1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月十三日(金曜日)午後一時三十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=1
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002・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 開會致します、今日は大藏大臣が御出席でございますから、大臣に對する御質問を是より願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=2
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003・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 私只今非公式に御話して居つた問題は後に廻して、經濟的の方面を主に大藏大臣に承つて見たいと思ひます、暫く御聽きを願ひたいと思ひます、經濟方面の問題に付きましては、各方面で非常に心配して居ります、殊に最近になりまして日銀劵が六百億を突破し、九日には六百一億七千百萬圓となり、尚是がどう云ふ風になるかと云ふことは皆心配して居ります、今後一箇月の間に七十億の増勢が豫想され、非常に心配して居りまして、其の問題が延いては有らゆる方面に非常な禍を成すのぢやないかと思ひます、それに付きまして新聞で拜見致しますと、十二日の新聞に、大藏大臣の言葉として、通貨は大部分退藏し、「インフレ」防止自信ありと云ふやうな言葉が載つて居りまするけれども、此の點がどうも我々としては甚だ心配だと思ひます、先づ退藏の問題から致しましても、果して是が本當に農漁村、兩方面の退藏の儘で、是がじつとして居れば宜しうございますけれども、どうもさう云ふことばかりも考へられませぬ、それから先づ他の方面から考へましても、本會議で屡屡承りましたやうな御説明の通りの、聯合國關係の方のあの人々が持つて居る所の新圓と云ふものも相當なものであつて、是は改めて申す迄もございませぬが、先じ農漁村方面の退藏に付きましては、どう云ふ風になると云ふことに付ては、大臣の御説明を拜聽致しましても、どうも、是は果して此の儘で御説明通りに、政府としては今後、金融機關に退蔵通貨が預金化されるやうに國民心理が釀成されることを希望すると云ふことを仰せられて居りますけれども、實はそれに付きましても、農漁村方面に於ても、果してそれが銀行あたりに貯藏されて居るならば宜しうございますけれども、どうも手に持つて居る、「ポケット」に入れて居る、何處か褌の中に入れて居ると云ふうやな形になつて居つて、現在の状態から致しますと、貯藏の方面が、どうも疑はしいのぢやないか、本會議でも御説明がありました通り、日本銀行の方への貯藏が多い、斯う云ふやうな工合に承りましたが、第一に、日銀の方にどの位の程度、一體退藏と云ふものが出來て居るのでせうか、先づ其の方面が我々としては非常に心配なんですが、是は一つ一つに物事を聽いてはいけませぬかも知れませぬけれども、其の點を先づ第一に伺つて、それからぼつぼつと拜聽致したいのですが、如何でございませうか、もつと續いて申しませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=3
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004・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 孰れでも宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=4
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005・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 一々伺つても宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=5
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006・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 成るべく簡明に発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=6
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007・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 それでや一々伺つて……、日銀の方で、實際の本當の數字から云つて、どう云ふ風に、一週間一遍宛の大藏省に對する報告もございませうが、必ず私共は是は世間に出したりは致しませぬけれども、如何でせうか、それに對しまして實際の預金と云ふものは増加されて居るのでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=7
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008・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 今ちよつと其の數字は分らないのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=8
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009・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 それではそれは止めまして、さう致しまして、それは何れ後で承ると致しまして、其の預金の關係から行きまして、どう云ふ風に今後は預金が増加されて行くかと云ふことを非常に心配するが、偖、其の中の一つとしては、食糧事情の關係、即ち物資等の改善のこと、即ち米價の問題と物價の下落のことと、物品税のことの關係から考へますると云ふと、米價の問題は、幸にして今年度は申す迄もなく非常に豐作のやうでございますからして今年度は、今年の秋から來年度の秋前迄、是は端境期迄の間、是は幾らか安心もする、併しながら石六百圓でございましたか、それに依つて米價の問題も、色々のものも變つて參りまして、而してそれが衣食住の問題の根柢を成して來る問題になつて來るのでありますけれども、其の米價の關係の下落と、どう云ふ風になるかと云ふことに付ては、安定も、是も出來ないのではないか、來年、再來年頃になると、是は、一體來年度の米作の關係から、どう云ふ風になるか、是は非常な心配の問題であります、左樣な點に付ては、屡屡議會で本會議の方では安定のやうに仰せられますけれども、それは一時的のものぢやないか、之に付きまして、どうか消費の關係から、一つ御考へ下さいまして、何とかもつと繼續されて行つて、此の上とも出來ますことならば、是は矢張り「クレヂット」の關係もありませうから何でございませうが、南支方面からの米、「ビルマ」方面からの米も、なかなか買附けることも、特別の關係から許されないかも知れませぬが、其處は一つ、何とか聯合軍との御話を御努力願ひますれば、私は非常に幸なことぢやないか、併し又申す迄もなく、朝鮮なり、臺灣なり、是はなくなつた領土の方ですが、何とかして其處で睨み合つて工合良く行くやうな方法が出來ませうか、第二に、出來ますことならば、もつと、甚だ慾張つたことでございまするけれども、此の上とも何か出來ませうか、米國から呉れる所の食糧の、饂飩粉と申しますか、是などに付ても、矢張り「クレヂット」の關係で出來ないと云ふことばかりでございませうか、もう少し何とか、「クレヂット」で行かれるものなら、然るべく開拓出來ませうかどうか、先づ此の問題を承りたいのですが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=9
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010・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 只今御尋の自由預金の問題ですが、今此處にありますが、少し古いのでありますが、七月の末迄しかありませぬ、七月、此處ではまだ殖えて居ると云ふ程の状況を示して居りませぬが、東京の五大銀行の分だけであります、それが五月の末に二十九億六千萬圓、六月の末に三十二億六千九百萬圓、七月の末が三十六億六千七百萬圓、僅かですけれども殖えて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=10
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011・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 さうしますと、五、六、七を考へますと、此の貯藏のものが全く他に流通をされるものと、考へますると、それに加へて今の新圓の増加率から考へますると、七十億圓と云ふものが、其の二十九億圓、三十二億六千萬圓、三十六億六千萬圓と云ふものは、平均の何でございますか、七十億の新圓の増加になつて居りましたが、それに矢張り加へてさうなるのですか、七十億の中に、其の今の何は、特に別のものと私は考へるのですが、今の新圓、日銀から發行されたのが七十億ですから、さうしますると、七十億「プラス」二十九億六千萬圓と云ふことになりますると、相當の矢張り「インフレ」の關係を持ちやしないかと思ふのでありますが、其處はどうなんでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=11
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012・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 無論發行紙幣は此の外です、詰り預金にならない分が發行紙幣になつて居りますから……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=12
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013・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 さうするとそれに其の數字を加へますと、相當な「インフレ」と認めても宜いやうに思はれるのですが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=13
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014・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) それは通貨が出て居る、通貨が多く出て居ると云ふことを「インフレ」と言へば、それは其の通りであります、通貨は多く出て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=14
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015・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 さうすると、矢張り其の方面から申しますると云ふと、どうも「デフレ」になると云ふことに付ては、我々はちよつと考へられませぬし、さりながら、此の物價の變動と云ふものに付きましては、我々は一向素人で分りませぬけれども、如何でございませうか、今後に於きましても「デフレ」と云ふことは考へられないけれども、或點迄はどうしても通貨の膨脹と云ふことは免れないと致しますれば、先づ何と申しませうか、財政の關係から考へましても、又は生産の關係から言つても、有らゆる方面から考へて、總括すると相當なものになる、値段等も我々の思つて居るやうに、さう安くはならないと云ふ意味のことも拜聽するのでありますが、其の點に付て、我々國家の爲に憂慮に堪ない其處が考が違ふと、それこそえらい「インフレ」になつてしまふ、それに付て國民は皆心配して居るのが實際です、先程ちよつと申した通り、新圓が今後益益増加する虞があるので、又新圓の封鎖があるのではないかと、民間で非常に心配致して居る、もう少し何とかして「インフレ」が少しでも減退されることになれば、有らゆる方面から考へて、大變に都合が宜いと思ふのです、恩給に關する問題や、それから此のやうな問題に付ても、大變宜かつたと考へるのですが、それがさうでなく、昭和二十一年三月から臨時手當を支給する、六月から二十二億七千萬圓と云ふ臨時手當を出して行かなければならぬと云ふこと自體に於て、既にもう相當の「インフレ」も考へられ、心配もせられます、さうなると或方面から申すと、益々以て財政の方が赤字になつて行きます、先頃の所得税等の改正法律案、あれを見ましても、物品税はどんどん高くされて居ります、さうすると官公吏の方に付ては、今後とも何とか考へてやらなければならぬのぢやないか、六月から二十二億七千萬圓、是は今後とも臨時手當を出さなければならぬ、斯う云ふ風になつて參りませう、まあ毎月收入額を五割見當増加して見た處で、今日の状態からして物價の下落と云ふことは見込めないかも知れない、今の食糧關係、通貨の問題に付きましても、國民は非常に不安であります、官公吏の方々も、それ等の問題に付て非常に心配して居られると私は思ふのであります、就きまして、官公吏の御方に付きましても、現在の實情は誠に御氣の毒であります、人員整理の餘地のないこともございますまいが、官廳の能率が今後どう云ふ風になるか、其の能率が最高度に發揮されて居るかどうかと云ふことに付ては、非常に心配でございます國家の公撲として深切丁寧であるか、此の點をどう云ふ風に御考になつて居られるか知れぬけれども、今日の事態から見ましても、なかなか人員整理の問題に付ては、誠に困つた問題で、今日の新聞などにもございます通り「ゼネ・スト」の問題も非常に困難な問題であります、官公吏の問題に付ては、今後どう云ふ風にすれば官いか、非常に困難が加はりはしないかと思ふ、現に私は、或役所の方の關係から實際の問題を聞きましても、どうも怠業氣分があつて驚いたのであります、それで一體大藏省の關係から見ましても、内務省の關係は、恩給の點等に付ては大變に都合が好いかも知れぬけれども、或は司法省、文部省と云ふ所になると、惠まれて居ない、それに二等官と三等官とでは、差が酷過ぎると云ふやうなことがありますと、非常な問題になりはしないか、此の點に付ても、實は非常に心配される問題でございます、本俸に付ては、今後どう云ふ風にして安定させるか、米價の問題が安定されると云ふことは、なかなかむつかしい問題でございませう、其の見透しが附く迄の間は本俸を然るべき方法でやり、本俸の増加もし、それから手當とか、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=15
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016・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 奧平委員に申上げますが、只今御質問中ですが、此の法案に付きまして廣い意味の關係はございますけれども、尚、他にも大臣に對しての御質問がございますから、成るべく簡明に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=16
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017・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 それでは極く簡單にやります、一つ一つに致しませう、さう云ふやうな譯で、通貨の増發は、速度に速度を加へる虞がありはしないか、尚今後とも、米竝に石炭の補給金、又失業救濟費とか、救護費とか、復興金融資金とか、官公吏の待遇改善等の増加が避け難いと見られますが、其の點に付ては、どう御考へになりますか、それを承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=17
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018・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 御心配は御尤もと思ひますが、實は長たらしくなるかも知れませぬが、物價、通貨の問題を申上げますと、日本銀行の紙幣は昨年の七月三十一日、即ち終戦直前の發行高が二百八十四億圓、それが終戰後急激に増加致しまして、遂に本年二月十八日、即ちあの紙幣交換の直前の數字は六百十八億圓、それが紙幣交換に依りまして激減をして、さうして其の激減をした一番下りました所が、今年の三月十二日の百五十二億圓、一月にして百五十二億圓に減つた譯であります、それから増加致しまして、是は八月三十一日の數字が出て居りますが、五百七十五億圓、九月に入り殖えまして六百億圓になつた、斯う云ふ増加であります、之を指數に取つて見ますと、昨年七月三十一日を百に致しますと、今年の二月十八日に一番殖えた、二百十七、詰り二倍を超えた譯であります、三月十二日の減じた所は五十三、だから殖えた所から見ると、一擧にして四分の一に減つたのであります、本年八月三十一日は二百二でありますから、本年二月十八日よりは少し低いが、略略其處へ行つたと、斯う云ふやうな次第で紙弊の方は増減の著しい波を打つて居るのであります、之に對して、物價はどうかと申しますと、目本銀行の卸賣物價に依りますと、實は紙幣の増減の影響を受けて居ないのであります、昨年の七月を百にしますと卸賣物價、公定價格に依る物價指數であります、昨年の七月を百に致しますと、今年の二月は百七十七、それから三月が二百九十二、それから八月が六百八十八、だから是はずつと紙幣の昨年の七月から本年の二月迄の七箇月の増加は百から百七十七に行つたから、影響はあつたと申せますが、其の後の状況は、紙幣が減つてもそれが現れず、唯物價が増す一方、斯う云ふのであります、處が、是は公定價格であります、公定價格は御承知のやうに戰時中すつかり無理な物價であつた、そこで三月以後、殊に公定價格が急激の變化を致しましたから、八月が六百八十八と云ふ風になつたでのあります、是は本當の物價の後を追ひ駈けたのであります、そこで、本當の物價はどうなつて居るか、是は現在の所では、完全な調査はないのでありますが、さうして是は一般には發表してない數字でありますが、東京に於ける實際物價詰り闇物價であります、それを、是は米から麥、隨分相當數のものを調べて居るのですが、それに依りますと、昨年の九月を百に致しまして、それからずつと上りまして、本年の二月が百九十一、約二倍になりまして、それから三月が百七十九、そこで二月の例の金融緊急措置の影響が現れまして、百九十一が百七十九になりました、其の後は大體横這ひでありまして、一々申上げますと、四月が百六十二、それから後少し上りまして、五月が百七十三、それから六月が百八十一、それから七月が百七十八それから八月が百六十四、九月はまだ調べがございませぬが、現在集つた資料だけはもつと下つて居ります、それを此の内容を見ますと、大體多くのものが、二月を一番最高にして下つて居るのでありますとが、殊に二月を最高にして居りますのが肉類、牛肉とか鳥、豚、鷄卵、「バター」と、それから纖維製品、纖維製品と言ひましても、絹絲と足袋、手拭しか調べて居らぬのでありますが、それが二月が最高であります、日用品は靴とか下駄、石鹸、「マツチ」、電球、眞空管と云ふものが、二月が最高であります、木炭、薪と云ふ薪炭類が二月が最高であります、是は時期の關係がありませう、處が主食の米、麥、小麥粉は六月が最高であります。六月迄上りまして、而して七月、八月と下つて居ります、それから準主食である甘藷、馬鈴薯と云ふものは、是は三月が最高でありまして、後は大體下つて居ります、それから野菜類が六月が矢張り最高でありまして、七月、八月と下つて居ります、それから鰹節とか、砂糖とか、醤油とか調味料のやうな種類のものは、七月が最高になつて、八月から下つて居る、それから酒ですとか、「ビール」、煙草、茶と云ふやうなものは、六月が最高であつて後は下つて居ります、さう云ふ風で總體を引括めて申しますと、大體二月の百九十一を最高にして、其の後は四月迄、可なり強くて下つて、それから、五、六とちよつと高くなりました、又七、八と下つて、九月も下つて居る、斯う云ふ大體の状況であります、是が現在の略略實際の、所謂闇市場に現れて居る物價の傾向であらうと思ひます、そんな譯で、先程申しましたやうに、通貨の方から申すと非常に増加をし、更にそれが四分の一にも一時下り、更に又元に戻ると云ふ非常な増減をして居ります、實際物價で見ますると、其の増減は殆ど現れて居らぬ、詰り二月が最高で、後頭を打ちまして、さうして横這ひ、極く最近に於ては、是は米などの豐作と云ふ見越しからでありますが、却つて下つて居る、斯う云ふ状況でありますので、今迄の所では、日本銀行の紙幣は非常に増加をして居りますが、最近の増加が物價に直ぐに反映して居ることはない、從つてそれでは紙幣は何處に行つて居るかと云ふと、詰り市場にそれが全部流通して居る譯ではなく、其處に一部分が退藏せられて居るのだと斯う云ふ結論になるのであります、それでありますから、今の所では通貨の膨脹だけを見て、直ちに「インフレ」として、無論「インフレ」の心配ないことはありませぬけれども、之を唯心配すると云ふよりは、詰り物價の安定と云ふ方から言へば、世間で一般に六百億になつた、幾らになつたと云つて心配する程の現象は幸に起して居りませぬ、そこで問題は今後でありまして、先程の御話のやうに、是は今の金融機關に預金をすればどうとか何とかと云ふやうな不安がある間は出た通貨はなかなか戻つて參らぬと思ふのであります、だから、日本銀行の紙幣と云ふものは、尚増加するだらうと思ひます、増加するだらうと思ひますけれども、それでは増加した紙幣が何かになるかと云ふと、今一番我々の惧れるのは、食べ物とか云ふものへ紙幣が流れ込んで、食べ物の値段を上げるのではないかと云ふのが一番心配であります、それに次いでは、日用品が非常に買手が多くて騰るのぢやないか、斯う云ふ點でありますが、幸ひ食べ物の方は米が現在のやうな有樣であり、聯合國からの輸入も相當見込みがあるとすれば、最近の状況から見ましても、主食を非常に買ふ爲に、通貨が其の方へ流れ込んで、其の食べ物が暴騰すると云ふ危險は略略之を避け得るかと思ふのです、日用品の方は、物にも依りますが、或程度の生産をして來て居る、是亦、其の方に消費の爲に通貨が非常に使はれると云ふことは先づないであらう、從つて農漁村等に退藏される通貨と云ふものは、實は用ひ樣がないのでありまして、預金をして居る代りに通貨を持つて居る、斯う云ふことで私は無論是が動き出すことは絶對にないとも言へないのでありますが、今の見透しでは、それは動き出さぬ、もつと多くなりましても、多くなり過ぎたから、此の際使ふと云ふことは心配はない、唯一番惧れるのは、新圓封鎖等の風説等に依りまして、貨幣を持つて居ても危い、そこで今の内に早く使つてしまはなければならないと云ふ空氣が若し釀成されて、それで皆が使ひ始めれば、それはどうせ只になる貨幣になるのだから、幾ら物が高くても買ふと云ふことになりますから、そこで私は決して前途を心配しない譯でもありませぬけれども、又強ひて樂觀して居る譯でもございませぬが、何と申しますか、餘り其の點を強調して、新圓の封鎖を免れないとかと言ふことは、軈て夫子それ自身が新圓封鎖を免れないやうな情勢に陷し込むのではないか、私は實際最近の新聞、其の他の書いて居るところを見て、其の點を非常に危險に思つて居る、決して是は我々は宜いと思つて居るのではないが、今の場合はさう云ふ不安を通貨其のものに掛けては大變だ、今の所では幸に日本の銀行預金に對して不安を持つて居るので、通貨を自分で持つて居て呉れる、通貨にまだ信用があるから持つて居て來れる、行李に入れても如何に苦勞しながらも持つて居て下さるから有難い、其の中に金融機關が整理されて、是なら大丈夫だと云ふことを事實に示して、金融機關に囘收が出來る迄、此の状態を維持したいと思つて居ります、此所でじたばたして通貨を追つ駈けたら大變になる、斯う云ふ風に考へて居る譯です、それさへなければ、私は此の收拾が出來る、殊に財政の問題もありますが、今年度の豫算は如何にも財産税を大部分食つてやる、けれども、是は唯いきなり赤字公債を發行するのとは、趣きが違ひまして、私は或意味に於ては赤字公債を發行するのと同じだと云ふことを御説明申上げましたが、此の財政が如何に危險な點を含んで居るかと云ふことを、實は内外に知つて貰ひたくて隨分此の點を強調したのでありますが、併し財産税を徴ると云ふことは、其の相當部分は預金で入つて來ると思ひます、是は封鎖預金であると雖も、預金で納めるのであるから、其の方の證書の中味はそれだけ減ると思ひます、それから有價證劵、或は物、不動産等で納付される方も、其の有價證劵には近頃餘り收益がないのでありますけれども、まあ收益財産が大部分でありまして、それで收益がなくなればそれだけ消費が減りますし、餘り收益がないものであつても、兎に角自分の財産がそれだけ減つたと云ふことは、少くとも心理的に相當影響して、それ等の方々も矢張り消費を減すと思ひます、ですから、所得税をいきなり徴つて政府が使ふ程の效果はないかも知れませぬが、兎に角財産税で支辨すると云ふことは、相當「デフレ」の傾向を一面に持つものと思つて居ります、でありますから、今年度の財産税に依て、殊に此の支出の場合にも、先般本會議で申上げましたやうに非常に嚴重な査定を行つてやることになつて居りますし、旁旁私は今年度の財政の事實に依つて、所謂惡性「インフレ」が起ると云ふことは先づないと思つて居る、問題は來年度の豫算でありまして、是は其處に來ない中に、來る迄の内には、大體來年度の財政の見透しもはつきり著けなければならないと思つて居る、其の財政も又大變な赤字であるとすれば、是は心理的に相當な影響を及すかも知りませぬが、私共も今考へて居るやうに、來年度の財政が相當整理され、健全なものになると云ふことを世間に明かにすれば、其の財政の實行以前に、心理的に相當是は影響を及す、斯う思ふのであります、ですから、勝負は來年度の豫算の編成にある、現状に於ては私は成る程通貨は先程から申上げたやうな事情で、年末迄にまだまだ相當殖えるでありませうけれども、それはそんなに惧れなくて宜い、斯う云ふ風に考へて、出來るだけ早く金融機關に通貨が吸收されるやうな措置を講じたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=18
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019・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 もう一つ伺ひます、財産税が假に十二月になつて五百億圓の徴税が行はれるとしましても、幾何もなくして、只今御話の通りに赤字補填の爲に大部分又是は新圓を出さなければならぬことになるのぢやないかと惧れますことが一つと、それから今一つは、只今のことで大體分りましたが、國民から觀ましても、擬制資本の問題、之に付ては五大銀行などに付てはどうなつて居るか、其處を非常に心配する、成るべく早い機會に、第二封鎖の問題を開放して貰いたいが、銀行の方に其の整理が出來るのかどうか、其の前途に對する見透しはどうか、是は上層階級ばかりでなく、下層階級の者、勞働階級の者迄も何とか此の第二封鎖の問題を然るべく早く解放して貰へないか、是は勝手な言ひ分だらうとは思ひますけれども、皆國民がさう云ふ方面に付ての不安を持ち、希望を持つて居るのですが、此の問題に對して然るべき時期に於て、國民に對して安心させる方法は立たぬものかと云ふことに付ての御意見ございませうか、如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=19
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020・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 第二封鎖を成るべく早い機會に解くと云ふことは、是は只今申上げました矢張り成るべく早く金融機關を心配のないものにして、預金を吸收したいと云ふ方策から申しましても、出來るだけ早く之を解かなければいけない、でありますから、色々の關係で少しく豫定よりも遲れて遺憾千萬に私共考へて居るのでありますが、近い中に法案を御審議願ひまして、さうして整理に掛りましたら、手取早く第二封鎖は解きたい、是も唯大きな五大銀行などになりますと、貸出、其の他が複雜ですから、稍稍延びるかも知れませぬけれども、地方銀行の如き餘り影響のないやうなものは、もう即座にも第二封鎖を解く、斯う云ふ積りである、それから勘定がすつかり分りませぬでも、大體是位はもう大丈夫と見れば、第一封鎖の中から何割でも第二封鎖の方へ移す、斯う云ふ手順を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=20
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021・慶松勝左衞門
○慶松勝左衞門君 議事進行に付て一言致します、比の會議は「法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案」の審議をして居るやうに心得ますが、餘りに廣範圍な豫算委員會でやるやうな質問をして居つたら切りがないと思ひますが、如何でせうか、議事進行上此の委員會の最もやらなければならぬ法律案を先に、直接關係のある所だけに質問をして、御進行を願へると云ふ譯には參りませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=21
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022・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 御尤もでございます、奧平伯爵は豫て御通告がございました、それで時間の點に於て、實は簡明に願ひたいと云ふことを申上げました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=22
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023・慶松勝左衞門
○慶松勝左衞門君 私の希望が少數であれば已むを得ませぬ、けれども、私の希望に贊成者が多ければ、どうか御遠慮を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=23
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024・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 簡單です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=24
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025・慶松勝左衞門
○慶松勝左衞門君 簡單ではないのですよ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=25
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026・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 左樣ですか、今の恩給の問題に付て、先程申しました點に付て御答辯を願へれば、それで宜しいのです、恩給は本俸や手當、其の他の問題と實際關係のある問題ですから発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=26
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027・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 先程御答辯を落しまして相濟みませぬでした、俸給等の問題は、七月から大改正を致すことになりました、之に依つて、官廳の職員の俸給は大體滿足すべき状態に達して居るのぢやないか、それから先程申上げましたやうに、幸に物價が今後安定をする、若しくは多少なり下ると云ふことであれば、是は御心配のやうに今後著しく職員の給與を變へなければならぬと云ふことは起らない、是が又非常に起るやうであれば困ると思つて居りまして、成るべくさう云ふことのないやうに致したいと思つて居ります、恩給の點は色々問題がありますから、尚、色々承つて置きまして今後研究致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=27
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028・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 能く分りました、私の聽かむとすることは言ひましたから、私の言ふことはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=28
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029・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 然らば、御通告のありました永井委員に御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=29
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030・永井松三
○永井松三君 只今同僚議員の言はれたやうに、直接に本法案審査に關係のあることに局限を致して一、二當局大臣の御説明を伺ひたいのであります、一昨日の委員會に於きまして、大體本案提出の理由、又内容に付てのことも判明致しましたが、尚大臣の御出席を得ましたので、一、二御尋ね致したいのは、此の理由書に「聯合國最高司令官の要求」と云ふことが謳つてあるのでありますが、是は他の法律案等には餘り見受けない書き方である、茲に於てか、私の注意がそれに向つたのであります、此の司令官の要求と云ふものは其の儘茲に一條、二條、三條に現れて來て居るのか、それとも司令官が或要求をして、其の要求を敷衍なり、或は節約なりをして、政府當局に於て然るべきと御思ひになりまして、成文の形になつて、此處に出て來て居るのかと云ふことが御尋ね致したいと思ふのであります、若し初めのやうでしたら、審査の餘地がなくて、此の儘鵜呑みにしなければならぬ、又第二のやうな風でありましたならば、本案の審査に當つて、意見も加へて修正をも提示すると云ふことになるのでありますが、司令官の要求と云ふことは、今申上げましたやうなどちらになつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=30
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031・石原周夫
○政府委員(石原周夫君) 今の御質問に對しまして、便宜私より御答へ申上げます、聯合國最高司令官から參つて居ります指令は、此處に今御審議を願つて居ります文章の直接其の儘ではございませぬ、併しながら、其の狙つて居ります趣旨に於きましては、殆ど同樣でございます、御尋の點の論據として居ります色々な法律の中で、斯う云ふやうな言ひ廻しを理由書に書いて居るものがございます、是は御承知のやうに聯合國最高司令官の指令に基きまして、「ポッダム」勅令と申しますか、宣言受諾に伴ひまして出します勅令があるのであります、是は先般主計局長から申しましたやうに四月に指令が出て居ります、其の間に若干期間があつた、御承知のやうに政府の社債の保證等の問題に付きましては、現在ありますものと關聯しまして、其の間の睨み合せを致したりしました關係上、議會の審議に間に合ひまして、寧ろ「ポッダム」勅令で參りますより、議會へ法律として出して御審議を願つた方が宜いと考へましたので、其の間に時期が相當ありましたので、御尋ねのやうな御不審が起る點があると思ひます、其の間にさう云つた事情がありましたので、少し普通の法案とは違ふのであります、斯う云ふ形で御審議願ひました次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=31
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032・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 是は一昨日主計局長から、此の文章を讀み上げて申上げたさうであります、茲に尚念の爲に申上げますが、此の一部分を讀みますと、「帝國政府及地方公共團體は今後會社其の他の法人の債務に付其の性質の如何を問はず債務保證を爲すことを得ず」、それから「會社其の他の法人及團體に對する政府の財政的援助は今後は補助の形式に依るべし」と云ふやうなことがあります、それから「會社其の他の法人の配當の支拂を可能ならしむる目的の爲に補償を爲すことを得ず」、拾ひ讀みしますと、さう云ふことがあります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=32
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033・永井松三
○永井松三君 只今、大臣からの御説明で大變はつきり致しましたが、一昨日補助金の話を伺ひましたが、尚疑義がありまして、はつきりしたいと思ひます、今の第三條には但書があります、第一條第二條に但書がなくて、全面的でありますが、さう致しますと或は是が、司令官の命令其の儘ずつと書いたのか、第一條第二條にも、或は第三條の但書を作る場合があるのぢやないかと思ふのでありますが、其の點は如何でありますか、處で、司令官が斯かる要求とか指示と云ふやうなことをして來た、どう云ふ理由だと云ふことは分るのでありますか、其の理由如何に依つては、本委員會の審査竝に修正案の提示に影響して來るのであります、是は司令官の方の心事でありますから、忖度する餘地がないのであります、當局へ、どう云ふ理由指示乃至要求をして來たのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=33
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034・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 其の點は、別段文書で理由書は附いて居らないやうでありますが、出しました時に、向ふの理由として傳達されましたことは、此の法案に掲げてありますやうに、第一は財政の問題であります、是は此の問題ばかりでなく、頻に色々なことで日本の財政の膨脹を惧れて、負擔を輕くしよう、是が一つ、それと竝んで、或は附隨して、一體政府が斯う云ふ補助を無暗に出すと云ふことは、企業の民主化、或は自主性を喪はしめる、斯う云ふことが理由になつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=34
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035・慶松勝左衞門
○慶松勝左衞門君 私は餘り詳しいことは分らぬのですが、此處の理由の所に、「聯合國最高司令官の要求に基いて」と云ふことが唯一の理由になつて居りますが、今の大臣の御説明の、或は財政の緊縮を必要とするが故にと云ふやうな工合にして、最高司令部の要求と云ふことを冒頭に掲げると云ふのは少し理由として如何かと思ふのですが、それは差支ないものなんでせうか、外でも、さう云ふ色々な要求はあつたらしいですが、表面に斯う云ふ要求を書かずに、向ふが言うて來た理由が我が政府が納得すれば、それは政府の理由として御書きになるのが正當ぢやないのですか、其の點は如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=35
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036・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 甚だ御尤もと實は思ひます、私説明書の方には逆にして置いたのでありますが、唯此の中のことが全部それに當るものですから、其の點をはつきりした方が宜いと云ふやうな考で法制的に斯樣なものを書いたと云ふ次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=36
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037・慶松勝左衞門
○慶松勝左衞門君 能く御事情は分るのですが、公然印刷して理由とする所に、「聯合國最高司令官の要求」と云ふことを書かずに、今の御言葉の財政の緊縮とか、何とか云ふやうな工合に、御訂正にならぬものなのでせうか、慣例上、どうも餘り面白くないやうに思ふのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=37
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038・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 今の點はちよつと研究を要するのでありますが、確かに御尤もでございますが、實は衆議院との關係がどうなりますか、今法制局の專門家が居らぬものですから分りませぬが、此の理由書を、若し萬一御修正下すつた場合に、衆議院と所謂兩院協議會とか云ふものに掛けるか、掛からぬか、ちよつと分り兼ねます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=38
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039・永井松三
○永井松三君 實は今、慶松委員の御質問と同じ點を外の方から私は考へて居りまして、どうも斯う云ふことを御書きになるのがをかしいと思ひましたが、御書きになる以上は、もう否應なしに之を聽かなくちやならないと云ふことの意味に御書きになつたのかと思ひますが、さうでもない大體の原則趣旨が通れば宜いと云ふ風なことになつて居つて、而も司令官の方からの傳達、それから又政府當局としての其の傳達を御了解になる上に於て、政府の財政の關係の不安定を成るべく除くやうにしたいと云ふやうな御趣旨と云ふのが、一つの理由になつて居ります、其の外に私自身の考へる所では、此の戰爭關係の爲とか、或は日本の國外發展と云ふやうな意味に於ての事業の援助と云ふやうな風のことは、今日の情勢上、當然打切つて行かなくてはならぬものでありますからして、そんなやうな風のことを御考になつたのかしらんと云ふやうなことで、理由が能く分らなかつたのですが、政府財政の不安定を成るべく除くやうにと云ふ御理由が主たるものであると云ふやうなことになつて來ますると、三條だけはどうして例外規定が附いて、一條と、二條にはそれがなくて、全面的になつて居るのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=39
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040・石原周夫
○政府委員(石原周夫君) 私、今の御尋に直接御答へ申上げます、それは指令に、さう云ふ但書の餘地を取つてあるからであります、それ以外一條、二條に該當します指令の文書には、さう云ふやうな餘裕は存してないのであります、それから理由書の點でございますが、まあ財政援助の制限と云ふやうな點に付きましては、廣い意味で財政援助と申しますると、此處に掲げて居りますもの以外にも、色々の問題があるのでありまするが、其の中、向ふの指令で持つて參りましたものだけを取上げまして、本來ならば、議會の會期中でございませぬければ、從來の「ポッダム」勅令で參ります、それを其の儘此方へ持つて參つた關係があるので、理由書は些か正直に其點を表現を致した譯であります、御承知のやうに、議會の開會中には、當然「ポッダム」勅令から出しませぬ、それで議會に斯う云ふ形で出した、さう云ふ變則な經緯を持ちましたものでありますので、斯う云つた變則な表現をしたと云ふことに御了解願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=40
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041・永井松三
○永井松三君 尚此の點に引續いて伺ひますが、會社其の他の法人の事業目的に依つては、政府の是は見込でありますが、必ずしも財政の不安定を招くものとは見られぬものであるでありませうし、若し又不安定を生ずるやうな場合でも其の額が餘り大きくなくて、而も他方に於て、其の事業目的が日本の經濟再建なり、もう少し言葉を廣く言へば、「ポッダム」宣言の遂行を援けて行くと云ふやうな事業があると私は思ふのであります、さう云ふものに對しては、此の第一條なり第二條のやうな財政補助と云ふことをしても差支ないのぢやないかと考へますが、此の點に付て全面的になつて居るのですが、其處に何か理由があるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=41
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042・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 實は此の「ディレクチブ」なるものは四月三日に出て居る、私實際の衝に當つて居りませぬから、其の經緯がどう云ふやうな交渉で、斯う云ふ風になつたか分りませぬが、斯う云ふやうなものが出ます場合には、私の經驗では行きなり斯樣なものが出て來ることは少くて、十分押し問答をした結果ではないかと思ふのであります、でありますから、まあ御尋のやうなことは、議論としてはされたのだけれども、結局向ふで「ディレクチブ」で出して來たのぢやないかと想像致します、まあ政府委員からも申しましたやうに、左樣なことから、此の理由書は「ディレクチブ」で、唯向ふの斯う云ふ希望とか何とか云ふものを法律案にしたのではなくして、命令で來たものですから、命令だと云ふことを此處に明白にしたと云ふやうな譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=42
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043・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 他に御質問はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=43
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044・毛利元良
○男爵毛利元良君 第一條及び第二條の規定に依りますと、會社に對する助成金を打切ると云ふ御話でありますが、例へば私設鐵道のやうな公益性のあるもの、一つの企業であると同時に、公益性のある私設鐵道の如きものは、相當援助して貰はなければ經營が立つて行かない、又其の事業が交通運輸上から相當必要なものであると云ふやうな場合にも補助が出せなくなる譯ですが、さうなりますと、其の鐵道と云ふものは、經營が出來ない、非常に産業上、或は旅客の交通上、重大な支障を來すと云ふ場合に、此の規定に依つて補助は打切るが、斯う云ふ鐵道は今後別な方面から國が買收して經營すると云ふ風なことも考へられますが、鐵道の問題は一つの例でありまして、まだ色々な重要な生産以外に、何と言ひますか、或一つの部分的なものでもそれがなければ重要な生産が出來ないと云ふやうなものもあるかも知れませぬ、さう云ふものに對して補助が無くなり、生産が出來ない場合には、全體的に幾らかの影響を與へると云ふ場合もあると思ひます、さう云ふ場合に付てはどう云ふ御處置を御執りになりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=44
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045・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 此の法律は政府の持株に對する配當などを、外の株式と差を設けて配當を少くするとか、何とかと云ふことは出來ない、それから配當等が一定の配當に達する爲に補給金を出すと云ふことが出來ないと云ふことでありまして、鐵道などのやうに、補給金を出すことは出來る、鐵道などは、此の法律にあるやうな形の補助は今迄はして居らないのでありまして、此の指令の四項に「會社法人及其の他の團體に對する政府の財政的援助は補助の形式に依るへし」と云ふのでありまして、補助は出來るのですから、御質問の點は、差支は起らないだらうと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=45
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046・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 他に御質問はございませぬか、御質問はもう終了のやうに御見受け致しますが、果して左樣でございますれば、採決に移りたいと思ひます、併し茲に一點、御協議を申上げたいのでありますが、先程慶松委員、永井委員から御質問がございました本案の理由書に對しましての點でございますが、之を先づ以て御諮りを致しませぬと、此の採決には入れないと思ひます、是は政府の只今御答辯のございました所から見まして、此の儘に通して參ると云ふのと、或は之を先程御質問のやうに變更致すと云ふことに分れて參ります、御協議を致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=46
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047・慶松勝左衞門
○慶松勝左衞門君 強ひて私は、此の「聯合國最高司令官の要求」と云ふことを消した方が宜いと云ふことを堅く主張する者ではありませぬが、是は私は一つの慣例になると思ひます、最高司令官の居る間は慣例になりまして、もう解釋、理由の善惡を問はず、斯樣な理由に依つて日本の法律が改正されるものなら、私は一つの惡例ぢやないかと思ひます、ですから最高司令部の要求でも、政府がそれを御聽きになつて、尤もだと御得心になつて、さうして、其の最高司令部に理由を附して御返しになると云ふことは、私は宜い慣例ぢやないか、さうしないと、斯う云ふことが書いてあると云ふことは、又最高司令部の方が、是は簡單な法律でありますけれども、見まして、どう感じますか、又日本政府の威嚴の上からもどうですか、さう云ふ點で大臣などが是で差支ないと云ふのでしたら、それを強ひて、どうせいと云ふことを私は申すのでありませぬ、道理の基く所を一つ考へて戴きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=47
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048・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 其の點に付てちよつと申上げたいのでありますが、實は最近は餘り「デイレクテイヴ」でなく、話合で以て、色々のことを豫め協議して、それから日本政府の法律案として出すと云ふ形を成るべく執つて居るのであります、さう云ふ場合には、無論十分協議を致しまして、雙方納得の上でやるのでありますから、其の結果の如何に拘らず、日本政府の全責任を以てやると云ふことになります、是は唯「デイレクテイヴ」でありますからですから、「デイレクテイヴ」の場合には、必ず斯う書かなければならぬと云ふことはありませぬが、「デイレクテイヴ」で來たものは、寧ろ聯合國最高司令部と云ふことを強く謳つて置くのも宜いのぢやないか、或は其の方が正しいのかも知れませぬ、さう云ふ風に考へますので、私の氣持としては、相成るべくは一つ理由書も、此の儘御承認を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=48
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049・慶松勝左衞門
○慶松勝左衞門君 私は餘り贊成しませぬけれども、併し別に之に付て、私の主張は敢て致しませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=49
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050・大木操
○大木操君 ちよつとそれに付て私も意見を申します、理由書の方は、是は議決の對象にならない問題と思ひます、勿論法律案の法文だけでありますが、今質問者の御主張は、是も極めて同感なので大藏大臣の矢張り御説明もありましたけれども、御同感の意を表されて居られたやうであります、矢張り是は政府全體の自主的の立場に於て、理由書も今後は御書き下さると云ふ了解の下に、是は「デイレクテイヴ」だからと云ふことで、直ぐ手を著けると云ふことでなしに、さう云ふ御含みを以て將來御計らひ下さつたら如何かと、斯う思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=50
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051・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 然らば、政府提出の原案に付きまして、討論、採決に移りたいと思ひます、御發言の方は、此の際御願ひします……別に御發言もないやうに見受けます、然らば採決に移ります、「法人に對する政府の財政援助の制限に關する法律案」、之を可決することに御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=51
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052・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) それでは全會一致と認めます、本案は可決されました、是で散會致します
午後二時四十七分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=52
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053・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 男爵 周布兼道君
副委員長 子爵 梅溪通虎君
委員
侯爵 廣幡忠隆君
侯爵 嵯峨實勝君
伯爵 奧平昌恭君
子爵 牧野忠永君
永井松三君
慶松勝左衞門君
寺尾博君
男爵 平山洋三郎君
男爵 毛利元良君
大木操君
徳田昂平君
長島銀藏君
國務大臣
大藏大臣 石橋湛山君
政府委員
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 野田卯一君
同 石原周夫君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000160X00519460913&spkNum=53
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