1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○所得税法の一部を改正する等の法律案
○臨時租税措置法を改正する法律案
○地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年八月二十六日(月曜日)午後一時十分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=1
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002・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 開會致します、前囘に引續きまして御質問を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=2
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003・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 此の間伺つたことを繰返すやうでありますが、所得税の分類所得税と綜合所得税の課税の問題でありますが、此の間、二重課税なりや否やを御伺ひしたのでありますが、どうも大臣の御答辯がはつきりしないやうでありますから、もう一遍其の關係を御伺ひしたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=3
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004・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 所得税を分類所得税と綜合所得税の二段構へで課税することが二重課税にならないか、斯う云ふ御質問でございます、我々は二重課税にはならないと考へて居ります、なぜかと申しますと、所得に對しましては、是は所得の種類に依りまして擔税力の違ふ場合があるのであります、即ち資産所得と事業所得と勤勞所得と比べますと、資産所得が最も擔税力があり、勤勞所得が其の中でも擔税力が少いと斯う言はれます、又他の方面から申しますと、所得は其の量に依りまして擔税力が違つて參ります、即ち十萬圓の所得者は一萬圓の所得者よりも百圓あたりの擔税力がうんと高い勘定であります、所得は其の性質に依りましての擔税力又其の分量に依りましての擔税力が各各違つて居りますので、日本の法制に於きましては、其の二方面から擔税力を掴へて行く、斯う云ふ建方をして居るのでございます、昭和十五年以前には其の所得の種類の如何を問はず、其の分量に依りまして擔税力を見ることのみに努めて居りました、從ひまして一般勤勞所得でありませうと、事業所得でありませうとも、配當等の資産所得でありませうとも、全部合せまして免税點を千圓として課税して居つたのであります、此の間に於きまして、所得の種類に依りまして擔税力を或程度反映さす爲に、勤勞所得に付きましては、六千圓以下二割、一萬二千圓以下を一割引と斯う云ふ風なやり方で或程度の違を置いて置きました、さう云ふ問題でありまして、所得の種類に依り擔税力の差異と云ふものを、昔の税は餘り見て居ない、昭和十五年の税の改正に依りまして、質に依る擔税力で掴へる、分量に依る擔税力で掴へる、從つて質に依るものは「フラット」の税率でやつて居ります、百分の十八とか、百分の二十一、或は百分の二十三と云ふ「フラット」の税率で行きまして、唯或程度緩和する爲に基礎控除と云ふもので、百圓當りの「フラット」の税率を或程度緩和致して居るのであります、さうして片一方の綜合所得税は強度の累進税率になつて居ります、現行は百分の八から百分の七十四と云ふ累進率に依りまして、擔税力を茲で掴へようと、斯う致して居るのであります、從つて理論的には、所得税を分類と綜合とに分けることは、二重課税になつて居ないのでございます、假に分類所得税の税金を引いたものを綜合所得税に持つて行くと致しますると、非常な奇現象が起つて來ます、なぜかと申しますと、分類所得税は、勤勞所得ならば百分の十八を引いて、百圓の所得ならば八十二圓を綜合に持つて行く、それから配當でありますと、現行の百分の二十二を引いた七十八圓を綜合に持つて行く、斯う致しますると、一方で擔税力ありとして資産所得に強い率を置きながら、片方で非常に綜合の方で低い金額で綜合する、斯う云ふことに相成りまするので、是は折角分類と綜合とを設けた理由を沒却してしまふ、それで分類所得税に於ては、「フラット」の税率でやつて行く、唯それを緩和する爲に控除の問題を置いて居る、斯う云ふ建前になつて居ります、分類所得税、綜合所得税制度は英米獨佛四箇國とも之をやつて居るのでございます、昭和十五年に中央、地方を通じましての根本的改正の時に如何にして行くかと云ふことで、各方面の御意見を承りまして、是は今の日本の税制が一番擔税力があり、一番理論的だと云ふので拵へ上げたものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=4
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005・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 只今の御説明で了解致しました、次には内務大臣に御伺ひしたいのですが、地方分與税の一覽表を拜見致しますと、今囘配付税として特に目に付きますのは、特別の配付税と臨時特別配付税の活用だと思ひます、唯特別配付税に於ては、特別の事情を斟酌して分與、臨時特別配付税は戰災に依る税の減收額を理由として分與する、斯う云ふことでありますが、特別の事情を斟酌して分與すると云ふのは具體的に如何なるものを指すのでありますか、先づそれを伺ひます、其の次には此の總額から見ますると、百分の二十と五、此の二つの特別配付税の割當金額になつて居りますが、今囘の如く戰災後の處置、其の他の方から考へますと、此の配付税を擴張すべき所の範圍と云ふものが、相當あり得るのではないかと思ひます、總額から見ますと、果して百分の二十五で足りるものでありませうか、どうでありますか、望むらくは之をもう少し率を、全額に比べまして、許し得るならば、此の活用の出來ます税總額の「パーセンテージ」をもう少し上げることが出來ないものでせうかどうか、此の二點を御伺ひ致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=5
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006・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御尋になりましたのは、道府縣の配付税に於きまして特別の事情を斟酌して分與致します第三種配付額、それから市町村配付税に於ける、同樣の特別配付税、是は何れも市町村、道府縣配付税總額の百分の五、何れも百分の五を割當てて居るのでありまして、金額に致しまして、道府縣配付税に於きましては約七千五百萬圓、市町村の特別配付税に於きましては約四千萬圓になるのであります、是は結局に於きまして府縣及び市町村の特別事情を斟酌して配當するのでありますけれども、内務省に於きまして、配付が我儘になりましては誠に相濟まぬのでありまして、之には出來るだけ詳細な調査を致しまして、出來るだけ一つ客觀的標準を設けて運用する積りで居ります、只今考へて居ります所は凡そ五つばかりの事項を考へて居るのであります、即ち第一に於きましては災害應急費又は災害復舊費に充つる爲借入れました負債額が非常に多いと云ふのが一つの條項、次には人口の増加が顯著な場合、それから第三には逆に人口の密度が一般に比べて稀薄である場合、第四には國民學校兒童數の、人口に對する比率が特に高い小學校の兒童數が多い、それから第五には獨立税額が一般に比べて少い、斯う云ふやうな客觀的標準を取りまして、尚此の五つの中で拾はれないものが偶にあり得ることでありますから、其の他特別の事情のあるものと云ふやうな、斯う云ふ條項に當該します所に、其の團體の財政状況に徴しまして適當額を分與しようと云ふことになるのであります、從つて此の額が餘り多くなりますると見立割の額が多くなりまして、結果に於て色々と論議されることにもなりますので、從來も之を百分の五と云ふ形を取つて居つたのでありますが、今囘に於きましては大體百分の五程度で實際の處理は出來ると云ふ見込で居る次第であります、それから次に道府縣配付税に於きましては、第四種配付額、是は凡そ一億五千百萬圓位になるのであります、それから市町村の配付税の中の臨時特別配付税、是は一億六千三百萬圓と云ふ數字に相成りますが、此の兩者は何れも、戰災に依る税の減收額を標準額として分與する積りであります、詰り其の程度は大體税の減收額の凡そ二分の一を補給する程度になるのであります、戰災を蒙りました團體に於きまして減收額の半分は配付税に依つて補填をする殘り半分は是は一つ戰災團體の經費の節約なり或は其の他の便法に依りまして半分は自分で始末をする、半分は地方分與税の力に依つてやると云ふ程度で適當であらうと考へて居る次第であります、而して此の方は只今相當の減收額がありましても、團體の戰災復興の速度に依りまして、非常に早く恢復する所と遲く恢復する所とあらうと思ひます、其の遲速がございますので、大體減收額の半分を補填すると云ふ標準で逐次金額は戰災復興に伴ひまして此の方は、減少して行く、過大のものが渡らぬやうに取計らつて行く方針でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=6
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007・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 只今の御説明ではつきり致しました、さう致しますと今の御話で道府縣税の第三種配付額、それから市町村配付税の特別配付税ですが、是は特別の事情を今縷縷御説明になりました點から見ますと、是は比較的なんと言ひますか、次のものに比べますと期限的に長く繼續的の性質を持つて居るものになりますでありませうか、それから更に第四種と臨時特別税は今申しました通り戰災の復興に依つて金額が減つて來る、是は當然だらうと思ひます、さうしますれば自然地方分與税の總額の金額に異動が生じて來るのは當然でありまして、それに依りまして地方分與税の現在の豫算額よりは逐次減少すると云ふ状況に進むべきもの、斯う解釋して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=7
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008・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御尋ねの第一點でありますが、配付税額の百分の五を特別の事情を斟酌して分與すると云ふことはずつと連年繼續致しますけれども、併し具體的に此の配付額を受ける團體は年々異動があらうと思ひます、特別の事情が存續して居れば繼續致しますが、其の特別の事情が推移して參りますに伴ひまして、第一年に於きましての甲の町村が此の分與に預つて居りまして、翌年になりますれば、其の甲の町村には交付しないで乙の町村に移つて行くと云ふやうなことはあり得ることでありますが、併し第三種配付額は兎も角も配付税の百分の五の限度に於きまして、何れかの團體に交付すると云ふことはずつと繼續する豫定で居ります、それから質問の第二點でございますが、御承知のやうに配付税は年々の政府の税收入に依つて異動があることであります、其の配付税の生じて來ます所の基本の税に於きまして増減がありますれば、固より其の結果の影響を受ける譯であります、併し茲に法律に規定してあります所の配當の割合と云ふものは法律を改正せざる限りは固定して居る譯であります、併し此の臨時特別配付税及び府縣の第四種額に付きましては先に申上げましたやうに、税の減收の囘復後に於きましては百分の二十以内、二十と限定致しませぬで、二十以内と致して居りますから、是が或は百分の十五と云ふ工合で宜いと云ふことになりますと、此の方の割當は減ります、さうなりますと、其の殘りの分の外の一種二種の方に加算すると云ふやうな自動的な作用を致す譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=8
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009・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 それでありますと、結局當分の間は國の税率の變化があらざる限り現在計上されました配付税總額は當分總額的には動かない、斯う見て宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=9
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010・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 其の通りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=10
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011・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=11
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012・小山完吾
○小山完吾君 府縣民税と云ふものは、さうすると今迄の町村民税と兩方共率が上ると云ふことになりますと、所謂人頭税の掛るものと見て宜しいのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=12
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013・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 大きく申しますれば、人頭税のやうなものでありますが、併し實際の課税に當りましては、各人の擔税力に相應するやうな課税をば致したいと云ふやうに考へて居ります、併し實際の賦課の方法と致しましては、大體府縣民税の總額の三分の一位は一つ均等割に致したい、殘りの三分の二を擔税力に依つて課すると云ふのが適當であらうと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=13
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014・小山完吾
○小山完吾君 さうすると、それは法律施行の方針として地方にも、それは何か指令かなんか出されることになりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=14
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015・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今申上げましたやうな方針で、十分に地方當局に説明をし、勸告も致し、又監督も致す豫定であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=15
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016・小山完吾
○小山完吾君 私はそれだけであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=16
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017・長島銀藏
○長島銀藏君 私は所得税のことに付てもう一點當局の御意見を伺つて見たいと思ふのでありますが、大藏大臣は、中小工業を是から段々復興さして行く、行かなければならないと云ふ意味から、如何にしたら中小工業がやつて行けるかと云ふことに付て御考へのやうでありまするが、それに付きまして私は、所得税即中小工業のやつて行けるか行けないかと云ふ問題に影響が非常に大きくなると思ひまするので、舊法と新法に依りまする税額を一遍御計算願ひまして、それを御示し願つた上で檢討して見たいと考へて居りまするし、皆樣とも御相談して見たいとも思つて居るのであります、此の點政府當局に御願ひしたいと思ひますが、如何でありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=17
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018・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 事業所得者の昭和二十年分の所得税の負擔と、今度御審議を願ひました法案が通過致しまして昭和二十一年分の所得税の負擔、之を比較致して見ますと、妻及子三人の事業所得者に於きましては、三千圓の場合には昭和二十年には四百五十圓の税負擔になりまするが、昭和二十一年には百六十二圓に相成ります、五千圓の場合には二十年の千三十圓が二十一年の六百六十二圓になります、八千圓の場合には二千百十圓が千四百十二圓に減ずる、斯う云ふ状況であるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=18
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019・長島銀藏
○長島銀藏君 今主税局長の御話は非常に少額に失しまして、了解に苦しむ譯なんですが、扶養家族を除いた税額で、例へば事業所得の場合には營業附加税と云ふやうなものを加算して戴きまして、さうして一昨日のやうに二萬圓から三十萬圓迄、それから願へれば百萬圓迄の計算を飛び飛びで結構でございますが、分類所得と綜合所得と營業税、同じく營業附加税、之を「プラス」した合計額を舊法と新法に依るものを出して戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=19
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020・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 御話が中小商工業者と云ふ前提でありましたので、三千圓、五千圓、八千圓の場合に付て申上げたのでございます、事業所得は大體二三千圓程度が全國平均になつて居ります、一萬圓以上の事業所得者は、臨時利得税もかかりまして相當のものでありまするが、極く少く、日本の事業所得、即ち營業所得と致しましては、三千圓、五千圓位が中以上に相成つて居るやうな状況でございます、一萬圓以上と申しますと是は大所得者に相成つてしまつて、事業所得百萬圓、五十萬圓と云ふのは全國に五人の指も折れない、斯う云ふ状況であるのであります、併し折角の御尋でございますから申上げますと、只今の所は分類と綜合だけの比較に相成つて居りますが、二萬圓で申しますると、是は獨身者の、家族を拔きにした數字で申上げませう、二萬圓で申しますると、昨年度、昭和二十年度は七千九百二十六圓、今年度は八千四百五十圓……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=20
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021・長島銀藏
○長島銀藏君 二萬圓でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=21
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022・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) さうであります、五萬圓で申しますと、二十年が二萬六千二百二十六圓、二十一年が三萬四百五十圓、十萬圓で申しますと、二十年が六萬一千九百二十六圓、二十一年分が七萬四百五十圓、二十萬圓が十四萬九百二十六圓、二十一年分が十五萬五千四百五十圓、而して營業税の附加税は昭和二十年分に付きましては、所得額の百分の八が掛かつて居ります、昭和二十一年分は所得額の百分の十五が課税に相成ることになります、而して營業税以外に昭和二十年分に付きましては、別途臨時利得税が課かることになります、臨時利得税の計算は、平均利益が各人に依つて違つて居りまするので、階級別に負擔税額を申上げる譯には參りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=22
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023・長島銀藏
○長島銀藏君 只今御示し願つた分は、もう少し後に又質問致すことに致しまして、政府も非常に御忙しいやうでありますから、各逐條審議と云ふ意味に於きまして、氣の付いた所だけ質疑して見たいと思ひます、私の聞いた範圍に依りますと、「アルゼンチン」あたりでは、殆ど所得税を取つて居らないさうであります、それで國家が必要のものを施設をすると、さう云ふ方面の支出に對しては何を以て引き當てるかと言ひますと、國民の寄附であるさうであります、それで寄附の財源はどう云ふ所にあるかと言ひますと、富籖式のものを主として取扱ひまして、富籖で賞金が當選致しますと、賞金を半分持つて行つて寄附してくれないかと云ふ申込をするさうでありますが、當つた籖だから喜んで之を寄附する、さう云ふことに依つて國家の色々の施設が非常に立派なものになつて行くと云ふ御話であります、我が國に於きましては、斯う云ふことが今行はれて居りませぬので、無論租税と云ふものが收入の對象となる譯でありますが、私は此の中で酒でございますが、酒は國民の嗜好物でありますからして、比較的税が取り易いと云ふことで、増税の案が出來た譯でありますが、私は此の「アルゼンチン」の方法を考へて見ますと、澤山税收入を得る爲に、もつと國家は合成酒でも何でも構ひませぬから多量に造つて、國民にふんだんに飮ましてやつて貰ひ、さうして澤山の税を取つて行く、喜んで納税の出來ると云ふやうな方法に付て御考慮に預りたい、斯う考へて居る譯であります、それから現在織物消費税の案に出て居りまするものは、四十「パーセント」と、それから十「パーセント」になつて居るやうでありまするが、是は中間を取つて三十「パーセント」の一本にして戴くと云ふやうな方法はどうかと考へて居ります、何故かと申しまするのに、木綿と、「スフ」地の織物に對しては斯う云ふ考へ方を持つて居ります、「スフ」を作りますのには「パルプ」だけでは絶對にいけませぬ、「パルプ」の中へ襤褸を、詰り、木綿を更に入れまして、それを二硫化炭素で處理致しまして、始めて「スフ」になります、其の「スフ」に出來たものを其儘織物にしますと、弱くてもう非常に不經濟なものでありまするから、更に是へ木綿を加へます、さうして殆ど是の耐久力と云ふものは、木綿の何分の一かに落ちて居るに拘らず、木綿だけで使へば相當耐久力のある此の材料を「スフ」の中へ混入をして、而も三分の一とか、四分の一とか云ふやうな耐久力の弱いものにして織物に使はなきやならない、非常に不經濟極まるものでありまするが、中國あたりへも日本から「スフ」の織物を相當送りましたが、中國人は一遍か二度洗濯をしてこんな弱いものは到底買ふことは出來ないのだと云つてさつぱり中國には「スフ」の織物は賣れないと云ふ話を聞いて居りまするが、純綿と「スフ」入りのものは自然淘汰に依つて當然需要は少くなると云ふやうに考へられまするから、之を特に税率を低くする必要も私はないやうに思ひますので、他の織物と木綿類、或は「スフ」入りの物とを仕分けずに三十「パーセント」なら三十「パーセント」一本で行つて貰ふと云ふことの方が宜いのぢやないかと考へます、それから物品税に中に第一種甲類の十四に乘用自動車を擧げて居りまするが、乘用自動車は「タイプライター」とか、其の他の「ビジネス」の材料と同じやうな見解の下に之を丙類に一つ格下げをして戴く、乘用自動車が贅澤品であると云ふやうな考へ方はどうも現在のやうな文明時代に於きましては、如何にもどうもをかしうございます、自動車を贅澤品と思ふことは謂はば國辱みたいな感じが致しまするので、此の際當局の御意見を伺ひたいと思ひます、それから遊興飮食税でありまするが、遊興飮食税は其の支拂金額に依りまして色々な差が附いて居りまするが、是も二割とか、三割とか、四割とか云ふ、詰り一本にやつて戴いた方が却て簡單ではないかと斯う考へて居ります、大體物品税其の他に付きましては、此の程度の質問に止めて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=23
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024・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 國の歳出を賄ひますのに寄附金其の他に依る、寄附金、或は富籖を主たる歳入と致しますことは、民主國家、文化國家として取るべき策ではないと考へて居ります、次に酒に付きましては、是は我々として出來るだけ澤山作りまして、さうして需要に「マッチ」させたい氣持を持つて居るのでありまするが、何分にも御承知の通りの食糧事情でありますので、多くを酒に向けると云ふことは只今の所至難でございます、又之を澤山造れば非常に税收入が期待出來るではないか、斯う云ふ御話でございますが、是は非常に澤山造つた場合には、只今の如く一石二千數百圓、斯う云ふやうな税率は當然盛れないと考へて居ります、織物の税率を三十「パーセント」にしてはどうかと云ふ御意見でございまするが、只今此の改正案で四十「パーセント」と致して居りますのは、從來織物消費税が百分の十五「パーセント」、さうして物品税として織物竝に織物製品に課税して居りますのが、百分の四十、從ひまして合計致しますと百分の五十五で、課税すべき筋合のものでありまするが、生絲其の他の値上りが非常に甚しいので、此の際は合計しまして五十五を四十「パーセント」に止めたやうな次第であります、而して綿織物に對しましては從來課税して居りませぬ、併し綿織物に對しまする今の需要状況から考へまして、新たに課税致しますのでありますから、此の際十「パーセント」に止めた次第であります、で御話のやうに三十「パーセント」に致しますと、從來五十五「パーセント」であつたものを半分にする、而も課税は引取りの際課税するのでありますから、小賣價格より餘程、低くなつて參るのであります、從つて只今の既に物品税等を課税して居ります織物に付きましては、四十「パーセント」の程度が適當であり、新たに課税する綿織物に付きましては、課税當初でありますので、十「パーセント」程度を適當と認めた次第であります、尚物品税に付きまして、乘用自動車を「タイプライター」等の如く同じやうな税率にしてはどうかと云ふ御話でありまするが、我が國の今の乘用自動車の状況から考へまして「タイプライター」等と一緒に取扱ふことは是は不適當と考へて居ります、次に遊興飮食税の税率を非常に細かく分けてあるぢやないか、斯う云ふ御話でありまするが、三月九日の緊急勅令に依りまして、簡單な税率に引直して居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=24
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025・長島銀藏
○長島銀藏君 私は今の政府の御説明では非常に不滿の感じを持つて居ります、何故ならば、食糧を「アルコール」に變へると云ふやうな舊式なことを考へて總てのことを決めて居られるやうでありまするが、「アルコール」の資源と云ふものは穀物を「アルコール」にしなくても幾らでもある譯であります、例へば「フィツシャー」法に依つて木材の挽き粉を醗酵致しますれば、是も「アルコール」になります、其の他豐富な電氣を利用しまして、木炭と石灰で「カーバイト」を造りまして、其の「カーバイト」から「アルコール」に合成して行きますれば、「エチール」でも「メチール」でも、さう云ふやうなものが出來ますから、さう云ふものをもう少し研究致しますれば、是はもう「アルコール」の原料等は無制限、幾らでもある、私は斯う云ふ見解を持つて居りますので、穀類を醗酵して「アルコール」を造ると云そやうな、一方的な御考でなく、此の際もう少し掘下げた研究をして戴きまして、さう云ふもので我々國民の需要を滿す、斯う云ふことを御願ひして居るのでありまして、今の穀物を直ちに振替へられないから、事情が許さないのだと云ふ程度の簡單な御説明では私は納得が行きませぬ、殊に「アルコール」が非常に不足の爲に、勞働階級の人は非常な闇のものを買つて居りまして、闇の價格は現在日本酒一級が三百五十圓、處に依れば四百圓もして居るさうであります、斯う云ふやうな非常に澤山の人が要求して居るにも拘らず、闇の相場を知つて居られるか、知つて居られないかは別問題と致しまするが、其の需要を滿してやる、同時に澤山の收税をして來るのだと云ふことが民意に副つて居ることではないか、斯う私は考へますから、尚一層の御研究を願ひたいと思ひます、それから自動車の税金でありまするが、之を丙類に直すと云ふことは、日本の現状では不適當だと云ふ御考でありまするが、それは主税局長の御考へになつて居ることが不適當だと思ふか知れませぬが、私等は是は丙類に當然下げて貰つて適當だらう、斯う思ふのですが、適當か不適當かは、そこは見解の相違でありまするから、是は委員御一同に諮つて見たいと考へて居ります、以上であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=25
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026・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 「アルコール」の増産は常に我々努力致して居るのでございまするが、「フィッシャー」法に致しましても、我が國に於きましては、樺太竝に朝鮮でやつて居ります、併し是はどうしても「メチール」が相當分量入つて居りまして、今の價格では工業的に産出することは出來ぬことになつて居ります、是でうまく行きますれば、我々と致しましては、何も藷や或は其の他の澱粉粕、斯う云ふ粕原料を使ひたくはないのでありまするが、只今の化學と致しましては、「フィッシャー」法で「アルコール」を取つて之を飮料に供すると云ふ所迄化學は進んで居りませぬ、誠に遺憾な所でございまするが、此の「フィッシャー」法以外の方法で行くと云ふことに致しますと、何と致しましても、澱粉を持つて居るものを使はなければならぬ、菊芋とか或は彼岸花の根を取つたり、有らゆる努力は拂つて居るのでありまするが、年と共に「アルコール」の原料と云ふものは減つて參るやうな状況でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=26
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027・長島銀藏
○長島銀藏君 只今「アルコール」の問題は税法と少し懸け離れてしまつたやうな感がございまするが、「アルコール」の税を含めて居りませぬ「アルコール」のみの價格を、飮料に供するものだけ特に引上げると云ふやうな方法を執れば、完全に「セパレート」して、さうして立派な「アルコール」が出來ると私は信じます、化學水準が餘り日本が低過ぎますので、それに馴れ過ぎて、さう云ふやうな御議論になると思ひますが、例へば「アルコール」の中で「エチール」と「メチール」の沸騰點は僅か攝氏の十度しか差がありませぬが、是は酸化法に依りまして「アルデハイト」又は「エステル」とした場合には完全に分離が出來ると思ひます、處が「エステル」になると蒸溜「ポイント」差が大きくなりますから、さう云ふ方法で仕上げることが出來て、それを出來たものに依つてもう一遍「アルカリ」に依つてやれば、還元して元のものになる、さうすれば費用は少し高くなるのでありますが、飮料に依つて税金を多く取り得ると云ふことでありまするならば……詰りさう云ふ合成方法に依る「アルコール」の單價を引合ふやうに引上げれば、是は幾らでも出來ると思ひます、化學の討論見たやうなことになりまして、甚だ何ですか、それには間違ひありませぬから、どうか御參考に御聽取を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=27
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028・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 長島君に伺ひますが、まだ御質問はございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=28
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029・長島銀藏
○長島銀藏君 質問の方に先に行つてしまつたものですから、それに依る批判が出來兼ねますが、一昨日の計算は、都民税を收入金額から税金を引いた其の殘り、約一割以内を課税すると斯う云ふ御話でありましたので、私が此の間申上げました數字とは少し變つて參ります、そこで、此の數字を擧げまして委員諸君の御目にかけたいと實は考へて居る次第であります、それから私の希望致しますのは、只今主税局長から十萬圓と二十萬圓と云ふもの、それから二千圓ですか、斯う云ふ數字を承りましたか、御説明は分類所得と綜合所得と二つだけでございますが、實際に營業者が營業する上に於きましては、營業税も納めなければならぬし、之に對する附加税も當然拂ひますし、其の外に都民税と云ふものを拂ひます、其の合計額で營業者、或は其の他の者が、營業者が負擔が出來得るか出來得ないかと云ふことが、本原案を通過させるかさせないかと云ふ分岐點になると思ひますから、私は御差支なければ委員の方にちよつと御席を外しまして、相談を致したいと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=29
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030・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) どなたか他に御質問がございますれば續いて願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=30
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031・梅渓通虎
○子爵梅渓通虎君 私勤勞所得のことに付てちよつと伺ひたいと思ひます、勤勞所得のことに付きましては、衆議院の方では非常に論議があつたやうに此の前主税局長からも御説明があつたのでございますが、此の勤勞所得者の綜合所得の免税點は一萬圓になつて居ります、以前の一萬圓の所得と云ふのは、所謂高額所得と云ふやうなことであつたのでございますけれども、最近の一萬圓はもう免税點に掛る程度の所得と云ふことになつたのでありまするが、さう致しますと、現在一萬圓の綜合所得ならば、假に一萬一千圓とか、一萬五千圓位迄の所得者が、勤勞所得者の内では一番……私は正確な數字は知りませぬけれども多いのぢやないかと思ひます、さう云ふ場合に此の綜合所得税三十五「パーセント」と云ふのは、結局來年度になりましてから現在の一萬圓乃至一萬五千圓の收入者と云ふものは、最近の情勢、今迄年に二千圓乃至三千圓の收入の人が、最近の情勢で、一萬圓乃至一萬五千圓とか其の前後になつた人でありますので、現在の收入、それから分類所得税を引かれまして、到底それから貯金の餘裕のあるやうな人はないのではないかと思ひます、さう致しますと、此の物價情勢等が此の儘來年迄續きますと、結局來年になりますと、此の人達は今年の分の綜合所得税は來年度には拂へなくなるのではないかと斯う思ふのでありますが、さう云つた點に付てどう云つた御考でございませうか、ちよつと承りたいのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=31
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032・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 綜合所得税の免税點は、從來三千圓でありましたのを、物價事情を考慮致しまして、去る三月一萬圓に引上げたのでございます、其の當時は一萬圓に引上げれば結構だと考へて居りました、是は綜合所得税は勤勞ばかりに課税するのではありませぬ、事業或は配當、不動産所得、各所得に課税するのでございます、而して此の一萬圓と云ふ免税點は前年の所得に對して課税する場合でありますので、前年の物價事情から考へまして、三千圓を一萬圓に引上げましたことは私は上げ過ぎて居る位に考へて居るのでございます、今年の所謂俸給が非常に上りました勤勞所得者に對しましては、本年は綜合所得税は課税致しませぬ、昨年一萬圓以上の俸給所得者の方には課税致しまするが、本年一萬圓以上に相成つた方に付きましては、是は來年課税するのでございます、而して此の物價事情が此の冬、或は來年の春位迄、今の儘で落著いて居るか、或は騰るか、下るか、斯う云ふことを今後の情勢に依つて考へて行かなければならぬと思ふのであります、私は綜合所得税の一萬圓と云ふことになりますと、只今千圓乃至千二、三百圓取つて居る方が非常に多い、此の方が税を負擔する、中には一萬五千圓になると、それに對して百分の三十五課かると云ふ風の非常の突飛もない考を起す人があるやうでありますが、是は飽く迄一萬圓を超える五千圓に對しまして、超える部分へ三十五パーセント課税するのであります、從ひまして一萬五千圓の人も、一萬圓を超えました五千圓に對しまして三十五が課せられるので千七百五十圓の負擔になる、斯う云ふことになつて居るのであります、從ひまして免税點を今年度の綜合所得税を一萬圓に致しましたことは、私は餘り低過ぎると云ふ考は持つて居りませぬ、今年の勤勞所得者俸給増に對しましては來年對處すれば結構だと考へて居るのであります、さうして又別問題でございまするが、綜合所得税の免税點をどこに置くかと云ふことは、是は考へやうでございまして、「アメリカ」は分類所得税と綜合所得税とを一緒にして居ります、五百「ドル」の控除で而も綜合の方は向ふでは賦課課税と言ひますか、それが五百「ドル」から始つて居る、「イギリス」は二千「ポンド」から始つて居ります、我が國は一萬圓、勤勞所得者の俸給を上げたから、免税點を上げる、殊に綜合所得税の免税點を上げると云ふことよりも、先づ第一に其の一萬五千圓の勤勞者は分類、綜合を併せて幾らの負擔になるか、ここから考へて行かなければ嘘だと思ふのでございます、來年の税制改正に當りまして、免税點を一萬圓にするか、或は分類所得税制度をどう云ふ風にするかに依りまして、是から五千圓に下るか、是は各税の税率を見てから後に考へるべき問題だと思つて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=32
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033・梅渓通虎
○子爵梅渓通虎君 今の御話で、現在の一萬圓乃至一萬五千圓位の收入者の綜合所得税は來年度課税されるのであるから、來年度の所謂物價情勢とか經濟情勢とか云ふものを勘案致して、更に其の時に考究すると云ふ風な御話は詰り來年の情勢に依つては、或は此の一萬圓の免税點を一萬五千圓にするかも知れない、或は又根本的に綜合所得税と分類所得税との今迄のやり方に付て、殊に勤勞所得の方に付ては税制を改革するかも知れない、斯う云ふことなんでございますね、さうだとは思ひますけれども、其の點をはつきりと一つ……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=33
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034・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 御話の通りでございますが、最後に仰しやいました勤勞所得税に付ては、綜合、分類をどう云ふ風にして行くかと云ふのではございませぬ、綜合、分類は各種の所得に付て考へなければならぬ、勤勞所得に付て問題があるから、此の勤勞所得だけを外して税制を別個に考へると云ふ譯には行かぬと思ひます、其の他の點に付きましては御話の通りでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=34
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035・梅渓通虎
○子爵梅渓通虎君 唯私が勤勞所得に付て特に申上げたのは、先程も主税局長からも御話の中にあつたと思ひますが、丁度此の前井川さんの御引きになりましたやうに、勤勞所得者の所得は、丁度日本手拭のやうなもので、事業所得者の所得は西洋手拭ぢやないかと私は思ふのでありまして、勤勞所得者、同じ收入であつても、其の含みと云ふ風なものは、私は勤勞所得者の方が無いのぢやないかと云ふ風な點を考へて、其の點は幾分勤勞所得者と其の他の所得者との間で何等かの差異と申しますか、見方の違ひがあつても宜いのではないかと、斯う思つて居ります、是は私の考であります、それからもう一つ矢張り勤勞所得に關することでありますけれども、今度所謂軍需補償の打切り等失業者が相當出ることはもう必至と思ふのでございますが、其の場合に軍需補償の打切りと云ふやうなことで出ました勤勞所得者の失業者でございますが、さう云つた人の來年度の綜合所得税に付ては、何か減免と云ふ風なことに付て御考慮を御拂ひになりますか、或は將來出來る綜合所得税の改正の時に御考になるのでございますか、其の點を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=35
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036・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 勤勞所得者には含みが少なく、事業所得には含みが相當に豐富ではないか、斯う云ふ御話の點に付きましては、或る程度我々も考へて居ります、是は勤勞所得は源泉徴收でありますので、根こそぎ取られる課税の對象になつて居ります、それから事業所得は賦課課税であるから、税務署が如何に調査しても、とことん迄は實際の金額迄掴みにくいと云ふ、斯う云ふ點はあると思ふのでありますが、併し勤勞所得でも、調査して見ますと、なかなか根こそぎ課税對象になつて居ない場合もございますし、又事業所得でも税務署がそこに出掛けて行つて、特に帳面を調べた場合に、とことん迄行つて居る場合もあるのであります、唯總體的に申しますと、今の税務官吏の素質、又人員から申しましても、或る程度御話のやうな點はなきにしもあらずと云ふ氣持を持つて居ります、又是は今の時代が「インフレ」昂進の時代でありますので、其の感を深くするのでございます、併しそれは所謂理外の理でございまして、表面の理窟から申しますと、私は今の勤勞所得に對する税率、各種の控除等、事業所得者に對しましての營業税を考へた場合の負擔は、假令それが五千圓、或は一萬圓、或は三千圓、八千圓程度から申しまして、課税價格が半分に事業者が査定せられたと致しましても、勤勞所得が輕くなる、斯う云ふ風な性質を持つて居ります、從つて含みがあると申されましても、勤勞所得税の負擔税率は非常に低く致してあるから、所謂一萬圓以下の所得者に付きましては勤勞がうんと低くなつて居るやうに私は考へて居るのでございます、次に失業者が續出した場合、其の所得税は前年度の實績だから、只今千圓或は千數百圓の俸給を貰つて居る方が、來年失業したら綜合所得税はどうなる、斯う云ふ問題は、是は只今の税法の建前から申しますと、綜合所得税は翌年に納めることになつて居りますから、今の建前では減免と云ふことに相成りませぬ、唯先程申上げましたやうに今後の情勢の推移に依りまして、税制に付きましても相當改正を加へなければなりませぬので、其の際考慮すべき事項として問題に相成ると思ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=36
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037・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 御質問はございませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=37
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038・井川忠雄
○井川忠雄君 十七條の遊興飮食税を次のやうに改正すると云ふ衆議院の修正案がございます、第三條の免税點を引上げる中の十圓を三十圓と云ふのは餘りに一度に飛過ぎるやうに思はれますが、政府の御考は如何でございますか、此の點が一番税率としては上るのぢやないかと思ひますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=38
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039・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 十圓を三十圓にすることが適當であるかどうか、上り過ぎるのではないかと云ふ御話でございますが、今の物價をどう見るかと云ふことと、此の修正がありましたのは多分第三國人關係の問題が相當入つて居るのではないかと思ひます、一皿十圓と云ふ位なのが今普通であるから、三十圓位にするのが本當ぢやないかと斯う云ふやうな御話のやうでございました、私は別に十圓を三十圓にするのが實際に副ふとか合理的だと云ふ問題に付きましては、御話致します程の材料を持つて居りませぬ、唯政府と致しましては衆議院の修正案を尊重すると云ふことを大臣より答辯したのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=39
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040・井川忠雄
○井川忠雄君 税額としてはどの位是で上るのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=40
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041・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 大體初年度に於きまして六、七千萬圓、平年度で一億五千萬圓位に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=41
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042・井川忠雄
○井川忠雄君 私斯う云ふ非常時又はそれに準ずるやうな時には、租税の衡平の原則と云ふことも尊ばなければなりませぬけれども、同時に便宜の原則と言ひますか、さう云ふ點を多分に御考慮あつて然るべきだと思ふのでございます、特に先程主税局長の御話に依りますと、只今税務官吏の陣容ではなかなか税を捉へることがむづかしい所が相當あるやうでございます、從つて斯う云ふやうに比較的樂に納められます部門、是は大衆課税になる虞もありますけれども、同時に外へ出て斯う云ふものを食べられるやうな連中は、相當所謂泡錢を掴んで居る連中ではないかと思ひます、眞面目に所得を得て居る連中は、さう外へ行つて食べられないだらうと思ひます、斯う云ふ方面で、寧ろ衡平の原則より便宜の原則に從はれて、成るべく多く税收を圖られることが宜いのぢやないかと思ひます、從つて十圓を一躍三十圓にすることをしないで、其の下の方の十二圓を十五圓に、二十圓を四十圓にしたと云ふ權衡から考へましても、是はものが違ひますけれども、十圓を二十圓位に止めて置かれて、然るべきではないかと思ふのでございますが、如何なものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=42
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043・池田勇人
○政府委員(池田勇人君) 租税の衡平の原則と、便宜の原則は御話の通りでございます、唯先般も此處で問題になりましたやうに、遊興飮食税、殊に飮食の料金に付きましてはなかなか脱税が多いのでございまして、取締にも相當手を燒いて居る次第でございます、從つて只今は飮食料金の最高價格は三十圓と云ふことに相成つて居ります、三十圓に相成りますと、もう公にそれ以上の飮食がない譯なんでございまして、收入が皆無になるのではないか、斯う云ふやうに考へられます、併し此の遊興飮食税の收入に付きましては非常に變つて參ります、政府の物價政策に依りまして、それから又料理店を如何に取扱ふかに依りまして非常に變つて參ります、私は此處ではつきり申上げられませぬが、今年度或は來年度も三十圓の最高價格で飮食料金が止まるかどうか、此の點に付て疑問を持つて居ります、若し是が上に上ると云ふことになりますれば、各料理店全部を上に上げるか、或は或料理店を指定じて最高三十圓迄、此の料理店は最高七十圓迄、斯う云ふ風に相成つて來るのではないか、斯う云ふことも考へられます、各般の事情を綜合致しまして二十圓が宜いか、三十圓が宜いかと云ふことに付ては、餘程議論があると考へて居りますが、衆議院は三十圓が適當である、斯う云ふ風にせられたやうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=43
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044・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 井川委員、御質問はまだございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=44
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045・井川忠雄
○井川忠雄君 もう宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=45
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046・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 他に御質問ございませぬか、速記を止めて
午後二時二十分速記中止発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=46
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047・会議録情報3
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午後二時四十六分速記開始発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=47
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048・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 速記を始めて、大體御質疑は終了したものと認めまして、是より討論に移りたいと存じますが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=48
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049・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 御異議ないと認めまして討論に移ります、三案を一括して議題と致します、討論の御發言はございませぬか、御發言がなければ採決に入ります、「所得税法の一部を改正する等の法律案」、「臨時租税措置法を改正する法律案」、「地方税法及び地方分與税法の一部を改正する法律案」、此の三案を一括致しまして採決に移ります、原案に贊成の諸君の起立を願ひます
〔總員起立〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=49
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050・周布兼道
○委員長(男爵周布兼道君) 全員一致と認めます、三案は原案通り全會一致を以て可決致しました、是にて本委員會は散會を致します
午後二時四十八分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=50
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051・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 男爵 周布兼道君
副委員長 子爵 綾小路護君
委員
侯爵 西郷吉之助君
侯爵 鍋島直泰君
伯爵 奧平昌恭君
子爵 梅溪通虎君
中田薫君
男爵 松平外與麿君
男爵 岡俊二君
男爵 水谷川忠麿君
男爵 長基連君
黒田英雄君
松尾國松君
小山完吾君
塩田團平君
長島銀藏君
徳田昂平君
井川忠雄君
子爵 七條光明君
名取和作君
國務大臣
内務大臣 大村清一君
政府委員
内務事務官 荻田保君
大藏事務官 池田勇人君
同 前尾繁三郎君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001574X00619460826&spkNum=51
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