1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十年十二月七日(金曜日)
午後一時四十六分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第八號
昭和二十年十二月七日
午後一時開議
第一 戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第二 入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第三 昭和十二年法律第七十八號廢止法律案(紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籤券附囘數入場券發行に關する法律廢止の件)(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第四 映畫法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━
〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一、昨六日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案
昭和十二年法律第七十八號廢止法律案(紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籤券附囘數入場券發行に關する法律廢止の件)
映畫法廢止法律案
一、昨六日議長に於て徹囘を許可したる議案左の如し
石炭飢饉克服決議案
提出者
一宮房次郎君 今井健彦君
加藤鐐五郎君 作田高太郎君
齋藤隆夫君 田邊七六君
高橋守平君 東郷實君
中井川浩君 八角三郎君
鶴見祐輔君 太田正孝君
愛野時一郎君 猪野毛利榮君
金井正夫君 窪井義道君
久山知之君 小平權一君
小高長三郎君 小山邦太郎君
豐田收君 濱野徹太郎君
松永東君 松村光三君
前田房之助君 小山倉之助君
一、議員より提出せられたる議案左の如し
石炭飢饉克服決議案
提出者
一宮房次郎君 今井健彦君
加藤鐐五郎君 作田高太郎君
齋藤隆夫君 田邊七六君
高橋守平君 東郷實君
中井川浩君 八角三郎君
鶴見祐輔君 太田正孝君
愛野時一郎君 猪野毛利榮君
金井正夫君 窪井義道君
久山知之君 小平權一君
小高長三郎君 小山邦太郎君
豐田收君 濱野徹太郎君
松永東君 松村光三君
前田房之助君 小山倉之助君
眞藤愼太郎君 木下義介君
有馬英治君 川島正次郎君
眞崎勝次君 星野靖之助君
松野鶴平君 安藤正純君
紫安新九郎君 牧野良三君
星島二郎君 松岡俊三君
北れい吉君 藤生安太郎君
大口喜六君 木村武雄君
箸本太吉君 松山常次郎君
三木武吉君 庄司一郎君
河野密君 松本治一郎君
川俣清音君 正木清君
山崎常吉君
(以上十二月六日提出)
一、作六日委員長補闕選擧の結果左の如し
懲罰委員
委員長 谷原公君(委員長一松定吉君去三日委員辭任に付其の補闕)
一、昨六日常任委員補闕選擧の結果左の如し
第一部選出
豫算委員 濱田尚友君(安孫子孝次君補闕)
一、昨六日議長に於て選定したる委員左の如し
農地調整法中改正法律案(政府提出)
委員
阿子島俊治君 猪野毛利榮君
馬岡次郎君 越智太兵衞君
岡本馬太郎君 沖藏君
河盛安之介君 紀藤常亮君
小平權一君 佐藤洋之助君
佐藤芳男君 田邊七六君
高田耘平君 土屋寛君
成島勇君 西方利馬君
藤本捨助君 前田善治君
三浦一雄君 三木與吉郎君
三善信房君 村上國吉君
森肇君 森口淳三君
森部隆輔君 矢部藤七君
山口馬城次君 山田順策君
赤城宗徳君 金光邦三君
木村寅太郎君 黒澤酉藏君
田下政治君 松浦伊平君
松原五百藏君 吉植庄亮君
吉川亮夫君 吉田賢一君
池本甚四郎君 小笠原八十美君
深水吉毅君 松山常次郎君
安田桑次君 杉山元治郎君
前川正一君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=0
-
001・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 是より會議を開きます
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=1
-
002・長野高一
○長野高一君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際政府提出、農業團體法中改正法律案及び水産業團體法中改正法律案の兩案を一括議題となし、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=2
-
003・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=3
-
004・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て日程は變更せられました、農業團體法中改正法律案、水産業團體法中改正法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます――松村農林大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=4
-
005・会議録情報2
――――◇―――――
農業團體法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
水産業團體法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
農業團體法中改正法律案
農業團體法中左の通改正す
第一條中「全國農業經濟會及中央農業會」を「及全國農業會」に改む
第十條中「農業に關する國策に即應し」を削る
第十一條第一項乃至第三項を左の如く改む
地方農業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 農業の指導奬勵及統制其の他農業の整備發達に關する施設
二 會員の販賣する物の賣却又は其の加工に關する施設
三 會員に必要なる物の購買又は其の加工若は生産に關する施設
四 會員に必要なる資金の貸付又は會員の貯金の受入に關する施設
五 會員に必要なる設備の利用に關する施設
六 農業に開する調査及研究
七 農業に從事する者の福利増進に關する施設
八 前各號の事業に附帶する事業
第十五條第一項但書を左の如く改む
但し其の者が法人なるときは命令を以て定むるものに限る
同條第二項中「行政官廳の認可を受け」を削る
第二十一條第二項中「及第二號」を削る
第二十二條及第二十三條 削除
第二十五條中「會長」を「理事」に改む
第二十七條 地方農業會に理事及監事を置く
第二十八條 市町村農業會の理事は命令の定むる所に依り會員の中より會員之を選擧す
市町村農業會の理事特別の必要ありと認むるときは會則の定むる所に依り前項の規定に依る理事の外一人を限り總會の承認を得て理事を選任することを得
第二十五條の規定は前項の場合に付之を準用す
市町村農業會の監事は總會に於て之を選任す
道府縣農業會の理事及監事は總會に於て之を選任す
第二十九條 理事の任期は三年とし監事の任期は二年とす但し會則を以て別段の定を爲すことを得
前條第三項の場合に於て理事の選任に付總會の承認を得ざるときは當該理事は其の職を失ふ
監事は任期中と雖も總會に於て之を解任することを得道府縣農業會の理事に付亦同じ
第三十條 民法第五十二條第二項、第五十三條乃至第五十五條及第五十九條の規定は理事及監事に付之を準用す
第三十一條第二項中「第十一條第一項第一號、第二號及同條第二項第三號、第四號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第五號の事業」を「第十一條第一項第一號、第六號及第七號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業」に改む
第三十四條第二項中「會長」を「理事」に改む
第三十八條 削除
第三十九條中「地方農業會は」を「地方農業會農業の統制に關する事業を行はんとするときは」に、「農業の統制に關する規程」を「統制規程」に改む
第四十一條 削除
第四十五條中「會長」を「理事」に改む
第四十六條 削除
第四十七條中「會長、副會長」を削り「決議を取消し、」の下に「理事若は監事の改選を命じ、」を加ふ
第三章中「全國農業經濟會」を「全國農業會」に改む
第四十九條 全國農業會は農業の整備發達を圖り且會員の事業の發達に必要なる事業を行ふことを目的とす
第五十條 全國農業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 農業の指導奬勵及統制其の他農業の整備發達に關する施設
二 會員の販賣する物の賣却又は其の加工に關する施設
三 會員に必要なる物の購買又は其の加工若は生産に關する施設
四 會員に必要なる設備の利用に關する施設
五 農業に關する調査及研究
六 農業に從事する者の副利増進に關する施設
七 前各號 事業に附帶する事業
第五十三條第二項を削る
第五十四條乃至第五十六條 削除
第五十七條 第十六條乃至第十九條、第二十條第一項、第二項本文、第二十一條、第二十四條、第二十五條、第二十七條、第二十八條第五項、第二十九條第一項、第三項、第三十條乃至第三十三條、第三十五條、第三十六條第一項本文、第二項、第三十七條、第三十九條、第四十條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は全國農業會に付之を準用す但し第十六條及第十八條中第十四條とあるは第五十三條とし第三十一條第二項中第十一條第一項第一號、第六號及第七號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第五十條第一號、第五號及第六號の事業竝に此等の事業に關係ある範圍内に於ける第七號の事業とす
第四章 削除
第五十八條乃至第六十六條 削除
第六十七條第一項中「地方農業會の會長、副會長、理事若は監事、全國農業經濟會の理事長、理事若は監事又は第四十五條(第五十七條に於て準用する場合を含む)の規定に依る地方農業會の會長若は全國農業經濟會の理事長の職務を行ふ者」を「理事若は監事又は第四十五條(第五十七條に於て準用する場合を含む)の規定に依る理事の職務を行ふ者」に改む
第六十八條及第六十九條 削除
第七十條中「及第六十六條」を削る
第七十三條中「會長、理事長、會長若は理事長の職務を行ひ若は代理する副會長若は理事、清算人又は第四十五條(第五十七條及第六十六條に於て準用する場合を含む)の規定に依る會長若は理事長 職務を行ふ者」を「理事、清算人又は第四十五條(第五十七條に於て準用する場合を含む)の規定に依り理事の職務を行ふ者」に改む
第七十四條 削除
第七十五條中「、第五十二條第二項又は第六十條第二項」を「又は第五十二條第二項」に改む
附 則
第一條 本法施行の期日は勅令を以て之を定む
第二條 本法施行の際現に存する全國農業會令に依る全國農業會は之を本法に依り設立したるものと看做す
第三條 第二十八條第一項又は第五項(第五十七條に於て準用する場合を含む)の改正規定に依る最初の理事の選擧又は選任は命令を以て定むる期間内に之を爲すべし
本法施行の際現に地方農業會又は全國農業會令に依る全國農業會の會長、副會長又は理事たる者は各之を前項二掲ぐる改正規定に依り選擧又は選任せられたる理事と看做す
前項に規定する者は第一項に掲ぐる改正規定に依り選擧又は選任せられたる當該農業團體の理事就任したるとき(第一項の期間内に其の就任なきときは同項の期間滿了したるとき)は其の職を失ふ
第四條 本法施行前爲したる行爲に關する罰則の適用に付ては本法施行後と雖も仍從前の例に依る
第五條 前三條に規定するものの外本法施行の際必要なる規定は勅令を以て之を定む
第六條 郵便貯金法、印紙税法、特別法人税法、農業倉庫業法及農林中央金庫法中左の通改正す
「全國農業經濟會」を「全國農業會」に改む
第七條 全國農業會令は之を廢止す
━━━━━━━━━━━━━
水産業團體法中改正法律案
水産業團體法中左の通改正す
第十一條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第十二條第一項乃至第四項を左の如く改む
漁業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得但し第六號及第七號の事業は會員に出資を爲さしむる漁業會(以下出資漁業會と稱す)に非ざれば之を行ふことを得ず
一 漁業の指導奬勵及統制其の他漁業の整備發達に關する施設
二 水産動植物の蕃殖保護、漁場の利用其の他會員の漁業生産の確保強化に關する施設
三 船溜、船揚場、漁礁其の他會員の漁業に必要なる設備に關する施設
四 會員の遭難防止又は遭難救恤に關する施設
五 會員の福利増進に關する施設
六 會員の漁獲物其の他の生産物の加工、保藏、運搬又は販賣に關する施設
七 會員に必要なる物の供給若は資金の貸付又は會員の貯金の受入に關する施設
八 前各號の事業に附帶する事業
第十八條 削除
第二十三條第二項中「及第二號」を削る
第二十四條及第二十五條 削除
第二十七條中「會長」を「理事」に改む
第二十九條 漁業會に理事及監事を置く
第三十條 理事及監事は總會に於て會員又は會員たる法人の役員の中より之を選任す但し設立當時の理事及監事は創立總會に於て會員たるべき者又は會員たるべき法人の役員の中より之を選任すべし
特別の事由あるときは理事又は監事は前項の規定に該當せざる者の中より之を選任することを得
第三十一條 理事の任期は三年とし監事の任期は二年とす但し會則を以て別段の定を爲すことを得
理事又は監事は任期中と雖も總會に於て之を解任することを得
第三十二條 民法第五十二條第二項、第五十三條乃至第五十五條及第五十九條の規定は理事及監事に付之を準用す
第三十三條第二項中「第十二條第一項の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同條第四項の事業」を「第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業」に改む
第三十六條第二項中「會長」を「理事」に改む
第四十條中「漁業會は」を「漁業會漁業の統制に關する事業を行はんとするときは」に、「漁業の統制に關する規程」を「統制規程」に改む
第四十二條 削除
第四十五條中「會長」を「理事」に改む
第四十六條 削除
第四十七條中「會長、副會長、」を削り「其の決議を取消し、」の下に「理事若は監事の改選を命じ、」を加ふ
第四十九條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第五十一條 製造業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 當該水産物製造業の指導奬勵及統制其の他當該水産物製造業の整備發達に關する施設
二 會員の製品、其の原料若は材料又は製造若は加工の設備に對する檢査に關する施設
三 會員の福利増進に關する施設
四 會員の販賣する物の加工又は販賣に關する施設
五 會員の行ふ當該水産物製造業に必要なる物の供給に關する施設
六 會員の行ふ當該水産物製造業に必要なる資金の貸付、會員の爲にする當該水産物製造業に係る債務の保證又は會員の貯金の受入に關する施設
七 前各號の事業に附帶する事業
第五十三條 第十二條第二項、第十六條、第十七條、第十九條乃至第二十三條、第二十六條乃至第四十一條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は製造業會に付之を準用す但し第十六條第一號中會員の漁業とあるは當該水産物製造業とし第十七條及第二十條中第十五條とあるは第五十二條とし第三十三條第二項中第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第五十一條第一號乃至第三號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける第七號の事業とし第四十條中漁業の統制とあるは當該水産物製造業の統制とす
第五十四條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第五十五條第一項乃至第三項を左の如く改む
道府縣水産業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得但し第四號及第五號の事業は會員に出資を爲さしむる道府縣水産業會(以下道府縣出資水産業會と稱す)に非ざれば之を行ふことを得ず
一 水産業の指導奬勵及統制其の他水産業の整備發達に關する施設
二 水産物生産の確保強化に關する施設
三 水産業に從事する者の福利増進に關する施設
四 會員の販賣する物の加工、保藏、運搬又は販賣に關する施設
五 會員に必要なる物の供給若は資金の貸付又は會員の貯金の受入に關する施設
六 前各號の事業に附帶する事業
第五十八條及第五十九條 削除
第六十條 第十二條第二項、第十六條、第十七條、第十九條乃至第二十三條、第二十六條乃至第三十五條、第三十七條乃至第四十一條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は道府縣水産業會に付之を準用す但し第十六條第一號中會員の漁業とあるは水産業とし第十七條及第二十條中第十五條とあるは第五十七條とし第三十三條第二項中第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第五十五條第一項第一號乃至第三號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第六號の事業とし第三十八條第一項及第三十九條中出資漁業會とあるは道府縣出資水産業會とし第四十條中漁業の統制とあるは水産業の統制とす
第六十一條中「水産業に關する國策に即應し」を削る
第六十二條 中央水産業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 水産業の指導奬勵及統制其の他水産業の整備發達に關する施設
二 水産物生産の確保強化に關する施設
三 水産業に從事する者の福利増進に關する施設
四 會員の販賣する物の加工、保藏、運搬又は販賣に關する施設
五 會員に必要なる物の供給に關する施設
六 前各號の事業に附帶する事業
第六十五條及第六十六條 削除
第六十七條 第十二條第二項、第十六條、第十七條、第十九條乃至第二十三條、第二十六條乃至第三十五條、第三十七條乃至第四十一條、第四十三條乃至第四十五條、第四十七條及第四十八條の規定は中央水産業會に付之を準用す但し第十六條第一號中會員の漁業とあるは水産業とし第十七條及第二十條中第十五條とあるは第六十四條とし第三十三條第二項中第十二條第一項第一號乃至第五號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける同項第八號の事業とあるは第六十二條第一號乃至第三號の事業及此等の事業に關係ある範圍内に於ける第六號の事業とし第四十條中漁業の統制とあるは水産業の統制とす
第六十八條第一項中「會長、副會長、理事若は監事」を「理事、監事」に「會長の職務」を「理事の職務」に改む
第六十九條及第七十條 削除
第七十五條中「會長、會長の職務を行ひ若は代理する副會長若は」を削り「會長の職務」を「理事の職務」に改む
附 則
第一條 本法施行の期日は勅令を以て之を定む
第二條 第三十條(第五十三條、第六十條又は第六十七條に於て準用する場合を含む)の改正規定に依る最初の理事の選任は命令を以て定むる期間内に之を爲すべし
本法施行の際現に水産業團艦の會長、副會長又は理事たる者は各之を前項に掲ぐる改正規定に依り選任せられたる理事と看做す
前項に規定する者は第一項に掲ぐる改正規定に依り選任せられたる當該水産業團體の理事就任したるとき(第一項の期間内に其の就任なきときは同項の期間滿了したるとき)は其の職を失ふ
第三條 本法施行前に爲したる行爲に關する罰則の適用に付ては本法施行後と雖も仍從前の例に依る
第四條 前二條に規定するものの外本法施行の際必要なる規定は勅令を以て之を定む
〔國務大臣松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=5
-
006・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 只今議題となりました農業團體法中改正法律案及び水産業團體法中改正法律案の提案理由を御説明申上げます
先づ農業團體法中改正法律案に付て申上げます、本法律案は時局の要請に鑑みまして、農業團體の民主主義化を圖り、系統農業團體の活溌なる自主的活動を促進致し、以て農業者の利益増進と、國民食糧の確保に遺憾なからしむることを目的と致すものでございます、御承知の通り現行農業團體法は、從來農村に於ける諸團體分立の弊に鑑み、是が統合に關する輿論に即應致しまして、其の機構を全農業者を打つて一丸とした單一且つ綜合性ある機構に再編成致す目的を以て、昭和十八年制定せられたるものでありますが、此の法律に依つて農會、産業組合、畜産組合、養蠶業組合、茶業組合の各系統團體は、新たに一元的な系統農業會の組織に統合整備せられ、爾來今日に及んだのでございます、併しながら當時國民經濟の戰時的編成替に於て、一般的に採用せられた方法に則りまして、其の組織機構に付きましては多分に國家機關的の性格を附與し、其の事業運營に關しても多分に官廳的の色彩が濃厚になつたのでございまして、是が爲に農業團體は漸次其の本來の自主性を喪失し、動もすれば會員たる農民より遊離し、却て其の活動に困難を來すと云ふ状態をさへ招來するに至つたのでございます、仍て終戰後の事態に即應致しまして、從來最も官廳的色彩の濃厚でありました農業團體の役員制度、役員の選任方法、又之に對する行政官廳の監督制度等に付ては根本的檢討を加へ、其の結果從來行政官廳の任命又は認可に懸つて居りました役員の選任を會員の公選主義に改むること、會長中心の業務運營方法を改むること、及び團體に對する煩瑣なる行政官廳權限の縮減乃至廢止等を行ひ、以て眞に名實共に農民の爲の團體と致しまして、其の自主的なる活動を容易ならしめ、農業の自治的整備發達と、農業者の利益増進に寄與せしめたいと存ずる次第でございます
次に水産業團體法中改正法律案に付て申上げます、本法律案は只今申上げました農業團體法中改正法律案と全く同樣の趣旨を以て、現行法に改正を加へんとするものでありまして、改正の内容に付きましては、水産業團體特殊の事情に基く二、三の細かい點を除き、大體農業團體法中改正法律案と殆ど同樣でございますので、詳細は省略さして戴きたいと存じます
以上が是等兩法律案の提案理由の概要でございますが、固より現下當面の困難なる食糧事情を打解致す爲には、眞に農業團體、水産業團體の活溌なる活動に俟たねばならぬ所、極めて大なるものがあることは申すまでもないことでございまして、是が爲め、政府と致しましても今囘の改正を機として、更始一新以て今後に於ける農業團體及び水産業團體の積極的なる活動を深く期待致して居る次第でございます、何卒御審議の上速かに御協贊あらんことを御願ひ致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=6
-
007・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 質疑の通告があります、順次之を許します――加藤知正君
〔加藤知正君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=7
-
008・加藤知正
○加藤知正君 私は只今上程になりました農業團體法中改正法律案に付きまして數項の質問を致したいと存ずる次第であります
抑抑此の農業團體法の生れましたのは一昨十八年の春の議會の時でありまして、都道府縣や各市町村の農業會の成立を見ましたのは、一昨秋より昨春までのことでありましたから、まだ農業會の全機能を發揮する所までには行つて居らないのでありまして、是から漸く其の能力を發揮して行かうと云ふ時に於て、早くも之を改正せねばならぬと云ふ理由が何處にあるでありませうか、只今農林大臣は改正案提出の理由を御述べには相成りましたけれども、まだ其の他に根本的に之を練り直さなければならない點が多々殘つて居るのでございます、斯樣な重要法案を會期既に半ばを過ぎんとする此の臨時議會に提案せずして、總選擧後の特別議會に提案せられて、愼重審議を盡さしめ、全く時代に即應したる立派な法律と致し、本法の最大目的とする食糧の生産確保に、全農業者の總力を結集せしめ、其の活動の最高效率を發揮せしむるやうにせらるることが妥當ではないかと考へるのでございますが、尚ほ此の點に付きまして、農林大臣の御所見の存する所を承つて置きたいと思ふのでございます
そこで此の間提案せられました農地法の改正と云ひ、將又此の農業團體法の改正と云ひ、其の目的の存する所は生産力の増強、食糧問題の解決に資せんが爲であることは、今更申上げるまでもないことでありますが、此の食糧問題の解決に付きましては、應急對策と恆久對策の二つあることも亦爭ふべからざる事實であります、而して其の應急對策としては、外米及び其の他穀類の輸入に依つて之を解決するより外に方法なきことは、又多言を要せざる所でありまして、政府は「マッカーサー」軍司令部に對し、外米其の他合せて三百萬「トン」の輸入を要請せられ、其の輸入の承認は得られたが、まだ其の數量の承認は得られないと云ふことであります、併し其の輸入の承認だけでは、我々國民は未だ以て安心することが出來ないのでありますから、一日も早く現物輸入の進展するやう、政府當局に對して此の上とも一段の御努力を要望して已まざる次第であります、併しながら私は此の際此の外米及び其の他の穀類の輸入數量に對して、一點の疑義を質して置きたいと思ふのであります、そこで政府は此の三百萬「トン」の輸入が出來れば、目前に迫る食糧難の危機は突破し得るかのやうに考へて居られるやうでありますが、私は之を大なる疑問とするのであります、何となれば、私の計算する所に依れば、此の三百萬「トン」の倍額、即ち六百萬「トン」の食糧が確保さるるにあらざれば、到底安心することが出來ないと思ひます、今我々の主要食糧である米に付て申上げますれば、我々日本人は老若男女、病人、赤ん坊も皆平均して一箇年に一石一斗の米を要するのであります、是は以前内務省に於て累年に亙り調査せられたる結果の數量でありますから、私は之を確實なるものと見て居るのであります、此の一人平均一石一斗の數量を基調として計算しますると、我が國の人口七千二百萬に對しては一箇年七千九百萬石、即ち約八千萬石の米を要することになるのであります、然るに近年に於ける我が國の米の生産高は、昭和十八年度が六千三百萬石、昭和十九年度が五千六百萬石、而して昭和二十年度即ち本年度の生産推定額は、四千三百萬石と云ふことになつて居りますから、我々の所要數量額と差引計算しますれば、昭和十八年度には一千七百萬石、昭和十九年度には二千四百萬石の不足となり、昭和二十年度には一躍三千七百萬石の大不足となるのであります、そこで聯合軍司令部の「クレーマー」大佐は、日本の現状は三千五百萬石、之を「トン」數に直して五百八十萬「トン」約六百萬「トン」、に近い大量の米が足りないと、新聞紙上に之を發表せられて居るのであります、之に對して我が政府は如何なる計算で三百萬「トン」の要求をせられたのであるか、「クレーマー」大佐が五百八十三萬「トン」不足すると申されるのに對し、我が政府の要求三百萬「トン」を差引けば、殘り二百八十三萬「トン」即ち一千七百萬石の不足となるのであるが、此の巨額の米の不足額は、如何なる食糧を以て補充せんとせらるるのでありますか、之を松村農相より詳細に承りたいと思ふのであります、幸ひに私の誤算であれば此の上なき仕合せと存ずるのであります、此の點に付て十分御説明を戴きたいのであります
第二に承りたいのは補充食糧であります、松村農相は此の間此の壇上に於て、補充食糧として一千萬石の團栗の用意のあることを申されましたが、如何に團栗が用意されても、所謂團栗の背比べで、船は山へ上るであらう(笑聲)尤も日本の船は皆海底へ沈んでしまつた今日でありますから、山へ上る心配はないかも知れませぬが、併し團栗だけの用意で安心して居たならば、或は以て國民の大半が餓鬼道へ落こちて、收拾すべからざる大慘状を呈することにはなりはしますまいか、政府當局には此の團栗の外に如何なる補充食糧を用意せられて居るのであるか、私は能く之を承つて置きたいのであります、而して私は此の際特に松村農相に進言致したいものがあります、それは松葉の粉食であります、古來仙人は松葉を食べて千年壽の命を保つたと申して居ります、私は日本人に松葉を奬めて、仙人の眞似をせよと申す者ではございませぬが、松は全國到る處に繁茂して、而も其の松葉には神祕的な榮養價値が含まれて居るものと申されて居るのでありますから、松葉を粉末にしたものに小糠を加へ、之に蕎麥粉なり、麥粉なりを加へて、「パン」なり雜炊團子にして、一日一囘必ず全國民に之を食はしむることにしますれば、米の節約は大したことになり、此の緊迫せる食糧事情を緩和することに偉大なる力があると思ふのでありますが、松村農相は此の點を如何樣に考へて居られるのであるか、私は元來饑饉來の虞ある時には、籾穀の粉食、藁の粉食をなさしむるだけの用意が必要であると唱道して居る者でありますが、併し此の籾穀や藁 中には硅酸や「カロリー」の關係がありまして、多くの異論があるやうでありますけれども、小糠に至りましては何人も之を否定する者はありませぬ、實際又小糠は硅酸の爲に胃腸障碍を起す心配もなく、滋養價値は十分に存在し、「カロリー」の關係に於きましても心配はないから、食糧事情の緊迫せる今日に於ては、人間の食糧となさしめ、他の方へは一切之を使はさないことに致したい、併し茲に考へなければならぬことは玄米食との關係であります、玄米食を獎めますと、小糠は得られないことになりますから、玄米食信者の方には暫くの間御辛抱を願ふことに致し、此の際斷然玄米食を禁止して、米は必ず九六%搗、即ち四分搗になさしめ、之に依つて得たる小糠は我々の食糧に廻し、之に松葉や蕎麥粉を加へて、食はしむるやうにすれば、米の節約頗る大なるものがあると存じますが、松村農相の御所見を伺つて置きたいのであります
尚ほ此の機會に今一つ進言したいものがあります、それは桑葉を蠶ばかりでなく、人間の食糧として利用せしむることであります、尤も近頃は桑葉の粉食がぼつぼつ行はれて來て居りますが、大部分は硬化せしめて空しく散らしめて居るのであります、食糧難の今日是は如何にも勿體ないことでありますから、桑葉の將に硬化せんとする一歩手前に於て之を採集し、四五分間程之を煮沸して後桶中に入れ、其の煮汁を掛けて貯藏し、必要に應じて三四分四方位に切斷してお米と共に之を炊くのであります、斯うしますれば頗る美味しく食べ得られるのであります、而して桑葉を分柝したる成績に依りますと、凡ゆる植物中其の滋養價値に於ては、桑葉の右に出づるものなしとまで言はれて居りますから、此の桑葉をお米と共に炊いて節米の資に供し、或は汁の實として野菜代りにすることは、未利用資源開發の一として大いに推獎すべきものであると信ずのでありますが、此の點に付きましても松村農相の御所見のある所を伺ひたいのであります
第三に御尋ね致したいのは肥料問題であります、我國の農作物が一昨年よりも昨年、昨年より本年と其の生産力が減退し、就中米の收穫に於て其の減收甚しきものあるは、天災地變や氣候の關係もあることは申すまでもないが、肥料を滿足にやり得なかつたと云ふことが其の最大原因であることは、何人も之を認むる所でありまして、無肥料農業即ち奪掠的農業の經營が如何に恐るべきものであるかと云ふことを能く認識致したる農家は、戰時中は已むを得ないとしましても、終戰後の今日に於ては思ふ十分に肥料を與へて、昨年の作柄に一段の努力を致し、大いに増産の實を擧げ、食糧難を克服したいと云ふ切なる希望を持つて居るのでありますが、政府當局の言明する所に依りますれば昭和二十年度末頃までに、硫安及び石灰窒素が約七十八萬「トン」、昭和二十一年度末即ち明後年の八月頃までに二百萬「トン」を産出致したいと云ふ計畫ではあるが、併し石炭や資金の關係で、それもどうなるか分らないと云ふことであつて、況して燐酸や加里に至りましては、海外輸送の關係上殆ど見込みが立たないと云ふことであります、斯かる期待薄の下に又ぞろ掠奪的農業の經營をなさしむるが如きは危險極まる話であつて、増産上由々しき大問題であると思ひます、斯かる危道を踏まんよりは、此の際政府は自給肥料に全力を傾到し、大いに之を激勵し、場合に依つては嚴罰主義を以て臨んでも宜いではないかとまで考へさせられるのであります、私の是まで調査したる所に依りますれば、自給肥料即ち堆肥と燻炭肥料とを併用して居る農家は、化學肥料などを使用せずとも、立派に増産の實を擧げて居るのであります、然るにどう云ふものか、農林省を初め各府縣の農業技術者の大部分は此の自給肥料たる燻炭肥料に對し、餘りにも熱意がなさ過ぎると思ふのであります、併し此の燻炭が肥料として偉大なる效力を有することは、今更呶々を要せざる所でありまして、東京農業大學の教授や學者の試驗研究に依りましても、明かに是が證明されて居るのであります、松村農相にして眞に食糧増産に熱意を有せらるるならば、一大英斷を以て此の燻炭肥料を奬勵されて然るべしと私は考へるのであります、之に付て一言附加へて置きたいことは、此の燻炭肥料に付ては是まで請願委員會に於ても、又建議委員會に於きましても採擇され通過致して居るのでありまして、昨年は農林省より局長通牒が出され、本年は次官通牒が出されて居りますけれども、斯かる形式一片の通牒位では、各府縣の技術員や指導員はなかなか動きませぬから、今少しく熱意のある督勵方法を講ぜられたいと思ふのであります、松村農相の御所見を承りたい、尚ほ之に付て私は前田文相に御尋ねしたいことがあります、あなたが私の縣へ知事として赴任せらるる其の當日、日本倶樂部に於きまして、特に私は御目に懸り、三十分間の御約束で御話申上げたことがあります、それは即ち此の燻炭のことでありまして、此の燻炭は肥料として百利あるも一害なし、而も我が新潟縣の如きは動もすれば冷濕の害や、旱害に襲はれ易いから、あなたは宜しく燻炭肥料を奬勵されて、大いに増産の實を擧げ、天下の穀倉新潟縣の面目を發揮されたいと申上げたのであります、あなたは確かに之を御記憶であらうと存じます、然るにあなたは御在任中燻炭の燻の字も仰しやらずに新潟縣を御引揚げになりました、あなたは如何なる御考へで斯樣な態度に出られたのであるか、あなたにして眞に食糧増産に熱意を有せらるるならば、燻炭は加藤折角の話ではあつたが、肥料としてはまだ奬勵する譯には行かないとか何とか、私へ一言其の御話があつても宜しいではありませぬか、それともあなたは肥料としての價値を認めて居られたのか、然らば何故に之を御奬勵なさらないのであつたか、あなたは昨年我が新潟縣の米の生産目標を五百萬石として之を大いに奬勵されたが、大事な肝腎要めの肥料が之に伴はない上に、冷害に襲はれたから、昨年度の米は五百萬石どころか、平年作の四百十萬石にも達せず、遂に三百萬石臺に落ちてしまつたのであります、あなたは此の現象をどう御覽になつて居られますか、而もあなたは供出米に付ては如何にも嚴重でありました、それが爲に純朴なる農家は皆飯米まで外して供出致しましたが、滿足に還元米を得られないので、悲鳴を擧げて親類知己の助力を得て、漸く米の端境期まで漕ぎ付けた農家が決して少くないのであります、是に於てか一將功成り萬卒枯ると、あなたに對する怨言怨嗟の聲が、縣内に充ち滿ちて居るのであります、本年の供出米がうまく行かないで、昨年よりも惡いと云ふことは、明治四十二年以來の惡作の影響も勿論あることではありますが、以上申上げたやうなことも亦大いに關係して居ることも、あなたは決して御忘れになつてはいけないと思ふのであります、そこで私は此の際あなたに簡單に一つ御尋ねしたいことがあります、それは外ではございませぬ、此の食糧問題の根本的の解決は、どうしても國民教育に其の基調を置かねばならぬと思ひます、それには先づ以て農村に於ける國民學校の名稱を、國民農學校と改稱し、重點を農業教育に置いて、一般教育を施すやうにしなければならぬと思ひますが、前田文相の御所見の存する所を伺ひたいのであります
第四に御尋ね申上げたいのは稻の品種問題であります、今日我國に於て行はるる稻の奬勵品種なるものは、殆んど其の大部分が食味本位に依つて選定せられたものでありまして、數量本位、即ち收穫本位に依つて選定されたのではありませぬ、私が現在行はれて居る稻の奬勵品種に付て調べました所に依りますと、一穗の粒數百粒前後のものが大部分を占めて居ります、此の百粒前後の穗が基調となつて、全國三百三十萬町歩の水田から、最も收穫の多い年が七千二百萬石、最も少い年が本年の四千三百萬石と云ふことになるのであります、現在の稻の品種では七千二百萬石以上の收穫は擧げられないと見て宜いと思ひますが、併し現在 百粒前後の奬勵品種を改めて二百粒前後の品種とすれば、本年の如き惡作でも四千三百萬石の稻作は、是が倍額八千六百萬石の收穫となりますから、食糧難に苦しまなくても宜しいことになるのであります、况んや五千萬石の稻作とすれば一億萬石になり、六千萬石の稻作とすれば其倍の額の一億二千萬石を擧げられますから、食糧問題は一擧にして解決されることになるのであります、此の私の主張は是まで請願委員會に於ても、又建議委員會に於きましても通過して、今は唯政府當局の決意如何に依つて、全國に多收穫本位 稻の品種が行はるるやうになるか、それとも行はれないやうになるかと云ふことになつて居るのであります、私をして忌憚なく言はしむれば、稻の品種改善問題は蠶の品種改善問題に比較致しまして、確かに二、三十年は遲れて居ると思ふのであります、松村農相の之に對する御所見を伺ひたいのであります
第五に御尋ね申上げたいのは増産農法の研究機關設置に關することであります、政府は此の生産力の増強、食糧の増産と云ふことに付ては、巨額の費用を投じて凡ゆる手を打つて居らるるにも拘らず、一向に増産の實が擧らないのであります、是はどうしたことでありませうか、一體我が國の六百萬町歩の耕地、三百三十萬町歩の水田には増産の餘力があるのであるか、それともないのであるか、私は色々な點から之を調べて見ましたが、大いに増産の餘地ありと申上げたいのであります、今稻作に付て之を調べを見ますと、反當一石前後から四五石までの差、即ち開きがあるのであります、又甘藷、馬鈴薯に付て之を調べて見ましても、反當百貫前後から二千貫以上までの開きがあるのであります、此の大なる開きのあると云ふことが、即ち増産上に大餘力と餘地があると云ふことになると思ふのであります、そこで米の反當一石前後の生産高を二石前後に、又二石前後の生産高を三石前後にと云ふ風に、順次其の生産能率を引上げ、又甘藷や馬鈴薯の反當百貫前後の生産を五百貫前後に、又五百貫前後の生産高を千貫前後に、其の生産能率を引上げることが、即ち増産の實を擧ぐる所以でありまして、それには農事試驗場と農家とを能く結び付け、又名人、即ち篤農家とか老農家とか呼ばるる人達と一般農家と云ふものとを、眞に能く之を結び付けることが一番良い増産能率の引上げであると思ふのであります、實際農事試驗場に於て行はれた試驗研究の中には、増産上大變立派なものがありますが、併し多くの農家は、あれは試驗成績であつて我等の眞似し得べきものではないと考へ、下手な眞似をして失敗してはつまらぬと之を片付けて居ります、又世間には所謂名人と云ふものがありまして、甘藷の如き、馬鈴薯の如き、反當二千貫や三千貫と云ふ大量の生産をして居る者がありますけれども、あれは老農家のすることである、篤農家のやることであつて、我々の容易く眞似し得ることではないと、別物扱ひをして振向きもしないと云ふ傾向が大いにあるのであります、是れでは如何に良い方法がありましても、増産の實績は何年經つても擧りませぬ、故を以て此の農家の考へ方を一日も早く改めさせて、如何なる低位の農家でも、此の農事試驗場の良い試驗成績を直ちに取つて以て應用し、名人即ち篤農家や老農家の方法を實行せしむるやうにすることが、今日の増産上の急務であると申さねばなりませぬ、果して然らばそれは如何にしたならば宜しいかと云ふに、農家と試驗場との間、又農家と名人との間を能く結付かしむる仲介機關とでも申しませうか、應用技術の研究所と云ふやうな紹介機關を設置して、此の機關の中に各種試驗場の、増産上最も良い試驗成績や、名人と言はれる人々の特殊栽培法を悉く之を網羅して、所謂箱庭式のやり方ではなく、實際農家のやつて居る状態に於て、或は氣候風土の上から、或は品種、種類の上から、或は肥培管理の上から比較研究して、何れのやり方、何れの方法が一番多くの收穫を擧げ、又何れの方法が一番良く經濟上の收支が償ふかと云ふことを確かめ、其の確かめ得たる最善最上の方法、やり方を其の研究機關の中で養成して居る研究生を能く體得せしめ、應用技術の上に於て、十二分の試煉と訓練とを與へて、何人に對してでも立派に之を指導し得る眞の技術者を作らして、之を各町村に送つて町村技術員たらしめ、低位農家の指導者たらしむるのであります、而して此の機關は都道府縣の農業會をして之を設置せしめ、政府は之に對して出來るだけの助成を與へ、其の設備の完成をなさしめ、一日も早く増産農法が全國の津々浦々にまで徹底して、如何なる低位農家でも容易く之を實行して、大増産の實を擧げ得るやうにすることが、今日の急務であると信ずるのでありますが、敢て松村農林大臣の御所見を伺ひたいのであります、以上を以て私の質問を終ります(拍手)
〔國務大臣松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=8
-
009・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 御答へを申上げます、何故此の臨時議會に此のやうな重要な法案を出したかと云ふ御尋ねでございますが、是は昨日も申上げました通り、今日の急變轉する世の中にやるべきことは急いでやらねばならない、殊に農業上の一つの癌となります農業會の官僚的の色彩は、是は早急に一日も速かに改めて、農民の氣分を一新して、さうして増産に勵んで貰ふことが何より必要でございます、根本的の改正をと云ふ御話でございますが、此の民主的の機構が門が開かれて、そして其の上本當に農民の機關となつて、其の上に起る色々の農民の聲を聞いて、さうして根本的に改むべきものがあれば其の時に改めて然るべしと存じまして、今囘は唯其の民主的の門戸を開く程度に止めた次第でございます
次には三百萬「トン」で足らないぢやないかと云ふ、色々需給推算を承りましたが、大體其の通りであります、併しながら今日の此の状態に於きまして數字に御示しになりました平時と同じやうな食糧を、敗戰を致しました此の場合に取ると云ふ要求は、今日歐洲其の他の食糧事情とも併はせ考へます時に、さう云ふ譯には參りませぬ、やはり出來るだけ忍べるだけの必要な、最少限度の程度で此の食糧難を突破しなくてはならない、隨ひまして三百萬「トン」では足りませぬけれども、併し此の全量で、出來ますならば國民は飢ヱないで、さうして活動力を最低ながら持ち得るやうにやらなくてはならない、それに付ては三百萬「トン」入れても尚ほ足らざる部分を、今日までの食糧以外の未利用資源に依るも で之を補つて行く、斯う云ふ努力をしなくちやならぬのであります、其の未利用資源に付きまして色々の御話を承りまして洵に參考となりました、勿論私共は團栗ばかりを未利用資源とは考へないで、凡ゆる物を食糧化してやつて行きたいと存じて居ります、そして之を利用し得る根抵を作つて置かなくちやならぬ、それは何かと申しますと、粉食に必要な未利用資源と云ふものは、多く粉食の方法に依らなくちやならない、其の粉食をするのには、今日日本にある設備では間に合ひませぬ――間に合ひませぬと申すよりも加藤君御承知のやうに、非常に不足致して居るのでございますから、今度の議會に御協贊を得たいと思ひまして、未利用資源の設備其の他に付て相當の豫算を提出致したいと存じて、今日提案の運びになつて居るのでございます、是は大體の考へ方は大凡截斷機を八千臺、粉碎機を二千臺、乾燥機を二千臺、此のやうなものを拵へ、之を組み合はせまして大體全國三百箇所程配置致し、大きな都市には之に依つて「パン」に燒き得る設備を致し、十分に利用し得る用意を致しましたならば、御話のやうな松の葉も、其の他色々なものも之に依つて食糧化し得るのでありまして、其の食用化の範圍は御示しの物以外に相當に廣いのでありますから、之に全力を盡したいと存ずるのでございます
次は、化學肥料の外に自給肥料を大いにやれと云ふ御話でございますが、御意見の通りであります、唯併し化學肥料は、是は自給肥料が十分出來ましても、是非生産能力を囘復致しませぬと、今日の農業は自給肥料だけに依ることは出來ませぬから、一面化學肥料を大いに増産致しますと共に、御話のやうな自給肥料は又農民に御願ひをし出て來るだけ一つ努力をして戴きたい、戰時中に自給肥料に對する色々の計畫を立て、農民に其の實行を願ひましたが、是は御承知のやうに勞力が足りませぬので、十分の成績を擧ぐることは出來ませなんだが、今日農村に勞力が充實致しましたならば、自給肥料を作りますことも、戰時中よりはより良い成績を擧げ得ることと存じまして、今日農業會其の他を通じて、農民に自給肥料を作るやうに奬勵もし、努力も致して居るやうな次第でございます
それから多收穫品種の問題は全く御話通りでございまして、此の品種の改良に依つて増産を擧げると云ふことが根本的の問題と思ひます、農事試驗場を開放して、そして其の得た成績を農民に十分利用せしむると云ふことは、全く同感でございまして、試驗場と云ふものが農民と懸け離れて居るが如き形は、是は絶對にいけませぬので、御話のやうな方法を執ると共に、試驗場以外の民間の研究も亦廣く採入れるだけの用意を致したいと存じて居ります、大體御尋ね下さいました點は以上の所だと思ひます(拍手)
〔國務大臣前田多門君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=9
-
010・前田多門
○國務大臣(前田多門君) 只今加藤君より、私が曾て知事を致して居りました時代のことに付きまして御叱りを蒙つたのでありまするが、燻炭肥料に付きましての同君の御忠告を、決して私は度外視致した譯ではないのでございますけれども、併し何分私の熱意が加藤君の御期待通りに參りませぬことを大變恐縮に存じて居る次第であります
尚ほ御尋ねになりました農村に於きましての國民學校の在り方――農村に適應したものにやつて行かなければいけないのだ、斯う云ふ御趣旨の御質問のやうでございましたが、全く御同感でございます、尤も國民學校と致しましては、やはり都鄙を通じまして、國民全體と致しましての共通要件がございまするから、教授科目に付て都鄙を通じて共通の點もなければならぬと思ひますけれども、それ以外の點に付きましては、所謂畫一主義を打破致しまして、出來るだけ農村に適應した學校にして、小さい時分から農業に習熟させるやうにする、斯う云ふ御意見、全く御尤もでございます、其の意味に於きましては御贊同申上げる次第でございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=10
-
011・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 加藤宗平君
〔加藤宗平君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=11
-
012・加藤宗平
○加藤宗平君 農業團體法中改正法律案竝に水産業團體法中改正法律案に付きまして、二、三農林大臣に質疑を致したいと存じます
第一は、我が國が「ポツダム」宣言の受諾を致しまして、其の實踐をなすに當りましては、我が國は凡ゆる部門に於て、急速に軍國主義竝に極端なる國家主義を拂拭すると共に、進んで平和日本再建の爲に民主主義日本への改革を斷行しなければならないのであります、今囘議會に提出せられましたる一聯の法律案は、總て之を目標として居るものと言つても宜いのであります、此のことは法案の内容が民主主義的であると云ふことばかりでは足らないのでありまして、其の法案の形成過程に於きましても、其の法案の審議の過程に於きましても、與へられた時間内に於ては、飽くまでも民主的手法に依りまして、豐かなる民意が反映することが、必須の條件とせられるものと私は思ふのであります、それが民主主義の基本的性格でありまして、目標の上に於て民主的を目指す善意――善き心があつたと致しましても、それを實現する手段の上に於きましても、所謂「バイ・ザ・ピープル」――民主主義的な方法に依つてなされなければならないのでございます、此の觀點に立つて幣原内閣の施策の足跡を見る時に於きまして、甚だ遺憾の念に堪へないものが存するのであります、私は此の法案形成の過程に於きましても、法案審議の過程に於きましても、内閣の一隅に依然として戰時下に於てのみ許されたる、誤つた官僚「フアショ」の獨善的な傾向があるのではないかと考へられるのであります、先づ憲法改正と云ふ大きな問題に於ても、さう云ふ面が我々にちらちらして來るのであります、憲法改正は憲法改正と稱せられて居りまするけれども、恐らく、「グナイスト」や「シュタイン」に依つて影響せられた、さうして伊藤公が草案した憲法から見れば、今後豫想せらるる憲法改正は、全く其の質的變化を遂げるであらうことが豫想せらるるのでありまして、此の意味合に於きまして、今後あるべき憲法改正は、内容に於きましては新憲法の創造と云つても宜い程の、大きな問題が含められて居るものであり、是が實に今日以後に於て我々が努力しなければならない道義日本再建の基礎になるものであります、所が此の重要なる憲法改正の手續等に於きましても、私は政府が黒星を貰つて居るのではないかと思ふ、それは既に廢止さるべき命運にあつた内大臣府に依つて先づ最初に取上げられ、其の後輿論の動きに依りまして、政府が之を國務として取上げるに至つたと云ふやうなことは、正に民主的な憲法改正が其の手續、手段、方法等に於て決して民主的な線に沿うた行き方をして居るものにあらずと考へられるのであります、そこに私共は豐かなる民意を反映せしむべき手段を、政府が執つて居ないことが看取せられるのであります、此の根本方針が特に濃厚に現はれて居るのは、農林省から提出せられたる農地調整法改正案、農業團體法改正法案、水産業團體改正法案等に付て、更に其の感が深くせられるのであります、思ふに農地調整法改正法律案、是亦其の内容に於きましては、「ポツダム」宣言に依つて示唆せられて居りまする所の日本の民主化、其の經濟部面に於ける民主化の急速な實現を内包するものでありまして、それは實に日本農民解放の使命を持つものと云つて宜いと思ふのであります、それは舊農地調整法の改正ではなくて、新なる日本の農業の基礎たるべき農地制度の法案であるのであります、又農業團體法改正法律案の如きも、決して是は從來の農業團體を、唯役員を選擧に依つて行ふと云ふ點にのみ止まるべきものでないもの、是から發足して、更に幾多の農業團體の、新しい活動が期待せられるものでありますので、是も内容に於きましては舊き農業團體法の改正ではなくて、實に新しい時代に即應したる所の農業生産者の團體法案であり、又農民組合法案の内容を持つものでありまして、農地調整法改正法律案、農業團體法改正法律案、是が一緒になりまして、來るべき我が國の農業の在り方を規定する重要なる内容を持つものである、隨て私共は率直に言ひまするならば、寧ろ舊き法律の改正案の手續をなさずして、單行法の提出と云ふ所まで行くことに依つて、此の法案の中に含められたる意味を、國民大衆に闡明すべき必要があらうと思ふのであります、其の闡明することに依つて國民の協力を得、其の協力の上に目標を達成する途を打開いて行かなければならないと考へるのであります、さう云ふ重大なる法律案でありまするので、此の法律案の形成の過程に於きましては、やはり民主的手法を以て當るべきが本來の筋道であると私は考へるのであります、既に今議會に提出を豫想せられて居りまする厚生省提出の勞働組合法の場合に於きましては、農林省と全く違つた方法を以て勞働組合法案を作つて居ります、即ち勞働組合法案を作る以前に於きまして、厚生省は勞働組合法案諮問委員會を作りまして、さうして其の委員會は資本家及び勞働者竝に有識者の代表者を以て構成し、其の諮問委員會の運營の中に、豐かなる民意を反映せしむることに依りまして、民主的手法を實現致して居るのであります、今囘の傳へられる勞働組合法が、其の根本に於て極めて進歩的だと言はれる所以は、實に此の勞働組合法形成の過程に於て、十分民主的な手法に依つて民意を反映せしめたと云ふことが、大きな理由とせなければならないのであります、それが本筋なのであります、所が農林省が提出致しましたる一聯の改正法律案は、何れもさう云ふ過程を經て居ないのであります、農林省に於きまして官僚が之を作り、さうして原案を作り、之を閣議に諮り、傳へられる所に依りますれば、閣議に於きまして、一つの見方に依つては重要なる修正が行はれ、初めて議會に提出する原案が出たと言はれて居るのであります、私は勿論此の農林省の出した一聯の法律案の中に盛られて居る所の内容を見まして、決して農林官僚の善意を否定するものではないのであります、併しながらそれが善意に基くものであると云ひましても、其の方法に於て民主的な方法を執らなかつたならば、是は正しく、間違ひなく、戰爭中に於て許され、今日誤りたる方法として指彈せられて居る官僚「フアツシヨ」、官僚獨善以外の何ものでもないと考へるのであります、私は寧ろ厚生省の勞働組合法案を作る時に執つたやうな方法を以て、農業團體法なり、農地調整法の改正案と云ふものを作つたならば、より完成したもの、より矛盾の少いものが、同じ目標を目指して居りましても、出來たであらうことを想像しない譯には行かないのであります、此の點に於きまして私は斯う云ふ法律案の形成過程に於ける「アンチ・デモクラチック」な方法、反民主的な方法と云ふものは、今日速かに拂拭されなければならないのではないかと考へられるのであります、私は今日以後に於きましても、内閣がさうした法律案を作る際に於きまして、依然として只今申上げたやうな官僚獨善で、唯善意を頼りと致しまして、官僚のみで以て作成するやうな方法を今後とも御執りになる御意思であるかどうか、私は速かに是は打破することに依つて、民主主義への途を打開かなければならないと思ふのでありますが、此の點に關する農林大臣の御所見を御伺ひ致したいと存じます
次に直接農業團體法中改正法律案に付きまして質疑を致したいと存じます、私は率直に申しまして、農業團體が今日以後の新しい時代の農業及び農民 要請に應ずる爲には、少くとも二つの改革目標を持たなければならないと信じます、一つは其の形態に付てでございます、戰時中に於きまして農業團體は其の役員の任命及び官廳の指導等を通じまして極めて官僚的であつたことは、農林大臣の説明にも明かにせられて居ります、併しそればかりではなくて、あの形態と云ふものは戰時中に於て官僚及び官僚と提携し、更に進んで結託した或る種の人物の獨裁權をより容易ならしむる所の一つの形態であつたと云ふことが、今日私共に強く反省させられるのでありまして、之を速かに拂拭すると云ふことは何としても必要なことであります、官僚的から民主的への急速なる移行が要請せられるのであります、是が今度政府が提出したる農業團體法中改正法律案の中に、其の使命を達成すべく定められて居るのであります、併しながら此の形態上に於ける官僚的から民主的へと云ふことだけが實現されて、それで以て直ちに農業團體が自主的な活動を開始し、さうして新時代の農業及び農民の要請に十分應じ得るやうな活動をなすと期待するが如きは、極めて現實から遊離したる所の甘い考へでなければならないのであります、私共は形態に於て官僚的であつたと云ふことが農業團體の活動を阻碍し、農民の信頼を失つたばかりではなくて、形態以外に其の農業團體の内容に於きまして、其の農業團體の基本的構造の面に於きましても、改革しなければならないものがあつたことを考へられるのであります、農業團體の基本的な構造の在り方に付て私共は新しく考へ、之を實踐しなければならないのであります、此の形態の改革と、構造の改革と相俟つて完成せられた時に於て、初めて農業團體の黎明は來るものと考へるのであります、其の内容、其の構造の在り方に付ては、どう云ふことであるかと申しまするならば、先づ第一に考へられますことは、農業團體の統合に當りましては、單に農業者に關係する團體であるからと云ふのを唯一の頼りとして、總てを綜合し、統一し、一元化してしまつたのであります、是は實に戰時に於て全國的な所謂農業「コンツエルン」とも云ふべきものを作り上げまして、其の上に獨裁權を振はんとした其の者の野望達成を容易ならしめることが唯一の途であつたが如くに考へられ、是が今私共に痛切に反省せられるのであります、斯う云ふ無理なことをやつた結果と致しまして、其の中には大きな矛盾があつたのであります、即ち産業組合、是は組合員の出資を基礎と致しまして出來て居り、經濟行爲を中心として運營せられた團體でありまして、一方農會は、是は分擔金に依つて收受せられ、技術的指導奬勵を中心と致しまして、一聯の活動をなして居つたのであります、此の分擔金に依る組合、出資に依る組合、一方は技術的指導であり、一方は經濟行爲である、斯う云ふ風に、分柝して考へて見る時に當りまして、同じ農業部面の仕事とは云ひながら、そこには同質的なものではない、相容れざる異質的性格を私共は見ない譯には行かないのであります、此の異質的なものを無理に一元化したことに問題があつたのでありまして、是は今日に至るまでの間に於て、此の矛盾は全然解決せられて居りませぬでした、未消化の儘に今日に至つて居ります、是が戰時下に於て大きな使命を持たせられ、大きな責任を持たせられながら、尚ほ且つ農業會が之を完全に果すことを得なかつた根本的な原因であると言はなければならぬのでございます、隨ひまして私共は今日此の農業會の根本的改組をなすに當りましては、此の矛盾を解決しなければならない、矛盾の解決とは何であるかと云ひまするならば、それは私は元の各業種別の團體に復元することでなければならないと思ひます、之を實現することに依つて、初めて農業團體と云ふものは、其の團體が持つ固有の目的を執拗に追求することに依つて、立派なる成果を擧げることが出來るのであります、増産の成果を擧げることが出來ますし、供出の成果も期待することが出來るのであります、又今日食糧品輸入の見返り物資として、養蠶業が新たな脚光を浴びることになりました、是等のことを急速に其の成果を擧げようとするならば、私はやはり養蠶業の團體を此の綜合的な團體から分離せしめる、畜産或は茶業、さう云ふやうなものを、總て其の業種別に從つて元に還すと云ふことが、私は本當に農業體の機能を發揮せしむる所以であると考へるのでありますが、此の點に付きまして今度の改正案は何等觸れて居ないのであります、單に役員の選擧と云ふやうなことを通じまして、農業團體が自主的な活動を致すであらう、其の結果大きな役割を果すであらうと云ふやうなことは、極めて現實から離れた甘い考へであると言はなければなりませぬ、隨て今度の改正と云ふものは根本を忘れた改正であります、政府は此の點に付て此の内容の改革、其の構造の在り方に付きまして如何なる所見を持つて居るか、又此の改革以外に更に根本的な改革案を好き機會に提出する所の氣持があるかどうか、是等の點に付きまして農林大臣の所見を質したいと存じます
それから水産業團體法の改正案に付てでありますが、是は農林大臣の説明にあつた如く、農業團體法中改正法律案と同じ内容と、同じ手法を以て出て居るものでありますが、併しながら是も同一のことが言ひ得るのであります、それだけのことをやつただけで果して水産業の團體は、此の第十二條に於て一から八まで列擧せられたる數々の仕事を、十分果すことが出來るかどうかと云ふことであります、今日洵に言語に絶する所の窮迫したる食糧事情の際に於きまして、海洋國日本と致しましては、水産業の發達、漁業の發展と云ふことに對しまして期待すること極めて多いのでございます、殊に「ポツダム」宣言の受諾に依りまして、今日までの日本の資源、領土は失はれて居ります、唯與へられたるものは海面海下に於ける所の漁業資源の開發でなければならないと思ふのでありまして、漁業の今日以後に於て期待せられる役割は、決して過小評價することは出來ないばかりでなく、如何樣に之を大きく見ても大きく見過ぎたと云ふことのない程、大きなものを水産業團體の活動は内包して居るものと私は信ずるのであります、而もそれ等の活動が單に斯うした形態上に於ける改革のみを斷行することに依つて、ひとりでに滑り出しが宜くて、其の目的を達することが出來ると云ふやうなことを考へることは極めて甘いのであります、殊に又今日は惡條件が山積して居ります、資材、勞務、其の他等々の點に於て、何れも惡條件が山積して居る時に當りましては、單に自主的活動を期待すると云つて、活動に對する責任一切を民間の團體に任せ切りであることは、決して私はそれが民主的であるとは思はれないのであります、強力なる政府の指導が要請せられるのであります、此の點に關しまして私共は水産業に關する今日以後の使命を達成する爲の政府の新しき構想に關しましては、何卒聞知する所がないのであります、此の際此の機會に於きまして、農林大臣から其の點に付て御説明を戴きますならば、幸福は私のみに止まらざるものがあると信ずるのであります、御所見を御尋ね致します
最後に御尋ね致したいと存じますのは、結論から申しますならば、皇室御料地の農民への開放と云ふやうなことに關しまして、輔弼の責任を有する國務大臣は如何なる御考へがあるかと云ふことであります、私は最近非常なる衝撃を受けたのであります、それはどう云ふことであるかと申しまするならば、是は私共の立場から申しますれば、洵に口にするだに畏多いことなのでありまするが、民衆新聞の發刊號に於きまして斯ふ云ふ記事を發見致したのであります、見出しは、天皇樣は大地主、生神樣の正體暴露、斯う云ふ表現を使つて居るのであります、實に私共は畏多いと共に大きな衝動を受けたのであります、併しながら私が此の問題を茲に取上げたのは是が不敬罪に當るかどうか、或は法律に觸れるかどうかと云ふやうな問題ではございませぬ、同じく 陛下の赤子として生れたるそれ等の人々でありますが、それ等の人々をして敢て斯う云ふやうな表現を以て、皇室を非難すると云ふやうな擧に出でしめたことに付きまして、政治家は深く反省しなければならないのではないか、殊に 陛下の御親任を受けて居られる輔弼の大任を有する國務大臣に於て、其の感が殊に深くなければならないと云ふことであります、既に我が 天皇陛下は、朕は爾臣民と共に在りと仰せられて居るのであります、又傳へ聞く所の終戰を決定した最後の御前會議に於きまして、列席の群臣何れも天皇制の問題に付て思ひ惱み、「ポツダム」宣言を最終に受諾すべきや否やに付きまして、論議紛糾して纒らざる時に當りまして、畏多くも 陛下の御發言があり、其の御發言の中には、 陛下は、朕は如何樣にあらうとも、今日戰禍に苦しんで居る國民の悲慘なる姿を見れば、此の儘續ける譯には行かない、朕の身は如何樣であらうとも此の際「ポツダム」宣言を受諾することにする、皆もさう思へ、同時に 陛下自ら「マイク」に立つならば立たうと云ふ御言葉まで仰せられて居るのでありまして、 陛下の海の如き御仁慈の程を泌々と感ずるのであります、列席の群臣聲を上げて泣いたと傳へられて居りますが、其のことを思ふ時に於きまして、私共も眼頭の獨りでに熱くなつて來るのを禁ずることは出來ない次第なのであります、私は思ふ、「アドルフ・ヒトラー」は自分一個の面目に執著致しまして、最後まで所謂頑張ると言つて戰爭を繼續した結果、遂に世界の歴史に未だ曾てなかつた無政府状態の儘に「ドイツ」民族は降伏をし、其の爲に言語を絶する不幸のどん底に突落されて居るのであります、それに反しまして比較するだに畏多いことではありまするが、我が 陛下の御仁慈の程を私は身に泌みて感ずるのであります、此の御仁慈の程を單に御仁慈の御言葉のみに止まらず、此の御心持を政治の上に實踐し、經濟政策に於て、政治政策に於て其の儘の姿を現はすと云ふことが、是が 陛下の御信任を受けて居る所の、國務大臣の責任でなければならないと私は思ふのであります、それを通して國務大臣は 陛下に對する忠誠の心を捧げなければならないのであります、斯く考へる時に當りまして、私共は斯う云ふ所に於て輔弼の責を有する國務大臣が、忠誠心を 陛下に捧げる上に於て誤りがなかつたならば、此の御仁慈の程を常に政治の上に、經濟の上に實踐化する上に於て誤りなかつたならば、私は斷じて民衆新聞に現はれた如き表現の言葉を聞くことはなかつたと思はれるのでございます、私は此の意味合に於きまして、今や農業團體法中改正法律案及び農地調整法中改正法律案等に依つて、日本の農民解放への途が指向せられ、日本の新しき農業の發足に對しまして、基本的な制度が確立せられる時に當りまして、私は有難き 陛下の御仁慈が、御料地の開放と云ふやうな姿で以て現はれまするならば、單に農民が感奮興起し、地主又思ひを新たに致すのみならず、隨て此の法律案の目指す所の成果も、十分期待することが出來ることになりはしないかと考へるのであります、私は此の點に於きまして首相が居りませぬから、農林大臣の御所見を御伺ひ致したいのであります、殊に現在我々は好むと好まざるとに拘らず、天皇制は國内に於て、國外に於て、正に論議の課題として提出せられて居るのであります、是は國内の我々だけの問題ではなくて、國際政治の面に於きましても複雜なる姿を以て我が國に迫つて居るのであります、斯かる重大なる時期に際會致しまして、天皇制の擁護維持と云ふことは、單にそれを「モットー」とし、それを標語として掲げると云ふことだけでは、是は押通せないのであります、天皇制維持、國體の護持と云ふものは、やはり其の基礎を合理的な所に持たなければならぬ、合理的な理由に依つて支持せられなければならないのであります、斯かる際に於きまして、私共は只今私が申述べましたが如き 陛下の御仁慈の程を實際の政策の上に現はして行きまするならば、天皇制維持、天皇制擁護の合理的基礎と云ふものも、次第に確立せられるのでありまして、さう云ふものを通じて私共は國體護持の鬪ひを展開しなければならないと思ふのであります、其のことを行はず、其の御仁慈の程を實踐化する努力を國務大臣がなさずして、唯徒らに天皇制を擁護する、國體を護持すると云ふだけでは最早通らないのであります、殊に國際政治の面に於て、そこに深刻なる反對のあることを我々は考へなければならぬ、斯う云ふやうな意味合をも一つ考への中に置かれまして、此の農地制度改正を機會に御料地の開放を致し、之を日本農業の代表團體である所の新しき農業會をして、其の關係する地域に於ける經營或は運營をなさしめる、そこに新しき日本の農業の實權、例へば集團農場制度の如きものをなして、さうして日本農業の上に光明を點じて行く、斯う云ふやうな構想を持たれるかどうか、此の點に付きましても所見を承りたいと思ふのでございます(拍手)
〔國務大臣松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=12
-
013・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 御答へを申します、なぜ之を出すのに、政府で何等かの機關を經ないで此のやうにしたかと云ふ御尋ねでございます、是は斯う云ふ官僚的の色彩を拂拭して民主的にすると云ふことは今日の輿論でございます、隨ひまして委員會等は開きませぬでしたけれども、天下の聲を聽いてやつたのでございまして、別に官僚的の方法を執つたと云ふ譯ではございませぬから御諒承を御願ひ致します
それから第二に此の農業團體の畜産或は養蠶等の團體を分離してはどうかと云ふ御尋ねでございます、是は極めて重大な問題でございますが、是は唯戰時中に強力を以て是等を一本にしたと云ふだげではありませぬで、御承知の通り非常に農業に關する色々の團體が分立して居りまして、其の爲に農民が非常に澤山の方面に加入せにやならぬ、費用も非常に要るから、之を一本にしたら宜しい、之を整理したら宜しいと云ふことは多年の輿論であり、議會に於ても當時屡屡論ぜられたことであります、それ等の結果として斯う云ふ風に一纒めになつた經過もあるのでございます、隨ひまして之を今度分離するかどうかと云ふやうなことは、是は相當に重大な問題であらうと存じまして、先刻申上げました通りに自由の門戸を開放して、さうして農民の實際の聲を聽いて、是等の點に付て改正すべきものあれば改正しても遲くはなからうかと考へて居る次第でございます
それから水産に關する御尋ねでございましたが、魚族の漁獲の問題は、今後の食糧問題に非常に大きな影響があり、而も直ぐ效果が上る問題でございまして、之に全力を注がなくてはならぬのでございます、それに付きまして今日漁獲を増進しますのには、一つは漁船の囘復であり、一つは漁網の問題であり、一つは油の問題であり、それから集荷の斡旋其の他が大きな問題でございます、是が悉く水産業會の活溌なる運營に依るにあらざれば實績を擧げ得ないのでございまして、此の面に於きまして、今後全く民主的になりました水産業會の活溌なる活動に依つて、實績を擧げることを期待致して居る次第でございます
最後に御料地に付ての御意見がありましたが、是は謹みて承つて置きたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=13
-
014・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 前川正一君
〔前川正一君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=14
-
015・前川正一
○前川正一君 只今上程されて居ります二法案に付きまして、簡單に理由を申述べて質疑を致したいと思ひます
先日總理大臣は日本民主主義の發展の爲に農地改革の問題は極めて重大である、斯う云ふことを言はれたのであります、又本日も農林大臣は、急變轉致やしまする今日の情勢の場合に於てやるべきことは勇敢にやる、斯う云ふ言葉も言はれたのであります、兩方とも洵に良い言葉であります、併し先日上程されました農地調整法中改正法律案や、只今出て居りまする農業團體法中改正法律案の程度を以てして、日本の民主主義を最も勇敢に、強力に、妨害して參りましたる日本の農業と云ひませうか、日本の對建的農地問題が、果して日本の民主主義的の方向に向つて解決し得ると御考へになるかどうか、是は極めて重大なる問題でありまするので、少しく言葉を足して申述べたいと思ふのであります、先日の「マンチェスター・ガアディアン」に依りますると、日本民主化の第一歩は眞に日本の農業改革から始まると申して居ります、洵に其の通りであると思ふのであります、又更に其の新聞は、日本に於ては此の度の敗戰で軍閥は大きな打撃を受けた、けれども財閥、官僚、地主は依然として存續を恣にして居る、斯う云ふやうな言葉もあります、併し其の後財閥の大きいものは解體を命ぜられ、逐次解體の非運に際會して居ります、官僚亦其の陣營の一部が崩壞しつつありまするが、我が日本の民主主義の道を最も強力に塞いで居る彼等が申しまする地主勢力は、未だ此の二つの法案程度を以て致しましては、其の勢力を割くことには大してなり得ないと思ふのであります、何故日本に於て農村が封建的な勢力で支配されて居るか、此のことを考へて見なければならないと思ふのであります、一町歩以下を耕作致して居りまする零細農が、實に、農民の七割以上を占めて居ると云ふ事實であります、是等の過小零細農は極めて貧困なる生活しか出來ないのであります、そこには經濟上の獨立もありませぬ、農業再生産の資力も十分にございませぬ、有畜農業を致し、機械化することも勿論出來ないのであります、是等の貧困なる零細農が日本農民の大部分を占めて居ると云ふ此の事實は何に基くか、實に日本の土地が地主的な所有關係に置かれて居ると云ふ所に、根本的な原因を發見しなければならないと思ふのであります、其の結果は極めて高い小作料、而も物納の小作料があるのであります、農民は貧困で當然經濟の獨立がございませぬ、而も又それに依りまして生殺與奪の權が地主の手にあると云ふ事實であります、土地の取上等も頻繁に行はれました、隨て經濟上の獨立性が日本の零細農にはないと云ふこと、此の事は延いて社會的にも、地主と零細農の間に於きまして親分子分のやうな關係があり、親方子方の關係が出來、出入り者のやうな關係に置かれて居ります、或は債權者と債務者のやうな何時も頭の上らない状態に置かれて來て居るのであります、唯保護と、恩惠と、服從と云ふ、所謂封建的な言葉を以て致しますならば、極めて淳風美俗と云ふべきでありませうけれども、我々の今日の立場から申上げますならば、何等の對等な、自由な人格と云ふものはそこには存在しないのであります、そこにこそ日本の大部分を占めまする農民が、増産を致さうと致しましても、増産意欲さへも燃やし得ない現状になつて參る、増産し得る資力がないと云ふことなんです、日本の農業が戰時中あれ程強力に支援されながら増産し得なかつたと云ふことは、實に地主的土地所有關係と云ふ、經濟的地盤の上に、過小農が其の最も多きを占めて居つたと云ふ所に、最も大きなる原因を見なければらぬと思ひます(拍手)其の彼等の馴致されました服從と隷屬の觀念は、日本の軍國主義者の爲に最も宜き地盤を作つたのでございます(拍手)而もそれは同時に反動的な政治勢力の爲にも、最も強力な地盤たり得たのであります、此の事實を私達は斷じて見逃してはならないと思ふ、日本の封建的な土地所有關係と云ふものを拂拭することなしには、今日の日本民主主義の道は斷じて滑かになり得ないと思ひます(拍手)我々は是に於きまして之を思ひまする時に、日本の今囘の敗戰も、實に是等の點に最も大きな原因を發見しなければならぬと思ひます、私達は過去を振返つて見ます時に、明治維新のあの改革も、土地問題に於て一つの大きなる失敗をして參つたのであります、それが日本の資本主義を極めて歪めたことになつて居ります、大正の末期に於ける我々の曾ての無産運動も、土地問題を取上げまして、農民は痛切に土地を要求したけれども、時の支配階級の手に依つて、此の要求は遂に彈壓し盡されてしまつたのであります、是亦日本に於ける土地問題の第二次の失敗である、而も今日の此の國際的な情勢を考へて見まする時に、第一次歐洲戰後に於きましては、「エストニア」「ラトビア」「ルーマニア」「チェコスロヴァキア」に於きましては、封建的な土地所有關係は完全に清算し盡されて居るのであります、此の度の敗戰に依りまして、「ポーランド」と「ドイツ」の一部に於きましては、無慈悲にも土地の無償沒收が行はれつつあるのであります、進駐軍の進駐以來、朝鮮に於きましては、生産高の約半分を占めて居りました小作料が、三分の一以下に低下して居ると云ふ現實も私達は見て居るのであります、又他の例を申上げる程ではありませぬが、日本の小作料が現物地代としまして、生産高の四割七分を占めて居りまする時に、「イングランド」では僅かに一割一分、「スコットランド」に於きましては一割八分、「フランス」に於てさへも二割八分の小作料しか取つて居らないのであります、如何に封建的土地所有關係と云ふものが、高率なる小作料を要求して居るか、此の一つの事實から見ましても、日本の民主主義の道は、是等の問題の解決なくしては斷じて進行し得ないと云ふことを考へたいと思ふのであります(拍手)
然るに農地調整法中改正法律案に於きましては五町歩以下の土地の所有を認めて居ります、而もそれは地主としての土地の所有を認めて居るのであります、又それ以上の資本主義的な土地の經營者に、土地をより以上持つことをも認めて居るのであります、此の際一つ思ひ切つた英斷が揮はれなければ、必ず日本の民主主義は凡ゆる方向の力から押されまして、一應前進はするでありませうけれども、若し茲に地主の存在を、而も相當量の數を占めまする地主の存在を許しまするならば、必ずや將來再び反動「フアッショ」の巣窟が、其處から芽を出すと云ふことを考へなければならぬと思ふのであります(拍手)斯樣な意味に於きまして私は日本の封建制度を打倒して、完全なる日本民主主義の道を進める爲に、現在の如き農地調整法中改正法律案や、農業團體法中改正法律案のやうな程度のもので以て、果して可能であると農林大臣は御考へになるかどうか、是は極めて重大なる問題でございまするので、率直なる、出來まするならば大膽なる御答辯を要求致したいと思ふのであります、日本は今後獨立國家として立行くか、或は恐るべき結果になるか、洵に重大なる關頭に今日の場合立つて居ります、それは一に日本が國際環視裡に於て、日本の民主主義を完全に實現するや否やと云ふ此の一點に懸つて居ることを考へまする時に、お互ひは國難に起つの眞劍なる氣持を以ちまして、私も御尋ね致しまするが、農林大臣も眞劍に御答辯あらんことを特に要求致すのであります(拍手)
少し案の内容に付きまして御尋ねを致したいのでありまするが、此の法案提出の御説明の中に、團體の自治的活動を十分にする爲に、役員制度の改正をされると云ふ點であります、此の團體法の姉妹案でありまする所の農地調整法中に於きまして、不耕作農民、即ち地主と云ふものを農民として既に御認めになつて居るのであります、此の點が一つ、而して現在の農業會長の七割以上、約八割近くの者が地主であるか、若しくは地主的勢力に依つて占められて居り、極めて民主主義的な方向から縁の遠い勢力に依つて占められて居ると云ふ此の第二の事實、此の二つを併せて考へまするならば、さう云ふ前提の下に役員を町村長の推薦に依つて知事が任命をして見たり、或は知事の推薦に依つて農林大臣が任命をすると云ふ形態を、唯下から選擧に依つて選ぶと云ふやうなことを致しましても、其の選ばれるべき人が、先程申上げましたやうな封建的な勢力を村に於て持ち、部落に於て持つて居りまするならば、恐らくそこに現はれて參りまする人は、多少の變りはございましても、選擧と云ふ制度だけが變るのでありまして、内容は殆んど大部分變りのない顏觸れが現はれて來るのではないかと云ふことを憂へるものであります、斯樣な意味から致しまして、本當に此の團體法の役員の制度を改革致さうと致しまするならば、先づ働かざる農民、土地の所有に依つて農村生活をしようとする地主には、當然選擧の權利若くは被選擧權の權利を與へないと云ふことにしなければならないと思ふのであります(「ヒヤヒヤ」拍手)さう云ふ前提の上に立つか、若しくは土地を國家が管理すると云ふ前提に立つか、此の二つの前提の上に立つて、零細農と云ふものが漸次なくなつて、日本の農民は小農と中農、即ち一町以上の自己經營をやつて居る相當裕福なる農民が日本の農村の大部分を占めて居る、斯う云ふやうな安定せる農民だけになりまするならば、多少の地主の存在は問題はないのでありまするが、現在のやうな土地の配分の程度、現在のやうな過小零細農の實情を以て致しまするならば、役員制度の改正の程度を以て致してましては、農業會と云ふものの運營は、依然と致しまして地主的な方向及び封建的な方向へとのみ引張られて行くものであると云ふことを極めて憂ふるものであります、斯樣な意味に於きまして現在の役員制度を改正する前に、此の案全體に付て更に之と關聯せる農地調整法の案に付ても、御考へを戴かなければならないと思ふのでございます、之に對しましての農相の御意見を伺ひたいと思ふのであります
第三點でございますが、此の團體は二つの役割を持つて居るやうであります、一つは指導と統制に當る、もう一つは販賣、購買、加工利用と云つたやうな、元の産業組合的な仕事と、大體に於て此の二つの仕事を受持つて居るやうであります、農業會的仕事と産業組合的仕事の二つが今日まだ融合せずに殘つて居りますのに、此の二つの仕事をやるやうでございますが、曾ての産業組合的な仕事でありました購買、販賣、利用加工と云つたやうな仕事は、勿論其の構成「メンバー」でありまする農民の自主的な、民主的の動きに依りまして、之を協同組合の方向に持つて行くと云ふことは是は可能なのであります、我々は其のやうな方向を要求致したいと思ふのでございますが、指導統制の點に參りますると、是は一つの大きな問題があると思ふのであります、戰時中に於てあつた如くに、供出があのやうな方法で今後も執られて行く、此の供出や技術の方法を指導統制して行くと致しまするならば、農業會の今後の仕事たるや洵に大いなる仕事が殘ると思ひます、此の問題を考へまする時、農業會の指導統制の方向は、此の農業會自體の仕事としてやらすと云ふよりか、寧ろ將來公選に依つて出て參るでございませう町村長の下にある町村役場へ、所謂政府が直接其の指導の任に當つて居ります所の町村役場の方向に持つて行つて、指導統制の役割を與へて、寧ろ農業會は昔の産業組合が仕事をして來ましたやうに、農民の自主的な、民主的な協同組合の方向に持つて行くと云ふことに致します方が、寧ろ村の今後の運營の上に於きまして極めて有利になるのではないか、而も民主的な方向に向つて、其の道の方が宜いのではないかと私は考へるのであります、特に是等の點に付て指導統制が依然として農業會に殘されまするならば、考へなければならないことは、既に今日まで生産高の五割程度が供出でありまする場合には、まだ何とか出來たのでございますが、六割、七割が供出として持つて行かれまする今日に於きましては、中々農業會に對しまする農民の怨嗟の聲は高くなつて參つて居ります、更に其の上に極めて收入の多い作物の制限を命令して見たり、相當農民に向ひまして、戰時中は高壓的に臨んで參つたのが農業會の役割でございました、更にそれだけではない、農民から供出せしめました米麥の或るものを幾らか天引致しまして、他に廻したと云ふやうな話も到る處聞いて居ります、農村に配給されました必需物資を幾らか上前を刎ねて自分達が消耗したと云ふ話も聞くのであります、今や農業會に對しまして、多くの反感と云ふよりか、呪ひの聲さへ農民から出て居ります現状を見る時に、寧ろ此の指導統制の仕事は村役場の方に、而も公選に依る町村長下の町村役場の方に變へまして、それ以外のもつと民主的な、協同組合的な事業の出來まするものを、農業會に殘すと云ふやうにすることの方が、寧ろ今後の農業會の運營上正しいのではないか、斯樣に考へるのでございまするが、之に對しましての農相の御意見を伺ひたいと思ひます
第四點の供出の問題でありまするが、農業會の仕事として、供出は今後も今までの通りならば大きな仕事として殘りませうが、現在の供出は是は非常に眞劍に考へなければならない問題なのです、巷には餓ひょうが横はつて居ります、此の議事堂外に於ける國民の食を求める聲は實に深刻であります、悲痛であります、然るに「インフレーション」は益益昂進の歩調を高めて居る、其の場合に農産物の自由價格と公定價格との開きと云ふものが餘りにも大きい、一升の自由價格の米は一俵の公定價格の米價なのです、一升と一俵とが對立するやうな此の公定價格と自由價格の開きがあります場合に、農民にどんなに精神主義を以て供出を要求致しましても、それが生産高の四割、五割の中ならば宜しいが、六割、七割を占めて參りますならば、其の供出問題は極めて困難であります、而も一方に於て日本の食糧の絶對量が不足して居ると云ふ此の二つの事實――「インフレ」の昂進とそれに依る自由價格と公定價格の開きの擴大、食糧の絶對量の不足、斯う云ふ問題を併せ考へまするならば、供出は今後に於て非常に困難になつて參ると思ひます、之に對しましての外米の輸入に付て、政府當局は熱心に努力されて居るやうでございまするから、此の上とも御盡力を戴きたいと思ひますが、是等の問題を考へます時に、うも一つ供出を困難ならしめる事實がある、唯さへ以上のやうな理由で困難である上に持つて來まして、政府と農民との間に於ける供出關係は、是は一つの契約なのであります、何等の強制力を持つて居りませぬ、農民に對して幾らの米を供出せよと言はれまするけれども、それは一つの契約なのです、農民が政府に賣るか賣らないかと云ふだけの問題である、唯買上げて居るだけである、それを強制致す所の力を持つて居りませぬ、農業會自體も其の強制力を持つて居らない、強制力のない場合に於て生産高の六割、七割を無理に持つて行く、是が昔の物納小作料の高いものへ殆ど同じやうな状態になつて居りますが、茲に大きなる矛盾があるのであります、封建的な「イデオロギー」の儘の農民ならば是でも宜い、民主主義的な方向に總てが動く時に於て、農民がさう云ふやうなことを果してじつと辛抱するであらうかどうかと云ふ此の事實も、決して忘れてはならないと思ふのであります、斯樣な意味から供出をせしめる爲には、供出の土臺に於て合理的なる一つの基礎を與へなければならないと思ふ、合理的な基礎とは一體何か、土地の改革に依りまして、生産者が税金の如き氣持を以て供出が出來得るやうな状態にするか、それとも安定された健全農家の自主的な組合が農業經營を管理し、生産米の供出等を管理をして行くと云ふやうな、健全農家の組合管理に依つて今後仕事を運んで參りまするならば、是は又現在の農事實行組合のやうなものと違ひました一つの自主的なものとして動き出して來ると思ひますが、斯う云ふことを一つ私達は考へて行きたいと思ふのであります、さう云ふやうな自主的な健全農家の組合の經營に依つて、村の土地が巧く運營されて參りますならば、當然農業會の民主化されたものと似たものが出て來る、其の時にこそ初めて松村農林大臣の言はれまする同胞愛に依る供出、其の精神的なへ愬も亦響いて參るのでございまするが、現在のやうな立場に農民を置きましては、中々供出は困難であると云ふことを私は考へるものであります、斯樣な意味から供出をもつと十分にせしめまする爲には、今までの此處に出されました提案の内容では非常に困難である、斯う考へる私の意見に付きまして、若しそれでなし得ると致しますならば、單に同胞愛に愬へて供出をせしめると云ふよりか、もう少し進んで具體的な方針がおありになると思ひますが、それに付て御示し戴けたら戴きたいと思ひまするのと、若し私の今申しましたやうな方法が許されまするならば、さう云ふやうな方法に依つて、供出に合理的基礎を置くべきではないか、斯う考へるのでありますが、之に對しましての御意見を併せて伺ひたいと思ふのであります
次に農業會が將來土地を一括買上を致して參ることになりまするが、現在のやうな貧困零細農の多い場合に於きましては、中々此の組合の運營も困難だと思ひます、今後の農業會の運營を地主的にならないやうに、本當の耕作農民に依つて極めて有畜化され、機械化され電化された所の近代的な、高度化された一つの農業經營、是が本當の増産を約束する所の協同組合的な經營を基礎に致しまするならば、是こそ素晴らしい増産が豫想される行き方でございます、斯う云ふやうな方向に向けて今後の土地の一括買上が農業會に於て行はれて行くと云ふことを、私達は理想として考へて居るのでありまするが、今のやうな行き方では中々うまく行かないのではないか、現在の儘の農業會、而も地主的性格の強い農業會に於ては、是が困難なのではないかと云ふことを考へるのであります、尚ほそれに併せて考へまする問題は、政府が五箇年、百五十五萬町歩の開墾を計畫致して居ります、それに對しまして百萬戸の歸農をせしめようと致して居ります、日本の零細農の狹い耕地の上に、更に百五十五萬町歩の開墾に依つて百萬戸を歸農せしめると云ふことは、寧ろ日本の零細農を小農、中農へ發展せしめると云ふのではなくして、土地を一層細分化すると云ふことになるのではないか、政府は當面せる失業問題、復員問題等の爲に已むを得ない應急處置であると云ふならば、是は又別な問題でございまするが、日本の今日の土地問題、農業問題、食糧問題は左樣な應急的の問題ではなくして、もつと根本的な考へ方をしなければならないと思ふのであります、斯樣な意味から土地配分の問題が今後農業會に於て行はれる、農業會の行ひまする場合に、政府が之を指導して參りまする時に、今の政府の考へでは、開墾百五十五萬町歩に百萬戸を入れる、而も疎開者が隨分農村に入つて居る、日本の耕地はさう絶對的に擴大しない、農業人口は漸次殖えて來ると云ふならば、而も其處に依然として地主が殘されると云ふならば、日本は依然として零細農業經營が續けられることになると思ふのであります、決して土地の改革、農業の改革の問題になり得ないと云ふことは、此の開墾と歸農の問題、土地の配分の方法に依つて、それがどちらへでも持つて參られると云ふことを考へることが出來るのでございまして、特に土地の配分に付てやはり依然として零細農を承認するやうな御考へを持つて居るのか、それとも此の際大膽に小農中農へ日本の農業人口の配分を考へる、斯う云ふやうに御考へになるのか、是は現存せる失業問題と睨み合せて考へなければならない極めて重大なる問題でございませうが、農林當局と致しましては大膽なる方針を、先づ茲にしつかりと持つて居らなければならないと思ひますので、特に之に付きましての明快なる御答へを願ひたいと思ふのであります
終りに現在に於きまして都市の勞働者には勞働組合法が將に出來やうとして居ります、而も農村に於て地主の存在を許すと致しますならば、なぜそこに農民組合法と云ふものを御提出にならなかつたか、農業會が完全なる農民組合的な性格のものになれば宜しいが地主の存在を許して居りまする場合にはなり得ない、さう致しまするならば、何故農民組合と云ふものの存在を認めると同時に、それを組合法に於て保護しないのか、特に日本農業の民主化の問題は、農民組合法に依つて護られ、日本の農民は非常な素晴らしい勢ひで以て發展するものと考へるのであります、此の農民組合が出來、而も農民組合法に依つて護られて參りまするならば、現在の農業會を之に依つて十分に監視をし、而も此の中核となり、正しい農民的な方向に之を指導して行く力になり待ると、斯う思ふのであります(拍手)斯樣な意味合に於きまして、是非とも農民組合法の制定を私は急がなければならないと思ふのでございまするが、之に對しましての農林大臣の御意見を伺ひたいと思ふのであります
次に水産業團體の問題でございまするが、極めて具體的な一點だけを御伺ひを致したいと思ふ、政府は本年度の魚獲高に於て十二億貫の計畫を發表になりました、領域が極めて狹くなつた、資材が極めて不足である、漁船も不足となり、油も不足となり、「マニラ」麻も十分にない、漁網もない、「カッチ」もないと云ふ此の今日に於て、十二億貫と云ふのは極めて冒險的な數字でございまするが、之を御發表になつた時の政府の氣持である、食糧が非常に不足して居る今日、多くの數字を御示しになつたからと云つて國民は喜ばないのであります、現實に魚が我々の臺所に廻つて來て初めて本當の政治になるのであります、數字の羅列に依つて國民は何囘も騙され切つて居るのでございまして、決して喜ばないのであります、斯な意味に於きまして、政府は「ポツダム」宣言受諾以來、日本の領海が極めて狹くなつて居る、或は樺太の方面に於て、「カムチヤッカ」の方面に於きまして、沿海州に於て、朝鮮の近海に於きまして、日本の最も有望な漁場でございました地方が閉鎖されて居る、或は遠洋漁業も閉鎖されて居る、最近極く一部が許されたやうでございますが、又或る話に依りますると、地先十二哩以上への沖合漁業と云ふものも、現在は不十分だと云ふことを聞いて居りまするが、是等に對しまして聯合軍司令部に對して、政府當局は我々の漁場がもつと擴大し、それから得る漁獲高を増加さすと云つたことに付きまして、どの程度の御交渉なり努力を拂はれて居るのか、是は十二億貫の發表がありましたのに付きまして、それを裏付け致しまする爲に特に御示しを戴きたいと思ふのであります、更にそれと又併せ考へまする問題は、日本の魚撈に於きましての資材の不足、今も御話がございましたが、魚網の問題、「ロープ」の問題、油、「ゴム」合羽、「ゴム」手袋、「ゴム」靴等に付きましての「ゴム」、斯う云ふものの入手に付きまして、或は米棉を持つて來て魚網を造ることも宜いでせう、南から「ゴム」を入れることも宜いでせう、或は「マニラ」麻を持つて來ることも宜いでせう、或は「カッチ」を持つて來ることも出來るでせう、油の如きも其の通りである、是等に付てどの程度の御盡力が拂はれて居るか、單に資材がない、漁船が十分でないと云ふことでは、中々増産はあり得ないのでありまして、それに對する政府當局の御盡力、其の盡力の程度こそが、十二億貫の生鮮魚介類を我々國民の臺所に持つて來るかどうかと云ふことになつて現はれて來るのでございまして、それ等に付きましての具體的な事實なり、御考へを承ることが出來ますれば極めて幸ひでございます、以上を以て私の質問は終ります(拍手)
〔松村國務大臣登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=15
-
016・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 御答へを致します、何故農地調整法及び此の法案で地主を一應抑制しなかつたか、一口で言へばさう云ふやうな御尋ねでございます、之に付きましては私の此の方策を立てますに付きましては、地主でありますとか、小作であるとか、其の一方の側に立つて一方を見ると云ふやうな態度を執つてやつたのではございませぬ、小作農に燃える熱意は、どうかして自分で土地を持つてやりたい、斯う云ふ熱意が増産にもなり、農村の安定にもなりますので、農地調整法の改正案を出して土地問題を解決しよう、今之を解決しなくちやならぬと心得たのでございますが、其の一方の側に立つて考へたのではございませぬ、今後に於きましては、大體計畫通りに自作農が出來ますと、從來の地主と云ふものの觀念と、今後の地主と云ふものが農村に持つ位置とは非常に違ひます、殊に金納制ともなりますならば、是は若しも地主と云ふものに其のやうな非常に小作者と相容れぬものがあると――是まではありましても、今後あれだけの自作農が出來ますならば、是は事情は大いに變つて參るのでありまして、今後土地の兼併は許されないことでありますから、農村の模樣は變つて參ると思ふのであります、隨ひまして私は一つには農地調整法に於けるあの一つの土地制度の改革をなし、一面には農業會をして全く民主的のものたらしめたならば、農村の健全なる育成は之に依つてなし得るものと確信を致して居るものでございます
尚ほ供出に付きまして、農業組合に依つてやらせと云ふ御話でございます、之に對する御考へ方は私は一つの方法であると考へます、此の是非に付ては私は此處に申上げませぬ、併しながら多年農村には産業組合以來農業會がございまして、之にずつと系統的に結付いて居つて、それが官僚的であれば今日のやうに行きませなんだけれども、之を農民の手に返したならば、是が直ぐ今御話の通り、殊に善用さへすれば役立つ譯でございます、隨ひまして今日農業組合と云ふものを今新たに作りましても、それが農業會のやうな系統的な發達を自主的に致しますのには何年掛るか、農業會の如きは明治三十年頃からの發達に依る譯でありまして、今年の此の供出の間には本當に合ひませぬ、隨ひまして私は此の供出は農家に是れだけの改革をして、其の安心の上に、同胞愛に愬へて供出をして貰ひ、又其の將來の安心を得るならば、農民は此の同胞の飢ゑるを見捨てて置きはせぬだらうと考へて居るのでございまして、此の點に依つてどうか今年は滿足な――凶作の年でありますから昨年のやうな額には達しませぬけれども、豫定せられた供出を得たいと念願を致し、國民と共に之に努力を致したいと思ふのであります
それから農業經營の電化其の他の方法に依つて高度にやると云ふ御話に付きましては、私は全然同感でございまして、是れあるにあらざれば、到底澤山の人口を農村に吸收することは出來得ないと思ふのでございます、私は零細農を作ると云ふことは、是は非常に御話通りに社會的に見ましても、生産面から見ましても、宜しくないのでありまして、之を出來るだけ中農程度に維持致したいと思ひます、今度の此の農地の制度が改まつた後には、出來るだけ零細農を中農程度に引上げねばならぬと思ひますが、此の狹隘な土地に於きましては、今後中々さう云ふ譯には參らない、そこで此の高度の立體的農業と申しますか、農村の電化其の他の方法に依つてやつて行かざるを得ないと思ひます、開拓地に百萬戸の戸數を入れますことは、是は非常に困難なことであります、あれ位の面積で以て百萬の戸數を入れると云ふことは、それで獨立した農業經營と云ふことは、非常に困難でありますが、是は偏へにやはり御話の農村工業及び高度の電化其の他の施設と相俟つて、初めて是だけの人口が收容せらるる譯でございまして、斯う云ふ意味に於て御話のやうな經營方法を執らなくちやならないのであらうと思ひます
それから水産に關する御話でごさいます、之に付きましては十二億でしたか十三億でしたかと云ふ、此の豫定數量は果してやれるかやれぬか、斯う云ふ御話でございます、是は非常に困難だとは思ひますが、併しながら終戰當時より見ますと、漁業の状態が相當に變つて參つて居ります、例へば漁船も戰時中に多く失はれましたが、それが今日に於きましては、或は軍で使つて居りましたものが其の儘漁船になり、或は聯合國の好意に依りまして漁船の急速なる建造が許されまして、漁船の面から見た状態は日に改良せられて來て居ると云ふ譯でございます、又漁網の問題も、是れ亦聯合國側から還付せられましたあの資料の中にも或る程度のものがあり、又民間にも資料がありますので、漁網の製作は、是は十分とは言へませぬけれども、或る程度のものが殖えて參つて居ります、それから油に付きましても、是も聯合國側の心配もありまして、生産に必要な、ずつと續いての分量と言へば今後のことでございますが、今日相當漁獲に出掛けるだけのものに對しては、十分ではありませぬが漸次用意が出來て居る、斯う云ふ状態でありまして、御尋ねの漁場の狹隘の問題に付きましても、色々要請も致し、現に既に新聞で御承知の通り東海方面に――南方と云ふ所までは行きませぬが、漁區を限つての捕鯨漁場も認められて來て居ると云ふやうな状態でございまして、本當に業者の努力、政府の施設を得ますならば、私は來年度に於て十二、三億の漁獲を得て、そして今日主要食糧は少いのですけれども、魚類に依つて其の主要食糧の補ひをすると云ふことが、最もやり得る方法でないかと存じて、十二億萬貫と云ふ大きな數字を目安にして努力を致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=16
-
017・前川正一
○前川正一君 簡單ですから自席から御許しを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=17
-
018・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 許可致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=18
-
019・前川正一
○前川正一君 私の御尋ねに對しまして御答辯のなかつた點があるのであります、一つは農業會の指導統制の方面の仕事は、是は現在の農業會に任すよりか、寧ろ新しく民主主義化されるべき町村の方面に、而もそれは行政的に指導し、上から連絡を持つて居りまする機關に指導統制はやらすべきではないか、言換へるならば舊農會的な仕事は町村役場にやらす方が妥當でないかと云ふ一點と、現在のやうな農業團體の改正に於きましては、是非とも農民の自主的な組合が必要である、かるが故に我々は此の法案と竝行して農民組合法の制定をやらなければ、農村は妥當なる、竝行せる、丈夫なる動きを以て今の時代に進んで行くことが出來ないと思ふが、農民組合法の制定に對する意思ありや否や、此の二點に付きましての御答辯がなかつたと思ふのであります、改めて要求致します
〔國務大臣松村謙三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=19
-
020・松村謙三
○國務大臣(松村謙三君) 洩れました點に付て御答へを致します、第一の指導方面は之を町村に委ねたらどうか、斯う云ふ御話でございます、是はやはり經濟面を受持つ産業組合と、それと結付いて渾然一つとなつて行く方が、指導の面も實際的であり、效果が擧ると思ふのでございまして、之を自治體に任せて行くと云ふことは、是は指導の分裂の虞もありますので、やはり經濟面と指導面とを、兩方一つにした方が宜しいと考へて居るのでございます
それから農業會と竝行して農民組合を作ると云ふ考へ方でございますが、農民組合と云ふものが地主を對照としたる組合でありまするならば、是は以前から言はるることでありまして、別でございますけれども、私は地主を對象とし、又一方を對象としたる姿を農村に殘すと云ふことは甚だ面白からぬことと思ひまして、其の意味に於きましては願はくは――殆ど此の農地法に依りますと大部分の自作農が出來て、是ならば地主でもなし、小作でもないのでございまして、今後の地主と云ふものは大體自分で田を作つて居たが、それが家族が少くなつたとか何とかで已むを得ず小作に付すると云ふ場合に、小作と云ふものが殘ると云ふのが最も理想的の農村形態でないかと考へて居りますが、今の所そこまでには到達しませぬけれども、是は此の農地調整法が通り、農村が改まつて參つて、漸次其の過程を經、順を逐うて參ります時に、其のやうな理想的なものが出來るであらうと自分は考へて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=20
-
021・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 是にて質疑は終了致しました、各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=21
-
022・長野高一
○長野高一君 兩案を一括して議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=22
-
023・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=23
-
024・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました――日程第一、戰時森林資源造成法中改正法律案の第一讀會を開きます――紅露政務次官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=24
-
025・会議録情報3
――――◇―――――
第一 戰時森林資源造成法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
戰時森林資源造成法中改正法律案
戰時森林資源造成法中左の通改正す
題名を左の如く改む
森林資源造成法
第一條中「大東亞戰爭に際し森林資源の戰力化の徹底及之が造成の確保を期する爲」を「森林資源造成の確保を期する爲」に改む
第七條中「證券の交付ありたる後」を「前項の場合を除くの外證券の交付ありたる後」に改め同條に第一項として左の一項を加ふ
第五條第一項の規定に依る命令ありたる後當該森林に付命令に係る造林行爲の完了前新に森林所有者と爲りたる者は證券の交付を受けたる森林所有者の權利義務を承繼するものとす
附 則
本法は公布の日より之を施行す
〔政府委員紅露昭君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=25
-
026・紅露昭
○政府委員(紅露昭君) 只今議題となりました戰時森林資源造成法中改正法律案の提案理由を御説明申上げます、本法は第八十六帝國議會に於て成立したる衆議院議員提出の法律でありまして、施行直前終戰の事態に立至つたものであります、本法は戰爭中森林の伐採を強行致して參りましたが、伐採跡地の造林は是非とも之を實行して參らなければなりませぬが、勞務其の他の事情に依りまして、速急には造林を實行することが出來ませぬ關係等を考慮致しまして、立木の處分をなしたる森林所有者をして、其の收入の中から造林費用の半額を農林中央金庫に提供して證券の交付を受けしめ、勞務種苗等の都合の付き次第造林を實行させまして、政府が費用の半額を補給し、造林を奬勵して參ると云ふ制度でありまして、證券交付總額は額面三億圓、之に依る造林豫定面積は九十餘萬町歩と云ふことに相成つて居るのであります
斯樣に本法は戰時立法ではありまするが、終戰後に於きましても、御承知の通り戰災復興等、木材の需要は益益増加しつつありまするが、樺太の大資源を失ひ、且つは外國より木材及び「パルプ」の輸入を仰ぐことも容易ならざる今日、森林の伐採は戰時中と同樣に、之を強行せざるを得ない状態でありまする所、殊に近年水害が愈愈増加し、本年は又未曾有の大水害を見たやうな事情にありまするのに鑑みまする時、終戰後に於きましても本法の必要は愈愈増加致して居る次第であります、仍りまして茲に本法に若干の改正を致しまして、終戰後の林業界の非常事態に對處し、治山治水に遺憾なきを期したいと存じます、是れ本法を提出する所以であります、何卒御審議の上御協贊あらんことを冀ふ次第でございます
〔議長退席、副議長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=26
-
027・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 質疑の通告があります、之を許します――馬岡次郎君
〔馬岡次郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=27
-
028・馬岡次郎
○馬岡次郎君 只今上程されて居りまする戰時森林資源造成法中改正案に對しまして、又之に關聯して、二、三の質疑を致したいと存じます、就ては御答辯を得まする便宜上、質疑の要點を列擧致します、第一、主管事務の一元化及び國策の發表に關し首相の御方針を承りたい、第二、戰時森林資源造成法の活用及び勞務の配分に付て、農林大臣及び厚生大臣の御方針を承りたい、第三、薪炭行政に關し農林大臣の御方針を承りたい、第四、木材統制の存廢に付て農林大臣の御方針を承りたい、以上四項目に付て聊か卑見を加へて御尋ね申したいと存じます
其の一、主管事務の一元化及び國策の發表に付て二つの點を御伺ひ致します、今日まで度々問題とされて居る林業行政と、治山、治水問題の主管省の一元化の問題であります、是は今更申上げるまでもなく、北海道に於ける林業行政の全般は北海道長官に、又本土に於ける治山治水は内務省に、他の林業行政は農林省にあると云ふが如き實情で、只今上程されて居る此の森林資源造成の如き問題は、其の事業施行の際、當局の見解、熱意、手續等に關し、其の意見を異にし、實に言語に絶する支障が突發致し勝ちで、施業者の不便、迷惑も甚だしいものがあるのであります、爲に兎角森林資源の涵養、國土保安の施設が後れ勝ちで、今年の如く無理に増伐せなければならなかつた、又茲數年間は此の増伐が繼續するであらうことを豫期せらるる林材の將來を考へまする時、實に寒心に堪へざるものがあるのであります、此の儘で行けば必ずや一定時を經過した時、蓄積材の枯渇を來し、河川は氾濫し、到底收拾すべからざる事態が發生するやを憂ふるものであります、殊に我が國の如き、周期的大出水を毎年秋季に受くる國土に於きまして、此の治山治水を輕視する結果、本年西日本に於て被りたる被害は實に甚大であります、森林を濫伐の結果、之に伴はざる植林、砂防施設の及ぼす所なるは今更申すまでもありませぬ、此の被害の金額たるや實に厖大なる驚くに絶えたるものであります、宜しく此の際此の主管事務を統一一元化して、積極的に此の種事業を計畫せらるる御考へなきや如何、之を御尋ねするのであります
次に最近までは閣議決定の國策に關しましては、其の都度情報局又は主管省に於て發表せられて居つたやうに思ひますが、目下は左樣でないやうに思はれます、情報局や主管省で發表のないものでも、他の方面からどしどしと發表されて居る爲め、國民は其の掛聲に期待し、喜んで居ると、案外其の實施に手間取つたり、甚だしきは其の内容が似て非なる場合等があつて、喜ぶどころか却て迷惑をすら感ずる場合があるのであります、調査研究も結構だが、斯くては折角の政府の施策も實施に際し、國民は先刻拜承して居りますが、又變つたのか、是では政府の言ふが如き效果ありや、或は其の内に又復内容が變るのではないかと、何れの施策に對しても非常に期待薄の感じが強く、不信の觀念が相當に浸透されて居る實情であります、甚だしきは又復行詰まれば變更するか、自然價格の改訂が行はれるだらうと、自然か故意か、生産供出を遲らせて、値上を待つ者すら續出して居ることを如何に御覽になつて居るか、今囘の敗戰の原因も、其の一つは軍需生産方面に於ける月末生産が用兵作戰を誤らしめ、汽車、電車の混雜を敢てしたことを深く御留意願ひたいのであります、宜しく國策の發表は一元化し、其の發表と同時に施策を實施し、徒らに國民の不安及び爲にする策謀を根絶して戴きたいと思ひます、最近の事例を申し上げますならば、十一月二十五日から木材統制の枠を解くから、木材は直ちに出廻り、今に戰災復舊が出來るかのやうに、小林國務相の車中談が、十一月の二十一、二日頃新聞紙上に發表されました爲に、住むに家なく寒さに凍える戰災者の喜びは言ふも更なりであります、一面木材生産に從事して居る者が、二十五日から勝手に木材の生産及び製材業が出來、自由放奔に賣買が出來るかの如くに考へ、伐倒、搬出、製材と寸刻を爭ふ時に、勝手に仕事を捨てて將來の希望に浮かされ、其の眞疑を質し、事業計畫を立てんとして飛廻り、是が爲め一時木材生産が休止状態となつたことを當局は御存じないでせうか、木材統制の枠は果して取放しであるか、農林當局の意見と小林國務相の車中談とに若干の食違ひがあり、是が爲め當業者は其の何れが是か判斷に苦しんだことは見逃せない實情であります、宜しく是等は決走した責任ある所管官廳よりの發表までは、政府筋からの發表がないやうに願ひたい、此の點首相は如何に御考へになつて居るか、御尋ね致したいのであります
第二、戰時森林資源造成法案の活用に付て御伺ひ致したい、此の法案の成立して以來、最早や一作業年度も殆ど終了せんと致して居りまする時、本法案は發布されながら、其の運用上施行規則の發表を見なかつたのは何等價値がないではありませぬか、畏多くも御裁可を仰いで發布致しながら、施行規則の發布を見ざるは何故でありますか、政府の怠慢か、將た熱意が缺けて居るあか、此の點承りたいのであります、又此の法律を正面より考察致しますれば、實に旱天に雲霓を望むとでも言ふか、業者は渇仰措く能はざる所があるも、是が實施の上から一歩深く考察致しまするならば、遺憾ながら畫餠に屬し、是が活用力に乏しく、心動くも手足の動かざるを如何にせんやであります、唯呆然、勞力資材難の爲め、徒らに看過さるる状態ではありませぬか、最近失業者巷に滿ち、餓死する者すらありとの聲が喧しきも、一歩農山村に入りますならば、未だ勞力不足に泣き、偶偶復員者ありとするも、殆ど其の大部分は勞働に從事することを厭ひ、其の上農山村には戰爭犠牲者が續出して、戰前の勞力を囘復するには、今後相當年次を要すること歴然たるものがあるのであります、爲に主要食糧の増産にすら事缺き、木材の生産、薪炭の生産等其の悉くが皆然りであります、就中植林作業に至りましては、著手すら困難でありまして、伐採跡地の荒廢に任するもの三百數十萬町歩に達し、偶偶辛うじて植栽なし得たりとするも、其の後の手入れに至りましては少しも行届いて居りませぬ、徒らに藤葛の繁茂するに任せつつある幼齡林の年々増加する實状ではありませぬか、是は何に起因するのでありませうか、宜しく國土保安、治山治水、林材蓄積、資源造成の上から、大なる努力と熱意を以て本法の活用を期せねばなりませぬ、政府は一町歩當り數百圓位の金で、能く植林がなし得ると御考へになつて居りますか、闇の米五、六升にも足りない金額で、苗木代、運搬費、植栽人夫賃の公定額の支拂ひすらなし得ると考へて居られませうか、況して事實は公定價に數倍する實費を要するに於て、なしたくもなし得ざる状態を能く考察されたいのであります、元來我が國の獎勵國策は、形の上では實に間然する所なく羅列されて居りますが、其の效果至つて少く、全く形式のみに囚はれて、折角の國帑支出も殆ど無爲に消費されて居る實情ではありませぬか、いま少しく思ひ切つて實際施行し得らるる、最も速效のあるやう是正さるべきが當然だと思ひます、本法案の如きに植栽實費の半額を助成せらるるやう改正せざれば、折角稀に見る必緊の法案施策も、霞を隔て、月光を望むが如き憾みなき能はず、宜しく實行活用性に富むやう改正せらるる御意志があるか否かを伺ひたいのであります、或は當局は實際支出の認定は、事實上不可能なりと言はるるかも分りませぬ、此の點は農林當局に於て年々施行せられつつある官行作業に依つて、自ら其の實費算定の基礎も出來て居る筈であります、之を利用さるれば最も簡單で、其の上信用し得らるる經費が算出せらるるではありませぬか、又今日官行作業は一町歩何ぼで完成されて居るか、豫算はなく、作業は闇賃金でなくば人夫を得られない爲に、影人夫を筆の先で製造されたり、苗木を捨てたり、面積を勝手に縮小されて居つても、官行作業は豫算の金額では完成されて居るとは思へない、寸時も早く是等の缺點を是正し、眞に效果のある施策として本法の活用を御願ひ致す者であります、其の點の御所見を承りたい、幸に施行規則が未發布の折柄、十分是等の點を織込まるるやう切望する次第であります、此の點を能く御意見を承りたいと思ひます
次に農山漁村方面の勞力不足に對し、巷に滿つる失業者を割當活用さるる御意思がなきや、現下の失業に關し、其の原因に付ては、先日來同僚各位から論議された所でありますが、普通の失業と異り、闇で闇を食ひ合つて居る失業で、古來から働かなければ食へない、食はんが爲に働くと言はれて居りましたことが、今日では眞面目に働いて居つては食へないから、働かないで闇をやつて食つて行くか、さもなければ人のものを狙ふかと云ふ有樣で、復員者の多くは眞面目な仕事に從事して居らない事實を如何に御考へになつて居らるるか、各人自ら企業をしようにも資材、工場、店舗がない、一定額の收入では事實上生活なし能はざる實情を如何に見て居らるるか、殊に羮に懲りて膾を吹くとでも申しませうか、失敗せる統制を改良せんとせず、一足飛びに自由放任せる結果、經濟の自然現象と致しまして、生活必需物資に限つて、日に増し暴騰する折柄、一定額收入者の生計は實に慘めであることを如何に御覽になつて居りますか、斯くて一定の勞働に從事する者が増加さるると御考へになつて居らるるや否や、此の儘今少し放任せば實に由々しき社會問題が惹起するのみならず、何事が勃發するやも測り知れない不安に、國民が脅えて居ることを能く能く御考察され、此の失業者及び闇「ブローカー」を勞力不足方面に移入し、同時に一定額收入者の收入と、實際生活費との公平を期せらるることが急務中の急務で、如何に機構を變へても自由勞働者の闇賃金を根絶し、山村勞力の配分を御考へにならない限り、木材や薪炭は出廻りませぬことを申上げて置きます、此の點如何に御考へになつて居られまするか、厚生大臣の御見解を承りたいのであります
其の三、薪炭行政に關し御伺ひ致したい、寒さは日に加はります、暖を採るに火の氣のない戰災者は如何にして冬越しが出來ませうか、全國を通じて百有餘の戰災都市には、住むに家なく、未だ壕生活をなしつつある者すら相當にあります、是等の人々に對し適量の薪炭を配給し得らるる御手配が出來て居るのでせうか、瓦斯なく、電熱なく、戸ぼそを漏るる夜風身に泌み、寒さに凍えんとする罹災民を眼前にして、此の手當が完全に行はれたと言ひ得らるるや、薪炭の生産に關しては、餘りにも政府當局は無關心、無施策ではありませぬか、罹災以來相當の日數を經過した今日に於て何等かの手を打たれましたか、唯僅かに若干の値上と、生産者に對し少量の物資の特配のみではありませぬか、其の物資も掛聲のみのものすらあるであはありませぬか、其の他何等の手も打たれないではありませぬか、最近又もや規格の改正を見ましたが、相變らず半身不隨の改正ではありませぬか、其の上當局の考へ方の不思議なことは、支那事變以來物資増産に餘儀なくされ、種々の矛盾を押して色々と施策されましたが、遂に一時的生産増加を圖る上から、已むなく質より量と云ふことで、遮二無二突進された結果と致しまして、最低の規格で最高價に賣ることとなり、統制の缺陷を如實に暴露し、粗惡品の出荷となつたではありませぬか、それすら出澁れば時機も考へずに値上した結果、供出せないで遲らせた不心得者が惠まれ、眞面目な生産者が惠まれないと云ふ實情ではありませぬか、斯かる實際上の種々の點が綜合されて、是が敗戰の一原因ともなつたのであると信じます、其の中にも木炭に限つては自ら好んで此の矛盾を敢てし、檢査規則の簡易化、品種銘柄、等級制の徹廢等、凡ゆる改惡を行つて、一本値とされた如き、他の役所で素人が定めたのならばいざ知らず、專門の農林省薪炭課の人々は、何を考へて居るか疑はざるを得ないのであります、最近少々舊に復せられましたが、是とて何の改善にもなつて居らないが、實に不思議と言はずして何でありませう、他の物資は姑く措きます、薪炭に限つては、陳列して見て居るものでも、食べるものでもありませぬ、之を熱化する以外に用途の無いことは申すまでもなりませぬ、此の熱量を必要とする物に對し、品種銘柄、等級制を廢して、樫炭も、櫟炭も、栗や杉、檜、松等の粗惡炭も同樣の一本値としたことで、増産が出來ると思つて居るのでありませうか、我々が今日親しんで居る木炭は、木炭に似て非なる木頭炭にも等しい燻るか又は軟質の火持の惡いものばかりではありませぬか、是では如何に増産されても實用的には惠まれないことは明瞭です、完全に燒成されました樫炭一俵は、雜麻數俵に匹敵さるることを御承知ないでせうか、薪炭に限つては如何に辯解されても「カロリー」が必要で、「カロリー」の低いものが如何程増産されても、量が數倍となつても、質が惡ければ其の實用上の效果は増産にはならぬではありませぬか、從前木炭の改良を喧しく言はれました當時は、燒成度の如何は其の「カロリー」に及ぼすことを、隨分細かい成績表で調査指導された當局の人々が、平氣で手の裏を返すが如く、質より量だと呼び掛けられても、製炭夫は動くものではありませぬ、今一歩讓りまして、此の粗惡炭が果して増産されたでありまもうか、事實は豫期に反して年々減産に次ぐに減産なる上、自動車用炭は別だとか、いや已むを得ぬから家庭用炭の屑を自動車用炭に向けるのだとか、それも駄目だから農林省の都合の好いやうに、其の都度區別して拂下げるのだと、まるで兒戲に等しい、猫の眼程手段を變へ、全くの思付きのみで、是で薪炭對策が立つて居るのでせうか、今少しく責任を持つて、智慧の小出しをしないで、信念のある對策をなぜ御立てにならないか、木炭價格は餘りにも色々であつて困ると云へば、直ちに一本値に改惡し、又それではいかぬと言へば三等級に復して恬然として居るが如き、餘りにも素人工作ではありませぬか、薪炭課には木炭の實情を知る人が居られないのでまうか、薪炭の益益減産される根本が何れにあるかを御存じなくて、唯掛聲や、若干の値上や、機構を少しいぢくつた位で増産を圖ることは、木に縁つて魚を求むる以上に至難なことを御承知ないからでせう、此の惡條件のみの集積されたにも拘はらず、支那事變以來一時目立つて減産されず、最近に至つて急激に減産されました主なる原因は、若い働き盛りの製炭者が相當應召、應徴されても、製炭は幸にして、老人でも相當燒成されると云ふ點と、兼業製炭者が多數であつた爲であります、殊に是等の老人は窯詰め、爐焚等に對して、耐火力が却て老人の方が強いことと、窯揚作業は女子でも相當出來たことに依り、漸く製炭量が持續されたのであります、又是等の人々は製炭に對して一種の矜恃を持ち、質に於ても急激に時流に染まず、收入を度外視して自己の技術、信念の上から製炭されて居つたのであります、然るに十年に近き事變戰爭中、之に代るべき技術者の養成を怠りし爲め、若い人々が製炭に從事することが出來なくなり、年一年と此の國家的至寶が老衰せる爲と、作業林域が益益奧地へ奧地へと移動さるる爲め、之に加へて食糧難から製炭に專念することが不可能になつた爲め、惡條件に拍車を掛けて、減産に次ぐ減産を來した原因を見逃すことは出來ないのであります、普通なれば十一月下旬から十二月に掛けて山入を致します爲め、年末には相當出炭されたものが、本年は恐らく關東地帶以西では、二月に入らなければ本格的な出炭がない實情を如何に御覽になりますか、是れ製炭者が食糧難の爲め皆兼業農家となり、少くとも幾らかの食糧を自己の手に依つて作らなければ不安で、製炭に從事することが出來ない爲め、此の現象を來して居ることを御存じないのではないでせうか、是では此の大寒を如何にして越さしめるかを伺はざるを得ないのであります、現在の手持木炭を全部放出しても、罹災者と國民へ相當量の木炭を配給されることは出來ないと考へられます、況して最近石炭饑饉の爲に、一時戰前に復された鐵道も五割減を決行されると聞きます、是が爲に又輸送に一大隘路を生じ、自動車輸送がより以上に問題化することと思はれますが、之に對して薪炭に依る固形燃料の確保が出來て居るでせうか、平素ですら事缺く實情の時、是が對策に關しては今後調査研究中では間に合はない、代用燃料に對して落着いて御研究になつて居るや否や、松根油採取より生ずる松根炭を、直ちに代用燃料に使用出來ず、又家庭用炭には有害で困つても、之を配合することに於て利用價値が立派にあることすら、民間業者に先行された樣な試驗機關で、此の輸送隘路より來る小運送難を如何に打開さるる御計畫か、原子爆彈に竹槍で向ふ式の兵法で、手車輸送で一時のお茶を濁さるる御積りでせうが、困るのは國民で、此の際此の對策に付き確然たる方針のあることと思はれますから、明瞭に御發表を願ひたいのであります
次に木材統制の存廢に關して御伺ひ致します、支那事變以來種々の統制が行はれたが、中にも木材統制の如き行き過ぎたことだ、惡政だと世上各方面から惡評を受けた統制は、蓋し他に其の例を見ないであらうと思はれます、然るに必需物資の統制は皆豫期の半ば以上に達したものが少かつたにも拘らず、木材だけは國家所要の、軍需には殆ど一〇〇%、其の他は八五%以上を生産された事實は見逃すことが出來ない事實であります、是は行き過ぎたものでもなく、統制機構が一貫して居つて、業者自體が之に携はり、勝たんが爲と死力を盡して惡條件を克服した爲だと言つても、敢て過言でないと思ひます、然るに今年に入つて急激なる生産の減少を來しましたことは、其の原因は種々ありませうが、就中最大の原因は、官需材及び移出材の日本社經由に改正されたことと、山村勞力の極度の減少、食糧不安にありと信ずる者であります、勢力の極度の減少は護國隊の充員に依り、働き得る者は根こそぎ動員したのに起因せることと、食糧不安は同時に食糧不足となり、是が充足に奔走せること、又一面食糧不足に依り、從事者が從前の如く活動なし能はざる實情に起因するものであつて、機構や形式上からの出材難でないことを能く御考へにならないと、如何程機構を變へても、却て此の切換への爲め生産の遲延を來すのみであつて、十一月二十六日以來、地木社の手持品の引渡しだけに掛り切りで、生産集荷が杜絶して居ることを御考へを願ひたいのであります、戰災復舊に急を要すると云ふ點から、機構を變へて最早旬日を空費したではありませぬか、是等の點から見て、今後豫期さるる諸點に付て御伺ひ致したいのであります
第一に、木材統制法は殘して置いて、木材集荷配給規則の第三條を徹廢された爲め、地木社の機能は全く消失したるにも拘りませず、是が解散を認めないとすると、折角赤字を出さないで來た會社も、今後の開店休業の結果遂に赤字を出すことになるが、此の際早く解散させて眞の自治統制に移行せしめられては如何、此の點を伺ひたいのであります
第二に、木材生産業、製材業の自由企業は結構でありますが、一面公定價を殘しての自由企業は結局山元の買競ひとなります、是が爲に闇をやるか、然らざれば買入困難の爲に、機能停止の状態になることは火を睹るよりも明瞭であります、是では現在木材集荷配給規則第三條があつてすら、横流れ防止に苦しんだ實情でありますにも拘らず、是がなくなり、之を地方長官の自由裁量に委せては、より以上の闇、横流れを、何に依つて防止するか、現在の横流れや闇取引が山元生産地で、最寄の民需者が勝手に、手車一輛分位の取引が比較的目立たず、手頃で、如何程高くても喜んで買取る爲に、是が一番樂に取引され、集散地に來るまでになくなつてしまふ實情を御承知なりや否や、又同規則第三條の撤廢後、地方長官の方策に依る何等かの形式を以てすることは、現に杉皮の制度と同じで、杉皮取引が公定取引や、割當出荷は皆無にも等しいことを御承知になつて居られますか、此の缺點を御承知で又ぞろ繰返へさるることは、是は今後の出荷に非常に心配せられるのであります、此の點は山元には伐倒されて最早腐敗に近くなつて居つても出て來ない理由を能く御承知になつて、其の上で御考へにならないと大いなる間違ひが起ると存じます、又官需材、縣外移出材の日本社の一手取扱は、却て仕事を遲延せしめ、精算上種々の誤謬を生じ、爲に其の取引の積極性を阻止したる具體的事實を御承知の上で斯く改められたのであるか、此の邊能く御取調べを願ひたいと思ひます、斯くせざれば豫期に反した結果になりまして、思はざる減少を來すことを心配する者であります、此の點如何であるか御尋ね致したい
其の次に地木社が持つ共助金支出の爲めの借入金に對しては、今後地木社の機能廢止に依り豫期の收入に大異變を生じまして、是が決濟の道が杜絶することになるが、此の補填の途を如何に御考へになつて居るか承つて置きたい
最後に本月四日附で木材規格の改正と値上げが行はれましたが、如何に規格の改正をされても、建築規格を御定めにならないでは、此の枯渇に近い森林資源に對し、無駄が非常に多いと思ふのでありますが、何故建築規格の制定を御急ぎにならないのか、元來日本人位趣味の多い國民性はありませぬ、他國になく設計者毎に方式や好みを變へ、戰災應急の假建築すら、各都道府縣趣きを異にして居るではなりませぬか、是では罹災家屋の復舊にも、假建築にも、生産者方面で豫め備蓄する製材が不可能で、注文を受けて製材すると云ふことでは不便此の上もなく、又遲れて急の間に合はないことになる、此の點無駄を省く上から、急速出荷を圖る上から、至急制定する御考へなきや、此の點を承りたいのであります、以上を以ちまして私の御尋ねと致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=28
-
029・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 内閣總理大臣は豫算委員會より要求がありまして、其の方に出席されて居りますから、馬岡君に對する總理大臣の答辯は之を留保致して置きます――紅露農林政務次官
〔政府委員紅露昭君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=29
-
030・紅露昭
○政府委員(紅露昭君) 各方面に亙つて御質疑がありましたが、極めて簡單に要領だけを御答へ致したいと思ひます、先づ第一に、本法案が前議會に於て通過後に活用されなかつたのはどう云ふ理由であるかと云ふ御尋ねでありまするが、馬岡君御承知の如く、前議會に衆議院議員提出法案として議會を通過致しましたのは四月でございます、其の後施行規則、施行細則の制定、其の他の手續中に、御承知の如く帝都が大空襲に遭ひまして、爲に是等の規定の制定が遲れて居りまして色々準備中に終戰條約が締結されましたやうな譯で、今日に至つた次第であるのでございます
更に第二點として造林費の三百五十圓は安くないかと云ふやうな御質疑であつたと思ふのであります、是は詳細は委員會に讓りまするが、政府と致しましては、御承知の如く土地に依り、或は又業種に依りまして、種々の方面から之を檢討致して決定致しましたので、此の金額に依りまして、農林省と致しましては、相當の成績を擧げ得るものと、所謂實施上支障なきものと斯樣に相考へて居るのでございます
次に失業者が現今街に溢れて居る、此の失業者を造林方面に廻してはどうかと云ふやうな御尋ねであつたと思ふのでありますが、洵に御尤もの御質問で、政府と致しましても此の方面に成べく勞力を廻はしたいと思ふのでありますが、御承知の如く作業場が山奧であり、奧地であると云ふ關係上、中々此の都市から造林方面に勞力を廻すと云ふことは困難な事情がございまするので、成べく其の地方の在住者に重點を置いて行きたい、斯樣に考へて居ります
更に薪炭行政に付てと云ふ御質問中、戰災者に薪炭の配給が圓滑に行つて居ないではないか、政府は之に對して何等かの對策を持つて居るのかと云ふやうな御質疑でありましたが、是は洵に遺憾ながら輸送の關係、又生産の關係上、昨年度に比しまして本年は僅かに五、六割――無論薪炭に換算してでありますが、其の程度しか配給が出來て居りませぬ、具體的に申しまするならば、今年一戸僅かに二俵しか配給が出來て居りませぬ、寒さに向ひましたので、今年中に各戸に一俵づつ配給を致したいと思ひまして、折角今努力致して居る次第でございます、而も輸送の窮屈なことは馬岡君御承知の通りでありますが、關係省とも協議致しまして、戰災者に優先的に配給をしよう、斯樣に取計つて居ります
更に木炭の規格を定めるに付て質の規格を置かなかつたことはいけないのではないか、斯う云ふやうな御質疑でありますが、是も亦洵に御尤もな御質疑でありまして、政府と致しましては、御承知の通り戰時中非常に勞力の不足に依りまして、已むなくああ云ふやうな規格を定めたのでありまするが、最近質を加味しまして規格を定めると云ふことに致したいと思つて居ります、最近又種類に依りまして、樫或は椎、松其の他總て之をやることに致して居りまするから、此の點は御質疑の趣旨に副ひ得る、斯樣に考へて居ります
それから石炭が非常に窮屈になつて來たから、之に對する代替燃料を考へて居るか、斯う云ふやうな御質疑でありましたが、是は御承知の如く木炭の生産それ自體が、既に今申上げましたやうな窮屈な状態でございまするので、石炭の飢饉に對して木炭を以て之に代へると云ふやうな考へは今持つて居りませぬ、併し食糧の輸送其の他、今後非常事態に對處致しまして相當の考慮を致したい、斯樣に考へて居ります
最後に御尋ねの木材統制に關する問題でございまするが、全く御尋ねの如く、地木社或は日本社、其の他地方に依りましては足をもがれたやうな状態になつて居りまして、非常に業者が困つて居られると云ふことは農林省としても認めて居ります、そこで是は御承知の如く臨時應急の處置でごさいますので、縣内の處理に付きましては、地方長官と協議致しまして適當に處理を致したいと思つて居ります、又縣外移出に付きましても考慮致して居ります、隨て今御質疑の如く、直ぐ之を解散せしめてはどうかと云ふ御話でありましたが、是は各方面の意見も聽き、又長官とも協議致しまして適當に處理致したい、斯樣に考へて居ります、更に將來の木材統制に付てどう云ふ方針で進むのかと云ふ御尋ねでございましたが、是亦今申上げましたやうに、今囘の措置は臨時應急の措置でございまするので、是の結果を見、又各方面の御意見も伺ひました上で、適時適當な處理を致して參りたい、斯樣に考へて居ります
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=30
-
031・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 馬岡君から勞務の問題に付て御質問がありましたが、只今農林政務次官より答辯のあつた通りであります、特に之に附加へる程のものはございませぬ、左樣御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=31
-
032・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 是にて質疑は終了致しました、本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=32
-
033・長野高一
○長野高一君 本案は政府提出農業團體法中改正法律案外一件委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=33
-
034・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=34
-
035・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました――日程第二、入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案の第一讀會を開きます――芦田厚生大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=35
-
036・会議録情報4
――――◇―――――
第二 入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案
入營者職業保障法及國民勞務手帳法は之を廢止す
附 則
本法は公布の日より之を施行す
本法施行前に爲したる行爲に對する罰則の適用に付ては國民勞務手帳法は本法施行後と雖も仍其の效力を有す
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=36
-
037・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今上程になりました入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案に付て、提案の理由を説明致します
入營者職業保障法は入營者又は應召者が、入營又は應召に因り蒙ることあるべき不利なる取扱を防ぎ、退營又は召集解除に際し、其の原職復歸を保障する目的を以て、昭和六年制定公布を見たのでありますが、兵役法の廢止に伴ひまして其の必要がなくなり、且つ入營、應召者に付てのみ職業の保障をなすことは、只今諸般の情勢に鑑み適當でないと考へらるるに至りましたので、之を廢止せんとするものであります
尚ほ國民勞務手帳法は從業者の雇入及び使用に關し國民勞務手帳の所持を條件とし、從業者の引拔き竝に移動を防ぎ、併せて賃金の騰貴を抑制する目的を以て、昭和十六年三月制定公布を見たのでありますが、終戰後の今日に於ては、既に斯かる勞務統制の必要を認められなくなりましたので、之を廢止せんとするものであります、何卒速かに御審議の上御協贊あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=37
-
038・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=38
-
039・長野高一
○長野高一君 本案は議長指名二十七名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=39
-
040・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=40
-
041・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました――日程第三、昭和十二年法律第七十八號廢止法律案の第一讀會を開きます――小笠原商工大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=41
-
042・会議録情報5
――――◇―――――
第三 昭和十二年法律第七十八號廢止法律案(紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籖券附囘數入場券發行に關する法律廢止の件)(政府提出、貴族院送附)
第一讀會
昭和十二年法律第七十八號廢止法律案
昭和十二年法律第七十八號は之を廢止す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籖券附囘數入場券の模造に付ては舊法は本法施行後と雖も伽其の效力を有す
〔國務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=42
-
043・小笠原三九郎
○國務大臣(小笠原三九郎君) 只今上程せられました法律案に付て御説明申上げます
紀元二千六百年記念日本萬國博覽會は紀元二千六百年記念事業の一つとして計畫されたものでありますが、昭和十二年日支事變勃發等の理由に依り之を中止し、之に伴ひ社團法人日本萬國博覽會協會に資金調達の權限を附與する爲に、制定せられました紀元二千六百年記念日本萬國博覽會抽籖券附囘數入場券發行に關する法律は、其の必要がなきに至りましたので、之を廢止しようとするものであります、尚ほ日本萬國博覽會協會の發行致しました抽籖券附囘數入場券は、協會をして一册十圓、即ち發行價格にて買戻しせしむる方針であります、何卒御審議の上速かに御協贊あらんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=43
-
044・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=44
-
045・長野高一
○長野高一君 本案は政府提出入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案の委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=45
-
046・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=46
-
047・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました――日程第四、映畫法廢止法律案の第一讀會を開きます――川崎内務政務次官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=47
-
048・会議録情報6
――――◇―――――
第四 映畫法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
映畫法廢止法律案
映畫法は之を廢止す
附 則
本法は公布の日より之を施行す
〔政府委員川崎末五郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=48
-
049・川崎末五郎
○政府委員(川崎末五郎君) 只今上程せられました映畫法廢止法律案の提案の趣旨を説明致します、本法は昭和十四年四月五日法律第六十六號を以て公布せられまして、同年の十月一日から我が國に於きまする最初の文化立法として是が施行を見るに至つたのでございます、其の目的は國民文化の進展に資する爲め、映畫の質的向上を促し、映畫事業の健全なる發展を圖るにあるのでありました、爾來我が國に於きまする映畫事業に對しましては、本法に依り指導竝に取締を行つて參つたのでございまするが、今般聯合國最高司令官から帝國政府に對し、映畫業に對する日本政府の取締法令の撤廢に關する件の指令がございました、此の指令に依りまして映畫法竝に關係法令の廢止の要求がありましたので、本法廢止の法律案を茲に提出するの已むなき次第に相成つたのでございます、尚ほ今後の映畫其の他興行に關しまする保安竝に衞生等の取締に付きましては、目下新しい立場から關係官廳に於きまして鋭意立案を急いで居りまするから、是が實施を期待して居る次第でございます、何卒御審議の上速かに御協贊あらそことを希望して已まない次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=49
-
050・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=50
-
051・長野高一
○長野高一君 本案は政府提出入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=51
-
052・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=52
-
053・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=53
-
054・長野高一
○長野高一君 議事日程追加の緊急動議を提出致します、即ち此の際一松定吉君外五十五名提出、刑事訴訟法中改正法律案を議題とし、其の審議を進められそことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=54
-
055・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=55
-
056・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 御異議なしと認めます、仍て日程は追加せられました、刑事訴訟法中改正法律案の第一讀會を開きます、提出者の趣旨辯明を許します――提出者一松定吉君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=56
-
057・会議録情報7
――――◇―――――
刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外五十五名提出) 第一讀會
刑事訴訟法中改正法律案
刑事訴訟法中左の通改正す
第二百七十八條に左の二項を加ふ
刑法第百九十三條乃至第百九十六條の罪に付ては辯護士會も亦公訴を行ふことを得此の場合に於ては辯護士會は檢事と同一の權限を有す辯護士會か前項の權限を行ふには辯護士會の決議に依り辯護士會長又は其の指走したる辯護士をして辯護士會を代表せしむ
第二百八十條に左の一頂を加ふ
辯護士會か公訴を行ふ場合に於ては同會か指定したる者に付亦同し
〔一松定吉君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=57
-
058・一松定吉
○一松定吉君 只今上程されました刑事訴訟法中改正法律案は、官公吏の職權濫用、判檢事警察官の人權蹂躪を杜絶することを目的として提案致したのでございます、刑事訴訟法の第二百七十八條には公訴權は檢事之を行ふとございます、其の法文の次に刑法第百九十三條乃至百九十六條の犯罪に付ては辯護士會亦公訴權を行ふことが出來ると云ふやうに改正を致したいと思ふのであります、其の刑法の第百九十三條は官公吏が職權を濫用し、人をして義務なきことを行はしめ、若しくは行ふべき權利を妨害したる時の制裁であります、百九十四條は判檢事若しくは警察官が人を調べまするやうな時に、職權を濫用致しまして逮捕監禁をした時に對する制裁でありまして、百九十四條は判檢事司法警察官が其の職務を執行するに當りまして、被告人若しくは其の他の者に對して暴行凌虐を加へることに對する制裁であります、百九十五條は是等の職務を行うた結果、此の被告人若しくは被疑者を護送を致します、斯う云ふやうな人が其の職務執行中に暴行脅迫を加へると云ふやうなことに對する制裁であります、それから百九十六條は斯くの如き暴行をやりまして、それが爲に傷害を加へたと云ふ場合には、傷害罪に比較して重きに從つて處斷すると云ふ制裁であります、斯くの如き所謂職權濫用若しくは人權の蹂躪と云ふものは、もう餘程以前から叫ばれて居ることでございますが、一向是が根絶致しませぬ、如何に司法大臣や内務大臣が、地方長官や警察部長等に訓令を發しましても、是が行はれませぬ、其の是正の出來ない所以は、所謂公訴權と云ふものを檢事が專屬に持つて居る所以であります、故に檢事が人權蹂躪を致しましたやうな時に、上司が此の檢事に對して之を取調べ若しくは起訴しない、部下の司法警察官が人權蹂躪をし、暴行凌虐を加へましても、警察官の此の行爲に對して檢事が之を顧みない、それに付きましては色々理由がございますが、兎に角正當の理由ではありませぬ、さう云ふやうなことであると、百年河清を俟つても之を是正することが出來ないのであります、そこで此の公訴權を此の種犯罪に限つて、何等かの方法に依つて行ふことが出來る者を他に求めなければならぬと云ふことで、色々苦心研究致しました結果、結局被疑者に其の公訴權を與へることが宜いではないかと云ふ議論もある、現に外國ではさう云ふことが行はれて居るのでありますけれども、我が國情に照しまして、被疑者が進んで檢事若しくは警察官を告發し、若しくは告訴して其の罪を糺彈する、若しくは公訴權を行ふと云ふことは中々出來ませぬ、そこで法律の公正に執行せられることの監視役である所の辯護士會をして、之を行はしめると云ふことになれば、決して無理な公訴權を行ふと云ふことはない、正しき公訴權を行び、而も十分なる證據に基かなければ濫りに判檢事若しくは警察官に向つて公訴を提起すると云ふことを致さぬことは火を睹るより明かでありまするが故に、此の意味に於て此の種犯罪に限つて、辯護士會に公訴權を附與する、辯護士會は即ち辯讃士總會の決議に依つて此の公訴權を行ふ、辯護士會長をして之を代表せしむる、辯護士會長が差支へのありまする時には、辯護士會長の指定した辯護士をして、其の公訴の實行に當らしむることが出來る、斯う云うやうに致しますれば、此の法律が通過し、此の法律が現存して居ると云ふ事の一事に依つて、今申上げまする人權蹂躪と云ふものが立どころに根絶することは、火を睹るよりも明かであると私は確信を致します(拍手)此の意味に於て此の法案を提案を致したのでございまするが、只今本日の選擴法改正委員會にも問題になつて居りまする選擧干渉なんかと云ふことに付て、御承知の選擧法の第百十六條には、職權を濫用して選擧の公正なる施行を妨害するやうな者に對しまして制裁規定があります、併し是が餘り今まで行はれて居りませぬ、斯う云ふやうなことも此の法律が通過することに依りまして、公務員が其の職權を濫用して人をして義務なき事を行はしめ、若しくは行ふべき權利を妨害した時には、此の法律に依つて辯護士會が活動が出來ると云ふことでありますので、行政官廳が自己の部下の知事や、警察部長の非違を蔽はんとしても蔽ふことが出來ないと云ふことになりますから、隨て選擧干渉と云ふことも根絶することになるのであります、此の外色々な事情がございまするが、それ等のことは何れ委員會に於て詳細御説明申上げることに致しまして、此處では此の程度に止めて置きます、何卒御贊成あらんことを御願ひ致します(拍手)
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=58
-
059・長野高一
○長野高一君 本案は議長指名十八名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=59
-
060・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=60
-
061・勝田永吉
○副議長(勝田永吉君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、是にて議事日程は議了致しました、次會の議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後五時十三分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X00919451207&spkNum=61
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。