1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○食糧緊急措置令(承諾を求むる件)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月十一日(水躍日)午前十時十四分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=1
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002・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは是から昨日に引續きまして、會議を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=2
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003・今城定政
○子爵(今城定政君) 我々日本人と同じやうな主要食糧を取つて居ります朝鮮人、臺灣人等はまだ大分殘留して居るやうに聞いて居りますが、其の數はどの位でございませうか、又彼等に對する配給の方法はどうなつて居りますか、それを伺ひたい、尚近頃朝鮮人の、密入國と云ふことが大分あるやうでございますが、其の状況はどうでございますか、それを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=3
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004・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答申上げます、第一に一番多いのは朝鮮人でありますが、是は御承知のやうに終戰前迄は約二百萬居りました、其の後逐次歸國を致して居りまするし、又先般も日を限りまして歸國希望者に付て計畫輸送等も致したのであります、併し其の當時歸國の申出を致しました者も、其の後朝鮮に於ける經濟状況、社會状況が必ずしも良好でなく、特に本年は南鮮に二十年來の大水害が起りまして、勿論交通も十分囘復致して居りませぬのみならず、食糧事情も決して好くない、それに今申上げますやうな風に社會事情、經濟事情も必ずしも良好でない爲に尚こちらに殘つて居る者が相當多いやうであります、正確な數字を私只今手許に承知致して居りませぬが、五十萬以上の者は居るのではないかと思はれます、一方臺灣人でありまするが、現在中華民國臺灣省民と稱して居ります、此の方は矢張り終戰前には十萬程度居りましたが、歸國の希望者も相當多く、又其の方の輸送も順調に行つたやうでありまして、現在精々二三萬を超えない數字のやうに承知して居ります、それから是等の人々に對しまする食糧の問題でありますが、朝鮮人は全く日本人と同等の取扱を致して居ります、臺灣省民に付きましても、從前は日本人と同等の、全く同樣の取扱を致して居りましたが、先般司令部の方から指令が參りまして、聯合國人に對しまする食糧に付て加配をするやうにと云ふ指令が參りました、其の指令に基きまして、聯合國人に對しましては或程度増配を致して居ります、尤も此の増配の種類は、米食人種と申しますか、それと米を常食にしない國人との區別を設けまして、増加配給致しまする種類は區分を致して居りまするけれども、併しながら何れに致しましても、聯合國人に對しては司令部の指令に基きまして増配を致して居ります、それから密入國、主として是は朝鮮人の密入國でありますが、只今申上げましたやうな朝鮮内部の實情から致しまして、向ふへ歸りましても住みにくいと云ふことから、日本に密入國する者が相當ございます、是は見付け次第、本國に送還を致して居りますが、併し朝鮮内部の交通事情、今申しましたやうな水害に基く交通が復舊せぬと云ふやうな色々の事情から致しまして、現在約八千名、其の後數字は多少變更があるかとも思ひますが、約八千名の者を長崎の一區畫に抑留と申しますか、其處に留め置きまして、交通が付き次第向ふへ歸すと云ふことで、現在長崎に抑留を致して居ります、斯う云ふ現状であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=4
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005・今城定政
○子爵今城定政君 終戰當時には臺灣人に對しては五合の配給をして居つたと云ふことをちよつと耳に致しましたが、それは其の通りでございますかどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=5
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006・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 只今申上げましたやうに臺灣人に對しましては、全く日本人と同樣でございまして、唯日本の方々でありますと、田舍に親戚があるとか、或は其の他の事情で相當闇買も出來たのでありますが、臺灣の人の中で特に學生の方々は國からの送金も杜絶え、又内地に寄る邊もないと云ふことから、特に二合一勺で、而も學生の喰ひ盛りの連中でありますから、相當急迫を告げたやうであります、從つてさう云ふ人々に對しては、是は恆久的ではありませぬが、其の時々に必要な食糧、是は主として乾「パン」とかさう云つたものでありますが、それから小麥粉、それから調味料と云ふやうなものを時々増配を致しましたけれども、恆久的には日本人と全く同樣の立場で取扱ふ、斯う云ふ建前で從來も參つたやうな實情でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=6
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007・今城定政
○子爵今城定政君 宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=7
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008・井上勝英
○子爵井上勝英君 農林大臣が衆議院の緊急措置令の委員會の御答辯の中で、政府として輸入食糧以外に五千萬石程手持をして居れば、大體食糧操作がうまく行く、それに付ては米ばかりでなく色々引つくるめてと云ふ御話がありましたですけれども、それに關聯して、綜合供出の點に付て伺ひたいと思ひます、此の間要求した資料に依りますと、綜合供出は昭和二十一年産の馬鈴薯に付てだけ行はれたのでありませうか、所謂米と雜穀の代替供出はどうなつて居るのか、ちよつと其の點伺ひたい、それに付きまして、本年は農家の保有基準量の決定に綜合保有と云ふことがありますが、それの御説明も伺ひたい、丁度次官が食糧管理局長官の時代に日本農業研究所の小原博士から、綜合供出に付ての榮養上の見地から、米の玄米四十貫、或は精米三十九貫それから籾が五十貫と云ふものに對して、大麥五十貫、裸麥、小麥が四十四貫、斯う云ふものは大體宜いけれども、雜穀の玉蜀黍の五十三貫、黍の六十貫、かの八十貫、蕎麥の六十七貫は非常に重い負擔を農家に與へて居ると云ふ意見を提出された、それに付きまして、大體小原博士は、王蜀黍は十四貫、即ち一俵以上、黍も十一貫、蕎麥も十四貫、稗に至つては二十貫も過大供出を強られて居ると云ふやうに言はれて居るのでありますけれども、雜穀類を綜合供出すると云ふのは、生産條件が餘り良い地方にはさうない、或は又小農の立場に可なりさう云ふ問題が出て來ると云ふことを考へ合せましても、此の結果が相當苛酷な割當を行つて居るのではないかと云ふ風に思ふのですが之には何か特別の政治的の意圖があるとか色々な問題があるのでありますか、私としては代替供出を政府で認められると云ふからには、政府でも相當責任のある比率の決定を行はれなければいけないので、其の決定された科學的の根據と云ふやうなものが若しあれば、それを伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=8
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009・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 農林大臣が衆議院の委員會で五千萬石と云ふことを申上げたことに付て申上げて置きたいと思ひます、それは消費者に對する配給量を一體どの位に見るかと云ふことでありますが、是は例へば現在の二合一勺の場合、二合五勺の場合、或は全然自由經濟でありまして、通常言はれた一人一年一石と云ふやうな、さう云ふ風な色々の場合に依つて違ふのでありまして、勿論現在の二合一勺と云ふ「ベース」で參りますとさう云ふことではないのでありますが、通常二合五勺以上配給をし、又酒も從來のやうにさう切り詰めたものでなくやつて行ける、勞務加配も、全然滿足する程度迄は行かなくても、それに近い程度迄勞務加配を致すと云ふやうなことを考へますと、大體純消費者に對する食糧としては五千萬石程度あれば、需給操作は樂にやつて行けるのぢやないか、斯う云ふ意味のことを申上げたのであります、そこで其の次に御尋の綜合供出の問題でありますが、御話のやうに、具體的に綜合供出と云ふ問題を採上げましたのは、本年の馬鈴薯、麥からでありまして、是は昨日も申上げましたやうに、昨年産米の米の供出と云ふものと睨み合せ致しまして、馬鈴薯、麥の供出割當を致したのでありますが、其の意味に於きましては、米と馬鈴薯、麥との綜合供出と云ふことも言へる譯でありますが、それは併し尚完全な綜合供出ではないのでありまして、具體的に完全なる所謂綜合供出として採り上げられましたのは、只今仰せになりましたやうに馬鈴薯と麥でありまして、麥を出す代りに馬鈴薯を出しても宜い、又馬鈴薯の代りに麥を出しても、兎に角量を合せた供出量と云ふものの中でのやり繰りは宜いと云ふことを致したのが初めであります、尤も從來も、綜合供出と云ふ風に具體的には言つて居りませぬが、併しそれに近い供出割當の方法は執つて居つたのでありまして、例へば割當の時期が米と麥とでは違ふのでありますが、米の時に、其の當時の作柄其の他を見て勿論割當をするのでありますが、其の結果に基いて、或は何と言ひますか、少し甘過ぎたと云ふ場合には、麥で強く行く、逆に麥で少し緩めて米でやつて行くと云ふ風に、供出割當の時期が違ひます關係上、それ迄の從來の割當の實績等に基いて、さう云ふやうな割當を致して居つたのであります、併し是は非常に抽象的と申しますか不完全でありまして、結局本年の馬鈴薯、麥に付てやりましたやうなことを今後やらう、斯う云ふ風に考へて居るのでありまして、米に付きましても、同じく米と甘藷の綜合供出と云ふ問題は起らうかと思ひます、唯此の綜合供出を致します場合に、手放しの綜合供出でありますと、結局農家は出來るだけ米を殘して甘藷を出す、其の甘藷は又腐り易いと云ふことから致しまして、其の間供出を實行を致しまする上に於ける綜合供出の代替率と云ふものは或程度決めなければならぬと考へて居ります、馬鈴薯に付きましては、麥の二割迄は宜からうと云ふやうな風に具體的に決めた地方もあるのでありますが、甘藷に付きましては、其の代替率はもう少し少くしなければ、米の二割、假に三千萬石と致しますると、二割で六百萬石、六百萬石の甘藷と云ふことになりますと、約十億に近い甘藷が入つて來る譯でありますから、さう云ふ風になりますと、相當大變なことになりますので、此の割當の代替供出の率はうんと低めにしなければならないのぢやないかと、斯う云ふ風に考へて居るのであります、それから雜穀の供出の問題でありますが、御話になりましたやうに、日本農業研究所で私共も其の研究の中間報告を伺つたことがあるのであります、其の後色々補正をされて完全なものが或は出來て居るかとも思ひますが、私共伺ひました時には中間的のものでございました、御話になりましたやうに、麥類等の代替率は概ね宜いのでありますが、それ以外の雜穀、特に當時私共一番氣付きましたことは、大豆が其の榮養量、又「カロリー」量に較べて少し代替率が割が惡いと云ふことでありました、此のことは從來御承知のやうに、何と申しましても、米麥中心で物事を考へて參りました爲に、比較的の問題ではありますが、米麥を有利にして、米麥を出來るだけ多く出して貰ふと云ふ意味から致しましてさう云ふ風になつたことと思ふのでありますが、併し最近のやうに榮養問題が特に重要視され、就中大豆の如く蛋白資源として重要になつて參りますると、此の代替率は直さなければならぬと考へて居ります、具體的に其の率を檢討致して居ります、此の代替率の問題に關聯致しまして、價格の問題が同時に考へられなければならないのであります、從來大豆は滿洲大豆に大きな影響を受けて居つたのであります、是は國内に於て消費される大豆の八十「パーセント」から九十「パーセント」以上のものが滿洲大豆で占められて居りました爲に、内地産大豆は殆ど其の影響力はなかつたのでありますが、今日のやうな時代になつて參りますると、さう云ふ方面から申上げましても、此の大豆の價格と云ふものは相當是は引直さなければならない問題であらう、其の根據として、今の經濟的の事情の外に、榮養量、「カロリー」量から見て補正して行く必要があるのであります、價格改正に付きましては、さう云ふ觀點から實は考慮致したいと考へて居ります、尚王蜀黍とか稗に付ての御話がありましたが、御話になりましたやうに、私共も其の點を伺つて居るのであります、唯本年は小農に對する供出割當は致さない、昨日來申上げた通りに、還元配給をしなけれとばならぬやうな農家には供出の割當を致さないと云ふ方法を採つて居りますので、其の邊は從來と或程度違つた形が出て來るのではないかと考へます、大臣のやうに特に集荷面に於て特別の操作をし之を集めなければならぬと云ふ性質のものと、然らざるものとの間には區別を設けなければならぬとは思ひまするが、何れに致しましても、小農中心の此の供出の問題は本年から相當樣子が變つたと云ふ風に御了承願ひたいのであります、併し全般的の價格問題と云ふことになつて參りますると、私共は實は農産物の價格は、他の農産物以外の價格との均衡と云ふ問題を先づ第一に取上げて居りますが、それにも増して重要なことは、農産物の間に於ける價格均衡の問題であります、先般三月二日に金融緊急措置令のあの一聯の措置が講ぜられました際に、農産物價の間の價格均衡に付ては相當手直しをした積りでありますが、尚雜穀等に付きましては不十分な點があることを認めて居るのであります、從つて今囘米の價格と云ふものが具體的に決りますれば、それに應じて農産物價の間の價格均衡をもう一度見直すと云ふ方向で進んで參りたいと思ふのであります、同時に綜合供出の問題に付きましても、合理的な基礎の下に之を作りたい、斯う云ふ風に考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=9
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010・井上勝英
○子爵井上勝英君 それに引續きましての問題なんでありますけれども、さう云ふ比率とか、或は價格の決定等を爲さる場合に、專門家の委員會と云ふやうなものを御作りになる御豫定なんですか、それとも農林省だけで大體爲さる積りでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=10
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011・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 實は役所の方でも從來の色々な調査はございますが、併し矢張り專門的の知識のある方々の御意見を伺ふ必要があらうかと考へて居ります、そこで色々さう云ふ問題をやります場合に、非公式ではありますが、食糧研究所、それから只今御述べになりました日本農業研究所の方々の意見を實は今迄も再々聽いて居ります、又先輩連中で多年此の食糧行政に長く盡瘁せられ、其の道の權威者と言はれるやうな方々の御意見も其の都度聽いて居るのでありまするが、何れに致しましても、さう云ふやうな價格的の問題になつて參りますると、私共の持つて居りまする資料だけでは不十分でありまするので、是非さう云ふ方面の專門家の意見を伺つて、さうして決定致したい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=11
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012・井上勝英
○子爵井上勝英君 農林省が米麥中心にして今迄主要食糧の蒐集をやつて居られたと云ふことに付ては、是はもう當然のことと思ふのでありますが、是からの國民經濟のことを考へて行きますと、何としても食糧を少しでも多く國内で集めると云ふことが非常に重大だと思ひまするので、出來るだけ農家の出し易いやうなものから先づ集めると云ふやうな風に御努力戴きたい、それからそれに引續きまして、此の強權發動は、確に相當酷い農家もあつたので當然行はるべきであると云ふことは私も考へて居りますけれども、昨年の秋から今年の春の選擧の前頃迄、東北なんかを旅行して見ますと、隨分供出なんかしないでも宜いと云ふやうなことを大分宣傳して居り、其の地方の指導者が困つて居つたやうなのでありますけれども、是は措置令が發布されて全くなくなつたと考へて宜いのでございませうか、所謂十一條の發動と云ふことはなかつたと見て宜いのでございますか、それからもう一つ伺ひたいことは、昨今の馬鈴薯と麥の供出問題でありますけれども、是は米に付ても各府縣の實收報告は、どうも少し過小評價と云ふ風にしか考へられないのでありますけれども、是は農林省で再檢討をされると云ふやうなことも新聞でちよつと拜見致しましたけれども、農民側として見れば少いのを望むのは當然だと思ふのでありますけれども、是も亦日本の國民經濟上から言つて非常に重要な問題になるので、其の點に付て農林省は何處迄腰を入れられる御積りであるのか、此の點を一つ承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=12
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013・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 第一段の供出阻碍に關する煽動行爲でありますが、具體的に此の本條を適用致しまして處罰すると云ふ場合に、犯罪の内容が極めて認定困難な場合が多いのでありまして、例へば國の政策に對する意見の開陳批評と云ふやうなものに付きましては、是は實は煽動行爲とならないと斯う云ふやうな解釋になつて居りますので、具體的に事實行爲で以て、供出を阻止したと云ふ場合が本條に該當する、斯う云ふやうなことでありますので、なかなか捕まらないのであります、そこで緊急措置令の公布前と、公布後でありますが、公布前は確かにさう云ふことは特に選擧を控へて居りましたので、私自身もそれ等の中の或政黨に屬して居つた人に對して、個人的に相當強い注意を與へ警告をした事例もございます、併し此の措置令が實施される空氣になりましてから、又實施されるに至りましてから、相當さう云ふ連中も引掛らないやうに注意をして參りましたので、其のやり方は相當質は變つて參りました、併し今申しまするやうに單なる意見の開陳、政府の政策に對する批評は、自由であると云ふ建前から致しまして、どうも其の間粉はしいものもあつたやうであります、其の點は今申しましたやうに質は變りましたけれども、なかなか完全にうまくやると云ふことはむづかしい問題であらうかと思ふのであります、それから第二番の生産高の過小評價の問題でありますが、御話の如く農家は出來るだけ少くしたい又中間の指導者の人々も縣當局の人も、供出が輕ければ輕い程自分の縣内の遣り繰が樂であると云ふので、特に昨年の赤字供出等で相當各縣とも苦しい思ひをして居りますので、さう云ふやうなことがあるのは遺憾ながら事實であります、結論的に申せば、是等のことは輿論の力で是正して行くのが、一番強い、又的確な行き方ではないかと思ひまするが、先日も御話申上げましたやうに、群馬、千葉の極端な過小評價の事例に對する、新聞紙上に於ける攻撃が非常に大きな影響を與へて、是正をされた例もあるのでありますが、從つて輿論の力と云ふものは非常に大きいと思ふのであります、併しそれのみに俟つて居る譯に行きませぬので、私共は是も申上げましたことでありますが、農事試驗場等で致して居りまする御承知の豐凶考照試驗と云ふものを基礎にして、地方廳に押して、地方廳から出て來て居りまする數字を押返して居ります、さうして具體的なそれでは問題になる場合には、純技術者だけで此の問題を解決しようぢやないか、具體的に技術者だけが集つて、其の生産量を調べる、斯う云ふ方法で進みたいのであります、我々と致しましては相當是は大きな問題でありますると同時に、進駐軍關係も極めて重大な關心を持つて居りまして、昨年のやうに米がすつかり刈穫られてしまつてから、もう一度米の收穫を調べ直せと云ふやうな、指令に近いやうなこと迄言はれたことがあるのでありまするが、本年後でさう云ふことになりましても、事實不可能なことを強ひられることになりまするので、事前にさう云ふことを出來得る限り豫防致しまする爲に、我々と致しましては相當此の問題は、強腰で地方廳に臨んで居るのであります、從つて其の空氣は地方廳にも相當徹底致して居りまするが、併し何分にも人情と申しますか、出來るだけ少くしたいと云ふ氣分は拂拭する譯には參りませぬので、今申しますやうに純技術的の問題として、押して行くと云ふ方法で進んで參りたいと考へます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=13
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014・井上勝英
○子爵井上勝英君 最後に肥料のことで伺ひたいのですけれども、化學肥料の増産に付ては、既にもう方々で御質問があつたと思ひますので、伺ひませぬけれども、現在各地で非常に各種の間接肥料と申しますか、色々な肥料が亂賣されて、農民が此の使ひ方や成分もどう云ふものか分らないので、非常に弱つて居るのですけれども、農林省は斯う云ふものの取締をどうしてやつていらつしやるか、其の點を伺ひたい、又それに現行と申しても殆ど今無視されて居るやうな、間接肥料取締法と云ふものは、確か總動員法に準據して居つたと思ふので、確か此の九月の末で效力を失ふのではないかと思ひますが、農林省は之に代るものを何か御提出になりますか、其の點を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=14
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015・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 間接肥料の中で「いんちき」な肥料が横行して居りますることは、御話の通りであります、是は一面農家が肥料に對して、如何に執著を持ち又欲して居るかと云ふことを、如實に現して居ることでありますが、其の弱味に付け込んで、特に終戰後軍需工場を初め各工場の、化學製品の中で如何はしい物が、食糧事情の窮迫に伴ふ所謂物交用として、農村に是が流れ込む、それが又農家に大きな惡い影響を與へて居ることは、誠に遺憾ながら事實であります、從つて此の問題に付きましては、私共は始終地方廳に警告を發して居るのでありますが、同時に御承知のやうに、府縣には肥料檢査官、取締官吏が各地方廳に居りますので、是等の人々が中心になつて此の問題の摘發に努力を致して居ります、又此の鑑定と云ふことになりますると、農事試驗場等で其の中心になつて戴いて居るのでありますが、是は是非一掃致しますると同時に、農業會其の他の指導方面に對しても、絶えず警告を續けて參りたいと考へて居るのであります、それから取締の問題でありますが、御話のやうに、間接肥料取締規則は失効となる譯でありまするので、之に代る行き方と致しましては、結局此の物資需給調整法に基く規則で參りまするか、或は他の肥料取締法と云ふやうなもので參りまするか、まだはつきりとは態度を決めて居りませぬが、何れに致しましても、間接肥料の取諦は是非繼續して、其の實體は殘して參りたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=15
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016・井上勝英
○子爵井上勝英君 私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=16
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017・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 今御話の出た米麥の生産高の統計、是はもう先日來大臣からも御話の通り、なかなか困難であると云ふことはまあ承知して居りまするが、それに付て所謂闇賣に依る所の米麥、地方から東京迄持ち込んで來る、ああ云ふものは其の統計から外れて居るものでせうか、どうでせうか、詰り農村でも保有量一人幾ら、或は又配給を受けて居る者もありますが、配給量幾ら、それで農村の人の食糧と云ふものは、十分と云ふ譯には行かない、配給量四合としても迚も農村の人は四合位では凌げない、それで農村が闇をする、其の數量と云ふものは相當なものである、其の數量と云ふものは統計から外れて居るものでせうか、如何なものでせうか、統計外のものをさうして隱して居ると云ふやうにも思はれる、それは相當の量に達しはせぬかと思ひますが、其の點は如何ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=17
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018・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、概觀して申しますと、今御話になりましたやうに、農家の報告數字の外に、即ち統計の外にあるものがさう云ふことの用に供せられて居ると云ふ風に了解致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=18
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019・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 それと同時に實際問題でありまするけれども、農家で今日冠婚葬祭の場合に使ふ米は相當の量に達します、私共も時々出會はせるのですけれども、假に御葬式があると、三俵五俵の米を皆近所親戚の者が集つて消費してしまふ、それは何處から出て來るかと云ふと、矢張り何處からか出て來る、是は相當の數のものになる、まあ御話にならぬやうな數量も食べ込む、是等は矢張り割當量以外に何處かに藏つてあるものではないかと思ひますけれども、矢張り統計外のものでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=19
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020・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 矢張り同樣に統計外のものが多いぢやないかと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=20
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021・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 來年度に於ける釀造用の米、麥、清酒、麥酒に使ふ……それに對する割當はどの位になつて居りますか數量は発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=21
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022・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 釀造用の米の數量は御承知のやうに年々減つて參りまして、昨年は米を八十萬石潰して居るのであります、今年は矢張り色々輸入食糧等の見合ひの問題、對外的の關係もあらうかと思ふのでありますが、從つて急に此の數量を殖やすと云ふ譯には參らぬと思ひますが、かと云つて此の数字を又減らすと云ふことは先日も御話があつたのでありますが、濁酒との睨合のことにもなりますから、却て角を矯めて牛を殺すと云ふやうなことになつてはいけませぬので、來年はせめて本年の程度のものは維持して行く、同時に一方合成酒の方で芋を從來酒に潰して居るのでありますが、併し此の方はなかなか主要食糧の事情が窮屈でありました爲に、常に計畫を致して居りましても主要食糧の苦しさの爲に横取をして主要食糧の方に廻して居ると云ふことを此の二三年前から致して居ります、從つて本年は幸ひ芋も豐作のやうでありますから、此の方で手心を加へて參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=22
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023・名古屋三吉
○名古屋三吉君 今年大變豐作のやうで大變喜ばしいのであります、併し斯う云ふ豐作が來年も續くかと云ふことは私共、到底期待出來ないのでありまして、處で現在工場事業場に働いて居ります勞務者は職場の加配米を頂戴して居りまするが、併し到底現在の配給量に加へる加配米位では、到底重勞働は出來ない状態であります、例へば養成工の如きも食糧が足りない爲に寄宿舍へ置くことが、出來ないのでありまして、皆逃げ出すと云ふ風な状態であります、さうして現在では寄宿舍に置くことが出來ないで、大抵は家庭から通はして居る、親元から通はせて居る、遠くの養成工は採らないと云ふ風な状態が多いのであります、でありますから養成工は皆遠く親元から通つて、親元で相當の闇買ひをしてやつて居ると云ふことは本當に隱れもない事實であります、處で斯う云ふことを防止する爲に工場事業場の直接の農園を仕事の合間々々に作らせる、それに尚專門家の者を常に雇つて置いて、それに手の足りない時には工場事業場の勞務者を手傳はせると云ふ風にすれば、さう云ふことが非常に緩和されるのではないか、さうして勞務者も夜業早出のやうな場合にも、其の農場から穫れたものも食べさして、さうして安心して能率を擧げることが出來ると私は考へて居るのであります、此の點に付て政府に於ては事業場の直接の農場を經營することを御認め下さいますか、其の農場に對して供出を免除すると云ふ風なことは出來ないものでありませうか、其處をちよつと御伺ひ致したいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=23
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024・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、勞務が加配米の點は昨日來申上げますやうに、現在非常に少いのでありまして、繰返して申上げるやうでありますが、戰時中四百萬石から四百五十萬石も年間に出して居りました、一番多い時は確か五百萬石近く出して居つたと思ひますが、それが最近で參りますと精々百二十萬石から百五十萬石と云ふ風に三分の一程度に下つて居るのであります、同時に從來は重勞働者等の人々は、家庭に於て所謂甲種、乙種、丙種と云ふやうな區分で、家庭の一般配給に於ても一般人に比べて増加の數量を受けて、更に工場で加配を受けて居りました者が、一般家庭配給に於きましては一般人と同樣の「ペース」に切下げ、而も又工場の加配量は今申しましたやうに非常に減つて參つて居ります、斯う云ふ事態で非常に苦しいことは能く承知を致して居るのであります、唯何分にも一般の消費者が、十五日二十日と缺配、遲配をする際に、勞務者の方にそれを總て廻して上げると云ふことは、社會的に考へましてもなかなか困難な事情がございますので、勞務加配は最小限度に實は切下げて貰つて居るのであります、具體的に例へば農林省から商工省に對しまして、商工省として此の際どうしても暫くの間は我慢して貰ふ業種、それから又どうしても是は維持して行かなければならぬ業種と云ふやうなものの選定を商工省に御願をし、又車輛其の他になつて參りますと、運輸省方面に御願を致しまして、それぞれ御選定を願つたものに重點的に配給をして居る、從つて中には石炭の採掘の方には六合の配給を維持し、而も其の爲には輸入食糧を「イアマーク」を致しまして一般配給と切離して重點的に配給をして居ると云ふやうな業種もあるのでありますが、併し全般的には非常な切詰めた状態になつて居るのであります、併し此の状況で參りますると、結局日本の産業の復興、又再建と云ふものがそれだけ遲れることになる譯なのでありますが、此のことは一面大量飢餓を豫想された本食糧年度に於きましては、日本の再建復興が足踏をし、或は延びても大量飢餓を救ふ爲には已むを得ぬと云ふ覺悟で實は致したのであります、併し幸ひ諸般の情勢は漸次明朗化を加へて參りましたので、是は何としても勞務加配は出來得る限り増加を致したいと云ふことで、御説明申上げましたやうに本年度の大體三倍程度、年間にして三十五、六萬程度のものは多くしたい、斯う致しまする結果は、石炭のやうな六合のものは是以上殖やす必要は或はないかとも考へますが、併し他の業種で現在切詰めてやつて戴いて居りまする部面には、増加をする必要もあらうかと思ひまするし、又現在勞務加配を遠慮して貰つて居る業種に付きましては、新たに之を附加へると云ふことにならうかと思ふのであります、從つて勞務増配の問題に付きましては、新食糧年度からは相當改善を期待されて宜いのではないかと思つて居ります、從つて農園の問題もさう云ふ事情と睨み合せて、色々考慮を御願ひ致したいと思ひます、併しそれと切離して考へましても、新しく開墾して行くとか云ふやうな場合の自家農園と云ふことは結構でありますが、現在熟地になつて居る農地で、之を態態專門家百姓の生産から素人の生産に移して、それで生産物が下がると云ふことでは、全體の生産力の觀點から見ましても必ずしも得策ではないと思ふのであります、新開田でなしに熟地田に付きましては勞務加配の確保と云ふ方法で進んで行つて宜いのではないかと實は斯う云ふことを只今考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=24
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025・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 段々の御話で昨年度産米の供出殘額に對する政府の御態度は大體了解致しましたけれども、私は此の際農民の指導的立場においでになる當局に於て、昨年の供出殘米に對する態度を御確定になつて、今後の供出の爲に明快な御態度を執られることが必要であらうと思ふのでございますが、當局に於ては昨日の御説明の通り、今後も尚昨年の殘米に對し追求を進める御態度で臨まれるのでございますか、其の點を一應伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=25
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026・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 昨年の供出割當の事態に於て、不公正なことがありました場合は、是は其の觀點から考へ直さなければならぬと思ひますが、併し合理的に割當てられました供出に付ての供出殘の取扱ひと云ふことになりますると、是は昨日來申上げましたやうに先づ麥及び馬鈴薯の供出割當に際しまして、一應第一段の措置を致したのでありますが、併し尚それで不十分な點は、引續いて申告に及ぶと云ふ方法で進んで參りたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=26
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027・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 私が先程申上げたのは、昨年度殘米に對する供出が度度強制せられまして、現在に於ては既に行く所迄行つて居るのであらうと思ふのでございます、九州地方の如く、又沿岸地方で、艦砲射撃を受けた準戰場に近き地方に於ては、割當に付ても非常に不合理なものがございましたし、又本年の豐作を見ての農民の賣急ぎを見ましても、凸凹のあつたと云ふことは明かなのでございます、既に段段の追求に依りまして、一番各農家の生産高を能く知つて居ります部落内の班長は、之を能く心得て居るのでございますが、其の班長に於て、既に行詰つて居ることを見まして、自分の責任を完ふする爲に、大體農民と云ふものは都會の人と違ひまして、永年其の地に於て生活しなければならないのでございますので、無責任な態度に出られませぬ、それで班長に於ては其の供出のどうして出來ない、代替物を以てしても既に買ふ金さへもないと云ふやうな者に對しては立替を致して居ります、又立替金額に付ても各町村に於て相當問題を起して居りまして、或は班長に於ては一俵の供出品に對するものでありまするから、本來ならば闇で以て返して貰はなければならないものであるから、六百圓程度のもので金で返して貰へば宜いと申して居りますが、處が村の方としては供出品であるから飽く迄供出價格で返すべきものであると云ふやうな譯で結局六百圓の半値を取りまして三百圓に落付いたと云ふやうなことがありました、從ひまして去年の産米の殘高に付ては行く所迄行つて居るものと私は確信するのでございます、それから今後の法令が出ますに付きましてまあ農民の性は惡なりと取られるのならば仕樣がございませぬが、少くとも農民を供出の方に善導して行かうとする、農民の性は善なりと考へべきが至當だと思ひますが、政府が農民に對して信用のないと云ふことが農民の政府に對して信用が出來ぬ所以でございます、是が只今の國民道徳の頽廢して居る理由の第一條件でないかと私は思ふのでございます、從つて此の際此の新米穀に對し尚去年の既に各地方に於て人情的に解決して居る問題に對して迄此の新米に去年の殘高を又追求追加すると云ふさう云ふ御態度は如何かと思ひます、指導者の立場として如何かと思ひますので、此の際去年の殘高に對しては追求しないとかと云ふやうに確信ある明快なる御態度を發表せられて、農民の覺悟を又新たにされる方が宜いと思ふのでございますが、尚御考慮の餘地がありましたら御答を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=27
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028・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 只今土屋子爵から御話になりましたやうに地方的に色々人情を加味して、其の何と申しますか、言葉は惡いのでありますが、壓力に依り、又其の善導に依つてうまく處理して居る所もあるかと思ひますが、是等の所は勿論問題はないのでありますが、私共が一番氣に致しますることは、正直者が馬鹿を見たと云ふ氣分を農村に殘して居りますることは、是は今後の供出の面から見ましても、去年あれ程言つて居つたのに又正直者が馬鹿を見たぢやないかと云ふことでは、今後の供出にも又其の他の色々の農村に對する施策を執行して參りまする上に於ても少からぬ影響を持ち、又政府に對する不信も更に増大すると云ふことになる譯でありますので、うまく處理して出來て居る所は結構でありますが、なかなかさう出來て居らない所も實は地方に依りましては一二あるのであります、是等の所は是も申上げましたことでございますが、市町村食糧調整委員會邊りでも相當問題にして強權を發動して貰ひたいと云ふ希望を出して居る向きもあるやうであります、斯う云ふ所はどうしても締め括りはしなければならぬと思つて居ります、要しまするに甚だ抽象的なやうなことで申譯ないのでありますが、正直者が馬鹿を見たことのないやうに其の點から後の處置をして行きたいと考へて居ります、具體的に其の地方々々色々の事情もあることでありまするし、又其の地方の事は割當自體の不公平の場合もありませうし、さうでなくて所謂惡質農家が多くて、又指導層に於てもさう云ふやうなことで、全く地方は、是は一つの縣で申しましても、一つの郡だけがさう云ふ風な惡い状況で、從つて外の郡が承知しない、從つて郡内でも一つの村だけが惡くて外の村が承知しないと、斯う云ふ非常な公平感の觀念から見た問題が相當地方に依つてはあるやうでありまして、是等は矢張り具體的に其のあと始來を付けなければならぬぢやないかと云ふ風に全體的には考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=28
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029・井上勝英
○子爵井上勝英君 只今の農林次官の御意見には私非常に贊成なんですけれども、それに付きまして伺ひたいのでありますが、現在七十「パーセント」、八十「パーセント」の供出に付ても、結局さうすると強權發動が行はれると云ふことになりますと、徹底的に突くと云ふ點に付ては私はもう確かに猾い百姓と云ふものに付て今一番問題があるのぢやないかと云ふ風に考へて居りますが、其の點をちよつと伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=29
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030・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 此の點は先程も申しましたやうに、米の不足、此の供出殘の問題は先づ第一段に馬鈴薯と麥で、一應「カバー」出來る限りに於きましては、「カバー」を致したのであります、從つて米の供出が少い所に對しては、麥とそれから馬鈴薯を掛けた、又本年の馬鈴薯の供出實行に當つて相當百「パーセント」以上供出して居る所も多いのでありますが、さう云ふ所は此の馬鈴薯で埋め合せをさせるとかと云ふやうな措置は講じて居るのであります、それで此の救へないと申しますか、「カバー」し切れない點は新穀で行くと、斯う云ふ方法で實は私共考へて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=30
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031・井上勝英
○子爵井上勝英君 さう致しますと、強權發動と云ふものは、もう殆ど要らないと云ふことになるのぢやないでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=31
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032・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 處が實際はさうぢやございませぬで、さう云ふ風に割當を致しましても、何と申しますか、頑迷固陋と申しますか、部落でどうしても出さない者が、現に矢張り麥に付きましてもある譯なんであります、從つて先程申上げますやうに、もう食糧調整委員會が承知をしないと云ふことで、強權發動を申請したいと云ふやうな意嚮も傳へて來て居るやうな所もある譯でございます、從つて強權發動はさう云ふ地方にはやらなければならないし、又やる必要があらうかと思ひます、さう云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=32
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033・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 只今の御話で大體了解は致しましたが、世の中は民主主義になつて居りまして、一般の農民の考も、政府に對する態度に付ても餘程變つて居るのでございます、それで本年の新米に對する割當でさへも、私は割當時期は決して早くはないと思ひます、既に遲れて居ると思ひます、此の點に於て本年の産米供出が稍稍成績が惡いとすれば、此の豐作を以て量は既にあるのでございますから、是は政府に責任があるものと思ひます、殊更に昨年の割當遲延と云ふことは、是は本年の強權發動が或はしなければならない最も大きな原因をなしたものであると思ふのでございます、さうしますと、農民の心が、政府に對する態度が變つて居ります世の中で、政府に於ても本年産米に對する態度でさへ既に落度のある態度を執つて居るのでございますし、去年に於ては非常な遺憾な點がございましたから、其の點も御認めにならないと云ふと農民の心は納得が行かないのではないかと思ふのでございます、飽く迄理論的には、今の公平の觀念から行きまして、狡い農民をやつつけると云ふ態度で出られることは、結構だとは、納得の行く話でございますけれども、農民の心理状態、政府に對する態度、心の底が變つて居ります世の中で、之を尚主張されると云ふのは、所謂官僚主義であり、農民の反感を買ふものとして、寧ろ政策としてまづいのではないかと思ふのでございます、農林當局の御説明は大體分りましたが、其の點の御答辯を……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=33
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034・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 其の點は先程申上げましたやうに、地方に依つては、全體が一部の人の處置に對して、それこそ納得をしないと云ふ、何と申しますかやかましいと云ふ具體的の事例があるのであります、先程申上げましたやうに、一つの郡の或部分だけがいけない、そこで其の郡の、他の村は勿論でありますが、縣下全體がああ云ふ不始末を其の儘放つて置いて、それで今年も亦我々にやらせるのが、斯う云ふ風にまはりが承知しない、斯う云ふ場合には、寧ろ其の觀點から申せば、全體の人が氣持良く、政府を信頼して呉れ、又氣持良く出して呉れる爲には、さう云ふ非難に應へるだけの措置は構じなければならないのではないか、斯樣に實は考へて居るのであります、全體の考へ方に付ては、正直者が馬鹿を見たと云ふ不平をなくし、さう云つた具體的に不平が現れて、具體的に其の村を指して居るやうな事態に付きましては、是は勿論食糧調整委員會でありますとか、縣の食糧委員會と云ふものが其の氣持にならなければ、實は政府は發動しないのでありますから、さう云ふ風に輿論がそれを要求すると云ふものに付きましては、當然やつて宜いのではないか、斯樣に申上げて置く次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=34
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035・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 割當技術に付ては決して既に完成して居るとは思はれないので、缺點もあると存じますので、私としては、政府に於ても相當強權發動に對し寛大なる御取扱をなされることと思はれますが、尚國民精神が大分變つて居りますから、特に愼重に御取扱なされたいと思ふのでございます、質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=35
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036・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 段々此の供出の問題を承つて居りますと、結局割當てられた米、それが供出が出來なければ、次に穫れた所の馬鈴薯其の他のもので代替しても宜い、替へても宜い、或はそれがいけなければと、次の年度の米で補充しても宜い、斯う云ふことになりますのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=36
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037・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、此の問題は、先程來色々問題になつて居りまする點は、今迄の不始末をどうするかと云ふ問題でありまして、是からの問題になつて來ますと、具體的に此の農家保有量と云ふものもはつきり決めまして、それから基準生産量と云ふものもはつきりさせまして、納得づくの上で決める譯なんでありますから、從つてそれが、それこそ割當が決まつてから後に特別の事情が起れば別でありますが、さうでない限りは、割當てたものは其の期間に出して戴く、斯う云ふことになる譯でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=37
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038・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 御話は能く分りましたが、併し既に一度、替つたもので納めて宜い、次の年度のもので納めて宜いと云ふことの端を開くと云ふと、矢張りそれを次々に押して行くと云ふことになりはしないかと思ふのでありますが、さう云ふことなしに、強行してやつて行く、斯う云ふ御決心は固いのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=38
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039・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 其の點は前から來たものが、此の量の一部分を押し出して外へ行くと云ふのではなくして、前からの分を附加へて結末を付けて貰はう、幸ひ此の藷も豐作でありまするし、米も良いのでありますから、さう云ふことで行きたい、ずるずるべつたりに次々に順送りにやる、斯う云ふやうなことは、實は考へて居らないのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=39
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040・松本學
○松本學君 私は缺席を致して居りましたので、御質問が既に出たかも知れないのでございますが、若し出て居りましたならば、御注意下されば止めますが、先日供出以外の量に對して自由の取扱をしたら如何かと云ふことに對する御答の中に、輸入の見込に付ての御話がありました、それが相當強い理由であつたやうに拜聽したのでありますが、無論食糧が斯う云ふ緊迫な時でありますから、聯合軍の好意に依つて此の危局を突破することが出來た、それに付て政府が非常に努力をされ、此の危局を切拔けることが出來たと云ふことは、是は誠に有難いことであります、又此の好意に對しては大いに感謝せなければならぬのでありますが、唯聯合軍から放出された物資が、所謂食糧に於ける物資がどんな種類であつたのでありますか、それから其の量がどれ位になつて居りますか、是は無論米に換算して量が出るかとも思ひますし、新聞でもちよつと出て居りましたやうでありますが、此處でちよつと承つて置きたい、どうせ是は結局只で貰ふ譯のものでもありませぬで、恐らく是は今後に於て計算をちやんと立てまして、現に見返り物資等に依つて段々と清算されて居るのだらうと思ふのでありますが、其の見返りの物資はどう云ふもので、現状は赤字になつて居りますか、黒字になつて居りますか、それから此の價格を決めるに付ての標準がどう云ふ風になつて居りますか、現在の「ドル」と圓との率で計算されて居るのだらうと思ふのでありますが、さう云ふ點に付て、それから將來是はずつと殘つて行くものでありますか、或は此の際既に或品物と見返りを付けて置けば、是で清算が付いてしまつた、今後にさう云ふ計算上のなには殘ならいのだと云ふことになりますか、或は今の圓と「ドル」との率で決つたので宜いのか、或は將來是が引續いた場合に於て、「ドル」と圓の率が變つた場合に於て清算すると云ふことになると云ふと、又相當の費用を要することになるやうにも思ひますし、さう云ふ點に付ての現在の御計畫なり、又御見透しなりを承つて置きたいのであります、殊に輸入と云ふことを相當の理由として今後の即ち昭和二十二米穀年度以後の食糧計畫が立つと云ふことに政府は御考になつて居るやうですから、さうなると云ふと、どうしても之を根本的に能く檢討して見なければならないことぢやないかと思ふ、若し憂を後に貽すやうなことがあると是は大變なことになるのぢやないか、是は唯食糧の問題だけでなく、輸入の關係で以て「バランス」が非常に違つて來る、さうでなくても「インフレ」にならうとして居る時に、丁度「ドイツ」の惡性「インフレ」と同じやうな「ドル」と圓との間の違ひに依つてそれこそ取返しのつかぬ「インフレ」になつて來るのぢやないかと思ふ、從つて茲に輸入と云ふことに付ては餘程注意をして掛からぬと、唯目先が苦しいから輸入に仰げば樂に行く、安易に此の難局が切拔けられると云ふことだけで食糧計畫と云ふものが立てられると云ふことになると禍を後に貽すことになりはしないかと云ふやうなことも考へられるのであります、それから又何だか如何にも國民が安易な考へ方で、一方に於ては供出等に付て十分成績が擧らない、頻りに闇が行はれ、横流しが行はれると云ふやうな實情がまざまざとありながら、非常に困つて居ると云ふことで、輸入に食糧を仰いで行くと云ふやうなことがあるのではないか、若しさう云ふことであると云ふと、國民精神の上に私は由々しいことになると思ふのであります、是はまあ根本論で政策に付ての考へ方の違ひですから、政府の御考になつて居ることと、私の考へたことと違ひますから、是は論じても仕方のないことでありますけれども、輸入と云ふことを相當重く見、將來の食糧對策と云ふものを御立てになつて居ると云ふことを承つたのですから、一つ其の點に付ての數字でも御示し願へれば結構ですし、現状と御見透しとを承つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=40
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041・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、先日松本さんから供出完了後の自由販賣の問題等に關聯して色々御意見を拜聽致したのであります、實は需給推算を立てて行きます上に於て、どうも供給量の見込と需要量とが殆ど違ひ、又需要量が多くとも、多少の量でそれ程懸け離れた量でないと云ふやうな場合には、色々國内的の操作の上に於て新らしい方法を講じ、又御意見として御述べになりました狙ひ所、即ち出來るだけ多くのものを供給面に出させると云ふことが考へられるのでありますが、如何に慾目に見ましても、需要と供給との間の相當の開きがあると云ふやうな現状でありますので、從つて勿論此の開きと申しますのは、消費者に對する配給量を二合一勺にする場合、二合三勺、二合五勺と云ふ場合に於て違ふのでありますが、さう云ふやうな見透しでありますので、此の際國内で自由賑賣にすると云ふ場合には供給量の足りなさが多ければ多いだけ一部の自由物資に依つて全體が壞されると申しますか、非常に惡い影響を持つて來るのでありまして、從つてさう云ふやうな見透しの下にありましては、どうしても此の點が私共は懸念になるのであります、特に輸入食糧問題を考慮に入れ、事實輸入食糧を相當入れなければならない状態の下に於きましては、國内に於て相當施策を講ずることが輸入食糧を得る上に於て極めて惡い影響を持つことも、過去一年の私共輸入食糧に付て色々向う側と接觸をし、又本國側の意嚮と云ふものを間接に承知致しました範圍に於て判斷致しますれば、到底さう云ふことは望めない、斯う云ふやうな意味合から先日申上げたやうな次第であります、そこで從つて自由販賣の點はさう云つた色々「デリケート」な問題がありますので、私共は執るべきでない、斯う云ふ風に考へて居りますので、其の點御了承願ひたいと思ふのであります、それから輸入食糧の點でありますが、是は速記を止めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=41
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042・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を止めて
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=42
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043・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 速記を始めて発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=43
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044・松本學
○松本學君 只今の御答で大體状況が分りましたから、此の質問は是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=44
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045・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは午前は是で終ります、午後は一時半から開きます
午前十一時五十六分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=45
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046・会議録情報3
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午後一時四十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=46
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047・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは是から午前に引續いて委員會を開きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=47
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048・松本學
○松本學君 後もう一つ二つ御尋して見たいと思ひます、是も或は誰方か御尋になつたかも知れませぬけれども、若し重複することになりましたら委員長から御注意下さい、それは此の度の供出の計畫は、農家の保有米を食糧とか、種子用に引去つて、其の後を供出させると云ふことになつて居りますので、本年の供出計畫はと大分形が變つたやうになりました、本年のは全面的な供出と云ふことになつて居りまして、さうしてそれを還元配給すると云ふことになつて居りますが、是は誠に一つの案として改善されたものであらうと思ひますが、此の度の供出量決定の基磯、さう申しまするのは農家保有量を引去つた後全部を供出させると云ふことになるのでありませうか、そこをちよつと承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=48
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049・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、此の問題は實は農家の生産意欲の向上の問題とも關聯を持ち、又從つて供出完了後の餘剩米の自由販賣と云ふ問題も同じく生産意欲の向上と云ふ觀點から色々論議されたことは御承知の通りであります、そこで供出で一番問題になりますることは、精農、惰農にも同じ程度に割當をする、從つて其の爲に一面精農から見ますると、努力をすればしただけ總て供出として取り上げられると云ふ點に一面非常に不平の聲が生じて居つた譯であります、そこで色々私共實は其の點とどう云ふ風に噛合せて考へるかと云ふことに付て檢討を致したのでありますが、結論としては、結局平年基準量と申しますか、基準生産量と云ふものを基礎に致しまして、例へば天候の状況、又肥料の施肥の状況、斯う云ふものから見て基準生産量と云ふものは、例へば此の地帶の此に田であれば、反當六俵なら六俵と云ふものを基礎にして割當てて、それから保有量を引いた殘りを割當するやうにして行く、さうして其の基礎生産量以上に生産されたと云ふものは、結局農家の特別の努力に依るものでありまするから、さう云ふものは結局割當以上の供出と云ふことになる譯なんであります、其の割當以上の數量をどう云ふ形で正常の「ルート」に取るか、自由販賣の場合は是は勿論正常の「ルート」には入つて來ない譯でありますが、之を致さずに正常の「ルート」に引き入れると云ふ場合に、其の引き入れ方をどう云ふ方法で引き入れたら宜いかと云ふことが問題になるのであります、そこで私共の現在考へて居りますることは、割當量以上の、さう云ふ特別の努力に依つて得た米を報償金、割當以上の供出に對する報償金制度と云ふものに依つて農家から出して貰ふ、斯う云ふことを實は考へて居るやうな次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=49
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050・松本學
○松本學君 さうしますと、保有量と云ふものを引き去つた後全部供出すると云ふことに今度はなつた譯でありますが、さうしますと供出の基礎は、配給の面から見て一人當り何合配給と云ふことを計算しての御決定ではなくて、結局保有量を引き去つた數量を目當にしたいと云ふことになる譯なんでありますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=50
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051・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) さう云ふことになる譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=51
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052・松本學
○松本學君 それから此の度の供出量と云ふものは、甘藷、馬鈴薯のやうな署類も包含して居りませうか、米だけのことになつて居りませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=52
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053・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 其の點は結局綜合供出制度と云ふ觀點から致しまして、甘薯も考慮に入れて居ります、それで先日來も申上げたことでありますが、四合の農家保有と云ふものの中で、全國的な達觀を致しますると、七十七・五「パーセント」と云ふものが米になり、二十二・五「パーセント」が其の他の食糧になるのであります、勿論是は東北のやうな米の單作地帶に於きましては、其の比率は多い、米が多いのでありますが、大體從來の消費實績と云ふものを考慮致しまして、さう云ふやうな割當を致すことになつて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=53
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054・菅澤重雄
○菅澤重雄君 此の強權發動の法令は、先程來農林大臣の御説を承ると、傳家の寶刀である、傳家の寶刀として之を存して置くと云ふならば、傳家の寶刀は鞘から之を拔き放つて實行に移したのでは傳家の寶刀ではなくなつてしまふ、傳家の寶刀として置くならば、もつと自重して之を實際に實行しない、巡査なんかを使つて家宅搜索をやらないで置くべきであつて、今迄やつたやうな例でやれば、傳家の寶刀としての效力が却て農民の反感を招く、さうして寶刀としての效力と、反感を招いて供出や何かの意欲を阻止すると云ふことを差引きしたならば、私は寧ろ害の方が多いんぢやないかと思ふ、さうして供出のことをちよつと考へると、農家が供出をするのには、相場の問題と、それから色々の事情が關聯して來るので、例へば農地法の如きも、生産増加と供出を滑かにすることが掴み所である、斯う云ふやうに承つて居るけれども、事實、私は之に反する傾向を示すんぢやないかと斯う考へられるのであります、それは何であるかと云ふと、地主が澤山の小作米を取つても保有米を引いた後は全部供出するのですが、之を個々に小さく小作人に割當てて賣つてしまへば其の米は纒めて供出しないで、例へば米は自分の扶持だけあれば宜しい、他の金になるものを主力を盡して、全力を擧げてさう云ふものを作つて増産を圖る、地主には金で納めさへすれば宜しいと云ふことになれば、米を取ると云ふ方に付ては頗る冷淡になりはしないか、さうすると、政府の狙ひ所の増産と云ふものが反對の結果を齎す、金納も其の通りで、所謂金を納めれば宜いと云ふことになるのと同時に、米の方の増産も目的が外れる斯う云ふ結論になつて、而して強權を今後用ひてやると云ふことになると農家の意思を掴むことが出來ないで、政府は反對の傾向になるものですから強權を發動しなければならぬ結論になるのぢやないかと斯う考へられる、此の政府の考と我々の民間に於ける實情を調査した所から考へるのと掴み所が違つて居りやしないか斯う考へられます、此の點をはつきり一つ私共將來の爲に政府の所見を伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=54
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055・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 全體の問題として傳家の寶刀の效用の問題でありますが、是は仰せになりますやうに、傳家の寶刀は出來るだけ之を拔かずに事態が切拔けられると云ふことが一番望ましい行き方であります、此の意味に於て傳家の寶刀も效用がある譯でありますが、一面どうしても、いざ鎌倉の場合にどうしても拔かなければならぬ、其の事態に於きましては已むを得ず拔く譯でありますが、現に昨年の事例に依りましても、あの緊急措置令が出來る迄の状態は御承知の通りでありますが、緊急措置令が出來ましても、當時の一般情勢又一部の指導者の人々の指導の在り方を見て見ますと、此の傳家の寶刀に對して實は傳家の寶刀が傳家の寶刀でないやうな風に認識をして居る向があり、又指導をして居る向もあつたことは事實であります、言ひ換へて申しますると、此の傳家の寶刀を見縊つて結局政府は斯う云ふ勅令が出來たけれども、能う拔かぬだらうと云ふやうなことも一部にあつたのであります、私共は傳家の寶刀として出來るだけ拔かないことが望ましいのでありますから、又其の事前の盡すべきことは十分に盡さなければならぬと考へまして、先づ以て警告状を發すると云ふ措置を講じたのであります、其の結果強權措置の具體的の發動に依つて得ました數量は、本會議及び委員會で御説明申上げましたやうに、數量的には三千石にも足らぬ極めて少量でありますけれど、此の警告状に依りまして、大體是は地方に依つて多少違ひますけれども三月三十一日を期限として警告状を發した地方が多いのでありますが、さう致しますと、三十日とか三十一日に一日に五萬俵から十萬俵も出たやうな次第であるのでありまして、結局是は其の意味に於ては傳家の寶刀の狙ひを達したと思ふのでありますが、事實供出の状況から見ましても、一月から漸次出盛りに一月の上旬、中旬、下旬、二月の上旬と云ふ風に漸次又相當の「カーヴ」を描いて急降下して參りました供出状況が緊急措置令の制定に依つて上向いて參り、是が又ずつと急「カーヴ」で上昇したと云ふ事例に徴しましても、明かに此の傳家の寶刀としての役割を果し得たものと、斯樣に考へるのであります、併しながら狙ひとして、又重みとして、飽く迄出來るだけ之を拔かずに其の效用を果すと云ふ點にあることは仰せの通りであります、それから次に農地法との關聯でありますが、結局供出の面から見ての色々の考へ方もあらうかと思ふのでありますが、一面更に突き進んだ日本の農業經營、又今後の農村の在り方、所謂農村の民主化、又農業經營の自主化、民主化と云ふ、もつと掘り下げた大きな觀點から今囘の土地制度の改革と云ふ問題が行はれて居るのであります、勿論此の狙ひはそれに依つて經營の基礎を與へ、又再生産力の昂揚を圖つて行く、結局全體としての今後の經營の合理化、又増産の達成と云ふ點にあるのでありまして、結論としては結局供出に付きましても源の生産が殖えると云ふ所に狙ひがあるのでありますから、供出にも惡影響はないものと、斯う云ふ方向で考へて居るやうな次第であります、尤も此の轉換期に於きましては相當移り變りがうまくいかぬと云ふ場合も出て來やうかと思ひますが、長い眼で見ました場合に於きましては、結局目的が達成せられるのではないか、斯樣に考へて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=55
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056・菅澤重雄
○菅澤重雄君 私は先日農林大臣が言はれた通り、昨年の供出の惡いと云ふことは、色々の原因があつて供出の工合が惡かつたのですけれども、是は主として政府が施策が惡かつたと云ふ爲に出來なかつたのと、去年は凶作々々と云ふ聲を高く上げたものでありますから、一體米が足らぬ足らぬと云つたから、誰でも供出を鈍つたのでありますけれども、其の供出の鈍る原因は、先にも私が言つた通り藷の例に依つても分るので、先に一圓や二圓で出したものが出し拔けに農林省や東京都が千葉縣や、埼玉縣に行つて五圓で買つた、さうすると後の者は高く賣つたと云ふことが影響した、米でも其の通りで米の値段と、割當が第一に遲れた、其の次に値段を引上げたのが一月か二月頃だと私は思ふが、私共貴族院で五班に分つて全國を視察して參りまして、さうして地方の作柄や供出の状況や、色々のことを調査して、懇談會を開いて農林大臣に、其の時に私は米の相場をどうすると聽いた處が、まだ決定しない、然るに新聞には三百圓にすると云ふ説があつて、新聞には三百圓とする説がありましたけれども、何時も政府は、新聞に前以て政府の意嚮を書かせて、さうして輿論の反響を見てそれを實際に行ふ、斯う云ふやうな例があるから新聞を見てあの通りではないかと我々は稍稍考へる節があるがと云ふやうに言つた處が、それは大藏大臣に聞かなければ相場は決められない、斯う云ふやうな大臣の御答辯でございました、そこで私は米の相場を決めるのは、適正價格と云ふことを決めるのは主務官廳の農林省で決めて、さうして國庫から金を出して貰ふ、助力を得る、協力を得ると云ふことは大藏大臣の意見を聽く必要もあらうと思ふが、先づ以て農林省がそれを決めるのが相當ではないか、さう云ふので話した、農林大臣一個の意見でも宜いから、意見を述べて貰ひたい、懇談會には我々農民の状況を視察した意見も聽き、政府の意見も聽いて、さうして此の邊にしようと思ふと云ふやうなことが懇談會の性質であるのに、大臣の意見を發表することが出來ない、又は大藏大臣に聞かなければ分らない、斯う云ふやうなことでは懇談會の趣旨に副はない、斯う云ふことを私は其の當時申上げたが、其の時にも三百圓にすると云ふことを早く政府が言へばそれになつたのですが、丁度藷を早く供出した者は二圓や一圓で賣つて、後から狡けた者が五圓で賣つた、斯う云ふのが米に深刻に影響して來る、さう云ふことが、總て政府のやることが手遲れになつて來る因だから、さう云ふことであの強權發動をしたと云ふやうなことが、抑抑やらなければならないやうな事情であつただらうけれども、それに依つてやつたのではなくして、各種の事情綜合して供出をしなかつた、それからああ云ふことをやつたから出たのですが、それを何處迄も、何時迄も保存して置くことは私は必要ないと思ふ、今年のやうな豐年の時には自由販賣のやうな形式で、農林省は地方の供出割當を、地方の人の、町村農業會なり若しくは實行組合なり、色々なものの民意に依つて割當をして、さうしてそれを信用して、あんな傳家の寶刀なんかは取つてしまつた方が私は寧ろ農民が好意を以て出す、斯う云ふやうな結果になりはしないか、併しながら米と云ふ問題は直ちにそれが出來なければ、私は藷だけでも供出を九月、十月、十一月と云ふ此の三期に分けて割當をしてしまつて、その割當を出し終れば宜いのだから、其の間は確認さへあれば、出すと云ふことを責任を負つて、農會や實行組合なりの委員が引受ければ、後は自由販賣だと云ふやうなことはやつた方が寧ろ好いと考へられる、私は藷だけでも腐らせないやうにやつて欲しいと云ふ希望を持つて居るのですが、政府は此の點に付て一つ御考慮を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=56
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057・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 此の緊急措置令の分配の問題でありますが、勿論供出制度の實施に當りましては一番大事なことは割當の公正的確と云ふことであります、從つて此の觀點から市町村食糧調整委員會、或は道府縣の食糧委員會と云ふやうな民主的な機構を十分に活用致しまして、從來のやうな官僚的、天降り的な又祕密主義を公開主義で以て特に民主的にやつて行かうと云ふことで、本年から供出制度の改善を致しましたことは御承知の通りであります、そこで問題は結局民主的又は自主的に是が實行される譯でありますが、斯う云ふ制度が存續致して居ります以上、其の締括りとしてどうしても斯う云ふやうな處置が必要でないかと思ふのであります、從來の色々の自主的統制の場合に於きましても、其の裏打と云ふことはどうしても必要ではないかと思ひます、唯之を發動致します際に此の發動形式に付て、官の一方的な意思に基いてやると云ふことになりますれば、折角さう云ふ他の一面に於て民主的な行き方を致しましても、其の寶刀を預つて居る所が無暗矢鱈に之を使ふと云ふことになりますれば、結局其の目的を達しない譯なのでありますので、自主的な機關として活用せられます所の委員會の活動に依つて、我々が斯う云ふ風に決め、又斯う云ふ風にやらうとして居る、併しどうしても此の強權を發動して貰はなければ困るのだと云ふ申請があつた場合に限つて、此の措置を發動致さうと云ふことでありまして、自主的統制と申しますか、それの裏打の措置として之を存置させて行かう、此の事は最初に申上げましたやうに、供出制度と云ふものを存續して置く以上はどうしても必要ではないかと云ふ風に考へて居るのであります、それから藷の問題に付ての御尋でありますが、私共も本年の藷の處置に付きましては、出來る限り是はうまく一つ使ひたい、結局御承知のやうに早掘の藷、之を利用致しますことが、本年の食糧事情から致しまして、端境期を繋ぐ最も大きなものであるのでありますが、實は本年は馬鈴薯及び麥で端境期をうまく、尤も一部新米、早場米を考へて居りましたけれども、大筋は馬鈴薯と麥で此の端境期を切拔けて行きたいと云ふことを當初考へて居つたのでありますが、御承知のやうに馬鈴薯及び麥も豫想に反しまして、好い收穫を擧げ得なかつた爲に、結局其の中間を輸入食糧で繋ぎますと同時に、此の大端境期に際しましては、此の早掘甘藷と云ふものが大きな役目を果すことになつたのであります、從ひまして早掘獎勵金、是は實際は事實早掘のものはそれだけ收量も少いのでありますから、それは菅澤さん御承知の通りであります、それに「カバー」すると云ふ意味もある譯でありますが、早掘甘藷に對して相當思ひ切つた獎勵金を出して、之を出來得る限り此の大端境期に多く利用して行きたい、さうすることに依りまして、爾後の最盛出廻期に於ける甘藷と云ふものの出廻數量が幾分かでも先觸れに利用されると云ふことに依つて、其の一つの條件は緩和されることになる譯でありますが、それと同時に、是も御承知の通りでありますが、澱粉工場が本年は昨年に比較致しまして四五百程度のものが澱粉工場として從來に比べますと殖えたのであります、斯う云ふやうな原料工場或は午前中も申上げました「アルコール」原料と云ふやうな加工方面にも本年は久方振りに滿腹状態に見込めるのではないかと考へて居るのでございます、更に受入口と致しましては、御承知のやうに生鮮食料品の不足して居る状態でありますから、一部をさう云ふ方面に轉用して、又味噌等の需給状況もなかなか樂觀を許さぬ状況でありまするので、此の方の増量用として、之に或程度の相當數量を期待せざるを得ないのであります、斯う云ふ風に各方面に於て、藷の需要と云ふものが非常に多いのでありますから、やり方を巧く、特に計畫出荷、計畫輸送と云ふやうなことも、併せて十分考へなければならぬと思ひますが、さう云ふやうな色々の點に付て、巧く藷を扱つて行きたい、實はさう云ふ風に考へて居るのであります、現在の所、主要食量として取扱つて居る此の藷、特に松本さんからの御尋ねに對しまして、御答へ申上げました通り、主要食糧の問題に對しましては、非常に「デリケート」の問題もありますので、藷の統制を廢すとか、或は供出完了後は自由にすると云ふやうなことは、政府と致しましては考へて居らないのであります、其の邊の事情を能く御了承願ひたいと思ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=57
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058・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 今の點に關係致しまして、只今の藷の供出後の自由販賣に付きまして、私は贊成する者でございますが、それを致しませぬと、殘りのものは、大體に於て農業會の割當として、澱粉工場へ割當出荷すると云ふやうなことに、強制されるやうなことになるのでございます、然るに澱粉工場の製品に對しましては、兎角の批評がございまして、丁度現在ございます元の地方木材會社、或は日本木材統制會社に於て闇が甚だしい、あそこに新圓が集まつて居ると云ふのと同じやうな譯でございまして、配給「ルート」に乘つた藷に付ては、さう云ふ「いんちき」は行はれないのでございますが、澱粉工場に入つた藷に付ては、兎角の批評がございます、そこで政府に於ては特に澱粉工場に付て、其の會計の檢査を大いに嚴にされないと云ふと、農民の間に於て、殘存藷が自由販賣が出來ないと云ふので、縛りつけられて居ながら、而も農業會の命令が澱粉工場に供出したものに付て、いんちきが行はれると云ふので、非常に反感を來すものと私は思ふのでございます、そこは單に今迄伺つて居る自由販賣は出來ないと云ふ、統制の技術方面からだけではなく、實情に即して別の方法を以て澱粉工場の取締を、嚴にして戴きたいのでございます、それから是から伺ひたいことがございますが、此の強權發動をいざ行ふと云ふ段取になりました時に、自主的統制審議機關と致しまて、各町村の委員會に託すると云ふ仰せでございますが、此の委員會の構成委員の内容に依りまして、折角の精農であるか惡農であるかと云ふことが決定されることになるのでございますので、此の委員の内容は非常な重大問題を地方に與へるものと思ふのでございます、此の委員の構成に付きまして、或は政府に於ては、農地調整法に於ける農地委員會の如く、地主が何人、小作人が何人、地方の有識者とか、有能者とか、技術員とかさう云つた者を何人、と云ふ構成に遊ばす御積りであるか、此の點は私は地方に於て農民黨の如き共産黨分子が、一人でも入りました場合に於きまして、地方を混亂する處があると思ひますので、此の委員の構成に付て承りたいと思ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=58
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059・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 食糧調整委員會の市町村の方でございますが、此の方は耕作農民を中心と致しまして構成致したいと考へて居るのでございますが、其の方法と致しましては、農家の選擧等に依つて致したいと存じて居ります、さうして其の外に部落會長でありますとか、或は部落の實行組合長、斯う云ふやうな人々も同時に構成員として考へて居ります、大體さう云ふやうな構成でありますが、併しそれ以外に其の村の實情を知つて居り、又生産農家とも始終接して居りまする檢査員でありまするとか、或は農業會の役職員の方、斯う云ふやうな人も其の場合必要があれば、臨時委員として附加へても宜い、主體としては飽く迄耕作農民を中心にし、それと部落會長、斯う云ふやうな人々を中心として、考へて行きたいと存じて居ります、それから道府縣の食糧委員會の方でございますが、是は縣全體の食糧問題を廣い觀點から取扱つて貰ふことにして居るのでありますが、申落しましたが、此の食糧調整委員會は、生産量なり或は供出の割當、或は其の見返の資材、斯う云ふ風なものの割當とか、さう云つたものを主としてやるのでございます、主として供出中心の仕事をやる委員會でありますが、府縣の方になりますと全體の消費者の立場からも、食糧問題を取扱ふ、例へば一つの町村で、村全體が惡質の者で、どうしても埓が明かぬと、公正な割當であるにも拘らずいかぬ、單に市町村食糧調査委員會だけの手に委ねて置きますと、其の村では強權發動が出來ないと云ふことになるのでありまするが、さう云ふ場合に縣の食糧調整委員會に於て、生産者の立場と同時に、消費者の立場からも見て、妥當と思はれる場合には、強權發動の申請をする機關にする、斯う云ふことになると思ふのでありまするが、さう云ふ工合に縣の食糧委員會は、生産者の代表のみならず、消費者の代表或は政黨方面の代表者、斯う云ふやうな各方面の人々に入つて戴きまして、構成を致したい、斯う云ふやうに實は考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=59
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060・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 只今段々伺つて居りますと、現在供出關係をして居ります農業會の役場の役員、檢査員、それから各部落長、部落員、部落の班長、それ等の話合で以て、大體實際は圓滑に運行して居るのでございますが、只今の委員會の末端構成に付きまして、現在やつて居る人達と變らない者がやるやうに、大體私は了解したのでありますが、其の委員の數に付きまして、耕作農民を主體とする存在でありましたが、然らば耕作農民から何人、何から何人と云ふやうな數に付ての御規定がございませうか、或は斯う云ふ風に現在やつて居りますやうな儘の供出關係者に扱はせるのでございますか、其の點をはつきり致して置きませぬと云ふと、何しろ善農、惡農の境を作るものでございますので、相當な影響があると思ひますので伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=60
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061・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 人數に付きましては正確に豫定は致して居りませぬが、大體一部落から耕作農民の代表として一人、部落會長一人、それに農業會長と云ふやうな人が入りますから、大體部落の數の倍よりも多少多くなると思ひます、人數としては大體さう云ふことにならうかと思ひます、唯從來の供出委員會と多少違ひます點は、是は所に依りましては供出委員會の委員長は市町村長がやつて居られるのでございますが、今囘考へて居ります點は、供出割當の責任者は飽く迄市町村長でありまするが、其の市町村長の諮問を受けてやる委員會でありますので、其の委員長は此の委員の互選に依つて決めると云ふ風に市町村當局とは離して、此の委員會を實は考へて居る譯でございます、其の點は多少の從來の供出委員會と違ふと思ひますが、其の以外の點で大體供出委員會で巧く行つて居る所は大體私共が今考へて居りますやうな構成で行つて居る所が多いと存じますので、さう云ふ所はさして大きな變化はないのではないか、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=61
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062・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 次に第九條の關係に付てちよつと伺ひたいのでございますが、魚介類の統制と云ふことはなかなか言ふべくしてむつかしいことでございまして、それは船が運送機關でありますので、海上に於ける闇取引だとか、或は魚介類は非常に腐敗し易いものであると云ふやうな點、二つの點等から非常にむつかしいやうに思ふのでございまして、是は寧ろ必要がなければ、自由取引の方が宜いかと思ふのでございますけれども、政府の御所見を伺ひたいと思ひます、それから漁村に於ける加配米の問題を伺いたいと思いますが、從來國民一般の配給受給者と同樣の配給を受けて居りまして、其の他に、昔は加配米と云ふのがございます、今囘食糧事情が大體に於て豐作に依りまして配給も殖えると云ふやうな状態になつて參りましたし、此處で元のやうな加配米一日五合とか六合とか云ふやうなものを復活して戴く譯に行きませぬか、現在の處漁獲物と「リンク」さして加配米を出しておいでになるやうな現状でございまして、漁獲のない場合に於ては、寧ろより以上に働いて居るに拘らず、加配米を頂戴致せないと云ふ現状でございます、從つて今年、豐作で一般に加配されるやうな場合には元の加配米制度を復活して戴く譯には行きませぬか、此の點を伺ひたいと存じます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=62
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063・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 魚介類の統制の問題でございますが、仰せのやうに非常に是は統制を致しまする上に於てもむづかしい問題、對象でありまするが、現在の處統制を撤廢すると云ふ意思は持つて居らないのであります、唯此の對象が對象でありまするので、實は昨日も蔬榮に付て申上げました通り、生鮮食料品の統制に付ては、單純に統制の爲の統制に墮することのないやうに、出來るだけ其の對象が生き物であり、又腐敗し易いものであると云ふことを能く頭に入れまして、此の統制のやり方に付ては工夫改善を加へて參りたい、斯う云ふ風に考へて居りますので、此の點は從來やつて居りました單純な形式的な統制に墮さないやうに現在でも色々工夫を致して居り、一部さう云ふ線に沿つて實施を致して居るやうな次第であります、それから加配米の問題でありますが、此の問題も實は「リンク」用に米を出しますること事態に於ても農家の面から見ますると、色々非難もあり、折角自分達が血の出るやうな米を穫つて、賣つてさうして漁家にそれを配給し、漁師は其の魚を闇に流して居る、怪しからぬぢやないかと云ふやうな一部の相當強い農家からの非難もあつたやうなことでありまして、此の加配米の使ひ方に付ては特に氣を付けて參らなければ、必ずさう言つた一方の非難が起つて參りますので、「リンク」制に付ては特に氣を付けて居るのでありますが、從つて一般に其の増配が可能な場合には勿論普通の勞務者に對する配給も出來ると云ふやうな場合には、勿論漁師に對しましても加配することは當然でありますが、重點的に此の加配を續けまする間は矢張り從來のやうな行き方で行かざるを得ないと考へて居るのであります、そこで新年度から先日來申して居りやす三百五六十萬石の配分をどう云ふ方面にするか、勿論漁業も重要なことであることは申す迄もないことでありますが、此の三百五六十萬石と云ふ數量と睨み合せまして漁師に對する加配、どれだけ加配が可能であるとか云ふやうなことも能く檢討致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=63
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064・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 私は、沿岸の小漁業に對して、統制をなさらないで、漁業の大きなものに對して油「リンク」の統制をなさるから農民がさう云つた加配米に付て文句を言ふことになるのであらうと思ふのでございます、政府に於ても此の沿岸の小漁業、油の「リンク」の關係のない所を、詰り農民の目に屆く所の此の小漁業に對しても、一般が自由でないのならば統制をなさる必要があると思ふのでございますが、全然昨日の御話の如くさう云ふものには統制をなさらないで置いて、此の加配米問題を解決し得ると云ふ御確信があるのであるか伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=64
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065・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御答へ申上げます、昨日申上げました點は、一般の此の形式的になんでもかんでも水産物に付ては總て統制をすると云ふ點に付ては考へなければならない、併し此の水産物の大筋の統制に支障を來すやうなものに付ては勿論是は統制に入れなければならぬと云ふことを申上げたのであります、そこで只今御尋ねになりました勞働者に對する食糧加配でありますが、是は一般の勞働者に對しましても午前中に申上げましたやうに家庭に於て勞働者加配と云ふものを認めて居つた、極く最近迄認めて居つたのであります、即ち其の勞務が一般的に重點産業であらうと、然らざるものであらうと、勞務者なるが故に加配を考へて居つたのであります、さう云ふやうなものと同じ觀點から此の統制を、勿論統制に入つたものに付きましては「リンク」制になるのでありますが、統制に漏れた統制を致さない對象のものに付きましては、さう云つたものと同じ觀點から此の加配問題を考へたのであります、斯う云ふ風に實は午前中に申上げたのであります、從つて統制の問題と睨み合せまして、此の加配問題は取扱はうと斯樣に存じて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=65
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066・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 土屋さん宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=66
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067・土屋尹直
○子爵土屋尹直君 はい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=67
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068・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 前島さん、松本さん、ちよつと御待ち下さい、中村さんから先程……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=68
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069・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=69
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070・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) 中村委員どうぞ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=70
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071・中村藤兵衞
○中村藤兵衞君 只今問題とはちよつと關係の薄いやうなものでございますが、ちょつと承つて置きたいのであります、それは數日前政府の方で發表になりました蠶絲業對策、あれに依りますと「アメリカ」から食糧を輸入する、それに付ては色々こちらで何か送らなければならぬが、それには生絲、生絲は輸出品の大宗だと云ふ、處が生絲は今日十八萬俵程しか生産することが出來ない、どうしても三十萬俵程送らなければならぬ、それには桑園が必要だ、桑園は御承知の通り戰爭中は一本幾らで拔かしてしまつた、今日は十八萬町歩しか作つて居ない、さうして十二萬町歩の桑園を今日造らなければならぬ、向ふ三箇年で桑園をそれだけ殖さう、さうしますと云ふと、一方食糧を作る其の土地、食糧が足らないで居て、「アメリカ」の食糧を入れて行く其の見返り品として、食糧を作つて居る所を其の食糧を作るのを止めて桑畑にする、何だかぐるぐる廻りをするやうな感じが致すのであります、結局さうなると云ふと、農家の懷ろに都合の好いもの、言ひ換へれば利潤の多いものに其の士地を利用することになりはせぬかと思ふ、さうなれば米を作るのが宜いか、桑を作るのが宜いか、是は細かい計算はございませぬけれども、言ふ迄もなく養蠶の方が春蠶夏蠶秋蠶、少くとも春秋相當の收穫がある、收穫するのは極く短時間で、一月かそこいらで、其の中で忙しいのは二十日程である、米の方はなかなかさう云ふ譯には行かぬ、而も養蠶、生絲の方は二千掛、繭も二千掛と云ふ相場に決つたとすれば相當なものであります、どうも養蠶の方が懷ろ利益が多いことになるから、米を作らぬでさう云ふ方にのみ走るのではないか、さうなると云ふと、先日も御話の出た所の今度の國土計畫向う五箇年間に百五十萬町歩の耕地を作ると云ふ、さう云ふ足許から直ぐ十二萬町歩の土地を桑畑に代へなければならぬ、十二萬町歩以上桑畑になる、と云ふことは食糧の増産の計畫にも多少齬齬を來すのではあるまいか、一體政府は桑と米との生産に付てどう云ふ御考を持つて居るか、先刻菅澤委員からも小作料が金圓で納めることになれば、米を作らぬで割合の宜いものを作つて金に換へてそれを納める、言ひ換へれば米の増産にならぬぢやないかと云ふ御尋もあつたのですけれども、此の點は私は同感のやうな感じが致すのであります、是は此の委員會には縁故が薄いやうに思はれるのですけれども、矢張り食糧關係でありますから、若し御考がありましたならば、其の邊を伺つて置きたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=71
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072・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 蠶絲の問題でありますが、食糧の觀點だけで行きますと色々言ひ分があるやうな譯でありまして、勿論私共は今後の在り方と云ふことを考へて見ますと、必しも目前のことのみは言ひ得ないので、色々蠶絲に付きましても例へば桑畑を潰して、さうして麥とか芋とか、其の間に蔬菜を入れたりしましてやつた方が食糧の量としては宜いぢやないか、斯う云ふやうな見方をする方もありまするし、又一面生絲で例へば一町歩から一俵の生絲が取れると、其の一俵の生絲で「アメリカ」で現在の小麥の相場と絲の相場から見ると、五十石位に換算になるから、生絲を出してやつた方が十倍以上の生産が上るのだから宜いぢやないかと云ふ風に、色々甲論乙論がある譯なのですが、さう云ふ意見は意見と致しまして、結局今後の日本の農業、特に世界經濟に參加致しました時のことを考へ、又將來の日本の再建の爲の必要な資材輸入問題、現在は食糧が第一でありますけれども、是から機械類とか色々なものが輸入して參らなければならぬと云ふ際に、どうしても貿易品として考へられる場合には生絲に頼らざるを得ない、斯う云ふやうなことから致しまして、蠶絲はどうしても維持して行きたい、是もつい此の七、八年前頃迄は御承知のやうに桑園の面積は一部荒廢桑園も含めてでございますが、六十五、六萬町歩から七十萬町歩あつたのであります、それが現在も先程御話になりましたやうに、十八萬町歩、恐らく十七萬町歩位になつて居やしないかと思ふのです、斯う云ふやうに四分の一程度に約五十萬町歩以上のものが減つて居る、從つて將來のことを考へますると、どうしても是は現在の十七、八萬町歩と云ふものから、更にもう十萬町歩位のものは殖やして行きたいと云ふ風に考へて居るのであります、尤も此處で一番問題になりますることは、桑園の復奮には桑苗から始めなければならないので、結局色々蠶絲の復奮計畫を出來るだけ短く、或は三年後には三十萬俵が輸出出來るやうな計畫に作らうと云ふやうな意見もあるのでありますが、結局此の桑苗の生産力に制約せられまして、此の面積も計畫通りに行きましても、本年は一萬町歩位しか殖すことは出來ない、そこで其の一萬町歩は戰爭中に於て他の雜穀類、麥畑等に變りました……桑畑から大豆畑とか、さう云ふものに變つた所があつたのでありますが、さう云ふものの中から一萬町歩だけを元へ戻して貰つて、本年は一つやつて行かう、段々尻肥りの恰好になつて參りますので、一般の情勢の變化と丁度「ピッチ」が合つたやうな風に恢復して行くのではないか、是は今後好むと好まざるとに拘らず、桑苗に制約されて居ります爲に、さう云ふことになる譯でありますが、結論と致しましては色色觀方はありまするけれども、全體の立場から養蠶と云ふものは維持して行きたい、最小限度是は確保して行きたい、斯う云ふことで進めて居るやうな次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=72
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073・松本學
○松本學君 只今藷の自由販賣の御話が出ましたが、此の主要食糧の供出の後の自由販賣のことに付ての御答辯が矢張り「デリケート」な關係があるからと云ふ御話であるのでありますが、私もそれ以上申上げた處で、殆ど無意味でありますから、申上げないのでありますけれども、藷の自由販賣位は、是は「デリケート」な關係がありませうが、何とか出來ないものでありませうか、米麥のやうなものならば、是は保存の點から云ひましても、或は隱匿すると云やうなことがあつても、是はさう直ぐに腐るとか、何とか云つて是が無駄になると云ふやうなことはないのですが、藷は餘程扱ひをうまくしないと云ふと非常に統制を強化しても、其の他の運搬とか何とかの制約もありませうが、何年も藷を腐らして無駄にしたと云ふやうなこともありますし、之を自由にしてどんどん一部の食糧として是が利用されると云ふことになりますならば、さう云ふ點も大いに助かるのではなからうかと思ふのですが、一時藷の自由販賣のことに付て政府でも色々御研究になつたと云ふことも是は聞いて居りますが、其の當時は何としても米麥の方の生産量が十分でないから、藷に食糧として多量に依るのであるから、之を自由にすることは、食糧全體に付ての危險が伴ふと云ふことが理由で、其の當時は此の自由販賣が認められず、計畫されなかつたと云ふやうなことも洩れ聞いて居りますが、本年のやうな兎に角藷に付ても近來ない豐年である、産額も非常に大きいと云ふ斯う云ふ年に於て、先づ此の藷から外しておやりになる、それに付て何か色々な問題があれば十分さう云ふ點に付ては御努力を願つて、色々御苦心もありませうけれども、其の方面へ了解を十分得られて、先づ是だけでも自由販賣をさせると云ふ風な點に御盡力が願へないものか、ちよつとそれを伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=73
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074・菅澤重雄
○菅澤重雄君 それに開聯して丁度松本委員の意見と同じやうであるけれども、少し補足して具體的に伺ひたいのでありますが、先程から政府の意見を聽くと、統制を取る譯に行かぬと云ふことだけはどうも政府の御考に從つて了承する外ありませぬが、實際問題として昨年は斯う云ふ例があつたやうに私は伺つて居ります、消費組合と云ふやうなものがあつて、さうして縣の知事とか或は縣の藷會社と云ふやうなものの了解を得れば、何百貫でも「トラック」で運んでやつたと云ふような實際の例があるのですが、そこで消費組合と云ふものと生産組合と云ふものとの直接の取引の方が我々は實際問題としては望ましいのです、中間に居る人が色々なことをやるから、それが隘路となつて腐つたり何かするのですから、さうでなく、實際問題として、之を取扱ふ便宜な方法を設けたらどうですか、それは農林大臣も藷のことに付ては何等か善處すると云ふやうな御意見、成るべく腐らかさないやうに善處すると云ふやうなことの御意見があつたのですが、私は昨年王子の區長に頼まれまして、一萬俵買付けて貰ひたいと云ふことで、郷里の方に打電しまして、さうして一萬俵の約束を致しました、それは東京都の了解を得るとか、或は紹介をするとか、農林省の許可を得るとかと云ふやうに區長は言はれたが、矢張り縣の藷會社か何かの了解を得ればそれが出來た、ですから消費組合と云ふものが生産組合から直ちに買つて來て消費組合で販賣するならば、是は闇でない、闇と見た所が、公定價格でないと見た所が惡質の闇ではないし、それは營利を目的とするのではなくして、消費組合員が何人あつて、家族が何人あつて、それに一人に付て一貫目宛分けるなら分けると云ふやうに、はつきり官廳の指令の下に行へば生産者から消費組合に販賣し賣買すると云ふことが最も合理的だと私は考へる、さう云ふやうな便法を設けて消費組合ならば區長とか或は農林省とか、或は縣廳とかの證明があれば宜い、斯う云ふやうな便宜な方法を一つ設けて貰ひたい、是は實際問題として必要だと考へます、去年は餘程それが行はれて居ります、それから會社のやうなものも纒めて「トラック」で隨分買つて來て分配して居ります、さう云ふやうなものは之を一定の規則の下に、統制を直ちに解かないでも、さう云ふ合理的な方法で、餘り闇でなく、營利的に之をやるのでなく、惡質の闇でなく、公平に分配すると云うやうな方法を取つて貰ひたい、其の方法を承つて、今年から實行して貰ひたい、さう云ふ政府で便法が採られないでありませうか、斯う云ふ譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=74
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075・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 藷の統制撤廢の問題に付きましては、先程御答へ申上げました通りであります、唯色々此の取扱方に付ては、是から今年の生産事情にも照應致しまして、工夫改善を加へて參りたいと考へて居ります、唯茲で私共常に遺憾に思ひますことは、實は本年の馬鈴薯に付ても一部さう云ふことがあつたのでありますが、甘藷に付きましても同樣のことが實はあるのであります、と申しますことは、割當を受ける際には、生産量が非常に少ないやうなことを農家が言ひ、又地方廳も言ふのでありますが、そして是は甚だ藝のないことでありますが、夜中の二時、三時、四時頃迄掛つて割當の會議をやつて押問答をやるのでありますが、歸つた後で、割當を受けた後で農家から今年の馬鈴薯の割當は甘過ぎた、而も馬鈴薯は腐る、斯う云ふやうな聲を間々聽くのであります、此の點私はさう云ふ此の氣持が直らなければ日本の食糧問題は永遠に解決しないのぢやないかと云ふ位に實は遺憾に思ふのであります、我々としては百「パーセント」以上の供出、固より是非さう云ふ餘裕があれば出して貰ひたいのでありますし、又其の點を特に御願をして居るのでありますが、百「パーセント」以上は出す氣は毛頭ない、そこで自由販賣を狙つて居る一つの理由としては、公定價格以上にうんと高い値段で販賣をしたい、斯う云ふ點に相當狙ひがあるのでありまして、藷に付きましても、私共も先程來各委員の方々から御話がございましたやうに、本年は藷は非常に豐作だと思ひます、にも拘らず地方廳からの報告から行きますと、十億萬貫そこそこしか出來ないと云ふやうなことを言つて參るのであります、從つて此の自由販賣を狙ふ農家の中にはさう云ふやうな不純な考へ方があるのを遺憾に思ふのであります、尤も菅澤さんの仰せになりますことは、之に依つて生産、供出を圓滑にやられようと云ふ所の狙ひでありまして、勿論さう云ふ風に付ての御考であることは能く承知して居るのでありますが、自由販賣には斯う云ふ點に付て色々考へさせられることが多いのであります、併し結論としましては、先程申上げましたやうに、色々今年は私共は十五、六億以上二十億に近いものがあるのではないかと云ふ風に思ひます、從つて此の藷の處理に付ては、相當各方面に亙つて檢討を加へて、準備を十分致して置かなければならぬと考へて居る次第であります、それから菅澤さんの御尋の生産者及び消費者の直結の問題でありますが、中には非常にうまく行く所もあるのでありますが、此の點に付ても、實は私共今一番警戒を致して居りますることは、色々政黨的に或は組合運動的に結び付いて、此の生産者と消費者との直結問題が、起つて居るのであります、例へば一つの同じ系統の農民組合と都市の消費組合が結び付く、是は獨り藷に限りませぬで、米に付てもさう云ふやうなことを主張して居るものがあるのであります、私共は其の點に付ては好きな者同志が喰つついてやると云ふことになれば、物の全體の管理統制と云ふものがすつかり崩れてしまつて、さう云ふ繋りに乘り遲れた、又埓外にある人々が非常に困るのであります、例へば只今仰せになりましたやうに、菅澤さんなら菅澤さんが東京へ家を御持ちになつて居つて、又田舍に居られて、相當さう云ふ方面に白由が利かれると、さうすると菅澤さんの所は宜いのですが、其の隣りの所はそれが出來ないと云ふことになると、是は非常に困つたことになりますので、さう云ふ場合には、先程もちよつと御話がございましたやうに、表に戴せてさうして正常の「ルート」に乘つけて之を動かす、全體の計畫と睨み合して正常「ルート」に乘せて之を動かすことに致しませぬと、どうしても斯う云ふ方面から主要食糧の管理が崩れて行く虞があると云ふことを實は心配して居るのでありまして、全般的に此の直結の問題を取上げることに付きましては、尚檢討を要する問題ではなからうかと、斯う實は考へて居る次第であります、此の點は御了承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=75
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076・松本學
○松本學君 私が藷の自由販賣のことを申しましたのも、今御答の中にありましたやうに、農家の中には、藷に限りませぬが、食糧、米、麥に付ても、今のやうな不純な考へ方で自由販賣を希望して居る者もあるかも知れませぬ、自由販賣になれば高く賣れる、さうして闇値で以てどんどん賣れるのだ、だから自由販賣にして貰ひたいと云ふ希望があるかも知れませぬが、併しそれは實を言ふと、今でも實情は殆どさうぢやないか、統制をして居ると政府は仰つしやつて居りますけれども、偖て統制經濟で我々は生活して居るのかと云ふと、實際我々は統制經濟で生活して居ない、政府では統制して居ると仰つしやる、數量をちやんと供出させて、之を配給して居ると云ひながら、缺配は幾日續きましたか、是は統制經濟ぢやない、價格に付ても統制して居ると仰つしやるが、統制されて居ない、我々の今日の生活と云ふものは自由經濟です、事實に於て、是は何人も否むことが出來ない、私共が政府の仰つしやる通りの統制經濟の生活をして居るとすれば、一日も生きて居れない、二十日も三十日も缺配をされて居つて、統制經濟だけで生きて行くとすれば死ななければならぬ、然るに誰一人として餓死して居る人はない、さうすると一體我々は何と云ふのか、一種の「イデオロギー」のやうなもので締め付けられて居つて、實際は全く違つた道を歩いて居る、自由經濟の、實際自由經濟の生活をして居る、而も其の自由經濟の生活と云ふものは、偶偶政府が統制經濟と云ふことを御立てになつて居る爲に闇と云ふ實に嫌な氣持で我々は生活をして居る、さうして今闇の爲に闇をすると云ふことになつて、配給と云ふものがないから買出しと云ふものが出て、或は縁故とか、知己を頼つて行つて、一升か二升と云ふものを買出して來る、買出しに行きますから、こちらに闇と云ふ弱みと、今にも食へないと云ふ弱みがあるから、農家の方から言へばどんどん釣り上げると云ふことになる、御隣で一升六十圓だつた、其の隣は七十圓、買ひたい餘りに其の隣は八十圓で買ひませうと云ふのが今日の實情になつたと思ふ、併し若し自由になつたならば、初めは今の良い味をしめて居るので、今のやうな不純なる考を持つかも知れぬが、一人々々が行つて、それを闇で括つて置いて、高い物を買つて食ふ云ふことでなく、公然に闇ぢやない、自由販賣ならば、我々は闇をして居るのぢやありませぬ、當然自由經濟の取引關係で、需要供給の關係で、どんどん食糧が多くなつて來れば、物が安くなる、初めは不純な考を以て自由販賣に贊成をした人が、暫く經つと云ふと、恐らく段々値段が下つて來るので、こんなことぢやなかつたと云ふことになるのぢやないかと思ふ、さう云ふことを私は考へるから、食糧全部に付ては此の間から仰しやる通り、色々の「デリケート」な關係があると仰つしやるならば、何とか御盡力になつて、一つの例として、一つだけで宜いから、藷だけでも外すことが出來ないかどうか、闇と云ふことを仰つしやるけれども、闇と云ふことは、政府が統制と云ふことに拘はる爲に、それを嚴守して居られる爲に闇が起る、藷だけでも御外し下さるならば、藷だけは闇でない生活が出來るのぢやないか、斯う云ふやうに私は思ふから御尋ねしたのであります、如何でせうか、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=76
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077・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 此の問題に付きましては、尚十分研究さして(笑聲)戴きたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=77
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078・松本學
○松本學君 別に追及して申すのではありませぬが、どうか一つ御研究を願つて、私共の生活と云ふものは、白分等が生活して居りながら、不愉快な生活をして居る譯であります、何とか政府の方でも御考へを願へれば、もう少し朗かな、大らかな生活が具體化するもでのすから御尋ねした譯であります、それからもう一つ伺つて見たいのでありますが、今度の供出量を御決めになつた生産量の基礎がどこにありますか、それは、是は政府から出された材料でありますけれども、米と麥と甘藷と馬鈴薯の十七、十八、十九の三年平均を取つて見ますと云ふと、是は生産額ですが、米が六千二百六十七萬九千石と云ふことになる、麥、甘藷などが次にあり、平均して、米、麥、甘藷、馬鈴薯、是等を米換算をして幾らになつて居るかと云ふと、十七、十八、十九の三年の平均の米換算は八千三百七十萬石になつて居る、さうすると二十年の統計は、是は御承知の通り三千九百萬石と云ふやうなことが出て居りますが、是は此の間も農林大臣が仰つしやつたやうに、玄人の考ではこんな馬鹿なことはない筈だ、恐らく是は二十年度に於て五千萬石は取れて居ると思ふ、こんな數字になつて居りますが、こんな信憑の出來ない數字は出なかつたと思ふ、三年の基礎を出して見て八千三百七十萬石出れば、八千三百七十萬石と云ふものは少くとも今日の日本に於ける主要食糧の三年平均の基礎數量になるのぢやないか、さうすると此の八千三百七十萬石と云ふものを基礎にして計畫が立つべきぢやないかと思ふ、然るに二十一年の此の緊急措置令に依つて爲された基礎が一體何處にあつたかと言へば、結局昨年の信憑すべからざる數字と云ふものが基礎になつて強權發動とか、斯う云ふやうな御處置が取られたのぢやなからうかと思ふのです、どうしても是は今後の今度御立てになる供出と配給との此の食糧計畫と云ふものは其處の基礎に數字的なはつきりしたものを一つ持つて居なければならなかつたかと思ふのです、それを何處に置いて居られますか、本年の産米の見込額に依るのですか、米や麥、甘藷、馬鈴薯などを入れて、それを總額にして米換算をして此の度の供出割當の計畫なり、配給の計畫と云ふものはどの程度の基礎を御置きになつたのであるか、之をちよつと承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=78
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079・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 本年の米の供出に付きましては、先づ第一に農家に對する保有量に於て數理の上で事實行れないやうな數字を考へて割當をすることが無意味でありますので、從つて戰爭中やりましたことも、もう一月先には還元配給しなければならぬ、農家、極端に申せば明日の日から配給しなければならぬ農家にも割當を致したのでありますが、さう云ふことのないやうに先づ先づ農家に對して此の程度でやつて行ける程度の保有量を認めると云ふので、四合と云ふことに致します、さうして生産見込からそれを引いたものに付て供出を期待する斯う云ふことに致したのであります、そこで從つて一番問題は本年からは、問題の中心は是で食つて行けるとか、行けないとかと云ふ問題は先づ第二段に、或は問題外になりまして、生産量だけが問題になる、斯う云ふことであります、生産量に付きましても色々是は形の上では理想的に近いやうな調査方法を致して居るのでありますが、併しそれを調査する人の調査對象の田畑を取る、其の田畑の取りやうに依つて又それが段々と下から上へ行く迄の間に、霞が掛つて曖昧な數字になつて居る、そこでどうしても此の點が不明瞭になると云ふことを此の間農林大臣から申しました通り、最低五千百萬石迄から四百萬石、斯う云ふやうな、數字迄實は出て來るのであります、從つて尤も是は八月一日の當時に於ける調査が基礎になつて地方に行つて居りますが、其の後の状況を見ましても、又八月一日當時の状況から言ひましても、さう云ふやうな馬鹿なことはないと思ふのであります、そこで此の點は再三申上げましたやうに、純粹に豐凶考照試驗と云ふものを致して居りまして、是は單純に肥料とかさう云ふものを度外視しまして、天候の關係だけを基礎として無肥料で「ポツト」試驗で毎年比較して其の時の氣象状況のみを相手にしてさうして豐凶を考照比較するのであります、それを中心に致しまして それに對して施肥料の、是は水田は昔は八貫、九貫と入れて居つたのが本年は一貫五百から二貫迄しか入つて居りませぬので、さう云ふ肥料の變化の減少に因る減收、歩合と云ふやうなものを見まして、そこで客觀的に此の程度と云ふ數字が出て參りますので、其の數字を地方廳に示して居るのであります、所が此の點に付ても申上げましたやうになかなか折合が付かない、結局或程度の所で落付くのでありますが、一番不明確な點になつて居るのであります、結局是は土屋子爵の御質問に對して御答へ致しましたやうに、實地に技術的に之を攻めて行くと云ふ以外は途はないのではないかと云ふ風に考へて居るのであります、一面さう云ふやうな客觀的の調査を致して大量觀察を致して居るのでありまするが、同時に具體的に地方へ專門家が行つて、さうして現地で之を固める、斯う云ふ方向で一番問題の生産量と云ふものを確めると云ふことに致して見たいと、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=79
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080・松本學
○松本學君 只今のは米だけでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=80
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081・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 麥に付きましても實はさう云ふことを致したのでありますが、是はさう云ふ麥から實は試驗と云ひますか、準備に致しまして、愈々米から本格的になつて來る、斯う云ふことになつたのであります、藷に付きましては是はなかなか米程には實は的確には行かないのでありますが、それに致しましても矢張り坪刈とか、全刈と云ひますか、坪掘と云ひますか、斯う云ふやうなことで大體それに近いやうな方法でやらうと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=81
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082・松本學
○松本學君 只今の農家に對する四合と云ふのは、是は藷を含んで居りますか、米だけですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=82
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083・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 含ませて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=83
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084・松本學
○松本學君 よく分りましたが、實は非常な御努力な譯で、人を派遣して、さうして一々當つて生産量を御調べになると云ふことは非常に御面倒なことでもあるし、之を主要食糧である米麥、甘藷、馬鈴薯に當つてやると云ふことは非常に困難なことであらうと思ふのでありますが、ちよつと大雜把に先刻申上げたやうに三年平均を取つても八千三百七十萬石と出て來るのでありますが、此の統計其のものが信用出來ぬと云へば、それ迄でありますけれども、殊に十七、十八、十九となると段々と先達て農林大臣も仰つしやつたやうに玄人で考へれば、如何にも少く出して居ると云ふやうな數量が出て來て居る、其の數字を基礎にして三年平均を取つて見ても、八千三百七十萬石と云ふ數字が出て來るのでありますから、だから恐らく事實に於ては、生産量はもつともつと多いものだらうと思ふのです、でありますから、餘り細工が細か過ぎるので、もう少し大まかに三年平均位な、今申上げたやうな此の數字を御出しになつて、さうして大まかな所に一つ何とか手を打つと云ふやうな計畫は御立てになることは出來ないのか、それは政府の御方針でさう云ふことは出來ぬと云ふことになれば、それきりでありますけれども、餘りに細工が細か過ぎるのではないか、其の爲に餘り細かい爲に、あつちにぶつつかり、こつちにぶつつかりして、「スムース」にものが運ばないのではないかと云ふやうなことも私は考へ、是は御考のことですが、私が何と言つたつてそれぢやいかぬと云へばそれ切りですから、是位で止めますが、一體將來の食糧政策と云ふものは、どう云ふ風に御立てになる御積りでありますか、恐らく今日のやうな此の非常時の日本の難局に處して其の年だけの計畫や唯人に頼ると云ふ計畫だけで、私は立つては行かぬのぢやないかと思ふ、殊に日本再建と云ふやうな大きな仕事をして行かなければならぬ、さうして日本國民が再び立上らなければならぬと云ふやうな時には、矢張り三年、五年のちやんとした見透しの付いた計畫が立つて、まあ謂はば五年計畫と云ふやうなものが立つて、之には食糧に限りませぬ、財政にしてもさうだと思ひます、有らゆるものに付て五箇年計畫と云ふやうなものを立てて、さうして國民が其の計畫に從つて進んで行くと云ふやうな指標を政府に於て御示し下さることが最も肝要なことぢやないか、だから恐らく將來の食糧政策に付て何か御案が立つて居るのぢやないかと思ふのです、殊に將來のことで考へなければならぬことは、只今も中村委員から御話があつたやうに、生絲とか何かの關係に付ても、食糧と云ふものに付て日本として一體どう云ふやうに考へて居るのか、どうしても小さくなつた國でありますけれども、人口は非常に多いのであります、何としても是は食糧だけは自給すると云ふ覺悟で居らぬと、之を容易な考へ方で外國の食糧輸入に依存すると云ふやうな考へ方で御計畫を立てられたならば、日本と云ふ國は獨立性を失ふと思ひます、さう云ふやうな重要な問題だと思ひますから、どう云ふ御計畫が立つて居りますか、それを一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=84
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085・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 先づ第一點の供出に關して出來るだけ大まかな方法でやつてはどうかと云ふ點でありますが、實は私共も御承知のやうに段々苦しくなればなる程、何と申しますか、貧すれば鈍するで、色々細かい重箱の隅をほじくるやうなもの迄當てにしなければならぬと云ふやうなことで、隨分藝が細かくなり過ぎて參つたのでありまして、從つて此の管理の面に於て、供出の面に於きましては、實は私共もやり切れないやうな状態であつたのであります、從つて今囘此の農家保有に付てたんと保有量も認めるとか、色々細かい藝も實は考へて居つたのでありますが、斯う云ふものを一切止めまして、大雜把に一人平均四合と云ふやうな風に持つて行つたのも一つの現れでありまして、出來るだけ餘り細かい煩はしいことでないやうな風に努力はして參りたい、又それは著々やつて行きたい、斯う云ふやうに考へて居りますので、此の努力は更に緩まずに致したい、斯樣に考へて居ります、御趣旨の點は私も同樣に考へて居ります、それから將來の計畫でありますが、此の自給の問題に付きましても、色々論議があるのでありますが、是も考方に依りましては色々誤解を生じるので、此の點私共も十分に注意を致して居るのでありますが、先程も蠶種の御話が出ましたが、日本はどうしても食糧を自給しなければならぬ、從つて極論をせらるる方は、自給と云ふ點に餘りに重點を置く爲に、桑畑も全部引つこ拔いて食糧を作れ、斯う云ふ所迄動動ともすると議論が趨る虞があるのであります、從つて私共の申して居りますることは、勿論の仰せのやうに食糧に付ては出來るだけ最高限度の自給度を上げると云ふ點に付ては勿論異議のないことでありまするが、唯極端に桑迄全部ひつくり返すと云ふやうな議論だけを警戒を致して食糧の點に努力を致したい、從つて例へば國内の開拓の問題、或は干拓の問題等に付きましても總て此の觀點から實は、問題を取上げて居るのであります、そこで將來の計畫と云ふまあ差當りの五年なら五年の計畫と云ふものはあるかどうかの問題でありますが、實は此の問題に付ては、昨年の暮から計畫を檢討致して居りまして、司令部からも要請がありましたので、五箇年計畫と云ふものを立てて居ります、唯之には色々條件がありまして、例へば開拓の百五十萬町歩が完了する、或は十萬何町歩の干拓が完了する、或は肥料が二百萬「トン」が完成する、憐鑛石も所要の燐鑛石が入ると云ふやうな色々の條件があるのでありますが、それに依りまして大體水田に付ては、五年先には例へば七千二百萬石餘になるとか、或は麥に付きましては、二千九百萬石程度になると云ふ風に一應五年の目度は立てて其の方向で進めて居るのでありますが、何分にも其の梯子になる條件がなかなか不安定なものでありますので、色々是が又誤解の種になつてはならぬと思ひまして、それ等の條件がある程度筋道、方向だけでもはつきりすると云ふ場合に一つの此の問題を正式に世間に問ふやうな手段を取りたいと、斯う云ふことで現在まだ發表致して居らないやうな情勢であるのであります、其の點だけ申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=85
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086・松本學
○松本學君 能く承りまして了承致しました、燐鑛石なんかに付きましても御計畫の現れでありませう、司令部でも相當の好意を示して居ると云ふことも聞いて喜んで居りますが、さう云ふ計畫が御出來になつて居ると云ふことは、御考へになつて居りますやうなことで御盡力を願ひたいと思ひます、それでは私の質問は是で終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=86
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087・菅澤重雄
○菅澤重雄君 松本委員から將來百年の大計と云ふやうな問題が出ましたが、之に關聯して私も一言、政府が本當に百年の大計を樹立すると云ふなら、我々の首肯されるやうな案を立てて貰ひたいと云ふ註文をして置きたいのです、元來日本は國土狹小の上に、滿洲、朝鮮、臺灣、樺太等を失つたのですから、内地だけで自給自足しなければならない建前になれば、どうしても從來のやうに米にのみ依存すると云ふことは出來ない、そこで政府は五箇年計畫で百五十萬町歩乃至二百萬町歩の開拓をすると仰せられますけれども、是が矢張り是迄開拓の出來ない所と云ふものは、從來開いて居つた所の土地よりは遙かに劣等な土地であります、之を開いた處で政府の目的の通りに參らないと云ふやうに私は考へて居ります、そこで大體論から言へば、私共の常に主張する所のものは、第一に肥料が足らなかつた、昨年の麥なぞは大體肥料の關係からであつて、私の地方なぞは一段歩の收量が三升に五升に八升、斯う云ふやうな調査に依つて割當をしたのです、是は皆肥料の關係です、それ程肥料の力で收穫が減るのですから、此の肥料を先づ増産すると云ふこと程、急務な問題は今の時代に於てない、幸に政府は肥料を内地で造る、及び隣鑛石を入れると云ふことに御努力をなさつて居られますけれども、先づ私の考では麥を、現在の五箇年平均の二千六百萬石を倍にする位の計畫を立てなければならぬぢやないか、麥と云ふものは今の二千六百萬石の倍位穫れる性格を以て居るものであると私は確信するのであります、麥を作る技術程農民が今劣等なものはない、で私は一昨年ですか、昨年ですか、栃木縣に行きまして、栃木縣の供出は一昨年だつたかは確か七十萬石しか供出が出來なかつた、處が安積知事が三重縣から行つて、麥の移植、薄播廣幅を實行してそれをやつたら百四、五十萬石、倍の供出をして居ります、それでも一段歩當りから言へば最も少い肥料です、麥の收穫と云ふものは我々が視察した結果に依りますと、三重縣では一段歩から二十七俵穫つて居ります、それを一俵半か二俵位しか穫れない、私の縣などの昨年三升に、五升に、八升と云ふ收穫であります、之を農林省は大いに技術的にもつと改良を加へて、麥を倍にする、其の次にどうしても段當りの收量の多い玉蜀黍、之を山岳地帶、所謂塞冷地帶などにどんどん奬勵してやれば日本の食糧は解決すると私は考へます、昨年桔梗ケ原では十二俵、富士吉田では、其の前年行つたのですが、十二俵は穫れると山梨縣の農事試驗所では保證して居る、さう云ふやうな譯で私の經驗から申しましても三十九年から馬を飼つて王蜀黍を飼料に使つて居りましたが、七俵から十俵の間は大抵の年でも穫れて居る、段當りの收量の多いものを作ると云ふことが必要であると同時に、日本は今後粉食に依らなければならぬ、米にのみ依存することは絶對に出來ないと私は考へるのであります、之を農家に普及すること、そこで私の考へでは臺灣、朝鮮、滿洲が日本の國土に屬する時代に於ては此の三國を通じて食糧問題の計畫を立てれば、朝鮮、臺灣及び滿洲で三千萬石位作つて、さうして内地で一千五百萬石位増せば一億の人口は養ひ得ると云ふ、斯う云ふ腹案を持つて居つたのです、それが敗戰の結果、日本國土だけに止るのだから、尚更困難な事情が生じたから、一層百年の大計を立つる爲には、私共の主張するやうな粉食を今後奬勵する、麥を増産する、之を全國的に技術的に進歩させる、米の方に付ては既に殆ど餘地がないと思ふ、現に山崎農林大臣の時にも暗渠排水或は客土法或は耕地整理と云ふことをやりましたけれども、それに依つてどれ程の増産がありましたか、私はあの當時もそれは一つの机上の空論である、机上の計畫である、机上に計畫を立てて机上の人に承諾をするやうな案であつて、決して實際問題として、地に即いた案でないと云ふことを私は其の當時も批評した、果して其の通りぢやないかと私は考へる、なかなか客土法だとか暗渠排水だとか云ふもののみで日本の將來の百年の大計を立てるなんと云ふことは出來ないと考へる、六百萬町歩しかないものが、今度六百二十五萬戸の農家に、土地を零細に分配したならば、是は益益飯米百姓ばかりになつて、都會の農業をやらない耕作民でない所の者の食糧は益益缺乏を來すと云ふことは、はつきり私は分つて居ることであります、此の際政府は餘程英斷を以て百年の大計を立てなければ、是は食糧問題で絶えず苦しまなければならないと思ふのであります、今のやうな私共の主張する玉蜀黍のやうなものをもつと普及することが必要でないかと考へるのですが、どうも政府は我々素人に教はつてやることが、甚だ氣に食はないことのやうに考へて居る、自分の面子に係はるやうなことばかりに囚はれて居るから、それでは私は日本の再建は覺束ないと考へる、もう少し度量を大きくして、篤農家や或は實際家の意見を徴して、政府も研究するが然るべきだと考へるのです、是は參考に一つ進言して置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=87
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088・佐竹義履
○男爵佐竹義履君 私はちよつと一點だけ伺ひたいのであります、今農村文化協會と云ふものがありまして、そこで紙芝居とかさう云ふものをやりまして、農村の娯樂に努めて、大變有效であるやうでありますが、又一方には堅實性のある青年達が集り合つて、讀書とか文化又高度農業の研究などをして居るやうでありますが、斯う云ふやうな、下から盛り上る意氣込のある青年達の心持を把握しまして、道義上又知識上民主主義と云ふやうな方面を指導したらば、非常に有效であると思ひますが、斯う云ふことに付きましては例へば講師を派遣し、或は圖書の配付等を致しまして、大いに指導し、増産の意欲を高めさせるものにしたいと思ひますが、斯う云ふことに付きましては、當局の方でどう云ふ御考でありますか、其の一點だけ御伺ひしたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=88
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089・楠見義男
○政府委員(楠見義男君) 御話にありました農村文化協會の活動の點でありますが、是は實は戰爭中も色々農村に對する慰安を與へる爲に、又一面供出に對する御禮を兼ねて、農村文化協會が中心になつて、相當活躍をして戴いたのであります、政府も勿論十分ではございませぬでしたが、之に對しまして助成を續けて參つたのでございます、で此の終戰後の状況、特に今後の農村文化問題に付きましては、先般も御答へ申上げたことでありますが、農業經營の面に於ける合理化と云ふやうな、基礎的な農村文化を受入れる基盤の改善と云ふことをやらなければならぬことは勿論でありまして、此の面に於て努力を致して居るのでありますが、さう云ふやうな生産面、經營面に於ける合理化の上に、一面又只今御話になりました娯樂でありますとか、讀書でありますとか、健全なるものを植付けて行くと云ふことに付きましては、依然私共も努力を致したいと考へて居ります、從つて農村文化協會其の他色々の團體もございますが、是等の團體の事業に付きましては出來る限り助成を考へ又努力して行きたい、斯樣に考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=89
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090・黒田清
○委員長(伯爵黒田清君) それでは今日は是で散會致します、明日は午前十時から開きます
午後三時三十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=90
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091・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 伯爵 黒田清君
副委員長 男爵 佐竹義履君
委員
侯爵 大久保利謙君
侯爵 前田利建君
子爵 今城定政君
子爵 秋田重季君
子爵 土屋尹直君
子爵 井上勝英君
林春雄君
男爵 稻田昌植君
男爵 前島勘一郎君
中村藤兵衞君
山崎延吉君
松本學君
菅澤重雄君
名古屋三吉君
政府委員
農林次官 楠見義男君
農林事務官 三堀參郎君
同 坂田英一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001790X00419460911&spkNum=91
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