1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
昭和二十年十二月十日(月曜日)
午後二時五十分開議
━━━━━━━━━━━━━
議事日程 第九號
昭和二十年十二月十日
午後一時開議
第一 勞働組合法案(政府提出) 第一讀會
第二 鹽專賣法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 昭和二十年法律第十八號中改正法律案(昭和二十年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する件)(政府提出) 第一讀會
第四 蠶絲業法改正法律案(政府提出) 第一讀會
第五 裁判所構成法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 戰時民事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)第一讀會
第七 戰時刑事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)第一讀會
第八 判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第九 鐵道敷設法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第十 昭和二十年勅令第五百四十二號(「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)
━━━━━━━━━━━━━
〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一、政府より提出せられたる議案左の如し
農業團體法中改正法律案
水産業團體法中改正法律案
鹽專賣法中改正法律案
(以上十二月七日提出)
(第二號)昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案
(特第一號)昭和二十年度特別會計歳入歳出豫算追加案
蠶絲業法改正法律案
昭和二十年法律第十八號中改正法律案(昭和二十年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する件)
勞働組合法案
(以上十二月八日堤出)
一、去八日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
裁判所構成法戰時特例廢止法律案
戰時民事特別法廢止法律案
戰時刑事特別法廢止法律案
判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案
鐵道敷設法戰時特例廢止法律案
昭和二十年勅令第五百四十二號(「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件)(承諾を求むる件)
一、議員より提出せられたる議案左の如し
社會教育の強化擴充に關する建議案
提出者
石坂繁君 伊吹元五郎君
森肇君 宮澤裕君
沖藏君 曾木重貴君
高城憲夫君 桃原茂太君
伊豆富人君
(以上十二月七日提出)
一、議員より提出せられたる質問主意書左の如し
教職員待遇改善に關する質問主意書
提出者 木村寅太郎君
(以上十二月七日提出)
一、去七日幣原内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
司法省調査官 荻野益三郎
第八十九囘帝國議會司法省所管事務政府委員被仰付
鐵道監 郷野基秀
運輸省航空局長 飯野毅夫
第八十九囘帝國議會運輸省所管事務政府委員被仰付
一、去七日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
一七 秋田縣第二區選出議員
六三 青山憲三君
一、去七日委員長及理事互選の結果左の如し
農地調整法中改正法律案(政府提出)委員
委員長 村上國吉君
理事
越智太兵衞君 小平權一君
山田順策君 赤城宗徳君
一、去七日議長に於て選定したる委員左の如し
農業團體法中改正法律案(政府提出)外一件委員
安倍寛君 愛野時一郎君
五十嵐吉藏君 石坂養平君
今尾登君 宇田耕一君
岡田啓治郎君 川崎巳之太郎君
楠美省吾君 鈴木重次君
田嶋榮次郎君 中瀬拙夫君
仲西三良君 濱地文平君
別所喜一郎君 松延彌三郎君
森川仙太君 山田六郎君
安孫子孝次君 青山憲三君
大石大君 北勝太郎君
眞崎勝次君 奧野小四郎君
加藤宗平君 二田是儀君
川俣清音君
入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案(政府提出、貴族院送付)委員
木原七郎君 毛山森太郎君
小谷節夫君 小林絹治君
小柳牧衞君 坂本宗太郎君
酒井利雄君 高城憲夫君
遠山暉男君 中瀬拙夫君
仲井間宗一君 南條徳男君
船渡佐輔君 別所喜一郎君
星一君 松田正一君
柳川宗左衞門君 山田竹治君
高岡大輔君 永野護君
藤井伊右衞門君 松本忠雄君
山野平一君 岸井壽郎君
瀧澤七郎君 松岡俊三君
松本治一郎君
刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外五十五名提出)委員
伊藤清君 伊藤五郎君
今成留之助君 江口繁君
田村秀吉君 谷原公君
長井源君 林信雄君
一松定吉君 村松久義君
山本芳治君 小野秀一君
田中伊三次君 田中藤作君
三田村武夫君 信正義雄君
原玉重君 水谷長三郎君
一、去八日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第六部選出豫算委員 木村武雄君
第七部選出懲罰委員 濱田尚友君
一、去八日委員長及理事互選の結果左の如し
農業團體法中改正法律案(政府提出)外一件委員
委員長 川崎巳之太郎君
理事
仲西三良君 松延彌三郎君
北勝太郎君
刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外五十五名提出)委員
委員長 一松定吉君
理事
伊藤清君 今成留之助君
田中伊三次君
一、去八日に於ける特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
農地調整法中改正法律案(政府提出)委員
理事 池本甚四郎君(理事小笠原八十美君去八日理事辭任に付其の補闕)
一、去八日特別委員理事追加當選の結果左の如し
農地調整法中改正法律案(政府提出)委員
理事追加 小笠原八十美君
理事追加 杉山元治郎君
一、去八日に於ける特別委員の異動左の如し
農地調整法中改正法律案(政府提出)委員
辭任阿子島俊治君 補闕長内健榮君
農業團體法中改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任眞崎勝次君 補闕眞藤愼太郎君
刑事訴訟法中改正法律案(一松定吉君外五十五名提出)委員
辭任水谷長三郎君 補闕菊地養之輔君
一、昨九日議長に於て辭任を許可したる常任委員左の如し
第四部選出豫算委員 田中貢君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=0
-
001・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 是より會議を開きます、日程第一、勞働組合法案の第一讀會を開きます――芦田厚生大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=1
-
002・会議録情報2
――――◇―――――
第一 勞働組合法案(政府提出) 第一讀會
勞働組合法案
勞働組合法
第一章 總則
第一條 本法は團結權の保障及團體交渉權の保護助成に依り勞働者の地位の向上を圖り經濟の興隆に寄與することを以て目的とす
刑法第三十五條の規定は勞働組合の團體交渉其の他の行爲にして前項に掲ぐる目的を達成する爲爲したる正當なるものに付適用あるものとす
第二條 本法に於て勞働組合とは勞働者が主體となりて自主的に勞働條件の維持改善其の他經濟的地位の向上を圖ることを主たる目的として組織する團體又は其の聯合團體を謂ふ但し左の各號の一に該當するものは此の限に在らず
一 使用者又は其の利益を代表すと認むべき者の參加を許すもの
二 主たる經費を使用者の補助に仰ぐもの
三 共濟事業其の他福利事業のみを目的とするもの
四 主として政治運動又は社會運動を目的とするもの
第三條 本法に於て勞働者とは職業の種類を問はず賃金、給料其の他之に準ずる收入に依り生活する者を謂ふ
第四條 警察官吏、消防職員及監獄に於て勤務する者は勞働組合を結成し又は勞働組合に加入することを得ず
前項に規定するものの外官吏、待遇官吏及公吏其の他國又は公共團體に使用せらるる者に關しては本法の適用に付命令を以て別段の定を爲すことを得但し勞働組合の結成及之に加入することの禁止又は制限に付ては此の限に在らず
第二章 勞働組合
第五條 勞働組合の代表者は組合設立の日より一週間以内に規約竝に役員の氏名及住所を行政官廳に届出づべし
前項の規定に依り届出たる事項に變更を生じたるときは一週間以内に之を行政官廳に届出づべし
第六條 前條第一項の届出ありたる場合に於て當該組合第二條に該當せざるときは命令の定むる所に依り勞働委員會の決議に依り行政官廳之を決定す
前項の規定は勞働組合として設立したるもの第二條に該當せざるに至りたる場合に之を準用す
第七條 規約には少くとも左の事項を記載すべし
一 名稱
二 主たる事務所の所在地
三 法人たる組合に在りては法人たること
四 目的及事業
五 組合員又は構成團體に關する規定
六 會議に關する規定
七 代表者其の他役員に關する規定
八 組合費其の他會計に關する規定
九 規約の變更に關する規定
第八條 規約法令に違反するときは命令の定むる所に依り勞働委員會の決議に依り行政官廳は其の變更を命ずることを得
第九條 勞働組合は事務所に組合員又は構成團體の名簿を備付くべし
第十條 勞働組合の代表者又は勞働組合の委員を受けたる者は組合又は組合員の爲使用者又は其の團體と勞働協約の締結其の他の事項に關し交渉する權限を有す
第十一條 使用者は勞働者が勞働組合の組合員たるの故を以て之を解雇し其の他之に對し不利益なる取扱を爲すことを得ず
使用者は勞働者が組合に加入せざること又は組合より脱退することを雇傭條件と爲すことを得ず
第十二條 使用者は同盟罷業其の他の爭議行爲にして正當なるものに因り損害を受けたるの故を以て勞働組合又は其の組合員に對し賠償を請求することを得ず
第十三條 勞働組合は共濟事業其の他福利事業の爲特設したる基金を他の目的の爲に流用せんとするときは總會の決議を經べし
第十四條 勞働組合は左の事由に因りて解散す
一 規約を以て定めたる解散事由の發生
二 破産
三 組合員又は構成團體の四分の三以上の多數に依る總會の決議
四 第六條の規定に依る決定
五 第十五條の規定に依る解散の處分
第十五條 勞働組合屡法令に違反し安寧秩序を紊りたるときは勞働委員會の申立に依り裁判所は勞働組合の解散を爲すことを得
前項の場合に於ける手續に關し必要なる事項は命令を以て之を定む
第十六條 勞働組合は其の主たる事務所の所在地に於て登記を爲すに因りて法人たるものとす
本法に規定するものの外勞働組合の登記に關し必要なる事項は命令を以て之を定む
勞働組合に關し登記すべき事項は登記の後に非ざれば之を以て第三者に對抗することを得ず
第十七條 民法第四十三條、第四十四條、第五十條、第五十二條乃至第五十九條及第七十二條乃至第八十三條竝に非訟事件手續法第三十五條、第三十六條、第三十七條の二、第百三十六條第一項、第百三十七條及第百三十八條の規定は法人たる勞働組合に之を準用す
第十八條 法人たる勞働組合には命令の定むる所に依り所得税及法人税を課せず
第三章 勞働協約
第十九條 勞働組合と使用者又は其の團體との間の勞働條件其の他に關する勞働協約は書面に依り之を爲すに因りて其の效力を生ず
勞働協約の當事者は勞働協約を其の締結の日より一週間以内に行政官廳に届出づべし
第二十條 勞働協約には三年を超ゆる有效期間を定むることを得ず
第二十一條 勞働協約締結せられたるときは當事者互に誠意を以て之を遵守し勞働能率の増進と産業平和の維持とに協力すべきものとす
第二十二條 勞働協約に定むる勞働條件其の他の勞働者の待遇に關する規準(當該勞働協約に依り規準決定の爲設置せられたる機關の存するときは其の定めたる規準を含む以下同じ)に違反する勞働契約の部分は之を無效とす此の場合に於て無效と爲りたる部分は規準の定むる所に依る勞働契約に定なき部分に付亦同じ
第二十三條 一の工場事業場に常時使用せらるる同種の勞働者の數の四分の三以上の數の勞働者が一の勞働協約の適用を受くるに至りたるときは當該工場事業場に使用せらるる他の同種の勞働者に關しても當該勞働協約の適用あるものとす
第二十四條 一の地域に於て從業する同種の勞働者の大部分が一の勞働協約の適用を受くるに至りたるときは協約當事者の双方又は一方の申立に基き勞働委員會の決議に依り行政官廳は當該地域に於て從業する他の同種の勞働者及其の使用者も當該勞働協約(第二項の規定に依り修正ありたるものを含む)の適用を受くべきことの決定を爲すことを得協約當事者の申立なき場合と雖も行政官廳必要ありと認むるとき亦同じ
勞働委員會前項の決議を爲すに付當該勞働協約に不適當なる定ありと認むるときは之を修正することを得
第一項の決定は公告に依りて之を爲す
第二十五條 勞働協約に當該勞働協約に關し紛爭ある場合調停又は仲裁に付することの定あるときは調停又は仲裁成らざる場合の外同盟罷業、作業所閉鎖其の他の爭議行爲を爲すことを得ず
第四章 勞働委員會
第二十六條 使用者を代表する者、勞働者を代表する者及第三者各同數より成る勞働委員會を設く
使用者を代表する者は使用者團體の推薦に基き、勞働者を代表する者は勞働組合の推薦に基き、第三者は使用者を代表する者及勞働者を代表する者の同意を得て行政官廳之を委囑すべきものとす
勞働委員會は中央勞働委員會及地方勞働委員會とす特別の必要あるときは一定の地區又は事項に付特別勞働委員會を設くることを得
勞働委員會の委員及命令を以て定むる職員は之を法令に依り公務に從事する職員と見做す勞働委員會に關する事項は本法に定むるものの外勅令を以て之を定む
第二十七條 勞働委員會は第六條、第八條、第十五條、第二十四條及第三十三條に規定するものの外左の事務を掌る
一 勞働爭議に關する統計の作成其の他勞働事情の調査
二 團體交渉の斡旋其の他勞働爭議の豫防
三 勞働爭議の調停及仲裁
勞働委員會は勞働條件の改善に關し關係行政廳に建議することを得
第二十八條 勞働委員會は公益上必要ありと認むるとき又は關係者の請求あるときは其の會議を公開することを得
第二十九條 勞働委員會其の事務を行ふ爲必要あるときは使用者又は其の團體、勞働組合其の他の關係者に對し出頭を求め、報告を徴し若は必要なる帳簿書類の提出を求め又は委員若は第二十六條第四項の命令を以て定むる職員(以下職員と稱す)をして關係工場事業場に臨檢し業務の状況若は帳簿書類其の他の物件を檢査せしむることを得
第三十條 勞働委員會の委員若は委員たりし者又は職員若は職員たりし者は其の職務に關し知得したる祕密を漏泄することを得ず
第三十一條 第三章の規定は勞働委員會の關與したる勞働條件其の他の勞働者の待遇に關する規準に關する協定にして勞働組合其の當事者たらざるものに付之を準用す
第三十二條 一定の勞働者の勞働條件其の他の待遇特に適切ならざるときは勞働委員會は其の實情を調査し改善の具體案を作成して行政官廳に建議することを得
前項の建議ありたる場合に於て行政官廳必要ありと認むるときは關係使用者に對し勞働條件其の他の待遇に關する規準を指示することを得
使用者前項の指示を受けたるときは遲滯なく之を勞働者に周知せしむることを要す
第二項の規定に依り指示ありたる規準は關係使用者及關係勞働者に付勞働協約と同一の效力を有す
第五章 罰則
第三十三條 第十一條の規定の違反ありたる場合に於ては其の行爲を爲したる者は六月以下の禁錮又は五百圓以下の罰金に處す
前項の罪は勞働委員會の請求を待て之を論ず
第三十四條 第三十條の規定に違反したる者は千圓以下の罰金に處す
第三十五條 第二十九條の規定に違反し報告を爲さず若は虚僞の報告を爲し若は帳簿書類の提出を爲さず又は同條の規定に違反し出頭を爲さず若は同條の規定に依る檢査を拒み、妨げ若は忌避したる者は五百圓以下の罰金に處す
第三十六條 法人又は人の代理人、戸主、家族、同居者、雇人其の他の從業者が其の法人又は人の業務に關し前條前段の違反行爲を爲したるときは其の法人又は人は自己の指揮に出でざるの故を以て其の處罰を免るることを得ず
前條前段の規定は其の者が法人なるときは理事、取締役其の他の法人の業務を執行する役員に、未成年者又は禁治産者なるときは其の法定代理人に之を適用す但し營業に關し成年者と同一の能力を有する未成年者に付ては此の限に在らず
第三十七條 左の場合に於ては勞働組合の代表者又は清算人を五十圓以下の過料に處す
一 第五條又は第十九條第二項(第三十一條に於て準用する場合を含む)の規定に違反し届出を爲さず又は虚僞の届出を爲したるとき
二 第九條の規定に違反し名簿の備付を爲さざるとき
三 本法又は本法に基きて發する命令に依る登記を爲すことを怠りたるとき
四 第十七條に於て準用する民法第七十九條又は第八十一條の規定に違反し公告を爲さず又は不正の公告を爲したるとき
五 第十七條に於て準用する民法第八十一條の規定に違反し破産宣告の請求を爲さざるとき
六 第十七條に於て準用する民法第八十二條又は非訟事件手續法第三十六條の規定に依る裁判所の檢査を妨げたるとき
第十九條第二項(第三十一條に於て準用する場合を含む)の規定に違反し届出を爲さず又は虚僞の届出を爲したるときは勞働組合以外の勞働協約の當事者(當事者團體なるときは其の代表者とす)を五十圓以下の過料に處す
使用者第三十二條第三項の規定に違反したるときは五十圓以下の過料に處す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
本法施行の際現に存する勞働組合は本法施行の日より一週間以内に第五條第一項の規定に準じ届出を爲すべし登録税法中左の通改正す
第十九條第七號中「産業組合聯合會」を「産業組合聯合會、勞働組合」に、「産業組合法」を「産業組合法、勞働組合法」に改む
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=2
-
003・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今議題となりました勞働組合法案の提案の理由を説明致します
我が國の近代産業は日清日露兩戰役に依つて特に發育の契機を與へられ、第一次世界大戰を以て飛躍的發展の時期に入りました、資本と勞働との調整、社會政策としての勞働問題が採り上げられたのは「ヴェルサイユ」條約以降の時期であります、斯くして大正八、九年頃より勞働組合の結成が促進せられ、之に伴うて勞働組合法の制定が朝野の問題となつたことは御承知の通りであります、曩に昭和六年の第五十九帝國議會に於ては、政府提案の勞働組合法案が衆議院を通過致しましたが、貴族院に於て審議未了となり、引續き滿洲事變の勃發に依つて勞働組合の發達は阻止せられ、勞働組合法に對する朝野の關心も冷却して遂に今日に至つたのであります、然るに最近の終戰と共に我が國に於ける民主主義的傾向の復活強化は勞働組合の再組織となつて現はれ、全國各地に亙り新しき組合の結成せられるもの相次いで増加する傾向にあります、惟ふに新日本の建設に當り最も緊急を要する平和産業の再建に當りまして、乏しき資本資源を活用する爲には勞働に期待すべき所極めて大いなるものがあることは申すまでもありませぬ、斯かる時勞働者をして喜んで勞務に當らしめ、進んで其の能率を發揮せしめて、時代の要請に即應する爲には先づ勞働者大衆に對して其の組合結成に付き十分なる自由を保障し、其の言動に統一と秩序とを保たしめることが絶對に必要であります、此の目的の爲には一面に於て勞働條件の適正化を圖り、地面勞働意欲の昂揚を圖ることが最も緊要な基本的要件であると信じます、即ち政府は現在勞働組合の結成が急速に進展しつつある事情に鑑み、進んで是が健全なる育成を助成することを喫緊の要務なりと認めたのであります、斯かる際聯合國最高司令官より政府に示された五項目中に、勞働者の搾取と酷使からの防衞、及び其の生活水準の向上の爲め、有效なる發言を許容する如き權威を與ふる爲に勞働組合を促進助長すべきことが要請されたのであります、仍て政府は朝野の專門的知識經驗を有する人々を以て勞務法制審議會を組織し、其の具體的成案の作成を求めました所、最近一の答申を得たので、之を骨子として勞働組合法案を作成致しました
其の要點を略述すれば、本法は第一に團結權の保障に依り勞働者の地位の向上を圖り、經濟の興隆に寄與することを目的としたことであります、第二に勞働組合の團體交渉「ピケッティング」其の他の爭議行爲等にして正當なるものには刑罰及び警察取締規定の適用を排除し、又使用者に於て勞働者が前述の行爲に妨害を加へたり損害賠償を要求することは出來ないものとした點であります、第三に組合の結成運營は成べく自主的に行はしめると共に、其の經營する共濟事業等の福利事業は之を保護し、又相當の免税の恩典を與へて、其の健全性と永續性とを助成せんとしたことであります、第四に組合と使用者との間に結ばるる勞働協約には、其の勞働能率の向上と産業平和の維持の上に重要なる意義を持つことを明かにし、特に之に法的拘束力等を附與した點であります、第五に勞働組合を中心とする勞働に關する諸般の問題を圓滑且つ民主的に調整せしむる爲め、勞働者側、使用者側及び中立の各代表者より成る勞働委員會をそれぞれ中央地方其の他に設置して、之に所要の職權を附與することにした點であります
以上申述べました諸點を骨子とし、本勞働組合法案を立案致した次第であります、何卒御審議の上速かに御協贊を與へられんことを希望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=3
-
004・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 質疑の通告があります、順次之を許します――羽田武嗣郎君
〔羽田武嗣郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=4
-
005・羽田武嗣郎
○羽田武嗣郎君 只今上程になりましたる勞働組合法案に付きまして以下數點に亙りまして所管大臣の御答辯を煩はしたいのであります
先づ第一點と致しましては本法案の目的を示すべき第一條に於きまして、當初厚生省の原案に依りますれば、勞働者の經濟的、社會的竝に政治的地位の向上と規定せられて居つたのでございますが、只今御提案になりましたる政府案に依りますれば、經濟的、社會的、政治的と云ふ三つの字句が削除されまして、單に勞働者の地位の向上とのみ規定されて居りまするが、其の變更されましたる理由を御尋ね致したいのであります
第二に御伺ひ致したいのは、本法案第四條第二項に於きましては、警察官、消防職員、監獄勤務者を除く官公吏竝に國又は公共團體の使用者に關しては勅令を以て別段の定を爲すことを得と規定されて居るが、如何なる點に付きまして一般勞働者と違つた規定を勅令に於て定むる御方針であるか、其の骨子竝に其の立法されたる理由、外國の立法例を此處に政府に依つて示されたいのであります
第三に御伺ひ致したいのは、當初の厚生省案の第十三條に於きましては、組合員が共濟事業其の他福利事業の爲に特別に積立てたる所の基金は、政治運動の爲に之を流用することは出來ないと規定をして居つたのであります、然るに只今提案されましたる政府案に依りますると云ふと、是が流用し得るやうに改まつて居るのでございます、其の理由竝に諸國の立法例を茲に明かにされたいと思ふのであります
第四に御伺ひ致したい點は、本法運用に於て勞働委員會の占むる地位と云ふものは非常に重大でごさいます、就中勞働者代表、資本家代表以外の、即ち官廳の任命しまする第三者委員の選任が宜しきを得るか、所謂仲裁役になるべき其の委員の問題でありまするが、此の委員の選任如何に依つて、本法が生きて來るか否かを決するものと存ずるのでございます、政府の意圖する所の此の第三者委員會の詮衡の標準を此の際明かにして戴きたいのであります
第五として御伺ひ致したいのは、政府が勞働者の生活擁護に對しどれだけの熱意を持つて居らるるかと云ふ問題でございます、本日は言ふまでもなく十二月の十日でございます、今次臨時議會は會期僅かに十八日の短期の議會でございます、最早會期はあと四日を殘すに過ぎないのでございます、元來斯くの如き重要なる法案は、當然議會の劈頭に提案を致すことが、それが政府の政治的な責任であり、眞に議會政治、民主主義政治を尊重する所以であると深く考へて居るのであります(拍手)政府の法案提出が其の時期を失したことは洵に遺憾の極みでございます、之に對する幣原總理大臣の御見解を御尋ねを致します、尚ほ斯かる重要法案の圓滿に成立を望むならば、本案上程の本日の此の議場に於て、會期延長をどの程度奏請する御方針であるか、政府の意圖する所を示されて誠意を示すのが當然と存ずるのであります
次に本法案に依つて勞働者の生活の地位を擁護せんとする政府の意圖は、先程の厚生大臣の御提案の理由の御説明に依りまして、略略之を知ることが出來たのであります、併しながら私の見る所に依りますると云ふと、政府の本法案提出の態度は如何にもお座なりでございます、無定見でございます、眞に良心と誠實と情熱とを以て勞働者の生活安定に乘出されたのかどうか、疑ひなきを得ないのでございます、即ち本法案成立の曉に於て、勞働者の生活が果して法案の豫期せらるるが如くに安定せらるるであらうか、確たるお見透しと御用意があつたのであらうか、時節柄まあ法律でも作つて置けばそれで宜いのだと云ふやうなお座なりな、羊頭を掲げて狗肉を賣るの虞はないか、畫に描いた牡丹餠に終るの虞はないかと云ふことを心から心配致して居るのであります、私の見た所では、全國の勞働大衆、就中「サラリーマン」階級、官業勞働者群と致しましては、法律の制定よりは差當つての生活難をどうして呉れるか、謂はば花よりも團子を切望して居るのでございます、此の意味に於きまして本法案提出に先行して、現内閣としては組閣匆々に、先づ勞銀竝に俸給に付き緊急措置の手を打つて、活きた政治をして欲しかつたのであります、去る六日の豫算總會に於て、此の用意のあることを明かにされたことは、遲蒔きながら政府の誠意の片鱗を示したものと致しまして敬意を表して居るのでございます、私が申すまでもなく、最近の勞働者、就中官公吏、學校職員、會社員等、所謂定額俸給勞働者の生活は驚くべき物價高と、生活物資獲得の困難さに全く茫然自失、仕事も手に付かない現在の状況でございます(拍手)俸給では家族は愚か自分一人でも食つて行けないのが今日の實情でございます、全收入百圓の俸給取りが、二百圓、三百圓なければ生命を維持して行くことが出來ないのでございます、就職はして居つても、失業者も同樣の經濟状態であります、粒々辛苦の貯蓄には最早や限度がございます、衣類其の他道具類等の手持物資を以て日々の食糧獲得に狂奔致して見た所で、是れ亦限度がございます、少少の物價手當、家族手當では如何とも致し難いのでございます、貯蓄も使ひ果し、手持の生活物資を放出した後に、俸給生活者竝に其の家族は一體何處に行くのか、眞に痛心に堪へない所でございます、某高等學校の教授の一家が、闇は食はぬと悲痛なる抗議を、遺言を遺して、榮養失調で死んで行つたあの冷嚴なる現實は、軈て千數百萬俸給生活者の運命でもあるのでございます、一體政府は今や一刻も猶餘のならない切實なる政府の官吏を含む勞働者の今日只今の生活問題を、如何に見て居られるか、政府が目下立案中の優遇案の内容を此の際明かにして、年の暮の迫る彼等千數百萬の勤勞俸給勞働者の爲に、安堵の途を示されたいのでございます(拍手)併しながら單なる俸給竝に手當の値上げの優遇案だけでは、非常な速度を以て上昇致します明日の物價に對して追ひ付くことは到底出來ないのであります、どうしても一方に於ては強力な物價政策、就中、購買者をも含む所の暴利取締に付き、即刻斷乎たる處置に出でなければならぬと存じます、現在の如く販賣者又は「ブローカー」のみを罰することでは眞に效果を發揮することは出來ないのでございます、勞働大衆の生命を救ふ爲に札を札とも思はぬ戰時利得者に鐵槌を下して欲しいのであります、又退職文官及び遺族の中には官吏の恩給竝に扶助料の運命がどうなつて行くか、非常に心配して居る者がございます、政府の方針を此の際明かにされたいのでございます、右に付きまして大藏大臣、司法大臣の具體的な方針を御伺ひを致したいのでございます
第六點と致しまして私の御伺ひ致したいのは、本法運用の基本的指導精神の問題でございます、本法案第二十一條に於ては勞働協約締結せられたる時に於きましては當事者互ひに誠意を以て之を遵守し、能率の増進と産業平和の維持とに協力すべきものとすと規定して、勞資協力主義が本法運用の基本的の指導精神になつて居ると解せらるるのであります、法的根據に基き弱き勞働者に團結權と團體交渉權と「ストライキ」の權利を認めまして、此の後ろ楯の下に勞資協力主義を以て勞資關係を善處せんとすることは、社會正義の上に於て確かに一段の進歩でございます、昭和六年から今日に至るまで、勞働組合法が日の目を見ずに冬眠して居たことは、我が國社會正義公平の爲に洵に遺憾とする所でございます、唯併し何と申しましても、血を以て鬪ひ取つた諸外國の勞働組合法の沿革に鑑みまして、本法案の出發點は勞働者階級と資本家階級の對立であり、鬪爭であることは疑ひもないのであります、殊に本法案の立案に參畫致しましたる勞務法制審議會の答申に基き、厚生省案として最初内閣に囘付せられたる所の原案の第二條に於きましては、勞働組合の「ストライキ」に當つては、苟くも組合の爲にする組合員の第一條の精神に基く行爲は之を罰せずと規定し、さうして列擧的に刑法も、暴力行爲等處罰に關する法律も、警察犯處罰令も、行政執行法も、出版法等の所謂刑罰法規竝に取締法規は適用しないと規定を致し、一見如何なる暴行もやり放題である、取締官憲も手が著けられないと云つた無警察、非法治國家的印象の濃厚な規定がございました、少くとも治外法權的な行過ぎた保護を、一方的に勞働組合にのみ與へて居つたと解せらるる所の條文があつたことは隱れもなき事實でございます、是では勞働組合の力のみの過當に大きくなりまして、本法運用の指導精神でありまする勞資協力主義の實現は絶對に出來ないと存ずるのでございます、斯くては唯産業の不振と、勞働大衆の失業とが待つて居るだけでございます、多分閣議で修正を見たものと存じますが、當然のことでございます、長い戰に疲弊困憊其の極に達し、而も「ビー」二九と、原子爆彈と、艦砲射撃とに打ちのめされ、燒盡されたる我が産業施設は、一朝一夕に之を復興することは到底出來ないのであります、悲しき敗戰の我が國の現状は、階級鬪爭だけでは、之を救つて行くことは出來ないのでございます、言ふまでもなく産業は勞働と資本との結合に依つて興つて參ります、何れを重しとし、何れを輕しとすることは出來ませぬ、私は飽くまで社會正義と公平の見地に立つて、兩者の關係を見て行き、律して行べくきであると信じて居ります、資本と勞働の結合に依り、漸くあの燒野原にも再び工場が復興するのでございます、是に於て初めて勞働者の存在があり、失業問題の解決の曙光が見出され、さうして又國民生活物資竝に食糧輸入に對する見返り物資の生産が出來て、茲に初めて國民生活の安定の途が開かれるのでございます、元來社會立法はどうしても世界的なる影響を受くることは當然でございまするが、併しながら各各其の國の現實の國情と、時代の要求する其の國の社會正義を根軸としなければ机上の空論になつてしまふと存じます、借物ではいけないのでございます、今日の日本の現状を以てすれば、敗戰日本を救ふ所の社會正義の基調は、本法の所謂勞資協力主義でも、或は大正六、七年來唱へられて居りましたあの生緩い勞資協調主義でも、或は戰時中勞働強制の武器となつて居りましたる官製の産業報國主義でもないと信じます、即ち私は新日本建設の勞資關係の最高指導精神は、協同自治主義でなければならないと信じて居ります、企業家と勞働者が眞に協同一體となり、他から強ひられることなく、自治的に、自發的に産業の復興を圖り、民族の沒落を救はなければならないと存じます、恰も破産を宣せられたる一家が、相變らず親子喧嘩を致して居つたのでは、結局一家の破滅あるのみであります、親子一家氣を揃へ、相愛し、相敬し、眞に一體となつて新規蒔直しに、明朗に奮鬪する以外に家の再興を見ることは出來ないと存じます(拍手)然るに最近の世相を見ますると、一部分の人達とは云へ、畏くも陛下に對し奉つて、あの堪え難き罵詈雜言を聞きます、言論の自由とは申せ、客觀性と事實を無視したる、全く獨善的な、行き過ぎた、極端な物の見方が横行して居ります、利己的な、自分本位の物の考へ方が行はれて居ります、食糧問題を繞る都市と農村の深刻なる對立、學校の菜園の野菜の分配を繞る淺ましき師弟の對立、學校「ストライキ」、又少女達の無反省な姿、日夜目に餘る道義頽廢の種々相、騷然たる物情、正に國家民族は混亂へ、破滅へと悲しき驀進を續けて居ります(拍手)遺憾ながら其處には、平和新日本建設の明るい、地道な、而も積極的な、さうして冷靜にして科學的合理性ある國家再建の大道を歩む眞摯な姿は、未だ餘り多く見受けることが出來ないのでございます、以上申述べましたやうな社會環境の下にある今日の日本の産業界の實情は、勞資協同に依る外、あの荒凉たる焦土に工場の煙も上らなければ、都市の復興も困難であると存じて居ります、我が日本進歩黨が立黨の宣言竝に綱領の中に、敢て自治協同の字句を用ひた所以のものも全く茲に存するのでございます(拍手)政府は本勞働組合法運營の基本的指導方針として、協力主義を協同主義に改むる御意思がないか、敢て幣原總理大臣の所信を御尋ね致したいのでございます、協同主義に依り産業の再建を圖らんとするには、政府も、勤勞者も、企業家、資本家も、從來の考へ方を根本的に是正を要するのでございます、即ち先づ企業家資本家の反省の問題でございます、勤勞階級の國民的感情から申しますれば、戰時中の企業家の勞働觀、勤勞管理の構へと云ふものは全く適切を缺いて居つたのであります、特に徴用工に對して執つた所の經營者の態度は、如何にも軍官の權力を背景とし、人格を無視したる高壓的態度に出でました、恰も國策の鞭を以て温順なる小羊の群を驅使するの觀がなかつたでありませうか、勞働者用食糧を重役の宅に運んだ事實はなかつたでございませうか、仕事のない勞働者を温存する利己的な態度はなかつたでございませうか、一々枚擧すれば遑がございませぬ、是等の事實は勞働者に對し、深刻な惡感情を惱裡に深く植付けてしまつたのでございます、更に終戰時に於ける企業家の處理に於て、財政的に餘力なきものは已むを得ないと致しましても、餘力あるものに於てすら、一片の解散の形式に依つて、三箇月の手當で追放をしてしまつた事實、勤勞學徒に對する冷淡極まる仕打、或は軍の一部と結托して不正の利得を得た事實、工場の物資の不正處分問題等、目に餘る火事泥的な事實を見せ付けられて、痛憤措く能はざるものがあつたのであります(拍手)隨て企業家、資本家は是等の事實を眞に反省直視して、勤勞觀を全く一新して、今後の産業復興には勞資一體協同の體制の下に、眞摯なる再出發を要すると存ずるのであります(拍手)併しながら一面に勞働者側に於ても、事業が興らなかつたならば勞働はございませぬ、此のことを深く認識して、今日は階級鬪爭の秋ではない、勤勞以て國を救ふ、即ち勤勞救國の憂國の至情を振ひ起して、勞資協同體制の確立の急務に徹さなければならないと信じます(拍手)殊に資本家が勞働組合運動の勃興と「ブローカー」の跋扈を惧れて、事業に手を着けることを躊躇して居る所の事實を見逃してはならぬのであります、右に申述べましたる見地に立つて、私は今後の企業の新體制の一つの行き方に付き、政府の御所見を御伺ひを致します
過般朝日新聞竝に毎日新聞では、經營の民主化が行はれたのであります、即ち朝日新聞に於きましては、資本家たる村山、上野兩家が社主の地位を退いて、重役陣を全く更新して、多年先輩社員として功勞のあつた人々が經營の任に當ることになり、謂はば資本と經營の分離がものの見事に行はれたのであります、又毎日新聞に於きましては、全重役の退陣の後には社員、即ち本法の勞働者の總意に基き、社員の中より新進の重役が推薦をせられたのであります、經營者と勞働者は直結せられ、兩者の間には脈々たる温かき血が通ひ、對立は全くないのでございます、私は此の二つの事實は我が國産業界に於ける一大革命と考へて居ります、經營の民主化、勞資の全面的協力體制の確立と考へて居るのでございます、此の新しき勞資關係、新しき企業體制この新日本建設の方向を示すものと考へまするが、政府御當局の見解は如何でござい すか、御尋ねを致したいのでございます
第七點として御尋ね致したいのは、政府渉外の交渉の態度の問題でございます、本法案の議會提出の遲れましたる理由の一つは、「マッカーサー」司令部との連絡の圓滑を缺いた爲めではないかと存じます、敗戰日本を指導するものは悲しいかな「マッカーサー」司令部でございます、合理性と率直を好む米軍に對しては、誠意と率直さを以て當つたならば、之を容れるに吝かでないと信ずるのであります、話せば分る筈でございます、然るに現内閣の中央部にしても、又地方の官憲に致しましても、從來の官僚の弊たる尊大さと社交性のないこと、ぎごちなさ、廻り諄く形式的にこだはる所の事務の非能率さに禍ひされて居ないかどうか、敬して遠ざかる風はないか、或は時に徒らに阿附追從の風はないか、熱誠と迫力と機動性に缺くる所はないか、日本民族の傳統と信念である上 天皇制の問題から、下は八千萬國民の食糧問題と云ふ未曾有の難局に直面して居りますだけに、此の政府の態度、地方官憲の態度は眞に痛心に堪へないのでございます(拍手)受身の卑屈な態度を排し、「ポツダム」宜言受諾の線に沿つて「マッカーサー」司令部の眞意を酌み、先手々々と勇敢に、率直に諒解を求め、國難突破に邁進を致して行かなければならないのでございます、右に關する政府の所信を幣原總理大臣に御伺ひを致す次第であります
最後に私、第八點と致しまして御伺ひ致したいことは、最近の輿論の傾向は軍閥に對する反感の爲に、善良なる一般復員軍人に對しましても反感を持つて、其の平和産業に進出することを拒むの風がございます、善良なる國民と雖も世間の誤解の爲に糧道を絶たれる時、行くべき道は左翼、共産主義の方向であります、國家否定の方向であります、斯くては國家としましても、個人としましても、事志と違ひまして遺憾千萬のことでございます、是等の復員者に對する對策に付き幣原復員大臣の御方針を御尋ねする次第でございます、以上を以ちまして私の質疑を終ります(拍手)
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=5
-
006・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今羽田君よりの御質問に對しまして、厚生大臣の所管に關する點に付て私より御答へ致します、羽田君の御尋ねの第一點は勞務法制審議會の答申案に依れば、第一條に勞働者の經濟的、社會的竝に政治的地位の向上を助け云々と規定してあつたのを、政府提出案に於ては、勞働者の地位の向上を圖りと簡單になつて居るが、それはどう云ふ理由であるかと云ふ御尋ねであります、御承知の通りに勞働組合を組成致しまする主たる組合の目的は、後の條項に出て居ります通り、主として經濟條件の改善、經濟的地位の向上が眼目になつて居るのであります、隨ひまして第一條に於て答申案の如く經濟的、社會的竝に政治的地位の向上と竝べて書く場合には、勞働組合竝に勞働組合法の主たる目的を曖昧にする虞があると云ふことが一つの理由であります、無論勞働者の地位の向上を圖りと書きました以上は、其の主たる目的が經濟的地位の向上であらうとも、其の他の、例へば福利施設、或は圖書館、或は研究所の設置等に依る文化的、社會的の地位の向上であらうとも、之を圖り得るのであります、又社會的、經濟的地位の向上に必要なる部門に於ける或る程度の政治的の向上を圖り得ると云ふことは問題はないのであります、第一條に於て簡單に致しました理由は、是等の理由に外ならぬ次第であります
第二問は組合法案の第四條に國又は公共團體に使用せらるる者に關しては命令を以て特別の定をなすことを得とあるが、其の官吏の特殊の地位を定むる規定はどう云ふ條項であるかと云ふ御尋ねであります、是等の官吏の地位を定むる爲には、特に命令を以て別の定をする筈でありますが、其の内容は今日未だ確定とまでは參つて居りませぬ、大體の方針と致しましては、第一に官吏公吏其の他公共團體に使用せらるる者は、調停又は仲裁に掛け、其の調停又は仲裁が成立しない場合の外爭議行爲をなすことを得ないと云ふのが第一點であります、第二は、是等の者が爭議行爲をなし、又はなさんとする虞ある場合には、行政官廳は之に對し必要と認める時には爭議行爲の中止命令、其の他必要な命令を出すことが出來ると云ふのが第二點であります、第三には、是等の者が政治運動に携はらんとする時には、必要に應じて勞働委員會の決議に依り行政官廳が其の禁止又は制限をなすことが出來る、是が第三點であります、大體是等の點を眼目として別に勅令を以て別段の定をなす積りであります
質疑の第三點は法案第十三條に、勞働組合は共濟事業、福利事業等の爲に設けた基金を他の目的の爲に流用せんとする時は總會の決議を經べしと書いてあるが、是を政治運動の爲に流用することは禁じてはないのか、一時是等の基金を政治資金の爲に流用することを認めるかの如き意向があるとも聞いて居つたが、本案に於ては政治資金に流用し得ることになつたのはどう云ふ譯であるかと云ふ御尋ねであつたと思ひます、此の點に付きましては種々考慮致しました、併しながら現に勞働組合の從屬の目的の中に、或る程度の政治運動をなすことは認めて居ります、現に勞働總同盟が成立致しました時にも、勞働總同盟は社會大衆黨を支持すると云ふ規約を持つて居りましたが、當時何等之に對して民間からも、官廳の方からも制限を加へることを致さなかつたのであります、そこで從屬の目的として或る程度の政治運動は之を認めるとした以上、總會の決議に依つて勞働組合の基金を之に流用すると云ふことは禁止する理由がない、固より勞働組合は政治運動、社會運動を主たる目的とするものではありませぬ、隨て其の流用の程度に於ては無論此の制約を受けることは申すまでもないと存じます
第四の御質問は、法案第二十六條に、勞働委員會に加はるべき第三者に付て、勞働委員會には資本家と勞働者と、さうして第三者の代表者が同數相集まつて委員會を組織すると云ふことに相成つて居ります、其の第三者の選任の方針をどう云ふ點に置いて居るかと云ふ御尋ねであります、此の第三者代表と稱する者は、學識經驗ある者の中から勞働側及び資本側の同意を得て之を委囑するのであります、隨て世間一般の評判から見て立派な學識經驗あり、且つ其の判斷が中庸を得て居る如き人を第三者代表として選ぶ方針で居ります、以上御質問の點に付て簡單に御答へ致しました
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=6
-
007・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今の御質疑の私に對する部分の第一點は、今日斯かる重要法案を提出することになつたのは政府の怠慢ではないかと云ふことであります、實は本案に付きましては、組閣の當初から直ちに研究に著手致したのであります、各方面の意見を十分に參酌致す必要があつたので、成案を得るのが意外に遲れたのであります、本案の重要性に顧みまして萬巳むを得なかつたのであります、決して政府が怠慢であつたと云ふやうな事實はないのであります、此の點は能く御諒承を願ひたいのであります、政府と致しましては皆樣の御協力と御理解に依りまして、本案の速かなる成立を期待致して居るのであります、又熱望も致して居るのであります
それから第二點に、本法適用の基本的指導方針に付ての御質問であります、此の際我が政治上の改革の最も重要なる目標の一つは、勞働者の地位の向上を圖り、其の意向を十分に暢達せしむると云ふことであります、此の目標の實現は延いては生産の興隆に寄與する所以であると信じて居ります、萬一全體主義などの思想に依りまして、勞働者の人格を尊重せず、之に高壓的態度を以て臨むと云ふやうなことがありましては、結局は生産増強に資する所以ではありませぬ、我々は斯う云つたやうな方針で此の法の適用に當りたいと考へて居るのであります
それから第三點に政府の渉外交渉の態度に付てであります、政府と聯合國總司令部との折衝は、終戰直後に於きましては機構の不備等もありまして、連絡が圓滑を缺いた事績もあつたのでありまするが、其の後漸次遲れを取返しまして、最近は相當改善の跡を示しつつあると思つて居ります、尤も我が方の措置振りが緩慢であると云ふ聲は今尚ほ聞えすますので、關係官廳間の連絡、民間との連絡協力に意を用ひるやう督勵致しまして、我々は熱意を以て、眞劍に此の目的を達するやうに、連絡も圓滑ならしむるやうに事に當つて居るのであります
それから其の次には、復員軍人のことに付ての御尋ねであります、善良なる復員軍人が平和産業に復歸するのを拒むと云ふやうなことがあつてはなりませぬ、是は政府に於きましては失業對策の一環として、關係の各機關に於て復員者の就職の斡旋に極力努めて居る次第であります、併しながら是は政府だけでは其の目的を達しませぬ、何卒國民全般の理解と協力とに俟つて、此の目的を全う致したいと老へて居るのであります
〔國務大臣子爵澁澤敬三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=7
-
008・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今の御質問に對しまして御答へ申上げます、定收入の官公吏其の他の方々に對しまする給與に付きましては、最近の情勢に鑑みまして眞に痛心を致して居りますが、目下の所本格的改正を致す前に、暫定的に臨時の手當を支給すると共に、現在支給して居ります所の臨時家族手當の大幅増額を行ひたいと考へて居ります、之に依りまして家族の多い方々に付きましては相當の實收の増加を見るものと思つて居ります、其の詳細に付きまして目下聯合國司令部に承認の手續中でございます、只今申上げることを差控へることを御許し願ひたいと存じます、尚ほ増俸に依りまして物價問題が解決するとは毛頭考へて居りませぬが、差當り生活の困難を多少とも緩和する爲に、此の方法を執ることと致しまして、物價政策と致しましては是と全く別個に、戰後の物價水準と、之に依ります各物資の價格の「バランス」を適當の所に求めまして、統制すべきものは嚴重に統制し、そこに安定を得せしめたいと、目下折角各種の檢討を致して居る次第でございます
次に軍人の恩給に付きましては、來年の二月一日までに支給を差止める措置を執ることになつて居ります、二月一日までは支給するのであります、其の以後支給は差止めることになつて居ります、是が爲に生活困難を來す方々に對しましては、軍人と云ふ特殊な階級としてでなく、一般社會政策と致しまして、適當に處置することと致しまして、目下鋭意研究中でございます、尚ほ在外部隊の留守宅に對しましては、歸還復員されるまで從來通り家族渡しを續けて參ることと致したいと考へて居ります、以上御答へ申上げます
〔國務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=8
-
009・小笠原三九郎
○國務大臣(小笠原三九郎君) 羽田君より産業民主化の方策の一つとして、資本と經營の分離に關する御尋ねがございましたが、政府と致しましては、産業民主化の實現に付ては、企業者と企業者との關係に於ては公正なる競爭を具現せしむること、企業者と消費者の關係に於ては相互の選擇の自由を與ふること、企業者と勞働者との關係に於ては團體契約を認むること、産業界と政府との關係に於ては、政府自體を民主主義的な政府に致しますると共に、業界に可及的廣範圍の自活を與へること、此の四つの目標を達成することに依りまして、一應全面的に産業經濟の民主化を圖ることが出來ると考へて居るのであります、而して其の根本を貫くものは、羽田君が仰せられた協同自治でなければならぬと考へて居ります(拍手)然らば資本と經營との分離に付てどう考へて居るか、政府は企業運營の基礎を關係者相互の尊重と協力とに置きまして、企業運營に際し從業者の意見を十分に反映せしむることに努むるやう相互の理解と信頼とを増進せしめたいと考へて居ります、此の精神に基き企業者と從業者とが話合つて、相互の合意に依り企業經營に從業員を參加せしむること、或は企業の株式の所有を分割すること等は結構なことと考へまするが、政府としては制度的に資本と經營とを分離せしむるが如き考へは持つて居りませぬ、御答へを致します
〔國務大臣岩田宙造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=9
-
010・岩田宙造
○國務大臣(岩田宙造君) 只今羽田君の御尋ねの中で司法關係のことに付て一言御答へを申上げます、司法の經濟警察に關係致しまする事柄は非常に困難な立場に居るのでありまするが、現在の情勢に於きましては、生活必需物資の價格の暴騰に依りまして、給料生活者其の他一般の人が非常な困難に遭遇して居ると云ふことは御説の通りであり、顯著な事實でございまして、此の點に付きまして、勿論取締に依つて根本的に之をどう斯うと云ふことの不可能なことは申すまでもないことでありまするが、司法の方面からも其の一部の援助をしなければならぬのでありまして、之に付きましては米穀等の主要食糧品に對しましては、其の横流れを防ぎ、供出を増進する爲に、唯生産者方面や「ブロカー」と云ふやうなものばかりでなく、消費者の方をも勿論處罰して取締るのでありますが、尤も御承知の通りの状況でありまするから、主として大口の消費者或は營利を目的とするやうな者に重きを置いて、嚴重に取締をする方針で居ります、其の他獨り主要食糧品のみならず、先般統制を解除せられました生鮮食料品等に付きましても、隨分價格が暴騰致して、一般的に非常に困つて居るのでありまするから、是等に對しましても相當の取締はして居るのでありまするが、是は暴利行爲等の取締規則に依る外はないのでありまして、現に之に依つて相當の取締をして居ります、のみならず現在の暴利行爲等の取締規則は、不完全な所もありまするので之に改正を加へて、さうして其の目的を十分に達することが出來るやうにと折角考慮中であります、是だけのことを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=10
-
011・羽田武嗣郎
○羽田武嗣郎君 簡單でございますから自席で御許しを願ひます――芦田厚生大臣に對しまして私は外國の立法例を求めて居りましたが、此の點は委員會等に於て御答へを願ふことに致しまして、大藏大臣の御答辯の中に御親切に軍人の恩給問題に付きまして御話を戴きましたが、私の質問致しましたのは軍人ではなくて文官の恩給問題でございます、是は軍人の方が停止されたので文官の方も停止されることはなからうかと言つて、年老ひたる恩給受給者竝に寡婦の人達が非常に心配を致して居りますので、此の文官に對する恩給竝に扶助料はどうなつたのかと聽きますと、政府に於ても之に付て案を練つて居るやに聽きましたので、其の輪廓を明かにし、是等の惱み、心配をして居る人達に安心を與へるやうに願ひたい、斯う云ふ意味で御質問を致したのでありまするから、其の點に付て重ねて御答辯を願ひたいと思ひます
〔國務大臣子爵澁澤敬三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=11
-
012・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今御質問の御趣旨を少し取違へて洵に申譯ございませぬでした、文官の恩給に付きましては目下の所研究中であります、さうして厚生省其の他と御協議の上に、大きな意味に於きまして社會政策的に之を解決したいと云ふ風に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=12
-
013・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 渡邊泰邦君
〔渡邊泰邦君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=13
-
014・渡邊泰邦
○渡邊泰邦君 私は本法律案提出に際しまして、敗戰日本の現實の姿に對して總理大臣は如何なる見解を御持ちになつて居るかと云ふことに付て、先づ第一に御質問致したいのであります
御承知の如く我々は敗けたのである、敗けた以上は仕方がない、是からの國家を如何に盛立てて行くかと云ふ、所謂國家哲學の一端を總理大臣に御伺ひしたいのであります、御承知の如く國家を如何に論じて居るかと云ふ學説を一々申上げるのではありませぬ、併し國家を如何に觀察するかと云ふことに付きましては「ヘーゲル」流の一元國家論、即ち國家は自然發生的の本然社會であると云ふ學説が、「ドイツ」を初め一般に行はれて居つたことは御承知の通りであります、更に英國の「スペンサー」流の國家は派生社會である、極端に言へば國家と云ふものは個人の營利を追求する機關である、此の多元的國家論は天皇機關説を生んだのでありまして、斯う云ふ國家論も行はれて居るのであります、更に階級國家論と致しましては、國家は國民を搾取する機關である、國家其ものは人民を搾取するが爲に國家が存立して居ると云ふ風な、共産主義的な階級國家論もあるのであります、此の劃期的な勞働組合法案を制定するに當りまして、此の背景を成す所の國家は如何なる國家であるかと云ふ、此の敗戰日本の將來に對する日本の國家觀に付きまして、總理大臣の所謂國家觀を此の際是非承つて置きたいのであります、總理大臣は二十年間平和を主として其の政治的の道を歩まれて來ましたことは、過日の豫算總會に於きましても拜聽致したのであります、總理大臣は洵に平和を愛好せらるる姿を以て歩んで來られたことは、我々國民の能く知悉して居る所でございます、もう再び戰爭は起すまい、どんなことがあつても、日本國民をして再び戰火の裡に見えしむることは、やるまいと云ふ堅い信念を御持ちになつて居ることは能く承知致して居ります、併し戰爭と云ふものは何も一人や二人の指導者や、或は好き好んで起つて居るものではないのであります、此の戰爭の原因を深く掘下げて、更にもつと深く掘下げて行けば、戰爭の原因は人にあらずして制度にある、即ち資本主義制度が戰爭の本當の原因であると云ふことを、御分り願ひたいのであります、さうすればどうしても今後勞働組合法案を制定致しまして、國民をして眞に安んじて産業に從事せしめ、小さな國になつたから平和産業、或は農業を盛んにして我々は食べて行つて、更に日本を平和的國家に再建するには、どうしても戰爭を根本から止めさせる所の思想的な體系を持ち、さうして其の體系付けられた思想に依つて、日本を率ヰて行くと云ふことになりますと、どうしても資本主義を止めなければならぬと我々は考へるのでありますが、總理大臣の之に對する御觀察を御伺ひしたいのであります
先程羽田君も仰しやつたやうに、日本の經濟界は麻痺状態にあります、資材、勞務、運輸は極端に不便であります、資材もなし、勞務もなし、運輸は極端に不便であります、更に國家補償の未解決と云ふ問題が殘つて居る、金融は梗塞致して居ります、隨て軍需産業が平和産業に切替へらるべき筈の所、又切替へを如何に要求致しましても仕事は起きませぬ、仕事を起さない、何故起きないかと申しますと、仕事と云ふものは、御承知の如く利潤が基本を成して居ります、金の儲からない所に資本主義經濟下に於きまして企業と云ふものはあり得ませぬ、金が儲からないから企業はあり得ない、企業を起さないから失業者が起ると云ふ循環論になるのでありまして、勞力の搾取が企業の根本精神をなす限り、敗戰日本の今日に於ては企業と云ふものは、容易に起らぬと我々は判斷するのであります、隨て勞働の搾取を企業の根本原因となすやうな所の企業を、更に一歩前進せしめまして、金を儲けることが主でなく、而も國營でもないやうな協同組合式の企業が是から日本に起きなければ、日本の産業と云ふものは成立ち得ないと我々は考へるのでありまするが、之に對する商工大臣の御見解を承りたいのであります、即ち企業の徹底的民主化と云ふものは、此の「コーポレーション」に依つて初めて成立すると私共は深く信ずるのであります、先程羽田君も指摘されました通り、勞働者は非常に荒んで居ります、企業家は手控へて居ります、今日の如き背徳的な荒んだ現状は、是は勞働者が惡いのだ、食物がないから荒んだのだと、唯一言に片付けることが出來ないのは、所謂社會の環境がさうさせて居るのであつて、其の人の罪ではない、此の事を能く御記憶願ひまして、今後の企業には如何なる指導方針を持つかと云ふことに付て、しつかりとした御見解を商工大臣から承りたいのであります、殊に最近我々の非常に心配の種となつて居りますことは石炭であります、今日新聞で見ますると、聯合國の經濟方面を擔當して居られる方が指摘されて居りまする如く、食糧が欲しいと言ひながら石炭を掘らない、食糧の代替に要する工業品を造るには石炭が要るのだ、其の石炭が來年の二月には殆ど無くなる豫想であるに拘らず、石炭には勞務が不足だと云つて石炭が出て來ない、而も一方失業對策を五箇年計畫でやらうとして居る、此の日本の政府のやり方に付ては、どうも分らぬ節があると云ふことを新聞で見たのでありますが、我我も此の點に付て政府に御尋ねしたいのであります、石炭を掘るに色々な華人や、朝鮮人諸君の騷動、其の他ありましたけれども、もう大體落著いた筈である此の石炭に勞力が足りなくて、さうして石炭が出なければ食物がない、食物を貰ふことが出來ない、食物を貰ふに絶對必要なる石炭をなぜ掘らぬかと云ふことは「アメリカ」人ならずとも、國民が不思議に思ふ所でありまして、此の石炭を掘るに政府は無論遊んで居る譯ではありませぬ、一生懸命やつて居るのであります、併し一生懸命にやつても、役人が机の上で「プラン」を立てて一生懸命やればやる程民心が離れるやうな傾向にあることは、終戰後も依然とした状態であることに商工大臣が御氣付きになつて居る筈である、此の石炭を一日も早く出すことに商工大臣は如何なる成案と、如何なる見透しを持つて居られますか承りたいのであります、更に此の重要法案は本日我々の手許に提出されたのであります、あと會期餘す所僅か四日間、農地法案もまだ審議中であります、此の間に此の重要法案を審議して議會を終ると云ふことは、今までの議會通念と致しましては至難なことである、政府は此の餘す所四日間の日にちを以て、まさか此の議案を議了し盡すと御考へとも思へませぬが、之を議了するに更に會期を延長する意思ありや否やと云ふことも御伺ひしたいのであります
〔議長退席、副議長著席〕
運輸大臣おいでになりませぬから、どなたかお傳へなさつて御答辯を願ひたいのでありますが、勞働者の輸送、通勤の困難、勿論問題は石炭でありまするが、此の復舊の見透しに付て運輸大臣に御伺ひしたいのであります、先程の羽田君の質問と重複致しまするが、視野を變へる意味に於て厚生大臣に御答辯を煩はしたいのであります
第一條の社會的、政治的向上と云ふことを取去つたことは承りました、併し政治と云ふものを如何に御考へになつて居るか知りませぬが、單なる經濟的の面のみに、此の勞働組合法案の第一條が限局せられると云ふことは、要するに團體功利主義に趨る虞があると思ふのであります、此の點に關する御見解を承りたいのであります
政治と云ふものは、私が申上げるまでもなく、民族の未來を創造する主體的な役割をなすものでありまして、此の政治的の向上なくしては、民主主義はあり得ぬと我々は信ずるのでありまするが、それに對する御見解を承りたいのであります
更に法案の七條、三十一條に於きましては、地方長官の權限は極めて大きいのであります、今までは地方長官、其の他一般の役人に對して國民は命令を受けて居つたやうな形をなして居つたのでありまするが、今後はさうは行きませぬ、然るに尚且つ此の七條、三十一條の規定を見ますると、役人は賢明なりと云ふ思想に胚胎して居ります、役人が賢明であつたかなかつたかは、此の戰爭を通じて國民も我々も、泌々と體得せられたのであります、賢明でなかつたのであります、敗戰の主なる面を役人が擔當して居つたのでありまして、決して賢明ではなかつた、殊に非常に「スロー・モーション」である、此の「スロー・モーション」の爲に如何に多數の企業家が迷惑し、勞働者が塗炭の苦しみに陷つたかと云ふことは、我々が厭やと云ふ程感ぜしめられたのでありまして、此の役人を更に賢明なりと云ふ假定の下に、此の法案が規定せられて居ることに對する御答辯を煩はしたいのであります
更に第十四條に安寧秩序と云ふ言葉を使つて居ります、今まで安寧秩序を害すると云ふと、少しでも戰爭に反對するやうな口調のあつたものは、安寧秩序を害すると言つて縛り上げる、併し今後は言論の自由、民權の尊重を基調と致して居りまする此の日本帝國の行政に於て、安寧秩序とは如何なる範圍程度を申しまするのか、例へば國家否認の思想を強調し、或は同情罷業を強調するが如きことは、果して安寧秩序と云ふ文字に該當するや否やと云ふことに付き御伺ひ致したいのであります
更に此の法案の第九條に於きましては、勞働者の代理人を認めて居ります、先程羽田君の御質問にもありましたが、此の勞働者の代理人と云ふものは、各國に於て「ボス」の跳梁に惱んだ實例があります、此の「ボス」の跳梁を如何にして封鎖するか、如何にして之を局限するかと云ふことに付て、何等かの御腹案があらば承りたいのであります
更に二十四條の勞働協約の約款に付て御尋ねするのでありまするが、勞働協約の約款に規定したものは罷業をなすことも出來ない、お互ひの自由契約を尊重致して居るのでありまするが、産業豫備軍が巷に滿ち、失業者が氾濫する時に、お互ひに相互に均等なる契約を結ばれると云ふことは、考へられないのであります、即ち一方は其の日食べて行くかどうか分らない、先の見透しも付かない、使ふ方は綽々たる餘裕を持つて居ると云ふ、此の兩者の間に於きまして均等の契約が結ばれると云ふことは考へられないのであります、隨て動ともすれば資本家側に有利なる契約が到る處結ばれると、吾々は考へざるを得ないのでありまするが、此の協約が直ちに以て後の四分の一の協約に參加しない所の人々の、行動を制約すると云ふことに對しまする其の是非に付て、厚生大臣の御答辯を煩はしたいのであります
私の質問は極めて簡單でありますが、之を以て終りと致します
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=14
-
015・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今渡邊君より御質問のありました點に付きまして、總理大臣の答辯なさる部分を除き、厚生大臣所管の諸點に付て御答へ致します
第一問は先程羽田君の御質問にありました勞働組合法案第一條の中に、單に勞働者の地位の向上を圖ると云ふ文字であつて、政治的地位の向上と云ふ字がない、併しながら勞働組合法の主要なる目的を單に經濟的地位の改善維持と云ふことに限ることは、却て良くない結果を與へるのではないか、總ての問題は政治的地位の向上に關聯を持つのであるから、之を省いたことは果して適當かどうかと云ふ御尋ねであります、此の點は先程も羽田君に御答へ致しました通り、經濟的地位の向上を眼目とするとは言ひながら
〔副議長退席、議長著席〕
此の地位の向上を圖る目的を以てする或る程度の政治運動は、十分に認められて居る譯であります、又總ての勞働者の地位の向上が、政治的地位の向上と密接なる關聯を持つと云ふことも御説の通りでありますが、此の案の條文を以てしても渡邊君の御趣意には十分副ひ得ると信じて居るのでありまして、決して從屬的程度の政治運動を、此の法案に依つて禁止すると云ふ考へは持つて居らぬのであります
第二の御質問は地方長官、即ち法文の中に地方長官の權限を認めてある、法文の趣意から見ると、地方長官は總て利口な者だと云ふ想定の下に法文が出來て居るやうに思ふが、それで果して宜いのかと云ふ御質問であります、此の法文の趣意は地方長官が特に賢明であるとか、或は特に無能であるとか云ふ如き想定の下に作つたものではありませぬ、地方長官が當然其の權限として與へられて居る職務の範圍内に於て、勞働組合法に依つて附與せられて居る職權を行ふと云ふ程度のことでありまして、殊に各箇條で御覽の通り、重要な問題の決定に付ては、常に勞働委員會の決議を經て知事が其の決裁を與へると云ふ趣意になつて居るのでありまして、決して地方長官が獨斷專行を以て、勞働組合の内容に干渉する趣意に出來て居る譯ではないのであります
第三の御質問は案文の第十五條に安寧秩序と云ふ文字がある、安寧秩序を紊りたる時は勞働委員會の申立に依つて、勞働組合の解散を命ずると書いてある、安寧秩序と云ふ言葉が極めて曖昧模糊たる文字であつて、從來屡屡其の名の下に不當な壓迫が加へられた事實があるが、是で宜いのかと云ふ御質問であります、第十五條には勞働組合が、屡屡法令に違反して安寧秩序を紊りたるときと書いてあるのでありまして、法令に違反して、而もそれが安寧秩序を紊した場合のことを規定致して居るのであります、而も其の安寧秩序と申しますのは、普通公共の安全、國家社會の正常なる秩序を紊すと云ふ意味でありまして、廣く人心を惑亂し、經濟、社會、國家の秩序を混亂に陷れる如き場合を指すのであります、それ等の安寧秩序を紊つた行爲が、法令に違反して居ると云ふことを條件と致して居るのであります、さうして裁判所が其の判斷を致すのでありますから、本案の趣意を以てすれば、二重、三重に勞働組合の權利、利益を保護し得るものと考へて居ります
其の次に勞働組合には、勞働者以外の者も組合の委任を受け團體交渉等をすることを認める趣意になつて居るが、それでは「ボス」の跳梁を見るのではないかと云ふ渡邊君の御意見でありますが、從來の例に依りますと、成程「ボス」が介入した如き事例もありました、併しながら又一方に於ては組合員の信頼する、自分等の代理人として、十分權限を任せ得るが如き人間も相當に出て居るのでありまして、團體交渉等の場合に是等の人間を其の代理人に委任すると云ふことは、寧ろ當然認めるべきであり、一概に排斥すべしとも言へないのであります、惡質なる「ボス」が跳梁するが如きことは、寧ろ組合側から自主的に排斥せらるべきものであります、又使用者側で是が不良の「ボス」であると認められた場合には、其の方から勞働委員會に申出ると云ふが途が開かれて居るのでありますから、必ずしも勞働者以外の者に組合の代理を許さないと云ふ規定を設ける必要はない、斯樣に考へる次第であります
其の次の御質問は法案第二十五條に勞働協約に關する紛爭ある場合、調停又は仲裁に付する定めあるときは調停又は仲裁成らざる場合の外同盟罷業、作業所閉鎖其の他の爭議行爲を爲すことを得ず、一言で申しますと、勞働協約の仲裁約款の拘束力です、それは勞働協約は勞働者と資本家との關係を實力の鬪爭に依らずして、圓滿に之を平和的に整調すべきことを本來の使命と致して居ります、そこで誠意ある相互の約束、之を守り、仲裁約款に付ても其の拘束力を持たせることが當然の趣意と考へるのでございまして、唯産業豫備軍が非常に多いから勞働者と事業主とが、決して對等の立場に於て契約を結ぶことが出來ないのではないかと云ふ風な御懸念もありますが、さう云ふ懸念があればこそ、此の勞働組合法に依つて團結權を保障し、團體交渉權の保護助成に努めて居る次第でありまして、御疑念の點、御心配の點は十分に保護せられることと信じて居ります
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=15
-
016・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今渡邊君より私の國家觀に付て御問ひがあつたのであります、私は學説としての國家觀と云ふやうなものに付きましては、御話を申上げる程の資格はないのであります、併し今後の政治は飽くまでも一君萬民の理想に則り、國民の總意を基調とするものでなければなりませぬ、即ち國民の權利を尊重し、國民の權利を擁護し、國民の意思に即應したものでなければならぬと考へます、勿論自由と申しましても、決して放縱無節制を意味するものではありませぬ、自由の觀念は同時に國家社會への奉仕乃至責務の觀念に依つて裏付けられるものでなければなりませぬ、言葉を換へて言ひますれば、社會全體の考へが強く支配しなければならぬと考へます、斯くして個人と國家とが一體化することを以て新日本の國家思想であると申さなければなりませぬ
次に會期延長の考へはないかと云ふ御問ひがありました、私は何とかして皆樣の御理解、御協力に依りまして速かに本案の成立するやうに熱望致して居るのでありますが、會期延長の問題に付きましては、今後の事態に顧みて適當なる措置を執りたいと考へて居ります
〔國務大臣田中武雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=16
-
017・田中武雄
○國務大臣(田中武雄君) 只今豫算委員會の方に行つて居りまして、渡邊君の御質問の趣旨を直接承りませぬのでありましたが、聽きますると列車の囘復の時期に付てが一點、それから工員諸君の通勤に付ての御質問が一點、此の二點に付て御聽きだと承りましたので、其の二點に對して御答辯申上げます
御承知の通りの洵に窮迫せる石炭の事情でございまして、各省とも全力を擧げて此の解決に協力を致して居りまするが、列車の囘復の時期に付きましては、ぱかんと元の通りすつと直すと云ふやり方よりは、石炭の配給が付いて參りまする程度に依りましてどんどんと殖やして、段々に殖やして行くと云ふ風なやり方でございまして、あの二十日からの増發の状態に何時なるかと云ふことに對しては、一寸はつきり御答へを申上げ兼ねるのであります、併し段々配給が殖えるに從つて、線が段々殖えて行くと云ふことに付ての程度のことしか只今申上げられませぬ
それから工員諸君の通勤に付ては、只今のやうな窮屈な事情の下に運轉を致して居りますけれども、工員諸君の通勤に付ては差支へのないやうな手配を致して居ります、右御答辯を申上げます
〔國務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=17
-
018・小笠原三九郎
○國務大臣(小笠原三九郎君) 渡邊君が御尋ねになりました一點は、勞働者を搾取して企業が、利潤追求の道具であつてはならないと云ふ風な意味に今承つたのでありますが、それならば實は私共も、企業は決して露骨なる利潤追求の道具でもなく、又勞資が相爭ふ土俵でもない、斯樣に考へて居るのでありまして、殊に今後の日本經濟は長期に亙つて困難な不況の途を歩まなければならぬのであります、健全な發展のみが、日本の存在を維持して參りまする唯一の手段であることを考へますれば、勞資が對立をして利潤の分配を爭ふべきものではなく、一致協力して互ひに國民としての生活の職場たる企業に於て、是が發展に貢獻すべきものであると考へるのであります、勿論從來の産報運動等に於て、勞働者を唯壓制する弊のあつたことは、是は認めなければなりませぬが、今後も同じやうな意味で、勞資問題を不明瞭なる儘に放置しようと云ふものではございませぬ、互ひに其の立場に於て主張すべきものは主張せしめる、此の對立は飽くまで對立として、相互の批判を自由ならしむる如くすることが必要でありまするが、其の窮極の目標が相互の尊重と理解と、さうして協力とにあることを明確に闡明することは、勞働運動復活の現在に於て、特に適切且つ必要だと考へて居るのであります、此の實現方法と致しましては、企業者と勞働者との合意に依つて、例へば企業の株式、其の他の所有を分割することも可能でありませうし、企業經營の全般に勞働者を參加させることも適當でありませう、だが政府と致しまして指導すべき限界はそこに自らあると思ふのでありまして、企業運營事項にして勞働者との關係が密接なものに付ては、其の意見を反映せしむるが如き方法を講じさせること、或は産業の自治統制の運用に勞働代表を參加せしむることとする位が、政府として指導すべき限界であらうと考へて居る次第でございます
其の次に石炭を一日も速く出すことに付て、どう云ふ措置を執つて居るかと云ふことでございます、此の措置に付きましては既に度々申上げましたが、之を一口に申せば、食糧其の他必需物資の増配、賃金の引上等に依る所謂勞働條件の改善に依り勞務の充足を圖り、他方復舊資金、企業資金等、さう云ふ所要資金を賄つてやることにし、又戰時中に不當に増加した資本の銷却、切下げ等を行はしめるやうな金融竝に助成措置等を講ずることに依つて此の増産を圖つて參る外、新聞等で御承知のやうに石炭廳を作りまして、而も此の石炭廳が中央と地方と直結しまして、地方の増産本部と相俟つて、必ず成績を擧げ得るものと期待致して居る次第でございます、現に十一月中旬に比べますと、十一月下旬は相當増加して居るのでございまして、數字的に申せば、十一月中旬は全國で十六萬二千八百「トン」でありますが、十一月下旬は十九萬二千八百「トン」に増加し、十二月に於きましては、私共は六十六萬五千「トン」を豫想し、一月は九十萬九「トン」二月は百九萬五千「トン」を豫想致して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=18
-
019・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 本多市郎君
〔本多市郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=19
-
020・本多市郎
○本多市郎君 私は先づ本法案の對象たる新日本の企業體制に付て政府の御所見を御伺ひ致したいと思ふのであります、即ち今後の日本の産業體制は民營を主とするか、官營を主とするかと云ふ問題であります、此のことは本法の性格に重大な影響があるからであります、社會主義理念より致しますれば、計畫經濟の下、官公營主義を執ることになると思ふのでありますが、吾人の見解を以て致しますれば、官公營は損益が國家公共團體に歸屬する結果、所謂役人仕事に墮しまして、事業に對する責任觀念と熱意を缺き、經營は放漫に流れ、競爭に依る進歩がない爲に發展性に乏しいのでありまして、此のことは既に國民の熟知する所であらうと思ふのであります、故に新日本の經濟を興隆せしめ、世界の進運に後れざらしむる爲には、必要なる統制は例外的に行ひ、自由經濟を原則とし、個人民營を主として競爭に依る發展を期することが最も適當であると思ふのであります、而つて民營を適當とせざる事業に付てのみ例外的に官公營とするのであります、本法も亦資本的生産を前提とする立案と思ふのでありますが、其の産業體制に付きました政府の御所信を御伺ひ致したいのであります、又計畫經濟は結果に於て統制經濟の別名に過ぎないのでありまして、是れ亦國民の深刻に體驗せる所であります、斯くの如き計畫統制經濟下に於ては、何人が其の運營に當つても、國民の創意工夫と云ふものを十分に活かし得ないのみならず、社會經濟の複雜なる情勢に對應することは困難でありまして、其の結果は國民個人の利益と國家の利益とが逆行する多くの場面を生ずるのであつて、茲に人情の自然に反する破綻の絲口があると思ふのであります、新日本の政治は從來の如き眞面目、正當なる者が馬鹿を見るやうなものではあつてはならぬのであります、今後の政策は個人の利益と、國家の利益とが竝行して増進される所の政策でなければ、眞に活きた政策と云ふことは出來ないと思ふのでありまして、斯くの如き政策は自由經濟を原則として初めて成立つのであります、而して自由經濟に伴ふ弊害に付きましては、盛んに社會政策を斷行して、之を是正すべきであると思ふのであります
次に「ストライキ」合法化の理念に付て、政府の御意見を御伺ひ致したいと思ふのであります、團結せざる個々の勞働者は洵に無力でありまして、如何に苛酷なる勞働條件にも屈從せねばならぬ場合があるのであります、故に勞働條件改善の爲には、團結の力に依る勞働協約締結權を認むる外はないと思ふのでありますが、我が國に於きましては未だに「ストライキ」は不道徳なり、罪惡なりと云ふやうな思想が多いと思ふのであります、是は封建時代の主從關係の思想から來るものと、契約自由の原則より見て、雇傭契約後に甚だしき情勢の變化なき限り、其の變更を強要することが非合法であると云ふ觀念から來るものではないかと思ふのであります、斯くの如き思想がある爲に我が國に於ける勞働條件の改善は甚だしく阻碍せられて居ると思ふのでありまして、此の際本法立案の根本理念たる「ストライキ」正當化、合法化の理念に付て政府は其の見解を國民の前に明瞭にせらるることが、本法の目的を達する上に最も適當であると思ふのであります
次に本法の對象たるべき中小商工業の復活に付て、政府の對策を御伺ひ致したいと思ひます、本法は大工場を主たる對象として立案せられて居るやうでありまするが、今後暫くの間は大工場復興の見透しは困難であつて、我が國の都市産業は、主として、中小商工業が中心とならなければならぬと思ふのであります、然るに今日中小商工業の實情はどうであるか、企業整備で家業を奪はれ、戰災で店舗工場は燒かれ、破壞の儘曝されて居るのでありまして、勞働者の團結權よりも其の對象たる中小商工業の復興が、先決問題であると思はれるのであるが、政府に如何なる對策があるのでありますか、之を御伺ひ致して置きます
次に階級鬪爭の誘發と、生産能率の低下を防止する爲に、如何なる考慮が拂はれて居るかと云ふ點であります、本法に依つて勞働者が種目別に、地域別に組合を作つたならば、都市住民の大部分は使用者と傭人と二分對立することになるのであります、其の結果は階級鬪爭を誘發する虞なしとしないのであります、又屡屡爭議の結果は勞働者に穩健、著實、勤勉の美風を失はしめ、能率低下の虞なしとしない、特に我が國の如き機械の發達不十分な状態に於ては、各人の働きを機械的に明確に知ることは困難であつて、勞働者の誠實と云ふものがなければ、非常なる生産の低下を生ずるのであります、若しも斯くの如き結果に陷りましたならば、産業の興隆どころか産業の破滅であります、更に我が國の中小商工業者、其の他家庭的雇傭關係に於きましては、單なる勞働條件のみの繋りではない、人情に基く敬愛の繋りが多いのであるが、本法に依つて此の點に付て不必要なる對立觀念を生ずるの虞なきや否や、是等の點に付きましては所謂日本的民主主義の立場から、特別の考慮が本法の上に拂はれて居なくてはならぬと思ふのでありますが、如何なる考慮が拂はれて居るかと云ふことを、御伺ひ致して置きたいと思ふのであります
次は企業體制の編成に關する質問でありまするが、勞資協調の爲には、勞資交流の途を開くことが最も適當ではなからうかと思ふのであります、即ち從業員に株式を公開し、一定限度の株式は從業員が株主たるの途を講じ、勞資交流せしむることが、堅實なる産業發達の爲に最も適當ではないかと思ふのであります、之に對する政府の御所信を御伺ひする次第であります、本法に於きましては勞資を截然區分する建前を執つて居るのでありますが、之を恰も農地法に於ける自作農創設の精神と同一の精神を以てするならば、眞に其の事業を愛し、工場を愛し、職場を愛し、熱意を傾注せしむる爲には、其の事業の最終的損益が從業員自身にも歸屬するやうにすることが、最も適當と思ふのであります、又之に依つて勞資雙方の立場が能く理解せられまして、圓滿協調して企業の發展を期することが出來ると思ふのであります、是には低利資金融通等、政府の助成手段は勿論伴はねばならぬのでありますが、斯くの如き方策に對する政府の所信を御伺ひ致したいのであります
次に交通事業、其の他公營事業に付て、爭議防止の爲に當然強制調停の手段を講ずべきであると思ふのでありまするが、更に進んで最後的強制解決の途を講ずべきではないかと思ふのであります、此の點に對する政府の見解を御伺ひ致したいのであります、本法案は爭議を合法化すると共に、爭議の防止を目的とするものであると解するのであります、調停仲裁等を以てしても、最終的解決の法的手段が伴はない點は、民主主義政治の弱點の代表的な缺陷を有するものと思ふのでありまして、洵に遺憾とする所であります、即ち爭議には損害賠償もなければ、解雇される心配もない、爭議は時々やらねば損だと云ふやうな觀念に陷りましたならば、産業の破滅であり、國家の大なる損失であると思ふのであります、殊に交通事業などの爭議は大衆にも非常なる迷惑を及ぼし、他の産業にも及ぼす影響も大なるものがあるのであります、之に對し職權調停の途はあつても、最後的解決の途は設けられて居ないのであります、之を例へば勞働委員會の最後的決定に對し服せぬ場合には、使用者に對しては委員會の事業管理、從業員に對しては使用者の解雇權を認める等の方法に依りまして、強制調停に服せしむる手段を講ずべきものではないかと思ふのであります、又一般の事業に付ても少くとも總ての問題に付き爭議前調停申立の義務を設くべきであると思ふのであります、是等の點に對する政府の御見解を御伺ひする次第であります
次に勞働協約の骨子たる勞働賃銀と勞働時間に付て新事態に對應する政府の御意見を御伺ひ致したいと思ふのであります、現下の情勢は勞働者を含む生産者の立場にあるもの程、有利なものはないと思ふのであります、一般消費者は生活必需品の暴騰に、既に追ひ詰められて居るのであります、斯くの如き事態に於きましては、勞働協約の改訂と云ふものは總て消費者の負擔に於て如何ともすることが出來るのであります、又平時に於ても特に獨占的事業の場合に於ては、勞資の狎合ひに依れば、如何なる協約も消費者の負擔に於てなし得られるのでありまするが、斯くの如き場合に、如何にして一般消費者の立場を擁護するのであるか、此の爲には勞働協約の基準として、最高賃銀の制度が必要ではないかと思ふのであります、又不景氣と失業が深刻になればなる程、勞働者は生きんが爲には如何なる苛酷なる條件でも働かなければならぬ實情に立至るのであつて、多數失業者があるのに、一部の勞働者が長時間酷使せられるやうな不合理に陷らないとも限らない、さう云ふことがないやうにする爲には、勞働者の生活と體位を保護する爲に、最低賃銀と勞働時間の制限がより以上に必要であると思ふのであります、更に勞働時間は全部の勞働者に就勞の機會を與へ、短時間均等の勞働に依つて生活の保障を得せしむる失業對策の重點と云ふ觀點からも、考慮せらるべきであると思ふのでありますが、是等の點に對して政府は如何なる御考へを持つて居られるでのあるか御尋ねする次第であります
次に消質者の立場にある勤勞者の待遇改善に付て、前質問者よりも御話が出たのでありまするが、重ねて御伺ひを致して置きたいと思ふのであります、今日學校教職員、下級官公吏、警察官等が如何なる状況に陷つて居るか、其の苦境は今更多言を要しないのであります、警察官に限りましては、組合への加入を禁止せられたやうでありまするが、其の他の官公吏に對しては、やはり勞働組合に入つて、勞働組合の力で待遇改善をすると云ふ建前を執つて居られるやうであります、して見ると是等の官公吏に對しては「ストライキ」に依り改善を期待して居るのであるか、何れにしても思ひ切つた待遇改善をなすと云ふことは、一刻も猶豫出來ない問題であると思ふのであります、之に對する政府の明確なる所信をお伺ひ致して置きたいと思ひます
次に失業保險と勞働行政、是は不可分なる國家の責任であると思ふのでありまするが、此の點に關する政府の見解を御伺ひ致します、現下多數國民の失業と云ふものは、殆ど總てが國家の責任であつて、本人の怠慢、怠惰に依るものではないのであります、之に衣食住の給與をなすか、職業を與へるか、擧げて國家の絶對責任であると思ふのでありまして、失業保險は實に此の觀點から考へられねばならぬのであります、外國の例はいざ知らず、新日本の再建に當つて、勞働力を極度に必要とする今日に於て、勞働行政宜しきを得れば、失業者なからしむることも出來るのであつて、失業手當に依る財政破綻などと云ふことは、勞働行政に自信なきことを自ら告白するに過ぎないと思ふのであります、失業者は一千萬人と言はれるのに、最前も御話がありました通り、炭礦勞働者不足で悲鳴を擧げて居るのはどうした譯か、困難なる炭礦勞働に對應する勞働條件が充されて居ないからではないかと思ふのであります、尤も如何に多くの人が遊んで暮して居つても、働く意思のない者は失業者ではないのでありますが、今日の如き勞働行政の緩慢さでは本問題の解決は覺束ないやうな氣がするのであります、此の失業對策に自信がなければ失業保險と云ふものは成立たないのであります、故に失業保險は勞働行政と不可分の關係に於て、政府の責任觀念と誠意とが解決するのであります、此の點に付て如何なる確信を持つて居られるのであるか、政府の御答辯を望む次第であります
最後に私は勤勞所得に對する源泉課税を撤廢して、勤勞者の負擔を輕減するの意思はないかどうかと云ふことを御尋ね致します、近來政府が勤勞所得に對する源泉課税に、税源の重點を置くことになりました結果、勤勞者の負擔は著しく加重せられたのでありまするが、大所得者の課税に付ては著しく徹底を缺くやうになつて參つたのであります、而も戰爭中勤勞者に對しては收入の面に於ても、支出の面に於ても、共に共産主義的規制を加へて來たのでありまするが、資本家には、此の收入の面に於て極端なる資本主義的利得を許容して來たのであります、之に對する課税の不徹底が手傳つて非常なる開きを生じ、戰爭成金を作つたのであります、若し勤勞者の如く、税法通り正當に納税して居たならば、何百萬圓、何千萬圓と云ふ財産は出來る筈がないのであります、どんな計算をしても斯の如き戰爭成金は出來る譯がないのでありますが、實に戰爭成金は脱税の結果と見ることが出來るのであります、是等に對しては、改めて財産を調査し、戰時利得を吐き出させることが、戰爭の不公平を是正する上からも勿論必要でありますが、今述べました脱税の點からも當然のことと思ふのであります、然るに勤勞所得に對する源泉課税の如きは、勤勞階級を對象として、税中最大の税源でありまして、惡税の大なるものと言はなければなりませぬ、故に今後の直接税は應能課税主義に則りまして、綜合所得に對する累進率課税を中心とし、本税の如き不合理なる惡税は之を撤廢して、下級勤勞者の負擔を輕減すべきであると思ふのであります、此の點に付ての政府の御意見を御伺ひ致します、以上私の質問は十項目に亙つて居りますが、其の各項目に對し政府の御答辯を求むる次第であります(拍手)
〔國務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=20
-
021・小笠原三九郎
○國務大臣(小笠原三九郎君) 本多君に御答へ申上げます、本多君の御意見として、今日の場合、民營を主とすべし、斯う云ふ御意見に對しましては、私共も全く同感であります、隨ひまして多數の企業がそれぞれ自主的に活動し得るが如く措置することが必要でありまして、是が爲には獨占的な市場支配を抑へること、企業自體の財閥的結合の發生を制限すること、産業、企業が金融資本に不當に支配されないやうな制限をすること、斯う云ふことが必要であつて、是等の措置を執ることに依つて、民營を主として民主主義的に運營し得ると考へて居る次第であります
尚ほ第二の御尋ねになりました中小工業に關する勞資關係でありますが、本法案には特に觸れて居りませぬが、御意見の如く中小工業の現状及び將來等に鑑みまして、從來の子弟關係、家庭的の雰圍氣、斯う云ふやうなことは今後とも産業上の美風として存續せしめたい、斯樣な方針であります
次に産業組織の根本方針に付て御尋ねがありましたが、先刻渡邊君に御答へ致したので、大體御諒解が願へたことと思ふのであります、即ち日本經濟の今後の任務に鑑みまして、勞資對立して利潤の分配を爭ふべきではない、一致協力して互ひに國民として、生活の職場に於て是が發展に貢獻すべきものである、斯う云ふ風に考へて居るのであります、隨ひまして從業者に或は企業の株式、其の他の所有を分割すること、又企業經營に從業者を參加させること、斯う云ふやうな御意見に付きましては洵に望ましい所であつて、是が企業者と從業者との合意に依つてなされることが、最も願はしい所であると考へて居る次第であります
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=21
-
022・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 本多君の御尋ねになりました第一點は、團結權理念の合法的根據が何處にあるかと云ふ質問であります、「ストライキ」をするが如き行動を以て、合法的なりと云ふ根據が何處にあるか、斯う云ふ御質問であります、今日まで勞働者の團結權は法律上所謂放任行爲として自由を認められる程度であつたと云ふことでありましたが、本法に依つて明かに其の第一章に團結權を法的に認めた譯であります、其の根據は使用者側は、既に「ロック・アウト」其の他の方法に依つて勞働者に對し極めて強力なる立場にある、茲に勞働者が平等の立場に於て使用者と契約を結ぶには、どうしても團結の力を以てしなければ不可能であります、常に個々の勞働者は使用者に對して弱者の地位に立つて居る、之に團結權、罷業權を與へると云ふことは社會政策の上から見ましても、又民主主義政治の理念から見ましても適當である、斯樣に考へた次第であります
次に勞働組合法を制定することは、爭議誘發の虞はないかと云ふ御質問であります、勞働組合法のあるとないとに拘らず、爭議が起ると云ふことは現實の事實であります、斯くの如き爭議を圓滿に調停し、或は之を未然に防ぐと云ふことが、勞働法に依つて初めて法的に行はれ得る、此の勞働組合法に於ては勞働委員會なるものを設けて、爭議の虞ある場合、爭議の起つた場合公平なる委員會の決定に依つて之を調停し、解決することに努力する途が開かれたのでありますから、寧ろ將來の勞働爭議を解決する上に於て、斯樣な法律を制定する方が望ましいことである、斯樣に考へた次第でありまして、此の法律が出來たから勞働爭議を誘發する原因となるとは考へて居りませぬ
次に公共事業に付ては、最後的に強制調停の途を開いてはどうかと云ふ質問であります、現行の爭議調停法は今日の事態に適應しない點がありますので、近く勞働組合法と共に新しく爭議調停法を提案する計畫を進めて居ります、其の爭議調停法の中には、公共事業に關しては最後的に強制調停をなし得る途に開きたいと考へまして、其の方面に研究を進めて居ります
次に勞働賃金の最低賃金制度、或は現在の時間制限、何れも新事態に即應しない、更に新しき事態に合致せしむる爲に最低賃金の制度を定めてはどうかと云ふ御説でありました、最低賃金の問題に付きましては、昭和十五年の賃金統制令に依る公定額は至急改正することに致して居ります、時間の制限に付きましては、十一月初頭より戰時中の諸法規を廢しまして、今日工場法の適用を受けることになつて居りますが、更に檢討することと致したいと考へて居ります、最低賃金制度に付きましては、御説の趣意を參酌致しまして、今後篤と考慮致す積りであります
最後に失業保險制度を設けなければ、勞働行政の空虚なることを示す結果になるではないかと云ふ御説でありました、失業保險問題に付きましては、既に本議會に於ても一、二囘政府の所信を述べたと考へて居りますが、目下保險制度審議會と云ふ委員會を組織致しまして、本日第一囘の會合を開いた譯でありますが、失業保險の問題に付きましても、此の委員會に於て敏速に調査研究を致しまして、何等かの成案を得たいと考へて居ります
〔國務大臣子爵澁澤敬三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=22
-
023・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 勤勞所得に對しまする源泉課税を撤廢したらどうかと云ふ御質問に對しまして御答へを申上げます、所得税に於きまして綜合所得税、分類所得税の兩者を併用致しましたのは、昭和十五年の税制改正に依るものであります、其の目的とする所は、負擔の均衡と收入の彈力性を企圖したものであります、即ち綜合所得税は所得の金額に依つて累進課税をなしまして、所得の量に依る所の負擔の均衡を保たしむると共に、分類所得税は資産の所得、事業所得、勤勞所得等の、即ち所得の種類に依りまして税率を異にする比例課税をなしまして、所得の質に依る所の負擔の均衡を保つて、兩々相俟つて全體の負擔の衡平を圖り、且つ比例税率に依ります爲に、其の税率の變更を容易ならしめるのでありまして、所得税の税收入に彈力性を持たしたのであります、現在益益國家の收入の確保を圖ることが必要であります時に、既に綜合所得税に於きましては、税率に對しまして或る程度行詰りを來して居る時に於きまして、分類所得税の廢止は不適當だと考へて居ります、併し將來分類所得税の税率改正に當りましては、資産所得に重課しまして、勤勞所得に對しまする税率の引上が成べく最小に止まるやうに、考慮したいと存じて居る次第であります、尚ほ從來の課税漏れの御意見に付きましては、戰時利得税等に依りまして課税しようと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=23
-
024・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 河野密君
〔河野密君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=24
-
025・河野密
○河野密君 私は只今議題となりました勞動組合法案に付きまして、極めて簡潔に四、五の點に付て御質問申上げたいと存じます
「ポツダム」宣言を受諾して以來、民主主義は我が國の政治的な根本要請となつたのでありまするが、私の理解する所に依りますると、民主主義には二種あるのでありまして、政治上の民主主義と、經濟上の民主主義とが存するのであります、政治上の民主主義に付きましては、今茲に論議を差控へまするが、經濟上の民主主義、所謂産業民主主義「インダストリアル・デモクラシー」に付きまして、私は質問を申上げたいのであります、産業民主主義の根本を成すものは勞働組合でありまして、茲に勞働組合法の提出を見るに至つたのは極めて當然であると言はなければなりませぬ、而して現在提案を致されました勞働組合法を檢討致して見まするに、比較的進歩的な法案でありまして、此の種の立法としては、先づ上乘のものであると我々は考へるのであります、私は本法案の如きものを短日月の間に立案せられましたる厚生當局に對しましては、敬意を表する次第であります、併しながら此の機會に勞働組合法に對する二、三の質疑と共に、勞働行政一般に對する政府の所信を承はりたいと存ずるのであります
第一に御願したいのは、總理大臣に對してでありまするが、「ポツダム」宣言と本勞働組合法との關係如何、「ポツダム」宣言の第十項に、日本國政府は日本國國民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に對する一切の障碍を除去すへしとあるのであります、本法案提出の根據は此處にあるのであるか、民主主義的傾向の復活強化に對する障碍を除去するとは、單に治安警察法を廢するとか、治安維持法を廢するとか云ふことだけではなくして、進んで社會的弱者たる勞働者階級の地位を確立し、法的擁護を與へると云ふことに存すると、斯樣に解するのであります、して見るならば「ポツダム」宣言を受諾した當然の結果として勞働組合法は、當然に制定せらるべき不可缺なる要求であると、斯樣に考へるのであります、若し然りとするならば、本議會が此の法案に對して如何なる態度を執らうとも、又政府が之に對して如何なる態度を執らうとも、「ポツダム」宣言を受諾し、之を忠實に履行せんとする以上は、本法案の如きものを制定することは、絶對的なる要件であると存ずるのでありますが、此の點に對する總理大臣の所信を承りたい、幣原總理大臣は繰返して「ポツダム」宣言を忠實に履行するのであると、斯樣に申して居るのでありますが、其の忠實なる「ポツダム」宣言の履行と云ふことを前提と致すならば、此の法案の通過、實施、運營に對しても、相當なる覺悟を有すべきものであると存ずるが、其の點に對する總理の信念を問ひたいと思ふのであります
第二は政府の産業政策に對する根本方針に付て承はりたいのであります、戰前我が國の産業政策は低賃金、長勞働時間、所謂「チープ・レーバー」に基礎を置いて居たのであります、是は蔽ふべからざる事實であります、曾て「ソーシャル・ダンピング」の論が國際的にやかましくなつたのは此の故であります、當時私は本議場の此の壇上に於て、少くとも政府は「ワシントン」國際勞働條約を承認し、一週四十八時間制を採擇して、之に應ふべきものであると云ふことを主張致したのでありますが、今日に至るまで其の事なく終つたのであります、此の低賃金、長勞働時間に立脚すると云ふ日本の産業の弱點と云ふものは、戰時中も其の儘繼續致しまして、寧ろ日本の産業は戰時中、中小工業が徒らに横に擴がつたと云ふやうな形態を具へて居るに過ぎなかつたのであります、近代工業の中樞を成すと言はるる航空機工業に於てすら其の感は深かつたのである、「アメリカ」と同じ航空機産業に從事する勞働者を擁しながら、「アメリカ」の十分の一程の生産能力すら擧げることの出來なかつたと云ふ實情は、正に茲に基因するのであります、日本の飛行機の六割を生産したと稱する三菱重工業の名古屋工場に於て、其の飛行機の製品を各務ヶ原の飛行場に送る場合に牛車を使つて居て、牛を運搬するのに寧ろ「トラック」を使つて居たと云ふやうな事實は、日本の産業の弱點をまざまざと露呈して居たものでなかつたかと思ふのであります、然るに戰後に至りまして、我が國の産業政策を如何にすべきかは各方面の檢討の材料となつて居りますが、之に對して未だ根本的なる意見を承ることは出來ない、新日本建設の方向を述べた日本産業の代表者と言はるる鮎川義介氏は、終戰後日本の産業の復興は低賃金にあり、失業者が殖えて賃金が低下するならば、日本の産業は復興の機會を得るであらうと云ふことを放言して居るのであります、是が我が國の所謂代表的なる資本家の時局認識であると存ずるのでありますが、政府は之に對して如何なる考へを持つて居るのであるか、我々の見る所に依るならば、戰後に於ける日本の産業復興の方向は、高能率、高賃金、高度に機械化されたる産業と、近代的なる勞務管理と、文化的なる勤勞者生活と、所謂高能率、高賃金、而して生産第一主義に依るべきものであると、斯樣に信ずるのでありますが、商工當局の御考へは如何でありませうか(拍手)先般「アメリカ」の賠償大使である「ポーレー」大使が日本に參りまして、日本に於ける工業の特色は軍需生産に集中せられて居る、併しながら日本の工業には、尚ほ民需生産の能力が十分に殘存して居る、日本の完全なる非武裝化をすることに依つても、日本の工業を全面的に否認するものではない、斯樣な前提の下に於て現物賠償の具體的措置として、工作機械に付ては是れ是れ、造船所に付ては是れ是れ、鋼鐵に付ては二百五十萬「トン」を超ゆるものは禁止、電力に付ては是れ、化學工業に付ては是れと、中間的に、日本より取去るべき工業設備の移動案を發表致して居るのでありますが、此の發表を見た今日に於て、商工當局は如何なる對策を以て日本の産業の將來に對せんとするのであるか、此の日本産業復興の方向に付て如何なる具體策を持つて居るのであるか、我々の見る所に依るならば、所謂勤勞者を中心にして日本産業の復興を圖る以外にないと信ずるが、商工當局の御信念如何、此の點を承りたいのであります
第三に産業民主制の内容に付て政府は十分なる理解を有するや否やと云ふことであります、先程の此の壇上に於きましても、多くの論をなすものがありましたが、世上に於ても同じやうなことを言つて居るのであります、勞働組合を放任するならば、産業の荒廢を來すのではないか、或は事業を國營に移すならば、之に依つて能率を阻碍するのではないか等々、世間の論者と云ふものは、皆さう云ふことを論じて居るのであります、併しながら我々の見る所は勞働者に勞働組合を組織せしめ、勞働組合を企業に參畫せしめ、權利と共に義務を與へ、地位と共に責任を與へることが生産を増大し、能率を増進する所以であると信ずるが、政府の所信は如何でありませうか、我々は重要産業に付ては國營を主張するのであります、今日の事態に於て國營を以て産業の復興を圖る以外に途があるでありませうか、然るに多くの者は國營産業の非能率化を説き、官僚支配と混合することに依つて之に反對をするのであります、併しながら事實は決してさうではない、從來國營産業、專賣事業の能率の上らなかつたのは、それに從事する從業員に組織を與へ、從業員をして生産に對して責任を持たせなかつたからであると私は信ずるのであります、(拍手)戰時中鐵道の運營に當つた者は誰であつたか、戰時中船舶の運營に當つた者は誰であつたか、空襲下に於て鐵道を誤りなく運營した者は、鐵道省の幹部室に納まつて居る高級の人々にあらずして、實はお下髮に結つた十五、六位のいたいけな少女達が國家大事と思つて働いた、其の作業能率に依るものと私は信ずるのであります、我我は此の鐵道從業員に組織を與へ、勞働者に組織を與へて、責任と義務と、訓練とを與へるならば事業の運營、能率の増進期して俟つべきものありと信ずるのでありますが、此の點に付ての政府の所信を承りたいのであります、殊に全國四十萬の鐵道從業員を擁する運輸省、全國三十萬の從業員を擁する遞信院と云ふものが、如何なる勤勞者對策を考へて居るか御開陳を願ひたい、殊に我々が極めて不思議に思ふのは、厚生省が極めて進歩的なる勞働組合法を提出致して居りまする反面に於て、鐵道省は鐵道省として、恰も厚生省とは相關せざるが如く、鐵道委員會を作つて、横斷的なる勞働組合の組織を寧ろ阻止するが如き方向を執つて居るやに聞くのでありまするが、此の點に對する運輸當局の答辯を求めたいと思ふのであります、我々の見る所に依りまするならば、官業の從業員と雖も、鐵道省、遞信院、或は專賣局等の從業員と雖も、それ等の者が勞働組合を組織したならば、其の勞働組合は總て横斷的な組織に加入することを許し、それ等の勞働組合に對する行政は、厚生當局が他の一般勞働者に對すると同じやうな取扱をなすべきものであると信ずるが所見如何、同時に今日勞働組合法の制定を見た反面に於て、各會社、事業場が爭つて勞働組合を作つて居りまするが、是は看板を塗變へた所謂「コンパニー・ユニオン」會社組合を作ることに汲々として居るのでありまするが、是等の點に付ての政府の所見を承りたいと存じます
第四に團結權と、團體交渉權と、罷業權の三つが勞働權の内容をなすものでありまして、隨て勞働立法の體系は勞働組合法、團體協約法、勞働爭議調停法の三本建で、所謂三位一體に依つて其の目的を達すべきものと我々は信じます、今囘の勞働組合法には團結權、團體交渉權に付ては明確なる規定を設けて居るのでありまするが、勞働爭議調停法に關しては、勞働委員會を設けると云ふ以外に、具體的なる方向を明示して居りませぬ、先程の厚生大臣の御答辯に依りますると、勞働爭議調停法を近く改正すると云ふことでありまするが、現下の勞働爭議調停法に鑑みて、如何なる改正をなさんとするのであるか、又勞働爭議の所謂自然調停と云ふものに對して如何なる方針を持たれるのであるか、此の點に付ての御答辯を煩はしたいと存じます
第五に現下の急務である石炭の増産に付て、商工當局に御尋ねを申上げたいのであります、我々は先般石炭の増産に關する我々の所見を當局に具申致しました、其の要旨とする所は從業員組合を作つて、其の從業員の熱意を喚起することに依つて石炭の増産を圖るべしと云ふのであります、然るに其の後商工當局の案を見ますると、石炭廳を御作りになり、從業命令を發動して此の危機を突破せられんとするやうであります、我々の要求するのは石炭の増産であつて、官廳の増産ではないのである、法令の制定ではないのであります、從來我が國の官廳は事有る毎に役所を増設し、事有る毎に法令を制定し、法令と官廳の増産は出來て居るけれども、具體的なる現物の物資の増産は、常に出來ないと云ふのが我が國の從來の官廳の幣である(拍手)之に對して商工當局は如何なる對策を持つのであるか、我々の觀る所に依りまするならば、現在炭礦從業員は二十數萬居ると存じますが、二十數萬の炭礦從業員は全く熱意を失つて居る、其の熱意を失つて居る根本の原因は、低賃銀と、食糧難と、配給の不正、言ひ換へるならば炭礦の從業員を人間として取扱つて居らぬ點にあるのであります(拍手)私の所に參りました常磐炭礦坑夫の愬ふる所に依りますると、炭礦坑夫が一日働きに持つて行く所の辨當、晝食の辨當だけで六圓五十錢掛る、而もそれに依つて得る所の賃金は八圓である、是でどうして炭礦坑夫が石炭を掘る所の熱情が湧くであらうかと言つて居る、新聞紙の傳ふる所に依れば、北海道に於ける美唄の炭礦に於ては炭礦坑夫の賃銀、手當を合せて二十圓にすべきものであるとの要求が出されて居るのでありまするが、少くとも最低の食糧を政府に依つて確保するか、然らずんば二十圓程度の炭礦賃銀にまで上げるにあらずんば、此の石炭危機は斷じて切拔けることは出來ぬと信ずるが、政府の所見如何
次に私は日傭勞務者の問題に付て御尋ねを致します、此の勞働組合法と日傭勞務者との關係はどうであるか、日傭勞務者と一口に申しまするが、此の日傭勞務者の範圍は極めて複雜多岐に分れて居ります、大工、左官、石工などの如く獨立で營業を營んで居る者もございます、何々組、何々會社と、時に常傭的に雇はれて居る所の勞務者もあります、沖仲仕、沿岸仲仕、或は小運搬業に從事して居る者もございます、或は失業者の別名とも言ふべき登録勞務者の如きものもあるのであります、是等の勞務者の總ては昭和十五年百五十九萬と言はれて居りました、最も景氣の好い時代に於ける百五十九萬、昭和十年末には二百四十四、五萬を數へて居つたのであります、今日此の日傭勞務者は、私は益益殖えて行く所の傾向にあると思ふのでありますが、此の日傭勞務者の對策、此の日傭勞務者をして如何にして勞働組合を組織せしむるか、現在ある勞務協會、之を如何に處置せんとするものあるか、厚生當局に御尋ねを致したいのであります
次に私は法文の内容に付て、二、三點を御尋ね致したいと思ひます、此の法律、勞働組合法案は冒頭に申上げましたやうに、各國に於て勞働組合が問題となつた多くの點は、之に取入れられて解決を致して居ります、例へば「タッフ・ベール」事件として有名なる組合の賠償問題に付ては、本法案の第十二條に依つて解決を致して居ります、或は「オスボーン」判決として世界的に有名なる政治資金の問題に付きましては、第十三條に依つて解決を致して居ります、併し今一つ各國の立法例に於て問題となつて居りまする勞働爭議に對する「ピケッチング」所謂爭議をする場合に、お前爭議團に入れと勸誘する場合に於ける所謂「ピケッチング」問題に付て如何に考へて居るのであるか、此の點を明確にして戴きたいのであります、本法第一條の第二項に「刑法第三十五條の規定は勞働組合の團體交渉其の他の行爲にして」云々と書いて居りまするが、此の第一條第二項の趣旨は、各國に於て問題となつて居る「ピケッチング」の如きものに對しては、之を合法なりと斯樣な見地に立つて居るものであるかどうか、此の點をはつきりと御答辯が願ひたいと存ずるのであります
次に本法に勞働者の範圍が極めて廣くなつて居るのは我々の贊成する所であります、唯第四條の第二項に於て官公吏に對する所の特別なる規定がございます、此の點に付きましては先程質問に對して厚生當局から答辯があつたのでありまするが、官業其の他に於て、官吏も勤勞者と同一の勞働組合に加入すると云ふことを認めて居るのであるかどうか、官吏、公吏と雖も、其の從業員と同じ線列の上に立つて、勞働組合に加入することを認めて居る趣旨であるかどうか、其の場合に其の官吏に對する取扱ひに付ては、先程の勅令に委ねてありまする例外規定の適用は如何相成るのであるか、此の點を御尋ね申上げたいのであります
以上極めて簡潔でありまするが、本法案を手に致しまして、私の考へて居る所の所見の一端を申述べつつ政府の御答辯を求めたのであります
勞働は國家の基本でありまして、勞働なくして日本の再建はあり得ないと信じます、勞働權が憲法の上に規定せられて居る所の國家のあることは周知の如くであります、獨り我が國に於きましては勞働保護の遲れて居ること、是れ亦周知の事實であります、此の勞働保護の遲れて居つた其の一點こそが、日本をして斯くの如き悲境に陷れた有力なる原因の一つをなして居ると私は確信するのであります、今勞働組合法の提案を見た、此の勞働組合法の提案が今十年早かつたならば、日本は如何相成つて居つたであらうか、我々は徐ろに既往を囘顧して、萬感胸に迫るものがあるのであります、政府は「ポツダム」宣言に規定されて居るから、已むを得ずして之を出したのであると云ふやうな消極的なる態度を執るべきでなく、是こそが日本再建の土臺をなすのものである、之に依つてこそ日本再建の途が開かれるものであると云ふ熱情を持つて、此の法案の運營に當らなければならないと私は信ずるのであります、從來厚生當局は動もすれば厚生行政に對する熱意を缺く憾みが多かつたのでありまするが、願はくは自己の所信に邁進し、一生の仕事としてでも、勞働行政の革新をなし、勞働者福祉増進をなすを自分の天職とすると云ふやうな氣持に於て、厚生當局が熱情を持つて本法案の運營に當らんことを衷心より希望致しまして、私の質問を終る次第でございます(拍手)
〔國務大臣男爵幣原喜重郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=25
-
026・幣原喜重郎
○國務大臣(男爵幣原喜重郎君) 只今河野君より私に對する御質疑の要點は、先づ「ポツダム」宣言と此の勞働組合法との關係如何と云ふことと、それから本案の通過實施に付ての私の考へ如何と云ふ點であります、之に御答へ申上げますが、「ポツダム」宣言に於きまして、我が國は民主主義的傾向の復活、強化に對する一切の妨害を除去すべしと云ふことになつて居るのであります、此の民主主義的傾向の復活、強化に付きまして當然考へなければならぬことは、勞働者の地位向上の問題であります、私は本案の成立に依りまして、勞働者の團結權を保障し、團體交渉權を保護し、助成し、以て勞働者の地位の向上を圖り、我が國の經濟の民主主義的發展に寄與することが大なるものがありと信じて居るのであります、何も「ポツダム」宣言に書いてあるから厭や厭やながら斯う云つたやうな方角に進んで行くと云ふことではありませぬ、日本の將來を思ひ、日本の經濟の前途を考へますれば、どうしても此の方向に進んで行くしかないと私は考へて居ります、是が即ち我が國の國利民福に寄與する所以であると考へます、此の信念に基きまして私は本案に臨んで居る者であります
〔國務大臣小笠原三九郎君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=26
-
027・小笠原三九郎
○國務大臣(小笠原三九郎君) 河野君の御質問に對しまして御答へ致します、日本の産業は將來技術の向上、能率の増進に大いに力を入れなければならぬと考へて居ります、而して能率の増進に依つて得ました利益は當然之を勞資雙方に收得せしめ、勞働者に對しては就業時間の短縮、賃金の増加を圖り、以て勞働條件の改善に資して、尚ほ能率向上を進めたい、斯樣に考へて居る次第であります、次に産業の復興には勞働が基礎ではないかと云ふ御話に對しましては、此の御意見は全然同感であります、特に日本が外國より原料を輸入し、製品を輸入物資の見返り等として輸出しなければならぬ場合に、勞働が其の基礎でありますることは申すまでもないことでございまして、私共も河野君と同樣な考へを持つて居る次第でございます
其の次に重要産業を國營化したらどうかと云ふ御意見でありましたが、之に付ては、私共も産業の國營と云ふことは、必ずしも産業の民主主義化と牴觸するものでない、斯うは考へて居りますが、併し敗戰後に於きまする我が國の國情、各般の状況等から見まして、主要産業を國營化すると云ふ意思は、現在の所持つて居りませぬ
それから先般河野君等、社會黨の各位が決議書を齎されまして、炭礦に對して色々御要望がございました、御尤もな點も多々あるのでございまするが、今御尋ねになりました二つの點だけに付て御答へを申上げます、それは一つは勞働組合を各炭礦で結成させて、組合員の熱意を喚起して、石炭の増産に邁進せしむるやうにとの御話でございます、此の點に付きましては商工省と致しましても、炭礦に健全なる勞働組合の結成せられることは、石炭増産上洵に望ましいことだと考へて居るのであります、尚ほ業者に於きましても、健全なる組合の結成せられることは、歡迎して居ると云ふ實情でございます
其の次には炭礦從業員に對する食糧竝に必需物資確保の萬全を期し、且つ其の配給權を勞働組合に與へ、後顧の憂ひなく増産に專念せしむることと云ふ御要望でありました、從業員に對する食糧竝に必需物資の確保の萬全を期しますることは、最も緊要な事項と思ひ、現在も極力努力しつつありまするが、今後に於きましても、此の方面に大いに努力する考へでございます、唯配給權の問題でございますが、此の配給に付きましては、業者の側にも十分責任を負つて貰はなければならぬと考へますし、又勞務者の側にも、十分其の分配の公平であると云ふことを、納得して貰はなければならぬと思ひまするので、其の間に何等かの機構が要ると思つて居りまするが、目下研究中でございまして、私は此處で確答は出來ませぬけれども、例へば委員會の如きものを作りまして、經營者側と勞務者側とが兩方互に參加して、配給の公明を期すると云ふやうなことにしたら如何かと考へて居る次第であります、更に賃金の増加に付て二十圓に引上げろと云ふやうな御話がございましたが、御承知の如く十一月の一日より大幅の引上を行ひまして、八割の引上を行つたのであります、併し是は啻に賃金の引上を行つたばかりでなく、食糧、生活必需物資等の増配等も致しまして、勞働條件が改善されて居ることは、河野君の御承知の如くであります、併しながら尚ほ實情を能く吐露し合ひまして、其の實情に即して更に引上を要すると致しますならば、之を引上げる考へであります
〔國務大臣田中武雄君登壇)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=27
-
028・田中武雄
○國務大臣(田中武雄君) 河野君に御答へを申上げます、鐵道委員會は決して横斷的なる勞働組合を阻止する意味を以て作つたものではありませぬ、只今上程になりました勞働組合法が通過を致しまして、官吏に對する處置等も決りました上は、十分從事員の意思を聽きまして、勞働組合を認めて參る積りであります、そして其の組合が國際線上に於ける理想的の存在を示して呉れるやうに、私は念願を致して居りますと云ふことをはつきり申上げて置きます(拍手)
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=28
-
029・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 河野君の御質問に係る第一問中、組合法案の中に於て爭議調停に關する規定が極めて大筋しか掲げられて居ないが、どう云ふ方針であるかと云ふ御尋ねでございます、此の法律の中には勞働委員會が爭議の調停、仲裁等に付て斡旋することを定めて居りますが、更に爭議調停の完全を期する爲に、目下爭議調停法の改正を考慮して居ります、勞働爭議調停法の改正に當りまして、差當り考慮すべき點は次の如くであると思ひます、第一には爭議の事前調停を制度化することであります、第二に強制調停の範圍を擴大すると云ふ點であります、第三には必要に依つては爭議行爲の禁止又は中止命令を發し得る如くに改めると云ふことであります、第四に勞働委員會を調停法上の常設爭議調停機關として活用すると云ふ點であります、第五は勞働委員會の爭議調停に場合に依つては決定拘束力を有せしめると云ふ點であります、之に依つて今後の爭議調停は、極めて圓滑に且つ敏速に行ひ得ることと信じて居ります
次に日傭勞働者の問題であります、日傭勞務者の適正なる管理を行ふことは、非常に困難なものでありますが、併し從來とも賃金等に付きましては、或る程度賃金を公定し、又實情に即した協定賃金の制度を認めて居ります、河野君より現存の勞務協會をどうするかと云ふ御質問がありましたが、勞務協會は最近に解散をすることに決定致しましたから、其の點は御諒承を願ひます
次に爭議の際勞働者が「ピケッチング」を行ふことが果して爭議行爲として正當であるかどうかの意見を明白に聽きたいと云ふことであります、先程本案提出の理由を説明致しました時に、其の中に勞働組合の團體交渉、「ピケッチング」其の他の爭議行爲にして正當なるものに付ては、刑法第三十五條の適用あることは勿論であると申述べたのでありますが、「ピケッチング」を爭議の正當な行爲として認める趣意で此の法案は出來て居るのであります
次に官吏の組合加入の問題に付ての質問であります、此の點に付きましては、先程一應質問に答へたのでありますが、元來官吏を勞働組合の中に加入せしめ、或は官吏をして勞働組合を組織せしむることをどう云ふ風に諸外國に於て認めて居るかと申しますと、御承知の通り「イギリス」に於ては、官吏は組合を組織し得るけれども、他の組合に加入することが出來ないと云ふことになつて居り、「フランス」に於ては、原則として官吏等に付ては組合の結成を禁止して居ります、「アメリカ」に於ては鐵道、遞信等の從業員に付て其の爭議のある場合、相當の制約規定を設けて居るのであります、我が國に於きましても官吏の組合結成加入は之を認めて居ります、併しながら其の他の法規に依つて種々の制約を受けることは、先程他の質問の場合に御答へ致した通りでありまして、勅令を以て特に制約を定めることを考慮致して居ります、以上厚生省に對する質問に御答へした次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=29
-
030・河野密
○河野密君 此の席からの發言を御許し願ひたいと思ひます――一つは商工大臣でありますが、先程私の質問の趣旨が徹底しなかつたと存じまするけれども、先般賠償物資が中間的に發表致されまして、此の賠償物資の履行に依つては、日本の産業は將來如何なる形になるかと云ふことが重大なる問題であらうと存じます、是は獨り事業家、企業家のみが之に關心を有するものでなくして、全日本の勤勞者全般の問題にも關係を致すことであると思ふのでありまして、若し其の賠償の點に付て勤勞者の熱意を披瀝することが必要なりとするならば、我々は之を吝かとするものではないのでありまするが、唯其の案の發表に依つて商工當局が如何なる考へを持つて居るか、商工當局の見透し如何、之に依つて我々も亦對策を考へなければ相成らぬと云ふ趣旨に於て、此の點を御尋ね申上げたのであります、就きましては、此の點に付ての重ねての御答辯を煩したいと存じます、今一つは厚生大臣の最後の御答辯の中に、官吏に付ての特別なる取扱ひをすることに付ては私も諒承致します、唯鐵道從業員、或は遞信從業員、或は專賣局の如き官營事業、公營事業等に於て、官吏と從業員とが共に組合を組織することが出來るのであるかどうか、其の場合に於ける例外規定は其の從業員組合の中に於ける官吏のみに適用があるのかどうか、此の點を明確にして欲しい、是が私の質問の趣旨であります、以上二點に付て御答辯を煩はしたいと存じます
〔國務大臣芦田均君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=30
-
031・芦田均
○國務大臣(芦田均君) 只今河野君の官吏の組合に對する御質問に御答へ致します、現業廳に於て官吏と雇員、それが一つの組合に組合員として參加し得るや否やと云ふ御尋ねであります、御承知の通り使用者の代表と認められる如き人間が組合に加入する場合には、勞働組合とは認めないと云ふ規定がありますから、國家を代表する地位に居るかどうかと云ふ問題が相當重要な意味を持つ關係上、例へば局長であるとか、課長であるとかと云ふものを果して國家意思を代表するものと認めて、之に加入を許さないかどうかと云ふことは、個々の官廳に付て現實に判斷をした上でないと、抽象的には定め兼ねる點があると思ひます、併しながら官吏と從業員とが一つの組合に加入することを禁ずると云ふ趣意では出來て居りませぬ、以上御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=31
-
032・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 河野君、商工大臣は今他の委員會の爲め退席されましたから、あなたの商工大臣に對する質問は委員會ではどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=32
-
033・河野密
○河野密君 此の點は極めて重大なる點でありまするので、適當の機會に商工當局から其の所信を明かにせられんことを要望致しまして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=33
-
034・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 是にて質疑は終了致しました、本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=34
-
035・長野高一
○長野高一君 本案は議長指名三十六名の委員に付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=35
-
036・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」〕と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=36
-
037・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました――日程第二及び第三は便宜上一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=37
-
038・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て日程第二、鹽專賣法中改正法律案、日程第三、昭和二十年法律第十八號中改正法律案、右兩案を一括して第一讀會を開きます――澁澤大藏大臣
第二 鹽專賣法中改正法律案(政府提出) 第一讀會
第三 昭和二十年法律第十八號中改正法律案(昭和二十年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する件)(政府提出) 第一讀會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=38
-
039・会議録情報3
━━━━━━━━━━━━━
鹽專賣法中改正法律案
鹽專賣法中左の通改正す
第二十四條の二 鹽の需給調整上特に必要あるときは第四條、第五條、第七條、第九條、第十一條第二項、第十二條、第十四條第一項及第十八條第二項(第九條及第十一條第二項に付ては第四十條及第四十條の二に於て、第十二條に付ては第四十條に於て準用する場合を含む)の規定に拘らず勅令を以て別段の定を爲すことを得
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
━━━━━━━━━━━━━
昭和二十年法律第十八號中改正法律案
昭和二十年法律第十八號中左の通改正す
第一條中「百十二億千三百八十萬圓」を「百十四億千九百二十萬圓」に改む
附 則
本法は公布の日より之を施行す
參 照
昭和二十年法律第十八號は昭和二十年度一般會計歳出の財源に充つる等の爲の公債發行に關する法律なり
〔國務大臣子爵澁澤敬三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=39
-
040・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今議題となりました鹽專賣法中改正法律案外一件に付きまして提案の理由を御説明致します
先づ鹽專賣法中改正法律案に付き御説明致します、終戰後鹽の需給は、海外からの輸入の杜絶、國内生産の減退、殊に先般の風水害に因ります鹽田の莫大なる被害に伴ひます生産の激減に因りまして極度に逼迫し、國民生活確保の上から相當憂慮すべき状態に立至つて居るのであります、斯かる事態に對處しまして、國内に於ける鹽の増産及び是が輸入に付きましては、特段の努力を致して居るのでありますが、鹽増産方策の一つとして、戰時行政特例法に基き鹽專賣法の特例として實施して參りました所謂自給製鹽に付て、鹽專賣法自體に之が實施に必要なる法制的措置を講ずると共に、現在著しく低廉に失して居ります鹽の價格の引上を行ひ、以て鹽の生産意欲を昂揚し、一層自給製鹽の普及を圖り、又鹽の效率的使用と、消費節約とを更に徹底せしめ、併せて國庫負擔の輕減に資することは、現下最も緊要なる措置でありますから、茲に本法律案を提出した次第であります
次に昭和二十年法律第十八號中改正法律案に付て御説明を致します、今囘提出致しました昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案第二號に計上致しました經費の財源と致しましては、同經費相當額の公債發行を要するのでありますが、是が爲には同法第一條に規定する公債の發行限度を増額する必要がありますので、本法律案を提出致しました次第であります、以上二件の法律案に付きましては、何卒御審議の上速かに協贊を與へられんことを希望する次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=40
-
041・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=41
-
042・長野高一
○長野高一君 日程第二、第三の兩案は之を一括議長指名十八名の委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=42
-
043・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=43
-
044・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決めました――日程第四、蠶絲業法改正法律案の第一讀會を開きます――紅露農林政務次官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=44
-
045・会議録情報4
――――◇―――――
第四 蠶絲業法改正法律案(政府提出) 第一讀會
蠶絲業法改正法律案
蠶絲業法
第一條 本法に於て蠶絲とは蠶種、繭、生絲其の他命令を以て定むる蠶絲類を謂ふ
第二條 蠶種製造業を營まんとする者は命令の定むる所に依り主務大臣の許可を受くべし
第三條 原原蠶種たる蠶種の品種は主務大臣之を定む
第四條 原原蠶種は政府又は當該原原蠶種の品種の選出育成者に非ざれば之を製造することを得ず
原原蠶種の品種の選出育成者は命令の定むる所に依り主務大臣の許可を受け他の者をして其の選出育成に係る品種の原原蠶種の製造を行はしむることを得
第五條 政府は命令の定むる所に依り蠶種の品種の選出育成者をして其の選出育成に係る品種の蠶種を提出せしめ當該品種の原原蠶種を製造し之を配付することを得
第六條 蠶種の品種の選出育成者は其の選出育成に係る品種の原原蠶種に付蠶種製造業者より其の買受の申込ありたるときは正當の事由あるに非ざれば之を拒むことを得ず
第七條 原蠶種は都道府縣又は命令を以て定むる蠶種製造業者に非ざれば之を制造することを得ず
原蠶種は原原蠶種より産出したる繭を用ふるに非ざれば之を製造することを得ず
第八條 普通蠶種の製造は主務大臣の定むる交配形式に依るべし
普通蠶種は原原蠶種又は原蠶種より産出したる繭を用ふるに非ざれば之を製造することを得ず
第九條 蠶種製造業者は自己の製造する蠶種に關し命令の定むる所に依り都道府縣若は其の者の所屬する團體の檢査を受け又は自ら檢査を行ふべし
前項の規定に依り蠶種製造業者が其の者の所屬する團體の檢査を受け又は自ら檢査を行ひたる場合に於て監督上必要ありと認むるときは都道府縣は更に檢査を行ふことを得
第一項の檢査(前項の檢査ありたる場合に於ては其の檢査)に合格したる蠶種及其の蠶兒に非ざれば之を讓渡し又は飼育することを得ず
第十條 行政官廳は蠶兒の飼育又は生繭の取扱を爲す者に對し蠶病の驅除又は豫防に關し必要なる施設を命じ其の他取締上必要なる命令を爲すことを得
第十一條 學術研究の爲に蠶種の製造又は蠶兒の飼育を爲す場合に於て行政官廳第三條、第四條又は第六條乃至第九條の規定を適用する必要なしと認むるときは命令を以て其の適用を除外することを得
第十二條 都道府縣は命令の定むる所に依り蠶種に關する檢査其の他蠶病の驅除又は豫防の爲必要なる吏員を置くべし
第十三條 蠶種の輸出又は輸入は命令の定むる所に依り主務大臣の許可を受くるに非ざれば之を爲すことを得ず
第十四條 行政官廳は桑苗の檢査又は桑苗若は野蠶の病蟲害の驅除若は豫防に關し取締上必要なる命令を爲すことを得
第十五條 繭は命令の定むる所に依り都道府縣の行ふ檢査に依る品位に依るに非ざれば其の賣買取引を爲すことを得ず
第十六條 生絲は命令の定むる所に依り國の生絲檢査所の檢査を受けたるものに非ざれば之を輸出することを得ず
生絲は前項の檢査又は命令を以て定むる檢査に依る正量及品位に依るに非ざれば其の賣買取引を爲すことを得ず
第十七條 主務大臣前二條の規定を適用する必要なしと認むるときは命令を以て其の適用を除外することを得
第十八條 主務大臣必要ありと認むるときは勅令の定むる所り依り蠶絲業を營まんとする者に對し行政官廳の許可を受くべきことを命ずることを得
第十九條 行政官廳は第二條又は前條の許可を受けたる者の行爲が本法若は本法に基きて發する命令又は之に基きて爲す處分に違反し又は公益を害したるときは其の許可を取消し又は其の業務を制限し若は停止することを得
第二十條 主務大臣は蠶絲の需給の調整、價格の安定又は輸出の振興上特に必要ありと認むるときは蠶絲の生産、加工、輸出、輸入又は取扱を業とする者(以下蠶絲業者と稱す)に對し勅令の定むる所に依り蠶絲の生産、配給、消費、使用、價格、輸出又は輸入の統制に關し必要なる命令を爲すことを得
第二十一條 蠶絲業者は其の蠶絲業の改良發達を圖る爲共同の施設を爲す目的を以て蠶絲協同組合を設立することを得
蠶絲協同組合は法人とす
第二十二條 蠶絲協同組合は其の目的を達する爲左の事業を行ふことを得
一 組合員の生産又は取扱に係る蠶絲の加工又は販賣
二 組合員の事業に必要なる物の共同購入及共同設備の設置
三 組合員の生産したる蠶絲の檢査
四 前各號に掲ぐるものの外蠶絲協同組合の目的を達するに必要なる施設
第二十三條 蠶絲協同組合は命令の定むる所に依り其の名稱中に蠶絲協同組合たることを示すべき文字を用ふべし
蠶絲協同組合に非ざるものは其の名稱中に蠶絲協同組合たることを示すべき文字を用ふることを得ず
第二十四條 蠶絲協同組合を設立せんとするときは蠶絲業者七人以上設立者と爲り定款を作成し出資第一囘の拂込を爲さしめたる後二週間以内に勅令の定むる所に依り主たる事務所の所在地に於て設立の登記を爲すべし
蠶絲協同組合は前項の設立の登記を爲すに因りて成立す
第二十五條 蠶絲協同組合の組合員は出資一口以上を有すべし
蠶絲協同組合の組合員の責任は其の出資額を限度とす
第二十六條 蠶絲協合組合に總會を置く
總會は總組合員を以て之を組織す
蠶絲協同組合は定款の定むる所に依り總會に代るべき總代會を設くることを得
第二十七條 組合員は總會に於て各一個の議決權を有す但し定款の定むる所に依り一人に付議決權總數の十分の二を超えざる範圍内に於て出資口數に應じ二個以上の議決權を有せしむることを得
第二十八條 蠶絲協同組合に理事及監事を置く
理事及監事は組合員又は組合員たる法人の業務を執行する役員の中より總會に於て之を選任す但し組合設立當時の理事及監事は定款を以て之を定むべし
特別の事由あるときは理事及監事は前項に該當せざる者より之を選任することを得
第二十九條 蠶絲業者又は其の團體(農業團體を含む)は蠶絲業の改良發達及統制を圖る目的を以て蠶絲業會を設立することを得
蠶絲業に密接なる關係ある事業を營む者又は其の團體は蠶絲業會の定款の定むる所に依り其の會員と爲ることを得
蠶絲業會は法人とす
第三十條 蠶絲業會は其の目的を達する爲左の事業を行ふ
一 蠶絲業の指導奬勵に關する施設
二 蠶絲業の聯絡及統制に關する施設
三 蠶絲業に關する調査及研究
四 前各號に掲ぐるものの外蠶絲業會の目的を達するに必要なる施設
蠶絲業會は前項各號に掲ぐる事業の外第二十二條第一號乃至第三號に掲ぐる事業を行ふことを得
第三十一條 蠶絲業會を設立せんとするときは蠶絲業者十人以上設立者と爲り地區内の會員たる資格を有する者の三分の二以上の同意を得て創立總會を開き定款其の他必要なる事項を議決すべし
全國を地區とする蠶絲業會を設立せんとする場合に於て特別の事由に因り主務大臣の認可を受けたるときは蠶絲業者二十五人以上設立者と爲り設立に關する一切の行爲を爲すことを得
第二十四條の規定は蠶絲業會の設立に之を準用す
第三十二條 蠶絲業會は其の會員に對し經費を賦課することを得
蠶絲業會其の事業を行ふ爲必要あるときは會員をして出資を爲さしむることを得
前項の規定に依り會員をして出資を爲さしむる蠶絲業會の會員は出資一口以上を有すべし
第二項の規定に依り會員をして出資を爲さしむる蠶絲業會の會員の責任は第一項の規定に依る費用負擔の外其の出資額を限度とす
第三十三條 蠶絲業會は定款の定むる所に依り會員に對し過怠金を課することを得
第三十四條 蠶絲業會に總會及評議員會を置く
總會は議員及特別議員を以て之を組織す
評議員會は評議員を以て之を組織す
第三十五條 議員は定款の定むる所に依り會員の中より會員之を選擧す但し特別の事由ある場合に於ては定款を以て別段の定を爲すことを得
特別議員は蠶絲業に關し學識經驗ある者の中より總會に於て之を選任す
評議員は議員及特別議員の中より總會に於て之を選任す
第三十六條 議員及特別議員は總會に於て各一個の議決權を有す
第三十七條 主務大臣は命令の定むる所に依り蠶絲業會の申請に因り其の會員たる資格を有する者に對し當該蠶絲業會に加入すべきことを命ずることを得
第三十八條 全國を地區とする蠶絲業會にして命令を以て定むる者を會員とするものは繭及生絲の價格の安定を圖る爲命令の定むる所に依り繭絲價格安定資金を設定することを得
前項の規定に依り繭絲價格安定資金に繰入れたる金額は勅令の定むる所に依り特別法人税法に依る剩餘金の計算上之を益金に算入せざることを得
第三十九條 第二十三條及第二十八條の規定は蠶絲業會に之を準用す
第四十條 蠶絲協同組合又は蠶絲業會は勅令の定むる所に依り登記を爲すことを要す
前項の規定に依り登記すべき事項は登記の後に非ざれば之を以て第三者に對抗することを得ず
第四十一條 行政官廳は蠶絲協同組合又は蠶絲業會の決議又は役員の行爲が法令、法令に基きて爲す處分若は定款に違反し又は公益を害したるときは其の決議を取消し、役員の改選を命じ、業務を停止し又は解散を命ずることを得
第四十二條 本法に規定するものの外蠶絲協同組合又は蠶絲業會の設立、管理、解散、清算其の他蠶絲協同組合又は蠶絲業會に關し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第四十三條 蠶絲協同組合及蠶絲業會には所得税、法人税及營業税を課せず
第四十四條 行政官廳必要ありと認むるときは蠶絲業者、蠶絲協同組合、蠶絲業會其の他命令を以て定むる者に對し其の業務及財産の状況に關し報告を爲さしめ又は帳簿書類其の他の物件の檢査を爲すことを得
第四十五條 第二條、第四條第一項、第七條、第八條、第九條第三項、第十三條、第十五條若は第十六條の規定又は第十八條、第二十條若は第三十七條の規定に依る命令に違反したる者は五千圓以下の罰金に處す第四條第二項の規定に依る許可を受けずして原原蠶種の製造を行はしめたる者亦同じ
第四十六條 第九條第二項の規定に依る檢査を拒み、妨げ又は忌避したる者は三千圓以下の罰金に處す
第四十七條 第六條の規定又は第十條若は第十四條の規定に依る命令に違反したる者は千圓以下の罰金に處す
第四十八條 左の各號の一に該當する者は五百圓以下の罰金に處す
一 第四十四條の規定に依る報告を爲さず又は虚僞の報告を爲したる者
二 第四十四條の規定に依る檢査を拒み、妨げ又は忌避したる者
第四十九條 人又は法人の代理人、戸主、家族、同居者、雇人其の他の從業者が其の人又は法人の業務に關し第四十五條、第四十七條又は前條第一號の違反行爲を爲したるときは其の人又は法人は自己の指揮に出でざるの故を以て其の處罰を免るることを得ず
第四十五條、第四十七條又は前條第一號の罰則は其の者が法人なるときは法人の業務を執行する役員に、未成年者又は禁治産者なるときは其の法定代理人に之を適用す但し營業に關し成年者と同一の能力を有する未成年者に付ては此の限に在らず
第五十條 蠶絲協同組合又は蠶絲業會本法中蠶絲協同組合若は蠶絲業會に關する規定若は之に基きて發する命令又は之に基きて爲す處分に違反したるときは理事、監事又は清算人を五千圓以下の過料に處す
第五十一條 第二十三條第二項(第三十九條に於て準用する場合を含む)の規定に違反したる者は千圓以下の過料に處す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
原蠶種管理法、輸出生絲取引法及蠶絲業統制法は之を廢止す
從前の蠶絲業法、原蠶種管理法又は蠶絲業統制法に基きて爲したる處分、申請、檢査其の他の行爲は勅令の定むる所に依り之を本法の相當規定に基きて爲したるものと看做す
從前の蠶絲業法に依り設立の登記を爲したる蠶絲共同施設組合にして本法施行の際現に存するものは之を本法に依り設立したる蠶絲協同組合と看做す
前項の蠶絲共同施設組合無限責任又は保證責任の組合なるときは其の組織に關しては仍從前の例に依る
前項の組合は從前の例に依り其の組織を變更し有限責任の組合と爲ることを得
日本蠶絲統制株式會社は主務大臣の指定する日に於て解散す
蠶絲業統制法第四條、第七條乃至第十一條、第二十二條乃至第四十三條及第五十條乃至第五十四條の規定は前項の日迄仍其の效力を有す
日本蠶絲統制株式會社解散したるときは蠶絲業統制法第四十二條第一項の規定に依り積立てたる繭絲價格安定資金を第三十八條に規定する蠶絲業會にして主務大臣の指定するものに引渡すべし
前項の規定に依り日本蠶絲統制株式會社が引渡すべき蠶絲價格安定資金は勅令の定むる所に依り法人税法に依る清算所得及營業税法に依る清算純益の計算上之を益金に算入せざることを得
前二項に規定するものの外日本蠶絲統制株式會社の清算に關し必要なる事項は勅令を以て之を定む
第九項に規定する蠶絲業會が同項の規定に依り日本蠶絲統制株式會社より承繼したる財産に付ては特別法人税法に依る剩餘金の計算上之を益金に算入せず
蠶絲業組合法中左の通改正す
第三章を削る
日本中央蠶絲會は主務大臣の指定する日に於て解散す
蠶絲業組合法第三章の規定は日本中央蠶絲會の清算の結了に至る迄仍其の效力を有す
印紙税法中左の通改正す
第四條第一項第十二號中「中央水産業會、」の下に「蠶絲協同組合、蠶絲業會、」を加ふ
登録税法中左の通改正す
第十九條第七號中「蠶絲共同施設組合」を「蠶絲協同組合、蠶絲業會」に改む
特別法人税法中左の通改正す
第二條第六號を左の如く改む
六 蠶絲協同組合及蠶絲業會(所屬の會員をして出資を爲さしめざるものを除く)
本法施行前(附則第八項の場合に於ては第七項の日前)に爲したる行爲に關する罰則の適用に付ては仍從前の例に依る
本法に規定するものの外本法の施行に關し必要なる規定は勅令を以て之を定む
〔政府委員紅露昭君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=45
-
046・紅露昭
○政府委員(紅露昭君) 只今議題となりました蠶絲業法改正法律案に付きまして、提案の理由を御説明致します
蠶絲業は對米輸出貿易の大宗と致しまして、今後我が國經濟を再建する上に極めて重大な使命を擔つて居りますにも拘らず、當面喫緊の重要問題である食糧の輸入を確保する爲に、其の見返り物資として生絲が最も主要なるものであることは、是れ亦申上ぐるまでもない所であります、而して戰爭中に於きましては、蠶絲業は輸出産業たる本來の性格を一變し、專ら國内纎維資源の充足を目的として、其の運營に當ると共に、一面産額も著しく減少して參つたのでありますが、今や生絲輸出の再開を見んとする秋に當りまして、蠶絲業を速かに囘復せしめ、其の使命達成を期しまするが爲には、今後に於ける我が國政治、經濟の動向に即應して、現在の斯業統制方式に根本的の改訂を加へ、關係業者の自主的運營に依りまして、活氣ある發展の途を拓いて參る必要があるのであります、此のことは過般蠶絲業に對する聯合軍最高司令部の指示の次第もありまして、早急處理を要する問題であります、本法案は以上の趣旨に基きまして、日本蠶絲統制株式會社を中心として運營致して參りました蠶絲業統制機構の廢止及び之に伴ふ善後措置、蠶絲關係業者の自主的新團體組織に關する法的措置竝に原蠶種管理制度の根本的改正、蠶種に關する制度の改正等を内容と致しまして、必要なる規定を設けんとするものであります、何卒愼重御審議の上御協贊あらんことを切に御願ひ致す次第であります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=46
-
047・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=47
-
048・長野高一
○長野高一君 本案は政府提出農業團體法中改正法律案外一件委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=48
-
049・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=49
-
050・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました――日程第五乃至第八は便宜上一括議題となすに御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=50
-
051・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て日程第五、裁判所構成法戰時特例廢止法律案、日程第六、戰時民事特別法廢止法律案、日程第七、戰時刑事特別法廢止法律案、日程第八、判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案、右四案を一括して第一讀會を開きます――岩田司法大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=51
-
052・会議録情報5
━━━━━━━━━━━━━
第五 裁判所構成法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第六 戰時民事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第七 戰時刑事特別法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
第八 判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
━━━━━━━━━━━━━
裁判所構成法戰時特例廢止法律案
裁判所構成法戰時特例は之を廢止す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
舊法第一條の二の規定に基き發したる勅令は本法施行後と雖も仍其の效力を有す
舊法第二條、第九條及第十條の規定は本法施行後と雖も當分の内仍其の效力を有す
舊法第三條の規定は本法施行前公訴を提起したる事件に付ては本法施行後と雖も仍其の效力を有す
舊法第四條乃至第六條の規定は本法施行の際舊法の規定に依り現に繋屬中の上告事件又は抗告事件に付ては本法施行後と雖も仍其の效力を有す本法施行前舊法の規定に依り爲したる手續は本法施行後と雖も仍其の效力を有す
━━━━━━━━━━━━━
戰時民事特別法廢止法案
戰時民事特別法は之を廢止す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
舊法第三條、第五條及第十四條乃至第二十二條竝に昭和二十年法律第九號附則第三項の規定は本法施行後と雖も當分の内仍其の效力を有す
舊法第十條の二及第十條の三の規定は本法施行の際裁判所構成法戰時特例の規定に依り現に繋屬中の上告事件に付ては本法施行後と雖も仍其の效力を有す
舊法第十一條第二項及第十二條第二項の規定は本法施行の際舊法第十一條第一項又は第十二條第一項の規定に依り現に停止又は中止中の強制執行又は破産手續に付ては本法施行後と雖も仍其の效力を有す
本法施行前舊法の規定に依り爲したる手續は本法施行後と雖も仍其の效力を有す
━━━━━━━━━━━━━
戰時刑事特別法廢止法律案
戰時刑事特別法は之を廢止す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
本法施行前舊法第一章に規定する罪を犯したる者の處罰に付ては仍同章の規定に依る
舊法第十九條の二、第二十三條第三項及第二十五條の規定竝に舊法第三十一條の規定中舊法第二十三條第三項の規定を準用する部分は本法施行前公訴を提起したる事件に付ては本法施行後と雖も仍其の效力を有す
舊法第二十七條の規定は本法施行の際裁判所構成法戰時特例の規定に依り現に繋屬中の上告事件に付ては本法施行後と雖も仍其の效力を有す
本法施行前舊法の規定に依り爲したる手續は本法施行後と雖も仍其の效力を有す
━━━━━━━━━━━━━
判事及檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案
第一條 終戰に伴ひ官吏の減員を行ふに際し司法大臣は昭和二十一年三月三十一日迄の間に於て判事及檢事中二百二十八人を限り退職を命ずることを得但し判事に退職を命ずるには願に依る場合を除くの外大審院の總會の決議を經ることを要す
前項の總會は大審院の判事の三分の二以上出席して之を開き其の決議は出席したる判事の三分の二以上の意見に依る
第二條 裁判所構成法中判事の轉所に關する規定は昭和二十一年四月三十日迄を限り之を適用せず
附 則
本法は公布の日より之を施行す
〔國務大臣岩田宙造君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=52
-
053・岩田宙造
○國務大臣(岩田宙造君) 只今上程に相成りました四法律案の中、先づ裁判所構成法戰時特例廢止法律案、戰事民事特別法廢止法律案及び戰時刑事特別法廢止法律案の三法律案の提案理由を申上げます
右各法律案を以て廢止せんとする三法律は、何れも大東亞戰爭中司法制度を戰時態勢下に置き、民事刑事の全般に亙り司法事務を簡略に運營することを目的として制定せられたものでありまして、戰局の推移に即應し數次の改正を經て、今日に及んだものであります、然る所終戰後諸般の情勢が逐次平時状態に復しつつある現在に於きましては、右特別法の制定の理由は一應消滅致しまして、最早之を維持する必要がなきのみならず、却て國民の權利の保護を全うする上に障碍となる虞がありますので、此の際之を廢止せんとするものであります、是等の法律案、殊に裁判所構成法戰時特例廢止法律案が成立致しますれば、二審制度は三審制度に復歸致しまして、裁判所の設立、廢止及び管轄區域等を定めるには法律を要することと相成ります、刑事に於ける區裁判所の廣汎な事物管轄は平時の状態に復することと相成るのであります、唯民事訴訟に於ける區裁判所の事物管轄の限度二千圓は、現下の經濟状態に鑑みまして、尚ほ之を存續せしむる必要があるのでありまして、其の他にも現行法中尚ほ存續せしめる必要のある規定が若干ありますので、是等は附則を以て最小限度其の效力を維持する旨規定を致したものであります
次に判事及び檢事の退職竝に判事の轉所に關する法律案の提案の理由を申上げます、本法案は終戰に伴ひ一般官吏の減員を行ふに際し、其の一環として司法官に付ても減員を行ふ必要がありまるす所、判事及び檢事には、裁判所構成法に依る地位の保障がございますので、退職豫定數二百二十八人を限り一時此の保障を撤廢して、之に退職を命じ、右減員を實行せんとするものであります、尚ほ判事に付きましては、憲法に依る身分の保障があることでありますので、其の精神は之を十分尊重致しまして、取扱ひの愼重を期する爲に特別の法的措置を講じました、尚ほ右減員を實施致しまする時には、其の結果と致しまして職員の配置替を行ふ必要がありまするので、判事の轉所の制限も一時之を撤廢せんとするものであります、何卒愼重御審議の上、速かに協贊を與へられんことを希望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=53
-
054・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 各案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=54
-
055・長野高一
○長野高一君 日程第五乃至第八の四案は之を一括して政府提出入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=55
-
056・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=56
-
057・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました――日程第九、鐵道敷設法戰時特例廢止法律案の第一讀會を開きます――田中運輸大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=57
-
058・会議録情報6
――――◇―――――
第九 鐵道敷設法戰時特例廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
鐵道敷設法戰時特例廢止法律案
鐵道敷設法戰時特例は之を廢止す
附 則
本法は公布の日より之を施行す
〔國務大臣田中武雄君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=58
-
059・田中武雄
○國務大臣(田中武雄君) 只今議題となりました鐵道敷設法戰時特例廢止法律案提案の理由を御説明致します
鐵道敷設法戰時特例は、大東亞戰爭に際し緊急の必要あるときは鐵道敷設法の規定に拘らず、政府は鐵道敷設法の豫定線路以外のもの、或は豫定線路にして豫算に計上なきものの調査敷設を早急に行ふことを得しむる戰時法でありますが、戰爭終結に伴ひ、其の必要を認めざることとなりましたので、之を廢止せんとするものであります、何卒御審議の上御協贊あらんことを希望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=59
-
060・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=60
-
061・長野高一
○長野高一君 本案も亦政府提出入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=61
-
062・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=62
-
063・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=63
-
064・長野高一
○長野高一君 殘餘の日程を延期して明十一日定刻より本會議を開くこととし本日は是にて散會されんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=64
-
065・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=65
-
066・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後五時五十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01019451210&spkNum=66
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。