1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○地方競馬法案(衆)発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月十四日(土曜日)午前十時二十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=1
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002・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) それでは委員會を只今より開會致します、其の前にちよつと御諮りして置きますが、昨日皆樣に申上げて置いたことと存じますが、段々馬産方針の專門的の御質疑があるやうでありますから、此の會議中は農林省の馬産課長がずつと御出席のやうに存じますから、一々皆樣に御諮りをしないで、説明員として御發言を願ふやうに致したいと存じますから、念の爲に御了承を得て置きます
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=2
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003・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) それでは左樣致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=3
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004・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 多少專門的のことに亙りますけれども、二、三御質問申上げます、昨日迄の色々御説明に依りますと、地方競馬と公認競馬と、出す馬の標準が大變違ふと云ふ御話、公認競馬は「サラブレット」を主體とする、地方競馬は其の地方に保有される中間種、比較的重い馬を以て競走をしたい、斯樣な御説明があつたのであります、是は從來にもあつたことでありますが、競馬をやるからには、中間種よりも「サラブレツト」の血液に近いものが有利であることは疑のない所である、左樣な状況でありますから、地方に於きましては、馬の出走する資格を得る期間だけ輕い馬を繋養して出場資格を得て、競馬目的の爲にのみ馬を飼ふと云ふ者が出來て來る、左樣な馬が地方競馬でも有利になる、從來も斯樣な現象があつた譯であります、今後は從前よりも賞金も良いでせうし、馬票も澤山賣れることですから、斯かる傾向は從來に増して餘計になる、さうすると目的とする所の地方競馬に出すべき所の地方の中間種は不利である、詰る所さう云ふ馬は出來ないと云ふことになります、仍て其の結果は、公認競馬には到底勝てぬが、扨、中間種ではないと云ふ中途半端な馬が地方競馬に出場する率が餘計になる、是では此の競馬の目的を達せられない、是は技術的にどうしても何等かの方法を執らなければならぬと云ふことになります、此の點を如何にするかと云ふ御方針を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=4
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005・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 只今四條侯爵より色々御尋がございましたのですが、誠に御尤もなことで、又我々と致しまして、將來非常に注意を致さなければならぬと云ふ點の御質問でございました譯であります、地方競馬に付きましては、先般來の説明にもございました通り、全國に亙ります次第でございますので、それぞれ各府縣に於きまする地方の特色を持たした番組を編成させるやうに、施行規則の方でやりたいと考へるのであります、併しながら競馬は、御承知のやうに、「サラブレッド」を主體とする競馬が一番觀衆に興味を惹かれるのでございまするが、只今御注意もございましたやうに、それでは日本の馬産方針上色々弊害もございまするので、番組に特徴を持たせるやうに指導しまするに付きましては、生産地に於きまして、中間種の生産地等でございますれば、基礎牝馬になるものの能力を「テスト」する意味に於きまして、さう云ふ風な中間種の番組を編成致します、或は輕種を生産する地域に於きましては、輕種の牝馬の鍛錬をするやうな番組を編成致させる、それから生産等に關係のない地域に於きましては、事情に依りましては、相當な輕種の競爭も行はれるかと思ひますが、成るべく馬産を健全に發達させる意味合に於きまして、中間種の番組を組ませるやうに指導して參りたいと云ふ積りでございまして、競馬に出走致しましたものが擧げて繁殖の方に返して行くやうに指導したい、又繁殖に返しませぬものも、鍛錬に依りまして其の後實益的に能力を發揮し得るやうに奬勵して行きたいと云ふ積りで居ります、要は施行規則を作ります際の心得方と存じますので、只今の御注意の點は能く注意を致しまして、方針を誤りないやうに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=5
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006・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 只今の方法は、番組編成で成るべく中間種、重い馬を出すやうに編成すると云ふ御話でありましたが、さうすると「サラブレッド」の血量を何「パーセント」以上のものは出られぬと云ふ風に、血量を以て制限すると云ふ方法を執るのでせうか、そこを一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=6
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007・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 中間種に付きましては、「サラブレッド」の血量と云ふものの算定は可なり技術的に困難だと考へるのでございます、でございまするから、大體日本の馬の改良種に使つて居ります中間種は「アングロノルマン」が主體になつて居ります、「アングロノルマン」に付ては「サラブレッド」の血液が入つて居る譯でありますから、大體親、祖父等が「アングロノルマン」で出來たもの、或は其の系統馬であると云ふことがはつきりした番組を組ませると云ふことで出來るのぢやないかと思つて居ります、又「アングロノルマン」に付てもさう云ふ雑種が多い譯でありますが、其の點に付ては左樣な考へ方で進んで行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=7
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008・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 別の點でもう一應伺ひたい點がありますが、是は先般來私も伺つたことで、今日は技術的にちよつと伺ひたいので、更に同樣なことを伺ふ譯ですが、實際は馬産計畫と云ふものが出來て居つて初めて競馬の執行方法と云ふものが決定する譯であります、現在の處、日本の馬産計畫と云ふものが我々に發表がない以上、競馬を云々することは技術的に困難と思ひます、競馬自體をやると云ふことは、是は先般政務次官からも御説明があつた所で、如何なる馬産計畫が樹立されても競馬をやると云ふ御説明がありましたから、競馬をやると云ふことに付ては、私も了解出來たのです、如何なる競馬をやるかと云ふことは、新日本の馬産計畫が發表されぬ限りは、之を檢討することは出來ないと考へるのであります、現在我々の手許には、新馬産計畫は發表されて居らないが、大體の御方針が、新しい馬産計畫が如何なる血種を奬勵するか、如何なる使役馬を目的にするかと云ふことを全體が分つて居られると思ふのですが、概略新馬産方針を御示しを願へると大變結構だと思ひます、此の點を一つ伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=8
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009・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 御答へ申上げます、馬政計畫に付きましては、御承知のやうに、内地馬政計畫は一旦緩急ある場合の國防用の馬を造ると云ふ點が重點の一つになつて居つたのであります、一方に於きましては、産業用の馬を造ると云ふことも一つの重點になる譯でありますが、今後に於きましては、國防上必要なる馬を造ると云ふことは必要のないことに相成つたのでございますので、專ら産業用の馬を造ると云ふことになる譯でございます、處が産業と申しますると、馬の用途と致しましては、主たるものは農用の馬と輓用の馬とに相成るのでございますが、輓用の馬に付きましては、大體前の方針でも大した差支はないのであります、軍馬的なる考から、規格等に付て相當制限がございましたが、それ等の點で緩やかになるだけでございまして、大いした問題はございませぬのであります、處が農用になりますと、御承知のやうに、此は北海道、南は九州の端迄考へますると、可なり日本の農業事情と云ふものは複雑多岐でございます、從來も勿論馬政計畫で考へないのではございませぬが、一般農用馬と云ふことになりますと、特に技術的に色々考へなければならぬ點が出て來る次第であります、今日迄内地馬政計畫の廢止と同時に新しい馬政計畫を出しませぬのは、如何なる馬が最も農用に適するかと云ふ問題で、愼重に檢討を要するものがございまするので、遷延を致して居る次第でございます、大體の成案を得ましたので、近くそれぞれの手を通じまして發表をし得るやうに相成ると考へるのであります、極く概略を申上げますと、輓用の馬も、農用の馬も主體は矢張り中間種であることは勿論でこざいます、唯輓用馬に付きましては相當大格なるものを、能力上差支なければ、之を繋養すると云ふことが變つて來ることと思ひます、それから農用馬に付きましては日本人の體高、背の高さが西洋人に較べましては低いのでございますので、之に適するやうにすると云ふこと、最も使ひ易いものを造る積りでございますから、從來の兵器等の關係からの制約は全然なくなりますので、是は外國のものに較べれば相當小さくなると思ふのでございます、體高の點は先づ五尺以内のものが宜しからう、斯う云ふ風に考へて居るのであります、唯坊間餘り關係のない人の質問は、農用馬になれば日本の馬と云ふものは改良する必要がなくなるであらうと云ふやうな御質問を受ける場合もあるのでありまするが、是はさう云ふ風に參りませぬので、實は使ひ易い馬と、簡單にさう申しましても、人の馴致に適するやうに、且又能力を擧げて、是から農業が非常に重い意味を持ちまするに付きましては、さう云ふ馬を造り上げることに致しますと、從來よりも一層丁寧に改良をする必要があるやうに考へて居ります、是は「フランス」等に於きましても、左樣な風でございまするが、全く農用に使つて居る「フルトン」と云つたやうな種類の馬でも輕種の血液を相當に入れませぬと、其の馬の調教の感度の點から、且又機動力の點から申しましてうまくございませぬので、御承知のやうに或程度の輕種の血液を入れて改良して居るのでございます、孰れに致しましても、馬と致しまして最も進んで居りまするのは輕種でございまするから、其の血液め巧みに利用することに依りまして馬の改良を進めて行くと云ふことは、今後農用の馬が非常に澤山造られることになりましても忘れてならぬ點であらうかと考へて居ります、それから農用馬の數でございまするが、大體の計算を致しますると、先づ百四十八萬頭位の働かなければならぬ農用馬があると考へます、之に約二萬頭を加へました百五十萬頭を越す程度の馬が必要に相成るのでございまするが、其の外に開拓計畫の進捗に伴ひまして、開拓計畫を進めまするにも、更に開拓が竣工し々曉に於きましても大體は高冷地の農業に相成りまするので、先づ今の處では三十萬頭近い頭數を必要とするものと思ふのであります、さう致しますと、ざつと計算致しまして百八十萬頭を越える馬の頭數が必要であらうかと思ひまするが、現在の状況から申しますると、之を達成致しますることは可なり困難でございます、併しどうしても必要と云ふことになりますれば、色色手の盡しまして増産に努めなければならぬと思つて居ります、尤も此の増産は戰爭前に於きまして年々十二萬頭位の生産でございましたものが、戰爭中に非常な努力を致しまして十九萬頭位に達して居りまするので、農村の彈力性に信頼を致しまして或程度の増産は必ず成し遂げ得るものと斯樣に考へる次第でございます、其の外計畫の細かいことに付きましては、何れ機會を得まして申上げたいと考へまするが、只今まだ發表を致しまして御批判を受ける程度になつて居りませぬので、此の程度のことを申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=9
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010・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 從來中間種の繋養種類は「アングロノルマン」に限ることになつて居りましたが、今後「アングロノルマン」の種馬を歐洲大陸から得ることも極めて困難と思ひまするが、今後の奬勵馬種の如何に定められるか、此の點をちよつと伺ひたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=10
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011・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 御答へ申上げます、「アングロノルマン」を「フランス」から輸入致しますることは、當分の間困難であらうと思ひます、併しながら最近聞きます所に依りますと、「フランス」と致しましても相當に氣を附けて、「ドイツ」軍のああ云ふ風な状態の時にも、疎開致しまして、大した資源の荒發がないと云ふ風に傳へて居る向きもあるのであります、併しながら日本が從來「フランス」から改良の原原種を入れまして、改良を進めて來たと云ふことに付きましては、此の際大いに考へ直さなければならぬ點がございますること御承知の通りでございます、でございまするので、先程種畜牧場を全國に新たに設定を致しまして、從來ございます種馬牧場と併せまして、是迄の牧場を活用致しますことに依りまして、純日本的な馬の改良をする意味の原原種を造りたい、斯樣な希望を持つて居るのでございます、併しながら事情が許しますれば、「アメリカ」にも、研究を要しまするが、相當に輸入して改良の原種にして宜しいのもあると思ひますので、輸入が出來るやうな事情になりますれば、或程度の馬を入れて戴きたい、斯樣な風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=11
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012・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 もう一點伺ひたいのですが、公認競馬に於ても、地方競馬に於ても速歩競走をやるのか、竝に我が國で今後「アメリカ」との交通、貿易も非常に深くなることと思ひますが「アメリカン・トロッター」の種類を繁殖すことの良し惡しと云ふ問題は如何でせうか、此の點に付て御意見を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=12
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013・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 「アメリカン・トロッター」に付きましては、御承知のやうに戰爭前に於きまして、軍馬の改良には餘り役に立たぬものであると云ふので、政府としては勿論入れませぬし、民間としましても餘り入れることを好まないやうな風に考へて居つたのでございますが、「アメリカン・トロッター」は、是も能く御承知のやうに、速歩能力に富んだ馬でございまして、且又所謂中間種の「アングロアラブ」と言はれる位、敏感でもありますし、歩容等も良く速い馬でございまして、此の純粹のものは兎に角と致しまして、之の雜種になりましたものは相當民間にも居りまして、農用馬と致しては結構なものだと云ふ風に實は考へて居るのであります、政府の方針はまだそこ迄檢討を加へて居りませぬのでございますが、私一存の考に致しますれば、或程度の「アメリカン・トロッター」を入れまして改良の原種に使ひたいと思ふのでございます、從ひまして競馬に此の「アメリカン・トロッター」の走る番組を編成して貰ひたいと實は考へて居る次第でございます、尤も此の點に付きましては、尚從來の行懸りもございまするし、且又日本の馬の改良上「アメリカ」の馬を入れると云ふことに付きましては、色々技術的に檢討を要するやうな點もございますので、更に愼重に研究の上で、さう云ふ方針を採るか採らないかを決めたいと思つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=13
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014・渡部信
○渡部信君 一つ法律的なことを伺ひたいのであります、競馬をやりまして、現在の競馬法なら勝馬投票券、本案に依りますれば優勝馬票、之を賣ると云ふことは、法律の性質として賭博に當るものと御考であるかどうか、之を一つ伺ひたいと思ひます、本來の性質を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=14
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015・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 皆さんに申上げますが、今馬産課長は居られますが、畜産局長が居られませぬので見える迄御待ち願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=15
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016・渡部信
○渡部信君 法律のことをずつと關聯にして伺ひたいと思ひますから後程質問致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=16
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017・瀧川儀作
○瀧川儀作君 昨日から御質問のありました馬産助成金のことでありますが、過去に支出された年度、金額が分つたら伺ひたいと思ひます、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=17
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018・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) それでは政府委員が見える迄速記を中止致します
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=18
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019・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 速記を始めて……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=19
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020・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 もう一點ちよつと伺ひたいのですが、從來日本の競馬は外國から「サラブレット」が入つて來て、日本で繁殖して走らせて居た、外國ぢやもう一流の馬を賣らない、他國に出して居るのは二流の馬を賣る、技術の足りない日本で走らせるのだから、競走の「タイム」が外國に追つつかぬことは當然のことなんで、外國と「タイム」を爭ふと云ふことも實際は愚の話だ、寧ろ日本が獨得な行き方で競馬をやつた方が面白いのぢやないかと云ふやうな意見は民間に多々あつた譯であります、それに付ても外國と同樣な距離であつたり、或は同樣な負擔重量では、詰る所種の二流以下のものを連れて來て、同じやうなことをやつて居るに過ぎない、そこで日本がまあ獨得なことをやるとすれば、例へば非常に競走の距離を延ばす、重さもうんと重い物を背負はせると云ふことになれば、もう別段外國と「タイム」を爭ふこともない、別個の馬を日本で造つて行く形になる譯なのです、且從來の馬の状況を見ましても、競走の距離が短い程背の高い馬が出來て居りますし、競走距離が長い程背の低い、持久力のある馬が出來て居る、斯樣な状況であることは爭はれない所であります、況して日本の要望する馬が日本人の身體に適當した低い馬を要求して居ると云ふことになれば、最も改良上は適當ぢやないかと、斯う思ふのです、唯競馬の距離を延ばしたり、重量を重くすると馬が痛み易いから、餘程賞金を多額に拂ふとか、何かの助成方法がなければ、馬主はなかなか容易でない、斯樣に思ふのであります、併て今迄通りのことをやつて居つても、果して今後の日本の馬を改良するのに如何かと存ずるのですが、競馬の執行方法を根本的に改良すると云ふやうな御意見でもありますでせうか、此の點ちよつと伺ひたいのですが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=20
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021・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 御答へ申上げます、只今御質問がございました點でございますが、日本の「サラブレット」の發達は、御承知のやうに相當向ふから出て來ます原種の馬が、御話のやうに中等程度のものでございまするが、それにも拘らず進歩して參りましたことは明言して憚ない所だと思ふのでございます、將來に於きましても、此の「サラブレット」は非常に優秀なものが馬の改良に役立つのでございまして、餘り優秀でないものは餘り必要ではないのであります、で何を以て優秀と言ふかと申しますれば、勿論體形等もございますが、走ることを唯一の目的とし居りまする動物でございますから走らなければならぬのであります、我々と致しましては只今御意見もございましたけれども、甚だ御意見を反駁するやうな風に申上げて居るのではございませぬ、信ずる所を申上げて居る譯でございますが矢張り「ヨーロッパ」や「アメリカ」の馬に較べまして劣らないやうなものを造りまして、將來に於きましては國際的な競馬場を日本にも開きまして、濠洲や「アメリカ」から馬を持つて來ましても、之に勝ち得るやうなものを造る、極く尤物を造りまして、其の血液を流すことに依りまして改良を進めて行きたいと云ふやうな念願を持つて居るのであります、迚も是は只今四條侯爵の御話になりましたやうに相當困難なことでございますが、どうしても達成して、是非日本の馬の水準をそこ迄高めて行く必要があり、さうしなければ折角「サラブレット」をやる價値もないやうにも考へて居るのでございます、將來許し得まするならば、優秀な種馬の日本に入れて戴きたい、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=21
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022・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 もう一點伺ひたいのは、「サラブレット」の競走の外に「アングロアラブ」、「アラビヤ」馬と「サラブレット」との掛合せの「アングロアラブ」の「レース」がありましたのですが、之を今後許可爲さる方針でありますかどうか、之を伺ひたい、實際「アラビヤ」馬の數も減つて居りますし、「アングロアラブ」の査定も極めて困難ぢやないか、或は血統に示してあるやうな果して相當な「パーセント」のものが揃つて居るかどうかと云ふことの疑を挾む點もあるので、今後「アングロアラブ」の「レース」を奬勵爲さる方針であるかどうか、ちよつと之を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=22
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023・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 「アングロアラブ」に付きましては、現状は戰爭前に較べまして餘程減少して居るのでございます、是は「アングロアラブ」の方のことは主に實用的な乘馬と云ふことであつたのでございます、戰爭中或は終戰後になりましてからさう云ふ必要も次第に乏しくなつたのと、一方に於きましては生産費が相當高いのでございまして、「サラブレット」よりも幾分安いのでございますが、優秀なものを造りまするには相當の生産費が掛るのでございまするが、にも拘らず經濟的に惠まれない、競馬と致しましても惠まれない状態にございますので、段々減少致して參つて居るのでございます、併し此の「アングロアラブ」は一面から申しますと、「サラブレット」に較べまして體躯も低うございますから、身體全體が小さいのでございまして、或程度は競馬の方に改良上用ひる餘地がないでもないと思ふのでございます、今急に生産方針に變更を加へることはございませぬで、大體現状よりも積極的に奬勵して行く意思はございませぬが、さればと云つて急に之を減少させると云ふことも色々事情がございまして困難ではないかと思ひます、大體其の程度でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=23
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024・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 馬の衞生のことでちよつと伺ひたいのですが、今囘戰爭に依つて海外から相當馬の流行病を持込んで居ると云ふやうな話をちよつと耳にしたのですが、其のやうな點非常に今後處置せねばならぬと云ふやうなことがあると思ひますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=24
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025・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 海外から持込みました病氣と致しましては、南方から入りました「ズルラ」があるのでございます、是は一時非常に心配致しましたが、現状では大したことないと考へて居ります、其の他の傳染病は鼻疽でございますが、鼻疽は現在では殆ど終熄して居るやうに考へて居ります、大した御心配は掛けるやうなことはなからうかと思ひます、其の他にはさして申上げる程の病氣は只今の處馬に關しましてはございませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=25
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026・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 全然是は又關係はないことですが、馬の改良以外を考へれば、金の吸收とか、或は社會事業費の捻出と云ふやうなことを考へれば別段馬に限つたことではないので、往々今犬の競走をやるやうな話を聞くのですが、犬の競走は馬票に類似したものを賣つて之を許可する御意思でありますかどうか伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=26
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027・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 只今の處はさう云ふ風にも承つて居りませぬので、何とも意見もございませぬのでありますが、若しあると致しますれば、競馬をやれば實は澤山ではないかと思つて居ります、犬の競走のこと迄は考へぬでも宜からうと思ひます、唯私共さう云ふことを承つて居りませぬので甚だ申譯ありませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=27
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028・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 井上馬産課長馬のことだけしか御權限がないと思ひますが、畜産局で、是は現在犬の競走は一部の新聞にも載つたやうな譯で、我々も興味を持つて居る譯ですが、犬は家畜としての取扱を受けて居らぬかも知れませぬが、賣上と云ふやうな問題から考へれば、馬と違つて極めて土地を少く使つて濟む、設備も簡單であるし、社會風教上の害を馬券が餘り伴はぬと云ふことになれば是も考へねばならぬのでありますが、畜産局で犬の競走を出願する者があれば許可爲なる方針ですか、局長おいでになれば御意見を伺つて置きたいのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=28
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029・灘波理平
○政府委員(灘波理平君) 實は犬の競走に付きましてはまだ研究を致して居りませぬので御答へ申上げ兼ねますが、競走に伴ひまして何と云ふ名前になるか存じませぬが、馬券に類似したやうなものを賣ることになりますと、是は我々だけの話では決りませぬので、他の方面と十分折衝致しませぬと御答へ申上げ兼ねるかと存じます、只今の處は研究を致して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=29
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030・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 只今の點でもう一遍ちよつと伺ひたいことがあるのですが、實は先程馬券が賭博でありや否やと云ふ御質問があつて、實際に今御答へがあることと思ひますけれども、私等競馬法案が上程された場合には大概委員會に出て居りましたが、從來我々常識として教へて戴いたのは實際丁か半かと云ふ一般の純然たる賭博でない、馬の鑑識眼の競爭である、あの馬は良い、此の馬は良いと云ふ鑑識眼に訴へた競爭で、賭け事類似として一應賭博と分けて考へるやうに御説明があつたのであります、處が犬の競走になりましても實際純然たる賭博と無論言へない譯で、あの犬が良い、此の犬が良いと云ふ、犬の鑑識眼に訴へた競爭となるから、無論今迄の競馬の馬票の取扱から言へば、犬であらうと兎であらうと一向差支ない、唯要はそれで一方は馬の種類を改良する、一方は犬は改良しても差詰め我々實社會に役立つ動物でないと云ふだけなんで、此の點私が犬の券を賣ることに付ては同樣だと思ひます、唯犬の改良と云ふ問題でさして重要でないと云ふことになるのですが、實は一部には犬も繁殖すると云ふ話があつたのも聞きましたから、是は一つ御研究願ひたいと思ひます、左樣な譯で今のことも今囘もう一應先程の質問同樣、犬なり馬なり券を賣ることが純然たる賭博としての取扱を受けるものか、或は從來の如く賭博類似の行爲で、動物の鑑識眼に訴へて競爭すると云ふことか、此の點一つ伺ひたいのですが、矢張り馬票が賭け事に付ての根本義に付て一つ御説明あれば結構だと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=30
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031・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 能く調べまして御答へ申げるさうです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=31
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032・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 私の質問は一應是で打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=32
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033・瀧川儀作
○瀧川儀作君 今四條侯爵の御質問もありましたが、四條侯爵は非常に御詳しいのでありまして、私は學問したのではないのでありますが、併しものは惡い半面を見ないで、良い半面から解釋して行くことも必要であります、私は此の競馬とか其の他賭博に類するやうな疑ひのあるものは、自身個人としては關係はないのでありますが、惡く解釋する場合に、大藏省が富籤附の公債を發行すると云ふ場合も、射倖心を煽ると云ふことになりますが、さう云ふ意味でなくて、現在財界が「インフレーション」で非常にやかましい問題になつて居りますが、此の次に來るものは非常な不景氣で、國民が塗炭の苦しみを嘗めるのぢやないかと云ふ風に考へて居ります、斯う云ふ場合には射倖心を煽る譯ではありませぬけれども、或意味に於て之を善用して人氣を、或は誠に沈んだ氣分を復興せしむる上にも、效用があるのぢやないかと斯う云ふやうなことも考へて居ります、現在と致しましては、復興事業は非常に財源に苦しんで居りますから、前囘も申しました通り地方の都市邊りの財源の目的の爲に、之を留保させて戴くと云ふやうなことを、當局として御考を願ふ餘裕を持つて戴きたい、斯う云ふ風に考へまして良い方面から見た四條侯爵の御意見に、私は共鳴する者であります、又適當の場合に意見を申上げますけれども、此の點は政府當局に於きましても監督も要します、無暗な「スペキュレーション」を奬勵するやうなことになりましても弊害が伴ひ易い、是は情操上から大いに注意の要することと思ひますけれども、經濟上から見て相當效用をなす場合もあるかと、斯う云ふ風に考へられるのでありますが、さう云う方面に付ては細心の御考慮を願ひたい、是は質問でないかも知れませぬが、此の機會に意見を申述べて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=33
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034・三須精一
○男爵三須精一君 競馬は馬の改良増殖が目的でありますが、我が國が保有馬として改良して行くべき必要が、先づ先程御話の通り何十萬頭と云ふことになりまするが、それを完成するのに大體の御見込みとして、現在の種馬及び其の他設備で、どれ位の年限が掛ると云ふ御見込みですか、同時に現在一年間に於ける生産馬の状況に付て、御説明があれば承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=34
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035・井上綱雄
○説明員(井上綱雄君) 馬の改良は馬一代と申しますと、改良の方では先づ六年と見て居るのでございます、と申しますのは、馬の母體が完全に發育して行きますには四年間掛るのでございます、丁度子供が生れます勘定を致しますと、六年に相成るのでございます、如何に多くとも全く改良し得る馬が居ると致しまして、之を改良を成し遂げるには、少くとも馬の三代、五代を必要とすると考へるのであります、三代經ちますと所謂「エフ」三が出來る譯であります、其の程度になりますと、今迄の經驗に依りまして相當程度に改良が進んで來るやうに思ふのであります、現在の處では明治三十九年以來既に長い間、改良を進めて參りましたのでございますが、遺憾ながら從來の改良の方法の儘で進みますれば、非常に日本の國防上の問題が急がれました爲に、根柢的な科學的な改良方法に付て、遺憾な點がないとは申上げられぬのでございます、併しながら改良の基盤は既に出來上がつて居るのでございます、之に手を加へまして今後馬二代十二年位になりまするが、其の位經ちますれば技術的に、産業用馬を確立することが出來るのではないか、斯う云ふ風に考へて居ります、尤も之に付きましては相當多額の經費を要しまするし、又關係者の熱心な努力を續けて行かなければならぬと考へる次第であります、それから種と致しまして牡の方は、只今計畫では七千五百頭を標榜して居るのでございます、戰爭の影響、其の後引續く終戰の混亂に依りまして、是が現在で五千頭臺に下つて居るのであります、併し是は本年の豫算、明年に要求致します豫算等に付きまして、急速に必要程度に持つて行きたいと考へて居ります、牝馬の方は六十萬頭位でございますが、實際繁殖に使ひますものは、其の中の四十五萬頭位でございます、尤も年々子供を持ちまするものは、同じ馬が年々持つと云ふ譯には參りませぬので、大體三分の二が年々使はれることになりまして、三十萬位が使はれることになります、さう致しますと現在の事情では、生産致しますものは其の四十「パーセント」から五十「パーセント」の間でございます、先づ生産として十四五萬頭と云ふ所でございます、尤も本年は十二萬八百頭でございます、明年は更に是が減少致しまして、十萬頭そこそこになると考へて居ります、此の原因は主もに終戰に於ける一時的の農村の混亂に基く、斯樣な風に考へて居ります、併し之の常態に立返らせることは、さう困難ではないと思ひます、以上のやうにして改良を進めて行きたいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=35
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036・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 御異議がなければ本日は此の程度で散會致したいと存じます、次會の委員會は來週の火曜日午前十時から開會致したいと思ひます、本日は是にて散會致します
午前十一時三十一分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=36
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037・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 西尾忠方君
副委員長 男爵 三須精一君
委員
侯爵 四條隆徳君
伯爵 南部利英君
小山松吉君
松村眞一郎君
男爵 徳川誠君
男爵 斯波正夫君
瀧川儀作君
安田伊左衞門君
有馬忠三郎君
渡部信君
政府委員
農林政務次官 大石倫治君
農林事務官 灘波理平君
説明員
農林技官 井上綱雄君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00319460914&spkNum=37
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