1. 会議録本文
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000・会議録情報
付託議案
○東京都制の一部を改正する法律案
○市制の一部を改正する法律案
○町村制の一部を改正する法律案
○府縣制の一部を改正する法律案
○衆議院議員選擧人名簿等の臨時特例に關する法律案発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=0
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001・会議録情報2
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昭和二十一年九月十六日(月曜日)午後一時六分開會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=1
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002・白根竹介
○委員長(白根竹介君) 會議を始めます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=2
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003・渡邉覺造
○渡邉覺造君 公選知事の權限に付て御尋したい、内務大臣の御説明に依りますと、知事其の他地方團體の長を公選にしたのは、從來に於ける過度の中央集權の弊を是正して、地方分權の徹底を圖る、又一方民意を基磐として強力な團體として地方行政を、強力に推進せしめるのが其の目的であるやうに御話を承つた、さうしますと是には知事の權限が非常に擴張竝に強化されなければならぬと存じますけれども、知事の權限は從來通りのものでありますか、又之を擴張されますかどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=3
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004・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今提案致して居ります地方制度改正案其のものに付て見ますれば、公選された知事が、官吏としてそれぞれの府縣の府縣知事に任命されますと、現在の官選知事の持つて居ります權限と形の上に於きましては變りはございませぬ、即ち現在の官選知事は、一方國の官吏若しくは地方廳としての立場に於きまして、所謂國政事務を管掌して居ります外に、府縣と公共團體の長として、公共團體の持つて居ります權限を行つて居りますが、公選された知事に於きましては、それが逆になりまして、公選知事は公共團體の長としての府縣の持つて居ります權限を行ひます外に、一面官吏として行政廳、地方行政廳たる府縣を管理致しますから、國政事務も併せて行ふことになります、形式上に於きましては増減はございませぬが、併し公選知事の場合に於きましては、選擧人の背景を持つて居りまして、非常に其處に民主制と云ふか、自治制が強くなつて居りますから、實際の上に於きましては、改正案に於きましても、地方分權と申しますか、地方自治と云ふのに餘程重點の掛つた運營が出來ると思ふのであります、併しそれは現在の御審議中の改正案の持つて居ります内容でありますが、將來地方制度に對しまして更に改革を加へまして、府縣知事は公選府縣知事と純然たる公吏に切替はると云ふ時期迄に於きましては、現在國政事務に屬して居りますものも、嘗て御説明申したやうに、地方分權の趣旨に依りまして、相當大幅に、或は之を公共團體の事務に移す、乃至は公共團體の長たる公選府縣知事に委任すると云ふことに依りまして、形の上に於きましても、公選知事の權限が、相當大幅に擴張されると云ふやうに思つて居ります、併し是は後の機會に於きまして、所謂第二次の地方制度の民主化をやると云ふ、其の内容に掛ることでありますが、大體の見透しは其のやうになると考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=4
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005・渡邉覺造
○渡邉覺造君 さうすると今迄例へば警察權のやうなものは、矢張り從前通り公選知事の權限内に入つて來ることになりますか、内相の御考を伺ひたい発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=5
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006・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 只今御尋になりましたのは、知事が純然たる公吏に切替へた後のことを御尋でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=6
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007・渡邉覺造
○渡邉覺造君 さうでございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=7
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008・大村清一
○國務大臣(大村清一君) それは度々御説明申上げて居りますやうに、現在の府縣廳で所管されて居ります警察事務は、之を能く檢討致しまして、警察事務に留保せぬでも宜いやうなものは警察外に外して宜からう、其の種類のものに於きましては、之を公共團體たる府縣若しくは市町村に委讓されるものが大部分であらう、尚又其の純然たる警察事務の中に於きましても、原則としては、之を公吏たる府縣知事の所管に委讓されるものと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=8
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009・渡邉覺造
○渡邉覺造君 現在國政事務として地方に特殊機關がある、例へば食糧事務所、域は木炭事務所のやうに農林行政に關する特殊の事務所が府縣にありますけれども、ああ云うやうな農林行政のやうなものは、大體是の權限と云ひますか、さう云ふことも、府縣知事の中に包含されるやうな御考の下に第二次の地方制度改正案と云ふものを御考になつて居りますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=9
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010・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 其の點に付きましては、曩に御尋になりました警察行政の點に付きましては、内務大臣の所管にありますので、相當にはつきりした見透しを申上げることが出來るのでありますが、内務大臣以外の權限に屬して居りますものに付きまして、之を如何に取扱ふかと云ふことに付ては、今後の研究に依つて決まることでございますが、併し地方制度を改正しまする政府の根本方針は、矢張り其の場合に於ても適用されるものと私共は考へて居ります、從つて恐らく將來に於きましては、所謂現業事務に關しまするものに付きまして、地方鐡道局等が置かれると云ふことは、是は仕事の實際からして矢張り存續されるものと思ふのでありますが、純然たる地方行政に關するものに付きましては、是は出來るだけ府縣其の他の公共團體に委讓されるべきものであると云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=10
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011・渡邉覺造
○渡邉覺造君 さうすると今迄の知事が、官吏としての知事の身分が公吏に切替へられたからして今度は今迄のやうな國政事務が別な特殊機關を設けて、所謂公吏の知事の權限から取外すと云ふことは、政府では考へて居りませぬでせうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=11
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012・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 是は先程來申上げますやうに、具體的の問題としては、今後の研究立案に俟つことでありまして、正確に御答を申上げますことは困難でありますが、併し從來と違ひまして、新憲法の施行になります曉に於きましては、官廳の組織の如きは勅令でなく何れ法律に根據を置くと云ふことになることでありまして、是等は何れも豫算及び官廳の組織法の法律と共に、國會の協贊を經なければならぬことでありますし、又我が國の民主化の傾向から申しましても、先程來御答へ申上げますやうに、大體地方分權の線に沿つて地力行政を民主主義化する、自治化すると云ふことは當然の歸趨だと思ひますので、大體論と致しましては御尋のやうになるものと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=12
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013・渡邉覺造
○渡邉覺造君 次に監査委員のことで御尋致したいと思ふのですが、此の監査委員は内務大臣の御説明に依りますと、其の事務、事業の執行の状況を審査して非違を正し、地方の住民及び議會に常に公共事務の内容の實際に付ての資料を提供せしめ云々とあります、是で見ますと、監査委員の權限は非常に廣く且強力なものと推察される、然る時には府縣知事の權限内に迄立入る虞が多分にあるやうに思ひますけれども、之に付て内務大臣は如何に御考になりますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=13
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014・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 監査委員の制度は、現在に於きましても類似のものがあるのであります、即ち監査役であります、處が監査後の地位は獨立性が非常に乏しいのであります、其の監査役に更に獨立性を付與したものが監査委員と云ふやうに申したら宜からうかと思ふのであります、而して監査委員の組織に付きましては、政治上或は行政上に付きましての識見のある方を選ばれるでありませうが、尚他の一面に於きましては、監査の方に特別の知識經驗技術を持つて居る專門家を任用することも望ましいことだと思ふのであります、それ等の監査に依りまして府縣制或は市町村制の行はれた後を監査して、さうして非違を正す、乃至は理事者が如何なる行動をやつて居るかと云ふことを選擧人にも知らせると云ふことに依りまして、選擧人が、或は理事者のやり方が適當でなければ、そこに監査の結果からして、解職請求權を發動すると云ふやうなことに相成る場合もあらうと思ひまするが、現在の改正地方制度で認めて居りますやうな限度に於きまして、理事者のやりましたことに對して掣肘を受けると云ふやうな結果に相成る場合があらうと思ひまするが、併しそれは當然のことでありまして、此の改正案の持つて居りまする程度の影響が理事者に及ぶと云ふことは、是は已むを得ないことである、否寧ろさう云ふ點を狙つて此の制度が改正されたと云ふやうに考へて宜からうと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=14
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015・渡邉覺造
○渡邉覺造君 さうしますと、此の監査委員は一つの獨立性を帶びた一つの機關と斯う認めて宜うございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=15
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016・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 獨立と言ひますのもどう云ふ風に考へますか、結局理事者から監査委員の地位を脅すことは出來ない意味に於きましては、強立性を持つて居る譯であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=16
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017・渡邉覺造
○渡邉覺造君 さうすると、參事會と監査委員は從來通りの私共の參事會に對する觀念と、今度新設せられた監査委員會は大體似寄つたやうに思ひますけれども、寧ろ是は參事會の方に入れた方が宜くはないかと云ふ感じも致すのですが、之に付て殊更斯う云ふ監査委員を設けた趣旨は、どう云ふやうな意味でございませうか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=17
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018・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 從來此の參事會が或は書類、帳簿を檢査する、又は實地檢査をすると云ふやうな權限を持つて居つたこともございますが、今度の改正に依りまして、參事會は實地檢査權がないことになつて居ります、實地檢査は監査委員の方に移つて居るのであります、さうして此の監査委員は府縣會が之を決めますが、其の監査委員の職務の執行が面白くないと云ふやうな場合に於きましては、選擧人の解職請求權の發動もある譯であります、そこで職務を適正に行使すると云ふことに付きましては、選任の場合にも、解職の場合に於きましても、相當の手段が設けられて居ることでありまして、此のやうな所謂獨立性を持つて居ります監査委員の監査の方が、寧ろ參事會が行つて居りました從來の監査よりも尚望ましいものであると云ふ考で此の立案を致した次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=18
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019・渡邉覺造
○渡邉覺造君 監査委員は有給吏員でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=19
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020・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 有給吏員ではございませぬが、此の改正地方制度に依りまして、報酬は給與することに相成つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=20
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021・渡邉覺造
○渡邉覺造君 さうすると、此の改正案の第六條の五項に「府縣の官吏及有給の吏員其の他の職員にして在職中の者は其の府縣の府縣會議員と相兼ぬることを得す」と、斯うなつて居ります、同じく第七十四條の二十の二項に、「監査委員は府縣吏員とし其の定數は四人とす」となつて居ります、さうして同條の第五項に、「監査委員は府縣知事府縣會の同意を得て府縣會議員及學識經驗ある者の中より各同數を選任すべし」、即ち府縣會議員が吏員の形になつたものと存じますさうすると、第六條の第五項と矛盾するやうに考へますけれども、是はどう云ふ風に解釋致して宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=21
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022・郡祐一
○政府委員(郡祐一君) 府縣制第六條、第五項に於きましては、選擧事務に關係のありまする官吏及び吏員の被選擧權の停止を規定致して居ります、それで監査委員は報酬を給與致されまする吏員でありまして、從ひまして一般の有給吏員ではございませぬ、さうして從來第六條、第五項に於きましては、「選擧事務に關係ある官吏及吏員」と規定してありましたのを、改正案にございまするやうに、選擧管理委員及び選擧管理委員會に附屬致しまする書記及び各種の投票管理者等に限定致しまして第五項を規定致して居りまするので、何等疑義を生ずるやうなことはない積りであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=22
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023・渡邉覺造
○渡邉覺造君 さうすると第六條、第五項は選擧に關してのみ斯う云ふ規定があつて、一般原則として、府縣の府縣會議員が斯う云ふ府縣の吏員と兼職することが出來ないと云ふのぢやないのですね、唯選擧に關してのみ此の法律が成立つて居る譯でございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=23
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024・郡祐一
○政府委員(郡祐一君) 第六條、第五項は其處にございまするやうに、選擧事務に關係ある官吏の被選擧權の規定であります、第七項が官吏と府縣から給與を受けて居りまする有給吏員の兼職の規定であります、從ひまして、第六條の第五項に申してありまする選擧事務に關係あります者、此の度の改正に依りまして、管理委員の外に各種の管理委員等に擴められて居るのでありますが、七項の方は兼職の禁止であります、官吏に付きましては、其の職務の性質上、又其の他の府縣の吏員に付きまして、一身を奉じて府縣に奉仕して居ります其の全體の給與を受けます吏員、それに付ての規定であります、其の他のものは此の中に含まれて居ない次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=24
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025・渡邉覺造
○渡邉覺造君 それから地方團體の首長竝に市町村吏員の國家的待遇と申しますか、待遇が今迄は非常に官吏よりも薄かつた、是は事實であります、例へば是はほんの一例でございますが、其の縣を代表すべき縣廳所在地の都市の市長が、十數年もやつて初めて勅任待遇と云ふ風で、是は稍稍終戰前に辛うじて改められたやうな状態であります、それに倣つて市町村の吏員と云ふものは國家的待遇を受けることは極めて薄い、併しながら茲に地方制度が改正されまして、地方住民の權利と云ふものは非常に擴大強化されました、之に從つて地方吏員が眞の地方住民の公僕となつて働くに付て、之に對して國家は何か報ゆる所がなければならぬと思ふのですが、此の改正に伴つて、地方吏員の國家的待遇問題を政府は御考になつて居りますかどうか、内務大臣の御意見を拜聽致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=25
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026・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 今日の時勢になりまして、官公吏に對する國家的待遇をどう改めるかと云ふ問題は、時勢に即應致しました新たなる見地から再檢討をしなければならぬものと思ふのであります、何れ官公吏法乃至公務員法と云ふやうなものが立案をされる際に於きましては、其の國家的待遇に付きましても、當然に考慮さるべきものだと思ふのであります、而して官吏のみ獨り國家から殊遇を受け、公吏は然らずと云ふやうな行き方は今日の時勢では到底採用が出來ないのであります、是は後日の問題でありますが、恐らくは公務員の中で官吏は國家から俸給を受け、公吏は公共團體から俸給を受けて居ると云ふ以外に於きましては、總ての待遇の點に於きまして何等の區別もないと云ふことに行かなければならぬものと思ふのであります、さうして封建思想とも言はるべき官尊民卑の弊風を此の點に於きましても一掃することに政府は努めなければならぬと考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=26
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027・渡邉覺造
○渡邉覺造君 私の質問は終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=27
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028・松平外與麿
○男爵松平外與麿君 文部大臣に御伺ひ致しますが、此の度都制、府縣制、市町村制の改正案が出まして内務當局に於きまして非常な新しき計畫の下に、又民主的な方途の下にそれぞれ改正法を御定めになつたのであります、處が衆議院に於きまして修正された箇所に、地方團體の市長と兼職し得ぬ者に關する規定の中に教員と云ふ字句が入つて居りますのを之を削除せられたのであります、でありますから教員は立候補が出來るし、當選すれば學校長で知事も市町村長も兼ねてやれることが出來ることに相成つたのであります、内務當局の御説明竝に衆議院議員の御意見の方も略略察知することは出來ますが、從來他の場合に於ける文部大臣の御意見と致しまして學校教員が政治と云ふものに全然無關心であると云ふことは困る、或程度の理解、了解を持ち、而して所謂青年子女の指導の上に於てもそれだけの素養を持たせる必要がある、けれども此の規定が實施されますると中には物好な者も居りますから一つやつて見ようと云ふので出ますれば、學校長兼知事と云ふやうな者が出來る譯であります、さうなりますと或は教員と云ふ者が政治と云ふことに足を踏み入れる、或は又人に依りましては非常に興味を持つてやりたくて仕樣がないと云ふ者も出て來る、さうなりますと學校の校長又は其の教員が教育が本體であるか、政治方面が本體であるか頗る瞹昧模糊たるものが出來上らないとも限りませぬ、無論常識的に考へますればさう云ふ場合は殆ど少からうと思ひますけれども、併し理窟から言ひますれば、さう云ふ場合も生じ得ることを考へなければなりませぬ、其の場合に文部當局は此の修正案に對し、又それに對する利害等を考へた場合に如何なる御所見を御持ちになりますか、此の際承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=28
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029・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 政府原案に依りますと教員は只今仰せのやうに「在職中のものは其の市の市長と相兼ぬることを得ず」と云ふことになつて居りました、是は詰り教員として學校長は勿論のことでありますが、非常な負擔を負つて居る、それが市長と云ふやうな劇職に就くと云ふことは相容れないことであると云ふ風な趣旨に考へて居りました譯であります、處で衆議院の修正に依りまして、教員が此の條項から削除されると云ふことになりますと、一方に於てさう云ふ重要なる職務を遂行しながら他方に於て亦更に性質は違つて居るが、非常に責任の重い職責を負擔すると云ふことになる譯であります、で又只今の御話のやうに政治と教育との「デリケート」な接觸に觸れて關係して來ると云ふやうな虞もない譯ではありませぬ、御懸念は御尤もと思ひますが、此の問題に付きましては市の有給吏員、教員其の他の職員と云ふ風になつて居りまして、有給吏員の場合と教員の場合とは其の職務の性質上多少違つて居るのではないかと云ふ風にも考へられないこともないのであります、仕事の分量の場合に付きましては教員としての負擔が非常に重いと云ふ場合に於ては市長の地位と相容れないと云ふことになります、併し具體的の場合に付て考へて見ますると、公立の大學教授が假に市長に當選したと云ふやうなことになります場合もあり得る譯でありますが、大學では假に一週一時間位しか講義をやつて居ないと云ふ場合に於きましては必ずしも兩方兼ねることが不可能でないと云ふことは、判事で大學教授を兼ねて居るやうな場合もある譯でありまして、是は自治體の經營する學校に付てでありますが、私立の場合の如きを考へて見ますると、私立の學校の教授であつて、市長の地位に就くと云ふやうなことも別に比の規定に抵觸しない譯である、で負擔上詰り職務の分量上相容れないと云ふ場合に於ては其の何れかを辭めなければならないと云ふことは是は當然のことだと存じます、併し事柄の性質上から申しますと、教育と云ふことの職務の性質から市の有給吏員が市長になる場合と違つて、獨立的な性質を持つて居るから必ずしも相容れないことはない、それから其の場合に於きまして政治的の傾向が教育界に入つて來ると云ふ御推量でございます、此の點に付きましては是は良心の問題でありまして、詰り教育家として教壇に起つ場合に於ては、どうしても自己の政治的な立場を表面に立てて教育者としての職責を行ふと云ふことは是は認められないことでありまして、其の點は良心の問題になつて參る譯であります、從つて結論を申上げますと、政府原案が兼務の場合に職務の分量が非常に過大になると云ふことを考慮して、詰り在職中の教員が市長になれないと云ふやうな規定を設けましたけれども.之を削除して、衆議院が教員を除外したことに依りまして、仕事の分量の決定等個々の場合に讓つたと云ふことも亦全然理由のないことぢやない、教員の職責と云ふものが他の吏員と違つて居ると云ふやうなことから考へまして、全く不合理だとは申せないと云ふ風に考へて居る次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=29
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030・松平外與麿
○子爵松平外與麿君 只今御説明の御趣旨は能く分りました、併し仕事の分量の個々的の場合に考へてと云ふことでありますが、成る程今の御話にございます通り大學の教授が衆議院議員を兼ねて居ると云ふと一つの事務的の仕事の分量が多い、其の通りでありますが、假に國民學校の教員と致しますと、恐らく今日國民學校の教員の仕事の分量と云ふものはさう輕いものでなくて一學級を受持つのでありますから、仕事の分量に於ては最上級の學校の先生方とは違ふ、其の自分の持つて居る業務に携はることが相當大きいと存じます、それからすれば仕事の分量の多少を以て批判すると云ふことはどうかと思はれます、併し衆議院の方の御説明も大體殆ど似たやうな御話も承つたのでありますが、結局此の實現した場合に於て教育上不適當であれば罷めると云ふ結論になると思ひますが、併し今度の選擧に於きましても相當教育者が立候補をして名乘りを擧げて、正確な數は存じませぬが、兎も角三十人近くも所謂學校教員と云ふものが代議士に當選された、さう云ふことから考へて見まして相當何と申しますか、所謂閥、教員に對する所の教員團と云ふ閥、斯う云ふ點から考へますと將來非常にさう云ふ政治的の地位を占めると云ふ人が現はれないとも限らないし、又出た場合に相當な有利な代表者を獲得する「チャンス」を十分持つと思ふ、さう云ふことを考へますと、或場合に於ては立候補に出ると云ふので有力な地盤を持つて居ると云ふことも考へられるけれども、それは教授の良心的判斷、良心の判斷に依つて選擇すると申しますか、それはなかなかむづかしい實際問題ではないかと思ひます、自分の良心は飽く迄も突つ張つてやることは是は結構でありますが、中には色色な傀儡の手に依りまして出たくなると云ふ人もないこともないのでありますから、只今文部大臣の御意見の御趣旨は略略了承して居りますから、御答辯は要りませぬが、此の點に付ては文部當局としても將來十分に御注意を願ひたいと云ふことを申しまして私の質問を終ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=30
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031・白根竹介
○委員長(白根竹介君) 文部省に關係のある御質疑は成るべく此の際一つ御述を願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=31
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032・松尾國松
○松尾國松君 文部大臣に御尋したいのでありますが、昭和二十一年度の改定豫算を見ますると、十二億五千九百萬圓である、此の額は多くない、前年度の比較を見ましても他の省よりも寧ろ少い位であつて、是だけの額を以て國家再建に最も大切なる教育振興に當つて貰ふことは非常に御骨の折れることと存ずるのであります、處で戰災に依りまして直轄學校及び國民學校迄が全部百十市町村のものがやられまして、是の復舊には大變金が掛かると存じますが、細かいことを申上げると長うなりまして多くを申しませぬし、能く御分りになつて居ると思ひます、で實は私は細かく申上げたいけれども、時間を取りましてさう云ふことは止めて置きますが、如何にして此の學校を復舊するか、斯う云うことであります、それは地方制度にどう云ふ關係があるかと申すと、地方制度は内務當局の説明に依りますると、自治の財力も強化する、相當の税源も與へると斯う云ふことでありますが、なかなかそれだけでは堪へられぬのであります、簡單に一つの例を申上げると、今迄は戰災前迄は大體一校御承知でもありませうが、敷地迄混ぜまして三十萬圓前後で出來て居りました、處が今日は時局で已むを得ず今日相應の「バラック」式の建物で一坪三千圓掛ります、さうしますると今迄三十萬圓で出來たものは敷地を除けまして二百三、四十萬圓も掛ります、二百三十萬圓掛りますと、此の中に火災保險と云ふものを附してあるとしまして、それが約二十萬圓程度であります、それで二百二十萬圓と云ふものが足りないのであります、其の二百二十萬圓に對しては、今後建てるものには國庫が約半額補助せられる、斯う云ふことであります、それでも尚百十萬圓負擔をしなければならぬ、處が今日の戰災都市町村に於きましては自己の復興、所謂住宅其の他の復興に迚も力がないのであります、其處へ持つて行つて學校を是だけのものを建てると云ふことは、御承知でもありませうが、事實出來ないのであります、處がどう云ふ譯で斯う云ふことを具體的に文部大臣に申上げるかと云ふと、今迄のことは地方だけで濟んだのでありますけれども、今度のことは地方だけで濟まないのです、又戰災と云ふものも、申上げる迄もなく地方の不注意と云ふことから來たのぢやないのでありますから、どうしても政府と協力しなければいかぬ、處が政府に於て時々それの力を入れることの出來ない、流行り言葉で申すと隘路とでも申しますか、隘路と云ふものが政府にあると云ふことがあるのであります、共の點を伺ふのでありますが、現在に於て戰災を受けました所は、教育は大切であるから已むを得ませぬから野天で教育致す所もあるのでありまして、私共は之を見まして敗戰の苦難、廢墟の中から再建を覺悟して居るものであるから已むを得ぬとは存じまするが、純情なる幼年の心理を察しまする時には涙なくして見られぬのであります、是は恐らく私一人でないと存じますが、さうすれば此の學校を復築するには國庫の補助では力が足らぬ、地方は力がない、斯う云ふことになりますれば何處に求めるか、斯う云ふことであります、何處に求めるか、之に付て文部大臣はどう云ふ風に御考へになるでありませうか、此處に一つの問題があります、と云ふのは私は融資に依るより已むを得ぬと斯う思つて居りますが、融資に依るより篤志家の寄附に俟つと云ふことも全部ではないが、一部の方法である、是は申上げる迄もなく、一方に於て財産税と云ふものを徴收されると云ふ關係で是亦容易でありませぬが、併し篤志家に求むると云ふことが、一番此の國の力及ばず、自治體の力及ばずとすれば、それを篤志家に俟つと云ふことであります、處が篤志家の寄附に付ては今迄は税を課する、私が申上げる迄もなく、戰時中に於ては軍部に關する寄附に付ては税を取らなかつた、處が此の問題に付て現に現實に於て税を免除して貰へば寄附すると云ふ人があるけれども、それが容易に許可をしない、是は私ははつきり申上げて置きますが、税を負擔することを私が贊成して其の人に力を入れないとするものではないのでありますが、全くに於て此の慘状を救ふ寄附と云ふものは、從來に於ける軍事費に寄附したと同等以上の私は必要な公益的のものだと斯う考へるのであります、それに税を取ると斯う云ふことになれば、出した上に税を出すと斯う云ふことになれば、是は私は人間として寄附を能うせぬと云ふのも、是は無理はないと思ふのであります、私個人に取つてもさう云ふことを考へる者でありますが、それでありますから、文部大臣は此の焦眉の必要なることに到達する爲に、如何なる異論も排除して勇氣と努力を以て、此の寄附の課税を取らないと云ふことに付て、どう云ふ御考を御持になるであらうかと斯う云ふことが承りたいのであります、私は尚方法を申して置けば、寄附が確實性を缺くと云ふならば、文部省が寄附を受けて、さうして寄附者の指定する所に交付になれば、一厘一毛違はずに居るのであります、今日の寄附をすると云ふことに付てはさう云ふ普通の人の考へるやうな、あれは誤魔化すのであらうとか、寄附したことで税を免れるのだらうと、そんな者はありませぬし、そんなことで扱ふものではないのです、それでも尚疑ふと云ふ從來の考へが若しありとすれば、文部大臣が其の寄附を受けられて、其の目的指定の所へ交付されればそれで確實になる、だからさう云ふ事柄に付て、文部大臣はどう云ふ御考を御持ちになるかと云ふことが承りたいのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=32
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033・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 戰災學校の復舊の問題は、終戰直後から文部省が努力して參り、又現に努力しつつあることでございます、是は教職員の待遇を一般官公吏並に引上げると云ふ問題と共に、最も焦眉の急だとして考へて、及ばずながら努力して參つて居る譯でございます、併し色々な所謂隘路がございまして、今日迄なかなか我々の努力が思ふやうな結果を見ませぬことは、甚だ殘念至極であります、此の前の豫算に於きましては、是も其の當時の文部當局として餘程努力致しましたのですが、市町村に於て學校復舊の爲に起債をする、此の起債の利子の半額と云ふ極めて僅かの、今數字に付てははつきり記憶致して居りませぬが、三百何十萬圓位の極く微々たるものでありました、斯う云ふ譯ではいかぬと云ふので、現内閣になりましてからの改定豫算の中に、何か考慮して貰ひたいと云ふことになりまして努力致したのであります、公共事業費の方で何とか賄ふと云ふ可能性のある問題であります、十五億の三年計畫で、官公私立學校全部を含めましての復興計畫を立てました、詰りさうなりますと金額が約五十億位になるのであります、併し今年度は十五億と云ふやうな計算で以て努力して參りましたが、併し公共事業費は生産事業と云ふやうな、又資材關係の裏附けと云ふやうなことが第一に問題にされる譯であります、さう云ふ制約が付いて居るものでありますから、學校復舊に付ては順位が少し後廻しになる、さう云ふやうな關係からも、只今申上げましたやうな額の何分の一しか認められないと云ふやうな形勢でありまして、甚だ遺憾に存じて居ります、併し是は全く別に一般の追加豫算の中に考慮して貰へないものかと云ふやうなことを考へまして、こちらの方からの努力を實は抛棄して居る譯ではございませぬ、それから火災保險金の問題はどうやら解決されたやうでありますけれども、學校の持つて居る所の、是はまあ特に私立學校の問題でありますけれども、特殊預金、封鎖預金の問題であります、其の解除の問題、是は色々の難關がございまして、なかなかこちらの思ふやうには參りませぬ、最後の財産税の免除の問題でございます、篤志者の寄附の場合に於ける財産税の免除に付きましての御説御尤もでありまして、是が自由になることに付きまして極力努力致して居ります、唯此の問題は關係方面が色々ございまして、相當戰災保險金の問題と同じやうになかなか「スムース」に參りませぬので氣を揉んで居る次第でございます、結局財政的の見地から申しますと、金があつても資材がないと云ふ所に、非常な隘路があるのでありまして、木材から申しますと少し裕りを附けて見積りますと、千萬石位の木材が入るのでありまして、三箇年計畫で考へますと二百五十萬石位毎年入ります譯であります、併し今年はまだ手持の木材もありますから、二百五十萬石で宜い譯であります、將來の年度に於きましてはそれが無くなりますから、千萬石位に見積つて置けば宜いのであります、併し是は進駐軍の宿舍の建築とか云ふやうなことを考へますと、日本の現在の木材の生産額を農林省から色色聽きました所では、非常に其の點が困るのであります、外國から更に輸入と云ふやうなことでも考へなければならぬ、そちらの方面も努力しなければならないやうな實状でございまして、此の資材の裏附がなくて唯金を放資すると云ふことになりますと、「インフレ」を助長して、さうなると勞銀等は益益高くなる、學校の復舊のみならず、國家全體の經濟的復興にも非常に害があると云ふ譯でありまして、なかなかさう云ふ色々な影響等を考へますると、我々の希望が簡單に通らないことに付きましても、それに相應する理由があると云ふやうな譯でもあるのでございます、併しながら財産税の免除の問題に付きましても、文部省と致しましても再三努力を致しまして、決して諦めないでやつて居る次第でございます、どうぞ御了承を願ふ次第でございます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=33
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034・松尾國松
○松尾國松君 私はもう御答辯は要りませぬのでございますが、大變色々な方面に御盡力下さることを多とする者であります、是は私考へますと、色々な事情があると仰しやることも想像が付きます、想像が付きますが、税で取るか寄附で取るか、是だけの違ひであります、ですから理論的に申せば、どうせ取るのですから、兎に角儲けたものにしろ、蓄積して居つたものにしろ、寄附で出して貰ふのですから、其の理論は主張して貰へば通る、斯う考へる者であります、更に具體的に言へば文部省が少し骨を折つて貰へば、國家再建をさせる上に於て技術的には色々正しい技術があると思ひますが、今日は時間を取りますから遠慮して置きます、一つどうぞ其の方面に工夫と御盡力を御願したいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=34
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035・多久龍三郎
○男爵多久龍三郎君 委員長の御許しを得ますれば文部大臣の御臨席の機會に御伺ひ申上げたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=35
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036・白根竹介
○委員長(白根竹介君) 簡單に願ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=36
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037・多久龍三郎
○男爵多久龍三郎君 私は國民學校其の他所謂初等教育、普通教育と云ふものに付きまして非常に關心を持つて居るのでございますが、是は申上げる迄もなく今度の戰爭に於きまして、古いことは別と致しまして、今日の條約尊重時代に於きまして條約を無視して侵略行爲に出たと云ふこと、或は既に「ヘーグ」の陸戰法規に依りまして定められて居る敗殘者に對する虐待行爲と云ふものは、是は加入するしないに拘らず一般の常識と思つて居るのでありますが、是が實は行はれなかつたと云ふことにはそこに非常な責任もあり、且此の根本的の原因は初等教育の缺陷にあると私は思ふのであります、日本の再建に於きましては、却て高級の學校に於ては大した問題ではなくとも、初等教育、普通教育に於て十分人格教育を施さなければ、是は日本の將來の非常な不幸を招來するのだ、斯う云ふ考から私は非常に初等教育に付きまして關心を持つて居ります、それ故に只今行はれて居ります文部省の教育刷新委員會に付て新聞を非常に熱心に拜見致して居りますが、十三日に行はれました會議に於きまして、教育行政の特に地方分權の問題と云ふ風なことが出て居ります、先日大臣の御臨席の時に一應御伺ひ致しましたが、まだ此の御決定もございませぬし、十分拜聽することを得ませぬで、是は御尤ものことと存じますが、併しながら私共と致しましては殊に地方制度の劃期的な自主的の改革に付きまして、教育の方面に於ても劃期的な地方分權と云ふ問題に付きまして十分御考慮願ひたい、斯う云ふ風に考へて居る次第でございます、從來府縣に於きましては教育者は兎角繼子扱ひされまして何時でも不利な立場にありましたのが、今日の教員組合に於て爆發する一つの原因であつたと私は思ひます、それから又今囘の新憲法に於きましては初等教育が國家に於てなされ、又教員の俸級其の他は國庫支辨と云ふことになつて居りますので、寧ろ其の點は有難いことだと感謝致します次第でございますが、今日に於きまして民主主義の政治になりました以上は、地方に於て十分なる責任を持たなければいけない、教育其の他に於きましても勿論自分達の子弟を教育する以上、自分達が費用や其の他に於て十分覺悟を持つてそれを支辨しなければいかぬと云ふことを始終申して居りますですが、今日に於きましては全般の教員の待遇改善と云ふ問題が各地方に起りました場合にも、町村長會に於きましての會合の相談にも色々説がございまして、國民學校、青年學校其の他の教育者の俸給は縣費支辨がないから町村では負擔する必要はない、斯う云ふ風なことを言はれる方もありましたが、幸ひ私の村竝に隣村に於きましては私の主張を了解して戴きまして、非常に好意ある態度に出て戴きましたことは誠に有難かつた次第でございます、さう云ふ風な好意ある人もありますけれども、概して先生達に於きましては又其の土地の大事な子弟を本當に心を入れて教育すると云ふことよりも謂はば事務的に教育し、又其の地方に於きましては學校に出して置けば何とかして呉れると云ふ風に割合興味が少いのであります、例に擧げまして如何かと存じますけれども、私の讀みました所に付きまして、「フランス」の地方の例と致しまして、國民學校、小學校の卒業には村の村長さんが試驗をする、さうして而も其の級全體に付きまして或は學業の出來る子供、或は運動の出來る子供又人を助けたやうな功績のある子供、或は正義感の強い子供に賞状を與へると云ふ風に、非常に細かく其の地方民の教育に對する熱度が教育其のものに現はれて居るやうに私は思ふのであります、斯う云ふ制度が良いのか惡いのかそれは別問題と致しまして、今後地方に於きましては假に國家支辨に致しましても、もつともつと教育と地方と云ふものが密接な連絡を持つて戴かなければ教育の本當の目的を達することが出來ないのぢやなからうか、斯う云ふ風に思つて居りますが故に、教育の地方分權と云ふ點に於きましては私非常に注意を拂つて居るのでございますが、此の點に付きまして教育刷新委員會の御審議は別と致しまして、文部大臣の御私見でも承ることが出來ましたら誠に幸と思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=37
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038・田中耕太郎
○國務大臣(田中耕太郎君) 只今の多久男爵の教育の地方分權化の問題、それから是は勿論まだ内定して居る譯でございませぬけれども、教育の費用の國庫負擔の問題でございます、幾ら分權化と申しましても、例へば日本の教育界から軍國主義的極端なる國家主義的要索を拂拭することが教育に於て、殊に公民教育に於きまして新憲法の實施されます曉に於きまして、此の民主主義的な精神を普及させると云ふやうなことは是は全國一律にならなければならないと思ひます、併し地方の實情を考慮し、地方の教育家をして溌剌たる自覺を以て自己の使命に邁進せしめることを得る爲に、詰り中央の官僚的統制なり、又は地方の官僚的の統制を及ばないやうにすると云ふ意味に於ての地方分權は是は必要であります、併し斯く申しますことに依りまして地方民が教育に冷淡になると云ふことを認める譯ぢや決してありませぬ、此の點は詰り教育の内容に素人が不當に干渉しないで、官僚的又は政治的の要素の介入を防止しなければならないと同時に、或は施設、或は教育に對する社會的の待遇と云ふやうな、さう云ふ點に付きましては十分關心を持つて貰はなければ困るのであります、其の關心が失はれると云ふやうなことは現在の所は心配ないやうに思ひます、現に戰災學校の復興等に付きまして、或は學校の新設、昇格と云ふやうな問題に付きましても非常に地方の地元の方でも熱心なのであります、尚ほ其の財政的の措置の如何に拘らず、或は府縣とか市町村、又分權が實現されます曉に於きまして何等かの機構が出來ると致しましても、其の機構との間の十分なる連絡と云ふものは、是は必要だと云ふ風に考へて居る次第でございます、只今の御質問の御趣旨には大いに共鳴致しますと共にそれに對する十分なる、詰り地方團體と地方教育家の間の關係は十分密接にしなければならない、さう云ふ線に沿つて努力致したいと考へて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=38
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039・白根竹介
○委員長(白根竹介君) 文部大臣に關係のある御質問はもう是で宜しうございますか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=39
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040・佐々木長治
○佐々木長治君 此の縣會議員の選擧で推薦候補者に付ては本人の承諾を得るやうに衆議院で改正になつたやうでありますが、縣知事の候補者は第三者の推薦を認めて居られるやうでありますが、別に本人の承諾を求めるやうに修正されてないやうですが、其の相違の意義と申しますか、内務省は懸會議員の選擧の方に御同意になつたやうですが、そこの意義と申しますか、何と申しますか、解釋と申しますか、御意見を一つ承りたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=40
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041・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 現在知事が現任地に於きまして公選知事に立候補すると云ふ問題に付きましては、此處で嘗つて御答へを申上げたのであります、新聞の報道に付きましては其の全部が出て居りませぬ爲に、或は第三者の推薦だけに限ると云ふやうな印象を與へるやうな報道があつたものもございますが、政府と致しましては今此の問題に付きまして研究中でありますから、はつきりとしたことは申上げられませぬが、私の今考へて居ります所では第三者選擧に限定してしまふと云ふことも行き過ぎではないかと思ひます、唯現任知事が立候補しました場合に於きましては、民間候補者との間に、運動上に付きましての非常な逕庭が生ずると云ふやうなことは極力避けなければならぬことであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=41
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042・佐々木長治
○佐々木長治君 私の質問と御答が違つて居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=42
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043・大村清一
○國務大臣(大村清一君) ちよつと其の點だけ申上げて置きます、さうして次の御尋の點は斯うだと思ひます、第三者が現在知事を推薦した場合に於きまして、それは矢張り此の改正地方制度に依りまして立候補の的確を得る爲に、現任知事がそれに同意を與へなければならない発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=43
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044・佐々木長治
○佐々木長治君 さうですか、さう云ふ風になつて居りますか、縣知事の立侯補者には第三者が本人の承諾なしで後で承諾を受けて宜いのですか、縣會議員の候補者は第三者が推薦する場合に、本人の承諾を得なければ推薦が效力を生じない、知事の方は第三者が推薦して後で、當選後に承諾を得ても宜いやうになつて居るのですが、それで私は縣會議員の候補者は第三者が本人の承諾を得るものとし、知事の方は第三者が本人の承諾なくても推薦が出來る、此の相違の意義を伺ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=44
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045・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 私は縣會議員の場合と府縣知事の場合と混同して居りましたが、衆議院の修正に付きましては政府委員から御説明申上げます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=45
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046・郡祐一
○政府委員(郡祐一君) 其の點に付きまして衆議院の御修正の極めて明瞭な御見解と云ふものは聽いて居らないのでありまするけれども、縣會議員に付きましては、自己の立候補或は第三者の推薦、是が場合に依りましては選擧區を分けて行はれると云ふやうなこと、或は數箇所で推薦が行はれると云ふやうな場合、是等の場合を豫想し、而も事柄を簡明に致し、數箇所當選をして後になりまして、常選後に於て何れを探るかと云ふことを決定致す現行制度に於ては餘計な手間を掛けて居る、是は直さなければならぬと云ふ御意見が非常に強かつたのであります、唯知事の問題に付きましては、現在だけに考へますれば、先程内務大臣から御答辯のあつたやうなことであります、將來の問題に於きましても一縣から一人の知事は、此の場合は現行の府縣會議員の選擧等に於きまして見ますやうな、それから起つて參ります弊害と申しますか、餘計の手續をすると云ふやうなことは恐らく事實問題として起り得ないと云ふやうな御見解で特に知事の場合には手を著けられなかつたのではないかと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=46
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047・佐々木長治
○佐々木長治君 只今の御説明は混亂と言ひますか、選擧を明確にする意味に於ける御解釋のやうに拜聽したのですが、併し實際には私のさう云ふ相違から起ります違ひは縣會議員は第三者の推薦であつても本人の承諾を得て居りまするから、それで當選後に於ける云云と云ふ問題もなし、又本人が縣會議員たるの意思がはつきりして居りますから、それで選擧後の混亂もなく、又問題もない、知事の場合には恐らくは又さう云ふ意味もおありになるのではないかと思ひまするが、自ら進んで知事にならうとは言はないが、第三者が入つて推薦し、當選し、縣の爲に奮起願ひたい、斯う云ふやうな候補者を又推擧して當選せしめたいと云ふ意思もおありになるのではないか、又自然結果としてさう云ふ結果になりはしないか、さう致しますと、其の當選した知事は、自分は知事、長官であると同時に又事務官として此の面倒な、又非常に多忙な縣知事としての職務を果すことは困難であるけれども、併し縣民から言へば、其の候補者は非常に徳望のある人で、大局の點に於て立派な觀察を持ち識見を持つて居る人である、斯う云ふやうな方が本人が進んで立候補し、又推薦を承諾せられなくとも、縣民が斯う云ふ方こそ我々の公選知事として最も適任者なりとして當選を期する場合が出て來ると思ふ、さう致しますると、其の當選した人は自分としては知事たる野心もなければ非常に困るけれども、折角縣民がさう言ふなら、縣民の爲に一つ及ばずながらもやつて見ようと云ふやうな結果を來すのぢやないか、さうなりますると、其の知事が官吏となりまして、まあ將來は兎も角、現改正法に於ては官吏となりまして、縣廳の知事の事務を執る、さうなつて來まして、其の知事は左樣な知事であり、之に配するに、將來の第二次改正は兎も角、現在に於ては此の改正法で審議をしなくちやいけませぬので、さうなりますと、内務部長以下、警察部長にしろ、經濟部長にしろ、内務省から與へられたる幕僚を以て、同僚を以て縣政に當る、而も其の知事が望むやうな優秀なる部長は、又内務省に於ても早く榮轉をさしたいやうな部長である、斯う云ふ結果になりますると、左樣な種類の知事は縣の爲に折角縣民も要望し、本人も亦自分の特徴に於て縣の爲に盡力したいと考へて居つても、自分の左右の幕僚が安定しない、斯う云ふことの爲に非常に其の縣政の運用の上に不安を感ずるのみならず、又其の知事が働くことが出來ないと云ふ結果になりはしないか、斯う云ふ風に存ずるのでありまするが、左樣な點に付きましては、内務大臣としては御不安なく此の案を御立案でありませうが、其の點に付て伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=47
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048・大村清一
○國務大臣(大村清一君) ちよつと御尋の趣旨が十分呑込めませなんだので、十分な御答が出來ぬかも存じませぬが、現職知事が知事公選の場合の立候補の時に當つて、職務上何か支障が起りやせぬかと云ふ御尋だと思ひますが発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=48
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049・佐々木長治
○佐々木長治君 違ひます、現職知事に付て私は何も申して居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=49
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050・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 將來の場合ですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=50
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051・佐々木長治
○佐々木長治君 もう一度それぢや委員長、大變恐縮ですが、……詰り知事の選擧はですね、本人の承諾なくしても、第三者が推薦で知事の當選を期することが出來るのでありませう、でありまするから、豫め本人が知事たることを承知しないで、さうして第三者が此の人を縣の知事として最も適任なりとして當選せしめて、せしめた結果は本人は自分では必ずしも知事に適任ではないが、其處迄所望されるならば知事として就任しようと斯う云ふ場合が多く出來ると思ふのです、又左樣な知事を縣民は望むと思ひます、自ら立候補の運動をしてやる知事よりも、本來から言ひますならば、第三者が推薦するやうな知事を縣民としては望むと思ひます、さう云ふやうな徳望のある知事は、縣廳は詰めてさうして又事務にも詳しくて、又專心知事の事務が出來るやうな方でないと想像しても宜いと思ふのであります、さう云ふ知事は必ず女房役と云ふもの、部長なり、内政部長なり、警察部長なりがどつしりと腰を据えて其の知事を補佐しなくちや私はいかぬと思ふ、又さう云ふ部長を得て始めて其の知事は本當の手腕を發揮することが出來、特色を發揮することが出來ると思ふ、處が知事は公選で四年の任期でやつて居りまするし、それ等の部長は……將來の第二次の改正の御趣旨は別として、現行法の現在の改正法案に於きましては、是等の部長は内部省に於て、轉任、或は又榮轉は自由に御やりになると斯う云うことになりますると、縣政の上に於て圓滿を缺き、又十分なる立派な行政が出來兼ねるのぢやないか、斯樣に考へるのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=51
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052・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 御尤もな御質問でありますが、現在に於きましては、御話の如く内務部長等は知事に於きまして、功過に對する具情權はありますが、進退に對しては何等發言權を特つて居りませぬ、併し此の地方制度の實施と同時に其の扱ひを變へまして、公選知事に部下の官吏の進退の具情權を附與することに致して居ります、其の知事の具情がなければ動かさぬと云ふことに致しまして、其の間支障なからしめる方針で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=52
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053・佐々木長治
○佐々木長治君 そこで私はもう一つ大局的に伺ひたいのですが、左樣な場合に知事を長く留めますると云ふことは、本人の榮轉を或場合には妨げる場合が出て來る、それで日本の官僚制度として私は詳しいことは知りませぬが、官等と官職、或は其の官等と俸給、所謂官等は上らなくても俸給が別箇に上つて行く、或は又是はまあ私は官吏の本當の民主化と思ふのですが、即ち官等が低くても其の適職に長く居座らしめるやうな優遇の途を講ずることが官吏の本當の道かと思ひますが、唯徒らに官等が上り、官職が上ることのみを焦つて轉任をやつて行くことが從來の弊害だと思ひますが、是等の點に付ては今後公吏制度なり官吏制度を御考になる時に御考慮になるやうな御方針があれば伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=53
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054・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 今年の春の改正に依りまして、大體部長の地位は元の奏任官で行くと云ふことになつて居ります、現在では二級官でありますが、此の部長に於きましても、今度の一級官、元の勅任官にする途が拓けて居りますので、其の地位に長く留つて居つて知事に昇進されると云ふことも認められて居ります、併しそれだけでも優秀な部長を處遇する譯には行かぬと云ふ場合に於きましては、公選知事の部下官吏の具情權に基きまして、内務省とよく相談の上で、其の人には又然るべき良い地位を當がうとして、又後に公選知事の望まれるが如き者を配置すると云ふことも可能でありますので、其の邊は一つ都合好く運用して行ける見込で居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=54
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055・佐々木長治
○佐々木長治君 有難うございました発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=55
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056・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 今後の選擧運動の取締ですな、是は勿論嚴正公平に御やりになることと存じまするが、何分民主化が急激に進んで参りましたり、一方では言論の自由と云ふことで、斯う云ふ風になつたのでありまするから、從來と違つて之に對する取締の方針に付ては御苦心のあることと存じます、嚴罰主義で行くと云ふことよりも今申しました民主化、言論の自由と云ふやうな點からして、從來と變つた何等かの之に對する御取締が必要ぢやないか、斯樣に思ふのであります、先達ての衆議院議員の選擧に於きまして、二三の人から聞きますると、演説會の臨檢し警官が、どうも斯う云ふ風に民主化され、言論が自由になつたのだから迂つかりと發言を停正すると云ふやうなことをやつては、あべこべに此方が取つちめられることになるだらうと云ふことで、まあ傍觀すると云ふやうな態度に出た者があつたと云ふことを聞いて居りまするが、是は勿論、何分急激に斯う云ふことになつたのでありまするから、斯う云ふ選擧に對する警官の訓練とか云ふやうなことが、此の僅かな短時日の間に出來なかつたが爲にさう云ふことになつたんだらうかと思ひます、又候補者乃至有權者の方に於きましても、急激に多數の者に擴大されて居るのでありますから、是亦政治的訓練がないが爲に、色々なことを考へて居るのかと思ふのでありますが、さう云ふ點を考へますと今後の選擧運動の取締と云ふことは、從來と違つた何等かの對策を御講じになる必要があるのぢやないかと斯樣に考へまするので、さう云つた方面に對する御用意の程をば伺ひたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=56
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057・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 今後の選擧が民主主義の新趣旨を體して、公正に行はれなければならぬと云ふことは、是は民主政治發達の上に非常に基本的のものでありまして、政府としては其の點に十分意を用ひなければならぬ、併し此の公正なる選擧が行はれると云ふ裏付は、選擧の取締のみに依つては到底完うし得ないことでありまして、寧ろ取締以前に於きまして、國民が民主政治に醒めて、國民が公正なる選擧を行ふと云ふ意欲が起るやうに啓發宣傳と申しますか、さう云ふ面に大なる努力を致さなければならぬと思ひます、之に付きましては、それぞれの政府部内の面に於きまして、企畫中でありますので、私共は其の點に多大の期待を掛けて居る譯であります、尚一面選擧の公正を確保する上に於きましては、取締を適正にやると云ふことも是は十分注意しなければならぬことであります、何分自由なる民意の表明を確保しようと云ふことを目標と致しました曩の衆議院議員の總選擧に於きまして、是は新しい型でありましたので、總ての點に於て完全に行つたと申上げることは出來ないのであります、殊に餘り其の點に重點を置きましたが爲に、選擧運動が少し放縱に流れた、從つて選擧運動費を餘分に注ぎ込んだ者、乃至は其の選擧運動に於きまして必ずしも公正でない方法を採つた爲に、結果が好かつたと云ふやうな面も絶無ではなかつたと思ふのであります、で衆議院議員の總選擧の際のことは其の後に於きまして、取締當局に於て段段と調査檢討を致しまして、あの實績を能く檢討致しまして、此の次の選擧に對しては更に完璧を期さうと云ふことで、段々其の檢討の結果も現れつつあることであります、豫ても此の席で御質問もあつたことでありまするが、事前運動の取締の如きは、前囘は少し「ルーズ」に失したではないか、尚又選擧費用の取締の點に於きましても同樣の關係があつたと思ふのであります、或は又選擧運動に對しまして、いたいけな學童を少し使ひ過ぎたやうな行過ぎがあつたと云ふ、斯う云ふやうな事例が澤山ありますが、斯う云ふやうなことに對しましては十分檢討致しまして、次の選擧には更に公正なる選擧が行はれるやうに、取締の面からもやり方を是正し、又強化すると云ふやうな行き方を致したいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=57
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058・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 能く了承致しました、唯さう云つたことでありまするから、演説會の臨檢の警官とか、其の他のことに關係する警察官の訓練とか、さう云つたことに特に意を御用ひに相成る考でありませうが、何等か之に對する御抱負を伺ひたい、是から次々と選擧を行ふやうになりますから、何か御考がありますかどうか伺ひたいと思ふのであります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=58
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059・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 先程來申上げますやうに段々檢討を致しまして、逐次結論を得つつありますので、之を一つ集大成することを急ぎまして、選擧の行はれる前に警察部長會議等を催しまして、其の研究の結果を示し、又部長諸君の意見も徴しまして、全國に亙りまして、新らしい選擧の取締方に付ては完全なる打合せを遂げ、實施をする豫定で居ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=59
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060・中田薫
○中田薫君 私は此の原案の七十四條の二、即ち「府縣知事は官吏とす」、之に修正意見が付いて居る、此の問題であります、それを此の前大分質疑應答が此處でありましたが、其の問題を再び蒸返すやうな譯でありますけれども、今迄の御議論と違つた觀點から一つ質問を致したいと思つて居ります、それは其の條文の解釋問題でありますが、其の前に政府の方の御答では何處にも憲法施行の後縣知事が公吏になると云ふ規定はないのである、又さう云ふことも餘り簡單にして、衆議院の方の修正には出て居らぬから、そこで直ちに憲法施行と同時に其の公選された者が縣知事となると云ふことはちよつと出來兼ねる、そこに切替の何か必要がある、斯う云ふ風な御答であつたと私は記憶して居ります、間違つて居るか知りませぬが、兎に角其切替の何か措置を講じなければならぬ……私はちょっと別な解釋を持つて居るのありでます、と申すのは、此の府縣知事は改正憲法施行の日迄官吏とすると云ふ簡單な修正を加へた、其の衆議院の方の意思でございます、是は明かに其の施行の後は公吏と之をすると云ふ意思であつたと思ふのであります、それから又政府が一應此の修正に御贊成なすつた時にもそれと同じやうに憲法施行の日には其の公選された者が知事となる、今の知事が詰り公務員……公吏となつてしまふのだ、衆議院の修正の意思と同じ心持だつたらうと思ひます、又此の委員會でも色々御議論なさる所を見ると、矢張り憲法施行の日には公務員になるのである、公吏になるのである、さう云ふことを皆前提として御議論をして居られるやうであります、そこで私はそこを掴まへるのであります、御承知の通り法律の解釋と云ふものは、必ずしも條文に現はれた所に依る必要もないので、或時には立法者の意思と云ふことが重要な解釋の根となるのであります、私は其の立法者の意思を根據としたいと思ふのであります、即ち立法者……修正をしたのは衆議院でありますが、立法者の意思は明かに是は憲法施行の日に公吏となるのである、さう云ふ意思で此の修正を加へた、政府も亦之を受諾されたのも同じである、立法者の意思は極めて明白である、唯其のことが所謂憲法實施と云ふ不確定な期限に懸つて居る、處が憲法が愈愈實施になると其の不確定の期限と云ふものは直ちに確定してしまふ、私は其の瞬間に當然其の選擧された者が公吏と云ふことに切替を待たずになつて來る、今迄期限に懸つて現はれなかつたものが表に現はれて來ると同時に、今迄の縣知事と云ふものは其の瞬間になくなつてしまふ、免官の手續を要せずして私は當然廢官と同樣になつてしまふものと思ふ、さうして見ますと何も其の間に切替の必要もなく當然憲法施行と云ふ期限が來れば公務員になつてしまふ、併しそれは矢張り縣知事である、そこで問題が混がらかつて來るのではないかと思ひますが、今迄の縣知事とは性質が違つて來る、唯名前は縣知事と今度の公吏は實質的には何等關係がない、例へば今日迄の知事と云ふものは金ぴかの大禮服を著て居つたが、今度の公吏と云ふものは極く平民的な開襟服か何かに衣を替へた、而も其の衣には舊の名に從つて名だけ府縣知事と云ふ貼札がしてある、それを著たのである、それだけの差である、ですから舊の官吏が、縣知事が直ちにこつちの方に送つて行くと云ふことになると、そこに色々議論がありますので全く連絡はない、今度の知事は名だけを先通り取つたので、實質的には其の瞬間に舊の知事は廢官になつてしまつた、斯う云ふことに私は解釋したいと思つて居りますが、さうすれば切替の必要も何も要らない、問題はさう云ふ場合に於て今迄の府縣知事が行ふて居つた所の中央の行政、國の行政、是は誰が行ふか、其の善後策に於ては特別の措置が必要である、殘りの問題はそれだけであると私は解釋したいのでありますが、政府の方ではさう云ふ解釋が成り立つものと御考になりますか、どうですか、若し解釋は成り立つと斯樣に御贊成を得ましたら、それに依つて附議される考はないか、之を御尋ね致します発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=60
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061・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 法律論と致しましては大體御話の通りであらうと思ひますが、唯法律の表面から見ますれば府縣知事は改正憲法施行の日迄官吏とすると云ふことになつて居る、裏では施行の日以後は公吏とする想像は一應付きますが、逆は必ずしも眞でないのでありますので、其の日迄は官吏であるから、それから先はどうするかと云ふことは法律論としてははつきり論定の出來ぬことと思ふ、唯立法者の意思を忖度致しますと附帶決議がありますので、「政府は都道府縣の首長及び其の部下をすべて公史とする都制、府縣制改正案及びこれに必要なる法律案を急速に整備し、來るべき通常議會に提出すること。」と附帶決議があります、故に政府が此の附帶決議を尊重致しまして、此の改正法律案に對しまして、公吏で運用して行くに付て必要なもの乃至便宜な規定、それ等を採入れた改正案を次の議會に出す、さうすればそれは先づ憲法施行前に其の改正法律案が成立せられるものと豫期し得ますから、さうなれば一層明瞭に法制も確立され、運用上も支障がないと云ふことを衆議院は立法省として考へて居られると云ふやうに、立法者の意思は推測が出來ると思ふのであります、而して御話の如く、憲法施行の日迄に於て何等の措置を取らないとすれば、それはそれに基いて何等か運用出來るやうな解釋をしなければならぬと思ひますが、併し其の解釋をするに付ては、現在の改正案に於きましては、悉く知事の官吏制を前提として規定して居りますから、それをどう云ふやうな工合に憲法施行の日以後解釋して行くかと云ふことに付ては、研究の結果只今結論を得るとしても、そこに色々疑義が生ずるのであります、例へば御指摘になつた七十四條の第二項の如きは、此の儘で置きますと「被選擧權あるものに就き選擧人をして選擧せしめ其の者に就き之に任ず」となつて居ります、さうなりますと官吏であれば、官吏法に依つて任命手續があるのでありますが、切替はつた時分に此の任命手續は誰がするかと云ふやうな點にも疑問が起るので、是等は恐らく公吏制に切替へる時は、選擧に依つて當選すれば、それが直ちに公吏たる地位を取得すると云ふやうな工合に改正した方が、疑義を少くとも避けることが出來るだらう、其の外にも斯う云ふやうな點があると思ひます、例へば此の改正案の七十四條の二十二に「本法に規定するものの外府縣の官吏に關しては勅令の定むる所に依る」と云ふやうな規定も、府縣知事が公吏に對する身分に切替へると云ふことになると、是等の點に付ても解釋上疑義が起ると云ふやうなことがありますので、政府としては此の附帶決議の趣旨を尊重致しまして、憲法施行の日以後に於きましては、府縣制は知事を公吏とし、其の部下も總て公吏と致しまして、運用の出來るやうに全般的に再檢討を加へて、それに適するやうな改正を致したいと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=61
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062・中田薫
○中田薫君 今の御答では主として運用上多少訂正を更に要するやうな規定があると云ふ爲に、私の解釋を直ちに採る譯に行かぬと云ふやうなことでありました、私の言ふのは詰り此の法規の問題よりは、憲法施行の日迄官吏とする、而してそれは立法者の意思である、殊に衆議院の附帶決議があれば立法者の意思は極めて明白であるから、其の立法者の意思を解釋の根據とする、是は普通ちよつと能くあることでございますから、それに依つて動もれば此の公選の知事が憲法施行の日當然公吏となると云ふことで、別に其の點は切替の必要はないだらう、それに依つて原案は初からそれを前提として立てたものでありますから、從つてそれに付て提案の初から官吏と云ふことを前提として立てたものだから、多少今御示しになりました諸種の規定或は改變を要する規定がありませうが、併し是は切替の時に一緒にそれを御改めになつたら宜いことであつて、公選されたものが當然知事になると云ふ點は其の解釋でも十分行けるのぢやないか、別にそれ迄切替へないでも、唯運用上其の方が便利だ、一般に合してなら問題は別問題でありますが……発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=62
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063・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 法律論と致しましては、御尋のやうな御見解になるものかと思ひまするが、併し實際の問題と致しましては、各所に疑義を生じますから、行政運營の上から申しましては、公吏制に切替へる時期迄に疑義を生じますやうな規定に付きましては、適當な改正を加へた方が望ましいものだと云ふやうに考へて居る次第であります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=63
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064・中田薫
○中田薫君 只今の答で私の解釋が成立つ、解釋としては成立つと云ふことを御認め下さつたことは私の誠に滿足とする所であります、是で質問を打切ります発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=64
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065・中川望
○中川望君 只今の此の知事公選のことに付て、色々地方でもそれぞれの行政面の情報もあるやに聞いて居りまするが、當局の方に何か一般的に大體斯んな情勢が見えると云ふことが、材料がございますれば伺つて置きたいと思ひます発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=65
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066・大村清一
○國務大臣(大村清一君) 知事公選に對しましては、新聞紙等に於きまして報道されて居るものがございますが、まだ内務省に對しましては、それ等の情報が報告されると云ふ程度迄には至つて居りませぬ発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=66
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067・梅園篤彦
○子爵梅園篤彦君 大體總括的の質問は略略盡きたやうに思ひますから、此の程度で總括的の質問を打切つて戴きまして、明日からでも各論的な質問をして戴くと云ふ風に願つたらどうですか、尤も大臣に對する御質問とか、總括的な質問の殘つて居る方は其の際に願ふと云ふやうなことに願つてはどうですか発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=67
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068・白根竹介
○委員長(白根竹介君) 何分にも重要なる法案でありますからして、愼重に審査を致したいと思ひます、就ては唯議事の進行の順序と致しまして、只今迄總括質問は隨分ありまして、今後も或はあるかと存じまするが、進行する爲に、明日から府縣制は府縣制で章別に、それから市制、町村制も章別にずつと參りまして、一應審議を進めて見たいと思ひます、其の場合に、勿論總括的の大きいことを御聽きになつても一向差支ないのでありますから、又其の審議が一應濟んだ上、或は御氣付きことがありましたら御質問になつても宜しいかと存じます、兎に角進行上さうやつて行きたいと存じますが、如何でございませうか
〔「異議なし」と呼ふ者あり〕発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=68
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069・白根竹介
○委員長(白根竹介君) ぢやさう云ふ方針で進めて行きます、明日は本會があるさうでありますので、色々の都合で午後一時から開きたいと存じます、本日は此の程度で散會致します
午後二時五十五分散會発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=69
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070・会議録情報3
出席者左の如し
委員長 白根竹介君
副委員長 男爵 伊江朝助君
委員
侯爵 小村捷治君
侯爵 佐竹義榮君
伯爵 大木喜福君
子爵 森俊成君
子爵 梅園篤彦君
子爵 松平銑之助君
子爵 田中薫君
子爵 植松雅俊君
姉崎正治君
中田薫君
男爵 松平外與麿君
男爵 尚琳君
男爵 島津忠彦君
男爵 多久龍三郎君
中川望君
松尾國松君
河端作兵衞君
渡邉覺造君
佐々木長治君
奧主一郎君
國務大臣
内務大臣 大村清一君
文部大臣 田中耕太郎君
政府委員
内務事務官 郡祐一君発言のURL:https://teikokugikai-i.ndl.go.jp/simple/detail?minId=009002723X00619460916&spkNum=70
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