1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
地方競馬法案(衆)
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昭和二十一年九月十七日(火曜日)午前十時十八分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=0
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001・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) それでは只今から地方競馬法委員會を開會致します、渡部君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=1
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002・渡部信
○渡部信君 私は法律の關係のことをちよつと御伺ひしたい、本法案に依りまして優勝馬票を賣ることが出來る、現在の競馬法に依れば、勝馬投票券、さう云ふ所謂馬券を賣ると云ふことは法律上賭博、富籤、さう云ふ性質を持つものと御考でありますかどうか、其の點を伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=2
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003・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 只今の御質問は、競馬は賭博であるかどうかと云う御質問でございますが、從來の競馬法に於きましては、矢張り賭け事であると云ふ點は認めて居るのでありまするけれども、普通申す所の賭博、例へば丁半とか、其の他の賭博のやうなものとは認めて居らぬのでありまして、競馬法制定に當りましても是が色々議論せられたのでありますが、結局法文の上から見ましても賭け事、賭博と云ふ意味では扱つて居らないやうであります、さうかと言つて賭け事でないと云ふはつきりしたことも申して居りませぬ、唯此の公認競馬等に於きますることは、色々科學的に研究が出來て、大體勝負の結論を得るやうな方法もあり、又其の馬の能力と云ふやうな一つの認識標準を以て爭ひ得るのでありまして、一六勝負のやうな運否天賦の全然自分の考へ方や研究が何等の價値がないと云ふやうな勝負でございませぬから、賭け事と申しましても、其の點に於きましては非常に輕い意味に扱はれて今日馬券の賣買が許されて居ると存じます、勿論先年競馬法制定當時の日本の國情に於きましては、賭博を禁止すると云ふ原則に依つて總てが扱はれて居りました、今日と雖も賭博は公認せられて居りませぬけれども、事變前から戰爭中に於きましても、現在行はれて居る所謂富籤と云ふやうなものは行はれて居るのであります、競馬法制定の當時に於きましては、此の富籤などと云ふものは、矢張り一六勝負である、さう云ふ投機的なものは許さぬと云ふやうな時代でありましたが、時代が推移致しまして今日は政府に於きましても「インフレ」防止の一手段としても、或は色々なる目的に於きましても、遙かに此の競馬よりも無制限な富籤が行はれて居る時代でございます、従つて此の法律制定に當りましても、其の點も一つ御了承を願ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=3
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004・渡部信
○渡部信君 實は先日御尋ね致しました時に、政府の方がいらつしやらなかつたものですから、漠然と御尋ね致しましたが、只今の御話に依りますと、私は競馬が賭博かと云ふことを御伺ひした譯ぢやないのです、別に議論する譯でありませぬけれども、競馬でなく、唯馬の競走をすることは少しも差支ない、此の馬券を賣ると云ふことが問題になるのですが、それは御話の通り、丁半とは成る程違ひます、違ひますけれどもどうも普通の刑法の學説では賭博にして居るやうであります、唯同じことでも、無論刑法に反するけれども博奕でなくて富籤であると云ふ説もありますが、孰れにしても刑法に違反であると云ふのが大體の通説であります、殊に丁か半かと云ふやうに全く偶然のことばかりでなくても、そこに多少力量とか、熟練とか云ふやうなことが入る競技…「ジユ・ダドレス」又は「クンストスピール」と云ふやうな競技的のものでも、必ずしもどれが勝つと云ふことが當らないのであります、勝敗と云ふものは決つて居るのではないから、此の力量やなんかを見てやる場合でも、そこにどうしても偶然と云ふことがあるから、賭博であると言ふのが通説のやうに思います、只今の御見解は、通説はさうであつても賭博と認めない、斯う云ふ御考でありますか、賭碁なんかでも大體兩方の力量が同じでありましても…あそこに法律家もおいでになりますが、大審院の判決でも度々賭博であると云ふやうになつて居りますし、又學説でも賭博であると云ふのが一般の通説のやうであります、それでも馬券を賣ることが、賭博でないと斯う御認めになるのでありませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=4
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005・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 只今御答へ申上げましたのは、はつきり賭博でないと言ひ切つて居りませぬ、又要するに馬券を賣つて居ると云ふことは一つの賭け事に相違ない、其の點は認めて居るのであります、けれども俗に稱する賭博、一六勝負の賭博と云ふやうなものとは考へて居りませぬ、それでありますから賭け事でないとも申さぬし、又賭博であるとも申さぬ、少し瞹昧のやうでありますけれども、是は常識的に一つ御判斷を願ふより外ないのでありまして、永い間競馬は馬券を賣捌きまして、さうして現在に及んで居るのでありますから、國の觀ました馬券の關係は、一面に於ては多少の弊害も確かにありますけれども、それと共に國家的の、又公衆的の利益と云ふものが伴うて、それを補うて餘りあると云ふ關係が今囘の地方競馬法の提出せられた所以であると斯う存じて居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=5
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006・渡部信
○渡部信君 只今の御話の通り私は馬券を賣ることが宜しくないとか、或は此の法律がいかぬとか、決してさう云ふ意味で申上げて居るのではありませぬ、唯此の馬券を賣ることは法律上賭博の性質を持つて居ると政府は御認になるかどうか、先程富籤も行われて居ると云ふやうな御話がありましたが、所謂寶籤のやうなものは一々法律上の根據があるやうでありまして、臨時資金調整法に基いて、寶籤を賣出すことが出來ると云ふやうなことで、廣く行はれて居るのではないかと思ひます、馬券を賣ることは無論一面に所謂馬事の振興上必要なことでありますから宜しいのでありますし、又一面獎勵すべき理由があると云ふことで、法律で矢張り特に馬券を賣ることが出來ると云ふことが、競馬法に於ても或は此の案に於ても入つて居るのではないでありませうか、本來ならば禁止すべきであるが、一面に於て獎勵すべき場合もあるから、特に法律を以て除外例を認めた、斯う云ふ意味でおいでになるのではないでありませうか、別に深く議論を致さうと云ふ考はないのでありますが、唯法律の規定がなければ、是が違法になるのであると云ふ御考なのでありますか、或は規定がなくても違法ではないと云ふ御考なのであるか、一般通説なり判決例を見ますと、ちよつと御話と違ふのでありますが、其の點原則として法律がなければ違法になるかならぬか、最後の結論だけちよつと伺つて置きたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=6
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007・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 御説の通り考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=7
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008・渡部信
○渡部信君 さう致しますると、法律の規定がなければ大體競技的のものであつても違法であると御認になると致しますれば、第一囘の時から伺つて居りますと、地方に於ては競馬をやつて居ると云ふことでございますが、其の地方競馬に於ては馬券は矢張り賣つて居るのでございませうか、其の點をちよつと……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=8
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009・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 終戰後此の地方競馬と申すべきもの、即ち先般來申上げて居りました總動員法に伴つて出來ました軍馬資源保護法に依る鍛錬馬競走と云ふものが廢止せられまして以來、何等の規定も法律もないのであります、其の後實質上所謂地方競馬類似のものが行はれて居りまして、其の競馬に於きましては矢張り優勝馬票には配當が伴ふのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=9
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010・渡部信
○渡部信君 さう致しますると法律上の根據なくして馬券を賣つた、それはまあ地方長官の認可があると云ふ御話でございまするが、何か法律上の根據なくして、通説に依る賭博と認めるものを公認したやうな恰好になりますが、さう云ふことになりますでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=10
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011・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 此の點ははつきり茲で御答へ申し兼ねるのでありますが、此の類似競馬も地方長官、所謂知事が認可を與へて行ふものでありまして、全然開催者が何等の法規其の他を無視してやつて居ると云ふやうなものでもないのであります、開催屆を致し、それに對して地方長官が認可を致す、又所に依りましては賣上金の中から百分の五程度位の、名前はどうなつて居りますか、寄附金と云ふことになつて居りますか、課税と云ふことになつて居りますか、兎に角收入を得て居ると云ふ所もあるやうでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=11
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012・渡部信
○渡部信君 さう致しますると、まあ法律上の根據なく賭博を公認したと云ふ恰好になる譯でありまするが、其の意味から申しましても、御話の通り早く此の法律を制定することは非常に必要なことかと思ひます、殊に此の前の御話に依れば、色々收入の使ひ方等も監督の方法がないと云ふ話もありましたが、一部さう云ふ税ではありますまいが、税のやうな名前で取つたやうな所もあると致しますと、孰れに致しましても斯う云ふやうな法律は早く通す必要が益益あるやうに存じまするが、それで誰方か仰しやつたかも知れませぬが、さう致しますと、さう云ふ賭博と學説なり、判例上認められて居ることを學生や未成年者でも御許になるのか、現在の競馬法では認めて居ないことを御許になる、如何に自由主義でありましても未成年者でも之を御許になると云ふ風にせられた御趣旨は何處にあるのでありますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=12
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013・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 其の點は細則、或は施行規則に依つて制限し得る場合があると存じます、法律の面では制限をして居らぬのでございますが、此の法律の施行細則の運營等に依りまして、相當制限、或は秩序の上に、或は國民思想の上に惡影響のありと認められる場合に於きましては、相當制限を加へて取締を致したいと斯う考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=13
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014・渡部信
○渡部信君 只今の點は是れ以上は議論になりまするから一應申上げて置くに止めます、序に各條文のことで、例へば此の案の七條に、現在の競馬法に依りますると、入場料の金額等は主務大臣の認可を受けろと云ふことがございまするが、是はさう云ふ認可は成るべく減らすと云ふ意味でありますか、入つて居らぬやうでございますが、入場料其の他、現在の競馬法の七條には、入場料の金額とか勝馬投票券の券面金額、其の他主務大臣の認可を受くべしとなつて居ります、是は入場料を取らねばならないと云ふことはありますが、其の認可は要しないと云ふことに致してありますが、さう云ふ認可を經なくても宜しいと云ふことになされた理由をちよつと伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=14
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015・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 現行競馬法の第七條に於ける入場料の金額、勝馬投票券の券面金額及び發賣方法等の認可に關することは、此の地方競馬法にははつきりと申して居りませぬが、大體此の間もどなたかの御質問に御答へ申上げましたやうに、第一條の開催認可に當りまして、相當さう云う點は明かに致して認可を致すのでございます、入場料も一圓とか二圓とか三圓とか、又馬券も、法律には十圓以内とありますが、十圓を發行するか、五圓を程度として開催するかと云ふやうな、開催者の認可申告の際に、さう云ふやうな條件が大體明かにせられることになります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=15
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016・渡部信
○渡部信君 もう一つ、九條に優勝馬票を賣出すことの出來ない者が列擧してございますが、それは競馬法と比較致しますと、競馬法には開催執務委員、其の外に調教師とか馬丁とかありますが、調教師、馬丁と云ふ者は差支ないのでございませうか、競馬の事務に從事する者と云ふやうな言葉はありますが、調教師、馬丁などを態々御拔きになつた理由を一つ伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=16
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017・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 第九條に依りまする制限が、現行法よりは少し弛んで居ると仰せられますが、多少其の點に於きまして調教師或は騎手、馬丁と云ふやうなものは現行法の第五條にございますが、此の地方競馬法にはそれは拔いてありますが、別に根據と申しても、格段なる根據はございませぬで、例へば騎手であるとか、或は調教師、馬丁と云ふ者は、出場馬に直接關係を持つて居るものでありまして、是等の馬券を買ふことが八百長をやつて弊害があると云ふやうな建前から今迄は禁止致して居つたのであります、此の度の法律に於きましては、現在の競馬法よりも大體大まかな建て方でございまして、さう云ふ缺陷或は色々なる點は、主に細則及び開催規程等に依つて制限をし、運營を致すと云ふ建前でありまする爲に、原則として禁じましたのは、第九條の競馬を開催致します法人の役員とか、或は開催執務委員、騎手其の他競馬の事務に從ふ者等とございますから、是等の點は矢張り細則等に依りまして規定を致して運營を致す、斯う云ふ建前でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=17
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018・渡部信
○渡部信君 今の未成年者の件と共に是も細則、施行の規則の方で出來る、さう云ふ一つの御考でありまするが、是は違反しますと罰則を伴つて居りますし、出來るならば、若し規定するならば、法律の方が宜くはないかと云ふやうな感じが致しまするから、是は唯議論になりまするから、一應さう云ふことを伺つて置きます、それからもう一つ伺つて置きたいことは、此の十五條に色々法令に違反したり、公益を侵害したりすることは、次の處分をすることが出來ると云ふことがあるのでありますが、例へば第一條で許可を受けて競馬を行ふのに、許可がないに拘らず競馬を行ふと云ふやうに法律に違反したり、許可を取消されたり、競馬の停止を命ぜられたりすると云ふことがあるのであります、其の競馬の停止を命じたにも拘らず、取消されたにも拘らず、競馬を行ふ、更に全然第一條の許可を得ずして競馬を行ふと云ふやうな場合に、此の開催者なり施行者なりに罰則がないやうでありまするが、さう云ふ規定に違反した場合は罰則がなくて宜しいのでありませうか、其の點をちよつと伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=18
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019・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 第十五條の一二三四の項目がありまして、是は不都合がありますれば、「第一條の許可の取消」、或は競馬施行中に色々なる騷擾とか、秩序を紊すとか、其の他色々なことがありますれば、直ちに停止すると云ふのでありまするが、今御尋の許可を得ずして競馬をやつた場合に於ける制裁はどうかと云ふことでございまするが、第十六條に「左の各號の一に該當する者は、三年以下の懲役若しくは五千圓以下の罰金に處し、」と云ふものの中に、「第一條の許可を受けないで、優勝馬券を發賣したり、又はこれに類似の行為をなした」場合には當然罰するのであります、第十五條第三號の「停止又は制限」に違反して優勝馬票を發賣した者も同樣であると云ふやうな工合に、前條十五條の違反者は十六條に於て大體罰することになつて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=19
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020・渡部信
○渡部信君 今のは少し御答の仕方が違ふのぢやありませぬか、私の伺ひたいのは、優勝馬票發賣の許可を得なければ罰せられますけれども、許可を得ずに競馬を行ふ、許可を取消されたにも拘らず競馬を行ふ、競馬を停止したにも拘らず競馬を行ふ、是は何處にも規定がないやうであります、之をちよつと伺ひます、今御話の十六條は許可を得ないで優勝馬票を發賣した場合で、許可を得ないで競馬を行つたと云ふことに付ては見方が惡いやうで規定が私はないやうに思いまするが、許可を一遍得たのに取消された、取消されたに拘らず又競馬を行ふと云ふことは、それもどう云ふ風になりますか、それから競馬の停止を命ぜられた、其の競馬の停止を命ぜられたにも拘らず、矢張り命令に反して競馬を行つた場合に制裁がありますが、斯う云ふ意味であります、此の三つの場合は條文にないやうでございますが………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=20
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021・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 仰せの通り甚だ此の點明確を缺く嫌ひがございます、併し此の提案者の考へ方でございましても、又私共政府側と致して考へましても、許可をしない競馬が開かるることがないと云ふ考へ方を持つて居ります、又一旦停止を命ぜられても、尚競馬をやると云ふこともあり得ないことだと考へて居ります、初から花競馬のやうなものであるとか、或はお祭競馬のやうなものでありまするならば、是は別箇に考へねばならぬのでありまするけれども、此の法律の建前は、開催者は限定せられて居りまして、都道府縣の馬匹組合聯合會又は都道府縣を區域と致して馬匹組合、それに中央團體たる中央馬事會、斯う云ふ風に限定致して居りまするので、其の他に開催を申請致しましても、許可を致さぬのでありまするから、斯う云ふやうな團體は許可を得ないで開催をする、或は停止を命ぜられてもやる、或は許可を取消されても競馬をやると云ふやうなことはあり得ないことと考へて居るのでありまするから、是で運用が付くでないかと思うて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=21
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022・渡部信
○渡部信君 例へば競馬法の三十九條には廣く、本法に於て主務大臣の許可、認可を受くべき場合に、此の認可を受けない場合には理事長、副理事長、理事、監事、若しくは開催執務委員又は清算人は罰する、過料に處すると云ふ規定がありまして、是は廣く入つて居りますが、今御話のやうにさう云ふことはない筈でありまするけれども、總て刑法、刑罰法令と云ふものはない筈のことを萬一あつた場合にはと云ふことは刑罰法令の元でありますから、唯併し何か外に理由があるのではないのでございませうか、是から先は議論になりますが、書いてない理由だけは是はあり得ない、あり得ないから書いてない、斯う云ふ御話でございますね、只今のは、それで競馬法には極く輕いやうでございますが、罰則の規定もあるやうでございますので、それだけをちよつと御參考に申上げて置きます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=22
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023・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) さう云う場合に於きましては、矢張り此の第十七條の開催執務委員と云ふものはさう云ふやうに開催者を含んで居ると云ふことが出來ると思つて居ります、又さう云ふ場合は團體若しくは多衆の威力を以て行はむとするやうな不法行為と看做して居りまして相當罰し得ることと存じて居るのであります、此の條文のはつきりしたものを申して居りませぬけれども、開催者若しくは競馬關係者がさう云ふやうな不法な無理な行為を致す場合に於ては之を取締る、或は罰するやうなことは此の法律に於ては含まれて居ると考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=23
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024・渡部信
○渡部信君 只今御話の十七條は開催執務委員に對して罰する犯罪でありまして、開催執務委員が暴行脅迫を加へるのではなくて、開催執務委員に對して暴行脅迫を加へると云ふことであると、少し御話と違ふやうでございますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=24
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025・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) ああさうです、御話の御意見は此の法律執行に方りまして能く注意を致しまして、萬一さう云ふ缺陷が生ずる虞があるものがあります場合に於ては、それに處する改正を又致す機會があることと存じます、尚大體は政府提案でございませぬので、議院提案でございまするから、矢張り政府の現法律に於きまする如き、周到を缺いた點がないとも限りませぬから、それは適當なる機會に於てさう云ふ缺陷を補ふことに致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=25
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026・渡部信
○渡部信君 今一つ、先日から本案に依る競馬と、競馬法に依る競馬と主體が違ふことは明瞭でありますが、目的が違ふと云ふことは伺ひましたが、どうも競馬法を見ましても、此の案を見ましても其の目的が違ふ所がはつきり致して居りませぬ、競馬法は日本競馬會がやり、競馬會は馬の改良、増殖、馬事思想の普及と云ふことを目的としてやるのだ、此の競馬法は馬事の振興を圖る爲にやるのだ、此の馬事の振興を圖ると云ふことは、初めから御説明を戴きましたやうに、目的が違ふことがはつきりして居るかどうか、私は素人で分り兼ねますが、動もすれば地方競馬も競馬專門の競馬にならぬ迄も、それに近い弊害が起るのぢやないかと思ひますが、折角目的が違ふとすれば何か農耕馬なり、輓馬なり、所謂役馬を主とすると云ふやうな意味のことが、法律に現れれば大變宜いぢやないかと思ひます、役馬の方と輕い「サラブレット」や「アラブ」でない、本當の重い物を輓く方の馬の振興を圖ると云ふことが、法文に現れて居れば宜しいと思ひますが、是が書いた目的が違ふと云ふ所がはつきり致しませぬので、是れ以上條文を御改になる意思はないでありませうか、其の點だけを伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=26
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027・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 兩法文の上から御覽下さいますと、はつきりとした具體的の差別は御分にならぬと云ふのは御尤もであります、現行法の目的と地方競馬法の目的とは、共通點は確かにございます、併し御話の如く又私が先般御説明を申しました如くに、實質に於きましては非常に違つて居ると云ふことを申上げたのでありますが、只今の御説の輕い馬、所謂輕種を主として居りまする公認競馬と、中間種或は中間重種と名前を付けて宜しいかも知れぬが、稍稍中間種に重い血を入れました馬の出場競走は、此の地方競馬に於てやりますので、一方は輕種を主と致しまする競馬は、馬の原原種を作る爲の能力の檢定であり、鍛錬であり、一面又馬の育成になるのであります、地方競馬は多數の農村所在の馬、或は農耕馬と輓馬と云ふやうな、さう云ふやうなものを主と致して居りまするので、一面に於て輓馬の繁殖種牝馬を主と致す番組もございませうし、輓馬の輓曳を主と致す場合もございませうし、農耕使役に適するやうな場合もあると存じまして、さう云ふ種類の限定は、法律に於て規定致すと云ふことは、從來どうしても困難でございまして、是は大體細則及び競馬の出場番組等の場合に於てはつきりと、血量も輕種は「サラブレット」とか、「アラブ」とか、「アングロアラブ」のやうな場合に於きましては、「サラブレット」の血がどの位、「アラブ」の血がどの位と云ふやうな、番組編成に當りまして、さう云ふものははつきりと決定致しまして、從つて地方競馬に對する中間種でありましても、「サラブレット」の血が幾ら以上入つてはならない、或は輕種の血量が是以上入つたものは、此の番組に馳せることは出來ない、或は重種がどの程度、中間種の血量がどの程度と云ふやうなことは、開催に關する關係に於きまして、はつきりと之を區別することが出來るのでございます、又實體に於きましては、競馬法に於ける公認競馬は一つの中央團體が全國に於て開催致す、地方競馬は其の一つの團體が、一箇所の競馬を開催すると、唯例外として北海道の聯合會は三箇所を開催すると云ふ、斯う云ふ風に限定されて居るのでありまして、自ら内容實質に於きましては、取上げました金の使ひ方に於きましても、亦色々な方面で競馬開催の目的が、公認競馬と異つて居ると云ふことを申上げたのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=27
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028・有馬忠三郎
○有馬忠三郎君 學生、未成年者のことに付て、是は今の渡部委員に對する御答辯で、細則か何かで禁止をなさる、さう承つて宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=28
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029・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 左樣御了承を得て宜しうございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=29
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030・有馬忠三郎
○有馬忠三郎君 先般は時世が變つたから、今迄は禁じて居つたが、規定しないと云ふやうな御趣旨のやうに思つて居つたが、それなれば細則でもなされば結構でございます、左樣承つて置きます、もう一つ是は大變大事なことですが、是も渡部委員の御尋に、許可がなくて競馬をやると云ふ、それより前に、十六條の「又はこれに類似の行爲をなした者」と云ふのはどう云ふのでございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=30
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031・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 是は矢張り認可、許可を受けずして、競馬を行うて馬券を賣つたと云ふことが、明瞭に此の法律に違反するのであります、もう一つは俗に呑屋と申して居ります、類似行為を致して居る者があるのであります、是は現在でも、既往に於きましても、公然の窓口が餘り制限が致されて居りまして、此の馬を十枚買ひたい、二十枚買ひたいと、けれども一人一枚と限られて居りまするので、矢張り呑屋に依つて多數の勝負を致して居ると云ふのが、今迄一番行はれて居るのでございます、又一方呑屋は其の手數料をかけないでやれる、幾らかでも配當が多くなると云ふやうな考へ方等から、此の呑屋が利用せられ、呑屋が繁昌して居つたのであります、さう云ふ類似行爲を、馬券を賣買を致すと云ふやうな類似行爲を致した者を罰しようと斯う云ふものでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=31
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032・有馬忠三郎
○有馬忠三郎君 呑屋が賣るたつて矢張り發賣ぢやないですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=32
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033・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 呑屋は發賣ではありませぬ、それは何等の認可、許可を受けないで居て馬券を内緒で契約するのであります、内緒で場内に居つて、今度の馬に對して勝負をするのであります、其の觀客の方からあの馬を君一つやつて呉れと言つて、現金を十圓のものなら、十枚なら百圓、百枚なら千圓渡す、斯う云ふことに致しまして、當らなかつたら呑屋に取られてしまふのです、當れば其の配當金を矢張り受け取ると云ふやうな、もぐり行爲をやつて居るのが澤山今迄ありますので、さう云ふやうな呑屋行爲と云ふものの取締りがなかなか困難でありまして、從來と雖も競馬開催者の側から嚴重に取締つて貰ふことを警察方面に願つて、警察の方に於ても一生懸命努めて居りまするけれども、偶偶檢擧せられることがございますが、なかなか根絶は困難でございます、併し斯樣に馬券の無制限な賣買が行はれ、百倍迄の配當が行はれると云ふことになりまするならば、斯樣な闇行爲、所謂呑屋行爲のやうなものは、自然自滅して行くではないかと云ふやうな考へ方をして居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=33
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034・有馬忠三郎
○有馬忠三郎君 此の十六條の一號に依つて、先程渡部君の言はれたやうな許可を取消されたとか、或は許可なしでやつたと云ふやうな場合は含まれるのぢやないのですか、呑屋などでなく、所謂競馬の施行者が許可を一旦受けて居つても取消されたりした場合に、さう云ふやうなものは、是は書き方が少し惡いが、さう云ふものも含まれるのぢやないのですか、呑屋のやうな、それは競馬の施行者と云ふ意味ぢやないのですね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=34
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035・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 其の點も今呑屋の前に申上げました許可を得ずして競馬を行ひ、馬券の發賣を致すと云ふやうなものは當然罰せられるのであります、それ等も類似行爲の一つであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=35
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036・有馬忠三郎
○有馬忠三郎君 さうすると、先程の渡部委員が言はれた許可を取消されたやうな場合とか、それは矢張り罰則があると云ふ譯ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=36
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037・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 此の第十五條の「第一條の許可の取消」を受けたと云ふ場合に、それに拘らず此の許可を受けないでやると云ふことは當然違反でありますし、二の「競馬の停止」を命ぜられましたにも拘らず、競馬を繼續して馬券の發賣を致したと云ふやうなことになりますれば、是は當然罰せられなければならぬのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=37
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038・有馬忠三郎
○有馬忠三郎君 さう云ふものが之の類似行爲と云ふのぢやないのですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=38
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039・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 此の一二に對しましては、類似行爲と申すよりも此處に明文に依つてはつきりと罰する條文が出て居ります、類似行爲と申しましたのは、大體矢張り最初から許可を受けないでやつて居る、或は所謂闇取引の呑屋と云ふやうなものを類似行爲、斯う看做して居るのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=39
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040・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 速記中止
〔速記中止〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=40
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041・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 速記を始めて…発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=41
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042・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 先刻渡部委員、有馬委員からの類似行爲、第十五條の「許可の取消」、又は「競馬の停止」後に於て競馬を行ひ、或は開催を強行すると云ふやうなことに對する私の御答が明瞭を缺く虞がありましたから、改めて茲に御答を申上げて置きます、第十五條の一、「第一條の許可の取消」二、「競馬の停止」と云ふやうな場合は、第十六條の「又はこれに類似の行爲をなした者」と看做して之を取締ると云ふことに御承知を御願ひしたいと思ひます、尚闇取引的の呑屋行爲は第十六條の三、「職業として、多數の者に對して財物を以て賭けごとをなした者」と云ふやうなものに依つて取締る、斯う云ふことに御解釋を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=42
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043・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 私今の懇談の際に發言致したいと存じたのでありますが、餘りに事が複雜化するものでありますから、つい默つて居りましたが、之に關聯してちよつと伺ひたいことがある、實は只今御話のやうに、實際馬券の發賣數を殖やせば、從來の所謂呑屋なる私設馬券發賣人は一掃されることと考へます、競馬がもつと明朗になることは事實であります、併し今度は枚數を多く發賣すると、比較的起り得る場合に斯う云ふ場合が起つて來る、投票券の發賣所を締める、締めてから後に急に或馬の人氣が高まる、其の時に其の高まつた馬の馬券を多量に買つた者が、馬が決勝點に入る前に、勝負決定前に之を「プレミアム」附で賣る場合が起ります、さう云ふ場合には、其の人は馬券の發賣を許可されたのでもないが、相當多量に、而も「プレミアム」附で場内で賣るかも知らぬ、さう云ふ場合は外國に於ても例はございます、斯う云ふものは、中で、簡單に言へば自分の持つて居る品物を是は一分何秒の後には必ず配當金が餘計であるから、其の配當金の見込よりは少いかも知れないが、比較的安全率の良い中に他人に譲るので、差支ないと言へば差支ないやうなものの、是は中で、今迄ならばたつた一枚と云ふことで餘り起らぬと思ふが、多量となると起るかも知れませぬが、別段起つて惡いと云ふものでも何でもないのですが、斯かる細則の話が出ましたから、實は公認競馬法が將來提案されるさうですが、其の場合に之に類似の細かいことを種種伺ひたいと存じて居つたのでございますが、今さう云う問題が出ましたから、斯う云ふ行爲は止めるのか、一向差支ないと云ふ風に取扱はれるか、之をちよつと伺ひたいのです、発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=43
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044・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 誠に御尤もの御質問ですが、只今四條侯爵の御質問のやうな多數の馬券を買つて居る者が、勝負の途中に於てそれを賣る、それは十圓で買つたものを十圓で譲ると云ふやうなことは、此の地方競馬法に於ては咎めない積りであります、從來の競馬法に於きましては譲渡を認めなかつたのであります、馬券の譲渡は…、けれども地方競馬の場合に於きましては、其の枚數制限を撤廢致しますが爲に、何人でも自由に買入れたい數だけ買へるのでありますから、譲渡致してはならないと云ふ規定を必要と認めなかつたのであります、併しそれを十圓で買つたものを十五圓で賣つたとか、二十圓で賣つたなどと「プレミアム」などを附けて賣ると云ふことになりますれば、是は當然違法の行爲と認めまして、即ち十六條の第一號で、第一條の許可を受けないで優勝馬票を發賣し若くは之に類似した行爲をなしたる者と見做すのでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=44
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045・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 實際は一分何秒の間に「プレミアム」附きで賣る者が必ずやあると存じますが、是はなかなか今迄の呑屋以上に取締ることが出來ない、是は實際は他人に相當價値付けられたものを「プレミアム」附で賣ると云ふことは、馬票に限らず他の場合でも世間にあることなんで、是は全然いけないとも考へられないのですが、地方競馬に於ては餘りさう云ふ多額の取引はないと私は思ひますからして、之に對しては公認競馬のやうな際に之に類似のことは伺ひたいと思ひます、今囘は私は是だけで、いけないと云ふことで私は了解しました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=45
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046・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 松村さんに申上げますが、今大藏省の政府委員が見えて居られるさうです、非常に御忙しいさうですが、今御質問願ひますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=46
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047・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私大藏省の政府委員に御伺ひ致します、それは本法の附則です、本法案が成立致しましたなれば、本法附則の施行に依りまして「馬券税法を次のやうに改正する」となつて居ります、結局馬券税法の中に於て、元は軍馬資源保護法に依る鍛錬馬競爭に依るものを馬券税法で取立てて居つたのでありますが、此の法律は今日ありませぬ、其處で今度地方競馬法と云ふものが此處に成立されましたならば、其の地方競馬法の馬券に對しまして馬券税が掛ると云ふことになりますから、此の法案が成立致しました場合に於て國の收入、歳入に是がなる譯であります、本案が成立致しました場合に、大藏省の御見込ではどの位の收入が國庫に増加するのであるか、さう云ふことを御聞き致したいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=47
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048・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) ちよつと松村さんに申上げますが、大藏省の税の方の政府委員は今おいでになつて居らぬさうであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=48
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049・松村眞一郎
○松村眞一郎君 御聞き願つて置いて、御傳へ願ひ、後で御答辯を願ひます、詰り本法は政府提案でないのであつて、衆議院の提案でありますから、若し政府提案であるならば、政府は法律を提出されると同時に、法律改正に依る收入増加と云ふことを豫算に計上されるべき筈と思ひます、處が是は衆議院の提案なるが故に、政府はそれを豫想して居らない、處が成立すれば、是は馬券税法と云ふものを變へて居るのでありまして、當然直ちに政府の收入が増加する、政府が思はざる收入を得る譯です、其の思はざる收入は「インフレ」防止になる、そこで「インフレ」防止に何程貢獻するかと云ふことを考へたい、「インフレ」防止と非常に關係のあるのは寶籤、寶籤は是と非常に關係がある、寶籤の方は、十圓で一萬倍の十萬圓を渡す、是は十圓で百倍の千圓しか渡さない、千圓と云ふのは、百倍と云ふのは法律に書いてありますが、寶籤の如きは、多數の人から集めた金を渡すのだが、馬は二十頭かそこら位です、二十分の一の當選率がある、殆ど百倍になることはない、大概五十九倍位であります、六十倍になるかどうか分りませぬ、百倍と云ふことは、寧ろ制限を如へなくても、實は五六十倍位にしか行かない、併し百倍の所を豫想して百倍とやつた、さう云ふ譯でありますから、さう云ふことになつて居ると、此の法案に書いてある所の百倍と云ふことが果して適當なるものかどうかと云ふことを比較研究する必要があると思ふ、それと同時に寶籤なるものは、枚數に制限がない、どう云ふことをやつているかと云ふと、三枚御買ひになれば煙草一個差上げると云ふ、初めから少くとも三枚御買ひなさいと云ふことを要求して居る、一人一枚ぢやない、多々益益喜ぶのですから、さう云ふ多々益益喜んでいる一萬倍の富籤、私は富籤と稱しますが、之をやつてる場合、所謂馬券と云ふものは、是は賭け事です、刑法の罰して居る行爲をやる、さう云ふ行爲をやる場合に、寶籤には根據法がある譯であります、刑法の方の賭け事に對する例外を茲に作らむとしてやつてる、因果關係がある、處が刑法に於きましては「賭博及富籤に關する罪」と一つ書いてある、非常に關聯がある、私の考では十圓で十萬圓も與へると云ふことになると、一萬圓を與へる爲には十萬人の應募がなければならぬ、一人に與へる爲に九千九百九十九人が犧牲になる、競馬はそんなものぢやない、今申上げたやうに、二十人の中で一人當る、十九人が犧牲となつて一人が貰ふので、射倖性が極く低い、地方競馬と云ふものは如何に射倖性が稀薄なものであるかと云ふことを見るが爲に、寶籤と比較する必要がある、そこで私は寶籤に付て何故申上げるかと云ふと、馬券の方は明瞭に「インフレ」防止になる、寶籤は若し八千人しか應募者がなかつたとすれば得る金は八萬圓しかない、八萬圓しか賣れなかつたものを政府が十萬圓拂つたならば、新圓で二萬圓と云ふものが却て「インフレ」の増加と云ふことになるのでありますから、寶籤は場合に依つて成績の惡い場合には「インフレ」増加の起る虞があると云ふことを私は明言するのですが、そこで寶籤の成績如何と云ふことを御尋したいのです、若し寶籤の成績が惡いならば、寧ろ「インフレ」増加をして居ると云ふならば是は止めなければならぬ、それで寧ろ馬券の大いに賣れると云ふことを御獎勵になつたが宜いではないか、斯う云ふことになつて因果關係がある、是は私の御尋ですが、それに對して御答辯を御用意があればやつて戴きたい、是は又後で色々なことに關係します、極く單純であります、政府案ならば必ず收入豫算を計上して豫算に御示になるのであるが、偶偶衆議院が出したので政府は思はざる歳入を得た、どの位「インフレ」防止に貢獻したかと云ふことを政府は感謝しなければならぬ、少くとも大藏省は此の法案に對しては雙手を擧げて早く通過することを希望して居られるのぢやないかと私は思ふ、さう云ふ意味に於て寧ろ大藏省の政府委員が出て來て此の法案が良い案でありますと云ふことを、餘計なことを言ふやうでありますけれども、禮讚されると云ふことを私は要望して居つたのです、それでありますから、私の御尋ね致しましたことを御調になつて御報告を願ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=49
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050・福田赳夫
○政府委員(福田赳夫君) 只今松村さんの御話に依りまして、競馬の關係が非常な宜い施設であると云ふのは是は御同感であります、そこで寶籤との關係如何と云ふ問題であります、寶籤は賣籤金額の大體半分と云ふものが政府の收入になるのであります、そこで今迄の成績と致しまして然らばどの位の額を賣捌いて居つたかと申しますと、寶籤の傾向のものは、始めは勝札と稱してお目見致した譯であります、次いで名前を變へまして寶籤となり、同じやうな性質のもので、「スピード」籤、野球籤と云ふやうなものも其の後始めました、是等のものを通じまして、第一囘勝札を始めました昭和二十年七月より七月に至る迄に於きまして、發行額は七億八千萬圓であります、其の中賣捌き濟みとなつたものが五億一千八百萬圓でありまして、其の中「スピード」籤が非常に賣れ行きが宜いのでありまして、殆ど是は全額消化して居ります、それから寶籤、勝札に於きましては時に消長があるのでありますが、第一囘の勝札は成績が非常に惡く六十五「パーセント」の消化であります、第一囘の寶籤、之が八十六「パーセント」の消化率であります、それから第二囘の寶籤が八十三「パーセント」、第三囘が六十八「パーセント」、第四囘が九十六「パーセント」となつて居る次第であります、尚此處に計數を持つて居りませぬけれども、極く最近の寶籤に付きましては成績極めて良好でありまして、九十六「パーセント」と云ふやうな高率を示して居る譯であります、本年度の寶籤の計晝と致しましては、總額約十億圓を賣り捌きまして、其の中國家の收納する豫定のものが四億三千六百萬圓と斯樣に豫算に計上致して居る譯であります、併しながら其の賣り捌き状況を只今申上げましたやうな状況から考へますと、是は相當賣れるのぢやないか、十三四億の賣り捌きが出來るのぢやないかと思ひます、從ひまして其の中國家の收納と相成りますものが七億と云ふ位な數字になるのぢやないかと云ふ風に見透して居るのであります、尚今後のことでありまするが、明年度に於きましては大體十億位の國庫收納は取れるのではないかと云ふ風な見透を持つて居ります、それから尚現在出來ました色々寶籤の賣り方に付きまして改善を致すと云ふことを考へて居るのであります、非常に零細な金のやうに見えるのでありますが、現在なかなか貯蓄が集りませぬ、其の關係上少いものでありまするが、富籤と云ふやうなものに頼らざるを得ないやうな國家財政の現状でありまして、富籤に付きましては色々の作案を致しまして其の收納を殖やしたいと思つて居ります、其の最も大きな問題と致しましては地方團體に富籤を賣らせると云ふことを考へて居るのであります、近く是は法案と致しまして議會の御協贊を仰ぐと云ふことでありまするが、地方團體に富籤を發賣することに致しまして、地方團體の盛り上がる熱意に依りまして賣捌を致す、斯樣なことを考へて居るのであります、尚競馬に之を應用するとか、さう云ふやうなことも考へて居つたのでありまするが、今囘の競馬法との關係もありますから、それは調整を要すると思ひます、それから農山漁村、都市の盛り場等に於て之をどんどん賣上げて行くと云ふやうなことも考へなければいかぬと考へて居ります、又賣捌の場所として郵便局を利用すると云ふやうなことも考へなければならぬと云ふ風に思つて居ります、それから景品と致しまして出す所の品物に付てももう少し何とか工夫を致したいと云ふやうなこと等色々考へまして、此の富籤の收入と云ふものを出來る限り上げたい、斯樣な考を持つて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=50
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051・松村眞一郎
○松村眞一郎君 大變御詳細に御説明願ひまして獨り委員會のみならず他の方々も此の御説明に非常に有益な參考になつたことと思ひますので、非常に感謝致します、それで馬券税に依る收入はまだ御見込になりませぬか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=51
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052・福田赳夫
○政府委員(福田赳夫君) 實は私其の方の專門でありませぬで、本日御聽きして居りませぬでした關係上御答へ出來ないのでありますが、後刻其の方の專門の政府委員が見えて御答へ致す、斯樣に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=52
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053・松村眞一郎
○松村眞一郎君 それぢやさう御願ひ致します、今迄ありましたのは相當な額になつて居りますが、是は農林省が大藏省の方に色々な資料を提供して豫算に計上をしなければならぬぢやないかと思ひますが、是は追加豫算にでもなりますか、是は後から政府が追加豫算を御出しになりますから、其の際には矢張り收入の一項目として掲げられることになると思ひますが、さうだらうと思ひますが、如何でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=53
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054・福田赳夫
○政府委員(福田赳夫君) 恐らく左樣な筋を取る外はないと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=54
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055・松村眞一郎
○松村眞一郎君 さう致しますと是は地方競馬は……是は今日迄やつて居るのは類似競馬で法律の根據はありませぬ、今日迄やつて居るのは、總て犯罪行爲をやつて居る、非常に惡いことである、是は一日も早くやりませぬと、今迄やつて居る人は告發されると、すぐ罪になる、其の關係は内務大臣にも、司法大臣にも御話しようと思つて居ります、大事なことでありますから……早く罪人を少くしないといけませぬ、今日調べると今年一月から數字が六千六百六十六萬六千圓と云ふ金が出て居る、是は委員諸君に御配付になつて居ります、此の金額を計算しますと、それだけでも六千六百六十六萬圓になつて居ります、今度政府は之に伴つて競馬法を改正されると、地方競馬をやりますから、競馬法の馬券税と云ふものは收入が出て居るでせうね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=55
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056・福田赳夫
○政府委員(福田赳夫君) 出て居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=56
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057・松村眞一郎
○松村眞一郎君 さうすると此の馬券税は競馬會の競馬を見て居るのではないかと思ひます、今ありませぬから……是があると増加する譯であります、只今の處では今申しましたやうに六千六百六十六萬六千圓と云ふやうな金額でありますけれども、是が一年を通じて公に開かれた時にどの位になるか、ちよつと私は分りませぬけれども、御見込を立てて置いて戴きたいと思ひます、今の御話で安心致しましたのは、私は寶籤の或ものが喰ひ込みでもして居るのぢやないかと心配したのです、既にさう云ふ金額があると云ふことであれば、是は成績が好い譯です、是は非常に關係がありますから、大藏省の方で一つ豫算を御見積りを願ひたい、さうすると我々は此の法案を審議します上に、「インフレ」防止に貢獻する上に於てどの位、將來どの位あるかと云ふことを見て置きたいので、其の見込に於てどうぞ一つ御願ひ致します、私は司法大臣と内務大臣に質問を御伺して居るのですが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=57
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058・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 松村さんに申上げますが、大蔵省の主税局の政府委員が來られたさうですが、宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=58
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059・松村眞一郎
○松村眞一郎君 今大藏省の政府委員から御答辯願ひましたから、主税局長と一つ御相談願ひまして、さうして今即答は求めませぬ、御相談を願ひまして、凡その所を仰しやつて戴いて結構だと思ひます、それでは大藏省の馬券税の方の御説明を願へれば結構であります、從來の馬券税は何を見込んで居つたのか、今度の馬券税税はどんな風に大藏省で御覽になって居るかと云ふやうなことが御分になれば、一つ仰しやつて戴きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=59
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060・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 實は地方競馬に付きましては豫測致して居なかつた譯でございますが、現在の競馬に依ります馬券税の總額は十八年度の實績が二千九百萬圓でございます、十九年は百萬圓程度でございまして、ちよつと基準に取り難いのでございますので、十八年度の五割減位と致しまして、それで九月から施行致しますので、約其の七箇月分を見込みますと、九百九十萬圓程度でございます、其の中で此の地方競馬に依りますものは極く僅かでございまして、五十萬圓に足りないと云ふ風に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=60
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061・松村眞一郎
○松村眞一郎君 有難うございました、政府委員に御禮を申上げます、それからさうしますと、今の金額は結局競馬法に依る競馬の方の收入になる譯でございますね発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=61
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062・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 只今申上げましたのは競馬法全體の數字でありまして、地方競馬の分が約五十萬圓、詳しく言へば四十七萬九千圓程度になりますと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=62
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063・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) ちよつと私伺ひたいのは、地方競馬に依る五十萬圓と云ふのはそれは將來法律が出た場合の御見込ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=63
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064・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 十八年の實績から其の當時鍛錬馬をやつて居りましたので、それから推定したものでございます、將來の見込と致しましては只今の處は分りませぬので、常に豫算と致しましては從來の實績から考へて居りますもので左樣申上げて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=64
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065・松村眞一郎
○松村眞一郎君 實はそれから政府委員に申上げますが、鍛錬馬競爭がなくなつて居るのですが、今度の見込で經常部に地方競馬を御入れになつたことは穏かでないのですが、實は御心配はないのです発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=65
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066・前尾繁三郎
○政府委員(前尾繁三郎君) 此の馬券税に付きましては昨年以來停止致して居ります、それで九月から復活致した譯でございます、地方競馬に付きましては、約五十萬圓と申しましたのは見込んで居る譯ではございませぬ、唯從來の十八年の實績から考へますと、此の程度のものしか取れないのぢやないかと云ふ風に考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=66
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067・松村眞一郎
○松村眞一郎君 私は委員長から御傳へ願ひたいのですが、内務大臣と司法大臣と申上げましたけれども、内務省は大臣の御都合が惡ければ政務次官、次官、何方でも結構です、司法省の方は大臣御都合が惡ければ政務次官でも次官でも刑事局長でも結構です、但し兩方揃つて戴きたいと思ひます、同じことを申上げることを避けたいと思ひますから………発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=67
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068・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 松村君に申上げますが、兩大臣共御差支があるさうでありまして、何方でも宜いと云ふ御話であつたので、只今内務省の政府委員が御出席になつて居るのでございますし、司法省の政府委員は午後から出席すると云ふことでございますが、午後此の委員會が繼續しますれば御出席願へることが出來ると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=68
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069・松村眞一郎
○松村眞一郎君 さう致しますれば、私は矢張りそれが議事の進行かと思ひますし、又同じことを内務大臣に……同じことではありませぬ、内容を變へますけれども、内務省の政府委員に申上げ、又司法省の政府委員に申上げると云ふことになりますから、重複しないやうにしますけれども、却て御二方御集りの時に申した方が議事進行上便宜だと思ひますから、御集りの時に御願ひ致したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=69
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070・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) それでは成るべく午後に御出席願へるやうに取計らひます、如何でせうか、もう時間もお晝に近いのでありますからして、午前は此の程度で措きまして、午後は一時から開會致すことに致します
午前十一時四十七分休憩発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=70
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071・会議録情報2
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午後一時三十一分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=71
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072・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) それでは午前に引續きまして是より委員會を開會致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=72
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073・松村眞一郎
○松村眞一郎君 司法省の政務次官と内務省の政務次官が御見えになつたと云ふことでありますから、私答問をさせて戴きます、私の申しますことは此の地方競馬法案は其の目的と致す處は、元來馬を馳けさせまして、さうしてどれが勝つかと云ふことを判斷し、勝つたなればそれに對して當つた者は金を貰ふ、當らなかつた者は自分の出した金は取らない、斯う云ふ形で行はれるのでありますから、是は明かに刑法に申します賭事と云ふことになりますことは是はもうどなたも御議論のないことと存じます、其の點が本問題の出發點になる譯でございます、刑法の第二十三章の「賭博及び富籤に關する罪」其の第百八十五條に「偶然の輸贏に關し財物を以て博戯又は賭事を爲したる者は千圓以下の罰金又は科料に處す但一時の娯樂に供する物を賭したる者は此限に在らす」そこで賭事を爲したる者と云ふことになりますと、是は色々解釋がありまして、或は賭事でないと云ふ議論もあります、即ち賭事と云ふ議論と富籤と云ふ議論と兩方ありますが、大體今日では賭事と云ふことに決つて居るのであります、「一時の娯樂に供する物を賭したる者は此限に在らす」と云ふ此の但書をどう胡麻化すと言ひますか、濫用と言ひますか、此の規定を利用と言ひますか、此の規定に依るが如き顏をして從來は行はれて居つた部分が相當あつた譯であります、それから第百八十六條が重大なことであります、それは「常習として博戯又は賭事を爲したる者は三年以下の懲役に處す」、其の第二項が大變關係があるのです、「賭博場を開張し又は博徒を結合して利を圖りたる者は三月以上五年以下の懲役に處す」、現在色々な地方で澤山な人を集めまして、さうして馬券とは申して居りませぬ、色々な名前で今行はれて居ります、能力檢定票と云ふやうなことでやつて居りますが、さう云ふやうなものを發賣して居って、多數人を集めて居ると云ふことは事實でありますが、是は結局賭博場を開張して居るのでありますから、それは刑法の正面から申しますと三月以上五年以下の體刑に當る犯罪行爲を爲して居るものであると私は解釋致します、今日各地方に行はれて居ります、其の事實上行はれて居るものは、此の賭博場を開張して居るものであると云ふ意味に於きまして、是は懲役に處せられるべき行爲を行って居るのだ、そこで今日は犯罪行爲が地方に廣く行はれて居ると云ふことを私は非常に心配致すのであります、是は政府で作つたものではありませぬが、此の委員會で配付された「地方競馬類似競馬施行調」と云ふ書類に今迄行はれたことが書いてございます、それを私は非常に重大視して居るのであります、そこで私の見る所に依りますと、それだけの賭博公開場があると云ふことは實に容易ならぬことであると、私は非常に心配する者であります、全國到る處に斯う云ふ賭博場を公開されて居ると云ふ現状はどうも見るに忍びないから、早く之を合法化しなければならぬと云ふ意味に於きまして本法案が現れたものであるとして、非常に私は此の法案の早く成立することが適當であると云ふことを痛感致して居るのでございます、それで今日午前に政府委員にも申したのでありますが、此所に行はれたものを御覽になりましたでせうか、非常に澤山あります、例へば靜岡縣で四箇所も行はれて居ります、埼玉縣で三箇所、茨城縣で一箇所、岐阜縣で九箇所、愛知縣で四箇所、千葉縣で二箇所、大分縣で二箇所、北海道で三箇所と云ふ風に全國到る處で行はれて居ります、其の賣得した金額を合計すると六千六百六十六萬六千圓餘、是だけのものが賣得金である、私は正面から法律を獨り靜かに眺めて居るのでありますが、是は只今申しました如く犯罪行爲でありますから、結局得たる所のものは犯罪に依つて得たるものと云ふことに私はなると思ひます、それでありますから、是は公然たる事實でありますから、誰かが告發しまして、それが犯罪として判決せられましたならば、此の六千六百六十六萬六千圓と云ふものの内、賭博を開帳して居ります、所謂開催者の側で持つて居ります分は沒收されることになる、刑法の第十九條に依りまして「左に記載したる物は之を沒收することを得」、第三號に「犯罪行爲により生し若くは之に因り得たる物又は犯罪行爲の報酬として得たる物」と云ふやうな譯でありまして、第四號には「前號に記載したる物の對價として得たる物」、斯う云ふ規定がありますから、どうしましても有罪と云ふことに決定すると全部沒收されることになる、さうすると大體どの位取つて居りますかと云ふと、大體其の二割位は取って居りますから、さうすると六千六百六十六萬圓の二割と云ふことになると云ふと、是は千三百萬圓以上になりませう、さうすると今茲に檢擧して皆罪に服しますれば政府には千三百萬圓と云ふ「インフレ」を防止をする財源が茲に生れて來ると云ふことが言ひ得るのであります、是は大變結構なことであると云ふことに一面申し得られませう、併しながらさう云ふことを致しましたならば從來競馬を開催して居ります方方は皆犯罪人になつてしまふ、何故斯う云ふ競馬が起るのかと云ふことを我々は考へませぬと云ふと、是は非常に涙のない、情のない唯法律一點張りの議論をすることになりますから、私は何故此處迄地方に於て、地方競馬の形に於て斯くも濫立し、廣く斯う云ふ事實が我々の目の前に展開するかと云ふことを考へて見ますると云ふと、是はさう云ふやうな事情になるべき社會状態が茲に存在して居る、人間と云ふ者は何等かの射倖を求める、さうして娯樂を求めて居る、是は人情の然らしむる所でありまして、何と抑へましても此のはけ口を與へなければいけない、今日午前に大藏省の政府委員の御説明を伺ひまして、寶籤と云ふものは是は一種の射倖でありますから、どの位賣れるものであるかと云ふことを伺つたのであります、政府の見る所では、十億と云ふものを目標にして居るのである、其の半分は政府の收納となつて、此の「インフレ」防止になる、五億圓と云ふものを富籤に依つて政府は「インフレ」を防止しようと云ふことの場合に立至つて居る、それは政府委員の説明を承りますと云ふと、何としても貯金が思ふやうに行はれない、已むを得ず富籤と云ふが如き形に於て行はざるを得ないと云ふ現状を我々が見ましたならば、地方競馬に斯う云ふ状態が起ると云ふことに付ては同情を持つて見なければならぬと云ふことを私は深く痛感するのであります、一方に於きましては非常に日本の社會事情と云ふものは何となく我々の氣分を快活にしないと云ふ分野もある譯でありますから、茲に明朗娯樂を求めると云ふ民衆の要望は是は私は當然起ることであると思ひます、處で、此の競馬と云ふものは御承知の如く戸外に於て極く豐な氣分を以て明朗に娯樂をすると云ふのでありますから、そこでさう云ふ所に向つて行くと云ふことは私は必ずしも惡いことではないと思ひます、或は空氣の惡い映畫館に非常に澤山の人が集つて、さうして衞生上非常に惡い、或は傳染病がうつるかも知れない、そんな暗い暗黒の所に密集して映畫を見て、漸く我々の色々な境遇に於て、我々が生活等に惱むと云ふやうな感情を緩和しようと思つて都民の隨分多くの人がさう云ふ所に行くのです、で田舍の人が見まして、都會へ來ると云ふと皆遊んで居るぢやないかと云ふやうなことを言ふ人がありますが、映畫館などに入る人は全體の人口の上からは僅かなものであると云ふことは是は厚生省でありましたか、何處かの數字で示して居る、田舍の人が突然來られまして映畫館を見て、非常に澤山の人が入つて居る、都会の人間と云ふ者は緊張しないと云ふが如きも、ちよつと御覽になつても是は數字の示す所に依りますと映畫館に入る人は少數である、且堪へざる心勞等を慰する爲に行かれる人だと思ひます、私などは映畫を見たことはありませぬ、芝居を見たこともありませぬ、併し現在の社會状態でありますからさう云ふことになる、併しさう云ふ所に行かなければならないと云ふ茲に境遇に、心理的及び身體的の状況に置かれて居る人に對しましては深き同情を持つて私は眺めなければならぬと思ひますから、競馬に出入りする人に對しては我々は深き同情を持つて眺めて居る譯であります、それのみならず、此の地方競馬に依りまして賣得歩合金と云ふものを取る、二割は之を收納するやうな形で行つて居ります、其の二割は所謂刑法で言ひますと、賭博開帳者の方で收得して居る譯です、それを今度此の地方競馬法が出來ましたなれば、公然と刑法の例外として適法に秩序ある賭事の興行を開催することになつて、合法的の興行者となるのであります、此の意味に於て、茲に朗かな氣分で澤山の人を集めて、さうして一日を野外に於て青空を眺めて暮すと云ふことが出來ることになるのでありますから、どうしても早くさう云ふことにしなければならぬと云ふ風に考へるのであります、それでどう云ふ形に於て今の開催者が此の競馬を行つて居るかと云ふことは、是は餘程細心に御覽願はぬといかぬと思ひます、是は内務省は能く御存じと思ひますが、一つの例を擧げます、それは直ぐ近くの戸塚であります、神奈川縣の戸塚でそれを行つた、それは參考資料にあります如く八月の十七、十八、十九、二十三、二十四、二十五の六日間興行致しまして、賣得金は二千九百二十五萬千五百三十圓と云ふのであります、是は私の今申述べましたが如く犯罪に依つて賣得したるものであります、其の中で二割を取つて居りますから、五百八十萬圓と云ふ其の位のものは開催者の側で收得したることになつて居ります、それは刑法の冷やかな眼で見たならば、是は犯罪行爲に依つて得たものである、それが唯當業者が得ただけならば宜しうございますが、それで是は内務省の政務次官に御聽き置き願ひたいのですが、其の中で約百五十萬圓と云ふものを神奈川縣廳が貰つて居るのです、それはやかましいことを申しますと云ふと私は贓物に關する罪だと思ふ、犯罪に依つて得たるものを取ると云ふことは、私は先づ法律論を申しまして、決してそれを適用して内務省としては地方長官に對してどうして戴きたいと云ふことを申しませぬ、併しながら私共は是は贓物に關する罪かと思ひます、併し贓物に付ては色々議論がありますから、此の委員會には法律の権威者が居られます、法學博士の有馬君も居られるし、法學博士で刑法、刑事、訴訟法の大家の小山博士も居られます、法學博士であり司法大臣をして居られるのですから、此の委員會では法律問題を解釋するの知識に缺乏致して居りませぬ、斯るが故に我々が法律論を致しましたならば、是が何であるかと云ふ結論には容易に到達し得ると思ひます、私はさう云ふ學者ではありませぬが、私の考へる所に於ては刑法違犯の犯罪が公々然として行はれて居る、併しそれは已むに已まれぬ行爲であることを見ますが故に私は責めませぬ、斯う云ふことは早く直さなければならぬと云ふことになりますが、そこで神奈川縣ではさう云ふ金を收得して居られますけれども地方長官として、競馬施行を許可されるに付て苦心慘澹の跡が見られる、是は能く斯う云ふことを御聽き願ひたい、どう云ふことになるかと云ふと、戸塚競馬は神奈川縣馬匹組合聯合會主催の下に昭和二十一年八月の、先刻申しましたやうな六日間行つたのであります、神奈川縣の戸塚馬場に於て行つた、一日午前十時から發馬致しまして、開催して、第一日には三百九十萬圓と云ふ賣上高を得て居ります、第二日に四百七十萬圓と云ふものを得て居ります、爾後毎日四五百萬圓以上を得て居るのでありまして、最終の六日目には遂に六百萬圓を突破したと云ふ戸塚競馬に於ての未曾有の賣上を見て居る譯であります、そして六日間の總賣上高が先程申しましたやうに二千九百二十五萬圓と云ふ多額の賣上を示したと云ふことになります、是は投票は一票十圓で行つて居りまして、單式、複式兩方で行つて居ります、馬の登録馬數が百六十頭と云ふことになつて居ります、騎手が四十三名、私が先程申上げましたやうに、控除金二割、詰り開催者が取得した金額、それが是で見ますと五百八十五萬三百六圓、斯う云ふやうになつて居ります、縣への寄附それが百四十六萬圓、諸經費として百四十萬圓出して居ります、斯う云ふことは内務省でも御存じでございませうが、如何に知事が苦心をして競馬を施行せしめられたか、先程贓物に關する罪と申しましたが、第三章の第二百五十六條「贓物を收受したる者は三年以下の懲役に處す、」斯う云ふ問題になる處があると云ふことを申上げたのであります、それから如何に地方長官が競馬開催を許すが爲に苦心慘澹して居られるかと云ふことを見ますと、實に同情に堪へない、地方長官に對してどうしても一日も早く本法案は成立をせしめなければならぬと云ふ風に考へて居ります、それで刑法第百八十五條の第一項の但書、先程申しました「但一時の娯樂に供する物を賭したる者は此限に在らす」、此の規定を何とか活用して、此の規定に準據したるが如きことにして、なんとか賄はふぢやないかと云ふことになつて爲されたことと考へます、是は後から申しますが、神奈川縣知事だけではありませぬ、農林省、内務省が曾て斯う云ふ…私から申しますと是は罪惡です、斯う云ふ罪惡が重つて來て居る、知事は斯う云ふことをされて居る、神奈川縣告示で第二百九十六號と云ふのが昭和二十一年七月十一日に出て居ります、家畜能力檢定競勵會施行要綱左の通り定む、知事、家畜能力檢定競勵會施行要綱、是は非常に苦心慘澹して作られて居ります、之を能く御讀み願ふと如何に地方長官は此の問題を取扱ふのに非常に苦慮したかと云ふことが分る、「第一家畜の資質及能力の向上を圖る爲め牛馬耕搾乳、輓曳、駄載、速度等の能力檢定競勵會(以下競勵會と稱す)を實施する時は本要項に依らねばならぬ、第二競勵會は農業會馬匹組合聯合會又は馬匹組合でなければ出來ない、第三競勵會の目的達成上必要あるときは能力優良家畜竝に能力鑑定成績優良な者に對し景品を交付することが出來る、第四競勵會を開催するには左に掲げる事項を具して知事の承認を受くることを要する、承認を受けた後其の内容を變更しやうとするときも同樣である、一名稱及目的、二開催の場所及開催の日時、三競勵會實施に關する規定、四競勵會開催に關する收支豫算、第五競勵會實施者は開催後二週間以内に左に掲げる事項を知事に報告するを要する、實施の概況或は收支決算、第六本要項に依つて提出する願書及報告書は所轄警察署を經由せねばならぬ、」斯う云ふ規定が出て居ります、結局之を見ますと云ふと、牛のことも馬のことも書いてあります、さうして能力檢定とか色々なことが書いてあります、併しながら目的は此の競馬をやることにある、總て色々なことを網羅して置いて、目的は此の競馬をやることにある、さう云ふやうに色々なことを包容して置いて、其の中で一つあると云ふことに非常な苦心があると云ふことを我々は見ざるを得ない、處が、それだけならば宜しいが、次に斯う云ふことがあります、昭和二十一年七月十一日、警察部長、經濟部長連署で出て居ります、三市長、事務所長、警察署長に宛てた書面に斯う云ふことがあります、「家畜能力檢定競勵會施行要綱に關する件、昭和二十一年七月十一日神奈川縣告示第二百九十六號を以て家畜能力檢定競勵會施行要綱が定められたが、開催願の提出ありたるときは左に依り處置をせられたい、記、」此の「記」がなかなか問題であります、「一、願書の進達に當つては交通、食糧事情等を勘案し、開催地事務所長又は三市長と協議の上内容を充分審査し意見を附すること、二、開催中は指導竝に取締に遺漏なきを期し、必要あるときは中止を命じたり開催をせしめないこと、」三、是が重大です、「三、能力豫想票を發賣せんとする場合は、額面十圓で的中者に對する拂戻金額は能力豫想票發賣金額の百倍を超えてはいけない、」之をどう御覽になりますか、是は即ち此の地方競馬法案に書いてあることを先廻りして出來て居る、知事は金で賣るとは言うて居りませぬ、景品と云ふことを言つて居る、先程申しました景品を交付することが出來ると云ふので、金で賣れと云ふことを知事は認めて居りませぬ、さうして部長は今申しましたやうに、額面十圓で、拂戻金額は金にして百倍を超えてはいけないと云ふ通牒をして居る、是は地方競馬法案と同じであります、如何に地方競馬法の如き準據法が出來て、法律の下に明るく何等咎められる所なく地方競馬を行ひたいものであると云ふ地方の要望が之に依つて明瞭であると思ひます、地方長官が非常に自己の縣に居られる方方の心持を酌んで、何とかして要望を達せしめなければならぬと云ふことに依つて出て居るのでありますから、是は非常に情の厚い取扱であると思ひます、斯くの如きことで出來て居るのでありますから、此の地方競馬法案を成立せしめて、斯る行爲を合理化しなければいけませぬ、是は私申上げる迄もなく、法律さへ出來ますれば、後からは刑法の規定に依りまして處罰することはありませぬから、是はもう安心されて宜いと思ひます、それは刑法第六條に、「犯罪後の法律に因り刑の變更ありたるときは其輕きものを適用す」と云ふことがありますから、無罪になれば罪になりませぬ、ですから早く本法律を成立せしむるを要するのであります、斯う云ふことの意味を私は申すのであります、是は豫算委員會に、司法省刑事局の名に於て配付された書類でありますが、「終戰前及終戰後に於ける犯罪調」と云ふ調査があります、是は衆議院豫算委員に配付され、貴族院豫算委員にも配布されたもので、司法政務次官は御存じでせうが、犯罪の種類及び何の犯罪が一番多いかと云ふことが列擧してあり、之を見れば一目瞭然であります、其の中最も多いものは賭博及び富籤に關する罪それが六萬一千三百十、是は或期間に於ける犯罪でありますから、期間は拔いて申上げます、犯罪の總數は十萬一千五十七、其の中賭博、富籤が六萬一千三百十、斯う云ふことになりますから、半數以上が賭博に關する罪であります、此の中には今申しました馬券を買ったものは入つて居りませぬ、若し馬券を買つた者が入つたならば、今日此の統計を出して此の馬券に關係したものを總て網羅したとなりますと、大變な犯罪の數が統計に現れて參ります譯であります、だから早く法律を出し、さう云ふ統計の出ないことを私は要望するのであります、是はもう司法省から出たのでありますから、それは戰爭前の犯罪の表です、それから終戰後の統計にも出て居りますが、それは賭博及び富籤に關する罪は一萬四千四百二十七と云ふ數字になつて居ります、それより多いのが今度は竊盜罪に出て居ります、それが一萬九千七百、犯罪全體の刑法犯の計が四萬一千二百五十一と云ふことになつて居りますから、其の中に竊盜が一番多くて、其の次には賭博及び富籤に關する罪と云ふことが茲に書かれて居ります、是は豫算委員は皆承知して居る、そこでです、私は斯くの如き賭博と云ふものはなかなか防ぎ切れない犯罪であると云ふことを御考へ願ふと同時に、此の地方競馬法に付て餘程御考慮を煩したいと云ふことを茲に申上げるのです、それは私が申上げる迄もなく、司法省では是は十分御承知のことでありますが、斯う云ふ本があるのであります、「競馬の制度及犯罪」、是は社團法人帝國競馬協會と云ふものが印刷して發行したものです、それは頁數は二百二十八頁と云ふ、是は相當の小さな字で書いて、相當の厚い本です、著者は楢原義男と云ふ方です、是が如何に地方競馬、我々の茲に論じて居る地方競馬と云ふものに付て農林省、内務省に對しての措置を非常に遺憾として居るかと云ふことが明瞭になつて居りますから、其のことを申上げて茲に引用するのであります、序文に斯う云ふことが書いてあります、「私は先年司法省より「競馬制度及競馬に關する犯罪」の自由研究を命ぜられ、其の調査研究に從事した關係上聊か競馬制度に関する知識を廣ふするを得た。本書は、當時司法省に提出した右の研究報告書に多少の修正を加えたものである。」と云ふのでありますから、原本は司法省にある譯であります、是はどう云ふ方か存じませぬが、楢原義男と云ふ方が……檢事であられたと云ふことを聞いて居りますが、是は司法省で御調べ願へば分ると思ひますし、特に「司法省より」とありますから、司法省の御役人でありませう、今どう云ふ地位においでになる方か存じませぬ、併しながら相當の權威者である、御書きになつて居る所を見ると非常に研究されて居ります、是は私は競馬法及び競馬犯罪の日本の唯一の文獻であると思ひます、私も嘗て見たことがありましたが、もう燒けて居りますから私持って居りませぬが、借りて來て茲に讀む譯ですが、之に斯う云ふことが書いてあります、色々な所がありますが、之をちよつと御聽き願ひたいです、「競馬法は競馬の施行に關し馬券の發賣を許容して居るが、此の「馬券發賣行爲の刑罪法規上の性質如何」と云ふ事は舊刑法時代盛んに論議せられた命題であつた。併し現行刑法の下に於ては廣議の賭博なる事に何人も異論はない。」異論はないと云ふのであつて、だから是は賭博であります、」唯狹義の賭博の範疇に入るる者と、富籤行爲と解する者とがある。」是は先程私が申した點です「前説に依れば競馬開催者は賭博開帳者又は胴元で、馬券購買者は賭者又は張子である。後説に從へば競馬開催者は富籤發賣者にして、馬券購買者は富籤購買者といふ事になる。」私は富籤説を採りませぬ、賭博開帳説を以て之を見て居る、それの見地は先に申上げました、是は賭博に關する問題です、そこで斯う云ふことがある、此の當時は地方競馬と云ふものは農林省、内務省の省令で行つて居つた、是が法律違反です、省令で出來るものではない、そこで此の省令は何を書いて居るか、矢張り景品的のことを書いて居つた、是が非常に亂雜を極めまして、地方競馬と云ふものが非常な弊害を與へた、斯う云ふことがあります、「地方競馬に於ける馬券制度は形式的理論に於ては公認競馬の馬券制度と異り」公認競馬と云ふのは、競馬法に依り競馬の法律的に合理的に認められたものです、「公認競馬の馬券制度と異り競馬場入場券購入者に對し一般商店に於ける福引券と同趣旨の下に入場券の種類に應じ、一枚、五枚、十枚の投票證引換券附投票券を無償贈與し、投票的中者に對しては粗品(景品券)を進呈するといふ仕組になつて居るが、實質は競馬法と同一内容の馬券制度を採用して居る。從つて競馬法と殆ど同樣なる刑罰規定を設けて風教上の弊害防止を期して居る。」地方競馬規制は斯う云ふことを期して居るのですけれども、事實は出來ないと云ふことを言ふ譯です、「投票的中者に對しては粗品(景品券)を進呈するといふ仕組になつて居る、」從來の地方競馬は粗品と云ふ名前で景品券を與へる、さうしてそれをどうするかと言ふと、横に景品券引換所と云ふものがあつて、其處へ行けば金と換へて呉れる、斯う云ふ脱法行爲をやつて居つたのが地方競馬です、是が非常に大事な點です、それから九十五頁です、「競馬施行上最も憤慨に堪へないのは地方競馬である」斯う云ふ言葉が使つてある、憤慨に堪へないと言ふのです、「全國百十餘の競馬場に於ける馬券の發賣手續は一として法規を遵守せるものなし。多少制度に不備の點ありとは云へ法規に基き施行せらるる事柄にして、法規を無視するもの之より甚しきものはあるまい。法の法たる所以何處に在り哉。當路者は何を規定し何を行はしめんとするか、實に歎はしき沙汰である。法規にして實状に添はざる點あらば速かに改むべし、然らずんば斷乎として嚴守せしめよ。敢へて農林内務兩省の猛省を促す。」猛省を促されて居るのは當然であります、省令では出來ないことをやつて居つた、そこでどう云ふことになつたかと申しますと、非常に惡いことがそれ以來行はれたのです、是は皆さんの手に廻って居ります地方競馬法及び其の説明書の中にある、昭和二年八月以來地方競馬規則に依り地方競馬の名稱の下に行はれたのであります、それから今申した弊害を生じた譯です、此の本の出來ましたのは昭和十一年であります、昭和二年以來十一年に至る迄の間ですね、地方競馬規則で今申した如き亂雜なることを行はれて居つたのです、そこでそれが非常に底止することを知らない亂雜になつたのです、私共其の時農林省に奉職して居つたのですが、地方競馬規則で困り拔いたのです、どう云ふことかと申しますと、地方からは政黨の運動が來るのです、俺の所に競馬場を殖やせと言つて來て、内閣が迭る度に競馬場が數を増すのです、抑へ切れませぬ、是は政黨政治の弊でありませう、そこで縣に澤山出來るのです、それで始終殖える、亂雜極る競馬が行はれて、農林省も何ともすることが出來ない、どんな硬骨な大臣が來られましても、地方に動かされて殖えるばかりです、是は非常に宜しくないと私は思つて居りました、なんとかして是は變へなければならぬと云ふことで非常に其の關係者と云ふものは苦慮慘澹して居りました、それが何時解決されましたかと云ふと、昭和十四年に至つて漸く解決されたのです、昭和二年から十四年、年を閲すること十二年です、其の間日本の國には賭事が横行して居つたのです、法律無視の行爲が横行して居つたのです、そこで、昭和十四年に初めて之を統一したのが鍛錬馬競走と云ふ名の下に統一したのです、鍛錬中央會と云ふものが出來まして、是は甚だ人を申上げるのは當を得ないかも知れませぬが、西尾子爵が其の鍛錬中央會の副會長です、松平伯が會長、吉岡陸軍中將が他の一人の副會長です、是で法律を以て此の地方競馬と云ふものを統一したのです、さうして出來たのが今日出來て居ります、地方競馬の前身と申して宜しいのです、それで漸く地方競馬の數を少くした、是は法案の第三條にあります、「この法律により、競馬を行ふ競馬場の數は、北海道三箇所以内、都府縣各各一箇所以内である。」是はもう鍛錬中央會の場合の軍馬資源保護法と全然同じです、是が非常に大事な規定です、先程讀みました競馬制度の犯罪と云ふ本にも地方競馬場は百十三箇所と書いてあります、其の競馬場が滔滔として法を無視した行爲を致して居つたと云ふのでありますが、其の法案はそれを引括りまして、沖繩縣を除きまして一道一都二府四十二縣になりますか、さうすると今度集めましても、五十になりませぬ、五十にならない競馬場で全部統制しようと云ふのが此の法案です、さうして軍馬資源保護法に依りまして鍛錬競馬場の數を減少統制する爲にどの位政府が苦心したかと云ふことが、是が地方競馬改善の刮目すべき歴史であります、亂雜極る地方競馬が出來ましたから、それを統一する爲に日本競馬會に金を出さしめて、其の金を以て政府は鍛錬中央會に地方競馬の整理を行はしめたのであります、さうして鍛錬中央會の事務は日本競馬會に移り終戰の時迄維持し來つたのであります、處が終戰と同時に此の軍馬資源保護法が廢止された、是は此の説明書にあります、昭和二十年十一月に廢止せられた、そこで昨年の十一月以來今日迄の状況が、嘗つて困り拔いた昭和二年から昭和十四年に至る迄の亂雜状態が今萌芽を發して居るのです、一日措きましたならば、今迄十二年間苦しみ拔いたことが、再び茲に滔滔として日本全國に瀰漫せむとして居るのだから、一日も早く本法案を成立せしむべきであります、本法案には軍馬資源保護法の規定の良い所が皆集められてあります、そこでどうしても是は早く成立せしめねばならぬと云ふことは能く御了解を願つたことと思ひます、さう云ふやうな状況でありますから、どうしても此の地方競馬法と云ふものに付ては、第三條の規定に重點を置いて、さうして之を將來施行されることが必要であると同時に、外に出來ます色々な競馬類似の施設がありました場合には、内務省としましては、地方長官に能く御命令願つて、それを出來るだけ嚴重に抑へて戴かぬと、統制ある競馬に、害を及すことでありますから、其の點は十分内務政務次官に御願ひ致します、司法政務次官にも御願ひ致します、結局類似のものは犯罪をすることでありますから、犯罪は司法警察で押へて戴きたい、それはどう云ふことかと云ふと、競馬場以外で行ふものは税金を納めませぬ、さうして開催者に對して何等の納付金もしないのでありますから、馬政にちつとも貢献しない、さう云ふものが横行すると云ふことは非常に惡いことでありますから、其の點を嚴重に取締つて戴きたいと云ふことを司法大臣、内務大臣に能く御傳へを願ひたい、能く其の點御了解願ひたいと思ふのです、そこで第一條を御覽願ふと、「馬事の振興を圖るため、主務大臣の許可を受けて、この法律により、競馬を行ふことができる。」と云ふことになつて居ります、馬事振興の爲と云ふのは、此の規定で申しますと、第十一條です、第十一條に斯う云ふことが書いてある、「競馬施行者は、主務大臣の認可を受けて、優勝馬票の賣得金額の百分の二十五以内の金額を、自己の收入とすることができる。」、此の百分の二十五の金で、地方長官と相談をして、地方廳でお金が御入用であればそれに出す、神奈川縣では今申しました百四十萬圓以上の金を色々な用途に御使になることが出來る譯です、此の主催者は、馬匹組合聯合會又は馬匹組合でありますから、結局馬事振興の爲に使ふ譯です、是は私の團體ではございませぬから、幾ら收得しても私の金にはなりませぬ、全部馬事振興の爲に使ふ、是は御安心願つても宜いのです、問題は二十五と云ふことが宜いかどうかと云ふことが要點になる譯です、此の二十五と云ふのは、成るべく少い方が宜いのです、是は實は多年農林省が公認競馬に付ても此の點に付て競馬に對する理解がないのです、それはどう云ふことかと云ふと、此の賣得金を多くすると云ふと、二十五も、頭を撥ねられるのであれば闇取引が行はれます、呑屋に行くと云ふと、賣得金は頭を撥ねられませぬ、呑屋の殖える原因は此處にあるので、開催者が頭を撥ねることを多くしちやいかない、是は能く斯う云ふことを御考へ願はなければなりませぬが、是は賭博開帳者が何故罪が重いかと云ふことに付ては斯う云ふことがあるのです、二割頭を撥ねますと、あと八割になる譯ですね、其の八割を又賭けると、又其の中二割取られる、結局馬券を買ひに行く者は全部取られることになる、さうすると、取られますと、新しいものが入つて來る譯ですね、其の新しいものが二割づつ順次に取られまして、結局全部競馬開催に取られてしまふのです、それが賭博開帳者を罪を重くしなければならぬ理由です、處が今度はそれを公に許すのですから、宜いのです、詰り競馬に行つたが最後皆取られてしまふ、處がそれが惡いかと云ふことになると、能く御考にならなければならぬ、娯樂に行くのですから、娯樂に行つて金を儲けると云ふことは有り得べからざることであります、競馬に行けば金を使ふのが当り前である、我々が芝居に行つたり映畫を觀に行つたりして家に金を入場前よりも多く持つて歸つたと言へば、それは掏摸でもやらなければならぬ、映畫を觀たり芝居を觀たりすれば持金が減ずるのが當り前であります、殊に馬券を買つて金を儲けて歸らふと云ふのは初めから間違つて居る、無くなるのは當り前である、そこで賭博開帳者を罪を重くする所以はそこにある、それを自分の懷に入れるのですから重く罰すべきは當然である、そこで此の百分の二十五を少くすると金が無くなる迄には、永く樂しめる譯です、此の理窟で言つて頭を撥ねて開催者の收める歩合金を少くしなければならぬ、處が是が多くなると面白くないから、「フアン」は來ない、結局少くした方が澤山の人に澤山賣れる譯です、農林省は財源として競馬會よりの納付金を多く致さうと思ふ時には何時も歩合を殖やさうとするのです、それが大間違ひです、今迄の沿革は皆さうです、非常に愚かなことを歴代農林省はやつて居る、所謂賣得歩合金を殖やすことを以て收入増加を爲し得ることなりと考へて居るのは間違ひであります、枚數制限を撤廢すれば宜い、それを撤廢すれば幾らでも殖える、賣得歩合金を、枚數制限を撤廢すると同時に減さなければならぬ、そこで私は農林政務次官に申しますが、若し競馬法を以て地方競馬法に從つて改正案を御出しになるとすれば賣得歩合金を減さなければならぬ、賣得歩合金を其の儘にして枚數制限を撤廢すると云ふことは大間違ひだ、枚數制限を撤廢する時には賣得歩合金も減さなければならぬ、さうしないと多く賣れない、是は總ての問題に共通する問題です、工業者が工業の生産をします時には薄利多量生産をやるのです、僅かな利益で、非常に澤山賣つて結局儲けると云ふのは是は工業の祕訣です、商賣人は薄利多賣と云ふことになる、暴利を貪ると結局少ししか賣れない、それで競馬に付ても競馬は何かと云ふと、歩合金を少くしなくちやいかぬ、それで私は斯う云ふことを言ふ、少歩、歩合を少くする、少歩多賣と云ふことにしなくちやならぬ、少歩多賣と云ふことが競馬經營の要諦である、競馬法に斯う云ふことがある、是は大石政務次官に能く御聽きを願ひます、歴代の農林省が政府納付金を多くするが爲には賣得歩合金を殖やせば宜いと云ふことを繰返し行つて來たのですから、それは甚だ宜しくない、今のことで能く御了解だと思ひます、それは競馬法に斯う云ふことがあるのです、競馬法の第九條に、「政府に納付すべき金額と賣得歩合金額との合計は賣得金の額の百分の十五を超ゆることを得す」とある、是は狹い意味の賣得歩合金です、さつき申上げた少歩の歩と云ふのは兩方入つて居るのです、元は百分の十一位しか取らなかつた、政府はどう云ふことを致したかと云へば、昭和十四年の法律第三十八號に斯う云ふものを出して居ります、「競馬法第八條第一項の規定に依り日本競馬會が政府に納付すべき金額は同項の制限に拘らず其の賣得金の額の百分の十一・五以内に於て命令の定むる金額とす」其の次に「前項の規定に依る政府に納付すべき金額と競馬法第九條の規定に依る賣得歩合金額との合計は賣得金額の百分の十八を超ゆることを得ず」とあつて今度は十八に増加した、「本法は大東亞戰爭終了後其の翌年十二月三十一日迄に之を廢止するものとす」と斯うある、終戰後翌年十二月三十一日と云ふのだから本年の三十一日迄の譯で、是は本年の十二月三十一日迄有效です、競馬會は百分の十八を取つて居る、處が其の外に馬券税がある譯です、馬券税は今度此の附則で地方競馬の方は改正しますが、競馬會の納めて居るのは馬券税法の第三條にあります百分の七と云ふことになつて居る、それですから今の十八と百分の七を加へますと、百分の二十五になる譯です、其の百分の二十五を眞似をして、此の法案では百分の二十五と書いた譯です、此の百分の二十五は是亦大いに間違つて居る、此處で百分の二十五を取ると、地方競馬の方は馬券税は百分の四と云ふことになつて居るから、百分の二十九になる譯です、是は地方競馬法が二十五と云ふのは大間違ひです、こんなことはいけない、そこで衆議院に於ける説明には一般には二十五迄は取りませぬ、二十にしますと云ふことを説明して居る、是は初めから二十にして置かなければならぬ、もつと少くして宜い、今申しましたやうに少歩多賣主義と云ふものから見て根柢が間違つて居る、それからもう一つ此の際申上げますが、此の競馬は初め第一條にある如く、馬事振興を圖る爲に行ふのでありますから、其の馬を虐待してはいけない、非常に合理的の競馬を行はなければならぬ、馬の保護の爲ですから正直にやらなければならぬ、正しく直な競馬を行はなければならぬ、八百長をやることはいけない、八百長をやつたならば馬券が賣れない、眞面目にやるから馬券が賣れる、だから競馬を行ふには正直と云ふことが要件です、賭事の堂元は最も正直でなければならぬ、それが要諦であります、そこで此の競馬と云ふものは正直にやらなければいかぬと云ふことになります、其の一つは、八百長は禁じなければならぬ、もう一つは興奮劑を飮ましてはいけない、茶を飮ましたり、「ビール」を飮ましたり、蝮の黒燒を食はしたりする時に非常に馬は興奮する、出走前に既に汗を出して居る、我々が眞面目に討論する時に酒を飮んではいけない、心靜かに行ふべきである、それと同じであります、競馬と云ふものは正しく直に行はなければならぬ、それが要諦であります、是は「オネスティ」と云ふことになる、競馬は「オネスティ」でなければならぬ、横道に入るやうでありますが、「オネスティ・イズ・ゼ・ベスト・ポリシイ」と云ふことがあります、處が「オネスティ」と云ふことは誠實と云ふこととは違ふ、誠の實と云ふことを言ひますのは、是は道徳の方で「ヴァーチュー」です、正しく直にやると云ふのは道徳ぢやない、是は條理「リーズン」であつて、決して「ヴァーチュー」ぢやない、だから「オネスティ」が「ベスト・ポリシイ」になる、是が條理である、だから競馬法をやる者は何も誠實にやつて居るのぢやない、道徳的にやつて居ることぢやない、正しく行ふと云ふだけのものです、そこで話は横道に外れますがそれが故に「オネスティ」と云ふことは、是は或意味に於て言ふと政略的なものである、ですから「ベスト・ポリシイ」です、だから「フランス」人がこう言つて居る、「スコットランド」の人は「オネスティ」を「ベスト・ポリシイ」と云ふことでやつて居る、だから佛人は「プロビテ・エコセーズ」、「スコットランド」の正直と言つて居ります、「スコティッシュ・オネスティ」と云ふ譯です、「オネスティ・イズ・ベスト・ポリシイ」と云ふのは「スコットランド」の言葉です、「スコットランド」の商人が死にます時に子供を集めて、どうも正直にやつたことが一番好い「オネスティ・イズ・ベスト・ポリシイ」と云ふことを話した、それが元です、だから是は「スコッチ」正直と謂つて宜いでせう、競馬をする者は「スコッチ」正直を守るべし、斯う云ふことが一つの要諦です、そこでさう云ふやうなことで進んで參つて居る競馬法でありまするから、どうぞ私が今申しましたことに……、内務省、司法省、農林省の皆政務次官であられるから、是は大政治家です、大政治家は唯文字の、法律の文字をこぢくり廻してやるやうな行政は、是はされない、世の中に政治的解決と云ふが如くですね、是は條理も人情も何も加つた圓滿なる解決をすることが、是は政治の要諦でありますから、地方競馬法は斯くの如き政治の要諦で一つ御施行願ひたい、要點とする所は今多く申しました、結局する所は折角今度是が出來て、五十に足りない競馬場で緊張したる所の競馬を施行せしめることになるのでありますから、どうぞ此の競馬を施行する者が堅實にやつて戴くやうに御指導願ひたい、地方長官に對してもさう云ふやうに指導して戴きたい、不堅實な者は地方長官で警告して貰ひたい、で、眞面目に行はせて戴きたい、さうして競馬類似のもの、法を潜る者を嚴重に取締つて戴きたいと云ふことが目的の重點であります、さう云ふ譯でありますから、司法の政務次官に御願ひしますが、さう云ふ意味に於て御覽願ひたい、そこで斯う云ふ問題がある、何が故に我々は此の馬にそれ程力を入れるかと云ふ點、是が要點です、元來は日本の農業政策には馬がなくては行きませぬ、それは一番卑近な例を申上げますと、米の増産を圖る爲に考ふべきことに貸馬制度と云ふものがある、是は能く御承知でせう、富山縣などは馬が足りない、それで岐阜縣や、長野縣の馬を借りて山の耕起をさせる、それは牛では出來ませぬ、さう云ふことに依つて早場米の地方が早く植付が出來る、是は、飛騨の賃馬制度と云ふものは昔からあることです、今日富山縣は貸馬に依存して居る農業經營であります、東京もさうです、東京も矢張り千葉、埼玉から馬を借りる、そんなことは牛にはありませぬ、それがなければ日本農業は成立ちませぬ、それからもう一つ農業の一番苦しいことは田の草取りです、炎天に四つ這ひになつて田の草を取つて居る、是は如何に日本の農業と云ふものが勞苦を重ねて居るものであるかと云ふことが分る、何とかしてそれを脱却せぬといかぬ、四つ這ひになつて居ると云ふことは、是は私は或意味に於て人間が家畜の形をして働いて居るのだと思ふ、そんなことは見るに偲びないのであります、早く馬耕を行はなければならぬ、草取りと云ひますけれども、あれは中耕除草なのです、除草すると同時に泥を掻き廻すのです、唯草を取つて居るのぢやない、中耕を行つて居るのです、そこで馬耕をしますと馬の通る所を廣くする、他は狹くする、それで鋤でやるのでありますが、明かに中耕です、是は大石政務次官が除草だけではと云ふことで議論して居られます、田の草取りと云ふのは中耕が大事なんです、中耕すれば草も引つ繰返る、で除草と中耕と兩方行ふ、さうすると肥料の效果が、肥效と云ふものが増加する、殊に日本は酸性土壤が非常に多い所ですから、そこで片方には厩肥が必要なのです、酸性土壤を緩和する爲に、無機質肥料を緩和する爲には厩肥が非常に必要なのです、厩肥と云ふと牛馬である、特に馬の必要なのは、是は東北では馬の温い温性厩肥でなければならない、牛は冷性厩肥です、それで東京の直ぐ側に東京農業大学と云ふものがある、馬冀だけで雛を孵して居る、是は普通なら「ランプ」で行ふのですね、處が、農業大學に行けば馬糞だけです、それだけの熱を持つて居る、だから冷害地にはどうしても馬が要る、日本の農業の豐凶を左右するものは東北です、東北、北海道で凶作の時には日本は凶作となる、あすこが豐作であれば日本は豐作になると云ふのですから、米作の鍵を握つて居るものは東北、北海道であつて、それは又馬の厩肥で維持して居ると云ふことを御考になれば、馬が如何に大切であるかと云ふことが能く御分りだらうと思ふ、それのみならず馬が非常に大切であることは、人間に使ふ血清なんかでも馬に依らなければならぬ、只今日本は結核退治を行はなければならぬが、其の結核退治は牛ではいけない、牛には結核がある、「ツベルクリン」反應と云ふのがあでせう、馬には結核はない、それは馬には其の乳から作ります「クミス」菌と云ふのがあるのですね、乳を酸性化する「クミス」酸と云ふものが乳の中にある、此の「クミス」菌で結核退治をすると云ふことは既に「ソヴイエト」聯邦で行つて居ることです、「ハルピン」でも行つて居ります、「ソヴイエト」聯邦に於ける結核療養所は馬の乳で行つて居る、さう云うことを研究して戴きたいので、大石政務次官の息子さんが、東北帝大の醫學博士です、大石さんにさう言つたのです、息子さんが馬の方に進出して下さるやうにと、日本人の結核退治が非常に必要ではないか、「クミス」菌で日本の結核を退治しなければならぬ、それには色々な例がある、毎日結核患者に四合づつ馬の乳を飮ませて結核が癒つたと云ふ例がある、斯くの如く非常に重大なることが馬に付て濳んで居ると云ふことを、私共馬に平常關係して居る者は思つて居ります、何とかして馬を出來るだけ活用しなければならぬと云ふ強い信念の下に私は言ふのです、處が、歴代の大藏省は馬に關する豫算をなかなか認めないのです、そこで已むを得ず出來たのが競馬法に依る納付金です、競馬法で收得歩合金と云ふのがあるでせう、あれは馬に使つて居るのかと思つたら、其の收得歩合金は其の儘一般會計に出て居る、それで私は農林省に在職して居る時に、競馬の收得金は總て馬事に使つて戴きたいと云ふことを競馬法の改正案で申し出でた、處が、さう云ふことは出來ないと大藏省は申されました、それは競馬に依り政府への納付金額は決算を見なければ分らない、決算を見てから後に馬事に使ふと云ふより外はない、決算は翌々年に分ると云ふのであるから、今そんなことは出來ない、出來ないと云ふので閣議で潰れてしまつた、其の時の大藏大臣は井上準之助さんでした、私は馬の金を馬に使ふことは出來ない譯はない、さうすると大藏大臣曰く、北海道の拓殖費が北海道に於ける收入金を北海道拓殖の爲に使ふといふことを閣議決定で決つて居るのだから、それと同じやうにしたらどうか、特に法律にする必要はない、さう閣議で決定すれば宜からうと云ふのです、其の時私は農林次官で大臣は町田さんでしたが、閣議から歸つて來られて、政府委員室で斯う云ふことになつたから君の意見は通らぬよと云ふ譯です、それで私はどう云ふ譯ですか伺ひますと言つて、大臣に參りました、處がまだ閣僚が殘つて居られた、文部大臣田中隆三さんに何故出來ないのか聽きました處が、それは大藏大臣もどうもいかぬと言われる、それから閣僚の中には江木翼さんと云ふ法學博士が居られる、それは法律上から見てもいけない、井上さんは財政の大家ですが、財政上から見てもいかないと言はれたとのことでありました、私は決算ではなく豫算で考へて居るのであると申しました、私は町田大臣の御許しを得て、三河臺の大藏大臣の私邸に伺つた、大臣に私は豫算で行つたら宜いではありませぬか、片つ方で競馬收入と云ふ豫算を政府が計上する、それに對し、片つ方農林省の馬事の支出豫算を組んだら宜いではないか、豫算と豫算を見合せて何故出來ないかと申しました處が、そこは井上さんで成る程それならば出來ると申されました、然るに大藏省の政務次官は小川郷太郎君、主計課長の賀屋君、次官が確か河田君、法制局長官は川崎卓吉君、今國務大臣をして居らるる金森君が法制局參事官、全部擧つて私の方の原案に反對である、仍て大藏大臣が御同意下さるならば、大臣から政務次官其の他に、仰つしやつて戴きたいと申し、それで出來たのが今日の競馬法の規定であります、此の競馬法には競馬の納付金は馬に使ふと云ふことになつて居ります、それは私の功績であると申し得る、それ以來其の納付金で農林省の馬の豫算を維持して居つた、大藏省がどうしても馬の豫算をなかなか認めて呉れない、そこで斯う云ふ賭事の財源で日本の馬政を維持して居ると云ふことは何事だと私は云ふのです、けれども仕方がない、それから馬券を買う人は喜んで御奉公して下さる方ですから、歡迎して宜い譯です、競馬で一番大事にしなければならぬのは「フアン」です、今言つたやうに金を出して居つて、豫算を國家に成立せしめて居る、初めから金を取られるのを覺悟して居る人もあります、中には金を儲ける積りで競馬に行くと云ふのもありませう、それが競馬と云ふものです、ですから出來るだけ「フアン」の喜ぶやうに設備も良くし、芝生のやうな所に花を植えて氣持の好いやうにしなければならぬ、日本の馬政は「フアン」に依つて成立して居る、是は愼重に考へなければならぬ、斯う云ふ譯であります、色々長々と申しましたが、さう云ふことでありますから、内務省、司法省及び農林省の政務次官の御方々に御願ひするのは、どうぞ眞面目な競馬が行はれますやうに一つ考慮して戴きたい、良い所は斷行して戴きたいと云ふのが要件であります、農林省の政務次官に特に申上げますが、競馬法の改正は續いてなさらないと競馬法に依る所謂公認競馬と地方競馬とが不均衡になりますから、それは速かに出して、今の枚數制限の撤廢ですが、其の時に併せて考へて戴かなければならぬのは競馬法施行者の收入歩合金のことです、法案第十一條の規定です、此の地方競馬法案の出來る時に私は二十でなければいかぬと云ふことを申して居つた、衆議院の方で二十五に致しました、先程言つたやうに申譯をして居ります、二十五は殆ど使はない、是は農林省に御願ひしますが、地方競馬は農林大臣の監督の下にやるのでありますが、歩合金に付て十分御考慮を願ひます、さう云ふ趣旨で御質問する譯でありますから、何か私の意見に付て御教を戴けることがありますれば、御答を願ひたい、是が私の質問の要點であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=73
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074・古島義英
○政府委員(古島義英君) 只今松村さんから大變蘊蓄のある御言葉を頂戴致しまして、特に刑事問題、若しくは馬匹問題、農耕問題、其の他の該博なる御意見を承りまして誠に感謝に堪へない次第であります、御説の通り競馬が勝馬券を賣りましても、或は能力檢定券を賣りましても、法律の定める所に據らなくんば、是が賭事であり、富籤であると云ふことには異論はないのであります、そこで司法省も若し何等の法律的の根據がない、斯樣な競馬でありますならば、是は十分取締らねばならぬことであります、併しながら法律に根據を有し、さうして御質問の中にありますやうな效果のあることであるならば、之を獎勵致さなければならぬ筋になるのでありますから、相成るべく違反のないやうな法律的正常な事項に於て御説の通りの目的を達したいと考へて居ります、其の積りで進みますから、何卒御了承を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=74
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075・世耕弘一
○政府委員(世耕弘一君) 内務當局と致しまして一應御答へ致したいと思ひます、各方面に亙つて御高説を拜聽致しましたのですが、至極御尤もと存じ上げます、終戰後に於て特に地方競馬が稍稍無軌道な形に於て行はれて居ると云ふことも御指摘の通りだと存じます、幸に近く地方競馬法の成立する運びとなりました場合には、只今の御趣旨を體しまして十分取締を致したい、斯樣に考へて居ります、只今の御質問に御答へ致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=75
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076・松村眞一郎
○松村眞一郎君 司法政務次官、内務政務次官が態態御繰合せ御出席を戴きまして、又御丁寧な御陳述を得ましたことは、此の委員會としても喜びであらうと存じます、私に取りましては非常に感謝の意を深くするものであります、厚く御禮を申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=76
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077・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 松村さんの御説は誠に傾聽に價すること勿論であります、農林省に對しまして此の競馬法の扱ひ方、又地方競馬法の成立の曉に於きましての運用等に付きましては、御趣旨に副ふやうな取扱ひを致すことが最も適正であると思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=77
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078・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 他に御質疑がございませうか、ございませぬければ、御諮を致しますが、委員外より質問の御通告がございます、小原男爵からして此の機會に質問をしたいと云ふ御通告がございますが、御許しして差支ありませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=78
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079・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 御異議ないと認めます、小原男爵発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=79
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080・小原謙太郎
○委員外議員(小原謙太郎君) 競馬のことに付きましては先般の生活保護法の時に少し觸れて置きましたが、今日はもう少し根本的な問題に付て伺ひたいと思ひます、自分は現行競馬法を二本建てで行く必要はあり得ないし、現行競馬法、日本競馬會は其の軍事的性質の點から見ましても、非民主的な獨占機關であると云ふことからしても、當然それを改善して速かに非軍事的目的であり、民主的であり、平和主義的なものに改造すべきものだと云ふ意見を持つて居るものでありますが、此の見地から現行競馬法を何故に存置する必要があるかと云ふ點に付て御尋ね致したいのであります、現行競馬法制定の動機が抑抑第一に軍事目的を主眼とするものであつたことは何人も疑ふ餘地がないことと存じます、現行競馬法は御承知の通り大正十二年に時の陸軍大臣山梨半造氏の提案に依つて生れたものでありますが、其の提案の時貴族院の反對を押切つた理由は、日露戰爭以來軍馬の充實改良を心掛けて來た陸軍は馬政局を設けて大いに之に意を用ひて來ましたが、今や軍備縮小の爲に軍馬方面に軍から多額の費用を割くことは出來ない、就ては馬券でも賣つて其の收益で馬の改良方面を賄ふことにしたいと云ふのが、其の根本理由であつて、陸軍の強力なる壓力の下に此の案は兩院を通過して、此の案を土産として日本の馬政はそれ以來農林省畜産局の所管に移されたものであります、即ち其の制定の抑抑の動機、理由が何よりも軍事目的を主眼として居たものであります、斯かる次第でありますから、競馬法に依つて何が行はれたか、如何なる方面に向つて日本の馬の改良が進められたかと云ふことは、殆ど説明の要はない程明瞭でありますが、此の軍事目的性を更に強化したものは、昭和十一年の競馬法の劃期的な大改正、又之に依る日本競馬會の設立であります、此の改正に依つて現在の日本競馬會と云ふ獨占機關は生れたのでありますが、凡そ軍國主義を建前とし、全體主義を根軸とせざる平和主義國家、民主主義國家に、競馬の獨占機關などと云ふものが存在すべき謂れがないと云ふ反對的解釋説明に依つて、今の日本競馬會の軍事目的性、非民主主義性は十分に明らかにせらるると思ひますが、其のやつて來たことは何でありましたか、勿論日本の政治經濟社會一般がさうであつたのでありますが、滿洲事變から引續いての支那事變、日本が所謂國家總動員態勢を目指して、國家機構全體を軍事目的本位に編成替した時に、眞先に採上げられたのが日本の馬政でありますが、競馬法の大改正であります、日本競馬會の設立であつたのであります、一言にして言へば日本競馬會なるものは、軍事目的の爲に生れ、軍人目的に終始して來た機關であると言つても決して過言ではないと思ひます、馬の改良増殖と云ふ其の目標は何に置かれたか、曰く日滿に亙る馬政國策、曰く内地馬政計畫、而して國家總動員法の姉妹法である所の種馬統制法、此の三つのものが敗戰後の今日、一切の戰力と袂別した今日でも、未だに廢止もせられずに殘つて居るやうでありますが、日本競馬會が其の設立以來十年間行つて來た所は、此の二つの國策と、一つの法律の線内に於て、只管に軍馬の改良増殖に努めて來たものに外ならないものであります、而して勢の赴所は遂に誠に不愉快な國際的不祥事迄惹起して居るのでありますが、昭和十五年七月、此の時はまだ米英に開戰を宣するよりも一年半も前のことではありますが、何を血迷つたものか、日本の競馬は軍馬と關係がある、就ては國際關係緊迫の際、外國人が競馬關係團體の役員の地位に居るには都合が惡いから辭めて呉れと言つて、日本の競馬社會から米英人、其の他の外國人を全部追つ拂つてしまつたことであります、最近出版された野村吉三郎大將の「「アメリカ」に使して」と云ふ同大使の日米交渉に關する記録を見ますと、日本の上下が當時國際關係に對してどんな氣持で居たかと云ふことが分ると思ひますが、此の本に依ると、當時日本の上層部が如何に細心の注意を拂つて、對米英外交調節に苦心して居たかが分ります、從つて民間個人に關する問題の如きも、「アメリカ」側に於ても努めて日本の氣持を刺戟しないやうに努力して居たと云ふ記載が隨處に發見せられます、又當時の國内の情況を振返つて見ましても、例へば文部省方面のことにしても、多數の外國人教師の講義を平常通りに續けさして居て、少しも外人排斥等のことはありませぬでした、然るに競馬社會に限つて斯かることが行はれたのであります、如何に日本競馬會の競馬と云ふものが軍事目的本位のものであるかと云ふことは、此の點でも誠に明瞭であると思ひます、日本は「ポツダム」宣言を受諾し、降伏條件に調印し、憲法には戰爭抛棄を明記して、一切の戰力と袂別した筈ではありませぬか、何故に非民主主義的にして軍國主義的な競馬法を存置し、日本競馬會と云ふ時代逆行的な獨占機關を庇護存續せしめねばならないのでありませうか、之を平和主義的なものに切替へれば差支ないと云ふやうな安易な考で居る人も居るかも知れませぬが、それでは將來はどうなつた所で、過去十年間の戰爭責任はどうなるのか、正眞正銘の軍事協力專門機關であつたものを其の儘にして置いて、何時迄も通るやうな甘い時代ではないと思ひます、假令之を現内閣が何とかしまして濟まして置いたとしても、何時かの機會には必ず此の機關の正體、此の法律の目的は明らかにされます、日本政府が祕して置けば、何時かの時期に必らず占領軍に依つて分つて來ると思ひます、發かれて狼狽する時は醜態でもあるし、日本の信用を高めるものでありませぬ、又日本の民主主義化を早めるものでもありませぬ、競馬關係法規の審議に當つて日本の兩院に於て此の點に關する言議が一言もなかつたと云ふことは、國内から軍國主義を拂拭しなければならぬと云ふ時代の要請に副ふものではないと思ひますから、自分は敢て競馬通でも何でもありませぬが、一言申上げたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=80
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081・大石倫治
○政府委員(大石倫治君) 只今小原男爵の御質問、御意見の點でありますが、日本競馬會の存在は軍事的であり、非民主主義的で排すべきものであると云ふやうな御意見のやうでありますが、事變、戰時中に於きまして、全然軍事關係を持たないとは申さぬのでありますが、併し今日又日本競馬會の設立と云ふものは御話の如く、單純なる軍事關係のみを以て成立を致したのではございませぬ、内地馬政計畫と申しまするものは、單純なる軍事の關係を一切に盛込んだと云ふものでございませぬで、馬の必要は戰時に於きましても、平時に於きましても必要である、今日終戰後に於きましても、日本は戰爭を抛棄し、軍事關係が無くなつたと致しましても、馬の重要性には變りはないのでございます、第一次馬政計畫に於て、内地馬政の計晝は百五十萬頭の馬を國内に飼養育成する、斯う云ふ建前から日本の國民の生活上に於ける所の耕地と睨み合せまして、又其の百五十萬頭の馬を育成飼養致しまする農家或は耕作地其の他の部面との程度が計畫の中に加へられて居るのであります、又生産部面に於きましても、此の百五十萬頭の馬を年々消費補充を致す生産力と云ふやうなものを考へられて出ましたのであります、戰爭中ですらも馬の需要は全馬數の幾割かに止つて居りまして、大部分は農耕及び輓曳等に仕向けられて居るのでありまして、今日戰ひが終つた、總てが戰爭を抛棄して平和の日本を再建するのだと云ふ場合に於きましても、益益馬の重要性は加つて參りまして、殊に食糧生産、耕地の狹い所に非常に多い所の人口を包容せねばならぬ問題は益益耕地の擴張ともなり、食料の増産となるものでありまして、此の食糧の増産と耕地の擴張とに對應致しまして、嘗つて第一次馬政計畫、第二次馬政計畫に於て適當と見られて居りました百五十萬頭は尚不足を告げると云ふやうなことでございまするから、戰時中に於きまして、又あの軍備の盛なる時代に於きましてすら百五十萬頭で適當と思うたのが、今日は更に耕地の擴張百五十萬町歩も殖やさうと云ふことになりますると、どうしても肥料の供給、勞力の整備、色々の部面から馬の必要が益益加つて參るのであります、日本競馬會は の必要なる馬、即ち農耕馬として、輓曳馬として、總じて之を産業馬と稱へまするが、全く戰爭や軍事に何等の、微塵の關係もない馬の生産、育成、飼育等さう云ふやうな場合に於きまして相當馬の素質でありましても、現在軍馬中心に奬勵を受けました馬の今日の體格、體高、能力、育成上の難易と云ふやうな關係が、必ずしも今の産業馬として適當なものばかりではないのでありまして、漸次之を適當なる生産、農耕、輓曳の馬に改めて行かねばなりませぬ、それには矢張り其の基本となる所のものは種牡馬、種牝馬であります、此の適當なる種牡馬、種牝馬の能力を能く檢定し、どう云ふものを種付し、どう云ふものを生まし、どう云ふ風に育成して行くかと云ふことになりますれば、其の基本を成す所の種馬の生産育成の爲に、茲に日本競馬會が重要なる役割を持つと云ふことになるのでありまして、之を存在せしむることは軍事的、軍國的の色彩を持つものだと云ふやうなことは、今日に於ては考へる必要はないのであります、又斯樣な建前で之が存置を認めて居るのであります、將來現在の日本競馬會の機構、或は競馬法のそれに伴ふ改正等に付きましては、近き將來に於きまして根本的に、只今申上げました線に沿うて改正の必要を認めざるを得ないのでありますが、今囘此の地方競馬法が成立施行になりますると、先づ第一に非常な違ひのある點だけは此の機會に於て改正案を提案致しまして、全般的の只今申上げました根本改正に付きましては、更に調査研究を進めまして、近き機會に於て之を提案致したい、斯樣な政府の考へ方でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=81
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082・小原謙太郎
○委員外議員(男爵小原謙太郎君) どうも有難うございました、地方競馬法が出ました理由とか、又急いで居られる譯は能く分つて居りますので、之に對して今言ふのではありませぬけれども、又此處で色々と細かいことを申上げるのに、急だつたものでまだ材料も十分揃つて居りませぬし、又議論をすることもないと思ひますけれども、今度根本的に出ます時に能く其の點を御考へ下さつて、しつかり根本的に御改革願ひたいと思ひます、どうも有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=82
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083・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 如何でございませうか、他に御質疑がなければ、本委員會も今日で四囘開いた居りまして、大體御質疑も盡きたやうに存じますが、討論に移つては如何でございませうか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=83
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084・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 別に御發言もございませぬか……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=84
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085・安田伊左衞門
○安田伊左衞門君 私ちよつと一言希望を述べて本案に贊成する者でありますが、一應希望を申述べて置きたいと思ひます、競馬は明治三十八年、明治天皇樣の深く馬の改良に付て御軫念あらせられたことが本で、馬政十八年計畫と云ふものが成立つて、競馬は馬の改良の最も捷徑であると云ふことで、非常に時の政府は獎勵されたのであります、當時本院に席を持つて居られました加納子爵が、馬の改良に付て非常に主張して居られました、私共も非常にそれに共鳴して、馬の改良と云ふことの出發が出來たのが即ち今日の競馬法に依つてやつて居る競馬であります、途中に於て色々な競馬の創設あり、又禁止あり、又復活あり、又禁止、波瀾曲折を極めて居りますが、其の間漸く競馬法なるものが十六年間の歳月を費し、我々同志と共に、さう云ふ競馬法と云ふものが制定されたのでありまして、それから二十數年間競馬法は、所謂原原種を拵へると云ふことが第一點、其の外一般馬事の振興と云ふことが、主になつて居りますが、此の二十數年間に於て、外國に依存せずして日本で「サラブレット」と云ふ原原種を拵へたと云ふことは、即ち競馬法に依つてさう云ふことが出來たのであります、今日盛に立派な、詰り日本の氣候、風土に馴れた「サラブレット」原種と云ふものが出來たのが即ちそれが爲であります、是は日本競馬法と云ふものの功績の一つだらうと思ひます、又一つには一般馬事に對する、即ち收益を擧げて馬事の振興を圖ると云ふことであります、昭和十八年の競馬の停止迄に、競馬法が出來て以來の政府で收めました收入は約三億に近い、即ち貨幣の價値の尊い時代に於て約三億に達する金を一般馬事の振興に向けられたのでございます、細かく申上げますれば際限がないですから、極く簡單に、此の二つが競馬法に依つて馬事に關して非常な成績を擧げた譯であります、故に此の地方競馬法案が出來ますれば、矢張り同一に馬事の振興に對して好成績を擧げるものと私は信じて居ります、本案に對しては私は贊成するものであります、但し茲に一つの希望を願つて置きたいのは、競馬は大きい都會に於て、即ち人の集散の激しい所に於て、どうしても收入が多いのであります、賣上げが多いのであります、馬の生産地とか、不便な地に如何に競馬を獎勵しても收入が餘り上らないのであります、故に大きい所の都會で上げた金を、上らない所の馬産地方面に遍く金を分配して、馬事の振興を圖つて戴きたいと云ふことが私の希望する第一であります、それから第二には、もう是は曩に松村委員から取締上に付て懇々希望がありまして、御答辯がありましたから私は之を敢て申しませぬ、唯もう一つ御願ひして置きたいのは、競馬は非常に簡單なやうで、非常に困難な仕事でありますから、どうか各地に於て之に當られる方は、適當な方を配置されるやうに、御當局に於てさう云ふ點を十分に一つ御心配を戴きたいと、斯う思ふのであります、以上を以ちまして私は本案に贊成するものであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=85
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086・四條隆徳
○侯爵四條隆徳君 馬の重要性に付きましては、松村委員から種々御述になつた所と私も同感であります、競馬を執行するの可否に付きましても、只今安田委員から御述になりました所と同樣な考でございます、唯本案の特徴とする所の馬券でありますが、是は從來も一人一票を許されて居つた、其の時には、先程政務官から種々御話もあつた通り、なかなか取締困難である所の私設馬券屋が相當あつた、馬券を買ふ額は、勿論人々の懷勘定に依つて違ふ譯でありまして、之を一概に一人一票とすると云ふことも寧ろ不合理である、且之を枚數を餘計に無制限に賣ると云ふことになりますれば、却て競馬が明朗になる、但し自分の財産に比して不相應な馬券買ひも世間にはあることと存じます、是等は當然國民自體の自省心に俟つべきものであると、私は左樣に考へる次第で、此の制限を撤廢することに付ても、私は異議のない所と考へます、唯此の運用の問題でありますが、地方競馬は我が國の半血種馬に對する獎勵と云ふことを強調されて居りますが、從來の如き指導の方法であれば、當然之には公認競馬に於ける所の勝ち味のない比較的輕い馬が走ると云ふ状況になると考へます、仍て今後左樣な技術的の點を篤と御指導願ふと云ふことを希望致しまして、本案全部に贊成を致す次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=86
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087・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 別に他に御發議がなければ、討論を終結致しまして、採決に移りたいと思ひますが、御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=87
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088・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 御異議ないと認めます、衆議院提出の地方競馬法案、全部原案通りで御異議ございませぬか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=88
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089・西尾忠方
○委員長(子爵西尾忠方君) 御異議ないと認めます、是にて委員會を終了致します
午後三時十六分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=89
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090・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 子爵 西尾忠方君
副委員長 男爵 三須精一君
委員
侯爵 四條隆徳君
伯爵 南部利英君
子爵 北小路三郎君
松村眞一郎君
男爵 徳川誠君
男爵 斯波正夫君
瀧川儀作君
安田伊左衞門君
有馬忠三郎君
渡部信君
政府委員
内務政務次官 世耕弘一君
内務參與官 桂作藏君
大藏事務官 福田赳夫君
同 前尾繁三郎君
司法政務次官 古島義英君
農林政務次官 大石倫治君
農林事務官 灘波理平君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002385X00419460917&spkNum=90
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