1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○自作農創設特別措置法案
○農地調整法の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年十月九日(水曜日)午前十時十三分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=1
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002・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 開會致します、赤木君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=2
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003・赤木正雄
○赤木正雄君 私は先づ農林大臣に御尋ねしたいのですが、農林省の前に次のやうな掲示が掲げてあります、讀んで見ます、「農民解放に挺身せむとする職員諸君に訴ふ、第二囘勞働調整委員會より本勞働組合に依頼し來れり、銓衡は同委員全員、農政局二名、開拓局二名、整地課長井上事務官が之に當る、赴任は十一月下旬より」、斯う云ふ風に麗々しく記載してあります、ちよつと私共どう云ふ解釋か解釋に苦しむのです、斯う云ふ世の中が非常に不安の時代に、眞に農民を解放しようと云ふ考へならば、固より今迄地主の惡い所を改め、又小作人の惡い所を改め、本當に敗戰後の日本を建て直さなければならぬ、斯う云ふ氣持に先づ職員からなつて行くべきものと思ひますが、是には農林省の御役人が地方に此の運動の爲に赴任されるやうに私思ふのですが、是はどう云ふ風な御意見でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=3
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004・山添利作
○政府委員(山添利作君) 今度の農地改革の爲には、相當地方の行政機構も充實することに相成りまして、府縣に於きましても農地部を設置することになつて居ります、其の爲に相當人員が要る譯でございまして、本省の方に於きましても農地關係等に所屬して居る者、若しくはさう云ふ希望を持つて居ります者で優秀な人は、或程度地方に行きたいと云ふやうな見解を持つて居るのであります、從つて是等の募集に付きまして、職員組合の方でも協力すると云ふので、ああ云ふ掲示がなされた譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=4
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005・赤木正雄
○赤木正雄君 是は第一社會にどう云ふ影響を與へるか、之に對して先づ大臣の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=5
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006・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 其の文句は實は私は讀んで居ないので、能く分りませぬが、是は結局今度の農地改革の仕事をやります上に於きまして、それぞれの人を必要とする、其の時に、矢張り農地制度の改革と云ふ非常にむづかしい仕事をやる譯でありまするので、それに付て謂はば熟達した殊に熱心にやつて戴ける人を募集すると、斯う云ふ意味なのでありまして、職員組合の方で書きました「ビラ」に付きましても、恐らくそこに別段他意があるとは私は思つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=6
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007・赤木正雄
○赤木正雄君 斯う云ふ要求に對して農林省としては、之に御出しになるだけの十分の職員が先づおありでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=7
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008・山添利作
○政府委員(山添利作君) それは農林省から全國と云ふ意味ぢやございませぬので、農林省からも出し得るだけは出すと云ふ譯でありまして、全體から見ればほんの一部分に過ぎませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=8
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009・赤木正雄
○赤木正雄君 どれ程御出しになるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=9
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010・山添利作
○政府委員(山添利作君) 其の邊の所はまだ未定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=10
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011・赤木正雄
○赤木正雄君 併し斯う云ふ書き物がある以上、農政局二名、開拓局二名、整地課長井上事務官云々と是れ迄書いてあるのでありますから、相當の人員を御出しになるとかなんとか、相當の豫想もついて居るやうに思ふのですが、さう云ふ御豫想もないのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=11
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012・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は是から人を色々募集する關係もありまするし、農林省のみならず地方に於きましても、それぞれの人を矢張り募集する必要があると思ふのであります、それで其の關係の者を本省として今やつて居ると、斯う云ふ譯でありまして、或程度の人に付ての數と云ふものは、是は祕書課の方では大體決まつて居ると思ひますが、其の人數が今どの程度になつて居るか私は聽いて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=12
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013・赤木正雄
○赤木正雄君 農林省としては、開拓事業其の他此の法案の爲にやらなければならぬことがありますから、其の事業の爲に餘程十分な職員が御入用で、斯う云ふことに迄御出しになる餘裕があるかないか、それを私共は第一に不審に思ふのです、現に此の間も大分各官廳で人の整理もされた筈です、それは戰時下に於て餘裕の人は殆どない筈だと私は思つて居りますが、若しも餘裕の人があるならば、當然此の三月の整理の時に御考になつて居ることと思ふのです、さうしたら、眞に國を再建すると云ふ自分の職業に、是は單り農林省のみならず各官廳の職員は眞劍になつてやるならば、是も一つは國を再興する途かも知れませぬが、何だか自分の本當に職場に走るやうな氣持は致しますが、之に對して御意見は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=13
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014・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は農林省は成る程行政整理を矢張り致しました、從つて或程度の人員整理は見た譯でありますが、此の農地制度の改革をやるに付きましては、是は大きな仕事でありますので、農林省の中からしましても、出來るだけ立派な人を割いて、是は本省でやる仕事でもありますし、又地方でもやる仕事でありまして、一貫して居りますので、出來るだけの人を割いてやると云ふことと、今一つは復員者等が矢張り相當あります、斯う云ふやうな人の中には、優秀な人がある譯であります、それ等の人人の中には矢張り、此の農地の仕事に丹念な人もある譯でありますので、さう云ふ人を十分使つて、此の際働いて貰ふと云ふことも考へられます、行政整理の問題とは別個に、十分考へることが出來ると、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=14
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015・赤木正雄
○赤木正雄君 此の掲示の一般社會に及す影響は相當大きいものと思ひます、善い方に解釋すれば非常に結構ですが、惡い方に解釋する者が萬一あるならば、此の不安な世情に拍車を掛けるやうな氣持が矢張り起るかと思ひます、私は是以上申しませぬが、大臣も此の世相を心から御了解して下さつて居ると思ひますから、一層御諒察の上に、尚一般に不安を掛けるやうなことのないやうに特に御願ひして置きます、それから次に開墾の問題に付て……其の前に今度の此の法案は一體小作人が全部自作になり得ることを希望するか、寧ろ從來のやうに、小作の方が却て自分等としては宜いと、斯う云ふ風に思ふのも澤山あらうと思ひます、殊に是は同じ國内でも各地方に依つて非常に相違するので、果して自作農にしたら宜いか、或は從來の慣行に依つたら宜いか、從來の慣行でも惡いことは改める必要はありますが、全國の農民の全體の意思を測る時にはどう云ふものか、非常に私は疑問を持つて居ります、又食糧増産の上に於ても、自作にした方が的確に生産され得るか、從來の方が宜いか、之にも多大の疑問を持つて居ります、併し此の自作農が制定されるならば、之に依つて立派な形を作るのが先づ此の際の途と思ひますが、就きましては、開墾の問題から先づ御伺したいと思ひます、開墾可能の面積は、傾斜が十五度以内の土地で、農地及び農地となり得る面積九百五十餘萬町歩の中から、既耕の面積を差引きました三百六十萬町歩の約七十「パーセント」、即ち二百五十五萬町歩、此の中で緊急開拓事業面積は百五十五萬町歩、斯う云ふ風にされて居ますが、是は有らゆる點に非常に大きな關係があるやうに思ひます、先づ百五十五萬町歩が開墾されるには、多額の費用を要することは今更申すに及びませぬ、從つてそれに適ふ豫算も御出しになつて居ますから、單に此の百五十五萬町歩の開墾可能地は、陸地測量部のやうな、さう云ふ圖面で概略的に、御決めになつたものでなく、相當どの場所にはどれ程と云ふ調査が出來て居ることと思ひますが、此の點は如何ですか、是は政府委員に御答ひ願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=15
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016・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 今御尋の開墾適地の問題でございますが、當初の計畫を樹立した場合に於きましては、過去に於ける、それぞれ府縣の調査竝に又全體的な觀察に基いた所の調査、斯う云つたものを綜合して、百五十五萬町歩と推定されたのであります、其の後各縣に於きまして、精密な調査を現在實行中でございますが、本年の四月迄の各縣からの報告に依りますと、大體八十二萬町歩のものは、何郡、何村のどう云ふ部落にどれ位あるかと云ふ、其の見當は附いて居るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=16
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017・赤木正雄
○赤木正雄君 八十萬町と云ふと大分大きな集團地ですが、それ以下のものに付ては、唯參謀本部の圖面位の調査ですか、或はどの程度なんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=17
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018・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 其の八十萬町歩と言ひますのは、是は小さな段地から大きな段地迄色々あります、尤も其の中には舊軍用地なども含まれて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=18
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019・赤木正雄
○赤木正雄君 八十萬町歩以上でなしに八十萬町歩迄の意味なんですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=19
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020・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 本年の四月迄に精密な、具體的な場所の調査が出來て居りますのは、八十萬町歩と云ふ報告が參つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=20
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021・赤木正雄
○赤木正雄君 昨日どなたかの御質問に、自分で開墾するものは、是は耕地を擴張する意味だから、政府の指定するものには當らない、十分開墾して、自作して差支ないと云ふ風な政府委員からの御囘答と心得て居りますが、さう云ふ風な場所と、或は政府の方で御調査なすつた場所と「ダブル」かも知れませぬが、大體各土地の所有者に、是は開墾するのだ、或はそれには上つて居ないと云ふことを、各所有者に御通知しておありになるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=21
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022・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 其の點に付きましては、各所有者に付きまして、貴方の所有地の此處が開墾地であると云ふ報告はまだして居らないと思ひます、事實其の土地が開發されると云ふ計畫が具體的にはつきりなつてから、所有者に對して此の土地を開墾して宜いかどうかと云ふことに付て交渉が始るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=22
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023・赤木正雄
○赤木正雄君 さうすると、今土地の所有者は直ぐ自分の士地を開墾してもそれが政府の豫定される開墾地と重なることがある、自分が開墾した土地を政府の方で買取られる、さう云ふやうになり得る場所もあるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=23
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024・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 所有者が自から自分の所有地を開發すると云つたやうなことが明瞭に、而も具體的になつて居りますれば、さう云ふ所を強ひて政府の方で買收して取ると云ふことは先づあり得ないと思ひます、唯さう云つた事柄が今迄の事例に依りますと云ふと、相當不明確な點がありまするので、さう云つた場合に於きまして、多數の開拓者が控へて居る今日でございまするからして、さう不明確な状態にして置くと云ふことは好ましいことではないのでございますから、さう云つた點は具體的に調査して、はつきりして居れば、所有者に通知してどんどん開墾するやうに解決して行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=24
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025・赤木正雄
○赤木正雄君 次に昭和十六年以後二十年迄の開發されました土地は、大體一萬八千九百九十町歩、之に對する入植者は九百三十三戸、斯う云ふ風になつて居りますが、さうすると一戸當り大體二十三町歩になつて居ります、どうも非常に入植者が少い、斯う云ふことは昨日委員の方から御質問がありましたが、開墾される土地は一體に土地が地味が惡い、氣候が惡い、交通が不便だ、水利が惡い、謂はば今迄開墾されても喰殘しの惡い土地と云ふ、斯う云ふ風に先づ考へ得るのでございます、さう云ふ所を無理に開墾するよりも今農林省で力を注がれて居られる既開墾地の土地改良の方に主力を注がれた方が生産部面に於ては遙かに増強すると、斯う云ふ風に思ふのですが如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=25
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026・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 從來の農地に對しまして改良を加へまして、其の土地の生産力を増強すると云ふことは、是は勿論大切でございます、併しながら一方に於きまして、從來の農村に付きましては、段々人口が多くなつて參りますし、到底從來の耕地だけに付きまして、如何に單位生産力を擧げようが、相當困難な經濟状況になるのではないかと思ふのでございます、從つて個々の土地を擴げると現在殘されて居る所の土地は、成る程從來の土地と比較しますれば、惡い土地ではございまするけれども、其の土地を改良する、又立地條件に從つて適正な農業經營を營むと云ふことになりますれば、必ずしもさう云つた土地が見込がないと云ふ譯ではございませぬで、現在開墾されて居る所に於きましても、相當の成績を擧げて居るのでございます、是が段々土地が土壤が改善され、又各種の農業經營の技術が浸透して參りますれば、相當な成績を擧げ得るのではないかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=26
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027・赤木正雄
○赤木正雄君 是は結局見解の相違で、成る程開墾をなされて、人口の増すに從つて土地が狹い國でありまするから、耕地を拓くと云ふことは必要でありまするが、生産部面からすれば、果してどう云ふ風にそれが影響するか、殊に開墾される所は、例へて申すならば、昨年の北海道の例の如き入植者が自分達は政府に騙された、折角此處に來ても殆ど何も出來やせぬ、さう云ふことを道廳に訴へて居る事實は澤山あります、全くこんな所に追ひやられるならば、自分の故郷に居つた方が遙かに宜かつた、まるで何にも出來ぬ所に追ひ遣られた、斯う云ふ風な悲慘な話も隨分私共は聞いて居ります、それには開墾される時の先づ仕事をやる人の根本精神が間違つて居りはせぬか、或は土建組合に之を請合はして、實に表面だけはちよつと草を取つて開墾して居ますが、實際仕事に當つて是が農地として生産し得ると云ふ所迄眞心が籠つて居ない、それでは折角百姓共が直ぐ之を耕地にして生産しよう筈がないのです、斯う云ふ風なことに對して今迄の開墾の方法が餘り杜撰、所謂眞心の籠つて居ない開墾が各所にありますが、之に對する政府の今後の御見解は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=27
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028・笹山茂太郎
○政府委員(笹山茂太郎君) 昨年北海道に入植しました者に付きましての御話がございましたが、丁度空襲の最中でございまして、主に都市の人が防空總本部の斡旋に依りまして北海道に行つたのであります、處が御承知の通り都市の人がいきなり百姓になると云ふのでございまして、其の間に何等經驗のない人が多數行つたのでありまして、而も受入の方はそれ程十分でなかつたと云ふやうな關係で非常に不幸な目に遭つたのでありますが、其の後我我の調査に依りますると云ふと、是等の北海道に行つた方が今年の春頃以降に付きましては、相當地に著いた農業經營を致して居ると云ふ報告を受けて居るのでございます、從ひまして今後の入植に付きましては、さう云つた十分經驗のない人には農業の技術を授けまして、はつきりした農業に對する認識を懷かせて入植させることが必要だと思ひます、御話の通り現在入植の關係に付きましては、其の工事を進ませる側に於きまして入植者の氣持になつて十分やつて居ないと云ふ面も確かに一小部分に付てはあることでございます、是等に付きましては、私共の方で工事の設計其の他入植者の斡旋等に付きましては、本當に開拓民の心になつて、開拓民を本當に育てようと指導に付ても強化して參つて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=28
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029・赤木正雄
○赤木正雄君 此の開拓にもう一つ關係することは、開墾された結果水害を助成せぬと、其の結果水害が起つて來る、斯う云ふ所は多少あります、唯山を伐り拓き畑にすれば宜い、それから單に耕地を作れば宜い、さう云ふ觀點から治水に對する考が案外拂はれて居ない點が多くあります、折角開墾されても其の土地が壞はれるのみならず、是が延いては水害の原因となつて既墾、既に出來た土地迄害される、今度の此の法規の缺點の一つは、治水關係の河川にしても、砂防にしても、大部分關係が變つて來ますが、之に對する内務當局の御考は如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=29
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030・岩澤忠恭
○政府委員(岩澤忠恭君) 内務省に付きましては、此の開墾と云ふことに付て相當關心を持つて居るのです、例へば今御話のやうに開墾する場所が非常に土地ならば、河川なり或は又砂防の施設をしないで濟む場所なら宜しうございますが、唯單に開墾すると云ふことに囚はれて、斯う云ふやうなことを顧慮せられてないやうな場所に付きましては、非常に迷惑と心得て居るのであります、それでなくても、此の戰爭中相當山林が過伐の爲に、現在に於ては御承知の通りに全國の河川の水源と云ふものは荒れに荒れて居るやうな状態でありますから、内務省と致しましては今後の治水對策は少くとも山林の土砂扞止、既ち砂防工事に重點を置かなければならない状態であります、又此の食糧増産と云ふ緊迫な問題に對しましても、治水と云ふ事業は少くとも既墾地を防禦すると云ふやうな方面に全力を注いで行きたいと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=30
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031・赤木正雄
○赤木正雄君 今内務省御當局の御意見で能く分りましたが、實際農林省の方の開墾に從事される方、内務省の治水に從事される方が、本當に國と云ふことを考へるならば、一つの點に來る筈でありますが、事實に於てはさうも行つて居らない、動ともすると一方では矢鱈に開く、一方では治水ばかりに凝る、斯う云ふ所は開墾しても宜いと云ふ所でも場合に依つては色々制限を附けることがありますから、それは矢張り國全體として利するものではありませぬから、此の點特に斯う云ふ法規も出來る譯でありますから、農林省當局は内務當局と十分に再び從來のやうな害のないやうに御考の程を願ひます、それから次に今内務省から治水のことも御話願ひましたが、如何に立派な法規が出來ましても、此の先づ農地の確保、是が一番重大で、農地が水で流れてしまふと云ふやうなことでは法規も是は無駄になつて何にもならない、だからして今度の法規では私はどうも適正規模の農地經營迄進んで居らないと思ひます、自作農創設に餘り急なる爲に、適正規模にはまだ考を及ぼして居られないやうに思ひます、併し縱し一町歩の土地でも出來たらそれが十分水害からして免れ、土地の確保是は今後農村に最も重大なことで、又政府としてもそれを第一に御考になるべく、此の法規を運用して本當の日本の農村を作ると云ふ上に最も重大なことと思ひます、處が此の最近十箇年の耕地の流出、埋沒した面積を見ますと二十五萬五千町歩に及んで居るのであります、一方開發されても年々斯う云ふ風に大面積の土地が流れてしまふ、而も是は皆既耕地であるから、今日新たに開發される土地よりも立派な土地です、それが流れてしまふと云ふやうなことでは誠に意味をなさぬ、斯う云ふやうに思ひます、そこで此の治水に對しては此の農地制度を改正と同時に、一層十分御考にならないと折角農林省で期待されて居る眞の農地が活きて來ない、斯う思ひます、是は内務當局も特に其の點は御考へ願へるでせうか、治水の重要性に付ては……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=31
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032・岩澤忠恭
○政府委員(岩澤忠恭君) 其の問題に付きましては、從來から、先程も申上げた通りに、既墾地、所謂熟田の防禦と云ふことに付ては十分考へなければならぬ、斯う云ふ風に方針を決めて居りまして、來年度の豫算編成に於きましても、中小河川の災害防除と云ふやうな點に於て十分な施設を完備したい、斯う云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=32
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033・赤木正雄
○赤木正雄君 從來の内務省の治水はどうか、さう云ふことは私は此の席では詳しく申上げませぬ、農林省としましては、天災に因る農業保險を御考になるやうでありますが、今申した通りに保險を掛けて、それで農地の一部でも再び囘復するとか……、さう云ふ風にするのはもう實に末の問題で、呉呉も申しますが、根本は先づ治水其のものを完全にして、農地の確保を圖ると云ふことを特に御考へ願ひます、次に、一體先程も申した通りに、開發される面積が今後百五十萬町歩ある、それに對しても内務當局の御考と農林當局の御考とは、從來の例に見ますと、動もすると開發可能地或は不可能地に於て、多少意見の相違するのは是は當然と思ひます、だから此の際内務省なり、農林省なり、或は、將來工業を以て、農村の一部を轉化すると云ふ風なことがありますならば、商工省なり、さう云ふ各省を纏めて、眞の國土計畫、何處にどれ程の農地を造る、何處にどう商工地を造ると、さう云ふ風に御考を先づ御決めになつて、それから此處ならば此の土地は開發する、此の土地は或は工業地にすると、其の根本の國土計畫を先づ御立てになるのが最初の道と思ひますが、之に對する農林大臣の御考を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=33
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034・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 開拓に關しまする今迄の御質問に付て、一言私から御答へ致して置きたいと思ふのでありますが、御話のやうに開墾とそれから水の問題とは、是は切つても切り離せない問題でありまして、御話のやうに開墾した爲に却つて山が荒れて、治水の上から云つて好ましくない結果が出て、開墾をしたよりも國全體からすれば寧ろ「マイナス」になると云ふやうなことがありましては、我々が開墾を致さうと致して居りまする目的にも實は副はないのでありまして、從ひまして今度開墾を致しますのは、百五十五萬町歩と云ふ一應の目安は出て居りまするが、未墾地の決定、開墾適地としての決定に付きましては、是は縣に開拓の委員會を作りまして、さうして其處にはさう云ふ專門の有らゆる方面の人に集つて貰ひまして、實際上の技術的な調査等をも基礎に致しまして、是は治山治水の點から行けば、寧ろ山として殘して置く方が宜いんだと云ふやうな所は、第一開墾適地としては決定致さない方針を採らうと思つて居るのであります、從つてさう云ふ所でない所、是は治水の點から云つても寧ろ大丈夫であるし、農地として之を開墾して行く方が適當だと、斯う云ふ所を先づ決定致すやうに致しまして、只今御話になりましたやうな矛盾が起らないやうに先づ致さうと、斯う云ふ考で居ります、それから治山治水の點に付きましては、是は内務省の唯單に河川の補修工事とか云ふものだけでは完全ではありませぬので、先づ山を治めると云ふ點から言ひまして、戰爭中相當の過伐を致しまして、伐採跡地として二百七十萬町歩もあると云ふ現状でございまするので、是等のものは五箇年の計畫を立てまして是非之を緑化して、先づ山に木を植ヱると云ふことから治山治水の根本の策を講じたい、斯う思つて居ります、勿論今年度は戰爭中の關係もありまして、種苗等に付ては不足でありまするので、本年度の四十二萬町歩と云ふものに付ては多少そこに思ふやうな何が出ない點があるかも知れませぬが、兎に角我々としましては計畫を立てまして、種苗も増産致し、山其のものを先づ治めて行く、それと内務省の河川の工事と相俟つて完璧を期して行きたい、斯う考へて居る次第であります、それから國土計畫の問題は、是は御話のやうに、日本の此の狹い國土に於きまして其の資源を最も經濟的に又十分利用して行きまする爲には、何かそこに綜合的な計畫が必要としますることは言ふ迄もありませぬ、唯是が單なる圖式的な「ペーパープラン」でありましては、又局部的な見地からするものでありましては、到底用をなさないのでありまして、それ等の點に付きましては、是は寧ろ内閣にさう云ふものを置きまして、各關係方面の十分なる智能を收めて、之に俟つて計畫を立てるのが宜いのではないか、斯樣に私共は考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=34
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035・赤木正雄
○赤木正雄君 今國土計畫に對する大臣の御意見を承つて、實は私も左樣に考へます、是は單に一省一局の問題ではない、矢張り國全體から考ふべき問題で、農林省の問題でもなければ内務省の問題でもない、又商工省の問題でもない、各省が寄られて十分に御檢討になるべき問題で、今の農林大臣の御意見は非常に滿足する點であります、次に土地の交換分合の件に付て御伺ひしますが、昨日政府委員の御話の土地の交換分合をなさる程度では、まだ私共眞に土地の交換分合が行つて居ないと思ひます、又政府委員も本當の土地の交換分合は尚それ迄には行かないと云ふ風な御答辯になりましたが、併し斯う云ふ風に土地が小さくなりますと、生産の増強には土地の交換分合が一番大事な仕事のやうに思ふのであります、今土地を決めてしまつて、それから後に又本當の土地の交換分合をする、是は折角先祖から代々承けた土地を切離すのであつて、其の意味で此の際こそ土地の交換分合はし易いと思ひますが、一旦自分の土地と決定されてそれから後に又改めて土地の眞の交換分合をされるのは非常に困難である、又農民の自分の土地に對する愛著心、本當に心から自分の土地を耕して行くと云ふやうな氣持を非常に害するやうに私は思ひますが、之に對する御考は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=35
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036・山添利作
○政府委員(山添利作君) 昨日も申上げました通りに、交換分合と云ふことは徹底して行ふべきことであると考へて居りますことは、全く御意見の通りでございまするが、偖て此の土地を買ひ又賣ると云ふ仕事を二箇年間に遂行する譯でございまして、政府が一度買ひまして、さうして全體の農地の交換分合の計畫を立ててそれから賣ると云ふやり方は、實は執つて居りませぬ、土地を買ひまして、原則的に其の土地の上に耕作して居る人に其の儘賣渡すと云ふ方針を執つて居るのであります、さう云ふ方針を執りつつ、其の間事情の許す限り交換分合を致して行く、其の事柄は土地の交換分合と云ふことも一つの大きな目標として土地の買收計畫を立てることが即ち又一面から見ると賣渡し計畫其のものである關係もございまするので、交換分合と云ふこともなし得る限り行ふと云ふことが又土地の買收計畫を立てる目標の一つに致しまして、出來るだけの事情の許す限りの交換分合をやつて參る、併しながら今申しますやうな状況で此の仕事を進めます關係上、どうしても徹底した全體的の土地の交換分合と云ふものは後に殘る譯でありまして、引續き此の農地改革の後に續くものとしての徹底した交換分合は引續いてやつて行く譯であります、此の土地の交換分合と云ふ事柄は前々から色々施設もし又奬勵も致して居りまするけれども、偖て實際の問題となりますと、今日迄十分なる成績を上げて居ると言ふ譯には參りませぬ、寧ろ遲々として、進んで居ないやうな状況でございます、今後は樣子も變り農業の經營方法と致しましても、畜力勞力等を用ひ、中級の農具をも入れて能率的な農耕をやつて參ると云ふ必要もあり、又是は農具製作と云ふ方面からだけ見ましてもさう云ふ機運に向つて居る譯でありまして、況や海外に於ける農業との競合關係等を考へますると、當然さう云ふことに重點を置いて參らなければならない譯でありまして、さう云ふ譯で色々土地の條件から見ましても亦外から農業に要求される刺戟の點から見ましても、亦之を實際に進めて行く農耕のやり方と云ふ面から見ましても略略條件が揃ひつつある事情でございますので、徹底且大規模な交換分合は此の仕事に當然引續いて遂行して行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=36
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037・赤木正雄
○赤木正雄君 徹底的の土地の分合迄は此の際やらないと斯う云ふやうな御意見ですが、それが非常に間違つて居りはせぬか、寧ろ此の際本當に土地の交換分合をされて能率の意義があると考へる、此の際に何とかそれをなさる方法はないのですか、それをなさらない以上は農地制度を改正しても本當の成績は上らない、又一旦農地が決つて其の後に又土地の交換分合をすると云ふのは如何にも無駄のやうに思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=37
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038・山添利作
○政府委員(山添利作君) 農地改革のやり方と致しましては、例へば「ヨーロッパ」の或國で致しましたやうに、大きな所有地を分割して賣渡すと云ふやうな場合、土地の區劃整理なり改良なり徹底致しましてやると云ふやうな方法があります、例へば日本に於きましても、やらうと思へば全體の土地を一度政府の手に收めまして耕地整理をやり、交換分合を徹底してやるなり、理論の上に於きましては考へ得る譯でございますけれども、併しながらさう云ふことを致しまする爲に、相當永い年數を要する譯でありまして、色々農地改革を致しますに付きましては、其の背後にある所の又社會的情勢と云ふことも考慮して置かなければならぬ、此の仕事をゆつくりとやつて居ると云ふことでございましては、果して本法の所期しました意圖が完全に出來上るかどうかと云ふこともございますし、又今の急激なる日本の民主主義化と云ふ任務、國に課せられました任務、又國の要求である所の方向に急速に進めると云ふ爲には、速急に此の仕事を進め、且完了する必要もございまするので、此の際と致しましては、所謂理想的な方法を執つて居りませぬのであります、併しながら簡單に申しますのに此の機會に於て爲し得る限りに於きましては是は極力交換分合を致す譯であります、其の事柄は農地を買ひます、買收計畫を建てます時に一部殘る土地と、國が買收する土地とございますが、其の買收する土地なるものは創設される自作農の耕地が集團化しますやうに、十分なる計畫を致す譯でありまするし、又農地の交換分合等を併せて行ふ爲の規定と致しましては、此の法律の中にも交換分合の強制規定、是は農地に關するものと、小作權に關するものとを二つの場合を規定して居りまするが、是は事情の許します範圍に於て政府の買ひました土地、又買はざる土地との間の交換分合、或は耕作權の交換分合等に依りまして組織される自作農の農地が、可及的に集團化されるやうには是は措置を致して行く譯であります、併しながら耕地の交換分合を徹底して致します爲には、全體の農地を對象と致しませぬければ十分なることも出來ないのでございます、今囘は農地改革、此の農地改革の主要點である自作地化すると云ふことと、又全體の交換分合と云ふものは一應切離しまして、今後の機會に於て爲し得る限りの交換分合、斯う云ふ方法を執つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=38
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039・赤木正雄
○赤木正雄君 今政府委員の仰しやつた通りに、土地交換分合は全體の農地を對象としない以上は出來ないことは當然であります、それを此の際されないと云ふことは非常に遺憾に思ひますが、是は意見の相違ですから仕樣がないと思ひます、次に御伺ひしたいのは土地を買收致しまして、農地證券を發行されますが、是が長い歳月になりますと、今日でも國債が殆ど無價値になつたと同じやうな情勢で、殆どどう云ふ風な價値になるか分らないのでございます、之に對して何か保證の途でも御考へになつて居りますか、是は實は大臣に御伺ひしたかつたのでありますが、如何でせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=39
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040・山添利作
○政府委員(山添利作君) 此の農地證券に付きまして、將來の價値の安定と云ふことでございまするが、長い將來に亙りまして貨幣價値がどうなるか、結局農地證券の價値と申しましても、さう云ふ點に歸著すると考へる譯であります、之に付きましては理窟から申しますれば或程度物價指數等を參酌して、額面額を變へて行く、額面額と言ひますが、年賦金の償還を變へて行くと云ふやうなことも理窟の上では考へ得る譯でございますけれども、さう云ふことは結局非常に煩雜でもあり、實行上困難性を伴ふのでありまして、又何人も將來此の償還期間は二十四年になつて居りまするが、それを通算して眺めまして、貨幣價値が現在よりも上ることになるのか下ることになるのか、是亦豫測も出來ないことでありまして、結局現在の……現在のと申すとをかしいのでありまするが、結局是は貨幣で渡すと云ふ以外に具體的實行し得る所の方法はない譯であります、其の他の原因でです、貨幣價値と云ふこと以外の原因で、此の農地證券をどうとかすることはないかと云ふ點に付きましては、衆議院で質問がございました、それは農地を買ふ人に對しましては農地證券に對する見合の年賦金の支拂額が、通常耕地から穫れます收穫物の價格の三分の一以上は越さない、越すやうな場合は國が減免をし、又支拂猶豫をする斯う云ふ保證を付けて居るのであります、さう云ふ場合に既ち農産物の價格が非常に下落したと云ふやうな場合に、國家として財源に困る、其の場合に農地證券の方を價値の切下げを行ふことはないか斯う云ふ質問がございました、是は絶對にない譯であります、今申しましたやうに貨幣價値のことは考へて居ないのでありまするから、貨幣價値が上りましても下落しましても、是は農地證券の方には影響を及ぼさない、從つて只今の場合でございますると、農産物の價格が下り又從つて貨幣價値から見れば上ると云ふことでありまするが、さればと言つてそれでは農地證券の支拂の方を繰下げて行くと云ふことは、是はもう絶對にないのでございます、それからもう一つ是は謂はば市場金融情勢に依る所の價値維持と云ふ問題でございます、是は農地證券を受取りました地主等の都合に依りまして、之を換金すると云ふ場合は相當あらうかと思ひます、此のやうな場合に於きましては、協同組合等若くは勸銀等に於きまして出來るだけ買入をする、同時に政府と致しましては土地を買ひました人が、通常の年賦償還の外に繰上償還をして來る場合が相當あらうと思ひます、さう云ふやうな財源を以て金融機關が買取りましたものは、買入消却をすると云ふやうな方法を講じて、所謂市價維持と云ふことにも必要なる施設を致して行きたい、斯う云ふ考へで居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=40
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041・赤木正雄
○赤木正雄君 次に此の土地の買收が昭和二十年の十一月二十三曰現在に於ける事情に基くとありますが、戰爭に行つて居た爲め、又此の日に此處に居ないとか、或は買收して居ても處理がまだ役所に行つて書類を出しても完備して居ない、さう云ふ人々も大分あらうと思ひますが、さう云ふ人々に對しては此の日にちは如何御考になつて居りますか、矢張り十月二十三日と云ふことでありますか、特にさう云ふ例外を見て復員した者、書類を出してある者、斯う云ふ人々に對する御取扱は如何でせう発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=41
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042・山添利作
○政府委員(山添利作君) それはさう云ふ特別な事情に依りまして、偶偶其の當時居なかつたと云ふやうなものを不在地主に取扱はないのであります、大體此の法律に於きましては、農地の所有關係、主として面積に關する適用でございますが、是は家族單位と云ふことに致して居るのであります、そこで特別なる事情で、外に居りましたものに付きましては、それが不在地主になると云ふことがないやうに法律の中に特別の規定も設けて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=42
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043・赤木正雄
○赤木正雄君 もう一つ、北海道のやうに採草地として大きな面積を持つて居る、斯う云ふ風な採草地も矢張り農地の對象になるのでせうか、どうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=43
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044・山添利作
○政府委員(山添利作君) 採草地は此の法律に言ふ所の農地ではございませぬ、併しながら牧草を栽培して居ると云ふことになりまして、肥培管理をすると云ふやうなことでございますれば、是は農地に入ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=44
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045・赤木正雄
○赤木正雄君 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=45
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046・久松定武
○伯爵久松定武君 私は六點に付て質問を致したいと思ひます、先づ第一に在村地主の所有地が北海道に於ては四町歩、内地に於ては一町歩、自作農兼小作人は内地に於ては三町歩、北海道は十二町歩と決定致されましたが、其の理由如何と云ふことと、第二は現存の自作農に對しては、其の所有地は何等制限なきも、今度の農地法に於ては、小作人で農地を所有する場合にも、矢張り制度なきやうに思はれますが、其の點如何でございませうか、第三點は今後農地は自作農創設の爲に、小作人或は自作農竝に小作人共同の共用地として所有し得るでありませうか、それから第四點は市町村農地委員會の委員が今度減ぜられた理由は如何なる點にありますか、第五點は自作農創設に依り、近き將來我が國の人口を養ふ點に付きまして、どの程度主食物の増産が可能であるかと云ふことを御説明戴きたいと思ひます、第六點は大農場の經營に對する政府の將來の方針如何、此の六點でございますが、先づ第一の在村地主の所有地が北海道四町歩、其の他は一町歩、自作農兼小作人が内地三町歩、北海道を十二町歩と致した理由でございますが、是は即ち人口に比例して、さう云ふ風に割當てられたものでありますか、或は企業經營面より割當てられたものでありますか、或は又兩者併用したものでありますか、それとも全然別個の考より立案されたものでありませうか、此の點を御伺ひ致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=46
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047・山添利作
○政府委員(山添利作君) 先づ内地と北海道との關係でごさいますが、内地一町歩に對して、北海道は四町歩、又内地三町歩に對して北海道十二町歩と云ふやうに、四倍になつて居ります理由は、主として土地の生産力、土地の農耕的價値から見たのでありまして、其の他の人口と云ふやうなことを考へた譯ではございませぬ、大體内地に於きましては耕地は平均一町歩程度になつて居るのであります、是は北海道も含めたものでありまして、内地だけにしますと、更に切下がる譯であります、北海道に行きますと御承知のやうに十町歩位やつて居る所は決してむつかしくない、或は二十町歩以上やつて居る所も相當あるのでありまして、土地の、區劃割も五町單位になつて居ると云ふやうな譯でありまして、さう云ふ土地の生産力の差異と云ふことを決定の基凖に致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=47
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048・久松定武
○伯爵久松定武君 尚其の點で伺ひますが、内地は平均一町歩となつて居りますけれども、假に東北地方の如く一毛作しか出來ない地方と、九州地方の如く非常に多方面に亙つて生産を爲し得るやうな土地とがありますので、是は結局寒冷地帶に對しては多少土地を廣く持たし、九州方面或は靜岡縣の如き暖國に對しては、面積を多少狹めると云ふやうな御考でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=48
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049・山添利作
○政府委員(山添利作君) 此の前の農地調整法に於きまして、保有面積は平均五町歩と云ふことになつて居り、之を縣別に御承知のやうに定めて居りますが、此の定めました時の基凖と致しましては、大體先程申上げましたやうに土地の價値と云ふものを基準にして等級を決めて居るのでありまして、是は土地から生産されます農産物の價格なり、又自作農創設の場合に、最高面積と云ふのを作つて居ります、所謂適性規模と云ふことに合致する面積もありますが、それ等のものを參酌致しまして、面積を各縣に割つて居ります、之に依りますと中心地から多い所と少い所と、大體三割程度の開きが出來て居る、一町歩を取つて見れば、東北が一町三段と云ふやうな決め方に大體なつて居ると思ひます、今囘は此の一町歩及び内地三町歩に付きましても、それぞれ縣別に中央農地委員會で定める譯でございまして、此の一町歩を決めるに付きましても、矢張り土地の價値と云ふことも標準の一つになるでありませうし、又人口と農地との關係と申しますか、一戸當りの耕作面積はどの位になつて居るかと云ふことも標準になるでありませうし、又其の點に於きまして、耕地の中で小作率が幾らを占めて居るかと云ふことも標凖になるでありませう、それ等のものを勘案致しまして、結局結論的に中央農地委員會に於て適等な數字が決まる、其の結果は只今御話になりましたやうに、西の方では少く、東北の方では稍稍多いと云ふやうなことになる譯であります、又平均三町歩は特に是は農業經營に關する面積でございますが、土地の生産力でありまするとか、或は其の地方に於ける一戸當りの耕作面積と云ふやうなものを勘案されまして、矢張り東北と關西と、それぞれ違つた面積が定められると云ふ風に考へて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=49
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050・久松定武
○伯爵久松定武君 第二の質問の現存の自作農に對しては、其の耕作地は目下の處は差異はありませぬが、それと同樣に今度の農地法に依つて、土地を所有せざるものは、どの程度迄農地を所有することを許されるかと云ふ點がないやうに思ひますが、此の點は如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=50
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051・山添利作
○政府委員(山添利作君) 現に自作を致して居ります場合に於きましては、土地の所有に對する制限は原則的には全然ない譯でございますが、小作の場合はどうする、茲に廣い小作地を借りて農業をやつて居る小作者があつたとして、其の人が五町歩も六町歩も一人で買へるかどうかと云ふ斯う云ふ問題に歸著する譯でありまして、是は成るべく多くの人に土地を持たせると云ふことを目標に致す必要があるのでありまして從つて此の小作者が買受けます小作地の面積に付きましても、自からそこに制限がなければならぬと考へて居るのであります、是は第三條の第三號に一應經營の標準としての面積と、それから所有面積と云ふやうなものを勘案致しまして、三町歩と云ふやうな基準を取つて居りまするので、其の邊が一應最高の目安になりますると同時に、兎も角も他の人が土地が買へないのに一人の人が多くの小作地を買ひ得ると云ふことは、是は制限を致したい、其の事柄は規則等に於て規定を致したいと考へて居るのであります、併しながら御斷りして置きまするけれども、是は現に經營して居る小作地を自己の所有にすることに付ての制限でありまして、其の經營を侵す譯ではありませぬから、從つて今小作して居る部分は其の儘小作を致して居る譯でありまして、政府としてはさう云ふ場合の小作地は成るべく買收計畫の中に入れない、假に買收致しましても、直ちに其の人に所有權を移すと云ふことを留保して置く、斯う云ふ取扱をする積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=51
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052・久松定武
○伯爵久松定武君 第三の質問は自作農創設の爲に共有地を許されるか如何と云ふ點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=52
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053・山添利作
○政府委員(山添利作君) 元の土地所有者と新しく自作農になります人達の共有地になりますことは是は認めませぬ、併しながら小作人が集團的に買ひます土地を共有にして置きたいと云ふ場合が災害に對する配慮等から極めて稀ではございますが、必要ないとは言へないのでありまして、さう云ふ特別事情があります時には、其の事情に即して小作者の共有地と云ふものが考へられるかと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=53
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054・久松定武
○伯爵久松定武君 其の場合には矢張り三町歩以上と云ふことは許されますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=54
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055・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是は共有地になります場合には當然廣い面積になる譯でありますから、三町歩の制限と云ふことは何等關係はございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=55
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056・久松定武
○伯爵久松定武君 私の質問の第四點は市町村農地委員會の構成人員を減じたのは如何なる點にあるのでございませうか、是は私として考へますのに、先般の大臣の御説明に依りますと、小作人の有利の爲に減じたと云ふやうな御話でありましたが、私の考へます所に依りますと、我が日本の都市なるものは英米の都市と餘程趣を異にして居るやうに私は存じます、所謂英米で申します「シテイ」、「タウン」なるものは、都市又は町、其の字の通りの解釋が出來るやうに存じますが、日本の都市或は町に於きましては、農村と非常に密接な關係がありまして、大都市、或は中都市、或は町に於きましても、其の町、市街地の周邊の農村部落を合併なつて居る町が多いやうに思ひます、甚しき都市に參りますると、殆ど一郡の大部分を都市に編入して居るやうな例もございますが、是から考へますと、さう云ふ日本の町、市の如きは非常に農村と密接な關係がありますし、學識經驗者も多分に其處に存在して居るのでありますが、此の點は英米と餘程趣きが違ひますので私はさう云ふ學識經驗者を委員に入れられる方が非常に公平を期せられるやうに存じますが、其の點如何でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=56
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057・山添利作
○政府委員(山添利作君) 此の市町村農地委員會の變りました點は、土地を買ひます小作者の方と、土地を所有して居ります側とを對等の數に致したことであります、是は今迄自作農階級に屬する者、此の中には自作兼地主の者、又自作兼小作の者も含んで居る譯でありますが、之を一つの「カテゴリー」に屬する人達と考へて居つたのでありますけれども、大體さう云ふ人達の社會的に屬する階級と申すと、言葉が大きくなりますけれども、層と云ひますか、又實際の農業經營に於ける關係等から見まして、大體此の人達は土地所有者、地主に近い立場にあると云ふ考を以ちまして、從來の地主に屬する人と、又自作階級に屬する人とを合せまして、土地所有者として之を小作側に對立した立場に置いて一纏めに致しましたのであります、是は日本の現在の農村の事情から見まして、今囘の農地改革を行ひますには、適切且理由のある改正だと、斯う云ふ風にしなければならぬと考へたのであります、それから從來は三人の地方長官の選任した徳望經驗ある者も委員として加つて居つたのでございますが、今囘は之を必ず設置すると云ふことに致しませぬで、市町村の農地委員會が成立を致しまして、其の選擧された委員の間で第三者に屬する委員が加はつて貰つた方が運營上宜しい、又是は土地計畫を立てる譯でありまするから、さう云ふ專門的な知識を持つて居る人が參加をして貰ひたいと云ふので、皆の意見が一致しました場合に、三人以内を設置すると云ふことに致したのであります、法案の上から見ますると、地方長官が任命をする、從つて其の任命をするのに付ては各委員の同意がなければならぬと云ふ風に規定してございまするけれども、實際の運用方法と致しましては、選擧をせられました農地委員が全員で以て推薦する人を三名以内地方長官の任命と云ふ形で委員にする、斯う云ふ風に致して居るのであります、是は自らさう云ふ人が此の市町村にあるかどうかと云ふことにも關係致しませうし、又小作と地主側の空氣と云ふやうなものも關係致しますでありませうし、うまく人もあり、又氣分も纏つて、さう云ふ第三者委員を置くと云ふ時には置き得る所の途を設けて居る譯であります、それから人數其のものは前でございますと全員十八人でございました、是は今囘に於きましては選擧される委員は十名でございまするが、併し是も部落數が非常に多いやうな市町村に於きましては之を倍數の二十人迄殖やし得ると云ふ規定を設けて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=57
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058・久松定武
○伯爵久松定武君 第五の質問は此の農地法改正に依りまして、又自作農の創設が出來ましたに付きまして、近き將來我が國の人口を養つて行くのに自給自足の域には少くとも行きたいのでありますけれども、なかなか此の點も困難な點を含みませうが、今後技術又は肥料の十分なる配分等に依つて、近き將來に於てどの程度主食の増産が可能になるか、其の點を伺ひたいと存じます、それで一例を擧げますると、過去に於て第一次の歐洲大戰の時に我が國の人口は現在よりも僅少ではありましたけれども、肥料の非常な豐富な爲、其の他に於て、大體朝鮮米、臺灣米を除いても、我が國は人口を養ひ得た、自給自足の域に先づ達して居つたやうに存じますけれども、肥料の今後の増産、或は田畑の所謂農地の増産に依つてどの程度迄今後人口を養ひ得る域に達するか、其の御見込、見透しは如何なものでございませうか、其の點を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=58
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059・山添利作
○政府委員(山添利作君) 其の點は自作農創設其のものと云ふことよりも、他の色々な條件が多い譯であります、確實なことは申上げる譯に行かないのであります、自作農にすると云ふことだけで、どれだけの利益があるだらうかと云ふことに付きましては、此の差上げてあります統計資料に依りますると、自作地と小作地との生産の比較では自作地が概ね四「パーセント」前後多いと云ふ結果になつて居るやうであります、併し一般に謂はれて居ります所では自作地の方が一割位は小作地よりも生産が上つて居る、斯う云ふ風によく謂はれて居るのが普通であります、併し今囘の自作の創設を致しまする場合に於きましては、まあ今迄さう云ふことが謂はれて居つたと、又さう云ふ結果があると云ふことの外に、農業の内部に農業經營から生じまする餘裕が其の儘に、又再投資をされる、即ち農業の高度化と申しまするか、肥料も使へば農具も改良農具を使ふ、家畜も補給をすると云ふやうなことに依りまして、相當農業が發展して行くと考へられて居るのであります、之を數量的に見積ることは出來ませぬけれども、色色な農業經營を構成する要素に於て、それぞれが發展をして行く、若し他の肥料でありますとか農機具でありますとか云ふ生産が進みますならば、農業の方に於て之を受入れ得る所の經營上の餘裕と申しますか、餘地と云ふものが此の自作農創設に依つて作り出される譯でありまして、相當さう云ふ農業經營の構造の變化、生産力の發展と云ふことが期待し得る譯であります、併し此の事は同時に又農業外の生産にも係つて居る譯でありまして、農業だけで實現し得る譯ではない譯であります、さう云ふことを數字的に見積りますことは出來ませぬのでございますが、昨年の秋聯合軍司令部の要求に依りまして、今後五箇年間の農業の生産計畫を提出したものがございます、此の生産計畫は特別に戰爭中のやうな氣分で、希望を持つて實際生産されるであらうと云ふ見込にした數字ではないのでありまして、普通な氣持で事實達成せられるであらうと云ふ計畫を作定したことがございます、それに依りますると、米に付きましては千九百五十年度の供出量と致しましては、一千八十四萬三千「トン」出來ると云ふことになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=59
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060・久松定武
○伯爵久松定武君 石高で申しますと発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=60
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061・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是は六倍をして戴きますと、普通使つて居ります石「トン」の換算になります、一「トン」六石乃至六石半と云ふ譯であります、それに對して米の需要量を差引いて見まして、約三百萬「トン」足りないと云ふことになつて居る譯であります、處が此の米の需要量と申しますのは、今の統制に於ける配給量を基凖としたものではございませぬ、自由に食つて居る時代、申換へますと四百萬石以上も酒で飮んで居つたと云ふ時代の消費量を基礎に致しまして、人口増加等を考へました需要量と對照致しますと、約三百萬「トン」足りないと云ふことになつて居る譯であります、それから麥類でございますが、是は供給高が同じ年度即ち千九百五十年度に三百八十一萬一千「トン」でございます、是は需要量と對照して見ますと、二十五萬六千「トン」の不足と云ふことになつて居ります、斯う云ふ風に自由なる消費を考へまして、穀類に於きましては「マイナス」でございまするが、芋類に於きましては是は相當餘ると云ふ計畫を立てて居る譯であります、是は甘藷に付きましては供給高が八百六十六萬二千「トン」、而して需要度の差に於きまして「プラス」になりますものが四百十六萬九千「トン」、馬鈴薯に於きましては供給高が四百十七萬五千「トン」、「バランス」に於きまして「プラス」になりまする部分が二百九十三萬六千「トン」と云ふ譯でございます、是は過去に於ける芋の消費が少かつた時代を基礎に致しまして、一定の趨勢に依つて考へた數字でありますから、斯う云ふことが出て來る譯でありまして、先程申しました米や麥の「マイナス」が芋で埋められて來る、斯う云ふ關係になる譯であります、さう云ふ風に致しますると、是はまあ相當程度埋め得る譯でありまするけれども、併し尚相當程度は「マイナス」になると云ふこことは、是は全體としまして免れない状況にある譯でございます、將來のことを必ずしも確實に申上げることには行きませぬけれども、一つの作られた資料を參考にして申上げれば斯う云ふ状況であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=61
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062・久松定武
○伯爵久松定武君 尚最後の質問でございますが、大農場經營に對する政府將來の方針如何、詰り農地委員會の運用如何に依つては此の大農場經營は壓迫されるやうな懸念がないとも考へられないのでありますが、此の大農場段當收穫率は小農に比して低きものは當然でありますが、今後開墾すべき場所は、特に牧畜を主とする方が宜いやうな土地は必ず其の地味が惡いのであります、就ては大農場の經營がさう云ふやうな土地に於て發達をしなければならないと存じますが、唯茲に大農場の經營に依りますと、農村の人口の過剩を來すと云ふことは考へられますが、是は假に工業方面に向けて解決すると致しましても然るべきとは存じますが、此の大農場法の經營に對しては政府の御考は如何なものでございませうか、其の點を御伺ひ致したいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=62
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063・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は大農場でありましても十分自作と言ひますか「ファミリー・ファーマー」としての大農場でありますが、適正にやられまするものに付ては、是は何等制限をすると云ふ考は私は持つて居りませぬ、殊に開拓地などに於きましては、寧ろ資本を投下し實際上の良い意味の大農揚と云ふものが是は恐らく牧畜も入り、色々の形になります、それが入りますことは、是は日本の農業に取つても相當生産力が高いものでありますれば、是は喜ぶべきことだと思ふのでありまして、必ずしも是は全部が全部小さな農業經營をやつて行くやうになると云ふやうなことは、寧ろ國全體の農業生産力の點から行きますれば餘り好ましくないのかと思ひますので、大農場に付てはさう云ふ態度を私は持つて居ります、殊に日本は面積だけでは實際上は言へないのでありまして、農業が行はれます場所又は其の場所の持つて居る地力、それから經營の形態、それから作られます作物、さう云つたやうな色色なものに依りまして自づと其處に自作と云ふ自己經營と云ふことを中心にして考へますれば、まあ適正なと言ひますか「オプティマム」な經營、生産度の高い經營と云ふものは恐らくそれぞれあると思ふのであります、さう云ふものに付ては何等制限して行くと云ふ考はございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=63
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064・久松定武
○伯爵久松定武君 分りました、私は是で質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=64
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065・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 久松伯爵の御質問に關聯して質問をしたいと云ふ御希望が御二人ございます、松尾さんと土屋子爵であります、松尾さん昨日から順番も來て居りますから発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=65
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066・松尾國松
○松尾國松君 松尾は昨日法制調査會に出席しまして十七時半に終りました爲に、此の會を缺席致しました、從つて私が承りたいと思ふことは外の御方から御質問があつたかも知れませぬ、それは多少やヱる所があつたら、さう云ふ意味で御了承を願ひます、但し出來るだけさう云ふことのないやうに承りたいと思ひます、又昨日牧野先生からも色々御尋がありましたが、私は第一線に居る者として非常に能く分るのであります、さう云ふ意味に於て尚さう云ふ方面にも承りたいと思ひますが、承ります前に、私は私の基本的考と云ふものを簡單に申上げたいと思ひます、私は實は敗戰日本の今日、文化の日本を再建するに付ては、我々の先祖が教へて置いた働く者は飢ヱず、斯う云ふ金言を今思ひ出さざるを得ぬのであります、此の農地法の改正に付きましても、さう云ふことが主になつて居ると存じます、此の祖先の殘した意味と云ふものは、私に申させれば、政治家、或は言葉を短く申せば、學者、法律家、教育家、宗教家、官吏竝に農工商は申すに及ばず、全國民が此の考を我々日常の職場に於て其の持場に於て誠實に之を現實に實行することであると存じます、此の頃皆樣も御覽になつたでありませうが、全米の商業會議所の會頭の「エックス・エー・ジョンストン」ですか、是が全米の資本家に向つて新經濟政策を説いて居ります、又全米の勞働者に向つて新經濟政策を呼び掛けて居ります、此のことを讀み考へて見ますと、今日我々は申すに及ばず、資本家も勞働者も、就中教育に從事する學者、官吏が最も氣を付けて、我々は敗戰日本の立起る意味に於て參考とすべき新經濟政策であると、斯う云ふ風に存じます、私は斯う云ふ觀點に於て御尋ね申すのですが、私常に各委員會に於て或は法制調査會に於て論陣を張ります趣旨は、今日の行政は遺憾ながら我々は見るに堪へぬ状態であります、例へば思想の不安なること、一々申す迄もなく、新聞に通じて居る、是は色々な言ひ方があります、或は政治の不信であり、或は食物の不足であり、或は資本家の「サボ」であり、或は勞働者の無理な注文であり、勝手なことを論じて居るのであります、而して資本的のことを言へば、或は是は反動と稱し、或は向ふ見ずのことを言はなければ進歩でないと云ふやうな意味に於て、非常に押され氣味でありまして、從つて我々が此處で色々研究をし、獻策をし、承つて意見を交換することに於きましても、松尾の考へる所では何となく舊い型の臭みを松尾は感ずるのであります、政府當局はさうでないかも知れぬ、松尾の想像する所、松尾の匂を感ずる所に依ると、先づ説明をして置けば宜い、斯う云ふことで、過ぎ去れば又何とかなるであらうと云ふやうなことでないかと云ふ風に、匂ひを感ずるのであります、私は年も取つて居りまするし、失禮ながら政治の裏も表も承知して居る積りでありますが、一體此の頃は斯う云ふ問題があるのであります、或地主の有力者から私の所へ農地法の規定に付て不滿がある、實際に於て政府の所期する目的は是では達しられない、斯う云ふことを相當な思慮、學識ある人が愬へて來て居ります、そこで私は斯う云ふ風に言つたのです、それは自分も能く分る、自分も能く分るが、併し此處に僕は十五種の專門家の書いた書物…… 所謂日本の……所謂と申します私は…… 所謂日本の自ら學者と稱する者、若くは其の他、主義者と稱する人色んな人が書いて居る書物を殆ど要點だけ眼を通した、併し是は一面に於ては理論である、此の理論を更に科學的に對抗するだけの意見を發表しておいで、地主が全部揃つて發表しておいで、さうすれば僕がどんなことでもやる、やるが併し僕は自分一人で是を讀んで、自分の此の讀んだ中にも、所謂日本の學者の書いたものの中にも、甚だ感心しないものもある、あるけれども、是も時勢である、大體そして我々は今「ヨーロッパ」の前世界大戰後に於ける世界各國が、土地の問題に付て非常に惱んだ、其の惱み丁度今日本へ來て居るのであつて、何も今主義的には進歩的とか退歩的とか、そんな小さいものぢやない、前世界大戰後に世界が四つの土地制度の改正型を捉へて其の波に乘つて來たのである、而して今日の日本はどうであると云ふと、千九百二十三年の「イギリス」型を取つたのである、唯「イギリス」型を取つたけれども、「イギリス」の土地代金は六十七年半を期限として居るが、日本は二十四年に縮めただけである、併し唯此處で問題が起る所は、政府は此の改正に依つて耕作者の安定と、耕作者の生活水準を向上すると云ふことと、又過小農を中農にしよう、中農と云ふことに付ても標準は色々ある、專門家に依つても違ふが、我々はまあ中農と稱すれば、一町五段を耕さなければ日本に於ける中農ぢやないと思ひます、だから中農にすると云ふことも結構であるが、之を本當に考へるかどうかと云ふことを、地主も何もかも考へなけにやいけない、斯う云ふことを私は申して居る者でありますが、それで色々皆さんが御聽きになると、強いことを言ふと云ふ方があるであらうし、或は事實を能く言ふと云ふ人もあるだらうが、私は今日の政治と云ふものは、最も現實を理想と相接近せしむることに於て成果が擧がるものである、斯う考へて居るものであります、理想は空想に終ることは申す迄もない、理想が低くてもいかぬ、併し理想を高きに及ばむとする爲には其の現實に足が著いて居らなくはいかぬ、であるから此の頃私は和田農林大臣に對して、林産組合の時に、あなたは素人であるから私は大いに希望を持つ、何故と云ふと、今迄役人の玄人と云ふものは部下の意見の申達を大體受けるだけで、それであるから素人の農林大臣に最も期待する、斯う申して私は色々意見を承り、申上げたのであります、殊に物價次長に對しては私は可なり強く迫りましたのであります、さう云ふことで此處で何が爲に繰返すかと云ふと、此の農地法は私は今後日本の再建に於ける基礎産業として最も重要なものである、最も大切なものである、殊に此の我々三千年の歴史に依る農業と云ふものは、申上げる迄もなく我が國の傳統精神であります、決して私はそれを封建制の維持とか何とか云ふやうな、さう云ふ下らない半可通の言ふやうな意見ぢやないのであります、私は日本建國以來の傳統的堅實なる、眞面目なる道義心を持つ、之が始めて再建日本の大和民族の精神なり、文化日本を建設する第一の要件である、斯う云ふ風に考へて居るものでありますが、さう云ふ意味に於きまして、果して此の目的が達せられるかどうであらうか、斯う云ふことを考へるものである、文化日本再建の基礎産業として、最も重要視し、最も注意をして、さうして此の目的を達したい、斯う云ふ意味に外ならぬのであります、それで私は其の話を結ぶ意味に於て申しますが、農林大臣のさう云ふ方面に素人であると云ふことは、新しい意味に於て考を定められるに付てのことを希望して居るのであります、故に強く申すのであります、物價次長にも私は可なり強く申したのであります、簡單に其の例を申すと、木材の統制が七萬二千六百種あります、今日でも二萬餘種あるのであります、物價次長に二萬餘種のものを一つでも貴方は御存じになりますかと言つたら、知らないと仰つしやつた、知らないでどうして基本計畫が立ちますか、今其の統制の爲に統制を紊し、統制を破り、統制が分らぬと云ふのは實際に於て誰も知らないからであると云ふことを申したのでありますが、私は兎に角色々な意味に於て申上げて居ると云ふことは、再建日本に於ては政治の首腦部、各省の首腦部が、決して一專門家の一方的の考ありとすれば、それに偏らず、又惰力的の國民的の考に偏せず、全く之が再建の方途であると云ふことを新たに案出し、新たに工夫し、さうしてやつて貰ひたい、斯う云ふ意味に於て私は農林大臣にも林業法案の時に申したのであります、で今も申上げることはさう云ふ觀點に外ならぬのであります、勿論私一人ぢやない、皆樣も其の御積りに相違ないのでありますが、私の質問に於て私の切つ先きが強いと云ふことは、今日の再建日本にはもう少し眞劍になつて貰はねばならぬと云ふ誠實なる意味に外ならぬのであります、それに付て農林大臣にさう云ふ意味で承るのでありますから、私は必ずしも細かいことを農林大臣に承らうとするのぢやないのであります、併し今後此の改正法案を實施して貰ふ上に於ては少く共此處で論議されることは、參考にはされると思ふ、今迄でありますと、濟めば、あれはああ言つたがで濟んで居つた、それであるから議會の速記録を讀んで見ても、勅令になつて出たのを見ると、大變違つて居る、私は其の當時の議會人に時時言ひましたが、あれぢや速記録と違ふぢやないか、いや役人なんて云ふものはあんなものだよと、どつちがどうだか分らぬやうなことがあつた、是は例を申すと幾らでもあります、さう云ふ時に私は心安い議會人を捕へて怒鳴りつけたことがある、そんなたわけたことがあるかと、いやそんなこと言つたつて仕樣がないんだよ、誰が惡いと云ふことでもないが、さう云ふことがありましたが、今日ではそんなことをやつて居る餘地がない、我々は年を取つて居るだけぢやない、如何に專門書や、新しい書物に眼を曝しても、どうしたら宜いかと云ふことに付ては、なかなかむづかしい問題でありますが、殊に昨今の新聞を御覧になつたら、私は大臣の職に居られる方に、何と考へられるかと云ふことを聞きたい位である、別に御尋はしないが、聞きたい位である、實に情ない世相であると思ふ、さう云ふ意味に於て私は一つ承りたいのでありますが、此の小農を中農に引上げる、此の頃の專門書を讀んで見ると、色々なことが書いてある、貴方方も御覽になつたと思ひますが、中農がどうとか、小作が貧乏して居るとか、此の私よりうまいことを列べて書いてある、之を衆議院の或人に見せたら、なあに此の頃は色々あんな詰らぬものが出て來るのだ、そんなら貴下はそれを反駁したら宜いぢやないか、いや反駁しても我々の聲は小さいし仕方がない、斯う云ふ話であつた、私は決して私自身は地主でもなければ、小作でもない、私は經濟的にも濁立獨歩の人間であります、さう云ふ立場から眺めて居つて、必ずしも地主だけが惡くはない、地主にも惡い者が居るが、小作にも改むべきものが澤山ある、斯う云ふ點は農林大臣も能く御承知になつて居ると思ふ、私はもう一つそれに付て始終考へるのでありますが、私は實は色々な方面に知己を持つて居る、實は學者にも知己と云ふか、親戚と云ふか持つて居りますが、君の親は一體どう云ふ人か、親は資本主義でちやんと育てて君を博士にしたんぢやないか、今をかしなことを言つて居るのは、是はさう云ふ世の中だから仕方がない、そんなたわけたことがあるかと言つて笑ひましたが、私は實に面白いことを言つて居ると思ふのでありますが、人生の眞理を言つて居る積りであります、働けば飢えずと云ふことは、古今東西を通じて、我々の先祖が言殘した一つの人生哲理と考へて居るのであります、それに付て田畑で御承知の通り耕地は六百萬町歩あります、其の中を先程來赤木さんからも、殊に牧野先生は中農をどうする、中産階級をどうするかと云ふ御意見でありますが、是は御尤もでありますが、それをするのには先づ六百萬町歩に對し農家數三百萬戸にする、さうすると一戸當り二町歩で、稍稍中農になる、中農になると一家に成人の可働勞力を、假に二人半と致しますれば、さうすると一反一日一人當りになる、一反一日一人當りになると、稍稍狹いが、それでは足りなくはないことになる、二町の地主になると、金融も若干出來、資本的にも働ける、文化生活も出來る、子供の教育も出來る、所謂今日世の中が要求して居る所の生活水準の向上と安定が圖られる、御承知の通り「イギリス」は昔から地主と、小作人と、勞働と三つで成立つて居る、斯う言つて居つたのでありますが、それが世界大戰後に於て、勞働と、小作が離れて來たことは御承知の通りであります、日本は此の流れを汲んで今度は所有と小作を一緒にしたのであります、是は新憲法の上から言へば、所有權には義務が伴ふ、勞働者にも、牧野先生から御話があつたが、義務が伴ふ、所有と勞働を一元化して、權利が二が一になる、義務も二が一になる、斯う云ふことで非常に働き易い、斯うなると有畜農業も出來るし、又農業の機械化も出來ます、農地の改良も出來る、一昨日農村の地主がなくなつたら指導者をどうするかと云ふ御尋がありましたが、私もそれは心配して居るのでありますが、併し農村に於ては、土地を所有して居つて初めて指導階級となれるけれども、貧乏なものになつてしまへば、指導階級にも何にもなれない、一町ばかり持つて居つても指導階級でも何でもない、斯う云ふことになります、だから優良地主を指導階級にして置たならば、指導者として、精農に續いて、優良指導者の力を保たしめるには、共同耕作の面積を、三町歩迄は許すと云ふやうなことが伴はなければ、指導者にはなれぬと思ふ、兎も角どう云ふ方面にしても、三百萬戸に之を縮める、さうして今日牛馬の數がどれだけあるか、凡そ牛馬は百五十萬頭づつ、大體三百萬頭と申して宜いと思ふのでありますが、之を五百萬頭に増加する、斯う云ふことになれば、一戸に約二頭の牛馬を飼養することが出來る、だから生産も増加し、文化生活も出來、文化の向上にも資し、機械力も應用し、さうして生活も豐かになる、毎日文化的生活が出來る、政府の最も企圖せられる所に達すると思ふのであります、之に付て農林大臣は、今は斯う云ふことに考へて居られるやうに思ふが、一町歩持たせると云ふことで地主になる、それで生産意欲も起き、此の法に書いてあるやうな生活の安定も出來ると云ふやうに考へて居られるやうに思ひますが、其の補充として五箇町村に一箇所の指導農場を持つことと、共同耕作をやらせる、斯う云ふやうなことのやうに私は思ふのであります、違ふか違はぬか知りませぬが、私は一體此の指導農場と云ふものに付ても意見がありますが、さう云ふことは措きまして、本當に農林大臣が中農にして、所有權と勞働を一緒にして、さうして生産を増加し、生活を安定し、生活の水準を上げ、生活を豐にし、再建日本の基礎産業を完成する、斯う云ふ考に立たるるならば、さう云ふことを考へ得らるるかどうか、斯う云ふことなんです、勿論それには政治的の言葉で言へば、それは宜いかも知れぬけれども、今五百五十萬戸ある農家を二百五十萬戸と、斯うやると云ふことは考も立たぬ、現在はさうもいかないと、斯う云ふことでありませう、私もさう云ふことは思ふ、思ふが、併し是は外の御方からも御話がありましたが、工業と云ふ問題に關係して居るのであります、工業と云ふものと關係を持てば、必ずしもさう云ふことが出來ぬではないと云ふのは、今一町歩と云ふやうにすれば、一町歩で完全に出來るかと言へば是は大臣の御説明にもあつたやうでありますが、二百萬町歩を二箇年間に移すと、斯う云ふことのやうでありますが、二百萬町歩移しても、それだけ移しただけで、中農になることも出來ぬと、斯う云ふやうに思ふのでありますから、さうすると、今專門家が色々論じて居る、日本の農業の一番まづいことは、兼業が多い、兼業が多いと云ふことは農業だけで食へぬことである、斯う云ふのであるならば、一町歩近くにしたつて矢張り兼業で、食へないのです、であるから食へるやうにすると云ふには、二町歩と云ふものを充てなければならぬ、斯う云ふことでありますが、それに付ての大臣の御考と、それから農業經營に付て、有畜農業と機械、科學的の耕作方法、斯う云ふものを奬勵して指導して行かう、斯う云ふ御考のやうでありますが、それと合せて若し私の伺ふ所の二町歩は出來ぬのであるならば、今迄の過小農業で、兼業農業で、是が生活の安定も缺くのである、生活水準が低いのであると云ふことをどの方法を以て補はるるか、先づ是だけ一つ承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=66
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067・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 日本の農業の適正な規模と云ふものが何處にあるかと云ふ問題でありまするが、それは私は平均の耕作反別だけを以てそれを言ふと云ふことは完全ではないと、斯う思つて居ります、と云ふのは、御承知のやうに、此の統計を見ましても、此處に專業農家と云ふものが昭和十六年で二百二十一萬戸あるのであります、此の二百二十一萬戸ある中で、一町、二町の專業農家と云ふものが八十六萬戸ばかりあります、二町、三町が二十二萬戸ある譯であります、是等のものの「パーセンテーヂ」を取つて見ると云ふと、兎に角專業農家だけでは、五十「パーセント」位が其の層に集つて居る譯であります、併し是は此の數字を此の儘眺めて、一町、二町と云ふ所、又二町、三町が然らば適正な規模であるか、斯う云ふ問を出された時に、總てが是で適正であると云ふことには必ずしも私は言へないと思ふ、と云ふのは、農業の經營の形態、作りまする作物、其の他の家族勞力と云つたやうな點から見て、或は是で狹いものもあるだらうし、寧ろ廣過るものも出來る、斯う云ふ譯でありますから、是は地帶別に、經營別に考へて來ないと、二町と云ふ所に水準を置いて、總てのものが二町持てるやうに人口を減らして行く、斯う云ふことはちよつと考へられないのぢやないかと考へます、私は御話のやうに、農民は出來るだけ專業農家として、さうして其の農業から上つて來まする所得と云ふものを以て、其の時々の與へられた、兎に角一般の文化水準の生活が出來ると云ふことは、是は農業政策の矢張り大きな一つの目標である、斯う云ふ點に付ては私も御同感なんであります、唯それを達成しまする爲に、今囘の農地調整法と云ふものの改正と、自作農の創定と云ふものに於きましては、是は出來るだけあなたの仰しやいまするやうに、土地を小作人に與へて、所有と經營とを一緒にさせる、出來るだけさう云つた中堅の農家と云ふものを作つて行くと、斯う云ふ考は勿論あるのでありまして、唯斯う云ふ方策を採つて見ましても、現在の日本の現状から見て、さう云ふ各地帶々々に於けるものに於て、總てが適正な專業農家になり得ると云ふことは、是は望めないことなんであります、どうしても過小農と云ふものは現實的に殘ると思ふのです、此の現實はどうしても承認せざるを得ないと思ふのです、そこで殘つた過小農に付ては、是は私は農業だけで農業問題を解決しようとは根本の思想に於て思つて居ないのです、是は結局不可能なことを言ふことになるのでありまして、農業がいつ迄經つても、例へば外の工業の方の失業者が出た場合には、總てそれを農業で以て引受けると云ふやうなことを續けて行く間は、日本の國民の生活水準と云ふものは恐らく永久に私は上らないと思ふのです、どうしても農民の生活水準を上げ、そこで近代化された農業經營と云ふものを基礎にして生活水準の上つた農民と云ふものを基礎にして、さうして國全體の經濟と云ふものが再建されて行くと、斯う云ふ方向へ持つて行かない限り、是はどうしても私は日本の國民の生活水準と云ふものはなかなか上昇しないと、斯う思つて居りますので、そこで是はなんとしても工業の方面の囘復と言ひますか、再建と言ふか、さう云ふものに私は矢張り多くのものを期待して居るのであります、それとの結び付きに依つて、一つには此の過小農と言ひましても、それを分析して見ますると、飯米とか、其の他の物を得る爲に、又外への食糧がなくなつた爲に、自分で農業をやつて居る者もあり、農家としては不適當なものが相當私はあると思ふ、さう云ふやうなものは矢張り將來はさう云つた方面に吸收して貰つて、産業を興す方に吸收して貰ふことに依つて、農業の負擔と云ふものはさう云ふ面から減らして行くと云ふことをどうしても國として考へなければならないと思ひます、そこで、工業の興らない場合にさう云ふことを言つても夢を懷くやうなものでありますので、農業面は、私は差當つては過小農は殘る、其の過小農はどうしても過小農の間に於ける何か協同の力に依りまして、小さいながらも一緒になれば可なり合理化されるやうに出來て來る譯でありますから、さう云ふ面で一應救ふのと、それから矢張り村々に、部落々々に或程度耕地を擴げ得る餘地と云ふものが日本にはあると思ふのです、さう云ふ面に付ての開墾と云ふことを進めることに依つて多少でも此の面積を殖やして行く、斯う云ふ面からも或程度の解決が出來て行くのではないか、事實上進んで來る行程だらうと考へる、それから後は矢張り開墾の方に向けて行くと云ふことにならうかと思ひます、それから是は矢張り兼業農家でも、農業だけでなしに、山の仕事がありまするとか、其の他色々な何がありまするので、さう云ふ場面等も是は或は農産加工の面も相當農産物としてもある譯でありますから、さう云つた方面も矢張り勞働をすると云ふことで、全體の所得を殖やして行くと云ふことで指導して行くと云ふことにならうかと思ふのであります、松尾さんの御話のやうなことは農民だけでなくて皆が本當に日本が再建する爲に、兎に角働き方と云ふことが非常に大きな問題でありますが、勞働して、さうして資本を出來るだけ早い機會に蓄積して國力を殖やして行くと云ふことより外囘復の途がないと云ふことに付ては私共全く同感であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=67
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068・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) それでは休憩致します、午後は一時半から開會致します
午後零時二十二分休憩
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午後一時四十六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=68
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069・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 委員會を再開致します、松尾君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=69
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070・松尾國松
○松尾國松君 私、委員長さんに御願ひしたいのですが、一々起立もせずに大臣も其の儘言つて戴いた方が、却て私も承るに心持が宜いが、さう云ふことに御承認願へませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=70
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071・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) こちらは承認するもしないもありませぬ、お樂にどうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=71
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072・原田譲二
○原田譲二君 議事進行に付て……、質疑に關聯して各委員の立派な御意見なり御議論は、甚だ結構なんでありますが、一人の方が餘り長い時間を占有されないやうに、殊に會期も切迫致して居りますから、成るべく簡單に、皆に質疑をさせるやうに一つ御取計ひを願ひたいと、斯う考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=72
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073・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 御聽きの通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=73
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074・松尾國松
○松尾國松君 私も簡單に一つ大臣に承りますが、農地の細分化は結構でありますが、例へば某家に於て三町歩持つて居る、それを一町歩づつまあ何と云ひますか、世襲的に維持をすると云ふことに付ては、どんな御考でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=74
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075・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 今度で農地が一應自作農創定と云ふ形で、大きな内地としては一町歩を超える面積に付ては細分されて行く譯ですが、是は今度の憲法の改正とも絡んで居るのでありまして、均分相續になりますと、其の面からも耕地が細分化して行くと云ふことが考へられますので、是は農政の方から、何か餘り土地が零細化して行くことを防ぐ爲に、又特別の立法が必要ぢやないかと、斯う思つて居ります、それをどう云ふ形でやりますか、結局は家産法みたいになるのでありませうが、「ドイツ」でやつた世襲農場法みたいなものにしてやりますか、そこの所は私はまだ具體的に突き詰めては案を持つて居ないのでありますが、何かさう云ふ家産的なものにして、耕地が徒らに零細化して行くと云ふことは、是は是非避けなければならぬと考へて居ります、是は至急具體的に研究して見て、出來るだけ早い機會にさう云ふ法制を作る必要があると思つて居ります、なかなかむづかしい問題でありますので、もう少し研究して見たいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=75
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076・松尾國松
○松尾國松君 それぢや事務の方にちよつと承ります、簡單でございますが、事務の方に一つ承ります、此の温泉地で、假に下には温泉があり、温泉地帶である、處が是は作物も穫れる、斯う云ふのでありますが、温泉地帶であるから温泉に利用した方が宜いことは申す迄もない、宅地に利用するのもあるでありませうし、又温泉の關係の施設をして使ふものもあるでありませうが、それが其の温泉地で、上が畑と云ふやうな名稱になつて居る場合には、さう云ふことでも使はせられぬか、どうであるか、斯う云ふことですね、それからもう一つは地租法に御承知の通り、第六條に地目があるが、其の地目が畑に非ざる地目と云ふものは、今度の對象にされぬかどうかと、斯う云ふことと、それからもう一つは區劃整理の地區内にあるものは、田畑でも此の對象にされぬものかどうか、それも區劃整理の目的はですね、申す迄もなく宅地に利用すると云ふことで、現在は田畑の地目がありましても、區劃整理でそれを宅地にする目的で區劃整理をやる、それだから區劃整理地區内は之を其の對象にしないと云ふやうな、斯う云ふことは、其の三つはどうでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=76
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077・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 温泉の點ですがね、是は今度の法律は、此の前の法律と同じやうに現状主義を執つて居りますから、それで温泉地であつても、上が農地として作物はまあ作られて居ると、斯う云ふ所であれば農地として利用されて居るのは、是は畑として矢張り取扱ひますけれども、土地臺帳の面が畑になつて居るが、實は作物も何も出來て居ない、温泉地であると斯う云ふことであれば對象にはなりませぬ、それから今の地目の點も、それで實は御答へした譯ですが、是は全部何に依つて農地としては現状主義に依つて居る譯ですから、例へば土地臺帳の面では田畑以外の原野となつて居つても、現状が畑として使はれて居り、それからまあ田圃になつて居ると云ふやうなものは現状を押へて現状でやりまするから、それは農地として矢張り對象になると斯う云ふことになります、それから最後の區劃整理のやつはですね、是も皆對象にしないと云ふ譯には參らないのであつて、此のことは其の第五條の四號にちやんと書いてあるのでありまして、「都市計畫法第十二條第一項の規定による土地區劃整理を施行する土地、又は都市計畫による同法第十六條第一項の施設に必要な土地の境域内にある農地で地方長官の指定する區域内にあるもの」だけは買收しない、斯う云ふことになつて居ります、兎に角大きく網を張られちやつてるのを皆認めると云ふ譯には參りませぬから、さう云ふことに一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=77
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078・松尾國松
○松尾國松君 もう一つは温泉地と云ふ権利の附いて居るのは、田畑の外に其の権利も矢張り價格の對象になるかならぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=78
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079・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 温泉地としての權利でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=79
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080・松尾國松
○松尾國松君 はあ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=80
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081・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は今のやうに現に田畑として使はれて居りましたとすれば、農地としてそれを利用して居た場合には、是は矢張り農地の價格と云ふことになるだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=81
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082・松尾國松
○松尾國松君 矢張り此の五十倍と云ふもので行く……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=82
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083・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 良い農地とすればですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=83
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084・松尾國松
○松尾國松君 私のはもう是で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=84
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085・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 初めに只今のことに付て關聯しまして伺ひたいと思ひますが、さう致しますと、畑の値段で以て買つて、其處をやつてる小作人が、例へば宿屋を直ぐ其處へ建てて、是から新しく温泉をやる、前の所有者は宿屋を其處へ建てて、温泉事業をやらうと云ふ計畫ではあるが、まだ畑が其の儘になつて居る、今のやうに建築が出來ないから其の儘になつて居る、さう云ふ場合には不當に小作人の方が利益を得るやうになりますが、さう云ふやうになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=85
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086・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は假に農地として買つた場合には矢張り農地として自作農で使つて行くので、勝手に目的の變更と云ふものをやらない、やることは出來ないやうになつて居ります、そこでさう云ふ土地を持つて將來まではつきりと温泉地として使ふと云ふことがもう既にはつきりとして居るのであり、同時に自作農を其處に創定すると云ふことが假に不當でありますれば、是は現實の問題としては温泉地として使つて行くと云ふことになるとは思ひますが、農地としてそれを何處迄も使つて行くと云ふことで自作農を創定するならば、創定された自作農地を直ぐ小作人が目的變更してやると云ふ譯には參らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=86
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087・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 次に伺ひたいのでありますが、今囘の農地調整法の再改正に依りまして、此のことが敗戰後農地調整法が出來ると云ふことを聽きまして以來、地主の側で以て土地の取上とか色々な問題が諸方で起きて居りますが、それは要するに地主の方が立後れて居た結果だと私は思ひます、地主側は主に都會に住んで居りまして、疎開後其の土地に參りまして、是から生活の安定を其處で得ようと思つて居るのでごさいますけれども、斯う云ふ調整法が出來ますと云ふと、將來の地主の生活の安定と云ふことが計れない、地主の方としましては、寧ろ自分が將來使ふであらうと云ふやうな土地は生活の安定の爲に取つて置きたいのであつて、其の外の土地は無償で從來の關係のある人に譲渡してやつても、勿論長い間苦心して耕作して居た者でございますから構はない、さう云ふやうなことに考へて居るのだと思ふのでありますが、それで第九條の賃貸人の自作を制定する場合と云ふ解釋の問題になるのでございますけれども、此の間も農林大臣の御話で、今後の農業政策が相當の機械化其の他の轉換をしなければならぬ、そんな轉換をする場合にも地主側は資力があるから轉換力が強い、又轉換には立後れをしないで濟む、小作の團體でやる場合には金の問題だとか、責任者の問題だとか起きまして、外國に對する日本の轉換力が遲くなる、さう云ふやうに感ずるのであります、それで此の法案が飽く迄も農地の耕作者の地位の安定と云ふことを御考になるのだつたらば、在村地主は同時に耕作者なんでありますから、在村地主の地位の安定を圖らないと云ふと、農村の問題とか、又此の農地調整法の土地の買上の問題もうまく進まないやうに思ふのであります、それで私の考と致しましては、自作をして居ない在村地主でさへも一町歩は持てると云ふのでありますが、それでは此の法案の農地の生産力の維持増進と云ふことには却て非常に不徹底なものであると思ふのであります、それで何と申しましても、今のやうに主食を増産して行けば宜いと云ふのでなくして、「アメリカ」の趣旨としましても、「アメリカ」の欲しい物は今の生絲位なものでございまして、或は果樹とか、「アメリカ」と牴觸しないものをやらないと云ふと、是からの農村は滅びてしまうと思ふのであります、さう云ふ場合にそれの準備を疎開後自分の土地に歸つて以來まだ日が淺うございますので、資力を投じて色々機械だとか何かを買ひ集めて居りまして、用意して居ります者が大分あるやうに思ふのであります、其の者に對しても大臣からの御努力に依りまして、現在地主の方が利用價値が大きいならば小作の生活を困らせないと云ふ原則で、其の使用を認めると仰しやいましたけれども、それを一歩進めまして、既に用意の出來て居る地主に對しては、將來其の土地を十分に農業生産力を擧げる爲には、地主に使はせる必要があるのだと思ふのでございます、此の點は大臣も御同感ぢやないかと、是迄の御説明で伺つて居ります、又さう云ふ場合には、開墾したら宜いぢやないかと云ふやうな御話でございますけれども、只今でも農地の交換分合と云ふ問題も起きて居りまして、農地は直ぐ近隣にあると云ふことが一番能率の上るのは御承知の通りでございます、家の周りにある土地がさう言つた果樹とか、何とか云ふ非常な面積を要するやうな栽培をする場合は、僅かに一町歩位の安全辨がございましたとしても、又其の一町歩にしても現に小作が使つて居るので、澤山持つて居る今でさへも取上げると云ふことは骨が折れるものでございます、それに疎開者が其處に入ると云ふことも出來ない、ほんの一町歩を殘して戴いても、地主が其の目的に使ふことは出來ないと思ひます、それで開墾をする所は家から遠い所にある、畠は直ぐ行ける所にあるけれども、小作に取られてしまふ、それでは本當の農業生産力の維持増進と云ふことは、出來ないと思ひます、又斯う云つた仕事を實際に致しまする上に於ては、今目の届く所に畠のあるのが必要である、一番いけないのが遠いことで、折角遠くの土地を開墾致しましても、其の土地に殊更に番人でも置かなければ皆果樹を盜まれてしまふ、養鶏をしても盜まれてしまふ、今盜むことは普通のやうに考へられて居る世の中で、とても「ブレーキ」が多くて仕事が捗らないばかりでなく、危險であります、又開墾にしましても防風林のことも考へなければなりませぬ、又落葉其の他の堆肥原料を取ることも考へなければならぬので、無暗に今殘つて居る土地を開墾にすることは……開墾すれば宜いぢやないかと云ふことは、机上の問題としては宜いかも知れませぬが、實際の問題として、我々が在村地主としてやらうと云ふには、斯う云ふことでは到底御國の爲に生産力の増強をすると云ふことは出來ないことになつて參りますが、其の點今大體用意の出來て居る地主に對しては一定の面積を決めて、又何時迄と云ふやうな時期も決めて、さうして農地委員會の裁定に委して戴くと云ふやうな程度迄、一歩進めて戴く譯に行かないものでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=87
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088・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 其の點はどうしても唯用意が、今迄耕して居なかつた地主が今度の改正がありますので、又其の他の事情が御ありになつて、農業をやらうと云ふので、用意が出來て居ると云ふだけで、それに一定の保有面積を認めると云ふ譯にはちよつと參らぬと思ひます、結局は九條の問題になつて來るのでありまして、是は現に小作が耕して居る土地でありますので、そこで矢張り九條も私が申上げましたやうに、地主の方は十分に仕事の能力もあり、又小作人の方から言つても、土地を多少そこに返しても勞力の關係、其の他外に換地があるかなんかして、生活には困らないと云ふ事情があれば、是は農地委員會が之を認めて、そこで地主が自作する、斯う云ふことになると思ふのでありまして、結局はさう云ふ形で問題を解決して行きたいと、我々としては考へて居る譯であります、唯此の農地調整法と、自作農創定をやりまするに付て、國家が色々の土地を買ふ譯でありますが、國家が土地を買ふ、併し小作人が此の土地を買はないものも或は最後には出て來る、而も其の小作人が農業を廢めてしまふと云ふやうな、將來の場合が考へられますれば、さう言つたやうな時には地主の方に相當の耕作能力がありますれば、是は其の地主が自作になると云ふことも、是は法の建前から言ひましても、ちつとも構はないと思ふのであります、御話のやうに唯準備をして居るから相當の餘力を認めると云ふことは、ちよつと法律の建前からはそれ迄はいかないのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=88
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089・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 それから今のことに關聯しまして、開墾のことでございますけれども、一概に直ぐ此の入植者を入れる爲とか、或は疎開者の爲とか言つて山を開墾するやうでございますけれども、現に既存して居ります農地の利用が、小作人が使つて居ります小作の状態が非常に精農なものもございますし、不精農なものもございますので、從來の動も致しますと、人數で以て何人の勞働力があるから、どれだけの面積が宜いぢやないかと云ふやうに、人數で行きますけれども、實際に經營致して見ますと、其の人々の手腕がございまして、一人でも三人前も働く人もございますし、又半人前も働けない人もございますので、頭數ではなかなかうまくいかないのであります、さう云ふ譯で、此の開墾適地を机上で以て御計算になる前に、一つ現在の土地の收穫高が各耕作者の精農如何の標準になるやうに思ふのでございます、其の點を能く御整理遊ばすと云ふと、相當既存の畠の中に入植者を入れる部分が相當出來ると思ふが、さう云ふやうなことはしないで唯足りなければ山を開墾してしまふ、新しい開墾地を作ると云ふ御方針のやうに動もすればなる虞がごさいますが、さう云ふことは防げるものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=89
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090・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は開墾地に付きましては、御話の通り農民の勤惰と言ひますか、それから經營の巧拙其の他に依りまして、生産量がさう云ふ風に異つて來ると云ふことは、是も矢張り考へられると思ふのでありますが、それを整理してそこに入植者を入れる、斯う云ふ考を此の中では徹底的には採つて居りませぬ、是はさうでなくて唯大きな經營をやつて居るもの、例へばどうせ小さなものに付ては殆ど問題にならぬ譯でありまして、自作農でも大きな經營をやつて居る、而もどうも生産が上つて居ないと云ふものに付きまして、是は三町歩で打切りまして、其の外のものは自作農創定の對象になる、斯う云ふことに一應なつて居る譯であります、後は御話のやうに、開墾の方面に持つて行つて居る譯でありまするが、開墾をやるとしましても、唯人數の點からだけ考へることは適當ではないのでありまして、矢張り其の人の能力なりなんなりと云ふものを十分に考慮して、自然其處に面積と云ふものも具體的には決つて來ると思ふのでありますが、唯一應の計畫としては、或程度平均的な人がやれば此の程度のものが出來ると云ふことで計畫を立てて居る譯であります、個々の場合になりますれば、其の入つて行きまする人達の能力關係、又は巧拙に依りまして、自然其處に開拓の場合に於ても差は出來て來るのではないかと、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=90
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091・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 それから農地委員會の委員の人數でございまするけれども、必要の場合は二十人迄は増加し得ると云ふやうに御規定になつて居りまするが、私の考と致しましては、行政區劃の村を單位として居るが、村では實際に即しないので、矢張り部落を單位にして、地主と小作人と一人宛出ると云ふやうにしなければ、實際の農地の買上の時、割當の時もうまく行かないと思ふのでございます、それで此の委員の構成は部落内で以て、小作の代表一人、地主の代表一人とするのが理想のやうに思ふのでございます、處が二十人迄は増加し得ると言ひましても、さう致しますと、一村は十部落以上のものはないかと申しますと、十部落以上のものもある、さうすると、一つの部落で以て小作人だけしか出ない、外の部落の方からは地主が出ると、さうなりますと、非常に小作の出た部落は小作に有利であり、地主の出た部落は地主に有利であると云ふことになつて、折角の公平の原則が缺けるやうに思ふのでありますが、是はなんとかして部落單位にして、一部落から小作の代表一人、地主の代表一人と云ふやうに御改正を願ふ方が宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=91
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092・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 此の點は御話の點もある譯でありまするが、斯う云ふやうに私共としては考へて居る譯でありまして、此の前の經驗に依りまして、大體兩方で二十人と云ふことに致した譯でありますが、部落々々に付きましては、委員會が出來ましても、其の委員會に於て選ばれる人は大體兩方の層から選擧に依つて選ばれるのでありますが、委員會としては、各部落に於てさう云ふ人達を助手として使ふと云ふやうなことに依りまして其處の所を調和さして行きたいと、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=92
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093・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 大體伺ひましたが、第一番目の點に付きまして……速記はして戴かないでも宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=93
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094・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=94
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095・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 速記開始、三島子爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=95
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096・三島通陽
○子爵三島通陽君 私は新しい憲法、民法に依りまして相續に依つて段々土地が零細化されて行くのではないかと云ふことの心配を實は持つて居りまして、其の點は衆議院でも色々御質問があつたさうでありますけれども、尚少し伺ひたいと思ひますが、尚此の問題に付ては此の方面の權威者であられる我妻博士、それから松村委員も御質問があるさうでありますから、私は此のことに付て質問を致しませぬ、唯自分の祖先のことを申して恐れ入りますけれども何かの御參考になると思ひますので、少し似た問題にはなりますが附加へて置きたいと思ひます、それは私の祖父が小さな開墾を致したのでございますが、此の開墾致した土地に付て私の父に申した言葉が大變面白いと思ひました、それは相續するに當つて男の子の澤山ある場合に土地を分割して與へると云ふことは意味がない段段小作を自作にすることは結構なことだから大いに奬勵してやるが宜い、併し自分の子供に土地を分割して分けて行くことは土地を段々零細にして行くのみで意味がない、斯樣なものは、一つ纏つた所で、開墾地と云ふやうなものも非常に意味もあるし、經營もやり宜いのだと云ふ意味のことを父は私に申したことがありましたので、私は其の趣旨を體して小作を自作に致しましたけれども、私は兄弟達に之を分割しなかつたのであります、是は一つの開墾地の例でありますけれども、是が耕地である場合、而も其の耕地が一町歩位な場合には尚其の問題がより切實ではないかと心配致すのでございます、まあ此の點は兩委員に御讓り致しまして私は是以上申しませぬ、そこで今の開墾地に付て私が遭ひました一つの何と申すか、問題を此所で曝け出して甚だ餘計なことを申すやうでありますが、一應政府に今度はさう云ふことはやりますまいねと云ふことを申上げたいのであります、と云ふのは丁度戰爭末期でありましたが、徴用者を各縣の未開墾地に入植させて開墾させる、是は食糧増産の意味と徴用工の落伍者を集めたのだらうと思ひますが、さう云ふ計畫のありました時に縣廰の若い御役人が私共の開墾地に來られて言はれたこと、爲されたことが私は甚だ殘念に思つたのであります、と云ふのは私の所等は殆ど開墾されて居りまして、防風林位しかないのでありますが、其の防風林の樹を切つて人を入れろと云ふのであります、是は專門家であられる農林省の方々に申上げる必要もないと思ひますが、それを幾ら説明しても聽き容れがない、併し現場に就いて私共が説明したら、それが能く分つて戴けたのでありませうが、私の隣りの開墾地等には到頭人を入れることになりました、其の時に人を入れてから先は誰が指導するのかと訊いた處が、そんな先のことは私の知つたことぢやないと云ふことをはつきり其の役人が言はれたのでありますが、是は隨分亂暴なことであつて、其の時私共は親子三代に亙つて此の農地を開墾して居るのでありますけれども、開墾事業と云ふものは親子三代やつてもなかなかむづかしいものでありますのに、それを世話される役人が後は私の知つたことではないと云ふやうな態度は餘りにひどいと私は今でも記憶して居ります、もう一つ、一體農地と云ふものは食糧増産工場ではございませぬ、廣い野原に一つの開墾地を拓くと云ふのなら宜いのかも知れませぬが、農村と云ふものは一つの社會的生活を爲して居る所だから、人間の繋がりと云ふものがある、一つの「アトモスフィアー」と云ふか、雰圍氣、空氣と云ふものがある、或村に團體を入れると云ふ時には其の村の空氣と云ふものに餘程しつくりしなければ生活は出來るものでもないし、社會單位を構成して行く上に於て非常にむづかしいことだから、其の點も御考を戴きたいと云ふことを其の御役人に申したのでありますが、なかなか其の意味を汲んで戴けなかつたと云ふ事實であります、今度は都道府縣の農地委員會がおやりになるのですから、そんな馬鹿なことは爲さるまいと思ひますけれども、併し都道府縣の農地委員會が尚市町村の農地委員會に能く御相談になつて、土地の實情乃至土地の空氣と云ふやうなものと能くしつくり合ふやうにやつて戴きたい、斯う云ふ希望を持つて居るのでありますが、是は甚だ愚論のやうでありますが、一應申上げて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=96
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097・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 甚だ御尤もな御注意でありまして、實は開墾と云ふことは同時に新しい村を作ると言ひますか、其所へ一つの文化を移して行く譯でありまするので、唯土地を拓きまして、其所に人を入れてしまへば仕事は終る、而も入植後の營農に付ては何等指導をしないと云ふことは根本的に間違でありまして、今度はさう云ふことのないやうに、差當つては營農の資金も出しますが、さう云ふ面だけでなしに、長く開拓の營農に付ては十分面倒を見て行きたいと斯う思つて居ります、是は矢張り、私も開墾地は餘り見ないでありますが、五年、十年と經ちませぬと、開墾地が一つの農地として、殊に開墾者が農業に安心して其所に生活出來ると云ふやうな農地にはなかなか達しないのでありまして、入つて行きます時には當然其の村なり、部落の人が耕地を擴げる意味なら是は樂でありませうが、どうせ外の部落の人、外の縣の人が入つて來ます時には、是は地元の人とも亦風俗、習慣が違つた人が入つて來ることが想定されます、其の部落との間の調和と言ひますか、さう云ふものに付ては是は御話のやうに十分土地柄と云ふものを考へてやつて行くと云ふことに致したいと思ひます、是は私も此の間埼玉の開拓地を廻りまして熟々とさう思つたのでありまして、うまく行つて居る所は矢張り地元としつくりと氣持が合つて居ると云ふことが非常に感ぜられましたので、さう云つた社會的觀念なり、關心と云ふものを十分に拂ふやうに今後は常に指導して行きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=97
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098・三島通陽
○子爵三島通陽君 大臣の今の御話で非常に安心をし、且喜ぶ次第でございます、今朝赤木さんからも土木的な見地からの御質問、又昨日井上子爵からの教育的な指導的な意味での御質問、併せて只今の大臣の御話を承りまして私は全く安心致す次第でございます、次に今の井上子爵の指導的な御話が段々ありまして、井上さんの言はれることに私も全然御同感でございますし、大臣の御答でも安心致して居るのでありまして、もう是以上餘計なことになると思ひますし、又昨日寺尾さんの御質疑の中にも指導農場に付て色々御話がありまして、誠に結構な御話であると思つて喜んで居るのでありますけれども、尚ほもう一應私もちよつと一昨日の質問に申しました中に、文部省式の學校教育がどうも農村にうまく行つて居ない、滿足して居ないと云ふ意味のことを申しました序でに、甚だ此の席を借りて自分の意見を申上げるやうで恐縮なんでありますけれども、質問に事寄せて御願を致したいと思ふのであります、と云ふのは是はもう説明の必要はございませぬけれども、農學校とか或は青年學校と云ふものがどうも今の農村にはまだぴつたりしないので、是から斯う云ふものの教育と云ふものに相當力を入れて戴かないと、折角自作農になりましてもなかなかうまく行かないことになるのではないか、そこで私は斯う云ふことを考へたのであります、一つの部落の青年學校で、各生徒にそれぞれ土地を耕させる、なかなかさう云ふ餘つた耕作面積を持たない生徒もありませうから、持つた者だけでも宜いから或者には麥を植ヱさせる、或者は藷なら藷を植ヱさせる、さうしてそれを皆で協力して植ヱて、そこに先生が行つて實際に指導する、さうして晴耕雨讀で、雨が降つた日だけ理論を教へたり、或は修身を教へるとか、倫理を教へると云ふやうなことで、もう晴れた日は實際の仕事を其の場でやつたら宜いぢやないかと云ふことを思ひまして、文部省あたりにそんなことを言つて見たのでありますけれども、偖てさう云ふことを指導する人がちつともないと云ふやうなことで、それを全國的な青年學校の組織の中に、さう云ふ制度を採入れると云ふことは實際問題としては不可能だと云ふやうなことで、到頭今日になつてしまつたのであります、併し矢張り私は將來斯う云ふものが必要ぢやないかと思ひますので、一箇所に集める農民道場是も必要だし、昨日の御話のやうな指道農場も必要だし、併せて又さう云ふ小さい地主の青年を指導する、實際の耕作して居る場で指導して行く一つの機關、學校と言ひますか、さう言つたものも亦必要ぢやないかと思ふのでございます、兎に角色色な意味で此の教育と云ふことが、此の法律を活かす大きな手段になりますので、何分此の上とも宜しく御願を致す次第でございますが、さう云つたものに付て何か御考がございませうか、甚だ質問の形式で申上げて恐縮でございますが、大臣の御考がございましたら承ることが出來れば仕合せでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=98
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099・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 御話御尤もですが、實際此の農村の今後の子弟教育と云ふものをどう云ふ方法で、どう、持つて行くかと云ふことが矢張り今後農村問題として一番大きな問題になると思つて居ります、まあ農林省の方としましては今一應足場としてありますのは此の農民道場でありまするが、私は矢張りああ云ふ道場が餘り形式的でなくて、謂はば入つて來る子弟から親しまれると言ひますか、非常に慕はれると言ひますか、さう云ふ明るい氣持に進むのが一番宜いんぢやないかと斯う考へて居る譯でありまして、そこでどうせ農民道場に來まする子弟は家に歸へれば是は農業をやる人が主なのでありますから、其の家に於てそれぞれの經營をやつて居る譯ですから、其の結果なんかに付ても氣樂に相談に行つたり、又こちらからも氣樂に出て行つてやる、さう云ふ形を執つたら相當程度迄教育としての技術の滲透が出來ると思つて居ります、農民道場長なんかも非常にそれを考へて居るやうでありまして、今迄相當の年限を經て來て居りまするので、道場を卒業した者が相當縣に村にある譯であります、さう云ふやうな人達がそれぞれ學校を出ましても連絡を取りまして、それが常に道場を中心に集り、又同じ教を受けた者と云ふことで、連絡を取つてやると云ふことにしますれば、割合にうまく行くんぢやないかと思ひます、それには勿論道場の教育のやり方自體に付て色々檢討すべき點は是は固よりでありますけれども、是非さう云ふやうに致して行きたいと思つて居ります、それから指導道場の面も部落の實行組合等で、地元の實踐班の班長としまして是非指導農場へ出掛けて行つて、部落の實行組合長がそこで技術を色々覺えて、是はと云ふ自信を持つて部落へ歸つて、實地に部落へ歸つて實地に部落の人達を指導して行く、斯う云ふことをやらして行きたい、斯う考へて居る譯でありまして、唯是は役人が上から言つて講義をしたりそれからなにをするだけでは、迚も宜い實地の教育は出來ないと、私も御同感に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=99
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100・三島通陽
○子爵三島通陽君 もう一點簡單でありますが、先程松尾委員とそれから土屋委員からちよつと御話がありましたが、温泉地のことでございますが、私は土地の耕作權のみを重大に認めて、其の土地が例へば温泉が出て、將來療養所として非常に好適地であると云ふやうな土地だとか、或は鑛區で、今は畑とか田にはなつて居るけれども、其の下には石炭が埋藏されて居ると云ふやうな場所は、是は別途に御考慮になり、何か施行條例の中に、別途にさう云ふものを研究すると云ふやうなものがあつて宜いと思ふのでありますが、是は如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=100
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101・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 是は斯う云ふことになると私は思ふのであります、温泉地でありましても實際上は今農地として使はれて、現實に農業經營をやつて居ると云ふことでありますと、それが自作農の創定をして、そこで小作人は自作農として、どこ迄も農業をやつて行きたいと、斯う云ふことでありますれば、どうしても是は農地として扱はざるを得ないと思ふのであります、唯自作農になりました小作人が、直ぐ下に温泉が出るからと云ふので、其の土地を勝手に處分出來ると云ふことは、是は社會的の正義に反する譯でありますので、其の點は嚴重に、自作農を止める場合には、國が之を買取る、斯う云ふことになつて居る譯でありますから、國がそれを買取つて、其の土地が、本當に自作農を創定するんぢやなくて、温泉地として利用した方が宜い場所になつて居ると云ふ場合には、是は又別途其の時に考へると云ふことになるのでありまして、農地として利用して行く間は、どうも已を得ない、又さうした方が宜いんぢやないかと、斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=101
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102・我妻榮
○我妻榮君 二つの問題に付て御尋ね致したいと思ひます、一つは均分相續と農耕地の細分割と云ふ問題で、是は大臣に御尋ね致したいと思ひます、もう一つの問題は、自作農の創設を昨年の十一月二十三日に遡つてやると云ふことに關聯して、農地調整法の第九條三項の持つ意味に關する、是は極めて法律的なことでありまして、政府委員の方に御尋ね致したいのでございます、先づ第一に均分相續と農耕地の細分割の問題でありますが、申す迄もなく憲法改正の第十四條は、法律の前に平等と云ふことを規定致しました、又二十四條は個人の尊嚴と兩性の本質的平等と云ふ現状から見ましても、是等の趣旨から見て、多くの子供があつた場合に、其の子供達は所謂均分相續をすることになると云ふことが要請をされて居るのだらうと考へられます、そこで過日發表になりました民法改正の要綱も此のことを明言致しまして、相續は諸子均分として、所謂共同相續を執るのだと云ふことを申して居ります、此の相續に依つて所謂均分相續をすると云ふことは、併しながら農業政策の立場から見れば段々土地の零細分割を生ずる、殊に自作農を維持する場合に所謂適正規模の農耕地を確保して行かなくちやならぬと云ふ理想から見れば、どうしても是が破れて行くと云ふ虞が多分にあると思はれる、そこで農林當局としてはなんとか處置を講じなければならぬと云ふことになるのでありませうが、其の場合に假令農業政策の上で非常に必要だからと云つて、農民の相續だけは長男或は次男、三男と云ふけれども、一人の相續として他の子供達には分けないと云ふことを、即ち民法に對する例外と云ふものを農民の場合にだけ認めると云ふことが出來るものだらうか、一部には今度の憲法にも社會公共の爲には基本的人權も制限を受けると云ふことが書かれて居るのだから、農業政策の立場から已むを得ないと云ふならば、諸子均分と云ふものを農民の相續に於ては例外を認めて宜いのだと云ふやうな議論が行はれ居てるかのやうに伺つて居ります、併し私の考へる所に依りますればそれは少し行き過ぎなので、矢張り憲法が諸子均分と云ふ大原則を採つた以上は、農民の立場、農業政策の立場がどのやうにあらうとも、茲に例外を設けて農民の相續だけは一人相續で、他の子供達は一文も貰へないのだと云ふ此のやり方は、どうしても憲法に違反するので許されないものだと私は考へて居るのであります、そこで問題は憲法の大原則から來れば平等に分けなければならぬ、併し農業政策の立場から見れば耕地の現實の分割は許されない、結局結論は分けるのだが、併し其の分け方が現物で分けないで金を分けてやる、或は收益で年賦で分けてやる、何か其の分け方で平等の原則を破らないが、併し農耕地も崩れて行かぬ、さう云ふ方法を考へる外ないのぢやないかと考へて居ります、此の點に付ては屡屡大臣から御答になりましたやうでありますから今更改めて大臣の御意見を伺ふ必要がないと云ふやうに思はれますが、寧ろ私は逆に農業政策の立場からでも私は他の子供に分けないと云ふことは憲法に違反するのぢやないだらうかと云ふことを一つ伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=102
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103・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 私家産としましても他の者に分けないと言つても何等かの形で矢張り他の者にも利益が行くと思ふのであります、それをどう云ふ形でやるかは、吾妻先生からも年賦と云ふやうなことがありましたが、何かの形で、丁度「ドイツ」でやりましたやうに、それ等の者が一定の職業に就くやうなことを斡旋してやるとか、相當な資本を出してやるとか、なんとかさう云ふ意味での、田畑を相續します者が義務を負ふと云ふ形でそこの問題を解決するより外、實際問題としてはないだらうと思ひます、それから農業の方から行きますと、國の基礎を確かにする點から行きますと、今度の憲法の均分相續と云ふものは實際困るのであります、斯う云ふ形で、法理論的に言へば何處迄も分れて行つて宜いのだと云ふ形になつて居りますことは、經濟の方から、私は假令原則は斯うなつて居つても、是が此の通り進行するとは思へませぬけれども、そこは實際上の問題として色々な工夫が出來て來ますからさうは思ひませぬけれども、農業の方から行くと、日本の農業に取つては甚だ困る原則でありまして、何か此處の所は憲法の原則として認めたのだから例外と云ふものがあつても、精神に於てちつとも變らないものであれば、何か農政の方からうまい工夫がないかと思つて私は苦慮致して、研究を致して居る譯でありまして、もう暫く皆さんの御意見を聽いて、なんとか良い方法を考へ出したいと斯う思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=103
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104・我妻榮
○我妻榮君 質問に事寄せて私の考を申上げる積りはありませぬですが、民法改正要綱に現れて居る所が往々にして誤解されて居つて、どうしても物で全部分けると云ふ民法の規定になつて居るのだと云ふやうに解釋して居られる方が間々あるやうに思はれますので、皆さんの御了承を得まして、民法の改正要網に現れて居る所が何處迄のことを要求して居るのかと云ふことを申上げて、其の上で農林當局として其の上のことを御考へ下さいと云ふことを御尋ねすることに致したいと思ひます、民法の建前から申しましても、現物で分けると云ふことは少しも要求して居らないのであります、結局遺されたる財産の價値全體として考へる、不動産もあるだらうし、動産もあるだらうし、預金もあるだらう、それ全體を價値的に計算して、それを今度が遺された妻と子供達とに分けると云ふことになりませう、先づ第一に決して現物で分けると云ふことを要求して居るのぢやないと云ふことをはつきり申上げて置きたいと思ひます、從つて少し話が`細かくなりますが、例へば父親が死んだ後、子供が五人ある、さうして長男だけが農業を承繼して、後の子供達は都會に出て工場で働くと云ふやうな場合を考へて見ますと、先づ彼等は如何に相續するかと云ふことを協議することになります、協議をする場合に、長男は無論自分が百姓であるのだから土地や畑は分けてやれないと申しませう、それから次男三男は都會に出て働いて居るのでありますから、土地を貰つても不在地主になりますから土地を欲しいとは申さないだらうと思ひます、そこで次男は金を貰ふ、長男は不動産を貰ふと云ふ協定が恐らくは成立つだらうと考へられる、併し金がなかつたらどうするかと仰しやるでせうが、さう云ふ場合には長男はまあ借金をして拂ふと云ふことになりませう、併し農耕地は御承知の通り擔保に入れることが出來ないから、借金があればどうなるだらうか、結局の所は長男が次男三男に對して證文を書いてさうして年賦償還でお前に是だけの物を分けてやらうと云ふやうなことをする、それが恐らくは最後の手段、最後の方法で、そんな所で協議が成立つのではないかと考へられるのであります、併し勿論總て理想通りには行きませぬので、理想通りに行きませぬ時には、協議整はざる場合には家事裁判所に出て來る家事裁判所は諸般の事情を考慮して、恐らくは私が只今申上げたやうな方法で此の分割方法を定めてやると云ふことになるだらう、其の分割方法は協議に依つて決めるのであつて、決して現物で分けるのでないと云ふことが第一に御注意願ひたい點だと思ひます、併し第二に、さうやつて分けましても、次男三男に行く部分が非常に多うございますと、矢張り借金の形で長男が之を脊負つて行く、我が國の小さい農民が起上り際から借金を脊負ふと云ふことは非常に困ることだと云ふことは申す迄もないことであります、それならばどれだけの割合が借金になるだらうかと云ふ問題になる譯であります、詰り分割の割合と云ふ點であります、是は要綱で定まつて居る所に依りますと、殘されたる妻が三分の一、其の殘りの三分の二を子供達で平等に分けると云ふことになつて居ります、從つて先程のやうに、子供が五人と妻があつたと云ふやうな場合を想定しますと、數學が少し細かになりますが、妻は三分の一、長男は三分の二の五分の一ですから、十五分の二と云ふことになります、そして此の長男は、農業ですから母と一緒に居りませうから、さうすると長男は母の受ける三分の一と自分が受ける十五分の二と合計十五分の七、詰り四割六分六厘を持つ、相續する、そして五割三分三厘の借財を次男、三男、四男、五男に負ふ、斯う云ふことになります、半分以上の借金を負ひますから、なかなか辛いと云ふことになるのであります、そこでもう一つ方法が考へられます、それは父親は財産を生前に又は遺言で自分の財産は半分は自由に處分することが出來ることになつて居りますので、父親が此の權利を行使して呉れますと、そして生前に全財産の半分を長男に讓つたと假定致しますと、さうしますると長男は先づ二分の一を貰ひまして、殘りの二分の一を、只今申しましたやうに、母と此の五人の子供達に分けることになります、さうすると母親の計算が今度は違つて參りまして、二分の一を差引いた殘りの二分の一に付て、母は三分の一、即ち全體の六分の一を取り、又長男は二分の一の三分の二の五分の一、即ち十五分の一と云ふものを長男が貰ふことになります、其處へ母親の分と長男の分を今度は一々加へて見ますと、父親から特別に貰ふ二分の一と、自分が子供の一人として受ける十五分の一と、母親の受ける六分の一とを加へますると、十五分の十一と云ふ形になつて參ります、即ち七割三分三厘になります、そして次男以下に對して二割六分六厘を負擔すると云ふことになります、斯樣に考へて來ますと、七割三分三厘を長男が承繼して、殘りの二割六分六厘を次男以下五男迄に對して、年賦償還で負擔すると云ふことが、理想的に行はれた場合の長男に取つての負擔になるだらうと云ふことになるやうに考へられます、で只今子供が五人あると云ふ假定を致しましたのですが、子供が三人に減れば長男の取る部分が少し多くなり、詰り次男以下に對して負擔する借金が少くなると云ふのが、是が現在民法の考へて居る所なのであります、で斯う云ふ立場に於て、尚日本の農業と云ふものを農林當局として能く考へて戴きたい、で民法が斯う云ふ風にやることを考へて居りましても、色々不都合を生ずるだらうと考へられるのであります、即ち第一に長男が非常に弱氣で、次男達の主張に從つて、兎に角小さく分けようと云ふやうなことを言ひ出すと、是は大變困りますので、長男は飽く迄も分けないと頑張つて呉れると、協議整はざる場合と云ふので家事裁判所に來ると云ふことになりますけれども、長男が弱氣で、それぢや一町歩の土地を三段歩宛分けようと云ふやうなことになると、先づ大變困る、そこで尠くとも、例へば相續の場合でも農地は一定面積の以下に分け得ないと云ふやうな法律は、最小限度に必要なのぢやないかと云ふことに考へられるのであります、それから又遺言で、半分だけは長男に讓ることが出來ると申しましたが、我國では御承知の通り、遺言を書くと云ふ風習が非常に行渡つて居りませぬので、從つて農民を指導すると云ふやうな場合に、生前に財産をはつきりと處分して置くと云ふやうな風習を作るやうに指導することが必要になるのぢやないかと云ふ風に考へられるのであります、それから又私は先程次男、三男は東京に出て、都に出て工場で働くと云ふ例を擧げたのでありますが、そして其の場合には問題は比較的簡單だらうと思はれるのですけれども、次男、三男も矢張り農村に居つて耕作をして行きたいと云ふやうな時には、問題は相當深刻になるだらうと思はれます、其の場合に共同耕作と云ふやうな方法を認めたのが宜いのか、其の共同耕作と云ふやうなことを認める場合には、其の收益をどう分配するかと云ふやうなことに付て、相當の指導をして行かないと、爭を生ずる虞もあるだらう、又我國の農業の全體から見て、次男以下はさう農業に執著しないで、何とかして都會に出て行くと云ふやうな方法、只今の大臣もちよつと仰しやいましたやうに、職業の指導をするとか何とかして、農業に執著しないやうな指導をすると云ふことも考へられるだらう、そして最後には單にさう云ふ民法の規定だけぢやなく、破産制度と云ふやうな所迄やらなければならないかも知れない、それから私は家事裁判と云ふものを家事審判所に持つて行くと、非常にうまくやつて呉れると申しましたけれども、家事審判所と云ふものはまだ未定の制度でありまして、どう云ふ風に出來るのか現在の所では分つて居りませぬ、單なる裁判官ぢやなく、實情に通じた人を入れると云ふことにはなつて居りますけれども、全國の家事審判所に果して農民家族の相續と云ふ問題を妥當に解決するだけの有能な人を得ることが出來るかどうかも甚だ疑問だらうと思はれるのであります、從つて家事審判所と云ふものの活動に對して農林當局としては矢張り指針を與へると云ふ積りで準備を爲さる必要があるのぢやないかと思はれるのであります、斯樣な立場から考へまして、大臣の今仰つしやるやうに或は法律を作ることになりますと、司法當局との折衝と云ふことになりませう、司法當局は法律的な技術には非常に進歩して進んで居るのでございますけれども、何と申しましても、農業の實際と云ふことになりますと、當面の農林省が農事の資料を提供して下さらなければ、十分なものは出來ないだらうと思ひます、さう云ふ點に付て更に一層御盡力を願ひたいと思ふのであります、で時日は非常に切迫して居りますので、此の民法の施行は申す迄もなく、新憲法公布の後六箇月から施行になりますから、もう大體半年しかないのであります、此の半年の間に此の大問題に付て特別の立法をすると云ふことは餘程一生懸命にならないと出來ないことだらうと思ひます、農林當局が自作農創設と云ふ大事業を爲さる時に、又此の制度を考へると云ふ大事業を爲さることは甚だ重荷だと存じまして、十分御同情は申上げますけれども、是等の點を御考の上で一つ十分な御盡力を下さるやうに、質問がいつの間にか希望になつて參りましたけれども、ちよつと申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=104
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105・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 甚だ御尤もな適切なことでありまして、非常に感謝致す譯でありますが、矢張り御指摘になりましたやうに、さう云ふ點は結局相續した者が農業經營の初めに於て多くの負債を帶びて行くと云ふことが一番矢張り問題になつて來ると思ひます、それからもう一つの問題は今御話のやうに農業經營をやるのに一番適切な人に農地が相續されて行くと云ふことになることも亦考へなければならぬ點だと思つて居りますので、農地が細分されるのを防ぐと同時に、相續された農地と云ふものが一番農業をやつて行くのに適切な能力のあるさう云ふ者が段々と農事を進めて行くと云ふことになつて行けば農業の方から言へば非常に良いと云ふことになる譯であります、是は「ドイツ」其の他の色々の過去に於て惱んだ問題を又日本も惱まなければならなくなつた點だと思ひますので、此の點に付ては十分研究致しまして、是は是非早い機會に、御話のやうに時が非常に切迫致して居りますので、具體的な案を立てまして、是非農業の方からの細分化と云ふことで日本の農業が大きく言へば非常に窮境に立つやうなことは是非避けて行きたいと、斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=105
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106・我妻榮
○我妻榮君 質問の第二、是は政府委員に伺ひたいと思ひますが、二十年の十一月二十三日現在で自作農創設臨時措置法を施行する、此のことは戴いた資料の中を見ましても、對日理事會の委員なんかで相當強く言つて居るが、併し農林省當局の御盡力で或程度まで軟くなるのだと云ふことも先程からの御質問にありましたので、其の點は繰返しませぬ、唯一つ法律に付て其のことを伺ひたいのは、十一月二十三日現在で計畫を立てて實行すると申しましても、其の十一月二十三日から現在迄の所で行はれた改正法の第四條、舊法の第五條、六條と云ふものに依る讓渡はどう云ふ風に相成るのでありますか、更に舊法第六條第三號は今度削除になりました、第六條第三號に基いて認可なくして讓渡が行はれたと云ふやうなものは、遡及して行ふと云ふ立場から如何に御取扱になるかどうかが一つ伺ひたいことであります、それからもう一つは、今度は本法施行後二年間掛かつて、それが實行中に農地が移動することがある、それをどう御取扱になるのか、十一月二十三日と云ふことを非常にやかましく言へば、二年間は讓渡を停止して置くと云ふことが一番徹底して居ることだらうと思はれますけれども、併しそれもやれないと云ふことになりますと、矢張り二年間はどう云ふ風に御取扱になるか、即ち二年間の間の第四條、第九條と云ふものの作用を停止せしめないとすると、十一月二十三日現在と云ふこととどう調和させるのであるか、其の點一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=106
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107・山添利作
○政府委員(山添利作君) 十一月二十三日に遡る點に付きまして、今御指摘になりましたやうな、其の後に起つて居る權利關係の移動もある譯であります、さう云ふ場合に何れに依ることになるかと云ふ問題になる譯でございまするが、原則的には現在改正法の第四條、元の五條、六條に依りまして、實は事柄が混亂しますのを防ぎます爲に、原則的には權利の移動を許可して居ないのであります、併しながら許可をしないと申しましても、許可を要せないで、移る場合がある譯であつて、一番典型的な場合を擧げて見ますれば、結局相續が行はれたと云ふ場合、是は人の意思に依らずして起ることでありまするから、當然認めて宜からうし、又認めることに依つて弊害が起る譯ではございませぬから、是は其の相續された状況に置く、それから元の第六條の第三號の場合は結局小作人が其の小作をして居ります農地を自分の所有地とする、農地を耕作の用に供する爲に買ふ場合の權利關係の移動としては考へ得る譯であります、是は本來自作農創設の目的になる譯でございまするから、今迄行はれました小作地の自作化と云ふことは、是亦性質上當然認めて行く譯であります、併し此の點に付きましては、今後新らしい法律が施行されますと、個々的にさう云ふ風に小作地が自作地になることは認めないのであります、此の法律に依りまして政府が一旦買收し、而して之を小作人に分ける制度に變る譯でありまするから、既に行はれた小作地の其の小作人に對する自作化と云ふことは其の儘認めて行く譯であります、それから今後に對する扱ひと致しましては、勿論權利關係、特に所有權等の移轉を自由に認めて居りますれば、十一月二十三日現在の状況を目標とすることと全般的に背馳致しまするので、從來と同樣の方針に依りまして、土地移動を停止して居る、此のことは一層嚴格に行ふ積りで居る譯であります、併しながら細かく考へて行きますると、小作地を持つて居る人が一町歩未滿であると云ふことでございますれば、此の法律に依る所の強制買收と云ふこととは關係がない譯でありまして、さう云ふ場合に於きましては、其の小作地が自作地になると云ふことは望ましいことでありまするから、其の儘認めて行く、又自作地になります場合に限らず、是が土地所有權其のものの移轉と云ふことも、事情已むを得ぬと云ふことでございますれば認めて參ると云ふ風な取扱を致したいと思つて居ります、尤も此の第四條の運營と致しましては、小作地の所有權を離す場合には、先づ以て之を現に小作をして居る人に賣渡すと云ふことは當然考慮すべきことでございますけれども、さうは行かぬと云ふ事情があれば、是は他の方面に移ることも認めて行く譯でありまして、要は第四條の運用と致しましては、此の自作農特別措置法の施行關係、實行關係に付きまして、其の障碍にならないやうに、原則的には土地に關する權利の移轉を止めて行くと云ふことに取扱ふ方針で居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=107
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108・我妻榮
○我妻榮君 只今の御答は、要するに十一月二十三日現在でやると云ふ原則を採つて居るのだが、其の後今日迄、そして又殊に今日から二年間の事業の完成する迄の間に、正當に行はれた權利の移動はそれは認めて行かう、さう云ふ御答だらうと存じます、それで正當に行はれたのかどうかと云ふことは、各各の場合に依つて隨分むづかしい問題を生ずるのだから、それは第四條、第九條の運用に依つて、即ち豫め認可を得さしめることに依つて問題の紛糾を避けて行く、斯う云ふ當局の御考だらうと拜察して居りました、誠に其の通りだらうと私も思ひますので、其の考で地主の小作地を取上げると云ふ問題に付て考へます、取上げると甲しますと、總て地主が大變惡いと云ふやうな先入觀を以て申すやうで甚だ恐縮であります、私は決してさうは考へて居りませぬ、特に此の委員會では、先日來地主が小作地の返還を受けると云ふことには、誠に已むを得ない事情があるのだと云ふことを、色々各委員から御話がありまして、何れも恐らくは御自身の御經験に基いた御話らしく承りましたので、日本の土地にはさう云ふ例も勿論非常に多いことであらうと存じて居ります、併し同時に又此の法律の趣旨を破るやうな土地の返還を請求して居る地主も是亦少くないと云ふことも否定し得ない事實だらうと存じます、そこで地主が土地の返還を受けると云つた場合に、或其のものは本法の趣旨に矛盾しないものであつて、それは認めて行く、併し或其のものは本法の趣旨に合はぬから認められないと云ふことになる、認められないものに付て、即ち十一月二十三日と云ふ所で實行する、十一月二十三日に遡つてやると云ふ一つの大原則を、正當なる土地の返還は是は例外として認めて行くが、正當ならざる土地の返還は、是は例外として認めない、斯う云ふことになるだらうと思ひます、さうしますと事の自然として、是はどうしても豫め認可をさせると云ふことに致しませぬと云ふと、事が甚だ紛糾して來るだらうと思はれるのであります、地主が小作人から土地の返還を受けた中に、本法の趣旨から認めた正當なものと、然らざるものとがある、然らざるものは、それは後から調べて認めないで、十一月二十三日以後は認めないと云ふことになつては、事が非常に紛糾する、從つて豫め委員會に掛けしめると云ふことが一番正しい、さうでなければ實際問題としてやつて行けないだらうと考へられるのであります、斯樣な考を前提として本法を讀んで行きますと、第四條の改正になりましたことは如何にも至當であります、第四條に依つて、現在の農耕地の耕作關係が異動を生ずるやうな場合には、全部認可を要することになつて居ります、それに反して、第九條と云ふ……從來續けて來た耕作關係、契約關係を終る、解約し、又は更新を拒絶して行くと云ふ場合に付ては疑問を生ずる餘地があるのであります、と申しますのは、九條第三項は、どうも文字が多少、今私が申しましたやうな立法の趣旨を達する爲には些か不適當ではないかと考へられるのであります、もつと具體的に申しますと、第九條第三項で、農地の賃貸人即ち地主の方から解約する場合、小作人即ち賃借人から解約する場合、是は勿論本法に入る譯でありますが、兩方合意の上で契約を解約すると云ふ場合が果して入るのだらうかと云ふことが問題になる譯であります、先程申しました趣旨から言ふと、是非入ると解釋しないと甚だ困る、此の當事者が一應合意で止めたと申しましても、其の合意なるものが、御承知の通り、今日の我が國の實際に於てはなかなか眞意に出て居ると限らない場合が隨分ある、又從つて本法の趣旨から見て、妥當でないと考へられるものも決して少くない、それで事を紛糾せしめないと云ふ立場として申しますと、假令當事者が一應合意と云ふ形を取つた場合でも、農地委員會の認可を要する、是は決して合意のあるものをも禁じたと言つてる意味ぢやありませぬで、先程から屡屡申すやうに、本法の趣旨に當つたものもあるし、さうでないものもある、それを後から調べるのでは事を紛糾させるから、豫め認可を得しめることが宜いのではないか、即ち此の中に合意の解約を含むと云ふ解釋をしないと、本法の趣旨が大きな穴を生ずると云ふことになると云ふやうに考へるのであります、斯樣に考へて參りますると、九條三項を見ますと、文字から讀めば、合意解約は入らないと解釋する方が、他の法律なんかの用語例から見れば、入らないと解釋するのが一應尤もな考なのであります、まだ委員會の速記録をはつきり讀んで居りませぬが、衆議院の委員會では司法省の民事當局が、合意解約は入らないのだと云ふ解釋をなすつたと云ふことをちよつと聞きましたが、一應の解釋としては、民事當局の解釋が正しいのだらうと私も考へます、併し先程來申して居りますやうな本法の立法の趣旨と云ふものを見れば、殊に第四條に於て、從來の制度を變へて第六條三號を削除したと云ふこととそれから附則に於て十一月二十三日に遡り得ると云ふ含みを持たして居るが、附則の含みのある規定を、實際上紛糾せしめることを紛糾せしめないで運用して行くと云ふ必要上、さう云ふ二つの點を考へて、さうして九條三項を讀んで行く時は、九條三項は、合意の解約をも含むと云ふ解釋が出來ないこともない、文字の上でさう云ふ解釋が出來ないでもないと考へられまするので、立法の趣旨に立ち返つて、さう云ふやうな解釋をした方が宜いのぢやないかと云ふことを考へます、大變細かな解釋論を用上げて恐縮でございますが、本法運用の上からは餘程重要な意味を持つだらうと存じますので、職掌柄一應御尋ね申上げて置きたいと思ひます、惡しからず御了承を願ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=108
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109・山添利作
○政府委員(山添利作君) 懇切なる質問と申しますか、御意見を承つたのでございまするが、私共も先生と同樣に考へて居るのでございます、此の土地取上の問題と、自作農創設措置法の施行との關係に付きましては、從來十一月二十三日以後に行はれました土地返還の問題は、改めて再檢討をする、而して其の内容、形式共に整つた合法的な正當なものは之を認めて行く、然らざるものは之を元の小作關係に立直つたものとして法律を適用して行く、即ち買收計畫を立てます時に自作地になつて居りましても、是は小作地であるものとして買收の對象になります、又元の小作者に賣渡すと云ふ措置を取ることに相成る譯であります、又今後に付きましては、此の法律施行を繞つて、土地取上と云ふやうなことが一層激化することも考へられましたので、農地委員會の承認を、特に附則に於て當分の間地方長官の許可に掛けまして、嚴格に措置をして行くと云ふことに致して居るのであります、そこで此の解釋の問題でございまするが、仰せになりましたやうに、簡單に合意の場合は宜しいのだと云ふ風になる、然るに其の合意其のものは、實際は強ひられたる合意であるか、又そこ迄行かなくても眞正の合意でない、從つて此の農地調整法第一條に該當しないと云ふことになりますると、農地委員會は、又遡つた状況で以て、事實をひつくり返して法律を適用して行かなければならぬと云ふ極めて複雑紛糾した關係を生ずる譯でありますので、是は何としても、土地返還は、此の關係からも、嚴格に正當なる場合、即ち農地調整法第九條に規定する場合に限り、且又附則に於きまする地方長官の許可を受けると云ふことでなければならぬ譯でありまして、是は當事者間に合意があるなしと云ふことに拘らず、左樣な取扱ひを致して行きませぬければ、御話のやうな状況になるのであります、又其の事柄がないと致しましても、私共としては、本來此の第九條の立法趣旨は、先生も御述べになりましたやうに、小作者の立場が弱い、從つて普通の場合でございますれば、當事者間の合意で宜しいものが、斯う云ふ場合に於きましては、合意が果して眞正なる合意であるかどうか、又假に眞正の合意でありましても、其の眞正の合意が出來上る必理的經過と申しますか、社會的地位の相違から來ます色々な影響と云ふことも考へ得るのでありまして、本來此の第九條の農地委員會の「承認」なるものは、豫め市町村農地委員會の承認を受くべきであり、其の豫め受けるに付ては、小作人の方の承諾が、合意があつたとかないとか云ふことに拘らず受けなければならぬものと云ふ風に、私共は解釋をして居るのでございます、法律の文句と致しまして、書き方と致しまして、二樣に解釋されるやうなことがございましても、又司法省當局から御答辯になりました趣旨も、私共も其の時は承知はして居つたのでありますが、まあ私共が今迄考へて居つたこととは違ふ答辯をされたと云ふ考を持つて居つたのでございまするが、是は若し法の解釋が二つも三つもあると云ふことは無論をかしいことでございまするけれども、併し具體的な、社會的な必要に基いて解釋をして行くと云ふことでございますれば、是は現状に於きまして、又近い將來の間は、少くとも合意のある場合に於きましても農地委員會の承諾を要し、又當分の間は地方長官の許可を要すると云ふ風に解釋さるべきものと云ふ風に、農林當局としては考へて居る次第でありまして、全く先生の御述べになりました所と同意見を懷いて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=109
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110・我妻榮
○我妻榮君 私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=110
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111・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 松村君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=111
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112・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私は先づ自作農創設特別措置法の第十三條の三項、四項の報償金の性質が私はちよつと了解出來ないのですが、是はどう云ふ性質なんですか、報償金と代金との關係です発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=112
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113・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是も報償金と代價との關係でございますが、代價は固より公定價格として農地に付きまして決めて居る譯でございます、併しながら是は正當なる對價として支拂ふ譯でございますが、扨て事實問題と致しまして、此の農地改革を致しますに付ては、土地を所有し、之を政府に賣渡される側に立つて見ますると、そこに從來の事情と經濟的に變化を生じますことは無論、又主觀的にも相當犠牲を拂つて居ると云ふ感じもある譯でありまして、從つてそれに對して、政府としては主として中小地主の立場を考慮して一定の報償金を出す、是は戰爭中能く企業整備等を致した場合、まあ一定の資金を交付致したのであります、政府が此の報償金を出しますに付きましても、それと同樣な心持ち、又報償金の性質としましては、はつきりそれだと申上げる譯ではございませぬけれども、先づ類似のものだと云ふ風に考へて居る譯であります、此の報償金に付きましては、沿革のあることでございまして、是は此の前から同一の金額を出して居り、且此の前は總ての開放される農地に對して出して居つたのであります、今囘は是が平均三町歩を限度とすると云ふことになりましたのが、變つた點でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=113
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114・松村眞一郎
○松村眞一郎君 さうすると是は報償金は見舞金の積りですか、代金の一部の積りですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=114
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115・山添利作
○政府委員(山添利作君) 是は先づ見舞金と云ふやうに解釋すれば、其の性質を現はして居るかと思ひます、併しながら其の見舞金なるものが又何處から出るかと云ふ風に更に考へて見ますれば、又此の報償金が決まりました沿革から見ますれば、農地の公定價格と、又地主だけの立場から見た所の收益價格と云ふものとの差と云ふものも亦ございまするので、其の間の、全部ではございませぬけれども、若干を、斯う云ふ意味を持つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=115
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116・松村眞一郎
○松村眞一郎君 さうしますと政府の御考は、地主に對して拂ふのは適正代價と見て之を更に附加へなければならぬと云ふことに、何か法律的の弱點と言つてはをかしいですが、何となくちよつと地主に對して氣の毒だと云ふやうな感じがあるのぢやないですか、私は煎じ詰めて、問ひ詰めてどうすると云ふのではございませぬが、私の考は、元來自由經濟であれば、土地の値段と云ふものは、是は大體に於て相場で決まる、ですから茲に不動産取引所と云ふやうなものもある、其處で評價したら宜いし、勸業銀行のやうな金融機關、さう云ふやうなものが見れば、地主の立場とか、小作人の立場とか云ふことでなく、凡そ値段は決つて居る譯です、それであれば見舞金を出す必要もなければ、政府の方で遠慮する必要もないのではないか、淡泊な價であれば……、それは自由經濟と云ふことであるが故にと云ふことで説明する外はありませぬ、是は政府の方の御考はどうか知りませぬが、私自身はさう眺めて居る、元來農地調整法とか、自作農創設と云ふやうな場合には、政府は自由經濟の頭ではないんぢやないかと云ふ考で私は見て居る、所謂「レセ・フェール」の自由經濟であれば、物と云ふものは皆一つの譯です、二つも三つもある譯はない、統制經濟ではいかぬでせう、「プラン・エコノミー」、計畫經濟の立場でどうも行政を進めないと、斯う云ふむづかしい世の中では割切れない、そこで米の値段に付ては生産者價格と云ふものと消費者價格と云ふものがある、併し元の自由經濟の時には、取引所で相場を立てれば、それで仕舞なんです、それで農家は賣り、それで消費者は買つて居る、處が「プラン・エコノミー」になつて居る結果、政府としては二重價格と云ふものを茲に考へて來る、物に二つの價格があると云ふことは、是はどうしても自由經濟では説明が出來ませぬ、だから是は矢張り計畫經濟で來て居る此の思想が矢張り此の土地の關係に付ても現はれて居ると私は見て居る、ですから其の意味で言ふと、或は地主からは安く買ふかも知れぬ、或は小作人に對しても、今度自作農になる時に安く渡すかも知れぬと云ふやうな意味が若し入ると、何だか恩惠を與へるやうに私はなると思ふ、さう云ふ恩惠的に考へるのでなくして、適正と云ふことに矢張り著眼をして此の行政をやりませぬと、何となくそこに恩惠が入つて見たり、さうして理窟で割り切れないやうなことをやつて居るのだと云ふやうな思想が茲に入つて來ると思ひますから、どうしても政府の態度は、地主に對しても適正な態度で臨むが、小作人が自作農になる場合に於ても適正な價格で賣渡すのであると、斯う云ふ思想で一貫しないことにはいけないのぢやないかと思ひます、地主だけ安く叩いて賣ると云ふことになると、是は奪掠になつてしまふ、さうすると農地調整法は實は農地奪掠法と云ふやうになる虞がある、「ドイツ」語で「アカ・ボイテン・ゲゼッツ」、さう云ふことになつては是は大變なことです、地主には矢張り適正な價格で買ふのであると云ふ思想でどうしてもやらなければならぬと私は思ふ、自作農に對しても安く賣つたんだと云ふと、自作農の白尊心を傷けると私は思ふ、元來土地を自分が手に入れる時に、土地の値打だけのものを拂つて自分は取得したのだと云ふことでなければ、農業經營の「スタート」、出發點に於て私は隨分非常な弱點があると思ふ、恩惠に依つて白分は自作農を始めて居るのだと云ふことは非常に私は自尊心を傷付けると思ひます、元來土地に付ては色色な思想が茲に考へられなければなりませぬが、今私が申しましたやうに、土地奪掠と云ふやうな思想が茲に生れて來ると大變だと思ふ、そこで話は少し横になるかも知れませぬが、千八百四十年ですが、空想的社會主義者と稱せられて居る「フランス」の「プルードン」が本を書いて、所有權とは何かと云ふ本を書いて居る、「ケス・ク・ラ・プロプリエテ」と云ふ本を書いて居る、自らそれに答へて曰く、所有權は窃盜なり、斯う言つて居る、「ラ・プロプリエテ・セ・ル・ヴォル」、斯う云ふことを言つて居る、是が社會主義に於ては一つの題目になつて居り、京都大學の前の教授、岡村司博士はそれを譯して、所有權は盜賊なりと、斯う譯して居られます、私は初め英譯で讀んだのですが、英譯ではどうかと云ふと、「プロパーテイ・イズ・ロバリー」、所有權は強盜だと言ふ、それは所有權奪掠の思想だと思ひます、元來所有權其のものは總て窃盜罪だと云ふ思想は、是は大間違であることは確かであつて、總て開墾地に付て考へれば直ぐ分る、開墾する人は自分の汗を出し、さうして血と汗で仕事をする、それの結晶として茲に土地が、耕作し得るものが生れて來た、それが何が泥棒であるかと思ひます、其の人が所有權を持つた場合に、是はちつとも恥ぢる所もない、ちつとも泥棒でない、併し土地其のものは是は人間が造つたものでありませぬから、之を自分のものであると考へたならば、是は私は泥棒だと思ひます、土地と云ふものは人間には出來ないもので、唯人間の勞力で僅に耕作し得ると云ふ状態に置いたと云ふに過ぎないのでありますから、それだけの努力をしただけで、土地は天の上から地球の中心迄自己のものだと云ふ、法律の上に於てはさう云ふ言葉がありますが、さう云ふのは法律觀念であります、唯上だけ耕作して置いて、さうして地球の中心迄俺のものだと云ふことは、さう云ふ考は泥棒だと思ひます、併し靜かに考へて見ると、私は所有權を、財産權は泥棒なりと云ふ思想は惡いが、泥棒であつてはならぬと思ひます、若し自分が土地を持つて居つて、それを安い値段で買つたとするならば、それは不當の値段で若し買つたとするならば、其の差額だけは私は是は泥棒でないかと思ふ、さうして又所有權を持つて居つてちつともそれを使はないと云ふことになつて居れば、或意味に於ける泥棒であるかも知れませぬ、私はさうだから財産權は何なりやと云ふ答は、それは窃盜なりとは言ひませぬけれども、所有權は窃盜になつてはいかないと云ふ考を私は各人が持たなければならぬのぢやないか、ですから私は「プルードン」の問に對しては「ラ・プロプリエテ・ス・ヌ・ドア・パ・ル・ヴォル」、「ヴォル」になつてはいけない、斯う云ふ思想でなければならないと思ひます、さう云ふ譯に考へますと、日本にも既に祿盜人と云ふ者がある、昔士が殿樣から祿を貰つて居つて働かないから祿盜人、是は日本の言葉にあります、役人が若し月給を貰つて居つて一向役に立たぬことをやつて居つたら是は俸給盜人で、さう云ふことは既に日本の思想にあるのでありますから、百姓が出來るだけの努力をしないとすれば矢張り或意味に於て泥棒であると云つても宜いのぢやないか、ですから泥棒になつてはならないと云ふ思想は各人が懷くべきことでないかと思ひます、殊に農業の方で産業組合運動が非常に盛になつた原因は、商人が過當な口錢を取つた、過當な部分は是は窃盜です、それがあつてはならないからと云ふので産業組合運動が起つたので、産業組合は又正當な利潤で物を賣らなければならぬ、それを今日往々行はれて居るやうな闇取引で賣ると云ふことになれば、正當値段を超過して居る部分は是は私は泥棒と言つて差支ないと思ひます、どうしても農業經營と云ふものは自らの行爲が心に恥ぢる所ない、窃盜であるべきでないと云ふ思想で經營しなければならぬと私は思ひますから、茲に御定めになつて居る小作料に付ても適正價額と云ふ頭でないと私はいけないと思ひますが、農林省の御考へはどうですか、例へば農地調整法の九條の八を見ると云ふと、田に付ては二割五分、畑に付ては一割五分を超ゆることを得ずと云ふことだけのことが書いてあります、是は斯う云ふことになりませう、之を超ゆるものは不適正であると云ふことが言へませう、適正小作料にあらずと云ふことだけは分つて、消極的の意味は分ります、「ネガティブ」のことは分ります、併しながら二割五分以下のものはどこが適正なりやと云ふことはまだ定めてないのぢやないかと思ふが、必ずどこか適正と云ふものがある筈です、二割五分を超えたならば不適正と云ふことは分つて居るが、それでは二割五分以下のどこが適正であるかと云ふことは法律は言うて居らないのです、それを幾らでも少いだけが適正であると云ふ思想は私はいけないと思ふ、上だけは決めた、是は今計畫經濟と言つて私は宜からうと思ふが、日本の計畫經濟の立場から言ふと、小作料と云ふものを金納の立場から考へ、さうして田に付ては二割五分を超えてはいけない、畑に付ては一割五分を超えてはいけないと云ふことで、上には不適正の線を引いてしまつた、其の以下の適正と云ふことが決まつて居ないが、安ければ益益適正であると云ふ思想で農業を經營されたならば、是は私は當を得ないものと思ひます、さう云ふ考で農業を經營されては、迚も地主になつて居ることが出來なくなつて來る、さうであるのではない、是は上だけ決めたのであつて、適正と云ふことは一々決め得ないから、それぞれの機關を通じ、色々の智慧をここに集めて、さうして適正は矢張り得なければならぬ、斯う云ふ思想で私は行かなければならぬのであつて、凡そ小作人の側から言つても地主の側から言つても、適正小作料で貸借をする、此の思想に私は固まつて戴きたい、然らざれば私は今申したやうに、小作人は安い小作料を拂つて居ると云ふと、私の言葉を以て言へば、其の差額は泥棒だと云ふことを言つて宜からうと思ふ、窃盜罪、詰り正しきもの以上を取つて居るならば、是は私は窃盜だと思ふ、正しからざるものを又地主が取つて居れば地主が窃盜であると云ふことは、私は言ふて宜いと思ひます、言葉は甚だ穩かでありませぬが、日本に祿盜人と云ふことがあるから、何も「プルードン」の言葉を引く必要はないと思ふ、併し其の思想は我々考へなければならぬ思想であつて、凡そ我々仕事して居る時は仕事と云ふことを考へなければならぬ、自分が貰つて居る月給、給料と云ふものに値する行爲をして居るかどうかと云ふことを反省して、それ以上の月給を取つて居る者は、其の部分は泥棒でせう、私は勞働爭議に於てもさうだと思ふ、勞働爭議をやつて、奪掠をしたならば是は奪掠です、併しながら眞に自己の勞務に報ゆるだけのものを要求するのは正しいと思ひますから、どうしても農業經營に於ても、世間では動もすると云ふとさう云ふ誤解があると思ひます、農林省の立場は小作人ばかり無闇に保護しろ、安ければ安いだけ宜いのだと云ふことで、小作官と云ふ者は小作人の贔負ばかりする、地主と小作人と爭ふと、直ぐ小作人が出來るだけ地主を抑へて安くするが、それが適正になつて居るか不適正か分らないやうなことを小作官がして居れば、今申しましたやうに自作農の、小作人の自尊心を傷付けると思ふ、私は氣慨ある小作人であるならば、適正價額で買ひませう、安くは要りませぬ、斯う云ふことが農民として氣慨のある態度でないかと考へますので、そんなやうな御考で御指導願ひたいと思ひますが、どうですか、是は大臣に伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=116
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117・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 全く其の通りでありまして、小作料に付きましては御意見の中にありましたやうに、消極的な面を此處に書いてある譯でありますが、何が適正の小作料であるかと云ふことは、御話の中にありましたやうに地方々々、個々に依つて是は決定したいと、抽象的に決めましても適正の小作料は出て來ませぬので、さう云ふやうな方針で臨んで居る積で居ります、又將來と雖も小作料の問題等に付きましては、適正の小作料と云ふものを具體的に決めて行くと云ふやうに指導して行きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=117
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118・松村眞一郎
○松村眞一郎君 土地に付てもさう云ふことを御考へ願ひたい、私の心持を言ひますと地主もさうでせう、適正價格以上に貰はうと云ふやうなことは考へないでせう、併し出來るだけ高く地主から買つて適正な範圍で、さうして自作農には出來るだけ安く賣るのが宜いと私は思ふ、適正の範圍を逸しない範圍に於て、自分の考では證券を渡して地主はそれを持つて居り、將來土地を自作農になつた人が手放したいと云ふ時には、私は農地證券を持つて居る人が優先權を持つて宜いのぢやないかと云ふやうなことも考へて居ります、其の際自分は若し高く賈つたとすれば其の値段で引取る譯です、それには證券に金利を付けて宜いでせう、何か優先的に農地證券と云ふやうなもので……さう云ふやうな意味のものを御考になるのも一つの考へ方ぢやないかと私は思ふ、何か土地の間に、そこに縁故關係を附著せしめると云ふのも一つの考へ方であると思ふ、色々想ひ浮ぶ譯でありますが、どうぞ土地に縁故のあつた人は、矢張り土地に縁故があれば又歸つて自作農をやつて、自分は國家の爲に貢獻をして見たいと云ふやうな心持があれば、矢張りそれを成るべく失はせないやうなことも宜いのぢやないかと思ひますから、それは唯心持だけを申して置く譯でありますが、御考へ置き願ひたいと思ひます、其の次には我妻さんの仰しやつた所の問題に關聯して居りますが、私は斯う云ふ風に考へて居るのです、農地調整法の文字を見ますと、分割相續のことは固より想像致して居りませぬ、是は何かと云ふとまだ憲法は施行されませぬ、憲法が施行されて初めて分割相續と云ふことが起る譯でありますから、憲法が施行されて民法が改正される時に同時に併行して御考へ願ひたいと思ふ、それは自作農の創設特別措置法の第二條を見ましても、「同居の戸主若しくは家族」と云ふことがあります、今度は新しい憲法が出來て、民法が出來ると、戸主と云ふものがなくなる譯です、此の文字も矢張り憲法の施行後に於ける新民法にはそぐはない規定がある譯であります、是も當然改正しなければならぬ、民法の改正と共に自作農創設特別措置法と、農地調整法とは竝行して司法省に御協議願ひたい、さうして先程御話のありましたやうな點に付て改正をして戴きたい、改正の案は第四條は、私は實質的に考へて置いて宜いと思ひます、それは「權利の設定又は移轉」と云ふ代りに「權利の設定若は移轉又は分割相續」と斯う改める、「當事者に於て」とあるのを「當事者又は共同相續人」に改めるのであります、斯う云ふやうに文字を加へて司法省に御相談になることを適當と考へます、さうして私の考へは此の點に付て大體に於て我妻さんと見解を同じくして居りますが、私は農地を何人に後を繼がせるかと云ふことは共同相續人から地方長官の許可又は市町村農地委員會の承認を受けて適當に定めたら宜いと思ひます、次男が適當であるか、長男が適當であるかと云ふことは、そこは相談する方が宜いと思ひます、大臣の仰しやつたことは私の言ふ意味と合つて居るかどうか知りませぬが、最も適當なる者にやると云ふ思想は非常に無理な譯であります、農業に適してさへ居れば宜い、不適當な者は排除しなければいかぬけれども、其の中の能率の上がる者にやると云ふことは餘り行過ぎで、適當であれば宜い、其の中の最も適當であると云ふやうなことを考へてやつたならば大變な騒動を起す、適當であれば宜い、さう云ふ頭でないと、若しさう云ふことを考へて居られるならば大變な間違だと云ふことを申上げて置きます、農業に適すれば宜いので、それから指導すれば最も適切になるかも知れない、それは運用上御注意願ひたい、農地はさう云ふやうな工合にして、私は一町歩四町歩と云ふことは適正規模と云ふ思想ではないかも知れぬが、それより「フラクション」になつてはいかぬと考へて居ります、どうですか大臣の御考は……大體此の位の程度迄は持たせぬといかぬと云ふ御考はないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=118
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119・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 大體さう云ふ考は背後にある譯であります、それが「オプティマム」と云ふことにはなりませぬけれども……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=119
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120・松村眞一郎
○松村眞一郎君 大體私の趣旨と一致します、さうすると農地の方の處分は地方長官の許可なり、市町村農地委員會で十分研究されると云ふことにして、一方相續の關係は、今我妻さんの仰しやつた如く私は財産で分配して宜いと思ひます、財産の評價をして次男より分配すれば宜いと思ひます、此の問題は極く易々たることだと思ひます、頭さへさう御決めになれば心配はちつともない、さうして司法省に御相談して御進行になつたら宜いと思ひます、處が相續の分配の問題はなかなかむづかしい、今我妻さんの仰しやつたのは、憲法の委員會に司法省から民法改正要綱試案と云ふものを出して居る、是は農林省の方で御覽になれば直ぐ分りますが、それの第三十四、第三十五、第三十六條に色々書いてあり、又三十八條に遺留分のことが書いてありますが、果して是が憲法に適して居るや否やと云ふことは議會に民法が掛りますから議會で議論しなければいかぬ、是は憲法の適用上色々な問題が起ります、憲法は性の區別をやつてはいかぬ、總て平等と云ふことになつて居りますから、其の適用の範圍外に逸脱するやうなことを民法でやつたならば民法としては成立たない、今民法の委員會ではさう云ふことをやつて居られるが、それは議會で認めるかどうか分らない、唯總て法の前には平等である云ふことは十四條に書いてあります、「人種、信條、性別、社會的身分又は門地により、政治的、經濟的又は社會的關係において、差別をされない」と云ふことがある、そこで此の中に數へてないものが親等關係、一等親、二等親、三等親、是は書いてない、配偶者と云ふ關係もありませぬ、嫡出子、庶子の關係もありませぬから、是は別に十四條に斯う云ふことは差別することを禁じて居ない、さう云ふことを頭に入れて相續法を作るべきだと思ひます、第十四條の中に、是だけのものは平等扱をしなければならぬと云ふことを言つてないものは一向差支ないのでありますから、遺留分問題はそれで解決するでせう、色々分配の細かいことを我妻博士から御話になりましたから、それを一つ御參考にされて御研究願ひたいと思ひます、色々民法の關係がありますから、司法省と今から一つ御相談になつて置いて、農林省の立場は農地を守り、それを合理的に財産で分配するのが宜いと思ひます、全然我妻さんの御意見と同感であります、さう云ふ所から言つて是と竝行して御處置願ひたいと云ふことを希望致して置きます、農地はどうしても是より以上に細分することは適當でないと思ひます、併しどうですか、農林省としては「ロシア」が考へて居るやうな悉く農業の國營主義と云ふやうなことが宜いとは考へて居られないのでありませう、「ロシア」のやはり方は國營農場「コルホーズ」を目標にする譯ですから、さう云ふやうなことは考へて居られないであらうと考へて居りますけれども、併し折角政府が土地を持つ以上は、政府の持つて居る土地で農耕を行つて見たらどうかと云ふ考も私としてはあるのです、小規模で宜しい、何も全國を國營農場主義にやると云ふやうな「ソヴィエト」主義の政策は日本として取る譯ではないのでありますから、「ソヴィエト」のやうな工合に農地を全部無償で取つてしまつたりと云ふやうな政策は日本は取つて居ないことは、此の法案で分つて居るのですから、法案の立て方が全然違ふのですから、唯政府が持つて居つて自作農の出來るのを待つて居ると云ふやうな生ぬるいことではなく、政府自らやつて御覽になつたら、政府自身がどれ位の腕を持つて居るかと云ふこと、恐らくは餘り腕を持つて居ないだらうと思ふ、世間から笑はれたとすると、是は考へなければならぬことになる、それは必要なことだ、だから國營農場を何處かに持つて見るのも宜いと思ひます、例を言へば、例へば昔の種馬所、そんなものは自分で土地を持つて耕作をして居つた譯です、さう云ふこともありますし、農事試驗場が横に自營の農場を造つても宜いのぢやないかと思ひます、それから採種用と云ふやうなものを造つて、從來の農事試驗場は非常に高遠なる應用學理の試驗の方には徹底して居られるが、其の中間の實は實踐的の私は機構が必要だと思ふのです、さう云ふものは國營でやつて宜いのぢやないかと思ふ、或程度はそれをやつて、役人が自身で體驗して見るのが宜い、そして指導に向つて行つたならば、どれ位農業がむづかしいものかと云ふことが自分も分る、寺尾博士自身の御著書を見ても、色々研究して居る所と實際とは違ふと、あれは宮崎農業全書に付てでありましたか、其の差違のあることを書いて居られるが、其の通りです、机の上でやつて居つたら理窟は分るですけれども、どうしても篤農家の本當の味ひは分らない、だから私は政府が國有のものを御持ちになるのであるから、其の或ものは、模範と云ふことは或は政府には出來ないかも知れませぬが、併し實地に御やりになつた方が宜いのぢやないかと思ふ、是は私は大臣には魚類配給の問題で申したことがあります、食糧の配給に付て魚類を農林省で買取つて配給なさい、必ず腐敗などが生じて困られるでありませう、如何に役人と云ふものは迂濶な所のあるものであるかと云ふこと、機敏に行かないものかと云ふことを體驗するだらう、だから一つ魚類の配給を自分でやつた方が宜いと云ふことを大臣に言うたことがあるけれども、農業に付てもさう云ふことを少し御やりになつた方が宜いと云ふことを私は申上げますが直ぐに御返答は求めませぬが、如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=120
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121・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 御答へしますが、自作農創定の場合に國が買ひまして、殘りましたものに付て國でやつて見よと云ふ御話ですが、さう云ふ考は今の所は持つて居りませぬ、唯御話のやうな國の農事試驗場其の他のものがさう云ふ農場を經營すると云ふことはやる積りで居ります、それから開墾地に付ては私も是は一部は國で或程度やつて見たらどうかと思つて居ります、將來農事の實際に付て指導して行くにはどうしても經驗を持つて行くことが必要でありますので、是は僅かな面積でありまするが、さう云ふものを或程度豫定して居りまして、開墾地に付ては多少やつて見た方が宜いのぢやないかと思つて居りますが、既墾地に付てはさう云ふことは全然考へて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=121
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122・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それは大臣の御考は非常に結構と思ひます、是非一つ開墾地でやつて戴きたい、さうして其處で畜力利用もありませうし、機械農業も少しやられて、二箇年でやり上げてしまうには斯う云ふ風にやれば實際出來るのだ、と云ふことを手を取つて、農業者と一緒に御相談になりながら、どこがむづかしいか、それは斯う斯うしたら宜いのだと云ふことで、適切におやりになる必要がありますから、開墾こそ非常に結構と思ひます、初めから開墾してそれをやる、又干拓の方もやつたら宜いと思ふ、濕地の開拓、湖沼地の開拓、そんなことも國營開拓の中でおやりになつて、其處でやつて見る、さうして農具を使つて、色々な機械的の方の施設を試みられると云ふことと、私はどうしても是は共同經營をしなければいかぬと思ふ、一町歩と云ふやうな地主が澤山出來ますので、それぢや迚も機械を十分に使ふことが出來ない、それで矢張りそこに共同施設とか共同耕作と云ふことを加味するのが宜いのぢやないかと思ひます、それを御考へ願ひたい、是は既に馬に付て富山縣では馬がないから岐阜縣なり長野縣から馬を借りて來て、さうして耕作して、其の馬は又長野縣に返し、岐阜縣に返して、又其處でやる譯であります、それは或意味に於て共同耕作であります、廣い意味から言へば……さう云ふやうなことが農業の上に於て非常に必要なことでありますから、どうしても共同施設と云ふことの緒も農林省の方で御開き願つた方が良くはないか、今申す開墾地に於てさう云ふ經營をされたならば、開墾地だけの自己の獨自な經營でなく近隣の農村と一緒に矢張り共同施設をやると云ふやうなことを御考になつて、全く民間の農業經營者と政府が一つの氣分になつてやつて戴くと云ふことにしないと、二年間では迚もいかぬと思ふ、そこ迄乘出さなければいかぬ、どうしてもさう云ふ職員を一つ御採りになつて、眞劍に其處へ行つて農業それ自身を體驗して、さうして農民諸君と共に農業の振興に努力をしようと云ふやうな職員を充實されて、行政の進展をせられむことを特に私は要望致します、大體私はそれだけで結構であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=122
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123・菅澤重雄
○菅澤重雄君 時間も切迫致しましたから、簡單に質問を致したいと思ひます、私の聽かむとする第一點は只今松村さんからも申上げたやうですが、小作官と云ふものが各府縣にありますが、之が讀んで字の如く小作官と云ふ名前で小作の代表者のやうな考で居りまして、私共別に小作官の御厄介になつたこともありませぬが、縣廳へ行つて小作官に會つて色々話をしたけれども、其の説がどうも此の小作官と云ふものが全く小作人の代表者と云ふやうな、小作料を下げることや、土地を安くすることばかりを考へて、小作官と云ふものを置くならば一方に地主官と云ふやうなものも置かなければならぬと云ふやうな考があるのですが、是は今度小作地を全部小作人に讓り、若くは耕作權と云ふものが確立すれば要らないものになりますが、是は何時頃廢されますか、私は今でも廢して貰ひたいと思ひます、是が第一點、それからもう一點は御承知の通り、戰爭に付て非常に木が濫伐されたのですが、私の千葉縣などは東京が近いので割當が、農林省の今の大臣ぢやないかも知れませぬが、非常に割當が高いと云ふことから、過伐をされた弊害がありまして、全國の木材の立木の蓄積と云ふものが、二十六億とか云ふやうに聞いて居りますが、今度の戰爭に於て全體で六億萬石を、伐つた、さうすると四分の一に當らない位でありますけれども、千葉縣の如きは殆ど八、九分通りも伐つたもののやうに考へられる、さう云ふ所へ持つて行つて、今度は山林も買上げて開墾をすると云ふやうな規則が出て、地方の農民も非常に恐慌を來して居る、それは所謂國土計畫と申しませうか、治水治山の問題、色々の關係から此の山林と云ふものも必要であるのに、各縣に命じて開墾の出來る反別を調べろ、斯う云ふやうなことになつて、縣の役人なんと云ふものは、先程三島子爵の仰せられる通り、一方的にどうも考へて、主食物を作れと言へば桑を皆んな掘つてしまへとか、主食物を作るのに甲州では葡萄を掘れとか云ふやうな、其の時其の時にどうも八方から多角的に考へないでやると云ふ弊がありまして、私の縣なども、或はもつと開墾が平地林は出來ると云ふことがあるかも知れませぬが、昨年の例に依りますと、麥の一反歩の收穫が、私の縣では三升に五升に八升、斯う云ふやうな收穫です、私の村だけでも皆無の場所が百町歩以上あつた、それは何に原因するかと云ふと、大體は木が伐られた結果であります、それは色々の惡條件がありまして、薩摩芋を餘計作つては地力が盡きて、若くは搬出の時期が遲れて、又雨がなくてと云つたやうな色々の惡條件があつただらうけれども、大體に於て風で硅藻土が飛ばされた、硅藻土が飛ばされたので……私は明治四十年に開墾をやりまして、耕地整理をやつたんですが、色々の方面から考へて、土地の分合も、二十人ばかりの地主があつたのを全部交換致しまして、さうして耕地整理を獨自でやつた、實地に致したのです、さうして防風林を百五十間の距離南の方が……所謂我々の地方の風土の關係から言ふと、南風及巽風と云ふのが一番強い、それから冬になりまして麥を作る時になりますと、北風と西風に飛ばされる、さう云ふ譯で百五十間の距離に防風林を設けたのでありますが、それが矢張り軍部が來て色々濫伐をしたり、色々の關係と、それから先程申した割當が多い爲に、自然の防風林を成して居た所のものが伐られたのが、是が大原因であつたと私は考へる、そこで開墾と云ふものは、もう防風林がなければ全く意義がない、それは風土の關係と土質の關係にも依りませうが、火山灰とか、硅藻土のやうな所は寧ろ防風林がなかつたならば、十年か十五年の間に、表土は全部飛んでしまふ、さうして下の底土の赤い土ばかり殘つて、耕作土と云ふものはなくなつてしまふ、さう云ふことを考へないで、年長樹の外無暗に平地林を伐ると云ふことであつたならば、是は容易なことでない、旱害もあるし、或は水害も起るし、色々の關係がありますが、そこで是は我々も農村に居りまして、實際の問題から言ふと、田畑山林の三種の揃つた所の村が一番良い村である、是が理想の村である、そこでさう云ふやうな所の田畑山林の揃つた所で、まだ山を拓く餘地があるからと云ふので、他から移住民を入れたり、若しくは開墾をしたりしたならば、是は立派な本當の健全農村と云ふものが破壊されてしまふ、それを私は恐れる、そこで私共の考では、山林は農家として一戸の山林の手入やなんかの管理の届く所の町歩は二十町歩位の所は出來ると私は確信して居ります、併しどうしても私は三町歩五町歩位はどんなに少くてもなければ、堆肥を拵へたり、薪炭を取つたり、さう云ふやうなことも出來ないことになる、と同時に農家の自給自足と云ふものも破られてしまふ、斯う云ふやうな意味に於て、農林省では本當の健全なる農家と云ふものを作り、健全なる、理想的の村と云ふものに對しては、田畑が何町歩位宛一戸當りあれば、是が本當の健全であるか、斯う云ふやうなことの御調査がありましたら一つ伺ひたい、後は其の次に致しますからどうぞ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=123
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124・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 小作官の取扱でありまするが、是は小作官は御承知のやうに、小作調停法が出來ました時に、此の調停事務に當りまするので全國に置いた譯でありまして、小作の問題の調停をやつて居つた譯であります、是は今囘の自作農創定に當りましても、矢張り主になつて實際上働いて貰はなければならない人達でありまして、唯我々が指導致して居りまするのは、小作官も矢張り廣い見地に立ちまして、農政一般のことを十分考へて、さうして唯單に地主と小作との間と云ふだけでなくて、今後は農業の經營と云ふ面の事柄に付ても十分意見も出し、又指導も出來る、斯う云ふやうになつて、さうして實際上の農家の指導をやつて行くと云ふやうに我々としても指導致して居るのであります、唯小作官は從來の小作調停法の關係で言ひますれば、仕事が小作問題でありましたので、主として小作の問題に付ての事柄をやつて來て居りましたので、外部から見ますれば是は如何にも小作の味方だけで、地主のことを考へなかつたと云ふやうなことを御考へになる人があるかも知れませぬが、我々としては矢張り小作官は公平な立場に立つて、さうして仕事をやつて行くやうに常に指導は致して居るのであります、今後は小作官は、此の農地改革が出來ますれば、是は後にも矢張り相當の仕事が殘るし、新しい仕事が又出て來るのでありまして、私が只今申しましたやうに、農業の生産面と言ひますか、經營面にも十分意を用ひられるやうな風に今後はなつて行くと思ふのでありまして、今之を止めると云ふ考は今の所はございませぬ、それから日本の村の在り方の問題でありますが、是は御意見のやうに、私も田畑と山林が揃つて居る村が一番宜いと思ひます、此の三つが揃つて居れば理想的な村だと實は思つて居ります、其の點では是は日本のやうな國に於ては、殊に農民生活、薪炭の問題にしましても、それから自給肥料が非常に大きなものを占めて居りますから、自給肥料の點から言つても、山のない村と云ふものは非常に慘めな村だと思つて居ります、唯どの程度の田畑の割合を持つて居れば理想的かと云ふことは、是は東北或は關東、關西など、それは地區に依つて違ひますので、一概に私は言へぬと思ひますが、御意見のやうに二拍子揃つた村と云ふものが正しく理想的な村だと、我々も色々村を廻つて見て分るのであります、唯平地林の問題を無闇に何處も彼處も開墾するのではありませぬけれども、開墾するには、開墾適地の選定と云ふものに付ては、是は非常に嚴格な態度を執りまして、村や縣の開拓委員會なり、それから小さな面積のものは村の農地委員會等が之を決定すると云ふことに致しまして、治山治水の點、それから今の防風と云つたやうな關係を十分考へました上で、それで村の委員會なり、縣の委員會なりが適地を決定して行く、斯う云ふことに致す考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=124
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125・菅澤重雄
○菅澤重雄君 只今大臣の御説で、小作官は公平な立場に於てやると云ふことでありまするけれども、從來はさうでなかつたので、此の方針で以て訓示をしてやつて戴くこと、それから今の理想の村と云つたやうなものに付ては、是亦縣の役人が一方的に考へて、開墾をすれば出來るからと云ふのでやらせないやうに、是亦一つ御注意を願ひたい、それから今一點、此の農地法には餘り關係はないけれども伺ひたいのは、此の農地改革に付ての向ふの覺書にもあるが、「懸け離れたる統制團體に依り、一方的に割當てられたる供出割當は、往々にして農民を飯米農乃至供出非協力利己的農家に追込んで居る」と云ふこともありますが、營團と云ふものがありまして、どうも御承知の通り新聞にも粉に色々なものを混ぜたとか、或は不正な事實が到る所で行はれて居ることは周知の事實であります、是は農業會に移讓して、農業會の手でやらせると云ふことは出來ないものでせうか、農業會で米の集荷、薩摩芋其の他色々の問題等を大抵やつて居るのですから、「テーブル」の上で少しやる位が營團の仕事のやうに……勿論東京邊りの營團で配給をやつて居りますけれども、非常に弊害が多いので、此の機構を改革することが總ての點に於て必要ではないか、斯う考へるので、營團を廢止することの適切なことを考へて居るのですが、農林當局の御方針は如何でありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=125
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126・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 食糧營團に付きましては、中央の食糧營團は廢止することに決めました、それで是は勅令に依つて廢止することになつて居りますから、中央の食糧營團は之を廢止することに決めたのであります、唯地方の食糧營團は是は配給の面を受持つて居りますので、色々從來と雖も、戰爭中も色々非難があつたのでございますが、是は今の處直ぐに廢止する考はありませぬ、唯食糧營團のさう云つた惡い點は、どしどし具體的の事例に付て御申出を願ひたいと思ふのであります、我々としましては、具體的にあそこの食糧營團は斯う云ふことをやつて居ると云ふことがありますれば、直ぐに是は食糧營團に言つてやりまして、倉糧營團の方から係員を派しまして、どんどん惡いものは摘發するなり、人を代へるなり致させる方針でありまして、是は食糧營團自身もさう云ふ點に付ては、少くとも考へて居る譯でございます、さう云ふ風にして暫くは改善をして行きたい、斯う云ふ風に考へて居ります、唯集荷の點は今でも農業會がやつて居るのでありまして、食糧營團は特別に集荷と云ふことに付てはやつて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=126
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127・菅澤重雄
○菅澤重雄君 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=127
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128・稻田昌植
○委員長(男爵稻田昌植君) 本日は此の程度で散會を致します、明日は午前十時から開會致します
午後四時十四分散會
出席者左の如し
委員長 男爵 稻田昌植君
副委員長 子爵 北條雋八君
委員
侯爵 細川護立君
侯爵 中山輔親君
伯爵 久松定武君
子爵 安藤信昭君
子爵 三島通陽君
子爵 土屋尹直君
子爵 井上勝英君
牧野英一君
松村眞一郎君
寺尾博君
男爵 内海勝二君
男爵 岩村一木君
男爵 毛利元良君
男爵 多久龍三郎君
赤木正雄君
竹下豐次君
我妻榮君
松尾國松君
菅澤重雄君
原田讓二君
長島銀藏君
國務大臣
農林大臣 和田博雄君
政府委員
内務事務官 岩澤忠恭君
農林事務官 山添利作君
同 笹山茂太郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001384X00319461009&spkNum=128
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