に、其の弊害があるのであつて、どうしても是は司法の眞面目を取返さなければならぬ、司法の行政化すると云ふことは、何處に原因があるか、是は色々の點であると思ひまするが、是はやはり檢事局、殊に刑事方面が問題になるのでありまするが、檢事方面の勢力に裁判方面が何となく壓倒されると云ふ傾向が、やはりそれの重要な原因をなして居るのぢやないか、司法はやはり何處までも裁判所と云ふものが中心になつて、檢事方面の勢力よりも斷然其の上に居なければならぬものだと考へて居るのでありまして、さう云ふ方面に司法を導いて行き、組替へて行くと云ふことが必要でもあり、又それでなければ司法の責務を果すことが出來ないと思ふのであります、然らばさう云ふ風にするにはどうしたら宜いかと云ふことは、今までは裁判所と云ふものが一般の他の行政部の方面に對して輕んぜられた、一般の社會からも輕んぜられるし、政府の他の方面からも輕んぜられて居つた、之をどうしても適當な地位に上げると云ふ爲には、判事の地位を向上しなければならぬ、具體的に言へば、此の判事の最高峰に立つて居る大審院長と云ふものの地位を、他の國家の機關に比較して、もう少し高い地位に持つて來なければならぬ、それに應じて其の以下の判事の地位も、皆上げて行かなければならぬ、それも比較的の位置をもう少し檢事に對しても、裁判所と云ふものが高い地位にあるやうにしなければならぬ、それには同時に檢事局と云ふものを今は御承知の通りに裁判所に附置して居り、法制の上にも又實際の形の上にも、裁判所と同じ所に居るのでありますが、之を法制上から言へば、裁判所構成法から檢事局と云ふものを分離するし、又形の上に於ても判事と檢事が始終同じ所で仕事をして居ると云ふことを止めて、別の所に持つて行くと云ふことをしなければならぬのぢやないかと云ふことで、差當り裁判所と檢事局の分離と云ふこと、さうして裁判官の地位を上げると云ふことを先づやるべきであらう、斯う考へて他の點もありまするが、先づそれから一つ手を著けて行きたいと考へて、折角今努力して居る所であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=35
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036・三田村武夫
○三田村委員 時間の關係もありますから、成べく簡潔に要點に付てのみ御尋ね致して、又他の機會に譲りたいと思ひますが、只今大臣の御述べになりました通り、私は從來の日本の司法權の運用、斯う云つた概念的の表現をすることが少し間違ひと思ひますが、最近の司法權の運用が非常に間違ひを犯したと思つて居ります、司法權の行政への隷屬、是が私は今度の敗戰に付ての非常に大きな原因をなして居ると思ふ、私自身深刻なる體驗を持つて居る一人なのです、此の委員會の議題になつて居ります戰時刑法に付きましては、私は十八年の此の衆議院委員會に於きまして、最後まで反對した一人であります、斯う云ふ立法をやれば戰爭に負ける、私は信念的にさう確信して、信念的にさう申上げた、岩村司法大臣と私は一週間に亙つて其の議論を續けた、私が一番いけないと言つたのは、政治上の要求を立法化しないこと、就中刑罰立法化しないこと、之をやれば大臣の只今仰しやつた通り、司法權は遺憾ながら行政に隷屬してしまふ、政府の性格は幕府になると云ふことが、私の變らざる信念であり、主張であつた、委員長も其の時には慥か特別委員の一人であつたと思ふのでありますが、私は今日の敗戰の中に立つて、其の點甚だ遺憾至極に思つて居ります、さうして私自身が反對し續けた其の戰刑法に依つて、拘引檢擧され、取調べを受けて參りました、私が言つた通りだつたのです、裁判所に行く場合は、私は司法大臣に詳しいことは申上げませぬが、直接政府の指示、命令に依つて、警察の捜査權を發動したのであります、さうして其の捜査權發動の形式は、やはり戰時刑法七條の三乃至四で命令が出て居るのであります、さう云ふものがさう云ふ形で行はれて來ることを私は心配した、當時の司法大臣はそんなことはないと斷言されて居られましたが、さうであつた、私は其の間の事情を能く知るが故に、自を進んで戰刑法に該當するやうに、自分で調書まで作つて行つた、私は裁判所に行つて之を明かにしました、併し檢事局の立場になりますと、如何にも司法事務的に無理になります、遂に當時の檢事局は戰刑法の違反としては身柄を受取ることを拒みまして、何で受取つたかと申しますと、此の間十月四日ですか「マッカーサー」司令部の通牒に依つて廢止されましたる言論出版集會結社等臨時取締法に依つて私の身柄を受取つた、是も一つの便宜主義である、三田村を三月も四月も警視廳に置いたのだから、此の儘釋放する譯に行かない、何とか一つ締括りをしなければならないと云ふ所に、其の身柄の處置がある、そこに私は日本司法權の間違ひがあつたと思ふ、さう云ふ間違ひは多多あります、此の委員會に掛つて居ります戰刑法と云ひ、それに關聯した戰時諸立法と云ひ、更に今申しました言論集會結社法と言ひ、悉く行政上の要求を立法化したものであります、而も是は司法省が提案して居ります、茲に私は大きな間違ひを犯したと斷言せざるを得ないのであります、同時に大臣も只今御話になりました通り抑抑間違つた戰時司法體制と申しますか、司法權運營の一つの習性、一つの制度的な流が今も殘つて居ります、是は同じ人が同じ機構で同じ社會でやつて居るのですから、中々簡單に通牒や訓示だけで直らない雰圍氣が其の儘あるのです、是は極めて重要な問題であらうと思ひます、試みに一、二の事實に付て大臣の御考慮を煩したいと思ひますが、私自身で警察から拘置所へ、それから裁判所へ自分の體で體驗して來ましたが、私は自分の體驗其のものに付ては濟んだことですから申上げたくないし、申上げませぬ、又如何にそこに大きな矛盾を知り、不法なる扱ひを知つても、それは申上げないことに致しますが、私は非常に遺憾に思ふのです、裁判所の檢事も同樣ですが、人に對する扱ひ、是は在野法曹の立場から十分御經驗と思ひますが、檢事にしましても、判事にしましても長い一つの習しから來るのでやはり人と言ふ概念よりも或は事件其のものが物に近いやうな概念になり勝ちだつたのです、端的に申しますと、十八歳から二十一、二十二歳位の少年犯の御扱ひを見て居ると、是は夜店の「バナナ」の叩き賣りのやうな扱ひなのです、ずらつと竝べて置いて檢事が起訴状を讀む、お前はいつ幾日何處そこで三百圓金を盜つたらう、自轉車一臺掻つ拂つたらう、それだけなのです、事實は認めるか、はい、宜しい、三分か五分、それから次の日に判決言渡しをする、ずらつと竝べて誰々前に出ろ、お前はいつ幾日斯う云ふことをしただらう、はい、懲役一年半に處す、懲役二年に處す、斯うなのです、丁度菜つ葉か大根の叩き賣りみたいに、ずらつと竝べて置いてやる、實に大變なことだと思ふ、私は感覺が麻痺して居るのではないかと思ひます、此の十八歳から二十歳の少年も人の子、神の子なのです、刑罰の目的はどこにあるか、刑罰の目的は所謂應報主義でなくて改過遷善主義でなければならぬ、刑の刑たる所以は罪せざる所になければいけない、一人も罪せざらんことが刑の目的でなければならぬ、それにも拘らず十八歳から二十歳位の青年をずらつと竝べて置いて三分か五分で懲役一年、二年にしてしまふ、刑務所と云ふ所も亦自分で經驗して居りますが、餘程思想的に健全なものでないとそこへ行くことは決して人間を善くすることにはなりませぬ、精神的にも病人なのです、其の病人を病院に入れるのでなくて益益惡い所に入れるのです、是は看守の問題も入りますが、看守と云ふものは人間の痛い所ばかりに觸れる、精神的な病人に一番痛い所ばかり觸れるので直りませぬ、若い者をあそこへ入れて置いて、大臣御承知の三犯罪重ねた者は皆斯う云ふ所から來て居るのであります、斯う云ふことがいかぬ、間違のないやうに導くことが大切です、裁判所の調べに付ては此の過ちを自ら悟らしめるか、再び間違を起さないやうに導くかと云ふことに私は司法權の主たる任務があり、主たる目的がなければならぬと思ひます、それが恰も檢事も判事も成績の點取蟲のやうにずらつと竝べて何年々々とやつてしまふ、私は斷じてさう云ふことはいかぬと思ふ、刑務所、警視廳の留置場も監獄法に依つて司法省の監督下にある譯でありますが、是も同樣でありまして、私はもう少し人間を人間として扱はなければならない、人間は物ではない、事件も物ではない、少くとも刑事裁判に於て扱ふ扱ひに付ては――民事は別で民事は物で宜い、元來が物なのですから物で宜いですが、刑事に於ては物に非ず人なのです、人格なのであります、人格を對象にしてやられる刑事裁判は私はもう少し尊嚴を保つて行きたいと考へるのであります、其の見地から私はさつき司法大臣が言はれましたが司法省は此の際大いに考へなければならぬ、今までも司法省の豫算を見ると一番隅つこにちよつぴりしかない、私は斯う云ふ態度をどうして今まで執られたのか不思議で堪らない、大事な人權を扱ふ國家の最も尊嚴であるべき司法權の行使を擔當する司法官が斯う云つた微々たる豫算で事を爲して居る態度自身が不思議で堪らない、堂々と十分豫算を取られて、大事な人間を扱ふのですから、間違ひのないやうに萬全を期する爲の措置を採つて戴きたい、大いに勇敢に遠慮されないでやつて貰はなければいかぬ、さうでなければ文化日本建設と言つても言葉の上の空手形に終つては何もなりませぬ、警察に於ても檢事局に於てもさうであります、裁判所の事情を聽いて見ますと、とても事件が多いからやれない、斯う言はれる、檢事局でも裁判所でもさう言はれる、是は勿論さうだと思ひますが、事件が多くて十分の審議が盡して居れなかつたら人をうんと殖やされて宜いと思ひます、うんと待遇を良くされて宜い、裁判所の書記あたりでも非常に薄給で、私は實に同情に堪へないと思ひますが、斯う云ふことではいかぬ、此の判檢事の問題、司法官の問題は人が足りなければ十分殖やして、外國の裁判の司法權の運用なんか見ても、こんな例はない、大抵判事は一人ですが、此の判事が一人で一箇月に何十件も何百件も事件を處理することは無理だと思ふ、何處にもこんな例はない、審理になりはしない、結局檢事の要求通りになる、罪状の書類の持つて來る時から一年半なら一年半と書いてある、三年なら三年と書いてある、大體の標準があつて書類の上の標準なのです、それで全くの丸公か闇か知りませぬが、相場が決つて居つて、づらつと讀むだけなのです、私は今自分の家に一人さう云つた立場の人を預つて居りますが、何とか眞面目な途に還つて貰ひたいと云ふ氣持で預つた所が眞面目な氣持に還つて貰ひたいどころか極めて眞面目なのです、一寸した心の動きに依つて人は間違ひを起す、其の過ちは一生取返しの付かない間違ひになる、而もそれが國家社會に大きな迷惑をかける結果になる、裁判に依つて司法の運用に依つてそれを結果する極めて由々しい問題でありますから、此の點は大いに勇氣を以て御考へ願ひたいと思ひます、此の議會では準備も出來ないでせうが、私は其の點戰刑法を廢止した此の機會に申上げて置いて、戰時日本の司法權から、文化日本の司法權への切替の時期に當つて司法省がどう云ふ態度で出て來られるか、此の次の議會には十分私は司法省の態度を御伺ひ致したいと思ひます
只今司法大臣が仰しやつた裁判所の權威の問題ですが裁判所が檢事局に隷屬するやうな從來の形がどうして出て來たかと私は思ひますが、是は大臣も御氣付きの通り、司法省の本省の構成にもあるのです、司法大臣と云ふのは概ね檢事畑出身なのです、次官はどうかすると判事から來ますが、刑事局長は原則としてやはり檢事出身です、而も刑事局長と云ふものが、實際司法省に於ては實權を握るのです、此の建前は間違ひだ、變へなければいかぬと私は思ふ、判檢事同一體の原則と云ふので、司法大臣の命令を聽くことになつて居りますが、司法大臣は閣僚の一人であり、内閣の政策を提げて司法省を指揮することになれば、大臣が如何に仰しやつても、やはり日本の司法權の行政への隷屬性と云ふものは出て來る、茲に新しい憲法の立場から考へなければならぬものが出て來ると思ひますが、それは他日と致しまして、司法省の本省自身の姿勢から私は御考へを願ひたい、今大臣は大審院長の話をなされましたが、私も豫々それを言つて居る、日本の大審院長は司法の上に於ては最高峰でなければならぬに拘らず、司法大臣の監督下にある形である、大審院長をやつた人、又は檢事總長をやつた人が司法大臣になるのでせう、詰り大審院長とか檢事總長が、司法大臣になる一階程になつて居る、是は寧ろ司法大臣よりも大審院長が權威のある地位になければいかぬと思ふが、さう云ふ仕組になつて居らぬ、檢事局と裁判所の關係、是は申上げると色々ありますが、大臣も其の點は能く御存じなのですから申上げませぬが、唯此の際大臣の御所見を伺つて置きたいと思ふのは、今此の瞬間でも裁判は行はれて居り、捜査權を發動して居るのですから、直ぐ考へて戴きたいのですが、正しい司法權運用の爲に、概念にあらざる具體的にどう云ふことを御考へになつて居るか、是からおやりになることを、役所的の立場でなく、在野法曹の權威としての岩田博士の立場から伺ひたいのです、先づ役所的な拘束から離れることが民主主義の第一歩だと私は思ふ、さう云ふ立場から大臣自身の率直な御氣持を此の機會に伺つて、あともう一、二點御尋ね致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=36
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037・岩田宙造
○岩田國務大臣 御説の通りに裁判所で、殊に刑事裁判に關して、判事竝に檢事が人を人と思はないで、恰も物の如き取扱ひ方をすると云ふことは、さう云ふ風に言はれても仕方のないやうな事實は多々あるだらうと思ひます、是は同じことを繰返すと云ふと、それに依つて神經が益益過敏になる場合と麻痺する場合とありまして、今のやうな場合はどつちかと云ふと麻痺する方の場合に屬して、初めはどうも人を罰して刑罰を課すると云ふことは甚だ重大なことのやうに思つても、段々慣れると平氣になり、隨てさう云ふことを粗末に扱ふと云ふことになる、是は大體の傾向としては已むを得ぬのでありまするが、併し已むを得ぬと云つても、さう云ふことになつてはならぬことでありますから、出來るだけさう云ふやうにしないやうにしなければならぬのでありますが、是の一つの原因は、實はさう云ふ扱ひをする裁判所、司法權の尖端に居る人自身が又世の中から見て餘り人らしき扱ひを受けけいと云ふ所から出て來て居る、それは私共の體驗から言つても、行政の方面の相當の地位にあるやうな人が、私が辯護士をして居る時に言ふのに、自分は裁判所へ行つたことがない、裁判所へ行くのはどうも不淨な所へ行くやうな氣がして、あの門を濳ると體が穢れるやうな氣がすると云ふやうなことを言つて居る人が少くない、さう云の風に世間が見て居る、裁判所に行けば、惡いことをして居つても、自分の惡いことがそこで脱けて、寧ろ清淨な體になるのだと云ふ風に思はなければならぬのが、あべこべに裁判所の門を潛ると身が穢れると云ふやうな感じを持つて居る人が相當ある、それは知識階級でない人なら已むを得ませぬが、行政方面の相當の地位にある人でさう云ふ風に言うて居る人が相當ある、隨てさう見られて居るやうな極く尖端に行つて居る者が、今度自分が人を扱ふ時に又同じやうな考へで扱ふと云ふ風になつて居るのであります、今のやうな人が、偶偶自分の友人か、縁故のある人が何か問題にでも觸れると初めて裁判所なり司法のことが忽にすべからざるものであると云ふことに氣が付いて、どうも裁判所と云ふものはもつと宜くしなければいかぬと云ふことを言ふのでありますけれども、さうでない人は非常に無關心で居る、是が自然に裁判所、司法權の行使の上に於て現はれて來るのだと思ふのであります、隨てもう少し此の裁判所と云ふものに、立法府の方面に於ても、他の行政の方面に於ても、本當の認識を持ち關心を持たなければ、司法權の革正と云ふことは私は出來ないと思ひます、唯偶偶何か地下にあつた人とか、司法に特別の關係のあつた人だけが色々考へますけれども、世間一般の人は、司法權と云ふものを自分等とは沒交渉の特別の一機關のやうに考へて居る爲に、どうしても司法權と云ふものが持つべき適當なる位置に行くことが出來ないのであると私は考へて居るのであります、隨て只今御述べになつたやうなことは何れも尤もなことでありまして、色々な方面で十分考へ直して行かなければならぬと思ひますし、それには豫算の關係等は最も重要な關係を持つのでありまして、十分な努力をする積りで居りまするから、又議會方面に於きましても三田村君のやうにさう云ふ事情に能く通曉して居られる諸公の甚大なる御援助を得たいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=37
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038・三田村武夫
○三田村委員 何か私が自分の身體で其の經驗を經たから之を申上げるやうな風に今の司法大臣の御言葉を取つたのですが、私はさう云ふ意味で申上げたのではない政務次官も御承知の通り私は此の議會に出て來ましてから司法權の問題を何時も主張して來て居るのです、自分で體驗したから、やられたから申上げるのではなくて、是は餘程眞劍に御考へにならないと私はいかぬと思ひます、日本の司法制度と云ふものは率直な言葉で申しますと實際の司法制度になつて居りませぬ、私は實に悲しむべき傾向だと思ひます、判事などは率直な言葉を以て申しますと全く不勉強で、人格的に成つて居ない人が相當あります、私は斯う云ふ人が陛下の裁判權を單獨で行ふのであるからどうしたものかと不思議に堪へない場合があるのです、先般も丁度戰爭中我々の同志があの事件に引掛りまして、私は法廷に居つたのであります、區裁判所の監督判事ですから、此の人に決定權がある、其の人が判事の席から威猛高になつて曰く、政府の政策を批判するやうなことは一億一心の御詔勅に反すると思はぬか、斯う言う、私は此の位低級な頭で裁判されたら大變だと思ふ、返す言葉を持つ者は宜しい、併し多くの者ははつと平伏してしまひます、頭を下げてしまひます、裁判長に壇上から、一億一心の御詔勅に反すると思はぬかと呶鳴られる、司法大臣御承知の如く最近共産黨の運動も相當活溌になりました、是に問題があるのです、天皇制と云ふものは政治制度上どの面に如何に利用されて來たかと云ふことは、此の際嚴肅に判斷しなければならぬと思ふ、殊に裁判と云ふものは 天皇の名に於て行ふ、政策を批判した、こんな間違つた政策は改めなければならぬ、改めなければ戰爭に負けるんだ、正しい國家民人の幸福は得られないと云ふ見地から政府の政策を批判する、それを政府の政策を批判するやうなことは一億一心の御詔勅に反すると思はぬかと頭から呶鳴る裁判所長が居る、判事が居る、是は斷じていけませぬ、どうして改められるかと云ふことを私は具體的に御考へ願ひたいと思ふ、其の人達は今全部居るが、恐らく私は頭が變つて居ないだらうと思ふ、よく昔から裁判官の頭は化石だと云ふ、私は益益さうなりつつあると思ふ、なぜかならば、大臣が今言はれました如く、社會的に冷遇されて居ります、此の點大いに考へなければならぬ、裁判所とか或は警察とか云ふ所は、眞面目な人間の行く所ではないと云ふ客觀的認識があるが、是も間違ひであります、改めなければならぬものである、之を改めることは大臣は輿論に依つてと言はれましたが、勿論輿論も要りますが、司法部御自身もやはり私は其の御努力をなされなければならぬと思ふ、何に依つてそれが改まつて來るか、是は百の説法よりも一つの事實です、裁判の權威を高めようと我々がどんなに言つても、一つの惡がありますれば全部消されてしまふ、どんなに宣傳がなくとも、毒の傳はる、黴より速かなりで、立派な裁判が行はれれば、之に親しみ信頼し、敬意を表します、私の友人で辯護士をして居りますが、曾ては判事であつたのです、たつた一囘豫審判事として判決を下して家に歸つた、そして一晩中それが一體宜かつたのか惡かつたのか惱み拔いた自分の書いた判決文が正しかつたかどうか、之に依つて其の人の將來はどうなるかを考へ惱み拔いた擧句、其の翌日辭表を出して今辯護士をして居りますが、私はそれを一つ考へて戴きたい、又私の一友人の判事は悲觀をして自分に向つて、三田村君、此の間魚屋が來てお前さんの所は何ですかと言ふ、判事だと言ふと、判事さんは偉くなると警察署長位にはなれるのですかと言つたと云ふ、此の冷遇を改めなければならぬ、それには其の地位、人格を高めることなのです、裁判所に行くのに汚れの場所に行くと云ふ印象を持つて居ります、それは持つて居る民衆も惡いが其の雰圍氣の中に尚ほ依然として存在する裁判所が惡い、民主日本の建設は民衆と共に裁判權がなければならぬ、世の中の人は人民裁判と云ふことを言つて居りますが、私は人民裁判は正しいか正しくないかは別として、やはり裁判は人民裁判でなければならぬ、少くともそれだけの存在でなければならぬ、共産黨の言はれる人民裁判とは違ふ、是は自から別個なものであつてはいかぬ、其の爲にもう一つ御考へ願ひたいことは、私は司法大臣と議論して居りますと、一日掛つても二日掛つても盡きぬか分りませぬから適當に止めますが、其の點に於て一つ御考へ願ひたいことは、司法警察の問題です、是は日本の警察制度の沿革から言つてももう疾くに考へ直さなければならぬ點でありますが、やつて居らぬ、大正十一年でしたか、刑事訴訟法改正の際にも問題になりましたけれども、内務省は行政警察を離したくないと云ふことは昔からの傳統であります、併し私は内務省が行政警察のやうなものを離したくない、今の行政警察が司法警察官として持つて居る立場を捨てたくないことは、私は今までの日本には通用したが、今後は通用しない、「ポツダム」宣言はそこにある、警察が斷じて權力支配の前衞機關であつてはならぬ、警察が行政の面と司法の面と併せ握つて、權力政治の前衞機關であり得た所に今日までの日本があつた、さう云ふものをなくする、さて云ふ一つの性格をなくする爲には、今日勇敢に行政警察と司法警察とを切離す、是は司法省として多年の懸案でした、さうして之を直接檢察機關の下に置いて、正しい捜査權と云ふものが私は行はれなければいかぬと思ふ、又私の體驗談ではありませぬが、私は警視廳の留置場に丁度百日居りました、此の百日間の扱ひが例の所謂行政檢束です、毎朝放免で出て、晩に又留置場に戻つて行く時には新入りで入る、百日間放免、新入りを繰返して居つた、是が遵法精神は戰力増強の一翼なりと言はれて居つた岩村司法大臣の下に行はれて居る、私は餘り多くは言ひませぬが、是が通用しないのです、三田村武夫は之を言ひます、併し弱き民衆は何處にも抗議の途がない、弱き民衆は一寸警察から呼出しが一遍來ると、何か知らぬ、一寸來いには油斷するなと云ふのが日本の通り言葉です、行くと待つとれと待たして置く、時間が遲うなつた、今日は入れて置けと言ふ、何處に入れるか、是が留置場です、翌日、あいつ入れてあつたな、一寸出して呉れ、一寸出して、もう一遍入つて居れ、警視廳で聽いて見ると、一番多いのは一年以上も檢束で入つて居る、而もそれを司法省は平然として受取るのです、檢事局は平然として受取る、私は自分の身柄を檢事局に移した時に、檢事さん、一體斯う云ふ質問をしたらどう答辯するか、三田村は百日警視廳に居つたんだ、百日間警視廳に居つた身柄は一體何だ、何の處分であつたか、斯う訊いたらあなたはどう答辯するか、まさま司法處分だとは言へぬだらう、行政處分だとも言へぬだらう、行政處分なら何故身柄を引取つたと言ふ、司法處分とも言へまい、併しあなたは僅か百日間警視廳に居つた時の調書をこんなに積んであるのを受取つて居るぢやないか、あんたどう答辯するか、併し僕はそんな意地の惡いことを言つて答辯を求めようと思ふのぢやないが、斯う云ふことは止めなければいけませぬぜと係の檢事に言つたんですが、それがざらなんです、三田村はまだ議の途を知つて居りませう、併し多くの善良なる市民は抗議の途を知りませぬ、唯怨みの一語を以て終生終るのです、そこで今大臣が言はれました警察とか裁判所と云ふものは眞人間の行く所ぢやない、斯う云ふ社會的印象と認識が出て來る、社會の眼が惡いのぢやない、實は主體が惡いのです、是は一つ私は御考へを願ひたいと思ふ、さうして私が警視廳に居る間でも知つて居りますが、司法警察と云ふものを私は檢事局に直接取つて貰ひたいと思ふ、檢事局は書類の上で事件を受取るのです、現行犯であつた場合に、檢事が直接現行犯處分することはありますけれども、大體は司法警察官がやる、さうして檢事局は書面の上で受取るのです、書面の上で人間を受取りますが、其の書面で檢事局に渡るまでの扱ひは實にひどいものなんです、殊に經濟違反などと云ふものは、私の直ぐ隣りの部屋が調室になつて居て私は知つて居りますが、毎日耳を掩ひたくなる、それはもうぴいぴい泣き叫ぶ、びんびん毆る蹴る、毎日やるんです、是もやはり人間か知らん、家に歸つて平氣で飯を食ふのか知らんとよく思つたんです、實にやるんですよ、是が一つの習性になつて居る、習はしになつてしまつて、何ともないらしいです、さうやつて事件になつて行くんです、私は日本の裁判を見ながら、司法權の運用の形式を見ながら、先般來「マニラ」で行はれて居る山下大將の裁判を見て、流石に文化の程度が違ふと思つて敬意を表して居る、向ふは、勿論辯護士團でありますが、向ふの事件を扱ふやり方は、被告人に不利な點ばかり探さずに、有利な點を探さうとして居る、日本の刑事訴訟にも以前から被告人の爲に利益な點を探せとあつたけれども、一遍もさう云ふことはやつたことがない、不利な點のみを探し出さうとする、一度警察が持つて來たら事件にしなければならぬ、檢事局に持つて行かなければならぬ、所謂刑事根性と云ふものに依つて組立てられた日本の司法警察は一遍壞さなければいけない、人の問題もありますが、一つは制度です、本當に一遍叩き壞さなければ本當の人權は確立されて來ぬ、是非此の際司法省で以て權威を以て願ひたいと思ひます、中途半端の考へは止めて貰ひたい、司法制度の改革も相當今日やかましくなつて來て居るから、少し豫算も殖やして、中途半端なことをやると云ふことは止めて戴きたい、大いに權威と勇氣を以て變へて貰ひたい、さうしなければ改まりませぬ、日本の司法權と云ふものは、私は汚い言葉で何時も言ふんですが、幕府の岡つ引政治とちつとも違はない、惡代官、岡つ引政治、其の前提機關であつたものが日本の司法機關であつた、私は斷言して憚りませぬ、さう云ふ建前であつては文化日本の建設は絶對に不可能です、司法警察をどうするか、元來現在の司法警察は其の在り方が間違ひなんです、是が違警罪を扱ふ面なら警察に隷屬しても宜いですが、今日の司法警察は違警罪ぢやないのです、刑法的警察行爲の主體になつて居るのです、刑法的捜査行爲の主體になつて居るのが今日の司法警察です、檢事は書面の上の捜査活動しかやらぬ、斯う云ふ譯ですから捜査の主體です、捜査權發動の主體である、是は檢事と云ふものが飽までも中心になつて檢察制度、捜査權の發動の機關と云ふものが制度的に組織的に私は再整備されなければいかぬ、司法大臣何等か此の問題に付て御考へがありますか、承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=38
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039・岩田宙造
○岩田國務大臣 只今の司法警察に關する點は、我々の方でも同じやうな考へを持つて居りまして、檢事局の下に司法警察官を置くと云ふ案を立てて、今司法制度改革審議會にも諮問中であります、それから捜査方法が非常に幼稚な爲に無暗に勾留をしたり、勾留をして拷問の手段に依つて自白を強要すると云ふ弊も公知の事實でありまして、是が一面に於ては直接に斯樣な非合法な措置を禁ずると同時に、他面に於ては、捜査方法をもう少し科學的に行ふ研究、教養を積みたいと云ふことで、今具體的の方法を講ずることに著手して居るのであります、其の他御述べになりましたことは、大體私共が今考へて居ることと同じでありまして、御考へのやうな方針で今著々進行して居ります、それだけを申上げて置くのでありますが、先刻局外者が自分の身に關係したことが起つた時に初めて關心を持つと言ひましたのは、三田村君のことを言つたのではありませぬ、あなたはさうでなくても司法に關係の方であるので、我々の先輩友人で司法に關係のない行政部面に居つた人で現にさう云ふ人が多數あるのでありますから、其のことを言つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=39
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040・三田村武夫
○三田村委員 時間の關係でもう一點御尋ね致して置きます、それは近頃非常に社會的關心の的になつて參りました事件の頻發であります、強盜とか殺人と云ふものが毎日の新聞に出て參りますが、是は私非常に重要な問題だと思ひます、何處から是が來るかと云ふことを私は一つ御考へ願ひたいと思ふのであります、是は警察官の手不足とか、或は檢察陣の不足と云ふことではないのです、私はさう云ふ御答辯なら最初から了承致しませぬ、是は警察が手不足になつたとか、或は檢事が手不足になつたから、だから斯う云ふ事件が起るのだと云ふやうな御答辯なら私は了承致しませぬ、何處に原因があるかと云ふと、是は敗戰から今日までの日本的性格から來て居るのです、詰り秩序のなくなつた所から來て居るのです、客觀的に秩序がなくなつたと同時に、主體的に秩序がないのです、是は一般の民衆にもないし、檢事にもなければ、警察にもない、之は極めて重要な問題であります、私が最初に司法大臣に申上げました、戰爭日本から敗戰日本へ、是は言葉の上の理解は樂ですが、實際之を身に依つて實踐する場合には、さう樂ぢやないのです、難かしし問題なんです、例へば今檢事局に毎日出て行つて事件を扱ふ檢事にしろ判事にしろ、昨日言つたことと今日言つたことと違ふのです、昨日罪であつたことが今日は罪でなくなる、此の戰刑法の廢止でも、戰時窃盜、戰時強盜、戰時殺人として極刑に處すべき者が、此の法律がなくなつた途端から變つて來る、法律がなくなると同時に罪の消える者もあるのです、それを實際扱つて居る人の心理的影響と云ふものは、是は中々深刻なものです、警察官でも、同樣です、今身を挺して治安維持の責に任じようと云ふ者は、私はないと斷言します、檢事局に於ても同樣、大まかな極端な表現をすれば、恰も無警察的な状況にある今日、そこに於て一般の民心が又無秩序なんです、心のけじめを持つて居りませぬ、人間は自分自身が一つの秩序を持たなければならぬ、人間自身が一つの自らなる秩序があり制度があるのです、其の秩序と制度の線からもう既に皆外れてしまつて居る、極端に言へば人間でなくなつて居る、動物的本能が益益出て來て居る今日です、それが自然に動くのですから、不祥事件が起つて來るのは當り前です、而も之を締めて行く社會的な秩序がない、法的な秩序も失はれて居る、而も權威ある警察權、司法權の發動も亦失はれて居る、斯う云ふ状態に在るのです、そこに今日頻發する強窃盜其の他の不祥事件がある、之を他の面から見ましても、私は中野に住んで居りますが、此の間私の直ぐ隣りで華人が三四十名暴れて居りました、最後には「エム・ピー」が出て來て手當をしたやうであります、私はさう云ふ日本治安機關の腑甲斐なさと云ふか、是も大きな原因だと思ふ、戰爭には負けたのです、「ポツダム」宣言は受諾しましたが、爲すべきことは斷乎として爲さなければならぬ、此の決心が私は司法省にも内務省にも少々足らぬのではないかと思ふ、日本は日本自らの責任に於て其の治安を維持して行かなければなりませぬ、聯合國の占領軍は保障占領であつて、日本には軍政が布かれて居るのではない、内政の問題は總て悉く日本政府に依つて之を行ふ、其の建前から治安は日本政府の責任である、此の邊の決心が内務省も司法省も足らぬのではないか、だからああ云ふ事件が起つて來る、さう云ふ事件が起つて來れば、今後益益事件と云ふものは頻發しますよ、由々しき問題である、それが一人で起る場合と、複數で起つて來る場合がある、遂には團體的行動となつて來る、そこに測らざりし結果を招來することを我々は惧れます、此の問題に付ては私は一つ御決心を願ひたいと思ふ、そして一般の民心がもう少し安定するやうにして戴きたい、私達が聽くことは、もう夜八時以後になると外から歸つて來られぬと言ふ、家庭の婦人が皆言ふのです、私達でもどうかすると少々不氣味なことを感じます、斯う云ふ状態に一般の人心を置くことは、甚だ悲しむべきことである、同時に國家の爲に大いなる不幸であります、人心安定の爲に、不法行爲、強盜とか殺人とか云ふものは正に不法行爲なんです、自然なる不法行爲で、最も本質的なる刑法犯です、斯う云ふものは戰時立法があるないに拘らず、當然社會秩序に對する最大の惡として取除かなければならぬ、さう云ふものに對する私は斷乎たる御決心が願ひたいと思ふ、今日非常に其の點に於て不安を持ち戰いて居る民心安定の爲に之を如何になされますか、此の一點、強い言葉で私は司法大臣の御言明を御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=40
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041・岩田宙造
○岩田國務大臣 此の頃色々兇惡な犯罪の起つて居ることは洵に悲しむべきことでありますが、此の原因は實は單純ではないやうに考へるのであります、華人勞働者、或は朝鮮人等の多數暴動的の犯罪、是は敗戰後日本に於ける特殊の原因に依るものと見て宜からうと思ふのでありまするが、併し戰後に種々殺人罪等が多く出て來ると云ふことは、是は日本ばかりでなく、歐米に於てもさう云ふ現象はあるやうでありまして、其の共通的の原因もあるだらうと思ふのでありまするが、其の他に三田村君の言はれましたやうに、日本の現状に於きまする社會秩序、法律秩序、警察力の弱體化、其の他種々の原因があるだらうと考へまして、司法權の發動のみに依つて之を完全に阻止すると云ふことは困難と考へます、併しながら司法權の受持つ部分に於て出來るだけの努力を續けて行くのは當然のことでありまして、又やる考へでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=41
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042・三田村武夫
○三田村委員 私は此の質問は是で終りますが、今の司法大臣の御言葉に、私の申上げたことに誤解があつてはならぬと思ひますから、もう一言申上げて御所見を伺つて置きます、固より私は司法的處置だけで此の問題が解決するとは思ひませぬ、寧ろ司法的處置は其の從たる立場であります、今日の社會不安、其の社會不安の中から生れ出ずる所の社會的惡――殺人にしても、竊盜にしても、私は之を敗戰の悲劇が産み出した所の特殊なる社會的惡と言ひたいでありますが、之に對する認識が自ら違はなければなりませぬ、私は司法權の立場から見た社會的惡を、唯司法の角度に於てのみ之を指導されないことを此の際御願ひ致します、私が裁判所でも、警察でも、屡屡經験したことでありますが、司法省は今大臣が仰しやつたやうに、何時でも非常に貴重な資料を持つのです、一人の犯罪者を調べて見ても、非常に貴重な資料を持つ、けれども常に其の資料は死藏されてしまふ、司法省と云ふものは、司法權運營の上に出て來た社會的善、社會的惡、國家的善、國家的惡と云ふものは自ら分つて來る譯です、司法の面からそれは出來る譯です、是が今までは積極的に、動的にものを言はないで、其の善い面も上から押へ付けられて來た、唯上からの言ふ通りになつて來た、是は民主主義ぢやない、司法の面から言ふ民主主義體制と云ふものは、司法を通じて汲出した所の社會的善、社會的惡と云ふものを、國全體の制度の上に活かして行くことが、私は眞に民主政治だと思ふのです、今の殺人の問題でもさうですが、是は私は理知にして互惠なる眞の社會秩序が確立されないと、此の問題は如何に司法省が努力されてもなくならぬと思ふ、現實の問題として食へない者がある、食へない時に、人間は人間の尊嚴を護つて行く道が教へられて居る、其の社會があればそれは護つて行きます、食へなくても人間の護つて行く道が保てれば、社會的秩序を破壞しないで、生きる道を考へます、其の道が塞がれた場合は、己れの生命を斷つても社會的秩序を破らないと云ふ人間的尊嚴がある、けれども今のやうな状態では、其の人間的尊嚴を何處にも置き所がない、でありますから何處へ行くかと云ふと、食へなくなれば泥棒でも強盜でも何でもやる、明日から食へない、銀行預金も郵便貯金もなくなつてしまつた、百五十圓の會社の給料では米二升も買へないと云ふ立場になれば、而も、お互ひに愛する社會の秩序なく、共に護らなければならない尊嚴もない、斯うなつて來れば泥棒と同じことです、泥棒でも人殺しでもやるのは當り前です、そこに大いなる政治の問題がありますが、此の問題への反映を司法省の立場から御考へ願ひたいことは、司法制度の民主化と云ふ見地からすれば、司法の事務の中から社會的善も社會的惡も出て來る譯であります、其の司法の事務の中から出て來る社會的善も惡も、司法權運營の中から出て來る社會的善も惡も、私は素朴に素直に汲出して貰ひたい、さうしてそれを或は法律の上に、或は行政の上に、之を反映せしめて行くと云ふことが眞の民主政治であります、司法省は司法省だけで動く、上からの命令に依つて動くと云ふことは眞の民主政治ではない、それは官主的政治と私は言ひたい、官主政治、權力政治であつて、今までがさう云ふ形であつたから間違つて居る、私は司法省自身が司法省の活動の面から汲上げて來る民主的の素朴なる國民の聲、犯罪を通じて見たる社會的善と惡とを非常に大きな力として汲上げて行けると思ふ、斯う云ふ點に付て今後大いに御考へ願ひたい、唯人間を掴まへて之を處斷すれば宜い、是が司法權ではないと私は思ふ、出來ることなら、特別の施設を講じて、さう云ふ途を御開き願ひたいと思ひます、色々申上げ色々伺つて見たいこともありますが、今日は時間も過ぎましたから、又別の機會に譲ることに致しまして、司法大臣に對する私の質疑を終りますけれど、今私の申上げましたことに付て、司法の民主化、司法權の運營を通じて汲上げて來るべき善と惡、之を國全體の立場から政治の上に、行政の上に反映せしめて行くと云ふことが、非常に大切だと思ひますが、さう云ふ點に付て何か御考へがありませぬか、ありましたら伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=42
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043・岩田宙造
○岩田國務大臣 只今御述べになりましたことは能く參考にして考へて參ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=43
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044・小柳牧衞
○小柳委員長 是で休憩致します、午後は本會議に決議案が上程されるので、其の都合上其の議了後に開會致す豫定であります
午後零時十七分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=44
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045・会議録情報2
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午後二時四十八分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=45
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046・小柳牧衞
○小柳委員長 午前に引續きまして會議を開きます――藤井君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=46
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047・藤井伊右衞門
○藤井委員 一昨日私が質問を致しました其の中、まだ御答辯のない點があるのでありまして、昨日來何等かの御答辯があることを期待致して居りましたが、つい其の機會を得ませぬ、尚ほ只今質問の要旨を改めて申上げる必要を生じましたので、極く簡單に申上げます
第一は、食糧の不足に伴ひます所の榮養失調に基因を致し、尚ほ又戰災者に付きましては、衣料の不足或は住居の不足等より致しまして病氣に對する抵抗力が極めて弱く相成つて居るやうに思ふのであります、是が爲に色々な患者が益益増加を致して居る趨勢にあることを感ずるのでありますが、現在地方に於きましては、醫師の復員が中中遲々として捗々しく參つて居りませぬ、一面藥品或は衞生材料の不足等より致しまして、十分なる治療效果を擧げ得て居らないやうに思ふのでありまして、再建設の途上にある我が國の現状と致しまして、頗る憂慮すべき問題であらうと思ふのでありますが、是等の點に對しまして、如何なる對策が現在講ぜられて居りますか、此の點を御尋ね致したいと思ひます
第二點は、醫療保險に付てでありますが、國民健康保險組合が段々と普及致して參りました今日、尚ほ從來の健康保險を初めと致し、其の他各種の職域に於ける所の共濟組合の醫療施設等が錯綜を致して居りまして、是が爲に地域組合の經營を困難に陷らせて居る點もあります、又診療擔當者が事務的な煩雜さに非常に惱されて居る現状であります、是等の改善の方法を採らるべく屡屡陳情其の他が行はれて居りますが、今以て何等改善の方途が講せられて居ないと思ふのでありますが、斯うした改善の途に付ての御意思があるか、或は若しも改善される意思を持たれるならば、只今どんな方向に進みつつありますか、其の點に付て御尋ね致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=47
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048・澤重民
○澤政府委員 大變答辯が遲くなりまして恐縮に存じます、最初の御質問の御要旨は、終戰後の今日に於ける國民の榮養保健の一般問題に對する政府の對策如何と云ふことであります、御話のやうに、現下の事態に於きまして、食糧事情等から致しまする國民の榮養問題は、極めて深刻な緊切な問題でございます、我々衞生當局に於きましても、此の問題は現下の問題として最も重要な問題と考へまして、近く相當廣範圍な科學的な調査を致したいと考へて居ります、此の我が國の榮養低下の問題は、謂はばじり貧と申しますか、戰時中じりじりと食糧が惡化して參りまして、隨て國民の體位がずつとじり貧に下つて參りました、搗てて加へて食糧の配給が減つたと云ふやうなことから致しまして、最近の各府縣から來ます報告に依りましても、所謂榮養失調症と云ふものが相當顯著に現はれつつあるのでありまして、甚だ寒心すべき状態にあるのであります、國民の一人當り一日平均の最低必要量は二千百六十「カロリー」と云ふことに相成つて居るのでありますが、大都市等に於きまする配給量だけを以てすれば、千三百乃至千四百「カロリー」で、配給量以外の食糧を攝取致しまする分を考へましても、千六百乃至千八百程度、斯う云ふ調査の結果に相成つて居ります、此の不足の分は、何としても第一には食糧の増配が望ましいのでありますが、現在主要食糧の關係から致しまして、早急には困難でございますので、是等は生鮮魚介、其の他の動物性蚤白質の補給とに依つて之を補つて參ると云ふ以外には今の所方法はない、又食生活の方面に於きまする科學的な榮養指導、斯う云ふ面に付きましても、都道府縣の保健所或は榮養士會等が町村、町會等に付きまして、是等の指導に當つて居るのであります、未だ以て各家に滲透するまでに至つて居りませぬが、是等のものも將來とも大いに活動させて、食生活に於ける榮養指導と云ふことに付て大いに力を盡して參りたい、斯樣に考へて居る次第であります、一般の醫療の問題と致しまして、只今醫者の復員があるから、將來良くなるだらうと云ふ御話がありましたが、戰時中非常に醫師が不足致して居りまして、殊に農村方面に於ては、無醫村等が非常に殖えたのでありますが、終戰後續々と復員を致して居りまして、寧ろ醫師過剩の状態を呈するとさへ考へられるのでありまして、斯う云ふ機會にこそ從來の無醫村と云ふやうなものを解消する方向に向つて力を注ぎたいと考へて居ります、既に從來醫師がなかつた村に相當醫師が診療所を開設したと云ふ例も聞いて居りますし、又さう云ふことの出來なかつたやうな町村に付きましては、日本醫療團をして、赤字を覺悟で、さう云ふ處に診療所を設けると云ふ方針を以て色々施策を講じつつあるやうな次第であります、それから尚ほ御話の出ました醫藥品の問題でありますが、是も戰時中は軍需品其の他の關係から、非常に不足を來して居つたのであります、最近も尚ほ十分な状態ではございませぬが、先づ第一には陸海軍の持つて居りました醫藥品等を、差當り一般の配給に廻すと云ふ手段を現に講じつつあるのであります、是は相當量ありまして、金額に致しまして一億五、六千萬圓はあらうかと思ひます、是等を早急に配給すると云ふことを考へて居りますし、尚又醫藥品工業の將來を考へまして、原料其の他の關係から致しまして、今までよりは相當資材其の他に餘裕を持つて參りますので、是から先の見透しと致しましては、さう窮屈になることはないと考へます、戰災に依りまして相當工場もやられて居ります關係で、急激に増産と云ふことは期待し難いのでありますが、精々復興等に努力致しまして、醫藥品にこと缺かないやうに十分努力致して參りたい、斯樣に考へて居る次第であります
第二に各種の社會保險の整理統合及び保險運營の簡素化と云ふやうな點に付て御話がございましたが、此の點は屡屡各方面からも意見の出て居る點でありまして、厚生省としても、從來とも研究を致して居るのでありますが、御話のやうな方向に向つて研究を進めて居ると云ふ程度でありまして、具體的にどうすると云ふ所までの段取りには參つて居ないのであります、左樣御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=48
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049・藤井伊右衞門
○藤井委員 只今醫藥品に付ての御答辯がありまして、陸海軍の手持品を此の際急速に各方面へ配給になると云ふことでありますが、只今地方の状況を申上げますと、診斷の結果斯うした藥が手許にあれば宜いが、それが手許にないと云ふことから致しまして、患者自身が百方手を盡して其の治療に要する藥品を求めると云ふやうな形が非常に行はれて居るのであります、左樣に致しますとまだないとは申しながら、ある所には偏在して居るのではないかと思ふのであります、さうした死藏品と申しますか、或は退藏品と申しますか、さうしたものを此の際急速に配給し得るやうな方法も講ぜられて然るべしと思ひますが、此の點如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=49
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050・澤重民
○澤政府委員 醫藥品が相當偏在して居つて、それが闇でさへも入手出來ないと云ふことを我々屡屡聞くのであります、又事實左樣な事態があることを承知して居るのでありますが、我々の方と致しまして、從來やつて居りました醫藥品の統制に於きましては、統制會社、卸機關、小賣と分けますが、そこまでの經路は大體分るのでありますが、それから先の品物が消費者の手に入る面が、中々實際問題として巧く行つて居なかつたと思ひます、そこに多少闇とか退藏とか云ふやうなことがありまして、一般の醫療に非常に困難であつたと云ふやうな事實もあつたらうと思ひます、是等の點は實際問題として非常に調査も難かしいので、そこで末端までのことに付きましては、色々と配給上に於て考慮を致したのでありますが、切符制度と云ふ譯にも參りませず、今日まで小賣から先のことは自由に致して居るのであります、若しも我々の方と致しまして、或る所に澤山の醫藥品が貯藏されて居る、而もそれが死藏されて居ると云ふことでありますならば、それに付きましては行政的な適當な手段を以て之を配給せしめると云ふ必要があると思ひますが、一般の小賣店までのものを調べ上げることは、數量的には一番多いのだらうと思ひますが、其處まで調査致すことは甚だ困難かと思ひます、具體的の問題として、左樣な澤山の貯藏があると云ふ場合に於きましては、十分考へて參りたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=50
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051・藤井伊右衞門
○藤井委員 尚ほ續いて伺ひますが、醫療保險の整備簡素化と申しませうか、只今專ら其の方法に付ての調査研究を進められて居ると云ふ御答辯でありましたが、此の御調査は私相當長い期間に亙つて居るものではないかと思ひまして、何かそこには制度上或は技術上の特別な隘路があつて、是が實現を致さないで居るのではないかと思ひますが、此の點は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=51
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052・澤重民
○澤政府委員 實は私は保險關係の主管の局長ではありませぬので、私の申しますことは間違つて居るかも知れませぬが、非常に關係の深い問題でありますので、我々の知つて居る範圍に於きましては、醫師會其の他から簡素化の問題に付きましては色々御話がありまして、其の都度段々と簡素化をしつつあるのであります、又點數或は單價等の問題に付きましても、醫師會等の常々連絡を致して居りまして、一箇月ばかり前に於きましても、藥品の公定價格の上りましたに付きまして、是等の單價等も改訂致して居るのでございます、唯簡素化と申しましても限度があるのでありまして、さう云ふ點數計算と云ふやうなものを廢めてしまふと云ふ根本的な問題になりますと、是は中々制度全體として考へなければならぬ難かしい問題がありますので、手續の事務的な簡素化と云ふ面に付きましては、常に段々と簡素化しつつあるのであります、根本の問題に付きまして、尚ほ檢討を要すべき問題がある、斯樣な風に私は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=52
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053・矢野庄太郎
○矢野政府委員 只今の御質問に付て私から御答へ申上げます、御質問の點は、醫師會等から頻りに陳情があるやうでございます、醫師會の方面の意見は、患者の方から診察料其の他藥代等を徴收する、さう云ふ風にして呉れ、斯う意見が大多數を占めて居るやうであります、只今御尋ねの手續が非常に煩雜であると云ふやうなことも陳情を受けて居るのでありまして、此の點は此の際十分調査をして、何か一つ改革の案を立てたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=53
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054・藤井伊右衞門
○藤井委員 只今の御答辯に依りますと、主として醫師會方面からの要望に對して色々と調査を進められて居るやうに伺ふのでありますが、是は地域的組合の經營に及ぼして居ります影響と云つたやうなことに付て、何等か御調査になつたことはございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=54
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055・矢野庄太郎
○矢野政府委員 御質問の點は、私も就任早々で能く存じて居りませぬ、能く役所の方で調査をして、此の際何か具體的の改革案が出來るならば、早急にやつて見たい、斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=55
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056・藤井伊右衞門
○藤井委員 各種の醫療保險が錯綜致して居ります爲に、地域組合の經營上相當困難を感ぜしめられて居る點があると云ふことを耳に致して居るのであります、それ等の點に付きましても篤と御調査を願ひまして、此の問題は相當長い問題でありまするので、急速に改善の實現致しますやうに御努力を願ひたいことを要望致します、以上で私の質問を終ります
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057・小柳牧衞
○小柳委員長 是より入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案、昭和十二年法律第七十八號廢止法律案、映畫法廢止法律案、裁判所構成法戰時特例廢止法律案、戰時民事特別法廢止法律案、戰時刑事特別法廢止法律案、判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案、鐵道敷設法戰時特例廢止法律案の八件を一括議題として討論に付します――松本君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=57
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058・松本治一郎
○松本(治)委員 私は日本社會黨を代表して今上程になつて居ります各案の廢止に同意をするものでありますが、本委員會に審議を付託されて居ります所の入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案其の他數件の各案は、軍閥、官僚、財閥等の合作に依つて起しました無謀なる大東亞戰爭の遂行の爲に、國民を法律に依つて縛り付け野望を遂げんが爲に、其の多くが設けられたもので、中にも戰時刑事特別法の如きは主なるものでありまして、我が日本社會黨所屬議員は此の戰時刑事特別法に對しましては最後まで反對したものであります、大敗北を以て終戰を致しました今日、廢止になるのは當然のことと思ひます、仍て此の各案廢止に付ては異議ありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=58
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059・小柳牧衞
○小柳委員長 討論は終局致しました、是より採決を致します、各案とも原案に贊成の諸君は御起立願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=59
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060・小柳牧衞
○小柳委員長 起立總員、仍て各案は何れも原案の通り可決致しました
次に防空法廢止法律案の提案の理由を政府より聽取することに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=60
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061・川崎末五郎
○川崎政府委員 只今上程されました防空法廢止に關する法律案の提案の趣旨を御説明致します、防空法は昭和十二年に制定せられまして、軍の防衞に即應して實施せらるべき民防空の基礎法として今日に及んだのでありまするが、今や終戰に伴ひまして、民防空は全く其の必要性を喪失するに至りましたので、今般之を廢止することと致し、茲に本案を提出致した次第であります、併しながら防空法の廢止に依り差當り經過的措置を必要とする點が若干存在するのであります、防空法に於ては權利の制限に關する規定を相當に包含して居りまして、是等は固より防空防衞上の必要性に基いて設けられたることは勿論でありますが、其の中防空防衞の立場を離れ、專ら平時的なる目的より致しましたものは、尚ほ存續するを適當とする規定が若干存するのであります、例へば、人口稠密なる都市の一定の地域に對する工場建築の禁止制限、大都市の周邊部等に空地を保持する爲にする建築制限又は特定の地域に對する一般建築制限に關する規定の如きは、本來都市計畫法に規定せらるべき性質を有するものでありまして、防空法廢止後と雖も、是等は都市計畫法に移行せしむるを適當と致しますのみならず、今直ちに是等規定を廢止する時は、當面の戰災復興事業にも支障を來す虞もありますので、都市計畫法に於て之を繼承して立法するに至るまでの間、尚ほ暫く是等規定の效力を保有せしむることと致し、是が爲め必要なる經過規定を設けたのであります
次に防空法の適用に依り既に支給の義務を生じて居ります扶助金、補助金、實費辨償其の他の金錢支拂に關しましては、防空法廢止後と雖も當然其の支拂を必要と致しますのと、之に關聯する訴訟に付きましても、所定の期間は其の出訴を認むる要がありますので、是等に付ても必要なる經過規定を設けた次 であります、何卒御審議の上速かに御協贊あらんことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=61
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062・小柳牧衞
○小柳委員長 質疑はありませぬか――引續きまして大日本航空株式會社法廢止法律案に付きまして政府の提案理由の説明を御願ひすることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=62
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063・白川久雄
○白川政府委員 只今議題となりました大日本航空株式會社法廢止法律案に付きまして、其の提案の理由を御説明申上げます
御承知の通り、大日本航空株式會社法は昭和十四年第七十四帝國議會の協贊を經て制定せられたのでありますが、右は當時列強が相次いで東亞にそれぞれの航空路を擴張し來り、帝國も亦其の間に伍し海外航空路網を擴充するの必要がありましたので、從來存しましたる舊大日本航空株式會社を特殊會社たる大日本航空株式會社に改組し、國家の特別なる助成と指導監督の下に、我が國航空輸送事業の振興と、大陸航空輸送事業の興隆を圖るの目的に出でたのであります、爾來同社は我が國唯一の民間航空會社として其の目的の達成に努力し來つた次第であります、然るに帝國今次の敗戰に因り聯合國は其の對日處理方針として、凡そ航空に關係ある活動は原則として一切之を禁止するの態度に出で、大日本航空株式會社の存立は到底之を許されざるの事態に立至りましたので、同社は去る十月三十一日を以て解散し、目下清算手續を進行中であります、是に於きまして政府は大日本航空株式會社法を廢止するを適當と認め、同法廢止法律案を提出致しました次第であります、尚ほ同法案の附則として補償及び課税に關し規定を殘しましたのは、經過的、注意的規定として一應之を存置するを適當と考へたからであります、之を以て提案理由の御説明を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=63
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064・小柳牧衞
○小柳委員長 質疑はございませぬか――それでは本日は是にて散會致し、明日は午前十時より開會致します
午後三時十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008912881X00419451213&spkNum=64
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