1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○金融緊急措置令(承諾を求むる件)
○日本銀行劵預入令(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第九十號(承諾を求むる件)
○臨時財産調査令(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第百二十八號(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第百十一號(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第百二十七號(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第百五十九號(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第百七十九號(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第百八十號(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第二百四十一號(承諾を求むる件)
○昭和二十一年勅令第二百四十二號(承諾を求むる件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年七月十八日(木曜日)午前十時二十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=1
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002・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 開會を致します、前回に引續きまして御質問を願ひます。最初に前回から宿題に致して居りました臨時財産調査令、これから願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=2
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003・種田虎雄
○種田虎雄君 此の前の政府委員の御答辯の中に財産調査に付きまして色々御話がありましたが、殊に此の動産に付きましての調査は各人の申告に俟つのだと云ふやうな御話があつたやうに思ひます、此の三月當時の動産の價格を如何なる程度に決めて申告するのでありませうか、さう云ふことに付て御説明を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=3
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004・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 動産の調査は、財産税の基本たる財産調査に於きましても、非常に困難な點でございます、就きましては、營業者、事業者の動産は財産調査令に依りまして三月三日現在で申告することに相成つて居ります、營業者の物は三月三日の申告に依りますが、一般の營業者でない方の動産をどう云ふ風に決めるか、殊に價格をどう云ふ風にするかと云ふ問題でありまするが、矢張り價格に付きましては三月三日の價格に依りたいと思ひます、さうして只今の所考へて居りますのは、生活に通常必要なる家具、什器は非課税に致して居りますが、其の非課税の範圍をどう云ふ風に見て居るか、又非課税を超えました課税財産をどう云ふ風にして行くかと云ふことは只今研究を致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=4
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005・種田虎雄
○種田虎雄君 一般の大衆が、例へば祖先傳來の家に傳つて居る動産に付て市價を研究しろと仰しやつても、買つたことのないやうな場合にはどう云ふ風にして評價したら宜いのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=5
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006・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) それは賣買の實例のないものに付きましては、其の人其の人の主觀的價値に依る外致し方ないと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=6
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007・種田虎雄
○種田虎雄君 多くの人は動産に付ては保險を付けて居るだらうと思ひます、さう云ふやうな保險金額を大體標準として申告した場合に、それが正當な申告として御認めになりませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=7
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008・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 保險も保險を付けます時に依りまして餘程違つて居りますので、一概にそれに依ることは出來ないと思ひますが、動産の評價に付きまして保險金額と云ふものは有力なる資材と認めて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=8
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009・種田虎雄
○種田虎雄君 此の前の政府委員の御説明の中に、嚴罰主義を以て臨むと云ふ御言葉があつたのでありますが、一般の大衆に賣買價格に依つて申告せいと仰しやいましても、恐らく家具類の賣買價格を調査申告すると云ふやうなことはなかなか出來ないのぢやないかと思ひます、從つて保險金額等を先づ參考にして出せばそれを正しい申告なりと云ふ位な御認定がないと、可なり怪我人が出來やせぬかと思ひます、其の點に付きましては特に御考慮を願ひたいと云ふことを希望して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=9
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010・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 前會で嚴罰主義と申上げましたのは、評價の點に付きましては是は各人各樣でございますから、嚴罰主義で臨むと云ふことは非常に行過ぎだと思ひます、財産の隱匿だとか或は不正の行爲のあつた場合に、嚴罰主義で臨みたいと云ふ考で居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=10
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011・瀧脇宏光
○子爵瀧脇宏光君 ちよつと御尋ね致します、此の前に嚴罰主義と云ふ御話もありましたし、誠に結構なことと存じますが、實は非常に巧みな人は巧みに財産を隱して居ると思ふ、私共が住んで居ります町でも斯う云ふ例がある、或大きな別莊を或工場が買つた、さうすると其處に直ぐ札を立てまして、何々製作所産業報國會職員寮と云ふ看板を立てた、さうして其の建物をどんどん、改築する、庭も何萬圓も掛けて造る、而も見て見ますと職工は一人も來たことがない、是なんか明かに會社の金をさう云ふ風に胡麻化した脱税だらうと思ひます、のみならず今の此の財産税に付きましても、さう云ふものは恐らく其の人の個人の財産にはなつて居らない、而も現實は其の人の個人の財産、斯う云ふ例が熱海、湯河原邊に澤山あります、斯う云ふのを十分に御調べ願つたら全國に於て相當な數が出て來ると思ひます、無論御氣付になつて御調べになつて居ると思ひますが、どうか財産税が若し愈愈施行せられるやうになりましたら、さう云ふ點も能く下の方に御命令になつて御調査を願ひたいと思ひます、もう一つ、是は人間でございますから、神樣でないのですから分りませぬが、大藏省の税の係の方々でも、なかなか斯う云ふ時勢だと云ふと、能く其の相手方に買收される、語弊があつてはいけませぬけれども、能く馴れ合になつてしまふ例が澤山あります、現に先々月位に或私の知つて居る料理屋に税務署の方が調べに來た、是は一日位で調べが濟む、處が何んとか彼とか言つて三日位も調べて居られたさうです、何故かと云ふと晝飯を出す、此の頃は晝飯が二百圓も三百圓も掛る、それを毎日食べられるのでやつて來る、誠に迷惑だと云ふことを私の親しい友達が聞いて來て居る、斯う云ふことになるとどうしても茲に非常に公平でない査定が生ずる、斯う云ふことのないやうに、所謂東條内閣と言つては語弊があるかも知れませぬが、戰爭中に狡いことをする奴がうまいことをして居る、正直な者は損をするのだと云ふ觀念を國民に植付けて居る、今後一つ政府の信用を回復し、從つて紙幣、金の信用を回復する上にも多大の影響があると思ひますから、斯う云ふ狡いことをする奴だけが得をするのだと云ふことのないやうに、嚴罰主義誠に結構でありますが、どうか其の點を徹底するやうに、財産税を御取りになる時は下の者に其の趣旨が分るやうに御話を願ひたい、今のやうな御調査をなさつていらつしやるでございませうか、所謂會社の金で自分の別莊を作り、色々なものを拵へて居る、斯う云ふ御調査をなさつたことがございますでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=11
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012・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 財産の調査には萬全を期して居ります、前回三月三日を動かす考はないかと云ふ御質問がございましたが、實は私の考と致しましては、今後今一度財産調査を致しましても、なかなか三月三日程度の調査が出來兼ねるのではないかと思ひます、何故かと申しますと、三月三日の時には個人、法人を通じて全部の財産の調査をすると云ふ建前に致しました、財産税が變りまして、法人等には財産税を課税しない、殊に公益法人、人格なき社團、斯う云ふものは非課税だと云ふことになると、財産税の拔け道が非常に澤山出來るやうに相成るのであります、從ひまして私としましては、三月三日の調査は、全部に網を張つてやつた爲に非常に其の點がうまく行つたと考へて居ります、從つて先般の御質問のやうに、三月三日を變へて、もう一回やると云ふことになりますと、なかなかむづかしいのではないかと思ひます、個人の住宅を會社に移したと申しましても、例へば登記簿上移して居りますかどうか、此の點は會社の方に移して居れば會社の方でも分ります、十分調査が出來ると思ひます、それから動産の調査に致しましても、自分と致しましては、三月三日の預金でなしに、終戰後、或は三月三日以後の預金の動きを十分調べる積りで居ります、是は將來の税務執行の手心でございますが、出來るだけ財産調査に付きましては萬全を期したいと云ふ氣持で居ります、又税務官吏の涜職等に付きましても、實は財産税法を施行せむとする際に此の點が一番心配に相成つて居るのであります、税務官吏の素質の向上、又不正行爲のないやうに日夜心配致して居るのでありますが、財産税法が若し施行になるとしますれば、税務官吏をもう少し増員し、而も資質の良い人をどしどし入れて行つて、不正を防止し、十分に調査の出來るやうな機構を拵へたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=12
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013・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 動産の價格を御決めになる時に市價に依ると云ふ御意見であります、而もそれが所持者の主觀的に依つて決めると云ふ御方針のやうでありますが、さうなつて來ると非常に區々になつて統一が取れないのぢやないか、斯う思はれますが如何でございませうか、例へばお上から拜領しました御紋章の付いた金銀の器物、其の外、先祖傳來の寶物として取扱はれて居るもの、是はどう云ふ風に處置なさるのでございませうか、何れは何か評價委員と云ふやうなものでもお作りになつて、それの認定に委すと云ふやうなことにでもなさるのだらうと思ひますが、扨てそれも相當むづかしいことだらうと思ひます、例へば戰爭中貴金屬の供出と云ふことが行はれまして、美術品其の他のものも地金と同樣に取扱はれて、價格が甚だ情けない價格に決つてしまふと云ふやうなことも澤山にあつたと思ひます、是等を參酌して如何樣に御處置なさるか、それを伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=13
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014・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 動産の價格は三月三日の時價に依るのであります、是は原則でございます、唯先程御質問のありましたやうに、先祖傳來のものであつて、さうして取引も何もない、斯う云ふやうなものに付ての申告を如何にするかと云ふことに付きましては、是は其の方の主觀的價値に依つて申告をして戴きます、其のものを税務署が如何に評價するかと云ふことは只今研究中でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=14
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015・種田虎雄
○種田虎雄君 此の財産調査をしますのも、結局財産税を取ると云ふことから出發して居ると思ひますが、是は今更さう云ふことを伺つても或はどうかと思ひますが、一體此の財産税を徴收すると云ふことに依つて、當初は「インフレ」を防止する、斯う云ふ御考があつたやうに新聞紙上等に於て御當局の御意嚮が色々傳へられて居つたのでありますが、今日でも尚さう云ふやうな面も御考になつて之を施行なさる積りでありますか、さう云ふ事に付ての御考へを伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=15
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016・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 財産税創設の目的は、戰時中非常に膨れました擬制資本即ち物の裏付のない擬制資本を撤去しまして、仍て以て「インフレ」を防止すると云ふことが第一の目的でございました、勿論斯く致しますことに依りまして、其の擬制資本の撤去の方法等に依つて富の再分配と云ふ結果が出て參ると思ひます、此の氣持は今も變つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=16
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017・種田虎雄
○種田虎雄君 只今の御答辯に依りますと、擬制資本を撤去する、切捨てると言ひますか、さう云ふやうな御考がおありになつたやうでありますが、軍需補償の打切りと云ふ問題、之に關聯した色々の施策もありましたが、さう云ふことと、此の財産税徴收と云ふことと、どう云ふ風に政府では御考へになつて居つたか、是は竝行してやるべきものであつたか、或は財産税を徴收する方を先にやるべきものであつたか、さう云ふ事に付ての當局の御考はどうでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=17
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018・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 軍需補償をするかしないかと云ふことと財産税を徴收することは、當然の因果關係はないと思ひます、併し財産税を徴收するとすれば、軍需補償が如何になるかと云ふことが前提に相成ると思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=18
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019・種田虎雄
○種田虎雄君 私の伺つたことが少し言葉が足らなかつたから、十分でありませぬから、更に追加して申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=19
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020・膳桂之助
○膳桂之助君 只今種田氏の御質問に對する御答辯のことに付きまして私ちよつと疑ひが出て參つたのでありますが、其の點に付て承りたい、財産税徴收の目的は、之に依つて擬制資本をば整理するにあり、是が一つの目的であると云ふやうな今御話でありましたが、一體擬制資本と云ふものは、財産の實なくして唯資本の形式的に現はれて居るもの、是が擬制資本の大體の觀念ぢやないかと思ふ、一體財産の實もなきものに對して財産税を取ると云ふ觀念がちよつと私に分らないのでありますが、其ふ點に付て御説明を重ねて願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=20
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021・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 膳君に申上げますが、只今種田君の御質問中であつたのでございますが、私ちよっと種田君の發言を聽取れませぬ中にあなたの御發言もございまして、只今…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=21
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022・膳桂之助
○膳桂之助君 それでは私は後に致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=22
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023・種田虎雄
○種田虎雄君 實は今同じやうなことを伺はうと思つて居つたのであります、今の擬制資本の打切、撤去と云ふやうな御話がありましたから、それに絡んで私の申したことが十分に御分りでなかつたかと思ひますので、重ねて質問しようと思つて居る所に膳さんが御聽きになつたのです、大體同じやうなことを質問しようと思つて居つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=23
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024・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=24
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025・種田虎雄
○種田虎雄君 それで、實は今の御答辯では、政府が「インフレ」を防止すると云ふことを重要國策の一つとして御考へになつて居つて、あれや是やの手を御打ちになつて居ると私は思ふのでありますが、併し國民に能く政府の御方針が徹底し、納得の行くやうにして戴かないと困る、只今の御説明ではどうも私共能く分らないのであります、それで今、膳さんが御尋になつて居つたやうな點も實は私も伺はうと思つて居つたのであります、どうぞそれ等の點に付て御説明を願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=25
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026・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 財産税の目的は、先程申上げましたやうに戰時中非常に膨らんで參りました擬制資本、具體的に申しますと、物の裏付のない架空的のものとでも申しますか、非常に殖えました預金、國債等、勿論不動産なんかも入つて參りますが、さう云ふ非常に膨らんだ、國力以上に膨らんだ資本を徴收し、「インフレ」をそれに依つて防止すると云ふことが第一の目的であつたのでございます、併し只今財産税がどうなつて居るかと云ふ問題を考へて見ますと、當初の政府の考へて居つた通りには行かないのではないかと云ふ氣が致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=26
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027・種田虎雄
○種田虎雄君 さうしますと、財産調査令に依つて今後取られる財産税の本當の目的は最初御計畫になつた當時よりは事情の變化の爲に變つて來た、斯う認めて宜しいのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=27
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028・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 變つて來かる變つて來ないか、只今關係方面と折衝中でございます、唯財産を調査すると云ふことは何れに致しても必要なことでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=28
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029・種田虎雄
○種田虎雄君 是は我々が此の勅令を審議する場合に唯何れにしても、財産は調べなければならぬからと云ふ今の御言葉でありましたけれども、其の目的が奈邊にあるかと云ふことをはつきり掴みませぬと、餘程さう云ふ點に付て色々の議論が出るのではないか、斯う思ひますので只今伺つた譯なんであります、色々關係の方面の御了解もあるのでございませうから、御了解が付き得られまして、はっきり是はどう云ふ風な目的で調べるのだと云ふことに付ての御答辯を、後日御願して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=29
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030・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 膳君に申上げますが、先程御質問なさいましたが、若し御質問なさるならば此の際一つ…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=30
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031・膳桂之助
○膳桂之助君 大體私の御尋しようと思ひましたことは今種田氏が御質問下すつたことで、それで宜いのでありますが、唯私が大藏御當局に御尋ね申した點がまだはっきりしないのであります、唯私が言葉の誤解かも知れないのでありますが、もう一遍此の點をはっきり伺つて置きたいのであります、唯言葉尻を申上げる意味でも何でもありませぬから、唯分らなかつたので御尋したのでありますが、物資の裏付のない戰時中の膨れた財産を押し縮めると云ふ意味は、國の生産力と云ひますか、國の現在の色々の戰災や其の他で戰爭の爲に失つた物資で、國の富が減つて居る、唯金錢的の評價だけが非常に殖えて居るから、其の國の實質の富に相當する程度に金錢的の評價を切下げるのだ、斯う云ふやうな意味でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=31
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032・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 切下げると云ふ言葉が非常に誤解を招き易いので、私の氣持と致しましては、國の富と云ふものは實質的富は非常に減少して居る、併し名目的の預金、其の他の所謂名目的の財産は相當殖えて來て居る、此の不釣合を是正すると、斯う考へて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=32
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033・膳桂之助
○膳桂之助君 さうなりますと、名目的に金錢に評價する其の評價が高過ぎるから、之を正當のものの價格迄に切下げると云ふやうな風に矢張り承はれるのでありますが、さうでありますれば、例へば兌換劵が過日も御示し下さつたやうに何百億と云ふやうになつて居る、併し國の富の實質から言へば、戰前は十何億の兌換劵であつて、是が或は二十倍とか三十倍とか云ふやうな風に水膨れになつて居る、さうすれば、それを健康なる状態に迄引下げるのが目的だ、預金も同樣に非常に殖えて居るから是も下げると云ふ、さう云ふ目的であるならば、或は預金を切捨てるとか、或は現在持たれて居る通貨の何割かを切捨てると云ふやうな方が、簡便でもあり、目的に適ふのであります、然るに一方、或は元から持つて居り、別に水膨れも何もして居りませぬ所の不動産、或は動産と云ふ實質のもの、其の中の何割かを取上げる、是は別に戰時中に水膨れして居るものでも何でもない、物の裏付のある其のものなんでありますから、それに迄及ぶと云ふことが、ちよつと斯う理論上少し説明がし兼ねるやうに考へられるのでありますが、別に是は言葉の上を捉へて申上げるのでも何でもない、そこで根本の財産税の觀念、それから財産税をどう云ふ方法で取るかと云ふことが、さう云ふ目的に依つて出て來るのだらうと思ふのであります、段々と財産調査のことを承つて見ますると、預金やら現金などに付ては既に三月三日現在で現金は分らないでありませうが、預金に付ては相當分つて居る、不動産は或程度分りませうが、動産等に付ては隨分此の調査が困難であり、而も嚴罰主義を以て之に臨む、隨分承れば、又是が爲に徴税官吏をば何十萬か人數は承りませぬが、報ぜられる所に依りますると、二十萬人とか三十萬人とか云ふやうな納税官吏を入れる、假に一萬人官吏を新しく入れるとすれば、近頃の待遇改善の等色々な點もありまするから、年に一人一萬圓位の費用が掛かると思ひます、假に一萬人入れるとすれば一億圓、十萬人入れるとすれば十億圓、三十萬人とすれば三十億圓、是が一年で完備すれば宜しうございますけれども、なかなか一年では濟みますまい、又さう云ふ風な人を入れて之を辭めさせる時に、只では辭めさせられないと思ひます、矢張り何箇月分かの退職手當も出さなくてはなりますまい、假に是が二年續くものとして、三十萬人の人間が入るとしますれば、茲に六十億と云ふか、七十億と云ふか、さう云ふやうな相當大きな費用が掛かるのではあるまいか、又單に費用が掛かるばかりでありませぬで、嚴罰主義を以て財産隱匿に對しては臨む、數日前片倉委員の御尋ねしました點に、信州の或所で財産税の調査に事寄せて隱匿物資の調査をすると云ふので、家宅搜索的のことがあつて、是は逸脱行爲であるので嚴重に申渡して置いたと云ふ御説明がありました、或は今も隱匿物資の探究と云ふやうなことで、或は人民管理であるとか何とか云ふやうな又間違つた考へも出て居る、可成り財産税の動産等の調査に付きましては、私ばかりでありませぬで一般の懸念する所は矢張り何か家宅搜索的のことでも行はれて、それで相當之には怪我人も出來るし、又國民に嫌な思ひをさせることが相當多いのではないかと云ふ風に考へ得られます、承はれば、財産税を初め創設しようと云ふ目的も、大分關係筋との御協議の結果、曲るかも知れないし、變るかも知れぬ、又或は個人にはかかるけれども、會社等にはかからぬかも知れぬと云ふやうな意味も傳へられて居ります、何だか非常な世間騷がせと云ふこともありませぬが、大掛かりであるが從來の問題に付きましては、成る程財産も一度調査して置かれるのも結構でありませう、何かになるかも知れませぬけれども、是からの手續を考へて見ましても相當煩瑣であり、又隨分經費の掛かる問題でもある、斯う云ふやうな思想の混亂して居る際に、何か又色々な爬羅剔抉が起きて、嫌な見聞をしたくないやうなことも出て來るのぢやないかと云ふやうな感もあるのであります、若し裏付のない水膨れの通貨及び預金と云ふやうなものを切捨てると云ふならば、寧ろもつと直截簡明な方法も考へられるのではあるまいか、それに對しては、裏付のない唯空疎の通貨、預金等を持つて居ります者が果して財産税のかかる階級に止まるであらうかと云ふと、私は多少の疑ひを持つのであります、と申しますのは、現在農村、漁村等に於きまして、過日承はれば百七十五億と云ふやうな尨大な、現在行はれて居ります通貨の稍稍半分に近いやうなものが農村、漁村の箪笥の底か何かに沈澱して居るのだと云ふやうな數字を頂戴したのでありますが、是が財産税がかかる其の財産税の限度が、傳へられる所に依ると三萬圓とも傳へられ、又五萬圓に上るだらうとも傅へられて居ります、何れかは存じませぬが、其の何萬圓と云ふ中にも亦何萬圓かの基礎控除もあるのでありませうから、政府當局の今言はれて居りますやうな空疎な通貨及預金を引下げると云ふ方面に果して力があるかどうか、と申しますのは、現在でも、不當にと云ふこともありませぬけれども、異常に水膨れして居る購買力を持つて居ります者は、寧ろ大地主とか、或は農村で相當の田畑を持つて居り相當の地位を保つて居る人は、さう闇のことも出來ませぬし、多く供出と云ふものは公定價で出て居る、今のやうな沈澱して居る金を持つて居る者は、農村で申せば、都會の附近にある寧ろ三反、五反百姓と言つたもので「トマト」を作つて一季に二萬圓になるさうであります、胡瓜でも一萬圓になるさうであります、さう云ふ人達に水膨れの裏付のない金が入るのぢやないかと思ふ、さうして見ると今迄傳へられて居る財産税の構成では、今のやうな水膨れの擬制資本と云ふか、擬制財産をば、之を切取つて「インフレ」の助長を防止すると云ふのに、果して役立つかどうかと云ふことが疑問に思へるのでありまして、是は意見になりますが、何かそれよりも簡單直截の…さう云ふ目的であるならば、例へば是は公平不公平は多少それは出來ますけれども、斯う云ふ際に餘りに何と云ふか正義感も結構でありますけれども、理論的の正義感に囚はれて居ると云ふと却つて公平を失ふ場合もあらうと思ひますけれども、それはさうしろと云ふ意味でなく、それが宜いと云ふのでもありませぬが、假りに一つの思ひ付きのことでありますが、財産税を取るのに預金の調べをする、其の預金の源泉的には何割かを切捨てる、又綜合した財産の分つた其の上のものは更にそれを増加するのも結構でありませうが、そんな方法に依るとか、例へば現金を或時期に調べまして、其の何割かを切捨てさせると云ふやうな方法に依れば、初めて今御説明のやうな目的が達し得るばかりでなく、無駄と申しては甚だ恐縮でありますけれども、若し二年に亘ると、此の際に七十億と云ふやうな税務官吏を入れるだけの巨大な費用がある、恐らく其の位になるのぢやないかと思ふのでありますが、多くなれば質の良い者を入れると云ふのでありますから、雇員や何かの安い者を入れる御積りではありますまい、大部分が矢張り月に七八百圓乃至千圓位の人を入れることにならうと思ひます、過日來から官吏待遇改善の此の表を戴きましても、判任官の一級、中間位の者もそれ位になるやうでありますから、兎に角巨大の經費を使つて徴税目的にも大して合はず、而も社會に混亂と非常な嫌な現象を起す、それ迄して果して其の目的が達し得るのかどうかと云ふことに、多少疑を持つて見られるのであります、其の邊に付て重ねて御當局の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=33
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034・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 財産税徴收に付きまして、預金等に付きまして先づ源泉的に「フラット」の税率で課税してはどうか、斯う云ふ御意見でございますが、斯く致しますると、財産の種類に依りまして非常に不公平が出て參るのでございます、不動産を持つて居る方と、又財産の大部分を預貯金國債にして居られる方との負擔が非常に違つて參ることになります、從つて先づ預貯金に對して特別の課税をし、然る後に他の財産と綜合致しまして超過累進税率で課税し、前に納めた預貯金の納付税額を控除する、斯う云ふ方法は考へられますが、併し是はなかなかの手數でございまして、矢張り先般の委員會で申上げましたやうに、各種の財産を合せて超過累進税率で行くのが最も公平な取り方であると考へて居るのでございます、次に免税點を三萬圓とか、或は五萬圓と云ふことにしたのでは所謂擬制資本を取るのに餘り上過ぎるのぢやないか、斯う云ふ御意見でございました、我々と致しましても、免税點は其の意味から申しますれば出來るだけ低いに越したことはございませぬ、併し徴税技術から申しますと、免税點を一萬圓程度に持つて行くことは非常に手數が掛ります、從ひまして只今研究中でございまするが、免税點に付きましては三萬圓或は五萬圓になるのではないかと云ふ豫想を持つて居るのであります、擬制資本の撤去と申しましても、是は個々の人に付ての話ではないのであつて、私は飽く迄國民經濟上からの擬制資本の撤去と云ふことを考へて居るのであります、それから徴税に非常に経費を要するではないかと云ふ御話でございました、只今税務署は全國で三百八十ばかりございまして、税務官吏は一萬人弱でございます、財産税調査に要しまする人員と致しまして、大體六千人を要求致して居るのであります、御話の通りに十萬とか二十萬とか、斯う云ふことは毛頭考へて居りませぬ、今後六千人以外に一二千人の所謂外部からの相當素養のある人を入れたいと云ふ氣持を持つて居るのであります、從ひまして徴税費も、數百億取ります場合に於きまして一二億圓の徴税費は已むを得ないのではないか、御參考に申上げまするが、聯合軍司令部では、日本の徴税費は非常に低過ぎる、どうしても税を公平に適實にうまく取つて行く爲には税收額の三「パーセント」が適當である、アメリカは二「パーセント」半位要して居るさうであります、日本では〇・三「パーセント」乃至〇・四「パーセント」程度に相成つて居ります、我が國の財政状況から申しまして、徴税費は出來るだけ少いに越したことはございませぬけれども、併しそれが爲に適正公平な課税が行はれないと云ふことになると、是は一大事でございますので、最小限度でありますが、適當な有能な方を税務官吏に採用致しまして、財産税調査に萬全を期したいと考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=34
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035・紀俊忠
○男爵紀俊忠君 此の三月三日に財産調査をされました前後の新聞に、物納或は封鎖預金で納税しても宜いと云ふやうなことが書いてあつたと記憶するのですが、其の點は間違つて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=35
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036・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 財産税は物納の制度を認めて居ります、封鎖預金で支拂ひ出來るかどうかに付きましては只今御答が出來ませぬ、研究致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=36
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037・紀俊忠
○男爵紀俊忠君 今物納は差支ないと云ふ御話でございましたが、然らば先程から御質問にも出て居りますやうな祖先傳來の家寶と云ふやうな物を若し出した場合にはどう云ふ風に御扱ひになりますか又三月三日當時には相當の價格のあつた株券等が徴税當時に殆ど價格がないと云ふやうなものが出來て、それを以て納税した場合には政府はどう云ふやうに御取扱になる御積りでございますか、其の點伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=37
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038・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 物納は今回の如き高率な財産税でございましたら認めざるを得ませぬ、併し物納にも順序がございます、先づ國債、それから不動産、それから株券、斯う云ふ順序に致したいと思ひます、併し流通力のある所謂取引所に掛つて居るやうな株に付きましては、是は不動産よりも優先し得ると思ひます、同族會社の株のやうなものは不動産より後と云ふことになると思ひます、從ひまして御話の家寶等は、物納は認めまするが併し後順位となると思ひます、政府と致しましても出來るだけ換價し易い物を取りたいと云ふ考がありますので、さう云ふ殆ど不流通的のものは後廻しとならざるを得ないと思ひます、それから株券の評價に付きましては是は三月三日の時價に依りますか或はそれ以後の時價に依りますかまだ考究中でございますが、何れに致しましても課税價格に依つて納入を認めます、課税致しました價格に依つて納税を認めます、或る株券を五十圓と評價致しましたならば、それに依つて財産税を課税致しましたならば、其の株が如何に下つて居りましても、是は五十圓として政府が納入を認めると云ふことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=38
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039・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 他に御質問ございませぬか、ございませぬければ、引續きまして昭和二十一年勅令第百二十八號に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=39
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040・種田虎雄
○種田虎雄君 私は甚だ細かなことで恐縮なんでありますけれども此の勅令の方に依りますと、「遊興飮食税法中左の通改正す」と書いてありますが、最近御配布になつて居る此の「税制改正に關する法律案要綱」の方を見ますと、第十五に、遊興飮食税では「定額課税の制度及びこれに伴ふ納税切符の制度を廢止すること」と云ふことだけが簡單に書いてありますが矢張り遊興飮食税は相當取られるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=40
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041・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 遊興飮食税に付きましては、今回は納税證紙、納税切符の制度を廢止すると云ふ改正規定だけでございます、此の納税證紙、納税切符の制度は一昨年來施行致しましたが、昨年の八月に戰時緊急措置法に依りまして停止致しまして、本年六月迄停止に相成つて居ります、今後戰時緊急措置法がなくなりましても矢張り納税證紙の制度は今迄と同樣に止めて行かうと云ふ改正だけでございます、三月九日の緊急勅令に依りまして税率を大幅に引下げまして、又免税點を大幅に引上げまして、税率に付きましても出來るだけ簡素に致しましたので、今回は改正を致さないことに致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=41
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042・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 最近行はれて居ります所得税の査定のことでございますが、農村に於ては査定が餘りに苛酷であると云ふので大分訴へがあるやうでございますが先程御話のありましたやうに、「トマト」を一反作れば一萬圓になるとか二萬圓になるとか云ふやうな事態を採り入れての査定でございませうか、或は總てさう云つた生産物は公定價格にして査定されたのでございませうか、若し此の兩者の中間でも採られたと云ふのであるとすれば、どう云ふ風な標準を設けて御決めになつたのでございませうか、之を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=42
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043・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 農家の所得に付きましては、昨年下期以後農産物が非常に騰貴致しましたので、可なり所得が増加致しました、農家の所得の算定に付きましては、各農家の耕作面積又作付の種類を見まして、さうして甘藷を作れば幾ら、大根ならば幾ら、斯う云ふ風に作付毎に計算することに致して居ります、又供出物に付きましては、例へば田を五反作つて居る、十石の收穫があつたと致しまして、其の中六石を供出することに相成つて居りますと、其の六石を全部供出された人は供出價格に依つてやつて居ります、併し六石を全部供出せずに四石なり或は五石なり供出なさいました人には、供出不足の二石なり或は一石を他の價格で御賣りになりましたと云ふことを想像致しまして、之に適當な價格で課税して居ると思つて居ります、唯問題は、各農家に付きまして收入金と必要の經費を見ると云ふことが非常に手數でありますので、耕作反別、作付の種類等から農事實行組合、町村長等の意見を聽きまして決めて居る譯であります、だから供出の農産物に付きましては、全部供出なさつた時には供出價格に依つて計算致して居ります、供出が全部出なかつた場合には差額米に付て適當な價格を以て致して居ります、又御話の「トマト」或は普通の生鮮食料品に付きましては、是は先程申しましたやうに作付が分つて居ります、例へば三浦大根なら一反歩六千圓の收入があつたらう、斯う云ふ風な計算を致して各自の所得を決定致して居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=43
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044・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 只今の適當な價格と云ふのはどう云ふ意味なのでございませうか、供出割當に不足した部分は他所へ處分したものと見做されると云ふ話でありますが、それに對して適當な價格、其の適當な價格であります、場合に依つては闇取引を是認することにもならうかと思ひますが、如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=44
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045・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 適當な價格とは、闇とも申されませぬが、實質は闇になるかは分りませぬ、が、要するに常に價格が變つて居りますから、蜜柑を賣りますに致しましても、十二月頃賣つた蜜柑、一月に賣つた蜜柑、三月に賣つた蜜柑は、餘程價格が違つて居ります、さう云ふのを平均的に見まして課税價額にする譯でございます、政府は闇を認めるか、斯う云ふ御話でございますが、闇と云ふものは飽く迄非合法的で、認めは致しませぬ、唯農家の實際收入が若しそれが闇から來て居るものと致しましても、税務署は是が闇であるかないかは分りませぬ、若し司法省の手で是が闇でありと判決を受けた場合に於きましては、闇の價格は課税の中には入れないことに取扱は致して居ります、我々は飽く迄實收入、實際の所得主義で行つて居るのであります、御話の通りに、そんなことをするのは酷ではないかと云ふ御話があるかも分りませぬが、若し税務署が今年農家に對しまして、世間でも酷だつたと申される課税を致さなかつた場合には、私は闇を非常に助長するのぢやないか、闇で賣つて如何に儲けても、之に課税をしないと云ふことは、公平の觀念から非常に反する、斯う考へて居りすま発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=45
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046・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 尚本件に付て御質問ございますか…ございませぬやうですから、次に移ります、次は昭和二十年勅令第百十一號並に第百八十號、此の二つの質疑に移りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=46
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047・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 此の二つの勅令に關して遞信省と運輸省の方に御伺ひしたいと思ひますが、遞信省の關係は、昨日本議場に於て可決されました郵便法改正の委員長報告に依りまして、大體其の委員會に於ける、質疑應答で盡きて居ると思ひます、但しまだ速記録は見ませぬけれども、大體其のやうに思ひますから、遞信省關係の方は此の際重ねて御伺ひするのも重複することと思ひますから、差控へますが、運輸省の方に對して少しく御尋ねしたいと思ひます、先づ運賃の値上の結果、利益計算がどの位になつて居りますか、是が第一點、それから第二點は、噂に依ると、又運賃が値上げされると云ふことでありますが、さう云ふ御計畫がありまするかどうか、次に第三點として、一體此の運輸事業を運營されるのは、人を運ぶのが主であるか、物を運ぶのが主であるか、何處に重點を置かれて居りまするか、之を伺ひたいのであります、第四點として、先日大藏省の方の御話では、料金、運賃の値上げと云ふものは、通貨收縮に役立つものと云ふ御議論のやうでありましたが、今後値上げをなさる時には此の議論が矢張り基調になつて居るのでありませうか、運輸省ではどう之を取扱になりまするか、第五點として、將來の運賃を値下げされる御意嚮がありまするか、又それはどんな状態になつた時に値下げされるかと云ふことが伺ひたい、此の五點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=47
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048・郷野基秀
○政府委員(郷野基秀君) 本年三月一日から運賃の改正を致しまして、旅客約二倍半、貨物三倍の運賃の値上げを致しました、之に依りまして、大體平年度三四億圓ばかりの増收を見込んだのであります、處が定期運賃の點に付きまして、運賃改正實施の間際に至りまして、豫定の値上げの率を變更致しまして、十五「キロ」以上の定期の運賃に對しまして五割引をすると云ふことになりましたので、約一億六千萬圓ばかりの減が見込まれることになりました、それで二十一年度の運賃の收入と致しましては五十二億九千萬圓ばかりを見込んで居ります、處が只今進めて居りまする今年の豫算の實行の模樣に依りますると、大體之で實行して參りまして、更に十四億圓位の收支の差、收益勘定に於きまする赤字が出る見込でございます尤も六月の給與の改正、又七月以降に於て行はれまする給與の改正が決定致しましたならば、此の赤字は更に殖えることと考へて居ります、又更に物價の基準が變ると云ふやうなことがありましたならば勿論此の點からも赤字が殖える懸念があるのでございます、兎に角只今迄に決定致しました所で、大體十四億程度の赤字が出る見込になつて居ります、結局此の赤字に付きましては、鐵道の財政の現状又國の一般の經濟財政の方策から考へまして、大體運賃の値上げに依りまして、取敢へず此の十四億程度のものは補ふの外はないのではないかと考へて居ります、併しながら、之に付きましては更に鐵道會議の議を經、關係の方面と色々折衝致しまして、其の上で正式に決まることになると考へます尚運賃値上げが通貨縮少の關係に於きましてどう云ふ風に相成りますか、私共と致しましてはまだ深い決定的な研究も遂げて居りませぬ、併しながら鐵道財政の現状と致しまして、大藏省とも色々豫算編成或は豫算の運用の點に付きまして交渉致して居りまするが、現實に資金の關係で、運賃値上以外にも色々と鐵道會計に對しまして面倒を見て戴かなければならないやうな状態でありまするし、今後に於きましてもさう云ふ點は相當に殘つて參ることと存じまするが非常に此の點に於て、國の全體の資金の關係に於きまして、大藏省の方に於きましても困難を感じて居られるやうであります、從ひまして出來るだけ運賃値上で行け、一般の經濟財政の現状と睨合せまして、可能なる範圍に於て運賃の値上をしろと斯う云ふ御要求がございまして、其の線に沿ひまして研究して居る次第でございます、尚將來鐵道が運賃を引下げる時期であるであらうか、又どう云ふ状態になつた時に運賃の値下が出來るであらうかと云ふ御話でありまするが、私共の考と致しましては此の二十年度に於きましても十一億四千二百萬圓の借入金を致しまして、此の返還を今後致さなければなりませぬ、又不幸にして本年度更に借入金をしなければならないと云ふやうなことになりますれば、是等の借入金に付きましても今後之が處理を致さなければなりませぬ、從つて今後經濟界が落付きまして鐵道の運賃に付きましても十分に鐵道財政の收支を賄つて行けるやうな計算が出來るやうになりますれば、是等の借入金などに付きましても其の處置を同時に其の際付けまして、其の上で運賃の引下をする餘裕が出來ますれば引下をすると云ふことに相成るものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=48
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049・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 只今の御話の旅客運賃と貨物運賃との増額に差があるのは、どう云ふ理由でございませうか、同じ値上ならば同じ「パーセンテージ」で以て御上げになるのが常識的でもあらうと思はれますが、それに關聯して、運輸省では物の運輸と人の運輸と之をどう御考になつて居りますか近頃の状態から考へて見ますると先づ人の運輸と云ふものは第二義的なものにして、物の運輸と云ふものが大事ぢやないか、斯う云ふ氣がするのであります、にも拘らず物の運輸の方の運賃が割高になつて居るやうでございますが、此の理由を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=49
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050・伊能繁次郎
○政府委員(伊能繁次郎君) 私から御答へ申上げます、去三月運賃値上を致しました際は、旅客約二倍半、貨物三倍でございまして、當時の鐵道營業の收支と致しましては、旅客では稍稍收支が償ふ状態でございまして、貨物では三倍に値上を致しても營業實費を償ひ得ないやうな状況で參りました、と申しますることは、御承知のやうに放客運賃は戰時中數度運賃値上を致しました、貨物運賃の方は大正十年以來根本的な運賃値上を目標と致しました修正は致さなかつたのでございます、其の間に經濟界の實情に對應致しまして、賃率其の他の若干の是正は致したのでありまするが、根本的な運賃値上と云ふやうな點は考へませぬでした、三月の運賃値上の状況はさう云ふ状態でございました、當時只今郷野政府委員から御説明がございましたやうに、放客運賃に付きましては、定期旅客運賃が國民負擔の上に相當強い影響があると云ふことで、通勤の實情を考慮致しまして、十五「キロ」以上の定期旅客を五割引に致したやうな次第でございまするが、私共の考と致しましては、現在の運輸の状態に於て旅客を主にすべきか貨物を主にすべきかと云ふ御話がございました、此の點に付きましては、日本の國有鐵道は、實情と致しましては他の國の鐵道と少し異りまして、御承知でもございませうが、輸送の量から申しますと、貨物よりも旅客の方が壓倒的に多かつたのでございます、是は收入からの比率、又輸送施設自體からの比率から見て申上げたのであります、然るに戰時中御承知のやうな状況から、海運貨物を陸運に轉嫁しなければならぬと云ふやうな事態に立到りました爲に、戰時中に於きましては旅客の方に大變御迷惑を煩しまして、相當な輸送規正を致しました、それで出來ました餘剩輸送力を擧げて貨物に轉換を致したやうな次第であります、戰爭が終りましてからの今日に於きましては、只今の御質問に關しまして私共としては、旅客貨物共に國民の輿望に應へて出來得る限り輸送を致したいと云ふ氣持で、有らゆる努力を傾けて居るのでございまするが、御承知の如く戰災に依りまして車輛、施設共多大の損傷を受けました結果、意の如くならないのでありまするが、それでも旅客の方は、戰爭中又戰爭直後の昨年の秋の状態から考へますると、一時稍稍減り氣味になつて參りましたが、最近に於きまして逐次増加して參りました、殊に定期旅客に付きましては、御承知の如く軍需工場其の他の生産が停頓し、或は止りました爲に、戦時中、昭和二十年度の初め頃に較べまして、一割五分から二割方定期旅客は減少して參りました、然るに普通旅客の方は最近の食糧事情其の他疎開復歸等の關係から非常に増加を致して參りまして、全體としては最近一日當り八百萬人程度の輸送を致して居りまして、非常な増加の趨勢に相成つて居ります、一方貨物の方は如何なる状態かと申しますると、戰爭中輸送量と致しましては昭和十八年度の一億七千八百萬「トン」の輸送數量が最大量であります、併しながら之を距離と考へ合せまして、全體の鐵道に負擔せられた輸送量、距離的に延びました「トン・キロ」の點から申しますと、昭和十九年の方が貨物輸送としては大きな量を運んで居ります、「トン」數自體としては昭和十八年度でありまするが、距離が延びました關係上、全體としては昭和十九年度の方が非常に強い負擔になつて居ります、さうして昭和二十年に於きましては大體五月が最高でありましたが、一日當り四十五六萬「トン」を運んで居ります、それが八月に於きまして戰爭直前の上半期は、空襲其の他の關係で一日當り二十八萬「トン」程度でありましたが、終戰と共に急激に落ちて參りまして、殊に昨年の秋は旅客貨物共に稍稍立直り掛けました十一月下旬から十二月に掛けまして、石炭危機の爲に非常な輸送規制を敢てせざるを得ないやうな情勢に陷りました爲に、貨物は一時は一日十七八萬「トン」程度迄落ちたのでりあまするが、其の後本年に入りまして石炭の状況が僅か宛好轉し始め、爲に鐵道にも少しばかり宛の増配がありまたし爲に、月々殖えて參りました現在では多い日で一日當り二十七萬「トン」位、少い日で二十四萬「トン」位宛運んで居ります、然らば輸送の實情はさうなつて居りますが、輸送の申込需要はどうなつて居るかと申しますると、貨物の方に付きましては現在二十五六萬「トン」運んで居ります、他に其の日に運べない在貨が大體それの倍程度、五十萬「トン」強、從ひまして七八十萬「トン」ある中、毎日二十四五萬「トン」程度を運んで居ると云ふやうな状況になつて居ります、私共と致しましては、出來得る限り貨物に付きまして國民の御期待に副ふべく有らゆる努力を致したいと考へて居るのでありますが、先般本席上に於きまして大臣からも御質問の點に付て御答を申上げたと存じまするが、石炭並に輸送施設の面で貨物輸送力が遺憾ながら十分の能力を發揮し得ない状態にあります、併し輸送施設は直ちに恢復することは困難でありまするが、石炭を増配せらるるならば、現在の状態に於ても十一萬輛の貨車を以てするならば、國民の輿望に應へ得るだけの輸送數量は直ちに運び得るのではないかと云ふ風に御答を申上げたのでございまするが、我々と致しましては、旅客貨物共に有らゆる力を傾けまして輸送を致して參りたい斯樣に考へて居ります、只貨物に付きましては、戰爭も終り、更に今後經濟が平常の状態に復歸致しますならば、石炭でありますとか、木材でありますとか、礦石でありますとか、所謂荒物關係の物資は日本の地域的な特異性から當然船舶で輸送せらるべき性質のものであらうかと私考へて居ります、現に船舶には稍稍輸送の餘力もございますので、極力私共と致しましては、戰時中行ひました海運の陸運轉移の貨物を、陸運貨物の海運再轉移を實施致さうと思ひまして、折角努力致して居るやうな次第でございます、貨物を主にすべきか、旅客を主にすべきかと云ふ御答に付きましては、是は誠にむづかしい問題だと存じまするが、日本の長い國有鐵道の沿革と致しまして又日本の地域的特性から申しまするならば、平常の状態に於ては大量貨物の荒物は海上輸送が當然之を負擔すべきものであり、雜貨類其の他山元から海岸迄の輸送を鐵道が負擔をする、通常の状態に於ては旅客が割合が多いと云ふことが常識でありますが、今日のやうな戰後尚經濟界も安定致しませぬし、鐵道輸送に對する需要の非常に大きな際に於きましては、私共は旅客と共に貨物に付きましても全力を盡して輸送を致したい、斯樣に考へて居る次第であります、最後に御指摘のありました運賃の値上げの内容が旅客と貨物で調和が取れて居ないではないかと云ふ御話がありましたが、本日の新聞に出て居りましたのは我々事務當局間の一つの案でありまして、未だ何等確定致したものではございませぬ、只其の事務的な案の基礎となるべき觀點に付きましては、當初に申上げました如く、旅客は數度値上げを致して居りまして、貨物は去る三月一度値上げを致しただけでありますので、實費の觀點から申しますると、貨物の方が非常に高く、實費を割つて居ると云ふ状態でございます、さう云ふやうな點と、もう一つ考へられますことは、是は獨り旅客だけの面ではございませぬ、貨物に付きましても同樣に言ひ得ることとは存じますが、殊に旅客の面に付きまして、日常の旅客運賃、五百圓を基礎とした旅客運賃と云ふやうな點から考へますと、旅客の方は現在の状態に於きましては餘り大きな運賃引上が果して可能であらうかどうかと云ふやうな點に付きまして、私共自身も幾分疑問を持つて居る、斯樣な状態で、現在鋭意研究中であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=50
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051・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 次に御伺ひ致したいのですが、若干自分の意見又は希望のやうなものも混るかも知れないが、此の點御了承を願ひたいと思ひます、と申しますのは運輸通信のやうな政府の獨占事業である事業が特別會計として取扱はれて居る、是も色々歴史があることで、一概に之をまづいと云ふことも言はれないと思ひまするが、此の前の委員會に於きまして大藏當局の御説明に依ると、特別會計と云ふものの再檢討をしたい或は整理をすると云ふやうな御意向が窺はれたのであります、此の際特別會計と云ふものの性質が此の運輸通信と云ふやうな公益的の獨占事業の本質にしつくり合つて居るかどうか、事業の方針の爲に赤字を消す爲に運賃を上げなければならぬ、當然それは考へられるのではありますが、是は國家事業としての本質から言つて果して當を得たものであるかどうか、本來ならば逆に運賃料金を下げて然るべきぢやないかと思はれるのであります、それでは特別會計が破産すると云ふことになりませうが、そこを特別會計の立直しに取入れて御研究願ひたいと思ふのであります、それから今一つは、何と言ひましても運輸省にしろ、遞信省にしろ、國民がどう云ふ風な眼で以て見て居るかと申しますると、決して喜ぶべき現象ぢやないと思ひます、悉く呪ひの聲を以て迎へて居る、政府の諸施設に對して、呪ひの聲を以て迎へて居ると云ふのが現状であります、是は國民全體の運輸通信に關する知識が足りない、理解が足りないと云ふ所に相當原因があると思ふのであります、此の理解が足りないと云ふ其の原因は何にあるかと云ふと、運輸通信と云ふものが政府の獨占事業であり、民衆は唯運んで貰ふ、或は唯郵便切手を貼つて出せば宜いぢやないかと云ふやうな態度が相當濃厚であつたやうに思はれるのであります、之を此の際、國民が自分の運輸機關であり、自分の通信機關であると云ふ所迄理解し得るやうに仕向けて行くことが、最も急務ぢやないかと思はれます、何か新しい施設をなさらうとする時に、直ぐ鐵道會議とか、或は遞信協議會とか、何とか會議と云ふやうなものにお掛けになつて、それの決定に從つてされるのが普通のやうでありますが、是は甚だ遺憾なことだと思ひます、見方に依つては責任轉嫁と云ふやうなことにならうと思はれます、そんなことで以て我が日本の國の運輸事業通信事業と云ふものが是から立直り得るかどうか甚だ覺束ないと思ふのであります、國民全體が自分の機關であると云ふことをしつくりと腹の底に据えて、然る後に政府の諸施設に協力すると云ふ態度に出なければ、何時迄經つても此の事業は立直ることがなからうと思はれます、それには今申上げましたやうに、ずつと上層部に於ける何々會議と云ふやうなものばかりでなしに、末端に於ける國民の聲、之を取入れると云ふ一つの仕組が必要ぢやないかと思はれます、例へば遞信省で言ひますれば各郵便局を中心にし、運輸省で言ひますれば各驛を中心として、一つの協議會のやうなものをお作りになるのも一つの方法ぢやないかと思はれます、是などはやつて直ぐ出來ることと思ふ、大した經費の掛かることぢやないと思はれます、是非さう云ふやうなことに意をお用ひになると云ふことを希望致しまして、私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=51
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052・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 八代男爵の御質問は終了したやうでありますが…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=52
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053・八代五郎造
○男爵八代五郎造君 終りました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=53
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054・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) もう午前の時間も餘りございませぬので、便宜上只今議題となつて居ります外に、此の際追加を致したいと思ひます、さうして尚議員の御都合上簡單な御質問でもございますれば、此の際政府委員の都合もございますから、午前中に願つて置きたいと思ひます、其の議題は昭和二十一年勅令第百二十七號、同じく第百五十九號、同じく第百七十九號、同じく第二百四十二號此の四つでございます、之に付きまして簡單な御質問でもございますれば御願ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=54
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055・田島正雄
○田島正雄君 勅令第百二十七號船舶運營會の昭和十九年度に於ける損失を補填するに要する經費二億四千九十八萬圓、勅令第百五十九號、船舶運營會の昭和二十年度に於ける事業費に對し補助するに要する經費六億圓、勅令第二百四十二號、船舶運營會補助に要する經費一億五千萬圓、以上三件を合計して九億九千九十八萬圓でありますが、此の事柄に付きまして成るべく簡單に運輸、大藏兩省御當局の御考を承りたいのであります、要點は五つであります、第一は、此の船舶運營會に對しまして十億に垂んとする巨額の補助を國家が致すことは、現在の情勢に於きまして、海運事業が重要であり、且緊急であることを御認めになり、又其の經營が收支相償はぬと云ふことを政府に於て御認めになりまして、之に對する國家の補助を與へると云ふ御方針であると解するのでありますが、其の通りでございますかどうか、先づ此の一點であります、若し左樣な御方針であるとするならば、今後も引續き其の方針を踏襲される、從つて相當の國費を以て海運の經營に對する補助を御續けになるものと考へるのでありますが、其の點は如何ありますか、是が第二點でありまです、第三點は、若し左樣な御方針であると致しまするならば、今後海運事業の經營に付て、成るべく其の損失額を少なからしめるべき施策を講じ、從つて國庫の負擔を減少する方針を採るべきものであることに付ては、異論はないと思ひます、斯樣な目的を達しまするに付て差當り二つの點が考へられますので、其の二つの點に付て御意見を承りたい、是は日本の商船と云ふものは、戰爭中に戰時海運管理令に依りまして國家が使用をし、船舶運營會をして一元的に運航せしめて、全面的に計畫輸送をさせたのであります、是は戰時中の事情から致しまして、經濟的考慮と云ふものを超越した措置であつたのであります、左樣なやり方が今日に於ても繼續されて居ります、其の結果が只今此處に出て居りますやうな、相當巨額な國庫補助を船舶運營會に支給しなければならぬことになつたものと考へるのであります、そこで今日或は今後のやり方としては、戰時中に行はれました船舶國家使用制度を廢して、之を各船主に返還し、其の責任と採算に於て運航せしめ、又運賃も現在の物價水準に適合するやうに是正して、自由且活溌なる運營を行はしめることが適切であると考へるのでありますが、其の場合に於きましても或程度の國家統制は必要であるが、之を最少限度に止むる方針を是とすべきものと考へます、又此の考へ方に付きましては、先般對日理事會に於て、商船運航能率改善の見地から略略同樣の趣旨の提案がされたやうに伺つて居るのでありますが、斯樣な方針を御執りになりますることが、今後の海運經營から生ずる損失を相當に減少する結果になるのではないか、又損失を生じました場合、或損失に對しては現在の方針通り國家より補助されると云ふことになるのでありますか、此の點を御伺ひしたいと思ひます、それから今一つは、現在の海運經營が斯樣な巨額な缺損を生じまする今一つの、と申すよりも最も重大なる原因は何處にあるかと申しますると、現在存在して居りまする我が商船の大部分は戰爭中に建造せられました所謂戰時標準船でありまして、性能は頗る惡く、極めて非能率、非經濟的な船舶であります、斯樣な船舶が現在日本商船隊の大部分を占めて居りますことは、誠に已むを得ない結果ではありまするが、併し是が現在の海運經營の損失を生ずる最大の原因であり、此の原因を排除せずして今後に於ける日本の海運の再建と云ふことは不可能である、又從つて現在やつて居られますやうな船舶運營會に對する巨額の補助を繰返した所で、それは一つの燒石に水に終るのではないかと思ふのであります、從つて其の對策として成るべく速かに能率的且經濟的なる船舶の新造の計畫を樹て、之を實行されることが最も緊要なる方策ではないか、斯樣に考へます、然るに戰爭中に於て喪失しました船舶は累計約八百萬「トン」に達して居ります、而して其の八百萬「トン」の喪はれました船舶に對する補償はどうなつて居るかと申しますると、所謂「シー」船と稱する一般輸送に使はれました船舶に對しては、戰爭保險契約に依つて保險金の支拂が既に完了したもの、或は未拂のものがあります、又「エー」「ビー」船と稱せられました軍用船に付きましては、當時の政府の方針に依つて戰爭保險契約に代ふるに國家補償制度を採用されまして、相當の手順と云ふものを經て、保險と同樣の補償をされて居りますが、是等の保險若しくは補償に依つて支拂はれました金がどう云ふやうに今日迄動いて居るかと云ふことを考へて見ますると、戰爭中の船舶喪失率と云ふものは年々非常に急速に進みまして、或場合には、出來たての船が一航海で沈み、或は多くの船は建造後一年以内に沈むと云ふ状態でありましたが爲に、船が沈み、之に對して保險なり補償金が出て船を造り、それが又沈む、謂はば其の間に此の補償、保險の金と云ふものは踊つて居ります、踊りましたが、其の結果、最後に今日殘つて居るものは百五十萬「トン」の素質の惡い船隊と、興業銀行の特殊預金に殘つて居ります全海運業者の預金の殘高が約十四億圓、是だけであります、此の状態の下に如何にして今後の日本商船隊の再建を爲すか、之に付てどう云ふ方針を御考へになつて居るか伺ひたいのであります、それは現在に於て此の興銀に殘つて居ります十四億の預金は、最初は此の金は船が喪くなつた代りに拂つた金であるから、其の外の用途は許さない、言ひ換へれば、船を造る揚合は此の金で何時でも造ると云ふ建前だつたのでありますが、最近に於て是等の預金が凍結せられ、造船に付ても或は現存船の修理に付ても使用出來ないことになつて居ります、此の儘に放置しましたならば現在の船主としては商船隊の再建は出來ないと云ふことになるのではないか、之に對する對策としまして、例へば最近問題になつて居りまする補償打切の問題の如き、之を政府に於て處理せられます場合に於て、此の海運再建の見地から、今申しました預金に對し特殊の考慮を加へ、特殊の御取計ひをなさつて、少くとも此の金は今後の造船資金として利用し得る途を拓くことが必要であると考へるのでありますが、之に付て政府の考は如何でありませうか、更に又假りに十四億の金が全部造船資金として利用し得る状態に置かれたと致しましても、今日の造船價格から考へますると、到底是だけの金額を以て、日本海運の需要を充たすべき造船と云ふものは出來ない然らば、之に對しては、今後作らるべき復興金融會社等より、相當の資金的援助を必要とするものと考へられますが、是等の場合に於きまして、今後日本の産業再建と云ふことを全面的に考へられる場合に於て、此の海運事業と云ふものに對して如何なる程度迄只今御考になつて居るのであるか、左樣な點に付て當局の御考を承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=55
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056・有田喜一
○政府委員(有田喜一君) 一應運輸省の立場として御答辯を致します、船舶運營會の補助金に付きましては、全く御説の通りでありまして、船舶の重要性、即ち國家として最も重要なる物資輸送を預り、同時に復員輸送其の他送還輸送を預つて居り、其の關係上、運營會が之をやらなくちやならぬ、然るに、一方御説の通り非常なる經費が掛つて來る、其の補ひを當然國家はやるべきだ、斯う云ふ前提の下に運營會と云ふものを扱つて居る譯であります、然らば今後はどうなるか、斯う云ふ問題であります、運營會の問題に付きましては、もう一つの御質問がありますから其の時答へたいと思ひますが、海運局として今後補助金と申しますか、補償金と申しますか、さう云ふものを今後繼續するかどうかと、云ふ御質問があつたのであります率直に申しますと、御承知の通り海運は國際的性格を非常に持つて居ります、又同時に、海運は左樣な性質から見まして、自由的に其の企業を進展せしむべきものと考へられます、從ひまして國家の補助、補償、左樣なものなくして海運が發展して行くと云ふことは極めて望ましきことではありますが、一方考へますと、日本は海運の再建なくては今後の日本全體の再建は覺束ない、日本が生きて行く爲にはどうしても海外發展をやらなくちやならぬ、就きましては、其の先驅を爲すものは海運であります、海運の建直しをやること、又今日の海運の現状を見ます時に、御説の通りに非常に劣惡なる素質の船舶では、只今經營的に成立たないと云ふ状態であります、同時に又國内的にも、國家政策の見地より運賃其の他を制限して居りますので、今日の現状では國家財政との方面とも相照しまして、海運當局としましては或程度の助成保護をやつて行かなくちやならぬ、斯樣に考へて居る次第であります、第三に運航體制と申しますか、船舶運營會の問題があつたやうでありますが、先程もちよつと言ひましたやうに、海運は其の本來の性質から見まして、船主に其の船舶を還元致しまして、自由運航の體制に戻すのが本來の姿であると私も思ふのであります、唯、今日の段階に於きましては或程度の統制を加へなければならぬと云ふことも、是は當然であると思ひます、然らば船舶運營會を此の儘置くかと言ひますと、私達と致しましては、出來るだけ早く海運が自由に進展し得るやうな方途を講じたいと云ふ氣持は持つて居りますが、御承知の通り、今日の日本の船舶は百總「トン」以上のものは全部「マッカーサー」司令部に於て管理されて居ります、從ひまして「マッカーサー」司令部との了解なくては、我々の考へだけで此の問題は片付かないのであります、過般對日理事會にも日本商船隊の運營に關する案が上程されましたが、御承知のやうな状況で、對日理事會では一應此の案は「ドロップ」致しました、方針と致しましては御説のやうな所へ持つて行きたいと考へて居りますが、今日の段階に於きましては「マッカーサー」司令部との關係で、私の方からは斯くすると云ふ明瞭なる御答辯を申上げることは出來ませぬので、其の點惡しからず御了承願ひたいと思ひます、それから戰標船を處理して優秀船を新造せよと云ふ御話でありますが、是も御説至極御尤もでありまして、私も左樣な方針で行きたいと云ふ考を持つて居ります、此の點も亦今日の占領されて居る我が國と致しましては、「マッカーサー」司令部の許しなくしては船舶の新造と云ふことは認められないのでありまして、今日認められて居るのは、戰時中造つて居りました三十七萬「トン」の船舶の續行と、最近認められました漁船とか、或は鐵道連絡とか其の他特殊船が或程度認められて居るだけでありまして、世界的に船舶は過剩を呈して居ります現在でありまして、日本の新造を今日許されて居らない状態であります從ひまして、今直ちに私は茲に優秀船を新造すると云ふことも明言出來ないのであります、やがて其の中に平和條約も結ばれることと思ひますが、日本の方針と致しましては出來るだけ速かに優秀船を造つて、さうして現在のぼろ船を整理したい、斯樣に考へて居ります、それから補償金或は戰爭保險の問題に付ての御尋でありますが、此の點は大藏御當局から御答へ申上げるのが然るべきでありますので、私は控へたいと思ひますが、唯海運當局の立場と致しましては御説の通り陸海軍の徴用船、之に對する補償金は、是は實質的には全く戰爭保險金と同樣の扱を致して居ります、私の記憶に間違ひなかりせば、其の補償金の支拂に付きましても保險の掛金相當額を考慮して拂つて居る次第で、何も船主が好んで之をおやりになつたのではなくて、國家の方から、どうせ國が之を負擔するのであるから戰爭保險が付かなくても此の補償制度で宜いだらうと云ふことでやつたのですから、少くとも戰爭保險金と同樣の扱をしたいと云ふ氣持は持つて居ります、又仰しやるやうに船舶は、最初船が沈められて保險金を貰ふ、それから代船を建造して行つて、又それがやられる、又それを保險金を貰つて代船を建造して行くと云ふ工合に、一つのものが二重三重と廻つて來て居る關係もありますので、左樣な特殊性のありますものに付きましては、我々と致しましては十分認識して居りますので、國内的には左樣な點に付て關係方面の了解を得たいと思ひますが、併し本件に付きましては私の方の希望と申しますか、左樣な見解を申すだけでありまして、政府としての答辯は大藏御當局から御返答になるのが然るべきかと思ひますから、其の點御了承願ひます、又復興金融會社より海運再建の爲に大いに融資してはどうかと云ふ御意見でありますが、至極御尤もでありまして先程申しますやうに、日本の再建の先驅をなすものは海運であることは私確信致すのであります、從ひまして他の重要産業同樣、否それ以上に、金融其の他の方面に於て海運に諸般の便宜を供與すると云ふ方に進めたいと考へて居ります、簡單でありますが御答へ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=56
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057・田島正雄
○田島正雄君 只今の海運總局長官の御答辯十分了承致しました、尚最後に御尋ね致しました船舶關係の補償の問題等に付きまする大藏御當局の御答を此の際得られますれば幸であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=57
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058・野田卯一
○政府委員(野田卯一君) 簡單に御答へ致します、補償の問題でございますが、補償と申しましても損失補償でございますが、是は御承知のやうに、十九年、二十年、二十一年と、何れも段々殖えて來て居ります、二十一年度の豫算はまだ提出致して居りませぬので申上げ兼ねますが、是は相當ありますので、今後さう云ふやうな巨額な政府の損失補償を續けて行くと云ふことは迚も出來ないと云ふ見通しを持つて居ります、併し然らば全然やらないかと云ふことになりますと云ふと、斯う云ふことを全然やらないかどうかと云ふことも、是もはつきり申上げられませぬ、能く考慮して見たいと思ひます、それから例の興銀の封鎖預金あれは御承知の通り司令部の方の指令に依つて凍結されて居りますので、之が處理は、御承知の色々な補償等の問題もありますので、それとの關聯も能く考慮して決めなければならぬ、只今どう云ふやうにすると云ふことは今の段階では申上げられませぬ、それから最後に復興金融機關が出來た時にどうするかと云ふことですが、是は出來る時に色々決めると思ひますが、運輸省あたりとも色々相談して見まして、出來るだけ御趣旨に副ふやうに致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=58
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059・田島正雄
○田島正雄君 只今の御答辯で分りましたが、今後共尚此の海運の特殊事情を御考へ下さいまして、補償並に金融に付ては格段の御考慮あらむことを希望致しまして、私の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=59
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060・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 本日の委員會は是にて止めます、次回は來る二十二日午前十時より開會致します
午後零時十九分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=60
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061・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 男爵 周布兼道君
副委員長 子爵 綾小路護君
委員
侯爵 中山輔親君
荒川文六君
男爵 八代五郎造君
男爵 紀俊忠君
男爵 斯波正夫君
種田虎雄君
田島正雄君
澁澤金藏君
小野耕一君
飯塚知信君
膳桂之助君
伯爵 壬生基泰君
子爵 瀧脇宏光君
政府委員
復員事務官 遠藤武勝君
同 荒尾興功君
大藏政務次官 上塚司君
大藏事務官 野田卯一君
同 池田勇人君
同 櫛田光男君
同 江澤省三君
同 河野一之君
專賣局長官 杉山昌作君
農林事務官 遠藤三郎君
運輸事務官 郷野基秀君
同 伊能繁次郎君
同 有田喜一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009000567X00519460718&spkNum=61
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