1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和二十年十二月四日(火曜日)午前十時二十三分開議
出席委員左の如し
委員長 中島彌團次君
理事 石坂繁君 理事 今尾登君
理事 片山一男君 理事 南條徳男君
理事 眞鍋儀十君 理事 池田正之輔君
理事 中村又七郎君 理事 田中好君
理事 水谷長三郎君
安孫子孝次君 赤間徳壽君
有馬英治君 植松練磨君
大口喜六君 勝正憲君
勝又春一君 木下信君
喜多壯一郎君 岸井壽郎君
川崎克君 篠原陸朗君
庄司一郎君 鈴木正吾君
曾木重貴君 田中伊三次君
田中藤作君 田中貢君
竹内俊吉君 中井亮作君
中村三之丞君 長井源君
南郷武夫君 木村武雄君
濱野徹太郎君 林佳介君
樋口善右衞門君 松尾三藏君
松田竹千代君 阪本勝君
三宅正一君 村松久義君
紫安新九郎君 山口左右平君
横川重次君 吉田正君
同月三日委員櫻井兵五郎君及山崎達之輔君辭任に付其の補闕として同月四日川副隆君及安藤覺君當選せり
出席國務大臣左の如し
内閣總理大臣兼第一復員大臣第二復員大臣 男爵 幣原喜重郎君
司法大臣 岩田宙造君
農林大臣 松村謙三君
文部大臣 前田多門君
外務大臣 吉田茂君
内務大臣 堀切善次郎君
國務大臣 松本烝治君
厚生大臣 芦田均君
國務大臣 次田大三郎君
大藏大臣 子爵 澁澤敬三君
運輸大臣 田中武雄君
商工大臣 小笠原三九郎君
國務大臣 小林一三君
出席政府委員左の如し
内閣副書記官長 三好重夫君
法制局長官 楢橋渡君
法制局次長 入江俊郎君
法制局參事官 佐藤達夫君
外務政務次官 犬養健君
外務參與官 松浦周太郎君
外務省政務局長 田尻愛義君
外務省管理局長 森重干夫君
内務政務次官 川崎末五郎君
内務參與官 中助松君
内務省警保局長 小泉梧郎君
大藏政務次官 由谷義治君
大藏參與官 山本粂吉君
大藏省主計局長 中村建城君
大藏省主税局長 池田勇人君
大藏省外資局長 野田卯一君
大藏省金融局長 久保文藏君
第一復員政務次官 宮崎一君
第一復員次官 原守君
第一復員參與官 野口喜一君
第一復員官 吉積正雄君
第一復員官 森田親三君
第一復員官 大山文雄君
第一復員官 吉本重章君
第二復員政務次官 田中亮一君
第二復員次官 三戸壽君
第二復員參與官 星野靖之助君
第二復員官 山本丑之助君
第二復員官 山本善雄君
司法政務次官 手代木隆吉君
司法參與官伯爵 渡邊昭君
文部政務次官子爵 三島通陽君
文部參與官 森田重次郎君
文部省學校教育局長 田中耕太郎君
文部省社會教育局長 關口泰君
厚生政務次官 矢野庄太郎君
厚生參與官 田中和一郎君
厚生省衞生局長 澤重民君
厚生省社會局長 栗原美能留君
厚生省勤勞局長 佐伯敏男君
農林政務次官 紅露昭君
農林參與官子爵 北條雋八君
食糧管理局長官 並川義隆君
商工政務次官 木暮武太夫君
商工參與官男爵 山根健男君
商工省總務局長 菅波稱事君
商工省商務局長 岡村武君
商工省工務局長 奧田新三君
商工省纖維局長 松田太郎君
商工省燃料局長 岡松成太郎君
商工省整理部長 吉田悌二郎君
運輸政務次官 新井堯爾君
運輸參與官 白川久雄君
運輸省企畫局長 小野哲君
鐵道監 滿尾君亮君
運輸省海運總局長官 福原敬次君
運輸省海運總局海運局長 有田喜一君
本日の會議に上りたる議案左の如し
(第一號)昭和二十年度歳入歳出總豫算追加案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=0
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001・中島彌團次
○中島委員長 是より會議を開きます、昨日の川崎君の質問に對する答辯の爲め、政府より發言を求められて居ります――内閣總理大臣発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=1
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002・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 昨日川崎君の御質問に對しまして、同一の質問が昨日の本會議にも提出されたのであります、其の際私は一應御答へを致して置きましたが、此の豫算總會に於きましては、あの質問のあの問題が一時留保されたやうな形になつて居りまするから、此の際重複するかも知れませぬが、本會議で申上げたと同樣な趣旨を私より更めて此の際申上げて置きたいと存じます、即ち一般論と致しまして、解散に依る總選擧の結果、政府と政見を異にする黨派が多數を占めました場合、之に政權が移つて行くと云ふことは、所謂憲政の常道であります、民主的見地から見まして望ましいことであると考へて居ります、私は我が國に於ても今後斯くの如き政治の慣習が一日も速かに確立されることを希望して居る次第であります、現内閣 進退に付きましても、當然以上の趣旨を實現すべき線に沿つて決すべきものであると思ひまするが、今日の場合具體的に何時如何なる場合に進退するかと云ふことに付ては、言明出來兼ねることを御諒承願つて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=2
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003・中島彌團次
○中島委員長 川崎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=3
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004・川崎克
○川崎(克)委員 大體只今總理大臣の御言明に依りまして、昨日來質問を繰返しましたことが諒解をされたと存じます、其の點は私は諒承致します、此の問題と關聯を致しまして總理が御述べになりましたものの中で、國民の政治責任と云ふことがあるのであります、其の國民の政治責任に付ては、新聞記者に御答へになりました所に依つては、國民にも政治責任があると云ふことになつて居るのでありますが、昨日の御答辯を承つて見ますると、其の質問は重臣に對して責任があるかないかと云ふことから發して、重臣は戰爭を阻止しなかつたからして、其の阻止しなかつた責任があるのではないかと云ふことであつたが、それに對しては、重臣に責任があると云ふことに付ては、別に法律上の責任もないやうに思ふし、重臣に責任があるならば國民にも責任があるぢやないかと云ふやうなことまで應酬をされたと云ふことになつて居るのであります、隨て重臣に責任がないと云ふことならば、國民にも責任がないと云ふことに解せらるる御答辯であつたと思ふのでありますが、併し其のことを私がはつきり致して置きたいと思ひますのは、此の間議會に於て責任に對する決議案が提出せられました時に、國民に對して責任なしと云ふことを決議を致して居るのであります、其の趣旨から致しまして國民は政治上の責任を負ふべきでない、何故に負ふべきでないかと云ふことを明かにして置くことが必要である、斯樣に思ふのであります、それは此の大東亞戰爭と云ふものの開始せられた戰爭誘發者と見るべきものは勿論軍部、官僚の一部にあつたことは明かでありまして、其の大東亞戰爭に導くまでの經路に於きまして、最も深い原因をなしたものは三國同盟であると思ひます、三國同盟に對しましては我國の國論が殆ど一致して、彼の三國同盟を支持して居つたかと言へばさうではない、さうではないと云ふ證據は、三國同盟を締結するに至るまでの經路に依つて明白にされると思ふのであります、第一平沼内閣の時分に七十何囘か會議を開いて此の問題を論じたのであるが、遂に之を流してしまつた、續いて出來た内閣は阿部内閣でありまして、是は極めて短い内閣でありましたから此の問題を論議するに至らなかつたが、米内内閣になりまして此の問題を採上げた時分に、米内内閣は三國同盟に反對をした、反對をした爲に陸軍に於ては陸軍大臣辭職をして、さうしてそれが爲に米内内閣は瓦解の餘儀なきに至つた、其の後を承けて生れたものは近衞内閣でありまして、近衞内閣の時に遂に三國同盟が締結された、内閣を三度迭へて漸く三國同盟の締結を見たのでありますが、それまでには色々な工作が行はれて、政治新體制であるとか、全體主義であるとか、衆議統裁であるとか云ふやうな思想を入れて、銃劍の力を以て國民の言論を壓迫し、國民の言論を封鎖して置いて三國同盟を締結した、國民は三國同盟に付ては何等の發言權を持つて居りませぬ、一部の軍閥官僚が之を謳歌して、強いて三國同盟の國論を擬裝し、迭に大東亞戰爭に導いた、此のことに付ては、戰爭を開始しまするに至る迄の原因に付ては國民は知らなかつた、それから後に於ても愈愈詔書が發せられて、承詔必謹の精神に基いて、國民は政府の命令を承順し、職域に於て挺身を致して來たのでありまして、國民は戰爭開始者の責任と云ふものに付ては何等持つて居ない、世間では日本に對して好戰國民であると云ふ考へを懷いて居るやうでありますが、大東亞戰爭に限つては、好戰國民として英米を敵として戰ふと云ふ考へを國民の全部が持つて居るなんと云ふことは決してなかつた、それは擬裝の國論は作られたかも知れませぬけれども、さう云ふことはなかつた、終戰後の今日に於て見ますると、どうであるかと云へば、此の終戰を本土上陸をせずに、又さう云ふ状態に入らないで、一兵も衂らずして遂に終戰になつたと云ふ此の状態でありますが、其の終戰後の状況を見るならば――尤も「マックアーサー」司令部の處置宜しきを得て居る爲めでもありませうが、國民の「マックアーサー」司令部及び進駐軍を迎へて居る態度と云ふものは、全く仇敵に對するやうな感情が發露して居ない、是は明かな證據である、心から十年の舊知を迎へるやうな、心持を以て迎へて居る、國民に英米を敵とするの心がなかつたと云ふことをはつきりと證明して居るのでありまして、其の意味に於ては國民に責任なしと云ふことを明かにして置きたい、故に總理大臣に御願ひを致しますが、新聞記者の御尋ねに對して御答へになりましたことの經緯は兎も角として、政治上の責任は國民は有しないと云ふことを、はつきり總理から此の議場を通じて國民に明白にされたいと云ふことを私は希望に堪へない、それだけを申上げて政府の御意見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=4
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005・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 只今川崎君の御話の通りの政治の裏面の消息に付きましては國民は知らなかつた、知らされなかつたのであります、國民は知る途がなかつたのであります、隨て三國同盟であるとか、其の他今囘の戰爭の直接又は間接の動機、原因となつた政治の動向に關しましては、國民の多數は全く其の内情を知らないのでありますから、知らないのに責任と云ふものが生じて來る譯はないと思ひます、其の點は私は川崎君と全く同感を持つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=5
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006・川崎末五郎
○川崎委員 はつきり致しまして洵に滿足を致します
更に總理に御尋ねを致したいのでありますが、憲法改正の事に付きましては、過日の議會に於て齋藤君からも御尋ねを致しまして、政府の堂々たる所信を此の際發表すべきが當然ぢやないかと云ふことを述べたのであります、それに對して政府は今所信を發表するの時期ではないと云ふことであつたやうであります、併し具體的の問題に付ては具體的の問題を採上げて、斯樣な問題はどう云ふ風に考へて居られるかと云ふことを御尋ね致したいのでありまして、それに付ては御答へを得られることであらうと存ずるのであります、先づ私の御尋ね致したいのは、先程來申上げましたやうに、戰爭の原因となつた問題に付きまして、第一軍國主義の壞滅を圖ると同時に、民主國家の樹立を圖らなければならぬと云ふことは、「ポツダム」宣言の受諾に伴つて當然履行しなければならぬことでありますから、そこで宣戰であるとか、講和であるとか、條約であるとか云ふやうな問題の締結に付ては、日本の憲法は憲法十三條に依つて大權事項として規定せられて居りまして、是は大權の發動に依つて行はれる外、國民の協力を求めるやうなことはない、隨て此の規定があるが爲に軍閥及び一部の官僚が利用して、此の度の大戰爭を誘致したと云ふ原因もあるのであります、少くとも此の問題に付ては國民に相談を掛ける、國民の代表である所の議會の協贊を得ると云ふことがあれば、斯樣な失態は起らなかつたであらうと思ふ、それでありますから、此の度の憲法の改正をなさる上に付ては、民主主義國家を樹立せられると云ふ建前から、此の點を憲法を改正せられる精神の上に織込まなければならぬと思ふのであります、それに付て政府は如何なる考へを御持ちになつて居るか、それを承りたいのであります
それと同時に従來外交問題に付ては、各國にもありますやうに、外交委員會の設置のことが叫ばれて居りましたが、今日まで其の實現を見なかつたけれども、國民外交、民主外交と云ふことを行うて行かなければならぬ建前に於きましては、當然外交上の問題に付ては、外交委員會がなければならぬと思ふ、幣原總理は今まで海外の事情にも御通じになつて居りまして、斯樣な必要を認められることであらうと思ふのであります、是は憲法の改正問題ではありませぬけれども、行政運用の上に於て其の必要ありと思ふのでありますが、之に對する政府の所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=6
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007・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 御承知の通り、憲法改正の問題に付きましては、今内閣の方で一つの審査委員會を開きまして、殆ど連日研究を致して居るのであります、併しながら申すまでもなく、是は政治、國家組織の根本に關するものでありますから、極めて愼重に取扱ふ必要がありまして、凡ゆる角度から檢討致して居るのであります、隨てまだ閣議に問題が提出されて論議されると云ふ場合には達して居りませぬので、詰り内部の一つの審査を進めて居ると云ふだけのことであります、隨て具體的の問題に付きまして結論を得て居ないものを此の際に私から申上げると云ふことは出來兼ねる次第でありまするが、併し大體に於きまして、假令憲法の解釋上條項を改正しなくても行はれると云ふやうなものがありましても、之をはつきりして置いて、他日に疑義を貽さない、濫用される虞を防ぐのだと云ふやうなことでありますれば、是は改正があつて宜いことだと思つて居るのであります、根本はどうしても民主主義的傾向と云ふものの發達を妨げないやうに、それを便宜にするやうにと云ふ考へから起つて居るのでありますから、さう云ふ點に付きましては十分考へに入れまして、適當なる案を練つて行きたいと思つて居るのであります、併しながら實は具體的の問題に付きまして、外交委員會を拵へるとか、大權をどう云ふ範圍内に於て新たなる規定を設けるとか、大權事項に關してどう云ふ規定を設けるとか、未だ結論に對して居らぬものを今豫め申上げると云ふことは出來ない實情にあるのでありますから、それだけは御諒承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=7
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008・川崎克
○川崎(克)委員 私は大藏大臣に御尋ねを致したいのであります、昨日大藏大臣の豫算の全貌に付て御説明を承りまして、其のことに付て私は大體の財政計畫に付て御伺ひを致して見たいのでありますが、あとで同僚の田中君、中村君から御問ひにならうと思ひますからして、私は極めて大體の點を承つて置きたいと思ふのであります、昨日の財政計畫全體に對しまする御發表に依りまして了承致したのでありますが、五箇年計畫なるものが發表せられて居りまして、其の中で公債二千億と云ふことに決められて、此の利子が七十三億計上せられて居るやうでありますが、此の二千億の内容を極めて大綱で宜しいですから承りたいと思ひます、今日既發の公債は約千三百億程にもなつて居るかと思ひますが、其の數字はどの位になつて居りますか、それを承りたいと同時に、臨時軍事費の百六十五億と云ふものはもう是で打切りになる豫定でありますか、更に又追加豫算を求められる豫定でありますか、それも承りたいと思ひます、それから軍需會社の補償金は五百六十五億と云ふことでありますが、其の中で軍需會社に對する分は三百二億と云ふやうに記憶致して居りますが、是等の經費を合せますと、約二千億に近いやうな數字が出て來るのであります、其の他に復興資金とか失業救濟資金とかを計上致しまして大體二千億の計算の基礎的數字、大まかな點で宜しいから、大體の項目に付て二千億と云ふ數字が出て居るのか、承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=8
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009・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今財政方針の大要に付ての御尋ねがありました、其の中で公債利子が七十三億、其の元になる大凡其の二千億の公債發行に對する基礎的な考へ方に付ての御尋ねがございました、御答へ申上げます、現在公債が發行されて居りますのは、十九年度末に於て千四十四億であります、二十年度末に於ては千五百六十億になる推定を致して居ります、其の他に臨軍の借入金の百五十億、補償金の四百六十億と云ふものが今豫定されて居ります、即ち約六百億ばかりのものが豫定されて居る譯であります、其の他に今後申されました戰災復興に要する經費、又食糧増産に要する經費、社會施設に要る經費、或は引揚邦人援護に要する經費、更に對外的な國庫負擔になるもの、是等は今のところ全く見當の付かぬものがあります、斯う云ふものを考へまして、大體のところ二千億程度と云ふことに勘定して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=9
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010・川崎克
○川崎(克)委員 御示しになりました數字を拾ひ上げて見ますと、大體二十年度末の現計に於て千五百六十億と云ふ外に、軍事費の百五十億、軍需補償金の四百六十億と云ふやうな數字で、是だけで二千億に達して居る、其の外に戰災復興資金及び食糧増産、社會施設或は引揚に關するものなどを除外して居つて、是はまだ目途が付かぬと云ふことでありましたが、左樣に了承して宜しうございますか――そこで承りたいことは二千億の公債を償還する爲に、茲に劃期的な増税計畫を發表せられて居ります、一つは「インフレ」防止であり、一つは財政再興の基礎確立の意味であると思ひますが、其の劃期的増税は、戰爭利得税及び財産税、此の二つの柱を立てて、大體財源を得る目的となつたと云ふことであります、其の中で戰爭利得に關する軍需會社に對する分に付きましては、是は戰爭には利益がない、況や敗戰後に於てをやでありまして、是は徹底的に吐出させなければならぬと云ふやうに考へられて居り、又國民の希望も其の點にあると思ふのであります、そこで戰爭利益者と云ふものが今までどう云ふことをして居るかと言へば、闇行爲の横行する原因も色々ありますが、此の戰爭利益者が最も大きな原因を煽つて居る、それだから此の戰爭利益者から利益を取上げると云ふことは、一つは社會風教上の點から考へても其の必要があるのでありまして、之をどう云ふ方法に依つて取上げるか、此の年度は何時から利益計算が始まるのでありますかと云ふことを承りたいのでありますが、何時から利益計算の算定を御始めになる御考へでありますか、それを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=10
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011・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今御尋ねの軍需會社の利益に對しまする問題でありますが、是は洵に御説御尤もでありまして、私も至極同感と存じます、唯軍需會社個々に依つて其の態樣が恐ろしく違ふのであります、一つ一つに付きましては各種の事情の異なることを考へなければならぬと思ひます、補償其のものが事實の損害に對する補償であります、其の損害を埋めて果して利益になるかどうかと云ふことも問題であります、さう云ふ會社もございますし、又今囘の軍需會社の補償其のものの考へ方が、必ずしも全部の損害を「カバー」して、尚ほ其の軍需會社をして全く損害なからしむると云ふ建前ではございませぬ、此の軍需會社の補償には二つの分け方をして居ります、一つは火災保險の損害であります、是は火災保險の保險料を拂つて居る一つの保險契約であります、此の問題と、それから例へば設備を國家の命令に依りまして殖やしましたもの、其の他の生産命令、さう云ふものとの間に多少の區別を考へて居ります、軍需會社の生産設備の殖えました部分、之に對しましての損害の補償と云ふものは、是は單純に補償する考へはございませぬ、一つ一つの軍需會社を十分に調べまして、而も其の如何なる範圍に於て補償するか、如何なる程度に於て補償するか、如何なる方法に於て補償するかと云ふやうなことに付きましては、極めて公開的な委員會を設置し、それに一つ一つ掛けまして、十分に經理的、實際的に其の會社を調べた上ではつきり其の額を決めて參る積りで居りますから、今客觀的に出して居ります所の數字其のものが、必ずしも補償されるとは限らないのであります、又生産命令其の他に於きましても、其の段階に於きまして必ずしも明確でないものもございます、斯う云ふ風な點に付きましては、其の委員會に於きまして十分精査を迭げ、而もそれは政府だけでなしに、凡ゆる民間の知識を入れまして、一つの委員會を作りまして、それに依りまして精査して行くと云ふ考へ方でございます、併し尚且つ其の軍需會社に含みの利益があると云ふやうなことがございました場合には、戰爭利得税として取ることが方法論的に不可能でありましても、財産税として十分に取つて行けると云ふ風に考へて居ります、隨て戰爭に依つて其の爲に肥えると云ふことはなからしむる考へ方をして居ります、尚ほそれでは何時から利得税竝に財産税を開始するかと云ふ御問ひでございましたが、是は最初考へ付きました時には、昭和十六年の暮と云ふことを考へて居りました、即ち大東亞戰爭勃發の時を以てと云ふやうに考へて居りましたが、其の後色々考へました結果、戰爭は必ずしも大東亞戰爭から始まつたのではないのであります、隨ひまして出來るだけ過去に遡る積りで居りますが、併し同時に是は税務署に於きまする當局の資料、それから相手方の資料、其の他の凡ゆる觀點に立ちまして、資料のある限りと云ふことに大體なつて居ります、隨ひまして其の資料はさう古くは遡り得ない、多くの會社が戰災に依つて燒けた爲もございませうが、必ずしもさう古くは遡り得ないと考へて居る次第でございます、個人なども大體の場合に於きましては、恐らく昭和十五年を基準と致すことにならうと存じて居ります、それまでの政府の政策と致しましては、出來るだけ私益追求を避けしむる爲に凡ゆる税を取りまして、出來るだけの意味に於きまして、會社其の他に於て戰爭に於ける利益の得せしめないやうに、非常な峻嚴な方策を執つて居つたのであります、隨ひまして非常に儲けを出しましたのは寧ろ其の後に屬するものだと思ひます、それに付きましても若し資料が完全であれば、相當程度過去まで遡り得る譯でありませうが、現實の問題と致しましては、さう遠き過去までは遡り得ない、是は資料に制約されることだらうと思ひますが、唯單に大東亞戰爭だけの利益と云ふことを考へずに、或る意味に於て戰爭全體を通じての戰爭の利得に付て徹底的に税を課けると云ふ考へ方を致して居ります、其の開始の時期に付きましては目下研究中でございまして、何時と云ふことをはつきり日を決めて、今申上げることは出來ないのであります、其の點は御承知を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=11
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012・川崎克
○川崎(克)委員 脱税の防止と、それから購買力の抑制の意味から考へまして、新券の發行と云ふことは重大な意味を持つて參る譯でありますが、昨日の御説明の中にも、新券の發行に付て述べられて居りますが、是は新券の發行に依つて戰爭中利益を得た者の現金全部を捕捉することが出來ると云ふ見地から、どうしても其の新券の發行が必要であると思ふのでありますが、其の新券の發行と同時に併用して、其の資金の大部分を封鎖して置かなければ購買力の抑制は出來ないのでありますが、それに付てどう云ふ風な御考へを御持ちになつて居られるか、例へば現金で所有する者は千圓以内に限るとか、それ以上のものは封鎖して、商業取引等に付ては傳票で行ふとか、色々のことをやつて居る例もあるやうでありますが、政府の之に對する御考へはどう云ふ方針でおやりになる御積りであるか、それから新券の發行は少くとも戰爭利得税及び財産税を實施する前位でなければならぬと思ふのでありますが、其の準備はどうであるか、果して左樣な準備が出來て居りますか、又其の時期は何時であるかと云ふことも承つて見たい、それから新券發行と同時に平價の切下を行はれる御考へがあるかどうか、さう云つたやうなことも併せて伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=12
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013・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今財産税を課徴致しまする一つの手段と致しまして、財産税の目的が現金にも及ぶのでありますが、それを捕捉する一つの手段と致しまして、政府は新樣式の日本銀行券を發行する計畫を持つて居ることは咋日申上げた通りでございます、之に對しまする準備、是は目下計畫中でありまして、其の印刷能力其の他の點に於きましては實行し得ることを信じて居ります
それから何時さう云ふ新券を發行し、或は財産税を課徴するかと云ふ問題でございますが、其の問題に付きましては、何分にも財産税又は戰爭利得税と云ふものは重大なる劃期的な税でございまして、苟くも此の方法の宜しきを得ませぬ時には、却つて混亂を來すことを覺悟しなければなりませぬ、隨ひまして之には税務署の準備も必要でございませう、又各種金融機關等の準備も必要でございませう、又如何にして之を課徴するかと云ふ方法論其の他に付きまして、餘程萬全の準備をして掛りませぬと、是は徹底しないことになります、隨て今早急にする譯にも參りませぬし、又それに對しまして凡ゆる準備、構想を練りました上に、是は來るべき議會に協贊を經なければならぬ問題でございます、方法論と致しましては、出來るだけ早い時期に之を實施するのが本當だと存じて居りますが、さう云ふ準備其の他の點に於きまして、今何時と云ふことを申上げることが出來ませぬ、唯來年度中にやることだけははつきりして居ります、何月の何日と云ふやうなことをはつきり申上げることは出來ないのであります
それから新樣式の――最近新聞では新圓々々と云ふ言葉を用ひられて居りますが、是は非常に紛らはしい言葉であると思つて居ります、新圓と云ふ意味は新樣式の日本銀行券と云ふことに努めて改めたいと考へて居ります、如何にも新圓と云ふことが、平價切下の如き感を與へることは非常に愼しむべきことと思ひます、又平價切下をするかと云ふことでありますが、是は致しませぬ考へで居ります、又事實其の意味に於きましての平價切下は無意味と存じます、尚ほ新樣式の銀行券と交換を致しました時に、其の後に於きまして之を封鎖するかどうかと云ふ御質問がございました、此の點に付きましては、目下色々考へて居りますが、今の所それに對して何とも御答へを申上げる所に立到つて居ないことを御諒承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=13
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014・川崎克
○川崎(克)委員 新券の發行と同時に、之を増税の脱税防止に用ひると云ふことの必要は固より論を俟たぬのでありますが、此の新券發行は少くとも一部の――大部分と云つて宜しいが、資本の封鎖を行はなければどうしても購買力の抑制にはならぬのでありまして、何でも「フランス」では左樣なことを行はなかつた爲に惡かつたやうに承つて居ります、是は併用しなければならぬものと思つて居るのであります、所が今御考への中には、まだはつきりして居ないかのやうに承るのであるが、是は是非とも「インフレーション」防止、購買力抑制と云ふ建前から行はなければならぬものと信じて居りますので、政府は左樣な意味に於て之を行ふことに御進めを願ひたいと云ふことを希望致します
それと同時に承りたいことは、先程から御説明を承りまして大體の要點は分つたのでありますが、公債半減を大目的とする所の大増税計畫、是も一囘限りのものでありますが、餘程思ひ切つた増税計畫である、此の思ひ切つた増税計畫を實施すると云ふことは、是は非常なことであります、其のことを御決心になつておやりになるのでありますが、所で此の一千億の財源を得る本はどうかと云へば、戰爭利得税と財産税から得るのである、所で其の日本の總財産は幾らあるかと云へば、昨日御示しになりました大藏省の御考へでは、四、五千億と云ふことに計上せられて居るのであります、それも累積した所の國債の結果でありまして、物資と見合を持たない所の財産と云ふことに説明をされて居りますが、全く其の通りであります、物資と見合を持たない所の財産を基礎にして、さうして一千億の増税をする、其の御考へはそこにありましても、恐らく私共の見當では一千億は得られないのではないか、或は七、八百億圓位しか得られないのではないか、斯樣に思ふのでありますが、其の計畫が假に一千億を得たと致しましても、先程から御説明を承つて居りますと、二千億の公債と云ふものを計上して居られまする基本的な考へから見ますと、二千億以上のものになるのでありまして、其の外にまだ大事なものが取除けになつて居るやうに思はれる、先づ外地、臺灣、朝鮮、滿洲、中支等に於きましての政府關係の會社であるとか、或は個人及び會社であるとか云ふやうなものに付て、是は聯合軍に接收せられるものが多分にある、其の接收せられるものに對する日本の賠償額と云ふものは、是は相當の額に上るのではないか、是は大體の計算に於ても或は一千億を超えるのではないかと思はれるのでありますが、其の問題を除外されて居る、それから更に賠償金のことに付きましては、まだはつきりも致さないやうでありますけれども、承る所に依ると、現物賠償を要求されて居るかのやうである、此の現物賠償の價格と云ふものが何處までに上るかと云ふことは豫想が付きませぬが、假に政府に於て是が付いて居れば御示しを願ひたい、此の現物賠償でやつた場合、是も亦政府は補償してやらなくちやならぬ部分があると思ふ、是は大掴みの見當でありますが、幾ら位の見當で補償をせられる御考へでありますか、それを承りたい、左樣なことに計算を致しますると、是は二千億の公債を一千億大増税に依つて減らすのだと云ふ御計畫になつても、後で又公債増發に依らなければならぬやうなことになつて、さうして其の公債増發の基礎的な増税の財源と言へば、先程申上げたやうなことであると言ふなら、洵に寒心に堪へぬ、もう少し見透しの付く計畫の下に増税を行はれないものであらうか、此の點に付て甚だ憂慮に堪へぬものがあるのでありますが、其の點を一つ率直に伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=14
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015・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今御尋ねのございました財産税其の他に依りまして約一千億圓見當の税を課税する、併し國富の大部分は物と見合はざるものの基礎に立つて居るのであるから、果して千億圓取れるかどうかと云ふ第一の御質問でございます、其の點に付きましては目下研究中なのでございます、其の課税の方法及び税率、價格の算定及び物價の工合などを見まして、是の課税の方法が一つ、それから餘りに強く課けますと、將來の日本の經濟的基盤が壞されてしまふ、是は避けなければならぬ、此の二つのことを十分に考へ合せまして、目下研究中なのでございます、其の方法及び税率、或は他の條件をそこへ加味する、物價との關係を加味すると云ふ點に付きまして、鋭意研究中なのでございまして、之に對して今明確なことを申すことは出來ないのが遺憾でありますが、さう云ふ點と、將來の國民の基盤が壞れないと云ふことを十分に考へなければならぬ、そこで大體の目安として今の千億と云ふことを申上げて居る次第でございます、唯仰せの通りに多少物價の考慮を強く致しますれば、それだけでは千億は取れないことになります、又課税の率及び賠償、取り方に依りまして、直ぐ變つて來るのでありますから、其の點に付きまして、目下鋭意研究中であると云ふことを御諒承願ひたいのであります、我々の決心と致しましては、出來るだけ其の點を考へ合せまして、大體の所千億圓程度のものを囘收したいと云ふ心掛けで居る次第でございます
尚ほ次の問題でございますが、臺灣、其の他朝鮮等、及び外地關係のものが接收された場合にどうなるか、之に對しての賠償額、或は補償額、或は其の他の關係、又内地に於きましても、賠償と云ふものが大體現物賠償になるのであるが、其の價格をどう見るか、竝びに之に對して政府はどうするかと云ふ御尋ねでございますが、尚ほ大體之を見ても、千億圓以上になるのではないかと思ふと云ふ御話でございましたが、是は目下非常な勞力を掛けまして外地に於きまする企業、竝びに其の他一般のものに對しましても研究中でございます、まだ不幸にして其の集計がはつきりしないのでありますが、是は恐らく本年中にははつきりするだらうと存じて居ります、それがまだ全然分らない、而も尚且つどれが賠償に當るか、或はどれが賠償として取られて行くかと云ふ點があると思ふのであります、又賠償以外に、例へば滿洲に於きましても、戰災或は匪賊の爲に奪ひ去られるものもあるかも知れない、さう云ふやうな問題が全く不確定事實なのでありまして、今の所之に對する金額が全然「アンノーン」なのでございます、其の爲に相當の金額に上るものが我が國家が持つて居つたものから取り去られると云ふことだけは確かであります、それに對する政府の處置と云ふ問題に付ての御尋ねと、それからもう少しそれを入れて、見透しを付けての増税と云ふことが考へられぬかと云ふ御尋ねに伺ひました、無論私共と致しましては之を十分考慮に入れたかつた、又入れて居るのでありまして、先程申上げましたやうに外地關係に對する見透しが、全く今の所「アンノーン」であるのであります、之に對して政府は如何なる措置に出るか、完全に賠償するか、或は一面は救濟と云ふ恰好になるかどうかと云ふ問題、又或る企業に賠償するか、企業を形成して居る株券を持つて居る人なら人に救濟的に考へるかと云ふ點に付きましては、今後研究致したいと考へて居る次第でございます、例へばあちらで一つの企業をして居る、是は向ふで企業の出來ないものである、之を形成して居る基盤に對して政府がどう考へるかと云ふ問題になつて行くと思ふのでございますが、其の點に付きましては目下研究中でございます、唯或る程度の額はどうしても見込まなければならぬと云ふやうな決心をして居る次第でございます、之に對しても餘りにも其の額に對しての全貌が分りませぬ爲に、今直ぐに此の位の額を斯うすると云ふことを御答へすることは、只今出來ませぬことを御諒承願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=15
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016・川崎克
○川崎(克)委員 只今懇切な御答辯を得たのでありますが、遺憾ながらどうも今度の御示しになりました財政計畫全體に付ては、見透しの付かない結論になつて居ると思はれるのです、是は甚だ遺憾であります、此の劃期的な増税計畫を立てた以上は、もう一遍増税が出來ないのでありますから、もう今度限りの増税であると云ふことの御考への下に立てられた以上は、先の見透しが付くやうにしておやりにならぬと、是はどうも中途半端なものであつて、先の見透しは殆ど付かない、ゆとりを餘程取つて置いて財政計畫を立てて行く、計算が出來ぬならば他日の計算に俟つとしても、ゆとりを付けて見透しを付けて計畫を御立てになつて居らなければならぬが、ぎりぎり一ぱいの計畫で、現在二千億圓の公債がある、其の中半額だけは今の御話に依つて、増税に依つて充すのだと云ふことになるとしても、後から出て來るものは又千億を超した以上のものが殘つて居ると云ふことがあるのでありますから、之をどうするか、それが一番大事なことです、是は抜本塞源の方法に依つて増税計畫をおやりになると云ふ以上は、先の見透しの付くやうにしておやりにならなければ國民は安心しない、此の點に付ては洵に遺憾です、今御説明を承つた所に於ては、洵に遺憾なことである、此の大きな増税――まあ其の中に於ても戰爭利得税の如きは、是はもう絶對的に行はれなければならぬものであり、又思ひ切つておやりになることは當然ですが、財産税の如きに於ては、是は一囘限りと言つても非常な惡税です、之をもう一度又やると云ふことは出來ないと思ふ、それでは財政の見透しが付かぬと云ふことになつてしまふのである、財政の見透しの付かない計畫を御立てになつた、斯う云ふことになる、是は洵に遺憾です、それだからもう少し財政の見透しが是なら付くなと云ふ感じを國民に與へるやうな方法を御執りになられぬものかどうか、只今御説明を承つただけでは、遺憾ながら是はどうも安心の出來ない、見透しの付かない増税をおやりになつたと云ふことに結論はなると思ふのでありますが、何かそれに對する御考へがありましたならば御聽かせを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=16
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017・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 御答へ致します、全體と致しまして、千億圓の財産税を取ると云ふことは仰せの通り一囘限りであり、惡税であることも承知して居ります、今の財政を建直す爲に計畫をしたものでございます、それに對して、後の問題に對しましての――外地關係其の他の間題に對しましての金額が、見透しがないではないかと云ふ御尋ねでございますが、我々と致しましては、是が結局日本は單なる此の儘小さくなるだけではないのであります、其の爲に今後凡ゆる産業を興して、五箇年計畫に於て大體辻褄を合はすと云ふことを考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=17
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018・川崎克
○川崎(克)委員 五箇年計畫に依つて行ふ積りであると云ふことでありますが、それならば五箇年計畫になるべき基礎的な數字を御示しになつて、私の數字に對する御答へを得たいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=18
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019・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 其の點に付きまして、今の所的確には分り兼ねますが、後年度に於きましては、相當財源の餘裕も生ずるものと見込まれて居ります、大體處理出來ることと感じて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=19
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020・川崎克
○川崎(克)委員 私の御尋ね致して居りますのは、結局大まかな點であるのです、極めて大まかな點で、其の數字の如きも大まかな數字で、或は千億と云ひ、千億以上と云ふやうな見易い數字で、當然起るべきことで豫想せなければならぬ事柄を述べたのでありまして、此の豫想せなければならぬ事柄に付ては、具體的にどう云ふ計畫を立ててそれを果すのであるかと云ふこと位な御見込がなければならぬ、五箇年計畫に依つて果すと云ふならば、五箇年計畫の内容を議會を通じて御示しになることが一番大事だと思ふ、どうか五箇年計畫の内容を御示しを願へませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=20
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021・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 數字に付きましては、財産税の數字もはつきりさせまして、具體的に次の機會に申上げたいと思ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=21
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022・中村三之丞
○中村(三)委員 議事進行に付て…、大藏大臣は本會議の財政質問に於ても、只今の川崎君の質問に於ても、財政五箇年計畫の用意ありと云ふ答辯をせられて致ります、然らば其の内容を此の委貝會を通じて廣く發表せられ、國民の協力と理解を求められることこそ民主主義的態度でなければなりませぬ、戰時中に於ける物動計畫の如きはひた隱しに隱して、而も内容杜撰、遂に今日の憂目を見るに至つたことは斷じて繰返してはならない、此の際大藏大臣は自信を以て、財政五箇年計畫表を此の委員會に提出せられ、國民にはつきりせられることが今後に於ける財政計畫を明かにせられる所以であると思ひます、此の點委員長を通じて、今明日中に發表せられんことを要求するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=22
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023・中島彌團次
○中島委員長 政府に申します、中村君から財政計畫五箇年表の提出を求められました、政府の御意向は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=23
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024・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 其の骨格豫算の用意に付きまして、今明日中に御示しをすることに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=24
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025・川崎克
○川崎(克)委員 私の質問に對しては財政五箇年計畫を以て説明をせらるべきことになつたやうでありますから、私は其の説明を承つて更に質問を繼續することになるかも知れませぬが、其の質問を留保致しまして私は是で質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=25
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026・中島彌團次
○中島委員長 田中貢君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=26
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027・田中貢
○田中(貢)委員 總理大臣に「ポツダム」宣言と議會との關係に付て質疑したい、日本國民は平和愛好の國民でありまして、又正直な國民であります、降伏條件として示されたものは何處までも忠實に守ることと思ひます、又「アメリカ」人も非常に「フェヤー」な國民で、「オープンリー」で「フランクリー」な國民でありますから、降伏條件に示した條件だけ守れば、それ以上の要求はしないだらうと思ひます、そこで國民は「ポツダム」宜言に示されたる條項を守れば宜いと思つて居りますが、それで間違ひないのですか、それ以上にまだ守らねばならぬ條項があるかを御示しを願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=27
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028・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 「ポツダム」宣言と云ふのは、我が國に戰爭終結の機會を與へたる提議と解し得るものと思ひます、我が國の降伏は、日本が其の提議に應じて「ポツダム」宣言を受諾し、降伏文書に調印を致しました其のことに基いて成立したものと解すべきであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=28
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029・田中貢
○田中(貢)委員 其の降伏文書の日本が調印致しました其の條項は、明かに國民に示して、是れを守れば宜いのだと云ふことは、國民は悉く諒解して居ると御考へでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=29
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030・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 降伏文書は既に其の當時發表されたのでありまして、御承知のことと存じて居つたのであります、併しどう云ふ點と云ふ御質問がありますれば、更に御答へを致したいと思ひます、其の文書の全部は既に其の當時發表されたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=30
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031・田中貢
○田中(貢)委員 寡聞にして本員は承知致しませぬのです、國民の大多數も明瞭に之を承知して居るとは思ひませぬ、國民に之を十分に知らしめられることが必要でありませう、具體的の問題を例に採つて聽きますならば、此の頃聯合軍最高司令部から色々な指示を受けます、財政に關しましても財産税、戰爭利得税、其の他各種類の指示を受けて居ります、勞働組合法に付きましても各種の指示を受けて居りますが、其の指示は何に基く指示か、私共は「ポツダム」宣言の條項に基く指示かと思ひましたが、降伏文書に基くものならば財政に關する指示は其の降伏文書の第何條に基く指示か、具體的に御示しを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=31
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032・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 御答へを致します、聯合國總司令部の發しまする指令は、降伏文書に於きまして降伏條項を實施する爲め適當と認めらるる範圍内に於て天皇及び日本國政府の統治の權限は聯合國最高司令官に從屬するものとせられてありますこと、竝に日本政府は聯合國最高司令官が降伏實施の爲め適當なりと認めて自ら發し、又は其の委任に基いて發せしむる一切の布告、命令及び指示を遵守し、且つ之を施行することとせられてある、此のことに基いて發せられて居ると解して居るのでありまして、財政に關する指令も亦之に屬するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=32
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033・田中貢
○田中(貢)委員 然らば聯合軍最高指令部から指示のありました際には、議會が、國民經濟を支持し、實物賠償をなすに必要な産業は許容されて居るからして、日本の經濟を支持すると云ふ見地から見まして、指示條項に修正を加へんとしても、それは無駄であつて、聯合軍最高司令部の指示は其の儘守らなければならぬ、それに反對するものは悉く無效である、斯う云ふことになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=33
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034・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 降伏條項實施の爲に聯合國の最高司令官が適當なりと認むるものなる限り、我が國は之を遵守する義務を持つて居るのであります、其の指令は直接議會の審議權を全面的に拘束するものであると思ひませぬけれども、實際政治の問題と致しましては、其の内容を修正することは困難であると思ひます、但し其の指令中の基礎となるべき事實が、何か間違ひに基くと云つたやうな場合には、諒解を得る餘地はあるものと考へて居ります、唯日本側が進んで先方に協力して、其の目的の達成の爲に積極的の態度を明かにすればする程、斯かる場合の連絡の途は圓滑に行くものと考へて居ります、何れに致しましても、先方の意圖する所を實施に移すと云ふことは、是は日本側の責任であり、義務でありまして、議會が不要になるとか、政府が不要であるとか云ふやうなことは絶對にないと信じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=34
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035・田中貢
○田中(貢)委員 然らば財産税、戰爭利得税等に關する財政の指示は、直接聯合軍最高司令部から來たものか、或は大藏省が伺ひを立てて相談に行つたからさう云ふ指示を受けたものか、其の點に付て大藏大臣から御答辯を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=35
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036・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今の御質問の財産税等に付きまして、斯う云ふ經過を辿つて居ります、不肖就任以來此の點に付きましては、非常に苦慮を重ねて研究をして居つた次第でございます、其の資料を得、且つ研究が出來ました時に、こちらから司令部の方に對しまして、各種の問題と共に、此の問題を持つて行つた次第でございます、向ふでも色々の議論がつたやうでございます、併しこちらの案を色々檢討して見たやうでありましたが、こちらと致しましては、こちらの自信を持つた案を持つて參りました、それで之を持つて參りましたのが十一月十六日であります、但しそれに對して向ふから囘答が參りましたのが、十一月二十五日でございます、向ふから財産税を起せと言つたことはございませぬ、こちらが起すと申した次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=36
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037・田中貢
○田中(貢)委員 其の點は初めて明瞭になつたのでございますが、どうも何も彼も聯合軍最高司令部の指示であると言つて、難きを國民に押付けんとする癖がある、戰時中之に類似したものが澤山あつて、國民は迷惑至極であつたが、最近もさう云ふ弊風があるやうだから其の點をはつきりさしたのでありますが、守るべきことは何處までも守らなければならぬ、日本國民はさう云ふ國民です、又日本國民は「ピースフル」の國民であると云ふことは、「アメリカ」の新聞雜誌にも戰爭中でさへ出て居りました、ですから「アメリカ」人は日本國民を信用して居りますが、要らぬことを相談に行つて、重きを國民に押付けると云ふことは斷じて愼まなければならぬことだと思ひます、守るべきことは守る、さうしてこちらの守らなければならぬ條件は成べく立派に果すと云ふこと以上に進んだ出過ぎたことは、政府としては今後愼まなければならぬことと思ひますから、此の點御注意申上げて置きたいと思ひます
第二に「インフレーション」の對策に付て承りたい、戰後の日本の通貨事情、物資の供給事情が「ドイツ」の「インフレーシヨン」直前の實情に似て居ると云ふので、「インフレーション」必至論が無遠慮に述べられて居る、之に對しまして何とか之を囘避し得ると云ふ意見もある、大藏大臣は何とかして囘避したいと云ふ希望の下に御努力になつて居ると思ふが、御就任以來今日まで、其の爲に如何なる方策を盡されたか、將來のことを聽いて居るのではなくて、御就任以來今日まで「インフレ」囘避の爲にどんな方法を執られたか、それを擧げて御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=37
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038・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 終戰後の「インフレ」對策に付きましては、政府と致しまして之に對して非常な努力を致した次第でございますが、財政的には現事態に即しまして、能ふ限りの努力を以て實行豫算を編成致しました、臨軍費に付きましても其の經過と致しまして遺憾ながら遲くはあつたのでありますが、大藏省へ移管を行ひました、其の間に至るまでの實施に付きましても、出來る限り適正ならしむるやうに、陸海軍當局に指令を發して居つた次第であります、又それに付きましては末端に於きまして、色々言はれますやうに多少のことがありましたけれども、大まかな點に於きましては、非常な熱意を以て之に當つて下さつて居る次第であります、又金融的な面に於きましては、終戰直後に於きまして不測の混亂を生ずることがあるだらうと云ふことを心配致しまして、それに備へて「モラトリアム」の如きは絶對に之を行はないと云ふ旨を明示致しまして、先づ落付きを與へたのであります、一方金融機關に對しましては、八月十七日事實的に一切の軍需融資の停止を行つたのであります、それから尚ほ終戰に因ります諸事業の打切に伴ひまして、事業會社の擁しました錯雜した債權債務の處理に付きましても、之に對しまして必要な決濟資金を供給します等、徒らに「インフレーション」の促進となると云ふことの觀點から、集中決濟制度を執りまして之を抑止したのであります、又政府の各種の支拂に付きましては、概ね特殊決濟制度を利用致しまして、是が直ちに通貨化すと云ふことを止めて居ります、それから退職金の支拂等の多額のものに付きましては、大部分が定期預金又は公債に依つて支給しまして、それの現金化を極力抑へて居る次第でありまして、各般の措置を講じた積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=38
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039・田中貢
○田中(貢)委員 大藏大臣は其の程度のことで今までおやりになつた處置で――尤も抽象的な御話ではありますが、來る議會に諸般の施設をされるやうだが、其の點をも併せて考へれば「インフレーション」を免れ得るとの御考へであるかどうか、昨日の財政演説を承りますと、口では何とかなるやうに言つて居られるけれども、餘程御心配のやうな口振りであるが、必至論と囘避説との二つの間に立つて大藏大臣の所信を承りたい、唯抽象的に今のやうに御話になつたのではいけませぬから、「インフレーション」を助長する原因、殊に通貨の増發の原因の重要なるものに付ての見透し、又逆に「インフレーション」を阻止する原因、通貨を縮小する方面の原因等に付き、大體の數字が斯う云ふ結果になるから斯う云ふ結論になると云ふことを明瞭に示されて、迷つて居る國民に嚮ふ所を知らして欲しいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=39
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040・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 「インフレーション」對策が目下の急務であることは、眞劍に考へて居る次第であります、通貨を抑制すると云ふ點に付きましては、只今申上げましたやうに極力政府支拂其の他のものを抑へると云ふことに努力を致して居る次第であります、同時に現下の惡性「インフレーション」が、將に危機を呼びさうな時期に於きまして、最も大切なのは結局食糧問題及び燃料其の他の問題であります、之に對しましては政府全般と致しまして、通貨だけでなしに、此の方の供給に付て全力を擧げて之を緩和する、更に増産をする、是が目下の重大問題であります、通貨面のみに於て「インフレーション」を阻止すると云ふことだけでは出來ない大きな問題であると云ふ風に考へて、之に付きましては政府全體として眞劍に努力をして居る所でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=40
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041・田中貢
○田中(貢)委員 只今の大藏大臣の説明は抽象論であつて、通貨を吸收すると云ふ方面に於ても、實際に今までやられたものが效果を奏して居るものは殆ど見受けられないのであります、又物資の供給増加面に付ても、食糧にしても、國民が知つて居る通り、日常必需品にしても國民の知つて居る通り殆どないのであります、だから大藏大臣は文書を讀んで居られるだけであつて、「インフレーション」阻止に何等の效果のなかつたと云ふことが明かであります、若し御意見があるなら承りませう、そこで總理大臣に承りますが、「インフレーション」の囘避は、只今の御話のやうに通貨吸收面と、物資増加面とが必要であります、そこで財政經濟の全部門に亙つて綜合的な對策を必要とします、現内閣に於きましては、「インフレーション」囘避の責任者は誰が一體當つて居られるか、總理大臣が御當りになつて居られるのか、どなたが御當りになつて居られるのか、其の責任者を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=41
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042・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 それは極めて困難な御問ひでありますが、要するに閣僚全體が責任を執つてやる、共同の責任を以て其のことに當つて居ると申上げるより外仕方がないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=42
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043・田中貢
○田中(貢)委員 そんなことで此の「インフレーション」を免れると思つて居られたら、一寸見當が違ひはしないかと思ひますが、其の點は幾ら追求しても無駄ですから、問題を二つに分けて、先づ通貨吸收面に付て閣僚全體に於て特に責任を持つて居られる大藏大臣に聽いて見たい、大藏大臣は物資の見合ひのない金は吸收する、と云うて、國民の財産の四分の一の一千億圓の新税を起す、斯う云ふ風に言はれて居りますが、能く考へて見ると、一體こんなことをしなくちやならぬ原因は何處から出たか、戰時中政府は放漫なる財政政策、不合理極まる財政政策を行つた、其の結果の蓄積を國民に押付けよう、斯う云ふのであります、何でも彼でも國民に重い負擔を掛けよう、斯う云ふのでありますが、國民にさう云ふことを要求する前に、政府自身としてなし得ることを先づなすべきではないか、政府が八方手を盡して、迚も是では敵はぬと云ふので國民に頼むべきではないか、國民經濟は財政の母であります、財政と致しましては、財政で出來るだけのことをして置いて、金融方面で政府の出來るだけの手を盡して置いて、其の上で國民經濟に泣を入れるべきが當然であると思ひますが、政府は其の點に付て餘り實行されたことがない、さつき御就任以來何をなさつたかと言ふ問ひに對して、數々擧げられましくけれども、其の擧げられた點に付きまして一つ御尋ねして見たい
第一は――一般行政費に付てであります、一般行政費は、昭和十一年度には三億圓餘でありましたが十九年度は十六億圓餘であります、二十年度は更に殖えて居ります、國民は戰爭中戰費が要れば、家庭の費用を節約する、のみならず政府は重い租税を課けて、其の上に更に國民貯蓄を強要したそれにも耐へた、然るに其の間に最も放漫に金を使つたものは政府なのであります、而も一般行政費であります、「アメリカ」の豫算、「イギリス」の豫算、其の他「ドイツ」の豫算を御覽になつて、大藏大臣御承知のことと思ひますが、一般行政費がこんなに殖えた國が何處にあるか、さう云ふやり方をやつて置いて、而も其の跡始末を國民に頼まうと云ふ、是が官僚財政なのであります、大藏大臣は其の官僚財政を其の儘受繼がうと言はれるのか、そこで聽きたいのは昭和二十年度の一般行政費は幾らか、終戰後之を如何に整理したか、如何に之を削減したかと云ふことの數字に付ての御説明と、更に加へて各省の局、課を如何に廢合したか、人員の整理を既に何處までやつたかと云ふことを事實に依つて承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=43
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044・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 數字の點に付ては後から申上げます、支那事變以來、政府の行政機構が非常に大きくなつて參りまして、今の所厖大なるものになつて居りますのは仰せの通であります、之に對しまして目下大幅の行政整理を斷行せんとして、之に對して今眞劍にやつて居ります、唯一つ一つの各省に付てのことを申上げられないのでございますが、各省も之に能く協力されて居りまして、相當大きな行政整理を斷行しようとして居ります、又同時に各省の局課の廢合、之に付きましても、大藏省だけの例を申上げますと、相當の局課の廢合を致したのであります、さうして更に今後相當程度の行政整理を覺悟して居りまして、其の爲に更にもう一遍局課を廢合して縮小する決心で、今其の計畫を立てて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=44
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045・田中貢
○田中(貢)委員 大藏大臣、此處は豫算委員會なのですから、數字に付ての御説明がありませぬといけないのであります、抽象論ではいけない、今年度の一般行政費は幾らの豫算があつた、それを就任以來何程にした、來年度は何ぼ減すかと云ふことを聽いて居るのです、御就任以來幾らに減らされたのかと云ふことを承りたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=45
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046・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 實行豫算の節約額が十七億であります、其の中行政費の節約額は五億六千五百萬圓であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=46
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047・田中貢
○田中(貢)委員 何程が何程に減つたのですか、一般行政費の豫算は幾らだつたのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=47
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048・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 私今頭にありませぬので、甚だ申譯ありませぬが、後に申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=48
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049・田中貢
○田中(貢)委員 なぜこんなことを聽くかと云ふと、繰返して言ふが、政府は努力したかと云ふことを聽いて居るのでありまして、政府が努力した上で國民に要求すべきであつて、もう少ししつかりして貰はぬと困るですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=49
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050・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 御答へ申上げます、二十一億の中、五億六千五百萬圓を節約したのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=50
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051・田中貢
○田中(貢)委員 今二十一億の豫算のものを五億六千萬圓減額した、斯う云ふことであり、更に續いて第二の行政整理を行ふと云ふが、それはどの程度を豫想して居られるか、財産税に付ては四分の一、一千億圓と數字が出て居るのでありますが、局課の廢合、行政整理に付ては凡そ何億圓の減少を豫想して居られるか、其の點を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=51
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052・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 其の實際に付きましては目下計數を集めて居りまして、今直ちに幾らと云ふことは申上げ兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=52
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053・田中貢
○田中(貢)委員 此の點は政府に特に御注意申上げたいのであります、先づ自分の爲すべきことを爲して後に國民に要求すると云ふことを御忘れにならぬやうに御願ひしたいのであります
第二に補助費であります、補助費は支那事變前の十一年度の補助費は一億九千萬圓でありましたが、其の二億圓に足らないものが、二十年度に於ては五十六億圓と云ふ恐ろしい數字であります、何でも彼でも補助金で一時を糊塗して行かう、補助費で何とかして行かうと云ふ政府の怠慢な政策が茲に現はれて居るのであります、此の補助費に付ては現在までに如何樣に整理されたか、其の點を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=53
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054・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 御答へ致します、只今御尋ねの補助金の中、價格差補給金が約二億圓、其の他八億八千萬圓、合計十億八千七百萬圓を節約したのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=54
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055・田中貢
○田中(貢)委員 國民に重きを要求するのに、其の程度の事で一體宜いかどうか、大藏大臣は何と御考へになつて居るか、自分の方の手にあるものは放漫の限りを盡して置いて、國民にだけ要求すると云ふやり方が宜いか、此の點を御改めにならなければ、國民は協力しませぬよ、それから價格差補給金に付きましては、昨日の御演説に於て、徹底的に檢討を加へると共に、他の補助金に付ても廢止又は大幅の削減をする、斯う云ふ風に言うて居られるが、今仰しやつたことは五十何億圓の中の十億圓位の整理に過ぎぬ、それで一體宜いものかどうか、一體價格差補助金なんと云ふものは「インフレーション」の一番大きい原因なのです、米とか石炭とか云ふものは政府の買上量が極めて少くて民間が之を食ふもの使ふものであります、隨て之に補助金を出すと云ふことは、通貨増發の最も甚しい原因なんです、例へば戰時中の鐵の如く政府の買上量の多い場合には、どちらが通貨の増發になるかの議論もありますが、米とか石炭とか云ふ政府の買上量の少いものは、補助金を出すと云ふことが通貨増發の一番大きい原因で、「インフレーション」の最も大きい原因となつて居るのですから、直ちに之を廢めて然るべきものであるのです、鐵も同樣です、「アルミニゥム」も同樣です、而もそれに對しては何等手を着けない、殊に米に付ては本委員會に尚ほ二億圓の追加豫算を出すと云ふ御言明であつたやうに承つたが、廢めざるのみならずまだ殖やす、「インフレーション」の原因を助長しようと云ふ大藏大臣の肚は何處にあるか、大藏大臣は餘程「インフレーション」に付て樂觀論を持つて居ると見る外はない、若し大丈夫と言ふのならば樂觀論の基礎を示されたい、若しさうでないと言ふのならば何故廢めぬか、今まで何故廢めなかつたか、廢めなかつた理由を詳細に御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=55
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056・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 價格差補給金の問題でありますが、是は石炭、鐵其の他銅、「アルミニウム」色々の物がございます、戰時中に於きまする應急採炭、又戰爭災害等に因ります打撃を逐次囘復しまして生産條件が安定され、約四千萬「トン」の生産、是は大體支那事變勃發前の四箇年間の平均に相當するのでありますが、之を期待し得べき時期であると看做される昭和二十四年度に於きます所の推定された生産費を基準と致しまして、昭和二十年度十二月以降現在の販賣價格一「トン」當り二十圓十三錢程度を八十五圓に引上げる方針でございます、隨て價格調整補給金は二十四年以降に於て之を廢止することに致しますが、二十三年度までは經過的措置として存置して置きたいと云ふ考へでございます、其の方針に伴ひまして段々出炭を殖やして參る考へでございます、補給金と致しましては、國庫の負擔が二十年度の下半期に於ては六億二千萬圓、二十一年度に於きましては七億九千六百萬圓、二十二年度は四億八千四百萬圓、二十三年度が二億九百萬圓、二十四年度に全くなくなると云ふことに致したいと存じて居ります、此の場合の石炭の消費者價格が如何なる時期にどの位上るかと申しますと、消費者價格は現在平均「トン」當り二十圓十三錢程度でありますが、此の案に依りますと、本年の十二月以降八十五圓程度に引上げられるのであります、さうして其の以後特別の事情のない限り据置かれると云ふ恰好になるのであります、大體御説の通りに價格差補給金を國庫が出して居ると云ふことは洵に宜くない制度でありまして、さう云ふものなしに全く普通の價格に於て全部の經濟が、營まれなければならぬと云ふことは御説の通りでございますが、今までの關係竝に終戰後に於きます關係から、一遍に外しますと、石炭がいきなり十倍以上にも上つてしまふと云ふことは、全體の經濟を攪亂すると云ふ觀點から致しまして、其の程度で影響を多少とも狹めて行かうと云ふことを考へて居る次第であります、又銅、亞鉛、「アルミニウム」等に付きましては、少くとも二十一年度以降價格差補給金を全廢しようとして居るのであります、唯石炭の如き本當の基本物資に付きまして、急に之を取外します時には、寧ろ物價面に於て非常な混亂を來すと云ふことを考へて居る次第であります、今直ちに石炭の價格差補給金を外しますと、恐らく現在の値段の十倍或は十何倍に上つてしまふと云ふことも考へられるのであります、それで今後の生産力の囘復の程度に應じまして、逐次販賣價格の引下げを期するやうにしたいと考へて居る次第であります、併し此の案に依りましても、販賣價格は現在に比しまして約四倍程度に引上げられるのであります、各種の産業、就中「ガス」とか運賃とか云ふものに對しては相當の影響が免れないことだと存じて居ります、併し今後生産費に及ぼす影響に付きましては鋭意研究中でございます、適當なる時期に於きまして價格の引上を認めまして、價格差補給補助と云ふのは原則として實施しない意向を持つて居ります
尚ほ價格差補給金を價格の引上を以て處理してしまふと云ふ場合に於きまして、將來の物價水準を如何なる點に安定させるかと云ふことでありますが、此の點に付ましては當局として目下鋭意研究中でございます、現状に於きまして物價水準の安定は、結局食糧を基本とする生活必需物資竝にそれの價格の如何に依存することが最も大きいのであります、而も此の點に付きましては食糧の輸入、生産囘復、凡ゆる物資の生産の状態の囘復可能の程度、是等總てが中々見透しが困難なる要素を多分に持つて居るのであります、目下此の點が物價水準を一應上げて、一つの體系を立てると云ふことも極めて困難な實情にあるのであります、尚ほ物價水準の問題に關しましては、今後財政計畫竝に食糧事情總てのものを勘案致しまして、物價水準を如何なる程度に安定すべきかと云ふことに付きまして、今暫く時期的に餘裕を得て實施して行きたいと云ふ風に考へて居る次第でございます、仰せの通り「インフレーション」の原因になりますものは、出來るだけ除去することを苦心して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=56
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057・田中貢
○田中(貢)委員 只今石炭を例に御取りになりましたが、石炭の補給金を廢めれば十倍に價格が上るであらう、十倍になれば經濟界に恐ろしい影響が來るであらうと言はれたが、どう云ふ影響があるかを述べて貰ひたい、今日石炭は八方苦心しても到底増産の見込がありませぬ、斯う云ふ状態でありまして、石炭がないのと其の値段が上るのと、どちらが影響が大きいか、少くとも値段が十倍に上るとどう云ふ影響が國民經濟に來るのか、其の點を明瞭に御答辯を願ひたい、又「インフレーション」を阻止する爲には補給金を廢める、其の他補助金を廢める、凡ゆる財政上手を打たなければならぬが、「インフレーション」を阻止する爲には努力して居る、斯う言ひながら一々政府の手を著け得るものを擧げて見ると、何もやつて居らない、それで一體大藏大臣の重責を盡して居ると思はれるかどうか、其の問題は後にしまして、先づ第一に十倍になつたら恐ろしい影響をすると言はれたが、どう云ふ影響が來るのですか、それを一つ明瞭に御説明願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=57
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058・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今の御質問でありますが、一例を取りますと、例へばいきなり補給金を外しますれば、運賃其の他が一遍に昂騰しなければならぬ、全部生産なり運行が出來なくなる状態の所が多いのであります、此の點に付きまして直ちに外さない方が經濟の運行上適當であらうと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=58
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059・田中貢
○田中(貢)委員 大藏大臣の御答辯では滿足致し兼ねますが、此の補給金の問題は是れ以上追究致しても、同樣な答辯を繰返すのみである、唯調査中、研究中、將來やると云ふやうな御答辯しかなさらぬのでありますから、追究しても仕樣がないと思ひます、それで補助金の問題に付ては一應此の程度にして置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=59
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060・中島彌團次
○中島委員長 それでは是にて午後一時まで休憩致します
午後零時十分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=60
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061・会議録情報2
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午後一時十七分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=61
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062・中島彌團次
○中島委員長 休憩前に引續き會議を開きます、政府より閣議の爲め各大臣共午後二時まで出席致し兼ねる旨の申出があります、仍て午後二時まで休憩致したいと思ひます、御異議はありませぬか
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=62
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063・中島彌團次
○中島委員長 御異議なければ其の通りに決します、午後二時まで休憩致します
午後一時十八分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=63
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064・会議録情報3
――――◇―――――
午後二時十一分開議発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=64
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065・中島彌團次
○中島委員長 休憩前に引續き會議を開きます――田中貢君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=65
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066・田中貢
○田中(貢)委員 休憩前に石炭の補給金に付て大藏大臣と質疑應答をしました、其の際に補給金なくば十倍に上ると云ふ御話でありましたから、十倍に上つたら如何なる影響を及ぼすかと云ふことを問うたのでありますが、其の御答へ洵に私の滿足する程に至りませぬでした、此の問題は戰爭中豫算委員會に於て、石炭の委員會に於て、詳細に亙つて質疑應答があつたのであります、其の際に色々突込んで質問して見ますと、補給金を廢めて値上をするならば、其の爲に凡ゆる物價に影響する、政府は當時公定價格制を執つて居りましたから、其の公定價格を原價に依つて改正せねばならぬ、それは手續の煩に堪へぬ、斯う云ふことが政府の答辯でありました、議事録に依つて御覽を願ひたい、そこで政府は手續の煩瑣よ恐れて、補給金制度を續けました、最初始まつた時は五千萬圓足り足らずの金でありましたが、今日は數十億圓と云ふ巨額なものになり、更にそれが「インフレーション」に重大な影響を及ぼすと云ふ状態になつて居るのであります、それにも拘らず政府は今尚ほ依然として色々な理由を拵へて――特に拵へたものと言つても宜い程の理由を以て之を支持しようと云ふのでありますが、此の問題は未解決の儘に殘して置きまして、近く米に付ての補給金を出される時に、米の補給金と竝べて全般の補給金に付てもう一度論議したいと思ひます、のみならず此の補給金こそは計算の手續が極めて煩瑣であります、補給金がある爲に原價計算をせねばならず、其の手續は煩瑣であつて、却て石炭の増産を妨げたことは、戰爭中明かに現はれた事實であります、政府は篤と此の點を研究になつて、石炭の實情に付て――其の他の補給金に付てはそれぞれの物の實情に付て、御研究の上議場に臨まれんことを望んで已まない次第であります、隨て補給金の問題は此の程度にして置きますが、兎も角も政府は財政演説に於ては之を止めるやうな口振りであるが、止める意思はないのだ、少くとも今までは止めて居なかつたのだと云ふ事實だけは明瞭になりました
次に、公債の日銀引受發行でありますが、此のことの起りを詳細に説明する必要はなくて、大藏大臣は既に御承知のことと思ひます、民間に金のなかつた時に已むを得ず高橋大藏大臣が實施された其の方法を、其の後に於てもずつと繼續して來たことが、今日財政經濟に幾多の困難な原因を貽した、斯う云ふことだけは大藏大臣自身も昨日の演説に於て認められた通りであります、然らば日銀引受發行方法はもう御止めになつて居るのかどうか、どう云ふ方法で只今公債を發行して居るのか、其の點を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=66
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067・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今の日銀に於ける公債の引受制度の問題であります、是は戰後通貨竝に物價對策委員會に於ても屡屡論議せられて居る所であります、今後は出來るだけ公債は公募主義に依りたいと云ふことが念願であります、但し現在直ちにさう致すことは、今の所實情がそこまで行つて居りませぬ、併し何處までも其の方向を以て努力致したい
尚ほ此の機會に先程御答辯申上げたことに付きまして、一寸申上げて置きたいことがございます、それは石炭の價格に付て八十五圓と云ふ數字を申上げましたが、是はまだ商工省の方に於きまして「マッカーサー」司令部の方との打合せが濟んで居らぬ數字でございますから、此のことだけ御含み置きを願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=67
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068・田中貢
○田中(貢)委員 次に通貨の囘收と云ふ點に付きまして一、二承りたいのであります、先づ租税に付きまして、從來租税を納入して居たものを止めまして、國策會社とか、金庫、營團、統制會社と云ふ風なものにして、法人税、營業税を免除しました、更に補助金を交付すると云ふ方法を執つて居る、戰爭中色色な理窟を付けて、税金を納めて居つたものをわざわざ納めぬでも宜いやうにして、政府が補助金を出すと云ふ方法を執つた、此の方法が今も尚ほ繼續して行つて居るのかどうか、既に止められたかどうか、其の點を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=68
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069・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 只今の御質問でありますが、統制會社其の他に於きましては、現在原則として課税して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=69
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070・田中貢
○田中(貢)委員 大藏省の所管では日本證券株式會社と云ふのがありますが、あれは戰前に於て取引所竝に取引員がどの位税金を出して居つたのか、現在どれ程補助金を出して居るのか、數字に依つて明瞭にして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=70
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071・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 是は全く特別の會社でありまして、政府が多く出資して居る會社であります、隨て現在の所課税して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=71
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072・田中貢
○田中(貢)委員 補助金はどの位出して居るのですか、どの位税金があつたものか租税減になつて居るか、日本證券株式會社を作つた爲にどの位租税が減少して、而もどの位今補給金を出して居るか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=72
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073・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 數字に付きましては私今能く存じませぬ、何れ申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=73
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074・田中貢
○田中(貢)委員 適當の機會に御發表願ひたいと思ひます
次に租税體系に付て承りたいのですが、日本の租税收入は、專賣益金などを寄せまして、國民所得の二割三分だと言はれて居る、英米の租税收入は國民所得の四割だと斯う言はれて居つた、大體そんなものであると云ふ風に了承して居りますが、日本に於ては租税負擔は非常に重い、而も三割三分しか取れないと云ふことは、租税體系が良くないと云ふことに基くものではなからうか、此の點は戰時中の議會に於て屡屡論議された所でありますけれども、政府は依然として改められて居らぬ、大藏大臣は財界出身の方であり、實情を御存じの方であるが、其の大藏大臣の考へられて居る所の租税體系は、如何なるものか、租税の理想としては成べく國民が知らぬ間に――負擔を感ぜずに出すと云ふことにある、さうして其の額が多くなると云ふことでなくてはなりませぬが、其の點に付て大藏大臣の御所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=74
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075・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 租税體系の問題に付ては目下研究中でありまして、殊に終戰後の日本の經濟状態、國民の負擔能力、其の他に付きまして十分研究の上、租税體系に付ては御言葉のやうな意味で研究して行きたいと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=75
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076・田中貢
○田中(貢)委員 さつきから屡屡質問を重ねて居りますと、研究中、調査中と云ふことであつて具體的の案はない、一方國民への要求は大體の金額要項も決まつて居つて、國民に重い要求をすると云ふことはちやんと決まつて居るが、政府自身のなすべきことはやらない、政府自身が戰時中放漫な政策をやつた、それを自肅自戒すると云ふことに付ては何等御考へがないと云ふことは遺憾であります、殊に今日劃期的な財産税、戰爭利得税をやらうと云ふ際に、租税體系が今尚ほ調査中と云ふことでは成つて居ないと思ひます、其の調査中に於て、間接税に重點を置くこと、闇收入に課税すると云ふ風なことは論議されて居るかどうか、此の二點に付て承りたい、租税體系に付ては色々議論もありませうが、ここで調査中と云ふのを押問答しても追つ付きませぬ、隨て唯一つだけ聽きたいことは、間接税に付てはどう云ふ方向に向つて調査を進めて居るか、闇收入を如何にして捕捉するか、此の二點に付て承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=76
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077・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 間接税に付きましては、今後或る程度の増徴を行ふ積りで居ります、尚ほ闇收入に付きましての御話に付きましては、其の捕捉が非常に困難であります、隨ひまして今の所直ちに其の都度の闇收入を捕捉することは不可能だと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=77
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078・田中貢
○田中(貢)委員 間接税に付て、昨日の財政演説に於きましては、酒類其の他嗜好品に重課すると云ふことの御言明がありましたが、唯そんな程度であるか、一般の取引税と云ふか、特別行爲税と云ふか、兎も角も賣買以外の賃貸借、交換、委託、仲介、周旋と云ふ風なものも課税の對象となるのではなからうか、それから闇收入の點に付ては復興事業の繼續する間、少くとも今日に於ては大工の賃金は一體どんなものか、土建業者の收入は一體どんなものか、是は大藏大臣も御存じでせう、さう云ふものは悉く課税を免れて居る、一體新興所得階級はみんな逃がして置いて、さうでない階級に重く課する所に、日本の租税の拙劣な所がある、今大藏大臣はそれは困難なことだと言はれた、成程無理はない、從來政府のやつて來たことは、成べく困難なことを避けて、樂な方法をやつて居る、補助金然り、租税體系然り、其の他經濟政策然り、それが負けた大きな原因でありますが、今尚ほそれを財界出身の大藏大臣が困難だからと言ふ、そんな言葉で此の際逃げられると云ふことは、どう云ふものであらうか、困難なことをやつて行かなくてはならぬのであります、何も彼も困難なのが今日の實情でありますから、此の點に付てはもう一遍重ねて御決心の程を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=78
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079・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 闇收入の問題に付きましては、技術上困難だと申上げたのでありますが、財産税及び戰爭利得税其の他の方法に依りましては、之を捕捉することが出來ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=79
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080・田中貢
○田中(貢)委員 只今の大藏大臣の答辯は洵に私は了承し兼ねるのでありますが、幾ら追究しても同じことを御答辯になるに相違ありませぬから、是れ以上追究は致しませぬ、唯そんなことでは政府自身の爲すべきことは足らぬものであると云ふことだけ申上げて置きます
次に通貨の吸收策として、又戰後の財源探究の點からして、更に能率を高めると云ふ點から致しまして、官有財産或は官營事業と云ふものを拂下、株式化すると云ふことが必要であつて、又それは政府のなし得ることであるが、政府は官有財産、官營事業の拂下乃至株式化と云ふことに付て、之を直ちに決行する意思はないかどうか、此の點を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=80
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081・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 官業の拂下問題は大いに考慮すべき問題だと思ひます、併し現在の状態に於きまして、直ちに總ての官業を拂下げると云ふことは考へて居りませぬ、唯或る部分に付きまして、さう云ふことは可能な範圍に於きましては目下研究中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=81
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082・田中貢
○田中(貢)委員 大藏大臣に質疑致したいことは多々ありますが、只今までの御答辯に依りまして、財政に關する限り政府は自らなし得ること、財政政策上なさねばならぬことをなさずして、徒らに重き負擔を國民に課ける嫌ひがあると云ふことだけは明瞭になりました、斯う云ふ方法で果して國民の協力が得られるでありませうか、政府がなすべきことをなして、本當に是だけのことをした、ここまでやつた、こんなにやつたと云ふことで、初めて國民の協力を得られると思ふのです、政府の今まで御説明になつたやうな方法で、果して國民の協力を得られるものかどうか、大藏大臣に唯其の一點だけを承りたいと思ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=82
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083・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 十分に努力致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=83
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084・田中貢
○田中(貢)委員 是れ以上は追究致しますまい、更にもう一點承りたいことは、日銀の貸出は昭和十七、八年、殊に昭和十八年の下期以來頓に殖えまして、數億圓であつたものが、今日は何百億と云ふ數になつて居る、日銀の貸出は經理統制令其の他の施策の拙劣に基いたものでありますが、今日は既に事情が變つて來たにも拘らず、貸出が非常に多い、政府は日銀の貸出に付て何等かの方法を執つたかどうか、是が通貨の殖える大きな原因でありますが、何等かの對策を執られて居るならば、其の概要を御示し願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=84
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085・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 日銀の貸出が殖えました大きな原因は、軍需産業を政府として戰時中何處までも助成した所に原因があります、其の方法が必ずしも妥當であつたかどうかと云ふことは問題であります、併し現實の問題としては貸出が殖えて居ります、之に對しまして政府と致しましては、事業補償の問題其の他が或る程度解決すれば、日銀の貸出は其の儘減る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=85
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086・田中貢
○田中(貢)委員 戰時に軍需産業に付ての貸出の殖えました原因は何處にあるかと云へば、政府は盛んに増産を命令する、而も株式經理統制令に依つて其の配當其の他を抑へて居る、隨て株式資本に依つてやつたのでは會社は立つて行けませぬ、隨て銀行に貸出を求める、銀行は日銀の援けを受けると云ふことが増加した原因であつた、隨て政府がさう云ふ方針を執つたが故に、日銀貸出の數字は殖えて居るのであります、屡屡是も議會に於て指摘した所でありますけれども、時の大藏大臣は之を是正しませぬでした、そこで日銀からおいでになつた大藏大臣なんだから何等かの方法を執つて居られるか、殊に今日「インフレーション」を非常に氣にして居られる大藏大臣が、日銀の貸出に付て制限其の他の方法を執つて居られぬと云ふことは驚き入つたことであります、此の點は財界の實情に副ふやうに相當の方法を講ぜられることが必要であると私は信じます、そして各銀行をして自己資金を以て賄はすやうな方法を御執りにならなければ間に合はぬのではないかと云ふことを、唯御注意を申上げて置く程度に止めませう
只今は貸幣の方面から見た「インフレーション」の問題を論議致しましたが、次に物の方面から見た「インフレーション」囘避の問題に付て承りたいのであります、先づ農林大臣に承りたいのでありますが、食糧事情の惡化せることと、農林大臣御努力の點は國民悉く之を知つて居ると思ひます、けれども二合一勺の配給で健康を保持し、勤勞能力を保持すると云ふことは難かしいことでありますのみならず、政府は屡屡米麥を以て二合一勺配給して、藷は特配するんだと云ふことを放送されますけれども、實際二合一勺の米麥は配給されて居りませぬ、現に私の經驗して居る所では、十一月の六日から十九日までは配給がありませぬでした、遲延致しまして全然なかつた、二十五日以後は藷ばかりであります、是は事實であります、斯う云ふ状態を以て果して國民はやつて行けるかどうか、成程農林省と致しましては日本の耕地、其の生産量と云ふ點からして配給の御計畫を立つて居られますけれども、配給は唯單に生産と云ふ點から考へて行くべきものか、更に其の外に社會に動搖のあつた場合には之をどうするか、社會生活と云ふ方面から此の問題を一つ考へなければならぬ、斯樣に思ふのでありまして、生産のみからは論議されぬと思ひますが、農林大臣の御所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=86
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087・松村謙三
○松村國務大臣 御答へを申します、勿論御話の通りに二合一勺では十分でないことは承知致して居ります、隨ひまして供出其の他の見透しが付きますならば、何とか努力をして二合三勺までは増配を致したい考へで居ります、それから御話のやうに配給が途切れた場合がありますことは、從來も屡屡小運搬其の他の事情からありましたことであります、私も洵に申譯のないことと思うて居るのであります、十分注意致しましてさう云ふことのないやうに努めて居ります、中旬から二合一勺の内容を充實して、混物をなくしたいと云ふことは豫て聲明を致した通りでありますが、其の後今年は作柄が遲れました等の爲に、東京への廻米、大阪への廻米が例年のやうに參りませぬで、其の爲に遲れたのでございますが、辛ひに先月の末頃から順調に囘復を致して參りましたので、先月末から見据えが付きましたので、内容の充實を致して配給を改めつつあるのでございます、今後配給を受けられる方は、さう云ふ風に内容の改善を致して配給をする、斯う云ふことに著手を致して居るのでございますから、左樣御承知を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=87
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088・田中貢
○田中(貢)委員 農林大臣が熱心に配給其の他に努力して居られることは、能く承知して居るのでございます、けれども實際は農林大臣の御言明になりましたことと違つて居る、それは各人知つて居ります、又二合一勺貰ひましても、是ではやつて行けぬのだから、どうしたつて闇で手配しなければならぬ、闇で手配すれば何か彼か入る、闇はいかぬと言うても、生きる爲には何とかしなければならぬ、又會社とか團體などの方面に於ては、相當に大規模に食糧を持つて居て、從業員には特配して居るのではないかと思はれる節が多々あるのであります、此の點から考へると、其の配給方法に付て、或は供出方法に付て、何等か其處に不十分な點があるのではなからうか、農林大臣は大變に御努力をせられまして、又農林大臣の人格の上からして非常に農民は共鳴して呉れて居る、尊敬して呉れて居ると思ひますが、併しながら振返つて考へると、戰爭中にやられた所の方法は人情に反するものが多かつた、農村の實情に反するものが非常に多かつた、經濟に反する方法が盛んに行はれた、而も戰爭に勝つ爲に國民は之を忍んで來たのであります、のみならず御民我等一切を大君に捧げまつらん、と斯う云ふ意氣込で耐へ忍んで參りました、然るに今日に於きましては、さう云ふことがもう出來なくなりました、どうしたつて農村の實情に應ずるやうな供出の方法、經濟の原則に合ふやうな供出の方法でなければ、實際此の供出の圓滿を期することは出來ぬと思ひますが、政府は今日の供出の方法を以ちましてさう云ふ農村の實情に合ふものとして、此の儘で圓滑に行くと云ふ御意見であるかどうか、兎に角供出の爲には實情に合ふやうにやつて行かうと云ふ御希望であるか、此の點に付て農林大臣の御意見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=88
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089・松村謙三
○松村國務大臣 農民の氣分に付きましては、御話通りと私共も心得て居ります、そこで戰爭中の歪められたあの形に於ての供出と云ふことは、極めて困難であることも承知を致して居ります、併しながら今日の此の情勢に於きましては、一面精神的には全く同胞愛に依りまして、何とかして日本の國民總てが生きて行けるやうに供出をして貰はう、是より外に途がないのでございます、さう云ふ風に努めまして、歪められたる氣分を――本當の農民が傳統的に持つて居りますあの同情のある氣分に愬へて供出を促し、此の危局を乘切るやうに、心から供出をして貰ふより外に途がないと思ひます、又物の方面から申しますと、實際今日農村の實情から申しますれば、生活に必要な物を買ひ、若しくは生産に必要な物を得まするのに、只では買ひ得ない、必ず米を持つて行かなくては買ふことは出來ないと云ふやうなことが實情であります、それが單に闇相場でなければ買へないと云ふだけではなくて、それに加ふるに物々交換のやうな形が、而も最も形の惡い「バーター」のやうな形が出て居りますので、此の爲に自分の食糧以外に必要な物を得る爲に米を殘して置かなくてはならないと云ふことが、供出を妨げて居る大きな原因でありますので、出來るだけ其のやうなことをしなくて、直接に農民に肥料、農機具其の他必需資材を渡せることを考へなくちやならぬことを痛切に感ずるのであります、それで今度供出に肥料であるとか、農機具であるとか或は酒類、衣類と云ふやうなものを附けて行かうと云ふことも、供出を促進する意味でもあり、十分に供出をして呉れた方に報ゆる意味でもありますが、一般農家に出來るだけ斯う云ふものをさう云ふ闇でなくして渡したい、斯う云ふことでやつて居るのでございます、是等だけで十分であるとは申しませぬが、此の精神方面と物的方面と併せて十分に努力を致しますならば、今年の割當てられたる供出も、何とかして是は出して貰ふことが出來て、食糧難の突破に貢獻することが出來るのではないか、此のやうな心掛けで只今やつて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=89
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090・田中貢
○田中(貢)委員 配給供出面に付ての農林大臣の御熱心なやり方に付ては、一應諒承致しましたが、其の本をなすものは生産であります、殊に最近は社會事情の變化に基きまして、玄人の農民が耕作して居たのに代つて、素人の農民が漸次殖えると云ふ傾向であります、是は生産能率を下げることは間違ひないことでありまして、必ずしも好ましいことではありませぬ、更にもつと大切なことは、新たに農地を開拓することも必要であるが、現存の農地に於て反當の收穫を殖やすと云ふことが更に必要である、而もそれは肥料の問題を離れては考へられませぬ、是も戰時中は事情を異にしましたが、肥料が絶對に必要である、化學肥料とか、魚介とか、そんなものに亙りまして一體肥料はいつ頃手に渡るものか、少くとも今年の麥作に間に合ふものはどの位の程度かと云ふことを、成べく詳細に農民に通ずるやうに此の際御發表願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=90
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091・松村謙三
○松村國務大臣 御話の通り肥料の問題が、今日生産の基礎的條件になつて居りますことは申すまでもないことであります、今年の凶作の如きも天候の關係にも因りませうけれども、實際地味の永い間の涸渇に因る點が多いのであります、それで肥料のことが今後の食料問題の中心となるのでありますが、不幸にして窒素肥料に於きましては、戰爭の爲に工場が非常に爆撃其の他の損害を受けまして、終戰當時には一箇月の硫安製造量が八千「トン」程度まで下つて居た状態であります、それを早急に囘復することに努めて參りましたが、最低がそれ位でございましたので、今日の所相當に改善せられて居りますけれども、今年の麥の肥料に間に合ふ分量は極めて少いものであります、一反歩當り僅かに一貫目位のものでございます、是では非常に心配であります、今年の食糧問題の解決の大きな鍵を握つて居ります麥の作柄等に付ては、是は餘程大切に考へなくちやならないと思ひます、それで硫安若しくは石灰窒素以外の、何でも肥料になるものは掻集めて農家に廻したいと思つて、只今最善の努力を致して居る所でございます、是は少し廣い意味で掻集めて見ますと、或る程度のものは集め得ると思ひまして、之に努力を致して居るやうな譯であります
それから來年度の肥料の増産でありますが、是は肥料年度でなく、來年の正月から來年の十二月までには、凡そ七十四、五萬「トン」と計畫致し、期待を致して居る譯であります、明後年度になりますと、それが大體二百萬「トン」の程度、即ち戰前の状態に復歸する、斯う云ふことでございます、是等の計畫を確實に致しますが爲には、此の儘で放つて置きますと、斯樣なことには中々參りませぬ、そこで十分に業者と連絡しまして、其の價格、それから設備、金融等に付て十二分のことをするにあらざれば、是だけの數量を確保することが出來得ないと存じまして、先般も閣議決定を得て、最も生産の隘路となつて居ります金融に對する國家補償のことも定め、資材の優先も認めて戴きまして、今日は最善の努力を致して居る積りでございます、先月中に業者の一社毎に、明年必ず是だけやると云ふ責任額を決めて呉れることをこちらから懇談致しまして、不日其の責任額を決めて來る筈でございます、さうして是等のものを綜合して、計畫だけでなく、實體的に把握し得る方法を講じたいと思うて居ります、明年一箇年に七十四、五萬「トン」が全部でありますら、是れ全部が來年の稻作に間に合ふと云ふことになれば非常に宜いのでありますけれども、其の中七月以後位のものは稻作に間に合ひませぬので、隨て其の全量が明年の稻作に間に合ひませぬけれども、今年よりも相當に改善せられることと思ふのであります、明年の麥作以後に於ては、大體平時の状態に肥料關係に於て改良されるのではないか、此のやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=91
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092・田中貢
○田中(貢)委員 肥料に付て御心配の點能く了承致しましたが、硫安肥料がこんな状態になつたことは農林大臣篤と御存じのことであり、特に此の問題に付ては造詣の深い方でありまして、御研究の點は傍から見て能く承知して居りますけれども、硫安の生産が斯くの如き状態になつたことには遠い原因がある、それは農林省が價格政策に酷であつた爲に硫安の會社が立ち行かなくなつちやつた、例へば硫安の第一流の會社ですら、殆ど見る影もないと云ふ状態であります、簡單に見るならば、軍需會社其の他の會社の考課状と、硫安の會社の考課状とを過去數年に於て比較して見ると、如何に農林省の肥料價格政策が影響して居るかと云ふことが分る、之を改めざる限り如何樣に努力しても私は物にならぬと思ふ、唯農林大臣は只今價格政策に於ても相當の改善をしたと云ふことでありますから、さぞ適當な價格にせられたことでありませう、次には戰災を被つて破壞された設備もあるけれども、其の以前に設備を酷使した爲に、大規模の修繕を要するものが少くありませぬ、是等の點に付きましても、只今資材の配給其の他を優先的に認められると云ふことでありましたから、相當の效果を擧げることと思ひますが、大體只今農林大臣の御言明になつたやうな數字、それだけの肥料を得る爲に障碍となるものは既に一掃されて居る、隨て御言明になつた數字は大體期待して宜い、斯う云ふ風に了承して宜いものでありませうか、大切な問題でありますからもう一度御答辯を煩はしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=92
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093・松村謙三
○松村國務大臣 御話の通り此の價格が是まで生産を抑壓したことは認めます、隨ひまして今は何を差措いても肥料が根本でありますから、價格問題の隘路は是は一つ撤廢と申しますか、是正と申しますか、價格に依つて生産を阻碍することのないやうには絶對に致したいと心得て居ります
〔委員長退席、眞鍋委員長代理著席〕
それから是だけやつたならばもう是で隘路がないかと仰せられますと、それは資材其の他の――私言ひ洩らしましたが、戰爭中酷使した爲に大きな修繕を要する部分もありますし、それから爆撃に依つて一部しか殘らないで、其の一部の殘つたのだけでは非常に「コスト」が高く上り、生産が上らないと云ふやうな部分もありまして、それ等に殆ど新しく建築すると同じやうな資材を要する所もあります、それで此の資材を要する其の調査も此處に持合せて居りませぬが、大體聯合國から返還を受けました資材の中等で、大體賄ひ得るのではないかと云ふ見据えは持つて居りまして、それと新たに造るものと併せて考へます時に、資材の隘路は是は解決出來得るのではなからうかと思ふのです、唯今日もう目の前に隘路となつて居りますのは、やはり石炭であります、此の石炭の問題が石灰窒素等の生産に及ぼす影響は非常に多うございますので、此の點に付きましては石炭の増産に農林省として、食糧其の他の點に付ての援助は出來るだけのことを致し、其の代り石炭に依る肥料の減産を出來るだけ優先的に補つて貰ふ、斯う云ふ風に話合ひをし、考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=93
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094・田中貢
○田中(貢)委員 尚ほ先刻御答辯を得ませぬでしたことが一點ありますのを、此の際聽いて置きたいと思ひますが、需給關係からのみ考へて配給量を決めて居られる譯である、御尤もな話でありまして、一應さうあるべきことを了承致しますけれども、それでは國民の健康を保持し、又は勤勞能力を出すと云ふには不足であることは、國民の皆認めて居る所であります、又事實であります、そこで若し茲に何等かの不安を生じた場合に、政府は如何なる處置を執るか、言換へれば、需給量のみならず更に此の社會状態、或は個人の健康状態、勤勞能力と云ふ風な點から配給量を決めるべきではないか、此の點に付て先刻御答辯がなかつたのですが、もう一度御答辯を煩はしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=94
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095・松村謙三
○松村國務大臣 今御尋ねの點は非常に重要な點でございますので、私共の考へ、又執つて居ります方針を申上げたいと思ひます、二合一勺が不十分であることは先刻も申した通りでありますが、それならば之を一つ増すと云ふことに付ても、非常に熟慮を致したのであります、世間に主要食糧を三合に増せとか、二合五勺に増せとか云ふ意見が相當にあります、無理からぬ要求でございまして、出來るならば左樣に致したい、さうすれば闇も減る、斯う云ふことであります、併しながらそれだけ増しますと、一勺を増すのに約二百五十萬石程要りますから、それに準じて餘計に増せば増す程非常に大きな穴が開きまして、三合に致します時には二千二百萬石と云ふやうな數字が出て參りまして、此の數字を埋合せませぬと、そこに大きな穴が開く、是は誰しも分ることでありますので、三合なり二合五勺なりに無理をして増しますならば、其の時に果して闇が消ゆるかと云ふと、今は滿足して食ひますけれども、あと二、三箇月經てば必ず斯う云ふ恐ろしい穴が開くのだと云ふことは誰しも分りますから、其の數箇月後に備へる爲に闇と云ふものは消えないのみならず、寧ろ積極的に死物狂ひの食糧漁りが來るのではなからうか、斯う云ふ風に考へます時に、責任の地位に居ります者としては、さう云ふことを實は私としてやり切れなかつたのであります、隨ひまして聯合國側に要請して居ります數字は、二合三勺と云ふことを基礎と致して居るのでございますが、是は二合三勺位では少いぢやないかと言へば尤もでありますけれども、是は過去四、五年間ずつとやつて參りました慣行でありまして、此の二合三勺と云ふ數字は、最初やつた時には別に餘り不平がありませぬでした、それが末になる程是では足らぬと云ふ聲が起りましたことは、申すまでもなく最初二合三勺に規正した時には、副食物が相當潤澤にあつた時であります、即ち副食物で補ひ得たから二合三勺でも先づ滿足すべき食生活をして來た、それが副食物の面が段々減つて參りましたが爲に二合三勺でも足りない、そこへ二合一勺まで戰爭の末期に於て減らさざるを得なくなつた譯でありまして、食生活は今日のやうなものになつて來たと云ふ譯であります、それで私は甚だ消極的のことをやつて居ると云ふ御叱りを蒙ることは全く存じて居りますが、何とかして此の二合一勺の内容を充實すると共に、副食物の面を出來るだけ潤澤に、供給する方法がないか、生鮮食料の統制を外しましたことも、之に依つて何とかあの非常に少い配給よりも、而も闇に依つて取るやうな形よりも、少し値は高くても公然と潤澤に物が集まり物が買ひ得ることになつて、副食物の面に於て増加をすることが第一であらうと考へまして、二合一勺を守ると共に、副食物の生産を増し、それを市場へ呼び掛ける考へを以てあの統制を外した譯でございます、統制を外してから日が淺うございますから、どう云ふやうなことになるか分りませぬけれども、只今までの短い經驗に依りますと、其の目的は或る程度まで達し、若しくは達せられるのではないかと云ふ感じを持つて居るのでございまして、今後魚類の生産等に付ても萬全の策を施して、例へば油の如き、魚網の如き、其の他漁船の如き、是等に力を入れてやりますならば、相當副食物の面に於て主食物の少いのを補うて、食生活を改善することが出來得ると思ひ、それに努力を致して居るのであります、萬一の場合はどうするかと云ふ御尋ねでございますが、是等の施策に依りまして、其のことのないやうに最善の努力を致さねばならぬと心得てやつて居るやうな譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=95
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096・田中貢
○田中(貢)委員 今一點承りますが、米の輸入の問題が政府からも盛んに言明せられ、兎や角傳へられて居りますが、結局何時頃どれ位來る豫定なのか、それを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=96
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097・松村謙三
○松村國務大臣 御承知の通り、先般輸入許可の原則的の指示がありまして、希望の途が開かれましたとは存じますが、何時どれだけ寄越すと云ふ點に付きましては、まだ確かな見透しを得ることを得ませぬことが實際でございまして、出來るだけ早く其の見透しを得たいものと存ずるのであります、實際を申しますと、是は不足の時に遲れて來て、若しくは、丁度不足の時に來ては間に合ひませぬので、所謂操作の上から言ひますと、其の不足を告げる數箇月以前に入手して居らなければなりませぬ、さう云ふ意味に於て非常に取急いでの指令を得ないと、甚だ困る譯でございますので、此の趣旨に依つて成べく早く、此の數量の決定を得たい、斯う云ふ風に努力を致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=97
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098・田中貢
○田中(貢)委員 農林大臣も私と同樣の御心配を以て、前以て用意したいと云ふことでありますから、是れ以上追究は致しますまい、唯もう一點承りたいのは、見返り物資は既に用意が出來て居るか、又船舶の用意も既に出來て居るか、此の點だけを一つ簡單に御答へ願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=98
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099・松村謙三
○松村國務大臣 見返り物資に付きまして、現在確實に手にありますものは生絲であります、資料が手許にありませぬので、ほんの大體の數字と御心得願ひたいが、約五萬梱ばかり現に「ストック」として持つて居ります、其の全部が輸出生絲として間に合ふかと申しますと、是はまだ調べない所もありますが、大體三萬五千梱は直ぐにも輸出出來るものを持つて居ります、それから見返り物資として大體認めて貰つて居りますのは、生絲に致しましても、現在手持のものばかりではなくて、來年一ぱいに正確に生産し得るものも見込んで呉れると云ふことになつて居る譯であります、隨て來年一ぱいの生産量が見返り物資になる譯でございますから、來年の生絲の生産に付ては十分の努力をしなくてはならぬ、繭を作るのは即ち食糧を得る所以であると思つてやつて居ります、それから化學製品其の他のものに付ても、是は商工大臣から詳しく御答へがあるかも知れませぬが、やはりさう云ふ生産の餘白を見て貰へるのではないかと見て居ります、尚ほ船舶關係は一つの大きな難點でございますが、聯合國側の厚意に依つて、此の隘路も大きく開いたとは申されませぬが、出來るだけの心配をして貰へるのではないか、此のやうに考へて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=99
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100・田中貢
○田中(貢)委員 食糧問題に關しまして、各方面より折角御努力の點能く諒承致しましたが、此の問題は數字のみで扱へない問題であります、理窟だけで扱へない問題であります、社會不安の起りました後に手を著けたのでは間に合はないのでありまして、農林大臣は非常な專門家でありますから、御注意申上げることもないと思ひますけれども、先々に手を打つて行かうと言はれた今の言葉を是非忘れずに實效あらしめて戴きたいと思ふのであります
次に民需物資のことに付て商工大臣に承りたい、「ポツダム」宣言の十一條には、日本の經濟を支持するに足る産業を認めて居るのであります、日本の經濟を支持するに足る産業とは何を意味するものか、如何なる程度に於て之を認めるものか、又其の許容された範圍程度に於ては日本の産業政策、平和産業全體に綜合計畫と云ふものが立つて居る筈だと思ふのであります、若し政府にさう云ふ計畫なくば國民の絶對自由に任す外はない、國民の絶對自由に任さないとすれば、政府に綜合産業計畫と云ふものが立つて居る筈であります、そこで今日は終戰後相當な日にちも經つて居ることでありますから、既にさう云ふ計畫が立つて居ることと思ひますので、其の大體を御説明願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=100
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101・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 田中君の御質問に對して御答へ致します、我が國將來の産業の規模を何處に定めるかと云ふことは、聯合國側が如何なる業種に、如何なる程度の生産を認めるかと云ふことで岐れるのでございますが、賠償問題等と關聯致しまして、まだ確定を致して居りませぬ所が多々ありまするので、現在の状況に於ては綜合計畫を立てる所に行つて居りませぬ、けれども「ポツダム」宣言の趣旨に依りますれば、今後の日本國民が生活を維持するに必要なる産業の維持繼續と云ふことは、當然許容せられる所となつて居りますから、此の狹い領土で八千萬の人口を養ふに必要な生活必需物資竝に食糧品、其の不足分を輸入する見返り物資等に充てる輸出生産工業に付ては、是は認めて呉れることと存じて、それに對する適切なる措置を進めて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=101
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102・田中貢
○田中(貢)委員 只今賠償が決まらないから綜合的な計畫は立つて居ないと云ふ御話がありましたが、賠償が決まりますのは何時になるか分りませぬ、其のなるまで日本の國は待つて居れませぬ、隨て今日の程度に於て一應の計畫を立て、更に賠償が決まりました時に、それに適應するやうに計畫を立てると云ふことが、今日必要なんでありまして、何さま今日必要なのは速力でありまして、非常な速力を出して實際の事情に適應するやうな政策を立てねばならぬと思ひますが、まだ出來て居ないと云ふことでありますから、成べくさう云ふ方向に早く向けていらつしやるか、若し政府にそれが立たぬのならば民間に任すか、私は特に此の點は味はつて貰ひたいと思ふのでありますが、從來戰時中政府に其の能力がなくして計畫經濟を行つたことが生産を非常に低下せしめた原因であります、而も其の計畫を議會で聽いて見ると、殆ど計畫がないのであつて、計畫なき計畫經濟が日本を失敗に導いた原因でありますが、此の點に付て民主主義的自由經濟と云ふならば、政府に確乎たる自信のある計畫が立てばそれに依る、さもなければ國民の有爲な者に任す、どちらかの途を立てて、速急に政府は其の方針を決めて發表してて業者に向ふ所を知らしめられることが必要だと思ひます
次に民需物資の生産に付きまして、戰爭中是は極端に制限した、而も感情に基いて必要以上に制限したことも少くない、隨て戰時中一體國民の生活を平時の何「パーセント」に制限する積りか、政府は目標あつて民需を壓迫して居るのかと云ふ風なことに付て、色色政府に苦言を呈しましたけれども、政府は之に耳を藉さずして、政府の政策を強行しました結果、今日のやうな悲慘な状態に立至つたのであります、而も廣汎に亙る戰災に依りまして、民需物資は多大の不足を告げて居ります、そしてそれが「インフレーション」の大きな原因をなして居るのであります、此の事實は聯合軍側も認めまして、民需物資の最大限の生産を促進することを認めて居る、而もそれが爲には資材不足だと云ふならばと言つて、各工場保有の軍需資材を開放しました、更に又民需工場及び民需品と軍需品とを併せて製造した工場は、自由に民需品を造ることを認め、更に又軍需工場であつても、聯合軍側の許可を得る時には民需物資の生産に轉換し得ることを認めたのでありますから、諸般の事情は揃つたやうに思ひますけれども、新たに生産せられた民需物資の顏を見ませぬ、而もそれが「インフレーション」の原因になつて居る、即ち非常な闇値段が出て「インフレーション」の原因をなして居ること、昨日大藏大臣の財政演説に指摘される通りであります、政府も亦之を認めて居るのでありますが、斯く諸般の障碍は除いてありながら、少くとも對外的なる障碍は除いてありながら、尚且つ民需物資が出廻らない原因は何處にあるか、其の點を御説明を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=102
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103・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 前の補足として少し申上げて置きますが、私が綜合的の計畫が立つて居らぬと云ふことを申しましたけれども、民需物資の生産等に付きましては、計畫を立てて居ることは、勿論でありまして、唯賠償の内容等が分りませぬ、又向ふがどう云ふ事業を許可するか、どう云ふ工場を實物賠償として持つて行くかと云ふことが分らぬから、まだ全體としての綜合計畫は立たぬと申したのでありまして、個々の、特に國民の生活必需物資でありますとか、見返り物資の増産でありますとか云ふことに對しては、計畫を立てて居ること勿論であります、そこで今御尋ねの點でございますが、工場設備を色々今申上げたやうな民需の生活物資、及び輸入用の見返り物資等に轉換をする爲に、例へば機械工業に付て申しますと、從來兵器等を造つて居りました機械工業に付ては、農業用の機械器具、或は製粉機、家庭用粉碎器其の他食糧加工用機械器具、土木、建築用機械器具、電球、家庭用電熱器、「ラヂオ」、電話機等電氣機械器具、其の他或は纖維工業用及び鑛山用の機械器具、「トラック」自轉車其の他の輸送用機械器具、事務用或は印刷用の機械器具、或は醫療用機械器具、斯う云ふものに轉換を致すことに指導致しまして、既に相當轉換を了して居るのであります、數字が御入用でございますれば、又後から申上げても宜しうございます
更に化學工業の轉換に付きましては、例へば「アンモニア」工業及び硫酸工業は其の性格を變へまして、硫安の生産増強に重點を置きます關係上、硫安工場に轉換せしめることにして居りますし、或は硝酸、硝安の生産等を縮小致しまして、是れ亦硫安工業に轉換して居る、或は爆藥、火藥等の工業等よりも、硫安、人絹、「スフ」製絲の工場等に轉換せしめて居るのであります
尚ほ石灰窒素が今非常に入用な所から、或は「カーバイト」工場、「フエロ・アロイ」工場、研削材工場等は石灰窒素の工場に之を轉換せしめて居ると云ふやうな工合でありますし、更に又聯合軍司令部の許可を得まして、岩國、四日市、徳山、斯う云つた各軍燃料廠を轉換致しまして、硫安の製造を實施することにして、目下それぞれ、準備を進めて居るのであります、其の外鹽素系工業は是も性格を變へさせまして、殺菌用鹽素、調味料、醫藥用鹽酸、「マッチ」用鹽素酸「カリ」、斯う云ふやうな生産に變へさした次第であります、又「タール」系合成工業は、是も軍用爆發原料工業から轉換させまして醫藥品原料、合成染料等に變へさす、斯う云ふやうな特殊の處置を執つて居ります
尚ほ御參考の爲に一寸此處で申上げて置きますれば、大きな軍需工場の中で、既に米軍司令部の轉換許可を得たるものを申上げますと、三菱重工業株式會社、川崎航空機株式會社の岐阜工場、石川島航空の杉田工場、日立製作所の多賀工場、理研工業の柏崎工場、熊谷工場、前橋工場、住友金屬、古河電氣、神戸製鋼所株式會社等は既にそれぞれ轉換許可を得まして、民需物資の増産に是から取掛ることに相成つて居ります、尚ほ目下許可を申請致して居りますものは、立川飛行機株式會社、日立航空機株式會社、川西航空機株式會社等であります、そこで今御尋ねの點に付て申上げますと、商工省と致しましては、民需物資の増産は戰後極めて重要な施策であります所から、懸命な努力を致して居るのであります、併し是が出ぬのはどう云ふ譯か、是は私共率直に申しまして、價格制度の惡い所もありませうが、統制の惡い點もある、是等のことが何れも其の原因を成して居るやうに考へますけれども、同時に又原材料の不足、特に最近に於きましては石炭の不足等に因るものが非常に多いと考へられるのであります、そこで商工省と致しまして生活必需品生産の爲に終戰後執りました處置は、各種主要制限規則を撤廢致しまして、價格及び企業許可に關する權限を地方に委讓致しますと同時に、手續を極めて簡易化致しまして、大體に於て特殊の――十一、二種ありますが、それを除く外は全部企業許可をすると云ふ建前を執つて居ります、軍用資材及び軍需工場の手持資材の民需向け轉用のことを考へて居りますが、更に國民生活用品生産計畫の推進竝に之に關する金融上の措置をも講じて居るのであります、更に戰災者越冬用の衣服、其の他生活必需品等の配給に付きましても、全力を盡して居る譯合でありまして、是等の爲に更に廣く官民各界の有識者の御意見をも徴したく、曩に生活必需品緊急増産本部を設けまして、各界の方の御協力を願ひ、目下此の増産に努力致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=103
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104・田中貢
○田中(貢)委員 隨分詳細に亙つて、質疑した點よりも廣く且つ多く御親切に御説明がありました、大體御努力になつて居る點は了承致しましたが、之を要するに一言で宜いのでありまして、何時頃になつたら民需品が出廻つて、實際我々の役に立つかと云ふことを承つたのであります、もう一遍御迷惑ですが御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=104
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105・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 今私は價格のことも統制のことも、若干其の妨げとなつて居ると云ふことを申上げましたが、是等に付ては、既に「マッカーサー」司令部の方へ、是々のものは斯うしたいと云ふことを今打合せ中であります、然るに其の指令が參りませぬ、其の指令が參り次第、其の處置を執ることに相成つて居りますので、私は月を限つて、一月は何ぼ出るか、二月は何ぼ出るかと云ふことを此處で申上げる譯には行きませぬが、近く出廻ると云ふことを確信して居る次第であります。発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=105
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106・田中貢
○田中(貢)委員 然らば一點聽きたいのでありますが、慥か二十九日米軍司令部から出た指令に、總ての平和産業方面が非常に遲延した状態に鑑みまして、第二次の促進命令が出て居る、只今商工大臣の御話では司令部の方が遲いので、自分の方が遲れて居ると云ふ話でありましたが、司令部の方は日本の方が怠慢であつて爲に遲れて居ると云ふ意味の發表であつたと思はれました、何かそこに行違ひが生じて居るのでせうか、其の點承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=106
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107・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 御答へ致します、あの生産促進命令は實はこちらの要請に基いて出て居ると云ふことを申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=107
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108・田中貢
○田中(貢)委員 どうも民需品に付て色々御説明もありましたが、御努力の點だけ了承致しまして、次にもう一點聽きたいのは貿易であります、どうしても日本は農業で全部の國民を養ふ譯に行かぬ、隨て工業に主力を注がなければならぬ、茲に原料が要ります、更に見返り物資が要る、斯う云ふ譯で、どうしても貿易の再開と云ふことが我が國の經濟を支持する前提となるのでありますが、此の點に付ても大體政府に於ては、何時頃聯合軍側が國際貿易に參加を許すものか、又其の際に於ける用意は全部今日出來て居て、何時許されても宜い状態になつて居るか居らぬか、斯う云ふ點に付て極く簡單に概要を御話願ひたいと思ひます
〔眞鍋委員長代理退席、委員長著席〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=108
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109・小笠原三九郎
○小笠原國務大臣 見返り物資の關係に付きましては、現下色々輸入をしなければならぬものの關係上、必要な所から全力を盡して之をやつて居る譯であります、御參考の爲に一寸申上げて置きます、現在直ちに輸出可能なものが一應の推定金額で四億八千二百萬圓ございます、其の内譯は纖維品が一億一千八百萬圓、或は餘り細かいことが必要でなければ止めて置きます(「細かい細かい、止めて置け」と呼ぶ者あり)其の次にそれと合せて三十億と云ふものがあります、それだけ御答へ致して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=109
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110・田中貢
○田中(貢)委員 更に今一點承りたいのは大藏大臣に承りたいのであります、大藏大臣は昨日の財政演説に於きまして、物價政策の問題に付て、合理的な物價秩序を再建する爲に政府は熱意と責任とを以て正面から打突かる所存だから、國民に協力援助を頼む、斯う云ふ意味の御演説がありました、國民に協力援助を頼まれるのですが、何に協力するのか言つてない、物價對策の何處に協力しろと云ふのか、其の一點だけ明瞭にして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=110
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111・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 國民に協力願ふ點で一番大切な所は生産であります、物資の豐富になることが物價の面に於て一番大きい問題であります、物價を決めることでなく、物資を多くすることに御協力願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=111
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112・田中貢
○田中(貢)委員 其の時の御演説を見ますと、凡ゆるものが價格と云ふ形で集中されて來るので、此の點に力を注いで貰ひたいと云ふ意味の御演説のやうに承つたのであります、昨日の御演説をもう一度繰返して讀んで戴けば分ると思ひますが、今の御答辯と少し違つた意味のことだと思ひます、政府は是から更に物價秩序を再建しようと云ふのですが、其の物價基準を何處へ置くのか、此の一點だけで宜い、明瞭にして戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=112
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113・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 大藏省に於きましては、今囘物價部を設けまして專門家を置き、更に民間の知識經驗のある方々においでを願ひ、今まで政府としましてはばらばらになつて居りました物價面に對して統一して、農林省、商工省各方面の方々にも御協力を願ひまして、さうして單に物價の一々の價格形成と云ふことでなく、體系を立てることに付て十分な研究をし、そこへ持つて行きたいと、斯う考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=113
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114・田中貢
○田中(貢)委員 昨日の財政の御演説に依りますと、現在は不合理な公定價格の存在、公定價格の權威の失墜及び亂脈な闇價格の横行に依つて、物價體系は崩壞とも稱すべき事態に立至つて居ります、今日合理的な物價秩序を再建することは實に至難の仕事でありますが、政府と致しましては、責任と熱意とを以て正面から打突かる所存でありますので、何卒國民各位に於かれては理解ある協力御支援を與へられんことを切望する次第であります、斯う云ふのでありまして、生産に努力して呉れ、協力して呉れとは、言つては居ないのであります、そこで何に協力するか、物價政策に協力する、其の物價政策に協力するのには何處へ協力するのか、物價の目標を何處に置いて居るのか、具體的に基準を何處に置いて居るのか、斯う云ふことがなければ國民は協力の仕樣がないぢやありませぬか、宜しく頼むと言つても、何處を宜しく頼んだのか分らぬでは協力の仕樣がない、明確に物價目標と云ふか、基準と云ふか、其の點に關する現内閣の御方針を御示しを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=114
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115・澁澤敬三
○澁澤國務大臣 咋日申上げましたやうに、現在の物價體系は壞れて居ると思ひます、之を如何にして再建するかと云ふことは多少の時日と、それから物資の出廻り、其の他總てを勘案して或る所に決まつて行くものであります、之に對して政府としましては熱意を以て打突かつて行くと云ふことを申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=115
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116・田中貢
○田中(貢)委員 最後に總理大臣に一點伺ひたいのでありますが、それは思想に關する問題であります、戰爭中に言論を極端に壓迫した反動と言ひますか、今日は自由奔放な言論が横行して居りまして、天皇制に關する議論さへ自由に述べられて居るやうな實情であります、共産主義とか、社會主義に關する議論も盛んに述べられて居ると云ふ状態でありまして、思想界は全く混沌と致しまして、國民は向ふ所を知りませぬ、之に對しまして政府は如何なる方策を執るか、如何なる取締の方法を執るか、或は善導の方法を執るか、そこに何等かの對策を必要としますが、其の思想に對する方策に付て總理大臣の御所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=116
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117・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 今日思想界に於ける混沌たる状況に顧みて、之に對して何か適當なる對策を執るか、其の對策如何と云ふことであります、是は一言にして言へば、詰り教育の刷新と云ふことが根本策であらうと考へます、今日思想が混沌として、或は極端に奔り、反動的のものもあるし、又矯激に亙るものもあります、斯樣な問題に付て此の際最も必要なることは、教育の刷新であらうと思ふのでありまして、其の點に付きまして我々は及ばずながら出來るだけの努力を致して居る積りであります、此の教育の刷新を除いて、他には適當なる對策はなからうと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=117
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118・田中貢
○田中(貢)委員 教育の刷新と云ふことは學校教育の刷新と云ふことでありますか、それならば何年か先でなくては效果の出ぬことであります、まだ中々中遠い先のことで、今日の間に合ひませぬ、學校に於ける教育の刷新固より必要でありまして、是は根本でありますけれども、色々な事實に反することが宣傳せられた時に、直ちに之に對して反駁する、或は非常に矯激な思想を宣傳された時に、是と理論鬪爭をする、言ひ換へれば思想を取締るものは刑罰でなくて思想である、思想に對するに思想を以てする、斯う云ふ點に付て、政府の方に御用意はないか、今まで政府にやつて居られることを見ますと、此の臨時議會に於て稍稍色々なことが明瞭になりまして、例へば戰後に於て日本の財政負擔が幾らになると云ふ風なことに付ても、自由奔放な議論が述べられて居るが、政府は事實を明かにして反駁したことがない、又其の他社會主義、共産主義に付ても色々述べられて居るが、結局さう云ふ世の中には誰が損をするのか、誰に一番影響が來るのか、實際上から見たものと、又理論上から見たものと色々あるが、政府は何等之に對して手を打つて居らぬ、從來は悉く刑罰を以て之を取締つた、刑罰を以て思想を抑へ付けて失敗した歴史は、帝政「ロシヤ」の末期に明かであります、又日本も最近其のことを明かに體驗した所であります、政府は此の點に付て唯學校教育に依ると云ふ風なことでなしに、是も必要なことで根本でありますが、もつと具體的に斯うすると云ふ風な御施策はないのでありませうか、大事な點でありますから重ねて御答辯を煩はします発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=118
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119・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 御話の通り思想に對しては思想を以て之に酬ゆると云ふことでなければなりませぬ、公の權力を以て之を抑へ付ける、取締ると云ふやうなことだけは、中々徹底的に目的を達する所以ではありませぬ、私も能く其の點を承知致して居ります、それ故に健全なる與論を鼓吹して、之に依つて思想問題に對抗すると云ふことでなければならぬと思ひます、例へば近頃の新聞なんかで能く天皇制なんと云ふやうなことを論じて居りまするが、私は其の點に付きましては、此の間大阪地方に參りました時に、私色々陛下が關西地方を御巡幸になつた事情を能く承り、又御供をした人からも其の事情を聽きまして、及ばずながら私も、國民全體の思想はそれ程矯激になつて居らぬ、 陛下に對する誠忠の念は、地方の民心では著しく變つて居る形勢は見えない、私はさう云ふ趣旨を國民に徹底する爲に、放送を行つたこともあります、是も一つの方法であらうと私は考へて、其の方法を執つたのであります、是から後も能く注意を致しまして、矯激に亙らぬ、極端に亙らぬやうに舵を執つて行かなければならぬと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=119
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120・田中貢
○田中(貢)委員 以上私は重要な政策の二、三に付きまして政府と質疑應答しました、咋日總理大臣は本委員會の私語に答へて、政府に政策がありますと云ふ御答へでありました、成程政府に政策はありますが、實際の效果を擧げたものは殆どないと云ふことが明かになつて、洵に遺憾に思ふ次第であります、今日は日本が肇つて以來の大きな變化、經濟上、社會上、政治上、凡ゆる方面に大きい變化をして居る時でありまして、一歩を誤りますならばどんなことになるかも知れませぬ、折角祖先が多大の犧牲を拂つて、多大の命を犧牲にして作り上げた此の日本がどんなになるか分りませぬ、洵に憂慮に堪へぬ状態であります、此の時に對しましての諸般の施策は急ぐことであります、速かと云ふことが最も大事なことなのであります、考へて立派なものを作ると云ふよりも、速かに手を打つて行くと云ふことが必要なのであります、此の點を政府は忘れられぬやうに、此の難局に處して日本を護つて行くと云ふことに折角御努力あらんことを切望致しまして、私の質疑を打切りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=120
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121・中島彌團次
○中島委員長 濱野徹太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=121
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122・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 私は憲法改正の動向に付て、根本義に付て總理大臣に二、三質問を致したいと思ひます、「ポツダム」宣言をば忠實に履行して、民主主義政治を日本に復活強化すると云ふことは至上命令でありまするが、此の民主主義を、政治のみならず生活面にまでも強化擴充すると云ふことの根本義は色々とありませうが、先づ以て憲法と云ふものに其の動向をば示すと云ふことが一番必要であると思ひます、蓋し憲法は國家の公道を基準するものであると共に、國民の人權と自由を保證すると云ふ兩面の立場から見まして、憲法の改正が如何やうに進んで居るかと云ふことが、一番根本として國民の知らんと欲する所であります、私達昨日聯合軍司令部から指名されたる戰爭責任者の中に、宮殿下の御名前を拜承致しまして、洵に何とも申すことの出來ない衝撃を受けたのでございまして、本當に御痛はしいと云ふ言葉では言ひ切れないやうな感情に全國民が滿たされて居るのであります、そこで私達が此の憲法と云ふものの改正が、日本の民主主義化に對して根本主義であると考へ、總理大臣も本會議に於て非常に含蓄に富んだ示唆を與へられたのでござりまするが、先づ憲法改正の中で二つの目標を定めて行かなくてはならぬ、其の一つは皇室の政治上の御安泰を彌が上にも圖り、強からしめると云ふことが憲法改正の中心目標でなければならぬと私は思ふ、惟ふに八月十五日の終戰の大詔にも、萬世大平の基を開かむと仰せられて居ります、平和を愛好することは日本の本當の姿であります、況や軍備と云ふものが御承知のやうな状態になりました時に、何の左樣な萬般の心配はありませぬけれども、尚ほ日本人の忠誠心が彌が上にも皇室の政治上の御安泰を願ふことは、是は申すまでもございませぬ、さうして憲法改正のもう一つの行くべき限界と云ひまするか、目標は、單り日本的民主主義と云ふやうな言葉を用ひられて居りまするが、日本的民主主義とか云ふやうな言葉が何を示すかは別に致しまして、やはり是は世界の動向と云ふものを常に照し合はして、日本が國際的の地位を奪はれて居るのをば、何時の日か日本がやはり國際的な一員として活躍すると云ふことが、日本の平和國民としての目標の一つでありまする以上は、憲法の改正、又やはり世界の動向に常に注目をし、其の流れに沿うて行くと云ふことも一つの目標であらなければなりませぬ、此の皇室の政治上の御安泰と云ふことを彌が上にも考へさせられると云ふことと、更に又今申しました世界の動向と云ふものを見極めまして、日本が何時の日か國際的の一員となり得ることをば望みまする時に、先般皇室に於かせられまして、憲法に關する御希望と申しませうか、御洩し遊ばされたやうに新聞紙上で拜承致したのであります、即ち「イギリス」流の立憲政體が御希望であるかのやうに私達拜讀致したのであります、申すまでもなく「イギリス」の立憲政體は、君主は君臨するけれども政治は行はない、隨て又總理大臣の任命に當つては、「イギリス」の君主の獨自の意思に依ることなく、意思の任意に任せると云ふことなく、議會と云ふものの過半數を占めた政黨から首相を任命しなければならないと云ふことが不文律となつて居る、又政府も責任は「イギリス」の皇帝に負はずして、議會に對して負ふと云ふことになつて居る、日本はどうか、第一條には「萬世一系の天皇之を統治す」と明示されて居ります、君臨され給うて尚ほ政治をば遊ばされるのであります、ここ日本の憲法の建前と、「イギリス」の建前と大いに開きがあることは申すまでもございませぬが、飜つて思ふ、總理大臣は此の皇室の憲法に對する御希望と云ふことをば拜讀されました時に、如何なる御考へをば御持ちになつたでありませうか、惟ふに總理大臣の輔弼の大任は、入りては君徳を啓沃匡順し出でては大政を奉行すると云ふことが總理大臣の大任であります、成程政府部内に於ては憲法の調査委員を置いて居るやうでありますが、是は單なる學究の遊戲であります、大學の博士と云ふものが憲法の學説と學理に富んで居るかは分りませぬが、實際の運用と云ふ方面に於ては未だ明かなりとは言へませぬ、それは兎に角として、總理大臣が今申しました君徳を啓沃匡順し出でては大政を奉行すると云ふ重大なる責任の上から、此の皇室に於て御洩らし遊ばされた立憲政體に對する御希望に付きまして、何等か御考へになり、又何等か總理大臣として御取計らひになつた所がございませうか、此の點を一遍先づ伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=122
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123・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 只今何時か 陛下が外國の新聞記者に對して、我が國の政治の動向に付て御話があつたと云ふことであります、私は今囘就任致しまして以來、斯かる事實のあつたことを承知致しませぬ、私の一家の私見と致しましては、一國の民主主義政治の方針と云ふものの、それはどうしても各國其の國の環境、歴史、國民性と云ふやうなものに順應するものでなければ、其の政治制度は永續する結果を得られるものではないと考へて居ります、「アメリカ」には「アメリカ」の制度があり、「イギリス」には「イギリス」の制度があり、「ソヴエト」には「ソヴエト」の制度がありますが、是等は皆其の國の國情に適したものであらうと思ひます、日本には又日本の國情に適應した民主政治が發達して差支へないと思つて居るのであります、單に一つの國の政治制度と云ふものを頭に置いて、それだけで日本の政治も之に倣ふ、之を其の通り受入れると云ふことは、我々はする必要もなければ又宜しくないことと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=123
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124・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 私も憲法が其の國の歴史の示す所を取入れ、それぞれ國の環境とか歴史に依つてそれぞれ異なる所があることは、承るまでもなく承知して居ります、問題は新聞に斯樣なことが傳へられて居り、當時總理大臣でなかつたにしましても、あなたが總理大臣となられ、日本の民主主義化と云ふことが至上命令であります以上は、是と重大なる關係のあることが既に皇室の御言葉として御洩しになつたと云ふことを御承知である以上は、總理大臣として此の根本問題に付て何も知らないと云ふ顔は許されない筈であります、總理大臣は之に對して如何なる御考へを御持ちであらうか、伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=124
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125・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 私は 陛下がどう云ふ言葉を御用ひ遊ばしたのか、それは私は知らないと云ふのであります、新聞に現はれて居りましたが、果して其の通りであつたか、私は御確かめも致して居りませぬ、其の點は存じて居ないと申上げるより仕方がないのでありますが、私の理想とする所は斯く斯くであると云ふことを申上げたのであります、私はどうか此の理想で以て、日本は日本の國情に適應した民主主義の發達を期すると云ふことが、我々の理想とすべきであるとさう考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=125
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126・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 新聞に載つて居りましたことでありまするから、是れ以上と云ふやうな御言葉であります、私も事皇室に關することでございまするから是れ以上のことは申上げませぬ、併しながら私達は少くも總理大臣の地位にある人であるならば、斯う云ふやうなことを新聞で拜見致しましたが如何なる御趣意に亙らせられるのでございませうか、此の事をば態々伺ひ奉つて、且つ今日の日本の憲法の改正と云ふことが積極性を持たなければならないと云ふ此の状態と關渉して、總理大臣としては憲法改正案の御下賜を願ふと云ふことが、あの新聞の記事がどうあらうとも、まさか間違つたことは載せないであらうと云ふ今日の新聞の眞實性から考へても、戰爭中に總て新聞が押へられて居つた時代と異つて、本當に正しいことを新聞に戴せると云ふ新聞の眞實性に顧みると、あの記事を左樣に一片の記事として扱はず、總理大臣の職責に鑑みられて、憲法改正案を考へられ、さうして憲法改正案の御公布を上奏すると云ふことが、總理大臣の輔弼の責任であると考へますが、此の點に付て伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=126
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127・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 憲法改正の問題に付きましては、私は數囘本議場に於きましても、此の豫算總會に於ても申上げたと信じて居ります、要するに此の憲法改正と云ふ問題は、國家組織の根本に關することでありまするから、さう輕率に斯う云ふ點を斯う云ふ方針に依つて改正するのだと云ふやうなことを、私は今申上げる地位ではないのであります、今委員を設けまして熱心に考究致して居ります、それがまだ結論に達して居ないのであります、豫め斯う云ふ方針で斯う云 風にやるのだと云ふことが決まつて居るならば、初めから結論を持つて、さうして其の細目を委員の人に強ひると云ふことでありますが、私は斯う云ふ式でやつて居ない、總ての點から檢討して、凡ゆる議論を盡し、さうして最後の結論に達する、私はさう云ふ風に考へて居るのであります、只今日夜此の憲法改正の問題に付て研究を致して居るのでありますから、まだ閣議にも其の報告は出して居ないのであります、是は將來の爲に間違ひのないやうに十分愼重に、日本の將來の動向と、世界政治の動向も考へて、此の問題は極めて徹底的に愼重に考へなければならぬ、斯う思つて居ります、餘程之には重きを置いて大事を取つてやつて居るのであります、輕率に是は取計らふべきものではない、それ故に今も輕率に斯う云ふ趣旨でやつて居るのだ、斯う云ふ點を斯う云ふ風に改正するのだと云ふことは、私はまだ此處で發表するやうな程度に達して居ないと云ふことだけを御答へ申上げて置いたのであります、只今も同樣なことを繰返すより仕方がないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=127
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128・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 私は總理大臣が極めて愼重な態度を以て憲法改正に臨んで居られることを以て諒とします、それ故にこそ言葉を重ねます、苟くも新聞紙上に皇室の御希望として、「イギリス」の立憲君主制が望ましいと仰せられたと書かれました以上は、總理大臣として進んで此の御言葉の眞否をば伺ひ奉り、さうして總理大臣として君徳を啓沃し奉る立場からして、憲法改正の重要性を我々に説かるる前に、尚ほなさるべきことがあつたのではないか、それをなさずしてさうして憲法改正は愼重にしなければならぬと云ふことは、あの記事が書かれたことを、承知されて居ることに對しても、總理大臣は愼重にしなければならない憲法であればある程、君徳を啓沃し奉ることが總理大臣の責任ではないか、總理大臣の責任と云ふことは憲法上に規定されて居る、其の重大な責任をば盡すことに於て私はどうかと思ふ、もう一遍此の記事を知つて居られるあなたの御信念を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=128
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129・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 只今申しました如く、私は愼重に考慮して、それで何等かの結論に達しますれば、之を直ちに御上に奏上して、陛下の思召を伺ひ、それから改正問題を決めたい、斯う云ふ風に思つて居るのであります、隨て陛下が斯う云ふことを仰せられたが、陛下それは本當でございますかと云ふことを私は伺ふ必要はないと思ふ、我我が自分の確信を以て斯う云ふ點は斯う云ふ風に改めるが宜からうと云ふ結論を得ましたならば、直ぐ陛下に奏上して、陛下の思召を承る、それから改正の問題に付て進んで行きたい、斯う思つて居るのが私の今日考へて居る順序であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=129
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130・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 不幸にして私の考へ方は全く異なる、ああ云ふやうな記事が新聞で漏れまして、私達が拜讀致しました時に、忠誠なる日本國民は皇室の御希望が斯くあらせられまする以上は、日本の憲法の動向は斯樣に進むべきものだと云ふやうに、日本人の心理に直ちに映るのが常態である、之を知らずして、學者の研究を待つて奏上しようとすること、私はどうもあなたの御心情は我々と揆を一にしないと云ふことを申上げまして、此の問題を納めて置きます、私考へまするに、あなたは臣節に於てどうかと思ふ所があるのでありますが、此の問題はもう追究しませぬ
次に是も新聞の記事でありますが、先般石渡宮内大臣が斯う云ふ言葉を漏して居る、是は新聞の記事ですが、知らなかつたぢや濟まない、十月二十二日でしたかの新聞に、石渡宮内大臣は記者に對して 天皇陛下が日本の民主主義化に付き眞劍な御希望を懷かれて居るのは疑いないことだ、併しさうした御希望は今後とも鞏固なる官僚陣の防壁の爲に屡屡妨害されるであらうと言つて居る、國民としては意外千萬だ、八月十五日の終戰の大詔には、朕は國民と共に在りと仰せられて居る、私達何とも申すことの出來ない有難い御言葉だと拜しました、朕は國民と共に在り、本當に日本の國の平和愛好の眞の姿を示さんが爲に、皇室に於かせられては國民と共に在りと云ふ御言葉を以て、國民と共に進まうと云ふ御趣意の御示し遊ばされたものと拜察致しまして、何とも言へない有難く存じたのであります、皇室に於かせられては、日本の民主主義化に關して眞劍な御態度を以て進まれようとする時に、軍閥に代つて官僚の輩が聖明を蔽ひ奉つて、此の民主主義化の眞劍な御希望を妨げるものがあると宮内大臣が言つて居る、是は由々しいことであります、あの大東亞戰爭と云ふものが、軍閥一流の輩が日本の本當の希望でない侵略の姿を籍りてしまつたが爲に、遂に日本を今日の姿に陷れた、誤つて官僚の輩、皇室の周圍に蟠居して聖明を蔽ひ奉るが如きことありとすればどうでせう、此の記事は由つて來る所ありと考へる、總理大臣の烱眼を以てして、此の事實を知らぬとは言へますまい、若し左樣な輩があつたならば、如何なる態度に出でられるべきであらうか、想ひ起す、山本權兵衞伯が、曾て總理大臣であつた時に、樞密院が言ふことを聽かぬと云つた時に、樞密院なんて何を恐れるんだ、彼等と雖も總理大臣の奏請の運命に係はるのであるから、何時でも馘にしてしまうんだと言つたことがある、私は當時蠻勇に富んだ言葉だと思つたが、實に強い總理大臣であつた、宮内大臣に直ちに御確かめ下さい、確かめるまでもなく總理大臣として君側を掩ふ所の――民主主義化の眞劍なる御希望があらせられるに拘らず、其の防壁を作る所の官僚の輩があるならば、斷乎として之を打攘ふと云ふことが、即ちあなたが本會議に於て述べられました民主主議の障碍になるやうなものを除去することが我々の仕事であると仰しやつたことに適ふ譯である、宮内大臣が間違つて居るのか、あなたの言ふのが本當か、若しありとするならばどうされるか、ないとするならば宮内大臣が間違つたで宜しい、御信念を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=130
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131・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 軍部の諸官が 陛下の聖明を蔽ひ奉ると云ふやうなことは、若しありまするならば是は許すべからざることでありまして、我々は何としても斯樣な虞がないやうに絶えず注意をして、斯う云つたやうな事態の出來ないやうに極力力を盡すと云ふことが、私のどうしても努めなければならぬ當然の義務であると私は心得て居るのであります、其の方針を以て私は注意を致して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=131
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132・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 皇室と國民とが政治上の血の繋がりを持つと云ふことが、是が日本の民主主義の行き方でございます、總理大臣は宮内大臣がさう言つた、言はぬと云ふことを言つて居るが、それは偖て措き、私達は此の宮内大臣の言葉を信じたい、さうして皇室を取卷く所の軍閥と言ひましたけれども、軍閥に代つて官僚の頭目が取圍んで居ると云ふことを信じて居るのですが、あつたならばやると云ふのでなしに、あなたには現在御氣付きにならないのか、御氣付きにならないならば、私共の方から又申上げて宜い、それを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=132
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133・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 軍閥に斯かる行動があつたと云ふことは…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=133
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134・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 現在は官僚です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=134
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135・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 官僚に斯かる行動があれば、私は固より黙過する積りではありませぬ、是はどうしても取締らなければならぬ、それには信賞必罰、官紀の振肅と云ふことはどうしてもやらなければならぬ、私が聲を深くして申上げたのは其の點であります、さう云つた行動があつたならば私は斷じて看過しない積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=135
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136・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 事皇室に關することでございますから、私は此の言葉を以て私の論陣を一應收めます、併しながら國民の見る所は、十目の見る所十指の指さす所夫れ嚴なり、是が新聞に現はれた時に、總理大臣は國務御多忙でありませうけれども、今少しく大局に眼を注がれて、苟くも民主主義下に非常に高度の立場にある所の人達にしてさう云ふ行動があるとすれば、斷乎として處置を執つて戴きたいと思ひます
次に私はもう一つ他の方面から總理大臣に伺ひたい、先程田中君も社會不安と云ふことに付て非常に御心配になりましたが、是は最近國民が齊しく心配する所で、今日の社會不安と云ふことは色々の方面から原因して居りませうが、先づ直接に其の治安がどう云ふことになつて居るかと云ふことを申上げたい、私達神戸で申しますと、十一月の十七日に神戸の盛り場とも言ふべき元町に内外人不明の暴徒が四十名ばかり、眞晝間に砂糖の配給所を襲つて、砂糖四千三百五十斤をば荷車に積んで運び去つた、それから又國籍不明の暴徒が十數名、もとの船員の作業服を納めて居る所に眞晝間に押寄せて作業服を二千著ばかり強奪して行きました、其の外神戸市に於ても澤山あるのでありますが、結局砂糖卸商の組合の如きは、此の状態では砂糖其の外のものを民間で保管することは出來ないとも斷言して居ります、又東京市に於きましても、餘り例を引くのはうるさいですが、どうも續々として暴徒が巷に横行して居る、一言にして言ふならば、群盜横行し暴力巷に滿つと云ふやうな言葉になる、是が適當である、是は色々の原因がありますが、今までの暴徒とは暴徒が違ひます、それは白晝やる、食糧とか衣類と云つたやうな生活の必需品に眼を付けて居る、金に眼を付けない、もう一つは白晝徒黨を組んで横行する、是で國内の治安がどうだと云ふことは御想像出來るでありませう、是は私達のやうな者からは一言にして其の手蔓、原因を掴むことは出來ませぬ、食糧飢饉、罹災地の小林さんの折角の復興が進まないと云ふことからも起つて來て居りますが、之を一面政治の方面から端的に一言にして言ふならば、是は官僚恃むに足らずと云ふことです、もう一つ鋭い言葉を以てすれば、官憲に對する一種の挑戰です、さう見ても差支へないでせう、眞晝間盛り場に徒黨を組んで以て澤山の物を強奪して去る、官憲に對する挑戰にあらずして何ぞや、そこで私は承りたい、先づ治安の紊亂に對して第一線に立つ治安確保の役人は誰かと言ふと警察です、其の次に來るものは司法の當局です、警察のことは所管の内務大臣が居られませぬから機會を改めて伺ひたい、先づ治安確保の第二線に於て最後の線を守つて居る所の司法と云ふ方面に付て私は伺はなければならぬことが多々あります、司法省は私から言ひますと、實に今までは、此の戰爭中からと云ふものは、非常に陰欝な重々しい空氣に滿ちて居りました、幸にして今の司法大臣が御就任になりましてから、司法部と云ふものが聊か明くなつて來たことは事實です、それはどう云ふ所に原因するかと言ふと、在野の法曹としての司法大臣が御考へになつて居つたと云ふやうなこともあり、司法省の本省の空氣と云ふものが、人事の入替へなどが齎したと云ふことが直接でせうが、先づ何よりも司法大臣が司法制度改革に熱意を持つて居られると云ふことが我々に察知し得られるのであります、司法部が明るくなつたことは事實であるが、大體私が何時も言つて居つたのですが、此の戰爭に負けると思はないから、勝つた曉に於て皆萬歳を言ふ中で、司法部だけは萬歳が言へない、なぜかと云ふと、凡そ司法部程權威を笠に著て民衆に重々し乘掛つて居たものはない、勝つたら先づ萬歳と云ふ聲が、祭の神輿が見込まれた地主の所に乘込むやうに、先づ眞先きに檢事局に乘込んで行く、と云ふのは戰爭と云ふものを笠に著て檢事局が民衆に臨む態度は見られなかつた、是は東條内閣の指示に依る、當時司法部の長官を四、五人集めた時に、本來司法大臣の官邸に開かるべき會議が總理大臣官邸で開かれて、東條首相が司法官に向つて、戰時中であるから速かに且つ差別せずに嚴重にやれと云ふやうな、まるで軍事裁判をば強化したやうな訓示を出したとか出さぬとか云ふことを漏れ聞いて居ります、それかあらんか、當時それからと云ふものは司法部の態度と云ふものは一般に強化し、民衆に威壓を加へたことは事實であります、其の弊が今日殘つて居るのでありますが、特に司法部の實體を形作つて居るのは私は檢事の「フアッショ」だと思ふ、檢事の「フアッショ」は斷じて見遁すことは出來ない、抑抑司法部の制度の改革の中で一番大切なことは司法部の解體です、「フアッショ」と云ふことは檢事が團體を組んで行くことである、一體檢事の人生觀と云ふものが、或る種の暗い人生觀を懷いて居る、と云ふのは、大學を卒業していきなり司法官試補になり、檢事になり、檢事局で段々調べて行く時に、檢事の前に來るのは警察が引張つて來た惡い事をした奴だと思つて居る、來る人來る人皆惡いことをした人間だと思つて調べる、皆恐れ入つてしまふ、ははあ人生と云ふものはこんな惡いものだ、凡そ檢事をして居る者は、人間は皆惡い奴だとばかり思つて居る、支那の言葉に、「習ひ性となる」と云ふことがある、下宿の飯を食つて大學を出て、檢事になつて直ぐと調べる、人は皆惡い奴である、人生惡なり、と云ふ説に感染してしまう、檢事の前に來る人は皆惡いと云ふ所がある、人生惡を抱いた結果が何かと言へば、檢事と云ふ人間の背後にある所の恐るべき一種の優越感である、此の檢事の人生觀と云ふものと優越感と云ふものが、今日の國民から離反した所以である、そこへ持つて來て砂糖の甘い事件が起つて來た、それは人を舐めた話だ(笑聲)そこで先づ檢事が如何なる態度に出るかと云ふこと、威壓したかと云ふことをば、私は極く簡單な言葉で言ふと、是は總理大臣も能く御聽き下さい、一つは判事に對する威壓なんです、二は民衆に對する威壓なんです、と言ふのは、あなたはそんなことは能く御存じないでせうが世人は言ふのです、判事と云ふものは横を見て居れば宜い、君僕で純然たる獨立性を帶びて、上から下を見、下から上を仰ぐと云ふことはない、良心に依つて立派な裁判をする、檢事は上を見る、之を引縛りませうか、起訴しませうか、罪はなささうだけれども、政府に都合が惡さうな奴だから、引縛りませう、命令されたら縛らなければならぬ、詰り一般の官吏と同じで命令が強化されて居る、ですから檢事と云ふものは司法大臣から裾の檢事に至るまで一體をなして居る、私には親分子分であり、公には上官と下官の關係である、是が非常に力強い基礎をなして居ります、判事は個個別々である、獨立して居る、隣の人とか友人のやうな氣持である、是が判事の良い所である、檢事は裏では親分と子分の關係であり、表では上官と下官との關係である、是が一人々々に分離して居る、判事に向つて、廊下で以て、おいあれを執行猶豫にしたらいかんぞと牽制する、檢事がまるで一種の監察官であるかの如く判事を牽制し監視すると云ふことが在野法曹の通説です、判事に對して此のやうな態度を執つて牽制する檢事が、團體を組んで氣負つた時に、國民に對してどう云ふ態度を執つたかと云ふことは、思ひ半ばに過ぎるでありませう、それに對する國民の怨嗟の聲が高かつた所に、がたと敗戰で以てすつかり砂糖事件で、味噌を付けたのではなく、砂糖を付けた(笑聲)ここで私は一應結論を先づ伺ひます、仍て此の際司法制度の改正には、檢事と云ふものの制度を改める必要がありまするから、之を司法大臣に御尋ねする、どうしたら宜いか、是は法曹一元化であつて、判事と檢事と辯護士と云ふものが一體となつて、檢事を採用するには、辯護士として民間のことを能く知つて居ると云ふやうな人をば拔擢すると云ふことが、先づ一つの方法であると考へる、是は與論であります、司法大臣は之に對して如何樣な御考へを持つて居りますか、先づ此の點から伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=136
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137・岩田宙造
○岩田國務大臣 只今濱野君の述べられましたやうな弊害、從來さう云ふやうなことのあつたことは、私共も同じやうに感じて居つたのであります、又私は内部に入りましてさう云ふ事情を見まして、是は其の人の心得の惡い點も無論あるのでありますが、斯樣な状況になりましたことは、制度の上に於ても餘程主なる原因があるのではないか、隨て制度を改めることに依つて是等の弊害の大部分は矯正することが出來るのではないかと云ふことを愈愈強く信ずるやうになりました、隨て目下さう云ふ方針で省内に於てもそれぞれ研究を致しますし、又其の方面の權威者の意見も參照致しまして、一應省としての考へ、是は確定ではありませぬが、大體の向ふべき見透しが略略付きましたので、御承知の通りに朝野の其の方面の權威者を集めまして、司法制度改正審議會を作つて、目下急速度を以て調査を進行中でございます、只今濱野君の或る示唆を與へられましたやうな法曹一元化と云ふことは、私は是は理想であると思ひます、唯其の一元化は今日の儘で直ちに行はれるかどうかと云ふことは、尚ほ大いに愼重の考慮を要することではありますが、理想としては法曹一元化にあることでありまするし、尚ほ直ちに行ひ得る點は是は檢事局と裁判所の分離であります、是は今日でも行はうとすれば行へないことはないことでありますから、斯う云ふ點に付きまして只今熱心に研究をして、一日も早く實行に移したいと折角努力して居る所でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=137
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138・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 只今の御答辯で大凡の方向は分りました、折角の御苦心をば諒と致しますが、我々から言ふと頗る手緩いと思ひます、制度と云ふものは紙の上に書かれた形で、それをば姿に現はしたものであつて、制度を如何樣に變へた所で扱ふ所のものは人間である、先程も申しました通り、檢事と云ふものの人生觀は私の言つた通り間違ひない、厭やな優越感と人生惡なりと云ふ性格を帶びた人が日本の檢事の全部だから、此の檢事を、取迭へることなくしては、迚も裁判の明朗化と云ふことは出來ませぬ、制度と云つても人間の扱ふ制度である、私はあなたがもう一度勇斷されんことを望んで置きます
そこでもう一點私はあなたに率直に申上げて見たい、あなたは司法制度改正と云ふことに非常な御熱意を持たれて、民間からの人を以て委員會を作られて居りますが、私は茲に一つ解せないことがある、あなたが司法制度に對する顧問を置いて居られます、あの顧問の顏觸れは司法大臣であつた松阪君と小原君と松本國務大臣、それから清瀬一郎君と某大學の博士、是等の顏觸れです、松阪君と小原君はあなたが改革しなければならないと云ふ其の司法省で、判事でなくして檢事で三十年間生きて來た人である、今日改革しなければならない城壁を作つた御本人ではないですか、其の人達に對して何處か改革することがあるかと云へば、其の人達は司法省と云ふものは居心地の好い所でここで、三十年も居れば檢事長から檢事總長となり、司法大臣になつて貴族院議員になる、こんな居心地の好い所はないと云ふので、改革など思ひも寄らぬ、松本國務大臣はどうか、是が顧問となつて司法省を改革したならば、是は國務大臣として共同の責任を負ふべき人ではないか、あなたが顧問にしてもしなくても、あなたのなさつたこと、司法大臣のしたことに對して連帶の責任を負はなければならぬ國務大臣である、而も貴族院議員である、貴族院議員が三人、衆議院議員が一人、さうして大學の教授が一人、是で司法を民主化しようとする、之に相當の改革を期待することが出來るか、いや出來ませぬ、それはあなたが民主主義の第一線に立つ人であるから、俺のやうに行過ぎてはいけないから、貴族院流の古い考へで一遍にやることは見合せようと云ふ御心持であつたのでせう、それでなくして斯う云ふものをあなたが本氣になつて顧問として置かれたならば、民主化は逆轉して封建的に進むのではないか、凡そ貴族院は封建的だと謂はれて居るでせう、之に對してどう云ふ御考へを御持ちであるか御伺ひ致したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=138
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139・岩田宙造
○岩田國務大臣 只今司法省の顧問の人選に付ての御質問がございましたが、松本國務相はまだ國務相になられない中に委員を御委託したのであります、其の後に國務大臣になられたのであります、而して此の顧問の顏觸れが皆司法制度に付ては寧ろ現状維持派であり、のみならず却て舊制を主張するやうな、寧ろ司法「フアッショ」の責任者ではないかと云ふやうな御尋ねでありましたが、或は見方に依つてはさうでありませう、故らに私はさう云ふ方に御願ひしたのであります、と申しますのは、私は是まで數十年民間に居りまして、實は相當に司法省の檢事其の他司法當局に向つては反對の非難の考へを強く持つて居りました、是は或は誤解があるのではないか、民間に居つて中の事情を知りませぬ、多少の誤解がありはしないかと云ふことを自ら反省しなければならぬと云ふことを考へて居つた、ここで私と同じやうな人を顧問にしましたならば、私が若し誤つて居るならば益益其の過ちを深くするのではないかと考へましたから、是は寧ろ以前の制度を辯護するやうな立場に居る人を顧問に出て貰つて、私の考へが間違つて居るかどうかと云ふことを御相談をしたい、斯う云ふ考へから主としてまあ古い考へではないかも知れませぬが、さう云ふやうな立場の方に顧問になつて戴きました、而して今囘の全體の審議會の方の委員はさう云ふことでなしに、廣く兩方の説を代表して居るやうな方に御願ひを致した譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=139
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140・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 それ御覽なさい、やはりあなた方が民主主義の第一線に立つ方だから、俺の過ちが進み過ぎて居るか分らぬからと云ふので、ああ云ふ封建的の人を引張つて來たと云ふ私の豫想が適中したと云ふことを申上げて置きます
次に司法部が本當に大物を引張り上げないと云ふ聲がある、第一線でない最後の線を守る司法部が、どうも統制違反などを戰時中に擧げるに當つて、やはり大物を遠慮して、細民魚介の徒ばかり擧げて居つたと云ふ聲がある、是が民衆からも怨まれ、且つ小馬鹿にされた理由の一つであります、そこで極く簡單なことを一つ伺ひますが、あの東條大將を調べると云ふことを檢事總長が言明されたが、それは進行して居るのか、もう一つ前の重光外務大臣は今どう云ふ運命に居られるのか知りませぬが、此の間大阪の新聞で、戰時中國民政府から二千萬圓の金を貰つた、蒋政權と日本政府とが妥協しない爲に、國民政府から二千萬圓貰つたのだと云ふことを、相當有數の地位にある石原莞爾將軍が新聞に載せて居る、新聞に載せて居つたものを又誰かのやうに知らぬと言ふかも知れぬが、名前を出した以上は信ぜざるを得ない、此の大官が、戰時中の外務大臣が、二千萬圓の大金をば敵國とは云はないが餘所の國から貰つたと云ふことが明らかになつて民衆が疑つて居る時に、やはり司法部としては相當活躍するのが本當と思ひます、先づ東條大將の調べが進んで居るかと云ふことと、重光さんが二千萬圓貰つたと云ふことが新聞に責任ある人から公表された以上は、之に對して司法部はどう云ふ態度を執るか、私は個人を憎むに非ずして、司法部は斷乎たる態度を人に依らずして執るんだと云ふことをはつきりしたことを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=140
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141・岩田宙造
○岩田國務大臣 只今御尋ねの東條大將に關する點は、此の方は相當に調査致して居ります、重光前外務大臣に關する點は、是は私も何かさう云ふやうなことを見たやうな氣も致しますが、實ははつきり其の新聞を見て居りませぬ、若し何等か左樣な相當の疑を容るべき材料がありまするならば、是は是から調査致すのでありますが、今まではまだ調査に著手する程の材料を承知して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=141
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142・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 是ははつきり申して置きます、大阪新報に載つて居るのですから、大阪の檢事局に御紹介になつて、それこそ檢事局が活躍されるのが裁判の公正、社會的國家的地位の如何を問はないのだと云ふことをはつきり示す爲に必要なことであると云ふことを申上げて置きます
それから憲法上の點に付て總理大臣に伺ひたい、先般聯合軍司令部から、新聞の言論の自由と云ふことを保障するに付きまして、斯う云ふことの通達があつたと云ふことです、新聞紙法に依る新聞人の責任を追究する時には、逮捕審問たると罰金の言渡したるとを問はず、先づ聯合軍司令部の許可を受くべしと云ふ通達があつたと云ふことを承りました、そこで私は此の點愼重な態度で伺ひます、日本の裁判は先づ世界に公平を誇る所の第一のものである、日本の裁判だけは、外國人でも是だけは實に立派なものであると云ふ定評があつて洵に嬉しい、それはなぜかと云ふと、日本の裁判は 天皇の御名に於て法律を適用して裁判することが憲法に決められて居りまして、上を見ない、下を見ない、獨自の立場で立派な裁判をする、唯適用するものは法律である、此の時に新聞紙法に依る所の新聞人の處罰でありまするけれども、憲法に定められて居りまする「日本臣民は法律に依るに非ずして逮捕、監禁、審問、處罰を受くることなし」二十四條「日本臣民は法律に定めたる裁判官の裁判を受くるの權を奪はるることなし」五十七條「司法權は 天皇の名に於て法律に依り裁判所之を行ふ」の場合に世界で第一に明るい立派な裁判をすると云ふ定評がある日本の裁判所が、判事が獨立の地位を保障され、適用するものが日本の法律であると云ふ時に當つて、假令新聞紙法の一部分だけにしても、やはり聯合軍司令部の許可を受けて逮捕し、許可を受けて裁判し、許可を受けて罰金幾らと云ふことを定めなければならぬと云ふ時に、是は至上命令でありませうから、裁判官の苦心を私は諒とするが、憲法上之をどう解釋すべきものでありませうか、法律と解して至上の命令なりと致しますか、私は此の點を伺つた上に、之の對策を持つて居りますから、後で伺ひますが、一體此の命令は至上の命令であると云ふことを私は知つて居ります、知つて居りますが、之をどう解釋するか、憲法上の御解釋を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=142
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143・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 裁判所が法律を適用して裁判を致します時に、聯合軍司令部と諒解を取つて來なければならぬと云ふことは絶對にありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=143
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144・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 自分は司令部のことを考へて居りますから、何遍も見た、罰金と云ふ文字を使つて許可を受ける――それは間違ひありませぬか、私は今新聞の記録を持つて居りませぬけれども、何遍となしに見た、あれは 天皇陛下が「マッカーサー」元帥を御訪問遊ばされた記事に對して、内務省が之を發禁した時に、其の翌日さう云ふ指令が出て居ります、司法大臣どうです、私は明日でも材料を以て迫りますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=144
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145・岩田宙造
○岩田國務大臣 御質問の事項がはつきりしませぬが、新聞を發行停止をした當時に、發行停止が不都合だと云ふ意味のことが來たと云ふことは聞いて居りますが、處罰するのに罰金を課すると云ふことに付いて、それに對して何等かの指令が來たと云ふことはないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=145
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146・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 是は今御即答が中々難かしいだらうと思ひます、私は之を保留して明日新聞を持つて來まして、間違ひであれば是は日本の司法權の爲に喜ぶのです、何も私は強いてこじつけをするのぢやない、若しさう云ふことがあつたならば、處罰するに當りましては是はどうしても其の通りしなければならぬ、非常に裁判官の地位が苦しい、日本の裁判の神聖を保つ爲には、是は議會に於ける行動は議會人の自治に任すやうに、新聞と云ふ方面の法律を一つ除けてしまふか、新聞紙法と云ふものを大體犯罪と云ふ建前から除いてしまつて、裁判所の世話にならないと云ふのが一つの見解、第一に新聞人の問に委員會を作ると云ふやうにして、議會内の行動に對しては自治に任して、議會人自ら懲罰の方法に依つて議院の自治性を保つことが、一面日本人の裁判官に對する信頼感を強くすると共に、新聞の自主性を強く高調するのが宜いのではないかと云ふ自信を持つて居る、それ程までに私が自信を持つて居るので、示唆に富んだ質問をして居るのですが、どうも御分りにならないやうであります、資料を明日持つて來て質問致したいと思ひますので、本日は此の問題だけは保留して置きます
次に私は民主政治と官僚の行政と云ふことに付て伺ひたい、蓋し憲法の動向と、さうして司法部の民主化と行政の民主化と云ふことで、凡その論點が終ると思ふのであります、今日の官僚と云ふものが如何なる状態であるかと云ふことを一言にして言ふならば、日本の官僚は悉く「サボ」です、怠業です、復興事業が進まないと小林さんが一生懸命になつて御心配になつて居るが、是は駄目です、あなたが命令される所の地方廳に行つて御覽なさい、すつかり晝寢して居る、其の晝寢して居るのには同情すべき理由があります、それは先づ全國の官廳と云ふもの、特に復興事業に努力するのは地方廳です、府縣廳です、所が府縣知事を公選すると云ふ態度をば内務省が發表しました、是は私達主義として贊成です、公選すると云ふことになると、來年の三月か四月に決まつて居る、さうすると縣廳の役人はどうなりますか、今の縣知事が公選になると云ふ心配は絶對にありませぬ、是は馘です、それから警察部長も、經濟部長も、内政部長も知事に再びなりつこない、知事になつて辭めれば、其の邊の會社の社長位には拾つて呉れるけれども、内政部長、經濟部長で辭めてしまつたのでは拾つて呉れる人はない、さうすれば何の目的もなければ樂みもないから、まあまあと云ふ態度になります、もう一つは總理大臣が度々内閣の方針として言はれて居りますが、行政整理、官廳機構の改正と相俟つて、今日の三十萬の官吏をば戰前の十三萬七千人にしてしまふと云ふことは、どう云ふ心理状態を起すか、何時俺の首がなくなるか、もう知事になると云ふことは奪はれてしまつた、もう三月になつたら五人の中三人まで馘になる、右を見、左を見てさぼつてしまふと云ふことは、人情から見れば或は同情すべき所があります、さう云ふ方面に對して官吏の奮起を望むやうな工合に、何等か活を入られるやうな方法を講じて貰はなければ、容易ならぬ状態である
それから此の點に關して總理大臣の御答辯をばもう一つの問題と一緒に伺ひますが、此の官僚が非常な優越感を抱いて、官僚横暴などと言はれる基礎が何處にあるかと云ふと、法律的の立場から見ると、茲に官僚共が威張る一つの法律がある、世間では之を一向知りませぬ、明治二十三年「命令の條項違犯に關する罰則の件」と云ふ薄つぺらな法律がある、世間の人は明治二十三年の罰則の件ですから、六法全書の隅つこに載つて居るが爲にちつとも氣が付かない、是が恐しいのです、即ち命令の條項たると、勅令たると、閣令たると、省令たると、縣令たると、府令たるとを問はず「命令の條項に違犯する者は各其の命令に規定する所に從ひ二百圓以内の罰金若は一年以下の禁錮に處す」と云ふ法律がある、そこで閣令たると、下つては府縣令たるとを問はず、苟くも定めたることに對して違犯した者に一年以下の禁錮、罰金二百圓以下と云ふことで決めると云ふ茲に法律がある、法律ではない、昔の古い明治二十三年ですから勅令みたいなものですが、此の勅令が官僚をして人民に優越感を持つて臨ましめる因になる、之を除つてしまはぬと、いつでも府縣令を出す、さうして引括る、是は近頃は中央へ報告することもないが、元は斯う云ふ令が出た時には、一々中央に相談することになつて居つた、此の頃では府縣令で、知事だけで勝手に斯う云ふ罰則を附けて府縣令を出す、是が官僚の奧の手なんです、そこで之を廢止することが、官僚共をして國民に奉仕させるのだと云ふ頭の入替に絶對必要なんです、刀をやつて置いて、お前拔くなよ、刀をやつて置いて氣を荒立てるなよ、是は無理で、丸腰にさせないで之をやることは間違ひなんです、あなた方は之を廢止してしまふだけの勇氣を持たぬか、はつきりと伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=146
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147・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 官吏が一般の國民に對して優越權を持つと云ふのは、法律や勅令の其の結果ではありませぬ、時代が既に段々違つて來て居りまして、今日ではそんなことはないと思ふ、法律で何か罰則があるから、それで威張り出して國民に對して亂暴なことをやる、私はさう云ふ事實がありとは思ひませぬけれども、其の法律を改廢しなければならぬかと云ふ問題でありまするならば、能く考へて見ようと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=147
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148・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 私は今更官僚が優越感を持つて居つたと云ふことを申上げて、それが全原因であるとは決して申して居りませぬ
次に行政と云ふ方面に付て、自治行政と云ふ一面もありますが、此の點に付きまして今日の復興と云ふことを照し合はして御考へを願ひたいと思ひます、今日の政府の仕事と云ふもののさぼり方はあの通りでありまして、復興事業の進まぬと云ふことも一つはさう云ふ所に大きな原因があります、東京都制と云ふものが布かれまして、都廳は官吏を以てすることになつて居りますが、都廳が出來てからと云ふもの東京都政はどう云ふ方面に進んで居るか、先づ戰時中に於て防空對策などに於て大いに缺くる所があつた、終戰後に於きましても、此の罹災者を援ける點に於て、一向どうも都廳制を官史にしたと云ふ效果が現はれて居りませぬ、更に從來特別市制と云ふ運動がありましたが、今までの特別市制は二重監督を廢止して呉れと云ふ建前からでございましたが、國家百年の大計を定めます復興と云ふことに對しては、實に急を要するものであるが、一々府縣廳の知事の許可を取ると云ふことでは手間が掛りますから、五大都市即ち大阪、京都、横濱、神戸、名古屋と云つたやうな都市には、知事に二重の監督權を附與することを止めまして、市長が府縣知事と同樣なる立場に立つて、復興事業の促進に資するやうな權限を與へることが必要であります、のみならず民主主義の政治の徹底化と云ふことは、やはり自治體に十分なる自主權を與へると云ふことも、其の動きの一つであらうと存じます、此の自治體を尊重して、自治體に十分なる自主權を與へると云ふことに付て、さうして當面の復興に資すると云ふことに付て、總理大臣と小林國務大臣の御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=148
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149・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 復興の事業が我々の期待して居つたやうに速かなる進行をしないと云ふことは、是は我々が色々心を痛めて居る點でありますけれども、是には又色々の事情があるのであります、決して官吏が怠業をしたと云ふことだけが原因ではありませぬ、併しながらさう云ふ官吏の怠業なんと云ふ形跡がありますならば、是は容易ならぬことでありますから、其の點は官紀の振肅と云ふことに十分努める決心であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=149
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150・小林一三
○小林國務大臣 私は百十幾つかの地方の大中都市の復興は、其の都市の市長、或は有力者の自治體に依つて進んで行くことが一番早い、又それをやる爲には最近八日の日に、知事、各地方の市長さんの御集りの機會に、此の事をはつきり御願ひしたいと考へて居る次第であります、御同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=150
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151・濱野徹太郎
○濱野(徹)委員 最近復興に關して五大都市の市會竝に市長の動きは、自治と云ふ建前から、復興促進の建前から盛んに機運が強くなつて來て居りますので、政府に於ても此の點に付て十分なる好意ある御考慮を願つて置きます
最後に私は民主主義と云ふことに付きまして政府の根本的の御意見を伺ひたいと思ひます、總理大臣の御説明に依りますると、民主政治と云ふことは民意を政治に反映することであると御話になつて居りまするし、私達も左樣に考へるのでありまするが、其の根本義はどこにあるかと云ひますれば、國民が良心に省みて自分の創意を働かすと云ふことであり、それは他人の人格をも齋しく尊敬すると云ふことであり、斯くしてそれが他に對する奉仕となつて現はれる所に、民主政治の根本義があると思ふのです、是が政治の方面に現はれて來た時に、民主政治と稱すべきものであらうと思ひますが、最近人心の動向を見ますると、終戰後に於て民主主義とは勝手に行ふことだ、自分の專制、自己に對する謙抑の心なくして、徒らに擅恣横行のやうな傾きがあると云ふことは、私は非常に殘念に思ふのであります、例へば今囘提出されました政府の選擧法の如きも、婦人の權限を擴張するとか、選擧年齡を低下したと云ふやうなことは形の上でありまして、是は政治面に於ける國民の責任と云ふことを十分に自覺させ、自主自立の權利が軈ては責任を伴ふものであると云ふことを、十分に徹底させる必要があると思ふ、勞働組合法の如きも、資本家に對する熊度のみにあらずして、全く産業經營に參加する所の組合員の重大なる責任感と云ふことに付て、やはり大いに考へるべき必要がある、農地調整法の如きも同樣なる立場からの三大政策があると私は思ふ、是等に對する責任と云ふものは、結局は我々が自分の良心に省み、其の創造能力を活用することに依つて、他人の人格を御互ひに尊重し、さうして社會奉仕となつて責任を果すことであらうと思ひます、此の根本義に付て十分に宣傳と云ひますか、そんな言葉でいけなければ、啓蒙と云ひますか、其の必要があると考へる、而も其の啓蒙と云ふものは從來あつたやうな、お上からのお説教、戰時中の政府の御訓示のやうなものでなくして、國民の胸奧に潛在する所のものに灯りを點けるのだと云つたやうな方法に依つて、啓蒙の必要がありと考へまするが、此の點、文部大臣が居られるならば、或は公民教育の全部でないかと思ひますが、御所見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=151
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152・前田多門
○前田國務大臣 只今の御説に對しましては、全く同感でございます、さう云ふやうな趣旨を以ちまして、本會議場でも申上げたと思ひまするが、近く公民啓發教育と云ふやうなことを致します場合には、さう云ふ趣旨を十分に採入れたいと思ひます、殊に政府は機會ある毎に、自由と云ふものは責任の觀念で裏付けられなければならない、是は慥か總理大臣の今度の演説にもあつたと思ひますが、さう云ふ思想を一貫して生かしたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=152
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153・中島彌團次
○中島委員長 鈴木正吾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=153
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154・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 私は先づ總理大臣に今次の戰爭の責任が 天皇にありと信ぜられるか、なしと信じて輔弼の重任に當つて居られるか、總理大臣の信念を問ひたいのであります、帝國憲法には「天皇は神聖にして侵すべからず」と明記せられて居ります、責任を追求せられるやうな存在は神聖とは稱し難い、 天皇は一切の政治的責任を超越し給ふが故に神聖と云ふのでございます、而も 天皇が一切の政治的責任を超越し給ふ爲には、天皇輔弼の重任に當る總理以下の國務大臣が 天皇に代つて一切の責任を負はねばならぬ筈であります、かるが故に輔弼の責に任ずる者は、時ありては 天皇の大御心の儘に輔弼の責を盡す場合もあるし、時ありては大御心を抑止し奉つて、眞の輔弼の責任を全うする所以なりと信ずるやうな場合もあり得る筈だと思ひます、例へば 天皇は戰爭を欲し給ふと雖も、國家の爲に此の際戰はざることを至當なりと信じた場合には、大御心に反してでも戰爭を阻止することが輔弼の責を全うする所以であると私は思ひます、之を 天子樣の側から言へば、假令大御心に副はずとも、輔弼の責に任ずる政府當局者が宣戰の詔勅の宣布を其の責任に於て奏請したる場合に於ては、民の心を以て心とする我が 皇室の御傳統に基いて、之を御許し遊ばされることもあり得るのであります、去る八十八議會に於ける東久邇宮總理大臣の御演説に依りますと、天皇は此の戰爭は好み給はなかつた、少くとも此の戰爭は大御心に適つた戰爭ではなかつたと云ふ十分の示唆が與へられたやうに思ふのであります、即ち「天皇陛下に於かせられましては、大東亞戰爭勃發前、我が國が和戰を決すべき重大なる御前會議が開かれました時に」―
此の時が何時であるかと云ふことも承りたい、外國の電報に依れば、既に七月に戰爭のことが決せられたと云ふやうな報道もありますが、一體日本が戰爭をやると肚を決めた最後の御前會議なるものは何時開かれたのであるかと云ふことは、重大な問題だと思ふのであります、其の御前會議に於て「世界の大國たる我が國と米英とが戰端を開くが如きこととなりましたならば、世界人類の蒙るべき破壞と混亂は測るべからざるものがあり、世界人類の不幸之に過ぐることなきことを痛く御軫念あらせられまして、御自ら 明治天皇の「よもの海みなはらからと思ふ世になと波風のたちさわくらむ」との御製を高らかに御詠み遊ばされ、如何にしても我が國と米英兩國との間に蟠まる誤解を一掃し、戰爭の危機を克服して、世界人類の平和を、維持せられることを冀はれ、政府に對し、百方手段を盡して交渉を圓滿に纒めるやうにとの御鞭撻を給はり、參列の諸員一同、宏大無邊の大御心に肅然として襟を正したと云ふことを漏れ承つて居ります」苟くも總理大臣の宮樣が施政方針の演説の中で此のことを御述べになつたのであつて、之に依つて見ますと、和戰を決すべき重大な御前會議に於て、尚ほ交渉を圓滿に纒めるやうにとの御鞭撻を給はつたと云ふのであります、之に由つて之を觀るに、今囘の戰爭に於て宣戰の御詔勅は東條總理大臣が補弼の責任に於て之を奏請し、天皇は民の心を以て心とする大御心に依つて之を許容し給はつたと解すべきであらうと信ずるのであります、日本に於ける補弼の責任の範圍と性格を明確にすることは、憲法改正の上にも重大なる示唆を與へるものと私は信じます、 天皇の責任が内からでも外からでも追究せられるやうなことになれば、最早天皇の神聖と云ふことは保たれる道理はないのでありますから、此の點に付て總理大臣は無論今度の戰爭に於て 天皇に責任なしと 信ぜられて居る筈である、我々は切々それを思ふ、今日國民の間に 天皇に對する氣持が動いて居ないと云ふことは、總理大臣の先程御述べになつた通りであります、天下の人心はかるが故に一層心配して居る、此の頃の新聞を見ると、聯合軍は頻りに 天皇の責任を追究するが如く感ぜられるやうな風であります、日本の政府からは何等其の事に付て國民を安んぜしむるやうな態度の聲明もありませぬ、私は此の際總理大臣が我々と同樣に、此の戰爭に於て 天皇に責任はないのだと云ふ信念を以て補弼の重責に當られて居るや否や、若しさう云ふ信念を以て當つて居るとせらるるならば、其の責任なしと云ふ理論の根據を明白に御示し願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=154
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155・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 御答へを致します、 天皇の統治上の御行動に付きましては、之を補弼する國務大臣が一切の責任を負ふものと考へて居ります、 天皇陛下に御責任があるべき譯は絶對にありませぬ、先年此の開戰のことが決せられたる御前會議は何時のことであつたか、何時是が決せられたか、其の裏面の消息に付きましては私は承つて居りませぬ、それ故に御答へすることが出來ませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=155
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156・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 此の開戰のことを御決しになつた御前會議の期日と云ふことは、重大な問題であらうと思ひます、故に只今御存じがないと云ふならば、無論聽く譯にも行きませぬけれども、當然政府としては之を國民の前に明かにせらるる責任があると思ひますから、適當の機會に之を御明確にせられることを希望する
それから只今の御言明に依つて、政府は此の戰爭に於て 天皇には責任なしと云ふ信念を吐露せられて居るやうであります、當然のことでありますが、果して然らば此の内閣は成立以來「マッカーサー」司令部との折衝に於て、或は聯合各國との折衝に於て、と申して宜いかどうか分りませぬが、兎に角日本の 天皇には責任なしと云ふ見地に於て努力せられなければならなかつた筈であります、其の努力をせられて居るであらうとは思ひますけれども、寡聞にして我々は、政府當局がさう云ふ意味に於ての努力を拂つたと云ふことを何等今まで承知して居ない、それが甚だ不滿なのであります、其の點に付て政府は唯此の信念を抱いただけで黙つて居るのか、或は 天皇に責任なしと云ふことを列國に諒解せしむる如き十分なる努力をして居るかどうか、それをはつきり承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=156
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157・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 天皇の御責任に付きまして、聯合軍司令部より何等私は話を聞いたことはありませぬ、左樣な議論は致したことはありませぬ、それ故にこちらから進んで、 天皇に御責任があるとかないとか、斯う云ふやうな事實があるんだと云ふことを、私は言ふべき必要はないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=157
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158・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 能く分りました、其の點に付て、我々は何か責任を追及せられ居るが如き不安を感じて居る、それがないと云ふことが分ることも、此の際に於て非常に大事なことでありまして、言明を得たことは私の大層滿足する所であります
次に御伺ひ致したいと思ひますことは、軍閥とは何ぞやと云ふことに付て明かにして欲しいと思ふのであります、明治時代にも薩の海軍、長の陸軍と云ふやうな軍閥と云ふ考へ方がないではありませぬでしたけれども、其の當時の軍閥と云ふものは、勿論薩摩の人間は薩摩の人間を引張つて海軍の有爲な人物を作る、長州は長州の縁故を辿つて、之に一種の便宜を與へると云ふやうな意味での閥でありまして、未だ一つの政治的勢力を以て外國を侵略せんとするが如き意圖を藏した軍閥と云ふものは、明治時代には少くも存在しなかつたと私は信ずるのであります、そこで日本に今外國人が見て居るが如き軍閥と云ふものが發生したのは、少くとも明治の終り以後どの位の時か知らぬけれども、是が日本に發達した經路と其の實體を掴むことが、私は日本の將來國を建てる上に於て大事な問題だと思ひます、例へば私は日清、日露の戰爭は斷じて軍閥の企てた侵略の戰爭ではないと信じて居る、若し軍閥の企てた侵略戰爭ありとすれば、是は日本の主觀から言へば尚ほ色色言ふことがあるか知れぬけれども、外國の眼から見ると、侵略戰爭と稱すべき戰爭ありとすれば、それは少くとも滿洲事變以後の戰爭であらうと私は思つて居ります、そこで日清、日露の戰爭は斷じて侵略の戰爭ではない、其の戰爭の結果得たる臺灣と樺太は、是は日本に取つては侵略戰爭の結果得たる收得ではないのである、我々は「ポツダム」宣言を無條件で受容れました以上は、今それを彼此れと言はぬけれども、日本が正常の國家として立上がる時に於て、此の主張だけは飽くまで保留して置く必要があると私は確信して居ります、朝鮮を日本に併合せられたことも侵略戰爭の結果として得た譯ではない、朝鮮を獨立させるかどうかと云ふことは別問題であります、日本が今度の戰爭に於て奪はれた領土を、軍國主義の戰爭の結果として之を處斷せらるると云ふことに付ては、我々は國民として斷じて承知し難きものがあります、それ等の點に付て總理大臣はどう御考へになるか、是は日本の軍閥の發達が何時から出來て來て、さうしてどう云ふ經路を辿つて來たかと云ふことがはつきり證明せられることに依つて、私は十分世界を納得せしむることが出來ると信じますが故に、先づ日本の軍閥とは何ぞやと云ふことをはつきりして貰ひたい、此の軍閥と云ふ總稱の爲に、善良なる軍人が如何に多くの迷惑を蒙つて居るかと云ふことは想像以上のものがあるのであります、今政府は即座に御答辯が出來兼ねる問題かも知れぬと思ひますけれども、其の軍閥の發生過程と、其の具體的の實體を速かに調査研究せられて、國民の前に是が軍閥なんだ、日本の軍閥の政治的侵略は此の時から始つたのだと、斯う云ふ風に御説明になることが日本の平和愛好國家であると云ふことを世界に闡明する上に於ても大事なことであると存じますので、此の點に對する總理大臣の御所見を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=158
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159・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 軍閥と云ふことは何を意味するかと云ふ御問ひであります、それは其の言葉を用ひる人々に依りまして、意味が違つて居るのでございます、一定せる定義があるとは私は存じませぬ、又其の何れの意味に於きましても、日清、日露の戰役が軍閥主義の結果である、侵略主義の結果であると云ふやうなことは絶對になかつたのであります、それは日本のみならず西洋各國到る處、世界一般にそれを認めて居つたと私は考へて居る、さう云ふ意味に於ての侵略主義、軍閥主義であるとか軍國主義と云ふものはなかつたのであります、今囘の大東亞戰爭が軍閥主義の結果であつたかどうかと云ふことは、其の戰爭及び戰に敗れた原因及び眞相に付て調査委員會を開いて、只今總ての角度から調査致して居るのであります、此の事業が完成致しますれば、其の邊の消息は判明して來るだらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=159
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160・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 只今總理大臣の御話を聽いて居ると、軍閥と云ふことには一定の定義はないのだ、考へる人に依つて色々意味は違ふと仰しやつたが、私はそれがどうも解せぬと思ふ、日本の軍閥と今日言はれるものは、政治に干與して、日本を侵略主義の國と世界をして誤らしめた行動を執つたのが軍閥であつて、此の解釋は一定して居るべき筈だと私は信じて居ります、又只今總理大臣は日清戰爭、日露戰爭は侵略戰爭ではないのだと云ふことは世界各國が認めて居る、斯う仰しやつた、それなら私は大層結構だと思ひます、或は私の誤解かも知れぬけれども、「カイロ」會議に於て日本を丸裸にしようとした此の宣言の内容は、臺灣、朝鮮、樺太は日本の侵略主義戰爭の結果として獲得したのであるが故に、之を舊態に復すると云ふ精神に於て論ぜられて居ると思ふのでありますが、其の點は私の誤解でありませうか、或は世界が臺灣、朝鮮、樺太を日本から引離した理由は、侵略戰爭と云ふ以外に、此の戰爭を捲き起した詰り賠償とか、懲罰とか云ふ意味に於て取上げて居るのであるか、詰り臺灣を日本が失ひ朝鮮を失ひ、樺太を失つたのは如何なる理由で失つて居るかと云ふことも、此の際はつきりと述べて戴きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=160
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161・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 日清戰爭、日露戰爭に付きましては、私は實は其の當時既に成人致して居つたのでありまして、實際の事情は私は知つて居るのであります、外務省に於て既に働いて居つたのであります、隨て其の當時世界の輿論は、翕然として日本に同情を持つて居つた、是は明瞭なる事實であります、私は左樣に解して居る、私は其の當時列國の新聞、雜誌、言論などを注意して讀んで居りましたけれども、日本が侵略戰爭をやつたのであると云ふ議論は私は見たことがありませぬ、例へば日露戰爭に於きましては「フランス」の如きは「ロシヤ」の同盟國であつたに拘らず、日本の行動に對しては諒解ある態度を執つて居つたのであります、日本が外國に公債を發行すると云ふ時には、「フランス」の資本家も亦之に應募して居つたと云ふ現状であつたのであります、私の考へる所では日本が日清戰爭、日露戰爭共に日本の侵略主義に依つたのではないと云ふことは、其の當時列國が皆認めて居つたことである、私は斯う信じて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=161
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162・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 其の點に付ては私もさうあるべき筈だと信じて居る、日清戰爭、日露戰爭は侵略戰爭ではないのだ、其の侵略主義でない戰爭の結果得た日本の臺灣、樺太の領土は、決して侵略の結果として認めらる性質のものではない、然るに「カイロ」會議の宜言の内容――私が或は誤解して居るかも知れぬけれども、「カイロ」宣言に依れば之を日本の侵略の結果得た果物なりとして、日本を負かした後に之を取上げると云ふ風に「カイロ」會議では言うて居ると私は思ふのでありますが、今囘「ポツダム」宣言は少くとも日本から臺灣、朝鮮、樺太を切離した限りに於ては「カイロ」會議を實行したことになる、其の聯合軍が日本から其の島々を取上げた理由は、侵略主義の戰爭の結果として取上げたのか、或は私のさう解釋することは間違ひであるのか、此の際總理大臣の御教示を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=162
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163・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 今御話の如く「ポツダム」の宣言は「カイロ」宣言と云ふものを認容して之を確認致したのであります、其の「カイロ」宣言なるものは果して宜いか惡いかは、一寸私は切離さない方が宜いと思ふ、切離すべき立場でないと思ふ、日本はそれを鵜呑みにして承認した以上は、是は宜いとか惡いとか云ふことを批判すべきものでないと私は思ふのであります、併しながら私の眼に映つて居つた事實はどうかと御聽きになりますから、私は日清戰爭、日露戰爭は列國の輿論は翕然として日本に同情して居つたのである、是が私の見て居つた事實であると云ふことを率直に申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=163
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164・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 是れ以上の御答辯を求めようとは思ひませぬ、唯私は日本人の一員として朝鮮、臺灣、樺太は侵略戰爭の結果取つたのではないと云ふ氣持が日本人にはあるぞ、而も我々は「ポツダム」宣言を無條件に受諾したのであるから、之に對しては飽くまで忠實に實行することを無論やらねばならぬのであるけれども、氣持にそれを殘して持つて居るのだと云ふことだけは、茲に言うて置きたいと思ふのであります
次に總理大臣に承りたいのですけれども、政府には此の未曾有の國難に直面して、人心を一新して一種の精神的革命を成就すると云ふやうな積りで、此の際年號を改める意思はないかと云ふことを承りたい、總理大臣は去月二十九日の本會議で鳩山氏の質問に對して、日本は敗戰して如何に苦しいかは何人も痛感して居る、是は子孫に至るまで忘れてならぬと言はれましたが、全く其の通りでなければならぬ筈の日本人の敗戰感と云ふか、此の實感は、まだどうも不徹底のやうに思はれるのであります、去月十五日米國賠償委員の「ポーレー」大使が新聞記者團に發表した聲明を一讀すると、詰り日本國民の生活は、日本が侵略した國々の國民以上の生活は許さぬと言ふ、今後の我が國民の頭上に振り掛かる國難は如何に深刻であるか、恐らく思ひ半ばに過ぐるものがあらうと思ひます、然るに我が國民の中には、まだまだ斯かる敗戰の深刻の苦しさが、本當には痛感されて居らないのではないかと疑はれるやうな世相がないとは言へぬのです、此の際全國民に襟を正して、嚴肅な敗戰の事實を凝視せしめざるを得ざるやうな嚴肅なる精神的革命に寄與する何等かの手が打たれて宜かりさうなものだと思ふのであります、國史を繙きますと、國家の慶事又は凶事の際、年號を改められた事實は枚擧に遑がないと思ひます、明治以來一天皇、一年號となつたが、今次の敗戰は國史未曾有の國家の大凶事であります、或る意味で昭和二十年八月十五日以前の日本は、最早古代史に屬するとさへ言ひ得ると思ひます、總ての日本人が今や新しく紀元一年から起ち上るのだと云ふ位の覺悟をしなければ、日本は到底再建し復活し得ないであらうと思ふのであります、此の意味で此の際昭和の年號を改めて人心を一新する工夫があつて然るべしと存じますが、總理大臣の御考へは如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=164
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165・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 年號に關しましては、皇室典範の中に規定があるのであります、此の問題は餘程愼重に考慮を要することだと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=165
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166・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 其の皇室典範に御規定があると云ふことも、私滿更存ぜぬではないのですけれども、若し是が必要だとすれば、さう云ふものを改めてでも此の際輔弼の責任に於て人心一新の途を圖られると云ふ位の英斷が私は望ましい、さう思ふのであります、年號を改めると云ふことは、私は日本國民の人心に一大衝動を與へ、本當に紀元一年から起ち上らせると云ふ氣魄を持たせる上に必要なものがあると存じますので申上げた次第でありますが、今直ぐどうすると云ふ御返答は勿論出來ないでありませう、併し詰りそれ位のことをやらなければ日本は救はれぬぞと云ふ位の心持を、私は總理大臣に諒解して貰ひたいと思ふのであります、それには及ばぬと御考へになるのか、私はもう一度しつこいやうですけれども、此の問題に付ての總理大臣の意氣込を一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=166
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167・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 私が申上げたのは、此の問題は輕々に取扱ふべきものでなくて、極めて愼重に取扱ふべきものである、深い考量を要するものであると云ふことを申上げただけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=167
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168・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 何卒其の深い御考慮の上で、一つ思ひ切つて斷行して戴くやうにと御願ひ申上げて、此の問題に付ては質問を是で終ります
次に私總理大臣に御伺ひしたいことは、總理大臣は現在の議會を以て民主主義を運營する資格ある議會と御認めになるや否やと云ふ問題であります、私は現在の議會は其の構成上、本質的に民主主義の基盤に立つたるものとは考へられない、本來ならば直ちに解散して、日本再建の諸法案は擧げて總選擧後の新らしい民意を盛上げた議會に諮るべきであると思ひます、唯併し現在の選擧法は、餘りにも舊式非民主主義的でありますから、此の選擧法の儘で選擧を行つたのでは、到底眞の國民の總意を新議會に結集することが不可能である、さう云ふ意味で次の總選擧に於て眞の民意を表現し得られるやうな選擧法の民主主義化を實現することは、此の際としては洵に已むを得ざることであると思ひます、隨て我々は此の已むを得ざる選擧法の改正だけをなし迭げて、直ちに總辭職をして一種の經濟革命法とも見るべき農地調整法とか、勞働組合法の如き重要法案は、宜しく新選擧法に依つて選ばれた新議會に諮ることが極めて妥當な行き方であらうと考へるのであります、而も其の選擧が來年だ、再來年だと云ふなら、此の法案をさう遲らす譯には行かないとも考へられますが、近々、長くて、二箇月か二箇月半もすれば、此の法案は直ちに成立出來るやうな議會が作れる譯なのですから、何を苦しんでそんなに急いで斯う云ふ重大法案を此の議會に出す必要があるのか、特に現在の議會に於ては、何と云つても依然地主的勢力、財閥的勢力の殘滓が相當根強く現議會には居るのであります、さうして農地法とか或は勞働組合法と云ふものは、斯かる舊財閥的、舊地主的残滓勢力に依つて、相當多量に地主的に或は財閥的に修正せられる虞のある斯ふ云ふ議會に、何も慌ててそんなものを出す必要はないのだ、寧ろ此の法案の名譽の爲にも、私は唯此の議會は選擧法を通すだけで、後の法案などは新しい議會に任して成立せしめた方が、出來上つた法案も其の方を喜ぶであらう、斯う私は考へて居るのでありますが、現議會に對する總理大臣の御認識の度合はどう云ふものでありませうか、承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=168
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169・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 終戰後國内情勢の一變致しましたる今日、より良く民意を反映する議會の出現を我々は眞實期待致して居るのであります、今日よりも能く民意を反映する議會が出て來るやうに我々は望んで居るのであります、唯農地調整法の改正法律案と云ふやうなものは、是は今日我々が差當り直面致して居る最大の急務たる、一大急務たる食糧問題の解決とも關係がありまするから、諸般の情勢を考へまして、是だけはどうしても案の具體化を圖らなければならぬと云ふ見地から見まして、此の法律案は此の議會に提出致したい考へで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=169
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170・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 さうしますと、私が問うたのは、總理大臣は現在の議會の本質に於て、さう云ふ民主主義政治の運營に當る資格ありや否やと云ふことに付ての總理大臣の認識を聽いた譯なんですけれども、今の御答辯で見ると、其の點に付ては餘りはつきりしない、唯此の議會に出したのは食糧問題などがあるから急ぐのだ、急ぐから少々議會が本質的には背くやうな氣持があつても出すのだ、恰も選擧法をここで通さなければ次の選擧が無意味になるから、選擧法を急いで出したと云ふと同じ意味で御提出になつたと理解して宜しうございますか、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=170
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171・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 其の通りで宜いのであります、若し其の議論を徹底して行けば、選擧法の改正法も今度は出せないと云ふ理窟になります、さう云つた意味でなく、急を要したものはどうしても此の議會に提出して皆樣の御協贊を仰ぐのが當然だ、斯う考へたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=171
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172・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 そこで大體さう言うては議員が怒るから言はぬだらうけれども、今の總理大臣の認識は、兎も角現在の議會は眞の民主主義政治を運營する本質を具へて居ないと云ふ認識を持たれたと私は理解する、それでなければ何も急ぐから出すのだと云ふ必要はない、さうでせう、そこに一つの大事な問題があると云ふことだけ私は念を押して、此の認識の問題はそれ以上には進まない積りであります
次に外務大臣に御伺ひしたいのですけれども、外務大臣は只今「マッカーサー」司令部の方においでになつたとか云ふ話で、五時までに來なければ今日は歸れぬと云ふ話であります、恐らく今日は御見えになることが出來ぬと思ふ、そこで外務大臣に對する質疑は私明朝まで保留さして戴きます、そこで何と云つて宜いか、何處へ質問して宜いか實は分らぬのですが、復員の問題、復員省と云ふものが出來て…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=172
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173・中島彌團次
○中島委員長 總理大臣に質問しなさい、兼任です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=173
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174・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 私は事務的のことに付て御伺ひしたいのですから、總理大臣でなくても宜しうございますが、それを答辯して下さる係りは此處に居るのでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=174
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175・幣原喜重郎
○幣原國務大臣 第一復員次官も 第二復員次官も、此の席に居られます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=175
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176・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 總理大臣に御答辯を願へれば結構ですが、若しそれでなければ其の係りの方に御説明を願ひたい、現在日本國内に居る人々の中で、兵隊を外地に持つて居る家族達は、本當に息子達或は親達がどんな扱ひを外地で受けて居るだらうかと云ふことを心から心配して居ります、そこで私さう云ふ親達の氣持、或は女房達の氣持、子供達の氣持を要約して御尋ね致したいと思ひますから、一つさう云ふ人達の氣持を思ひ遣つて、出來るだけ丁寧に、出來るだけ親切に具體的に御答へを願ひたいと思ひます、就ては一問一答で、さう云ふ所から出て來られると時間を取ると思ひますから、ずつと聽きたいことだけを全部羅列致しますから、御記憶の上でそれに付て一々御返答が願ひたいと思ひます
先づ外地三百萬の復員兵の家族は、只管其の生死安否を氣遣つて居ります、もう手紙が半年も一年も來ないと云ふのは、皆さうなんです、生きて居るか死んで居るか分らない、それが知りたい、そこで成べく速かに出來るなら本人自身で、外地に居る兵隊自身で簡單に葉書で宜いから自分が安全で居ると云ふことを郷里の親達女房達に直ちに通信するやうに、日本から命令する譯に行かぬだらうけれども、交渉すべき筋と交渉して、直ちに其の許可を得て、本人自身から健在なりと云ふ通知を家族に送るやうに取計らつて貰ひたい、是が第一です、さうして其の通信文は必ず飛行機で運搬して貰ひたい、何日掛るか分らぬと云ふ心配なしの飛行機で運搬して貰ひたい、其の飛行機は勿論日本で勝手に使ふ譯に行かぬでせうから、是も何處と交渉するか、一箇所でなければ數箇所、兎に角交渉をして、相手方の許可と云ふか、承認を得て――こちらの飛行機を使へるものもある筈ですからこつちのを使つても宜し、向ふので運んで貰つても宜し、何れにせよ飛行機で運ぶやうに一つ御盡力を願ひたい
次に在外復員兵はそれぞれの地域に於て、漸次國際法規に依つて捕虜としての取扱を受けて居るものと信じますけれども、其の捕虜としての取扱ひと云ふことはどう云ふやうな――苦役と云つてはどうか、仕事をして居るのか、或はどう云ふ状態で彼等は生活しつつあるか、親達の氣持から云ふと、まるで牛馬のやうにこき使はれて腹を減らして居るのぢやなからうか、病氣になつても醫者にも掛かれずに居るのではないだらうかと云ふやうなことを心配して居るのですから、其の外地に居る兵隊の生活振りとか、其の仕事の種類とか云ふやうなことを出來るだけ詳細に、「ビルマ」方面の捕虜はどうやつて居るのか、支那方面の復員――捕虜と云ふのは私は厭やだけれども、何と云ふか、其の兵隊さん達はどう云ふやうな生活をして居るのか、さう云ふやうな地域々々の状態に付ても、分れば分るだけ精しく御報告が願ひたい、今や日本國民の大多數は陸海軍があつた時分に發表した何部隊は何處に居る、こんな小さな發表でさへ飢ゑたる者が食を漁るやうにして待つて居るのです、是非一つ成べく精しい情報を聽かして貰ひたいと思ひます
それから次は復員の根本方針に付て承りたいのです、何と云ふか、傷病兵を先づ第一に運んで來ると云ふ、勿論御方針だらうと思ひますが、爾餘の將兵の復員順序はどうなるのか、例へば距離の遠近とか、交通の便不便とか、生活の難易とか、在外期間の長短とか、家族の状態とか云つた點を考慮して、其の順序を決めて居るのかどうか、丁度「アメリカ」の兵隊が歸るのに、八十五點とか云ふやうな點數に滿つれば歸つて行かれるやうになると云ふ話を聞いて居りますが、何かさう云ふやうな一定の標準があつて、歸還の順位が決められて居るのかどうか、あるとすれば其の順位を承りたい
それから次は復員人員の年度別、方面別、例へば昭和二十一年には中支方面から何千人の兵隊が歸つて來るのだ、「フィリピン」からは何千人の兵隊が歸る、或は、「ビルマ」方面からは何千人の兵隊が歸つて來る豫定で、さうして其の全體の人間の復員が完了するのが大體何年の何月に終ると云ふやうな、さう云ふ具體的な計畫があらうと思ふのであります、其の具體的の計畫を成べく詳細に承りたい、且つ仄聞する所に依れば、最初は不成功に終つて居つたけれども、近頃「アメリカ」の諒解に依つて復員に「アメリカ」の船も少々使へると云ふやうな諒解を得たと云ふやうな話も聞いて居ります、さう云ふ結果として最初に發表された復員計畫が、一月でも一年でも早く切上がると云ふことになれば、國民に取つては無上の喜びであらうと思ひますから、さう云ふやうなことを詳しく御話願ひたい
それから最後に復員は原則として應召の將兵を先にし、職業的の軍人を後にするのが本當だらう、是はこつちの心持ですけれども、終戰後の状態で見ますと、朝鮮邊りでは將校が飛行機に乘つて九州に着いて、兵隊を置き去りにしたと云ふやうな話も聞いて居ります、さう云ふやうな兵隊を置き去りに逃げ歸つたやうな將校を一體どう處置して居るか、もう一遍現地に還して居るか、歸るは歸つたが仕方がないから其の儘見過して居るかどうか、斯う云ふことが全體の士氣の上に大いなる影響があると考へますので、御伺ひする次第であります、何卒出來るだけ詳細な御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=176
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177・原守
○原政府委員 只今の御質問に對しまして御答へを申上げます、第一に、三百萬に上る將校以下兵の身上安否を考へられて其の状態がどうかと云ふことを御心配になつての御尋ねであります、此の點に付きましては私共と致しまして、出來るだけ其の状況を知らうと云ふことに努めて居ります、事實は朝鮮の三十八度以北、滿洲、千島、樺太に於きましては終戰以後遺憾ながら通信が出來ませぬ、其の外の公的の處置を以てやりますことは全部實行が出來ず、聯合軍を通じまして、更に話をしましても返事がないと云ふやうな實情であります、唯其の間に色々の方法を以て内地方面に來た人の斷片的な状況を察しますと、軍人又同胞に於ても非常なる苦心をされて居られると云ふことが察せられます、其の點私共非常に憂慮して居る次第でございます、軍人の方は、是も正式なる報告ではございませぬが、樺太、滿洲に於ては將校も下士官も兵も別々と云ふやうなことになりまして、其の人達は或は勞役に使はれ、而も其の勞役の場所もはつきり致しませぬと云ふやうな状態であります、其の勞役の状態が如何であるかと云ふこともはつきりしないのが現在の實情でございます、支那に於きます安否の問題は、是は中國側の理解ある態度に依りまして、軍の今まで持つて居りました組織と云ふものも完全に保持されて居ります、隨て從來軍でよく現地自活と云ふ言葉を使つて居りますが、其の附近々々に於て環境を整理し、殊に一地に長く居つた所では其の自活の状態は良好でありまするので、生活には心配はないと云ふ状況でございます、唯御承知のやうに延安方面のあの中國側に對するごたごたの結果、揚子江以北、殊に北支に於きましては事實休戰以後に於ても日々戰死者を出して居るやうな状態でございます、此の支那に於ける内亂の結果蒙る將兵の死傷に對しては、是れ亦、私共の非常に心痛して居る所でございます、既に九月二日より十一月半ばに亙りまする間に於て、三千幾らの戰死者を出すと云ふ風な實情にございます、全般的には先刻申上げますやうに良いのでありますが、局部に於ては斯くの如く苦勞をして居ると云ふ實情でございます、中部太平洋、「ニューギニア」或は「ビルマ」尚ほ南方方面に於きます將兵に付きましては是は一々詳しいことは分りませぬが、大體に於て小さい島に行つて居つた人々、現地自活には苦しんで居りまするので、終戰後軍と致しましては、其の附近に大きな島で現地自活の出來るやうな所に小さい所から有り合せの船で集結を致しまして、團結を鞏固にして士氣を旺盛にしてやつて居るのでございます、概して心配はないと云ふ状態でございます、「フィリピン」に於きましては――是は次の俘虜と言はれました此の問題とも關聯致しますが、「フィリピン」に於きましては、終戰後大體に於て俘虜の取扱を受けて居ります、「マニラ」或は其の郊外に於て約四萬の將兵が天幕に入つて俘虜の待遇を受けて居ります、既に「フィリピン」よりは千何百人の將兵が内地へ歸還致しました、それ等の報告に依りますと、最初は「アメリカ」側に於ても非常なる好意ある待遇を受けて居りますが、如何せん「フィリピン」にある食糧は使はぬと云ふことを聲明せられた關係上、漸次他所の方から持つて來る所の食糧も減退を來して、初めは一日五百「グラム」位の米が段々減つて參りまして、現在は日本の二合一勺よりも少い状態でございます、歸還者の報告に依りますと、「アメリカ」側の報告では一日千五百「カロリー」はあると言はれて居りますが、事實は中々足りませぬで、相當榮養上困つて居るやうな樣子でございます、併し是は給與上の問題でございまして、疾病其の他に付ては概して心配ないと云ふ實情であります、唯遣憾ながら非常に苦戰をせられた將兵が、あの終戰を傳へられて大部分はもう榮養失調に近いやうな状態で「マニラ」に皆歸られた爲に、「マニラ」到著後相當の死歿者を出して居ります、又數ははつきり致しませぬけれども、終戰の結果降らずして尚ほ現地の山の中に立籠つて居る將兵が相當數あると云ふ見込でございます、「ビルマ」の状況に付きましては、只今受けて居ります状況には今まで載つて居りませぬので、確たることを申上げ兼ねますが、現地では恐らく、隊長の掌握下に入つて現地自活等も或る程度行つて居りはせぬか、是は私の想像でございますが、
次は斯くの如き安否を尋ねて心配して居る家族に對して、何とか郵便其の他で知る方法はないかと云ふ御尋ねであります、是は現在さう云ふ途が開かれました、今日も其の途がどうなつて居るかと云つて念を押したのでございます、是は聯合國の方の諒解は經て居りますが、實質に於て行つて居りませぬが、近く是は希望のやうに行く筈でございます、安否の中で、現在の實情を申上げますと、復員部には留守業務部と云ふものがございまして、此の留守業務部が三百萬海外に居る人の安否を取扱つて居ります、さうしてそれを知る爲には、海外から兎に角さう云ふことを一番知つた人を一番早く歸すと云ふことが現在のやり方でございます、是はそれぞれの出先に其の名簿を持つて皆歸るやうに指令をして居りますので、或る程度行つて居りますが、「フィリピン」邊りは、こちらの希望が中々傳はりませぬで、歸つて來た者はたつた一人歸つたと云ふに過ぎないので、全部の安否と云ふのは分りにくい状態であります、此の點はもう暫くしますと、三百萬全部とは申しませぬが、非常に能く分ると思ひます、但し現在の實情は約八十「パーセント」――三百萬人の八十「パーセント」の安否は分つて居ります、其の八十「パーセント」の分つて居る時期は、名簿に依つて送つたのが終戰後位のものはまだ來て居りませぬので是は分りませぬが、若干部分は終戰直前、一番古いのは是は古うございまして昨年の五月位でございます、「ニューギニア」とか、「ビルマ」とか、中々連絡が出來ませぬのでさう云ふ實情であります、今年の一月から四月、是れ位までのは大體七十「パーセント」位は來て居る、飛行機に依つてやつたらどうか、是は願はしいことであります、之に付きしまては、日本には飛行機がございませぬし、旅客飛行機も禁止されて居るやうな状況で、聯合國と交渉をしなければなりませぬから、直ぐ此處で言明をする譯には參りませぬ
次は俘虜の取扱をなして居るのかどうか、生活状態はどうかと云ふ御話でございます、生活状態は今のやうな大體の状態でございますので、大凡是も申上げたかと思ひますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=177
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178・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 一寸此の儘で話させて戴きたい、先刻現地自活と仰しやつた、私は支那に居る兵隊も俘虜として扱はれて居ると思つて居つたのですが、部隊の組織を其の儘にして現地自活をして居ると云ふのは、何だか嬉しい心強いやうな氣持が致します、其の現地自活と云ふのは、日本が金を拂つて買つて食つて居ると云ふのですか、さうだとすれば、一寸そこが理解出來ないのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=178
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179・原守
○原政府委員 支那其のものに居りませぬので、明確な御答へは出來ませぬが、私其のものが沖繩なり臺灣に行きまして、私の部隊のやつて來ました状況に依りますと、皆自分で耕します、唯米だけは自分でやるまでには臺灣でも行つて居りませぬ、大部分は自分で耕して居ります、併し米は或る程度の保有米を持つて居りますので、支那に於ては尚ほ食糧には困つて居らぬと云ふ報告がございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=179
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180・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 被服はどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=180
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181・原守
○原政府委員 被服の方は或る程度困つて居るだらうと思ひます、併し戰をします爲に準備を相當して居りますので、是はひどいのを着て居るのもありませうが、或る程度は緩和して居ると考へます
復員の根本方針はどうか、點數制其の他をやつて居るか、何等か標準を知りたい、斯う云ふ御話であります、海外の三百萬の人を何とかして早く内地に歸還させて、それぞれの家庭に歸つてさうして新日本の平和建設に盡させるやうにと云ふことは、私共の所謂根本でこざいます、頭を悩まして居るのでございますが、之を一刻も早くやる爲には、何としましても船が基礎になる、船がなければ外は皆机上の空論であります、所で現在までの實情を申上げますと、南部朝鮮に居ります部隊十七萬の者は既に全部内地に歸還致しました、支那の方は是は先程の御話にございましたやうに、十一月二十日以後あの「エル・エス・テー」と申しますが、「アメリカ」の水陸兩用戰車の母艦でございます、之を二隻乃至三隻を…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=181
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182・中島彌團次
○中島委員長 鈴木君は總理大臣に質問がございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=182
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183・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=183
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184・原守
○原政府委員 少し長くなりますが、其の「エル・エス・テー」に依りまして、一隻が千人も乘りますので、時に三千人、四千人と云ふ軍人、或は同胞も歸還をして居ると云ふやうな状態になつて居ります、曾て陸軍省時代に發表致しました昭和二十三年にあらざれば、支那の兵は内地に復員が出來ない、斯う云ふことは現在の見込では明年の暮には出來ると云ふ見込になつて居ります、但し其の船は「アメリカ」の援助が續いての計算を今申上げたので、是が切れますと又元の通りになつてしまふと云ふ状態である、或は海軍の復員に付ては第二復員省からも説明があるかも知れませぬが、南の方の中部太平洋、是等の方面は海軍が主に其の任に當つて居られるのでありますが、是も明年の大體八日頃には終る計畫になつて居ります、それからずつと西南の方は、是も主として海軍がやつて居られますが、是も明年の十月と思ひます、臺灣は、此の前の發表では昭和二十四年と云つて居りましたが、是も支那に居ります軍隊が斯樣に早く復員出來ますならば、二十二年半ばには復員出來る、二年ばかり短縮すると云ふことになる現在の見込でございます
復員順序、是は中々難かしいのでございます、例へば「フイリピン」邊りでも先程申しました此の人一人が先に歸つて來れば爾後安否の状態が分ると云ふことを申立てても許されないと云ふので、こちらが希望をしても實行出來ない状況でありますが、全般の考へ方と致しましては、是は經緯を申上げれば長くなりますから止めまして、軍人も海外に居ります同胞も成べく同時に歸還させる、斯う云ふことに現在なつて居ります、復員順序がどう云ふ風に歸るかと云ふことは先程申上げましたので終りますが、十一月二十五日までの統計を見ますと、二十二萬何千人と云ふ人が内地に歸還して居ります、同胞は二十五萬内地に歸還して居ります
最後に御尋ねの應召者を先にせよと云ふ御話でございますが、是は中々さうは參りませぬ、是は隊毎に嚴正を保つて歸すと云ふのが理想でございます、其の部隊の中に非常に良い部隊があればそれが先に歸る、是が理想でありますが、「アメリカ」の船では中々希望通りに參りませぬ、將校の中に自分は飛行機に乘つて部下を棄てて歸つて來た、其の取扱はどうして居るか、斯う云ふ御話であります、何處で御聽ききか私は知りませぬが、世間にさう云ふ噂がありましたら、それは實際憤慨すべきことであります、今まで朝鮮から逃げて歸つたとか云ふやうな者は、私は一名も聞いて居ないと云ふやうな状態であります、唯斯う云ふのがございます、滿洲は一遍に捕まへて皆牢獄――と言つては適當でないかも知れませぬが、抑留された、兵隊を歸さぬと云ふやうなことまで言はれた部隊もあります、そこで兵や將校の中に是はいかぬ、取敢ず内地に報告しようと云ふので苦勞をし、汽車の不通の所を歩いて朝鮮から汽車に乘つて歸つて來たと云ふ人はありますが、部下を棄てて歸つて來たと云ふやうな人はありませぬ、又丁度内地に状況報告で歸つて來た後に、八月十五日斯う云ふことに打突かつて、向ふに行かぬ人はありますが、先程御尋ねのやうな状況は是はないと云ふことを私は斷言致します、之を以て私の御答へを終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=184
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185・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 「アメリカ」の船で歸還の計畫が非常に促進して居ると云ふことは嬉しいことですが、日本の船はそれにどの位使つて居るのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=185
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186・原守
○原政府委員 海軍の船が數としましては百二十隻入つて居りますが、總「トン」數から言ひますと非常に少いのであります、其の外に病院船、客船、之を合しまして約十五萬總「トン」でございます、でございますから、それが現在は支那にも活動して居る、南の方にも活動して居ると云ふので、先程申上げましたやうな日にちに復員出來る、斯う云ふことになります、ではどう云ふ船が何時何處を出てどう云ふ風な運轉でやつて居ると云ふやうなことまではまだ押へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=186
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187・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 第二復員省の方から何か…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=187
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188・三戸壽
○三戸政府委員 只今第一復員次官から説明のございましたことと殆ど同じでありまして、違つた所竝に補足致します點だけを申上げます、第一の生死安否の問題に付きまして、舊海軍軍人の居ります方面では、只今戰鬪状態に入つて居る所はございませぬ
次に復員の根本方針に付ての御尋ねでございますが、復員の順序に付きましては、聯合國側の指示に依りましたもの、是は先づ自活の出來ない孤島等を先づ還送する、それから個々に付きましては傷病兵を先づ取扱ふ、斯う云ふ工合になつて居りまして、大體指揮官級は最後に廻るやうになつて居ります、其の中で誰を還すかと云ふやうなことは、概ね聯合國側の指示に依つて居ります
次は方面別の還送の計畫でございますが、是は今後使用致します艦船が變つて參りますと、現在の計畫が又變つて來るのは當然でございますが、今まで使つて居ります船舶其の儘で繼續すると致しますと、現在使つて居りますのは、商船が三十四隻、舊海軍艦艇が百四十隻――先程百十隻ばかりと云ふ御話でございましたが、是は南西方面に居ります舊海軍艦艇でございます、之を使つて更に輸送することになりましたので約百四十隻に殖えて居ります、米英の艦艇に依りますもの約十五隻、之を使用致しまして現在の所、今までのやうな稼行率で參りまして、小笠原方面が來年の一月末、是は終了の時期でございます、中部太平洋方面が來年の三月末、比島方面が同じく來年の九月末、南東方面は二十二年の七月末、南西方面が二十三年の末、中南支が同じく二十三年の末に終了するものと推定致して居ります、但し今後更に使用艦艇に付きまして條件が有利になりますと、是は一層繰上げられるものと期待して居ります、復員を原則的に應召を先にし、職業軍人を後にすべきであると云ふやうな御質問がございましたが、是は先程第一復員次官から説明がございましたやうに、海軍に於きましても陸軍のやうな編制とは違ひますけれども、大體例へば艦船から退艦致しました者、或は陸上のそれぞれの部隊に居つた者、是は更に一纒めにして統制ある行動を取らして居ります關係上、大體陸軍の行き方と同じやうな要領になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=188
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189・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 只今聽いて書き取ることが出來なかつたから、正確なことは言へませぬけれども、陸軍の方は今だけの船と外國船の援助があれば、大體來年の末には全部完了する、斯う云ふやうな御話のやうに聽きました、所が海軍の方は、中南支方面の全部完了が二十三年の末だ、斯う云ふことになりますと、陸軍と海軍との計畫の間に二年間の大體大雜把な意味で狂ひがあるやうに思ふのですが、陸軍がそんなに早く出來るのに、海軍が何故さう遲れるのか、そこの所を一寸説明して貰ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=189
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190・三戸壽
○三戸政府委員 只今申上げました數字は、只今海軍の方で、舊海軍艦艇百四十隻ばかりを使つて還送して居りますが、是と先程申上げました船で、現在の要領で還送致します場合の豫想でございます、是から尚ほ還送に携るは船の増加に付て色々希望を出して居りますので、それが通れば、恐らく此の時期は一層詰るものと考へて居ります、隨て私の申上げました計畫は、現在に於て將來を見透して手を打つて居る數字は入つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=190
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191・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 復員に關する問題は分りました、尚ほ此の際第一及び第二復員省の次官に御尋したいのは、内地軍隊の復員に際して行はれた軍需品の不正處分の、人心に與へた惡影響は甚大なものがあります、地方に依つては此の問題が徹底的に糺明せられない限りは、米の供出などは斷じてしないと云ふ程の空氣もあるのであります、然るに此の問題に關する過日の本會議に於ける陸軍大臣の御説明では、檢擧したものが七百二十五件、其の中には上級將校もあつた、三割から六割程度囘收せられたが、まだまだ不十分である、今後益益峻烈に檢擧したいと云ふ程度の御話で、是では到底一般國民の憤懣をなくすることは出來ないと思ひます、依然小物を擧げて、件數は多いやうでも呑舟の魚を逸して居ると云ふ疑惑は、何となしに拂拭することが出來ないと思ひます、此の問題の解決の急所は檢擧又は處罰の件數の多少にあるのではなくして、寧ろ巨魁を拉して國民の溜飮を下げると云ふ底の解決をなさなければならぬと思ひます、それで私は第一復員省に此の問題をもつと詳細に具體的に、例へば檢擧せられたる人員が何名、其の中で將官が何名、佐官が何名、尉官が何名と云ふ風に分つて居つたならばやつて貰ひたい、それから不正處分品の價格です、件數でなしに一體どの位の金額のものが先づ胡麻化されたのだ、不正處分せられたのだ、其の中のどの位が囘收せられたのだと云ふ風なことを、出來れば價格に於て明瞭に示されたいと思ふのであります、第二復員省に付ても同樣に考へるのであります
それから司法大臣がおいでのやうでありますが、私能く分らぬけれども、陸軍大臣も海軍大臣も今後更に檢擧をやると仰しやいました、憲兵のない、或は軍法會議もなくなつたのぢやないかと思ひますが、さう云ふものがなくなつた今日以後、峻烈に檢擧を續行すると言はれるけれども、其の檢擧と云ふものは一體一般の警察官乃至檢事がやるのであるか、どう云ふ手で檢擧をやるのか、其のやうなことを私了解したい、それから又檢擧に際して陸軍大臣が此の點に對する國民の協力を求めると言はれるが、國民の協力と云ふのは、之を警察に密告するとか、さう云ふやうなことを意味するのか、軍が國民に協力して欲しいと云ふ其の具體的の協力の方法に付て承つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=191
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192・原守
○原政府委員 終戰時に於ける軍需品の不始末に付て國民の疑惑が解けない、斯う云ふ御話であります、之には私は實際終戰當時の陸軍が持つて居つたものを申上げて、さうして幾ら不始末をしましても此の程度のものだと云ふ大體のことを申上げるのが宜いのではないかと思ふのです、實際調べました所では、主要糧食は米麥、雜穀です、米麥が七萬「トン」で、雜穀が十萬「トン」、合計約十七萬「トン」を保有して居りました、此の十七萬「トン」と云ふのは、當時陸軍の部隊、戰鬪する部隊が二百餘萬人、それから馬が大凡十萬頭、之に對して三箇月分の保有して居る糧秣、是は後から見て割合に能くあつたなと云ふ位、當時後方兵站をやつて居る主任者は、三箇月は迚もないだらうと云ふので、實は内心四苦八苦して居つた、終戰後此の數字が出て、まあまあ大分あつたなと思つた位です、併し關東平野に於ては相當なくて部隊は困つて居つたのであります、そこで其の後軍隊が復員致しまする間に食べましたもの、それから二百萬餘りの者が復員致しましたが、其の兵に大凡一人五日分の食糧を携行させるやうな命令でありましたので、それ等を引きますと、それ等は大凡五萬「トン」に當ります、それから終戰直後より八月二十八日の閣議決定に至る間は、民需に之を廻すと云ふ政府の方針に基きまして、相當亂雜に拂下げられたと思ひます、それが非常に世間の疑惑になつて居るのではないかと想像するのでございます、其の數量は三萬「トン」でございます、其の三萬「トン」も地方の官廳、食糧營團、食糧事務所、其の外民間の團體と云ふものに主として拂下げるやうに命令されたのでございますが、實際局所々々に於きましては、事實斯う云ふ事態が起るとは考へて居らなかつた爲に、相當亂雜に、何と云ひますかばら撒いたと云ひますか、さう云ふ事象が起きたのではないかと想像する、是は確かにあつたと思ひます、隨て最後に聯合軍に引繼いで居り、引繼ぎ中のものを加へますと九萬「トン」、此の九萬「トン」のものは聯合國の手を經て内務省に渡り、民需に渡ると云ふ計畫になつて居るのであります、先程の御話の不正不都合だと言はれるのは、想像致しまするのに、部隊が解散をして、復員軍人があの背中に背負つて歸つたのに多少餘計持たせてやつたこと、是は私は認めます、と云ふのは之に依つて處分せられた部隊長も相當あります、今茲に五日分と言はれて居るが、國民にやるのだと云ふので、それは十日分とか或はそれ以上渡したと云ふ人がありませう、それが非常に重い恰好をして歸つた、さうして軍人が何だと云ふ非常に惡い眼を以て見られた(「そんなことではない、それは諒として居る」と呼ぶ者あり)それは分りました、問題は次の三萬「トン」の問題だと思ふのです、是は前の大臣が説明したと思ひますが、大體三割から六割囘收を致しまして、さうして地方にありますものはそれを府縣の官廳に渡して改めて入れて、さうして何と言ひますか、配給の處置を執りつつあります、被服に付きましては、冬服と夏服を合しまして終戰時の保有量は約七百六十萬著ございます、復員者の携行したものは約百八十五萬著ございます、拂下げた數量は約百七十五萬著でありまして、殘つて居ります大凡四百萬著を聯合軍に引渡した、斯う云ふ状況でございます、毛布に付きましては、是も被服と同じやうに、大凡終戰時に於きましては七百七十萬枚持つて居りました、復員者の携行して居りましたのが約二百二十萬枚、拂下げた數量が百萬枚、殘りの四百五十萬枚を聯合軍に引繼いで居る、斯う云ふ状況でございます
以上のやうな状況でございまして、私は一番不正の起つて居ると思ひますのは、八月十五日頃から二十九日頃までに拂下げました、約三萬「トン」が一番問題になつて居るのだと、私想像致します、是は先程も申上げましたやうに分るものは囘收を致しまするし、散亂したものは出來ないものも相當あるのではないかと想像して居ります、先程の御質問に、此の際は大物をやつて快哉を叫ぶのでなければ納まらない、斯う云ふ風な御話のやうに承りましたが、實際を調べて見ますと、今までの調べに依りますと、將官で係つて居るものが一名、佐官が三十七名、尉官が百五十八名、准士官、下士官が百九十一名、兵百四十名、軍屬百二十五名、其の何を目標にしたかと言ひますと、食糧品を狙つたものが二百六十五件、被服百六十七件、金錢十三件、兵器其の他二百八十六件、其の他盜難に罹つて居る件數と云ふのが二百四十七件ございます、此の調べは十一月二十日までに何とか各地方で調べたものを皆報告せいと言つて集めたものでございます、全部到著して來たのもあります、今後前大臣が申しましたやうに、是で滿足して居ると云ふことはないのでございまして、事實私の方にそれを搜査する機關もない實情でありまするので、是は今から調べると云ふても中中手がないのでございます、そこで現在やつて居りますのは聞込み、投書でございます、投書は五百五通ありました、其の中で百四十九件とありますが、是が大體餘り誇大をして居らず、眞に稍稍近いと云ふのであります、三分の二以上は是は殆ど事實無根に近い事實を言つて來て居ります、それは投書した所に行つて一々聽いて居るのでございます、本人に當つて聽いて居ります、唯無責任な人が記名をして居りますが、人をやつて見ましても其の人は其處に居りませぬ、さうして手數は掛けますが、結局何處の人やら分らない、現在はさう云ふ方々がありますならば、是は何時でもそれを御聽きしたい氣持で居りまするので、自分の身體で以て御傳へ願ひたい、手紙で言うても分らないやうにしてやつて戴いては、實際取調べが付かないのであります、私共は糺すべきことは糺さなければならぬと云ふ積りで居ります、さう云ふことが分りましたら、大小となく言つて戴きますれば、私共の本務に從つて萬全なる處置を講じたい、斯う云ふ積りでございます、之を以て御答へと致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=192
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193・山本善雄
○山本(善)政府委員 第二復員省の關係で申しますと、只今第一復員次官から申されたのと同じやうなことが澤山あるのでありますが、全體的にどれだけの金額と、どれだけの物品を不正處分されたか、斯う云ふ計畫は今用意して居りませぬので、御答へすることの出來ないのは遺憾でありますが、之を具體的に人に當つて御説明申上げたいと思ひます、此の前本會議に於きまして、當時の海軍大臣が大まかな所を御答へ申したのでありますが、今其の不正處分の犯罪が受理されたものが約四百五十人でありまして、其の内約三百六十人が處理濟であります、それで其の内譯を先程御質問がありましたから申上げて見ますと、士官の方を申しますが、少將が一人であります、大佐が五名、中佐が二名、少佐が十名、大尉が十八名、中尉が二十三名、少尉が二十三名、斯う云ふことになつて居りまして、あとは下士官、兵であります、それから書記、海軍文官其の他の者であります、それで大物、斯う云ふことで先づ今申上げました「ランク」の方から申上げますれば、今申したので能く御分りのことと思ひます、物の方で二、三申上げて見ますと、金を横領拐帶したと云ふのが、少尉五名で以て八十一萬圓を拐帶した事件があります、是は其の後懲罰處理が確定致しまして、主謀者は懲役三年、其の他の者は懲役二年、若しくは懲役一年半、斯う云ふことに相成つて居ります、それから物の方では或る工廠の大佐の者が工廠から絨毯を二枚、機械、電氣冷藏庫、「トラツク」、自轉車、斯う云ふものを約六十四點、時價に致しまして是も數十萬圓であります、斯う云ふものを不當に拂下げた、斯う云ふ嫌疑を受けまして今調査中であります、それから或る大佐が是は軍需部の者でありますが、米十俵、麥五俵、罐詰七十箱、兵用の軍服四十五著、毛布二十五枚、砂糖四十五俵、「ウヰスキー」其の他斯う云ふ日用品、生活品等を持出した、斯う云ふ嫌疑を受けて居る者がございます、先程少將一と申上げましたが、是は病院の或る院長でございまして、病院に於きまする治療器械、藥品、日用品、或は糧食品等を數百點横領致しまして、自宅に持歸つた、是は豫備役になりました關係上、只今檢事局に送致致しまして搜査中であります、斯う云ふのが澤山ございます、是で大體今まで處理を致しましたものが八割位でありますが、今尚ほ檢擧して居る者が續いて居ります、それから所謂大物――斯う云ふ重要な事件が二、三ございまして、是は非常に大掛りにやつて居ります關係上、搜査は中々困難でありますが、現に是の檢擧の端緒を得まして今内査中のものがございます、此の内容は内査中でありますので、此處で申上げるとそれが分るといけませぬので、申上げられませぬのでありますが、さう云ふ大きな、是は先程申上げました個人にやつたやうなものではなくして、もつと大きなものであります、斯う云ふものが二、三ありますことを御報告申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=193
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194・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 復員省の係りから、色々終戰當時に於ける軍需品不正處分の問題に付て具體的の御報告がありました、私の言ふのは要するに呑舟の魚を逸しては居らぬかと云ふ印象を、事實の有無に拘らず、國民はさう云ふ風に感じて居る氣持がある、其の感じを拂拭することが軍として努むべきことであつて、若し事實世間が考へて居るが如き大物にさう云ふ不正行爲がなかつたとすれば、是は國家の爲にも、軍の爲にも甚だ慶賀すべきことであります、さう云ふことであればである程さう云ふ事實がなかつたと云ふことを國民をして信ぜしめるに足る論據に立つて、之を速かに公表せられることが、米の供出其の他人心の安定と云ふか、さう云ふ上に效力のあることと存じますから、至急左樣な行動に出られることを御勸めする次第であります
次に内務大臣に御伺ひ致したい、と云ふのは此の状態で此の日本の治安問題は大丈夫なのか、私はそれを心配する、何となしに現在の我が國の治安は、山雨將に至らんとして風樓に滿つ、一つ間違へば直ちに暴動にでも行きさうな空氣があるのぢやないかと私には感ぜられるのであります、總理大臣は過日西下の車中談で戰災者の住宅問題は小林國務相の獨創的手腕を十分に發揮して貰つて、強力に敏速に是が解決に當ることになつて居るから大丈夫だ、失業者の救濟は、「ダム」の大築造工事を起せば心配ない、敗戰後の惡性「インフレーション」は、澁澤藏相を全的に信頼し、任せてあるから必ず乘切る確信がある、獲らぬ狸の皮算用に類する太平樂を並べて居るのであります、所が住宅問題は一向進捗して居らぬではないか、「ダム」の築造は何時になつたら著手するのか、それも全然見當が付いて居りはせぬ惡性「インフレ」の傾向は日に日に其の深度を加へて行くと思ひます、加ふるに政府が率先して餓死者が出來る出來る、政府自ら、如何なる理由か知らぬけれども、今まではさう云ふことを言ふことを愼んだ政府が、今度は眞先になつて米が足りないから餓死者が出來ると云ふやうな宣傳を致しました爲に、食糧不安は極めて深刻に人心に影響して來ました、隨て金のある奴は必要以上に買占を致したので、主要食糧品の偏在は今日隨分夥しい状態であると思ひます、此の結果今や人心は險惡其のものと云ふべき一線に立つて居るのぢやないのか、若し一歩を誤れば、或は恐る此の一月、二月の嚴冬期に於て、一部國民の中には迭に自暴自棄の餘り暴動、掠奪等の行爲に出づる者がないとは保障し難い状態であると思ひます、斯かる世相に直面して内務大臣は果して左樣な心配は絶對に無用と斷言する自信がおありですか、萬々一不祥な事件が起つても、今日の警察力を以て國内治安の維持の重責を完遂することが出來ると云ふ確信がおありでありますか、詰り内務大臣の現世相に對する感想、實に私は容易ならぬ情勢だと思ふのですけれども、其の國内治安が是で十分保つて行かれると云ふ御觀察なりや否やを承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=194
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195・堀切善次郎
○堀切國務大臣 只今の世相は御話のやうに、或は食糧の問題、或は失業の問題等から致しまして、色々な懸念な點があるやうに存じて居るのであります、唯此の間に處しまして政府と致しましても適當の措置を執り、又治安維持に當ります警察官に對しましても、十分の注意を以て之に當るやうに注意を致して居る次第であります、先頃地方長官會議の席に於きまして地方長官に對しまして、又警察部長の會議に於きまして警察部長に對しましても、私は此の點の心配を十分に述べまして、十分注意をし治安の維持に當るやうにと云ふことを力説致しましたやうな次第であります、今日に於きまして、更に又或は物價の騰貴其の他に依りまして、状況は其の當時よりも決して良くなつて居ないやうに考へて居ります、唯警察と致しましては、何處までも、國内の治安を保持しますことが、何より第一の任務でありますので、各警察當局を督勵致しまして、此の治安の維持に付きましては萬善の策を講じますやうに注意を致して居る次第であります、十分に注意を致しますれば、國内治安の保持に付きましては懸念はないと考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=195
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196・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 現在の警察力を以て豫想し得らるる國内の治安混亂を十分に制壓出來ると、斯う内務大臣として言ひ切られた以上は、それが出來ないと言ふのは見解の相違に過ぎぬと云ふことになる譯でありますが、私は現在の警察力を以てしては到底始末の付かぬやうな情勢が起るのぢやないかと心配するのです、是は無用の心配だと言はれればそれだけですけれども、現在の微弱なる警察力を以て防げる程度の國内不安で終るやうなことはない、斯う思ひますので、私の聽いたのは、其の自信がない、今日の警察力だけで自信がないと言ふのなら、私は更に自信の持てる警察力を建設する、増強する、さう云ふ施設が伴はなければならぬのぢやないかと云ふ含みで御質問を申上げたのですけれども、内務大臣、當局者自らが是で大丈夫だと仰しやれば又何をか言はんや、私は切にあなたの言うたことが本當になつて、見ろ、あんなことを言つたけれども、抑へることは出來ぬぢやないか、「マッカーサー」軍隊の御世話になつて日本の暴動が漸く鎭壓出來たと云ふやうな状態にならぬやうに、本氣にやつて戴きたいと云ふ私の衷心の御願ひを申上げて、此の問題は是で一應終ります
次に農林大臣に一言御質問したい、私は好むと好まざるとに拘らず、日本の生きる途は農業立國の一途あるのみと信じて居ります、いや何とか彼とか、食糧を外國から取らねばとか、其の見返りの工業が興らなければとか、色々言ひますけれども、それが無用だと云ふのぢやないけれども、從來或は工業立國だとか、或は貿易で國を立てると云ふやうに戰爭前に言はれた、さう云ふ意味に於て言へば、將來日本の進むべき途は最早農業立國以外にはないのだ、斯う私は考へますけれども、それに對する農林大臣の御感想を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=196
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197・松村謙三
○松村國務大臣 私も全く同感でございます、今日に於ては日本は農業立國で行くより外に途はないと思ひます、今囘農地法を此の臨時議會に出しますのも、農業立國の基礎を一日も早く立てたいが爲でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=197
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198・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 此の觀點から七千五百萬の日本人口のどの割合――七割とか六割とか見るでせうが、どの程度のものが今日の農村、漁村に安住し、定著し得ると云ふ政策を御採りになる積りなのか、詰り之に依つて一戸當りのお百姓の持つ田畑の見當も付いて來る譯になります、農業經營の各種の問題もそこから大體割出されて來るやうに思ふのですが、先づ七千五百萬と人口を踏んで、其の中でどの位の分量を農業に振向け、どの位の人口を工業に振向け、どの位の人口を商人として受入れ、さうしてあとの殘りが結局役人とかさう云ふことになると思ひますが、大體さう云ふ人口の計畫的割當と云ふやうな御考へを、現在政府は御持ちでありますかどうか、其の點を御伺ひしたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=198
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199・松村謙三
○松村國務大臣 農村へ今後恆久的に入れ得る人口と云ふものは、現在の既耕地の農村には大なる分量は入り得ないものと存じて居ります、今囘開拓若しくは干拓を致しますあの部面に於てのみ新しい人口を吸收し得ると思ひます、之に對しては大體開墾の側に於て少し耕地は窮屈でありまして、農村工業等を加へなくちやなりませぬけれども、大體百萬戸即ちざつと家族とも五百萬人入れられる、恆久的に申しますと、是が最大限度でなからうかと思ひます、尚ほ干拓の方面に入れ得る人口は、干拓計畫の實際は今後に俟ちますから分りませぬけれども之に「プラス」しましても大なるものではなからう、二十萬戸位のものではなからうか、斯う云ふ風に想像致して居ります、それに今日の農業人口及び既墾の土地を考へます時に、ざつと考へまして日本の人口の五割五分位を吸收することが最高の能力ではなからうか、其のやうに私は大體見當を付けて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=199
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200・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 五割五分と云ふ見當、私は六割、若しくは六割五分入らなければ日本は食つて行けぬのぢやないかと云ふやうに思ふのですけれども、そこは見解の相違と云ふことになりませうから、それ以上は申しませぬ、兎にも角にも日本の人口の五割五分位が農村に入らなければならぬと云ふ御見解を承ることが出來ました
次に何と云つても今日一番大事な問題は、お百姓が米を出すと云ふことなんですが、其の米を出し澁つて居る理由を私は斯う云ふ風に見て居る、骨髓に徹した官僚に對する不信と云ふことが一つあります、それから不正軍人、官僚の醜行に對する不滿と云ふやうなことがあります、それから農村いぢめの諸統制に對する不滿、從來の官僚統制に對する不滿、さう云ふものがやはり米を出し澁つて居る原因になつて居る、それから農民の賣るものは安く、買ふのものは高いと云ふ事實に立脚する不滿、それから是は特に農相は御承知ですが、供出物に對する代價の支拂が著しく遲滯すると云ふことであります、是も供出なんて馬鹿らしいと云ふ氣持にして居る一つの事實、それから第六は先刻田中君の御質問の時に農林大臣自ら仰しやつたのですが、今米を持つて行かなければ實際鍬を直すことも出來ず、醫者に診て貰ふことも出來ぬ、米を持つて居なければ何も日常生活に必要なものを手に入れることが出來ぬから、供出を澁つてでも米を持つて居ないと生きて行かれないと云ふ感じのある事實、是等の六つの點が私の目から見た供出を澁る原因である、地方地方に依つて新しい事情もありませうけれども、大體さうだらうと思ふ、先づ農民の米を出し澁る理由として斯う云ふやうな事情にあることを農林大臣自ら御認め下さいますかどうか、之を一つ承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=200
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201・松村謙三
○松村國務大臣 全部認めざるを得ませぬ、私二、三縣でありますけれども農村を廻りまして、自分が實際見聞致した所も同樣でありまして、全部認めざるを得ませぬ、要するに政府の信用の囘復、それからさう云ふ物資の賣買が極めて不當に行はるる事實、其の他約束せられた金が早く渡らないと云ふやうな點等、御話の點は輕重の差はありますけれども、全部其の通りであらうと思ひまして、是が囘復、是が是正に努めて居る譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=201
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202・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 既に私が是から問はうとして居ることに對しても答へられたやうな氣持が致しますが、米の供出がうまく行かない農民心理がそこにあるならば、私はさう云ふ事情を一々取除いて行くことに依つて、米の供出を快くせしむると云ふ努力をして欲しい、それを今農林大臣はすると仰しやつた、けれども言葉の先だけでなしに、どう云ふ風にして事實具體的にそれをおやりになるのか、例へば今言つたやうに農民の賣る物は安く農民の買ふ物は高い、是は詰り農産物の値段を上げるか、或は農村の需要する品物の値段を下げるか、議論ぢやない、努力ぢやない、事實それが行はれなければ、さう云ふ原因を除くことは出來ぬと思ふ、例へば醫者が米を持つて行かなければ脈を診て呉れぬ、さう云ふことはしていかぬと云ふ唯一片の訓令を出しただけでは、そんなことで醫者が米を要求する態度が改まるとは思ひませぬ、お百姓が鍬を鍛冶屋へ持つて行つて直さうと云ふと、米を持つて來なければ直さぬと言ふ、それではいかぬと云ふことを鍛冶屋に言つただけでは迚も直るものではないのであります、如何なる具體的の施設に依つて、今農林大臣自ら肯走せられたやうな事情を改めて行かれる御積りであるか、其の點を少しく具體的に御示しを願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=202
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203・松村謙三
○松村國務大臣 それに付きましては、第一に私共が實踐もし、やらねばならぬと思つて心掛けてやつて居りますことは、政府の發表、政府のやることが實際と違はないこと、そして總てがありの儘を國民に示すことが第一義と存じまして、私共は總てを隱さずに發表致して居る積りでございます、隨て私共の發表致しますことは非常な悲觀になつて、却て副作用を起すやうなことがある虞はありますけれども、是も已むを得ざることと思うて、ありの儘の發表を致すことが第一に國民の信頼を囘復する所以であらうと思ふのであります、又官吏若しくは之に準ずる者の從來の慘いやり方に付きましては、全然其のやり方を變へて行かなくちやならぬと存じまして是もやつて居ります、又供出の制度の如きも、米なら米一本で無理に取らうと云ふやうなやり方も是は止めまして、農村の要望でありました綜合配給制度を執るとか云ふやうなことを致し、又物を「バーター」でなければ買へないと云ふやうなことに付きましては、何とかさう云ふ途を通らないで、必要な物が農家の手に入るやうに努めねばならぬと考へまして、之に對する努力を致して居るのであります、私は農業會が總ての物の流れを壟斷することには同意を致し兼ねますが、併しながら只今の先づ第一の途としてはやはり農業會に流すことが、さう云ふ「バーター」の形になることを避ける近道だと思ひまして、之に物を流すことを今日圖つて居る譯でございます、此のやうなことを致しますと共に、供出其のものに對して從來の壓制的なやり方を止めまして、本當に今日の食糧打開の爲に同胞をして飢ゑしめざるが爲に、農民の心からの動きに依りまして此の供出をやつて行きたい、又地方を廻つて、本當の農村を見ます時に、あの闇行爲の如き社會惡を犯す者は農村の一部の者でありまして、全體の農村と云ふものは、昔ながらの淳朴な人情の厚い農村として殘つて居るものと私は認めて居る譯であります、是等の人情に厚い農村に、此の場合同胞愛に愬へて供出を願ひたい、從來のやうなやり方は執らない、斯う云ふ方針でやつて居るのでございます、是だけ御答へを申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=203
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204・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 大體農林大臣の御努力、御誠意は了承致しました、唯承り漏れたのか、或はわざと御觸れにならないのかも知れないが、今日の農産物價と一般物價の間に非常な開きがある、此の開きをどうするかと云ふことに付ての農林大臣の御意見を承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=204
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205・松村謙三
○松村國務大臣 私が全部認めました意味は、農産物價が安くて他の物價が高いと云ふ原則だと云ふ御質問とは思ひませぬ、例へば醫者に行けば米を取られ、農具を買ひに行けば隨分高い物を買はされる、斯う云ふことだと思つて全部を御認め致した譯でありますが、農産物價の點に付きまして、若しも農産物價が安くて他の物が高いと云ふやうなことがあつてはならないと思ひます、今日に於て農産物價は必ずしも安いとは申されないのであります、なぜならば野菜類などは、他の物價と比較致しまして今日は寧ろ先廻つて居る位の價格も出て居りますから、農産物價全體が安いとは申されないと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=205
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206・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 主要食糧です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=206
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207・松村謙三
○松村國務大臣 そこで食糧に付きましても是が是正をしなくてはならないと存じまして、先般も相當大幅の値上を致したのであります、之に付きまして私共は斯う云ふ考へを持つて居るのであります、やはり主要食糧の價格は、其の生産費及び利潤を見、又消費者側の家計費を睨み合せて決定せらるべきものである、之に依つて價格は形成せられ、之に依つて價格は動くのでなければ本當でないと思ふのであります、それと今日一般物價との割合を見て決定せらるべきものと思ふのであります、唯今日に於ては、戰時中家計費の調査も、生産費の調査も、其の他の統計の基礎が全然ありませず、そして物價の如きも唯公定せられた價格はありますが、自由に動く物價の趨勢と云ふものは闇以外にはないのでございますから、それで根據のある基礎的の價格を決定することが出來ない状態で目分量でやつて行かなくちやならぬ、それでありますから至急に其の調査を始めて、農産物價の價格の基本を作りたいと思ひ、是等の調査を始めることに致す考へでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=207
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208・鈴木正吾
○鈴木(正)委員 一應了承致しました、尚ほ大藏大臣もおいでになつて居りますが、大藏大臣に物價對策と云ふか、一つの體系ある物價秩序を御作りにならうとする問題に付て承りたいと思つて居りましたけれども、田中君との質問應答を聽いて居りまして、大體政府の意のある所は分りますが、全體を通じて私が感じましたことは、何か斯うやれば大丈夫病氣は治る、併しながらそれまで命が保つかどうか分らないと云ふ風な感じなのであります、病氣を治すことは大事なのだけれども、命がある中に治して貰はなければ駄目なのだ、そこを一つ能く心棒に置いて考へて戴きたいと思ひます、商工大臣もお見えになつて、商工大臣にも御尋ねする積りでありましたけれども、時間が大分過ぎましたので、外務大臣に對する質問を後に殘して、私は、大藏大臣と商工大臣が折角おいでになつて御待ち下すつて居るのですが、自ら質問を放棄します、唯願はくば命のある中に病氣を治して貰ひたい、病氣は治してやるけれども、命は保證出來ぬと云ふことでは困る、さう云ふことを申上げて、是で終ることに致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=208
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209・中島彌團次
○中島委員長 明日は午前十時より開會致します、本日は是にて散會致します
午後六時四十八分散會
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〔參照〕
豫算委員會要求參考資料
中村(又)委員
二三、國防獻金、恤兵金、學藝技術奬勵金等の現在状況
(第一、第二復員省)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=008913541X00319451204&spkNum=209
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