1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○所得税法の一部を改正する等の法律案
○臨時租税措置法を改正する法律案
○地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年八月二十三日(金曜日)午後一時四十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=1
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002・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 開會致します、昨日一委員から大藏、農林、商工三大臣御列席の上で質問をしたいと云ふ御要求がございました、それに付きまして大臣の方に連絡を執りました處が、只今二大臣だけ御出席がございましたが、まだ商工大臣が御見えにならないのであります、併し時間も貴重でございまするから、先づ以て三大臣に對する御要求の方は御後に願ひまして、他に御質問がございますれば其の方を先へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=2
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003・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 消費税の全般に付て一つ御意見を伺ひたいと思ひます、咋日も特に此の砂精消費税に付ては税率の上り方が強いと云ふ御注意が出たのでありますが、どうも考へて見ますと云ふと、税率一覽表を見ましても、從來に比べまして約三十倍以上の高率になつて居ります、それから假に織物消費税を見ましても、從來の百分の十五が百分の四十になつて居る、物に依つては下つて居りますが、特に綿織物は非課税であつたのが百分の十課税する、斯う云ふことになつて居るのであります、國民生活と云ふ點から考へますと、砂糖と云ふものは絶對に必需品と云ふことは言へませぬかも知れませぬけれども、日本の家庭と云ふものを考へて見た場合に於てはどうしても砂糖と云ふものは必需品の中に入るものぢやないかと思ひます、其の點から考へまして斯くの如く高額になりますれば必要の者は買ひませうけれども、今日の物價高と云ふ現状から考へて見ますれば可なりの出費額になると思ひます、さう云ふ點から考へまして大藏當局にしては已むを得ない、從來此の税率は上つて居らぬと云ふ御話も承つて居るのでありますが、餘りに此の率が上り過ぎて居はしないか、國民生活上の點から見て少し高率過ぎはしないかと云ふ感じが致すのであります、それから又織物の點を見ましても織物は日本の獨特のものでありまして、矢張り日本の家庭生活の上から考へて見ますれば矢張り是は相當必要なものである、今日だから成るたけ物を節約して買はないで行くと言へばそれ切りの問題でありますが、矢張り家庭と云ふ問題を考へますと、日本の衣類と云ふものは或程度に必需品と見なければならぬ、さう云ふ點から考へて見ましても是亦砂糖に比べますればさう高率ではありませぬけれども可なり上つて居ります、殊に綿織物は非課税であつたものを課税をして價格の百分の十にする、之に付て何か特殊の御事情があると思ひますが、此の點を併せて御説明願ひたいと思ひます、斯う云ふ國民生活の點から見まして砂糖以外に日本の家庭として必要なのは味噌、醤油でありますが、此の味噌、醤油は是に掲つて居りませぬから税が課からぬものと思ひます、さう云ふ點から考へて見ますと、同じ家庭の必需品である味噌、醤油と云ふものは絶對的に必需品、斯う云ふ御判斷だらうと思ひますが、砂糖も矢張り是に類似すべきもので、絶對性はないにしましても矢張り是は相當必要なるものでありますから、さう云ふ點を斟酌されて、此の税率を引上げになる場合に於て餘り上り過ぎたと云ふ點をつくづく感じるのであります、又織物に付きましては御管轄は農林省の關係もあり、又商工省の關係もありますが、農林、商工の立場から見まして斯う云ふ課税を相當上げても將來繊維製品と云ふものに對しては支障はないかどうかと云ふことの御意見を主管の商工大臣から御話を併せて伺へたら幸だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=3
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004・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 消費税の問題でありますが、唯砂糖は税が非常に一遍に上るやうに考へまして、色々檢討を致したのでありますが、實は最近の砂糖の状況は御承知のやうに平時と違ふ状況を呈して居りまして、隨分實際の價格は上つて居る、それで税を斯樣に致しましても現在の物價の状況から見れば實際はそんなに高いものではない、寧ろ斯う云ふ風にする方が現在の砂糖の状況に合ふであらう、斯う云ふことから税を上げました、それから織物の方は是は物品税を廢しました關係からでありまして、物品税を加へると、物に依つては下つて居るのであります、物品税の方を廢めまして、さうして織物消費税一本に致した譯でございます、唯綿織物だけは確かに、今度百分の十新しく課けた譯でありますが、是は今の砂糖と同じやうに綿織物の状況は、現在は非常に以前と變つて居りまして、他の織物と比較して家庭の衣料として綿織物と云ふものが非常に數量も少いし、それから市中等の價格と云ふものは無暗に騰つて居りますやうな譯でありますから、現在に於ては百分の十位綿織物に課税しても實際に於て家庭に差支を起すことはないだらう、他の織物との關聯から見ても、此の際綿織物にも若干の課税をした方が適當だらうと斯う云ふ風に考へまして此の税率を作つた次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=4
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005・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 私どうもはつきり致しませぬのでありますが、今の御話に依りますと砂糖の値が今日は相當高い、それから比べれば是位にしても差支ないぢやないか、織物も同樣の御説明であります、物價高と云ふものを基準にして税率を上げると云ふことになると是は頗るをかしなものぢやないかと思ひます、假に物價高になりましても將來の需要上それを考へて見た場合に於ては必ずしも單位をさう上げませぬても「バランス」が取れ得るものぢやないかと思ひます、織物に於ても同樣に感ずるのでありますが、殊に今の御話に依りますと、相當物價高だから是位で構はないだらうと仰しやいますけれども、一般家庭の購買力と云うものは、家に依りましては違ひますけれども、今度の所得税の増額、財産税の徴收と云ふことを考へますと、恐らく國家全般に見まして、國民の購買力と云ふものは御話に依りますと餘り變りないやうな御話でありますけれども、餘程の影響を持つのぢやないかと思ひます、さう云ふ點から考へて見ますと、餘り極端に之を上げ過ぎると云ふことが將來の國民生活の上にどう云ふ影響が現れて來るかと云ふことを考へて見ますと、餘程心配の點の一つぢやないかと思ふのであります、大藏當局として假に斯う云ふことをしても全般的に見で國民の購買力と云ふものは變らない、是位のものは常に買へるだらうと云ふ御自信がおありなのでせうかどうでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=5
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006・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 實は砂糖、織物がもつとふんだんにありまして、家庭がどんどん買ふやうな状況であれば、課税ももつと考へなければならぬと思ひますが、砂糖は此の課税で一貫目三十圓程度になるのであります、平時と云ふか、以前の砂糖の状況から見れば是は非當に高い税率でありまして、斯う云ふことは出來ない譯でありまして、若し砂糖或は織物が平時的状態に戻る場合には、斯樣な税は無論改めなければならぬと考へて、居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=6
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007・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 物價の點から考へまして、此の税率の方を對照しますと、三十倍以上になります、作日も私此の點に付て色々御説明を聞きましたが、どれを見ましても、八圓七十錢のものが二百八十圓になるとか、或は十二圓のものが三百五十圓になるとか、二十二圓のものが四百六十圓になるとか、二十三圓のものが四百八十圓になるとか、如何にも數字的に考へますと三十倍以上のものばかり多いものでありますから、如何に大藏大臣が申されましても、國民經済研究協會あたりでは是等の點に付て物價の點から研究は始終やつて居られるでせうから、若しさう云ふ點から見まして、此の研究會あたりの物價の點に付てもう一遍どなたからでも説明して戴きたいと考へます、就きましては砂糖の生産の問題に付きましては農林大臣に後で御質問申上げますけれども、今の數字的の問題に付きまして、もう少し何とか出來ませぬか、今の場合は是は仕方ない譯でありますけれども、來年度になつて砂糖の生産が増加された時には、之に付ては御考慮願ひたい、さうしなければ國民の衞生の點から言つて、殊に小兒の衞生上の點から、健康の點から何人も殊に必要なものであります、我々は砂糖は舐めなくても生きちや居られませうけれども、病人と今の兒童と云ふものに付ては篤と御考慮願ひたい、此の二點からも先程申しましたのですから、若し其の點から考へまして、さう云う方面の必要なものに付ては特にそれは考慮しなければならぬ、特に砂糖でも御菓子でも宜しうございますから、それに付てはもつと輕減をするとか、病人に付ても、何と言ひますか、砂糖の注射をしますに付きましては、もつと輕減をする方法を考へてやらないと、國民の經濟がどうなるかと云ふことで、前途を非常に心配されるのでありますが、其の點に付て御考慮願へますか、どうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=7
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008・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 今も申しましたやうに砂糖でも、綿織物でも、もつと家庭に十分入るやうになる場合には無論こんな税は取ることも出來ませぬし、取る積りはありませぬ、それから又酒なぞでも矢張り同じであります、是は全く當面の一種の非常課税であります、ですから此の税制に付きましても、近い中に又皆さんを煩して、税制全般に付ての檢討を致したいと思つて居りますから、其の際には十分又此の平時の場合のことを想像しての檢討を致したいと考へて居ります、それから現在に於ても煉乳などに使ふ砂糖は無税なのであります、ですから事實に於ては八圓七十錢が二百八十圓に上ると云ふ數字を見ますと、びつくりしますが、一貫匁三十圓で實際家庭に入つた所の砂糖の値段から考へますと、現在としては變態的ですが、さう大したものでもないと思ひます、それでも宜いから砂糖がもつと入れば宜いのでありますが、實際は入らないと云ふ状況で困つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=8
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009・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 大體分りましたが、農林大臣に一つ私から申上げますが、此の砂糖の生産に付きまして昨日もちよつと承りましたのですけれども、鹿兒島縣とか、或は四國だとか、靜岡とか、或は北海道と云ふやうな縣に於て生産を十分奨勵されておいでのやうでございます、併しながら今日の事態から申しまして、今迄の戰爭中の事態から考へますと云ふと、恐らく其の砂糖畑と云ふものは餘程減してしまつて居るのではないかと云ふことに付て、私は之を危惧して考へて居ります、其の點に付て肥料を加へても、私共は一向素人のことで分りませぬけれども、僅かな所の段別に付きましても、是は玉蜀黍と同じやうな工合に實施をさせても是は出來る問題であります、そんなことは技術的で、能く分りませぬけれども、何とか此の以上に面積を然るべく擴めて行つて、それに對して砂糖の畑をもつと擴張出來ませぬでせうか、其の點を一つと、殊に最も一番むつかしい問題は、私は大正七、八年の頃でありましたか、樺太に參りました時分に、樺太でも砂糖に付きましては、「ビート」で以てやつてることを承りまして歸つて參りました、ああ云ふ風な地帶に持つて行つても「ビート」が出來るのですから、北海道の如きも相當の厖大なる面積があるに拘らず、どうして「ビート」が出來ないのかと云ふことを聽きました時に、向ふの人が言ふには、是は蠅が來て「ビート」に取つ著くと云ふことでどうもうまく行かぬが爲に、北海道に於て此の會社がなくなつて、今の樺太で始めたのだと云ふことを承つて歸りました、其のやうな状態から行きまして、砂糖の生産額は、又之を考へますと、今の蠅を避けて耕作をして居ると考へますと、どうも危險があるのぢやないか、北海道でさへも危險があるのぢやないかと思ひますから、我々國民として全體が一年中に舐める數量は國内で安心して之を舐めて居るやうな状態で居られますか、居られないかに付て、先づ此の二點に付て御説明を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=9
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010・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 此の國内産の砂糖でありますが、是は主なものは北海道の甜菜と鹿兒島の黒糖になつて居ります、十六年には北海道は二萬五千七百「トン」の生産がありまして、鹿兒島の黒糖は一萬「トン」ばかりの生産があつた、それが二十年には北海道は八千六百「トン」しかありませぬ、鹿兒島の黒糖は百八「トン」、此う云う状態で非常に減つて居るのであります、そこで國内産の砂糖の生産に付きましては、二十年度に於きましては、農林省としては北海道に約一萬八千町歩の甜菜の割當をした譯であります、併し實際上栽培されましたのは一萬五百町歩ばかりであります、北海道廳では北海道の甜菜審議會と云ふものを實は作りまして、長官が會長になつて居られる譯けでありますが、丁度北海道では例の七十五萬町歩の開拓計畫がある譯でありますが、それと竝行して十萬町歩位を限度として甜菜の作付の確保を圖らう、斯う致して居るのでありまして、勿論是は五箇年計畫になつて居ります、さう云ふ状態でありまして、熊毛郡の方も是も五箇年計畫で三千町歩位の面積にして行かう、斯う計畫致して居る次第であります、是は何と申しましても、日本では到底國内の需要量を國内生産で滿して行くと云ふことは出來ないのでありまして、家庭用では二千九百「トン」位しか配給は實際行つて居ない、斯う云ふ状態であります、そこで只今問題になりました税の方も實際上非常に税率が高くなつて居るのでありますが、實は家庭に配給されるものは殆どないと言つても宜い状態でありますので、現在としては家庭の生活を脅すと云ふことはない、それから煉乳、粉乳に行きますものは、今大藏大臣が言はれましたやうに、無税の状態になつて居りますので、實際家庭に入つて行く砂糖に付ては一應是は解消されて居る、後は工業用であるとか藥品用の形のものでありますが、併し是は總量が非常に少いものでありますから、實際上の生活面に於ては餘り影響がないと云ふことで、税率が高くなつたと云ふことになつて居る譯であります、實際砂糖の數量が非常に譯山のものが家庭に配給されるやうになりますれば、今のやうな税率では誠に困ることになりまして、生活上不安に陷ることになる譯であります、其の點は只今の處は過渡的な事情にありますので、已むを得ず、物が非常に少いので、實際上影響がないと云ふことでさうなつて居るのであります、それから甜菜栽培でありますが、是は從來は北海道だけでやつて居つたのでありますが、私は矢張り斯う云ふものは北海道と氣候條件を同じくしたやうな内地に於きましても、開拓上の一つの作物として考へて行くべきものぢやないかと考へて居る次第でありまして、現在の處、北海道と鹿兒島を中心にしまして、出來るだけ計畫を樹てまして、只今貿易の關係上許されて居りませぬやうな事情に於きましては、出來るだけ國内に於ても供給量を多くすることに努力致して居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=10
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011・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 極く簡單に一つ申上げます、今の砂糖の問題に付きましては、税率の問題は昨日もちよつと承りましたけれども、「ダンピング」をさせられる虞はないと云ふことで安心は致したのでありますが、砂糖は全く手に入るのが少いのですから、來年度になりましては少しでも生産されるやうに御努力願ひたいと思ひます、從ひまして砂糖は國内で生産すると云ふことが困難だとすると云ふと、此の四月以來手に入つた砂糖の輸入と云ふものは僅かなものでありまして、是は私聞きましたことでございますけれども、恐らく奄美大島から入れた三百「トン」より外に輸入した砂糖がないであらうと云ふことを聞いて居ります、本當のことだと云ふことを聽いて居りますが、事實其の通りであるとするならば、それに付きまして今後共相當に司令部の方の諒解を得る人があつて、それを國内に入れることに對して相當に奬勵をしてやることに付ては、持に御考へになる必要があるのではないかと私は考へて居るのであります、今商工大臣が來ましたから再び申上げますけれども、それに付きまして砂糖の點に付ては特別に世話人のやうなものを國内に拵へて……例へば三井物産とか、三菱商事とか、日本砂糖貿易とか、有馬洋行とか、復利洋行とか云ふ、特殊のものにのみ權利を與へたやうな形に今日はなつて居るやうでありまするから、所謂何と申しまするか、斯う云ふ資産階級の者にのみ權利を與へるのでなく、どんな國民にでも、或は二世の人にでも、所謂民主主義の爲に、國の爲に働いて呉れる人であるならば、是は先程も申しました通り、相當の保護を加へてやり、さうして然るべき方法を執つてやつて行かれれば、非常に國家の爲になるだらう、唯從來の關係から言つて、七八人の者にのみ、會社、法人、其の他個人にやらせると云ふことのみに依つては私は砂糖の政策は完全に遂行は出來ない今日ぢやないか、此の點を御考へ置きを願ふことが出來ますでせうか、其の點は奬來共相當農林大臣も、尚且商工大臣も御考へ置きを願ひたいと私は考へて居るのであります、別に特に説明を求めようと私は考へて居りませぬけれども、自分の希望を申して置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=11
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012・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 此の砂糖はどうしましても、國内の生産だけでは、是は足りませぬので、聯合軍の方にも食糧の輸入を懇請を致しまする時に、矢張り我々としては砂糖の輸入の懇請を致して居つたのであります、約三十五萬「トン」を二十一年度は致した譯であります、併し色々な都合で、仰しやいますやうに、入つたのは殆どないと云ふ状態であります、それで貿易の點は是は商工省の方の所管になると思ひますが、今では國が一緒にして、纒めてやつて居るやうな實際の實情でございます、將來國としてさう云つたやうな點は特に大きな業者だけに特權を與へると云ふやうなことのないやうにやつて行かなければならぬ、斯う思つて居ります、具體的にはどう云ふやうな問題ですか私能く存じませぬので、御答辯は出來兼ねますが、大體其の程度であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=12
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013・奧平昌恭
○伯爵奧平昌恭君 どうぞ一つ御考へ置きを願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=13
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014・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 松尾委員に申上げます、只今商工大臣がおいでになりましたので、三大臣揃ひましたから、御通告の御質問を御願ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=14
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015・松尾國松
○松尾國松君 私が先づ三大臣に伺ひたいと云ふことを申出ました其の理由を簡單に申上げます、此の増税案に付きまして、商工大臣、農林大臣に御尋ね申したいと云ふ意味は、平時に於きましては納税は大藏大臣だけの所管に屬することは申上げる迄もないのでありますが、今日は統制と云う枠があり、又總てを爲しまするには許可、認可若しくは了解を得なければならぬ實情にあり、又片一方で生産を致さうと思ひましても、片一方で其の資材及び必要なるそれぞれのものは矢張り各關係の方々の承認若しくは許可を得なければならぬ、斯う云ふことは私が申す迄もなく皆樣御承知の通りであります、殊に政治家として堪能なる方々は野においでになつた時、若しくは今日でも我々の申すやうなことは、頻々と御耳に入つて居ることと存じますが故に、今日に於ける増税を審議するに當りましては擔税能力が如何にあるか、斯う云ふことと、又無ければ其の擔税能力を如何に培養するか、さうして國民をして此の増税案に協贊したる處の意味を最も能く知らしめて、此の増税案に對する結果の良好を期すると云ふふことは、増税案に對する我々の責任でもあり、義務であると存ずる次第であります、故に最も御關係の厚いと思ふ三大臣に御質問を希望した譯であります、平時に於きましては自己の力に於て、自己の努力に於て生産も出來るし、又他の努力も出來ます、今日は政府の了解とか、認可とか、承認なくしては殆ど動くことが出來ないことは御承知の通りであります、故に是等に關して民意を最も能く知り、最も能く了解し、最も能く好意と同情を以て之を處理して行くと云ふことでなければ、私は平和日本の財源は恐らく出來なからうと存ずるものであります、でさう云ふ意味に於て御伺を致しまするのであります、第一に先づ大藏大臣に御伺ひしたいことは、昨二十二日、議會に於て財政に關する御説明の中に、八箇年に亙る戰爭中資材其の他資産的の減損が頻る大なるものがある、斯う云ふことを御述べになつたやうに存じます、言葉は違ふかも存じませぬが、意味はさう云う風に承つたのでります、私は如何にもそれは御尤もであると存じまするが、それは我々が戰災に依りまする災害だけを假に取上げて見ましても、焦土化したものは御承知の通り、一億六千萬坪、此の土地を利用致しまする地上及び地下の資産、施設の損失を見積りますと、少くとも私の計算では一千億を下らぬと存じます、更に敗戰に依る其の他の私有の財産及び設備の減少額を見積りましたならば、測り知れざる巨額に上るのでなからうかと存じます、其の次には賠償はどう云ふことになりますか私は存じませぬが、但し我々が常識を以て想像致しましても、賠償の結果に依る生産減と云ふものは著しいものがあらうと存じます、さう云ふ風に考へて見ますと擔税能力と云ふものは頗る貧弱になりはしないか、一昨日大藏大臣に御伺ひする時にも申上げましたが、二十年度の租税賦課の對象になるものは農業所得に於て九十三億、十九年度に比して七十四億圓の増加で、約五倍になつて居ります、更に勤勞所得は二百四十何億であります、それで農業所得は勤勞所得に次ぐ額に上つて居ります、更に農業の方面から考へますれば勤勞に依る所得は農業も加はりまするからして、農業の負擔も相當にえらいと存じまするが、兎に角前年に比しますると、私の計算では、まだ追加豫算も出るでありますかも知れぬし、しつかりは分りませぬが、少くとも二十年度に比して、戰時中の豫算に比して、負擔の増額は三百億圓以上に上るのぢやないかと存じます、數字が多少違ふかも知れぬが、私の推計ではさう云ふ風に思ひます、又個人の支出、斯う云ふ方から考へますと、申上げる迄もなく復興費、生活費等、著しく負擔は増加になつて居ることは私が申す迄もないことであります、故に私は此の増税案を審議し、協贊する上に於て申上げることを憚る程の不安を感ずる者であります、此の不安を解いて國民は安心して租税を負擔し此の租税負擔に依つて私は平和日本の再建が出來るのであると云ふ希望の下に此の擔税をしなければならぬ、斯う存じますのであります、此の苦しみの擔税力は總てが平和日本再建の爲である、而して我々は努力に依つて此の擔税力の義務を果すことが出來るのである、此の重き苦しい擔税は軈ては明るい日本の基礎であると云ふ、一面に於て苦痛を喜びに變へる意味に於ける擔税でなければならぬと存じますのであります、然るに増税案のそれ程に私は敗戰日本の實情に於ては、擔税能力に於て困難があると存じます、然るに増税案の理由を見ますると、國庫の收入の増加を圖り、財政の強化に資すると同時に、經濟の諸情勢等の推移に應じとあります、私は之を考へますと、昨日議會に於ける大藏大臣の御説明の中の損失の大きかつたことを肯定さるることは肯定さるるが、更に經濟情勢の椎移に依つて是程の増税も容易に……まあ容易にと云ふ言葉が當らなければ負擔に堪へるものであると御認めになりました點に於ては、多少の私共は分らぬ點があるのであります、斯う云ふ意味に於て、此の點を大藏大臣に私共の分るやうに、伺ひたい、其の次には「インフレ」必至の状況は、是は國民の齊しく憂慮する所であります、是は經濟上の知識が有ると無いとを問はず誰言ふとなく「インフレ」は此の冬には千億の通貨になる、斯う云ふことを言ひます、勿論之に對しては、大藏大臣は別な見地に於て左樣の「インフレ」の心配はないと、斯う云ふやうに承つて居ります、寧ろ「デフレ」の關係にあるのぢやないかと云ふやうな意味に於ても、私は議會に於ける御話だけでなしに、色々な御説に於ても伺つて居る者でありますが、兎に角それに付て一咋日も御伺ひしました如く、「インフレ」防止、物價安定の第一要件は生産増強である、斯う云ふことであります、それでありますから、此の生産増強に付きまして、どう云ふ風に御考へ下さつて居るかと云ふ、生産増強の具體的の要綱を承りたい、斯う存ずるものであります、それから是は單に生産増強をすると、斯う云ふことを成るたけ便宜を與へる、斯う云ふ御意嚮でありませうが、併しながら今日は統制の枠と云ふもの、其の他に於て相當な支障があります、さう云ふものを如何にして除き、國民の希望を容易に達し得るかと云ふことに付ての御所見を承りたいのであります、それから其の次には是だけの擔税を致しまするには、預金、貯金を當てにしなければ出來ぬのであります、是は他の機會に於て御述べになつたかも存じませぬが、此の預金、貯金に付ては第二封鎖預金若しくは貯金から當てらるるや否や、之を一つ承りたいのであります、生活の最低資金も御承知の通り困難でありまする、あれだけのものではなかなか納税に當てると云ふことは出來なからうと存じますが、さう云ふ意味に於てはつきりと御答辯を願ひたいと存じます、もう一つ御伺ひ致したいことは、此の復興資金を得る爲に、地方で實籤を發行致して居ります、是は地方の復興資金を得ると云ふことでもあり、又私は他の一面から考へると納税を容易ならしむる一方法であるとも考へられる、又見樣に依つては擔税能力の培養の一つであると考へられまする、でありますから地方に於て是は有力なる一つの財源、言ひ換へて見ますれば、地方に於て國庫の負擔を少くする意味に於ても相當有效なものであらうと存じますが、然る處、政府は之に對して假に千萬圓の當籤を發行致しますると、雜費其の他の諸費を引きまして五百萬圓殘るとすると、半額宛、國庫が二百五十萬圓、地方が二百五十萬圓と、斯う云ふやうに承つて居ります、是は私は全額地方に交付し、而して地方の復興を容易ならしめ、税源を涵養すると云ふ意味に於て、國庫は片一方に増税をして徴收するのであるから、世話料は國庫で取る必要はなからうと存じます、さう云ふ意味に於て全額を交付する御考があるかどうか、斯う云ふことを承りたいのであります、其の次には農林大臣に御尋ね申しますのであります、私が増税案の審議に付て農林大臣に御伺ひ致しますると云ふ意味は、私は曩に申しました通り、皆さん御關係があることは申す迄もありませぬが、直接に御關係があらうと存ずる農林大臣に一つ御伺ひするのであります、でそれはどう云ふことであるかと申すと、大藏大臣の御説明に依りますれば、先程申した通り農業所得は九十三億、又勞所得は二百四十億、農家の勤勞に關する所得も相當にありますからして、此の農家の負擔と云ふものも相當に重からうと存じます、そこで大藏大臣の「インフレ」對策の一つとして、生産増加、曩に申しました通り、生産増加が最も必要なりと云ふ御説の如く私は承つて居るのであります、私も左樣信ずるものであります、私は時間の爲に詳しいことは申上げませぬが、私の考では段段平和條約が結ばるるに從ひまして、今日迄の私の考では、當局者の考へでござるやうな生産機構と云ふものは、容易に出來なからうと云ふことを私は考へるものであります、勿論私の考が當るか當らぬかと云ふことは今後に徴しますが、容易に出來なからうと存じます、從ひまして我々が生活を維持し、國民の生活を安定するにはどう致しましても、手近な小さい方面に於て生産を圖つて行かなければならぬのぢやないか、斯う云う風に考へるのであります、そこでさう云ふ大藏大臣の生産第一を完遂しまするには、食糧が本と云ふことは、私が申す迄もないことであります、今日の安定は食糧以外にはないと申しても宜いと思ひます、昨日遞信省の發表に依りますると、電話修理の復舊の出來ないことは、第一の理由として食糧難が舉げられて居ります、是も私は尤もであると存じます、故に税源を涵養し、擔税能力を培養しますには、食糧と云ふものが一番大切なものであると存じますが、是がなければ如何に大藏大臣が租税賦課の對象として生産に御盡力になつても容易に出來なからうと思ひます、幸に食糧は聯合軍の司令部の好意と、和田農林大臣の御盡力に依りまして、相當に廻つて居ると云ふことは、私は大いに謝意を表するものであります、そこで私は本年の米作、是は私の申す迄もなく今後に於きまして、別段なる變化がなく災害がなくば、此の調子で行きますれば、先づ私の推計では六千萬石には達するものであると存じます、さう致しますると、此の二十一年の産米の四千三百萬石から此較致しますと、申す迄もなく千七百萬石増加致します、又藷類は前年の九億乃至十億貫に對する本年は十九億はあらうと存じます、私も左樣考へて居ります、だから之を米に換算致しますると、昨年の換算六百三十二萬石に對して、今年は諸の換算だけが千百五十萬石になりまするから、是が五百萬石増加致します、さうすると昨年に比して二千二百萬石増加致します、此の間に於て細かいことを申上げれば、麥の不作の減が百五十萬石程ありますが、差引きましても少くとも二千萬石は増收が出來ると存じますが、今後に變化がなくば私はさう云ふ風に考へるものであります、もつと細かいことを申上ぐれば、麥の不作の減と云ふものに對しては、蔬菜の收穫に依りまして相當に補つて居ると云ふことを申しても宜いのであります、さう云ふことを、今後聯合軍司令部の好意と和田農林大臣の努力を加へる時には、國民が渇望の焦點である三合配給に近いものが出來ると私は存じますが、そこで今日は申しませぬが、私は實は六大都市には少し統制を考へれば、三合は給與し得るものであると云ふ考を持つて居るものであります、併しさう云ふことは餘り申しませぬ、現在の役人の人にさう云ふことを言つたつて、今は通用しない、もう少し經たなければ……今は通用しないと云ふことを以て私は措きます、そこで私はさう云ふことを考へて居るのであります、然る處、和田農林大臣はさうかどうか存じませぬが、私の仄かに承つた所に依ると、二合七勺は先づ宜からうと言はれたと云ふことを聞いて居ります、併しそれは私は實は數字的に尤もだと考へるものであります、どう云ふ譯で尤もぢやと申すと、昭和十五年には御承知の通り八千四百萬石であります、昭和十四年が八千四百萬石、昭和十三年が八千九百萬石と云ふことになつて居るのであります、而して昭和十八年が八千二百萬石、昭和十九年が八千百萬石、昭和二十年が七千七百萬石、昭和二十一年は、是は勿論米のみの計算でありますが、五千三百萬石、之に對して二千萬石混ぜますれば七千三百萬石になります、更に若干の輸入がありますれば八千萬石になる、それでありますから私共は寧ろ、軍需の必要がなくなつた今日、復員軍人と、又海外から引揚げる者を混ぜましても、容易に八千萬人にはならないものと思つて居ります、七千五、六百萬人で今の處止まるのぢやないかと考へて居ります、さう云ふことから推算致しますれば、成程農林大臣が仰しやつたか、仰しやらぬか知らぬが、私の仄かに聞いた數字は合ふ、だから今三合出來るか出來ないか考へ中であると云ふ、斯う云ふことのやうに承つて居ります、さう云ふ意味に於て御差支のない限り御考を承りたい、併し私はさう云ふことを承つたとて、農林大臣の責任であるとか何とか、そんな下らないことを言ふものではないのであります、是はどう云ふことで申すかと云ふと、三合に近い配給が出來ると云ふことを國民に知らしむるならば、それに依つて何とも言へぬ氣持を囘復するものでなからうかと思ひます、故に九月を突破すれば、十月から出來るとか云ふやうな意味のことを一日も早く聞かしたい、勿論新聞に依りますれば考慮中であると云ふことでありますが、さう云ふ意味で御尋を申すのであります、其の次には肥料の増産であります、肥料の増産に付きましては、遺憾ながら私共は國民に何とも申譯ない攻撃を受けて居るのであります、是は私が申す迄もありませぬ、之を出して呉れれば肥料は是だけやると言つて置きながら、ちよつともやれない、是は改めて申す迄もなく公知の事實であり、御承知の通りであります、最近に於て幾らか御盡力に依つて直つて來て居りますけれども、今日迄の約束不履行を遺憾とするものであります、處が茲に一番私の御聽きを願ひたいことは、一つ肥料を造らう、期う云ふことを考へます時、工場關係では商工大臣の管理下に工務局長があり、商務局長がある、さうして更に厚生省にも關係する、農林省の農政局の肥料に關する者が關係する、まごまごして廻つて居る内に、大藏省の金融に引つ掛つてしまつた、實に何と言つて宜いか分らない、それであるから二日か三日で濟むことを、一月も、二月も、三月も、四月も、半年も掛つて終ひにはしまつたことをした、私は斯う云ふことを能く聞きますが、實に私は斯う云ふ點に於ては大藏大臣の言はれる生産増加に付て一大支障を來すものでなからうかと存ずるのでありまするが、それで勿論是はどこに行きましても堂々たる御役人が構へてござつて、多くの場合に於て自己主觀の意見を述べて何とも仕樣がない、斯う云ふ點に於て、私は農林大臣は之を自己の下に一元化して、食糧増産に最も緊切なる此の肥料を、斯う云ふ現實に於ける弊害を除いて、自己の下に一元化して我々國民の希望するが如き機構に改むる意思ありや否や、之を一つ承りたいのであります、若し改むること能はずんば、各關係の大臣の方々は最も緊密に異體同心、一元化して戴く、之を私が御願ひし得るや否や、斯う云ふ意味で御尋ね申したいのであります、更に商工大臣に御伺ひしたいことは、石炭の増産は生産事業に於ける食糧に次ぐ大切なること、私が申上げる迄もないことであります、之に付て非常なる御苦心の中にあることも存じて居ります、又之が價格調整の資金として、私はまだ豫算を一々檢討して居りませぬが、五十餘億の國庫負擔があるとか聞いて居ります、之を需要者に負擔せしむると云ふことも出來ませぬ理由、さうして石炭を如何にして今後増配し得るかと云ふ御見込を承りたいのであります、それは尚一言附加へまするが、何か一つ事業をやらうと思つても、石炭がない、石炭が配給がなければ出來ないぢやないか、何とも仕樣がない、石炭がどこにあるかと言へば、俺の方でやらなければ出來ない、全く何ともかんとも仕樣がない、さう言はれればさうに違ひない、企業者の身になつて見れば、配給がなければ出來ない、生産を増加せむとするも能はざること御承知の通りであります、それに付て商工大臣はどう云ふ考を以て此の生産を御助け下さるか、是だけを承りたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=15
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016・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 非常に廣汎に亙つての御質問でありますが、此の税に付きましては如何にも金額は増加して居ります、大體私が議會に於て述べました如く、日本の經濟が、此の戰爭及び終戰に伴ひまして、非常な損害を受けて居りますと云ふことも、是も申す迄もないことであります、それがどの位の額に上つて居ると云ふことは今正確な計算は出來て居りませぬが、先程御話のやうな無論數字になるものと思ひます、でありますから實質的に申せば税の負擔能力は減つて居る譯であります、併しながら一面に於きましては、物價の騰貴があると云ふことで詰り金錢的には、實質的には物價の騰貴が示して居るが如く、我々の所得と云ふものは實質的には決して殖えて居るとは言へぬのでありますが、金錢的には殖えて居る、さう云ふことの關係から租税收入等も歳出が金錢的に殖えて居ると同樣に、租税其の他の收入も金錢的には殖えて居ると見えて居ります、租税にしましても、昨年度よりはちよつと二十三億圓程度の租税收入全體として殖えて居りますが、併し此の程度のものは、何時かも申上げましたやうに、私共の主税局で長年の經驗及び調査資料に依りまして、無論負擔が國民にして貰へるものと云ふ計算の上に建てました次第であります、それから「インフレ」の問題でありますが、是は色々私の申上げたことに對し諸方面に誤解もあるやうでありますが、私は終戰後一番心配を致しましたのは、當時からもう世間では「インフレ」「インフレ」と言つて騷いで居つた、確にそれは通貨が膨脹し、物價の騰貴と云ふことも心配でないのではございませぬが、併し是は財政上に非常な赤字が年々に相次いで現れて、詰り財政上から通貨の膨脹と云ふものが起らざる限り、「インフレ」と云ふものはさう心配すべきものではない、是は理論的にも亦今迄の歴史的に考へましても左樣に信じて居る譯であります、處が終戰後の状況は、實際にはどう云ふ形の「インフレ」が起つたかと云ふと、「アメリカ」あたりでも是は起つて居る「インフレ」でありますが、過去の蓄積、詰り戰時中の國民の預貯金と云ふ形になつてありました蓄積が流れ出して、さうして「インフレ」の形を呈して居るのであります、併し斯樣な「インフレ」である限りは、起りましても限度があるものであります、それよりももつと心配なのは、終戰に依つて經濟界が、産業が第一に虚脱状態になつて生産が縮小し、さうして色々な赤字が各事業に現れる、其の結果、大整理が經濟界に行はれなければならなくなつて、一種の恐慌が起るであらうと云ふことを終戰直後も心配致しましたから、言葉を強めて、心配すべきは「インフレ」でなくて却つて「デフレ」であると云ふことを申して居つたのであります、現在の状況は、或程度私の申した通りでありまして、今度補償打切問題等に依つて政府自身が經濟界の整理に或程度乘出すことになつて居る、是はさう致すことが秩序ある整理が出來、極端な恐慌を起さずに濟むことと考へまして居ります譯であります、之を放つて置けば矢張り斯う云ふ整理が行はれ、随分ひどいことになるのではないか、今度政府のやります場合に於ても、一面に於て、復興金融、其の他のもので、謂はば注射を一面に於てなしつつやらなければ相當困難が殖えると思ふのであります、でありますから唯の「インフレ」ならば、「デフレ」政策を取るならば簡單に片付くのであります、「ドイツ」のあのひどい「インフレ」でも「レンテン・マルク」で片附く、單なる「インフレ」ならば非常にと云ふ譯でもありませうが、割合に手術は容易であるし、又今日の一種の不景氣、恐慌状態が矢張り景氣變動の普通の場合に起る恐慌であるとか、不景氣ならばやりやうがあるのであります、處が今日は普通の意味での「インフレ」でなしに、さうかと云つて普通の意味の「デフレ」でもない、だから私は議會で、單に購買力を注入したからと云つて日本の經濟が立直るものではない、だから是は生産増強と云ふ方面に行かなければいかぬ、單なる「デフレ」、「インフレ」ならば手術は簡單でありますが、さうも行かない、斯う云ふ所に惱みがあります、其のことを私は終戰後絶えず申して居つた考へであります、其處でどうしても此の状況を立直すには生産第一主義で進まなければなぬと私は考へて居りますし、現在の政府全體は左樣に考へて居ると信じて居る譯であります、其の生産の増加する方法は、矢張り御言葉の通り容易ならざることでありまして、なかなか口で言ふやうには行きませぬ、其のことも能く感じて居りまして、常に閣僚同志申合せもし、何とか之をやらなければ、單に政府が困るとか、政府がどうかと云ふことでない、國がどうなるかと云ふ問題でありますから、是はどんなことがあつてもしてやらなければならぬと云ふことを常に考へてやつて居る次第であります、其の第一段の所作としては、石炭の増産を一つどうしてもやらなければならぬ、之に付ては或は思ひ切つて補給金を出して、さうして石炭業者にどんなことがあつても十月迄には増産をさせる、八月一杯に計畫をすつかり立てまして、賃銀、其の他の合理化を行ひ、又選炭の設備をやり、それから又炭質の檢査を行ふ、さうして坑木がないとか、食糧がないとか云ふやうな口實を許さない、斯う云ふやうな制約の下に八月から準備をして十月迄には必ず計畫生産量の所迄持つて行く、少くも計畫生産量を多くして、而も品質の良い石炭を出すと云ふことで邁進を致すことになつて居るのであります、唯ちよつと今日色々の關係がありまして、色々の方面へ交渉を致さなければならぬやうなことから行き閊へて居る點があるのでありますが、目下さう云ふやうな「ライン」で一應交渉中であります、是は無論十月迄の暫定處理でありまして、後は其の根本對策を速に立て、石炭の増産、何は兎もあれ石炭の増産と云ふことに先づ第一に著手を始めた譯であります、其の他の點に付ては商工大臣及農林大臣の方から御答へ下さることと思ひますが、そんなやうな積りで、實は政府としては此の生産増加と云ふことに、もう何物も棄てて立ち向ふと云ふ決心を持つて居る次第であります、其の場合に、先般も松尾委員から御話がありましたが、色々統制にかかつて實際に民間の者が仕事をしようとしてもうまく行かない、之も能く政府としては認めて居る所でありまして、それ等の點も著々何とか直して、もつと自由に各民間の業者が各自の創造、各自の「イニシアチブ」を發揮して活動が出來るやうな制度に成るべく速に持つて行きたい、斯う云ふ考を持つて居る譯であります、それから寶籤の御話、是はまだ地方でやつて居ると云ふやうな御話でありますが、一箇所試驗的にやりまして、其の成績を見て居る次第でありますが、私の考としてはああ云ふ種類のものは地方の事業と結び付けることに依つて始めてうまく成功するものだらうと考へて居ります、中央の政府が東京で煙草をくつ付けて賣ると云ふやうなことでは、是はもう行き詰るのではないかと思つて居るのであります、斯樣なものは成べく一つ地方にやらしたいと云ふ考を私は持つて居ります、其の爲にはちよつと法律を必要と致す譯であります、是は別段大した法律ぢやありませぬが、一つの法律の中ちよつと一部分を修正する程度の法律案を近い中に、是は只今非常に法律案が多い爲に、法制局あたりの能力がもう手一杯になつて居りまして、なかなか仕事が運びにくくなつて居りますが、併し是はもう直ぐ片附きますので、左樣な法律の改正案を御審議願ひまして、さうして地方で實籤でありますとか、或は割増金付の貯蓄でありますとか云ふやうなものがもう少し地方的に行はれるやうな方策を講じたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=16
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017・和田博雄
○國務大臣(和田博雄君) 私の關係しまする點に付きまして御答へ申上げます、食糧の増配の問題でございまするが、是は何と言ひましても、産業を再建しますると云ふ點から考へましても、亦生産の増加に依る「インフレーション」の防止と云ふ點から考へましても、亦國民の營養の見地、其の他色々の點から考へて、今の基準の配給量を殖やして行くと云ふことが必要でありますと云ふことに付てはもう議論がないと思ふのであります、幸ひ今年は此の儘の状況で行きますれば、松尾さんの仰つしやいますやうに、相當の米も穫れますし、又甘諸も可なりな豐作の氣構へであります、そこで政府としましては、是は出來るだけ早い機會に、國民に安心感を輿へまする點から言ひまして、來年の食糧年度からは、所謂今年の十一月から始まります食糧年度からは、米の出廻の状況等を十分睨み合せて増配を致して行きたい、斯う思ふのであります、其の準備を我々としては致して居るのでありまするが、是は御承知のやうに、全體を考へますると、來年の食糧年度と雖も、矢張り或程度の、と云ひますか、輸入を俟ちませぬと需要供給の「バランス」は是は合ひませぬ、と申しますのは、唯茲で増配を致し、又農家の保有量と云ふものに付ても、之をはつきりと認め、其の他生産再開等に必要な點に付て十分考慮を拂ひますと、需要量と云ふものは相當の數に上ります、そこで來年の食糧年度に致しましても矢張り或程度の輸入を俟たねばならぬのであります、さう云ふやうな關係がございますので、其の關係方面とも色々な打合せを致しますので、まだ幾らにするかと云ふことに付ての發表は實は致し兼ねるのでありまするが、我々としましては、松尾さんの御意見竝に一般の人達の何から考へましても、十分一つ早い機會に食糧の基準量を上げると云ふことに致したい、斯う努力致して居る譯でございまするので、左樣に御了承を御願ひ致したいと思ふのであります、それから肥料の點でありまするが、肥料行政の一元化の點に付きましては、今一番必要でありまするのは、是は石炭を増産致しまして、それかを片方では食糧の供給を確保致しまして、さうして其の他の産業を興すと云ふことでありますので、肥料に付ても實は増産第一本位でやつて行つて居るのであります、それから機構の一元化の點に付きましては、是は農林省であるとか商工省であるとか云ふやうなことに囚はれることなくして、何等かの形で之をはつきり一元化しまして、さうしてここ一二年の増産……一「トン」でも多く増産をするやうに致したい、斯う私共は考へて居るのであります、從來それぞれ新聞紙上で、恰も農林省と商工省とが如何にも機構問題に付きまして爭つて居りますやうな報道が出ますことは、是は我我としては甚だ心外に存じて居るのであります、我々の方と致しましても、商工省も勿論私はさうだと思ふのでありますが、從來のやうに所管に囚はれて、所謂所管爭ひをすると云ふ氣持は毛頭ないのでありまして、唯謂はば一日も早く増産する、それにはどうしたら宜いかと云ふことに付て、それぞれ兩者の間に於きまして眞劍に研究致しますのみならず、又役所も一體となりまして現在ではやつて居るやうな次第でございまして、其の點に付きまして從來色々の非難も受けるのでありまするが、さう云ふ點に於ては我々として尤もだと思ひますことは、常に反省致して之を改善致し、改めて參つて居つたのでありますが、尚一層今の緊迫した事情から言ひまして、肥料の増産は即ち食糧の増産でございますので、それ等の點に付きましては、何等かの形に於ける機構的の一元化を行ひまして、其の點に付ての目的を達成したい、斯う考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=17
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018・星島二郎
○國務大臣(星島二郎君) 松尾委員の御尋の中で大體大藏大臣より、或は農林大臣よりも既に御答へした通りでありまして、多くを私附加へる必要はないと思ひまするが、實際人を動かすのには食糧、機械を動かすのには石炭と云ふことは分り切つたことのやうで、之に當面致しますと、實に影響の深刻なのには驚いて居る譯でありまして、一「トン」でも多く石炭を出したいと思ひまして、色々苦慮致して居るのでありますが、是も結局食糧問題に起因して居ります、今の處、大體月産百六十萬「トン」餘り、百七十萬「トン」近い目安を持つて年産二千三百萬「トン」を大體の標準と致しまして、來て居りますが、一時勞働問題、殊に生産管理の問題が北海道に起きまして、非常に心配な状況になつて居りましたが、政府が社會秩序維持に關する聲明を發し、斷乎として生産管理を排撃するの方針を確立し、同時に徒に勞務者を抑へると云ふ方針ではなくして、經營協議會の如きものを設けて、十分勞資の間の協調を保つた方策を執らなければならぬと云ふことが昨今徹底すると同時に終戰直後の少し行き過ぎた感じから稍稍後戻りした感じが社會一般にもありまする如く、石炭勞働界にも凡そそれと竝行した思想がありまして、昨今は甚だ喜ぶべき現象になつて參りまして、先程九州の方面からも一般の配給を止めてでも、福岡縣の如き缺配しながらも石炭山などに對しては加配を斷行したと云ふやうなことに非常に感激致しまして、勞働組合の代表者が態態禮に商工省に參つたやうな事實もあるのでありまして、是等の精神が加りまして、昨今稍稍豫定に近い程度になつて參りましたことは誠に御同慶の至りであります、併しどうしても、是では足らぬのでありまして、私は寧ろ許されるならば若干の輸入が欲しい、殊に製鐵の如きはどうしても日本の炭よりも北支炭或は佛領印度支那等の炭が良いのでありますから、之を要請致して居ります、一應斯う云ふものを入れて戴きますと、有らゆる點に於きまして「セメント」の増産も出來る、「セメント」の増産が出來ると云ふと「ダム」が修繕出來たりして水力電氣が殖える、其の電力が殖えれば石炭が多少節約出來ると云ふやうな有らゆる方面に影響するので、取敢へず或る時期の間でも是非石炭の輸入を仰ぎたい、斯樣に考へて今要請して居る譯でありますが、未だ十分な答は得られませぬけれども、併し消極的に日本から朝鮮竝に香港に出して居りまする石炭はせめて是は止めて貰ひたい、之を司令部の方に御願を致しまして、其の事實を認められまして、先々月以來香港に向けて送つて居りましたものは直ちに中止をされまするし、朝鮮に向けて居りました石炭も殆ど半減するやうな結果になりまして、大變日本の國内事情を同情の態度を以て之に處置されて居ることに對して感謝して居るやうな譯でありますから、先づ此の樣子で行きますれば今の見積りは大體目的に達成出來ると思ひまするし、尚衆議院等の各政黨に於きまして、今囘食糧増産對策委員會と同じやうに石炭増産は單なる食糧の加配米とか云ふだけではいかぬ、本當に目覺めて勞資共に國家の再建の爲に蹶起して精神的な運動をしなければならぬと云ふやうな聲も起つて居りますので、斯う云ふものがそれぞれ末端迄行屆いて行きますならば、必ずや二千三百萬「トン」はおろか三千萬「トン」近い所迄出して呉れますれば、概ね總ての仕事が順調になる譯でございます、昭和十六年でありましたか、一時五千萬「トン」も出たことがありますが、是は尤も濫掘で唯戰爭の爲に無暗に出したのでありますけれども、三千萬「トン」位は本當を言へば出さうと思へば出せぬことはないだらうと考へますので、今後十分留意致しまして其の邊の目的達成に萬遺憾なきを期したいと思つて居る次第であります、尚肥料問題は和田農林大臣から申上げた通りでありまして、熱心の餘り理論的には如何にもえらい競爭が行はれて居るやうでありますけれども、是は是非此の内閣の間に總て話合を付けまして順調に仕事が進みますやうにやりたいと斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=18
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019・松尾國松
○松尾國松君 有難うございました、今大體分りましたが、大藏大臣に申上げました第二對鎖から納税に當てることの御返事と云ふか御説明を御願ひしたいと存じます、それから地方で富籤、寶籤を出します場合に於ての剩餘金を國庫に取つてしまはずに、地方に全額交付して貰ひたいと云ふことを申して居りましたが、是は含んで貰へば宜い、終りに私は特に商工大臣に御願ひして置きたいのですが、勿論二大臣の御方も同じことでありますが、私は特に商工大臣に御願ひしたいのは、最後の御言葉であります、連絡であります、成程熱心の餘りと云ふ御話を伺ふが、是は私も一應御尤もと存じまするが、併し私共が聞いて居ると熱心だか、自己主觀的のことかちよつと能く分らぬのであります、此の點に付ては特に私は商工大臣の政治的御考を以て大藏大臣或は農林大臣の方に何と言ひますか御援助と云ふと言葉が悪いかも知れませぬが、一つ御協力を願つて、我々が何處へ行つても話は成る程尤もだと云ふやうに御連絡を御願ひしたいと云ふことを特に私は商工大臣に御願を致して希望を申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=19
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020・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 第二對鎖からの税金の問題を落しましたが、是は本年分の賦課課税による所得税、本年八月十日以前終了事業年度分の法人税等は第二對鎖から支拂して宜しいと云ふ告示がもう既に出て居ります、それから寶籖の方は先程申上げましたやうに試驗的にやりましたので、あれは確か國庫へ半分と云ふやうなことをやる、それは實は國で出すと云ふ豫算にもありますが、國で實籤を出すことになつて居ります、其の一部を出さしめたと云ふやうな關係で、是は前内閣時代のことでありますが、何か半分々々と云ふことにしたやうであります、今後はもう少し考へようと存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=20
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021・長島銀藏
○長島銀藏君 私の質問は松尾委員の蛇足に値する以外の何ものもないかも知れませぬが、ちよつと氣の付いた所を御當局から承つて置き、又自分の希望も申上げて見たいと思ふ譯であります、實は戰時中に多くの國民が本當に家財も何も彼も全部烏有に歸しまして、或るものは爆撃の爲に、御氣の毒にも斃れたりなんかした譯でありますが、或は負傷をしたりなんかして生き殘つたと云ふ方が、若し是が死んで居る場合ならば、今我々が要求したいと思ふやうなことは無論申さぬ譯でありまするが、斯う云ふ方が生き殘つて、是から敗戰日本を再建して行かなければならない、それから税金なんかも出來るだけ澤山御納めして行かなければならない、斯う云ふ工合に考へました場合に、どうか是れだけは一つ政府御當局としても、國民の聲として御聽取願つて置きたいと斯う思ふ譯であります、昨日の本會議の時にも、私が今申上げようとすることと同じやうな議論を出した方がございましたが、假に保險金を十萬圓掛けてある、さうして其の十萬圓が特殊預金になつた、特殊預金になつて、今度の新しい方法で行きますると云ふと、五萬圓だけは個人の懷ろに入る、後の殘り五萬圓は棒引と云ふ至つて簡單な計數になつて居ります、處が昨年の終戰前後の物價と、今日の物價は優に十倍になつて居ります、そこで私は五萬圓は金の面で取れるが、後の失はれた五萬圓は十倍だから、五十萬圓と云ふことになる、其の五十萬圓から五萬圓を引きますと、殘りは四十五萬圓、是が完全な損失になる譯であります、それから幸ひ燒け殘つた人は、當時の十萬圓が現在は其の十倍でありますから、是は百萬圓になつて居る譯であります、そこで百萬圓になつて居る人と、燒けて五萬圓貰つた人の差と云ふものは、兎も角も九十五萬圓と云ふ明かな差が出て居るのであります、そこで今度は此の九十五萬圓と云ふそれだけの大きな差があるにも拘らず、それは成る程昨年に於きましては、罹災者に對しては所得税は免除されましたけれども、本年に入つて果して、其の免除が行はれるか否やと云ふことは、我々は存じて居りませぬから伺ひたいのでございまするが、之を新しい税率に依りまして課税するとした場合に、是は所得税だけに過ぎませぬですが、片方の人はもう殆どやり切れない状態になつて居るのに、片方は擔税力が本當に澤山あります、さう云ふ場合に對する政府の御考慮、それから財産税とは無論別問題になる譯ですが、財産税はさう云ふ人に對しては、どう云ふ風な程度に取つて行くかと云ふことも承つて置きたいと思ひます、詰りさう云ふ燒け殘つた人に對しては、どう云ふ工合に取つて行くかと云ふことも、詳しく伺ひたいと思ふのであります、それから尚此の特殊預金が五萬圓を殘して、後全部棒引されると云ふやうな新事態でありまするが、是は私はさう云ふと、大藏大臣の御叱りを受けるかも知れませぬが、聯合軍自體が實情を目でも見、耳でも聽いて居る、新聞の論調でも、或は色々な方面からも能く納得して居ると思ふのであります、而も「アメリカ」は人類愛と云ふことを非常に標榜する「キリスト」教信者でありまするからして、どうか、此の窮状と云ふものに御同情願ふと云ふ意味合でもう一段と聯合軍に向つて一つ陳情をして戴きたい、さうしてどうか五萬圓しか駄目だ、五萬圓しか殘すことの出來ないと云ふことに對して若干でも修正が出來るならば、此の際して戴きたいと考へて居る次第であります、尚大藏大臣の此の間の御話でありますると云ふと、五萬圓を確保すると云ふと、それは全國の九十「パーセント」に當る、さうして後のを高額の、詰り預金者と云ふものは十「パーセント」だと云ふことでありましたが、若し十「パーセント」位の僅かなものであるならば、總花式に是は全部は行かない迄も、高額の人にも何がしかの「パーセンテーヂ」に依つてそれが、生きるやうな途を講じて戴きたい、國民全部がさうなれば非常に安心立命を致します、どうか此の點に付きましては、聯合軍當局にもう一度も二度も三度も御願致しまして、少くとも民主主義的に日本が「アメリカ」の標榜する自由主義に矢張り倣つて行くのだと云ふ考で「スタート」をして居ります關係上、日本人にもどうか民主主義的な自由を與へて貰ふやうに御努力を願ひたいと思ふのであります、それから尚私はあの打切りに依りまして、事情は國民に對しては非常に悪い感情が殘されて居ると思ひます、そこで政府を信頼しなくなつたと云ふやうな意味合の惡い感情が殘されて居りまするから、之を政府を信頼する觀念に引き戻しまするにも、非常に有效適切の方法ではなからうかと考へて居るのであります、將來まだまだ政府と致しましては、國民の詰り愛國心に愬へて、或は赤字公債だとか、色々な其の他のものを負擔して貰はなければならないことだと思ひます、それでありまするから、此の信義の國、まあ聯合軍に對しましてそれ等の事情を篤と御陳情を願ひたいと思ふのであります、それから今度は保險會社のことに付て、又是も擔税力に影響がありまするから御尋ねしたいのでありまするが、戰時中政府が保險會社に對しまして補償をすると云ふことになりまして、今度は政府自體、軍自體、色々の監督關係は戰災保險に入つて、戰災保險に入らなければ其の保險契約は無效になると云ふことで、保險契約書の裏面に書いてあります條項に依つて、戰爭のやうな場合の災害と云ふものは契約面から行きますると云ふと無效になるのだと云ふことでありまして、當時戰災保險に付きましては政府自體も御推奬になつた譯でありまするが、そこで之を民主的の見解から考へますると云ふと、兎も角保險金を支拂つた譯であります、處が今度の新しい處置に依りますと、保險金は幾ら拂つてあつても、それは考慮に入れてない、個人であるならば最高五萬圓は認めるが、後は棒引だ、斬う云ふことになりますが、私はそれでは非常に影響する所が大きいのぢやないかと思ふ譯であります、少くとも支拂つた保險料と云ふものは、若し罹災した場合に、當然保險契約の條項に基いて、其の金額が返つて來なければならない譯であります、そこで政府が補償する五萬圓と云ふものは、其の儘補償して戴いて罹災者に御支拂ひ願ふ、それから保險會社は受取つて居る保險金に對する應分の保險料を同時に支拂ふと云ふことに依つて、難儀をして居る所の國民を救濟する途がないか、斬う云ふことを御尋ねしたいと思ひます、又さう云ふ方法があるならば一つ御考慮に置いて戴きまして、保險會社、或は保險會社を監督する商工省の保險局ですか、さう云ふ所とも御話合に與りたいと、斯う思ふのであります、それからもう一つ、今度は先程御話しました所にもう一遍戻る譯なんですが、燒けた者と燒けない者との相違は、先程申上げた通り單に保險會社から取る金だけの程度ではございませぬ、洋服一著買ひましても、當時は七十圓も出せば相當な物がありましたが、今では數千圓、それから家庭道具の鍋、釜に至る迄、それを當時の金額からすればいと簡單な價格でありましたのですが、現在は矢張り是も物に依ると百倍近くして居ります、是等の物を見積りますと、實に大きな金額になるのでありますが、之を共産主義的に考へるならば、燒け殘つた人の財産も燒けた人並に、一遍「プール」計算かなんかに入れて、さうして國民が分けたら宣いのぢやないかと云ふことに或はなるかも知れませぬが、私はそんな極端なことを申上げる譯ではありませぬが、税金を取る上に於ては容易に御考慮が拂はれる、完全罹災者は、私は少くとも數十年間或は數年間は完全罹災者、或はちよつと燒けた人、或は疎開を全然しなかつた人と云ふやうに分けて戴きたいと思ひます、其の理由とする所は、當時頭の非常に良い市長なんかが居りまして、早く疎開した方が安全だから疎開しろ、或は非常に處置が宜かつたのだと言つて、燒跡を見て褒められた市もあります、さうかと言つて、どうも非國民的な行動であつて、我々はもう敵を自分の國の本土の海岸近く迄に誘ひ寄せるので、それに對して丸で負けたと同じやうな風に、荷物を車へ積んで、家内中で山へ避難すると云ふやうなことは、實に非國民的であると言つて非難することもあります、それが良かつたか悪かつたかと云ふことは、私は今申しませぬけれども、兎に角日本人の氣持と云ふものは、當時はそれ位に差がありました、そこで其の今の家財道具とか何とか云ふ問題になつて來ますと、罹災をしなかつた人とした人との差の實に大きなことを能く御認識下さいまして、課税方針、其の他に付きましては國民も救濟出來、それから同時に日本を救ひ得るのだと云ふ下地を此の際特に石橋大藏大臣に御願ひしたいと思ふのであります、それからもう一つ課税上の問題に屬するのでありますが、現在紙幣がどの方面に堆積されて居るかと申しますと、もう皆樣も既に御承知の通でありますが、農村に大體多いのであります、其の次に漁村、それから又最近迄日本の法律上の掣肘を受けない所の營業者、詰り日本人以外の方でありますが、斬う云ふ方の懷中深く藏せられて居りまして、なかなか一般人の懷には入つて居りませぬ、銀行にも預金はちよつとも出來ないと云ふ理由は、是は紙幣が澤山有餘つて、銀行の信用が無いから入れないと云ふばかりではありませぬ、實際に眞面目の國民の懷中にはもう金がないのであります、それで増税をされるに從ひまして、其の税金を完納出來るや否やと云ふ問題になりますと、眞面目な者程出來ない譯であります、例へば生眞面目であつた實業家とか棒給生活者、或は株券の配當金、國債の利子、それかな眞面目な意味の地主でありますとか、或は家を貸して家賃を取つて居たと云ふ者は、資産があつても是は全く擔税能力がございませぬ、それでありますから、闇行爲や何かをして居つたやうな者とか、或は無闇に物を高く賣付けて、殆ど帳簿にも何も記載して居なかつたやうな飮食店とか、或は又先程申しましたやうな、日本の法律の掣肘を受けて居らない方々とか、さう云ふ所から適當な方法を講ぜられまして、澤山の税金を此の際取つて戴く、さう云ふ工合に御願ひしたいと思ふのであります、それから今度は軍需生産に關する賠償金の問題に付てちよつと御尋ねしたいのですが、軍需會社とか或は個人でありましても、工場を持つて居る者が軍から示達を受けます、海軍省の例で言ひますと、内示と云ふのが一つありまして、其の他に示達と云ふのがあります、示達と云ふのは生産の設備を増大すると云ふのでありますが、其の示達に依りして色々設備を擴充し、それから内示に依りまして註文を受けて、其の品物を納めようと云ふ時に、終戰になつてしまつた場合の例を以て御伺ひする譯でありますが、現在は其の補償が打切だと云ふだけで、殘務整理部に廻されて居ります、それで是はどうしても國庫が責任を負ふべき筋合になつて居るに拘らず、軍需補償打切と云ふことに聯合軍の方の御指令もあつて、さうなつて居るさうでありますが、處が之を貰つてしまつた所があるのです、さう云ふ者はどうなつて居るかと云ふと、此の間も聞いて見ますと、示達とか何とか、さう云ふ風な完全な命令でなくて、係官と口約束位で軍の仕事を進んで行つた者は、前に金を貰つてしまつてある、斯う云ふ話である、是は金は返すのだと云ふ御話があつたのですけれども、金は返さなくても宜いらしいやうに聞いて居りますが、是では全くの不公平だと私は考へます、それで若し軍需補償が打切られてしまつた人から見まして、此の人が若し銀行から借金があつた場合、其の借金は軍の裏付けに依つてやつた借金でなく、單なる信用に依つて銀行が金を貸與へた、其の貸與へられた資金で以て設備の擴充をした、或は商品も造つた、或は之が燒けてしまつた、今の特殊預金になつてしまつたと云ふやうな人は明かにもう損失として永久に返つて參りませぬが、此の場合に補償問題と銀行の借金と云ふものは大藏當局から見るとどう云つた救濟方法が講ぜられるのでありませうか、斯う云ふことも、一つ考へて戴きたいと思ふのであります、尚之が救濟されない場合に昭和二十一年度の損失として永久に帳面にそれが殘る譯ですが、其の殘つたものは是から先に起ります處の經營の勘定中に損失として又認めて貰へるかどうかと云ふことに付ても一つ御意見を拝聽したいと考へる譯であります、それから又是も道義的な話でございまするが、軍人とか電屬とか其の他官吏と云ふ者は人生の大半を國家に盡しまして、さうして恩給に依つて老後を營んで行くと云ふことが今迄考へられて居つたのですが、此の恩給と云ふものはもう打切りになつたのでありまするが、其の人等はどんな考を持つて居るだらうかと云ふことを私はつくづく考へます、道義日本を建設して行く上に於ては、斯う云ふ風な者を是非救ふ途を大藏省は考へて戴きたい、是はまあ道義だけの問題でありまするが、斯う云ふ非常の際に斯う云ふことを申上げると云ふと生温い話をするやうに御聽取りになるかも知れませぬが、道義が完全に行はれなければ、結局擔税力が假にあつてもそれは胡魔化して逃げの手を打ちます、又徴收令状が來ましても、それに對する實際の擔税力のない連中の處理なんと云ふことに付きましても、色々又苦心が要る譯でありますが、さう云ふことのやり易いやうに致しまするには、どうしても道義と云ふことを目標に進んで戴かなければならないのであります、それから今度所得税に付きまして申上げたいのでございますが、所得税第十一條の第一號にございます軍は、軍屬の手當の削除がございまするが、是は公務員として例へば手當を假に貰ふことに致しまするが、公務員の手當と云ふものに課税をされないやうな工合に、さうやうに填め換へてしまふことは出來ないだらうか、斯う云ふ風に考へて居りますが、是は大藏大臣の一つ御意見を伺ひたいと思ひます、所得税の第十一條の第一號に軍人に對する免税と云ふものが、新法に依りますと削除されて居ります、それから今度は扶養家族妻及子供三人の標準を取つて見ますると云ふと、勤勞所得に依る場合と事業所得に依る場合と二つを計算をしまして出して見たのでありますが、一年間に二萬圓の收入のある者が使へる金は一萬一千圓であります、それから三萬圓の場合には事業所得で行きますると、一萬五千百六十二圓と云ふ税金を拂ひまして、結局使へる金は一萬三千三百十二圓、五萬圓の場合には使へる金が一萬六千八百二十三圓、それから十萬圓の場合には二萬二千八百二十一圓八十錢、それから二十萬圓の收入の場合には使へる金が二萬九千三百二十一圓八十錢、三十萬圓の收入の場合には三萬一千四百二十一圓八十錢、是だけが自分の使へる金となつて居りまして、後は全部課税される譯であります、假に此の物價高の時代に於きまして、一年間に子供が三人あつて女房と自分、詰り五人暮しで二萬圓と云ふと月に一千五六百圓、是は勤勞所得の場合は収入であり、事業家とした場合には、二萬圓の事業と云つたら、たいした事業でありせぬですが、兎に角二萬圓の場合でも一萬一千圓しか使ふことが出來ない、後は殘らない、三十萬と云つても三萬一千四百二十一圓八十錢しか使へないのだ、手許に殘らないのだ、一體三十萬圓の實收を舉げると云ふのは、是の十五倍二十倍、詰り三百萬圓六百萬圓の商賣をしなければ、それだけの收入が舉りませぬ、それだけの大きな仕事をすれば、或は社員にも色々面倒を見てやらなければならない、其の人が此の物價高に三萬二千圓、詰り月に割りますと、二千五百圓ばかりの收入で實際やつて行けるかどうかと云ふことを御批判を願ひたいと思ひますが、私は斯う云ふ點から見まして、所得税に付きましては若干數字を動かして行かなければならないかと、斯う考へて居る譯であります、まだまだ逐條的に申上げまするとございますが、時間も大分遅うございますので、實は此の程度に御質問申上げて置きたいと思ふ譯でありますが、之に付きまして甚だ恐縮でございますが、一つ御囘答を得たいと思つて居ります、種類に依りましては、今日の御囘答でなくても、次囘でも結構でございますが、簡單なものだけは一つ御答へ願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=21
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022・石橋湛山
○國務大臣(石橋湛山君) 私から大體の御答を致しまして、尚財産税或は所得税との關係に付きましては政府委員から御答へ申上げます、今囘の補償打切りと云ひますか、打切りの處置に付て、戰災に罹つた人達、私も其の一人でありますが、其の人達の火災保險が大體五萬圓で、それ以上が支拂はれないと云ふことに付ては問題であります、昨日本會議の席上でも左樣なことが出た譯でありますが、是は色々考へ方もあり、確に御話のやうに戰災に罹つた者と、罹らない者とは非常な相違がある譯であります、それ等のことも考慮して、出來るだけのことを致したいと存じた次第であります、が其の結果が大したことも出來ずに、結局五萬圓程度、是がまあ實はさうはつきりしないのでありますが、人數から申しますと、九割方はそれであつて、五萬圓以下の被保險者、斯う云ふことでありますから、其の後の殘りの一割ばかりの人、是は金額から言へば、相當のものになると思ひますが、之をどこまでも拂ふと云ふことは金持を擁護するのだと云ふことになつて、是は日本の輿論が斯うしたのです、新聞を御覽なさい、補償打切りで是でも足りない、公債を打切れと云ふのが輿論……私は輿論ぢやないと思ふが、上べに現はれて居る議論であります、それが今日の政治を支配して居ると云ふことを御理解願ひます、そこで保險會社をして支拂保險料等を拂戻させる方法はないか、是はなかなかむづかしいかと思ひますけれども、問題と致して研究を致して見ます、それから火災保險、戰災者と燒殘つた者との不公平を是正する爲に、財産税を取るに付てどうするかと云ふことは、尚主税局長から申上げさせます、併し大體はなかなか事實に於て不公平を是正することは困難であります、戰災者に拂ふと云ふことをやれば、是は何とか是正は出來るのでありますが、其の方は拂はぬ、すると何とか燒け殘つた者にうんと課税すると云ふことでありますが、是は實際に於ては果して可能かと云ふと、なかなか其の公平を保つやうに課税すると云ふことは事實むづかしいと云ふことだけを御了承願ひます、それから所謂新圓を持つて居ると云ふやうな連中に對する課税問題も色々の苦心を致して居るのでありますが、是は戰時中にも今日の人と違つて居りますが、新興所得階級なるものがあると稱せられて、私共も大藏省あたりの委員で、どうかして新興所得階級に課税をする工夫はないかと隨分苦心したのでありますが、なかなか之を捕捉することがむづかしいので、其の爲に丙種事業所得などと云ふものも出來たのでありますが、是は現在は大分税務署あたりの機構も充實して居りますし、今後も亦充實をさせる積りで居ります、それから所謂第三國人に付ては、今迄色々の誤解もあり、實力の關係もありまして、當然課税出來るものに、課税しなかつたと云ふこともあります、是も段々改良致すことでありますから、大體御趣旨に副ふやうな方向に參ると思つて居ります、それから軍需會社等の補償の打切りの問題でありますが、是も先程例に出されましたやうな不都合が、是から具體的になりますと色々あらうと思ひます、是はなかなか全部を救濟する策がないやうでありますが、併し尚是はどうせ新舊勘定に分離して、舊勘定は整理することになる譯でありますから、又個々の場合に付て、餘程實際の整理に當つて何と申しますか手心は加へ得るのではないかと思ひます、それから軍人の恩給或は遺家族の扶助料と云ふものが打切られて、何ともそれ等の人達には相濟まない、私も伜が一人戰死して、それで何か扶助料を貰ふことになつて居るのでありますが、私はどうやら貰はなくとも食へますが、是が打切られますと本當にそれだけで暮らして居る人は悲惨なものだと思ひます、是は實は畏くも 陛下も御心配になつて居られることと承りまして、何とか致さなければならぬと思つて居りますが、段段さう云ふことに付ての了解を……軍人ばかりでなく、引揚者に付ても同樣で、屡屡申上げますやうに、なかなか軍人と言へば全部不都合な軍閥、引揚者と云ふものも軍閥の手先だつたと云ふ全體の考へ方であります、此の考へ方を改めて貰はなければ何ともならない、其の考へ方を改めるやうに總理とも常に話が出まして、左樣な方向に導いて何とか救濟策を建てたいと考へて居ります、甚だ簡單でありましたが、其の他所得税、財産税の課け方等に付きましては主税局長から御答へさせます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=22
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023・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 罹災者に對しまする所得税を輕減免除してはどうかと云ふ御質問でございますが、所得税は前年の實績に課税致すのであります、新たなる所得に對しまして、過去の事情に依りまして、輕減免除することは殆どないのでございます、唯先程申上げました、前年度の實績に課税すると云ふ建前を取つて居ります税に付きましては、罹災をして納税資力がなくなつた、斯う云う場合は相當ありますので、此の罹災者の減免は事業所得等は昨年一年間認めて居りました、唯それとの權衡上矢張り新しい勤勞所得にも、此の際一年間は免税の例外的の取扱をしよう、斯う云ふのでやつて參りましたが、今囘は矢張り原則に歸りまして、新しい所得に對しては輕減免除をしない、斯う云ふことに致して居ります、罹災者に對しましては誠に御氣の毒な點があるのでありますが、罹災者と申しましても、色々實際の被害の程度が變つて居ります、又同じ被害者でも所得の状況に依りまして相當考慮しなければならぬと思ひまして、輕減規定を置きますことが却て不適當だと云ふので、今度止めた次第でございます、矢張り罹災者と非罹災者との課税に付きまして、殊に財産税をどうするかと云ふ御話がございましたが、昨年發表致しました政府の原案では、罹災者に付きましては一萬圓程度を控除する、斯う云ふことを書いて居りましたが、其の後の物價事情が餘程變つて參りまして、又免税點等も相當變ることになつて居ると思つて居ります、從つて罹災者に對しまする財産税の控除に付きましては、昨年度とは餘程考へ方を變へまして、最近の物價事情等を考へ、又免税點とも睨合せまして、出來るだけ罹災者の負擔を少くするやうに努めたいと考へて居ります、併し御話の通りに、燒けた人と燒けない人は税で如何に補正しようとも出来るものではございませぬ、大臣も御話になりましたやうに、燒け殘つた人にさう無茶苦茶に課税すると云ふ譯には行きませぬ、どうしても我々の税だけでは拭ひ切れないものだらう、併し出來ますことだけは出來るだけやりたいと思ひます、所得税第十一條の第一號、是は軍人、軍屬の從軍時の俸給、賞與でございます、今後は日本では、軍人、軍屬と云ふものはございませぬ、從つて此の規定は削除したのであります、それから税引所得の問題で、二十萬圓の方は二萬九千圓しか殘らない、或は三十萬圓の方は三萬一千圓しか税引所得がないと云ふ御話でございまするが、事業所得に付きましても我々の計算ではさうはなつて居ないのでございます、三十萬圓で五萬五千圓、二十萬圓で四萬四千圓であります、若し御話のやうになりますと、營業税を負擔の中に入れられたかと思ひますが、營業税は損金に計算するのでございまして、若し斯かる場合に於きましては、二十萬圓の所得は二十三萬の所得として計算しなければなりませぬ、三十萬圓の所得は三十四萬五千圓としての計算に相成ると思ふのであります、所得税だけで申しますと、税引所得は、三十萬圓の場合は五萬五千圓、二十萬圓の場合は四萬四千圓、斯う云ふ風なことになつて居ります、二十萬、三十萬の所得の方が此の程度の負擔をなさると云ふことは、敗戰の只今と致しましては仕方がないのではないかと考へて居ります、又増税前に致しましても、斯う云ふ事業所得者は臨時利得税を負擔されて居つたのでありまするから、今囘其の臨時利得税がなくなりましたので、増税の歩合はさう大したものではないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=23
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024・長島銀藏
○長島銀藏君 只今税率の數字に違ひがございますやうな御説明でありまするが、私は税金が事業所得三十萬圓の場合は二十四萬四千百六十二圓、それに持つて行きまして都民税を約十「パーセント」「プラス」致します、さうすると差引いて殘るのは三萬一千四百二十一圓八十錢、是は十「パーセント」入つて居るからさう云ふことになつたのであります、あなたのは入つて居らぬのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=24
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025・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 私の計算では市町村民税、府縣民税は入れて居りませぬ、府縣民税、市町村民税の負擔は税引所得の最高限一割を目標として行きたい、斯う内務大臣は言つて居られました、最高限一割迄は府縣民税、市町村民税を負擔さすかどうかと云ふことも是亦研究の餘地があるやうに思ひます、如何に負擔してもそれ以上に負擔させない、斯う云ふ御話だつたと記憶して居ります、國税に付きましては、先程申上げましたやうに、二十萬圓の事業所得に對しましては四萬四千八百圓の税引所得があります、それから三十萬圓の場合は五萬五千八百圓の税引所得に相成るのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=25
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026・黒田英雄
○黒田英雄君 大分時間を取つて居りますが、簡單な質問でありますから一つ……、相續税の場合に於きまして、相續財産の中、在外資産があつたやうな場合に、是は終戰後非常に價値が問題であるだらうと思ひますが、今日以後に相續を開始した者は、今日ではない、終戰後相續を開始した者はそれに依つて、評價されるのだらうと思ひますが、終戰前に相續の開始して居つた場合に於ては、在外資産の評價と云ふものはどう云ふ風になる譯ですか、税法に依れば、相續開始の時の價格に依ると云ふことになつて居りますが、其の價格と云ふものは今日は殆ど無價値になつて居るやうなものも隨分ある、さう云ふものはどう云ふやうに御取扱になるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=26
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027・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 御話の點は今囘の第二封鎖預金制度の問題に付きまして其の點が起りますので、十分研究を致して居ります、在外資産に付きましても、將來其の價値が如何になるか豫想が付きませぬので、第二對鎖預金と同樣な氣持で考へて行きたいと思ひます、大體の方針と致しましては、相續税を決定して居りましても、又未決定の分に付きましても、相續税の未納額ある場合に於ては、其の未納額に付きまして非常に價値の減少した預金或は在外資産を減少割合に依つて減して行きたい、斯う云ふ考の下に研究致して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=27
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028・黒田英雄
○黒田英雄君 それは何か特別の立法をなさるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=28
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029・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 立法を致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=29
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030・黒田英雄
○黒田英雄君 もう一つ簡單ですから……、此の臨時租税措置法の改正に依つて、長期預金及分類所得税の輕減を今度廢められて居る、預金を吸収さして退藏其の他浮動して居る資金を銀行に集めると云ふ上に於ては長期に之を預金さして置くと云ふことを奬勵することは、さう大した效果はないかも知れませぬが、吸收すると云ふことの方策としては、一つの政府の方針が現れるものだらうと思ふのですが、之を廢められた理由はどう云ふ譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=30
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031・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 長期預貯金に對しまする百分の六乃至七の輕減は戰時中設けましたのでありますが、徴收の手數から申しまして、非常な煩瑣でございます、さうして又大して效果は認められませぬ、我々と致しましては所謂徴税の簡素化、斯う云ふ意味から行きまして削除致したやうな次第でございます、唯長期に限らず預貯金の増強政策に付きましては、又別途に大藏省としては考へなければならない重大な問題だと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=31
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032・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 如何でございますか、御質問が續きましたが、尚大臣に對する御質問ございませうか、ございませぬければ今日は是にて散會を致したいと思ひます、如何でございますか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=32
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033・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) それでは今日は是にて止めまして、次會は來る月曜日午前十時から開會致したいと思ひます
午後三時五十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=33
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034・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 男爵 周布兼道君
副委員長 子爵 綾小路護君
委員
侯爵 池田宣政君
侯爵 西郷吉之助君
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 奧平昌恭君
子爵 富小路隆直君
子爵 梅溪通虎君
中田薫君
男爵 松平外與麿君
男爵 岡俊二君
男爵 水谷川忠麿君
男爵 長基連君
黒田英雄君
松尾國松君
小山完吾君
塩田團平君
長島銀藏君
子爵 七條光明君
國務大臣
農林大臣 和田博雄君
商工大臣 星島二郎君
大藏大臣 石橋湛山君
政府委員
内務事務官 郡祐一君
同 荻田保君
大藏事務官 池田勇人君
同 前尾繁三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00519460823&spkNum=34
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