1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十年十二月十三日(木曜日)
午後一時五十四分開議
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議事日程 第十二號
昭和二十年十二月十三日
午後一時開議
第一 國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
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〔左の報告は朗讀を經さるも參照の爲茲に掲載す〕
一、昨十二日貴族院より受領したる政府提出案左の如し
國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案
一、議員より提出せられたる議案左の如し
森林の整備に關する建議案
提出者
小柳牧衞君 小山邦太郎君
木下義介君 田中政治君
(以上十二月十二日提出)
一、昨十二日弊原内閣總理大臣より左の通發令ありたる旨の通牒を受領せり
專賣局部長 長沼弘毅
第八十九囘帝國議會大藏省所管事務政府委員被仰付(十二月十一日附)
一、昨十二日衆議院規則第十五條但書に依り議長に於て議席を左の通變更せり
三一〇 山形縣第一區選出議員
三七五 坂本宗太郎君
一、昨十二日委員長及理事互選の結果左の如し
昭和二十年勅令第五百四十二號(「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)委員
委員長 小山谷藏君
理事
伊豆富人君 今牧嘉雄君
南雲正朔君 中谷武世君
一、昨十二日に於ける特別委員理事補闕選擧の結果左の如し
農地調整法中改正法律案(政府提出)委員
理事 馬岡次郎君(理事越智太兵衞君昨十二日理事辭任に付其の補闕)
勞働組合法案(政府提出)委員
理事 永山忠則君(理事喜多壯一郎君昨十二日委員辭任に付其の補闕)
一、昨十二日に於ける特別委員の異動左の如し
農地調整法中改正法律案(政府提出)委員
辭任 前田善治君 補闕 高城憲夫君
辭任 長内健榮君 補闕 楠美省吾君
農業團體法中改正法律案(政府提出)外一件委員
辭任 大石大君 補闕 加藤知正君
勞働組合法案(政府提出)委員
辭任 村松久義君 補闕 薩摩雄次君
辭任 羽田武嗣郎君 補闕 逢澤寛君
辭任 喜多壯一郎君 補闕 永山忠則君
辭任 今井新造君 補闕 小山亮君
昭和二十年勅令第五百四十二號(「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件)(承諾を求むる件)(貴族院送付)委員
辭任 竹内俊吉君 補闕 小山亮君
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=0
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001・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 是より會議を開きます
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=1
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002・長野高一
○長野高一君 議事日程變更の緊急動議を提出致します、即ち此の際一宮房治郎君外五十名提出、戰災復興促進決議案を議題となし、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=2
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003・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=3
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004・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、政府は此の議事日程變更に同意せられました、仍て日程は變更されました、戰災復興促進決議案を議題と致します、其の趣旨辯明を許します――眞鍋儀十君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=4
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005・会議録情報2
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戰災復興促進決議案(一宮房治郎君外五十名提出)
戰災復興促進決議案
戰災復興促進決議
新日本の平和的建設は眞に前途荊棘に充つ憶ふに未曾有の戰災に遭遇して國力は銷盡し同胞は或は非業の死を遂け或は家財を喪ひ焦土の中に彷徨せり
政府は之に應へて機關を設け計畫を進むと雖も未た剴切なる施策の講せられたるを見す而も依然として官僚的事務に跼蹐し徒に机上の計畫に晏如たるの感なくんはあらす斯くては食糧の窮乏と迫り來れる寒氣を前にして倍々戰災同胞を苦難の淵に沈潛せしむるの外なし
仍て政府は速に民生の安定を確保し經濟の再興を促進する爲萬難を排除して強力果敢に拔本塞源的復興施策を斷行すへし
右決議す
〔眞鍋儀十君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=5
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006・眞鍋儀十
○眞鍋儀十君 私は茲に各派の共同提案になりまする戰災復興促進決議案の趣旨を辯明致したいと存じます
嚴しい敗戰の現實は、私共に固より荊の道を切拓いて進まなければならぬ忍苦を覺悟致させて居ります、此の意味に於て戰災者と雖も、此の忍苦に克ち得なければならないことは固よりであります、併し此の敗戰の現實の中に、其の名に隱れて政府の無能怠慢は許さるべきではございませぬ(拍手)政府は速かに新日本再建の國土計畫に基きまして、平和的都市の建設に政府自身としての所信を表明し、國民にも亦懸命の努力を求めなければならぬ筈でございますのに、現實は私共をして遺憾禁ぜざるものが多いのであります、特に新たなる構想の下に國土計畫を立てまするのには、二百餘の大都市が戰火の慘害を受け、三百萬戸に垂んとする、一千萬人に亙る大慘害を受けました今日こそ、政府が最も新國土計畫を立てまするのには絶好の機會だと存じて居ります、更に財閥の解體も行はれました此の際こそ、私は特に此の政府の努力を必要とする時期が到來して居るものと思ひます、今期議會に堤出されました農地調整法の如きは、小作人に農地を與へるの制度を確立致します、然らば借地人には土地を、借家人には家屋を、各各都市計畫の上に於ても示さるべきであるのに、政府は其の片鱗をだに示して呉れないのであります、今や日本の商工業の中心たるべき都市問題は先づ人口配分の上から申しましても、最も切替の時期に直面致して居る、農村は最近食糧問題の爲に凡ゆる勞力を集中致して居りますけれども、其の包容力たるや恐らく日本人口の五割五分を出でないでございませう、假に七千五百萬人と致しましても、四割五分たる三千五百萬人の人口配分を如何にすべきやの國土計畫に付ては、現在の政府が逸早く我々に示さなければならぬ根本的な問題でなければならぬ筈であります、之に付きましても都市計畫の基準を示さなければならぬ、今や敗戰に依つて虚脱状態に陷つて居る、此の政府が國民に何等の示唆をも與へないと云ふことは、今日の都市が戰災其の儘の姿に於て依然として敗戰をまざまざと見せ付けられて居る、赤き煉瓦や、或は酸化しつつある金屬の現状を見ても分りまするやうに、此の戰災都市に對する政府の冷淡さは洵に慨嘆に堪へぬものがございます、今や失業者數は六百萬人から一千萬人に垂んとすると言はれて居りまするが、をかしな言ひ方ではあるけれども、其の失業群の給源地は、大體に於て此の戰災地でございます、都會の現在の實相を政府は何と見て居りますか、手近い例を採りましても、東京都の盛り場が最近殷賑を極めて居るが如きは、之を以て都市が復興に向ひつつあるが如く感違ひすることは大變な政府の間違であります、今や都市は何をなしつつあるか、闇市の品物を求めて闇の品物を叩き、其の闇の價格差のみが彼等の生活の資料となつて居ります、さうして此の闇の循環が唯一つの増産にもなつて居りませぬ、物價の問題に關する限り全く無政府状態でございます、洵に斯樣な例を申しましては細か過ぎるやうではございまするが、巷には先般の寶籤の空籤を買ひ集めて居る者がございますが、是等も一圓に買つても、二圓に買つても、十圓に賣れれば四本で煙草の闇商賣が成立つのでございます、殊に洵に痛ましいのは復員軍人が初めて故山に見えて家を失ひ、肉親に別れ、僅かに貰つた復員手當を食ひ盡した後は、問題の支給せられたる被服を糶に掛けて、而も其の糶の價格を必要の一定價格より下げないが爲に、其の被服の糶値が足りなければ「シャツ」を加へ「ゲートル」を添へて必要な價格を求めて生計を立てて行かうとする現状を政府は何と見て居りますか、郵便局の門前に列をなして居りますものは、農村の懷ろから百圓の札びらを切る貯金に引替へて、僅かの殘高を氣遣ひながら十圓、二十圓と貯金帳から引出して行く街の者の正直な姿を見て下さい、斯うした都會の生活が、是から重き荷を背負つて起ち上らなければならない日本の中心都市の姿であつて宜からうか、此の都會の復興の遲々として進まざるの結果は、近郷より通つて來る者も唯東京に入つたきりで、其の日の職なく、又家へと戻つて居る所の實情は、あの殺人的な汽車の中で揉まれ拔いて東京に來て、一日の職を得なかつた爲に、三囘の映畫の見直しをして、夕方又其の殺人的な近郷の汽車に乘つて自宅に通つて外見を繕つて居ると云ふ此の實情は、働く意思があつて働くことが許されないのであります、又御承知のやうに上野驛頭の如く殺到して居る人達が、汽車に乘つて何時間、何十時間かの後には、自分の身體より重い物を身に附けて又驛頭に現はれて居る、此の混雜がなんで敗戰日本再建の姿があり得るか、政府は仰々しくも何十萬戸の住宅を國民に與へると、屡屡發表されました、さうして今與へられて居る現實はどうであるか、此の師走の寒空に隙間漏る風さへ寒いと云ふのに、あの建具さへなき壕舍に親が子を抱へて、寒さを凌ぎながら慄へて居る此の現状は、是で政府が何十萬戸の計畫だけで晏如として居られ得るや、政府の標準型と云ふお得意の簡易住宅も、六坪二合五勺で狹いながらも出來さへすれば固より我慢しなければなりませぬ、何を標準に之を建てさせようとなさるのか、二千三百圓が四千圓になつたと云ふ、それで一體罹災者は住まへると考へて居られるか、唯骨組だけの此の金額は、實に何倍かの闇値に當る附屬建具がなければ人の住ひにはなりますまい、只今大工賃が四十圓から五十圓が相場でありませう、障子骨が一枚で百二十圓、障子紙が一本で二十圓から二十五圓、硝子の尺角が一枚十圓、疊が大體に於て百五十圓、「トタン」であれば一枚六十圓だから、坪では百五十圓、瓦にすれば三百圓、さう言つたものを寄せ集めなければ政府の呉れる二千三百圓の家屋には住宅としての價値は生じて來ないのであります、僅か三千圓の保險金を貰つた、其の元手が何時まで續くと考へて居られるか、今少くとも此の標準型の家ですら正直に請負に掛ければ一萬五千圓であります、而も其の家屋すら中々手に入らない現状であります
私は經營的天才と謳はれて居る小林復興院總裁が就任せられ、必ず奇想天外な名案を以てぴしぴし解決して行かれることと、國民と共に期待を致して居りました、瞑想久しく未だに我々の期待を滿足する實績を示して戴けませぬ、議會に於ても色々の隘路は打開された、特に木材の統制の如きも自由販賣の形に於て我々の手に入ると申されましたけれども、街の現實は入りませぬ、總裁は地木社は開店休業中であるけれども、木材統制は解けて居らぬことを御承知ないか、一體地木社がなくなつて、是で統制は何故解かぬのだ、地木社はなくなつても、統制を解かない所に色々の操作をなしつつ日木社の赤字を、國民の負擔に依つて帳消しようと云ふやうな惡い操作も、必要なことではありますけれども、國民は左樣な疑惑を現在持つて居ります、私はもつとてきぱきやられると云ふことは、政府の爲に是非して欲しい、木材がないのではない「マッカーサー」の指示に依つて出せる木材があるのなら、何故事前に政府はそれを出さぬか、私はせめて出し得るものならば、政府の手から出して貰ひたかつたが、出し得るものすら政府が出さぬで、「マッカーサー」に出して貰つたと云ふことは、國民感情の上から政府を信任しないではないが、「マッカーサー」に好感を持たずには居られぬではないか、なし得ることすらなさない政府の此の態度を、私は日本の爲に洵に惜しまざるを得ませぬ(拍手)御料林の御下賜もあつたと云ふ、どう云ふ形に於て國民の上に戴けるものであるか、由來君民の間に障壁を作つて温かき君の御心を民に通ぜしめなかつた前例は幾らもある、斯う云ふ時にこそ、殊に渾沌たる思想の今日に於てこそ、政府は何よりも御下賜の木材があれば、柱一本にても多くの民草の上に行渡られるやうな親切こそなければならぬのではあるまいか、復興の遲々たる原因の中に、運送のことが取上げられて居ります、貨物自動車は軍から差繰つて貰つたと言ふ、何故動かぬかと聽けば、部品が盜まれて何ともならぬ、斯う答へられる、木材があつても製材が出來ぬから渡されないと言はれる、製材所が燒けたことは今の話ではない筈だ、斯う云ふ不親切さが私は度重つて政府の不信任と云ふ結論が自然の中にうん釀されて行くのではないか、寒波は既に襲來して居る、昨日の如きは零下二度を示しました、少しは「ヒーター」の中から街の罹災者の上に心を馳せて、底冷えのする壕舍の中から肉親の子供の寒さを身を以て庇ひながら、霜夜の長さを喞つて居る巷の人の上に温き思ひを運らして下さい、私は斯樣な建前に於て茲に決議案を朗讀して、各員の贊成を求めようとする者であります、即ち
戰災復興促進決議
新日本の平和的建設は眞に前途荊棘に充つ憶ふに未曾有の戰災に遭遇して國力は銷盡し同胞は或は非業の死を遂け或は家財を喪ひ焦土の中に彷徨せり
政府は之に應へて機關を設け計畫を進むと雖も未た剴切なる施策の講せられたるを見す而も依然として官僚的事務に跼蹐し徒に机上の計畫に晏如たるの感なくんはあらす斯くては食糧の窮乏と迫り來れる寒氣を前にして倍倍戰災同胞を苦難の淵に沈潛せしむるの外なし仍て政府は速に民生の安定を確保し經濟の再興を促進する爲萬難を排除して強力果敢に拔本塞源的復興施策を斷行すへし
右決議す
何卒各員の御贊成を賜はらんことを希望致します(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=6
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007・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 討論の通告があります、之を許します──河野密君
〔河野密君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=7
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008・河野密
○河野密君 私は只今上程の決議案に對しまして、極めて簡潔に贊成の趣旨を申述べたいと存じます、本決議案の趣旨は極めて明瞭でありまして、何等喋々を要しませぬ、要は全國一千萬の罹災者に對して速かに其の家を與へ、其の衣服を給し、其の食糧を確保し、以て生活の安定をなさしむることであるのであります
囘顧すれば昨年の春初めて北九州に「ビー」二九の來襲を見てより、本土の空襲は日を逐うて激化し、殊に「サイパン」を失陷し、「グァム」を敵手に委ねてよりは、日本全土は全く「ビー」二九の蹂躪に任する所となり、家を燒かるる者二百五十萬、死傷合計百萬、罹災者總數一千萬の多きに逹したのであります、而も最初の攻撃目標は主として工場、軍需施設であつたものが、終戰に近づくに從つて一般民家を對象とするに至り、大都市より中都市へと延び、交通機關へと爆撃が擴大され、遂には廣島、長崎の原子爆彈に因る大量的破壞にまで發展致したのであります、不幸爆撃に依つて生命を失ひ、身體の毀傷を受けたる者は痛惜哀悼洵に慰むべき言葉がないのでありまするが、家を燒かれ、家具を失ひ、衣食を奪はれたる者亦同情に堪へないのであります、殊に冬季を控へ「バラック」の中に一家數人寒さに震へて居る現状は如何に見るべきでありませうか、世人口を開けば道義の頽廢を歎くのであります、私自身も道義の頽廢、民心の荒廢を憂ふる點に於て、斷じて人後に落つる者ではございませぬ、併しながら其の由つて來る所を見るに、全く衣食住の不安より招來されて居るのであります、古人既に衣食足つて禮節を知ると申して居りまするが、衣を以て寒さを凌ぐに足らず、食は以て飢ゑを凌ぐに足らず、家は以て雨露を凌ぐに足らざる現状に於て、如何にして道義を説くことが出來ませうか、然るに政府の施設を見るに、一として國民の窮状に即するものがありませぬ、政府は曩に簡易住宅三十萬戸建設の計畫を發表し、東京都五萬戸を年内に建設すると聲明したのでありますが、其の實績は果して如何でありませうか、最近の發表に依りますれば、年内二千五百戸のみが可能であるとのことであるのであります、二百五十萬の燒失家屋に對して二千五百戸の建設を以て、假にも住宅政策是にありと稱することが出來るでありませうか、終戰以來政府のなす所を見るに、全くの喪心の状態にあり、徒らに右往左往するのみであつて、一として逞ましさと、頼もしさを感ぜしむるものがございませぬ(拍手)曾て傲然民衆に臨み、國民を土芥の如くに脾睨して居た所の彼等が、今は全く方針を失ひ、舵を失したる孤舟の如く、波の間に間に漂流しつつある現状は、眞に亡國の姿と云ふの外はないのであります
惟ふに今日の戰災者は總て國策の犠牲者であります、戰爭指導にして宜しきを得、戰爭準備に於て缺くる所がなかつたならば、其の災害を今日の十分の一、二十分の一に縮小し得たものがあると信ずるのであります、私は先般横須賀市に參つたのでありまするが、同地は軍港であるに拘らず、爆撃の餘禍を殆ど蒙つて居りませぬ、唯數發の爆彈が崖に落ちて之を崩した程度の被害であります、聞く所に依りますれば、横須賀周邊を護る爲に据付けられたる高射砲の總數は、東北六縣に据付けたる高射砲の六倍に當るとのことであります、是に由つて之を觀るならば、若し防備施設全きを得るならば、敵襲を防ぎ得ることは當然であつたのであります、然るに我が作戰用兵當局は如何でありませうか、我々は本年の三月初旬、帝都代議士の代表と致しまして、東部防衞司令部に同僚の諸君と參謀長を訪問して、帝都防衞の強化を要望し、飛行機の出撃と邀撃とを懇望致したのであります、然るに當局は、其の時に本土決戰に飛行機を温存せねばならぬと云ふ理由の下に、之を拒否致したのであります、果せる哉、其の直後に行はれました三月十日の東京東部、本所、深川を中心とする其の爆撃を見た時に於て、飛行機の邀撃が一臺でもあつたでありませうか、飛行機の邀撃を見ることを得なかつたのであります、要するに今日の戰災者は國策の犠牲者であります、自ら戰災を受け、川に沈み、或は「プール」に浸って罹災をした者でなければ、其の眞情は理解することが出來ないと信ずるのであります、政府は何故速かに住宅の建設を促進しないのでありませうか、而して罹災者に對して政府建設の標準住宅の如きは、之を無償に給與して然るべきものであると信ずるが、如何であらうか、私は全國一千萬人の罹災者に代って強く政府の施策を要望し、本案に贊成の意を表明する者でございます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=8
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009・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 是にて討論は終局致しました、採決致します、本案に贊成の諸君の起立を求めます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=9
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010・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 起立總員、仍て本案は全會一致可決致しました(拍手)
此の際小林國務大臣より發言を求められて居ります──小林國務大臣
〔國務大臣小林一三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=10
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011・小林一三
○國務大臣(小林一三君) 戰災復興の事業は刻下喫緊の要務なるに鑑みまして、政府に於きましては凡ゆる努力を傾注して戰災復興の推進に當つて居る次第であります
先づ急務中の急務である住宅建築の仕事も、資材、勞力、食糧等各方面の隘路もありますが、漸次にほどいて參りまして、漸く大體の見込も付きました、殊に越冬對策としては、曩に三十萬戸の簡易住宅、此の建設は實は思ふ通りに運び得なかつたので、頗る遺憾とする所でありますが、目下鋭意實行中で、本年末までには彼此れ二萬戸位は出來るだらうと云ふ、是も漸く見込が付いた位でありますが、併し來年の三月までには大體計畫の半分位は出來るやうにしたいと一生懸命になつて居ります、進行が遲れて洵に申譯がないと考へて居ります、併し各方面の自力建設に依る建築方面のものは、建坪には多少の制限がありますが、是までの色々の制限を緩和し自由に認めて居りますので、是は頗る旺盛で、此の分は既に二十萬戸以上も出來て居る現状であります、又戰災者等の皆さんの爲に緊急に住宅を供給し得るが爲に、住宅緊急措置令に依りまして、遊休建物に對しましても、其の使用權を設定し、以て戰災者に對し住居施設を供給し得ると云ふ應急處置を講じたのでありますが、此の成績は有望であります、只今まで十二月五日現在では、十七萬千三百十一坪、一萬二千以上の世帶が利用されて居りますが、是は非常に注文が多いので、益益増加する見込であります、尚ほ應急住宅措置、此の施設の建設補助金と致しましても、政府は約四千七百萬圓を豫備金に御願ひしまして、來春までの間には此の建設補助に依って、以て窮迫の状態にある戰災者の皆さんに、成べく低廉なる住宅施設を供給しようと考へて居る次第であります、尚ほ二十一年度以降の復興院諸施策に付きましては、目下關係各廳、各地方の當局者と緊密なる連絡を取りながら、著々施策の推進に當って居る次第であります、而して復興計畫に付きましては、國土計畫を基礎とし、全國百二十に達せる戰災市町村は、地方的特色を發揮し得る自治的機構に依つて特色のある都市を復興し、新日本建設に資せんことを目標として居る次第であります、それが爲に官公民の一致したる御努力を御願ひし、計畫の樹立、事業の遂行に當つては特に皆さんの御助力を御願ひしたいと考へて居ります(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=11
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012・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 日程第一、國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案の第一讀會を開きます――楢橋法制局長官発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=12
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013・会議録情報3
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第一 國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案
國家總動員法及戰時緊急措置法は之を廢止す
附 則
本法施行の期日は勅令を以て之を定む
本法施行の際現に存する舊法に基く勅令に付ては本法施行後六月間を限り舊法(國家總動員法第一條乃至第三條の規定を除く)は仍其の效力を有す此の場合に於ては國家總動員法中戰時に際し國家總動員上必要あるときはとあり若は國家總動員上必要あるときはとあり又は戰時緊急措置法中大東亞戰爭に際し國家の危急を克服する爲緊急の必要あるときはとあるは終戰後の事態に對處し國民生活の維持及安定を圖る爲特に必要あるときはとし國家總動員法中總動員業務とあるは國民生活の維持及安定を圖る爲特に必要なる業務とし總動員物資とあるは國民生活の維持及安定を圖る爲特に必要なる物資とす
前項の規定に依り效力を有する勅令は其の規定する事項の範圍内に於て之を改正することを妨げず
本法施行前(附則第二項の場合に於ては同項の規定に依る期間内以下同じ)に舊法に依り爲したる命令、處分又は行爲に係る優先買受、課税標準の計算に關する特例、租税減免及損失補償、本法施行前に清算を開始したる團體又は會社にして舊法に依り設立せられたるもの竝に本法施行前に爲したる行爲に對する罰則の適用に付ては舊法は本法施行後(附則第二項の場合に於ては同項の規定に依る期間經過後)と雖も仍其の效力を有す
〔政府委員楢橋渡君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=13
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014・楢橋渡
○政府委員(楢橋渡君) 只今上程せられました國家總動員法及戰時緊急措置法廢止法律案に付き提案の趣旨及び法案の大綱を御説明申上げます
國家總動員法は戰時又は事變に際し、國防目的達成の爲め全國力を最も有效に發揮する爲め各般の資源を統制運用するの目的を以て、去る第七十三帝國議會の協贊を經て制定せられたのであります、而して本法は昭和十三年五月其の施行以來、國防目的逹成の爲めなされたる各般の統制の根幹たる法律として廣く其の適用を見て參つたのであります、又戰時緊急措置法は戰爭の最終的段階に於て、國家の危急を克服せんが爲め應機の措置を講ずる必要上、去る第八十七議會の協贊を經て本年六月に制定公布せられ、政府に對し、強力なる非常措置の權限を與へた法律であります、終戰後の今日に於きましては、總ての戰時法令は何れも能ふ限り整理改廢を致すべきでありますが、特に此の二法律は戰時法令の根幹をなすものでありますから、一刻も早く之を整理することが妥當と信じ、茲に兩法律の廢止法律案を提出致した次第であります
唯終戰後の諸般の事情に即應する善後措置を十分に講ずることなくして、直ちに是等の法律を廢止致しますならば、是等の法律に依りて形成されました現状を急激に改變することとなり、却て社會秩序の動搖を來す虞がありますので、現に存する勅令に關する限り、且つ終戰後の事態に對應し、國民生活を維持安定せしめるに必要なる限度に於て、暫定的に六箇月を限り、是等二法律の效力を認めることと致した次第であります、勿論其の間に於きましても整理すべきものは速かに之を整理しまして、圓滑平穏裡に戰時法令の廢止に終止符を打たんとするものでありまして、是等に關し必要なる經過的規定を附則に於て設けた次第であります、何卒宜しく御審議の上御協贊あらんことを御願ひ申上げます(拍手)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=14
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015・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=15
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016・長野高一
○長野高一君 本案は政府提出入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=16
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017・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=17
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018・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=18
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019・長野高一
○長野高一君 議事日程追加の緊急動議を提出致します、即ち此の際政府提出戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案を議題となし、其の審議を進められんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=19
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020・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=20
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021・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て日程は追加せられました、戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案の第一讀會を開きます――澁澤大藏大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=21
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022・会議録情報4
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戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案(政府提出、貴族院送付) 第一讀會
戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案
第一條 左に掲ぐる法律は之を廢止す
戰爭死亡傷害保險法
戰時特殊損害保險法
第二條 生命保險中央會法中左の通改正す
第十九條第一項第三號中「第一號に掲ぐるものを除くの外」及同項第四號中「第一號及」竝に同項第一號及第二號を削り同項中第三號を第一號とし第四號を第二號とし第五號を第三號とす
同條第二項を削る
第二十六條 削除
第二十八條 削除
第三十條及第三十一條中「戰爭危險の保險に關する業務以外の業務に因りて得たる」を削る
第三十三條 削除
第三十四條第四項中「及第二項」及同條第一項を削る
第三十五條第一項中「及第二項」を削る
第三十六條中「五億圓」を「二億圓」に改む
第四十六條 削徐
第四十九條第一項第六號及第二項を削る
第三條 損害保險中央會法中左の通改正す
第十八條 削除
第十九條第一項第一號中「普通保險」を「損害保險」に改め同項中第二號を削り第三號を第二號とし第四號を第三號とす
同條第二項中「第三號」を「第二號」に改む
第二十四條第一項を削る
第二十五條中「普通保險」を「損害保險」に改む
第四十一條 削除
附 則
第四條 本法は公布のより之を施行す
第五條 戰爭死亡傷害保險法第一條及第五條乃至第八條の規定は本法施行後と雖も當分の内仍其の效力を有す
戰爭死亡傷害保險法は本法施行の際現に存する戰爭死亡傷害保險契約及第三項の規定に依り更新せられたる戰爭死亡傷害保險契約に關しては本法施行後と雖も仍其の效力を有す本法施行前(前項の場合に於ては同項の規定に依り戰爭死亡傷害保險法第六條の規定が其の效力を有する間)に爲したる行爲に對する罰則の適用に關し亦同じ
本法施行の際現に存する戰爭死亡傷害保險契約は本法施行後と雖も仍從前の例に依り一囘を限り之を更新することを得
第六條 戰時特殊損害保險法第一條、第十條、第十四條、第十五條及第十八條の規定は本法施行後と雖も當分の内仍其の效力を有す
戰時特殊損害保險法は本法施行の際現に存する戰爭保險契約に關しては本法施行後と雖も仍其の效力を有す本法施行前(前項の場合に於ては同項の規定に依り戰時特殊損害保險法第十五條の規定が其の效力を有する間)に爲したる行爲に對する罰則の適用に關し亦同じ 本法施行の際現に存する戰時特殊損害保險法に依る地震保險契約は將來に向て其の效力を失ふ
戰時特殊損害保險法第五條の損害保險契約に在りては損害保險中央會又は保險會社は同條に規定する事故にして本法施行後に發生したるものに因りて生じたる損害を填補する責に任ぜず
第七條 生命保險に於ける戰爭危險(戰爭其の他の變亂に因る死亡を謂ふ以下同じ)の再保險及戰爭死亡傷害保險にして本法施行前に生命保險中央會の引受けたるもの竝に第五條第三項の規定に依り更新せらるる保險に關しては仍從前の例に依る
本法施行の際現に存する生命保險契約に在りては保險會社は本法施行後に發生したる戰爭危險に因る保險金の支拂を爲す責に任ぜず
第八條 本法施行前に爲したる行爲の處罰に關しては第二條及第三條の規定に拘らず仍從前の例に依る
第九條 前四條に定むるものの外本法施行の際必要なる事項は命令を以て之を定む
〔國務大臣子爵澁澤敬三君登壇〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=22
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023・澁澤敬三
○國務大臣(子爵澁澤敬三君) 只今議題となりました戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法廢止等に關する法律案に付きまして、提案の理由を御説明致します
今次終戰に伴ひ戰爭危險發生の虞は特殊の場合を除き殆ど消滅するに至りましたので、戰爭危險の保險を目的とする諸般の戰時的保險制度を原則として廢止するを適當と認め、其の爲に戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法を廢止すると共に、是等諸般の戰時的保險の運營機關たる生命保險中央會及び損害保險中央會の業務内容等にも所要の修正を加へることとし、茲に本法律案を提出致した次第であります
本法律案の趣旨を申述べますれば、先づ戰爭死亡傷害保險法及戰時特殊損害保險法は之を廢止し、是等兩法に基く戰爭死亡傷害保險、戰爭保險及び地震保險は今後之を原則として成立せしめないことと致したのであります、唯戰爭死亡傷害保險に付きましては、今日尚ほ多數の同胞諸君が海外に殘留せられ、今後内地歸還に至るまでは相當程度危險に曝される場合もあり得ると考へられますので、是等の方々の便宜を考慮し、今後尚ほ一囘限り現存契約を更新し得ることと致した次第であります、他方戰爭保險に付ては斯かる特別措置を講ずる必要を認められませぬが、地震保險に付きましては、同保險が戰爭中に生じた地震損害のみを填補する趣旨のものである關係上、終戰後の實情に即せざる點もあり、旁旁國家財政の状況等をも考慮し、本法施行と同時に將來に向つて其の效力を失はせることに致しました、固より現存地震保險契約者に對し、不當なる損失を與へざるやうに此の點は十分考慮致し、未經過保險料の返還等適宜の措置を講ずる所存であります
次に生命保險中央會に付きましては、其の業務の中戰爭死亡傷害保險の引受及び一般の生命保險に於きまする戰爭危險の再保險の引受の二つの業務を廢止することと致し、之に關聯して同會の経理に關する規定にも所要の改正を加へると共に、從來生命保險契約に於ける戰爭危險免責約款を無效ならしめて來た強行規定は、右戰爭危險再保險の停止に伴ひ、之を撤廢することと致したのであります、更に損害保險中央會に於きましては、其の業務の重點を戰爭保險の分野より普通保險の分野に移すことを明かに致しました
尚ほ右四法の改廢に關聯し、必要なる經過規定を設け、殘存事務の處理の圓滑を期したのであります、何卒御審議の上速かに御協贊あらんことを切望致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=23
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024・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 本案の審査を付託すべき委員の選擧に付て御諮り致します
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=24
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025・長野高一
○長野高一君 本案は政府提出入營者職業保障法及國民勞務手帳法廢止法律案委員に併せ付託せられんことを望みます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=25
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026・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 長野君の動議に御異議ありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=26
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027・島田俊雄
○議長(島田俊雄君) 御異議なしと認めます、仍て動議の如く決しました、是にて議事日程は議了致しました、明十四日は午後一時より本會議を開きます、議事日程は公報を以て通知致します、本日は是にて散會致します
午後二時三十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913242X01319451213&spkNum=27
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