1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○生活保護法案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月二日(月曜日)午前十時十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=1
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002・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 是より開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=2
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003・小山松吉
○小山松吉君 私は本法案に付きまして立法上の手續と申しますか、立法上の事柄を主として御尋ね致したいと思ひます、此の法案を拜見しますると、私の考では立法上色々意見を述べ、修正を願ひたいこともあるのですが、併し斯う云ふ切迫した場合でありますから、強ひて其のことを飽く迄主張致しませぬ、唯重要な點を二三點御尋ね致したいと思ひます、法律の第一條には「この法律は、生活の保護を要ずる状態にある者の生活を、國が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護して、社會の福祉を増進することを目的とする。」とありますからして、此の第一條の規定に依ると、是は本法の根本精神を明かにしたものでありますことは「目的とする。」と云ふので明瞭であります、目的を表したものである、で本法に依つて如何なる人が保護を受くべきか、國民の側から申しますれば、どう云ふ者が保護を要請する權利があるかと云ふことが書いてないのであります、是が落ちて居るのです、私は條文の缺點であると思つて居ります、殊に憲法草案の二十三條、まあ二十五條に修正になつて居りますが、此の條文の趣旨から申しまして、文化的なる最低生活を營む權利のあると云ふことを明かにして居りまするからして、換言すれば國民が保護を請求する權利のあると云ふことが何處かに現れて居なければならないと思ふのであります、詰り國民の側から申すれば國民の基本的權利が不明である、併しそれは第一條に「保護を要する状態にある者」とあるから是で分つて居るだらうと云ふ風に思はれまするが、是では甚だ漠然として居りまして具體的の規定がないのであります、國民の方から申しますると、自分が保護を要する者であると云ふことを考へましても、自分に其の要求する資格があるか、自分に其の權利があるかと云ふことが是では分らないのであります、從つて若しも保護を申請する場合になりました時には其の申請權があるかどうかと云ふことに付ても疑ひがある譯であります、元來此の種の法律ではどうしても何人が救護を受くべきものであるかと云ふことを明かに規定しなければならぬのであります、現に現行救護法の規定に依りましても、第一條に此の法律よりも餘程具體的に書いてあります、救護法の第一條には「左に掲ぐる者貧困の爲生活すること能はざるときは本法に依り之を救護す」とある、目的とも何ともありませぬ、それで具體的に救護する權利が法律に發生するのであります、さうして是は一號から四號迄に「六十五歳以上の老衰者」だとか、「十三歳以下の幼者、妊産婦」、「不具癈疾、疾病、傷痍其の他精神又は身體の障碍に因り勞務を行ふに故障ある者」と云ふ風にありまして誠に具體的に列擧してあります、此の種の法律としては斯くの如く深切なる規定がなければならぬと思ふのであります、本案は何故斯う云ふ規定を置かなかつたかと申しますると、大臣の前囘よりの御説明に依りますと、從來の救護のやり方は、軍人遺族とか、或は孤兒とか寡婦とか云ふものを縱に線を引いて、之を救濟したものである、今囘の保護法の建前では、種種の失業者があり、引揚者もあり、戰災者もあるからして、之を從來の如く縱に考へると保護に輕重の差別が生ずる、斯う仰しやつたのであります、仍て横に太い線を引いて、生活に困難なる状態にある者を悉く拾ひ上げると云ふ劃期的なる保護を與へる、一應尤もに聞えますけれども、能く考へて見るとそれは分らない、生活保護の點でありますけれども了解が出來ないのであります、引揚者とか戰災者と云ふ一見當然保護すべき者たること明瞭なる人人に對しては、それは宜しいでありませう、横に線を引いても大雜把に一纒めにしても宜いのでありませうけれども、さうでない其の他の原因に依つて失業者になつたとか、寡婦、孤兒、不具者、盲目と云ふやうな者は、法律規定に明文がありませぬければ、生活の保護を受けられるや否やと云ふことは國民には分らないのであります、そこでお尋ね致したいのでありますが、大臣の仰しやるやうに、縱に線を引いて列擧主義を取りますのは何故宜しくないか、何故是が保護に輕重の差別を生ずるかと云ふことであります、序でに申上げて置きますが、一體此の生活保護法の内容を拜見致しますと、此の條文の後の附則の方に書いてありますやうに、救護法、軍事扶助法、母子保護法、醫療保護法、戰事災害保護法、是等の幾多の法律を廢止致しまして、之に代るべきものが本法案でありますから、是だけの内容を含む所のものを、此の保護法案は簡單なる條文で賄ふと云ふのでありまして、誠に困難であります、此の種の法律としては實際の解釋に於ては種々疑問の生じますことは、私共が經驗上能く知つて居る通りであります、斯う云ふ法律を拵へまして、八百萬人に對して十三億の厖大なる豫算を以て賄ふと云ふ場合になりましては、深切丁寧に細かく規定しなければならぬのに、此の生活保護法案と云ふものは、現行救護法の引直しであります、私はすつかり對照して見ましたが、現行救護法をちよつと直しただけであります、惡く直してはいけない、現行救護法の方が、運用が自由にうまく行ける法律でありますが、此の生活保護法に依ると、條文が簡單になりました爲に却て運用が非常に面倒になつて居る、それでありますから、第一點はどう云ふ譯で第一條に目的だけを書いて、斯う云ふ者を保護すると云ふことを規定なさらなかつたのであるかと云ふことを御尋したい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=3
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004・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の小山委員の御尋に御答へ致しますが、第一條に於て保護を受ける者の權利であると云ふやうな意味のことを書くのも私は一つだと思ひます、それから或はそれを書いた方がはつきりすると云ふやうな御話のやうな點も私はあると思ふのであります、唯今度の憲法の二十三條、衆議院で修正しました二十五條、少し何と申しますか、極く形式的の法律論になる傾きがありまするが、それとの關係上矢張り書かぬ方が宜いのぢやないかと云ふ風に私共は解釋致すのであります、と申すのは、憲法二十五條に、「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有する」とあります、其の外「勤勞の權利を有し、義務を負ふ」と云ふやうな條項も出て居りますが、此の憲法に於ける權利を有すと云ふ意味は、國家はそれに對して全責任を負つて最低生活を保障してやる義務があると云ふ意味ではないと云ふ憲法の解釋に致して居ります、と申すのは、此の權利を有すと云ふのは、平等に公平に國民は斯う云ふ生活を營む權利を有するのであつて、之を國家は妨害してはならないと云ふ意味に於ける權利である、比喩的に平等とか公平とか云ふ點にあります、是は例へば勤勞權等に付て見れば最も明瞭でありまして、勤勞を平等にやらなければならぬのであるが、之を國家は妨げてはならないと云ふのであつて、一人殘らず勤勞をさせる義務を國家は有して居るのではないと云ふ風に、權利に對する義務は結局公平に取扱はなければならぬ義務、或は妨害してはならぬと云ふ義務と云ふやうな點に重點を置いて憲法の權利と云ふことを考へて居るのであります、少し理窟つぽくなりまするけれども……さうしますると、政府はそれぢやさう云ふ責任がないのかと云ふと、さうぢやありませぬ、それはさう云ふ保護を要する人を出來るだけ救濟しなければならぬ責任は持つて居るのであります、例へば第二十五條第二項に、「國は、すべての生活部面について、社會福祉、社會保障及び公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない」と云ふ風に書いてありまして、是は私は勿論國家の責任だらうと思ひます、斯う云ふ風に二十五條の權利を有すと云ふことの其の儘の裏の義務と云ふ意味でない意味に於て、多少緩みのある言葉でありまするが、國家の責任として「向上及び増進に努めなければならない」、原案に於ては「増進のために立案ざれなければならない」と云ふ風に多少餘地を殘してあると云ふのは、是は國の事情、財政の事情、其の他の點に於きまして、矢張り是位の緩みを持たぬと絶對的のことは出来ない事情にある、あるかも知れぬと云ふことを豫想したものだらうと思ひます、と申すのは、「ソヴィエト」の憲法に於きましては、是と反對に、權利を有すの裏に國家は之を保障する義務を有すると云ふ風に明確に直ぐ裏返しが來て居るのでありまするが、日本に於てはそこ迄はつきりした裏返しは來て居りませぬが、大部分は政治上の責任として「努めなければならない」と云ふ意味に於ける裏付がしてある、さう云ふ風に先づ憲法の趣旨を解釋して參りまして、さうして此の法案に移つて參りますると、「努めなければならない」と云ふ所が根柢になつて居る譯であります、さうしますと、第一條に、此處に權利を有すと書きますことは、私は書いても差支ないと思ひます、憲法の意味を其の儘重複して此處に書くのは差支ないけれども、それに對する國家の責任は憲法二十五條の第二項から來て居るとしますると、其の權利を其の儘に百「パーセント」裏返した義務の觀念でないと云ふことになりますと、此處に權利を有すと云ふことを書くと云ふことは却てごちや付く虞があると云ふことで、理論上は權利と書いても宜いが、實際上は矢張り書かないで、其の面だけを積極的に書いた方が宜いのではないかと云ふ風に私は考へるのであります、そこで、併しながら此の法律は生活の保護を要する状態にあるものと云ふ客觀的の状態を捉へまして、其の保護を要する状態にある者を救濟することが目的だと云ふ風に謳ふ方が憲法の第二十五條の趣旨にも適合するものなりと云ふ風に解釋して居ります、少し理窟つぽい説明を申上げまするけれども、其の位の意味に解釋しまして、多少の政治責任を明かにする、國家の其の意味に於ける責任を明かにする、法律上の百「パーセント」の義務と云ふこととは少し違つた意味に考へたいと云ふ風に存じて居る次第であります、それから尚それに關聯しまして、縱に之を計算して行くと云ふことと、横に一つの線を引いて救濟して行くと云ふことの御質疑もありましたが、是は只今の實際の状況に於きましては、戰時災害保護法或は軍事扶助法或は母子保護法と云ふ幾つかの法律の扱ひ方に實際問題として濃淡の差があるのであります、軍事扶助法が最も厚く行つて居ります、戰時災害保護法が其の次に行つて居りますと云ふ風に、母子保護法などはずつと程度が低いと云ふ風に濃淡の差がありまするので、其の點が聯合國からも指示を受けて居りまして、同一に扱へと云ふ意味であります、同一に扱へと云ふことは、是は今の御尋の通りちよつと曖昧な所があるのであります、例へば戰爭に依る癈疾著、不具者などは、非常に困つた程度、又身體の不自由の程度などが非常に酷く行つて居りますから、同一に扱へと云ふことは斯う云ふものをどう扱ふかと云ふことになりますと、酷く穴の開いた所は澤山埋めなければならぬと云ふことは當然出て來ます、それは扱ひはどうなるか知れませぬ、併し是は保護法ばかりでなく、保護法以外の關係に於ても埋めて行かなければならぬ、それで同一に扱ふと云ふことは、餘計與へる、少く與へるとか特別に與へてはいかぬと云ふ意味の最底生活の標準線と云ふことの上の方を主として「アジャスト」せよと云ふことで、最低生活を保護すると云ふ下の方は必ずしも同一にならぬと考へて居ります、例へば是は一つの例ですが、三百圓の收入ある者はいかぬとか、或は貯蓄を持つて居る者はいかぬと云ふ風に上の方は決めますけれども、どうしても親戚もないし、孤獨であつて、外の社會的の援助も何もないと云ふ者は、特別に三百圓ではいかぬので、四百圓も五百圓も認めて行かなければならぬと云ふこともあらうと思ひます、さう云ふ意味に於て、横の線と云ふことは多少紊れるやうなことになる、場合に依つて紊れるのが當り前である、最低生活を保障すると云ふ上に向つて居る線を横に引くと云ふ風に、實際を運用して行くべきものだらうと云ふ風に考へて居る次第であります、甚だ抽象的な少し理窟つぽい説明を致しましたが、左樣御了承願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=4
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005・正田貞一郎
○正田貞一郎君 只今の問題は御尋しても議論するやうになりますから、今の程度で止めて置きます、第二點は、第二條であります、第二條には此の保護を與へない規定があるのであります、此の規定も私は率直に申しますと、分りにくい規定だと思つて居るのであります、餘りに條文が簡單でありまして、文字の使ひ方がどうもはつきりしない所があるのであります、斯う云ふ條文でありますと、被保護者が勤勞の意思がない、勤勞を怠つて居る或は生計の業を營まないと云ふやうな場合には、是は今度出來まする民生委員が調査して、民生委員の報告に依つて決るのでありまするが、勤勞の意思がないとか、勤勞を怠ると云ふやうなことは、今日の社會状態に於ける國民生活の上から見まして、なかなか分るものではないのであります、國民の中には戰災に依つて虚脱状態になつた者もありますし、意氣沮喪して居る者もあります、勤めようと思つても勤めることが出來ずに、懶けて居るやうな形の見える者もあります、さう云ふ者が澤山あるのでありますから、それを勤勞の意思がない、勤勞を怠るものと斷定をしまして、保護を與へないと云ふことになりますと、其の結果は意外なことにならうと思ふのであります、殊に民生委員と云ふものは皆立派な人が揃つて居れば宜しいのでありますが、民生委員にはまあ處に依つては大層好い人も居りますが、色々批評のある人もあるのでありますから、民生委員の御機嫌を損じて居る者は、あれは勤勞の意思がない、懶者だと云ふことに認められますと、保護を與へられないと云ふ結果になります、第一條では大幅に何も彼も保護する、保護を要する状態にあるのならば、其の者の生活は之を保護してやると、非常に大きく門戸を開いて置きながら、第二條に入つては、是はいかぬ、是はいかぬと云ふ風にして之を拒絶する譯になります、左の手で與へて右の手で之を防ぐと云ふことと同じことであります、それからもう一つ申上げて置くのは、素行不良と云うことであります、素行不良の者も生活の保護を受けることが出來ないことになつて居るのであります、此の文字も甚だ曖昧なのである、色々私地方に居りまして、素行不良と云ふ者の調査などをしたことがありますが、是はまあ警察官などの意見に依つて區々で、一方では良と云ふのを、一方では不良と云ふ、何に依つて素行不良と云ふことを決めるかはむづかしい、もう少し細かいことが書いてなければ納得が出來ない、國民は不安で堪らない、國民は此の條文で保護を與へられぬと云ふことになれば……、此の點に付ての大臣の御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=5
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006・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御尋は御尤もの次第でありまして、斯う云ふ一つの漠然としたことで人間の最低生活が保障される、されぬかと云ふ問題に觸れるのでありまするが、非常に是は苦慮された點だと思ひます、此の點は原案作成に於きましても、今迄私共は是で一體巧く行くのかと云ふやうな疑問を持つ次第でありますが、まあ一面から云ひますと、どうしても此の國家の保護の目的と云ふものは濫救と申しますか、に亙つてはいけませぬのと、申す迄もなく國民全體の負擔に於てやることでありますから、濫救に亙らして怠けて居る者迄に手を延ばすぢやないか、あれ位注意したのに、尚素行不良な者を救ふのはどう云ふ譯か、さう云ふ意味もありますし、もう一つは國家の目的と云ふものから考へまして、どうしても共同生活を立てて行く以上は人間は勤勞の義務がある、勤勉にして行かなければならぬ、又素行不良では共同生活に適合せぬぢやないかと云ふ譯で、どうしても其の點は引締めて行かなくちや、國家として進展して行く譯には行くまいと云ふやうな考も、勿論是は當然のことでありまするから、どうしても一つの線を引かなくちやならぬ、其の線の引き方に對する問題でありまするが、具體的に色々もつと精密に書くのも一つでありませうが、斯う云ふ問題は極めて抽象的の問題でありまして、困難な問題でありまするから、矢張り斯う云ふことにしまして、後は運用で行くと云ふより外に方法がないだらうと云ふ風に私共は考へる次第であります、勿論是は今度民生委員會と云ふものが中心になりまして、多數が寄つて、其の多數の大體の意向に依つて、民生委員の與論に依つて、之を處理して行く問題でありまして、其の點は運用上も今迄の個人的の方面委員とは大分性質も違つて來ると存じますし、又本當に働かうと思つても働く仕事がないと云ふやうなのと、是は本當に懶けて働かぬのだと云ふのとは、自ら常識的の判斷も出來ませうし、又そこに輿論と云ふものもある、本當に助けなくちやならぬ人を打つちやつて置くと云ふと、町内の輿論もそれは其の儘にして置かず、又不當に懶けてばかり居る人に對しては、あれは怪しからぬぢやないかと云ふ輿論も出て來る、さう云う所に重點を置いて、自主的にやつて行くと云ふことが歸著點であると思ひます、其の上勤勞の意思があるとか、ないとかを決定しますのは、是は唯氣持だけで決定するのでなく、授産所なり、或はちよつと何處かへ働きに行つた場合に、どうしても俺はいやだ、理由なくしていやだと云ふ事例でも起つた時に、勤勞の意思がない、或は素行に對しても何遍も忠告しても矢張り酒ばかり喰つて妻子を顧みぬ、それでは困るぢやないかと云ふ意味に用ひられるのでありまして、今迄の官廳がやつたやうな風に、機械的に扱ふと云ふのでない所に民生委員の運用の目的もある、さう云ふ風にしなくちやならぬものだと云ふ風に考へる次第であります、それから素行不良の者に付きましては、是は賣春婦の如き者に對しましては、又何か別の措置を取らなければならぬと云ふ考も持つて居りまして、何か性格上の缺陷とか、或は社會の環境から、どうしても斯うならざるを得ぬことになつて居ると云ふやうな、色々の階級に對しましては、此の保護法以外に別の方法を以て救濟しなくちやならぬと云ふ考で居ります、斯う云ふものから落ち溢れて來る者に付ては、又他の方法も併用してやつて行くと云ふ考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=6
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007・正田貞一郎
○正田貞一郎君 御説明の御趣旨は能く分りましたが、次にそれならば第二條に依りまして保護を與へないと云ふ決定、此の決定の爲にお前はいかぬと撥ね付けられた、さう云ふ者が自分は保護を要する、保護を受くべき者だ、又勤勞の意思もあるのだと云ふことを主張して保護を受けようとする者はどう云う手續をしたら宜しいか、詰り拒否された時分にそれに對する異議が言へると云ふやうな方法はありませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=7
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008・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 御答へ申上げます、左樣な書面を以てやるやうな場合が時にはあり得るかと思ひますが、さつき大臣から御話ありましたやうに、民生委員が民生委員會に於て色色實情を調べるので、そこで可なり是正がされるのぢやないかと思ひます、併しさう云ふことでは民生委員會で工合が惡いと云ふことでありますれば、一般の監督系統に依つて、殊に決定をする時は市町村長が最後決定をするので、市町村長の所に行つて話をすると云ふことも出來る驛でありますし、更に一般の監督系統に依つて斯う云ふ事情があるのだと云ふことを市町村の上級磯關等に申出ると云ふやうなこともあり得るだらうと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=8
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009・正田貞一郎
○正田貞一郎君 さうすると決定をするやうな手續は別に何か規定があるのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=9
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010・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) さう云ふ異議を申立てると云ふやうな手續や規定等は別に規定致さないのであります、先程も大臣から御話がございましたやうに、正面から要援護者が權利として要求をして行くと云ふやうなことよりも、寧ろ是は一應要援護者があれば申請を爲すとか、或は又市町村なり、民生委員なりの方でさう云ふ人があると云ふことになれば、積極的にこちらからやると云ふやうな申請に依り、或は申請に依らずして職權と云ふ力に依つてやると云ふやうなことだけは規定に設ける積りでございますが、それから先のことになれば實際上の運用でやることで差支ないのぢやないかと云ふやうに思ひまして、別段異議の手續、規定等は設けずに、是は斯う云ふ風な保護に關することでもあるし、それ程むづかしく規定を設けてやると云ふことでなくとも、町村長に任意に事情を話して行くと云ふやうなことでも解決されますし、又其の下で民生委員會に話を持ち込むと云ふことでも解決出來ると思ひます、又縣廳等に手紙等を出して、自分は斯う云ふことであるのだと云ふ方法でも解決出來るのぢやないか、軍事扶助とか、或は其の外の扶助なんかでも只今でも手紙等に依つて解決して居る例も澤山ありますので、さう云ふやうに致すことが此の生活保護のやり方から觀れば適當ではないかと云ふ風に思つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=10
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011・正田貞一郎
○正田貞一郎君 今權利と云ふ御話がありましたが、私が先刻第一條に付て申上げたのは、權利と云ふのを正面にとつて、權利があるとか、權利上斯うすると云ふやうな意味で申上げたのではないのであります、詰り保護を要求するだけのことが出來るかどうか、此の命令の中に申請と云ふ言葉がありますが、保護を申請すると云ふのは、詰り保護を受くべき状態にある者であつて、保護を要する身分であるから申請するのだ、申請するとなれば、それは權利があると言つて宜いのだらうと思ひます、只今政府委員の御話のやうに、さう云ふ場合は手紙で宜いとか何とかと云ふことになると甚だ頼りのないことで、實は斯う云ふ豫算を政府が御出しになつて、遍く保護を社會の福祉を増進する爲に爲さると云ふのですから、もう少し深切丁寧なる規定が、假令無駄になつても、手續上相當な文句を聞くだけのことをしなければ社會事業としては不完全だと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=11
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012・正田貞一郎
○正田貞一郎君 ちよつと委員長速記を止めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=12
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013・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 速記中止……
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=13
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014・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 速記を始めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=14
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015・中村壽彦
○中村壽彦君 私先日第三囘の委員會の時に已むを得ず缺席を致しましたので、其の日にどう云ふ御質疑が繰返へされましたか存じませぬ、私の御尋ね致しますることが重複を致しましたら其の點は御許しを願ひます、先づ第一に御尋ね致したいことは、此の法律案は從來の救護法を中心として其の他の救護援護の諸法令を雜然と統合されたやうに考へられるのであります、現下の急角度に展開致しました社會情勢に即應した新味が少いぢやないかと云ふやうな氣持が致すのであります、生活の困難な者に生活の安定を與へると云ふことが法案の主たる目的のやうでありまするに拘らず、依然として舊時代の保護立法の域を脱しないやうな感じが致して居るのであります、生活保護法と申しますが、此の保護の點がどうも明確を缺くやうな氣持が致すのであります、又保護と申しながら其の内容を見ますと云ふと生活、生業其の他の扶助を意味するやうな譯であります、又一面今日の社會情勢から申しますると云ふと保護と云ふことが何となく差別待遇でありますとか、或は一種の不快の感じを起すやうな傾向があるんぢやないか、寧ろ本當の内容から致しまして、是は生活扶助法とか或は生活安定法と云ふやうな名前が宜いのではあるまいかと、斯う云ふやうな感じを私は持つのでありますが、之に對する御意見を伺ひたいのであります、第二は此の法案と社會保險制度との關聯であります、御承知の通り今日の一般の大勢は此の濫立した社會保險制度に各種の社會扶助或は社會救護法令を總括して廣汎な一つの社會保障制度を創設してすべきではないかと云ふやうな傾向があるやうに思ふのであります、若しも社會保險の被保險者にして保險料を取らない、無醵出を認めると云ふことになりますれば、本案の對象とするものは悉く社會保險の被保險者となり得るのであります、斯う云ふ意味合から私は矢張り社會保障制度と云ふものをお考になつて行つたらどうか、最近承りますと云ふと、失業保險を實施すると云ふやうなことも耳に致して居るのでありますが、若し斯う云ふものが實現致しますと云ふと、さうでなくても事務的に複雜多岐になつて居りますことが、一層本案と混線を致しまして、急速に給付或は補助の手續を缺くやうな嫌ひが起りはしないかと云ふことを憂慮致すのでありますが、其の社會保障制度を創設なさる意思があるかどうかと云ふことを御尋ね致したいのであります、第三には本法の對象となります被保護者の範圍でありますが、此の範圍に付きましては、外の委員の方も繰返し御質問になり、第二條には斯う云ふものは保護しないと云ふ規定、只今の御説明に依りますと云ふと、民生委員、市町村等に於て之を適當に決めるのだと一應聽取れるのであります、私は出來得るならば、命令事項に依つて出來るだけ明確に御決めを願つたらどうかと云ふ氣持が致すのであります、第四は保護施設の問題、本案は社會の福祉を増進すると云ふことが一つの目途であります、此の目途に副ふて各種の施設をなさることが宜いのぢやないか、どうも積極的にさう云ふ意圖が實現されないやうな點を私誠に遺憾として居るのであります、例へて申しますれば、怠惰性のものに對して適當な授産場を與へて生活を補助する、病苦感に對しては現在の醫療關係機關と密接な連絡をして安全感を與へるとか、斯う云ふ點をもう少し徹底されたらどうか、即ち政府は施設を積極的に創設する、或は又助成なさるべき意思があるかどうかと云ふことを御尋ね致したいのであります、次に第十條に、「保護は、生活に必要な限度を超えることができない」と云ふやうなことが書いてありまするが、此の限度を超えるものは保護しないと云ふことの認定は非常にむづかしいのぢやなからうか、まあ社會の一般通念から申しまして、或所に棒を引くことは出來得るかと存じまするが、どうも其の點が少し私はうまく行くかどうかと云ふことの疑を持つて居るのであります、それから施設の問題、保護の種類方法は今申述べましたのでありまするが、次に保護の費用の問題であります、斯う云ふ費用は國家が全部を負擔なさる建前が一番宜いぢやないか、併しながら今日の國家財政の見地から申しましても、さうとは參りますまいから、まあ都道府縣が若干の費用を持つと云ふことは宜いかも知れませぬが、市町村迄も少くとも僅かの費用でも負擔すると云ふことは、隣保更生の上から言つても、どうかと云ふ感じを起すのでありますし、又市町村に依つては財政の非常に裕かな所と、又非常に貧弱な所と色々あるのであります、又貧弱な所には却て要保護者の數と云ふものが比較的多いと云ふやうなことも想像せられるのでありまして、若しさう云ふことになりますと云ふと、折角此の法案が實施をされましても、其の徹底を缺く嫌ひがあるのぢやないか、或は甲の土地と乙の土地に依りましては、其の適用の度合が異るのではないかと、斯う云ふやうなことも憂ふるのでありまするから、此の點に付ても御尋をするのであります、次に此の法案の運用であります、民生委員會等が之を運用されるのでありまするが、中央に於ては厚生省の社會局、又末端に於ては市町村、此の中間の都道府縣に於きましては、どう云ふ課に於て此の取扱をなさるのか、此の行政系統を一つ御示しを願ひたいのであります、尚最後に、是は立派な社會施設ではありまするけれども、之をうまく運用致しませぬと云ふと、折角の法案も其の效果を擧ぐることが少いのでありまして、少くとも民生委員の人選には十分な御注意を拂つて戴きたい、さうして又私は此の民生委員の中に開業醫師を加へて戴きたいと云ふことを望むのであります、と申しまするのは、醫師は各家庭の經濟状態、其の他内部の面に付て比較的通曉して居るのであります、所謂民生委員の資格を持つて居るのであります、一人の醫者が東京ならば區、地方ならば町村の全體を知つて居らぬのぢやないかと云ふ話も出ますが、是は會員間の連絡に依つて出來得るのぢやないか、斯う云ふ意味と今一つはこの醫療と云ふものは適正に行はれなければなりませぬ、診療費等は參考文書に依りますと云ふと、現在の社會保險の診療報酬に準據するやうに考へられますが、斯ふ云ふ醫療が適正に行はれて居るかどうか、今日動もすると云ふと差別待遇をする、斯う云ふやうな誠に不愉快なことを耳に致すのであります、醫者を民生委員に加へて置きますと云ふことは、此の醫療の適正に行はれて居りまするかどうかと云ふことを、監督すると云ふことは少し語弊がありまするが、さう云ふ點に向つて注意を拂ふことが出來る、斯う云ふ見地から適當なる開業醫を民生委員の中に加へて戴きたい、斯う云ふやうなことを一つ御願ひ致すのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=15
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016・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の中山委員からの御質問に御答へ致しますが、第一番の此の生活保護法と云ふことの問題でございまするが、是は御話のやうに何とか保護をする、保護を受けると云ふことは多少斯う恩惠的なやうな感じの殘るのは是は御同感であります、それで大分適當な言葉も考へたのであります、と言ひまして一足飛びに權利の主張のやうにするのもどうかと考へましたので、實は色々言葉を考へて、矢張り生活保護法と云ふ言葉だらうと云ふ所に落付いたやうなことでありまして、それで生活扶助と云ふやうな言葉もありましたが、矢張り扶助と云ふ言葉にも同じ氣持が殘りますので、それならばもつと廣い言葉が宜いだらうと考へる譯であります、安定と云ふ言葉もありました、是は外の面の問題が非常に入つて參りますので、非常に廣汎な法律になるものですから、それで消極的に保護法と云ふ言葉が宜からうとした意味で、其の點はどうぞ御了承願ひたいと思ひます、それから第二番目に社會保險制度なり或は社會保障全體に付ての御尋でありますが、是は社會保障と云ふことは憲法上の政府の責任にもなつて居りまするので、出來るだけ早い機會に於て此の系統を完成させたいと思つて居ります、此の次の秋の議會にも幾らかそれに關する立法を出しまするし、暮の議會にも出來るだけのことを出したい、成るべく早く社會保障制度の完成と云ふことをやりたいと思つて居る次第であります、唯それは「イギリス」「アメリカ」色々なやり方もありまするが、法律を一つにすると云ふ形式の問題は第二に考へまして、實質の問題から參る譯であります、さうしますと矢張り此の生活保護法と云ふものは少くとも當分は是は社會保障制度の、社會上の根本的の法律となつて行くと思ひます、矢張り之を一つの基本に考へまして、それに色々な制度を附加へると云ふ構想を只今畫いて居ります、例へば失業保險の問題の如く、勿論いの一番に取上げて行く問題と考へて居りますが、此の失業保險の問題に付きましても、只今の失業者をどうするかと云ふことにはもう間に合はないのです、失業保險は工場なり會社に居る人を捉へて行くのですから、今後の問題にはなりまするが、之を遡つて今起きつつある失業問題に、失業保險で之をどう行くかと云ふことになりますと、是は矢張り失業手當なり、或は只今の失業の救濟の問題に落ちて來ます、保險としましては、整理の後に殘つた人をそれに向けて行くと云ふ建前になりますので、そこら矢張りさうだらう、總て斯う云ふ社會問題に對する國家の施策としましては、現在のものをどうして行くかと云ふ問題と、將來に亙る問題と二つに分けて總てを取つて行かなくてはならぬのだらうと思ひます、さう云ふ意味に於て現在のは御承知の通り失業對策なり生活保護法の運用で行きまして、將來のものも矢張り生活保護法で行くか失業保險で行く、或は健康保險を更に擴大する、或は一般に亙りまする老齡、寡婦、癈疾等の保險にも及ぼすべきものだと思つて居ります、それから醫療の普及問題、無醫村を無くする、其の他地方に於ける醫療普及に對しまして、斯う云ふやうなものも根本問題に採上げまして、どうしても國民はお醫者さんにかかる機會だけは誰でも必ず持つと云ふことにどうしてもしなければならぬと云ふ考で居ります、それから勞働問題に付きましても、勞働組合法は御承知の通り實行されて居りまして、只今勞働調整法を提案して居ります、それから此の秋には勞働基準法を出します、此の三つが勞働問題に關する限りは大體に於て基本法でありまして、其の外勞働者に對する福利施設と云ふやうなものも盛んにやつて行く、其の外尚憲法第二十三條では、今度の改正案で「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活」となつて居て、最低限度の健康と文化的と云ふ條件が附いて居るやうな譯でありまして、此の方面に對して左樣なことは矢張りやつて行かなければならぬ、併し或程度の文化面を加味したものは或程度最小限に生活保護の中に入つて行くものと思ひます、さう云ふ分野に向つて出來るだけ資したい、尚一般の社會政策の部面に對しまして、不具癈疾者とか、戰災孤兒とか、浮浪兒とか、色々不良性のあるやうな者に對して、どう云ふ風なことをやつて行くかと云ふことに對して、矢張り是も竝行的な政策を採つて行つて、近い將來に於ては社會保障制度と云ふものを完成したいと云ふ決心で居ります、併し一面から言ひますと、完全雇傭と云ふ問題は稍稍困難であります、但し「フル・インプロイメント」と云ふ問題になりますと、どうしても工業の勃興、産業の勃興と云ふことが問題になりまして、是などは石炭の問題が一番重大でありまして、それから資材の關係、原料の關係、國際貿易の關係が囘復しませぬと、「フル・インプロイメント」と云ふものは多少遲れるものと思ひます、社會保障制度は勿論最も完全に行くと云ふ風に考へて居ります、此の點はどうも一般の經濟状態から見て多少遲れる、それ迄の間は出來るだけ消極的の社會保障と云ふものはやつて行く、是等は豫算と非常に重大な關係を持つて居りますから、來年度あたりの豫算、大體終戰事務費と云ふものが非常に少なくなると云ふことになり、又國防費も要らないと云ふことになると、豫算に餘裕も生じて來ると思ひます、併し一面に於て、賠償撤去に伴ふ費用、軍需補償と云つたやうなもの、賠償と云つた意味の費用などが是はもうこちらの負擔ぢやないかと思ひまするが、斯う云ふ點などと睨み合せまして、事實はどうなるか、財政計畫の餘裕がありますれば、社會保障制度を勇敢に行ひたいと云ふ建前を取つて居ります、それから第三番目の保護者の範圍、是は政府委員の方から説明致します、それから施設の問題に付きましても、是も相當重大である、積極的に助成する積りで居ります、それから第五番目の最低生活限度を超える、生活に必要な限度を超えると云ふことは、是は只今も申上げましたが、其の方で文化的と云ふ意味のことを加へなくちやならぬ、現在の憲法の改正に伴ふて加へて行かなくちやならぬと云ふことも考へて居ります、それから是等の費用と云ふものも、形は市町村の負擔になつて居りますが、分與税で國家が殆ど負擔する建前を取つて居ります、運用に付きましては、是は申す迄もなく非常に重大な點でありまして、唯今迄のやうな恩惠的の救濟でないと云ふ點に重點を置きまして、國家の責任を民主國家として人間の義務として、是は行ふべきものだと云ふやうな見地からやり方を根本的に改正して、さうして官僚的なやり方を出來るだけ排除致しまして、出來るだけ深切に且つ深い人道的信念の下に實行して行きたいと云ふ考で居ります、尚細かい點は政府委員から説明致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=16
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017・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 御答へ致します、第三點に御尋になりました被保護者の範圍が非常に不明確ぢやないかと云ふ御指摘、先般來各委員の方々から御指摘がありましたのですが、一應仕樣がないものでございますから、現に生活に困つて居るものと云ふやうなことで、それが要保護者になる譯でありますが、具體的に申しますと、五人世帶なら五人世帶の標準世帶を押へまして、一應東京ならば三百三圓と云ふやうな、普通の状態の家庭に於きましては、大體三百三圓と云ふ線を引きまして、五人世帶ならば三百三圓、一人ならば一日三圓六十錢と云ふやうなことに、二人ならば幾らと云ふことにして居りまして、普通の生活状態に居る者に於ては是位の所が一應最低生活の線ではないかと云ふ線を引く譯でありまして、從つてそれ以下の收入の者に付ては、具體的に此の人は要保護者の範圍であると云ふことが決る譯であります、唯併し個々の世帶に付きましては、そこで抽象的には普通の家庭に於ては要保護者と云ふものは決る譯に相成らうかと思ひます、併し個々の具體的の家庭に付ては、或は乳が出ない、子供が居つて乳が出ない爲に、どうしても乳製品を入手しなければならぬと云ふやうな特別の事情があると云ふやうな家庭に於きましては、是は又其の家庭の最低生活と云ふものは違つて來る譯でございまして、個々に決めなければならぬ、一應原則的に斯樣に決めて參りまするので、是は其の土地に依り時に依つて變ります譯でありまして、さう云ふ風に致しますと、普通の家庭に付ては一應の目途と申しますか、標準が決りますので、それで一應拾つて行つて貰はう、それから個々にどうしても特別の事情があつて、其の保護に掛らないと云ふものがあります場合には、是は本人なり、或は親戚の人なり、或は近くの人なりが言ふて來る、或はさつき御話のありましたやうに申請をすると云ふやうなこともありまして、民生委員會で決定すると云ふことが色々あらうかと思ひます、それから又被保護者の範圍では第二條の點が不明確ではないかと云ふ點でございますが、是等の點は、先程大臣から御話もありましたのでありますが、殊に斯う云ふものは、具體的に例を示しまして、地方等の會議或は民生委員にも御示しをする積りでありますが、具體的の例を示して過ちのないやうにして參りたいと考へて居ります、從ひまして範圍の點も出來るだけ斯樣に致しまして間違ひのないやうにして參らうと云ふ考でございます、それから保護施設の點、先程大臣からも御話がございましたが、是は二十年度と二十一年度では約全國で一千三四百箇所の色々な施設を作ることを各地方から言ふて來て居りまして、之を刻々認めて居る譯であります、さうなれば全國で千三四百の施設が出來ることになつて居ります、收容所或は授産場或は實費若しくは無料の診療所、共同宿泊所、そんなやうなものが出來る譯であります、それに此の法律にございますやうに、臨時費は國の方から心配を致します、又法律が実施になりますれば、四分の一を其の設置者が持つことに依りまして、後の四分の三、は國府縣で總て助成を致しまして參ると云ふやうなことになります、それから經常費の方に付きましては、是は此の法律にもありますやうに、施設事務費と云ふのがありまして、是で一人當り一圓三十三錢と云ふやうなことで、扱ひになる數に依りまして事務費の補助があります、是で相當社會事業、社會施設等に於きましては運用が出來るのぢやないかと云ふ風に考へて居ります、それから第六點の全額國庫負擔に何故しないかと云ふやうな御尋でございました、特に市町村の財政上から斯う云ふ多額の經費が持てないのではないかと云ふやうな點を御指摘になつての御質問でございましたが、是は斯う云ふやうな保護と云ふものを國の責任を以てやると云ふ建前を、假に取ると致しましても、亦此の要援護者は市町村の住人でもある譯でありますので、市町村としても之を無關心で居る譯には行かないのぢやないかと云ふ風に思ふ譯でございます、從つて市町村にも、出來れば斯う云ふものの一部を負擔させまして、片棒を擔がすと云ふ恰好を取ると云ふことが地方地方の行政をやつて行く上に於て非常に良いのではないかと云ふやうなことも第一點として考へましたし、又地方の、先程御心配載きました財源の點に付きましては、此の本法施行の經費を分與金の形式を以ちまして地方廳に流してやることになつて居ります、此の點は先般御配付申上げました資料の中に「民生安定施設に要する經費に對する國庫、都道府縣、市町村負擔額調」と云ふものがございますのですが、此の下に「地方費負擔」と云ふ欄がございまして、是位な經費を分與金の形式で地方へ流してやることになります、從ひまして、是は實際から申上げますれば殆ど全部國で出すのと同じことに相成る譯でございます、唯是は今のやうな點もありまするが、又一つは地方に財源を一應持つた恰好にして戴きますことが濫りに何でも國の經費なら貰つてやると云ふやうな考を持ち、間違つた運用を致します市町村等が若し假にありと致しますれば、斯樣な點も防止出來るのぢやないか、濫給の防止と云ふやうな點からも良いし、又本來申しますれば市町村でも斯樣なものが居つたならば、無關心で居つて戴かないと云ふやうなことが良いのではないかと云ふやうなことから、地方にも一部極く輕い程度の負擔をさせると云ふ譯でございます、十分の一、一割でございますから、三百圓でございましたから三十圓でございます、さうして財源は分與金を以て地方に豫め渡して置くと云ふやうなことでやりますので、御心配のやうな點はないのぢやないかと云ふ風に考へて居る次第であります、それから本法運用の點に付て御心配を戴きまして、之の行政系統を明かにせよとの御話でございましたが、是は聯合軍の「レリーフ・アンド・ウヱルフェア・プランス」の中にも一貫した系統で此の行政をやるべしと云ふやうなことが、載つて居る譯でございます、是は現在も一貫した系統でやつて居る譯でございますが、是は御承知のやうに中央は厚生省がやりますし、地方に於ては内務部或は教育民生部のあります所は内務部、或は教育民生部、それから地方事務所の方へ參りまして地方事務所の厚生課の系統を通じまして市町村、市町村では厚生係と云ふやうなものがありまして、それが民生委員の援助を受けましてやつて參ると云ふやうな、中央からのずつと一貫した系統がある次第でございます、勿論それ等の實際に事業を致して行く上に於きましては、他の醫療でありますれば衞生課の關係等の協力を得ます點は、中央に於きまして其の仕事の實施上に於きまして衞生局の援助を受けるとちつとも變らない譯でございます、元の系統は右申しましたやうな次第でございます、是は大臣から申上げたのでございますが、民生委員の中に開業醫を入れることがどうか、殊に醫療の適正を見る上に於て非常に適當ではないかと云ふやうな點でございましたが、民生委員は先日も配付致しました資料の中にございますやうに、地區だけを特に擔當致さない、地區全體を見ます民生委員も今度設けることになる豫定でございますので、斯樣なことになりますれば、醫療衞生と云ふやうな御示しの點だけでもなく、一般の醫療の向上衞生の向上と云ふやうな見地からも是非必要でありますので、醫師の方々等が民生委員の中に選ばれて參ることは當然のことであらうと云ふ風に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=17
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018・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 榊原委員に申上げますが、復員廳から參りましたから…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=18
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019・榊原政春
○子爵榊原政春君 本案の審議の上の事項と致しまして、復員の状況に付きまして若干伺ひたいと思ひます、今次の戰爭に於て、身體が強健でありまして、最も活動的な人材は殆ど軍の召集を受けまして、或は軍屬として外地に出征をしたのでありますが、其の後色々私内々聞きますと、まだまだ歸つて來ない未復員の軍人も相當あるのぢやないかと思ふのでございまして、是等の遺家族は、内地に居ります所の其の家庭は、彼等の歸還の一日も早いことを待つて居りますし、又或場合は氣の毒にも本法案の適用を受けるやうな者も相當あるのぢやないかと思ふのでございます、就きましては、二三の點に付きまして御當局の御話を承りたいと存ずるのであります、先づ未復員の状況はどんなものであるか、詰り各地域別にどの位の未復員者が殘つて居るのであるかと云ふことを御説明願へれば結構だと思ひます、唯本件に關しましては、相當祕密に亙る點もあるかと存じますので、此の點は委員長の方に於かれまして然るべく御處理をお願ひしたいと存じます、元來「ポツダム」宣言に依りますと、「日本國軍隊は完全に武裝を解除せられたる後各自の家庭に復歸し平和的且生産的の生活を營むの機會を得しめらるべし」となつて居るのでありまして、當然武裝を解除された後は、速かに内地に歸還すべきであると存ずるのであります、此の邊に付ての率直の實情を伺ひたいと存ずるのであります、次に今「ポツダム」宣言の條項を申上げましたやうに、當然還るべき者が未だ還らないと云ふ状況もあるかと存じますので、之に對しまして政府に於かれましてはどう云ふ處置をしていらつしやるか、此の點を一つ伺ひたいと思ふのでございます、尚未だ復員しない者更に行方不明になつて居る者、斯う云ふ者も相當數あるだらうと思ひます、是等の家庭は早くそれ等の状況を、正確なる情報を得ますことに依つて、今後の生計にも色々の對處すべき途があるのぢやないかと思ひますので、斯う云ふものに對する當局の御處置はどう云ふ風になつていらつしやるか、此の點も一つ承りたいのであります、更に最も氣の毒なのは遺族、傷痍者或は健全な活動が出來ないやうな状況になつて、要するに内地に歸つて來たと云ふやうな人達があると思ふのでありますが、是等に對する對策はどう云ふ風にやつて居らつしやるか、更にそれ等の人は、今どう云ふ職に就き、どう云ふ生計を營んで居られるか、それ等の概要を承りたいと存ずるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=19
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020・荒尾興功
○政府委員(荒尾興功君) 只今の御質問の復員状況に付て申上げます、第一は未復員状況でございますが、是は當初の豫想に反しまして、御承知のやうに「アメリカ」軍の好意に依りまして、多數の船舶を貸して貰ひましたので、復員は非常な進捗を致しました、併しながら現實に殘つて居りまする總數は、陸海民を合せまして、七月末調を以て約二百七十萬であります、内陸軍關係が約百萬であります、此の陸軍關係の數字の多いのは、滿洲朝鮮を合しまして約七十萬、それから「タイ」、「ビルマ」、「マレー」、「スマトラ」地域、是が「マレー」半島の地域が約十萬七千、次に數の多いのは「ジャワ」の三萬と云ふやうな數字であります、是等の殘つて居るものに付きまして實情に付て御質問がございましたが、本件に付きましては、大體の状況を申上げますと、地域に依つて非常に違ひまするが、終戰後もう一年も經ちまして個人の被服が非常に衰損をして居る、それから諸給與と云ふものが恤兵金其の他を運用してやつて居りましたが、それ等の金ももう無くなつて居ると云ふ風な事情と、何と申しましても現地の強制勞働に服して居りまして、相當の困難をして居る所がございます、是は地域に依つて非常に趣きが違ひまするが、場所に依りましては全然慰安の施設もなく、煙草も喫めない、酒も飮めない、或は家庭との通信も思ふやうに行かないと云ふ風な事情にございますので、是等に對しましては政府と致しましては色々手を打つて居る次第であります、就中是等現在殘つて居りまする者は、斯かる肉體的の苦勞のみならず精神的にも非常に苦痛であることは申上げる迄もございませぬ、殊に現地に居りまする者は留守宅のことが一番懸念になつて居るやうでございます、私共と致しましては、何とか留守宅の處遇を良くしてやらうと云ふことに努力は致しまするが、何と申しましても、内地の物價高、それから内地勤務者の各種の俸給の値上りに追隨するだけのことは非常にむづかしくあります、第一復員局と致しましては、多少上級者の待遇等を三月以後下げて居りますが、是等は自ら慰める程度でありまして、何と申しましても是等の處遇を改善する爲には、根本は復員の促進であると思つて居ります、が當初本年度の豫算を組みます時には、是等の未復員の者の御家族には非常な社會的の同情が續いて居ると云ふ風な從來の社會的通念で考へて居りましたが、色々金融緊急措置其の他に依りまして、御同情あるべき人でも出ないと云ふ風な各種の事情がございますので、差當りは只今の御審議の中の生活保護法であるとか、斯かるものに依りまして援護を受けなければならぬ者が多數あると思ひまするので、此の點格段御推進をして戴きたいと云ふことを念願する次第であります、第二の質問の復員の促進に關しまして、政府はどんな手段を執つて居るかと云ふ問題でありますが、本件は滿洲方面に對しましては政府は幾多の手段を執つて居りますることは此處で申上げる迄もございませぬ、尚其の他の地域に付きましても之が促進に關しまして最近更に政府からも交渉して居ります、何れにせよ「マッカーサー」司令部に於きましては復員の促進に關しましては、只今御話のありました通り「ポツダム」宣言の復員促進に關する條項に關しまして極めて熱心なる指示と協力とを與へて戴いて居ることを此處に御紹介して置きます、第三番目は是等の未復員者或は今次戰爭の特質から相當の行方不明者があるだらう、是等の整理を如何にしてやつて居るかと云ふ御質問でございますが、是は御承知のやうに現在復員が非常に促進して居りますので、未復員者の御家族に於きましては、極めて焦慮、不安が濃厚になつて居ることは想像以上でございます、そこで私共の復員廳の當然の任務でありますが、是等の調査を的確に致しまする件に關しましては、全力を振つて今努力中でございます、それの對象は、所謂未復員者、即ち順番に依つて當然歸つて來る者、現地の強制勞働、強制留用に使はれて居る人、或は戰爭裁判關係の容疑者、證人、參考人等に殘されて居る方、其の外に所謂行方不明者、是は帳簿上の行方不明者もあれば、現實に現地で召集解除の結果、一般の在留邦人と共に歸還して居ります爲に、復員の手續は濟んで居らないが、帳簿上は行方不明であるとか云ふ人とか、或は現地に於て所謂行方不明とは言はれますが、事實何處かに存在して居る人、是等の總てを對象と致しまして目下調査中であります、それ等の方法に付きまして極く簡單に申上げますと、大體復員が一段落著きまして最終的に現地から歸還をして居りますそれ等の司令部の正式報告、第二は戰爭間に内地若しくは外地に在りました人に關する諸名簿を集めまして、是の當時の取扱者或は其の調査の對象者の多く存續して居る部隊の人事に通曉して居る者、之を至急集めまして、北方地域を除きまして、本月の中旬迄に諸調査の再製を千葉の留守業務部を中心として整へることにして居ります、第三は現地から復員して來た者の帳簿が戰爭中に海沒、飛行機の事故、爆撃に依る燒失と云ふことで相當飛散して居りますので、外地から歸つて來た個々の人間に付きまして、斯かる人間を對象とした所の口述の調査書を上陸地で集めて居ります、それを留守業務部の書類整理の補助にして居ります、第四番目は現に未復員の御家庭から申告をして貰つて本年の八月一日に全國の一齊調査をして戴きましたが、それに調査漏等がありますし、又其の後復員して來た人もありますので、毎月末調を以て之が調査を續行して居ります、是は今後の調査の極めて大切の資料になりますから、正確に御屆けを願ひたいと思つて居ります、第五番目には占領軍から與へられた資料があります、是は先般「アメリカ」の占領地域に殘留して居る者の名簿、抑留者名簿一覽表と云ふものを各町村に一部づつ差上げましたが、さう云ふ資料を成るべく他の占領地域からも欲しいと思つて居ります、他の地域からも斯う云ふ資料を戴くやうに交渉中であります、第六番目に於きましては、現地に於ける搜索であります、是は帝國の今日の國力上、大規模の搜索は出來ませぬけれども、幸ひ米軍地域に於きましては相當廣範圍の搜索をやつて居りますので、之に便乘と申しますか、是と共に現地に居る、在留して居る所の邦人若しくは軍人を利用して貰ひまして、極力現地の搜索を續行する、斯樣な方法で蒐集したものを、從來は部隊別の名簿でありましたが、之を本籍地別の名簿に完成を致しまして生死の程をはつきりして、將來之の保護の確立を期する、或は留守宅に對して最終處理を御知らせすると云ふやうなことに關しまして全力を振つて居る次第であります、但し本事業は相當困難な事業でございますので、相當長年掛かると云ふことに付きましては御同情戴きたいと思ひます、尚極めて地味な仕事であり、外地から歸つて來た人は心身が衰耗したと同時に仕事に就かなければならない、さうして給與は餘り良くない、内地の人を斯う云ふ仕事に集めますと、勤務をして居る箇所が二箇所に分かれると云ふことは現在の生活上非常に苦しい點もありますので、頗る個人と致しましては非常にやりにくい仕事であります、是非此の仕事は復員廳の責務として完遂するやうに努力をして居るやうな次第であります、次の遺族、傷痍者、復員者の就職状況に付きましては、復員廳の所掌ではございませぬので、大體復員廳の關係は是位で……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=20
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021・荒尾興功
○政府委員(荒尾興功君) 御答へ申上げます、遺族の點、或は傷痍者、それから氣の毒な復員者の就職の状況は只今表を持つて居らぬので、御必要でございますれば取調べまして、或はさう云ふ風に取纒めて出來て居るかどうか分りませぬが、分るだけ調べて資料を差上げても宜しいと思ひます、遺族の點、是等の點の保護の問題は、實は大變申譯ないのでありまするが、餘り良く行つて居ない實情でございます、御承知のやうに、戰時中に於きましては軍事保護院と云ふ特別な役所があつて、是等のことを特に取扱つて居つたのでございますが、此の敗戰後、遺族であるから、或は傷痍軍人であるからと云ふ風な理由で特別の保護が出來ないことになりまして、一般と捏ねてやるやうなことにして居りますものですから、まだまだ行届かない點が多いのでございます、殊に最近の色々な社會の状態から、精神的にも非常に不安動搖を來して居ると云ふやうな點も、私共非常に心配をして居るのであります、出來るだけ授産とか或は職業補導機關等を活用を致しまして、出來るだけのことをして、さうしてそれでどうしても困るやうな人がありました場合には此の生活保護法で最後の保護をして參ると云ふ風な態勢にならうかと思ひます、それから復員者の中で病氣で復員して參りました者は、是は御承知のやうに國立病院が全國各所に相當數がございますので、ここへ入れまして、病氣が癒る迄其處で國の手で療養をさせて歸つて戴くと云ふやうなことに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=21
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022・榊原政春
○子爵榊原政春君 私は戰爭中に軍に召集されまして出征したそれ等の復員軍人が、今度の敗戰の結果、新日本の新らしい建設に本當に眞面目に精進するか精進しないかと云ふ問題は、私は日本の將來が成り立つか成り立たぬかと云ふ位に重大な問題であると思ひますので、斯う云ふ問題に對しては政府に於かれて篤と御考慮を願ひたいと思ふのであります、特に今私が御尋ね申上げたいと思ふ點は、今申上げた遺家族とか、傷痍軍人、斯う云ふやうな人達に對する生業扶助と申しますか、單なる是は生活の扶助をしてやるのでなくて、斯う云ふ遺家族及び傷痍軍人は働く意思はもう十分にあるものと思ひますので、眞面目に働くやうに彼等に生業扶助をしてやると云ふことが私は彼等を更生させる根本であると思ひます、此の點は厚生大臣も此の間仰しやいましたやうに、彼等に勤勞の機會を與へてやると云ふことが、精神作興の唯一の途であると仰しやつたのであります、私も全く其の通りであると思ひますので、何とか彼等に生業扶助の途を與へて戴きたい、斯う思ふのであります、此の本法律案で計畫していらつしやいます所の生業扶助と云ふ中から、或は其の他、厚生省で別に御取りかも知れませぬが、さう云ふ經費を別に計上して御考慮になつていらつしやるのかどうか、或はどの程度の經費を之に充てていらつしやるのか、此の點を承りたいのであります、更に最近の「ラヂオ」等に依りますと、眞面目に働いて居た人間が寧ろ「マレー」其の他でも殘されて、相當な色々な勞働に服して居る、眞面目に戰時中働いたと云ふ人間が後から遲れて歸つて來ると云ふ状況になるのではないかと思ふのであります、是等の人に對して、遲れて歸つて來た者がもう職業がなくなつてしまつたと云ふやうなことでは誠に氣の毒なことでありまして、彼等は故國に歸つてどう云ふ氣持がするかと云ふことを思ふと、誠に私達は涙が出る、從つて是等の遲れて歸つて來る人達に對して、どう云ふことを具體的に考へて居るのか、是の點を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=22
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023・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 復員軍人を出來るだけ此の生産面に働いて戴いて、さうして産業再建の基調と爲すと云ふことは全く御同感でございまして、此の面に付きましては一般引揚者との關係と竝行して行つて居る譯でありますが、只今厚生省で觀て居りまする所では、復員軍人は矢張り家族のある御方が非常に多いのであります、それで一番矢張り農業面への吸收が多いのであります、今年の米作の良いなどは、勿論是は天候の關係などもありますけれども、肥料が非常に不足に拘らず、秋落ちのやうな状態もないと云ふのは、矢張り手入の行届きと云ふことが重大な原因だと思つて居ります、さう云ふ面に於て復員軍人が農業面に於て、勇敢におやり下さつて居ることに付ては非常に感謝して居る次第でありますが、農業面以外に付きましても、勿論一般産業面に付ても出来るだけ…殊に中小産業面に付ても入つて貰ひたいし、又入るやうな方法を色々講じて居りますが、御承知の通り先程申しました石炭の不足などが最も重大な點でございまして、石炭問題に付きまして、是が今、年に二三千萬「トン」ですが、是が三千萬「トン」位になりましたならば、斯う云ふ問題は非常に大きなものが解決するのであります、それから又海外貿易の面も、是は講和會議結了後でないと本當のことにはならぬと思ひまするけれども、矢張り南なり中國なりには非常に御承知の通りに纖維品なり、それから雜貨も非常に不足して居りまするので、斯う云ふ問題に日本の餘つた勞力を、殊に復員軍人のやうな風の力を之に向けて行くと云ふことは、是は非常に重大なことであると云ふ風に考へまして、さう云ふ點に付ても色々折衝を重ねて居る次第であります、唯纖維工業の如きも、どうも只今「アメリカ」の方から廻して貰つて居る棉を十分こなし切れぬと云ふ状況で、是は主として機械の設備の問題もありまするが、矢張り一番大きな問題は食糧であります、食糧と機械油、さう云ふやうなものなどが隘路になつて居ります、食糧問題は是で大分解決して參りますると、餘程纖維面に於ける生産力も増加して來るのぢやないかと思つて居ります、さう云ふやうなことで、結局日本の産業復興と云ふことの線が、一番復員軍人なり、或は引揚者を救濟する方法でありまして、厚生省のやつて居りまする社會面でやつて行くと云ふことは、是はやらなくちやならぬことには相違ありませぬけれども、是が目的ぢやない、是は已むを得ず斯う云ふ國民生活を確保して行かなくちやならないからやつて居るのでありまして、目標は生産の勃興と云ふ點にあると考へて居ります、それから尚斯う云ふ方面に對しまして金融上の措置も採つて居りまして、是は前にも此の席で申上げたかも知れませぬが、約三億圓ばかりの金を庶民金融金庫を通じて、庶民金融金庫にそれに七億圓を附足しまして、十億圓として融通することになりました、今それをやつて居ります、是が十億圓として一家族三千圓單位に貸しますから、先づ三十三萬世帶と云ふものが入ります、引揚家族が八十萬世帶であります、そこへ復員軍人も戰災者も入りまするけれども、斯う云ふ面に於て三千圓では十分ではありませぬけれども、是は何人かの共同でやるとか、或は今迄色々外に融通したのも加へてやると云ふことで、三千圓の三十三萬世帶と云ふのは、全國的に見ますと、相當生産面にそれが行くだらうと云ふ氣持で居ります、それから遺家族、傷病者、癈疾者に對することでありまするが、是は先程も申しましたが、遺家族なるが故に、傷病者なるが故にと云ふ理由では特別のことはして行かぬと云ふことになつて居りまするけれども、最低生活保障の方面から見ると、最も深く救濟しなければならぬ問題でありまするが、さう云ふ意味に於て最低生活の線に達する迄は、出來るだけ厚い手當をすると云ふことは、決して聯合國から受けて居る指令に反するものぢやないと云ふ確信を持つて居りまするので、此の點に付きましては今説明申上げました如く、遷り變りの時でありまして十分には行つて居りませぬ、行つて居らぬが、之に對して何か特別の方法を採る、此の生活保護法で行かなければ、又特別の方法を採つて此の生活保護法でやれる線迄追ひ詰めて行くと云ふ風な方法も實は考へて居る次第であります、出來るだけ斯う云ふ面に對しましては手厚い方法を採りたいと云ふ考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=23
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024・榊原政春
○子爵榊原政春君 只今の御話に依りますと遺家族、傷痍軍人等に對する救濟と云ふことは、具體的には生活保護法、是とは別にと申しますか、之に依つて生活の保護だけは何とかそこ迄持つて行つてやるのだ、私が申上げるのはさうではございませぬ、彼等は矢張り何とか働きたい、生活保護なんか受けて居るのは誠に恥かしい、何か自分で職業をやりたいが、やるのに資金がない、術がないと云ふのが相當にあるかと思ふのであります、足はないけれども手は利く、其の手で十二分に働いてでも此の新らしい日本の建設に努力したいと云ふ人は相當數あると思ひまするので、斯う云ふ人達に私は生業扶助の何かの手段を一つ政府で御考になつて戴きたいと斯う申すのであります、是は今の此の法案には或は考へて居ないが、別に政府で以て今後御考になると云ふのかとも存じますが、其の邊の所を一つ承りたいと思ふのであります、更に復興金融金庫が出來ると云ふ御話は此の間から承つたのでありますが、此の三億圓と云ふ經費の對象の中には、遺家族とか、傷痍軍人とか云ふやうなものが何か一つ協同組合とか云ふやうな形で、個人ぢや出來ないと思ひますから、協同の形で以て一つの事業でもやりたいと云ふやうな場合に、之に對して融資すると云ふことも含んで居りますのかどうか、此の點承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=24
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025・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今申上げました三億を出しまして、庶民金融金庫の七億との十億と云ふことには勿論遺家族等も含んで居ります、それから傷痍軍人も含んで居りまするし、其の協同的の作業等は最も希望して居ると云ふことであります、其の方面に於て相當積極的に生業を與へて行けるのぢやないかと云ふ氣持で居ります、それから尚此の法律で直接の生業扶助と云ふことも亦別にやる途も付いて居りますので、其の點も十分考慮して行く積りで居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=25
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026・榊原政春
○子爵榊原政春君 大體今私の伺ひました點に依りまして、一つ政府に於かれても傷痍軍人、或は遺家族と云ふやうな問題は、復員軍人と密接な精神的な連鎖もありますことでございますので、特に一つ、特にと云ふこともございませぬが、漏れなく一つ、一般の水準に於て一つ救濟を是非積極的にやつて戴きたいと斯う思ふのであります、更に生活保護法の施行前に、政府で以て生活困窮者緊急措置と云ふのを御作りになりまして、之に依つて救護を實施していらつしやると云ふのでありますが、私の色々聞きます所に依りますと、此の緊急措置はなかなか地方の末端に迄徹底して居りませぬので、地方の末端に於てはまだ此の緊急措置の御趣旨に依つて動いて居ないやうな所が相當あるのぢやないか、斯う思はれるのであります、從つて私は此の生活保護法に付きましても、特に今度は市町村が單位になつて居りますので、末端業務が非常に重要だと思ひますので、此の末端に徹底しますやうに特に御配慮を願ひたいと思ふのであります、先程から御話ございましたやうに、本件は民生委員の問題と密接な關係があると思ふのであります、此の民生委員に付きましては、從來の方面委員が、中には一生懸命やるのもあるけれども、適當でないのがあると云ふことを、政府に於かれても率直に認めていらつしやるのでありまして、私は取敢へず、生活保護法に依つて三十億の豫算を使つて事業をなさるのでありますから、圓滑に推移する爲に、取敢へず從來の方面委員を民生委員に切替へられると云ふことは必要と思ひますが、それに依つて從來の方面委員が民生委員となつたと云ふ頭の切替は出來るのぢやないのでありますから、私は此の際、先程から各委員の方からも御話がございましたやうに、引揚者であるとか、或は復員者であるとか、斯う云ふやうな自分自身に苦い經驗を持つて居る人、或は現在に於ける社會事業家醫師とか、さう云ふ社會事業家、或は今後彼等に産業補助をすると云ふ意味に於きまして産業の指導家と云ふやうな人、更に彼等に温い手で痒い所迄手を届かせると云ふやうな意味に於きまして婦人等をも民生委員の中に是非混じへて、民生委員を急速に全部替へることは困難でございませうけれども、一部位づつでも成るべく早い機會に新らしい方々に替へて行くと云ふやうに御配慮を願ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=26
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027・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 今御指摘のやうに、現在行つて居ります生活困窮者の緊急生活援護要綱は、末端迄なかなか徹底して居らぬと云ふ御話でございましたが、實は大變殘念でございますが、私共もそれを認めざるを得ないやうな所もあるのでございます、取敢へず、主として大都市に先づやると云ふことが必要ではないかと云ふやうなことから、是は議會の始まる直前でありましたが、大臣の命を受けまして、私或は保護課長などが六大都市方面には自ら出向きまして、其處の市の當局の人などに來て貰ひまして、やつて居るやうな譯でありまして、若し漏れるやうなことがありますれば非常に殘念でありますので、漏れないやうにと云ふやうなことで、十分やつて居る積りでございます、尚議會で本案を御議決して戴きますれば、十月一日から之を實施するやうな積りで居りまするので、市町村等にも豫算を作つて戴くと云ふやうなこともあらうかと思ひますので、是亦大臣の命で出來るだけ早く地方廳に參りまして、實際ぶつかつて徹底するやうに致したい、御説の通り全く末端に徹底させると云ふことが一番大事なことだらうと云ふ風に考へて居りまして、其のやうに努力する覺悟でございます、尚又之を實際やつて行きます上に、民生委員が極めて大切だと云ふことを御指摘戴きましたが、其の通りでございまして、出來るだけ早い機會に成るべく方面委員令を止めまして、民生委員令に致しました趣旨に副ひますやうに、私共が願つて居りますやうな新らしい人が出て戴くやうな措置を至急に講ずるやうに致したい、是も生活保護法と一緒に矢張り只今の所では、御議決を戴きますれば勅令として十月一日から同時に施行すると云ふやうな積りで準備を致して居ります、御述になりました社會事業家、或は引揚者、醫療關係の方々、産業の人達、或は婦人の人達、是等の人が新らしく選ばれまして民生委員になつて戴く、私共も全く左樣に考へる次第でございます、色々地方の民生委員の推薦委員會は本當に眞面目にやつて戴いて、斯樣な人達が出て大いに仕事が進んで行きますやうにやつて戴くことを期待して居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=27
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028・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 委員會の方々に御諮り致します、午前の會議は此の程度に致しまして、午後一時から續行致したいと思ひます、それでは休憩致します
午後零時一分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=28
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029・会議録情報3
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午後一時三十二分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=29
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030・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 是より開會致します、只今厚生大臣は内閣に緊急協議があつて一時缺席されるさうでありますから、若し他の政府委員で宜ければ御質問願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=30
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031・北大路信明
○男爵北大路信明君 先日頂戴致しました資料の、青少年犯罪者罪別累年比較調査表と云ふのを頂戴致しましたが、之に依りますと、逐年少年の犯罪者の數は増加の傾向を辿つて居ります、殊に終戰後に於ては更に増加の傾向のあることは、誠に憂慮すべき問題だと思ふのであります、司法省では今度全國に八つの少年審判所を増設致しまして、之が對策に乘出して居るのでありますが、我々の望む所は、是等少年をして犯罪を行はしめないやうにすることが萬全の策であると云ふことは言を俟たないのでありますから、厚生省としても是等の見地から少年に保護を加へる要があると思ふのであります、抑抑犯罪の原因は色々あると思ふのでありますが、大體に於て兩親がないとか片親が缺けて居るとか云ふやうな、家庭的愛に缺けて居ることが惡に入る原因になつて居るやうに思ひます、從つて温かい保護を與へてやると云ふことが必要であります、私は只今是等少年保護をして居ります保護塾に居るのであります關係上、毎日是等少年の日常生活を見て居るのであります、是等少年は大體に於きまして意志が薄弱で、案外懶け癖があり、命ぜられることはやるが、命ぜられなければやらぬ、それから毎日決つた仕事でも、言はれなければやらぬと言ふやうな者が比較的多いやうであります、それで時たま監督の者が嚴しい小言でも言ふと、何か仇をすると云ふやうな状態で、誠に是等少年の保護矯正と云ふものはなかなか骨が折れる仕事であります、それに隙があれば逃亡する、是等は辛いから逃げると云ふやうな者ばかりでなく、一種の逃走癖と云ふやうなものがあるので、是等は何囘となく繰返すのであります、尤も今是等逃亡した少年は異動申告等の關係がありまして、食糧が手に入らないことが分つて居るのでありますけれども、それでも逃げ出して行く、さうして驛などの人の集つて居るやうな所へ行つては辨當の餘りを貰つたり、又物や金を盜んで食物を買ひ漁ると云ふやうに、又善良な少年を惡に導くと云ふやうな、誠に始末の惡いものであります、現在上野や其の他の所に、戰災の爲もありませうけれども、浮浪兒が相當多く居るのであります、是等の場所は結局惡の温床となりまして、社會上誠に憂慮すべき問題だと思ふのであります、從つて是等の少年に温かい手を差延べまして保護をすることは、一日も早くしなければならないと思ふのでありまするが、未だに放置されて居ることは甚だ遺憾であります、厚生省としましては、是等少年を惡から未然に防いで保護を與へと云ふ、積極的の何か施設がございませうか、其の點を御伺ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=31
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032・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 此の浮浪兒の點を御心配戴きまして、何か考へて居る所があるかと云ふ御尋でございましたが、實は浮浪兒は今御指摘になりましたやうに、非常に逃亡する者が多うございまして、汲めども盡きぬと云ふやうな状態でございまして、新聞等でも御覽戴いて居りまするやうに、東京の例で申上げますと、東京都では時時浮浪兒狩と云ふ言葉は大變惡うございますが、浮浪兒を保護致します爲に、定期的に動員を致しまして、保護施設に入れるやうな處置を執つて居るのでありますが又復逃げる、或は他所から新らしく出て來ると云ふやうなことでございまして、なかなか盡きないのでございます、此の點に付きましては聯合軍の總司令部に於きましても非常に關心を持つて居りまして、或時の如きは、今後一週間以内に浮浪兒を東京、横濱の街頭から全部なくするやうな措置を執れと云ふやうなことを言はれたりなど致して居る譯でございます、現在大體、是は古い資料しかごでいませぬのでありまするが、五月末の現在では、全國から一應纒めて見たのです、數字が大體三千數百人浮浪兒が居ると云ふやうなことになつて居りまして、此の内約半分、千三百人ばかりを保護施設へ收容したと云ふことを言つて參つて居る譯でございます、併し御承知のやうに、浮浪兒と云ふ名前が示しますやうに、殆ど或一定の時期を捉へましても、數が正確に掴めないのが浮浪兒の特性ぢやないかと思ふ譯でございますが、そんな風にして努力致しまして、一應保護施設へ入れると云ふ風なことは致して居る譯でございます、東京の例を以ちまして見ても、新聞等で御承知かと思ひますが、一番多いのは上野でございますが、上野の附近に於きましては一週に二囘位、區役所方面や驛の方々、或は養育院の人と云ふやうなものが中心になりまして定期的に、狩込みと云ふ言葉は惡うございますが、便宜使はして戴きますれば、狩込をやつて居るのであります、さうして一應そこで押へました子供を「バス」に乘せまして、板橋の養育院へ連れて參る譯であります、其處で專門の職員の方が居りまして、心理學等の專門家も居る譯でございますが、色々精神上の鑑別、或は身許を聽いたりなど致します、浮浪兒の中には親許があつて、親許がありましても時々出てやると云ふやうなのも居ります、斯う云ふのは親許へ返すやうに致して居ります、是も相當ございます、それから一時やかましく言はれました戰災兒も相當居ります、斯う云ふのは養育院へ一應落著く迄一時置きまして、それから適當の所へ分けるやうに致して居ります、宮城縣あたりでも農村で働くやうな者があればと云ふ風なことで、貰つて戴いたのもあります、或は千葉縣等でも戰災兒あたりを貰つて、働いて落著いて居ると云ふやうな例もあります、或はさうでなければ、東京には三十數箇所保護施設がありますから、其處らに持つて行くと云ふやうなことも致します、或は又精神病の患者なども居るさうであります、斯う云ふのは病院へ送る、或は又少年教護院の對象になるやうな者、或は少年保護の對象になるやうな者は、矯正院なり或は少年教護院の方へ行つて保護をして貰ふと云ふやうに、其處で區分けを致す譯であります、併し斯んな風に致して居るのが現在の状態でございますが、是ではどうもいかぬ、常時浮浪兒の世話を見る專任の組織的なものが必要ではないかと云ふやうなことから、是は聯合軍司令部とも今相談を致しまして、大體具體的な案を私共の手許に於て作りまして、聯合軍司令部も大體宜からうと云ふことで、今財政上の措置を大藏當局と相談を致して居るものがあるのでございますが、何があるかと極く大雜把に申上げてみますと、先づ狩込の機關みたいなものを作る、而も此の爲には東京と横濱を先づ中心にしまして、東京、横濱を中心にした委員會を作りまして、色々な關係方面の人に入つて戴いて、其の委員會が下部の組織を持ちまして、當時さう云ふ浮浪兒の集るやうな所に出張つて拔けられるやうなことのないやうにしよう、さうしてそれを第二次の收容所へ先づ持つて行きます、横濱でも一箇所作りたい、東京では養育院がありますが、それが適當なる施設がありますれば、其處へ連れて行つて、其處で落著けば落著かして、其處で色々科學的に、醫學的に、心理學的にも分類をしまして、是はどう云ふ施設へ送るが適當かと云ふやうに致しまして、鑑別機關を備へました第一次の收容所と云ふやうなものを作ります、さうして其處で區分けをした者を或は親許へ、或は保護施設へ、或は少年教護院、或は病院と云ふやうな所へ送るやうにする、第二次の是は保護施設と申しませうか、さう云ふものを作る、さうして其處へ入りました者をどうして一人前に保護して參り、善くして行くかと云ふやうな點に付きましては、是はなかなか專門的なことでありますので、一應さう云ふ風に致しました上で、更に具體的に又案を練りたい、今の常時的の委員會を作り、第一次及び第二次の收容所を作ると云ふやうな點だけを只今具體的に考へて居る次第であります、出來れば來月あたりそろそろ、寒くならないうちに此の第一歩に著手しまして、寒くならない時に保護が行渡りますやうにと、今準備を致して居る譯でござます、施設へ參りましてから根本的にどうするかと云ふやうな點に付きましては、根本的に又色々關係の方々の御智慧を藉りましてやつて參る、取敢ず施設へ收容して保護すると云ふ所迄は近近やりたいと云ふやうな考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=32
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033・北大路信明
○男爵北大路信明君 今詳細に御説明を戴きまして有難うございました、浮浪兒を收容するのでありますけれども、收容所の設備が割合に少いのぢやないかと思ふのでございます、從つて期間等も短期に出してしまふと云ふやうな傾向があり、其の爲に繰返して惡いことを行ふと云ふやうな者が相當多いと思ひますから、此の際教護所とか云ふやうなものは相當増設されまして、十分に是から收容し矯正される迄入れて置けると云ふやうな設備を一刻も早く建設されむことを御願したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=33
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034・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 色々御注意を戴きまして、有難うございます、唯設備の方は此の保護法の三十億圓の中から、浮浪兒の收容施設としましては只今では五、六十箇所に近いものを用意する豫定になつて居ります、現在ある外に「プラス」することになる譯でございます、其の外にも是は大臣からも御話があつたかと思ひますが、根本的に一つ浮浪兒對策と云ふものは線を太くしてやると云ふやうな、相當完備した、殊に先程申上げました第一次の收容施設と申しますやうなものは相當設備がなければ出來ぬことで、此處らの點は今後更に力を入れて參りたいと云ふ風に思つて居る次第であります、唯先刻も御述になりましたやうに設備だけではございませぬで、逃げる癖がありましたり、或は何か致しますし、其の外矢張り食糧事情、或は取扱ひます者の深切と申しますか、温みと申しますか、或は其の兒童の環境と申しますか、其處の點も相當改善をして行かないと、此の保護施設の目的は達せられないのでないかと云ふ風に思ひまして、そんな方面も準備して參りたいと云ふ風に思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=34
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035・北小路三郎
○子爵北小路三郎君 私は第一條の内容に付きまして少し御尋したいのでありますが、此の法案を通じまして考へられますことは、本法案が國民に生活保護の權利を與ふるものでると云ふことが考へられるのでありまして、それだけに此の法案は劃期的のものであるやうに考へられるのであります、又それだけに此の内容に盛られて居ります所の言葉が、從來の例に依りますと非常に進んだものがあるやうに拜見されます、で、此の第一條に於きまして、此の法律は生活の保護を要する時にそれ等の生活を無差別平等に保護すると云ふことが謳はれて居ります、此の點に關しましては先程政府委員からも御話がございましたやうに、其の筋の指令に依りまして斯う云ふ考が先づ劈頭に盛られて居ると云ふことは了承されるのでありますが、併し實際の社會の眞相に觸れました時に、斯う云ふやうな積極的な法案内容が實際に行はれます場合に、果して其の精神的方面に於きまして是がどう云ふ影響を與へるか、其の點は相當に考慮せられるのではないかと思ふのであります、從來戰爭以來の社會状態に連れまして、政府が色々の政策を執られ、さうして或は統制或は配給、色々な方面に政策が執られて居りますが、是は社會状態上已むを得ざる施設であつて、又それが齎した所の效果も相當にあつたと思はれますが、併しそれは兩面から考へますと、眼に見える世界、眼に見えぬ世界、其の兩面に與へた影響と云ふものを考へます時には、果して兩面に對して本當に政府が考へるが如き結果を齎し得たかと云ふことはどうかと思はれるが、成る程目に見える場面、即ち物質的には相當の效果を擧げたが、目に見えない世界、即ち精神方面には、又測るべからざる結果を來して居ると云ふことがあると思ふ、そこへ持つて來て今度斯う云ふ風な要綱に盛られたものが與へられたと云ふことは、それが又所謂今日迄實現された惡平等に對して、或意味に於ては拍車を掛けるやうなことはないか、さう云ふことが顧慮されるのであるが、此の點に付ては政府とされてはどう云ふ風に考へて居られますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=35
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036・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 此の無差別平等の取扱の問題でありますが、是は或は社會の階級であるとか、或は宗教的な差別であるとか、或は軍人の遺族であるからどうするとか云ふやうなことをしないやうに、苟くも現に生活に困つて居る者は平等にすると云ふ建前であります、午前中も大臣から御話があつたやうに實際困つて居る、實情が酷い者がありますれば、其の差を均して行くと云ふやうな點は一向差支ない譯で、從ひまして此の無差別平等と云ふものも、實情に即して保護をして行くと云ふことは、是は一向差支ないことになつて居るのであります、御指摘になつた惡平等と云ふやうなことが、果して今申上げたことで解決するかどうか存じませぬが、苟くも困難して居る者に付ては、從來のやうに軍人の遺族であるから厚くする、其の次は戰災者、其の次は救護法だから厚くないと云ふやうな取扱は、今日の我が國としてやつていけないと云ふ點だけでありまして、具體的に困つて居る其の世帶世帶の實情に應ずる、傷痍軍人とか或は遺族の方々とか云ふやうなことになりますれば、遺族の場合なんかで申しますれば、生活の保護をする上に更に又授産とか何とかの御世話をして、成るべくそちらの方で働いて戴くと云ふやうなことをするとか、精神的な指導をするとか云ふやうなことは勿論であります、さう云ふ風に實際に即して保護をして行くことは、無差別平等の原則には毫も反しないと云ふやうに考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=36
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037・北小路三郎
○子爵北小路三郎君 大體御趣意のある所は了解致しましたが、先程も申上げました如く、なかなか世の中の實情と云ふものは誠に簡單であつて複雜なもので、私共は此の平等と云ふ言葉が果してどれだけ善用されるかと云ふことを疑ふものであります、私共個人としては平たく世の中の實際の眞相はと考へるならば決して平等ではない、又差別でもない、詰り平等であつて差別、差別にして平等と云ふのが實相であると私は考へて居るのであります、今日政府が教育方面には非常に重大關心を持たれ、個性の完成と云ふことに付ては、當局者も非常に強調されて居ります、此の個性の完成と云ふことを考へるに付ても私は此の法案に盛られて居る所の此の無差別平等と云ふことが、此の個性完成の上にどう云ふ影響を與へるものであるかと云ふことが心配なのであります、それで先程も統制配給のことに付て言及致しましたが、前の社會に於て、無論日本の社會でありますが、例へば魚屋は魚屋、鳶は鳶、其の鳶職を發揮して、所謂氣質と云ふものを持つて居つた、鳶は鳶の氣質に依つて立ち、それで自分も本當に立ち得、又社會もそれを得と致した、さう云ふものがあつて、そこに又美しい場面が精神的に繰返されて居つたと思ふのでありますが、此の惡平等の結果はさう云ふ氣質と云ふやうな美點は取去られて居ります、是は單にさう云ふ人達に限りませぬ、有らゆる社會相に於てさう云ふ「スペシヤリテイ」が剥がれて居るぢやないかと云ふことを私は痛感するのであります、さう云ふ意味に於て、さう云ふ時代が繼續されて戰爭以來行はれて居るのが實情であらうと思ひます、そこへ持つて來て此の法案の如き趣意に於きまして實行される場合に於ては又それは一つの惡平等に上塗をして拭ふべからざる結果を精神方面に齎すことはないか、其の點が私共の顧慮される點であります、是は固より國民に生活保護の權利を與ふるのでありますから、無論此の見地から言つて當然のこととは考へられますけれども、併し今日此の民主主義に對する日本國民が果して責任の自覺ある認識に立つものが全部であるか、是は疑問であります、是は無論全部であることを我々は希望しますけれども、まだ日の淺い今日の日本社會に於ては、各個が責任の自覺に立つ民主主義に立つて居るかどうか、是は疑問でありまして、此の最中に此の法案が實施されることになると今私が申上げたやうな惡い場面が此の上繰返されなければならないと云ふことを私は思うのであります、其の點に付ての政府の御考を伺つたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=37
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038・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 私途中で參りましたので十分御質問の趣旨を承つて居りませぬが、只今承つた範圍に於て御答へ致します、是は申す迄もなく今度の憲法、其の他日本の將來の國の建前は、民主國家と申せば今御指摘の通り個性の完成、個性の自覺と云ふことが根本の問題になると考へて居ります、さうして個性の自覺と云ふことは、各人各樣に又自分自らの自覺でありますが、是と同時に他人の個性の完成、個性の自覺を疎かにしてはなりませぬ、それで茲に一つの協同的の考と云ふものが出て來て、さうして是が或程度迄個人の權利を指導し、場合に依つては制限すると云ふやうな建前に大體憲法の目指す所はなつて居ります、其の線に沿うて此の法律も實施される譯であります、それで憲法には勤勞權も認め財産權も認め、それから勤勞權の中には人間の頭腦の働き、即ち知識權と申しますか、其の差別も當然あることも認めるのでありますから、斯う云ふ個人の「イニシアテイヴ」を土臺にして社會が展開して行くことは、人類全體の爲なりと云ふ思想に基いて居ると思ひますから、茲に差別の出來ることは是は已むを得ぬことであります、併しながら此の差別は常に公共の福祉と云ふことに「リード」、指導されて行かねばならぬ、或は制限を受ける建前で大體立つて居りますから、決して頭の方が皆平等になると云ふ考ではなからうかと思つて居ります、併しながら此の最低生活の保障と云ふことは、結局生命權の保障でありまして、人間が生きなければならぬ、生きると云ふ點に付ては是は平等である、どうしても生かさなければならぬ人間は生きるやうにしてやらなければならぬのぢやないかと云ふ點、是は一番下の「ベース」の線でありますから、此の線から行けば平等に行かなければならぬと云ふやうに私は少くとも考へて居ります、故に是は惡平等でない、人間は御互ひに人格の完成の目標に向つての保障は必要だと云ふ意味に於て、是はそこ迄浮き上がるやうに、水面迄浮き上つて行かなければならぬと云ふ點に此の平等の思想があるだらうと思ひますが、是は全體から見れば、決して惡平等ぢやない、此の點の調和を求めて行くのが是からの政治の要諦であると私は考へて居ります、それで統制なり、配給なりの問題に付きましても、色々今迄の經過もありまするし、私共も數囘是には自分の體驗を持つて居りまして、或意味に於て自由にして見たり、或意味に於て統制して見たり、外界の事情の色々の變化に依つて動く問題で、なかなか一律には行かぬ問題でありまするが、それの矢張り根本を貫く精神は人間が生活して行かなければならぬと云ふこと、配給は米なら米を綺麗に配給しなければならぬと云ふので配給して居る、野菜もさう云ふ意味に於てやるのであつて、それ以上あるものは配給する必要はないと云ふやうな風に、配給も一番「ベース」の「ライン」を目標にすべきである、鐵も配給する、石炭も配給すると云ふのは、是は戰爭遂行の目的に主としてやつて居つたのでありますが、それが御承知の通り非常に少ない爲に、少ない物をうまく分けて行かぬと民需の産業も、國民生活も脅かされると云ふ所に配給の重要性がある、それが澤山出て來ますれば、配給と云ふものは段々外して行つても宜いと云ふ風に私共は考へて居ります、さう云ふ意味に於て、惡平等では決してない、そこに自ら差があると考へて居ります、此の方針で此の法律を實施して行く考で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=38
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039・北小路三郎
○子爵北小路三郎君 御説明で大體了承したのでありますが、唯私が尚顧慮する點は、第二條を見まする時に、此の能力があるにも拘らず、勤勞の意思がない者、勤勞を怠る者、其の他生計の維持に努めない者、素行不良者、さう云ふものに對しては保護はなされない、之を見極めるのは何であるかと云へば、先程も段々御話にありましたやうに、民生委員其の他の者が之に關聯しまして、實際の資格があるかないか、實情を御調べになることと思ひますが、此の點に於きましても、唯政府が頭から平等と云ふ觀念の下に行はれたのでは私はいかぬと思ひます、それで私見と致しましては、先程から申上げましたやうな見地に立ちまして考へまするならば、此の第一條の、國が差別的又は優先的な取扱をなすことなく平等に保護する、此の點が問題になるのであります、之を寧ろ私個人の考と致しましては、今迄申しましたやうな意味を取入れまして考へますれば、公平に平等にと申したならば少しはつきりするのではないか、私はまあ個人の考として申しますればさう云ふ風に考へます、唯平等に公平にと云ふのは違ふのぢやないか、此の公平と云ふ觀念、平等と云ふ觀念を政府としては、どう云ふやうな御方針を御採りになりますか、序でに伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=39
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040・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 平等と云ふことは、例へば皆に平等に三百圓づつ分けると云ふやうな意味の平等ではないのでありまして、結局此の保護を受けるのに付て平等の機會を得させなくちやならぬ、と申すのは結局受けるべき要件を備へた人は、全部之を受けさしたい、受けるべき要件を備へた人で受ける人もあり受けない人もあると云ふのは不平等であると云ふやうな意味に於ける平等、從つて社會的の地位とか、收入とか、色々の前歴とか色々の關係に依つて此の保護を受けさせないと云ふことはいかぬ、人間として皆それはさう云ふ意味に於て公平と申した方が宜しいでありませうが、公平に取扱つて行くと云ふ平等でありまして、三百圓づつ皆やるとか、二百圓づつ交付するとか云ふ意味の平等ではありませぬ、さう云ふやうに御了解を戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=40
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041・北小路三郎
○子爵北小路三郎君 段々御説明で有難うございました、序にもう一つ御伺ひ申したいのでありますが、第十三條でございますが、此の中に「市町村長は、保護を受ける者の親權者又は後見人がその權利を適切に行はない場合は」と云ふのがありますが、其の權利でございますが、此の權利の意味をちよつと御尋したいのでありますが、是は私共ちよつと常識で考へますと寧ろ義務と云つた方が分るのぢやないかと云ふ風に考へられるのであります、其の點での權利の意味を御尋したいのであります、固より此の法案の要領が、先程も申しますやうに、國民生活に、國民に詰り生活保護の權利を與へると云ふ建前になつて居りますから、さう云ふ意味に於きまして、或は特に義務と云ふべき所を權利と匂はされたかは知れませぬが、其のことも私共としては分らないぢやありませぬが、さう云ふ意味に於て權利と云ふ言葉が此處で使はれたとするならば、それはそれで分ります、一般は常識として私が今申上げるやうな意味に於て果して此の條項を見て取り得るかどうか、それは私の疑問なんであります、私が今御尋したいのは權利の意味なんであります、是は義務としての意味と考へて宜いのか、其の點を伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=41
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042・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 大體心持としては御指摘のやうに思ひます、殊に此の場合の權利と云ふのは、民法の八百七十九條でありますとか、九百二十一條等にあります親權と云ふやうな、親の子供を保護する、養育する權利、是は當然義務を性質から言へば伴ふやうなことにならうかと思ひますが、さう云ふ意味の權利でございます、心持と致しましては御指摘の通りのものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=42
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043・小原謙太郎
○男爵小原謙太郎君 今迄のことを伺つて大體分つて參りましたけれども、唯此の法案を見ますると、精神的方面で、どうも私滿足しない所があります、人を救ふのには、金をやるとか何とか眼に見える方面だけをやつても、それだけでは、精神的の心持を通してやらなければ、どしても人と云ふものは救はれないのぢやないかと思ふ、例へば走馬燈のやうなもので、其の觀點がない時は、幾ら走つて影を追つ掛けましても實際の目的は達せられないことになります、根本的に申しますと、世の中は因果の博覽會、此の言葉はちよつと御分りにならないかも知れませぬが、是が世の實相であります、晝と夜とは互ひに交互して行く、幾ら科學が發達して晝間暗幕を張つて暗くしても、矢張り晝は晝であります、夜電氣を煌々と點けて晝のやうに明るくしても、それは矢張り夜であります、其の點を十分立法の立場に織込まないと、どうも救はれぬ、どうしても本當のものにはぶつからないのぢやないかと思はれます、それで之を法文化するのにはなかなかむづかしいので、今迄も色色のものを我々考へて居て、もう少しさう云ふ點が現はれて欲しいと思ひながら、自分も具體的に斯うだと云ふことを申上げられないので、甚だ申譯ないのでありまするけれども、是には運營の方で十分補つて戴きたいと思ひます、精神的方面の運營と云ふことは何か漠とした抽象的なやうな風に聞えますけれども、それは一方から言ふと豫算も要りませぬし、唯熱心と忍耐力があれば實際に國民全體の中に染み込んで行くものだと思ひます、私は長年來、人に接する時に始終説いて居りますけれども、具體的に國民の一つの運動として次のやうなことを御當局なんかも御考へになつて、宜かつたら實施して戴いたら宜いと思ひますのは、極く詰らないことで、子供瞞しのやうなことでありますけれども、例へば食事の時に飯粒を飯茶碗に付けないで綺麗に戴く、それから下駄を脱ぎ捨てる時に其の下駄をちやんと揃へて脱ぐこと、自分の家庭のこと、私は便所の掃除を言つて居りますけれども、そこ迄行かないでも、一家の中心となるものが進んで人に任せないで自分の家を掃除して行くと云ふこと、まだありますけれども、一番簡單な、澤山の税金を取つて皆を苦しめないでも、そんなことは誰にも出來るのだらうと思ひます、大分今迄話して居る中に之をやつて非常に喜ばれて居る人間も知つて居りますし、是は簡單なことで馬鹿らしいけれども、是非國民の運動として實行して戴いたならば、食糧問題も解決しますし、精神方面の教育も是で以て根本が出來ると思ひます、勿論文部當局とも十分御連絡になつて、あちらの方でもやつて戴かなければならないことはありますけれども、國民に直接打つかつて、皆が信頼して居ります所の御當局だけの方でも、是は是非人に任さないでおやり願ひたいと、此の保護法なんかも、其の氣持を以て是非やつて戴きたいので、實際ならば之に付て先程も小山委員の御質問と大臣の御答に依つて大體の事情は分りましたから、此處で今ごてごて言ふことは致しませぬけれども、是で人が出來るのだと言つて安心を持つては大間違ひ、此の現下の國情に於て苦しんで居る人間を、斯んなことでどうやら義務が達したと云ふやうな御考はないと思ひますけれども、さう云ふことがあつたら大變なことだと思ひます、自分のことを申してはおかしいですけれども、昨年罹災しましてから今日迄の生活を見まして、自分の不徳とは言へ、實に苦しい生活をして居ります、議員として今自分が此の委員を承り、議員になつて居ることを是は御辭退しなければならないのぢやないかと云ふ程深刻に考へて居ります、決して此の保護法で救濟して戴かうと云ふ考はございませぬけれども、實際に眞面目な人間は今苦しんで居るのでありますから、其の點十分御考へ下さつて、此の法に依つて人が救はれるやうな程度のものではいけない、過日大河内さんが本會議の席上に於ても、斯んなやうな保護法でどうなるものかと云ふことを言はれたやうでありますけれども、實際にまだまだ之を基としても色々のことが考へられるのであります、餘り此の點は長くなりますから是で終りますが、要するに世の中は因果の博覽會である、晝と夜は絶對に誤魔化せいなのでありますから、色々な事情とか、色々なことに迷はされないで、立てる方は眞面目に其の點を考へて御決めになり、又運營して戴くことを希望致します、さう云ふ點に付て先程來の皆さんの方の質疑應答に依つてちらりちらりと伺つて居ります、さうして御當局でも御考になつて居ることは察するのでありますけれども、先程の大臣の御話の平等と云ふやうなことに付きましては、まだ是はちよつと伺ひたいと思ひますけれども、今は差控へます、是は精神的方面であります、今度は是からの世の中に、之を愈愈やつて行く上には迚も今の豫算ぢや足りないので、それで考へますことは、此の財源として競馬をそこへ利用する御意思はありませぬか、是は我が國では救護法の財源を競馬に求めた前例があります、即ち第五十九議會に於て通過しました競馬法改正は即ち此の爲なのでありましたが、今日の局面に於ては競馬の馬劵賣上金から生ずる收益に依つて、此の法案の財源たらしめることは至極當を得たものだと存じます、大體競馬が我が國に公認せられました當時は、軍馬の改良と云ふ國防上の觀點から馬の改良に對して費用が安く、馬事思想の普及とか、發達と云ふ目標を達成する爲に、收入の大部分は馬の爲に使はれたのであります、又農林省が競馬の監督官廳として今日に至つて居るのであります、然るに今囘我が國は戰爭抛棄の決意をなし、世界に類例のない文化國家として、人類永遠の幸福の爲に國の再建を圖らうとして居るのでありますから、兵器である軍馬は全く無用なんであります、又種馬の改良には從來の如き馬政計畫も不必要、從つて巨額の出費を馬と云ふ局限された部面に消費することは必要ないのであります、歐米諸國に於て昔から競馬が行はれて、而も「スポーツ」として、又時には社交機關として立派に行はれて居ることは一々此處に申上げる迄もないのでありますが、我が國に於きましても從來の如き目的を打捨てて見方を廣く持つて行く時には、是からの競馬は單に馬を競爭させる一つの立派な「スポーツ」として考へることは何等意とするに當らないと思ひます、多くの「フアン」を持ち、大衆の支持強固なる「スポーツ」であることは、最近進駐軍の主催、或は許可の下に開催せられました北海道の札幌とか、函館、神奈川縣の戸塚の競馬が、現下の「インフレ」を反映してか、過去の競馬に到底夢想だに及ばなかつた程の馬劵賣上高を示して居る事實が立派に物語つて居るのであります、此の競馬を利用して其の馬劵賣上から生ずる政府收納金を、目下當面する我が國の厚生事業費に充てるならば、無理に色々と費用を捻出するのに苦しむ必要はないと思ひます、過日衆議院に於て富籤の發賣は道義の頽廢を惹起すると云ふ非難があつたと承知して居りますが、其の議論の是非善惡は今茲に批評することは避けまして、唯富籤と云ふものは果して何番が一等の當り籤になるか、全く豫想が付かないのであります、それですから全く賞金の額と或は品物を餌に國民は買はせるので、射倖心を唆ると云ふ非難は一面に於てどうしても受けなければならないと思ひます、一方競馬、自分も昔から好きでありまして暇があると見に行きましたり又馬劵を買つたことがありますけれども、其の經驗に依りましても又多くの「フアン」の話を聽きましても、此の「レース」の一等に來る馬は何だと云ふことは大體斷定が出來るのであります、又或新聞紙上に長く勝馬豫想の記事を書いて居る人の統計に依りますと、競馬の囘數を百と見て、其の實際に勝つた馬と豫想して居る馬との「パーセンテージ」は、半分の五十囘が、一番多く人氣を持つて居る馬だらうと云ふのが勝つて居ります、二十囘が、其の馬と殆ど力は同じであるけれども、一番のより人氣が少し劣つて居る、即ち二番人氣であります、殘りの二十囘が其の次に皆が豫想して居る所謂三番人氣の馬であります、殘りの十囘が多くの人が見逃した絶對に勝てない馬ではなく必ず勝てるけれども皆が何かの關係で見損つた馬、所謂「ダークホース」さう云ふ馬が勝つて居る、此の點が冨籤や又は他の賭博と全く異る處で、其處に「スポーツ」として「スリル」や面白味が含まれて居り、多くの愛好者を集める魅力が生ずるのでありまして、馬劵は骰子や抽籤の偶然性を少しも含んで居ない點に於て、大いに世間の賭博と同視する弊を改めて戴く必要があると思ひます、でありますから此の競馬を利用して其の收入を社會公共の事業、文化的の事業に充當するなら競馬の意義も向上しますし、又現下の如く富籤や何かをどんどん發行して居るやうな世の中に於ては單なる射倖心の爲のものではなく、立派に其の意義が世の中にも認められると思ふのであります、此の點で好條件のものだと思ひます、尚競馬を再現するのには色々の法律上の改廢等の手續が必要でありますけれども、其の際に於て馬本位の、詰り馬の爲の競馬と云ふ觀念を拂拭する必要があります、先程も申した通り馬は單なる道具である、即ち例へば野球に於ける「ボール」、「ボートレース」の「ボート」の如き一つの道具、勿論馬は生き物である點では違ひますけれども、一つの道具であると云ふ考へ方でなくてはならないのであります、是非此の考へ方を持つて戴きたい、斯く考へまする時は私は其の收入を利用する處の主管官廳である大藏省乃至は厚生省で他の「スポーツ」と同樣に監督指導して戴きたいと思ふものであります、以上競馬に依る政府收入金の利用を差當り本法の財源たらしめるやう政府は此の際御考になつたら宜いと思ひますけれども、此の點如何なものでございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=43
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044・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の小原議員の御質問に御答へ致します、第一の此の法律四十何箇條でありますか、是は言ふ迄もなく斯う云ふ生命のない活字であつてはならぬのでありまして、是にはどうしても法文の一箇條一箇條に魂を打込んで行かなければならない、精神的の裏付をして行かなければならないと云ふことは全く御同感でありまして、どうしても運營方針としては其の氣持でやつて行かなくちやならないと思つて居ります、今御指摘の例へば私共も辨當を食ひまする時には辨當箱の側に附いて居る飯を一粒殘らず拾ひまして、それから中の辨當を食ひます、どうしても水の如きものも矢張り無駄に使つてはいけませぬ、水は立派に我々を養つて呉れるものですから、最も大切に使はなければならないと云ふやうな所謂天地の恩に對する人間の考へ、斯う云ふことは此の法律が社會問題を中心にしたものであるからと云ふことと決して矛盾しないのであります、矢張り宗教的と申しますか、人道的と申しますか、精神的と申しますか、さう云ふことが矢張り此の中に本當に魂として濳んで居るのであります、此の法律の一字々々が生命を持つて躍動して此の法律が實施される、是はどうしても其處に行かなければならぬと私共は固く信じて居る次第であります、唯御承知の通りに此の法律の實施と云ふものは多年或程度迄機械的に動いて來て居りまして、斯う云ふ國家の大變動に際して斯う云ふ劃期的の法律が出まして、それが非常にうまく動くかと云ふ現實の事實に付きましては幾多の疑問を持つて居ります、直ちにさう理想的に行かぬと思ひます、併しどうしてもさうやることを目標にしなければならぬと云ふことは固く私共は決心して居る次第であります、先日各府縣の厚生關係の官吏が三百人程寄りました時、或は外の席で申したのかも知れませぬが、それ等に對して私の考も述べまして、兎も角も世の中始つて何千萬年になるか知らないが、宇宙は廣袤渺々たるもので、何處にどう云ふ限りがあるか分らぬ大きなものである、其處に我々が生れて來て、斯う云ふ時に是だげの八百萬なら八百萬に恩惠と云ふか、救濟を與へる、保護を與へると云ふ機會に我々が遭遇したと云ふことは、是は全く所謂盲龜の浮木と云ふ譬が言へる位で、全く人間として生れ合はせる光榮此の上ない次第であります、是は誠に有難いことであると云ふことを心に期することがあつて宜い、それから出發すれば、總ての問題は深切に極めて圓滑に行く、極めて公平に是こそ平等に行く筈だと私も申述べた次第でありまして、此の點は重々氣を付けまして、御趣旨に副ふやうなことにやるやうな積りで居ります、それから第二の點の此の豫算の財源を競馬に求めてはどうかと云ふ御説でありますが、只今競馬法が多分議會に上提されて居ると思ひますが、是は農林省の所管になつて居るので、實は其の事情を存じませぬが、豫算の關係は多少此の財源と歳出との「リンク」して居る所は絶無ではありませぬが、大體に於て段々其の關係を外して來て居るやうになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=44
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045・板谷順助
○板谷順助君 競馬法は議院提出であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=45
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046・河合良成
○國務大臣(河合良成君) さうでございますか、それぢや議院提出になつて居るさうで間違つて居ります、外して來て居る關係になつて居りまして、殊に憲法に基いて最低生活保障と云ふことは國家の目的の非常に大きな問題であります、さうして一面消極的な問題でありますけれども、積極面は産業の増産其の他に向つて行かなければならないけれども、消極面としては非常に大きな分野を占めて居る問題でありますから、此の法律及び之に關聯した一聯の今後の社會保障の施策と云ふものは平和國家としての非常に重大なる問題だから、私は財源は斯う云ふ問題は優先すべきものだと思ひます、それだから細かい所に財源を求めないでも、正々堂々之を一番切込んでやつて行くべきものである、又政府は之に大きな豫算を出すべきである、現に只今の法律に對しまして、豫算も三十億圓になつて居りますが、是は補充費であると云ふ建前になつて居りまして、法律實施の爲に必要あるならば三十億圓以上出しても宜しい、追加豫算なり豫備金なり出して宜しいと云ふ建前になつて居ります、又物價も非常に昂騰しまして、是では適はぬと云ふことになれば實際是が動いて行く、又失業問題が非常に面倒になりまして、生活保護を受けなければならぬ人が非常に増加すると云ふ状態になればそれもやつて行かなければならぬ、併しさう云ふことをやることは非常にまづいものでありますから物價も成るべく低落さすやうにしよう、又失業者等も此處になだれて來ることは本來の目的はそれではありませぬから、成るべく「チエツク」してやつて行かなければならぬ、其の積りで政府の政策を執つて居りますけれども、併しながら金の問題に付てはやるべき所迄やるべきものだと云ふ考で、特定の財源と云ふことに先づ拘束されないで、いの一番に斯う云ふ問題をやつて行くと云ふ風に考へて居りますので、只今此の競馬と是との財源を「リンク」すると云ふ考は、政府としては只今の所では持たないと申上げて宜いと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=46
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047・江口文雄
○江口文雄君 此の法案の是否は兎も角と致しまして、私は町村の末端の行政に携つて居る者の立場から二、三小さい問題を御尋したいと思ひます、衆議院の速記録を見ましても、こちらの各委員の方々の御意嚮を伺ひましても、町村長として之を運營する場合に一番困るのは要保護者の性格がはつきりして居ない、生業扶助を受ける者の對象がまだはつきりして居ないと云ふ風な點が之を運營する町村長としては實に困りはしないか、而もそれを無差別に平等に公平に運營しろ、單にそれに對する説明が縱の線とか横の線とか、さう云ふ抽象的の御説明だけでは實際問題としては町村長が、此の要保護者なり、或は生業扶助を受ける者の性格をどう云ふ風にして解釋をして行くかと云ふことが、非常に困る場合が澤山出やしないかと思ひますので、此の要保護者の性格とか、生業扶助を受ける對象と云ふ風なものを、此の法案の中に記入しなくとも宜しうございますから、施行令か、施行規則の中に或程度出來るだけ一つ成文化して戴いたならば、運營する場合に町村長は非常に樂になりはしないかと云ふ風に考へる譯でございますから、どうしても其の性格がはつきりと本文に書けないと云ふことであれば施行令か、施行規則の中に成るたけ小さく成文化して戴いたならば、地方の町村長として非常にやり易くはないかと云ふ風に考へる譯でございます、それから二番目に是も小さい問題でございますけれども町村毎の推薦委員會、それから各縣に銓衡委員會と云ふ風なものを設定されまして、民生委員を決めると云ふことでありますけれども、此の推薦委員とか、銓衡委員と云ふ風な者はどうして決めるか、町村長であるとか、地方長官が委嘱するのか、或は地方議員が選擧するのか、其の邊がはつきりして居ない、是は各町村の行政が圓滿に行つて居る所はまあ是でも宜い譯ですけれども、町村の行政が不圓滑に行つて居るやうな所では此の推薦委員の委嘱と云ひますか、選擧と云ひますか、さう云ふ風な場合に町村長は困る場合が澤山出て來ます、斯う云ふ貴族院議員の方とか、政府の大臣閣下等は小さい町村の行政には餘り携つて居られないと思ひますから御分りにならぬでせうけれども、私達のやうに町村の行政に入込んで居る者から見れば、さう云ふ點は或程度決めて戴かないと云ふと實際の場合に困つて居ると云ふ例が澤山出て來ます、是も推薦委員會の委員の決め樣、銓衡委員會の委員の決め樣と云ふことも、出來るならば指示して戴ければ非常に運營が樂になると思ひます、それから民生委員令の第十だつたと思ひますが、方面委員の職にある者は原則として其の儘民生委員となると云ふことがありますが、是も實際の場合に當りますと、先刻どなたか仰しやいましたやうに、此の運營の妙の良く行くのも惡く行くのも民生委員の活動に依ると云ふ御話でございましたが、實際さうなりますが、現在方面委員の活動が非常に活溌に良く行つて居る所もありますれば、又有名無實になつて居るやうな町村もあります、併し斯う云ふ風に原則として其の儘民生委員となる、さうなりますと云ふと、どうしても從來の方面委員が民生委員にならざるを得ない、假に其の方面委員の中に於ても不適當な者があつても、町村長としてはあなたは止めなさいとか、あなたはもう少しやつて呉れとか云ふことは事實問題として言へない、現在でもさうです、町村長と云ふものは議員の選擧、其の議員と云ふものは色々町内會長あたりの勢力に依つて決まる譯です、さう云ふ風になりますと云ふと、實際は民生委員として不適當だなと思つて居つても、町村長としてはあなたはお辭めなさいとか何とか言ふことは、是は事實の問題としてなかなか言ひにくい、新らしく方面委員とか民生委員になつて呉れと云ふことは言ひ易いけれども、辭めて呉れと云ふことは言ひにくい、民生委員の生れ出た根本の法案が三つ四つありましたが、さう云ふ風なものから生れ出た方面委員でございますから、之を一つ十條は削除して戴いて、新らしく御決めになれば、從來の方面委員で非常に活動力があつて良い人は無論なる譯でございますけれども、非活動的な、さうして有名無實になつて居るやうな此の制度を排除して、新らしい活動力ある民生委員を出すと云ふことになれば、今度が非常に良い機會ではなからうかと云ふ風に考へますので、此の第十條は削除して戴いたらどうであらうかと云ふ風に考へます、それから二十一年三月末迄の戰災者、引揚者の住宅建設の統計表を見ましたが、戰災者、引揚者が一番困つて居るのは矢張り食生活よりは住宅でございますが、二十一年度の住宅建設の各都道府縣別の御豫定がありましたならば知らせて戴きたい、なかつたら宜しうございますが、都道府縣別の住宅建設の豫定、それに對する補助の見込、さう云ふやうなものが分つて居りましたなら知らして戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=47
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048・葛西嘉資
○政府委員(葛西嘉資君) 御答へ申上げます、只今實際の面からの大變詳細な御質問でございましたが、此の對象がどうもはつきりしないと云ふ點でございますが、是は實は現に生活に困つて居る者と云ふことで、是以上はなかなかむづかしいと云ふやうに思ふのであります、それで箇々には生活扶助の場合と、其の他の扶助の場合と、大體分けて考へなければならぬと思ふのでありますが、生活扶助の場合でございますと、先程も御説明を申上げましたやうに、扶助の保護の程度及び方法は勅令で定めると此の法律に書いてございます、此の定め方は此の施行令或は施行規則の要綱にもございますやうに、令の方で申しますと、法律第十一條關係と云ふ所に書いてございますやうに、保護の爲支出する限度は厚生大臣の認可を受け地方長官が之を定める、地方長官に任せて、地方長官に定めて戴かうと云ふ考であります、それで大體私共の方と致しましても、此の豫算を作ります時の状態から致しまして、其の當時は五人の標準世帶に於きましては約二百五十圓と云ふことを見て居つたのでありますが、其の後の物價騰貴、缺配等の情勢から、是では不足ぢやないかと云ふやうなことから、三百三圓と云ふ風に金額を上げた譯でございます、二割方……さう云ふ風になりますると東京都長官の方では此の地區の一應標準の生計費と云ふものは是位掛かるのであると云ふやうなことで、大臣に申請をして參る譯でございます、厚生省の方に於きましては、年數囘各地の生計調査を拔き取りに致しまして、大體の基準を持つて居りまして、地方長官が持つて參りました標準の生計費をそこで査定致しまして、それで是位でやらうぢやないかと云ふものが出來る譯でございます、現在では東京に於きましては、五人世帶三百三圓、一人の場合は三圓六十錢と云ふものが一應の標準の最低生活の費用と云ふことになつて居ります、從ひまして今此處に世帶がありまして、一人の單獨の世帶でありますれば、一日平均致しまして三圓六十錢の收入のない者は、現に生活に困つて居る者だと云ふ風に或程度機械的に決めて差支ないのぢやないか、併しまだそれでは實際に食べて行けないと云ふやうなのがある譯でございますから、さう云ふ、先程例で申上げましたやうに、乳の出る家と乳の出ない家とは明かに違ふのでありますから、乳の出ない家の寡婦の家庭と云ふやうなものに於きましては、乳製品を加へたものが最低生活の費用だと云ふやうなことにならうかと思ひます、さうなりますと、それ等のものに對しては不足の金を、或は全額、或は其の一部を公共團體の方から扶助して參ると云ふやうなことになる譯でございます、世帶の實状に應じまして、扶助をして參る限度を設けないのでありまするから、或世帶ではどうしても是だけ要ると云ふやうなことになれば、それだけ要る譯で、一應の基準はそこで決る譯かと思ふのであります、左樣に致しまして一應具體的に生活に困難なるものの世帶と云ふものが是で決つて參りますと、それ等の費用はどうにか斯うにかあるけれども、一度病氣になつたり、或は働きに行かうと思つても働くのに要る道具等を手に入れられないと云ふやうな者に付きましては、是等を更に扶助して行けると云ふやうなことになる譯であります、言葉を換へて申しますれば、東京都で三百圓なり或は四百圓の收入が假にございましても、どうしても病人が出た場合には醫療が出來ないと云ふやうな場合に於きましては、其の醫療を受けさすことは差支ない譯で、生業扶助で繩綯機械がどうしても要ると云ふやうな場合に於きましては、繩綯機械を買つて生業を立てたいと思ひましても繩綯機械を買ふ金がない、其の人は兎に角やつて居りまして、生活扶助は今出て居りませぬ、併しそれだけの費用が出ないと云ふことでございますれば、其の生業扶助の爲に繩綯機械を買つて戴くと云ふやうなことは差支ない譯であります、三百三圓はどうにか斯うにかある、或は三百圓を一圓か二圓か、或は五圓か六圓も上廻つて居るやうな者に於きましては、醫療、助産、葬祭と云ふやうなものには、生業扶助と云ふものは認める譯であります、勿論兩方一緒に受けることも差支ない譯で、斯樣に致しまして、箇々具體的の場合には對象は自ら決つて來るやうに考へられるのでございます、從ひまして生業扶助の場合が非常に御心配のやうでございましたが、之を施行令とか何とかで成文化する必要はないやうに思ひます、それから第二の質問でございましたが、推薦委員會、銓衡委員會等は一體誰が命ずるのかと云ふ御尋でございましたが、民生委員令……只今私共が此の法と一緒に施行する積りでごさいますが、其の委員會に於きましては銓衡委員會竝に推薦委員會の組織は、厚生大臣が之を決めると云ふことに致したいと思つて居ります、大臣の方に於きましては、地方の實状に合ひますやうに或程度の基準を作りまして、どう云ふ範圍の人が宜いだらうと云ふやうな基準を作りまして、府縣知事の下に作りまする銓衡委員會の方は府縣知事が其の基準に基いて委嘱することに致したいと思つて居ります、市町村長の手許に作ります民生委員の推薦委員會の方は、大臣が定めました基準に基いて市町村長から委嘱する、其の委嘱された推薦委員會が適任者は斯う云ふ人が宜いだらうと云ふやうなことで推薦をして戴く、是は勿論地方の色々な實状があらうと思ひますので、餘り細かい、地方を縛るやうな基準は決めない積りでございます、地方々々で適當にやれるやうに、或は府縣等で又更に大臣の細則等を敷衍致しました基準を作ると云ふ風なことは差支ないやうに致して、成るべく地方の實情に合ふやうにして委員會を作るやうに致したいと云ふ風に只今考へて居ります、第三點の經過規定で、方面委員の職にある者を原則として民生委員とすると云ふ點でございます、此の點は衆議院の委員會に於きましても實は問題になつた點でございます、斯う云ふ風な經過規定が必要であります譯は、是はもう申上げぬでも御承知のことと思ひますが、一應方面委員令は此の民生委員令の施行と同時に廢止致すことになります、さう致しますと新らしく民生委員令を作ります、さうすると直ぐに此の民生委員令の推薦委員會或は銓衡委員會と云ふやうなものを作りまして、若干の手續を經てさうして厚生大臣から委囑されると云ふことで、初めて茲に民生委員が出來ることになる譯であります、之に若干の手續的な點……最近では地方等に於きましても改選を致した縣もあるのであります、さう云ふ所で又更に新らしい委員會を作れと云ふやうなことをやることも如何かと云ふやうなことで、其の穴をなくする爲に、一應經過的に方面委員の職にある者は其の儘民生委員にすると云ふ風にしたいと云ふので、まあ衆議院に此の資料を提出致して居つたのでございます、大變此の點も今御指摘になりましたやうな意味から御議論があつたのでございます、それで此の點に付きましては只今の所では衆議院等でも、若干其の穴がなくなる程度の猶豫期間を置きまして、此の際市町村等で面倒のないやうに或程度の猶豫期間を置いて、此の法律にもありまするが、二箇月間の猶豫を定めて置いて、保護施設を轉用する場合のは此の法律にもあるのでありますが、四十五條にあるのでありますが、斯う云ふ風に穴の空かないやうな風にして、地方廳で準備が出來るやうな期間を與へて民生委員をやり替へたいと云ふやうなこともどうであらうか、處が偶偶心配になりますことは、二箇月でありますと、丁度暮を控へまして、要援護者が困るやうな場合もありはせぬかと云ふやうなことも一應考へて居るのでありますが、さう云ふ點さへ差支なければ、衆議院でも御意見もございましたし、私共と致しましては、此の點は三年間もずつと任期のある限り、方面委員でやると云ふやうなことも或程度事務的に差支がないやうに地方で運營出來ますれば、此の際猶豫期間を置いて穴の空かないやうにしてやり替へると云ふやうなことを考へたらどうかと云ふやうなことを考へて居ります、尚其の外にも民生委員の點は任期が三年と云ふ風に、茲に四の所で名譽職として其の任期は三年とすると云ふやうになつてありますが、是は衆議院で附帶決議が付きまして、二年にしてしまへと云ふやうなことがあつたのであります、同じやうな趣旨だと思ひますが、是等の點は能く御意見のある所を徴しまして、是は民生委員令の公布は是は成るべく近い中にやりたいと思つて居りますが、是等の點も御意見に依つて、重任は差支ないから變へて見たらどうかと云ふ風に只今の處では考へて居る次第であります、それから第四點として住宅建築の點でありますが、是は御承知のやうに住宅の方は戰災復興院の所管でありますので、二十一年度の都道府縣別の豫算或は扶助の關係等は、御必要でございますれば後程復興院の方に聽きまして、出來て居りましたならば、御手許迄差上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=48
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049・北小路三郎
○子爵北小路三郎君 御願ひ致します、有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=49
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050・實吉純郎
○子爵實吉純郎君 此の生活保護法と結核問題とに關聯して御伺致したいと思ひますが、戰爭中結核の罹病率やら死亡率は發表がなかつたのであります、それで其の戰爭前迄は段々に死亡率が減つて行くやうな傾向でありましたが、其の後は必ず殖えて居るであらうと推察して居ります、と云ふのは色色の生活状態も不安定で、結核も殖えて行くやうに思つて居ります、今年も殖えて行く、矢張り食糧にしても、生活樣式にしても、住居にしても、皆結核を惡くすると云ふ方面ばかりが殖えて居りまして、それが良くなると云ふ現象が全くないのでございます、今必ず殖えて居るだらうと私は推察致します、其の數が御分りになつて居りますならば、一つ承知致したい、此の結核と云ふやうなものは、御承知のやうに可なり生活の問題に關係がありまして、生活が困難になるのも可なり此の結核と云ふものが原因になつて居りますから、此の結核の豫防或は結核の治療と云ふことと、此の生活保護と云ふこととは可なり重大な要素の一つになつて居るだらうと存じます、それで此の生活保護法を御實施になりまするならば、結核の方のことも可なり十分に御注意になりまして、それで結核豫防法との連絡を十分に御執りになつて下さるやうに私は希望致します、それに付ての御考を承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=50
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051・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 戰時中の結核の状態に付きまして、實は此の間貴族院の本會議で御質問がありまして、大分詳細に御説明致したのでありますが、其の時の資料は此處に持たぬものですから、數字はちよつと後で御届け致しまするが、大體に於きましては御意見の通り一時大分減つて來ましたが、最近三、四年は殖えて來て居ります、殊にちよつと年の行つた者、三十歳位からの者は殖えて居ります、特に其の傾向が著しいのであります、昨年あたりの數字は餘り能く統計は出て居りませぬが、宮城縣、富山縣、滋賀縣、五六縣に對する細かい數字が分つて居ります、是等の傾向も大體惡いのです、之に對しまして結核療養の設備も、病床數は軍隊の方の病院が國立の病院に移りました關係で、全國全體で六萬位の數字になつて居りまして、大分殖えました、併し只今療養所へ非常に入つて居る者が少なうございます、と云ふのは食糧の關係、どうしても食糧が續かぬものでありますから、結核療養所に於ける人が減つて、其の爲に開放性結核も大分散布されて居る、それから徴用工が強制勞働の結果、段々皆歸つて來たので大分罹病者が多い、全體に於て御話の通り惡い傾向です、それで此の問題に對しまする一番大きな問題は、矢張り食糧の問題が重大であります、是は御承知の通り段々明るくなつて來ました、それから療養の問題に付きましては、「ビー・シー・ジー」の注射も非常に效果がありまして、あれをやりますと死亡率が八分の一位に減りました、それから罹病率が二分の一迄に減りました、非常に工合が宜しいので、是は私の就任以來、國民全般にやつて宜いぢやないかと云ふことで、只今は徴用工の歸つた者でありますとか、復員者、引揚者などに付てやつて居りますが、今度是は國民全體にやらうぢやないかと云ふことで、三十一歳未滿で身體檢査をしまして、陰性になつた者を全部「ビー・シー・ジー」をやらうと云ふことで、追加豫算に請求致しまして、僅か二千五六百萬圓で出來る、全國で三十一歳未滿の者を檢査して、陰性の者は今度の追加豫算で八百萬圓ばかり計上して貰ひ、此の議會に出します、殘りは來年やります、來年度中には全部「ビー・シー・ジー」の注射可能の者はやつてしまふ積りであります、其の外色々の點に於て、結核の豫防に對しては相當積極的政策を採る積りであります、本法との關係に於きましても矢張り國庫の醫療法の方の補助がありますが、此の前に矢張り國民健康保險と云ふものが御承知の通り全國で約一萬四百位の組合があつて、都會を除きまして、地方は大分國民健康保險の網が張られて居る、處が是も網を急に張つたものでありますから、まだ運用がうまく行かぬ所もありますが、此の點も物價の値上りで非常に療養費が高くなりましたので、金が十分拂へぬで、國民健康保險も大分危機に切迫して居ります、是も一億五千萬圓ばかりの追加豫算の了解を得ました、續いて此の議會に出す積りで居ります、さう云ふことで先づさう云ふ問題、國民健康保險を第一線として、それに類したもので療養能力のない者に醫療をやつて行くと云ふ建前であります、それで矢張り結核に今後大分金が掛つて行くだらうと云ふ積りで用意はして居りますが、一面此の醫療施設、例へば日本醫療團とか、或は國立病院、國立病院は只今は引揚者、引揚軍人の方に主に使つて居りまして、まだ空きませぬけれども、此の問題も大體濟みましたから、來年度からは一般の療養に使へると思ひます、さう云ふ點を段々擴大をしまして、先程申しました醫療の普及と云ふことを強力に推進して行きたいと云ふことで、結核對策を其の中の重大なる部分として行つて行く、それに殘つたのを是で行く、此の分は生活保護法で結核と云ふものを成るべく少くしたいと云ふことを理想としてやつて行く積りであります、併しそれ迄に行かぬ内は、是で醫療の負擔をやつて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=51
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052・實吉純郎
○子爵實吉純郎君 只今の御話で色々御心配になつて居ることは分りましたが、結核療養所の患者が段々減ると云ふことをちよつと聞いたのでありますが、それは癒つて減るのでなくて、退院する人が多い、と言ふのは、療養所に入つて來ても餘り效果がない、それは食糧や何かの關係もありませうが、入つても別に良くならない、矢張り結局出てしまふと云ふのがあつて、以前程は結核療養所の患者が澤山居ないと云ふ話を聞きますが、是なども矢張り療養施設と云ふものに對する注意が足りないと云ひますか、或はそれに對しての食糧不足でありますとか、色々不便があつて、却て入院した方が惡くなると云ふやうなことを言ふ人もある、それと又、設備があつてもそれをうまく利用が出來ないと云ふことで患者が減る、さうするとそれは結核が癒つたのではなくして、結核が段々民間に散逸して、傳染をする力が却て増して來るのではないかと云ふ風にも考へられますので、其の設備だけは出來ても、それを動かすのに十分力を注いで戴かなければ實效は擧がるまいと思ひます、其の點も十分御注意を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=52
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053・河合良成
○國務大臣(河合良成君) 只今の御意見御尤もですが、全く結核療養所の人の減るのは食糧の關係であつて、是は御承知の通りの食糧事情から、あれで病院でやられては迚も堪らぬ、と云つて家から持つて行くにしても、自分の方にも十分な配給がないので苦しいものだから、仕方なく病院の方に行つても、餘り效果がないと云ふことで減つて居るのであります、それで段々食糧事情も好くなりますので、今度入る見込であります、豫算も追加豫算に千何百萬圓か追加して貰ふことに今やつて居ります、と申すのは物價が高くなり、日本醫療團なんかもなかなかやり切れなくなりまして、それに應じて結核患者も今後は殖える見込で、追加豫算を計上して居ります、勿論十分届かぬ所もありますけれども、一番大きな殆ど決定的な問題は、食糧事情であつたと云ふことを御了承願ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=53
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054・高木喜寛
○委員長(男爵高木喜寛君) 他に御質疑はございませぬか、それでは本日は此の程度で散會致します、明日は午前十時より開會致します
午後三時五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=54
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055・会議録情報4
出席者左の如し
委員長 男爵 高木喜寛君
副委員長 子爵 京極高鋭君
委員
公爵 島津忠承君
公爵 三條實春君
侯爵 黒田長禮君
伯爵 前田利男君
子爵 北小路三郎君
子爵 實吉純郎君
子爵 安藤信昭君
子爵 榊原政春君
小山松吉君
男爵 奧田剛郎君
男爵 團伊能君
男爵 北大路信明君
男爵 小原謙太郎君
木内四郎君
板谷順助君
正田貞一郎君
長谷川萬次郎君
中山壽彦君
江口文雄君
國務大臣
厚生大臣 河合良成君
政府委員
復員事務官 荒尾興功君
厚生事務官 勝俣稔君
同 葛西嘉資君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009001906X00419460902&spkNum=55
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